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審判番号(事件番号) データベース 権利
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関連ワード 冒認出願(冒認) /  特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  考案者 /  職務発明 /  発明行為 /  無償の通常実施権 /  相当の対価(相当な対価) /  協議 /  外国の特許 /  準拠法 /  産業上利用(29条1項柱書) /  自然法則 /  技術的思想 /  有用性 /  創作性(創作) /  物の発明 /  方法の発明 /  製造方法 /  使用方法 /  新規性 /  共同開発 /  共同発明 /  29条1項3号 /  頒布された刊行物 /  容易に実施 /  公衆に利用可能 /  インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  寄せ集め /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  29条の2(拡大された先願の地位) /  技術的範囲 /  出願公開 /  同一の発明 /  特許の有効性 /  試行錯誤 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  遡及 /  翻訳文 /  発明の利用 /  補償金請求権 /  パリ条約 /  優先権 /  共同出願 /  分割出願 /  実質的に同一 /  共有 /  着想 /  警告 /  模倣 /  悪意 /  善意 /  時効 /  クレーム /  ライセンス /  抵触 /  意匠権 /  消尽 /  援用権(援用) /  権利の濫用(権利濫用) /  存続期間 /  特許出願日 /  優先日 /  特許料(維持年金) /  参酌 /  文言解釈 /  技術的意義 /  均等 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  禁反言 /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  属地主義 /  間接侵害 /  構成要件 /  専用品 /  方法の使用 /  のみ用いる /  物の生産に用いる物 /  一般に流通 /  課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  算定方法 /  販売数量(販売数) /  販売利益 /  実施料 /  相当因果関係 /  不法行為(民法709条) /  共同発明者 /  同意 /  実施権 /  専用実施権 /  通常実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  設定登録 /  混同 /  対価 /  クロスライセンス /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  前置審査 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  要旨変更 /  合理的な理由 /  審決確定(審決が確定) /  不実施 /  異議申立 /  追認 / 
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事件 平成 19年 (ネ) 10056号 不当利得返還等請求控訴事件
一審原告 X1外1名
一審被告 ブラザー工業株式会社 知的財産高等裁判所 第2部 「閲覧制限及び仮名処理にともない,目次に記載のページ数は判決原本とは異な ります 」。 目次 4
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/06/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 5第1 控訴の趣旨第2 事案の概要 6第3 当事者の主張 101 一審被告 10…………………………………………………… (1) 本件各特許権が無効であること 10…………………………………… (2) 一審被告は本件各発明を実施していないこと 60………………………………………………………… (3) 超過売上高の算定について 68…………………………………………………………… (4) 仮想実施料率について 124……………………………………………… (5) 第三者からの実施料収入について 127……………………………………… (6) 発明に対する一審被告の貢献度について 137………………………………………………… (7) 共同発明者間の寄与度について 148…………………………………………………… (8) 相当対価の支払時期について 151………………………………………………………………… (9) 消滅時効について 1522 一審原告ら 154………………………………………………… (1) 本件各特許権は有効であること 154…………………………………… (2) 一審被告は本件各発明を実施していること 198……………………………………………………… (3) 超過売上高の算定について 200………………………………………………………………… (4) 利益率等について 239……………………………………………… (5) 第三者からの実施料収入について 242……………………………………… (6) 発明に対する一審被告の貢献度について 250………………………………………………… (7) 共同発明者間の寄与度について 260…………………………………………………… (8) 相当対価の支払時期について 261………………………………………………………………… (9) 消滅時効について 261第4 当裁判所の判断 2631 本件における基礎的事実関係 2632 本件発明報酬請求と特許無効事由との関係 2963 本件各発明により一審被告が受けるべき利益──自己実施分 319………………………………………………………………………………… (1) 総論 319…………………………………… (2) 一審被告による本件各発明自己実施の有無 321……………………………………………………………………… (3) 売上高の算定 330………………………………………………………………… (4) 超過売上高の割合 335-3-……………………………………………………………… (5) 本件における利益率 378……………………………………………………………… (6) 本件各発明の寄与度 379‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ア 一審被告保有権利についての検討 380‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ イ 寄与度の算定 4664 本件各発明により一審被告が受けるべき利益──第三者実施分 471………………………………………………………………………………… (1) 総論 471………………………………………………… (2) キングジム社からの実施料収入 472……………………………………………………… (3) カシオ社からの実施料収入 474……………………………………………………… (4) ダイモ社からの実施料収入 4745 本件各発明に対する一審被告の貢献度 4806 共同発明者間における一審原告らの寄与度 4847 相当対価の支払時期 4868 消滅時効 4879 相当対価額と既払金控除 48910 結論 493別紙 認容金額一覧表 605別紙 本件被告製品の売上高(自己実施分) 606別紙 ラミネート発明の相当対価算定表(自己実施分) 608別紙 第1発明の相当対価算定表(自己実施分) 610別紙 第3発明の相当対価算定表(自己実施分) 611別紙 キングジム社実施分 612別紙 カシオ社実施分 613別紙 ダイモ社実施分 614別紙 相当対価の金額のまとめ 616-4-平成19年(ネ)第10056号 不当利得返還等請求控訴事件(原審・東京地裁平成17年 ワ 第11007号 以下 ブラザー工業株式会社控訴に係る部分 東 () 。 , 〔京地裁平成19年(ワネ)第1092号〕を「A事件 ,X 1及び X 2控訴に係る部 」分〔東京地裁平成19年(ワネ)第1110号〕を「B事件」という )。
口頭弁論終結日 平成21年1月22日判決A事件控訴人・B事件被控訴人 ブラザー工業株式会社(一審被告)訴訟代理人弁護士 熊 倉 禎 男同 佐尾重久同 富岡英次同 田中伸一郎同 相良由里子同水沼淳同 小和田 敦 子訴訟復代理人弁護士 木 内 加 奈 子A事件被控訴人・B事件控訴人 X1(一審原告)A事件被控訴人・B事件控訴人 X2(一審原告)両名訴訟代理人弁護士 加 藤 洪 太 郎同 夏目武志主文1 A事件控訴人ブラザー工業株式会社の控訴を棄却する。
2 B事件控訴人 X 1・同 X 2の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
-5-(1) 一審被告は,一審原告 X 1に対し,3188万2587円及び「」「 () 」 別紙 認容金額一覧表 の 表1 認容金額一覧表 一審原告 X 1記載の「支払時期」ごとの各「合計」に対する各「支払時期」から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 一審被告は,一審原告 X 2に対し,2449万5226円及び「」「 () 」 別紙 認容金額一覧表 の 表2 認容金額一覧表 一審原告 X 2記載の「支払時期」ごとの各「合計」に対する各「支払時期」から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 一審原告 X 1・同 X 2のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その2を一審原告らの負担とし,その余を一審被告の負担とする。
4 この判決の第2項(1)及び(2)は仮に執行することができる。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 一審被告ブラザー工業株式会社(A事件)(1) 原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。
(2) 一審原告らの請求をいずれも棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,一審原告らの負担とする。
2 一審原告X1,同X2(B事件)(1) 原判決の予備的請求に係る部分のうち,一審原告ら敗訴部分を取り消す。
(2)ア 一審被告は,一審原告 X 1に対し,原判決で支払を命じられた主文第2項(2)の金額のほかに,1億7816万1858円(元本合計2億円)及び原判決別紙1記載の「請求金額」欄の「支払時期」ごとの各内金に対する各「支払時期」から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 一審被告は,一審原告 X 2に対し,原判決で支払を命じられた主文第2項(3)の金額のほかに,1億8479万1869円(元本合計2億円)及び原判決別紙1記載の「請求金額」欄の「支払時期」ごとの各内金に対する各「支払時期」から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも,一審被告の負担とする。
事案の概要
【以下,略称は原判決の例による 】。
1 一審原告 X 1は,千葉大学工学部工業意匠科を卒業して昭和58年4月に一審被告に入社し,平成12年5月に退社するまでの間,市場調査部門であるライフリサーチセンター(LRセンター ・商品事業企画部等において,市場調 )査及びそれに基づく開発商品コンセプトの提言勧告等の業務に従事していた。
上記退社後は,自ら設立した会社を経営する傍ら,名古屋市中小企業振興センターの経営診断員等も務めている。
一審原告 X 2は,東北大学法学部を卒業して昭和61年4月に一審被告に入社し,現在まで一審被告の従業者の地位にある。その間,昭和61年7月から昭和63年9月までは情報機器第3事業部企画管理グループ等においてマーケティング活動及び商品開発・生産販売に関する基本方針の企画・立案業務等に従事し,その後,6年間のアメリカ駐在等を経て,平成18年からはQM推進部においてミシンの品質管理等を担当している。
一審被告は,昭和9年1月15日に設立された株式会社で,裁縫用ミシン機械,電気機械器具,電子機械器具,事務用機器等の製造販売等を主たる業務としている。
2 一審被告の従業者であった一審原告 X 1及び同 X 2は,昭和61年ないし同62年にかけて,単独又は他の発明者と共同で,ラベルライターに関する下記(, 「 」 発明又は考案 以下 下記(1)〜(8)の発明ないし考案を総称して 本件各発明ということがある )を含む発明又は考案をし,そのころ上記発明又は考案に 。
ついての特許又は実用新案登録を受ける権利を一審被告に譲渡した。
記(1) 第1発明出願日 昭和61年11月14日登録日 平成10年12月18日特許番号 第2139579号名称 簡易レタリングテープ作製機発明者 X 1(2) 第2発明出願日 昭和62年11月20日登録日 平成9年11月21日特許番号 第2133451号名称 反転印字を行うテープ印字装置発明者 X 1,X 2,A,B,C,D(3) 第3発明出願日 昭和62年12月10日登録日 平成9年4月18日特許番号 第2128329号発明の名称 印字位置の変更可能な印字装置発明者 前記(2)と同じ(4) 第5発明出願日 昭和62年12月21日登録日 平成6年1月27日特許番号 第1818963号発明の名称 記録装置発明者 前記(2)と同じ(5) 海外特許1出願日 1988(昭和63)年10月27日登録日 1992(平成4)年9月2日登録番号 欧州特許0315369号名称 保護媒体で保護された像を記録する装置発明者 前記(2)と同じ対象国 ドイツ,フランス,イギリス,イタリア(6) 海外特許2出願日 1991(平成3)年8月22日登録日 1992(平成4)年12月8日登録番号 米国特許5168814号名称 印字媒体を印字の長手方向に搬送する装置発明者 前記(2)と同じ(7) 海外特許3出願日 1988(昭和63)年10月24日登録日 1991(平成3)年4月23日登録番号 米国特許5009530号名称 反転した像を記録し,保護媒体で保護することを特徴とした記録装置発明者 前記(2)と同じ(8) 第3考案出願日 昭和62年11月18日登録日 平成6年6月21日実用新案登録番号 第2021118号考案の名称 テープ印字装置用テープカセット考案者 前記(2)と同じ3 本件訴訟は,ラベルライターに関する本件各発明(前記2(1)ないし(8))及び第4考案の発明者又は考案者である一審原告らが,原審においては,(1)主位的に,本件各発明は職務発明又は職務考案に当たらないから,一審被告への特許等を出願する権利の承継は無効であり,特許権等の実施等により被告が得た利益は不当利得に当たると主張してその返還を求め,(2)予備的に,一審原告らが一審被告に対し,前記2(1)ないし(7)につき平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3,4項(以下「旧35条3,4項」ということがある ,前記2(8)及び第4考案につき実用新案法11条3項に各基づき,一 。)審原告らが一審被告に承継させた職務発明又は職務考案について,相当対価の一部として各2億円及びこれに対する原判決別紙「請求金額一覧表」の各内金の各支払時期から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
〈注〉平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3,4項は,次のとおり。
3項:従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4項:前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。
4 原審の東京地裁は,平成19年4月18日,?@本件各発明は職務発明又は職,, 務考案に当たるとして主位的請求をいずれも棄却し ?A予備的請求については平成18年4月1日以降の一審被告の売上高に基づく相当対価及び同日以降得られた実施料収入に基づく相当対価に係る訴えを将来の給付の訴えの要件を欠くとしていずれも却下し,その余の現在請求について一審原告 X 1につき相当対価2183万8142円・一審原告 X 2につき相当対価1520万8131円及びこれらに対する原判決別紙「認容金額一覧表」の各「支払時期」から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その。, 。 余を棄却した そこで これを不服とする当事者双方が本件各控訴を提起した5 当審に至り一審原告らは,不当利得返還請求に係る主位的請求を取り下げたので,当審における訴訟物は,前記2(1)ないし(8)及び第4考案の特許又は考案に関する特許法旧35条3,4項又は実用新案法11条3項に基づく報酬対価及び遅延損害金請求である。
なお,一審被告は,一審原告らに対し,一審原告らのなした発明等に対する実績報奨として,原判決別紙「実績報奨の支払状況」記載のとおり一審原告 X1につき20万0900円,一審原告 X 2につき19万9300円を支払済みである。
,(), 6 当審における争点は 原判決記載の争点2ないし7 争点1は撤回 のほか5年の商事消滅時効が適用されるか(争点7の拡大)である。
当事者の主張
当事者双方の主張は,当審における主張として次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄記載のとおりであるから,これを引用する。
1 一審被告(1) 本件各特許権が無効であることア 無効事由を有する特許と独占の利益の関係に関する原判決の判断の誤り(ア) 原判決は,第3発明,第5発明,海外特許1の請求項1〜3,5〜7には無効事由があると認定したにもかかわらず,無効事由を含む特許等について実質的な独占の利益を認定している。
しかし,無効事由を有する特許による第三者に対する権利行使に関し裁判所は終始厳しく制限し(最高裁判所平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁,いわゆるキルビー判決 ,最近で)は特許法104条の3の導入により制定法上その権利の行使を制限するに至っている。実際に近時の侵害事件においては,極めて高い割合で裁判所が無効の判断をし,特許権者の請求を棄却していることは周知のとおりである。無効事由を有する特許権の行使は,このように制限され,その独占権の行使が裁判所において認められないものである。特許法旧35条対価請求は,当事者は異なるが,発明者たる従業員等と特許を受ける権利又は特許権の承継者である使用者等の間における当該権利に関する権利行使という側面を有するものである。したがって,特許法旧35条も,承継されるのは「特許を受ける権利」又は「特許権」であることを明示しており,当然ながら将来独占権の対象となる権利について規定したことは疑いの余地がない。そもそも,無効である特許発明に関連して一審被告が利益を得たという理由により,発明者が使用者である一審被告にその利益の配分を求めることは,法規範上も許されるものではない。その場合の使用者の請求が無効な特許による不当な利得というのであれば,発明者の請求も不当な利得の配分を求めるものであり,法的正義に反するものである。
(イ) 論者によっては,特許法旧35条4項において「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」と規定して「その特許により」と規定していないことを,特許性のない発明でも対価請求の対象となると論ずる者もいるようである。しかし,特許法旧35条4項は「前項の対価の額は」という文言で始まり 「前項」である旧35条3項は「特許を受け ,る権利若しくは特許を承継させ,又は使用者等のため専用使用権を設定したときは」と規定されているのであって,単に「発明を承継させたと」。「」「」 きは とは規定されていない 同条3項の上記 特許 や 専用使用権が有効な特許を指すことは,特許権が審判において無効とされた場合に「」() は 初めから存在しなかったものとみなす との規定 特許法125条から明らかである。
(ウ) 原判決は,無効審判や侵害訴訟で無効と判断されたとの主張がないことを根拠とするが,そもそも無効審判の提起という事態は侵害訴訟を提起され,あるいは警告に対して法的な手続をとらざるを得ない状態において初めて生ずるものである以上,無効審判や侵害事件で無効が主張されたことがないから有効性を前提に「独占の利益」を認めるという論理には著しい飛躍があり合理性が全くない。原判決の論理に従えば,無効の可能性のある特許や発明は通常は権利行使の対象とされないから権利の有効性を争われることがないが,そのためにかえって対価請求において高い評価を受けることになりかねない。そもそも,旧35条3項,4項に基づく対価請求訴訟において「独占の利益」という概念を裁判所が使用してきたのは,特許法35条1項通常実施権を超え,市場において当該技術を独占できることによる法的な評価であって,単に事実上他社が実施を妨げられている状態を意味してきたものではないはずである。
また,特許法2条1項において「発明」は 「自然法則を利用した技 ,術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義され,特許法29条の特許性を有するものをいうとは定義されていない。しかしながら,特許法は全体として「特許性のある発明の保護」に関して規定しているのであって,そうでない規定は,無効となる特許に係る発明,拒絶されるべき特許出願に係る発明に関するものであり,こうした規定の結果ないし効果は,特許による独占権を否定する効果につながるものである。
したがって,無効性を有する特許による「独占の利益」ということ自体が論理の破綻を示すものであり,特許法の解釈として整合性を著しく欠如する不合理な解釈である。
(エ) ちなみに大阪地方裁判所平成19年3月27日判決は,無効事由がある事例においては「独占の利益の算定が困難」として,独占の利益を認めていない。
もっとも,かかる無効性を有する特許発明については,付随的な価値又は低い評価をすることもあり得るが,原判決は,第5発明の無効性を認めながら,第2発明と組み合わせた「ラミネート発明」という概念を使用し,様々に「ラミネート発明」の価値を高く評価する認定を行い,自己実施において最大30%に及ぶ超過売上げを認定しているのであり,到底無効性を考慮したとはいえず 「無効性のあるものは低い評価 ,とする」のとは全く逆の認定を行っているのである。
(オ) 第3発明と海外特許1については,とりわけ上記の矛盾が著しい。
すなわち,原判決は第3発明の無効性を認定しながら,自己実施及びキングジム社からの実施料収入に関し単独で「独占の利益」を認めており(原判決267頁及び表2-3,表1-3 ,また海外特許1のほとん )どの発明の無効性を認定し,かつ当事者であるダイモ社と一審被告がドイツにおける訴訟の根拠にも和解契約の対象特許にもしていない海外特許1を,ラミネート発明として単独でダイモ社からのテープカセットに係る実施料収入における「独占の利益」の根拠としているものである。
(カ) したがって,原判決は,無効性のある特許につき付随的な評価を行うのではなく,それ自体単独で「独占の利益」があるものとした点において,明らかな誤りがある。
その結果,原判決は,一審原告各自に対し,無効性のある第3発明について●●円(両名合計で●●円,ダイモ社から海外特許1について )(ラミネート発明の名に藉口して)●●円(両名合計で●●円)を誤って認定し,ラミネート発明の自己実施に関しては各自●●円(両名合計で●●円)を誤って認定したものである。
イ 本件各特許権の無効(ア) 第1発明の無効a 進歩性の欠如による無効(a) 第1発明は,特開昭55-156980号公報(乙7の1刊行物 ,特開昭61-211076号公報(乙7の2刊行物 ,特開昭 ))57-4797号公報(乙20刊行物 ,特開昭61-14316 )3号公報(乙18刊行物)を組み合わせることにより容易に発明できるから無効である。
(b) そもそも第1発明は,新規製品を検討するために設けられた合同チームが検討した7つのコンセプトの一つであり,当時,どのような商品のイメージが考えられるかという点が検討されていた過程において,こんな商品があったらという願望をアイデア提案として出されたものにすぎず,技術的にどのようにしたら具体的に実施可能であるかとの点の検討は一切されていない。
そして,第1発明の明細書(甲2の1)第2欄〔従来技術及び問題点〕に記載されているように,公知技術として,レタリングシートそのものは存在していたし,テープに所望の文字を印字することのできるラベル作製機は既に存在していたが,その両者を組み合わせてレタリング用(インレタ用)の文字をテープに印字するようにしたものは存在しなかった旨記載しているのである。その上で,明細書(甲2の1)第3欄〔発明の目的〕に「本発明…の目的とするところは,簡単に単語や熟語等の編集ができ,かつ,その編集したものを被転写物に簡単に転写できるレタリングテープを作製する簡易レタリングテープ作製機を提供することにある 」とし 〔問題点 。,を解決するための手段〕の欄では「本発明の容易(注: 簡易』の 『誤植)レタリングテープ作製機は,文字や記号等を入力する為の入力部と,その入力部により入力された文字や記号等の文字データを記憶するメモリ部と,前記メモリ部に記憶された文字データに基づき,その文字データの示す文字や記号等の形状を反転させた鏡像をインクリボンを介してレタリングテープ面に印字する印字手段とを備えている 」と記載してある。すなわち,入力部,メモリ部,反 。
転印字,インクリボンを介して印字する印字手段が慣用技術であることは明らかであり,ただ,それとレタリングテープとを組み合わせたことが第1発明の要点にすぎないのである(なお,第2発明において後記するように,慣用技術であることは多くの文献等によって裏付けることができる 。この点は,本件に係る発明記述書(乙 。)10)の7枚目の「?B主な特徴」の箇所に,手書きで「文書作成機能に関してはNP-100と同様ですとあることから 一審原告 X 」,1自身も,入力・編集・印字機能が一審被告保有の公知技術であることを認識していたことは明らかであり,発明のポイントは,従来技術を利用してレタリング用テープ(インレタ用テープ)を作製することにある。そして,第1発明の公開された当初の特許請求の範囲は,上記〔問題点を解決するための手段〕と同じ記載である。
(c) 上記の点について補足説明すると,第1発明の特許請求の範囲,()「」, のうち 原判決が認定した構成要件 4頁 の 1A の入力部や「1B」のメモリ部や 「1C」の表示部を有する,テープに所望 ,の文字を印字することのできるラベル作製機は,第2発明の無効事由に関して後述するとおり,既に公知の慣用技術として存在していたものである。この点,第1発明の審査手続きにおける異議申立の公知資料として提出されたのは特開昭55-156980号公報(乙7の1刊行物)であるが,これは数多い公知資料の一つにすぎない。また,第1発明の構成要件「1E」のインクリボンや 「1,F」のインクリボンを介して印字する印字手段,すなわちサーマルヘッド及び鏡像(反転)印字を行う印字方法もまた,同様に公知の慣用技術である。さらに,レタリングテープないしレタリングテープを作製する機械については,特開昭57-4797号公報(乙20刊行物)などで公知である。なお一審原告らは,乙20刊行物について,外側を切り取ると内側が抜け落ちてしまうなどと主張するが,この乙20刊行物の装置20は,同明細書5頁左上欄18行〜右上欄1行に記載されているように,米国特許3914775号と同様である。その米国特許の日本対応出願である特開昭53-35735号公報(乙22の2刊行物)によれば,透明な部材の一部が,() 高反射被覆体で覆われて 文字を形成するための窓 光の通過部分が形成されていることは明らかであり,一審原告らが主張するように抜け落ちることなどない。ちなみに,乙20刊行物には,インクリボンを用いて任意の文字を「離型促進剤」上に形成して,インレタテープ(第1発明における「レタリングテープ )を作製する装 」置が記載されており,一審原告らが第1発明の審査過程で異議申立人により引用例とされたと指摘する特開昭60-225793号公報とは異なる内容が開示されている。すなわち,乙20刊行物は,審判を含め審査過程においては全く考慮されていないものである。
以上のとおり,第1発明はその構成要件中「1G」の「カッタ」を除くとすべて慣用技術の組合せにすぎない。仮に,第1発明において組み合わせたものが公知技術として存在しなければ新規性はあるにしても,通常のテープをレタリングテープに置き換えることは当業者にとっては容易なことであるから,進歩性があるといえるか極めて疑問である。また,前記のとおり,第1発明はアイデア提案にすぎないから,一審原告 X 1が具体的に実施するに際しての技術検討を行い,克服すべき技術的課題が存在し,それを解決するため,。 に新規な発明をしたならともかくそのような事実はないのである(d) 第1発明の異議申立てにおいては,公知資料として特開昭61-211076号公報(乙7の2刊行物)が提出された。同公報には,転写紙に所望の文字を左右反転して印字することができる転写紙の製造方法が開示されている。この公報では,小ロット多品種の製造に適し,アイロンを用いて対象物に加圧熱転写する技術が開示されており,第1発明には,熱転写でなく加圧のみによる乾式転写を限定する構成要件は存在しないことに留意すべきである。
転写紙をレタリングテープに置き換えることは当業者にとっては極めて容易なことである。すなわち,第1発明が目的とした,編集が容易なインレタ用転写媒体(第1発明における「レタリングテープ )を作製する装置は公知技術として存在するのであり,インレ 」タ用転写媒体(第1発明における「レタリングテープ )としてテ 」ープを利用し,かつ,離型剤を用いるインレタテープ作製装置(第1発明における「簡易レタリングテープ作製機 )も乙20刊行物 」のように公知技術として存在するのである。
一審被告は,この異議申立てに対し,もはや単純な組み合わせでは登録ができないと考え,明細書に記載されている範囲内で3度にわたり特許請求の範囲を補正したが,異議決定(乙6)において,加熱を伴わない転写技術,転写紙の離型剤を塗布すること,転写紙背面からの押圧で転写すること及びインクリボンを着脱自在とすることは,いずれも慣用技術であるとして一蹴され,特許を受けることができないと断定されている。すなわち,第1発明は従来技術の組合せのアイデアにすぎず,具体的な技術的課題を解決したものではないから,当該組合せが当業者にとって困難性がなければ,新規性進歩性は否定される運命にあった。
しかし,拒絶査定不服審判において,特許請求の範囲の構成要素「1G」のカッタを加えて補正をしたところ,補正で加えたカッタは,異議において提出されていた特開昭61-143163号公報(乙18刊行物)に開示されているにもかかわらず,なぜか登録査定となった。この公報は異議決定(乙6)の理由とされておらず,そのため拒絶査定不服審判の審判請求理由補充書(乙187)には添付されていなかったことから,前置審査を担当した審査官が異議決定の理由となった審判請求書に添付された特開昭55-156980号公報(乙7の1刊行物)及び特開昭61-211076号公報(乙7の2刊行物)のみを参照して審理をした可能性があるが,異議決定の理由に記載されていない資料であっても出願前に公知であれば,進歩性新規性に影響を与えることはいうまでもない。
, (e) 第1発明のポイントである各技術の組合せに困難性がなければ第1発明は無効としか評価できないところ,上記のとおり,カッタ以外の構成要件慣用技術として乙20刊行物,乙7の2刊行物にすべて開示されており,乙7の2刊行物記載の転写紙製作装置に,乙20刊行物に開示されている技術である印字媒体として離型剤を有するテープを利用することを持ち込むことに困難性はない。
しかるに,原判決は 「被告は,第1発明の構成要件は乙7の1 ,刊行物,乙7の2刊行物及び乙18刊行物にほとんど開示されており,無効の可能性が高いから,その構成要件は限定的に解釈する必要がある旨主張するが,離型促進剤の点を直ちに慣用技術であると認めることはできないから,第1発明を無効の可能性が高いものと,。 」 認めることはできず 被告の上記主張は採用することができない(174頁)と判示する。すなわち,原判決は,離型促進剤以外の構成要件については公知であるが,離型促進剤に新規性があるから無効ではないと判断しているのである。しかし,この判断は誤っている。上記のとおり,異議決定(乙6)において,特許庁の審査官は,特段の公知資料をも提示しないまま 「転写紙の離型剤を塗布 ,すること,…は慣用技術である」と一蹴しており,原判決はその点。, を見逃しているのである 原判決が指摘する離型促進剤については()「 」 特開昭57-4797号公報 乙20刊行物 の 付着性材料15にも開示されている。そのほか,特開昭61-128263号公報(乙152刊行物:3頁左上欄第18行以下:転写材料用シートにおけるシリコン等の離形層 特開昭58-203087号公報 乙 ),(153刊行物:2頁左下欄7行以下:シート本体1に対する複写層3の剥離を極めて容易にするシリコーン層)にも開示されている。
このように,当業者にとってはインスタントレタリングに関する離型促進剤は従来からの慣用技術である。
しかも,第1発明の公開公報(甲2の1)には 「離型促進剤」 ,について 「これらのテープ基材の印字ヘッド9との対向面にシリ ,コン等の離型促進剤を塗布したものが好ましい (4欄4行)とあ 」るだけで 「離型促進剤」の成分,塗布の方法,作用効果などの記 ,載は一切ない。上記のような記載でも,当業者にとって「実施をすることができる程度に明確かつ十分 (特許法36条4項1号)で 」あると判断されているのであるから 「離型促進剤」が慣用技術で ,あることは明らかであり,新規性進歩性のある技術ではない。
なお,離型促進剤が公知な技術であることは,一審原告らが原審の準備書面において,市販のインレタ購入シートを購入して観察してみると,樹脂製のシート面に文字の転写を促進するようなコーティング剤が塗布されている旨主張しているとおり,一審原告らの自認するところであり,当事者間に争いのない事実である。それにもかかわらず 「離型促進剤の点を直ちに慣用技術であると認めるこ ,とはできない」などと判断することは許されない。
ちなみに,第1発明が無効であることは,キングジム社からも指摘されている(甲135:3〜4頁 。),,, (f) なお テープを切断する装置については 実際の機種としては「KROY-80 (乙106)などがあり,公報としては,上記 」特開昭61-143163号公報(乙18刊行物)のほか,特公昭47-16105号公報(乙162 ,特公昭54-8094号公 )報(乙219 ,USP3698296(乙220)などに開示さ )れている。
b 第1発明が出願前公知であること一審原告 X 1は,昭和61年5月ころに第1発明を完成させ,その後昭和61年7月19日から27日にかけて当該発明に係るインレタ作製機の受容性調査を行っており,その結果をまとめたものが 「パ,ーソナルワープロコンセプト評価の為のグループインタビュー報告書 (乙245)である。これによると,同調査においては,第1発 」明に係る発明社内登録用紙(乙4の1,乙10)に開示されたコンセプトシート「ワードプロッター Q」と同じコンセプトシートが10グループ合計62名に対して呈示され,これに基づきグループインタビュー調査が行われている。
そうすると,上記コンセプトシート「ワードプロッター Q」に記載されている技術内容は,第1発明の出願前に不特定多数の人に開示されており,その時点において公知技術となっており,また第1発明のその他の構成(離型促進剤及びカッタ)は周知技術であるから,第1発明が新規性あるいは進歩性を欠くことは明らかである。
c 冒認による無効一審原告 X 1の本人尋問における供述全体からすれば,第1発明において離型促進剤を使用することが可能か否かを具体的に検討し解決したのは E であるというのであるから,第1発明の発明者は,E であり一審原告 X 1ではないことになる。したがって,第1発明は冒認出願であり無効である。
(イ) 第2発明の無効a 第2発明が慣用技術により構成されていること第2発明は,以下のとおり,乙11の1刊行物(特開昭59-95)( ) 169号公報 と乙11の5刊行物特開昭53-70700号公報及び他の公報を組み合わせれば容易に発明することができるから,進歩性を欠き無効である。
(a) 構成要素中の技術第2発明に係る特許請求の範囲の構成要素を分析してみると ハ,「ウジング内に設けたテープ印字装置」であり 「第一のテープと第 ,二のテープを圧着した」いわゆる「ラミネートテープ」を使用し,「サーマルヘッドとインクリボン及びインクリボン巻取り機構を含む印字機構」があり,当該印字機構により「反転印字」するものであり 「第一のテープを送る送り機構が存在し,かつハウジングの ,外へ排出する」ものであり 「第二のテープ基材を着色し,それが ,第一のテープに印字された文字等の背景」となっているという各技。, , 術から構成されていることは明らかである そして 以下のとおりこれらの技術はいずれも当業者にとって慣用技術であり,個々の技術について新規性進歩性は全くない。
(b) ハウジング内に設けたテープ印字装置ハウジング内に設けたテープ印字装置は,慣用技術であり,実際に販売されていた機種として,ダイモ社製「ダイモライター(乙164・添付資料1,2 ,クロイ社製「KROY-80 (乙10 )」」6 ,バリトロニクス社製「マーリン (乙107 ,同「マーリン )」)エクスプレス (乙15〜17 ,アンリツ社製「レーベルマスタ」 」)(乙179)などがある 「マーリン (乙107)及び「マーリン 。」エクスプレス (乙15〜17)においては,編集機能と編集をす 」るための制御機構も内蔵されている。
他方,公開公報としては,乙7の1刊行物(特開昭55-156980号公報,乙7の1・乙11の2 ,乙13の4刊行物(特開 )昭61-37447号公報 ,乙18刊行物(特開昭61-143 )163号公報 ,実開昭62-15946号公報(乙72 ,実開昭 ))62-109958号公報(乙88 ,特公昭47-16105号 )公報(乙162 ,特公昭54-8094号公報(乙219 ,US ))P3698296 乙220 特公昭50-40968号公報 乙 () ,(230)がある。いずれも内部に,入力部,編集機能,制御装置,印字装置などが具備されていて,テープに印字をする印字装置である。
以上のとおり,ハウジング内にテープ印字装置を設ける技術は,,。 当業者にとっては慣用技術でありその点に新規性進歩性はない(c) ラミネートタイプのテープとテープの貼合せ・ ラミネートタイプのテープには,各種のものがある。そして,ラミネートタイプのテープは,被印字テープとそれを保護するテープとを貼り合わせて作製されているのであるから,被印字テープ 第2発明における第一のテープ とそれを保護するテープ 第 ()(2発明における第二のテープ)を圧着して貼り合わせることは極めて当然のことである。
・ 第2発明のラミネートテープは,透明フィルムの裏面に印刷層を設け,その印刷層を両面粘着テープを圧着することにより貼り合わせ,印刷層が透明フィルムのみを通して見えるようにしたラミネートテープであるが,全く同一のラミネートテープは,乙11の5刊行物,特開昭53-60600号公報(乙19の1 ,)実開昭62-33080号公報(乙165)などがある。
・ 透明テープの裏面側に設けられた粘着層上に印刷層が配置され,これに台紙を貼り付けて,表面側から見て正像視認可能なタイプの貼付け用ラミネートラベルがある。乙13の4刊行物,U() ,() SP4068028 乙19の2 テープ・ロード 乙178などである。
・ 貼付けラベルではないが,透明フィルム(テープ,シート)の裏面側に印刷がなされ,表面側から見て正像視認可能なタイプのラミネートラベルがある。乙11の1刊行物,実開昭59-83547号公報 乙11の4 特開昭58-11180号公報 乙 () ,(83 ,特開昭51-11611号公報(乙166 ,プリンタに ))よるプラスチックフィルムへの印字などである。
・ 正像印刷面を透明フィルム(テープ,シート)で被覆したタイプの貼付け用ラミネートラベルがある。実開昭59-129556号公報(乙154 ,実開昭54-160598号公報(乙1 )67 ,特開昭61-206766号公報(乙168 ,実公昭4 ))6-25843号公報(乙169 ,特公昭51-42480号 )公報(乙170 ,特公昭54-8094号公報(乙219 ,U ))SP3698296(乙220)などである。
・ このようにラミネートテープにも各種のものがあり,ラミネートテープを複数のテープを圧着して貼り合わせて製造する技術はいずれも慣用技術である。そして,これらすべてのラミネートテープにおいて,原判決が判示しているところの「優れた耐久性」を有していることは明らかであり,第2発明に開示されているラミネートテープのタイプのみが有している作用効果ではない。そして,いずれのタイプのラミネートテープを使用するかは設計上の問題にすぎない。本件においては 「P-touch」開発に ,おいて,インレタとテープ印字の双方が可能なものを検討し,インレタでは反転印字が欠かせないから,テープ印字においてもラミネートテープに対する反転印字を採用したため,上記のとおりのラミネートテープを採用したのである。
・ 乙11の1刊行物や乙11の5刊行物などにおいては,テープを圧着して貼り合わせるローラが回転しながら,かつ,貼り合わせる力も加えているのであるから,その回転・貼り合わせる力によりテープが送られる。したがって,圧着ローラがテープ送りも行っていることは開示されている。
そして,前記ハウジング内に設けたテープ印字装置において,第一のテープと第二のテープを圧着して貼り合わせてラミネートテープを作製して使用することは,当業者にとっては慣用技術の組合せにすぎず,新規性進歩性は全くない。
(d) サーマルヘッド印字とインクリボン・インクリボン巻取り機構サーマルヘッドを使用して印字を行うこと,その際にインクリボンを使用すること,インクリボンは使用後巻き取るための巻取り機構が設けられていること,以上は慣用技術である。
テープに「サーマルヘッドを使用して印字を行うこと」については 実際に販売されていた機種として マーリンエクスプレス 乙 ,「」 (,) ,「」 (), 15〜17 乙21の1 レーベルマスタ 乙179 があり公報として,乙7の1刊行物,乙18刊行物,特公昭50-40968号公報(乙230)などがある。
サーマルヘッドは熱を加えて,熱によりインクを被印字物に印字するものであり,そのためインクが必要で,インクは通常インクリボンに付着させて使用し,連続体であるインクリボンは使用後に巻き取らなければならないから,インクリボン巻取り機構が必要となる。すなわち,サーマルヘッド,インクリボン,インクリボン巻取り機構は,一体となった技術である。実際に販売されていた機種では 「EP-20 (乙27 「ピコワード NP-100 (乙2 ,」) ,」8 「マーリンエクスプレス (乙15〜17,乙21の1 「レ ),」 ) ,ーベルマスタ (乙179 「ピコワード 5100 (乙30)な 」) ,」どで使用されている。また公開公報としては,乙7の1刊行物,乙11の1刊行物,特開昭61-31260号公報(乙11の3 ,)特開昭59-70079号公報(乙13の6 ,実開昭62-15 )(),() , 946号公報 乙72 特開昭58-11180号公報 乙83実開昭62-109958号公報(乙88)などがある。
以上要するに,サーマルヘッドとインクリボンを使用して印字すること,及び使用したインクリボンを巻き取る機構を設けることは古くからある慣用技術である。ハウジング内に設けられたテープ印字装置において,ラミネートテープを印字する際にサーマルヘッドを使用することは設計上の問題にすぎず,なんらの新規性進歩性はなく,他の印字方法と置き換えることも当業者においては自明のことである。
(e) 反転印字反転印字をする技術も慣用技術である。反転印字は,OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用紙やインレタ,あるいはラミネートテープに裏面から印字するなど,ニーズは多種あり,そのため反転印字を行う技術は慣用技術となっている。
実際に販売されていた機種としてはマーリンエクスプレス 乙 ,「」 (16刊行物41頁,乙17)や「ピコワード 5100 (乙30 」及び乙55の添付資料10の318頁 」がある。)公開公報においては,乙7の2刊行物(特開昭61-211076号公報 乙11の1刊行物 特開昭61-31260号公報 乙 ),, (11の3 ,実開昭59-83547号公報(乙11の4 ,乙11 ))の5刊行物,特開昭61-202852号公報(乙13の3 ,乙)13の4刊行物,乙13の5刊行物(特開昭59-131478号公報 ,特開昭59-70079号公報(乙13の6 ,特開昭55 ))-3983号公報(乙13の7 ,特開昭53-60600号公報 )(乙19の1 ,USP4068028(乙19の2 ,乙20刊行 ))物(特開昭57-4797号公報 ,特開昭58-11180号公 )報(乙83)など多数存在する。
反転印字する技術は,当業者にとっては慣用技術であることは明らかで,ハウジング内に設けられたテープ印字装置において,反転印字を使用するかあるいは正常印字を使用するかは,設計上の問題にすぎず,なんら新規性進歩性を有することではない。
(f) テープ送り機構とハウジング外への排出ハウジング内にテープ印字装置を設けた場合,印字するテープをハウジング内で送るためのテープ送り機構を設けることが必須・不可欠である。そして,印字後のテープの処理については,ハウジング内で巻き取る方法と,ハウジング外へ排出する方法の2通りがあること,いずれを採用するかは設計思想にすぎないことも明らかである。したがって,ハウジング内にテープ印字装置を設けた場合においては,テープ送り機構及びハウジング外への排出は必須・不可欠の慣用技術である。
実際に販売されている機種としては 「レーベルマスタ (乙17 ,」9 「マーリン (乙107,乙164・添付資料6 「マーリン ),」 ) 」,エクスプレス (乙15〜17,乙21の1 」などがある。 」)公開公報としては,乙13の4刊行物,乙18刊行物,実開昭62-15946号公報(乙72 ,実開昭62-109958号公 )報(乙88 ,実開昭59-129556号公報(乙154 ,特公 ))昭47-16105号公報(乙162 ,特開昭61-20676 )6号公報(乙168 ,特公昭54-8094号公報(乙219 , ))USP3698296(乙220 ,USP2661289(乙2 )31)など多数ある。
ハウジング内にテープ印字装置を設けた場合には,テープ送り機構でテープを送り,かつ,ハウジング外へ排出することは必須・不可欠なことであるから,それらが慣用技術であり,それを設けることには新規性進歩性がないことは明らかである。
(g) テープの着色と背景・ テープの着色テープを着色する方法として,?@粘着テープの基材となるフィ,, ルム等に着色印刷する方法 ?A着色された粘着剤を塗布する方法?B粘着テープの基材となるフィルムそのものを着色する方法があることは公知の事実である。
この点について補足すると,両面テープについてのテープの着色の公知技術としては,実開昭58-140149号公報(乙135 ,特開昭50-74637号公報(乙181 ,特開昭50 ))-150743号公報(乙182 ,特開昭51-19049号 )公報(乙183)がある。なお,実開昭62-33080号公報(乙165)における基材が紙の場合にはその紙の色が反映されることは自明である。
・ 「第一のテープ」の背景貼り合わせたテープを使用した場合に 「第一のテープ」が透 ,明であれば 「第一のテープ」の表面から見た場合は 「第二のテ ,,ープ」が背景となるのは論理必然のことであって,特許法2条で規定されているところの技術ではない。そして,テープ印字装置を使用してテープに印字する場合において,ラミネートテープを使用し 「第一のテープ」の裏面に反転印字する場合には,印字 ,した文字等が読めるようにするため「第一のテープ」が透明であることが求められる。そうすると 「第一のテープ」に貼り合わ ,された「第二のテープ」が「第一のテープ」の表面から見たときに背景となることは必然であり,特許法2条で規定されているところの技術ではない。
そして,乙11の5刊行物の最終頁左欄5行以下に 「全ての ,実施例にわたり,粘着層は透明又は不透明又は着色されたもののいずれの粘着層も使用する事が可能である。透明な基材に不透明又は着色された粘着層を用いることにより,粘着層がラベルの地色の一色として作用し,印刷インクの節約となる 」と明記され 。
ていて,粘着層を透明な基材に対する背景とする思想が開示されている。ここで「印刷インクの節約となる」と記載されている趣旨は,基材を直接印刷することとも考えられるが,基材を着色するための印刷インクの節約のために粘着層を着色するとの趣旨である。
仮に 「第一のテープ」の背景として「第二のテープ」を着色 ,することが技術として評価されても,そのような技術は公知であり,新規性進歩性はない。
(h) 進歩性の欠如以上のとおり,第2発明の特許請求の範囲に記載されている各要件はすべて慣用技術であって新規性がなく,それらの組合せにより特段の作用効果が生じてもいないから進歩性も存在せず,無効であることは明らかである。
b 原判決の誤り(a) 原判決の判示原判決は,第2発明と乙11の1刊行物(特開昭59-95169号公報 の公知技術とをまず対比し その後乙11の5刊行物 特 ),(開昭53-70700号公報)の公知技術と対比して,いずれも新規性進歩性を有すると判断する。公知技術との対比をするのであ,, れば 公知技術全体としての組合せの容易性も判断対象であるので乙11の1刊行物と乙11の5刊行物とを各別に対比するのは妥当ではないが,いずれにせよ第2発明に新規性進歩性がないことは明らかである。
(b) 乙11の1刊行物との対比・ 原判決は,第2発明と公知資料1との対比について,以下の3点の相違点を挙げる。
?@ 乙11の1刊行物の 台紙 に 構成要件2Eが規定する 第 「」, 「一のテープの背景となる」点 「両側に設けられた粘着剤層」 ,及び「その粘着剤層の片側に予め粘着された剥離紙」に相当する構成は開示されていない点。
?A 乙11の1刊行物は,反転印字を開示したものではない。
?B 乙11の1刊行物には 「前記テープ送り機構が,前記第一 ,のテープを送る際に 「第二のテープを圧着する」点,並びに 」,「圧着された記録用紙と台紙がハウジングの外へ排出される」点は,少なくとも明示されていない。
・ しかし,乙11の1刊行物には反転印字が開示されており,相違点?Aは認定を誤ったものである。また,透明な記録用紙(第一のテープ)に反転印字された印刷物を,接着剤を有する不透明な,, 台紙を圧着させ 印刷物をラミネートすることも記載されており貼付けラベルではないが,透明な記録用紙(第一のテープ)から見れば,不透明な台紙は第一のテープの背景となっている。
そして,ラミネートテープを作製するのであれば,例えば不透明な台紙を,乙11の5刊行物に開示されているような「不透明な基材の両側に設けられた粘着剤層を有し,その粘着剤層の片側に予め粘着された剥離紙」に置き換えることは,極めて容易である。さらに,第一のテープと第二のテープを送る際に圧着すること,その圧着されたテープをハウジング外に排出することは,いずれも慣用技術であり,当業者が容易に置き換えることができる。, ことである 原判決が指摘する点には新規性進歩性が全くなく第2発明が有効であるという理由にはならない。
(c) 乙11の5刊行物との対比・ 原判決は,乙11の5刊行物と第2発明とを対比して,以下の点で相違するとし,特に?B及び?Cについては,乙11の1刊行物や一審被告が従来技術として主張する公知文献にも記載されているとは認められず,第2発明が,乙11の5刊行物を主たる引用例として,新規性又は進歩性を欠如するものとは認められない,と判示する(191頁 。)?@ 第2発明は インクリボンとサーマルヘッドを備えた反転 印 ,「字」を行う印字機構及びインクリボン巻取り装置を備えているが,乙11の5刊行物にはその記載がないこと?A 第2発明は,印字機構,テープ送り機構及びリボン巻取機構を内部に収容するハウジングを含むが,乙11の5刊行物にはその記載がないこと?B 第2発明は,第二のテープのテープ基材が第一のテープの背景となるが,乙11の5刊行物にはその記載がないこと?C 第2発明は,第一のテープのテープ送り機構が,第一のテー,, プを送る際 第一のテープに第二のテープを圧着するとともにハウジング外へ排出するが,乙11の5刊行物には,連続基材の送り機構と貼合せ装置との関係が不明であること原判決の上記判断からすれば,上記?@と?Aの相違点は公知文献に記載されていると判断していると理解される。
・ この点,上記?@におけるインクリボンとサーマルヘッドを備えた印字機構は,乙7の1刊行物,乙11の1刊行物,特開昭58-11180号公報(乙83 ,実開昭62-109958号公 )報(乙88)にも開示されているとおり従来からある印刷技術であり,また反転印字を行うことは,乙7の2刊行物,乙13の4刊行物,乙13の5刊行物にも開示されている技術であり,当業者にとって周知な慣用技術であり,この点に新規性進歩性がないことは明らかである。
・ 同様に,上記?Aについては,印字機構,テープ送り機構,リボン巻取り機構のすべてが実開昭62-109958号公報(乙88)に開示されている。すなわち,同公報の明細書に開示されて「」 。, いる 熱転写型プリンタ は正にハウジングに該当する そしてその「熱転写型プリンタ」の中には,印字機構であるサーマルヘッド3が存在する(第2図参照 。また,印字テープ11が内蔵 ),「,,」, されていて それを送る ローラ14 15 16 が内蔵されテープ11が送り出されると明記されている(明細書・9頁4〜7行目 さらに 同明細書には リボン巻取機構 としての 巻 )。, 「 」 「取りコア13」及び「熱転写リボン12」が開示されており,サーマルヘッドを使用する場合にはインクリボンを使用することはプリンタ,日本語ワープロ等において周知の印字技術である(乙27,28 。したがって,原判決の上記判断理由?Aは,乙11 )の5に開示されていなくても,周知の慣用技術であることは明らかであり,その点について新規性進歩性がないことは明らかである。
・ また,原判決は,上記?Bについて 「第二のテープのテープ基 ,材が第一のテープの背景となる」ことについての記載が乙11の,。 5刊行物にないことからこれを相違点と認定するが 誤りである乙11の5刊行物には 「全ての実施例にわたり,粘着層は透 ,明又は不透明又は着色されたもののいずれの粘着層も使用する事が可能である。透明な基材に不透明又は着色された粘着層を用いる事により,粘着層がラベルの地色の一色として作用し,印刷インクの節約となる (最終頁左欄5行以下)と明記されていて, 。」基材を直接印刷することによるインクを節約するために粘着層を着色するという技術,すなわち,粘着層を「第一のテープ」の背景とする技術が開示されている。
また 実開昭58-140149号公報 乙135 には 着 ,(), 「色された粘着テープを製造する場合には,フィルム等の片面を各色で印刷する方法および着色された粘着剤を塗布する方法がある…フィルムそのものを着色することが望まれている (明細書1 。」頁下1行以下)と記載されている。すなわち,粘着テープにおいて着色する方法として,?@粘着テープの基材となるフィルム等に着色印刷する方法,?A着色された粘着剤を塗布する方法,?B粘着テープの基材となるフィルムそのものを着色する方法,以上3種の方法があることは当業者にとって公知の事実であり,そのいずれの方法も難点があるため,同公開公報の考案がなされたことが記載されている。
このように,乙11の5刊行物には 「第二のテープ」に設け ,られた粘着剤を着色することにより「第一のテープ」の背景となることが開示されており,また上記実開昭58-140149号公報(乙135)によれば,粘着テープを着色する方法として,着色された粘着剤を塗布する方法のみならず,粘着テープの基材となるフィルムに着色印刷する方法や,テープの基材となるフィルムそのものを着色する方法が従来から公知技術であることは明らかである。
そうすると,当業者がこれらを容易に組み合わせることができることは明らかであるから,第2発明における「第二のテープ」のテープ基材に印刷して着色して「第一のテープ」の背景とする技術も 「第二のテープ」のテープ基材自体を着色して背景とす ,る技術も,極めて容易に実施することができるのであって,その点について新規性進歩性はない。
・ さらに,上記?Cの「第2発明は,第一のテープのテープ送り機構が,第一のテープを送る際,第一のテープに第二のテープを圧着するとともに,ハウジング外へ排出するが,乙11の5刊行物には,連続基材の送り機構と貼合せ装置との関係が不明であること」との点については,従来技術である実開昭62-109958号公報(乙88)を全く理解しない判断である。
すなわち 実開昭62-109958号公報 乙88 に プ ,(), 「リンタ本体側の駆動機構により,カセット1に配設されている第1図のローラが回転するようになっているからテープ11が送り」(), 出される 明細書9頁・4行〜7行と記載されているとおり送り機構と貼合せ装置との関係は公知の技術である。
また 「第一のテープに第二のテープを圧着」する点について ,は,乙11の5刊行物に開示されていることは明らかである。
なお,実開昭59-129556号公報(乙154)においても,文字などが描かれたメインテープ10に両面粘着テープ11を圧接部材6,6(ローラ)が貼り合わせて,送り出す(同明細書5頁・9〜19行目・図1(a)・(b)参照)技術が開示されている。すなわち,文字などが描かれたテープを送る構成によって,両面粘着テープと貼り合わせ,ハウジングから排出することは,公知技術である。
・ 以上のとおり,原判決が第2発明について新規性進歩性があるとの判断において前提とした上記相違点?@〜?Cについては,いずれも当業者にとっては公知の慣用技術であって,その相違点に新規性進歩性はない。
c 一審原告らの主張に対し(a) 一審原告らは,一審被告が挙げた各種文献等には,第2発明の主題である,抜群の耐久性を誇るラミネートラベルが誰にでも簡単にその場で作れることを実現する技術は一つも存在しないなどと主張して,第2発明の作用効果は「抜群の耐久性を誇るラミネートラベルが誰にでも簡単にその場で作れる」点にある,すなわち,ラミネートテープの印字装置に関するパイオニア発明であるかのように,。, () 主張するが 誤りである そもそも 第2発明の明細書 甲2の2には「抜群の耐久性 「誰にでも簡単にその場で作れる」などとい 」,う記載はなく,一審原告らは,明細書の記載から離れた独自の解釈をするものである。
(b) また,第2発明の出願当初の特許請求の範囲の請求項1は「透視性を有する第一のテープに裏返しパターンの反転印字を行う印字機構と,その第一のテープの反転印字が行われた印字面に第二のテープを圧着するテープ圧着装置とを備えることを特徴とする反転印字を行うテープ印字装置 ,すなわち,ラミネートテープを作製す 」るテープ印字装置であり,その構成要素は極めて少なく,仮にこれで登録されたのであれば極めて広い技術的範囲であるため,強い特許権となったといえる。しかし,第2発明は,公知技術の存在を理由に拒絶理由通知が送付されるたびに補正をして権利範囲を狭め,ようやく登録されるに至ったものであり,第2発明は,公知のテープ印字装置のうち,背景の構成を限定した上,一部の装置を包含する具体的な構成の特許に関する発明にすぎないのである。
(c) 一審原告らは,乙11の5刊行物記載のようなラベル作製業者が大量に同じラベルを印刷する際に用いる方法について,サーマル印字ヘッドとインクリボンを使用することが非現実的である旨主張する。しかし,実際の機器においてどのような印刷方法を使用するのがよいかという設計上の問題と,いかなる技術が開示されているかという点とは全く異なることであり,一審原告らは,この点を混同するものである。乙11の5刊行物の4頁左欄13行に 「以上,実施態様を説明したが,本発明と趣旨を同じくすることにおいて,前記実施態様に限定されるものではない 」と記載されているとお 。
り,印刷方法は実施例に限定されておらず,当業者にとって公知の印刷方法に置き換える技術まで開示されており,サーマルヘッドとインクリボンを使用する印刷方法が公知技術であるから,乙11の5刊行物に開示されている技術において,サーマルヘッドとインクリボンによる印刷方法を選択することも当業者としては極めて容易なことである。
(d) 一審原告らのその他の主張も,各刊行物に開示された技術との相違点を述べるにとまり,当業者にとって公知技術を組み合わせて発明することは極めて容易であり,進歩性がないという判断基準を無視した主張である。
(ウ) 第3発明の無効第3発明に進歩性欠如(特許法29条2項)の無効事由がある旨の原判決の判断は正当である。なお,原判決が無効な権利であっても法的保護に値すると解釈している点は,上記アで述べたとおり誤りである。
また原判決は,発明者の一人である D が乙16刊行物等を知っていたとの事情を一審原告らが知っていたとは認められないと認定し,一審原告らが無効事由の存在を知らなかったから一審原告らは保護されるべきであるかのように判断しているが,これも法律的に誤りである。
一審被告は,会社として本件ラベルライター(P-touch)を開発するに際しマーリンエクスプレス(乙15,乙16)を参考にしたのであり,分析までして検討したのである(一審被告従業員 F 作成の報告書〔乙17。以下「乙17報告書」という〕参照 。したがって,D の 。)みならず,企画に携わった一審原告らがマーリンエクスプレスを全く知らないということは考え難い。さらに,乙17報告書の作成者である F( ),, はLRC ライフリサーチセンターに所属しており 一審原告 X 1は乙17報告書作成当時LRCに所属していたのであるから,同じ部署にいて,しかも本件ラベルライターの企画に関与していた一審原告 X 1が乙17報告書を知らなかったことはあり得ないし,もし知らなかったのなら重大な過失がある。
第3発明は,一審被告会社が業務として作成した乙17報告書に開示されている技術であり,かつ,技術者であれば「印字素子列の範囲を印字素子列の長さ方向にシフトして行う」ことは誰でも知っている技術であるから,一審被告として本来出願すべきでなかったことは明らかである。それにもかかわらず,誤って出願され,誤って登録された無効な権利について,その共同発明者とされている者のうち公知技術であることを知らなかった者は救済されて権利行使が可能であるなどという原判決の解釈は,明らかに誤りである。
(エ) 第5発明の無効一審被告の原審における主張は,第5発明は限定解釈しなければ無効となるものであり,限定解釈すれば実施していないというものであったが,原判決は限定解釈をせず第5発明は無効であるとした。原判決の上記判断は,一審被告としても異議はない。
(オ) 海外特許1の無効a 原判決の認定した権利内容の誤り原判決は,一審原告らが甲20の7として提出した海外特許1の明細書,特許請求の範囲翻訳文に基づいてその権利の内容を認定したが,一審原告らが提出した甲20の7は海外特許1の公開公報であっ,。 て 海外特許1はその後の審査において請求項の補正がなされているすなわち,甲20の7におけるクレーム(特許請求の範囲)の翻訳文は請求項として1〜13が記載されているが,海外特許1の請求項は特許公報(乙155)のとおり1〜8までしかなく,また一審原告ら提出の翻訳文中の請求項1〜8も特許された請求項1〜8とは異なる。海外特許1(補正後)の正確な請求項の構成は,下記記載のとおりである。
記・ 請求項17A’ 以下の要素を有するテーププリンター7B’ 実質的に透明な記録媒体(70)を搬走路に沿って搬送する,,,,,, ための手段 (76 99 100 112 114 116118,120,123,124,132)と,7C’ 記録媒体の,装置オペレーターから離れた側に隣接して,インクリボン(74)を移送するための手段と,7D’ 前記記録媒体(70)のオペレータから離れた側に,前記() (, インクリボン 74 を用いてプリントする記録手段 72174)と,7E’ 前記プリントは,使用時オペレーターに正規に現れるように,左右に反転されて遂行されるべく制御されることと,7F’ 両面粘着テープ(102)を,記録媒体(70)の前記プリント側に貼着するための手段 (99,100,102,,,,,,,) 。 104 106 112 114 116 123 124・ 請求項27G’ 更に以下の要素からなる請求項1に従うテーププリンター7H 前記装置 12 の一区画において前記媒体搬送手段 7 ’() (6,99,100,112,114,116,118,120,123,124,132)及び前記記録手段(72)の前方に配置され,前記記録手段によって記録される前記イメージ(204)をあらわすデータを入力するための,オペレーターによって制御されるデータ入力手段・ 請求項37I’ 請求項1または2に従うテーププリンターで,7J’ 前記搬送手段(76,99,100,112,114,116,118,120,123,124,132)は,前記記録テープを前記装置本体(12)の横方向に搬送するのに有効である。
・ 請求項47K’ 請求項3に従うテーププリンターで,7L’ 前記テープ搬送機構(76,99,100,112,11,,,,,,), 4 116 118 120 123 124 132 は前記記録テープ(70)を,使用中のオペレーターにより見られる左側方向に搬送する。
・ 請求項57M’ 更に以下の要素からなる,先の任意の請求項に従うテーププリンター7N’ 前記記録テープ(70)を切断するための切断機構であって,その機構は,前記搬送通路に沿う位置で,前記記録テープ 70 の搬送方向にてみられるように 前記記録手段 7 () , (2)の下流に配置されている。
・ 請求項67O’ 更に以下の要素からなる,先の任意の請求項に従うテーププリンター7P’ 前記搬送方向に沿って前記記録手段(72)の下流に配置され,粘着テープ(102)を,前記左右に反転されたイメージ(204)が記録されている記録テープ(70)の記録部分に重合するための一対の押圧ローラー(99,100)であって,その両ローラーは,記録テープの前記記録部分および重合されている前記粘着テープが両ローラー間を通過する際に,両者間に圧力挟持をもたらし,それにより,前記記録部分と前記粘着テープとが相互に固着される。
・ 請求項77Q’ 請求項6に従うテーププリンターで,7R’ 前記テープ搬送機構(76,99,100,112,11,,,,,,), 4 116 118 120 123 124 132 は前記一対の押圧ローラー(99,100)と,その押圧ローラーの少なくとも一方を回転するための駆動源とからなり,’,, (,), 7S 前記装置は 更に 前記押圧ローラー 99 100 を前記圧力挟持が確立される第1の位置と,前記押圧ローラーが相互に離間する第2の位置とに,選択的に配置する切換手段(112,114,116,122,142 。)・ 請求項87T’ 請求項7に従うテーププリンターで,7U’ 前記粘着テープ(102)が,基材(107)と,その基材の両面に形成された2つの粘着層(108,110)と,その2つの粘着層のうち,前記記録テープの記録部と前記バッキング(両面粘着)テープとが互いに重合された時に,前記記録テープ(70)から離れた一方の粘着層上に設けられ剥離層(111)とからなり,7V’ 前記装置が,更に,前記媒体搬送通路に沿う位置で,前記記録手段(72)の下流に配置された切断機構からなり,その切断機構は,前記記録テープと前記バッキングテープの双方を切断するための完全切断刃(152)と,前記バッキングテープ(剥離層)のみを切断するための部分切断刃(154,156)とからなる。
b 進歩性の欠如(a) 原判決は 「…前提事実(3)エ及びカのとおり,第5発明の構 ,成要件と海外特許1の請求項8及び9の構成要件は同一ではない。
さらに,欧州特許条約及びこれに基づくEPOの実務における進歩性の判断は,日本における進歩性の判断と必ずしも同じでない。したがって,乙13の5刊行物等の存在から,海外特許1の請求項8及び9が進歩性欠如により無効とされると認めることはできない… (200頁)と判断した。要するに,原判決は海外特許1の請 」求項8及び9について明確に無効でないと判断した。
しかし,前記aのとおり,原判決は海外特許1の内容の認定を誤っており,そのため,原判決における海外特許1の進歩性についての認定は維持できない。原判決は第5発明が進歩性欠如(特許法29条2項)の無効事由を有するとするのであるから(199頁 ,)第5発明に対応する海外特許1も当然無効である。
また,原判決は 「欧州特許条約及びこれに基づくEPOの実務 ,における進歩性の判断は,日本における進歩性の判断と必ずしも同じではない (200頁)とし,そこから「海外特許1の請求項8 」及び9が進歩性欠如により無効とされると認めることはできない」(同頁)と結論付けているが,外国特許にも我が国の特許法旧35条3項,4項を類推適用し,従業員による「相当の対価」の請求を認めるのであれば,その範囲で裁判所は,海外特許についても有効性判断の基準を示し,具体的判断をする必要があり,原審のこのような態度は失当である。
なお,原判決は,請求項1ないし7について新規性の欠如により無効であると判断したため,進歩性欠如についての判断を明確にしなかったと考えられるが,その後のダイモ社からの実施料収入に関しては,請求項1ないし7は進歩性欠如により無効でないことが前提にされており,原判決の理由には矛盾,不備が存在する。
(b) 海外特許1の有効性について更に詳述すると,海外特許1の請求項1〜6については,原審が特許された請求項として誤って認定した出願公開時の請求項1〜7の構成を超える実質上の限定は存在しないから,第5発明と同じく,乙11の5及び乙13の5の各刊行物の存在から進歩性が否定される。
すなわち,海外特許1の請求項1〜6の各発明の構成と乙11の5刊行物(なお,同刊行物は海外特許1の審査において一切引用されていない )の開示内容を対比すると,乙11の5刊行物には, 。
海外特許1の請求項1の構成要件7C’及び7D’を除く他の構成要件はすべて明示的に記載されている。そして,構成要件7C’及び7D’のインクリボンとインクリボン移送手段は周知のサーマル印字方式の基本的構成であり,同公報の3頁右下欄1〜3行の「印刷装置はあらゆる方式が可能であること」との記載からも,乙11の5刊行物に開示された構成のラベル作製装置にサーマル印字方式を採用し,インクリボンとインクリボン移送手段の構成を設けることは当業者が容易になし得ることである。
また,請求項2における「データ入力手段が,記録媒体搬送手段及び記録手段の前方に配置されている」構成も,特開昭61-37447号公報(乙13の4刊行物 ,特開昭61-143163号 )() ,() 公報 乙18刊行物 実開昭62-109958号公報 乙88等によりテーププリンターにおいて周知であり,何ら新規な構成ではない。したがって,海外特許1の請求項2も進歩性を有しない。
さらに,海外特許1の請求項3〜6の各構成要件は,すべて乙11の5刊行物に開示されている。
以上のとおり,海外特許1の請求項1〜6の各発明は,乙11の5刊行物等に開示された技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであり,欧州特許条約52条1項が要求する進歩性が認められないことは明らかである。
c 新規性の欠如(a) 原判決は 請求項1〜3及び5〜7は EP319209号 甲 ,,(20の11)との関係で新規性欠如により無効であるとするが,前記aのとおり請求項の認定が誤っているため,採用できない。もっとも,以下に述べるとおり,海外特許1の請求項1〜7は,優先権主張の関連でやはり新規性を欠くものである。
(b) 海外特許1に係る発明は 「透明記録媒体搬送手段,インクリボ ,ン移送手段及び記録手段の相互の配置関係,及び記録手段による透明記録媒体への左右反転印字によりオペレーターが正像視認できるようにしたこと」を特徴とする。この海外特許1は,以下2件の日本出願?@と?Aを優先権主張の基礎としているが,同特許の各発明の構成は,その日本出願?@には開示されておらず,日本出願?Aに開示されている。
?@ 実願昭62-167673号(実開平1-72361号)昭和62年〔1987年〕10月31日出願(乙77)?A 特願昭62-323429号(特開平1-163073号)昭和62年〔1987年〕12月21日出願(乙78:第5発明)すなわち,上記出願?@には 「剥離紙付テープの前面(作業者) ,側に正像パターンの印字を行い,その印字面を透明テープにて覆う構成のテープ印字装置」が記載されているのみであり,海外特許1に係る発明のように透明テープの後側(作業者と反対側)に左右反転印字が行われる構成ではない。
しかし,海外特許1の前記請求項1〜6の内容は,上記日本出願?Aより先の出願に係る以下の日本出願?Bを優先権主張の基礎とする以下の欧州特許?Cの明細書及び図面に記載されており,その内容は欧州特許条約54条3項の規定により海外特許1の技術水準となり,したがって従来技術とみなされる。これは,欧州特許においては,我が国の特許法における29条の2に相当する規定がないためである。
?B 実願昭62-181307号(実開平1-85050号)昭和62年〔1987年〕11月28日出願(甲2の7)?C 欧州特許第319209号(1994年〔平成6年〕4月27日登録。指定国はイギリス・ドイツ・フランス・イタリアで。)〔〕 海外特許1と同一である 優先日:1987年 昭和62年11月28日(甲20の11)すなわち,上記欧州特許?Cの明細書及び図面には,透明テープ70を搬送する一対の送りローラ99,100とテープ送りモータ123等からなるテープ送り装置(海外特許1の請求項1の構成要件7B )及び両面テープを貼り付ける貼着手段(同構成要件7F ) ’’がそれぞれ記載されるとともに 「オペレーター側から見て正規の ,イメージとして視認可能となるように,搬送される透明テープ70の後面にインクリボンを介してサーマルヘッド72により左右反転印字を行い(同構成要件7E ,その印字面に粘着剤層107と剥 ’)離紙102とからなる両面テープを貼着する構成のテーププリンタ」, ’ ー が開示されており 海外特許1の請求項1に係る構成要件7A〜7F’をすべて有している。したがって,海外特許1の請求項1は,欧州特許条約52条1項の規定を満たしておらず,従来技術である上記欧州特許?Cより当然に無効となる。
さらに,上記欧州特許?Cの明細書及び図面には,透明テープ搬送装置(一対のローラー99,100等)及び記録手段(サーマルヘッド72)の前方に配置されたデータ入力部10(海外特許1の請求項2の構成要件7B’に該当 ,透明テープ70を装置の横方向 )に搬送するテープ搬送装置(同請求項3の構成要件7J ,透明テ ’)ープ70をオペレーター側からみて左側方向へ搬送するテープ搬送機構(同請求項4の構成要件7L ,透明テープ70の搬送方向に ’)沿って記録手段(サーマルヘッド72)の下流に配置されたテープ切断機構130(同請求項5の構成要件7N )及び記録テープの ’搬送方向に沿って記録手段の下流に配置され左右反転イメージが記録された透明テープ70に両面テープを圧着固定する一対の押圧ローラー99,100(同請求項6の構成要件7P )がそれぞれ記 ’載されている。
したがって,海外特許1の請求項2〜6に係る各発明も上記欧州特許?Cにすべて開示されており,新規性を有しておらず,当然無効になるべきものである。
d 他の公知例による無効(a) 海外特許1の請求項1〜8の発明は,上記日本出願?Aの出願日である昭和62年〔1987年〕12月21日を優先権主張に基づく遡及出願日とするものである。しかし,海外特許1の請求項1〜7の各発明は,前記日本出願?Aより先の出願に係る以下の日本出願?Dの明細書及び図面に開示されている。
?D 実願昭62-292729号(特開平1-133761号)昭和62年〔1987年〕11月19日出願(乙156)すなわち,この日本出願?Dの明細書及び図面には,透明テープ70を搬送する一対の送りローラ99 100等からなる搬送手段 海 ,(外特許1の請求項1の構成要件7B’に該当 ,インクリボン74 )を移送するための巻取スプール82・スプール駆動軸84等からなるリボン移送手段(同構成要件7C ,サーマルヘッド72からな ’)る記録手段(同構成要件7D )及び透明テープ70に剥離紙付き ’両面テープ102を貼り付ける一対のローラ99,100からなる貼着手段(同構成要件7F )がそれぞれ記載されるとともに 「オ ’,ペレーター側から見て正規のイメージ(正像)として視認可能となるように,搬送される透明テープ70の後面にインクリボンを介して左右反転印字を行い(同構成要件7E ,その印字面に両面テー ’)プ102を貼着する構成のテープ印字装置」が記載されている。したがって,上記日本出願?Dには,海外特許1の請求項1の構成要件7A’〜7F’がすべて開示されている。
さらに,その日本出願?Dの明細書及び図面には,透明テープ搬送手段及び記録手段(サーマルヘッド72)の前方に配置されたデータ入力部10(同請求項2の構成要件7H’に該当 ,透明テープ )70を装置の横方向に搬送する一対のローラ99,100からなる透明テープ搬送装置(同請求項3の構成要件7J ,透明テープを ’)オペレーター側からみて左側方向へ搬送するテープ搬送機構(同請求項4の構成要件7L ,透明テープの送り方向に沿って記録手段 ’)(サーマルヘッド72)の下流に配置されたテープ切断装置(説明のみで図番なし (同請求項5の構成要件7N ,透明テープの送 )’ )り方向に沿って記録手段の下流に配置され左右反転イメージが記録された透明テープに両面テープ102を圧着固定する一対のローラ99,100(同請求項6の構成要件7P )及びそれら両ローラ ’が圧着する第1状態と互いに離間する第2状態に選択的に配置するためのギヤレバー122等からなる切換手段がそれぞれ記載されている。したがって,海外特許1の請求項2〜7に係る各発明も上記日本出願?Dにすべて開示されている。
(b) また,海外特許1の請求項1〜6の各発明は,前記日本出願?Aより先の出願日を有する第2発明に係る日本出願?E(甲2の2)の明細書及び図面にも開示されている。
?E 特許2133451号:昭和62年〔1987年〕11月20日出願,平成元年〔1989年〕5月29日公開(c) 以上から明らかなように,海外特許1の請求項1〜7の各発明は,優先権主張の基礎となる日本出願?Aより先の出願に係る前記日本出願?D又は?Eの明細書及び図面に開示されており,最先の出願の優先権主張に基づく出願に係るものではない。そうすると,海外特許1に係る欧州特許出願は,欧州特許条約87条1項の規定に違反してなされており,日本出願?Aを基礎とする優先権主張は無効であり,海外特許1の請求項1〜7の各発明の有効出願日は,現実の欧〔〕 。 州特許出願日である1988年昭和63年 10月27日となるなお,欧州特許庁におけるこのような取扱いに関しては,欧州特許庁審査便覧第V章1.4項(乙157)に明確に規定されている。
(d) 海外特許1の請求項1〜7の各発明は,その有効出願日より先の出願日を有する以下の日本出願?F〜?Hを優先権主張の基礎とする以下の欧州特許?Iの明細書及び図面に開示されており,その開示内容は欧州特許条約第54条第3項の規定により海外特許1の技術水準となり,したがって従来技術とみなされる。
?F 実願昭62-199662号(実開平1-104359号)昭和62年〔1987年〕12月29日出願(乙40の7)?G 実願昭63-135277号(実開平2-56666号)昭和63年〔1988年〕10月17日出願(実公平7-30374号:乙40の6)?H 実願昭63-135230号(実開平2-56663号)昭和63年〔1988年〕10月17日出願(実公平7-4934号:乙40の5)?I 欧州特許●●(1992年〔平成4年〕4月15日登録,指定国は英独仏伊で海外特許1と同一 (●●))すなわち,上記欧州特許?Iの明細書及び図面には,透明テープ25を搬送する一対の送りローラ69,101からなるテープ送り手段(海外特許1の請求項1の構成要件7B’に該当 ,熱転写リボ )ン91を移送するためのリボン巻取体85・巻取スプール95等からなるリボン移送手段(同構成要件7C ,サーマルヘッド83か ’)らなる記録手段(同構成要件7D )及び透明テープ25に両面粘 ’着テープ27を貼り付ける貼着手段(同構成要件7F )がそれぞ ’れ記載されるとともに 「オペレーターが正規のイメージ(正像) ,として視認可能となるように,搬送される透明テープ25の裏面にインクリボンを介してサーマルヘッド83により左右反転印字を行(’ ),, い 同構成要件7E その印字面に基材27aと粘着剤層27b27cと剥離紙27dとからなる両面粘着テープ27を貼着する構成のテーププリンター」が開示されている。そのような構成は,海’’ 。 外特許1の請求項1の構成要件7A 〜7F をすべて有しているしたがって,海外特許1の請求項1は,従来技術である上記欧州特許?Iより当然に無効となり得るものである。
さらに,上記欧州特許?Iの明細書及び図面には,透明テープ搬送手段(一対の送りローラ69,101等)及び記録手段(サーマルヘッド83)の前方に配置された選字ダイアル5,確定キー11等(’) , からなるデータ入力手段10 同請求項2の構成要件7H に該当透明テープ25を装置の横方向に搬送するテープ搬送手段(同請求項3の構成要件7J ,透明テープ25をオペレーター側からみて ’)(’ ), 左側方向へ搬送するテープ搬送機構 同請求項4の構成要件7L() 透明テープ25の搬送方向に沿って記録手段 サーマルヘッド83の下流に配置されたカッター49,カッターレバー45等からなるテープ切断機構(同請求項5の構成要件7N ,記録テープ搬送方 ’)向に沿って記録手段の下流に配置され左右反転イメージが記録された透明テープ25に両面テープ27を圧着固定する一対の押圧ローラー69,101(同請求項6の構成要件7P )及びその一対の ’押圧ローラーの一方を回転するための図示されてないステップモータ,テープ送り体87等からなる駆動源(同請求項7の構成要件7R )並びに前記両ローラーが圧着する第1状態と互いに離間する ’第2状態に選択的に配置するためのリリースレバー35からなる切(’ )。 換手段 同請求項7の構成要件7Sがそれぞれ記載されているしたがって,海外特許1の請求項2〜7に係る各発明も上記欧州特許?Iにすべて開示されており,欧州特許条約52条1項新規性を有しておらず,当然無効になるべきものである。
(e) 以上のとおり,海外特許1の請求項1ないし7の各発明は,優先権主張の問題から,上記欧州特許?C(EP319209)及び欧州特許?I(EP●●)により,新規性がなく,当然に無効となるべきものである。
(カ) 海外特許2の無効a 海外特許2の特許性に影響を与える公知資料として,乙11の5刊行物(特開昭53-70700号公報)が存在する。この乙11の5刊行物は,日本の第2発明及び第5発明に係る異議申立てにおいて提出された資料であるが,その時点において海外特許2は既に特許されていたため,この海外特許2に対する先行技術としては未だ議論されていない。
b 乙11の5刊行物の明細書3頁左上欄7行以下には 「図1におい ,,() て 透明又は不透明なプラスチックフィルム又は紙等の連続基材 1の一方の面に印刷装置(2)により印刷面(3)を形成し,該連続基材(1)は貼合せ装置(4)に導びかれる。一方紙及び/又はプラスチックフィルムからなる剥離層(5)と,あらかじめ該剥離層(5)上に塗布された粘着層(6)とを具備するテープロール(7)より巻きほぐされたテープも又貼合せ装置(4)に導びかれる。印刷をほどこされた連続基材(1 )と剥離層(5)と粘着層(6)を具備した ’テープは貼合せ装置(4)により印刷面(3)と粘着層(6)が完全に密着する様に重合される。しかる後にダイカット装置(8)により常法に従ってダイカットされ,必要があればカス巻上げ装置(9)にカス(10)を巻き上げ,製品は巻取り装置(11)に巻き取られるか又は必要に応じてシートカット装置(図示せず)によりシート状に裁断される 」との記載がある。 。
また,同頁右下欄1行〜5行には 「全ての実施例にわたり,印刷 ,装置は通常シール印刷に用いられる,フレキソ,オフセット,凸版,グラビア等その他あらゆる方式が可能であるが,図3の実施例においては,印刷を断続的に行う印刷方式は好ましくない 」との記載があ。
る。
さらに,同頁右下欄12行以下には 「透明な材料を使用する事に ,より,印刷がラベル表面に露出する事なく,透明な材質を通して印刷の表示を識別でき,さらに摩擦,溶剤,薬品,水等により印刷インクが侵かされる事がない」との記載がある。
以上の記載によれば,前記乙11の5刊行物には,印刷を施された「(’ )」「() 」「 ()」 透明な連続基材 1 に対して 剥離層 5 と 粘着層 6を具備したテープを貼り合わせてラベルを作製する技術が開示さている。作製されるラベルは「透明な連続基材(1 」を通して印刷され ’)た内容を見るものである。人がラベルを見る側の面をラベルの表面とすれば 「透明な連続基材(1 」の裏面側を印刷するように 「印刷 ,’ ),()」「 (’)」 。 装置 2 が 透明な連続基材 1 の裏面側 に配置されているそして,表面側から印刷された内容を見るということは,裏面側に印刷された像は向きを反転されたものであることは当然であり,その印刷された面に両面テープが貼り付けられていることから,前記乙11の5刊行物においては,表面側から裏面側に向かって,透明な連続基材1 ・印刷面3・粘着層6・剥離層5という積層構造を有するラ ’ベルが作製されることは容易に理解できる。
そうすると,この乙11の5刊行物には海外特許2の発明によって作製される記録用紙と同じ積層構造のラベル(ラミネートタイプのラベル自体やその製作の技術)が開示されていることになる。
したがって,ラミネートタイプのテープ及びそのテープを作製する装置は既に公知であった。また,ラミネートタイプのテープを作製する装置において,透明な記録媒体の裏面側に印刷装置などの記録手段を配置することや,印刷された面に両面テープを貼り合わせることも既に公知であった。
また,この乙11の5刊行物におけるラベル製造方法及び装置により作製されたラベルは,印刷された部分を露出させずに,透明な材料を通して見るようになっており,印刷された部分の侵食を防ぐことができる効果も同様に既に公知であった。
c 海外特許2の請求項2〜12の各発明における各構成要件と前記乙11の5刊行物における開示内容を対比すれば明らかなように,海外特許2の請求項2の構成要件8A〜8F及び請求項3の構成要件8G〜8Iは乙11の5刊行物にすべて開示されており,請求項2及び3の各発明は新規性を有しない。
d 海外特許2の請求項4における「テープ貼り合せ手段が記録テープ送り手段とカバーテープ送り手段とを兼用する」構成は,乙11の5刊行物中には明確な記載はないが,貼合せのために図中の一対のローラー4,4間に挟持圧力がかかっている関係上,この一対のローラーのうちの少なくとも一方が駆動される必要があることは当業者が容易に想到するところである。そして,そのような構成については,特開昭59-95169号公報(乙11の1刊行物 ,実開昭59-83 )547号公報(乙11の4 ,特開昭58-11180号公報(乙8 )3)等により周知である。したがって,海外特許2の請求項4も進歩性を有しない。
e 海外特許2の請求項5における「記録テープが,印字手段としての印字ヘッドと回転可能なプラテンローラーにより接触状態に保持されて印字が行われる」構成についても,上記特開昭58-11180号公報(乙83)及び乙11の1刊行物等により周知である。そして,前記乙11の5刊行物における印刷装置に関する変形例の記載,すなわち 「全ての実施例にわたり,印刷装置は通常シール印刷に用いら ,れる,フレキソ,オフセット,凸版,グラビア等その他あらゆる方式が可能であるが,図3の実施例においては,印刷を断続的に行う印刷方式は好ましくない 」との記載を参照すれば,上記構成の印字手段 。
を持ち込むことは容易に想到し得るものである。したがって,海外特許2の請求項5も進歩性を有しない。
f 海外特許2の別の独立クレームである請求項6の発明について検討すると,請求項6の各構成要件8A ,8C ,8E ,8F ,8Qは ’’’’すべて乙11の5刊行物に開示されており,何ら新規な構成は存在しない。上記構成要件8Qの「記録テープとカバーテープとを一緒に送る搬送手段」は,海外特許2の実施例においては,構成要件8F’の貼合せ手段を兼ねているが,上記乙11の5刊行物においては巻取り装置11が直接的に該当する。したがって,海外特許2の請求項6も新規性を有しない。
,, g 海外特許2の請求項7の発明は 前記請求項3の記載と同一であり同じく新規な構成は存在しない。
h 請求項8の発明は 「カバーテープと記録テープとを搬送するため ,に一対の圧着ローラーを動作させる圧着ローラー駆動装置」を搬送手段が有していることを規定しているが,前記請求項4に関して述べたとおり,何ら新規な構成ではなく,上記乙11の5刊行物から容易に想到し得るものである。したがって,海外特許2の請求項8も進歩性を有しない。
i 海外特許2の別の独立クレームである請求項11の発明については,請求項11の各構成要件のうち,構成要件8X以外はすべて上記乙11の5刊行物に開示されており,何ら新規な構成ではない。上記構成要件8Xの「データ入力手段」は,海外特許1の請求項2の発明,() , に関しても述べたとおり 実開昭62-109958号公報 乙88特開昭61-37447号公報(乙13の4刊行物 ,特開昭61-)143163号公報(乙18刊行物)等多数の公知資料が存在し,テープ印字装置において周知技術である。この周知技術を上記乙11の5刊行物のラベル製造装置に組み込むことに何らの困難性も存在しない。したがって,海外特許2の請求項11も進歩性を有しない。
j 海外特許2の更に別の独立クレームである請求項12における各構成要件も,上記乙11の5刊行物にすべて開示されており,新規な構成は存在しない。したがって,この請求項12の発明も新規性を有しない。
k なお,海外特許2の請求項9及び10の各発明については,本件被告製品において実施されていない。
(キ) 海外特許3の無効a 海外特許3に対する公知資料海外特許3については,海外特許2について指摘した乙11の5刊行物に加え,乙13の4刊行物の記載内容に鑑みれば,特許性は認められない。なお,これら刊行物は,海外特許3に対する米国特許庁における審査では先行技術として何ら議論されていない。
b 乙13の4刊行物の記載内容乙13の4刊行物の明細書2頁左下欄12行以下には 「この発明 ,は従来のものがもつ以上のような問題点を除去するため,メモリ機能を有し,いつでもメモリーに書きこんだ記憶されている文章,文字,記号,数字,線等をボタン操作のみで編集しながら簡単に粘着テープ。」 に印字する携帯性の良いラベル印刷機を提供することを目的とするとの記載がある。
同3頁左上欄13行以下には 「又,図3の破線に示すように,裏 ,面の蓋をあければテープ状に巻かれ,その裏面には接着剤がついているプリント用ラベル紙20(カセット内に収納 ,このラベル紙を送 )り出すローラー21,印字するためのプリンターヘッド22が配置され,ここを通って印字されたラベル19が出てくる。更に電池収納部() 。 」。 23 電源部 があり外部電源入力部24もある との記載がある同頁右上欄16行以下の「テープの表面はほぼ平らであり,テープの厚さは薄くてもよく,透明テープベースにすれば,添付する物体の表面に直接印刷してあるように見える 」との記載がある。 。
c 乙13の4刊行物に開示されている技術第3図から明らかなように,一対のラベル送出ローラー21により左方へ搬送されるラベル19の搬送路を境にして,後方部分(反オペレーター側)に印字手段としてのプリンターヘッド22が配置され,ラベルを挟んでそのヘッドと対向するようにプラテン(図番なし)が搬送路の前面側(オペレーター側)に配置されており,かつ,第2及び3図から明らかなように,前記ラベル搬送路より前方部分にキー入力部のキーボード左半分16が配置されている。
また,第2図において,印字されたラベル19は装置本体から左方に送り出されており,その前面側には 「A(b)ア」の文字列が確 ,認できる。第3図において,印字されたラベル19はプリンターヘッド22の前面側に位置し,一直線状に装置本体の外に至っている。その文字列については,反オペレーター側に配置されているプリンターヘッド22が,透明なラベル紙20の裏面に左右反転印字して,その印字された文字列が透明なラベル19を通して前面側(オペレーター側)から正像として視認可能である。
なお,一審原告らは,プリンターヘッド22がラベル20の表面に印字し,印字されたラベル19のハウジングから出た部分が出た直後に捻られて,その文字列が見えている旨主張する。しかし,機構上,テープ状の「印字されたラベル19」が装置から出た瞬間に捻れることはあり得ず,さらにこの公報には,印字されたラベル19を捻ったとの記載もその示唆すらもない。更に付言すれば,一審原告らは,ラベルが捻られていると主張する理由として,そもそもラベル20の粘着層側に印字することはサーマル印字ヘッドでは不可能である旨主張するが,この公報においてプリンターヘッド22の印字方式は限定されておらず,必要に応じて適した印字方式を採用すればよい。
d 乙11の5刊行物に開示されている技術,, 乙11の5刊行物には 海外特許2に対する関係で前述したように印刷をほどこされた透明な連続基材(1 )に対して,剥離層(5) ’と粘着層(6)とを具備したテープを貼り合わせてラベルを作製する技術が開示されている。作製されるラベルは,垂直状態では移送されていないが,貼合せ装置(4)により貼り合わせた後は水平状態に搬送され,その後巻き取られている。そして,作業者は,透明な連続基材(1 )を通して印刷された内容を上方から見ることになり,作業 ’者がラベルを見る側の面をラベルの表面側(オペレーター側)とすれ,(’ ),() ば 透明な連続基材 1 の裏面側に印刷するように 印刷装置 2が透明な連続基材(1 )の裏面側(後方部分)に配置されている。 ’したがって,乙11の5刊行物には,海外特許3の発明によって作製されるラベルと同じ積層構造のラベル(ラミネートタイプのラベル自体やその製作の技術)が開示されている。
e 海外特許3の請求項1の発明について海外特許3の請求項1の発明は 「あらかじめ決められたテープ搬 ,送路に対してオペレーター側から離れた側に配置された固定サーマルヘッドにより,オペレーター側から見て正規のイメージ(正像)となるように,左右反転した像が透明テープに印字され,その印字面が,印字部より下流側において,剥離紙を有する貼り付けテープ(両面粘着テープ)により重合されて貼り合せられること 」に係る基本構成 。
を特徴とするものである。
そして,海外特許3の請求項1の構成要件を検討すると,前記乙11の5刊行物には,海外特許3の請求項1の構成要件9A〜9C,9H,9Iのすべて,9E〜9Gの主要部が開示されているが,構成要件9Dのみが一切開示されていない。しかし,構成要件9Dのリボン,, 送り手段は サーマルヘッドを有する印字装置においては周知であり構成要件9Eの印字手段として,サーマルヘッドによりインクリボンを介して印字する周知の印字手段を採用することにより,必然的に具備することになる技術である。そのような印字装置が開示されている,() , 公報を挙げると 特開昭59-95169号公報 乙11の1刊行物特開昭58-11180号公報(乙83 ,実開昭62-10995 )8号公報(乙88)等がある。したがって,この周知技術構成要件9Eの印字手段に代替することにより,海外特許3の請求項1の構成要件9A〜9Iを有するテープ印字装置は容易に想到し得る。
したがって,海外特許3の請求項1の発明は,上記公知資料により当業者ならば容易に想到し得るものであり,進歩性を有するものではない。
なお,原判決は 「米国特許法及びこれに基づく米国の実務におけ ,る非自明性の判断は,日本における進歩性の判断と必ずしも同じではない (201頁)とするが,米国最高裁における最近の判決におい 。」て,米国特許法103条の自明性の判断基準に関する重要な変更を決定した。すなわち,カナダ KSR International Co. v. 米国 TeleflexInc. 事件において 「ある技術が一つの産業分野で既知であれば,改 ,善意欲やその他の市場原理の作用により,同じ産業分野中であれ別の,。 」, 産業分野であれ その技術内容の発展・向上が促され得る と判断し公知技術の組合せについて 「組合せを促す何らかの教示・示唆・動 ,機の有無にかかわらず,あるいは,組合せによりうまくいくという客観的な見込みの有無にかかわらず,先行技術であればどんなものでも自明性に基づいて特許を無効化する材料に使える 」とした。したが 。
って,米国特許における非自明性の判断は,少なくとも日本特許についての判断に比べ,高いレベルの自明性を要求するものではない(乙161 。)f 海外特許3の請求項2,4〜6の発明について海外特許3の請求項2における「データ入力手段が,媒体搬送手段及び記録手段より前方に配置されていること」に係る構成は,前記乙11の5刊行物中には記載されてないが,ラベル作製装置においては周知の技術であり,上記乙13の4刊行物,特開昭61-143163号公報(乙18刊行物 ,実開昭62-109958号公報(乙8 )8)等にも開示されている。したがって,海外特許3の請求項2も進歩性を有しない。
次に,請求項4における「記録テープが装置本体の左側へ送られること」に係る構成は,上記乙11の5刊行物,乙13の4刊行物,乙18刊行物,実開昭62-109958号公報(乙88)等により周知技術である。
また,請求項5における「テープ搬送路の下流側に切断機構が配置されていること」に係る構成は,上記乙11の5刊行物中に変形例として記載されており(3頁右上欄1行〜4行参照 ,さらには,実開 )昭59-83547号公報(乙11の4 ,乙18刊行物,実開昭6 )2-109958号公報(乙88)等により周知である。
さらに,請求項6における「記録テープの印字部分が,一対の圧着ローラーにより,貼り付けテープにより圧着されること」に係る構成も,乙11の5刊行物に開示されており,新規な構成ではない。
g 海外特許3の請求項7の発明ついて請求項7の発明は請求項6の従属であり 「駆動源により回転する ,一対の圧着ローラーを,両者が圧接状態にある第1の位置と,両者が離間する第2の位置とに選択的に配置するための切換手段を有すること」を特徴としている。前記乙11の5刊行物には,その構成要件9Sに係る「圧着ローラー」に該当する「一対のローラー4,4」が開示されており,貼合せのために両ローラー間に挟持圧力がかかっていることを考慮すれば,両ローラーの少なくともいずれか一方が駆動されることは自明である。また,前記乙13の4刊行物には 「圧着ロ,ーラー」及び「その駆動源」に該当する 「一対のラベル送出ローラ ,ー21」及び「モータードライバー13」が開示されている。
残る構成要件9Uに係る「両ローラーが圧接状態にある第1の位置,」 と 両者が離間する第2の位置とに選択的に配置するための切換手段については,両公報には何ら具体的な記載はない。しかし,前記乙11の5刊行物における連続基材(1)を消費して新しいロールに交換する時,あるいは,前記乙13の4刊行物におけるラベル紙20を消費して新しいロールに交換する際には,当然に両ローラーを離間する必要があり,そのような構成を採用することは当業者ならば設計上自明の事項である。現に,一審被告がラベルライターの開発当初におい,, て参考にしたマーリンエクスプレスにおいても カセットの交換時に操作つまみの操作により,一対の送りローラーを離間させている。更に,一審原告らが熟知しているメカ式テープ作製機である「ダイモライター」においても,テープの交換のためにカバー板を開放すると,テープ送り用のローラーが遊動ローラーと離間する構成となっている。そのような構成を開示する公知資料として,特公昭47-16105号公報(乙162)がある。以上によれば,被告製品におけるテープカセットの交換時に両ローラーを離間する操作手段を含むとすれば,この請求項7の発明は当然に無効となるべきものである。
そして,この「切換手段」は,海外特許3の明細書の実施例においては,インレタ(再転写)テープと貼合せテープの作製の切換の際に操作される「ギヤーレバー122」が該当する。原判決は,海外特許2の請求項9の構成要件8Vに係る「切り換え手段」に関して,単にテープカセット着脱時の態様を規定した構成は,構成要件8Vを充足しないと認められる旨の認定しており(186〜187頁参照 ,海)外特許3の請求項7の構成要件9Uの「切換手段」についても,海外特許2における場合と同様に解釈すべきである。
したがって,海外特許2の請求項7の発明を実施した本件被告製品は存在せず,仮に,本件被告製品におけるテープカセット着脱時の態様を規定した構成が,海外特許3の請求項7の構成要件9Uを充足す,。 るとすれば この請求項7の発明は当然に無効となるべきものであるh 海外特許3の請求項8〜11の各発明について海外特許2の別の独立クレームである請求項8の発明について検討すると,請求項8の発明は,請求項1の構成要件9A〜9Iから構成要件9D及び9Fを除いたものとほぼ同等であり,それらの構成要件はすべて乙11の5刊行物に開示又は示唆されており,何ら新規な構成は存在しない。したがって,海外特許2の請求項8も進歩性を有しない。
また,請求項9の発明は,前記請求項7について述べたのと同様であり,乙11の5刊行物,乙13の4刊行物に開示又は示唆されており,新規な構成は存在しない。
請求項10の発明は,有効な発明であるが,本件被告製品が貼合せテープのみを切断する部分切断刃を有しておらず,非実施であることは上述したとおりである。
残る独立クレームである請求項11の発明は,前記請求項8の発明とほぼ同等であり 「記録手段としての印字ヘッドがドットマトリッ ,クス方式である」ことを限定しているが,この方式はサーマルヘッドにおいては通常であり,周知の事項である。したがって,海外特許3の請求項11も進歩性を有しない。
(2) 一審被告は本件各発明を実施していないことア第1発明(ア) 前記のとおり第1発明は無効であり,したがって,第1発明の実施の有無は問題にならないと解すべきであるが,仮に第1発明が有効であるならば,原審において主張したとおり,特許請求の範囲構成要件1Eについて,インクリボンがインレタテープ(印字されるテープ:第1発明における「レタリングテープ)とは別に着脱自在とされていると 」限定解釈をしなければならず,その結果,一審被告は第1発明を実施していないというべきである。
(イ) 原判決の構成要件「1E」の解釈の誤り(その1)原判決は,特許異議答弁書(乙8)の解釈として 「…同一のレタリ ,ングテープに対してインクリボンを適宜交換しつつ印字する場合だけを想定したものと認めることはできず,テープごとに異なる色で印字されたものをユーザーが組み合わせて対象物に転写する場合を含めて述べたものと解する余地がある (173頁)と判示するが,誤りである。 。」例えば 祝 を赤色 五十周年 を青色 記念 を黒色とした 祝 ,「」 ,「」, 「」 「五十周年記念」の文字列を印字する場合を想定してみると,原判決の解釈によれば,テープごとに異なる色で印字されたものをユーザーが組み合わせるというのであるから,まず,赤色のインクリボンと印字テープ(印字されるテープ)を使用してその印字テープに「祝」と印字してカッタで切り離し,次に青色のインクリボンと印字テープを使用してその印字テープに「五十周年」と印字してカッタで切り離し,次に黒色のインクリボンと印字テープを使用してその印字テープに「記念」と印字してカッタで切り離し,これにより3本のインレタテープを作製し,その後,それらをそれぞれ対象物にそれぞれ転写することになる。
,「」 , 「 」 転写の際には まず 祝 を転写対象物に転写し その後 五十周年「」 , を転写対象物の 祝 に続くように正確に位置合わせした上で転写をし更に「記念」も正確に位置合わせした上で転写するという極めて面倒な。, 「」 作業をしなければならない このような方法により 祝五十周年記念との均等の文字列をきれいに一列に転写することはまず不可能である。
すなわち 「祝 「五十周年 「記念」のそれぞれの文字列が均等な文 ,」,」 ,字間隔で転写されること,あるいは上下方向にずれることなく,かつ文字も傾くことなく一直線に転写されることはほぼ不可能であり,仮に可能であるとしても相当の熟練を要する。
これに対し,一審被告の解釈によると,第1発明は,同一の印字テープ(印字されるテープ)に,インクリボンのみを単独にて着脱することによりいろいろな色の文字を印字することができるものである。具体的には,まず赤色のインクリボンを使用して「祝」と印字し,次に青色のインクリボンに交換して 「五十周年」と印字し,最後に黒色のインク ,リボンに交換して「記念」と印字すれば,均等な文字間隔でかつ一直線に並んだ綺麗な印字が可能であることは明らかである。
そして,上記インレタテープを使用して転写すれば,1本のインレタテープに複数色で印字されているから,位置合わせなどの転写作業も一回で済むので,色ごとに分けて転写する場合よりも,作業性が良いし,等間隔かつ整列された文字列の転写が可能となる。
したがって,原判決は異議答弁書の解釈において誤っている。
(ウ) 原判決の構成要件「1E」の解釈の誤り(その2)原判決は 「…特許異議決定においては『インクリボンを着脱自在と ,,』, 『』 (, すること は相違点の1つと認められたものの 慣用技術 4頁3行4行 であり 上記相違点に発明の存在を認めることができない 4 ),『。 』(頁9行)と判断されていることが認められる (173頁)から 「特 。」,許異議答弁書(乙8)から,構成要件1Eを被告主張のように解釈することはできない (173〜174頁)と判断する。 。」しかし,異議決定においては,一審被告が異議審理時において主張した,構成要件「1E」を「インクリボンのみを(印字テープとは別に)着脱自在とすること」と解釈した上で,その点については進歩性がないということを指摘しているのである。すなわち,まず 「インクリボン ,のみを(印字テープとは別に)着脱自在とすること」との解釈が前提となっている。これに対して,原判決の上記判断は,その前提を無視し,論理を逆転させて,その前提には進歩性がないとの判断がされているか,「()」 ら インクリボンのみを 印字テープとは別に 着脱自在とすることとは解釈できないとの論理展開をしているのであり,異議決定の解釈において論理的に誤っている。
イ第2発明前記のとおり,第2発明は無効であるが,仮にこれが有効と考えるのであれば,第2発明については,第二のテープのテープ基材自体を着色すると限定して解釈するほかはない。
この点,原判決は 「…第2発明の特許請求の範囲,発明の詳細な説明 ,及び図面中にテープ基材を着色する方法を限定した記載は見いだせない。
また,上記cの出願過程における被告の主張も,第二のテープのテープ基材が第一のテープの背景色となることを意味するにとどまり,印刷層等によって背景色を得ることを排除しているものではないと認められる (1。」76頁)と判断する。しかし,問題は,明細書中や出願過程における主張において 「テープ基材を着色する方法を限定した記載」があるか否かで ,はなく 「テープ基材そのものを着色する方法」以外の「粘着剤層を着色 ,する方法」や「テープ基材に印刷して着色する方法」の技術が開示されて,。,, いて そこまで含むものと解釈できるか否かである そして 一審被告は第2発明の明細書や出願過程における主張において 「テープ基材そのも ,のを着色する方法」以外の方法は開示されていないから限定して解釈すべきであると主張しているのである。これに対し,原判決のように,本件明細書中に「テープ基材を着色する方法」に限定されておらず 「テープ基 ,材そのものを印刷する方法」や「粘着剤を着色する方法」も含まれると解釈するのであれば,前記のとおり,そのような技術は乙11の5刊行物に開示されていることは明らかであるから,本件第2発明は無効であるとの結論となる。
ウ第5発明原判決は 「PT-240」については構成要件5H(5h 透明印字 ,テープをその長手方向に沿って筐体の右から左へ搬送する仕組み)を充足しないとしたが(178頁 ,対象品群bには 「PT-240」と同様に ),第5発明の構成要件5Hを充足しない被告製品(PT-120,160SP,170,200:甲90,91,123)が含まれている。
エ 海外特許1(ア) 原判決の認定した権利内容の誤り原判決は,対象品群nのPT2420PC以外の本体と対象品群nのテープカセットを組み合わせたものが,請求項1〜3及び5〜8を充足するとしたが(189頁 ,前提となる海外特許1の権利内容の認定に )おいて誤りがあることは前記(1)イ(オ)のとおりである。
(イ) パソコン接続専用機種(PT-2420PC)について海外特許1の権利内容は,前記(1)イ(オ)のとおりテーププリンターに関するものであり,被告製品である対象品群nのうちパソコン接続専用機種(PT-2420PC)については,パソコンにおいて制御することによって初めてプリンターとして機能するものであり,前記請求項1の構成要件7A ,そして7E’を有しない。したがって,パソコン接 ’続専用機種(PT-2420PC)は,海外特許1のいずれの請求項に係る発明をも実施していない。
なお,原判決は,海外特許1について対象品群nだけ問題としているが,原判決における超過売上額の算定においては結局他の対象品群をも含めた売上げ全部を計算の基礎としており,そのうちヨーロッパでも販売された対象品群oにおいては,PT-9200PC,PC9200DX,2500PC,9500PCもパソコン接続専用機であり,これらも海外特許1のいずれの請求項に係る発明をも実施していない。
(ウ) 記録テープが装置の前後方向に送られる機種について被告製品の対象品群nのうち,記録媒体としての記録テープがオペレーターからみて横方向ではなく前後方向に搬送される構成の機種(PT-200(シリーズ ,PT-1200(シリーズ ,PT-220,P ))T-2480,PT-2460がそれに当たる)については,機器における各手段の配置が,請求項1の特定と異なり,記録テープのオペレーターとは反対側に印字される構成とはなっておらず,請求項1の構成要件7C’〜7E’を有しない。したがって,対象品群nのこのような機種は,海外特許1のいずれの請求項に係る発明をも実施していない。
(エ) すべての機種についてあらゆる一審被告製品について,請求項7の構成要件7S’の切換手段を有しておらず,また,請求項8の構成要件7V’の部分切断刃を有していない。したがって,すべての一審被告製品において請求項7及び8に係る発明を実施していない。
オ 海外特許2海外特許2の請求項2〜9及び11,12の各発明の構成に係る原判決の認定は特に争わない。なお,請求項1,13,14はテープ作製方法に係る発明であり,一審原告らは実施を主張していない。また,海外特許2の請求項9及び10の各発明が一審被告製品において実施されていないことは,原判決の認定するとおりである。
カ 海外特許3(ア) 海外特許3の権利内容a 海外特許3の請求項1〜2,4〜9及び11の各発明の構成は原判決の認定するとおりである。
また海外特許3の請求項2,4〜6はいずれも上記請求項1の従属クレームで,請求項7は請求項6の従属クレームである。
,「, なお 原判決が請求項1の9Cの構成を 前記装置本体に支持され前記前面部分と前記後方部分の境界に位置するあらかじめ設けられたテープ搬送路に沿って,ほぼ透明な印字テープを,そのテープのどち。」 らか一方の面がオペレーター側に面するように送るテープ送り手段としたのは正確ではなく,正しくは「前記装置本体に支持され,前記前面部分と前記後方部分の境界を画定するあらかじめ設けられたテープ搬送路に沿って,ほぼ透明な印字テープを,そのテープのどちらか一方の面がオペレーター側に面するように送るテープ送り手段 」と。
訂正すべきである(下線は訂正個所 。)同様に,請求項7の9Uの構成を「前記一対のローラーが圧着状態である第1位置と前記ローラーがお互い離れた第2の位置を選択的に選ぶ手段を持っている」とした点は 「前記記録装置は,更に,前記 ,一対のローラーが圧着状態である第1位置と前記ローラーがお互い離れた第2の位置とに選択的に配置する切換手段を持っている」と訂正すべきである。
b 海外特許2と対比すると,海外特許3に係る発明においては,装置本体における記録テープ搬送路を挟んでオペレーター側を前面部分,その反対側を後方部分と規定し,インクリボン送り手段,印字手段,プラテン及びテープ貼り合せ手段の配置を特定して,透明テープに印字されたイメージがオペレーター側から正像として視認できるようにした構成を限定している。この前面部分及び後方部分に関し,海外特許3の明細書においては 「記録媒体がほぼ水平に保たれ,テープの ,底面に印字するような場合には,本体の上部は先に使用した“前面部”, 。 」, 分 に相当し テープの底面は裏面に相当する と記載されており海外特許3に係る発明は,記録テープの印字面がほぼ垂直に支持されて印字される場合のみに限定されない。
c 以上のとおり,海外特許3の請求項1〜11の各発明はテープ印字装置単体に関するものであり 「第2のテープが第1のテープの背景 ,となる」との限定はなく 「使用者側から見て正像視認可能」とする ,ために周知あるいは公知の各要素の配置構成を限定したものである。
(イ) 実施についてa パソコン接続専用機種海外特許3の権利内容はテープ印字装置単体に関するものであり,被告製品のうち,パソコン接続専用機種(PT-9200PC,PC9200DX,2500PC,1500PC(シリーズ ,9500)PC)は,左右反転の印字制御がパソコン側で行われ,テープ印字装置内にては行わない構成であり,独立クレームである前記請求項1,8及び11の構成要件9G,9G’及び9G”の印字制御手段を有しない。したがって,原判決が認定するとおり,パソコン接続専用機種は,海外特許3の各請求項の発明を実施していない。
b 記録テープが装置の前後方向に送られる機種被告製品のうち,記録媒体としての記録テープがオペレーターからみて横方向ではなく前後方向に搬送される構成の機種(ST-1150,PT-1130,PT-1170,PT-1180,PT-11Q PT-1160 PT-200 シリーズ PT-1200 シ ,,() ,(リーズ ,PT-1400(シリーズ,PT-1600)は,装置本 ))体がオペレータ側の前面部分と後方部分とを有しておらず 「使用者,側から見て正像視認可能」となるように構成されていない。したがって,上記機種は,海外特許3の請求項1〜11の各発明を実施していない。
c すべての機種あらゆる被告製品については,海外特許3の請求項7及び10の各発明を実施していない。請求項7の発明における「駆動源により回転する一対の圧着ローラーを,両者が圧接状態にある第1の位置と,両」, 者が離間する第2の位置とに選択的に配置するための切換手段 とは原判決における海外特許2の請求項9の構成要件8Vに関して認定されたように 「単にテープカセット着脱時の態様を規定した構成」は ,同構成要件を充足しないと解すべきである(原判決186〜187頁参照 。なお,仮にテープカセット着脱時の態様を規定した構成が海 )外特許3の請求項7の構成要件9Uを充足するとすれば,この請求項7の発明は,既に述べたとおり,無効となるべきものである。
また,請求項10の発明における「記録テープと貼り付けテープの両方を切断する完全切断刃と,貼り付けテープのみを切断する部分切断刃とからなる切断機構 」を有する被告製品は存在せず,上記その 。
他の機種のみならず,すべての機種において請求項10の発明は実施されていない。
d 請求項3海外特許3の請求項3について一審原告らが実施を主張していないにもかかわらず,原判決が実施していると認定したことは明らかに誤りである。
(3) 超過売上高の算定についてア 自己実施における独占の利益・実施料収入との関係(ア) 原判決の判断原判決は 一審被告が 開放的ライセンスポリシー を採用せずに 制 ,「 」 「限的ライセンスポリシー」を採用していたとして,カシオ社がラミネートテープの競合技術であるノンラミネートテープの技術を実施した製品「ネームランド」をもって市場に参入した平成3年11月,キングジム社が同様な競合技術の製品「テプラ・プロ」をもって市場に参入した平成4年12月,ダイモ社が同様なノンラミネートタイプの「DYMO4500」をもって市場に参入した平成4年4月以降はもちろんのこと,その後10年も経過した平成14年にカシオ社及びキングジム社が一審被告から包括的な実施許諾を受けた後においても,自己実施から独占の利益を得たと認定した。
しかし,原判決の上記判示は,単に一審被告がラベルライターの取扱「」 業者の全員には実施許諾をしていないから 制限的ライセンスポリシーであり,自己実施による独占の利益を認めるという,極めて短絡した論理によるものであり,法律的な根拠を全く有しない。
(イ) 三菱電機事件における判断基準の位置付けと原判決の誤りa 裁判例の内容そもそも,特許権者が開放的なライセンスポリシーを採用している,, 場合には 自己実施からの独占の利益を認定しないという判断基準は三菱電機株式会社に対する職務発明対価請求事件(いわゆる三菱電機事件)における東京地方裁判所民事46部に係属した平成15年(ワ)第29850号事件の平成18年6月8日言渡しの判決により初めて導入されたものであるが,同事件でも,また,その後の同部の事件(例えば東京地方裁判所平成15年(ワ)第23981号・同19年1月30日判決,いわゆるキヤノン事件)においても 「特許権,者が,当該特許発明実施しつつ,他社に実施許諾もしている場合については,当該特許発明実施について,実施許諾を得ていない他社に対する特許権による禁止権を行使したことによる超過利益が生じているとみるべきかどうかについては,事案により異なるものというこ」, , とができる と述べ そもそも一律に適用できるものではないことをまず前提としている。
さらに,上記三菱電機事件判決における「開放的ライセンスポリシー」と「制限的ライセンスポリシー」への言及は,次のような文脈中でなされているものである。
「?@特許権者が当該特許について有償実施許諾を求める者にはすべて合理的な実施料率でこれを許諾する方針(開放的ライセンスポリシー)を採用しているか,あるいは,特定の企業にのみ実施許諾をする方針(限定的ライセンスポリシー)を採用しているか,?A当該特許の実施許諾を得ていない競業会社が一定割合で存在する場合でも,当該競業会社が当該特許に代替する技術を使用して同種の製品を製造販売しているか,代替技術と当該特許発明との間に作用効果等の面で技術的に顕著な差異がないか,また,?B包括ライセンス契約あるいは包括クロスライセンス契約等を締結している相手方が当該特許発明実施しているか,あるいはこれを実施せず代替技術を実施しているか,さらに,?C特許権者自身が当該特許発明実施しているのみならず,同時に又は別な時期に,他の代替技術も実施しているか等の事情を総合的に考慮して,特許権者が当該特許権の禁止権による超過売上げを得ているかどうかを判断すべきである 」。
ちなみに,こうした判示は他の事件(東京地方裁判所平成17年(ワ)467号等東芝事件の和解勧告書,前掲キヤノン事件)においても,共通に述べられている。
b ライセンスポリシーの位置付け上記一連の裁判例の示した判断要素のうち,?@の「ライセンスポリシーが開放的か制限的か」という問題は 「開放的なライセンスポリ ,シー」の場合は,その要素のみで自己実施からの独占の利益を考慮する必要はないというものであるが,他方,ライセンスの状態が制限的な場合には,他の?Aないし?Cの要素を考慮することが許されないというものではない。むしろ逆に,?@の制限的なライセンスポリシーの場合には,?Aないし?Cに該当するか否かを検討すべきことが明らかに述べられているものである。この場合,例えば,?Aの場合は,実施許諾を得ていない企業の存在を前提としているが,この企業が実施許諾を受けていない理由が特許権者の拒否による結果なのか,実施許諾を得ないことを選択したのかは問わないが,いずれにせよ競争力のある代替技術を使用して実施許諾を受けない企業が存在する場合に,自己実施は特許権の独占的効力が技術競争上微弱であることを考慮して,自己実施からの独占の利益を認める必要はないとしているものである。
したがって,原判決が,キングジム社・カシオ社の両社に対する実施権許諾にかかわらず,例えばクロイ社,マックス社,タカラ社が実施権受諾ではなく,OEM供給を一審被告から受けていることを指摘して,本件は制限的ライセンスポリシーであり,実施料収入のみならず,自己実施からの独占の利益をも認めるべきであるとしたことは,極めて短絡的であり,上記一連の裁判例の示した判断基準の一部のみを恣意的に切り取って適用した不合理な解釈であるといわざるを得ない。
もちろん,原判決も,三菱電機事件判決も,地方裁判所の判決であり,相互に拘束力を有する訳ではない。しかし,客観的に見ても,完全に開放的な場合以外はすべて「制限的ライセンスポリシー」であるとして,自己実施からの独占の利益を認めるとすれば,特許法35条1項が無償の法定通常実施権を規定した立法趣旨が意味を失うおそれがあることも,明らかであろう。
c 代替技術の存在一方,三菱電機事件の上記判断基準例の?Aないし?Bに照らすと,本件においては,自己実施通常実施権の範囲内に止まるものとする結論の妥当性が明らかとなる。すなわち,原判決も認定するように,欧州市場においてはドイツのダイモ社は強力な販売力を有するが,1994年(平成6年)以降はノンラミネートテープを使用する安価型のラベルライター「DYMO1000」を製造販売しており,実質的なシェアを有する非実施権者として欧州市場のトップメーカーの地位を維持しているのであるから,有力な競合的な代替技術が存在するといえる場合である。
我が国においては,一審被告の発売開始からわずかに数年後から現在に至るまで,カシオ社及びキングジム社が従前から存在したノンラミネートテープに改良を加え,ラベルテープの表面側から印字するが擦れても消えない耐久性のあるノンラミネートテープ技術という代替技術を開発し,平成3年と平成4年に製造販売を開始し,たちまちに両社が市場を席巻したものであり,それ以後一審被告の我が国における市場占有率は両社に大きく差をつけられた状態で3位を維持してきたにすぎない。
しかも,カシオ社・キングジム社の両社は,10年以上も経過した平成14年に一審被告から包括的ライセンスを取得し,このライセンスの対象には,原判決が「ラミネート特許」と一括する第2発明,第5発明を含むものの,これらの発明はラベルテープの裏側から鏡像ないし裏文字で印字することを要件とするから,カシオ社・キングジム社の両社がこのような特許発明実施していないことは一審原告らも原判決も認めるところである。
加えて,一審被告も,第2・第5発明を実施しないノンラミネート型製品の競争力に対抗するために,自らもかかる発明を実施しない製品(M型等)を発売せざるを得なかったものである。
d小括したがって,本件は,?@実施許諾を受けないで代替技術を使用する企業の実質的な存在,?A実施権は受諾したが代替技術を実施する企業の存在,?B当該代替技術は消費者にとって技術的効果において差はなく,価格においてより安価である事実,?C特許権者である一審被告もこうした代替技術を採用せざるを得なかった事実から,上記三菱電機事件判決の判断基準によっても,その?Aないし?Bに該当し,実施料収入のほかに自己実施からの独占の利益を認めるべきでない事例に該当することは明らかである。
(ウ) 事実認定の誤り等しかも,原判決は,本件の具体的な事実の認定に関しても,制限的ライセンスポリシーについて事実に反する認定を行っている。
例えば,特許庁における異議申立を行ったマックス社が,特許異議不「」 成立後に一審被告からOEM供給を受けた状況を 警告による権利行使とみなしているが,これも特許制度の運用の実務及び企業の合理的なビジネス判断の通常からみて,およそ根拠のない不合理な推測である。
マックス社は,既に知られていた競争技術(カシオ社・キングジム社と同様なノンラミネート)で自社製造を行う決定も,そうせずに実施許諾を受けることも,製造を委託することも,いずれも選択可能であったが,既にカシオ社・キングジム社が席巻している市場において大量販売を見込めないマックス社は自己で製造を行わず,一審被告等にOEM委託をしたものであって,これは企業のビジネス決定として常識的なものであり,これを一審被告の「制限的ライセンスポリシー」の根拠とすることはできない。
また,原判決は,米国クロイ社についても制限的ライセンスポリシーで実施許諾契約を締結していないと認定するが,これはクロイ社が一審被告の販売したラベルライター本体に使用する補給用のテープカセットの製造販売を認めなかったにすぎない。もちろん,こうした補給品の他社による製造販売の拒否は,一審被告がテープカセットについて多くの特許(一審原告らが発明者ではない)を保有していたからこそ可能になったものであり,本件各発明の抑止力行使の結果ではない。
なお,原判決は,一審被告が単にカシオ社・キングジム社の両社との契約が過去の免責を含むから契約前の自己実施からの独占の利益を考慮すべきではないと主張したかのごとく整理しているが,誤りである。一審被告は,明示的に,上記の代替技術の存在,実施権者が代替技術を使用し第2・第5発明を実施していない事実,自社も代替技術を採用した,。 事実を 自己実施からの独占の利益の不発生の根拠として主張しているイ 自己実施による超過売上高の算定?想定実施権者のシェアについて(ア) いわゆる「ラミネート発明」a 原判決は,第2発明,第5発明,海外特許1ないし3を一まとめにして「ラミネート発明」とし,国内について平成11年支払分まで本体分の30%,テープカセット分の25%,海外について同時期に本体分の20%,テープカセット分の16%を最高として,極めて高率の超過売上高を認定する。その理由として原判決は 「ラミネート発,明は優れた耐久性を有しているから,被告が開放的ライセンスポリシーを採用すれば,実施許諾を求める企業が相当数あったと推認でき,この点は,特に国内分におけるOEM生産の割合が極めて高かったことから裏付けられるところ,一審被告は,国内においてはラミネート発明を含めた実施許諾の申入れを拒絶し,平成14年までラミネート発明への他社の参入を許さず,海外においても,ダイモ社に対し速やかに権利行使を行い,在庫の販売のみを許したものである。そして,上記超過売上高の認定は時間の経過とともに非ラミネート方式の研究開発が進展してきたことやキングジム契約等が締結されたことを超過売上高の割合の減少に反映させたものである (原判決228頁2行 」〜10行)と判示する。
b しかし,上記判示からも明らかなように,原判決は,個々の発明の構成要件該当性や技術的評価を行わず,あたかもラミネート発明という概念に技術的・実用的・商業的に価値の高いものがあるかのように認定している点において,基本的な不合理性がある。
(a) 例えば,原判決は,第5発明も海外特許1も無効理由があると認定しながら,これらを含めた「ラミネート発明」の価値を論じている。また,一審被告がダイモ社に対して権利行使をして和解契約に至った対象の権利は,そもそも海外特許1ではないことは,一審被告が早い段階から指摘し立証してきたものであるのに(乙40の1・2 ,上記の判示においては,あたかも海外特許1が行使され )たかのように述べている。無効性のある海外特許1により権利行使ができるはずもないし,これに対しダイモ社が対価を支払うはずもない。
(b) また,一審原告らのラミネート発明が優秀な技術であり,平成14年までラミネート発明による他社の市場参入を阻止したとの認定も,それではカシオ社やキングジム社が平成4年にノンラミネート技術のラベルライターを発売でき,しかも直ちに一審被告を上回る販売高と市場占有率を得られた理由を全く説明できない。この事実のみを見ても,一審原告らのラミネート発明を構成する(日本及,), び米国では各2件 欧州ではわずかに1件の 特許をもってしては日本においてはカシオ社・キングジム社の,欧州においてはダイモ社のラベルライターの営業を抑止できなかったことが示されている。
(c) 耐久性等の性能の相違については,一審被告がなんとか商品の差別化を宣伝し,製造コストからくる価格の相違を説明しようとした努力の現れであり,だからといって一審原告らが,使用上の性能の差及びその結果として営業上の成功を証明したわけでもない。問題は,ラミネートテープが消費者からみて,価格の差を越えて,購入意欲をそそるかという問題であって,仮に他社の製品の性能が消費者から見て劣等であれば,キングジム社が一審被告からのOEM取引を縮小してセイコーエプソン社からのOEM供給に主体を移すはずもなく,また,カシオ社等の製品の売上高が一審被告を凌駕するはずがない。事実は,ラミネートテープとノンラミネートテープの構成の相違が消費者に与える影響は顕著ではなく,このためM型の製造販売を行っており,その販売台数を伸長してきたことは,原判決も認定するとおりである。
(d) さらに,カシオ社・キングジム社の競争業者が実施許諾を受けながらラミネートタイプに切り換えなかったのは,それだけの技術的・商業的な意味が見出せなかったからにほかならないし,また,それ以外のダイモ社等の他社にとっては,カシオ社・キングジム社・ダイモ社の各社が,いわゆるノンラミネートテープにより充分に大きな売上高を達成していることをみれば,なにも実施許諾を受け実施料を支払ってまで,ラミネートテープを選択する必要はなかったものである。
(e) 原判決が「時間の経過とともに非ラミネート式の研究が進展した」と述べている点も,上述のとおりカシオ社が平成3年に,キングジム社が平成4年には非ラミネート式の製品の発売を開始するとともに,欧州においてもダイモ社が同様に上記和解に前後してノンラミネートタイプの製品を販売し,これらにより平成5年度(平成4年11月21日〜平成5年11月20日)の一審被告の製品の販「」() 売高が 約3分の1に落ち込んだという原判決の認定 210頁と明らかに矛盾するものである。
(f) 以上のとおり,原判決が,高率の超過売上高は考えられないとの一審被告の主張を排斥した理由にはいずれも合理性がない。
c 一方,カシオ社・キングジム社がノンラミネートテープの販売開始後10年も経過した時点で一審被告の包括的なライセンスの許諾を受けた理由は,この時点までに一審被告がテープカセットを中心に膨大な特許ポートフォリオを確立していたので,上記各社はそのすべての特許との抵触を回避するコストを負担するより,包括的ライセンスを受けることにより設計の自由を確保することを選択したものであることは,電子機器の業界の常識から見て極めて合理的に推測できる。
,, , , しかも 両社は 契約の前後においてはもちろん 現在に至るまでノンラミネート方式からラミネート方式に変更したことはないから,ラミネート方式の特許について実施許諾を受けなければならない必然性は見出せないものである。この点は海外を含めたラベルライターの市場シェアの●%以上をノンラミネート方式が占めていることから明らかである。
d 確かに,米国に関する限りは,一審被告の製品が市場において優先している。しかし,これは米国における一審被告の著しい販売網確立の努力及び宣伝の成果であることは,一審において詳細に主張立証してきたところである(乙68参照 。ラベルライターの業界において )のこうした販売力の相違は,欧州におけるダイモ社の優位,我が国におけるキングジム社・カシオ社の優位からみても明らかである。
e なお,一審被告が販売したラベルライター用のテープカセットが他社により製造販売されず,一審被告が売上げの●%以上を占めるテープカセットの販売を維持できていることは,一審被告がテープカセットに関し,国内及び海外において多くの特許権・実用新案権を確立し維持していることが主たる要因である。また,テープカセットの製造技術が,例えば録音テープカセットに比較して,著しく高度な技術を要するために,模倣者が製造し難いということも大きな原因となって(, (, ) , いる すなわち インクに関する化学組成 例えば 乙55:別紙12種のテープの貼合時のずれ防止などの機械的技術,印字条件との整合性などの電子的技術等 。)f 以上のとおりであるから,競合技術により市場が飽和している技術分野において,無効の権利も含め「ラミネート発明」という具体的な特許を離れた概念で一審被告の発明を把握し,高率の超過売上高を認めた原判決の認定及び判断に合理性がないことは明らかである。
原判決の根拠は,結局制限的ライセンスポリシーであったということに尽きるが,ここでの問題は,市場の状況,とりわけ,競争技術の存在とその強さからみて,また一審被告及び競争業者を含めての市場の飽和度からみて,他の新規の参入者があり得たか,またその場合にいわゆるラミネート発明に基づく実施許諾を希望し得たか,その場合新たなライセンシーがどの程度の販売高(シェア)を確保できたか,という事実関係に基づく判断を必要とするものであり,もともと概念が不明確で恣意的な判断に流れやすい「制限的ライセンスポリシー」か否かによって決定されるべき問題ではない。原判決は,かかる基本的な判断基準において,合理性に欠けるものといわざるを得ない。
(イ) 第1発明,, ., 原判決は 第1発明については 本体分について1%から0 5%のテープカセットについて5%から2.5%の超過売上高を認定する。
しかし,第1発明は,押絵のように文字等を対象物に擦り付ける方式に関するものであり,旧来からのインスタントレタリングと同様に用途が極めて限られており,わざわざ実施許諾を得てまで必要とする技術ではない。
この事実は,一審被告もキングジム社もカシオ社も,単に品揃えのために提供していただけであり,現にインレタテープは,もともと売上げも少なく,キングジム社は既に販売を取り止めていることは,原判決も認定するとおりである。こうした発明について新たに実施権の許諾を希望する企業があるとは思えない。原判決は,制限的ライセンスポリシーを唯一の理由とするようであるが,市場の必要性の不存在が重視されるべきであり,数値的には小さいとはいえ,原判決の超過売上高の認定は恣意的であり合理的な根拠を有しない。
ウ 「ラミネート特許」の他社への実施許諾について(ア) ラミネート特許の実施許諾一審原告らは,ラミネート特許は他社に実施許諾されておらず,したがって,ラミネート特許に関して一審被告は「非ライセンスポリシー」を採用していたものであり,一審被告はラミネート技術を門外不出の独自技術としてだれにも許諾していないなどと主張するが,原判決が認定するとおり,一審被告はカシオ社に対してもキングジム社に対してもラミネートタイプのラベルライターについて実施許諾をしているものである。
(イ) カシオ社,キングジム社との実施許諾契約a まず,カシオ社との契約に関しては,●●(省略)もし,カシオ社が実施するのであれば,ラミネートラベルタイプの製品を製造販売できたことは明らかである。
b 次に,キングジム社との契約に関しては,●●(省略)かかる事実は,キングジム社に対する契約の解釈について原判決の認定及び一審被告の主張が正しいことを示すものである。
さらに,一審原告らは,ラベルライターの国内販売に関して,売買契約上,一審被告は国内販売することを制約されていたと主張し,乙55・添付資料45の第7条を引用し 販売権の特約として 乙 注 ,, 「()( ),( ) ・一審被告 及び丙 注・ブラザー販売 は 甲 注・キングジム社が本件製品を昭和64年10月31日までに10万台購入することの見返りとして,本件契約の記名捺印の日から昭和64年10月31日までの期間中,本件製品並びに本件製品と意匠の類似した製品を甲以外の第三者に販売しない 」と明記されたことを指摘する。 。
しかし,製造物納入契約の実務上当然に理解されることであるが,上記規定は,キングジム社向けと同一仕様・同一外観の製品を一審被告が第三者(ブラザー販売を含む)にOEM供給することを禁止する趣旨である。同じ国内市場で同一のデザインの製品が異なるブランドで販売されると購入者に出所の誤認混同を生ずる恐れもあるから,契約に際して当然に規定される条項にすぎない。換言すれば,上記規定の下でも,キングジム社向けの仕様と外観が異なるラベルライターであれば一審被告はいつでも自由に製造販売できる規定であり,こうした国内販売をも制約する内容ではなかった。
したがって,実施許諾の有無に関する限り,原判決の認定に誤りはない。
(ウ) G 陳述書(甲180)一審原告らが提出した G 陳述書(甲180)には 「関係者が一番の ,リスクとして認識していたのが,ブラザーのラミネート特許が2007年以降に切れるということでした 」との記載がある(10頁 。 。)確かに一審被告のラミネートタイプの製品は他社が現実に販売している製品との差別化のため一審被告にとって大切であったことは事実であるが,ラミネート化の技術は,多くの関連する特許群や製造技術の総合から成るものであり,特定の特許発明を指すものではない。また,特許期間はいずれ満了するものであるから,キングジム社やカシオ社などの他社がどうしてもラミネートタイプのラベルライターを製品に加える必要がある場合には,前記契約に従い実施料さえ支払えば実施できたのである。
したがって,カシオ社やキングジム社がラミネートタイプの製品を扱わないで推移してきたことは,今更一審被告製品と同じタイプの製品を販売してもPR効果がなく,テープカセットの種類が増えるだけ販売店での取扱いが煩雑となるにすぎないこと等から,その製品化に魅力を見出せず,積極的にラミネートタイプの製品に乗り出さなかったことを示すことは明らかである。
なお,キングジム社についていえば,一審被告によるOEM製品(ラミネートタイプ)から他の会社(セイコーエプソン社)によるOEM製品(ノンラミネートタイプ)へ取扱いの中心を転換したものの,一審被告からのOEM購入は継続していたのであるから,真にラミネートタイプのラベルライターが市場の要求に合致しているのであれば,セイコーエプソン社からのノンラミネートタイプの製品の販売数量に比較して,一審被告からのラミネートタイプの製品の販売数量が少なくとも互角以上であったはずである。それにもかかわらず,セイコーエプソン社からのノンラミネートタイプの製品の販売数量が圧倒的に大きかったという事実は,キングジム社がノンラミネートタイプのラベルライターの商品力に満足し,販売戦略上ノンラミネートタイプのラベルライターの販売に注力したことを裏付けるものである。換言すれば,一般消費者は,作製されるラベルがラミネートタイプであるかノンラミネートタイプであるかを意識せずに購入しているのであり,販売力さえあればいずれのタイプの製品でも販売数量を確保できることが明白に示されているのである。
以上のとおり,ラミネート発明は他社に実施許諾されてないとの一審原告らの主張が根拠のない憶測によるものであることは明白である。
(エ) マックス社侵害品に関する主張に対しマックス社の製品が第2及び第5発明を実施している可能性があるとして特許庁に対して優先審査を申請したことはあるが,特許請求範囲を補正して特許登録された前後において,一審被告がマックス社に対して警告書を送付したことはない。マックス社が自社で製造をせずに一審被告からOEM供給を受けたのは,自社開発及び製造設備投資等のリスクを回避する判断と選択をしたからにすぎない。
エ 一審被告製品の優位性について(ア) 発明実施品は耐久性,耐候性,耐薬品性,透明性,見栄えの面で圧倒的な優位性を持つとの主張に関し一審原告らは,一審被告製品は他社の製品に比し耐久性等の品質上の優位性を有する旨主張している。
しかし,一審原告らが指摘するラミネートタイプのラベルテープの優位性は,本件各発明から直接導かれる帰結ではない。むしろこうした優位性は,一審被告がワープロ用等のテープ化・カセット化の技術の蓄積に始まり,本件製品自体と製造技術の開発・改良に努めた成果であり,一審被告の貢献として評価されるべきものである。
しかも,第2発明,第3発明,海外特許1 〜3は,実質的にテープの「印字装置」に関する発明であることは明白であり,したがって,一審原告らが称する「発明実施品」とはテープ印字装置(ラベルライター本体)自体である。それにもかかわらず,一審原告らは,あたかもラミネートのテープ自体が一審原告らの発明であるかのごとき主張を繰り返しており,失当である。
(イ) ラミネート式であること自体の優位性に関し第2発明,第3発明,海外特許 1 〜3に記載されているラミネートタイプのラベルの構成は出願前に公知であったものであり(乙165,乙11の5),その製造方法も既に提案されていたこと,したがって,上記の本件発明はラミネートタイプのテープ自体を特徴とするものではなく,ラミネートタイプのテープを作製するための限定された具体的構成を特徴とするものにすぎないものであることは,既に主張したとおりである。
したがって,一審被告が 「自社の排他的なラミネート技術によって ,市場トップシェアをもたらしている」としているのは,一審被告が保有するラミネート技術(テープカセットを含む)に係る多数の権利と製造,。 技術を総称しているのであり 本件各発明に限定しているものではない(ウ) ラミネートテープのコストに関しノンラミネートタイプのラベルを作製するために必要なテープ類は,裏面に粘着層が塗布された被記録テープ(剥離紙付)とインクリボンの2種類であるのに対して,ラミネートラベルを作製するために必要なテープ類は,被記録テープと剥離紙付両面粘着テープとインクリボンの3種類であり,生産数量等の同1条件にて比較するならばラミネートタイプのラベルのコストが高くなることは明らかである。
一審被告は,こうしたラベルのコスト競争力を向上するために 「P,-touchカートリッジの内製化」プロジェクトを立ち上げ,記録テープ(透明テープ)及び両面粘着テープをそれまでの小巻状態での購入から原反での購入に切り替え,スリッタによる所定幅への裁断加工,ワインダによる所定テープ長への小巻加工を社内に取り込むことによりコストダウンを図り,さらに,加工付加価値の極めて高い両面粘着テープの研究を重ね,最終的に塗工設備を社内に導入して剥離紙付両面粘着テープの内製化に成功した。これにより,社内で広幅原反として製造される剥離紙付両面粘着テープ,広幅の原反にて購入される記録テープ(透明テープ)及びインクリボンのすべてについて,それら原反以降の加工を社内にて行うことにより小巻テープ類が生産され,協力工場にて製造されたカセット部品とそれら小巻テープ類が,社内設備として開発されたカセット自動組立てラインに投入され,原価が大幅に低減されたテープカセットの内製化が実現したのである。
その結果,単純比較すると製造原価の高いラミネートテープカセットが,製造原価の低いノンラミネートテープカセットに近い原価に抑えら,。 れ コスト競争力の向上と付加価値の社内取込みが実現したものであるいずれにしても,こうしたコスト削減努力は,一審被告の継続的な経営及び製造の努力の成果であり,これを第2,第5発明等に結び付けようとする一審原告らの主張は本質を把握しておらず,失当である。
(エ) ラミネートラベルの用途に関し一審原告らは,原判決がラミネート式でなければならない市場規模を過小評価していると主張する。
しかし,一審原告らが必要性があると主張する耐擦過性,耐薬品性,耐候性(紫外線で退色しにくいこと ,耐熱性等は,ラミネートタイプ )のラベル自体の特徴であり,本件各発明の特徴ではない。既に述べたとおり,本件各発明と同一構成を有するラミネートタイプのラベル自体は公知(乙165,乙11の5)であり,第2,第5発明は,そのようなラミネートタイプのラベルを作製するための具体的構成を構成要件とする限定された装置の構成にすぎないものである。
換言すれば,一審原告らは,第2,第5発明がラミネートタイプのラベルの作製とそのテープカセットのすべてに及ぶかのように主張するものである。
(オ) 他社の類似ラミネートラベル作製機に関し一審原告らは,クロイ社の「Dura Type 240」及びキングジム社の「テプラJET JCR770」を取り上げて,ラベルの不透明感を含む品質の劣勢で撤退した商品であるとか,わずかしか売れずに撤退した商品である旨主張する。
しかし,これらの商品は技術的・品質的には一審被告のラミネートタ() , イプのラベルライターと遜色ないもので 乙95・印字サンプル参照ビジネス市場を狙ったが故に装置本体が大型化し高価格となり,販売戦略も相まって販売台数が伸びなかったものである。
しかも,クロイ社は,その後一審被告からのOEM購入したラミネートタイプのラベルライターを販売したが,この一審被告が製造したラミネートタイプの製品も売上げが伸長しなかったから,クロイ社の売上げ不振はクロイ社の有する販売網が一般消費者及びオフィス向けに適していなかっただけのことであり,製品の品質によるものではない。
さらに,装置本体のサイズについては,クロイ社の「Dura Type 240」に採用されたラミネートラベル作製機においても,小型化は当然に可能である。すなわち,一審被告のラベルライターのテープカセットの構成において,記録媒体として裏面に剥離紙付着色粘着層を設けた透明テープを用い,そのテープ表面に正像印字後にその印字面を覆うカバーテープとして透明粘着層を有する透明テープを用いれば,一審被告のラベルライターと同じサイズの装置本体となることは自明である。
なお,前述のとおり,一審被告が供給したラミネートタイプの製品とセイコーエプソン社が供給したノンラミネートタイプの製品の両者を販売してきたキングジム社についても,一審原告らが主張するようにラミネートタイプのラベルライターが市場の要求に合致しているのであれば,キングジム社はセイコーエプソン社からのノンラミネートタイプの製品の販売数量に比較して一審被告のラミネートタイプの製品を,互角かそれ以上販売したはずである。それにもかかわらず,ノンラミネートタイプ製品の販売数量が圧倒的に大きいという事実は,消費者が,作製されるラベルがラミネートタイプであるかノンラミネートタイプであるかは意識せずに購入しており,そのいずれのタイプの製品も販売者の販売力により販売数量を確保できるということが合理的に推認されるものである。
オ 製造・販売地別の売上げについて(ア) 国内製造販売分a 原判決の誤り原判決は,特許法101条2号間接侵害規定が平成14年法律第24号による特許法の改正により設けられ,同規定に経過措置が設けられていないことから,平成15年1月1日の同改正法施行よりも前の行為には排他的な効力が及ばないにもかかわらず,これを明確に区別することなく同規定が該当するかのように判示する点で,誤りといわざるを得ない。
この改正の理由の一つとして 「この改正前の間接侵害規定につい ,ては 「〜にのみ使用する物」の「のみ」という要件が厳格に解釈さ ,れると,間接侵害が認められにくいとの問題点が指摘されていた」ということが立法関係者によって明らかにされている(特許庁総務部総務課制度改正審議室編「平成14年改正 産業財産権法の解説」23頁 。すなわち,同改正による2号の追加によって,これまでより間 )接侵害の認められる範囲が広くなったことは明らかである。
また,これを特許権者以外の当業者の側からみれば,これまで特許法101条1号の「のみ」に該当するといえない限り,発明の全部を実施していない物の製造・販売を自由になし得たのに,2号の追加により 「発明による課題の解決に不可欠」なものであるか否かについ ,ても検討しなければならなくなったものであって,明らかに市場に対する抑制は異なっている。なお,特許法101条1号の「のみ」に該当するかどうかについては,これまで数多くの裁判例が蓄積されており,当業者にとってその判断は必ずしも困難なものではなかった。
そして,本件においては,この2号の適用の余地のないラベルライター本体及びテープカセットの売上げは,決して小さなものということはできない。
なお,原判決は,後記カのとおり,相当因果関係を有するテープカセットあるいは本体の売上高を考慮すべきであると判示しており,前記間接侵害の認定がこれら自己実施による超過売上高の算出や,相当実施料率の決定に具体的にどのように考慮されているのか不明である。このような判断方法が不当であることは,後記カのとおりであるが,いずれにしても,上記のような特許法101条2号に関する判断の誤りないし遺脱が,原判決の自己実施による超過売上高の算出や,相当実施料率の決定についての認定判断に影響を及ぼしていないはずはなく,再度,正確な認定に基づいて,これらを判断すべきである。
b 一審原告らの主張に対し一審原告らは,本件各発明について,実績を用いて直接侵害にも間接侵害にも該当しないようにした製品の市場が,国内売上げのどの程度の割合となるかを算出するが,その方法は恣意的であり,ミスリーディングである。
(a) ラミネート発明一審原告らは,第2発明及び第5発明のいずれにも直接・間接侵害とならないテープカセット(クリアタイプ)が国内売上げの●%程度しかないと推測し,さらに第1発明については,転写テープの売上げのほとんどはTC型のものであることを前提として,平成14年以前の実績でいえば直接侵害にも間接侵害にも該当しないように間隙を縫って参入できる場合はほぼ0%であると主張する。
しかし,平成14年以前についていえば,少なくともテープカセット中,クリアタイプのTX及びTZ型のテープカセットが第1発明ないし第5発明の直接侵害にも間接侵害にも該当しないものであることは原判決も認めるところであり,一審原告らも争わないところである。したがって,他社が第1発明ないし第5発明に触れないようにするためには,単に一審被告が販売しているクリアタイプのTX及びTZ型のテープカセットと同一のものを選択すればよかったのである。
しかも,クリアタイプのTX及びTZ型のテープカセットの販売数量は,一審原告らがいうような極めて少ない割合ではない。すなわち,消滅時効により本件各発明が消滅する基準時期とされた平成4年以降のクリアタイプ以外のタイプを含むTC,TX及びTZの各型のテープカセットの売上げを全世界で見てみると,同年当時にはTCタイプの売上げは大きいものであったが,その後一貫してかなり急速にTC型の売上げが減少し,これに反して特にTZ型の売上げが増加しており,例えば,平成9年にはTC型が●%に対し,TX及びTZの合計が●%と,双方の割合は逆転し,平成14年に,, 。 は TCが●%に対し TX及びTZが●%を占めるに至っているそして,この期間における各型の総売上げを対比すると,TX及びTZの合計が●●円に達し,総売上げの●%に達する。このうちクリアタイプの割合をそれぞれ一審原告らが主張するように●%と考えたとしても,●●万円,全体の●%(●●)である。これは明らかに有意な数値であり,いわゆるコンパチ〔compatible〕品(互換製品)の製造業者が狙いを付けても不思議ではない。平成4年当時にコンパチ業者がコンパチ品の販売を企画することを考える場合には日本国内販売にのみ狙いを絞ることは考えられないから,全世界における売上げを見ることが妥当であるが,上記の傾向は日本国内に限定しても同様であった。
これに対し一審原告らは,第2発明については,これを回避できるクリアテープの売上げのテープカセット全体に対する比率を挙げ,他方,第5発明については,これを回避できるラベルライター本体の売上げの全体に対する比率を挙げて,これを乗じて得られる数値が,第2発明及び第5発明を回避できる実際の市場であるかのように主張する。
しかし,ここには,明らかな誤りがある。すなわち,第5発明に関しては,例えばTX及びTZ型のテープカセットについて間接侵害が成立しない以上,他社は,TX及びTZ型を使用可能なすべてのラベルライター用のTX及びTZ型のテープカセットを製造,販売することが可能となるのであって,第5発明を回避できるラベルライター本体にのみ使用されるTX,TZ型のテープカセットだけしか販売できなくなるわけではないため,第5発明を回避できるラベルライター本体のラベルライター本体全体に対する市場の割合を出してみても,何らの意味もないからである。
(b) 第1発明第1発明については,一審原告らの主張によっても,TX及びTZ型のテープカセットが平成14年以前に同発明の直接侵害間接侵害に該当するものではない。そうすると,上記第5発明と同様,第1発明についても,他者は自由にTX及びTZ型のテープカセットを販売することができ,すべてのTX及びTZ型のテープカセットの売上げが,第1発明の特許権に基づく排除効による保護なしになされたものというべきである。
したがって,第1発明についても,実績でいえば,直接侵害にも間接侵害にも該当しないように間隙を縫って参入できる場合はほぼ0%であるなどという一審原告らの主張は理由がない。
(c) 第3発明第3発明についても,テープカセットについては,以上と同様に考えることができ,一審原告らの主張には理由がない。
(イ) 海外向け製品テープカセットの輸出はそもそも我が国の本件各特許の間接侵害を構成しないものであるから,かかる輸出分について日本国内の製造に関して間接侵害に基づく実施を認めることもできない。
すなわち,仮に,テープカセットが日本国内においてラベルライターと組み合わされた場合に我が国の本件各特許との関係で特許法101条1号又は2号の間接侵害を構成する物であったとしても,このテープカセットが日本国内において専ら海外輸出用として製造され,輸出されるものであって,日本国内において販売されてラベルライターに組み込まれることにより我が国の本件各特許発明実施されることがないとすれば,日本国内において我が国の本件各特許権が侵害されるおそれはないから,このようなテープカセットの製造,輸出のための譲渡行為が特許法101条1号又は2号の間接侵害に該当するものと評価することはできない。
このことは,学説・裁判例において認められているところである(大阪地裁平成12年10月24日判決・判例タイムズ1081号241頁〔製パン器特許事件 ,大阪地裁平成12年12月21日判決・判例タ 〕イムズ1104号270頁〔ポリオレフィン透明剤事件 ,同事件の控〕訴審判決である大阪高裁平成13年8月30日判決・平成13年(ネ)第240号 。)ところで,一審被告の米国・欧州等向け輸出用のテープカセットは,海外各国の被告子会社等から受注を受け,一審被告の製造部・生産管理(旧工務部)において海外からの受注に合わせて生産計画を立て,製造後,名古屋港の名四倉庫において,国内向けテープカセット(戸部下倉庫保管)とは区別して保管され,一審被告から各国に輸出されるものである。したがって,海外向けテープカセットは,海外向け専用として製造され,その後,日本国内における他の業者に譲渡・販売されることなく,すべて輸出に供されるものである。
そのため,海外向けテープカセットが,日本国内において,本件各特許にかかるラベルライターと組み合わされて使用される可能性は全くない。
したがって,仮にテープカセットが,日本国内においてラベルライターと組み合わされたとすれば,我が国の本件各特許権との関係で,特許法101条1号又は2号の間接侵害を構成する物であったとしても,一審被告が日本国内において米国のみならず,欧州を含むすべての海外向けとして製造しているテープカセットの製造,輸出のための譲渡,輸出が,我が国の本件各特許権の間接侵害を構成することはなく,この間接侵害に基づく一審被告の実施を認めることはできない。
このことによって除外されるべきテープカセットの売上げは,総額で約●●円(日本生産の輸出用テープカセットの●%)となる(原判決の算定方法によった場合 。)したがって,一審被告の製造する輸出用の単体のテープカセットを自己実施による超過売上げの算定根拠として使用した原判決の認定は,明らかに誤りである。原判決が誤って算定の根拠として使用したテープカセットの売上げは,総額約●●円となる。
(ウ) 特許不存在国で製造され,特許不存在国へ輸出された販売高a 特許権の存在しない中国で生産され,同様に特許権の存在しない国に販売された売上分は,いかなる自己実施の計算からも除外されるべきである。
その額は,ラベルライター本体については約●●円(●% ,テー)() ( ) プカセットについては約●●円 ●% の合計約●●円 全体の●%である。
b これに対し一審原告らは,従来日本国内において一審被告が生産した本件各発明の実施品について,超過売上高を発明の対価算定の根拠とすることができたにもかかわらず,これを中国に移管したことにより,日本国内において他社は相変わらず実施を制限されたままであるのに,直ちに一審被告の従来の国内生産分の売上げを算定の基礎とできなくなることが不当である旨主張する。
しかし,一審被告が中国へ生産シフト後においても独占の利益を得ているかどうかは,中国における生産・輸出に独占の利益が存在するかどうかによるところ,一審被告は,中国においては特許による市場の独占という保護を受けることなく製造・輸出をしなければならないため,特許権の排他的効力に基づく独占的利益,自己実施による超過売上げを全く得ることができない。
なお,日本国内の同業他社についていえば,これまでも,特許の存在しない外国,例えば中国において,自由に本件各発明の実施品を製造し,特許の存在しない国へ輸出することも可能であったのであり,一審被告が中国において生産を開始したからといって,これまでと同様の中国生産,特許のない国への輸出が制限を受けるようになったわけではない。
c 一審原告らは,日本国内において,日本特許に基づき日本国内の競合他社を牽制してきたことにのみ注目し,一審被告が中国に生産をシフトしたからといって,これまで特許の排他的効力により制限を受けてきた日本国内の競合他社が,国内において急にその制限から免れるようになるわけではない旨主張するが,一審被告の中国への上記シフトにより日本国内の競合他社が直ちに日本国内における発明の実施品の生産を開始することができるかどうかということと,一審被告が,中国における生産・輸出において,中国における超過売上げを認めることができるかということとは,全く関係がない。
d 一審原告らは,仮に他社が中国生産を行ったとしても,販売できるのは主要市場である欧米日本を除く権利不在国のみに限定されるので,それでは事業として成り立たないことを,その主張の根拠の一つとして掲げているが,例えば日本においては間接侵害が成立するようなテープカセットが,米国では寄与侵害等の特許権侵害に該当しない場合があることを利用すれば,これらテープカセットのみを製造し,間接侵害等による特許権侵害が成立しない国及び特許のない国への輸出を併せ,相当の事業の実施が考えられる。また,近時の経済の成長が著しく,人口十億人を超える中国をはじめとする東南アジア諸国の市場への販売は,特許権による保護も十分でないものの,どの企業も当然無視できないはずである。
e 一審原告らは,中国で行っているのは最後の組立ての部分のみであって,実施品本体に使用する専用部品,ラミネート式テープカセットの生産に必須となる専用テープ,主要部品はすべて日本で製造し,輸出している旨主張する。
この主張の意味は必ずしも明らかでないが,仮に同主張がいわゆる「ノックダウン (構成要件(部品)から成る物の発明につき各部品 」のすべてを製造し,これらをまとめて又は別々に輸出し,輸出先で組み立てて完成品とする場合に,日本国内における生産と実質上同一であるとして,直接侵害の対象となるとされるもの。吉藤幸朔「特許法概説」第13版460頁参照)として,日本国内で実質的に生産されているという主張であるとすれば,以下のとおり,そのような実態はない。
すなわち,例えばラミネートタイプのテープカセット(商品名「P-touch )の中国生産についてみると 「P-touch」のテ 」,ープカセットの中国生産は,平成11年6月ころから開始され,同年10月から数量的にも本格的に生産が開始されたものであるが,中国現地で製造された部品数の製品全体の部品数に対する割合は,同年10月ころに約●%,平成12年4月ころには約●%,同年12月ころには約●%であった。
なお,平成11年9月以前の当初の2〜3か月間,量的にはわずかであるが,日本から中国へ部品毎に分けて箱詰めされて送られた14種の部品を中国で組み立ててテープカセットを生産していたことがある。しかし,それですら,14点もの部品を工場において専用に作られた治具を使用して組み立てていたものである。そして,平成15年10月からは,すべての部品について,中国で生産,加工,調達されたものを用いて生産している。まして,部品点数のはるかに多いラベルライター本体については,その部品の組立作業だけであっても容易なものではなく,また,全部品を日本から輸出したこともない。
したがって,中国における生産がいわゆるノックダウンとして,実質的に日本における生産であると解することはできない。
(エ) 米国販売分(消尽論)a 海外特許2及び3はいずれも米国特許であり,本体とインクリボンや印字テープを組み合わせた構成を特許請求するものである。米国においては,我が国の販売形態,使用形態と同様,一審被告のラベルライター本体はまずテープカセットを同梱して販売され,購入者は同梱のテープカセットの使用が終わった後,補給部品としてテープカセットを購入し使用する。
そして,仮に,当初の販売状態でテープカセットを同梱したラベルライターのセット商品の販売がラベルライターを特許請求した米国特許である海外特許2及び3の実施に該当すると仮定しても,米国法においては,First Sale Doctrine により,最初の販売により当該製品についての米国特許は消尽し,その後に当該ラベルライター用に販売された補給用テープカセットの消費者による使用は「修理」と同様に評価され,特許権の新たな実施とみなされず,したがって,このような補給用品の販売も新たな特許の実施とみなされず,またその販売が米国特許法271条(b)項の積極的誘導にも同条(c)項の寄与侵害にも該当しないものである。
b この点は,我が国で発表された複数の論文でも詳細に説明されているが(乙150,151の1・2 ,本件訴訟の対象である一審被告 )のテープカセットと海外特許2及び3の関係について,米国ワシントン大学(University of Washington)の知的財産法の専門家である竹中俊子教授の具体的な鑑定意見(竹中第1鑑定意見,乙149)を得た。これを要約すると以下のとおりである。
(a) アメリカ特許法271条(a)項は特許権侵害を構成する行為を列挙するが,特許権者又は実施権者によって正当な権利に基づき特許発明実施する製品が販売された場合,その製品に限り,特許権は消尽し,その製品を使用,販売,輸入等する行為は特許権侵害を構成しない。この消尽理論は,ファーストセールドクトリンとも呼ばれ,?@問題となる特許を実施する製品(特許実施製品)が適法にアメリカ国内で販売されること,?A特許権者又は実施権者によってその販売に何らの制限が設けられていないことを条件に,特許発明の排他権は消尽し,その後,その特許実施製品に関する限り,購買者を含めた第三者の行為に権利を及ぼすことはできなくなるというものである。
(b) 次に,アメリカの判例は,適法に販売された特許実施製品に関しては特許権が消尽するとして消尽理論の適用を認めた上で,一審被告の行為が特許法上許される修理に該当するか又は侵害を構成する再製造に該当するかを判断している。修理が侵害を構成しない根拠については,消尽理論の当然の帰結として販売後の購買者等による行為に及ばないとするものと考えることもできるが,判例は消尽理論の適用後,購買者は適法に購入した製品に限り製品全体としての寿命が存在する限り使用し続けることができるようになるため,修理する積極的権利を取得するとして説明する。一方,再製造された製品は別の物であるため消尽理論の適用対象外となり,この製品に対する行為は侵害を構成するとされる。この場合,販売された製品の予測される寿命を全うし使い尽くされたかどうかが問題となり,使い尽くされた製品を再生する行為は修理をする権利の範囲外となり,違法な再製造とされる。
(c) したがって,交換・改造された構成要素の寿命が残りの構成要素より短い場合,消耗品である場合,又は廉価である場合には,適法な修理と判断されるのである。米国最高裁判所が別個に特許されていない構成要素の交換は再製造とならず,侵害を構成するのは特許発明全体の再製造に限られると強調し,特許実施製品を適法に取得した購買者に与えられる修理をする権利を広範に認めたことから,CAFC(連邦巡回控訴裁判所)は,一部の例外を除き,別個に特許の対象となっていない構成要素の交換・改造については修理権の範囲内として,侵害を構成しないと判断している。
(d) 海外特許2,3の各米国特許は,ラベルライター本体とテープカセットが組み合わせられて初めてクレームの構成要素をすべて充足し,実施製品を構成する。したがって,テープカセットのみを製造・販売する行為は直接侵害を構成せず,間接侵害を構成するかどうかのみが問題とされる。間接侵害の成立は直接侵害の存在が前提とされるが,以下のとおり,テープカセットを購入し,ラベルライター本体と組み合わせて使用する者の行為は,消尽理論又は黙示的ライセンスの適用により侵害を構成しない。したがって,カセットテープの製造・販売等が間接侵害を構成することもない。
(e) 以上のように,アメリカ特許法の下においては,特許製品の適法な実施製品の購買者が消耗品であるインクリボンやテープ,あるいはそのテープカセット等を交換する行為は直接侵害を構成しないので,これらの消耗品を交換するカセットを製造・販売する行為は間接侵害を構成しない。
c また,上記竹中第1鑑定意見(乙149)に対する一審原告らの批判を考慮して,同教授により2007年〔平成19年〕12月12日付けの第2鑑定意見(乙192,竹中第2鑑定意見)が作成されており,これを要約すると以下のとおりとなる。
() (a) 米国法において特許権が消尽するかは再製造 reconstructionに該当するか,それとも修理(repair)に該当するかによって決定されるが 「再製造」も「修理」も判例の積み重ねによって形成さ ,れた法的概念であって,通常の口語的な用語例の概念ではない。また,米国において消耗部品の交換に関連して特許の消尽が争われた事件では,Sandvik 事件を除いては,ほとんどの事件で「修理に該当する」として特許権が消尽すると判断され,交換部品の使用よる侵害が否定されてきたことが注目されるべきである。この点において,最高裁判所平成19年11月8日判決,知財高裁特別部平成18年1月31日大合議判決に代表される我が国の消尽論に比較して,米国の消尽理論における「修理」の概念は我が国よりはるかに広く解釈されて消尽が容易に認められ,したがって侵害が否定されている。
例えば,竹中第2鑑定意見(乙192)が本件事例との比較のために引用している Jazz Photo Corp v ITC 264 F.3d 1094 59 USPQ2d ,,1907 (Fed Cir. 2001)は,富士写真フィルムのレンズつきフィルムユニット(いわゆる使い捨てカメラ)のフィルム入れ替え品に関する事例であり,被告の行為は「修理」の範囲に属するものとして侵害が否定されたが,この事件にほぼ対応する「写ルンです」事件の東京地裁平成12年8月31日判決及びコニカ事件についての東京地裁平成12年6月6日決定の2件も,撮影済みのレンズつきフィルムユニットのシェルを利用したフィルム入れ替えに関するものであるが,米国の Jazz Photo事件とは全く反対に侵害を肯定したものである。
このように消尽に関する米国の法理論とその適用は,我が国のそれとは大きな隔たりがあることを認識する必要がある。
いずれにしても 「消尽」という同じ用語を使用しながらも,そ ,の適用の範囲は,我が国とは明確に異なるものであるので,米国でのテープカセットの販売と消尽理論の関係については,我が国の間接侵害論から安易に推測するべきものではなく,適用法である米国法の解釈を慎重に検討する必要があるので,一審被告は,竹中第1鑑定意見及び竹中第2鑑定意見により米国法の内容及び本件への適用を立証したものである。
(b) 本件に対する消尽理論の具体的な適用上述のとおり,仮想的な実施権者が支払うべき実施料の前提として,テープカセットを同梱したラベルライター本体の販売後,その消耗品もしくは補給部品として販売するテープカセットの販売は,特許権行使の対象となるか否かという側面から検討するものである。
こうした消尽理論は,米国の判例の累積により判例法として確立していることは,竹中第1鑑定意見でも竹中第2鑑定意見でも明確にされている。したがって,一審原告らの,制定法に規定がないとの事由で軽視する立場は,法律的な議論として到底認められるものではない。
判例により確立された米国の消尽理論は,複数のファクターを参酌した上で,最終的に「使い尽くされたかどうか」を判断するものであり 「判例は,通常,これらのファクターのいくつかを組み合 ,わせて,適法に販売された特許実施製品が使い尽くされていたかを事案毎の事実に基づいて,発明の性質や目的,当事者の意図を参酌して判断している (竹中第1鑑定意見5頁23行〜25行 。しか 」)も米国の裁判所は「実際には先例の事実,特に発明全体に対する交換・改造された構成要素の関係について比較し,同種と考えられる場合には先例の結論を適用している」のである(同5頁25行〜27行 。)(c) 上述した判例法と適用の実態を前提として,竹中教授は,前述の Jazz Photo 事件のCAFC(連邦巡回控訴裁判所)の判示と比較しながら,本件に対する種々のファクターを検討している(竹中第2鑑定意見7頁〜11頁参照 。)?@ まず,販売された製品との同一性に関しては,Jazz Photo 事件が「再製造は,特許製品が使い尽くされた後で,本当に新しい製品を作る場合に限られる」と強調し,さらに「個別には特許の対象となっていない各構成要素の交換は,一回に一つずつであろうと,同じ構成要素を繰り返し交換するのであろうと,異なる構成要素を次から次に交換するのであろうと,いずれも特許製品所有者の正当な権利の範囲内であると言明している」こと(同8頁?B項 Jazz Photo 事件では リサイクル業者がカメラのボディ パ ),, (ッケージ)の(a)厚紙によるカバーをはがし (b)レンズと ,一体化したボディ本体の溶接部をあけ (c)巻き取り機構の歯 ,車を交換し (d)フィルムカウンターをリセットし (e)フラ ,,ッシュの電池を交換し (f)新しいフィルムをセットし (g) ,,本体のこじ開けた部分をテープ・糊付けし (h)新しい厚紙の ,,, カバーをつける作業により フィルム交換が行われているといういわば使い捨てカメラのほぼすべての構成要素が交換作業の対象となった事実を認定した上で,依然として,製品が同一性を維持しており,かかるフィルム交換作業は再製造ではなく,修理であると判断し,したがって,侵害を否定したものである(同7頁下8行〜8頁6行 。)こうした先例に比較して,本件テープカセットは,ラベルライター本体にはなんら手を加えずに使用を継続することが可能であり,個別的には一審原告らの発明の対象ではない透明テープ,インクリボン,両面粘着テープ,ローラー,テープ搬送路を含むテープカセットを一度に交換するものであり,ラベルライター本体が同一性を維持していると認定されることは疑う余地がない(同8頁,?C項 。)?A 構成要素の重要性については,Aro Manufacturing 事件の米国連邦最高裁判所が「交換される構成要素の重要性によって修理か再製造の判断をしてはならない」と強調しているため,米国のその後の事例では「構成要素の重要性」を強調した議論がなされていない。Bottom Line Management 事件でも,修理部分が当該特許発明新規性に係わる部分であったが,特許権者の主張は認められなかった。このように構成要素の重要性の議論は,米国裁判所の判断基準として重要視されていない(同9頁〜10頁の?U項参照 。なお,Jazz Photo 事件のように,一見重要な部分の交換作 )業と考えられるような事例でも,再製造と認められなかったことは,本件事例においても「構成要素の重要性」の主張が認められるとは思えない(同上 。)?B 構成要素の寿命交換される構成要素の寿命が交換されない構成要素より短いことが 修理と判断される決定的なファクターになることが多い 竹 ,(中第2鑑定意見10頁,?V.?@参照 。Jazz Photo 事件では,交 )換されたフィルムが消耗品であること,ボディがより寿命の長いものであることが修理とみなされる決め手になったが(同上 ,)本件でもラベルライター本体は繰り返し使用できる長い寿命の構成要素であり,他方,テープカセットは,透明テープ・両面粘着テープ・インクリボン等は本質的に消耗部品であり,これらを使い切るとテープカセットを交換せざるを得ない したがって Jazz 。,Photo 事件その他の米国の先例から見て,本件の構成要素の寿命の相違が,テープカセットの交換は「修理」であり,侵害を構成しないと判断されるものである。
?C 構成要素の割合交換の対象とならないラベルライター本体と交換の対象となるテープカセットの構成要素としての割合自体は,決定的なファクターではないが(同上,11頁,?W項参照 ,本件ではラベルラ )イター本体の所有者は 「本体」を主とし,テープカセットを従 ,とすることは,常識的な判断に属する。
?D 特許権者と購買者の意図当事者の主観的な要素は,使い尽くされたかどうかの1ファクターとして使用され,このファクター自体は決定的なファクターを構成しないが,Jazz Photo 事件のCAFC(連邦巡回控訴裁判所)判決のように,特許権者が修理改造を禁止することを製品上に明示した場合でも,再製造を認めずに修理と認定した事例が多いものである(同上,11頁,?X項参照 。本件では,テープカ )セットはラベルライター本体から着脱自在に構成され,テープが費消された場合には,新たなテープカセットと交換することが特許権者及び購入者の意図であり,交換を禁止する意図が存在しないことは明らかである。
(d) したがって,実施権者の販売したラベルライター本体(テープカセットを同梱している)の販売により,同ラベルライターに関しては海外特許2及び3は消尽しているものであり,その消耗品用ないし補給用テープカセットを販売する第三者又は実施権者の行為を,上記特許に係る発明の新たな実施又は同特許権の侵害ということはできない。
d これに対し一審原告らは,本件テープカセットの販売に関連する消,() 尽理論の適用は 同テープカセットの販売が米国特許法271条 b項の積極的侵害の誘導あるいは c 項の寄与侵害 以下 両者を 寄 () ( , 「与侵害等」という)を構成することに影響を与えないと主張し,米国における本件テープカセットの販売高は上記条項により超過売上高に算入すべきであると主張する。
しかし,我が国特許法に基づく間接侵害理論(従属説に従う場合は直接侵害の存在を要件とするが,独立説に従う場合は直接侵害の存在を要件しない)とは異なり,米国の寄与侵害等は,常に直接侵害の存在を必要とするものであり,この点は一審原告ら自身が証拠として提出した各文献自体から明らかであり,また,竹中第2鑑定意見が詳細に説明するところである。
寄与侵害等の成立には直接侵害の存在が必要であることは,271条(b)項の「積極的に特許侵害を誘発した者」という文言の「特許侵害」の語,及び,同条(c)項の「当該特許の侵害に使用する」という文言の「特許の侵害」の語が,それぞれ直接侵害を定義する271条(a)項の「特許を侵害」の語を意味するところに,法文上の根拠があるといわれている(乙194 。それだけではなく,我が国で )発行されている米国特許法の解説書のいずれにも「寄与侵害等の成立は,直接侵害の存在を必要としない」という否定的な見解は記載されていない。むしろ,以下のとおり,一審原告らの引用した文献を含め「寄与侵害等の成立には,直接侵害の存在が必要である」と解説されているものである。
?@ 甲231文献の291頁「?@直接侵害との関係」の「直接侵害が存在しなければ,本条による間接侵害も成立しないというのが原則である 「我が国の特許法では,間接侵害の成立に直接侵害の存在 」,,」 は要求されないというのが通説であり 我が国の取扱いと相違するとの記載,同293頁「?@直接侵害との関係」の項の同一の記載?A 甲232文献の68頁2-4-1-1項の「寄与侵害の基本的要件は第三者による直接侵害である。第三者の行為が直接侵害を構成しないなら,誰も寄与侵害者であり得ない」との記載なお,この文献には「しかしながら,過去数年間に,PaperConverting Machine Company v. Magna-GraphicsCorporation, 223USPQ 591 (Fed. Cir. 1984), Procter & Gamble Co. v. NabiscoBrands, Inc., 604 F. Supp. 1485, 225USPQ 929 (D.C. Del. 1985)から理解されるごとく,この理論はある程度浸食されている」との記載があるが ここで引用されている二つの判決のうち 前者 Paper ,,(Converting Machine 事件)は,被告が特許期間満了前に期間満了に備えて特許装置の一部を製造しテストした上で,特許期間満了後に出荷し,特許後にユーザーにより組み立てられた事例で,不完全実施による直接侵害を認めた事例である また 後者 Procter & Gamble 。,(事件)は,被告が,米国特許が発効する直前に,その事実を知りながら特許侵害製品(クッキー)を多数の小売店に納入させ,その直,。 後に特許が成立した事例で 裁判所は直接侵害を認めたものであるこの2つの事例は特許期間の直前・直後に直接侵害相当行為が生じた事実関係において寄与侵害を認めたものであるから,上記日本文献の「浸食された」という表現は直接侵害の存在期間をやや広く解釈したということを表しているにすぎず,寄与侵害の成立に直接侵害の存在を要しないと判断したものではない。むしろ,いずれも直接侵害の遂行が認定されており,寄与侵害に直接侵害の立証を必要としないという根拠にはなり得ない(竹中第2鑑定意見,6〜8頁?E参照 。)?B 甲233文献の64頁「1-3-1直接侵害の証明 第一に,原告は有力な証拠をもって,少なくとも一つのクレームの直接的侵害が存在することを示さなければならない。まず第一に,直接侵害がなければ侵害の誘発もあり得ない との記載 同号証66頁 1 。」, 「-4-1 直接侵害が存在しなければならない 米国特許法271条(b)と同様に,直接侵害271条(c)に基づく寄与侵害を認定する要件である」との記載,「() ?C 甲234文献 119頁本文1行〜5行 特許法第271条 bは積極的に特許権の侵害を引き起こさせた者は,侵害者としての責任を負うものとすると規定している。この規定の下で誘因の責任を問うには,引き起こされている行為が直接侵害になるとの立証が必要である」との記載e なお,一審原告らが445頁ないし447頁のみを提出した甲299の405頁本文の下から2行ないし407頁12行(乙193)には 「寄与侵害又は侵害の誘導が成立するためには,寄与された又は ,誘導された行為は直接侵害を構成していなければならない 」と述べ。
た上で 竹中第1及び第2鑑定意見が参照している Aro Manufacturing ,。, 事件の連邦最高裁判所の判決を引用して説明している この事件では自動車の屋根機構に関する特許に基づく実施権を許諾されたジェネラル・モーターズ社が販売した車の所有者は,自分の車を修理する権利を有するので,特許にかかる屋根機構の交換用布製屋根を使用することは「修理」に該当するので,消尽理論により直接侵害は成立せず,したがって,交換用布製屋根を販売する被告には「寄与侵害」が成立しないと判断したものである。
f 以上のとおり,一審被告が米国で行った補給用テープカセットの販売は,海外特許2及び3の直接侵害にも,侵害の積極的誘導にも寄与侵害にも該当しないから,少なくとも米国におけるテープカセットの売上高は自己実施の基礎たる売上高から除外されるべきものである。
原判決の認定手法による場合,かかる米国での売上高は合計約●●億円に達するものであり,他の要素を原判決の前提のままとしても,同判決が自己実施における海外でのテープカセットの販売に関し認定した相当対価の金額の●%(日本を入れて総額の●%)が過剰に計算されていたことになる。
したがって,原判決には,上記の点において,明らかに法の適用の誤り及びその結果として相当の対価の認定の誤りがある。
g なお,カシオ社が日本国外のテープカセットの販売について実施料を支払っているのは,一審被告がテープカセットについての多数の外国特許権を有しているからであって,海外特許2及び3の存在のためではない。
また,現在までのところ第三者(いわゆるコンパチ業者)による,互換用のテープカセット(コンパチ品)の販売が生じていないのも,ラベルライター本体についての海外特許2・3が存在するためではなく,一審被告がテープカセットの構成について多くの特許を保有するために,それらの特許を回避しかつ互換性を確保することが困難であるためである。仮にテープカセットに関する多くの特許が存在しないで,海外特許2及び3のみが存在するのであれば,実施権者によるラベルライター本体(テープカセットを同梱)の販売により海外特許2及び3は消尽するから,第三者が互換性のあるテープカセットを販売することが容易になり,しかも,一審被告は,海外特許2及び3によりそうした互換性のある補給用テープカセットを販売することを阻止できない。
(オ) 米国特許●●号に関する一審原告らの主張に対しa 一審原告らは,米国特許●●号(●●)が一審原告らの発明である旨主張するが,そもそも米国特許●●号は本件訴訟の対象権利ではなく,そして何より,以下のとおり,一審原告らの発明に係るものではない。なお,上記米国特許はダイモ契約権利の対応特許であるから,一審被告の反論は,以下に述べるもののほか,第三者実施(ダイモ社分)のダイモ契約権利に関して後述する反論がそのまま当てはまるものである。
b 一審原告らは,大友教授の鑑定意見2(甲312の24〜30頁)に基づき,米国特許●●号の請求項1,3,4,5に係る発明は,一審原告らの発明が特許となったものであると主張する。
この点,上記大友鑑定意見2は,上記米国特許●●号の上記各請求項に記載の発明は 第3考案及び第2発明に係る発明社内登録用紙 乙 ,(64の2及び3)に開示された発明を特許請求したものであるというものであるが,第3考案及び第2発明に係る発明社内登録用紙(乙64の2及び3)には,上記米国特許●●号の上記各請求項に記載の発明は記載されていない。換言すれば,乙64の2及び3に記載されている内容から 米国特許●●号の上記各請求項に係る発明を 特許 な ,,(いし実用新案登録)出願することは不可能であり,これが一審原告らの発明でないことは明らかである。
すなわち,第3考案の内容及び明細書に開示されている技術は,上記米国特許●●号の対応特許であるダイモ契約権利2(●●)に開示されている発明とは全く異なるものである。ダイモ契約権利2は,第3考案の明細書には開示されていない「インクリボン,透明印字テープ,両面粘着テープがテープカセット内の3つの収納部にそれぞれ個別に収納され,その単一のテープカセット内を3つのテープが移送されて,透明印字テープへの印刷と印刷された透明印字テープの印刷面へのラミネート化がカセット内にて行えるようにしたこと」を特徴とする新規な技術思想に関わるものである。そして,上記米国特許●●号がダイモ契約権利2の対応特許であり,その発明が第3考案とは全く異なることはダイモ契約権利2と同じである。
,(), また 第2発明に係る発明社内登録用紙 乙64の3 の記載ではそもそもインクリボンのみがカセット内に収納され,透明印字テープ及び両面粘着テープはカセット内に収納されていない。したがって,インクリボン,透明印字テープ,両面粘着テープがテープカセット内の3つの収納部にそれぞれ個別に収納されるという技術は,この第2発明に係る発明社内登録用紙には全く開示されていないのである。
c なお,大友教授の鑑定意見(甲312)11〜19頁においては,第2発明及び第3考案に係る発明社内登録用紙(乙64の3,乙64の2 ,並びに「P-touchプロジェクト基本仕様書案(1版 」 ))(乙55の添付資料11)に記載された内容を基に一審原告らのなした発明を認定するとしているが,そもそもこれらにはテーププリンタに着脱可能なラミネートタイプのテープカセットに係るカセット化の技術思想が記載も示唆も一切されていないのであって,この鑑定意見2は,これらの記載内容を誤って理解するものである。
カ 原判決の「相当因果関係」論の誤り(ア) 原判決の相当因果関係論の誤り原判決は,自己実施による超過売上高を算定するに当たり(216頁)() , 下6〜下3行 又は相当実施料率の決定に当たり 217頁3行〜7行間接侵害の有無にかかわらず,法定の通常実施権に加えて本件各発明の特許を受ける権利等を承継したことと相当因果関係を有するテープカセット又は本体の売上高を考慮すべきであると判示する。
しかし,超過利益(超過売上げを得たことに基づく利益)の算定方式は,当該特許の実施許諾を想定した場合に,仮想的な実施権者からどのような金額の実施料を受けられるかを仮定的に計算するものとして裁判所が確立してきた仮定的な算定方式である。その場合,当該特許発明を直接的にも間接的にも実施しない製品は,そもそも実施料支払の対象とならないものであるから,特許請求の範囲に属しない製品を想定して超過売上げやそこから得られる利益を「相当因果関係を有する売上げあるいは利益」として算入することは絶対に許されない。原判決の上記判断は,従来の裁判例と基本的に異なるものであり,前提において極めて不合理である。
なお,原判決における「相当因果関係」による利益の考慮は,平成15年1月1日施行の平成14年法律第24号による改正特許法により特許法101条2号が導入される以前の日本国内におけるラベルライター本体及びテープカセットが個別には101条1号間接侵害が成立しないという認定との関連でなされたものであるが,対価計算上実質的に最も大きな影響を与えるのは,前述した消尽論により侵害を構成しない米国における一審被告の補給用テープカセットの売上げについてである。
(イ) 原判決の事実認定しかも,原判決の上記判断は,明らかな誤解ないし事実誤認に基づくものである。
原判決の上記判断の前提となった事実認定を分説すると,以下の?@ないし?Dのとおりである。
?@ 本件被告製品や同業他社のラベルライターは,いずれも専用のテープカセットを組み合わせて使用する製品として販売されていること(216頁,b,(a)2行〜3行)?A 需要者は,特定のラベルライター本体あるいはテープカセットとを使いたいと思った場合,それに対応するテープカセットあるいはラベルライター本体を購入するという関係があること(同頁 (a)3行〜 ,5行)?B 本体あるいはテープカセットについて間接侵害が成立しない場合であっても本件各発明,特にラミネート発明や第1発明を有しない競合他社が,間接侵害にも当たらないように間隙を縫ってラベルライター本体だけあるいはテープカセットだけ製造販売に参入することは,採算性及び将来性の観点から,事実上困難であること(同頁 (a)5行 ,〜9行)?C そうすると,自己実施による超過売上高を算定するに当たっては,ラベルライター本体あるいはテープカセットには間接侵害が成立しない場合であっても,法定の通常実施権に加えて本件各発明の特許を受ける権利等を承継したことと相当因果関係を有するテープカセットあ(, ) るいは本体の売上げを考慮すべきであること 同頁 (b)1行〜4行?D また,超過売上高を第三者から得られる実施料収入の観点から評価する場合においても,ラベルライターがさほど利益が上がらず,その後のテープの販売により利益を上げるビジネスモデルにおいては,実施料率の交渉は,このようなラベルライター本体の販売後のテープカセットの販売による利益をも考慮して行われるものであるから,相当実施料率の決定に当たっては,同様に,ラベルライター本体あるいはテープカセットには間接侵害が成立しない場合であっても,法定の通常実施権に加えて本件各特許発明の権利等を承継したことと相当因果関係を有するテープカセットあるいは本体の売上げを考慮すべきであること(同頁〜217頁,(c))(ウ) 原判決の事実誤認a まず上記?@の認定は,各社のラベルライターのカタログ(乙110〜122)のみから各社のラベルライターには専用のテープカセットが使用されるという認定をしたものであるが,これらのカタログは単に各メーカーが自己のラベルライター本体とそれに使用される自社のテープカセットを記載した各社自身の商品説明にすぎない。したがって,これらのカタログは,当該ラベルライターの製造業者が販売するテープカセット(原判決のいう「専用のテープカセット )以外は使」用できないことを意味するものではない。
実際には,あるラベルライターに使用され得るテープカセットは,単に当該ラベルライターに対して形状・サイズ・印字ヘッドと被印字,, 位置など物理的な外形設計が合致すれば充分であるが 上記認定?@はかかる事実を看過し,同じメーカーの専用テープカセット以外は使用できないものとして販売されていると事実誤認したものであり,証拠に基づかない推測である。
b また,テープカセットは,特許権等により保護されていない限り,例えば,本件被告製品のラベルライター用テープカセットとの外形等に合致する安価なテープカセットが第三者により市場に供給されれば,本件被告製品のラベルライターの購入者が一審被告のテープカセットを購入する必要がない。それにもかかわらず,上記認定?Aは,こうした事実及び可能性を看過ないし論理的にあり得ないものとして排除し,必ず同じメーカーのテープカセットを購入すると事実誤認したものである。
c さらに,上記認定?Bは,上記?@及び?Aの認定を前提として法律的及び経済的な判断を述べたものであるが,そもそも論理的には上記認定?@及び?Aと認定?Bとは直接的な関係がないと思われる。また,これらを関係付けても上記認定?@,?A自体が事実誤認であるから,これを前提とした?Bの認定も根拠がないことになる。
それのみならず,上記認定?Bは,それ自体理解に苦しむ内容の判示であり,また,明らかに誤った判断である。
まず,上記認定?Bは 「ラミネート発明や第1発明を有しない競合 ,他社が,間接侵害にも当たらないように間隙を縫ってラベルライター本体だけあるいはテープカセットだけの製造販売に参入する」ことが「採算性及び事業の将来性から事実上困難である」というものであるが,そもそも強力な競合他社であるカシオ社,キングジム社及びダイモ訴訟後のダイモ社が製造販売してきたラベルライターは,ラミネート発明を実施せずに,ノンラミネートのテープカセットのみを使用す(, , ) 。 るものである この点は 原判決も認定し 一審原告らも争わないしたがって,上記競合他社はラミネート発明を実施しないで市場参入してきたものである。
また,第1発明については,擦り付け型のインレタテープの用途は狭く販売数量も限られるところから,キングジム社は平成15年5月に製造販売を中止しており,第1発明ないしインレタテープがラベルライターの事業に不可欠ではないことは明らかである。
したがって,ラミネート発明や第1発明は,かかる競合他社に対して「採算上・将来性」からも市場への参入の障壁となっていない。
d しかも,ラベルライター本体とテープカセットの種類のかかる関係は,競合他社に限られず,一審被告の事業においても同様である。
すなわち,一審被告の製品カタログ(乙249)には,最終ページ,「( ) 」 のテープカセットの一覧中に ノンラミネート エコノミータイプとして9種のテープが記載されている 「ノンラミネート(エコノミ 。
ータイプ 」は,テープ裏面に貼り付け層等を予め設け,テープ表面 )に正像で印字するものである。また,一審被告がOEM供給してきたマックス社のカタログ 乙250 には その2枚目中央と下部に ノ (), 「ンラミネートテープは,たくさんラベルを作る人にうれしいエコノミータイプです」及び「ラベルをたくさん使うオフィスにエコノミーなノンラミネートテープ」の記載が,5枚目の下部には「便利でエコノミーなノンラミネート」等の説明が,6枚目には各テープのリストと価格表が記載されている。
当然ながら,ノンラミネートタイプのテープをラベルライター本体に組み込んで使用する場合は,ラミネート発明も第1発明も関係がないことになる。
他方,インレタ用テープカセットは,販売数量が極めて少数であるので,一審被告においても平成12年ころから順次製造を中止してきている(TXは平成17年4月にすべて機種廃止され,TZは平成19年3月にすべて機種廃止され,その生産は機種廃止の数か月前〜半年前に終了している 。)したがって,ノンラミネート製品を主とする競合各社はもとより,一審被告の製品をみても,第三者が 「ラミネート発明,第1発明を ,有しなくとも(あるいはライセンスを取得しなくても ,ラベルライ )」ター本体とりわけテープカセットの市場に参入することは可能であり,本件各特許が参入の法的な障壁になるものではない。こうした第三者の参入に対する法的な障害は,一審被告が有するテープカセットを中心とするその他の多数の権利の保有に基づくものであり,第1発。, 明やラミネート発明の存在と因果関係を有するものではない よって上記認定?@ないし?Bを理由として,第1発明,ラミネート発明と間接侵害をも生ぜしめないテープカセットの売上げによる利益との「相当因果関係」を認めた認定?Cは誤りである。
e なお,原判決の上記認定?Bにおける競合他社の意味は不明であり,一審被告のラベルライター本体に使用するテープカセットの互換製品(コンパチ品)のメーカーを意味しているのかもしれないが,その場合でも一審被告の上記主張が該当する。上記のように第1発明の擦り付け型インレタのテープカセットはもともと用途が狭く,販売量も少なく,一審被告もキングジム社もその販売を中止しても営業に実質的な影響を与えないどころかその廃止がコスト削減に役立つレベルのものであるから,そもそもインレタ用テープカセットを製造しないでも(すなわち第1発明を実施しなくても)コンパチ市場に参入することは可能である。
また,一審被告のラベルライター本体にもノンラミネートのテープカセットを使用することが可能であり,こうしたテープをコンパチ業者が製造することにはラミネート発明も第1発明も関係ないから,第1発明やラミネート発明により,コンパチ業者がより安価なノンラミネートのテープカセットを一審被告の製品用に販売することを防止することはできない。この点で原判決の上記認定?Bが事実誤認をしていることは明らかである。
また,こうしたコンパチ業者がターゲットにするのは,通常システムの本体ではなく補給部品の市場であることは,裁判例や多くの電子機器(プリンター等)をみるまでもなく明らかである。コンパチ業者が補給部品のコンパチ市場に参入するのは,電子機器のシステムないし本体装置自体は構造が複雑であり様々な機能を果たすプログラムも組み込まれているために,本体装置のコンパチ品の開発・製造にはコストとリスクが多いためであって,コンパチ業者が本体装置の市場に参入することを想定することは,およそ現実的ではなく常識に反する想定である。
一方,コンパチ業者による補給部品市場への参入が,そもそも「採算面・将来性から困難」という?Bの認定は全くの事実誤認である。原判決が上記?@及び?Aで認定している「本体のラベルライターと補給部品のテープカセット」の関係は,多くのプリンターに対するインクテープやインクカセット等の市場を典型として常に存在するものであるが,それにもかかわらず,補給部品のコンパチ市場への参入が絶えないのは,間接侵害も成立しない場合には本体を含めた多額の開発コストを負担していないコンパチ業者による補給部品の事業は採算上十分に成立するからである。したがって,上記?Bの認定が,弁論の全趣旨からも認定できるとは到底考えられないものである。
ちなみに,一審被告の本件製品用のテープカセットにコンパチ業者が参入していないのは,本件各発明の存在のためではなく,本件各発明以外のテープカセットを直接の対象とした多くの特許及びノウハウにより保護しているからである(キヤノン・インクカートリッジに関する最高裁判所判決はこうした補給部品側の構成を特許により保護することの意義をよく示している 。。)f 最後に,原判決の上記認定?Dは,カシオ社・キングジム社からの実施料収入についての認定であるが,実施許諾契約の交渉において,実施権を受けようとする企業が本体販売後のテープカセットが「間接侵害にも当たらない」場合にも,実施料を支払うことを約すると認定することは常識に反するものであり,かかる認定を支持する証拠はもちろん,取引事情その他いかなる根拠も存在しない。キングジム社及びカシオ社による実施料の計算と支払は,ラベルライター本体,テープカセット,スタンプメーカー(簡易印鑑製造装置 ,その他電子文具 )周辺等に区分して,実施権者による特許の実施の判断に基づき,計算・支払が行われている。この場合「間接侵害にも当たらないが,実施料を支払う」という論理は,およそ合理的な利益を追求する企業の判,。, 断に反するものであり かかる考慮は入り込む余地はない もちろん一審被告はテープカセットの構成を含む多数の特許を保有しているから,これらを包括的に実施許諾を受けたキングジム社・カシオ社が一件一件の権利の実施を詳細に検討することはしないが(一般には,こうした詳細な検討のコストとリスクを避け,設計の自由を確保することが包括的な実施権取得の目的である,原判決のように 「特定の権 ),利が間接侵害にも該当しないことを前提にした場合」には,実施料収入とこうした特定の権利との因果関係を認定することは不当であり,上記?Dの認定は,明らかな事実誤認ないし誤った判断である。
本件においては,上述のように,包括的な実施許諾を受けたカシオ社・キングジム社・ダイモ社(ダイモ訴訟後の製品)のいずれによっても,第2発明等のラミネート関連発明は実施されておらず,また,第1発明のインレタ用テープカセットは製造中止されるなどその実施が不可欠ではない 「競合他社」が本件各発明を回避できることは, 。
実際に市場で大きなシェアを占めている上記競合他社3社の製品を見ても明らかである。
したがって,こうした本件各発明を実施していない競合他社の存在は,法定の実施権を超えた独占の利益を否定する根拠とすべきものではあっても,単に各社が自己の設計による本体とテープカセットの販売を行っているという事実のみで 「間接侵害にも当たらない」補給 ,構成部品の販売を「相当因果関係」の名の下に独占の利益に考慮すべきではない。
キ 販売子会社段階での売上高(ア) 原判決の誤り原判決は,自己実施分に係る相当の対価の算定に際し,対象売上げを第三者への販売価格と認定し,一審被告の売上げを販売子会社段階での売上高に換算するための売上係数を乗算して対象売上げを算定しているが,この売上係数は事実に反するものである。
この売上係数についての誤りを正すために提出したのが W の陳述書(乙213)であり,この陳述書における売上係数を原判決で認定された売上係数と対比させて記載すると,以下のとおりである(なお,下記以外の海外販売については米国に準じる 。)【本体関係】日本:●●〔原判決:●●〕※ ただし平成12年4月1日から欧州:●●〔原判決:●●〕,,, ※ ただし海外特許1の指定国であるイギリス イタリア ドイツフランスの4か国米国:●●〔原判決:●●〕【テープカセット関係】日本:●●〔原判決:●●〕※ ただし平成12年4月1日から欧州:●●〔原判決:●●〕,,, ※ ただし海外特許1の指定国であるイギリス イタリア ドイツフランスの4か国米国:●●〔原判決:●●〕上記のとおり,販売子会社段階での売上高とするための現実の売上係数は,日本国内販売については原判決に用いられた数値より高い数値であり,米国及び欧州販売については低い数値である。特に,テープカセ,。 ットの欧米販売について 原判決の売上係数は過大といわざるを得ないなお原判決は,米国等での販売に関して「販売会社への販売価格はグループ内部でいくらでも調整できる (230頁)と認定するが,あま 」りにも企業会計の適正性制度や外国との移転価格税制の存在を無視するものである。我が国の会計基準においても,上場会社であったブラザー販売(平成11年4月1日以降は連結子会社)に対しては適正な販売価格でなければならなかったし,米国等子会社にも,売上高を不当に高くすれば米国の利益を日本に移転したものとして課税されるし,日本から安値で出荷すれば日本の会計及び税務が問題となることは当然である。
(イ) 一審原告らの主張に対しa これに対し一審原告らは,一審被告の子会社であるブラザーインタ(「 」 。 ) ーナショナル株式会社 以下 ブラザーインターナショナル というが一審被告から海外向けの製品を買い受け,●●のマージンを乗せて海外の販売会社へ販売していると主張するが,誤りである。
ブラザーインターナショナルは,少なくとも平成2年ころ以降においては,一審被告が日本で製造した商品の輸出手続代行業務(輸出書類作成・船便手配等)を担当しており,一審被告から海外向けの製品を買い受け,海外の販売会社へ販売することは行っていない。
b また一審原告らは,欧州に販売される製品はブラザー・インターナショナル・ヨーロッパ(BIE)へ輸出され,そこから注文に応じて,。 各国の販売子会社へ輸出販売されると主張するが これも誤りであるBIEは,欧州各国の注文を取りまとめて一審被告に発注書を送付するが,製品は上記各国の販売会社等へ直接輸出され配送されている。
。, イギリスに輸出されるのはイギリス販売向けのみである したがって欧州販売会社の値数の●●倍が誤りであるとする一審原告らの主張は根拠がない。
c さらに一審原告らは,TX関連の全売上げについては子会社である三重ブラザー精機株式会社の利益を相当対価の対象として加えなければならないと主張する。
しかし,一審被告の販売価格・売上高は,当然三重ブラザー精機株式会社から購入して販売したものも含まれ,三重ブラザー精機株式会社の製造コスト・利益は,一審被告の仕入価格に含まれ,一審被告の販売価格に対する製品原価の一部として計算済みのものである。
ク 超過売上高の認定と他の権利の寄与について(特許ポートフォリオ)(ア) 原判決の認定原判決は,本件各発明以外の多数の特許権等の存在とその実施の事実を認定しながら 「…その内容を個々に検討すれば,必ずしも必要性が ,高いとは認め難い権利であり,個々の権利がどの程度他社のラベルライ,, ターの製造販売を抑え 本件被告製品の売上高の増加に貢献したのかは明らかとはいえない 」と認定する(222頁 。 。)(イ) 原判決の誤りしかし,第5発明,海外特許1の無効性からみても,第2発明が鏡像ないし裏文字を印字するいわゆるラミネートタイプに限定されているところからも,第1発明は擦り付けによるインレタテープという旧来の方式であることからも,第3発明は無効性とともに多くの選択的な編集機能の一種を構成するにすぎないことからも 「その内容を個々に検討す ,れば,必ずしも必要性が高いとはいえない」こと 「個々の権利が他社 ,のラベルライターの製造販売を抑えたかは明らかではない」ことは,正に本件各発明にも該当するものである。原判決の,他の権利については上記のように「その貢献度が明らかではない」と一蹴し,訴訟の対象となった権利について超過売上高を安易に認定することは,訴訟を提起すれば利益を得るという状況を創出するだけであり,合理性のある判断ではない。
そもそも,かかる他の権利の存在及びその実施の有無は,訴訟の対象の権利と同一のレベルで認定及び判断を行うべきであり 原判決別紙 被 ,「告保有権利一覧表」に示される多数のテープカセット関連の特許等を含む,その他の有用な多くの特許群が,超過売上高の割合の一要素として埋没されるべきものではない。すなわち,自己実施について独占の利益を算定する場合は,対象特許権の仮想的な実施許諾から得られる実施料の計算を試みる手法であるから,特許権者(使用者)に他に実施権利が存在する場合においては,使用者の売上高の達成にはこれらの権利の実施の要素も含まれているものであり,訴訟対象の権利と同等の貢献度を有するものとして扱い,超過売上高は,こうした権利の数による割り算により算定すべきものである。
しかも,原判決自体においても,実施料収入からの独占の利益に関しては,包括ライセンス契約からの実施料であることから,当該実施料における本件各発明による寄与度を,他の実施発明を考慮して認定し,実施料収入を他の権利との間で割り振って計算しているが(争点3,原判決の240〜249頁 ,こうした計算方法は,仮定的ライセンスによ )る「実施料収入」を想定する自己実施からの独占の利益の計算においても当然に行われるべきである。しかるに,原判決は,自己実施に関しては,こうした他の権利の寄与度を計算していない点において,明らかに計算方法の誤りがあるといわざるを得ない。
ケ キングジム社との共同開発との主張に関し,(), 一審原告らは キングジム社と一審被告との契約 甲139 を引用し一審被告はキングジム社と共同開発契約を締結した共同開発関係にあり,キングジム社に対して独占権行使ができない権利が存在する旨主張する。
しかし,キングジム社と一審被告との取引は共同開発契約ではなく,商品の製造販売取引であり,甲139の契約も上記取引のための極めて普通の「取引基本契約書 (甲139)にすぎない。例えば,取引基本契約書 」の「第9条(工業所有権等 」の1項には 「乙(一審被告)は,甲(キン ),グジム社)に納入する製品について,第三者の工業所有権・著作権等の権利を侵害していないことを保証し,万一,第三者の工業所有権・著作権等の権利についての侵害問題が発生した場合には,乙の責任で解決する 」。
と規定されている。したがって,キングジム社へ納入するラベルライターとテープカセットは,一審被告が単独で技術開発を行い,特許保証を行うとともに,その過程において生まれる発明は原則として一審被告が単独で出願するものであって,基本的にメーカーの技術による相手先ブランド製品の製造物供給契約である。ちなみに,同条第2項においては 「共同で ,なした製品に関する発明・著作物並びにその帰属・利用については,協議の上取り決める 」との例外が規定されているが,実際には,上記2項に 。
よりキングジム社との共同出願とされたのは極めてわずかな件数である。
ちなみに,一審被告に限らず,すべての出願は公開されるから,同業者であるキングジム社は,一審被告の出願公開を見て,共同発明であれば協議を申し入れて出願人を決定すれば足りることであるが,一審被告はキングジム社から出願人についての異議を申し入れられたこともない。
当然のことながら,一審被告が製造する製品の購入者であるキングジム社が製品の仕様に関する提案を行うことはあり得るが,キングジム社の希望を技術的に具体化し,その過程で発明があれば,発明として完成して製,。 品に組み込む行為は 専ら一審被告の開発技術者が行っていたものである要するに,単なる願望的なアイディアと発明とは別物で,そのアイディアを実施できる程度に具現化されたものが発明であり,製品仕様の提案に係るアイディアは必ずしも発明として完成していないので,アイディア提案者と発明者とは必ずしも一致しない。したがって,キングジム社からの技術提案6件に係る発明はキングジム社に対して行使できないものであるとの一審原告らの主張は,要望と発明の関係についての理解を欠如するものである。
コ 権利存続期間(ア) 本件訴訟対象権利の出願,登録時期及び存続状況等本件訴訟において対象となっており,我が国の特許(第1ないし第3発明,第5発明)及び実用新案登録(第1ないし第4考案 ,並びに海)外特許1ないし3の存続の状況は,以下のとおりである。
?@ 一審被告においては,権利の継続のためにはその他の管理手続きに,, 費用が生ずることから 自ら実施する可能性がないと確認できた場合無効事由の存在が明らかとなり権利行使が不可能を確認できた場合等,権利維持の理由がないと判断した場合においては,特許料(いわゆる「年金 )の支払を中止し,権利を失効させている。 」?A 第1ないし第3発明及び第5発明については,いずれも無効事由の存在が確認されたため,平成17年から平成18年の間に権利を失効させている。それぞれ権利の失効日は以下のとおりである。
・ 第1発明:平成17年12月13日・ 第2発明:平成18年7月17日・ 第3発明:平成17年7月7日・ 第5発明:平成18年7月17日,, ?B 第1ないし第3考案は期間満了で消滅したが 第4考案については不実施実施の可能性がないとして,本訴が提起される前の平成12年5月31日に失効させている。
?C 海外特許1ないし3について,海外特許1のイタリアにおける権利については,不実施実施の可能性がないとの理由で,平成10年10月27日付けで失効させた。その余の権利については,以前の年金を権利満了の最終年まで既に支払済みであり,存続している。
(イ) 一審原告らの主張に対しa 一審原告らは一審被告が上記措置につき損害賠償をする義務があるとするところ,同主張が不法行為の主張を追加するという趣旨であれば,そもそも一審原告らは本来正当に対価を請求することができたものでないから,理由がない。のみならず,このような主張は時機に遅れた攻撃防御方法の提出であり民訴法157条1項により却下されるべきである。
b また一審原告らは,上記の主張を第2発明に関してのみ問題とするが,前記のとおり第2発明は無効である。仮に有効としても,第2発明はそもそも 「第二のテープ」の基材自体を有色にして「第一のテ ,ープ」を背景としている構成に限定されるものであるから,一審被告自身が実施しておらず,企業の知的財産のコストの合理化の側面から見ても,第2発明に関する特許権を維持する合理的な理由ないし必要はなかったものである。
c さらに一審原告らは,権利を失効させた手続が発明等取扱規程(乙54の1)に反し,存続廃棄が同規程上決定権限がないP&Hカンパニーの J という一部長によって決済されていると主張するが,誤りで。, ある 上記発明等取扱規程における特許権等の存続廃棄の職務権限は他の社内規程により,同部長に代理執行権限が与えられていたものであり,同部長の決済には何らの社内規程違反はない。すなわち,職務権限規程(乙310)の「1.6権限の代理執行 (2)プレジデン ,ト権限」において 「この規程において各プレジデント決裁となって ,いる事項については,特に指定のない限りカンパニー毎に起案者,審査者,決裁権の代理執行者を決定することができるものとする 」と。
規定されており,この規定に基づきラベルライター関連の権利を保有しているパーソナル&ホームカンパニー(P&Hカンパニー)は「パーソナル&ホームカンパニー職務権限規程内規 (乙311)を定め 」ている。そして,この「パーソナル&ホームカンパニー職務権限規程」, , 内規 において 知的財産権の出願・存続・放棄についての決裁権限すなわち代理執行者を開発担当部長(2006年当時は J 部長)と規定されている。
,, 。 したがって 上記権利消滅の手続は 社内規程に沿ったものであるd なお,出願した発明を権利化しないと決定した場合や権利を維持しない(維持年金を支払わない)と決定した場合の取扱いについて規程上の違反がないことは原審において主張したとおりであり,一審原告らから明確な連絡がない限り,一審被告としては廃棄の手続きをなすほかなかったものである。
e なお,一審原告らは海外特許については権利が維持されている旨を指摘するが,これは一審被告の社内決定の時期が国内特許とは異なるために生じた状況である。すなわち,欧州特許である海外特許1については,指定国イタリアに関して,訴訟提起日前の1998年〔平成10年〕6月に「他社不実施であり,他国に比べて売上が低く権利保有により得られる効果が低いため」との理由で権利放棄した。指定国ドイツ,イギリス,フランスに関しては,本件訴訟が提起される前の2003年〔平成15年〕4月に,最終年まで維持年金を支払うこと,, 。 を一括で稟議し それに基づき最終年まで維持年金を支払っているまた,米国特許である海外特許2,3についても同様に,訴訟提起前の2002年〔平成14年〕4月ころまでには,最終年まで維持年金を支払うことの稟議を行い,それに基づいて最終年まで維持年金を一括支払していたものである。
(4) 仮想実施料率についてア 原判決の誤り原判決の自己実施に関する仮想実施料率の認定は,上述した諸事実及び本件各発明の評価(権利の狭さ,無効の可能性 ,本件各発明が他の多く )の実施許諾可能な権利のごく一部にすぎないこと等を考慮すると,過大な実施料率であることが一見して明らかである。
イ ラミネート発明まずラミネート発明(第2発明,第5発明及び海外特許1〜3の総称)については,それ以前からOEM製品の納入先という特殊取引関係及び当事者の主観的な背景を有するキングジム社との契約とは異なり,最も客観的な第三者であるカシオ社との(いわゆるラミネート発明を含む)包括的実施許諾契約においてさえ,本体分及びテープカセットの販売高の●%の実施料の支払を約されたに止まるものである。したがって,日本については原判決が無効であるという第5発明の他は第2発明1件のみ,欧州では原判決が無効であるという海外特許1のみ,また米国では2件のみ,という少数の特許権について,本体については最大5%,テープカセットについては最大4%という原判決における仮想実施料率は余りにも高率である。ラベルライターのような電子機器の包括的ライセンスは極めて多数の特許権を含むが,多くの競争技術によりそれらを回避することが困難ではないため,合計で1%程度が業界の常識であり,上記のようにわずかな数の,しかも,強力な競争業者が実施していない権利について,仮想的な実施権者が原判決の認定するような高率の実施料を支払うことを合意するとの認定はおよそ不合理である。
ウ第1発明第1発明は,擦り付けタイプのインレタテープの作製機の構成を特許請求した発明であり,その用途は極めて限定されており,ラベルライターの製造業者にとって必ずしも必要な権利ではない。原判決は,公知文献には「離型促進剤の開示がない」との理由で第1発明を有効とするが,かかる理由で有効性が維持されるのであれば,第1発明の技術的価値は極めて低いものとなるはずである。いずれにしても,カシオ社との契約が第1発明を含み,その他の多くの特許権を対象とし,また多くのテープカセットの特許発明・実用新案をも対象としても,合計●%の実施料であること,その他の諸事実を勘案すると,第1発明のみについて0.8%ないし1%の仮想実施料を想定する原判決の認定は合理的根拠を有しない。
エ第3発明第3発明は,原判決も無効であると判断しており,このために0.4%及び0.5%の実施料を想定したのであろうが,そもそも想定実施料の認定は,この特許のみを取り上げて実施許諾契約の交渉を行った場合に当事者が合意するであろう料率を見出す作業である。したがって,第3発明の仮想的交渉においては,相手方は当然に原判決の認定した無効事由を主張するはずであり,その場合に第3特許に上記のような実施料率を支払う合意をするとは思えない。無効の可能性のある特許については,仮想的実施料を想定しないという判断がなされるべきであり,万一想定するとしても限りなくゼロに近い料率にすべきものである。
オ 一審原告ら主張の利益率等に対し特許法旧35条の「相当の対価」は,企業の利益の配分を職務発明者に認めるものではなく,従業員等に対する発明へのインセンティブとして相当の対価の支払を認めるに止まるのであり,一審原告らが主張するように使用者の売上高の80%におよぶ金額を超過売上高の算出根拠として認めるようなことは,およそ立法の趣旨を逸脱するものである。
なお,一審原告らは,計算方式1に合理性があるように主張するが,そもそも超過売上高が80%になることの因果関係が不明であるし,製品開発や製造技術開発に投入された人的資源も単に人件費としてしか計算されず,一方,相当対価請求の原告となった従業員については利益の配分に与かる方式となる。また,職務発明については使用者企業が特許法35条1項無償の通常実施権を有するものであるからこそ,一審被告としても商品の詳細設計,製造技術の開発・改良,販売努力やコスト削減努力をするのであるが,一審原告らの主張ではこうした通常実施権に基づく実施によ。, る売上高への配分は20%に止まることになる かかる主張の不合理さは例えば,一審被告の保有する多くの特許やノウハウについて一審原告らと同じような請求をした場合,たちまち売上高や営業利益の100%を超える請求が生じることが合理的に予想されることからも明らかである。
こうした特定の発明と「超過売上高」との関係を合理的に定める算定が不可能であるからこそ,裁判所は仮想的実施権許諾を想定する判断事例を積み重ねてきたものであり,ここに特許法旧35条相当の対価の算定の困難さがある。一審原告らの算定方式1は,結局のところ,超過売上高を恣意的に主張しているのであり,裁判所が合理性を認め得ない根拠に基づく主張である。
(5) 第三者からの実施料収入についてア キングジム社からの実施料収入(ア) 第1発明の寄与度原判決が認定した寄与割合の算定根拠の詳細は不明であるが,一審被告が,●件の発明が実施されている旨を主張したことに鑑み(乙70,73 ,各発明の寄与度を均等であると想定して算出すると2%となる )ので,この数値を基準としたものと推測される。しかしながら,転写テープの用途は極めて限定されたものであり,原判決が認定しているとおり,転写テープの販売額は,テープカセット全体の●%程度でしかないばかりか,転写テープの販売を既に中止している。以上のような事実関係にもかかわらず,第1発明が一時金に対して2%もの寄与度を有するとは考えられない。
,, 「, しかし 原判決が認定しているとおり 被告が多数の権利を保有し特許ポートフォリオを構築していることは,他社に対し,個々の権利は回避可能であるとしても,全体として同業他社の参入を抑制したり,設計の自由度を確保するなどの目的から包括的ライセンス契約を締結させる動機になるもの」である。すなわち,実施を回避し難い中核となるような権利がいくつか存在するだけでなく,実施の有無にかかわらず,同業他社の参入を抑制し得るほどに,又は同業他社における設計の自由度を奪うほどに,網羅的に権利が存在していて初めて,包括的ライセンス契約を締結することができるのである。この点,一審被告はテープカセットについて,その機構のほぼすべての部分について権利を保有しており,これら多数の権利の存在が,キングジム社において包括的ライセンス契約を締結する動機付けとなったことは明らかである。したがって,少なくとも実施権利のみで均等割にすればよいというほど単純なものではない。
加えて,第1発明については,一審被告が交渉過程においてキングジム社主張のとおり無効となる可能性が高く,権利行使は実質的には困難と判断して断念した経緯があり,他の実施権利と均等に評価して寄与度を算出するのは不相当である。
(イ) 第3発明の寄与度原判決は第3発明の寄与度を第1発明よりも高く認定するが,訴訟に利用した点を考慮したとしても,本来無効となる権利であること,実施料収入の約●%を占めるテープカセットには全く関係しない発明であり,間接侵害も成立しないこと等を考慮すると,やはり不相当に高く評価するものといわざるを得ない。
したがって,第3発明が一時金に対して3%,平成14年1月1日から平成17年6月20日までの実施料収入に対して1%もの寄与率を有するとは,到底考えられない。
イ カシオ社からの実施料収入原判決は,カシオ社からの実施料収入について,第1発明の寄与度を,?@当初の一時金について2%,?A平成14年10月1日から平成17年12月20日までの期間につき本体及びテープカセットに関する実施料の0.8%と認定するが,キングジム社からの実施料収入における第1発明の寄与度の算定と同様の理由により,不相当である。
ウ ダイモ社からの実施料収入(ア) 海外特許1がダイモ契約に寄与していないこと海外特許1は,訴訟の対象権利ではないし,ダイモ社との和解交渉開始からダイモ契約締結までの間においても一切関連性を有しておらず,英語による出願公開はされていたが,未だ権利として発生していなかった。
ダイモ契約の目的は,和解契約書(乙173)から明らかなように,「ミュンヘンにおける係属中の係争(仮処分命令の控訴審)を和解するため,並びに,ダイモの装置及びテープカセットの生産及び/又は販売に関して,ブラザーが所有している上述の2件の保護権利(ドイツ実用)」 新案G●●と欧州特許EP●● に関係する更なる係争を回避するため(乙173・2頁・全文和訳1〜2頁参照)であり,他の権利は一切無関係であった。
ダイモ社との和解交渉においては,補償金請求権の起算日には法的根拠が必要であるとの認識に立ち,ダイモ契約対象権利に係るダイモ契約権利2の出願が英語によりなされていたため,出願の指定国4か国のうち英語が公用語である英国を除く独・仏・伊の3か国においては欧州特許条約第67条(3)の規定により,それらの国の公用語によるクレーム翻訳文公衆に利用可能とされた時,又はその発明を実施している者に対して送達された時から仮保護の効果が生じるものであることが確認された。
●●(省略)また,ドイツ以外の3か国におけるDYMO4000及び補給用テープカセットの在庫処理のために1992年〔平成4年〕6月30日までそれらの販売延長の許可が与えられ,同年7月1日以降においては,DYMO4000の少なくともダイモ契約権利2の指定国4か国における販売は完全に終了することが合意された。したがって,ドイツにおいては平成4年(1992年)5月1日以降,英・仏・伊3か国においては同年7月1日以降は,それまでに販売されたDYMO4000に対する補給用テープカセットのみの販売となり,そのテープカセット(契約対象権利2件を実施)の販売に係る補償金がダイモ社側から定期的に継続して支払われ,現在に至っている(乙173・7頁10項参照 。)このように,和解契約書には,●●(省略)更に海外特許1が特許として発効した平成4年(1992年)9月2日時点においては,DYMO4000本体は市場から完全に姿を消しており,補給用としてのテープカセットだけが供給されていた。したがって,海外特許1は和解には一切関与しておらず,かつ,テープカセットに直接関係しない海外特許1が補給用テープカセットの販売に係る補償金の受領に寄与しないことは明らかである。
なお,上記和解契約に規定された補償金の料率は,ドイツ代理人がドイツにおける高料率の損害賠償をベースに強腰の交渉を展開した結果であって,通常の実施権許諾の際の合理的料率とはかけ離れているものである。
(イ) 原判決の誤りa 原判決は,ダイモ社からの実施料収入が,海外特許1が訴訟の対象特許に含まれていない点からも,当事者の和解契約に海外特許1が含まれていない点からも,海外特許1とは関係がないことが明らかであるにもかかわらず,敢えて,ラミネート発明の概念を用いて,ラミネート発明の対価として,同社からの実施料収入の2分の1(50%)。, , を海外特許1という1件の権利のみに配分している また 原判決は同特許は無効性があることを認めながら,その無効原因は発明自体に起因しないとする。
そもそも,ダイモ社は,DYMO4000を欧州で製造販売しているのであるから,平成4年(1992年)6月4日に和解契約を締結した時点で,実際に警告され訴訟を提起されたダイモ契約権利1(ドイツ実用新案G●●)及びダイモ契約権利2(欧州特許EP●●)の他に,その時点で既に公開されていた海外特許1(公開日は1991年〔平成元年〕5月10日)について将来において一審被告から権利侵害の要求がなされるリスクを感じていれば,公開中の海外特許1であっても契約対象に加えて免責を求め,将来のリスクを払拭することが通常のビジネス判断であり,特許交渉であったはずである。しかるに,ダイモ社自身がそのような要求をせずに,海外特許1を加えないまま契約をしたのであるから,原判決が「ダイモ契約によりダイモ社から実施料収入を得ることができたことには,ラミネート発明の1つである海外特許1が貢献しているものと認められ」ると認定したことには根拠がなく,むしろ上記の事実関係からは,ダイモ社は他の特許を加えないことにより実施料を抑制することを選択したと推認するのが合理的である。
しかも,原判決は,実施料収入の2分の1(50%)を海外特許1に配分した理由として 「海外特許1は,印字装置に関する発明であ ,,」 () 。 り テープカセットの部分を含まないから 249頁 と認定するしかし,ダイモ社が,本件和解契約を締結した理由は,過去に販売した本体の消費者へテープカセットの供給を続けるところにあったものであり,ダイモ社の関心はテープカセットにあったものである。したがって 「カセットテープの部分を含まないから2分の1」という認 ,定も,余りに大雑把で合理性のない,結局は,無理に相当の対価の数値を上げるための認定にすぎないといわざるを得ない。
以上のとおり,ダイモ社からの実施料収入についての海外特許1の寄与は,全く存在しないものと認定されるべきである。
b 原判決は,DYMO4000の構成は,海外特許1の請求項1〜3及び5〜8を充足すると認定するが,そもそも海外特許1に係る発明の内容の認定において誤りがある。DYMO4000も,被告製品の対象品群nと同じく,請求項7の構成要素?B「切換手段」及び請求項8の構成要件?B「部分切断刃」を有しておらず,請求項7及び8を充足しないことは明らかである。
c 原判決は,ダイモ契約権利2のうち,DYMO4000で実施されている請求項1〜3,7及び8に係る発明の技術思想は,ラミネートテープ及びその作製方法に関する部分に,必要なテープ類をテープカセットに収納するとの技術思想を追加したものであると認定するが,ダイモ契約権利2に係る発明の技術的意義を看過するものである。
すなわち,海外特許1に係る明細書及び図面には必要なテープ類をテープカセットに収納するとの技術思想は開示されていないところ,一審被告のラベルライターの製品化においては 「インクリボン,透 ,明記録テープ,両面粘着テープを,それぞれ別個にカセット内に収納して本体に対して着脱可能にする」という点が最も重要な解決課題であり,そのカセット内にラミネートタイプのラベル作製のための技術が集約されており,消耗品ビジネスを確立する上で開発技術者が最も腐心したところである。海外特許1は公知技術との関係で進歩性を有さないものであるのに対して,ダイモ契約権利1,2は,粘着層が存在する両面粘着テープをも含めてカセット化することに関係し,類似,。 する従来技術が全く存在せず 全く新規な独創的な発明・考案であるそれゆえに,無審査で登録がなされたダイモ契約権利1に係る仮差止め訴訟にもかかわらず,提訴から70日という短期間でDYMO4000のドイツでの販売差止の仮処分を認める決定がなされたものであり,新規性進歩性が疑わしかったならば,そのような短期間での仮処分決定はなされなかったことはいうまでもない。また,そうであるからこそ,ダイモ社との間で和解が成立したのである。
この和解契約は,飽くまでもダイモ契約権利1によりDYMO4000の製造,販売が差し止められた状況の中でなされたものである。
これによりダイモ社は損害賠償の支払を余儀なくされ,しかも一審被告の同意を得てラベルライター本体を購入した顧客のために補給用のカセットを製造販売することを認めてもらうことが必要であり,また可能であればラベルライターの在庫処理をも認めてもらいたいという。, , ことであった そこで このような条件での和解がなされたのであり契約の締結及びその条件はすべてダイモ契約権利1及び2を前提とするものであり,海外特許1は関係ない。本件での海外特許1の貢献度は全く存在しないのである。
d 原判決は,ダイモ契約において,ダイモ契約権利1及び2のみがその対象とされ,海外特許1が対象に加えられなかったのは,海外特許1がその時点で登録されていなかったためであるとするが,これは本件和解契約締結交渉の実態,当業者における知的財産権を巡る交渉の厳しさを無視した不合理な認定である。
また,原判決が海外特許1の一部について新規性欠如の無効理由があるとしつつ,当該無効理由の存否を重視すべきでないとしたことも誤りである。優先権(新規性)の問題だけでなく,ダイモ社が実施したと解される請求項については発明の進歩性も明確に否定されるのであり,およそ理由がない。
e 以上に加え,原判決は,海外特許1については,ドイツ特許法等の規定により,少なくとも補償金請求権ないし類似の権利が既に発生していたものと考えられるので,ダイモ契約に基づきダイモ社から実施料収入を得ることができたことには,ラミネート発明の一つである海外特許1が貢献しているものと認められるとするが,このような判断を前提とする限り,海外特許1以外にも考慮すべき権利は多数存在する。
すなわち,DYMO4000は,少なくとも以下の一審被告が保有する出願・権利を実施している。
●●(省略)これら●件の権利が登録された時点において,仮にDYMO4000の販売が継続されていれば,DYMO4000がそれらの権利を侵害していると判断されたものである。しかし,いずれの権利もDYMO4000の販売が中止された後に登録されたものであり,一審被告としては何らの請求もしなかった。また,これら●件の権利は,いずれもテープカセットをクレーム構成要件にしているが,発明の対象はテーププリンタ自体あるいはその機構であり,ダイモ契約権利とは異なり,テープカセット自体が発明の対象ではない。
したがって,仮に海外特許1がダイモ社からの補償金収入に寄与するとしても,少なくともこれら●件の権利の寄与を同様に認めざるを得ない。また,ダイモ社との和解契約により許可された補給用テープカセットに係る補償金収入に関して,海外特許1が寄与しているとするならば,テープカセットに係る構成要件が存在するこれら●件の権利の寄与の程度が海外特許1より大きいことは必然であり,したがって,海外特許1の寄与はほとんどないといわざるを得ない。
したがって,原判決が,海外特許1の貢献度を2分の1と評価したのは明らかに間違っている。
f 以上のとおり,ダイモ社からの実施料収入に関する海外特許1についての原判決の判断は,事実を誤認し,また契約による実施許諾の意味を理解せずになされたものといわざるを得ない。
(ウ) ダイモ契約権利2と第3考案が異なる発明であること一審原告らはダイモ契約権利2の実際の発明者は一審原告らを含む6名である旨主張するが,両者は異なる発明である。
a 第3考案として当初提案された内容は,発明社内登録用紙(乙64の2)に添付された発明記述書に記載されたとおりであるところ,そこには,従来技術の欠点としてリボンカセットが大きくなること,考案の目的としてサーマルリボンと被印字体のテープが巻かれるスプールを共通化し小型化することが記載されており,ダイモ契約権利2のように透明テープとインクリボンを別々のスプールに保持するという技術的思想は全く考えられていなかった。なお,第3考案の明細書には両者を分離・独立させることが可能である旨の記載があるが,これは出願担当者(一審被告知財部員)の判断で「他の実施例」として記載したものであり,第3考案の考案者とされる一審原告らを含む6名の考案ではない。
b 第3考案の目的は「スプールを取り外し可能にすること」にあり,そのため,クローズされたハウジングを設けず,オープンなカセットケース54を用いているものであり,かつ,カセットケースにスリット状の切欠を設けたものであり,一般的にイメージされているカセットとは,用語は同じでも全く異なるものである。第3考案及びそれの基となる発明社内登録用紙に記載されている考案は 「P-Touc,h」検討開始直後の,どのようなものが可能かという検討段階で提案されたアイデアにすぎず,試作等を行って検討したものではない。したがって,試作等を始める時点では取り外し可能なオープンなカセットはすぐに検討から除かれている。さらには,透明テープとインクリボンとを同一スプールに巻くことも実施困難であることが確認されて,別々のスプールに巻くこととされている。それのみならず,第3考案の明細書や発明社内登録用紙には,各スプールをどのように駆動するのか一切記載されていない不完全なものであり,アイデアとして提案されたにすぎないことが明らかである。
c 第3考案に開示されているカセットは,ハウジングがなく,オープンなカセットケースで構成されている。そして,テープ類はカセット外を走行し,走行を開始するとただちにカセットから排出される。し,。 たがって テープ類を送るプラテンローラもカセット外に配置されるカセットケースにはテープが巻装されたスプールが着脱自在となるような構成をとっている。
これに対して,ダイモ契約特許のカセットは,ハウジングで構成され,テープ類はそのハウジング内に個別に収納されていて着脱自在で,, はなく 各テープ類はカセット内を走行するように配置されているし透明テープに印字後,その透明テープはカセット内にて貼り付けテープと貼り合わされた後,ハウジングから排出される。
すなわち,両者は,技術思想において全く相違し,重なり合う部分はない。
また,その差異をダイモ契約権利2の請求項1でみると,●●(省略)は,いずれも第3考案には開示されていない。
また,ダイモ契約権利2の請求項2でみると更に明白であり 「●,●(省略 」は第3考案には開示されておらず,第3考案では第1及 )び第2の送りローラ手段ともにテーププリンタ側にある。ダイモ契約権利2の請求項3〜7は少なくとも上記請求項1又は2の従属項であり,請求項1及び2の発明が第3考案と同一でない以上,他の請求項3〜7の発明も第3考案と全く異なることは明らかである。
なお,ダイモ契約権利2は,実開昭62-109958号公報(乙88)と対比しても新規性進歩性を有することは明らかである。
(6) 発明に対する一審被告の貢献度についてア 第1発明における一審被告の貢献度に関する原判決の誤り(ア) 原判決の認定原判決は,第1発明における一審被告の貢献度を93%と認定し,一審被告の貢献度を減ずる事情として 「?A当時,被告においてラベルラ ,イター事業に向けた組織的取組みはいまだ十分ではなく,E の協力を受けながら,原告 X 1が第1発明を完成したこと」と 「?E原告らは,前 ,記2(4)ア(ウ)d(c)の表彰を受けた程度で,第1発明による好待遇を受」( ) 。 けているとは認められないこと を挙げる 判決260頁6行〜15行しかし,以下のとおり,これらの事情は何ら一審被告の貢献度に影響を及ぼすものではない。むしろ原判決は,第1発明の「インレタ作製専」, , 用機 は その後商品化されたラベルライターとは関係がないばかりか一審被告が蓄積してきた技術ないし公知技術を組み合わせて利用したものにすぎないこと,換言すれば,第1発明の「インレタ作製専用機」という商品が市場で受け入れられたはずもない,という重要な事情を看過しているものである。
また,上記?Eの「第1発明による好待遇を受けていない」という点については,事実に反する認定であるが,そもそも人事的な待遇は発明の良否のみにより一審被告の貢献度が定まるものではなく,むしろその他の要因によるところが多いことが留意されるべきである。
(イ) 一審原告 X 1の関与第1発明は,新規製品を検討するために設けられた合同チームが検討した7つのコンセプトの一つである。すなわち,当時,どのような商品のイメージが考えられるかという点が検討されていた過程において,アイディア提案として出されたものにすぎず,技術的にどのようにしたら具体的に実施可能であるかとの点の検討は一審原告 X 1は一切行っていない。
第1発明に係るインレタ(擦り付け方式のレタリング)について社,。 内で技術的検討を加えたのは 開発部製品開発グループの D であったD は,昭和61年10月1日から昭和62年5月31日までの間に21件のインレタ用短冊テープの作製技術に関する提案をしている。このインレタの具体的技術検討について,一審原告 X 1は無関係であった。
インレタ機能も備えるラベルライターの技術的検討に正式に入ったのは昭和62年5月21日に設置された「NB-1プロジェクト」からであり,一審原告 X 1も会議には参加してはいたが,技術的検討を専属で行っていたのは A,C,B の3名である 「NB-1プロジェク 。
ト」が解散し 「NEW-Bグループ」に引き継がれた同年7月10 ,日までの間に技術的検討の成果として,12件の提案(乙14,乙64の1〜11)が出されたが,そのうち「インレタ」に関するものは一つであり,それも,インレタ印字とレタリング印字の切替え装置に関するもので,インレタ固有のものではない。このように 「NB-,1プロジェクト」においては,実際に印字できる試作品も作られておらず,ましてやインレタに関する固有の検討など行われていたはずがない。
ラベルライターの開発は 「NB-1プロジェクト」解散後 「NE ,,W-Bグループ」に引き継がれたが,一審原告らは「NEW-Bグループ」には全く関与していない。したがって,一審原告らがインレタ機能について具体的に関与したのは,一審原告 X 1による第1発明のインレタ作製専用機のアイディアの提案のみであり,それ以外の技術的貢献は何もしていない。
(ウ) 一審被告におけるインレタ技術の開発a 一審被告は昭和62年10月にインレタシート作製機能を搭載した日本語ワープロ「ピコワードNP-5100 (乙30)を販売して 」いる。すなわち,一審被告においては,ラベルライター「P-touch」の開発とは全く別にインレタ技術について研究開発し,製品化をしたのである。この「ピコワードNP-5100」の開発については,一審原告らは一切関与していなかった。そして,この「ピコワードNP-5100」に搭載されたインレタ機能に関する技術を応用して「P-touch」のインレタ機能が搭載可能になったのであるから,前者の貢献なくして,後者はあり得なかったのである。
b 日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」の開発の端緒となったのがいわゆる K 発明である。K発明が提案されたのは,第1発明の提案より早い昭和61年6月12日(乙29の2)であり,昭和61年10月13日に出願された後,特公平4-78110号(乙29の1)として公告された。
K 発明は,その発明社内登録用紙(乙29の2)の「8.発明の効果」の欄に記載されているとおり 「この発明による印字装置では, ,OHP用紙等の透明フイルムの裏側に文字を反転することにより,正しい文字配列で印字することを可能とするものである。したがって,ミラー文字を使って,一度印刷したものを再び他のものへ印刷しなおすインスタントレタリングシートや,OHPシートなどの透明シートを使った利用価値の高い印字装置が得られ,ワードプロセッサーの応用範囲を格段に広げる効果がある 」ものであり,まさに,日本語ワ 。
ープロ「ピコワードNP-5100」にインレタ機能を搭載するための提案・発明であった。
c 原判決は,上記 K 発明について 「…開発部LRセンターに所属し ,ていた K らは,昭和61年6月11日,ワープロにおいて転写用紙に印字するための『ミラー(鏡像)データ印字装置』に関する発明を,発明社内登録用紙(乙29の2)に記載して提出した。ただし,この発明と第1発明との間にどのような関連があるのかを認めるに足りる証拠はない (250頁下3行〜251頁2行)と認定するが,上記 。」のとおり,最初に K 発明があり,それに基づき日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」のインレタ機能が開発され,その技術を応用してラベルライター「P-touch」のインレタ機能が完成したのであるから,極めて密接な関係があるのであり,原判決はその点で判断を誤っている。
d 日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」のインレタ機能の技,, 術的検討を直接行ったのは 技術部製品技術グループのLとEであり昭和61年7月22日付けの「61年下期 研究プロジェクト報告会資料 (乙55の添付資料9)から明らかなように,インスタントレ 」タリングに関して 「NEP(注:日本語ワープロの俗称)を用いた ,インスタントレタリング法の開発」における技術ポイントについて研究報告がなされた。この報告会資料の「 3)特許・出願状況」に記 (載されている「インスタントレタリング5件」とは,乙55の別紙1に記載した L 及び E の発明に係る出願5件である。
e 上記の点について,原判決は 「(イ) 原告 X 1は,その後,インレ ,タ作製機に必要となる技術について,独自に検討した。転写用レタリングテープと印字リボンの化学的要素については,開発部基礎開発グループ所属の技術者であった E に協力を依頼し,その研究成果によって実現の目処が立った (250頁13行〜16行)と認定するが, 。」明らかに誤りである。
第一に,一審原告 X 1が,第1発明を提案した後,インレタ機能について独自に技術的検討などしたことはない。技術者ではなく技術の研究開発を行う部署にも属しておらず,研究設備も持っていない一審原告 X 1が技術的検討をできるわけもない。
現に,一審原告 X 1による具体的な検討成果などは一切提出されていないし,前記したとおり,ラベルライター「P-touch」の技術的検討を行った「NB-1プロジェクト」においても,インレタについてのなんらかの技術的成果が出されたことはないし,ましてや一審原告らがなんらかの技術的貢献をしたこともない。
さらに,一審原告 X 1が他の部署である開発部基礎開発グループ所属の技術者であった E に個人的に協力を依頼したとしても,E らは会社の業務として日本語ワープロに搭載するインレタ機能の技術的検討を行っていたのであり,その時点ではラベルライター「P-touch」のインレタ機能の技術的検討を行っていたのではない。そして,日本語ワープロに搭載されるインレタ機能の技術的検討が先に完成し「ピコワードNP-5100」の付加機能として販売され,その後,その技術が E らによってラベルライター「P-touch」のインレタ機能に応用されたものである(M 陳述書・乙55の添付資料9: 6「1年下期研究プロジェクト報告会資料 ,乙221の1〜4。なお, 」これらの 技術研究計画表 の起案欄の捺印及びチーフ・担当者欄に N 「」とあるのは,一審原告の X 1ではなく,開発部開発グループの N であり,別人である 。。)また原判決も 「(エ) 開発部基礎開発グループ所属の E と L は,… ,に関する発明を,被告社内に届け出た。これらのインクの化学的性状等に関する技術は,その後,昭和62年10月発売の被告日本語ワープロとラベルライターに採用された(250頁19行〜23行)と 。」,, 「 」 認定するが 正確には 日本語ワープロ ピコワードNP-5100のために開発された技術がラベルライター「P-touch」に応用されたのである。
f 日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」のために開発されたインレタ技術を ラベルライターP-touch に応用したのも E ,「」である 「ピコワードNP-5100」に採用されたインレタ用のイ 。
ンクリボン及び転写シートの改良研究を行った後 ラベルライター 当 ,(初はインレタ専用機)に使用するインクリボン及び転写シートの本格的研究開発に着手し(乙221の3 ,日本語ワープロ「ピコワード )NP-5100」に採用されたインレタ用のインクリボン及び転写シートをベースに,ラベルライター「P-touch」のインレタ用インクリボン及び転写テープの改良研究を行ったのである。なお,その改良技術については,出願されるとともに,ノウハウとしても一審被告において蓄積されてきた。
g また,ラベルライター「P-touch」のインレタ機能の機構面については,h,p を担当者として,被告製品である電子パーソナルプ「」 ,「 」 リンター EP-5 日本語ワープロ ピコワードNP-5100と技術比較を行って改良点を見出したり(乙55の添付資料28 ,)日本語ワープロの熱転写技術の専門家であった O を他部署より移籍し担当させて改良した(乙63の5頁)のである。O は E と協力して,印字品質・転写効率などを改善した。
(エ) まとめ以上のとおり,仮にラベルライター「P-touch」のレタリング機能について一審原告らが貢献したとしても,一審原告 X 1の貢献は第1発明のインレタ専用機を企画するアイディア的な部分のみであり,インレタ技術も含み製品の技術的開発,工業化への貢献その他の貢献は存在しないから,第1発明に対する一審原告 X 1の貢献度が原判決が判示するような7%(会社貢献度が93%)もあるなどということはあり得ない。ラベルライターへのインレタ機能の搭載は,日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」へのインレタ機能の搭載のために,K 発明に端を発し,E らが行った研究開発や,その他の技術者の努力の結果であって,アイディアを提案しただけの一審原告 X 1の貢献度が7%であるならば,実際に苦労して開発を担当した技術者の貢献を正当に評価することは困難である。
したがって,第1発明における一審被告の貢献度を93%と,第2発明等以上に一審被告の貢献度を低く認定した原判決は,第1発明に至る経緯において,第1発明が,その後商品化されたラベルライターとは無,, 関係である点 一審被告における蓄積技術を利用したものにすぎない点及び一審被告の開発部の協力を得なければ完成し得なかった点を看過した,明らかに不当なものといわざるを得ない。これまでに主張してきたとおり,一審被告の貢献度は,99%を下らないものである。
イ 第2発明,第3発明,第5発明における一審被告の貢献度に関する原判決の誤り(ア) 原判決の認定原判決は,第2発明,第3発明,第5発明における一審被告の貢献度を減ずる事情として 「?Aこのようなプロジェクトチームの立ち上げ及 ,び前提となる仕様等の検討には 一審原告らが大いに貢献したこと ?E ,」 ,「一審原告らは,前記2(5)ア(ウ)d(c)の表彰を受けた程度で,ラミネート発明による好待遇を受けているとは認められないこと」を挙げる(判決260頁18行〜261頁3行 。)しかし,以下に述べるとおり,?Aについては,一審原告らが「前提となる仕様等の検討」に「大いに」貢献したとは評価し難く,また?Eについては,何ら一審被告の貢献度に影響を及ぼす事情ではない。
(イ) 一審被告の日本語ワープロ技術の蓄積そもそも,ラベルライターが,技術的には一審被告が蓄積してきた日本語ワープロに関する技術を基礎とするものであることは,前記のとおりである。
原判決が一審原告らの貢献として評価するのは,NB-1チーム発足以前に,一審原告らが「P-touchプロジェクト 基本仕様案(1版 (乙55添付資料11)をまとめ,社内においてプレゼンテーショ )」ンを行うとともにグループインタビューを行うなどした点等と考えられるが,この時期に一審原告らにより検討されていたのは,飽くまでもインレタ作製専用機に関するものにすぎず 「P-touch」なるネー ,ミングこそ継承したものの,その後事業化されたラベルライターではない。
ラベルライターの製品化,事業化において基本となった技術は,?@熱転写印字技術,?A漢字処理ソフト技術,?Bレタリングインク技術,?Cリボンカセット及びリボン送り機構技術,の4つであって,?@及び?Aの技術は日本語ワープロにおいて利用していた技術を,?Bの技術は E が主体となって研究開発したものをそれぞれ基礎とするものであり,?Cの技術はP-touchの開発設計チームが最後まで苦労して新たに開発した。, , 技術であった これに対し 一審原告らがこの時期に提案していたのは短冊方式のインレタ作製専用機であるから,?Cの技術についての仕様は含まれない。
よって,NB-1チーム発足以前の時期に一審原告らが検討していた「」, , 仕様等 は 実際に事業化されたラベルライターの仕様というよりはむしろ従来から一審被告において蓄積されていた,日本語ワープロの仕様というべきである。
仮に「前提となる仕様等」であったとしても,飽くまでも「前提」にすぎず,一審被告が組織的に取り組んで行った,現実に事業化されたラベルライターの基本技術等の検討に比し,その重要性は小さい上,技術的な検討はすべて D が行っていた。一審原告らが行ったのはアイデアの提示程度にすぎないのである。
(ウ) ラミネートテープ構成についての貢献a 原判決は,一審原告 X 1による第1発明の社内申請書類の記載や,一審原告 X 2による「P-touch『インスタントレタリング作製機』企画書」の記載から,被告ラミネートテープの構成がまとまったことについての一審原告らの貢献度が大きかったと認定するが,一審原告らは飽くまでもインレタ作製専用機を前提としており,その構成は,いわゆるラミネートテープの構成とは異なるものであったことは明白である。
原判決が認定するとおり,ラミネートテープの構成がまとまったことには,C によるインレタテープと貼付けテープの双方を行うことができる機構の提案が大きく影響したのであって,一審原告らの貢献があったとすれば,インスタントレタリング用の貼付けテープという,それのみでは発明として成立し得ないアイデアの提示程度である。そ,, , れにもかかわらず 原判決は アイデアのみのインレタ作製専用機と商品化されたラベルライターに付したネーミングが同じ「P-touch」であることに誘引されて,一審原告 X 1の貢献度を過大に認定したものである。
b しかも,裏面へ印字したテープをそのまま対象物に貼り付ける構成のラベルやプラスター状のテープごと貼り付けるという構成は,そもそも一審原告らが指摘するまでもなく公知であり,例えば,米国特許明細書第4068028号(乙19の2 ,特開昭61-37447 )号公報(乙13の4)などの公知のラベルと変わるところはない。
さらに他の例を挙げれば,昭和54年4 月21日発行の特公昭54-8094号公報(乙219)及びその対応米国特許明細書第369(〔〕 。) 8296号 1972年 昭和47年 10月17日発行 乙220は,携帯型ラベル作製機に関する発明を開示しているが,その第9A図に当該発明にかかるラべリング装置に用いられるラベリング用テープとして,一番上部の層に「透明な頂面層129 ,その下に「印字 」される感光層125 ,その下に「感圧接着剤層127 ,さらに,そ 」」の下に「裏張り材128」という層構造を有するラベル用のテープが開示されている。なお上記第9図のテープについては「裏張り材128は貯蔵やラベル製作中接着剤を保護するため取除き自在に接着剤に接合されている。裏張り材128はまた,その本来の性質によるか又は適当に被覆することによって,テープから作られたラベルを品物に付けるために接着剤を露出させたいとき,接着剤が薄層に裂けることなく除去できる性質をもつものである」との記載があり(10欄26行〜37行 ,さらに,第9A図のテープについては 「テープの紫外 ),線感光層125を覆ってその上に延びている頂面積 後の記述から 頂 (「面層」の誤りである)129を含む「頂面層129は…著しく透明 」,。, なプラスチックフィルムや被覆から成り得る 頂面層の使用によって例えば紙基質層126を使用したときにはテープから作ったラベルの保護は増すこととなる」との記載(11欄8行〜17行)があり,携帯型ラベルライターにおいて,印字層の上面に透明層を設け,印字層の下面に接着材層を設け,対象物に接着材層で貼り付けられた印字層がその上面の透明層で保護される構成は,第1発明の出願前においても,明らかに公知の技術であった。
(エ) まとめ以上の事実に鑑みれば,第2発明等に至る経緯においても,一審原告らが「大いに貢献」したとは評価し難く,この点についての原判決の認定は誤りである。
また,企業における処遇は本人の資質,人格,指導力その他総合的な評価によるものであり,しかも,元来ラミネート発明に積極的な貢献をしたものでもない一審原告 X 1が個人的不遇感をもったからといって,一審被告の貢献度を減ずる事情にはなり得ないのであって 「ラミネー,ト発明による好待遇を受けていない」との認定は,本来考慮すべきでない事実を認定するものであり,誤りというべきである。
ウ 一審被告の貢献原審において主張したとおり,本件各発明等の過程における協力,本件各発明等の権利化のための知的財産担当者の努力・費用,他の特許等知的財産権の取得・活用,一審被告の会社組織としての製品化の遂行及び人材の投入,一審被告会社で過去に蓄積された保有技術の投入と改良,国内における販売ルートの開拓と販売活動,米国及び欧州における一審被告販売会社の販売努力及び販売促進活動,テープカセットの内製化努力,ラベルライター事業の一審被告知的財産権による防衛及び他社権利に対する対応等,一審被告が本件各発明等の過程から,P-touchの開発,製品化及び販売等について,多大な貢献をしたことは明らかである。
一審被告は,パーソナル日本語ワープロ・プリンター等の製品開発において培ってきた多くの保有技術,例えば,?@キー入力技術,?A仮名漢字変換技術,?B入力データ編集技術,?C熱転写印字技術,?Dインレタ作製(インク)技術,?Eカセット化技術,?E電子基板小型化技術等をその基礎として開発し,自社のラベルライターを市場に出した。特にテープカセットの開発過程においては,多くの重要な発明・考案が生まれ,これらが権利化されることによって,消耗品ビジネスとしてのテープカセットの保護が図られ,ラベルライター事業の大きな利益を確保できた。
さらに,一審被告が本件ラベルライターを商品化できた背景は,上記のような過去から蓄積された技術に加え,本件製品特有の困難性(本件各発明の構成を示しても解決できない,例えば,複数のテープの円滑でずれのない走行やテープとインクの化学的処理など)の製造技術上の解決,キングジム社という文具用品の販売に強い企業にOEM供給する販売戦略決定・取引交渉,多額の経費を費やした米国でのクロイ社による訴訟の克服,米国での時宜を得た宣伝活動と販売ルートの確保(これにより米国ではカシオ社に先んじ得たこと)等々の一審被告の企業を挙げてのリスク負担と費用・マンパワーの投入がなされたことによるものであり,これらは多額の投資判断の対象とされたものである。こうした企業努力の成果は膨大な特許や実用新案の出願・登録に象徴されるが,もともと専門技術者ではない一審原告らが他の技術者の協力によりなした本件各発明は日本特許3件,実用新案1件,欧州特許1件,米国特許2件で,極めてわずかな部分を構成するのみである。
以上によれば,一審被告の貢献度は,第1発明,第2発明,第3発明,第5発明においても,やはり99%を下らないものである。
(7) 共同発明者間の寄与度についてア 原判決の誤り原判決は,第2発明,第3発明,第5発明,海外特許1〜3の一審原告らの寄与度を頭割りによる割合である各6分の1と認定する。
しかし,上記各発明における一審原告らの貢献は,以下のとおり,仮にあったとしてもアイディアの提示程度のものであり,技術に関する思想として概念化したのは A,B,C の3名であったから,一審原告らは真の意味での発明者であるとはいえない。そのような事実関係を無視して,各発明者について頭割りによる均等割合とすることは不相当である。
イ 一審原告らの貢献が小さいこと(ア) 一審原告らは,昭和62年4月ごろ発足した新製品のアイディアについての技術的研究を目的とする「NB-1プロジェクト」に参加していたが,同プロジェクトにおいて企画管理グループの一審原告 X 2,LRCの一審原告 X 1は技術的開発の経験を有していなかった。一方,同プロジェクトには技術者として A(リーダー,メカニック担当 ,B(メカ)ニック担当 ,C(電子担当 ,P(担当課長 ,D の5名が参加していた。 )))なお,D は,開発部で独自にレタリング作製機の研究をしていたが,このプロジェクトでは直接的な技術研究は行っていない。
P 課長はディジタル・プリンター,電卓,日本語タイプライター「ピコワード」の開発に従事した経験を有し,A は電子タイプライター,英「」 。 文ワードプロセッサー WP-1の開発に従事した経験を有していたこのプロジェクトにおいては一審原告らが提唱していたアイディアの「押し付け転写タイプのインスタント・レタリング・テープ(インレタテープ)作製専用機」の製品化のための問題点を抽出する技術研究を行っていた。
この当初のインレタ専用機の提案は,第1発明に関連し,一審原告 X1の発案とされるものであるが,テープ状の部材に反転したミラー文字を印字し,それを被印字物に擦り付けて転写するというものであり,一審被告において後に商品化した貼付型のラベルライターとは全く異なるものであった。
しかし,上記 D を除く技術系の4名は,転写タイプのインレタテープ専用機では商品とならないから,貼付型のラベル作製装置とすべきことを提案していた。この二つのアイディアを一審被告社内でインタビュー調査をしたところ,社内でも意見が分かれたので,結局双方の機能を有するラベルライターの実現のために技術研究が開始された。実際に開発が進められ製品化されたものは,貼付けラベル作製を主たる機能とし,レタリングテープも作製できるものとなったが,この製品の技術的な開発作業には一審原告らは参加していなかった。しかし,プロジェクトメンバーとして参加していたためか,第2発明の出願から上記6名が発明者として記載されることになった。
このように一審原告らはレタリング作製専用機のアイディアを提案したものであるが,その具体的な構造の決定等技術的な開発作業は A らの技術者のグループによりなされたものであり,第1発明を除く本件各発明は実質的には上記3名の技術者によりなされたのが実態である。一審原告両名の本件各発明への技術的な貢献はほとんど皆無であったものであり,仮に存在するとしても上記3名の技術者に比較すれば,はるかに小さな貢献でしかなかったものである。
(イ) この点,原判決は「…ラミネート発明は,課題をどのように解決し ,たかだけでなく,顧客のニーズを的確に理解することを含む課題の発見が重要な発明であり… (261頁11行〜13行)と認定するが,課 」題の発見が重要であるとしても,課題の発見のみでは発明としては成立し得ないのであるから,共同発明者間で課題の発見のみしか行っていな,, い者がいるとすれば その者は真の意味での発明者にも該当しない以上寄与度は相当程度低く評価されるべきである。
加えて,本件において,インレタ作製専用機では商品化しても売れないと考え 貼付テープ を検討することを提案したのは 実質的には 漢 「」 ,「字ダイモ」の検討をしていた技術者である A,C,B の3名であったのであるから,原判決のいう「課題の発見」の重要性という観点を考慮しても,一審原告らの寄与度を頭割りの均等割合とすることは不相当といわざるを得ない。
(ウ) したがって,一審原告らの共同発明者間の寄与度については,一審原告らそれぞれについて各12分の1とすべきである。
ウ 第1発明について原判決は,第1発明について 「… E らが共同発明者であるとまで認め ,るに足りる証拠はないから,E らの協力は,被告の貢献度の中で評価されるべき事柄であり… (261頁下3行〜下2行)とする。 」しかし,第1発明について E らの協力がなければ第1発明も単なるアイデアの域を出なかったものであり,技術者ではない一審原告 X 1が発明できるはずもなかった。第1発明を含めどの発明も,一審原告ら以外の技術者(一審被告の技術者)が,同社に蓄積されたインク処理,テープ処理,テープ搬送等についての技術知識及び各発明時の技術的知見を投入して初めて実施可能となったものであり,本件被告製品の技術的課題を知り,その克服のための知識を提供した E 等の他の技術者の寄与は一審原告らより大きいものである。
したがって,第1発明における一審原告 X 1の寄与度は2分の1(50%)とすべきである。
(8) 相当対価の支払時期について原判決の認定(第3,6〔262頁以下 )は争う。〕,, 仮に本件各発明に対する対価の支払時期につき 原判決が認定するように?@平成4年8月20日以前の期間に係る相当対価請求権の消滅時効については支払時期の定めがなく,?Aその後の期間については,報奨規程により各年12月25日が支払時期となると解したとしても,一審被告の発明報奨規程を無効と判示した点は改められるべきである。
(9) 消滅時効についてア 商事消滅時効の主張の追加一審被告は,原審において,特許法旧35条は外国における特許出願をする権利の承継には及ばないとの前提で10年間の消滅時効の主張をしたが,最高裁判所平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁)を踏まえ,以下のとおり,商事消滅時効を主張する。
なお,仮に,特許法旧35条対価請求権に係る債務が民事債務であるとしても,原判決が認定するとおり,前記(8)の?@平成4年8月20日以前における対価請求債権は消滅時効が成立しているものである。
イ 最高裁判所平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁)と商事消滅時効上記最高裁判決は,外国において特許出願を受ける権利の対価請求債権に係る法律上の性質決定に関し 「外国の特許を受ける権利の譲渡に伴っ ,て譲渡人が譲受人に対しその対価を請求できるかどうか,その対価の額はいくらであるかなどの特許を受ける権利の譲渡の対価に関する問題は,譲渡の当事者がどのような債権債務を有するのかという問題にほかならず,譲渡当事者間における譲渡の原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題であると解されるから,その準拠法は,法例7条1項の規定により,第1次的には当事者の意思に従って定められると解するのが相当である 」と判断した。。
上記判示は,直接的には渉外的要素を有する請求権についての法例(現「法の適用の通則法 )の適用条文を判断するための法律的な性質の決定 」に関するものであるが,対応する発明について日本国で特許を受ける権利の譲渡に関する対価の請求の性質が外国のそれと異なることは考えられない。したがって,上記最高裁判決は,日本国の特許を受ける権利も「原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題」であることを前提にするものと考えられる。そうすると,日本国内及び外国における特許を受ける権利の譲渡の対価請求権の消滅時効に関しても,一審原告らと一審被告の契約に関する法律行為に係る債権の問題として法律の適用を検討すべきことになる。
これを本件についてみると,本件訴訟において一審原告らが求めているのは,一審原告らが営利企業である一審被告に特許を受ける権利承継したことによる相当の対価であり,同請求権は債務者である一審被告がその営業のためにする商行為によって生じた債権であるから,商法522条の商事消滅時効が適用されると解すべきである。
そして,原判決が認定するとおり,本件各発明に対する対価の支払時期は,?@平成4年8月20日以前の期間に係る相当対価請求権の消滅時効については支払時期の定めがないので,各出願日が起算点となり,?Aその後の期間については,報奨規程により各年12月25日が支払期限となるところ,一審原告らは平成15年12月5日付け及び同月12日差出しの書面により催告をして,6か月以内である平成16年2月13日に本件訴訟を提起した。
したがって,上記?@の債権はもとより,?Aのうち平成9年12月25日に支払期限が到達する平成9年3月31日までの自己実施及び実施料収入,, についての対価請求債権は 商事消滅時効期間である5年間の経過により消滅時効が成立しており,一審被告は同時効援用する。
ウ 一審原告らの主張に対し一審原告らは,上記最高裁判決における「譲渡当事者間における譲渡の原因関係である契約その他の債権的法律行為の効力の問題である」との判示は国際私法の問題についてのものであるから,商事消滅時効の根拠とはならない旨主張する。
しかし,上記最高裁判決は,外国特許(ないし特許を受ける権利)の譲渡に伴っての譲渡人が譲受人に対してその対価を受ける権利について 原,「因関係の契約その他の債権的効力」に基づき判断するとし,これが雇用契約関係等に基づくものであることから,日本特許(ないし特許を受ける権利)の譲渡と同様に扱うことを判示したのである。
そして,いずれにせよ,特許権の譲渡は雇用者等と被用者等の間の合意等に基づきなされ,それによって対価請求権が発生するものであるから,同請求権は債務者である雇用者等にとって営業のためにする商事行為となるものである。
したがって,商事消滅時効が適用されることは明らかである。
なお,平成16年の特許法改正の審議経過で否定されたのは短期消滅時効の特別規定を置くかどうかであって,商事消滅時効が適用されることが否定されたものではない。
2 一審原告ら(1) 本件各特許権は有効であることア 無効事由を有する特許と独占の利益の関係に対し一審被告は,職務発明対価請求訴訟においても無効主張が可能であることは当然のことであるとして,本件各発明には進歩性がないなどとして無効であると主張する。
もちろん,特許法旧35条に基づく職務発明対価請求訴訟においても,発明の内容が具体的にどのようなものであって,どの点に優れた価値があり,それが独占的利益を生むものであるかどうかという評価は当然必要であり,事実を見極めることが第一ではある。
しかし,侵害訴訟において無効の主張が認められているのは,特許権者が不当に技術を独占することがないよう,他業者の利益との衡平を図りながら産業の発展を図るという特許法の本旨に沿った目的のためであって,本来,特許権者が職務発明対価請求に際して発明者に対抗するためにあるわけではない。
本件においては,例えば第2発明・第5発明にしても,マックス社やセイコーエプソン社という複数の競業他社から異議申立てを受け,その上で特許査定されており,そのマックス社は侵害品を製造・販売したものの結局異議申立てが通らず侵害品の製造・販売を中止したという経緯があり,さらに,これらの日本出願をベースにした海外特許が欧米諸国で有効に特許登録を受けており,特許番号を警告的に明記して他社を牽制してきたという事実がある。そして何より,一審被告自身が特許権者として第2発明・第5発明の主題である,抜群の耐久性を誇るラミネートラベルが誰にでも簡単にその場で作れるという利点を製品の最大の特長として積極的にアピールすることでラベルライター市場を拡大し,凌駕してきたのである。
このような状況が揃う中で新たに市場参入を考える者がいたとしても,第2発明や第5発明に関する特許を無効であるとする根拠は一つもないのである。この点において,第2発明・第5発明に対して,特許権者である一審被告が自ら特許無効の主張をすること自体,全く道理に合わず,許されないことである。
,, 要するに 特許の無効化がおよそ期待し得ないような状況下においては特許権者は既に市場において独占の利益を獲得しているのであって,それは,後日自ら特許の無効を訴えたとしても,既に社会に対して返還不可能な既得の利益なのである。
しかも,以下のとおり,本件各発明に基づく特許はいずれも有効であって,これと同旨の第1発明,第2発明,海外特許2,海外特許3に係る原判決の判断は正当であるが,これと異なる第3発明,第5発明,海外特許1に係る原判決の判断は誤りである。
イ 無効事由の不存在第1発明〜第3発明,第5発明,海外特許1〜3には,以下に述べるとおり,いずれも無効事由はない。
(ア) 第1発明が有効であることa 一審被告は,原判決が離型促進剤の構成要件について公知でないとした点について,離型促進剤を使用することは慣用技術であるから,第1発明を有効とした原判決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,市販のインレタシートのコーティング剤と第1発明の離型促進剤は異なるものであり,前者を後者に替えて用いることもできない。
この点,一審被告の上記主張は,一審原告 X 1が自ら離形促進剤が公知な技術であることを認めていることを前提とするものであるが,このような主張は,市販のインレタシートに樹脂製のシート面に文字の転写を促進するようなコーティング剤が塗布されていることを,第1発明における「離型促進剤」と同じレベルのものと混同するものである。
市販のインレタシートは,シート基材(?@)に充分な量のインク材でシルク印刷してインレタ文字(?A)を形成し,インレタ文字(?A),() () を乾燥させた後に そのインレタ文字?A 側からコーティング剤 ?Bを塗布する。そして,コーティング剤(?B)が転写対象となる紙と接触するとコーティング剤(?B)の粘着性により,インレタ文字(?A)がシート基材(?@)から剥がれるというものである。しかし,このように,まずテープにインレタ文字を形成しておいて,その後でテープ印字面にコーティング剤を塗布するような方法は,インレタ製造工場では許されても,その場ですぐに誰にでもインレタが作れるという第1発明の本旨に背くから,採用し得ない。一審原告 X 1は,大学時代に学んだ材料工学の知識と経験を生かしながら,予めシート基材に離形促進剤が施され,その上にインク材でインレタ文字が印字される仕組みによって,インレタテープが即座に作れるということを発見したのである。
さらに,市販のインレタシートに用いられるコーティング剤は,インレタ文字と転写対象物との間に介在して両者を粘着させるのに対,, , し 第1発明の離形促進剤は シート基材とインク材との間に介在しインク材をシート基材から剥がれやすくしている点でも異なるのである。もちろん,市販のインレタシートに用いられるコーティング剤を第1発明の離形促進剤に代えて用いることもできない。
b また一審被告は,特開昭57-4797号公報(乙20刊行物)に「付着性材料15」が開示されていることをもって,同公報に離型促進剤が開示されていると主張するようである。
しかし,乙20刊行物における「付着性材料15」は,第1発明の「離型促進剤」と同一ではない。なぜなら,同公報の装置は,その他の構成要素やインレタの製法が第1発明とは大きく異なる上,文言上も,一方は「付着性」であるのに対し,第1発明は「離型促進」である。
両者の相違点について更に付言すれば乙20刊行物の明細書 FIG.3 ,に開示されている「複写用複合材料」は,その明細書 FIG.2 にあるような光露光版と強力ライトを組み合わせた装置により複写用の像が形成される。この発明では,キセノンフラッシュランプ(35)を照射することによる輻射熱を利用してこの付着性材料(15)への加熱を行っているが,請求項にもあるように,付着性材料(15)を「選択的に軟化」させるためには照射光を選択的に通すための切抜きタイプの露光版をまず別途用意しなくてはならない。その露光版をフィルターとして,キセノン光を照射し,被照射部分のインクだけが軟化し,それが複写用の像になるという思想である。複写用の像を形成するまでに,別途に露光版もしくは文字盤テンプレートを作る必要があり,できる複写像も同じ露光版から作られるので,同じ文字(像)ばかりとなる。しかも,例えば「回」という少ない画数の文字でさえ,単純に文字部分を切り抜くだけでは文字にならない(外側を切り取ると内側が抜け落ちてしまうため,内側の「口」が残るよう,つなぎ箇所を入れながら切り抜かなくてはならない 。。)さらに,この発明では,例えば FIG.2 にあるように一文字ずつ照射する場合はキセノンフラッシュランプの照射と充電を繰り返しながら,。 複写用の像を形成していかなくてはならず はなはだ使い勝手が悪いこれでは一般消費者が使用する簡易インレタ作製機としては用をなさないし,たとえ一審原告 X 1が事前にこの技術を知り得たとしても,第1発明の参考になるようなものではない。
加えて,このようにキセノンランプで転写用の像を作る技術については,第1発明の審査過程で異議申立人の Q 達により引用例とされた特開昭60-225793号公報の中で従来技術として審議済みであり,乙20刊行物は新たな意味を持たないものである。
c さらに一審被告は 乙152刊行物と乙153刊行物を挙げて シ ,, 「リコン等の離型層」や「シリコーン層」が第1発明の離型促進剤である旨主張するが,誤りである。
確かに,これらの公知例においては「シリコン等の離型層」や「シリコーン層」という記載はあるが,これらは転写される図柄を形成してから,その後,乙153刊行物では複写層3の上に感圧接着剤による接着剤層4を形成するものであり,この「シリコーン層」は後から塗布する感圧接着剤があって初めて機能するものである。同様に,乙152刊行物では 「複写画像に接着剤を塗布し,この接着剤の転写 ,材料用シートに対する接着力を画像の転写材料用シートに対する接着力より大きくすれば,(e)転写材料用シート3上の画像は容易に目的物4に転写される 」となっており,接着剤を後から塗布することが 。
前提となっている。
要するに,これら公知例では,シリコーン層と後から塗布する接着剤が相俟って初めて機能を果たすものであるが,このように後から接着剤を塗らなければならないとなると,利便性が極めて悪くなり,簡易インレタ作製機としてそれ自体で完成された転写テープを作製できないことになり,これらの公知例を第1発明のために積極的に参考にする動機付けも利点もない。
しかも,これら公知例に開示されている方法は,いずれも複写機を利用して「転写シート」を作製しようとするものであるが,以下のように非常に手間のかかる手順を踏む必要がある。
?@ 原画を用意する?A 複写機又は製版カメラ又は引伸機等を使って,原画を左右反転させた複写原稿を作製する?B 上記の複写原稿を,複写機で転写シートにコピーする?C 上記の複写シートに,スプレイやスクイージーにより接着剤を塗布するこのように,上記方法では転写シートを得るまでに複写機や製版カメラなどで複写原稿を用意しなくてはならず,しかもコピーされた転写シートの転写面に接着スプレイで接着剤を塗布する必要がある。これでは一般消費者が使用する簡易インレタ作製機としては用をなさないし,何人も事前にこの技術を知り得たとしても,第1発明を完成させるために参考になるようなものではない。
d 一審被告は,第1発明が無効であることの根拠として,特開昭61-211076号公報(乙7の2刊行物)を挙げる。
この点,乙7の2刊行物には,アイロンを用いて対象物に加圧熱転写する技術が開示されているが,第1発明の請求項には 「その背面,から押圧されることで印字された像を被転写物に転写するためにレタリングテープ面に離型促進剤が塗布され,長尺状に形成された樹脂フィルムからなるレタリングテープと 」と明記され,レタリングテー ,プは,アイロン等の熱による転写ではなく,テープの背面から押圧するだけで転写するものに限定している。それゆえ,効果として,転写作業が,レタリングテープの背面を押圧するという非常に簡単な作業,。 で行え 安全にかつ能率的に行える利点があるとされているのである仮にレタリングテープの文字を転写するのにアイロンが必要であるとすると火傷の危険があり,しかもその都度アイロンを持ち出さなくてはならず非常に不便であり,およそ現実的ではない。一審被告の上記主張は誤解に基づくものである。
また,一審被告の主張は技術的にも根拠がない。すなわち,乙7の2刊行物の技術は転写紙に図柄を印刷し,それをアイロン加熱することで衣類などの布地に転写するものである。そして,布地にアイロン転写することを実現するために,同発明では昇華型インクを使っている。昇華型インクは固体インク又は液体インクが加熱されることで発色し,かつ,気体化して微細な色の粒子が転写対象物の組織内に入り込むという特徴を有している。しかし,一度加熱して昇華させてしまうとインク粒子が対象物の組織内に入り込んでしまうので,それを再加熱して別の対象物に転写しようとしても,元の対象物に留まってしまい転写されない。このように,昇華型インクは昇華転写する前に熱を加えるということができないから,乙7の2刊行物のように転写紙に形成された転写画像を布地等にアイロン転写するのであれば,初回の転写紙への印刷は非加熱型の印刷方式でなければならない。それゆえ,乙7の2刊行物では,転写紙に像を作る最初の工程はインクジェット方式又はインパクト方式とされ,熱を使わない非加熱の印刷方式に限定されているのである。
そうすると,乙7の2刊行物の技術では画像を布地に転写する際にアイロン加熱が必須となるものであって,第1発明の意義であるテープの背面から押圧するだけで転写されることを実現できない。
また,熱溶融型インクによるサーマル印字は加熱を伴うものであるが,昇華型インクを用いてサーマル方式で転写紙に像を形成してしまうとその工程でインクが昇華してしまい,印刷された転写紙の像を加熱して布地に再転写しようとしても像がほとんど転写されない。
つまり,乙7の2刊行物の技術は,転写紙に形成された像が布等に染み込むように再転写されるところに発明の主題があるのであって,そのためには昇華型インクを使い,アイロンの強力な熱によって一気に加熱し,インクを昇華させるということが必須なのであって,昇華型インクを印刷する非加熱式のインクジェットやインパクト方式に代えてわざわざ加熱式のインクリボンを使う動機付けが全くないのである。
さらに,乙7の2刊行物に記載された発明と第1発明との相違点を挙げると,前者の転写紙基材はシートであって第1発明のような長尺状のテープではないし,カッタもない。前者はパソコンとプリンタを活用するものであって,第1発明における小型の一体化された印字装置とは異なる。
このように乙7の2刊行物記載の「転写紙の製造方法」は,少なくとも第1発明の構成要件D,G,Hがなく,発明の目的からしても全く異なるものである。
e 一審被告は,アイロン加熱を必要とせず,常温において押圧することで転写される複写用複合材料の例として特開昭57-4797号公報(乙20刊行物)を,その材料に絵画を形成する装置として特開昭53-35735号公報(乙22の2刊行物)をそれぞれ挙げる。
(a) 確かに,乙20刊行物では,シート14と対象物に再転写される像の部分37の間には別の部材である「付着性材料15」が介在するが,乙20刊行物と第1発明では,転写のための像を形成する方法が全く異なる。乙20刊行物と乙22の2刊行物に記載された技術は,キセノンランプなどの強力な光源を必要とし,付着性材料15はキセノン光の輻射熱により加熱されると活性化して接着性を,,() 帯び その部分がもろい供与体層18に付着し 固化した 冷えた後に引き剥がすと,活性化されていた付着性材料と接した部分の供与体層だけが供与体ウェブ17から引き剥がされるという技術であって,第1発明とは異なる。
(b) また,両者は像を形成する材料も異なる。
乙20刊行物に開示される対象物に転写されるための像を形成する供与体層は,その請求項8にもあるように「供与体層が互いに融,」 着した微粒子からなり 顔料と液体を含んだ隙間を有する複合材料である。そしてこの供与体層18を輻射熱で活性化された付着性材料15が供与体ウェブ17から一体的な像としてもぎ取っているのである。供与体層18はそれ自身がいくらか粘着性を有し 「例え,ば紙,さし絵板,ガラス或いはプラスチックフィルムでもよい」とされているように,押圧されればガラス面にでも付着し得る性質のものである。要するに,乙20刊行物において像を形成する供与体層18は粘着性を帯びた一枚の薄皮のような材料である。
これに対して第1発明では,サーマルヘッドが有する多数の発熱素子のうち所定の発熱素子を発熱せしめることにより,熱転写型インクリボンの支持体を介して発熱素子に接している熱溶融性インク部分を溶かして転写テープに熱転写して像を形成するものである。
この種の熱転写型インクリボンは,通常,カーボン系の着色剤とワックス系の結合剤とからなり,そのワックスが熱溶融することで上記の熱転写印字を可能にしている。すなわち,第1発明で像を形成するインクリボンは,100ミクロン程度の微細な印字素子の熱に反応して転写されるもので,印字された像は微細な点の集合体である。そして,第1発明の転写テ-プ上に形成された像は,押圧によって紙の組織の中にインク粒子が浸透することによって得られるのであって,対象物の表面に1枚の薄皮として付着するのではない。
以上述べたように,乙20刊行物に記載された供与体層18はサーマル印字方式に用いられる熱溶融型インクとは全く異なり,第1発明に開示されているサーマルヘッドを用いて図形を形成することはできない。
(c) さらにいえば,乙20刊行物には,図形を反転させる思想もない。
乙20刊行物に開示されている複合材料は,乙22の2刊行物記載の「図形形成装置」にあるように,キセノンランプの光が選択光透過フィルタ上に形成された図画(抜き型)の部分だけ透過し,さらに透明な受容テープ11を透過して,付着性材料15を溶融して像を形成するものである。この抜き型のテンプレートは正像で用意すればよく,左右反転された像を必要としない。また 「供与体層 ,は,特定の用途に対して形成させる絵画に必要な光学的密度又は不透明性を与えるのに十分な厚さをもつべきである (乙20刊行物 」3頁右下段2行〜4行)との記載から,下方(供与体ウェブ側)から光を照射しても供与体層18で遮断されてしまい,付着性材料15に届かないことは明らかであり,そのため乙20刊行物では受容() 。 テープ11側 図の上方 からキセノン光を照射しているのであるまた,仮に図の下方より光を照射する場合であっても,正像のテンプレートを用意すればよい。
これに対して,第1発明は,構成要件Fにあるように,文字や記号等の形状を反転させた鏡像を,インクリボンを介してレタリングテープ面に反転印字するものであり,前記の図形形成方法とは明らかに異なる。
f したがって,一審被告の主張する公知例の一つを主たる引用例として他の公知技術寄せ集めても,なお当業者が容易に第1発明に到達し得たとはいえないので,第1発明が新規性進歩性欠如により無効となるものではない。
(イ) 第2発明が有効であることa 第2発明が慣用技術により構成されているとの主張に対し(a) 一審被告が挙げる文献等一審被告は,ハウジング内に設けたテープ印字装置の例として,各種文献や製品を挙げて,第2発明は進歩性を欠き無効である旨主張する。
しかし,一審被告が挙げた文献等のいずれにおいても,第2発明の主題である「抜群の耐久性を誇るラミネートラベルが誰にでも簡単にその場で作れる」ことを実現する技術は存在せず,示唆するものもない。
これらの文献にある製品を製造・販売しているのは,一審被告よりも先にラベル印刷装置を手がけてきた老舗メーカーであり,一審被告にとっては一番の競合相手となるはずであった。特に,KROY-80などを製造・販売していたクロイ社やマーリンエクスプレスを製造・販売していたバリトロニクス社は,技術指向の極めて強いメーカーである。
一審被告が列挙した文献は,こうした技術に長けたライバルメーカーでさえテープ上の文字が消えないことを課題として捉えていなかったことを証明しているものである。発明の端緒ともいえるテープに印字された文字が消えないようにするという課題の発見なくして,発明に到達することはほぼあり得ないことである。
唯一表面を覆う行為をしているのは,USP4419175号公報(乙19の3)のセロテープを糊面を上向きにセットし,親指でローラーを回して印字済みテープを重ね合わせるという手道具であるが,単に表面をセロテープで覆うというものであり,でき上がるものは貼付けラベルでさえない。ラベルライターにおいてテープの上の文字等が擦れることのないように耐久性を持ったものとする技術を世界で初めて示したのは,第2発明・第5発明(それをカセット化した第3考案)なのである。
なお,特開昭61-37447号公報(乙13の4刊行物)に関しては,印字された文字の耐久性に関する示唆も,それを実現する方法も何一つ記載がない。
(b) ラミネートテープ・ 第2発明と同じ構造とされるテープ一審被告は,第2発明と同じ構造のテープとして,実開昭62-33080号公報(乙165 ,特開昭53-70700号公 )報(乙11の5刊行物 ,特開昭53-60600号公報(乙1 )9の1)等を挙げる。
しかし,上記は3件とも凸版,グラビア,フレキソ印刷などの印刷方式によって印刷されたラベルであって,第2発明のようにサーマル印字ヘッドと熱転写インクリボンによって印字されたものではなく,同じものではない。例えば,特公昭51-4248() () 0号公報 乙170 に記載されたラベルを入手した者 当業者がそれを見てインク組成等を解析したとしても,上記凸版,グラビア,フレキソ印刷などの印刷方式によって印刷がされたものであることしか知り得ないのであって,サーマル印字ヘッドと熱転写インクリボンによって印字することを考えつくことはない。
しかも,実開昭62-33080号公報(乙165)と特開昭53-60600号公報(乙19の1)の2件は,印刷工程を行うのは全く別の印刷機械であって,前者の実開昭62-33080号公報は,その貼合せ工程を別の貼合せ専用機によって行うというものである。
要するに,この実開昭62-33080号公報(乙165)の実用新案によっては,第2発明の意義である 「印字機構がサー ,マルヘッドによりインクリボンを介して印字を行うものであるため,テープ印字装置全体の小型,軽量化が容易である 」という 。
点は実現できず 「テープ送り機構が第一のテープを送りつつ第 ,二のテープを第一のテープに圧着するようにされており,テープ送り機構がテープ圧着装置を兼ねているため,専用のテープ圧着装置を設ける場合に比較してテープ印字装置を小形,軽量化することができる」という点も実現できず 「以上の印字機構,テー ,プ圧着装置を兼ねたテープ送り機構,リボン巻取機構等がハウジング内に収容されており,所望の文字が印字された第一テープの印字面に第二テープが圧着されて完成したテープが,テープ圧着装置兼テープ送り機構によりハウジング外へ排出される」という点も実現できず 「機構部が全てハウジング内に収容されて保護 ,されているのであって,一般使用者の使用に適するとともに,コンパクトで見栄えの良いテープ印字装置が得られる」という点も一切実現できない。
そして,実開昭62-33080号公報(乙165)の実用新案には印字のためのテープ送りをしながら,同時に,同一機構内でテープの圧着を行う構造を含んでいない点で第2発明とは全く次元が異なるものである。
後者の特開昭53-60600号公報(乙19の1)は,前もって印刷された透明なテープに,手作業で両面粘着テープを貼り合せるというものであり,その明細書3頁左上欄には「印刷方式は重要ではなく 」と書かれているほどである。 ,しかも,この特開昭53-60600号公報(乙19の1)のテープ(FIG.1参照)は,第2発明の「第二のテープ」の基材に当たるものが存在しない。基材が存在しないのであるから,「第二のテープ」基材が「第一のテープ」の背景となることもできない。そして,このテープは,表面の透明テープが何者かによって後から剥がされた場合に,透明テープの方ではなく粘着剤の方に印刷された文字が残る(移る)ことによって,ラベルの改竄を知り得るということを発明の目的にしているものであって,そのため,透明テープへの印刷は弱い( 親和性が低い )ものでな 「」ければならず,サーマル印字ヘッドによる熱転写インクリボンは適さない。
さらに,乙11の5刊行物に関しては,原判決も認めているように,乙11の5刊行物のラベルでは,着色されるのは粘着層のみであり,第2発明の「第二のテープ」基材を着色した場合にように美しく隠蔽力に優れた背景とはなり得ない点において異なる。
・ 第2発明とは異なる構造のテープ一審被告は,第2発明のラミネート式ラベルライターで作られるラベルとは構造の異なるテープとして多数挙げ,このようにラミネートテープにも各種のものがあり,ラミネートテープを複数のテープを圧着して貼り合わせて製造する技術はいずれも慣用技術であるから,いずれのタイプのラミネートテープを使用するかは設計上の問題にすぎないと主張する。しかし,これらはそもそも第2発明のラミネートラベルとは構造が異なるから,逐一反論を要しない。
・まとめこのように,第2発明と同じラミネートラベルは存在せず,一審被告の挙げる特開昭53-60600号公報(乙19の1 ,)実開昭62-33080号公報(乙165)そして乙11の5刊行物の方法によるラベルが存在していたとしても,そこから第2発明に至るには 「第二のテープ」基材を着色することと,テー ,プ送り,反転印字,貼合せ,インクリボンの巻取りのすべての工程を単一の装置の中で行い,テープの自由端を外に向けてハウジング外へ排出するための構造と機構部の配置を考えなければ,第2発明の作用効果は実現できない。
そして,上記3件の公報には,装置を小型にして一般人の使用に適するものにするという概念が全くないのであるから,第2発明に至る可能性はないに等しい。
したがって,ラミネートテープが慣用技術であるとの一審被告の主張は理由がない。
(c) サーマルヘッドによる印字とインクリボン・インクリボン巻取り機構一審被告は,サーマルヘッドとインクリボンを使用して印字する製品や文献を多数挙げ,これが慣用技術である旨主張する。
この点,サーマルヘッドとインクリボンを利用した印字技術が古くからあることは一審原告らとしても特段否定しないが,ハウジング内に設けられたテープ印字装置においてラミネートテープを印字することは全く新規なことである。
さらに,乙11の5刊行物に開示されたラベル製造方法においてインクリボンによる印字手段を用いることは,当該ラベル製造方法の阻害要素となるもので,動機付けとはなり得ない。すなわち,乙11の5刊行物は,その明細書2頁右下欄の記載からみて同じラベルを大量(1000〜5000枚)に製造するための方法であり,通常,例示されたフレキソ,オフセット,凸版,グラビアなどの印刷は毎秒数mの速さで印刷される。これに対し,インクリボンを使用して熱転写印字を使う場合,必然的な制約として印字速度はせいぜい毎秒20mm程度となり,通常のシール印刷方法としては許容できないほど時間がかかってしまう。第2発明が発明されて20年,, が経過した現在においても シール印刷に用いられるのは凸版印刷オフセット印刷,シルクスクリーン印刷というのが常識であり,インクリボンを使用して熱転写で印字をするということはない。
また,こうしたシール作製を業とするシール印刷業者では,注文は1000枚〜10000枚というのが常識であり,乙11の5刊行物の明細書を見ても顧客から注文を受けて印刷をすることを想定している。そこでインクリボンなどを使えば,コストが非常に高い,。 ものとなってしまい その点からもインクリボンなど採用し得ないさらに,インクリボンは,非常に高価であるだけでなく,非常に遅い速度でしか印字ができないという欠点があり,その点からもインクリボンは採用し得ないのである。
この遅い速度と引き換えに,装置を非常に小型化でき,印字に準備時間が要らず,電源投入後すぐに印字ができるという利点を持つのがラベルライターなのである。
(d) 反転印字が慣用技術であるとの主張に対し・ 第2発明の請求項2Aの「透視性を有する第一のテープにインクリボンを介して,文字等を裏返しパターンの反転印字する」及び2Eの「第一のテープの反転印字が行われた印字面に,前記第一のテープの背景となるテープ基材とそのテープ基材の両側に儲けられた粘着剤層とその粘着剤層の片側に予め粘着された剥離紙とから構成された第二のテープを圧着する」という構成要件に従えば 「反転印字」とは「透視性を有するテープにインクリボン ,を介して,文字等を裏返しパターンで印字する」ことであって,その面に第二のテープが貼り付けられることを前提とするものである。
この点,一審被告は,反転印字を行う製品や文献を多数挙げるが,上記定義に従い一審被告が挙げる製品や文献をみると,マーリンエクスプレス(乙16,17)では,既に貼付け用の粘着剤が裏側に施されたテープの表面側に印字を行うものであり,第2発明の「反転印字」とは全く異なるものである。ここで作られたテープは窓ガラスに貼って外側から見るためのものであるが,テープ上の文字自体はテープの表側に印字されているため,耐久性。, のないものとなる これは第2発明と異なるというばかりでなく一審被告より先行する競合メーカーがラベルの耐久性を高めるという観念や問題意識を全く持っていなかった証でもある。
・ 次に,実開昭59-83547号公報(乙11の4 ,乙11 )の5刊行物,特開昭53-60600号公報(乙19の1 ,U)SP4068028(乙19の2 ,特開昭62-33080号 )(), ,, 公報 乙165 をみると これらはすべて凸版印刷 フレキソオフセットという印刷方法で行うものであって,印刷用原版を別途用意し,インクを輪転機から転写するものであるから 「反転,印字」とは異なる(一審被告自身,第2発明に対するマックス社の異議申立てに対して同旨の反論をし,その後審査官も相違を認め,特許査定をしている 。なお,一審被告がフィルム印刷面の 。)反対側から正視し得るものすべてを反転印字と呼んでいる点でも失当である。
・ また一審被告は,特開昭61-37447号公報(乙13の4刊行物)について,同公報の図面において示されている印字ヘッドの位置と打ち出しテープの態様からみて反転印字がなされていると主張する。
しかし,同公報の明細書では,第3図の22が印字手段であることと 「テープ20の裏面には接着剤がついている」ことだけ ,が記載されている。そして,図のテープ20のどちらが裏面かは記載がないし,接着剤がついている裏面側に印字をするなどという記載もない。このことからすれば,接着剤がついていない表面側に印字すると考えるべきであって,これに反する記載や示唆はない。もちろん,この明細書には 「反転印字 「裏から印刷 , ,」 ,」「表から正規に見える 「耐久性 「文字がかすれない 「粘着 」,」 ,」 ,剤の上から印字する」などといった言葉はない。
しかも,この明細書では 「 テープを)透明ベースにすれば, ,(添付する物体の表面に直接印刷してあるように見える 」と記載 。
されており,印字されるテープとして不透明の場合と透明である場合を想定していることは明らかである。
ところで,透明な媒体と不透明な媒体に印字をしなくてはならない場合において,印字の結果がまともに見られるのは,表面から印字をした場合だけであり,裏面(接着剤面)に印字すると解釈すると,媒体が不透明な場合,印字の結果を見ることは物理的に不可能である。
さらにいえば,第2図と第3図の関係は,第2図が外観図であり,第3図は内部を透視した透視図である。そして,第3図が真上から見た平面図でもあるので,当然第2図も真上から見た外観図である。ところが,第3図の24近傍,第2図の16近傍を見ると,真上から見た平面図であれば描けないはずの奥行き部分が描かれている。しかし,一方で,第3図の20,21,22近傍を見ると,前述の奥行き(製品の厚み)に呼応して描かれなけれ。, ばならない奥行きがこれらの部分では全く描かれていない また印字ヘッドやプラテンなど,丸と四角だけで描かれていることからも,非常に稚拙な概要図である。ここでテープの出口近傍に注意して見れば,第3図では,排出されるテープ19はどちらにも倒れずまっすぐ左へ排出されており,断面(テープの厚み)しか見えないように描かれている。本来なら第2図でも断面しか見えないはずであるが,第2図ではテープは捻じって横に倒されて描かれている。そうすると,同公報の出願人は,第3図では断面しか見えないように描かれたテープを,単にテープに印字がされているということを示すために,何の意図もなく片側に倒して第2図19のように描いたのである。このことは,この乙13の4刊行物の明細書の第2図や第3図は,これら図の描かれ方だけを根拠にして発明としての開示内容を推測することができないことを表している。
・ なお一審被告は,特開昭59-95169号公報(乙11の1刊行物)には反転印字が開示されていると主張するが,このような主張に理由がないことは,原判決(190〜191頁)の判示するとおりである。
(e) テープ送り機構とハウジング外への排出一審被告は,テープ送りを行いハウジング外へテープを排出する製品及び文献を多数挙げるが,それらはすべてラミネートラベルと関係のないものばかりである。これらの中には,機構部がすべてハウジング内に収容されて保護されているため一般使用者の使用に適するものもあるが,作られるテープはただのテープである。
第2発明では,印字機構だけでなくテープ圧着装置を兼ねたテープ送り機構,リボン巻取機構等がすべてハウジング内に収容されているため,所望の文字が印字された第一テープの印字面に第二テープが圧着されて完成したテープが,テープ圧着装置兼テープ送り機構によりハウジング外へ排出されるという決定的な利点を提供できるのである。一審被告が挙げた例には,このようなものは一つもない。
(f) テープの着色と背景に関する主張に対し・ まず,乙11の5刊行物には,粘着層を着色する思想はあるものの,両面粘着テープのテープ基材を着色して背景とする思想はないのであって このことは原判決も認めているところである 原 ,(判決192頁 。)・ この点一審被告は,テープを着色する方法として,?@粘着テープの基材となるフィルム等に着色する方法,?A着色された粘着剤を塗布する方法,?B粘着テープの基材となるフィルムそのものを着色する方法があることは公知の事実であると主張して,特開昭50-74637号公報(乙181 ,特開昭50-15074 )3号公報(乙182 ,特開昭51-19049号公報(乙18 )3)を挙げる。
しかし,上記公報における着色に関する記載は,いずれも粘着テープを「包装用等の使用に際して好ましい色に着色する」場合について述べられているのであって,包装用に使われるテープは両面テープではなく,単に片側だけに粘着剤が存在する普通のテープである。これらの文献では,片面にだけ接着剤のある普通のテープを包装用に着色することに言及されているものの,両面粘着テープにおいてテープを着色することには一切言及しておらず,両面テープのテープ基材を着色することについても一切言及していない。貼り付ける対象物で被覆されることが前提となる両面テープを着色すること自体常識的なことではなく,乙181〜183の出願人である東洋紡績株式会社のような世界屈指の化学メーカーにとっても,テープを着色するのは常識的にはテープの片面が外に現れる包装用途などの場合であり,両面粘着テープのテープ基材を着色することは非常識であり,さらに,それをラベルの背景となるように利用し,小型の装置の中で反転印字を行った後に裏から貼り合せ,ラミネートラベルを瞬時に作製するなどという思想は通常の想像を超えるものである。
b 乙11の1刊行物・乙11の5刊行物との対比この点に関する一審原告らの主張は原審において主張したとおりであり,原判決の判断(190〜192頁)に誤りはない。
(ウ) 第3発明が有効であることa 原判決の判断原判決は,第3発明は,新規性を欠如するとは認められないが,マーリンエクスプレスの説明書(乙16刊行物)に記載された発明及び特開昭56-162659号公報(乙134刊行物)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,進歩性欠如の無効事由を有すると判示した(194頁)が,以下に述べるとおり誤りである。
b 乙134刊行物もともと乙134刊行物は,第3発明が特許査定に至る過程において,拒絶理由通知(甲227の3)により進歩性が否定された際,審査官が引用例(第2引用例)として挙げたものである。
審査官は,この拒絶理由通知において,第2引用例記載の「ハングル文字が横母音を含む場合は前子音を印字する領域に印字し,含まない場合は前子音と横母音を印字する領域にまたがって印字する印字位置変更手段」につき,前子音をバランスのとれた自然な位置に印字するために設けられた手段であると理解し,第2引用例記載の発明と第3発明とは「印字素子列の長さより小さいサイズのキャラクタを印字する際に駆動される印字素子列の範囲を印字素子列の長さ方向にシフトする印字位置変更手段」でもって見やすい印字を行うという同一目的を達成しようとするものと認定した。
これに対し一審被告は,意見書(甲227の4)をもって,第3発明は,種々のケースに応じてセンタ印字及び片側寄せ印字(例えば下揃え印字)を選択し得るようにするためであって,前子音をバランスのとれた自然な位置に印字するために印字位置を変更する第2引用例とは全く目的が違い,創造的活動による特別な着想がなければ容易に達成できないものであることを主張するとともに,同日付けで同主張に沿う内容に適正な手続補正(甲227の5)をし,その結果,特許査定に至った。
このように,原判決が摘示した乙134刊行物(第2引用例)は特許査定に至る段階で,テープ印字装置との組合せにおいて既に考慮され尽くしているのである。
c 乙16刊行物上記bのとおり,乙134刊行物は既に考慮され尽くしており,結局,本訴訟において一審被告が新たに公知技術として提示したのは乙16刊行物だけであるから,第3発明の進歩性を判断するためには,この乙16刊行物記載の内容が特許査定を受けるに当たり考慮された引用例や公知例と同じ範囲に属するものであるのか,また,第3発明のセンタ印字と片側揃え印字のうち,文字サイズや印字テープの使用目的に応じてより適切と思われる印字書式を選択することにより,ケースに応じて最適の印字テープを作製するという範囲に属するものであるかを検討すべきである。
この点,原判決は,乙16刊行物の「比較的小さいサイズのアルファベットを印字する場合において,通常は文字のベースラインがテープ中央に配置されるところ,これを大きな文字のベースラインと揃えるように下方に寄せて配置する機能が 当然のように第3発明の 片 」, 「側に寄せてキャラクタ列の印字を行わせる片側揃えモード」に一致するとしているが,なぜこの二つが一致するといえるかという根拠については一切説明がない。
しかし,マーリンエクスプレスは,原則として文字列がセンター固定で印字されるようになっているが,種類の異なるフォントを混在させて文字列を印字する場合には,センター固定のままでは文字が踊って見えてしまうことから,この見た目の問題を解決する目的で,一律にベースラインで揃うように文字を印字するという装置である。これに対し,第3発明の根本的な思想は,明細書の〈発明が解決しようとする問題点 〈作用および効果〉欄にも記載のあるとおり,従来技術 〉ではレイアウトが画一的でフレキシビリティが得られないことを問題として,文字サイズに応じて印字位置のフレキシビリティを高めるため,予め一律に定められた印字位置ではなく,ユーザーの嗜好に合わせ,多様な印字書式を実現しようというものである。第3発明の審査の過程においては,この明確な目的とそれによる技術の違いが認められて特許査定を受けているのであるから,この違いは第3発明の本旨に関わるものであり,最も重視されるべきである。
実際にも,第3発明では印字素子列の範囲で小さいサイズの文字のキャラクタ列を上下に寄せて印字することができる(第3発明は,使,, 用目的に応じて より適切と思われる印字書式を選択することによりケースに応じて最適の印字テープを作製する技術である)が,乙16刊行物の技術では,小さいサイズのキャラクタ列を上に寄せることはできないという違いがある。
しかも,マーリンエクスプレスはテープ印字装置であり,製造元のバリトロニクス社は一審被告にとって競合他社となり得た存在である。もし,第3発明が容易に到達し得るものであれば,彼らこそ一審原告らよりも先に第3発明と同じ方法で文字を片側に寄せて印字位置を変更する技術を製品に取り入れていたはずである。一審原告らは早くから自由なレイアウトができることが重要になることに気付き,その態様と実現方法を次々に考えていったのであり,その最初のものが第3発明であるし,一審原告 X 2は,その後も見出しラベルに使う特殊な2行印字の方法(第1考案)を考え出し,2行印字の入力方法や複数ブロックの際の便利な入力方法も提案していったのである。要するに,同業他社は,ラベルライターにおいてより自由なレイアウトに対応するという点において一審原告らに劣後したのであり,この事実も,第3発明が容易に発明し得なかったことを裏付けるものである。
したがって,乙16刊行物(マーリンエクスプレス取扱説明書)記載のセンター固定をベースライン固定に切り換える機能と,第3発明の片側に寄せて印字する技術が同一であるとした原判決の判断は誤りである。
(エ) 第5発明が有効であることa 第5発明の実効性原判決は,第5発明に無効事由があるとしつつ,独占の利益を肯定すべきと判断しており,後者の判断は一審原告らとしても争うものではない。
そして,これに更に付言すると,第5発明は,少なくとも形式上有効な特許として,第三者に対する禁止権を行使し得る状態で存続してきたものであるばかりでなく,直接的には,国内でマックス社が模倣品のラミネート式ラベルライターLM-200を発売した際,特許庁に優先審査請求をし,これに対して異議申立てをしたマックス社と激しく争った上で第5発明を特許化させ,以後マックス社には侵害品の販売を直ちにやめさせ,代わりに被告会社のOEM製品を販売させたという実績がある。このように,第5発明は,国内で出現した第一の競合会社と激しく有効性を争って特許をさせた上で,その独占権を行使してきた,実効性が極めて高い,実利のある特許である。
このような特許に対して,対価請求を受けたからといって,公知例を寄せ集め,無効の主張をすること自体,非常に反社会的であるし,独占の利益の算定から除くことはあり得ない。
b 原判決の誤り(a) 制御手段に関する相違点の看過原判決は,乙13の5刊行物の活字ブロックは左右に移動するのに対し,第5発明のサーマルヘッドは固定されているから,この点も相違点である旨の一審原告らの主張について,実施例に限定した解釈に基づくもので誤りであると判示する。
しかし,原判決は,用紙を上下に送る機構を持つ装置において,用紙送りが止まった際に活字ブロックを左右に移動させて印字することと,搬送される記録媒体にその搬送方向に沿って左右反転印字を行うことが根本的に異なるということを考慮しなかった点において,誤りがあるといわざるを得ない。
すなわち,この乙13の5刊行物における用紙の搬送路は下から上の方向であり,この搬送路に沿って用紙を下から上へ送りながら印字をすると,活字ブロックがタイプライターのような活字の場合であれば縦書きにしかならないし,サーマルヘッドの場合,全く印字することができない(一本の細い線が印字されるのみである 。。)乙13の5刊行物の実施例(第1図)においてABCと印字ができているのは,用紙を搬送路に沿って下から上へ送る手段とは別に,用紙送りが止まっている際に印字ヘッドを左から右へ移動させる手段が存在するからである。
したがって,乙13の5刊行物において印字ブロックが固定された状態では記載されたような印字ができないのであるから,用紙を上下に送り,印字ブロックは左右に動かすという構成は実施例であるばかりでなく,必須な構成要素である。
そして,このような乙13の5刊行物の記載内容をベースにして第5発明の「記録媒体」の裏面に「左右反転した像」を印字するには,まず用紙が右から左に送られるように配置し直さなければなら,, , ず さらに 右から左に送られる用紙に左右反転の印字を行うにはサーマルヘッドの印字素子列が用紙の幅方向に配列されるように90度倒した上で反転印字がされるように制御しなければならない。
このように,乙13の5刊行物の記載は,用紙を用紙の搬送路に沿って送り,活字ブロックをレールに沿って横方向に印字しながら移動して印字するものであり,第5発明の構成要素である透視性を有する記録媒体を媒体搬送路に沿って搬送し,記録媒体の裏面側に形成される記録像が前期裏面側から見て左右反転した像になるように反転記録を行わせる制御手段とは全く異なるものである。
なお,乙13の5刊行物の欧州出願は,国内で第5発明が特許された平成5年(1993年)8月9日以前である海外特許2の審査過程において,平成元年(1989年)12月15日に米国審査官から公知技術として指摘を受けたが,一審被告は両者の違いについて上記と同様の主張をして,特許査定を受けている。
(b) 組合せの容易性に関する判断の誤り原判決は,乙13の5刊行物と乙11の5刊行物とを組み合わせることが容易である旨判断するが,乙13の5刊行物と乙11の5刊行物を積極的に結び付ける要素や動機はないのであって,上記判断は誤りである。
すなわち,乙13の5刊行物は,従来技術では印字した直後の印字結果をすぐに見ることができないという「解決すべき課題」について,それを印字直後に見れるように,印字結果と使用者との間に介在するプラテンをわざわざ透明のものにしたものであって,これがこの発明の核心であり,課題解決の手段である。ところが,乙11の5刊行物では,印刷された基材に,その直後に両面粘着テープを貼り合わせる工程があり,乙13の5刊行物の印字面にわざわざ両面延着テープを貼り付けるということは,この乙13の5刊行物の目的である印字した結果をすぐに見えるようにするという目的・効果を完全に阻害することになる。一方,乙11の5刊行物の印刷手段ではプラテンなど使われていないので,これをわざわざ透明にすることは意味がない。
このように,乙13の5と乙11の5を仮に同時に知ることがあ,,, ったとしても 両者は相容れないものであり 互いに参考にならず両者を組み合わせても第5発明に容易に到達し得るものでないから,進歩性は否定されない。
(オ) 海外特許1が有効であることa 補正による影響につき,, 一審被告の主張のうち 誤って公開公報に基づいた翻訳が提出され海外特許1の請求項がその後の審査において補正されたことは認める。
ただし,上記補正はその前後において有効性に関して実質的な差を生ずるような違いはなく,補正後の請求項によってもこれまでの一審原告らの主張や原判決の内容はそのまま当てはまる。
すなわち,海外特許1の公開公報(甲20の7)と特許公報(乙155)の違いは,請求項1に請求項3の要素が取り込まれ,以後,請求項の番号が繰り上がった点のみで,実質的な差はない。そして,両者の実質的な差である請求項1に請求項3の構成要素が追加されていることによって原判決の判断が影響を受けることはない。
b 進歩性につき(a) 第5発明との関係一審被告は,海外特許1の請求項1〜6は,原審が特許された請求項として誤って認定した出願公開時の請求項1〜7の構成を超える実質上の限定は存在せず,そうである以上,第5発明と同じく,乙11の5及び乙13の5刊行物の存在から進歩性が否定される旨主張する。
しかし,海外特許1の請求項1〜6は,第5発明の構成要件と同一ではないし,そもそも第5発明に無効事由はない。
(b) 乙11の5刊行物との関係また一審被告は,乙11の5刊行物に海外特許1の請求項1の構成要件7C'及び7D (インクリボンとインクリボン移送手段)を ’除く他の構成要件はすべて明示的に記載されている旨主張する。
しかし,以下のとおり,乙11の5刊行物には,請求項1の構成’’ ,’’ 要件7C と7D が示されていないばかりでなく 7B も7Eも明示的に記載されているとはいえない。
構成要件7B’一審被告の上記主張は,乙11の5刊行物における「透明な連続基材(1)を搬送路に沿って搬送するための手段(11)」が,請求項1の構成要件7B’である「実質的に透明な記録媒体(70)を搬送路に沿って搬送するための手段」に当たることを前提とするものであるが,海外特許1では 「搬送するための手段(feeding ,means 」で送られるのは「実質的に透明な記録媒体」であるのに )対し,乙11の5刊行物においては,上記「手段(11 」を用い)「」, 「() 」 ても 透明な連続基材(1) は全く巻き取られず 巻取り装置 11と透明な連続基材はつながってすらいないのであって 「巻取り ,装置(11 」が巻き取っているのは,テープロール7に巻かれた )両面粘着テープである 「巻取り装置(11 」を巻けば,粘着テー 。)プに接着させられた透明基材の一部は途中までは引き摺られて一時的に引っ張られるが,まともに搬送することはできない。なお原文では,海外特許1は「feedingmeans」であり 「送って供給,」, ( ) する手段 であり 巻き取る装置 英訳すれば rewinding meansとは異なる。
この「送って供給する」か「巻き取る」かは,単に文言上の違いでなく,機能上も非常に重要なポイントである。すなわち,乙11の5刊行物には連続的な印刷を行うラベル製造方法が開示されているが,このラベルを巻き取る構造では,供給側のスプールが空になるまで連続印刷をして,その後ラベルのスプールを外して,さらに巻かれたラベルを後のものから順に引き出して切り出。, し使用することになる 仮に一枚だけのラベルを得ようとすれば供給側と巻取り側のスプールをセットして一枚分を印刷した後に,巻取りスプールと両面粘着テープのスプールの両方を取り外し,ラベルを切り出すことになる。このようにつながったラベルを一旦切ってしまうと,再度スプールに巻きなおし,装置に取り付け直すなどとという作業は手間がかかりすぎて非現実的である。ラベルライターでは,印字されたラベルの自由端を外へ向けてハウジング外に送り出し,印字したテープ片をすぐにカットできる構造でなくてはならないのである。
,, ’ このように 乙11の5刊行物には 請求項1の構成要件7Bである「実質的に透明な記録媒体(70)を搬送路に沿って搬送するための手段」が記載されていない。
構成要件7E’乙11の5刊行物の明細書には,装置の配置方向やオペレーターがどちらから装置を操作するのか,そして印刷結果をどの方向から見るのかなどについての思想が全くなく,請求項1の7E’の構成要件である「前記プリントは,使用時オペレーターに正規に現れるように,左右に反転されて遂行されるべく制御されること」について,何らの記載もない。
そもそも,乙11の5刊行物のラベル製造方法は,その明細書の記載からも明らかなように,同じラベルを大量に(1000〜5000枚程度)作るためのものであって,ラベルのでき栄えを一枚一枚オペレーターが確認するという必要がないものである。
そのため,乙11の5刊行物では,オペレーターの存在,オペレーターが装置を見る方向,オペレーターとラベル基材が搬送される方向の関係といったことについて全く想定していないのである。明細書の図1において,仮にオペレーターが印刷結果を見るとすると,天井方向から下を見るのでなければ何も見ることができない。
一方,ラミネート式を実現したラベルライターにおいて印字ヘッドがオペレーター側にあると,テープが排出された際に剥離紙の裏側しか見ることができない。覗き込んでも上下逆さにしか見えず,これでは,でき上がったラミネートラベルは素晴らしいものであっても,ラベルライターとして,ラベル作製の際に印字結果が確認できないという操作性に劣る点を抱えることになってしまう。
,「」, そのような不都合を解決し 正規に現れるように するには入力操作などを行うオペレーターの位置に対して,印字ヘッドの位置と向き,透明印字テープの位置と送り方向,印刷データを特別に考えなければならない。
このような特別の配置が考え出されたからこそ,オペレーターが一枚一枚内容の異なる印字がされたラベルを正しく見ることができ,ラベルがラミネートされた上,できあがった姿が直ぐに目視でき,かつ直ぐに使えるという利便性も得られるのである。
このように 「前記プリントは,使用時オペレーターに正規に ,,」 現れるように 左右に反転されて遂行されるべく制御されることは,海外特許1において極めて重要な構成要素であるにもかかわらず,乙11の5刊行物ではこの重要な構成要素7E’に関する思想がないのである。
したがって,一審被告の前記主張は前提において誤っている。
・ 構成要素7C’と7D’一審被告は,乙11の5刊行物の「印刷装置はあらゆる方式が可能であること」との記載から容易想到性を導いているが 「あ,らゆる方式」といっても,明細書には「全ての実施例にわたり,,, , 印刷装置は通常シール印刷に用いられる フレキソ オフセット凸版,グラビア等その他あらゆる方式」と記載されているのであって,通常シール印刷に用いられる印刷方式にしか言及されていない。そして,乙11の5刊行物に開示されたラベル製造方法においてインクリボンによる印字手段を用いることがラベル製造方法の阻害要素となり,動機付けとはなり得ないことは,第2発明において述べたとおりである。
(c) データ入力装置が周知でないこと一審被告は,請求項2におけるデータ入力装置もテーププリンターにおいて周知であり,請求項3〜6の各構成要件はすべて乙11の5刊行物に開示されている旨主張するが,誤りである。
上記主張は,請求項2の「前記装置の一区画において前記媒体搬送手段及び前記記録手段の前方に配置され,前記記録手段によって記録される前記イメージをあらわすデータを入力するための,オペレーターによって制御されるデータ入力手段」について,他の公知例(乙88,乙13の4,乙18)などで周知であることを前提とするものである。
しかし,乙11の5刊行物に記載又は例示されているのは,別の手段によって印刷に用いる版を事前に作製し,文字校正や色校正をした後で製版を行い,その印刷用原版(明細書図面ではドラム状)をセットして印刷するような方法ばかりである。したがって,このような工程によるラベル製造においては,印刷をする際にその都度印刷用原稿を印刷装置に入力するといった思想はなく,ラベルプリンターのデータ入力手段と容易に結び付けて考えられるものではない。
仮に乙11の5刊行物と乙88などテープに印字する装置を同時,, に知り得た当業者がいたとしても両者を積極的に結び付けて考えかつ,海外特許1の発明に至ることが容易でないことは歴史が証明している。すなわち,一審被告従業員の陳述書(乙164・R 陳述書)によれば,乙11の5刊行物の公開が昭和53年,サーマルヘッドとインクリボンによる印字技術が汎用技術となったのは昭和57年ころからである。一審原告らが第2発明や第5発明を完成させたのは昭和62年7月であるから,当業者には5年間という時間が等しく与えられていた。それにもかかわらず,クロイ社やバリトロニクス社は,ラベルの文字がすぐに見えなくなってしまう製品しか,。 考えることができず 耐久性の高いラベルへの意識は全くなかったダイモ社に至っては,サーマルヘッドとインクリボンを使用してラベルを作るということにすら全く関心がなかったのである。
このように,乙11の5刊行物を知る当業者が,単にサーマル印字方式という技術を知っていたり,テープにサーマル印字をする装置(例えば,乙88)を知っているだけでは海外特許1に至ることはできない。一枚一枚内容の異なるラベルを作ることができ,しかも装置を操作するオペレーターが印字された内容を正常な画像として視認することができ,それが抜群の耐久性を持っていることの価値を見抜いていなければ,海外特許1に至ることはない。そして,この発明を実施した製品が商業的に大成功した事実も海外特許1の進歩性を如実に証明している。
(d) 取扱説明書への表示一審被告は,欧州向けのラミネート式ラベルライター製品には,海外特許1を含む一審原告らのラミネートに係る特許表示を取扱説明書に掲載して他社の参入を牽制している。
c 新規性につき(a) 欧州特許●●号(ダイモ契約権利2)と欧州特許319209号の優先権主張が無効であること欧州特許条約87条(1)によれば,同一出願者(一審被告)が同一発明に関して行った「最初の出願」を優先権主張の基礎とするのでなければ,その優先権主張は当該規定に違反して無効となり,無効となる範囲において有効出願日は現実の欧州出願日となる。
ここで海外特許1の請求項1〜7の各発明は,遅くとも一審被告が指摘する実願昭62-292729号公報(昭和62年〔1987年〕11月19日出願,日本出願?D)にすべて開示されている。
そして,最先の国内出願である第3考案(実願昭62-176067号公報)では,海外特許1の請求項1〜6の各発明に加えて,ラミネート式ラベルライターに用いるカセットにおいて,透明印字テープとインクリボンと剥離紙付き両面粘着テープを同一のカセットに収納するという技術が記載されている。したがって,海外特許1の請求項1〜6の各発明は,最先の第3考案を優先権主張の基礎とするのでなければ,その優先権主張は87条(1)規定違反となり無効となる。
請求項7の発明は,最先の上記日本出願?Dを優先権主張の基礎とするのでなければ,その優先権主張は87条(1)規定違反となり無効となる。
,, そして ラミネート式ラベルライターに用いるカセットにおいて透明印字テープとインクリボンと剥離紙付き両面粘着テープを同一のカセットに収納するという発明は,最先の第3考案を優先権主張の基礎とするのでなければ,その優先権主張は87条(1)規定違反となり無効となる。
したがって,これらより後の出願に係る実願昭62-181307号(昭和62年〔1987年〕11月28日出願,日本出願?B)を優先権主張の基礎とする欧州特許319209号(欧州特許?C)の優先権主張は無効であり,無効となる範囲(海外特許1の請求項1〜7に係る部分)の有効出願日は現実の出願日である昭和63年(1988年)11月25日となる。
一審被告の指摘する特願昭62-323429号 昭和62年 1 (〔987年〕12月21日出願,第5発明,日本出願?A)を優先権主張の基礎とする海外特許1の優先権主張も無効であり,無効となる範囲(海外特許1の請求項1〜7に係る部分)の有効出願日は,一審被告が主張するとおり現実の出願日である昭和63年(1988年)10月27日となる。
,() さらに ダイモ契約権利2の優先権主張の基礎である●● 省略も海外特許1の請求項1〜7の各発明に係る最先の出願ではないので優先権主張は無効となり,無効となる範囲(海外特許1の請求項1〜7に係る部分)のダイモ契約権利2の有効出願日は,現実の出願日である昭和63年(1988年)12月29日となる。
要するに どの優先権主張も 最先の国内出願である第3考案 一 ,, (審被告の主張によっても日本出願?D)を基礎としていないため,最先の出願とはいえず,海外特許1の請求項1〜6の主題に関する限りすべて優先権主張は無効となり,無効となる範囲については現実の欧州出願日が有効出願日となるということである。
現実の出願日・本件海外特許1 → 昭和63年10月27日・欧州特許319209号 →昭和63年11月15日・ダイモ契約権利2 → 昭和63年12月29日したがって,海外特許1の請求項1〜8の発明に係る最先の出願は,海外特許1の現実の出願(昭和63年10月27日)自体であり,優先権主張が無効となる他の欧州特許319209号とダイモ契約権利2の現実の出願はこれに劣後する。これら有効出願日が劣後する出願が従来技術となることはないので,海外特許1は新規性を有することは明らかである。かえって,以下のとおり,ダイモ契約権利2は新規性を欠き,無効となる可能性が高いというべきである。
(b) ダイモ契約権利2が無効であること・ 欧州には我が国の特許法における29条の2ただし書に相当する規定がないため,欧州特許条約54条3項の規定によって後願のダイモ契約権利2に対して,海外特許1の請求項1〜8が技術水準を構成する。
ところで,ダイモ契約権利2の請求項1に開示された技術のうち,一見して一審原告らの第3考案及び海外特許1に明示されていないのは,次の3点のみである。
?@ テープカセットのハウジングに印字ヘッドが進入できる凹所があること?A テープカセットのハウジングにテープの出口があること?B 第3考案のように透明テープとインクリボンが重ねて第1 区画にともに巻かれているのではなく,透明テープとインクリボンとが別々の区画に収納されていることしかし,印字ヘッドを収納するための凹所を設けることは当然のことであって,上の第2発明の明細書第1図にも印字ヘッド(72)が挿入できるように凹所が設けられている。
2点目のテープカセットのハウジングにテープの出口を設けることも常識である。出口がなければ印字されたテープを出すことができない。
3点目のインクリボンが透明テープとは別に巻かれている点についても,第2発明の第1図で示されている。
また,テープカセットに関する第3考案では,カセットのサイズを小さくするために敢えて透明テープとインクリボンの供給側スプールを共通にするという工夫をしている。
そして,第3考案の明細書(甲246)には 「また,第1図 ,のように透明テープ 32 とサーマルリボン 34 とが共用スプール 56に積層状態で巻かれていることは不可欠の要件ではなく,共用スプール 56 を,透明テープ 32 の供給スプールとサーマルリボン 34の供給スプールとの2個のスプールに分離・独立させることも可能である。この場合,スプールが都合4個となってカセットケース 54 は幾分大きくなるが,透明テープ 32 とサーマルリボン 34。」() , とを互いに独立交換することができる16頁 とあるように透明テープとインクリボンを独立させて,4つのスプールからなるカセットの構成が変形例として明示的に記載されている。
このように,透明テープとインクリボンと両面粘着テープが単独でスプールに巻かれる構成とすれば,カセットのハウジング内では,各テープスプールを収納する第1〜第3の収納区画に分かれるのは必然である。すなわち,透明テープのスプールはテープ出口から一番遠い収納エリアに配置され,次にインクリボンの供給スプールと巻取りスプールが2つ目のエリアに配置され,圧着ローラーとテープ出口に最も近い3つ目のエリアに両面粘着テープのスプールが配置される。
以上述べたように,第3考案の変形例や第2発明の1図によりテープカセットの構成は開示されていたのであり,これが正しくダイモ契約権利2の請求項1に該当する。
したがって,一審被告のダイモ契約権利2は新規性を失い,無効となる可能性が極めて高い。
・ 上記の現実の出願日に対して,国内でキングジム社が被告製造のラミネート式ラベルライター「TR-55」を発売したのが昭和63年11月12日であり 「TR-55」には一審被告のダ ,イモ契約権利2のすべての請求項に係る技術が実施されている。
既に述べたように,ダイモ契約権利2の優先権主張は無効であるから,無効になる範囲でその有効出願日は昭和63年(1988年)12月29日であり,有効出願日以前にすでに特許請求の内容が「TR-55」で公然と実施されており,新規性を有しない。このことからもダイモ契約権利2は無効である。
(カ) 海外特許2が有効であることa 一審原告らの主張及び原判決の判断この点に関する一審原告らの主張は原審において主張したとおりであり,海外特許2が有効であるとの原判決の判断は正当である。
b 一審被告の主張に対し(a) 乙11の5刊行物(特開昭53-70700号公報)・ 一審被告は,乙11の5刊行物について,海外特許2の請求項2,3,6,7,12はすべて乙11の5刊行物に記載されていると主張し,請求項4,5,8,11は乙11の5刊行物には未,, 開示の要素があるものの それらの構成要素は周知の技術であり進歩性がない旨を主張する。
しかし,海外特許2と同様のラミネート発明である第2発明と乙11の5刊行物との関係は前記のとおりであって,第2発明と同様の構成に関しては,一審被告の主張は理由がない。
・ また,海外特許2の請求項2の構成要素8Cについては,乙11の5刊行物には印字ヘッドとプラテンを用いることは全く記載されておらず,かつ,相容れない思想であり,当業者が乙11の5をベースに,インクリボンによるサーマル印刷方式を採用することはあり得ない。
また,同構成に関し,乙11の1刊行物を挙げるが,同刊行物記載の装置はテープに印字をするものではなく,シートにカラー印刷をした後に,印刷されたシートを取り出し,別のパウチ機のような機械に入れてパウチするものであって,でき上がるのも粘着性のないシートである。しかも記述されているのは,記録用紙へのカラー印刷の順番についての思想であって,反転印字を開示したものではない。
・ 請求項4における「テープ貼り合せ手段が記録テープ送り手段とカバーテープ送り手段を兼用する」構成は,乙11の5刊行物には記載がない。乙11の5刊行物において,積極的に駆動する部分として記載されているのは 「巻取り装置(11)」と「カス巻 ,上げ装置(9)」だけである。
また乙11の5刊行物の実施例の構成においては,海外特許2の発明と異なり,貼合せローラーが最終位置(最下流)に配置されていない。このような配置で仮に「貼合せ装置(4)」の一方を駆動させると 「貼合せ装置(4)」と「巻取り装置(11)」等の間で ,媒体にたるみが生じてしまい,ダイカット装置(8)がたるんだ状態の媒体を切ることになりかねない。貼合せローラーが積極的に駆動して印字テープを送るとともに,印字テープと両面粘着テープを圧着するということは,海外特許2にように,圧着ローラー兼テープ送りローラーを出口の一番近くに配置するように考えなければ解決できないことである。
・ 請求項5については,請求項2と同様,当業者が乙11の5刊行物に基づき,インクリボンによるサーマル印刷方式を採用することはあり得ない。
・ 請求項6,7については,搬送手段が記録テープとカバーテープを一緒に送ることが明確化されているところ,乙11の5刊行物にはそのような思想がない。
・ 請求項8については 「テープ貼り合せ手段が記録テープ送り ,手段とカバーテープ送り手段を兼用する」構成は,乙11の5刊行物に開示がなく,海外特許2の画期的な配置を考えつかなければならない。
・ 請求項11については,8B ’の「透明な記録テープを搬送 ’する媒体搬送手段」が「巻取り装置(11)」ではないし,8C ’’の「印字データにしたがって,前記複数の文字を前記所望の順番で前記記録テープの一方の面に,印字手段から印字する面に向かった第1の方向から見たときには前記の個々の文字が左右反転して見え,反対の第2の方向から見たときに通常の像に見えるように印字する印字手段」は乙11の5刊行物に記載がなく,8Xの「データ入力手段」も乙11の5刊行物とは全く結び付かないものである。
・ 請求項12についても請求項2と同様であり,一審被告の反論は理由がない。
(b) 米国の実務における非自明性の判断・ 非自明性の判断において考慮すべき副次的要因以下のとおり,ドナルド・S・チザム著「Elements of UnitedStates of Law (アメリカ特許法とその手続:竹中俊子訳。甲2 」49・51〜57頁)において,米国における非自明性の判断の際に考慮すべき副次的要因として挙げられている諸事情に照らしてみても,海外特許2は有効である。
・ 長く要望されていた課題-他者の失敗例米国における非自明性の判断においては,審査の対象である発明がその課題を解決した場合,この解決方法は当該分野で通常の知識を有する者にとって自明でなかったことを間接的に示す証拠となるとされている。
これを本件についてみると,海外特許2のラミネート式ラベルライターが発明される以前に存在した単にテープ上に印字をする装置は,市場で全く受け入れられずに失敗した。すなわち,バリトロニクス社のマーリンエクスプレスは全く売れなかった。どこでも,誰でも,すぐに一枚から所望の貼付けラベルが作れるという課題に対して,耐久性を持つことが必須であることに気付かず取り組んだ他者はことごとく失敗したのである。
・ 商業上の成功上記と同様に,発明を実施したある製品が従来の製品にとって代わり,大きな商業的成功を収めた場合,発明が自明であれば,そのような成功の見込みによって刺激された他の者がその発明を完成させていたであろうから,この発明が自明でなかったことを間接的に示す証拠とすることができるとされている。
これを本件についてみると,海外特許2のラミネート式ラベルライターは,単にテープ上に印字をする装置だけでなく,それまでダイモ社が世界中で年間600万台も販売していたメカ式ダイモ(エンボス式)を瞬く間に市場から完全に駆逐してしまった。
,,,, それだけではなく それまで存在しなかった どこでも 誰でもすぐに,一枚から耐久性の高い貼り付けラベルが作れ,どこにでも使えるという新たな市場を創造した。一審被告のラミネート式ラベルライターの売上げは既に3000億円近い。
実施許諾と高率のロイヤリティ同様に,特許権者の主要な商業上の競業者が特許権に基づく実施許諾を受けた場合,自明であれば競業者が特許の有効性について無効の主張を行ったであろうから,その発明は自明でないことを間接的に示す証拠とすることができるとされている。
これを本件についてみると,ダイモ社に対する販売差止め・賠償金を獲得し,本体の製造・販売を条件とする本体●%,テープカセット●%の実施料を課した経緯がある。ダイモ社は世界企業であり,当然米国における販売も阻止された。
また,実施料が低いと,競業者が訴訟費用の負担を避けるためにのみ実施許諾を受けたと考えられるので,その実施許諾の主張は証拠として説得力を持たないとされているが,ラミネート式ラベルライターの製造・販売停止に追い込まれたダイモ社は本体●%,テープ●%の料率を課されている。
侵害者による模倣と称賛の言動同様に,自明性を理由に特許の無効を主張している者が特許された発明を故意に模倣した場合,発明が自明であれば無効を主張する者が独自にたやすく別の製品を開発したか,利用可能な他の先行技術の製品の一つを模倣したはずであろうから,このような模倣はその発明が自明でないことを間接的に示す証拠とすることができるとされている。
これを本件についてみると,マックス社は国内の第2,第5発明に対して異議申立てをして無効を争ったが,その一方で,ラミネートラベルライターの模倣品LM-200を,第2・第5発明の公開(平成元年6月)後,海外特許1の登録(平成3年4月)後に製造・販売している(平成3年7月 。)マックス社は世界企業であり,国内での販売行為が差し止められなければ,当然米国に輸出していたであろうことは明らかである。
・ ほぼ同時に同じ発明をした者がいない同様に,クレームされた発明と同一又は類似の解決手段を他の者が同時に考え出した場合,このような事実は,その発明が当該技術分野において通常の知識を有する者に自明であったことを間接的に示す証拠とすることができるとされており,逆にそのような事実がないことは,その発明が当該技術分野において通常の知識を有する者に自明でなかった証拠となる。
本件の場合,海外特許2と同一又は類似の解決手段を他の者が同時に考え出したという事実がない。ダイモ社,クロイ社,マックス社,カシオ社,セイコーエプソン社にしても,これら競業他社が同一(又は類似)の発明がほぼ同時期にしたという事実はない。
・ 再審査の困難さ米国には 一度特許された発明については 査定系の再審査 ex ,,(parte reexamination)と,当事者系の再審査(inter partesreexamination)の2つの方法があり,後者は1999年〔平成〕,〔〕 11年 改正法によって新設されたが1999年 平成11年11月29日以前の出願の特許については対象とならないため,一度登録された特許を無効にするには,前者の査定系の再審査しかない。
しかし 「アメリカ特許法実務ハンドブック (甲250)によ ,」れば 「査定系の再審査では特許を現実に無効にすることは困難 ,であり,むしろ特許権者が特許の有効性追認させて,特許権を強化するために利用されてきた。すなわち,第三者が積極的に参加をして特許を無効にするという制度(わが国でいう無効審判のような制度)は事実上存在していなかった (271頁)という 。」のが米国での実情である。
しかも,第三者が乙11の5刊行物を理由にこの査定系の再審査の請求を米国特許庁に対して行う道はあったのに,誰もしなかったというのが現実である。それほど米国での特許は一度特許されると効力が強い。
したがって,一審被告の無効主張は,米国における特許制度とその現実を無視したものである。
(キ) 海外特許3が有効であることa 一審原告らの主張及び原判決の判断この点に関する一審原告らの主張は原審において主張したとおりであり,海外特許3が有効であるとの原判決の判断は正当である。
b 一審被告の主張に対し一審被告が海外特許3について無効主張をする根拠は,第2発明,第5発明 海外特許1及び2でも根拠としている乙11の5刊行物 特 ,(開昭53-70700号公報)と,乙13の4刊行物(特開昭61-37447号公報)である。
しかし,上記発明において主張したとおり,乙13の4は反転印字と無関係のものである。また乙11の5刊行物については,海外特許,。 1及び海外特許2で主張したのと同様に なんら無効事由とならない(2) 一審被告は本件各発明を実施していること,,,, この点に関する一審原告らの主張は 以下に述べるほか 原判決第2 3(2),ア(18頁以下)記載のとおりである。
ア第2発明国内実施品として,クリアテープカセットとの組合せが除かれることは争わない。
イ第5発明専らPCと接続するタイプで印字制御手段を備えないものと,テープが本体の上面側から排出されるタイプのものが除かれることは争わない。
ウ 海外特許1(ア) 原判決の海外特許1についての認定は,誤って公開公報(甲20の7)に基づいた翻訳が提出されたため,その後の審査における補正が反映されていないものであり,その限度において誤りである。
もっとも,上記補正はその前後において有効性に関して実質的な差を生ずるような違いはなく,補正後の請求項によっても従前の一審原告らの主張や原判決の判断はそのまま妥当するものである。すなわち,海外特許1の公開公報(甲20の7)と特許公報(乙155)の違いは,請求項1に請求項3の要素が取り込まれ,請求項の番号が繰り上がった点のみで,実質的な差はない。そして,両者の実質的な差である請求項1に請求項3の構成要素が追加されていることによって原判決の判断が影響を受けることはない。
(イ) 海外特許1につきパソコン接続専用機種が請求項1の7E’を充足しないことは争わない。
もっとも PC パソコン 接続専用タイプ PT-2420PC 実 ,( ) ( 〔施品番号:87 ,PT-PC〔同:36 ,PT-9200PC〔同: 〕〕83 ,PT-9200DX〔同:84 ,PT-2500PC〔同:8 〕〕5 ,PT-9500PC〔同:88)は,平成6年(1994年)に 〕〕初めて導入されたものの,平成15年(2003年)半ばまでの累計販売額は,欧州向けのPT-2420PCの●●円と,PT-PC,PT-9200PC,PT-9200DX,PT-2500PC,PT-9500PCの●●円程度(全世界向け売上合計●●)である。したがって,欧州販売分の合計は●●円程度にすぎず,ラミネート式本体の全売上げである●●円の●%にすぎない。
(ウ) また,一審被告が非実施を主張する記録テープが装置の前後方向に(〔〕 ,〔〕 , 送られる機種 PT-220 同:76 PT-210E 同:77PT-2480〔同:80 ,PT-2460〔同:82 ,PT-12 〕〕50シリーズ〔同:62 ,PT-200シリーズ〔同:74 ,PT- 〕〕1200シリーズ〔同:75 )は,平成7年(1995年)に初めて 〕導入されたが,平成15年(2003年)半ばまでの欧州での累計販売分は,欧州向けのPT-220,210E,2480,2460,1250シリーズの●●円と,PT-200とPT-1200の●●円程度(全世界向け売上合計●●)である。したがって,欧州販売分の合計は●●円程度にすぎず,ラミネート式本体の全売上げである●●円の●%程度にすぎない。
(エ) 以上によれば,海外特許1のうち一審被告が実施されていないと主張する対象品は,全ラミネート式ラベルライター本体の売上げの●●程度であり,他の●%は海外特許1の請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6を実施しているものである。
エ 海外特許3() , 海外特許3の請求項3 請求項1の従属項 及び請求項10については一審原告らが原審から実施を主張していなかったものである。
これに加えて,原判決で非実施と認定された請求項6に従属する独立の請求項7については,当審において実施を主張しない。
,(,’” また 対象品群jの本体のうち原判決で非実施 9G 9G 及び9Gの非充足)と認定されたパソコン接続専用モデルについても,当審においては争わない。
さらに,記録テープが装置の前後方向に送られる機種の非実施についても,当審においては争わない。
なお,海外特許2については,パソコン接続専用モデルも記録テープが装置の前後方向に送られる機種も実施している。
(3) 超過売上高の算定についてア ラミネート発明に対する独占のポリシー(ア) ラミネート技術の非ライセンスポリシーa 原判決は,一審被告がキングジム社に対し,平成14年のキングジム契約時にラミネート技術を許諾したと認定し,キングジム社が侵害品(ラミネート式ではない)を販売開始した平成12年から和解した平成14年までの期間を境にして,それ以前とそれ以降の3つの時期に分け,平成12年以降については明らかにラミネート発明に係る独占の利益(率)を極端に減じている。
b しかし,一審被告がキングジム社に対しラミネート技術の使用許諾をすることはあり得ない。
(a) まず,キングジム契約書(甲176)において,●●(省略)と記載されているのは,明らかにラミネート式ラベルライターに係る技術を許諾対象から除外する規定であり,一審被告がキングジム社にOEM供給した製品が含まれないことをわざわざ規定したものなどではない。それにもかかわらず,原判決がキングジム契約第1条(1)を単なる許諾製品に関する例示規定にすぎないと理解し,同条項が許諾の範囲を画する意味を持たないと位置付けたことは,重大な誤りである。
すなわち,一審被告はキングジム社に対し,非ラミネート式(M型)ラベルライターとラミネート式ラベルライターの二種類をOEM供給していた。仮にキングジム契約に「キングジム社が販売しているラミネートタイプのラベルライターは,被告が製造・供給したものであり,これについては許諾(実施料の支払)の必要がないことを明確にする」という内容を盛り込むのであれば,一審被告が製造・供給しているラベルライターにはラミネート式と非ラミネート式の2種類があるのであるから,その規定は,●●となるはずはなく 「(ア) ラベルライター(ブラザーが製造してキングジム社にOE ,M供給したものを除く 」とするか 「(ア)ラベルライター(ラミネ ),ートラベルを使用するもの,およびM型のテープを使用するものを除く 」とされなければならない。そうでなければ,OEM供給品 )「() 」, である 非ラミネート M型 が実施料の対象に含まれてしまい一審被告が主張する「OEM供給品を除く」という趣旨は果たせないからである。しかるに,実際の契約書にそのように書かれていないのは,OEM供給品を除くなどという趣旨ではなく,ラミネートラベルを使用する製品すべてが除外されているということなのである。
さらに,それを裏付ける記載として,第1条(1)の「(イ)ラミネーター」がある。一審被告は,この「ラミネーター」も「ピタ!ゴラス」PGS300という製品( コールド方式」と呼ばれている) 「() 。, をキングジム社にOEM供給している 甲224の1・2 一方キングジム社は,一審被告以外の第三者からも「ピタ!ゴラス」LHというラミネーターのOEM供給を受けている( 加熱式」と呼 「。) 。, , ばれている 甲224の1 仮に キングジム契約の第1条(1)で被告がキングジム社に製造・供給したOEM製品について許諾(実施料の支払)の必要がないことを明確にしようとしたのであれば,これについても,第三者の加熱式と一審被告がOEM供給しているものを区別して 「(イ)ラミネーター(コールド方式を除く 」との ,)括弧書きが加えられたはずである。上記のような括弧書きの記載がないことも,キングジム契約の第1条(1)が,OEM製品について許諾(実施料の支払)の必要がないことを明確にしようとしたものではないことの証左である。
さらに,同(ウ)では (印字幅A6までのもの)という書き方で, ,A6版より大きいモバイルプリンターも除外されている。これは,小型サイズでノートパソコンと一緒にビジネスマンが持ち歩くものとして市場が有望視されていて,かつ,一審被告の主力事業の一つであるプリンターに関するものであり,一審被告は平成11年から製品を市場投入していたため,これらの分野の製品をこの製品限定で除外したのである。このように,一審被告は,自身が手掛ける大切な商品に関しては,許諾の対象から除くという政策を採っているのである。
以上述べたように,●●の趣旨は,一審被告がOEM供給したものを除くという意味には解釈し得ず 「ラベルライターのうち,ラ ,ミネートラベルを使用するものは許諾の対象ではない」ことを明確にした除外規定である。
(b) また キングジム契約の第1条(2)ただし書において ●● 省 ,, 「(略 」という意味であり,この第1条(2)ただし書はいくつかの絞込 )み方法の一つにすぎず,契約第1条(1)も許諾の範囲を画する条項である。したがって,この意味においても,原判決の前記認定は誤りである。
(c) しかも,原判決の上記判断は,当事者間に解釈上争いのなかった事項につき,両当事者の主張の枠を超えて,独自の判断をしたものである。すなわち,一審被告は,原審の準備書面において,キングジム契約第1条(1)が許諾の範囲を画する条項であることを当然の前提に 「キングジム社が販売しているラミネートタイプのラベ ,ルライターは,被告が製造・供給したものであり,これについては許諾(実施料の支払)の必要がないことを明確にするためだけに記載されたものである (一審被告準備書面(12)7頁)などと述べて 。」いたのである。この主張は,一審被告が同条項は許諾の範囲を画する条項であることを認めざるを得なかったからこそ,それを前提に「●●」とする括弧書きを「許諾(実施料の支払)の必要がないことを明確にする」ものだという解釈論を展開したものである。
(d) この点について,昭和62年から平成18年まで18年余り一審被告でP-touchの商品企画と営業企画の業務に従事し,退職まで課長職であった G は その陳述書 甲194 において 私 ,(), 「は,ブラザーがキングジム社ラミネートの技術を使用許諾したというような話は聞いたことがありません。そのようなことは絶対に無いと思います。仮に他社に許諾していたのであれば,先の『ラミネート特許が切れる』などというリスクについて話し合ったりはしません。もし会社がそのようなことを言っているとしたら,それは事実と違うと思います。カシオ社に対しても同じです (11頁)と 。」明言している。また 「私は,ブラザーを退職する前の2003年 ,頃から毎年 『ピータッチ』の関係者が集まってブラザーや競合他 ,社の強みと弱みを分析するSWOT研修会というミーティングにも出席しました。その会議でも,関係者が一番のリスクとして認識していたのが,ブラザーのラミネート特許が2007年以降に切れるということでした。その後はどうやって他社製品と差別化していくかを真剣に討議していました (同10頁)とも述べている。 。」また,平成19年当時一審被告の専務取締役であり,P&Hカンパニーのプレジデントであり,平成4年以来「ピータッチ事業」の最高責任者であった S の会話記録(甲292)によれば,S は,一審原告 X 2のキングジム社とカシオ社の契約でラミネート特許も許諾されているかという質問に対して,S は 「してない 「そんな憶 ,」えない」と明言している。
,, c 以上のとおり この点に関する原判決の認定は明らかに誤っておりこれにより対価算定に与えた影響は非常に大きく,この点は変更されるべきである。
(イ) カシオ契約はラミネート技術に対する開放的ライセンスポリシーを意味しないカシオ社との契約に関する経緯は,キングジム社訴訟に勝った一審被告が,その勢いでカシオ社に特許料の支払を求めたところ,カシオ社から7〜8倍もの数の,しかも被告会社にとって現在の本業であるプリンターやLCD表示技術にかかわる特許侵害を逆に突きつけられ,特許担当役員であった T が慌てて S に助けを求め,むしろ一審被告には相当不利な状況で契約せざるを得なかったというのが事実である(甲292の2・2頁下段 。)そして,一審被告は,ラベルライター市場における主たるメーカーであるダイモ社がラミネート式の侵害品で市場参入したのに対し,訴訟により本体の販売停止を勝ち取った経緯があり,またマックス社が国内で侵害品の販売を始めるとともに,ラミネート特許(第2,第5発明)の異議申立てをしたのに対し,これを防御してラミネート発明の特許を獲得した経緯があり,さらにキングジム契約においても,上記(ア)のとおり,明確にラミネート技術を許諾対象から除外している。
以上のような諸事情に鑑みれば,一審被告がカシオ社との上記契約以降,市場参入を図る他社に対して急にラミネート技術を開放的にライセンスするポリシーに変わったとは到底いえない。
このように,一審被告のラミネート技術に対する「非ライセンスポリシー」は脈々と続いているのである。
イ 超過売上げに係る原判決の誤認(ア) 市場独占状況(シェア)a 世界シェア・海外シェアに関する原判決の誤り一審被告が提示したデータによれば,ダイモ社も含めた場合の,平成15年単年におけるラミネート式ラベルライターの全世界におけるシェア(本体台数のシェア)は●%であり,ラミネートテープのそれは●%となる。このように,原判決の世界シェアに関する認定は,数値からして誤っている。
すなわち,・ 一審被告のシェアは約●%でなく,●%である。
・ M型のシェアは●%ではなく,●%である。
・ ラミネート( その他 )のシェアは約●%でなく,●%である。 「」上記の数値は,一審原告らがキングジム社及びカシオ社からの実施料報告書のデータに基づいて一審被告,キングジム社(セイコーエプソン社 ,カシオ社の平成15年度における正確な売上台数比較デー )タと,同じく一審被告が示すダイモ社対カシオ社の同年の販売台数比率を単純に加味して4社の平成15年度売上台数比較を算出したものであって,データの出所が実施料報告書であるから,極めて正確なものである。
b 世界シェア●%の意味一審被告のラミネート方式だけで●%(平成16年)の世界シェアを持っている状態は,排他的独占力が継続していることを示すものである。本来,市場シェアを語る場合,?@商品の価格帯,?A販売地域,?B金額ベースと台数ベース,?C時系列変化という,少なくとも複数の視点から見なければ市場支配力を正しく理解することはできない。特に?@の価格帯を無視して,単純に数量ベースで比べ市場占有率を計ることは不適切である。
そして,利益を生む価格帯でトップシェアを握る者が,結局は全体市場における勝者となるのであるから,利益を生む価格帯での独占状況に注目して見なければならない。
c 累計台数では世界シェア●%を超え,金額では●%を超える,, 昭和63年に創出され 拡大を始めたラベルライター市場において当初の100%独占の状態から徐々に他社の参入があったものの,累計台数比では一審被告のラミネート式ラベルライターの世界シェアは●%を超えており,驚異的な独占の状態である。さらに金額ベースでは●%を超える。
この点,一審被告は,他社のノンラミネートと合わせた場合,ラベルライター市場はノンラミネートタイプに支配されているかのように主張するが,ブラザーのノンラミネート式とはM型であり,その本体は,店頭での小売価格がラミネートテープ1本よりも安いのであり,ラベルライターとして買うというより,ギフト商品,ちょっとしたプレゼントや記念品として買われているものであって,台数はそれなりに売れても販売額は非常に低く,テープの販売もほとんど見込めない(2003年のM型(ブラザーノンラミネート)のテープの全世界本数シェアは●% 。M型には独占の利益と呼べるものはなく,独占の )利益はほぼすべてラミネート式ラベルライターによって生み出されているのである。
また一審被告は,平成13年あるいは平成15年に限定し,単年度でのシェアについて論じている点でも失当である。なぜなら,一審被告がラミネート式ラベルライターを市場投入したことによって耐久性の求められるラベルがその場で作製できるというラベルライター市場が生まれ,その後爆発的に拡大していったのであるから,その推移を見なければ真実は見えてこない。ラベルライター市場は,一審原告らのラミネート発明を製品化した昭和63年11月から実質的に市場として確立され,成長し始めた。そして,マックス社やカシオ社やセイコーエプソン社(キングジム社OEM製品 ,ダイモ社が参入してく )る平成3年までの間,一審被告はキングジム社やダイモ社やクロイ社など主たる企業にラミネート式ラベルライターのOEM供給を行い,さらには海外において自社ブランドでも販売し,市場をほぼ100%独占する状態にあった。
その後,欧州ではダイモ社が,日本ではマックス社が模倣品のラミネート式ラベルライターを販売開始したのに対し,間髪入れずにこれらを押さえ,他社には決してラミネート技術を使わせることなく,一審被告の独占的技術として今日まで至っている。
d 原判決が国内シェアが低いことを考慮しすぎたのは誤りである原判決は,以下のような事情を挙げて,国内では一審被告のシェアが低いことを消極的要素として挙げる。
・ 当初は有力な競合品がなかった(原判決209頁)・ 自社P-touch参入後も平成9年以降低落(原判決210頁)・ 自社P-touchも平成11年以前は実質ゼロ(原判決210頁)・ テープカセットも平成9年以降やや低落(原判決210頁)・ 国内台数ベースシェア●%(M型含む (原判決210頁) )・ 国内の一審被告シェア●%(原判決211頁)しかし,国内シェアが低いのは,次のような特異事情によるものである。
すなわち,キングジム社との売買契約(乙55・添付資料45)第7条と,それに続く「電子テープライター(TEPRA)に関する合意書 (甲144)により,一審被告自身が国内販売することが制約 」されていた。要するに,一審被告は昭和63年にキングジム社と取引基本契約と売買契約,そしてそれに続く覚書を締結して以来,これらを一方的に破棄するのでなければ,一審被告が国内でラミネート式ラベルライターを自社販売することはできなかったのである。このような致命的な障害が存在する国内市場においてシェアを論じる意味は極めて低い。
また,一審被告の唯一の国内販売ルートであるブラザー販売は,かつて一審被告製造の製品のみを扱う,いわゆるメーカー専属の販売業者であった。ところが,一審被告製品の競争力があまりにも劣後するため,他社製品の販売を始め,ついには,宝石や高級バッグや高級布団の販売,ゴルフ場やエステサロン経営など,未経験の事業に手を出して失敗し,さらにはバブル経済崩壊とともに巨額の赤字を抱えるようになった。そして,平成10年ころに経営難に陥り,一審被告がP-touchで稼いだキャッシュによってブラザー販売の債務を補填するとともに吸収合併したという経緯があり,このことは一審被告内,。, 部の者に限らず 世間にも広く知られている事実である いうなればこのように本件特許とは何ら関係のない一審被告の不振やブラザー販売の経営危機といった会社の根本問題を,本件ラベルライターによって獲得した利益が穴埋めし,企業存亡の危機を救ったのである。
このような瀕死の経営状態にある会社が,新規商品を拡販するために投資できるはずはないのであって,一審被告は,この瀕死のブラザー販売の販売力よりもキングジム社の販売力が勝っていたためにキングジム社製のラベルライターの方が売れたと述べているのであって,ラミネート式ラベルライターの優位性とは何ら関係のない話である。
そして,平成11年にブラザー販売が一審被告に吸収合併されて,ようやく自社ブランド品を投入したのが同年後半である。既に国内市場はキングジム社とカシオ社の2大ブランドで寡占状態にあり,10年遅れというハンディキャップは,いかんともし難いものであった。したがって,平成13年や平成15年の国内の市場シェアをもってラミネート式ラベルライターの市場優位性を論じることはナンセンスである。
もっとも,参入してわずか3年足らずの平成15年(2003年),, には 販売力ではキングジム社やカシオ社に圧倒的に劣る一審被告が本体●%,テープカセット●%のシェアを獲得したことは特筆に値する。これは国内向け製品でもラミネート式ラベルによる差別化戦略が奏功したもので,それ以外に要因はない。
さらに,一審被告の営業政策の失敗,基礎技術のなさ,テープカセットの意匠権を巡る論争からキングジム社が被告会社から離れていったという経緯もあった(G 陳述書・甲180 。)したがって,上記のような諸事情を捨象して国内市場のシェアを論じる意味は低いものである。
(イ) ラミネート式でなければならない需要原判決は,ラミネート式でなければならない市場規模を過小評価している点,またラミネート式のテープが選ばれて消費されているのは原判決が述べる「家庭や職場における通常の用途」ではなく,より耐久性が求められる現場において,優れた耐久性があることから安心して使われている点を看過するものである。
(ウ) ラミネート式の短所とされる点また原判決がラミネート式の短所であると認定した点にも,以下のとおり誤りがある。
a ラミネート式テープの原価が高いという点一審被告は,ラミネート式では単純にテープが1種類多い3種類となるため高いと主張するが,コストの内訳をみれば,ラミネートであ。, るTC・TZ型のテープの部品費はM型より安い 総合計が高いのはむしろ自社工場の空洞化を避けるために社内製造するという政策的な事情によるもので,その分被告会社の人件費を賄っているということである。
b ラミネート式はカセットが大型化して本体も大型化するという点ラミネート機構が複雑でテープカセットが大型化するなどということはない。カシオ社のネームランドのテープカセット(非ラミネート式 ,キングジム社のテプラ・プロのテープカセット(非ラミネート )式)と一審被告のラミネート式テープカセット(TC型)の投影面積を比較しても,これらに大差はない。本体のサイズは,頻繁に使う人向けにはキーボードを大きくしたりして,サイズは用途に合わせて変えるのであって,ラミネート機構があると本体サイズが大きくなるというものではない。
c ラミネート機構があると電池消費が早いという点,。 ラミネート機構があると電池消耗が早いというのも 事実に反するラミネートは,印字後のテープを排出する機構を利用して剥離紙付き両面粘着テープの重合を行っているので,余分な機構にお金がかかったり,その機構を駆動するのに電力がかかるというのは間違いである。どのようなラベルライターでも,印字後にテープを排出する機構は必要である。これがなければテープが本体内に滞留してしまう。
これに対して,耐久性の高いレジン系のインクリボンを用いる非ラミネート式は,熱転写の際に溶かすためにより高温でなければ溶融しないことから,リボンコストが高く,印字にも高いエネルギーが必要となり,電池の消耗が非常に激しい。
dその他縦じわが入る,曲面に弱い,余白が大きいという点は初期にあった不良の話であり,既に克服されているものである。
ウ 製造・販売地別の売上げの主張に対し(ア) 間接侵害の成否a 第2発明に対しては,ラミネート式テープカセットのうちクリアテープを除くすべてのタイプ(TC,TZ,TX)のテープカセットが特許法101条1号間接侵害を構成する。
b 第5発明に対しては,ラミネート式テープカセットのうちTCシリーズのテープカセットが特許法101条1号間接侵害を構成し,また,これを含むすべてのタイプのテープカセットが特許法101条2号間接侵害を構成する。
ただし,平成14年法律第24号による改正特許法101条2号が施行される平成15年1月1日までに販売されたTZ及びTXタイプのクリアテープカセットは除外されるが,これは,国内で得られた同タイプのテープカセットの●%である。
c 欧州販売分については,海外特許1の間接侵害が成立する。
d なお,第2発明の直接・間接侵害とならないようにするためには,。, テープカセットはクリアテープに限定する必要がある そして同時に第5発明も直接・間接侵害とならないようにするには,本体はパソコン接続専用型か縦置きタイプにするしかない。
そこで,・ クリアテープの比率は全体の●%程度であること・ PC接続専用タイプの比率は全売上げ中の●%,2003年までの国内売上げの●%程度であること・ 縦置きタイプと一審被告が新たに主張しているハンドタイプを合わせてもその比率は全体の●%,2003年までの国内売上げの●%程度であること以上を前提に,第2発明の侵害を免れるためテープカセットをクリアテープだけに限定し,第5発明を回避するため特殊な配置のラベルライターに限定したものの市場を,実績を用いて計算すると,国内売上げの●%程度しかないと合理的に推測される。
(計算式 ●●(省略)% )(イ) 中国で製造して米国で販売する分の売上げ(消尽論)a コンパチ業者を想定した場合(a) 直接侵害と積極的誘導・寄与的侵害の関係一審被告は,一審被告が米国で販売したラミネート式ラベルライター(本体とテープカセットのセット)について,補給用のテープカセットを製造・販売する業者の行為を想定し,そのような行為に対しては海外特許2や同3によって阻止できないと主張する。
この点,一審被告の上記主張は,竹中第1鑑定意見(乙149)の A 直接侵害と積極的誘導・寄与的侵害の関係 における ア 「」, 「メリカ法の下において,積極的誘導・寄与的侵害は直接侵害に従属しており,直接侵害の立証無しに積極的誘導・寄与的侵害の成立が認められることは無い。従って,特許発明の構成要素の一部の製造・販売に関し,積極的誘導・寄与的侵害が問題とされる場合には,まず,その構成要素を購入し,特許製品に使用する者の行為が消尽理論又は黙示的ライセンスにより侵害を構成するかどうかが判断される。その結果,侵害を構成しない場合には,積極的誘導・寄与的侵害を議論する余地はない (1頁)との記述に依拠するものと解 。」される。
しかし,直接侵害の立証と消尽論において消尽しないと判断されることとは同じでなく,一審被告の主張する米国消尽論は米国判例上の一般論であって,個々の事例を離れて補給用品の販売はどんな場合でも間接侵害が成立しないとまで普遍化して考えることはできない。
すなわち 「直接侵害の立証無しに積極的誘導・寄与的侵害の成 ,立が認められることはない」というのは明文の規定ではない。そして,例えば 「アメリカ特許法 実務ハンドブック (高岡亮一著, ,」甲231文献)によれば 「本条(271条c項)による間接侵害 ,が成立するためには,直接侵害が完全に成立していなければならないのか,それとも直接侵害の可能性があればよいのか。判例によれば 直接侵害の完全なる遂行は必要なく 侵害のおそれ threatened ,,(infringement)があれば足りる(Graham Paper v. InternationalPaper Co. 46 F. 2d 881,(8th Cir.1931) (294頁)という見解 )」がある。
また,別の文献でも 「国際特許侵害 (東京布井出版,甲232 ,」文献)によれば 「寄与侵害行為の基本的要件は第三者による直接 ,侵害である。第三者の行為が直接侵害を構成しないなら,誰も寄与的侵害者であり得ない。寄与すべき侵害が存在しないからである。
特許発明を使用しない第三者に構成部品を販売することは寄与侵害行為ではない。しかしながら,過去数年間に,Paper ConvertingMachine Company v. Magna-Graphics Corporation,223 USPQ 591(Fed.Cir.1984)及び Procter & Gamble Co. v.Nabisco Brands,Inc.,604 F.Supp. 1485,225 USPQ 929(D.C.Del.1985)から理解されるごとく,この理論はある程度浸食されている (68頁)と述べら 。」れている。
また 例えば 技術革新と国際特許訴訟 甲233文献 の 1-3-1 ,,「」 ()「直接侵害の証明」においても 「第一に,原告は有力な証拠をもっ ,て,少なくとも1つのクレームの直接侵害が存在することを示さなければならない。まず第一に,直接侵害がなければ侵害の誘発はあり得ない (64頁)と述べている。 。」すなわち,直接侵害の証明とは,有力な証拠をもって,少なくとも一つのクレームの直接侵害が存在することを示すことであるとしている。
また 「米国特許訴訟戦略 II (甲234文献)では 「第271 ,」,条(c)の下で,寄与的侵害を立証するには次の4つの要件が存在する。まず第1に,これは最も重要なものであるが,特許発明において,あるいは,特許発明に対して用いられる構成部分の寄与的侵害者による販売が存在しなければならない (Aro Manufacturing Co. 。
v. Convertible Top Replacement Co.事件参照 (121頁)とし )。」て,特許発明に対して用いられる構成部分の寄与的侵害者による販売が存在することを求めている。
このように,これらの文献には「直接侵害の立証=消尽論で消尽しないことの立証」としている部分は見当たらない。
(b) 米国特許法における消尽又は「修理」か「再製造」かの議論また,仮に「修理」か「再製造」かの議論がされた場合においても,竹中第1鑑定意見(乙149)9〜10頁における本件製品への当てはめは強引な解釈を重ねるものであり,むしろ米国消尽論においても「再製造」と判断される可能性の方が高いというべきである。
すなわち,竹中第1鑑定意見によれば,消尽,修理か再製造かについては,結局のところ,米国でも明確な線引きができる基準がないため,複数の基準のいくつかをファクターとして組み合わせて,事例に応じて判断されるということである(竹中第1鑑定意見4〜5頁 。しかるに,竹中第1鑑定意見は,同一性を失ったといえる )かというiの判断基準について,何の根拠も理由も示さず 「?@に,ついては,カセットによるインクリボン・テープ等の交換によって製品としての同一性を失ったとは言い難く」などと帰結する。しかし 「同一性を失ったといえるか」の判断基準については,結局, ,,, 交換される部分の比重と関係しており 本件ラベルライターの場合テープカセットを本体から外せば,透明テープ,インクリボン,両面粘着テープ,ローラー,テープ搬送路という必須構成要素のほとんどがなくなり,これを新たなものに交換するということは,もはや同一性を失ったと考えられる可能性の方が高い。
また,同鑑定意見は,米国法の消尽論の適用における「重要な部分」のファクターに関しては何らの根拠も示さず,ただ日本と米国は異なるというだけであるが,交換されるテープカセットの部分が特許されたラミネート式ラベルライターの全構成要素のうちで進歩性に係る極めて重要な部分であることは明らかである。
さらに,同鑑定意見は,構成要素の寿命と廉価という基準についても,寿命が短いと述べるが,テープカセットの中には費消されない圧着ローラー,テープ搬送路,リボン巻取りスプールなどが入っており,これらは消耗せず,むしろ装置の一部である。しかも,同鑑定意見は,廉価であるか否かという考慮要素については一切言及していない。米国のラベルライター事業責任者(現副社長)の V の陳述書(乙68)によれば 「小売モデルのオープン価格は29ド ,ルまで下がり(添付資料33 ,今日,19ドルの日用モデルまで )登場し,毎日出荷されています (16頁21行〜22行)とされ 。」ており,その添付資料33をみれば,ラミネート式のラベルライター(本体とテープカセットがセットされているもの)が値引き後29ドルで売られているのに対して,同じ場所でラミネート式テープ,。, カセットは 一本が18ドルから29ドルで売られている これは一審被告が最も販売量が多いというオフィス・スーパーストア(OSS)の店頭であり,全米3000店で同じ状況なのである。これは,新しく購入するテープカセットがラベルライターに比べて廉価でないという決定的な事実である。
次に 「交換・改造された構成要素が残りの構成要素に比較して ,支配的な割合を占めているか」の判断基準については,交換されるテープカセットには,必須構成要素のうち,透明印字テープ,インクリボン,テープ送り搬送路,剥離紙付き両面粘着テープ,テープ送りと圧着を兼ねる一対のローラーの内の一つが収納されており,明らかに支配的な割合を占めており,完全に支配的な割合を占めているといえる。
最後に 「特許権者と購買者の意図」についての判断基準につい ,てみると,ラベルライターを購入したユーザーが追加購入するテープカセットについて,一切特許権の行使をしないなどという意図が一審被告にあるはずがない。
このように,竹中第1鑑定意見が挙げるすべての基準において,本件の場合,一審被告製造のラミネート式ラベルライターは最初の販売によって消尽したとはいえず,新たなテープカセットを購入し使用する行為は「再製造」とみなされるのである。
なお,無権利者がラミネート式ラベルライター用のテープカセットを販売する行為は,海外特許2及び3により間接侵害となり,また,もし無権利者が一審被告の販売するラミネート式ラベルライター専用のテープカセットを販売すれば,米国では3倍までの賠償金を支払わされるリスクを背負うこととなるので,そのような業者の行為はおよそ事業として永続性があるものではない。飽くまで,多大なリスクと引き換えに市場のごく一部を奪取しようとする行為にすぎない。しかも,実際に無権利者が一審被告の販売するラミネート式ラベルライター専用のテープカセットを販売するという事件は発生していないのであるから,海外特許1及び同2の排他的効力により,そのような行為が抑制されてきたと考えるべきである。
(c) 裁判例にだけ依拠して和解例を無視しているまた 「直接侵害の立証無しに積極的誘導・寄与的侵害の成立が ,認められることはない」という学説的見解は,米国での裁判例をベースにしたものと思われるが,実務では,米国での特許訴訟が判決まで至るケースはごく稀であり,それ以前に和解するケースが圧倒的に多い 「特許・ライセンスの日米比較 (甲235)によれば, 。」2001年度(平成13年度)の米国連邦地裁における特許に関する訴訟件数は2612件で,そのうち公判に至ったものは86件(3.5%)である(そのうち56件は陪審裁判,29頁 。)また,特許製品専用のテープカセットなどを販売すれば,侵害は懲罰的侵害行為と認められる可能性が極めて高く,そうなれば3倍の損害賠償を命ぜられるリスクを背負い,また,米国においては同時に複数の裁判所で戦わなければならない場合が多い(甲236は懲罰的損害賠償が認められたケースである 。。)要するに,訴えられた疑侵害者が抗弁として消尽論を持ち出して抗弁したとしても,勝ち抜ける可能性は非常に少ないということである。
竹中鑑定意見は,米国特許事件のうちわずか3.5%の判例をベースにしたものであり,特許の比較法的・学問的考察として一つの意見であるとしても,侵害に対して実際に特許権者が起こす実務的対応を考慮に入れていないものである。
b 丸ごと侵害を想定した場合(a) 丸ごと侵害を想定すべき必然性一審被告はコンパチ業者やリサイクル業者による市場機会の奪取のみを想定するが,誤りである。技術力や販売力に勝る競合他社が侵害品の本体とその本体で使用するテープカセット丸ごと製造・販売する場合の侵害形態(以下「丸ごと侵害」という )の方が,影 。
響度が大きいからである。
すなわち,本件では一審原告らの海外特許2と同3の米国における独占の利益が問題なのであり,特にここでは,一審被告が現に米国で販売したテープカセットの売上げのうち,どれだけが一審原告らの海外特許2と同3の排他的効力によってもたらされたかを問題にしているのである。そうであれば,まず最初にどのような侵害形態があり得たのかを正しく想定する必要がある。そして,そのあり得た侵害に対して,それがなぜ防がれて一審被告の市場独占(米国での一審被告シェアが●%以上であることは争いがない)をもたらしたかを見る必要があるはずである。
ところが,一審被告は,同被告自身が販売したラベルライター専用のテープカセットを第三者がそっくり複製し,それを購入者へ販売する行為が防げたか否かの点に限定して論じている。そして,その結論をもって独占の利益がないと主張しているのである。逆にいえば,競合他社が独自のラミネート式ラベルライターを製造・販売し,その専用のテープカセットを米国で製造・販売するという場合を全く除外しているのである。
欧州におけるダイモ社も日本におけるマックス社も一審被告のテープカセットだけを複製するのではなく,ラミネート技術を使用して,彼ら独自のデザインの本体とその専用のテープカセットをセットにした実施品を製造・販売し,その専用テープカセットも製造・販売するという形態で侵害をしてきた。
そもそも発明者にとっての最大の脅威は,発明や発明品が開示された途端に他社がその技術を使った模倣品を製造・販売してくることである。このような,発明の苦労が報われなくなる理不尽が起こらないようにするために特許制度があるのである。一方,侵害者の側からすれば,わざわざ数年も十数年も待って市場に発明品が十分行き渡ってから専用の消耗品だけを販売するよりも,発明品が出て売れ行きが良いのを見たらすぐに真似をして自社独自の本体と消耗品を製造・販売した方が,商機を逃さず確実に市場を奪取できる。
現にダイモ社とマックス社がそれをやってきた。
(b) 侵害者の負うリスクの違い一方,本体が市場に行き渡ってから消耗品のみを販売するのは成功しないリスクが高い。なぜなら,本体を自分で作っていない場合は,本体を製造・販売しているメーカーが本体の設計を変更してしまうと,些細なことでも消耗品の互換性がなくなってしまうからである。
それゆえ,特許に関わる製品の専用消耗品だけの市場を狙う業者(いわゆる海賊版メーカー)は,例えば,インクジェットプリンターや使い捨てカメラの事件等でみられるように,メーカーの純正の消耗品を回収して中身だけを詰め替えて販売するという行為を行っているのである。メーカー純正品を回収する限り,メーカーが本体の設計を変更してしまうという対抗手段に出てもなお互換性を保つことができるからである。競合他社による,特許技術を使用した模倣品による参入のケース(まるごと侵害)と海賊版メーカーによる侵害のケースを比較すると,権利者からすれば,まるごと侵害の方が後者より侵害の範囲が大きく(本体とテープカセット両方 ,さ)らに初期段階より発生するという点,技術力・資本力のあるメーカーが行う危険があり,多大な影響を受けるのである。一審被告はこのまるごと侵害のケースを除外して,不当に超過売上げを減じようとしているものである。
また,行為者の負うリスクの点からすれば,海賊版メーカーによる侵害の場合は,裁判で負ければ悪意による侵害となり,3倍の賠償義務を負い,脱法行為企業として社会的地位も失うので,まるご。。 と侵害よりはるかにリスクが大きい 互換性を保つのも大変であるしたがって,特別な場合を除けば,海賊版メーカーによる侵害が起きる可能性はかなり低い。
また,こういった業者は特許のあるなしに関係なく市場を狙ってくる面もあり,いわば脱法的行為に近い。中には提訴された時点で会社を倒産させて逃げる業者さえいる。このような違法業者の存在を考慮して,超過売上げを算定することは無意味である。
(c) 価格的有意性さらに,コンパチ業者は価格的優位性がすぐになくなるというリスクを抱える。
すなわち,真正品とコンパチ品の価格差は,コンパチ業者が利益を削って安売りしているというにすぎず 真正品メーカの多くは 一 ,(審被告も同様に)通常約●●ほどで金型等の投資は償却するように製品価格が決められる。●●で償却を終えてしまえば,真正品メーカーとコンパチ業者とは投資の面では互角であり,コンパチ業者と同じ値段を付けて販売しさえすれば,もはやコンパチ業者が参入する余地はなくなる。
このように,コンパチ業者の価格優位性は非常に脆弱なものであり,この面でもコンパチ業者などほとんど無視できるものである。
(ウ) 輸出専用テープカセットの国内生産品一審被告は,輸出専用テープカセットの国内生産品には間接侵害が成立しない旨主張するが,上記(イ)のとおり,海外特許2及び同3の独占権がテープカセットに及ぶものであるから,一審被告の主張は理由がない。
(エ) 特許不存在国で製造され,特許不存在国へ輸出された販売高一審被告は,中国で製造され,特許不存在国へ輸出されたものについては,超過売上げの対象から除外されるべきである旨主張する。
しかし,中国で行っているのは最後の組立ての部分のみであって,実施品本体に使用するサーマル印字ヘッドやその他の専用部品,ラミネート式テープカセットの生産に必須となる専用の小巻にした透明テープ,両面延着テープ,インクリボンなどの主要部品はすべて日本で製造し輸出している。本件国内特許の実施品であるラベルライター本体を製造するための部品と,専用のテープカセットを製造するための部品のほとんどが,一審被告又は同被告が指定する下請け業者によって日本国内で生産されているのが現状である。
一般的な樹脂成型部品(本体やテープカセットの外側ケース等)は中国でも安く調達可能であるが,他の部品は中国では供給メーカーがないなどの理由で調達できないものが多い。こういった事情は,競合他社にとっても共通しているので,他社が本件ラミネート特許を侵害する製品を生産しようと試みる場合,特許回避のためにわざわざ中国で生産を行うかは疑問である。仮に行ったとしても,販売できるのは,主要市場である欧米日本を除く権利不在国のみに限定されるので,それでは事業として成り立たない。
一審被告が完成品の組立てのみを中国に移管し始めたのは,他の事業が縮小になり工場が遊休化するのを避けるために行ったものである。そのような事情がない他社にしてみれば,国内でほぼすべての専用部品が生産されている現状から考えると,当然国内生産が最も適した選択肢であり,その選択肢が本件国内特許の存在により侵害となるため採り得ないことの排除効果は非常に大きい。
つまり,競合他社には,?@ 特許料を払って国内で生産するという選択肢?A 特許を侵害して国内生産するという選択肢?B 特許を回避するためわざわざ中国で生産するという選択肢?C 劣った代替技術を使うという選択肢があり得たところ,?@と?Aを避けて?Cを選択しているという状況において,一審被告が中国生産を始めたからといって,競合他社が?@と?Aを行うのを抑制してきた効果が消えるわけではないということである。
実際このような競合他者がいないのは,第2発明及び第5発明の効力が及んでおり,第一に考えられる日本生産という選択肢を与えていないからといえる。
,,, したがって 一審被告が日本でほとんどの専用部品を生産し 輸出し中国で製造し,特許のない国に対して輸出した売上げについても本件特,。 許の独占権は及んでいるので 対価算定から除外することは許されないエ 米国特許●●号が一審原告らの発明であること(ア) 米国特許●●号と第3考案一審被告は,互換製品の出現を防いできたのは,一審被告の保有するラミネート式テープカセットの基本構成を保護する米国特許●●号(●●)であると主張する。
しかし,米国特許●●号は,記載上は一審原告ら以外の4名が発明者となっているが,実質的には第3考案と同じであり,真の発明者は第3考案の考案者である一審原告 X 1・X 2ら6名である。
(イ) 第3考案の内容第3考案に係る実開平1-80457号公報(甲246)には,下記?@〜?Fの内容が記載されている。
?@ テーププリンタに着脱自在に装着されるテープカセットであること・ 「テープ印字装置用テープカセット (1頁3行〜7行) 」?A テーププリンタには印字ヘッドとプラテンが対向するように配置され,協働して印字動作を行うこと・ 「なお,サーマルヘッド28のドット列の発熱パターンや発熱タイミング,テープ送り速度および入力キャラクタの判別等は,図示しないマイクロコンピュータによって制御または実行されるようになっている (7頁19行〜8頁3行)及び第1 。」図?B 透明テープと,印字用テープと,両面粘着テープがあり,透明テープの裏側に印字用テープによって反転印字がされ,その面に両面粘着テープが貼り付けられること・ 「前記2種類以上のテープが,裏返しパターンの反転印字が施される透視性テープと,その透視性テープに印字部を形成する印字部形成テープと,透視性テープの印字部が形成された側の面に貼り付けられて印字部の背景を形成するベーステープであり… (1頁15行〜20行) 」?C 透明テープと,印字用テープと,両面粘着テープをそれぞれ個別のスプールに巻回して備え,両面粘着テープのスプールが一番出口に近く配置されること・ 「また,第1図のように透明テープ 32 とサーマルリボン 34とが共用スプール 56 に積層状態で巻かれていることは不可欠の要件ではなく,共用スプール 56 を,透明テープ 32 の供給スプールとサーマルリボン 34 の供給スプールとの2個のスプールに分離・独立させることも可能である。この場合,スプールが都合4個となってカセットケース 54 は幾分大きくなるが,透明テープ 32 とサーマルリボン34 とを互いに独立交換することができる (16頁2行〜11行)及び第1図(両面粘着テ 。」ープ 42 の供給スプール 60 がテープ 52 出口の一番近くに配置されていることが図示されている)・ 「<従来の技術>上記のような印字装置において,主に取扱いの容易化のために,必要なテープ材をスプールに巻いた状態でカセットケースに収めたテープカセットが使用されている。例えば,周知のように,印字部形成テープとしてのインクリボンをその供給スプールおよび巻取スプールとともにカセットケースに収めてリボンカセットとし,インクリボンはリボンカセットごと交換できるようにするのである。
ところでテープ印字装置では,インクリボン等の印字部形成テープのほか,印字が施される被印字テープが少なくとも必要であり,この被印字テープもスプールに巻かれ,印字の進行に合わせて印字ヘッドに供給されるのが普通である。そして,この被印字テープのスプールを,インクリボンの供給および巻取のスプールとともに1個のカセットケースに収めて,2種のテープを備えたテープカセットとする場合がある (2頁13行 。」〜3頁12行)?D 透明テープは印字用テープとに重なった状態で,印字ヘッドとプラテンの間を通って搬送され,印字用テープに対面する面に印字ヘッドにより印字用テープを介してイメージが転写されること・ 「入力部14で入力されたデータに従い,印字部16では長手方向のテープ送りを伴い,位置固定のサーマルヘッド28で印字が行われる。サーマルヘッド28は印字ヘッドとして機能,() するもので テープ送り方向と直交するドット列 発熱素子列,。 を備え プラテンローラ30に圧接する状態で設けられている本実施例においては,そのドット列の発熱により,透視性被印字体テープとしての透明フィルムテープ32(以下,透明テープという)に,印字部形成テープとしてのサーマルリボン34のインクが裏返しパターンで転写されて,左右反転印字が行われるのである (6頁末行〜7頁11行) 。」?E 一対のテープ送りローラを備え,透明テープを印字ヘッド下流方向へ送ること「, ・ テープ送り方向においてサーマルヘッド28より下流には, 1 組のテープ送りローラ36および38が圧接状態で設けられモータ等の駆動源により互いに逆向きに回転駆動されて,透明テープ32を図において左方向へおくるようになっていて,モータ等の駆動源とともにテープ送り装置を構成している (7。」頁12行〜18行)?F その一対のローラが片方に剥離紙が付いた両面粘着テープを透明テープの印字がされた部分に貼り付けること・ 「本実施例において上記ローラ36,38は,透明テープ32の反転印字がされた側の面に,その背景を形成するベーステープ42を貼り付けるテープ貼り付けローラを兼ねている。ベーステープ42は,第 2 図に示すように基材44の両面に粘着材層46,48を備えた両面粘着テープであり,粘着材層46は剥離紙50で被覆され,反対側の粘着材層48において第3図に示すように透明テープ32の反転印字面に貼り付けられるものである (8頁4行〜13行) 。」(ウ) その他の自明の設計事項テーププリンタに用いられるテープカセットが出口を持つことと,印字ヘッドが装着されるための凹所を持つこと,そしてテーププリンタにおいて印字ヘッドとプラテンが離間したり,圧接したり相対的に位置を移動することはあまりにも自明の設計事項であるが,例として,実開昭62-109958号公報(乙88)にこれらが開示されていることを挙げておく。
・ テープ出口上記乙88のテープカセットには,テープ出口がある。テープ出,, 口がないカセットでは テープを外に排出することができないからこれは自明の設計事項といえる。
・ 印字ヘッドが装着されるための凹所上記乙88のテープカセットには,印字ヘッドが装着されるための凹所がある。凹所がなければ印字ヘッドをカセット内に挿入できないから,これは自明の設計事項といえる。
・ 印字ヘッドとプラテンが離間したり,圧接したり相対的に位置を移動すること上記乙88のテーププリンタ(マーリンエクスプレス)では,非プリント状態では印字ヘッドとプラテンが離間し,プリント状態では互いに圧接するように,印字ヘッドとプラテンが相対的に移動するようになっている。印字ヘッドとプラテンが離間しなければテープがセットできず,圧接しなければ印字ができないから,これは自明の設計事項といえる。
(エ) 米国特許●●号(●●)との対比a 米国特許●●号の請求項1(括弧内は原文)●●(省略)(b) 第3考案との対比米国特許●●号の請求項1の構成要素A〜Jのうち,・ Aは第3考案に記載された?@及び?Aと同一であり,・ Bは第3考案に記載された?Aと同一であり,・ Cは上記乙88でもみられる自明の設計事項であり,・ Dは上記乙88でもみられる自明の設計事項であり,・ Eは第3考案に記載された?Cと同一であり,・ Fは第3考案に記載された?C及び?Dと同一であり,・ Gは第3考案に記載された?Dと同一であり,・ Hは第3考案に記載された?B及び?Dと同一であり,・ Iは第3考案に記載された?Dと同一であり,・ Jは第3考案に記載された?Fと同一である。
したがって,米国特許●●号の請求項1の構成要素は,すべて第3考案に記載されている内容と自明の設計事項を組み合わせたものである。
(c) 小括以上のように,米国特許●●号の請求項1に係る発明の構成要素のすべては,最先の出願である第3考案に記載された内容と同一である。よって,米国特許●●号の請求項1の発明者は,実際は第3考案の発明者である一審原告ら6名である。
なお,大友教授鑑定意見(甲312)は,出願される以前の一審原告らが会社に譲渡した発明を詳細に分析したうえで,一審原告らの発明が米国特許●●号として展開され特許化されていることを示すものである(11〜30頁 。)オ 子会社等の売上げ(ア) W 陳述書を採用できないこと一審被告は,一審被告の売上高と販売子会社段階での売上高との比率について,原判決が採用した数値を訂正すべきと主張する。
しかし,一審被告がその主張の根拠とするのは一審被告の従業員である W の陳述書(乙213)であるが,同人は平成11年以前ラベルライターと全く関わりがなく,その陳述書(乙213)にも販売子会社段階の売上げや粗利益のデータが添付されていない。したがって同陳述書に記載された数値がそのまま認められるものではない。
(イ) 裏付けの不存在原判決の認定が誤りというのであれば,最低でも下記の点を含めて立証すべきであるが,かかる立証はなされていない。
a W 陳述書(乙213)を裏付けるための数値資料平成4年以降の各年度における,ラミネート式本体セット及び補給用テープカセットの米国販売子会社の粗利率( 販売高-仕入高)/ (販売高 ,欧州販売子会社(ドイツ,イギリス,フランス)の粗利率 )が示されるべきである。
b 海外向けの中間子会社を介在していることによる係数一審被告の有価証券報告書(第101期:平成4(1992)年11月21日〜平成5(1993)年11月20日,甲329)の46頁には,国内と海外における一審被告と販売子会社を含む企業集団の関係が示されている。
これによれば,一審被告と海外販売子会社との中間に,子会社・ブラザーインターナショナルが介在している。この会社は,同有価証券報告書59頁に記載されているように100%直接所有の子会社である。
ブラザーインターナショナルは,一審被告から海外向けの製品を買い受け,●●のマージンを乗せて,海外の販売会社へ販売している。
一審被告が W 陳述書(乙213)に基づき計算する数値は,明らかにこの子会社が仲介していることによる係数を含んでいない。
したがって,一審被告の主張を裏付けるためには,米国と欧州向けの本体とテープカセットについて,子会社ブラザーインターナショナルが獲得している粗利率のデータが明らかにされるべきである。
c BIEの係数上記bに加えて,欧州に販売される製品は,イギリス国マンチェス() ター市に位置するブラザーインターナショナル・ヨーロッパ BIEという欧州の統括会社へ輸入され,そこから注文に応じて各国の販売子会社(ブラザーインターナショナル・ドイツ,ブラザーインターナショナル・UKなど)へ輸出販売されている。このBIEも,同有価証券報告書(甲329)59頁に記載されているように,一審被告の100%子会社である(間接所有,現在は直接所有 。)このBIEは,製品の流通,在庫管理,公告,マーケティングなどを担当しているため,約●%のマージンを得ている。
W 陳述書(乙213)は本体について欧州販売会社の係数を●●倍としているが,この数値はBIEの粗利かその下流の販売子会社の粗利かどちらか一方しか考慮されていないものである。
したがって,一審被告の主張を裏付けるためには,BIEの粗利率とその下流の販売子会社の粗利率の,両方を含めた数値が明らかにされるべきである。
d 三重ブラザー精機の製造・販売利益一審被告は,ラベルライター本体の製造は自社では行わず,国内では子会社と非関連会社に製造委託し,これらより購入してきた。
このうち,三重ブラザー精機株式会社は同有価証券報告書35頁にあるように子会社である。子会社である三重ブラザー精機株式会社が製造し,一審被告に販売することで得た利益には独占の利益が含まれている。全TXモデルの本体(同梱テープカセット含む)と全TXテープが該当する。
したがって,TX関連の全売上げについては,子会社である三重ブラザー精機株式会社の利益が相当対価の対象として加えられなければならない。
(ウ) 連結利益また,一審被告の売上げに販売子会社係数を乗じて超過売上高を算出するのではなく,これを一審被告自身のみならずその100%子会社を含む一審被告グループ会社の連結の営業利益から独占の利益を求めると,P-touchの事業に関しては,一審被告であるブラザー工業単体の利益に対して●●倍もの利益が企業グループにもたらされる(連結売上げを基礎とした場合はグループ内取引の売上げが相殺されるが,連結利益を基礎とした場合はグループ内の利益が積算されることとなる。
なお,一審被告は,三重ブラザー精機株式会社の利益は一審被告の仕入価格に含まれると主張するが,これは利益と売上げを混同するものである。。)したがって,一審被告の売上げに販売子会社係数を乗じる方法によって超過売上げを計算するとしても,その係数は●●倍より大きく離れることは許されない。
カ ポートフォリオ論(ア) 原判決の誤り原判決は,一審被告の特許ポートフォリオに関し,一審被告自身が一審被告保有の個々の特許発明は,技術的には特許されるか否かさえ判断できない程度のものばかりであるなどと主張していたにもかかわらず,多くの特許を保有することにより「同業他社に製品開発のリスクを生 ,じさせ,新規参入や新製品開発を遅らせるなどの効果があることは否定」, , できない として 一審被告の権利の数自体を考慮に入れた誤りがありその結果,自社実施分,他社実施分,超過率,貢献度などの面で幾重にも判断を誤るものである。
(イ) 本体に関する権利(一審被告が他社実施を主張するもの)a非実施一審原告らが調査したところでは,一審被告が他社実施に対して寄与する権利として主張する一審被告保有権利のうち多くの権利は,キングジム社でもカシオ社でも全く実施されていない。
b無効また,一審被告が主張する権利の中には,新規性の欠如等により明らかな無効事由が存するものがある。なお,有効性に関する調査においては,公知例として競合メーカーや自社の製品や取扱説明書や特許文献に限定して行ったものであり,同じ産業分野内の他の公知例などに当たれば,更に無効事由は増大すると考えられる。
c キングジム社に対する共同開発規定違反さらに,一審被告が主張する権利の中には,キングジム社との「取引基本契約 (甲139)第9条の中で 「甲及び乙が共同でなした製 」,品に関する発明・著作物並びにそれらの帰属・利用については,甲乙間で協議の上取り決める 」と定めた上で共同開発をした際,キング 。
ジム社側からされた技術提案であるか,少なくとも一審被告とキングジム社との間における技術的思想のやりとりの中で生まれたものがある。これらの技術思想を一審被告だけで勝手に特許出願したこと自体もこの「取引基本契約」第9条からして契約不履行にあたるが,これら冒認出願し登録させた経緯のある権利は,争われれば冒認出願で無効となるか,少なくとも上記契約違背でキングジム社に対して権利行使できないものである。
d 一審原告 X 2の発明が特許化されたものキングジム社に対して販売差止めの仮処分で行使されたオートサイズに関する発明(特許第2556224号 ,キングジム社に対して )侵害警告に行使された切断装置に関する2件の発明(特許第2814,), 。 692号 特許第2830860号 は 一審原告 X 2の発明であるe 残りの権利その余の権利は,カシオ社が別売品として販売しているテープ端処理装置だけが実施品であって,対象がラベルライター本体やテープカセットではないものや,カシオ社のごく一部の製品にしか実施されていないものや,内容が極めて近似・重複しているため実質的には2件で 1 件ともいうような権利にすぎない。
f 他社実施分に対する結論(重み付け)(a) 調査結果等を踏まえた重み付け一審原告らは,一審原告ら発明の権利にこれら一審被告が他社実施を主張する権利を含め,キングジム社の賠償金分,キングジム社からのロイヤリティ分,カシオ社及びダイモ社からの賠償金とロイヤリティ分について,?@有効性,?A実施モデルの多寡,?B基本発明性,?C優位性(特許表示・宣伝 ,?D訴訟行使実績という5つの指 )標に基づいて重み付けを行った。その結果は以下のとおりである。
(b) キングジム社から獲得した賠償金分の結論キングジム社から獲得した●●(省略 ,第1発明の重みは25 )(13.8% ,第3発明の重みが48(26.4% ,一審原告 X ))2の発明によるオートサイズに関する特許第2556224号の重みが48(26.4% ,同じく一審原告 X 2の第4考案から生ま )れた特許第2814692号と特許第2830860号の重みが24(13.2%)である。
したがって,キングジム社賠償金分に対する相当対価は,この寄与割合に分配してから,各発明において一審被告の貢献割合,共同の発明について発明者間割合で相当対価が決められなければならない。
(c) キングジム社ロイヤリティ対象権利の結論キングジム社から平成15年度〜18年年度までに獲得したロイ,(.) , ヤリティ収入●●円のうち 第1発明の重みは24 18 8%第3発明の重みが32(25% ,一審原告 X 2の発明によるオー )(), トサイズに関する特許第2556224号の重みが32 25%同じく一審原告 X 2の第4考案から生まれた特許第2814692号と特許第2830860号の重みが12(9.4%)である。
したがって,キングジム社からのロイヤリティに対する相当対価は,この寄与割合に分配してから,各発明において一審被告の貢献割合,共同の発明について発明者間割合で相当対価が決められなければならない。
(d) カシオ社賠償金及びロイヤリティ対象権利の結論カシオ社から平成15年度〜18年度までに獲得したロイヤリティ収入●●円及び過去賠償金●●円のうち 第1発明の重みは4 1 ,(2.5% ,一審原告 X 2の発明による●●の重みが8(25%) )である。
したがって,カシオ社からの賠償金及びロイヤリティ分に対する相当対価は,この寄与割合に分配してから,各発明において一審被告の貢献割合,共同の発明について発明者間割合で相当対価が決められなければならない。
(e) ダイモ社賠償金分及びロイヤリティダイモ社に関しては,ダイモ社からの賠償金とロイヤリティ収入に対して何が貢献したかという点だけでなく,一審被告の最大の競合メーカーであり,資本力・技術力・販売力に勝るダイモ社に対してラミネート技術をどうやって禁止してきたのかが,自社実施における独占の利益とも深く関係しているので,ダイモ社に関しては後述する。
g 一審被告の均等頭割りの主張に対し発明の対価は,独占の利益獲得により大きく貢献した権利に対してより多く支払われるべきものであり,これに反して均等頭割りを主張する一審被告の主張は到底認められない。
(ウ) 一審被告が自社実施を主張するその他の権利に関しa 自社実施分でテープカセットに関する権利(a) 一審被告の主張一審被告は,自社実施に対して寄与する権利として,一審被告の保有するテープカセットに関する権利の存在を主張し,こうした権利の数による割り算により発明の寄与を算定すべきものである旨主張する。
(b) 無効一審原告らがこれを調査したところ,これらの権利の一部には新規性欠如等によって明らかな無効事由がある。なお,有効性に関する調査においては,公知例として競合メーカーや自社の製品や取扱説明書や特許文献に限定して行ったため,同じ産業分野内の他の公知例などに当たれば,さらに無効事由は増大すると考えられる。
(c) 非実施また,一部の権利は,自社製品で実施されていない。
(d) 一審原告らが発明行為に関与している権利さらに,一部の権利は,一審原告らが発明行為に関与しており,一審被告側の権利として評価されるべきものでない。
b 自社実施分で本体に関する権利(a) 一審被告の主張一審被告は,他社にライセンスされた権利についても自社実施分に係る寄与権利として考慮できるとして,多数の権利の存在を指摘する。
(b) 実施についてこれらの権利は実施品が非常に限定されており,ラミネート式ラベルライターの製品のうちほんの一部にしか使われていない。その額は 「ラベロ」の●●台(●●円 「LM-2000」の●●台 ,) ,(●●円 「PT-18R」の●●台(●●円 「PT-24」の ),) ,●●台(●●円 「PT-240」の●●台(●●円)しかない。 ),これらの売上げは,合計しても●●円であって,平成4年8月以降の国内販売のわずか●%程度である。
これに対し,一審原告らのラミネートの技術は,国内で販売されたすべてのラミネート式ラベルライターで100%実施されており,比較にならない。
c 自社実施分に関する寄与権利(重み付け)(a) 調査結果等を踏まえた重み付け一審原告らは,一審原告ら発明の権利にこれら一審被告が主張する権利を含め,以下の指標に基づいて重み付けを行った。その結果は以下のとおりである。
?@ 有効性 0.5〜4倍?A 実施品の多寡 0〜1倍?B 基本発明性 1又は2倍?C 効果(技術面) 1又は2倍?D 優位性(市場・宣伝・特許表示) 1,2又は4倍?E 受賞実績 1又は2倍?F 訴訟行使実績 1又は2倍?G 海外権利化有無 1又は2倍?H 重み付けの集計 (?@〜?Gの乗算値)(b) 日本国内分に係る権利の重み付け結論国内での本体販売額●●円について,一審原告らのラミネート発明による寄与が192(99.5%)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は1(0.5%)である。
同じく国内でのテープカセット販売額●●円について,一審原告らの発明による寄与が320(92%,256+64)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は28(8%)である。
(c) 米国権利に係る重み付け結論米国での本体販売額●●円について,一審原告らの発明による寄与が80(99%)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は0.46(1%)である。
同じく米国でのテープカセット販売額●●円について,一審原告らの発明による寄与が80(74%)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は28(26%)である。
なお,一審被告は米国消尽論との関係で海外特許2及び3にはテープカセットに対する独占の利益はないと主張するが,ダイモ社が実際行ったような本体・テープカセットとも侵害するような場合について(丸ごと侵害のケース ,海外特許2及び3が有効にこれを )阻止し得ることは疑いないから,海外特許2及び3の間接侵害についても重み付けをした。
(d) 欧州特許に係る重み付け結論欧州での本体販売額●●円について,一審原告らの発明による寄与が96(ほぼ100%)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は0.23(0.2%)である。
同じく欧州でのテープカセット販売額●●円について,一審原告らの発明による寄与が64(88%)であるのに対して,一審被告側の権利による寄与は10(13%)である。
d 他の権利でラミネート技術に関係するもの・関係しないもの一審被告が主張する他の権利でラミネート技術に関係し,かつ他社に許諾されていないラミネート技術を実施する上で実効性があるのは4件のみであり,この4件に対応する外国出願は,米国の2件と欧州の2件しかない。
キ 権利存続期間について(ア) 原審において主張したとおり,一審被告が,本訴が提起され,本件各発明の有効性が激しく争われている最中に,平成4〜5年という本訴が提起される約10年前の返還希望調査の結果のみを基にして,一審原告らに何らの連絡・申出なく権利を消滅させたのは不当であり,原判決が第2発明について本来の存続期間までの相当対価の支払を命じたことは相当である。
(イ) また,一審被告は,権利を消滅させた分については,一審原告らに対して損害賠償をする義務があるというべきである。
まず,原判決が指摘した「本件訴訟提起以降は,権利返還の申し出があればこれを受ける意思を有していたものと認められる (226頁)」ということ以前に,一審原告らは将来分として少なくとも平成20年3月分までを求めている事実がある。これに対して,一審被告が国内の第2発明を本来の存続期間である平成19年11月19日より前の平成18年7月17日に放棄し消滅させたことは,本来一審原告らが正当に請求の根拠とし得た権利を一審被告が故意に滅失させたものである。
さらに,この存続廃棄の決裁は社内規程に違反してなされたものである。すなわち,一審被告における平成17年4月1日施行の「発明等取扱規程 (乙54の1)には「国内および外国において当社が保有する 」,特許権の存続廃棄については,各カンパニーのプレジデントまたは本社各部門の部門長が決定する (4頁)と明記されている。 。」ところが,実際の存続廃棄の決定は,乙148から明らかなように,カンパニープレジデントでも本社の部門長でもないP&HカンパニーのJ という一部長によって決裁されている。この J には規程上決定権限がない。
このように,本来正当に対価を請求することができるはずの権利の一部について,明らかに社内規程に反する手続によって,一方的に権利を滅失させた行為は違法である。このような詐害的な対応は絶対に認められるべきでない。このような違法な手段で故意に正当な権利を滅失させた分(平成18年7月17日〜平成19年11月19日)については,損害賠償として一審被告は一審原告らに補償する義務がある。
(ウ) なお,一審被告は海外特許1〜3についてはその後も存続させており,その存続予定期間は次のとおりである。
・ 海外特許1:2008年〔平成20年〕11月14日・ 海外特許2:2008年〔平成20年〕10月24日・ 海外特許3:2008年〔平成20年〕12月28日これらの権利は1995年〔平成7年〕6月8日以前に出願されたものであり,ウルグアイラウンド合意協定(1994年〔平成6年〕12月8日発行)に基づき,米国での出願日から20年,又は特許発行日から17年のうち長い方が適用され,存続期間となり,外国優先権主張に基づくその国での出願日は起算点にならない。
(4) 利益率等についてア利益率等(ア) 原判決の誤り原判決は,一審原告らが主張した算定方式1を排斥したが,仮に,現実の利益と仮想実施料率で計算する利益が同一といわないまでも著しく乖離していないのであれば,審理の効率を優先して仮想実施料率を使うことも考えられないではない。しかし,本件の現実の利益率と原判決の仮想実施料率とでは著しく乖離しており,このような仮想実施料率を用いて計算することは不当である。
また,現実の利益をベースに算定する方法による方が,特許法旧35条4項が 「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべ ,き利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない 」と定めていることにも合致し,さら 。
に,現行特許法35条5項が 「…第三項の対価の額は,その発明によ ,り使用者が受けるべき利益の額,その発明に関連して使用者等が行う負担,貢献及び従業者等の処遇その他の事項を考慮して定めなければならない 」という要請にも適うものである。 。
(イ) 利益率の裏付けこの点,原判決は算定方式1を採用し得ない理由として証拠が不十分であることを挙げるが,この点は一審原告らが当審において提出した一審被告におけるラベルライター製品事業の正確な財務データ(甲195の1〜5,197〜200)等により十分立証されたというべきである。
これによれば,事業年度により若干のばらつきはあるが,平成元年〜平成15年までの実績で,ラベルライター事業の営業利益率が●%(, であることは疑い得ない事実である 原審では●%と主張していたが変更する 。なお,この値は,売上げから,原材料費や外部加工費, 。)金型費,工場の労務費,設計・製造・開発に関するその他一切の人件費,工場の施設費,営業や間接部門の人件費や広告宣伝費などの販売費,知的財産取得に関する費用,本社への上納金,事業税をすべて引いた被告会社のラベルライター事業における実際の数値である。設備投資などについても減価償却費としてもちろん計上されている。
また,正確な資料に基づき被告会社における資本コストを計算すると,対売上比で●%であることが明らかとなった(原審では売上高の●%と主張していたが,変更する 。。)したがって,算定方式1に基づく本件における超過売上高に基づく収益は,発明による超過売上げをS,超過売上高に基づく収益をRとした場合,以下のような数式で求めることができる。
R=S×営業利益率-S×資本コスト比率=S×●%-S×●%=S×(●%-●%)=S×●%イ 仮想実施料率仮想実施料率に関する原判決の認定は,その数値が低すぎる点及び同数値を時の経過とともに著しく減じている点で誤りである。
なお,原判決の上記判断の誤りは,前記のとおり以下のような複数の事実誤認に基づくものである。
・ キングジム社にラミネート技術が許諾されているという一審被告の主張を誤って認めたこと・ ラミネート式でなければならない市場規模を過小評価していること・ 一審被告の特許ポートフォリオの存在とその効果を誤って高く認めたこと・ 他社や自社の非ラミネート式を過大評価していること・ ラミネート式の原価が高いと誤った認定をしたこと・ ラミネート式に欠点もあると誤認定したこと・ ラミネート式の市場占有率を誤って低く認定したこと・ 米国での圧倒的シェアの原因を誤って販売力としたこと(5) 第三者からの実施料収入についてア キングジム社からの実施料収入(ア) 第1発明の寄与第1発明はキングジム社及びカシオ社の両社に対して侵害警告を行った代表特許であり,過去の裁判例でも代表特許は重視されている。
それにもかかわらず,原判決では両社から得た一時金に対する第1発明の寄与率は2%とされた。そうすると,残り98%は他の発明の寄与ということになるが,後記(エ)のとおり,特許ポートフォリオの実体はないのであるから,第1発明の寄与率は相当程度に大きいと評価すべきである。
(イ) 第3発明の寄与第3発明は,一審被告がキングジム社に対する販売差止めの仮処分申請時に使われた3件のうちの1件である。このように,第3発明が代表特許であることや一審被告の主張する特許ポートフォリオに実体がないこと(後記(オ))に鑑みれば,その選りすぐりの代表特許の寄与率がわずか3%ということはあり得ず,30%以上と評価すべきである。
(ウ) 第4考案又はキングジム警告権利7及び8の寄与a 原判決(239頁)は,一審原告 X 2の陳述書(甲171)のみでは同人がキングジム警告権利7(特許第2814692号)及び同8(特許第2830860号)の発明者の一人であると認めることはできないとするが,一審原告 X 2と同僚の立場でP-touchやキングジム社向けOEMのほぼすべて担当してきた一審被告元社員であるG は,その陳述書(甲180)において「X 2さんは,ラベルライタ ,ーに必要な新しい機能をいつも考えていました。最初のモデルから比べて新しい機能が登載されたのは,TR-77というモデルだと思います。そのモデルは X 2さんが担当していましたが,定長印刷や,2段印字,それに特殊なカッターなども X 2さんが提案したと思います (7頁2行〜5行)と述べている。 。」b また,ラベルライターにおいて,印字されたテープを本体から切り離すカッターとは別に当該テープに特殊な処理を施す切断機構を本体内に設けるという思想は,一審原告らによる第2考案に開示されている。
すなわち,第2考案(甲2の7)は,昭和62年11月28日に出願された,一審被告のラベルライターに関する権利の中でカッターについての最初の考案であり,完成した貼付けラベルの剥離紙をユーザーが容易に剥がすことができるように,テープをカットする際に,完全にテープを切断する刃と,剥離紙のみを切断する刃の2枚構造にして,剥離紙の一部に切り込みを入れる(ハーフカット機構)というものである。
この第2考案の明細書中 「問題点を解決するための手段 (2頁左 ,」欄41行〜45行)には,印字テープ及び剥離紙にわたって複合テープを切断する完全切断用のカッタと,剥離紙のみを切断するハーフカット用のカッタとを別々に設けて,完全切断とハーフカットとを同時又は相前後して行う旨の記載があり 「第2の切断装置を別体とする ,のではなくラベルライター本体に第2の切断装置を内蔵する思想」が明確に開示されている。
そして,一審原告 X 2は 「貼り付けたテープがその角から捲れて ,剥がれてしまう」という問題を解決するためにテープ角をRカットして剥がれにくくする機構を考案し,本体に別の目的の切断装置を内蔵するという第2考案の思想とを組み合わせ,それをキングジム社へ提案し,キングジム社の開発担当者であった a がこれに共感して,平成(), 元年6月9日に一審被告へ送付したTR-77企画案 甲140 に本体のカッターとは別の「別カッターメカ内蔵をも含むハーフカット・余白カット・コーナーRの実現 」と記載された要望が一審被告へ 。
出されたのである。
このように,テープ端部をR状等に処理する第2の切断装置を別体とするのではなくラベルライター本体に内蔵するとした思想は,一審原告 X 2の発明・考案である。
したがって,キングジム警告権利7及び8の発明者は一審原告 X 2であって,原判決にはこの点について重大な事実誤認がある。
(エ) オートサイズ発明(特許第2556224号)によって得た利益の公平分配a キングジム社への侵害警告及び仮処分申立てに用いられたオートサイズ発明(特許第2556224号。乙71添付資料1)は,一審原告 X 2の発明を一審被告社員の b が冒認出願したものである。ところが原判決は,同発明の請求項1,3,4,5の主な部分が一審原告 X2の技術提案(甲137)と同一であるから同発明は一審原告 X 2が発明者の1人である可能性が高いとしつつ,他の請求項の存在から同人の単独発明とまでは認められないとして,キングジム社からの実施料収入における上記発明の寄与を重視することはできないと認定する(原判決241頁 。),,,, (,) b 原判決の上記認定は 請求項1 3 4 5以外の請求項 2 6が存在することを理由の一つとするものであるが,キングジム社が実施し,またキングジム社訴訟で行使された請求項は一審原告 X 2が発明した請求項1である このことは一審被告自身も認めているし 一 。, (審被告知的財産部に所属する R の陳述書〔乙70〕別紙2参照 ,一)審被告がキングジム社に対して販売差止めの仮処分申立て(甲228),。 の1 をした際に特許侵害を主張したのも 請求項1についてであるこのように,キングジム社の侵害品を差し止めるに際してオートサイズ特許が効力を持ったのは一審原告 X 2が発明した部分であることは明らかである。一審原告 X 2の発明を受けて b が後から追加した請求項2と請求項6は全く関与していない。
c また,原判決は,一審原告 X 2の提案を具体化するために b ら技術者の協力が必要であったことを上記認定の理由の一つとするが,この点も誤りである。一審原告 X 2は,ラベルのレイアウトと入力編集機能について,第3発明を発明した後,単独でインデックスラベルに関する第1考案を完成させた。そしてさらに複雑なレイアウトのラベルが簡単にできる入力編集機能を模索していく中で,このオートサイズの発明をしたのであり b はその過程で協力をしていない 一審原告 X ,。
2がこのオートサイズ発明に関する技術提案(甲137)をして,その翌日である平成2年11月27日に V,c,d,e,f,g といった設計者を招集して説明したものを,b が後日それをそのまま社内出願したものである。
(オ) 一審被告のポートフォリオ論に対し原判決は,他社からの実施料収入において 「被告の特許ポートフ ,ォリオが包括的ライセンス契約を締結させる動機になった」として,一審原告らの発明の寄与率を下げている。
しかし,前記(3)カに述べたところに照らせば,一審被告の特許ポートフォリオの実体は他社に対するライセンス契約の動機付けにはなり得ないものであって,考慮に入れるべきではない。
イ カシオ社からの実施料収入●●は,キングジム社だけではなく,カシオ社製品についても実施されており,かつ,重要な権利である。したがって,カシオ社からの賠償金及びその後のロイヤリティについても一審原告 X 2に相当な対価が支払われるべきであって,その寄与率及び貢献度はキングジム社分に対する対価に準ずるものである。
ウ ダイモ社からの実施料収入(ア) 原判決の誤り原判決は,ダイモ契約に基づきダイモ社から実施料収入を得ることができたことには海外特許1が貢献していると認定しつつ,海外特許1は印字装置に関する発明であり,テープカセットの部分を含まないとの理由で,その寄与率を50%に減じている。
しかし,一審被告がダイモ社を直接抑えたのは本体であって,ダイモ社は間接侵害の訴訟が改めて提起されるのを危惧してテープも含めた和解に応じたものである。したがって,原判決の挙げる上記理由で寄与率を減じるべきではない。
(イ) ダイモ契約権利1・2の発明者が一審原告らであることa ダイモ契約権利1(ドイツ実用新案G●●)及びダイモ契約権利2(欧州特許EP●●号)の優先権主張の基礎となる国内出願は,●●省略 である そして ダイモ契約権利1及びダイモ契約権利2 原 ()。, (判決が認定するとおり,両者の内容は実質的に同一である)は,上記3件の日本出願の明細書に実施例として記載されていた一審原告らのラミネート発明(第2発明,第5発明)とラミネートテープカセットの発明(第3考案)の構成要素を請求項へ取り込んで出願され,このようにして取り込まれた一審原告らの発明をDYMO4000が実施したのである。
このようなことが可能となったのは,パリ条約4条Hが,欧州出願をする場合には,特許請求の範囲のみならず実施例など明細書の他の部分に記載されている要素も新たに請求項として盛り込むことができるとしていることによるものであり,一審被告は,欧州出願における優先権主張という制度に乗じて,上記日本出願1〜3を優先権の基礎としつつ,実施例として第2発明に係るラミネート式ラベルライターの全要素と第3考案に係るラミネート式に用いられるテープカセットの全要素を取り込んだものである。ちなみに,日本出願1〜3はいずれもラミネート式ラベルライターの本質とは無関係であるし,これら3件の実用新案はDYMO4000で全く実施されていない。
b いうまでもなくラミネート式ラベルライターの発明は一審原告らが第2発明でなしたものであり,ラミネート式ラベルライターに用いる3種のテープ(透明テープ,インクリボン,両面粘着テープ)を個別に同一のカセットに収納して供給することも,3種のテープスプールの配置もすべて一審原告らが誰よりも先に完成させて第3考案として社内出願し,特許(実用新案)出願をしたものである。
,( ),( , 上記日本出願1〜3の考案者はA 日本出願1 h 日本出願12 ,i(日本出願3 ,j(日本出願3)の4名となっており,ラミネ ))ート発明(第2発明・第5発明)とラミネート用テープカセットの発明第3考案の発明者である一審原告X1一審原告X2CDB ( ) , ,,,については,実施例を引用されているにもかかわらず発明者としての記載が漏れており,唯一記載されているのは A だけである。
そして,ダイモ契約権利2の発明者は,A,h,i,j の4名となっており,一審原告 X 1,一審原告 X 2,C,D,B については,ラミネート発明とラミネート用テープカセットの発明技術が特許請求範囲とされているにもかかわらず,発明者として記載されていない。
同一会社内といえども,同じ発明が複数存在することはあり得ないのであって,ダイモ契約権利1及び2の発明者はラミネート発明及び第3考案の発明者である一審原告ら6名である。
c これに対し一審被告は,第3考案で示された技術内容とダイモ契約権利2の請求項1,3,7,8(DYMO4000で実施された請求項)は,以下の3つの点で異なると主張する。
第3考案は各テープ(インクリボン,透明テープ,両面粘着テ ?Tープ)が個別に交換できるようになっているため,そのカセットごと本体に対して交換することは含まれない?U 第3考案ではハウジングが全体を覆うものでなく,テープ類のスプールの一部が露出している?V 第3考案ではインクリボンと透明テープの供給スプールが共通化されており,他の実施例としてインクリボンと透明テープの供給スプールを別々にする思想は特許担当者が出願時に加えたものであるしかし,上記?Tについては,第3考案はラミネート式ラベルライターの構造に必要なテープ類を一元的に供給するという発明技術が示されており,この技術を発展的に限定してリボン・テープ類のスプールを個別に交換する方法を示したものであって,カセットごと本体に対して交換することも含むものである。
また上記?Uについては,第3考案とダイモ契約権利2との違いは,ハウジングがすべてを覆う形状か否か,テープ出口があるか,印字ヘッドを収納する凹所があるか否かだけであって,技術的な差異とは認められない。
さらに上記?Vについては,第3考案の出願時明細書には他の実施例としてインクリボンと透明テープの供給スプールを別々にする構成が,, (, 明記されているし さらに遡って 第3考案の社内出願用紙 譲渡証乙64の2)3頁用紙Bにおいても,インクリボンと透明テープの供給スプールを別々にする構成が従来技術として明記されている。このように,当該他の実施例の起源は一審原告らであり,一審被告特許部の出願担当者によるものではない。
したがって,一審被告の主張はいずれも理由がない。
(ウ) 小括このように,DYMO4000本体が侵害したのは,海外特許1のラミネート式ラベルライターの技術そのものである。ダイモ契約権利1・2のラミネート式ラベルライターに関係のない部分は侵害されていない。つまり,海外特許1がなければ,ダイモDYMO4000の販売差止めも,賠償金を獲得することもできなかった。
また,仮にダイモとの契約で直接交渉のテーブルに出された権利が最初に権利化されたダイモ契約権利1・2であった点を考慮するとしても,ダイモ契約権利1・2は一審原告らの海外特許1(ラミネート式ラベルライターの基本発明)に第3考案のカセットで3種類のテープを供給する技術を加えただけのものであり,ダイモ権利1・2の実質的発明者は一審原告ら6名に他ならない。
したがって,一審被告は一審原告らに対し,ダイモ社からの賠償金と実施料について発明対価を支払わなければならない。
(エ) ダイモ賠償金分及び実施料に対する寄与一審被告が平成5年度〜16年度にダイモ社から獲得したロイヤリティ収入は●●円である。
そして,これに寄与した権利を重み付けで評価すると,海外特許1の重みは27.5%であり,一審原告らの発明が権利化されているダイモ契約権利2の請求項1と3,請求項7と8の重みは55.2%である。
他方,同じくDYMO4000で実施されたダイモ契約権利2の請求項2を一審被告側の権利とみなしても,その重みは17.2%しかない。
したがって,ダイモ社からの賠償金及びロイヤリティ分に対する相当対価は,この寄与割合に基づき決められなければならない。
(6) 発明に対する一審被告の貢献度についてア 原判決の判断構造の誤り原判決は,相当対価の算定に当たり,全売上げから,一審被告が行った広告宣伝,TVCM,販売網や有力ディーラーの活用,製品のラインナップ化などといった特許の独占的効力による売上げ以外の要素と通常実施分の売上げを差し引いて超過売上げを算出した後に,仮想実施料率を算定する段階においても同じ要素を重複して考慮し,さらに,この独占の利益か,, ら発明者の貢献分を算出する際にも 本件各発明と関係のない他の発明や一審被告が行った宣伝広告,TVCM,販売網や有力ディーラーの活用,製品のラインナップ化などといった要素を考慮しており,明らかに不当といわなければならない。
超過売上げとは,物を作って販売するという通常の営業行為で得られる売上げを超えた部分であり,原判決のように,全売上げから発明によって得られた超過売上げに絞り込んだ上で,超過売上げ以外の全売上げに係るこれらの要素を重ねて考慮するのは不当である。原判決はこの点において誤っているといわざるを得ない。
イ 自社実施分に係る貢献度(ア) 原判決の誤り原判決(249〜261頁)は,一審被告の貢献度を算定するに当たり各種事情を挙げるが,このうち「漢字ダイモ」に関する点や,インレタと貼付け両立の機構提案を C が単独で行ったとした点など,重大な事実認定の誤りがある。
また,原判決は,製品化段階に関する要素に加えて,販売宣伝活動・ラインナップ継続活動に関する要素を重く考慮しすぎている。
(イ) 漢字ダイモの検討指示が事実に反すること原判決は 「証拠はないが,会社が漢字ダイモの検討を指示すること ,で始まった 「独自に漢字ダイモの検討を進めていた A らが加わった」 」,と認定したが,重大な事実誤認である。
原判決の上記認定は,第2発明等の共同発明者である C の陳述書(乙66)に基づくものであるが,第2発明等の共同発明者である A は,陳述書(乙198)において 「(2)当時,私は,インスタントレタリング ,用テープ作製専用機に関する情報につきましては,全く知りませんでした。また 『漢字ダイモ』という言葉も『NB-1 プロジェクト』の ,,発足当時は聞いたこともありませんでした (2頁 「私は,U 事業部 。」),長らに呼ばれた記憶もありませんし 『漢字ダイモを検討しろ』と言わ ,れた記録もありません。また,そのような記載は,私の業務日誌のノートにも一切ありません。もし仮に,U 部長から言われて『漢字ダイモ』を検討していたのなら,後記のとおり『NB-1 プロジェクト』の発足時に当然課題として挙げられているはずですが,実際には課題にあげられていないことからしても,U部長から『漢字ダイモを検討しろ』と言われたことがないという点に,間違いはありません (2頁)と述べ。」ている。
一審被告は,A の上記陳述を受け,一審被告従業員である P(P 課長)の陳述書(乙199)を提出し,今度は P 課長が「漢字ダイモ」と最初に呼び始め,あたかも,P 課長が漢字ダイモのコンセプトを発表したかのように主張するが,これは反論に窮して急遽主張を変更するものであり,採用できるものではない。
(ウ) インレタと貼付け両立の機構提案原判決は,インレタと貼付けを両立する機構の提案が,あたかも通常の会議において C によって提出されたかのように認定するが,誤りである。
,,,, インレタと貼付けを両立する機構は 一審原告 X 1 一審原告 X 2 CA,B がインレタと貼付けを両立する機構について技術的ブレーンストーミングを行った結果生まれた成果であって,C 単独の提案ではない。そして,会議でのブレーンストーミングに先立ち,インレタと貼付けを一つの装置で実現させるという課題と,貼付けは擦っても文字が消えないものとすること,その際に正像と逆像の印字切替えは他社特許を回避するために行わないという技術課題を提供したのも専ら一審原告 X 1と一審原告 X 2である。さらには,一審原告 X 1が第1発明で既に想到していた,透明テープの印字面に粘着性を持たせてそのまま貼るという方法も会議前にヒントとして共有された。そのような中で集中的に討議が行われ解決案が生まれたのである。その解決案が,テープ印字装置において糊のない透明テープに裏から反転印字を行い,その後に両面粘着テープを貼り付けるというラミネート機構と,両面粘着テープを貼らないインレタテープ作製機構を両立させたものである。
原判決は,インレタと貼付けを両立する機構の提案が上記のように一審原告らと3名の設計者が技術的ブレーンストーミングをする中で生まれた思想であることを見誤っており,これにより,一審原告 X 1と一審原告 X 2の貢献度が低くされているとすれば,これによる貢献度の修正は必須である。
(エ) 第3発明の貢献度原判決は第3発明における一審被告の貢献を95%と認定したが,第3発明は本体制御ソフトに関する発明であり,その発明は,基本的な仕様と情報処理フローを考えれば,実現化に向けての大きな障害はない。
したがって,新素材などの化学分野における発明のような実験や設備投資は不要であり,仕様決めとプログラミングとデバッグの作業で完結するものであって,一審被告の貢献はない。一審原告らを含む6名の発明者の20倍に相当する一審被告の貢献が何かは原判決にも摘示がなく,不明である。むしろ発明者の貢献を95%,一審被告の貢献を5%と解すべきである。
(オ) 発明に直接関係しない要素についての評価原判決は,以下のような発明に直接関係しない要素を一審被告の貢献として挙げる。そもそもこのような事情を考慮する点において誤りというべきであるが,仮にこれらを考慮するとしても重視すべきではない。
a NB-1プロジェクト以降の組織的対応一審被告が組織的に対応を始めたのはラミネート発明に関する一連の特許出願を終えた後のことである。製品試作を担当する設計者が投入されたのも,それをまとめる i が課長として配置されたのも,一審原告らが必死でP-touchの事業化を訴え,ラミネートという他社にない強みで長期にわたって事業が継続できることを説得したからである。結果的に会社が製品化と事業化に乗り出したからといって,一審被告が主導的に開発に当たっていたわけではない。
b 品質不良への対応品質の作り込みや品質不良への対応はメーカーとして当然の対応であり,その際特段の困難があったものではない。実際にも,発明出願後わずか半年で試作機が完成し,キングジム社に見せたものは完成品に近いものであったc 従来技術の駆使P-touchの製品化で電子を担当した C は,ワープロ技術との関係において,ブラザーに特別な技術があって,それがP-Touchに使われているということはない旨明言している。ワープロの開発責任者であった l も,ブラザーが利用可能であったワープロに関する技術は競争力の劣った負けの技術であったことを明言している。
d 製品開発費一審被告は通算●●円の開発費を投じたと主張するが,売上げや利益の確保されない間のリスクを負った投資はほとんどない。P-touch事業は初年度である平成元年には●●円(限界利益率●% ,)次年度の平成2年には早くも●●円(限界利益率●% ,3年目の平)() 。, 成3年には●●円 限界利益率●%を稼ぎ出している このことは当時社長であり現ブラザー工業会長の m も,他の事業がことごとく失敗するなか,ピータッチは最初から利益を稼いでくれた孝行息子であったと自著(甲110)の中で吐露している。
しかも,この●●円の経費は,他の失敗事業(巨額を投じたカラーコピー事業,撤退した家電事業,編み機事業,縮小のミシン事業)での余剰設計者を受け入れたことによる人件費増加である。
初期モデルの製品開発に投じられたという●●円の中身における実際の開発投資は●●円にしかすぎない。
e キングジム社とのOEM当時一審原告 X 2の上司でもあった l は,一審被告社内のプロジェクト一掃のプレッシャーに対して,P-touchがつぶれるのも仕方ないと諦めかけていたところ,一審原告らのラベルライターに対する熱意と行動に心を動かされ,なんとかキングジム社から10万台のオーダーをもぎ取ってきたと述べている。
f 広告宣伝費16年間で●●円の広告宣伝費は,売上げ総計●●円に対してわずか●%であり,一審被告の全社平均である●%よりも少なく,カシオ社の販促費率6%よりも著しく少ない。
g ユーザー拡大のための対応とラインナップ化ラミネート式ラベルライターの強みを最大限に活用して事業拡大を,, するため 米国に調査に行き市場ニーズを探った上でテープの幅広化複数印字,自動カッタ,文字サイズ,ラベルレイアウトなどについて具体的な設計仕様を提案したのは一審原告 X 2である。これらのことは,一審被告が行ったのではなく,ラミネート技術という最高の武器を手にしながらなんらの提案も出来ない設計者等に代わり 一審原告 X,2が市場を示し,そこに必要な仕様と技術を提案し続けてきた成果である。
h 米国販売ルートOSSとの関係強化米国に約3000店舗ほどあるOSS(オフィススーパーストア)は米国での一般的流通業態であって,競合のダイモ社もカシオ社も陳列スペースを確保して売っているのであって,平成2年ころから増え始めたOSSと関係が強化されていったのは一審被告に限ったことではなく,社会現象である。
i 湾岸戦争時のCNNのCM一審被告は,湾岸戦争でのCNNのCMをP-touchが認知され始めたきっかけ要素として主張するが,テレビコマーシャルで伝わ,, るのはせいぜいネーミングくらいで実際に顧客が商品を選ぶ際には店頭における説明札の内容,カタログ上の記載,そして特に米国では商品に貼付され特徴を謳ったシール類,雑誌の広告内容,最近ではインターネット上の説明などである。一審被告はラミネート式であること,その優位性や耐久性を最大限にこれら幾多の広告販促物で誇示してきた。
j BIE販売網販売網が強かったので売れたのではなく,当初は売る気もなくOEM主体で売り出したら爆発的に売れたため,今度はOEMルートを自ら廃して,特許製品を自社独占にして販売し続けているのが実態であり,P-touchの販売によって欧州での販売網が維持できたというのが事実である。
k ラベルの用途提案ラベルの用途を種々考えた宣伝用のリーフレットを企画し,その必要性を会社へ具申し,内容・構成を考え,スタジオでの写真撮影に立会い,欧州各国へ売り込み方も含めて説明したのは一審原告 X 2である。発明者である一審原告 X 2が,発明の利用価値をさらに高めるために社内で行った活動を,発明対価請求訴訟において一審被告の貢献要素と捉えるのは理不尽である。
ウ 他社実施分に係る貢献度(ア) 他社実施分における考慮要素他社実施分で貢献度評価において考慮され得るのは,自社実施分のそれよりさらに狭く,発明出願までと権利化,訴訟やロイヤリティ交渉に係る部分だけとなるはずである。
(イ) ダイモ社分についての貢献度a 海外特許1ダイモ社は,自社でラミネート式ラベルライターの侵害品を製造・販売し,一審被告は●●ドイツマルク(約●●円)の賠償金と本体●%,テープ●%の実施料を得た。これに係る一審被告の貢献は,せいぜい海外特許1の権利化とダイモ社に対する訴訟遂行しかないが,ダイモ訴訟の訴訟費用はダイモ社の負担である(乙173の全文和訳6頁14行〜16行 。)そうすると,ダイモ社分に係る一審被告の貢献は海外特許1の権利化しかないが,海外特許1は通常の審査を経て特許化されているものであって,特筆すべき一審被告の貢献は認めることができない。
したがって,ダイモ社分についての海外特許1に係る一審被告貢献度は,多くとも5%を上回ることはない。
b 一審原告らの発明が特許化されたダイモ契約権利2ダイモ契約権利2(欧州特許EP●●号)はダイモ社に対して直接行使された権利であるが,一審原告ら6名が第3考案で示したラミネート式ラベルライターをテープカセット(請求項1,3)及びラミネート式ラベルライター(請求項7,8)として特許化されたものである。
これに関する一審被告の貢献は,優先権主張の手続の失敗からダイモ社から追及されれば優先権主張違反で無効となっていた可能性があるものの,実施例として一審原告らのラミネート発明を入れ込み,第3考案の形ではなくラミネート式ラベルライターにおけるテープカセットのより実施品に近い形で特許化したという点であるが,技術的貢献は一審原告らにあり,一審被告の貢献は限定的で,多くとも10%を上回ることはない。
(ウ) キングジム社分a キングジム社賠償金分(a) 第1発明第1発明は計4回の異議申立て等を受けているが,一審原告 X 1の社内申請書には,後に第1発明の特許請求範囲となるすべての要素が記載されていたにもかかわらず,特許担当者が第1発明の意義と発明性を理解せず,カッターや樹脂フィルムについて当初出願で特許請求範囲とすることを忘れて出願したため,数度の補正でこれらの構成要素を請求項で正しく規定する作業が必要になったのである。したがって,一審被告には権利化に対して特段の貢献は認められない。
また,一審被告は第1発明の実用化について E や他の設計者の努力等をことさら強調しているが,キングジム社やカシオ社はそのような努力と関係なく一審被告と同じインレタテープを製造・販売しており,こうした設計努力は考慮する余地がない。一審被告の貢献として考えられるのは,キングジム訴訟において佐尾重久代理人が侵害警告を突きつけた際のやり取りくらいであり,多くとも3%を上回ることはない。
(b) 第3発明前記のとおり,第3発明の完成までには一審被告の貢献はない。
,, そうすると 一審被告の貢献として考慮すべきは出願・権利化とキングジム訴訟での訴訟遂行行為であるが,第3発明は権利化については計4回の異議申立て等を受けて,またキングジム訴訟では第3発明が最も多くキングジム社との熾烈な攻防の対象となっている,, 事実があるから この限度において一審被告の貢献が認められるが以上を考慮しても,その貢献度が30%を超えるものではない。
(c) 一審原告 X 2の発明であるオートサイズ発明オートサイズ発明(特許第2556224号)も,第3発明と同様に本体制御ソフトに関する発明であり,発明完成までには一審被告の貢献はない。
ただし,このオートサイズ発明を出願したこと及び計4回の異議申立て等を経て権利化していることと,キングジム訴訟において計2回の攻防がされていることから,権利化と訴訟遂行に関する分については,一審被告の貢献が認められる。
しかしこれらを考慮しても一審被告の貢献度は30%を上回るものではない。
(d) 第4考案とキングジム警告権利7,8キングジム警告権利7(特許第2814692号)とキングジム警告権利8(特許第2830860号)は実質的に一審原告 X 2が第4考案をベースとして発明したものである。
これら2件の権利はそれぞれ計2回の異議申立て等を経ており,,, また キングジム社に対して侵害警告を行うという負担はあったがこれらのことを総合しても,一審被告の貢献度は30%を上回ることはない。
b キングジム社のロイヤリティ分賠償金分とロイヤリティ分の貢献度に関する違いは,賠償金分は個別の権利の内容,実施,有効性を立証するための攻防がキングジム社と展開されているのに対し,ロイヤリティ分は個別のやりとりがない点にある。
したがって,上記aで示した最大限評価した場合の一審被告の貢献度に対して,キングジム社のロイヤリティ分における一審被告の貢献度は,以下のように解すべきである。
・ 第1発明 多くとも1%・ 第3発明 多くとも10%・ オートサイズ発明 多くとも15%・ 切断装置発明 多くとも15%c カシオ社賠償金及びロイヤリティ分(a) 第1発明カシオ社との交渉は,一審被告が示した特許権利の7〜8倍もの数のプリンター等に関する権利をカシオ社が対抗して示した中でなされた契約である。
,, したがって 一審被告の交渉上の特段の貢献は認められないからカシオ社分における第1発明に係る一審被告の貢献度は,多くとも2%を上回ることはない。
(b) オートサイズ発明前記のとおり,●●の完成までに一審被告の貢献はなく,このオートサイズ発明を出願したこと及び計4回の異議申立て等を経て権利化している点で,一審被告の貢献度は,多くとも15%である。
(7) 共同発明者間の寄与度について一審原告らは,発明の初期段階から関わり,一審原告 X 1の第1発明を原点として,一審原告 X 2が加わりラミネート式ラベルライターへと昇華させてきたものであり,ラミネート発明の核心となっている機構についても,一審原告 X 1と一審原告 X 2を含む5名による技術的ブレーンストーミングを行った結果生まれたものである。
すなわち,ラミネート発明が完成するまでには,少なくとも以下に挙げる16のポイントがあり,一審原告 X 1と一審原告 X 2はそれらすべてに主体的に関わっている。
?@ 一審原告 X 1の学生時代におけるインレタ経験と問題意識の発芽:昭和54年?A 入社初年度に自主的に行った書字機会において好まれる文字イメージの研究:昭和58年〜昭和59年?B ワープロでのインレタシート印字の着想:昭和61年4月ころ?C 学生時代の化学知識に基づくインレタシートの調査と実験と E への協力依頼:昭和61年5月ころ?D ポータブルサイズのインレタ作製機の着想:同上?E 貼付けラベルも含む第1発明の具体化:同上?F 第1発明の社内申請:昭和61年7月?G 一審原告 X 2が参画してインレタ作製機の用途開発と調査:昭和61年10月ころ?H 必要とされる文字サイズや印字品位などの印字機構の検討:同上?I プライベートユースを想定した簡易な「ダイヤル入力方法」の着想と具体化:昭和61年11月ころ?J P-touch基本仕様案の検討:昭和62年1月?K 貼付けラベルへの方向転換:昭和62年1月ころ?L インレタと貼付けラベルを両立し,かつ,他社特許を回避することのできる印字機構の試行錯誤:昭和62年2月〜3月ころ?M 集中思考によるラミネート式印字の着想と具体化:昭和62年5月?N ラミネートラベルのカセット化の着想と具体化:同上?O 第2発明,第3発明,第5発明,第3考案を社内申請:昭和62年7月10日,, , そして 一審原告らは その後製品化のために更に製品の具体化に関わり社内を説得し,調査をし,コスト実現の知恵を絞るなど,あらゆる面で尽力している。
したがって,一審原告らの貢献は比類なく高いのであって,その共同発明者貢献度がそれぞれ6分の1を下回るものではあり得ない。
(8) 相当対価の支払時期について,(,〔 〕 ) 本件各発明に対する対価の支払時期は原判決 第3 6 262頁以下認定のとおりである。
(9) 消滅時効についてア 一審被告は,最高裁判所平成18年10月17日第三小法廷判決(民集60巻8号2853頁)を引用して商法522条の商事消滅時効が適用される論拠とするが,同判決は,外国の特許を受ける権利対価請求権について,どこの国の法律が適用されるかという国際私法の問題を論じているものである。すなわち,同判決は抵触法の解釈という観点から,渉外的法律関係の準拠法決定の場面における法律関係の性質決定(法性決定)とし,, て 外国の特許を受ける権利対価請求権について論じているのであって当事者の権利義務の実質を直接に規律する実質法的な観点から対価請求権の性質について一般論の判示をしているわけではない。したがって,上記最高裁判決は商事消滅時効を適用する論拠とはならないのであって,一審被告の上記主張は失当である。
,, , イ この点 多数の裁判例は 職務発明対価請求債権の消滅時効期間として一貫して10年を採用している(NTTアドバンス事件に関する東京地裁平成18年5月29日判決・平成16年(ワ)第23041号,味の素アスパルテーム事件に関する東京地裁平成14年(ワ)第20521号,日立事件に関する東京地裁平成14年11月29日判決・平成10年(ワ)第16832号,その控訴審である東京高裁平成16年1月29日判決・平成14年(ネ)第6451号,日亜化学青色発光ダイオード事件に関す() , る東京地裁平成16年1月30日判決・平成13年 ワ 第17772号オリンパス光学事件に関する東京地裁平成11年4月16日判決・平成7年(ワ)第3841号,その控訴審である東京高裁平成13年5月22日判決・平成11年(ネ)第3208号,合成繊維(釣糸)に関する大阪地裁平成5年3月4日判決・平成3年(ワ)第292号,その控訴審である大阪高裁平成6年5月27日判決・平成5年(ネ)第723号 。)学説においても,これを10年とするのが多数説である(高林龍[判解]平成7年度重判解〔ジュリスト1091号〕232頁,青柳れい子「職務発明(2)-対価請求権 〔裁判実務大系9〕294頁等 。 」)ウ しかも,相当対価請求権の消滅時効については,平成16年の特許法改正の際,短期消滅時効の規定の導入が検討されたという経過がある。これは,現行法によれば一般の10年の消滅時効が適用されるということを大前提とするものである。そして,結論としては 「特許法35条対価請 ,求について短期消滅時効の規定を設けるべきではない」として,立法化もされなかったのであり,5年の短期消滅時効については立法論としても支持されていない。
当裁判所の判断
一審原告らの本訴請求は,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(旧35条。なお,実用新案法11条3項は特許法35条の規定を準用する )3,4項に基づく職務発明報酬金各2億円及びこれに対する前記各起算 。
日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものであるところ,当裁判所は,同請求は主文第2項(1)(2)の限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。その理由は,以下に付加・訂正するほか,原判決記載のとおりであるからこれを引用する。
1 本件における基礎的事実関係( ,,,, , , 証拠 甲25〜27 49 61 75 102の1・2 103の1・2,,,, ,,,, 107 109 110 131 139〜143 170 171 179,,, ,,,,,,, 180 196 297 308の1〜3 乙1 2 4 10 14 2831の1の1〜3の2,35,40の1〜4,55,63,64の1〜11,65〜69,74,75,85,96,106,110〜119,146〜148,158,171〜173,198〜200,215,255,258,259,265,294〜301,306〜308,当審証人 B,当審本人 X1,同 X 2)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1) 本件各特許等の出願に至る経緯ア 一審原告 X 1は,昭和58年4月に一審被告に入社し,同年11月から平成元年ころまでの間は一審被告のライフリサーチセンター〔LRセンター (当時は市場調査部門。昭和60年8月からは開発部の,昭和62年 〕2月からは中央研究所の部門 ・商品事業企画部等において,市場調査及 )びそれに基づく開発商品コンセプトの提言勧告等の業務に従事していた。
一審原告 X 2は,昭和61年4月に一審被告に入社し,同年5月から昭和63年9月まではワープロ・プリンター等の情報機器及び付属品に関する総合調整・事業計画の立案・商品開発に関する企画立案を業務とする部門である情報機器第3事業部又は同第1事業部企画管理グループに所属していた。その後,昭和63年10月から平成2年5月ころまでは同第1事業部又は情報機器事業部の営業部に所属していた。
イ第1発明(ア) 一審被告は,昭和59年4月に他社に先駆けて10万円を下回る小型日本語ワープロ「ピコワードNP-100」を発売し,同市場において一時優位に立ったが,その後,他社が相次いで競合商品を開発・製品化するに至ったことから,一審被告は同市場におけるシェアを失っていった。そこで一審被告は,昭和60年12月ころ開発部ライフリサーチセンター(LRセンター)においてピコワード購入者に対し日本語ワー,,, プロの使用実態に関する調査を行いこれを踏まえて LRセンターは昭和61年2月から5月にかけて,日本語ワープロの企画担当部門である情報機器第3事業部企画管理グループのメンバー(NPプロジェクトチーム)及び開発部のデザイングループを交えて,ターゲットとなる7種の顧客層ごとに商品コンセプトをまとめた。この際まとめられたコンセプトは,ベーシックワープロ(文書処理の基本性能に関わる機能を重視して充実させた本格的ワープロ,ハイブリッドワープロ(コピー機 )能,FAX機能,パソコン機能なども装備可能な多機能ワープロ ,日)英ワープロ(英和辞書機能搭載の日英兼用ワープロ ,コンポワープロ )(本体とプリンタ,外部記憶装置がそれぞれ独立したコンポーネントタイプのワープロ ,日本語タイプライター(入力と印字を交互に行う簡 )単操作の清書機)などというものであった。
(イ) 上記調査を担当した一審原告 X 1は,上記ピコワード購入者への調査結果の中に,極めて短い文章しか作らない層を見出し,これにインスタントレタリングを使用してカセットテープのインデックスカード等を作成した自らの経験を重ね合わせて,手作業で行っていたインレタをワープロで作製することができれば簡単かつきれいにインデックスカード等を完成することができると思い至った。そこで一審原告 X 1は,新規事業に係る商品アイデアの一つとして 「透明のテープに文字を打ち出 ,し,それを指でこすれば紙でもプラスチックでもどこにでも転写できるインスタントレタリング作成専用の超小型ワープロ」として,インレタ作製機のアイデアを提案し,同アイデアもまた 「ワードプロッター」 ,としてコンセプトの一つにまとめ上げられた。昭和61年7月にワープロ購入者及びワープロ購入希望者に対して上記各コンセプトの受容性を調査するためのグループインタビューが行われたが,その際,コンセプトが受容されたのはベーシックワープロ,ワードプロッター,日本語タイプライターだけであり,それ以外のコンセプトは不採用ないし変更とされた。
(ウ) 一審原告 X 1の提案した上記コンセプトは,LRセンター等の議論,, において必ずしも高く評価されたわけではなかったが 一審原告 X 1は自分の発案に係るインレタ作製機に対する強い思い入れがあり,また,技術的にみても 「ワードプロッター」はワープロとしての高度な変換 ,機能や編集処理が不要であるし,機能が限定されていることから液晶やメモリも小さくて済み,一審被告がワープロで培った基本的な技術を利用することで容易に実現可能と考えたことから,LRセンターにおける検討と並行して,インレタ作製機の製品化のために必要となる技術について検討を進めた。その中で,転写用レタリングテープに離型促進剤を塗布すると熱転写印字がしにくくなるという課題に逢着したが,その化学的要素についても開発部基礎開発グループ所属の技術者であった E に協力を依頼するなどして,解決の道筋を付けることができた。
なお,開発部基礎開発グループ所属の E とL は,昭和61年7月17日,7月24日及び30日に,それぞれ「乾式転写材の製造法」(乙31の3の2) 「乾式転写材の基本シート」(乙31の1の2) 「インク ,,リボン」(乙31の2の2)に関する発明を社内に届け出た。これらのインクの化学的性状等に関する技術は,その後,一審被告が昭和62年10月に発売した日本語ワープロとラベルライターに採用された。
,,, (エ) 一審原告 X 1は これらの検討を踏まえて 昭和61年7月30日「インスタントレタリング作製機」として,第1発明を記載した「発明社内登録用紙(譲渡証)」(乙4の1)を提出した。なお,その添付資料である発明記述用紙(乙10)には,反転印字された文字を転写する用途のほか 「…そのテープ自体に接着力があれば,それをそのまま対象物 ,に貼ってやることも可能で,それが保護膜としての機能を持つようになる (乙10,発明記述用紙E下3行〜下1行)として,テープ自体を 。」貼り付ける用途についての記載もあった。
ウ 「NB-1チーム」発足(ア) 一審原告 X 1は,前記「発明社内登録用紙(譲渡証)」(乙4の1)の提出と前後して,自身がコンセプトを創造したワードプロッターの商品化をワープロの開発チーム(NPプロジェクトチーム)リーダーであった l 課長に具申したが,ワープロの範ちゅうには入らないとして取り合ってもらえなかった。また,製品化のための社内手続であるアイデア提案書を開発部 k 次長(k 次長)に提出したが,一審被告がこれを採り上げることはなかった。一審原告 X 1は,製品化の実現にはコンセプトの具体化が必要と考え,昭和61年10月ころから,勤務に余裕があった一審原告 X 2や,開発部製品開発グループの技術者であった D に協力を呼びかけ,その具体的な仕様の検討を開始した。その後この具体化の作業は,一審原告X1,同X2及びD のほか手が空いているメカ担当者やデザイン担当者をも巻き込む形で進められ,昭和62年1月以降毎週の,。 ようにミーティングを実施し 同年2月ころには相当程度具体化された一審原告 X 1は,インレタ作製機に「P-touch」との名称を与えた上で,一審原告 X 2と共に昭和62年2月25日付けアイデア提案書(乙55添付資料13,乙297,乙308添付資料5)として一審被告に提出し,その成果をプレゼンテーション資料として同年2月26日付け「P-touchプロジェクト基本仕様案(1版 (乙55添付資)」料11,乙199添付資料1)にまとめ上げた。
(イ) 上記 X 1,X 2,D らは,昭和62年2月26日,P-touchプロジェクトに人と予算を付けてもらい試作機の製作・ひいては製品化を実現するため,k 次長ほか出席の下,上記P-touchプロジェクト基本仕様案に基づきプレゼンテーションを行った。その際,k 次長からはP-touchを製品化するために克服すべき課題を少なからず指摘されたが,予算措置等がされることはなかった。そこで一審原告らは,事業部に働きかけることで予算措置やP-touchの製品化を実現しようと考え,昭和62年3月以降もプロジェクトを推進しながら,昭和62年4月1日付けで「P-touch『インスタントレタリング作成機』企画書 (乙9,乙55添付資料14)を作成するとともに,情報 」機器第1事業部長であった U(U 事業部長)に直接働き掛けた。その当時,一審被告ではワープロ事業からの撤退が検討されており,事業部としても新商品の開発が急務であったところ,P-touchは基本的に一審被告が保有する既存のワープロ技術等の転用により製品化が可能であるため,リスクや開発コストの点で受け入れ可能なものであった。そこで U 事業部長はP-touchプロジェクトを正式に開発案件に加えることとし,当時情報機器第1事業部開発設計グループ課長であった P(P 課長)に指示して昭和62年4月7日付け製品開発計画表(乙55添付資料15)を作成させ,管掌役員である専務取締役までの社内決裁を了した。なお,上記企画書(乙9,乙55添付資料14)における商品コンセプトの中心は短冊テープに印字するインレタ作製機というもの,, , であったが 次機種案として テープをカートリッジで供給することや印字したテープ自体を貼り付けるものについても言及していた。P 課長が行った一審被告内での審議においては,P-touchのコンセプトについて,?@粘着性テープに鏡像文字をプリントし,持ち物,表紙等に貼付する漢字ダイモ,?Aカセットのインデックス・ファイルの背表紙などに感圧で転写できるような文字を透明テープにプリントするインレタ原稿作成機として,インレタ用途と貼付用途が組み合わされたものとして紹介された(乙199添付資料4 。)(ウ) 上記製品開発計画表の決裁により,P-touchの研究開発プロジェクトは,事業部内での優先順位は低かった(5番目)ものの,一審被告の正式プロジェクトとして,昭和62年5月に商品企画会を開始,昭和63年4月に発売(出荷)することに決定された。その上で一審被告は,前記「P-touchプロジェクト基本仕様案(1版 (乙55)」添付資料11,乙199添付資料1)や前記企画書(乙9,乙55添付資料14)等を基礎としつつ,そこに記載された仕様を満足するインレタリボンの開発,操作性の追求,低価格での商品化を研究テーマに据えて技術的な可能性を検討することとし,そのための人選を進めた。その結果,従前P-touchの研究を行ってきた一審原告ら及び D のほかに,新たに技術者として当時情報機器第1事業部開発設計グループに所属していた A,B,C を投入することとし,昭和62年5月21日,P 課長を責任者として,一審原告ら及び D のほか,技術者リーダー A,電子担当技術者 C,メカ担当技術者 B を構成員とする「NB-1プロジェクト」としてP-touchの検討チームが発足した。
(エ) なお,NB-1プロジェクトの発足準備と並行する形で,一審原告らはLRセンターの企画として昭和62年5月10日ころプロダクト調査(市場調査)を行った。同調査は「レタリングプリンター」における印字テープの特徴について 「インレタタイプ」と「テープタイプ」の ,2種類を提示するものであったところ,需要者層の反応は「テープタイプ」の方がいいというものであった。
エ 第2発明等(ア) NB-1プロジェクトのメンバーは,発足の翌日である昭和62年5月22日に初回の打合せを行った。一審原告ら及び D は,A,B,C の技術者3名に対しP-touchに関する従前の検討結果を説明した。
その説明の中には,前記昭和62年4月1日付け企画書(乙9,乙55添付資料14)において次機種案として挙げられていた印字したテープを貼り付けて使用する用途やテープのカセット化に関する事項も含まれていた。A ら3名はインレタという用途自体の展望については懐疑的であり,むしろ,印字したテープごと貼り付ける用途の方が有望ではないかとの感触を抱いたが,P-touchがインレタをベースとして検討されてきたという経緯に加え,需要者のニーズを絞り込むための材料に,, 不足していたことから 設計者のアイデアを抽出し仕様をまとめるため社内100人くらいにアンケートを行うことにした。また,基本的にP-touchプロジェクトで行われた検討結果を踏まえ,コスト目標は9800円,キーテクノロジーはテープ,リボンであること,リボンによる印字は「こすってもとれない」ものであることが必要で,その点を,, 開発の化学担当者と詰める必要性があることなどが確認され その上で上記アンケートとテープ・リボンの検討をまとめて昭和62年6月末に中間報告を行うことなどが決められた。
(イ) NB-1プロジェクトは,一審原告ら及び D が作り上げたインレタ作製機のコンセプトを前提に,その技術的な可能性を検討することが目的であったことから,A,B,C の技術者3名は,一審原告ら及び D が不在のときにも3名のみで技術的研究を進めた。その後,昭和62年5月28日に行われた2回目の会議では,一審原告ら及び D が作り上げたP-touchのコンセプトを維持しながらも,その中に貼付けの用途にも転用可能な機構を取り込むことの技術的可能性について検討が加えられた。その際,糊が塗布されたテープに直接印字することなど,一審原告ら及び D において既に検討した事項も再度検討されたが,A ら3名の技術者の受け入れるところではなく,最終的に,C が提案した印字テープにサーマル印字ヘッドとインクリボンで印字した後,両面粘着テープを貼り付けるというラミネートテープの構成(ラミネート方式)が最善ということで意見が一致し,インレタと貼付テープの共存という方向性が定まった。
(ウ) その後,技術的な仕様の詳細については A,B,C の3名が中心となって検討を加えたほか,販売会社に対する説明会,社内アンケートの実施及び分析,デザイン・仕様の詰め,特許化に向けた準備等を経て,昭和62年7月10日,第2発明〜第5発明,第2考案,第3考案を含む12件の発明につき 「発明社内登録用紙(譲渡証)」(乙4の2〜5・7 ,・8,14,64の1〜11)が一審被告に提出された。本件各発明に係る分については,B,C 及び D がその内容を,A が図面を記載して作成した。上記の登録用紙には,本件各発明の明細書中の図面とほぼ同一の図面が記載されており,第2発明(乙64の3)及び第5発明(乙14)の図面には 「インクリボンカセット+オープンリール方式」のものが, ,第3考案(乙64の2)の第3図には,ラミネート方式を前提とした3種類のテープを一つにまとめ,スプールを着脱自在としたテープカセットが記載された。これらの発明者は,A の提案により,A,B,C,一審原告ら及び D の6名とされた。
(エ) なお,一審原告らの上記発明と前後して,ラベル作成機としてクロイ社のレタリングマシーン Kroy80・190・290・XL 乙 「」 (106 マックス社社のレタリングプロセッサ Letarica 乙 ),「」 (), , 111 が市場に現れたが これらはいずれもラミネート方式ではなくテープ表面に直接印字する方式であった。
オ出願(ア) 国内特許等,,。 一審被告は 一審原告らから承継した発明を順次出願し 権利化した本件各特許のうち国内における第1発明〜第3発明,第5発明等の出願,「 」 。 経緯は 原判決別紙 特許・実用新案目録 1〜9記載のとおりであるすなわち,第1発明〜第3発明,第5発明に対しては,いずれも異議申立てないし付与前異議申立て(第3発明については無効審判請求も)がなされ,特にラミネート発明である第2発明及び第5発明については競合会社であるマックス社やセイコーエプソン社から付与前異議申立てがなされたが,最終的にはいずれも権利化に至っている。
(イ) 海外特許1一審被告は一審原告らから承継した発明に基づき,欧州特許庁に特許出願し,海外特許1として権利化した。海外特許1の出願経緯は,原判決別紙「特許・実用新案目録」10記載のとおりである。
(ウ) 海外特許2及び3一審被告は一審原告らから承継した発明に基づき,米国特許商標庁に特許出願し,海外特許2及び3として権利化した。海外特許2及び3の出願経緯は,原判決別紙「特許・実用新案目録」11及び12記載のとおりである。
また海外特許2及び3の内容は,原判決別紙「海外特許2(USP5)」「( ) 168814 の構成要件 及び海外特許3 USP5009530の構成要件」記載のとおりである。
(2) ラベルライター製品化の経緯ア NEW-Bグループの発足一審被告は,NB-1プロジェクトにおける検討によりP-touchの技術的な可能性が検証され,発明社内登録にまで至ったことから,これを区切りとして,昭和62年7月10日付けでNB-1プロジェクトを正式に情報機器第1事業部の開発設計グループの組織に組み込むこととし i,課長代理をトップとする「NEW-Bグループ」を新設し,その中の「P-タッチ開発グループ」として具体的な製品開発グループを組織した。NEW-Bグループのメンバーは,A,B,C のほか,新たにソフト担当として o,メカ担当として p,庶務担当として q を加えたが,一審原告ら及び Dは加わらなかった(乙55の添付資料21 。)同グループは,昭和62年7月18日付けで「P-touchプロジェクト中間報告 (乙55の添付資料22)を作成し,同年5月にLRセン 」ターが実施した社外でのグループインタビューに基づき商品コンセプトをP-touchプロジェクト当初のものから修正することとし,NB-1プロジェクトにおいて検討されていたテープカセット方式とする製品仕様も正式に提案された。
イ P-touchの製品化一審被告は,昭和62年9月以後,NEW-Bグループの改編を行い,同チームは i を総括,A をチーフとし,ほかに機構3名,電子3名,ソフト1名及びソフト開発の外部委託(3名)と人員が大幅に増強され(乙63添付資料2 ,昭和62年9月14日には,昭和63年上期短計(短期 )計画)としてインスタントレタリング作成機に係る「商品計画表 (乙5 」5の添付資料23)が提出され,インスタントレタリングテープと貼付テープとを作成するインスタントレタリング作成機「P-touch」の商品計画が正式に採用された。また昭和62年10月6日には一審被告及び販売会社の専務取締役等,経営陣を含む多人数が出席した商品企画会議が開催され,その結果,一審被告はP-touchの製品化(試作開始)を正式に決定した(乙55添付資料24 。ただし,市場自体があるのか不 )明である等の懸念があったため,重要課題として,コストダウンによる目標コストの達成,リボン(貼付テープ)送りの安定化とともに,新規販売ルートの開発が挙げられた(乙55添付資料25 。なお,テープとして )は,インレタテープと貼付テープのカセットを使用するものとされた。
また,上記商品企画会議に前後して一審被告製品の第1次試作設計が行われ,昭和62年11月から12月初めには48ピンドットヘッドを搭載した第1次試作機が組み立てられてその評価が行われ(乙63添付資料3 ,また,昭和62年12月から翌昭和63年1月初めには第2次試作 )機が組み立てられてその評価が行われた。
さらに一審被告は,前記商品企画会議での商品化決定を受けて,昭和62年11月2日に感圧転写テープ(インスタントレタリングテープ)と貼付テープとが作成できるテープ作成機である「インスタントレタリング作成機(P-touch 」に関する商品企画書(乙34,乙55添付資料 )26)に基づいて製品化を進めることを決定した。
ウ 製品化の課題製品化へ向けた課題としては,当初からコストダウンによる目標コストの達成,リボン(貼付テープ)送りの安定化,新規販売ルートの開発が挙げられていたが,第1次試作機における評価の結果,更にインスタントレタリング用インクリボンの保存性,貼付用インクリボンの印字性能,電池消耗,テープ蛇行(乙55添付資料27 ,レタリング印字技術の問題が )顕在化した(乙55添付資料28 。そこで一審被告は,第3次試作設計 )に入る前に,それら問題点への対応と,前記重要課題への対応,特に目標コストの達成の目処をつけるべく,昭和62年12月から翌昭和63年1月にかけてその対策を実施し,レタリング印字技術については,h,p を担,「」 , 当者として 一審被告製品である電子パーソナルプリンター EP-5日本語ワープロ「ピコワードNP-5100」と技術比較を行って改良点を見出し(乙55添付資料28 ,かつ,インクリボンの専門家である E ),。 に協力を依頼し 同人の指導でレタリングリボンの改良を加えるなどしたまた,昭和63年 1 月には,印字品質改善のために,ピコワードの熱転写印字技術の専門家である O をNEW-Bグループへ移籍させ,同人の主。,, 導で改良するなどした その後も昭和63年2月から3月にかけて 構造電気,ソフトなどについて様々な改良を施し,第2次試作までの問題点を改良して,第3次試作(改良)設計を行った(乙55添付資料34及び35。)このように,P-touchの製品化の過程では,?@従前一審被告製ワープロで使用していた熱転写印字技術及び単漢字変換の漢字処理ソフト技術,?A E らによるレタリングインク及び再転写シートの技術に加え,?B開発中に生じたテープ蛇行などの課題解決のため,テープの走行蛇行の防止技術(●●),透明テープと両面テープの平行貼合わせ技術(●●),テンションの強さ かけ方に関する技術(●●) 両面テープの送り安定化技術(● ,,●)など,インクリボン送り・カセット化技術などを実現しながら行われた。
,,() 以上の製品開発に要した費用は一審被告の試算によれば ●● 省略に上る(乙74別紙2)。
エ 販路の開拓統括責任者である i は,前記のような製品化に向けた技術的作業と並行して,第1次試作品が完成した昭和62年10月ころから販売予測台数と採算性の検討に入った。当時一審被告は,日本国内は系列の販売会社,海外は米国販売子会社及び欧州販売子会社経由の販売ルートを有していたが,一審被告事務機製品(タイプライター,ワープロ等)の国内販売は大手の事務機販売会社数社に商品を扱ってもらうルートが主で,独自の直接販売ルートは販売力を有していなかった。また,米国販売は量販店・通信販売店への卸しが主で,欧州販売は小規模の事務機器店と直接の取引をし,「」 ていたため 価格が安く利益額が小さい電子文具である P-touchは,既存のいずれの販売ルートともマッチしないのではないか,ユーザーにこのような商品を認知してもらう手立てが不明であるなどという懸念事項があった。
このような状況下において新規販売ルートを模索していた l は,昭和62年12月16日,一審被告及びキングジム社の双方と取引関係のある株式会社平野デザイン設計の仲介により,キングジム社商品企画部の a と面談する機会を得た。l がこの席で開発中であるP-touchのコンセプトの概略を説明したところ,キングジム社は興味を示し,昭和62年12月24日には,キングジム社からP-touchに類似する仕様の「電子テープライター概要 (乙55添付資料30)を含む,同社の企画商品3 」点の概要を開示する資料が送られて来るとともに,各商品のコスト見積もりの要請があった。l は昭和63年2月8日付けでキングジム社宛てに見積もり報告を提出するとともに,同年2月9日にキングジム社を訪問し,P-touchの2次試作機のデモンストレーションを行った。その際,キングジム社からP-touchのOEM供給(Original EquipmentManufacturing,相手先ブランドによる供給)の要望が出され(乙55添付資料32 ,販売方法としてOEM供給という選択肢が検討されること )となった。
i は,OEMによるキングジム社製品と一審被告製品が市場に出された場合,両社の差別化を図ることによる開発力の分散を懸念したこと,キングジム社も自社のみによる専売を希望していたこと,一審被告による販売,, 数量は3万台程度であり 独自の販売では採算ラインに乗らないのに対しキングジム社は10万台を提示していること,キングジム社が文具に関する商品分野について非常に強力な宣伝力を有していることなどを考慮した結果,国内販売はキングジム社へのOEM供給のみとし,一審被告ブランドの販売は輸出モデルに集約する旨のP-touch事業化案を一審被告社内で提示し(乙55添付資料37 ,その後のキングジム社からの強い )働き掛けも相俟って,i の上記事業化案をベースとする昭和63年下期短計(短期計画)における商品計画表(乙55添付資料42)が作成され,その計画が一審被告の管掌役員により了承されることとなった。
そこで一審被告の開発設計メンバーは,キングジム社へOEM販売をすることが決定されたことを機に,キングジム社との打合せを頻繁に行い,()。 キングジム社仕様に対応するよう再設計作業 第4次試作設計 に入ったキングジム社は外観デザインとテープカセットの装着位置の変更を要求し,そのため従前の設計を大幅に変更することが必要となったが,昭和63年3月23日に新デザインを確立し,同年4月15日に試作部品の手配を完了し,同年5月7日付けでキングジム社へのOEM供給に関する基本品質仕様書(案)を作成し,同年5月26日付けで U 事業部長の決裁を得た(乙55添付資料46 。)その後,一審被告とキングジム社との間で,昭和63年5月19日付けでOEM供給に係る売買契約が締結された(甲139,乙55添付資料45 。その内容は,一審被告はキングジム社に対し昭和63年10月21 )日までにP-touchのOEM仕様である「電子テープライター」の最初の納入を行うこと,キングジム社は平成元年10月31日までに「電子テープライター」を10万台購入すること,ブラザー販売を通じたキングジム社への納入価格は1台当たり●●円とすること,一審被告及びブラザー販売は上記期間中,国内において同一仕様製品及び意匠類似製品の第三者への販売をしないこと,ただし非日本語仕様の製品については別商標で海外向けとして第三者への販売をすることができること等であった。
オ量産化一審被告は昭和63年6月8日にP-touch第4次試作品の検討会,() , を行い 国内仕様機はキングジム社へのOEM供給 商品商標TEPRA輸出仕様機は一審被告のブランド(商品商標P-touch)での販売予定が報告されるとともに,試作品のテスト結果,問題点とその対策,生産日程等が確認され(乙55添付資料47 ,同年6月9日の販売企画会議 ),。, を経て ラベルライターの商品化が会社として正式に決定された その後第4次試作品の問題点を検討するなどして生産を前提とした量産試作に入り,その後もテープカセットの品質の安定等の問題はあったものの量産化に至り,昭和63年11月1日にはキングジム社から「テプラTR55」との商品名で,P-touchのコンセプトを基礎とする初のラベルライターの国内販売が開始された(価格1万6800円 。)テプラTR55は,キングジム社の強力な販売ルートや,積極的な広告宣伝もあって順調に売上げを伸ばし,その後のラベルライター事業発展につながった。
(3) 日本国内におけるラベルライターの販売状況ア キングジム社の独占販売(平成3年ころまで)キングジム社が昭和63年11月1日に発売したテプラTR55は こ,「すっても安心,ラミネート式」を売り文句とするラミネート式のテープを,()。 使用し このテープはカートリッジ式 TC型 で交換可能となっていたテプラTR55は,キングジム社が文具・事務機器の強力な販売ルートを持っていたこと等に加え,当初は有力な競合品がなかったこともあり,本体・テープカセットとも順調に売上げを伸ばした。本件被告製品(原判決別紙「本件被告製品一覧表1(ラベルライター本体 」及び別紙「本件被 )告製品一覧表2(テープカセット 」記載の各製品)の国内売上高(原判 )決別紙「相当対価算定表(自己実施分 」の表1-1「本件被告製品の売 )上高」参照)は,昭和63年度(昭和62年11月21日〜昭和63年11月20日)は本体●●円・テープカセット●●円,平成元年度は本体●●円・テープカセット●●円であった。
そして平成2年1月には,印字後のテープ自動送りを加えることにより操作性を向上した改良品(テプラTR55R,価格1万6800円)が発売され,その後も後継機種として,上位機種であるテプラTR77(平成3年5月発売,価格3万4800円 ,従来のダイヤル入力方式に替えて )キーボード入力タイプを採用したテプラTR55KB(平成4年6月発売時の商品名はテプラTR66,価格2万2800円 ,被印字テープの幅 )を12ミリから24ミリに拡げたテプラUR55などの開発が進められた。平成2年度の本件被告製品の本体売上げは●●円,カセットテープ売上げは●●円,平成3年度の本体売上げは●●円,テープカセット売上げは●●円であった。
イ 他社の参入(平成4年ころまで)上記のとおり,キングジム社は順調に売上げを伸ばしていたが,平成2年には早くも他社の電子テープ作成機市場への参入に関する情報が入り,平成3年1月には,マックス社が同年5月ころ製品を発表する見込みであることが判明した。一審被告とキングジム社は平成2年から3年にかけて対応を協議し,宣伝広告の実施や新機種開発について打合せを行ったが,平成2年11月には一審被告からキングジム社に対しUR55を一審被告ブランドで販売する可能性が示唆され(乙69添付資料3 ,平成3年1 )月にはUR55は共同開発ではなく一審被告のみのOEM供給とすることが協議された(同添付資料4 。)これに対しマックス社は,平成3年7月1日,セイコーエプソン社からのOEM供給により「マックス社・テープワープロLM-200 (価格 」3万9800円)の販売を開始した。同製品は20ミリ幅テープに印字可能な見出しラベル作成専用のキーボード入力タイプのワープロで,本件被告製品に類似したラミネート方式テープを使用したモデルであり,カタログ中では「ラミネートタイプで丈夫,長持ち 」という売り文句が使用さ 。
れていた(乙69添付資料5・乙112のカタログ参照 。一審被告は平 )成3年9月19日,特許庁に対しマックス社の上記製品の販売を理由に第2発明及び第5発明の出願に係る優先審査を求め(甲49,61 ,両発 )明は平成4年7月17日に出願公告がなされた。マックス社は平成4年10月に第2発明及び第5発明につき付与前異議申立てをしたが,最終的に第2発明及び第5発明は権利化された。マックス社の上記製品はキングジム社の売上げに大きな影響を及ぼすことはなく,その後マックス社は同製品の販売を停止した。
また,平成3年11月15日には,カシオ社が「ネームランドKL-1000 (価格2万6800円)の販売を開始した。同製品は本件被告製 」品とは異なりテープ表面から印字する非ラミネート方式のラベルライターであったが,カシオ社が独自の販売ルートを有していたこともあり,順調に売上げを伸ばしていった。
キングジム社は,文具店を通じた販売ルートにおける販売ではカシオ社に圧勝していたが,カメラ・量販店ルートではむしろカシオ社の後手に回っていた。そのためキングジム社は平成4年6月にはキングジム社とカシオ社の国内シェアが5対5になるおそれがあるとして危機感を強め,同4年5月に行われた一審被告との交渉においてテープカセットの値下げ等の対策を強く求めた。さらに,キングジム社は一審被告に対しセイコーエプソン社が開発・製造した非ラミネート方式ラベルライターを販売する予定であること,その最大の理由は,テープカセットの売上げによる利益が重要であるところ,同社製のテープカセットが非常に安いことにあると説明した。
その後キングジム社は平成4年12月にセイコーエプソン社製の非ラミネート方式ラベルライター「テプラプロSR-606 (価格2万680 」0円)の販売を開始した。同製品は従来のテプラTRシリーズとは互換性のないPROテープカートリッジを用い 「ラベルのレセプター表面で受 ,像層と特殊なインクが一体化するため,文字の落ちにくいタフなラベルが作れる」ことや,ランニングコストが安く済むことなどを売り文句としていたが,他方でテプラTRシリーズ(TR33,55F,66,77)も「信頼のラミネートラベル 「TRシリーズのラベルは,透明フィルムで 」表面を保護する全自動ラミネート式。こすっても水に濡れてもにじみません 」として差別化がなされ,両者は同じテプラのラインナップとして販 。
売された(乙69添付資料13 。)これらの事情により,平成4年度(平成3年11月21日〜平成4年11月20日)の本件被告製品の売上げは本体●●円・テープカセット●●円と好調であったにもかかわらず,平成5年度(平成4年11月21日〜平成5年11月20日)の本体の売上げは,前年度の約3分の1である●●円にまで落ち込んだ。もっとも,テープカセットについては売上げを維持し,平成5年度は●●円,平成6年度は●●円であった。
ウ 他の販売ルートの開拓(平成7年ころまで)「」 カシオ社は平成4年10月に上位機種の ネームランドKL-1200(価格3万4800円)を投入し,その後も平成7年ころまで毎年新モデルを3機種以上投入するなど販売に力を入れた。キングジム社はこれへの対抗上新モデルを投入したが,それらは主としてセイコーエプソン社から供給された製品であり,平成5年以降に一審被告からキングジム社へ供給されたのは平成6年4月ころに発売された低価格製品である「テプラTR22」のみであった。
一審被告は将来におけるテプラシリーズの消滅を危惧し,キングジム社に対し同シリーズの新規モデルを積極的に開発し,販売に協力するよう働き掛けたが,キングジム社はこれを聞き入れず,かえって,キングジム社の常務取締役 r は一審被告の常務取締役s に対し,平成6年6月10日付けでテープライターに関して一審被告が保有する特許権等の包括的な実施許諾を申し入れた(乙75添付資料1 。これに対し一審被告は,上記実 )施許諾をした場合,キングジム社と一審被告間の取引がより減少する可能性が大きくなると考え,同月15日付けで否定的な内容の返答をした(同添付資料2 。)もっとも,以後キングジム社との製品取引は年々減少し,平成10年にはセイコーエプソン社製のテプラプロに対し一審被告の製品はその●%にまで減少し,キングジム社向けの転写テープは,平成15年3月までに生産を終了した(乙85 。)このような経緯もあり,一審被告は販売台数の減少に対応するため新規OEM供給先の開拓に迫られ,平成5年までに三菱鉛筆株式会社に対して販売することに成功し,平成5年1月ころから三菱鉛筆株式会社のラベルワープロ「ラベロ (テープカセットはTX型)が販売されたが,出荷台 」数は思わしいものではなかった。そこで一審被告はさらにキングジム社以外の文具関係企業,日用雑貨関係企業,玩具関係企業等にアプローチすることとし,その結果,マックス社及びタカラ社へのOEM供給(テープカセットは新開発のTZ型)を実現し,平成6年8月ころからマックス社のテープワープロLM-2000「LETARI」が,平成6年10月ころからタカラ社の「ルシール」シリーズが販売された。
以上の結果,本件被告製品の本体売上高は,平成6年度(平成5年11月21日〜平成6年11月20日)は●●円,平成7年度は●●円と回復,, 。 してきたが 平成3 4年度ころの売上高を回復することはできなかった他方,テープカセットについては,平成6年度が●●円,平成7年度が●●円と安定した売上げを得ていた。
エ 自社ブランド製品の国内投入(平成7年以降)テプラTR55が市場に登場した当初は,ファイルの背表紙,見出しなどオフィス向けの需要が中心であったが,オーディオやビデオテープなどのタイトル,持ち物の名前付けにも使えることから,ユーザー層がオフィスから家庭や個人に広がりをみせ,また,パソコンと接続できる機種や似顔絵プリント,アイロン転写が可能なものといった多機能化が進み,幅広い需要を獲得した。
一審被告は,平成7年10月ころから,パソコン接続モデルであるPCラベルプリンタ「P-TOUCH PC (価格3万9800円)の投入 」を皮切りに 自社ブランド製品による国内販売に参入した なお 上記 P ,。,「-TOUCH PC」はラミネート方式を採用しており(テープカセットはTX型 ,一審被告はそのカタログ(乙69添付資料15)に「ブラザ )ーは「P-TOUCH」ブランドでのラベルプリンタ事業を,欧米をはじめ世界各国で展開しており,ラミネートプリント方式など独自の技術に裏付けられた高い信頼性で,圧倒的なシェアを誇っております。1994年末には,累積出荷台数300万台を達成しました 「ラミネートテープ… 。」汎用性の高いテープは透明フィルムで表面を保護。こすっても水に濡れてもにじむことはありません 」と記載し,国内市場への参入に当たりラミ 。
ネート方式の有効性を積極的なセールスポイントとしてアピールした P。「-TOUCH PC」はラベルプリンタ事業における初の一審被告ブランドの導入を目指したもので,出荷台数もわずかなものであったが,平成10年以降はパソコン接続モデルのラインナップを拡充したほか(PT-9,,,,) , 200PC 2500PC 9300PC 1500PC 9500PC平成11年以降はP-touchブランドのラベルライターを投入し(テープカセットはいずれもTZ型 ,本格的な国内市場での浸透を図った。 )そして,一審被告が自社ブランドでラベルライター市場に参入したころには,キングジム社,カシオ社とも逐次新機種を投入するとともにラインナップを拡張し,平成11年当時には企業,家庭用ともほぼ製品が行き渡,。 った傾向がみられ 国内ラベルライター市場は飽和状態気味となっていた市場規模は平成9年は前年比横ばいで推移したものの,平成10年は数量で前年比●%,金額で前年比●%と二桁減となり,実売価格の下落傾向も顕著になった。P-touchブランドも国内的には後発であったことなどから販売が順調ではなく,生産量ベースで見ると,平成10年当時の国内テープライタの生産数量シェア(見込み値)でこそ一審被告が●%と圧倒的なシェアを有していたが(なお,カシオ社は●%,セイコーエプソン社は●%,マックス社は●% ,ブランド別国内出荷台数ではカシオ社が )●%以上のシェアを有するトップブランドであり,次いでキングジム社との序列であって,一審被告は飽くまでOEM供給を中心に展開する企業と位置付けられていた(甲107 。)その後,一審被告ブランドの国内シェアは平成12年の約●%から平成13年の約●%,平成14年の約●%と漸増し,平成15年度の本体台数ベースの国内シェアは,キングジム社のテプラプロが約●%,カシオ社約●%,非ラミネート方式であるM型を含む一審被告の製品は約●%である(甲109 。)なお,株式会社矢野経済研究所の調査(乙35)によると,平成13年度において,ラベルライターとPCラベルプリンターからなる電子文具市場の売上げシェアは,キングジム社(●●)60.8%,カシオ社30.7%,一審被告4.3%(●●)である。
以上のようなキングジム社との関係や市場の動向等を反映し,本件被告製品の本体売上高は次第に低減し,平成8年度(平成7年11月21日〜平成8年11月20日 が●●円 会計年度の区分の変更による移行期 平 ), (成8年11月21日〜平成9年3月31日)を経た平成9年度(平成9年4月1日〜平成10年3月31日)が●●円,平成10年度が●●円,平,, 成11年度が●●円となったが その後は低減傾向にやや歯止めがかかり平成12年度が●●円,平成13年度が●●円,平成14年度が●●円,平成15年度が●●円という水準を維持している。
また,本件被告製品のテープカセット売上高についても,平成8年度が●●円,移行期を挟んで平成9年度が●●円,平成10年度は●●円と低減し,平成11年度は●●円にまでなったが,その後は低減傾向にやや歯止めがかかり,平成12年度が●●円,平成13年度が●●円,平成14年度が●●円,平成15年度が●●円と,ほぼ一定水準を維持している。
オ 本件被告製品の売上高以上のとおり,国内における一審被告のラベルライター事業は,キングジム社によるテプラTR55の発売以降,継続して一審被告に一定の売上げをもたらしており,平成元年から一審被告の代表者をしていた m は同会長であった平成5年当時発刊した著書「ブラザーの再生と進化 価値創造へのあくなき挑戦 (甲110)の中で 「最初から利益を出した《孝行息 」,子 」と題して 「新規事業がことごとく苦戦する中で,当初から割合好調 》,な滑り出しだったのが,1988年に発売を開始したP-touchであ。, る P-touchはテープに熱転写方式で印字をするラベルプリンタで当時としては非常に独創的な商品だった。開発当初から,取扱説明書を読まなくても使えるイージーユース機を目標としていたので,だれにでも使。。 」(), えるという強みもあった それが市場に評価されたのである 25頁「現在,P-touchは国内でもブラザーのオリジナル・ブランドとして売られていて,年間300億円近い売上がある。発売以来の累積売上総額は2000億円を超え,累積営業利益総額も500億円を超えていて,ブラザーの利益体質の重要な一翼を担う事業となっている。そういう意味でP-touchは,最初から利益を出してくれた《孝行息子》なのである (27頁)とP-touchを高く評価している。 。」一審被告による本件被告製品の売上高は,当事者間に争いがないものだけでも,原判決別紙「相当対価算定表(自己実施分 」の表1-1「本件 )被告製品の売上高」のとおり,昭和63年度から平成15年度(移行期を含む)までで,本体合計●●円,テープカセット合計●●円,総合計●●円に上る。
カ キングジム社との係争及び実施許諾前記のとおり,平成4年12月にキングジム社がセイコーエプソン社製の非ラミネート方式ラベルライター「テプラプロSR-606」を販売した後,一審被告とキングジム社との製品取引は減少傾向が続いており,平成10年にはキングジム社の取り扱うラベルライター商品に占める一審被告製品の割合がセイコーエプソン社製に比して著しく少なくなった。そこで,一審被告は,キングジム社が販売するテプラプロは非ラミネートテープに関する構成以外の部分に既存のテプラの構成がそのまま流用されていたことから,結果として一審被告がラベルライターについて保有する特許等が多数使用されていることに着目し,これを理由にキングジム社に対して権利行使をすることにして 平成11年9月 一審被告の知的財産部長 T ,,からキングジム社知的財産室長 t に対し一審被告保有特許の無断使用を指摘し,実施許諾に関する交渉を開始した。
しかし,その後の交渉が進展しなかったことから,一審被告は,一審被告代理人弁護士佐尾重久名義のキングジム社代表者宛て内容証明郵便による平成12年4月4日付け通知書(甲25)をもって,キングジム社がテプラプロなどにより一審被告保有のラベルライターに関する特許権9件(この中には一審原告 X 1の発明に係る第1発明,一審原告らほかの発明に係る第3発明 一審原告ら以外の発明に係る特許第2814692号 キ ,〔〕,〔〕 ングジム警告権利7 特許第2830860号 キングジム警告権利8等が含まれる)等を侵害している旨警告した。
これに対しキングジム社は,第1発明が無効である旨主張したが,一審被告は第1発明は有効である旨回答してこれを争った。また,平成12年9月1日に両者の代理人が直接交渉を行った際には,キングジム社は第3発明,特許第2546196号,特許第2556224号の3件の権利について特許権侵害を認める旨回答した。そこで両者は和解に向けた交渉を進めたが,合意に達するには至らなかった。
以上の経緯を踏まえ,一審被告は司法的解決を選択することとし,平成13年5月2日,東京地方裁判所に対し,キングジム社を債務者として特許権侵害に基づく製造・販売の禁止を求める仮処分を申し立てた(甲26 。この際,被保全権利としては,手続進行の容易性を考慮して,キン )グジム社が前記交渉において特許権侵害を認めていた前記第3発明等の3件を挙げることとした。一審被告とキングジム社は,上記仮処分手続と並行して,訴訟外において和解解決を模索する交渉を行い,●●(省略)キングジム契約に基づきキングジム社が一審被告に対し支払った平成18年6月20日分までのラベルライターに係る実施料は,原判決別紙「相当対価算定表(実施料収入分 」の「表1-1 キングジムからの実施料 )収入」のとおりであり,平成14年以降は1年間に●●円程度である。
キ カシオ社との係争等の経緯一審被告は,キングジム社に対する交渉と並行して,カシオ社に対しても同様の権利侵害を主張し,その結果,●●(省略)というものである。
カシオ契約に基づきカシオ社が一審被告に対し支払った平成18年9月30日分までのラベルライターに係る実施料は,原判決別紙「相当対価算定表(実施料収入 」の「表2-1 カシオ社からの実施料収入」のとお )りであり,平成14年以降は1年間に●●円程度である。
(4) 欧州におけるラベルライターの販売状況ア 販売の開始一審被告は,1958年〔昭和33年〕10月にミシンの輸出販売のための欧州販売統括拠点としてブラザーインターナショナルヨーロッパ(BIE)を設立し,その後タイプライターやプリンタ等,一審被告の製作に係る事務機器の販売を欧州各国に展開していたことから,ラベルライターが日本において製品化された1988年〔昭和63年〕ころには,既に欧州内約15か国において20社程度のBIE子会社による販売網を確立していた。そこで一審被告は上記販売網を通じて欧州におけるラベルライターの輸出販売を行うこととし,日本のキングジム社にOEM供給したテプラTR55をベースに欧州仕様に変更した上で,1989年〔平成元年〕5月ころ,欧州において一審被告ブランドのP-touch(PT-8E)の販売を開始した。
そして一審被告は,欧州における自社ブランドによるラベルライターの販売展開と並行して,販売数量の確保の観点からBIE以外の販売ルートを模索していたところ,当時エンボス加工により硬質プラスティックテープに英数字を刻印するラベル作成機器においてトップのシェアを有し,欧州に強力な販売網を有していたダイモ社との間でOEM取引の話が持ち上がった。両者は1989年〔平成元年〕9月1日付けで一審被告がダイモ,, 社にラベルライターをOEM供給する内容の売買契約を締結し そのころダイモブランドのラベルライター「DYMO3000」の販売が開始された。これにより一審被告とダイモ社の両ブランドの競合によりラベルライター商品の認知度が高まるという相乗効果が生じ,また各国のBIE子会社の営業努力等もあって,欧州におけるラベルライターは順調に立ち上がった。
その後一審被告は,1990年〔平成2年〕6月ころから,それまでのダイヤル入力方式に替えてキーボード入力方式を採用した「P-touch2000」を投入し,本体の販売に伴うテープカセットの需要の発生を販売店に説明して回る販売促進活動等もあって,本体・テープカセットとも順調に売上げが増加していった。また,1989年〔平成元年〕10月ころからダイモブランドについても次期モデルの話が持ち上がり,BIEを介して一審被告とダイモ社との間で1990年〔平成2年〕3月ころから9月ころにかけて,キーボード入力方式を採用する方向で,ダイモブランド次機種の具体的仕様や外観デザインについての具体的な話合いが行われた。
その後,1991年〔平成3年〕後半は後記ダイモ社との係争がありダイモ社への欧州におけるOEM供給が途絶えたが,テープの用途の新たな提案に努めたり,1992年〔平成4年〕に欧州で行われた冬季及び夏季の両オリンピックにおいて「P-touch」製品の紹介活動を行い商品,。 の浸透を図ったBIEの営業販売努力により 安定した売上げを確保したダイモ社は,後記ダイモ契約締結と相前後する1992年〔平成4年〕5月から,非ラミネート方式ラベルライター「DYMO4500」を発売し,また,1994年〔平成6年〕末ころからは,低価格機の「DYMO」。, 1000 を発売するなどして売上げを伸ばした これに対し一審被告も非ラミネート方式であるM型の「P-touch110」を投入するなどして対抗した。
欧州における2003年度〔平成15年度〕の本体台数ベースの市場占有率は,ダイモ社約●%,M型を含む一審被告の製品が約●%,カシオ社約●%である。
イ売上高欧州特許国(海外特許1の指定国であるドイツ,フランス,イギリス,イタリアの4か国)における本件被告製品の売上高は,本判決別紙「本件被告製品の売上高(自己実施分 」の欧州特許国販売欄記載のとおりであ )る。
これらを合計すると,昭和63年度(昭和62年11月21日〜昭和63年11月20日)から平成16年度(平成16年4月1日〜平成17年3月31日)までで,移行期を含め本体分●●円,テープカセット分●●円の合計●●円である。
ウ ダイモ契約締結に至る経緯ダイモ社は,一審被告との間で前記のような次期OEM供給モデルの話合いが行われていたにもかかわらず,1991年〔平成3年〕1月下旬にイギリスのロンドンで開催された文具・事務用品に係る展示会に,一審被告がその製作に全く関与していないラミネートタイプのラベルライター「DYMO4000」のプロトタイプを出展した。一審被告は同プロトタイプの販売予定価格がP-touch2000よりもかなり安価であり,また,BIEのドイツにおける販売関連会社であるブラザーインターナショナルジャーマニー(BIG)がその売上げ・利益の多くをP-touchの販売に依存しており,その影響の大きさを危惧した同社から対応を強く求められたことから,ダイモ社に対する法的対応の可否について検討を開始した。
一審被告は,1991年〔平成3年〕1月当時,P-touch関係の外国出願は,米国で7件が登録になっていたものの,それ以外の国では権利化されていなかったところ,同年3月下旬にDYMO4000のテープカセットサンプルを入手し,特許部においてこれを分析した結果,同テープカセットが当時出願中の欧州出願を侵害する可能性のあることが確認された。そこで一審被告の関係者は,同年5月にドイツに赴き,テープカセットに密接に関係する3件の欧州ないしドイツ出願(?@欧州出願番号EPA●●〔後のダイモ契約権利2・欧州特許●● ,?A欧州出願番号EPA 〕●●〔後の欧州特許●● ,?Bドイツ出願番号DEA●●〔後のダイモ契 〕約権利1・ドイツ実用新案G●● 。なお,上記ドイツ出願?Bは欧州出願 〕?@のドイツにおける分岐出願)についてドイツの出願代理人と対応について検討したところ,ドイツの出願代理人から,上記欧州出願?@及び?Aを基にドイツ実用新案の登録を行えば8週間で登録されるので,これにより当面の防御を行うことができること,上記欧州出願?@及び?Aについて審査促進(早期審査)の申請をすれば一般的に4〜6週間でアクションが出るから,その申請手続を行うこと,ドイツ出願の場合クレームの補正が可能であるためドイツ出願?Bについては侵害品を見てから早期審査の申請手続を行うこと,といったアドバイスがあり,一審被告は同代理人に対しその手続をするよう指示した(乙171添付資料8 。また,一審被告は,上記 )欧州出願?@について,上記欧州出願?A及びドイツ出願?Bとは別に,2件の分割出願(?C欧州出願番号EPA●●〔後の欧州特許●● ,?D欧州出願 〕番号EPA●●〔後の欧州特許●● )及び1件のドイツ実用新案の分岐 〕出願(?Eドイツ出願番号DEA●●〔後のドイツ実用新案G●● )を行 〕うこととし,その旨ドイツ代理人に指示した。
ダイモ社は1991年〔平成3年〕4月ないし5月ころ欧州においてDYMO4000の正式な販売を開始した。一審被告はダイモ社に対する法的対応に向けた準備を行い,同年8月29日及び30日付けで,イギリス及びドイツのダイモ社に対し,ドイツの特許代理人を通じて,DYMO4000が1991年〔平成3年〕8月22日に登録された一審被告のダイモ契約権利1(上記ドイツ出願?B)及び同年9月5日に登録される予定である上記ドイツ出願?Eの各権利を侵害する旨警告した(乙171添付資料12,13 。これに対しダイモ社の特許代理人は,同年9月19日付け )で,ダイモ契約権利1は公知資料(米国特許4419175号及び同4068928号)の組合せにより無効であること,上記ドイツ出願?Bは原出願である上記欧州出願?@(ダイモ契約権利2)と内容が相違しているため出願日の遡及が認められず,現出願の存在により新規性を欠き無効となる旨回答した(乙171添付資料14 。)一審被告のドイツ代理人はダイモ社側から提示された上記公知資料を検討した結果,これらが上記欧州出願?@(ダイモ契約権利2)の審査の段階で引用されていなかったため有効性に疑義が出ることを懸念し,欧州特許庁に対し同出願の再審査を請求した。この際,既に許可通知を受けていた請求項1と4を組み合わせて新しい請求項1にする補正を行った結果,同補正後の上記欧州出願?@について欧州特許庁から特許許可の内諾を得た。
これを受けて同代理人は既に登録されていた上記ドイツ出願?B(ダイモ契約権利1)の請求項を原出願であるダイモ契約権利2の請求項と同じものに補正し,その旨をダイモ社側代理人に通知した(後記ミュンヘン地裁判決〔乙171添付資料15,乙172〕事実及び認定参照。なお,ダイモ契約権利1及び2の内容は,原判決別紙「ダイモ契約権利1(ドイツ実用新案G●●)の構成要件」及び「ダイモ契約権利2(EP●●)の構成要件」参照 。)上記の経過を踏まえ,一審被告は1991年〔平成3年〕10月8日付けでドイツのミュンヘン地裁に対しダイモ社を相手方とする仮差止めの請求を行った。ダイモ社側は緊急性の欠如とダイモ契約権利1の進歩性の欠如を主張して争ったが,一審被告側は緊急性があることと上記権利に進歩性があることを主張し,その結果,ミュンヘン地裁は緊急性の存在と権利の有効性を認めて同年12月18日に販売差止め判決をした(乙171添付資料15,乙172 。一審被告は上記判決でDYMO4000の販売 )を仮に差し止めるための条件として示された130万マルク(約1億1000万円)の供託手続を履行し,その販売を差し止めた。
ダイモ社は上記判決を不服として控訴したが,これと並行して英国ダイモ社は 1992年 平成4年 2月6日付けで一審被告に対しレター 乙 ,〔〕 (171添付資料16)を送付し,一審被告の権利を侵害しない非ラミネートタイプの構成を有するDYMO4500を同年4月から販売するとともにDYMO4000本体の販売を中止することを内容とする和解の申出を行った。一審被告はDYMO4500の構成を検討した結果,同製品がラミネートテープに関する一審被告の権利を実施していないことが確認できたことから,ダイモ社との間で和解交渉を進めることとした。
●●(省略)ダイモ契約に基づく2006年〔平成18年〕3月31日分までの実施料収入は原判決別紙「相当対価算定表(実施料収入)」の「表3 ダイモ社からの実施料収入」のとおりであり,年々減少しているものの2003年〔平成15年〕の実績で年間●●円,2004年〔平成16年 ,200 〕5年〔平成17年〕の実績で年間●●円で,2006年〔平成18年〕3月31日までの総合計は●●円である。
(5) 米国におけるラベルライターの販売状況ア 米国においては,1988年〔昭和63年〕当時,高価な商業用のラベルシステムはあったものの,家庭や事務所においては,エンボス加工により硬質プラスティックテープに英数字を刻印するダイモ社のラベル作成機を使用してラベル作るのが一般的であった。このような状況下において,一審被告は,その販売子会社であるブラザーインターナショナルコーポレーションUSA(BICUSA)を通じて,1988年〔昭和63年〕12月から一審被告ブランドのラミネート方式によるラベルライター「PT-6」の販売を開始し,その後すぐに同じく「PT-8」を導入したが,米国の顧客にP-touchと既存のエンボス機の違いやラミネート方式の優位性が浸透せず,また価格が150ドル近くと高価であったこと,PT-6及びPT-8のテープカセットTC型が高価であったことなどの要因で,当初の販売は全く振るわなかった。
その後BICUSAは大小の企業・事務所に事務機器を販売していたオフィススーパーストア(OSS)向けの販路を開拓し,またMACY’Sのようなデパートや小物店,タイプライターディーラー等にも販路を広げていったが販売は依然として振るわなかった。そこでBICUSAはOEM供給による販路の開拓に乗り出し,1989年〔平成元年〕ころ,クロイ社との間でOEM供給契約を締結し,PT-8をベースとするラミネート方式のラベルライター「KROY DURATYPE200」として販売されることとなったが,それでもこの当時の販売数は月平均約●●個程度であった。
そして一審被告は1990年〔平成2年〕にキーボード入力方式を採用した「PT-10」を米国市場に投入し,その後1994年〔平成6年〕までに相次いでP-touchのバリエーションを拡げ,低価格品から高級機までラインナップを充実させた。また同時期にBICUSAの店舗数が増えるとともに,OSSのチェーン数も増大し,米国顧客がP-touchを目にする機会が増大した。さらにBICUSAは積極的な広告戦略を展開し,巨費を投じてラジオ・テレビ等のマスメディアへの露出度を高め,折しも湾岸戦争が始まりスポンサーとなっていたCNNの視聴率が高まったこともあり,一審被告ブランドP-touchシリーズの米国における認知度が急速に高まった。この当時の広告費は1991年度〔平成3年度〕は●●ドル,1992年度〔平成4年度〕から1994年度〔平成6年度〕にかけては毎年●●ドルであった。他方,クロイ社との間では価格競争が激化するという弊害が生じた反面,クロイ社自身の売上げが大幅に増加するということもなかったことなどから,BICUSAはOEMに注力するのではなく自社ブランドの強化に専念することに方針転換をした。上記の結果,米国における本件被告製品の販売は月平均約●●個の販売数(1994年〔平成6年〕の会計年度)を上げるほどに成長した。
また一審被告は,1995年〔平成7年〕以降,オフィス及び工業用装置向けにTZ型のテープカセットを導入し,また低価格機種である非ラミネート方式のM型製品を投入することで顧客層を拡大した。これに加えてOSS店舗数が更に増大し,会員制のディスカウントショップへの販売拡大など販売チャネルが増えたことも相俟って,2000年〔平成12年〕の会計年度にはBICUSAの月平均販売台数が約●●個を超えるまでに至った。その後も米国における本件被告製品の販売は拡大し,2003年度〔平成15年度〕の本体台数ベースの市場占有率は,非ラミネート方式のM型を含む被告の製品は約●%,ダイモ社約●%,カシオ社約●%である。
なお一審被告は,米国で販売する被告製品の取扱説明書において,実施特許権の一つとして海外特許3の特許番号を記載している。
イ クロイ社との係争クロイ社は2000年〔平成12年〕一審被告を相手方として一審被告が同社の米国特許権2件を侵害しているとして米国連邦地方裁判所(ヴァージニア東部地区,オハイオ北部地区及びニュージャージー地区)に訴訟を提起した。一審被告はこの訴訟対応のため米国弁護士に依頼するとともにディスカバリー(証拠開示)対応等のため●●(省略)米国・欧州その他の国際的な市場で被告製品を販売することが可能となった。
ウ 米国における売上高一審被告の米国における本件被告製品の売上高は,本判決別紙「本件被告製品の売上高(自己実施分 」の米国販売欄記載のとおりである。 )これらを合計すると,昭和63年度(昭和62年11月21日〜昭和63年11月20日)から平成16年度(平成16年4月1日〜平成17年3月31日)までで,移行期を含め本体分●●円,テープカセット分●●円の合計●●円である。
(6) 一審被告からの発明報償の支払等一審原告らを含む第5発明の発明者ら6名は,第5発明に関し,平成6年に,社団法人発明協会愛知県支部から県内の最も優れた7件の発明に授与される「愛知発明賞」を授与され,また「テープ印字装置」に対し名古屋市長。, から平成6年度中部地方発明表彰における優秀賞を授与された 一審被告は一審原告 X 1に対し,上記表彰を受けて,発明特別賞を授与した。
また一審原告 X 1は,本件各発明の実績報償として,原判決別紙「実績報奨の支払状況」記載のとおり,これまでに一審被告から合計20万0900円の支払を受け,同様に一審原告 X 2は,合計19万9300円の支払を受けた。
なお,一審被告は,本訴提起後の平成17年4月12日に第3発明について,同年8月29日に第1発明について,平成18年3月17日に第2発明及び第5発明について,いずれもこれらの特許権につき特許法107条に定める特許料(いわゆる「年金 )を支払わないこととした。その理由は,第 」1発明は「自他社共に不実施であり,今後も実施する可能性が極めて低い」(乙147 ,第3発明は「権利無効となる資料が見つかったため (乙1 )。 」46 ,第2発明及び第5発明は「ほぼ最終年であり,自他社が不実施であ )る (乙148 ,というものであった。そして,上記のとおり一審被告は 。」)特許料を不納付としたから,上記の各権利は,特許法112条4項により,以下のとおり,本来の存続満了日前に消滅した。
・ 第1発明 権利消滅日:平成17年12月13日(本来の存続満了日は平成18年11月14日)・ 第2発明 権利消滅日:平成18年7月17日(本来の存続満了日は平成19年11月20日)・ 第3発明 権利消滅日:平成17年7月7日(本来の存続満了日は平成19年12月10日)・ 第5発明 権利消滅日:平成18年7月17日(本来の存続満了日は平成19年12月21日)2 本件発明報酬請求と特許無効事由との関係(1) 一審被告は,海外特許を含む本件各特許権には無効事由があるから一審原告らには一審被告に対し本件職務発明報酬請求をすることは許されないと主張し,これに対し一審原告らは,特許権を取得した一審被告が職務発明報酬請求訴訟において無効事由があることを主張することは許されないし本件各特許権には無効事由は存在しないと反論するので,以下,検討する。
(2) 本件職務発明報酬請求は,前記のとおり,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条3,4項(旧35条3,4項)に基づく請求(海外特許は同各項の類推適用,実用新案権は同各項の準用)であり,同3項によれば「従業者等は,契約,勤務規則その他の定により,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ,又は使用者等のため専用実施権を設定したときは,相当の対価の支払を受ける権利を有する」とされ,同4項によれば「前項の対価の額は,その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない」と各規定されているところ,前記1(1)記載のとおり,一審被告の従業員であった一審原告ら及び他の発明者は,第1発明については昭和61年7月30日ころに,第2発明以下については昭和62年7月10日ころに,それぞれ特許を受ける権利として使用者たる一審被告に譲渡し,これを受けた一審被告は,自らの責任において日本国特許庁・欧州特許庁・米国特許商標庁に特許出願をし,その結果,前記のとおり,第1発明・第2発明・第3発明・第5発明については日本国において,海外特許1については欧州(ドイツ,フランス,イギリス,イタリア)において,,() 海外特許2及び3については米国において それぞれ特許権 本件各特許権を取得しているのであるから,一審原告らは一審被告に対し,上記譲渡日時ころ「特許を受ける権利」としての本件各特許権を譲渡し,その譲渡契約の時点で「相当額の発明報酬」の支払を求める債権を取得したことになる。
上記のことからすると,発明者たる一審原告らから「特許を受ける権利」の譲渡を受けた一審被告が,同権利を特許権とすべくその後自らの責任において出願し取得した特許権につき,職務発明報酬請求訴訟において上記特許権につき無効事由があると主張することは,譲渡契約時に予定されていなかった事情に基づき譲渡契約の効力を過去に遡って斟酌しようとする点で背理であり,譲渡人たる従業者が特許無効事由があることを知りながら譲渡した等の特段の事情がない限り,許されないと解されるが,他方,上記職務発明報酬債権は「相当額」の支払を内容とするものであって,相当額の算定に際しては,上記特許を受ける権利ないしその発展的権利としての特許権により譲受人たる一審被告が現実に取得した利益を斟酌してなされるものであるか,, ら 相当額算定の一事情として特許権の無効事由を考慮することは許されると解される。
,「 , 一審被告は 要旨 特許に無効事由が存在することが明らかであるときはその特許権に基づく差止め,損害賠償等の請求は,特段の事情がない限り,権利の濫用に当たり許されない」とした最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決 民集54巻4号1368頁及び平成17年4月1日から施行 本 () (件には適用がない)された特許法104条の3第1項が「特許権又は専用実施権侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者又は専用実施権者は,相手方に対しその権利を行使することができない」と定めていること等を根拠に,職務発明報酬対価請求は特許権に無効事由があるときは許されない等と主張するが,上記判例及び法条は,その表現からして明らかなように,特許権者が第三者に対して差止め又は損害賠償請求権を行使する場面に適用があるのであって,本件のような職務発明報酬支払請求権を行使する場面に適用があるものではないから,一審被告の上記主張は失当である。
のみならず,特許法は,国内特許については,登録により成立した特許権の消滅事由につき,特許権自体が内包する瑕疵に基づく事由としては特許庁による無効審決の確定(特許法125条)しか定めておらず,それ以外の消滅事由はいずれも特許権の瑕疵とは無関係な事由(存続期間の満了〔特許法67条 ,特許料の不納付〔特許法112条4項 ,相続人の不存在〔特許法 〕〕76条 ,特許権の放棄〔特許法97条1項 )にすぎないのであって,現実 〕〕に無効審決が確定するまでは,その存続中,当該特許発明実施(許諾又は禁止)する権利を専有することができる(特許法68条)から,たとえ特許権に無効事由があったとしても,当該特許権の行使の結果生じる独占の利益を享受できることは当然のこととして許容されるのである。そして,特許法旧35条3項及び4項の趣旨が,従業者等が,特許を受ける権利等の譲渡時において,当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにしたものであることに鑑みれば,当該特許権を実施して現に得た利益について,特許権に無効事由があるからといって上記使用者等が得るべき発明の独占実施による利益から殊更に除外し,これを使用者のみに留保させることを正当化できる理由はないというべきである。したがって,職務発明報酬の対価額算定という場面においては,使用者等が有効に存続する特許権を現に実施して利益を得ている場合には,無効事由が存在するためおよそ独占の利益の発生を考慮できないような極めて例外的な事情のない限り,当該利益には特許権に基づく上記利益を含むと推認すべきである。
有効な特許権の存在を前提にこれを実施してきた使用者が,職務発明報酬対価請求訴訟を提起されるに至って初めて無効事由の存在を主張して当該利益の従業者への配分を免れようとすることは,前記特許法旧35条3項及び4項の趣旨のみならず禁反言の見地からも到底容認できるものではない。
もっとも,特許権の通常実施権設定交渉(ライセンス交渉)を行う場面等においては,相手方から無効事由の存在を指摘されるなどして実施料が減額されたり,ライセンス交渉自体が拒絶されることがあり得るところであり,したがって独占の利益を算定する前提としての仮想実施料率を決する場面においては,無効事由の存否がその多寡に影響を与えることがあり得るということはできる。したがって,原判決が本件各特許権の無効事由について判断したことは,そのような場面において無効事由の存在を指摘できるという限度において正当ということができる。しかし,ライセンス交渉等の場面における無効事由の主張は,いざ交渉が決裂した場合に双方から提起されるかもしれない特許権侵害訴訟ないし無効審判において無効判断がなされる可能性があることを指摘するという,いわば仮定的・暫定的なものにすぎず,しかも無効審判手続における訂正の手続等,制度的にも無効事由を回避する手段が留保されていること等を考慮すると,無効事由の指摘自体,その根拠が確定的とまではいい難い場合もあり得る。これらの事情に鑑みれば,無効事由の有無に関する事情は,仮想実施料率を認定するに当たり総合考慮すべき諸事情の中の一要素となり得るとしても,その影響を過大視することはできない。
なお,前述した海外特許1,2,3は日本国特許ではなく,その無効事由の有無及び無効事由を判断することができる機関(裁判所か特許庁かその双方か等)は特許権が付与された各国法により決せられるが,上記のような外国特許であっても,本件のような職務発明報酬対価請求においては日本国特許法旧35条3項,4項が類推適用されるべきことは,原判決記載のとおりである(最高裁平成18年10月17日第三小法廷判決・民集60巻8号2853頁 。)(3) そして,本件全証拠によっても,本件各特許権の譲渡人たる一審原告ら及び他の発明者において「本件各発明に特許無効事由があること」を知りながらこれを一審被告に譲渡したという事情は認められないから,以下においては,本件訴訟における当事者双方の主張立証の経緯に鑑み,前述した仮想実施料率認定ひいては特許法旧35条にいう「相当額」認定の資料として,以下,本件各特許権の無効事由の有無について検討する。
ア第1発明(ア) 第1発明に無効事由があると認めることはできない。その理由は以下に述べるとおりである。
(イ) 一審被告は,第1発明は乙7の1刊行物,乙7の2刊行物,乙18刊行物,乙20刊行物を組み合わせることにより容易に発明できるから無効である旨主張する。
この点,乙7の1刊行物には 「…サーマルヘッド23はプリンタ1 ,3内に収納されており,セラミック基板24上に複数の発熱体…が配置,, されており この発熱体のいずれかに…電流が流れると発熱体が発熱しテープ2上にその発熱体に対応する箇所に印字が行われる。発熱体…は入力キーを押圧することにより,その文字に対応した文字を印字するた,」() ,, めの発熱体であり … 3頁左下欄1行〜11行 乙18刊行物には「第1図は本発明の一実施例を示す構成図である。同図において1は熱を与えると発色する感熱紙を使用したテープ状のプリンタ用紙,2はワードプロセッサ本体,3は英数字・かな文字等を入力するキーボード,4は…サーマルヘッド,5は…カッター,6は…液晶表示部,7は,…切断されたテープ,8は…原稿を示す。…テープ状のプリンタ用紙は細長い紙テープのほか裏面に糊をつけ,かつ糊不着性のシールで保護されたテープを使用することもできる (2頁左下欄5行〜右下欄3行 , 。」)乙7の2刊行物には 「…プリンタ8は転写インキを担持するインキリ ,ボン…等の転写インキ担持体を持つもので,中央処理装置4によって制御される。中央処理装置4は入力装置1から入力された被転写画像の信号を処理して被転写画像の左右を反転させた転写画像を作成し,その転写画像に基づいてプリンタ8を制御する。プリンタ8の駆動により,転写紙基材13上に被転写図柄14が印刷された転写紙12が形成され。」(),, る … 2頁右下欄2行〜10行 などの記載があり 乙20刊行物乙152刊行物,乙153刊行物には離型促進剤に関する記載がある。
これによれば,乙7の1刊行物,乙18刊行物は,単に発熱体(サーマルヘッド)を発熱させることによりテープに印字する技術を開示するにとどまるものであって,インクリボンを介して印字することや,文字・記号等の形状を反転させた鏡像を印字してレタリングテープを製造することの記載ないし示唆はない。また乙7の2刊行物には,インクリボンを用いて左右を反転させた転写画像を作成することが開示されているが,これにより転写紙を作成することが開示されるにとどまるのであって,テープを作成することの記載ないし示唆はない。
そうすると,単にテープに印字するにすぎない乙7の1刊行物,乙18刊行物に開示された技術において,乙7の2刊行物に開示された左右を反転させた転写画像を作成するという技術を適用することが直ちに容易であるということはできないから,第1発明につき,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に発明をすることができたということはできない。
なお一審被告は,第1発明に無効事由があることの根拠として異議決定・拒絶査定不服審判の経緯を挙げ,また,乙20刊行物のような離型促進剤に関する技術や第1発明に係る他の構成が従来知られていたものであったとして刊行物の存在を挙げるが,これらを考慮したとしても,上記認定が左右されるものではない。
(ウ) また一審被告は,第1発明は出願前に公知であった旨主張するところ,一審被告が指摘する受容性調査においてコンセプトシート(乙2の2)が開示された具体的な態様は一切不明であるし,また,上記コンセプトシート自体は第1発明のコンセプトを開示するものであるとしても,第1発明の具体的構成を明らかにするものということはできないから,その開示をもって第1発明が出願前に公知であったということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(エ) また一審被告は,第1発明は冒認による無効事由がある旨主張するが 前記1に認定した第1発明の経緯に照らせば 第1発明は一審原告 X ,,1のみが発明者であると認められる。そして,一審被告が一審原告 X 1から第1発明につき特許を受ける権利承継し,その後一審被告が特許出願をしたものであることは前記1のとおりであるから,第1発明は特許法123条1項6号の定める「その特許が発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利承継しないものの特許出願に対して。」。 されたとき との無効事由に該当するものでないことは明らかであるしたがって,一審被告の主張は採用することができない。
イ第2発明(ア) 第2発明に無効事由があると認めることはできない。その理由は原「」( ) ,( ) 判決 事実及び理由 第3 当裁判所の判断 2(2)イ 190頁以下のとおりであるから,これを引用する。
(イ) これに対し一審被告は,乙11の1刊行物を主引用例とした場合における原判決の相違点の認定に誤りがある旨主張するが,乙11の1刊行物の「台紙」に,?@構成要件2Eが規定する「第1のテープの背景となる」点が明示的に触れられていない点,?A「両側に設けられた粘着剤層」及び?B「その粘着剤層の片側に予め粘着された剥離紙」に相当する構成が開示されていない旨の原判決の認定,及び乙11の1刊行物には,, 反転印字が開示されていない旨の原判決の認定は いずれも相当であり相違点の認定に誤りがあるということはできない(なお,上記?@の構成については,乙11の1刊行物の記載上,明示的ではないとしても自明のことであるとみる余地はあるが,この点は上記判断を左右するものではない 。。)したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) また一審被告は,乙11の5刊行物を主引用例とした場合の原判決の判断について,乙88刊行物の記載内容に鑑みれば,第2発明と乙11の5刊行物との相違点である「印字機構,テープ送り機構及びリボン巻取機構を内部に収容するハウジングを含む」点及び「第1のテープに第2のテープを圧着するとともに,ハウジング外へ排出する」点を容易想到でないとしたことは誤りである旨主張する。
しかし,乙88刊行物に記載された発明は熱転写型プリンタ用テープ収容カセットに関するものであるのに対し,乙11の5刊行物に記載された発明は印刷業者における印刷を予定し,感圧接着ラベルをいわば工業的に生産する技術に関するものであって,両者は印刷技術という点で共通性はあるものの,対象とする技術分野は大きく異なるのであって,乙88刊行物に記載されたプリンタにおける印字機構等をハウジング内に収容し,テープをハウジング外に排出する技術を乙11の5刊行物記載の発明に適用することが容易であるということはできず,第2発明が乙11の5刊行物に基づき容易想到とは認められない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(エ) さらに一審被告は,多数の公知文献を挙げて,第2発明は慣用技術,, から構成されており 個々の技術に新規性進歩性はない旨主張するがこれら公知文献は第2発明の構成の一部を個々的に開示するに止まり,必ずしも第2発明の全構成要件相互の組合せを開示・示唆するものということはできないから,これらの公知文献の存在をもって第2発明が容易想到であると認めることはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
ウ第3発明第3発明には無効事由があると判断する。その理由は原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(2)ウ(192頁以下)のとおりである )から,これを引用する。
これに対し一審原告らは,乙134刊行物は特許査定に至る段階でテープ印字装置との組合せにおいて考慮され尽くしている旨主張するが,そのような審査段階における事情は上記判断を左右するものではないから,一審原告らの上記主張は採用することができない。
また一審原告らは,マーリンエクスプレスは一律にベースラインで揃うように文字を印字するという装置であるのに対し,第3発明はユーザーの嗜好に合わせて多様な印字書式を実現しようというものであり,そのため第3発明では印字素子列の範囲で小さいサイズの文字を上下に寄せて印字できるのに対し,マーリンエクスプレスではそれができない旨主張する。
しかし,第3発明は,センタ印字モードと片側揃えモードとに変更する印字位置変更手段を設けたものではあるが,それ以上に多様な印字書式を実現する構成を備えたものではないし,また,片側揃えモードは「印字テープの幅方向に片側に寄せてキャラクタ列の印字を行わせる」と規定するに止まり,印字素子列の範囲で小さいサイズの文字のキャラクタ列を上下に寄せて印字できるものと認めることはできない。そうすると,一審原告らの主張する事情が前記判断を左右するものということはできず,一審原告らの上記主張は採用することができない。
エ第5発明(ア) 第5発明に無効事由があると認めることはできない。一審被告は,乙13の5刊行物,乙13の4刊行物等に基づき容易に想到することができる旨主張するが,以下に述べるとおり採用することができない。
(イ) 乙13の5刊行物の記載と,乙13の5刊行物を主引用例としてこれを第5発明と対比した場合の一致点及び相違点は,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(2)エ(ア)及び(イ)(195頁,197 )頁以下)のとおりである。
この点,乙11の5刊行物には 「透視性を有する連続基材に,裏返 ,しパターンの反転した像を印刷する印刷機構と,前記連続基材を送る送り機構とを含み,連続基材の印刷面に,透明なフィルムを支持体とした剥離紙付き両面粘着テープを貼り合わせる装置」の発明(乙11の5発明)が開示されているものと認められる。上記装置の「透視性を有する連続基材に透明なフィルムを支持体とした剥離紙付き両面粘着テープを貼り合わせ」たものは,同刊行物に「本発明は印刷をほどこした感圧接着ラベルの印刷面が,該ラベル表面に露出しない事を特徴とする感圧接着ラベルに関する。更に詳しくは,連続基材の一方の面にシール印刷機において印刷をほどこし,印刷面にあらかじめ剥離層上に塗布した粘着層を該シール印刷機上で重合し,しかる後に感圧接着ラベルに加工する事を特徴とする感圧接着ラベルに関する(2頁左上欄17行〜右上欄 。」4行)と記載されるとおり,いわゆるシールなどの感圧接着ラベルであって,被着体に接着することを予定されたものである。したがって,乙11の5発明は,被着体に接着することを予定されたシールなどの感圧接着ラベルを製造する装置に関するものということができる。
,, 「, , これに対し 乙13の5刊行物には本発明は 印字方法に関して裏面より印字して表面から判読可能な印字用紙の表面を透明なプラテンに接面させ,該印字用紙の裏面に逆文字の活字ブロックで印字することにより成り,その印字装置に関しては,印字用紙の送り出し装置及び引取り装置,プラテン,活字ブロックを備える印字装置において,文字の読み取り側に透明なプラテンを,そして反読み取り側に逆文字の活字ブロックを配して成るもので,印字と同時にその印字を判読できるようにして印字結果に即時対処可能とする…」(1頁右欄13行〜2頁左上欄3行) 「上記印字用紙1は,活字ブロックの形式との関連で定まるが, ,裏面に印字して表面から読みとれるものであれば特に制約はない。インクリボン,インクジェット等の裏面の印字が表面にて発色しない形式にあっては,印字用紙は半透明のものが採用され,印字が加圧あるいは加熱による形式のものにあっては,裏面での印字が表面で発色する感圧記録紙あるいは感熱紙がそれぞれ採用される 」(2頁左上欄下2行〜右上 。
欄6行)との記載がある。これら記載によれば,乙13の5刊行物に記載された発明は,プラテンを透明のものとし,裏面より印字して表面から判読可能な印字用紙の裏面に逆文字を印字することにより透明のプラテンを通して印字と同時にその印字を確認できるようにするとの作用効果を奏する点に特徴があるものと認められ,その際,印字用紙として半透明のものが採用されることも記載されているが,これは透明のプラテンを通して印字を確認できるようにするとの作用効果を奏するためのものと理解できるにとどまり,更に印字用紙の裏面に粘着層などの層を設け,被着体に接着することは記載も示唆もされていない。
そうすると,乙13の5発明と乙11の5発明とは,透視性のある印刷媒体に,印刷面の反対側から正像として認識できる反転した像を印刷するという点で共通するとしても,単に,透明のプラテンを通して印字を確認できるようにするとの作用効果を奏するための印字用紙を用いることを示すにとどまる乙13の5発明において,被着体に接着することを予定されたシールなどの感圧接着ラベルを製造する装置に関する乙11の5発明を適用することが容易であるということはできない。
したがって,乙13の5刊行物記載の発明において印字面に両面粘着テープを貼り付けることは容易に想到できるものではない。
,,, (ウ) 次に 乙11の5刊行物を主引用例として検討すると 第5発明は記録装置本体がハウジングを備え(構成5A ,搬送手段が記録媒体を )ハウジング外へ送り出す(構成5B)ものであって,ハウジング外へ送り出される記録媒体を当該記録装置の使用者が前方から見た側の面を表面としたとき,記録手段が記録媒体の裏面側に配設され,記録媒体の裏面に記録材による記録が行われる(構成5C)のに対して,乙11の5刊行物には,記録装置本体のハウジングの記載ないし示唆がなく,乙11の5刊行物記載の発明とはハウジングの有無において相違するものと認められる。
そして,第2発明について説示したように,仮に乙88刊行物,乙11の2刊行物,乙13の4刊行物等に記載された,一般使用者が卓上等において使用するプリンタにあって,印字機構等をハウジング内に収納し,テープをハウジング外に排出する技術が従来周知のものであるとしても,これを印刷業者における印刷を予定し感圧接着ラベルをいわば工業的に生産する技術に関する乙11の5刊行物記載の発明に適用することが容易であるということはできない。
,,, したがって 乙11の5刊行物を主引用例としても 第5発明につき当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
(エ) さらに,一審被告は,乙13の4刊行物を主たる引用例として,第5発明の進歩性欠如を主張するので,この点について検討する。
a 乙13の4刊行物には,以下の記載がある。
・ 「図2は外観図である。…また,図3の破線で示すように,裏面の蓋をあければテープ状に巻かれ,その裏面には接着剤がついているプリント用ラベル紙 20(カセット内に収納 ,このラベル紙を送 )り出すローラー 21,印字するためのプリンターヘッド 22 が配置され,ここを通って印字されたラベル 9が出てくる (3頁左上欄8。」行〜19行)・ 「透明テープベースにすれば,添付する物体の表面に直接印刷してあるように見える (3頁右上欄17行〜19行) 。」・ 「印字の色は何色でもよく,バックカラーも自由である (3頁 。」左下欄3行〜4行)・ 第2図,第3図は次のとおりである。
なお,乙13の4刊行物には,ラベル紙20の裏面に反転印字をすることは明記されていない。
b 上記のように,第3図には,テープ状に巻かれたラベル紙 20 の内面側にプリンターヘッド 22 が配置されるように記載されているのに対し 第2図では 第3図と同じく装置上方に送り出されたラベル紙 20 ,,の手前側に文字が見えることからすると,第3図においてプリンター「」 ヘッド 22 が配置されたラベル紙 20 の内面側が 接着剤がついているラベル紙 20 の裏面なのか,直ちには判断し難い。
ここで,仮にラベル紙 20 の内面側を裏面とすると,露出した粘着面に印字を行うことは考え難い。
また,内面側,外面側のいずれが裏面であるにせよ,ローラー 21でラベル紙 20 が送られること,送り出されたラベル紙 20 を取り扱う際に粘着面が露出していると取り扱いが困難であることからすると,粘着面が露出することは考えにくいから,裏面には剥離紙が設けられると考えるのが相当である。そうすると,裏面に印字するとは,剥離紙の表面に印字することになり,無意味といわざるを得ない。
この点一審被告は,粘着剤に印字できることはUSP4068028号公報(乙19の2刊行物)に開示されている旨主張するが,上記のように,剥離紙が設けられているとすれば,乙19の2刊行物に開示された技術の適用を論じる余地はない。
以上によれば,ラベル紙 20 の内面側にプリンターヘッド 22 が配置される第3図を前提としても,内面側が表面であり表面に反転文字ではなく通常の文字が印字されるものであって,第2図は,単に印字の様子が見やすいよう表面を手前にして記載したものにすぎない可能性が高く,乙13の4刊行物には,テープ裏面に反転印字をする技術が開示されているとまではいえないから,乙13の4刊行物に開示された発明に,乙11の5刊行物に開示された発明等を組み合わせて,第5発明のように構成することは,当業者にとって容易ということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
オ 海外特許1海外特許1には,以下に述べるとおり,無効事由があると認めることはできない。
(ア) 海外特許1の内容(補正後)海外特許1の構成要件に関する原判決の認定は 補正前の公開公報 甲 ,(20の7)の内容に基づくものであり,誤りである。海外特許1の特許公報(乙155)によれば,海外特許1の正しい内容は以下のとおりである。
・ 請求項17A’ 以下の要素を有するテーププリンター7B’ 実質的に透明な記録媒体(70)を搬走路に沿って搬送する,,,,,, ための手段 (76 99 100 112 114 116118,120,123,124,132)と,7C’ 記録媒体の,装置オペレーターから離れた側に隣接して,インクリボン(74)を移送するための手段と,7D’ 前記記録媒体(70)のオペレータから離れた側に,前記() (, インクリボン 74 を用いてプリントする記録手段 72174)と,7E’ 前記プリントは,使用時オペレーターに正規に現れるように,左右に反転されて遂行されるべく制御されることと,7F’ 両面粘着テープ(102)を,記録媒体(70)の前記プリント側に貼着するための手段 (99,100,102,104,106,112, 114,116,123,124。)・ 請求項27G’ 更に以下の要素からなる請求項1に従うテーププリンター7H 前記装置 12 の一区画において前記媒体搬送手段 7 ’() (6,99,100,112,114,116,118,120,123,124,132)及び前記記録手段(72)の前方に配置され,前記記録手段によって記録される前記イメージ(204)をあらわすデータを入力するための,オペレーターによって制御されるデータ入力手段・ 請求項37I’ 請求項1または2に従うテーププリンターで,7J’ 前記搬送手段(76,99,100,112,114,116,118,120,123,124,132)は,前記記録テープを前記装置本体(12)の横方向に搬送するのに有効である。
・ 請求項47K’ 請求項3に従うテーププリンターで,7L’ 前記テープ搬送機構(76,99,100,112,11,,,,,,), 4 116 118 120 123 124 132 は前記記録テープ(70)を,使用中のオペレーターにより見られる左側方向に搬送する。
・ 請求項57M’ 更に以下の要素からなる,先の任意の請求項に従うテーププリンター7N’ 前記記録テープ(70)を切断するための切断機構であって,その機構は,前記搬送通路に沿う位置で,前記記録テープ 70 の搬送方向にてみられるように 前記記録手段 7 () , (2)の下流に配置されている。
・ 請求項67O’ 更に以下の要素からなる,先の任意の請求項に従うテーププリンター7P’ 前記搬送方向に沿って前記記録手段(72)の下流に配置され,粘着テープ(102)を,前記左右に反転されたイメージ(204)が記録されている記録テープ(70)の記録部分に重合するための一対の押圧ローラー(99,100)であって,その両ローラーは,記録テープの前記記録部分および重合されている前記粘着テープが両ローラー間を通過する際に,両者間に圧力挟持をもたらし,それにより,前記記録部分と前記粘着テープとが相互に固着される。
・ 請求項77Q’ 請求項6に従うテーププリンターで,7R’ 前記テープ搬送機構(76,99,100,112,11,,,,,,), 4 116 118 120 123 124 132 は前記一対の押圧ローラー(99,100)と,その押圧ローラーの少なくとも一方を回転するための駆動源とからなり,’,, (,), 7S 前記装置は 更に 前記押圧ローラー 99 100 を前記圧力挟持が確立される第1の位置と,前記押圧ローラーが相互に離間する第2の位置とに,選択的に配置する切換手段(112,114,116,122,142 。)・ 請求項87T’ 請求項7に従うテーププリンターで,7U’ 前記粘着テープ(102)が,基材(107)と,その基材の両面に形成された2つの粘着層(108,110)と,その2つの粘着層のうち,前記記録テープの記録部と前記バッキング(両面粘着)テープとが互いに重合された時に,前記記録テープ(70)から離れた一方の粘着層上に設けられ剥離層(111)とからなり,7V’ 前記装置が,更に,前記媒体搬送通路に沿う位置で,前記記録手段(72)の下流に配置された切断機構からなり,その切断機構は,前記記録テープと前記バッキングテープの双方を切断するための完全切断刃(152)と,前記バッキングテープ(剥離層)のみを切断するための部分切断刃(154,156)とからなる。
(イ) 新規性a 一審被告は,海外特許1には欧州特許EP319209号又は欧州特許EP●●号(ダイモ契約権利2)との関係で新規性欠如の無効事由がある旨主張するので,以下この点について判断する。なお,後記3(2)イ(カ)のとおり,海外特許1の請求項(補正後)7及び8は本件被告製品において実施していないものと認められるので,以下においては請求項1〜6の新規性の有無についてのみ判断する。
b まず,ダイモ契約権利2(欧州特許EP●●号)との関係における,(), 新規性について検討するに ダイモ契約権利2の明細書 ●● には少なくとも海外特許1の請求項1の7D’の構成(前記記録媒体のオペレータから離れた側に,前記インクリボンを用いてプリントする記録手段)は開示されていないから,ダイモ契約権利2によって海外特許1の請求項1〜6が新規性を喪失する余地はない。
したがって,ダイモ契約権利2との関係において海外特許1の新規性がない旨の一審被告の主張は,その余を検討するまでもなく,採用することができない。
c 次に,欧州特許EP319209号との関係における新規性について検討する。
この点,海外特許1の出願日は1988年〔昭和63年〕10月27日であり,優先権主張日は1987年〔昭和62年〕10月31日(実願昭62-167673号・実開平1-72361号の出願日,乙77 ,1987年〔昭和62年〕12月21日(第5発明の出願 )日,乙78)であるのに対し,欧州特許EP319209号の出願日は1988年〔昭和63年〕11月25日,優先権主張日は1987年〔昭和62年〕11月28日(実願昭62-181307号・実開平1-85050号の出願日,甲2の7)である。
このうち,海外特許1の優先権主張の基礎とされた上記実願昭62-167673号(実開平1-72361号)の明細書(乙77)には,少なくとも海外特許1の請求項1における7D’の構成(前記記録媒体のオペレータから離れた側に,前記インクリボンを用いてプリ)( , ントする記録手段 が開示されておらず 乙77の第5図においては記録媒体のオペレータ側にインクリボンを用いてプリントする記録手段があるのみである ,これを同請求項との関係で優先権主張の基礎 )とすることはできないし,また同請求項2〜6は同請求項1の従属項であるから,結局のところ,上記実願昭62-167673号(実開平1-72361号)の優先権主張は,海外特許1の請求項1〜6との関係で意味を持つものではない。
,(「」。 ) また 欧州特許付与に関する条約 以下 欧州特許条約 という87条(4)は,最先の先の出願と同一の対象についてなされた後の出願についてのみ優先権の効力を認めるものであるから,同一出願者による更に先の出願において後の出願に係る主題が開示されていた場合には,当該更に先の出願に既に開示されていた主題に関する限り,優先権の主張は無効になるものと解される。
そして,特願昭62-292729号(発明の名称「反転印字を行うテープ印字装置 ,出願人 一審被告,出願日 1987年〔昭和6 」2年〕11月19日)の明細書(乙156)には,海外特許1の請求() , 項1〜6の構成が開示されておりこの点は当事者間に争いがないしたがって,これより後に出願された,海外特許1に係る上記第5発明に基づく優先権主張及び欧州特許EP319209号に係る上記実願昭62-181307号(実開平1-85050号)に基づく優先権主張は,いずれも最先の先の出願によるものということはできないから,欧州特許条約87条(4)に該当せず,いずれも無効といわざるを得ない。
そうすると,欧州特許EP319209号との関係における海外特許1の新規性は両特許の現実の出願に基づき判断されることになるから,欧州特許EP319209号の明細書に海外特許1の請求項1〜6の構成が開示されていたとしても,これにより先に現実の出願がなされている海外特許1の請求項1〜6の構成に係る発明が新規性を欠くことにはならない。
したがって,欧州特許EP319209号との関係において海外特,。 許1の新規性がない旨の一審被告の主張も 採用することができない(ウ) 進歩性一審被告は,海外特許1には乙11の5刊行物及び乙13の5刊行物の存在から進歩性が否定される旨主張するが,海外特許1に対応する国内特許である第2発明及び第5発明に関して前記イ及びエに説示したところに照らし,採用することができない。
カ 海外特許2海外特許2に無効事由があると認めることはできない。このことは,海外特許2に対応する国内特許である第2発明及び第5発明に関して前記イ及びエに説示したところに照らして明らかである。
これに対し一審被告は,海外特許2の請求項2〜8,11及び12の各発明は,乙11の5刊行物を主たる引用例として新規性又は進歩性を欠如する旨主張する。
しかし,海外特許2の上記各発明は,印字手段(構成8C等)を備えるテープ印字装置(構成8A等)であるところ,一審被告の提出に係る u 鑑定意見(乙191)が 「…海外特許2の明細書には,印字手段を構成す ,る構造としてサーマルプリントヘッド172とプラテンローラ及びプリントリボン174からなる印字部114と,印字する画像の向きや順番を制御するCPU,ROM,RAM等を含むコントロールシステムが記載されているから,構成要件8Cの印字手段は,これらのもの及びその均等のものに限定解釈される (29頁訳文1行〜5行)と述べるとおり,海外特 。」許2の印字手段は上記のとおり限定解釈されるべきである。これに対し,乙11の5刊行物に開示された技術は,フレキソ,オフセット,凸版,グラビア等の通常シール印刷に用いられる一般的な意味での印刷を予定したものと認められるから,この点において両者は相違する。そして,乙11の5刊行物には 「全ての実施例にわたり,印刷装置は通常シール印刷に ,用いられる,フレキソ,オフセット,凸版,グラビア等その他あらゆる方式が可能である…」と記載されているものの,当該記載は,通常シール印刷に用いられるフレキソ,オフセット,凸版,グラビア等の方式が可能であることを開示するに止まり,あらゆる印字方式が可能であることまでを示唆するものではない。
そうすると,インクリボンとサーマルヘッドを備えた印字機構が,乙83刊行物,乙11の1刊行物,乙88刊行物に開示されるとしても,これらに開示される印字機構を乙11の5刊行物記載の発明に用いて左右反転印字を行うことが自明であるということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
キ 海外特許3。, (ア) 海外特許3に無効事由があると認めることはできない このことは海外特許3に対応する国内特許である第2発明及び第5発明に関して前記イ及びエに説示したところに照らして明らかである。
これに対し一審被告は,乙11の5刊行物には,海外特許3の請求項1の構成要件9A〜9C,9H,9Iのすべてと,9E〜9Gの主要部が開示されており,構成要件9Dのみが開示されていないが,構成要件9Dのリボン送り手段は,サーマルヘッドを有する印字装置においては周知であり(乙88,乙11の1,乙83等 ,この周知技術を構成要 )件9Eの印字手段に代替することにより,海外特許3の請求項1の構成要件9A〜9Iを有するテープ印字装置は容易に想到し得る,と主張する。
しかし,乙11の5刊行物には,海外特許3請求項1の構成9Dのみならず,少なくとも,9B,9Eが開示されていない。なお構成9Bにつき,u 鑑定意見(乙191)は 「印刷した画像を確認できるように装 ,置を構成するのが通常であるので,テープの上方側がオペレータ側であると認識される (57頁第2段落)とするが,乙11の5刊行物に開 。」示された技術は,フレキソ,オフセット,凸版,グラビア等の通常シール印刷に用いられる一般的な意味での印刷を予定したものと解されるところ,かかる技術において印刷した画像を確認できるように装置を構成することが通常であるとの根拠がなく,テープの上方側がオペレータ側であると認識することはできない。
そして,これら構成が当業者にとって容易想到であるというべき根拠を見いだせないから,請求項1が進歩性を欠如するものということはできないし,海外特許3の請求項2〜7は請求項1を引用するものであるから,これと同様に,進歩性を欠如するものということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(イ) 一審被告は,請求項8の発明は,請求項1の構成要件9A〜9Iから構成要件9D及び9Fを除いたものとほぼ同等であり,それらの構成要件はすべて乙11の5刊行物に開示又は示唆されており,新規な構成は存在しないから,請求項8も進歩性を有しないと主張するが,乙11の5刊行物には,少なくとも,海外特許3請求項8の構成9B ,9E'’が開示されておらず,これらの構成が当業者にとって容易想到であるというべき根拠を見いだせないから,請求項8が進歩性を欠如するものということはできない。また,海外特許3の請求項9は,請求項8を引用するものであるから,これと同様に,進歩性を欠如するものということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 一審被告は,請求項11の発明は,請求項8の発明とほぼ同等であり 「記録手段としての印字ヘッドがドットマトリックス方式である」 ,ことを限定しているが,この方式はサーマルヘッドにおいては通常であり,周知の事項であるから,請求項11も進歩性を有しないと主張するが,乙11の5刊行物には,少なくとも,海外特許3請求項11の構成9B″,9E″が開示されておらず,これら構成が当業者にとって容易想到であるというべき根拠を見いだせないから,請求項11が進歩性を欠如するものということはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
クまとめ以上のとおりであるから,第1発明・第2発明・第5発明・海外特許1〜3には無効事由はなく有効であるが,第3発明には無効事由があるということになるので,後に述べる仮想実施料率等の算定に際し考慮することとする。
3 本件各発明により一審被告が受けるべき利益──自己実施分(1) 総論ア 一審原告らの本訴請求は,前記のとおり,特許法旧35条3,4項に基づき(ただし,海外特許についてはその類推適用 ,本件各発明の譲渡対 )価としての「相当額」の支払等を求めるものであるが,そのうち,まず使用者たる一審被告が自らその発明を実施した分(自己実施分)について検討する。
「」 イ 特許法旧35条4項の その発明により使用者等が受けるべき利益の額は,特許を受ける権利が将来特許を受けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明により使用者等が将来得ることができる独占的実施による利益の額をその承継時に算定することが極めて困難であることからすると,当該発明の独占的実施による利益を得た後の時点において,これらの独占的実施による利益をみてその法的独占権に由来する利益の額を認定することも,同条項の文言解釈として許容されると解する。
そして使用者等は,職務発明について特許を受ける権利又は特許権を承継することがなくとも当然に当該発明について同条1項が規定する通常実施権を有することに鑑みれば,同条4項にいう「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,自己実施の場合は,通常実施権(法定通常実施権)の行使による利益を超えたものより得た利益と解すべきである。
,「 」「 」 したがって ここでいう 独占的実施による利益 ないし 独占の利益とは,一般的には,特許権者が他社に実施許諾をせずに当該特許発明を独占的に実施している場合(自己実施の場合)における,他社に当該特許発明実施を禁止したことに基づいて使用者が挙げた利益,すなわち,他社に対する禁止権の効果として,他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較してこれを上回る売上高(以下,売上げの差額を「超過売上げ」という )を得たことに基づく利益(法定通常実施権による減額後の 。
もの)が,これに相当するものということができる。
また,特許権者が,当該特許発明実施しつつ,他社に実施許諾もしている場合において,当該特許発明の自己実施分について,実施許諾を得ていない他社に対する特許権による禁止権を行使したことにより超過売上げが生じているとみるべきかどうかについては,事案により異なるものということができる。すなわち,?@特許権者は特許法旧35条1項により,自己実施分については当然に無償で当該特許発明実施することができ(法定通常実施権 ,それを超える実施分についてのみ「超過売上げを得たこ )とに基づく利益」を算定することができるのであり,通常は50〜60%程度の減額をすべきであること,?A当該特許発明が他社においてどの程度実施されているか,当該特許発明の代替技術又は競合技術としてどのようなものがあり,それらが実施されているか,?B特許権者が当該特許について有償実施許諾を求める者にはすべて合理的な実施料率でこれを許諾する方針を採用しているか,あるいは,特定の企業にのみ実施許諾をする方針を採用しているか,などの事情を総合的に考慮して,特許権者が当該特許権の禁止権による超過売上げを得ているかどうかを判断すべきである。
エ そこで,自己実施の場合における特許法旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」の額を本件の場合に即して検討すると,次のような手順になると考えられる。すなわち,?@一審被告が販売している一審被告製品のうちで一審被告が本件各発明を実施している製品はどれか,?A上記?@が肯定された商品の具体的な売上高はどれくらいか,?B上記?Aが肯定された売上高の中で法定通常実施権の行使による売上高を超える売上高(超過売上高)の割合,?C利益率又は仮想実施料率,?D一審被告製品の中に使用されている発明の中における本件各発明の寄与度。
なお,法定通常実施権について定めた特許法35条1項は日本国特許権についての規定であり,外国特許たる海外特許1〜3については同旨の規定を置いていない国(例えば米国)もあるが,外国特許についても職務発明報酬請求という債権関係の処理においては日本国特許法旧35条3,4項が類推適用されるとする当裁判所の見解に立てば,日本人たる一審原告らが日本法人たる一審被告に対し,社会的事実としては実質的に一個と評価される本件各発明から生じる職務発明報酬請求という場面においては,海外特許1〜3に関する部分についても,日本国特許たる第1発明以下と同じく日本国特許法35条1項を類推適用し,法定通常実施権の存在を前提とした減額をすべきものと解される。
以下順次検討する。
(2) 一審被告による本件各発明自己実施の有無一審被告は,本件被告製品につき本件各発明を自ら実施していることはないと主張し,これに対し一審原告らは,一審被告が本件各発明を自ら実施していると主張するので,以下検討する。
ア ラベルライター本体・テープカセットと本件各発明との関係第1発明〜第3発明,第5発明,海外特許1〜3の各印字装置は,本体部分の構成とテープ部分の構成とが密接不可分に関連して作用効果を奏する点に技術的意義を有するものである。
,(, ,,,,, これに対し証拠甲929〜4147104115118,,,,,,, 119 140〜142 乙36 37 99 110 117〜121249,250)及び弁論の全趣旨によれば,本件被告製品は,ラベルライター本体部分とテープカセット部分とが構造上分離可能であるととも,,, に 両者は独立して製造・販売される場合があり得るものの その性質上本体及びテープカセットの両者を組み合わせて使用しなければおよそ用をなさず,そのため,構造上両者は容易に脱着できるように設計され,使用方法も本体を購入した者がこれに適合するテープカセットを自らの用途に応じて選択するとともに自らこれを装着して使用することが予定されており,一審被告がラベルライター本体又はテープカセットを製造・販売する,。 行為も このような使用方法を当然の前提とするものであると認められる後記(3)のとおり,当審における本件被告製品の売上高の認定も 「本体売,上高」とあるのは,ラベルライター本体とテープカセットが同梱されて販売された本件被告製品の売上げを指し 「テープ売上高」とあるのは,補 ,給交換用のテープカセットの売上高を指すものである。
したがって,以下においては,特定の対象品群同士のラベルライター本体とテープカセットとを組み合わせた製品(原判決別紙「本件被告製品一覧表1(ラベルライター本体 」と同「本件被告製品一覧表2(テープカ )セット 」の各発明欄ないし「EP 「USP」欄におけるアルファベット )」の記載が符合するもの同士を組み合わせた製品)の製造販売が本件各発明を実施したものに当たるかについて検討する。
イ ラベルライター本体とテープカセットとを組み合わせた製品による本件各発明の実施の有無(ア) 第1発明第1発明の実施の有無については,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(1)イ(172頁以下)のとおりであるから,これを )引用する。
すなわち,対象品群aは第1発明を実施したものに該当すると認められる。
これに対し一審被告は,原判決の構成要件「1E」の解釈の誤り(その1)として,原判決が認定するようにテープごとに異なる色で印字されたものをユーザーが組み合わせて対象物に転写することは実現不可能である旨主張するが,これが不可能であると認めるに足りる証拠はないし,一審被告が主張するように,一審被告の解釈によった場合の方が作,, 業性がよく 等間隔かつ整列された文字列の転写が可能となるとしてもそのことから直ちに第1発明の構成要件1Eを一審被告主張のとおりに限定解釈すべきものではないから,一審被告の上記主張は採用することができない。
また一審被告は,原判決の構成要件「1E」の解釈の誤り(その2)として,原判決は特許異議決定(乙6)の解釈において論理的に誤っている旨主張する。しかし,異議決定においてインクリボンのみを着脱自在とすることに進歩性がない旨判断されたとしても,そのことから直ちに構成要件「1E」について特定の解釈が導かれるものではないから,この点に関する一審被告の主張は採用することができない。
(イ) 第2発明第2発明の実施の有無については,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(1)ウ(174頁以下)のとおりであるから,これを )引用する。
すなわち,対象品群bは,対象品群bのラベルライター本体に「クリアタイプ」のテープカセットを組み合わせたものを除き,いずれも第2発明を実施したものに該当すると認められる。なお,弁論の全趣旨によれば,本体販売時に同梱されるテープはクリアタイプ以外のテープであると認められるから,除外されるのはテープカセットの売上げのみである。
【除外製品】クリアタイプのテープカセットこれに対し一審被告は,第2発明は限定解釈しない限り乙11の5刊行物との関係で無効となる旨主張するが,第2発明が乙11の5刊行物との関係で無効事由があるといえないことは前記2のとおりであるから,一審被告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 第3発明対象品群gが第3発明を実施したものであることは,当事者間に争いがない。
(エ) 第5発明a 第5発明の実施の有無については,以下のとおり当審において非実施の機種を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(1)エ(176頁以下)のとおりであるから,これを引用 )する。
b 対象品群bのうち PT-12098番 PT-160SP 1 ,() ,(00番 ,PT-170(191番,PT-200(74番)の各ラ ))ベルライター本体に同対象品群のテープカセットを組み合わせた製品については,構成要件5h(透明印字テープをその長手方向に沿って筐体の右から左へ搬送する仕組み)を充足することを認めるに足りる証拠はないから,第5発明を実施したものに該当するとは認められない(品番に付記した番号は,原判決別紙「本件被告製品一覧表1(ラベルライター本体 」の各番号欄の番号を指す。以下同じ 。 ))c したがって,対象品群bは,以下の除外製品と対象品群bのテープカセットを組み合わせた製品を除き,第5発明を実施したものに該当する。なお,上記組合せはテープを同梱した本体分の場合と,除外製品のための補給交換用としてテープカセット分を購入する場合の双方が考えられるから,除外されるのは両方の売上げである。
【除外製品】・ 印字ヘッドの配置が異なるものPT-18N(96番の一部)・ パソコン接続専用モデルPT-PC(36番 ,PT-9200PC(83番 ,PT-2 ))500PC(85番 ,PT-1500PC(86番 ,PT242 ))0PC(87番 ,PT-9500PC(88番 ,Labello ))PC(188番)・ 印字テープの搬送方向が異なるもの(請求項2のみ非実施)PT-240(95番 ,PT-120(98番 ,PT-160 ))SP(100番 ,PT-170(191番 ,PT-200(74 ))番)(オ) 第3考案対象品群fは,平成6年10月ころ以降,タカラ社にOEM供給して販売された「ルシール」シリーズに係るものであるが,これらは一審被告が第3考案を実施したものに該当するとは認められない。その理由は原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(1)オ(180頁以 )下)のとおりであるから,これを引用する。
(カ) 海外特許1a 海外特許1の実施の有無については,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(1)カ(183頁)において海外特許1の技術 )的範囲に属さないものと認定されたもののほか,以下のとおり,非実施の機種を付加する。
なお,前記のとおり,海外特許1の構成要件に関する原判決の認定は補正前の内容(公開公報の内容)に基づくものであり,正しくは前記2(3)オのとおりであるが,両構成を対比すれば明らかなとおり,上記補正は,表現に若干の変更はあるものの,実質的には従前の請求項1と3を合わせたものを請求項1とし,従前の請求項4,11ないし13を削除し,従前の請求項5ないし10を請求項3ないし8に繰り上げたものである。
b 対象品群nのうち,PT-200(シリーズ (74番 ,PT-1 ))200(シリーズ (75番 ,PT-220(76番 ,PT-24 )) )80(80番 ,PT-2460(82番)の各ラベルライター本体 )に同対象品群のテープカセットを組み合わせた製品については,請求項1の印字テープの搬送方向に関する構成要件7C’ないし7E’に相当する構成を有すると認めるに足りる証拠はないから,海外特許1を実施したものに該当するとは認められない。
c 対象品群nにおけるパソコン接続専用機種PT-2420PC(87番)と対象品群oのすべての製品が,海外特許請求項1における7E’のプリント制御に係る構成を充足せず,したがって海外特許1を実施したものでないことは,当事者間に争いがない。
d 対象品群n及びoのすべての製品について,請求項7の構成要件7S (切換手段)及び請求項8の構成要件7V (部分切断刃)に相当 ’’する構成を有すると認めるに足りる証拠はないから,海外特許1の請求項7及び8を実施したものに該当するとは認められない。
e 対象品群nのうち以上bないしdに挙げた機種以外の機種が海外特許1の請求項1〜6の構成要件を充足することは当事者間に争いがない。
f これらをまとめると,除外製品は以下のとおりであり,対象品群nは,ラベルライター本体につき以下の除外製品と同対象群のテープカセットを組み合わせた製品を除き,海外特許1を実施したものに該当すると認められ,また対象品群oのすべての製品は海外特許1を実施。, , したものに該当するとは認められない なお 対象品群nについては上記組合せはテープを同梱した本体分の場合と,除外製品のための補給交換用としてテープカセット分を購入する場合の双方が考えられるから,除外されるのは両方の売上げである。対象品群oは本体しかないため,除外されるのは本体の売上げのみである。
【除外製品】・ パソコン接続専用モデルPT-2420PC(87番,すべての対象品群oの機種 )・ 印字テープの搬送方向が異なるもの() (),() PT-200 シリーズ 74番 PT-1200 シリーズ(75番 ,PT-220(76番 ,PT-2480(80番 , )) )PT-2460(82番)・ 切換手段及び部分切断刃の構成が異なるもの(請求項7及び8のみ非実施)すべての対象品群n及びoの製品(キ) 海外特許2海外特許2の実施の有無については原判決 事実及び理由 第3 当 ,「 」(裁判所の判断 ,2(1)キ(185頁以下)のとおりであるから,これを )引用する。
すなわち,対象品群jは海外特許2の請求項2〜8,11及び12を実施したものに該当すると認められるが,同請求項9を実施したものとは認められない。
(ク) 海外特許3a 海外特許3の実施の有無については,以下の除外製品と対象品群j,, のテープカセットを組み合わせた製品を除き 海外特許3の請求項12,4〜6,8,9及び11を実施したものに該当することは,当事。, , 者間に争いがない また 対象品群Jの製品が海外特許3の請求項37,10を実施したものでないことは,当事者間に争いがない(一審被告は原判決が海外特許3の請求項3の実施を認定した旨主張するが,原判決は請求項3の実施を認定していない 。。)なお,上記組合せはテープを同梱した本体分の場合と,除外製品のための補給交換用としてテープカセット分を購入する場合の双方が考えられるから,除外されるのは両方の売上げである。
b 除外製品・ パソコン接続専用モデル() ,() , PT-9200PC 同83番 PT-9200DX 84番() ,() , PT-2500PC 同85番PT-1500PC 同86番PT-9500PC(同88番)・ 印字テープの搬送方向が異なるものST-1150(57番 ,PT-1130(58番 ,PT-1 ))170(59番 ,PT-1180(60番 ,PT-11Q(61 ))番 ,PT-1160(63番 ,PT-200(シリーズ (74 )))番 ,PT-1200(シリーズ (75番 ,PT-1400(シ )))リーズ (78番 ,PT-1600(79番) ))ウ小括以上をまとめると,本件被告製品における本件各発明の実施の有無は,次のとおりとなる。
(ア) ラミネート発明の実施a 国内のラミネート発明(第2発明及び第5発明)は,第2発明については対象品群bのすべての本体において実施されるとともに,前記イ(イ)(第2発明)の除外製品に係るテープカセットを除いた対象品,, 群bのテープカセットにおいて実施されており 第5発明については前記イ(エ)(第5発明)の除外製品に係る本体とこれに組み合わせる補給用のテープカセットを除き,その余の対象品群bの本体・テープカセットにおいて実施されている。
したがって,国内のラミネート発明全体としてみれば,対象品群bのすべての本体において第2発明又は第5発明のいずれかの実施が認められることになり,また対象品群bのテープカセットにおいては,第2発明と第5発明の両者で除外製品とされるテープカセット(前記イ(エ)〔第5発明〕の「印字ヘッドの配置が異なるもの」又は「パソコン接続専用モデル」に係る製品本体に組み合わせる補給用のテープカセットであって,かつ 「クリアタイプ」であるもの。なお 「印字 ,,テープの搬送方向が異なるもの」に係る製品本体と,これに組み合わせる補給用のテープカセットは,いずれも請求項1の実施が認められる )においては実施が認められないが,その余のテープカセットに 。
おいて実施が認められる。
b 欧州特許国に係るラミネート発明(海外特許1)については,対象品群nの前記イ(カ)(海外特許1)の除外製品のうち「パソコン接続専用モデル」及び「印字テープの搬送方向が異なるもの」に係る本体と,これに組み合わせる補給用のテープカセットにおいては,いずれも実施が認められないが,その余の本体及びテープカセットにおいては実施が認められる(なお 「切替手段及び部分切断刃の構成が異な ,るもの」に係る製品本体と,これに組み合わせる補給用のテープカセットは,いずれも海外特許1の請求項7及び8を実施していないが,他の請求項において実施が認められる。他方,対象品群oの全製品 。)(対象品群oは本体のみ)においては,海外特許1の実施は認められない。
c 米国に係るラミネート発明(海外特許2,3)については,海外特許2は対象品群jの全製品(本体及びテープカセット)において実施しており(一部の請求項において実施が認められないとしても,他のいずれかの請求項において実施が認められる ,海外特許3は対象品 。)群jのうち前記イ(ク)の除外製品に係る本体及びテープカセットを除いた本体及びテープカセットにおいて実施している。
したがって,米国のラミネート発明全体としてみれば,対象品群jの全製品(本体及びテープカセット)において実施していることになる。
(イ) 第1発明の実施,( ) 第1発明については 対象品群aの全製品 本体及びテープカセットを実施している。
(ウ) 第3発明の実施,( ) 第3発明については 対象品群gの全製品 本体及びテープカセットを実施している。
(エ) 第3考案の実施,( ) 第3考案については 対象品群fの全製品 本体及びテープカセットを実施していない。
(3) 売上高の算定ア 本件被告製品の売上げ総額及びその内訳(),, 前記1 本件における基礎的事実関係に認定したとおり 一審被告は原判決別紙「本件被告製品一覧表1(ラベルライター本体 」及び「本件 )被告製品一覧表2(テープカセット 」記載の各製品(本件被告製品)を ),,「 () 」 製造・販売し その売上高は 原判決別紙 相当対価算定表 自己実施分の表1-1「本件被告製品の売上高」のとおりである。
そして,弁論の全趣旨によれば,上記売上高に平成16年会計年度分を加え,かつ,当該売上高の生産地(日本・中国)及び販売先別(日本・米国・欧州特許国・その他)の売上げの内訳を示すと,本判決別紙「本件被告製品の売上高(自己実施分 」のとおりであると認められる。 )なお,同別紙において「欧州特許国」とあるのは海外特許1の指定国であるドイツ,フランス,イギリス,イタリアの4か国を 「その他」とあ ,るのは米国を除く北米及び南米,欧州特許国を除く欧州諸国,日本を除くアジア諸国及びオセアニア諸国等,本件各発明に係る特許の効力の及ばない国を指す。
また,同別紙において「本体売上高」とあるのは,ラベルライター本体とテープカセットが同梱されて販売された本件被告製品の売上げを指し,「テープ売上高」とあるのは,補給交換用のテープカセットの売上高を指す。
イ 子会社販売による売上高の修正(ア) 子会社を経由して販売した場合の売上高の算定方法発明の自己実施の方法(実施品の販売方法)として,一審被告から第三者に実施品を直接販売するのではなく,製造会社である一審被告から子会社である販売会社に一旦実施品を売却した上,当該販売子会社において第三者に実施品を販売するという販売方法を採ることがあり得るが,このような販売方法を採用した結果,子会社に対する販売価額と第三者に対する販売価額が異なることが考えられる。このような場合,子会社に対する販売価額の決定にはグループ企業内における利益(損失)の調整等,当該製品の客観的価値以外の要素が加味されることがあることからすると,少なくとも当該子会社が一審被告の100%子会社である場合には,独占的実施による利益を認定する基礎となる売上高は,当該子会社に対する販売価額ではなく,当該子会社が第三者に販売した価額に基づき算定するのが相当である。
(イ) 国内販売分の係数以上の見地に立って本件についてみると,証拠(乙213)及び弁論の全趣旨によれば,国内における本件被告製品の販売はブラザー販売株式会社が行っていたところ,同社は平成11年4月1日に一審被告の完全子会社となったことが認められ,また,その場合の当該子会社の販売価額は,一審被告の販売価額に対して本体で●●倍,テープカセットで●●倍であったと認められる。
したがって,少なくとも平成11年4月1日以降の国内売上高については,上記係数を乗じて算定するのが相当である。
(ウ) 欧州特許国販売分の係数証拠(乙213)及び弁論の全趣旨によれば,欧州特許国(海外特許1の指定国であるイギリス,イタリア,ドイツ,フランスの4か国)における本件被告製品の販売はブラザーインターナショナルヨーロッパ(), , BIE 等 一審被告の100%子会社である販売会社が行っておりその場合の当該子会社の販売価額は,一審被告の販売価額に対して本体で●●倍,テープカセットで●●倍であったと認められる。
したがって,欧州売上高については,上記係数を乗じて算定するのが相当である。
(エ) 米国販売分の係数証拠(乙213)及び弁論の全趣旨によれば,米国における本件被告製品の販売はブラザーインターナショナルコーポレーションUSA(BICUSA)等,一審被告の100%子会社である販売会社が行っており,その場合の当該子会社の販売価額は,一審被告の販売価額に対して本体で●●倍,テープカセットで●●倍であったと認められる。
したがって,米国売上高については,上記係数を乗じて算定するのが相当である。
(オ) その他特許不存在国販売分の係数弁論の全趣旨によれば,上記(ウ)・(エ)以外のその他特許不存在国(米国を除く北米及び南米,欧州特許国を除く欧州諸国,日本を除くアジア,) 諸国及びオセアニア諸国等 本件各発明に係る特許の効力の及ばない国における販売は,一審被告の100%子会社である販売会社が行っており,その場合の当該子会社の販売価額は,一審被告の販売価額に対して本体で●●倍であったと認められる(なお,後記(4)のとおり,テープカセット販売分については超過売上高の存在を認めることはできない。。)したがって,その他特許不存在国の売上高については,上記係数を乗じて算定するのが相当である。
(カ) 一審原告らの主張に対する判断一審原告らは,上記各係数とは異なる係数をもって売上高を修正すべきである旨主張するが,同主張に係る係数の正確性を裏付ける的確な証拠はないから,上記(ア)〜(エ)に認定したとおり,一審被告が主張する各係数の限度で売上高を修正するのが相当である。したがって,一審原告らの上記主張は採用することができない。
ウ その他の修正要素(ア) ルシール非実施による修正前記アの本体・国内販売分の売上高には非実施であるルシールの売上げ(対象群fの売上げ)が含まれているため,相当対価の算定に当たっ,。 ては ルシール分の売上げを控除した売上高を基礎とすべきこととなるその範囲は,原判決(231頁)と同様,平成7年12月支払期以降の本体分の国内売上げから●%を控除して計算するものとする。
(イ) 本体分の修正(第1発明・第3発明の実施割合)前記アの本体の売上高は本件被告製品の全売上高であるため,本件各発明ごとの相当対価を算定するためには,上記売上高に占める各発明の実施割合を乗じて算出した個別の売上高を基礎とすべきこととなる。
本体分の売上高に占める第1発明の実施割合は,原判決(232頁)と同様,●%と認める。
本体分の売上高に占める第3発明の実施割合は,原判決(232頁)と同様,●%と認める。
(ウ) テープカセット分の修正(ラミネート比率による修正)前記アのテープカセットの売上高には,ラミネート発明の実施に係るラミネートテープの売上分,第1発明の実施に係るインレタテープの売上分,その他非実施の売上分等が含まれることとなり,本件各発明ごとの相当対価を算定するためには,上記売上高に占める本件各発明の実施割合を乗じて算出した個別の売上高を基礎とすべきこととなる。
全テープカセットの売上分に占めるラミネートテープの比率(実施割合)は,原判決(231頁)と同様,国内分は●%,海外分は●%と認める。
全テープカセット売上分に占める第1発明の実施割合は,原判決(232頁)と同様,国内分は●%と認める(なお,後記(4)エのとおり,第1発明のテープカセット・海外売上分に超過売上高の存在は認められない 。。)(エ) その他非実施分の修正なお,前記(2)ウ(ア)(ラミネート発明)のとおり,国内のラミネート発明(第2発明及び第5発明)は,テープカセットとの関係では,対象品群bのテープカセットのうち第2発明と第5発明の両者で除外製品とされるもの(前記(2)イ(エ)〔第5発明〕の「印字ヘッドの配置が異なるもの」又は「パソコン接続専用モデル」に係る製品本体に組み合わせる補給用のテープカセットであって,かつ,前記(2)イ(イ)〔第2発明〕のクリアタイプであるもの )において実施がない。そこで,テープカセ 。
ットとの関係において第2発明及び第5発明の実施を前提として超過売上高を算定する場面(具体的には,後記(4)エ〔生産地・販売地からみた超過売上高減額の要否〕において説示するとおり,国内販売分のテープカセット分の超過売上高がこれに該当)においては,前記ア(本件被告製品の売上げ総額及びその内訳)において認定したテープカセット売上高(具体的には国内販売合計〔日本生産及び中国生産〕の額)からこ,, の非実施分に相当する額を控除すべきことになるが この点については本件各発明の寄与度に係る後記(6)イ(ア)(ラミネート発明の寄与度)の国内販売分の寄与度において考慮することにする。
また,欧州特許国販売との関係では,対象品群oの本体すべてと,対象品群nの本体のうち「パソコン接続専用モデル」及び「印字テープの搬送方向が異なるもの (前記(2)イ(カ)〔海外特許1〕参照)に係る除 」外製品と,これと組み合わせる補給用のテープカセットの両者において実施がないことから,本体又はテープカセットとの関係において海外特許1のみの実施を前提として超過売上高を算定する場面(具体的には,後記(4)エ(イ)〔欧州特許国販売分の超過売上高〕のうち,a(b)〔中国生産の本体〕とc〔テープカセットの売上げにおける海外特許1に基づく超過売上高〕がこれに該当)においては,前記ア(本件被告製品の売上げ総額及びその内訳)において認定した本体又はテープカセット売上高(具体的には本体売上高に係る欧州特許国販売〔中国生産〕と,テープカセット売上高に係る欧州特許国販売合計〔日本生産及び中国生産〕の額)からこの非実施分に相当する額を控除すべきことになるが,この点については,本件各発明の寄与度に係る後記(6)イ(ア)(ラミネート発)。 明の寄与度 の欧州特許国販売分の寄与度において考慮することにする(4) 超過売上高の割合ア総論前記(1)(総論)でも述べたように,従業者が職務上なした発明につき使用者たる一審被告は,従業者から譲渡を受けなくとも当然に通常実施権(法定通常実施権)を有し,自己実施としての販売等をすることができるのであるから,当該発明の譲渡を受けたときに従業者に支払うべき報酬の額は,国内特許か外国特許かを問わず,通常は50%前後の減額をすべきことになる。そこで,本件について,法定通常実施権としての自己実施を超える売上高(超過売上高)の割合はどの程度かにつき,以下,具体的に検討する。
イ 本件における個別事情(ア) ラミネート発明に関する事情a ラミネートテープの優位性に関する事情( ,, ,,, 証拠 甲2の2・5・7 9 20の4・5・7 105 106113の1〜11,115,118の1〜3,120の1〜9,121〜123,146の1〜3,354〜361の各1・2,乙92〜95,114〜119)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
・ ラミネート発明(第2発明,第5発明,海外特許1〜3)の構成要件は,原判決「事実及び理由」第2(事案の概要 ,1(前提事 )実 ,(3)イ,エ,カ〜ク(5頁以下)のとおりである。 )これらラミネート発明は,インクリボン,透明印字テープ及び剥離紙付き両面粘着テープを備え,印字ヘッドによりインクリボンを介して透視性を有するテープに反転印字し,その印字面に剥離紙付き両面粘着テープを貼り付けることにより,透明印字テープ-印字面-粘着層-テープ基材-粘着層-剥離紙からなるラミネートテープ(以下「本件ラミネートテープ」という )の作成に関する発明 。
である点で共通する。このようなラミネート発明は,ラベルを作成する印字装置において,上記ラベル作成に必要な機構(印字機構,テープ送り機構,リボン巻取機構等)を一つのハウジング内に収納するという基本的構成を採用することにより,透視性を有するテープが単に被印字体としてのみならず印字部を保護する保護フィルムとしても機能するため,印字につき「消え」や「かすれ」の問題が解消されることや,機構部がすべてハウジング内に収容されて保護されていることにより,一般使用者の使用に適するとともに,コンパクトで見栄えのよいテープ印字装置を得られるなどといった作用効果が得られる。
・ 上記のとおり,本件ラミネートテープは,透視性を有するテープが単に被印字体としてのみならず印字部を物理的に保護する保護フィルムとしても機能するため,印字部分の耐久性・保存性に優れている。これに対し,テープに直接印字する非ラミネートタイプはこのような保護機構が存在しないため印字面が露出することになり,そのような構造上,薬品や摩擦等の印字面に対する外部からの刺激に対する物理的耐久性・保存性の点では本件ラミネートテープに及ばない。もっとも,実用性という観点から見た場合,初期の非ラミネートタイプのラベル作成機においてはテープの印字部分を手でこすっただけで消えてしまったりするなど,十分な実用性を有していないものがあったのに対し(甲105,106 ,近時の非ラミネ )ートテープの製品においてはインクの定着技術の進展等により家庭や通常の事務的用途に耐えられる品質を有するものも現れてきており,キングジム社のテプラプロなど,非ラミネートテープを使用する製品のカタログにおいては,印字が劣化しにくいことを積極的にアピールしているものもある。
また,正像印字したテープ表面に粘着剤付き透明テープをかぶせる方式のラミネートテープによれば,本件ラミネートテープと同様の物理的耐久性・保存性を得ることができるが,印字部分と透明テープ間に粘着剤層が介在するため,透視性の高さという点では本件ラミネートテープを超えるものではない。
,, ・ また一審被告は ラミネート発明やラミネートテープの優位性をアニュアルレポート,国内のP-Touchカタログ,海外の総合カタログ,海外のプレスリリース,海外の実施製品に印刷されたロゴ,米国での取扱説明書,海外でのテレビコマーシャル,ウェブサイト等において表示し,積極的にアピールしている。
キングジム社等一審被告のOEM供給先も,ラミネートタイプのラベルライターを販売するに当たり,カタログにおいてラミネートテープの優位性を積極的にアピールしている。
・ そして,日本国内においては,本件ラミネートテープは他社の非ラミネートテープと比較して,定価で20%程度,店頭価格で18〜26%高く販売されているにもかかわらず,競争力を失うことなく一定の売上げを続けており,価格とは異なる付加価値の存在が認められる。なお,キングジム社は,非ラミネートタイプであるテプラプロのカタログにおいて,同機種のテープが低価格であることを記載しており,非ラミネートタイプの場合は価格の点に訴求力があることが認められる。
・ このように,国内・欧州・米国のいずれにおいても,一審被告がOEM供給し,又は自社ブランドとして販売する場合を除き,本件ラミネートテープと同じ仕様のラミネートテープは販売されておらず,一審被告が同市場を独占している。
なお,前記1(本件における基礎的事実関係)のとおり,一審被告は,マックス社が平成3年にセイコーエプソン社からのOEM供給によりラミネート方式テープを使用したラベルライターを発売したことから,これに対抗する趣旨で特許庁に第2発明及び第5発明の優先審査を求め,マックス社やセイコーエプソン社はその出願公告に対し付与前異議申立てをしたが,前記のとおり,最終的に両発。, 明が特許権として権利化されたという経緯がある また一審被告は前記のとおり,ダイモ社が欧州においてラミネートタイプのラベルライターであるDYMO4000を発売した際,これを差し止めるためにドイツにおいて訴訟を提起し,最終的にその販売を中止に追い込んでいる。
・ 一方,ラベルライターは,カシオ社が平成3年11月に非ラミネートタイプのネームランドを発売した後,ラミネートタイプと非ラミネートタイプの両製品が市場において競合するようになった。非ラミネートタイプは低価格を前面に出して販売され,ラミネートタイプを販売していたキングジム社も非ラミネートタイプの販売に乗り出し,一審被告自身も平成7年以降は自社ブランドとして低価格版の非ラミネート方式「M型」を販売するようになった。
一審被告のラベルライター本体の販売数量に占めるM型ラベルライター本体の販売数量は,平成12年度●%,平成13年度●%,平成14年度●%であり,平成7年度から平成15年度までの総計では●%であるが,売上高との関係では,原判決別紙「M型の売上高の推移」記載のとおり,総合計で平成7年度が●%,平成8年度が●%,平成9年度が●%,平成10年度が●%,平成11年度が●%,平成12年度が●%,平成13年度が●%,平成14年度が●%,平成15年度が●%であり,以上の平均は●%にすぎない。
b 代替技術ないし競合製品の存在上記aのとおり,ラミネートタイプに対する競合製品としてラミネートタイプの製品が販売され,ラベルライター市場において一定のシェアを占めているが,非ラミネートテープは販売開始当初,印字の耐久性ないし保存性の点で明らかに劣っていたほか,現在においても本件ラミネートタイプと完全に比肩すべき耐久性・保存性があるとまでは認められず,本件ラミネートテープにはなお技術的優位性があるということができる。また,上記aのとおり,現在販売されている家庭等の用途において一定の実用性を有する非ラミネートテープは,テープ上にインクを安定的に定着させるための技術開発を前提とするものであることからすれば,本件ラミネートテープはそのような開発を免れている点でコスト的に優位性を有するものである。さらに,上記aのとおり,本件ラミネートテープは一般に非ラミネートテープよりも高価であるにもかかわらず,依然として市場において一定のシェアを維持しており,一審被告自身,非ラミネートタイプの販売開始に遅れ「」 , て自社ブランド P-Touch で市場に参入したにもかかわらず同市場において相当程度シェアを伸ばしていることなども併せ考慮すると,ラベルライター市場においては非ラミネートテープだけでは満たし得ない需要が少なからず存在することが推認できる。
以上のような事情に鑑みれば,非ラミネートテープという競合製品の存在により本件ラミネートテープの優位性が著しく減殺されたとまでは評価することができない。
c ラミネートテープに関するその他の事情原判決は,ラミネートテープ方式の不利な点として,?@製造原価が高くなる,?Aテープカセットが複雑化,大型化し,ひいては本体も大型化する,?B消費電力が多く,電池の消耗が早い,?C透明テープの浮き,縦しわが生じやすく,幅方向においてずれが生じた場合,粘着層テープが端から露出し,ほこりが付着しやすい,?D曲面に貼り付けると剥がれやすい,?E印字位置から貼り合せ位置までのテープがデッドスペースとなり,テープを余分に消費する点を挙げる(原判決218頁参照 。)確かに,前記aのようなラミネートテープの構造に鑑みれば,ラミ,, ネートテープ方式の採用により 非ラミネートテープの場合に比して主として両面粘着テープに係る材料費や部品点数の増加により一定のコスト増が発生することも考えられるが,前記のとおりラミネートテープ方式のラベルライターは非ラミネート方式の製品に比べて割高であるにもかかわらず一定数量の売上げがあることからすると,上記コスト増が本件ラミネートテープの優位性を減殺する程度を過大に評価すべきではない。またテープカセットの大型化については,実際の製品においてラミネートテープ方式を採用したテープカセットが非ラミネートテープ方式のそれに比して一般に大型であるということを認めるに足りる証拠はなく,テープのデッドスペースについてもラミネートテープ方式に特有の事情であると認めるに足りる証拠はない。電池の消耗その他の事情についても,製品化当初の時点でそのような事情があったとしても,これらがラミネートテープの優位性を左右するほどの事情であったことを認めるに足りる証拠はなく,以上によれば,これらの事情を過大視することはできない。
(イ) 第1発明に関する事情,「 」( ) , a 第1発明の構成要件は 原判決 事実及び理由 第2 事案の概要1(前提事実 ,(3)ア(4頁)記載のとおりである。 )b 第1発明の明細書(特許公告公報,甲2の1)には,次の記載がある。
・ 産業上の利用分野「本発明は,カセットテープのインデックスカード,ビデオカセットのラベル,文書ファイルの背表紙等に表題等を転写できるレタリングテープを簡単に作製することのできる簡易レタリングテープ作製機に関するものである (1頁左欄12行〜右欄1行) 。」・ 従来技術及び問題点「この種の簡易レタリングテープ作製機というものは従来なかった。しいて挙れば,透明なフィルムシートに裏文字をスクリーン印刷したものが市販されていて,需要者が使用するに際して好みの文字を裏側から被印写物に擦り付けて転写させるというものはあった。しかし,これによれば,所望の文字や記号だけでなく,必要のない文字や記号等までも含まれており,また,必要な文字や記号等を取り揃えるのに何枚も買わなければならないといった不経済な面があった。さらに使用に際して単語,熟語,或いは簡単な文章にしようとすれば,所望の文字を一文字づつ選びながら被印写物に転写させなければならず,そのために単語等の構成や文字間の位置合せ等に手間が掛かり,その割にレイアウトの出来映えが余り良くないといったことがあって,使い勝手の悪いものであった。
一方,文字や記号等を被印写物へ転写するタイプのものではないが,ぶ厚い樹脂テープに所望の文字や記号等を印字することのできるラベル作製機は既に存在する。しかし,このラベルに作製機により作製されたラベルはぶ厚い樹脂テープそのものを被印写物に貼り付けるものであるために体裁が悪く,また,樹脂テープが剥れ易いといった欠点があった (1頁右欄3行〜2頁左欄9行) 。」・ 発明の目的「その目的とするところは,簡単に単語や熟語等の編集ができ,かつ,その編集したものを被転写物に簡単に転写できるレタリングテープを作製する簡易レタリングテープ作製機を提供することにある (補1頁左欄下10行〜下7行) 。」・ 発明の効果「…本発明にかかる簡易レタリングテープ作製機は,…簡単に単語や熟語等の編集ができ,その編集した所望の文字や記号,単語,,, 熟語 或いは簡単な文章のレタリングテープを作製することができこれによって,各種インデックスカードやラベルへの表題等の転写作業が,レタリングテープの背面を押圧するという非常に簡単な作業で行え,安全かつ能率的に行える利点がある (補1頁右欄下9 。」行〜補2頁右欄下1行)c 以上によれば,第1発明は,従前,カセットテープのインデックスカード,ビデオカセットのラベル,文書ファイルの背表紙等に表題等を作成する際,市販のフィルムシートに印刷されたレタリング文字を一文字ずつ転写していてそれが手間や見栄えに課題を有していたことから,文字の入力,編集機能を持たせたレタリング作製機によりレタリングテープに反転文字等を直接印字させること等により上記課題を克服しようとしたものである。
このように,第1発明は本件被告製品のようなラベルライターを直接の目的とするものではないが,テープに反転文字を印字させる点においてラミネート発明と共通するため,本件ラミネートテープの前提をなす技術ということができる。
そして,前記1のとおり,一審被告はキングジム社の製品が第1発,, 明等を侵害するとして警告し キングジム社も第1発明の実施を認めキングジム契約に至っている。また同様に,第1発明を実施していたカシオ社との間においてもカシオ契約の締結に至っている。
(ウ) 第3発明に関する事情,「 」( ) , a 第3発明の構成要件は 原判決 事実及び理由 第2 事案の概要1(前提事実 ,(3)ウ(6頁)記載のとおりである。 )b 第3発明の明細書(特許公告公報,甲2の3)には,次の記載がある。
・ 産業上の利用分野「本発明は印字テープに文字,記号等のキャラクタを印字テープの長手方向に並べてキャラクタ列の印字を行う印字装置に関し,特にキャラクタ列の印字テープの幅方向における印字位置の変更が可能なテープ印字装置に関する (1頁右欄8行〜下1行) 。」・ 従来の技術「, 。 テープ印字装置は通常 印字ヘッドと送り装置とを備えている印字ヘッドは多数の印字素子からなる印字素子列を備えており,送り装置は印字ヘッドに対して相対的に印字テープを印字素子列に交差する方向に送る。その送りに合わせて印字素子列の長さの範囲内でドットマトリックスによるキャラクタ列の印字が行われるのである (2頁左欄2行〜8行) 。」・ 発明が解決しようとする問題点「しかしながら,従来のテープ印字装置においては,文字サイズ…に応じた印字位置のフレキシビリティが考慮されておらず,印字素子列の長さより小さいサイズのキャラクタについてその印字位置は予め一律に定められていてユーザに選択の余地はなく,多様な印字書式に対応できない問題がある(2頁左欄10行〜17行) 。」・ 問題点を解決するための手段「, 本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり本発明に係る印字装置は前述のような印字装置において,印字素子列の長さより小さいサイズのキャラクタを印字テープの長手方向に並べてキャラクタ列を印字する際に駆動される印字素子列の範囲を印字素子列の長さ方向にシフトして,印字テープの幅方向の中央にキャラクタ列を印字を行わせるセンタ印字モードと,印字テープの幅方向の片側に寄せてキャラクタ列を印字を行わせる片側揃えモードとに変更する印字位置変更手段を設けたことを特徴とする (2。」頁左欄19行〜29行)・ 作用及び効果「上記のような印字装置によれば,ユーザの選択によってセンタ。, 印字と片側揃え印字とのいずれでも行うことができる したがってセンタ印字と片側揃え印字のうち,文字サイズや印字テープの使用目的等に応じて,より適切と思われる印字書式を選択することにより ケースに応じて最適の印字テープを作成することができる 2 ,。 」(頁左欄31行〜37行)c 以上によれば,第3発明は,テープ印字装置において,印字素子列の長さより小さいサイズのキャラクタを印字する際,従来技術においては印字位置が固定されていたため,多様な印字書式に対応できなかったものを,ユーザの選択によって印字位置を中央か片側揃えかに変更することを可能としたものであり,印字装置における編集機能の一種ということができる。
そして,前記1(本件における基礎的事実関係)のとおり,一審被告は,キングジム社の製品が第3発明等を侵害するとして警告し,これを実施していたキングジム社との間でキングジム契約に至っている。
(エ) 各発明に共通する事情a 日本国内における事情(キングジム契約及びカシオ契約)(a) 前記1(本件における基礎的事実関係)のとおり,一審被告は国内において本件国内特許・実用新案につきキングジム社及びカシオ社との間でライセンス契約を締結し,実施料収入を得ている。
両契約において第2発明ないし第5発明がライセンスの対象となっているかについては争いがあるが,両契約において上記各発明が許諾対象から除外したと解することはできない。その理由は原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,2(4)ア(イ)a(キング )ジム契約,212頁)及びb(カシオ契約,213頁)のとおりであるから,これを引用する。この点に関する当審における一審原告らの主張は,上記認定を左右するものではない。
(b) もっとも,キングジム社及びカシオ社はその製品においてラミネート発明を実施しておらず,両契約が超過売上高の増減に影響を与えたことを認めるに足りる証拠はないから,上記各発明に基づく超過売上高との関係で上記ライセンス契約の存在が大きな影響を与えたものと評価することはできない。
b ダイモ契約前記1のとおり,一審被告は欧州においてダイモ社とライセンス契約を締結しているが,ダイモ契約の結果,ダイモ社は一審被告からのOEM製品以外にラミネート発明を実施しておらず,同発明に基づくラベルライターに関しては一審被告が現に市場を独占していることからすれば,上記aにおけると同様,本件ラミネートテープに基づく超過売上高との関係で上記ライセンス契約の存在が大きな影響を与えたものと評価することはできない。
(オ) その他原判決が考慮した事由についてa 無効事由について一審被告は,ラミネート発明,第1発明,第3発明に係る特許にはいずれも無効事由が存する旨主張するところ,前記2のとおり,発明報酬の対価額算定という場面においては,使用者が有効に存続する特許権を現に実施して利益を得ている場合には,特段の事情のない限り当該利益をもって特許権に基づく超過売上高を含むものと推認すべきである。
,( ) , 本件においては 前記1 本件における基礎的事実関係 のとおり第1発明〜第3発明,第5発明に対しては,いずれも異議申立てないし付与前異議申立て(第3発明については無効審判請求も)がなされたが,最終的にいずれも権利化に至り,その後無効審判が請求されることなく現在に至っている。また,第1発明については,キングジム契約に至るまでのライセンス交渉の過程において,キングジム社から一審被告に対し無効事由が存する旨の主張がなされたが,一審被告は同特許の有効性を主張して争い,最終的には同特許の有効性について。, 公権的判断がなされることなくキングジム契約に至っている そして現在に至るまで,上記のような事情が本件被告製品の売上げに何らかの影響を与えたことを認めるに足りる証拠はない。この点は海外特許1ないし3についても同様である。
したがって,本件各特許権の無効事由は,前記2(本件発明報酬請求と特許無効事由との関係)において説示したとおり,仮想実施料率ないし各発明の寄与度の認定に当たり考慮する余地があるとしても(この点は項を改め,後述する ,超過売上高の算定に影響を与える )ものとは認められない。
b その他の権利の寄与本件被告製品は,ラミネート発明のみならず一審被告が保有する他の複数の特許権をも実施するものであることは当事者間に争いがない。また,原判決が認定するとおり,一審被告が後述する特許ポートフォリオを構築したこと自体は同業他社に製品開発のリスクを生じさせ,新規参入や新製品開発を遅らせるなどの効果があり,その意味でこれが本件被告製品の売上げの増加に寄与したことは否定できない。
もっとも,以上のような事情は,本件被告製品を構成する発明について等しく妥当するものであるから,超過売上高に占める各発明ごとの寄与の割合を決するに当たり考慮すべき要素というべきである(この点は項を改め,後述する 。)c 海外における販売力原判決は,海外における一審被告の売上分について,国内分との比較において一審被告の販売力が高いことを考慮し,海外分の超過売上高の割合を低く算定したが(原判決227頁参照 ,一般的には販売 )力の高低は売上高全体を左右するものではあっても,売上高における通常実施分のみを選択的に高め又は超過売上分を相対的に低めるものではなく,その意味で,販売力に関する事情は,通常,一審被告の貢献度として評価すれば足りるというべきである。
そして,本件各発明が特許権を有することで独占力を保持しているのに対し,海外における一審被告の販売力が他社を圧倒する等,国内のそれに比して異質のものであったとまで認めるに足りる証拠はないから,海外における一審被告の販売力をもって超過売上高の割合を殊更に左右するものと解することはできない。
d 満了前の権利消滅前記1(本件における基礎的事実関係)のとおり,一審被告は,平成17年から平成18年にかけて第1発明〜第3発明,第5発明につき特許法107条に定める特許料(いわゆる「年金 )を支払わない」こととし,権利を放棄したことになるが,これらはいずれも一審原告らが本訴を提起し,職務発明対価請求をなしている中でなされたものである。そして,本件において,当該特許権等を維持することが殊更に一審被告の不利益に該当すると解すべき事情は見当たらないから,少なくとも職務発明対価算定に当たっては,その権利放棄をもって一審原告らに対抗し得ないものと解すべきであり,権利放棄後の期間についても超過売上高の発生を観念し得るというべきである。
この点,一審被告は,平成4年11月ないし平成5年1月ころに権利放棄決定時の返還希望調査を行い,一審原告らがその返還を希望しなかったこと(この点は当事者間に争いがない)をもって上記権利放棄が合理的な手続を経たものである旨主張するが,本訴の経緯に鑑みれば一審原告らは本訴提起後において権利返還の申し出があればこれを受ける意思を有していたことは明らかであるから,上記のような返還希望調査の結果のみをもって権利放棄を正当化し得るものではない。したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
また一審被告は,上記各発明の権利放棄の理由について,無効事由が確認されたから放棄した旨主張するが,かかる理由は,第3発明を除き,一審被告社内における決裁の理由と矛盾するものであって(前記1,乙146〜148参照 ,到底採用できないし,また仮に一審 )被告において無効事由があると判断したとしても,当該無効事由について現に一審原告らが争っている以上,これをもって上記放棄を正当化する理由とすることはできない。したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
なお原判決は,第3発明及び第5発明については無効事由の存在を理由として,また第1発明は販売額が少なく,かつ減少傾向が続いて,, いることを理由として いずれも権利放棄の合理性を肯定しているが一審原告らが当該権利について職務発明対価請求を行っているという特殊性を考慮すれば,上記のような事情のみで合理性を肯定することはできない。
したがって,以下においては,第1,第3及び第5発明のいずれについても,当該権利が本来の満了期間に達するまで超過売上げの発生があるものとして扱うこととする。
e 海外特許の権利存続期間弁論の全趣旨によれば,海外特許の存続期間の満了日は以下のとおりと認められる。
・ 海外特許1:2008年〔平成20年〕11月14日・ 海外特許2:2008年〔平成20年〕10月24日・ 海外特許3:2008年〔平成20年〕12月28日ウ 本件被告製品の売上げにおける超過売上高以上によれば,本件被告製品は,競合製品である非ラミネートテープ方式のラベルライターが市場に現れるまでは同市場を独占し,また非ラミネートテープ方式のものが現れた後も市場内において一定の売上げを確保していること,しかも,ラミネートテープ方式によるラベルライターは非ラミネートテープ方式に比して高価であるにもかかわらずこのように売上げを確保し,国内のラベルライター市場においては後発である一審被告の自,, 社ブランドでさえ順次シェアを拡大していること 欧州や米国においては一審被告は大きなシェアを確保していること,技術的観点からみても,本件ラミネートテープは非ラミネートテープに比して印字の耐久性・保存性において優位性があり,ラミネート発明,第1発明,第3発明の各内容に照らせば,ラミネート発明を中核とする各発明の独占力が上記のようなシェアの確保,ひいては売上げに少なからぬ貢献をしていることが認められる。
もっとも,前記1(本件における基礎的事実関係)に認定した本件被告製品の売上げの推移及び販売当時の状況,競合製品の販売状況,ラベルライター市場の飽和状況等に鑑みれば,平成11年ころまでには,競合製品である非ラミネートタイプのラベルライターが市場において確固たる地位を獲得し,遅くともそれ以後の本件被告製品の売上げにおいては,特許権等の法的独占力以外の要素の占める割合が増大したものと認めることができる。
以上の諸事情を総合考慮すれば,本件被告製品の売上げにおいてそれを構成する発明による超過売上高の割合は,平成11年3月31日までの対象期間は50%,平成11年4月1日以降の対象期間は40%と認めるのが相当である。
なお一審被告は,実施料収入がある場合の自己実施における独占の利益の算定に関し,ライセンスポリシーの性質と代替技術の存在を挙げて,一審被告には自己実施分について独占の利益がない旨主張する。確かに,ライセンスポリシーの性質や代替技術の存在は,その内容次第では独占力を反映する要素となり得る性質を有するという意味において,特許の独占力を判断するに当たって考慮すべき事情の一つということはできるが,特許の独占力は諸般の事情により形成されているものであって,一審被告の挙げる上記事情のみでこれを網羅的に捕捉し,評価し尽くすことができるものではないから,上記各事情のみを殊更に重視することはできない。そして,本件においては,上記各事情をも考慮に入れたとしても,本件被告製品の売上げに占める超過売上高の割合は,上記のとおり,平成11年3月,, 31日までの対象期間は50% その後は40%と認めるのが相当であり一審被告の上記主張は採用することができない。
エ 生産地・販売地からみた超過売上高減額の要否本件被告製品は,本体・テープカセットとも,生産地と販売地により,以下のように区別することができる。
?T 日本国内で生産・販売されたもの?U 中国で生産され日本で販売されたもの?V 日本で生産され欧州特許国で販売されたもの?W 中国で生産され欧州特許国で販売されたもの?X 日本で生産され米国で販売されたもの?Y 中国で販売され米国で販売されたもの?Z 日本で生産されその他の国で販売されたもの?[ 中国で生産されその他の国で販売されたものそして,特許権としてその権利の排他的効力が及ぶのはその付与された国の範囲内においてであるため(属地主義 ,以上のような生産・販売地 )の差異により本件各特許の法的独占力に影響が生じ,その結果,上記イに認定した超過売上高の割合を更に減ずべき場合があり得るから,以下順次検討する。なお,前記(3)ア(本件被告製品の売上げ総額及びその内訳)のとおり,超過売上高を算定する際の基礎となる売上高のうち「本体」とあるのは,本体部分とテープカセット部分とを同梱した状態を指すものであるから,以下においても,本体を製造・販売するという場合の「本体」とはテープカセットと一体となったものと解することを前提に検討を加える。
(ア) 国内販売分における超過売上高(?T及び?U)a 超過売上高と間接侵害規定との関係職務発明対価請求において基礎となる特許法旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,特許発明の法的独占権に由来する独占的実施の利益を指し,特許権者による自己実施の場合,一般的には,他社に当該特許発明実施を禁止したことに基づいて特許権者たる使用者が挙げた利益(超過売上げを得たことに基づく利益)がこれに相当する。そして,本件被告製品は,ラベルライター本体部分とテープカセット部分とが構造上分離可能であるとともに,本体とテープカセットは独立して製造・輸入・販売されているから,これらを同一主体が同時に製造・輸入・販売する場合には,前記に認定した限度において第1発明〜第3発明又は第5発明を実施するものということができるが,他方,テープカセットのみを製造・輸入・販売する行為はその実施に当たるものではない。そうすると,一審被告は上記各発明の実施品である本体については他社の実施(製造・輸入・販売)を禁止することができ,したがって,日本国内で販売された第1発明〜第3発明及び第5発明の実施に係る本体の売上げとの関係では,前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)に認定し(, た超過売上高の割合 平成11年3月31日までの対象期間は50%平成11年4月1日以降の対象期間は40%)を乗じて得られた全額について超過売上高の存在を認めることができる。
他方,上記各発明の実施品に適合するテープカセットについては,場合を分けて検討する必要がある。
すなわち,平成14年法律第24号(平成15年1月1日施行)による改正前の特許法101条は「侵害とみなす行為 (講学上の間接 ,」侵害規定)として,1号で「特許が物の発明についてされている場合において,業として,その物の生産にのみ使用する物を生産し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為」と,2号で「特許が方法の発明についてされている場合において,業として,その発明の実施にのみ使用する物を生産し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為」とのみ規定していたが,上記改正後は,1号で「特許が物の発明についてされている場合において,業として,その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」と,2号で「特許が物の発明についてされている場合において,その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く )であつてその発明による課題の解決に不可欠なも 。
のにつき,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」と,3号で「特許が方法の発明についてされている場合において,業として,その方法の使用にの,」 み用いる物の生産 譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為と,4号で「特許が方法の発明についてされている場合において,その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く )であつてその発明による課題の解決に不可欠なものに 。
つき,その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」と規定されるに至っている。したがって,上記テープカセットについては,これが第1発明〜第3発明又は第5発明との関係で特許法101条の定める間接侵害行為に該当しない限り,他社の実施(製造・輸入・販売)を禁止することはできない。換言すれば,本件被告製品のうちテープカセットのみの国内販売に係る超過売上高については,間接侵害規定の適用がある場合には日本国内で販売された第1発明〜第3発明及び第5発明の実施に係るテープカセットの売上げに前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)に認定した超過売上高の割合を乗じて得られた全額をもって超過売上高となし得るのに対し,間接侵害規定の適用がない場合には,超過売上高の存否を別途検討すべきこととなる。
b 平成15年1月1日以後にテープカセットのみを製造・輸入・販売する行為と間接侵害の成否そこで,まず本件被告製品におけるテープカセットのみを第三者が製造・輸入・販売した場合の間接侵害の成否について検討すると,この点に関する当裁判所の判断は,上記改正後の特許法101条の規定を前提とする限り,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断)2(3)(202頁以下)のとおり(ただし,本体に関する説示部分を除く)であるから,これを引用する。
すなわち,上記改正法施行日である平成15年 1 月1日以後においては,本件被告製品(テープカセット)のうち前記(2)(一審被告による本件各発明自己実施の有無)に認定した第1発明,第2発明又は第5発明の実施製品に該当するものは,これを第三者が実施したとしても特許法101条1号又は2号のいずれかの間接侵害が成立し得るのに対し,第3発明の実施製品に該当するものは,これを第三者が実施したとしてもいずれの間接侵害も成立しない。
そうすると,第1発明,第2発明及び第5発明の特許権者である一審被告は,その実施品であるテープカセットを第三者が実施(製造・),,, 輸入・販売 することを禁止することができ したがって 第1発明第2発明及び第5発明の実施に係る本体部分に適合する上記テープカセットの売上げとの関係では,前記ウ(本件被告製品の売上げにおけ)。 る超過売上高 の認定に係る超過売上高の存在を認めることができるc 平成14年12月31日以前にテープカセットのみを製造・輸入・販売する行為と間接侵害の成否上記改正法により新設された特許法101条2号は,その規定内容に鑑みれば遡及適用することは相当でないから,平成14年12月31日以前の行為については適用がないものと解さざるを得ない。
そうすると,同施行日前において改正前特許法101条1号の規定が適用されず,上記改正後の特許法101条2号の規定にのみ該当する場合,すなわち,第1発明に係る対象品群aのテープカセットすべてと第5発明に係る対象品群bのテープカセットでTX型及びTZ型のものについては,上記発明の特許権者である一審被告は第三者の製造・販売を禁止することができなかったことになる 前記(2)ウ(ア) ラ (〔〕, , ミネート発明の実施 のとおり 対象品群bのテープカセットのうちクリアタイプを除くテープカセットについては,ラミネート発明である第2発明との関係で別途特許法101条1号間接侵害に該当することになるから,国内販売分のテープカセットにおいてラミネート発明との関係で間接侵害規定の適用が問題となり得るのは,実質的にはTX型及びTZ型の各クリアタイプのテープカセットということになる。。)したがって,当該実施製品の売上げについては,前記bのような趣旨における超過売上高の存在を認めることはできない。
d 平成14年12月31日以前に販売されたテープカセットの売上げにおける超過売上高そこで,上記cに挙げたテープカセットの売上げに前記b以外の趣旨における超過売上高が含まれる余地があるかについて検討する。
上記aのとおり,特許発明の法的独占権に由来する独占的実施の利益とは,自己実施の場合,一般的には,他社に当該特許発明実施を禁止したことに基づいて使用者が挙げた利益(超過売上げを得たことに基づく利益)がこれに相当するものである。
しかし,前記のとおり,特許法旧35条3項及び4項の趣旨は,従業者が特許を受ける権利の処分時において,当該権利を取得した使用者が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち,同条4項所定の基準に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者において確保できるようにしたものであることに鑑みれば,使用者が特許権を実施して現に得た利益(売上げ)の中に,特許権を取得した使用者が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益が存するのであれば,仮にその一部の実施については法的に他社の販売を禁止できないとしても,当該利益はなお法的独占権に由来する独占的実施の利益ということができるから,当該利益に対応する売上部分をもって職務発明対価算定の基礎としての超過売上高とみることができるというべきである。
これを本件についてみると,ラミネート発明及び第1発明は,本体に関する機構(入力機構や印字機構等)とテープに関する機構が一体化している点に技術的意義を有し,実施品である本体部分及びテープカセット部分の両者を同時に製造・販売することは特許権者である一審被告にしかなし得ない行為である。そのため,前記(2)ア(ラベルライター本体・テープカセットと本件各発明との関係)のとおり,その実施品である本件被告製品は,性質上,本体部分及びテープカセット部分の両者を組み合わせて使用しなければおよそ用をなさず,構造上両者は容易に脱着できるように設計され,使用方法も本体を購入した者がこれに適合するテープカセットを自らの用途に応じて選択するとともに自らこれを装着して使用に供することが予定されているところである。
このような本件被告製品の性質や構造,実際の使用態様等に照らせば,本件被告製品における本体部分とテープ部分は,別々に販売されたとしても技術的に強固に結び付いていることは明らかであって,仮に実施品である本件被告製品に係る本体部分に適合するテープカセットを第三者が安価に販売したとしても,本体製造者がこれに適合するものとして同時に製造販売するテープカセットのシェアをすべて奪われ,売上げを喪失することはおよそ想定し得ないから,テープカセットについて一定程度の売上げに基づく利益を必然的に確保することができるものと認められる。また本件被告製品における本体部分とテープカセット部分の組合せに係る仕様の変更は全体についての実施権を有する一審被告にしかなし得ないところであり,しかもそのような仕様変更が行われた場合,テープカセットのみを販売しようとする業者は,少なくとも新しい仕様に適合する製品を開発し商品化するまでの,,, 一定期間については 必ず参入が抑止されることになるから その間一審被告は必ず独占の利益を得ることができるものでもある。
このようにして維持される売上げないし得られる独占の利益は,本体部分とテープ部分の一体性を技術的意義とするラミネート発明ないし第1発明の法的独占力が実現したものと評価することができるから,間接侵害規定による参入禁止をなし得ない場合であっても,実施品である本件被告製品に係る本体部分に適合するテープカセットの売上げのうち,少なくとも他社が参入してもなお維持される売上げに相当する部分については,超過売上高の存在を観念することができるというべきである。
そして,本件におけるラミネート発明及び第1発明の内容,本件被告製品の構造,実際の仕様態様,その他の事情を総合すれば,その割合は平成11年3月31日までの対象期間は25%,その後は20%(前記ウ〔本件被告製品の売上げにおける超過売上高〕に認定した超過売上高の50%分相当)と認めるのが相当である。
e 第3発明を実施するテープカセットの売上げにおける超過売上高第3発明はラミネート発明や第1発明とは異なり編集機能に関する発明であって,その技術的範囲において上記のような本体部分とテープ部分の一体性による法的独占力を有するものではないから,上記dに述べた事情は該当しない。したがって,第3発明との関係においては,これを実施するテープカセットの販売に係る売上げに超過売上高の存在を観念することはできない。
fまとめ前記(2)(一審被告による本件各発明自己実施の有無)において認定した実施品に係る本件被告製品の売上げのうち,国内販売分に係る売上げに対する関係で超過売上高をまとめると,以下のとおりとなる(なお,生産国による違いはない 。)(a) 本体の売上げは,その全体に対する関係で平成11年3月31日までの対象期間は50%,その後は40%の超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 平成14年12月31日以前に販売された第1発明に係る対象品群aのテープカセットすべてと,第5発明に係る対象品群bのTX型及びTZ型の各クリアタイプのテープカセットについては,その売上げ全体に対する関係で,平成11年3月31日までの対象期間は25%,その後は20%の超過売上高の存在を認めることができる(ただし,第5発明分の超過売上高については後述する発明の寄与度において斟酌する 。)(c) 上記(b)を除く第1発明,第2発明,第5発明に係るテープカセットは,その売上げの全体に対する関係で平成11年3月31日までの対象期間は50%,その後は40%の超過売上高の存在を認めることができる。
(d) 第3発明に係る対象品群gのテープカセットのみに該当するものについては,その売上げに超過売上高は含まれない。
(イ) 欧州特許国販売分の超過売上高(?V及び?W)a 本体の売上げにおける超過売上高(a) 日本国内生産の本体弁論の全趣旨によれば,一審被告が日本で生産し,国外で販売する本体及びテープカセットは輸出専用品であり,国内においては販売されていないことが認められる。
もっとも,日本国内において,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体を生産する行為は,上記各特許の実施に該当するから(特許法2条3項1号 ,一審被告は第三者がこれを行うこと )を禁止することができる。そうすると,これを実施する一審被告の行為には日本国特許法に基づく法的独占力の実現を認めることができるから,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体売上げのうち,国内生産分については,その全体に対する関係で前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)の認定に係る超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 中国生産の本体一審被告が一審原告らから承継した特許を受ける権利が中国にお。, いて特許化されていないことは当事者間に争いがない そうすると本件被告製品が中国において生産された時点においては第1発明〜第3発明又は第5発明の法的独占力が及ばないから,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体売上げのうち,中国生産分については,超過売上高の存在を観念することはできない。
これに対し,欧州での販売時を基準とした場合,欧州特許である海外特許1の実施品である本体について海外特許1の法的独占力が及ぶことはいうまでもないから,海外特許1の実施に係る本体の売上げのうち,中国生産分については,その全体に対する関係で前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)の認定に係る超過売上高の存在を認めることができる(なお,この点は日本生産分についても同様である 。。)b テープカセットの売上げにおける日本国特許権に基づく超過売上高(a) 日本国内生産のテープカセット前記aのとおり,一審被告が日本で生産し,欧州特許国で販売する本体及びテープカセットは輸出専用品であり,国内においては販売されていないことが認められる。
ところで,前記(ア)a(超過売上高と間接侵害規定との関係)のとおり,第三者が国内においてテープカセットのみを製造・販売する行為は本件各発明の実施に当たるものではないから,国内におけるテープカセットのみの製造・販売行為が間接侵害に該当しない場合,他社の製造・販売を禁止することはできず,前記(ア)d(平成14年12月31日以前に販売されたテープカセットの売上げにおける超過売上高)に述べたような特段の事情のない限り,その売上げについて超過売上高の存在を認めることはできない。
そこで,日本国内において流通することを予定しない輸出専用品であるテープカセットを第三者が国内で生産する行為が前記改正後の特許法101条1号又は2号の定める間接侵害に当たるかについて検討する。
本来,日本国外において,日本で特許を受けている発明の技術的範囲に属する物を製造してその価値を利用しても,日本の特許権を侵害することにはならない。それは,日本における特許権が,日本の主権の及ぶ日本国内においてのみ効力を有するにすぎないことに伴う内在的な制約によるものであり,一般に属地主義として承認されているところであって,このような見地からすると,特許法2条3項1号にいう「生産」とは,日本国内におけるもののみを意味すると解すべきである。そうすると,外国において発明に係る物の生産に供される物についてまで,特許法101条1号ないし2号が間接侵害の要件として規定する「その物の生産にのみ使用する物」又は「その物の生産に用いる物」であるとして特許権の効力を拡張する場合には,日本の特許権者が,本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの,外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり,不当に当該特許権の効力を享受することになるというべきである。したがって 「その物の生産にのみ使 ,用する物 「その物の生産に用いる物」における「生産」とは,日 」,本国内におけるものに限られると解するのが相当であり,このように解することは,前記のような特許法2条3項1号にいう「生産」の意義にも整合するものというべきである。
以上を踏まえれば,日本国内において流通することを予定しない輸出専用品であるテープカセットを第三者が国内で生産する行為は,本件各発明の直接侵害のみならず上記改正後の特許法101条1号又は2号の定める間接侵害にも当たらないというべきであるから,これを実施する一審被告の行為について日本国特許法に基づく法的独占力の実現を認めることはできず,したがって,日本国特許である第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る上記テープカセットの売上げについて超過売上高の存在を認めることはできない。
また,前記(ア)d(平成14年12月31日以前に販売されたテープカセットの売上げにおける超過売上高)に認定した法的独占権に由来する超過売上高は,その実施に日本国特許権の効力が及ぶことを前提とするものであるから これが及ばない上記輸出専用品 テ ,(ープカセット)の売上げには,前記(ア)dに説示した意味における超過売上高の存在も認めることはできない。
(b) 中国生産のテープカセット前記a(b)(中国生産の本体)のとおり,一審被告が一審原告らから承継した特許を受ける権利は中国において特許化されておらず,中国において生産された時点においてはいかなる独占力も生じていないから,その時点における超過売上高を観念することはできない。
c テープカセットの売上げにおける海外特許1に基づく超過売上高欧州特許国(ドイツ,フランス,イギリス,イタリア)において第三者が海外特許1の実施に係る本体部分に適合するテープカセットを販売することが同特許の間接侵害行為に該当することは当事者間に争いがなく,そうすると,海外特許1の特許権者である一審被告は,その実施品であるテープカセットを第三者が実施(製造・輸入・販売)することを禁止することができ,したがって,海外特許1の実施に係る本体部分に適合する上記テープカセットの売上げには,その全体に対する関係で前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)の認定に係る超過売上高の存在を認めることができる。
dまとめ前記(2)において認定した実施品に係る本件被告製品の売上げのうち,欧州特許国販売分に係る本件被告製品の売上げに関する超過売上高をまとめると,以下のとおりとなる。
,, (a) 本体売上げのうち日本生産分については 第1発明〜第3発明第5発明又は海外特許1の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 本体売上げのうち中国生産分については,海外特許1の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(c) テープカセットの売上げについては,日本生産分及び中国生産分のいずれについても,海外特許1の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(d) 以上(a)〜(c)以外の売上げについては,超過売上高の存在を認めることができない。
(ウ) 米国販売分における超過売上高(?X及び?Y)a 本体の売上げにおける超過売上高(a) 日本国内生産分前記(イ)a(a)(日本国内生産の本体)のとおり,日本国内において,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体を生産する,() , 行為は 上記各特許の実施に該当するから 特許法2条3項1号一審被告は第三者がこれを行うことを禁止することができる。そうすると,これを実施する一審被告の行為には日本国特許法に基づく法的独占力の実現を認めることができるから,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体売上げのうち,日本国内生産分については,その全体に対する関係で前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)の認定に係る超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 中国生産分前記(イ)a(b)(中国生産の本体)のとおり,一審被告が承継した特許を受ける権利は中国において特許化されておらず,中国で本件被告製品が生産された時点においてはいかなる独占力も及ばないから,その時点における超過売上高を観念することはできない。
これに対し,米国での販売時を基準とした場合,米国特許である海外特許2,3の実施品である本体について海外特許2,3の法的独占力が及ぶことはいうまでもないから,海外特許2,3の実施に係る本体の売上げのうち,中国生産分については,その全体について前記ウの認定に係る超過売上高の存在を認めることができる(なお,この点は日本生産分についても同様である 。。)b テープカセットの売上げにおける日本国特許権に基づく超過売上高(a) 国内生産分前記(イ)b(a)(日本国内生産のテープカセット)のとおり,輸出専用品であるテープカセットは国内においては販売されておらず,これを第三者が国内で生産する行為は,本件各発明の直接侵害のみならず前記改正後の特許法101条1号又は2号の定める間接侵害にも当たらないというべきであるから,これを実施する一審被告の行為について日本国特許法に基づく法的独占力の行使を認めることはできず,したがって,生産時点においてテープカセットの売上げについて超過売上高の存在を認めることはできない。
(b) 中国生産分前記(イ)b(b)(中国生産のテープカセット)のとおり,一審被告が承継した特許を受ける権利は中国において特許化されておらず,中国で本件被告製品が生産された時点においてはいかなる独占力も及ばないから,その時点における超過売上高を観念することはできない。
c テープカセットの売上げにおける海外特許2,3に基づく超過売上高(a) 法的独占力に関する準拠法前記b(テープカセットの売上げにおける日本国特許権に基づく超過売上高)のとおり,生産時ないし輸出時を基準とした場合,輸出専用品であるテープカセットの売上げには超過売上高の存在は認められないが,米国での販売時を基準とした場合,海外特許2,3に基づく超過売上高の存否が問題となり,これは,上記テープカセットに海外特許2,3の法的独占力が及ぶかにより決すべきことになる。
上記を検討する前提として,法的独占力の基礎となる当該特許権の効力の及ぶ範囲についての準拠法が問題となるが,譲渡の対象となる特許を受ける権利がいかなる内容の法的独占力を有するかという点は,当該特許を受ける権利が外国において登録された後に当該外国においていかなる効力を有するかに関わる問題であるから,その準拠法は,特許権についての属地主義の原則に照らし,当該特許権が登録された国の法律であると解するのが相当であり,海外特許2,3の効力の及ぶ範囲は,その登録国である米国法に基づき決すべきものと解される。
(b) 寄与侵害等と直接侵害の関係ラミネート発明である海外特許2,3は,本体部分とテープ部分とを一体とする構成をもってその技術的範囲とするものであるところ,前記(ア)a(超過売上高と間接侵害規定との関係)において述べたとおり,本件被告製品は本体部分とテープカセット部分とが構造上分離可能であるとともに,両者は独立して製造・販売されており,テープカセットのみを販売する行為は本件各発明の実施に当たるものではないから,前記(ア)aと同様の問題,すなわち,海外特許2,3に基づき他社が米国においてテープカセットのみ販売することを禁止することができるかが問題となる。
ところで,米国特許法271条は,(a)項において 「(a)本法に ,別段の定めがある場合を除き,特許の存続期間中に,権限を有することなく,特許発明を合衆国において生産,使用,販売の申出若しくは販売する者,又は特許発明を合衆国に輸入する者は特許を侵害する 」として直接侵害について定めるとともに,(b)項において, 。
「(b)積極的に特許侵害を誘発した者は,侵害者としての責めを負うものとする としていわゆる侵害の積極的誘因について また(c) 。」,項において 「(c)特許を受けている機械,製品,組立物若しくは合 ,成物の構成要素,又は特許方法を実施するために使用される材料若しくは装置であって,その発明の主要部分を構成しているものについて,それらが当該特許の侵害に使用するために特別に製造若しくは改造されたものであり,かつ,一般的市販品若しくは基本的には侵害しない使用に適した取引商品でないことを知りながら,合衆国において販売の申出若しくは販売し,又は合衆国に輸入した者は,寄与侵害者としての責めを負うものとする 」としていわゆる寄与 。
侵害について規定する(乙194 。)したがって,第三者が米国においてテープカセットのみを販売する行為が上記直接侵害,積極的誘因,寄与侵害に該当するのであれば,一審被告はこれを禁止することができることになるが,米国法の解釈としては,寄与侵害等(積極的誘因及び寄与侵害)は直接侵害に従属し,直接侵害が存在しない場合は寄与侵害等も存在しないと解されるから(Aro Manufacturing Co. v. Convertible TopReplacement Co.,365U.S. 336, 128 U.S.P.Q.354(1961) ,寄与侵害)等の成否に先立ち,直接侵害の成否を決する必要がある。これに反する一審原告らの主張は採用することができない。
(c) いわゆる消尽の有無海外特許2,3は本体部分とテープ部分の両者をその構成要件に含むから,第三者が米国において海外特許2,3の実施品に適合するテープカセット部分のみを販売する行為は海外特許2,3の直接侵害には当たらない。しかし,当該テープカセットを購入した者がそれを既存の本体部分と組み合わせた時点においては,それが再製造行為と評価される限り,海外特許2,3の構成要件を満たすことになる。したがって,直接侵害の成否は,そのような購入者の行為が海外特許2,3の実施品の再製造に該当するかによって決すべきこととなり,これを換言すれば,一審被告がテープカセットが同梱された本体を販売した時点で海外特許2,3の権利が消尽し,その後補給交換用テープカセットの購入者がこれを本体に組み合わせる行為は適法な修理行為として許容されるか,という問題ということもできる。
そこで,これを本件についてみると,前記1(本件における基礎的事実関係)のとおり,一審被告は,本件被告製品につき,消耗品であるテープカセットの売上げを収益源とするビジネスモデルを採用していることからすると,本件被告製品は本体部分よりも先にテープカセットが消耗することが当初から想定されて製品化されているということができ,そのため,前記(2)ア(ラベルライター本体・テープカセットと本件各発明との関係)のとおり,本件被告製品は,その性質上,本体及びテープカセットの両者を組み合わせて使用しなければおよそ用をなさない反面,構造上両者は容易に脱着できるように設計され,使用方法も本体を購入した者がこれに適合するテープカセットを自らの用途に応じて選択するとともに自らこれを装着して使用に供することが予定されており,一審被告がラベルライター本体のほかにテープカセットを個別に製造・販売する行為も,このような使用方法を当然の前提とするものであると認められる。
このような事実関係を前提とすると,一審被告が海外特許2,3の実施品である本体(テープカセットが同梱されている)を販売すれば,海外特許2,3の権利は消尽し,ラベルライターの使用を継続するために補給用のテープカセットを購入して交換する行為は,本件被告製品の再製造ではなく特許権侵害といえない修理に該当す,。 るものと認められるから もはや直接侵害を構成するものではないなお,権利者が販売時に上記のようなテープカセットの交換行為に対する権利行使を留保しているのであれば,上記行為についても直接侵害が成立すると解する余地はあるが,本件においてはそのような権利行使の留保を認めるに足りる証拠はないから,上記の意味での直接侵害も成立しないというべきである。
(d) テープカセットの売上げにおける超過売上高以上によれば,米国特許法上の寄与侵害等はその適用の前提を欠き,一審被告は米国特許法271条(b)項又は(c)項に基づき第三者が米国においてテープカセットのみを販売する行為を禁止することはできないことになる。
もっとも,上記(c)(いわゆる消尽の有無)のような事実関係を前提とすれば,前記(ア)d(平成14年12月31日以前に販売さ), れたテープカセットの売上げにおける超過売上高 の場合と同様にテープカセットの販売によって得られる利益の少なくとも一部については,本体部分とテープ部分の一体性を技術的意義とするラミネート発明の法的独占力が実現したものと評価することができるから,米国法上の寄与侵害等に関する規定による参入禁止をなし得ない場合であっても,海外特許2,3の実施品に適合するテープカセットの売上げのうち,少なくとも他社が参入してもなお維持される売上げに相当する部分については,法的独占権に由来する超過売上高の存在を観念することができる。
そして,本件における海外特許2,3の内容,本件被告製品の構造,実際の仕様態様,その他の事情を総合すれば,その割合は平成11年3月31日までの対象期間は25%,その後は20%(前記ウ〔本件被告製品の売上げにおける超過売上高〕に認定した超過売上高の50%分相当)と認めるのが相当である。
(e) 一審原告らの主張に対する判断・ 一審原告らは,米国の特許権侵害訴訟が和解により解決する可能性が高いことを理由として,消尽の成否により超過売上高が影響を受けるべきではないと主張する。
しかし,いわゆる消尽の成否は,それが成立することによって特許権による禁止の効力が及ばないという点で法的独占力の有無に直接関わるものであるのに対し,特許権侵害訴訟が結果として和解により解決したか否か(換言すれば,消尽の成否が公権的に判断されたか否か)は法的独占力に由来する超過売上高の存否とは法的意味では無関係な事情にすぎず,かかる事情が超過売上高の存否又は多寡に影響を与えるものではない。
,。 したがって 一審原告らの上記主張は採用することができない・ また一審原告らは,独占の利益を決するに当たっては,テープカセットの販売のみで市場機会を奪取する場合のみならず,本体とテープカセットを一体として侵害する場合の影響の大きさをも考慮すべきであると主張する。
しかし,本体部分とテープ部分とを一体で侵害する場合を想定した超過売上高は,まずはテープカセットが同梱された本体の売上げにおける超過売上高として考慮されているのであって,それを超えて,第三者による米国における販売を禁止し得ないテープカセットの売上げについて超過売上高を認めるためには 前記(d),(テープカセットの売上げにおける超過売上高)のとおり,それが海外特許2,3の法的独占力に由来するといえるような事情が必要というべきであるところ,それについては前記(d)で判示したとおりである。
d テープカセットの売上げにおける米国特許●●号に基づく超過売上高一審原告らは,米国特許●●号は第3考案及びラミネート発明を権利化したものであり,その実質的な発明者は一審原告ら6名である旨主張するので,この点について判断する。
(a) 米国特許●●号の内容米国特許●●号を特許請求の範囲請求項1の記載(乙211)に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)(b) 第3考案の内容一方,第3考案を特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
?@ 所定の印字が施された印字テープを作成するテープ印字装置のためのテープカセットであって,?A その印字テープの作成に必要な2種以上のテープが複数のスプールに巻かれ,?B それらのスプールがカセットケース内にそれぞれ回転可能に保持されるとともに,?C それらスプールの少なくとも1個がカセットケースに対して着脱自在とされていること?D を特徴とするテープ印字装置用テープカセット。
,(),。 (c) そして 第3考案の明細書甲2の8 には 次の記載がある・ 「第1図に本考案の一実施例であるテープカセット10と,それが装着されたテープ印字装置12を示す (4欄27行〜 。」29行)・ 「入力部14で入力されたデータに従い,印字部16では長手方向のテープ送りを伴い,位置固定のサーマルヘッド28で印字が行われる。… (4欄42行〜45行) 」・ 「…本実施例においては,そのドット列の発熱により,透視性被印字体テープとしての透明フィルムテープ32(以下,透明テープという)に,印字部形成テープとしてのサーマルリボン34のインクが裏返しパターンで転写されて,左右反転印字が行われるのである (5欄4行〜9行) 。」・ 「本実施例において上記ローラ36,38は,透明テープ32の反転印字がされた側の面に,その背景を形成するベーステープ42を貼り付けるテープ貼付けローラを兼ねている。ベーステープ42は,第2図に示すように基材44の両面に粘着剤層46,48を備えた両面粘着テープであり,粘着剤層46は剥離紙50で被覆され,反対側の粘着剤層48において第3図に示すように透明テープ32の反転印字面に貼り付けられるものである。… (5欄22行〜31行) 」・ 「第1図に戻って,透明テープ32,サーマルリボン34およびベーステープ42は,前記テープカセット10のカセットケース54に,共用スプール56,巻き取りスプール58および供給スプール60を介して保持されている。
透明テープ32とサーマルリボン34は,共用スプール56に互いに重ね合わされた状態で巻かれている。ただし,接着剤等で接合されているのではなく,単に積層されているだけである。そのように二重に巻かれた状態で外周側に透明テープ32,, が 内周側にサーマルリボン34が位置するようにされており共用スプール56が透明テープ32の供給スプールとサーマルリボン34の供給スプールとを兼ねている。これによって,カセットケース54ひいてはテープカセット10をコンパクトに構成することができる。
透明テープ32とサーマルリボン34は,重ね合わせ状態で共用スプール56から引き出されて,サーマルヘッド28とプラテンローラ30との間に供給されるが,サーマルヘッド28において転写が終了した使用後のサーマルリボン34は,透明テープ32から引き剥がされ,分離させられた後,巻取スプール58に巻き取られるようになっている。
また,ベーステープ42は巻取スプール58の隣に位置する供給スプール60に巻かれ,第2図に示す粘着剤層48が内周側に,剥離紙50が外周側に位置するように保持されている。
このベーステープ42が供給スプール60から引き出されてローラ36と38の間に供給され,両ローラ36,38の圧着力により前述のように粘着剤層48において透明テープ32の反転印字面に貼り付けられることになる。
カセットケース54はコの字形の断面形状を備え,前方(サーマルヘッド28の側)および左右に解放されたものとなっている。そして,カセットケース54の共用スプール56が保持されている部分には,板縁から内部に向かってほぼU字型をなすスプール装着用の切欠62が形成されており,この切欠62に共用スプール56のスプール軸64が回転可能に装着されている。… (5欄43行〜6欄39行) 」・ 「また,第1図のように透明テープ32とサーマルリボン34とが共用スプール56に積層状態で巻かれていることは不可欠の要件ではなく,共用スプール56を,透明テープ32の供給スプールとサーマルリボン34の供給スプールとの2個のスプールに分離・独立させることも可能である (9欄5行〜1 。」0行)(d) 以上によれば,米国特許●●号と第3考案は,ともに「プラテンと協働してプリント動作を実行する印字ヘッドを備えたテーププリンタに使用される,テープカセット (米国特許●●)である。 」しかし,米国特許●●号はプリントヘッドとプラテンの「両者が離間する非作用位置とプリント動作を実行するために互いに接触する作用位置との間を相対的に移動可能 (構成C)であるところ,第 」3考案はこの点について特に限定する記載はない。また米国特許●●号は 「テープ出口 (構成E)を備えるものであるところ,第3 ,」考案に記載されているカセットケース54には 「テープ出口」と ,いえるものが存在しないから テープ出口を有するハウジング 米 ,「」 (国特許●●)を備えるものではない。
そして,第3考案は 「…テープを保持するスプールをカセット ,ケースに対して着脱自在とすることにより,そのテープのみ交換の必要が生じたときには,そのスプールだけカセットケースから取り外して別のものと交換することができ,カセットごと交換する必要がなくなる (明細書〔甲2の8〕4欄2行〜7行)ことを作用効 」果とする考案であり,この作用効果を奏するためスプールの着脱を容易にする構成,すなわち「テープ出口を有するハウジング」を用いない構成を採用した点に技術的意義があるものと理解することができるから 「テープ出口を有するハウジング」を必須の構成とす ,る米国特許●●号とは技術的意義が異なる発明ということができる。したがって,第3考案の考案者が直ちに米国特許●●号の発明者であるということはできない。
(e) また,上記(a)(米国特許●●号の内容)に述べた米国特許●●号の構成は,実質的に,透明な受像テープにイメージを転写した上で,当該プリント面に両面に粘着層を有する粘着テープを貼り合わせるという,ラミネート機構が含まれているものの,同特許自体はテープカセットに関する発明であるし,ラミネート発明にはない前記構成Cを備えるものである。
そうすると,米国特許●●号にラミネート発明が寄与していると,( ) しても 前記c(d) テープカセットの売上げにおける超過売上高を超えて超過売上高の存在を認めることはできない。
eまとめ前記(2)(一審被告による本件各発明自己実施の有無)において認定した実施品に係る本件被告製品の売上げのうち,米国販売分に係る本件被告製品の売上げに関する超過売上高をまとめると,以下のとおりとなる。
,, (a) 本体売上げのうち日本生産分については 第1発明〜第3発明第5発明又は海外特許2,3の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 本体売上げのうち中国生産分については,海外特許2,3の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(c) テープカセットの売上げについては,日本生産分及び中国生産分のいずれについても,海外特許2,3の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの25%,その後は売上げの20%について超過売上高の存在を認めることができる。
(d) 以上(a)〜(c)以外の売上げについては,超過売上高の存在を認めることができない。
(エ) 特許不存在国販売分の超過売上高(?Z及び?[)a 日本国内生産の本体・テープカセット(),, 前記(イ)a(a) 日本国内生産の本体 のとおり 日本国内において第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体を生産する行為は,上記各特許の実施に該当するから(特許法2条3項1号 ,一審)。, 被告は第三者がこれを行うことを禁止することができる そうするとこれを実施する一審被告の行為には日本国特許法に基づく法的独占力の実現を認めることができるから,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る本体売上げのうち,国内生産分については,その全体に対する関係で前記ウ(本件被告製品の売上げにおける超過売上高)の認定に係る超過売上高の存在を認めることができる。
他方,テープカセットについては,前記(イ)b(a)(日本国内生産のテープカセット)のとおり,輸出専用品であるため国内においては販売されておらず,これを第三者が国内で生産する行為は,本件各発明の直接侵害のみならず上記改正後の特許法101条1号又は2号の定める間接侵害にも当たらないというべきであるから,これを実施する一審被告の行為について日本国特許法に基づく法的独占力の行使を認めることはできず,したがって,生産時点においてテープカセットの売上げについて超過売上高の存在を認めることはできない。
また,同製品が日本国内で生産された後,特許不存在国において販売された場合についても,法的独占力の基礎となる特許権自体が存在しない以上,いかなる意味でも法的独占力に由来する超過売上高を観念することができない。
b 中国生産の本体・テープカセット前記(イ)a(b)(中国生産の本体 ,(イ)b(b)(中国生産のテープカ )セット)のとおり,一審原告らが一審被告に承継した特許を受ける権利は中国において特許化されておらず,中国で本件被告製品が生産された時点においてはいかなる独占力も及ばないから,その時点における超過売上高を観念することはできない。
また,同製品が中国で生産された後,特許不存在国において販売された場合,法的独占力の基礎となる特許権自体が存在しない以上,いかなる意味でも法的独占力に由来する超過売上高を観念することができない。
したがって,中国で生産され特許不存在国へ販売された本体・テープカセットの売上げについては,独占の利益の算定に当たってはこれを控除すべきである。
これに対し一審原告らは,一審被告が中国において行っているのは最後の組立ての部分のみであるなどとして,本件被告製品の製造が実質的に日本国内で行われている旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
その他一審原告らは,一審被告が製造を中国に移管した経緯等の事情を挙げるが,これらを考慮したとしても中国で生産され特許不存在国へ販売された製品に対し本件各特許に基づく法的独占力が付与され,。 るものではないから 前記判断を左右するものということはできないしたがって,一審原告らの上記主張は採用することができない。
cまとめ前記(2)(一審被告による本件各発明自己実施の有無)において認定した実施品に係る本件被告製品の売上げのうち,特許不存在国販売分に係る本件被告製品の売上げに関する超過売上高をまとめると,以下のとおりとなる。
(a) 本体売上げのうち日本生産分については,第1発明〜第3発明又は第5発明の実施に係る限度で,平成11年3月31日までの対象期間は売上げの50%,その後は売上げの40%について超過売上高の存在を認めることができる。
(b) 上記(a)以外の売上げについては,超過売上高の存在を認めることができない。
(5) 本件における利益率ア 職務発明における使用者の独占的利益を算定する方法として,利益率算定方式と,仮想実施料率算定方式が考えられるところ,一審原告らは,算定方式1として 「超過売上高に基づく収益=超過売上高×利益率-資本 ,コスト」との算定方式を主張し,平成元年から平成15年までの実績に照らせば,一審被告のラベルライター事業に係る超過売上高に基づく収益の割合は●%であると主張する。
しかし,売上げに占める特許権による法的独占力に由来する利益の割合,, は 後記イのとおり諸事情を総合考慮して初めて認定できるものであって営業利益率や資本コストといった係数のみでそのすべての事情を代替できるものと解することはできない。
したがって,一審原告らの上記主張は相当でなく,採用することができない。
イ 仮想実施料率による算定(ア) 超過売上げに基づき特許権者等が受ける利益は,超過売上高に一定の利益率を乗ずることにより算定される。本件の場合に一審原告ら主張の割合である●%を用いることができないことは上記のとおりであるが,その場合には,その代替的方法として,特許権侵害訴訟における損害額算定方法である特許法102条3項の趣旨を考慮して,仮に当該特許権者等が第三者に実施させたときに得られるであろう実施料率(仮想実施料率)に基づき算定することも許されると解する。
そして,上記のような仮想実施料率の認定に際しては,当該特許権等を具体的に念頭に置いて行うべきであり,とりわけ当該特許権等を自己実施に併せて第三者実施もしているときはそのときの現実の実施料率を参酌すべきものと解するのが相当である。
(), (イ) 前記1 本件における基礎的事実関係 で認定したキングジム契約カシオ契約及びダイモ契約の経緯によれば,ラミネートタイプのラベルライターに関する実施許諾においては,対象となる権利について無効事由の主張がされたことがあったにもかかわらず,最終的に,キングジム契約においてはラベルライター本体については販売価格の●%,テープカートリッジ等の消耗品については販売価格の●%の実施料を支払うという内容で,カシオ契約においては本体・テープカセットとも販売価格の●%の実施料を支払うという内容で包括的な実施許諾がなされ,またダイモ契約においては本体につき●%,テープカセットにつき●%の実施料を支払うという内容で和解がなされ,これらのいずれについても許諾期間中に実施料率の変更はなされたことを認めるに足りる証拠はない。
そして,前記2(本件発明報酬請求と特許無効事由との関係)において説示した本件各特許における無効事由の有無,前記(4)(超過売上高の割合)で認定した各発明に対する評価,また後記(6)(本件各発明の寄与度)に認定する本件被告製品を構成する特許ポートフォリオ等の諸事情を総合考慮すれば,本件被告製品を構成する特許ないし実用新案全体に対する関係における仮想実施料率は,本体・テープカセットとも5%と認めるのが相当である。
(6) 本件各発明の寄与度前記(2)ないし(5)における説示は,本件各発明が含まれる本件被告製品についてのものであるが,上記被告製品に含まれる発明は本件各発明だけでなく,一審被告が有するに至った他の数多くの発明ないし特許権等が含まれており,これらが一体となって上記超過売上高算定の基礎となっているものであるから,以下,上記各発明の中における本件各発明の寄与度について検討する。
ア 一審被告保有権利についての検討一審被告は,本件被告製品において一審被告は多数の権利を保有し,これが特許ポートフォリオを形成している旨主張し,これに対し一審原告らは,その実施の有無や有効性を争っている。
そこでこれを具体的に検討すると,次の(ア)及び(イ)のとおりである。
また,以下(ウ)記載の各権利について一審原告らはその実施を明らかに争わないところ,乙132及び弁論の全趣旨によれば,(ウ)記載の各権利は一審被告の製品において実施されていると認められる。
なお,一審被告は,これら以外の特許権,実用新案権についても特許ポートフォリオを構成するものとして主張するが,一審被告はそれら権利の内容や実施の具体的な状況について主張立証するところがないので,本件各発明の寄与度を判断するに当たりこれらの権利を考慮することはできない。
(ア) 一審被告主張の特許ポートフォリオ(本体)〔1〕 【特許第●●号(特許発明1,出願日平成3年9月25日 】)a 特許発明1の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 特許発明1の実施●●(省略)c 特許発明1の発明者主張に鑑み,一審原告 X 2が特許発明1の発明者であるか否かについて検討する。
(a) 一審原告 X 2ら作成のP-touch EXCEL操作系仕様案(甲137)記載の構成甲137の3頁目の右欄には,ラベルライターに18mmテープが装着されて最大3行までしか印字できない状態で,ユーザーが4行の印字能力を必要とする場合の操作手順が記載されている。すな,,) ,) わち ユーザーが 手順2 で24mmテープを装着して 手順3で電源ONを行うと,24mmテープの装着状態が表示される。その後,手順4)でリターンキーを操作すると,行数を選択する画面が表示される。この選択画面では,行数として,1行から5行までのいずれかが選択できる。ユーザーが,手順5)でカーソルキーとリターンキーとを操作して行数「4」を選択すると,文字サイズと行数との組み合わせとして 「FREE 「12×4 「24×2 ,」 ,」 ,& 12×2 「36 & 6×3」の各組合せが表示される。 」,ユーザーが,手順6)でラインアップキー及びラインダウンキーとリターンキーとを操作して,必要とする一つの組合せ「12×4」を選択する。その後,ユーザーが,手順7)でリターンキーを使用して文字列を入力し,手順8)で印字を行う。
(b) 構成の対比等・ 甲137には,ラベルの長手方向に印字を行う装置が記載されているので,この装置は特許発明1の構成?@「テープ印字装置」に相当する。また,甲137には,手順3)で装着されているテープの幅を表示する手段が記載されているので,特許発明1の構成?A「テープ幅設定手段」を備えている。
・ 甲137には,手順4)で行数を選択すると,その行数を全体の行数とする文字の大きさと各大きさの文字の行数の組合せが表示されるから,特許発明1の構成?B「前記テープの幅方向に印字される行数を格納する格納手段」を備えていると解される。
・ 甲137には,手順4)で行数を選択すると, その行数を全体の行数とする文字の大きさと各大きさの文字の行数の組合せが表示されることが記載されているが,その組合せがどのようにして決まるかの記載はなく,また,弁論の全趣旨によると 「24,×2 & 12×2」の場合は,24mmテープの幅内に文字が収まらないものと認められるから,特許発明1の構成?C「その格納手段に格納された行数と前記テープ幅にもとづいて,前記テープ上に印字可能な文字サイズを選択する」ものであるかどうかは明らかでない。また,甲137に 「その格納手段に格納された ,行数と前記テープ幅にもとづいて,前記テープ上に印字可能な文字サイズを選択する」ために採用すべき具体的な構成が記載されているということもないから,甲137の記載は,アイデアを記載したにとどまるというほかない。
(c) したがって,甲137の記載をもってしても,一審原告 X 2が特許発明1の発明者であると認めることはできない。
〔2〕 【特許第●●号(特許発明2,出願日平成4年4月30日 】)a 特許発明2の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔3〕 【特許第●●号(特許発明3,出願日平成4年12月28日 】)a 特許発明3の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)c 無効事由の有無次に,特許発明3の無効事由について検討する。
証拠(甲202,294,295)及び弁論の全趣旨によれば,一審被告は,欧州において1992年(平成4年)3月からPT-8000の販売を始め,米国では,同製品を「PT-EXCEL」の名称で遅くとも同年5月には販売を始めたところ,甲202( P-TO「UCH XL USER'S GUIDE )は,その発売当初の取扱 」説明書であることが認められる。そうすると,甲202は,特許発明3に係る特許の出願日(平成4年12月28日)前に外国で頒布された刊行物であると認められる。
甲202の62頁〜63頁には,入力された文字列とテープの幅を比較して,最も大きな文字サイズを機械が自動的に選択するが,特定の文字サイズを指定することもできることが記載されており,90頁には,装着されたテープの幅に対して入力された文字が大きすぎると装置が判断した場合に警告が出ることが記載されていると認められる。
しかし,文字サイズの自動的な設定に際して「テープ幅検出手段により検出されたテープ幅に基づいて,テキスト中における文字をテープに印字する際の文字サイズを複数種類の各テープ幅と各テープ幅に対応して予め決定された文字サイズとを対応させてなるテーブルを参照して」設定されるとの記載があるとは認められないし,警告を発するのは文字サイズの設定とはいえないから,この点をもって 「テー,プ幅検出手段により検出されたテープ幅に基づいて,テキスト中における文字をテープに印字する際の文字サイズを複数種類の各テープ幅と各テープ幅に対応して予め決定された文字サイズとを対応させてなるテーブルを参照して」文字サイズが設定されると認めることはできない。したがって,甲202に特許発明3の構成?Cについて記載されているとは認められず,甲202の記載に基づいて特許発明3に無効事由があると認めることはできない。
〔4〕 【特許第●●号(特許発明4,出願日平成5年1月7日 】)a 特許発明4の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無次に,特許発明4の無効事由の有無について検討する。
特許発明3について述べたとおり,甲202は,特許発明4に係る特許出願(平成5年1月7日)前に外国で頒布された刊行物であると認められる。
甲202の62頁には,通常はAUTOに設定されており,この場合は,入力された文字列(inputtedmessage)をテープサイズと比較して,自動的に可能な限り大きな文字を利用することが記載されており,68頁には,AUTO(自動)ラベル長設定のときは,入力された文字列(inputted message)とテープ幅を参照して,自動的に文字列に合うようにラベル長を調整するが,文字列のサイズにかかわらずラベルの長さを指定することもできることが記載されており,91頁には,ラベルの長さを指定した場合,入力した文字列(the text youhave entered)が指定したラベルの長さに対して長すぎると判断されると,印字しようとした際に「設定したラベル長に対して文字列が長すぎます」とのエラー表示が出ることが記載されている。そして,ラベル長を自動的に調製するためには文字の大きさが判明しなければならないところ,自動的に可能な限り大きな文字が設定される通常の場合には,その文字について自動的にラベル長が調製されるものと解される。また,ラベルの長さを指定した場合に,指定されたラベルの長さと比べる対象は,印字しようとしているテキストの長さであるはずであるから,自動的に可能な限り大きな文字が設定される通常の場合には,その文字についてのテキストの長さと解するのが自然である。
また,甲202には,指定されたラベルの長さがそのテキストの長さに対して不足するときは,エラー表示が出ることが記載されており,それ以外の場合(指定されたラベルの長さがそのテキストの長さに対して不足しないとき及び自動的にラベル長が調製されたとき)につい,。 て記載されていないが そのまま印字されると解するのが自然である特許発明4は,上記のとおり,テープ幅検出手段により検出されたテープ幅に基づいて,そのテープに印字される文字等のサイズが自動的に決定され,その決定された文字等のサイズを有する文字等のテキスト長が算出され,このようにして算出されたテキスト長と,任意に設定されたテープ長を比較して,テキスト長の方が小さいときは印字をし,テキスト長に従って自動的にテープのテープ長が設定された場合は,そのまま比較を行うことなく印字する(特許発明4の構成?D〜?K ,というものであるところ,上記の甲202の記載内容に照らす )と,甲202には,特許発明4のこの構成がすべて記載されているものと認めることができる。弁論の全趣旨によると,特許発明4の構成?@〜?Cは,ラベルプリンタに広く見られる周知の構成であると認められるから,特許発明4は,甲202に基づく無効事由があると認められる。
〔5〕 【特許●●号(特許発明5,出願日平成4年4月27日 】)a 特許発明5の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c なお,特許発明5につきキングジム社と共同出願すべきであったか否かを検討するに,証拠(甲214,216)によると,キングジム社から平成3年9月3日に一審被告に提出された「UR505 操作仕様書案」には 「自動に属する『小さめ・普通・大きめ』を選択し ,た場合は,印刷実行時にあらかじめ定められたテープ幅毎の印刷可能な最大幅(最大ドット数)に基づいて,行数に従って文字サイズを割り付け,印刷を行う 」と記載されており,そこで述べられているこ 。
。, とは特許発明5の構成?Fと重なる点があるものと認められる しかしそのような記載があるからといって,そのことから直ちに特許発明5についてキングジム社の従業員が発明をしたということはできない。
したがって,特許発明5を一審被告が単独で出願したからといってキングジム社との契約(甲139)に違反するとは認められない。
〔6〕 【特許第●●号(特許発明6,出願日平成3年9月25日 】)a 特許発明6の構成請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明6の意義特許発明6は,上記のとおり,テープの長手方向の印字長さを入力する入力し,文章データ中の各行のテープ長手方向の文字数のうち最大文字数とテープの長手方向の印字長さとを比較して,印字不可能な関係にあるときエラー出力をするものであるところ,特許発明6に係る明細書(●●)の記載を参酌すると,ここでいう「印字長さ」は 「ラベルの長さから余白を除いた長さ」を意味するもの ,と解される。
●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明7,出願日平成3年3月28日 】7)a 特許発明7の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無次に特許発明7の無効事由の有無について検討する。
(a) 特許発明7の意義特許発明7の上記構成のうち,構成?Cは 「前記キャラクタのデ ,ータを適宜の位置で区切って前記テープの幅方向に複数の印字行に印字することを設定するための行印字指令データを入力する行設定手段と というものであるから 行印字指令データ につき キ ,」, 「」, 「ャラクタのデータを適宜の位置で区切って複数の印字行に印字することを設定する」という限定しかないことは明らかであり,単に上段と下段に区切って印字することを設定するためのものも 「行印,字指令データ」に含まれるというべきである。また,構成?Dの「入力バッファ」は,入力手段により入力されたキャラクタのデータ及び行設定手段により入力された行印字指令データを入力順に格納するためのものであり,構成?Eの「データ形成手段」は,行印字指令データに基づいて各印字行のキャラクタデータを,テープの幅内に対応して配置し印字データに形成するものであって,単にキャラクタのデータを上段と下段に区切って印刷するような印字データに形成するものも「データ形成手段」に含まれるというべきである。さらに,構成?Fは 「データ形成手段」が,テープの幅内に対応する ,全ての行の印字データを並行して印字ヘッドに供給するとともにテープの長手方向に対応するデータを順次印字ヘッドに供給することが記載されているのみである 一審被告は 特許発明7につき 上 。, , 「段行印字指令データ」及び「下段行印字指令データ」を用いて入力された文字列をテープの上段に配置するか下段には配置するかを決定し,1つのテープの上に1行印字及び2行印字を混在することができるものを意味すると主張するが,特許発明7がそのようなものに限られると解することはできない。
(b) 検討甲296(実開平1-178948号公報,公開日平成元年12月21日)には,上段と下段に同じ内容のものを並行して印字することが記載されている。
乙171(M の陳述書)の添付資料4には,DYMO4000のカタログが掲載されているが,そのDYMO4000の写真は不鮮明であり,これによって,特許発明7の構成?C「行設定手段」が記載されているとまで認めることはできない。 また,同添付資料に2行印字のサンプルが貼られているとしても,それがどのような形成されたかは明らかでない。
甲201(DYMO4000の取扱説明書)には,▲ボタンとPrintボタンを押すことによって,文字データを2行に区切って印字することが記載されているが,甲201が特許発明7に係る特許出願(平成3年3月28日)前である平成3年1月に日本国内又は外国において頒布された刊行物であることを認めるに足りる証拠はない。
これらのことからすると,特許発明7に無効事由があると認めることはできない。
〔8〕 【特許第●●号(特許発明8,出願日平成3年3月28日 】)a 特許発明8の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無(a) 特許発明8の意義特許発明8は,上記の特許発明7とは 「行印字指令データ」 ,が「テープの幅方向に1または複数の行に印字することを設定するため」のものであることが異なり 「テープ幅をその複数行に ,分割したときにその分割された各行の幅内に印字可能なキャラクタサイズを,テープ上に印字されるキャラクタのサイズを選択する選択手段を制御して選択する」機能が加わっている。
(b) 検討上記7の特許が無効事由が認められないのと同様の理由によって,甲296,乙171,甲201に基づく無効事由は認められない。
また甲141(キングジム社から一審被告宛ての1989年[平成元年 9月17日付け TR55RR企画 案 には / ]「 () 」),「==ユーザー挿入の2行印字開始・改行・終了マーク 「2行印 」,字の際,文字サイズが一義的に機械側に依って決定されることを厭わない 」と記載されているが,甲141は会社間のFAX文 。
書であるから,同文書の記載によって直ちに特許発明に無効事由があると認めることはできない。また,同文書の記載から直ちにキングジム社の従業員が特許発明8の発明者であると認めることもできない。
〔9〕 【特許第●●号(特許発明9,出願日平成3年3月28日 】)a 特許発明9の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無等(特許発明9の発明者)(a) 証拠(甲47,141,143,207)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
・ 平成元年6月9日,キングジム社から一審被告宛てに「TR-77 プロポーザルの件」と題する書面(甲47)が提出され,そこには 「TR-77の特長」として 「2行印字や定長ラベル ,,への割付印字の実現」と記載されていた。
・ 平成元年9月17日,キングジム社から一審被告宛てに「TR55RR企画(案 (甲141)が提出された。そこには 「文 )」,中で任意に2行印字を指定でき印刷できるようにする 「/== 」,ユーザー挿入の2行印字開始・改行・終了マーク」と記載され,下記の印字の例が示されていた。
記・ 平成2年12月24日,キングジム社から一審被告宛てに「UR55機能・操作仕様(案 (甲143)が提出された。そこに )」は,下記の印字の例が示されていた。
記・ 平成3年3月6日,一審被告からキングジム社宛てに「UR-55(PT-EXCEL)仕様及び概略御見積 (甲207)が 」提出された。そこには,上段に「ABC」下段に「DEF」と印字し,その右側に「GHI」と1行で印字している例が示されていた。
(b) 以上の事実からすると,キングジム社と一審被告との間でやり取りされた書面には,2行の上段と下段の文字の長さが同じものの右側に1行の文字が記載されているものか,2行の上段と下段の文字の長さが異なるが,その右側には文字が記載されていないものしかなく,2行の上段と下段の文字の長さが異なるが,その右側に文字が記載されているものはないから,特許発明9の構成?E,?Iについて何らかの検討がされたとは認められない。
(c) 乙71の添付資料9によると,特許発明9については,設定登録後,4名の者から特許異議の申立てがされたが,引用例には,特許発明9の構成?E,?Iが記載されていないとして,特許が維持されたことが認められる。このように,特許発明9の構成のうち新規な特徴部分は構成?E,?Iにあるところ,上記のとおり,特許発明9に係る特許出願(平成3年3月28日)前に,キングジム社と一審被告との間で構成?E,?Iについて何らかの検討がされたとは認められないから,キングジム社の従業員が発明者であると認めることはできない。したがって,特許発明9を一審被告が単独で出願したからといってキングジム社との契約(甲139)に違反するとは認められない。
〔10〕 【特許第●●号(特許発明10,出願日平成3年12月26日)】a 特許発明10の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由と発明者性(a) 無効事由の有無カシオ社KL-1000の取扱説明書64頁(甲206)には,「2行以上文字を打ちたいときは改行をします。9mmテープの場合は縦1倍の文字で2行まで,18mmテープの場合は縦1倍の文字で4行まで改行できます 「印刷できる行数以上,改行した場 。」,合には,表示右上に“ERR”と表示されます 」と記載されてい 。
る。証拠(甲297)によると,カシオ社KL-1000は平成3年11月15日に発売されたと認められるが,上記取扱説明書(甲206)には 「1992年10月現在」と記載されているから, ,上記取扱説明書は,特許発明10に係る特許出願(平成3年12月26日)前に頒布されたとは認められない。また,カシオ社KL-1000の実機が特許発明10に係る特許出願(平成3年12月26日)前から上記取扱説明書記載のような内容のものであるとも認められない。
特許発明10の構成?Cは,所定行数に対応する個数以上の「改行データ」の入力を禁止するものである。しかるところ,カシオ社KL-1000の上記取扱説明書の記載によると,表示右上に“ERR”と表示されるのみで 「改行データ」の入力を禁止するもので ,あるかどうかは明らかでない。また,弁論の全趣旨によると,カシオ社KL-1000の実機においては,印刷できる行数以上改行した場合には,表示右上に“ERR”と表示されるものの,液晶上には改行マークが挿入されることが認められる。そして 「改行デー ,タ」の入力を禁止することとエラー表示をすることは,技術的に異,「」 なる事項であって エラー表示をすることから直ちに 改行データの入力を禁止することを想起するということはできない。
したがって,上記取扱説明書の記載又はカシオ社KL-1000から,特許発明10に無効事由があると認めることはできない。
(b) キングジム社の従業員は発明者か平成3年3月6日に一審被告からキングジム社宛てに提出されたUR-55 PT-EXCEL 仕様及び概略御見積 18頁 甲 「( ) 」(207)には 「 エラー条件〉1.RETURNキー押下により行 ,〈数が9行を越えるとき」と記載されている。
しかし,この文書は,一審被告からキングジム社宛てに提出されたものであって,同文書に記載されていたからといってキングジム社の従業員が特許発明10の発明者であるということはできないし,同文書には,特許発明10の構成?C,すなわち,所定行数に対応する個数以上の「改行データ」の入力を禁止することは記載されていないから,いずれにしても,キングジム社の従業員が特許発明10の発明者であると認めることはできない。したがって,特許発明10を一審被告が単独で出願したからといってキングジム社との契約(甲139)に違反するとは認められない。
〔11〕 【特許第●●(特許発明11,出願日平成3年3月28日 】)a 特許発明11の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明11の意義特許発明11の明細書(●●)には,印字範囲の長さを設定するためのダイヤルとキーによって印字長さSLを設定し,それを印字長さメモリ40に格納した後,そのメモリに格納したデータから印刷開始部分及び印刷終了部分の印刷不可能な印字長さを除いて実際印字長さJLを算出し,実際印字長さJLの中に文字を均等に割り付けることが記載されている( 0030 【0031】及び【0 【】 ,038 。この記載を参酌すると,特許発明11の構成?F「印字媒 】)体テープに印字する印字範囲の長さを設定する印字長さ設定手段」によって設定されるものは,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を含むテープ全体の長さと解釈することができる。特許発明11の明細書(●●)の【図29】の記載は,特許発明11の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
●●(省略)〔 〕 【特許第●●(特許発明12,平成3年3月28日 】12)a 特許発明12の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明12の意義特許発明12の明細書(●●)には,印字範囲の長さを設定するためのダイヤルとキーによって印字長さSLを設定し,それを印字長さメモリ40に格納した後,そのメモリに格納したデータから印刷開始部分及び印刷終了部分の印刷不可能な印字長さを除いて実際印字長さJLを算出し,実際印字長さJLの中にキャラクタ列を記録可能かどうかを判断し,記録可能と判断されたときは,キャラクタ列の印刷へ進むが,記録不可能と判断されたときは,エラーメッセージを表示することが記載されている( 0054 【0055 【0063】及 【】 ,】 ,び【0064 。この記載を参酌すると,特許発明12の構成?D「前 】)記テープの長手方向の記録長さを入力設定する記録長さ設定手段」によって設定されるものは,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を含むテープ全体の長さと解釈することができる。特許発明12の明細書(●●)の【図29】の記載は,特許発明12の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。また,特許発明12の構成?F「前記設定された記録長さと前記キャラクタ列との長さを比較する比較手段」は,設定された記録長さに基づき算出された実際印字長さJLとキャラクタ列を比較するとの意味であると解される。
●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明13,出願日平成3年3月28日 】13)a 特許発明13の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明13の意義特許発明13の明細書(●●)には,印字範囲の長さを設定するためのダイヤルとキーによって印字長さSLを設定し,それを印字長さメモリ40に格納した後,そのメモリに格納したデータから印刷開始部分及び印刷終了部分の印刷不可能な印字長さを除いて実際印字長さJLを算出し,実際印字長さJLの中にキャラクタ列を記録可能かどうかを判断し,記録可能と判断されたときは,キャラク(【】 ,【】 , タ列の印刷へ進むことが記載されている 0046 0047【0055】及び【0056 。特許請求の範囲の記載に,この明 】)細書の記載を参酌すると,特許発明13の構成?C「前記テープの長手方向の印字長さを設定するかしないかを指示する指示手段 ,構」成?D「前記テープの長手方向の印字長さを入力し 」によって設定 ,入力されるものは,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を含むテープ全体の長さと解釈することができる 特許発明13の明細書 ● 。(●)の【図29】の記載は,特許発明13の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
(b) 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明14,出願日平成3年3月28日 】14)a 特許発明14の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明14の意義特許発明14の明細書(●●)には,印字範囲の長さを設定するためのダイヤルによって画面に表示されている数値を増減した上,設定キーによって印字長さSLを設定し,それを印字長さメモリ40に格納した後,そのメモリに格納したデータから印刷開始部分及び印刷終了部分の印刷不可能な印字長さを除いて実際印字長さJLを算出し,実際印字長さJLの中にキャラクタ列を記録可能かどうかを判断し,記録可能と判断されたときは,キャラクタ列の印刷へ(【】 ,【】 ,【】 進むことが記載されている 0038 0039 0049及び【0050 。この記載を参酌すると,特許発明14の構成?H 】)「前記印字媒体テープに印字する印字範囲の長さを設定するための設定画面を前記表示手段に表示させる設定画面表示手段 ,構成?I 」「前記設定画面に表示されている印字長さを示す数値を増減する増減手段 ,構成?J「前記設定画面に表示されている数値に基づいて 」印字長を設定する印字長さ設定手段」によって設定されるものは,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を含むテープ全体の長さと解釈することができる。特許発明14の明細書(●●)の【図28】の記載は,特許発明14の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
●●(省略)〔〕【 ( , 】15実用新案登録第●●号 考案15出願日平成4年4月30日)a 考案15の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無証拠(甲208)及び弁論の全趣旨によると,一審被告製造のキングジム社「テプラTR-77」は,考案15に係る実用新案登録の出願(平成4年4月30日)前の平成3年5月15日に発売された「テープ送り機構とテープ送り機構により送られたテープ上に文字等の印字を行う印字機構とテープ送り機構によるテープ送り方向に沿って印字機構から所定距離だけ離間されるとともに印字機構よりも下流側に配設されたテープカッタ機構とを有するテープ印字装置」であると認められる。
同製品の取扱説明書(甲29)43頁には,同製品においてはテープ送りの長さを変えることができ 「全送り 「半送り 「手動」の ,」 ,」 ,3種類の中から選ぶことができること 「全送り」では,文字の前後 ,にそれぞれ約17mmの余白が付くこと 「半送り」では,文字の前 ,に約20mm,文字の後ろに約3.5mmの余白が付き,文字の前約., 「」, 3 5mmのところにカットマークが入っていること 手動 ではテープ送りは自動的には行われないことが記載されている。そして,弁論の全趣旨によると,同製品において,印字装置とカッターの所定距離は17mmであり 「全送り」の場合,印字終了位置からテープ ,を34mm送ることが認められる。そうすると,同製品は,考案15の構成をすべて備えているということができる。
この点について,一審被告は,上記「半送り」では,文字の前後の余白の長さが異なるから,考案15の構成?Dを備えていないと主張するが,実用新案登録請求の範囲には,文字の前後の余白が同一でなければならないという限定はないから,一審被告の主張を採用すること。, ,「 」 ,「」 , はできない また 一審被告は 上記 全送り 半送り の表示は考案15の構成?D「予め決められた余白の大きさを表す複数の余白データとして表示する」とはいえないとも主張するが 「全送り 「半 ,」 ,送り」については,それぞれ上記のとおり決まった長さの余白が付くことが示されているのであるから 「全送り 「半送り」の表示は, ,」 ,考案15の構成?D「予め決められた余白の大きさを表す複数の余白データとして表示する」に当たるものということができる。
したがって,考案15には無効事由があると認められる。
〔〕【 ( , ) 】 16 特許第●●号 特許発明16 出願日平成2年9月12日a 特許発明16の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 17 特許第●●号 特許発明17 出願日平成2年9月12日a 特許発明17の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 18 特許第●●号 特許発明18 出願日平成4年4月20日a 特許発明18の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明18の意義特許発明18の明細書(●●)には 「設定テープ長」が左右 ,のカーソル移動キーの操作によって設定され 「行修飾 (レフト ,」マージンフラッシュ,ライトマージンフラッシュ,中央揃え,行頭・行末揃え)がやはり左右のカーソル移動キーの操作によって設定され 「設定テープ長」がテープ長データLDとしてテープ ,長メモリ49に記憶され,設定された行修飾のフラグがセットさ,( ) , れて 印刷制御処理に移ること10欄26行〜11欄15行設定テープ長LDが文書データの総文字幅TWより大きいときは,設定テープ長LDから総文字幅TWを差し引いた残りのスペース分を 「行修飾」の設定に応じて,文書データの前方方向に ,付加する,後方方向に付加する,半分を前方方向に半分を後方方向に付加する 均等に割り付けるといった処理が行われること 1 ,(1欄28行〜12欄10行)が記載されている。この記載を参酌すると,特許発明18の構成?B「前記テープの長手方向の印字長を入力設定するテープ長設定手段」によって設定されるものは,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものである。そして,特許発明18の上記明細書(●●)では,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を想定した記載はないから,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものをもってテープ全体の長さと解釈することが相当である。特許発明18の明細書(●●)の【図18】〜【図24】の記載は,特許発明18の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明19,出願日平成4年4月30日 】19)a 特許発明19の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明19の意義特許発明19の明細書(●●)には「設定テープ長」が左右の ,カーソル移動キーの操作によって設定され 「行修飾 (レフトマー ,」ジンフラッシュ,ライトマージンフラッシュ,中央揃え,行頭・行), 末揃え がやはり左右のカーソル移動キーの操作によって設定され「設定テープ長」がテープ長データLDとしてテープ長メモリ43に記憶され,設定された行修飾のフラグがセットされて,テープ印字制御処理に移ること( 0041 【0042 ,設定テープ長 【】 ,】 )LDが総ブロック幅TBWより大きいときは,設定テープ長LDから総ブロック幅TBWを差し引いた残りのスペース分が余白メモリ46に記憶され 「行修飾」の設定に応じて,ブロックの位置につ ,いて,スペース分を前方方向に付加する,後方方向に付加する,半分を前方方向に半分を後方方向に付加する,均等に割り付けるといった処理が行われること( 0045】〜【0047 )が記載され 【】ている。この記載を参酌すると,特許発明19の構成?G「前記行修飾を設定する被記録媒体上の記録領域の大きさを任意に設定する領域設定手段」によって設定されるものは,総ブロック幅TBWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものである。そして,特許発明19の上記明細書(●●)では,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を想定した記載はないから,総ブロック幅TBWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものは,テープ全体の長さと解釈することができる 特許発明19の明細書●●の図14〜図 。()【】【17】の記載は,特許発明19の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 20 特許第●●号 特許発明20出願日平成3年12月26日a 特許発明20の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 発明者は誰か(a) キングジム社が一審被告との共同開発中に提案したものかどうか証拠(甲136の5,142,143,207,215)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。
・ 平成2年7月23日,キングジム社は一審被告宛てに「UR55プロポーザル」と題する書面(甲142)を提出した。
・ 平成2年8月31日 一審原告 X 2はキングジム社宛てに 9 ,「/6(木)御来社の件」と題する文書(甲215)を送り,そこに,上記「UR55プロポーザル」に対する一審被告の案を添付した。
・ 平成2年11月7日,一審被告はキングジム社宛てに「テプラ EXCEL UR-55 仕様案 (甲136の5)を提 」出した。その中にはキャラクタ列をブロックで区切ることが記載されている。
・ 平成2年12月24日,キングジム社は一審被告宛てに「UR-55 機能・操作仕様(案 (甲143)を提出した。 )」・ 以上のような経緯を経て,特許発明20の出願(平成3年12月26日)前である平成3年3月6日,一審被告はキングジム社宛てに「UR-55(PT-EXCEL)仕様及び概略御見積 (甲207)を提出した。同書面には,複数段落のラベ 」ルを作成する場合に,1行目のABCを入力し,改行キーを押すと2行目に移り,続いて2行目のDEFを入力し,NEWBLOCKキーを押すと,3行目ではなく,1行目であることを示す「1:」が行頭に表示されることが示されている。
(b) 特許発明20の構成は,上記のとおり甲207に記載されているものと認められる。
しかし,甲207は,一審被告からキングジム社宛てに提出された文書であって,上記(a)認定に係るそれまでの文書には,キャラクタ列をブロックで区切ることは記載されているが,改ブロックデータの入力により行番号を初期値に戻して表示手段に表示させることは記載されていない。したがって,上記(a)の事実から,特許発明20は,キングジム社が一審被告との共同開発中に提案したとか,キングジム社の従業員が発明したと認めることはできない。したがって,一審被告がキングジム社に対して特許発明20に係る権利を行使することは許されないということはない。
(c) 一審原告 X 2は発明者か証拠(甲136の6)によると,平成2年11月14日の一審被告の会議において 「マルチラインは各行の先頭にM1,M2 ,() 」 。 … 仮 マークを表示する ことが検討されたものと認められるしかし,この検討内容は「改ブロックデータの入力により行番号を初期値に戻して表示手段に表示させる」ことを意味するものではないし,一審原告 X 2が提案したことを認めるに足りる証拠もない。その他,一審原告 X 2が改ブロックデータの入力により行番号を初期値に戻して表示手段に表示させることを提案したことを認めるに足りる証拠はない(甲136の7及び137も,その旨の提案が記載されているものではない 。したがって,一審原 )告 X 2が発明者であると認めることはできない。
〔〕【 ( , ) 】 21 特許第●●号 特許発明21 出願日平成4年6月30日a 特許発明21の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無等(a) 特許発明21がキングジム社が一審被告との共同開発中に提案したものかどうか特許発明20において認定したとおり,甲207には,改ブロックデータを入力することが記載されているが,同号証は一審被告からキングジム社宛てに提出された文書であって,甲207に上記事項が記載されている事実から,特許発明21は,キングジム社が一審被告との共同開発中に提案したとか,キングジム社の従業員が発明したと認めることはできないし,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,一審被告がキングジム社に対して特許発明21に係る権利を行使することは許されないということはない。
(b) 無効事由の有無特許発明21に係る特許出願(平成4年6月30日)前である平成3年5月15日発売の機種(TR-77)において,文書をファイルに登録しておき,必要に応じてカーソルがある位置にファイルからその文書を呼び出すという技術が公然使用されていたとしても,特許発明21の構成?E「前記挿入する登録文書データと挿入される文書データを前記テープの長手方向に並べるべく両文書データを区切る改ブロックデータを両文書データ間に付加する改ブロック付加手段」が使用されていたことにはならず,特許発明21に無効事由があるということはできない。
(c) 一審原告 X 2は発明者か証拠(甲136の6)によると,平成2年11月14日の会議において 「マルチラインは各行の先頭にM1,M2・・ 仮)マ ,(ークを表示する」ことが検討されたものと認められる。しかし,この検討内容を一審原告 X 2が提案したことを認めるに足りる証拠はないし,このようなことが検討されていたということから直ちに一審原告 X 2が特許発明21の発明者であると認めることはできない。
〔〕【 ( , ) 】 22 特許第●●号 特許発明22出願日平成3年12月28日a 特許発明22の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無後記特許発明54において併せて判断する。
〔〕【 ( , ) 】 23 特許第●●号 特許発明23 出願日平成4年4月30日a 特許発明23の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明23の意義特許発明23の明細書(●●)には 「設定テープ長」が左右 ,のカーソル移動キーの操作によって設定され 「行修飾 (レフト ,」マージンフラッシュ,ライトマージンフラッシュ,中央揃え,行頭・行末揃え)がやはり左右のカーソル移動キーの操作によって設定され 「設定テープ長」がテープ長データLDとしてテープ ,長メモリ49に記憶され,設定された行修飾のフラグがセットさ,( 【】 ,【】 ), れて テープ印字制御処理に移ること 0041 0042設定テープ長LDが,文字サイズメモリ44に格納されているサイズデータと文書データの各コードデータに対応するアウトラインデータに含まれる文字幅データとバーコード幅データに基づいて求められる「文書データの総文字幅TW」より大きいときは,設定テープ長LDから総文字幅TWを差し引いた残りのスペース分がフィード量データとしてとして記憶され 「行修飾」の設定 ,に応じて,文書データの前方方向に付加する,後方方向に付加する,半分を前方方向に半分を後方方向に付加する,均等に割り付けるといった処理が行われること( 0044】〜【0054 ) 【】が記載されている。この記載を参酌すると,特許発明23の構成「」 ?A 前記テープの長手方向の印字長を設定するテープ長設定手段によって設定されるものは,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものである。そして,特許発明23の上記明細書(●●)では,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を想定した記載はないから,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペー,。 ス分を加えたものは テープ全体の長さと解釈することができる特許発明23の明細書(●●)の【図17】〜【図23】の記載は,特許発明23の上記技術的意義に照らすと,上記解釈を左右するものということはできない。
●●(省略)〔24〕 【特許第●●号(特許発明24,出願日平成4年4月30日 】)a 特許発明24の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔25〕 【特許第●●号(特許発明25,出願日平成4年9月7日 】)a 特許発明25の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無証拠(甲218,219,315)によると,バーコードには規格があり,例えば,NW-7(CODABAR)規格では,最初の文字,,,, , と最後の文字は A B C Dのいずれかでなければならないことこの規格は,1972年(昭和47年)にモナークマーキング社によって開発されたことが認められる。
しかし,それ以上に特許発明25の構成が知られていたことを認めるに足りる証拠はないから,特許発明25に無効事由があると認めることはできない。
〔〕【 ( , ) 】 26 特許第●●号 特許発明26 出願日昭和61年10月13日a 特許発明26の構成特許請求の範囲第1項の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(a) 特許発明26の意義一審原告らは,特許発明26について,ワープロのように複数行を数回に分けて印字する場合に限って発明性が認められたものにすぎない旨主張する。しかし,特許発明26の明細書(●●)には一審原告主張の権利解釈を裏付ける記載は認められないし,特開昭54-68326号公報(甲221)及び特開昭60-232594号公報(甲222)に照らしても,特許発明26を一審原告主張のように限定して解釈すべきであると解されない。一審原告らが指摘する特許異議決定(甲138)には,上記一審原告らの主張に沿う記載があるが,採用することができない。
●●(省略)c 無効事由の有無特許発明26に係る特許の出願当初の明細書(甲220)の特許請求の範囲は 「入力された文字列をそのまま又は漢字混じり文に変換 ,して印字出力を行う印字装置において,印字すべき文字情報を記憶する主記憶手段と,この主記憶手段に記憶された文字情報に基づいて印字ヘッドへドットパターン情報を供給する供給手段と,主記憶手段から印字ヘッドへのドットパターン情報の供給の際に必要に応じてドットパターン情報の上下反転を行う手段と,を有する印字装置」というものであったが,その後の補正により,特許請求の範囲第1項は上記aのとおりとなり,第2項として 「前記記録媒体はレタリング用テ ,ープからなり,前記印字ヘッドにより印字リボンを介してテープ表面に印字がなされることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の印字装置」が追加されたものである。そして,記録媒体がレタリング用テープであることについては,出願当初の明細書には明示的な記載はないが,弁論の全趣旨によると,テープに文字を記録するタイプライタ又ワードプロセッサが周知であったと認められることや出願当初の明細書(甲220,2欄2行)にインスタントレタリングシートに印字することが記載されていたことに照らすと,第2項の追加をもって要旨変更とまでいうことはできない。
したがって,特許発明26に無効事由がある旨の一審原告らの主張は前提を欠き採用することができない。
〔〕【 ( , ) 】 27 特許第●●号 特許発明27出願日平成4年12月28日a 特許発明27の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 28 特許第●●号 特許発明28出願日平成5年12月14日a 特許発明28の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無(a) 特許発明3について述べたとおり,甲202( P-TOUC「H XL USER'S GUIDE )は,特許発明28に係る 」特許の出願日(平成5年12月24日)前に外国で頒布された刊行物であると認められる。
(b) 甲202の92頁には,以下の記載がある。
「・テキストエリア(workingarea)には入力できる限界があります。もし,文字や,アクセント記号や,改行キー,改ブロックキー,スペース,又はタグを入力しようとしたときに,入力エリアのバッファ(working area buffer)の限界を超える場合,『WORKING AREA FULL』という警告表示がされます。
・ナンバリングモードや,記号モードや,部分フォーマットモードやバーコードモードに入った後で,改行キーを押したときに入力エリアのバッファ(working area buffer)の限界を超えたときも,この『WORKING AREA FULL』の警告表示が出ます。
・ファイルを呼び出し,連結させようとしたときに,改行キーを押したときこの入力エリアのバッファの限界を超えるときは,この『WORKING AREAFULL』の警告表示が出ます 」。
(c) また,甲202の91頁には,以下の記載がある。
「印刷しようとしたとき,workingarea にテキストが入力されていない場合は,こののメッセージ( WORKINGAREA EMPTY! )が出 『』ます 」。
(d) 以上のとおり,甲202の92頁には,入力が入力エリアのバッファ(working area buffer)の限界を超える場合 「WORKING,AREA FULL」の警告表示が出ることが記載されていると認められるが,それが「印刷領域内に印刷可能か否かを判定し,印刷不可能と判定されたときにその旨を報知する」ものであるとは,91頁の記載を併せて参酌しても認められない。したがって,甲202に特許発明28の構成?Gが記載されているとは認められず,特許発明28に無効事由があると認めることはできない。
〔〕【 ( , ) 】 29 特許第●●号 特許発明29出願日昭和58年11月19日a 特許発明29の構成特許請求の範囲第1項の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 30 実用新案登録第●●号 考案30 出願日昭和62年7月2日a 考案30の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 31 実用新案登録第●●号 考案31 出願日昭和62年7月2日a 考案31の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔32〕 【特許第●●(特許発明32,出願日平成4年4月30日 】)a 特許発明32の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c発明者特許発明32に係る特許明細書(●●)には 「一方,ローカル印 ,字フォーマットの設定データを変更するフォーマット変更キーを設け,この変更キーを介してローカル印字フォーマット変更モードを設定するように構成すると,キーや制御モードが増え,操作性が低下する。本発明の目的は,文書の任意部分に印字フォーマットを設定可能な文書処理装置において,操作性やディスプレイの表示機能を低下させることなく,印字フォーマットの設定データを変更可能とすることである ( 0004 )と記載されているから,特許発明32の課題 。」【 】は,操作性やディスプレイの表示機能を低下させることなく,印字フォーマットの設定データを変更することであって,そのために,構成?Hを採用したものと解されるから,特許発明32の構成のうち特徴的な部分は,構成?Hであって,構成?H以外の構成が特許発明32を特徴付けるものであるとは認められない。
しかるところ,証拠(甲214)及び弁論の全趣旨によると,キングジム社から平成3年9月3日に一審被告に提出された「UR505操作仕様書案 (甲214)には,構成?@〜?G,?I,?Jについては 」記載されていると認められるが,構成?Hが記載されているとは認められない。したがって,キングジム社の従業員が特許発明32の発明者であると認めることはできず,一審被告がキングジム社に対して特許発明32に係る権利を行使することは許されないということはない。
〔33〕 【特許第●●号(特許発明33,出願日平成6年7月18日 】)a 特許発明33の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 発明者と無効事由( ) 一審原告 2,一審被告社員が発明者であるかどうかaX v一審原告 2,一審被告社員が特許発明33の発明者であるこXvとを認めるに足りる証拠はない。
(b) 無効事由の有無甲302(キングジム社のテプラプロSR404の取扱説明書),() , は 1993年 平成5年 に印刷したことが記載されているから特許発明33に係る特許出願(平成6年7月18日)前に頒布されたものと認められる。
甲302の161頁,162頁では,複数のラベル名にそれぞれ対応するテープ幅が指定されている。しかし,その記載からは,そのテープの幅の情報が書式情報記憶手段に格納されている(特許発明33の構成?F)とまでは認められない。したがって,甲302には特許発明33の構成がすべて記載されているということはできないから,一審原告主張に係る特許法29条1項3号の無効事由があるとは認められない。
〔34〕 【特許第●●号(特許発明34,出願日平成5年1月7日 】)a 特許発明34の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,特許発明34の構成のうち?@?Dは,甲298(PT-8000のカタログ表紙)に記載されており,?Bは甲298から明らかであり,?Aは,甲202( P-TOUCH XL USER'S 「GUIDE )に記載されており,?Cは甲202から明らかである 」から,特許発明34は進歩性を欠くと主張する。
しかし,甲298にはテストパターンを印刷した写真であるとの説明はなく,写真から当然にそのように理解することもできないから,甲298に,特許発明34の構成のうち?@?Bが記載されているということはできない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,特許発明34に無効事由があるとは認められない。
〔〕【 ( , ) 】 35 特許第●●号 特許発明35出願日平成3年12月26日a 特許発明35の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 発明の経緯(a) 証拠(甲207,214)及び弁論の全趣旨によると,平成3年3月6日,一審被告はキングジム社宛てに「UR-55(PT-EXCEL)仕様及び概略御見積り (甲207)を提出したが, 」これに対して,平成3年9月3日に,キングジム社から一審被告宛に「UR505 操作仕様案 (甲214)が提出されたことが認 」められる。その37頁には 「モード指定」の表題の下に 「モード ,,ではローカルフォーマットに相当するものを行頭・文中で指定。別にモード保存によってグローバルフォーマットに相当するものを設。」,「(,, 定 グローバルフォーマットに相当する内容 外枠罫 鏡文字縦書きなど全文の書式)を文頭の特殊なモード指定マークで受け付ける考え方もある 」と記載され,さらに 「モードの樹系構造を次 。,の様に仮定する 」として,表が掲載されているが,その表におい 。
,「」,「」 ,「」 。 て 罫線 囲み罫:細い 囲み罫:太い と記載されている(b) 「UR505 操作仕様案 (甲214)の上記記載によると, 」「グローバルフォーマット」と「ローカルフォーマット」を設ける,「」 , こと グローバルフォーマットに外枠罫の設定が含まれること「ローカルフォーマット」として「囲み罫」を設定することがあることが認められるから,これらの記載を実行すると,結果的に2重のフレーミングが形成されることがあり得るが,2重のフレーミングを形成すること自体が「UR505 操作仕様案 (甲214) 」に記載されているわけではないから,特許発明35がキングジム社の提案によるものとまで認めることはできない。
〔36〕 【特許第●●号(特許発明36,出願日平成6年8月10日 】)a 特許発明36の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔37〕 【特許第●●号(特許発明37,出願日昭和61年12月26日】)a 特許発明37の構成特許請求の範囲第1項の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)(c) なお,特許発明37に係る特許の出願当初の明細書(甲217)においては,特許請求の範囲第1項は 「…レタリングテー ,プ作製装置」とされており,その後の補正によって「…テープ印刷装置」となったものであるところ,出願当初の明細書(甲217)には「レタリングテープ作製装置」についての記載しかないから 「テープ印刷装置」と補正することは,要旨変更に当たる ,と考えられる。
しかし,特許発明37に係る特許に適用される平成5年法律第26号による改正前の特許法40条は 「願書に添付した明細書 ,又は図面についての出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前にした補正がこれらの要旨を変更するものと特許権の設定の登録があった後に認められたときは,その特許出願は,その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 」と規定してお 。
り,当然に無効事由があるとされていたものではない。
〔38〕 【特許第●●号(特許発明38,出願日平成2年5月17日 ・)●●】a 特許発明38の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c発明者特許発明39(●●)において併せて判断する。
〔39〕 【特許第●●号(特許発明39,出願日平成2年5月17日 ・)●●】a 特許発明39の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 特許発明39の実施●●(省略)c 一審原告 X 2は発明者か(a) 第2考案(出願人一審被告,考案者 A ほか2名,出願日昭和62年11月28日)の公告公報(実公平6-34126号。甲2の7)には,次のような技術が記されている。
「テープ印字装置が,テープ110全体を切断する一つの完全切断カッター136と,剥離紙102のみを切断する二つのハーフ切断カッター138,140を備えている 」。
(b) 第4考案(出願人一審被告,考案者一審原告 X 2,出願日平成)( 。) 元年10月6日 の公告公報 実公平7-23191号 甲2の9には,次のような技術が記されている。
「テープ印刷装置とは別体に構成されたテープ切断装置10は,カッタ刃18を保持するカッタホルダ20が装着された押付け体12と,テープ体28を収容するテープ収容体14とから構成されており,テープ収容体14には,テープ体28の幅方向の移動を規制する一対のガイド部材34が設けられている。カッタ刃18は,テープ体28の粘着テープ38を完全に切断するが,剥離紙40を切断しないようにしてもよいし,テープ体全体を切断するようにしてもよい 」。
(c) 実開平3-33857号公報(出願人一審被告,考案者一審原告 X 2外1名,出願日平成元年8月11日。甲44)には,次のような技術が記されている。
「カッターレバー24の操作により上下動するカッターホルダ28を備えたテープ印字装置であって,カッターホルダ28は,カッター刃44,45を有している。カッター刃44は,テープ基体42及び剥離紙43を含むテープ1全体を切断する完全切断刃であり,カッター刃45は,粘着層41を有するテープ基体42のみを切断するハーフカット刃である 」。
(d) 証拠(甲140,171)及び弁論の全趣旨によると,平成元年6月9日にキングジム社から一審被告に提出された「TR-77企画(案 (甲140)には 「別カッターメカ内蔵をも含むハー )」,フカット・余白カット・コーナーRの実現 」と記載されている。 。
(e) 上記第2考案及び実開平3-33857号の技術は,第1の切断機構で切り取られた被印刷媒体の端部を第2の切断機構で所望の形状に切断するという構成を含むものではないし,また,上記第4考案の技術は,一つの印刷装置に第1の切断機構と第2の切断機構を有するものでないから,これらは,キングジム警告権利7ないし8と技術的思想を異にする別個の考案である。さらに,TR-77企画(案 (甲140)の上記記載は,記載された事項を実現する )ための具体的な構成が述べられているものではなく,アイデアにとどまるし,その内容もキングジム警告権利7ないし8と同じものであるかどうかは,その記載から必ずしも明らかでない。
したがって,上記各証拠から,一審原告 X 2が●●の発明者であると認めることはできない。
〔40〕 【実用新案登録第●●号(考案40,出願日昭和63年8月31日 】)a 考案40の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)について検討する。
( ) 考案40の意義a証拠(甲212,213)によると,考案40に係る実用新案登録出願は,●●から分割出願されたものであるところ,同実用新案登録出願の明細書(甲213)の図1には,カセットケースの前壁面の一部分が受台を構成し,可動刃はその刃先が受台と対向しかつ受台に向かって押圧されるように構成されている図が記載されていたと認められる。そうすると,考案40に係る実用新案登録出願は,分割出願の要件を備えているものであって,上記図1に記載されているのがカッターを回転して切断するものであったとしても,考案40がそのようなものに限定されることはないというべきである。
●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 41 特許第●●号 特許発明41 出願日平成2年6月19日a 特許発明41の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って構成要素を分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 発明者第4考案(出願人一審被告,考案者一審原告 X 2,出願日平成元年10月6日)の公告公報(実公平7-23191号。甲2の9)には,特許発明41の構成?A〜?Cは記載されておらず,特許発明41が第4考案に基づくもので,一審原告X 2が発明者であると認めることはできない。
〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案42,出願日平成元年11月742日】)a 考案42の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 43 特許第●●号 特許発明43 出願日平成3年3月12日a 特許発明43の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明44,出願日平成6年5月25日 】44)a 特許発明44の構成特許請求の範囲の請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無特開平6-122239号公報(平成6年5月6日公開。出願人セイコーエプソン社・キングジム社。甲300)には,テープよりもインクリボンの幅を広く形成すること,サーマルヘッドで印字される個所よりも,さらに,フィルムテープとインクリボンとの分離位置よりも下流にテープの排出口(10Aと10Bの間)が設けられていることが記載されていると認められる。しかし 「前記分離位置の近傍に ,てカセットケースにおける側壁に形成され,フィルムテープの幅方向への位置ずれを規制案内する一対の規制部材を備え」ていること(構成?E 「前記各規制部材の間の間隔は前記フィルムテープのテープ幅 ),とほぼ同一かつ前記インクリボンのリボン幅よりも小さくされていることにより 「前記規制部材は,前記インクリボンが当該規制部材の ,」下流側まで走行することを防止すること (構成?F?G)について記載 」又は示唆があるとは認められない。
一審原告らは,キングジム社のテープカセットのテープの出口の幅はフィルムテープの幅よりほんの少し広く,フィルムテープの幅はインクリボンの幅よりも広い,と主張するが,特許発明44に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から,キングジム社のテープカセットが上記のとおりであったことを認めるに足りる証拠はない(甲299も,キングジム社が平成4年から6mmテープと9mmテープを発売していることが認められるのみで,キングジム社のテープカセットが特許発明44に係る特許の出願前から上記のとおりであったことを認めることはできない 。。)また,一審原告らは,テープの幅に合せて上下に規制部材を設け,テープの上下の移動を防ぐということは,一審被告が平成4年4月から販売しているTX型テープカセットでも実施されている公知の技術であるとも主張する。しかし,特許発明44が上記相違点に係る構成(構成?E〜?G)を有することの技術的意義は,インクリボンとフィルムテープとを確実に分離してインクリボンがフィルムテープの走行に伴って必要以上に引き出されることを防止することにあると認められる(●●)ところ,弁論の全趣旨により認められるTX型カセットの構成によれば,TX型カセットの規制部材は,このような課題解決のために設けられているものとは認められず,規制部材のさらに下流側においてラミネートテープとフィルムテープとを積層させるに当たり位置ずれを起こすことのないようにフィルムテープを確実に規制案内するために設けられているものと解されるから,上記特開平6-122239号公報(甲300)に記載された発明において上記相違点に係る構成(構成?E〜?G)を設けることは,TX型カセットの規制部材から当業者が容易に想到できるものではない。
したがって,特許発明44に無効事由があるとは認められない。
〔45〕 【特許第●●号(特許発明45,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明45の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無特開平6-122239号公報(平成6年5月6日公開。出願人セイコーエプソン社・キングジム社。甲300)の図によるも,同公報記載のテープカートリッジが 「各フィルムテープ及びインクリボン ,を案内するとともに,一対の壁部を有するガイド部 (特許発明45」の構成?C?D)を有すると認められないし,また 「前記フィルムテー ,プの幅方向を案内規制する案内規制部 (特許発明45の構成?E?F) 」を有するとも認められない。
また,一審原告らは,キングジム社のテープカセットは,上記の図を製品化したものであって,その製品は,上記各構成(特許発明45の構成?C〜?F)を有していると主張するが,特許発明45に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から,キングジム社のテープカセットが上記のとおりであったことを認めるに足りる証拠はない(甲299も,キングジム社が平成4年から6mmテープと9mmテープを発売していることが認められるのみで,キングジム社のテープカセットが特許発明45に係る特許の出願前から上記のとおりであったことを認めることはできない 。。)したがって,特許発明45に無効事由があるとは認められない。
〔46〕 【特許第●●号(特許発明46,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明46の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無特開平6-122239号公報(出願人セイコーエプソン株式会社・キングジム社,公開日平成6年5月6日。甲300)の記載及び図によるも,同公報記載のテープカートリッジが 「前記フィルムテー ,プの搬送経路を構成し,且つ,前記外壁と同一の高さを有する第1壁」() 。, 部 特許発明46の構成?C を有すると認められない したがって前記第1壁部よりも高く…第2壁部 特許発明46の構成?D 前 「」 () ,「記第1壁部と第2壁部の間に,…分離壁を設け (特許発明46の構 ,」成?E 「前記フィルムテープは前記第1壁部と分離壁との間を走行案 ),内される (特許発明46の構成?F)の各構成を有するとも認められ 」ない。
また,特許発明46に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から,キングジム社のテープカセットが上記各構成を有することを認めるに足りる証拠はない(甲299も,キングジム社が平成4年から6mmテープと9mmテープを発売していることが認められるのみで,キングジム社のテープカセットが特許発明46に係る特許の出願前から上記のとおりであったことを認めることはできない 。。)そうすると,特許発明46に無効事由があるとは認められない。
〔47〕 【特許第●●号(特許発明47,出願日平成4年1月8日 】)a 特許発明47の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)?C を特徴とするテープカセット。
b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無証拠(乙164添付資料6〜12,226の1・2)によると,米国のバリトロニクス社は 1984昭和59年 4月から Merlin ,( )「(マーリン)レタリング」というラベル作製専用機を販売しており,日本においても昭和60年12月ころには輸入販売されていたこと,その後 同社は 1986年 昭和61年 12月から Merlin Express ,, ( ) 「(マーリンエクスプレス 」というラベル作製専用機の販売を始め, )昭和62年5月からは日本でも輸入販売されていたことが認められる。
しかし,上記マーリンエクスプレスが,特許発明47に係る特許出願(平成4年1月8日)前から,下記写真(一審原告らの当審第20準備書面38頁の写真)のような構成を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
記【マーリンエクスプレスのカセット】また,本件特許発明47は,テープ状の被印字媒体が「カセットケース本体のテープ出口より送り出され」てから「テープカッタにより裁断」されるものであるから,テープカッタ(可動刃,固定刃)はテープ状の被印字媒体がテープカセット本体から送り出される側すなわちテープカセット本体の外側に配置されるものであるということができる。そうすると,固定刃の刃先近傍まではりだして形成されている「くちばし状のテープ受部」についてもテープカセットの本体の外枠に設けられていると解するのが妥当である。
上記写真によると,上記マーリンエクスプレスにおいて一審原告らが上記「くちばし状のテープ受部」に当たると主張する「くちばし部材」がテープカセットの本体の外枠に設けられていると認めることはできないから,この点からも上記マーリンエクスプレスが特許発明47の構成を備えているということはできない。
したがって,特許発明47に無効事由があるとは認められない。
〔48〕 【実用新案登録第●●号(考案48,出願日昭和63年10月15日 】)a 考案48の構成実用新案登録請求の範囲の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔49〕 【特許第●●号(特許発明49,出願日平成4年6月8日 】)a 特許発明49の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無特許発明49は,上記の構成を採用することによって,バーコードの両側に余白を空けるようにしたものであって,読み取りのためにはバーコードの両側に余白を空けることが知られていた(甲304)としても,特許発明49に無効事由があるということはできないし,他社に対して権利行使できないということもない。
〔50〕 【特許第●●号(特許発明50,出願日平成4年9月19日 】)a 特許発明50の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無。
証拠(甲204,205,301)によると,カシオ社は海外でラベルプリンター「KL-2000」を平成4年4月に発売したこと,その発売当初の取扱説明書(甲205)59頁には,次の記載があることが認められる。
「メモを画面上でスクロールして探す方法1. キーを押して,次いで キーを押して,FUNCTION SEARCH検索開始画面に入ります。
2.▽キー(又は キー)を押して,保存されている文書を探SETします。
., 。 3 文書が表示されますので △キーと▽キーを使って探します4.所望の文書が画面に表示されたら, キーを押して直接PRINT印字するかまたは, キーを押して保存エリアにある文書をSET入力エリアに転送するかを選べます。どちらも不要であれば,キーを押せばこの操作から抜け出せます 」ESC。
上記の事実によると,上記取扱説明書(甲205)は,特許発明50に係る特許出願(平成4年9月19日)前に外国で頒布された刊行物であると認められる。
そして,上記取扱説明書(甲205)の記載によると 「4 」の操 ,.作は,所望の文書が画面に表示された場合に,SET キーを押すと保存エリアにある文書を入力エリアに転送されるが,PRINT キーを押すと保存エリアから読み出して印字すると合理的に解釈することができるから,上記取扱説明書(甲205)には,特許発明50の構成?Fが記載されているものと認められる。また,弁論の全趣旨によると,特許発明50の構成のうち構成?@〜?E,?Gは,ラベルプリンターに共通する周知の構成であると認められる。そうすると,特許発明50には無効事由があると認められる。
〔51〕 【特許第●●号(特許発明51,出願日平成4年2月21日 】)a 特許発明51の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無特許発明51の構成には,テープ幅を検出し,入力し,バッファ内に格納しておく手段が含まれていないが,上記〔 (特許発明4)で4〕判示したとおり,テープ幅検出手段は周知のものであるから,テープ幅の検出に関する構成が含まれていないからといって,特許請求の範囲の記載に不備があるということはできない。
また,特許発明51が,文字列方向変更手段により変更された文字列情報の文字列方向の文字列幅がテープに収まるかどうかを判別し,収まらないときは文字列情報の文字サイズを全体的に縮小するというものであることからすると,構成?D,?Eでいう「テープ幅」は,テープの物理的な幅から印字不可能領域を除いたものと解するのが相当であり,この点において特許請求の範囲の記載が不明確であるということはできない。
〔52〕 【特許第●●号(特許発明52,出願日平成4年4月27日 】)a 特許発明52の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明53,出願日平成4年4月30日 】53)a 特許発明53の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】54特許第●●号 特許発明54 出願日平成3年12月28日a 特許発明54の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無(a) 特許発明22の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,前記特許発明22のとおり,以下のようになる。
●●(省略)(b) 乙71添付資料22,54及び弁論の全趣旨によると,特許発明54に係る特許 特許第●●号 は 特許発明22に係る出願 ● (), (●)から分割出願された●●から更に分割出願(●●)されたものであると認められる。
(c) 構成の対比特許発明22と特許発明54の構成を対比すると 「入力手段 , ,」「入力データ記憶手段 「記録手段「データ変換手段 「表示手 」,」 ,」 ,段」を備えていること,バーコードのデータの入力位置に対応するようにバーコードのデータの存在を示す所定の識別マークを表示することは共通する。
しかし,特許発明54は 「文書データを入力するテキストモー ,ドとバーコードデータを入力するためのバーコードモードとを切り換えるモード切換手段」を有する点 「入力データ記憶手段から読 ,み出された入力データを被記録媒体に記録する際に,読み出された入力データが文書データかバーコードデータかを判断し,その判断結果に応じて文書データを文書記録用データに変換すると共にバーコードデータをバーコード記録用データに変換して,文書とバーコードとを記録する」点 「表示手段による表示の際に,読み出され ,た入力データが文書データかバーコードデータかを判断し,その判断結果に応じて文書データを文書表示用データに変換すると共にバーコードデータをバーコード識別マーク表示用データに変換して表示する」点において,特許発明22とは相違しており,同一の発明ということはできない。
(d) したがって,特許発明22,特許発明54について無効事由がある旨の一審原告らの主張は,前提において失当である。
〔55〕 【特許第●●号(特許発明55,出願日平成4年6月11日 】)a 特許発明55の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,上記記載の主張に基づき,構成?Dを充たそうとすると,ITF,NW-7,CODE39の三つについて,設定項目数をバーコード規格に反したものとしなければならないから,このような発明は実用性が欠如しており,特許法29条1項で規定する「産業上利用することができる発明」とはいえないと主張する。
しかし,一審原告らの上記記載の主張を採用することができないから,特許発明55において設定項目数をバーコード規格に反したものとしなければならないということはなく,特許発明55について一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔56〕 【特許第●●号(特許発明56,出願日平成5年9月13日 】)a 特許発明56の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】 57 特許第●●号 特許発明57出願日平成5年12月28日a 特許発明57の構成特許請求の範囲請求項2の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無(「 」 ), 甲202 一審被告の P-TOUCH XL の取扱説明書 は() 前記特許発明3のとおり特許発明57の出願 平成5年12月28日,, に外国で頒布された刊行物であると認められるところ 甲202には特許発明57の構成を備えた装置が記載されているものと認められる。
この点について,一審被告は,上記構成?H「前記規格名表示制御手段は,前記モード設定手段により設定された前記バーコード入力モード中に,前記バーコード規格名を表示させるように構成されたこと」は 「前記規格名表示制御手段は,前記モード設定手段により設定さ ,れた前記バーコード入力モード中に,前記バーコード規格名を一時的に表示させるように構成されたこと」を意味すると主張するが,特許請求の範囲に「一時的」というような限定がないことは明らかであるから,一審被告の主張を採用することはできない。
したがって,特許発明57には無効事由があると認められる。
〔58〕 【特許第●●号(特許発明58,出願日平成8年5月21日 】)a 特許発明58の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無弁論の全趣旨によれば,特許発明58はキングジム社の製品で実施されていると認められる。
c 特許発明58の実効性網掛け装飾の場合でもバーコードの読み取り精度を確保するという効果を有しているものであり,実効性がないということはできない。
〔59〕 【特許第●●号(特許発明59,出願日平成4年4月20日 】)a 特許発明59の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)次に,●●の製品において実施されているかどうかについて検討する。
( ) 特許発明59の意義a特許発明59の明細書(●●)には 「設定テープ長」が左右の ,カーソル移動キーの操作によって設定され 「行修飾 (レフトマー ,」ジンフラッシュ,ライトマージンフラッシュ,中央揃え)がやはり,「」 左右のカーソル移動キーの操作によって設定され 設定テープ長がテープ長データLDとしてテープ長メモリ49に記憶され,設定された行修飾のフラグがセットされて,テープ印字制御処理に移ること( 0044 【0045 ,設定テープ長LDが,文字サイ 【】 ,】 )ズメモリ44に格納されているサイズデータと文書データの各コードデータに対応するアウトラインデータに含まれる文字幅データとバーコード幅データに基づいて求められる「文書データの総文字幅TW」より大きいときは,設定テープ長LDから総文字幅TWを差し引いた残りのスペース分がフィード量データとして記憶され 行,「修飾」の設定に応じて,文書データの前方方向に付加する,後方方向に付加する,半分を前方方向に半分を後方方向に付加するといった処理が行われること( 0047】〜【0057 )が記載されて 【】いる。この記載を参酌すると,特許発明59の構成?A「前記テープの長手方向の印字長を設定するテープ長設定手段」によって設定されるものは,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものである。そして,特許発明59の上記明細書(●●)では,印刷開始部分及び印刷終了部分の余白を想定した記載はないから,総文字幅TWに行修飾で付加されるスペース分を加えたものは,テープ全体の長さと解釈することができる 特許発明59の明細書 ● 。(●)の【図17】〜【図23】の記載は,特許発明59の上記技術,。 的意義に照らすと 上記解釈を左右するものということはできない●●(省略)〔60〕 【特許第●●号(特許発明60,出願日平成6年7月18日 】)a 特許発明60の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 発明者及び無効事由(a) 一審原告 X 2,一審被告社員 v は発明者か一審原告 X 2,一審被告社員 v が特許発明60の発明者であることを認めるに足りる証拠はない。
(b) 無効事由の有無前記特許発明33のとおり,甲302(キングジム社のテプラプロSR404の取扱説明書)は,特許発明60に係る特許出願(平成6年7月18日)前に頒布されたものと認められる。
甲302の161頁〜164頁には,特許発明60の構成?@〜,, , ?C ?Hのほか 複数のラベル名が順々にディスプレイに表示されラベル名を選ぶと,そのラベル名に付随する複数の入力指示メッ(, ) ,, セージ 絵文字入力 文字入力の表示 が表示されること また文字入力の表示に付随するテキストデータ入力欄が表示され,一部のテキストデータと関連付けて印字する為に予め設定し記憶手段に格納されている特定の文字や記号の設定印字情報( DAT 「E 「TIME 「ねん 「くみ」など)も表示されること,そ 」,」 ,」,れらは順々にディスプレイに表示されること,入力されたテキストデータを所定の書式で印字することができることが記載されていると認められるから,特許発明60の構成?D〜?Gを備えているものと認められる。
したがって,甲302には特許発明60の構成がすべて記載されているから,特許発明60には無効事由があると認められる。
(イ) 一審被告主張の特許ポートフォリオ(テープカセット)〔1〕 【実用新案登録第●●号(考案1,出願日昭和63年10月14日】)a 考案1の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 考案1が考案2の権利と重複して権利化されたものであるかどうか後記考案2のとおり。
〔2〕 【実用新案登録第●●号(考案2,出願日昭和63年10月14日】)a 考案の構成() , 考案1に係る実用新案登録出願●● から分割出願されたものでその構成を実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 考案1が考案2の権利と重複して権利化されたものであるかどうか考案1は 「テープ印刷装置に用いられるテープ案内装置」に関す ,るものであるのに対し,考案2は,テープ収納カセットにおける「テープ案内装置」に関するものであるから,両考案を同一のものであるとか,重複して権利化されたということはできない。
〔3〕 【実用新案登録第●●号(考案3 出願日昭和63年10月17日】)a 考案3の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔4〕 【実用新案登録第●●号(考案4 出願日昭和63年10月19日】)a 考案4の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案5 出願日昭和63年10月175日】)a 考案5の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔6〕 【実用新案登録第●●号(考案6 出願日昭和63年10月17日】)a 考案6の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案7 出願日昭和62年12月297日】)a 考案7の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案8,出願日昭和62年12月298日】)a 考案8の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 共同出願(実用新案法11条1項で準用されている特許法38条)違反の有無考案8は 「テープ送出口を備えたハウジング (構成?A)を備える ,」ものであるところ,第3考案の公告実用新案公報(実公平5-36704号,出願人一審被告,考案者一審原告 2外5名,出願日昭和6X2年11月18日。甲2の8)に記載されているカセットケース54には 「テープ送出口」といえるものが存在しないから 「テープ送出 ,,口を備えたハウジング (考案8の構成?A)を備えるものではない。 」したがって,被印字テープ及び剥離紙付両面粘着テープが「ハウジン」( ,) 。 グ内に収納される との構成 考案8の構成?B ?D も備えていないそして,第3考案は 「…テープを保持するスプールをカセットケ ,ースに対して着脱自在とすることにより,そのテープのみ交換の必要が生じたときには,そのスプールだけカセットケースから取り外して別のものと交換することができ,カセットごと交換する必要がなくなる (明細書〔甲2の8〕4欄2行〜7行)ことを作用効果とする考 」案であり,この作用効果を奏するためスプールの着脱を容易にする構成,すなわち「テープ送出口を備えたハウジング」を用いない構成を採用した点に技術的意義があるものと理解することができるから テ,「ープ送出口を備えたハウジング」を必須の構成とする考案8とは技術的意義の異なる考案ということができる。したがって,第3考案の考案者が直ちに考案8の考案者であるということはできない。
また,第3考案の考案者は,一審被告の社員であるから,その実用新案登録を受ける権利は一審被告に帰属していたのであり,その意味においても一審被告が考案8に係る実用新案登録を出願することが特許法38条に違反するということはできない。
〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案9,出願日昭和63年10月179日】)a 考案9の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【実用新案登録第●●号(考案10,出願日昭和63年10月1105日 】)前記(ア)の考案48と同じ権利である(当事者間に争いがない 。)〔11〕 【実用新案登録第●●号(考案11,出願日昭和63年10月17日 】)a 考案11の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 共同出願(実用新案法11条1項で準用されている特許法38条)違反の有無考案11に係る実用新案登録請求の範囲請求項1には 「箱体」に ,ついて特に限定する記載はないが,第3考案の公告実用新案公報(実,, , 公平5-36704号 出願人一審被告 考案者一審原告 2外5名X出願日昭和62年11月18日。甲2の8)に記載されているカセットケース54は,コの字形の断面形状を備え,前方及び左右は開放されていたものである(6欄32行〜34行)から,日本語の通常の意「」 。 , , 味として 箱体 ということは困難である そうすると 考案11は第3考案とは 「箱体」を用い,その「箱体」に 「通常の熱転写型イ ,,ンクリボンとレタリング用熱転写型インクリボンとが共用できるインクリボン収納部 (考案11の構成?@ 「熱転写用印字テープとレタ 」) ,リング用印字テープとが共用できる印字テープ収納部 (考案11の」構成?A 「前記いずれかのインクリボンとそれに対応する印字テープ ),とが印字の際に重合して走行する印字部 (考案11の構成?B 「印 」) ,字後の前記熱転写用印字テープの印字面側に貼着される両面粘着テープを収納する粘着テープ収納部 (考案11の構成?C)を備えたこと 」が異なる。
そして,第3考案は 「…テープを保持するスプールをカセットケ ,ースに対して着脱自在とすることにより,そのテープのみ交換の必要が生じたときには,そのスプールだけカセットケースから取り外して別のものと交換することができ,カセットごと交換する必要がなくなる (明細書〔甲2の8〕4欄2行〜7行)ことを作用効果とする考 」案であり,この作用効果を奏するためスプールの着脱を容易にする構成,すなわち「箱体」を用いない構成を採用した点に技術的意義があるものと理解することができるから 「箱体」を必須の構成とする考 ,。, 案11とは技術的意義の異なる考案ということができる したがって第3考案の考案者が考案11の考案者であるということはできない。
また,第3考案の考案者は,一審被告の社員であるから,その実用新案登録を受ける権利は一審被告に帰属していたのであり,その意味でも一審被告が考案11に係る実用新案登録を出願することが特許法38条に違反するということはできない。
〔〕【 ( , ) 】 12 実用新案登録第●●号 考案12 出願日平成元年11月7日a 考案12の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無弁論の全趣旨によると,第3考案の公開実用新案公報(実開平1-80457号公報,出願人一審被告,発明者一審原告 X 2外5名,公開日平成元年5月30日,甲246)には,考案12の構成?D〜?Fに,「」, ついては記載されていないところ ラベルライター テプラ55 は鏡像印刷された透明テープの印刷面を両面粘着テープと貼り合わせたラミネートテープと,鏡像印刷された透明テープの印字面の文字を転写するための転写テープを作成することができるものであると認められる。ラベルライター「テプラ55」の上記各テープはいずれも鏡像印刷するものであるから,考案12の構成?D〜?Fに当たる機構を有していない。
したがって,第3考案の公開実用新案公報にラベルライター「テプラ55」の構成を適用しても,考案12とはならないから,考案12に無効事由があるということはできないし,第3考案とは別個の考案というべきである。
〔13〕 【実用新案登録第●●号(考案13,出願日昭和63年8月31日】)a 考案13の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 考案14及び考案15と重複して権利化されたものか後記考案15のとおり。
〔14〕 【実用新案登録第●●号(考案14,出願日昭和63年8月31日】)a 考案14の構成考案14に係る実用新案登録は,考案13に係る実用新案登録出願(●●)から分割出願されたもので,その構成を実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 考案13及び考案15と重複して権利化されたものか後記考案15のとおり。
〔15〕 【実用新案登録第●●号(考案15,出願日昭和63年8月31日】)a 考案15の構成考案15に係る実用新案登録は,考案13に係る実用新案登録出願(●●)から分割出願されたもので,その構成は,実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 考案13,14と重複して権利化されたものか( ) 考案13と考案14の対比a考案13は,カセットケースの箱状の形状を具体的に限定している(構成?C)が,考案14はカセットケースの具体的形状を規定していない。
また,考案13は 「前記カセットケースの前壁面の一部分が前 ,,」() , , 記受台を構成し 構成?D と規定しているのに対し 考案14は「前記被印刷媒体の引き出し口よりも被印刷媒体の送り方向下流側」「 」 ( )。 に位置するカセット前面 を 受台 として構成している 構成?C( ) 考案13と考案15の対比b考案15の「保持部材」は,考案13には存在しない。
( ) 考案14と考案15との対比c考案15は,カセットケースの箱状の形状を具体的に限定している(構成?C)が,●●ていない。
また,考案14では 「前記被印刷媒体の引き出し口よりも被印 ,刷媒体の送り方向下流側に位置するカセット前面」を「受台」として構成している(構成?C)のに対し,考案15では 「前記カセッ ,トケースの前記前壁面の所定部分が前記受台を構成し (構成?D) ,」と規定している。
さらに,考案15の「保持部材 (構成?E)は,考案14には存 」在しない。
(d) 以上のとおり,考案13,14,15は相違しており,同一ではない。また,考案15は,考案13の構成に「保持部材」を加えて限定したものということができるが,考案13と考案14,考案14と考案15の関係は,上記のとおりであって,いずれかがいずれかに限定を加えただけであると単純にいうことはできない。
したがって,考案13,14,15が重複して権利化されたものであるとは認められない。
〔16〕 【実用新案登録第●●号(考案16,出願日昭和62年12月29日 】)a 考案16の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 第3考案との関係考案16は,第3考案の公告実用新案公報(実公平5-36704号,出願人一審被告,考案者一審原告 X 2外5名,出願日昭和62年11月18日。甲2の8)に記載されている考案とは異なる技術であって,第3考案で示した技術ということはできない。
〔17〕 【実用新案登録第●●号(考案17,出願日平成3年10月31日】)a 考案17の構成実用新案登録請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無証拠(乙164添付資料6〜12,226の1・2)によると,米国のバリトロニクス社は,1984(昭和59年)4月から「Merlin(マーリン)レタリング」というラベル作製専用機を販売しており,日本においても昭和60年12月ころには輸入販売されていたこと,その後 同社は 1986年 昭和61年 12月から Merlin Express ,, ( ) 「(マーリンエクスプレス 」というラベル作製専用機の販売を始め, )昭和62年5月からは日本でも輸入販売されていたことが認められる。
しかし,上記マーリンエクスプレスが,特許発明47に係る特許出願(平成4年1月8日)前から,下記写真(一審原告らの当審第20準備書面51頁,52頁の写真)のような構成を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
記したがって,考案17に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔〕【 ( , ) 】 18 特許第●●号 特許発明18 出願日昭和63年10月14日a 特許発明18の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔19〕 【特許第●●号(特許発明19,出願日平成3年7月22日 】)a 特許発明19の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔20〕 【特許第●●号(特許発明20,出願日平成4年1月8日 】)前記(ア)の特許発明47と同じ権利であり,無効事由は認められない。
〔21〕 【特許第●●号(特許発明21,出願日平成4年1月8日 】)a 特許発明21の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無( ) 証拠(乙164添付資料6〜12,226の1・2)によると,a米国のバリトロニクス社は 1984昭和59年 4月から Merlin ,( )「() 」 , マーリン レタリング というラベル作製専用機を販売しており日本においても昭和60年12月ころには輸入販売されていたこと その後 同社は 1986年 昭和61年 12月から Merlin ,,, ( ) 「Express(マーリンエクスプレス 」というラベル作製専用機の販売 )を始め,昭和62年5月からは日本でも輸入販売されていたことが認められる。
しかし,上記マーリンエクスプレスが,特許発明21に係る特許出願(平成4年1月8日)前から,前記(ア)〔47〕掲記の写真(一審原告らの当審第20準備書面38頁の写真)のような構成を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
(b) また,特許発明21は被印字媒体(テープ)が「テープカセットから送り出され」てから「テープカッタにより裁断」されるものであるから,テープカッタ(可動刃,固定刃)はテープがテープカセットから送り出される側すなわちテープカセットの外側に配置されるものであるということができる。そうすると,固定刃の刃先近傍まではりだして形成されている「案内部」についてもテープカセットの本体の外枠に設けられていると解するのが妥当である。
上記写真によると,一審原告らが上記「案内部」に当たると主張する「くちばし部材」がテープカセットの本体の外枠に設けられていると認めることはできないから,この点からも上記マーリンエクスプレスが特許発明21の構成を備えているということはできない。
(c) したがって,特許発明21に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔22〕 【特許第●●号(特許発明22,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明22の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無(,), (a) 証拠 乙164添付資料6〜12 226の1・2 によると米国のバリトロニクス社は 1984昭和59年 4月から Merlin ,( )「() 」 , マーリン レタリング というラベル作製専用機を販売しており日本においても昭和60年12月ころには輸入販売されていたこと その後 同社は 1986年 昭和61年 12月から Merlin ,,, ( ) 「Express(マーリンエクスプレス 」というラベル作製専用機の販売 )を始め,昭和62年5月からは日本でも輸入販売されていたことが認められる。
しかし,上記マーリンエクスプレスが,特許発明22に係る特許出願(平成6年5月25)前から,前記(ア)〔47〕掲記の写真(一審原告らの当審第20準備書面38頁の写真)ないし下記写真(一審原告らの当審第20準備書面44頁の写真)のような構成を有していたことを認めるに足りる証拠はない。
記(b) また 特許発明22の構成によると 構成?Iの 突出部 は テ ,,「」, 「ープ排出部」に設けられているところ 「テープ排出部」は 「カセ ,,」()。 ットケースの周壁によって形成され ているもの 構成?C である〔〕 , 「 」 前記(ア) 47 掲記の写真によると 一審原告らが上記 突出部に当たると主張する「くちばし部材」は,カセットケースの周壁によって形成されているものではないから,この点からも上記マーリンエクスプレスが特許発明22の構成を備えているということはできない。
(c) したがって,特許発明22に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔23〕 【特許第●●号(特許発明23,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明23の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無弁論の全趣旨によると,特許発明23は,同特許出願(平成6年5月25日)前から一審被告のTX型テープカセットにおいて実施されていたものと認められる。
この点について,一審被告は,TX型テープカセットにおいて,カセットがカセット収納室に装着されたときに,第2突起部は第2嵌合部に嵌合されないと主張するが,一審原告ら第20準備書面94頁の写真によれば,カセットがカセット収納室に装着されたときに,第2突起部は第2嵌合部に嵌合されるものと認められるから,一審被告の主張を採用することはできない。
したがって,特許発明23には無効事由があると認められる。
〔24〕 【特許第●●号(特許発明24,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明24の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔25〕 【特許第●●号(特許発明25,出願日平成6年5月25日 】)前記(ア)の特許発明44と同じ権利であり,無効事由は認められない。
〔26〕 【特許第●●号(特許発明26,出願日平成6年7月14日 】)a 特許発明26の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)有用性を有するものである。
〔27〕 【特許第●●号(特許発明27,出願日平成6年5月25日 】)上記(ア)の特許発明45と同じ権利であり,無効事由は認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明28,出願日平成4年1月8日 】28)a 特許発明28の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)有用性を有するものである。
〔〕【 ( , ) 】 29 特許第●●号 特許発明29 出願日平成3年10月21日a 特許発明29の構成●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明30 出願日平成6年7月21日 】30)a 特許発明30の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無弁論の全趣旨によると,一審被告が,昭和63年11月から発売しているTC型テープカセットは,特許発明30の構成をすべて充足するものと認められる。
この点について,一審被告は,TC型テープカセットは,上ケースに形成された小径のボス軸と,下ケースに形成された大径のボス軸とを有し,上ケースを下ケースに組み付けたときに,小径のボス軸が大径のボス軸の中に挿入される構成であるから,特許発明30の構成?Fを充足しないと主張するが,構成?Fの文言からすると,一審被告が主張するような構成が排除されているとは認められない上 「インクリ,ボンを巻回したスプールは傾いたりするようなこともなく」との作用効果もあると認められるから,一審被告の主張を採用することはできない。
したがって,特許発明30には無効事由があると認められる。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明31,出願日平成4年1月8日 】31)a 特許発明31の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明32,出願日平成6年5月25日 】32)上記(ア)の特許発明46と同じ権利であり,無効事由は認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明33,出願日平成6年5月25日 】33)a 特許発明33の構成特許請求の範囲請求項1〜3の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
( ) 請求項1a●●(省略)( ) 請求項2b●●(省略)( ) 請求項3c●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔 〕 【特許第●●号(特許発明34,出願日平成6年8月17日 】34)a 特許発明34の構成特許請求の範囲請求項2の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 特許発明34の発明者一審原告 2が特許発明34の発明者であるとまで認めるに足りるX証拠はない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明35,出願日平成6年5月25日 】35)a 特許発明35の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,一審被告が平成4年から日本国内で販売しているTX型テープカセットには,特許発明35の構成のうち 「テープカセ,ットの種類を特定し得るカセット検出部」が「機械式検出スイッチのスイッチ端子を押下しまたは押下しない ことによるものである点 構 」(成?E)を除いて備わっており 「テープカセットの種類を特定し得る ,カセット検出部」が「機械式検出スイッチのスイッチ端子を押下しまたは押下しない」ことによるものである点は,カシオ社が平成3年から日本国内で販売している「KL-1000」で採用されていた(TX型テープカセットに「カセット検出部」が「カセットケースにおけるテープ送りローラが配置された隅角部の対角線上にある隅角部に設けられ」との構成が備わっていないとしても 「KL-1000」に ,存する)から,特許発明35は,容易に発明することができた,と主張する。
しかし,弁論の全趣旨によると 「テープカセットの種類を特定し ,得るカセット検出部」は,TX型テープカセットにおいてはカセットケースの隅角部から少し離れた側面に沿って設けられている。また,弁論の全趣旨によると 「KL-1000」においては 「テープカセ ,,ットの種類を特定し得るカセット検出部」は,カセットケースの隅角部から少し離れた位置に設けられている上,ヘッド装着部に隣接するテープカセットの一つの隅角部の対角線上にあるとも認められない。
,「」, したがって TX型テープカセット及び KL-1000 において「テープカセットの種類を特定し得るカセット検出部」が「ヘッド装着部に隣接するテープカセットの一つの隅角部の対角線上にある隅角」(),, 部 に設けられている 構成?Eとはいえないから 特許発明35に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔36〕 【特許第●●号(特許発明36,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明36の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,一審被告が平成4年から日本国内で販売しているTX型テープカセットには,特許発明36の構成のうち 「テープカセ,ットの種類を特定し得るカセット検出部」が「機械式検出スイッチのスイッチ端子を押下しまたは押下しない ことによるものである点 構 」(成?E)を除いて備わっており 「テープカセットの種類を特定し得る ,カセット検出部」が「機械式検出スイッチのスイッチ端子を押下しまたは押下しない」ことによるものである点は,カシオ社が平成3年から日本国内で販売している「KL-1000」で採用されていた(TX型テープカセットに「カセット検出部」が「カセットケースにおけるテープ送りローラが配置された隅角部の対角線上にある隅角部に設けられ」との構成が備わっていないとしても 「KL-1000」に ,存する)から,特許発明36は,容易に発明することができた,と主張する。
しかし,弁論の全趣旨によると 「テープカセットの種類を特定し ,得るカセット検出部」は,TX型テープカセットにおいてはカセットケースの隅角部から少し離れた側面に沿って設けられている。また,弁論の全趣旨によると 「KL-1000」においては 「テープカセ ,,ットの種類を特定し得るカセット検出部」は,カセットケースの隅角部から少し離れた位置に設けられている上,ヘッド装着部に隣接するテープカセットの一つの隅角部の対角線上にあるとも認められない。
,「」, したがって TX型テープカセット及び KL-1000 において「テープカセットの種類を特定し得るカセット検出部」が「ヘッド装着部に隣接するテープカセットの一つの隅角部の対角線上にある隅角」(),, 部 に設けられている 構成?Eとはいえないから 特許発明36に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔37〕 【特許第●●号(特許発明37,出願日平成8年2月16日 】)a 特許発明37の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔38〕 【特許第●●号(特許発明38,出願日平成6年5月25日 】)a 特許発明38の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無,,( ) 一審原告らは 特許発明38は 同特許出願 平成6年5月25日前から日本国内で販売されているTX型ラミネートテープカセット(24mm)において実施されていたと主張する。
しかし,弁論の全趣旨によると,TX型ラミネートテープカセット(24mm)のテープ送りローラは,円筒部と被支持部に加えて,テープの下端縁を案内するために円筒部から膨出した顎部を有していると認められるから 「前記フィルムテープのテープ幅と同じ幅の円筒 ,部とその円筒部の両端に設けられ該円筒部の直径よりも小さい直径からなる被支持部とのみからなるテープ送りローラ (構成?B)を充足 」しない。
したがって,特許発明38に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明39,出願日平成6年5月25日 】39)a 特許発明39の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 特許発明39が一審原告 2の提案によるものであるかどうかXXX甲171 一審原告 2の陳述書31頁〜32頁には 一審原告 (),2が,テープ幅に対してプラテンローラーの全高の真中位置でテープに接するようにすること,カセットテープを本体の表裏どちらからでも挿入することがてきるようにすることを考えて提案した旨の記載がある。そのような事実があったとしても,それ以上に,一審原告 2Xが特許発明39の構成について発明したことを認めるに足りる証拠はないから,一審原告 2が特許発明39の発明者であると認めることXはできない。
したがって,特許発明39に係る特許は,一審被告が有する権利として考慮することができるものである。
〔〕【 ( , ) 】40特許第●●号 特許発明40 出願日平成14年9月27日a 特許発明40の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)〔〕【 ( , ) 】41特許第●●号 特許発明41 出願日平成16年11月15日a 特許発明41の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 特許発明41が一審原告 2の提案によるものであるかどうかXXX甲171 一審原告 2の陳述書31頁〜32頁には 一審原告 (),2が,テープ幅に対してプラテンローラーの全高の真中位置でテープに接するようにすること,カセットテープを本体の表裏どちらからでも挿入することができるようにすることを考えて提案した旨の記載がある。そのような事実があったとしても,それ以上に,一審原告 2Xが特許発明41の構成について発明したことを認めるに足りる証拠はないから,一審原告 2が特許発明41の発明者であると認めることXはできない。
したがって,特許発明41に係る特許は,一審被告が有する権利として考慮することができるものである。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明42,出願日平成6年5月25日 】42)a 特許発明42の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,特許発明42の構成のうち 「インクリボンと印字 ,テープを分離させつつ案内する,リボン幅とほぼ同一高さの分離案内部材 (構成?H,?I)を除いては一審被告のTX型ラミネートテープ 」カセットに備わっており 「インクリボンと印字テープを分離させつ ,つ案内する,リボン幅とほぼ同一高さの分離案内部材」は,キングジム社のテープカセットに備わっているから,これらを組み合わせて容易に発明することができたと主張する。
しかし,特許発明42に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から,キングジム社のテープカセットが上記の一審原告主張のとおりであったことを認めるに足りる証拠はない。また,仮にそうであったとしても,TX型ラミネートテープカセットとキングジム社のテープカセットでは,印字テープとインクリボンの配置等の構成が大きく異なっているから,キングジム社のテープカセットに「インクリボンと印字テープを分離させつつ案内する,リボン幅とほぼ同一高さの分離案内部材」が備わっているからといって,それをTX型ラミネートテープカセットに適用することが容易であると認めることはできない。
さらに,特開平6-122239号公報(出願人セイコーエプソン社・株式会社キングダム,公開日平成6年5月6日。甲300)に記載のテープカセットにも,上記「分離案内部材」が記載されているとし,, , ても そのテープカセットは TX型ラミネートテープカセットとは印字テープとインクリボンの配置等の構成が大きく異なるから,やはり,それをTX型ラミネートテープカセットに適用することが容易であると認めることはできない。
したがって,特許発明42に,一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明43,出願日平成6年5月25日 】43)a 特許発明43の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,特許発明43の構成は,すべてキングジム社の「テプラ・プロ」テープカセットが備えていると主張する。
しかし,キングジム社の「テプラ・プロ」テープカセットが,特許発明43に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から上記の一審原告ら主張のとおりであったことを認めるに足りる証拠はない(甲299も,キングジム社が平成4年から9mmテープを発売していることが認められるのみで,キングジム社のテープカセットが特許発明43に係る特許の出願前から上記のとおりであったことを認めることはできない 。。)したがって,特許発明43に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明44 出願日平成6年5月25日 】44)a 特許発明44の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,特許発明44の構成は,すべてキングジム社の「テプラ・プロ」テープカセットが備えていると主張する。
しかし,キングジム社の「テプラ・プロ」テープカセットが,特許発明44に係る特許の出願(平成6年5月25日)前から上記の一審原告ら主張のとおりであったことを認めるに足りる証拠はない(甲299も,キングジム社が平成4年から9mmテープを発売していることが認められるのみで,キングジム社のテープカセットが特許発明44に係る特許の出願前から上記のとおりであったことを認めることはできない 。。)したがって,特許発明44に一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
〔 〕 【特許第●●号(特許発明45,出願日平成6年5月25日 】45)a 特許発明45の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無弁論の全趣旨によれば,特許発明45は,同特許出願(平成6年5月25日)前から,一審被告のTX型ラミネートテープカセットにおいて実施されていたと認められる。
この点について,一審被告は,TX型ラミネートテープカセットには,特許発明45の構成?F,?Gがない旨主張するが,TX型ラミネー() トテープカセットの下ケースに設けられたリブ 下記図面の青色部分が,走行時にテープがカセット内部に入り込まないようにする作用を奏していると認められるから,特許発明45の構成?Fを備えているものと認められる。また,インクリボン案内の先端(下記図面の紫色のb部分)のフランジは,特許発明45の構成?G「前記フィルムテープの幅方向への移動を規制する第3規制部材」に当たるものと認められる(一審被告は,上記フランジは,走行時におけるフィルムテープの幅方向への移動の規制を行わないと主張するが,構成?Gには 「走行,時」という限定はないから,採用することができない 。。)したがって,特許発明45には,無効事由があると認められる。
記〔 〕 【特許第●●号(特許発明46,出願日平成6年5月25日 】46)a 特許発明46の構成特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)b 実施の有無●●(省略)c 無効事由の有無一審原告らは,特許発明46は,特許出願(平成6年5月25日)前から,一審被告のTC型ラミネートテープカセットで実施されていたと主張する。
しかし,TC型テープカセットにおいて,一審原告らが「案内規制片」に当たると主張する「ケースのリブ」は,一審原告らが「第2案内部材」に当たると主張する「第2の案内棒」の基端部の外周面から外側方向に突設されたものとは認められず,他にTC型テープカセットに 第2案内部材の基端部の外周面から外側方向に突設され た 案 「」「内規制片」があると認めるに足りる証拠はないから,TC型テープカセットが特許発明46の構成?Dを充足するとは認められない。
したがって,特許発明46に,一審原告らが主張する無効事由があるとは認められない。
(ウ) 本件被告製品において実施されていると認められるもの前記のとおり,乙132及び弁論の全趣旨によれば,一審被告は以下の権利を本件被告製品において実施しているものと認められる。
●●(省略)イ 寄与度の算定(ア) ラミネート発明の寄与度a 一審被告保有権利は,いずれもラミネート発明を基礎としつつ,これとともに用いられて他社製品との差別化に寄与する点において有用な発明と位置付けることができる。他方,前記(4)(超過売上高の割合 で認定したラミネート発明の技術的意義ないし優位性や前記1 本 )(件における基礎的事実関係)で認定したラミネート発明に至る経緯及びその後の製品化に至る経緯,販売状況等に加え,前記アで認定した一審被告保有権利の内容に鑑みれば,ラミネート発明をいわば基本特許と位置付けることができるのであって,これとの対比でみると,前記アにおいて実施を認めた個々の一審被告保有権利の寄与度は,ラミネート発明よりはるかに低いといわざるを得ない。
b 一方,前記(4)(超過売上高の割合)で認定したとおり,ラミネート発明を実施している本件被告製品は,それが製品化されてからしばらくの間は独占状態を保っていたものの,その後,特に国内においては,競合他社から非ラミネートタイプの製品が発売された後はシェアを失い,キングジム社が非ラミネートタイプ製品の販売を開始した後はこれが決定的になり,これを挽回するため新たな販路の開拓ほか相次いで新製品を投入する必要に迫られており,このことは,製品化された当初から競合他社による非ラミネートタイプ製品の発売に至るまではラミネート発明が基本特許として相対的に大きな寄与を果たしていたのに対し,非ラミネートタイプ製品が発売されてこれとの競争が激化した後は,他社と差別化を図る上で有用な発明が相対的に重要性を増したことを表しているということができる。もっとも,一審被告は,国内に比べて早くから自社ブランドによる販売網を展開していた欧米においては,国内の場合ほどシェアを失っていない。
c なお,前記(3)ウ(エ)(その他非実施分の修正)において説示したとおり 一部のテープカセット 印字ヘッドの配置が異なる 又は パ ,( 「」「ソコン接続専用モデル」に係る製品本体に組み合わせる補給用のテープカセットであって,かつ,クリアタイプであるもの。前記(2)イ(イ)〔第2発明〕及び同(エ)〔第5発明〕参照)が第2発明及び第5発明のいずれにおいても非実施であることについては,ラミネート発明の国内販売分の寄与度において考慮することにする。
同様に,前記(4)エ(ア)d(平成14年12月31日以前に販売されたテープカセットの売上げにおける超過売上高)のとおり,TX型及びTZ型の各クリアタイプのテープカセットについては,上記非実施のものを除き,一定割合において超過売上高の存在を観念することが,, でき その限度において超過売上高の算定を修正すべきことになるがこの点についても上記寄与度において考慮することにする。
また,前記(3)ウ(エ)(その他非実施分の修正)において説示したとおり,一部の本体(対象品群oの本体すべてと,対象品群nの本体のうち「パソコン接続専用モデル」及び「印字テープの搬送方向が異なるもの )と一部のテープカセット(上記非実施の本体と組み合わせ 」る補給用のテープカセット)が海外特許1において非実施であること(前記(2)イ(カ)〔海外特許1〕参照)については,ラミネート発明の欧州特許国販売分の寄与度において考慮することにする。
さらに,報奨支払時期が平成20年12月の対象期間(平成19年4月1日〜平成20年3月31日)のうち,第2発明が満了した後の平成19年11月21日から第5発明が満了する同年12月21日の対象期間は,第5発明の実施製品のみ(国内販売分及び特許不存在国販売分)又は第5発明及び海外特許1の実施製品のみ(欧州特許国販売分)が対象となるため,その限度において超過売上高の算定を修正すべきことになるが,この点についても報奨支払時期が平成20年12月の対象期間(平成19年4月1日〜平成20年3月31日)におけるラミネート発明の上記各販売分の寄与度において考慮することにする。
d 以上のような事情を総合考慮すれば,ラミネート発明(第2発明,第5発明,海外特許1〜3)を実施する本件被告製品における同発明の寄与度は,本体・テープカセットとも,次のとおりと認めるのが相当である。
(a) 日本国内販売分・ 平成5年支払分まで60%・ 平成6年支払分から平成11年支払分まで(概ねラベルライター市場が飽和状態に達するまでの期間)55%・ 平成12年支払分以降50%(b) 欧州特許国販売分( その他」販売もこれに準じる) 「・ 平成8年支払分まで(概ねDYMO1000等が発売されるまでの期間)60%・ 平成9年支払分から平成13年支払分まで(販売台数が概ね減少に転じるまでの期間)55%・ 平成14年支払分以降50%(c) 米国販売分・ 平成7年支払分まで(概ね低価格機を投入するまでの期間)60%・ 平成8年支払分から平成13年支払分まで(概ねクロイ社との和解に至るまでの期間)55%・ 平成14年支払分以降50%(イ) 第1発明の寄与度前記(4)で認定した第1発明の技術的意義,前記アで認定した一審被,, 告保有権利の内容 前記(ア)で認定したラミネート発明の寄与度に加えラベルライター本体については,対象品群aのラベルライター本体はすべて対象品群bの本体に含まれること,インレタテープとの関係では第1発明をもって基本特許の一つと理解することができること,第1発明に無効事由がないこと等を総合考慮すれば,同発明の寄与度は,国内,欧州特許国,米国 「その他」の各国販売分(なお,テープカセットに ,ついては国内販売分のみ)とも,次のとおりと認めるのが相当である。
a 対象品群aの本体分・ 平成8年支払分まで(概ね第1発明が出願公告〔平成7年12月13日〕されるまでの期間)1.5%・ 平成9年支払分から平成14年支払分まで(概ねキングジム契約が締結〔平成14年1月31日〕されるまでの期間)2%・ 平成15年支払分以降1%b 対象品群aのテープ分・ 平成8年支払分まで40%・ 平成9年支払分から平成14年支払分まで50%・ 平成15年支払分以降30%(ウ) 第3発明の寄与度前記(4)で認定した第3発明の技術的意義,前記アで認定した一審被,, 告保有権利の内容 前記(ア)で認定したラミネート発明の寄与度に加え証拠(甲54,乙117,118)及び弁論の全趣旨によれば,編集機能である第3発明は他社で実施されることがあっても多くの編集機能の一つにすぎず,これを有していない機種があるなど,相対的に重要度が低いこと,テープカセットについて超過売上高の存在が認められないこと,第3発明に無効事由を指摘することができること等を総合考慮すれば,同発明の寄与度(本体のみ)は,国内,欧州特許国,米国 「その,他」の各国販売分とも,次のとおりと認めるのが相当である。
・ 対象品群gの本体分(〔〕 平成5年支払分まで 概ね第3発明が出願公告 平成5年7月7日されるまでの期間)0.8%平成9年支払分から平成14年支払分まで(概ねキングジム契約が締結されるまでの期間)1%平成15年支払分以降0.5%4 本件各発明により一審被告が受けるべき利益──第三者実施分(1) 総論前記3(1)でも述べたように,特許法旧35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,特許を受ける権利が将来特許を受けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明により使用者等が将来得ることができる第三者からの実施料収入による利益の額をその承継時に算定することは極めて困難であることからすると,第三者に当該発明の実施許諾をし,実施料収入を得た後の時点において,これらの実施料収入額をみてその法的独占権に由来する利益の額を認定することも,同条項の文言解釈として許容されると解する。
そして,特許法旧35条3,4項に基づき従業者たる一審原告らが,使用者である一審被告に対し第三者実施分につき本件各発明の譲渡対価を求める場合,その算定方法は,上記3で述べた自己実施分の場合と異なり,同条1項にいわゆる法定通常実施権による減額をする必要はなく,端的に本件各発明につき一審被告が第三者から取得した実施料収入を基準とすべきである。
そこで,上記見解を前提として,以下,具体的に検討する。
(2) キングジム社からの実施料収入ア 本件各発明の寄与度●●(省略)ところで,複数の特許発明が単一のライセンス契約(実施許諾)の対象となっている場合には,当該発明により「使用者が受けるべき利益の額」を算定するに当たっては,当該発明が当該ライセンス契約締結に寄与した程度を考慮すべきである。
そして,キングジム契約における本件各発明の寄与についての当裁判所の判断は,原判決240頁下8行〜下4行及び244頁4行〜244頁10行を削除し,243頁下6行を「b 平成14年1月1日から平成18年12月31日まで(全対象期間 」と改め,一審被告が特許ポートフォ )リオとして主張する権利の内容,実施,無効事由等に関して,前記3(6)アに認定した事情を考慮するほかは,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,3(1)(234頁以下)のとおりであるから,これを引用す )る。
イ 一審原告らの主張に対する判断(ア) キングジム警告権利7及び8につき一審原告らは,キングジム警告権利7及び8の発明者は一審原告 X 2である旨主張するが これを採用することができないことは 前記3(6) ,,ア(ア)〔38 (特許発明38)及び〔39 (特許発明39)のとおりであ 〕〕る。
(イ) オートサイズ発明につき一審原告らは,オートサイズ発明(特許第2556224号)の発明者は一審原告 X 2である旨主張するが,これを採用することができないことは,前記3(6)ア(ア)〔1 (特許発明1)のとおりである。 〕ウまとめキングジム社からの実施料収入における本件各発明の寄与度は,以上述べた諸事情に加え,第1発明には無効事由はないものの,キングジム社に対する侵害警告の根拠とされ,かつ,仮処分申立ての根拠とはされなかったこと,第3発明には無効事由があるものの,カシオ社に対する侵害警告及び仮処分申立ての根拠とされたこと,一審被告の特許ポートフォリオに係る権利の内容 キングジム社のテプラプロ製品に使用する転写テープ イ ,(ンレタテープ)が平成15年3月までに生産中止となったこと等を考慮すると,以下のとおりと認めるのが相当である。
(ア) 第1発明a 当初の一時金ラベルライター本体及びテープカセットの2%b ●●から平成15年6月20日まで(概ねインレタテープが生産中止になるまでの期間)本体及びテープカセットの0.8%c 平成15年6月21日〜平成18年12月31日まで(インレタテープの生産中止後第1発明のライセンス期間満了日まで)0%(イ) 第3発明a 当初の一時金本体及びテープカセットの2%b ●●から平成18年12月31日まで本体の1%(3) カシオ社からの実施料収入ア 本件各発明の寄与度●●(省略)上記カシオ契約における本件各発明の寄与度についての当裁判所の判断は,原判決246頁8行〜下4行を削除し,247頁10行を「b 平成14年10月1日から平成18年11月14日まで」と,247頁16行を「c 平成18年11月15日以降」とそれぞれ改めるほかは,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,3(2)(244頁以下)のとお )りであるから,これを引用する。
,, 一審被告が特許ポートフォリオとして主張する権利の内容 実施の有無無効事由の有無等は,前記3(6)アに認定したとおりである。
イまとめカシオ社からの実施料収入における本件各発明の寄与度は,以上述べた,, 諸事情に加え 第1発明がカシオ社に対する侵害警告の根拠とされたこと第1発明に無効事由がないこと,一審被告の特許ポートフォリオに係る権利の内容等を考慮すると,以下のとおりと認めるのが相当である。
第1発明a 当初の一時金一時金の2%b ●●から平成18年11月14日まで(第1発明の本来の存続満了日までの期間)本体及びテープカセットの0.8%c 平成18年11月15日以降0%(4) ダイモ社からの実施料収入ア 海外特許1の寄与●●(省略)このダイモ契約に基づく実施料収入は本判決別紙「ダイモ社からの実施料収入」記載のとおりである(なお,原判決が認定した2006年〔平成18年〕3月31日よりも後の実施料収入については,これを認めるに足りる的確な証拠はないことから,考慮しない )。
他方,海外特許1は,ダイモ契約当時いまだ登録されておらず(海外特許1の登録日は平成4年9月2日 ,ダイモ契約における保護権利として )も挙げられていない。
そうすると,上記ダイモ契約の締結の経緯において海外特許1の法的独占力が及んでいるということはできず,ダイモ契約の実施料について同権利自体の寄与を認めることはできない。
イ ダイモ契約権利2と第3考案・ラミネート発明との関係一審原告らは,ダイモ契約権利1ないし2は第3考案及びラミネート発明を権利化したものであり,その実質的な発明者は一審原告ら6名である旨主張するので,この点について判断する。
(ア) ダイモ契約権利とDYMO4000の関係ダイモ契約において和解の対象とされたダイモ契約権利1及び2の内容が原判決別紙「ダイモ契約権利1(ドイツ実用新案G●●)の構成要件」及び同「ダイモ契約権利2(EP●●)の構成要件」のとおりであること,ダイモ契約権利1及び2の内容が実質的に同一であること,ダイモ契約権利2の請求項1〜3,7及び8の発明がDYMO4000において実施されているが,同請求項4〜6の発明が実施されていないことはいずれも当事者間に争いがない。
(イ) ダイモ契約権利2の内容ダイモ契約権利2を特許請求の範囲請求項1の記載(乙163)に従って分説すると,以下のとおりである。
●●(省略)(ウ) 第3考案の内容a 一方,第3考案を特許請求の範囲請求項1の記載に従って分説すると,以下のとおりである。
?@ 所定の印字が施された印字テープを作成するテープ印字装置のためのテープカセットであって,?A その印字テープの作成に必要な2種以上のテープが複数のスプールに巻かれ,?B それらのスプールがカセットケース内にそれぞれ回転可能に保持されるとともに,?C それらスプールの少なくとも1個がカセットケースに対して着脱自在とされていること?D を特徴とするテープ印字装置用テープカセット。
b そして,第3考案の明細書(甲2の8)には,次の記載がある。
(a) 「第1図に本考案の一実施例であるテープカセット10と,それが装着されたテープ印字装置12を示す (4欄27行〜29 。」行)(b) 「入力部14で入力されたデータに従い,印字部16では長手方向のテープ送りを伴い,位置固定のサーマルヘッド28で印字が行われる。… (4欄42行〜45行) 」(c) 「…本実施例においては,そのドット列の発熱により,透視性被印字体テープとしての透明フィルムテープ32(以下,透明テープという)に,印字部形成テープとしてのサーマルリボン34のインクが裏返しパターンで転写されて,左右反転印字が行われるのである (5欄4行〜9行) 。」(d) 「本実施例において上記ローラ36,38は,透明テープ32の反転印字がされた側の面に,その背景を形成するベーステープ42を貼り付けるテープ貼付けローラを兼ねている。ベーステープ42は,第2図に示すように基材44の両面に粘着剤層46,48を備えた両面粘着テープであり,粘着剤層46は剥離紙50で被覆され,反対側の粘着剤層48において第3図に示すように透明テープ32の反転印字面に貼り付けられるものである。…」(5欄22行〜31行)(e) 「第1図に戻って,透明テープ32,サーマルリボン34およびベーステープ42は,前記テープカセット10のカセットケース54に,共用スプール56,巻き取りスプール58および供給スプール60を介して保持されている。
透明テープ32とサーマルリボン34は,共用スプール56に互いに重ね合わされた状態で巻かれている。ただし,接着剤等で接合されているのではなく,単に積層されているだけである。そのように二重に巻かれた状態で外周側に透明テープ32が,内周側にサーマルリボン34が位置するようにされており,共用スプール56が透明テープ32の供給スプールとサーマルリボン34の供給スプールとを兼ねている。これによって,カセットケース54ひいてはテープカセット10をコンパクトに構成することができる。
透明テープ32とサーマルリボン34は,重ね合わせ状態で共用スプール56から引き出されて,サーマルヘッド28とプラテンローラ30との間に供給されるが,サーマルヘッド28において転写が終了した使用後のサーマルリボン34は,透明テープ32から引き剥がされ,分離させられた後,巻取スプール58に巻き取られるようになっている。
また,ベーステープ42は巻取スプール58の隣に位置する供,, 給スプール60に巻かれ 第2図に示す粘着剤層48が内周側に剥離紙50が外周側に位置するように保持されている。このベーステープ42が供給スプール60から引き出されてローラ36と38の間に供給され,両ローラ36,38の圧着力により前述のように粘着剤層48において透明テープ32の反転印字面に貼り付けられることになる。
カセットケース54はコの字形の断面形状を備え,前方(サー)。 マルヘッド28の側 および左右に解放されたものとなっているそして,カセットケース54の共用スプール56が保持されている部分には,板縁から内部に向かってほぼU字型をなすスプール装着用の切欠62が形成されており,この切欠62に共用スプール56のスプール軸64が回転可能に装着されている。… (5」欄43行〜6欄39行)(f) 「また,第1図のように透明テープ32とサーマルリボン34とが共用スプール56に積層状態で巻かれていることは不可欠の要件ではなく,共用スプール56を,透明テープ32の供給スプールとサーマルリボン34の供給スプールとの2個のスプールに分離・独立させることも可能である(9欄5行〜10行) 。」(エ) 判断a 第3考案との関係ダイモ契約権利2と第3考案は,ともに「プラテンと協働してプリント動作を実行する印字ヘッドを備えたテーププリンタに使用される,テープカセット (ダイモ契約権利2の構成?@)である。ダイモ 」契約権利2は 「テープ出口(構成?A)を備えるものであるところ, ,」第3考案に記載されているカセットケース54には「テープ出口」,といえるものが存在しないから テープ出口を有するハウジング ダ ,「」 (イモ契約権利2の構成?A,?B)を備えるものではない。またダイモ契約権利2は「印字ヘッドを収容する凹所を有するハウジング (ダイ」モ契約権利2の構成?B)を備えるものであるところ,第3考案は印字ヘッドが当接する部分が開放されているため 「印字ヘッドを収容す ,る凹所を有するハウジング」を備えるものでもない。
そうすると,ダイモ契約権利2は,第3考案とは 「テープ出口と ,印字ヘッドを収容する凹所とを有するハウジング」を備えた点が異なることになる。
そして,第3考案は 「…テープを保持するスプールをカセットケ ,ースに対して着脱自在とすることにより,そのテープのみ交換の必要が生じたときには,そのスプールだけカセットケースから取り外して別のものと交換することができ,カセットごと交換する必要がなくなる (明細書〔甲2の8〕4欄2行〜7行)ことを作用効果とする考 」案であり,この作用効果を奏するためスプールの着脱を容易にする構成,すなわち「テープ出口と印字ヘッドを収容する凹所とを有するハウジング」を用いない構成を採用した点に技術的意義があるものと理解することができるから,このようなハウジングを必須の構成とするダイモ契約権利2とは技術的意義の異なる発明ということができる。
したがって,第3考案の考案者が直ちにダイモ契約権利2の発明者であるということはできない。
b ラミネート発明の寄与上記(イ)のダイモ契約権利2の構成は,実質的に透明な受像テープにイメージを転写した上で,当該プリント面に両面に粘着層を有する粘着テープを貼り合わせるという,ラミネート機構そのものが含まれるものであって,その明細書〔●●〕に 「…一般表示用として又は ,ラベルとして供され,且つプリント面が直接接触されないように保護されているテープを作製することができ,また,プリント面を擦ることにより別のシートにインスタントレタリングのイメージを得るために使用されるテープ…を作製することができるテープカセットを提供するとともに,そのようなテープカセットを用いて使用される,構成。」() ・操作が簡単で安価なテーププリンタを提供するものである ●●と記載されているように,ダイモ契約権利2は,ラミネートテープ作成機におけるラミネート機構部分をテープカセットとして脱着可能としたことを発明の内容とするものである。そうすると,ダイモ契約権利2にはラミネート発明の寄与があるというべきであるが,ダイモ契約権利2自体はテープカセットに関する発明であり,ラミネート発明にはない上記構成?A,?Bを備えるものであること等の諸事情を併せ考慮すると,その寄与度は20%をもって相当と認める。
5 本件各発明に対する一審被告の貢献度(1) 総説特許法旧35条4項によれば 「前項の対価の額は,その発明により使用 ,者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない」と規定されているところ,前段の「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」については,前記3及び4で説示したところであるので,進んで後段の「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」について検討する。
(2) 貢献度に関する事情ア 本件各発明に至る経緯,製品化に至るまでの経緯,本件各発明の権利化の経緯,製品化後の国内・欧州・米国における本件被告製品の販売状況,国内におけるキングジム社及びカシオ社との紛争の発生とライセンス契約,, 締結の経緯 欧州におけるダイモ社との紛争の発生と和解契約締結の経緯米国におけるクロイ社との紛争の発生と和解契約締結の経緯等の事情は,前記1に認定したとおりである。
イ 一審被告は現在に至るまでラベルライター事業関連として年間●●円の開発投資を継続し,平成元年度から平成15年度までに約●●円の開発費を投じ,また,一審被告(BICUSAを含む。)がラベルライター事業に() 投じた広告宣伝費は16年間で合計●●円 本件被告製品の売上高の●%である(当事者間に争いがない 。)ウ また,証拠(乙56,74,132,133)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 一審被告の平成15年度までのラベルライターに関する権利の出願は,特許・実用新案合わせて国内で●●件,海外で●●件,意匠は日本国内で●●件,海外で●●件に上る。
(イ) 平成15年度末時点において,特許権・実用新案権は,国内で登録,, , , ●●件 公開●●件 その他出願中●●件 意匠権について登録●●件出願●●件が存在し,海外で特許登録●●件,公開●●件,その他出願中●●件,外国意匠については登録●●件,出願●●件が存在する。
(ウ) 一審被告は,平成元年から平成15年まで,上記知的財産権の確保及び維持のため累計約●●円を費やした。
(エ) 一審被告がラベルライターに関して保有する特許ポートフォリオの内容等は,前記3(6)アのとおりである。
エ そして,証拠(乙63,243)及び弁論の全趣旨によれば,一審被告は本件各発明に先立ちワープロ事業を展開しており,その際の蓄積技術と,,, して サーマルヘッドによる熱転写印字方式 印字される文字ドット構成,。, 漢字処理ソフト技術 レタリングインク技術等を有していた のみならず前記1のとおり,一審原告らがラミネート発明の基礎となった第1発明を一審被告の商品として具体化する開発チームである「P-Touchプロ」, , ジェクト を立ち上げ その製品化に向けて技術的構成を検討した際にはこれら一審被告の蓄積技術を用いることが前提とされていた。
オ 一方,一審被告は,前記1のとおり,ラベルライターを商品化するに当たり,自らは有力な販売ルートを有していなかったことから一時は製品化自体が危ぶまれたが,キングジム社との間でOEM供給契約が締結されたことにより事務機器の分野に強力な販売ルートを開拓することができ,これがラベルライター製品化当初の普及に貢献した。また,キングジム社の非ラミネートテープ製品への進出により同社へのOEM供給が減少していった際には,マックス社やタカラ社へのOEM供給を実現し,これが本件被告製品の売上げの維持に貢献した。
カ 欧州における販売網については,前記1のとおり,一審被告は,ラベルライターの欧州での発売当時,既に欧州内に自前の販売網を構築していたため,自社ブランドのラベルライターをこの販売網を通じて販売することにより,他社が参入した後においても欧州内における高いシェアを維持することができ,本件被告製品の売上げの維持に貢献した。
キ 米国における販売活動については,一審被告は,当初本件被告製品の販売が伸び悩んでいたが,前記イのような広告活動等の結果一審被告ブランド及び商品の知名度を上げ,ラベルライター分野において大きなシェアを獲得するに至った。
ク 「漢字ダイモ」の研究に関する一審被告の主張について,, 一審被告は 一審原告らによるP-Touchプロジェクトと並行して一審被告のプロジェクトとして,ラベルライターと同様な「漢字ダイモ」の研究が進められていた旨主張する。
しかし,第2発明等の共同発明者である A は,陳述書(乙198)において 「漢字ダイモ」に関する指示を受けたことはない旨断言し,証人 B ,,「」 。, も 漢字ダイモ の存在や内容については曖昧な供述に終始する また昭和62年4月1日付け「P-touch『インスタントレタリング作成機』企画書 (乙55添付資料14)には,次機種案として印字したテー 」プを貼り付けて使用する用途が記載されており,これによれば,同企画書に基づいて行われた U 事業部長に対するプレゼンテーションにおいてはその点についての説明が行われたことを推認することができるところ,陳述書(乙199)において「漢字ダイモ」の名付け親と自称する P が「漢字ダイモ」という言葉を使用したのは,いずれもその後のことである(乙55添付資料15,乙199添付資料4参照 。以上の事情に鑑みれば,P 陳 )述書における「漢字ダイモ」に関する供述は,一審原告らのP-Touchプロジェクトにおける活動と混同したものであって,当該活動とは別に「漢字ダイモ」に関するプロジェクトが一審被告において検討されていたとは認めることができない。一審被告から「漢字ダイモ」を研究するよう指示を受けた旨の C の陳述書(乙66)の供述は,上記に照らし採用することができない。
,。 したがって この点に関する一審被告の主張は採用することができないケ 一審原告らの主張について一審原告らは,製品化や事業を継続・拡大するためになされた要素は発明に直接関係しないから,これらを独占の利益に対する貢献と評価すべきでない旨主張する。
この点,旧35条3項及び4項の規定は,職務発明の独占的な実施に係る権利が処分される場合において,職務発明が雇用関係や使用関係に基づいてされたものであるために,当該発明をした従業者等と使用者等とが対,, 等の立場で取引をすることが困難であることに鑑み その処分時において当該権利を取得した使用者等が当該発明の実施を独占することによって得られると客観的に見込まれる利益のうち,同条4項所定の基準(その発明により使用者等が受けるべき利益の額及びその発明がされるについて使用者等が貢献した程度)に従って定められる一定範囲の金額について,これを当該発明をした従業者等において確保できるようにして当該発明をした従業者等を保護し,もって発明を奨励し,産業の発展に寄与するという特許法の目的を実現することを趣旨とするものであって,従業者等と使用者等の利害関係を調整する規定であるからこのような趣旨に照らせば 使 ,, 「用者等が貢献した程度」には,使用者等が「その発明がされるについて」貢献した事情のほか,特許の取得・維持やライセンス契約の締結に要した労力や費用,あるいは,特許発明実施品にかかる事業が成功するに至った一切の要因・事情等を考慮し得るものと解するのが相当である。
したがって,一審原告らの上記主張は採用することができない。
(3) まとめ以上の事情に 前記1 本件における基礎的事実関係 及び前記3(4) 超 ,( ) (過売上高の割合)に認定した本件各発明の技術としての価値,一審原告らの,, 一審被告社内での待遇 その他本件訴訟に顕われた一切の事情を考慮すると本件各発明に関する一審被告の貢献度は,第1発明については93%,ラミネート発明及び第3発明については95%と認めるのが相当である。
6 共同発明者間における一審原告らの寄与度本件各発明の発明者は,前記のとおり,第1発明は一審原告 X 11名であるが,その余の第2発明・第3発明・第5発明・海外特許1・海外特許2・海外特許3・第3考案は一審原告 X 1及び同 X 2のほか A,B,C,D の合計6名であるので,第2発明以下の共同発明につき一審原告 X 1及び同 X 2の寄与度について,以下検討する。
(1) ラミネート発明につき前記1で認定した事実,特に,第1発明を昭和61年7月30日に一審被告へ承継した後「NB-1プロジェクト」のチームが発足する昭和62年5,(,,) 月21日までの間 ラミネート発明第2発明 第5発明 海外特許1〜3の基礎となった第1発明を一審被告の商品として具体化する開発チームである「P-Touchプロジェクト」は,一審原告 X 1を中心に,一審原告 X2,D が一体となって研究開発を進めていたこと,また,ラミネート発明を完成させた「NB-1プロジェクト」の位置付けはP-touchプロジェクトの成果を技術的に検討するというものであったことから,P-Touchプロジェクトにおいて固められた技術的な基本方針はNB-1チームにも引き継がれていること,さらに,ラミネート発明の中核となっている透視性フィルムに両面粘着テープを貼り付けるという発想は,原始的な形では既にP-Touchプロジェクトにおいて表れており,実際の構成はラミネート発明の発明者である上記6名がNB-1プロジェクト発足直後に一審原告らが参加して行われた会議における議論により一応の完成をみたものであり,,, また その具体的な着想自体は技術者である C が行ったものであるとしても技術的に著しく高度というほどのものではなく,その意味では6名の共同作業に依拠するところが多いと評価できること,その後,昭和62年7月10日に「NEW-Bグループ」が発足し,製品化に至るまでの具体的な研究がなされたが,これらは,一審原告らが第2発明を一審被告に承継した後の製品についての詳細な仕様を決定するための技術的作業であって,共同発明者間の寄与度として考慮すべき事情とは解されない等の諸事情を総合考慮すれば,6名の共同発明となっているラミネート発明における一審原告らの寄与度は,各6分の1と認めるのが相当である。
(2) 第3発明第3発明の具体化はNB-1プロジェクトにおいてなされたものであるところ,NB-1プロジェクトの位置付けその他前記1に認定した第3発明の完成の経緯等を総合考慮すれば,第3発明についても一審原告らの寄与度は各6分の1と認めるのが相当である。
(3) 第1発明についての補足的説明第1発明は一審原告 X 1の単独による発明であるから,寄与度を論じるまでもないが,一審被告は,第1発明の完成には,E 等,一審原告 X 1以外の技術者の寄与が大きいなどと主張する。
,( ) , しかし 前記1 本件における基礎的事実関係 に認定した事実によれば一審原告 X 1はLRセンターにおける新しいワープロのコンセプトを議論する過程でインスタントレタリング作成専用機を着想し,独自にその製品化に向けて技術的課題の克服を進めていたこと,また,その過程で,インクの技術という化学的・個別的な課題についてE に協力を依頼して,解決の道筋を付けることができたこと等が認められるが,E の上記関与は第1発明の全体的な課題の解決ないし研究開発とは距離を置いた限定的なものにすぎないことなどからすれば,E を第1発明の発明者に準じるものとしてその寄与度を考慮すべきものとは認められず,せいぜい,その関与は前記5(本件各発明に対する一審被告の貢献度)のとおり一審被告の貢献度において考慮すれば足りるというべきである。なお,一審被告は E 以外の技術者による寄与が大きい旨主張するが,上記のほか第1発明において特筆すべき技術的貢献した者の存在を認めるに足りる証拠はない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
7 相当対価の支払時期一審被告の発明報奨規程によれば,下記の各期間における自己実施及び実施,。, 料収入を対象とする相当対価の支払時期は 以下のとおりとなる その理由は原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,6(262頁以下)のとお )りであるから,これを引用する。
【期 間】 【支払時期】平成4年8月21日〜平成5年5月20日 平成5年12月25日平成5年5月21日〜平成6年5月20日 平成6年12月25日平成6年5月21日〜平成7年5月20日 平成7年12月25日平成7年5月21日〜平成8年5月20日 平成8年12月25日平成8年5月21日〜平成9年3月31日 平成9年12月25日平成9年4月1日〜平成10年3月31日 平成10年12月25日以降,前年4月1日〜当年3月31日 当年12月25日8 消滅時効(1) 本件における消滅時効の成否職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨の契約やこれを定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該契約・勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法旧35条3項対価の額に )ついては,同条4項の規定があるので,契約・勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるが,対価の支払時期についてはそのような規定はない。したがって,契約・勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,契約・勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。そうすると,契約・勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照 。)そして特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,その金額が同条により定められたいわば法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)と解するのが相当である。
以上の見地に立って本件について検討すると,以下に当審における一審被告の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」第3(当裁判所の判断 ,7(3)〜(6)(265頁以下)のとおりであるから,これを )引用する。
(2) 商事消滅時効の主張に対し一審被告は,一審原告らの請求債権は,一審原告らが営利企業である一審被告に譲渡した職務発明について特許を受ける権利承継したことによる対価請求債権であり,これは債務者である一審被告がその営業のためにする商行為によって生じた債権であるから,商法522条により5年の期間の経過により時効消滅する旨主張する。
しかし,特許法旧35条3項及び4項の規定によれば,使用者は,使用者と従業者間の契約により特許を受ける権利承継を受ける場合のみならず,従業者が職務発明について特許を受ける権利を使用者に承継させる意思を現に有しているか否かに関わりなく,勤務規則その他使用者が単独で制定可能,, な規定によりその承継を受けることができるものとされており それゆえに使用者と従業者間の衡平を図る見地から,従業者に対し前記契約・勤務規則等の定めた金額にとらわれない「相当」の対価の支払を受ける権利を付与した上(同3項 ,その対価額について一定の算定方法を規定しているのであ )る(同4項 。)このような特許法の定めに鑑みれば,特許を受ける権利承継したことによる対価の請求債権は,使用者と従業者間の衡平を図る見地から設けられた債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないというべきであるから,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。
(3) まとめ以上によれば,平成4年8月20日以前における自己実施及び実施料収入に係る相当対価の請求債権は時効により消滅したのに対し,平成5年12月支払分(平成4年8月21日〜平成5年5月20日)以降の請求債権は,時効が中断した結果,時効により消滅していないことになる。
9 相当対価額と既払金控除(1) 相当対価額以上述べたところを総合すると,本件各発明の特許を受ける権利承継の相当対価の額は,次のとおりである。
ア 自己実施分(ア) ラミネート発明分本判決別紙「ラミネート発明の相当対価算定表(自己実施分 」のと)おり。
計算方法は,相当対価算定の基礎となる売上高について,本件被告製品の売上高(本判決別紙「本件被告製品の売上高(自己実施分 」の表)1-1「本件被告製品の売上高 )を基礎としつつ,これを下記のとお 」り修正し(表2-1中「修正後売上高」欄,なお端数は切捨て ,その)上で,これに超過売上高の割合(表2-1中「超過売上高割合」欄)を乗じて超過売上高を算出し(表2-1中「超過売上高」欄,なお端数は切捨て ,これに更に仮想実施料率(表2-1中「仮想実施料率」欄 ・ ))発明寄与度(表2-1中「発明寄与度」欄 ・一審原告らの貢献度(表 )2-1中「1-被告貢献度」欄)を乗じるとともに,発明者の数(表2「」) ( 「() 」 -1中 共同発明 欄 で除したものである 表2-1中 相当対価 円欄,なお端数は切捨て 。)記【修正事項】a 表1-1「本件被告製品の売上高」記載の本件被告製品の売上高を基礎として,ここから時効消滅分を除外するとともに平成17年度〜平成20年度の売上高を推計する(同表1-2「本件被告製品(, ) 」 の売上高 時効消滅分を除外し支払期限到来分を推計したもの参照 。)b 上記aを基礎として,売上高を一審被告の発明報酬規程の定める支払時期・対象期間に対応させる(同表1-3「本件被告製品の売() 」)。 上高 被告発明報奨規程の支払時期・対象期間に対応したものc 上記bを基礎として,子会社を経由して販売したものについて子会社係数を乗じる(表2-1中「子会社修正」欄 。)d 以上のほか,(a) 本体・国内販売分については,上記bから対象品群fのルシール分を控除する(表2-1中「ルシール修正」が●%となっているもの 。)(b) テープカセット分については,ラミネートテープでない分を控除する(表2-1中「ラミネート比率修正」欄 。)(c) 平成20年度分の国内販売額には,平成19年4月1日から() 同年12月21日までを日割計算した係数 265 ÷ 365 ≒ 0.726を乗じる。
(d) テープカセット・米国販売分については,権利が消尽しつつも売上げの一部について特に超過売上高を認めるべきものについて修正率を乗じる(表2-1中「テープ修正」欄 。)(イ) 第1発明分本判決別紙「第1発明の相当対価算定表(自己実施分 」のとおり。)計算方法は,売上高について次のとおり修正するほか,上記(ア)(ただし【修正事項】dを除く)に準じる。
a 平成19年度分の国内販売額には,平成18年4月1日から同年1()。 1月14日までを日割計算した係数 228÷365≒0.624 を乗じるb テープカセットについては,間接侵害規定の適用がなくとも売上げの一部について特に超過売上高を認めるべきものについて修正率を乗じる(表2-2中「テープ修正」欄,なお平成15年度については9か月分を50%,3か月分を100%として計算 。)c 売上高に占める第1発明の実施割合を修正要素として乗じる(表2-2中「第1発明実施割合」欄 。)(ウ) 第3発明分本判決別紙「第3発明の相当対価算定表(自己実施分 」のとおり。)計算方法は,売上高について次のとおり修正するほか,上記(ア)(ただし【修正事項】dを除く)に準じる。
a 平成20年度分の販売額には,平成19年4月1日から同年12月10日までを日割計算した係数(254 ÷ 365 ≒ 0.695)を乗じる。
b 売上高に占める第3発明の実施割合を修正要素として乗じる(表2-3中「第3発明実施割合」欄 。)イ 他社実施分(ア) キングジム社a 第1発明分「」「(. 本判決別紙 キングジム社実施分 の表1-2 第1発明 H155生産中止 」のとおり。)計算方法は,キングジム社からの実施料収入(表1-1「キングジム社からの実施料収入 )を基礎として,これに本体の寄与度(表1 」-2の「寄与度(本体 」欄)を乗じたものと,テープカセットの寄 )与度(同「寄与度(テープ 」欄)を乗じたものとの合計額を算出し )(表中「対象実施料」欄,なお端数は切捨て ,これに一審原告らの )貢献度(表中「1-被告貢献度」欄)を乗じるとともに,発明者の数(表中「共同発明」欄)で除したものである(表中「相当対価」欄,なお端数は切捨て 。)b 第3発明分「」「(. 本判決別紙 キングジム社実施分 の表1-3 第3発明 H1912.10満了 」のとおり。)計算方法は上記aに準じる。
(イ) カシオ社本判決別紙「カシオ社実施分」の表2-2「第1発明」のとおり。
,( ) , 計算方法は 発明者の数を除き 第1発明は一審原告 X 1の単独発明上記(ア)aに準じる。
(ウ) ダイモ社本判決別紙「ダイモ社実施分」の表3「ダイモ社からの実施料収入」のとおり。
計算方法は,ダイモ社からの実施料に関するレポートを国内通貨に引(「 」), (「 」) き直したもの 表中 国内通貨額 欄 に 寄与度 表中 寄与度 欄を乗じ,これに一審原告らの貢献度(表中「1-被告貢献度」欄)を乗じるとともに,発明者の数(表中「共同発明」欄)で除したものである(表中「相当対価」欄,なお端数は切り捨て 。)ウ小括以上の相当対価を各支払時期ごとにまとめると,本判決別紙「相当対価の金額のまとめ」の表1(一審原告 X 1分)及び表2(一審原告 X 2分)のとおりである。
(2) 既払金の控除一審原告 X 1は一審被告からラミネート発明,第1発明及び第3発明についての平成5年以降の実績報奨として16万0600円,一審原告 X 2は同じく7万7100円の支払を受けており,その支払時期は本判決別紙「相当対価の金額のまとめ」の表3「既払金のまとめ」のとおりである。
以上を各支払時期ごとに前記(1)ウ(小括)の金額から控除(なお,第3発明の平成5年12月支払時期分は665円が過払いとなることから,相当対価額の算定としては,同過払い分を翌年支払時期分の相当対価額から控除することとする。本判決別紙「認容金額一覧表」の表1〔一審原告 X 1分〕及び表2〔一審原告 X 2分〕の各平成6年12月の支払時期〔各支払時期は前記のとおり12月25日であるが,一審原告らの請求の始期が12月末日であるので,同表においては原審と同様に,便宜 「12.31」と表示し ,た〕における第3発明の「既払金等」欄参照)した上で算定した本件における認容額は,本判決別紙「認容金額一覧表」の「合計」欄のとおりと認めるのが相当である。
10 結論以上の次第で,一審原告らの請求は,一審原告 X 1については,元本3188万2587円及び別紙「認容金額一覧表」の「表1 認容金額一覧表(一審原告 X 1 」記載の「支払時期」ごとの各「合計」に対する各「支払時期」か )ら支払済みまで,一審原告 X 2については,元本2449万5226円及び別紙 認容金額一覧表 の 表2 認容金額一覧表 一審原告 X 2 記載の 支 「」「 () 」「払時期」ごとの各「合計」に対する各「支払時期」から支払済みまで,各年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
,() , そうすると 一審被告の控訴 A事件 は理由がないから棄却するとともに一審原告らの控訴(B事件)に基づき原判決を変更し,一審原告らの本訴請求,,。 を上記の限度で認容し その余は棄却することとして 主文のとおり判決する
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
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