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事件 平成 20年 (行ケ) 10373号 審決取消請求事件
原告大 日本印刷株式会社
同訴訟代理人弁護士櫻井彰人
同訴訟代理人弁理士結田純次
同 三輪昭次
同 竹林則幸
同 金山聡
同 藤枡裕実
被告凸 版印刷株式会社
同訴訟代理人弁護士竹田稔
同 木村耕太郎
同 三縄隆
同訴訟代理人弁理士志賀正武
同 高橋詔男
同 村山靖彦
同 渡辺浩史
同 渡邊隆
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2007-800270号事件について平成20年9月9日にした審決を取り消す。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯被告は,発明の名称を「広告情報の供給方法およびその登録方法」とする特許第2756483号(平成7年7月14日出願,平成10年3月13日設定登録。以下「本件特許」という。請求項の数は10であった。)の特許権者である(甲8)。本件特許に対しては,平成10年11月25日に特許異議の申立てがされ(平成10年異議第75697号),被告は,平成11年6月7日付けで訂正請求をしたところ(これにより請求項の数は9となった。),特許庁は,平成11年8月16日付けで「訂正を認める。特許第2756483号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。」との決定をした(甲23)。
原告は,平成19年12月7日,特許庁に対して無効審判請求をしたが(無効2007-800270号事件),特許庁は,平成20年9月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同年同月19日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲本件特許に係る明細書(甲8,23。以下「本件明細書」という。請求項の数は9である。)によれば,本件特許の請求項1ないし9は,下記のとおりである。
【請求項1】サーバー側からコンピュータネットワークを介して広告情報を供給する広告情報の供給方法において,広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す一方,前記サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備える一方,広告受給者の端末に対しては,前記サーバー側から前記地図情報に基づく地図を表示するとともに,当該地図上の地点であって,記憶された広告対象物の座標に相当する地点に,図象化した当該広告対象物を表示して,所望する広告対象物の選択を促す段階と,選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を前記サーバー側で読み出す段階と,読み出された広告情報を,前記広告受給者の端末に対して出力する段階とを備えることを特徴とする広告情報の供給方法。
【請求項2】広告依頼者に対し,依頼者自身の識別IDの入力を促す段階と,入力された識別IDによって,前記広告情報の入力を許可するか否かを決定する段階とを備えることを特徴とする請求項1記載の広告情報の供給方法。
【請求項3】前記広告情報は,少なくとも前記広告対象物の業種を示す業種情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の広告情報の供給方法。
【請求項4】広告対象物の図象化は,前記業種情報毎に異ならせて行うことを特徴とする請求項3に記載の広告情報の供給方法。
【請求項5】広告受給者に対しては,所望の業種を少なくとも1つ以上選択するように促す段階を備え,地図上には,選択された業種の広告対象物のみを図象化して表示することを特徴とする請求項3に記載の広告情報の供給方法。
【請求項6】読み出された広告情報を,前記広告受給者に対して出力する段階の後,広告受給者に対し,当該広告情報あるいは受給者自身に関する事項の入力を促す段階と,入力された事項を,当該広告情報を入力した広告依頼者に転送する段階とを備えることを特徴とする請求項1に記載の広告情報の供給方法。
【請求項7】コンピュータネットワークを介してサーバー側へ広告情報を登録する広告情報の登録方法において,広告依頼者の端末に対し,広告情報の入力を促す一方,前記サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備えることを特徴とする広告情報の登録方法。
【請求項8】広告依頼者に対し,依頼者自身のIDの入力を促す段階と,入力された識別IDによって,前記広告情報の入力を許可するか否かを決定する段階とを備えることを特徴とする請求項7記載の広告情報の登録方法。
【請求項9】前記広告情報は,少なくとも前記広告対象物の業種を示す業種情報を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の広告情報の登録方法。(以下,請求項1〜請求項9に記載された発明を,「本件発明1」ないし「本件発明9」といい,これらを併せて「本件各発明」という。)3 審決の内容別紙審決書の写しのとおりである。要するに,審決は,?@本件各発明は,甲1ないし甲7に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできず,?A本件発明1ないし5は,本件特許に係る出願の分割出願に係る特許第3324602号(甲10)の特許発明の請求項1,請求項4ないし請求項7(以下「分割発明1」,「分割発明4」等という。)と実質的に同一とはいえないから,特許法39条2項の規定により無効とすることはできないと判断した。
(1)甲1記載の発明(以下「引用発明1」という。)を主引用例とした場合の判断について審決が認定した引用発明1の内容並びに本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
ア 引用発明1の内容「1電話帳情報と,住宅地図情報,広告情報,伝言情報を有機的に連動し,これらの情報を電話帳情報とともに案内するサービスであって,2CUPIDセンタと利用者が使用するパソコン端末等が公衆電話網を介して接続されており,3CUPIDセンタからパソコン端末等に電話帳情報や住宅地図情報,広告情報等が供給されるものにおいて,4電話帳情報は電話帳掲載者の情報であって,名義(姓名,企業名),電話番号,住所,職業などの情報から構成され,電話帳DBに格納されており,5住宅地図情報は,表示用地図データ,建物毎の名義,住所,(地図上の位置を示す)座標などから構成され,地図DBに格納されており,6広告情報には,簡易広告,画面広告,営業内容広告などの情報があり,7電話帳情報と住宅地図情報に基いて,両者の共通情報である「名義」と「住所」により自動照合し,電話帳情報に座標を対応付けた電話帳DBが作成され,8広告情報のうち,簡易広告と営業内容広告は,それぞれ電話帳情報の1項目として電話帳情報に結合され,電話帳DBに格納され,9パソコン端末から検索キーとして,名義,住所,職業,電話番号,目標物,地図上の領域などが指定されると,これに対応する情報が電話帳DBから検索され,10番号案内サービスにおいて,検索条件に合う電話帳掲載者の情報が提示され,11地図案内サービスにおいて,電話帳DB中の当該電話帳掲載者に対応する座標に基づき,地図DBが検索されて当該電話帳掲載者の付近の地図が表示案内され,12ピック検索案内サービスにおいて,地図上でピック指定された建物内の企業名が案内され,13また,電話帳掲載者の情報を提示する場合,広告サービスにおいて,電話帳掲載者の簡易広告や営業内容広告が表示され,14電話帳情報と結合した広告情報は,端末,電話回線等に制約されない利用者IDおよびパスワードによる認証を経て,広告の持主がパソコン端末から即時登録・更新することができる,高付加価値型番号案内システム」イ 一致点サーバー側からコンピュータネットワークを介して広告情報を供給する広告情報の供給方法において,広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す一方,広告受給者の端末に対しては,前記サーバー側から地図情報に基づく地図を表示するとともに,当該地図上の地点であって,所望する広告対象物の選択を促す段階と,選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を前記サーバー側で読み出す段階と,読み出された広告情報を,前記広告受給者の端末に対して出力する段階とを備えることを特徴とする広告情報の供給方法である点。
ウ 相違点(ア) 相違点1本件発明1は,広告情報の登録に際し,「広告依頼者の端末に対し,サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備える」ものであるのに対し,引用発明1は上記構成を具備していない点。
(イ) 相違点2本件発明1は,「記憶された広告対象物の座標に相当する地点に,図象化した当該広告対象物を表示」する,すなわち,地図上に表示されるのが,広告情報と座標情報とが関連づけられてサーバに記憶された「広告対象物」であり,かつその広告対象物を「図象化して表示する」ものであるのに対し,引用発明1は,地図上に表示されるのは,地図データに記憶された建物イメージであって,電話帳情報と関連づけられた建物イメージではなく(自動照合により建物イメージに電話帳情報が関連づく場合もあるが,そもそも建物イメージは電話帳情報と関連していないので,地図上には電話帳情報と関連していない建物イメージも表示される),そしてそれを「図象化して表示」していない点。
(ウ) 相違点3本件発明1は,「広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す」ものであり,このとき促されて入力されるのは,顧客ファイル作成に必要な情報であるのに対し,引用発明1は,促されて入力されるのは,電話帳情報(本件発明1でいう顧客ファイルに相当する)の一部の情報である点。
(2)甲2記載の発明(以下「引用発明2」という。)を主引用例とした場合の判断について審決が認定した引用発明2の内容並びに本件発明1と引用発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。
ア 引用発明2の内容「1 問い合わせ応答システムであって,2親機と複数の使用者用子機と店舗等に配置された複数の被使用者用子機とが通信回線を介して接続されており,3親機は,店舗データ(図12)を含む地図データ(図11)と,混雑度データ(図20)を記憶するとともに,使用者用子機に所望の領域の店舗データを含んだ地図データ(図11,図12)を送信し,4使用者用子機は,前記地図データを受信して,画面に地図(図13)を表示し,5使用者用子機の操作者が,表示された地図を見て,カーソルによって地図上に特定の店舗名が表記され位置が特定された枠の枠内を指定すると,使用者用子機は,当該位置に対応する店舗の店舗データ(メッセージ,休業日フラグ等)を読み出し,店のメッセージや休業メッセージ等を表示し,6親機が記憶している休業フラグは,日や曜日で休業日を記憶しておくもので,被使用者用子機から随時書き換え・追加が可能になっており,7メッセージ表示後,使用者用子機の操作者が,現在の店舗状況を知ることを要求する操作を行うと,取得対象変更命令が親機に送信され,親機が被使用者用子機に該命令を送信すると,被使用者用子機は,店舗の撮像情報を親機を介し使用者用子機に送信し,8また,使用者用子機の操作者が,店の予約をすることを要求する操作を行うと,予約命令(図19)が親機に送信され,親機は,記憶している当該店の混雑度情報から予約の可否を判断し,予約が可能であれば,混雑度データに予約データを追加して記憶し,予約が完了したことを使用者用子機に送信するとともに,被使用者用子機に送信し,9被使用者用子機は,親機に混雑度データの送信要求をすることにより,混雑度データを取得することが出来る,問い合わせ応答システム。」イ 一致点サーバー側からコンピュータネットワークを介して広告情報を供給する広告情報の供給方法において,広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す一方,広告受給者の端末に対しては,前記サーバー側から前記地図情報に基づく地図を表示するとともに,当該地図上の地点であって,記憶された広告対象物の座標に相当する地点に,広告対象物を表示して,所望する広告対象物の選択を促す段階と,選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を,前記広告受給者の端末に対して出力する段階とを備えることを特徴とする広告情報の供給方法である点。
ウ 相違点(ア) 相違点1本件発明1は,「広告依頼者の端末に対して,サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備える」ものであるのに対し,引用発明2に上記事項が記載されていない点。
(イ) 相違点2本件発明1は,選択された広告対象物に関連付けられた広告情報を,「サーバー側で読み出し,広告受給者の端末に対して出力する」ものであるのに対し,引用発明2は,広告対象物に関連した広告情報は,既に地図情報と共に使用者用端末に送られているので,選択された広告対象物に関連付けられた広告情報は広告受給者の端末から読み出すものである点。
(ウ) 相違点3本件発明1は,地図上の広告対象物の座標に相当する地点に,「図象化した」当該広告対象物を表示するのに対し,引用発明2は,広告対象物の座標に相当する地点に,広告対象物を図案化した枠を表示するものの,「図象化した広告対象物」は表示していない点。
(エ) 相違点4本件発明1は,「広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す」ものであり,このとき促されて入力されるのは,顧客ファイル作成に必要な情報であるのに対し,引用発明2は,促されて入力されるのは,店舗データ(本件発明1でいう顧客ファイルに相当する)の一部である休業フラグである点。
(3) 本件発明1と分割発明1との相違点本件発明1は,「選択された広告対象物に関連づけられた広告情報を前記サーバー側で読み出す段階」を備えているのに対し,分割発明1は「前記広告受給者によって指定された座標に一致する,または,最も近傍の座標の広告対象物に関連づけられた広告情報を,前記サーバが検索して読み出す段階」を備えている点。
取消事由に関する原告の主張
審決には,下記の取消事由があるから,取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件発明1及び引用発明1の各認定の誤り)(1) 本件発明1の「広告情報」の認定の誤り審決は,本件発明1の「広告情報」を顧客ファイル作成に必要な情報のすべてを指すものと解しているが,誤りである。「広告情報」は,店名,電話番号,業種情報,広告メッセージ等の顧客ファイル情報を構成する個々の情報であり,そのいずれでも足りると解すべきである。
すなわち,?@請求項1には,「広告情報」が顧客ファイル作成に必要な情報の集合(全体)であることを示唆する記載はなく,?A請求項1には,「コンピュータネットワークを介して広告情報の供給を行う」,「広告情報を,前記広告受給者の端末に対して出力する」と規定され,登録者IDやパスワードを含めた「顧客ファイル作成に必要な情報のすべて」を供給,出力すると解することはできず,?B上記審決の解釈は,「広告情報」の持つ通常の意味から逸脱している。また,本件発明2で登録者IDを「広告情報」とは別個に入力すると規定していることとも矛盾する。
(2) 引用発明1の「電話帳情報」の認定の誤り審決は,引用発明1の「電話帳情報」は,名義,電話番号,職業及び簡易広告や営業内容広告を含む情報であるから,本件発明1の「広告情報」に対応すると認定したが,誤りである。
甲1の記載(839頁左欄24〜32行)によれば,簡易広告や営業内容広告は,電話帳情報に含まれる情報ではなく,電話帳情報と結合した広告データベースに含まれる情報である。
(3) 「新規に広告情報を登録」との認定の誤り審決は,本件発明1の相違点1に対応する構成について,「地図上の任意の位置に対応付けて,広告依頼者が新規に広告情報を登録するために,サーバに予め記憶された地図情報に基づいて広告依頼者の端末に地図を表示し,その地図上の任意の位置を広告依頼者に指定させ,かつ,広告依頼者が入力した広告情報と前記地図上で指定した位置の座標情報に関連づけてサーバに記憶(登録)する」(25頁37行〜26頁4行)と認定し,「地図上の任意の位置に対応付けて広告依頼者が新規に広告情報を登録するために」と限定解釈をした。
しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りである。すなわち,本件発明1においては,単に「広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す一方」と記載されるのみで,広告情報の更新又は既登録の変更を排除し,新規の広告情報の登録に限るとの記載はない。審決は,本件明細書における実施形態の記載(段落【0014】〜【0020】)に基づいて,「地図上の任意の位置に対応付けて広告依頼者が新規に広告情報を登録するために」と限定解釈している点で誤りがある。本件発明1は,新規登録のみならず,登録した広告情報の変更,修正を行うために,又は,広告情報を追加登録するために行う広告情報の入力も含むものである。
(4) 「第三者のサーバー」との認定の誤りア審決は,本件発明1の構成を,広告依頼者がデータを管理している第三者のサーバに対し,広告依頼者の端末から座標情報と関連づけて広告情報を登録するものであり,広告依頼者とデータを管理している第三者は別人格であり,広告依頼者の端末はサーバー(第三者)の管理下にない端末であると解しているが,誤りである。
本件発明1の「サーバー」には,第三者の限定や,「端末」がいずれの管理下にあるかの限定はされておらず,「サーバー」と広告依頼者が別個のものとされているにすぎない。また,本件明細書において,広告情報の入力と地図上での位置指定を行なう者を「端末操作者」とし(段落【0014】〜【0020】),この端末操作者は広告依頼者(又はその代理人)としている(段落【0014】)。すなわち,本件明細書においては,広告情報の入力が広告依頼者以外の端末から行なわれることが示され,この端末としてサーバーの管理下にある端末を排除していない。
したがって,本件発明1の「サーバー」の管理者と広告依頼者が別人格であり,広告依頼者の端末はサーバー(第三者)の管理下にない端末であるとの限定解釈は誤りである。
イ被告は,本件発明1の「サーバー」は不特定多数の広告依頼者を対象としていると主張する。しかし,本件発明1は,「サーバー」,「広告依頼者の端末」等と装置の動作として特定されており,「サーバー」が対象としているのは,「広告依頼者」ではなく,「広告依頼者の端末」である。
したがって,「広告依頼者の端末」を不特定多数か否かで区別する技術的意義は存しないし,甲31によれば,「広告」は広告依頼者が誰であるかを問わない用語とされる。被告の上記主張は失当である。
2 取消事由2(本件発明1と引用発明1との一致点の認定の誤り)甲1には,地図上の企業や店(広告対象物)の座標情報は,電話帳DB(名義,住所,電話番号等の広告情報)と関連づけてサーバーに記憶され,この地図上の座標情報と関連づけてサーバーに記憶される広告情報について,広告の持主がオンラインで即時登録・更新できることが示されている。したがって,本件発明1と引用発明1とは,地図上の広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけてサーバー側で記憶する段階である点において,一致するにもかかわらず,審決は,かかる一致点を看過しており,誤りである。
3取消事由3(本件発明1と引用発明1との相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)(1) 本件発明1と引用発明1との対比に関する容易想到性の判断の誤り審決は,相違点1に関し,「甲第1号証には,利用者端末から「広告」を登録・更新することができることが記載されているものの,・・甲第1号証には,利用者端末から広告情報(電話帳情報)と地図上の座標情報を関連づけてサーバに登録できることは記載されていない。」,「甲第1号証記載のものは,(狭い意味の)広告の登録以前から電話帳情報と座標情報が関連づけられて登録されており,この情報の登録を,広告依頼者ではなく付加情報サービス提供者(センタ側)が行なうことを前提としたシステムである。」と判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,本件発明1も引用発明1も,地図情報に関連付けられた広告情報を,広告受給者の端末に出力するものであるから,地図情報と広告情報との関連付けをどのような手法で行なうのかが重要である。そのため,広告依頼者が広告情報を登録する以前から電話帳情報と座標情報が関連づけられているかは重要ではないから,それを考慮して,相違点1の容易想到性の判断を行なっている点で誤りである。
(2) 引用発明1と周知技術(甲3,5,6)との組合せの判断の誤り審決は,「甲第1号証に記載されたものと甲第3号証に記載されたものを組み合わせたとしても,広告依頼者自身が新規に広告情報(店舗情報)を登録するために,サーバに記憶された地図情報に基づき広告依頼者の端末に地図を表示させ,その地図上の任意の位置を広告依頼者に指定させ,かつ,広告依頼者が入力した広告情報と前記地図上で指定した位置の座標情報を関連付けてサーバに記憶することが容易に想到できたとは認めることができない。」,「(甲第5号証及び甲第6号証)もまた広告依頼者の端末から座標情報と関連づけて広告を第三者のサーバーに登録し,広告受給者がサーバにアクセスして広告等を見ることができるようなシステムに関するものではなく,上記相違点1に係る事項が記載されているとはいえない。」と判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,?@本件発明1について「新規に登録」,「第三者のサーバー」としている点で誤っていること,?A仮にこれらの認定に誤りがないとしても,甲1には,広告依頼者自身が新規に,広告情報を第三者のサーバーに登録する技術が記載されていること,?B甲3,5,6には,座標情報と属性情報を関連づける手法として,地図上の位置を指定する周知技術が示されているにもかかわらず,これを考慮していないことに照らすならば,審決の相違点1に関する判断は,誤りである。
4取消事由4(周知技術(甲12,15)の認定及びそれに基づく本件発明1と引用発明1との相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)審決は,「広告依頼者が自分の端末から地図座標と広告情報を関連づけて第三者のサーバーに記憶させることが周知技術であるとは認められず,相違点1に係る事項が甲11ないし甲16に記載されたものから容易に想到できたということはできない。」と判断した(審決28頁1行〜5行)。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,甲12には,端末から第三者のホストに対して座標情報と属性情報の入力,更新,検索等を行うシステムが実質的に開示されているし,甲15には,各事業者の端末に第三者のホストに記載されている地図を表示して,第三者のホストに座標情報と属性情報を入力するシステムが開示されている。したがって,端末から地図情報と属性情報を関連づけて第三者のサーバ(ホスト)に記憶させることは,甲12及び甲15から周知技術であり,これを否定する審決の周知技術の認定は誤りであり,これに基づいてした相違点1の容易想到性に関する判断も誤りである。
5 取消事由5(本件発明1の顕著な作用効果の判断の誤り)審決は,「本件発明1は,上記構成を備えることにより,サーバ管理者が広告依頼者からの依頼を受けて地図と関連付けられた広告情報を登録するのではなく,広告依頼者自身が自分の端末からサーバに対して広告情報と関連付けられる地図座標の指定及び登録を行うことができるため,広告配布までのタイムラグが短くなるという作用効果が生じるものと認められる。」と本件発明1には顕著な作用効果がある旨判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,引用発明1においても,広告依頼者自身が自分の端末からサーバーに対して広告情報を即時登録でき,登録された広告情報は,地図と関連づけられ,一般利用者に案内されるため,広告配布までのタイムラグが短くなるという作用効果が生じる。
よって,本件発明1の上記作用効果は顕著な作用効果とはいえないので,審決の判断は誤りである。
6取消事由6(本件発明1と引用発明2との一致点の認定容易想到性の判断の誤り)審決は,引用発明2を主引用例とした場合においても,本件発明1を容易に想到することができないと判断した。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。すなわち,甲2には,地図上の広告対象物の座標を店舗情報(広告情報)と関連づけてサーバー側で記憶することが記載され,被使用者用子機7から入力される休日(休業日)フラグは,本件発明1の広告情報に対応する。したがって,本件発明1と引用発明2とは,「地図上の広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけてサーバー側で記憶する段階」で一致しており,これを看過し,引用発明2から本件発明1を容易に想到できないとした審決の一致点の認定及び容易想到性の判断は誤りである。
7 取消事由7(本件発明2ないし9に関する判断の誤り)審決は,本件発明2ないし9に関し,本件発明1と同じ理由で当業者が容易に発明できたものとは認められないと判断した。しかし,前記のとおり本件発明1に関する審決の認定判断は誤りであるから,上記判断もまた誤りである。
8取消事由8(本件発明1ないし5と分割発明1,4ないし7の同一性の判断の誤り)(1) 本件発明1と分割発明1との構成の同一性に関する判断の誤り審決は,本件発明1と分割発明1との相違点(前記第2,3(3))は,実質的な相違点であると認定して,本件発明1と分割発明1とは実質的に同一ではないと判断したが,誤りである。
本件発明1の「広告対象物の選択」は,広告依頼者の端末と同様の操作,すなわち,「表示された地図上において,位置を指定すること」により広告対象物を選択することにより限定されるので,その構成は分割発明1と同一である。
(2) 分割発明1の作用効果の誤認審決は,分割発明1には,おおよその座標を指定するだけで広告対象物を指定できるという独自の作用効果が生じると認定したが,誤りである。
甲28,29によれば,地図上の対象物を1つの座標で特定し,地図上で指定された座標の最も近傍の座標の対象物を検索してそれに関する情報を読み出すことは周知技術にすぎない。また,地図上で対象物の位置を指定する場合,正確に位置を指定するのが困難であることは技術常識である。したがって,おおよその座標を指定するだけで広告対象物を指定できるようにしたことは,操作性を向上させるための周知技術を採用したにすぎず,独自の作用効果を生じるものではない。
(3) 本件発明2ないし5と分割発明4ないし7との同一性判断の誤り審決は,本件発明2ないし5と分割発明4ないし7は,前記相違点の点で相違しているから,両者は同一ではないと判断したが,誤りである。
前記のように,前記相違点についての審決の判断は誤っているから,かかる誤った判断を前提としている点で誤りである。
被告の反論
原告主張の取消事由には理由がなく,審決を取り消すべき違法は認められない。
1 取消事由1(本件発明1の認定及び引用発明1の各認定の誤り)に対し(1) 「広告情報」の認定の誤りに対し原告は,「広告情報」は,「顧客ファイル作成に必要な情報の各々の情報」のうち,そのいずれでもよいと主張する。しかし,そのような解釈を前提とすると,「広告情報」は,広告として提供されることのない登録者IDのみでも,パスワードのみでもよいこととなり失当である。
原告は,登録者IDやパスワードを含めた「顧客ファイル作成に必要な情報のすべて」を供給,出力することは想定できないと主張する。しかし,広告受給者のために供給,出力されるのは「選択された広告対象物に関連づけられた広告情報」であって,「広告情報」ではないので,想定できないことはない。原告の主張は失当である。
(2) 「電話帳情報」の認定の誤りに対し甲1(862頁図3)には,簡易広告と営業内容広告が電話帳データベースに格納された情報の1項目として記載されていることからすれば,審決の認定した「電話帳情報」は,「電話帳情報に結合され」て「電話帳データベースに格納された」簡易広告や営業内容広告に関する情報という趣旨に解されるべきであり,審決の認定に誤りはない。
(3) 「新規に広告情報を登録」との認定の誤りに対しア本件発明1の「入力された広告情報」は,新規に入力された広告情報のみを指すのか,変更,修正及び追加登録のために入力された広告情報を含むかについては,本件特許の出願時の技術常識に照らすならば,広告情報を変更,修正及び追加登録する場合には,広告情報のみを変更,修正及び追加登録すればよく,改めて座標の位置指定を行う必要はないと解するのが自然であるから,広告対象物の位置指定を前提とした「入力された広告情報」とは,新規の入力を意味すると解される。
仮に,特許請求の範囲からは,上記のように一義的に明確に解釈することができないとしても,本件明細書において「既登録の変更」について記載されている(段落【0021】)ことに照らすならば,本件発明1がサーバー側管理者において広告依頼者の情報を何ら保有しないことを前提として,顧客ファイル作成に必要なすべての情報を広告依頼者自身に入力させるのであるから,「入力された広告情報」とは,「新規に入力された広告情報」と解するのが相当である。
イさらに,本件発明1の「広告情報」が,変更,修正及び追加登録の場合を含むとしても,本件発明1の広告情報の供給方法においては実施に際してまず新規登録が必要である。また,当該広告情報の供給方法の実施途中においても新規顧客に対する新規登録の必要性は生じる。そして,これら新規登録における広告情報の入力に際しては,サーバーにおいて広告依頼者の情報を何ら保有しないところから出発して,顧客ファイル作成に必要なすべての情報を広告依頼者自身に入力させ,広告依頼者自身の端末に表示された地図上において広告対象物を位置指定するように促す段階が必ず生じる。審決は,本件発明1において必ず必要となる新規登録について引用発明1と比較したものであり,誤りはない。
(4) 「第三者のサーバー」との認定の誤りに対し広告依頼者とデータを管理している第三者が別人格であり,かつ広告依頼者の端末は「サーバー側」の管理下にない端末であることは特許請求の範囲自体から明らかであり,原告の主張は失当である。
すなわち,本件発明1では,?@「端末」の語に「広告依頼者の」という限定を付して,サーバー「側」と対比させていることからすれば,端末とサーバーとが別人格で運営されていると解されること,?A広告情報の入力を促されるのは広告依頼者であり,広告情報の入力を促すのは「サーバー側」であり,「促される」ものと「促す」ものとは別人格であるといえること,?B本件明細書の段落【0009】には,「広告とは,ある者がその者の商品・サービス等に関し,その消費者等に成り得る者に対して宣伝等を行なうことであるが,その情報の提供は,第三者を介して行なわれることもある。本願発明は,このような「第三者」に相当する部分である。」との記載があり,この記載から,広告依頼者とは第三者の関係にある者がサーバー側の管理者であるといえること,?C広告情報を入力する「広告依頼者」がサーバー側の管理者と別人格であることを前提としてはじめて,本件発明1の作用効果が奏すること,?D広告依頼者が自ら端末から広告情報の入力をすることによって,同じ住所を有する領域内における店舗の詳細な位置を指定できるという効果を奏すること等に照らすならば,広告依頼者とデータを管理している第三者が別人格であることは明らかである。
2 取消事由2(本件発明1と引用発明1との一致点の認定の誤り)に対し本件発明1には,「前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階」とあり,前記「座標」は,本件発明1の「前記サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階」を経て得られる座標であり,単なる「地図上の広告対象物の座標」ではない。本件発明1では,広告依頼者により地図上において位置指定される構成によってはじめて,作用効果を奏する。原告の主張は失当である。
3取消事由3(本件発明1と引用発明1との相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)に対し本件発明1と引用発明1とは,電話帳情報の管理を広告依頼者にゆだねるのか(本件発明1),サーバー側で行なうのか(引用発明1)という点で,技術的思想における相違がある。また,本件発明1と引用発明1とは,以前から電話帳情報と座標情報が関連づけられているか否かの点でも,技術的思想における相違がある。原告の主張は失当である。
4取消事由4(周知技術の認定及びそれに基づく本件発明1と引用発明1との相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)に対し本件発明1の「サーバー」は,前記1(4)のとおり,広告依頼者や広告受給者とは別人格の第三者の関係にあり,かつ不特定多数の広告依頼者を対象としている。これに対し,甲12では,各支社,事業部の端末とホストコンピュータとが異なるコンピュータであることが示されているにすぎず,ホストコンピュータの運営主体と各支社や事業部は,登録された情報との関係では一体と見られ,第三者とはいえない。また,甲15のセンターシステム(ホスト)では,「電信電話,電力,ガス,水道,下水道,地下鉄」といった特定の「事業者」を想定しており,本件発明1の「サーバー」のような不特定多数の第三者を対象としていない。原告の主張は失当である。
5 取消事由5(本件発明1の顕著な作用効果の判断の誤り)に対し引用発明1では,サーバーに情報が記憶されていない状態から,広告記載依頼をして広告頒布するまでの手順を想定した場合,まず,通信事業者に電話回線の申込みを行うことにより,サーバーに電話帳情報が記憶され,座標の自動生成が行われる。この段階で,電話回線の申込みから,通信事業者側における電話帳情報の確認・登録作業を経て,座標の自動生成まで,数日程度を要する。その後,広告依頼者が端末を通じてオンラインでサーバーに簡易広告や営業内容広告を登録するという手順を経ることになる。
これに対し,本件発明1では,通信事業者に電話回線の申し込みを行ってサーバに電話帳情報を記憶させ,座標の自動生成を行う時間が一切不要である。
サーバー側に何ら情報がない段階から,広告依頼者が自ら端末を通じて広告情報の入力と地図上での位置指定を行うだけで広告頒布することが可能だからである。
したがって,タイムラグの短さという点において,本件発明1は,引用発明1にはない顕著な作用効果が得られる。原告の主張は理由がない。
6取消事由6(本件発明1と引用発明2との一致点の認定及び容易想到性の判断の誤り)に対し引用発明2を主引用例とした場合においても,本件発明1を容易に想到することができないとした審決の判断に誤りはない。すなわち,甲2には,既に地図上の座標と店舗情報が関連づけられて登録された情報(図12)に対して,店舗データの一部である休業フラグを登録(付加)したり更新することができるシステムが示されているにすぎず,また,甲2における「座標」は,操作者において任意に位置指定されるものではない。原告の主張は失当である。
7 取消事由7(本件発明2ないし9に関する判断の誤り)に対し原告の主張は争う。
8取消事由8(本件発明1ないし5と分割発明1,4ないし7の同一性の判断の誤り)に対し(1) 本件発明1と分割発明1との技術的意義の相違本件発明1は,広告受給者によって広告対象物を選択すること自体に技術的意義があるのに対し,分割発明1は,広告対象物を選択するための構成を広告受給者によって地図上の座標が指定され,この指定された座標に一致する又はその座標に最も近い座標を持つ広告対象物を選択するという構成とすることにより,おおよその座標を指定するだけでも広告対象物を指定できることで広告受給者の利便性にも資するという技術的意義があり,同一の技術的思想を表現したものではない。
(2) 本件発明1と分割発明1との構成の同一性に関する判断の誤りに対し原告は,本件発明1の「広告対象物の選択」は,広告依頼者の端末と同様の操作,すなわち,「表示された地図上において,位置を指定すること」により広告対象物を選択することで限定されると主張する。
しかし,本件発明1の「広告対象物」とは,例えばアイコンなどであり,広告受給者がそれぞれのアイコンを区別して視認できるようになっており,これらのアイコンからマウス等を用いて画面上で所望するアイコンを含む領域指定を行なうことにより所望するアイコンを選択することができるものである。また,本件発明1では,広告対象物を図像化しているから,その図像化した形状自体が番号を示していれば,番号を広告対象物に新たに付与する必要もなく,図像化された形状で示される番号を選択することにより,広告対象物そのものを選択している。したがって,原告の主張は失当である。
(3) 分割発明1の作用効果の誤認に対し甲28,29には,広告対象物が図像化された,すなわち選択する対象物が視認できる状態にされた発明について記載されているわけではない。甲28,29は,ユーザが正確な座標が分かっていればその座標を指定できるはずのところを,無作為に地図上で位置指定を行なっても,とりあえず情報が出る仕組みになっているにすぎない。
これに対し,分割発明1は,広告対象物が図像化され重なり合う確率は高く,位置指定がずれても該当するアイコンを選択するために近傍という構成をとっているのであり,独自の作用効果を奏する。原告の主張は理由がない。
(4)本件発明2ないし5と分割発明4ないし7との同一性判断の誤りに対し原告の主張は争う。
当裁判所の判断
当裁判所は,審決の本件発明1の認定のうち「新規に広告情報を登録」との認定及び「第三者のサーバー」との認定(取消事由1)に誤りがあるものの,いずれも審決の結論に影響を及ぼすものではなく,その余の取消事由にはいずれも理由がないから,原告の請求を棄却すべきものと判断する。以下理由を述べる。
1 事実認定(1) 本件発明1に係る特許請求の範囲及び明細書の記載等ア「・・広告依頼者の端末に対しては,広告情報の入力を促す一方,・・前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備える一方,広告受給者の端末に対しては,・・選択された広告対象物に関連づけられた広告情報・・特徴とする広告情報の供給方法」(特許請求の範囲請求項1)イ「前記広告情報は,少なくとも前記広告対象物の業種を示す業種情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の広告情報の供給方法」(特許請求の範囲請求項3)ウ「請求項1,7に記載の発明によれば,広告依頼者が,表示された地図の位置を指定することによって,当該座標が広告対象物の位置として,その広告情報と関連づけられて登録される一方,広告受給者が,地図上において図像化表示された広告対象物を選択することによって,当該広告対象物に関連づけられた広告情報が読み出される。したがって,広告依頼者にとってみれば,簡単な操作のみによって,所望する広告対象物の広告情報を登録することができる一方,広告受給者にとってみれば,簡単な操作のみによって,所望する広告対象物の広告情報を得ることができる。しかも,登録された広告情報は,直ちに読み出すことができるので,広告依頼者による登録から広告受給者への供給までのタイムラグをほとんどなくすことが可能である。・・」(段落【0007】)エ「・・広告とは,ある者がその者の商品サービス等に関し,その消費者等に成り得る者に対して宣伝等を行なうことであるが・・・」(段落【0009】)オ「・・本願の広告情報とは,狭義では広告メッセージを指すが,広義には,店舗情報よりも上位であって,顧客ファイル作成に必要な情報のすべてを指す。・・」(段落【0012】)カ「ステップSb3において,制御手段11は,端末101に対して,図7に示す位置指定画面を表示させる制御を行なって,端末操作者に対し,広告すべき店舗の位置指定を促す。ここで,表示される地図は,記憶手段15に記憶された地図ファイルに基づくものである。なお,図7に示すものは,東京都千代田区神田界隈(秋葉原駅周辺)を示す下層の区分地図である。端末操作者は,表示された地図上において,広告の対象となる店舗の位置を,マウスカーソルMCにより指してクリックする。すると,制御手段11は,この地図を示すコードと,この地図上において指定された位置の座標を示す(x,y)情報とを求めて,これらの情報を一旦格納した後に,次のステップSb4の処理を行なう。」(段落【0018】)キ「ステップSb4において,制御手段11は,端末101に対して,図8〜図10に示す店舗情報入力画面を表示させる制御を行なって,端末操作者に対し,店舗情報の入力を促す。・・」(段落【0019】)ク「2-2-1:地図まず,「地図」について説明する。この場合,店舗情報を受ける端末操作者は,図3に示したステップSa1のメインメニュー画面(図5参照)において,「地図」のボタン21 をクリックする。
1すると,制御手段11は,手順をステップSa2に進ませ,上層の地図ファイルを記憶手段15から読み出し,端末101の表示部に,当該ファイルに基づく日本地図とともに,地域的な限定をするように促すメッセージを表示させる制御を行なう。このときに端末101の表示部に表示される画面を図11に示す。ここで,端末操作者は,例えば,表示地図上の東京にマウスカーソルMCを合わせてクリックしたとする。すると制御手段11は,手順をステップSa3に進ませて,中層の地図ファイルのうち,位置指定された東京の地図ファイルを記憶手段15から読み出し,端末101の表示部に,当該ファイルに基づく東京都近郊の地図とともに,さらに,地域的な限定をするように促すメッセージを表示させる制御を行なう。このときに端末101の表示部に表示される画面を図12に示す。この画面に対し,端末操作者は,表示地図上の「秋葉原周辺」にマウスカーソルMCを合わせてクリックしたとすると,手順は次のステップSa4に進む。」(段落【0028】)ケ「ステップSa4において制御手段11は,まず,下層の地図ファイルのうち,位置指定された秋葉原近郊の地図ファイルを記憶手段15から読み出し,端末101の表示部に,当該ファイルに基づく秋葉原近郊の地図を表示させる。次に,制御手段11は,記憶手段17に格納された顧客ファイルのうち,地図コードが,先に読み出された秋葉原近郊の地図ファイルを示すものを検索して抽出する。そして,制御手段11は,抽出された顧客ファイルの(x,y)情報を読み出し,その情報で示される座標位置に,業種情報に対応するアイコンを,必要であればその店名とともに,表示した地図に上書きして表示させる。なお,かかる上書き表示は,抽出した顧客ファイルのすべてに対応して行なわれる。また,アイコンのビットマップデータは,業種情報に対応するものが記憶手段16から読み出される。このときに端末101の表示部に表示される画面を図13に示す。なお,かかる表示画面に示されるメッセージ中,アンダーラインが付されている文字部分をマウスクリックすることにより,表示された地図およびアイコンが,当該メッセージで示される方向にスクロール移動するようになっている。かかる制御も制御手段11が行なっている。また,この表示画面のボタン31をマウスでクリックすれば,前述したステップSb1の登録メニュー画面表示に移行し,また,所定の操作により後述するステップSa8にも移行することができるようにもなっている。」(段落【0029】)コ「さて,端末操作者は,かかる画面にアイコン化されている店舗情報を欲する場合には,そのアイコンをマウスによりクリックする。例えば,当該画面には,先に登録動作で説明した「○○デパート」が,指定された位置にアイコン化されて表示されているが,端末操作者は,この「○○デパート」の詳細情報を欲する場合,同図に示すように「○○デパート」のアイコンにマウスカーソルを合わせてクリックする。かかる操作により制御手段11は,手順をステップSa5に進ませ,地図上でクリックされた座標を検出し,この座標に一致する,あるいは最も近傍の(x,y)情報を有する顧客ファイルを検索して見つけ,さらに,当該顧客ファイルの店舗情報を読み出して,端末101の表示部に表示させる。かかる動作により,例えば,クリックしたアイコンが「○○デパート」であれば,この顧客ファイルが検索されて,図14に示したように,先に広告依頼人が店舗情報入力画面により入力した店舗情報が表示される。」(段落【0030】)サ「このように,広告受給者たる端末操作者は,表示部に表示された地図と,その地図上に重ねられたアイコンとを見ながら,アイコンをクリックするのみにより,そのアイコン化された店舗の情報を得ることができる。
一方,この店舗情報は,広告依頼者のみにより容易に修正可能である。したがって,かかる実施形態によれば,広告記載依頼から実際の広告頒布までのタイムラグを短くすることができ,しかも,広告情報の信頼性を保つこともできるのである。」【0031】(2) 引用刊行物(甲1)の記載甲1には,以下の記載がある。
ア「CUPIDでは,電話帳情報に住宅地図情報,広告情報,伝言情報を有機的に連動し,これらの情報を電話帳情報とともに案内するサービスを実現した。」(833ページ)「現在の電話帳情報は,「名前」「電話番号」「住所」「職業分類」の項目から構成され,これらの項目をキーワードとして該当する電話番号が抽出できる。「地図上の位置を表す座標」や企業の「広告」などを付加すれば,電話帳をインデックスとして,電話帳掲載のお客さまの様々な情報が得られ,日常生活の利便向上に役立てることができる。」(834ページ)イ 「4.2 電話帳データベースと地図データベースの結合電話帳情報と地図情報の結合により,電話帳掲載者の周辺の地図を表示したり,逆に地図上で電話帳情報を検索するための領域を指定可能とした。具体的には,電話帳情報に地図上の座標情報を追加することにより,電話帳情報を地図上の位置へ対応付けた。」(839ページ)ウ 「4.3 電話帳データベースと広告データベースの結合企業の広告情報として,多様な利用形態を評価する観点から,次の3種類の広告を電話帳と関連付けて格納した。
(1)簡易広告:1〜2行の簡単な広告(2)画面広告:画面単位の広告(3)営業内容広告:営業時間,設備状況等,業種ごとに統一した営業内容に関する情報(中略)(2)電話帳情報と地図情報,広告情報,伝言情報を有機的に結合した付加価値サービスを実現した。」(839ページ)エ 「3.1 電話帳情報の構成要素CUPIDで扱う電話帳情報の構成要素として,以下の項目がある。
(中略)(2)場所情報行政区分を表す「住所」および,地理的な位置を表す「座標」が考えられる。(ただし,現在の電話帳には,「座標」は含まれていない。)(中略)3.2 電話帳の利用形態と検索仕様(中略)これら3つの調べ方に加えて,住所の区名や町名が不確かな場合,「○○駅近く」など,目標物を指定したり,地図上で領域を指定する方法が有効である。
本システムでは,これらの目的に対応するため,「名義」「住所」「職業」「電話番号」に加えて,「目標物」,地図上で指定した「領域」を検索条件項目とし,これらの条件を組み合わせることにより,多様な検索を実現した。」(842ページ〜843ページ)「「目標物」を指定した場合,その周辺領域を条件とする検索を実現するため,目標物の位置を示す2次元の座標情報に変換し,これを中心とする決められた範囲の矩形の「領域」で電話帳を検索するようにした。
「領域」で検索可能とするため,電話帳データベースには,地図上の座標情報を収容した。」(844ページ)オ「(1)異種DBである電話帳DBと地図DBを自動結合する技術を提案し,「名義」+「住所」により結合処理を行い,約60%の結合率を得た。」(851ページ)「本システムでは,付加価値の1つとして地図情報を取り上げ,これを利用した種々の付加価値サービスを実現している。電話帳に掲載されている企業や店の所在地を地図上で案内する,地図上で指定した領域内からレストランを探し出す等がその一例である。」(851〜852ページ)カ 「2.2 開発技術この付加価値サービスを実現するために,以下の技術を開発する。
(1)電話帳DBと地図DBの結合地図情報を利用した付加価値サービスでは,「電話帳情報から地図情報の参照・案内」および,「地図情報から電話帳情報の参照・案内」という双方向のサービスを実現する。このため,電話帳DBと地図DBの間に関連付け(電話帳DBと地図DBの結合)を行う。」(852ページ)「3.2 電話帳DBと地図DBの結合処理電話帳DBと地図DBの関連付けは,地図座標データを電話帳掲載者ごとに付与することにより行った(図1)。
住宅地図は,建物ごとの名義,住所,座標および表示用地図データ等からなり,電話帳は,名義,住所,電話番号等からなる。地図座標データを電話帳掲載者に付与するため,各々独立に作成された住宅地図と電話帳を,両者の共通情報である「名義」と「住所」により自動照合した。本照合により,住宅地図の座標を,対応する電話帳掲載者に付与し,座標付きの電話帳DBを作成した。
自動照合により座標を付与できた割合は,『名義』照合で50%,『名義』+『住所』照合により60%に向上した。付与できない要因としては以下が考えられる。
(1)『名義』は,電話帳ではご契約者の名義を使用しているのに対し,住宅地図では表札,看板,刊行物等の掲載名義を使用している(表1)。
(2)電話帳は日々更新され絶えず最新の情報となっている一方,住宅地図は1年1回の更新のため,両者の間に情報の新しさの相違ができる。
(3)同一ビル名で建物が複数存在し,1つの建物に特定できない場合がある。」(852〜853ページ)キ「図1電話帳DBと地図DBの結合および地図データ構造(記載内容は省略)」(853ページ)ク「また,実データを用いて技術確認を実施した結果,以下の成果が得られた。
(1)電話帳DBと地図DBの結合は,自動結合処理を行った結果約60%について結合することができた。」(856ページ)ケ「本論文では,広告・伝言情報と電話帳情報の結合方式と広告・伝言の登録更新,参照の処理方式について述べる。」(857ページ)「本システムでは,電話帳情報をリレーショナルDBとして格納している。すなわち,電話帳情報は,電話帳の掲載単位を「行」(電話帳レコードと呼ぶ)に,検索対象項目(住所,名前等)を「カラム」として電話帳テーブルに格納した。」(858ページ)コ 「3.1 広告の種類電話帳と結合した広告情報の利用形態として,?@検索された企業のリストから各々の広告情報を比較しながら絞り込むために利用する形態,?A検索された企業の詳しい情報を個々に参照する形態,?B企業の営業内容を条件に検索された企業を絞り込む形態,が考えられ,それぞれに対応して,?@簡易広告,?A画面広告,?B営業内容広告と呼称する3種類の広告を設けた(表1)。」(858ページ)サ 「3.3 広告の登録・更新方式本システムでは,端末に格納された動画広告を除いて,広告情報を広告の持主が端末から即時登録・更新する機能を実現した。
広告の登録・更新機能を利用者に提供する場合,以下の点に留意することが重要である。」(861ページ)「図3広告の登録・更新に関するテーブル関連図(記載内容は省略」(862ページ)シ「本システムは,一般の利用者が直接端末を操作するタイプの情報案内システムであり,電話帳,地図,広告,伝言等の情報を案内する。」(865ページ〜866ページ)。
2 取消事由1(本件発明1及び引用発明1の認定の誤り)について(1) 本件発明1の「広告情報」についてア 「広告情報」の意義特許請求の範囲(請求項1,請求項3)の記載によれば,本件発明1の「広告情報」は,広告依頼者の端末に対して入力を促される情報であり,少なくとも広告対象物の業種を示す業種情報が含まれるものと認められる。
そして,以上を前提に発明の詳細な説明の記載(段落【0012】)を参酌すると,「広告情報」とは,顧客ファイル作成に必要な情報のすべてであると解するのが相当である。
イ 原告の主張に対し原告は,前記特許請求の範囲請求項1の「入力された広告情報」と「選択された広告情報」とが同義であることを前提として,仮に,「広告情報」を顧客ファイル作成に必要な情報のすべてであると解するとするならば,供給,出力されることが考えられない登録者IDやパスワードが含まれることとなり,失当であると主張する。
しかし,特許請求の範囲請求項1の記載によれば,「入力された広告情報」と「選択された広告情報」とは区別され,前者は後者を含む概念であると理解すべきである。そうすると,「広告情報」に登録者IDやパスワードが含まれると解することに何ら不自然な点はない。原告の主張は理由がない。
(2) 引用発明1の「電話帳情報」について原告は,甲1の記載(839頁)から,引用発明1の「電話帳情報」が簡易広告や営業内容広告を含むとの審決の認定は誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は失当である。
すなわち,甲1のうち,?@862頁の図3「広告の登録・更新に関するテーブル関連図」には,簡易広告や営業内容広告が「電話帳」に含まれるとの記載があること,?A838頁の表4「データベース一覧」には「電話帳」について「?B付加情報の一部として「簡易広告」(略),「営業内容広告」(略)を収容」との記載があること,?B859頁以下に「以上の点から,電話帳情報との結合方式は,電話帳情報と同時に検索され,データ量が小さく定型的な簡易広告と営業内容広告は,電話帳テーブルへ格納する方式を,・・採用した(図1)」との記載があることに照らせば,甲1の「電話帳情報」には簡易広告や営業内容広告を含むことは明らかである。原告の主張は理由がない。
(3) 「新規に広告情報を登録」との認定について本件発明1の特許請求の範囲請求項1には,広告情報の登録を「新規」に限るとの記載はなく,文言上「更新」の場合も含まれるというべきであり,本件明細書の発明の詳細な説明参酌しても,広告情報を新規に登録する場合の他既に登録された広告情報の変更,削除の場合の記載も存する(段落【0021】〜【0026】)。したがって,「『新規に』広告情報を登録」と認定した審決の認定は誤りである。しかし,「広告情報を登録」が新規の場合に限られないとしても,後記のとおり審決の相違点1に対する判断に誤りがないことから,上記審決の認定の誤りは審決の結論に影響を及ぼすものではない。
(4) 「第三者のサーバー」について特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明1において,「広告依頼者の端末」と「サーバー側」とが別個のものとして記載されているものの,「サーバー側」が広告依頼者とは異なる「第三者」のサーバーである旨の記載はない。また,「広告依頼者の端末」と「サーバー側」という装置が対置されているが,その主体を特定する記載はない。前記本件明細書の記載によれば,広告とは,「ある者がその者の商品,サービス等に関し,その消費者等に成り得る者に対して宣伝等を行なうこと」とされ,甲31によれば「広く世間に告げ知らせること」を意味するとされ,「依頼主」と「広告を提供する者」とが同一である場合を排除するものとはいえない。
したがって,本件発明1の「サーバー」の管理者と広告依頼者が別人格であり,広告依頼者の端末はサーバー(第三者)の管理下にない端末であるとの審決の認定は誤りである。
なお,認定の誤りは,後記のとおり,審決の結論に影響を及ぼすものではない。
3 取消事由2(本件発明1と引用発明1との一致点の認定の誤り)について原告は,本件発明1と引用発明1とは,地図上の広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけてサーバー側で記憶する段階であることでも一致すると主張する。
しかし,原告の上記主張は失当である。
すなわち,本件発明1に係る特許請求の範囲請求項1には,「・・前記サーバー側に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示して,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で逐一記憶する段階とを備える一方・・」とあり,広告対象物の「座標」は,「前記地図上において位置指定された」ものであると記載され,単なる地図上の広告対象物の座標とは異なる上に,入力された広告情報と関連づけてサーバー側で「逐一」記憶するものと記載されている。そして,前記1(2)で認定したとおり,甲1には,地図上で電話帳情報を検索できること,広告主が広告情報を端末から即時登録・更新することができることが記載されているものの,広告対象物の座標が地図上で位置指定されたものであることも,それを広告情報と関連づけて「逐一」記憶することについても何ら記載がない。したがって,原告の主張は理由がない。
4取消事由3(本件発明1と引用発明1との相違点1の容易想到性の判断の誤り)について(1)「広告依頼者の端末に対しては,・・・前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で・・とを備える」の意義本件発明1の特許請求の範囲の「広告依頼者の端末に対しては,・・・前記地図上において位置指定された広告対象物の座標を,入力された広告情報と関連づけて前記サーバー側で・・とを備える」とは,広告依頼者において,その端末において画面上に表示された地図上で位置を指定して,当該座標を広告対象物の位置として登録させることで,広告対象物の座標と入力された広告情報に関連性をもたせることを意味するものと解される。
(2) 引用発明1及び周知技術(甲3,5,6)とによる容易想到性の判断上記認定判断を前提に甲1及び甲3について検討すると,前記1(2)で認定したとおり,甲1には,利用者の端末から「広告情報」を登録・更新できることが記載されているが,それは,既に地図上の座標と電話帳情報とが関連付けられて登録された情報に対して登録したり変更したりすることが開示されているにすぎず,広告依頼者の端末から地図を利用して位置指定をすることにより,利用者において地図上の座標情報を入力された広告情報と関連づけるとの技術的思想の開示はない。
そして,甲3には,「1電話番号と,該電話番号の該当地区の地図等のデータ検索システムに関し,2電話番号,住所,持ち主,住所コード等のデータと,住所コードに対応した複数のイメージデータを対応させ,また,表示された地図の該当地番の場所にポイントを表示するための地番座標変換テーブルを備え,3電話番号あるいは住所コードを入力すると,該当する地図(区分地図)を表示し,かつ,地番に対応する地番ポイントを地図上に表示(第2図,14)するものであって,4指定された地区の地図を表示し,該地図画面上にライトペン等により所望の位置を指定してその座標を読み取らせるとともに,キーボードにて角番地,住所コードのデータを入力して,座標-角番地対応テーブルが作成され,続いて地番座標変換テーブルを自動作成する,地番座標変換テーブル作成システムを有する,電話番号-地図データ処理システム。」が記載されている(当事者間に争いがない)。
上記のとおり,甲3には,地図上の位置と地番とを対応づける地番変換システムを作成するシステムの記載はあるものの,広告依頼者の端末から地図を利用して位置指定することにより,座標を入力された広告情報と関連づけるとの技術的思想の開示はない。
甲5,6を検討しても,同様に,広告依頼者の端末から地図を利用して位置指定することにより,座標を入力された広告情報と関連づけるとの技術的思想の開示はない。
そうすると,引用発明1に周知技術(甲3,5,6)を組み合わせても,本件発明1のように広告情報の端末から地図を利用して位置指定することにより座標を入力された広告情報と関連づけるとの構成を想到することはできないというべきである。原告の主張は理由がない。
(3) 原告の主張に対し原告は,広告依頼者が広告情報を登録する以前から広告情報と座標情報が関連づけられているかは重要ではないにもかかわらず,その点を重視して,相違点1に係る構成が容易に想到できないとした審決の判断は誤りであると主張する。
しかし,原告の主張は失当である。
すなわち,本件発明1においては,広告依頼者自身が簡単な操作で広告対象物の広告情報を登録し,広告対象物に関連づけられた広告情報は,広告受給者も簡単な操作で直ちに読み出すことができる広告情報を得られることによって,広告記載依頼から広告頒布までのタイムラグをできるだけ短くするという作用効果を奏する。したがって,広告情報と座標情報の関連づけを広告依頼者がするか否かは,上記作用効果の有無に直接影響を及ぼす構成というべきである。原告の主張は,理由がない。
5取消事由4(周知技術の認定及びそれに基づく本件発明1と引用発明1との相違点1に関する容易想到性の判断の誤り)について原告は,端末から地図情報と属性情報を関連づけて第三者のサーバ(ホスト)に記憶させることは,甲12及び甲15から周知技術であり,これを否定する審決の周知技術の認定は誤りであると主張する。しかし,以下の理由から原告の主張は失当である。
(1)審決は,周知技術(甲11ないし16)の認定及び判断として,「甲第11ないし第16号証記載のものは,ホストコンピュータで記憶・管理される情報(地図情報や属性情報)を該ホストコンピュータに接続された端末で作成,修正(編集),削除するシステム,つまり情報を蓄積・管理しているセンタ(ホスト)のデータを,センタの管理下にある複数の端末によって,作成,照会,編集,登録できるようなシステムに関するものであって,そもそも広告依頼者が広告を出すために,広告依頼者の端末から第三者のホストに情報を登録するようなシステムではないから,広告依頼者が自分の端末から地図座標と広告情報を関連付けて第三者のサーバに記憶させることが周知技術であるとは認められず,上記相違点1に係る事項が甲第11号証ないし甲第16号証に記載されたものから容易に想到できたということはできない。」と判断している。要するに,審決は,「広告依頼者がその端末から,第三者のサーバに記憶させる」ことが周知技術であるとは認められないと判断したものであり,後記のとおり,その判断を誤りとする理由はない。なお,原告の指摘する周知技術は,審決が判断の対象とした周知技術と内容において異なるから,原告の主張は,その主張自体失当である。
(2) 甲12甲12には,「東京ガスの地下埋設物情報管理システム」に関して,以下の記載がある。
ア「コンピュータ・マッピング・システムは基本的に,?@入力,更新,検索の場合などに図形情報を表示するグラフィック・ディスプレイ,?A図形の座標点を入力するためのディジタイザ,?B登録された情報から作図するプロッタ,?C全体をコントロールするミニコンピュータから構成される。」(144頁〜145頁)イ「図11-1東京ガスのハードウェア構成図」には,東京ガスの20支社に設置された端末から中央の各コンピュータに接続するハードウェア構成が記載されている。(144頁)ウ「図面データおよびその属性データの登録・修正・削除を効率的に行うためのもので,特にデータのメンテナンスを容易にするため,任意の多角形(ポリゴン)を指定し,内部の情報を修正,削除し情報の更新を行う機能を持つ。」(147頁)以上によれば,甲12には,東京ガスの支社に設置された端末から中央のコンピュータに対して,地図上の図形を指定して図形に関連する属性のデータの入力を行うことが記載されているといえるが,「広告提供者の」端末から,サーバー側に対して広告対象物の座標を「広告情報」と関連づけて記憶するとの技術的思想の開示はない。
(3) 甲15甲15には,以下の記載がある。
ア「図16はその機運にのっとったコンピュータ・マッピングシステムのシステム構成図であり,センターシステムCSには,通信回線Lにより複数のユーザーシステムUSが接続されている。センターシステムCSは,たとえば基本地図データベースを入力し,維持管理するとともに設備データを預かり保管する機関に設置され,各ユーザーシステムUSは,電信電話,電力,ガス,水道,下水道,地下鉄など,道路を占有する設備を管理する各事業者に設置されている。」(段落【0003】)イ「センターシステムCSは,地図および設備に関して構築された各種の図形データベースを外部記憶装置CES上で維持管理するものであり,センターシステムCSのホストコンピュータCHCは,各ユーザーシステムUSの要求に応じて各種の図形データベースの検索処理を行う。」(段落【0004】)ウ「センターシステムCSが有する図形データベースは・・・大別すると,本センターシステムCSが設置された上記の機関により作成され,地形,道路,街区などの地図情報,ビルなどの構築物の占有位置,名称など地図に関する各種のデータをデータベース化した基本地図データベースDB1と,上記のような各事業者により個別に作成されて本機関に提供された設備の配設状況に関する各種データをデータベース化した設備地図データベースDB2とに分けられる。」(段落【0005】)エ「各事業者に設置されたユーザーシステムUSは,自己の管理下に属する設備の配設状況に関する各種データを地形や街区データと対応づけてデータベース化した図形データベース・・・を,自己の外部記憶装置UES上で個別に登録,更新,検索するなどして維持管理するものであるが,自己の管理下に属する設備を改修する場合など,他の事業者が管理している設備を破損しないようにするために,他の事業者が管理している設備の配設状況を調査しなければならない場合があるため,センターシステムCSに提供されている他の事業者の管理下にある設備の設備地図データベースDB2を検索する機能をも有している。」(段落【0006】)オ「また,各事業者の管理下にある設備の設備地図データベースDB2は,・・・各設備地図データベースDB2の背景となる地図としては,上記機関により作成された基本地図データベースDB1を共通に使用するよう要請されている。すなわち,基本地図データベースDB1を背景とした設備地図データベースDB2のみをセンターシステムCSに提供するよう要請されている。」(段落【0007】)カ「デジタイザ2は,たとえばガス管の位置データ(座標データ),ガス管の材質,太さなどの属性などの図形データの入力に使用され,このデジタイザ2でもメニューシートを利用して入力内容を指示する。ただし,メニューの選択などは,カーソルにより行う。」(段落【0026】)キ「パソコン4は,街,家屋などの名称など,座標データ以外の文字データを入力する場合などに使用される。・・」(段落【0028】)以上の記載によれば,甲15には,各事業者のパソコンから地図データベースを維持管理するセンターシステムに対して,街,家屋等の名称を入力する旨の記載があるといえるが,「広告提供者の」端末から,サーバー側に対して「広告対象物の」座標を,「広告情報」と関連づけて記憶するとの技術的思想の開示はない。
(4)したがって,原告が指摘する甲12及び甲15の内容を検討しても,いずれも,広告依頼者が自分の端末から地図座標と広告情報を関連付けてサーバに記憶させることができるとの技術的思想の開示はなく,上記審決の判断に誤りがあるとは認められない。原告の主張は理由がない。
6 取消事由5(本件発明1の顕著な作用効果の判断の誤り)について原告は,引用発明1においても,広告依頼者自身が自分の端末からサーバーに対して広告情報を即時登録でき,登録された広告情報は,地図と関連づけられ,一般利用者に案内されるため,広告配布までのタイムラグが短くなるという作用効果が生じると主張する。しかし,前記4で認定判断したとおり,引用発明1には,広告依頼者の端末から地図を利用して位置指定をすることにより,座標を入力された広告情報と関連づけるものということはできない。これに対し,本件発明1は,広告依頼者の端末から地図を利用して位置指定をすることにより,座標を入力された広告情報と関連づけるものであり,これにより,「広告記載依頼から実際の広告頒布までのタイムラグをできるだけ短く」(【発明の効果】)するという作用効果を奏するものである。原告の主張は理由がない。
7 取消事由6(本件発明1と引用発明2との一致点の認定の誤り)について引用発明2を主引用例とした場合においても,本件発明1を容易に想到することができないとした審決の判断に誤りはない。
甲2には,前記第2,3(2)記載の発明が記載されていることは当事者間に争いがない。甲2には,既に地図上の座標と店舗情報が関連づけられて登録された情報(図12)に対して,店舗データの一部である休業フラグを登録(付加)したり更新することができるシステムが示されているにすぎず,本件発明1のように地図上の広告対象物の座標を広告情報と関連づけてサーバー側で記憶するとの開示はなく,また,甲2における「座標」は,操作者において任意に位置指定されることの開示もない。原告の主張は失当である。
8 取消事由7(本件発明2ないし9に関する判断の誤り)に対し前記のとおり,本件発明1についての審決の判断に違法はないから,それを前提とする本件発明2ないし9に関する審決の判断に誤りはない。
9取消事由8(本件発明1ないし5と分割発明1,4ないし7の同一性の判断の誤り)に対し(1) 分割発明1に係る明細書(甲10)の記載分割発明1に係る明細書(甲10)には,以下の記載がある。
ア「サーバが,コンピュータネットワークを介して接続される広告依頼者の端末に対し,広告情報の入力を促す一方,前記サーバ側の記憶手段に予め記憶された地図情報に基づいて地図を表示させて,当該地図上において広告対象物の位置指定を促す段階と,前記広告依頼者の端末によって位置指定された広告対象物の座標を,当該端末によって入力された広告情報と関連づけて,前記サーバが前記記憶手段に記憶させる段階とによって登録した広告情報を,広告受給者に供給する広告情報の供給方法であって,前記サーバが,前記広告受給者の端末に対し,前記地図情報に基づく地図を表示させるとともに,当該地図上の地点であって,記憶された広告対象物の座標に相当する地点に,図像化した当該広告対象物を表示させて,所望する広告対象物の選択を促す段階と,前記広告受給者の端末に表示された地図上において,前記広告受給者によって指定された座標に一致する,または,最も近傍の座標の広告対象物に関連づけられた広告情報を,前記サーバが検索して読み出す段階と,前記サーバが,読み出した広告情報を,前記広告受給者の端末に対して出力する段階とを備えることを特徴とする広告情報の供給方法。」(【請求項1】)イ「・・例えば,当該画面には,先に登録動作で説明した「○○デパート」が,指定された位置にアイコン化されて表示されているが,端末操作者は,この「○○デパート」の詳細情報を欲する場合,同図に示すように「○○デパート」のアイコンにマウスカーソルを合わせてクリックする。かかる操作により制御手段11は,手順をステップSa5に進ませ,地図上でクリックされた座標を検出し,この座標に一致する,あるいは最も近傍の(x,y)情報を有する顧客ファイルを検索して見つけ,さらに,当該顧客ファイルの店舗情報を読み出して,端末101の表示部に表示させる。かかる動作により,例えば,クリックしたアイコンが「○○デパート」であれば,この顧客ファイルが検索されて,図14に示したように,先に広告依頼人が店舗情報入力画面により入力した店舗情報が表示される。」(段落【0030】)ウ「このように,広告受給者たる端末操作者は,表示部に表示された地図と,その地図上に重ねられたアイコンをクリックするのみにより,そのアイコン化された店舗の情報を得ることができる。一方,この店舗情報は,広告依頼者のみにより容易に修正可能である。したがって,かかる実施形態によれば,広告記載依頼から実際の広告頒布までのタイムラグを短くすることができ,しかも,広告情報の信頼性を保つこともできるのである。」(段落【0031】)(2) 判断ア上記のとおり,分割発明1は,さらに指定された座標に最も近傍の座標の広告対象物を用いる構成を備え,これによりおおよその座標指定で広告対象物を指定できるという効果を奏するものである。これに対し,本件発明1は,前記認定のとおり,広告受給者によって広告対象物が選択されることにより,広告記載依頼から実際の広告頒布までのタイムラグをできるだけ短くするという作用効果を奏するものであり,両者の技術的構成もその効果も異なるものというべきである。
イ原告は,甲28,29によれば,地図上の対象物を1つの座標で特定し,地図上で指定された座標の最も近傍の座標の対象物を検索してそれに関する情報を読み出すことは,周知技術にすぎないと主張する。
しかし,原告の上記主張は失当である。
すなわち,分割発明1は,選択される対象が広告対象物であるところ,この場合,広告依頼者がそれぞれ広告対象物の座標指定を行なう結果,複数の広告対象物が近接して配置されることになるため,分割発明1のように広告受給者が地図上で指定した座標の最も近傍の座標の対象物を検索する構成であれば,広告受給者が容易に広告対象物を選択できるのであり,これは分割発明1の構成から容易に予測し得る作用効果であるといえる。
これに対し,甲28,29の場合,選択される対象が土地や家屋等であり,複数の対象物が近接して配置されることは必ずしも想定されず(甲29では,付加情報としてガソリンスタンドなどの施設の概要,住所等を示す文字情報等が指定位置に近いものから順番に表示されるが,そもそも地図上に,アイコンなどで施設を表示する記載はないから,複数の選択対象が近接して配置される場合は必ずしも想定されない。),仮にそのような場合が想定されるとしても,その課題解決のために地図上で指定した座標の最も近傍の座標の対象物を検索するという手段をとったとの記載も示唆もない。原告の主張は理由がない。
したがって,本件発明1と分割発明1とは実質的に同一であるとはいえないとした審決の認定に誤りはなく,本件発明2ないし5と分割発明4ないし7についても同様に審決の認定に誤りはない。
10 結論以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がない。原告は,その他縷々主張するが,審決を取り消すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
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