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関連審決 無効2007-800229
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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 発明者 /  技術的思想 /  製造方法 /  容易に発明 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  同一の発明 /  実施可能要件 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  分割出願 /  原出願日 /  技術的意義 /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  設定登録 /  請求の範囲 /  減縮 /  変更 /  釈明 /  訂正明細書 /  国際公開 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10438号 審決取消請求事件
原告日 本化薬株式会社
同訴訟代理人弁護士小池豊 櫻井彰人 萱島博文
同弁理士川口義雄 小野誠 渡邉千尋 金山賢教 大崎勝真 坪倉道明
被告ダイセル化学工業株式会社
同訴訟代理人弁護士吉澤敬夫
同弁理士岡崎信太郎 新井全
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/09/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2007-800229号事件について平成20年10月15日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の本件特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が,本件訂正を認め,本件特許に係る発明の要旨を下記2のとおりと認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件特許発明の名称:「エアバッグ用ガス発生剤成型体の製造法」分割出願日:平成12年12月20日(特願2000-386678号)原出願日:平成8年7月31日(特願平8-201802号)優先権主張日:平成7年10月6日(ただし,特願平7-259953号に基づくもの)優先権主張日:平成8年7月22日(ただし,特願平8-192294号に基づくもの)設定登録日:平成15年9月26日特許番号:第3476771号(2)審判手続及び本件審決審判請求日:平成19年10月19日(無効2007-800229号)訂正請求日:平成20年4月4日(甲28。以下「本件訂正」という。)審決日:平成20年10月15日本件審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成20年10月27日(原告に対する送達日)2本件発明の要旨本件審決は,本件訂正後の明細書(甲28。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし7の記載に基づいて本件特許に係る発明の要旨を認定したものであるが,各請求項の記載は次のとおりである。以下,請求項の番号に従って「本件訂正発明1」などといい,これらをまとめて「本件訂正発明」という。
【請求項1】アジ化物を除く含窒素有機化合物を含み,70kgf/cm の圧力2下における線燃焼速度が5〜12.5mm/秒の範囲にあるガス発生剤組成物を単孔円筒状に成型してなるエアバッグ用ガス発生剤成型体であり,単孔円筒状成型体の厚みWが,W=(R-d)/2(Rは外径,dは内径)で求められ,厚みWに対する前記単孔円筒状成型体の長さLの比(L/W)が1以上のもので,該ガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度r(mm/秒)と,単2孔円筒状成型体の厚みW(mm)との関係が0.033≦W/(2・r)≦0.058で表される範囲にあるエアバッグ用ガス発生剤成型体であって,前記ガス発生剤組成物が含窒素有機化合物及び酸化剤に水溶性バインダーと,必要に応じスラグ形成剤を添加してなるエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項2】前記単孔円筒状成型体の厚みに対する長さの比が1〜9.62である請求項1記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項3】前記単孔円筒状成型体の長さが0.5〜5mmである請求項1又は2記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項4】前記含窒素有機化合物がニトログアニジン,前記酸化剤が硝酸ストロンチウムであり,前記水溶性バインダーがカルボキシメチルセルロースナトリウム塩,前記スラグ形成剤が酸性白土である請求項1〜3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項5】前記含窒素有機化合物がジシアンジアミドであり,前記酸化剤が硝酸ストロンチウム及び酸化銅であり,前記水溶性バインダーがカルボキシメチルセルロースナトリウム塩である請求項1〜3の何れか1項記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項6】ジシアンジアミドを8〜20重量%,硝酸ストロンチウムを11.5〜55重量%,酸化銅を24.5〜80重量%,カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を0.5〜8重量%含有させる請求項5記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
【請求項7】前記水溶性バインダーが多糖誘導体からなる請求項1記載のエアバッグ用ガス発生剤成型体。
3本件審決の理由の要旨(1)本件審決の理由は,要するに,本件訂正は特許請求の範囲減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項の要件も満たすとして,本件訂正を認める一方,本件分割出願の手続は適法であるが,本件訂正発明は優先権主張の基礎となる出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明であるということはできないから,本件特許出願について優先権主張の利益を享受することはできないとし,本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて本件特許に係る発明の要旨を認定した上,原告主張に係る無効理由について,?@本件明細書の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たし,?A同明細書の特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明に記載したものであり,かつ,明確であって,?B本件訂正発明1ないし3及び7は下記アの先願明細書に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一であるということはできず,?C本件訂正発明は下記イの引用例1に記載された発明(以下,下記イないしオの引用例1ないし4に記載された発明をそれぞれ「引用発明1」ないし「引用発明4」という。)及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明することができたということはできず,?D本件訂正発明1ないし3及び7は,引用発明3及び4又は引用発明3及び1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできないし,?E職権により検討しても,本件訂正発明は,引用発明2及び1又は引用発明2及び4に基づいて当業者が容易に発明することができたということもできないから,本件特許を無効とすることはできない,というものである。
ア先願明細書:特開平9-328389号公報(甲3)イ引用例1:昭和56年(1981年)公表の米国特許第4243443号公報(甲6)ウ引用例2:国際公開第95/09825号パンフレット(甲7の1,2)エ引用例3:平成8年(1996年)5月19日公表の米国特許第5500059号公報(甲8)オ引用例4:特開平8-40178号公報(甲10)(2)なお,本件審決は,本件訂正発明1と先願発明との相違点として以下の相違点a及び同bを,本件訂正発明1と引用発明1との相違点として以下の相違点1及び同2を,本件訂正発明と引用発明3との相違点として以下の相違点3ないし5をそれぞれ認定している。
相違点a:ガス発生剤組成物につき,本件訂正発明1では,「70kgf/cmの圧力下における線燃焼速度が5〜12.5mm/秒の範囲にある」のに対し,2先願発明では,ガス発生剤組成物の線燃焼速度が不明である点相違点b:ガス発生剤成型体につき,本件訂正発明1では,「ガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度r(mm/秒)と,単孔円筒状2成型体の厚みW(mm)との関係が0.033≦W/(2・r)≦0.058で表される範囲にある」のに対し,先願発明では,当該線燃焼速度rと厚みWとの関係が不明である点相違点1:ガス発生剤組成物につき,本件訂正発明1では,「アジ化物を除く含窒素有機化合物を含み,含窒素有機化合物及び酸化剤に水溶性バインダーと,必要に応じスラグ形成剤を添加してなる」のに対して,引用発明1では,「酸化鉄とアジ化ナトリウムからなる」点相違点2:本件訂正発明1では,「該ガス発生剤組成物の70kgf/cm の2圧力下における線燃焼速度r(mm/秒)と,単孔円筒状成型体の厚みW(mm)との関係が0.033≦W/(2・r)≦0.058で表される範囲にある」のに対して,引用発明1では,当該「W/(2・r)」が0.088である点相違点3:ガス発生剤組成物につき,本件訂正発明1では「70kgf/cm2の圧力下における線燃焼速度が5〜12.5mm/秒の範囲にある」のに対し,引用発明3では,線燃焼速度が不明である点相違点4:ガス発生剤成型体につき,本件訂正発明1では「単孔円筒状成型体の厚みWが,W=(R-d)/2(Rは外径,dは内径)で求められ,厚みWに対する前記単孔円筒状成型体の長さLの比(L/W)が1以上のもので,ガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度r(mm/秒)と,単孔円2筒状成型体の厚みW(mm)との関係が0.033≦W/(2・r)≦0.058で表される範囲にある」のに対し,引用発明3では,「円柱状ペレット」である点相違点5:ガス発生剤組成物につき,本件訂正発明1では「含窒素有機化合物及び酸化剤に水溶性バインダーと,必要に応じスラグ形成剤を添加してなる」のに対し,引用発明3では,「アジ化物を除く含窒素有機化合物及び酸化剤を含有してなる」もので,「水溶性バインダー」の使用について不明である点4取消事由(1)本件訂正を認めた判断の誤り(取消事由1)(2)本件訂正発明の認定の誤り(取消事由2)(3)サポート要件についての判断の誤り(取消事由3)(4)本件訂正発明1と先願発明との相違点a及びbを認定した誤り(取消事由4)(5)本件訂正発明1と引用発明1との相違点1及び2についての判断の誤り(取消事由5)(6)本件訂正発明1と引用発明3との相違点3ないし5についての判断の誤り(取消事由6)第3当事者の主張1取消事由1(本件訂正を認めた判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,本件明細書(甲28)中の「実施例A」(【0046】)において,ガス発生剤組成物成型体の形状が,外径2.5mm,内径0.8mm,長さ2.14mmであることから,外径と内径の値に基づいて,W(=(外径-内径)÷2)=(2.5-0.8)÷2=0.85(mm)の値を求め,同実施例におけるガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度r(m2m/秒)の値については【0048】の【表2】にある7.3(mm/秒)とした上,W/(2・r)=0.85/(2×7.3)=0.058と計算し,上限値「0.058」が本件明細書に記載されているに等しい事項であるとし,上記「実施例A」の記載を根拠として,請求項1のガス発生剤組成物の70kgf/cm2の圧力下における線燃焼速度r(mm/秒)と単孔円筒状成型体の厚みW(mm)との関係についての不等式の上限値を「0.058」とすることを含む本件訂正が,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであると判断したが,以下のとおり,その判断は誤りである。
(2)本件明細書における線燃焼速度の測定方法についての記載(【0039】)によると,上記線燃焼速度7.3(mm/秒)は,ガス発生剤組成物の測定資料を一定容積の容器内に収容し,当該容器内をあらかじめ70kgf/cm に2加圧して該圧力下で燃焼を開始させた際に,その燃焼に伴い発生する燃焼ガスによって更に上昇する容器内の圧力変化を測定することにより導かれたものであるということになる。
一方,本件審決(18頁16〜20行)は,請求項1の「70kgf/cm の2圧力下における線燃焼速度」は「70kgf/cm 」なる定圧下において測定す2ることにより,燃焼器内圧力及びその変化による線燃焼速度の変化を排除した「線燃焼速度」であることを明示するとともに,「線燃焼速度」は,上記各変化要因が全て排除される限りにおいて,可燃(組成)物単一固有の物理量であるものと解している。
そうすると,上記のとおり,「実施例A」における7.3(mm/秒)という線燃焼速度は,「燃焼開始時の70kgf/cm を上回った変動圧力下において測2定された線燃焼速度」であり,そのような線燃焼速度の値に基づいて計算された上限値「0.058」は本件訂正発明1におけるW/(2・r)の上限値とはなり得ないのであるから,本件明細書の「実施例A」に上限値「0.058」が記載されているということはできない。
(3)また,本件審決(18頁31〜33行)は,本件訂正による訂正後の請求項1の記載における「ガス発生剤組成物の…線燃焼速度」を測定する方法について,「ガス発生剤組成物中に配合する各剤の粒子径が変化しない程度で密度が充分に高くなる程度に圧縮成型した」試料,すなわち,「最高密度圧縮物」とでもいうべき試料を使用することを前提としているところ,本件明細書の「実施例A」における「ガス発生剤組成物成型体」は,湿潤状態としたガス発生剤組成物を80kg/cm の加圧条件下で押し出して単孔円筒状となし,その後,水分を充分に乾燥2して得られたものである(【0044】,【0045】)から,このような「実施例A」の「ガス発生剤組成物成型体」が,請求項1に記載される「ガス発生剤組成物の…線燃焼速度」を求めるための「ガス発生剤組成物の最高密度圧縮物」であるとは到底考えられない。
そうすると,「実施例A」における「ガス発生剤成型体」の線燃焼速度と請求項1の「ガス発生剤組成物の…線燃焼速度」は異なるものであるから,そのような線燃焼速度を前提として計算した上限値が「0.058」であるからといって,本件明細書において,本件訂正発明1のW/(2・r)の上限値について,「0.058」の値が記載されているとみることはできない。
(4)以上によると,請求項1のガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力2下における線燃焼速度r(mm/秒)と単孔円筒状成型体の厚みW(mm)との関係についての不等式の上限値を「0.058」とする本件訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものではないから,本件訂正を認めた本件審決の判断は誤りであり,本件審決は発明の要旨の認定を誤ったものとして取消しを免れないというべきである。
〔被告の主張〕(1)原告は,「実施例A」の記載を根拠として,本件訂正発明1におけるW/(2・r)の上限値「0.058」が記載されているということはできないと主張するが,失当である。
(2)まず,原告は,「実施例A」における7.3(mm/秒)という線燃焼速度は,「燃焼開始時の70kgf/cm を上回った変動圧力下において測定され2た線燃焼速度」であるとするが,本件明細書の【0039】に「ガス発生剤組成物の線燃焼速度は,窒素置換された容量1リットルの容器中,70kgf/cm の2圧力下で燃焼させ,圧力センサーにより記録される容器内圧力変化を解析することにより導かれる。」と記載されているように,「実施例A」においては「容器内圧力変化を解析」することにより,燃焼器内圧力及びその変化による線燃焼速度の変化を排除した「70kgf/cm なる定圧下」における線燃焼速度を求めている2のであるから,この値を本件訂正発明1におけるW/(2・r)の値として用いることができるのは当然である。
(3)また,原告は,「実施例A」における「ガス発生剤成型体」の線燃焼速度と請求項1の「ガス発生剤組成物の…線燃焼速度」とは異なるものであるから,そのような線燃焼速度を前提として計算した上限値が「0.058」であるからといって,本件明細書において,本件訂正発明1のW/(2・r)の上限値について,「0.058」の値が記載されているとみることはできないと主張するところ,この主張は,「実施例A」における線燃焼速度7.3(mm/秒)は,同実施例における材料を使用した「最高密度圧縮物」なるものの線燃焼速度であることを前提としている。
ところで,ストランド法により線燃焼速度を測定するためには,「圧縮圧力による密度の変化がない程度に圧縮できる圧力」を加えて試料(ストランド)を作成する必要があり,原告が指摘する本件審決の説示もこのことを表現しているものであるところ,原告のいう「最高密度圧縮物」なる概念は「物理的に可能な限り高い圧力をかけて作成された物」という意味であると解されるから,原告の主張は本件審決の理解を誤ったものである。
(4)以上のとおり,原告の主張はいずれも失当であり,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(本件訂正発明の認定の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は,本件訂正発明1における「70kgf/cm の圧力下における線2燃焼速度」について,「70kgf/cm 」なる定圧下において測定することに2より,燃焼器内圧力及びその変化による線燃焼速度の変化を排除した「線燃焼速度」であると認定しているが,本件特許出願に係る本件訂正後の明細書(以下「本件訂正明細書」という。)の【0039】に開示された「線燃焼速度」の測定方法は「定圧下」におけるものではないから,本件審決は,本件訂正発明1の認定を誤ったものである。
したがって,本件審決における本件訂正発明1についての誤った認定を前提とする対比・判断は,いずれも誤ったものといわざるを得ないから,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕線燃焼速度の測定において圧力変動が生じた場合でも,その影響を正しく補正する限りにおいて,線燃焼速度の測定方法として問題がないことは技術常識であり,本件審決が,本件訂正発明1における線燃焼速度について,原告が主張するような認定をしたということはできない。
また,仮に,線燃焼速度の測定が70kgf/cm の圧力下でないか,変動圧2力下で測定したものであっても,適切な補正実験や測定値の数学的な解析を行うことにより,「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度」の精密な推定値を2算出することが可能であることは技術常識であるから,本件審決が原告主張のとおり認定したものであるとしても,そのこと自体に誤りはない。
したがって,原告の主張は失当であり,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(サポート要件についての判断の誤り)について〔原告の主張〕本件審決は,本件訂正発明は,本件訂正明細書発明の詳細な説明に記載したものであり,サポート要件を満たすと判断したが,本件訂正明細書には,本件訂正発明1に係るガス発生組成物成型体の金型寸法の記載はあるが,その実寸法が記載されていないのであり,本件訂正明細書中の10個の具体例(実施例及び比較例)についても,上記1の〔原告の主張〕と同様の理由により,本件訂正発明1の具体例であるということはできないから,本件訂正発明1は本件訂正明細書に記載したものではないというべきである。
したがって,本件訂正発明がサポート要件を満たしているとの本件審決の判断は誤りであり,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕原告は,本件訂正明細書においては金型寸法しか記載していないなどと主張するが,金型を用いる押出工程において,長い紐状のガス発生剤が押し出され,引き続き行われる裁断工程においてはじめて長さが決まるのであり,「長さ」が記載されている場合は,金型寸法ではなく成型体の実寸を意味するものであるところ,本件訂正明細書実施例にはいずれも「長さ」の記載があるから,これらの実施例の記載は成型体の実寸についての記載であり,原告の主張は前提を誤ったものである。
また,上記1の〔原告の主張〕に対する主張は,上記1の〔被告の主張〕と同様である。
したがって,原告の主張は失当であり,取消事由3は理由がない。
4取消事由4(本件訂正発明1と先願発明との相違点a及びbを認定した誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,本件訂正発明1と先願発明との相違点aが実質的な相違点でないことを証明するために原告が提出した甲5の実験(以下「甲5実験」という。)の結果は技術的信頼性に乏しいとして採用しなかったところ,確かに甲5実験では,各剤の粒子径が変化しない程度で密度が充分に高くなる程度の圧縮成型した紐状体を使用し,可燃物の粒子径及び試料の密度による変動要因を排除するものとはなっていない。
しかしながら,甲20の再実験では,上記の問題点は解消されており,先願発明のガス発生剤組成物の線燃焼速度については,甲20における「試料No.?@-6」の「8.3mm/秒」と認定すべきであるから,相違点aを認定した本件審決は誤りである。
(2)また,本件審決は,本件訂正発明1と先願発明との相違点bを認定しているが,この認定は,先願発明における線燃焼速度が不明であることを前提とするものであるから,相違点aを認定したことが誤りである以上,相違点bを認定したことも誤りである。
上記(1)のとおり,先願発明における線燃焼速度を「8.3mm/秒」とすると,W=(1.47-0.86)/2=0.305であるから,W/(2・r)=0.305/(2×8.3)=0.018となる。
この値は,本件訂正前の請求項1ないし7に係る発明が規定する数値範囲に含まれるところ,本件訂正発明1における数値範囲の限定は,課題解決のための具体化手段における微差であって,新たな効果を奏するものではないから,本件訂正発明1は先願発明と実質同一である。
(3)以上のとおり,本件訂正発明1と先願発明とは同一であり,本件審決による相違点a及び同bの認定は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕(1)原告は,甲20の再実験に基づいて先願発明における線燃焼速度を立証していると主張するが,甲20においては15%以上の水を加えているところ,硝酸グアニジンは水に対する溶解度が高く,水による溶解,再結晶により硝酸グアニジンの一次粒子径が変化するという問題があり,先願発明における線燃焼速度を立証したものということはできない。
結局,甲20の再実験は,製法を変更することによって様々な密度の成型体が得られることを証明しているだけで,先願発明においてどのような密度のものが得られたのかについては,甲20から全くわからないといわざるを得ない。
(2)また,原告は,先願発明における線燃焼速度が8.3mm/秒であることを前提として,先願発明においてW/(2・r)=0.018であると主張するが,この値は本件訂正発明1において規定する数値範囲に含まれないから,本件訂正発明1と先願発明とが同一であるということはできない。
(3)以上のとおり,本件訂正発明1と先願発明との相違点として,相違点a及び同bを認定した本件審決の判断に誤りはなく,取消事由4は理由がない。
5取消事由5(本件訂正発明1と引用発明1との相違点1及び2についての判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,引用発明1に引用発明2を組み合わせて相違点1に係る構成とすることは当業者といえども困難であるとした。
しかしながら,本件訂正発明1が対象とする「非アジド系ガス発生剤」においては「使用する酸化剤の種類」の選択により「燃焼温度」の問題は解決されているものの,そのことにより「燃焼速度」が小さくなってしまったことを前提としているのであり,引用発明1のガス発生剤組成物は「アジ化物系ガス発生剤」ではあるが,その線燃焼速度は7.2mm/秒と極めて小さく,本件訂正発明1における線燃焼速度の範囲に含まれるものなのであるから,当業者であれば,引用発明1のアジ化物系ガス発生剤の成型体に引用発明2を組み合わせて単孔円筒状とすることに特段の技術的な阻害要因があったとは思われない。
(2)また,本件審決は,相違点2に係る構成とすることは当業者にとって容易ではないと判断しているが,W/(2・r)の値の上限値と下限値とに臨界的意義があるわけではなく,単なる設計事項にすぎない。
(3)したがって,本件審決による本件訂正発明1と引用発明1との相違点1及び同2についての判断はいずれも誤りであり,本件訂正発明1は引用発明1から容易に想到することができるから,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕(1)原告は,相違点1に係る構成とするために引用発明1に引用発明2を組み合わせることを阻害する要因はないと主張するが,本件審決は,引用例1に「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度が7.2mm/秒の範囲にあるガス発2生剤組成物を単孔円筒状に成型してなるエアバック用ガス発生剤組成物」が記載されていると認定しているところ,これはアジ化物系ガス発生剤であることが前提となっているから,アジ化物系ガス発生剤に代えて,引用例2記載の非アジド系ガス発生剤を用いる場合には,「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度が27.2mm/秒の範囲にある」との部分も変更されることが前提となるため,そのような組合せをしようとする動機付けがないと判断し,その上で,「むしろ,…」として阻害要因も存することを重ねて説示しているだけであり,原告の主張は本件審決の結論に影響を及ぼさない。
また,非アジド系ガス発生剤には,燃焼温度と線燃焼速度とが相反する関係が存するという解決すべき課題があるのだから,阻害要因があるとの本件審決の判断にも誤りはない。
(2)また,原告は,相違点2に係る構成とすることは単なる設計事項に過ぎないと主張するが,引用例1におけるW/(2・r)の値である0.088は,本件訂正発明1において規定される範囲外であり,引用例1のアジ化物系ガス発生剤を引用例2の非アジド系ガス発生剤に変更すれば,もはや「0.088」という数値自体がその前提を失うことになるのであるから,相違点2に係る構成とすることが容易であるということはできない。
(3)したがって,原告の主張はいずれも失当であり,取消事由5は理由がない。
6取消事由6(本件訂正発明1と引用発明3との相違点3ないし5についての判断の誤り)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,相違点3を認定しているが,上記1の〔原告の主張〕のとおり,本件訂正発明1における線燃焼速度は,「燃焼開始時の70kgf/cm を2上回った変動圧力下において測定された」ものであり,引用例3における平均圧力75.3kgf/cm の圧力下における線燃焼速度12.6mm/秒を70kg2f/cm の場合に換算すれば12.6mm/秒を若干下回り,12.5mm/秒2以下である蓋然性は高いから,相違点3は実質的な相違点ではない。
(2)また,本件審決は,相違点4について容易想到でないとしているが,引用例3の「円柱状ペレット」を「単孔円筒状」とすることを阻害する要因はなく,線燃焼速度が小さいガス発生剤においては,「単孔円筒状」とすることに充分な動機付けがあったというべきであることに加え,W/(2・r)の値は単なる設計事項に過ぎないのであるから,相違点4に係る構成とすることは容易である。
(3)さらに,相違点5の「水溶性バインダー」については,本件訂正明細書だけでなく,引用例2においもその使用が推奨されているのであるから,当業者が容易に想到することができたものである。
(4)以上によると,本件訂正発明1は引用発明3に基づいて容易に発明することができたものというべきであるから,本件審決の判断は誤りであり,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕(1)原告は,本件訂正発明1における線燃焼速度が「燃焼開始時の70kgf/cm を上回った変動圧力下において測定された」ものであるとの前提に立っ2て,本件審決の相違点3の認定が誤りであると主張するが,この前提が誤りであることは上記1の〔被告の主張〕のとおりであり,原告の主張は失当である。
(2)また,相違点4については,引用例3において線燃焼速度は不明であるから,これに引用例1又は4の記載を組み合わせても本件訂正発明1の構成とならないことは明らかであり,本件審決の判断は正当である。
(3)さらに,相違点5について,本件審決は引用例1,3及び4において,「水溶性バインダーを含むべき」であるとする理由はないと判断したものであり,本件審決の判断は正当である。なお,原告は引用例2の記載を持ち出しているが,引用発明3に引用発明2を組み合わせるとの主張は無効審判で行われていないのであるから,原告の主張は失当である。
(4)以上によると,本件訂正発明1は引用発明3に基づいて容易に発明することはできなかったというべきであり,本件審決の判断は正当であるから,取消事由6は理由がない。
第4当裁判所の判断1取消事由1(本件訂正を認めた判断の誤り)について(1)本件審決の判断の適否原告は,本件審決が,本件明細書において「実施例A」としてW/(2・r)の上限値「0.058」の値が記載されていることを前提として,本件訂正において上記上限値を「0.058」とする訂正は新規事項を追加するものではないとして,本件訂正を認めた点が誤りであると主張するので,以下において検討する。
ア本件明細書の記載線燃焼速度の測定に関しては,本件明細書(【0039】)に「ガス発生組成物の線燃焼速度は,窒素置換された容量1リットルの容器中,70kgf/cm の2圧力下で燃焼させ,圧力センサーにより記録される容器内圧力変化を解析することにより導かれる。」との記載がある。
イ燃焼速度の測定方法についての文献における記載(ア)「工業火薬ハンドブック」の記載昭和41年11月1日共立出版株式会社発行の「工業火薬ハンドブック」403頁(甲37)には,燃焼速度の測定方法であるストランド法について「密閉器中に窒素ガスを満たして所定の圧とし,この中で一定間隔にフューズを埋め込んだ推進薬を端面燃焼させ,このフューズの切断時間間隔を測定し,フューズ間距離をフューズの切断時間間隔で除した値をもって,その圧力における平均燃焼速度とする方法である。この場合,燃焼して出る燃焼ガスによって密閉器内の圧力が上昇するのを防ぐため,十分な容量をもった蓄圧器を連結して用いる。また,燃焼面が到達する前に燃焼炎によりフューズが切断されるのを防ぐために,窒素ガスを密閉容器の下方から連続的に送入し,上方から排出させるなど,改良法もとられている。」との記載がある。
(イ)火薬学会誌の記載原告が審判段階において提出した意見書(甲28)に添付された参考資料6(火薬学会誌Vol.56,No.6,1995,248頁以下)には次の記載がある。
混合した組成物3gを400MPaで加圧して,約6×6×30mmのストランドを作製した。見かけ密度は,体積および重量測定より求め,約1.85g/mlであった(248頁右欄5〜7行)。
線燃焼速度の測定はチムニ型ストランド燃焼器を用いて窒素加圧下で行った。燃焼ボンブはSUS316製で内容積は1.1リットルである。燃焼ボンブ等の圧力容器は常温槽内に納められており-40℃〜+100℃の温度範囲で実験可能であるが,本実験についてはすべて常温にて実験を行った。エポキシ樹脂のレストリクタの上からさらにシリコンゴムのコーティングを行ったストランドを0.4mmのニクロム線の加熱により着火させた。ストランド燃焼器にはストレイン圧力センサ(ミネベア製)を取り付け,ストレインアンプを介してアナライジングレコーダ(横河電機製)によって圧力変化を検出した。燃焼時間は圧力の立ち上がりから,燃焼終了を示す圧力降下の開始点までの時間とした(248頁右欄10〜23行)。
ウ線燃焼速度の測定方法についての当業者の認識と本件明細書の記載上記イの各記載によると,本件特許に係る原出願の出願時(平成8年7月31日)における当業者は,線燃焼速度の測定方法として周知のストランド法を実施するために,組成物のストランドを作製し,これを燃焼器において燃焼させる際の圧力変化を検出して燃焼速度を測定するという方法によっていたことが認められるところ,これを踏まえて上記アの本件訂正明細書の記載をみると,本件訂正明細書における「ガス発生剤組成物の線燃焼速度」はストランド法によって測定されたものであり,一定の試料(ストランド)を作製し,これを燃焼器において70kgf/cm の圧力下で燃焼させる際の圧力変化を解析することにより導かれたものであ2るということができる。
そうすると,本件訂正発明1における「70kgf/cm の圧力下における線2燃焼速度が5〜12.5mm/秒の範囲にある」とは,このようにして測定した線燃焼速度が「5〜12.5mm/秒」の範囲内であることを意味するものと理解されるべきである。
エ本件明細書の「実施例A」の記載本件明細書においては,線燃焼速度の導き方についての上記アの記載を前提として,「実施例1」について「尚,本ガス発生剤組成物の線燃焼速度は8.1mm/秒であった。」との記載(【0044】)があり,更にこれを前提として,「実施例2〜4,A及び比較例1〜2」について「各成分の重要部又は成型体の形状を表1に示す如く変えた以外は実施例1と同様にしてガス発生剤組成物成型体を作った。」との記載(【0045】)がある。
そして,「【表1】」の「実施例A」の「外径×内径×長さ」の欄には「2.5×0.8×2.14」との記載(【0046】)がある。
また,「実施例1〜4,A及び比較例1〜2の各ガス発生剤組成物の線燃焼速度と一定のガス発生量を発生するに必要な組成物量を用いたときの総発熱量を表2に示した。」との記載(【0047】)があるほか,「【表2】」の「実施例A」の「線燃焼速度(mm/秒)」の欄には「7.3」と記載されている。
本件明細書の以上の記載によると,本件訂正発明における単孔円筒状成型体の厚みWはW=(R-d)/2(Rは外径,dは内径)で求められることから,「実施例A」におけるW=(2.5-0.8)/2=0.85(mm)となる。
そうすると,ガス発生剤組成物の70kgf/cm の圧力下における線燃焼速2度r(mm/秒)と,単孔円筒状成型体の厚みW(mm)との関係は,W/(2・r)=0.85/(2×7.3)=0.0582となる。
したがって,本件明細書に「実施例A」として,W/(2・r)の値が0.058と記載されていると読み取ることは当業者にとって自明というべきである。
オ小括上記エによると,本件審決が,本件訂正のうち,請求項1のW/(2・r)の上限値について「0.058」とする部分について,本件明細書に記載されているに等しい事項であるとして,同訂正が本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであると判断したことに誤りはない。
(2)原告の主張に対する検討なお,原告は,?@本件明細書の実施例Aにおけるガス発生剤組成物の線燃焼速度は「燃焼開始時の70kgf/cm を上回った変動圧力下において測定された線2燃焼速度」であって,70kgf/cm の定圧下におけるものではないこと,ま2た,?A実施例Aのガス発生剤組成物の線燃焼速度が「ガス発生剤組成物中に配合する各剤の粒子径が変化しない程度で密度が充分に高くなる程度に圧縮成型した」試料(最高密度圧縮物)のものでないことから,本件審決の判断は誤りであると主張するので,以下,?@及び?Aの主張について検討する。
上記?@の主張について,そもそも,本件訂正発明1においては,線燃焼速度について「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度」と規定されるのみであっ2て,原告が主張するような「定圧下」におけるものであることについては請求項1に何ら記載がない。そして,本件訂正発明1における線燃焼速度の測定方法については,上記(1)ウに説示したとおりのものと理解すべきであるから,原告の主張を採用することはできない。
また,上記?Aの主張について,上記(1)イ(ア)及び(イ)によると,ストランド法により線燃焼速度を測定するためには,加圧してストランド状とした試料を作製する必要があることは当然の前提であるところ,試料としてのストランドと成型体の組成及び密度が互いに無関係であれば,線燃焼速度の測定に意味がなくなってしまうことは明らかであるから,試料としてのストランドは成型体と同様の組成及び密度のものであることも,当業者にとって明らかな事項であるというべきである。
したがって,成型体の密度とは異なる「ガス発生剤組成物中に配合する各剤の粒子径が変化しない程度で密度が充分に高くなる程度に圧縮成型した」試料を想定し,本件明細書における線燃焼速度はそのような試料を測定することによって求められるものであるとする原告の主張は前提を誤ったものであり,採用することはできない。
なお,本件審決は,本件明細書における「線燃焼速度」に関して,「可燃(組成)物単一固有の物理量であるものと解される。」(18頁20行)とし,「…当該測定方法においては,各剤の粒子径が変化しない程度で密度が十分に高くなる程度に圧縮成型した紐状体を使用し,…変動要因(可燃物の粒子径及び試料の密度)を排除することも当業者の技術常識の範疇の事項であるものと解される。」(18頁31〜34行)と説示しており,原告の上記主張も本件審決の上記各説示部分に基づくものと解されるところ,本件審決の上記各説示は,本判決における上記説示に照らし,正確性を欠き,不適切であるというべきであるが,上記説示が原告が主張するような「最高密度圧縮物」なるものを意味するものであるということはできないし,本件訂正におけるW/(2・r)の上限値の訂正が本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであるとの本件審決の結論は上記のとおり正当である。
(3)以上のとおり,本件訂正のうちW/(2・r)の上限値を「0.058」とする訂正が本件明細書に記載した事項の範囲内においてするものであるとして本件訂正を認めた本件審決の判断に誤りはなく,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(本件訂正発明の認定の誤り)について原告は,本件訂正発明1における線燃焼速度について,取消事由1と同様に,70kgf/cm の定圧下におけるものではないとして,本件審決は,本件訂正発2明1についての誤った認定を前提として対比・判断を行ったと主張するが,本件訂正発明1及び本件明細書における線燃焼速度の理解について,原告の前提とするところを採用することができないことは上記1において説示したとおりであるから,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(サポート要件についての判断の誤り)について原告は,本件訂正発明1が本件訂正明細書に記載したものではないから,本件訂正発明はサポート要件を満たさないと主張するが,その根拠は,ガス発生組成物成型体の実寸法が本件訂正明細書に記載されていないというものである。
しかしながら,本件訂正明細書には,上記1(1)エで認定した本件明細書の【0045】の記載と同様の記載があり,本件訂正明細書の【0046】には,実施例2〜4及び同Aについて,成型体の形状を特定する寸法として,外径,内径及び長さを特定する記載があるのであるから,原告の主張を採用することはできない。
なお,原告が指摘するように,本件訂正明細書には,実施例1について,「外径2.5mmφ,内径0.80mmφの金型」との記載(【0044】)があるが,実寸を示す長さの記載も存在し,内外径に関する上記記載が,金型のサイズを示すことによって実寸法を示す趣旨であることは明らかであり,仮に金型と実寸法とが一致しないような事態となれば,当業者としては,金型サイズに適合する成型体が得られるように適宜調整するであろうことは明らかであり,本件の全証拠によっても,本件訂正発明1に係るガス発生剤成型体についてそのような調整が困難であるなどの事情は認められない。
また,原告は,サポート要件違反の根拠としても,上記1(2)における原告の主張?@及び同?Aと同様の主張をするが,これらの主張を採用することができないことは,上記1(2)に説示したとおりである。
したがって,取消事由3も理由がないというべきである。
4取消事由4(本件訂正発明1と先願発明との相違点a及びbを認定した誤り)について原告は,本件訂正発明1と先願発明は実質同一であるとして,本件審決の相違点a及びbの認定の誤りを主張するので,以下,検討する。
(1)先願発明先願明細書(甲3)には,次の記載がある。
【0001】本発明は自動車エアバッグを膨張させるために使用されるようなガス発生性組成物,そして,詳細には,燃焼として銅(?U)硝酸錯体を使用するガス発生性組成物に関する。
【0002】自動車エアバッグを膨張するためのガス発生性組成物は,最も一般的には,アジ化ナトリウムをベースとするものであり,それは,膨張時に窒素ガスを製造する。しかし,毒性および安定性の問題のために,燃料としてアジ化ナトリウムは非常に敬遠されており,そして多くの非アジ化物ガス発生性配合物は提案されており,…その各々の教示を参照により本明細書中に取り入れる。非アジ化物配合物は,しかしながら,粒状物の発生および非酸化物ガスの発生のような,その独自の問題を呈する傾向がある。
【0003】国際公開公報WO95/09825は,燃料として,硝酸ポリアミン,硝酸アルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩または硝酸アンモニウムである酸化剤,および,アッシュ含分を改良するためのキャリア物質を使用するガス発生性組成物を教示している。この公報に記載されている組成物は多くの有利な特性を有するが,アルミニウムハウジングまたは他のアルミニウム部品とともにインフレータモジュール内で使用される組成物に特に望まれる特性である,より低温で燃焼する組成物であって,且つ,より多量のガス生成率である組成物を提供することが望まれるであろう。
【0016】例2塩基性硝酸銅(?U)(58.9重量%),硝酸グアニジン(41.1重量%)およびグアーガム(5.3重量%,燃料+酸化剤に対して計算)を,十分な水を混合して,スラリーを形成した。スラリーを,適切なダイを有する一軸Haake(商標)押出機で押出し,0.035インチ(0.86mm)の内径および0.06インチ(1.47mm)の外径の単一孔を有する,長いストランドの花火材料を製造した。ストランドを自動チョッパーで0.1インチ(2.45mm)長さに切断した。38gのペレットをエアバッグインフレータで使用した。
内部燃焼圧は2500psiであり,そして60リットルタンク圧は約250kPaであった。両方とも許容できるものであると考えられる。
上記記載のうち,「例2」の記載によると,先願明細書には,「硝酸グアニジン,塩基性硝酸銅(?U)及びグアーガムを含む内径0.86mm,外径1.47mm,長さ2.45mmの単一孔を有する長いストランド花火材料からなる自動車エアバッグを膨張させるために使用されるガス発生性組成物」の発明(先願発明)が記載されているものと認められる。
(2)原告の主張に対する検討原告は,先願発明における組成物の線燃焼速度を測定した結果が,10.6mm/秒(甲5),8.3mm/秒(甲20),8.9mm/秒(甲38)及び10.3mm/秒(甲44)であったことから,本件訂正発明1における線燃焼速度である「5〜12.5mm/秒」の範囲に含まれるとする。
他方,先願発明における外径(1.47mm),内径(0.86mm)によると,W=(1.47-0.86)/2=0.305であり,仮に最も小さな線燃焼速度である8.3mm/秒を前提としても,W/(2・r)=0.0183となり,本件訂正発明1の下限値(0.033)を下回る。
この点について,原告は,本件訂正発明1におけるW/(2・r)の上限値と下限値に臨界的意義はなく,課題解決のための具体化手段における微差であるから,本件訂正発明1と先願発明に実質的な相違点はないと主張する。
しかしながら,特許法29条の2を根拠として先願発明と同一の発明である後願発明について特許を受けることができないとされるのは,先願発明の開示によって後願発明の技術的思想が開示されていると認められるからであるところ,上記のように,先願発明が本件訂正発明の数値範囲を外れる場合に両発明が同一であるということができるかどうかについては,両者の技術的思想を対比して検討する必要がある。
(3)先願発明及び本件訂正発明における技術的課題そこで,以下において,先願発明及び本件訂正発明の課題とするところをそれぞれ検討する。
ア先願発明について先願明細書には,上記(1)のとおりの記載があるところ,その記載によると,先願明細書における技術的課題は,自動車エアバッグを膨張するためのガス発生性組成物に関し,毒性及び安定性の問題のために敬遠されるアジ化ナトリウムに代わって提案されている多くの非アジ化物ガス発生配合物が粒状物の発生および非酸化物ガスの発生のような独自の問題を呈することを踏まえ,アルミニウム部品とともに使用するために望ましい特性である低温燃焼と,より多量のガス生成率である組成物とを提供することにあるものと認められる。
そして,上記(2)における原告の主張を踏まえると,そのような組成物についての実施例の一つに,当該組成物の線燃焼速度が本件訂正発明が前提とするところに含まれるものが記載されている可能性があるものと認められる。
イ本件訂正発明について本件訂正明細書には,次の記載がある。
【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,エアバッグシステムを膨張させるために燃焼してガス成分を供給するガス発生剤成型体及びその製造方法に関する。更に詳しくは,本発明は,自動車,航空機等に搭載される人体保護のために供せられるエアバッグシステムにおいて作動ガスとなるガス発生剤の新規な組成物及びその剤形に関するものである。
【0003】現在,エアバッグシステムに一般的に用いられているガス発生基剤としては,無機アジド系化合物,特にアジ化ナトリウムがあげられる。アジ化ナトリウムは燃焼性という点では優れているが,ガス発生時に副生するアルカリ成分は毒性を示し,搭乗者に対する安全性という点で,上記の要求を満たしていない。また,それ自体も毒性を示すことから,廃棄した場合の環境に与える影響も懸念される。
【0004】これらの欠点を補うため,アジ化ナトリウム系に替わるいわゆる非アジド系ガス発生剤も幾つか開発されてきている。例えば,特開平3-208878にはテトラゾール,トリアゾール又はこれらの金属塩とアルカリ金属硝酸塩等の酸素含有酸化剤とを主成分とした組成物が開示されている。
【0006】【発明が解決しようとする課題】ところが,含窒素有機化合物は一般的に燃焼において,化学当量分,すなわち化合物分子中の炭素,水素その他の元素の燃焼に必要な量の酸素を発生させるだけの酸化剤を用いる際,アジド系化合物に比べて発熱量が大きいという欠点が有する。…ガス発生剤の燃焼時の発熱量が大きいと,ガス発生器を設計する場合除熱のための付加的な部品を必要とし,ガス発生器自体の小型化が不可能である。酸化剤の種類を選択することにより発熱量を低下させることも可能であるが,これに対応して線燃焼速度も低下し,結局ガス発生性能が低下することになる。
【0009】テトラゾール誘導体をはじめ,各種含窒素有機化合物を用いた非アジド系ガス発生剤組成物が従来から検討されてきた。組成物の線燃焼速度は組み合わされる酸化剤の種類によって異なるが,一般的に30mm/秒以下の線燃焼速度を有する組成物がほとんどである。
【0010】線燃焼速度は,所望の性能を満足させるためのガス発生剤組成物の形状に影響を与える。ガス発生剤組成物の1個の形状において,肉厚部分の厚みの最も小さい厚み距離とそのガス発生剤組成物の線燃焼速度とによってガス発生剤組成物の燃焼時間が決定される。インフレータシステムに要求されるバッグ展開時間はおおよそ40〜60ミリ秒にある。
【0011】多用されているペレット形状及びディスク形状のガス発生剤組成物をこの時間内に燃焼完了させるためには,例えば厚み2mmで線燃焼速度20mm/秒の時100m秒の時間を必要とし,所望のインフレータ性能を得ることができない。従って,線燃焼速度が20mm/秒前後のガス発生剤組成物では厚み1mm前後でなければ性能を満足できない。線燃焼速度が10mm/秒前後及びそれ以下の場合,より肉厚部の厚みが小さいことが必須条件となる。
【0013】線燃焼速度が10mm/秒前後及びそれ以下で,肉厚部の厚みを多用されているペレット形状及びディスク形状で達成するためには0.5mm前後及びそれ以下の厚みが必須となるが,長期間の自動車の振動に耐え且つ工業的に安定した状態でペレット形状及びディスク形状にガス発生剤組成物を製造することは事実上不可能に近い。
【0014】【課題を解決するための手段】本発明者らは上記した問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果,線燃焼速度の小さいガス発生剤組成物を成型することにより,所定の時間内に燃焼させうること,その性能はエアバッグ用ガス発生剤として十分適用しうることを見出し,本発明に至った。
上記記載によると,本件訂正明細書における本件訂正発明の課題は,他の点では有利ではあるが,発熱量を抑えると,線燃焼速度が小さくなってしまうガス発生剤組成物について,その成型を工夫することにより,必要な時間内に燃焼させ,エアバッグ用ガス発生剤として適用することにあるものと認められる。
そして,この点を踏まえると,本件訂正発明1における「W」は単孔円筒状に成型された成型体の厚み部分であり,「2・r」は線燃焼速度を2倍したものであるから,W/(2・r)は,ガス発生剤組成物成型体が燃焼しきる時間,すなわちエアバッグの展開時間(又はその近似値)を示す指数であるものと認められる。
(4)上記(3)で検討したところによると,先願明細書と本件訂正明細書は,共にエアバッグ用のガス発生剤に関する発明を開示するものであるが,先願明細書においては,低温燃焼でより多量のガスを生成する組成物の提供が課題とされるのに対し,本件訂正明細書においては,発熱量を低下させることにより線燃焼速度が低下してしまう組成物の成型を工夫することにより,求められるエアバッグの展開時間と強度を実現することが課題とされているものと認められるのであり,両明細書が課題とするところは明らかに異なるものである。
そうすると,上記のような先願明細書における課題に向けられた発明を開示する同明細書の「例2」の記載に接した当業者が,仮に,当該組成物についての明示されていない線燃焼速度を求めることができたとしても,更に進んで,同明細書の記載から単孔円筒状の成型体の厚みと線燃焼速度から求められるエアバッグの展開時間の指数であるW/(2・r)について,0.033≦W/(2・r)≦0.058の数値範囲に含まれるガス発生剤組成物成型体の発明を読み取ることはできないというべきである。
原告は,上記(2)のとおり,上記数値範囲に臨界的意義がなく,課題解決のための具体化手段における微差であると主張するが,本件訂正発明における上記数値範囲は,上記のとおりエアバッグの展開時間の指数と考えられるものであり,上記(3)のとおり本件訂正明細書の【0010】において「インフレータシステムに要求されるバッグ展開時間はおおよそ40〜60ミリ秒にある」とされていることに対応するものであるということができるから,上記数値範囲(0.033≦W/(2・r)≦0.058)を大きく外れる数値(0.018)について,原告が主張するような微差であるとして,同数値範囲に含まれるものと同視することは到底できないというべきである。
(5)以上のとおりであるから,相違点aについての主張について検討するまでもなく,相違点bを認定した本件審決の判断に誤りはないから,取消事由4は理由がない。
5取消事由5(本件訂正発明1と引用発明1との相違点1及び2についての判断の誤り)について原告は,引用発明1と引用発明2を組み合わせて,本件訂正発明1と引用発明1との相違点1及び同2に係る構成とすることは容易であり,本件審決の相違点1及び2についての判断は誤りであると主張するので,以下,検討する。
(1)引用発明1及び引用発明2の内容引用発明1が「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度が7.2mm/2秒である酸化鉄とアジ化ナトリウムからなる組成物を外径3.56mm,内径1.02mm,長さ10.2mmの中空シリンダ状粒状物として調製された,自動車乗員の受動的拘束システムにおける安全のための衝突バッグを膨張させるのに特に適した固体の化学ガス発生剤組成物」の発明であり,引用発明2が「アジ化物でない含窒素有機化合物,酸化剤,スラグ形成を改良するためのキャリヤー物質,酸素供給キャリヤー物質及びセルロース化合物等の室温で水に溶解する結合剤を含有してなるエアバッグ中のガス発生剤として使用されるガス発生剤推進薬」の発明であることについて,当事者間に争いはない。
(2)本件審決による相違点についての判断本件審決が認定した本件訂正発明1と引用発明1との一致点及び相違点1及び同2についても,当事者間に争いがないところ,本件審決は,本件訂正発明1と引用発明1とは「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度が7.2mm/秒の2範囲にあるガス発生剤組成物を単孔円筒状に成型してなるエアバッグ用ガス発生剤成型体であり,単孔円筒状成型体の厚みWが,W=(R-d)/2(Rは外径,dは内径)で求められ,厚みWに対する前記単孔円筒状成型体の長さLの比(L/W)が8.0のものであるエアバッグ用ガス発生剤成型体」に係る点で一致すると認定しているものである。
ここで,一致点に係る「70kgf/cm の圧力下における線燃焼速度が7.22mm/秒の範囲になる」との部分は,その「ガス発生剤組成物」が,引用例1の組成物である「酸化鉄とアジ化ナトリウムからなる組成物」であることを前提とするものであることは明らかである。
そうすると,相違点1に係る構成とするために「アジ化物でない含窒素有機化合物,酸化剤,スラグ形成を改良するためのキャリヤー物質,酸素供給キャリヤー物質及びセルロース化合物等の室温で水に溶解する結合剤を含有してなるエアバッグ中のガス発生剤として使用されるガス発生剤推進薬」の発明である引用発明2を適用しようとすれば,当然に線燃焼速度の前提となる組成物の素材が変更されてしまうのであり,他方,引用発明2は「線燃焼速度」について何ら規定はするものではないのであるから,引用発明2を適用することによって相違点1を解消し,かつ,他の相違点を生じないようにすることはできないというべきであるし,特定の構成を実現するためにこれらの発明を組み合わせることもできないというべきである。
(3)したがって,引用発明1と引用発明2とを組み合わせて相違点1に係る構成とすることはできないとした本件審決の判断は正当であり,取消事由5は理由がない。
6取消事由6(本件訂正発明1と引用発明3との相違点3ないし5についての判断の誤り)について(1)引用発明3と引用発明4の内容引用発明3が「5-アミノテトラゾールと酸化銅とから調製されたガス発生剤組成物を円柱状ペレットとしてなる平均圧力1071(psi)における燃焼速度が0.497(in/s)のエアバッグ用ガス発生剤円柱状ペレット」の発明であり,引用発明4が「長さが約0.52インチ(1.32cm)で薬厚が約0.105インチ(0.267cm)の単孔円筒状のエアバッグ用推進剤グレイン」の発明であることについて,当事者間に争いはない。
また,本件訂正発明1と引用発明3との相違点4については,当事者間に争いがない。
(2)引用例3の記載引用例3には,以下の記載がある。
本発明は,自動車用エアバッグおよび同様の装置を膨らませるための,新規なガス発生剤組成物に関する。より詳細には,本発明は,ガス発生火工組成物における1次燃料としての,実質的に無水のアミノテトラゾール(5-アミノテトラゾール)の使用と,そのような組成物の調製方法とに関する(1欄16〜22行。引用例3の全訳である甲22の1頁19〜22行)。
この方法によって調製されたペレットは,頑丈であることが観察され,湿潤環境に曝されたときに構造的完全性が維持される。一般に,本発明の好適な方法で調製されたペレットは,その典型的な形状(直径3/8インチ,厚さ0.07インチ)において,10ポンド(1b)の負荷を上回るような圧壊強度を示す。これは,同じ寸法の,商用のアジ化ナトリウム発生剤ペレットを用いて得られたものに好ましく匹敵し,典型的には5ポンドから15ポンドの負荷の圧壊強度をもたらす(4欄11〜19行。引用例3の全訳である甲22の6頁6〜11行)。
本発明の組成物は,安定なペレットを生成する。これは,一般に自動車用補助拘束システムなどのガス発生装置中に配置するためにペレット形状のガス発生剤を用いるので,重要である。ガス発生剤ペレットは,ペレットの破損によって制御不可能な内部燃焼特性が生じるので,通常の使用中にその形状および構成が維持されるように,また点火によって生成された負荷に耐えられるように,十分な圧壊強度を有するべきである(5欄66〜6欄6行。引用例3の全訳である甲22の8頁21〜25行)。
実施例5実施例4の手順により調製された顆粒のサンプルを,220°Fでさらに乾燥した。これに伴う重量損失を,表2にまとめる。5-AT/CuO組成物のサンプルを加圧して,それぞれ3gの重量の直径1/2インチの円柱状ペレットとした。得られた燃焼速度データを表2にまとめる(9欄9〜13行。引用例3の全訳である甲22の13頁7〜11行。ただし,甲22では,「cylindrical pellets」を「円筒状ペレット」と訳しているが,同ペレットは内孔を有するものではないから,「円柱状ペレット」と訳すべきものである。)。
上記記載によると,引用例3に記載された円柱状ペレットは所定の圧壊強度を有することに技術的意義が存するものであると認められる。
(3)容易想到性以上を踏まえて相違点4について判断する。
上記(1)及び(2)によると,引用例3の円柱状ペレットの発明に基づいて,相違点4に係る「単孔円筒状成型体」のように非常に薄い壁によって形成された成型体にするために引用発明1(上記5(1))や引用発明4(上記(1))を適用しようとすれば,引用例3が前提とする圧壊強度が犠牲となることは明らかであるから,引用発明3に基づいて,本件訂正発明1との相違点4に係る構成とすることが,当業者によって容易であるということはできない。
(4)したがって,相違点3及び同5について判断するまでもなく,本件訂正発明1は,引用発明3及び引用発明4又は引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえないとした本件審決の判断に誤りはないというべきであり,取消事由6は理由がない。
7結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
裁判長裁判官 滝澤孝臣
裁判官 高部眞規子
裁判官 杜下弘記