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関連審決 不服2007-23783
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10478審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10243審決取消請求事件 判例 特許
平成18ワ16119特許権侵害差止 判例 特許
平成20行ケ10359審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 発明者 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  技術常識 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  発明の範囲 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10330号 審決取消請求事件
原告株 式会社スノウチ
訴訟代理人弁護士出縄正人
同高橋祥子
訴訟代理人弁理士川崎仁
被告特許庁長官
指定代理 人佐々木一浩
同千葉成就
同森川元嗣
同小林和男
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/06/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-23783号事件について平成20年7月28日にした審決を取り消す。
第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成13年11月16日,発明の名称を「角コラムの溶接裏当て用」,( , 鋼板 とする発明について 特許出願をした 特願2001-351258号以下「本願」という。請求項の数は4であった。甲1の1ないし3 。)原告は,本願につき,平成13年11月21日付け手続補正書(甲2)及び平成19年3月9日付け手続補正書(甲7)により,明細書の補正をした(以下,平成19年3月9日付け手続補正書による補正後の明細書を図面とともに「本願明細書」という。同補正後も請求項の数は4のままである。。)原告は,平成19年7月24日付けで拒絶査定を受けたので(甲9 ,同年)8月30日,これに対する不服の審判請求をした(不服2007-23783号,甲10 。特許庁は,平成20年7月28日 「本件審判の請求は,成り立 ) ,たない 」との審決をし,その謄本は,同年8月15日,原告に送達された。 。
2特許請求の範囲本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。。)「角コラムの突き合わせ溶接のための,真直な状態で提供され角コラムの内寸に合わせて曲げて用いられる溶接裏当て用鋼板において,角コラムの各角部の内曲面部に当てるべき部分に,一群の溝が並列に配置されて形成されており,前記溝の形状は,その深さにおける50%以上の部分の両側面が平行な形状であり,その溝位置における残存板厚,一群の溝の数,各溝の幅および溝のピッチが,作業者が治具を用いずに曲げることができ,かつロボット溶接を行ったとき抜けが起こらないように設定され,前記残存板厚が1.5〜2.5mmであり,一群の溝の数が4以上であり,各溝の幅が4mm以下で,かつ溝のピッ. 。」 チが2 55mm以上であることを特徴とする角コラムの溶接裏当て用鋼板3審決の理由( )別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,本願出願前に1日本国内において頒布された刊行物である実願昭62-45190号(実開昭63-157497号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。
甲4)記載の発明(以下「引用例1発明」という )及び特開平8-155 。
679号公報(以下「引用例2」という。甲5)記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとするものである。
( )審決が,本願発明に進歩性がないとの結論を導く過程において認定した2引用例1発明,本願発明と引用例1発明の一致点,相違点,引用例2記載の技術事項は,次のとおりである。
ア引用例1発明角形鋼管(コラム)の突き合わせ溶接のための,真直な状態で提供され角形鋼管(コラム)の内寸に合わせて曲げて用いられる溶接裏当金において,角形鋼管(コラム)の各角部の内曲面部に当てるべき部分である金板本体31の曲げ部に相当する内面32に,一群の切欠溝33が並列に配置されて形成されており,前記切欠溝33は,その両側面全体が平行な形状であり,金板本体31の厚さ,曲げ部32aの曲率半径の変化に伴い,溝形状,溝寸法,溝深さ,溝ピッチ,溝数を変化させるように構成されている角形鋼管(コラム)の溶接裏当金 (審決3頁) 。
イ一致点角コラムの突き合わせ溶接のための,真直な状態で提供され角コラムの内寸に合わせて曲げて用いられる溶接裏当て用鋼板において,角コラムの各角部の内曲面部に当てるべき部分に,一群の溝が並列に配置されて形成されており,前記溝の形状は,その深さにおける50%以上の部分の両側。() 面が平行な形状である角コラムの溶接裏当て用鋼板審決7ないし8頁ウ相違点本願発明では 「その溝位置における残存板厚,一群の溝の数,各溝の ,幅および溝のピッチが,作業者が治具を用いずに曲げることができ,かつロボット溶接を行ったとき抜けが起こらないように設定され,前記残存板厚が1.5〜2.5mmであり,一群の溝の数が4以上であり,各溝の幅が4mm以下で,かつ溝のピッチが2.55mm以上である (本判決に 」いて 「本願発明所定の数値」という場合がある )のに対して,引用例1 , 。
発明では,溝は,金板本体の厚さ,曲げ部の曲率半径の変化に伴い,溝形状,溝寸法,溝深さ,溝ピッチ,溝数を変化させるように構成されているものの,それらの具体的数値は明らかでない点 (審決8頁) 。
エ引用例2記載の技術事項角コラムの各角部の内曲面部に当てるべき部分に一群のV溝が並列に配置されて形成された溶接裏当て用鋼板において,当該溶接裏当て用鋼板を人力で曲げるためにV溝部分の残余板厚を3mm以下とし,また,強度の点からその下限値を1.7mmとし,板厚を6.0mmとした場合,V溝部分の残余板厚を2.0mm,V溝の深さを4.0mm,一群のV溝数を8以上(8,9,10,13 ,V溝のピッチを3.3mm以上(3.3 )mm,3.7mm,4.1mm)とすること (審決7頁) 。
第3取消事由に関する原告の主張審決には,引用例1に引用例2を組み合わせることによって相違点に係る構成は容易想到であるとした判断の誤り(取消事由1 ,本願発明における「溶 )け込み深さ」についての顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由2 ,本願)発明における「治具の不使用「溶接抜けの防止「溶け込み深さの確保」 」,」,を同時に実現するという顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由3)があるから,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(引用例1に引用例2を組み合わせることによって相違点に係る構成は容易想到であるとした判断の誤り)引用例1発明は,本願発明と同様に,溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝とした裏当て用鋼板であり,曲げるために大きな力を要しないが,曲げられた部分において平行溝の底部に空間が生じ,溶接抜けが生じる可能性があるから,溶接抜けが生じないように残存板厚等を定める必要がある。
他方,引用例2記載の裏当て用鋼板は,溝の断面がV溝なので曲げられた部分で溝同士がほぼ密着し,曲げる際の曲率半径が制限され,溝の深部周辺の残存板厚が厚いので,曲げるために大きな力を要するが,溝同士がほぼ密着する, , 。 から 曲げられた部分に空間を生じることがなく 溶接抜けは問題とならないそうすると,引用例1発明及び本願発明のような溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝とする裏当て用鋼板について,溶接抜けが生じないように残存板厚等を定める場合,引用例2では,そもそも,曲げられた部分に空間を生じることがなく,溶接抜けが問題とならないのであるから,引用例2記載の裏当て用鋼板についての数値を当てはめることはできない。
本願発明と引用例2記載の技術事項は,技術分野が共通であり,また,容易に曲げることができるようにするという課題も共通するが,引用例1発明と引用例2記載の裏当て用鋼板との間には,曲げられた部分の空間の存否及び溶接抜けの防止という課題の有無等の相違があるから,引用例1発明に引用例2記載の残余板厚等の数値を単純に当てはめ,又は変更した上で当てはめることによって本願発明を導くことはできない。
被告は,本訴において,乙1(特開2001-252767号公報 ,乙2)(特開平5-253669号公報)を提出する。しかし,乙1,2は,単に溶接の条件によって裏当材の構成の如何を問わず溶接抜けが生じ得る場合のあることを示唆しているのみであって,本願発明の構成を採用する場合にも溶接抜けが生じることを示唆するものではない。
2取消事由2(本願発明における「溶け込み深さ」についての顕著な作用効果を看過した誤り)本願発明は,以下のとおり,本願発明所定の数値を採用したことにより,裏当て用鋼板のコーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなるという顕著な作用効果を奏し,コーナー部における溶接欠陥の発生率を大幅に改善することができるが,審決は,このような顕著な作用効果を看過した誤りがある。
( )裏当て用鋼板を用いた溶接においては,裏当て用鋼板の溶け込み深さが1深いほど,溶解部分が増加し,接合が強力に行われる。そして,コーナー部を有する裏当て用鋼板を用いた溶接において,コーナー部の溶接は,直線部の溶接よりも電流,電圧,溶接速度を低下させて行われるが,そのようにしてもコーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも浅くならないようにしなければならない。本願発明所定の数値を用いる場合には,コーナー部における溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるという,引用例1発明及び引用例2記載の技術事項にはない顕著な作用効果が得られる。
本願明細書には,溶け込み深さについての具体的な記載はないが,示唆があり,当業者は,本願発明所定の数値を用いる場合に溶け込み深さが深くなるという顕著な作用効果が生ずることを推論することができる。すなわち,本願明細書の【0022】の【表1】は,実施例等の溶接試験の結果を示すものであり,その評価の欄のタイトルは「溶接結果」とされている。溶接不良には,溶け込み不良(溶け込み深さが十分でない状態)の他に溶接抜けもあるが,評価の欄のタイトルは「溶接抜け」ではなく「溶接結果」とされており,溶け込みが良好か否かの試験を行った上でその結果が良好である場合に,実施例の溶接結果を○としたものと理解される。当業者は,この記載を参照することにより,本願発明所定の数値を用いる場合に溶け込み深さが深。, くなるという顕著な作用効果が生ずることを推論することができる 原告は意見書及び実験成績証明書を提出し,本願発明所定の数値を用いる場合に溶け込み深さが深くなることを示してきたから,このような作用効果が生ずることは否定し得ない。
( )甲8の2(平成19年3月5日付け実験成績証明書)の【表1】におい2て,サンプル?bPは溝のない裏当て用鋼板であり,サンプル?bQ,3は,残存板厚が極めて大きい裏当て用鋼板であることから,これらのサンプルについては,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより浅くても溶接結果を○としたものであり,これによって,引用例2の【表1】の溶接結果に溶け込み深さの試験結果の評価が含まれていることは否定されることはない。
本願発明は,溝の残存板厚,溝の数,溝のピッチ,溝の幅の数値範囲について本願発明所定の数値を定めているから,溶け込み深さが溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件に依存するとしても,当業者は,本願発明が溶け込み深さについて当然考慮していると推測することができる。
平行溝の裏当て用鋼板は,曲げられた部分に空間が生じる点で,V溝の裏当て用鋼板や溝のない裏当て用鋼板と異なるから,引用例2のV溝の裏当て用鋼板に関する残余板厚等の数値を単に適用するだけでは,平行溝の裏当て用鋼板の溶け込み深さを十分なものとすることはできず,コーナー部も含めて溶け込み深さが十分な状態となるように残余板厚等の数値を選択して本願発明の構成を得ることは,容易になし得るものではない。
平行溝の裏当て用鋼板について本願発明所定の数値を適用すると,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件を変えた場合にもコーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなることは甲14(平成21年1月21日付け実験成績証明書)の実験により明らかである。
3取消事由3(本願発明における「治具の不使用「溶接抜けの防止「溶 」,」,け込み深さの確保」を同時に実現するという顕著な作用効果を看過した誤り)本願発明は,作業者が治具を用いずに曲げることができること(治具の不使用 ,ロボット溶接を行ったときに溶接抜けを防止することができること(溶 )接抜けの防止 ,溶け込み深さが十分であること(溶け込み深さの確保)とい )う三つの作用効果を同時に奏するとの顕著な作用効果を有するところ,審決には,このような顕著な作用効果を看過した誤りがある。
第4被告の反論1取消事由1(引用例1に引用例2を組み合わせることによって相違点に係る構成は容易想到であるとした判断の誤り)に対し( )引用例1発明の溝は,本願発明と同様,その深さの50%以上の部分の1(),() 両側面が平行な形状 平行溝 であり 引用例1の記載 4頁5ないし8行から,引用例1発明における溝に関する具体的な数値は,角コラムのコーナー部に合わせて形状変更できるように当業者が適宜設定すべきことは明らかである。引用例1発明は,角コラムのコーナー部に合わせて容易に形状変更できるようにすることを課題の一つとしており(引用例1,2頁14ないし,), ,, 17行 4頁13ないし18行上記課題を解決し得る残存板厚 溝の数溝の幅及び溝のピッチの具体的な数値を定めるような場合に,類似技術を参考にすることは,しばしば行われる。そして,角コラムの裏当て用鋼板の曲げについては,溝が平行溝であろうとV溝であろうと,曲げるために必要な力は残存板厚に依存し,最大曲げ角度は溝の開口部の幅と深さにより制限されることに変わりないから,平行溝の数値を定める場合であっても,V溝である引用例2記載の技術事項を参考にすることは妨げられない。
引用例2記載の技術事項は,前記第2,3( )エのとおりであり,板厚を26.0mmとした場合の溝(V溝)に係る数値は,すべて本願発明所定の数値の範囲内に含まれる。
,,, 引用例1発明と引用例2記載の技術事項は 技術分野が共通であり また容易に曲げることができるようにするという課題も共通するから,引用例1発明について溝に係る数値を決めるに際し,引用例2記載の溝に係る数値を参考にし,これを適用して本願発明に想到することは,当業者が容易になし得たことである。
( )溶接抜けが生じるか否かは,溝部分の構成のみによって決まるものでは2なく,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件に依存することは技術常識であるにもかかわらず(乙1【0034 ,乙2【0005,本 】】)願発明は溶接条件を何も特定していないから,本願発明所定の数値が溝に係る数値を特定しているとしても,そのことから,溶接抜けを防止するという作用効果が顕著であるとはいえないし,本願発明所定の数値に臨界的意義があるともいえない。
引用例2( 0011 )には,溝の部分の残存板厚を小さくしすぎると溶 【】接抜けが生じることが示唆されており,また,溶接の技術分野において,裏当て材の厚さを溶け落ちない厚さに調節することは一般的な課題であり(乙3【0012 ,乙4の1頁12行ないし2頁6行 ,引用例1発明について 】 )溝に係る数値を定めるに際し,引用例2の示唆や一般的な課題に基づいて溶接抜けが生じない数値を選択することは,当業者が容易になし得たことである。
( )引用例2の記載( 0035 )によれば,引用例2の裏当て用鋼板は,3 【】V溝全体で90度曲がればよいところを110度まで曲げられるように設計されているから,V溝であっても,曲率がただ一つに制限されるものではない。
また,引用例2の記載( 0013【0014 )及び本願明細書の記 【】,】載( 0019【0020 )によれば,引用例2のV溝の裏当て用鋼板 【】,】も,本願発明の平行溝の裏当て用鋼板も,曲げモーメントは同じ式で計算され,曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って曲げた場合に25kgの, , 力で曲げられること 残存板厚を4mmとすると1000kg・cmとなり万力などの工具を用いても限界となることは同じであるから,平行溝とV溝とで曲げるために必要な力に格別の差異はない。
さらに,引用例2の記載( 0035 )によれば,V溝であっても曲げら 【】れた部分に間隙ができる場合のあることは明らかであるから,間隙により生ずる溶接抜けを防ぐことを考慮するとしても,そのことは,引用例1発明に引用例2記載の数値を適用することの妨げとならない。
2取消事由2(本願発明における「溶け込み深さ」についての顕著な作用効果を看過した誤り)に対し( )本願明細書の【0022】の記載( 表1】を含む )及び甲8の2(平1 【。
成19年3月5日付け実験成績証明書)の【表1】の記載を参照すると,本願明細書の【表1】の溶接結果欄の評価は,溶け込み深さを考慮したものであるとはいえず,本願明細書には溶け込み深さに関する記載はない。
溶け込み深さは,溝部分の構成のみによって決まるものではなく,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件に依存するにもかかわらず,本願発明は溶接条件を何も特定していないから,本願発明が溝に係る数値を特定したことによって,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるという作用効果を生ずるとはいえない。
( )甲8の2(平成19年3月5日付け実験成績証明書 ,甲12の2(平成2 )19年9月20日付け実験成績証明書)の実験では,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件は一つに固定されており,異なる溶接条件において,コーナー部における溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなるかは不明であるから,コーナー部における溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなることが本願発明の顕著な作用効果であるとはいえない。
甲12の2の【表1】においては,本願発明所定の数値の範囲に含まれるものも含まれないものも,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなっているから,本願発明所定の数値に臨界的意義があるとはいえない。
甲14(平成21年1月21日付け実験成績証明書)の実験は,二つの溶接条件を設定しているものの,溝に係る数値が本願発明所定の数値の範囲内のサンプルは1種類だけであるから,甲14により,本願発明所定の数値の範囲内のものが様々な溶接条件のもとですべて溶け込み深さが十分になるとの顕著な作用効果を奏するとはいえない。
甲15(実験結果を記載した書面)の実験によれば,本願発明所定の数値に含まれていても溶接抜けについて問題を生じた例があったことが認められ,甲15からは,どのようにして本願発明所定の数値が得られたかは必ずしも明らかとはいえないし,本願発明に溶接抜けを防ぐという点において顕著な作用効果があるとは認められない。
溶け込み深さを十分にすることは周知の課題であるから,引用例1発明について,溝の形状,寸法,深さ,ピッチ等を決めるに際し,引用例2に記載された数値の範囲内で適切な数値を定めるに当たっては,溶け込み深さを十分にすることも当然考慮に入れられていると解される。そうすると,仮に,本願発明が,溶け込み深さについて作用効果を奏するとしても,その作用効果は,引用例2に記載された数値の範囲内で適切な数値を定めることに伴って当然に奏されるものと解される。
したがって,本願発明は,裏当て用鋼板の溶け込み深さに関する顕著な作用効果を奏するとは認められない。
3取消事由3(本願発明における「治具の不使用「溶接抜けの防止「溶 」,」,け込み深さの確保」を同時に実現するという顕著な作用効果を看過した誤り)に対しまず,原告の主張に係る「作業者が治具を用いずに曲げることができる」という作用効果は,引用例2記載の技術事項も奏する効果であるから,顕著な作用効果ではない。
次に,原告主張に係る「ロボット溶接を行ったときの溶接抜けを防止する効果」は,引用例1発明に引用例2記載の技術事項を適用して適切な数値を採用することにより当然得られる作用効果であるから,顕著な作用効果ではない。
さらに,原告主張に係る「溶け込み深さの確保」は,本願明細書には溶け込み深さについて記載がなく,本願発明は溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件を特定していないから,本願発明が溝に係る数値を特定したことによって,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなるという作用効果を奏するとはいえない。
仮に,本願発明が,溶接抜けを防ぐこと,溶け込み深さが十分であることについて作用効果を奏するとしても,溶接の技術分野において,溶接抜けが生じないようにすること,溶け込み深さを十分にすることは,周知の課題であり,引用例1発明に,引用例2に記載された溝に係る数値を適用して本願発明を想到することは,引用例1発明を実用化するに当たって当業者が普通に行い得たことにすぎないから,それらの作用効果は顕著なものではない。
第5当裁判所の判断当裁判所は,本願発明は,引用例1発明及び引用例2記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした審決の判断に誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(引用例1に引用例2を組み合わせることによって相違点に係る構成は容易想到であるとした判断の誤り)について引用例1発明について,溝の形状,寸法,深さ,ピッチ数を決めるに際し,引用例2に記載された溝の寸法,深さ,ピッチ数を適用し,その範囲内で適切, ,, な数値を定め 本願発明の相違点に係る構成を採用することは 以下のとおり当業者にとって容易であったといえる。
( )事実認定1ア引用例1発明について引用例1発明は,本願発明と同じく,溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝としたものであり,引用例1の「考案が解決しようとする問題点」の欄に「このように,従来の裏当金は,曲げ加工によって張出凸部, 。, 25が生じたり 形状変更が容易にできない問題がある 本考案の目的はこのような問題を改善できる裏当金を提供することにある(2頁14な。」いし19行)と記載され,実施例の欄に「前記切欠溝33は,金板本体31の厚さ,曲げ部32aの曲率半径の変化に伴い,溝形状,溝寸法,溝深さ,溝ピッチ,溝数(単数でも複数でもよい)を変化させる(4頁5な。」いし8行「また切欠溝33の部分では金板本体31の肉厚が薄いので, ),この切欠溝部分を角形鋼管(コラム)のコーナー部に押付け,角形鋼管のコーナー間の寸法あるいはコーナー部の曲率半径に応じて現場で曲げ部32aを多種多様の形状に現物成形することも可能である(4頁13ない。」し18行)との記載があることから,引用例1発明の平行溝の溝の部分における残存板厚(上記の金板本体31の厚さと溝深さの差に該当する,。)溝の数,溝の幅及び溝のピッチの具体的な数値は,角コラムの曲率半径,形状に応じて当業者が適宜設定することができるものと認められる。
イ引用例2記載の技術事項について(ア)引用例2の「発明が解決しようとする課題」の欄には,次のとおりの記載がある。
「前記の実開昭63-157497号の平鋼にあらかじめ溝を設けておく方法においては,角コラムのそれぞれのコーナー部に対応する位置に一定の幅を有する角形の溝を4個ずつ設けたものが示されている。本発明者等はこの考案の実施例に示された裏当て金について実験してみたが良好な結果は得られなかった。すなわち図4は上記考案の裏当て金の曲げ部分を示す斜視図であるが,溝を設けてあった部分20の背面に凹み21が生じ折れ線的な曲がりとなり,これらにより角コラムの内壁との間に隙間を生じ溶接不良すなわちルート部の欠陥の原因となることがわかった。この実開昭63-157497号には裏当て金の溝は形状,寸法,深さ,ピッチ数を適宜変化させると記載されているものの,具体的な場合に応じてどのような考え方でどのようにしたら良いのかといったことは一切示されていない( 0006 )。」【】「上記のような問題に対し,本発明は角コラムの内面側の曲率のバラツキがある場合でも,溶接上全く問題のない程度まで隙間を極力小さく抑えることができ,かつ加工し易い裏当て金用の鋼板を提供しようとするものである( 0007 )。」【】(イ)そして,本願発明所定の残存板厚,一群の溝の数,溝の幅,溝のピッチの数値は,引用例2記載の技術事項として記載された数値範囲に含まれる。
すなわち,引用例2記載の技術事項は,前記第2,3( )エのとおり2である。そして,引用例2記載の技術事項において,板厚を6.0mmとした場合のV溝の深さは4.0mmであるから,引用例2の「V溝の幅は深さの4分の1以下 ( 0023 )との記載に照らすと,V溝の 」【】幅は1.0mm以下となる。また,引用例2に「本発明は角コラムの内面側の曲率のバラツキがある場合でも,溶接上全く問題のない程度まで隙間を極力小さく抑えることができ,かつ加工し易い裏当て金用の鋼板を提供しようとするものである ( 0007 )と記載されていること 」【】から,引用例2記載の技術事項における溝部分に係る諸数値は,角コラムの各角部に合わせて形状変更できるように設定されることが認められる。さらに,引用例2記載の技術事項における「残余板厚」は,裏当て用鋼板の溝部分における溝の深さを除いた残りの板厚という意味で本願発明の「残存板厚」に相当し,引用例2記載の技術事項における「人力で曲げる」は,本願発明の「作業者が治具を用いずに曲げる」に相当するものと認められる。
引用例2記載の技術事項と本願発明を対比すると,引用例2記載の技術事項は,V溝の残存板厚を1.7ないし3mmとするものであり,溝の形状は異なるものの,本願発明の平行溝の残存板厚である1.5ないし2.5mmの数値範囲と,1.7ないし2.5mmの範囲で重なる。
また,引用例2記載の技術事項において,板厚を6.0mmとした場合の残存板厚は2.0mm,一群の溝の数は8以上,溝の幅は1.0mm以下,溝のピッチは3.3mm以上であり,これらは,本願発明の残存板厚(1.5ないし2.5mm ,一群の溝の数(4以上 ,溝の幅(4 ))mm以下 ,溝のピッチ(2.55mm以上)の数値範囲にすべて含ま )れる。
( )容易想到性の判断2, , 上記認定した事実によれば 引用例2記載の技術事項と引用例1発明とは共に,角コラムの裏当て用鋼板という同一の技術分野に属し,かつ角コラムのコーナー部に合わせて作業者が治具を用いずに曲げること(引用例1の2頁14ないし19行,引用例2【0007,及び,裏当て用鋼板の溝に関 】)する数値を適切なものにすることを課題としている。そして,本願発明所定の残存板厚,一群の溝の数,溝の幅,溝のピッチの数値は,引用例2記載の技術事項として記載された数値範囲に含まれる。
そうすると,引用例1発明について,溝の形状,寸法,深さ,ピッチ数を決めるに際し,引用例2に記載された溝の寸法,深さ,ピッチ数を適用し,その範囲内で適切な数値を定め,本願発明に想到することは,当業者にとって何ら困難な点はない。
( )原告の主張について3ア原告は,引用例1発明及び本願発明のような溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝とする溶接裏当て用鋼板において,溶接抜けが生じないように残存板厚等を定めようとした場合,引用例2は,そもそも,曲げられた部分に空間を生じることがなく,溶接抜けが問題とならないのであるから,引用例2記載の裏当て用鋼板に係る数値を適用することはできないと主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下の理由により,採用することができない。
すなわち,引用例2には 「またこのV溝の角度の下限はコーナー部が ,V溝全体で直角に曲げるためにV溝の数をnとして90/n度以上にする必要がある。一方,角コラムの曲率の誤差やV溝加工の誤差などに対処するため上記90/n度より大きい方がよいが,110/n度を超えると曲げたときの隙間が全体に大きくなるので110/n度以下にするのが好ましい( 0035 )と記載されており,V溝であっても曲げられた部 。」【】分においてある程度の空間が生じる場合のあることが認められ,引用例2記載の裏当て用鋼板について 「曲げられた部分に空間を生じることがな ,くそもそも溶接抜けが問題とならない」とはいえない。
また,引用例2には 「溝の形をV形にすることにより,裏当て用鋼板 ,を曲げたとき溝の面同士がほぼ密着するようにでき,空間が残ることなく好ましい。これにより曲げるときの力を少なくするため溝の部分における裏当て用鋼板の残存板厚が小さく,溝のあった部分までも溶接時に溶けても溶融金属が空間に溶け落ちるおそれがなくなる( 0011 )と記 。」【】載されている。同記載によれば,溝の形がV形ではなく空間が残る場合には,曲げるときの力を少なくするため溝の部分における残存板厚を小さくしすぎると,溝のあった部分までも溶接時に溶けて溶接抜けが生じることが示唆されているといえる。そして,溶接の技術分野において,裏当て材,() , の厚さを 溶け落ちない 溶接抜けのない ような厚さに調節することは裏当て材を用いる趣旨からして当然の事柄であり,一般的な課題であると認められ そのことは 乙3 特開平9-141441号公報 の記載0 ,,( )(【012,乙4(実願昭53-89156号公報(実開昭55-1121 】)8号)のマイクロフィルム)の記載(1頁12行ないし2頁6行)によっても裏付けられる。
以上のとおり,引用例1発明について,溝寸法,溝深さ,溝ピッチ,溝数等を決めるに際し,引用例2に記載された示唆や一般的課題に基づき,溶接抜けが生じないような数値を選択することは,当業者が容易になし得たものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。
イ原告は,引用例1発明は,本願発明と同様に,溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝とした裏当て用鋼板であり,曲げるために大きな力を要しないとする一方,引用例2記載の裏当て用鋼板は,溝の深部周辺の残存板厚が厚いので,曲げるために大きな力を要すると主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下の理由により,採用することができない。すなわち,(ア)引用例2記載の裏当て用鋼板はV溝を有するものであるが,曲げに必要とする力について,引用例2には,次のとおりの記載がある。
「・・・この曲げに必要とする力は以下のようにして計算することができる。すなわち図6に示すように溝部の残余厚さをt ,鋼板の板幅をbw,引張り強さをσとすれば応力分布7は図示したようになるから合 B力Tはt ×w×σとなり,曲げモーメントMは曲げの支点がV溝の b B底,力点が残余板厚の半分の位置として下式のようになる。
M=T×t /2=w・t・σ /2 ( 0013 )b b B2」【】「たとえばσ=50kg/mm ,w=25mm,t=2mmならB b2250kg・cmとなり,曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って25kgの力で曲げられることとなり人力で容易に曲げられる。これがt=4mmとなると1000kg・cmとなり万力などの工具を用bいても限界となる( 0014 )。」【】(イ)他方,本願発明は,溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝としたものであり,本願明細書には,次のとおりの記載がある。
「・・・この曲げに必要とする力は以下のようにして計算することができる すなわち図8に示すように溝部の残存板厚をt鋼板の板幅 図 。 ,(b示せず)をw1,引張り強さをσ とすれば応力分布Sは図示したよう Bになるから合力Tはt ×w1×σ となり,曲げモーメントMは曲げの b B支点が溝の底,力点が残存板厚の半分の位置として下式のようになる。
M=T×t /2=w1・t・σ /2 ( 0019 )b bB2」【】「たとえばσ =50kg/mm ,w1=25mm,t =2mmならB b2250kg・cmとなり,曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って25kgの力で曲げられることとなり人力で容易に曲げられる。これがt =4mmとなると1000kg・cmとなり万力などの工具を用bいても限界となる( 0020。。」【】)(ウ)上記の記載を比較すると,引用例2記載の裏当て用鋼板も本願発明も,いずれも曲げモーメントは同じ式を用いて計算することができ,また,曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って曲げた場合25kgの力で曲げられること,残存板厚を4mmとすると1000kg・cmとなり万力などの工具を用いても限界となる点において相違はない。
ウ原告は,引用例2記載の裏当て用鋼板は,溝の深部周辺の残存板厚が厚いので,曲げるために大きな力を要すると主張する。
しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。
引用例1発明は,溝の深さの50%以上の部分の両側面を平行溝としたものであり,溝の底側の50%弱の部分をV溝とする場合,仮に,原告の上記主張を前提とするならば,引用例1発明においても,溝の深部周辺の残存板厚が厚くなるので,曲げるために大きな力を要するはずであり,引用例2記載の裏当て用鋼板は曲げるために大きな力を要するのに対して引用例1発明は曲げるために大きな力を要しないということはできない。そうすると,原告の上記主張は,採用することができない。
エ原告は,引用例2記載の裏当て用鋼板は,曲げる際の曲率半径が制限されると主張する。
しかし,この点の原告の主張も,以下のとおり理由がない。
すなわち,曲率半径は一つに制限されるものではない。引用例2の記載( 0035 ,前記ア)によれば,コーナー部の複数のV溝全体で,本来 【】ならば90度曲がればよいところを,90ないし110度まで曲げることができるように設計されていることが認められ,曲率半径が一つに制限されるものでないことが認められる。
( )小括4以上のとおり,引用例1発明について,溝の形状,寸法,深さ,ピッチ数, ,,, を決めるに際し 引用例2に記載された溝の寸法 深さ ピッチ数を適用しその範囲内で適切な数値を定め,本願発明に想到することは,当業者にとって容易であったということができ,この点の審決の判断に誤りはない。
2取消事由2(本願発明における「溶け込み深さ」についての顕著な作用効果を看過した誤り)について本願発明は,以下の各点を考慮してもなお,裏当て用鋼板の溶け込み深さについての顕著な作用効果を奏するとは認められず,審決の判断に誤りはない。
( )まず,本願明細書には,以下のとおり,溶け込み深さに関する記載や示1唆はない。
本願明細書の【表1】の溶接結果欄は,○及び×の記号により表示されており,その評価については 「○…良好「×…抜けが生じた」と記載され ,」,ており,また,本願明細書の【0022】には 【表1】の説明として「こ ,の表から分かるように,本発明の範囲内のものは,ロボット溶接による抜けがなく,効率よく溶接作業を行うことができたが,本発明の範囲を外れるものにあっては,溶接時に抜けが生じ,ロボットが自動的に停止してしまい,作用効率が悪かった 」との記載はあるが,同記載は,溶接抜けの有無に関 。
する説明であって,溶接結果が溶け込み深さを考慮に入れたものと解することはできない。
甲8の2(平成19年3月5日付け実験成績証明書)の【表1】には,溶接結果の欄とは別に溶け込み深さの欄がある。この点,原告は,コーナー部の溶け込み深さを直線部の溶け込み深さよりも深くしたことをもって本願発明の顕著な作用効果と主張する。原告の主張によると,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも浅い場合は,好ましくない場合となるはずであるが,上記【表1】のサンプル?bPないし3は,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも浅く,好ましくない場合であるにも, ,,「」 かかわらず 溶接結果は○とされており このことからすると溶接結果という文言から,直ちにそこで溶け込み深さが考慮されているとは認められず,むしろ 「溶接結果」は,溶け込み深さとは別に溶接抜けの有無等を考 ,慮した結果を示す場合があるものと判断できる。
そうすると,本願明細書の【表1】の溶接結果欄の記載によって,本願発明所定の数値を採用する場合に溶け込み深さが十分となることが示唆されているともいえない。
( )また,本願発明には,溶接条件の定めがないことに照らすと,溶け込み2深さについて顕著な作用効果を奏すると解することはできない。
溶け込み深さは,溶接時の温度等の要因によって左右されるから,溝の残存板厚,溝の数,溝のピッチ,溝の幅といった本願発明所定の数値のみならず,温度等の要因の前提となる溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件にも少なからず依存するといえる(弁論の全趣旨 。ところで,本願 )発明は,溝の残存板厚,溝の数,溝のピッチ,溝の幅については,数値により限定をしているが,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件について,何らの限定をしていないことに照らすと,本願発明が,溶け込み深さについて顕著な作用効果を奏すると解することはできない。
( )さらに,原告提出の実験成績証明書等を参照しても,本願発明に溶け込3み深さについて顕著な作用効果があるとは認められない。
原告提出の甲8の2,甲12の2(平成19年9月20日付け実験成績証明書)の実験は,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件を一つに固定したものであって,異なる溶接条件においてコーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるか明らかでない。
甲14(平成21年1月21日付け実験成績証明書)の実験は,二つの溶接条件を設定しているが,平行溝についての実験例は,溝に係る数値が本願発明所定の数値に含まれる1種類だけであり,平行溝ではあるものの本願発明所定の数値から外れた例との比較で本願発明が顕著な作用効果を生ずることは示されていないし,本願発明所定の数値に含まれるものがすべて,様々な溶接条件の下において,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるという作用効果を生ずることが,明らかにされているとはいえない。
甲8の2の実験においては,本願発明所定の数値の範囲に設定されたサンプル?bU.8とともに,本願発明所定の数値の範囲に設定されていないサンプル?bTについても,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなっていることから,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるということが,本願発明の顕著な作用効果であるとは認められない。
甲12の2の実験の試験体?bQ,3,5,7,10,13ないし16,22は,溝部分に係る数値が本願発明所定の数値の範囲に含まれないにもかかわらず,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さより深くなっており,このような結果に照らすと,本願発明所定の数値が,溶け込み深さについて臨界的意義を有するとは認められず,コーナー部の溶け込み深さが直線部の溶け込み深さよりも深くなるということが,本願発明の顕著な作用効果であるとは認められない。
甲15の実験によれば,本願発明所定の数値の範囲に含まれていても溶接抜けについて問題を生じた例があったことが認められ,甲15からは,どのようにして本願発明所定の数値が得られたかは必ずしも明らかとはいえないし,本願発明に溶接抜けを防ぐという点において顕著な作用効果があるとは認められない。
以上のとおり,原告提出の実験成績証明書等を参照しても,本願発明に溶け込み深さについて顕著な作用効果があるとは認められない。
( )なお,引用例1発明について,溝の形状,寸法,深さ,ピッチ数を決め4るに際し,引用例2に記載された溝の寸法,深さ,ピッチ数を適用し,その範囲内で適切な数値を定め,本願発明に想到することは,当業者にとって容易であることは,前記1( )で説示したとおりである。そして,溶け込み深4さを十分にすることは周知の課題であるから,引用例2に記載された数値の範囲内で適切な数値を定めるに当たって,溶け込み深さを十分にすることも当然考慮に入れられていると解するのが自然である。そうすると,仮に,本願発明が,溶け込み深さについて作用効果を奏するとしても,それは,引用例2に記載された数値の範囲内で適切な数値を定めることに伴って当然に生じる作用効果であると理解するのが相当である。
3取消事由3(本願発明における「治具の不使用「溶接抜けの防止「溶 」,」,け込み深さの確保」を同時に実現するという顕著な作用効果を看過した誤り)について本願発明が 「治具の不使用「溶接抜けの防止「溶け込み深さの確保」 ,」,」,を実現するものであるとしても,それぞれの作用効果はいずれも顕著な作用効果とはいえないし,それらの作用効果を同時に実現することについても,顕著な作用効果とはいえず,審決の判断に誤りはない。
( )まず,作業者が治具を用いずに曲げることができるという作用効果は,1以下のとおり,顕著な作用効果とはいえない。
引用例1の「考案が解決しようとする問題点」の欄には 「このように, ,従来の裏当金は,曲げ加工によって張出凸部25が生じたり,形状変更が容易にできない問題がある。本考案の目的は,このような問題を改善できる裏当金を提供することにある(2頁14ないし19行)と記載され,実施例 。」の欄には 「また切欠溝33の部分では金板本体31の肉厚が薄いので,こ ,の切欠溝部分を角形鋼管(コラム)のコーナー部に押付け,角形鋼管のコーナー間の寸法あるいはコーナー部の曲率半径に応じて現場で曲げ部32aを。」() 多種多様の形状に現物成形することも可能である4頁13ないし18行との記載があることから,引用例1発明は,裏当て用鋼板の形状変更を容易になし得るものと認められる。また,引用例2には,作用の欄に「たとえばσ=50kg/mm ,w=25mm,t=2mmなら250kg・cB b2mとなり,曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って25kgの力で曲げられることとなり人力で容易に曲げられる。これがt=4mmとなるとb1000kg・cmとなり万力などの工具を用いても限界となる。このため本発明においてはV溝の深さの下限は裏当て用鋼板の板厚から4mmを引いた値とした( 0014 )との記載があることから,引用例2記載の技 。」【】術事項は,作業者が治具を用いずに曲げることができるという作用効果を奏することが認められる。
したがって,作業者が治具を用いずに曲げることができるという作用効果は,顕著な作用効果ということはできない。
( )また,ロボット溶接を行ったときに溶接抜けを防止することができると2いう作用効果は,以下のとおり,顕著な作用効果とはいえない。
溶接抜けの有無は,溶接時の温度等の要因によって左右されるから,溝の残存板厚,溝の数,溝のピッチ,溝の幅といった本願発明所定の数値のみならず,温度等の要因の前提となる溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件にも少なからず依存するものと認められ,このことは,乙1(特開2001-252767号公報)の記載( 0034,乙2(特開平5- 【】)253669号公報)の記載( 0005 )によっても裏付けられる。とこ 【】ろが,本願発明は,溝の残存板厚,溝の数,溝のピッチ,溝の幅といった本願発明所定の数値を定めるものの,溶接電流,溶接電圧及び溶接スピード等の溶接条件については何らの定めもないから,本願発明が溶け込み深さについて顕著な作用効果を奏するとは認められない。また,引用例2には,溝の形がV形ではなく空間が残る場合に溝の部分における残存板厚を小さくしすぎると,溝のあった部分までも溶接時に溶けて溶接抜けが生じることが示唆されており( 0011,溶接の技術分野において,裏当て材の厚さを, 【】)溶け落ちないような厚さに調節することは,裏当て材を用いる趣旨からして当然の事柄であり,一般的な課題であると認められることから(前記1( )3ア ,引用例1発明について,溝寸法,溝深さ,溝ピッチ,溝数等を決める )に際し,引用例2に記載された示唆や一般的課題に基づき,溶接抜けが生じないような数値を選択することは,当業者が容易になし得たものと認められる。したがって,ロボット溶接を行ったときに溶接抜けを防止することができるという作用効果は,本願発明の顕著な作用効果ということはできない。
さらに,前記2( )ないし( )のとおり,溶け込み深さが十分であるとの作14用効果は,本願発明の顕著な作用効果ということはできない。
( )このように 「作業者が治具を用いずに曲げることができること(治具の3 ,不使用「ロボット溶接を行ったときに溶接抜けを防止することができる )」,こと(溶接抜けの防止「溶け込み深さが十分であること(溶け込み深さ )」,の確保 」は,いずれも顕著な作用効果ではなく,これらの三つの作用効果 )が同時に実現されたとしても,それをもって顕著な作用効果とする根拠も認められない。
,,「」,「」, したがって 審決には 本願発明が 治具の不使用溶接抜けの防止「溶け込み深さの確保」を同時に実現するという顕著な作用効果を奏することを看過した誤りはない。
4結論以上のとおり,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。原告は,その他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 中平健
裁判官 上田洋幸
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