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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10345審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10405審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10396審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10468審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10338審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  相違点の認定 /  周知技術 /  技術的手段 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10444号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/07/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文


平成21年7月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(行ケ)第10444号審決取消請求事件(特許)
口頭弁論終結日平成21年7月15日
判決
原告ユニ・チャーム株式会社
同 訴 訟 代 理 人 弁 理 士野崎照夫
同 三輪正義
被告特許庁長官
同指定代理人北川清伸
同 中島成
同 紀本孝
同 小林和男
主文
1特許庁が不服2006?12786号事件について平成20年10月14日
にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨。
第2事案の概要
本件は,原告が特許出願をしたところ,特許庁から拒絶査定を受けたので,これ
を不服として審判請求をしたが,同庁が請求不成立の審決をしたことから,その取
消しを求めた事案である。
主たる争点は,本願発明が,特開平9?38126号公報(甲1。以下「引用例
1」という )に記載された発明(以下「引用発明」という )を前提として,米国 。 。
特許第3368561号明細書(甲2。以下「引用例2」という,その他の周知。)



, 。 技術をも参酌することにより 当業者が容易に想到することができたか否かである
1特許庁における手続の経緯
,,「」() 原告は 平成11年1月20日 名称を 尿取りパッド とする発明 本願発明
につき出願し(特願平11?11663号 ,その後,平成17年12月14日付 )
け手続補正書(甲10)により補正をしたが,特許庁は,平成18年5月18日付
けで拒絶査定をした。
原告は,同年6月21日,上記拒絶査定に対する不服審判を請求するとともに,
同年7月19日付けで手続補正をした(甲13 。)
特許庁は,上記審判請求を不服2006?12786号事件として審理し,平成
,「,。」。, 20年10月14日本件審判の請求は 成り立たないとの審決をした なお
同審決は,上記平成18年7月19日付けの手続補正を却下した。
2本願発明の内容
本願発明は,平成18年7月19日付けの手続補正書(甲13)により補正され
た後の【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項7】に記載された次のと
おりのものであり(以下,同日付け補正後の請求項5の発明を「本願補正発明」と
いい,同補正前の,平成17年12月14日付け手続補正書により補正された明細
書の,特許請求の範囲の請求項5記載の発明を「本願補正前発明」という。なお,
下線部は平成18年7月19日付け補正による補正箇所を示している明細書 甲。),(
8)によれば,尿失禁用などとして使用される袋状の尿取りパッドに係り,特に袋
体に開口する開口部が泌尿器に追従して変形しやすくして,尿漏れが発生しにくく
した尿取りパッドに関するものである。
【請求項1】
「液透過性の内面シートと外面シートと両シート間に挟まれた液吸収体とを有する
積層体によって,前記内面シートが内側に向く袋体が形成され,この袋体にペニス
が挿入される開口部が設けられた尿取りパッドにおいて,前記袋体は,身体に対面
する身体装着側と,袋体の内部空間を挟んで前記身体装着側に対向する裏側とを有



し,前記身体装着側に,前記開口部が形成されているとともに,前記開口部を囲む
領域での前記積層体の剛性が,前記領域以外の前記積層体の剛性よりも低くなって
おり,前記袋体内には,前記開口部よりも下側に尿吸収空間が形成され,前記袋体
の前記裏側の内部には,前記開口部が設けられている位置から前記尿吸収空間にわ
たって上下方向に延びる弾性シートが設けられていることを特徴とする尿取りパッ
ド 」。
【請求項2】
「前記開口部を囲む領域での前記液吸収体の厚みが,前記領域以外の前記液吸収体
の厚みよりも薄い請求項1記載の尿取りパッド 」。
【請求項3】
「前記開口部を囲む領域での前記液吸収体の密度が,前記領域以外の前記液吸収体
の密度よりも低い請求項1又は2記載の尿取りパッド 」。
【請求項4】
「前記開口部を囲む剛性の低い領域と,それ以外の剛性の高い領域との境に,前記
液吸収体を薄くしまたは液吸収体を除去した変形境界部が形成されている請求項1
?3のいずれかに記載の尿取りパッド 」。
【請求項5】
「液透過性の内面シートと外面シートと両シート間に挟まれた液吸収体とを有する
積層体によって,前記内面シートが内側に向く袋体が形成され,この袋体にペニス
が挿入される開口部が設けられた尿取りパッドにおいて,前記袋体は,身体に対面
する身体装着側と,袋体の内部空間を挟んで前記身体装着側に対向する裏側とを有
し,前記身体装着側に,前記開口部が形成されているとともに,前記開口部を囲む
領域と,これ以外の領域との境に,前記液吸収体を薄くしまたは液吸収体を除去し
た変形境界部が形成されており,前記袋体内には,前記開口部より下側に尿吸収空
間が形成され,前記袋体の前記裏側の内部には,前記開口部が設けられている位置
から前記尿吸収空間にわたって上下方向に延びる弾性シートが設けられていること



を特徴とする尿取りパッド 」。
【請求項6】
「前記開口部には,袋体内に挿入されるペニスに対して前記開口部を締め付ける締
め付け手段が設けられている請求項1?5のいずれかに記載の尿取りパッド 」。
【請求項7】
「前記弾性シートは,液透過性であり,前記袋体の内面側に設けられている請求項
1?6のいずれかに記載の尿取りパッド 」。
3審決の内容
審決は,次のとおり,本願補正発明は,引用例1に記載された引用発明,引用例
2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることがで
きたものであるから,特許法29条2項の規定により,独立して特許を受けること
ができないとして,平成18年7月19日付け補正は,平成18年改正前特許法1
7条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反し,特許法159
条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきとし
た。
審決は,さらに,次のとおり,本願補正前発明についても,上記同様,引用例1
に記載された引用発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定によ
り特許を受けることができないとした。
(1)引用発明等の内容
ア引用発明の内容
(ア)「引用例1には,以下の内容が,図面とともに記載されている 」。
a「図1に部分破断平面図で示す吸尿パッド1は,透液性表面シート2と,不透液性裏面
シート3と,両シート2,3間に介在する吸液性コア4とによって構成され,図の上下と左右
とに端縁5,6と側縁7,8とを有する。上縁5と左右の側縁7,8とは,斜めの外形線9,
10でつながり,矩形のパッド1は,その隅部が切り欠かれた状態にある。コア4は,上縁5



寄りに偏在しており,表裏面シート2,3は,コア4の周縁から延出する部分の内面が互いに
水密に接合している。パッド1の上下方向は,コア4が存在する吸収域13と存在しない非吸
収域14とに分かれ,吸収域13のほぼ中央域には,上下方向にミシン目状の断続的切り込み
案内線15が延びている。パッド1全体で見ると,この案内線15の位置は下縁6よりも上縁
5に偏倚している。案内線15の近傍16では,コア4が部分的に欠如し,表裏面シート2,
3がそれらの内面どうしで接合している。非吸収域14の一方の隅部近傍には裏面シート3外
面に粘着域18が形成されている 」。
b「図2に装着状態で示したパッド1は,次のように使用する。図1において,まずペニ
スに合わせて案内線15を適宜の長さだけ裂いて,ペニス挿通孔15Aを形成する。次に,裏
面シート3の側から表面シート2方向へペニスを孔15Aに挿通し,パッド1を第1仮想折曲
線31において,吸収域13の上方部分13Aを矢印P方向へ折り,ペニスを挟んで表面シー
。, , ト2どうしを重ねる 続いて 非吸収域14を第2仮想折曲線32において矢印Q方向へ折り
先に折曲した吸収域13の部分13Aに重ねる。重なり合う吸収域13と非吸収域14とは,
第3,4仮想折曲線33,34の順に各々矢印R,Sの方向へ折曲し,それらが元に戻らない
ように粘着域18を利用して止着する。吸収域13の隅部は切り欠かれているから,矢印R,
S方向への折曲は,その切り欠き外形線9,10に合わせるようにする 」。
c「図6に斜視図で示す吸尿パッド1は,図1のパッドを利用して得られるものである。
ただし,このパッドでは,まず非吸収域14が第2仮想折曲線32で内側へ折曲されて吸収域
13に重なり,その重なり合う部分の左右各側線7,8近傍が水密ないしシールライン7A,
8Aで接合することにより,上方に向かって開口するペニス挿入用ポケット25が形成されて
いる。吸収域13の第1仮想線31より上方の部分13Aは,図示したようにポケット25に
対する蓋となる。その蓋の先端部分となる上縁5の近傍を非吸収域14の裏面シート3外面に
形成された粘着域18に剥離可能に止着したり,ポケット25の中に挿入したりするとポケッ
ト25に貯った尿の漏れを防ぐことができる。このように使用するパッド1は,非吸収域14
が吸収性コアを備えている態様で使用すると吸尿量が一段と向上する。なお,図のパッド1は
案内線を切り裂いて開口15Aが既に形成されている状態にある 」。



d「図1には,吸尿パッド1が,透液性表面シート2と不透液性裏面シート3と両シート
間に介在する吸液性コア4とを有する積層体であることが図示されている 」。
e「図6には,吸尿パッド1の上下を表面シート2どうしを重ねるように折ってペニス挿
入用ポケット25およびポケット25に対する蓋を有する袋体が形成され,蓋にペニス挿入口
。, , 15Aが設けられていることが図示されている また 図6に図示された袋体の形状からみて
身体に装着した際には,どちらか一方の面が身体に対面する身体装着側に,他方の面が袋体の
内部空間を挟んで前記身体装着側に対向する裏側になることは自明のことであるから,図6に
は,袋体の蓋に設けられたペニス挿入口15Aは,身体装着側と身体装着側に対向する裏側に
わたって形成されることが図示されているといえる。また,図6に図示された袋体の形状から
みて,袋体内には,ペニス挿入口15Aより下側に尿吸収空間が形成されることも自明のこと
である 」。
(イ)「以上の引用例1における記載事項及び図示内容を総合し,本願補正発明の記載ぶり
に則って整理すると,引用例1には,以下の内容の引用発明が記載されている 」。
「透液性表面シート2と不透液性裏面シート3と両シート間に介在する吸液性コア4とを有
する積層体によって,上下を表面シート2どうしを重ねるように折ってペニス挿入用ポケット
25及びポケット25に対する蓋を有する袋体が形成され,この蓋にペニス挿入口15Aが設
けられた吸尿パッド1において,前記袋体は,身体に対面する身体装着側と,袋体の内部空間
を挟んで前記身体装着側に対向する裏側とを有し,前記袋体の蓋に設けられたペニス挿入口1
5Aが身体装着側と身体装着側に対向する裏側にわたって形成されているとともに,前記ペニ
ス挿入口15Aの近傍16では,前記コア4が部分的に欠如して表裏面シート2,3がそれら
の内面どうしで接合されており,前記袋体内には,前記ペニス挿入口15Aより下側に尿吸収
空間が形成されている吸尿パッド1 」。
イ引用例2に記載された発明の内容(引用例2の各引用部分につき,それぞれ特許庁によ
る訳文を記載している )。
(ア)「FIGURE 1 illustrates a typical pediatric urine collector of this invention in
the folded condition as viewed from the front or body engaging side.」



「図1は,前面即ち身体に取り付ける側から見た,折り畳んだ状態におけるこの発明の代表
的な小児用集尿袋を示している 」。
(イ)「FIGURE 7 illustrates in cross section, the arrangement of the collector of
FIGURE 1 particularly with respect to the baby's body.」
「図7は,特に,赤ん坊の身体に対する図1の集尿袋の配置を,断面で示している 」 。
(ウ)「This aperture extends through the facing strip 15 through the adhesive or
adhesive tape 14 and through the front panel 23.」
「この開口は,剥離紙15,粘着剤又は粘着テープ14そして前面パネル23を通して伸び
ている 」。
(エ)「図7には,小児用集尿袋10の身体装着側に形成された開口16からペニスが挿入
されている状態が,それぞれ図示されている 」。
(2)引用発明と本願補正発明の一致点及び相違点
ア引用発明と本願補正発明の一致点
「液透過性の内面シートと外面シートと両シート間に挟まれた液吸収体とを有する積層体に
よって,前記内面シートが内側に向く袋体が形成され,この袋体にペニスが挿入される開口部
が設けられた尿取りパッドにおいて,前記袋体は,身体に対面する身体装着側と,袋体の内部
空間を挟んで前記身体装着側に対向する裏側とを有し,前記開口部を囲む領域と,これ以外の
, , 領域との境に 前記液吸収体を薄くしまたは液吸収体を除去した変形境界部が形成されており
前記袋体内には,前記開口部より下側に尿吸収空間が形成されている尿取りパッド 」 。
イ相違点(括弧内は,対応する引用発明上の用語である )。
(ア) 相違点1
「ペニスが挿入される開口部が,本願補正発明においては,袋体の身体装着側に形成され
ているのに対し,引用発明においては,開口部(ペニス挿入口15A)が身体装着側と身体装
着側に対向する裏側にわたって形成されている点」
(イ) 相違点2
「本願補正発明においては,袋体の裏側の内部には,開口部が設けられている位置から尿



吸収空間にわたって上下方向に延びる弾性シートが設けられているのに対し,引用発明におい
ては,そのような弾性シートが設けられていない点」
(3)容易想到性
ア相違点1について
「引用例2には,ペニスが挿入される開口部(開口16)が設けられた袋体(小児用集尿袋
10)において,開口部(開口16)を身体装着側に形成することが記載されており,これに
() , ならって引用発明の開口部 ペニス挿入口15A を身体装着側に形成するようにすることは
当業者であれば必要に応じて容易になし得ることである 」。
イ相違点2について
「吸尿パッドやおむつ等において吸収性を維持する目的で,形状を保持することは従来周知
の課題であり,また一般に,柔軟な材料により構成された袋体において,保形性等を付与する
ためにプラスチック等の弾性を有するシートを袋体内部に設けることは,例えば,実願平5?
13309号(実開平6?67340号)のCD?ROM(これに対応する公開公報が甲3で
あり,以下「公知例1」という,特開平9?169347号公報(甲4。以下「公知例2」 。)
という,実願平4?87751号(実開平6?44740号)のCD?ROM(これに対応 。)
する公開公報が甲5であり,以下「公知例3」という,特表平7?502439号公報(甲 。)
6。以下「公知例4」という )等にも記載されているように周知技術であることを考慮する 。
と,袋体に保形性等を付与するために必要に応じてこのようなシートを袋体内部に設けるよう
にすることは当業者であれば適宜なし得ることであり,シートを設ける際に袋体内部のどの位
置に設けるかは,袋体の形状や構造等に応じて適宜決定し得る設計的事項にすぎない。したが
って,上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易にな
し得ることである 」。
「また,本願補正発明による効果も,引用発明,引用例2に記載された発明および上記周知
技術から当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない 」。
「したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された発明および上記周知技術
に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規



定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない 」。
(4)本願補正前発明の容易想到性
「本願補正前発明の構成要件をすべて含み,さらに,他の構成要件を付加したものに相当す
る本願補正発明が,引用発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明をすることができたのであるから,本願補正前発明も,同様に,引用発明,引用例2
に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであ
る 」。
第3原告主張の要旨
1取消事由1(本願補正発明と引用発明との間の相違点の認定の誤り)
本願補正発明における「袋体」は 「液吸収体を有する積層体」で形成されてお ,
り 「身体装着側」は「袋体」の一部であるから,当然に「身体装着側」は「液吸 ,
収体を有する積層体」で形成されている。そして 「開口部を囲む領域」と「これ ,
以外の領域」は 「身体装着側」の一部であるから 「開口部を囲む領域」と「これ , ,
以外の領域 は液吸収体を有する積層体 で形成されていなくてはならない な 」 ,「」 (
お,原告は,特許を受けようとする発明として特定すべき「袋体」に「縁部17」
が含まれていない旨主張しているのであって 「本願補正発明の『液吸収体を有す ,
る積層体』が,通常の『液吸収体を有する積層体』とは異なり,積層体のすべての
」 。)。 部分が液吸収体を有する特殊な積層体を意味する 旨主張しているものではない
他方で,引用例1の図1及び6に記載された発明では,開口部となる「案内線1
5」の両側に,表裏面シート2,3が直接に接合された「近傍16」のみが設けら
れており,これは,本願発明の明細書に係る図10(A (B)に記載された実施
形態の「縁部17,17」と同じである。そして 「縁部17,17」は,吸収コ ,
ア13を有する積層体10の一部ではない(開口部20の一部である )ため,本 。
願補正発明における「袋体」の一部ではなく,単に吸収コアが出ないように内面シ
ートと外面シートとを接合した「シール部」にすぎない。同様に,引用例1の「近
傍16」も,本願補正発明の「袋体」の一部には該当せず,単なるシール部であっ



て,本願補正発明の「開口部を囲む領域」には該当しない。
また,引用発明において 「近傍16」の外側は一定の厚さのコア4を有する積 ,
層体で形成されているだけであり近傍16 の外側に開口部を囲む領域こ ,「」,「」「
れ以外の領域」及び「変形境界部」のいずれも形成されていない。
, ,, 以上からすれば 本願補正発明と引用発明との間には 審決が認定した相違点1
2のほかに,相違点3として 「本願補正発明では 『開口部を囲む領域』と『これ ,,
以外の領域』及び『前記両領域の境に,前記液吸収体を薄くしまたは液吸収体を除
去した変形境界部』が設けられているのに対し,引用発明ではこれらが設けられて
いない点」が存在する。
なお,本願補正発明の請求項の記載上,本願補正発明において「開口部を囲む領
域」と「これ以外の領域」が「液吸収体を含む積層体」で形成されており,両者間
に「変形境界部」が存在する旨明確に特定されていることに加え,同請求項の記載
と,発明の詳細な説明の欄及び図10(A (B)の記載とが完全に整合している )
ことから,上記「相違点3」の存在が導き出せる。
さらに,本願補正発明においては 「尿取りパッドを装着している状態で袋体1 ,
に外力が作用したときに,開口部20を囲む領域31が,他の領域32に対して変
形境界部30a又は30bを境として変形しやすくなり,その結果として開口部2
0がペニス25から外れにくくなる との効果があるところ 上記作用効果は開 」,,「
口部を囲む領域」と「それ以外の領域」の双方が液吸収体を有し 「変形境界部」 ,
で液吸収体を薄くし又は除去することで達成できるものであって,引用発明の「近
傍16」が本願補正発明の「開口部を囲む領域」であるとした場合,上記作用効果
を全く奏することはできない。
2取消事由2(相違点1に係る容易想到性についての判断の誤り)
引用例2に記載された発明は,尿サンプルを収集するための小児用尿収集具であ
って,全体がフィルムパネルで形成されており,感圧接着剤を介して一時的に幼児
の身体に接着させて使用されるもので,本願補正発明のように「液吸収体を含む積



層体」で形成されるものではない。
, , また 引用例1に記載された吸尿パッドや本願補正発明の尿取りパッドのように
液吸収体を含む積層体で形成されたパッドにおいては,開口部の形成箇所がそのパ
ッドの構造と密接な関係を有しており,パッド全体の構造と切り離して開口部の形
成箇所のみを自由に変更できるものではない。
仮に,引用例1の図6に示す袋体において,引用例2の記載にならって,開口部
を身体装着側(図6の紙面の奥側に面している側)に位置させたとすると,身体装
着側から開口部に挿入したペニスをペニス挿入用ポケット25の上向きの開口から
ポケット内部に収めることが困難になる。したがって,引用例1の吸尿パッドにお
いて,引用例2の記載にならって,挿入孔15Aの位置を袋体の身体装着側に移動
させることは実質的に不可能である。
このように,引用例1に記載された吸尿パッドと本願補正発明の袋体とは,袋体
全体の構造とペニスへの装着方法が全く異なるものであるから,引用発明において
引用例2を参照しても,本願補正発明に容易に至ることはできない。
以上のとおり,相違点1について 「引用発明の開口部(ペニス挿入口15A) ,
を身体装着側に形成するようにすることは,当業者であれば必要に応じて容易にな
し得る」旨の審決の判断は誤りである。
3取消事由3(相違点2に係る容易想到性についての判断の誤り)
(1)引用例1 2のいずれにも 液吸収体を含む積層体で形成された袋体の 裏 ,, 「
側の内部」に「弾性シート」を設けることは記載されていない。
(2)公知例1ないし3に記載された発明は,いずれも,菓子類などを収納した
プラスチックシートなどの可撓シートで形成された極めて軟質な袋状容器を,使用
前すなわち開封前に立方体の形状に維持しておくために,袋状容器の側面に厚紙な
どを設けたものであって,本願補正発明のように,袋体の裏側の内部に弾性シート
を設けることで,身体に装着した使用状態において,液吸収体を有する積層体で形
成された袋体の内部に尿吸収空間を確保して尿の漏れを防止しようとするものと



は,発明の目的と解決しようとする課題において全く相違している。したがって,
公知例1ないし3の記載を参照しても,引用発明の吸尿パッドにおいて,使用状態
で袋体の形状を維持するために弾性シートを設けるという技術的手段を当業者が容
易に想到できるとは考えられない。
(3)本願補正発明と類似する技術分野である「使い捨て吸収物品」に関する発
明に係る公知例4においては,トップシート22の内側にコア26の上層26Uが
設けられ,バックシート24の内側にコア26の下層26Lが設けられ,トップシ
ート22に,肛門開口に一致させるための孔46が開口している。そして,上層2
6Uの内側に「スペーサ54,56」が固定されており,着用者が座って上層26
Uと下層26Lに向けて潰されたときに,スペーサ54,56が上層26Uと下層
26Lとの間に挟まれることで,肛門開口と一致させる孔46の下に最小空間を形
成する機能を発揮する。そのため,上層,下層のいずれに取り付ける場合であって
も,スペーサ54,56を孔46と重ならないように孔46の周囲部分に設けるこ
とが必須であり 「開口部が設けられている位置に弾性シートを設ける」ことは一 ,
切記載されていない。
したがって,スペーサ54,56は,本願補正発明のように尿を尿吸収空間に導
く効果を奏することはできず,公知例4を参照しても,引用例1の吸尿パッドにお
いて 「弾性シートを開口部が形成されている位置からその下の尿吸収空間にわた ,
って延びるように設ける」ことを導き出すことはできない。
(4)本願補正発明は,開口部からペニスを挿入した状態で,袋体の内部に十分
な容積の尿保持空間を形成できるが,この作用効果は,開口部に対向する裏側の内
部において,弾性シートが,開口部が設けられている位置からその下の尿吸収空間
にわたって上下方向に延びていることによってはじめて奏することができるもので
ある。
,,「」, なお 本願補正発明では 弾性シートが 袋体の裏側の内部 に設けられており
同シートが「開口部が設けられている位置から尿吸収空間にわたって上下に延びて



いる」ため,弾性シートが親水性か否かにかかわらず,袋体内部において開口部に
対向する部分に与えられた尿が弾性シートを伝わって尿吸収空間に与えられるであ
ろうことは,当業者にとって自明である。
4取消事由4(本願補正発明による効果についての認定の誤り)
本願補正発明には,引用発明との間に相違点2,3があるため,以下の効果を奏
する(下記(1)及び(2)は相違点3に基づく効果で,(3)ないし(5)は相違点2に基づ
く効果である )ものであるが,引用発明や引用例2に記載された発明,各公知例 。
に記載された発明は,いずれも下記効果を奏するものではなく,かつ,これらの記
載内容から,下記効果が容易に予測できるものでもない。
「, , (1)開口部を囲む領域と それ以外の領域とで積層体の剛性が同じであるが
前記2つの領域を変形境界部により区分するとともに,前記変形境界部で液吸収体
を薄くし又は液吸収体を除去しているため,開口部を囲む領域の積層体が袋体の他
の領域と独立して変形しやすくなる。よって,尿取りパッドに外力が作用しても,
泌尿器が開口部からはずれにくくなる 」。
(2) 「開口部を囲む領域がこれ以外の領域と独立して動きやすい構造でありなが
ら,開口部を囲む周囲の吸収量が低下することがない 」。
(3) 「袋体の裏側に弾性シートが設けられているために,外力により袋体が曲が
ったり,折れたりしにくくなり,袋体内の保水空間を常に広く確保できる 」。
(4) 「弾性シートが開口部が設けられている位置に配置されているため,袋体の
身体装着側で開口部を囲む領域の積層体が比較的自由に動くことができるのに対し
て,この開口部に対向する袋体の裏側部分は弾性シートで補強されて変形しにくく
なっている。そのため,袋体を身体に装着しているときに,開口部を囲む領域がペ
ニスとともに動いても,これに対向している裏側部分が変形しづらくなり,装着時
,, 。」 に袋体が曲がったり 折れたりしにくくなり ペニスが開口部から外れにくくなる
(5)「弾性シートが,開口部が設けられている位置から尿吸収空間にわたって
上下方向に延びて設けられているため,袋体の裏側の内部に向けて排泄された尿を



その下の尿吸収空間に向けて誘導しやすくなる 」。
5以上からすれば,本願補正発明は,特許出願の際に独立して特許を受けるこ
とができるものであるから,平成18年7月19日付けの手続補正は却下されるべ
きではない。
第4被告の反論
1取消事由1に対して
原告は 「本願補正発明の『液吸収体を有する積層体』が,積層体のすべての部 ,
分が液吸収体を有している特殊な積層体を意味する」旨主張するようであるが,通
常,液吸収体(吸収コア)を有する積層体は,端部にシール部となる縁部がないと
液吸収体(吸収コア)が端部から出てしまうから,シール部となる縁部が必須であ
り,特許請求の範囲にシール部となる縁部が明記されていなくとも 「液吸収体を ,
有する積層体」とは,そのような端部にシール部となる縁部を有する通常の積層体
と解釈するのが自然であって(つまり「開口部を囲む領域」に液吸収体が存在して
いなければならないわけではない,本願補正発明における「縁部17,17」が 。)
袋体を構成する積層体の一部であることは明らかである。
そして,引用発明には「開口部 (ペニス挿入口15A)が存在しており,その 」
「開口部 (ペニス挿入口15A)が形成される案内線15を囲むように「近傍1 」
6 で示される領域が形成されているから 引用発明の 近傍16 は 開口部 ペ 」 ,「」 ,(
ニス挿入口15A)を囲む領域といえるものである。
したがって,審決において,引用発明の「ペニス挿入口15Aの近傍16」は本
願補正発明の「開口部を囲む領域」に相当すると認定したことに誤りはない。
また,引用例1の図1に図示されているように,引用発明の「近傍16」の外側
には,コア4を有する領域が存在しているから,引用発明には「これ以外の領域」
も存在している。そして,これら両領域の境界部分の「近傍16」側は,表裏面シ
, ,() ート2 3がそれらの内面どうしで接合されている部分であり 液吸収体 コア4
が除去された境界部分といえるから,引用発明には 「液吸収体を薄くし又は液吸 ,



収体を除去した変形境界部」も存在している。したがって,審決において,引用発
「 」「」 , 明の ペニス挿入口15Aの近傍16 は本願補正発明の 開口部を囲む領域 に
引用発明の「前記ペニス挿入口15Aの近傍16では,前記コア4が部分的に欠如
して表裏面シート2 3がそれらの内面どうしで接合され は 本願補正発明の 前 , 」 ,「
記開口部を囲む領域と,これ以外の領域との境に,前記液吸収体を薄くし又は液吸
収体を除去した変形境界部が形成され」に,それぞれ相当するとした点に誤りはな
い。
以上のとおり,審決における一致点及び相違点の認定に誤りはなく,原告が主張
する「相違点3」は存在しないから,原告の主張は失当である。
2取消事由2に対して
引用例2には,ペニスが挿入される開口部(開口16)が設けられた袋体(小児
用集尿袋10)において,開口部(開口16)を身体装着側に形成することが記載
されており,引用例2の図7には,身体装着側に形成された開口部(開口16)か
らペニスを挿入してペニスを袋体(小児用集尿袋10)の内部に収めることが図示
されているから,同様のペニス挿入口が設けられた袋体である引用発明において,
引用例2の記載にならって,開口部を身体装着側に設け,ペニスを袋体内部に収め
るようにすることは,当業者であれば容易になし得ることである。
また,引用発明の袋体においても,ペニスを挿入できる内部空間が形成されてい
ることは明らかであり,引用例2の記載にならって開口部を身体装着側に位置させ
る場合に,開口部を身体装着側の最下部に形成することは通常あり得ないから,開
口部の下に尿吸収空間が形成されることも明らかである。したがって,原告主張の
構造は,当業者であれば容易に想到し得るものである。
なお,本願補正発明の請求項では,ペニスへの装着方法につき何ら記載されてい
ないから 「本願補正発明と引用発明とでは,ペニスへの装着方法が全く異なる」 ,
旨の原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づく主張ではなく,失当である。
3取消事由3に対して



本願補正発明における弾性シートは,外力により袋体が曲がったり折れたりしな
いよう補強するためのものである。そして,吸尿パッドやおむつ等の液吸収体を有
する製品において,吸収性を維持する目的で形状を保持することは,従来周知の課
題であり,一般に,柔軟な材料により構成された袋体において,保形性を付与する
ためにプラスチック等の弾性を有するシートを袋体内部に設けることは,公知例1
ないし4にも記載されているように周知技術であるから,引用発明の袋体において
も,袋体内部の形状を保ちたい箇所に弾性を有するシートを設けて補強する程度の
ことは,当業者が適宜なし得ることである。
また,形状を保つためにどこを弾性を有するシートで補強するかは,必要に応じ
, 。 て適宜なし得る設計的事項にすぎず 当業者であれば予測し得る程度のものである
4取消事由4に対して
本願補正発明と引用発明との間には,原告が主張する「相違点3」は存在しない
から,その存在を前提とした,第3.4の(1)(2)の効果についての原告の主張は失
当である。
また,第3.4の(3)及び(4)の効果については,当業者であれば予測し得る程度
の効果にすぎず,同(5)の効果は,弾性シートが液透過性であることを前提とした
主張であるところ,本願補正発明の請求項には,弾性シートが液透過性であること
, , は記載されておらず 上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであって
いずれも失当である。
第5当裁判所の判断
1取消事由1について
(1)被告は,引用発明の「近傍16」が本願補正発明の「開口部を囲む領域」
に相当し その結果 引用発明には開口部を囲む領域これ以外の領域変 ,,,「」,「」,「
」 ,,,「」 形境界部 がいずれも存在する旨主張し 他方で 原告は 引用発明の 近傍16
はシール部にすぎず,本願補正発明の「開口部を囲む領域」には相当せず,引用発
明には「開口部を囲む領域「これ以外の領域」及び「変形境界部」が存在しない 」,



旨(すなわち,審決における本願補正発明と引用発明の一致点,相違点の認定に誤
りがある旨)主張する。
そこで,引用発明における「近傍16」が本願補正発明における「開口部を囲む
領域」に相当するか否かを検討する必要があるが,その前提として,本願補正発明
における「開口部を囲む領域」の意味を明確にする必要がある。
(2)本願発明に係る明細書(甲8)には,以下の記載がある(ただし,カにつ
いてのみ,平成18年7月19日付け手続補正書(甲13)に記載されたもの
を示す。。)
ア【0004 【発明が解決しようとする課題】 】
前記従来の尿取りパッドは,袋体を構成する積層体の剛性が均一であり,また前
記開口部の周囲にも前記積層体が存在している。よって,開口部の周囲部分での前
記積層体と,開口部から離れた領域での積層体の剛性とがほぼ同じである。
イ【0005】
したがって,開口部からペニスを挿入した状態で尿取りパッドが動いたときに,
開口部の周囲領域の積層体が柔軟に変形することができず,ペニスが前記開口部か
ら外れやすくなる。例えば尿取りパッドをペニスに装着した後,尿取りパッドの外
側におむつを装着するときに,その装着の外力によっておむつ内で尿取りパッドが
ずれて,または,前記尿取りパッドとおむつを装着した状態で,寝返りなどをして
体を動かしたときに,尿取りパッドがずれて,その結果ペニスが開口部から外れ尿
が尿取りパッドから外へ漏れやすくなる。
ウ【0006】
また,従来の尿取りパッドでは,その外側からおむつを装着したときに,おむつ
の締め付け力で袋体が曲がるあるいは折れるなどの変形が生じ,その結果,積層体
で形成された袋体の内部空間が狭くなり,十分な保水力を確保できなくなることが
ある。
エ【0007】



本発明は上記従来の課題を解決するものであり,尿取りパッドが外力を受けても
泌尿器が開口部より外れることがない,すなわち,おむつを装着するときや,尿取
りパッドの装着状態において人体の体位が変ったときにも装着状態を安定できる尿
取りパッドを提供することを目的としている。
オ【0008】
また,本発明は,袋体の曲がりや折れなどを防止して,袋体の内部空間の実質的
な容積の減少を防止できる尿取りパッドを提供することを目的としている。
カ【課題を解決するための手段 【0013】】
次に第2の本発明は,液透過性の内面シートと外面シートと両シート間に挟まれ
た液吸収体とを有する積層体によって,前記内面シートが内側に向く袋体が形成さ
れ,この袋体にペニスが挿入される開口部が設けられた尿取りパッドにおいて,前
記袋体は,身体に対面する身体装着側と,袋体の内部空間を挟んで前記身体装着側
に対向する裏側とを有し,前記身体装着側に,前記開口部が形成されているととも
に,前記開口部を囲む領域と,これ以外の領域との境に,前記液吸収体を薄くしま
たは液吸収体を除去した変形境界部が形成されており,前記袋体内には,前記開口
部より下側に尿吸収空間が形成され,前記袋体の前記裏側の内部には,前記開口部
が設けられている位置から前記尿吸収空間にわたって上下方向に延びる弾性シート
が設けられていることを特徴とするものである。
キ【0014】
上記第2の本発明では,開口部から距離をあけて,前記開口部を囲む領域とこれ
以外の領域との境に液吸収体を薄くした又は液吸収体を除去した変形境界部が形成
されているため,開口部の周囲の領域の積層体が袋体の他の領域と独立して変形し
やすくなる。よって,尿取りパッドに外力が作用しても,泌尿器が開口部からはず
れにくくなる。
ク【発明の実施の形態 【0022】】
図8は,袋体1を構成する前記積層体10を展開して示したものであるが,展開



状態の積層体10は平坦なシート状であり,各縁部14,15,16,17のそれ
ぞれの部分では吸収コア13が存在せず前記内面シート11と外面シート12が吸
収コア13の外側に延出し且つ両シート11と12とが接着または熱シールあるい
は接着および熱シールなどで接合されている。
ケ【0023】
図8に示す展開状態では,上端の縁部14と下端の縁部15が平行,横方向両側
で且つ上側の縁部17,17側は互いに平行,横方向両側の縁部16と16は下端
側で互いに接近する傾斜縁部である。袋体1が形成された状態で,前記縁部17と
17との対向部で図1に示すような開口部20が形成される。
(3)引用例1に係る公開特許公報(甲1)には,以下の記載がある。
ア【実施例 【0008】】
図1に部分破断平面図で示す吸尿パッド1は,透液性表面シート2と,不透液性
裏面シート3と,両シート2,3間に介在する吸液性コア4とによって構成され,
図の上下と左右とに端縁5,6と側縁7,8とを有する。上縁5と左右の側縁7,
8とは,斜めの外形線9,10でつながり,矩形のパッド1は,その隅部が切り欠
。, ,,, かれた状態にある コア4は 上縁5寄りに偏在しており 表裏面シート2 3は
コア4の周縁から延出する部分の内面が互いに水密に接合している。パッド1の上
下方向は,コア4が存在する吸収域13と存在しない非吸収域14とに分かれ,吸
収域13のほぼ中央域には,上下方向にミシン目状の断続的切り込み案内線15が
延びている。パッド1全体で見ると,この案内線15の位置は下縁6よりも上縁5
に偏倚している。案内線15の近傍16では,コア4が部分的に欠如し,表裏面シ
ート2,3がそれらの内面どうしで接合している。非吸収域14の一方の隅部近傍
には裏面シート3外面に粘着域18が形成されている。
イ【0009】
図2に装着状態で示したパッド1は,次のように使用する。図1において,まず
ペニスに合わせて案内線15を適宜の長さだけ裂いて,ペニス挿通孔15Aを形成



する。
(以下省略)
(4)ア「開口部を囲む領域」について
(ア)本願補正発明に係る請求項の記載によれば 「内面シート「外面シート」 ,」,
及びこれらに挟まれた「液吸収体」とを有する「積層体」によって「袋体」が形成
されるとともに,当該「袋体」は「身体装着側」と「身体装着側に対向する裏側」
とを有し 「身体装着側」には「開口部」が形成され 「開口部を囲む領域」と「こ , ,
れ以外の領域」との境に,液吸収体を薄くし又はこれを除去した「変形境界部」が
形成されるものである。以上からすれば 「開口部を囲む領域」は,当然に,上記 ,
「袋体」の一部と解されるため 「内面シート「外面シート」及び「液吸収体」 ,」,
を有する「積層体」で形成されていることになる。
(イ)他方で,被告が主張するとおり,液吸収体を有する積層体において,端部
にシール部がないと液が端部から漏れるおそれがあることは技術常識といえるた
め,このような積層体はシール部を有することが通常であるものと解される。
そして,本願補正発明においても 「開口部」を囲む部位は積層体の端部となる ,
,「」 「」 ,, ので袋体 の 開口部 を囲む部位にはシール部が必要であると解され 現に
「」()(,)。 開口部20の周囲には 縁部17シール部 が存在する 前記(2)ク ケ参照
しかし,前記(ア)で検討したとおり,本願補正発明の請求項の記載によれば 「開,
口部を囲む領域 は内面シート外面シート 及び 液吸収体 を有する 積 」 ,「」,「」「」「
層体」で形成されるものである。仮に,シール部が「開口部を囲む領域」の一部に
該当すると解する余地があるとしても,被告が主張するように 「開口部を囲む領 ,
域」が,液吸収体が全く存在しない単なるシール部でもよいと解するのでは,特許
請求の範囲の請求項に「 開口部を囲む領域』が『液吸収体』を有する『積層体』 『
によって形成される」旨が記載されていることが無意味になるから,被告の上記主
張は採用できない。
(ウ)以上のとおり,本願補正発明に係る尿取りパッドにはシール部が存在する



が,本願補正発明における「開口部を囲む領域」とは,液吸収体を有する積層体で
形成されている領域であって,基本的にシール部以外の領域を指す(仮に「開口部
を囲む領域」がシール部を含むとしても,少なくともシール部以外の「液吸収体を
有する積層体」で形成される部分を主たる構成部分とする )ものと解するのが相 。
当である。
イ引用発明の「近傍16」について
引用発明の「近傍16」は,ペニス挿通孔15Aの周りにあり,吸液性コア4が
部分的に欠如し,表裏面シート2,3がそれらの内面どうしで接合した部分である
から,シール部に相当する。そして 「近傍16」の外側は,吸液性コア4を有す ,
る積層体で形成されているが 「吸液性コアを薄くし又は除去した部分」が存在す ,
るものとは認められない(前記(3)参照 。)
ウ本願補正発明と引用発明との対比
(ア)被告は,引用発明の「近傍16」は本願補正発明の「開口部を囲む領域」
に,引用発明の「近傍16」とその外側の領域との境界部分の「近傍16」側は,
本願補正発明の「液吸収体を薄くし又は液吸収体を除去した変形境界部」に,それ
ぞれ相当する旨主張するが,前記イのとおり,引用発明の「近傍16」はシール部
にすぎないものであって,これが本願補正発明の「開口部を囲む領域」や「液吸収
体を薄くし又は液吸収体を除去した変形境界部」に相当すると理解することはでき
ない。
(イ)また,前記(2)イ,エ,キ記載のとおり,本願補正発明は 「開口部からペ ,
ニスを挿入した状態で尿取りパッドが動いたときに,開口部の周囲領域の積層体が
柔軟に変形することができず,ペニスが前記開口部から外れやすくなる」ことを従
来の課題として掲げた上で 「尿取りパッドが外力を受けても泌尿器が開口部より ,
外れることがない,すなわち,おむつを装着するときや,尿取りパッドの装着状態
において人体の体位が変わったときにも装着状態を安定できる尿取りパッドを提供
すること」を目的とし 「開口部から距離をあけて,前記開口部を囲む領域とこれ ,



以外の領域との境に液吸収体を薄くした又は液吸収体を除去した変形境界部が形成
されているため,開口部の周囲の領域の積層体が袋体の他の領域と独立して変形し
やすくなり,尿取りパッドに外力が作用しても,泌尿器が開口部から外れにくくな
る」ものである。
そうであるとすれば,ペニスが開口部から外れにくいようにするという効果を得
るために 「開口部の周囲の領域の積層体」が「袋体の他の領域」と独立して変形 ,
しやすいようにする必要があり,そのための工夫が,本願補正発明における「開口
部を囲む領域とこれ以外の領域との境に液吸収体を薄くし又は液吸収体を除去した
変形境界部を形成すること」であると解すべきである。
以上の本願補正発明の特徴を念頭に置いた上で,引用発明の構成をみた場合,引
用発明においては,開口部(ペニス挿通孔)の周りは吸液性コアが欠如している部
分であって そもそも 開口部の周囲の領域の積層体 など存在しないから 同 積 ,「 」, 「
層体」が「袋体の他の領域」と独立して変形しやすくすることはできず,本願補正
発明が想定する「ペニスが開口部から外れにくいようにする」旨の効果も得られな
い可能性が高い。このように,被告の前記(ア)の解釈は,文言的に無理があるだけ
でなく,本願補正発明が想定する効果を奏することができないような引用発明を本
願補正発明と同視する解釈であって,相当ではない。
,,, , (ウ)以上のとおり 引用発明には シール部と その外側の領域しか存在せず
本願補正発明と引用発明との間には,原告主張の「相違点3 ,すなわち 「本願補 」,
,『』 『』『, 正発明では開口部を囲む領域 と これ以外の領域 及び 前記両領域の境に
液吸収体を薄くしまたは液吸収体を除去した変形境界部』が設けられているのに対
し,引用発明ではこれらが設けられていない点」が存在するものであり,しかも,
上記検討によれば,本願補正発明は顕著な効果を奏することが見込まれるものであ
る。
(5) 結論
このように,審決には,本願補正発明と引用発明との間に相違点3が存在するこ



とを看過した誤りがあるといわざるを得ず,しかも,この誤りは,審決の結論に影
響を及ぼすおそれがあるというべきである。
2以上のとおり,取消事由1は理由があるから,本件の事案にかんがみ,その
余の点について判断をしないで,審決を取り消すこととする。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
塚原朋一
裁判官
東海林保
裁判官
矢口俊哉

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