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関連審決 無効2007-800017
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10304審決取消請求事件 判例 特許
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平成21行ケ10130審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  公知技術 /  実施可能要件 /  技術常識 /  明確性 /  発明の詳細な説明 /  発明が明確 /  発明が不明確 /  明細書の記載要件 /  優先権 /  国内優先権 /  参酌 /  技術的意義 /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  設定登録 /  請求の理由 /  請求の範囲 /  変更 /  釈明 /  要旨変更 /  新たな無効理由 /  申し立てない理由 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10237号 審決取消請求事件
原告KPE株式会社
訴訟代理人弁護 士高橋雄一郎
訴訟代理人弁理 士大林章
同 林佳輔
同 望月尚子
被告アルゼ株式会社
訴訟代理人弁護 士長沢幸男
訴訟復代理人弁護 士長沢美智子
同 伊奈優子
同 鈴木知幸
訴訟代理人弁理 士正林真之
同 青木和夫
同 八木澤史彦
同 佐藤武史
同 新山雄一
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/07/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2007−800017号事件について平成20年5月20日にした審決(平成20年6月6日付け更正決定後のもの)を取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求主文同旨第2当事者間に争いのない前提事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成15年9月22日,発明の名称を「スロットマシン」とする発明について,特許出願(特願2003-330208号。国内優先権主張平成15年7月15日日本国)をし,平成16年6月4日,特許庁から特許第3560605号(以下「本件特許」という。)として設定登録を受けた(甲18)。
被告は,平成19年1月31日,特許庁に対し,原告を被請求人として本件特許の請求項1ないし19の発明についての特許を無効とすることを求める審判(無効2007-800017号事件)を請求した(甲20)。
そこで,原告は,平成19年5月1日に訂正請求をし,更に同年12月12日付けで訂正請求(甲35。以下「本件訂正」という。)をし(本件訂正により,同年5月1日にした訂正請求は特許法134条の2第4項により取り下げられたものとみなされた。),平成20年2月1日付けで本件訂正請求書を補正する手続補正(甲40。以下「本件補正」という。)をした。
特許庁は,平成20年5月20日,本件補正は本件訂正の要旨の変更に当たらないとして本件補正を認めたが,本件訂正については,特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項の規定に適合しないとしてこれを認めないとともに,「特許第3560605号の請求項1〜19に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年5月30日に原告に送達された。
2本件訂正前の特許請求の範囲本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし19の記載は,次のとおりである(甲18。なお,各請求項の構成の分説は,無効審判請求人(被告)において整理したものに準じた。本件訂正前の特許請求の範囲の各請求項に記載された各発明を請求項の数に応じて「本件発明1」のようにいい,それらの発明を総称して「本件発明」という。)。
「【請求項1】A複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,B複数の図柄を可変表示可能な表示列を備えた第2表示手段と,Cプレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,Dプレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,E前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,F1前記メインリールの回転中に,前記メインリールの回転方向と同じ方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記メインリールの回転方向と逆の方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第2処理とを選択的に実行する第2制御手段と,を備えることを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】A複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,B複数の図柄を可変表示可能な表示列を備えた第2表示手段と,Cプレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,Dプレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,E前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,F2前記メインリールの回転中に,前記メインリールの回転方向と同じ方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記メインリールの回転方向と逆の方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第2処理とを選択的に実行し,前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する第2制御手段と,を備えることを特徴とするスロットマシン。
【請求項3】A複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,B複数の図柄を可変表示可能な表示列を備えた第2表示手段と,Cプレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,Dプレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,E前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,G前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段と,F3前記メインリールの回転中に,前記表示列の可変表示速度を前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する第2処理とを選択的に実行する第2制御手段と,を備えることを特徴とするスロットマシン。
【請求項4】b1前記第2表示手段の表示列はサブリールであり,H前記サブリールの回転速度を検知して第2速度情報を前記第2制御手段に出力する第2速度検出手段を備え,f1前記第2制御手段の前記第1処理は,前記第1速度情報を目標として,前記第2速度情報を前記第1速度情報に近付けるように前記第2表示手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のスロットマシン。
【請求項5】b2前記第2表示手段は,複数種類の図柄の画像を可変表示可能な画像表示装置で構成され,b3前記表示列は前記画像表示装置に画像として表示され,b4前記表示列の可変表示速度は,前記複数種類の図柄の画像が可変表示される速度であり,f2前記第2制御手段は,前記図柄の画像を示す図柄画像データを記憶する画像記憶手段と,前記画像表示装置に表示する画像を示す表示画像データを記憶する表示用記憶手段と,前記表示用記憶手段から前記表示画像データを読み出して前記画像表示装置へ供給する供給手段と,前記第1処理において,前記表示列の図柄の移動速度が前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度と一致するように,前記画像記憶手段から前記図柄画像データを読み出して前記表示用記憶手段へ書き込むことによって前記表示用記憶手段の記憶内容を更新する更新手段と,を備えることを特徴とする請求項3に記載のスロットマシン。
【請求項6】g1前記第1速度検出手段は,前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサと,前記第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて前記第1速度情報を生成する第1速度情報生成手段と,を備えることを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項7】前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサを備え,e1前記第1制御手段は,前記第1検出パルスを検知して検知信号を生成する検知信号生成手段と,前記検知信号を前記第2制御手段に出力する出力手段とを備え,f3前記第2制御手段は,前記検知信号を入力する入力手段と,前記検知信号を入力する時間間隔を計測する計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて前記第1速度情報を生成する第1速度情報生成手段とを備え,g2前記第1速度検出手段は,前記第1センサ,前記検知信号生成手段,前記出力手段,前記入力手段,前記計測手段,及び前記第1速度情報生成手段によって構成されることを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項8】g3前記第1速度情報生成手段は,前記計測手段によって計測された時間間隔の平均を演算して得られた平均値に基づいて前記第1速度情報を生成することを特徴とする請求項6又は7に記載のスロットマシン。
【請求項9】A複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,B’複数の図柄が表示されたサブリールを備えた第2表示手段と,Cプレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,Dプレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,E前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,J前記メインリールの回転位相を検知して第1位相情報を生成する第1位相検出手段と,K前記サブリールの回転位相を検知して第2位相情報を出力する第2位相検出手段と,F4前記メインリールの回転中に,前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理とを選択的に実行する第2制御手段と,を備えることを特徴とするスロットマシン。
【請求項10】e2前記第1制御手段は,前記開始指示信号を検知すると前記メインリールの回転開始を指示する開始情報を前記第2制御手段へ出力すると共に,前記停止指示信号を検知すると前記メインリールの停止操作を指示する停止操作情報を前記第2制御手段へ出力し,f4前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を実行し,前記停止操作情報の入力後に前記第2処理を実行することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項11】e2前記第1制御手段は,前記開始指示信号を検知すると前記メインリールの回転開始を指示する開始情報を前記第2制御手段へ出力すると共に,前記停止指示信号を検知すると前記メインリールの停止操作を指示する停止操作情報を前記第2制御手段へ出力し,f5前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を選択して実行し,前記停止操作情報の入力を契機に可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項12】e2前記第1制御手段は,前記開始指示信号を検知すると前記メインリールの回転開始を指示する開始情報を前記第2制御手段へ出力すると共に,前記停止指示信号を検知すると前記メインリールの停止操作を指示する停止操作情報を前記第2制御手段へ出力し,f6前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから所定時間経過するまでの期間は,所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,前記所定時間経過後,前記第1処理又は前記第2処理のうち他方の処理を実行することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項13】a1前記第1表示手段は前記メインリールを複数備え,b5前記第2表示手段は前記各メインリールのそれぞれに対応した表示列を備え,d1前記停止操作手段は前記各メインリール及び前記各表示列のそれぞれに対応して設けられ,前記停止操作信号を各々出力し,e3前記第1制御手段は,前記開始指示信号を検知すると前記メインリールの回転開始を指示する開始情報を前記第2制御手段へ出力すると共に,前記各停止操作信号を検知すると前記各メインリールの停止操作を各々指示する各停止操作情報を前記第2制御手段へ出力し,f7前記メインリールの回転中とは,複数のメインリールのうち少なくとも一つのメインリールが回転している期間であり,f8前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから最初の停止操作に伴う前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,前記各表示列に対して所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,最初の停止操作に伴う停止操作情報の入力を契機に,当該停止操作情報に対応する前記表示列の可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御すると共に,可変表示中の他の表示列のうち少なくとも一つの表示列に対して前記期間で選択されなかった他方の処理を実行することを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項14】a1前記第1表示手段は前記メインリールを複数備え,b5前記第2表示手段は前記各メインリールのそれぞれに対応した表示列を備え,d2前記停止操作手段は前記各メインリールのそれぞれに対応して設けられ,前記停止操作信号を各々出力し,e3前記第1制御手段は,前記開始指示信号を検知すると前記メインリールの回転開始を指示する開始情報を前記第2制御手段へ出力すると共に,前記各停止操作信号を検知すると前記各メインリールの停止操作を各々指示する各停止操作情報を前記第2制御手段へ出力し,f7前記メインリールの回転中とは,複数のメインリールのうち少なくとも一つのメインリールが回転している期間であり,f9前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから,少なくとも一の表示列に対して前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を選択して実行し,他の表示列に対しては前記少なくとも一の表示列とは異なる他方の処理を実行することを特徴とする請求項1乃至12うちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項15】a1前記第1表示手段は前記メインリールを複数備え,d3前記停止操作手段は,前記メインリールのそれぞれに対応して設けられており,L前記第1表示手段の停止態様が所定の態様である場合に,当該停止態様に応じた数量の遊技媒体を払い出す払出手段と,M前記複数の停止操作手段のうち最後に操作された前記停止操作手段から出力される前記停止指示信号が前記第1制御手段により検知されてから前記払出手段が払出を開始するまでの時間を演出調整時間として決定する決定手段と,N前記第2表示手段の可変表示が最終的に停止した後に前記遊技媒体が払い出されるように,前記演出調整時間に基づいて前記払出手段の払出開始時刻を調整する調整手段と,を備えることを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項16】f10前記第2制御手段は,前記演出調整時間に応じて前記第2表示手段の停止態様を制御することを特徴とする請求項15に記載のスロットマシン。
【請求項17】a1前記第1表示手段は前記メインリールを複数備え,d3前記停止操作手段は,前記メインリールのそれぞれに対応して設けられており,b6前記第2表示手段の前記表示列は,前記メインリールのそれぞれに対応して設けられ,b7前記各表示列の図柄の配置は,前記各メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている,ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のスロットマシン。
【請求項18】a2前記各メインリールに表示される複数種類の図柄は,異なる数字の図形の組,同一形状で色彩が異なる図形の組,角の形状が異なる図形の組,色彩が同一で形状が異なる図形の組,又は,所定形状の図形を異なる角度回転させた図形の組のうち,いずれかの図形の組によって構成されることを特徴とする請求項17に記載のスロットマシン。
【請求項19】a3前記各メインリールに表示される複数種類の図柄は,前記各表示列に表示される複数種類の図柄と全て異なることを特徴とする請求項17に記載のスロットマシン。」3本件訂正の内容本件訂正請求は,次の訂正事項を含むものである(甲35。なお,審決と同様,訂正請求書の明白な誤記を改めた上で表記した。)。
(1)請求項1に対して訂正事項ア-10:「選択的に実行する第2制御手段と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段と」に訂正する。
(2)請求項2に対して訂正事項イ-10:「選択的に実行し,前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する第2制御手段と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行し,前記第1処理において前記複数のメインリールの各々の回転を検知すると前記複数の表示列の各々の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する第2制御手段と」に訂正する。
(3)請求項3に対して訂正事項ウ-10:「選択的に実行する第2制御手段と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段と」に訂正する。
(4)請求項9に対して訂正事項オ-9:「前記メインリールの回転中に,前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理とを選択的に実行する第2制御手段と」を「前記複数のメインリールのうち少なくとも一つのメインリールが回転している期間に,前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す当該メインリールに対応する前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,当該メインリールに対応する前記サブリールの回転位相を当該メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理とを前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段と」に訂正する。
4審決の理由(1)別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,次のアないしカのとおりである。
ア本件発明1ないし19の各特許請求の範囲の記載における第2制御手段の「選択的に実行」について,「抽選手段の抽選結果に基づいて」との事項を付加する内容の本件訂正は,本件特許の願書に添付される明細書(以下,本件訂正前の明細書を「本件特許明細書」という。),特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)において,所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行すること,又は所定の当選フラグがセットされていない場合に第2処理を実行することが記載又は示唆されていたものとはいえないから,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとは認められない。
イ本件発明1ないし16については,特開2002-143395号公報(甲1。以下「甲1」という。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。),特開2002-793号公報(甲6。以下,引用文献はその書証番号に合わせて,単に「甲6」のようにいう。本件発明2及び5について)及び特開2003-180920号公報(甲11。本件発明15及び16について)並びに周知技術(本件発明3〜9,16について)に基づいて当業者が容易に発明をすることができた(なお,本件発明17ないし19については容易に発明をすることができたとはいえない,としている。)。
ウ本件発明1ないし9,11,13及び14については,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものではないから,経済産業省令で定めるところにより記載したものであるとは認められない。
エ本件発明1ないし19については,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,実施可能要件を欠く。
オ本件発明1ないし9,11,13,14,17ないし19については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件を欠く。
カ本件発明17ないし19については,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号明確性の要件を欠く。
(2)上記判断に際し,審決が認定した甲1発明の内容並びに本件発明1ないし16と甲1発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア甲1発明の内容「各々の外周面に特定絵柄を含む複数種類の絵柄を配列した3個のメインリール(左リール101,中リール102,右リール103)と,スロットマシンの各種情報を表示すると共に,その動きによってボーナスの内部当選への期待感を高める演出を行うために使用されるサブリールであって,メインリール101〜103の各々と対応付けられており,各サブリールには,メインリール101〜103に描かれた各絵柄の種類に対応する絵柄(同じ絵柄,似た絵柄,異なっているが関連する絵柄等予め定めた対応する絵柄)がそれぞれ1つずつ描かれているサブリール140〜142と,ゲームを開始させるためのスタートレバー125と,メインリール101〜103を停止させるためのストップボタン126〜128と,遊技者がスタートレバー125を操作すると,スタートレバーセンサー314がONになることで,スタート操作の受付を検知し,これにより,ゲームを開始し,取得した乱数を用いて,選択した演出抽選テーブルに基き,通常演出,特殊演出,連動演出のいずれを行うのかを抽選し,演出抽選テーブルAにおいては,通常演出は実行されず,内部抽選の結果および遊技状態に係わらず,連動演出またはいずれかの特殊演出が1/1の確率で(必ず)実行され,一方,演出抽選テーブルBが設定された場合,通常演出,連動演出,および,特殊演出のいずれかが,内部抽選の結果および遊技状態に応じて,約1/8〜1/10の確率で実行され,いずれの演出抽選テーブルであっても,演出内容毎に,演出抽選に当選する確率を異ならせることによって,実行された演出内容に応じてボーナス内部当選の期待度を異なる制御を行い,演出抽選により当選した演出内容に対応する演出コマンドをROM318から読み出し,出力インターフェース325を介して副制御部400へ出力し,絵柄を上から下へ移動するように,メインリールの回転を開始し,いずれかのストップボタンが押下されるまで停止ボタンセンサー313の出力のチェックを継続して行い,押下された場合は,副制御部400に対し,どのストップボタンが押下されたのかを示す停止コマンドを,出力インターフェース325を介して送信し,かつ,メインリール101〜103のうち,押下されたストップボタンに対応するメインリールの停止制御を行い,全てのメインリールが停止すると,リール絵柄表示窓104〜106に表示されている絵柄を判断し,入賞有効ライン上に表示されている絵柄組合せが何らかの入賞役の絵柄組合せと一致しているか否かの判定を行い,入賞していた時は,ボーナスゲームに入賞した場合はボーナスゲームの入賞時に払い出すべきメダル枚数を,また,その他の入賞役に入賞した場合は,その入賞役に対応するメダル枚数を,ホッパー制御部321を介してメダル払出口131からメダル受皿132へ払い出すか,もしくは,スロットマシン本体100内に貯留する主制御部300と,主制御部300から演出コマンドを受信したか否かを判断し,入力インターフェース416を介して演出コマンドを受信すると,入出力インターフェース415を介してモーター制御部414に駆動パルスを出力し,これによりモーター制御部414は,入力される駆動パルスに従って,各サブリール140〜142の絵柄が,上から下へ移動するように,一斉に回転駆動し,演出コマンドが,特殊演出のいずれかであるか否かを判断し,演出コマンドが特殊演出のいずれかであった場合は,演出コマンドで指定された特殊演出の種類に応じて,各サブリールの回転制御および停止制御を行い,演出コマンドが特殊演出のいずれでもなかった場合は,停止コマンドを受信すると,受信した停止コマンドに基づいて,停止操作されたメインリールに対応するサブリールの停止制御を行う副制御部400と,を備えるスロットマシン。」(審決書23頁2行〜24頁13行)。
イ本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点「一致点『複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,複数の図柄を可変表示可能な表示列を備えた第2表示手段と,プレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,プレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,前記メインリールの回転中に,前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する処理を選択的に実行する第2制御手段と,を備えるスロットマシン。』である点。
相違点1-1第2制御手段が,メインリールの回転中に選択的に実行する処理が,本件発明1では,『前記メインリールの回転方向と同じ方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記メインリールの回転方向と逆の方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第2処理と』の組み合わせであるのに対し,甲1発明では,『メインリールの回転方向と同じ方向に表示列を可変表示させるように第2表示手段を制御する第1処理』のみである点。」(審決書30頁下から2行〜31頁18行)。
ウ本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明2とを比較すると,本件発明2は本件発明1の第2制御手段に『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する』との事項を追加したものである。
そうすると,本件発明2を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,上記追加事項に係る以下の点である。
相違点2-1本件発明2では,『第2制御手段』が『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書32頁25行〜末行)。
エ本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点「そうすると,本件発明3と甲1発明の両者は,以下の点でそれぞれ,一致並びに相違するものと認められる。
一致点3『複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,複数の図柄を可変表示可能な表示列を備えた第2表示手段と,プレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,プレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,前記メインリールの回転中に,前記第2表示手段を制御する処理を選択的に実行する第2制御手段と,を備えるスロットマシン。』である点。
相違点3-1本件発明3では,『前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段』を備えるのに対し,甲1発明では,第1速度検出手段を備えるか否かが明らかでない点。
相違点3-2『第2制御手段』がメインリールの回転中に選択的に実行する処理が,本件発明3では,『前記表示列の可変表示速度を前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する第2処理と』の組み合わせであるのに対し,甲1発明では,そうではない点。」(審決書34頁5行〜29行)オ本件発明4と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明3と本件発明4とを比較すると,本件発明4は本件発明3に構成要件b1,H,f1を追加したものである。・・・そうすると,本件発明4を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件H,f1に係る以下の点である。
相違点4-1本件発明4では,『前記サブリールの回転速度を検知して第2速度情報を前記第2制御手段に出力する第2速度検出手段を備え』るのに対し,甲1発明では,第2速度検出手段を備えるか否かが明らかでなく,また,本件発明4では,『前記第2制御手段の前記第1処理は,前記第1速度情報を目標として,前記第2速度情報を前記第1速度情報に近付けるように前記第2表示手段を制御する』のに対し,甲1発明では,そのように制御されない点。」(審決書36頁7行〜26行)。
カ本件発明5と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明3と本件発明5とを比較すると,本件発明5は本件発明3に構成要件b2,b3,b4,f2を追加したものである。
そうすると,本件発明5を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,これら追加された構成要件b2,b3,b4,f2に係る以下の点である。
相違点5-1本件発明5では,「前記第2表示手段は,複数種類の図柄の画像を可変表示可能な画像表示装置で構成され,前記表示列は前記画像表示装置に画像として表示され,前記表示列の可変表示速度は,前記複数種類の図柄の画像が可変表示される速度であり,前記第2制御手段は,前記図柄の画像を示す図柄画像データを記憶する画像記憶手段と,前記画像表示装置に表示する画像を示す表示画像データを記憶する表示用記憶手段と,前記表示用記憶手段から前記表示画像データを読み出して前記画像表示装置へ供給する供給手段と,前記第1処理において,前記表示列の図柄の移動速度が前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度と一致するように,前記画像記憶手段から前記図柄画像データを読み出して前記表示用記憶手段へ書き込むことによって前記表示用記憶手段の記憶内容を更新する更新手段と,を備える」のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書37頁13行〜30行)。
キ本件発明6と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明3と本件発明6とを比較すると,本件発明6は本件発明3に構成要件g1を追加したものである。
そうすると,本件発明6を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,追加された構成要件g1に係る以下の点である。
相違点6-1本件発明6では,『前記第1速度検出手段は,前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサと,前記第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて前記第1速度情報を生成する第1速度情報生成手段と,を備える』のに対し,甲1発明では,第1速度手段を備えるか否かが明らかでない点。」(審決書39頁13行〜23行)。
ク本件発明7と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明3と本件発明7とを比較すると,本件発明7は本件発明3に構成要件I,e1,f3,g3を追加したものである。
そうすると,本件発明7を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,これら追加された構成要件I,e1,f3,g2に係る以下の点である。
相違点7-1本件発明7では,『前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサを備え,前記第1制御手段は,前記第1検出パルスを検知して検知信号を生成する検知信号生成手段と,前記検知信号を前記第2制御手段に出力する出力手段とを備え,前記第2制御手段は,前記検知信号を入力する入力手段と,前記検知信号を入力する時間間隔を計測する計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて前記第1速度情報を生成する第1速度情報生成手段とを備え,前記第1速度検出手段は,前記第1センサ,前記検知信号生成手段,前記出力手段,前記入力手段,前記計測手段,及び前記第1速度情報生成手段によって構成される』のに対し,甲1発明では,第1センサ,第1速度手段を備えるか否かが明らかでなく,第1制御手段,第2制御手段がそのように構成されているか否かが明らかでない点。」(審決書40頁12行〜29行)。
ケ本件発明8と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明6と本件発明8とを比較すると,本件発明8は本件発明6に構成要件g3を追加したものである。
そうすると,本件発明8を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,追加された構成要件g3に係る以下の点である。
相違点8-1本件発明8では,『前記第1速度情報生成手段は,前記計測手段によって計測された時間間隔の平均を演算して得られた平均値に基づいて前記第1速度情報を生成する』のに対し,甲1発明では,第1速度手段を備えるか否かが明らかでない点。」(審決書41頁下から9行〜末行)。
コ本件発明9と甲1発明との一致点及び相違点「そうすると,本件発明9と甲1発明の両者は,以下の点でそれぞれ,一致並びに相違するものと認められる。
一致点9『複数の図柄が表示されたメインリールを備えた第1表示手段と,複数の図柄が表示されたサブリールを備えた第2表示手段と,プレイヤーの開始操作に応じて開始指示信号を出力する開始操作手段と,プレイヤーの停止操作に応じて停止指示信号を出力する停止操作手段と,前記開始指示信号を検知して前記メインリールの回転を開始させるように前記第1表示手段を制御し,前記停止指示信号を検知して前記メインリールの回転を停止させるように前記第1表示手段を制御する第1制御手段と,前記メインリールの回転中に,前記第2表示手段を制御する処理を選択的に実行する第2制御手段と,を備えるスロットマシン。』である点。
相違点9-1本件発明9では,『前記メインリールの回転位相を検知して第1位相情報を生成する第1位相検出手段』『前記サブリールの回転位相を検知して第2位相情報を出力する第2位相検出手段』を備えるに対し,甲1発明では,これらを備えるか否かが明らかでない点。
相違点9-2『第2制御手段』がメインリールの回転中に選択的に実行する処理が,本件発明9では,『前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理と』の組み合わせであるに対し,甲1発明では,そうではない点。」(審決書43頁6行〜31行)。
サ本件発明10と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明10とを比較すると,本件発明10は本件発明1に構成要件e2,f4を追加したものである。・・・そうすると,本件発明10を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件f4に係る以下の点である。
相違点10-1本件発明10では,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を実行し,前記停止操作情報の入力後に前記第2処理を実行する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書45頁8行〜46頁12行)。
シ本件発明11と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明11とを比較すると,本件発明11は本件発明1に構成要件e2,f5を追加したものである。・・・そうすると,本件発明11を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件f5のうち以下の点である。
相違点11-1本件発明11では,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を選択して実行し,前記停止操作情報の入力を契機に可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書47頁下から15行〜3行)。
ス本件発明12と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明12とを比較すると,本件発明12は本件発明1に構成要件e2,f6を追加したものである。
ここで,甲1発明における追加された構成要件の有無について検討すると,甲1発明は,本件発明10において既に検討したとおり,構成要件e2に相当する構成を備えている。
そうすると,本件発明12を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件f6に係る以下の点である。
相違点12-1本件発明12では,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから所定時間経過するまでの期間は,所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,前記所定時間経過後,前記第1処理又は前記第2処理のうち他方の処理を実行する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書48頁下から8行〜49頁5行)。
セ本件発明13と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明13とを比較すると,本件発明13は本件発明1に構成要件a1,b5,d1,e3,f7,f8を追加したものである。・・・そうすると,本件発明13を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件f8に係る以下の点である。
相違点13-1本件発明13では,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから最初の停止操作に伴う前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,前記各表示列に対して所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,最初の停止操作に伴う停止操作情報の入力を契機に,当該停止操作情報に対応する前記表示列の可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御すると共に,可変表示中の他の表示列のうち少なくとも一つの表示列に対して前記期間で選択されなかった他方の処理を実行する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書49頁下から2行〜50頁末行)。
ソ本件発明14と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明14とを比較すると,本件発明14は本件発明1に構成要件a1,b5,d2,e3,f7,f9を追加したものである。
ここで,甲1発明における追加された構成要件の有無について検討すると,甲1発明は,本件発明13において既に検討したとおり,構成要件a1,b5,e3,f7に相当する構成を備えている。・・・そうすると,本件発明14を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件f9に係る以下の点である。
相違点14-1本件発明14では,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから,少なくとも一の表示列に対して前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を選択して実行し,他の表示列に対しては前記少なくとも一の表示列とは異なる他方の処理を実行する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書51頁下から2行〜52頁18行)タ本件発明15と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明1と本件発明15とを比較すると,本件発明15は本件発明1に構成要件a1,d3,L,M,Nを追加したものである。・・・そうすると,本件発明15を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,構成要件M,Nに係る以下の点である。
相違点15-1本件発明15では,『前記複数の停止操作手段のうち最後に操作された前記停止操作手段から出力される前記停止指示信号が前記第1制御手段により検知されてから前記払出手段が払出を開始するまでの時間を演出調整時間として決定する決定手段と,前記第2表示手段の可変表示が最終的に停止した後に前記遊技媒体が払い出されるように,前記演出調整時間に基づいて前記払出手段の払出開始時刻を調整する調整手段と,を備える』のに対し,甲1発明では,これらの手段を備えていない点。」(審決書53頁9行〜54頁3行)。
チ本件発明16と甲1発明との一致点及び相違点「本件発明15と本件発明16とを比較すると,本件発明16は本件発明15に構成要件f10を追加したものである。
そうすると,本件発明16を甲1発明と対比した際,新たに検討すべき相違点は,追加された構成要件f10に係る以下の点である。
相違点16-1本件発明16では,『前記第2制御手段は,前記演出調整時間に応じて前記第2表示手段の停止態様を制御する』のに対し,甲1発明では,そのように構成されていない点。」(審決書54頁下から4行〜55頁4行)。
第3当事者の主張1審決の取消事由に係る原告の主張審決には,以下のとおりの誤りがある。
(1)審判手続の違背(取消事由1)(2)訂正の有効性に対する判断の誤り(取消事由2)(3)本件発明1と甲1発明との相違点に係る認定の誤り(取消事由3)(4)本件発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由4)(5)本件発明2の進歩性に係る判断の誤り(取消事由5)(6)本件発明3の進歩性に係る判断の誤り(取消事由6)(7)本件発明4の進歩性に係る判断の誤り(取消事由7)(8)本件発明5の進歩性に係る判断の誤り(取消事由8)(9)本件発明6の進歩性に係る判断の誤り(取消事由9)(10)本件発明7の進歩性に係る判断の誤り(取消事由10)(11)本件発明8の進歩性に係る判断の誤り(取消事由11)(12)本件発明9と甲1発明との相違点に係る認定の誤り(取消事由12)(13)本件発明9の進歩性に係る判断の誤り(取消事由13)(14)本件発明10の進歩性に係る判断の誤り(取消事由14)(15)本件発明11の進歩性に係る判断の誤り(取消事由15)(16)本件発明12の進歩性に係る判断の誤り(取消事由16)(17)本件発明13の進歩性に係る判断の誤り(取消事由17)(18)本件発明14の進歩性に係る判断の誤り(取消事由18)(19)本件発明15の進歩性に係る判断の誤り(取消事由19)(20)本件発明16の進歩性に係る判断の誤り(取消事由20)(21)委任省令要件違反に係る判断の誤り(取消事由21)(22)実施可能要件違反に係る判断の誤り(取消事由22)(23)サポート要件違反に係る判断の誤り(取消事由23)(24)特許請求の範囲の記載要件違反に係る判断の誤り(取消事由24)(1)ないし(24)の審決の誤りの詳細は,以下のとおりである。
(1)取消事由1(審判手続の違背)審判においては,当事者等が申し立てない理由についても,審理をする場合には,無効理由通知を行い,被請求人(原告)に対して訂正請求の機会を付与しなければならない旨規定されている(特許法153条,特許法134条の2第1項)。
請求人(被告)は,審判請求書(甲20,7頁5行〜9頁26行)において,次の表のとおりの証拠に基づいて,対応する請求項に係る特許発明進歩性が欠如する旨の主張を行い,これら特許を無効とするように求めた。
その後の口頭審理等の手続においても,請求人(被告)は,引用例の組合せに係る無効理由についての主張の補充をしていない。
被告の主張する根拠審決の無効根拠請求項1甲1甲1請求項2甲1甲1及び6請求項3甲1及び8甲1及び周知技術請求項4甲1及び8甲1及び周知技術請求項5甲1,6及び8甲1,6及び周知技術請求項6甲1,7及び8甲1及び周知技術請求項7甲1,7及び8甲1及び周知技術請求項8甲1,7及び8甲1及び周知技術請求項9甲1,8及び9甲1及び周知技術請求項10甲1,6,7,8及び9甲1請求項11甲1,6,7,8及び9甲1請求項12甲1,6,7,8及び9甲1請求項13甲1,6,7,8及び9甲1請求項14甲1,6,7,8及び9甲1請求項15甲1,6,7,8及び9甲1及び11請求項16甲1,6,7,8及び9甲1,11及び周知技術請求項17甲1,2及び8(進歩性肯定)請求項18甲1,2,3,4及び8(進歩性肯定)請求項19甲1,2及び8(進歩性肯定)しかし,審決においては,上記表の右欄のとおりの無効理由を根拠として,本件発明の進歩性を否定した。下線部分は請求人(被告)が主張しなかった無効理由である。すなわち,?@無効審判請求人である被告が主張しない甲11の組合せに係る無効理由を根拠とした審決(請求項15及び16),?A被告が主張しない周知技術を追加した無効理由を根拠とした審決(請求項3〜9,16)及び,?B被告が甲1単独及び甲6単独に係る無効理由を選択的に主張したにもかかわらず,甲1を主引用例とし,これに甲6を組み合わせた無効理由を根拠とした審決(請求項2)が存在する。
なお,審判請求書末尾に甲1ないし甲17が摘示されているからといって,「特許を無効にする根拠となる事実」は特定されず,「証拠」が列挙されているにすぎないのであるから,無効審判請求の理由が特定されたものとはいえない。
よって,審判には手続違背があり,審決のうち,本件発明2ないし9,15及び16に係る特許を無効とする部分は取り消されるべきである。
(2)取消事由2(訂正の有効性に対する判断の誤り)審決は,「各請求項に係る第1処理と第2処理とを抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2手段は,特許明細書等に記載した事項であるとも,これらから自明な事項であるともいえない。」(審決書8頁下から4行〜末行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア審決は,段落【0216】の記載は「所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を実行」することのみを示唆し,「所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行」することは示唆されておらず,したがって,「第1処理と,・・・第2処理と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」とする本件訂正は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でされたものとはいえない旨判断した(審決書7頁末行〜8頁2行,8頁8行〜15行,8頁下から11行,10行)。
しかし,審決の判断は,以下のとおり,誤りである。
まず,本件特許明細書(甲18)の段落【0216】には「第1処理を選択するか第2処理を選択するかは,サブCPU55が制御プログラムに従って決定する。例えば,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選のフラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。」とあり,「当選のフラグ」は「抽選手段の抽選結果」に対応し,「場合に・・・してもよい。」は「基づいて」に対応するものと理解されるから,本件訂正のうち「前記抽選手段の抽選結果に基づいて」との部分は明確に本件特許明細書に記載されているといえる。
そして,段落【0216】には,「第1処理を選択するか第2処理を選択するかは,サブCPU55が制御プログラムに従って決定する。」とされ,その一例として,「所定の当選のフラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。」とされている。同記載は,第1処理と第2処理のうちいずれを選択すべきかの契機の一例として「所定の当選のフラグがセットされている場合」が例示されているにすぎず,第2処理を実行することのみが記載されているわけでもない。
したがって,段落【0216】には,「第1処理と,・・・第2処理と」「選択的に実行する第2制御手段」が記載されているのみならず,この選択的な実行を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて」行うことも明確に記載されている。
この点,審決は,「所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行」することまで明細書中に明示的に記載されていなければならないとしている。しかし,「第1処理と,・・・第2処理と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」という特許請求の範囲の文言に対応する明細書上の記載としては,第1処理と第2処理のうちいずれを選択すべきかの契機の一例として「所定の当選のフラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。」(段落【0216】)との記載で十分であり,審決の前提は妥当を欠く。
イ仮に,「所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行」することが本件特許明細書等に記載されていなければ,「第1処理と,・・・第2処理と」を「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」が記載されているとはいえないとの考え方を前提にするとしても,「所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行」することは,本件特許明細書の記載から自明な事項である。すなわち,段落【0216】には「第1処理を選択するか第2処理を選択するかは,サブCPU55が制御プログラムに従って決定する。例えば,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選のフラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。」とあり,「所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を実行」することは例示にすぎないことが明確に表現されている。
さらに,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」に係る各種の態様も,次のとおり本件特許明細書等に記載されている。
段落【0216】及び【図31】(A)(別紙本件特許明細書【図31】)には,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的」に第1処理↑第2処理へと切り換える例と,第2処理↑第2処理を継続する例との,2つの例が明示されている。
加えて,本件特許明細書の段落【0148】ないし【0155】には,第1処理↑第2処理又は第1処理↑第1処理(継続)の2つのケースのあることが明示されている。
すなわち,【図21】のステップS131において,第2処理に切り換えるか,第1処理をそのまま継続するか(段落【0155】には「第2処理用の可変表示パターンとしては,第2処理を実行しないことも含めて,複数の可変表示パターンが用意されている。」と記載されている。)が選択される。
そして,このような選択(第1処理↑第2処理又は第1処理↑第1処理(継続))は「停止情報」に基づいて行うが,この「停止情報」は「例えば,・・・上述した停止図柄番号が該当する」(甲18,段落【0155】)。そして,この「停止図柄番号」は以下のとおり,内部抽選データISDに基づいて選択される。
段落【0124】には,「CPU31は,内部抽選データISDに基づいて,リール停止データ群の選択を実行する(ステップS20)。」(甲18,段落【0124】)と記載されている。
段落【0129】には「メインCPU31は,ステップS20において選択された停止データテーブル群の中から,内部抽選データISD及び停止ボタン番号等に基づいて,使用可能な停止データテーブル群を限定し(ステップS74),停止操作順別の停止データテーブルの組合せを特定する(ステップS75)。この後,メインCPU31は,第1停止に使用する停止データテーブルの組合せを特定し(ステップS76),さらに,複数の組合せがある場合には,抽選等により第1停止に使用する停止テーブルを決定する(ステップS77)。」(甲18,段落【0129 )と記載】されている。
さらに,段落【0130】には「メインCPU31は,決定した停止テーブルを参照して進みコマ数を取得し(ステップS78),押下図柄番号と進みコマ数から,停止図柄番号を算出する(ステップS79)。停止図柄番号は,当該メインリールが停止した状態における図柄番号である。この後,メインCPU31は,ボタン番号及び停止図柄番号をサブ基板30Bへ送信し(ステップS80),停止図柄番号に基づいて停止操作があったメインリールを停止させる(ステップS81)。」(甲18,段落【0130】)と記載されている。
これらの記載をまとめると,内部抽選データISD及び停止ボタン番号等によって停止テーブル群が限定され,このなかから抽選等によって停止テーブルが決定され,停止テーブルを参照して進みコマ数を取得し,この進みコマ数と押下図柄番号から停止図柄番号が算出される。
内部抽選データISD→↓停止ボタン番号等停止テーブル群(限定)→↓抽選停止テーブル(決定)→進みコマ数(取得)→↓押下図柄番号停止図柄番号(算出)→第2処理用の可変表示パターン(第2処理を実行しないことを含めて)の選択このように,「第2処理を実行しないことも含め」た「複数の可変表示パターン」のうちの1つの選択は,内部抽選情報に基づいて行う。
加えて,本件特許明細書等の段落【0220】及び【図31】(C)には,「所定の規則に従って」,第1処理↑第2処理又は第2処理↑第1処理の2つのケースを選択することが明示されている。
そして,その「所定の規則」は,段落【0216】に明示されており,「サブCPU55が制御プログラムに従って決定する」ものであり,その例は「メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選のフラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。」というものである。つまり,内部抽選情報に基づいて,第1処理↑第2処理又は第2処理↑第1処理の2つのケースを選択することが記載されている。
以上より,本件特許明細書等には,内部抽選情報に基づく選択として,段落【0216】及び【図31】(A)には第1処理↑第2処理第2処理↑第2処理が記載され,段落【0124】ないし【0155】には第1処理↑第2処理第1処理↑第1処理が記載され,段落【0220】及び【図31】(C)には第1処理↑第2処理第2処理↑第1処理が記載されていることになる。
したがって,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」の4つの態様(第1処理↑第2処理,第2処理↑第2処理,第2処理↑第1処理及び第1処理↑第1処理)の全てが本件特許明細書等に記載されていることになる。
よって,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2制御手段」という構成要件をこれら実施例や変形例に基づいて抽出することは可能である。
ウさらに,審決は,?@抽選手段の抽選結果はハズレが多く役に当選することが希少であることは技術常識から自明であり,?A第2処理は希少な演出態様なので役に当選するときに対応させるべきであるという推論の下,段落【0216】には「所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行することを暗示していない」(審決書8頁16行〜30行参照)と判断した。
しかし,以下のとおり,審決は,技術常識について誤った認定をした。
まず,?@抽選手段の抽選結果はハズレが多く,役に当選することが希少であることは技術常識から自明であるとの審決の上記判断は,誤りである。ハズレが少なく,役に当選することが多いパチスロ機は,現実に製造販売されている。また,原告PS制作部コンテンツグループ所属のWの陳述書によれば,平成12年より主にパチスロ機の制作に携わってきた(平成15年7月時点で,パチスロ機において何かしらの当選フラグがセットされていることが希少ではない仕様は,当然のごとく採用されていた(甲43の1,4頁下から4行〜下から2行)。
また,?A第2処理は希少な演出態様なので役に当選するときに対応させるべきとの審決の上記推論にも,誤りがあり,サブリールの正転/反転のどちらを役に対応させるかは一義的なものではない。
エ以上のとおり,本件訂正は許されないとした審決の判断は,誤りがある。
(3)取消事由3(本件発明1と甲1発明との相違点に係る認定の誤り)審決は,本件発明1にいう「選択的に実行」を「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出を実行するか否かを選択する趣旨」であると解釈しつつ,甲1には「選択的に実行」することが開示されていると認定した(審決書30頁18行〜下から5行参照)。
しかし,審決の上記認定は,次のとおり誤りである。
ア本件発明1(請求項1)記載の「選択的に実行」とは,第1処理(正転)と第2処理(反転)のいずれも可能であることを前提として,そのどちらかを選択して実行すること,すなわち第1処理(正転)を第2処理(反転)に切り換え,もしくは,第2処理(反転)を第1処理(正転)に切り換えることを意味する(サブリールが第1処理(正転)だけしかできないパチスロ機や第2処理(反転)だけしかできないパチスロ機は排除される。)。段落【0215】〜【0218】及び対応する【図31】(A)の各記載もこのような解釈と整合する。
したがって,本件発明1(請求項1)記載の「選択的に実行」を「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出を実行するか否かを選択する趣旨」との審決の理解は,誤りである。
イそして,本件発明1においては,上記の「選択的に実行」が,「メインリールの回転中」にされなければならないことを要件としている。つまり,メインリール回転中に,サブリールについて第1処理(正転)↑第2処理(反転)の切り換えや,第2処理(反転)↑第1処理(正転)の切り換えができなければならず,メインリール回転中に回転方向が切り換わらないようなパチスロ機,例えば,メインリール回転中にサブリールの回転方向が切り換わらないパチスロ機は排除される。
これに対して,甲1には,上記の構成の記載はない。すなわち,甲1記載のパチスロ機は,メインリールが回転中にサブリールの回転方向が切り換わることはない。甲1の段落【0082】には「各サブリールの回転方向は,ある時は正転,またある時は逆転させるようにしてもよいし,各サブリール間で回転方向を各々異ならせてもよい。また,サブリールの回転中に回転速度を変更する(例えば,一定周期またはランダムに回転速度を速くしたり遅くしたりする)ようにしてもよい。さらに,サブリールを毎ゲーム,必ず回転するようにしてもよいし,予め定められた確率に応じて回転させるようにしてもよい。」と記載され,サブリールがはじめから逆回転する点は開示されているものの,メインリールが回転中にサブリールの回転方向が切り換わるという本件発明1の「選択的に実行」が,「メインリールの回転中」にされるという構成の記載又は開示がされていない。
ウそうすると,本件発明1と甲1発明の正しい相違点は,以下のとおりとなる(原告主張に係る部分に下線を付した。)。
相違点1-1第2制御手段が,本件発明1では,「前記メインリールの回転中に,前記メインリールの回転方向と同じ方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記メインリールの回転方向と逆の方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第2処理とを選択的に実行する」ものであるのに対し,甲1発明では,「メインリールの回転方向と同じ方向に表示列を可変表示させるように第2表示手段を制御する第1処理」のみを行うである点。
エよって,本件発明1と甲1発明との相違点の認定を誤った審決は,本件発明1に係る特許を無効とする部分について取り消されるべきである。
(4)取消事由4(本件発明1の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「サブリールによる演出を,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項である。」(審決書31頁25行〜27行)と判断し,「甲1発明において,サブリールの演出として,メインリールの回転中に,メインリールの回転方向と逆の方向にサブリールを可変表示させることを追加すること,すなわち,『前記メインリールの回転方向と同じ方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記メインリールの回転方向と逆の方向に前記表示列を可変表示させるように前記第2表示手段を制御する第2処理と』の組み合わせを実行させることは,当業者にとって想到容易である。」(審決書32頁7行〜13行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア甲1発明においては,サブリールを始めから正回転,逆回転させる各例が開示されてはいるが,メインリールの回転中にサブリールの回転方向が切り換わることは記載されていない。
したがって,「様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出」にしたとしても,せいぜい,各サブリール間で回転方向を各々異ならせるにすぎず,メインリールの回転中にサブリールの回転方向が切り換わることまで,「当業者が適宜なし得る設計事項である」ということはできない。
イ甲1発明においては,メインリールの回転中にサブリールの回転方向は切り換わらない。一方で,本件発明1は,メインリールの回転中にサブリールの回転方向を切り換える(選択実行)することができる。
ここで,本件発明が適用されるスロットマシンはメインリールの回転停止により入賞役が確定する。そしてメインリールの回転が停止し,結果入賞している場合に速やかにコインが払い出される。なお,各役はメインリールの回転開始前に既にその抽選が行われ,当選/非当選は確定しているが,役には遊技者のリール停止操作のタイミングに基づき入賞/非入賞が決まる役と,遊技者のリール停止操作のタイミングによらず入賞する役とがあり,役に当選していながら非入賞なった場合,特定の役以外の役はそのゲームの終了(メインリールの回転停止まで)と共にその当選状態は解消される。
そして,このようなスロットマシンでは,例えば遊技者のすべてのメインリールに対する停止操作が素早く行われて早期にメインリールが停止するとコインが払い出されてしまい,サブリールの演出を続けても今回のゲームによって当選した役を報知する効果は薄れてしまうと考えられていたため,甲1を始めとする当時のスロットマシンではサブリールによる演出は当選状態が次のゲーム以降も維持される役を報知するものであった。そのため,当業者であれば,メインリールの回転中にサブリールの演出内容を大きく変化させることまで考えを至らすことは極めて困難である。
しかし,遊技者の停止操作は個人差があり,場合によってはすべてのメインリールが停止するまでに十分な時間がある場合もある。本件発明1は,従前の考え方(メインリールの回転中にサブリールの演出内容を大きく変化させることはないという考え方)に反して,停止操作に十分な時間を費やす遊技者に対してサブリールの演出(動作)により多くの情報を提供することができるものである。本件発明1は,メインリールの回転中に,回転が一瞬停止する「反転」をサブリールにさせることにより,他の演出にはない明確なメッセージを遊技者に与え,例えばそのゲームで役に当選している否かを予想させ,メインリールの停止操作のタイミングを調整することができるようにしたのである。これにより,サブリールの演出の趣向性が質的に向上し,遊技の意外性が生じるのみならず,多くの遊技者の利便性が著しく向上し,例えばメインリールの図柄構成を調整すればサブリールの演出に遊技者を注視させることができ,ゲーム性を著しく広げることができるという作用効果を生じる。
ウ以上のとおり,本件発明1と甲1発明との相違点は「当業者が適宜なし得る設計事項」でもないし,本件発明1には甲1発明にはないところの演出の趣向性を質的に向上させることができるという効果も存在する。よって,本件発明1の進歩性が欠如するとの審決の判断は誤りである。
(5)取消事由5(本件発明2の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明の副制御部400を,『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書33頁13行〜16行),「したがって,本件発明2は,甲1発明及び甲6に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」(審決書33頁22行,23行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア審決が引用する甲6のパチスロ機は,画像表示部178に例えば【図25】のような図柄が表示され,その動きを見ると,上下左右に自在に動く(例えば,メインリールの図柄が下に移動しても,画像表示部178の特定の図柄は,例えば横に移動する。)。つまり,メインリールとサブリールとを同じ方向等に回転させるという,いわば「同期制御」の概念が存在しない。したがって,甲1と甲6を組み合わせることはそもそも困難であるし,組み合わせても「前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する」という構成を得ることはできない。
イさらに,甲1発明と本件発明1とを比較すれば,取消事由3及び4で論じたとおり,メインリールの回転中に正転と反転とを「選択的に実行」するという構成について相違があり,この違いは本件発明1の進歩性を基礎付ける重要なものである。そして,本件発明2も同様に「選択的に実行」するという構成を有しており,本件発明1が進歩性を有するのと同様の理由で本件発明2も進歩性を有する。
ウよって,本件発明2の進歩性に係る判断を誤った審決は,本件発明2に係る特許を無効とする部分について取り消されるべきである。
(6)取消事由6(本件発明3の進歩性に係る判断の誤り)審決は,職権で引用した特開2001-353254号公報(甲19)には位置センサを有する回転リールが開示されていることを前提として,「速度は時刻の変化に対する位置の変化を示す指数であるから,随時,位置を特定することは,実質的に速度の特定と等価である。したがって,甲1発明に当該周知技術を付加し,相違点3-1に係る構成,すなわち,『前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段』を備える構成となすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書35頁5行〜10行)と判断し,「サブリールの演出を複雑にするために回転速度を変更する際に,メインリールの回転速度に近づけるような制御や,メインリールの回転速度と無関係な制御を実行することには,格別の技術的意義は認められない。」(審決書35頁19行〜22行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア特開2001-353254号(甲19)記載の回転リールは位置センサによってリールの位置を特定する。しかし,随時,位置を特定することは実質的に速度の特定と等価ではない。速度は位置の微分であるから速度を特定するためには,位置情報に微分演算を施す必要がある。そして,速度情報を得て,初めて,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度と近づけ又はこれと無関係にするとの処理が可能になる。
「位置センサによってリールの位置を特定する」ことが公知であったとしても,それから直ちにメインリールの「回転速度を検知」するとの技術内容を導き出すことはできず,サブリールの回転速度を検知されたメインリールの回転速度に近づけるか無関係に制御するかを選択的に実行するという本件特許発明の構成が得られるわけではない。
したがって,「『前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段』を備える構成となすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書35頁8行〜10行)との審決の判断は誤りである。
なお,回転速度又は移動速度とは,被告主張のように1秒間に何センチメートル移動するかという意味ではなく,1秒間に何コマ進むのかという意味であるから,前者の意味であるとの前提に立って原告の主張を論難する被告の反論は理由がない。
イ甲1には,サブリールの回転を速めたり遅くしたりする例は記載されているが,サブリールの回転制御形態として,検知したメインリールの回転速度に近づける例は記載されていない。
そもそも,甲1記載のパチスロ機は,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度に一致させる前提に欠ける。すなわち,甲1記載のパチスロ機のサブリールの各列には6つの絵柄が描かれているが(【図2】参照),メインリールには21の図柄が描かれている(甲1の【0023】参照)。したがって,メインリールが一回転する間にサブリールは3回転半する。つまり,メインリールとサブリールの各図柄を対応させようとすれば,メインリールとサブリールの回転速度は本質的に異ならざるを得ない(後者の回転速度を前者の回転速度の3.5倍にする必要がある。)。
よって,甲1発明においては,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度に一致させる前提に欠け,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度に近づけようとする第1の処理が存在しない。
これに対し,本件発明3においては,「前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段」という構成を有することによって,サブリールの回転とメインリールの回転とを同期させることが可能になり,これとの対比で,「前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する」際の意外性が高まるのみならず,演出の趣向性を質的に向上させることができる(サブリールの回転とメインリールの回転とを同期させるという状態と,無関係に制御するという状態の対比・アンバランスが顕著である。)との効果を生じさせる。
ウ以上のとおり,本件発明3と甲1発明との相違点は「当業者にとって想到容易」でもないし,本件発明3は甲1発明にはないところの演出の趣向性を質的に向上させることができるという効果も存在するから,本件発明3の進歩性が欠如するとの審決の判断は誤りである。
(7)取消事由7(本件発明4の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「リールの制御のために,制御されるリールに速度検出手段を備えるようになすことは,(2-3-2)で相違点3-1について述べたとおり,サブリールの可変表示速度をメインリールの回転速度に近づけるように制御することは,前記(2-3-2)で相違点3-2について述べたとおり,それぞれ,当業者にとって想到容易である。したがって,甲1発明において,制御されるサブリールに速度検出手段を備え,その速度検出手段からの情報に基づいてサブリールの回転制御を行うこと,すなわち,相違点4-1に係る本件発明4の構成(構成要件H,f1)を甲1発明に採用することは,当業者が容易に想到することができたものである。」(審決書36頁下から8行〜37頁1行)として,本件発明4は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたと判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア取消事由6で主張したとおり,「リールの制御のために,制御されるリールに速度検出手段を備えるようになすこと」及び「サブリールの可変表示速度をメインリールの回転速度に近づけるように制御すること」は,いずれも当業者にとって想到容易ではない。
また,本件発明4においては,さらに,「前記サブリールの回転速度を検知して第2速度情報を前記第2制御手段に出力する第2速度検出手段を備え,」「前記第2制御手段の前記第1処理は,前記第1速度情報を目標として,前記第2速度情報を前記第1速度情報に近付けるように前記第2表示手段を制御する」という,いわゆる負帰還制御(ネガティブフィードバック制御)をするものであり,このような第1速度情報を目的とした負帰還制御は,メインリールとサブリールの双方が各々対応するパチスロ機が一般的ではなく,被告(請求人)が証拠として挙げた文献や職権で引用した文献のいずれにも記載されていない以上,当業者にとって想到容易ではない。
イさらに,本件発明4においては,上述した負帰還制御がされることから,メインリールとサブリールの速度を一致させることが可能となる。仮に,メインリールの回転速度が変動したとしても,サブリールの回転速度もこれに追随する。この結果,メインリールとサブリールを正確に同期させることが可能となる。
(8)取消事由8(本件発明5の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明において,『前記表示列の可変表示速度を前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する第2処理と』を選択的に実行させることは,前記(2-3-2)で検討したように当業者にとって想到容易であり,」(審決書38頁下から9行〜5行)とし,「したがって,本件発明5は,甲1発明,甲6に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」(審決書39頁6行,7行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア取消事由6で主張したとおり,「前記表示列の可変表示速度を前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する第2処理と」を選択的に実行させることは,当業者にとって容易想到ではない。
イさらに,本件発明5においては,画像表示装置を用いて可変表示装置を構成するので,機械部分が存在せず,メインリールの回転とサブリールの回転とを厳密に同期させることが可能となる。
(9)取消事由9(本件発明6の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「第1速度手段を備えることは,前記(2-3-2)で述べたとおり,当業者にとって想到容易であり,前記(2-3-2)で指摘した『位置センサ』は,『前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサ』に相当する。ここで,速度が,移動した距離をその移動に要した時間間隔で除算することによって求められることは,周知である。したがって,甲1発明において速度を求めるならば,第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段とを備えるようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書39頁下から9行〜末行)とし,「したがって,本件発明6は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」(審決書40頁6行,7行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,誤りである。すなわち,取消事由6で主張したとおり,「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではない。したがって,実施態様として,「第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段」を具備することも当業者にとって想到容易ではない。
(10)取消事由10(本件発明7の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「第1速度手段を備えることは,前記(2-3-2)で述べたとおり,当業者にとって想到容易であり,前記(2-3-2)で指摘した『位置センサ』は,『前記メインリールの基準点が所定位置を通過するタイミングで第1検出パルスを発生する第1センサ』に相当する。そして,甲1発明において速度を求めるならば,第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段とを備えるようになすことは,当業者にとって容易に想起できることは,前記(2-6-2)で述べたとおりである。」(審決書40頁下から3行〜41頁5行)とし,「したがって,本件発明7は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」(審決書41頁20行,21行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,誤りである。すなわち,取消事由6で主張したとおり,「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではないから,実施態様として,「第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段」を具備することも当業者にとって想到容易ではない。
(11)取消事由11(本件発明8の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「第1速度手段を備えることは,前記(2-3-2)で述べたとおり,当業者にとって想到容易である。また,計測値を利用する際に,計測を複数回行い,その平均値を利用することは,周知技術である。したがって,甲1発明に相違点8-1に係る構成を採用することは,当業者にとって想到容易である。」(審決書42頁3行〜7行)とし,「したがって,本件発明8は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた」(審決書42頁13行,14行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,誤りである。すなわち,取消事由6で主張したとおり,「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではないから,第1速度手段が「計測を複数回行い,その平均値を利用すること」も当業者にとって想到容易ではない。
また,本件特許明細書の段落【0025】には「一定速度でメインリールが回転している場合に,正確にメインリールの回転速度を検出することができる」という本件発明8の顕著な効果が明示されている。
さらに,「計測を複数回行い,その平均値を利用する」と,メインリールの回転速度が何らかの理由で一瞬変化したような場合でも,表示列の回転速度の急激な変化を抑えることができるという効果がある。
(12)取消事由12(本件発明9と甲1発明との相違点に係る認定の誤り)審決は,本件発明1にいう「選択的に実行」を「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出を実行するか否かを選択する趣旨」であると解釈しつつ,甲1に「選択的に実行」することが開示されていると認定した(審決書42頁下から2行〜43頁5行)。
しかし,審決の上記認定は,次のとおり誤りである。
ア本件訂正前の本件発明9の構成要件F4は,「前記メインリールの回転中に,前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理とを選択的に実行する第2制御手段と」というものであり,第1処理(位相一致)と第2処理(位相不一致)は,「選択的に実行」されなければならない。
イ「選択的に実行」の解釈は,取消事由3において主張したとおり,第1処理(位相一致)と第2処理(位相不一致)のいずれもが可能であることを前提として,そのどちらかを選択して実行すること,すなわち,第1処理(位相一致)を第2処理(位相不一致)に切り換え,もしくは,第2処理(位相不一致)を第1処理(位相一致)に切り換えることを意味する。
したがって,サブリールが第1処理(位相一致)又は第2処理(位相不一致)のいずれかしかできないパチスロ機は排除されるのみならず,メインリールとサブリールの位相を一致させることがそもそも不可能なパチスロ機も排除される。
ウ甲1記載のパチスロ機は,メインリールとサブリールの位相を一致させることが不可能である。
甲1記載のパチスロ機のサブリールの各列には6つの絵柄が描かれているが(【図2】参照),メインリールには21の図柄が描かれている(甲1の【0023】参照)。メインリールが一回転する間にサブリールは3回転半するから,位相を同じくして(例えば,サブリールがメインリールから3コマ遅れて回転する。)回転することはできない。
したがって,甲1発明においては,本件発明9にいう第1処理(位相一致)を行うことができない。
エ以上より,甲1発明では,メインリールの回転中に,第1処理(位相一致)を実現できないので,これを「選択的に実行」することもできない。
なお,本件発明9と甲1発明の正しい相違点は,以下のとおりとなる(修正部分に下線を付した。)。
相違点9-1本件発明9では,「前記メインリールの回転位相を検知して第1位相情報を生成する第1位相検出手段」「前記サブリールの回転位相を検知して第2位相情報を出力する第2位相検出手段」を備えるに対し,甲1発明では,これらを備えるか否かが明らかでない点。
相違点9-2「第2制御手段」がメインリールの回転中に,本件発明9では,「前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理とを選択的に実行する」のに対し,甲1発明では,そうではない点。
(13)取消事由13(本件発明9の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「メインリール,サブリールにそれぞれ,位相検出手段を備えることで,相違点9-1に係る構成,すなわち,『前記メインリールの回転位相を検知して第1位相情報を生成する第1位相検出手段』『前記サブリールの回転位相を検知して第2位相情報を出力する第2位相検出手段』を備える構成となすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書44頁6行〜10行),「甲1発明は,サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されているものであり,サブリールによる演出を,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出とすることは,前記(2-1-2)のとおり,当業者が適宜なし得る設計事項である。」(審決書44頁12行〜15行),「甲1には,前記(2-3-2)のとおり,サブリールの回転速度を変更することが示唆されている。ここで,回転位相は回転速度に基づき変化するのであるから,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度と同じにすれば,メインリールの回転位相とサブリールの回転位相との位相差を所定値に収束するし,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度と異ならせれば,サブリールの回転位相はメインリールの回転位相と無関係となる。」(審決書44頁16行〜22行),「甲1発明において,サブリールの演出として,『前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理と』の組み合わせを実行させることは,当業者にとって想到容易である。」(審決書44頁27行〜32行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア甲1発明においては,サブリールとメインリールの位相差が一定になることはあり得ない(甲1記載のパチスロ機のサブリールの各列には6つの絵柄が描かれている(【図2】参照)。一方,メインリールには21の図柄が描かれている(甲1の【0023】参照)。)。したがって,サブリールの回転位相をメインリールの回転位相に近づけるという発想もなければ,そのようにするための動機もない。
イ審決は「回転位相は回転速度に基づき変化するのであるから,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度と同じにすれば,メインリールの回転位相とサブリールの回転位相との位相差を所定値に収束する」と述べるが,サブリールの図柄数とメインリールの図柄数が異なっていれば,回転速度を一致させても位相が収束することはありえない。
ウ被告は,メインリールとサブリールの回転速度(角速度)が一致すれば,自動的に位相差は収縮できると主張する。しかし,甲1発明には,メインリールとサブリールの回転速度(角速度)を一致させるという技術思想は存在しないから,被告の主張は理由がない。
また,被告は,本件請求項9は,サブリール及びメインリールの図柄数を限定していないから,記載不備であると主張する。しかし,記載不備は,審決における無効理由とはされていないので,本件訴訟において,無効理由を追加することは許されない。被告の上記主張も失当である。
エしたがって,サブリールの演出として,「前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理と」の組合せを実行させることは,当業者にとって容易想到ではない。
(14)取消事由14(本件発明10の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明は,サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されているものであり,サブリールによる演出を,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出とすることは,前記(2-1-2)のとおり,当業者が適宜なし得る設計事項である。」(審決書46頁15行〜18行),「甲1発明において,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を実行し,前記停止操作情報の入力後に前記第2処理を実行する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書47頁5行〜9行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
ア甲1発明においては,メインリールの回転中にサブリールの回転方向が変化することが何ら示唆されていないため,「サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されている」とはいえない。
イまた,請求項10は請求項1ないし9に従属しており,これらの請求項に記載された発明(本件発明1〜9)が進歩性を有する以上,本件発明10の進歩性を否定することはできない。
(15)取消事由15(本件発明11の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明は,サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されているものであり,サブリールによる演出を,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出とすることは,前記(2-1-2)のとおり,当業者が適宜なし得る設計事項である。」(審決書48頁1行〜4行),「してみると,甲1発明において,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,所定の規則に従って前記第1処理又は前記第2処理を選択して実行し,前記停止操作情報の入力を契機に可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書48頁12行〜16行)と判断した。
しかし,請求項11は請求項1ないし9に従属しており,これらの請求項に記載された発明(本件発明1〜9)が進歩性を有する以上,本件発明11の進歩性を否定することはできない。
(16)取消事由16(本件発明12の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明は,サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されているものであり,サブリールによる演出を,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出とすることは,前記(2-1-2)のとおり,当業者が適宜なし得る設計事項である。」(審決書49頁8行〜11行),「さらに,例示されたサブリールの演出を,その回転状態を変化させる契機について見ると,甲1には,所定時間が経過することを契機に,サブリールの回転状態を変化させることが示されている(記載事項1-12には,『全サブリールの絵柄位置が揃った時点から,所定時間,通常速度で回転させた後,全サブリールをコマ送り回転へ移行させ,』と記載されている)。してみると,甲1発明において,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから所定時間経過するまでの期間は,所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,前記所定時間経過後,前記第1処理又は前記第2処理のうち他方の処理を実行する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書49頁14行〜23行)と判断した。
しかし,請求項12は請求項1ないし9に従属しており,これらの請求項に記載された発明(本件発明1〜9)が進歩性を有する以上,本件発明12の進歩性を否定することはできない。
(17)取消事由17(本件発明13の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明において,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから最初の停止操作に伴う前記停止操作情報が入力されるまでの期間は,前記各表示列に対して所定の規則に従って選択した前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を継続して実行し,最初の停止操作に伴う停止操作情報の入力を契機に,当該停止操作情報に対応する前記表示列の可変表示を停止させるように前記第2表示手段を制御すると共に,可変表示中の他の表示列のうち少なくとも一つの表示列に対して前記期間で選択されなかった他方の処理を実行する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」と判断した(審決書51頁15行〜23行)。
しかし,審決の上記判断は誤りである。
本件発明13では,停止操作情報に対応する表示列は停止するが,他の表示列の少なくとも一つでは他方の処理を実行する。これにより,本件発明13は次のような効果を奏する。すなわち,仮に,停止操作情報が入力されるまでの期間に,停止操作情報に対応する表示列で演出をすることで何らかの情報を報知していたとしても,停止操作情報に対応する表示列が停止した時点で遊技者は報知を確認できなくなるが,別の表示列で演出を継続すると,対応する表示列が停止した後でも,遊技者は報知を確認することができる。
甲1発明には,本件発明13のように,停止操作情報に対応しない表示列の処理を変化させることについては,記載もなければ示唆もない。甲1の記載事項1-6には,「結果的に各サブリール間で回転方向が異なっていても良い」とあるにすぎず,「どのように各サブリール間で回転方向を異ならせるか」という処理方法については示唆すらない。よって,甲1発明から本件発明13は想到不可能である。
(18)取消事由18(本件発明14の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明において,『前記第2制御手段は,前記開始情報が入力されてから,少なくとも一の表示列に対して前記第1処理又は前記第2処理のうち一方の処理を選択して実行し,他の表示列に対しては前記少なくとも一の表示列とは異なる他方の処理を実行する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書52頁下から8行〜4行)と判断した。
しかし,請求項14は請求項1ないし12に従属しており,これらの請求項に記載された発明(本件発明1〜12)が進歩性を有する以上,本件発明14の進歩性を否定することはできない。
(19)取消事由19(本件発明15の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明において,最後のメインリールの回転を停止させた後も,サブリールによって演出動作を持続させるような場合には,時間消費をした後に,コインの払い出しを行うようになすことは,当業者が容易に想起できたものである。ここで,サブリールの演出を制御する副制御部400からコインの払い出しを制御する主制御部300へは,信号を送信できないことが技術常識であるから,副制御部400から主制御部300へサブリールの演出が終了したことを示す信号を送信することはできない。したがって,主制御部300では事前に時間消費の期間,すなわち,演出調整時間を定め,それに基づいて払い出し開始を調整するように構成しなければならないことは,当業者にとって設計事項の範疇である。以上のとおりであるから,構成要件M,Nを甲1発明に採用することは,当業者にとって想到容易である。」(審決書54頁9行〜20行)と判断した。
しかし,請求項15は請求項1ないし12に従属しており,これらの請求項に記載された発明(本件発明1〜12)が進歩性を有する以上,本件発明15の進歩性を否定することはできない。
(20)取消事由20(本件発明16の進歩性に係る判断の誤り)審決は,「甲1発明において,主制御部で演出調整時間を定めるようになしたときに,当該周知技術を付加して,副制御部で演出調整時間に応じて第2表示手段の停止態様を制御するようになすことは,当業者にとって想到容易である。」(審決書55頁11行〜14行)と判断した。
しかし,請求項16は請求項15に従属しており,この請求項に記載された発明(本件発明15)が進歩性を有する以上,本件発明16の進歩性を否定することはできない。
(21)取消事由21(委任省令要件違反に係る判断の誤り)審決は,「請求項1〜9,11,13〜14に係る発明は,段落0007〜0009に記載された課題の何れにも該当しないものである。」(審決書58頁26行,27行),「以上のとおりであるから,本件の明細書は,請求項1〜9,11,13〜14に係る発明について,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものではないから,経済産業省令で定めるところにより記載したものであるとは認められない。」(審決書58頁28行〜32行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
アまず,委任省令は,すべての請求項に記載されたすべての発明について,そのすべての課題を【発明が解決しようとする課題】欄に記載しなければならないことを規定しているわけではない。
請求項1,2,3及び9は独立形式であるところ,これら請求項に記載された各発明の課題が「演出の趣向性を向上させる」ことにあることは,特許請求の範囲の文言のみからも十分に理解することができる。
本件においては,「明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて」,メインリールの回転中に,そのゲームで他の役に当選しているか否かを予想させ,メインリールの停止操作のタイミングを調整することができるようにすること,これにより,サブリールの演出の趣向性が質的に向上し,遊技の意外性を生じさせるという課題を理解することが可能である。
イ仮に,すべての請求項に記載されたすべての発明について,その課題を【発明が解決しようとする課題】欄に記載することが必要であるとの見解を採るにしても,本件特許明細書の段落【0010】には「本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり,演出の趣向性を向上させるスロットマシンを提供することを解決課題とする。」(甲18,段落【0010】)と明確に記載されている。
加えて,審査便覧「第?T部」「第1章」「3.3.2委任省令要件の具体的運用」欄の「?A発明が解決しようとする課題及びその解決手段」欄の(??)には「ただし,発明が解決しようとする課題についての明示的な記載がなくても,従来の技術や発明の有利な効果等についての説明を含む明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,当業者が,発明が解決しようとする課題を理解することができる場合については,課題の記載を求めないこととする(技術常識に属する従来技術から課題が理解できる場合もある点に留意する)。」と記載されている。技術常識に属する従来技術から課題が理解できる場合に該当する本件の場合に限って,突如として厳格に「課題」欄の記載を求めるのは,公平取扱いの原則に反し不当である。
(22)取消事由22(実施可能要件違反に係る判断の誤り)審決は,「本件の明細書に記載された唯一の図柄配置の例では(段落0060〜0074,図4〜6参照),表示列のある図柄は,左・中・右のメインリール毎に異なる図柄と対応づけられ,メインリールの役を構成する図柄は入賞ライン上に異なる種類の図柄が並ぶ態様であり,表示列の役を構成する図柄は入賞ライン上に同じ種類の図柄が並ぶ態様である。この実施例のメインリールでは,一見して入賞か否かが判断できない(対比表を参照することで,判断は可能ではある)。第1回口頭審理調書によれば,本件の特許発明は,メインリール又は表示列のいずれかを手掛かりとして遊技者がストップボタンを押すことを前提としたスロットマシンであるが,このようなスロットマシンの遊技では,一般に,2回目の停止操作を行った後に,すべての入賞ラインに対して,かつ,すべての入賞役について,テンパイか否かを判断し,テンパイであるならば,最後にどの図柄を停止させるかを判断する。
しかし,本件実施例のメインリールでは,ゾロ目か否かで全ての入賞役について一見して入賞か否かが判断できる一般のスロットマシンと異なり,すべての入賞役について(本件実施例では6通りの入賞役について)対比表を参照してテンパイか否かの判断をしなければならないから,入賞の判断が困難である。また,テンパイであったときには,ゾロ目となっている図柄を停止させるべき図柄と判断できる一般のスロットマシンと異なり,対比表を参照して停止させるべき図柄を判断しなければならないから,停止させるべき図柄の判断も困難である。したがって,本件実施例のスロットマシンでは,メインリールを手掛かりとして遊技者が最後にどの図柄を停止させるかの判断が,相当に困難であるといえる。また,第1回口頭審理調書によれば,本件の特許発明では,表示列は,メインリールの回転中に第1処理のみが実行されるものが排除され,メインリールと回転位相が一致するとはいえない。すなわち,メインリールで表示されている図柄と表示列で表示されている図柄とが対応しなくなるから,表示列を見ても適切な停止操作時期が分からない。してみると,メインリール又は表示列のいずれかを手掛かりとして遊技者がストップボタンを押すことを前提としたスロットマシンをどのように実現するのかが,本件の明細書には記載されていない。したがって,請求項1〜19に係る発明は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に,明細書に記載されていない。」(審決書58頁下から5行〜59頁27行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,次のとおり誤りである。
アまず,審決が前提とするように一般のスロットマシンは,「ゾロ目か否かで全ての入賞役について一見して入賞か否かが判断できる」というわけではない。平成15年7月時点で,入賞となる役として,各リールごとに異なる図柄の組合せで役となるものを備えるパチスロ機は,多く存在していた(甲43の1,3頁21行〜23行)。実際にも,本件特許の実施例をそのまま実現して実機を製作した場合,初心者はサブリールを見ながら遊技を行うであろうし(この場合は目押しができない。),上級者は入賞役の図柄のパターンを記憶した上でメインリールを見て目押しをすることになろう。
目押しをしなくとも入賞するようなスロットマシンは,例えば特開2002-239088号公報(甲44)に記載されている。すなわち,同公報には,「ここでPBは,絵柄の引き込み率を示す。上記したように,スロットマシン100では,ストップボタンを押した時点で絵柄を停止させることができるのはもちろんのこと,さらに,最大4コマ先の絵柄まで引き込むことができる。」(甲44,段落【0085】),「したがって,各リールについて,4コマ間隔である絵柄を配置し,この絵柄についての引き込みを全て最大4コマに設定すれば,遊技者は,各ストップボタンを適当に押しても,必ず,その絵柄が揃うことになる。つまり,内部当選があれば,100%入賞することになる。これをPB(引き込み率)100%と呼ぶ。」(甲44,段落【0086】)と記載されている。
イまた,「対比表を参照して停止させるべき図柄を判断しなければならないから,停止させるべき図柄の判断も困難である。したがって,本件実施例のスロットマシンでは,メインリールを手掛かりとして遊技者が最後にどの図柄を停止させるかの判断が,相当に困難であるといえる。」との審決の判断部分にも誤りがある。
例えば,サミー社製パチスロ機「獣王」(甲43の2,11頁〜15頁,91頁〜93頁)やロデオ社製パチスロ機「インディージョーズ2」(甲43の2,16頁,17頁)は,いずれも入賞役が,各リールごとに異なる図柄の組合せで役となるものである。そして,これらのパチスロ機はいずれも,「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」(昭和六十年二月十二日国家公安委員会規則第四号)に基づく検定を経たものであり,同規則(これら実機が準拠した,いわゆる「4号機」規則)別表第五(1)イ(ニ)には「すべての回胴の回転の方向及び速さは一定とし,また,その回転の回数は,1分間に80回転を超えるものでないこと。」とあり,同(チ)には「図柄は,回胴回転装置の作動中においても,おおむね識別することができるものであること。」とあり,同(2)ロ(ロ)には「図柄は,鮮明であり,かつ,遊技者に識別しやすいものであること。」,同(ハ)には「図柄の大きさは,縦25mm以上,横35mm以上であること。また,図柄の大きさは,図柄の種類に応じて,すべての回胴につき同一であること。」と記載されている。これらの規則は目押しができることを求めるものであって,目押しができないパチスロ機は検定を経ることができない。
そして,サミー社製パチスロ機「獣王」やロデオ社製パチスロ機「インディージョーズ2」が検定を経ていることからしても,入賞役が各リールごとに異なる図柄の組合せで役となる場合であっても目押しは可能であることが明らかである。
したがって,本件特許明細書に記載された図柄配置の例(入賞役が,各リール毎に異なる図柄の組合せで役となる)においても目押しは可能である。
実施可能性の判断に当たって,ゲームの難易度(目押しが困難等)を考慮することになり,審決の判断は妥当を欠く。
(23)取消事由23(いわゆるサポート要件違反に係る判断の誤り)審決は,「請求項に係る発明は,発明の詳細な説明に記載された課題のうち少なくとも一つを解決する手段を備えていなければならず,また,その課題解決手段は発明の詳細な説明に記載されたものでなければならない。」(審決書59頁下から4行〜2行),「請求項1〜9,11,13〜14,17〜19に係る発明は,段落0007〜0009に記載された課題を解決する手段を備えていない。したがって,請求項1〜9,11,13〜14,17〜19に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求したものである。」(審決書61頁3行〜6行)と判断した。
しかし,以下のとおり,審決の上記判断は,誤りである。
ア特許法36条6項1号は,特許請求の範囲に記載された発明の構成が,発明の詳細な説明に記載されていることを要求しているのであって,【発明が解決しようとする課題】欄に請求項記載の発明の課題が具体的に記載されていなければならないことを求めるものではない。
イ仮に,「請求項に係る発明は,発明の詳細な説明に記載された課題のうち少なくとも一つを解決する手段を備えていなければならず,また,その課題解決手段は発明の詳細な説明に記載されたものでなければならない。」ことを前提とした場合であっても,本件特許明細書の段落【0010】には「本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり,演出の趣向性を向上させるスロットマシンを提供することを解決課題とする。」と記載されている。
よって,何ら特許法36条6項1号の要件に違反しておらず,サポート要件違反をいう審決は違法であり,全部取り消されるべきである。
(24)取消事由24(特許請求の範囲の記載要件違反に係る判断の誤り)請求項17には,「前記各表示列の図柄の配置は,前記各メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている」(甲18)と記載されているところ,審決は,「上記部分の意味が不明確である。したがって,不明確な部分を含む請求項17の記載は,特許を受けようとする発明が明確ではない。
そして,請求項17を引用する請求項18〜19の記載も,請求項17において不明確な部分を釈明するものではなく,不明確な部分とは異なる技術的事項を特定するものであるから,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。」(審決書61頁15行〜20行)と判断した。
しかし,審決の上記判断は,誤りである。すなわち,確かに「図柄の配置は」,「図柄と対応付けられている」とされており,「の配置」という文言は不要であるが,「図柄」と「図柄」が対応付けられているという趣旨を理解することは可能である。特許を受けようとする発明は明確であり,特許法36条6項2号の要件に違反するものではない。
2被告の反論(1)取消事由1(審判手続の違背)に対し原告は,被告が審判請求書で主張した無効理由のみを「被告の主張する根拠」と捉え,「審決の無効根拠」と「被告の主張する根拠」との相違点は,被告が主張しない理由であるから,手続違背があると主張する。
しかし,原告の上記主張は理由がない。
すなわち,被告は,平成19年11月2日付けで特許庁に提出した口頭審理陳述要領書(甲30)において,無効理由の補充を多々行っている。
また,審判請求書(甲20,54頁6行〜11行)には,そもそも甲1ないし17のすべてが摘示されており,原告は審判手続においてその内容を検討して防御する機会を十分与えられていたから,原告が主張する審判手続違背は認められない。原告は,仮に,審判において,甲1ないし17のあらゆる組合せで判断することが許されるのであれば,131071通りの組合せが許されることになり,原告の防御の機会を奪うことになると主張する。しかし,無効理由となる組合せは限定され,原告は実質的な防御の機会を得ていたというべきである。
また,審決は,甲11を「期間をその後に払出される遊技媒体の調整時間とすることは,当業者であれば容易に想到できる」との結論に至る論理過程を裏付けるものとして,引用したものであり,特許法153条2項にいう「当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したとき」に該当しない。
(2)取消事由2(訂正の有効性に対する判断の誤り)に対しア原告は,本件特許明細書(甲18,段落【0216】)においては,第2処理を実行することのみが記載されているのではなく,所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行することも自明な事項とされている旨主張する。
しかし,段落【0216】の記載は,「所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を実行」することのみを開示するものであり,所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行することまでを暗示するものではない。
イ原告は,「当選のフラグ」は本件訂正の「抽選手段の抽選結果」に対応し,「場合に・・・してもよい。」は「基づいて」に対応すると理解されるから,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて」との部分は,明確に本件特許明細書に記載されていると主張する。
しかし,段落【0216】には,「当選のフラグがセットされている場合に・・・してもよい。」と記載され,「当選のフラグがセットされている場合に」限って「・・・してもよい」ことが記載されているのであるから,当たりの場合とハズレの場合の双方を含めた「抽選手段の抽選結果」が記載されているものではない。
また,本件特許明細書には入賞役への当選を決定する「内部抽選」についての記載はあるが(甲18,段落【0090】),特許請求の範囲に記載の「抽選手段」については,入賞役への当選を決定するものである旨の限定がない。特許請求の範囲の記載において何らかの選択対象となるものは,第1処理と第2処理のみであるから,「抽選手段」とは,抽選のために,何らかのルールに基づいて,第1処理と第2処理のいずれかを選択する手段を意味すると解すべきであり,「抽選結果」とは,そのようなルールに基づく手段に従って得られた結果を意味すると解すべきである。しかし,本件特許明細書には,そのような意味で,第1処理と第2処理を選択するルールに関する記載はない。
ウ原告は,段落【0216】には,第1処理と第2処理のうちいずれを選択すべきかの契機の一例として「例えば,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選のフラグがセットされている場合」を明示していると主張する。
しかし,同記載は,「サブCPU55を制御する手法」を例示したものにすぎず,第1処理又は第2処理のいずれかの選択手法の例を示したものではない。段落【0216】においては,同記載に引き続いて,「より具体的には,所定の小役に対応した当選フラグ,BB当選フラグ,又はRB当選フラグが該当する」として,当選フラグの具体的,技術的な種類が記載されていることからも,第1処理又は第2処理の選択手法というよりは,「サブCPU55の制御方法」が問題とされていることが分かる。
そして,「特許明細書等の他の記載を見ても,所定の当選フラグがセットされている場合に第1処理を実行することについて,記載されていたものと認めることはできない」のであり,「同様に,特許明細書等には,『所定の当選フラグがセットされていない場合に第2処理を実行すること』について,記載されていたものと認めることはできない」のであるから,「結局のところ,各請求項に係る第1処理と第2処理とを抽選手段の抽選結果に基づいて選択的に実行する第2手段は,特許明細書等に記載した事項であるとも,これらから自明な事項であるともいえない」とした審決の判断に誤りはない。
(3)取消事由3(本件発明1と甲1発明との相違点に係る認定の誤り)に対しア本件発明1の「選択的に実行」の解釈について原告は,本件発明1の「選択的に実行」とは,第1処理(正転)と第2処理(反転)のいずれも可能であることを前提として,第1処理(正転)を第2処理(反転)に切り換え,又は,第2処理(反転)を第1処理(正転)に切り換えることを意味するから,審決が,本件発明1の「選択的に実行」を「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出を実行するか否かを選択する趣旨」であるとした解釈は,誤りであると主張する。
しかし,「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出」を行うに当たり,「第1処理(正転)を第2処理(反転)に切り換え,もしくは,第2処理(反転)を第1処理(正転)に切り換える」ステップは,必然的に存在する(「切り換え」をしない限り,「組み合わせ」は不可能である。)。したがって,審決が,「選択的に実行」について,「第1処理と第2処理とを組み合わせた演出を実行するか否かを選択する趣旨」であるとした解釈は,原告の解釈と実質的な相違はなく,誤りはない。
イ甲1の記載事項について原告は,本件発明1は,「前記メインリールの回転中に」「選択的に実行」をしなければならない(つまり,メインリール回転中に,サブリールについて第1処理(正転)↑第2処理(反転)の切り換えや,第2処理(反転)↑第1処理(正転)の切り換えができなければならない。)のに対し,甲1には,メインリールの回転中にサブリールの回転方向が切り換わるという構成について開示がないから,審決の認定には誤りがある,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,審決における「選択的に実行」の解釈を誤っているから,その前提を欠いている。
また,甲1の記載事項に係る審決の認定についても,相違点1-1として「メインリールの回転中に選択的に実行する処理が,本件発明1では・・・第1処理と・・・第2処理と』の組み合わせであるのに対し,甲1発明では・・・第1処理のみである点」(審決書第31頁)と記載されているように,原告の主張と実質的に同じ認定を行っている。
したがって,甲1の記載事項について,審決の認定に誤りがあるとする原告の主張は失当である。
ウ本件発明1と甲1発明との相違点についての反論原告は,本件発明1と甲1発明との相違点について,「第2制御手段が,本件発明1では,『前記メインリールの回転中に・・・第1処理と・・・第2処理とを選択的に実行する』ものであるのに対し,甲1発明では・・・第1処理』のみを行うである点」と主張する。
しかし,原告の上記主張は,「選択的に実行」の意義を表現上異ならせたものにすぎず,審決における相違点の認定と,その実質において変わるものではないから,理由がない。
(4)取消事由4(本件発明1の進歩性に係る判断の誤り)に対しア原告は,様々な態様を適宜組み合わせて複雑な演出をしたとしても,せいぜい,各サブリール間で回転方向を各々異ならせるにすぎず,メインリールの回転中にサブリールの回転方向が切り換わることまで,当業者が適宜なし得る設計事項であるということはできないと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,甲1には,サブリールの回転方向について,「各サブリールの回転方向は,ある時は正回転,またある時は逆転させるようにしてよい」(甲1,段落【0082】)こと,及び「停止したサブリールが再始動して・・・1コマ戻る」(甲1,段落【0106】)ことが記載されている。
また,サブリールの回転状態を変化させる時期について,甲1には「第1停止時または第2停止時に,対応するサブリールについて継続回転演出を行うようにしてもよい」こと(甲1,段落【0097】。つまり,第3の「メインリール回転中」に,非継続回転演出状態から継続回転演出状態へと「切り換わる」こと),及び「各サブリールの回転速度を調整する」全回転演出の制御を「スタートレバー125の操作時や,いずれかの停止操作が行われた時等」(甲1,段落【0155】)に開始すること(つまり,1つ又は全部の「メインリール回転中」に,ある回転速度状態から別の回転速度状態へと「切り換わる」こと)が記載されている。
以上の記載に基づいて,「メインリール回転中」におけるサブリールの回転状態の変化態様として,継続回転演出や全回転演出を,各サブリールの回転方向の逆転演出に置換し,「第1処理」と「第2処理」とを「選択的に実行する」構成に想到することは容易である。
したがって,「メインリールの回転中にサブリールの回転方向が切り換わる」態様を採用することを「当業者が適宜なし得る設計事項」であるとした審決の判断に誤りはない。
イ原告は,出願当時は,遊技者のすべてのメインリールに対する停止操作が素早く行われて早期にメインリールが停止するとコインが払い出されてしまい,サブリールの演出を続けても今回のゲームによって当選した役を報知する効果は薄れてしまうと考えられており,当時のスロットマシンではサブリールによる演出は当選状態が次のゲーム以降も維持される役を報知するものであったと主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり誤りである。
すなわち,甲1には,前述のとおり,「各サブリールの回転方向」を「ある時は正回転,またある時は逆転させる」ような「通常演出」(甲1,段落【0082】,【0085】)や,継続回転演出及び1コマ進み/戻り演出のような「特殊演出」(甲1,段落【0085】以下)が開示されているところ,これらの演出は「ボーナスゲーム中以外のゲーム(以下,「通常ゲーム」という)中に行われる」(甲1,【0085】)旨が明記されている。
また,そもそも甲1発明の課題は「はずれのスリルをバランスよく体感することができる遊技台を提供すること」(甲1,段落【0014】)にあり,実施形態として「演出で最終的にはずれとなる場合は,上記(ウ)の第3停止サブリールの再始動により,一旦,全サブリールの絵柄をリーチ絵柄に揃え」(甲1,段落【0112】)る演出態様も具体的に開示されている。
このように,「甲1を始めとする当時のスロットマシンではサブリールによる演出は当選状態が次のゲーム以降も維持される役を報知するものであった」とする原告の主張は,甲1の記載に基づかないものであって,失当である。
ウ原告は,本件発明1は,従前の考え方(メインリールの回転中にサブリールの演出内容を大きく変化させることはないという考え方)に反して,停止操作に十分な時間を費やす遊技者に対してサブリールの演出(動作)により多くの情報を提供することができるという効果を奏する発明であると主張する。
しかし,甲1には,「第1停止時または第2停止時に,対応するサブリールについて継続回転演出を行うようにしてもよい」(甲1,段落【0097】)こと,及び「各サブリールの回転速度を調整する」全回転演出の制御を「スタートレバー125の操作時や,いずれかの停止操作が行われた時等」(甲1,【0155】)に開始することが記載され,正に「メインリールの回転中にサブリールの演出内容を大きく変化させること」が開示されている。
したがって,原告の上記主張はその前提を欠いており,本件発明1の完成に至る過程にさしたる困難性も認められない。
エ原告は,本件発明1が奏する効果について,「メインリールの回転中に,回転が一瞬停止する『反転』をサブリールにさせることにより,他の演出にはない明確なメッセージを遊技者に与え・・・サブリールの演出の趣向性が質的に向上し,遊技の意外性が生じるのみならず,多くの遊技者の利便性が著しく向上」すると主張する。
しかし,甲1には,「メインリール回転中」にサブリールについて継続回転演出や全回転演出をする態様が示されているところ,「回転が一瞬停止する『反転』をサブリールにさせることにより」,かかる継続回転演出や全回転演出のような「他の演出」とは質的に異なる「明確なメッセージ」が遊技者に与えられるということはできない。
本件発明1の特徴は,「メインリールの回転中にサブリールの演出内容を大きく変化させること」であって,演出内容の変化の態様自体は当業者の設計事項であるし,各態様によるメッセージ性の差異は,顕著な差とはいえない。
したがって,「サブリールの演出の趣向性が質的に向上し,遊技の意外性が生じるのみならず,多くの遊技者の利便性が著しく向上」というような格別の効果も認められず,原告の上記主張は誤りである。
(5)取消事由5(本件発明2の進歩性に係る判断の誤り)に対しア原告は,甲6にメインリールとサブリールとを同じ方向等に回転させるという,いわば「同期制御」の技術思想が存在しないことをもって,甲1と甲6を組み合わせることはそもそも困難であるし,組み合わせても「前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する」という構成を得ることはできないと主張する。
しかし,審決において,甲1に甲6を組み合わせたのは,本件発明1と本件発明2の相違点である「前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する」との事項が,甲6の「リール位置センサ8L,8C,8Rの検出信号を演出制御部100のCPU103にも供給するものとし,この検出信号に基づいて変動表示される図柄を調整」するという機能に相当するためであるところ,同機能が付されたのは,互いに「対応した図柄」(甲6,段落【0027】)である「可変表示部71に表示される図柄と画像表示部178に表示される図柄とのズレを防ぐ」(甲6,段落【0250】)ためである。そして,同目的を達成するに当たり,メインリールとサブリールとの回転方向等の同一又は相違は,全く関係のない事情であるから,甲6に「同期制御」の技術思想が存在しないことは,上記機能に着目して甲6を組み合わせる際に,何らの障害事由とはならない。
イまた,甲6には「リール位置センサ8L,8C,8Rの検出信号を演出制御部100のCPU103にも供給するものとし,この検出信号に基づいて変動表示される図柄を調整してもよい」(甲6,段落【0250】)と記載され,「メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2制御手段を制御する」構成が開示されていることは明らかである。
ウ本件発明2が奏する効果について,原告は,「メインリールが何らかの理由により回転開始が遅延した場合であっても,メインリールが停止している状態で表示列が勝手に可変表示を開始するといったことがない」(甲22,3頁下から4行〜2行)と主張する。
しかし,原告の上記主張は,サブリールの回転制御が第1処理から行われることを前提としたものであり,第2処理から行われる場合には妥当せず,「メインリールが停止している状態で表示列が勝手に可変表示を開始する」といった事態が発生する。したがって,本件発明2が,原告の主張する効果を奏するということはできず,原告の上記主張は,本件発明2について参酌されるべきものではない。
よって,本件発明2の進歩性に係る判断について,審決に誤りはない。
(6)取消事由6(本件発明3の進歩性に係る判断の誤り)に対しア原告は,特開2001-353254号公報(甲19)には,「位置センサによってリールの位置を特定する」ことは記載されているが,メインリールの「回転速度を検知」するという技術内容を導き出すことはできないと主張する。
しかし,甲19には,「CPU9は,出力ポート19に各回転リールRa〜Rcの位置情報を出力」(甲19,段落【0027】)し,「液晶表示用回路30のCPU32は,入力ポート31からの入力データによって各回転リールRa〜Rcの位置を把握して,液晶ディスプレイ2の擬似回転リール1a〜1cも同じ動作をするよう,VDC35に指令を発する」(甲19,段落【0028】)と記載されている。
つまり,甲19には,メインリールに相当する「回転リールRa〜Rcの位置情報」に基づき,サブリールに相当する「擬似回転リール1a〜1c」を,同じ動作,つまり同じ速度で回転させる技術が開示されているところ,メインリールとサブリールとの速度を同一化させるという同じ目的を達成するに当たり,速度データに基づくか,位置データに基づくかは,当業者が適宜選択すべき「実質的に等価」な事項にすぎない。
したがって,「『前記メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段』を備える構成となすことは,当業者にとって想到容易である」とした審決の判断に,誤りはない。
イ原告は,甲1記載のパチスロ機のサブリールの各列には6つの絵柄が描かれている(図2参照)一方,メインリールには21の図柄が描かれている(甲1,段落【0023】参照)から,メインリールが1回転する間にサブリールは3回転半する,すなわち,メインリールとサブリールの各図柄を対応させれば,メインリールとサブリールの回転速度は異ならざるを得ない(後者の回転速度を前者の回転速度の3.5倍にする必要がある)ため,甲1記載のパチスロ機は,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度に一致させる前提を欠く旨主張する。
しかし,原告の主張は,理由がない。
ところで,回転速度には,角速度(例えば,1秒間に何回転するか)と,移動速度(例えば,ある図柄が1秒間に何cm移動するか)の2通りの解釈が考えられる。
この点について,原告は,「メインリールが一回転する間にサブリールは3回転半する」等に照らすならば,「回転速度」を「角速度」と解釈した上で主張をしている。
しかし,「回転速度」を「角速度」と解釈すると,請求項3と整合を欠く。すなわち,遊技者が感知するメインリール及びサブリールの図柄の移り具合は,角速度ではなく,移動速度である。例えば直径の比率が1:3の2種のリールが存在し,これらのリールを1秒間に3回転という同じ角速度で回転させた場合には,遊技者にとって,直径が3のリールに描かれた図柄は,直径が1のリールに描かれた図柄の3倍速く移動するように見える。換言すれば,本件発明3のように「表示列の可変表示速度を・・・メインリールの回転速度に近づける」としても,表示列とメインリールの直径が略等しくない限り,遊技者にとっては互いに異なる速度で移動するように見える結果,「これとの対比で,『前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する』際の意外性が高まる」という効果も生じない。したがって,「回転速度」が「角速度」を意味することを前提とする原告の上記主張は,本件発明3に係る明細書の記載との関係で整合を欠く。
以上のとおりであり,本件発明3の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(7)取消事由7(本件発明4の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,?@「リールの制御のために,制御されるリールに速度検出手段を備えるようになすこと」及び「サブリールの可変表示速度をメインリールの回転速度に近づけるように制御すること」は,いずれも当業者にとって想到容易ではない,?A第1速度情報を目的とした負帰還制御は,メインリールとサブリールの双方が各々対応するパチスロ機が一般的ではなく,被告(請求人)が証拠として挙げた文献や職権で引用した文献のいずれにも記載されていない以上,当業者にとって想到容易ではない,?Bこの結果,メインリールとサブリールを正確に同期させることが可能になると主張する。
しかし,原告の上記主張のうち,速度検出手段を備えるようにすること,及びサブリールの可変表示速度をメインリールの回転速度に近づけるように制御すること,については,「取消事由6(本件発明3の進歩性に係る判断の誤り)に対し」で述べたとおり,失当である。
また,「負帰還制御」に係る原告の主張についても,前記のとおり,原告は,「回転速度」を「角速度」と解釈しているが,メインリール及びサブリールの回転速度を正確に同一化したところで,格別の効果は生じない。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,本件発明4の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(8)取消事由8(本件発明5の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,「前記表示列の可変表示速度を前記第1速度情報の示す前記メインリールの回転速度に近づけるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記表示列の可変表示速度を前記メインリールの回転速度と無関係に制御する第2処理と」を選択的に実行させることは,当業者にとって想到容易とはいえないと主張する。
しかし,前記のとおり,メインリール及びサブリールの回転速度を互いに近づけたところで,メインリールとサブリールを正確に同期させることは可能とならないし,仮に正確に同期させることが可能となったとしても,それ自体格別のものとは認められない。
したがって,原告の上記主張は採用することができず,本件発明5の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(9)取消事由9(本件発明6の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではないことをもって「第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段」を具備することも当業者にとって想到容易ではないと主張する。
しかし,前記のとおり,メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段を備える構成とすることは,当業者にとって想到容易である。
したがって,本件発明6の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(10)取消事由10(本件発明7の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではないことをもって実施態様として,「第1センサと,第1検出パルス間の時間間隔を計測する計測手段と,前記計測手段の計測結果に基づいて速度情報を生成する速度情報生成手段」を具備することも当業者にとって想到容易ではないと主張する。
しかし,前記のとおり,メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段を備える構成とすることは,当業者にとって想到容易である。
したがって,本件発明7の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(11)取消事由11(本件発明8の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,?@「第1速度手段を備えること」は当業者にとって想到容易ではないことから,第1速度手段が「計測を複数回行い,その平均値を利用すること」も当業者にとって想到容易ではない,?A本件発明8は,「一定速度でメインリールが回転している場合に,正確にメインリールの回転速度を検出することができる」ことや,「メインリールの回転速度が何らかに理由で一瞬変化したような場合でも,表示列の回転速度の急激な変化を抑えることが出来る」との格別の効果があると主張する。
しかし,前記のとおり,メインリールの回転速度を検知して第1速度情報を生成する第1速度検出手段を備える構成とすることは,当業者にとって想到容易である。
また,計測値を利用する際に,計測を複数回行い,その平均値を利用することは,周知技術であり,原告が挙げた効果は,いずれも同周知技術により実現されるものにすぎない。
したがって,本件発明8の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(12)取消事由12(本件発明9と甲1発明との相違点に係る認定の誤り)に対し原告は,?@取消事由3で主張したとおりの理由により,審決は「選択的に実行」の解釈を誤っている,?A本件発明9と甲1発明との相違点は,「第2制御手段」がメインリールの回転中に,本件発明9では,「・・・第1処理と,・・・第2処理とを選択的に実行する」のに対し,甲1発明では,そうでない点であると主張する。
また,原告は,甲1のパチスロ機では「メインリールが一回転する間にサブリールは3回転半することになってしまい,位相を同じくして(例えば,サブリールがメインリールから3コマ遅れて回転する。)回転することがそもそもできない」と主張する。
しかし,「選択的に実行」の解釈が誤っているとの原告主張は,前記のとおり失当である。審決は,本件発明9と甲1発明との相違点について,原告の主張と実質的に同じ認定を行っているものであり,審決の認定に誤りはない。
また,後記のとおり,甲1発明に係るパチスロ機は,位相を同じくして回転することが可能であるから,「位相を同じくして回転することがそもそもできない」との原告主張も,失当である。
以上のとおり,本件発明9と甲1との相違点に係る審決の認定に,誤りはない。
(13)取消事由13(本件発明9の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,「甲1発明においては,サブリールとメインリールの位相差が一定になることはあり得ない」こと,及び「サブリールの図柄数とメインリールの図柄数が異なっていれば,回転速度を一致させても位相が収束することなどあり得ない」ことをもって,「サブリールの演出として,「前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理と」の組合せを実行させることは,当業者にとって想到容易ではないと主張する。
しかし,仮に「サブリールの図柄数とメインリールの図柄数が異なっていれば,回転速度を一致させても位相が収束することなどあり得ない」という主張が正しいとすれば,サブリール及びメインリールの図柄数を限定しない本件請求項9は,記載不備である。
よって,サブリールの演出として,「前記第1位相情報が示す前記メインリールの回転位相と前記第2位相情報が示す前記サブリールの回転位相との位相差を所定値に近付けるように前記第2表示手段を制御する第1処理と,前記サブリールの回転位相を前記メインリールの回転位相と無関係に制御する第2処理と」の組合せを実行させることは,当業者にとって想到容易であり,本件発明9の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(14)取消事由14(本件発明10の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,甲1においては,メインリールの回転中にサブリールの回転方向を変化させることは何ら示唆されていないため,「サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されている」とはいえないと主張する。
しかし,甲1には,サブリールを逆転させることが記載されているので,原告の主張は失当である。
また,甲1が「メインリールの回転中にサブリールの回転方向が変化することは何ら示唆していな」いからといって,このことから,原告主張のように「サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在されている」といえないとの結論を導く根拠はない。
すなわち,甲1には,メインリールの回転中に継続回転演出や全回転演出を行い,「サブリールの動作を複雑にする」態様が具体的に開示されているから,審決が認定したとおり,「サブリールの動作を複雑にするために,様々な態様を組み合わせた演出を行う動機が内在」されている。
したがって,甲1から,「サブリールの動作を複雑にする」態様の1つとして開示される「各サブリールの回転方向の逆転演出」等を採用することに,何らの阻害要因は存在しない。
なお,本件発明1ないし9の進歩性に係る審決の判断に誤りはないので,本件発明1ないし9が進歩性を有する以上,本件発明10の進歩性を否定することはできないとの原告の主張も認められない。
よって,本件発明10の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(15)取消事由15(本件発明11の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,本件発明1ないし9が進歩性を有する以上,本件発明11の進歩性を否定することはできないと主張する。
しかし,前記のとおり本件発明1ないし9の進歩性に係る審決の判断に誤りはない。
よって,原告の上記主張は認められず,本件発明11の進歩性に係る審決の判断にも誤りはない。
(16)取消事由16(本件発明12の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,本件発明1ないし9が進歩性を有する以上,本件発明12の進歩性を否定することはできないと主張する。
しかし,前述のように本件発明1ないし9の進歩性に係る審決の判断に誤りはない。
よって,原告の上記主張は認められず,本件発明12の進歩性に係る審決の判断にも誤りはない。
(17)取消事由17(本件発明13の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,甲1には「結果的に各サブリール間で回転方向が異なっていても良い」とあるにすぎず,「どのように各サブリール間で回転方向を異ならせるか」という処理方法については示唆がないこと,本件発明13は,停止操作情報に対応する表示列は停止するが,他の表示列の少なくとも1つでは他方の処理を実行するから,別の表示列で演出を継続すると,対応する表示列が停止した後でも,遊技者は報知を確認することができるという特別の効果を生ずることを主張する。
しかし,甲1には,「各サブリールは・・・対応するメインリールの停止に伴って停止していく」(甲1,段落【0079】)旨が記載されていることから,あるサブリールが停止した後も,他のサブリールは回転し続けることが開示されている。そして,回転するサブリールについて,甲1に記載される継続回転演出,全回転演出,各サブリールの回転方向の逆転演出等の種々の演出を行うことは,当業者の設計事項であるといえる。
また,本件発明13が奏する効果である「別の表示列で演出を継続すると,対応する表示列が停止した後でも,遊技者は報知を確認することが出来る」という効果も,あるサブリールが停止した後,他のサブリールについて継続回転演出,全回転演出,各サブリールの回転方向の逆転演出等の種々の演出を行うことで奏される効果と,格別異なるところがない。
したがって,「甲1発明から本件発明13は想到不可能である」とする原告の主張は失当であり,本件発明13の進歩性に係る審決の判断に,誤りはない。
(18)取消事由18(本件発明14の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,本件発明1ないし12が進歩性を有する以上,本件発明14の進歩性を否定することはできないと主張する。
しかし,前述のように本件発明1ないし12の進歩性に係る審決の判断に誤りはない。
よって,原告の上記主張は認められず,本件発明14の進歩性に係る審決の判断にも誤りはない。
(19)取消事由19(本件発明15の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,本件発明1ないし12が進歩性を有する以上,本件発明15の進歩性を否定することはできないと主張する。
しかし,前記のとおり本件発明1ないし12の進歩性に係る審決の判断に誤りはない。
よって,原告の上記主張は認められず,本件発明15の進歩性に係る審決の判断にも誤りはない。
(20)取消事由20(本件発明16の進歩性に係る判断の誤り)に対し原告は,本件発明15が進歩性を有する以上,本件発明16の進歩性を否定することはできないと主張する。
しかし,前記のとおり本件発明15の進歩性に係る審決の判断に誤りはない。
よって,原告の上記主張は認められず,本件発明16の進歩性に係る審決の判断にも誤りはない。
(21)取消事由21(委任省令要件違反に係る判断の誤り)に対し原告は,請求項1,2,3及び9は独立形式であるところ,これら請求項に記載された各発明の課題が「演出の趣向性を向上させること」にあることは,特許請求の範囲の文言のみから十分に理解することができると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
請求項1,2,3及び9に係る発明の「演出の趣向性を向上させる」という課題を解釈するに当たり,従来の遊技機が奏する演出の趣向性の問題点について,本件特許明細書の記載を参酌すべきことになる。そして,同明細書によれば,従来の遊技機に係る上記問題点は,段落【0007】ないし【0009】に尽きる。審決は,それらの段落に記載される問題点を参酌して,本件発明の課題の意味を解釈し,請求項1ないし9,11,13及び14に係る発明について,解決しようとする課題に必要な事項を記載したものではないと判断したのであって,その判断に誤りはない。
原告は,本件は,技術常識に属する従来技術から課題が理解できる場合であるにもかかわらず,「課題」欄の記載がないとして,委任省令違反と判断するのは,公平の原則に反する旨主張する。
しかし,上記のとおり,従来の遊技機が奏する演出の趣向性の問題点が,段落【0007】ないし【0009】に尽き,請求項1ないし9,11,13及び14に係る発明は,段落【0007】ないし【0009】に記載された課題のいずれにも該当しない以上,審決の判断に,委任省令要件違反の誤りはなく,公平の原則に違反するとの主張も理由がない。
(22)取消事由22(実施可能要件違反に係る判断の誤り)に対しア原告は,「各リールについて,4コマ間隔である絵柄を配置し,この絵柄についての引き込みを全て最大4コマに設定すれば,遊技者は,各ストップボタンを適当に押しても,必ず,その絵柄が揃うことになる」との記載に基づき,「ゾロ目か否かですべての入賞役について一見して入賞か否かが判断できる」との審決の判断は,誤りであると主張する。
しかし,そのような特定事項が特許請求の範囲に記載されていない以上,原告の主張は,前提を欠き,失当である。
イまた,原告は,実施可能性の判断において,ゲームの難易度(目押しが困難等)を考慮するのは相当でないと主張する。
しかし,審決は,「難易度が高いゲーム機なので実施可能性が欠ける」と説示したものではない。すなわち,原告は,本件口頭審理において,「本件各発明は,メインリール又は表示列のいずれかを手掛かりとして,遊技者がストップボタンを押すことを前提としたスロットマシンである」と陳述したが(甲32),そのような陳述を前提として,審決は,本件特許明細書において,そのようなスロットマシンを容易に製造するのに十分な記載はないから,実現可能要件を欠くと判断したものであって,同判断に,誤りはない。
(23)取消事由23(サポート要件違反に係る判断の誤り)に対し原告は,特許法36条6項1号は,「発明が解決しようとする課題」欄にすべての請求項記載の発明の課題が具体的に記載されていなければならないことを求めるものではない上,本件特許明細書の段落【0010】には「本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり,演出の趣向性を向上させるスロットマシンを提供することを解決課題とする。」と明確に記載されていると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,「演出の趣向性を向上させる」という課題の解釈は,本件特許明細書の段落【0007】ないし【0009】に尽きており,従来の遊技機が奏する演出の趣向性についての問題点の所在についても,取消事由21に対する反論のとおりである。審決が,「請求項1〜9,11,13〜14,17〜19に係る発明は,段落0007〜0009に記載された課題を解決する手段を備えていない」(審決書61頁3行,4行)とした判断に,誤りはない。
(24)取消事由24(特許請求の範囲の記載要件違反に係る判断の誤り)に対し原告は,「図柄の配置は」「図柄と対応付けられている」とあり,「の配置」という文言が重複しているとの前提に立って,「図柄」と「図柄」が対応付けられているという趣旨を理解することが可能であると主張する。
しかし,原告が主張するように「の配置」という文言が重複すると解する根拠はなく,請求項17における「対応」とは,?@「図柄」と「図柄」との対応,又は,?A「図柄の配置」と「図柄の配置」との対応と解することが可能である。
上記?@及び?Aのいずれと解するかによって,本件発明17の発明の要旨が異なるから,本件特許請求の範囲の請求項17の記載は,不明確というべきである。したがって,特許請求の範囲の記載要件違反に係る審決の判断に,誤りはない。
第4当裁判所の判断当裁判所は,原告主張に係る取消事由1(本件発明2,10〜19),取消事由2(本件発明1〜19),取消事由21(本件発明1〜9,11,13,14),取消事由22(本件発明1〜19),取消事由23(本件発明1〜9,11,13,14,17〜19)及び取消事由24(本件発明17〜19)は,いずれも理由があるものと判断する。取消事由2は,本件発明のすべてに係る訂正許否の判断の誤りであって,進歩性の判断も明細書の記載要件に係る判断も本件訂正後の記載に基づいて検討すべきことになるところ,審決はその検討をしていないから,本件訂正前の本件発明と対比した審決の進歩性判断に係る取消事由3ないし20を検討するまでもなく,審決には,違法があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(審判手続の違背)について当裁判所は,請求項2,15,16,及び請求項2に従属する請求項10ないし19に係る本件発明については,審決が,無効審判の被請求人である原告に意見を申し立てる機会及び訂正請求の機会を付与することなく,請求人である被告の主張しない理由をもって,本件発明の進歩性を否定したので,審判の手続違背があり,上記各請求項に係る発明についての特許を無効とした審決には違法があると判断する。以下,その理由を順次述べる。
(1)審判手続等の経緯ア審判請求書の記載本件審判請求書(甲20)には,以下の記載がある。
「?A本件の請求項2に係る特許発明は,甲第1号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,・・・?N本件の請求項15に係る特許発明は,甲第1号証,甲第6号証,甲第7号証,甲第8号証および甲第9号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,・・・?O本件の請求項16に係る特許発明は,甲第1号証,甲第6号証,甲第7号証,甲第8号証および甲第9号証に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,・・・」なお,同請求書(甲20)の「7.請求の理由(1)請求の理由の要約」の欄(理由の要点(請求項2)〔2頁〕,(請求項15)〔5頁,6頁〕,(請求項16)〔6頁〕)のほか,「7(4)本件特許を無効にすべきである理由」の欄(?B(B)〔29頁,30頁〕,(0)〔48頁〜50頁〕,(P)〔50頁,51頁〕)にも,上記各請求項について,同趣旨の記載がある。
イ口頭審理陳述要領書の記載(請求人(被告)の無効理由に係る部分)平成19年11月2日付けの口頭審理陳述要領書(甲30)の「6.陳述の要領」(2頁1行〜12頁14行)には,次のとおりの記載がある。
「反論,補足又は甲第6号証を主引用例とした場合の本件発明の進歩性について・・・(2)請求項2の反論又は補足『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する第2制御手段』について甲第6号証【0250】には,『リール位置センサ8L,8C,8Rの検出信号を演出制御部100のCPU103にも供給するものとし,この検出信号に基づいて変動表示される図柄を調整してもよい。これにより,可変表示部71に表示される図柄と画像表示部178に表示される図柄とのズレを防ぐことができる。」旨の記載がある。
この記載によれば,メインリールの回転位置を検出するリール位置センサ8L,8C,8Rの検出信号によって,メインリールの回転を検知して,これによってサブリールの回転を制御することが開示されている。
・・・すなわち,メインリールの挙動と従属させる技術は公知技術であり,メインリールの回転を検知して第1処理を実行することは,単なる設計変更にすぎず当業者が適宜実行できた事項である。
更に,『リール3〜5と同時に回転する。』旨の記載から,メインリールが何らかの理由により回転の開始が遅延した場合であっても,メインリールが停止している状態で表示列が勝手に可変表示を開始するといったことがないことは示唆されている。
・・・・・・(15)請求項15の反論又は補足甲第1号証【0089】には,『継続回転演出の時間を主制御部300から副制御部400への送出する演出コマンドによって指定する。』旨の記載がある。
また,甲第6号証【0222】には,「遊技制御部45が処理を行い,また,リール制御部200がリール6L,6C,6Rの回転,停止を,さらにこれに合わせて演出制御部100が表示図柄の変動を含む演出を行っていくことで,ゲーム実行処理が終了する。ゲーム実行処理が終了した後は,遊技制御部45は,入賞判定処理(ステップS2),コイン払出処理(S3)を続けて行う。」旨が記載されている。
即ち,サブリールが停止した後にメダルが払い出されるように制御する技術が開示されている。
したがって,甲第6号証の技術でも,サブリールの可変表示が最終的に停止した後に遊技媒体を払出すことができるから,サブリールの演出の途中で遊技媒体が払い出されることがなく,遊技者を演出で楽しませることができる。
(16)請求項16の反論又は補足請求項16に記載の発明は,請求項15の発明に従属するところ,請求項15に記載の発明は,上述のように進歩性を有していないので,請求項16に記載の発明は進歩性を有しない。」ウ審決書の記載審決書の「2.無効理由(進歩性欠如)について」の欄には,次のとおりの記載がある。
「(2-2)本件発明2について・・・甲6には,・・・すなわち,第2制御手段が『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する』ことが示唆されている。したがって,甲1発明の副制御部400を,『前記第1処理において前記メインリールの回転を検知すると前記表示列の可変表示を開始させるように前記第2表示手段を制御する』ようになすことは,当業者にとって想到容易である。
作用効果についてそして本件発明2の作用効果について検討しても,甲1発明及び甲6に記載された技術から当業者が予測できる範囲を越える技術的意義のある作用効果が生じるとは認められない。
進歩性欠如の判断したがって,本件発明2は,甲1発明及び甲6に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。」(審決書32頁23行〜33頁25行)「(2-15)本件発明15について・・・記載事項11-1のとおり,甲11には,最終停止コマンドの通りに最後の回転リールを停止させ,必要に応じて(演出動作を持続させるような場合には)時間消費をした後に,当選状態が実行化された場合にはコインの払出し処理を行うことが記載されている。したがって,甲1発明において,最後のメインリールの回転を停止させた後も,サブリールによって演出動作を持続させるような場合には,時間消費をした後に,コインの払い出しを行うようになすことは,当業者が容易に想起できたものである。・・・作用効果についてそして本件発明15の作用効果も,甲1発明及び甲11に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。
進歩性欠如の判断したがって,本件発明15は,甲1発明及び甲11に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件の請求項15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。」(審決書53頁7行〜54頁下から7行)「(2-16)本件発明16について・・・作用効果についてそして本件発明16の作用効果も,甲1発明,甲11に記載された技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
進歩性欠如の判断したがって,本件発明16は,甲1発明,甲11に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件の請求項16に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。」(審決書54頁下から6行〜55頁23行)。
(2)手続違背についての判断上記認定した事実に基づいて,判断する。
ア請求項2(本件発明2)について(ア)審判手続等の経緯のアないしウによれば,請求項2に係る特許発明について,請求人(被告)から,甲1を引用例とした進歩性欠如を理由による無効審判が請求され,その後,請求人(被告)により,口頭審理手続において甲6を主引用例とした無効理由が主張された。
これに対して,審決は,甲1及び甲6に基づいて進歩性を欠くとの理由により無効とすべきであると判断した。
そうすると,審決の判断の基礎となった無効理由について,被請求人である原告には,意見を申し述べる機会(特許法134条2項,153条2項)及び訂正請求をする機会(同法134条の2第1項)が付与されていなかったものというべきである。
(イ)この点,平成19年11月2日付けの口頭審理において,「甲第6号証に記載された発明に甲第1号証に記載された事項を適用しても,少なくとも構成要件F2を導くことはできない。」(甲27,22頁最終行〜23頁2行)と,被請求人(原告)から陳述がされた旨の記載がある。
しかし,審判長が,その後の平成19年11月8日付けで,被請求人(原告)に対して発した無効理由通知書(甲33)における無効理由は,特許法36条4項1号,同条6項1号又は同条6項2号に関するもののみであり,甲6を追加した進歩性欠如に関するものはない。また,被請求人(原告)の平成19年12月12日付け意見書(甲34)及び訂正請求(甲35,36,37)においても,甲6を追加した進歩性欠如に関する反論はない。
また,進歩性欠如を根拠付ける証拠の追加は無効審判請求の理由の要旨の変更に当たるというべきところ,甲6を追加した進歩性欠如を請求の理由とする補正がされたこと,又はそのような要旨変更の補正を許可する審判長の決定(特許法131条の2第2項)がされたことについて,第1回口頭審理調書(甲32)に記載はなく(特許法施行規則47条の5),他に上記各事実を認めるに足りる証拠もない。
以上によれば,被請求人(原告)が,平成19年11月2日付けの口頭審理において,甲6を追加した進歩性欠如に対する意見を述べたとしても,被請求人(原告)に対する意見を申し述べる機会等を与えなかった手続瑕疵が治癒されたものと解することはできない。
(ウ)被告は,?@口頭審理陳述要領書(甲30)において無効理由の補充を行っており,また,審判請求書(甲20)には甲1ないし17が摘示されているから,原告は審判手続においてその内容を検討して防御をする機会が与えられていた,?A被告は,請求項2に係る発明の構成要件のうち,「第2制御手段」に対応する構成が甲6に開示されていると主張しており,他の構成要件についても,審判請求書において甲1に基づいて容易に想到し得る旨を主張していると解されるから,無効審判手続における請求項2に係る特許無効理由として,甲1と甲6との組合せに基づく進歩性の欠如を指摘していたと解すべきである旨主張する。
しかし,被告の上記主張は理由がない。すなわち,上記認定事実によれば,?@審判請求書(甲20)における甲1ないし17の摘示は,証拠及び引用例を包括的に羅列したにすぎず,無効理由を基礎となる論理付けの主張はされていないこと,?A前記のとおり,被請求人(原告)が口頭審理において,甲1と甲6との組合せについて,反論したことがあったとしても,その後,審判長が発した無効理由通知には甲1と甲6との組合せによる無効理由が記載されていないこと,被請求人(原告)も甲1と甲6の組合せに係る,その点の防御を全くしていないことに照らすならば,被告の上記主張は,到底採用することができない。
イ請求項15(本件発明15)及び請求項16(本件発明16)について(ア)審判手続等の経緯のアないしウによれば,請求項15及び16に係る各特許発明について,請求人(被告)から,甲1,6ないし9を引用例とした進歩性欠如を理由による無効審判が請求され,その後,請求人(被告)により,口頭審理手続において甲6に基づく反論又は補足がされた。
これに対して,審決は,本件発明15については甲1及び甲11に記載された技術に基づいて,本件発明16については甲1,甲11及び周知技術(特開2001-353286号公報[段落0028],特開2001-187200号公報[段落0132〜0135])に記載された技術及び周知技術に基づいて,いずれも進歩性を欠くとの理由により無効とすべきであると判断した。
(イ)本件発明15及び16の進歩性欠如を判断した審決の無効理由は,審判請求書に理由として記載されていない甲1及び甲11に記載された技術に基づくものである。しかも,審決の理由では,甲11について,当業者の技術常識等を示す事例として引用したものではなく,甲1の記載事項との組合せにより,本件発明15及び本件発明16の進歩性欠如を論理付けるものとして引用して,結論を導いている。
他方,甲11を追加した進歩性欠如に関する無効理由について,審判手続において,審判長から被請求人(原告)に対して通知はされていない。そうすると,新たな無効理由に対して,被請求人(原告)に意見を申し述べる機会(特許法134条2項,153条2項)及び訂正請求する機会(同法134条の2第1項)が与えられていたということはできない。
(ウ)被告は,審決は「この期間をその後に払出される遊技媒体の調整時間とすることは,当業者であれば容易に想到できる」との結論に至る論理過程を構成する一部として,甲11を引用したものであるなどとして,審決は,特許法153条2項にいう「当事者が申し立てない理由について審理したとき」に該当しない旨主張する。
しかし,審決が甲1発明と本件発明15及び16との相違点15-1として認定した事項について,容易想到を論理付けるために甲11が新たに引用されたのであるから,上記検討した審判手続をみれば,本件審決は,当事者が申し立てない理由について審理,判断をした点は,明らかである。したがって,被告の主張は失当である。
ウ小括上記のとおり,本件発明2(請求項2),本件発明15(請求項15)及び本件発明16(請求項16)については,原告(被請求人)が防御方法を講ずる正当な機会が付与されていたということはできない。
したがって,請求項2,請求項15,請求項16,及び,請求項2に従属する請求項10ないし19に係る本件発明については,審判手続の違背があったということができるから,これらの請求項に係る本件発明については,原告主張の取消事由1は,理由がある。
2取消事由2(訂正に係る判断の誤り)について当裁判所は,第2制御手段の選択的な実行について「前記抽選手段の抽選結果に基づいて」との事項を付加する本件訂正は,本件特許明細書等に記載されていたものといえるから,本件訂正を認めなかった審決には違法があり,審決はすべて取り消されるべきであると判断する。以下,その理由を述べる。
(1)本件特許明細書(甲18)の記載本件特許明細書には,次の記載がある。
【0090】そして,メインCPU31は,判定結果に基づいて内部抽選データISDを生成する。内部抽選データISDは8ビットのデータであって,第1ビットにBB賞,第2ビットにRB賞,第3ビットにベル賞,第4ビットにプラム賞,第5ビットにチェリー賞,第6ビットにリプレイ賞が各々割り当てられている。内部抽選によっていずれかの賞に当選すると,メイ.ンCPU31は該当するビットの値を『1』にし,該当しない場合にはビットの値を「0」にする。したがって,内部抽選データISDを参照すれば,当選しているかハズレているか,また当選している賞群を知ることができる。
【0120】次に,メインCPU31は,ステップS14で設定した賞群抽選テーブルTBL1を用いて内部抽選処理を実行し(ステップS15),当選した賞群又はハズレを示す当選フラグをセットする(ステップS16)。
内部抽選処理および当選フラグのセットは,次の手順で行われる。第1に,メインCPU31は,スタートレバーセンサ43の検出信号がアクティブとなったタイミングで,カウントデータCDをサンプリングしてサンプリングデータSDを取得する。第2に,メインCPU31は,賞群抽選テーブルを参照して,内部抽選データISDを生成する。例えば,図8に示す賞群抽選テーブルTBL11を用い,サンプリングデータSDの値が「150」であるものとすれば,内部抽選データISDは,BB賞の当選を示すものとなる。この場合,メインCPU31は,内部抽選データISDの第1ビットに当選フラグを内部抽選データISDにセットする。この後,メインCPU31はサブ基板30Bへ当選フラグ(内部抽選データISD)を送信する(ステップS17)。
【0148】図19にサブリール可変態様選択処理の処理内容を示す。この処理にあっては,サブCPU110は,内部抽選情報に基づいて第1処理用の可変表示パターンを選択する(ステップS110)。上述したように第1処理はメインリールの回転に対応してサブリールの表示態様を可変させるものであるが,メインリールの回転に対応した可変表示には,各種のパターンがある。例えば,サブリールの回転速度をメインリールの回転速度に近付けるよう制御する制御パターン,あるいは,サブリールの回転位相をメインリールの回転位相に同期させて制御する制御パターン,さらに,回転位相の同期にはサブリールとメインリールの回転位相が1コマズレで回転する場合や,2コマズレで回転する場合が含まれる。
【0152】図20は,左サブリールの始動処理の内容を示すフローチャートである。なお,中・右サブリールにおいても同様の始動処理が実行される。サブCPU55は,内部抽選情報に基づいて,左サブリール処理用の可変表示パターンを選択し(ステップS120),選択された可変表示パターンに基づいて可変表示を制御する(ステップS121)。可変表示パターンとは,表示内容の可変態様を意味する。
【0153】図17に戻り説明を続ける。ステップS98において,サブCPU55は,全てのサブリールが始動したか否かを判定して,全てのサブリールの回転が始動するまで,ステップS92からステップS97までの処理を繰り返す。
【0154】この後,サブCPU55は,図18に示すステップS99に処理を進め,左メインリール停止フラグが『1』であるか否かを判定して(ステップS99),当該フラグが『1』であれば左サブリールの停止処理を実行する(ステップS100)。サブCPU55は,中サブリール及び右サブリールについても同様に,各メインリール停止フラグを参照して停止処理を実行する(ステップS101〜S104)。各メインリール停止フラグは,メインCPU31から送信される停止ボタン番号に基づいて生成される。即ち,左リールストップボタン7aの押下を指示する停止ボタン番号がサブ基板30Bに入力されると,サブCPU55は左メインリール停止フラグを『1』にセットし,入力された停止ボタン番号が中リールストップボタン7bの押下を指示する場合は,中メインリール停止フラグを『1』にセットし,入力された停止ボタン番号が右リールストップボタン7cの押下を指示する場合は,右メインリール停止フラグを『1』にセットする。本実施形態において,サブリール始動処理によるサブリールの回転制御は,上述した第1処理に相当する一方,サブリール停止処理によるサブリールの回転制御は上述した第2処理に相当する。そして,各リールストップボタンの操作に応じて,上述した第1処理と第2処理との切り換えが実行される。
【0155】図21は,左サブリールの停止処理の内容を示すフローチャートである。この図に示すように,サブCPU55は,入力された停止情報に基づいて第2処理用の可変表示パターンを選択する(ステップS130)。
ここで,停止情報は,左メインリールの停止位置を示す情報であって,例えば,基準点からの駆動パルス数やあるいは上述した停止図柄番号が該当する。また,停止情報はメイン基板30AのメインCPU31によって生成され,サブ基板30Bに送信される。ここで,第2処理用の可変表示パターンとしては,第2処理を実行しないことも含めて,複数の可変表示パターンが用意されている。
【0156】次に,サブCPU55は,ステップS130で選択した可変表示パターンに基づいて,第2処理を実行するか否かを判定する(ステップS131)。第2処理を実行する場合には,第2処理用の可変表示パターンで可変表示を開始する(ステップS132)。そして,停止情報に基づいて,入賞又は可能性があるか否かを判定する(ステップS133)。この際,内部抽選情報が参照される。即ち,内部抽選情報がある当選役を指示する場合には,メインリールにおいて当該役を構成する図柄を入賞ライン上に引き込むことが可能か否かを判定する。また,入賞か否かの判定は,左リールストップボタン7aの操作が最後の停止操作である場合に実行され,入賞の可能性の判定は,最初から最後の直前,即ち,第1番目及び第2番目の停止操作において実行される。
【0215】図31(A)の例は,サブCPU55に開始情報Aが入力されてから停止操作情報Bが入力されるまでの期間T1において,サブCPU55は第1処理又は第2処理を実行する。開始情報Aは,メインリールの回転開始を直接的又は間接的に示す情報であって,メインリールの回転を検知することによって得られた始動フラグであってもよいし,又は,スタートレバーセンサ43の検出信号,若しくは,検出信号をメインCPU31で検知して得たコマンドであってもよい。また,停止操作情報Bは,左・中・右リールストップボタンセンサ44〜46からの停止指示信号44a,45a,46a,あるいは,メインCPU31が停止指示信号44a,45a,46aを検知して得た停止ボタン番号であってもよい。
【0216】例えば,点線で示すようにサブリールを正転させる場合には,期間T1における処理は第1処理となる。第1処理を選択するか第2処理を選択するかは,サブCPU55が制御プログラムに従って決定する。例えば,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を実行してもよい。より具体的には,所定の小役に対応した当選フラグ,BB当選フラグ,又はRB当選フラグが該当する。
【0217】プレイヤーが停止ボタン7a〜7cを操作すると,メインCPU31は対応するメインリールの回転を停止させるように停止制御を開始すると共に,停止ボタン番号をサブCPU55に送信する。サブCPU55はこれを検知して,サブリールを逆転させるように制御を開始する。
【0218】期間T2においては,メインリールの回転が停止し,サブリールは逆転している。従って,期間T2において,サブCPU55は,第2処理を実行する。なお,この例では,サブリールの回転を,正転から逆転に連続して移行させたが,一旦,サブリールの回転を停止させ,その後,逆転させてもよい。
【0219】次に,図31(B)に,期間T1において,サブCPU55が第1処理又は第2処理を選択して実行し,停止操作情報Bの入力を契機に可変表示を停止させるようにサブリールを制御する例を示す。サブCPU55は開始情報Aが供給されると第1処理又は第2処理を選択して実行し,停止操作情報Bの入力を契機にサブリールを停止させるようにリール駆動モータを制御する。例えば,図31(B)に点線で示すようにサブリールが逆転する場合には,サブCPU55は,第2処理を選択する。
(2)判断ア上記によれば,メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて内部抽選データISDの当選フラグがセットされ,また,サブCPU55に開始情報Aが入力されてから停止操作情報Bが入力されるまでの期間T1(すなわち,メインリールの回転中の期間)において,第1処理を選択するか第2処理を選択するかを,サブCPU55が制御プログラムに従って決定することが記載されているということができる。また,このサブCPU55が第1処理を選択するか第2処理を選択するかを決定する処理の例示として,メインCPU31から送信される内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよいことが記載されているということができる。
イそして,「メインCPU31が実行した内部抽選処理の結果に基づいて当選フラグがセットされた内部抽選データISD」が「抽選手段の抽選結果」に相当するといえることに照らせば,本件特許明細書(甲18,段落【0216】)の「内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされている場合に第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分に,「抽選手段の抽選結果に基づいて第2処理を選択的に実行する」との事項が明確に示されていると解される。
そして,本件特許明細書(甲18)には,第1処理を選択して実行することを妨げる記載はないのであるから,「第2処理を選択して実行してもよい」との記載部分を見た当業者は,第1処理の選択と第2処理の選択を決定する処理に関して,「第1処理を選択して実行してもよい」と理解するのが自然である。
そうすると,「抽選手段の抽選結果基づいて第1処理を選択的に実行する」ことが,本件特許明細書(甲18)に,実質的に記載されているということができる。
ウ被告の反論について(ア)被告は,段落【0216】に記載される「当選のフラグがセットされている場合に・・・してもよい。」は,当たりの場合とハズレの場合の双方を含めた「抽選手段の抽選結果」が記載されていない旨主張する。
しかし,前記記載事項(段落【0120】の「当選した賞群又はハズレを示す当選フラグをセットする(ステップS16)」との記載)からすれば,当選フラグのセットは,当たりの場合とハズレの場合の両方を含むものということができるから,被告の上記主張は失当である。
(イ)また,被告は,特許請求の範囲において「抽選手段」というからには,抽選のための何らかのルールに基づいて第1処理と第2処理のいずれかを選択する手段を意味するはずであるが,このようなルールに基づく選択手段によって第1処理と第2処理を選択することを示す記載は,本件特許明細書に見いだすことができない旨主張する。
しかし,メインCPU31が行う内部抽選処理は,本件特許明細書の段落【0085】ないし【0089】に記載されているから,被告の上記主張は失当である。
(ウ)さらに,被告は,本件特許明細書の段落【0216】は,審決のとおり,「サブCPU55を制御する手法」を例示したにすぎず,第1処理又は第2処理のいずれかの選択手法の例を示したものではない旨主張する。
しかし,本件特許明細書の段落【0216】には,サブCPU55が,制御プログラムに従って,内部抽選データISDに含まれる所定の当選フラグがセットされていることに基づいて,第1処理を選択するか第2処理を選択するかを決定することが記載されているということができるから,被告の主張は失当である。
(3)小括上記によれば,本件訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができるから,これに反して,特許法134条の2第5項において準用する同法126条3項の規定に適合しないので,本件訂正を認めることができないとした審決の判断は,誤りである。
そして,本件訂正は,第2制御手段の選択的な実行について,「前記抽選手段の抽選結果に基づいて」との事項を付加するものであるが,「従来のスロットマシンにおいては,役に入賞する各リールの停止態様は,同一種類の図柄が揃うことを条件とするので,サブの画像表示部を中央部に配置し,メインの可変表示部を周辺部に配置しても,プレイヤーは可変表示部を一見してゲームの結果を知ることができる。このため,サブの画像表示部でどのような演出をしようとも,演出の面白みにかけるといった問題があった」(甲18,段落【0008】)ことなどから,サブリールの演出の趣向性を向上させるスロットマシンを提供しようとするのが本件発明の目的であること(甲18,段落【0010】)からすると,これらの訂正事項は本件発明を特徴付けるものとされているということができる。
そうすると,これらの請求項(請求項1,2,3,9)及びこれらに従属する請求項(請求項4〜8,10〜19)について,本件発明の特徴に関連する上記訂正事項についての判断を欠いたまま本件発明のすべてについて進歩性の判断をしたといえるから,本件訂正を認めなかった審決の判断の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものであるということができる。
したがって,請求項1ないし19の発明に係る原告主張の取消事由2には,理由がある。
3取消事由21(委任省令要件違反に関する判断の誤り)について事案にかんがみ,取消事由3ないし20に先立って,取消事由21について判断する。
当裁判所は,委任省令違反があるとした審決の判断は誤りであると判断する。以下,その理由を述べる。
審決は,特許法36条4項1号に規定する委任省令要件について,「本件の明細書,段落0007〜0009には,本件発明が解決しようとする具体的な課題が記載されている。」とした上で,「請求項1〜9,11,13〜14に係る発明は,段落0007〜0009に記載された課題の何れにも該当しないものである。」とし,「本件の明細書は,請求項1〜9,11,13〜14に係る発明について,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものではないから,経済産業省令で定めるところにより記載したものであるとは認められない。」と判断した(審決書57頁30行〜58頁32行)。
しかし,委任省令違反があるとした審決の上記判断は,誤りである。
すなわち,特許法36条4項は,「発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と定め,同条同項1号において,「一経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と定めている。そして,上記の「経済産業省令」に当たる特許法施行規則24条の2は,「特許法第三十6条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と定めている。
特許法36条4項1号において,「通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」(いわゆる「実施可能要件」)を規定した趣旨は,通常の知識を有する者(当業者)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したといえない発明に対して,独占権を付与することになるならば,発明を公開したことの代償として独占権を付与するという特許制度の趣旨に反する結果を生ずるからである。
ところで,そのような,いわゆる実施可能要件を定めた特許法36条4項1号の下において,特許法施行規則24条の2が,(明細書には)「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を記載すべきとしたのは,特許法が,いわゆる実施可能要件を設けた前記の趣旨の実効性を,実質的に確保するためであるということができる。そのような趣旨に照らすならば,特許法施行規則24条の2の規定した「技術上の意義を理解するために必要な事項」は,実施可能要件の有無を判断するに当たっての間接的な判断要素として活用されるよう解釈適用されるべきであって,実施可能要件と別個の独立した要件として,形式的に解釈適用されるべきではない。
もとより,特許法施行規則24条の2の求める事項は,発明の詳細な説明中の「課題及びその解決手段」に記載される必要もなく,当業者が発明の技術上の意義を当然に理解できれば足りるのであって,明示的な記載は必要ない。
なお,特許庁の審査基準(第?T部第1章3.3委任省令要件の欄)においては,「(1)委任省令の趣旨・・・こうした理由から,委任省令では発明がどのような技術的貢献をもたらすものかが理解でき,また審査や調査に役立つように,『当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項』を記載すべきものとし,記載事項の例として課題及びその解決手段を掲げている。」,「(??)『発明が解決しようとする課題』としては,請求項に係る発明が解決しようとする技術上の課題を少なくとも一つ記載する。『その解決手段』としては,請求項に係る発明によってどのように当該課題が解決されたかについて説明する。」「(??)ただし,発明が解決しようとする課題について明示的な記載がなくても,従来の技術や発明の有利な効果等についての説明を含む明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,当業者が,発明が解決しようとする課題を理解することができる場合については,課題の記載を求めないこととする(技術常識に属する従来技術から課題が理解できる場合もある点に留意する)。また,そのようにして理解した課題から,実施例等の記載を参酌しつつ請求項に係る発明を見た結果,その発明がどのように課題を解決したかを理解することができる場合は,課題とその解決手段という形式の記載を求めないこととする。」とされている。
審決は,請求項1ないし9,11,13及び14に係る発明が,本件特許明細書(甲18)の【発明が解決しようとする課題】の欄(段落【0007】〜【0009】)に記載された課題のいずれにも該当しないことのみをもって,「経済産業省令で定めるところにより記載したものであるとは認められない。」と判断した。審決の上記判断は誤りである。
なお,本件特許明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて,当業者であれば,サブリールの演出の趣向性を向上させるという課題を理解することができる。
請求項1〜9,11,13及び14について,委任省令違反があるとした審決の判断が誤りである旨の原告主張の取消事由21には,理由がある。
4取消事由22(実施可能要件違反に関する判断の誤り)について当裁判所は,請求項1ないし19に係る発明は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に,明細書に記載されていないとした審決の判断は誤りであると判断する。以下,その理由を述べる。
(1)本件特許明細書(甲18)の記載本件特許明細書には,図面とともに,次の記載がある。
「【0060】<1-2:役と図柄の関係>図4に,左・中・右リールRa1,Ra2,Ra3及び左・中・右リールRb1,Rb2,Rb3に表示される図柄の一例を示す。この図に示すように各リールには,21個・6種類の図柄が表示されており,各図柄には図柄番号PN=1〜21が割り当てられている。以下の説明では,左・中・右を区別する必要がない場合には,第1表示部10Aの左・中・右リールRa1,Ra2,Ra3を単にメインリールと称し,第2表示部10Bの左・中・右リールRb1,Rb2,Rb3を単にサブリールと称する。
【0061】図5に,サブリールの図柄と,メインリールの図柄との対応関係を示す。
この図に示すようにサブリールのある図柄は,左・中・右リールRa1,Ra2,Ra3ごとに異なる図柄と対応付けられている。例えば,サブリールの図柄『7』は,左リールRa1の図柄『1』,中リールRa2の図柄『3』,右リールRa3の図柄『4』と各々対応付けられている。
【0062】図柄の組合せは,遊技価値を与える「役」と無価値な「ハズレ」とに大別される。そして,役は,表示列たる各メインリールが停止した状態において,有効な入賞ライン上に停止した図柄の組合せのうち,所定の態様のものをいう。この例では,メインリールの図柄がサブリールの図柄に対応付けられているから,各サブリールが停止した状態において,第2表示部10Bの有効な入賞ライン上に停止した図柄の組合せのうち,所定の態様のものは役に該当する。
【0063】図6に,役とサブリール及びメインリールの図柄の関係を示す。本実施形態では,役として,BB役,RB役,プラム役,ベル役,チェリー役,及びリプレイ役を採用する。役を構成する図柄が有効な入賞ライン上に揃うことを入賞といい,入賞した役に応じた枚数のメダルが払い出される。メダルは,ゲームを開始する際にスロットマシン1に投入するものであり,プレイヤーがゲームを継続するために必要である。つまり,メダルはゲームの継続等の遊技価値を有する遊技媒体といえる。
【0064】図6に示すように,メインリールの役を構成する図柄は,第1表示部10Aの複数の入賞ラインL1〜L5のうち賭けの対象となる有効化された入賞ライン上に予め定められた異なる種類の図柄が並ぶ態様であり,サブリールの役を構成する図柄は,第2表示部10Bの複数の入賞ラインL1〜L5のうち有効化された入賞ライン上に同じ種類の図柄が並ぶ態様である。本実施形態の役には次のものがある。
【0065】1)BB役 この役は,左リールRa1,Rb1,中リールRa2,Rb2,右リールRa3,Rb3における図柄番号PN=21の図柄の組合せであり,サブリールの停止態様が「7-7-7」,メインリールの停止態様が「1-3-4」である。
【0066】2)RB役 この役は,左リールRa1,Rb1,中リールRa2,Rb2,右リールRa3,Rb3における図柄番号PN=5の図柄の組合せであり,サブリールの停止態様が「BAR-BAR-BAR」,メインリールの停止態様が「2-5-3」である。
【0067】3)ベル役 この役は,左リールRa1,Rb1における図柄番号PN=16,12,9または2の図柄,中リールRa2,Rb2における図柄番号PN=20,17,13,9または3の図柄,右リールRa3,Rb3における図柄番号PN=18,13,9,または1の図柄の組合せであり,サブリールの停止態様が「ベル-ベル-ベル」,メインリールの停止態様が「5-6-7」である。
【0068】5)プラム役 この役は,左リールRa1,Rb1における図柄番号PN=18,15,9または2の図柄,中リールRa2,Rb2における図柄番号PN=18,14,10,6または1の図柄,右リールRa3,Rb3における図柄番号PN=19,14,10,6または2の図柄の組合せであり,サブリールの停止態様が「プラム-プラム-プラム」,メインリールの停止態様が「4-1-2」である。
【0069】6)チェリー役 この役は,左リールRa1,Rb1における図柄番号PN=20,13または6の図柄が入賞ラインL1〜L5のうち有効化されたものに停止すればよく,他のリールの停止位置とは無関係である。即ち,サブリールの停止態様が「チェリー-?-?」,メインリールの停止態様が「6-?-?」である。
【0070】7)リプレイ役 この役は,左リールRa1,Rb1における図柄番号PN=19,17,10または3の図柄,中リールRa2,Rb2における図柄番号PN=19,15,11,7または2の図柄,右リールRa3,Rb3における図柄番号PN=20,15,11,7または3の図柄の組合せであり,サブリールの停止態様が「リプレイ-リプレイ-リプレイ」,メインリールの停止態様が「7-4-1」である。リプレイ役が成立してもメダルの払い出しはないが,再遊技ができる。再遊技とは,新たにメダルを投入することなく再びゲームを行うことをいう。」(2)判断ア上記の記載事項によれば,役を構成する図柄は,メインリールRa1,Ra2,Ra3では有効化された入賞ライン上に異なる種類の図柄が並ぶ態様であり,この時,サブリール(表示列)Rb1,Rb2,Rb3では有効化された入賞ライン上に同じ種類の図柄が並ぶ態様である。
遊技者がリールストップボタンを操作することに基づいてメインリール及びサブリールが停止することは明らかであるところ,入賞ライン上に役を構成する図柄を並べて停止させることは,サブリール(表示列)を見ながらリールストップボタンを操作することによって可能であるといえる。
他方,メインリールの役を構成する図柄は入賞ライン上に異なる種類の図柄が並ぶ態様であるから,メインリールを見て目押し操作を行うことは容易ではないということができるものの,熟練した遊技者であれば,入賞役の図柄のパターンを記憶して操作するなど,メインリールを見て目押し操作を行うこともできるといえる。
そうすると,メインリール又は表示列のいずれかを手掛かりとして遊技者がストップボタンを押すことを前提としたスロットマシンをどのように実現するのかについて,本件特許明細書に記載されているということができる。
イ被告は,審決は,難易度が高いゲーム機なので実施可能性が欠けると判断したものではなく,「スロットマシン」(各請求項)を容易に製造等するのに十分な記載が明細書に存在することが,特許法上の要件とされていることを前提として,本件特許明細書について,そのような意味での実現可能要件を欠くと判断したものであると主張する。
しかし,審決は,「本件実施例のスロットマシンでは,メインリールを手掛かりとして競技者が最後にどの図柄を停止させるかの判断が,相当に困難であるといえる」等と述べるとおり,競技者におけるスロットマシンの操作が困難であることを前提として,当該スロットマシンを実施することができる程度に明細書の記載がされてないと判断していることが明らかである(審決書58頁下から5行〜59頁27行)。したがって,被告の主張は,その前提において誤りがあるということができるから,被告の上記主張は採用することができない。
ウ小括以上によれば,請求項1ないし19に係る本件発明は,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に,明細書に記載されていないとして,特許法36条4第1号に基づいて,無効とした審決の判断には誤りがあったということができる。
したがって,請求項1ないし19に係る本件発明について,原告主張の取消事由22には理由がある。
5取消事由23(サポート要件違反に関する判断の誤り)について当裁判所は,請求項1ないし9,11,13及び14,17ないし19に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求したものであるとした審決の判断は誤りであると判断する。以下,その理由を述べる。
上記3(取消事由21)で検討したとおり,発明の課題は,必ずしも明細書の特定の欄に記載されていなければならないとはいえないから,本件特許明細書につき,段落【0007】ないし【0009】に記載された課題を解決する手段を備えていないことを理由に,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求したものであるということはできない。
そうすると,請求項1ないし9,11,13,14及び17ないし19に係る本件発明は,特許法36条6項1号に規定する「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載していない」特許出願に対してされたものとして無効であるとした審決の判断には誤りがあるということができる。
したがって,請求項1ないし9,11,13,14及び17ないし19に係る本件発明について,原告主張の取消事由23には理由がある。
6取消事由24(特許請求の範囲の記載要件違反に関する判断の誤り)について当裁判所は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の要件に違反するとした審決の判断は誤りであると判断する。以下,その理由を述べる。
(1)請求項17を見ると,「図柄の配置」が「図柄」と対応付けられているとの記載は,?@「図柄の配置」が「図柄の配置」に対応すると記載すべきところの誤記であるか,?A「図柄」が「図柄」に対応すると記載すべきところの誤記であるのか,その意味が不明確であり,その技術的意義を特許請求の範囲の記載のみからは一義的に明確に理解することができない。
(2)本件特許明細書の記載そこで,請求項17の上記記載事項の技術的意義を理解するに当たって,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するに,本件特許明細書(甲18)には,次のような記載がある。
「【0041】また,前記第1表示手段は前記メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)を複数備え,前記停止操作手段(7a,7b,7c)は,前記メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)のそれぞれに対応して設けられており,前記第2表示手段(10B)の前記表示列は,前記メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)のそれぞれに対応して設けられ,前記各表示列の図柄の配置は,前記各メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)毎に異なる種類の図柄と対応付けられていることが好ましい。
【0042】この発明によれば,各表示列は複数のメインリールに各々対応付けて設けられているから,表示列の数とメインリールの数は一致する。そして,表示列の図柄の配置は,メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている。例えば,メインリールの図柄が『1』,『2』,『3』で構成されており,表示列の図柄が『A』,「B],『C』で構成されており,メインリール数が『3』であるものとする。この場合,『表示列の図柄の配置は,各メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている』とは,例えば,第1番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『A』,『2』と『B』,『3』と『C』が対応しており,第2番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『B』,『2』と『C』,『3』と『A』が対応しており,第3番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『C』,『2』と『A』,『3』と『B』が対応していることをいう。
【0043】このような対応付を行うと,各表示列が停止した状態で同一種類の図柄が.並ぶ場合,各メインリールは異なる種類の図柄が並ぶことになる。そして,払い出しの対象となる図柄の並びは,第2表示手段では同一種類,第1表示手段では異なる種類となるので,プレイヤーの関心を第2表示手段に惹きつけることができる。上述したように第2表示手段は,多様な演出を行うことができるので,ゲームの面白さを大幅に向上させることができる。さらに,第1表示手段の可変表示が停止した状態では,一見して入賞したことが判断できないので,プレイヤーは第1表示手段の可変表示が停止した後に行う第2表示手段の演出を楽しむことができる。
【0044】また,前記各メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)に表示される複数種類の図柄は,異なる数字の図形の組,同一形状で色彩が異なる図形の組,角の形状が異なる図形の組,色彩同一で形状が異なる図形の組,又は,所定形状の図形を異なる角度回転させた図形の組のうち,いずれかの図形の組によって構成されることが好ましい。また,前記各メインリール(Ra1,Ra2,Ra3)に表示される複数種類の図柄は,前記各表示列に表示される複数種類の図柄と全て異なることが好ましい。これらの場合は,プレイヤー.が第1表示手段を一見しても入賞したか否かを分かり難くすることができ,プレイヤーの関心を第2表示手段に惹きつけることができる。
【0045】また,本発明においてスロットマシンには,第1表示手段が機械的なリールによって構成されるパチスロ機の他,第1表示手段が画像表示装置によって構成されるビデオスロットも含まれる。」「【0061】図5に,サブリールの図柄と,メインリールの図柄との対応関係を示す。
この図に示すようにサブリールのある図柄は,左・中・右リールRa1,Ra2,Ra3毎に異なる図柄と対応付けられている。例えば,サブリールの図柄『7』は,左リールRa1の図柄『1』,中リールRa2の図柄『3』,右リールRa3の図柄『4』と各々対応付けられている。」(3)判断上記の記載事項によれば,「表示列の図柄の配置は,各メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている」との事項については,「第1番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『A』,『2』と『B』,『3』と『C』が対応しており,第2番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『B』,『2』と『C』,『3』と『A』が対応しており,第3番目のメインリールと表示列の組において,『1』と『C』,『2』と『A』,『3』と『B』が対応していることをいう。」との例示をもって記載されており,表示列の「図柄」がメインリールの「図柄」に対応付けられることを意味するものと定義されている。また,図5に示される実施例に係る記載においても,表示列に相当するサブリールの図柄と,メインリールの図柄とが対応付けられていることが記載されている(段落【0061】参照)。
このような本件特許明細書の詳細な説明の記載を参酌すると,請求項17における「前記各表示列の図柄の配置は,前記各メインリール毎に異なる種類の図柄と対応付けられている」との記載事項については,「図柄」が「図柄」に対応付けられているとの意味であると理解することができるから,特許を受けようとする発明が不明確であるとはいえない。
したがって,請求項17の上記記載事項の意味が不明確であるから請求項17及びそれを引用する請求項18及び19に係る本件発明は,特許法36条6項2号の要件に違反し,無効であるとした審決の判断は,誤りであるといえる。
よって,請求項17ないし19に係る本件発明について,原告主張の取消事由24は理由がある。
7結論以上の検討によれば,原告主張の取消事由1(本件発明2,10〜19),取消事由2(本件発明1〜19),取消事由21(本件発明1〜9,11,13,14),取消事由22(本件発明1〜19),取消事由23(本件発明1〜9,11,13,14,17〜19)及び取消事由24(本件発明17〜19)は,いずれも理由がある。取消事由2は,上記括弧書のとおり本件発明のすべてに係る訂正許否の判断の誤りであって,進歩性の判断も明細書の記載要件に係る判断も本件訂正後の記載に基づいて検討すべきことになるところ,審決はその検討をしていないから,本件訂正前の本件発明と対比した審決の進歩性判断に係る取消事由3ないし20を検討するまでもなく,審決は取消しを免れず,原告の審決取消請求は理由がある。
よって,原告の請求を認容して審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 上田洋幸
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