関連審決 |
訂正2007-390061 無効2006-80054 |
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関連ワード | 発明者 / 製造方法 / 公然知られ(29条1項1号) / 公然実施(29条1項2号) / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 技術常識 / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 構成要件 / 設定登録 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 訂正明細書 / 公知事実 / |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10457号
審決取消請求事件
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原告株式会社四国総合研究所 原告東 洋工業株式会社 両名訴訟代理人弁理士西脇民雄 同 平瀬享児 被告三菱マテリアル株式会社 訴訟代理人弁護 士近藤惠嗣 訴訟代理人弁理 士千葉博史 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/10/15 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2006-80054号事件について平成20年10月16日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
1本件は,原告らが特許権者であり発明の名称を「コンクリートブロック及びその製造方法 (後記訂正後は「舗装用コンクリートブロック及びその製造方 」法 )とする特許第3583037号の全請求項(請求項1〜7)について被 」告が特許無効審判請求をしたところ,特許庁が原告らがなした平成20年3月31日付け訂正請求(請求項1及び2を削除し,同4を同1とし,同3,5〜7をそれぞれ同2〜5とする等)を認めた上,上記訂正後の請求項1〜5についての特許を無効とする旨の審決をしたことから,原告らがその取消しを求めた事案である。 2争点は,上記訂正後の請求項1〜5に係る発明が下記引用例との関係で進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。 記・刊行物1:特開平9-268509号公報(発明の名称「舗装用NOX浄化ブロック ,出願人 三菱マテリアル株式会社,公開日 平成 」9年10月14日,甲1。以下「刊行物1」といい,そこに記載された発明を「刊行物1に記載された発明」という )。 ・刊行物2:野々山登 光触媒による自動車排気ガス浄化機能を持つ道路 フ 「 『ォトロード工法』の開発 ,資源環境対策,1999年〔平成 」11年 ,Vol.35,No.6,551頁〜556頁(甲 〕2。以下「刊行物2」といい,そこに記載された発明を「刊行物2発明」という )。 ・刊行物3:特開平11-33413号公報(発明の名称「大気浄化用構造物の製造方法 ,出願人 三菱マテリアル株式会社,公開日 平 」成11年2月9日,甲6。以下「刊行物3」といい,そこに記載された発明を「刊行物3発明」という )。 ・刊行物4:特許第2875993号公報(発明の名称「アナターゼ分散液およびその製造方法 ,特許権者 佐賀県,登録日 平成11年 」1月14日,甲13。以下「刊行物4」といい,そこに記載された発明を「刊行物4発明」という )。 |
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当事者の主張
1 請求の原因(1) 特許庁等における手続の経緯ア原告らは,平成11年9月28日,名称を「コンクリートブロック及びその製造方法」とする発明について特許出願(特願平11-273776号)をし,平成16年8月6日に特許第3583037号として設定登録(,「」。)。 を受けた 請求項の数7 以下 本件特許 という 特許公報は甲41イこれに対し,被告が平成18年3月31日付けで本件特許の請求項1ないし7について無効審判請求を行ったので,特許庁は同請求を無効2006-80054号事件として審理し,平成19年2月26日,本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする旨の審決をした。 ウそこで原告らは,平成19年4月9日知的財産高等裁判所に対し上記審(()), 決の取消しを求める訴えを提起し 平成19年 行ケ 第10125号その後平成19年5月16日付けで特許庁に対し訂正審判請求(訂正2007-390061号)をしたところ,同裁判所は,平成19年7月13日,特許法181条2項により上記審決を取り消す旨の決定をした。 エ上記決定により前記無効2006-80054号事件は再び特許庁で審理されることとなり,その中で原告らは平成20年3月31日付けで訂正請求(その内容は,請求項1及び2を削除し,同4を同1とし,同3,5〜7をそれぞれ同2〜5等とするもの。以下「本件訂正」という )をし。 たところ 特許庁は 平成20年10月16日 上記訂正を認めた上特 ,,,,「許第3583037号の請求項1〜5に係る発明についての特許を無効とする」旨の審決をし,その謄本は平成20年10月31日原告らに送達された。 (2) 発明の内容本件訂正後の請求項1〜5(そこに記載された発明を,以下順に「本件発明1」〜「本件発明5」という。下線は訂正部分)は次のとおりである。 ・【請求項1】セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたコンクリートブロックであって,前記コンクリートブロックは,透水係数が0.1cm/秒以上,JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm,幅W300mm,高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロック。 ・【請求項2】前記骨材は,粒径5mm以上の粗骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロック。 ・【請求項3】セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したコンクリートブロックに,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか,または,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に,前記コンクリートブロックを浸漬することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。 ・【請求項4】セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックまたは表面側を研磨して前記連通孔が表面に開口した平板状コンクリートブロックを形成し,この平板状コンクリートブロックの表面から,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥するか,または,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に,前記平板状コンクリートブロックの表面を浸漬したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。 ・【請求項5】前記バインダの使用量は,前記骨材100重量部に対して30重量部よりも少ない量で使用されていることを特徴とする請求項4に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法。 (3) 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,上記訂正は適法であり,かつ訂正後の本件発明1〜5はいずれも刊行物1〜4に記載された事項及び出願前に公然知られた発明又は公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 イなお審決が認定した 刊行物1に記載された発明 の内容 同発明と 本 「 」,「件発明1,4」との一致点及び相違点は,次のとおりである。 (ア) 〈刊行物1に記載された発明の内容〉・「コンクリート製基層と表面層からなる舗装用NOx浄化ブロック, ,, であって コンクリート基層用混練物として ポルトランドセメント水,砕石を配合し,表面層用混練物として,砂の粒度を1.2mm〜5mmとした砕砂,酸化チタン及びポルトランドセメント,水を配合することで各層を形成した,基層の空隙率は26%,表面層の空隙率は20%,透水性試験値は,0.10cm/secである舗装用NOx浄化ブロック (以下「刊行物1発明」という ) 。」 。 ・「コンクリート製基層と表面層からなる舗装用NOx浄化ブロックの製造方法であって,コンクリート基層用混練物として,ポルトランドセメント,水,砕石を配合し混練し,表面層用混練物として,砂の粒度を1.2mm〜5mmとした砕砂,酸化チタン及びポルトランドセメント,水を配合し混練し,コンクリート基層混練り物の上に表面層用混練り物を投入することで各層を形成する,基層の空隙率は26%,表面層の空隙率は20%,透水性試験値は,0.10cm/secである舗装用NOx浄化ブロックの製造方法(以下「刊行物1方 。」法発明」という )。 (イ) 本件発明1と刊行物1発明との対比〈一致点1〉本件発明1と刊行物1発明とは,いずれも,「セメントを主バインダとして骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを付着させた透水係数が0.1cm/秒以上の舗装用コンクリートブロック」である点で一致する。 〈相違点1〉本件発明1では 「粒径1mm以上の骨材同士を接合」していると ,特定されているのに対し,刊行物1発明では,表面層の骨材である砂の粒度が1.2mm〜5mmであるものの基層の骨材の粒径については明らかでなく前記特定を有しない点。 〈相違点2〉本件発明1では 「コンクリートブロックの表層付近の骨材間に形 ,成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを,バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い,自然乾」 ,, 燥により 付着させたと特定されているのに対し 刊行物1発明では前記特定を有しない点。 〈相違点3〉本件発明1では コンクリートブロックはJISA5304 1 ,,「() ,, 994 舗装用コンクリート平板長さL300mm 幅W300mm高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板である」と特定されているのに対し,刊行物1発明では,前記特定を有しない点。 (ウ)本件発明4(選択的記載を除いたもの)と刊行物1方法発明との対比〈一致点2〉本件発明4のうち選択的記載を除いた 「セメントを主バインダと ,して粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックを形成し,この平板状コンクリートブロックの表面から,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの製造方法 」との発明 。 と刊行物1方法発明とを対比すると,両者は,いずれも,「セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックを形成し,この平板状コンクリートブロックが,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンを有する舗装用コンクリートブロックの製造方法 」である点で一致する。 。 〈相違点4〉本件発明4では 「平板状コンクリートブロックの表面から,光触 ,媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥する」のに対し,刊行物1方法発明では,表面層用混練物に酸化チタン粉末を配合したとされるのみである点。 (4) 審決の取消事由しかしながら,本件訂正後の各発明は特許法29条2項に違反するとした審決には以下のとおりの誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ア 取消事由1(相違点の看過及び刊行物2記載事項認定誤り)(ア) 相違点の看過刊行物1(甲1)には,バインダとしてのセメントを用いてNOx除去用の触媒としての酸化チタンをコンクリートブロックに固定すれば,舗装用という用途に適する程度の摩擦耐久性を備えたコンクリートブロックが提供できる旨の開示がある。 しかし,刊行物1に記載された「表面層用混練物」は,その配合組成においてバインダとしてセメントを用いることが必須の構成とされている。その上,刊行物1発明における舗装用という用途に照らしても,これを充たすためには極めて高い耐久性(耐摩耗性)という作用効果が必要である旨の記載があることからすれば,このような作用効果は,バインダとしてのセメントにより砂礫を強固に結合・硬化させたコンクリー。,, ト構造物を用いることを前提とするものである この点 刊行物1には舗装用という用途に適する程度の摩擦耐久性を備えたコンクリートブロックにおいて,バインダとしてのセメントを用いずに酸化チタンを保持させる事項については,開示も示唆もなく,また,バインダとしてのセメントを用いずに酸化チタンを保持させても舗装用という用途に実用的に耐える程度の耐久性を備えたコンクリートブロックが得られるという本件発明1〜5により奏される作用効果についても,記載も示唆もされていない。 さらに,刊行物1に記載された「表面層用混練物」において,その配合組成からセメントを除外することは,そもそも舗装用の表面層を形成させることができない点で,選択肢として存在し得ないのであって,技術的に不合理であることは明らかである。 そうすると,本件発明1と刊行物1発明とは,バインダの有無という相違点があるにもかかわらず,審決はこの点を指摘しておらず,相違点を看過した誤りがある。 (イ) 刊行物2記載事項の認定誤り審決は,刊行物2(甲2)の図面(551頁)について 「高機能舗 ,装の表層部の拡大図があり,骨材のまわりに光触媒が付着されていること」が見て取れると認定しつつ(15頁1行〜3行 ,この光触媒につ )いて 「…刊行物2の『光触媒(酸化チタン:TiO )を含むセメント ,2系固化剤』が本件発明3の『光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー』に相当することは明らかである… (23頁22行〜 」24行)として,刊行物2に記載された光触媒がバインダとしてのセメントを含まない配合組成を用いる構成であるかのように認定する。 しかし,刊行物2(甲2)には,バインダとしてのセメントを含む配合組成を用いれば舗装用という用途に適する程度の摩擦耐久性を備えたコンクリートブロック又はコンクリートを提供することができる旨の開示はあるが,それを超えて,本件各発明のようなバインダとしてのセメントを含まない配合組成を用いる構成については開示されていない。そればかりか,刊行物2において用いられる配合組成からバインダを除外する事項は,刊行物2発明の前提を覆す発想又は刊行物2発明から積極的に除外又は排除されている構成であり,技術的に不合理である。このように,刊行物2の記載を通して,セメントをバインダとして用いない酸化チタンスラリーについては当然のこと,バインダを含まない酸化チタンスラリーを連想させる記載は一切ないから,刊行物2の拡大図で骨材の周りに付着されているのがバインダとしてのセメントを用いないで保持された光触媒ではなく,セメント系固化剤(STコート)との関わりを有した形態(STコートの形態)での付着であることは明らかである。審決の上記認定は誤りといわざるを得ない。 審決の進歩性判断は,これら刊行物2に記載された事項の認定の誤りを前提として行われたものであるから,取り消されるべきである。 イ 取消事由2(相違点2に係る容易性判断の誤り)(ア)取消事由2-1(刊行物1及び刊行物2の組合せに関する判断の誤り)審決は 「…触媒の付着方法として,刊行物2に記載された方法を刊 ,行物1記載発明に適用し,本件発明1のようにNOx除去用の触媒としての酸化チタンを骨材間に形成された空隙に付着させることは,当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない(21頁下2行〜22頁2 。」行)とする。 しかし,刊行物1発明は,セメント,酸化チタン粉末及び砂から成る表面層を有する舗装用NOx浄化ブロックに関する発明であり,その表面層は既に酸化チタンを含有しているので,更に刊行物2(甲2)記載の舗装面に特殊なバインダが含まれた酸化チタンをSTコートの形態で付与する方法を適用する必要はない。 したがって,当業者は,刊行物2に記載された方法を刊行物1発明に適用しようとは発想しない。 また,刊行物1及び刊行物2には,いずれもバインダを含まない「酸化チタンスラリー」についての記載がないので 「刊行物2に記載され ,た方法を刊行物1記載発明に適用したNOx浄化用ブロック」では,どのような組合せを採用しようとも,触媒はバインダとしてのセメントにより固定されているのであって,バインダを用いずに固定することを必須の構成要件とする本件各発明の構成とはならない。 さらに,刊行物1発明及び刊行物2発明では,舗装用に用途を限定した場合,いずれも酸化チタンをバインダとしてのセメントとともに用いることが発明の本質的要素とされており,それらの配合組成からバインダとしてのセメントを除くという発想ないし思想が容易に想到されることはない。 なお被告は,取消事由2-1〜2-3に対し,刊行物4(甲13)は株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液に係るパンフレット(甲12,以下「甲12パンフレット」という )に記載された酸化チタンス 。 ラリー液を具体的に示したものであるとして,甲12パンフレットの記載内容を前提に反論するが,甲12パンフレット(及び甲12パンフレット記載の酸化チタンスラリーが前提とする特許第2875993号に係る特許公報〔刊行物4,甲13 )の具体的内容は審決において引用 〕されていないから,審判手続で審理判断されなかった公知事実との対比について審決を適法とする理由として新たに主張することが許されるものではない。また,甲12パンフレットの頒布日は立証されておらず,本件出願前に公知であったことが明らかでないことに加え,本件の審判手続においても証拠として採用されなかったことに鑑みれば,いずれにせよ反論の根拠とならないというべきである。 (イ)取消事由2-2(酸化チタンスラリーの選択に関する判断の誤り)審決は 「…酸化チタンを含む液を噴霧する際に,どのような液を選 ,択するかは,必要に応じ適宜選択し得るものであり,酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを噴霧し,自然乾燥させて付着させる点は,刊行物3,4に記載されているから,酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを選択し 『光,触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを,自然乾燥させることにより付着させる』ことも,当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない (22頁3行〜10行)とする。 。」ここで,審決は,酸化チタンスラリーを選択し自然乾燥により付着させる対象物について記載するところがないため,付与対象物は不明であるが,仮にこれが刊行物1発明ないし刊行物2発明を付与対象物とするのであれば,誤りである。すなわち,刊行物1発明については,セメント,酸化チタン粉末及び砂から成る表面層を有する舗装用NOx浄化ブロックに関する発明であり,その表面層は既に酸化チタンを含有してい, 。 るので 更に酸化チタンを付与する方法を選択適用する必要は生じないまた,刊行物2発明については,セメントを必須の成分として含むSTコートの形態での付与を推奨する発明であり,舗装用という用途ないし目的を設定した場合,セメントを必須の構成成分とするものと考えられるから,このようなSTコートの組成からバインダとしてのセメントを除去した組成物により触媒を付与する構成は刊行物2記載から読み取れないというのが技術常識である。 そして 刊行物1及び刊行物2には いずれもバインダを含まない 酸 , , 「化チタンスラリー」についての記載がない一方で,舗装用という用途を限定する場合には,タイヤチェーン(刊行物1)ないしタイヤ(刊行物2)の摩耗にも耐える程度の極めて高い水準の耐摩耗性が必要であり,そのためには,バインダとしてのセメントが必要必須であることを開示している。この点,本件特許出願前において,酸化チタンスラリーはバインダを含むものと含まないものの両者が知られており,また,バインダとしてのセメントを含むものがタイヤ等による摩耗に耐える程度の極めて高い水準の耐摩耗性を維持できるコート層を与えることも知られていたが,バインダを含まない酸化チタンスラリーは,固定力はあるものの,タイヤ等による摩耗に耐える程度の極めて高い水準の耐摩耗性を維持できることを示す証拠はない。 そうすると,刊行物1ないし刊行物2の開示事項ないし発明の代替手,() 段として当業者が選択する代替手段としては バインダ 特にセメントを含む酸化チタンを選択する余地はあるとしても,バインダを含まない刊行物3ないし4に記載の酸化チタンスラリーを適用するという選択肢は予想できない。 なお被告は,刊行物1発明の方法に代えて刊行物2に記載されたSTコート又は刊行物3(甲6)に記載された酸化チタンスラリーを用いる方法が容易である旨主張するが,審決においては,刊行物3及び刊行物4を「酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリーを噴霧し,自然乾燥させて付着させる点」として同列一体のものとして挙げているから,刊行物3と刊行物4の各記載を分離の上,刊行物3の記載のみを刊行物2の記載と同列に理解して刊行物1発明の代替手段として示すものであると理解することはできない。またこの点は措くとしても,刊行物3は,空隙径10nm〜200nmという超微細な空隙径を有する無機多孔体に特定すれば舗装用という用途を充たす作用効果が得られることを開示する発明であるから,刊行物3にバインダを含まない酸化チタンスラリー(酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である酸化チタンスラリー)を噴霧し,自然乾燥させて付着させることが記載されているからといって,当該付着方法が上記のように特定された固定対象とは異なる固定対象にまで広げて適用可能になるというものではない。刊行物3が推奨するバインダを含まない酸化チタンスラリーの固定対象は,飽くまで刊行物3の記載から推定される超微細な空隙であって,粒子径が1mm以上の骨材間に形成された空隙を対象として推奨するものでないことは明らかである。その一方で,刊行物1には「表面層用混練物」としての形態しか開示されておらず,刊行物3に記載された上記スラリー状形態の酸化チタンを噴霧する技術につき開示又は示唆する記載がないことも明らかである。そうすると,刊行物1記載の表面層の付与方法に代えて刊行物3に記載の付与方法を適用することが容易であるということはできない。 (ウ)取消事由2-3(株式会社田中転写製酸化チタンスラリー液に係る判断の誤り)審決は 「…株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液は,実施例 ,1に使われ,本件出願前製造販売されていたことは明らかであり,本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明といえるから,酸化チタンを含む液として,この酸化チタンスラリー液を使用することも当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない(審決22頁11。」行〜15行)とする。 確かに,本件出願前,酸化チタンスラリーは,株式会社田中転写製のものに限らず,当業者において自由に調製されていたり,市販品を取り寄せることができた。しかし,本件各発明は 「酸化チタンをバインダ ,を用いずに保持させた舗装用コンクリートブロックであること (第1」の特徴 ,光触媒としての酸化チタンが保持される保持対象が「セメン )トを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロック(透水性骨材接合ブロック)であること (第2の特徴 ,光触媒と 」)しての酸化チタンが保持される保持形態につき「表層付近の骨材間に形成された空隙に保持させたこと (第3の特徴)という各特徴を有する 」ところ,上記第2の特徴に係る構成は,本件特許出願前に公知であった刊行物4(甲13)中には具体的に記載がない。 そして,本件各発明は,保持対象に係る上記第2の特徴と保持形態に係る上記第3の特徴との組合せによれば,酸化チタンをバインダを用いずに保持させた舗装用コンクリートブロックであっても要求性能を満たすことを提案しているのであって,このような本件各発明が,実施例に使用された酸化チタンスラリーそれ自身が「公然知られた発明もしくは公然実施された発明といえる」という理由のみで,当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎないといえるものではない。 (エ) 取消事由2-4(作用効果に係る判断の誤り)審決は 「…本件発明1によってもたらされる効果は,刊行物1〜4 ,に記載された事項が当然に奏する程度,または刊行物1,2に記載された事項及び本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明が当然に奏する程度であり,格別のものとはいえない(22頁下5行。」〜下2行)とする。 しかし,刊行物1ないし刊行物2は,舗装用という用途に対しては,バインダとしてのセメントが必須であることを開示するのみであり,バインダとしてのセメントが不要であることを技術的に示していない。 この点,本件各発明により奏される作用効果は,触媒性能が付与された平板であって,透水性と曲げ強さという,透水性舗装用ブロックとしての本質的に必要な性能を兼ね備えることができるというものである。 このような作用効果は,透水性舗装用ブロックに対して触媒性能を付与する際にバインダを用いないことに起因するのであって,バインダとしてセメントを併用した場合にはバインダとしてのセメントが光触媒を覆うため光触媒まで光が届きにくくなり,結果として触媒機能が低下したり,透水性を阻害するか,又は曲げ強さを低下させるなど作用効果に劣ることになる。 そうすると,バインダを用いないで触媒を保持させることを開示していない刊行物1又は2には,本件各発明により奏される作用効果が記載されていないというべきである。 また,刊行物3は,付与対象として極めて微細な多孔質を対象とした場合に限定して舗装用コンクリートブロックへの適用可能性を示唆しているが,上記(ウ)の特徴事項1〜3の組合せについては開示も示唆もなく,同様に,刊行物4にも上記特徴事項の組合せについて開示も示唆もない。 そうすると,審決が指摘する刊行物1〜4のいずれについても,本件各発明の特徴点の組合せについて開示されていないので,本件各発明の作用効果が記載も示唆もされていないことは明らかである。 さらに,本件各発明に係る上記第1ないし第3の特徴事項が結合した結果,本件各発明は「光触媒能が付与された平板であって,透水係数が0.1cm/秒以上という透水性と,JISにより測定される曲げ強さが12kN以上を兼ね備えるという特徴 (第4の特徴)を備えること 」,,「 , ができるところ 刊行物1〜4には光触媒能を有する平板であって」 。 透水性と曲げ強さを備えたもの が得られるとの証拠は示されていないしたがって,審決の上記判断は誤りである。 ウ 取消事由3(本件発明2〜5に係る認定・判断の誤り),,「『(」 (ア) 前記ア(ア)のとおり 審決は…刊行物2の 光触媒 酸化チタンTiO )を含むセメント系固化剤』が本件発明3の『光触媒として機2能するNOx除去用の酸化チタンスラリー』に相当することは明らかである… (審決23頁22行〜24行)と誤って認定しているから,こ 」のような誤りを前提に本件発明3を容易想到とした審決の判断もまた誤りである。 (イ)また,本件発明2〜5は,いずれも本件発明1を引用した発明であ, , るから 前記のとおり本件発明1に係る容易性の判断が誤りである以上本件発明2〜5に係る審決の判断もまた,誤りというべきである。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。 3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告ら主張はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対しア原告らは,審決には刊行物1及び刊行物2に記載された事項の認定に誤りがあり,本件特許の進歩性判断はこれら誤りを前提としたものであるので,取り消されるべきであると主張する。しかし,審決は,刊行物1発明と本件発明1とを対比して相違点を認定し,しかる後に,相違点の容易性を判断しているものであるから,刊行物1に記載された事項の認定の誤りについては,結果として相違点の看過になっているか否かという観点と,相違点判断の誤りにつながっているか否かという観点に分けて評価する必要があるし,刊行物2に記載された事項の認定の誤りについては,相違点判断の誤りにつながっているか否かという観点から評価すべきものである。 イこの点,刊行物1の記載に関する原告らの主張は,表面層であるモルタルやコンクリートを形成するためのセメントを,あたかも酸化チタンスラリーに配合されているバインダであるかのように誤解したものといわなければならない。一般に知られているように,砂とセメントは水を加えて混練し乾燥することによってモルタルないしコンクリートが形成される。刊行物1の請求項1に記載されている「セメント100重量部,および砂100重量部〜700重量部」は表面層を形成するモルタルないしコンクリートの成分に関するものであり,このモルタルないしコンクリートに酸化チタン粉末5重量部〜50重量部が含まれている。しかも,刊行物1発明は酸化チタンスラリーを用いないので,酸化チタンスラリーにセメントが配合されるものでないことは明らかである。原告らはこのようなモルタル形成のセメントを酸化チタンスラリーのバインダと同一視しているが,技術常識からみて明らかに誤っている。 また,本件発明1においても,その請求項1に記載されているように,コンクリートブロックの表層は「セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合」して形成されるものであり,ブロック表面層がセメントと砂(骨材)によって形成されることは共通している。 原告らはこのような表面層の形成について,バインダとしてのセメントを除外することについて述べているが,セメントはコンクリートやモルタルを形成するための必須な成分材料であるので,セメントを除外する点についての主張は,技術的に全く無意味である。 刊行物1の実施例1には,表面層用混練物として,砂,酸化チタン20重量部及びポルトランドセメント80重量部を配合し,混練するとして,表面層の形成時に酸化チタン粉末を配合することが記載されている。原告らはこの態様を捉えてセメントが酸化チタンに対してバインダとして用いられているかのように主張していると思われるが,既に述べたように,セメントは砂(骨材)と共に表面層のモルタルないしコンクリートを形成する成分材料であり,これはその配合量からも明らかである。 酸化チタン粉末をブロック表面層に保持させる方法は,刊行物1に記載(, ,, ) されている態様 セメント 砂 酸化チタン 水を配合して混練する態様に限らない。刊行物3(甲6)には 「酸化チタン粒子を水に高度に分散 ,させて酸化チタン含有スラリーを形成し,ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔体表面に含浸させ,乾燥することを特徴とする大気浄化用構造物の製造方法 (請求項1)が記載されており,無機系多孔体とし 」(【】)。 てコンクリートやモルタルの構造物が例示されている 段落 0010この酸化チタンスラリーは,刊行物3の段落【0024】表1に示すように 固定化剤と分散剤を含むもの 実施例2〜6 のほかに 固定化剤 す , (),(なわちバインダ)及び分散剤を含まないもの(実施例7,8)が示されている。さらに,具体的には 「酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸 ,化チタン含有スラリーを形成するには,酸化チタン粒子と水とを十分混合撹拌することにより均一に分散された酸化チタン含有スラリーが得られる」ことが記載されており(段落【0011,固定化剤(バインダ)を 】)用いない態様が具体的に示されている。 このように,表面層のモルタルないしコンクリートを形成するためのセメントと,酸化チタンスラリーに含まれるバインダとは明確に区別して認識されており,したがって,両者を同一視する原告らの上記主張は誤っている。 なお,仮に原告らの主張に沿って,刊行物1発明においてはモルタルないしコンクリートを形成するためのセメントが同時に酸化チタンを保持させるためのバインダとしても機能していると理解したとしても,審決は,刊行物1発明では酸化チタンを付着させる手段が特定されていない点を相違点2として正しく認定し,これに基づいて容易性の判断をしているのであるから,そもそも,原告らの主張する点は審決の結論に影響するものではなく,取消事由となり得ない。 ウ次に,原告らは,刊行物2(甲2)の記載に関し,刊行物2のSTコートはセメントを含むから本件発明3の酸化チタンスラリーとは異なるので,STコートを本件発明3の酸化チタンスラリーに相当するとした審決の認定は誤りであると主張する。 しかし,刊行物2にはSTコートがセメントを含むことは全く記載されていない。一方,刊行物3(甲6)に記載されているように,酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーをコンクリートやモルタルの構造物に含浸させて表面層に酸化チタンを保持させることは従来から知られており,この酸化チタン含有スラリーの例として 「酸化チタ ,ン粒子と水とを十分混合撹拌することにより均一に分散された酸化チタン含有スラリーが得られる 」ことが記載されており(段落【0011, 。 】)固定化剤(バインダ)を用いない態様が具体的に示されている。しかも,刊行物3には,上記酸化チタンスラリーをコンクリートなどに含浸することが開示されている。 そうすると,刊行物2のSTコートに代えて刊行物3のバインダーを含まない酸化チタン含有スラリーを用い,舗装用道路面のコンクリート表層, 。 部に酸化チタンを保持させることは 当業者が容易に想到することであるしたがって,刊行物3の酸化チタン含有スラリーを併せ考慮すれば,刊行物2の施工方法は本件発明3の「光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧する」との技術事項を有するとした審決の認定に誤りはない。なお,原告らは上記STコートについて,その配合組成からセメントを除外することについて述べているが,審決は,STコートからセメントを除外して考慮することを示したものではなく,原告らの上記主張は失当である。 また原告らは,刊行物2の図面(551頁)に言及するが,同図には道路表面層の骨材に光触媒が付着している態様が明確に示されており,この光触媒は酸化チタンであることが明記されている(551頁下3行 。し)たがって,原告らが主張するような審決の不当性を示す問題はない。 (2) 取消事由2に対しア 取消事由2-1につき原告らは,刊行物1と刊行物2を組み合わせることは容易とした審決の, , 判断が誤りである旨主張するが 審決における本件発明1の容易性判断は原告らの指摘する刊行物1及び刊行物2の記載のみならず,刊行物3及び刊行物4の記載をも考慮して判断されている。 そして,この刊行物3には 「酸化チタン粒子を水に高度に分散させて ,酸化チタン含有スラリー」をコンクリートやモルタルなどの表面に含浸させ,乾燥させて酸化チタンを付着させることが記載されており,この酸化チタンスラリーの具体例として,固定化剤(バインダ)を含むものと含まないものが例示されている(実施例2〜8 。しかも,刊行物3の酸化チ )タンスラリーはNOx除去の触媒としてコンクリートやモルタルなどの表面に含浸乾燥させて付着させるものであり,本件発明1と同一の目的と作用効果の下で使用されるものである。 また,刊行物4は株式会社田中転写製の酸化チタンスラリー液に係るパンフレット(甲12パンフレット)に記載された酸化チタンスラリー液を具体的に示したものであり,これら刊行物4及び甲12パンフレットによれば,本件発明の実施例1で使用する酸化チタンスラリー液が本件特許の出願前に販売され,コンクリート構造物について既に使用されていたことが明らかである。 そうすると,刊行物1発明において,酸化チタンを予めセメント及び砂と混合して表面層を形成する態様に代えて,刊行物4及び甲12パンフレットに記載された酸化チタンスラリー液を用い,刊行物3に記載されているようにコンクリートやモルタルなどの表面に含浸させ乾燥させて酸化チタンを付着させることにより本件発明1のコンクリートブロックを形成することは,本件発明1と同一の目的を有し作用効果を共通するものであるので,当業者が容易に想到し得ることであるし,それを舗装面に適用することも刊行物2に記載されている目的と作用効果が共通であるから,刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 このように,原告らの主張は,審決の刊行物3及び刊行物4についての指摘を看過しており,刊行物1及び2の記載のみを機械的に組み合わせて論じたものであって,理由がない。 なお原告らは,刊行物3の記載について 「粒子径1mm以上の骨材間 ,に形成される空隙を有するコンクリートブロック」について記載されていないから本件発明1を示唆するものではないと主張するが,審決(21頁16行〜20行 が指摘するとおり 刊行物1のブロックは砂の粒度が1. ),2〜5mmが好ましいと記載されており,この粒度が表面層部分である場合には本件発明1と同様であり,またコンクリートブロック全体の粒度であるとしても,粒子径1mm以上の骨材であることに変わりはないから,刊行物3の粒径に関する原告らの主張は理由がない。 また原告らは,刊行物4の記載について,タイヤ等の磨耗などに対する耐摩耗性を有しているとは記載されておらず,そのような強固な固着力を有していないとか,舗装用ブロックへの適用を示唆する記載もない旨主張するが,刊行物4は甲12パンフレットに示された酸化チタンスラリーを具体的に説明した文献であり,甲12パンフレットには歩道等のインターロッキング等についてNOx対策試験に用いたことが記載されている(1頁表中24行参照 。しかも,本件発明1は甲12パンフレットに示す酸 )化チタンスラリーを実施例1に用いているのであるから,刊行物4に関する原告らの上記主張は理由がない。 イ 取消事由2-2につき(ア)原告らは,刊行物1の舗装用NOx浄化用ブロックの表面層は既に酸化チタンを含有しているので,更に酸化チタンを付与する方法を適用する必要がないと主張するが,審決の認定を誤解するものである。審決は,刊行物1の舗装用NOx浄化用ブロックの表面層が酸化チタンを含有している状態で,更に酸化チタンを付与する方法を適用することを認定しているのではない。そもそも,刊行物1(甲1)の請求項1には酸化チタンを表面層に含有するブロックとして記載されており,酸化チタンを付着させる方法を限定しておらず,酸化チタンを付着させる方法は任意であるから,実施例1に記載されている方法(セメントと砂と共に酸化チタンを含有する混練物とする方法)に限定されるものではない。 そして,刊行物2(甲2)には舗装面に酸化チタンを付着させた構造と共に,STコートを用いた酸化チタンの付着方法が記載されており,刊行物3(甲6)には,酸化チタンスラリーをコンクリートやモルタルに含浸し乾燥させることによって,表面層に酸化チタンが付着したNOx浄化性を有する建材,舗装ブロック,舗装構造物などの大気浄化用構造物が記載されている。これら刊行物2の舗装構造及び刊行物3の構造物は,コンクリートブロック等の表面層に酸化チタンを保持させ,その触媒作用によってNOx浄化効果を発揮するものであり,本件発明1と目的及び作用効果が共通するものであるから,刊行物1の舗装用NOx浄化用ブロックについて,酸化チタンをセメント及び砂に予め混合する方法に代えて,刊行物2に記載されているSTコート又は刊行物3に記載されている酸化チタンスラリーをコンクリートブロック等の表面層に含浸させて乾燥し,該表面層に酸化チタンが付着したNOx浄化用ブロックを形成することは,当業者が容易に想到可能なことである。 (イ)また原告らは,刊行物2のSTコートはセメントを必須成分として含むから,バインダを含まない酸化チタンスラリーを自然乾燥して付着させることは推奨していないとか,刊行物1及び刊行物2にはいずれもバインダを含まない酸化チタンスラリーが記載されていないとか,刊行物3の固定対象は空隙径10nm〜200nmの多孔体に特定されるなどと主張するが,前記アのとおり,刊行物3には酸化チタンスラリーとしてバインダを含むものと含まないものが例示されているし,刊行物3に記載されているコンクリートブロック(多孔質体)は空隙径10〜200nmが好ましいと記載されているものの,含浸性を有するものであれば特に限定されるものではないと説明されており,上記空隙径に限定されないことは明らかであるから,原告らの上記主張はいずれも理由がない。 (ウ)また原告らは,バインダを含まない酸化チタンスラリーではタイヤ等による摩耗に耐える高い耐摩耗性を維持することが可能であることを示す証拠がない旨主張するが,前記アのとおり,刊行物4の酸化チタンスラリーは,本件特許の実施例1に使用されているもので,バインダを含んでいないにもかかわらず,歩道等のインターロッキング等について使用されているのであって(甲12パンフレットの記載参照 ,原告ら )の上記主張は,本件特許の実施例1に矛盾しており,理由がない。 (エ)また原告らは,バインダを含む酸化チタンスラリーを用いる選択肢はあっても,バインダを含まない刊行物3及び4の酸化チタンスラリーを用いる選択肢は刊行物1及び2から予想できない旨主張するが,既に述べたことから明らかなように,原告らの上記主張は理由がない。 ウ 取消事由2-3につき原告らは,バインダを含まない酸化チタンスラリーを使用する対象として「セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロック」は刊行物4に記載されていないと主張するが,刊行物4(甲13)は,酸化チタンスラリーの成分等を具体的に開示した文献であり,その使用対象を特定したものではない。 しかも,前記アのとおり,刊行物4に示される酸化チタンスラリーは歩道等のインターロッキング等について使用されており(甲12パンフレットの記載参照 ,一般にインターロッキングブロックはコンクリート製で )あるから,粒径1mm以上の骨材(砂)を含むものである。一方,刊行物1には酸化チタンを保持する基体として砂の粒度1.2〜5mmが好ましいコンクリートブロックが示されており,刊行物3には酸化チタンスラリを含浸させる基体としてコンクリート等の多孔質構造物が示されている。 そうすると,刊行物4の酸化チタンスラリーを刊行物1及び刊行物3のコンクリートブロックに使用することは,その使用目的及び作用効果が共通であるから,当業者が容易に想到することができるというべきである。 エ 取消事由2-4につき原告らは,刊行物1,2には本各件発明により奏される作用効果が記載されていないし,その示唆もないと主張する。しかし,刊行物1のコンクリートブロックにおいて,酸化チタンはスラリー状態で使用されているのではない。刊行物1発明におけるセメントに関する原告らの上記主張は,表面層であるモルタルやコンクリートを形成するためのセメントを,あたかも酸化チタンスラリーに配合されるバインダであるかのように誤解したものであり,酸化チタンスラリーにセメントが必須成分として含まれるものではない。刊行物3にはコンクリートブロックに含浸させる酸化チタンスラリーとしてバインダを含まないものが例示されている。このように,酸化チタンスラリーについて刊行物1発明がバインダーを用いることを推奨していることはなく,刊行物1のバインダーに関する原告らの上記主張は明らかに誤っている。 また原告らは,バインダとしてのセメントを併用すればセメントが光触媒を覆うので結果として触媒機能が低下するなど作用効果が劣る旨主張するが,審決は,セメントを含有する酸化チタンスラリーについて判断したものではないし,本件特許の出願時の明細書には,バインダを含む酸化チタンスラリーを用いたときの触媒機能のデータと,バインダを含まない酸化チタンスラリーを用いたときの触媒機能のデータとが対比される具体的な数値データとして全く示されておらず,しかも,一般的な技術常識からみて,バインダーが触媒機能に与える影響はその使用量によって大きく異なることが予想される。したがって,原告らの上記主張は理由がない。 (3) 取消事由3に対し前記(1)及び(2)のとおり,本件発明1についての審決の判断に誤りはないから,取消事由3に関する原告らの主張は理由がない。 |
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当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁等における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審 ))決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 2 本件各発明の意義(1) 本件訂正後の請求項1〜5は,前記第3,1(2)のとおりである。 (2)また,本件訂正後の明細書(全文訂正明細書,甲27。ただし,図は特許公報〔甲41〕による)には次の記載がある。 ア発明の属する技術分野・「この発明は,歩道等に舗装として設置された際に,NOx除去の効果及び透水性を有し,かつ,曲げ強さが大きい舗装用コンクリートブロックに関する(段落。」【0001 )】イ従来の技術・「近年,自動車等から排出される排気ガスに含まれているNOxによる大気の汚染は,自動車数の増加,それに伴う交通渋滞などで増加している。このようなNOxを除去する目的で,酸化チタン(二酸化チタン)などの光触媒を外壁や舗装用ブロックの表面に保持させてNOxを除去することが提案されている(段落【00。」02 )】・「例えば,特開平9-268509号公報や特開平10-46512号公報によれば,コンクリート製基層上に,酸化チタン粉末を含むモルタルを表面層として被覆している(段落【0003 ) 。」】・「また,特開平10-96204号公報によれば,舗装ブロックのモルタル表面層を叩きによって凹凸模様に形成させ,その凹凸模様に酸化チタンを含有する表面層を付与している(段落【0004 ) 。」】ウ発明が解決しようとする課題・「しかしながら,酸化チタンを外壁に用いる場合には長期間の使用でも,光触媒機能は低下しないが,舗装材料としてこのコンクリートブロックを使用すると光触媒機能の経時低下が激しい。これは,舗装材料としての使用中に路面が汚れたり,また,その路面が踏まれるなどして表面の酸化チタン層が剥離してしまうためと考えられる(段落【0005 ) 。」】・「そこで,この発明は,長期間の使用に際しても,光触媒機能の低下の少ない,コンクリートブロックを提供することを目的とする(段落【0006 ) 。」】エ課題を解決するための手段・「この目的を達成するために,請求項1記載の発明は,セメントを主バインダとして粒径1mm以上の骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口した透水性を有するコンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンをバインダを用いずに保持させたコンクリートブロックであって,前記コンクリートブロックは,透水係数が0.1cm/秒以上,JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm,幅W300mm,高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上の平板であることを特徴とする舗装用コンクリートブロックである 」。 (段落【0007 )】・「本発明によれば,透水係数が0.1cm/秒以上という透水性を有するコンクリートブロックであって,JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm,幅W300mm,高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上という曲げ強さが大きい平板である舗装用コンクリートブロックが得られるので,このコンクリートブロックは,透水性のある舗装用コンクリートブロックとして利用できる。 また,本発明によれば,粒径1mm以上の骨材を用いることにより,骨材間に触媒を保持するに十分な空隙を設けることができ,これにより透水性を保持させることができる。 また,酸化チタンなどの光触媒は,粒子径の大きな骨材間により形成された表層付近の空隙に保持されるので,触媒面に光が到達されて光触媒として機能する。 また,この触媒が保持されている面は空隙であるので,汚れることが少なく,また,ブロックの表面が踏まれたり,摩擦されたりしても,触媒は骨材間に形成された空隙に保持されるので,外力が直接触媒に働くことがなく,したがって触媒が剥がれることが少ない。 また,このバインダを用いずに酸化チタンを保持させたコンクリートブロックは透水係数が0.1cm/秒以上と十分に高いことにより,光触媒作用により生成す, , る硝酸イオンは 表面側から裏面側に流下する降水時などの雨水などにより安定層路盤,路床,クッション層などの下層に洗い流されて,硝酸イオンが蓄積することなく,酸化チタンの高い触媒活性が維持される。 これにより,長期間の使用によっても光触媒効果の低下の少ないコンクリートブロックを提供することができる(段落【0008 ) 。」】・「請求項2に記載の発明は,前記骨材は,粒径5mm以上の粗骨材を主体とすることを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックである段落 0。」(【011 )】・「ここで,5mm以上の粗骨材を主体とするとは,いわゆる粗骨材を意味し,この粒子径が5mm未満の細骨材も15%未満程度で有れば,実質的に透水性に影響を与えないので,含まれていてもよい(段落【0012 ) 。」】・「このように構成すれば,一般的な粗骨材を用いることにより,この粗骨材間に触媒を保持するに十分な空隙を設けることができる(段落【0013 ) 。」】・「請求項3に記載の発明は,セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したコンクリートブロックに,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧するか,または,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に,前記コンクリートブロックを浸漬することを特徴とする請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である(段落【0016 ) 。」】・「このように構成すれば,請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックを容易に製造することができる(段落【0017 ) 。」】・「請求項4に記載の発明は,セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,該骨材間の空隙が連通孔により形成された平板状のコンクリートブロックの表面側に連通孔が開口した平板状コンクリートブロックまたは表面側を研磨して前記連通孔が表面に開口した平板状コンクリートブロックを形成し,この平板状コンクリートブロックの表面から,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリーを噴霧したものを自然乾燥又は加熱乾燥するか,または,光触媒として機能するNOx除去用の酸化チタンスラリー液の中に,前記平板状コンクリートブロックの表面を浸漬したものを自然乾燥又は加熱乾燥することを特徴とする請求。」(【】) 項1に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である段落 0018・「このように構成すれば,セメントをバインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合した平板状コンクリートブロックを形成させた際に,連通孔の一部は表面に開口されるが,骨材から遊離した状態のセメントが表面付近に多く含まれている場合にはこの連通孔の一部または全部は表面に開口されていない場合がある。そのような場合を含めて,その表面を研磨により除去すれば,より多くの連通孔が表面に開口される。このようにして得た平板状コンクリートブロックの表面に形成された開口から,触媒をその骨材間で形成された空隙に保持させることができるので,請求項1に記載の舗装用コンクリートブロックを容易に製造することができる(段落。」【0019 )】・「また,表面を研磨したコンクリートブロックは,透水性能に優れ,また,表面側が研磨されているので,この研磨面を上にして施工すれば,表面の歩行性が優れ。, 。」 る また 骨材の研磨断面がこの表面に露出されることにより外観も美麗となる(段落【0020 )】・「請求項5に記載の発明は,前記バインダの使用量は,前記骨材100重量部に対して30重量部よりも少ないことを特徴とする請求項4に記載の舗装用コンクリートブロックの製造方法である(段落【0021 ) 。」】・「このように構成すれば,骨材間に十分に広い空隙に基づく連通孔が形成されるので,このコンクリートブロックの透水性が優れる。これにより,NOx除去により生じた硝酸イオンをこの連通孔を介して下層に洗い流すことのできる平板状のコンクリートブロックを得ることができるので,光触媒活性の低下の少ない舗装用コンクリートブロックを得ることができる(段落【0022 ) 。」】オ発明の実施の形態・「以下,この発明に係る実施の形態を透水平板を一例として図面に基づいて説明する(段落【0023 ) 。」】・「この発明の実施の形態に係るコンクリートブロック1は,図1に示すように,長さL,幅Wが数十cm程度(例えば,15cm又は30cmなど ,高さHが数 )cm(例えば,60mm)に規格化された方形寸法であり,歩道,コミュニティ広場,駐車場,建物周辺,ガレージ,公園,庭園,プールサイド,親水施設などにおいて,透水性の路床,路盤,砂などのクッション層を介して併設敷設されて使用されるものである(段落【0024 ) 。」】・ 【図1】・「このコンクリートブロック1は,粒子径の大きな骨材2…同士がセメントなどのバインダ(不図示)により接合され,表面1a側に配置される骨材2の表面2aには,光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン3が保持されている。また,この骨材2の粒径が大きいことにより,骨材2…間には,多数の空隙4…が形成されている。また,この空隙4…は表面1a及び裏面1bまで連通されており,表面1aに形成された開口5から酸化チタン3まで光が届くように構成されている(段落【0025 ) 。」】・「…この骨材2を接合させるバインダとしては,通常の透水平板に用いられるバインダがそのまま用いられ,例えば,白色ポルトランドセメント,普通ポルトランドセメント,高炉セメント,エコセメントなどが用いられる。これらのセメントを主体としてバインダに使用することにより,平板状に成形しても,曲げ強さの大きな,踏まれたりしても耐久性のあるコンクリートブロックを得ることができる。これにより,例えば,JISA5304(1994)舗装用コンクリート平板長さL300mm,幅W300mm,高さH60mmに基づく曲げ強さが12kN以上と曲げ強さを大きくすることにより,舗装用平板として利用できる(段落【002。」7 )】・「また,このように構成されたコンクリートブロック1は,透水係数が0.1cm/秒以上であることが好ましい。透水係数が0.1cm/秒以上と高いことによ, , ,, り NOx除去により生じた硝酸イオンは 降水時などの雨水により安定層 路盤路床,クッション層などの下層に流すことができる(段落【0028 ) 。」】・「酸化チタンの表面に硝酸イオンが蓄積されると,その酸化触媒作用が低下することがある。このような場合,反応生成物である硝酸イオンは,吸着剤により除去することが好ましいが,この透水性を有するコンクリートブロックによれば,その表面に水をかけることにより容易に硝酸イオンを連通孔を通じて下層に洗い流すことができる。これにより,雨水に晒される状態で敷設されて使用される透水平板では,硝酸イオンは,雨水により連通孔を通して流されるので,酸化チタンの高活性は維持されることになる。この硝酸イオンは,少量で有れば地中に流されても,地中の微生物により分解されて無害化される(段落【0029 ) 。」】・「このようなコンクリートブロック1は,例えば,市販の透水平板の表面に酸化チタンを保持させることにより容易に得ることができる。ここで,透水平板とは,セメントを主バインダとして粒子径の大きな骨材同士を接合し,骨材間の空隙が連通孔により表面まで開口したものであり,このような透水平板は,例えば,粒子径の大きな骨材の表面にセメントを主バインダにより被覆し,接着性を有している状態でその骨材同士を接合して骨材間の空隙を連通孔により形成することにより製造することができる(段落【0030 ) 。」】・「このコンクリートブロックの開口付近の骨材の表面には光触媒として機能する。 ,, NOx除去用の酸化チタンが保持される この保持方法は限定されないが 例えば酸化チタンスラリーを噴霧するか,または,酸化チタンスラリー液の中にこのコンクリートブロックを浸漬し,開口付近の骨材の表層に酸化チタンを保持させればよい(段落【0033 ) 。」】・「酸化チタンスラリーは,酸化チタン微粒子を水に懸濁させた溶液である。この, 。 スラリー中の酸化チタン濃度としては 数%程度からその1/10程度が望ましいその溶液中(スラリー中)の酸化チタン濃度を変化させることによって,コンクリートブロックへの酸化チタンが付着する量を容易に調節することができる。このコンクリートブロックへの酸化チタンの保持量は,単位表面積あたり数十g/?u〜数百g/?u程度でよい(段落【0034 ) 。」】・「以下,実施例に基づき,この発明の効果を具体的に説明する(段落【004。」2 )】・ 「 実施例1】【骨材として粒径5〜2.5mmの7号砕石を主体として用い,この砕石間に空隙をもたせるように,砕石の100重量部に対して20重量の普通ポルトランドセメントを主体とするバインダと適量の水を配合して型枠に流し込んで養生を行うことにより骨材間が接合されてブロック全体に亘って透水性可能な幅20cm,長さ1, 。」(【】) 0cm 厚み15cmの透水性コンクリートブロックを得た段落 0043・「この透水性コンクリートブロックの一表面に酸化チタンの塗布量が100g/?uとなるように酸化チタンスラリー液(株式会社田中転写製,固形分濃度0.85%)を噴霧し,自然乾燥し,本発明に従うNOx除去能力のある透水ブロックを得た(段落【0044 ) 。」】・「この透水ブロックを試験体として,酸化チタンが保持された表面を上にして空, () 気導入口と出口とを備えた密閉容器に入れ 透水ブロック表面に一酸化窒素 NOを1ppmの濃度で含む空気を0.5L/分の流量で通気した。紫外線ランプによ,. , り 透水ブロック表面に0 6mW/c?uとなるように間欠的に紫外線を照射させ出口から排出されるガスを化学発光方式のNO濃度計に導き出口ガス中のNO濃度を連続的に測定した。結果を図3に示す( 段落【0045 ) 。」(】・「図3から,紫外線を照射しない初期には,NOは分解されないが,紫外線照射を開始すると,急激にNO濃度は低下し,最終的にはNO濃度はゼロとなった。次いで,この紫外線の照射を停止すると,NO濃度は急激に上昇し,導入口のNO濃度(1ppm)に達した。このことから,酸化チタンを表面部に保持させた透水平板が,紫外線照射のもとでNOを高い除去率で分解することが確かめられた(段。」落【0046 )】・「次に,この透水ブロックの表面を厚さ1mmで研磨して図2に示す透水ブロックとした。上記と同様なNOx除去試験を行ったところ,図3に示す結果と同様な結果を得ることができた。これにより,この実施例に従う透水ブロックでは,摩擦などにより表面が研磨されても,光触媒効果が劣化されないことが確認された 」。 (段落【0047 )】カ発明の効果「, , , ・以上説明したように 請求項1記載の発明によれば 長期間の使用に際しても光触媒機能の低下の少ない,舗装用コンクリートブロックを提供することができる(段落【0062 ) 。」】(3)以上によれば,本件各発明は,歩道等に舗装として設置される際にNOx除去の効果及び透水性を有し,かつ曲げ強さが大きい舗装用コンクリートブロックに関するものである。従来,自動車等から排出される排気ガスに含まれている大気汚染物質であるNOxを除去する目的で,酸化チタンなどの光触媒を舗装用ブロックの表面に保持させることや,舗装ブロックのモルタル表面層を凹凸模様に形成させ,その凹凸模様に酸化チタンを含有する表面層を付与することが行われていたが,このような方法では,舗装としての使用中に,表面の酸化チタン層が汚れたり剥離してしまうため光触媒機能の経時低下が激しかったことから,本件発明1の構成を採用することにより,長期間の使用に際しても光触媒機能の低下の少ないコンクリートブロックを提供しようというものである。ここで,粒径1mm以上の骨材を用いるのは,これにより骨材間に触媒を保持するに十分な空隙を設け,これにより透水性を保持するためであり,光触媒は粒子径の大きな骨材間により形成された表層付近に保持されるため,触媒面に光が到達されて光触媒として機能することになり,また,この触媒が保持されている面が空隙であるため,汚れることが少なく,かつ,外力が直接触媒に働かないことから触媒が剥がれることが少なくなる。また,ここで透水係数が十分に高いものとされるのは,光触媒作用の結果生成される硝酸イオンを降水時などの雨水などにより下層に洗い流すことができるようにするためであり,これにより,酸化チタンの高い触媒活性を維持することができる。なお,本件発明2は,本件発明1における骨材につき5mm以上の粗骨材を主体として用いることにより,十分な空隙を確保しようとするものであり,本件発明3〜5は,本件発明1ないしこれを含む舗装用コンクリートブロックの製造方法に関するものであり,これら本件発明2〜5はいずれも本件発明1の構成を前提とするものである。 3 取消事由1(相違点の看過及び刊行物2記載事項の認定誤り)について(1) 相違点の看過につきア原告らの主張に対する判断に先立ち,刊行物1発明の内容等について検討する。刊行物1(甲1)には,次の記載がある。 (ア)特許請求の範囲・【請求項1】コンクリート製基層上に,セメント100重量部,酸化チタン粉末5重量部〜50重量部及び砂100重量部〜700重量部からなる表面層を有することを特徴とする舗装用NOx浄化ブロック。 ・【請求項2】表面層の厚みが15mm〜2mmであることを特徴とする請求項1に記載の舗装用NOx浄化ブロック。 ・【請求項3】砂の少なくとも1部分がガラス粒又は珪砂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の舗装用NOx浄化ブロック。 ・【請求項4】表面層の表面が凹凸を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の舗装用NOx浄化ブロック。 ・【請求項5】表面層の空隙率が10%〜40%であり,透水係数が0.01cm/sec以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の舗装用NOx浄化ブロック。 (イ)発明の属する技術分野・「 0001】本発明は,舗装用NOx浄化ブロックに関し,更に詳しくは大 【気中のNOxを捕捉しかつその捕捉効率を上げかつ雨水による洗浄効率が向上し,更には良好な環境を得ることができると共に舗装用に供し得る耐すべり性並びに耐摩耗性を付与した舗装用NOx浄化ブロックに関するものである 」。 (ウ)従来の技術・「 0002】近年,自動車,特にジーゼル自動車からでる排気ガス中に含ま 【れているNOxによる大気環境の汚染は,自動車数の増加,それに伴う交通渋滞等で増加している。従来,このNOxの濃度を低下させる物質として金属酸化物が知られており,この中でも二酸化チタンが強い光触媒作用を有することも知られている。このような二酸化チタンの強い光触媒作用を利用してNOxを除去する研究は,近年ますます盛んになり二酸化チタンを混合してシートやパネルを形成し,建築物の外壁に用いてNOxを除去することが実用化されつつある 」。 (エ)発明が解決しようとする課題・「 0003】そこで,本発明者は,建築物の外壁に用いられるシートやパネ 【ルについて研究を続け,このパネルが舗装用に供せられる条件等を更に検討した結果,セメント,二酸化チタン粉末及び砂からなる混練物をコンクリート基材と組み合わせて舗装用ブロックとすることにより酸化チタンの触媒性能を損なわないばかりか効率よくNOxを除去することができ,舗装用に適する耐すべり性並びに耐摩耗性の優れたものが得られることを見出し,ここに本発明をなすに至った。したがって,本発明が解決しようとする第1の課題は,効率よくNOxを除去できると共に耐すべり性,耐久性に優れ,かつ自然環境上好ましい舗装用NOx浄化ブロックを提供することにある。本発明が解決しようとする第2の課題は,NOxの除去効率を上げ,雨水による洗浄効果が促進されると共に耐すべり性,耐久性に優れ,かつ自然環境上好ましい舗装用NOx浄化ブロックを提供することにある 」。 (オ)発明の実施の形態・「 0006】本発明において,舗装用とは,歩道や車道を含む意味であり, 【更に舗装用ブロックとは,歩道や車道に敷設されるブロックを意味する。本発明の舗装用NOx浄化ブロックは,コンクリート製基層上に,セメント100重量部,酸化チタン粉末5重量部〜50重量部及び砂100重量部〜400重量部からなる表面層を有することを特徴とするもので,これによりコンクリート製基層であるので,耐久性を有すると共に更に酸化チタンの作用により除去されたNOxは硝酸イオンとなりコンクリート中のアルカリ成分と中和し安定化されるので,自然環境上好ましい。また砂を加えているので,酸化チタン粉末のすべり性を押さえ耐すべり性が得られる。更に表面層は,セメントと砂を含むので,耐すべり性及び耐久性に優れており十分舗装用に供されるものである。更にまた舗装用NOx浄化ブロックの表面層の空隙率が10%〜40%であり,透水係数が0.01cm/sec以上とすることにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができ,また透水率が大きいので,雨水による洗浄効果の増加したものが得られる。したがって経済効率に優れた舗装用NOx浄化ブロックが得られる 」。 ・「 0007】本発明において表面層の厚みは15mm〜2mmであり,好ま 【しくは10mm〜2mmである。本発明において,表面層の厚みが15mmを越えると太陽光が浸透しにくくなりチタン層が無駄になる。またその厚みが2mm未満ではNOxの浄化効率が悪くなると共に耐久性が劣る。本発明において,砂として,光透過性の高いガラス粒や珪砂を用いる場合は,十分な光が奥深くまで浸透しNOxの浄化効率を良くする。また空隙率の大きい表面層を形成する場合には,できるだけ均一粒度の砂を使用し,砂の表面にセメントと酸化チタンの混合膜が形成される構造とし,これらの砂同士が被覆されたセメントと酸化チタンの混合物により結合されることが好ましい。このように構成することにより有効表面積の増加による光触媒の効率を上げることができので,NOx浄化効率が向上し,かつ透水率大きいので,洗浄効果が増加する。砂の粒度は1.2〜5mmが好ましい。砂に対して結合材であるセメントと酸化チタン粉末を多くし過ぎると空隙率が低下する。したがって,空隙率は,10%〜40%が有効であり,更に15%〜30%が好ましい。空隙率が,10%未満では十分な有効表面積が得られずNOx浄化効率が悪い。空隙率が,40%を越えると,NOx浄化効率は向上するが,強度が低下し舗装用ブロックとしての耐久性が低下する。空隙率を10%〜40%の範囲にするには,砂と結合材との比率は,砂に対して結合材は18〜100重量%の範囲が好ましい 」。 ・「 0008】更に本発明おいては,表面層の下に光反射層を設けることによ 【りNOxの浄化効率を上げることができる。この光反射層としては,セメントに二酸化チタン等の白色粒子又は白色顔料等を混合したものが好ましい。更に表面層は,その表面を凹凸にすることにより光の吸収性と大気との接触面積を増し,かつ耐すべり性を向上させることができる。この凹凸の形成は,成形時の型枠に凹凸を付けるかあるいは研削によっても可能である。研削方法はダイヤモンドブレードやその他の工具あるいはサンドブラスト法等適宜の方法でよい。この凹凸形状としては,ジグザグ型,波型又は台形型等が挙げられるが,。 他の凹凸形状や適宜の模様でも前記効果を損なわない限り用いることができる凹凸の深さは2mm〜7mmが好ましく,山と山との長さは4mm〜10mmが好ましい 」。 ・「 0009】本発明に用いられる表面層の酸化チタンの割合は,酸化チタン 【の種類,粒度等によって異なるが,セメント100重量部に対して,酸化チタン粉末5重量部〜50重量部であり,好ましくは酸化チタン粉末10重量部〜50重量部が用いられる。更に好ましくは酸化チタン粉末20重量部〜50重量部である。本発明に用いられる表面層の成分割合がセメント100重量部に, , 対して酸化チタン粉末は 5重量部より少ないとNOxの浄化効率が良くなく50重量部を越えると耐すべり性が悪くなるばかりか耐摩耗性も劣る。またセメント100重量部に対して砂100重量部より少ないと耐すべり性並びに耐摩耗性が減少し,400重量部を越えると相対的に酸化チタン粉末が少なくなりNOxの浄化効率が劣る。本発明において好ましい表面層の成分割合は,セメント100重量部に対して酸化チタン粉末10重量部〜50重量部,更に好ましくは20重量部〜50重量部,及び砂50重量部〜300重量部である。 本発明に用いられる舗装用NOx浄化ブロックは,適宜の方法で製造することができ,例えば型枠内にコンクリート混練物を投入して平にした後,表面層形成混練物をその上に投入して積層成形する方法(特開平3-169901号公報第1頁左欄14行〜19行参照)が挙げられる。この他基礎コンクリート部分を成形硬化させ,別に表層部分を成形硬化させて作り,その後両者を合体させることにより製造することも可能であるが,好ましくは前記方法がよい 」。 ・「 0010 (作用)本発明において,ブロックとしてコンクリート製基層を 【】用いることにより耐久性を得ると共にNOxから得られた硝酸イオンがコンクリート中のアルカリ成分と中和する。また砂としてガラスや珪砂を用いることにより耐すべり性や耐摩耗性が得られると共に良好な光透過性が得られる。更に表面に凹凸を設けることにより全方向からの光の侵入を可能にする。更にまた表面層の空隙率が10%〜40%であり,透水係数が0.01cm/sec, 以上とすることにより有効表面積が増加して光触媒の効率を上げることができまた透水率が大きくなるので,洗浄効果が増加する 」。 (カ)実施例・「 0011】以下,本発明を実施例を挙げて更に詳しく説明するが,本発明 【はこれに限定されるものではない 」。 ・「 0012 〔実施例1〕コンクリート基層用混練物として,ポルトランドセ 【】メント100重量部,水31重量部,砕石190重量部,砂240重量部を配合し,混練する。一方,表面層用混練物として,砂,酸化チタン20重量部及びポルトランドセメント80重量部を配合し,混練する。ここで,砂のセメントに対する割合を表1に示す値にし,試料1〜4を作製した。これらの試料1〜4を用いて4種類の舗装用ブロックを次のように製造した。10×20cmの型枠にコンクリート基層用混練物を入れ,振動成形した後,その上に表面層用混練物を投入し,型板を置いた後,同様に加圧振動成形(加圧力0.25k,. . ..,) g/c?u振動数3140r p m 振幅1 4mm 加圧振動時間3秒間を行い,養生した後,縦20cm,横10cm,高さ8cmの試験体1〜4が得られた。図1には得られたブロックの斜視図が示されている。このブロック1は,基層2に表面層3を有し,その表面層3の厚みは7mmである。得られた結果を表1に示す 」。 ・「 0018 〔実施例5〕実施例4に記載の表面層の表面をサンドブラスト法 【】により粗面とした以外は,実施例4と同様にして試験体10を得た。得られた試験体10は,すべり抵抗性に優れていると共に光透過性にも優れ,効率的にNOxを除去することができた 」。 ・「 0019 〔実施例6〕コンクリート基層用混練物として,ポルトランドセ 【】メント100重量部,水25重量部,砕石300重量部を配合し混練する。一方,表面層用混練物として,砕砂600重量部,酸化チタン30重量部及びポルトランドセメント100重量部,水25重量部を混合し混練する。10×20cmの型枠にコンクリート基層混練り物を入れ,振動成形した後,その上に表面層用混練り物を投入し,型板を置いた後,同様に加圧振動成形を行った。 養生して舗装用ブロックを得た。得られたブロックは,基層7cm,表面層1cmの厚みであり,基層の空隙率は26%,表面層の空隙率は20%,透水性試験値は,0.10cm/secであり,更にすべり抵抗性87BPNと優れていると共に洗浄効果にも優れ,効率的にNOxを除去することができた 」。 イ以上によれば,刊行物1に記載された発明は,自動車の排気ガス中に含まれるNOxによる大気環境の汚染を背景にするものであり,従来,このNOxの濃度を低下させる物質としては金属酸化物が知られており,中でも二酸化チタンが強い光触媒作用を有することが知られていたところ,このような二酸化チタンの強い光触媒作用を利用してNOxを除去する方法として実用化されつつあった,二酸化チタンを混合してシートやパネルを形成し,建築物の外壁に用いてNOxを除去するという方法を,舗装用ブロックに応用した舗装用NOx浄化ブロックに関するものであり,具体的には,審決認定のとおり 「コンクリート製基層と表面層からなる舗装用 ,NOx浄化ブロックであって,コンクリート基層用混練物として,ポルトランドセメント,水,砕石を配合し,表面層用混練物として,砂の粒度を1.2mm〜5mmとした砕砂,酸化チタン及びポルトランドセメント,水を配合することで各層を形成した,基層の空隙率は26%,表面層の空隙率は20%,透水性試験値は,0.10cm/secである舗装用NOx浄化ブロック 」との発明(刊行物1発明)が記載されていると認めら 。 れる。このように,刊行物1発明は,NOx浄化用の光触媒としての二酸化チタンを舗装用ブロックの表面層に付着させる方法として,舗装用ブロックの原料であるセメント及び砂に二酸化チタンを混練するという方法を採用するものである。その上で,舗装用という特性から要求される耐すべり性及び耐摩耗性は,浄化効率との関係に配慮しつつ,セメントないし砂との重量割合の最適化を図ることにより克服しようとするものであり,さらに,このようにして形成された空隙を有する酸化チタン含有層を,空隙を有するコンクリート製基層の表面に設けることにより,酸化チタンの触媒性能を損なわずに効率よくNOxを除去することを可能ならしめるというものである。 ウそして,以上を前提に本件発明1と刊行物1発明を対比すると,その一致点及び相違点は,前記第3の1(3)イ(イ)のとおりである。 エこれに対し原告らは,本件発明1と刊行物1発明とはバインダの有無という相違点があるにもかかわらず,審決にはこれを看過した誤りがある旨主張するが 前記第3の1(3)イ(イ)の 相違点2 のとおり 審決は本 ,〈〉,,「件発明1では 『コンクリートブロックの表層付近の骨材間に形成された ,空隙に光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタンを,バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い,自然乾燥により』付着させたと特定されているのに対し,刊行物1発明では,前記特定を有しない点 」を相違点として挙げており,原告らの指摘に係るバインダの有無は 。 相違点2において含意されているというべきであるから,原告らの主張は採用することができない。 (2) 刊行物2記載事項認定の誤りにつきア原告らは,刊行物2に記載された光触媒はバインダとしてのセメントを含むものであるにもかかわらず,審決がこれをバインダとしてのセメントを含まない配合組成を用いる構成であるかのように認定することは誤りであるから,審決は取り消されるべきである旨主張するので,この点について検討する。刊行物2(甲2)には,次の記載がある。 「, () ・近年の研究により 光触媒は太陽光エネルギーを利用して窒素酸化物 NOx等の大気汚染物質を酸化して除去する働きがあることが解明されている。また光触媒活性の高い製品が開発されてきており,都心での自動車排気ガス等の新しい処理技術として期待されている。 これまでに道路用ガードレールや道路側壁,遮音壁などに光触媒を含む材料を用いることにより,大気浄化および汚れ防止効果を活用する建材および工法が開発されている。 通常,自動車排気ガスの処理対策として光触媒を適用する場合,側壁等の道路周辺に比べ発生源に近く汚染物質が拡散する前に接触する道路表面に光触媒を固定する方が効果的に働くことがシミュレーションによりわかっている。しかし,これまで道路面に光触媒を固定する方法は,走行する自動車タイヤとの摩擦に耐えられる耐摩耗性および光触媒による空気浄化作用を維持することができる固定化剤の開発などの問題点があった。 今回開発した『フォトロード工法』は,道路表面に光触媒を含む特殊なセメントで固定することにより,耐摩耗性および高い光触媒作用の維持が可能となりかつ道路表面が比較的凹凸であり,低騒音性および雨水の排水性を有する高機能舗装を下地とすることにより効果的に道路表面で空気浄化を行うものである (551頁左欄2行〜右欄17行) 。」・「 フォトロード工法』は従来の通常舗装に対して自動車走行に伴って発生 『, , する騒音を低減し 雨水を透過して排水性を有する高機能舗装を下地としてさらに光触媒(酸化チタン:TiO ) により空気浄化作用を付与したもので2ある(図1(551頁右欄20行〜下1行) )。」・「 フォトロード工法』は従来の高機能舗装に光触媒による空気浄化能力を 『持たせたもので,超高機能舗装ともいえるものである。 高機能舗装は通常,骨材として粒径が13mm以下の6号砕石を用い空隙率を20%以上とすることにより道路表面が凹凸状となっている。排水性を持たせるためには表面が凹凸であるほか,一定の割合で連続する空隙が必要である 『フォトロード工法』では,光触媒(酸化チタン:TiO )を含む 。 2セメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングすることにより施工する。高機能舗装表面に固定するSTコートの膜厚は0.3〜0.5mm程度である (552頁右欄15行〜27行) 。」イ以上によれば,刊行物2(甲2)には,表面に空隙を有する高機能舗装に対して,光触媒を含む特殊なセメント,すなわち酸化チタンを含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングする「フォトロード工法」が記載されていると認められ,刊行物2に記載された光触媒はバインダとしてのセメントを含むものであるということができる。 ウ他方,審決は,刊行物2の記載事項として,前記アに掲記の事項などに加えて,刊行物2の551頁の図面から見て取れる事項として 「高機能 ,舗装の表層部の拡大図があり,骨材のまわりに光触媒が付着されていること」を認定するが(15頁1行〜3行 ,刊行物2の光触媒がバインダと )してのセメントを含まない配合組成を用いる構成である旨を積極的に認定するところはない。 なお,原告は,審決(23頁22行〜24行)が,刊行物2の551頁の図面に係る上記記載を引用した上,刊行物2の「光触媒(酸化チタン:)を含むセメント系固化剤」が本件発明3の「光触媒として機能すTiO2るNOx除去用の酸化チタンスラリー」に相当するとしたことが,刊行物2の認定誤りである旨主張するが,審決の当該記載は本件発明3の容易想到性を判断したものであって,その際,光触媒のコーティング方法として酸化チタンスラリーを噴霧するという方法が刊行物2に開示されていることを指摘したものにすぎず,刊行物2の「STコート」がバインダとしてのセメントを含まない旨を積極的に認定するものではない。 そうすると,審決における刊行物2記載事項の認定に誤りがあるということはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。 4 取消事由2(相違点2に係る容易性判断の誤り)について(1)審決は,相違点2について 「…本件発明1は,刊行物1〜4に記載され ,た事項,または刊行物1,2に記載された事項及び本件出願前に公然知られた発明もしくは公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである (22頁下10行〜下7行)とするのに対し,原告 」,。 らはこの点に関する審決の判断に誤りがある旨主張するので 以下検討する(2) 各刊行物の内容ア 刊行物1発明刊行物1(甲1)の記載内容及び刊行物1発明の内容は,前記3(1)イのとおりであるところ,これによれば,刊行物1発明においては,相違点2に係る「二酸化チタン(光触媒として機能するNOx除去用の触媒としての酸化チタン)を舗装用ブロックの表面層(コンクリートブロックの表層付近の骨材間)に付着させる方法」として,舗装用ブロックの原料であるセメント及び砂に二酸化チタンを混練して舗装用ブロックを成形するという方法を採用するものである。 イ 刊行物2発明刊行物2(甲2)の記載内容及び刊行物2発明の内容は,前記3(2)ア及びイのとおりであるところ,これによれば,刊行物2発明は,酸化チタンを含むセメント系固化剤(STコート)を高機能舗装の表面に噴霧してコーティングする「フォトロード工法」が記載されており,ここでの光触媒には,バインダとしてのセメントが含まれていると認められる。 ウ 刊行物3発明(ア) 刊行物3(甲6)には,次の記載がある。 ・「 請求項1】酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラ 【リーを形成し,ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔体表面に含浸させ,乾燥することを特徴とする大気浄化用構造物の製造方法 」。 ・「 0001 【発明の属する技術分野】本発明は,高度に分散した酸化チタ 【】ン含有スラリーを使用する大気浄化用構造物の製造方法に関し,更に詳しくは大気中のNOx,SOx,その他の有害物質を良好に除去することができる大気浄化用構造物の製造方法に関するものである 」。 ・「 0003 【発明が解決しようとする課題】…更に後者の表層に酸化チタ 【】ン含有層を積層する方法では,結合剤としてセメント等を使用していることにより,セメント等の粒径が酸化チタンの粒径より著しく大きいので,良好な分散ができないという問題があるばかりでなく,酸化チタンの固定が十分でなく長期間の使用で酸化チタンが流出し十分な有害物質の除去効果の減少が著しいという問題がある 」。 ・「 0004】そこで,本発明者等は,前記の欠点乃至問題点を更に詳しく 【検討した結果,構造物の表面に被覆や積層するのではなくその表面に,均一に分散された酸化チタン含有スラリーを含浸させることにより酸化チタンが強固に固定され,長期間触媒効果を有する大気浄化用構造物が得られることを見出し,本発明はこの知見に基づいてなされたものである。…」・「 0005 【課題を解決するための手段】 本発明の上記課題は,以下の各 【】発明により達成される 」。 ・「 0006】(1)酸化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含 【有スラリーを形成し,ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔質体表面に含浸させ,乾燥することを特徴とする大気浄化用構造物の製造方法。…」・「 0007 【発明の実施の形態】本発明に用いられる多孔質体は,酸化チ 【】タン粒子が入り込める表面空隙を有するものであれば特に限定されるものではない。また明細書中の『含浸,含浸させ又は含浸させる』という用語は,いずれも表面付近,表面から奥深いところまで,表面にも残存するがほとんどが含浸されるなどのいずれかを含む意味で使用している 」。 ・「 0008】本発明の大気浄化用構造物の製造方法は,酸化チタン粒子を 【水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成し,ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔質体表面に含浸させ,乾燥することを特徴とするもので,このように含浸させることにより,構造物の材料の多孔質体組織中に, 。 埋め込まれて固定され 長期間にわたり大気浄化性能を保持することができる…」・「 0010】本発明において,大気浄化用構造物を構成する材料は,含浸 【性を有するものであれば特に限定されるものではなく,コンクリート,モルタル,レンガ,セラミックス板,スレート,珪酸カルシウム板,押出成形板(例えば,押出成形セメント板等 ,吸音板(特にポーラスコンクリート製)等の無 )機系多孔質体であればよい。この多孔質体の空隙径は,10〜200nmであることが好ましい 」。 ・「 0016】また本発明では,無機系多孔質体表面に酸化チタン含有スラ 【リーを含浸させる手段としては,刷毛やロールによる塗布,デップ塗布,流し込み,吹き付け,ブレード塗布,型枠成形法,押出成形法,ブレス成形法等の中から適宜の方法を選択して被覆を形成することができる。…」・「 0017】…本発明では,酸化チタン含有スラリーを含浸後,乾燥する 【が,この乾燥は,天日,熱風,電熱等による乾燥手段が好ましい。…」・「 0018】本発明の大気浄化用構造物の製造方法により得られた構造物 【には,各種のものがあり,特に限定されるものではないが,建材,舗装用ブロック,舗装構造物,吸音部材等がある。…」・「 0028 【発明の効果】本発明の大気浄化用構造物の製造方法は,酸 【】化チタン粒子を水に高度に分散させて酸化チタン含有スラリーを形成し,ついでこの酸化チタン含有スラリーを無機系多孔質体表面に含浸させ,乾燥することを特徴とするもので,このように含浸させることにより,構造物の材料の多孔質体組織中に埋め込まれて固定され,長期間にわたり大気浄化性能を保持することができる。…」(イ)以上によれば,刊行物3(甲6)は,無機系多孔質体の表面に,酸化チタン粒子を水に分散させた酸化チタン含有スラリーを吹付け(すなわち噴霧)等により含浸させ,天日等により乾燥させて,舗装用ブロック等の大気浄化用構造物を製造する方法が記載されていると認められる。 エ 刊行物4発明(ア) 刊行物4(甲13)には,次の記載がある。 ・「 請求項1】アナターゼ分散液において,表面をペルオキソ基で修飾した 【, 。」 アナターゼ微粒子が 水中に分散していることを特徴とするアナターゼ分散液・「 0001 【発明の属する技術分野】本発明は,基体上に酸化チタンを含 【】む保護被膜膜,光触媒被膜等の形成に使用することが可能な安定なアナターゼ分散液に関するものである 」。 「【】【】 ,,,, ・0002従来の技術チタン含有物質をガラス 白磁器 金属 建材プラスチックス等の各種材料へ塗布,乾燥あるいは低温で焼き付けることにより,酸化チタンからなる保護被膜,光触媒,誘電体膜,半導体膜,紫外線カット被膜,着色コーティングなどを形成することが行われている 」。 ・「 0010】…さらに,基体上に塗布して酸化チタン膜を形成する場合に 【, , 。, は 基体に対する密着性が良く 低温で緻密化し易い特徴がある したがって塗布乾燥あるいは加熱処理のみにより,従来より低い温度でアナターゼ膜を形成でき,乾燥のみでも十分実用に耐えるものを得ることができる 」。 ・「 0015】…本発明のアナターゼ分散液を用いアナターゼ膜を作製する 【場合,セラミックス,陶磁器,金属,プラスチックス,繊維,建材等,用途に応じたあらゆる基体に塗布可能であり,多孔体の内部や粉体の表面処理の目的で使用することも可能である 」。 ・「 0023 【発明の効果】本発明のアナターゼ分散液は長期安定であり, 【】従来よりも高密度の密着性に優れたアナターゼ膜を低温で作製可能であり,焼成によって有害な副生成物が出ず,中性なので取り扱いやすく,種々の基体上に塗布することができる 」。 (イ)以上によれば,刊行物4(甲13)には,基体上に酸化チタンを含む光触媒被膜等の形成に使用することが可能なアナターゼ分散液が記載されており,このアナターゼ分散液は,基体上に酸化チタン膜を形成する場合には,密着性が良く,低温で緻密化し易い特徴があるので,塗布乾燥あるいは加熱処理のみにより,高密度の密着性に優れた十分実用に耐える光触媒被膜を得ることができ,また,用途に応じたあらゆる基体に塗布可能であり,多孔体の内部に使用することも可能であることが記載されていると認められる。 (3)以上の各刊行物の記載に照らして,本件発明1が容易想到といえるかについて検討する。 アまず,刊行物1発明に他の刊行物に係る発明を適用して,酸化チタンをコンクリートブロックの表層付近の骨材間に付着させる方法が置換可能かについてみると,前記3(1)イのとおり,刊行物1発明の舗装用ブロックにおいて二酸化チタンを混入(混練)するのはNOxを除去する光触媒としての機能を得るためであり,もしその混入量が他の組成分(コンクリート及び砂)に比して多すぎると舗装用途として十分な作用効果を奏しない可能性も示唆されていることからすると,同発明における舗装用ブロックは,その構成から二酸化チタンの組成分を除去してもなお,舗装用ブロックとして存立し得る構成であるということができる。換言すれば,刊行物, , 1発明は 一般的な舗装用ブロックに光触媒としての機能を得させるため当該ブロックの原料に二酸化チタンを混入させたものであると評価することができる。その意味で,二酸化チタンを混練することにより舗装用ブロックに光触媒としての機能を付与することは,他に舗装用ブロックに二酸化チタンを付着させて光触媒としての機能を付与することができるのであれば,当該他の方法と置換可能であるということができる。 これを刊行物2〜4についてみると,刊行物2,3はいずれも舗装用道路,舗装用ブロックないし舗装用構造物に光触媒を付着させることでNOx除去を指向する点で刊行物1と技術分野を同じくするものであるし,刊行物4も舗装用ブロックと同様の透水性を有する多孔性の基体に関するものである点で,刊行物2,3と同様ということができ,さらに,これらの方法はいずれも対象物に光触媒を含浸,噴霧ないし塗布するというものであるから,その置換が可能であるということができる。 イそして,刊行物1発明に刊行物3発明ないし刊行物4発明を適用した場合についてみると,舗装用ブロックの原料であるセメント及び砂に二酸化チタンを混練して舗装用ブロックを成形するという刊行物1発明の方法に換えて,無機系多孔質体の表面に酸化チタン粒子を水に分散させた酸化チタン含有スラリーを噴霧し,これを乾燥させることで付着させるという刊行物3発明ないし刊行物4発明の方法を採用した場合,酸化チタン含有スラリーは「バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い」た酸化チタンに相当すると認められるから,これを自然乾燥により付着させることで,本件発明1の構成を実現することができ,そうすると,刊行物3発明及び同4で本件発明1は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)において容易想到ということができる。 (4) 原告らの主張に対する補足的判断ア原告らは,取消事由2-1として,当業者は刊行物2に記載された方法を刊行物1発明に適用しようとは発想しないから,両者を組み合わせることが容易想到であるとした審決の判断は誤りである旨主張するところ,本件特許の出願前に光触媒としての酸化チタンが周知であり,またこのような光触媒を安定的に利用する際に光触媒を何らかの手段により固定することが必要であったことは原告らも認めるところであって,そのような固定手段として,舗装用材料に混練するという方法を選択するか噴霧という方法を選択するかは,当業者が適宜選択すべき事項というべきである。 また,舗装用ブロックの原料であるセメント及び砂に二酸化チタンを混練して舗装用ブロックを成形するという刊行物1発明の方法に換えて,酸化チタンを除く舗装部材を成形した上でこれに酸化チタンを含むセメント系固化剤を噴霧するという刊行物2発明の方法を採用すると,本件発明1の構成に係る「バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い,自然乾燥により」付着させたという構成を実現することはできないということはできるが,刊行物2の適用は,前記(3)のとおり,飽くまで光触媒の付着方法を刊行物1における混練から刊行物2における噴霧に置換するというものであって 「バインダを用いずに付着力のある水溶液を用い,自然乾燥 ,により」付着させたという構成は刊行物3発明ないし刊行物4発明によって実現可能ということができるから,刊行物2のみで本件発明1の構成を実現できないことは,前記認定を左右するものではない。審決が 「…触,媒の付着方法として,刊行物2に記載された方法を刊行物1記載発明に適用した… (21頁下2行〜下1行)とするのも,同様の趣旨に基づくも 」のとして理解することができる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 また原告らは,取消事由2-1において,刊行物1及び刊行物2はいずれもバインダを含まない「酸化チタンスラリー」についての記載がないので,バインダを用いずに固定することを必須の構成とする本件各発明の構成とはならないとか,刊行物1発明では,舗装用に用途を限定した場合,それらの配合組成からバインダとしてのセメントを除くという発想ないし思想が容易に想到されることはない旨主張するが,上記(3)に説示したところに照らして,原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは,取消事由2-2として,刊行物1発明はその表面層に既に酸化チタンを含有しているから,同発明を付与対象物として酸化チタンを付与する方法を選択する必要は生じない旨主張するが,上記(3)に説示したとおり,刊行物1発明における置換対象は二酸化チタンを含まない舗装用ブロックであるから,これに酸化チタンを付与する方法を選択する必要性がないということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 また原告らは,取消事由2-2において,刊行物1発明は,舗装用という用途に限定する場合には,極めて高い水準の耐摩耗性が必要であり,そのためにはバインダとしてのセメントが必須であると主張する。しかし,刊行物1(甲1)には 「…更に表面層は,セメントと砂を含むので,耐 ,すべり性及び耐久性に優れており十分舗装用に供されるものである。…」(2頁右欄39行〜41行「…本発明に用いられる表面層の成分割合が ),セメント100重量部に対して酸化チタン粉末は,5重量部より少ないとNOxの浄化効率が良くなく,50重量部を越えると耐すべり性が悪くなるばかりか耐摩耗性も劣る。またセメント100重量部に対して砂100重量部より少ないと耐すべり性並びに耐摩耗性が減少し,400重量部を越えると相対的に酸化チタン粉末が少なくなりNOxの浄化効率が劣る。 … (3頁左欄44行〜右欄2行「…本発明において,ブロックとして 」 ),コンクリート製基層を用いることにより耐久性を得ると共にNOxから得られた硝酸イオンがコンクリート中のアルカリ成分と中和する。また砂としてガラスや珪砂を用いることにより耐すべり性や耐摩耗性が得られると共に良好な光透過性が得られる。… (3頁右欄15行〜20行)などと 」して,耐摩耗性に有効な成分としてセメントと砂が挙げられ,また,その適正な成分割合が挙げられているものの,これらは舗装用コンクリートブロックに通常用いられる材料であることはいうまでもないのであって,それ自体技術的に特異なものであるということはできない。かえって,刊行物1には,光触媒である酸化チタンをバインダとしてのセメントを用いて付着させたことによる特有の作用については触れるところがなく,かえって,酸化チタン粉末が適正量より多い場合には耐摩耗性も劣ることになるものとされていることからすれば,耐摩耗性はセメントないし酸化チタンの相対的な量に関係することが示唆されているということはできても,バインダとしてのセメントが必須であることを示唆しているとまではいえないから,このような記載に接した当業者がバインダとしてのセメントが必須のものと解するということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 さらに原告らは,取消事由2-2において,刊行物3発明は超微細な空隙径を有する無機多孔体に特定すれば,舗装用という用途を充たす作用効果が得られることを開示する発明であるから,粒子径が1mm以上の空隙を対象とする刊行物1発明に適用可能ではない旨主張するが,前記(2)ウ(ア)のとおり,刊行物3発明は 「本発明において,大気浄化用構造物を構 ,, , 成する材料は 含浸性を有するものであれば特に限定されるものではなくコンクリート,モルタル,レンガ,セラミックス板,スレート,珪酸カルシウム板,押出成形板(例えば,押出成形セメント板等 ,吸音板(特に )ポーラスコンクリート製)等の無機系多孔質体であればよい。この多孔質体の空隙径は,10〜200nmであることが好ましい(段落【001。」0 )とされているのであって,その作用効果が超微細な空隙径を有する 】場合に限定されるものではない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 その他原告らの取消事由2-2に関する主張は,いずれも採用することができない。 ウ原告らは,取消事由2-3として,株式会社田中転写製酸化チタンスラリー液に関する審決の判断が誤りである旨主張するが,上記酸化チタンスラリー液が公然実施された発明といえるか否かにかかわらず,本件発明1が容易想到であることは前記のとおりであるから,原告らの主張は,結論に影響のない審決の判断を論難するものであって,いずれも採用することができない。 エ原告らは,取消事由2-4として,本件発明1の作用効果に関する審決の判断は誤りであると主張する。 この点,本件発明に係る全文訂正明細書(甲27)は,本件発明の効果について 「…長期間の使用に際しても,光触媒機能の低下の少ない,舗 ,装用コンクリートブロックを提供することができる 」とするのみであっ 。 て,かかる作用効果は,本件発明1に係る構成を採用した場合に当然奏することが期待できるものということができる。 そして,既に説示したとおり,本件発明1に係る構成自体が容易想到である以上,このような作用効果をもってなお,当業者において想到することが容易でないということはできない。 これに対し原告らは,刊行物1にはバインダを用いないで触媒を保持させることを開示していないとか,刊行物3は付与対象として極めて微細な多孔質を対象とした場合に限定して舗装用コンクリートブロックへの適用, , 可能を示唆しているなど 取消事由2-1〜2-3における主張を前提にこのような刊行物の理解に基づけば本件各発明の作用効果は格別である旨主張するが,これらの前提がいずれも採用することができないことは,前記のとおりであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 なお原告らは,刊行物1〜4には,本件各発明の有する「光触媒能を有する平板であって,透水性と曲げ強さを備えたもの」との特徴が得られることの証拠は示されていないと主張するが,上記特徴は本件発明1に係る構成を採用した場合に当然奏することが期待できるものであるから,このような特徴をもってなお,当業者において想到することが容易でないということはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 5 取消事由3(本件発明2〜5に係る認定・判断の誤り)について原告らは,本件発明2〜5に係る認定・判断に誤りがあると主張するが,同主張が前提とする本件発明1に係る認定・判断に誤りがあるといえないことは前記3及び4のとおりであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 6 結論以上によれば,原告ら主張の取消事由はすべて理由がない。 よって,原告らの請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 森義之 |
裁判官 | 澁谷勝海 |