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関連審決 不服2005-11606
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成21行ケ10015審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  創作性(創作) /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  発明特定事項 /  一致点の認定 /  周知技術 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  名義変更 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  構成要件 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 21年 (行ケ) 10090号 審決取消請求事件
原告 X
訴訟代理人弁理士木下茂
同 石村理恵
同 上野晋
被告特許庁長官
指定代理人相田義明
同 松田直也
同 岩崎伸二
同 酒井福造
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/10/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2005-11606号事件について平成21年2月20日にした審決を取り消す。
第2事案の概要1本件は,発明の名称を「生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法」とする後記特許の出願人である原告が,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をし,平成17年6月20日付けでも特許請求の範囲等の変更を理由とする補正をしたところ,特許庁が上記補正を却下した上,請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
2争点は,?@上記補正後の発明(本願補正発明)が下記刊行物1との関係で独立特許要件(進歩性,特許法29条2項)を有するか,及び,?A審判手続の違法性の有無,である。
記・刊行物1:特開2003-44666号公報(発明の名称「生活情報提供システム及び生活情報提供方法 ,出願人 住友生命保険相互会社, 」公開日 平成15年2月14日。以下この文献を「刊行物1」といい,そこに記載された発明を「引用発明」という。甲1)第3当事者の主張1請求原因( )特許庁における手続の経緯1原告は,平成15年3月11日,名称を「生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法」とする発明につき特許出願(特願2003-64295号。請求項の数7。以下「本願」という。甲5。公開公報は特開2004-272720号)をし,平成17年4月28日付けで特許請求の範囲等を変更する手続補正(請求項の数5。以下「第1次補正」という。甲7)をしたが,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2005-11606号事件として審理し,その中で原告は平成17年6月20日付けで特許請求の範囲変更等を内容とす(。「」。,) る手続補正 第2次補正 以下 本件補正 という 請求項の数5 甲11をしたが,特許庁は,平成21年2月20日,本件補正を却下した上 「本,件審判の請求は,成り立たない 」との審決をし,その謄本は同年3月5日 。
原告に送達された。
( )発明の内容2ア第1次補正時第1次補正時(平成17年4月28日)の請求項は前記のとおり1〜5から成るが,そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願発明」という)は,下記のとおりである。
記「 請求項1】生命保険に加入した被保険者の子供に対して奨学金を支 【給する生命保険加入者のための奨学金支給処理システムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報を入力する入力手段と,前記入力手段によって入力された,前記いずれかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づいて,被保険者の死亡時,高度障害に至った時,介護が必要になった時のいずれかの時に,子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索すると共に,子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部と,, , 前記演算処理部における検索の結果 就学している子供がいる場合に前記被保険者の保険契約情報に記録された該子供の氏名,住所,及び該子供に対する奨学金支給の案内状を少なくとも出力する印刷部及び/または表示部とを備えていることを特徴とする生命保険加入者のための奨学金支給処理システム 」。
イ本件補正時本件補正時(平成17年6月20日)の請求項は前記のとおり1〜5から成るが,そのうち請求項1に係る発明の内容(以下「本願補正発明」という)は,下記のとおりである(下線は補正箇所 。)記「 請求項1】生命保険に加入した被保険者の子供に対して保険会社が 【奨学金を支給する,生命保険加入者のための奨学金支給処理システムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報を入力する入力手段と,前記入力手段によって入力された,前記いずれかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づいて,被保険者の死亡時,高度障害に至った時,介護が必要になった時のいずれかの時に,子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索すると共に,子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部と,前記演算処理部における検索の結果,就学している子供がいる場合に,前記被保険者の保険契約情報に記録された該子供の氏名,住所,及び該子供に対する奨学金支給の案内状を少なくとも出力する印刷部及び/または表示部とを備えていることを特徴とする生命保険加入者のための奨学金支給処理システム 」。
( )審決の内容3ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,?@本願補正発明は,その出願前に頒布された上記刊行物1に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから特許法29条2項により特許出願の際に独立して特許を受けることができず,本件補正は却下すべきものである,?A本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
イなお,審決は,上記判断をするに当たり,引用発明の内容を次のとおり, ,。 認定したほか 本願補正発明との一致点及び相違点を 次のとおりとした〈引用発明の内容〉「生命保険の契約時や保全変更時などに被保険者から取得した情報に基づいて,生命保険加入者及びその家族の生活環境に必要な情報(生活情報)を適切に提供することを目的としたシステムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,保全変更情報を入力する手段と,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部と,被保険者又はその家族の生活環境に必要と思われる情報を取得して,Web上で又は郵送により提供する手段を備えた,生命保険加入者のための生活情報提供システム 」。
〈一致点〉本願補正発明と引用発明とは,「生命保険に加入した被保険者又はその家族に必要な情報を提供するための処理システムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,被保険者の契約条件又は契約形態の変更情報(保全変更情報)を入力する手段と,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部と,被保険者又はその家族の生活環境に必要と思われる情報を取得して,出力する印刷部とを備えた生命保険加入者のための情報提供システム 」。
である点で一致する。
〈相違点1 (審決にいう(ア)と(a ) 〉 )入力される「被保険者の契約条件又は契約形態の変更情報(保全変更情報 」が,本願補正発明では 「死亡保険金給付,高度障害時における ),保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報」であり,印刷して提供する情報が 「被保険者の子供に対 ,する奨学金支給の案内状」であるのに対し,引用発明においては 「保,全変更情報」については 「保全変更とは,契約時以降に発生した住所 ,変更名義変更などの契約条件の変更であり,さらには,保険金や保険料の減額や解約などの契約形態の変更も含めている 」とされているに 。
とどまり,印刷される情報は 「保険者又はその家族の生活環境に必要 ,と思われる情報」とされているものの,奨学金支給の案内状については記載がない点。
〈相違点2 (審決にいう(イ)と(b ) 〉 )本願補正発明では 「子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から ,検索すると共に,子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部」を備えているのに対し,引用発明では 「処理部」については,入力された ,保全変更情報に基づいて被保険者又はその家族の個人情報から必要な情報を検索する機能と,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能を備えることが理解できるにとどまり 「入力手段によって入力された,前記いず ,れかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づいて,被保険者の死亡時,高度障害に至った時,介護が必要になった時のいずれかの時に,子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索すると共に,子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部」を備えていない点。
( )審決の取消事由4しかしながら,以下に述べるとおり,審決が,本願補正発明について進歩性を欠き独立特許要件がないとして本件補正を却下したのは誤りであり(取消事由1〜4 ,審判手続にも法に定める手続に違背した瑕疵がある(取消 )事由5)から,審決は取り消されるべきである。
ア取消事由1(引用発明認定の誤り)(ア)審決は,引用発明の内容につき,上記(3)イのとおり認定した。しかし,下記?@〜?Bの内容を見落としている。
引用発明の記載された刊行物1(甲1)には 「 発明の属する技術分 ,【野】本発明は,顧客に対して居住地域に関する生活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法… (段落【0001 )と記載されてい 」】るように,?@引用発明は「居住地域に関する生活情報を提供する生活情報提供システム」に関する発明である。
また,刊行物1には「…顧客1は…登録内容を確認した後 『家族全 ,員』か『本人』か『配偶者』かなど,誰の情報を表示させるかを選択する… (段落【0044 )と記載されている。即ち,?A引用発明の処理 」】部は,選択された被保険者又はその家族に関して,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索するものである。
さらに刊行物1には …郵送によって情報送付を希望する場合は郵 「 ,『』, 。」 送希望 ボタンを押して 新住所の郵送先を確認して処理を完了する(段落【0045 )と記載されている。即ち,?B引用発明はWeb上 】の「郵送希望」ボタンを押すことにより情報が郵送されるものである。
そうすると,引用発明の内容は上記?@〜?Bの内容により,以下のとおり認定されるべきである(下線は審決の認定と異なる上記?@〜?Bの箇所 。)「生命保険の契約時や保全変更時などに被保険者から取得した情報に基づいて,生命保険加入者およびその家族の居住地域に関する生活情報を提供するシステムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,保全変更情報を入力する手段と,選択された被保険者又はその家族に関して,入力された保全変更情報に基づいて,その者の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部と,被保険者又はその家族に必要と思われる居住地域に関する生活情報を取得して,Web上で表示,又はWeb上の「郵送希望」ボタンを押すことにより郵送で生活情報を提供する手段とを備えた生命保険加入者のための生活情報提供システム」(イ)また,審決は,刊行物1(甲1)の段落【0050】に「…保全変更に関連する最適な生活情報を提供する場合について述べたが,これに限るものではない。例えば,契約時の顧客情報に基づいて顧客に提供できるような情報があれば,どのような時点であっても随時に情報提供サービスを行うことができる。例えば,子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。
…」と記載されていることから 「…引用発明においても,被保険者の ,子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる(審決1。」1頁7行〜9行)とした。
しかし,甲1の上記段落【0050】には 「…子供の進学年齢毎に ,国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもでき,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。
…」との記載があるのみで,その具体的な手段ないし構成については何ら記載されていない。
しかも,甲1の段落【0035】〜【0038】の記載から明らかなように,引用発明は被契約者の保全変更情報の入力の受付けを契機に動作する,居住地域に関する生活情報を提供するシステムである。
そうすると,審決が認定したように「引用発明に被保険者の子供の年齢を契約時の年齢又は誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備えられていた」としても,引用発明が被契約者の保全変更情報の入力の受付けを契機に動作する以上,被契約者の保全変更情報が入力されない限り,子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示できず,また家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示できないから,引用発明にあっては,中学校や高校や大学の各種案内やお祝いのメッセージを適切な時期に受けることができない。そこからすると,甲1の段落【0050】における,引用発明が中学校や高校や大学の各種案内を表示し,あるいは家族や子供の誕,, 生日毎にお祝いのメッセージなどを表示するとの記載は 単なる可能性ないし願望,希望が示されているに過ぎず,具体的な発明として開示されているものではない。これを根拠として 「引用発明においても,被 ,保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期。」 が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる(11頁7行〜9行)とした審決の認定は誤りである。
イ取消事由2(一致点認定の誤り)(ア)審決は,本願補正発明の「申請情報,給付完了情報」と引用発明の「保全変更情報」とが一致するものと認定した。
しかし,本願補正発明における「死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報」は保険金の支払いを実行するための契約履行情報であり,また「死亡保険金給付,高度, 」 障害時における保険金給付 介護保険金給付のいずれかの給付完了情報は保険金の支払いが完了した契約履行完了情報である。
一方,刊行物1(甲1)には 「保全変更情報」について 「…契約時 , ,における顧客の個人情報や家族情報などと,その後の保全変更情報とを有効に活用して,該当する顧客への生活情報の提供サービスを行うことにより,これらの顧客の契約継続性を一段と向上させることができる。
… (段落【0028 )と記載され,また「…保全変更は,契約内容を 」】間違いのないように継続させるためにのみ行うものである,という従来の考え方を変革し,顧客の維持・拡大のために,保全変更情報に基づいて顧客へ生活情報を還元するという認識に立って,保全変更を顧客ロイヤリティの向上に利用するものである(段落【0029 )と記載さ 。」】れている。
上記「保全変更情報を活用してなされる顧客への生活情報の提供サービスが顧客の契約継続性を向上させ,顧客の維持・拡大を図るものである」との記載からして,刊行物1に記載された「保全変更情報」は,契約継続性が前提とされる,契約途中の住所,名義などの変更情報をいうものである。
したがって,刊行物1に記載された「保全変更情報」は,契約継続性が前提とされる変更情報であるのに対して,本願補正発明における「申請情報,給付完了情報」は契約が終了する「契約履行情報あるいは契約履行完了情報」であり,本質的に異なる情報である。
(イ)よって,審決が,本願補正発明における「死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報」も,契約条件又は契約形態の変更をもたらす「」 , 情報であるから引用発明の 保全変更情報 ということができるとしてこれを一致点と認定したのは誤りである。
ウ取消事由3(周知技術認定の誤り)審決は,相違点1における判断において 「刊行物2〜4の上記記載か ,ら,保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていたものと認められる(1。」4頁4行〜6行)と認定した。
しかし,甲2〜4(審決の刊行物2〜4)の記載から,保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが,本願の出願日において周知になっていたとは認められず,審決の周知技術の認定は誤りである。
(ア)甲2(三井海上火災保険株式会社広報室「ディスクロージャー誌三井海上の現状2001 ,平成13年8月発行。以下「刊行物2」と 」いう )の19頁右欄18行〜24行に記載された「奨学金給付費用保 。
険」は 「学校法人等が扶養者の死亡・失業等の事故により経済的な事 ,情から在籍が困難になった学生・生徒に対して,必要な奨学金(学費相) 」 当分 を給付することにより負担する費用に対して保険金が支払われるものである。
即ち,保険会社は学生・生徒に対して奨学金を支給するものでなく,しかも保険会社は保険契約の履行として,学校法人に対して保険金を支払うに過ぎず,奨学金支給の支援をするものでもない。
したがって,刊行物2に,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが記載されているとは認められない。
(イ)甲3(安田火災海上保険株式会社広報部広報課「安田火災の現状」,。,「」 ディスクロージャー2001平成13年7月発行 以下刊行物3という )の31頁右下欄には 「安田火災環境財団の活動平成11年 。,4月に設立した安田火災環境財団では,環境問題の解決に資する団体の支援や人材育成支援等を行っています。平成12年度には,環境CSO(市民社会組織:NPOと同義)での体験を希望する学生を公募,選抜, 『 』 し 活動実績に応じて奨学金を支給する CSOラーニング奨学金制度をスタートし,日本野鳥の会などの12団体に21名を派遣しました。
本制度は社員のボランティア組織である『ちきゅうくらぶ』からの寄付金が学生の奨学金として活用されているところが大きな特徴です 」と。
記載されている。
即ち,刊行物3に記載された奨学金は,社員のボランティア組織である「ちきゅうくらぶ」からの寄付金を活用して,安田火災環境財団が,学生を公募,選抜し,活動実績に応じて奨学金を支給するものであり,保険加入者とは何ら関係がなく,安田火災環境財団が独自に選抜した学生を対象に奨学金が支給される。
したがって,刊行物3に,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが記載されているとは認められない。
(ウ)甲4(日本興亜損害保険株式会社広報部「日本興亜損保の現状20」,〔〕。,「」。) 012001年 平成13年 8月発行 以下刊行物4 というの19頁左欄4行〜8行に,「 財)日本興亜福祉財団の活動 (高齢者福祉に関する諸活動と研究を通じて社会に貢献するため,平成3年,日本火災福祉財団(現名称:日本興亜福祉財団)を設立し,次のような活動を実施しています 」と記載され,また19頁左欄17行〜 。
22行には,「 介護福祉士を目指す学生への奨学金支給事業』 『活動開始以来,奨学金支給の対象となった学生は毎年20名,延べ207名にのぼり,卒業後,全国各地の特別養護老人ホーム,病院で活躍しています。返還義務なしの奨学金支給制度としては,当財団の支給額は全国のトップレベルにあり,大いに評価されます 」と記載されてい 。
る。
即ち,刊行物4に記載された奨学金は (財)日本興亜福祉財団が行 ,っている介護福祉士を目指す学生への奨学金支給事業であって,保険加入者とは何ら関係がなく (財)日本興亜福祉財団が独自に選抜した学 ,生を対象に奨学金が支給される。
したがって,刊行物4に,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが記載されているとは認められない。
(エ)以上のように,刊行物2〜4には,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることの記載は認められない。
よって,審決が保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが,本願の出願日において周知になっていた旨の認定は誤りである。
エ取消事由4(相違点についての判断の誤り)(ア)本願補正発明と引用発明とは,被保険者の保険契約情報に基づいて何らかの情報を提供するという技術的思想において一致する点があるが,発明が解決しようとする課題及び発明の構成要件(発明特定事項)において異なる。
引用発明の課題は,甲1の段落【0010【0051】に記載され 】,ているように 「顧客のロイヤリティ(契約内容に対する忠誠度)を高 ,めて,契約の継続性を向上させる」ことにある。一方,本願補正発明の課題は,生命保険に加入した被保険者の子供を対象として,迅速に奨学金を支給することにあり(甲5段落【0007,引用発明の課題とは 】)異なる。
(イ)また,本願補正発明は,生命保険に加入した被保険者の子供に対して保険会社が奨学金を支給する,生命保険加入者のための奨学金支給処理システムである。一方,引用発明は 「生命保険の契約時や保全変更 ,時などに被保険者から取得した情報に基づいて,生命保険加入者およびその家族の居住地域に関する生活情報を提供するシステム」であり,本願補正発明の奨学金支給処理システムと異なる。
(ウ)また,本願補正発明は 「死亡保険金給付,高度障害時における保 ,険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報を入力する入力手段」を備えている。一方,引用発明は 「保,全変更情報を入力する手段」を備えている。
この引用発明の「保全変更情報」は,契約継続性が前提とされる変更情報であるのに対して,本願補正発明における「申請情報,給付完了情報」は契約が終了する「契約履行情報あるいは契約履行完了情報」であり,本質的に異なる情報である。
したがって,本願補正発明にかかる「入力手段」と,引用発明にかかる「入力手段」とは異なる。
(エ)また,本願補正発明は,前記入力手段によって入力された,前記いずれかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づいて,被保険者の死亡時,高度障害に至った時,介護が必要になった時のいずれか, , の時に 子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索すると共に子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部を備えている。
一方,引用発明は,選択された被保険者又はその家族に関し,入力された保全変更情報に基づいて,その者の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部を備えている。
,, , ここで 本願補正発明にあっては 前記入力手段によって入力された前記いずれかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づい, 。 て 子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索するものであるこれに対して,引用発明にあっては,顧客が生活情報を必要とする被保険者又はその家族を選択し,選択した者の個人情報を検索し,その検索された者の生活情報を提供するものである。
このように引用発明にあっては,生活情報を必要とする者が選択される必要がある。
したがって,本願補正発明にあっては,情報を必要とする者を選択することなく,入力手段によって入力された申請情報または給付完了情報に基づいて,情報が必要な子供を特定する点において相違する。
更に,本願補正発明が「子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する」のに対して,引用発明が「被保険者の子供の年齢を契約時の年齢又は誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う手段が示されていない」点において相違する。
(オ)本願補正発明は,前記演算処理部における検索の結果,就学している子供がいる場合に,前記被保険者の保険契約情報に記録された該子供の氏名,住所,及び該子供に対する奨学金支給の案内状を少なくとも出力する印刷部及び/または表示部を備えている。
一方,引用発明は,被保険者又はその家族に必要と思われる居住地域に関する生活情報を取得して,Web上で表示,又はWeb上の「郵送希望」ボタンを押すことにより居住地域に関する生活情報を郵送することから,印刷手段を備えていることは認められる。
しかし,本願補正発明のように,就学している子供がいる場合に,前記被保険者の保険契約情報に記録された該子供の氏名,住所,及び該子供に対する奨学金支給の案内状を少なくとも出力する印刷部については,引用発明には開示されておらず,その点において相違する。
(カ)相違点の検討審決は 「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の ,支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである(14頁。」7行〜15行)と判断した。
しかし,本願の出願日において,上記のように保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることは周知ではなく,しかも生命保険に加入した被保険者の子供に対して,契約情報に基づいて保険会社が奨学金を支給すること自体,新規なものである。
したがって 「被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学 ,している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる 」とする認定判断は,保険会 。
社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっているという誤った認識の上でなされたものであり,誤りである。
しかも,上記認定判断において「保全変更事情」という文言が用いられているが,この保全変更事情とは,甲1〜4の如何なる記載から導き出されたものなのか明らかでない。
刊行物(甲1)において 「保全変更情報」という文言が記載されて ,,「」 ,, いるが 上記のように 保全変更情報 は 契約継続性が前提とされる契約途中の住所 名義などの変更情報であり 本願補正発明にかかる 死 , ,「亡保険給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれ,, , かの申請情報 または死亡保険金給付 高度障害時における保険金給付介護保険金給付のいずれかの給付完了情報」と異なるものである。
また,甲2〜4の記載は,そもそも保険加入者とは何ら関係がなく,奨学金が支給されるため,被保険者の重大な保全変更事情に関する記載はない。
したがって,審決の「奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられる」との認定判断は,証拠に基づくものではなく,本願補正発明を知った上で認識した,いわゆる後知恵ないし後付けの理論であり,誤りである。
また,本願補正発明は,上記のように,刊行物1(甲1)に記載された引用発明と異なる「発明が解決すべき課題」を有し,しかも,甲1に, 「」 開示 示唆されていない発明特定事項である 奨学金支給処理システム「入力手段 「演算処理部 「印刷部」を備えるものである。 」」しかも,前記甲2〜4のいずれにも,本願補正発明にかかる発明特定事項である「奨学金支給処理システム 「入力手段 「演算処理部 「印 」」」刷部」について,開示,示唆はない。更に,本願補正発明は,生命保険に加入した被保険者の子供を対象として,迅速に奨学金を支給することができるという格別な効果を奏するものである。
したがって,本願補正発明が進歩性を備える発明であることは明らかである。このように,本願補正発明は進歩性を備える発明であって特許法29条2項の規定に該当する発明ではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができる発明である。
よって,審決は,本願補正発明が独立して特許を受けることができないとの誤った認定判断によるものであり,違法として取り消されるべきである。
オ取消事由5(手続違背)本願発明は,刊行物1(引用発明,甲1)に基づいて容易に創作できたとして拒絶査定がされたが,拒絶査定において刊行物2(ディスクロージャー誌三井海上の現状2001 甲2 が補助資料として提示され… ,) ,「被保険者が死亡した際に,被保険者の子供の就学のために『奨学金』の情報が有益であることは,…周知の事項と認められる…」と認定された。
一方,審決においては 「刊行物2〜4の上記記載から,保険会社が奨 ,学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていたものと認められる (14頁4行〜6行) 」と認定され,さらに「…本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである… (14頁下3行 」〜下2行)とされた。
このように,拒絶査定においては本願補正発明は刊行物1(甲1)記載の引用発明に基づいて容易に創作できたとされていたものが,審決においては,上記引用発明及び周知技術(刊行物2〜4)に基づいて容易に創作できたとされている。
このように,本願補正発明の進歩性を否定する証拠が,刊行物1から,刊行物1及び周知技術(刊行物2〜4)に変更されたことからしても,拒絶査定時と異なる拒絶理由で拒絶の審決がなされたことは明らかである。
しかも,拒絶査定においては,上記のとおり,刊行物2(甲2)が補助資料として提示され 「…被保険者が死亡した際に,被保険者の子供の就 ,学のために『奨学金』の情報が有益であることは,…周知の事項と認められる…」とされた。これに対して,審決においては,新たに刊行物3,4(甲3,4)が提示され 「刊行物2〜4の上記記載から,保険会社が奨 ,学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていたものと認められる (14頁4行〜6行) 」としている。このように,拒絶査定時及び審決時において 「周知」とい ,う同一の文言が用いられているが,拒絶査定時における審査官の「周知」と審決時における審判官の「周知」とは,内容を異にするものである。したがって,拒絶査定と異なる拒絶理由で拒絶の審決がなされたことは明らかである。
上記のように,審決時における周知(周知技術)の内容は,拒絶査定時における周知の内容と異にするものであり しかも審決時に認定された 保 ,「険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をする」という周知技術は,拒絶査定の理由とはされていなかったものである。
したがって,特許法159条2項の準用する同法50条に基づいて上記内容の拒絶理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならなかったにもかかわらず,意見を述べる機会を与えることなくなされた審決は取り消されるべきである。
2請求原因に対する認否請求原因( )ないし( )の各事実は認めるが,同( )は争う。
13 43被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
( )取消事由1に対し1ア原告が引用発明の内容として認定すべきとする?@〜?Bの点につき(ア)確かに,原告が主張するように,刊行物1(甲1)の段落【0001】には,次の記載がある。
「 発明の属する技術分野】本発明は,顧客に対して居住地域に関する生活情 【報を提供する生活情報提供システム及びその方法に関し,特に,特定の契約者に対して,契約情報に基づいて生活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法に関するものである 」。
しかし,刊行物1の他の箇所には,次の記載がある(下線は被告が付記 。)・段落【0003】「 発明が解決しようとする課題】しかし,住民個々の生活情報をビジネス 【として提供するのではなく,ある取引契約を取り交わしている所定の顧客に対して,必要な生活情報をサービスとして提供することにより,取引されている契約内容の付加価値を高めることができる。例えば,取引されている契約内容に含まれる顧客の情報に基づいて,所望の顧客に対して必要, , な生活情報を提供するなどして 顧客の生活行動に役立てるようにすれば顧客への情報提供サービスという形で契約内容の付加価値を高めることができる。また,顧客側にとっても必要な生活情報を無料で手軽に入手できるメリットがある。しかしながら,現状では,契約情報の中には顧客に関する情報がかなり多く含まれているものがあるにも拘わらず,これらの情報は,顧客へのサービスという形では殆ど還元されていない 」。
・段落【0004】「本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,契約時や保全変更時などに顧客から取得した情報に基づいて,顧客に必要な生活情報を適切に提供できるような生活情報提供システム及び生活情報提供方法を構築することにある 」。
・段落【0050】「また,上記の実施の形態は,顧客が保全変更を行った場合について,保全変更に関連する最適な生活情報を提供する場合について述べたが,これに限るものではない。例えば,契約時の顧客情報に基づいて顧客に提供できるような情報があれば,どのような時点であっても随時に情報提供サービスを行うことができる。例えば,子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。特に,顧客の家族構成の情報は,保険会社がほぼ独占的に保有している情報であるので,これらの情報を有効に活用して顧客の利用し易い情報に加工し,顧客側に情報提供という形でサービスすれば,結果的に,本来の契約業務の付加価値を高めることもできる 」。
上記段落【0003【0004【0050】の記載から,引用 】,】,発明は,保険会社がほぼ独占的に保有している顧客の家族構成の情報を有効に活用して顧客に必要な生活情報を適切に提供することを目的とするものであり,その生活情報の中には 「大学国公私立の中学校や高校 ,や大学の各種案内」や「誕生日毎のお祝いのメッセージ」なども含まれることが理解できる。
そうすると,引用発明は,原告が主張するような 「居住地域に関す ,る生活情報を提供する」生活情報提供システムに限定されるものではないことが明らかである。
(イ)一方,原告が主張するように,刊行物1の段落【0044】には,「次に,顧客1は,図3のような登録内容を確認した後 「家族全員」か「本 ,人」か「配偶者」かなど,誰の情報を表示させるかを選択する・・・」との記載がある。
しかし,それに先行する段落【0043 ,後続の段落【0045】 】には,次の記載がある(下線は被告が付記 。)・段落【0043】ここで 顧客1が 新住所周辺カスタマイズ情報 を選択すると ステッ 「,「 」(),「」 ()。 プS13顧客登録情報 の確認画面が表示される ステップS14尚,この場合,登録情報の開示内容は顧客単位のユニークなものである。
図3は,顧客登録情報の一例である。この図に示すように,家族構成や性別や年齢や趣味などが個別に表示されるので,それぞれの者にマッチした新住所周辺のカスタマイズ情報を提供することができる。…」・段落【0045】「このようにして,顧客1の画面に選択された者に関する地域情報が表示されたら,これを印刷して終了する。例えば,本人を選択した場合は,近くのゴルフ練習場や,近くの池や川や海における釣り場を表示した地図情報または文字情報を印刷して終了する…」以上の記載から,段落【0044】は,顧客が「新住所周辺のカスタマイズ情報」を選択した場合の記述であることが分かる 「カスタマイ 。
ズ情報」とは,ゴルフ練習場の情報など,顧客単位のユニークなものである。
しかし,引用発明が 「選択された被保険者又は家族に関して 」入力 , ,された保全変更情報に基づいて生活情報の提供に必要な個人情報を検索,【】, するものに限定されないことは 上記(ア)に摘記した段落 0003【0004】の記載や,段落【0050】の記載からも明らかである。
,,()【】 (ウ)また 原告が主張するように 刊行物1 甲1 の段落 0045には,「…また,郵送によって情報送付を希望する場合は 「郵送希望」ボタンを押 ,して,新住所の郵送先を確認して処理を完了する 」。
との記載がある。しかし,この記載も,段落【0043】から始まる,「 」 。 顧客が 新住所周辺のカスタマイズ情報 を選択した場合の記述であるかえって,引用発明について説明した刊行物1(甲1)の段落【0038】には,次の記載がある。
「次に,生命保険会社側のホストコンピュータ4は,顧客1の保全変更に関する事務処理などをその場で完結すると共に,顧客1から提示された保全変更情報に基づいて,顧客1の保全変更後の住所における生活環境に必要と思われる生活情報をインターネットにおけるWeb環境で顧客1に提供する 」。
また,情報提供の形態について,段落【0036】には,次の記載がある。
「…このステップでは,保全変更の事務処理を完了後に,生活情報サービスの利用有無の画面を立ち上げ,顧客の家族構成に応じて,住所変更後の顧客の生活環境に必要と思われる情報を提供する。この場合,情報提供は,一般的には,Web上で顧客1のパソコンに表示させるが,希望により顧客宛に郵送で情報を送ることもできる 」。
要するに,刊行物1では,顧客から提示された保全変更情報に基づいて顧客に生活情報を提供するに当たって,情報の提供は,一般的にはWeb上で顧客のパソコンに表示させるが,希望により,郵送で情報を送ることもできるとしているのであって,顧客が「新住所周辺のカスタマイズ情報」を選択した場合に限られるものでもなく,また 「郵送ボタ ,ン」を押した場合に限られるわけでもないことが明らかである。
(エ)以上のとおり,原告の主張する?@〜?Bの点は失当であり,審決の引用発明の認定に誤りはない。
イ刊行物1段落【0050】に関する主張につき(ア)原告は,刊行物1の段落【0050】における 「…子供の進学年 ,齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる 」との記載は,単なる可能性,単なる願望,単なる 。
希望が示されているにすぎず,具体的な発明として開示されているものではなく,審決が 「引用発明においても,被保険者の子供の年齢を契 ,約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる 」と認定したのは誤りで 。
ある旨主張する。
(イ)ところで刊行物1の段落【0050】には,次の記載がある(下線は被告により付記 。)「また,上記の実施の形態は,顧客が保全変更を行った場合について,保全変更に関連する最適な生活情報を提供する場合について述べたが,これに限るものではない。例えば,契約時の顧客情報に基づいて顧客に提供できるような情報があれば,どのような時点であっても随時に情報提供サービスを行うことができる。例えば,子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる あるいは 家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッ 。,セージなどを表示することもできる。特に,顧客の家族構成の情報は,保険会社がほぼ独占的に保有している情報であるので,これらの情報を有効に活用して顧客の利用し易い情報に加工し,顧客側に情報提供という形でサービスすれば,結果的に,本来の契約業務の付加価値を高めることもできる 」。
(ウ)上記記載部分は,刊行物1の文脈において,技術常識に照らして理解されるべきものであるところ,刊行物1の段落【0001】〜【0004【0026】〜【0036】等の記載から,刊行物1には,審決 】,が引用発明として認定した(前記第3,1( )イ)とおりの内容が記載3されていると理解できる。
そして,上記のように,引用発明は,保険会社がほぼ独占的に保有している顧客の家族構成の情報を有効に活用して顧客に必要な生活情報を適切に提供することを目的とするものであり,保険会社が有する情報には,被保険者(顧客)の子供の生年月日等,子供の年齢の計算の基礎となる情報が含まれることが明らかであるから,刊行物1の記載に接した当業者は,段落【0050】の記載から,引用発明においても,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの処理を行う機能が備わっているものと自然に理解する。
引用例(甲1)の段落【0037】以降には,保全変更の例として,住所変更の例が挙げられており,保全変更の事務処理がなされた後に,,, 新住所周辺の生活情報を提供することが記載されているが このことは被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの処理を行うことと,何ら矛盾しない。
したがって,審決の認定判断は正当であり,原告の主張は,失当である。
原告は,刊行物1の段落【0050】の記載は,単なる可能性,単なる願望,単なる希望が示されているにすぎず,具体的な発明として開示,(, されているものではないと主張するが 本件補正後の本願明細書 甲57,11)を見ると,奨学金支給処理システムとして開示されているシステム構成は,甲5の段落【0014【0022】及び図1,図4し 】,かなく,しかも,これらは情報処理装置としてごく普通のものであり,技術的内容の開示という点では,刊行物1全体の開示内容に及ばないといわざるを得ない。
( )取消事由2に対し2ア原告は,刊行物1の「保全変更情報」は,契約継続性が前提とされる変更情報であるのに対して,本願補正発明における「申請情報,給付完了情報」は,契約が終了する「契約履行情報あるいは契約履行完了情報」であり,本質的に異なる情報であると主張する。
しかし,以下に述べるように,原告の上記主張は,失当である。
イ刊行物1(甲1)には,次の記載がある(下線は被告が付記 。)「 0026 【発明の実施の形態】以下,本発明における生活情報提供システ 【】ムについて詳細に説明するが,以下の実施の形態では,生命保険業務における契約情報や保全変更情報に基づいて生活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法について説明する。尚,保全変更とは,契約時以降に発生した住所変更名義変更などの契約条件の変更であり,さらには,保険金や保険料の減額や解約などの契約形態の変更も含めている 」。
この記載から,刊行物1における「保全変更情報」には,契約条件の変更や,解約などの契約形態の変更が含まれることが明らかである。
これに対し,本件補正後の本願明細書(甲5,7,11)には,次の記載がある。
「 0008 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされ 【】た本発明にかかる生命保険加入者のための奨学金支給処理システムは,生命保険に加入した被保険者の子供に対して保険会社が奨学金を支給する,生命保険加入者のための奨学金支給処理システムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報を入力する入力手段と,前記入力手段によって入力された,前記いずれかの申請情報または前記いずれかの給付完了情報に基づいて,被保険者の死亡時,高度障害に至った時,介護が必要になった時のいずれかの時に,子供の有無を前記被保険者の保険契約情報から検索すると共に,子供がいる場合に,該子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学しているか否かを検索する演算処理部と,前記演算処理部における検索の結果,就学している子供がいる場合に,前記被保険者の保険契約情報に記録された該子供の氏名,住所,及び該子供に対する奨学金支給の案内状を少なくとも出力する印刷部及び/または表示部とを備えていることを特徴としている(甲11)。」この記載から,本願補正発明における「申請情報,給付完了情報」も,「契約条件や,解約などの契約形態の変更」をもたらす情報であることが明らかである。
したがって,本願補正発明の「申請情報,給付完了情報」も「保全変更情報」ということができるとした審決の認定(11頁11行〜22行)に誤りはない。
そして,これらの情報の具体的な内容の相違については,審決が「5相違点についての検討」において,別途,検討しているところである。
以上のとおり,審決の一致点の認定に誤りはない。
( )取消事由3に対し3ア原告は,刊行物2〜4(甲2〜4)の記載から,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが,本願の出願日において周知となっていたとは認められないと主張する。
しかし,原告の上記主張は,失当である。
イ第1に,審決は,保険会社が,その保険会社の保険加入者の子供に対して,奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが周知となっていたと認定したのではない。
第2に,刊行物2の「奨学金給付費用保険」は,実際に奨学金を支給するのは学校法人であるが,その費用を保険会社が保険金として支払うもの,, , であり 保険会社は その保険金が奨学金として支払われることを前提に学校法人に保険金を支払うものである。
したがって,保険会社が奨学金を支給,あるいは奨学金支給の支援をするものということができる。
第3に,刊行物3の「CSOラーニング奨学金制度」は,保険会社が,環境CSOでの体験を希望する学生を対象に奨学金を支給するものである。寄付金が奨学金として活用されているが,保険会社が奨学金を支給,あるいは奨学金支給の支援をするものであることに,変わりはない。
第4に,刊行物4の奨学金支給制度は,介護福祉士を目指す学生を対象とするものであるが,保険会社が奨学金を支給する,あるいは奨学金支給の支援をするものであることに,変わりはない。
重要なことは,保険会社が,奨学金支給にかかわっているという事実である。
ウなお,刊行物2〜4は,いずれも,平成13年発行のディスクロージャ。,「, ー誌である ディスクロージャー誌は 保険業法111条の 保険会社は事業年度ごとに,業務及び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し,本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所その他これらに準ずる場所として内閣府令で定める場所に備え置き,公衆の縦覧に供しなければならない 」との規定に基づいて保険 。
会社が作成するものであり,その内容は,本願の出願日(平成15年3月), 。 11日 には 保険業関係者において周知の事項となっていたものであるエ以上のとおりであるから 審決が 刊行物2〜4の記載に基づいて保 ,, ,「, , 険会社が奨学金を支給すること あるいは奨学金給付の支援をすることは本願の出願日において周知となっていたものと認められる 」とした点に 。
誤りはない。
( )取消事由4に対し4ア本願補正発明と引用発明との対比(ア)「課題」の相違取消事由1に対する反論で検討したように,引用発明は,保険会社がほぼ独占的に保有している顧客の家族構成の情報を有効に活用して顧客に必要な生活情報を適切に提供することを目的とするものであり,その生活情報の中には国公私立の中学校や高校や大学の各種案内 や 誕 ,「 」 「生日毎にお祝いのメッセージ」なども含まれることが理解でき,原告が主張するような 「居住地域に関する生活情報を提供する」生活情報提 ,供システムに限定されるものではない。
引用発明は,保険の保全変更時に保険加入者(顧客)から取得した情報に基づいて,保険加入者に必要な生活情報を提供することを目的とするものであり,その限度で,本願補正発明の目的と共通する。
もちろん,奨学金の給付等,提供する情報の具体的な内容では,本願補正発明は引用発明と相違するが,審決は,それを相違点として取り上げ,検討している。
(イ)「システム」の相違取消事由1に対する被告の反論で検討したように,引用発明が提供する情報は 「居住地域に関する生活情報」に限定されず,その生活情報 ,の中には 「国公私立の中学校や高校や大学の各種案内」や「誕生日毎 ,にお祝いのメッセージ」なども含まれるから,この点に関する原告の主張は失当である。
本願補正発明が,生命保険に加入した被保険者の子供に対して保険会社が奨学金を支給する生命保険加入者のための奨学金支給システムである点については,審決は,相違点として取り上げ,検討している。
(ウ)「入力手段」の相違取消事由2に対する被告の反論で検討したように,審決は 「契約条 ,件又は契約形態の変更」をもたらす情報という意味で,本願補正発明の「申請情報,給付完了情報」も「保全変更情報」ということができるとしたものであり,これらの情報の具体的な内容の相違については,審決は,相違点として取り上げ 「5相違点についての検討」において検 ,討している。
なお,本願補正発明にいう「入力手段」は,システム構成として見れば,通常のコンピュータが普通に備えている入力手段と何ら異なるところはない。
(エ)「演算処理部」の相違取消事由1に対する被告の反論で検討したように,引用発明は,情報を必要とする者を選択する態様に限定されるものではなく,審決の「引用発明においても,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる」との認定判断に誤りはない。したがって,原告の主張は,その前提において,失当である。
なお,本願補正発明にいう「演算処理部」は,システム構成として見れば,通常のコンピュータが普通に備えている演算処理手段と何ら異なるところはない。演算に必要な家族構成や誕生日等のデータも,保険会社が当然に有しているものである。
(オ)「印刷部」の相違上記(ア)で述べたように,引用発明が提供する情報は 「居住地域に ,関する生活情報」に限定されず,その生活情報の中には 「国公私立の ,中学校や高校や大学の各種案内」や「誕生日毎にお祝いのメッセージ」なども含まれるから,この点についての原告の主張は失当である。
本願補正発明の出力部が,保険契約情報に記録されている当該子供の氏名,住所,及び当該子供に対する奨学金支給の案内状を出力するものである点については,審決は,相違点として取り上げ,検討している。
,「」 ,, なお 本願補正発明にいう 印刷部 は システム構成として見れば通常のコンピュータが普通に備えている印刷手段と何ら異なるところはない。
イ相違点の検討(ア)「周知技術」について審決の周知技術の認定に誤りがないことは,取消事由3に対する被告の反論で主張したとおりである。
(イ)「保全変更事情」について原告は,審決における 「被保険者に重大な保全変更事情が発生した ,場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる 」との記載をとら 。
えて 「保全変更事情」という文言が刊行物1〜4のいかなる記載から ,導き出されたものなのか分からないと論難する。
しかし,審決は 「保全変更情報」を,被保険者から寄せられた契約 ,条件又は契約形態の変更をもたらす情報の意味で用いており(11頁11行〜22行「保全変更事情」が,被保険者の契約条件や契約形態の ),変更をもたらす事情の意味であることは明らかである。
(ウ)「保全変更情報」について取消事由2に対する被告の反論で検討したように 本願補正発明の 申 ,「請情報,給付完了情報」も「保全変更情報」ということができるとした審決の認定(審決11頁11行〜22行)に誤りはない。
ウ証拠に基づかない「後知恵」について原告は,審決の「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである 」との認定判断を,証 。
拠に基づかない後知恵であると主張している。
しかし,審決の周知技術等の認定に誤りのないことは取消事由3に対する被告の反論で主張したとおりである。そして,審決は,このような,保険会社が奨学金支給にかかわっているという事実に照らすならば,被保険,, 者の家族構成や保全変更事情を保有している保険会社が その被保険者に死亡,高度障害,介護保険給付等の収入に影響を与えるような重大な事情が発生した場合に,就学している子供がいれば奨学金を支給するように対処することは,保険会社のサービスの仕組みとして,普通に想起することであるとしたのである。
そして,審決が引用発明の内容として認定したことが刊行物1には開示されており,この引用発明によれば,保険契約情報の取得・記憶,保全変更情報の取得・入力,必要な個人情報の検索,必要な生活情報の取得,および生活情報の提示・印刷が行えるのであり,引用発明に係る生活情報提供システムを,本願補正発明のようなサービスを実施するように設計変更, , するに当たって 解決すべき技術的課題や技術的困難は見い出せないから「, 」 相違点に係る構成は 当業者が容易になし得る設計変更の範囲内のものと判断したのである。
このように,審決は,証拠に基づく事実認定と合理的な推論に基づく総合評価により容易想到の結論を導いたのであり,正当である。
( )取消事由5に対し5ア審判請求時に併せて提出された手続補正書(甲11)により特許請求の範囲が補正され,奨学金を支給する主体が「保険会社」とされたため,審決では,その観点から周知技術を認定したものである。そして,その周知技術の認定に誤りがないことは取消事由3に対する被告の反論で主張したとおりであり,審判請求人に対して不意打ちになることもない。
イまた,特許法50条ただし書によれば,本件補正を却下するに当たり,改めて拒絶の理由を通知することを要しない。
ウなお,拒絶査定における「被保険者が死亡した際に,被保険者の子供の就学のために『奨学金』の情報が有益であることは,周知事項である 」。
との審査官の認定を前提としたとしても,審決の結論は左右されない。
すなわち,被保険者の家族構成や保全変更事情を保有している保険会社が,その被保険者に,死亡,高度障害,介護保険給付等の収入に影響を与えるような重大な事情が発生した場合に,長期にわたって支援してきたその家族に思いをはせることは自然なことであり,就学している子供がいれば奨学金を支給するような仕組みを考えることは,自然に発想することである。
第4当裁判所の判断1請求原因( )(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決1 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,以下原告の主張する取消事由について判断する。
2取消事由1(引用発明認定の誤り)について(1)原告は,審決の引用発明の認定は誤りであり,具体的には,?@引用発明の内容は「居住地域に関する生活情報を提供する生活情報提供システム」に関する発明であると認定すべきこと,?A引用発明の処理部は,選択された被保険者又はその家族に関して,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索するものであること,?B引用発明はWeb上の「郵送希望」ボタンを押すことにより情報が郵送されるものであることを認定すべきである,また刊行物1(甲1)の段落【0050】の記載は単なる可能性ないし願望にすぎないから,審決が「引用発明においても,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる(11頁7行〜9行)としたのは誤りであると 。」主張する。
ア引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲・【請求項1】 地域に関する情報を提供する生活情報提供システムにおいて,地域に関する生活情報を記憶した生活情報記憶手段と,顧客の所定の情報に対応して,前記生活情報記憶手段に記憶された前記地域に関する生活情報を前記顧客に提供する情報提供手段とを備えたことを特徴とする生活情報提供システム。
・【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の生活情報提供システムにおいて,前記所定の顧客は有効契約を締結している顧客であり,前記顧客に関する情報は前記顧客の家族情報であり,前記顧客の所定の情報は前記有効契約における保全変更情報であり,前記所定の地域は前記顧客の居住地域であることを特徴とする生活情報提供システム。
・【請求項7】 請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の生活情報提供システムにおいて,前記顧客の家族情報は,前記顧客の家族全員の個人情報であることを特徴とする生活情報提供システム。
・【請求項8】 請求項3又は請求項6のいずれかに記載の生活情報提供システムにおいて,前記顧客の家族情報は,前記顧客の家族の中で指定された者の個人情報であることを特徴とする生活情報提供システム。
・【請求項10】 請求項2乃至請求項9のいずれかに記載の生活情報提供システムにおいて,前記有効契約は保険契約であることを特徴とする生活情報提供システム。
(イ)発明の詳細な説明・「 発明の属する技術分野】本発明は,顧客に対して居住地域に関する生 【活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法に関し,特に,特定の契約者に対して,契約情報に基づいて生活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法に関するものである(段落【0001 ) 。」】・「 従来の技術】住居移転などにより新しい地域に居住したときには,そ 【の地域の行政機関(例えば,市役所など)で所定の手続きをすると,例えば『生活ガイド情報』と称し,その地域における医療施設や学校や公民館など,日常的に利用する施設の案内書が配布される場合がある。しかし,このような情報は誰もが共通に必要とする一般的な地域情報であって,住民個別に対応しているものではない。したがって,幼児や老人などにのみ必要な保育施設とか老人施設などの個別の情報は 『生活ガ ,イド情報』が提供されたとしても,市役所とか隣近所等に問い合わせるなどして取得しなければならない。また,このような個別情報を提供するビジネスは採算が合わず,一般的には成立しない。このため,現状では,転居者等各自が必要に応じて個々の生活情報を入手して個別に対応している(段落【0002 ) 。」】・「 発明が解決しようとする課題】しかし,住民個々の生活情報をビジネ 【スとして提供するのではなく,ある取引契約を取り交わしている所定の顧客に対して,必要な生活情報をサービスとして提供することにより,取引されている契約内容の付加価値を高めることができる。例えば,取引されている契約内容に含まれる顧客の情報に基づいて,所望の顧客に対して必要な生活情報を提供するなどして,顧客の生活行動に役立てるようにすれば,顧客への情報提供サービスという形で契約内容の付加価値を高めることができる。また,顧客側にとっても必要な生活情報を無料で手軽に入手できるメリットがある。しかしながら,現状では,契約情報の中には顧客に関する情報がかなり多く含まれているものがあるにも拘わらず,これらの情報は,顧客へのサービスという形では殆ど還元されていない(段落【0003 ) 。」】「, ,, ・本発明はこのような事情に鑑みてなされたものでありその目的は契約時や保全変更時などに顧客から取得した情報に基づいて,顧客に必要な生活情報を適切に提供できるような生活情報提供システム及び生活情報提供方法を構築することにある(段落【0004 ) 。」】・「このような構成によれば,家族情報などの顧客に関する情報と,保全変更情報などの顧客の所定の情報に基づいて,顧客に対して居住地域などの地域の生活情報を適宜提供することができる。これによって,顧客。」(【】) は生活情報の提供サービスを受けることができる段落 0008・「また,本発明の生活情報提供システムにおいて,前記所定の顧客は有効契約を締結している顧客であり,前記顧客に関する情報は前記顧客の家族情報であり,前記顧客の所定の情報は前記有効契約における保全変更情報であり,前記所定の地域は前記顧客の居住地域であることを特徴とするものである(段落【0009 ) 。」】・「このような構成によれば,有効契約における顧客のロイヤリティ(契) ,, 約内容に対する忠誠度 が高まって契約の継続性が向上し 結果的には有効契約の付加価値を高めることができる。一般的に,契約条件の変更である保全変更を自ら申し出る顧客は,有効契約の継続性が高い顧客である。また,申し出のあった保全変更処理の対応に付加価値を付けることによって,顧客のロイヤリティが一段と高くなる。本発明は,このような観点に立って,顧客が保全変更手続きを行ったときに,有効契約を締結したときの顧客の個別情報とその顧客の保全変更情報とに基づいて,顧客に役立つ生活情報を還元することにより,さらに顧客のロイヤリティを向上させて有効契約の継続率を向上させるものである(段落。」【0010 )】・「また,本発明の生活情報提供システムにおいて,前記顧客の家族情報は,前記顧客の家族全員の個人情報であることを特徴とするものである(段落【0017 ) 。」】・「このような構成によれば,家族の全員に共通する,あるいは家族構成人員それぞれに必要な生活情報を提供することができる(段落【00。」18 )】・「また,本発明の生活情報提供システムにおいて,前記顧客の家族情報は,前記顧客の家族の中で指定された者の個人情報であることを特徴とするものである(段落【0019 ) 。」】・「このような構成によれば,家族の中で,特にその生活情報を必要とする者を対象とした生活情報を提供することができる。そして,生活情報を希望する者の性別・年齢・趣味などの登録内容に応じ,関連性の深い生活情報を検索して情報提供することができる。例えば,情報提供を希望する顧客の趣味情報から,ゴルフ練習場の案内情報や近くの釣り場の案内情報などを提供したり,また,子供に対しては,例えば,保育園や小児科医院の案内情報を提供したり,老人に対しては,例えば,老人クラブや介護施設の案内情報を提供するなど,家族の構成員に対し個別に特に必要とされる生活情報を選りだして提供することができる(段落。」【0020 )】・「 発明の実施の形態】以下,本発明における生活情報提供システムにつ 【いて詳細に説明するが,以下の実施の形態では,生命保険業務における契約情報や保全変更情報に基づいて生活情報を提供する生活情報提供システム及びその方法について説明する。尚,保全変更とは,契約時以降,, に発生した住所変更名義変更などの契約条件の変更であり さらには保険金や保険料の減額や解約などの契約形態の変更も含めている(段。」落【0026 )】・「生命保険業務における契約情報には,契約者に関する個人情報や医療情報などが含まれていると共に,家族に関する情報も含まれているが,通常,これらの情報は保険期間が満了するまで,例えば,20年,30年の間データベースに蓄積され,データを出し入れしたり変更したりすることは殆どない。つまり,保全変更や時間的に変化する内容を除いては変わることのない個人情報として蓄積されている。一方,引越しや結婚などに際しては,住所変更名義変更などの保全変更情報を提供する必要があるが,実際,このような保全変更情報を提供してくれる顧客は生命保険会社へのロイヤリティの高い顧客であり,契約の継続性が高い顧客と考えられている。さらに,顧客リサーチにおける顧客と営業職員とのヒヤリングでは,顧客から保全変更情報が提供された場合に,その顧客への対応サービスを向上させることにより,その顧客における生命保険会社へのロイヤリティが一段と向上することが明らかになっている(段落【0027 ) 。」】・「そこで,契約時における顧客の個人情報や家族情報などと,その後の保全変更情報とを有効に活用して,該当する顧客への生活情報の提供サービスを行うことにより,これらの顧客の契約継続性を一段と向上させることができる。例えば,引越しなどによって保全変更を行った顧客の家族情報などに基づいて,引越し先における最適な病院や学校やスーパーマーケットや銀行などの地図情報を提供するなど,顧客毎にユニークな生活情報を提供すれば,顧客の利便性が一段と向上する。さらには,顧客のロイヤリティの向上が図られ,結果として,契約情報の付加価値を高めることができる(段落【0028 ) 。」】・「すなわち,本発明では,生活情報の提供を,ビジネスではなく,本来行われている契約業務の付加価値を向上させるための手段として用いている。したがって,保全変更は,契約内容を間違いのないように継続させるためにのみ行うものである,という従来の考え方を変革し,顧客の維持・拡大のために,保全変更情報に基づいて顧客へ生活情報を還元するという認識に立って,保全変更を顧客ロイヤリティの向上に利用するものである(段落【0029 ) 。」】・「保全変更に基づいて顧客に生活情報を提供する場合は,先ず,生命保険会社は,顧客からの保全変更情報をホームページやコールセンターにより受け付けるようにしておくと共に,顧客へ情報サービスするための生活情報をホストコンピュータのデータベースへ格納しておく。なお,生活情報は各地域における公共機関等のデータベースに準備されている場合は,それをインターネット等の通信回線を介して取り寄せるようにしても良い。そして,顧客が,パソコンなどによって生命保険会社のホームページにアクセスしたり,携帯端末よって生命保険会社のコールセンターにアクセスしたりして,住所変更などの保全変更の申し出を行う(段落【0030 ) 。」】・「生命保険会社側のホストコンピュータは,保全変更の事務処理を即時に終了すると共に,顧客から提示された保全変更情報に基づいて,保全変更後の新住所における生活環境に必要と思われる生活情報を,インターネットにおけるWeb環境で顧客に提供する(段落【0031 ) 。」】・「以下,図面を用いて本発明における生活情報提供システムの実施の形態を説明する。図1は,本発明における生活情報提供システムを生命保険業務に適用したシステムブロック図の一例である。同図において,生命保険会社側には,顧客情報を入力したり保全変更処理などを行うホストコンピュータ4を備えており,このホストコンピュータ4は,顧客の生活情報を格納する生活情報データベース5aと生活情報に関連する地図情報を格納する地図情報データベース5bとを有する情報系データベース5を備えている。また,ホストコンピュータ4は,ホームページ2を開設すると共に携帯端末(電話)3と通信接続可能とされている。一方,顧客側には,不特定の顧客のパソコン(以下,単に顧客という)1が存在し,顧客1とホストコンピュータ4はインターネットによって接続されている。尚,顧客1は複数存在するが,ここでは代表して1つが描かれている(段落【0032 ) 。」】・「顧客1は,ホームページ2や携帯端末3を介してホストコンピュータ4にアクセスすることができる。一方,ホストコンピュータ4は,顧客1から取得した保全変更情報に基づいて,生活情報データベース5aから顧客の生活情報を取得したり,地図情報データベース5bから生活情報に関連する地図情報を取得して,これらの情報をWeb上においてホームページ2や携帯端末3を介して顧客1に提供する。尚,情報系データベース5の情報は,Web上ではなく,郵送によって顧客1に提供することもできる(段落【0033 ) 。」】・「ここで,生活情報データベース5aには,予め,保全変更などによって顧客のライフスタイルが変化したときに新居住地で新たに必要になると思われる各種の情報をデータベース化して格納しておく。また,生活情報データベース5aの検索項目は,顧客1から入力された郵便番号や電話番号などである。なお,住所そのものを検索項目としても良いことは言うまでもない。さらに,生活情報データベース5aに格納されている情報内容は 「学校・幼稚園 「病院 「スーパーマーケット 「コンビ ,」」」ニエンスストア 「クリーニング店 「本屋・ビデオ屋 「家具店 「市役 」」」」所(出張所「警察署 「地域別遊園地・温泉地 「カーショップ 「税 )」」 」」」「 」 金申告関係機関婚姻・出産などの役所提出書類の夜間休日提出機関などである。また,生活情報データベース5aは地図情報データベース5bと連動していて,上記の各情報の所在地が地図上で表示される仕組みになっている(段落【0034 ) 。」】・「図1に示す生活情報提供システムの主な処理の流れは次の4ステップよりなっている。先ず,第1ステップは,保険契約において,所定の情報としての家族情報を登録するステップである。第2ステップは,顧客1からの保全変更の申し出であり,このステップにおいて,顧客1が転居した場合に住所変更を申し出るステップである。このときの対応チャネルとしては,生命保険会社のホームページ2,または生命保険会社の営業職員の携帯端末3,あるいは,生命保険会社の本社コールセンター(図示せず)への電話などである。次に,第3ステップとして,生命保険会社側のホストコンピュータ4による保全変更の事務処理のステップである。このステップにおいては,ホストコンピュータ4が,情報系データベース5に格納されている顧客情報に基づいて,Web等で本人認, 。 ,, 証をした後 その場で保全変更の事務処理を完結させる 尚 このとき住所変更の理由などを顧客に尋ねる。ここまでは,従来から行われている保全変更の手続きである(段落【0035 ) 。」】・「さらに,本発明では第4ステップとして,顧客1の所望に応じて生活情報サービスの提供を開始するステップである。このステップでは,保全変更の事務処理を完了後に,生活情報サービスの利用有無の画面を立ち上げ,顧客の家族構成に応じて,住所変更後の顧客の生活環境に必要と思われる情報を提供する。この場合,情報提供は,一般的には,Web上で顧客1のパソコンに表示させるが,希望により顧客宛に郵送で情報を送ることもできる(段落【0036 ) 。」】・「また,上記の実施の形態は,顧客が保全変更を行った場合について,保全変更に関連する最適な生活情報を提供する場合について述べたが,これに限るものではない。例えば,契約時の顧客情報に基づいて顧客に提供できるような情報があれば,どのような時点であっても随時に情報提供サービスを行うことができる。例えば,子供の進学年齢毎に国公私。, 立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる あるいは家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。特に,顧客の家族構成の情報は,保険会社がほぼ独占的に保有している情報であるので,これらの情報を有効に活用して顧客の利用し易い, ,, 情報に加工し 顧客側に情報提供という形でサービスすれば 結果的に。」(【】) 本来の契約業務の付加価値を高めることもできる段落 0050・「 発明の効果】以上に詳述したように,本発明によれば,顧客に必要 【な生活情報を適切に提供でき,付加的サービスを高めることができて,顧客からの信用や評判を高めることができ,もって,顧客ロイヤリティ。」(【】) を一段と高めることができるという効果を奏する段落 0051(ウ)図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)・【図1 (本発明における生活情報提供システムを生命保険業務に適用し 】たシステムブロック図の一例である )。
・【図3 (顧客登録情報の一例である ) 】 。
(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば,引用発明は,生命保険業務における契約情報には顧客に関する情報がかなり含まれているが顧客へのサービスという形では殆ど還元されていないことに鑑み(段落【0003,契約】)時や保全変更時に顧客から取得した情報に基づいて,顧客である生命保険加入者に必要な生活情報を適切に提供するシステムを構築することを目的とする(段落【0004。顧客情報としては,本人,配偶者,子 】),, (【】)。 供の性別 年齢 趣味等が登録されていることが示されている図3そして 引用発明は 被保険者の保険情報を記憶する契約記憶手段 段 ,, (落【0032【0035,保全変更情報を入力する手段(段落【0 】,】)032,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族 】)の個人情報から 生活情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部 段 , (落【0036 【図1【図3,被保険者又はその家族の生活環境に 】】,】)必要と思われる情報を取得して,Web上で又は郵送により提供する手段(段落【0028【0030【0031【0036,とを 】,】,】,】)備えたものである。
そうすると,審決が引用発明の内容として 「生命保険の契約時や保 ,全変更時などに被保険者から取得した情報に基づいて,生命保険加入者及びその家族の生活環境に必要な情報(生活情報)を適切に提供することを目的としたシステムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,保全変更情報を入力する手段と,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,生活情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部と,被保険者又はその家族の生活環境に必要と思われる情報を取得して,Web上で又は郵送により提供する手段を備えた,生命保険加入者のための生活情報提供システム 」と認定したことに誤りはない。 。
( )原告の主張に対する補足的判断2ア原告は,引用発明は「居住地域に関する生活情報を提供する生活情報提供システム」に関する発明であると認定すべきであると主張する。
しかし,引用発明の記載された甲1には,上記(1)で摘記のとおり 「…,顧客に対して,必要な生活情報を…提供する… (段落【0003「… 」】),」(【】), 顧客に必要な生活情報を適切に提供できる…段落 0004とあり必要な生活情報として居住地域に限られない記載がある。加えて 「…保,全変更に関連する最適な生活情報を提供する場合について述べたが,これに限るものではない。例えば,契約時の顧客情報に基づいて顧客に提供できるような情報があれば,どのような時点であっても随時に情報提供サービスを行うことができる。例えば,子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。特に,顧客の家族構成の情報は,保険会社がほぼ独占的に保有している情報であるので,これらの情報を有効に活用して顧客の利用し易い情報に加工し,顧客側に情報提供という形でサービスすれば,結果的に,本来の契約業務の付加価値を高めることもできる(段落【0050 )と記載されている 。」】ことから,引用発明においては,居住地域に関する生活情報のみならず,被保険者の顧客情報に基づき顧客に提供できる情報であればどのようなものであれ,これを提供することで契約業務の付加価値を高めることが示唆されているということができる。原告の上記主張は採用することができない。
イまた原告は,引用発明の処理部は,選択された被保険者又はその家族に関して,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から生活情報の提供に必要な個人情報を検索するものであると主張する。
しかし,上記(1)で摘記したとおり,引用発明は,契約情報の中には顧客に関する情報がかなり含まれているにも拘わらず,これが顧客へのサービスに生かされていないところ(段落【0003,顧客に必要な生活情 】)報を提供することを目的とするもので(段落【0004,子供の進学年】)齢に合わせた学校等情報や,誕生日等のお祝いメッセージなどが例示されており(段落【0050,選択された被保険者又はその家族に関する個 】)人情報のみを検索するものに限られるものとは解されないし,請求項7・8,段落【0017】〜【0020】には家族全員ないし一部についての個人情報を利用する旨の記載もある。原告の上記主張は採用することができない。
ウ次に原告は,引用発明はWeb上の「郵送希望」ボタンを押すことにより情報が郵送されるものであることを認定すべきであると主張する。
しかし,刊行物1(甲1)には「…郵送によって顧客1に提供することもできる(段落【0033 )との記載もあり,引用発明において情報 。」】を郵送するか否かも任意であるから,情報の提供方法がWeb上の郵送希望ボタンを押して郵送する方法に限られるものではない。原告の上記主張は採用することができない。
エさらに原告は,刊行物1(甲1)の段落【0050】の記載は単なる可能性ないし願望にすぎないから,審決が「…引用発明においても,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できる(11頁。」7行〜9行)としたのは誤りであると主張する。
しかし,上記段落【0050】には 「…子供の進学年齢毎に国公私立の ,中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族。 」 や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる …とされており 【図3】には,顧客登録情報として被保険者の子供の年齢 ,等が示されているところからすれば,審決が,引用発明においても被保険者の子供の年齢を契約時の年齢または誕生日から算出し,就学時期が来ているか否かの判断を行う機能が備わっているものと理解できるとした点に誤りはない。原告の上記主張は採用することができない。
3取消事由2(一致点認定の誤り)について( )原告は,審決は本願補正発明の「申請情報,給付完了情報」と引用発明1の「保全変更情報」とを一致点として認定したが,本願補正発明の「申請情報,給付完了情報」は契約が終了する情報であるのに対し,引用発明の「保全変更情報」は契約の継続が前提とされる変更情報であるから異なるものであり,これを一致点と認定するのは誤りである旨主張する。
ア本件補正後の本願明細書(甲5,甲7,甲11。以下「本願明細書」という)には,以下の記載がある。
(ア)特許請求の範囲(請求項1)前記第3,1( )イのとおり(甲11 。
2 )(イ)発明の詳細な説明・「 発明の属する技術分野】 【本発明は,生命保険に加入した被保険者の子供に対して奨学金を支給する生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法に関する(段落【0001 ,甲5) 。」】・「 従来の技術】【一般的に,生命保険は,死亡保険金及び満期保険金を主契約とし,この主契約に対して,傷病入院特約等の特約契約を付加することができ,被保険者のライフステージに応じた保障を受けることができるようになっている。
そして,保険会社と契約者との契約に基づいて,所定の条件を満たす場合に入院給付金あるいは死亡保険金,更に保険が満期を迎えた場合には,満期保険金が支払われる(段落【0002 ,甲5) 。」】・「例えば,被保険者が死亡した場合,保険金受取人は,病院より死亡診断書を入手し,保険会社に対して,前記死亡診断書のほか,必要な書類を提出し,保険金を請求する。そして,保険会社は,契約の条件を満た, 。 す場合に 死亡保険金を保険金受取人に対して支払うようになっているこの生命保険に関し,各種ある生命保険から被保険者に適した保険を選択できるようにした保険設計方法(特開平8-305760号公報 ,)あるいは死亡保険金の支払い業務の効率化を図った生命保険の処理方法(特開2002-56188号公報)等が提案されている(段落【0。」003 ,甲5)】・「 発明が解決しようとする課題】 【ところで前記した死亡保険金が高額になるにしたがって掛け金保 , ,(険料)が高くなるため,将来,子供にかなりの学業資金がかかる場合であっても,十分な死亡保険金を確保した契約をする人は少ない。
このような被保険者が死亡すると,学業資金が不足し,その子供は就学を断念し,あるいは進学を断念しなければならない。特に,近年,多数の者が大学へ進学している現在,その学費はかなり高額である。
このように大学等に進学している場合に,被保険者(親)の死亡や,身体的障害を負って収入が途絶えたとき,勉強できないとすれば,子供本人のみならず社会的損失なることは言うまでもないことである。
一方,日本育英会など奨学金制度はあるが,その応募時期,枠が定められており,被保険者が死亡して直ちに奨学金が受けられるものでもない。
このように,遺児らが困窮するのは,被保険者が死亡した場合のみならず,収入が途絶えてしまう高度障害に至った場合,介護が必要になった場合も同様である(段落【0006 ,甲5) 。」】・「本発明は,上記事情に鑑みてなされたものであり,生命保険に加入した被保険者の子供を対象として,迅速に奨学金を支給することができる生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法を提供することを目的とするものである(段落【0007 ,甲5) 。」】・「 発明の効果】【以上のように,本発明によれば,生命保険に加入した被保険者の子供を対象として,迅速に奨学金を支給することができる生命保険加入者の(「」) ための奨学金支給処理システム及びその処理 判決注: 処理理 は誤記方法を得ることができる(段落【0025 ,甲5) 。」】(ウ)図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である。甲5)・【図1 (図1は,本発明にかかる奨学金支給処理システムの一実施形態 】を示す概略ブロック図である )。
・【図2 (図2は,図1の顧客契約情報記憶部に記憶されているデータ項 】目を示す図である )。
・【図3 (図3は,図1に示した奨学金支給処理システムを用いた処理方 】法を示すフローチャート図である )。
(エ)上記(ア)〜(ウ)によれば,本願補正発明は,生命保険に加入した被保険者の子供に対して,保険会社が奨学金を支給する生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法に関するものであり(請求項1,段落【0001,被保険者の死亡ないし収入が途絶える 】)高度障害,介護が必要になった場合に,被保険者の子供の学業資金が不(【】), 足し勉学の継続が困難になる場合があることに鑑み 段落 0006迅速に奨学金を支給することができる生命保険加入者のための奨学金支給処理システム及びその処理方法を提供することを目的とするものである(段落【0007。】)そのため,本願補正発明は,?@契約情報記憶手段,?A入力手段,?B演算処理部,?C印刷部・表示部の各手段・部から成るところ,?@契約情報記憶手段は,被保険者の保険契約情報を記憶し,次に,?A入力手段は,死亡保険金・高度障害時における保険金・介護保険金のいずれかの保険金の申請情報又は給付完了情報を入力するものであり,さらに,?B演算処理部は,上記申請情報ないし給付完了情報が入力された場合,被保険者の子供の年齢を契約時の年齢又は誕生日から算出して就学しているか,, , 否かを検索し ?C印刷部・表示部は 就学している子供がいる場合には子供の住所に奨学金の支給案内状を印刷ないし出力するものである(請求項1 。)イ上記ア,及び前記2で認定した引用発明の内容によれば,審決が,本願補正発明と引用発明との一致点につき 「生命保険に加入した被保険者又 ,はその家族に必要な情報を提供するための処理システムであって,被保険者の保険契約情報を記憶する契約情報記憶手段と,被保険者の契約条件又は契約形態の変更情報(保全変更情報)を入力する手段と,入力された保全変更情報に基づいて,被保険者又はその家族の個人情報から,情報の提供に必要な個人情報を検索する処理部と,被保険者又はその家族の生活環境に必要と思われる情報を取得して,出力する印刷部とを備えた生命保険加入者のための情報提供システム 」と認定したことに誤りはない。 。
( )原告の主張に対する補足的判断2原告は,引用発明の「保全変更情報」は,契約継続性が前提とされる変更情報であるのに対して,本願補正発明における「申請情報,給付完了情報」は契約が終了する「契約履行情報あるいは契約履行完了情報」であり,本質,,「, 的に異なる情報であって 審決が 本願補正発明における 死亡保険金給付高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報」も,契約条件又は契約形態の変更をもたらす情報であるから,引用発明の「保全変更情報」ということができるとして,これを一致点と認定したのは誤りである旨主張する。
しかし 引用発明の保全変更情報も 上記2(1)ア(イ)で摘記のとおり… , , ,「保全変更とは,契約時以降に発生した住所変更名義変更などの契約条件の変更であり,さらには,保険金や保険料の減額や解約などの契約形態の変更も含めている(甲1,段落【0026 )とあり,解約も含んだ契約形態 。」】の変更であり,原告が主張するような契約継続性が前提とされるものではない。そして,審決は,変更情報の内容の相違については,相違点として認定し,判断しているものであるから,原告の上記主張は採用することができない。
4取消事由3(周知技術認定の誤り)について(1)原告は,刊行物2〜4には,保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることについての記載はないから,審決が 「保険,会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた (14頁4行〜6行)旨認定したの 」は誤りである旨主張する。
周知技術が記載されているものとして審決が引用した刊行物2〜4(甲2〜4)には,以下の記載がある。
(ア)刊行物2(三井海上火災保険株式会社広報室「ディスクロージャー誌三井海上の現状2001 ,平成13年8月発行。甲2) 」奨学金給付費用保険「学校法人等が運営する学生・生徒向けの奨学金給付規程をバックアップする新商品として,平成13年4月に発売しました。学校法人等が,扶養者の死亡・失業等の事故により経済的な事情から在学が困難になった学生・生徒に対して,必要な奨学金(学費相当分)を給付することにより負担する費用に対して保険金をお支払いします(19頁右下欄) 。」(イ)刊行物3(安田火災海上保険株式会社広報部広報課「安田火災の現状ディスクロージャー2001 ,平成13年7月発行。甲3) 」・ 「●安田火災ちきゅうくらぶ社員のボランティア活動推進組織として『安田火災ちきゅうくらぶ』があります(平成5年設立 。全社員が『ちきゅうくらぶめんばー』となり, )各地区ごとに工夫をこらしたボランティア活動を展開しています。… (3」1頁右欄1行〜5行)・ 「●安田火災環境財団の活動平成11年4月に設立した安田火災環境財団では,環境問題の解決に資する団体の支援や人材育成支援等を行っています。平成12年度には,環境CSO(市民社会組織:NPOと同義)での体験を希望する学生を公募・選抜し,活動実績に応じて奨学金を支給する『CSOラーニング奨学金制度』をスタートし,日本野鳥の会などの12団体に21名を派遣しました。…」 (31頁右欄20行〜30行)(ウ)刊行物4(日本興亜損害保険株式会社広報部「日本興亜損保の現状2001 ,2001年〔平成13年〕8月発行。甲4) 」・ 「○(財)日本興亜福祉財団の活動高齢者福祉に関する諸活動と研究を通じて社会に貢献するため,平成3年,日本火災福祉財団(現名称:日本興亜福祉財団)を設立し,次のような活動を実施しています(19頁左欄4行〜8行) 。」・ 「 介護福祉士を目指す学生への奨学金支給事業] [活動開始以来,奨学金支給の対象となった学生は毎年20名,延べ207名にのぼり,卒業後,全国各地の特別養護老人ホーム,病院等で活躍しています。
返還義務なしの奨学金支給制度としては,当財団の支給額は全国のトップレベルにあり,大いに評価されています(19頁左欄17行〜22行) 。」(エ)保険業法111条1項は 「保険会社は,事業年度ごとに,業務及 ,び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し,本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所その他これらに準ずる場所として内閣府令で定める場所に備え置き,公衆の縦覧に供しなければならない 」と定めているところ,上記(ア)〜(ウ)は 。
(,, いずれもこの規定により公衆の縦覧に供されたものである 甲3 乙12 。)イ上記ア(ア)によれば,保険会社が,学校法人等が学生等に対し支給する奨学金に対し保険金を支払う旨が記載され,上記ア(イ),(ウ)によれば,保険会社が財団を設立しこれを通して学生に対し奨学金を支給することが記載されており,保険会社が学生に対する奨学金支給の支援をすること,保険会社が設立した財団を通じて学生に対し奨学金を支給することは周知であったことが認められる。
そうすると,審決が,保険会社が「奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた」としたことに誤りはないが 「奨,学金を支給すること」が周知となっていたと認定したのは誤りであるということができる。
しかし審決は 「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支 ,給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた (14」頁4行〜6行)とした上で 「保険会社が奨学金を支給すること,あるい ,は奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである(14頁7。」行〜15行)とした。
上記アのとおり,刊行物3,4によれば,保険会社が財団法人を設立することにより奨学金支給をしている旨が周知である旨認定できるものであるから,保険会社が直接奨学金を支給するようにすることについても当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が普通に想起できることといえる。加えて,本願補正発明において,奨学金支給の主体が保険会社であることによって,奨学金支給処理システムについての発明である本願補正発明の構成に特段の特徴があるものとも認められない。そうすると,審決がその結論において誤りであるということはできない。
( )原告の主張に対する補足的判断2ア原告は,刊行物2〜4には,保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることが記載されていないと主張するが,上記( )で検討したとおり,審決には結論として誤りはないということができ1るから,原告の上記主張は採用することができない。
イまた原告は,本願補正発明に規定する保険会社は生命保険の契約情報を扱える組織でなければならないところ,上記安田火災環境財団及び日本興亜福祉財団はそれに該当しないと主張して,これに沿う証拠として甲13( 日本興亜損保の現状2001 資料編 )を提出する。 「 」なるほど甲13には,日本興亜損害保険株式会社の扱う事業には損害保険事業と生命保険事業があり,そのうち生命保険事業を扱う1社として日本興亜生命保険会社がある旨記載されており,生命保険契約情報を扱うのは日本興亜生命保険会社に限られるものと解される。また日本興亜福祉財団及び安田火災環境財団は直接保険契約情報を扱えるものとは考えられないが,上記のとおり保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,保険会社がこれを直接行うことも当業者において普通に想起できるものと解されるから,原告の上記主張は採用することができない。
5取消事由4(相違点についての判断の誤り)について( )原告は,本願補正発明と引用発明とでは,発明が解決する課題及び構成1が異なり,本願補正発明は進歩性を備えるものであって特許法29条2項の規定に該当する発明ではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができる発明であるから,審決が相違点に係る構成について容易想到と判断したのは誤りである旨主張するので,以下検討する。
( )ア審決は,相違点(相違点1,2)に関し 「保険会社が奨学金を支給す2 ,ること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた (14頁4行〜6行)とした上で 「保険会社が奨学金 」 ,を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである(14頁7行〜15行)とした。 。」上記4で検討したとおり,保険会社が奨学金支給を支援すること,及び保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,被保険者に重大な事情の変更が生じた場合に,就学している子供がいれば,保険会社が奨学金を直接給付することについても,当業者において普通に想起できるものと解される。そして上記重大な事情の変更として本願補正発明の挙げる死亡保険金給付等があるとすることも,当業者が普通に想起するものである。
イまた,引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,上記2( )ア(イ)1で摘記したとおり 「…子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大 ,学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表示することもできる。… (段落【005 」0 )と記載され,同(ウ)摘記の図3に記載のとおり顧客登録情報として 】家族の構成・性別・年齢・趣味等が記載されていることからすると,引用発明でも被保険者及び家族の個人情報を検索し,必要と思われる情報を取得して印刷する機能を備えるものと解される。そうすると,引用発明において,入力する情報を本願補正発明における保険金給付等の情報とし,印刷し提供する情報を奨学金支給の案内状とすることに格別の技術的課題を見出すことはできないから,結局これら構成の相違点についても,当業者が容易になし得る設計的事項の範囲内のものであると認められる。そうすると,審決が相違点に係る構成について容易想到と判断したことに誤りはない。
( )原告の主張に対する補足的判断3ア原告は,本願補正発明の課題は契約継続性を高めることにあり,引用発明とは発明の課題が相違すると主張する。
しかし,上記2で検討したとおり,引用発明は,生命保険業務における契約情報には顧客に関する情報がかなり含まれているところ,これを顧客サービスに還元する生活情報を提供することを目的とし,本願補正発明も顧客との契約情報を活用して奨学金支給支援を目指すものであるから,その限度で本願補正発明の課題と共通する。原告の上記主張は採用することができない。
イまた原告は,引用発明のシステムは,居住地域に関する生活情報を提供するシステムであるところ,本願補正発明のシステムは保険会社が奨学金を支給する保険加入者のための奨学金処理システムであり,システムが異なると主張する。
しかし,上記2で検討したとおり,引用発明は居住地域に関する生活情報の提供のみを目的とするものではなく,本願補正発明が印刷して提供する情報が 「被保険者の子供に対する奨学金支給の案内状」であるのに対 ,し,引用発明で印刷される情報は 「保険者又はその家族の生活環境に必 ,要と思われる情報」とされているものの,奨学金支給の案内状については記載がない点については審決は相違点(相違点1)として検討している。
相違点(相違点1)についての審決の判断に誤りがないことについては上記のとおりであり,原告の上記主張は採用することができない。
ウ原告は,本願補正発明と引用発明では,入力手段において入力される情報が異なると主張する。
しかし,上記3で検討したとおり,本願補正発明の申請情報,給付完了情報も,引用発明の保全変更情報と本質的に異なるものではなく,具体的な情報の相違について審決は相違点(相違点1)において検討しているものである。そして審決の相違点(相違点1)の判断に誤りがないことは上記のとおりであり,原告の上記主張は採用することができない。
エ原告は,引用発明の処理部は,選択した者の個人情報を検索し,その検索された者の生活情報を提供するものであるから,本願補正発明の演算処理部と異なると主張する。
しかし,引用発明の処理部が選択された者の個人情報を検索するものに限られないことについては,上記2で検討したとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
オさらに原告は,本願補正発明の印刷部と引用発明の印刷手段の印刷内容は異なると主張するが,この相違については審決は相違点(相違点1)として認定し,判断している。そして相違点(相違点1)についての審決の判断に誤りがないことは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
カ原告は,本願補正発明は,生命保険に加入した被保険者の子供を対象として,迅速に奨学金を支給することができるという格別の作用効果を奏するものであるとも主張する。
しかし,本願補正発明が,引用発明に比し格別の作用効果を奏するもの, 。 と認めることもできないから 原告の上記主張は採用することができない6取消事由5(手続違背)について( )原告は,拒絶査定においては,補助資料として甲2が提示され 「被保険1 ,者が死亡した際に,被保険者の子供の就学のために『奨学金』の情報が有益であることは,周知事項である」とされたのに対し,審決では 「刊行物2 ,〜4(甲2〜4)の記載から保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知になっていたと認められる」と認定していて「周知」の内容を異にしており,審決において認定「 」 された 保険会社が奨学金を支給することあるいは奨学金支給の支援をするとの周知技術は,拒絶査定の理由とはされていないから,特許法159条2項の準用する同法50条により拒絶理由を通知する必要があるところ,これがされていないから,審判手続きには法に定める手続きをしていない瑕疵があると主張する。
( )平成18年法律第55号附則3条によりなお従前の例によるとされる平2成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「法」という)159条2項は 「第50条の規定は,拒絶査定不服審判において査定の理由と異な ,る拒絶の理由を発見した場合に準用する。この場合において,第50条ただし書中『第17条の2第1項第3号に掲げる場合』とあるのは 『第17条 ,()』。」 の2第1項第3号又は第4号に掲げる場合 …と読み替えるものとすると規定し,法159条1項は 「第53条の規定は,拒絶査定不服審判に準 ,。,『 』 用する この場合において 第53条第1項第17条の2第1項第3号とあるのは『第17条の2第1項第3号又は第4号』と 『補正が』とある ,のは『補正(同項第3号に掲げる場合にあっては,拒絶査定不服審判の請求前にしたものを除く )が』と読み替えるものとする 」と規定しており,拒 。 。
絶査定不服審判において,査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合には,審判官は拒絶理由を通知しなければならないが,拒絶査定不服審判を請求する場合で,その審判の請求の日から30日以内にする補正の場合(法17条の2第1項第4号の場合)において,補正後の発明が独立して特許を受けることができないものであること(17条の2第5項の準用する126条5項の場合)を理由として当該補正を却下する場合においてはこの限りでない旨規定している。
これを本件についてみると,審決は,本願補正発明につき,引用発明及び周知技術から容易に想到できたから特許法29条2項により独立して特許を受けることができないことを理由として本件補正を却下しており,上記のとおりこの場合には改めて拒絶の理由を通知する必要はないと解されるから,審判の手続きに誤りはない。
( )原告は,拒絶査定と審決とでは,周知とされた内容が異なり,審決時に3認定された周知事項の内容は,拒絶査定の理由とされていなかったと主張する。そこで本件審判手続きについて検討すると,まず平成17年5月24日付け拒絶査定(甲9)には,以下の記載がある。
「本願発明と先の引用文献1に記載されたものとを比較すると,先の引用文献1には『被保険者の死亡時に奨学金の案内状を印刷すること』が記載されていない点で本願発明のものと一応相違しているが,被保険者が死亡した際に,被保険者の子供の就学のために『奨学金』の情報が有益であることは,例えば下記引用文献A(特に第19頁右下欄 『奨学金給付費用保険』の項参 ,照)等に記載されているよう周知の事項と認められることから,先の引用文献1記載の発明において,被保険者の死亡の時点で子供の就学の状況に応じて『奨学金の案内』を印刷するよう構成することに格別の困難性があるものとは認められない。
したがって本願発明は先の引用文献1に記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる(下12行〜下3行) 。」上記拒絶査定においては,刊行物1(甲1)が引用文献1として主引用例として用いられ,周知の事項を示す引用文献Aとして刊行物2(甲2)が示され,被保険者が死亡した際に被保険者の子供の就学のために「奨学金」の情報が有益であることを周知の事項であるとしている。
そして,原告は,本件補正において,前記第3,1( )のとおり 「生命2 ,保険に加入した被保険者の子供に対して奨学金を支給する生命保険加入者のための奨学金支給処理システム…」を「生命保険に加入した被保険者の子供に対して保険会社が奨学金を支給する,生命保険加入者のための奨学金支給処理システム…」と補正したところ,審決は,刊行物1記載の発明(引用発明)を主引用例として用い,相違点についての判断において 「…,刊行物2〜4の上記記載から,保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていたものと認められる。…保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。… (14頁4行〜11行)としたものであ 」る。
上記によれば,本件補正前の本願発明においては,奨学金の支給主体が特定されていなかったことから,上記のとおり拒絶査定においては,奨学金の情報が有益である旨を周知事項として認定し,本件補正において奨学金支給の主体が保険会社とされたことから,保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていたものと認定したものであり,本件審判の手続きに原告主張の誤りはない。
また,上記審決の周知技術の認定には一部誤りがあるが,これが審決の結論に影響を及ぼすものでないことは上記4で検討したとおりである。なお,本願補正発明及び本願発明は,いずれも生命保険加入者のための奨学金支給処理システムに関する発明であり(請求項1 ,迅速に奨学金支給を )することを発明の目的・効果とし(段落【0007 ・ 0025,その】【】)ために契約情報記憶手段,入力手段,演算処理部,印刷部ないし表示部を備える構成(特許請求の範囲)とすることに特徴を有するものであって,奨学金支給の主体が保険会社であるか(本願補正発明 ,これに特定されな )いか(本願発明)により,発明としての進歩性判断の基準とすべきシステムの構成に差があるものではないから,審判手続に原告主張の違法はなく,原告の上記主張は採用することができない。
7結語以上によれば,原告主張の取消事由は全て理由がない。
よって原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 真辺朋子