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審判番号(事件番号) データベース 権利
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事件 平成 16年 (ワ) 17304号 特許権侵害差止請求事件

原告 株式会社荏原製作所
同訴訟代理人弁護士 大野聖二
同補佐人弁理士 渡邉 勇
同 伊藤 茂
被告 株式会社神鋼環境ソリューション
同訴訟代理人弁護士 吉澤敬夫
同 牧野知彦
同訴訟代理人弁理士 新井 全
同補佐人弁理士 岡崎 信太郎
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2006/01/20
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
被告は,別紙被告物件目録(原告)記載の被告製品を生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
事案の概要等
1 事案の概要 本件は,廃棄物の処理方法等について特許権を有する原告が,流動床式ガス化溶融炉を製造販売する被告に対し,生産等の差止めを請求する事案である。
2 争いのない事実等 (1) 当事者 ア 原告は,各種焼却炉の施工,販売等を業とする株式会社である。
イ 被告は,各種廃棄物処理システムの施工,販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告の特許権 原告は,次のとおり,3件の特許権(以下,それぞれ,「本件第1特許権」,「本件第2特許権」,「本件第3特許権」といい,また総称して「本件各特許権」という。)を保有している。
ア 本件第1特許権(その特許訂正明細書(甲1の2)を「本件明細書1」という。) (ア) 特許番号 第3153091号 (イ) 発明の名称 廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置 (ウ) 出願年月日 平成7年2月9日 (エ) 登録年月日 平成13年1月26日 (オ) 優先権主張 国名 日本国 出願年月日 平成6年3月10日 (カ) 特許請求の範囲 a 請求項16 「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。」 b 請求項17 「前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。」 c 請求項18 「前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。」 d 請求項19 「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。」 e 請求項21 「前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とする請求項19又は20記載の方法。」 イ 本件第2特許権(その特許明細書(甲2の2)を「本件明細書2」という。) (ア) 特許番号 第3270447号 (イ) 発明の名称 廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融装置 (ウ) 出願年月日 平成7年2月9日 (エ) 登録年月日 平成14年1月18日 (オ) 特許請求の範囲(請求項2) 「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融する装置において,該流動層炉は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段を備え,該質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,該質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段から供給される流動化ガスはともに空気とし,該流動化ガスを該炉内に供給して該炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,ガス化してガスとチャーを生成し,該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,該熔融炉は該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを燃焼して灰分を熔融することを特徴とするガス化及び熔融装置。」 ウ 本件第3特許権(その特許明細書(甲3の2)を「本件明細書3」という。) (ア) 特許番号 第3544953号 (イ) 発明の名称 廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融装置 (ウ) 出願年月日 平成7年2月9日 (エ) 登録年月日 平成16年4月16日 (オ) 特許請求の範囲 a 請求項1 「廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において,炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,抑制された燃焼反応が継続されるようにし,該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。」 b 請求項2 「廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において,炉内に流動化ガスとして空気を供給し,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,抑制された燃焼反応が継続されるようにし,該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。」 c 請求項4 「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス化及び熔融装置。」 d 請求項5 「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給することを特徴とする請求項1又は3又は4に記載のガス化及び熔融装置。」 e 請求項6 「廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において,炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ,該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。」 f 請求項7 「廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において,炉内に流動化ガスとして空気を供給し,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させ,該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。」 g 請求項9 「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されることを特徴とする請求項6に記載のガス化及び熔融装置。」 h 請求項10 「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給することを特徴とする請求項6又は8又は9に記載のガス化及び熔融装置。」 i 請求項12 「前記熔融炉は,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のガス化及び熔融装置。」 (3) 本件各特許権の特許発明構成要件の分説 本件第1特許権の特許請求の範囲請求項16ないし19及び21,本件第2特許権の特許請求の範囲請求項2並びに本件第3特許権の特許請求の範囲請求項1,2,4ないし7,9,10及び12に係る各特許発明(以下,併せて「本件各発明」という。)の構成要件は,次のとおり分説することができる。
ア 本件第1特許権請求項16に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明1@」という。また,その構成要件をその番号及び記号に従って「構成要件1A」などといい,以下同様とする。) 1A 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において, 1B@ 流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し, 1C 該廃棄物を該流動層炉に供給し, 1D 該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し 1E 該チャーを該循環流中で微粒子とし, 1F 該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
イ 本件第1特許権請求項17に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明1A」という。) 1A 前記アの構成要件1Aに同じ 1B@ 前記アの構成要件1B@に同じ 1BA 前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする 1C 前記アの構成要件1Cに同じ 1D 前記アの構成要件1Dに同じ 1E 前記アの構成要件1Eに同じ 1F 前記アの構成要件1Fに同じ ウ 本件第1特許権請求項18に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明1B」という。) 1A 前記アの構成要件1Aに同じ 1B@及びA 前記アの構成要件1B@及び前記イの構成要件1BAに同じ 1BB 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とし, 1C 前記アの構成要件1Cに同じ 1D 前記アの構成要件1Dに同じ 1E 前記アの構成要件1Eに同じ 1F 前記アの構成要件1Fに同じ エ 本件第1特許権請求項19に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明2@」という。) 2A 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において, 2B@ 流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し, 2BA 該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され, 2BB 流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり, 2C 該廃棄物を該流動層炉に供給し, 2D@ 該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し 2E 該チャーを該循環流中で微粒子とし, 2F@ 該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し, 2FA 該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し, 2FB 該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
オ 本件第1特許権請求項21に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明2A」という。) 2A 前記エの構成要件2Aに同じ 2B@ないしB 前記エの構成要件2B@ないしBに同じ 2C 前記エの構成要件2Cと同じ 2D@ 前記エの構成要件2D@と同じ 2DA 前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されることを特徴とし, 2E 前記エの構成要件2Eと同じ 2F@ないしB 前記エの構成要件2F@ないしBに同じ カ 本件第2特許権請求項2に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明3」という。) 3A 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融する装置において, 3B@ 該流動層炉は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段を備え, 3BA 該質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,該質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段から供給される流動化ガスはともに空気とし, 3BB 該流動化ガスを該炉内に供給して該炉内に流動媒体の循環流を形成し, 3C 該廃棄物を該流動層炉に供給し, 3D ガス化してガスとチャーを生成し, 3F@ 該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し, 3FA 該熔融炉は該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを燃焼して灰分を熔融することを特徴とするガス化及び熔融装置。
キ 本件第3特許権請求項1に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明4@」という。) 4A 廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において, 4B@ 炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え, 4D@ 該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し, 4DA 流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し, 4E 抑制された燃焼反応が継続されるようにし, 4F 該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。
ク 本件第3特許権請求項4に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明4A」という。) 4A 前記キの構成要件4Aに同じ 4B@ 前記キの構成要件4B@に同じ 4BA 前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されることを特徴とし, 4D@及びA 前記キの構成要件4D@及びAに同じ 4E 前記キの構成要件4Eに同じ 4F 前記キの構成要件4Fに同じ ケ 本件第3特許権請求項5に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明4B」という。) 4A 前記キの構成要件4Aに同じ 4B@ 前記キの構成要件4B@に同じ 4BA 又は,前記クの構成要件4BAに同じ 4BB 前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給することを特徴とし, 4D@及びA 前記キの構成要件4D@及びAに同じ 4E 前記キの構成要件4Eに同じ 4F 前記キの構成要件4Fに同じ コ 本件第3特許権請求項2に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明5」という。) 5A 廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において, 5B@ 炉内に流動化ガスとして空気を供給し, 5BA 質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え, 5D@ 該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し, 5DA 質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し, 5E 抑制された燃焼反応が継続されるようにし, 5F 該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。
サ 本件第3特許権請求項6に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明6@」という。) 6A 廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において, 6B@ 炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え, 6D@ 該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し, 6DA 流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し, 6E 生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ, 6F 該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。
シ 本件第3特許権請求項9に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明6A」という。) 6A 前記サの構成要件6Aに同じ 6B@ 前記サの構成要件6B@に同じ 6BA 前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されることを特徴とし, 6D@及びA 前記サの構成要件6D@及びAに同じ 6E 前記サの構成要件6Eに同じ 6F 前記サの構成要件6Fに同じ ス 本件第3特許権請求項10に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明6B」という。) 6A 前記サの構成要件6Aと同じ 6B@ 前記サの構成要件6B@に同じ 6BA 又は,前記シの構成要件6BAに同じ 6BB 前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給することを特徴とし, 6D@及びA 前記サの構成要件6D@及びAに同じ 6E 前記サの構成要件6Eに同じ 6F 前記サの構成要件6Fに同じ セ 本件第3特許権請求項7に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明7」という。) 7A 廃棄物をガス化した後に,灰分を熔融する装置において, 7B@ 炉内に流動化ガスとして空気を供給し, 7BA 質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え, 7D@ 該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し, 7DA 質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し, 7E 生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させ, 7F 該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたことを特徴とするガス化及び熔融装置。
ソ 本件第3特許権請求項12に係る特許発明(以下,この特許発明を「本件発明8」という。) 本件発明8の構成は,前記キないしセのいずれかの構成及び次の構成要件8Fとに分説することができる。
8F 前記熔融炉は,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えたことを特徴とする。
(4) 被告の行為 被告は,製品名「流動床式ガス化溶融炉」(以下「被告製品」という。)を製造販売している。
(5) 構成要件の一部充足 ア 被告製品の構成は,本件発明1@ないしBの構成要件1A及び1Cを充足する。
イ 被告製品の構成は,本件発明2@及びAの構成要件2A,2C,2F@及び2FAを充足する。
ウ 被告製品の構成は,本件発明3の構成要件3A,3C及び3F@を充足する。
エ 被告製品の構成は,本件発明4@ないしBの構成要件4Aを充足する。
オ 被告製品の構成は,本件発明5の構成要件5A及び5B@を充足する。
カ 被告製品の構成は,本件発明6@ないしBの構成要件6Aを充足する。
キ 被告製品の構成は,本件発明7の構成要件7A及び7B@を充足する。
3 争点 (1) 本件各発明における「循環流」の解釈 (2) 被告製品の構成 (3) 被告製品が本件発明1@ないしBの技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件1B@ないしB,1D,1E及び1Fを充足するか否か) (4) 被告製品が本件発明2@及びAの技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件2B@ないしB,2D@及びA,2E並びに2FBを充足するか否か) (5) 被告製品が本件発明3の技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件3B@ないしB,3D及び3FAを充足するか否か) (6) 被告製品が本件発明4@ないしBの技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件4B@ないしB,4D@及びA,4E及び4Fを充足するか否か) (7) 被告製品が本件発明5の技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件5BA,5D@及びA,5E及び5Fを充足するか否か) (8) 被告製品が本件発明6@ないしBの技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件6B@ないしB,6D@及びA,6E及び6Fを充足するか否か) (9) 被告製品が本件発明7の技術的範囲に属するか否か(被告製品の構成が構成要件7BA,7D@及びA,7E及び7Fを充足するか否か) (10) 被告製品が本件発明8の技術的範囲に属するか否か (11) 被告製品の構成が,本件各特許権の出願前に既に公知になっていた技術と同一ないし同技術から当業者において容易に想到することができるものであって,本件各特許権の侵害とならないものか否か(自由技術の抗弁) (12) 本件発明1@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か ア 本件発明1@の新規性の有無 イ 本件発明1@の進歩性の有無 ウ 本件発明1Aの進歩性の有無 エ 本件発明1Bの進歩性の有無 (13) 本件発明2@及びAに係る特許が無効にされるべきものか否か ア 本件発明2@の進歩性の有無 イ 本件発明2Aの進歩性の有無 (14) 本件発明3に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無) (15) 本件発明4@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か ア 本件発明4@の新規性及び進歩性の有無 イ 本件発明4Aの進歩性の有無 ウ 本件発明4Bの進歩性の有無 (16) 本件発明5に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無) (17) 本件発明6@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か ア 本件発明6@の新規性及び進歩性の有無 イ 本件発明6Aの進歩性の有無 ウ 本件発明6Bの進歩性の有無 (18) 本件発明7に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無) (19) 本件発明8に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無)
争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件各発明における「循環流」の解釈) について 〔原告の主張〕 (1) 「循環流」の意味 ア 特許請求の範囲文言解釈 本件発明1@の特許請求の範囲には,「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,」と記載されている。
このとおり,「流動媒体の循環流」は「形成し」の対象であり,ここで「形成」とは,国語的には「形づくること。」(広辞苑第5版(甲9)820頁)を意味する。したがって,「流動媒体の循環流」は,「形づくること。」の対象となるものであるから,単なる自然発生的なものではなく,意図的に形成されるようなものを意味する。
そして,「循環流」とは,文字どおり循環する流れを意味するから,「流動媒体の循環流」とは,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」を意味する。
イ 本件明細書1の記載 本件明細書1(甲1の3)の【課題を解決するための手段】(【0009】26頁18行ないし23行)の記載においては,「流動媒体の循環流」が「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」を意味することが示されている。
また,本件明細書1に記載された【発明の効果】(【0056】35頁45行及び46行,【0058】36頁2行)は,気泡が炉の下部から上部へと移動することに伴い,付随的,自然発生的に発生する各種循環セルでは,発生しないから(乙3),この点からも,「流動媒体の循環流」が,「流動層の反応工学」中に記載された各種の循環セルとは明確に区別された「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」を意味することを裏付けることができる。なお,従来型のバブリング型の流動床炉では,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」が存在しないために,ごみの取り込みに問題が生じ,特に不燃物の排出に支障が生じる。
本件発明1の上記作用効果は,従来のバブリング型流動床炉にはない本件発明1特有の効果である。
そうすると,「流動媒体の循環流」は,前記アのとおりに解釈されるべきである。
(2) 被告の主張について ア クレーム解釈の明確性 仮に,「流動層の反応工学」(乙3)中に記載されている流動媒体の循環である「粒子循環セル」が従来公知の流動層炉(流動床式ガス化炉)に妥当するとしても,このような「粒子循環セル」は,流動層である限り必然的に発生する周知の物理現象であって,意図的に形成された流動媒体の循環する流れとは,明確に区別される。
本件発明1@等においては,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れを形成すること」という要件は,流動媒体が循環するために,例えば,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小をつけたり,デフレクターを用いたりして,意図的,作為的に流動媒体の循環流を形成するための構成を,前段のガス化装置において備えることを要することを意味する。
他方,「粒子循環セル」は,流動層である限り必然的に発生する周知な物理現象である以上,意図的,作為的に流動媒体の循環流を形成するための構成をガス化装置が備えるものではない。
すなわち,本件発明1@等においては,意図的,作為的に流動媒体の循環流を形成するための構成をガス化装置が備えているのに対して,被告のいう公知技術においては,このような構成を備えるものではない以上,両者は明確に区別される。
被告の「循環流」についての解釈は不当な実施例限定解釈である。
公知技術に基づく主張について 〔被告 の主張〕(1)イは,本件各発明の「循環流」が公知技術とは異なるはずであると出発しながら,結論においては,公知技術と同様に解釈すべきであると主張しているのであって,論理的に破綻している。
公知技術の組合せにより本件各発明に容易に想到することを理由に,「循環流」を限定解釈するのは明らかに失当である。
ウ 明細書中の記載に基づく主張について 本件明細書1に記載されている「本発明」とは,「流動媒体の循環流を形成」するという要件だけを規定している本件発明1@だけではなく,「循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成」されることを要件とする本件発明1A等を含むものである。
したがって,本件発明1における「循環流」に関して,「循環流は,流動媒体が沈降する移動層と,流動媒体が上昇する流動層により形成」されることが本件明細書1に記載されているとしても,それは,本件発明1A等に関する記載であって,「循環流」に関して何らの限定のない本件発明1@の請求項の文言の解釈がこれにより限定される理由は全くない。
エ 技術文献等の参酌に基づく主張について 被告は,本件発明1@の循環流においては,流動層炉内に流動層及び移動層の2種類の層を形成することを前提にしてクレーム解釈を行っているが,この前提自体が失当である。
本件明細書1(甲1の2)では,「流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成」されると記載して(【0009】),「循環流」が流動媒体が上昇する部分と沈降する部分により形成される場合に,流動媒体が上昇する部分を「流動層」,流動媒体が沈降する部分を「移動層」と明確に定義しており,技術文献等を参酌する必要はない。
オ 明細書の実施例の参酌に関する主張について 全実施例における共通する要素を「循環流」の解釈にすべて反映しなければならない根拠はないし,実施例に記載された全要素を備えない限り特許発明実施できないわけではない。
なお,仮に全実施例における共通する要素を「循環流」の解釈にすべて反映したとしても,全実施例における「循環流」は,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れを形成すること」ものであり,被告の主張は失当である。
カ 明細書の効果の参酌に関する主張について 本件各発明の効果を奏するには,後記〔被告の主張〕(1)アの5要件に対応した,「移動層」と「流動層」の間の「循環」という大きくダイナミックな循環があることが必須なものではなく,本件各明細書に記載されているとおり,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れを形成」すれば足りる。
キ 出願経緯の参酌に関する主張について 特許権が有効に登録された後の請求項の解釈において,出願当初の請求項の内容に制約されることはない。特許出願の実務上,出願過程において,当初の狭いクレームから広いクレームとなることは多々あることであり,広いクレームで権利が成立した以上,出願当初のクレームの内容がどのようなものであったかは,クレームの解釈において,何ら問題となるものではない。
また,被告は,特許庁の異議決定(乙7) における(ア)「循環流」という上位概念が当初明細書に記載されていること,(イ)「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」ことが当初明細書に記載されていることについての2つを判断を,意図的に直接的に結び付けているもので,極めてミスリーディングである。
上記(ア)の「循環流」なる概念は,請求項1,10,16に記載の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,」を指している一方,上記(イ)の「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」という事項は,請求項3,12,17及び19に関する取消理由である。
異議決定(乙7)は,かかる異議申立理由に対して判断したものであり,異議決定中の「特定の概念を『循環流』なる用語で直接的に記載するものである。」という記載部分にいう「特定の概念」は,請求項1,10,16に記載の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,」を意味するものであることは明らかであり,「流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する」という事項を指すものではない。
しかも,仮に,「循環流」が,流動媒体が本件明細書1の図1又は図3中の矢印112及び118で示すように移動層及び流動層を通り循環する流れであるとすれば,請求項3,12,17及び19とは明確に区別された請求項1,10及び16は認められ得ない。
〔被告の主張〕 (1) 「循環流」の意味 ア 「循環流」の構成 本件各発明にいう「流動媒体の循環流」は,次のiないしvの5要件を充たすものをいう。このように解する理由は後記イないしキのとおりである。
@ 質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,炉中央部に流動媒体が沈降する「移動層」と, A 質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成され,炉周辺部に流動媒体が定常的に上昇する「流動層」により形成され, B 炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央に向かうように転向されることにより,流動媒体が周辺部頂部から中央部頂部へ移動する(「循環流」を「形成」するためには流動化ガスを周辺部頂部から中央部頂部へ転向するための手段が必要である。)。
C 炉の中央部の「移動層」では流動媒体が拡散沈降し,炉内周辺部の「流動層」では流動媒体が活発に流動しており,そして,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体が移動する。
D @ないしCにより,流動媒体を,炉内において大きな循環径で繰り返し循環させている。
公知技術参酌 本件各発明の装置の基本構成は先行の公知例たる特公昭62-35004号(乙1。以下「乙1発明」という。)によって公知であるから,本件各発明の「循環流」は,乙1発明の流動焼却炉3内に生起している循環とは異なるものでなければならない。「意図的に形成された流動媒体の流れ」などという定義では,乙1発明の流動焼却炉内に生起している循環との区別ができない。
そこで,本件各発明にいう「循環流」の意義を解釈し,これを用いた技術思想を理解するためには,乙1発明の参酌が必要である。
本件明細書1等には,本件各発明が解決すべき技術的課題を説明するために,いずれも乙1発明及び特開平2-147692号(乙24。以下「乙24発明」という。)が挙げられている。
乙1発明及び乙24発明との関係から,本件各発明では,乙1発明の「流動層熱分解炉2」に代えて,乙24発明の「流動層ガス化炉3」における「循環流」を組み合わせたものであるということができる。
すなわち,本件各発明では,炉の構成を乙1発明におけるように,流動層熱分解炉とサイクロン炉(溶融炉)に分けて,かつ流動層熱分解炉内に先行例2と同じ「移動層」と「流動層」からなり大きな循環径で繰り返し循環する「循環流」を形成し,その「移動層」には,廃棄物の「ガス化ゾーン」としての役割を与え,「流動層」には,廃棄物の「酸化ゾーン」としての役割を与えることで,高いガス化効率と,大きなゴミなどの取込み及び排出の2つの課題を同時に達成したものである。
したがって,本件各発明の「循環流」は,乙24発明において説明した「移動層」と「流動層」をもつ「循環流」と同じである。
ウ 特許明細書の「発明の詳細な説明」の参酌 本件明細書1の「発明の詳細な説明」の中の【課題を解決するための手段】(【0009】)及び【作用】(【0021】)の欄は,その主語が「本発明においては,(以下略)」と記載されていることから明らかなように,単なる実施態様を説明するものではなく,請求項に記載の発明に必須の手段とその作用を記載することで,特許権者が,自己の特許発明についていかなる手段が必要とされ,その手段がいかなる働きをするかという技術思想を解説したものである。
そうすると,本件各発明における「循環流」の意義が,この手段及び作用の欄の記載を離れて解釈されることがあってはならない(特許法36条6項1号)。
本件明細書1の上記 各記載を参酌すると,本件各発明における「循環流」は,前記アのとおりに解釈され,前記アの5要件が本件各発明の「循環流」を形成させるための必須の構成要件であることは明らかである。
エ 技術文献等の参酌 (ア) 原告による「移動層」及び「流動層」の用法 「移動層」と「流動層」を用いて,砂を循環させる,という技術は,本件各発明以前から,原告がTIF(Twin Interchanging Fluidized-bed)として公開し宣伝している技術にほかならない。
原告は,自らが平成2年に公表し,自社技術を解説した文献「無破砕旋回流型流動燃焼炉とその応用技術」(乙27)において,「移動層」は,「固定層と流動層の中間の状態で,砂が上下に躍り出す前のいわゆる弱い流動層であり,粒状の砂があたかも水のような流動特性と,重量物を沈降させないコロイド状の特性を合わせ持っている」と定義している。なお,TIF技術における用語の「流動層」と「移動層」は,本件各発明と全く同じ意味である。
本件各発明は,このTIF型燃焼炉又は乙24発明の「ガス化炉3」を「流動層炉」とし,これに旋回溶融炉(サイクロン燃焼炉)を組み合わせたものであり,TIF燃焼炉の構造は,本件各発明の「流動層炉」の構造と同じものである。
なお,原告は,本件各発明と同じ構造の製品を多くの文献において解説しているが,その中で,ガス化炉は,従来の技術を応用したものであることを明らかにしている(乙40,41)。
(イ) 「改訂版 反応工学」(平成15年9月20日改訂18版,乙42)には,流動化空気(気体)と,この流動化空気により砂層(粒子層)に形成される流動層との関係を示すグラフが,「化学工学便覧」(改訂6版,乙43)には,流動化空気の流速が変化するにつれて,砂層の状態が固定層から高速流動層へと変化する様子を示す図がそれぞれ掲載されている。
これらのグラフ等によると,流動化空気の流速が流動化開始速度Umfに達しない間は,砂層を構成する粒子が浮動することはない。一方,流動化空気の流速が流動化開始速度Umf以上となると,砂層を構成する粒子は浮動し,均一に流動化する均一流動化の状態となる(「均一相流動化」状態)。さらに,流動化空気の流速が増大し,気泡流動化開始速度Umbを超えると,砂層内に沢山の気泡が発生し,気泡流動層となる(「気泡流動化」状態)。この気泡流動層は,被告製品を始め,いわゆるバブリング流動層といわれる流動層を利用する流動床炉において用いられるものである。この状態から,さらに流動化空気の流速を増大させると,多量に送り込まれた空気による気泡が,互いに合体して大きな気泡を形成するスラッキング流動層となり,さらに流動化空気の流速が増大されるに従い,乱流流動層,高速流動層へと変化する。
「化学工学辞典」(改訂3版,乙44)及び「化学大辞典1」(乙45)における「移動層」の定義を「化学工学便覧」(改訂6版,乙43)中の図に当てはめると,「移動層」は,固定層と気泡流動層との間である均一流動化状態で,流動媒体が気泡によって流動する前の状態で,層自体が下降する性質があるもの,ということができる。
(ウ) 原告による「移動層」及び「流動層」の用法と学術用語との対比 前記(ア)の原告の用語(本件発明1@等の用語)の用法と,流動化技術における学術用語とを対比してみても,齟齬するものではなく,本件各発明の「移動層」は中央流動化ガスを導入されつつも,その質量速度は比較的小さいので,流動媒体が「沈降」し,砂である流動媒体が浮き上がることなく,次第に下降するから,前記(イ)の「化学工学便覧」中の図における固定層と気泡流動層との中間の「均一流動化」若しくはこれに等しい状態に相当する。これは,流動媒体が気泡によって流動する前の状態で,層自体が下降する性質をもつ状態を意味する。
また,本件各発明にいう「流動層」は,中央流動化ガスよりも質量速度の大きい周辺流動化ガスにより形成されるもので,激しく上昇するための運動量が流動媒体に与えられる。とりわけ,本件各発明では,「移動層」において流動媒体が下降し,「流動層」で流動媒体が上昇する,との区分けがなされており,「流動層」の流動媒体は,ランダムな上下動ではなく,定常的に上昇する。したがって,本件各発明にいう「流動層」は,少なくとも前記(イ)の「化学工学便覧」図6における気泡流動層(「流動媒体(砂)があたかも沸騰している湯のように上下に動いて流動する」状態)では足りず,流動媒体が定常的に上昇するような大きなエネルギーを持った流動層でなければならない。
本件各発明における「流動層」は,この「気泡流動化」状態であっても,かなり強い気泡流動化状態にあるか,又は「気泡流動化」状態よりもさらに激しい上記図6における乱流流動層若しくは高速流動層の状態に近い。
(エ) 本件各発明の「移動層」と「流動層」の作用 本件各発明は,炉内に前記(イ)の「化学工学便覧」図6の均一流動化若しくはこれにほぼ等しい「固定層と流動層の中間の状態で,砂が上下に躍り出す前のいわゆる弱い流動層」である「移動層」と,同図6の「気泡流動層」のうちの強い流動状態又はこれよりも激しい乱流流動層等である「流動層」の2種類の層が形成されることに特徴がある。
本件各発明の「移動層」が,本件明細書1の実施例の図1の炉中央部において,「均一流動化」層又はこれにほぼ等しい静かな層であることは,上記図面中央に静水面を表すのと同じ複数の横線によって移動層上部が表現されていることからも裏付けられる。前記(ア)の原告自らが自社技術を発表した文献(乙27)では,TIF技術の解説において,この層は「のみ込み層」と呼ばれ,静かでかつ下方向に移動する層である。当該層に燃焼物が投入されると,燃焼物を砂の中にのみ込む働きをする。また,この「移動層」において,燃焼物は砂の熱により蒸し焼きにされるが,酸素が少なく,燃焼が促進されないから,投入された廃棄物は,下降しながら熱分解及びガス化の進行を受ける(ガス化ゾーンG)。「移動層」を下降した流動媒体と熱分解・ガス化を経た燃焼物は,中央が高くなった傘状の炉底構造に基づいて,その傾斜に沿って移動し,炉周辺部の「流動層」に運ばれる。
炉周辺部の「流動層」の流動媒体は,その激しい浮動状態に基づいて,チャーを循環させ,チャーの微細化が図られる。また,「流動層」内には多量の酸素があるから,燃焼物の燃焼が促進される(酸化ゾーンS)。「流動層」の頂部においては,転向手段(実施例では「デフレクタ」)にガスが当たると,該転向手段によって,ガス及び流動媒体が炉中央部に向かうように進路を変更される。炉中央部では流動媒体及び廃棄物は再び移動層に同伴して下降し,炉底を移動する際に,以下,移動層から流動層へ,さらに流動層から移動層への流れを繰り返すのが「循環流」である。
(オ) 小括 以上によれば,本件各発明の「循環流」は,気泡が発生する前の静かな「移動層」と,少なくとも「気泡流動化」状態以上の激しく流動する「流動層」の2種類の明確に特性が区分される層を水平方向に併設して成り,かつその2つの明確な層の間を,流動媒体が移動しつつ炉内を大きな循環径で循環している構成をいう。
オ 本件明細書1の実施例の参酌 本件明細書1においては,すべての実施例である実施例1ないし5に前記アの5要件が記載されており,他方それ以外の形態は一切示されていない。そうすると,上記5要件は本件各発明の技術思想の中心的事項であって,同要件がすべて一体となって形成される「循環流」によらなければ本件各発明を実施できず,多数の実施例に普遍的に具体化されているということができる。
したがって,本件各発明にいう「循環流」は,上記5要件を充たすものであるというべきである。
カ 特許明細書の「効果」の参酌 本件明細書1の「発明の詳細な説明」中の【発明の効果】の記載(【0056】)及び【従来技術】の記載(【0003】)によれば,少なくとも本件各発明は,流動層炉の「循環流」すなわち,前記アの5要件に対応した,「移動層」と「流動層」の間の「循環」という大きくダイナミックな循環があることで,限られた容積の炉内の広い範囲で熱を拡散し,高負荷な炉を実現することや,大きな不燃物の排出,予めの破砕処理の省略が可能となったのである。このように,本件各発明の作用効果を発揮するためには,上記5要件で規定する,「移動層」と「流動層」という明確な性質の異なる層と,その間の「循環」が必須であることは明らかである。
キ 出願経緯の参酌 (ア) 本件第1特許権は,平成7年2月9日の出願の後,平成13年10月に特許異議申立てを受け,その後,特許庁からの取消理由通知に対して,訂正請求・意見書を提出することによって特許維持されたものである。この一連の経緯からも,本件各発明における「循環流」は前記アのとおりに解釈すべきものである。 (イ) 出願当初の請求項の参酌 本件第1特許権の出願当初の請求項1には,流動媒体の「循環」が,炉の中央部で流動媒体が沈降し,炉内周辺部で流動媒体が上昇するものであることが明記されている(乙5)。出願当初と,登録後の発明において,「循環」の意義に変更があるはずはないから,「循環流」の意義は,出願当初の請求項のものと同一に解さざるを得ない。また,出願当初においては,燃焼溶融炉が請求項1の構成として含まれていない。
(ウ) 特許異議申立ての審理経過の参酌 本件第1特許権については,平成12年10月5日に請求項の記載内容が補正され,特許3153091号公報(甲1の3)で示されている請求項の内容で特許権設定登録がされた。
ところが,川崎重工業株式会社らは,平成13年10月,本件第1特許権について,特許庁に対し特許異議申立てをし,上記補正が,「循環流」という広い概念が出願当初の明細書又は図面に記載した事項を明らかに超えるものであり,出願当初の明細書又は図面に記載された事項から直接的かつ一義的に導き出せるものではないことを理由として,特許法17条の2第3項違反を申し立てた(乙6)。
しかし,特許庁は,平成14年6月10日付けの異議決定(乙7)で,同社の異議申立てを退け,本件発明1における「循環流」の技術的意義が,願書に最初に添付された明細書に直接的に記載された特定の概念,すなわち流動媒体が,本件明細書1の図1又は図3の矢印112及び118で示すとおり,移動層及び流動層を通り循環する流動媒体の流れであることを明確に指摘している。
(2) 原告の主張について 「循環流」の意味を「意図的」という主観的要素を用いて解釈するのは不明確である。
2 争点(2)(被告製品の構成)について 〔原告の主張〕 (1) 被告製品は,別紙被告物件目録(原告)記載の構成を有する。被告製品の構成を分説すると,同目録の「構造及び作用の説明」記載のとおりとなる(以下,同記載の各部分を,その記号に従って「構成a」などという。)。
(2) 被告の従業員の論文等中の記載 被告の従業員が執筆した論文等には,次のとおり,被告製品の流動層に循環流が生じている趣旨の記載がある。
ア 「流動床式ガス化溶融炉の実証施設の概要」(甲10) 被告は,親会社である株式会社神戸製鋼所(以下「神戸製鋼所」という。)の都市環境・エンジニアリング部門をスピンアウトさせて設立された会社であり,平成15年10月以前は,神戸製鋼所が被告製品を製造販売していたものである。神戸製鋼所の被告製品の開発部長が執筆した論文中の表「流動床式ガス化溶融炉の実証施設の概要」(甲10の884頁表1)では,各社の流動床式ガス化溶融炉の概要が記載されているが,同表においては,被告製品は「一塔式内部循環型」と記載され,本件発明1の実施品である原告の製品と同型に分類され,川崎重工業株式会社等の「一塔式バブリング型」と明確に区別されて記載されている。そして,「一塔式内部循環型」は,流動層炉の内部の砂層中において,流動媒体たる砂が循環するものであり,「ごみの流動層内への取り込み,攪拌・混合に優れる。」という特徴を有するものであるとされている(甲10の888頁左側の図)。
イ 「廃棄物処理技術評価-第19号-流動床式熱分解ガス化溶融技術」(甲13) 被告製品は,財団法人廃棄物研究財団が実施した廃棄物処理技術評価対象たる技術を実施するものであるところ,甲第13号証はこの技術評価の内容(技術評価書)である。民間において開発された廃棄物処理技術について同財団法人が行う技術評価に関しては「廃棄物処理技術評価実施要領」が規定されており(甲14),「技術評価を受けた者が偽りその他不正の手段により技術評価を受けたことが判明したとき」を技術評価の全部又は一部の取消事由と定められており(同要領第13条2項1号),技術評価を受けるに際し,自社の技術を嘘偽りなく開示することが要求されている。なお,同財団法人の技術評価を取得すると,地方自治体等がごみ処理施設を導入するに当たっても(甲15の21頁参照),厚生労働省に対する補助金の申請に当たっても(甲16の2枚目参照),一定の便宜を受ける。
上記技術評価書(甲13)3頁の図では,矢印で,循環流(旋回流)の存在が明記されており,「鉄分,アルミ分を含む不燃物(熱分解残さ)の排出は,炉床部の傾斜構造と旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われる。」(5頁)及び「不燃物の排出は炉床部中央の不燃物排出口より旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われ,実証期間を通じて,不燃物堆積による流動阻害は認められていない。」(28頁)と記載されている。ここで,「旋回流動」における「旋回」とは,国語的には,「ぐるりとまわること。」を意味しており(甲9の1513頁),「循環」と同じ意味である。
そうすると,被告製品における「旋回流動」は,一定の作用効果を奏することを企図して,意図的に形成しているものであり,前記1〔原告の主張〕(1)アの「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」に該当することは明らかである。
しかも,上記技術評価書においては,本件発明1の循環流の効果である,「本発明においては,流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。」という効果と実質的に同様の効果を記載しており,被告製品には,循環流(旋回流)が存在することを前提に,その作用効果が説明されていると理解することができる。
ウ 「廃棄物の熱分解・ガス化灰溶融システムの開発動向」(甲17) 甲第17号証は,神戸製鋼所の都市環境本部環境エンジニアリングセンター開発部開発室課長伊藤正が執筆した,被告製品に関するものであるが,この中には,「砂層中心部の流動化速度を増加させ,外周部の流動化速度を低下させることで,流動化速度の差を設け,砂層中へのごみの取り込みを行ないます。」との記載があり(110頁),循環流(旋回流)を形成することが明記されている。
また,「【質疑5】流動層内部における熱媒体の流動化は,中央部で増加,周辺で低下というような動きをさせているのですか。また,通常のバブリング方式では問題点があるのですか。【応答5】基本的に均一の流動をさせた場合,軽い物質は層内にもぐりこみにくいので,流動速度差を設ける必要があります。」との記載(125頁)によれば,バブリング方式ではごみの取り込みに問題があり,被告製品では,循環流(旋回流)を設けて,かかる問題を解決すべきことが明確に記載されている。
しかも,この点は,前記技術評価書(甲13)の「鉄分,アルミ分を含む不燃物(熱分解残さ)の排出は,炉床部の傾斜構造と旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われる。」(5頁),「不燃物の排出は炉床部中央の不燃物排出口より旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われ,実証期間を通じて,不燃物堆積による流動阻害は認められていない。」(28頁)という記載にまさに符合するものであり,被告製品は,従来のバブリング型流動床炉の問題点を循環流(旋回流)を意図的に形成することにより改善した装置であることは明らかである。
エ 「神戸製鋼技報」第51巻第2号(甲18) 神戸製鋼所の都市環境本部環境エンジニアリングセンター開発部資源循環室室長高橋正光等が執筆した,同社の技報(甲18)でも,被告製品のシステム概要図が記載されているが(13頁),同図中では,流動層炉における矢印によって,被告製品に循環流(旋回流)が存在することが示されている。
また,同技報の13頁には,循環流(旋回流)の存在を前提に,その作用効果に関して記載がされている。この記載は,前記ウの甲第17号証における質疑応答の記載部分と符合するものであり,被告製品が従来型のバブリング型流動床炉ではないことを明確に示すものである。
オ ごみ処理新技術セミナー資料発表企業原稿集「流動床式熱分解ガス化溶融技術」(甲19) 被告の技術の発表原稿(甲19)の56頁において,バブリング型流動床炉とは明確に区別される技術的特徴が述べられている。
カ 「ごみ処理施設ガイドブック 2001」(甲25) 神戸製鋼所がその構成会員となっている社団法人日本環境衛生工業会発行の「ごみ処理施設ガイドブック 2001」(甲25)の49頁ないし50頁の記載は,被告製品に中央部から周辺部への強力な砂の旋回流,すなわち循環流(旋回流)αが存在することを明確に示し,前記イの甲第13号証中の記載及び前記ウの甲第17号証中の記載と符合するものである。
キ 「環境技術会誌」(甲26) 「環境技術会誌」(甲26)の27頁の記載は,被告製品に中央部から周辺部への強力な砂の旋回流,すなわち循環流(旋回流)αが存在することを明確に示し,前記イの甲第13号証中の記載及び前記ウの甲第17号証中の記載と符合するものである。
(3) 被告の主張について 次のとおり,被告製品の実機の運転状況を撮影したビデオ等は,被告製品の流動層において「循環流」が存せず被告主張に係るいわゆる「バブリング状態」であることを示すものではない。
ア 実機を撮影した映像を記録したCD-R(検乙1) (ア) 循環流αを備えた「内部循環型」の流動床式ガス化溶融炉においても,砂層に供給される流動化空気を炉床にほぼ均等に供給して「バブリング」状態を創出することは可能である。
しかるに,被告は,当該映像に係る運転状況がいかなる運転条件であるかを明らかにしておらず,当該映像が定常時の運転条件と同一の運転条件で運転した状況を撮影したものであるか否かを判断できない。
そうすると,運転条件が明らかでない検乙第1号証のみでは,被告製品に循環流αのような流れがないとは断定できず,証拠価値が全くない。
(イ)a 映像を見ても,流動層表面の状態から流動化空気が炉床に均等に供給されたものであるか否かを判断することは極めて難しい。
すなわち,流動層高がある高さ以上になると,層内で気泡の合体が進み気泡が大きく成長するが,均一に空気を吹き込んでも,あるいは,ある程度空気の吹き込みに分布をつけても,気泡には抵抗の少ない部分を求めつつ上昇する傾向がある。また,流動層表面は上昇・破裂する気泡の動きに攪乱されるため,少なくともガスの吹き込み条件などが明示されない状況の下では,流動層を上方から見ただけで,空気の炉床への供給状況を推測することは事実上不可能である。
映像中では,ある時期に真ん中で破裂する気泡が多く見られたり,壁付近で多く破裂したりしているが,気泡成長の過程で特定の場所に気泡が集中することは知られた事実であるところ,この破裂状況は長時間で見ればランダムにも見えるが,数秒から数十秒の周期で偏っているようにも見える。気泡が層表面でランダムに破裂していると言い切るのは少し難しく,いわゆるランダムなものとは少し違う(A博士見解書,甲21の2頁参照)。
b 流動媒体の砂はGeldartのグループB粒子であるため,気泡は合体を繰り返して大きくなる傾向があるが,流動層表面は盛り上がり破裂し四散する気泡と砂の動きに乱され,また気泡は抵抗の少ないところを選んで上昇するため,上方から見ただけで流動化空気が炉床に均一に供給されたか否かを判断することは極めて難しい(B博士見解書,甲22の1頁及び2頁参照)。
c 映像からは流動化はかなり激しいという印象を受ける。しかし,流動層上部からの砂層部表面の流動状態の観察は,流動化状態を推定するに当たっては有益ではあるが,砂層内部の流動化状態を断定する材料にはならない。
すなわち,層表面で原料が中央から外側に飛ばされる現象及び周辺部から火炎の多くが生じる現象が起きる理由については,映像のみからはよく分からず,炉床に流動化空気が均一に供給されているか否かは,炉床の細部を見ないと分からない(C博士見解書,甲23の2頁参照)。
d 層高が明確でないのに,流動層表面の観察だけで流動化空気の炉床への供給が均等か否かを推測することは実際上困難である。
映像からは,気泡は層表面全体に出現するものの,中心と壁の中間部分で多く発生していること,中心部での気泡通過は比較的少ないこと,周辺部でごみが呑み込まれ火炎が発生すること等が観察されるが,流動化空気が炉床に均等に供給されたか否かを判断することは極めて困難である(D博士見解書,甲24の1頁及び2頁参照)。
イ モデル実験を撮影した映像を記録したCD-R(検乙2) (ア) 被告は,当該モデル実験と実機の運転状況が相似するか否かに関する具体的データを明らかにしていないから,当該モデル実験が実機の運転状況を反映したものか不明である。
また,当該映像からは,コールドモデルと実機では相違しているように見受けられる。
そうすると,検乙第2号証には証拠価値がない。
(イ)a モデル実験においてはモデル化の条件(相似則など)が重要であり,当該映像から何らかの結論を引き出すためには,モデル化の諸条件を明らかにする必要がある。ところが,当該モデル実験に係るコールドモデルが実機の何をモデル化したものなのか,その目的並びに用いた相似則が具体的に示されていない。
検乙第2号証と検乙第1号証との間で表面での気泡の出方に差があり,これは,モデル化の条件(設定している条件:空気流速,層高,多孔板だとした場合の孔分布など)が実機と相異することが原因と考えられる(甲21ないし24)。
b 当該モデル実験における不燃物排出口上方の砂層中には流動化しない部分(dead space)が存在し,その部分に未燃物や熱分解物が蓄積するおそれがある。こうしたdead spaceを解消するために,媒体粒子の内部循環流動化が有効である。
当該モデル実験は,自社技術との差異を見せるために,意図的に極端な条件で運転したようにも思える(B博士見解書,甲22の2頁)。
c 二次元コールドモデルは,分散板からの流動化ガスの噴出の様子の観察や,炉底形状と流動化条件が不燃物排出の様子に与える影響を実験的に調べるには有効であるが,実験装置の厚みがないために気泡が合体しやすいから,層全体の流動化挙動を把握するための使用には耐えない(C博士見解書,甲23の2頁)。
〔被告の主張〕 (1) 被告製品は,別紙被告物件目録(被告)記載の構成を有する。被告製品の構成を分説すると,同目録の「構造及び作用の説明」記載のとおりとなる(以下,同記載の各部分を,その記号に従って「構成a’」などという。)。
(2) 被告製品には次のとおり,「移動層」と「流動層」という性質の異なる2種類の層がなく,「移動層」と「流動層」から成る層の間を流動媒体が循環する「循環流」がない。
ア 被告製品においては,流動化ガスの質量速度を異ならせておらず,「移動層」と「流動層」という性質の異なった2種類の層がない。被告製品の流動層炉の砂層は実質的に均質な気泡流動化状態になっている。
イ 被告製品には「移動層」がない。
被告製品の流動層炉では,砂層全体が「気泡流動化」(バブリング)状態であり,「固定層と流動層の中間の状態で,砂が上下に躍り出す前のいわゆる弱い流動層」に相当する「移動層」は存在しない。従って,この点のみでも被告製品は,本件各発明の「循環流」を持たないことが明らかである。
ウ 被告製品には,「流動層」がない。
本件各発明の「流動層」は,ランダムな流動ではなく,層内で流動媒体を定常的に炉周辺部で上昇させるものであるから,「気泡流動化」状態のうちでも強い流動化状態であるか,「気泡流動化」状態よりもさらに激しい「乱流流動層」あるいは「高速流動層」と呼ばれる状態である。
被告製品は,平成7年以前から広く知られた一般的な「気泡流動化」状態であるにすぎず,該流動化状態は,層全体がランダムに上下に流動する状態であり,流動媒体を定常的に上昇させるものではないから,本件各発明の循環流を構成する「流動層」が存在しない。
エ 被告製品には,「移動層」と「流動層」を大きな循環径で循環する媒体の流れがない。
上記のとおり,被告製品には,「移動層」や「流動層」などの性質の異なる二つの層が存在せず,異なった性質の層の間を大きな循環径で循環する流動媒体が存在しない。被告製品の流動層炉では,砂層全体が平成7年以前から広く知られた「気泡流動化」(バブリング)状態であり,炉内のあらゆる場所でランダムな流動が起きており,異なった性質の層との間における流動媒体の循環がない。
オ 被告製品には,媒体の流れを転向する手段がない。
被告製品には,本件各発明の「傾斜壁」又は実施例に記載の「デフレクタ」に相当する手段がなく,したがって上昇する「流動化ガス」を特定の方向に「転向」することができず,「循環流」を「形成」することができない。被告製品の「流動化ガス」は,単純に上昇するのみであり,また該「流動化ガス」のバブリングによって砂層上部で分散される砂は,検乙第1号証に示すとおりランダムに飛び散るだけでその方向が定まらず,流動媒体を特定の方向に転向することもない。
カ 被告製品は,風箱が単一であり,流動層炉に供給する流動化空気の速度に差を設けることができない。
被告製品においては,流動層炉に供給される空気の導入口は1つで,砂層への流動化空気供給装置としての「風箱」も単一であるので,炉に供給する流動化空気の速度に差を付けることができない。
そこで,炉内の砂層の中央部,中間部,周辺部の各部において,空塔速度(単位時間に単位面積当たりに流れる流量をいう。)が均一となるように,砂層底部に設置して砂層に空気を供給する役目を果たす「分散板」の通気口(ノズル)の口径を,砂層高(厚み)に応じて大小を付けることで,分散板から砂層に吹き出す空気量に大小を付けている。
すなわち,空気の通り難い砂層高が大きい箇所である炉中央部の分散板口径を大とし,空気の通り易い砂層高が小さい箇所である炉周辺部の分散板口径を小とすることで,炉中央部でも炉周辺部と同様に砂がよく流動するようにして砂層全体が「気泡流動化状態」になるようにしている。「すり鉢状」の炉底形状を有する流動層炉において,炉中央部と炉周辺部で分散板ノズル口径に差をつけて,砂層に供給する流動化空気速度に差を付け,砂層各所を通過する空気速度を均一にして砂層全体を均一な「気泡流動状態」とする技術は,従来から行われている常識的手段である。
本件各発明における「質量速度」とは,「単位時間に単位面積を流れる質量」をいうが,被告製品において砂層内における単位面積当たりに流れる空気量に差異はないから,「循環流」は存在しない。
(3) 原告の主張について ア 「流動床式ガス化溶融炉の特徴」(甲10),「廃棄物処理技術評価-第19号-流動床式熱分解ガス化溶融技術」(甲13),「廃棄物の熱分解・ガス化灰溶融システムの開発動向」(甲17),「神戸製鋼技報」第51巻第2号(甲18),ごみ処理新技術セミナー資料発表企業原稿集「流動床式熱分解ガス化溶融技術」(甲19)及び「ごみ処理施設ガイドブック 2001」(甲25),「環境技術会誌」(甲26)における流動層の矢印は,従来より公知の「気泡(バブリング)流動式」である「流動床式焼却炉」のメーカー各社のカタログや,流動層に関する一般公知文献と同様に,流動層の気泡(バブリング)流動状態を視覚的に理解し易いよう,模式的に矢印を使用して説明する趣旨等に出たものにすぎない。
また,被告がカタログ等の中でいう「循環流」,「旋回流」又は「旋回流動」という用途を用いていることは,本件各発明中の「沈降する移動層と上昇する流動層の間を砂が循環する」循環流とは無関係である。
したがって,被告が上記各書証中の図中で矢印を用いて説明したり,「循環流」などの用語を用いているとしても,被告製品に原告のいう「循環流」があることを示すものではない。
イ(ア) 被告製品の流動層の上部から撮影した映像に係るCD-ROM(検乙1)について 当該映像は,本件各発明でいうような移動層,流動層という明確に区分された流れは存在せず,層全体がランダムに流動している本件特許出願以前から公知の気泡流動状態であることを示している。A博士の見解書(甲21)における「気泡の破裂状況を見ていますと,ある時期に真ん中で破裂する気泡が多く見られたり,壁付近で多く破裂したりしています。(中略),長時間で見ればランダムに見えます」という記述や,B博士の見解書(甲22)における「私はこういった映像を見慣れているので,特に違和感はありません。」という記述も,被告製品の流動状態が従来から存在する気泡流動状態であることを暗に示している。
(イ) コールドモデル実験を撮影した映像(検乙2)について 現状では,炉内部での流動状態を知る必要がある場合でも,現に稼動している炉の砂層の内部を見ることはできない。コールドモデル実験は,当業者において一般的な手法である。
(ウ) 流動状態の算出について 被告は,被告製品の設計にあたり,工学的に根拠のある一定の計算式をもとに流動炉の条件を決定しているところ,Eの陳述書(乙47)においても,被告製品の現実の設計図書と実際の運転条件をもとに,この計算式に基づき,被告製品の流動層の流動状態が算出された。その結果,被告製品では,砂層各部で砂層の状態(空塔速度)がほぼ一定であり,流動層,移動層から成るような大きな循環流がないことなどが示された。
そして,F博士の鑑定意見書(乙59)中でも,@被告が散気管流量の計算に使用している計算式及び諸係数が合理的であること,A対象炉砂層全体の空塔速度が炉中央部,炉中間部,炉周辺部においてほぼ均一とみなせ,層全体がほぼ均一な気泡流動層状態であり,この結果は上記陳述書とも一致することが述べられている。
3 争点(3)(被告製品が本件発明1@ないしBの技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件1B@の充足性 原告主張に係る被告製品の構成bは,砂による意図的に形成された流動媒体の循環する流れ(循環流α)を生じさせるから,構成要件1B@を充足する。
(2) 構成要件1BAの充足性 構成要件1B@におけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,上昇する砂と下降する砂からなる循環流αを生じさせているから,「前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする」に当たり,構成要件1BAを充足する。
(3) 構成要件1BBの充足性 構成要件1B@におけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,砂層の中央部において空気量を大とし,砂層の周辺部において空気量を小とすることにより,砂の上昇する部分と砂の下降する部分が生じているから,「前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されること」に当たり,構成要件1BBを充足する。
(4) 構成要件1Dの充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,循環流α中でガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し」に当たり,構成要件1Dを充足する。
(5) 構成要件1Eの充足性 構成eのとおり,被告製品は,チャーが循環流中の燃焼等により,より小さな粒子となるから,「該チャーを該循環流中で微粒子とし,」に当たり,構成要件1Eを充足する。
(6) 構成要件1Fの充足性 構成fのとおり,被告製品は,流動床式ガス化炉から可燃ガスとより小さい粒子となったチャーが燃焼溶融炉に送られて,灰分を溶融スラグ化するものであるから,「該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化すること」に当たり,構成要件1Fを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件1B@の充足性 前記1〔被告の主張〕(1)アの5要件に従って判断すると,被告製品である流動床式ガス化炉1では,構成要件1B@にいう「流動媒体の循環流」を形成していないから,構成b’は,構成要件1B@を充足しない。
ア 前記1〔被告の主張〕(1)アの要件@及びAについて 本件発明1@では,「炉中央部に流動媒体が沈降する前記移動層が,また,炉周辺部に流動媒体が上昇する前記流動層が形成される」(本件明細書の【0009】)が,被告製品の流動床式ガス化炉1においては,流動床全体が,「気泡流動層」で形成されており,静かで沈降する「移動層」を持たないから,「移動層」と「流動層」による循環流が形成されることがない。
したがって,被告製品において投入されたごみなどの燃焼物は,炉内のいずれの場所で砂中に取り込まれるかなどは全く定まっておらず,炉内全域でランダムに流動しつつガス化される。
被告製品は,不燃物を炉の中央から取り出すため,分散板3が炉の中央に向かって下に傾斜している構造を有しているので,炉内中央部の砂の層が厚く,炉内周辺部の砂の層が薄いから,砂の層の圧力差があり,圧力差は中央部の方が大きくなる。そこで,この圧力差に対抗して層全体が気泡流動化状態となって気泡流動層を形成するように,通気口の口径を工夫して空気流量を調整し,砂層内各所で空塔速度がほぼ同じになるようにしている(乙47)。
被告製品では,流動化ガスに空気のみを用いているから,その空塔速度は,単位時間に単位面積当たりを流れる質量として定義される「質量速度」に相当する。
被告製品では炉中央部と周辺部において空塔速度をほぼ等しくして,大小を付けていないから,要件@及びAが意味する「流動層炉へ供給される炉中央の流動化ガスの質量速度が,炉周辺の流動化ガスの質量速度より小である。」という構成は備えていない。
被告製品では,構成b’のとおり,砂層の圧力差に抗して全体が気泡流動化状態となるように口径の異なる通気口9を分散板に複数配置しているのであって,構成要件1B@の「循環流」を形成させるために口径を異ならせているものではなく,層内全体がランダムに流動している典型的な気泡流動化状態であり,現実に本件発明1@のような「循環流」は存在しない(乙48,49)。
また,層の各所で「空塔速度」が「流動開始速度」の2倍以上あり,炉内全体が気泡流動化状態にあるので,少なくとも,「均一流動化」層か,若しくはこれに相当するような,静かで沈降する性質を持つ「移動層」に当たる層は存在しない。
以上のとおり,被告製品の砂層は全体が「気泡流動層」を形成しており,実際も検乙第1号証のような「水が沸騰するが如く」の流れであるバブリング流動層となっている。原告のTIFと異なり,一般の流動層では,「流動媒体(砂)があたかも沸騰している湯のように上下に動いて流動するかたちの流動層」が用いられており,被告製品の砂層はこれに当たるものである。
イ 同要件Bについて 本件発明1@では,炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央に向かうように転向されることで,「循環流」が形成される。この転向手段は,【課題を解決する手段】では「傾斜壁」とされ,実施例では,図3に示されたデフレクタ6である。
ところが,被告製品の流動床式ガス化炉1では,そもそも「炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央に向かうように転向される」ことがない。被告製品では,砂層各所で発生した気泡(流動化ガス)は砂層表面まで上昇しては破裂を繰り返すだけで,炉内周辺部上方において気泡が炉の中央に向かうように転向されようがない。また,このような「転向手段」すなわち傾斜壁やデフレクタ6に相当するものも存在しない。
したがって,被告製品は要件Bを充たさない。
ウ 同要件Cについて 本件発明1@では,炉の中央部の移動層では流動媒体が拡散沈降し,炉内周辺部の流動層では流動媒体が活発に流動しており,炉内へ供給された可燃物は,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。
被告製品の流動床式ガス化炉1では,炉内に性質の異なる移動層と流動層とが大きく領域分けして形成されることはなく,砂層全体が気泡流動化状態とされる構成である。このため,本件発明1@における上記循環は存しない。
したがって,被告製品は要件Cを充たさない。
エ 同要件Dについて 被告製品の流動床式ガス化炉1では,上記要件@ないしCにみられるような炉中央部の移動層から炉周辺部の流動層へ,そして,流動層頂部から移動層へと循環する流動媒体の大きな循環径の流れが形成されるための構成を有していない。したがって,炉内に本件発明1@におけるような大きな循環径の循環流が形成されない。
したがって,被告製品は要件Dを充たさない。
(2) 構成要件1BAの充足性 本件発明1Aに係る請求項17は,本件発明1@に係る請求項16の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(6)のとおり,本件発明1@の構成要件1B@,1D,1E及び1Fを充足せず,本件発明1@の技術的範囲に属しない以上,本件発明1Aの技術的範囲にも属しない。
(3) 構成要件1BBの充足性 本件発明1Bに係る請求項18は,本件発明1@に係る請求項16の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(6)のとおり,本件発明1@の構成要件1B@,1D,1E及び1Fを充足せず,本件発明1@の技術的範囲に属しない以上,本件発明1Bの技術的範囲にも属しない。
(4) 構成要件1Dの充足性 構成d’及びe’は,構成要件1Dを充足しない。
原告は,異議申立てを受けた後に特許庁に提出した意見書(乙50)において,構成要件1Dにつき,「炉内の循環流へ供給された可燃物は,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体と共に循環する間にガス化され,可燃ガスとチャーとなる。」と,その意義を自ら明らかにしている。
構成d’は,ランダムに流動している流動媒体とごみを接触させるものであり,上記のような本件発明1@における「循環流」中でごみからガスとチャーを生成するものではない。
(5) 構成要件1Eの充足性 構成d’及びe’は,構成要件1Eを充足しない。
構成d’は,ランダムに流動している流動媒体とごみを接触させるものであり,本件発明1@における「循環流」が存在せず,そのような「循環流」中でチャーを微粒子化するものではなく,被告製品では,チャーが微粒子となる要件を具備していない。
すなわち,そもそも,本件発明1@は,異議申立ての際の訂正により「該チャーを循環流中で微粒子」なる構成要件1Eを減縮訂正によって追加したものであるが,「微粒子」とは如何なる粒径を意味するのかが全く特許明細書に記載されていない。
本件第1特許権の異議申立てにおいて取消理由通知が出されたところ,原告は,それに対する反論である意見書(乙50)において,チャーの循環流中での微粒子化について,【0021】及び【0029】のように説明している。この説明によれば,「チャーが微粒子となる」とは,前記1〔被告の主張〕(1)アの5要件を充たす「循環流」が存在することを前提として,流動媒体とともに移動層と流動層を循環する間に細かくされることを意味する。
したがって,移動層と流動層から成る「循環流」を持たない構成d’及びe’は,構成要件1Eを充足しない。
(6) 構成要件1Fの充足性 構成f’は,構成要件1Fを充足しない。
構成要件1Fの「微粒子となったチャー」とは,構成要件1Eにおける「循環流」の存在を前提とするものであり,原告自ら述べる条件において,本件発明1@の「循環流」中でさらに微粒子となったチャーでなければならない。したがって,構成f’には,本件発明1@の「循環流」がないから,「循環流中でさらに微粒子となったチャー」もない。
4 争点(4)(被告製品が本件発明2@及びAの技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件2B@ないしBの充足性 構成要件1B@ないしBにおけると同様に,構成bのとおり,被告製品では,上昇する砂と下降する砂からなる循環流を生じさせて形成されているから,構成要件2B@ないしBを充足する。
(2) 構成要件2D@の充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,循環流α中でガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し」に当たり,構成要件2D@を充足する。
(3) 構成要件2DAの充足性 構成dのとおり,被告製品においては,砂層の温度が500℃ないし600℃程度であるから,「前記流動層炉は,流動層温度が450℃〜650℃に維持されること」に当たり,構成要件2DAを充足する。
(4) 構成要件2Eの充足性 構成eのとおり,被告製品においては,チャーが循環流中の燃焼等により,より小さな粒子となるから,「該チャーを該循環流中で微粒子とし,」に当たり,構成要件2Eを充足する。
(5) 構成要件2FBの充足性 構成fのとおり,被告製品は,ごみに含まれる不燃物と砂を炉底部から排出し,不燃物と砂を分別した後に砂を流動床式ガス化炉に戻し,流動床式ガス化炉から可燃ガスとより小さい粒子となったチャーが燃焼溶融炉に送られて灰分を溶融スラグ化するものであるから,「該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化すること」に当たり,構成要件2FBを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件2B@ないしBの充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,被告製品である流動床式ガス化炉1では,本件発明2@にいう「流動媒体の循環流」を形成していない。
したがって,構成b’は,構成要件2B@ないしBを充足しない。
(2) 構成要件2D@の充足性 構成d’及びe’は,ランダムに流動している流動媒体とごみを接触させるものであり,本件発明2@における「循環流」がなく,そのような「循環流」中でごみをガス化してガスとチャーを生成し,さらにチャーを該「循環流」中で微粒子化するものではない。
したがって,前記3〔被告の主張〕(4)と同様に,構成d’及びe’は,構成要件2D@を充足しない。
(3) 構成要件2DAの充足性 本件発明2Aに係る請求項21は,本件発明2@に係る請求項19の従属項であるから,前記(1)及び(2)並びに後記(4)及び(5)のとおり,被告製品の構成が本件発明2@の構成要件2B@ないしB,2D@,2E及び2Fを充足せず,本件発明2@の技術的範囲に属しない以上,本件発明2Aの技術的範囲にも属しない。
(4) 構成要件2Eの充足性 構成d’及びe’は,ランダムに流動している流動媒体とごみを接触させるものであり,本件発明2@における「循環流」がなく,そのような「循環流」中でごみをガス化してガスとチャーを生成し,さらにチャーを当該「循環流」中で微粒子化するものではない。
したがって,前記3〔被告の主張〕(5)と同様に,構成d’及びe’は,構成要件2Eを充足しない。
(5) 構成要件2FBの充足性 構成要件2FBの「微粒子となったチャー」とは,構成要件1Eで説明した「循環流」の存在を前提とし,「循環流」中で生成されさらに微粒子化されたチャーである。同様に,「該ガス」は本件発明2@の「循環流」中で生成するガスである。
構成f’には,本件発明2@の「循環流」がなく,「循環流中でさらに微粒子となったチャー」もなく,「循環流中で生成するガス」もない。そのような「該ガス」と「該チャー」が流動層炉から排出されることがないから,構成要件2FBを充足しない。
5 争点(5)(被告製品が本件発明3の技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件3B@の充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,分散板を通して砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「該流動層炉は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段を備え,」に当たり,構成要件3B@を充足する。
なお,「風箱5」が1つしかないとしても,複数の通気口9を設けることにより,質量速度の異なる流動化ガスを供給することができるから,「流動化ガス供給手段」を欠くとはいえない。単一の風箱を用いたとしても,流動化速度に差を付け,流動層炉に意図的,強制的な循環流を形成することが示されている(甲17の110頁)。
(2) 構成要件3BA及びBの充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,分散板を通して砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「該質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,該質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段から供給される流動化ガスはともに空気とし,」「該流動化ガスを該炉内に供給して該炉内に流動媒体の循環流を形成し」に当たり,構成要件3BA及びBを充足する。
(3) 構成要件3Dの充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,ガス化されてガスとチャー等を生成するから,「ガス化してガスとチャーを生成し,」に当たり,構成要件3Dを充足する。
(4) 構成要件3FAの充足性 構成fのとおり,被告製品においては,ごみに含まれる不燃物と砂を流動床式ガス化炉の炉底部から排出し,不燃物と砂を分別した後に砂を流動床式ガス化炉に戻し,流動床式ガス化炉から可燃ガス,チャー等が燃焼溶融炉に送られて,燃焼溶融炉において燃焼して灰分を溶融するので,「該熔融炉は該流動層炉より排出された該ガスと該チャーを燃焼して灰分を熔融すること」に当たり,構成要件3FAを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件3B@の充足性 構成b’の流動床式ガス化炉における流動化ガス供給手段は「風箱5」である。この「風箱5」は「単一の風箱5」であるから,流動化ガス供給手段は単一である。すなわち,被告製品は,「質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段」という別個に独立した複数の「流動化ガス供給手段」を有していない。
また,質量速度が「比較的小さい」あるいは「比較的大きい」なる特定に関して,どの程度の質量速度がそれぞれに対応するのか記載がなく,その意味で不適切な特定であり,構成要件3B@は正確な対比に耐えない構成要件である。
そうすると,構成b’は,構成要件3B@を充足しない。
(2) 構成要件3BA及びBの充足性 被告製品である流動床式ガス化炉1は,「該質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,該質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段」を持たないから,そのような手段で供給される「流動化ガス」を有していない。また被告製品には本件発明3にいう「循環流」がない。
そうすると,構成b’は,構成要件3BA及びBを充足しない。
(3) 構成要件3Dの充足性 構成要件3Dの「廃棄物が本件特許発明の循環流中でガス化して,ガスとチャーを生成する」の「循環流」は,本件発明3の「循環流」でなければならない。
構成d’は,気泡流動化状態の砂層内でガス化して,ガスと固形分を生成するものであり,その砂層には本件発明3の「循環流」がない。
そうすると,構成d’は,構成要件3Dを充足しない。
(4) 構成要件3FAの充足性 構成要件3FAにおける「該ガス」は本件発明3の「循環流」中で生成するガスであり,「該チャー」は本件発明3の「循環流」中で生成され,さらに微粒子化されるチャーである。
被告製品には本件発明3の「循環流」がないから,構成f’では「循環流」中で生成,微粒子化されるガスとチャーが流動層から排出されることがなく,このガスとチャーが熔融炉で燃焼されない。
そうすると,構成f’は,構成要件3FAを充足しない。
6 争点(6)(被告製品が本件発明4@ないしBの技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件4B@の充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品は,流動床式ガス化炉において,上昇する砂と下降する砂からなる循環流αを生じさせているから,「炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」に当たり,構成要件4B@を充足する。
(2) 構成要件4BAの充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品は,砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること」に当たり,構成要件4BAを充足する。
(3) 構成要件4BBの充足性 構成bのとおり,被告製品は,流動化ガスとして空気を使用しているから,「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること」に当たり,構成要件4BBを充足する。
(4) 構成要件4D@の充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,ガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,」に当たり,構成要件4D@を充足する。
(5) 構成要件4DAの充足性 構成dのとおり,被告製品の砂層の温度は500℃ないし600℃程度であるから,「流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,」に当たり,構成要件4DAを充足する。
(6) 構成要件4Eの充足性 構成eのとおり,被告製品においては,ごみが緩慢で安定した熱分解及びガス化を受け,部分燃焼が維持されるから,「抑制された燃焼反応が継続されるようにし,」に当たり,構成要件4Eを充足する。
(7) 構成要件4Fの充足性 構成fのとおり,被告製品においては,流動床式ガス化炉から可燃ガスとチャーが燃焼溶融炉に送られて,燃焼溶融炉において灰分が溶融されるから,「該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたこと」に当たり,構成要件4Fを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件4B@の充足性 本件発明1@におけるのと同様に,構成b’(流動床式ガス化炉1の砂層4)では,「気泡10の発生,合体そして破裂が随所でランダムに繰り返されており,これによって,流動媒体(砂)は,砂層4で,あたかも沸騰させた水のようにランダムに流動し,気泡流動化状態となる」から,本件発明4@にいう流動媒体の「循環流」を形成していない。
そうすると,構成b’は,構成要件4B@を充足しない。
(2) 構成要件4BAの充足性 本件発明4Aに係る請求項4は,本件発明4@に係る請求項1の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(7)のとおり,被告製品の構成が本件発明4@の構成要件4B@,4D@及びA,4E並びに4Fを充足せず,本件発明4@の技術的範囲に属しない以上,本件発明4Aの技術的範囲にも属しない。
(3) 構成要件4BBの充足性 本件発明4Bに係る請求項5は,本件発明4@に係る請求項1の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(7)のとおり,被告製品の構成が本件発明4@の構成要件4B@,4D@及びA,4E並びに4Fを充足せず,本件発明4@の技術的範囲に属しない以上,本件発明4Bの技術的範囲にも属しない。
(4) 構成要件4D@の充足性 構成要件4Dの廃棄物のガス化も,「循環流」のある流動層炉内で行われるものでなければならないが,構成d’のとおり,被告製品においては,気泡流動化状態の砂層内でガス化してガスとチャーを生成するものであるから,構成要件4D@を充足しない。
(5) 構成要件4DAの充足性 構成要件4DAの「流動層」は本件発明4の「循環流」の必須構成要件の「流動層」でなければならない。その「流動層」は,「炉周辺部」という特定の場所で上昇する「流動層」である(前記1〔被告の主張〕(1)アの「循環流」の要件A)。
これに対して,構成d’における砂層4は,「気泡10の発生,合体そして破裂が随所でランダムに繰り返されており,これによって,流動媒体(砂)は,砂層4で,あたかも沸騰させた水のようにランダムに流動し,気泡流動化状態となる」ものであり,砂層の特定の領域である,特に炉周辺部で,「流動媒体が上昇する」流動層はない。
そうすると,構成d’は,構成要件4DAを充足しない。
(6) 構成要件4Eの充足性 本件明細書3には,「流動層10の温度は,450〜650℃に維持され,抑制された燃焼反応が継続するようにされる。」と記載されている(【0031】)。したがって,「循環流」のある流動層において,流動層10の温度を450℃ないし650℃に維持し,抑制された燃焼反応を継続させるのが構成要件4Eの内容である。
被告製品においては,本件発明4@の「循環流」はなく,「流動媒体が上昇する」流動層は存在しないので,そのような流動層において抑制された燃焼反応が継続するような操作をしていない。
(7) 構成要件4Fの充足性 構成要件4Fにいう「該ガス」とは「循環流」中で生成されるガスをいい,「該チャー」は「循環流」中で生成され,微粒子化されるものである。
被告製品の流動層においては「循環流」が存在しないから,構成f’は,構成要件4Fを充足しない。
7 争点(7)(被告製品が本件発明5の技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件5BAの充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品は,流動床式ガス化炉において,砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」に当たり,構成要件5BAを充足する。
(2) 構成要件5D@の充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,ガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,」に当たり,構成要件5D@を充足する。
(3) 構成要件5DAの充足性 構成dのとおり,被告製品においては,砂層の温度が500℃ないし600℃程度であるから,「質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,」に当たり,構成要件5DAを充足する。
(4) 構成要件5Eの充足性 構成eのとおり,被告製品においては,ごみが緩慢で安定した熱分解・ガス化を受け,部分燃焼が維持されるから,「抑制された燃焼反応が継続されるようにし,」に当たり,構成要件5Eを充足する。
(5) 構成要件5Fの充足性 構成fのとおり,被告製品においては,流動床式ガス化炉から可燃ガスとチャーが燃焼溶融炉に送られて,燃焼溶融炉において灰分が溶融されるから,「該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたこと」に当たり,構成要件5Fを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件5BAの充足性 被告製品では,質量速度を異ならせた流動化ガスを用いていない。
また,本件発明5の「循環流」は,前記1〔被告の主張〕(1)アの5要件が一体となって実現されるものであるが,被告製品の流動床式ガス化炉1には,本件発明5の「循環流」がない。
そうすると,構成b’は,構成要件5BAを充足しない。
(2) 構成要件5D@の充足性 構成要件1D,2D@,3D,4D@におけるのと同様に,構成d’は,構成要件5D@を充足しない。
(3) 構成要件5DAの充足性 構成要件4DAにおけるのと同様に,構成d’は,構成要件5DAを充足しない。
(4) 構成要件5Eの充足性 構成要件4Eにおけるのと同様に,構成e’は,構成要件5Eを充足しない。
(5) 構成要件5Fの充足性 構成要件3FA,4Fにおけるのと同様に,構成f’は,構成要件5Fを充足しない。
8 争点(8)(被告製品が本件発明6@ないしBの技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件6B@の充足性 構成要件4B@におけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,流動床式ガス化炉において,上昇する砂と下降する砂からなる循環流αを生じさせているから,「炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」に当たり,構成要件6B@を充足する。
(2) 構成要件6BAの充足性 構成要件1B@ないしBにおけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること」に当たり,構成要件6BAを充足する。
(3) 構成要件6BBの充足性 構成bのとおり,被告製品は,流動化ガスとして空気を使用しているから,「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること」に当たり,構成要件6BBを充足する。
(4) 構成要件6D@の充足性 構成dのとおり,被告製品では,投入されたごみは,ガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,」に当たり,構成要件6D@を充足する。
(5) 構成要件6DAの充足性 構成dのとおり,被告製品の砂層の温度は500℃ないし600℃程度であるから,「流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,」に当たり,構成要件6DAを充足する。
(6) 構成要件6Eの充足性 構成eのとおり,被告製品では,チャー等は,上昇する砂層の中で部分燃焼されるから,「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ,」に当たり,構成要件6Eを充足する。
(7) 構成要件6Fの充足性 構成fのとおり,被告製品では,流動床式ガス化炉から可燃ガスとチャーが燃焼溶融炉に送られて,燃焼溶融炉において灰分が溶融されるから,「該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたこと」に当たり,構成要件6Fを充足する。
〔被告の主張〕 (1) 構成要件6 B@の充足性 構成b’は,構成要件6B@を充足しない。
本件発明6@の「循環流」は,前記1〔被告の主張〕(1)アの5要件が一体となって実現されるものであるが,被告製品の流動床式ガス化炉1の砂層には気泡化流動状態が生じるのであって,「循環流」がない。
(2) 構成要件6BAの充足性 本件発明6Aに係る請求項9は,本件発明6@に係る請求項6の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(7)のとおり,被告製品の構成が本件発明6@の構成要件6B@,6D@及びA,6E並びに6Fを充足せず,本件発明6@の技術的範囲に属しない以上,本件発明6Aの技術的範囲にも属しない。
(3) 構成要件6BBの充足性 本件発明6Bに係る請求項10は,本件発明6@に係る請求項6の従属項であるから,前記(1)及び後記(4)ないし(7)のとおり,被告製品の構成が本件発明6@の構成要件6B@,6D@及びA,6E並びに6Fを充足せず,本件発明6@の技術的範囲に属しない以上,本件発明6Bの技術的範囲にも属しない。
(4) 構成要件6D@の充足性 構成要件2D@,3D,4D@及び5D@におけるのと同様に,構成d’は,構成要件6D@を充足しない。
(5) 構成要件6DAの充足性 構成要件4DA及び5DAにおけるのと同様に,構成d’は,構成要件6DAを充足しない。
(6) 構成要件6Eの充足性 構成e’の「ごみは流動媒体と接触する」ことは,構成要件6Eにおける「チャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」ることと同視できない。
本件発明6@における「流動層」は,あくまでも前記1〔被告の主張〕(1)アの5要件を充たす「循環流」を形成する流動層であり,被告製品において,炉内に例えチャーが生成されたとしても,その一部がこの「循環流」の一部である流動層により燃焼されることはない。
そうすると,構成e’は,構成要件6Eを充足しない。
(7) 構成要件6Fの充足性 構成要件3FA,4F及び5Fにおけるのと同様に,構成f’は,構成要件6Fを充足しない。
9 争点(9)(被告製品が本件発明7の技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 (1) 構成要件7BAの充足性 構成要件1B@におけるのと同様に,構成bのとおり,被告製品では,流動床式ガス化炉において,砂層に供給される空気量を,砂層の中央部において大とし,周辺部において小とすることにより,砂からなる循環流αを生じさせているから,「質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」に当たり,構成要件7BAを充足する。
(2) 構成要件7D@の充足性 構成dのとおり,被告製品においては,投入されたごみは,ガス化されてガスとチャー等を生成するから,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,」に当たり,構成要件7D@を充足する。
(3) 構成要件7DAの充足性 構成dのとおり,被告製品の砂層の温度は500℃ないし600℃程度であるから,「質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し,」に当たり,構成要件7DAを充足する。
(4) 構成要件7Eの充足性 構成eのとおり,被告製品においては,チャー等は,上昇する砂層(供給される空気量が大とされる部分)の中で部分燃焼されるから,「生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させ,」に当たり,構成要件7Eを充足する。
(5) 構成要件7Fの充足性 構成fのとおり,被告製品では,流動床式ガス化炉から可燃ガスとチャーが燃焼溶融炉に送られて,燃焼溶融炉において灰分が溶融されるから,「該流動層炉より該ガスと該チャーを供給して灰分を熔融する熔融炉を備えたこと」に当たり,構成要件7Fを充足する。
〔被告の主張〕 構成要件7BAは構成要件5BAと,構成要件7D@は構成要件2D@,3D,4D@,5D@及び6D@と,構成要件7DAは構成要件4DA,5DA及び6DAと,構成要件7Eは構成要件6Eと,構成要件7Fは構成要件3FA,4F,5F及び6Fとそれぞれ同一である。
被告主張に係る被告製品の構成が構成要件7BA,7D@及びA,7E並びに7Fを充足しないことは,前記3ないし8と同様である。
10 争点(10)(被告製品が本件発明8の技術的範囲に属するか否か)について 〔原告の主張〕 構成fのとおり,被告製品の一部の製品は,燃焼溶融炉に酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えており,「前記熔融炉は,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えたこと」に当たるから,構成要件8Fを充足する。
被告製品がその余の構成要件を充足することは,前記6ないし9と同様である。
〔被告の主張〕 本件発明8に係る請求項12は,本件発明4@,5,6@及び7に係る請求項の従属項であるから,前記6ないし9のとおり,被告製品の構成が前者の技術的範囲に属しない以上,後者の技術的範囲にも属しない。
11 争点(11)(自由技術の抗弁)について 〔被告の主張〕 (1) 被告製品は,被告自身が従来から使用している流動床式ガス化炉と,同じく従来から使用している旋回流式溶融炉を組み合わせたものであり,流動床式ガス化炉の構成は,本件各発明において従来技術とされているバブリング式の流動床式ガス化炉そのものである。
被告の前身である神戸製鋼所は,本件特許出願前に流動床式ガス化炉と旋回流式溶融炉を組み合わせた処理システムを製造しており(乙11),乙第11号証に記載された技術は,その図1に示されているように,被告製品と同様,流動床式ガス化炉と旋回流式溶融炉(燃焼溶融炉)を組み合わせたもので,現在の被告製品とは,流動床式ガス化炉と旋回流式溶融炉が直結されているか,間に「サイクロン」と呼ぶ装置を挟んでいるかという点で相違しているにすぎない。
したがって,被告製品は,本件特許出願前から被告自身が実施していた製品と同一であるか,少なくとも当該製品から容易に想到することができる製品にすぎず,自由技術の範疇に入る技術であって,本件各特許権の権利行使が及ばないものである。
(2) 被告製品のように炉底が「すり鉢状」の構造を有している流動層炉において,砂層の層高に応じて供給する空気量に大小差を付けることは,当業者において常識的な事項である。そして,層高差に応じて供給する空気量に大小差を付ける流動床式焼却炉を,乙第1号証等に記載された流動床式ガス化炉と溶融炉との組合せに適用することは,実質的に公知技術そのものであるか,又は少なくとも,従来技術に基づいて極めて容易に想到できる事項にすぎない。被告製品の技術は,本件各特許権の出願前の技術から,容易に想到することができる自由技術の一種にほかならない。
すなわち,被告製品の流動層炉の炉底は「すり鉢状」の構造を有しており,周辺側から中心側に向かって傾斜する構造を有している。このような炉底の形状の場合,砂層の厚い炉中心部では,砂層を通過する流動化空気の空気速度が小さく,流動化空気が通りにくいが,砂層が薄い炉周辺部では,砂層を通過する流動化空気の空気速度が大きく,流動化空気が通りやすい。そこで,流動化空気の通りにくい炉中心部でも炉周辺部と同様に流動化空気が通るようにして,砂層全体を気泡流動化状態(バブリング状態)にするため,炉中心部に供給する流動化空気の空気量を炉周辺部に供給する流動化空気の空気量より大きくし,炉中心部の砂層と炉周辺部の砂層を通る流動化空気の空気速度をできるだけ均一にして,炉中心部でも炉周辺部でも砂がよく流動するようにし,ごみの取り込みと不燃物の排出を良好に行っている。
より具体的には,流動層炉の風箱が1つであり,炉に供給する流動化空気の速度に差を付けることができないので,分散板の通気口(ノズル)の口径を,砂層高に応じて大小差を付け,分散板から砂層に吹き出す流動化空気の空気量に大小差を付けている。
(3) また,被告製品の構造は,乙第1号証の第1図の構造と基本的に同一であり,同図には,被告物件目録の流動床式ガス化炉1と同じものが記載されている。
すなわち,被告製品の構造は,乙第1号証の製品の構造と基本的に変わらず,また流動床式ガス化炉の流動媒体の動きも,この従来技術と同じであるから,出願前に公知の自由技術をそのまま実施しているにすぎず,本件各特許権に基づく権利行使は否定されるべきものである。
〔原告の主張〕 否認ないし争う。
12 争点(12)(本件発明1@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について 〔被告の主張〕 (1) 本件発明1@の新規性の有無 本件発明1@は,その特許出願前の刊行物である特公昭62-35004号公報(乙1)に記載された発明と同一であり,新規性を欠く。
ア 乙第1号証の記載内容 乙第1号証の記載を総合して分説すると,以下の内容が記載されている(以下,その記号に従って,「構成(ア)」などという。)。
(ア) 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において, (イ) 流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し, (ウ) 該廃棄物を該流動層炉内に供給し, (エ) 該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし, (オ) 該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回溶融炉に供給して灰分を溶融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
イ 対比 本件発明1@と乙1発明とを対比すると,両者の相違点は次の2点となり,その余の点は一致する。
(ア) 相違点1 本件発明1@が,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」(構成要件1B@)ているのに対し,乙1発明が,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し」(構成(イ))ており,「循環流の形成」が明記されていない点 (イ) 相違点2 本件発明1@が,「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該循環流中で微粒子とし」(構成要件1D及び1E)ているのに対し,乙1発明が,「該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし」(構成(エ))ており,「循環流中」で「ガスとチャーを生成し,微粒子とする」ことが明記されていない点 ウ 相違点について (ア) 本件発明1@では,「循環流」との用語が使用されているが,本件明細書1中には,当該用語を特別な意味に定義した記載は存在しない。
特許発明技術的範囲の解釈とは異なり,新規性又は進歩性を判断するに際しての発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてなされるべきで,特許請求の範囲技術的意義が一義的に明確に理解することができないなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明参酌することが許されるから(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁),新規性進歩性を判断するに際しての発明の要旨認定の関係では,本件発明1@における「循環流」の意味は,その文言が示す通常の意味に解釈されなければならない。
原告の「循環流」の解釈は,「意図的」という主観的な要素を発明の権利範囲の解釈に持ち込む点で誤りであり,また,その定義自体,極めて不明確であり,しかも特許請求の範囲発明の詳細な説明の記載に裏付けられていない定義であるから,相当でない。
(イ) 相違点1について a 乙1発明の流動層熱分解炉とは,下部の分散板6から流動層炉内に空気を供給して,流動媒体である砂を流動化し,これをかき混ぜるものであって,ジャグジー風呂のようなものである。ジャグジー風呂において,流動媒体である水の循環が生じているのと同様に,乙1発明の流動層内においても流動媒体である砂の循環が生じていることは自明である。この流動媒体の循環は,例えば,当該技術分野におけるバイブル的な教科書である「流動層の反応工学」(乙3)で説明されているように,流動層である限り必然的に発生する周知な物理現象である(114頁ないし116頁)。
b また,乙1発明の流動層内において流動媒体である砂の循環が生じる点については,実開昭58-58232号公報(乙23)において,原告が自認しているといってよい内容である。
乙第23号証の第1図のような公知技術である流動層炉の流動層に,矢印で示され得る流動媒体の循環があることは,原告自ら認めているものであり,同図の流動層炉と同じ炉構造を有する乙第1号証において,その意味における「循環流」が生じていることは否定できない。
c 新規性進歩性を判断するに際しての発明の要旨認定の関係では,本件発明1@における「循環流」の意味は,乙第3号証や乙第23号証の第1図に記載された従来から周知となっていた物理現象である「循環流」を含むものとして解釈されるものであり,したがって,乙1発明には「循環流」が存在することは明らかである。
d 以上により,相違点1は,乙第1号証に記載されているか又は実質的に記載されていると同視できるものである。そうすると,この点を相違点ということはできない。
(ウ) 相違点2について 前記(イ)のとおり,乙1発明の流動層には,少なくとも乙第3号証や乙第23号証の第1図に記載の「循環流」が存在するのであり,乙1発明では,「該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし」(構成(エ))ているのであるから,乙1発明において,「該流動層炉内の流動層中,すなわち,循環流中で,ガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中,すなわち,循環流中で微粒子とし,」ていることは明らかである。
したがって,相違点2も相違点とはいえない。
(2) 本件発明1@の進歩性の有無 本件発明1@にいう「流動媒体の循環流」を,詳細な説明の記載と出願経緯を参酌して,本件明細書1の図1の符号118及び符号112で示されている流動媒体の明確な循環の意味として解釈した場合,すなわち上記(1)ウ(イ)よりも「流動媒体の循環流」を狭義に解釈した場合であっても,本件発明1@は,乙1発明に乙第22ないし第27号証に記載された発明(以下,書証の番号に従って「乙22発明」などという。なお,乙第23号証の考案も「乙23発明」という。)を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
ア 乙第22号証の記載内容 本件発明1@の出願前である平成2年8月1日に発行された刊行物である特許公開公報平2-195104号(乙22)には,流動層を用いた燃焼装置に関する技術が開示されているが,乙22発明の内容は次のとおりである(以下,その記号に従って,「構成(ア)’」などという。)。
(ア)’ 石炭等の被燃焼物を流動層炉にてガス化・燃焼する方法において, (イ)’ 流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し, (ウ)’ 該被燃焼物を該流動層炉内に供給し, (エ)’ 該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該循環流中で微粒子とすること。
したがって,上記構成(イ)’及び(エ)’が記載されているから,乙第22号証には,前記〔被告の主張〕(1)イの相違点1及び2が記載されている。
イ 乙22発明と乙1発明の組合せが容易であること 乙第1号証には,「本発明は,(中略)石炭などの固形燃料の燃焼方法及びその装置に関するものである。」とあり(1欄18行ないし22行),乙22発明の技術分野である石炭の燃焼方法を含む発明であることが明記されている。また,乙1発明も乙22発明も,共に流動層炉を使用する燃焼方法及びその装置に係る発明であり(乙1発明は,都市ごみ等の固形廃棄物や石炭等の燃焼方法及びその装置に関する発明であり,乙22発明も石炭焚き内部循環流動床ボイラに関する発明で,液状又は固形廃棄物の燃焼若しくは流動層ボイラに流動層を用いた燃焼装置が広く応用されていることは従来公知の事柄である。),国際特許分類もF23C11/02と一致している。このとおり,その技術分野が密接に共通しているから,特段の事情がない限り,その技術を相互に適用可能であることは明らかである。そして,乙第1号証にも乙第22号証にも,その組合せを阻害するような記載は一切存在しない。
さらに,後記ウのとおり,本件発明1@が符号118及び符号112で規定するような「循環流」との技術的事項は,原告自らがその出願前15年以上にわたって発表してきたことによって,本件発明1@の特許出願当時既に周知の技術的事項となっており,また,そのような技術をガス化・熱分解用に使用することについても,原告自身が遅くとも昭和52年には公開している周知事項にすぎない。
さらに,乙第22号証の炉を熱分解炉として採用する場合に,空気量や温度を下げるなど,適宜運転条件の調整を行うことは,当業者でなくても理解し得る自明の事柄であるから,乙第22号証のとおりの運転条件のままでは炉を乙1発明の炉に応用することができないから等といって,両者を組み合わせる上で阻害事由となるものではない。そうすると,乙1発明に乙22発明を組み合わせることは,当業者に自明といってよい程に容易である。
ウ 「循環流」の具体的な実施態様が周知であったこと 乙第24ないし第28号証によれば,本件発明1@の属する技術分野において,本件発明1@の「循環流」の実施例として記載された,本件明細書1の図1の符号118及び符号112で示されている流動媒体の循環に関する具体的態様は,原告自身が繰り返し特許出願や論文発表していたため,本件発明1@の特許出願時点において既に当業者に周知の技術となっていた。
また,特許庁は,本件発明1@と極めて近似している内容の請求項について,乙1発明と乙24発明の組合せに基づいて進歩性がないと判断している。このことからも,「ガス化炉」と「流動床ボイラまたは焼却炉」とが同一技術分野であり,相互に適用可能な技術であることは,特許庁も認める,明らかなことである。
エ 小括 以上のとおり,本件発明1@において矢印で示されたような「循環流」は,原告自身によって,本件発明1@の特許出願当時には既に周知の技術事項となっていた。
また,昭和50年代には,原告自身によって,従来からの気泡流動化(バブリング)状態を示す流動層(乙1発明の「流動層」もこれに該当する。)に代えて適用可能であることが示されており,当業者であれば,乙1発明の「流動層」に代えて,乙第22号証に記載され,また,本件発明1@の特許出願当時に既に周知の技術となっていた本件発明1@の「循環流」の技術を採用することは自明といってよいほどに容易であることが明らかである。
このとおり,本件発明1@は,乙1発明と乙22発明ないしそこに記載された周知事項を組み合わせることで当業者が容易に想到することができたから,明らかに進歩性を欠いた発明である。
なお,乙1発明は,従来の流動層燃焼炉の問題点並びに従来の流動層熱分解炉及びサイクロン焼却炉の問題点を踏まえ,これらを解消するため,流動層熱分解炉とサイクロン焼却炉とを一体化させる構造を提案したものである。従来からの公知技術である乙第23ないし第27号証のTIF型流動層熱分解炉との組合せを採用することは当業者において極めて容易である。
また,本件発明1@は,新規性及び進歩性の欠如に気付いた原告により,温度条件に関する訂正が加えられており,本件発明2Aに係る「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」なる構成要件が加えられている。しかし,これは当業者が通常採用する温度条件にすぎず,乙第1号証に記載されているも同然であり,たとえこの訂正が加えられたとしても,なお本件発明1@は新規性又は進歩性をいずれも欠く。
(3) 本件発明1Aの進歩性の有無 本件発明1Aは,本件発明1@に,既に当該技術分野における当業者に周知であった技術的事項を単に付加したものにすぎず,本件発明1@におけるのと同様の無効理由を有する。
すなわち,次のとおり,前記(2)と同様に,本件発明1Aは,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるため,進歩性を欠く。
ア 本件発明1Aと乙1発明の対比 本件発明1Aの構成要件は,本件発明1@の構成要件と前者が構成要件1BAを有する点を除いて同一である。したがって,両者の間で,前記(1)イの相違点1及び2に係る事情は同様である。
本件発明1Aの構成要件1BAに関し,乙1発明では,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し」(構成(イ))ている点(以下「相違点1’」という。)で異なっており,その余は一致する。
進歩性の有無 本件発明1Aの「循環流」の意義は前記1〔被告の主張〕(1)アにおける「循環流」の意義と同一であり,相違点1’で示されるような循環流は,前記(1)及び(2)のとおり,乙第22ないし第27号証等に記載されている当業者に周知な構成にすぎない。本件発明1Aは,乙1発明にこれらの乙号証の発明等を組み合わせることで,当業者が容易に想到することができた程度の発明にすぎない。したがって,本件発明1Aは進歩性を欠く。
(4) 本件発明1Bの進歩性の有無 本件発明1Bは,本件発明1@に,既に当該技術分野における当業者に周知であった技術的事項を単に付加したものにすぎず,本件発明1@におけるのと同様の無効理由を有する。
すなわち,次のとおり,前記(2)と同様に,本件発明1Bは,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるため,進歩性を欠く。
ア 本件発明1Bと乙1発明の対比 本件発明1Bの構成要件は,本件発明1Aの構成要件と,前者が構成要件1BBを有する点を除いて同一である。したがって,両者の間で,前記(1)の相違点1,1’及び2に係る事情は同様である。
本件発明1Bの構成要件1BBに関し,本件発明1Bと乙1発明との相違点は,前者が「前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される」のに対し,後者にはこのような構成がない点(構成要件1BB。以下「相違点1’’」という。)であり,それ以外の構成は一致する。
進歩性の有無 相違点1’’に係る技術的事項も,前記(1)及び(2)と同様に,流動層炉における周知の技術であり,例えば,乙第22ないし第27号証に明記されている。そうすると,本件発明1Bも乙1発明にこれらの乙号証の発明等を組み合わせることで,当業者が容易に想到することができた程度の発明にすぎない。したがって,本件発明1Bも,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 (1) 本件発明1@の新規性の有無 本件発明1@と乙1発明とでは,少なくとも,上記相違点1,2が存在し,両者は実質的に同一ではなく,本件発明1@は新規性を有している。
ア 相違点1について (ア) 本件発明1@における「流動媒体の循環流を形成」とは,「意図的に形成された流動媒体の循環する流れを形成すること」を意味しており,乙第3号証に記載された流動層である限り必然的に発生する周知の物理現象(「粒子の循環」)とは明確に区別される。
したがって,相違点1が乙第1号証に記載されているとか,又は記載されているものと同視することはできない。
(イ) 被告は,原告が,乙第23号証において,乙1発明の流動層内で流動媒体である砂の循環が生じる点について自認している旨を主張する。
しかし,乙23発明は,考案の名称が「流動床式焼却炉」であって,本件発明1@とは異なる技術分野のものであり,本件に直ちに妥当しない。また,乙第23号証の第1図と第3図は,全く異なる構造の焼却炉であり,しかも,第1図の矢印は,流動媒体が上下に運動していることを示したもので,いわゆるバブリング型を示したものであるから,第3図における矢印が流動媒体の循環流を示すものであるとしても,第1図の矢印が第3図と同様の循環流を示していることが明らかであるとはいえない。
イ 相違点2について 乙第1号証及び乙第23号証のいずれにも,「循環流中」で「ガスとチャーを生成し,微粒子とする」ことは記載されていない。
(2) 本件発明1@の進歩性の有無 乙第22ないし第27号証のいずれの技術も,乙1発明と組み合わせることは著しく困難であり,しかも,乙第22ないし第27号証には,相違点2は記載されておらず,乙1発明と公知技術の組合せによっても本件発明1@の進歩性が欠如することにはならない。
ア 乙22発明と乙1発明との組合せについて (ア) 乙第22号証の記載内容の理解について 乙第22号証においては,流動層は熱回収室を備え,流動層に投入された特定の炭種の石炭を,高温の流動層内部で旋回,循環させ,燃料比の高い石炭でも完全に燃焼させて,流動層内で燃焼熱を回収する。
短時間で加熱により揮発分が分離するが,分離した揮発分は,一部層内で燃焼し,他はフリーボード部で燃焼して燃焼ガスとなる。
したがって,乙第22号証における流動層炉では,石炭の加熱によって分離した揮発分は燃焼してしまい,流動層炉全体では,燃焼工程が行なわれている。このとおり,乙第22号証における流動層内の工程は,燃焼工程の一部が行なわれているのであって,ガス化工程が行なわれているものではない。したがって,流動層からは燃焼ガスがフリーボードに排出される。
乙第22号証には,チャーは流動層中を数十回にわたり旋回循環しながら長い時間をかけて燃焼し,このような燃焼により発生する多量の燃焼ガスに同伴されてチャーが排出されることが記載されている。揮発分の一部は流動層内で燃焼が完結しないで多量の燃焼ガスに混じってフリーボードに排出されるが,乙第22号証の流動層は,石炭を燃焼させるものであり,循環流中でガス化してガスとチャーを生成するというものではない。
また,乙第22号証においては,流動層中の燃焼工程の一部でチャーは生成されるが,流動層中で生成したチャーは,旋回流動する間に粒径が0.2mm以下になると,燃焼ガスに同伴されて煙道から排出されるが,サイクロン等で捕集されて流動層炉に戻され,戻されたチャーは燃焼される。そして,チャーの燃焼が完結するまで,このプロセスが繰り返されるため,乙第22号証においては,流動層で生成した生成されたチャーは完全に燃焼してしまう。
つまり,乙第22号証は,特定の炭種の石炭を使用することにより流動層炉において発生したチャーをすべて燃焼させるものであり,相違点2は記載されていない。
(イ) 組合せの論理付けについて 公知技術の組合せの論理付けは,主引用例と従たる引用例の技術分野,課題,作用機能を具体的に考慮して判断すべきである。乙22発明と乙1発明との組合せに関する,被告の技術分野等からする組合せの論理付けは失当である。
また,乙22発明と乙1発明とでは,技術分野及び課題を異にし,作用機能が共通でないから,当業者において両者を組み合わせることが容易とはいえない。
a 技術分野について 乙22発明は,石炭焚き内部循環流動床ボイラの燃料として特定の炭種の石炭を燃焼させ使用することにより排ガス中の窒素酸化物(NOx)の含有量を低減させ,熱エネルギを回収する技術であり,特定の炭種の石炭を使用することに特化した流動床ボイラの発明である。
これに対して,乙1発明は,広く廃棄物を対象として,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術に関する,広く廃棄物を処理する流動床式ガス化炉の発明であり,乙22発明と乙1発明とは技術分野を異にする。
なお,国際特許分類は,特許出願手続の事務処理の便宜のための分類にすぎず,これが一致しているからといって,公知技術の論理付けにおいて意味があるものではない。
b 課題について 乙22発明は,流動床ボイラにおいて石炭を燃焼させて熱エネルギーを回収する際に発生する排ガス中に含まれるチャーの触媒作用を利用して排ガス中のNOxを低減することを課題とするものである。したがって,流動層炉において特定の炭種の石炭の燃焼によって発生した排ガスに同伴するチャーの触媒作用を利用して排ガス中のNOxを低減しようとする乙22発明と,流動層炉で廃棄物を熱分解して可燃ガスとチャーを生成し,生成した可燃ガスとチャーをサイクロン燃焼炉に導入して燃焼させ灰分をスラグ化する乙1発明とは,課題を異にする。
c 作用機能について 前記(ア)のとおり,乙22発明における流動層内においては石炭の燃焼が行われ,循環流中でガス化してガスとチャーを生成するという作用機能はない。
また,乙22発明は,特定の炭種の石炭を使用することにより流動層炉において発生したチャーをすべて燃焼させるものであり,乙22発明の流動層は,乙1発明の流動層とは異なって,後段のサイクロン燃焼炉に導入して燃焼させるために微粒子とする作用機能を有しない。したがって,チャーを微粒子とするという作用機能においても,乙1発明の流動層と乙22発明の流動層とは作用機能が相違し,作用機能の共通性は全くない。
(ウ) 乙22発明等と乙1発明の組合せの阻害事由について 乙22発明等を乙1発明と組み合わせることについては,次のとおり阻害事由がある。
a 乙第1号証の阻害事由 乙1発明においては,流動層熱分解によりチャー及び灰分が「一般の機械的集じん装置では充分に捕捉し得ない」微粒子となっていることが解決すべき課題であり,この微粒子を,サイクロン燃焼炉で「高負荷燃焼を行」って「灰分をサイクロン内壁に捕捉溶融せしめて集じん性能を向上させると共に溶融スラグとして取り出」しているのであり,その結果,「流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法とを組み合わせることにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的な極めて顕著な効果を」奏しているのである。
したがって,そもそもの課題である微粒子がさらに微細になれば,上記効果が得られず,また逆に粗くなると,導入する原料を予め微細粒径まで破砕する前処理を行う必要が生じ,この前処理には動力損失,機材損耗が伴うとか,燃料が必要になるというサイクロン燃焼炉の課題を解決できない懸念が生ずる。この「流動層熱分解方法とサイクロン燃焼方法とを組み合わせること」は,従来技術の問題点を解決した唯一無二の組合せであり,他の組合せに置き換えることができない。したがって,乙1発明の流動層炉に関しては,これを,本件発明1@のような循環流を備えた流動層炉などのチヤーを微粒子とする他の流動層炉に置き換えるということはそもそも,全く意図されておらず,採用することがあり得ない。
また,乙第1号証に記載されたサイクロン燃焼炉はサイクロンと同様の構造を有しており,微細粒子の捕捉原理もサイクロンと同様に考えられる。
乙1発明の流動層熱分解炉は,キャリーオーバーの問題(捕捉しきれないものが一部サイクロン燃焼炉をすり抜けてしまうという問題)を内在しているとはいえ,サイクロン燃焼炉との組合せにより,両方法の長所が生かされ短所が相殺されて消滅し,相乗的な極めて顕著な効果を伴う固形物の燃焼方法及びその装置を提供しているのであり,乙1発明の流動層熱分解炉を,排出される微細な固形物の粒径が変化する他の流動層炉に置き換える動機付けは全く得られない。
まして,仮に,被告が主張するように,乙22発明の循環流が「チャーを微粒子とする」という作用機能を有するとすれば,以下のように,乙22発明を乙1発明に組み合わせることに関しては,明白な阻害事由を有することとなる。
すなわち,乙1発明は,「流動層燃焼に於ては,灰分は微細粒子となって燃焼ガス中に混入するが,粒径が細かいので一般の機械的集じん装置では充分に捕捉し得ないのみならず集じん后も発じん防止などに特別な対策を要する。」(乙1の2欄15行ないし19行)という従来技術の問題点を解決し,「サイクロン燃焼炉自体が集じん機能を果たすのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分はサイクロン内壁に捕捉溶融され内壁面は濡れ状態となって微細な灰分の集じん性能が向上」(乙1の6欄27行ないし30行)するという優れた効果を得ることを目的とする。
しかるに,乙1発明は,サイクロン燃焼炉の前段として流動層を使用したため,キャリーオーバーにより灰分の集塵性能には,限界があるという問題点を抱えている。かかる乙1発明の前段の流動層に,被告が主張するような微粒子化の機能を有する循環流を採用させると,後段のサイクロン燃焼炉に対して,より微細なチャー等が沢山供給されて,キャリーオーバーの問題がより拡大して,本来乙1発明の目的である微細な灰分の集塵性能向上という目的に反する改変となってしまう。
このような場合には,審査基準にも明記されているとおり,乙第22号証は,引用例としての適格性を欠き,容易想到性を認められるべきではなく,被告の主張は明らかに誤りである。
また,乙第1号証に記載の流動層に,石炭を燃焼させる乙第22号証に記載の流動層を採用すると,例えばプラスチックを多量に含む都市ごみのように発熱量が極めて高い原料を燃焼した場合,局部が異常に高温となり,熱媒体が半溶融状態となって凝塊を形成し,遂に流動化不能となったり,流動層の塔径を必要以上に過大に設定せねばならず,乙1発明の上記目的に反する改変となる。これは,明確な阻害事由があることを示すものである。
b 乙第22号証の阻害事由について 乙22発明の作用機能は,使用する石炭の炭種と密接不可分であり,使用する特定の炭種と一体となってはじめてその効果を奏するものであり,その技術的事項を,対象とする特定の炭種の石炭を離れて,乙1発明のものに適用することには,明白な阻害事由がある。
乙第22号証には,流動層炉でチャーを完全に燃焼させる技術が記載されているのであり,流動層炉の後段にチャーを供給する技術は全く記載されていない。むしろ記載されているのは,後段にチャーを供給することを妨げる技術である。そうすると,乙22発明は,廃棄物を熱分解して生成されたチャーを後段に供給する乙1発明に適用することはできず,阻害事由があることになる。
また,乙1発明の流動層に乙第22号証の流動層を採用した場合に,可燃ガスが生成できなくなってしまい,乙1発明が機能しなくなり,かかる観点からも,阻害事由がある。
イ 乙23発明と乙1発明との組合せについて 次のとおり,乙23発明は,乙1発明と技術分野,課題,作用機能を異にしており,両者を組み合わせることは当業者において容易でなく,組合せに阻害事由がある。
(ア) 技術分野について 乙23発明は,廃棄物を焼却する焼却炉に関する発明であり,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術に関する発明である乙1発明とは技術分野を異にするものである。
(イ) 課題について 乙23発明は,流動床式焼却炉において焼却物が砂の上部に停滞することがなく,燃焼による発生熱を砂に有効に還元伝達して,補助燃料を不要又は節約可能とし,さらにマテリアルシールの必要がなく,前処理破砕の必要性を低減することをその課題とする。他方,乙1発明は,流動層炉で廃棄物を熱分解して可燃ガスとチャーを生成し,生成した可燃性ガスとチャーをサイクロン燃焼炉に導入して燃焼させることをその課題とするから,両者は課題を異にする。
(ウ) 作用機能について 乙23発明の作用機能は,流動床式焼却炉において砂層に吹き込む空気の量に差異を設けて砂の循環を生じさせ,砂層中で廃棄物を焼却するというものであって,循環流中でガス化して可燃ガスとチャーを生成することが開示されていないのに対し,乙1発明は,流動層炉で廃棄物を熱分解して可燃ガスとチャーを生成し,生成した可燃ガスとチャーをサイクロン燃焼炉に導入して燃焼させる作用機能を有するから,両者は作用機能を異にし,組合せが困難である。
(エ) 組合せの阻害事由について 乙1発明には,前段の流動層に,微粒子化機能を有する循環流を採用することについて阻害事由があるし,また乙1発明の流動層に乙第23号証の流動層を採用した場合,可燃ガスとチャーを生成できなくなって,乙1発明を機能させることができない。
そうすると,乙23発明に乙1発明を組み合わせることには阻害事由がある。
ウ 乙24発明と乙1発明との組合せについて 次のとおり,乙24発明は,乙1発明と技術分野,課題,作用機能を異にしており,両者を組み合わせることは当業者において容易でなく,組合せの阻害事由がある。
(ア) 技術分野について 乙24発明は,石炭をガス化して可燃ガスを生成した後に洗浄,精製して生成ガスを得る技術であり,この生成ガスは,化学工業の原料等として用いるものである。
これに対して,乙1発明は,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術である。
したがって,石炭から有価な生成ガスを得る乙24発明と廃棄物を処理する乙1発明とは,技術分野を異にする。
(イ) 課題について 乙24発明は,生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応チャーの問題を解決するとともに,二段流動層ガス化炉の問題点等を解決することを課題とする。
これに対して,乙1発明は,流動層炉で生成したガスとチャーを後段のサイクロン燃焼炉に導入して燃焼し灰分をスラグ化することを課題とするから,両者は課題を全く異にする。
(ウ) 作用機能について 乙24発明では,流動層部35で行われているガス化反応によって,チャーのガス化を促進し,チャーがガス化されずに流動層から飛散しないようにしており,その流動層には,ガス化によって生成されたチャーを循環流中で微粒子とする作用機能はない。
また,乙第24号証には,炉外に飛散するチャーは例外的なものであって,また例外的に飛散したチャーもサイクロン4で捕集して炉内に戻し,ガス化することが記載されている。
これに対して,乙第1号証には,「熱分解過程を流動層により行い,熱分解の生成ガス中に含まれるチャー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して」(2頁3欄32行ないし34行)と記載されているのみである。
乙24発明の流動層には,ガス化によって生成されたチャーを微粒子とする作用機能はなく,したがって,乙24発明と乙1発明の流動層の作用機能とは共通するものではない。
(エ) 組合せの阻害事由について 乙第24号証には,可燃ガスが生成されることが記載されてはいるが,熱源として利用し得るチャーが生成されることは記載されていない。また,乙24発明では炉外に飛散するチャーは例外的なものであって,乙1発明のサイクロン燃焼炉で熱源として利用できるものではない。しかも,その例外的に飛散したチャーもサイクロンにより捕集して戻してガス化するものである。
したがって,乙第24号証の技術的事項を乙1発明に適用する阻害事由がある。
エ 乙25発明と乙1発明との組合せについて 次のとおり,乙25発明は,乙1発明と技術分野,課題,作用機能を異にしており,両者を組み合わせることは当業者において容易でなく,組合せの阻害事由がある。
(ア) 技術分野について 乙第25号証には,熱反応装置と記載されてはいるが,熱反応装置による可燃ガスとチャーの生成の記載はなく,実質的には焼却装置を記載している。
したがって,乙25発明は,実質的には,廃棄物を焼却する焼却装置に関する発明であり,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術に関する発明である乙1発明とは技術分野を異にする。
(イ) 課題について 乙25発明は,流動化火床を備えた焼却装置において,火床の好適な循環及び焼却装置の好適な作動を行わせるための空気供給手段の構造の簡略化を図るとともに,火床の深さを大きくすることを課題とするものである。
したがって,乙25発明と,流動層炉で廃棄物を熱分解して可燃ガスとチャーを生成し,生成した可燃ガスとチャーをサイクロン燃焼炉に導入して燃焼させ灰分をスラグ化する乙1発明とは,課題を異にする。
(ウ) 作用機能について 乙25発明の流動化火床は,循環流中で廃棄物を完全に焼却してしまうから,循環流中でガス化してガスとチャーを生成して排出するという作用機能はなく,よって,乙1発明の流動層との作用機能と共通するものではない。
(エ) 組合せの阻害事由について 乙1発明には,前段の流動層に,微粒子化機能を有する循環流を採用することについて阻害事由があるし,また乙1発明の流動層に乙第25号証の流動化火床を採用した場合,可燃ガスとチャーを生成できなくなって,乙1発明を機能させることができない。
そうすると,乙25発明に乙1発明を組み合わせることには阻害事由がある。
オ 乙26発明と乙1発明との組合せについて 次のとおり,乙26発明は,乙1発明と技術分野,課題,作用機能を異にしており,両者を組み合わせることは当業者において容易でないし,また組合せの阻害事由がある。
(ア) 技術分野について 乙26発明は,廃棄物を焼却する焼却炉などの熱反応炉に関するものである。乙第26号証には,熱反応炉と記載されてはいるが,実体は焼却炉である。焼却炉は廃棄物を十分な酸素により完全燃焼させ燃焼排ガスと灰を生成するものである。
これに対して,乙1発明は,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術であって,乙26発明と乙1発明とは,技術分野を異にする。
(イ) 課題について 乙26発明は,流動層炉内の流動媒体の循環流により廃棄物(ごみ)を破砕することにより廃棄物の無破砕投入を可能とすること,廃棄物を拡散させて燃焼させ燃焼効率を向上させること等を課題とする。したがって,乙26発明と,流動層炉で生成したガスとチャーを後段のサイクロン燃焼炉に導入して燃焼し灰分をスラグ化する乙1発明とは,課題を全く異にする。
(ウ) 作用機能について 乙26発明の流動層は,可燃ガスを流動層で燃焼させるものであり,循環流中でガス化してガスとチャーを生成して炉から排出するという作用機能はない。また,乙26発明においては,可燃物の大半が細片化していることが明らかであり,流動媒体の循環流中で可燃物が完全燃焼してしまい,チャーの生成は全くないし,炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成して次段で利用することが示唆されていない。すなわち,乙第26号証は,焼却炉を熱分解炉に転用できることを記載してはいるが,この熱分解炉は単なる例示であって,焼却炉を熱分解炉に転用したときに,いかなる構成及び作用効果になるのかについては全く記載していない。もちろん,循環流中でチャーを生成し,該チャーを該循環流中で微粒子とすることについても,記載してはいない。
したがって,乙1発明の流動層と乙26発明の流動層の作用機能は共通するものではない。
(エ) 阻害事由について 乙1発明には,前段の流動層に,微粒子化機能を有する循環流を採用することについて阻害事由があるし,また乙1発明の流動層に乙26発明の流動層を採用した場合に,可燃ガスとチャーを生成できなくなってしまい,乙1発明が機能しなくなり,組合せの阻害事由がある。
カ 乙27発明と乙1発明との組合せについて 次のとおり,乙27発明は,乙1発明と技術分野及び作用機能を異にしており,両者を組み合わせることは当業者において容易でなく,組合せの阻害事由がある。
(ア) 技術分野について 乙27発明は,燃焼物を焼却する流動燃焼炉に関するものであるところ,流動燃焼炉は燃焼物を十分な酸素により完全燃焼させ燃焼排ガスと灰を生成するものである。
これに対して,乙1発明は,廃棄物を熱分解炉でガス化して,ガスとチャーを生成し,サイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する2段の廃棄物の処理技術であって,乙27発明とは,技術分野を異にする。
(イ) 作用機能について 乙27発明の流動層には,循環流中でガス化してガスとチャーを生成して排出するという作用機能はなく,乙1発明の流動層の作用機能とは共通するものではない。
(ウ) 阻害事由について 乙1発明には,前段の流動層に,微粒子化機能を有する循環流を採用することについて阻害事由があるし,また乙1発明の流動層に乙27発明の流動層を採用した場合,可燃ガスとチャーを生成できなくなってしまい,乙1発明が機能しなくなるから,両者を組み合わせることには阻害事由がある。
(3) 本件発明1Aの進歩性の有無 本件発明1@は乙1発明に乙22発明ないし乙27発明を組み合わせることによって,当業者が容易に想到することができたものではなく,進歩性を有するから,本件発明1@の従属項である本件発明1Aも進歩性を有する。
(4) 本件発明1Bの進歩性の有無 前記(2)と同様に,本件発明1@は進歩性を有するから,本件発明1@の従属項である本件発明1Bも進歩性を有する。
13 争点(13)(本件発明2@及びAに係る特許が無効にされるべきものか否か)について 〔被告の主張〕 (1) 本件発明2@の進歩性の有無 本件発明2@も,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるため,次のとおり,進歩性を欠く。
なお,本件発明2@はいわゆる独立請求項の方式で記載されているが,その実体は,本件発明1Aに不燃物と流動媒体の排出に関する構成要件「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,」(構成要件2F@及びA)を付加したものにすぎず,本件発明1@に従属する請求項として,本件発明1A及びBと同列のものとして理解すべきものである。
ア 乙1発明と本件発明2@の対比 乙1発明と本件発明2@との対比のうち,構成要件2F@及びA以外に係る部分については,前記12〔被告の主張〕(3)のとおりである。構成要件2F@及びAについて,本件発明2@では,「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」ているのに対し,乙第1号証では,これが明記されていない点(以下「相違点3」という。)で異なっている。
イ 相違点3について 相違点3に係る技術的事項は,乙第1号証に明記はされてはいないものの,流動層炉における周知の技術であり,乙第1号証に記載されているも同然の事項である。
乙第1号証においては,炉底部に設けられた二重排出弁22までしか記載されておらず,この二重排出弁22から排出された不燃物と流動媒体をその後どのように処理するかは明記されていない。しかし,流動媒体である砂を出し放しにすることなどは,流動砂が無限に必要になるので考えられず,不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体を流動層に戻していることは,当業者であれば自明の理である。なお,乙第26号証の第1図及び乙第27号証の図2には,不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体を流動層に戻すことが明記されている。さらに,不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体を流動層に戻すことは,本件特許出願前に「ハンドブック」として当業者の間に流布されていた乙第29号証にも明確に記載されているとおりの当業者に極めて周知な技術にすぎない。
この点は,本件第1特許権の孫出願に対する拒絶理由通知(乙32の2)の請求項3の項において,特許庁が,「可燃物をガス化する流動層炉において,該可燃物に含まれる不燃物と該流動媒体を排出する不燃物排出口を備え,該不燃物排出口より排出された該不燃物と該流動媒体とを分別した後に,分別された流動媒体を該流動層炉に戻す事項は周知手段である」と認定していることにも示されている。
したがって,本件発明2@には進歩性がない。
なお,原告が,本件発明2@に新規性又は進歩性が欠如していることに気が付いて,本件発明2Aに係る「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」なる構成要件を加えたため,訂正後の本件発明2@は訂正前の本件発明2Aと実質的に同じものとなった。しかし,この温度条件は,当業者が通常採用する温度条件にすぎず,乙第1号証に記載されているも同然であり,たとえこの訂正が加えられたとしても,なお本件発明2@には進歩性がない。
(2) 本件発明2Aの進歩性の有無 本件発明2Aは,前記(1)と同様に,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるため,進歩性を欠く。
ア 本件発明2Aと乙1発明の対比 本件発明2Aでは,「前記流動層炉は,流動層温度を450℃〜650℃に維持され」(構成要件2DA)ているのに対し,乙1発明では,流動層の温度条件が明記されていない点(以下「相違点4」という。)で一応相違する。
イ 相違点4について 相違点4の流動層の温度条件は,ガス化溶融しようとする当業者が通常採用する温度条件にすぎず(乙2,28,30及び31等),乙第1号証に記載されているのと同然である。
そうすると,本件発明2Aも,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであるため,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 (1) 本件発明2@の進歩性の有無 本件発明2@は乙1発明に乙22発明等を組み合わせることによって,当業者が容易に想到することができたものではない。
(2) 本件発明2Aの進歩性の有無 本件発明2Aは乙1発明に乙22発明等を組み合わせることによって,当業者が容易に想到することができたものではない。
まず,相違点4における「前記流動層炉」とは,流動層炉内に流動媒体の循環流が形成され,循環流中でガス化してガスとチャーが生成され,チャーが微粒子とされる流動層炉なのに対して,温度条件が開示されていると被告が主張している乙第2号証,乙第28号証,乙第30号証の流動層炉は,いずれも,このような流動層炉ではなく,かかる構成要件が開示されているとはいえない。
しかも,被告は,乙1発明に被告が主張する温度条件を組み合わせることの阻害事由を看過しており,明らかに失当である。すなわち,乙1発明の流動層温度を被告が主張するような低温度とすると,流動層にチャーが堆積する問題が拡大し,乙1発明が機能しなくなるので,阻害事由があるといえる。
本件第1特許権は,乙第30号証に基づく取消理由を克服して維持されたものである。
14 争点(14)(本件発明3に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について 〔被告の主張〕 本件発明3は,次のとおり,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
(1) 本件発明3と乙1発明との対比 本件発明3と乙1発明との相違点は次の2点であり,その余の点は一致する。
ア 相違点5 本件発明3では,「該流動層炉は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段を備え,該流動化ガスを炉内に供給して該炉内に流動媒体の循環流を形成し」ているのに対し(構成要件3B@ないしB),乙1発明にはこのような構成がない点 イ 相違点6 本件発明3では,「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」ているのに対し(構成要件3F@),乙1発明にはこのような構成が明記されていない点 (2) 進歩性の有無 前記(1)の相違点5は,前記12〔被告の主張〕(4)の本件発明1Bに関する相違点1’’と実質的に同一の相違点であり,相違点6も,前記13〔被告の主張〕(1)の本件発明2@に関する相違点3と実質的に同一の相違点である。
本件発明3における相違点5及び6も,乙第22ないし第27号証に明記された周知技術にすぎず,乙1発明にこれらの構成を付加することは,当業者にとって容易である。
そうすると,当業者において,乙1発明に乙22ないし乙27発明を組み合わせることで,容易に本件発明3に想到することができる。
〔原告の主張〕 乙22発明等は,乙1発明と組み合わせる引用例としては適格性を欠くものであり,両者を組み合わせる阻害事由がある。したがって,本件発明3は進歩性を欠如していない。
また,相違点5は,被告も自認するように,本件発明1Bに関する相違点1’’と実質的に同一の相違点であり,同相違点は解消されない。
しかも,被告は,本件発明3の構成要件3BAを失念して,相違点として検討していない。しかし,かかる相違点は,廃棄物のガス化熔融において特有の作用により多大な効果を奏するものであり,しかも,ガス化炉におけるこのような構成は,被告が主張する公知例のどれにも記載されていない。
すなわち,本件発明3においては,構成要件3BAにより,流動化ガスの質量速度が比較的小さい領域の空気量は比較的少なくなり,流動化ガスの質量速度が比較的大きな領域の空気量は比較的多くなる。流動層炉内に投入された廃棄物は,流動化ガスの質量速度が比較的小さく空気量の比較的少ない領域において流動媒体により加熱され,ガス化して可燃ガスとチャーを生成し,空気量が比較的少ないため,可燃ガスは,余り燃焼されないで後段の熔融炉に供給される。生成したチャーは,流動媒体とともに循環し,流動化ガスの質量速度が比較的大きく空気量の比較的多い流動層に送られ,部分酸化されて,質量速度が比較的大きい流動化ガスにより活発に流動化している流動層を上昇し,表層でフリーボードに飛散しガスに同伴されて次段の熔融炉に供給される。したがって,流動層炉で発生した可燃ガスは,流動層炉で余り燃焼されないで熔融炉において熱源(燃料)として利用され,一方,流動層炉で発生したチャーは,流動層炉及び熔融炉の双方において熱源(燃料)として利用することができる。
すなわち,かかる構成は,前述のチャー堆積の問題を解決するとともに,可燃分を熔融炉で有効に利用することを可能にしている。
さらに,本件発明3における構成要件3BA及びB,3C並びに3Dは,それらが有機的に作用して,流動層ガス化熔融のガス化炉におけるチャー堆積の問題を解決するとともに,チャーをガス化炉の熱源及び熔融炉の熱源として利用させることを可能にし,ガス化熔融の技術分野において,多大な効果(甲2の2の【0059】ないし【0062】)を奏するものである。
したがって,かかる相違点だけでも,本件発明3の進歩性は充分に基礎付けられるものである。
15 争点(15)(本件発明4@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について 〔被告の主張〕 (1) 本件発明4@の新規性及び進歩性の有無 本件発明4@は,次のとおり,乙1発明と実質的に同一であり新規性がない。
ア 本件発明4@と乙1発明の対比 乙第1号証には,前記12〔被告の主張〕(1)アのとおりの記載があるところ,本件発明4@と乙1発明とを対比すると,次のとおりの相違点があり,その余の点は一致する。
なお,本件発明4@では,「抑制された燃焼反応が継続されるようにし」(構成要件4E)とあるが,これは乙1発明の特許明細書5欄4行等の「部分燃焼」と同義であると解されるので,一致点である。
すなわち,流動層式熱分解炉では,吹き込む空気量を少なくすることで,「部分燃焼」を生じさせ,「部分燃焼」による熱のみを供給して流動層の温度を低く維持することで,「部分燃焼」がゆっくり進行(継続)するようにしているのであって,この動作は,廃棄物等のガス化を十分に行うための,熱分解炉としての必須の構成である。そうすると,乙1発明にいう「部分燃焼」とは,完全燃焼の場合に比して空気量が少ない状態での燃焼状態をいう。他方,本件発明4@の流動層の温度を450℃ないし650℃に維持することは,「抑制された燃焼反応」の継続のための手段であり,換言すると,「抑制された燃焼反応」自体は温度条件とは無関係に発生している現象であって,上記温度維持の結果である。したがって,熱分解炉において,温度条件とは無関係に発生し,流動層の温度を低温に維持することで継続される状態が「部分燃焼」であるから,「抑制された燃焼反応」と「部分燃焼」とは同義である。
(ア) 相違点7 本件発明4@では,「炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」(構成要件4B@)ているのに対し,乙1発明では,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層とする流動層炉を形成し,」(前記12〔被告の主張〕(1)アの構成(イ)参照)ている点 (イ) 相違点8 本件発明4@では,「流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し」ている(構成要件4DA)のに対し,乙1発明ではこのような温度条件について明記されていない点 イ 新規性の有無 (ア) 相違点7について 乙1発明における流動層熱分解炉とは,下部の分散板6から流動層炉内に空気を供給して,流動媒体である砂を流動化し,これをかき混ぜる状態にするものであり,不規則ではあるが,大きくいえば,下部や中部にあった流動媒体が上部に上がり,上部にあった流動媒体が下部や中部に下がる運動が生じていることは自明である。このことは,前記12〔被告の主張〕(1)ウのとおり,流動層である限り必然的に発生する周知な物理現象である。
したがって,相違点7は,乙第1号証に記載されていると同視できる事項であり,相違点とはいえない。
(イ) 相違点8について 前記13〔被告の主張〕(2)の相違点4と同様に,流動層の温度条件は,乙第1号証には明記されてはいないが,例えば,本件出願前に原告により公表された多数の公知技術(乙28,30等)に記載されているとおり,都市ごみ等の被燃焼対象物のガス化温度に依存する周知の温度領域であり当業者が通常採用する温度条件にすぎず,乙第1号証に記載されているのも同然である。
そうすると,相違点8も,乙第1号証に記載されているのと同視できる事項であり,相違点とはいえない。
(ウ) よって,本件発明4@は乙1発明と実質的に同一であり,新規性がない。
進歩性の有無 本件発明4@にたとえ新規性があるとしても,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性がない。
(2) 本件発明4Aの進歩性の有無 本件発明4Aは,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
ア 本件発明4Aと乙1発明の対比 本件発明4Aの「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること」(構成要件4BA)に関し,乙1発明ではこのような付加的限定がない点(以下「相違点9」という。)で相違している。
進歩性の有無 相違点9については,前記12〔被告の主張〕(4)の相違点1’’と実質的に同一であり,相違点9にかかる技術的事項も,流動層炉における周知の技術であり,例えば,乙第22ないし第27号証に明記されている。本件発明4Aも乙1発明にこれらの乙号証の発明等を組み合わせることで,当業者が容易に想到することができた程度の発明にすぎない。
そうすると,本件発明4Aは進歩性を欠く。
(3) 本件発明4Bの進歩性の有無 本件発明4Bも,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
すなわち,本件発明4Bの「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること」(構成要件4BB)に関し,乙第1号証では「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。」(5欄6行ないし8行)とあり,流動化ガスとして空気を使用する点が明示されているから,構成要件4BBは,乙1発明との相違点ではない。
そうすると,前記(1)及び(2)のとおり,本件発明4Bは,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 (1) 本件発明4@の新規性及び進歩性の有無 ア 新規性の有無 本件発明4@の「抑制された燃焼反応」(以下「相違点10」という。)は,乙第1号証に記載された部分燃焼とは異なるのであり,被告の主張は相違点を明らかに看過したものである。すなわち,「抑制された燃焼反応が継続される」とは,燃焼速度と燃焼量を制止,抑制することを意味し,単に「部分燃焼」することだけでなく,緩慢で安定した熱分解,ガス化が行われることをも併有することが必要である。
被告は,相違点7が,乙第3号証の教科書的な記載が実機である乙第1号証に妥当するという前提に立って,実質的な相違点はないと主張するが,かかる前提自体が,失当である。また,相違点8及び10に関しては,被告の主張は,本件発明4@の技術的意義を全く考慮しておらず,誤りである。
乙第1号証にも記載されているように,ガス化は,供給された原料の一部を燃焼し,この時発生する熱を用いて原料の残部を熱分解する(乙1の5欄3行ないし5行)。ここで,原料は乾燥され熱分解されるので,燃焼熱は乾燥(水分蒸発)と熱分解を行わせ流動層の温度を維持するために必要な熱量である。「熱分解に必要な発熱量」とはこのような熱量であり,「少量の空気を供給すればよい」とは,原料中の可燃分をすべて燃焼させる完全燃焼に比べ空気量が少ないことを意味するにすぎない。
「抑制された燃焼反応」とは燃焼においてその燃焼量と燃焼速度を抑制することを意味している。本件発明4@では,「抑制された燃焼反応」により,流動媒体が上昇する流動層中で,ガス化により生成されたチャーを,低温度で限られた量の酸素と接触させて,必要最小限の量のチャーを燃焼させる。残部のチャーは後段の熔融炉に速やかに供給され,熱源(燃料)として有効利用される。本件発明4@では,熱分解温度を450℃ないし650℃としてチャーを多量に生成しても,流動媒体が上昇する流動層中で必要最小限の量のチャーを燃焼し,残部のチャーを後段の熔融溶融炉に速やかに供給することができるため,流動層温度を低温度とし燃焼速度を抑制するとともに,温度維持に必要な熱量(燃焼量に相当する。)を最小限とすることができる。
これに対し,乙第1号証では,流動層温度の記載はなく,燃焼速度を抑制した「抑制された燃焼反応」を行わせていることは記載されていない。流動層温度を低温度とすると,流動層にチャーが堆積する問題を生じるため,流動層温度を下げることにも限度があり,流動層温度維持に必要な熱量(燃焼量)を抑制することができない。また,乙第1号証の熱分解炉では,流動層全体が活発な流動化状態にあるので,廃棄物は層上で部分燃焼しがちとなる。このため,燃焼熱は流動媒体に伝わりにくく,流動層の温度維持(熱分解反応の維持)に必要な燃焼量を抑制することもできない。
乙第1号証には,燃焼においてその燃焼量と燃焼速度を抑制する「抑制された燃焼反応を継続させる」ことは記載されていない。
進歩性の有無 本件発明4@は,流動媒体が上昇する流動層の温度を低温度(450℃ないし650℃)に維持するという構成と,抑制された燃焼反応が継続されるようにするという構成とが有機的に組み合わさってチャーの燃焼速度と燃焼量を抑え,流動層において必要最小限の量のチャーを燃焼させることにより,熔融炉で熔融する対象である灰分と一体となったチャーを,できるだけ多量に可燃ガスとともに次段の熔融炉に送り熱源(燃料)として利用して高温燃焼を行わせ,灰分をスラグとするものである。
被告の主張する公知例は,すべて流動層炉の温度のみを記載しているだけであって,流動媒体の循環流の構成を開示するものではない。相違点8は,流動媒体の循環流の構成を前提にして,その「流動媒体が上昇する流動層の温度」を「450℃〜650℃に維持し」という構成を開示するものであり,そうすると,被告の指摘する公知例には,相違点8も記載されていない。
しかも,乙1発明の流動層温度を被告が主張するような低温度とすると,流動層にチャーが堆積する問題が拡大し,乙1発明が機能しなくなるので,阻害事由がある。
したがって,乙1発明と乙22発明ないし被告が公知技術と主張する各引用例との組合せでは,本件発明4@の進歩性は失われない。
(2) 本件発明4Aの進歩性の有無 本件発明1Bの場合と同様に,相違点1’’と実質的に同一の,乙1発明との相違点は,出願前に頒布された公知文献の存在によっても解消されない。
乙第22号証等は,乙1発明と組み合わせる引用例としては適格性を欠くものであり,両者を組み合わせる阻害事由がある。
さらに,本件発明4Aは,本件発明4@の従属項であるから,本件発明4@が進歩性を有する以上,本件発明4Aが進歩性を有することは明らかである。
(3) 本件発明4Bの進歩性の有無 構成要件4BBは,循環流を意図的に形成するための手段としての流動化ガスを空気とするものであり,乙1発明には,意図的に形成された循環流が存在しておらず,したがって,これを形成する手段としての流動化ガスを空気とする構成は開示されていない。
被告が請求した無効審判事件においては,被告は,乙1発明との相違点として,上記構成要件4BBを挙げており(乙39の50頁),乙第1号証に記載されているという主張が成り立つ余地はない。
しかも,流動化ガスを空気とする点に関して進歩性を有するものである。
さらに,本件発明4Bは,本件発明4@の従属項であるから,本件発明4@が進歩性を有する以上,本件発明4Bが進歩性を有することは明らかである。
16 争点(16)(本件発明5に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について 〔被告の主張〕 本件発明5は,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
すなわち,本件発明5は,独立請求項の形式で記載されているが,その構成は,本件発明4@ないしBをまとめたものにすぎない。
本件発明4@と本件発明5の構成を比較すると,後者が構成要件5B@及びAを有する点で相違しているが,構成要件5B@は本件発明4Bの構成要件4BBに実質的に同一であり,構成要件5BAは本件発明4Aの構成要件4BAと実質的に同一である。
したがって,本件発明5は,前記15〔被告の主張〕(1)ないし(3)のとおり,当業者が乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 本件発明5についても,本件発明4@ないしBにおけるのと同様の主張が妥当する。
本件発明5は,質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃ないし650℃に維持することにより,流動化ガスの質量速度が比較的大きく空気量の比較的多い領域であるにもかかわらず,燃焼速度を遅くし,ガス化によって生成されたチャーをゆるやかに燃焼させ,さらに,抑制された燃焼反応を継続させることによりチャーの燃焼量を抑えるものである。これにより,流動化ガスの質量速度が比較的大きく空気量の比較的多い領域であるにもかかわらず,必要最小限の量のチャーを燃焼させて,できるだけ多量のチャーを可燃ガスとともに次段の熔融炉に送り熱源(燃料)として利用するものである。
また,「質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を450℃〜650℃に維持し」という構成も被告の指摘する公知例(乙28及び乙30等)には記載されていない。
したがって,乙1発明と乙22発明等ないし被告が周知技術と主張する各引用例との組合せでは,本件発明5の進歩性は失われない。
17 争点(17)(本件発明6@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について 〔被告の主張〕 (1) 本件発明6@の新規性及び進歩性の有無 ア 本件発明6@と乙1発明の対比 本件発明6@は独立請求項の形式で記載されているが,ほとんど本件発明4@と同様であり,本件発明4@と相違する点は,本件発明4@において「抑制された燃焼反応が継続されるようにし」(構成要件4E)という構成要件があるのに対して本件発明6@ではこの構成要件がない点と,本件発明6@において「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」(構成要件6E)という構成要件があるのに対して本件発明4@ではこの構成要件がない点であり,その他は実質的に同一である。
そのため,本件発明6@と乙1発明の一致点及び相違点は,前記15〔被告の主張〕(1)における一致点及び相違点に関する部分に加えて,本件発明6@において「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」(構成要件6E)という構成要件があるのに対し,乙1発明ではそのような構成が明示されていない点(以下「相違点11」という。)となる。
新規性の有無 乙1発明においても,何らかの循環流は生じており,その中でチャーが形成されていることは自明である。
また,乙第1号証には,「熱分解過程を流動層により行い,熱分解の生成ガス中に含まれるチャー及び灰分が微細粒子となる」(3欄32行ないし34行)と記載されている。そうであれば,乙1発明においても,「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」られていることは自明であり,相違点11は,乙第1号証に記載されているのと同視できる事項であり,相違点とはいえない。
したがって,本件発明6@は,前記15〔被告の主張〕(1)イのとおり,乙1発明と実質的に同一であって,新規性がない。
進歩性の有無 本件発明6@にたとえ新規性があるとしても,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く。
(2) 本件発明6Aの進歩性の有無 本件発明6Aも,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであり,本件発明6Aも進歩性を欠く。
ア 本件発明6Aと乙1発明の対比 本件発明6Aは,本件発明6@と構成要件「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること」(構成要件6BA)を除いてその構成要件が同一であるから,本件発明6@の相違点にかかる事情は同じである。
進歩性の有無 本件発明6Aの構成要件6BAは,前記15〔被告の主張〕(2)と同様に,乙第22号証等に記載された当業者の周知技術であり,乙1発明にこれらの構成を付加することは,当業者にとって容易である。
そうすると,本件発明6Aは,当業者において乙1発明に乙22発明等を組み合わせることで容易に想到することができるものであって,進歩性を欠く。
(3) 本件発明6Bの進歩性の有無 本件発明6Bも,乙1発明に乙第22号証の発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができた発明であり,進歩性を欠く。
ア 本件発明6Bと乙1発明の対比 構成要件6BB「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること」については本件発明4Bの構成要件4BBと同様であるが,乙第1号証では「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。」(5欄6行ないし8行)とあり,流動化ガスとして空気を使用する点が明記されている。
したがって,本件発明6Bの構成要件6BBは乙1発明との一致点である。
進歩性の有無 本件発明6Bも本件発明6@又はAと同様の理由(前記(1)及び(2))により,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 (1) 本件発明6@の新規性及び進歩性の有無 ア 新規性の有無 本件発明4@におけるのと概ね同様である。
乙第1号証には,本件発明6@における「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ,」の構成(構成要件6E)は記載されていない。
進歩性の有無 本件発明6@は,流動媒体が上昇する流動層の温度を低温度(450℃ないし650℃)に維持するという構成と,生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させるという構成とが有機的に組み合わさって,チャーの燃焼速度と燃焼量を抑え,熔融炉で熔融する対象である灰分と一体となったチャーを,できるだけ多量に可燃ガスとともに次段の熔融炉に送り熱源(燃料)として利用して高温燃焼を行わせ,灰分をスラグとするものである。
「流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し」という相違点11も被告の指摘する乙第22号証等の公知例には記載されていない。
したがって,乙1発明と乙22発明等ないし被告が周知技術と主張する各引用例との組合せでは,本件発明6@の進歩性は失われない。
(2) 本件発明6Aの進歩性の有無 本件発明4Aにおける主張と同様である。
さらに,本件発明6Aは,本件発明6@の従属項であるから,後者が進歩性を有する以上,前者も進歩性を有することは明らかである。
(3) 本件発明6Bの進歩性の有無 本件発明4Bにおける主張と同様である。
さらに,本件発明6Bは,本件発明6@の従属項であるから,後者が進歩性を有する以上,前者も進歩性を有することは明らかである。
18 争点(18)(本件発明7に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について 〔被告の主張〕 本件発明7も,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができた発明であり,進歩性を欠く。
本件発明7と本件発明5を比較すると,後者には構成要件5Eがあるが,前者には同構成要件がない。また,前者には構成要件7Eがあるが,後者には同構成要件がない。その余の点は両者で実質的に同一であるので,本件発明7と乙1発明との対比は,基本的に,本件発明5と乙1発明との対比と同様である。
本件発明7で付加されている構成要件7Eは本件発明6@の構成要件6Eと実質的に同一であるが,本件発明6@と同様に,乙第1号証に記載されていると同視できる事項であるか,仮に相違点であると仮定しても,乙第22号証等で生じている周知の物理現象にすぎない。
したがって,本件発明7は,当業者において,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることで容易に想到することができるものであって,進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 乙第1号証には,本件発明7における「生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させ」の構成(構成要件7E)は記載されていない。
本件発明7は,質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層の温度を低温度(450℃ないし650℃)に維持するという構成と,生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させるという構成とが有機的に組み合わさって,熔融炉で熔融する対象である灰分と一体となったチャーを,できるだけ多量に可燃ガスとともに次段の熔融炉に送り熱源(燃料)として利用して高温燃焼を行わせ,灰分をスラグとするものである。
また,構成要件7DAも被告の指摘する公知例(乙28,30等)には記載されていない。
したがって,乙1発明と乙22発明等ないし被告が公知技術と主張する各引用例との組合せでは,本件発明7の進歩性は失われない。
19 争点(19)(本件発明8に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について 〔被告の主張〕 本件発明8も,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができた発明であり,進歩性を欠く。
本件発明8は,本件発明4@ないしB,5,6@ないしB又は7と構成要件「前記熔融炉は,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えたこと」(構成要件8F)を除いて同じであることから,相違点にかかる事情は同じである。
本件発明8の構成要件8Fに関し,乙第1号証には,溶融炉に空気を供給するノズルを備えること,及び高負荷燃焼を行なうことにより灰分を溶融させ得ることが記載されている。なお,空気等の気体を容器等に供給する場合に,ノズルを使用することは極めて当然で,技術常識以前の問題である。
高負荷燃焼を行なうために,酸素又は酸素と空気の混合気体を使用することは,当業者の周知技術であり(乙54ないし58),構成要件8Fは,乙第1号証に記載されているに等しい事項である。
そうすると,本件発明8も,乙1発明に乙22発明等を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができた発明であり,本件発明8は進歩性を欠く。
〔原告の主張〕 乙第1号証には,「溶融炉に空気を供給するノズルを備えること」旨の記載は全くなく,まして,「酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズル」は,開示されていない。
高負荷燃焼を行なうために,酸素又は酸素と空気の混合気体を使用することは周知技術とはいえない。すなわち,そもそも構成要件8Fは,単に溶融炉における高負荷燃焼を行わせるための構成ではなく,廃棄物のガス化溶融処理において,廃棄物の発熱量が低くなる場合においても別途の燃料を付加することなしに灰分を溶融させてスラグとすることを可能にするという顕著な効果を奏するものであり,従来は必要とされていた廃棄物の予備脱水や予備乾燥といった前処理を不要とするものである。したがって,構成要件8Fは,高負荷燃焼を行うための周知技術ではなく,被告の主張が成り立つ余地はなく,進歩性を有することは明らかである。
当裁判所の判断
1 争点(1)(本件各発明における「循環流」の解釈)について (1) 本件発明1における「循環流」の解釈 ア 特許請求の範囲の記載 本件発明1@ないしBの特許請求の範囲には,「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,」と記載されている(構成要件1A及び1B@)。
発明の詳細な説明の記載 本件明細書1の【発明の詳細な説明】のうち,【実施例】以外の部分には,「循環流」に関して,次のとおりの記載がある(甲1の2)。
(ア) 【従来の技術】(25頁4行ないし49行) 「【0002】近年,多量に発生する都市ごみ,廃プラスチック等の廃棄物を焼却し減量化すること,及びその焼却熱を有効利用することが望まれている。廃棄物の焼却灰は,通常,有害な重金属を含むので,焼却灰を埋め立てにより処理するためには,重金属成分を固化処理する等の対策が必要である。これらの課題に対応するため,特公昭62-35004号公報の固形物の燃焼方法及びその装置が提案された。この公報の燃焼方法においては,固形物原料が流動層熱分解炉において熱分解され,熱分解生成物,即ち,可燃ガス及び粒子,がサイクロン燃焼炉に導入される。サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分が高負荷燃焼され,旋回流により灰分が壁面に衝突し溶けて壁面を流下し,熔融スラグとなって排出口から水室へ落下し固化される。
【0003】特公昭62-35004号公報の方法においては,流動層全体が活発な流動化状態であるため,生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応可燃分が多いため,高いガス化効率が得られない等の短所があった。また,従来,流動層炉が使用できるガス化原料としては,石炭等の場合は,粒径0.5〜3mmの粉炭,廃棄物の場合は,数十mmの細破砕物とされてきた。これより大きいと流動化を阻害するし,これより小さいと完全にガス化されないまま未反応可燃分として生成ガスに同伴して炉外へ飛散してしまう。従って,これまでの流動層炉では,ガス化原料を炉に投入する前の前処理として,予め粉砕機等を用いて破砕・整粒することが不可欠であり,所定の粒径範囲に入らないガス化原料は,利用できず,歩留まりをある程度犠牲にせざるをえなかった。」 「【0004】上記の問題を解決するため,特開平2-147692号公報の流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉が提案された。この公報の流動層ガス化方法においては,炉の水平断面が矩形にされ,炉底中央部から炉内へ上向きに噴出される流動化ガスの質量速度が,炉底の2つの側縁部から供給される流動化ガスの質量速度より小さくされ,炉底側縁部の上方で流動化ガスの上向き流が炉中央部へ転向され,炉中央部に流動媒体が沈降する移動層が形成され,炉の両側縁部に流動媒体が活発に流動化する流動層が形成され,移動層に可燃物が供給される。
(中略)流動媒体は,珪砂である。
【0005】しかしながら,この特開平2-147692号公報の方法は,次の短所を有する。即ち,(1)移動層及び流動層の全体において,ガス化吸熱反応と燃焼反応が同時に生じ,ガス化し易い揮発分がガス化すると同時に燃焼され,ガス化困難な固定炭素(チャー)やタール分等は,未反応物として生成ガスに同伴して炉外へ飛散し,高いガス化効率が得られない。(2)生成ガスを燃焼させ蒸気及びガスタービン複合発電プラントに使用する場合,流動層炉を加圧型とすることが必要であるが,炉の水平断面が矩形のため,加圧型とすることが困難である。」 「【0007】しかしながら,現在の焼却システムは,次の問題を含んでいる。即ち,@HClによる腐食の問題があり,発電効率を高くできない。AHCl,NOx,SOx,水銀,ダイオキシン等に対する公害防止設備が複雑化してコスト及びスペースが増大している。B法規制の強化,最終処分場の用地難等により,焼却灰の熔融設備の設置が増大しているが,そのため別設備の建設が必要であり,また電力等を多量に消費している。Cダイオキシンを除去するには,高価な設備が必要である。D有価金属の回収が困難である。」 (イ) 【発明が解決しようとする課題】(25頁50行ないし26頁9行) 「【0008】本発明の目的は,従来技術の前記の問題点を解消することにあり,都市ごみ,廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成し,生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を熔融することができる処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置を提供することにある。本発明においては,熔融炉へ供給される生成ガスは,自己熱量により1300°C以上の高温を発生するような充分な熱量を持ち,チャー,タールを含む均質なガスであるようにされ,またガス化装置から不燃物の排出が支障なく行われるようにされる。本発明の別の目的は,廃棄物中の有価金属を還元雰囲気の流動層炉内から酸化しない状態で取出し回収できるガス化方法及び装置を提供することにある。本発明の更に別の目的は,図面を参照する実施例の説明において明らかにされる。」 (ウ) 【課題を解決するための手段】(26頁10行ないし27頁24行) 「【0009】上述の目的を達成するため,本発明の廃棄物の処理方法の1態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,炉内を450℃〜650℃に維持し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
(中略) 前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に,前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは,ともに空気である。
(中略) 更に,前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は,廃棄物をガス化する流動層炉と,該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において,前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え,該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し,炉内を450℃〜650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え,該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
(中略) 前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
(中略) 本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また,前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は,廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において,流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し,該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり,該廃棄物を該流動層炉に供給し,該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし,該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し,該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
(中略) 本発明においては,可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において,流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ,流動層炉へ供給される流動化ガスが,炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り,中央流動化ガスの質量速度が,周辺流動化ガスの質量速度より小にされ,炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され,それによって,炉の中央部に流動媒体(一般的には,硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され,炉内へ供給される可燃物が,移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ,流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され,(以下略)。」 (エ) 【作用】(30頁27行ないし30行及び41行ないし45行) 「【0020】本発明のガス化装置は,流動層炉の循環流により熱が拡散されるので,高負荷とすることができ,炉を小型にすることができる。」 「【0021】本発明においては,流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が,周辺流動化ガスの質量速度より小にされ,炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され,それによって,流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に,炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。」 (オ) 【発明の効果】(35頁43行ないし36頁3行) 「【0056】本発明のガス化装置は,流動層炉の循環流により熱が拡散されるので,高負荷とすることができ,炉を小型にすることができる。」 「【0058】本発明においては,流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。」 ウ 「流動媒体の循環流」の意味 前記イ(イ)のとおり,本件発明1@ないしBの解決すべき課題は,都市ごみ,廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成すること等にあり,また前記イ(エ)及び(オ)のとおり,その効果は,高負荷で小型の炉の実現やより大きな不燃物の排出の容易化にある。
前記アの特許請求の範囲の記載によれば,「流動媒体の循環流」は,「形成し」の対象であるから,単なる自然発生的なもの,すなわち,流動層において必然的に発生する物理現象とは異なり,意図的に形成されるものを意味するものと解される。そして,「循環流」とは,文字どおり,循環する流れを意味するものである。これによれば,「流動媒体の循環流」とは,意図的に形成された流動媒体の循環する流れを意味するものと解される。
また,発明の詳細な説明には,前記イ(ウ)のとおり,課題を解決する手段として,「前記流動媒体の循環流は,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。」との記載があり,前記イ(エ)のとおり,作用として,「流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が,周辺流動化ガスの質量速度より小にされ,」との記載があることを併せ考えれば,「流動媒体の循環流」とは,流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付け,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成された流動媒体の循環する流れをいうものと解される。
エ 小括 以上のとおり,本件発明1@ないしBにおける「流動媒体の循環流」とは,流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れを意味するものと解釈すべきである。
(2) 本件発明2ないし8における「流動媒体の循環流」の解釈 本件発明2@に係る請求項19及び本件発明2Aに係る請求項21は,本件発明1@に係る請求項16と同一の特許明細書に記載されているもので,同一の文言は同一の意味に解釈すべきであるから,本件発明2@及びAの構成要件2B@にいう「流動媒体の循環流」も,同様に,前記のとおり解釈すべきである。本件第2特許権は本件第1特許権から,本件第3特許権は本件第2特許権からそれぞれ分割出願されたものであり,本件明細書2及び3にも前記(1)イと同趣旨の記載があって,本件発明3ないし8にいう「流動媒体の循環流」の意味を構成要件1B@にいう「流動媒体の循環流」の意味と別異に解すべき事情はないから,これらはいずれも同一の意味に解釈すべきである。
したがって,本件発明2ないし8における「流動媒体の循環流」とは,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付け,質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成された流動媒体の循環する流れを意味し,流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なるものと解釈すべきである。
2 争点(2)(被告製品の構成)について (1) 原告は,「砂層4では,中央部において上昇する砂と周辺部で下降する砂からなる循環流αが生じている。」旨主張する(構成b)。
ア 原告の立証 原告が上記主張の根拠として提出した書証には,以下のような記載がある。
(ア) 環境技術Vol.28No.12の河端博昭(神戸製鋼所従業員)執筆に係る論文「特集・次世代型ごみ焼却技術『ガス化溶融炉』 流動床方式ガス化溶融炉の特徴」(平成11年12月発行。甲10) a 884頁の表1「流動床式ガス化溶融炉の実証施設の概要」 各社の流動床式ガス化溶融炉の概要が記載されており,流動床炉の型式(炉形状,分散方式)として,原告及び被告の製品(青森県内に設置されたもの)は「一塔式内部循環型(丸型,分散板式)」に,日立造船の製品は「一塔式内部循環型(角型,散気管式)」に,川崎重工,栗本鐵工・三機工業・東レエンジ・ユニチカ,パブコック日立,日本ガイシ及び月島機械の製品は「一塔式バブリング型」に,三菱重工の製品は「二塔式内部循環型に」,住友重機の製品は「一塔式外部循環型」に分類されている。
b 884頁の図-1「神戸製鋼システムの概要」 熱分解ガス化炉の流動層部において,砂中に中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
c 886頁右欄37行ないし44行及び888頁左欄1行「2.4.3 ガス化炉」 「流動床方式のガス化炉は以下のように,基本的な機構,構成により,多くの方式に分類できる。
1)炉形状 :・丸型 ・角型 2)空気分散方式:・分散板方式 ・散気管方式 ・ノズル方式 3)流動方式 :・内部循環式 ・外部循環式 ・バブリング式 4)炉構成 :・一塔式 ・二塔式」 d 887頁の図-2「神戸製鋼実証施設のフロー」 熱分解ガス化炉の流動層部において,砂中に中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
e 888頁の図-3「各種ガス化炉の構造」 「一塔式内部循環型(丸型,分散板式)」の熱分解ガス化炉の断面構造図では,流動層部において,砂中に中央下部から生じる周辺部から中央部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
f 888頁左欄8行ないし11行 「1)一塔式内部循環炉 構成はシンプルで,流動床方式の基本形といえる。ごみの流動層内への取り込み,攪拌・混合に優れる。」 (イ) 「廃棄物処理技術評価-第19号-流動床式熱分解ガス化溶融技術」(財団法人廃棄物研究財団発行)添付の「技術評価報告書」(申請者神戸製鋼所,件名「流動床式熱分解ガス化溶融技術」)(平成11年8月発行。甲13) a 3頁の図1-1「実証施設のフロー図」 熱分解ガス化炉の流動層の砂中に,中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。なお,この熱分解ガス化炉を含む実証施設は,青森県の中部上北清掃センター内に設置されたものである。
b 5頁11行及び12行「1.5.1 流動床式熱分解ガス化炉」 「鉄分,アルミ分を含む不燃物(熱分解残さ)の排出は,炉床部の傾斜構造と旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われる。」 c 28頁18行ないし20行「3)不燃物排出」 「不燃物の排出は炉床部中央の不燃物排出口より旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われ,実証期間を通じて,不燃物堆積による流動阻害は認められていない。」 d 51頁の図4.6-4「熱分解ガス化溶融設備フロー図」 3頁の図1-1「実証施設のフロー図」(前記a)と同様に,熱分解ガス化炉の流動層の砂中に,中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
(ウ) 「廃棄物の熱分解・ガス化灰溶融システムの開発動向」中の伊藤正(神戸製鋼所都市環境本部環境エンジニアリングセンター開発部開発室課長)執筆に係る記事「第6講 流動床式熱分解〜溶融システムの開発事例」(平成10年4月10日発行。甲17) a 110頁下から4行ないし2行「2.2 システムの特長」の「2.2.1 熱分解炉」 「当社の流動床炉は円筒形,砂層部分はすり鉢構造としており,中心から残渣を抜き出します。砂層中心部の流動化速度を増加させ,外周部の流動化速度を低下させることで,流動化速度の差を設け,砂層中へのごみの取り込みを行ないます。」 b 125頁18行ないし21行「【質疑応答】」 「【質疑5】流動層内部における熱媒体の流動化は,中央部で増加,周辺で低下というような動きをさせているのですか。また,通常のバブリング方式では問題点があるのですか。
【応答5】基本的に均一の流動をさせた場合,軽い物質は層内にもぐりこみにくいので,流動速度差を設ける必要があります。」 (エ) 神戸製鋼技報Vol.51No.2中の神戸製鋼所都市環境エンジニアリングカンパニー開発部の高橋正光,伊藤正及び細田博之並びに同技術開発本部機械研究所の多田俊哉の執筆に係る論文「熱分解ガス化溶融システムの実証」(平成13年9月発行。甲18) a 13頁の第1図「熱分解ガス化溶融システム概要」 熱分解ガス化炉の流動層部において,砂中に中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
b 13頁右欄11行ないし13行「1.2 主要機器の特長」の「1.2.1 流動床式熱分解ガス化炉」 「鉄・アルミなどの金属を含む不燃物の排出は,炉床部のすり鉢状構造と旋回流動にともなう砂の動きにより円滑におこなわれる。」 c 14頁の第2図「実証プラントフロー」 青森県の中部上北清掃センター内の実証施設に係る図である。前記aと同様に,熱分解ガス化炉の流動層部において,砂中に中央下部から生じる中央部から周辺部への流れが1組の円弧状の矢印を用いて表現されている。
(オ) 財団法人廃棄物研究財団発行の「発表企業原稿集」中の薗田雅志及び白石幸弘(神戸製鋼所従業員)執筆に係る論文「流動床式熱分解ガス化溶融技術」(平成13年6月及び7月発行。甲19) 「鉄分,アルミ分を含む不燃物(熱分解残さ)の排出は,炉床部の傾斜構造と旋回流動に伴う砂の動きにより円滑に行われる。」(56頁6行及び7行) (カ) 社団法人日本環境衛生工業会発行「ごみ処理施設ガイドブック 2001」中の神戸製鋼所作成に係る自社技術の紹介記事(平成13年2月発行。甲25) 「多様なごみを処理する流動床炉では,ごみの安定したガス化とごみ中に含まれる不燃物の排出が重要である。神戸製鋼式流動床炉は散気ノズルを耐火物に埋め込んだ分散板形式を採用しており,中央部から周辺部への強力な旋回運動で流動させることにより,ごみの砂中への取込みが行える。この作用により,ごみの乾燥・熱分解ガス化と不燃物の中央抜き出しが行われる。中央部に設けた大型の抜き出し管から砂と不燃物が連続的に排出され,炉内への不燃物の滞留は生じず,安定した運転が可能である。」(49頁右欄下から5行ないし50頁左上欄5行) (キ) 日本廃棄物処理施設技術管理者協議会発行「環境技術会誌2002」No.107中の神戸製鋼所作成に係る自社技術の紹介記事(平成14年3月25日発行。甲26) 「C 確実な不燃物抜出し 砂流動化方式は散気ノズルを耐火物に埋め込んだ分散板形式を採用しており,中央部から周辺部への強力な旋回運動と傾斜分散板により,中央部へ不燃物を確実に集めることができる。中央部に設けた大口径の抜出し管から砂と不燃物が連続的に排出されるため,炉内に不燃物が滞留せず,安定した運転が可能である。」(27頁右欄12行ないし19行) イ 上記書証の評価 (ア) 原告は,前記ア(ア),(イ)及び(エ)の各書証中の円弧状の矢印をもって,被告製品の熱分解ガス化炉の流動層において,中央部において上昇する砂と周辺部で下降する砂からなる意図的に形成された流れがあることの根拠とする(ただし,甲第10号証の888頁の図-3は,周辺部から中央部へと流れる様子が記載されている。)。
しかし,次のとおり,一塔式内部循環型ではなく,バブリング型の流動床式ガス化溶融炉についても,前記アの各図中の円弧状の矢印と同様の矢印(各所における小さな流れを小さな矢印で示し,総体としてみたときに全体の流れを把握することができるものを含む。)が用いられている。
a 流動床式焼却炉メーカーである久保田建設株式会社が設計施工した「朝霞市ごみ処理施設」(昭和63年3月30日竣工)に関するカタログ中の図「ゴミ処理施設フローシート」(昭和63年4月ころ発行。乙14) b 川崎重工業株式会社のカタログ「川崎-流動床式ごみ焼却処理施設」の5頁の流動床式焼却炉の構造図(平成5年11月発行。乙15) c 広島市環境事業局発行の神戸製鋼所が設計及び施工を行った流動床式焼却炉のカタログ「広島市佐伯工場」の3頁及び4頁の図「フローシート」並びに5頁の「流動床式焼却炉構造図」(昭和60年3月ころ発行。乙16) d 社団法人化学工学協会関東支部編集「最近の化学工学:流動層工学」12頁の図5「流動層のモデル」(昭和56年11月5日発行。乙17) e 鞭巌ほか著「流動層の反応工学」の114頁の図5・5(b)「気泡の横方向不均一分布による粒子濃厚相内の循環セルの形成」(昭和59年2月25日発行。乙3) f 「FLUIDIZATION SECOND EDITION」の176頁の図5.1及び177頁の図5.2(昭和60年発行。乙18) g 石川禎昭著「流動床式ごみ焼却炉設計の実務」の7頁の図1.3「流動床式ごみ焼却炉の構造」(昭和62年6月15日発行。乙19) h 河村博編集「月刊廃棄物」中の通産省工業技術院研究開発官室中原東郎執筆に係る「特集/工技院レポート 都市ゴミの熱分解技術」の42頁の図2「熱分解炉の3基本型」のうちの「流動層炉」の図(左上。これは流動層式熱分解炉一般についてのもの。昭和54年2月1日発行。乙20) そうすると,前記アの各図中の円弧状の矢印は,図を見る者が視覚的に理解しやすいように,模式的に矢印を使用して砂の流れを示したに止まるものというべきであり,これをもって,被告製品の流動層炉内の砂層の様子を正確に表現したものと評価することはできない。そして,これらの図をもって,被告製品の流動層炉の砂層4において,必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより流動媒体の循環する流れが作られていることを示すものであるとまではいえない。
(イ) 前記ア(ア)aの表1(甲10)において,神戸製鋼所の従業員の執筆した論文によって原告及び被告の製品が同一の流動床炉のグループ「一塔式内部循環型(丸型,分散板式)」に分類され,かつ同表中に「一塔式バブリング型」が他のグループとして存在する。
しかし,これらのグループの意義や区別の基準は同論文中には記載されていないし,888頁の図-3も各方式のうち代表的な炉構造を示したものにすぎず(同頁左欄2行),バリエーションがあり得ることを予定しているものであるから,このような分類等によって被告製品の流動層炉の砂層4において,必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れがあることを示すものであるとまではいえない。
(ウ) また,原告は,前記ア(イ)b及びc,(エ)b,(オ),(カ)並びに(キ)の各書証中の「旋回流動」又は「旋回運動」という用語が用いられていることをもって,被告製品の流動層炉に「循環流」があることの根拠とする。
しかし,原告が本件明細書1等で用いている「循環流」は,原告の主張によっても,流動層炉の砂層中に意図的に作られた流動媒体の流れを意味し,通常の用語法とは異なるものである。神戸製鋼所の従業員らが原告の上記用語法を意識して上記各用語を用いたことを認めるに足りる証拠はないから,上記各用語が用いられている記載部分があるからといって,被告製品の流動層炉の砂層4において,必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れがあることを示すものであるとまではいえない。
(エ) さらに,前記ア(ウ)の甲第17号証の各記載部分では,砂層の中心部と周辺部とで流動化速度に差を設ける旨が記載されている。
もっとも,甲第17号証において,中心部から周辺部へと向かう流動媒体(砂)の循環する流れができるように速度差を付けているか否かまでは判然としないのであって,これらの記載部分のみから被告製品の流動層炉の砂層4において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れがあると断定することは困難といわざるを得ない。
(オ) B工学博士の見解書等(甲38ないし40)には,原告の主張に沿う記載部分があるが,前記(イ)ないし(エ)の理由により,同各記載部分は信用できない。
ウ 以上のとおり,原告が根拠とする書証の記載部分から,被告製品の流動層炉の「砂層4では,中央部において上昇する砂と周辺部で下降する砂からなる循環流αが生じている」こと(構成b)を認めるに足りない。
(2) 他方,被告は,「砂層4が気泡流動化状態となるように口径の異なる通気口9を分散板3に複数配置して」おり,「砂層4では,図面2(a)〜(c)に示す通り,気泡10の発生,合体そして破裂が随所でランダムに繰り返されており,これによって,流動媒体(砂)は,砂層4で,あたかも沸騰させた水のようにランダムに流動し,気泡流動化状態となる。」旨主張し(構成b’),検乙第1及び第2号証を提出する。
ア 実機を撮影した映像(検乙1)について 検乙第1号証は,神戸製鋼所が納入した被告製品の実際の装置(実機)である,青森県の中部上北清掃センターのガス化炉の運転している様子を,炉の上部から撮影した映像を収録したCD-Rであり,これによれば,炉内の砂層表面の各所で気泡が盛り上がっては破裂を繰り返す様子が認められる。
しかし,これはあくまで砂層の表面の一部を撮影した映像にすぎないし,この気泡の生成及び消滅の態様が,ランダムなものか規則的なものかは極めて相対的であって,同態様が砂層全体で観察したときにどのような砂の流れによるものなのかは明らかでないといわざるを得ない。すなわち,この気泡の態様が,原告のいう,中央部において上昇する砂と周辺部で下降する砂からなる意図的に形成された流動媒体(砂)の循環する流れによるものなのか,被告のいう,あたかも沸騰させた水のようにランダムに流動する気泡流動化状態にある砂の局所的な流れによるものなのかは,判別できない。
イ この点,検乙第1号証における気泡の生成及び消滅の態様につき,被告提出に係る証拠中には,次のとおり,被告の上記主張に沿った記載部分がある。
(ア) 元名古屋大学教授F工学博士の見解書(乙10の1) 「ビデオにおける炉内粒子(砂)の挙動からみて,本流動床式ガス化炉における粒子層の流動状態は,平成7年(1995年)以前から一般に広く知られた従来の気泡(バブリング)流動状態であると,判断致します。荏原製作所の特許第3153091号,第3270447号,第3544953号(中略)の明細書に記載されているような砂の循環,即ち,『流動媒体である砂が,流動層を上昇し,移動層の上方へ流入し,移動層中を下降して移動し,流動層の下方へ流入し,流動層と移動層の中を循環する』ことを特徴とする,いわゆる内部循環型と呼ばれる特殊な流動にはなっておりません。」, 「いわゆる気泡(バブリング)流動式反応炉特有の粒子層全面に亘る気泡の発生と破裂による局所的な粒子の持ち上げと,気泡に入れ替わる粒子の沈み込みを示しております。これは全体として,平成7年(1995年)以前から周知の気泡(バブリング)流動式反応炉において見られる一般的な粒子挙動であります。具体的には,VTR(1)では炉径の1/2-1/4程度のドーム状の膨らみが粒子層表面に随所に数個/秒の頻度で現れ,これが破裂して粒子を吹き上げている様子,吹き上げられた粒子は再び表面に落下している様子が見られました。」, 「したがって,拝見した実機ビデオ画像;VTR(1)(中略)において,気泡は粒子層(砂層)の随所でランダムに発生と破裂を繰り返しており,神鋼環境ソリューション製の流動床式ガス化炉の粒子層は,平成7年(1995年)以前から公知の気泡(バブリング)流動状態になっていると判断できます。」 (イ) 岐阜大学大学院工学研究科教授Gの見解書(乙10の2) 「気泡は砂層表面の各所で盛り上がって破裂しています。(中略)気泡の破裂は砂層の随所で起きており,特定の場所で規則的に破裂するということがなく,1995年以前から広く実施されている従来公知の一般的な気泡(バブリング)流動状態となっています。」 (ウ) 神戸製鋼所アルミ・銅カンパニー技術部基礎研究室室長のH工学博士の見解書(乙10の3) 「荏原製作所の特許第3153091号,第3270447号,第3544953号(中略)の特許公報に記載されているような,上向きの流動層と下向きの移動層の間を砂が循環する規則的な流れを形成している砂層においては,ある特定の大きな気泡の発生と破裂がある一方,その他の部分は,殆ど発生と破裂がないという気泡の偏った動きとなります。」 「青森県中部上北清掃センターの流動床式ガス化炉実機の内部を上方から撮影したビデオでは,気泡は砂層表面の随所でドーム状に盛り上がって破裂して,砂を砂層表面に散布しています。(中略)気泡の破裂は砂層の随所でランダムに起きており,炉中央部もしくは炉周辺部の特定の場所で規則的に破裂するということは認められません。したがって,この実機ビデオにおいても,砂層は平成7年(1995年)以前から広く実施されている従来公知の気泡(バブリング)流動状態であると判断されます。」 (エ) 大阪大学大学院工学研究科機械物理工学エネルギー工学講座燃焼工学領域教授I工学博士の見解書(乙48) 「気泡が砂層表面の各所で盛り上がっては破裂して砂を散布することが,ランダムに繰り返されています。(中略)気泡の破裂は砂層の随所で起きており,特定の偏った場所で規則的に破裂するということがなく,一般的に広く知られた気泡(バブリング)流動状態となっています。」 (オ) 川崎重工業株式会社化学技術研究部電池グループのJの見解書(乙49) 「気泡の破裂は砂層の随所で起きており,特定の場所で規則的に破裂するということがなく,本件特許が出願された1995年以前から広く実施されている従来公知の一般的な気泡(バブリング)流動状態となっています。また,砂層には前記のような砂が気泡によって流動しないで沈降する移動層の区画があるとは認められず,砂層全体が活発に流動しており,本件特許のような流動層と移動層の水平方向に区画分けされておらず,移動層と流動層とを循環する定常的な砂の流れも認められません。」 ウ 他方,同様に,検乙第1号証について,次のとおり,原告提出の各証拠には,原告の上記主張に沿った記載部分がある。
(ア) 独立行政法人産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門クリーン燃料グループ長A工学博士の見解書(甲21) 「ビデオを見る限り,流動層表面の状態から流動化空気が炉床に均等に供給されたものであるか否かを判断することは極めて難しいと考えます。すなわち,流動層高がある高さ以上になると,層内で気泡の合体が進み気泡が大きく成長します。均一に空気を吹き込んでも,あるいは,ある程度空気の吹き込みに分布をつけても,気泡には抵抗の少ない部分を求めつつ上昇する傾向があります。また,流動層表面は上昇・破裂する気泡の動きに攪乱されるため,流動層を上方から見ただけで,空気の炉床への供給状況を推測することは事実上不可能です。(ガスの吹き込み条件などが明示されれば,上方での動きがそれに沿ったものであるか否かはある程度判定出来る可能性はありますが,条件の明示無しには難しいといえます。)気泡の破裂状況を見ていますと,ある時期に真ん中で破裂する気泡が多く見られたり,壁付近で多く破裂したりしています。気泡成長の過程で特定の場所に気泡が集中することは知られていますので,長時間で見ればランダムにも見えますが,数秒から数十秒の周期で偏っているようにも見えます。そのため,神鋼環境ソリューション殿が主張するように,気泡が層表面でランダムに破裂していると言い切るのは少し難しいと言えます。いわゆるランダムなものとは少し違うようです。」 (イ) 群馬大学名誉教授B工学博士の見解書(甲22) 「流動媒体の砂はGeldartのグループB粒子であるため,気泡は合体を繰り返して大きくなる傾向があります。流動層表面は盛り上がり破裂し四散する気泡と砂の動きに乱され,また気泡は抵抗の少ないところを選んで上昇するため,上方から見ただけで流動化空気が炉床に均一に供給されたか否かを判断することは極めて難しいといえます。」 (ウ) 早稲田大学理工学術院教授C工学博士の見解書(甲23) 「一見したところ,流動化はかなり激しいという印象を受けました。
最小流動化速度(Umf)と比べて10倍位もありそうに思われました。しかし,くわえて,流動層上部からの砂層部表面の流動状態の観察は,流動化状態を推定するに当たっては有益ではありますが,砂層内部の流動化状態を断定する材料にはならないことを強調したいと思います。層表面で原料は中央から外側に飛ばされること,周辺部から火炎の多くが生じること,こうした現象が起きる理由については,このビデオだけではよく判りません。炉床に流動化空気が均一に供給されているか否かは,炉床の細部を見ないと判りません。」 (エ) 苫小牧市テクノセンター館長兼道央産業技術振興機構研究開発部長D工学博士の見解書(甲24) 「気泡は層表面全体に出現するものの中心と壁の中間部分で多く発生していること,中心部での気泡通過は比較的少ないこと,周辺部でごみが呑み込まれ火炎が発生すること等が観察されましたが,流動化空気が炉床に均等に供給されたか否かを判断することは極めて困難です。」 エ 前記イ及びウのとおり,検乙第1号証における気泡の生成及び消滅の態様が,ランダムなものか規則的なものか,同態様が砂層全体で観察したときにどのような砂の流れによるものなのかは,複数の専門家の見解が分かれるほどであって,明らかとはいえず,それが原告のいう,中央部において上昇する砂と周辺部で下降する砂からなる意図的に形成された砂の流れによるものか,あるいは被告のいう,あたかも沸騰させた水のようにランダムに流動する気泡流動化状態にある砂の局所的な流れによるものかを,断定することはできない。
オ モデル実験を撮影した映像(検乙2)について 検乙第2号証は,神戸製鋼所が中部上北広域事業組合に納入した,中部上北清掃センターの流動床式ガス化溶融炉をもとに,被告が製作した二次元のコールドモデル実験装置を使用して行ったモデル実験の様子を撮影した映像を収録したCD-ROMである。
検乙第2号証の映像では,砂層全体でランダムに気泡が生成し,破裂していることが認められるところ,F工学博士の見解書(乙10の1)等でも,同趣旨の記載部分がある。しかしながら,上記流動床式ガス化溶融炉の客観的構造や運転の条件が明らかになっていないから,上記各証拠の客観性を担保する証拠がなく,これらは未だ信用するに足りないものといわざるを得ない。
なお,この点につき,神戸製鋼所主任研究員Kの陳述書(乙9)には,中部上北清掃センターの流動床式ガス化溶融炉をもとにモデルを作成した旨の記載部分があり,上記F工学博士の見解書(乙10の1)等にも検乙第1号証の装置と検乙第2号証のモデルが相似である旨の記載部分があるが,これらも未だモデル実験の客観性を担保するものではなく,被告が流動床式ガス化溶融炉の客観的構造や運転条件を明らかにしない状況の下では,これらを採用することはできないといわざるを得ない。
カ 結局,検乙第1号証及び検乙第2号証からは,被告製品の構成のうち,砂層4における流動媒体である砂の流れは明らかにならないといわざるを得ない。
(3) 小括 結局,本件全証拠によっても,被告製品の流動層炉の砂層4における砂(流動媒体)の流れの様子を明らかにすることができない。
したがって,被告製品に,本件各発明における「流動媒体の循環流」,すなわち,流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れがあると認めるに足りない。
3 争点(3)ないし(10)(構成要件の充足性)について 前記1のとおり,本件各発明における「流動媒体の循環流」は,「流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れ」を意味するものであるところ,前記2のとおり,被告製品の流動層炉の砂層4における砂(流動媒体)の流れは不明であって,本件全証拠によっても,この流れが「流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れ」に当たるということはできない。
したがって,被告製品が構成要件1B@,2B@,3BB,4B@,5BA,6B@及び7BAを充足するとはいえず,本件各発明の技術的範囲に属しない。
4 争点(12)(本件発明1@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について (1) 乙1発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日前の遅くとも昭和62年7月30日に頒布された刊行物である特開昭62-35004号公報(乙1)には,以下の内容が記載されている。
ア 特許請求の範囲請求項1 「固形物原料を,流動層熱分解炉において熱分解を行い,熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し,該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ,灰分の分離を行うことを特徴とする固形物の燃焼方法。」(1欄2行ないし6行) イ 1欄18行ないし22行(以下は発明の詳細な説明) 「本発明は,都市ごみ,廃プラスチックなどの固形廃棄物や,スラジなどの液の中に多く含まれている固形有機物や,石炭などの固形燃料,その他の固形物の燃焼方法及びその装置に関するものである。」 ウ 3欄9行ないし13行 「周知のサイクロン燃焼炉は,強力な空気の旋回流によつて能率的な燃焼が可能となるのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分をサイクロン内壁に捕捉溶融せしめて集じん性能を向上させると共に溶融スラグとして取り出せる」 エ 3欄32行ないし43行 「本発明は,熱分解過程を流動層により行い,熱分解の生成ガス中に含まれるチヤー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して,このガスをサイクロン燃焼炉に導入し,此処で加圧空気によつて可燃分(ガス及びチヤー)を燃焼せしめることにより,従来の方式の上記の欠点を除き,熱媒体の凝塊形成がなく,灰分の集じん性能が良好であり,流動層炉の大きさも小さくなり,重金属の溶出も防がれ,またサイクロン焼却炉用の特別な微粉砕前処理を必要としない高性能でありかつコンパクトで構造簡単な固形物の焼却方法及びその装置を提供することを目的とするものである。」 オ 3欄44行ないし4欄14行 「本発明は,固形物原料を,流動層熱分解炉において熱分解を行ない,熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し,該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ,灰分の分離を行なうことを特徴とする固形物の燃焼方法,及び,流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉とを備え,前記流動層熱分解炉の炉頂部出口と前記サイクロン燃焼炉の炉頂部入口とを熱分解生成物移送路にて接続し,かつ前記サイクロン燃焼炉に燃焼用加圧空気を供給する空気供給装置を備え,前記流動層熱分解炉の上部には原料固形物供給機構を備え,下部には不燃物排出口を備え,前記サイクロン燃焼炉の上部には排ガス出口を備え,下部には灰分排出機構を備えていることを特徴とする固形物の燃焼装置である。」 カ 4欄16行ないし23行(以下は実施例) 「第1図及び第2図において,2は流動層熱分解炉,11はサイクロン燃焼炉である。流動層熱分解炉2においては上部に原料供給装置1を備え,下部には分散板6を備えてガス室5が仕切られている。4はガス室5へ流動化ガスを導入するガス入口であり,この流動化ガスが分散板6より噴出して砂を熱媒体とする流動層3を形成するようになつている。」 キ 4欄28行ないし34行 「サイクロン燃焼炉11においては,上部に接線方向に入口23が設けられ,上部中央には排ガスの出口18が設けられている。13は溶融スラグの流下を示す矢印であり,14は溶融スラグの排出口である。15は溶融スラグを冷却して粒状固化するための水室,16はコンベア,17は二重排出弁である。」 ク 4欄37行ないし40行 「空気エジエクタ9にはブロワ10により加圧空気が供給され,フリーボード7からのガスを吸引し,サイクロン燃焼炉11に供給するようになつている。」 ケ 5欄2行ないし29行 「都市ごみ,スラジなどの原料は原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給され,流動層3内で部分燃焼によつて残部が加熱されて熱分解される。
空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通つて砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。熱分解により生成したチヤーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは,すべて塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て,空気エジエクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によつて,吸引加速され,空気とガスとの混合ガスはサイクロン燃焼炉11に接線方向に高速で送られ,矢印12の方向に強力な旋回流を生ぜしめられて熱分解生成物(ガス及びチヤー)は燃焼される。(中略)サイクロン焼却炉11の外面は水冷室(図示せず)とし内面はカーボランダム又はクロム鉱耐火物とするとよい。高負荷燃焼を行わせると灰分は融けて壁面を点線矢印13のように流下し,灰分やチヤーは旋回流に基づく遠心力によつて壁面に衝突して融灰により濡れ状態となつた壁面に付着し,チヤーは高速の旋回流を行う空気との間に大きな相対速度を生ずるので極めて高い燃焼速度で燃焼する。又遠心力効果と濡れ壁効果とによつて灰分は高い効率で補捉され溶融スラグとなつて排出口14から水室15に落下し」 コ 6欄16行ないし40行 「上述の実施例は以上の如く構成され作用するので次の如き効果を有する。
熱分解は吸熱反応であるから,熱分解に必要な発熱量に見合つた部分燃焼を行わせるような少量の空気を供給すればよいので,プラスチツクのような極めて高い発熱量の原料でも, @ 流動層の局部の異常高温による熱媒体(砂)の凝塊形成が無く, A 部分燃焼であるから所要空気量が少ないので,流動層の塔径を過大に設定する必要はない。
又,熱分解過程を終つたあとで B サイクロン燃焼炉自体が集じん機能を果たすのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分はサイクロン内壁に捕捉溶融され内壁面は濡れ状態となつて微細な灰分の集じん性能が向上し, C 灰分を溶融することにより原料中の有害重金属が封じ込められて,埋立に際して重金属溶出を防ぐ為の固化処理等の対策が不要となる。
更に, D サイクロン燃焼炉に供給される固体は熱分解で生成したチヤーと部分燃焼で生成した灰分などの微細な粒子であるから,在来のサイクロン燃焼法に不可欠であつた原料の微破砕処理が不要となる。
などの極めて優れた効果が得られる。」 (2) 前記(1)の各記載及び乙第1号証の第1図を総合すると,同文献には以下の内容が記載されているということができる(以下,その記号に従って「構成(ア)」などという。)。
(ア) 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に,熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において, (イ) 流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し, (ウ) 該廃棄物を該流動層炉内に供給し, (エ) 該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし, (オ) 該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回溶融炉に供給して灰分を溶融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
(3) 本件発明1@と乙1発明の対比 本件発明1@と乙1発明とを対比すると,両者の相違点は次の2点であり,その余の点は一致する。
ア 相違点1 本件発明1@が,「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」(構成要件1B@)ているのに対し,乙1発明が,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し」(構成(イ))ており,「循環流の形成」が明示されていない点 イ 相違点2 本件発明1@が,「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該循環流中で微粒子とし」(構成要件1D及び1E)ているのに対し,乙1発明が,「該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし」(構成(エ))ており,「循環流中」で「ガスとチャーを生成し,微粒子とする」ことが明示されていない点 (4) 本件発明1@の新規性の有無について 前記(3)のとおり,本件発明1@と乙1発明との間には,上記2つの相違点があるから,両者は実質的に同一であるとはいえない。
被告は,前記(3)の相違点1につき,本件発明1@にいう「循環流」は乙第3号証や乙第23号証の第1図に記載された従来から周知となっていた物理現象である「循環流」を含むものとして解釈され,乙第1号証にはこの「循環流」が存在するから,実質的に相違点ではない旨主張する(前記第3の12〔被告の主張〕(1)ウ(イ))。しかし,乙第1号証中に,流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れが記載されているということはできないから(なお,乙第3号証にも,この流動層において必然的に発生する物理現象としての流れとは異なり,流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れが記載されているとはいえない。),被告の上記主張は,採用することができない。
また,被告は,前記(3)の相違点2につき,乙第1号証の流動層炉には,少なくとも乙第3号証や乙第23号証の第1図に記載の「循環流」が存在するのであり,構成(エ)のとおり,乙1発明では,「該流動層炉内の流動層中でガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中で微粒子とし」ているのであるから,乙1発明において,「該流動層炉内の流動層中,すなわち,循環流中で,ガス化してガスとチャーを生成し,該チャーを該流動層中,すなわち,循環流中で微粒子とし,」ていることは明らかであると主張する(前記第3の12〔被告の主張〕(1)ウ(ウ))。しかしながら,上記のとおり,乙1発明の流動層炉において「流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れ」が記載されているとはいえないし,乙第1号証においては,構成(エ)のとおり,流動層内で微粒子化されることが開示されるに止まっており,流動層の「流動層炉に供給する流動化ガスの質量速度に大小を付けることにより形成された流動媒体の循環する流れ」中で微粒子化されることまでは,乙第1号証からは明らかでない。そうすると,相違点2に関する被告の上記主張も,採用することができない。
結局,本件発明1@が乙1発明と実質的に同一であって,新規性を欠くとはいえない。
(5) 本件発明1@の進歩性の有無について ア 乙22発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも平成2年8月1日に頒布された刊行物である特開平2-195104号公報(乙22,発明の名称は「内部循環流動床ボイラにおける排ガス中のNOxを低減する方法」)には,次の記載がある。
(ア) 1頁左下欄6行ないし16行(特許請求の範囲請求項1) 「1.流動床ボイラの流動床部を主燃焼室と熱回収室に仕切で区分し,主燃焼室下部には,流動媒体に大きな流動化速度を与える空気室と,小さな流動化速度を与える空気室の少なくとも2種類の空気室を備えており,これらの空気室から噴出される異なる空気の流動化速度の組合せにより主燃焼室内の流動媒体に旋回循環流を形成した内部循環流動床ボイラにおいて,脱硫剤を特に添加せずに,燃料として石炭を燃焼せしめることを特徴とする排ガス中のNOxを低減する方法。」 (イ) 2頁左上欄7行ないし11行(発明の詳細な説明) 「〔技術的背景並びに従来の技術〕 流動層を用いた燃焼装置は通常一層型であり液状あるいは固形廃棄物の焼却あるいは流動層ボイラなどに広く応用されており従来知られているものである。」 (ウ) 3頁左下欄19行ないし右下欄14行 「以下,本発明を詳しく説明する。
本発明では,炉底部から噴出する流動化ガスの質量速度に噴出部分により差異をつけることにより,流動媒体に旋回循環流動を行なわせる。石炭等の燃料はこの旋回循環流に伴なつて,旋回循環流動しながら燃焼する。
流動層に投入された石炭は短時間で加熱により揮発分が分離する。分離した揮発分は一部層内で燃焼し,他は層表面へ出てフリーボード部で燃焼する。
揮発分が分離した後の未燃炭素分(チヤー)は,流動層中を数10回にわたり旋回循環しながら比較的長い時間をかけて燃焼する。チヤーは当初揮発分の分離により多孔質状となり,その後燃焼の進行に伴い,漸次微小化する。粒径が0.2mm以下となると,燃焼ガスに同伴されて煙道から一旦炉外へ出る」 (エ) 5頁左上欄17行ないし右上欄11行 「空気室13から噴出する流動化用空気の質量速度が空気室12から噴出する流動化用空気の質量速度に比較して大きいため,空気室13の上部では空気と流動媒体が噴流となつて流動層内部を上部へ急激に移動し,流動層表面を出たところで周囲に拡散し,空気室12,14上部の流動層表面に落下する。一方,空気室13の上部の流動層においては,流動媒体が上方に移動したあとをうめるべく,両側のゆるやかな流動層,すなわち,空気室12,14の上部の流動層の底部の流動媒体が中央部,つまり空気室13の上部に移動してくる。その結果,流動層において中央部では激しい上昇流が形成されるが周辺部ではゆるやかな下降移動層が形成される。この上昇流部は酸化層を形成し,下降移動層は還元層を形成する。」 (オ) 5頁左下欄11行ないし16行 「燃料である石炭は,石炭投入口よりロータリーバルブ6を経てスプレツダ等の供給装置7により主燃焼室3内の下降移動層へ供給する。それによつて高温の流動層内部で旋回,循環し燃焼比の高い石炭でも完全に燃焼させることが出来,高負荷燃焼が可能である。」 (カ) 8頁第1図 内部循環流動床ボイラの流動層の縦断面図が図示されており,流動層の下部の空気室が12ないし14の3つに区分され,これらの空気室から異なった流動化用空気が上方に噴出される様子が示されており,その結果,流動層の中央部下部では中央部上部に向かって上昇し,さらに中央部上部から周辺部上部に向かう砂の流れと,周辺部上部から周辺部下部に向かって下降する砂の流れがあることが合計3個の矢印で示されている。
イ 乙23発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも昭和58年4月20日に頒布された刊行物である実願昭57-111269号(実開昭58-58232号)の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙23,考案の名称は「流動床式焼却炉」)には,次の記載がある。
(ア) 2頁3行ないし4頁8行 「3.〔考案の詳細な説明〕 本考案は流動床式焼却炉に関する。(中略) この様な流動床式の焼却炉に於ては硅砂等の流動媒体が使用されている。この如き流動床式焼却炉には通常流動媒体(本文に於ては砂と称する)が床面積全般に渉り流動化して,この砂の流動状態の部分の上方,所謂フリーボードと称する部分から焼却物の投入を行つて来た。しかしながらこの様な作動方式の場合には,次の様な問題が経験されている。即ち (1) 焼却物中の比較的比重の小さい成分(例えば紙類,プラスチツクス類等)は流動する砂の上部に於て停滞浮遊する。このため,これらの比較的可燃性傾向の高い成分は流動する砂の上部で良好に燃焼してもその燃焼による発生熱量は砂に伝達されることが少く従つてその熱が有効に利用されない。
(中略) 上記の如き比重の比較的低い焼却物,或いはこれらを含んだ焼却物を在来の流動床式焼却炉により焼却を有効に行うための方策としては焼却物を砂の上部に投入する代りに,砂の中,又は砂の底部に強制的に供給して砂の内部で燃焼させることが考えられる。この様にするためにはスクリユーフイーダ,等の機械的押込作用を行う装置が必要となる。但しこの様な装置を使用して強制押込を行うためには更に付随する問題が生ずる。即ち, (イ) 砂中,又は砂の底部に於ての投入のため,流動化状態を維持している高い風圧をシールする必要がある。
(ロ) スクリユーフイーダ等で強制的に押込む場合に焼却物自体によつてシール(マテリアルシール)を行わねばならないために,焼却物自体の形状が制限され,焼却に必要な程度以上に細かく破砕を行う必要がある。従つて,高馬力,高性能の破砕機が必要となる。
本考案は従来の流動床燃焼方式による上記した如き種々の欠点,問題点を克服するための流動床式焼却炉を提供することを目的とするものである。」 (イ) 4頁9行ないし5頁10行 「本考案による焼却炉は具体的には,焼却炉内の砂の部分に於て二種類の流動層を生ぜしめること,即ち一部に於ては比較的激しい流動状態となる流動層を生ぜしめ,他方の部分に於ては流動化の程度を比較的低度,或いは実質的に流動を行わず砂が下方に移動することにより重力により逐次全体として下方に沈降する移動層を生ぜしめる様になつている。尚上記の流動層上部から流動状態の砂は移動層の方に偏向され,又移動層の下部からは流動層の下部に砂が移行する様にして,砂全体が二つの移動層,流動層の間で循環する様になされている。この様な態様は特開昭52-118858号に開示された熱反応装置に於ける流動床にも見られるが,この例に於ては流動床に焼却物を直接投入しているため,前述した問題が生ずる。本考案の方式に於ては炉体上部からフリーボードを介して落下する如く投入すれば移動層の上部に落下した焼却物の上に流動層の砂を受けて下方に漸次沈降する。又流動層上部に落下した焼却物は流動層上部から移動層上部にカスケード的に移行する砂と共に移動層上部に動き前述の如く移動層を沈降する。」 (ウ) 6頁15行ないし17行及び7頁11行ないし8頁2行 「以下本考案を添付の図面により説明する。
第1図,第2図は本考案の理解に便ならしめるため,従来の炉を説明するものである。」 「第2図は別の形態の焼却炉で(中略)。この炉に於ては圧縮空気源からの流動化用圧力空気を多孔板11’又はサンドトラツプの下方の複数の空気室12a,12b,12cを介して砂13’中に送給し,その各々の風速を図に於ては12aより右の方の12cに至るにつれ順次大きくなしてある。又風速の大なる部分の上方に偏向手段としてのデフレクター17と旋回空気送入口18を設けて空気室12a,12b,12cからの風速差と相俟つて砂13’の循環を助長する様にしてある。」 (エ) 8頁7行ないし9頁13行 「第3図に本考案による流動床式焼却炉の断面図が説明図的に示されている。(中略)炉体の内部下方に中央部を高く,両側部に向けて傾斜させた多孔板21又はサンドトラツプが配置されてその下方に空気室を形成する。空気室は22a,22b,22cに区分されている。この区分された領域室22a,22b,22cに対応する炉内の上方部分で移動層,流動層が形成されて(中略)。A及びC領域の上方で炉体内部に於て炉体の両側壁に夫々デフレクター24が設けられ,デフレクター24はその下面が側壁から中央に向けて上向きに傾斜した面を有している。(中略)空気室22a,22b,22cには圧縮空気源31より空気を供給されるが,配管に適宜な圧力調整装置又はダンパ32,33を設けてダンパ32からは室22a,22cに圧縮空気を供給し,ダンパ33から中央の室22bに圧縮空気を供給する様にしてある。」 (オ) 9頁17行ないし10頁19行 「この焼却炉の作動方式について以下に説明する。
前記の如く,流動化用空気は空気室22a,22b,22c,より多孔板21を介して夫々上方に送気され,領域A,B,Cの砂を流動化させるが,この送給空気量は両側領域A,Cに於て中央領域Bより大きくなる様にダンパ32,33により制御し領域A,Cに於ては激しい流動化が生じ中央領域Bに於ては流動化の程度を低度に,或いは実質的に流動化が行われない程度とする。この様な送給空気量の調整,制御により,領域A,Cの砂は激しい流動を行い上方に移行する砂はデフレクター24により中央領域Bの上部にカスケードされる。中央領域Bの砂の高さはこのため領域A,C,よりも高くなる傾向となる。従つて領域Bの砂は底部から領域A,Cの側に流れる様になる。このため,上記状態となされた砂の領域A,C,の部分を流動層,領域Bの部分を移動層と称する。デフレクターの反転偏向作用と,移動層部分A,Cと流動層部分Bとの砂層高即ち砂量差傾向により,領域A,Cの上方に於ける流動層から移動層へ,又B領域下方に於ける移動層から流動層への砂の移行が行われ,領域A,C,と領域Bとの間でほぼ均一な砂の循環流が得られる。」 (カ) 11頁13行ないし12頁15行 「領域A,B,C,の上部にデフレクターの存在により実質的にはBの上部に落下した焼却物中の比重の小さい部分は砂上に於て停滞し,そこで燃焼することなくA,Cの流動層からカスケードされてくる高温(例えば600〜800℃)の砂に覆われ移動層の砂と共に下方に沈降する。供給された焼却物は領域Bの下方に動き多孔板21の位置に至る間に,焼却物中にあるプラスチツク類は液化,又は一部ガス化し,水分を含むものは更に水分を蒸発させ焼却物は概ね脆化の傾向を示す。(中略) 領域A,Cの下方部分で移動層から流動層へと移行した焼却物は水分も蒸発し,より可燃性となつているため,多量の空気(流動用並びに燃焼用)により撹拌作用を伴つた激しい流動化状態となり,瞬時に燃焼する。
焼却により生じたガスはデフレクター24下側と流動層領域A,Cの上方との間の間隙を通過し排気口26から排気ガス処理設備へ送られる。高温の砂は上記の如く再び移動層を形成し,沈降,循環を繰り返す。」 (キ) 14頁10行ないし15頁6行 「本考案の焼却炉は上記の如く構成されているから焼却物が砂の上部に停滞することがなく,焼却熱等は有効に砂に還元され,又移動層で沈降中により可燃性が高くなされて流動層に於て瞬時に燃焼し,砂の温度を均一に安定させ,排ガス温度変動が少い。又助燃油は殆んど必要がない。尚焼却物は移動層に於ける脆化の進行と,流動層に於ける激しい流動撹拌により破壊されて停滞することがなくクリンカの発生が実質的に防止されるので,比較的大きな粒径のものも焼却可能となるから前処理用破砕の程度は簡単,或いは省略も可能である。
又投入は砂の上方から行うため,投入機に於けるシールはその部分の炉内圧に対するものを考慮するだけの簡単なものでよく,マテイアルシールの必要はなく,この面からも前処理破砕の必要性が低減されるか,省略され得る。」 (ク) 公報添付の第3図 流動層式焼却炉の縦断面図であり,流動層中で流動媒体が,左側(領域A側)においては時計回りに,右側(領域C側)においては反時計回りにそれぞれ循環し,中央部(領域B)では上方から下方へ沈降する様子が示されている。
ウ 乙24発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも平成2年6月6日に頒布された刊行物である特開平2-147692号公報(乙24,発明の名称は「流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉」)には,次の記載がある。
(ア) 1頁左欄5行ないし右欄10行(特許請求の範囲請求項1) 「ガス化炉の炉底部より上方に向けて噴出せしめた流動化ガスにより,流動媒体を流動化して形成せしめた流動層により,石炭等をガス化する流動層ガス化方法において,(中略)前記流動化ガスは,中央部よりも両側縁部が低く形成されているガス分散機構から噴出せしめられ,前記流動化ガスの質量速度を,前記炉底の中央部付近におけるよりも,該中央部の両側の両側縁部において,より大となし,(中略)炉底の中央部には,流動媒体が沈降する移動層を形成し,両側縁部には流動媒体が活発に流動化している両側縁流動層を形成し,前記流動媒体を,前記移動層内で沈降せしめ,該移動層の下部で前記両側縁部に移行せしめ,前記両側縁流動層内で上昇せしめ,(中略)炉内を循環せしめつゝ前記移動層に石炭等を供給して該石炭等のガス化を行なわしめることを特徴とする流動層ガス化方法。」 (イ) 4頁上左欄7行ないし15行 「ガス化炉3について説明する。第2図に示すごとく,ガス化炉3の炉底部には流動化用のガス化剤の分散板20が備えられている。分散板20は両側縁部が中央部より低く,炉の中心線36に対してほぼ対称な山形断面状に形成されている。両側縁部には不燃物及び灰分排出口30が接続され,32,33のスクリユーコンベアにより,粗大な不燃物が流動媒体とともに排出される。」 (ウ) 4頁左上欄16行ないし左下欄9行 「予熱された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤は,分散板20から炉内に噴出し,傾斜壁24に当たつて垂直面内の旋回流となり,珪砂などの流動媒体をこれに沿つて動かしめて旋回流動層35が形成される。さらに(中略)炉内中央に下降移動層34が形成され,この下降移動層34及び旋回流動層35によつて石炭は短時間にガス化反応を完結させるため,粉砕・整粒を行なわなくとも流動化を阻害することなく高いガス化効率を得ることが出来る。
予熱された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤は,導入部の室21,22,23を経て分散板20から上方に噴出せしめられている。両側縁部の室21,23から噴出するガス化剤の質量速度は流動層を形成するのに十分な大きさを有するが,中央部の室22から噴出するガス化剤の質量速度は前者よりも小さく選ばれている。(中略) 中央部の室22から噴出する流動化ガスの酸素濃度は,両側縁部の室21,23から噴出する流動化ガスよりも低いか,あるいはスチームのみとしてもよい。
室の数は3以上の任意の数が選ばれる。多数の場合でも,流動化ガスの質量速度は中心に近いものを小,両側縁部に近いものを大となるようにする。両側縁部の室21,23の直上に流動化ガスの上向き流路をさえぎり,流動化ガスを炉中央に向けて反射転向せしめる反射壁として傾斜壁24が設けられている。」 (エ) 4頁左下欄16行ないし右下欄17行 「ガス化炉3の原理につき説明する。通常の流動層においては,流動媒体は沸騰している水のごとき激しい流動状態を形成しているが,室22の上方の流動媒体は弱い流動状態にある移動層34を形成する。この移動層34の幅は,上方は狭いが,裾の方は分散板20の傾斜の作用も相まつてやや広がつており,そこでは室21,23からの大きな質量速度のガス化剤の噴射を受け,流動化され上方に吹き上げられる。こうして裾の流動媒体が除かれるので,室22の直上の流動媒体の層は自重で降下する。この層の上方には,後述のごとく旋回流を伴う流動層35からの流動媒体が補給される。これを繰り返して室22の上方の流動媒体は,弱い流動状態の下降移動層34を形成する。室21,23上に移動した流動媒体は流動化され上方に吹き上げられるが,傾斜壁24により反射転回して炉の中央に向いて旋回し,前述の下降移動層34の頂部に移動し,徐々に降下し,移動層34の裾に至つて流動化され再び吹き上がつて循環する。一部の流動媒体は,旋回流として流動層35の中で旋回循環する。」 (オ) 5頁左上欄11行ないし18行 「下降移動層34の中では,石炭の乾留反応が主体的に,ガス化反応が部分的に行なわれ,ガスとチヤーが生成する。ここで生成したガスは上方または水平方向に抜け,チヤーは流動媒体と共に両側縁部の流動層部35へと移動し,流動化ガスとして供給された酸素とスチームの混合ガスからなるガス化剤と,部分燃焼をともなうガス化反応を引き起こす。」 (カ) 5頁右上欄4行ないし10行 「下降移動層34は,流動化が比較的穏やかなので,生成したチヤーのうち粒径がかなり細かいものでも,通常の流動層のようにガス化されずに飛散するようなことは起らない。例え一部が飛散しても,炉外でサイクロン4により捕集して,再度炉に戻せば,比較的容易にガス化することが可能である。」 (キ) 5頁左下欄3行ないし6行 「そのため石炭はかなり大きなものでも,下降移動層34の中で徐々に下降しながら乾留が行なわれ,下降移動層34の両端に達するころには大半が細片化したチヤーになる」 (ク) 6頁右上欄6行ないし11行 「D (中略)石炭と廃木材や廃プラスチツクとの混合利用のようなやり方が可能となり,原料の多様化や原料コストの引き下げが図れる。さらに破砕上問題になる不燃物を含むようなものを,ガス化原料として用いることも可能となる。」 (ケ) 6頁右上欄12行ないし14行 「E (中略)移動層の不活発な流動化の中で乾留による微粉化が行なわれる」 (コ) 7頁第2図 石炭ガス化炉の縦断面図が図示されており,下降移動層34と流動層35とで流動媒体の循環流が形成されている構成が矢印で示されている。
エ 乙26発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも昭和57年8月3日に頒布された刊行物である特開昭57-124608号公報(乙26,発明の名称は「流動層熱反応炉」)には,次の記載がある。
(ア) 1欄2行ないし7行 「本発明は,流動層を用いる焼却炉,熱分解炉などの熱反応炉に関するものである。
この種の熱反応炉として,例えば都市ごみの焼却炉においては,近年ストーカ炉よりも焼却効率がよく,かつ焼却残渣の少ない流動層炉が用いられて来ている。」 (イ) 12欄2行ないし13欄1行 「ブロワ7から送られた流動化空気は,空気室43,44,45を経て分散板42から上方に噴出せしめている。両側縁部の空気室43,45から噴出する流動化空気の質量速度(kg/m2・sec)は流動層を形成するのに十分な大きさを有するが,中央部の空気室44から噴出する流動化空気の質量速度は前者よりも小さく選ばれている。
(中略) 空気室の数は3個以上の任意の数が選ばれる。多数の場合でも,流動化空気の質量速度は,中心に近いものを大に,両側縁部に近いものを小になるようにする。
両側縁部の空気室43,45の直上に流動化空気の上向き流路をさえぎり,流動化空気を炉内中央に向けて反射転向せしめる反射壁として傾斜壁9が設けられている。」 (ウ) 14欄4行ないし15欄10行 「焼却炉6の作用につき説明すれば,ブロワ7により,流動化空気を送り込み,空気室43,45からは大なる質量速度にて,空気室44からは小なる質量速度にて噴出せしめる。
通常の流動層においては,流動媒体は沸とうしている水の如く激しく上下に運動して流動状態を形成しているが,空気室44の上方の流動媒体は激しい上下動は伴なわず,弱い流動状態にある移動層を形成する。この移動層の幅は上方は狭いが,裾の方は分散板42の傾斜の作用も相まつて,稍広がつており,裾の一部は両側縁部の空気室43,45の上方に達しているので,大きな質量速度の空気の噴射を受け,吹き上げられる。裾の一部の流動媒体が除かれるので,空気室44の直上の層は自重で降下する。この層の上方には後述の如く旋回流10を伴う流動層からの流動媒体が補給され堆積する。これを繰り返して,空気室44の上方の流動媒体は,或る領域の部分がほぼひとまとめとなり,徐々に下降する下降移動層46を形成する。
空気室43,45上に移動した流動媒体は上方に吹き上げられるが,傾斜壁9に当たり反射転向して炉の中央に向きながら上昇し,炉内断面の急増に伴い上昇速度を失い,前述の下降移動層46の頂部に落下し,徐々に下降し,裾に至つて再び吹き上げられて循環する。一部の流動媒体は旋回流10として流動層の中で旋回循環する。」 (エ) 15欄11行ないし16欄4行 「このような状態の焼却炉6の炉内に,原料投入口60から投入されたごみは下降移動層46の頂部に下降する。頂部付近においては流動媒体の流れは外側から中心に向かつて集中する方向に流れるので,ごみはこの流れに巻き込まれて下降移動層46の頂部にもぐり込まされる。(中略) 下降移動層46の中では部分的に熱分解が行なわれ可燃ガスが発生する。」 (オ) 16欄8行ないし17欄1行 「下降移動層46の表面にびん,アイロンなどの如き重くかつ大きな物体を落下せしめて供給した場合,これらの物体は瞬時に空気室44の上まで落下するのではなく,下降移動層46に支えられて,流動媒体の流れと共に徐々に下降する。
そのため,可燃物はかなりの大きさのものでも,下降移動層46の中で徐々に下降しているうちに乾燥,ガス化,燃焼が行なわれ,裾に達するときには大半が燃焼して細片化しているので,流動層の形成を阻害することがない。
従つて,ごみは予め破砕機で破砕をしなくても,吸じん装置5で破袋する程度で差支えなく,破砕機や破砕工程を省略しコンパクトな装置とすることができる。」 (カ) 21欄18行及び19行 「以上は焼却炉における例を示したが,熱分解炉その他の熱反応炉においても同様である。」 (キ) 10頁第9図 焼却炉の縦断面図が図示されており,前記(ウ)の流動媒体の旋回流10が流動層炉の砂層中に生じていることが示されている。
オ 乙27発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも平成2年11月に頒布された刊行物である「燃料協会誌第69巻第11号」中の原告の環境・プラント事業部ボイラ技術部従業員の大下孝裕執筆に係る特集記事「無破砕旋回流型流動燃焼炉とその応用技術」(乙27)には,次の記載がある。
(ア) 1034頁右欄5行ないし9行(「2.1 技術の概要」) 「TIFとは,Twin Interchanging Fluidized-bedの略であり,移動層(Moving-bed)と流動層(Fluidized-bed)の2種類(Twin)の流動状態の間において循環流(Interchanging)を生じるという意味である。」 (イ) 1034頁右欄10行ないし1035頁左欄3行 「一般の流動層焼却炉は,流動媒体(砂)があたかも沸騰している湯のように上下に動いて流動するかたちの流動層を形成しているが,本技術では移動層(のみ込み層)と流動層の組合せによって図1に示すように砂が適度に循環・旋回を行い,砂の沈降に伴い投入された燃焼物を熱砂の中にのみ込み,熱的に燃焼物を破壊し拡散する効果を持たせたものである。」 (ウ) 1034頁図1「TIF旋回流型流動燃焼炉」 TIF型流動層炉の縦断面図が図示されており,砂層が移動層と流動層とに分かれ,両者の間を流動媒体(砂)が循環する様子が矢印を用いて示されている。
(エ) 1035頁左欄20行ないし39行(「2.2 TIF炉の特徴」) 「TIF旋回流型流動燃焼炉の構造図を図2に示す。流動床は空気分散部を四つのブロックに分け,おのおのに燃焼用空気を送り込むが,中央部の2ブロックには少量の空気を入れて移動層を作り,両端の2ブロックには多量の空気を入れて移動層を形成する。
移動層と流動層との空気量の比は約1:3である。
(中略)この旋回流により,下記の特長が生ずる。
(1) 移動層部では砂はゆっくりと斜め下方に移動している。ここに燃焼物が投入されると,砂の熱により蒸し焼きにされ水分がなくなりもろくなる。
(2) もろくなった燃焼物は砂の旋回により拡散していき,流動層部での激しい砂の動きにより解砕され細かくなり,短時間に燃えつきる」 (オ) 1035頁左欄末行ないし右欄2行 「燃焼物中の不燃物は砂の動きとともに炉の両側に送られ,砂とともに炉外に取り出すことができる。」 (カ) 1035頁図2「TIF旋回流型流動燃焼炉構造図」 TIF型流動層炉の縦断面図が図示されており,砂層中に流動媒体(砂)の循環流が矢印を用いて示され,流動層炉からいったん排出された流動媒体を再度流動層炉内に戻すための,流動層炉下部の不燃物取出しコンベヤ,振動篩,不燃物排出口,砂循環用エレベータ及び砂投入コンベヤが示されている。
カ 乙28発明の内容 本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の前である遅くとも平成4年7月20日に頒布された刊行物である「エバラ時報第156号」中の原告の環境事業部技術第二部の従業員郷家千賀男等執筆に係る特集記事「高効率燃焼型流動床焼却施設-新潟県柏崎地域広域事務組合納入-」(乙28)には,次の記載がある。
(ア) 45頁左欄2行ないし右欄末行 「当社における流動式ごみ焼却分野への参画は1978年石川県珠洲市への納入に始まり,以来納入実績は1992年3月までに42施設に達した。この間,種々の技術改革が行われ,特に流動床焼却炉にとって不可欠とされていた破砕機を不要とする画期的な焼却施設(TIF型炉)を業界に先がけて1983年和歌山県海南市に納入した。以後の施設はすべてこのTIF型炉を採用し,更に改良・改善が加えられてきた。
近年,ごみ焼却施設から有害なダイオキシン類の排出が検出され,社会問題にまでなってきた。このような状況下で,1990年厚生省により『ダイオキシン類防止等ガイドライン』が策定された。この中で,廃棄物焼却炉の煙突から排出されるCO濃度は新設連続炉で50ppm以下とされている。
このような背景の中で,当社は燃焼効率の改善を目的として,炉形状を改良した高効率燃焼型流動床焼却炉の開発を進めてきた。本方式の焼却炉を新潟県柏崎地域広域事務組合向け焼却施設に適用し,1991年12月竣工引渡した(写真1)。
(中略) 本稿では,竣工引渡し後順調に稼働している本施設の設備概要と運転結果について報告する。」 (イ) 46頁右欄20行ないし47頁左欄6行 「本施設における高温領域(燃焼領域)である3領域は,それぞれ分担役割を持って運転している。これを表1に示す。
流動層,フリーボード部及び後燃焼領域における運転条件基準は以下のとおりである。
(1) 温度領域の設定基準 @ 流動層 ごみのガス化速度をより緩慢にするためには,低温の方が好ましい。このことから上限を700℃に設定した。
一方下限は,都市ごみを構成する物質のガス化温度に支配される。ガス化が完全に行われ,不燃物の熱しゃく減量が極めて少ないことが重要である。紙,プラスチック等都市ごみを構成する物質の熱分解温度は400℃以下であり,十分余裕をみて下限を600℃に設定した。」 (ウ) 47頁表1「燃焼領域の分担機能」の「流動層」の行 「機能」の欄に, 「<部分燃焼法によるガス化> 1.完全燃焼と異なり,高カロリーごみでも層内温度高温化の抑制が容易。
2.還元雰囲気なので低NOx化が可能」, 「温度」の欄に「600〜700℃」と, 「空気比」の欄に「1以下」とそれぞれ記載されている。
(エ) 48頁左欄8行ないし右欄2行 「焼却炉へ供給されたごみは,炉床で600〜700℃に熱された砂と一緒に旋回しながらガス化,燃焼し,更に800〜950℃に温度が保たれているフリーボードを経て短時間でほぼ完全に燃焼する。」 (オ) 48頁右欄10行ないし13行 「不燃物は,不燃物排出装置により砂と共に取り出し,振動篩で砂と分離後,(中略)場外へ搬出する。分離した砂は炉内へ戻して再利用している。」 (カ) 48頁図2「施設フローシート」 流動床焼却施設の概要が図示されており,この中に,焼却炉から排出する砂を再び炉内に戻すための砂循環エレベータ,砂分級装置,砂投入弁などが示されている。
キ 乙30発明の内容 本件第1特許権の優先権主張日(平成6年3月10日)の後であるが,出願日よりも前である,遅くとも平成6年11月1日に頒布された刊行物である特開平6-307614号公報(乙30,発明の名称は「廃棄物焼却方法」)には,次の記載がある。
(ア) 1欄11行ないし13行 「【産業上の利用分野】本発明は,ガラス繊維を含む廃棄プラスチックスを,燃焼分解させてスラグとして回収する廃棄物焼却方法に関する。」 (イ) 2欄9行ないし32行 「【0008】ガラス繊維を含む廃棄プラスチックス中のプラスチックスを流動層熱分解炉内で熱分解して分解ガスとするために,プラスチックスが500℃以上で熱分解を起こす特性を有するのを利用して,流動層熱分解炉内の温度を500〜600℃に温度制御して,廃棄プラスチックス中のプラスチックスを燃焼させて分解ガスとする。
一方,ガラス繊維は800℃以上に加熱されてはじめて軟化溶融するため,流動層熱分解炉中で溶融されずに残されたガラス繊維は,流動層熱分解炉の流動層の砂により微粉砕して飛灰となされる。又,このガラス繊維を0.05mm以下の大きさに微粉砕するために,流動層の砂の粒径は0.5〜0.8mmのものを使用するのが好ましい。
【0009】上記の流動層熱分解炉において,熱分解炉内の温度を500〜600℃に保って,廃棄プラスチックスを燃焼させるための温度制御は,廃棄プラスチックスの燃焼による発熱量に応じて,流動層熱分解炉への廃棄プラスチックスの供給量と,後述の空気予熱器から供給される空気温度を加減して行なうようになされている。」 (ウ) 2欄42行ないし45行 「【0012】旋回式溶融炉の旋回燃焼室で燃焼した飛灰を同伴した分解ガス中の飛灰は溶融スラグとなり,この溶融スラグは流下して旋回式溶融炉の下方のスラグ溜めを経てスラグ受けで回収される。」 ク 相違点について (ア) 相違点1について 前記イ(イ),(ウ),(エ),(オ)及び(ク)のとおり,乙23発明においては,流動層炉に下方の多孔板21から吹き込む圧縮空気の量を周辺部で大,中央部で小とし,かつ炉の両側の壁にデフレクタを設けることで,層全体を周辺に位置する流動層と中央に位置する移動層とに分かち,流動媒体を,中央上部からいったん中央下部に沈降し,中央下部から周辺下部,周辺下部から周辺上部,周辺上部から中央上部と順に意図的に流れさせる循環流を生じさせる構成が開示されている。
「質量速度」とは,日刊工業新聞社発行「マグローヒル科学技術用語大辞典(改訂第3版)」731頁(甲5)によれば,「単位時間に単位面積を流れる質量」と,朝倉書店発行「機械工学辞典」389頁(甲6)によれば,「流体が流れているとき,単位時間に,ある断面を通過する質量を質量速度という。」と,それぞれ定義されている(甲7も同趣旨)。前記イ(オ)のとおり,乙23発明では,流動層に吹き込む流動化空気の送給空気量に大小を付けることが開示されているが,これが単位時間内に吹き込む流動化空気の量をいうことは明らかであり,この空気量が大きくなると,断面を通過する流動化空気の質量は大きくなるから,乙23発明における送給空気量に大小を付けることと,本件発明1@における流動化ガスの質量速度に大小を付けることとは等価であると解される。
そうすると,前記(3)の相違点1の構成が乙23発明によって開示されているということができる。
なお,前記ア(ウ),(エ),(カ),ウ(ア),(ウ),(エ),(コ),エ(イ)ないし(キ)並びにオ(ア)ないし(エ)及び(カ)のとおり,乙22発明,乙24発明,乙26発明及び乙27発明においても,同様に,流動層炉内において流動層と移動層とに分かれ,流動媒体の循環流が生じている構成(ただし,乙22発明においては,本件発明1@と逆向きの流れである。)が開示されているから,本件第1特許権の出願当時,かかる構成は当業者において公知であったということができる。
(イ) 相違点2について 前記(2)のとおり,乙1発明において,流動層中で廃棄物をガス化してガスとチャーを生成する構成が開示されているところ(構成(エ)),前記イ(カ)及び(キ)のとおり,乙23発明においては,投入された焼却物が,中央部の上方から下方へ沈降する移動層中でその一部がガス化するとともにもろくなり,また周辺部の激しい流動撹拌によって破壊されるので,比較的大きな粒径の焼却物も処理でき,前処理の破砕処理の必要性を零又は小さくできるとの構成が開示されており,これは流動層の循環流中で焼却物の一部がガス化され,また流動撹拌によって微粒子化される構成を意味するものである。そうすると,当業者において,乙1発明に乙23発明を組み合わせることにより,流動層炉の流動層の循環流中で廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,チャーを微粒子化する構成,すなわち前記(3)の相違点2の構成を容易に想到することができる。
なお,前記ア(ウ),ウ(オ),(キ)及び(ケ)のとおり,乙22発明及び乙24発明では循環流中で石炭の揮発分(ガス)と未燃炭素分(チャー)とが分離され,後者が微小化される構成が,また前記エ(エ),(オ)及びオ(エ)のとおり,乙26発明及び乙27発明では流動層の循環流中で廃棄物がガスとチャーとに分離され,後者が微小化される構成がそれぞれ開示されている。また,本件第1特許権の出願日及び優先権主張日の前に頒布された刊行物である特開昭60-96823号公報(乙2,発明の名称「燃焼不適ごみの処理方法」。本件第1特許権に係る特許無効審判請求事件の審決(乙67)の甲13。)においても,「理論燃焼空気量より少ない空気と接触し,400〜600℃の温度下で部分燃焼方式により熱分解される。この熱分解により,CO,H2およびCH 4等の炭化水素からなる熱分解ガス22と,燃え残りの炭素分からなるチヤーが生成する。チヤーの一部は流動層4内で粉砕作用を受け,微粉となつて熱分解ガス22に同伴されながら空塔部10の方向へ飛び上がる。微粉化が進まない残部のチヤーは流動層内に滞留するが,空気吹き込み管5から吹き込まれる空気によつて燃焼される上流動層4の粉砕作用を受けるので,最終的には微細化される。」(3頁左上欄1行ないし12行)と記載されており,乙1発明と同様に,流動層炉の流動層で廃棄物がガスとチャーとに分離され,後者が微小化される構成がそれぞれ開示されている。
そうすると,本件第1特許権の出願日及び優先権主張日の当時,流動層の循環流中で廃棄物がガスとチャーとに分離され,後者が微小化される構成は当業者において公知であったということができる。
(ウ) 組合せの困難性について 乙1発明と乙23発明との間には,前者が流動層式熱分解炉とサイクロン式燃焼炉との組合せからなるものについての発明であり,後者が流動層式焼却炉のみからなるものについての発明であるという差異があるとしても,前者においても後段のサイクロン式燃焼炉で燃焼を行っているのであり,両者はいずれも流動層を用いて廃棄物を焼却ないし加熱して処分する方法の技術に関する発明である点が共通する。そうすると,両者の技術分野は異なるものではない。
また,乙1発明が解決しようとした課題は前記(1)エのとおり,乙23発明が解決しようとした課題は前記イ(ア)のとおりであって,両者は異なるが,当業者において両者を組み合わせることを困難にするほどのものとはいえない。
そして,乙1発明の作用,機能は前記(1)ケ及びコのとおり,乙23発明の作用,機能は前記イ(オ)ないし(キ)のとおりであって,両者は異なるが,当業者において両者を組み合わせることを困難にするほどのものとはいえない。
(エ) 小括 以上によれば,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において本件発明1@を容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明(同審決では甲7)に乙30発明(同審決では甲14)を適用することにより当業者において容易に本件発明1@(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙67)。
したがって,本件発明1@は,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
ケ 訂正請求について なお,原告は,平成17年1月17日付で,本件発明1@につき,「該廃棄物を該流動層炉に供給し」の次に「,流動層温度を450℃〜650℃に維持し」を加える訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲33の1,乙21,67)。
後記5(1)エのとおり,上記訂正に係る温度の設定は当業者の周知技術と評価すべきものであり,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第1特許権に係る特許を無効と判断していること(乙67)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
コ 原告の主張について (ア) 原告は,乙1発明に乙23発明等を組み合わせると,微細なチャー等が乙第1号証の後段のサイクロン燃焼炉をすり抜けてしまい,サイクロン燃焼炉が集じん機能を果たせなくなる旨主張する(キャリーオーバー。前記第3の12〔原告の主張〕(2)ア(ウ)a)。
しかし,乙第1号証の4頁第1図では,右上部分に集じん機20が図示されているが,明細書の5欄34行ないし40行には「燃焼排ガスはサイクロン炉の出口18より熱交換器19,及び要すれば未捕集のダストを集じんする為の電気集じん器20を通して系外に排出される。尚,電気集じん器20を設けた場合は,此処から排出されるダストを再びサイクロン燃焼炉11に供給して(中略),溶融固化すると良い。」と記載されており,電気集じん器の設置が必須とされているわけではないし,サイクロン燃焼炉に供給されるチャーが微粒子化されると必ず上記キャリーオーバーの問題が生ずるとすれば,電気集じん器で回収されたチャーを再度サイクロン燃焼炉に供給したときに果たして良好な結果が得られるのか疑問であって,上記記載部分の内容と矛盾するから,上記微粒子化によって上記キャリーオーバーの問題が必ず生ずるとまではいい難い。
また,乙第1号証においては,2欄1行ないし19行に,「流動層焼却炉は周知の様に多くの利点があるが,下記の欠点がある。即ち,(中略)B流動層燃焼に於ては,灰分は微細粒子となつて燃焼ガス中に混入するが,粒径が細かいので一般の機械的集じん装置では充分に補足し得ないのみならず,集じん后も発じん防止などに特別な対策を要する。」と記載され,かつ前記(1)コのとおり,「B サイクロン燃焼炉自体が集じん機能を果たすのみならず,高負荷燃焼を行えば灰分はサイクロン内壁に捕捉溶融され内壁面は濡れ状態となつて微細な灰分の集じん性能が向上し」と記載されているから,装置前段の流動層炉でチャーの微粒子化を行い,後段のサイクロン燃焼炉に微粒子化されたチャーを供給したとしても,サイクロン燃焼炉の高性能化などの対策を採ることで対処ができる程度のものと推認される。よって,炉の構造いかんで上記キャリーオーバーの問題が生じうるからといって,乙1発明を乙23発明と組み合わせることができなくなるわけではない。
(イ) 原告は,乙1発明の流動層に乙23発明の流動層を採用すると,可燃ガスとチャーを生成できなくなって,乙1発明を機能させることができない旨を主張する(前記第3の12〔原告の主張〕(2)イ(エ))。
しかし,乙23発明の流動層炉が焼却炉であるとしても,この炉の構造を乙1発明の流動層炉として採用する場合には,適宜運転条件の調整を行うことにより,可燃ガスとチャーを生成することができるから,乙23発明を乙1発明と組み合わせることができないとはいえず,原告の上記主張は採用することができない。
(6) 本件発明1Aの進歩性の有無について 本件発明1Aは,本件発明1@の構成に,構成要件1BA(前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環すること)を加えたものである。 本件発明1Aと乙1発明とを対比すると,本件発明1Aが「前記流動媒体の循環流は,流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され,流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環すること」としているのに対し,乙1発明が,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し」(構成(イ))ている点(相違点1’)並びに本件発明1@との相違点1及び2で相違しており,その余の点は一致する。
前記(5)ク(ア)のとおり,上記相違点1’は乙23発明によって開示されているし,乙22発明,乙24発明,乙26発明及び乙27発明においても,流動層中が流動層と移動層とに分かれ,流動媒体の循環流が生じている構成が開示されているから,本件第1特許権の出願日及び優先権主張日の当時,相違点1’は当業者において周知であったともいうことができる。また,相違点1及び2については前記(5)ク(ア)及び(イ)のとおりである。
そうすると,本件発明1Aも,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件1BAは,本件第1特許権の出願前に当業者には周知の技術であって,乙1発明に乙30発明及び周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明1A(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙67)。
したがって,本件発明1Aは,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(7) 本件発明1Bの進歩性の有無について 本件発明1Bは,本件発明1Aの構成に,構成要件1BB(前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されること)を加えたものである。
本件発明1Bと乙1発明とを対比すると,本件発明1Bが,「前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され,前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される」(構成要件1BB)のに対し,乙1発明にはこのような構成がない点(相違点1’’),本件発明1@との相違点1及び2並びに本件発明1Aとの相違点1’で相違し,その余の点は一致する。
前記(5)ク(ア)のとおり,上記相違点1’’は乙23発明によって開示されているし,乙22発明,乙24発明,乙26発明及び乙27発明においても,上記相違点1’’が開示されているから,本件第1特許権の出願日及び優先権主張日の当時,上記相違点1’’は当業者において周知であったということができる。また,相違点1及び2については,前記(5)クのとおり,相違点1’については,前記(6)のとおりである。
そうすると,本件発明1Bも,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件1BBは,本件第1特許権の出願前に当業者には周知の技術であって,乙1発明に乙30発明及び周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明1B(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙67)。
したがって,本件発明1Bは,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
5 争点(13)(本件発明2@及びAに係る特許が無効にされるべきものか否か)について (1) 本件発明2@の進歩性の有無について ア 本件発明2@は,いわゆる独立請求項の方式で記載されているものの,その実体は,本件発明1Aに不燃物と流動媒体の排出に関する構成要件2F@及びA(該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し)を付加したものにすぎない。
イ 本件発明2@と乙1発明との対比 本件発明2@と乙1発明とを対比すると,本件発明2@では,「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」(構成要件2F@及びA)ているのに対し,乙1発明では,これが明示されていない点(相違点3)並びに本件発明1Aとの相違点1,1’及び2で相違し,その余の点は一致する。
ウ 相違点について ところで,前記4(5)オ(カ),カ(オ)及び(カ)のとおり,乙27発明及び乙28発明においては,不燃物と流動媒体を分別した後に流動媒体をエレベータを用いて流動層炉内に戻す構成がそれぞれ開示されている。そうすると,本件第1特許権の特許出願日及び優先権主張日の当時において,上記構成要件2F@及びAの技術は当業者において既に周知になっていたと評価することができる。また,相違点1,1’及び2については,前記4(5)ク及び(6)のとおりである。
したがって,乙1発明に乙23発明と乙27発明,乙28発明若しくは周知技術を組み合わせることにより,又は乙1発明に周知技術を組み合わせることにより,当業者において,出願当時に本件発明2@を容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明(同審決では甲7)に乙27発明(同審決では甲11)及び周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明2@(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙67)。
したがって,本件発明2@も,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
エ 訂正請求について なお,原告は,平成17年1月17日付で,本件発明2@につき,「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」なる構成要件を加える訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲33の1,乙21,67)。
しかし,本件第1特許権の出願日及び優先権主張日よりも前である昭和60年5月30日に頒布された刊行物である特開昭60-96823号公報(乙2)の特許請求の範囲中には「上記流動層焼却部での焼却処理を400〜600℃の比較的低温下で部分酸化方式により行い」と記載され(1頁左欄7行ないし9行),2頁右下欄19行ないし3頁左上欄3行に,「燃焼不適ごみ1が供給機2を経たのち流動焼却炉3内へ投入され,次いで流動層4内で空気吹込み管5から導入される,理論燃焼空気量より少ない空気と接触し,400℃〜600℃の温度下で部分燃焼方式により熱分解される。」と記載されている。
同様に,前記4(5)カのとおり,乙第28号証の47頁では,左欄4行ないし6行で「紙,プラスチック等都市ごみを構成する物質の熱分解温度は400℃以下であり,十分余裕をみて下限を600℃に設定した。」と,表1「燃焼領域の分担機能」の流動層の温度欄で「600〜700℃」と,48頁左欄8行及び9行で「焼却炉へ供給されたごみは,炉床で600〜700℃に熱された砂と一緒に旋回しながらガス化,燃焼し,」とそれぞれ記載されている。
さらに,前記4(5)キ(イ)のとおり,乙30発明では,流動層の温度条件を500℃ないし600℃としてガス化することが開示されている。
そうすると,流動層の温度を450℃ないし650℃に維持することは,当業者が周知技術に基づいて容易に設定し得た設計的事項にすぎない。したがって,この温度条件を特許請求の範囲に加える訂正を行ったとしても,やはり本件発明2@は,進歩性を欠き,これに係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものであることには変わりはない。
(2) 本件発明2Aの進歩性の有無について 本件発明2Aは,本件発明2@の構成要件に加えて,構成要件2DA(前記流動層炉は,流動層温度を450℃〜650℃に維持されること。乙1発明との相違点4)を有する(なお,原告が,本件発明2@の特許請求の範囲に本件発明2Aに係る「流動層温度を450℃〜650℃に維持し」なる構成要件を加える訂正を行ったため(ただし,未確定である。),訂正後の本件発明2@は訂正前の本件発明2Aと実質的に同じものとなった。)。
しかしながら,前記(1)エのとおり,上記構成要件2DAは当業者が周知技術に基づいて容易に設定し得た設計的事項にすぎないから,本件発明2Aは進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
6 争点(14)(本件発明3に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について (1) 本件発明3と乙1発明との対比 本件発明3と乙1発明との相違点は次の2点であり,その余の点は一致する。
ア 相違点5 本件発明3では,「該流動層炉は,質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段と,質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する流動化ガス供給手段を備え」(構成要件3B@),「該質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と,該質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段から供給される流動化ガスはともに空気とし」(構成要件3BA),「該流動化ガスを該炉内に供給して該炉内に流動媒体の循環流を形成し」ている(構成要件3BB)のに対し,乙1発明にはこれらのような構成がない点 イ 相違点6 本件発明3では,「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し,該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」ているのに対し(構成要件3F@),乙1発明にはこのような構成が明示されていない点 (2) 本件発明3の進歩性の有無について 上記相違点5は,前記4(5)及び(7)と同様に,乙23発明等において開示されているか,又は当業者の周知技術にすぎない。すなわち,構成要件3B@及びBは,乙22ないし乙24,乙26及び乙27発明において開示されているか又は当業者の周知技術にすぎない。そして,流動層に吹き込む流動化ガスとして空気を用いること(構成要件3BA)は,乙22,乙23,乙26及び乙27発明で開示されているか(前記4(5)ア(ア),(カ),イ(ウ),エ(イ),(ウ),オ(エ))又は当業者の周知技術にすぎない。
一方,構成要件3F@は,本件発明2@の構成要件2F@及びAと同一内容のものであるから,前記(1)の相違点6は,本件発明2@に関する相違点3と実質的に同一の相違点である。そうすると,前記5(1)のとおり,相違点6も,乙27発明,乙28発明で開示されているか,又は当業者の周知技術にすぎない。
以上のとおり,本件発明3は,乙1発明に乙23発明と乙27発明,乙28発明又は周知技術を組み合わせることにより,あるいは乙1発明に周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明(同審決では甲2)に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明3(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙68)。
したがって,本件発明3は,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(3) 訂正請求について なお,原告は,平成17年2月21日付で,本件発明3につき,「該流動化ガスを該炉内に供給し」を「該流動化ガスを炉内に供給し」に改め,「ガス化してガスとチャーを生成し」を「循環流中でガスとチャーを生成し」に改める旨の訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲35,乙68)。
しかし,これらの訂正を加えても,本件発明3に進歩性があるとはいい難く,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第2特許権に係る特許を無効と判断していること(乙68)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
7 争点(15)(本件発明4@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について (1) 本件発明4@と乙1発明との対比 ア 本件発明4@の内容 本件発明4@に係る請求項1では,「流動層の温度を450〜650℃に維持し,抑制された燃焼反応が継続されるようにし,」(構成要件4DA,4E)とあるから,「抑制された燃焼反応が継続」は流動層の温度維持等の結果ないし目的に相当する。
本件明細書3中の【発明の詳細な説明】には,次の記載がある。
(ア) 【産業上の利用分野】(4頁19行ないし22行) 「【0001】本発明は,流動層炉において可燃物をガス化し,(中略)する方法及び装置に関する。」 (イ) 【作用】(10頁37行ないし44行) 「【0022】(中略)本発明においては,流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので,流動層炉を低空気比低温度(450〜650℃)とし,発熱を最小限に抑えて,ゆるやかに燃焼させることにより,可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ,ガス,タール,チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる」 (ウ) 11頁17行ないし25行 「【0024】移動層において揮発分が失われ加熱された可燃物,即ち,固定炭素(チャー)やタール分等は,次に流動層内へ循環され,流動層内の比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスと接触し燃焼され,燃焼ガス及び灰分に変わると共に炉内を450〜650℃に維持する燃焼熱を発生する。この燃焼熱により流動媒体が加熱され,加熱された流動媒体が炉周辺部上方で炉中央部へ転向され移動層内を下降することにより移動層内の温度を揮発分のガス化に必要な温度に維持する。可燃物が投入される炉中央部ほど低酸素状態であるので,高い可燃分を有する生成ガスを発生することができる。また,可燃物中の金属が不燃物取出口から未酸化の有価物として回収することができる。」 (エ) 【実施例】(13頁4行及び5行) 「【0035】流動化ガス全体の空気量が,可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ,炉内は,還元雰囲気とされる。」 (オ) 13頁13行ないし22行 「【0037】移動層9の上部へ投入された可燃物11は,流動媒体と共に移動層9中を下降する間に加熱され,その揮発分がガス化する。移動層9中でガス化されなかったチャー及びタール並びに一部の揮発分は,流動媒体と一緒に中間層9’及び流動層10へ移動し,部分的にガス化し部分的に燃焼される。中間層9’でガス化されない主としてチャー及びタールは,流動媒体と共に,炉周辺部の流動層10内へ移動し,比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8中で燃焼される。流動媒体は,流動層10中で加熱され,移動層9へ循環し,移動層9中の可燃物を加熱する。中間層の酸素濃度については,可燃物の種類(揮発分が多いか,チャー,タール分が多いか)等により,酸素濃度を低くしてガス化を主体にするか,酸素濃度を高くして酸化燃焼を主体にするかが選定される。」 これらの本件明細書3の各記載によれば,構成要件4Eにいう「抑制された燃焼反応」は,酸化燃焼に十分な酸素量を供給せず(低酸素状態,還元雰囲気),流動層炉中の可燃物を完全に酸化燃焼させず,その一部のみを酸化燃焼させて,燃焼による発熱を他の廃棄物の加熱・ガス化に利用するというものであるということができる。
イ 乙1発明の内容 他方,乙1発明について次の事実が認められる(乙1)。
(ア) 乙1発明に先立つ従前の技術においては,「プラスチツクのような発熱量の高い原料は燃焼に必要な空気量が極めて多く流動化に必要なガス量を遥かに越えるので,流動層の塔径を必要以上に過大に設定せねばならず不経済となる。」(発明の詳細な説明,2欄10行ないし14行)という課題があったので,「部分燃焼法などを用いて解決」(3欄5行及び6行)が図られていたが,「部分燃焼法」によっても解決しがたい課題を解決するために乙1発明の「発明者らは,上述の問題点を解決するために研究を重ね,本発明の技術的思想創作された」(3欄19行及び20行)。
(イ) 乙1発明の流動層炉の作用においては,「都市ごみ,スラジなどの原料は原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給され,流動層3内で部分燃焼によつて残部が加熱されて熱分解される。」(5欄2行ないし5行)。
(ウ) よって,乙1発明における「部分燃焼」においても,酸化燃焼に十分な酸素量を供給せず(低酸素状態,還元雰囲気),流動層炉中の可燃物を完全に酸化燃焼させずに,その一部のみを酸化燃焼させて,燃焼による発熱を他の廃棄物の加熱・ガス化に利用しているということができる。
ウ 対比 前記ア及びイのとおり,構成要件4Eにいう「抑制された燃焼反応」も,乙1発明にいう「部分燃焼」も,酸化燃焼に十分な酸素量を供給せず,流動層炉中の可燃物を完全に酸化燃焼させずに,その一部のみを酸化燃焼させて,燃焼による発熱を他の廃棄物の加熱・ガス化に利用することを意味するのであって,両者は同義であると解される。よって,構成要件4Eは本件発明4@と乙1発明との相違点とはいえない。なお,本件明細書3中にも,上記のとおり,「ゆるやかに」(10頁42行,17頁10行)とあるのみであって,十分な酸素のある酸化燃焼の場合に比して燃焼速度が小さいことを意味しているにすぎないと解されるし,乙1発明の流動層炉においても,供給する酸素量を減少させることで,十分な酸素のある酸化燃焼の場合に比して燃焼速度が小さくなることもあり得ると考えられるから,乙第1号証に燃焼速度を小さくする旨の明示の記載部分がないとしても,前記結論を左右するものではない。
そのほかに,本件発明4@と乙1発明には,次のとおりの相違点があり,その余の点は一致する。
(ア) 相違点7 本件発明4@では,「炉内に上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流を有する流動層炉を備え,」(構成要件4B@)ているのに対し,乙1発明では,「流動層炉内の流動媒体を流動化させて流動層を形成し」(構成(イ))ている点 (イ) 相違点8 本件発明4@では,「流動媒体が上昇する流動層の温度を450℃〜650℃に維持し」ている(構成要件4DA)のに対し,乙1発明ではこのような温度条件について明示されていない点 (2) 本件発明4@の新規性の有無について 前記4(4)のとおり,乙1発明では「循環流」が開示されていないから,相違点7は解消されない。
そうすると,本件発明4@には新規性がないとはいえない。
(3) 本件発明4@の進歩性の有無について ア 相違点について 前記4(6)と同様に,相違点7は乙23発明等によって開示されている。
また,前記5(1)エと同様に,相違点8は当業者が周知技術に基づいて容易に設定し得た設計的事項にすぎない。
そうすると,本件発明4@も,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明(同審決では甲3)に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明4@(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明4@は進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
イ 訂正請求について なお,原告は,平成17年2月21日付で,本件発明4@につき,「流動媒体の循環流を有する」を「流動媒体の循環流を形成し,該循環流を有する」に改め,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し」を「該廃棄物を循環流中でガスとチャーを生成し」に改める訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲37,乙69)。しかし,前者の訂正は記載の明瞭化の域を超えるものではないし,これらの訂正を加えても,本件発明4@に進歩性があるとは言い難く,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第3特許権に係る特許を無効と判断していること(乙69)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
(4) 本件発明4Aの進歩性について ア 本件発明4Aと乙1発明との対比 本件発明4Aは,本件発明4@の構成要件に加えて,構成要件4BA(前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること)を有する。
本件発明4Aと乙1発明とを対比すると,本件発明4Aでは,「前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成される」(構成要件4BA)のに対し,乙1発明では,このような付加的限定がない点(相違点9)並びに本件発明4@との相違点7及び8で相違し,その余の点は一致する。
イ 相違点について 相違点9については,本件発明1Bに係る相違点1’’(前記4(7))と実質的に同一であり,乙23発明等によって開示されている。
そうすると,本件発明4Aも乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件4BAは本件第3特許権の出願前に当業者に周知の技術であり,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明4A(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明4Aは,進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(5) 本件発明4Bの進歩性について ア 本件発明4Bと乙1発明との対比 本件発明4Bは,本件発明4@又はAの構成要件に加えて,構成要件4BB(前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること)を有する。
本件発明4Bと乙1発明とを対比すると,本件発明4Bでは「前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給する」(構成要件4BB)のに対し,乙1発明ではこのような付加的限定がない点並びに本件発明4@又はAとの相違点7ないし9で相違し,その余は一致する。なお,前記4(1)ケのとおり,乙第1号証には「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通つて砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。」との記載があり,また,その5欄41行ないし43行には,「流動層熱分解炉2に供給する空気はブロワ21により熱交換器19を介して昇温されてガス入口4に供給される。」との記載があるから,乙1発明において構成要件4BBが開示されており,本件発明4Bとの相違点とはならないと解することもできる。
イ 相違点について 前記6(2)と同様に,構成要件4BBは,乙22発明等で開示されているか,又は当業者の周知技術にすぎない。そうすると,前記(3)及び(4)と同様に,本件発明4Bは,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件4BBは,乙1発明が具備する構成にすぎず,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明4B(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明4Bは進歩性を欠き,これに係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。
8 争点(16)(本件発明5に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について (1) 本件発明5と乙1発明との対比 本件発明5は,いわゆる独立請求項の形式で記載されているものの,その構成は,本件発明4@ないしBをまとめたものにすぎない。すなわち,構成要件5Aは構成要件4Aに,構成要件5B@及びAは構成要件4B@ないしBに,構成要件5D@及びAは構成要件4D@及びAに,構成要件5Eは構成要件4Eに,構成要件5Fは構成要件4Fにそれぞれ相当する。そして,本件発明5は,本件発明4@の構成要件に加えて,後者が構成要件5B@及びAを有する点で相違しているが,構成要件5B@は本件発明4Bの構成要件4BBに実質的に同一であり,構成要件5BAは本件発明4Aの構成要件4BAと実質的に同一である。
よって,本件発明5と乙1発明との一致点及び相違点は,本件発明4A又はBにおけるのと同様である。
(2) 本件発明5の進歩性の有無について したがって,本件発明5は,前記7のとおり,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明5(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明5は進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(3) 訂正請求について なお,原告は,平成17年2月21日付で,本件発明5につき,「流動化ガスにより形成される」を「流動化ガスを供給することにより形成される」に改め,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し」を「該廃棄物を循環流中でガスとチャーを生成し」に改める訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲37,乙69)。しかし,前者の訂正は記載の明瞭化の域を超えるものではないし,これらの訂正を加えても,本件発明5に進歩性があるとは言い難く,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第3特許権に係る特許を無効と判断していること(乙69)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
9 争点(17)(本件発明6@ないしBに係る特許が無効にされるべきものか否か)について (1) 本件発明6@と乙1発明との対比 本件発明6@は,独立請求項の形式で記載されているが,本件発明4@にはない構成要件6E「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」がある以外は,本件発明4@と実質的に同一である。
本件発明6@と乙1発明とを対比すると,本件発明6@では,「生成されたチャーの一部を流動媒体が上昇する流動層で燃焼させ」(構成要件6E)という構成要件があるのに対し,乙1発明ではそのような構成が明示されていない点(相違点11)並びに本件発明4@との相違点7及び8で相違し,その余の点は一致する。
(2) 本件発明6@の新規性の有無について 本件発明4@におけるのと同様に,乙1発明では「循環流」が開示されていないから,本件発明6@が新規性を欠くとはいえない。
(3) 本件発明6@の進歩性の有無について ア 相違点について 前記4(5)クと同様に,乙1発明に乙23発明又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において,相違点11の構成を容易に想到することができる。また,相違点7については前記7(3)ア及び4(6)のとおり,相違点8については前記7(3)ア及び5(1)エのとおりである。
そうすると,本件発明6@も,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明6@(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明6@は進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
イ 訂正請求について なお,原告は,平成17年2月21日付で,本件発明6@につき,「流動媒体の循環流を有する」を「流動媒体の循環流を形成し,該循環流を有する」に改め,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し」を「該廃棄物を循環流中でガスとチャーを生成し」に改める訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲37,乙69)。しかし,前者の訂正は記載の明瞭化の域を超えるものではないし,これらの訂正を加えても,本件発明6@に進歩性があるとは言い難く,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第3特許権に係る特許を無効と判断していること(乙69)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
(4) 本件発明6Aの進歩性の有無について 本件発明6Aは,本件発明6@の構成要件に加えて,構成要件6BA(前記上昇する流動媒体と沈降する流動媒体からなる流動媒体の循環流は,質量速度が比較的大きい流動化ガスと質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成されること)を有する。
本件発明6Aと乙1発明とを対比すると,本件発明6@と乙1発明との相違点7,8及び11に加え,構成要件6BAが加えられた点において相違し,その余の点は一致する。
前記4(7)と同様に,本件発明6Aの構成要件6BAは,乙23発明等で開示されており,あるいは当業者の周知技術ということもできるのであって,乙1発明にこれらの構成を付加することは,当業者にとって容易である。また,相違点7については前記7(3)ア及び4(6)のとおり,相違点8については前記7(3)ア及び5(1)エのとおり,相違点11については前記4(5)クのとおりである。
そうすると,本件発明6Aは,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件6BAは本件第3特許権の出願前に当業者に周知の技術にすぎず,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明6A(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明6Aは進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
(5) 本件発明6Bの進歩性の有無について 本件発明6Bは,本件発明6@又は6Aの構成要件に加えて,構成要件6BB(前記流動層炉内には流動化ガスとして空気を供給すること)を有する。
構成要件6BBは,構成要件4BBと同じであるから,本件発明4Bにおけるのと同様に,構成要件6BBは,乙22発明等で開示されているか,当業者の周知技術にすぎないものであり,あるいは乙1発明との一致点である。
そうすると,本件発明6Bも,本件発明6@又はAと同様の理由(前記(3)及び(4))により,当業者において容易に想到できたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件6BBは乙1発明で具備された事項にすぎず,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明6B(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明6Bは進歩性を欠き,これに係る特許は,特許無効審判により無効にされるべきものである。
10 争点(18)(本件発明7に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について (1) 本件発明7と乙1発明との対比 本件発明7は,構成要件7E「生成されたチャーの一部を質量速度の比較的大きい流動化ガスによって流動化される流動層で燃焼させ」がある以外は,本件発明5と実質的に同一である。
よって,本件発明7と乙1発明とは,本件発明5との相違点に加え,構成要件7Eを具備する点において乙1発明と相違する。
(2) 相違点について 構成要件7Eは,本件発明6@の構成要件6Eと実質的に同一であるが,前記4(5)クのとおり,当業者において,乙1発明に乙23発明又は周知技術を組み合わせることで,流動層炉の流動層の循環流中で廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し,チャーを微粒子化する構成を容易に想到することができるといい得るから,同様に構成要件7Eも当業者において容易に想到することができるといい得るものである。
そうすると,本件発明7も,本件発明6@と同様に,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明7(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明7は進歩性を欠き,これに係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。
(3) 訂正請求について なお,原告は,平成17年2月21日付で,本件発明7につき,「流動化ガスにより形成される」を「流動化ガスを供給することにより形成される」に改め,「該廃棄物をガス化してガスとチャーを生成し」を「該廃棄物を循環流中でガスとチャーを生成し」に改める訂正請求を行い,訂正を認める旨の審決がされていること(未確定)が認められる(甲37,乙69)。しかし,前者の訂正は記載の明瞭化の域を超えるものではないし,これらの訂正を加えても,本件発明7に進歩性があるとは言い難く,また特許庁がかかる訂正請求を認めながら本件第3特許権に係る特許を無効と判断していること(乙69)にもかんがみると,かかる訂正をすべき旨の審決が確定したとしても,上記の無効の結論を左右するものではない。
11 争点(19)(本件発明8に係る特許が無効にされるべきものか否か(進歩性の有無))について 本件発明8は,本件発明4@ないしB,5,6@ないしB又は7と構成要件8F(前記熔融炉は,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを備えたこと)を除いて同じであることから,これらの各発明との相違点に加え,構成要件8Fを具備する点において,乙1発明と相違する。
本件第3特許権の出願日及び優先権主張日よりも前に頒布された刊行物である乙第1号証中には,「空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通つて砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。熱分解により生成したチヤーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは,全て塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て,空気エジエクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によつて,吸引加速され,空気とガスとの混合ガスはサイクロン燃焼炉11に接線方向に高速で送られ,」(5欄6行ないし14行)との記載があり,またその中の第1図中には,サイクロン燃焼炉がノズルを有する空気エジェクタ9が開示されているから,空気を炉の外部から導入して混合するノズルの構成が開示されている。
また,本件第3特許権の出願日及び優先権主張日よりも前である平成2年7月18日に頒布された刊行物である特開平2-183711号公報(乙54)中には,燃焼用空気として酸素富化空気を用い,これを竪型炉内に上向きに吹き込んで旋回流を形成させること(1欄左欄4行ないし8行,2頁右上欄7行ないし10行)が記載されているほか,昭和55年3月26日に頒布された刊行物である特開昭55-43135号公報(乙55)中にも純酸素又は酸素富化空気を吹き込む旨の記載(1欄9行及び10行)などがあり,乙第56号証ないし乙第58号証にも同趣旨の記載がある。そうすると,酸素又は酸素と空気の混合気体を供給するノズルを具備するとの上記構成要件8Fは,本件第3特許権の出願当時に既に当業者において周知技術となっていたものということができる。
したがって,前記7ないし10のとおり,本件発明4ないし7がいずれも進歩性を欠くことにもかんがみると,本件発明8も,乙1発明に乙23発明等又は周知技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものである。
なお,特許庁も,特許無効審判請求事件の審決において,構成要件8Fは本件第3特許権の出願前に当業者に周知の技術にすぎず,乙1発明に周知技術を適用することにより,当業者において容易に本件発明8(ただし,訂正後のもの)をすることができた旨判断している(乙69)。
したがって,本件発明8は進歩性を欠き,これに係る特許は特許無効審判により無効にされるべきものである。
12 結論 以上の次第で,被告製品の構成が本件各発明の技術的範囲に属するとはいえず,かつ,本件各発明はいずれも進歩性を欠き,本件各発明に係る特許はいずれも特許無効審判によって無効にされるべきものであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がない。よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 部眞規子
裁判官 中島基至
裁判官 田邉実
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