関連審決 | 無効2007-800123 |
---|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
平成20ワ2387特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10368審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10291審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10105審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10479審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 物の発明 / 新規性 / 容易に実施 / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 発明特定事項 / 一致点の認定 / 周知技術 / 公知技術 / 上位概念 / 下位概念 / 手続違反 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 発明の概要 / 翻訳文 / 優先権 / 優先日 / 技術的意義 / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 構成要件 / 設定登録 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / 国際公開 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|
事件 |
平成
20年
(行ケ)
10334号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告ナショナル・リサーチ・ カウンシル・オブ・カナダ 訴訟代理人弁護士今井浩人 同 中川豊 同 野中武 同 阿部佳基 訴訟代理人弁理士大塚康徳 同 西川恵雄 同 大塚康弘 同 坂田恭弘 被告浜松ホトニクス株式会社 訴訟代理人弁理士長谷川芳樹 訴訟代理人弁護士尾関孝彰 同 岡崎士朗 訴訟代理人弁理士城戸博兒 同 清水義憲 同 池田正人 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/05/28 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 - 2 - |
事実及び理由 | |
---|---|
全容
第1請求特許庁が無効2007-800123号事件について平成20年5月8日にした審決を取り消す。 第2事案の概要1本件は,原告が名称を「術中血管造影を行なうための装置」とする発明について特許第3881550号の特許権を有するところ,被告から上記特許の請求項1〜11につき無効審判請求がなされ,特許庁がこれらを無効とする旨の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 2争点は,本件特許発明1〜11が下記文献に記載された発明(以下「甲第1号証発明」又は「引用発明」という)との関係で進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。 記・文献:特開平9-309845号公報(発明の名称「近赤外線蛍光トレーサーおよび蛍光イメージング方法 ,出願人 浜松ホトニクス株式会 」社,公開日 平成9年12月2日。甲1)第3当事者の主張1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告は,平成11年9月24日の優先権(米国)を主張して米国に国際特許出願(PCT/US00/22088,日本における出願番号 特願2001-526090号。請求項の数52。国際公開は平成13年4月5日,国際公開番号 WO2001/022870号。国内公報は平成15年3月18日〔特表2003-510121号 ,甲65 )をし,平成14年3月 〕〕22日に日本国特許庁に翻訳文を提出したが(発明の名称「術中血管造影を行なうための方法及び装置,平成17年10月19日付け(甲67)及び 」)平成18年4月10日付け(甲71)で拒絶理由通知を受け,平成18年1月25日付け(請求項の数12。発明の名称を「術中血管造影を行なうための装置」と変更。甲69)及び平成18年10月11日付け(請求項の数11。甲72)で手続補正をしたところ,平成18年10月30日付けで特許査定がされ(甲73 ,平成18年11月17日に特許第3881550号 )として設定登録を受けた(請求項1〜11。以下「本件特許」という。甲30〔特許公報。〕)これに対し被告から,平成19年6月29日付けで本件特許の請求項1〜11について特許無効審判請求(乙14)がなされ,同請求は無効2007-800123号事件として係属したところ,特許庁は,平成20年5月8日 「特許第3881550号の請求項1〜11に係る発明についての特許 ,を無効とする 」旨の審決をし(出訴期間として90日を附加 ,その謄本は 。 )平成20年5月20日原告に送達された。 (2) 発明の内容本件特許の請求項1〜11に係る発明(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明11」という)の内容は,次のとおりである。 【請求項1】外科手術の間に,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を視覚化する装置であって,前記蛍光染料を励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記冠状動脈バイパスグラフト中の前記蛍光染料が放射した第2の放射線を検出して該冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得するカメラと,を備え,前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記蛍光染料は,ICGであり,前記第1及び第2の放射線の波長は,ICGを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,少なくとも毎秒15画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得し,前記ICGを含んだ血流が作る波面が視覚化されることを特徴とする装置。 【請求項2】前記カメラは,少なくとも毎秒30画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】前記放射手段が放射する放射線は,前記カメラによる画像取得速度に同期してパルス化されることを特徴とする請求項1又は2項に記載の装置。 【請求項4】前記放射手段は,レーザであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。 【請求項5】前記放射手段と前記カメラは,前記カメラの光軸と前記放射手段からの前記第1の放射線との間の角度が85度以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。 【請求項6】前記放射手段と前記カメラは,前記カメラの光軸と前記放射手段からの前記第1の放射線との間の角度が20度乃至70度となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。 【請求項7】前記放射手段はレーザであり,前記装置は,前記第1の放射線が注目領域を覆うように配置された光学部品をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。 【請求項8】前記カメラが前記蛍光染料の放射した放射線以外を検出することを防止する帯域フィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。 【請求項9】前記冠状動脈バイパスグラフト造影画像を拡大するレンズシステムをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。 【請求項10】前記カメラ及び前記放射手段から前記冠状動脈バイパスグラフトへの距離を計る距離センサをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。 【請求項11】外科手術の間に,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を視覚化する装置であって,前記蛍光染料を励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記冠状動脈バイパスグラフト中の前記蛍光染料が放射した第2の放射線を検出して該冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得するカメラと,を備え,前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記蛍光染料は,食塩水によってボーラスとして一気に流せる,ICGを含む組成物であり,前記第1及び第2の放射線の波長は,ICGを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,少なくとも毎秒15画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得し,前記冠状動脈バイパスグラフトにおける血流が,ボーラスが作る波面によって視覚化されることを特徴とする装置。 ( )審決の内容3ア審決の内容は別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本件特許発明1〜11は甲第1号証発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから特許法29条2項に違反する,としたものである。 イなお審決は,甲第1号証発明の内容を次のとおり認定し,本件特許発明1との一致点及び相違点を,以下のとおりとした。 ・ 甲第1号証発明の内容〉 〈「手術中に用いられ,生体内に導入された近赤外領域蛍光色素インドシアニングリーン(ICG)とヒト高密度リポプロテイン(HDL)との複合体(ICG-HDL)からなる近赤外線蛍光トレーサーが生体内液体媒体(血液,脊髄液等)の流動等により生体内を移動し,該トレーサーの位置及び濃度変化を,当該トレーサーに基づく蛍光を観察することでリアルタイムにイメージングする装置であって,ハロゲンランプにバンドパスフィルターを装着した励起光源から励起光を試料の生体の外部へ照射し,該励起光により生じる前記色素からの近赤外蛍光励起光を,前記色素からの蛍光のみを選択するシャープカットフィルターをセットしたTVレンズを装着し励起光の軸と一定の角度をなすCCDカメラにより所定の露光時間で検出し,該CCDカメラの信号を画像処理装置にてデーター処理することによりイメージングした近赤外蛍光像に基づいて,前記トレーサーが体内に分布していく様子を体外から経時的に観察できる体外蛍光イメージング装置 」。 ・ 一致点〉〈いずれも 「外科手術の間に,生体内液体媒体の流れの中を運ばれ ,る近赤外線蛍光トレーサーの移動を視覚化する装置であって,前記トレーサーを励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記トレーサーが放射した第2の放射線を検出して造影画像を取得するカメラと,を備え前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記第1及び第2の放射線の波長は,前記トレーサーを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,所定の画像化速度で観察対象の造影画像を取得し,前記トレーサーを含んだ生体内液体媒体の流れが作る波面が視覚化される装置 」である点。。 ・ 相違点1〉〈「生体内液体媒体の流れの中のトレーサーが,本件特許発明1においては,ICGであるのに対して,甲第1号証発明においては,ICG-HDL複合体である点 」。 ・ 相違点2〉〈「トレーサーが運ばれて移動する生体内液体媒体の流れが,本件特許発明1においては,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流であるのに対して,甲第1号証には,生体内液体媒体として血液が例示されているものの,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流については記載されていない点 」。 ・ 相違点3〉〈「観察対象の造影画像を取得する所定の画像化速度について,本件特許発明1においては,少なくとも毎秒15画像の速度で造影画像を取得しているのに対して,甲第1号証発明においては露光時間1秒およ,『 』 び露光時間8秒を例示するものの少なくとも毎秒15画像の速度で造影画像を取得することは記載されていない点 」。 ウ次に審決は,本件特許発明2と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点4〉〈「造影画像を取得する所定の画像化速度について,本件特許発明2においては,少なくとも毎秒30画像の速度で造影画像を取得しているのに対して,甲第1号証発明においては露光時間1秒および露光時間8秒を例示するのみであり,少なくとも毎秒30画像の速度で造影画像を取得することは記載されていない点 」。 エ次に審決は,本件特許発明3と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点5〉〈「放射手段が放射する放射線について,本件特許発明3においては,カメラによる画像取得速度に同期してパルス化されるのに対して,甲第1号証発明においてはカメラによる画像取得速度に同期してパルス化することは記載されていない点 」。 オ次に審決は,本件特許発明4と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点6〉〈「放射手段について,本件特許発明4においては,レーザであるのに対して,甲第1号証発明においてはハロゲンランプである点 」。 カ次に審決は,本件特許発明5と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点7〉〈「放射手段とカメラについて,本件特許発明5においては,前記カメラの光軸と前記放射手段からの前記第1の放射線との間の角度が85度以下となるように配置されているのに対して,甲第1号証発明においては一定の角度を規定する数値が具体的に記載されていない点 」。 キ次に審決は,本件特許発明6と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点8〉〈「放射手段とカメラについて,本件特許発明6においては,前記カメラの光軸と前記放射手段からの前記第1の放射線との間の角度が20度乃至70度となるように配置されているのに対して,甲第1号証発明においては一定の角度を規定する数値が具体的に記載されていない点 」。 ク次に審決は,本件特許発明7と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点9〉〈「放射手段について,本件特許発明7においては,放射手段がレーザであり,前記装置は,前記第1の放射線が注目領域を覆うように配置された光学部品をさらに備えるのに対して,甲第1号証発明においてはハロゲンランプである点 」。 ケ次に審決は,本件特許発明8と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点10〉〈「カメラについて,本件特許発明8においては,蛍光染料の放射した放射線以外を検出することを防止する帯域フィルタをさらに備えるのに対して,甲第1号証発明においてはシャープカットフィルターである点 」。 コ次に審決は,本件特許発明9と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点11〉〈「本件特許発明9においては,冠状動脈バイパスグラフト造影画像を拡大するレンズシステムを備えるのに対して,甲第1号証発明においてはCCDカメラに装着したTVレンズが拡大するレンズであるか明記されていない点 」。 サ次に審決は,本件特許発明10と甲第1号証発明との一致点及び相違点1・2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点12〉〈「本件特許発明10においては,カメラ及び放射手段から冠状動脈バイパスグラフトへの距離を計る距離センサをさらに備えるのに対して,甲第1号証には,距離センサについて記載されていない点 」。 シ次に審決は,本件特許発明11と甲第1号証発明との一致点及び相違点2・3は上記イと同じであるとした上,その余の相違点を以下のとおりであるとした。 ・ 相違点13〉〈「生体内液体媒体の流れの中のトレーサーが,本件特許発明11(判決注: 本件特許発明1」は誤記)においては,食塩水によってボー 「ラスとして一気に流せる,ICGを含む組成物であるのに対して,甲第1号証発明においては,ICG-HDL複合体である点 」。 (4)審決の取消事由しかしながら,審決には,以下のとおり誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ( ) ア取消事由1 本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点の認定の誤り(ア)審決の本件特許発明1と甲第1号証発明(引用発明)の一致点の認定には,?@「生体内液体媒体の流れ」の認定,?Aトレーサーの相違から, 「」 くる装置構成の相違を看過して一致点としたこと ?B 所定の画像速度の認定,?C「視覚化」の認定,に関して誤りがある。 (イ)「生体内液体媒体の流れ」について審決は 「…甲第1号証発明における『生体内液体媒体(血液,脊髄 ,液等)の流動』と本件特許発明1における『血流』とは 『生体内液体 ,媒体の流れ』である点で共通する(30頁22行〜24行)として, 。」これを一致点として認定した。 しかし,甲第1号証発明が観察対象とする「生体内液体媒体の流れ」「」,, と本件特許発明1が観察対象とする 血流 とは 以下に述べるとおり異なる意味内容のものである。 甲第1号証発明は,腫瘍組織,神経軸策流又は脳脊髄液といった静的な被写体に導入された複合体(ICG+HDL の位置,範囲,分布状)況を顕微鏡写真(静止画像)で体外計測することを目的・課題とするものであって 本件特許発明1のような高速な血液の流れの動態を動画 写 , (真ではない)により観察することを目的・課題としたものではない。 , , 当業者である心臓血管外科研究医が 仮に甲1に接したと仮定しても同号証の記載から理解できる観察対象は,腫瘍組織(甲1・段落【0002 ・ 0003,神経軸策流(同【0024,脳脊髄液(同【0 】【】) 】)035】〜【0037 )だけであり,いずれも,組織の位置・大きさ 】・分布状況といった静的な状態を静止画により体外計測するものである。 この点甲1には 「生体内液体媒体(例えば血液,脊髄液等(段落 , )」【0018 )との記載があるが,以下に述べるとおり,甲第1号証発 】明が血液の流れも観察対象とすることを意味するものではない。 上記段落【0018】の記載は,甲第1号証発明が近赤外線トレーサーとして使用する(ICG+HDL)複合体を概略的に説明する目的で記載されたものである(なお,ICG単体に関する説明ではない 。つま)り,当該記載は,甲第1号証発明におけるトレーサーを説明するに止まり,甲第1号証発明が実際にどのような「生体内液体媒体」を被写体として想定するか,また,どのような生体の部位・状態における生体内液体媒体を被写体として想定するかなどについて何ら説明するものではない。もちろん,当該記載は,生体内液体媒体の「流れ」を被写体とすることを何ら示唆しない。このような概括的・抽象的な記載に当業者(心臓血管外科研究医)がたまたま接しても,技術常識から判断して,何らの根拠もなく 「生体内液体媒体」に属する全ての液体(しかもあらゆ ,る部位に存在するあらゆる状態)を蛍光造影することが記載されているものと理解することは不可能である。 , ,「」 また 甲1全体の記載を合理的に考慮すれば 当該 生体内液体媒体は,それが甲第1号証発明の被写体を意味するものであると仮定したとしても,その動きが非常に遅い実質的に静止状態の静的なもののみを意味するものと理解せざるを得ない。従って,仮に「血液」が甲第1号証発明の被写体に含まれると仮定したとしても,甲第1号証発明が想定する「血液」は,ある特定組織などの部位に拡散分布・長時間滞留するよ。, うな実質的に静止した静的な状態の限られた血液である いずれにしろ被写体が何であれ,甲第1号証発明は,静止画像(写真)を撮影するもので 「流れ」や「移動」を視覚化するものではない。 ,,「」 , 以上のとおり 甲第1号証発明における 生体内液体媒体の流れ は実質的に静的なもののみを意味し,本件特許発明1における「血流」の高速な流れ(動態)とは技術的意味が異なる。審決は,かかる相違点を看過しており,審決の一致点の認定は誤りである。 (ウ)装置構成の相違の看過についてまた審決は 「…甲第1号証発明における『近赤外領域蛍光色素イン ,ドシアニングリーン(ICG)とヒト高密度リポプロテイン(HDL)との複合体(ICG-HDL)からなる近赤外線蛍光トレーサー』と,本件特許発明1における『ICG』とは 『生体内液体溶媒の流れの中 ,を運ばれる赤外線蛍光トレーサー』である点で共通する(30頁25。」行〜29行)としてこれを一致点と認定した。 しかし上記認定は,トレーサーの相違を形式的に認めながらも,赤外線蛍光トレーサーという上位概念を持ちだしてその技術的な意味は同一である旨認定し,その結果,当該トレーサーの相違から生じる本件特許発明1の装置と甲第1号証発明の装置との構成の相違を看過するものである。本件特許発明1の装置は,その用途に特に適した形状・構造等に限定された構成を有するものであり,当該構成は,以下のとおり甲第1号証発明の構成と異なる。 <ア>放射手段(励起光源)甲第1号証発明の「蛍光染料を励起させる第1の放射線を放射する放射手段」は 「腫瘍組織,神経軸策流,脳脊髄液といった非常 ,に流れの遅い(実質的に静的)部位(静的な被写体)に投与された複合体(ICG HDL)から生じる蛍光を励起させる励起光源」を+意味する。他方,本件特許発明1の当該放射手段は 「心拍動下の ,手術中に冠状動脈バイパスグラフト中を高速に流れる血液(高速に動く被写体)により運ばれるICGから生じる蛍光を励起させる為に適切な励起光源」を意味し,異なる構成の励起光源である。 甲1には,(ICG+HDL)複合体に対する励起光源として,150Wのハロゲンランプ(バントバスフィルター〔中心波長720〕)(【】 【】)。 nm 装着段落 0035 〜 0037が開示されている当該励起光源は,顕微鏡写真撮影用(段落【図3】〜【図5】の説明)に設けられたもので,撮影視野の狭い,静的な対象の写真(静止画)をとることを意図している。このような励起光源を,本件特許発明1が意図する比較的広い視野範囲(約7.5cm×7.5cm・甲30段落【0048 )の高速な動きを,動画(毎秒15画 】像以上)で撮影するために用いることはできない。仮に特別な画像処理装置などにより,様々な光学的設定に変更を加えることにより可能となると仮定しても,本件特許発明1の用途に使用する意図があったのであれば,わざわざそのような数々の設定変更を行うのでなく,最初から励起光源自体を適切なものに取り替える方がはるかに合理的である。そのような設定変更は,当業者が,特別の思考を要することなく容易に思いつくものではない。 , ,「,, 以上から 甲第1号証発明においては腫瘍組織 神経軸策流脳脊髄液といった非常に流れの遅い,実質的に静的部位に投与された複合体(ICG HDL)から生じる蛍光を励起させる」ために特+に適切な励起光源の構成を開示していることが理解でき,かかる励起光源の構成は,本件特許発明の装置構成と異なるものである。 <イ>造影画像を取得するカメラ, , 当業者が 甲1の記載から理解できる甲第1号証発明のカメラは動画を撮影することを目的としたカメラではなく,露光時間1秒又は8秒の顕微鏡写真(静止画像)を撮影することを目的としたカメラである。他方,本件特許発明1のカメラは,画像取得速度毎秒15画像以上を有する動画を撮影するためのカメラであり装置構成が異なる。 上述したとおり,甲第1号証発明に具体的に開示された観察対象が全て静的な被写体であること,唯一の実施例においても,8時間の間に3枚の顕微鏡写真(露光時間1秒又は8秒)しか撮影していないこと,後述するとおり,蛍光造影画像は通常,毎秒1画像程度の画像取得速度で撮影される静止画であることが当時の技術常識であったこと(甲49〔ロバート・フラワー作成の2008年(平成20年)6月26日付け書面・表題はなし )などに基づけば,当 〕業者が理解できる甲第1号証発明のカメラは露光時間が長い静止画用のカメラである。 この点審決は,甲第1号証発明の実施例に開示された「…STNC方式のCCDカメラであるC2400-75iが,毎秒30画像を取得することができないとしなければならない理由はない(4。」0頁8行〜10行)と判断した。しかし,以下のとおり,審決の判断は失当である。 CCDカメラ(浜松ホトニクス製)C2400-75iは,甲第1号証発明の実施例に開示されたものである(段落【0035。】)当該実施例には 「CCDカメラ6の信号は画像処理装置7(ARG ,US20)にて取り込む(同段落)との記載があり,当該CCD 。」カメラはARGUS20と共に使用することが前提であると理解できる。当該カメラのカタログ(甲9,浜松ホトニクス株式会社「顕微鏡用ビデオカメラ C2400シリーズ」1999年〔平成11年〕7月作成)には 「C2400-73I,-75I,-77I ,は,蛍光観察用のCCDカメラです。…ARGUS-20イメージプロセッサと組み合わせ,CCD上に一定時間の光入力によって発生した電荷を蓄積し感度を向上させています(チップ積算機能 。)…注)C2400-73I,-75IはコントローラーとしてARGUS-20イメージプロセッサが必要です(8頁中段左欄1行 。」〜9行)との記載がある。即ち,甲第1号証発明の実施例に開示されたカメラは,常に,ARGUS-20イメージプロセッサを組み合わせることで,CCD上に一定時間の光入力によって発生した電荷を蓄積し感度を向上させて使用するものであることが理解できる。 甲第1号証発明の実施例には 露光時間1秒又は8秒との記載 段 , (落【0035】〜【0037 )があり,上記電荷を蓄積させる時 】間が1秒又は8秒であることが理解できる。 当該露光時間は,1秒間に1枚又は8秒間に1枚の画像よりも多くの画像を取得することはできない。NTSC式の規格(30フレームレート)は,単にC2400-75iカメラの同期方式の規格を意味するだけで,当該カメラがARGUS-20と組み合わされた場合に取得可能な画像数を意味するものではない。 また,審決は,甲第1号証発明のカメラの設定・条件等を変更することにより,毎秒30画像を取得することも可能である趣旨を述べている。 しかし,そもそも,本件特許発明と甲第1号証発明との比較で対象となるのは,甲第1号証発明で開示された特定の機種のカメラが有する潜在的な能力ではない。あくまで,当業者が,特別の思考を要すること無く容易にその技術的思想を実施し得る程度に理解できる甲第1号証発明の技術的思想の内容を比較の対象としなければならない。審決の認定は,甲第1号証発明の技術的思想が想定する範囲を逸脱しており失当である。 以上から,審決は,装置構成の相違点を看過し,一致点の認定を誤ったものである。 (エ)「所定の画像化速度」について審決は 「…甲第1号証発明において,CCDカメラにより所定の ,露光時間で検出し,該CCDカメラの信号を画像処理装置にてデータ処理することによりイメージングすることと,本件特許発明1における少なくとも毎秒15画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得することとは,所定の速度で観察対象の造影画像を取得する点で共通する(30頁30行〜31頁3行)とし,これを一 。」致点として認定した。しかし,審決の認定は,上記「所定の画像化速度」の差異を看過するものである。 本件特許発明1では 「少なくとも毎秒15画像の速度」で画像を ,取得しているところ,これは動画であることを意味し,血液の流れの動く様子そのものを直接視覚化することを意味する。他方,甲第1号,「」 。 証発明では露光時間1秒又は8秒 により取得する静止画である当該露光時間では仮に連続して撮影したと仮定しても,毎秒1画像以, 。 上の画像を取得することができないため 動画とすることはできないもっとも,甲第1号証発明には,連続して撮影することの示唆すら存在しない(実施例では8時間に3枚の顕微鏡写真である 。甲第1号 )証発明では,取得した複数の静止画(写真)を比較して,画像の相違する部分に着目し,おそらくその間に移動・流れがあったのであろうと推測できるだけである。実際にその間の移動や流れを視覚化するものではない。 このように本件特許発明1と甲第1号証発明とでは,動画と静止画(写真)という重大な相違点が存在する。 ,, , 以上から 審決は 所定の画像化速度の技術的意味の相違を看過し一致点の認定を誤ったものである。 (オ)「移動を視覚化」及び「流れが作る波面が視覚化」について審決は 「甲第1号証発明の『生体液体媒体(血液,脊髄液等)の流 ,動等により生体内を移動していく近赤外線蛍光トレーサーの位置および濃度変化を時系列的に観察する』ことと,本件特許発明1における『ICGを含んだ血流が作る波面が視覚化される』こととは 『近赤外線蛍 ,光トレーサーを含んだ生体内液体媒体の流れが作る波面が視覚化される』点で共通する(31頁20行〜24行)とした。しかし,以下の 。」とおり審決の認定は誤りである。 上述したとおり,甲第1号証発明が開示するものは静止画(写真)であり,実際の動態を直接視覚化するものではない。他方,本件特許発明1の波面の視覚化は,実際に動いている波面の状態,即ち,自然な血液の流れの動態そのままを実際に視覚化することである。従って,本件特許発明がいう「視覚化」と甲第1号証発明の「視覚化」とでは,全く技術的意味が異なる。 このように,審決は 「視覚化」の技術的意味の相違を看過し,一致 ,点の認定を誤ったものである。 (カ)以上から,審決の一致点の認定には重大な誤りがあり,当該認定を前提とした進歩性の判断には重大な瑕疵がある。 そもそも甲1が開示する技術の属する分野は,癌の摘出手術に関する外科領域の分野及び神経学的な領域の分野であり,心臓血管外科の分野とは全く異なる。従って,冠状動脈バイパス手術におけるバイパスグラフトの不具合状態を評価する心臓血管外科研究医がその開発の為に通常参考にする文献ではない。甲1は,甲第1号証発明として適格性を欠くものである。 イ取消事由2(本件特許発明1と甲第1号証発明との相違点1〜3についての各判断の誤り)(ア)取消事由2-1(相違点1に関する判断における周知技術の認定の誤り)a審決は 「赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いた蛍光イメー ,ジング装置により血管造影を行う技術は周知(甲第5号証技術,第6号証技術参照)である(32頁19行〜20行)と認定した。 。」(a)しかし,当業者(心臓血管外科研究医)にとって,ICG蛍光を用いた血管造影は周知技術ではない。そもそも,当業者(心臓血管外科研究医)の間では,ICGが蛍光を発する事実すら一般的に知られていなかった(甲57,医師の「意見書」平成20年9月B26日付け 。)審決が参照した甲5(特表平8-503406号公報,発明の名称「目の新毛細血管膜の検出と治療 ,出願人 ザ・ジョンズ・ホプ 」キンズ・ユニバーシティ,公表日 平成8年4月16日 ,甲6(特 )表平10-506550号公報,発明の名称「眼における脈絡膜の血流および迷入血管構造の改善された視覚化 ,出願人 ザ・ジョー 」ンズ・ホプキンス・ユニバーシティ,公表日 平成10年6月30日)に開示されている技術は,いずれも眼底カメラに関する技術である。ICG蛍光造影の対象となる眼底血管は,非常に特殊な臓器, , であり 当該眼底血管は眼科研究医の技術分野に属するものであり本件特許発明の当業者(心臓血管外科研究医)の技術分野とは何ら関連性の無い技術分野である。つまり,当業者は,眼底血管及びその蛍光造影を行う眼底カメラを,自らの技術分野を研究する為に参考にすることは通常ない。従って 「眼底血管のICG蛍光造影」 ,技術は,当業者にとって周知技術となり得ない。また,当該関連性の全くない技術分野の技術を甲第1号証発明に結びつける動機付け又は示唆は存在しない。 (b)審決は,さらに 「6.被請求人の主張について (34頁25 , 」行)として被請求人である原告の主張に対する判断をしているが,結論として「…CABGに関心を有する当業者にとって,ICGを用いた蛍光イメージング装置による血管造影が未知のものであるとする理由もない(36頁28行〜30行)とした。 。」,, 。 しかし 当業者にとって 蛍光剤としてのICGは周知ではないまた,当業者が,染色染料としてのICGを知っていたとしても,血液の流れの観察に用いられることは周知ではない。 審決が根拠とした甲15(中村隆ら著「色素稀釈法における新色素クーマシーブルー,インドシアニングリーンの使用」内科14巻7号,1964年12月号)は,色素希釈法に関する技術である。 当該色素希釈法は,注入されたICG(蛍光剤としてではない)の色素が希釈されて薄くなっていく状態を計測して希釈曲線として記録し,血流量(心拍出量)を数値及び当該値により描かれた曲線グラフの形状により測定するものである(1362頁右欄18行〜20行及び1363頁左欄3)。従って,ICGの「蛍光性」とFigは関係がなく,また 「血液の流れ」の視覚化とも関係がない。 ,審決が引用する,本件明細書(甲30〔特許公報 )段落【00 〕39】の「…心拍出量分析… (審決35頁3行 ,参考周知例1の 」)「…心臓及び肝臓の血流を測定… (審決35頁9行)の記載も, 」参考周知例2の「…選択的グラフト希釈曲線を用いる… (審決3」5頁19行「…色素希釈管… (審決35頁21行〜22行)及 ),」び「…インドシアニングリーン標識希釈法… (審決35頁23行 」), 。 〜24行 の記載も いずれも上記色素希釈法に関する技術であるGerald C. TaichmanTexas Heart Institute また,甲28(ほか「」14巻2号「手術中における冠循環の視覚化のためのカJournal」,), ーディオグリーンの使用:心筋毒性の評価昭和62年6月発行甲29(ほか「「冠状動脈内膜切除:冠状Wilbert J. KeonSurgery 」動脈バイパス手術への適応」1979年〔昭和54年〕12月号)は,CABGの評価に関するものではあるが,ICGの「蛍光性」とも 「血液の流れの視覚化」とも何ら関係がない技術である。即 ,ち,当該技術は,緑色の染色色素としてのICGによって,緑色に染色された血管壁等の組織の分布・形状を観察することを目的としている(甲55 「博士 意見書 ,2008年〔平成20年〕6 ,」A月25日作成 。)当該技術では,心停止下のCABG手術における冠状動脈グラフトの遠位側吻合の開存性を観察するために,冠状動脈グラフトの近位端から注入されたICGにより緑色に染色された(心筋ブラッシュ)を観察するものである。即ち,人工心肺装置を使用することによって冠状動脈内の血流を遮断中に,冠状動脈グラフトの遠位側の, , みの吻合を行った後 まだ接合されていないグラフトの近位端から染色染料となるICGを注射器にて注入し,その強制的に注入されたICGにより緑色に染色された血管壁の分布・形状を肉眼で観察するというものである(甲55 。当該技術は,人工心肺装置を使 )用することによって冠状動脈内の血流を遮断中に実施していることから,グラフトの中には当然血液は存在しておらず,グラフト内の血液の自然な流れ(動態)を見ることはできないし,また,そのような目的・課題を有するものでもない(甲55 。)さらに,本件特許発明1以前は,当業者の間で,そもそもICGが蛍光を発するという事実は一般的に知られていなかった(甲57 。また,後述するとおり 「自然な血液の実際の流れの動態を視 ),覚化」するといった目的・課題も,当業者の間に存在しなかった。 また 甲25 特表平10-513175号公報 発明の名称 光 ,( ,「透過,反射に基づく生体内撮像用の造影剤 ,出願人 ナイコムド 」イメージング エーエス,公表日 平成10年12月15日)は,甲第1号証発明の適用対象を何ら示すものではなく,また,当業者に対して「心臓の血管」がICG蛍光観察の対象となることを示唆するものではない。医学の分野においては,対象臓器等が異なれば作用効果は予測困難であり,具体的な示唆がなければ,実施することは困難である。このことは「心臓の血管」が適用困難であるのみならず,他の多くの臓器等についても当てはまることである。 甲25の技術は 「従来から存在した種々の撮像技術」において ,「」。, 広く知られる 既存の造影薬 を改良するものである 具体的には「既存の造影薬」を粒状の散乱造影薬とすることによってコントラストを改善しようとするもので,粒状光撮像造影薬に関する発明である。従って,甲25は 「従来から知られた撮像技術」及び「従 ,来から知られた造影剤」を前提とするもので,新たに,未知の「撮像技術 (未知の撮像対象も含む)や未知の「造影薬」自体を開示 」するものではない。本件発明の当業者(心臓血管外科研究医)にしてみれば,仮に甲25に接する機会があったとしても,当該当業者は,その当業者の技術分野に属する「既存の造影薬」を「粒状造影剤」とすることを理解し得るに留まり,何らそれ以上に同号証から「新規の撮像技術(新規の撮像対象も含む 」や「新規の造影薬」 )を想到することができるものではない。 本件特許発明1の出願以前に,本件特許発明の当業者(心臓血管外科研究医)が実際に用いていたのは,せいぜいヨウ素造影剤を用いるX線造影法(甲33,の「意見書 ,平成20年1月23日B 」作成 ,磁性物質(ガドリニウム)を用いるMRI(核磁気共鳴画 )像法 ,インジウムやテクネチウム等の放射性物質を用いるシンチ )グラフィぐらいであり,ICGの蛍光特性を利用しての造影など行われていなかった(甲57 。)従って,本件特許発明1の当業者が甲25から理解できる技術は,せいぜい上記造影薬を,粒状化した上で使用することのみである。つまり,当業者は,甲25の記載から 「ICG蛍光造影剤」 ,や,それを用いた「ICG蛍光造影法 ,さらには,ICG蛍光造 」「」。「」 影法を用いた 血管造影 を想到することはない ましてや 心臓の血管造影を想到することは考えられない。実際,甲25には,それらを示唆する具体的な記載は何ら存在しない。 審決は,甲25の「8.前記画像が前記身体内の血管の画像である上記請求項のいずれかに記載の方法請求項第8項 及び と 。」()「りわけ外部排泄路を持つ器官又は導管(例えば胃腸路,子宮,膀胱など ,血管,食菌器官(例えば肝臓,脾臓,リンパ節など)又は )腫瘍の生体内光撮像に使用できる 」との記載をもって,同号証の 。 技術が「血管」一般をICG蛍光観察の対象にしていると認定している。しかし,上述したとおり,これら記載は,何ら撮像技術・造影剤・適用対象部位等の組合せを示唆するものではなく,また,そもそも当業者が念頭におくことが可能な従来技術は,上記X線造影法等程度であり,当該技術は造影薬としてヨウ素化合物・磁性物質(ガドリニウム ・放射性物質(インジウム・テクネチウム等)を )使用するもので,これらはICGとも,蛍光とも全く関係がない。 ,,, 「」 従って 当業者は 甲25から ICGの蛍光性を利用して 血管を視覚化することを想到することはできない。 (c)審決の「心臓の血管がICGを用いた蛍光イメージング装置の適用対象に含まれるものであることは周知 (35頁下5行〜下4 」行)であるとの評価について当業者(心臓血管外科研究医)にとって,心臓の冠状動脈がICG蛍光イメージング装置の適用対象に含まれることは何ら知られていなかった(上述のとおり,ICGの蛍光特性ですら一般的に知られていなかった 。その他の種類の心臓の血管についても,IC )G蛍光イメージング装置の適用対象に含まれることは当業者にとって周知ではなかった。 上記の周知事項の認定の基礎とされる参考周知例3に記載されているのは,PMRと呼ばれる治療法に用いる装置に関する技術である。当該治療法は,外科的開胸手術を伴わずにカテーテルを用いて行う内科的治療法であり,循環器内科医が行うものである。これに用いる装置も循環器内科の技術分野に属する。当業者(心臓血管外科研究医)の技術分野と,広く言えば同じ心臓に関するものではあるが,異なった技術分野である。従って,当業者にとって,周知技術とはなり得ない。 なお,審決は参考周知例3の記載事項につき特表2001-505472の文献(以下 「参考周知例3訳文」又は単に「訳文」と ,いう)から引用していると思われる。しかし,当該文献は,公表日が平成13年(2001年)4月24日であるから,それ自体としては本件特許の優先日(1999年〔平成11年〕9月24日)の周知技術を示す証拠たり得ない。参考周知例3は英文である国際公開番号WO98-30144の文献(以下 「参考周知例3原文」 ,又は単に「原文」という)と考えるべきである。 そして参考周知例3で開示されているのは,PMR治療のための装置である。PMR(経皮的心筋脈管再生)とは,参考周知例3の「発明の背景 (原文1〜2頁,訳文6〜7頁)に詳しく説明され 」ているように,カテーテルを用いて心臓の内側からレーザーエネルギーの照射あるいはその他のエネルギーを心臓内壁に加えることによって,心筋にチャンネル(小孔)を形成し,心筋への血液供給を。 , 改善しようとするものである カテーテルを用いて経皮的に行われメスによる開胸手術を伴わないため,内科医(循環器内科医)による手技とされており,心臓血管外科医の手技とは考えられていない(甲57 。冠状動脈バイパス手術とPMR治療は,技術内容・目 )的・作用効果等が全く異なるのみならず,上記のとおり明確に術者が異なるものであるから 全く別個の分野に属する技術である心 , 。「臓手術」とひとくくりにすることはできない。したがって,参考周知例3に記載の技術は当業者(心臓血管外科研究医)にとって周知技術であったとはいえない。 参考周知例4も,対象としているのは臓器における微小循環である( …生体顕微鏡を用いて…実質性の臓器の微小循環を…観察し 「て… (審決36頁20行〜21行。したがって,参考周知例3 」 ))につき述べたと同様,上記の周知事項の認定の基礎とすることはできない。 以上から,審決の上記の周知事項の認定は誤りである。 b 「…甲第1号証は…ICG単体を用いた血管造影では限られていた適応部位の制限をなくすために,ICG-HDL複合体を近赤外線トレーサーとすることを開示したものであること… (32頁21行〜 」24行)との認定について審決は,上記認定の前提として,ICG単体を用いた造影では対象となる血管の部位が限られていなかった旨認定しているものと理解できる。 しかし,甲1の段落【0041】には 「ICG単体を用いた血管 ,造影では適応部位が限られたが,ICG HDLを用いればそうした-制限はない 」との記載がある。 。 当該記載を文言どおり合理的に解釈すれば,ICG単体を使用した, 。 場合には 造影が可能な血管の部位が限られていたことが理解できる即ち,血管であればどのような血管でもICGによる蛍光造影が可能というわけではなく,一部の種類の血管でのみICGによる蛍光造影が実施されていたことが理解できる。 実際,甲1で具体的に開示されている血管造影は 「眼底血管」の ,造影だけである(段落【0007。当該眼底カメラ以外に,当業者 】)が特別な思考を要することなく容易にその技術的思想を実施し得る程度に理解できる「血管造影」技術は何ら開示されていない。 c「…甲第1号証記載の体外蛍光イメージング装置がICG HDL-からの赤外線以外は検出できないというようなICG HDLと一体 -不可分の構成であるとは認められない… (32頁24行〜26行) 」との認定について甲第1号証発明の装置は,ICG HDLの投与から生じる蛍光を-検出する為に特に適した励起光源を開示するものであり,ICG単体の投与から生じる蛍光を検出する為に適した励起光源を開示するものではない。この点,審決は 「…ICGが血流の中を運ばれる状態に ,おいて,第1の放射線により励起され,第2の放射線を放射するという機能として捉える前提に立った場合には,ICGとICG HDL-複合体とは実質的な差異はない (39頁5行〜7行)旨認定した。 」しかし 甲第1号証発明の 複合体ICGと高密度リポ蛋白質(H ,「」(DL) から形成される複合体)は,本件特許発明1で使用される「ICG単体」とは化学的・物理的に異なる物質である。また 「ICG ,単体」が血流中に投与された状態と 「ICG HDL複合体」の状態 ,-又はそれが仮に血流に投与された状態も化学的・物理的に異なる状態である。つまり,当該異なった状態に起因する上記機能も異なったものとなる。審決の上記認定は 「ICG単体」は血流中でHDLとの ,み結合することを前提とし,複合体(ICG HDL)を血液中に投-与することも,投与したICG単体が血液中で血中成分の一つであるHDLと結合することも実質的に同様であることを前提とするもので誤りである。 d以上から,審決の相違点1に対する判断には重大な瑕疵があり,その結論に影響を及ぼすものである。 (イ)取消事由2-2(相違点2に関する判断における,甲第1号証発明の認定及び周知技術の認定の誤り)審決は,相違点2に関して周知技術に基づき容易想到と判断したが,その前提(甲第1号証発明の認定・周知技術の認定)に誤りがある。 a審決の「甲第1号証発明は手術中に用いられる体外蛍光イメージング装置であることからして,該体外蛍光イメージング装置が用いられる対象として,生体内液体媒体の流れの中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術を視野に入れていることは明らかである (33頁2 」行〜5行)との認定について甲第1号証発明が用いられる対象として想定されているものは,腫瘍組織,神経軸策流又は脳脊髄液といった静的な被写体のみである。 審決は 「流れの中の移動」でありさえすれば,それが実質的に静 ,止していようが,高速にあらゆる方向に動いていようが,同じであると評価している しかし 甲第1号証発明は 静的な対象を静止画 写 。,,(真)で観察することのみを想定したものであり,本件特許発明1のように,高速で流れる血液の動態といった動的な対象を動画で観察することを想定したものではない。静的な対象においては,投与された蛍光染料の移動(拡散・分布)はほぼ静止状態である。当該移動は技術的意味において実質的に静止しているものと同等であると評価できる。つまり,静的な対象の観察と動的な対象の観察とでは技術的意味が全く異なる。審決は,当該技術的意味の差異を無視し,上位概念のみを認定したもので,進歩性の有無を判断する基礎として,極めて不十分かつ不合理な認定である。詳細については,上記取消事由1で述べたとおりである。 また,当時の技術常識から判断しても,審決の認定は誤っている。 本件特許発明1以前は,蛍光造影は,露光時間の非常に長い静止画像取得が一般的であった。例えば,露光時間1〜2秒間,即ち毎秒0.()。 5〜1画像程度の静止画像を取得することが常識であった 甲49,,, , 当該常識に基づけば 当業者は 仮に 甲第1号証発明に接してもこれにより,高速度で動く被写体を,動画で視覚化するものであるとは理解しない。従って,甲第1号証発明は,本件特許発明1の被写体のような動的対象を視野に入れていないことが明らかであり,この意味で審決の上記認定は誤りである。 b「冠状動脈バイパス手術の間に,冠状動脈バイパスにおける血流の(, 中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術は周知 甲第7号証技術甲第8号証技術参照)である (33頁5行〜7行)との認定につい 」てT.TakayamaIntraoperative Coronary Angiography 審決は,甲7(ら「Using Fluorescein Ann 」 ) (フルオレセインを用いた術中冠状動脈造影 ,,1991年〔平成3年〕51:140頁〜143頁 ,Thorac Surg )Tetsuro TakayamaIntraoperative Coronary Angiography 及び甲8(ら「(フルオレセUsing Fluorescein: Basic Studies and Clinical Application 」Vascular インを用いた術中冠状動脈造影:基礎研究と臨床応用 」)〔〕) ,Surgery, 1992年 平成4年 4月 に開示された技術に基づいて上記認定を行ったものであるが,以下に述べるとおり,審決の周知技術の認定は誤っている。 (a)甲7には,次の事項が記載されている?@「フルオレセインを用いた術中冠状動脈造影を,大伏在静脈グラフト140 の遠位側吻合完了直後に,グラフト開存性の評価に適用した(。」頁左欄行)110% 3mL6W?A「方法…フルオレセインナトリウムを…造影剤とした。 の黒色蛍光電球を蛍光誘起光源として用いた(頁左欄行) 。」14018?B「大伏在静脈グラフトを用いて遠位側の吻合を行った後,手術室のライトをすべて消し,黒色蛍光電球を心臓から上に設置して心臓10cm壁を照らした。続いて〜の蛍光造影剤を大伏在静脈グラフト 2040mL()。」() の近位端からの圧力で注入した 図頁左欄行 150mmHg 11402512140?C 本検査による大動脈遮断時間の延長はわずか〜分であった 「 。」(頁右欄行)6甲7で開示された技術は,心停止下のCABG手術において,大伏在静脈グラフト遠位側吻合完了直後に,当該吻合部の開存性を評価する目的で行われたものである(上記?@ 。即ち,人工心肺装置 )を使用することによって大動脈の血流を遮断中に,大伏在静脈グラフトを用いて遠位側の吻合のみを行った後,接合されていない大伏在静脈グラフトの近位端から,フルオレセインナトリウム蛍光造影剤をの圧力で注入し,人為的にバイパス内に強制的に押150mmHgし込まれたフルオレセインから生じた蛍光を観察するものである(上記?B 。これは,人工心肺装置を使用することによって大動脈 )の血流を遮断中に実施(上記?C)していることから,フルオレセイ, ,, ンを注入したグラフトの中には 当然血液は存在しておらず 当然当該フルオレセイン蛍光造影はグラフトの血液の流れを見ることができない。 また,甲7の開存性の評価方法は,フルオレセインの流れを観察することによって開存性を評価しているのではなく,実際には,血管内壁に付着したフルオレセインが描く血管壁の形状を観察することにより,その開存性を評価しているにすぎない(甲56,の平B成20年6月25日付け「意見書。」)以上のとおり,甲7に記載の技術は,血液の存在しないグラフト内に強制的に注入されたフルオレセイン造影剤の蛍光により,血管壁の形状を観察することが目的であり,グラフト内の血液の流れの中を運ばれるフルオレセインの移動を観察するものではない。 (b)甲8には,次の事項が記載されている。 ?@「結果…1.すべての遠位側の吻合を完了する。2.心臓から上 10cm6W 0.06%0.5mg/kgに設置した黒色蛍光灯の照明下でフルオレセイン ,(体重)をグラフト近位端からボーラス注入する「2名の患者におい 。」て,心筋保護液による心停止中に,本検査によって吻合部の予期せぬ狭窄およびグラフト血流の分布異常が認められたが,手術中に追加グラフティングの必要性および血行再建範囲を評価することができた 」。 (頁行)193abstract 6?A「CABGを施行した連続名の患者において,表?Uに概要を示した 29方法により術中検査を行った(図(頁行 ・ 術後の血管造 419611)。」)「影で吻合部の有意な狭窄()を検出した(図。この検査に要し99%7 )た時間はわずか〜分であり,大動脈遮断時間の延長は必要なかっ12た(頁行)。」 1976?B「CABGの結果を術中に評価する方法として,変化をモニタリ ECG,, ングする従来からの方法が最も広く使用されているが この方法ではデータが得られるのは大動脈遮断解除直後または体外循環離脱直後である(頁行)。」1983甲8で開示された技術は,甲7と同様に,( )心停止下のCABG i手術において,( )バイパスグラフトの遠位側の吻合の開存性を評 ii価するために, ( )グラフトの遠位端の吻合が完了した段階で,接 iii150mmHg合されていない近位端からフルオレセインを含む造影剤をの圧力で注入して,その蛍光造影画像を観察しており,冠状動脈グ()。 ラフト中の血液の流れを観察しているものではない 上記?@及び?A甲8の犬の動物実験では,心拍動下でも同様の技術が試みられている。しかし,心停止下と同様の技術を用いており,バイパスグラフト中に血液が存在しないことは,心停止下の実験の場合と同様である(甲56 。),, ,, なお 同号証の記載によると 人間に対する臨床適用では 常に人工心肺装置を用いた心停止下で同方法を行っており(上記?A ,最)終的には,心停止下で当該技術を行うべきであることを結論付けている。 また,甲8の開存性の評価方法は,フルオレセインの流れを観察することによって開存性を評価しているのではなく,実際には,血管内壁に付着したフルオレセインが描く血管壁の形状を観察することにより,その開存性を評価しているにすぎない(甲56 。)以上のとおり,甲8の技術は,血液の存在しないグラフト内に強制的に注入されたフルオレセイン造影剤の蛍光により,血管壁の形状を観察することが目的であり,グラフト内の血液の流れの中を運ばれるフルオレセインの移動を観察するものではない。 以上のとおり,審決が認定した周知技術の認定は誤りである。 (c)なお審決は,甲7,8についての被請求人(原告)の主張に対し 「…当該発明が具体的に適用される対象となる生体内液体媒体の ,流れの中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術から上記の手術を外すと考えなければならない理由はなく,甲第7号証技術及び甲第8号証技術は,当業者に甲第1号発明の適用対象の選択肢に加え得る周知例を示すという意味で本件特許発明の動機付けとなるものである(37頁5行〜10行)と判断した。 。」しかし,上述したとおり,甲7及び甲8に記載された蛍光染料である「フルオレセイン」は,如何なる「生体内液体媒体の流れ」によっても運ばれ移動するものではないことが明らかである。同号証で観察されるバイパスグラフト内のフルオレセインは血流によって運ばれ移動しているものではない。甲7及び甲8は,甲第1号証発明を本件特許発明1の用途に結びつける動機付けを何ら示すものではない。むしろ,以下に述べるような阻害要因が存在する。 すなわち,甲7及び甲8に記載の技術は,フルオレセイン蛍光造影法により,バイパスグラフトの血管壁の形状を視覚化しようとするものである。他方,本件特許発明1は,血管壁を観察するものではなく,当該血管の中に存在する血液の自然な流れそのものの動態を視覚化しようとするもので,全く異質で発想が異なる目的・課題を有するものである。同号証記載の技術に接した当業者(心臓血管外科研究医)が,当該技術から,本件特許発明1の目的・課題を発想することは非常に困難である。 また甲7及び甲8の技術は,バイパスグラフトの中に血液が存在しないことが前提となっている。当該技術に接した当業者は,当該技術は,バイパスグラフト中に血液が循環する心拍動下の冠状動脈バイパス手術とは全く関連性がないものと理解する。 さらに,甲7及び甲8に記載の技術は,上述したとおり,人工心肺装置を用いた心停止状態においてのみ行うことができ,逆に心拍動下では行ってはならないことが理解できる。従って,当業者は,このような類の蛍光剤を用いる蛍光観察技術は,心拍動下の手術には不適切なものと理解し,かえって心拍動下における蛍光観察技術の研究開発の妨げとなる。 c「…甲第1号証にはトレーサーが移動する生体内液体媒体の流れとして 血液の流れも例示され またICG単体を用いた血管造影が 0 ,, 【007】や【0041】に従来技術として記載されていること (3」3頁7行〜10行)との認定について甲第1号証発明は静止画(写真)を取得するもので,その被写体は静的な対象に限定され 「血液の流れ」を観察対象とはしないこと, ,甲第1号証発明に従来技術として記載されている「血管造影」は,眼底カメラによる特殊な眼底血管のみであること,しかも甲第1号証発明の装置は,眼底カメラの対象である眼底血管を観察対象としないこと,また,そもそも甲第1号証発明は「ICG単体」による蛍光造影に不適切な装置構成を有することは既に述べたとおりである。 d「…赤外線蛍光トレーサーとしてICG HDL複合体と周知のI-CGのどちらを用いるかは当業者による設計事項であること (33」頁10行〜12行)との認定について相違点1に関する判断に関して既に述べたとおり,上記認定は誤りである。 e以上のとおり,ICGを用いて冠状動脈バイパスにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を観察することは,当業者にとって予測困難である。審決の相違点2に対する判断の誤りは重大な瑕疵がある。 (ウ)取消事由2-3(相違点3に関する判断における,甲第1号証発明の認定及び周知技術の認定の誤り)a審決は,相違点3の構成とすることは当業者が適宜なし得ることで。 。 あると判断した しかし審決が前提とした認定には以下の誤りがあるb「…ICGを含んだ血液とICGを含まない血液との境界領域を,少なくとも毎秒15枚の速度で画像を取得する技術は周知であること(,)。」() 甲第5号証技術 甲第6号証技術参照33頁24行〜26行との認定について(a)審決は,甲5及び甲6の眼底カメラの技術に基づき上記周知技術を認定している。しかし,以下に述べるとおり,当該眼底カメラの技術に基づき上記周知技術を認定することはできない。また,当該眼底カメラの技術は 「血液の流れの動態」を蛍光観察する装置 ,を開発するために何ら参考とならない。 すなわち,本件特許発明1以前においては,眼底カメラは,毎秒1枚の速度で画像を取得するものであることが技術常識であった(甲49 。)甲5及び甲6の眼底カメラは,後述するとおり,通常の眼底カメラではなく,特別な目的の為に画像取得速度を毎秒15枚以上に改造したものである。当該特殊な眼底カメラは,本件特許発明1以前において,一般的に知られておらず,従って,当該特別な画像取得速度も周知技術とはなり得ない。 また,甲5及び甲6の眼底カメラは,毎秒15枚以上のデーターをコンピュータが取得するものの,静止画を表示するだけで,動画を視覚化するものではなかった。つまり,当該眼底カメラには動画を視覚化する目的が無く,当然「血液の流れの動態」を視覚化することも目的・課題とするものではなかった。従って,当該眼底カメラの技術は 「血液の流れの動態」を蛍光観察する装置を開発する ,ために何ら参考とならないものである。 そもそも,眼底カメラは眼科の技術分野に属する技術であり,本件特許発明1の技術分野とは全く関連性がない。また,本件特許発明1とは,目的・課題も異なる。従って,甲5及び甲6は,当業者が通常参考にする文献ではなく,その記載された技術も周知技術とはなり得ない。 (b)甲5に記載された技術は,眼底の脈絡管構造(特に,栄養物を運ぶコロイド内の毛細血管層である脈絡毛細管枝 (甲40の1, )2)における異常がある位置を特定し,それを除去して治療することを目的としている。当該技術は,眼底の脈絡管構造における血管の中を流れる血液の動き(動態)を視覚化することを目的とするものではない。 甲5では,毎秒15フレーム以上の速度で撮影されているが,当該フレーム・レートは,血液の流れの動き(動態)を視覚化する目的で設定されたものではない。 甲5に記載された技術は,異常に形成された新毛細血管膜に導入された蛍光剤に,コンピュータ制御で,光エネルギーを照射して励起させることにより,それを含む当該新毛細血管膜を破壊し,当該新毛細血管膜を除去しようとする技術である。当該技術では,当該光エネルギーを当該新毛細血管膜のみに照射するために,コンピュータにより,当該新毛細血管膜の正確な位置を測定検出する必要がある。また,当該毛細血管膜に蛍光剤が最高濃度で到達する瞬間を,,, コンピュータにより測定し その瞬間に コンピュータ制御により当該光エネルギーを照射する必要がある。これら測定は,コンピューターソフトウエアによって,ある特定の輝度値を超える画像の輝度変化を検出することにより行われる。 つまり,当該技術では,当該輝度変化をコンピューターソフトウエアにより,詳細に分析する為に,1秒間に15フレーム以上のデータを取得し電子信号によってデータをコンピュータに送っている。従って,当該技術では,当該フレーム・レートは,血液の流れの動態を視覚化する目的で設定されたものではない。 なお,本件特許発明1当時の技術常識では,眼底カメラは,毎秒1画像程度の静止画を取得するものであった(甲49 。甲5記載 )の眼底カメラは,上記の全く新しい目的の為,改造された眼底カメラであり,コンピュータに多数のデータを処理させる為に高速度のフレーム・レート(毎秒15フレームレート以上)を用いる特殊なものである(甲49 。)(c)甲6に記載された技術は,眼底の脈絡管構造における脈絡膜毛細血管(特に,迷入脈管構造の脈絡膜血管新生〔CNV )の異常〕がある位置を特定し,それを除去して治療することを目的としている。当該技術は,眼底の脈絡管構造における血管の中を流れる血液の動き(動態)を視覚化することを目的とするものではない。 甲6では,毎秒15〜30のフレーム・レートで撮影されているが,当該フレーム・レートは,血液の流れの動き(動態)を視覚化する目的で設定されたものではない。同号証に記載された技術は,脈絡膜毛細血管層(特にCNVのような迷入血管構造)の位置を視覚化するために,毎秒15〜30のフレーム・レートでコンピュータにより取得されたデータを,その後に取得されたデータから,コンピュータ処理により,ピクセル単位で減算処理し,それにより,脈絡膜毛細血管から放出される蛍光のみを取り出し,その結果画像を形成しようとするものである 当該高速度のフレーム・レート 毎 。 () ,(), 秒15〜30フレーム は コンピュータ処理 減算処理 により前後するデータ間のデータの違い部分のみを取り出し,当該相違する部分のみのデータを処理して画像を形成する為に設定されたものである。当該画像は,例えば,甲6の図3cに示される静止画像である。従って,当該フレーム・レートは,血液の流れが動いている状態そのものを動画像で視覚化する目的で設定されたものではない。実際,甲6の眼底カメラは,動画像を提供しない。モニター上には,静止画像のみが表示される。 以上から,仮に当業者が甲6に記載されたフレーム・レートに接しても 「血液の流れの動き(動態)を視覚化」する技術が記載さ ,れたものとは通常理解しない。同号証の記載からは,当該フレーム・レートの技術的意味をそのようには理解することができないからである。 c「…甲第1号証における実施例で用いられたCCDカメラC2400-75iは…画像処理装置ARGUS20とともに用いられることにより,少なくとも毎秒15枚の画像取得速度においてもCABGにおける血流の中を運ばれるICGの移動を視覚化できるものであること(33頁27行〜36行)との認定について 。」審決は,甲第1号証発明のカメラ装置(C2400-75i及びARGUS20からなる装置)であっても,様々な変更等を加えれば,本件特許発明1と同様の視覚化が可能である旨述べているものと理解できる。 しかし,既に述べたとおり,本件特許発明1を知ることなく,審決が指摘するような様々な変更等を行うことは非常に困難である。従って,当業者は,甲第1号証発明のカメラ装置で本件特許発明1と同様の視覚化をすることは通常できない。 また,そもそも,審決が指摘する変更を加えても,その程度の変更では,本件特許発明1と同様の視覚化は不可能である。 この点,審決は,被告の実験結果(下記甲26及び甲27)を根拠に,本件特許発明1と同様の視覚化が可能であると判断している。 しかし,当該被告の実験は不適切な実験であり,以下に述べるとおり,何ら本件特許発明1と同様の視覚化ができることを示すものではなく,審決の判断は誤っている。 甲26(浜松ホトニクス株式会社 システム事業部 第2設計部 第16部門作成「+による低照度画像観察」実施C2400-75iARGUS20年月日2008年1月17日)の実験では,通常の光源(しかも蛍光ではない)からの照明自体を撮影して得た輝度を30倍に増幅し,増幅した光が見えることを確認している。また,甲27(浜松ホトニクC2400-75i ス株式会社 システム事業部 第2設計部 第16部門作成「+による低照度時における空間分解能報告書」実施年月日ARGUS202008年1月31日)の実験では,通常の光源(しかも蛍光ではない)で解像度のテスト図面を撮影して得た輝度を30倍に増幅して,当該テスト図面が見えることを確認している。 上記方法は,いずれも観察対象の増幅したい輝度値のみを選択的に増幅できる撮影環境で行われたものであり,実際の観察環境ではこのような増幅は不可能である。 つまり,実際に冠状動脈バイパスグラフトのICG蛍光を観察対象として,同一の実験をしたとすれば,ICG蛍光からの輝度値のみを選択して増幅することは通常不可能であるからである。即ち,上記被告実験の撮影環境とは異なり,ICG蛍光以外の血液,血管,その他の心臓組織から起因する輝度値も同時に増幅されてしまうからであ。 , る このように観察対象の背景の輝度値も同時に増幅されてしまうといくら増幅しても識別可能な画像を取得することは困難である。しかも,増幅に伴いノイズが増大し解像度も極端に落ちてしまう。また,上記被告の実験では,解像度テスト用図といった固定された静止した被写体であったが,実際の被写体は高速に流れる血液である。このようなすばやい動きの被写体を視覚化するにはより高度の解像度が必要となる。 以上から,甲26及び甲27の実験は,不適切な実験であり,本件特許発明1と同様の視覚化が可能であることを示すものではない。 実際,甲第1号証発明のカメラ装置で本件特許発明1と同様の視覚化を行う為には,甲第1号証発明が想定しない様々な変更・追加及び撮影条件の変更等を加える必要がある。このような変更・追加等は,本件特許発明1を知ることなく,行うことは非常に困難である。 d 「既に蛍光を放出することが分かっているトレーサーからの蛍光を観察する装置を使用する際に,放出されているはずの蛍光が見えるよ。」 うになるまで装置を調整するのは当業者が通常行うことであること(34頁18行〜20行)との認定について既に述べたとおり,本件特許発明1を知ることなく上記調整を行うことは非常に困難である。従って,審決の上記認定は誤りである。 e以上から,審決の相違点3に対する判断には重大な瑕疵があり,その結論に影響を及ぼすものである。 (エ)取消事由2-4(作用効果の顕著性の看過)審決は 「…本件特許発明1の作用効果も,甲第1号証発明及び上記 ,周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである(34頁2。」1行〜22行)と判断したが,誤りである。 a構成の困難性本件特許発明1の構成は,特許請求の範囲記載の用途により限定される。そして,本件特許発明1及び本件装置は 「外科手術の間に, ,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれるICGの移動」 。, を視覚化 する為に用いるのに特に適した構造を有する 上記用途は, , 新規かつ異質な用途であるから 当該用途をあらかじめ知ることなく公知技術のみを出発点として,本件特許発明1の構成に至ることは極めて困難である。 b目的・課題の新規性本件特許発明1は 「外科手術中に,冠状動脈バイパスグラフト内 ,に存在する血液の流れの動態を視覚化 することを目的課題とする 本 」(件目的課題 。そして,本件目的課題は「ICGの移動を視覚化」す )ることにより解決される(狭義の目的課題 。当該視覚化された「血 )液の流れの動態」の情報により,執刀医は,バイパスグラフトの不具合の有無及び原因を評価することができる(広義の目的課題 。)このように 「心拍動下手術中に冠動脈バイパス内の血流中のIC ,Gの移動を視覚化」することも 「心拍動下手術中に冠動脈バイパス ,内の血液の流れの動態」を観察することも,それにより「心拍動下手術中の冠動脈バイパスグラフトの評価」を行うことも,いずれも,これまでなかった発想である(甲33,Bの平成20年1月23日作成「」)。,「」, の 意見書公知技術の中には血流の評価 に類似する技術や蛍光造影装置に関する技術が開示されている。しかし,いずれも,上記とは目的課題が異なり,その作用効果も異質で,開示されている構成も本件特許発明とは異なるものである。 1c当業者の予想を超える格別に顕著な作用効果本件特許発明1は,心臓血管外科の技術分野に属する発明であり,当業者(心臓血管外科研究医)が予想し得るであろう範囲を超えた格別に顕著な作用効果(以下「本件作用効果」という)を奏するものである。本件特許発明1は,過去約40年間存在しなかったバイパスグラフト手術の成功に役立つ画期的な装置である。本件特許発明1により,手術の成功率が高まり,これまで救われなかった多数の生命が救われている。本件特許発明1は,バイパスグラフト手術の成功率を高めることが長年切望されてきた心臓血管外科の技術分野において極め。(), て顕著な作用効果を有する 当業者 心臓血管外科研究医 にとって本件作用効果が顕著であることは,端的に上記目的課題がこれまで存在しなかったことからも理解できる。新たな目的課題から生じる作用効果には非予測性があるからである。 本件作用効果の予測困難性を検討するに際しては,本件特許発明1が心臓血管外科という特殊な医学分野に属することを考慮する必要がある。つまり,本件のように医学(特に生命に関わる臓器)の分野の装置では,その装置の構成のみからその有する作用効果を予測することができないからである。審決が本件特許発明の容易想到性の判断の基礎とした公知文献の中には「眼の血管」に関する蛍光造影装置(眼底カメラ (甲5及び甲6)がある。しかし,当業者(心臓血管外科 )研究医)が当該蛍光造影装置に仮に遭遇しても,当該蛍光造影装置から,本件特許発明1の顕著な作用効果を予測することは非常に困難である。即ち 「眼の血管」という異なった臓器で生じている現象が, ,「心臓の冠状動脈」でどのような現象として生じるのか,医学の専門家には予測することはできないからである。生命を直接危険にさらす心臓で,麻酔薬,血液凝固防止剤などの薬物を用い,人工心肺装置を用いない心拍動下冠状動脈バイパス手術(手術中も心臓は動き冠状動脈に血液が流れている)中に,冠状動脈といった特殊な臓器の中を高速に流れる血液(約25cm 秒)を対象にしており,当該特殊な環/境下で,どのような現象が起きるかは,綿密な研究による実証を重ねることなく到底予測できるものではない。以上のとおり,医療機器に関する発明の場合には,それに類似する公知技術の装置の構成から,発明の作用効果を予測することは非常に困難である。 d作用効果の顕著性を裏付ける事実本件特許発明1を実施したSPYシステムは,医学論文(甲34,甲41,甲36 ,医学書(甲35,甲38 ,医学雑誌(甲42,甲 ) )39,甲43 ,新聞(甲44,甲45,甲46,甲37,甲47 , ) )テレビ放送(甲48)にて世界各国の医師や研究者から絶大な賞賛を受けている。上記賞賛は,いずれも,SPYシステムが有する本件特許発明1の特徴的部分が高く評価されたことに基づくものである(甲33 。上記各甲号証において,SPYシステムが絶賛されていると )いうことは,即ち,本件特許発明1の特徴的部分が絶賛されていることに他ならず,本件特許発明1の作用効果の顕著性を裏付けるものである。 , 。, 以上の作用効果は 甲第1号証発明にはない作用効果である また当該発明からは予測できない作用効果である。 ウ取消事由3(手続違反)審決は,複数の参考周知例に基づき本件特許発明1の当業者の技術水準を評価している(34頁末行〜36頁30行 。これら参考周知例は,全 )て職権で探知・証拠調べが行われ,審決書において初めて通知されたものであるが,原告には全く意見を申し立てる機会を与えられていない。従って,審決の手続きには重大な瑕疵あり(特許法150条5項 ,審決は取 )消されるべきである。 エ取消事由4(本件特許発明2〜11の容易想到性の判断の誤り)本件特許発明2〜10は本件特許発明1に従属し,また本件特許発明11は本件特許発明1を前提とするものである。従って,本件特許発明1に関する取消事由1,2で述べたのと同様の理由で,本件特許発明2〜11も当業者が容易に発明をすることができたものではない。従って,これら発明を容易想到であるとした審決の判断は取り消されるべきである。 オ取消事由5(本件特許発明11に関する相違点13についての判断における周知技術の認定の誤り)(ア)審決が認定した本件特許発明11と甲第1号証発明との相違点13は,上記1( )シのとおりであるところ,相違点13に関する審決の周3知技術の認定は誤りであって審決の結論に影響するものである。 (イ)すなわち審決は,相違点13につき 「…相違点1について示した ,理由と同様の理由により,甲第1号証発明における赤外線蛍光トレーサーとしてICG-HDL複合体に代えて,蛍光イメージング装置における周知のICGを含む複合体であって,食塩水を担体としてボーラスとして一気に流せる複合体を用いることは,当業者が適宜選択する事項に。」(),, 過ぎない53頁10行〜15行 と判断したところ 審決の判断は以下の周知技術の認定に基づいている。 ?@ICGを注入する際に ボーラスとして注入することは周知 甲 「, (第5号証技術,甲第6号証技術,甲第15号証技術及び参考周知例「 」 5第268頁左欄第6-7行 ICGはボーラスとして注入された参照(53頁5行〜7行 。 )」)?A「食塩水によってボーラスとして一気に注入できるものであることも周知(甲第15号証技術及び甲第28号証技術(53頁8行)」〜9行 。)しかし,上記?@,?Aの審決の認定は誤りである。審決が上記認定の根拠とする各技術は,いずれも既に述べたとおり 「冠状動脈バイパスグ ,ラフトにおける血液の流れの中を運ばれる蛍光剤としてのICGの移動を視覚化」する技術とは関係がなく,その目的・課題も本件特許発明1とは異なるものである。従って,当業者は当該技術を参考にすることはない。 なお,審決は 「ICGを含む複合体」と述べているが誤りである。 ,請求項11に記載されているのは 「ICGを含む組成物」であり,当 ,該組成物と複合体とは全く化学的・物理的に異なる物質である。 2請求原因に対する認否請求原因( )ないし( )の各事実は認めるが,同( )は争う。 13 43被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 ( )取消事由1に対し1ア原告は,審決が本件特許発明1の「血流」も生体内液体媒体の流れであることから,甲第1号証発明における「生体内液体媒体の流れ」と共通するとしたことについて,甲第1号証発明の観察対象は静的なもので本件特,「」 許発明1における血流の高速な流れとは異なり生体内液体媒体の流れを一致点としたことが誤りであると主張する。 (ア)しかし 甲1には トレーサーによって観察対象とするものが体 ,, ,「液」の流動で移動するトレーサーに基づく蛍光であることが記載されており(段落【0021,その体液については「生体内液体媒体(例え 】)ば,血液,脊髄液等(段落【0018 )であることが明記されてお )」】り,ラットを用いた動物実験においても,生体内液体媒体である脊髄液の流れをトレーサーで観察している(段落【0037 ・ 0038。】【】)したがって,甲第1号証発明が体液の流れをトレーサーによる観察対象としていることは明らかである。 ここで,血液が生体内液体媒体(体液)であることは上記のとおりの甲第1号証記載及び技術常識のとおりで,本件特許発明1における「血流」が「生体内液体媒体の流れ」の下位概念であって,両者が共通することから,これを一致点として認定し,一方,本件特許発明1における「」 「 」 生体内液体媒体の流れ が 冠状動脈バイパスグラフトにおける血流であることは,相違点2として認定しているのであるから,審決の一致点の認定に誤りはない。 (イ)また,甲1には 「本発明に係る近赤外線トレーサーは,生体内で ,生体内液体媒体中で可溶性であり,かつ近赤外線領域で蛍光性を有する。, ,, ものである 従って 該トレーサーを生体内に導入し 該トレーサーが拡散または体液の流動等により生体内を移動し,その位置及び濃度変化を生体外から該トレーサーに基づく蛍光を観察することでリアルタイムにイメージングすることが可能となる( 0021 )と記載されて 。」【】いる。このように,近赤外線トレーサーの生体内液体媒体(体液)の流動による移動をリアルタイムにイメージング(視覚化)することが明記されている。ここで 「移動し,その位置をリアルタイミングにイメー ,ジング」ということが,静止体でなく,動的な流れを視覚化の対象としていることは,明らかである。なお,その流動する体液中の「トレーサー」とは,用語自体も追跡を意味している。 (ウ)そして,甲1の同じ記載箇所( 0021 )において 「近赤外線 【】,トレーサーは,生体内で生体内液体媒体中で可溶性」と記載しており,これについて 段落 0018 には上記色素が生体内液体媒体 例 ,【】,「 (えば血液,脊髄液等)には可溶性であるにもかかわらず…」と記載されている。このように段落【0021】のトレーサーに関する記載に対応した【0018】での説明において,近赤外線トレーサーが導入されてその移動が観察される対象として,本件特許発明1と同じ観察対象の血液が最初に例示されている。 (エ)また,血液以外の脊髄液や軸策流に近赤外線トレーサーを導入して観察する場合であっても,その流れの移動を視覚化していることは同様である。そのことは,甲1に「例えば,神経軸策流の画像診断として,上記ICG-HDL単体を神経筋接合部近傍に投与すれば,神経細胞に取り込まれ,軸策流に乗り,得られる蛍光を体外計測することで軸策流の測定が観察可能である( 0024「この結果は,ICG-H 。」【】),DLが脳から脊髄の中へと,体表より深い部分を移動していく様子が生きた実験動物で経時的に観察できることを明確に示している( 00。」【38 )と明記されている。 】, , (オ)原告は 甲第1号証発明の観察対象が静的なものという根拠として甲1に観察対象として,腫瘍組織や遅い流れの神経軸策流,脳脊髄液のみしか容易に実施できるように記載されていないとの主張をしている。 ,, , 確かに 甲1に記載された技術は 腫瘍組織の計測や観察にも適用できさらに,血液以外の生体内液体媒体にまでも適用できるものである。しかし,それとともに,血液を含む生体内液体媒体の中での近赤外線トレーサーの移動を視覚化するものでもあることは上記のとおりである。 甲1に記載された動物実験においては,ラットの頭部から脊髄末端までの脊髄中の脊髄液の流れを観察しているが,これは 「ICG単体を ,用いた血管造影では適応部位が限られたが,ICG-HDLを用いればそうした制限はない( 0041 )と記載されていることによる。 。」【】すなわち,従来から,ICGは血液中で蛍光を発して観察されるものであり,血管中の血液を観察対象の適応部位にできることは当然なことから,さらに技術的に困難である脊髄中の脊髄液を観察したことを述べているものである。このように,甲第1号証発明が,腫瘍組織や脊髄液等にも幅広く適用可能であるにしても,上記のとおり,血液を含む生体内液体媒体の流れを視覚化することに適用できるものである。 イ原告は,本件特許発明1は用途により限定された装置構成であって甲第1号証発明とは異なり,審決が「放射手段(励起光源「造影画像を取)」,得するカメラ」を一致点と認定したことが誤りであると主張する。 「()」 , (ア)原告が 放射手段 励起光源が一致点でないと主張する根拠は本件特許発明1の観察対象が「心拍動下の手術中に冠状動脈バイパスグラフト中を高速に流れる血液により運ばれるICGから生じる蛍光を励起させるために適切な励起光源」であるということにある。 しかし 「冠状動脈バイパスグラフト中の血流であること「蛍光染 , 」,料がICGであること」は,審決において,相違点1,2について検討判断されていることである。なお 「心拍動下」や「高速」は本件特許 ,発明1の発明特定事項でもない。 そして,甲1には,励起光源について 「本発明は,近赤外線蛍光ト ,レーサーを生体内に導入し,生体を励起照射し (段落【0014,」】)「該トレーサーからの蛍光を体外計測するための装置についても特に限定はないが,通常の励起光源と,必要ならば励起光源用フィルターにより最適な励起光を試料の生体の外部へ照射し,該励起光により生じる該色素からの蛍光を蛍光検出器で検出する ( 0025 )と明記され, 」【】動物実験においてもICG-HDLのICG近赤外蛍光色素を励起するためのハロゲンランプが記載されている。 したがって,甲第1号証発明が,蛍光色素を励起するための放射手段(励起光源)を備えていることは明らかであり,審決が,これを「近赤外線蛍光トレーサーを励起させる第1の放射手段」として一致点としたことに誤りはない。 (イ)また,原告が 「造影画像を取得するカメラ」を審決が一致点とし ,たことが誤りであるとする根拠は,本件特許発明1のカメラが毎秒15画像以上を取得するのに対し,甲第1号証発明のカメラがそうでないということである。 しかし,本件特許発明1のカメラが毎秒15画像以上を取得する点に, , 。 ついては 相違点3として審決は認定し 検討判断していることであるそして,甲第1号証発明のカメラが経時的な造影画像を取得するものであることは,甲1に 「ICGの近赤外蛍光を画像化して,ICG- ,HDLが体内に分布していく様子を体外計測した。…近赤外蛍光の検出にはTVレンズ(FUJINONCF8A1:1.8/8)を装着したCCDカメラ…を用いた( 0035「体表より深い部分を異動していく様子が生 。」【】),きた実験動物で経時的に観察できることを明確に示している( 00。」【38 )と記載され,動物実験において取得された画像の一部が掲載さ 】れていることからも明らかである。 したがって,審決が 「造影画像を取得するカメラ」を一致点とした ,ことに誤りはない。 なお,原告が,甲第1号証発明のカメラが毎秒30枚の画像を取得できないとか,画像処理装置ARGUS-20についての誤った主張については,相違点3の判断についての反論で述べる。 (ウ)さらに原告は,審決が「所定の画像化速度」について一致点としたことが誤りであると主張する。 その根拠として,本件特許発明1では,毎秒15画像以上の速度で画像を取得する動画であって血液の流れを直接視覚化するのに対して,甲第1号証発明では,静止画であって8時間に3枚の顕微鏡写真であると主張している。しかし,本件特許発明1のカメラが毎秒15枚以上の画像速度とする点は,相違点3の認定事項である。 そして,甲1に記載のカメラが経時的な造影画像を取得することは上記のとおりであり,経時的な画像取得が所定の画像化速度であることは明らかである。また,甲第1号証発明におけるカメラ及び画像処理装置は毎秒30枚で画像取得可能なものであり,また動物実験においても毎秒1枚の速度で画像を取得している。この甲第1号証発明の画像取得速度がどのような速度であるにしても 「所定の画像化速度」であること ,から,審決の一致点の認定に誤りはない。 また,甲第1号証発明が静止画でないことは上記のとおりであり,8時間に3枚の顕微鏡写真を撮影したものでもないことも上記のとおりである。 (エ)さらに原告は,審決が「移動を視覚化」及び「流れが作る波面が視覚化」を一致点としたことが誤りであると主張する。 原告の主張は,甲第1号証発明では,静止画(写真)であって,動いている波面の視覚化ではないというものである。しかし,甲1には,上記のとおり,近赤外線トレーサーの生体内液体媒体(体液)の流動による移動をリアルタイムにイメージング(視覚化)することが明記されており( 0021,動物実験においてもラットの脊髄における脊髄液 【】)の流れとともに移動する近赤外線トレーサーであるICG-HDLの移動を観察した結果が記載されている( 0037 ・ 0038。 【】【】)なお,本件特許発明1における「波面」とは本件明細書(甲30)に説明がなく,必ずしも明確でないが,原告による審査や審判における主張から,蛍光染料であるICGを含んだ領域と含まない領域の境界であるとすれば,甲第1号証発明においても,生体内液体媒体中の近赤外線トレーサーの移動を視覚化していることから,当然に,蛍光染料を含む,「」 領域と含まない領域の境界が視覚化されており 審決が 移動を視覚化及び「流れが作る波面が視覚化」を一致点としたことに誤りはない。 ( )取消事由2に対し2ア取消事由2-1につき(ア)そもそもICGは単独(例えば水溶液中)では蛍光を発せず,血液やある種の有機溶媒(例えばDMSO〔ジメチルスルホキシド )中に〕おいて蛍光性を示し,蛍光トレーサーとして使用される。血液中で蛍光性となるのは,ICGが血液中のリポ蛋白と結合するためである(甲1の段落【0019 ,甲6の7頁14行〜15行,乙1〔審判甲21〕 】の739頁2段落3行〜4行 。)甲第1号証発明において,トレーサーをICGとリポ蛋白(HDL)との複合体としているのは,ICGを水溶性溶媒中でも使用できて利便性が高まるように,予め,リポ蛋白と結合させているものである。 このように リポ蛋白との複合体としても その蛍光性がICGに依っ , ,ていることは,例えば甲1の図1に,ICG-HDLの蛍光スペクトルが,DMSO溶液中のICGが発する蛍光のスペクトルと同波長でのピークを有する同じ形の強度曲線であることが示され 「この結果から, ,ICG-HDL複合体はDMSO溶液と同様の蛍光スペクトルを示すことが明らかである( 0033 )と記載されるとおりである。 。」【】したがって,本件特許発明1においても,蛍光観察の対象は,血液中でのICGとリポ蛋白の複合体であることは明らかであって,甲第1号証発明と変わることがない。 (イ)また,上記のとおり,甲第1号証発明におけるトレーサーとしてのICG-HDL複合体において,蛍光性はICGに依存していることから,甲第1号証発明においては,トレーサーにおける蛍光色素はICGであるとされている。 例えば,甲1には 「前記近赤外線蛍光色素がインドシアニングリー ,ン系色素であり ( 請求項3「 実施例)以下のように,近赤外領 」【】),(域蛍光色素インドシアニングリーン(ICG)とヒト高密度リポプロテイン(HDL)との複合体(ICG-HDL)を調整したものを使用した( 0027 )と記載されているとおりである。 。」【】一方,本件特許発明1における発明特定事項は 「前記蛍光染料は, ,ICGであり」とされているだけで,複合化していないとも単体であるとの特定もされておらず 「蛍光染料」と「蛍光色素」は次のとおり同 ,義であるから,この点においても,実質的な相違はない。 例えば,乙2(玉虫文一ら編集「理化学辞典」1979年〔昭和54年〕8月30日第3版第10刷発行,748頁。審判甲22 )に 「染 〕,料」について「有機色素のうちで適当な染色法により繊維に染着するものをいう。…シアニン色素にも染料として用いられるものがある 」と。 記載され 「蛍光染料」についても「可視光線を選択的に吸収する色素 ,のうち…蛍光染料(レーザー色素)…」と記載されている。また,甲6においても 「ICG蛍光は移動する血液量中の血液蛋白に結合された ,色素分子から生じる (7頁14行〜15行)と記載されるように,本 」,() 件特許発明1でいう蛍光染料ICGは 血液中では血液蛋白 リポ蛋白と結合する蛍光色素であり,これは,甲第1号証発明の「蛍光色素ICG」と同じである。 (ウ)また,本件特許発明1におけるICGについて,本件明細書(甲30)には,ICG等の蛍光剤と「担体」が「組成物」を形成するとされており( 0041,その担体の一例として「リポソーム」が記載さ 【】)れている( 0043。【】)ここで,組成物とは 「二種以上の成分が全体として均質に存在し, ,一物質として把握されるもの (乙3〔審判甲23 )であることから, 」〕甲第1号証発明における複合体と相違するものでもない。 また,本件明細書にICG等と組成物を形成する担体として例示されるリポソームについては,乙4(今堀和友ら監修「生化学辞典」199〔〕 ,,) 1年 平成3年 2月5日第2版第2刷発行 1419頁 審判甲24に 「リポタンパク質…“人工リポタンパク質”を含める場合もある。 ,タンパク質を含ませたリポソームや…がこれに当たる 」と記載される 。 ように,甲第1号証発明においてICGと複合体とされるリポ蛋白と同種のものである。 さらに,ICGが担体のリポソームと組成物を形成した場合,甲第1号証発明におけるICG-HDL複合体と同じく予めICGが蛍光標識された複合体となるものである。これについては,甲25(特表平10-513175号公報)に 「これらの光学標識物質は,…粒子状担体 ,(例えば無機又は有機もしくはリポソ-ム)に結合するか,もしくは該粒子状担体内に封入しても良い。この場合,次式?Tの複合体が,とりわけ好ましい(28頁下2行〜29頁2行)と記載され,実際にICG 。」が標識されたリポソームが実施例8として 「光学標識リポソーム イン ,ドシアニン・グリーンの0.01M溶液と5〜10%のリン脂質…リポソーム懸濁液を調整する(36頁24〜27行)と記載されていると 。」おりである。 なお,原告は,審判において,担体とは希釈するものでICGに化学変化を起こさせるものでないとの主張をしているが,担体が化学変化を起こさせるか否かにかかわらず,上記のとおりの複合体を形成する場合も,本件明細書の記載に含まれている。 この点からしても,本件特許発明1における蛍光染料ICGは,甲第1号証発明における蛍光トレーサーの蛍光色素ICGと実質的に相違するものではない。 (エ)また,本件特許発明1における蛍光染料がICG単体であるとしても,ICGを単独で蛍光染料として用いることは,審決認定のとおり,適宜なし得る事項にすぎない。 先ず,甲1に,審決も引用するように 「ICG単体を用いた血管造 ,影では適応部位が限られたが,ICG-HDLを用いればそうした制限はない( 0041 )と記載されており,甲1自体に,血管の造影 。」【】については,ICG単体を使用できることが記載されている。 したがって,これだけをもっても,審決のとおり(32頁下3行〜末行 ,甲1の蛍光イメージング装置に周知のICG単体を用いることは )当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が適宜なし得る設計事項にすぎない。 さらには,審決のとおり,赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いた蛍光イメージング装置により血管造影を行う技術は周知でもあり,甲第1号証発明の蛍光イメージング装置に周知のICGを用いることは適宜なし得ることである。 (オ)これに対して原告は,当業者を心臓血管外科研究医とした上で,当業者にとって,ICG蛍光を用いた血管造影は周知ではないとして,審決の35頁1行〜36頁30行に挙げられた周知例について参考にならない旨の主張をする。 ICGの蛍光を用いた血管造影は周知である(乙1〔審判甲21 ,〕甲5,甲6,甲25,乙5〔審決の参考周知例1 ,甲62〔審決の参 〕〕,〔〕,〔〕)。 考周知例3乙7 審決の参考周知例4乙8 審決の参考周知例5しかも,上記周知例のうちで,甲62,乙7に記載されるように,ICGの蛍光を用いた血管造影を心臓の血管に適用することも周知であった。また,乙5も,心臓の血管の造影に用いることを少なくとも示唆している。 また必ずしも,蛍光を利用したものでないにしても,ICGを心疾患の患者の血管観察に用いることも周知であった(甲15,甲28,甲29,乙5,乙6〔審決の参考周知例2 ,乙8 。〕)しかも,上記周知例のうちで,甲28,甲29,乙6に記載されるように,ICGを用いる血管観察において冠状動脈バイパスグラフト(CABG)を評価対象とすることも周知であった。 ところで,発明の新規性,進歩性の判断に際しては,本件の特許出願() ,, 日 優先日 が判断の基準であることはいうまでもないが その際には引用刊行物の発明の認定も刊行物の発行時ではなく本件特許の出願日(優先日)の技術水準を基準にされるものである。多くの判決(平成14年(行ケ)199号,昭和60年(行ケ)167号,昭和59年(行ケ 303号等 がそのように判示しており 審査においてもそれに沿っ )) ,て基準を統一するために,平成15年12月に審査基準を変更し明確化している。したがって,本件特許においても,優先日における技術水準を基準として,上記各周知技術が判断されることとなる。 そして,本件特許の優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)においては,CABGを含む心臓の血管の観察にICGを用いることは周知であり,また,ICGの特性である蛍光を利用しての心臓を含む血管造影も周知であった。その場合,CABGが含まれる心臓の血管観察に,ICGを用いてきた心臓外科の関係者だけが,本件特許の優先日において,そのICGの周知の蛍光特性を知ることなく,周知の血管イメージングを想到することができないとする理由はない。 したがって,原告が,ICGの蛍光特性も血管イメージングも知らなかったという心臓外科医師の意見等を基に (仮に心臓外科関係者が本 ,件特許の当業者に関係するとしても)CABGに関心のある当業者にとって,ICG蛍光を用いた血管造影は周知ではないとする主張は失当である。 (カ)原告が,審決が挙げる周知例が参考にならないという理由は,本件特許発明1は,心臓外科における血管造影に関するもので,その当業者にとって,他の臓器に関することは参考にされないということである。 しかし,ICGの蛍光を利用した血管造影が心臓を含む種々の臓器に適用可能なことは,後述する周知例にも開示されるとおりである。 また,何より,本件明細書(甲30)には 「この発明のさらなる局 ,面は,たとえば心臓組織,腫瘍などの体組織の選択された部分がよく灌流される程度を医者が正確に決定できるようにすることによって,不適切(または適切)に灌流された組織の識別および診断を助ける(段落。」【0014「この発明の方法に従ってその開存性が評価され得る血 】),管を例示するものは,冠状動脈,末梢脈管構造,頚動脈,頭蓋内血管およびAV瘻孔(被告注:動脈,静脈への生成孔)を含む(段落【00。」21「この発明の方法を用いることによって利益を受け得る血管部 】),分の例は (損傷,動脈瘤および/もしくは奇形のための)修復または ,(冠状動脈もしくは末梢脈管構造の)バイパス,動脈内膜切除,頭蓋内外科手術,AV瘻孔の生成,ならびに内視鏡もしくは関連装置を用いて,。」 行なわれる外科手術手順を受けた血管を含むが これに制限されない(段落【0024「この発明のこの局面は,筋肉,胃,肝臓,腸, 】),膀胱,食道,肺,腎臓および脳組織を含むがそれに制限されないその他。」(【】) の体組織における血流を評定することをさらに予期する0030と記載され,本件特許発明1の技術は,心臓の血管以外にも同様に適用可能とされている。 このように,ICGの蛍光を用いた血管造影技術は,心臓,冠状動脈に限らず,他の臓器にも適用可能であり,他の臓器に適用された技術が心臓への適用の参考にもなることは明らかである。 , ,。 (キ)次に 各周知例に記載の技術事項を説明し 原告の主張に反論するa乙1(審判甲21)にはICGの蛍光を用いた血管造影がなされていたこと,ICGとカメラを用いた造影技術には,ICGの蛍光特性を用いる方法と吸収特性を用いる方法があるが,生体観察においては蛍光を用いる方がよいことが記載されている。 そして,乙1に記載の技術は,ICGの蛍光を用いた生体観察に関することで,甲第1号証発明及び本件特許発明1と共通しており,本件特許発明1と甲第1号証発明との相違点1に関する周知例として適したものである。 しかも,CABGの観察に適用されてきた周知のICG吸収特性を用いた方法よりも,乙1には,蛍光特性を用いる方が優れていることも記載されており,本件特許発明1においてICG蛍光特性を採用することの更なる動機付けまでされている。 b甲5,甲6甲5,甲6は眼底における血管を対象にしたものであるが,血管内の血流を蛍光染料ICGによって,撮像し画像化する技術が開示されている。 原告は,これらは,冠状動脈とは異なる眼底を眼底カメラによって撮影するもので,技術分野が異なり参考にならないと主張する。 しかし,甲5及び甲6のものは,蛍光色素を用いて生体の血液を含む生体内液体媒体を観察することにおいて,本件特許発明1及び甲第1号証発明と共通しており,眼底の血管に関するものであっても,蛍光色素ICGを用いて血液の流れを視覚化することの周知例として考慮することが何ら阻害されるものではない。 c甲25甲25には,審決が摘記するとおりの事項が記載されている。とりわけ,ICG等の蛍光造影薬による光撮像について 「本発明造影薬 ,は,生体内での光撮像,とりわけ外部排泄路を持つ器官又は導管(例えば胃腸路,子宮,膀胱など ,血管,食菌器官…に使用できる。… )造影剤の蓄積又は通過を示す時間的画像であってもよい(32頁下。」2行〜33頁7行)と記載されており,ICG等の蛍光を利用しての血管を含む各種の器官や導管における視覚化,特に蛍光色素の通過画像による視覚化が周知のものとして開示されている。 そして,ICG等の蛍光造影薬について,具体的に,実施例8として実施例8光学標識リポソームインドシアニン・グリーンの0. ,「01M溶液と5〜10%のリン脂質…リポソーム懸濁液を調整する(3。」6頁23行〜27行 」と記載され,担体としてのリポソームにIC )Gを封入した,ICG光学標識のリポソームが,実例として開示されている。このように,甲25によっても,ICG蛍光を用いた血管の画像造影が周知であり,しかも,幅広い臓器に適用可能であることが把握できる。 d乙5(審決の参考周知例1)乙5には,古くから,ICG(IG)は,心臓の血流の測定に使用されたものであることが記載されている。 それは,原告主張のように色素希釈法であったにしても,本件特許の優先日においては,ICGの蛍光特性を利用した観察も周知であることから,心臓の血管造影にICGの蛍光を用いることの参考にならないはずがない。 また,同じ乙5には,ICG(IG)を血流に注入し,ICGの蛍光を用いて血管を造影すること,及びその装置が記載されている。 そして,ICGの量について,心臓学の場合の標準量が記載されている。この記載が,ICGの蛍光を用る場合のことかどうかは明らかでないが,少なくとも本件特許の優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)の技術水準からすると,心臓の血管についてもICGの蛍光を利用した血管造影が示唆されているといえる。 e乙6(審決の参考周知例2)乙6には,ICGは心臓の血流の測定に使用するものであることが記載されている。それは,色素希釈法であったにしても,本件特許の優先日においては,ICGの蛍光特性を利用した観察も周知であることから,心臓の血管造影にICGの蛍光を用いることの参考にならないはずがない。 f甲62(審決の参考周知例3)審決が参考周知例3とする甲62(翻訳文として日本語の公表公報〔甲63 )には,審決が摘記するとおりの記載がある。 〕特に,レーザー等による心臓の心筋脈管再生手術であるPMRにおいて 「…立ち会いの心臓専門医が手順中にそのような失敗を検出・ ,修正するのは困難か,もしくは不可能である(甲62の2頁7,8 。」行,甲63の7頁16,17行)ことから,その術中に血流にICGを注入して,ICGの蛍光によって血管造影を行い,血流中のICGを観察することが記載されている。 すなわち 「フルオレセインやインドシアニングリーン(ICG) ,などのような周知の蛍光を発する対照薬品を血流に注いで心血管撮影法による局所的血液潅流の写真検出を容易にしてもよい(甲63の。」),「,, 10頁19行〜21行例えば検出装置は …患者の血流に注がれその結果微小脈管構造94まで運ばれるICGの近赤外蛍光を検出してもよい(甲63の19頁23行〜25行)と記載されている。 。」g乙7(審決の参考周知例4)審決が参考周知例4とする乙7には,審決が摘記する(36頁20行〜27行)ように 「心臓,肝臓,腎臓などの実質性の臓器の微小 ,循環を実時間で直接観察して,種々の病体と関連づけて検討することが必要となってきている(63頁左欄2行〜5行)と記載され,そ 。」れ以下に記載されたICG蛍光観察が,心臓を含む種々の臓器での流れの観察に適用可能であることを記載している。 そして,同じく審決が摘記するように 「ICGを血漿速度の測定 ,に応用することも考えられる。図13に示すように,経静脈的に投与したICGの流れの時間的経過を追ってみると,ICGははじめ画面, 。」 下方の細動脈に現れた後 しばらくして画面上方の細静脈に現れる(69頁右下欄3行〜末行)と記載されるように,ICGの血液中での流れを動的に観察することが開示されている。 しかも,この記載以前には 「図10〜図13はVTRに録画した ,モニター画面の静止画像を撮影したものであるが,各血管床の微小血管は暗い背景のもとに明らかに可視化された(68頁左下欄末行〜 。」右下欄3行)と記載されている。 すなわち,ICGの蛍光による血管の観察において,静止画での観察で済む場合は静止画として捉え,動的な必要がある場合は動的に観察することは,技術常識であることも示している。 h乙8(審決の参考周知例5)審決が参考周知例5とする乙8には 次のとおりの記載がある本 ,。「法ではインドシアニン・グリーン(ICG)を皮膚血流の蛍光マーカーとして使用した。ICGが本目的に適していると思われる理由は,血液中のタンパク質と強く結合すること,比較的皮膚を通りやすい近赤外波長に吸収ピークと発光ピーク(それぞれ800nm及び840nm)があること,また,心拍出量,肝機能,眼底血管造影などの診断に広く用いられているが副作用がほとんどないことである。色素を注射した後,レーザーで励起された皮弁の蛍光画像を経時的に取得すると,蛍光色素の取り込み,定常状態における分布,皮弁における色素標識された血液のクリアランスが示される。以上のように,本法では皮弁への循環が直接可視化されるので,皮弁の生存能の予測,皮弁の生着や治療のモニタリング,および皮弁遷延の評価において臨床的に有用である(266頁右欄8行〜26行) 。」また,そのための蛍光を励起させカメラで画像を取得してモニターする装置が図1に記載されている。 さらに,乙8には,蛍光画像の取得速度についても 「6フレーム ,/分の画像撮影速度は色素の取り込み,定常状態における分布,及び漸進的な減衰を記録するのに十分であるが,規格品のハードウエアではさらに速いフレーム速度での撮影も容易に実現できる(268頁。」左欄20行〜24行)と記載されている。 すなわち,乙8には,ICGの蛍光を用いて血管中の血流の流れを経時的に画像化し,流れを直接視覚化することが記載されている。 また,上記記載の前に 「皮弁の生存能を評価する上でより客観的 ,な方法(皮膚温測定,血流速度,フルオレセイン色素灌流,経皮的酸素モニタリング,超音波ドップラー法など)は,様々な理由から幅広い支持を得ていないようである(266頁左下欄8行〜右欄3行) 。」と記載されている。 すなわち,乙8においては,原告が従来技術にすぎないという温度測定,血流速度測定,フルオレセイン蛍光法,ドプラー法などが同じく従来法として存在したが,ICG蛍光による血流の可視化が優れていることが記載されており,同様に血流の視覚化が必要であった冠状動脈にも,適用することは当然であることを示唆してもいる。 i甲15甲15には,審決が摘記する(23頁3行〜20行)とおり,ICGを用いた色素希釈法によって,心臓の血流量を測定することが記載されている。原告は,甲15のものは,本件明細書(甲30)の段落【0039 ,参考周知例1,2に記載のものと同様に,色素希釈法 】に関するもので,ICG蛍光性とは関係がないとの主張をする。 しかし,これらは,心臓の血流を観察するためにICGを用いることで,本件特許発明1と共通しており,また本件特許の優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)にはICG蛍光を用いた血管造影は周知であったことから,本件特許発明1の進歩性判断のための周知例から排除される理由はない。 また,色素希釈法においては,ICGの特定波長の吸光性を利用し,, , ているが 乙1には ICGの特性としての吸光性と蛍光性を併記し蛍光性が生体観察に優れていることも開示されている。 j甲28,甲29ICGは,特定波長の吸光性を有しており,肉眼観察では緑色を呈している。これを利用して,手術中に冠状動脈バイパスの開存性を確認することが古くから行われてきたものであり,このことが甲28,甲29に開示されている。 甲28は標題が「手術中における冠循環の視覚化のためのカーディオグリーンの使用」とされ 「長年にわたって,インドシアニングリ ,ーン(カーディオグリーン)は,血流を測定する指示染料として用いられてきた。冠状動脈バイパスグラフティングの後,及び特に冠状動脈内膜切除後の,心筋の(血流の)流れの分布の,手術中における直接視覚化の質的手法としてそれ(インドシアニングリーン)が用いられることを既に我々は提唱した(133頁の左下欄1行〜右欄1 。」行「冠状動脈グラフトへのカーディオグリーン希釈溶液の注入は, ),バイパスグラフト及び動脈内膜切除からの流出(run off)の,容易かつ迅速な,手術中における視覚化を可能にする。心筋血行再建手術の適正評価の後,外科医は直ちに吻合で生じた技術的な問題を修正することができ,…我々は1979年から,動脈内膜切除を行ったものも行わなかったものも含め,1500ケース以上の冠状動脈バイパス手術で,この技術を用いてきた(136頁右下欄5行〜16行)と 。」記載されている。 また,甲29には,冠状動脈バイパスグラフトへICGが注入された画像が掲載されている(図3 。)このように,冠状動脈バイパスに関する外科手術中に,吻合したバイパスグラフトの開存性を確認する等のために,ICG希釈液をバイパスグラフトに注入してICGの流れを血流として,視覚化することが,1979年という古くから行われており,胸郭を閉じて手術を完了する前に,バイパスの流れを確認することは従来周知の課題に過ぎず,手段として色素としてのICGを用いることも周知にすぎない。 (ク)原告は,甲1でいうICG単体による血管造影が眼底に限られるとの主張をする。 しかし,甲1に具体的な適用の各種臓器の記載がないにしても,上記のとおり,本件特許の優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)においては,心臓を含む各種臓器へのICG蛍光による血管造影は周知のことであって,上記のとおり,引用文献の解釈も当該優先日を基準になされるものである。 原告は,甲1におけるイメージング装置は,ICG-HDLと一体不可分のものであること,ICGが血液中においてはどのような血中成分と化学反応を生じるか不明であるにも拘わらず審決はHDLとのみ結合することを前提としているとの主張をする。 しかし,甲1のイメージング装置は,ICG-HDL複合体を蛍光トレーサーとした場合であっても,上記のとおり,蛍光色素としてのICGに基づく蛍光検出を行っているもので,ICG-HDLと一体不可分のものではない。 また,審決は,ICGが血中でHDLとのみ結合することを前提としていることもない。ICGが血液中のタンパクと結合するものであることは,上記甲1の【0019 ,甲6の7頁14,15行,乙1の73 】9頁第2段落3,4行に記載され,さらに,審決も引用する乙7(参考周知例4)の63頁右欄8行〜13行にも「血液中で速やかに血漿蛋白と結合し」と記載されるように周知のことである。 , , そして ICGが結合する血漿タンパクがHDLに限らないにしても少なくともICGが血液中のHDLと複合体を形成して蛍光を生じることは,甲1の実施例から明らかであり,仮に,ICGが他の血漿タンパク成分とも結合することがあったとしても,何ら審決に誤りはない。なお,甲1では,その請求項1は脂溶性成分としておりHDLだけに限定もしていない。 以上のとおり,相違点1は実質的な相違点ではあり得ず,仮に,本件特許発明1の蛍光染料がICG単体であるにしても,甲第1号証発明の蛍光イメージング装置におけるトレーサーとして,周知のICG単体を用いることは容易に想到できることであり,審決の判断に誤りはない。 イ取消事由2-2につき(ア)原告は,審決が相違点2について容易に想到できることとした判断は誤りであると主張する。 その主張の第1の根拠は,甲第1号証発明の対象が,腫瘍組織,神経軸策流,脳脊髄液の静的な被写体であり,本件特許発明1のような血液の流れの動的なものを対象としていないということであるが,甲第1号証発明が観察の対象とするのが,腫瘍組織,神経軸策流,脳脊髄液に限らず,体液の動的な流れでもあることは上記取消事由1に対する反論において述べたとおりである。すなわち,甲1には,近赤外線トレーサーによって観察対象とするものが 「体液」の流動で移動するトレーサー ,に基づく蛍光であることが「該トレーサーが,拡散または体液の流動等により生体内を移動し,その位置及び濃度変化を生体外から該トレーサーに基づく蛍光を観察することでリアルタイムにイメージングすること。」(【】),, が可能となる段落 0021と記載されており その体液とは「生体内液体媒体(例えば,血液,脊髄液等(段落【0018 )で )」】あることが明記されている。 また,実施例のラット実験においては,血流よりも困難性の高い脊髄液の流れを観察しているが,これも流れを観察していることに変わりはなく,脊髄液とともに体液の流れとされている血液の流れが,観察対象であることは当然である。 原告が,甲第1号証発明が静的なものを対象にするというのは,甲1に腫瘍組織の計測が可能であることや実施例に流れの遅い脊髄液が記載されていることによるが,さらに,対象は血液を含む生体内液体媒体の中での近赤外線トレーサーの移動を視覚化するものでもあることは上記のとおりである。 むしろ,本件特許発明1は,本件明細書(甲30)によると,腫瘍にも( 0014,抹消脈管,頚動脈,頭蓋内血管,AV瘻孔にも( 0 【】) 【024筋肉 胃 肝臓 腸 膀胱 食道 肺 腎臓および脳組織0 】),, ,, ,,, ,(【030 )にも適用されるものであるとされ,実施例としての開示はマ 】ウスの大腿部動脈の直径測定のみであること( 0063】〜【008 【1 )からも,原告の主張は失当であり,本件特許発明1において観察 】対象をCABGの血流としたことは容易想到である。 さらに原告は,蛍光画像は従来では静止画像であって動画ではなく,当業者は甲1を動画とは理解しないと主張する。 しかし,本件特許発明1が「動画」であるというのは,特許請求の範囲の特定に基づかない主張である。これが,画像の取得が毎秒15画像以上であるということであれば,相違点3に関することなので,そこで反論する。また,流れを動的に観察するという意味であれば,上記のとおり,甲第1号証発明では流れを観察しており,何らの相違もない。 また,蛍光画像で流れを視覚化することが周知であることについて,甲5,甲6については相違点3で詳述するが,他にも,相違点1で詳述したように,多くの文献に開示されている。 さらに,蛍光画像での血流の動的な視覚化が周知であったことを示すために,乙9(審判甲4)について説明する。 乙9(特開平3-115958号公報,発明の名称「生体組織螢光観察装置 ,出願人 浜松ホトニクス株式会社,公開日 平成3年5月16 」日)には,蛍光色素がICGではないものの,蛍光色素のフルオレセインイソチアネートが赤血球と結合した赤血球ゴーストが,血流中を移動する映像をモニターで観察すること,すなわち観察対象組織の血流状態を観察することが 「高感度カメラ7によって撮影された映像は画像処 ,。, 理装置に送られ…蛍光輝点の移動量から血流速度が解析される さらにこの映像は…モニタ11に再生されるようになっている(2頁右下欄。」7行〜13行「観察組織全体の血流状態等を容易に観察できる(3 ), 。」頁左下欄10,11行)と記載されている。 また,乙9には 「動物体内の裸出させることが可能なほとんど全て ,の器官(例えば,脳,肝臓,胃,腎臓など)や組織の表層の血液分布,血流状態の観察が可能となり,より平静時に近い状態で生体観察ができる(3頁左下欄15行〜20行)と記載され,このような蛍光色素に 。」よる血流観察が,裸出可能なほとんど全ての器官に適応できるとされているところ,冠状動脈を含む心臓は手術の間に裸出されることから,蛍光色素による血流観察を含む甲第1号証発明が冠状動脈バイパスグラフト観察に適用可能なことを示唆するものでもある。 この乙9においては,赤血球ゴーストの移動をカメラによって撮影しており,その映像をモニターに再生するものであるから,移動を視覚化していることは明確である。このことは 「反射鏡5eを挿入すれば, ,顕微鏡を肉眼観察用に切り替えることができ,接眼レンズ5fを介して蛍光像を肉眼で観察することも可能となっている(3頁右上欄末行〜 。」同左下欄3行)と記載され,第2図の構成からして,反射鏡5eが挿入された状態では,肉眼で赤血球ゴーストの移動すなわち血流をそのままに観察でき,反射鏡を外せば同じ映像がカメラで撮影されて記録された後にモニターで観察されるものである。 この乙9には,甲1の図面の説明の一部と同様に「顕微鏡」の用語が使用されている。 しかし,乙9のものは,広い観察視野で蛍光観察できるように低倍率とするもので(2頁左上欄18行〜20行 ,観察対象も上記のとおり )動物の裸出可能な器官の血流状態等であるから,そのような観察が可能な倍率とすることは当然のことである。また,本件特許発明1も画像をレンズ等で拡大するものを含むことは,本件特許の請求項9に 「前記,冠状動脈バイパスグラフト造影画像を拡大するレンズシステムをさらに備える」と記載され,本件明細書(甲30)の段落【0051】に同様の記載があるとおりである。 (イ)次に原告は,相違点2についての審決の誤りの理由として,審決が冠状動脈バイパス(CABG)手術について引用するのは,甲7,8,28,29のみであるとした上で,甲7,甲8に記載されたものでは,血管壁の形状観察だけであることや人工心肺を用いた心停止下の手術なので血液が存在しないこと等を主張する。 しかし,審決は冠状動脈バイパス手術について,乙6も参考周知例2として引用している。また,原告が,本件特許発明1は甲7,甲8と相違して 「心拍動下」であるというのは,特許請求の範囲に基づかない ,主張である。 ,, , 次に 甲7 甲8についての原告主張に理由がないことを述べる前に本件特許の優先日における技術水準として,甲28,甲29と,甲7,甲8の一部に記載されたような心停止下での冠状動脈バイパス手術も,心拍動下でのバイパス手術もともに周知慣用であり,ともに,手術中におけるCABGの機能を評価するために血流を視覚化することが共通の課題であって,実際にも周知かつ慣用されていたことを以下の周知例によって説明する。 a乙10(須磨久善ら「体外循環を使用しない冠動脈バイパス術200例の経験」http.//www.cvi.or.jp/suma/koho2/koho2_17.html,2008年〔平成20年〕8月11日)乙10には,この論文執筆者等によって,本件特許の優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)の3年前である1996年〔平成8年〕10月から3年間にわたって,心拍動下のバイパス手術であるオフ・ポンプ手術が200例も行われたとされている(2頁3行 。)また,これらの手術中において,血流の視覚化について,バイパス手術中に,バイパスの吻合が終了すると,何らかの方法で周囲と血流とに温度差をつけて1996年10月から3年間にわたって,赤外線カメラによって,心拍動下で,全体が冠状動脈の血管に繋がったバイパスグラフト内の血流をリアルタイムで視覚化していたもので,その例がFig1の画像に示されている。 b乙11この論文は「低侵襲性冠状動脈バイパス(形成)後の,グラフト開存性評価のための術中での血管造影」に関するものである。そして,心拍動下での冠状動脈バイパス手術中に,バイパスの開存性の評価のために冠動脈画像を取得することについて記載されているところ,手術中の血管造影については,携帯式のX線撮影カメラによって,毎秒30枚の動的画像が取得されたとされている。その血管造影が,術中でかつバイパスグラフトの完了後になされていることも記載されている。そして,グラフト内の血流が血液中の造影剤の流れにより視覚化され,実際に撮像されたグラフト内の血流の画像が,Fig1〜Fig4に示されている。例えば,Fig1においては,上方のカーブした矢印で示されるグラフトから真直で黒の矢印で示される吻合部を経て下方の白矢印で示される既存の動脈に十分な血流が観察されたことが 「左内,胸動脈グラフト(曲線矢印)および吻合部(黒い直線矢印)の広い開存と左前下行枝(白矢印)への良好な血流が認められる(1980。」頁の図1)と記載されている。 さらに,このような冠動脈バイパス手術中のCABGの画像化によって,グラフトとネイティブの血管の動的な閉塞を確認でき,迅速に対応できることも記載されている。 このように,バイパス手術中に,バイパスの吻合が終了すると,携帯式のX線撮影カメラによって,心拍動下で,全体が冠状動脈の血管に繋がったバイパスグラフトの血流とともに流れる造影剤を毎秒30枚の動画での画像取得をして,血流をリアルタイムで視覚化することが記載されている。 c乙12(審判甲2)乙12には,冠状動脈バイパス手術中において,エコー法によってバイパス内の血流を視覚化することについて,図1の画像の説明として 「術中冠動脈バイパスグラフト血流の評価…大伏在静脈グラフト ,血流,…内胸動脈グラフト血流映像が明瞭に観察できる(76頁下。」段)と記載されている。 d甲7,8について甲7,8には,バイパス手術中に,ICGではないもののICGとともに生体に使用される代表的な蛍光色素であるフルオレセインをバイパスグラフトに注入して,その流れによる蛍光を視覚化し,バイパスグラフトの開存性等を確認することが開示されている。 具体的には,甲7に 「全ての症例において,明るい黄緑色の蛍光 ,をリアルタイムで,バイパス・グラフト,吻合部,冠状動脈,冠状動脈枝,心筋壁,冠静脈の順序で各部位から明瞭に観測した(1頁目。」左欄下2行〜右欄2行 ,甲8に 「フルオレセイン注入直後に,明瞭 ),。,, な蛍光をリアルタイムに以下の順序で検出した すなわち グラフト吻合部,冠状動脈,冠状動脈枝,心筋壁,最後に冠静脈である(1。」96頁下3行〜末行)と記載されている。 本件特許発明1と同様に,バイパス手術中にバイパスでの流れを蛍光色素によって確認することの課題が,甲7において,例えば「吻合部狭窄の重大性やグラフト血流分布の正常性に関しては,吻合による蛍光の流れを経路と滑らかさの点から観測することによって十分な臨床情報が得られた (142頁右欄1行〜6行)と記載されている。 」甲8には 「したがって,CABGの安全性および信頼性を向上さ ,せるには,CABGの効果を術中に評価する方法の開発が高く望まれていると思われる。このような理由から,動物実験におけるフルオレセインを用いた術中冠状動脈造影の使用を検討し,同方法を臨床に応用した(194頁のIntroduction4行〜8行)と,バイパス手術中 。」における蛍光色素を用いた冠状動脈造影を課題とすることが直接的に記載されてもいる。 原告は,甲7,甲8に記載のものは,心停止下のCABG手術においてグラフト遠位側の吻合後に近位端からフルオレセインを圧入しているもので,グラフト内には血液が存在していないと主張する。 しかし,甲8には 「本試験で使用したフルオレセイン溶液は,濃 ,度(0.06%)及び総用量(0.5mL/Kg体重)の双方に関して,過去の研究における抹消静脈を介して冠状動脈に到達させる注入方法の場合よりも少なかった。このことは,冠状動脈へ直接注入することによって,より少量の造影剤でより良質な血管造影像が得られることを示しており,この方法によって副作用の危険性が低下する可能性がある(199頁11行〜16行)と記載されている。 。」このように,冠状動脈のグラフト端からフルオレセインを注入することだけでなく,抹消静脈にフルオレセインを注入して,当然に血流とともにフルオレセインを冠状動脈に到達させて観察することも,さらに古い技術として開示されている。 また,甲8においては,犬を使用した実験で,心臓の拍動下での実験がされている。この結果について 「拍動中の心臓と心筋保護液に ,よる心停止下にある心臓との間に蛍光分布の有意差は認められなかった。これらの結果は,表?Uの仕様によってフルオレセインを用いて最適な冠状動脈造影図が得られることを示している(196頁5行〜。」8行)と記載されている。 すなわち,拍動下の心臓でのバイパス手術においても,フルオレセインによるバイパスの開存性等の評価がなされることが確認されている。この場合,バイパスの吻合部を経て,冠状動脈,冠状動脈枝,心筋壁,冠静脈を経過するフルオレセインの流れが,血液中のものであることはいうまでもない。 なお,原告は,この犬の心拍動下での実験について,甲8では,人間については心停止下で行うべきと結論付けていると主張するが,そのようなことは甲8には記載されていない。逆に,上記のとおり,拍動中の心臓でも同様に最適な冠状動脈造影図が得られるとされている。 また,原告は,甲7,甲8とも,フルオレセインによる流れを観察しているのではなく,フルオレセインが血管内壁に付着したことによる血管の形状を観察しているにすぎないと主張する。 しかし,フルオレセインが血管壁に付着し易く,流路に沿って一部ずつが付着していくにしても,フルオレセインが血液中に注入されている場合は血液とともに流れるからこそ,その蛍光による流れの経路や流れた範囲を観察できるものであり,また,たとえ,血液が遮断されている場合でも,逆行性の流れ,順行性の流れが観察され(甲7の141頁左欄3行〜6行 ,流入遅延も観察されている(甲8の19 )7頁1行〜3行)ように流れが観察されているものである。 e乙13上記のとおり,甲8には,抹消静脈にフルオレセインを注入して,血流とともにフルオレセインを冠状動脈に到達させて観察することが記載されている。これを,さらに,乙13によって説明する。 乙13には,肢静脈からフルオレセインを注入して,露出させた心拍動下の心臓の冠状動脈におけるフルオレセインを蛍光によって観察したことが記載されている。ここにおいて,心筋表面の健常部での蛍光が観察され,梗塞部で観察されなかったということは 「心筋梗塞 ,は,冠状動脈の左前下行枝をその起始部より約2cmの所で露出し,絹糸で結紮して作成した(69頁左欄4,5行)と記載されるよう 。」に,冠状動脈の一部が梗塞部とされ,他は健常部であるから,冠状動脈の部分である健常部において,血流中のフルオレセインの流れによる蛍光が観察されたことを意味している。 また,心拍動下であること,人も対象にできることは 「本研究で ,は,心拍動下で,…臨床的にも十分に応用できる方法である(74。」頁左欄5行〜9行)の記載からも明らかである。 このように,心拍動下の冠状動脈に血流とともに蛍光染料フルオレ,, , セインを流し その観察を行うことは 甲8にも記載されるとともに乙13にも記載のとおり,古くからなされていた周知のことである。 , 。 (ウ)以上のとおりであり 相違点2についての審決の判断に誤りはないウ取消事由2-3につき(ア)原告は,相違点3についての審決の判断は誤りであるとし,甲5,甲6に記載の眼底カメラによっては,画像取得速度が毎秒15枚以上であることの周知技術にはならないと主張する。 (イ)しかし,甲5には,眼底における血管を対象としているものではあるが,血流を蛍光染料ICGによって,視覚化することが記載されている。そして,甲5に記載のものは,蛍光色素を用いて生体の血液を含む生体内液体媒体を観察することにおいて,本件特許発明1及び甲第1号証発明と共通しており,眼底の血管に関するものであっても,蛍光色素ICGを用いて血液の流れを視覚化することの周知例の一つとして考慮することが何ら阻害されるものではない。 また,甲5に記載のものが,血液の流れを動態化していることも明らかである。甲5において,コンピュータは時間経過に伴う連続画像を記録し,その画像は,ビデオディスプレィ又はモニタに表示されて,作業者はそれを見ることができる。ここで,連続画像とは,甲5の18頁4行に記載のとおり,最低毎秒15フレームの画像である。そして,画像では,蛍光染料(ICG)の眼底での通過が記録され,蛍光の形状や通過速度が観察されている。ここで,通過速度が観察対象の一つであるから,当然にICGの蛍光の先端が観察されている。さらに,作業者は,蛍光の移動が撮影された各画像をモニタで検分して特定の位置を検出するとされている。 ところで,原告は,甲5,甲6は,本件特許発明1のように血液の流れの動態を視覚化するものでない旨を述べているが,本件特許発明1においては,観察対象はあくまで血流中の蛍光染料であって,さらにはその波面とされているものである。 そうすると,甲5のものでは,毎秒15画像以上の速度で血管内の蛍光染料の移動が撮影されており,特に,波面に相当する蛍光染料の先端部が観察されていることから,この点でも本件特許発明1と一致してい。, , る そして 画像を視覚化するに際してコンピュータが介在することや連続画像における各画像を,個別画像毎に検分することがあったにしても,血流中のICG蛍光染料の移動の視覚化がなされていることに変わりはない。 (ウ)甲6にも,眼底における血管を対象としているものではあるが,血。, 流を蛍光染料ICGによって視覚化することが記載されている そして甲6に記載のものが,蛍光色素の蛍光を用いて生体の血液を含む生体内液体媒体を観察することにおいて,本件特許発明1及び甲第1号証発明と共通していることは,甲5で述べたのと同様である。 甲6に記載のものが,血液の流れを動態化していることも明らかである。甲6においては,コンピュータによる減算処理をしないこと,脈絡膜血管層がたとえ多層であっても,ICG蛍光色素の波面が鮮明に規定されていれば,血流中のICG通過の完全サイクルについて容易に追跡されるとされ,ICGの移動による血流の視覚化がなされることが記載されている。またフレームデータの減算処理を行う理由について,脈絡,, 膜毛細血管の下方に大きな血管があるために 取得したままの画像ではICGの蛍光が重なり合って不鮮明であるが,脈絡膜毛細血管でのICG移動は,下方の血管でのICG移動より速いために,前後のフレームにおける輝度データを減算すれば,前後のフレームでほとんど動きのない下方の血管のICG像は相殺されて,移動の速い脈絡膜毛細血管の移動に伴う輝度変化が画像化されることが説明されている。 結局,甲6に記載のものでは,画像の減算処理を適用した場合であっても,結果として得られる画像は,脈絡膜毛細血管での血流中のICG移動を視覚化した毎秒15〜30枚の画像である。 そして,実際に血流中のICGの移動が観察されており,特許図面に選択して掲載された画像においてさえも,0.13秒や0.2秒毎の波面の移動が開示されている。これは,原告のいう流れの動態そのものである。 原告は,甲6当時の技術常識ではICGが血液中のタンパクと結合することで蛍光を簡単に観察できるものでなかったと主張するが,甲6自体にも 「ICG蛍光は移動する血液量中の血液蛋白に結合された色素 ,分子から生じる(7頁14,15行)と記載されており,本件特許の 。」優先日(平成11年〔1999年〕9月24日)においては,上記のとおり甲1の段落【0019 ,乙1の739頁第2段落3,4行,乙7 】の63頁右欄8行〜13行にも記載されるように周知のことである。 さらに,原告は,甲1の実施例に使用されたCCDカメラC2400-75iは画像処理装置ARGUS20とともに用いられることにより,少なくとも毎秒15枚の画像取得速度においてもCABGの血流の中を運ばれるICGの移動を視覚化できるとの審決の認定が誤りである, ,, とし その装置では本件特許発明1と同様の視覚化は通常できず また甲51に対する被告の甲26,甲27の実験結果は不適切であると主張する。 また,既に蛍光を放出することが分かっているトレーサーからの蛍光を観察する際に,放出されているはずの蛍光が見えるようになるまで装置を調整するのは当業者が通常行うこととの審決の認定も,本件特許発明1を知ることなく調整を行うことは困難であるとも主張する。 しかし 甲1のラット実験に用いられたカメラはCCDカメラ C , ,「(2400-75i浜松ホトニクス(株)製(段落【0035 )であ )」】り,そのカタログである甲9に 「同期方式…NTSC白黒」と記載さ ,れ,NTSCは30画像/秒として規格された方式であることから,毎秒30画像を撮影し,画像を取得するものである。また,同実験では,カメラと組み合わせる画像処理装置として,ARGUS20(浜松ホトニクス(株)製 (段落【0035 )が用いられている。 )】この画像処理装置のカタログである甲16の最後の頁の上表のEIA(USA)の欄に,水平走査周波数が15.734kHz,垂直走査周波数が59.94HzというNTSC方式が記載されているように,ARGUS20の画像処理装置も,CCDカメラC2400-75iと同, 。, じく 30枚/秒の画像を処理するNTSC方式のものである そして同じ頁の右下の「SENSITIVITYCOMPARISON (感度比較)の表には 「C 」,2400-75i+ARGUS20」として 「NormalScanning (通常走査「1 ,」),secIntegration (1秒積算「30secIntegration (30秒積 」),」算)というように,通常走査とIntegration(積算)が併記され,それぞれに対応する撮影に適した明るさが横軸に表示されている。 ここで 「通常走査」がNTSC方式の毎秒30枚画像であり,そこ ,から「30秒積算(30秒露光)まで多段階に使用されることを示している。なお 「1秒積算(1秒露光 」はその間の1つの例示として記載 ,)されている。 すなわち,甲1に開示された「C2400-75i」のカメラと「ARGUS20」の画像処理装置の組み合わせによって,通常の走査速度(30枚/秒)で使用すること,ラットでの実験に用いられた「Integration ( 積算 )で使用することは,適宜選択使用可能で,またそれ 」「」ぞれの場合に適した明るさが選択され得ることが示されている。 このように,甲1に記載のものでは,カメラもその画像処理装置も,ともに通常では30枚/秒の画像取得を行うための装置であり,適宜,露光時間を延ばす画像積算もできるものである。甲1のラットを対象とした実験においては 「露光時間1秒 ( 0037 )と記載されるよ ,」【】うに,毎秒1枚の画像を取得している。これは,ラットでの実験であって,投与するICG複合体の量が微量で且つ流速も遅いためで,投与対象によっては,規格どおりに毎秒30枚の画像を取得することは当然である。 本来,甲第1号証発明は,ラットの脊髄流の観察を対象としたものではなく,人の血液を含む体液を対象にしたものであって,トレーサーがそのような体液の流れによって移動する際のトレーサーの蛍光をリアルタイムにイメージングする( 0021 )ものであることから,それが 【】可能な画像取得速度及び励起照明に設定することは当然の事項にすぎない。そのことからしても,既に蛍光を放出することが分かっているトレーサーからの蛍光を観察する際に,放出されているはずの蛍光が見えるようになるまで装置を調整するのは当業者が通常行うことであるとの審決の認定に誤りはない。 原告は,甲26,甲27の実験では,蛍光を観察の対象とせずに輝度値のみを対象としていること,実際のCABG中のICG蛍光を対象にすると,他の輝度値も増幅され,識別可能な画像が取得できないと主張する。しかし,甲51の原告実験で,原告が判別不能だとした輝度10は,光電変換後のカメラの電気的な出力強度であるように,感度アップによる判別性の再現実験では,その輝度の元になったのが,ICGによる蛍光か否かは関係のないことである。また,甲26,甲27の実験では,毎秒30枚の画像を取得しており,その1枚の画像を掲載しているもので,それぞれの画像が甲27のとおりに十分な空間分解能を示していることから,他の輝度値との識別ができないということはない。仮に同等な輝度値どうしなので識別が困難ということであれば,本件特許発明1も同様であり,本件特許発明1においては,そのような解決手段を特定するものでもなく,原告の主張は失当である。 また,本件特許発明1において,画像取得速度を毎秒15画像以上としたことに 臨界的な技術的意義があるものではなく 経時的な画像 動 , ,(画)を取得する上での最も通常の数値範囲を特定したにすぎない。 以上によれば,相違点3に関する審決の判断に誤りはない。 エ取消事由2-4につき(ア)甲第1号証発明は,血液を含む生体内液体媒体中での,蛍光色素がICGである近赤外線トレーサーの移動をリアルタイムに撮像し,生体内液体媒体の流れを視覚化し観察する装置に関するものである。そのため,本件特許発明1における作用効果である血流の中を運ばれるICGの移動を視覚化することは,甲第1号証発明が有している作用効果にすぎない。このうち,本件特許発明1では,ICGが仮にICG単体であるとしても,ICG単体による血管造影は既に周知であり,それ以上の作用効果を奏するものではない。 (イ)そうすると,本件特許発明1においては,何らかの作用効果があるとすれば,観察の対象を外科手術中の冠状動脈バイパスグラフトの血流に限定したことだけである しかし 甲第1号証発明1においてはリ 。, ,「アルタイムイメージング(例えば手術中)の応用も可能とする( 0。」【040 )とされており,本件特許発明1と同様に手術中において利用 】されるものである。そして,外科手術中のバイパスグラフト内を流れるのは血液であり,甲第1号証発明が観察の対象とするものであって,それ以上のものではない。しかも,手術中にバイパスグラフト内の血流を視覚化するということは,従来から周知の課題であり(甲7,甲8,乙10,乙11,甲28,甲29,乙12 ,実際になされてきたもので )ある。 (ウ)原告は,ICGも本件特許発明1の構成要件であるとして,本件特許発明1の課題を 「ICGの移動を視覚化」することで解決したと主 ,張する。しかし,ICG蛍光色素の移動を視覚化することは,甲第1号証発明と何ら変わりはなく,さらに,ICGの移動によって血管造影をすることも周知であり(乙1,甲5,甲6,甲25,乙5,甲62,乙7,乙8 ,これらの作用効果の範囲を超えるものではない。また,原 )告は,冠状動脈バイパスグラフト内の血流の動態を視覚化することが,格別な作用効果と主張するが,上記のとおり,甲第1号証発明と周知技術から予測される以上のものでないことに加え,本件明細書(甲30)には,そのような作用効果の記載はされておらず,特許明細書に基づかない主張である。 本件明細書(甲30)には,バイパスグラフト内の血流に関する発明の実施形態も実施例も何ら記載されていない。当然,本件特許発明1の構成に基づく作用効果は記載されていない。冠状動脈バイパスについては,本件明細書の【0004】〜【0007 ・ 0011】に冠状動脈 】【バイパス手術についての一般的な記載があるにすぎない。また 【00,23】〜【0029】に本件特許発明の方法を冠状動脈バイパス手術に適用してもよいという程度の記載があるにすぎない。このうち,バイパスと血流について言及されている【0029】においても 「この方法 ,は,たとえばバイパスなどの処置を受けたたとえば冠状動脈などの特定の血管の下流に位置する脈管構造の血管造影画像を得ることによって,バイパス手順の成功を評定することを予期する 」と,バイパスの下流 。 における血流について適用の可能性があることを述べているにすぎない。 (3)取消事由3に対しア原告は,審決は複数の参考周知例に基づき技術水準を評価しているが,これらの参考周知例は審決書で初めて通知されたもので,原告は意見を申し立てる機会が与えられなかったことから,審決の手続は特許法150条5項に違反している旨主張する。 イしかし,審判においても審決取消訴訟においても,技術水準を示す周知技術文献の引用,提出が認められていることであり,原告の主張は失当である。このことは,昭和54年(行ツ)2号(昭和55年1月24日,最高裁第一小法廷判決,民集34巻1号80頁)により確立されている。この判決において 「審判の手続において審理判断されていた刊行物記載の ,考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法,違法を判断するにあたり,審判の手続にはあらわれていなかつた資料に基づき右考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という )の実用新案登録出願当時における技術常識を認定し,これによって 。 同考案のもつ意義を明らかにしたうえ無効原因の存否を認定したとしても,このことから審判の手続において審理判断されていなかつた刊行物記載の考案との対比における無効原因の存否を認定して審決の適法,違法を判断したものということはできない 」と判示されている。その後も,多 。 くの判決が,周知技術文献の引用,提出を認めており,たとえば,知財高裁平成18年(行ケ)10269号事件(平成19年1月30日判決)においては,本件と同様に,審決において初めて周知技術文献を引用したことについて,特許法153条2項にも,特許法150条5項についても手続違背に該当しないと判示した。 ( )取消事由4に対し4原告の請求項2〜11に係る発明についての取消事由4は,本件特許発明1についての取消事由1,2に基づくものであるが,取消事由1,2についての審決の判断に誤りはないから,取消事由4についても理由はない。 (5)取消事由5に対しア原告は,審決が相違点13について周知例として引用した技術が,冠状動脈バイパスグラフトにおける血液の流れの中を運ばれる蛍光剤としてのICGの移動を視覚化する技術と関係がなく,これらを参考にすることはないとして,審決の判断は誤りであると主張する。 イしかし,甲1においては,ICGをヒト高密度リポ蛋白,蒸留水からなるICG複合体とし( 0029 ・ 0030,実験動物に対して,一 【】【】)定量を注射器で注入することが記載されている( 0036。このよう 【】)な注入は,食塩水によってボーラスとして一気に流すことと格別に相違するものでもない。また,ICGを注入する際に,ボーラスとして注入することも,食塩水によってボーラスとして一気に注入することも,審決のとおりに周知であることから,審決の判断に誤りはない。 , ,,, 原告の主張は 上記周知技術として審決が引用した甲5 甲6 甲15甲28,乙8(参考周知例5)が,冠状動脈バイパスグラフトにおける血液の流れの中を運ばれる蛍光剤としてのICGの移動を視覚化する技術と関係がないというものである。しかし,これらの周知技術が,本件特許発明1に至る技術として参考になることは,本件特許発明1の取消事由に対する反論で述べたとおりである。また,相違点13については,ICGを生体である人体に注入することに関する事項であるから,同様の事項に関。。 する上記周知技術が参考にならないはずがない 原告の主張は失当であるなお,審決が 「ICGを含む複合体」と記載したのは,単なる誤記に ,すぎない。 第4当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 そこで,原告主張の取消事由について,以下順次判断する。 2取消事由1(本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点の認定の誤り)について(1)甲1(特開平9-309845号公報)には,以下の記載がある。 ア特許請求の範囲・「 請求項1】少なくとも近赤外線蛍光色素と,脂溶性成分を含有する物 【質とを有する複合体からなる近赤外線蛍光トレーサー 」。 ・「 請求項3】前記近赤外線蛍光色素がインドシアニングリーン系色素で 【あり,前記脂溶性成分を含有する物質が高密度リポ蛋白質であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線蛍光トレーサー 」。 ・「 請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線蛍光トレーサー 【を生体内に導入し,前記生体を励起光照射し,前記トレーサーからの近赤外線蛍光を検出することによる体外蛍光イメージング方法 」。 イ発明の詳細な説明「【】, 。」 ・発明の属する技術分野 本発明は 近赤外線蛍光トレーサーに関する(段落【0001 )】・「 従来の技術】厚みのある生体試料(人体等)の内部の様子を光を使っ 【て体外計測する手法は,医学研究や疾病の診断・治療にとって重要である。特に腫瘍の位置・大きさを画像診断によって予め知る事は,腫瘍の, 。」 摘出にとって重要な技術であり すでにいくつかの方法が知られている(段落【0002 )】・「例えば,放射性同位元素(RI)による腫瘍組織や神経軸策流の画像診断は,被爆・汚染の懸念があり管理が煩雑であるという問題がある。また,管理区域外では利用できないため,手術時への応用は難しいという問題がある。例えば,神経筋接合部近傍に物質を投与すると,神経細胞がその物質を取り込み,神経終端から細胞体に向かって能動的に運搬する現象(神経軸策流)が知られており,神経軸策流のスピードが正常に比べ低下している場合は,その神経細胞に何らかの障害があると診断できることが知られている。実際,この診断にRIを用いる試みがなされ, 。」(【】) ているが 腫瘍の診断と同様の問題点を有している段落 0003「, , ・またX線CT技術は 被爆の問題は放射性同位元素の場合と同様でありまた,装置が大型であり,被験者を断層撮影装置の奥まった内部に置かなければならないので 手術時への応用は難しいという問題もある段 , 。」(落【0004 )】・「 発明が解決しようとする課題】本発明は以上の問題点に鑑みなされた 【ものである。すなわち,厚みのある生体試料(人体等)の内部の様子を近赤外蛍光により体外計測するための毒性の低い生体に使用可能な新規トレーサーを提供するものであり,また該トレーサーを用いた体外計測イメージング法を提供するものである(段落【0005 ) 。」】・「 課題を解決するための手段】近赤外光は生体への透過性が高いため, 【近赤外蛍光を放つ色素を体内に分布させてその体外計測を行い,種々の診断等に応用することが可能と考えられる。さらに,この方法においてはハロゲンランプ,CCDカメラ,光学フィルターとレンズなど,小型で安価な装置のみの構成で実現できる(段落【0006 ) 。」】・「一方,色素については,トレーサーとして生体に用いた場合はその毒性が問題になり,使用できる色素に制限がある。この毒性の問題から,トレーサー色素として使用可能なものの1つとしてインドシアニングリーンが実際に臨床応用されている この色素は有機溶媒中で近赤外蛍光 8 。 (), 。」 35nm を放ち またこれを使って眼底血管を蛍光観察した例がある(段落【0007 )】・「さらには,本発明は,近赤外線蛍光トレーサーを生体内に導入し,生体を励起光照射し,トレーサーからの近赤外線蛍光を検出することにより体外蛍光イメージングする方法を提供するものである(段落【001。」4 )】・「 発明の実施の形態】 【(近赤外線トレーサー)本発明に係る近赤外線トレーサーは,近赤外領域に蛍光波長を有する色素を含むものであり,該蛍光を検出することにより追跡可能とするものである。ここで好ましい近赤外領域は,700nm,より好ましくは800nm以上の範囲であり,また上限は特に限定されないが,実際の有機系色素においては1200nm〜1600nm程度の範囲である。該色素自体は,少なくとも被検出物が存在する媒体中で蛍光性を有するものである必要があるが,以下に説明するように必ずしも水溶液中では蛍光性である必要はない(段落【0016 ) 。」】・「また,本発明に係るトレーサーを生物体内で使用する際には特に必要な特性として水溶性であること(生体内液体媒体に溶けること)と,該生体に対して毒性がないことが望ましい。上記の2つの特性を兼備する色素であれば本発明においては特に限定されることはないが,本発明においては,例えばインドシアニングリーン系の色素が好ましく使用可能である。実際インドシアニングリーン系の色素は水溶性であり,肝循環機能検査用薬として使用されるものであり毒性の点では問題はない(段。」落【0017 )】・「さらに,本発明に係る近赤外線トレーサーは,好ましくは該色素が他の生体成分に結合した複合体である。該色素が結合し得る他の生体成分としては,特に限定はないが,本発明に係るトレーサーの使用目的により種々の生体成分を選択可能である。例えば,( )上記色素が生体内液体媒1体(例えば血液,脊髄液等)に不溶性である場合に,可溶化するために種々の生体成分と複合体を形成させることも可能であるし,( )逆に,上2記色素が生体内液体媒体(例えば血液,脊髄液等)には可溶性であるにもかかわらず,水溶性の生体内液体媒体中では,十分蛍光性でなく,むしろ非水溶媒中で蛍光性となる場合に,種々の生体成分と複合体を形成させることで蛍光性とすることも可能であるし,( )さらに,以下で説明3するように本発明に係るトレーサーに被検出物を特異的に認識する部を導入するために適当な生体成分と複合体を形成することも可能である 」。 (段落【0018 )】・「実際,上記のインドシアニン系色素は,毒性の点ではまったく問題ではないが,水溶性溶媒中では実質的に非蛍光性である。従って,本発明の実施例で示されるように,インドシアニン色素を脂溶性成分を有する生体成分である高密度リポ蛋白質と複合体を形成させることにより,インドシアニン色素を含みかつインドシアニン色素を蛍光性とすることができる(段落【0019 ) 。」】・「 近赤外線トレーサーを用いたイメージング)本発明に係る近赤外線ト (レーサーは,生体内で生体内液体媒体中で可溶性であり,かつ近赤外線領域で蛍光性を有するものである。従って,該トレーサーを生体内に導,, , 入し 該トレーサーが 拡散または体液の流動等により生体内を移動しその位置及び濃度変化を生体外から該トレーサーに基づく蛍光を観察することでリアルタイムにイメージングすることが可能となる段落 0。」(【021 )】「, () ・例えば インドシアニングリーン-高密度リポ蛋白質 ICG-HDL複合体に,抗腫瘍抗体を化学的に結合させることで,生体内での外腫瘍の位置及び大きさをリアルタイムで体外計測可能となる。この際イメージング装置が小型でリアルタイム計測できるので,該腫瘍の切除手術中にも用いることが出来るものである。この際腫瘍組織と正常組織の弁別がその場で出来るので,正常組織を無駄に切除したり腫瘍組織を切除し残す事がなくなることとなる(段落【0022 ) 。」】・「例えば,神経軸策流の画像診断として,上記ICG-HDL単体を神経筋接合部近傍に投与すれば,神経細胞に取り込まれ,軸策流に乗り,得られる蛍光を体外計測することで軸策流の測定が観察可能である(段。」落【0024 )】・「本発明に係る上記トレーサーを使用し,該トレーサーからの蛍光を体外計測するための装置についても特に限定はないが,通常の励起光源と,必要ならば励起光源用フィルターにより最適な励起光を試料の生体の外部へ照射し,該励起光により生じる該色素からの蛍光を蛍光検出器で検出する。この際必要ならば,該色素からの蛍光のみを選択するためにフィルターを使用することも可能である。さらに,得られた蛍光情報をデーター処理することによりイメージングするものが好ましい。この際上記データー処理装置についても(判決注: つても」は誤記)特に限定さ 「れることはないが,例えば「ARGUS20(浜松ホトニクス株式会社製 」が使用可能である(段落【0025 ) )。」】・「 実施例)以下のように,近赤外領域蛍光色素インドシアニングリーン ((ICG)とヒト高密度リポプロテイン(HDL)との複合体(ICG-HDL)を調整したものを使用した。ここで使用したHDLは脂質と蛋白質が結合した血中蛋白成分である。ICGは上で説明したように該HDLの脂質部分に溶解して,その結果蛍光性となるものである。得られる複合体は水に可溶であり,従ってICG-HDLは生体内の種々の部分にも投与可能であり,かつその近赤外蛍光を体外から観測するものである(段落【0027 ) 。」】・「( ) ICG(ジアグノグリーン,第一製薬)20.5mgを蒸留水4m1,.(.)。」 lに溶解し 約5 1mg/ml =5 54mM 水溶液を調整した(段落【0029 )】「 (,,) ・ヒト高密度リポ蛋白溶液 HDL Kappel社製 20mg/ml250μlに,ICG水溶液2.5μlを加え攪拌し,色素ー蛋白複合体(ICG-HDL)を調整した。この複合体溶液中のICG濃度は約55.4μMである(段落【0030 ) 。」】・「( ) ICG-HDLを用いた近赤外線蛍光イメージング(段落【003 。」34 )】・「上記得られた,ICG-HDLを実際に生きた実験動物に投与し,ICGの近赤外蛍光を画像化して,ICG-HDLが体内に分布していく様子を体外計測した。図2には本実施例で使用した測定系の概略を示す。 すなわち,実験動物3にICG-HDLトレーサー4を導入した後,1() 50Wのハロゲンランプにバントバスフィルター 中心波長720nmを装着して励起光源1とし,この光を光ファイバー2を介して実験動物3に照射する。発生するICG-HDLの近赤外蛍光の検出にはTVレンズ(FUJINON CF8A1:1.8/8)を装着したCCDカメ( () )。, ラ C2400-75i 浜松ホトニクス 株 製 6を用いた ただしCCDカメラの赤外カットフィルターは除去し,TVレンズにシャープカットフィルター(透過波長840nm以上)5をセットする。CCD((() カメラ6の信号は画像処理装置7 ARGUS20 浜松ホトニクス 株製 )にて取り込む(段落【0035 ) )。」】・「すなわち,生後3日のウイスター系ラット(オス)の右脳にICG-HDL溶液25μlを注射器にて注入した。図3にその反射光像(シャープカットフィルターなし)と近赤外蛍光像(シャープカットフィルター装着)を示す(段落【0036 ) 。」】・「図3は投与直後の頭部の映像である(蛍光像におけるCCDカメラの露光時間は1秒間 。投与部位を中心に前頭部にICG-HDLが分布して )。 ()。 いるのが分かる 図4は投与後1時間の頭部の映像である 露光1秒間。 蛍光像よりICG-HDLの分布が後頭部に移ってきているのが分かるまた図5は投与後8時間の体全体の映像である(右が頭部,左が尾部。 露光8秒間 。脊髄の終端にICG-HDLが移動してきたのが分かる。 )さらに,図6には,以上の時間変化の結果を,得られた蛍光強度と時間との関係を明らかにするために模式的に示したものである(段落【0。」037 )】・「この結果は,ICG-HDLが脳から脊髄の中へと,体表より深い部分を移動していく様子が生きた実験動物で経時的に観察できることを明確に示している。これはまた,厚みを持った生体試料の観察にICG-HDLをトレーサーとして使用可能であることを示している(段落【0。」038 )】・「 発明の効果】本発明に係るトレーサーの構成,すなわち,近赤外領域 【, , , 蛍光色素と 適当な生体物質との複合体は 生体内体液中で可溶でありさらに,水溶液では蛍光色素としては使用不可能である毒性の低い色素を水溶液でも蛍光性とするものである。従って,本発明に係るトレーサーを,蛍光検出装置(励起光源,CCDカメラ等の検出系,および画像処理装置)とともに用いることにより生体外で計測してイメージングすることが可能となる(段落【0039 ) 。」】・「すなわち,X線源・レ-ザ-光源・断層撮影用検知器・高速コンピューター等は必要なく,同等のイメージングが可能となる。さらに,簡便・安価なために,リアルタイムイメージング(例えば手術中)の応用も可能とする(段落【0040 ) 。」】・「また,ICG単体を用いた血管造影では適応部位が限られたが,ICG-HDLを用いればそうした制限はない(段落【0041 ) 。」】ウ図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)・【図2 (本発明に係るインドシアニン-高密度リポ蛋白質複合体 】をトレーサーとして用いた,イメージングのための測定系の概略を示す図である )。 ・【図3 (ICG-HDLを投与したラットの投与直後の反射光像 】(上)と近赤外蛍光像(下)を示す写真である )。 ・【図4 (ICG-HDLを投与したラットの投与後1時間の反射 】光像(上)と近赤外蛍光像(下)を示す写真である )。 ・【図5 (ICG-HDLを投与したラットの投与後8時間の反射 】光像(上)と近赤外蛍光像(下)を示す写真である )。 ・【図6 (ICG-HDLを投与したラットの投与後の時間変化の 】結果を,得られた蛍光強度と時間との関係を模式的に示した図である )。 エ上記ア〜ウによれば,甲第1号証発明は,以下の内容のものであると認められる。 すなわち,甲第1号証発明は,人体等の内部の様子をトレーサーが発する近赤外線蛍光により測定するため,近赤外線トレーサーを生体内に導入し,トレーサーからの近赤外線蛍光を体外から検出・追跡する体外蛍光イ(,【】。 メージング方法を提供するものである 請求項1・5 段落 0014追跡につき段落【0016。トレーサー色素としてはインドシアニング 】)リーン(ICG)のみを用いることも可能である(段落【0007 ・ 0】【017 ・ 0041 )が,甲第1号証発明においては蛍光性の観点から 】【】インドシアニングリーン-高密度リポ蛋白質(ICG-HDL)複合体を用いるものである(請求項1・3,段落【0019【0022。】,】)そして甲第1号証発明においては,ICG-HDL複合体により生体内(【】) の腫瘍の位置等をリアルタイムで体外計測可能とする 段落 0022ほか,ICG-HDL単体の投与により軸策流の測定も可能であることが示唆されている(段落【0024。また,近赤外線トレーサーにつき, 】)血液等の生体内液体媒体に溶けることも示唆されている(段落【0018。】)このように,甲第1号証発明においては,近赤外線蛍光トレーサーが拡散又は体液の流動等により生体内を移動するものであり(段落【0021,このような流動をもたらす生体内液体媒体として血液,脊髄液等の 】)記載があることから(段落【0018,甲第1号証発明においては,近 】)赤外線蛍光トレーサーが生体内液体媒体の流動により生体内を移動し,その蛍光を体外から観測・計測するものである。 トレーサーからの蛍光を体外計測するための装置に特に限定はないが,励起光源によりトレーサーから生じる蛍光を蛍光検出器で検出することになるところ(段落【0025 ・ 0039,その具体的な検出の方法 】【】)(【】 についてはCCDカメラを用いることが示唆されており 段落 0006・ 0039,実施例として,CCDカメラに浜松ホトニクス株式会社 【】)製のC2400-75iを,画像処理装置にはARGUS20を用いた例が記載されている(段落【0035。】)上記励起光源となる放射手段,これを測定するカメラは人体等生体の外に配置される(段落【0025 ・ 0035。放射線の波長は,いず 】【】)れもトレーサーを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にある(段落【0007 ・ 0016 ・ 0035。 】【】【】)そして,手術等のリアルタイムイメージングへの応用についても示唆されているほか(段落【0040,経時的にトレーサーからの蛍光を追跡 】)した状況についても図示され(段落【0037 ・ 図3】〜【図6, 】【】)具体的には,投与直後,投与後1時間,投与後8時間の映像が示されている。 ( )一方,本件明細書(甲30〔特許公報 )には,以下の記載がある。 2 〕ア特許請求の範囲(判決注:請求項11に関し,請求項1の記載と異なる部分に下線を付した)・「 請求項1】【外科手術の間に,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を視覚化する装置であって,前記蛍光染料を励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記冠状動脈バイパスグラフト中の前記蛍光染料が放射した第2の放射線を検出して該冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得するカメラと,を備え,前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記蛍光染料は,ICGであり,前記第1及び第2の放射線の波長は,ICGを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,少なくとも毎秒15画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得し,前記ICGを含んだ血流が作る波面が視覚化されることを特徴とする装置 」。 ・「 請求項11】【外科手術の間に,冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を視覚化する装置であって,前記蛍光染料を励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記冠状動脈バイパスグラフト中の前記蛍光染料が放射した第2の放射線を検出して該冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得するカメラと,を備え,前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記蛍光染料は,食塩水によってボーラスとして一気に流せる,ICGを含む組成物であり,前記第1及び第2の放射線の波長は,ICGを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,少なくとも毎秒15画像の速度で前記冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得し,前記冠状動脈バイパスグラフトにおける血流が,ボーラスが作る波面によって視覚化されることを特徴とする装置 」。 イ発明の詳細な説明・「 発明の技術分野) (この発明は一般的に,動物の心血管系を通る血流を観察するための手順に関する(段落【0002 ) 。」】・「 発明の背景)(動物,特にヒトにおける心血管系に影響する疾患および損傷は今日の社会においてありふれたものである。こうした疾患の1つはアテローム性動脈硬化である。この疾患は,典型的には1つまたはそれ以上の動脈が狭くなることによって血管が部分的に塞がれること(狭窄)を特徴とする。最も深刻な形態においては,血管は完全に塞がれるところ(閉塞)まで狭くなる。冠状動脈において,狭窄および閉塞はしばしば深刻な胸痛およびおそらくは心筋梗塞(心臓発作)の形となって現れる。冠状動脈に限らず,アテローム性動脈硬化は,末梢脈管構造すなわち腕および脚に血液を循環させる動脈(および静脈)と,頚動脈すなわち脳に血液を運ぶ動脈と,頭蓋内動脈すなわち脳内に血液を分配する動脈とにも影響し得る(段落【0。」003 )】・「冠状および末梢血管におけるアテローム性動脈硬化の影響を克服するための努力において一般的に用いられる療法の1つは,バイパスグラフト外科手術である。この手順においては,血管グラフト,たとえば静脈もしくは動脈または代替的には柔軟な人工管などが,本来の血管の狭窄または閉塞部分を血液が迂回できるような態様で外科手術によって挿入される。バイパスグラフト外科手術の最もよく知られる例は冠状動脈バイパスグラフト(CABG)外科手術であろう。CABGにおいては,一般的に伏在静, 脈または内胸動脈であるグラフトがそれぞれ患者から採取または切開され患者の中に配置されることによって血流が狭窄または閉塞血管部分を迂回できるようになる。代替的または付加的には,グラフトを用いて血液が大動脈から動脈の狭窄または閉塞部分の下流の場所に直接流れ得るようにしてもよい(段落【0004 ) 。」】・「 発明の概要)(この発明は,1つの局面において,有利には血管が処置される侵襲性手順, の間に動物の血管の開存性を評定するための方法を提供することによって前述およびその他の必要性を満たす。この方法は,動物に蛍光染料を投与するステップと,血管部分の少なくとも1つの血管造影画像を得るステップと,少なくとも1つの血管造影画像を評価して血管部分の開存性を評定するステップとを含む(段落【0012 ) 。」】・「この発明の方法に従ってその開存性が評価され得る血管を例示するもの,,,, 。 は 冠状動脈 末梢脈管構造 頚動脈 頭蓋内血管およびAV瘻孔を含む血管開存性の評価は画像を視覚的に検査することによって定性的に行なわれてもよく,また所望であれば,血管直径の測定値を得ることによって定量的に行なわれてもよく,ここで特定の血管部分の内腔は実質的に均一な直径であることが望ましい(段落【0021 ) 。」】・「例として,この発明のこの局面は,医者が単一の侵襲性手順の際に,処置(たとえばバイパス)の前および後の両方に冠状動脈の血管造影画像を得ることを予期する。この態様で,医者は処置した血管の開存性を迅速に評価できる。これによって医者は処置した血管の問題に気づくと,同じ侵襲性手順の間に治療方策を取ることができ,動物にはその後の治療侵襲性手順に関連する外傷がなくなるため,これは有益である(段落【002。」3 )】・「この発明のこの局面は,筋肉,胃,肝臓,腸,膀胱,食道,肺,腎臓および脳組織を含むがそれに制限されないその他の体組織における血流を評定することをさらに予期する。血管造影画像は,これらの組織の表面の下の,目的の脈管構造の評価を可能にする深さを超えないところから得られてもよい。再び,および好ましくは,この深さは前述の組織のいずれかの表面から少なくとも約0.5cmであり,より好ましくは少なくとも約1cmであり,内視鏡による(判決注: にる」は誤記)組織へのアクセスは 「好ましい経路である。この方法は,たとえば内出血が止まったかどうかを評定する手順などのさまざまな侵襲性手順に関連して用いられてもよい。 たとえば,医者は以前に出血潰瘍であったところの出血を外科手術処置がうまく止めたかどうかを容易に定めることができる(段落【0030 ) 。」】・「この発明のさまざまな局面に従った画像を得るために,患者に蛍光イメージング剤が投与される。この蛍光剤は,それが目的の脈管構造を通るときにその脈管構造の少なくとも1つの有用な画像を得ることができるように選択されるべきである。蛍光染料は,特定の波長の放射線によって励起されるときに公知の波長の放射線を放射する。励起された染料によって放射される放射線は検出可能であり,放射線を可視画像に変換する好適な装置によって捕捉されてもよい(段落【0038 ) 。」】・「ここに説明されるような画像を与えるあらゆる蛍光染料が用いられてもよいが,インドシアニングリーン(ICG (IC-グリーン,カーデ )TMィオグリーン(),エイコーン社により販売 ,トリカ CARDIO-GREENTM )ルボシアニン染料の類似要素,およびそれらの混合物が好ましい。ICGは容易に入手可能であり,目の血管造影,心拍出量分析およびその他の表示のためにヒトに投与することが長い間認可されてきたために好ましい 」。 (段落【0039 )】・「さらなる任意の促進においては,パルス発生器18などの装置を用いることによって,レーザ出力がパルスにされ,カメラ画像取得速度と同期されてもよい。これによって,画像品質を保持しながら血管または組織が受取るレーザ放射線の量が減少される(段落【0049 ) 。」】・「イメージング剤からの放射を検出できる装置および特に好ましい蛍光染料もまた周知である。有利には,CCDカメラ2(例,日立KP-M2,KP-M3)などの,ある期間にわたって複数の画像を得ることができるカメラを用いてイメージング剤からの放射を捕捉してもよい。もちろん選択されるカメラは,イメージング剤によって放射される波長の放射線を捕捉できるものであるべきである。好ましくはカメラはこうした画像を少なくとも15画像/secの速度で,より好ましくは少なくとも約30画像/secの速度で捕捉すべきである。カメラはまた帯域フィルタ6と嵌合されることによって,イメージング剤から放射されたもの以外の放射線の捕捉を防いでもよい(段落【0050 ) 。」】・「カメラとレーザとの相対的な位置決めは,視覚ノイズとも呼ばれる画像明瞭度にも影響し得る。図1に示されるとおり,レーザはレーザおよびカメラの軸に関して,好ましくは約85°よりも小さく,より好ましくは約20°から70°である角度θ(判決注:原文の「Θ」は「θ」の意と認められる)にて置かれる。これらの角度で体腔にレーザ放射線を導入することにより,体腔中に存在する液体によって起こる,カメラに入るグレアの量が減少される(段落【0053 ) 。」】・「KP-160ビデオカメラ(日立電子株式会社,東京,日本)を用いて血管造影画像を回収した。KP-160カメラを選択したのは,それが電磁スペクトルの近赤外領域(ICGが蛍光を発するところでもある)において高感受性であり,励起されたICGから放射される放射線の捕捉を最適化するためである。… (段落【0067 ) 」】・「マウスを調製した後,ICGの10μlボーラスIV注入が施され,その後50μlの食塩水のIV注入が行なわれた。ボーラスを調製するために,注入の1時間以内に4μg/mlの臨床用等級のICG(カーディオグリーン)を滅菌水溶性溶剤に溶解した。すべての注入は頸静脈中に確TM立した挿管を介して施された。食塩水を用いて線にどっと流し,大腿部脈, 。」 管構造を完全なボーラスが通過し 鋭い波面が生成されることを確認した(段落【0071 )】ウ図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)・【図1 (この発明の装置の好ましい実施例を概略的な形で例示する 】図である )。 エ上記ア〜ウによれば,本件特許発明1は,外科手術の間に冠状動脈バイパスグラフトにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を視覚化する装置であって(特許請求の範囲 ,蛍光染料には,容易に入手可能で,ヒト )に投与することが長い間認可されてきたことからICGを用いるとされている(段落【0039。】)()(【】) イメージング剤 ICG からの近赤外線蛍光放射 段落 0067を検出する装置にはCCDカメラが例示され(段落【0050,これに】)より少なくとも毎秒15画像の速度で冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得し,ICGを含んだ血流が作る波面を視覚化する(特許請求の範囲)ものである。 そして上記「波面」に関しては,上記で摘記した請求項1,同11,発明の詳細な説明の段落【0071】にしかその記載がないところ,これらの記載によれば,審決が認定した(31頁9行〜10行。この審決の認定を原告も争わない)とおり 「時間とともに移動する境界領域であって, ,ICGを含んだ血液とICGを含まない血液との境界領域」の意味と解される。そうすると,本件特許発明1は,この境界領域部分を視覚化することにより,血管部分の開存性を評定することを可能とするものである(段落【0012。】)( )上記( ),( )によれば,本件特許発明1と甲第1号証発明とは,いずれ312も,外科手術の間に,生体内液体媒体の流れの中を運ばれる近赤外線蛍光トレーサーの移動を視覚化する装置であって,前記トレーサーを励起させる第1の放射線を放射する放射手段と,前記トレーサーが放射した第2の放射線を検出して造影画像を取得するカメラと,を備え,前記放射手段及び前記カメラは,患者の体外に配置され,前記第1及び第2の放射線の波長は,前記トレーサーを使用するための励起及び放射スペクトルの帯域にあり,前記カメラは,可視スペクトルの外にある放射線を可視像として視覚化することが可能であり,所定の画像化速度で観察対象の造影画像を取得し,前記トレーサーを含んだ生体内液体媒体の流れが作る波面が視覚化される装置である点で一致するものと認められる。そうすると,審決の一致点の認定に誤りはないというべきである。 ( )ア原告は,審決が甲第1号証発明が観察対象とする「生体内液体媒体の4流れ」と本件特許発明1が観察対象とする「血流」とは異なる内容のものである,すなわち甲第1号証発明が観察対象とするのは静的な状態のもののみであるから,これを一致点と認定したのは誤りであると主張する。 しかし,上記(1)エのとおり,甲第1号証発明は,トレーサーが生体内液体媒体により移動する様を観察可能とするものであり,経時的にトレーサーからの蛍光を追跡した状況が図示され,手術等のリアルタイムイメージングへの応用についても記載されているものであるから,甲第1号証発明が観察対象とするのは静的な状態のもののみであるということはできない。 また原告は,甲1の記載である「生体内液体媒体(例えば血液,脊髄液等(段落【0018 )の記載は概括的・抽象的であり,これに接した )」】当業者である心臓血管外科研究医において,生体内液体に関する全ての液体を蛍光造影することが記載されていると理解しないと主張する。 しかし,本件特許発明1は,冠状動脈バイパスグラフト手術の際に用いる術中血管造影を行うための装置に関し,蛍光染料であるICGを励起させる第1の放射線を放射する放射手段と蛍光染料が放射した第2の放射線を検出して冠状動脈バイパスグラフトの造影画像を取得するカメラ等から成る装置の発明であって,その場合の当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)とは,被告のような医療機器メーカーの技術者が主であって,原告が主張する心臓血管外科研究医に限られるものではない。原告の上記主張は採用することができない。 イ次に原告は,トレーサーの相違からくる装置構成の相違を看過して一致点としたこと,すなわち甲第1号証発明では,投与される複合体(ICG-HDL)が流れの遅い部位に投与された蛍光を励起させるのに適切な構成を開示したものにすぎず本件特許発明1とは異なる構成の励起光源であること,造影画像を取得するカメラの装置構成も異なることを主張する。 しかし,上記(1)エで認定したとおり,甲第1号証発明における生体内を移動する観察の対象は 近赤外領域蛍光色素インドシアニングリーン I , (CG)とヒト高密度リポプロテイン(HDL)との複合体(ICG-HDL)からなる近赤外線蛍光トレーサーであり(上記(1)イ摘記の段落【0005 ・ 0014 ・ 0021 ・ 0027,本件特許発明1につ 】【】【】【】)いても,血流の中を移動する観察対象は蛍光染料であり,この蛍光染料が近赤外線蛍光トレーサーであることは,上記(2)エで認定したとおりであるから,審決がこれを一致点と認定したことに誤りはない。その上で審決は,上記トレーサーの相違につき,相違点1と認定して検討しているのであるから,審決の認定に誤りはない(なお,相違点1に関する審決の認定・判断に誤りがないことは後述のとおり 。)また原告は,本件特許発明1と甲第1号証発明における造影画像を取得するカメラの構成が異なるとも主張するが,この点も審決はカメラ構成の前提となる造影画像の画像化速度の相違について相違点3として認定・判断しており,一致点に関する審決の認定に誤りはない。 以上の検討によれば,原告の上記主張は採用することができない。 ウさらに原告は,審決が本件特許発明1と甲第1号証発明とが「所定の画像化速度で観察対象の造影画像を取得する」との点を一致点と認定したことは,両者の技術的差異を無視したものであり,甲第1号証発明は静止画を取得するものであるのに対し,本件特許発明1は動画を取得するものであることを看過したものであり誤りであると主張する。 しかし,上記(1)イ摘記のとおり,甲1には,近赤外線蛍光トレーサーの移動を経時的に観察することが記載され,具体的には投与直後,投与後1時間,投与後8時間の蛍光の移動を測定した状況が記載されている(段落【0037 ・ 0038 ・ 図3】〜【図6 )から,審決が所定の画 】【】【】像化速度で造影画像を取得することを一致点として認定したことに誤りはない。その上で審決は,本件特許発明1が少なくとも毎秒15画像の速度で造影画像を取得するとしている点を相違点3として認定し,判断しているのである。審決の認定に誤りはなく,原告の上記主張は採用することができない。 エ次に原告は,甲第1号証発明におけるトレーサーの「移動」と,本件特許発明1の「流れが作る波面」との「視覚化」には,甲第1号証発明が静止画であるのに対し,本件特許発明1は流れの動態そのままの視覚化であるから技術的意味が異なり,審決の一致点の認定には誤りがあると主張する。 しかし,上記イ,ウで検討したとおり,甲第1号証発明と本件特許発明1との観察対象の相違(トレーサーの相違,画像化速度の相違)に関して審決の認定には誤りはないから,原告の上記主張は採用することができない。 3取消事由2(本件特許発明1と甲第1号証発明との相違点1〜3についての各判断の誤り)について( ) ( )取消事由2-1 相違点1に関する判断における周知技術の認定の誤り1につき原告は,審決が相違点1に関し,赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いた蛍光イメージング装置により血管造影を行うのは周知技術であると認定したのは誤りであると主張する。 ア審決が周知技術を示すものとした文献である甲5,甲6には以下の記載がある。 (ア)甲5(特表平8-503406号公報,発明の名称「目の新毛細血管膜の検出と治療 ,出願人 ザ・ジョンズ・ホプキンズ・ユニバーシテ 」ィ,公表日 平成8年4月16日。便宜のため摘記の前に?@以下の番号を付した)?@ 「…この特許の一好適実施例において,被験者に対して,フルオレセインナトリウム染料とインドシアニングリーン染料との混合物の静脈注射を一回行う。次に,目から,それぞれ,フルオレセインナトリウム染料に起因して発せられる電磁放射と,インドシアニングリーン染料に起因して発せられる電磁放射とを,互いに分離するように改造された眼底カメラを使用して,互いに独立した網膜循環と脈絡循環との血管造影を同時に得る(7頁12行〜17行) 。」「, , ?A本発明によれば 第1ボーラスの蛍光染料が患者に静脈注射されると眼底カメラによって,目の眼底の画像を,例えばこの眼底カメラに接続されたビデオカメラ等の画像捕捉手段上に焦点合わせさせる。染料ボーラスが,脈管構造に浸透すると,眼底カメラによって眼底に拡散状に焦点合わせされた第1レーザによって,染料が蛍光発光する。次に,眼底カメラは,前記画像捕捉手段とコンピュータ等の画像記録分析手段との協動で,脈管構造における染料の通過を記録する。そして,この脈管構造中に存在する染料を記録によってマップが構成される。このマップ上において,新血管新生膜などの脈管構造の異常は,正常な脈管構造と,例えば,蛍光の形状,強度,あるいは,染料がその異常部を通過する速度などの観察可能な状態で異なって現れる(10頁16行〜25行) 。」?B「上述のように,脈管構造の異常部位は,眼底の正常な脈管構造と観察可能な状態で異なっている。例えば,蛍光染料が眼底を通過移動する際に,眼底の異常部位を,正常な領域との比較を通じて特定することができる。例えば,ある領域または部位が,蛍光の形状,強度,質あるいは染料がその領域を通過する速度において,正常な眼底と大きく異なることによって異常を検出することができる(15頁1行〜5行 ) 。」?C「コンピュータシステム72に,第1レーザ26からの光エネルギで眼底を拡散状に照射し,その画像の捕捉,記録および分析を開始するように指示する。次に,患者に第1ボーラスの染料を静脈注射によって投与する(16頁3行〜6行) 。」?D「この実施例において,第1ボーラスの染料はインドシアニングリーン(ICG)であるが (16頁15行〜16行) 」?E 「第3の実施例においては,第1レーザは,近赤外線スペクトル領域に属する波長を有し,完全に均一な照射界を作り出すために積分球を介して眼底カメラに接続された半導体レーザである。蛍光画像を記録するの, , に使用する画像捕捉手段は 805nm近くの波長に対する感度を有し最低毎秒15フレームの速度で電子ゲート制御またはシャッタ作動(即ち,開閉操作)可能なシリコンアレイデバイスである。更に,上記第1レーザは,前述の好適実施例においては連続モードで操作されたのに対して,ここでは,パルスモードで操作され,そのパルスの発生は,上述の電子シャッタ作動する画像捕捉手段が,脈管構造中に存在する蛍光染料から発生される光を受け取る時間間隔に正確に同期されている(1。」8頁2行〜10行)(イ)甲6(特表平10-506550号公報,発明の名称「眼における脈絡膜の血流および迷入血管構造の改善された視覚化 ,出願人 ザ・ジ 」ョーンズ・ホプキンス・ユニバーシティ,公表日 平成10年6月30日。便宜のため摘記の前に?@以下の番号を付した)?@「 ナトリウム・フルオレセイン血管造影法において遭遇する高速の脈絡膜血流を視覚化しようと試みる時に遭遇する主要な問題を克服するために,高速インドシアニン・グリーン色素の蛍光血管造影法が開発された。ICG血管造影法は,網膜色素上皮および脈絡膜色素を比較的容易に透過する近赤外線波長を用いる(7頁7行〜10行) 。」?A「…ICG蛍光は移動する血液量中の血液蛋白に結合された色素分子から生じる(7頁14行〜15行) 。」?B「臨床的な脈絡膜血管造影法に関しては,ICG血管造影法は,最良の, (, 一時的および空間的な解像度を提供し 正常な生理学的条件下で 即ち眼内圧を上昇させるなどの方法により血流を人為的に遅くする必要なしに)脈絡膜中の色素の通過の視覚化を可能にする(7頁19行〜22 。」行)「, , , ?C明らかに 鮮鋭に規定された波面の進行は 規定の不良な場合よりも毛細血管網を介して容易に追跡される(8頁6行〜7行) 。」?D「ICG色素が脈絡膜循環を通って転移する際,805nmのレーザ・ダイオードをビデオ・カメラと同期して発光させることにより,ゲート動作するビデオ・カメラがICG色素の像を記録する(11頁8行〜。」10行)?E「一連の血管造影図が高速度(約15〜30像/秒)で作られる (1」1頁18行 )?F「ICG色素(12.5mg/ml)の小塊(約0.05ml)が比較的大きな伏在静脈中に挿入されたカテーテルを介して注入され,その直後に2.0mlの塩水フラッシュが行われた。脈絡膜脈管構造における色素の通過が改造されたツァイス眼底カメラを用いて検出され,PCによるビデオ・フレーム・グラバーによりディジタル的に直接記録された(14頁17行〜21行) 。」?G「…眼底カメラの通常の像受取り手段,即ち写真フィルム・カメラが,赤外線感応ビジコン管(モデル4532URIウルトラコン,Burle Industries社製)18で置換され(ビジコン管の代わりに電荷結合デバイスが使用可能である ,このビジコン管の前方に,ICG )色素蛍光を通すが励起レーザ光は排除するため,807nmの波長の遮断フィルタ20が設置された。脈絡膜色素の通過は,パーソナル・コンピュータ(Compaq社モデル386/25e (図示せず)に組み込 )(, まれた2個のディジタル・フレーム・グラバー モデル2861-60Data Translation社製 (図示せず)によって毎秒30 )または15フレームの速度で32枚の連続的なビデオ血管造影像に記録された(14頁26行〜第15頁7行) 。」?H 「図5dにおいて,0.133秒後には,色素充填の最初の波面は周辺域に達したように見え,この段階では,図5dは図5aの略々完全な逆コントラスト像である。 色素充填の波面は,約0.466秒で黄斑域から30°の視野の周辺へ半径方向に移動していた。このような全体的な充填パターンは観察された各眼球に存在し,充填パターンの細部はそれぞれの対象の眼に対して。」( ) 観察ごとに著しく一貫したものであった15頁25行〜16頁3行?I「ICG色素が脈絡膜循環により転移するにつれ,ゲートされるビデオ・カメラ36は,805nmのレーザ源44をビデオ・カメラ36と同期して発光させることによりICG色素の像を記録する。規則的な間隔で(例えば,8番目の像ごとに)480nmの光源42が発光されるように,カメラと光源との適切なプログラミングが行われ,同時に,ビデオ・カメラの前方の障壁フィルタ46の適切な変更が行われる(17。」頁23行〜28行)イまた,文献には以下の記載がある。 (ア)乙1(Kaoru Sakataniら「近赤外線蛍光を用いたクモ膜下腔および髄液流路の非侵襲光学的イメージング「J.Neurosurg ,87巻,7 」,」38頁〜745頁,1997年11月号所収,審判甲21。以下,訳文による)・「インドシアニングリーンはまた,近赤外線光により励起されると近赤外線蛍光を放つ。ICGの近赤外線蛍光は,網膜血管新生の画像化や…に適用された。… (2頁12行〜14行) 」「 , ・光学的診断技法は新しい強力なモニタリング方法として認識され始めこの方法により組織の酸素化状態および血行動態を非侵襲的に持続評価できる。…CCDカメラは脳血流の研究に使用され,網膜血管造影に適用されてきた。…ICGの画像を取得するために,CCDカメラを用いるつの方法(蛍光イメージングおよび吸収イメージング)が報告され2ている。最近,われわれは,CCDカメラを使用して,蛍光イメージングと吸収イメージングにおいて,マウス脳に蓄積したICGを検出する能力を比較した。…このことは,生体組織におけるICG検出力に関して,蛍光イメージングが吸収イメージングより優れていることを明確に示している(6頁6行〜24行) 。」Stephen A.MayPhotonic Approaches to Burn (イ)乙5(寄稿編集「」( ), Diagnostics Biophotonics International フォトニクスによる熱傷の診断1995年〔平成7年 ,44頁〜50頁。以下,訳文にMay/June,1995, 〕よる)・「…視診による診断は困難で不正確であることが多いため…最も有望なのがレーザーとインドシアニン・グリーン(IG)色素を用いる画像診断法である(1頁要約部分2行〜4行) 。」・「…心臓学で用いられているIGの標準量は,約2mg/kg体重である(4頁22行)。」Joseph StillEvaluation of the Circulation of Reconstructive (ウ)乙8(ら「〔インドシFlaps Using Laser-Induced Fluorescence of Indocyanine Green 」アニン・グリーンによるレーザー励起蛍光法を用いた再建皮弁の循環評価〕1999年〔平成11年〕3月,2Annals of Plastic Surgery,Vol.42,No3,66頁〜274頁。以下訳文による)・「…ICG色素は,数十年間にわたり,肝機能,心拍出量,脈絡膜血管造影の評価に用いられ (6頁下5行〜下4行) 」(エ)乙13(春日信照「急性期心筋虚血範囲決定に関する実験的研究」,, ) 日胸外会誌第30巻2号 68頁〜76頁 昭和57年2月10日付け・「1961年,らがを肘静脈より静注し,これ NovotnyFluoresceinNaが網膜に到達したときに,血性より蛍光を発生させて,眼底写真を撮影し…FluoresceinNaSalisbury 一方,循環器科領域に対するの応用としては,らがを冠動脈に注入して,2〜3分後に心臓を取り出FluoresceinNaし,心筋内におけるの分布状態から心筋内の血液分布 FluoresceinNaを推測する方法を発表した。…を犬の冠動脈結紮実験 FluoresceinNaで肢静脈より静注し,開胸心拍動下に心筋の虚血部位と硬塞部位の輪廓を描出し得たと報告した(73頁右欄29行〜末行) 。」(オ)甲25(特表平10-513175号公報,発明の名称「光透過,反射に基づく生体内撮像用の造影剤 ,出願人 ナイコムド イメージン 」グ エーエス,公表日 平成10年12月15日)・「1.ヒト又はヒト以外の動物の身体の画像を光撮像法によって作成す, , る方法であって 生理学的に許容できる粒子状造影薬を該身体に投与し前記身体の少なくとも一部の画像を作成することを特徴とする方法。…1 6.前記薬によって放射される蛍光から前記画像を作成する請求項からまでのいずれかに記載の方法。…38.前記画像が前記身体内の血管の画像である上記請求項のいずれかに記載の方法(2頁2行〜16行) 。」・ 「リポソームを光撮像用造影薬の担体として用いる他に,例えばドデシル硫酸ナトリウム…などの界面活性分子から形成されるような単純なミセルを,実質上水不溶性であるが,両親媒性ミセル形成剤によって可溶化することのできる光学標識(例えばインドシアニングリーンのような光学標識)の担体として使用することもできる。… (25頁14行〜 」19行)「() 」() ・…粒子状担体 例えば…リポソーム …28頁末行〜29頁1行・「本発明造影薬は,生体内での光撮像,とりわけ外部排泄路を持つ器官又は導管(例えば胃腸路,子宮,膀胱など ,血管,食菌器官…に使用 )。 。 」 できる …造影剤の蓄積又は通過を示す時間的画像であってもよい …(32頁下2行〜33頁7行)0.01 ・「実施例8光学標識リポソームインドシアニン・グリーンのM溶液と5〜%のリン脂質…リポソーム懸濁液を調整する。… (3 10 」6頁23行〜27行)ウ上記ア,イのとおり,甲5,6にはICGからの蛍光を追尾して血管造(,), 影を行うことが記載され 甲5摘記?@・?A・?D・?E 甲6摘記?@〜?D・?G乙1,乙5,乙8,乙13,甲25にもICGを用いた蛍光イメージング装置ないし画像診断が記載されている。 また,上記2( )イ摘記のとおり,甲第1号証発明の記載された甲1の 1従来技術にも,赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いうることが記載されている(段落【0007。】)エ上記ア〜ウによれば,赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いた蛍光イメージング装置により血管造影を行うことは周知技術であったと認められ,そうすると,審決の周知技術の認定に誤りはないというべきである。 そして,この周知技術を前提として,審決が相違点1につき容易想到と判断したことに誤りはない。 オ(ア)原告は,当業者である心臓血管外科研究医の間では,ICGが蛍光を発する事実すら一般的に知られていなかったとし,それに沿う証拠として甲57(心臓血管外科医である作成の「意見書 ,平成20年9B 」月26日付け)を提出する。 (イ)なるほど甲57には,以下の記載がある。 ・「…TMRとは,経心臓筋脈管再生治療のことです(1頁11行〜。」12行)・「…本件発明以前においては,少なくとも心臓血管外科医の間では,TMRの際に限らず,ICGの蛍光性を用いた写真検出など行っていませんでしたし,ICGに蛍光性があること自体,通常知られていませんでした(2頁8行〜11行) 。」・「文献2(判決注:本件甲25)に 「ICG」や「血管」の記載があ ,るからといって,そのような未知の物質を造影剤として心臓の血管に使用できるとは到底理解できません。文献2には,ICGを心臓の血管に適用することについて全く記載がありませんし,そもそも血管と言ってもその種類が異なれば全く異なった性質の臓器ですから,ある造影法で血管一般全てを造影できると考えること自体,医学的に考えられません(2頁25行〜29行) 。」(ウ)本件特許の優先日当時(平成11年〔1999年〕9月24日)の心臓血管外科医の状況について,上記医師の認識に何ら誤りはない Bとしても,上記2で検討したとおり,本件特許発明1に関する当業者は心臓血管外科医師に限られるものではないから,原告の上記主張はその前提を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 カまた原告は,甲5,6に開示された技術は眼底カメラに関する技術であり,本件特許発明1に関する当業者である心臓血管外科研究医とは何ら関連性がないとも主張する。 しかし,本件特許発明1に関する当業者が心臓血管外科研究医に限られないことは前記のとおりであって原告の主張は前提を欠くほか,甲5,6はいずれもICGを用いた経時的な血管造影法に関するものであるから,上記エの周知技術の認定を妨げるものではない。原告の上記主張は採用することができない。 キ次に原告は,審決が「6.被請求人の主張について (34頁25行) 」として被請求人である原告の主張に対する判断をしているところ,そのうち?@「…CABGに関心を有する当業者にとって,ICGを用いた蛍光イメージング装置による血管造影が未知のものであるとする理由もない 」。 (36頁28行〜30行)とした点,?A「心臓の血管がICGを用いた蛍光イメージング装置の適用対象に含まれるものであることは周知 (35」頁下5行〜下4行)であるとした点はいずれも誤りであると主張する。 しかし,本件特許発明1に関する当業者は前記のとおり心臓血管外科研究医に限られるものではないのみならず,上記エのとおり,赤外線蛍光トレーサーとしてICGを用いた蛍光イメージング装置により血管造影を行うことは周知技術であると認められるから,原告の上記主張は採用することができない。 ク次に原告は,審決が相違点1に関する判断において,甲第1号証発明に関し,?@「…甲第1号証は…ICG単体を用いた血管造影では限られていた適応部位の制限をなくすために,ICG-HDL複合体を近赤外線蛍光トレーサーとすることを開示したものであること… (32頁21行〜2 」4行)としたこと,?A「…甲第1号証記載の体外蛍光イメージング装置がICG-HDLからの赤外線以外は検出できないというようなICG-HDLと一体不可分の構成であるとは認められない… (32頁24行〜2 」6行)としたのは誤りであると主張する。 しかし,甲1には,ICG単体を用いた血管造影では限られていた適応部位の制限をなくすために,ICG-HDL複合体を近赤外線トレーサーとすることが記載されており(段落【0041,甲第1号証発明の体外 】)蛍光イメージング装置がICG-HDLからの赤外線以外は検出できないというようなICG-HDLと一体不可分の構成であるとは認められないことも段落【0007 ・ 0019 ・ 0041】の記載から明らかで 】【】【ある。原告の上記主張は採用することができない。 ( )取消事由2-2(相違点2に関する判断における,甲第1号証発明の認2定及び周知技術の認定の誤り)につき原告は,審決が相違点2に関する周知技術に関し 「…冠状動脈バイパス ,手術の間に,冠状動脈バイパスにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術は周知 甲第7号証技術 甲第8号証技術参照 である3 (,)」(3頁5行〜7行)と認定したことは誤りであると主張する。 ア審決が上記周知技術を示すものとした文献には以下の記載がある。 T.TakayamaIntraoperative Coronary Angiography Using (ア)甲7(ら「Fluorescein Ann Thorac 」 ) (フルオレセインを用いた術中冠状動脈造影 ,,1991年〔平成3年〕51:140頁〜143頁。以下,訳文Surgによる。便宜のため摘記の前に?@以下の番号を付した)?@「フルオレセインを用いた術中冠状動脈造影を,大伏在静脈グラフトの遠位側吻合完了直後に,グラフト開存性の評価に適用した。同技法によって,血行再建した心筋領域がリアルタイムで十分に評価された。この術中直視検査によって,冠状動脈バイパス術中に,よりタイムリーかつ正確な情報が得られる(1頁5行〜8行) 。」?A「大伏在静脈グラフトを用いて遠位側の吻合を行った後,手術室のライトをすべて消し,黒色蛍光電球を心臓から10cm上に設置して心臓壁を照らした。続いて20〜40mLの蛍光造影剤を大伏在静脈グラフトの近位端から150mmHgの圧力で注入した 図11()。」(頁18行〜20行)?B 「すべての症例において,明るい緑黄色の蛍光をリアルタイムで,バイパス・グラフト,吻合部,冠状動脈,冠状動脈枝,心筋壁,冠静脈の順序で各部位から明瞭に観測した。グラフトによって血行再建した領域は,非灌流の隣接域とのコントラストが明確であり,明るい蛍光を示した 」 (2頁2行〜4行) 。 ?C「フルオレセインは,2箇所の吻合部を介して心臓の下壁および側壁を灌流し,境界が明瞭な明るい蛍光を示した(2頁10行〜11 。」行)?D「フルオレセイン血管造影法では,吻合部からの逆行性血流によって対角枝が最初に十分に描出され(図4A ,LADへの順行性血流 )は遅れて観測された(図4B(2頁12行〜14行) )。」?E「術後冠状動脈造影および術中検査における所見から,対角枝への選択的血流および吻合部での50%超の狭窄が確認された(図5A,B(2頁18行〜19行) )。」?F「吻合部狭窄の重大性やグラフト血流分布の正常性に関しては,吻合による蛍光の流れを経路と滑らかさの点から観測することによって十分な臨床情報が得られた(3頁1行〜2行 」 。」)Tetsuro TakayamaIntraoperative Coronary Angiography Using (イ)甲8ら(「(フルオレセインを用Fluorescein: Basic Studies and Clinical Application 」Vascular Surgery April, いた術中冠状動脈造影:基礎研究と臨床応用 」)1992年〔平成4年〕4月。以下,訳文による。便宜のため摘記の前に?@以下の番号を付した)?@「冠状動脈バイパス術(CABG)の安全性および信頼性を向上させるために,フルオレセインを用いた術中冠状動脈造影を実験および臨床の両面から検討した(1頁3行〜4行) 。」?A「2.心臓から10cm上に設置した6W黒色蛍光灯の照明下で,0.06%フルオレセイン(0.5mg/kg体重)をグラフト近位。 , 端からボーラス注入する 冠状動脈へのフルオレセイン直接注入では組織学的な血管壁障害は認められなかった。 臨床応用では,グラフト血流分布,グラフトによる灌流領域,および吻合部の開存性を,蛍光の観測によってリアルタイムで十分に評価した。2名の患者において,心筋保護液による心停止中に,本検査によって吻合部の予期せぬ狭窄およびグラフト血流の分布異常が認められたが,手術中に追加グラフティングの必要性および血行再建範囲を評価することができた(1頁7行〜13行) 。」?B「動物実験体重10〜22kgの雑種イヌ10頭において,全身麻酔下で…心臓を露出した。…フルオレセイン注入のため,心拍動下または心筋保護液による心停止下で,…フルオレセインを注入した…心拍動下および心筋保護液による心停止下で以下の因子を検討した(2頁1行。」〜8行)?C「結果フルオレセイン溶液の注入により,心筋および冠状動脈樹の灌流領域がリアルタイムで明瞭に描出された…拍動中の心臓と心筋保護液による心停止下にある心臓との間に蛍光分布の有意差は認められなかった。… (2頁14行〜23行) 」?D「フルオレセイン注入直後に,明瞭な蛍光をリアルタイムに以下の順序で検出した。すなわち,グラフト,吻合部,冠状動脈,冠状動脈,,。,, 枝 心筋壁 最後に冠静脈である 血行再建領域は 非灌流隣接域と明確な境界で区別された(図5 。2症例において,吻合部を介して )の冠状動脈へのフルオレセインの流入遅延とそれに対応する心筋の弱い蛍光が観測されたが,このことはグラフティング中には予測しなかった(図6(3頁6行〜10行) )。」?E「本法では,従来の冠状動脈造影法では可能である,冠状動脈および吻合部の正確な狭窄率の判定を行うことはできなかった。しかし,バイパス血流の選択的経路,吻合部を介する血流の滑らかさ,および血行再建領域は,リアルタイムで容易にかつ明瞭に評価することができた。さらに,蛍光領域の幅は,グラフトに対応する血行再建心臓壁の範囲を定量的に表しており,蛍光領域の輝度は心筋の血流量を示している。本試験における患者2名で認められた減弱した蛍光は,主に吻合部の狭窄に起因する,血行再建の不完全さを示唆した。必要であれば,このような症例の場合,大動脈遮断中に迅速な外科的修復を考慮に入れることもできる(3頁18行〜25行) 。」?F「…本試験で使用したフルオレセイン溶液は,濃度(0.06%)および総用量(0.5m/kg体重)の双方に関して,過去の研L究における末梢静脈を介して冠状動脈に到達させる注入方法の場1-4合よりも少なかった。… (4頁12行〜14行) 」イ上記によれば,甲7,甲8には,冠状動脈バイパス手術の間に,吻合の状態を確認するグラフト開存性評価のため,冠状動脈バイパスにおける血流の中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術について記載されている(甲7摘記?@〜?D,甲8摘記?@・?A・?D)から,これは周知技術であると。, , 認められる そうすると 審決の周知技術の認定に誤りはないことになりこれを前提にして相違点2に関し容易想到と判断したことに誤りはない。 ウ原告は,甲7,甲8はいずれも血液の存在しないグラフトに関するものであるとして,審決の認定は誤りである旨主張する。 しかし,上記甲8の摘記?B・?Cにあるようにイヌにおいて心拍動下において血流を観察した記載があるほか(本件特許発明1もヒトに限定されない動物の心血管系を通る血流を観察するための手順に関する。本件明細書段落【0002,甲8の摘記?Fにあるように,血流により冠状動脈に蛍 】)光染料(フルオレセイン)を到達させる方法も過去の研究例として前提とされていることから,審決の上記周知技術の認定には誤りはない。原告の上記主張は採用することができない。 エ次に原告は,審決が相違点2に関する判断において 「甲第1号証発明 ,は手術中に用いられる体外蛍光イメージング装置であることからして,該体外蛍光イメージング装置が用いられる対象として,生体内液体媒体の流れの中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術を視野に入れていることは明らかである (33頁2行〜5行)とした認定は誤りである旨主張す 」る。 しかし,上記2( )エで認定したとおり,甲第1号証発明においても,1体外蛍光イメージング装置が用いられる対象として,生体内液体媒体の流れの中を運ばれる蛍光染料の移動を観察する手術を視野に入れていることは明らかである(上記2( )ア・イで摘記の請求項1・5,明細書の段落1【0014 ・ 0016 ・ 0018 ・ 0024】の記載)から,原 】【】【】【告の上記主張は採用することができない。 オ次に原告は 「甲第1号証にはトレーサーが移動する生体内液体媒体の ,流れとして,血液の流れも例示され,またICG単体を用いた血管造影が【0007】や【0041】に従来技術として記載されていること (3」3頁7行〜10行)との認定も誤りである旨主張する。 しかし,上記上記2( )エで認定したとおり,甲第1号証発明において1は血液の流れも例示され(段落【0018,またICG単体を用いた血 】)管造影に関しても記載されている(段落【0007 ・ 0041 )こと 】【】が明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。 カさらに原告は,審決が「赤外線蛍光トレーサーとしてICG-HDL複合体と周知のICGのどちらを用いるかは当業者による設計事項であること (33頁10行〜12行)とした認定は誤りである旨主張する。 」この点については,上記2( )エのとおり,赤外線蛍光トレーサーとし1てICGを用いた蛍光イメージング装置により血管造影を行うことは周知技術であり,赤外線蛍光トレーサーとしてICG-HDL複合体と周知のICGのどちらを用いるかは設計事項と認められる。原告の上記主張は採用することができない。 ( )取消事由2-3(相違点3に関する判断における,甲第1号証発明の認3定及び周知技術の認定の誤り)につきア原告は 「…ICGを含んだ血液とICGを含まない血液との境界領域 ,を,少なくとも毎秒15枚の速度で画像を取得する技術は周知であること(甲第5号証技術,甲第6号証技術参照(33頁24行〜26行)と )。」の認定は誤りである旨主張する。 しかし,上記( )アで摘記したとおり,甲5には,ICGを含んだ血液1に関し(摘記?C・?D ,最低毎秒15フレームの速度でシャッタ作動をす )る蛍光補足手段が記載され(摘記?E ,甲6には,ICGを含んだ血液と )ICGを含まない血液との境界領域である波面(摘記?@・?A・?C)を,約15〜30像/秒で血管造影し(摘記?E ,記録する装置(摘記?G・?I) )が記載されている。 上記によれば,ICGを含んだ血液とICGを含まない血液との境界領域を,少なくとも毎秒15枚の速度で画像を取得する技術は周知である旨の審決の認定に誤りはない。 イ次に原告は,審決の「…甲第1号証における実施例で用いられたCCDカメラC2400-75iは…画像処理装置ARGUS20とともに用いられることにより,少なくとも毎秒15枚の画像取得速度においてもCABGにおける血流の中を運ばれるICGの移動を視覚化できるものであること(33頁27行〜36行)との認定は誤りである旨主張する。 。」(ア)しかし,甲第1号証発明の実施例で用いられた画像処理装置については 「データ処理装置についても例えば『ARGUS20(浜松ホト ,ニクス株式会社製 』が使用可能である(上記2( )イ摘記段落【0 )。」1025 )とされており,浜松ホトニクス株式会社製のARGUS-2 】0を用いることが記載されている。 (イ)そして審決が上記認定の根拠に挙げた甲17(浜松ホトニクス株式会社1995年〔平成7年〕4月25日作成「生物顕微鏡画像高品位質観察システム ARGUS-20 取扱説明書」)には,以下の記載がある。 ・ 「?Cコントラスト調整ツマミ入力画像のコントラストを調整します。センタークリック位置より右に回すとコントラストが強調され,左に回すとコントラストが低減されます(3頁)。」・「ENH……画像処理を行なった画像に対して白黒反転やコントラスト強調,二値化などの明るさの変換処理を行った強調注)画像を映し出します ()。 ENHANCEDIMAGE強調画像は10種類以上の変換パターンのうち常用する3種類を選んで使用します。 注意明るさの変換処理についてイメージングコマンドで処理された画像の,テレビモニタ画面に出力されている256階調(8ビット)の明るさに対して変換を行い,ENH画像として画面に映し出されます(51頁)。」・「STH1(Stretch1), 。 任意の範囲の明るさに対して傾斜を付け コントラストを増強します… (97頁 )」)・「GAM1(Gamma1)ガンマ値を1以下にすると暗い部分のコントラストが高まり,ガンマ値を1以上にすると 明るい部分のコントラストが高まります9 , 。」(8頁)上記によれば,ARGUS-20イメージプロセッサは,画像処理を行った画像に対して,任意の範囲の明るさに対して傾斜をつけコントラスト増強を行うSTH1,明るい部分ないし暗い部分にコントラスト増強を行うGAM1といった変換処理を行った強調画像を映し出す「ENHANCED IMAGE機能」を有していることが認められる。 (ウ)甲26(浜松ホトニクス株式会社 システム事業部 第2設計部 第16部門作成「+による低照度画像観察報告書」C2400-75iARGUS20実施年月日2008年〔平成20年〕1月17日 ,甲27(浜松ホト )ニクス株式会社 システム事業部 第2設計部 第16部門作成「+による低照度時における空間分解能報告書」C2400-75iARGUS20実施年月日2008年〔平成20年〕1月31日)によれば,ARGUS-20イメージプロセッサは,低輝度(255階調で輝度5)の視覚化されていない画像あってもSTH1のコントラスト増強機能を用い感度を約30倍増強することで,画像表示速度毎秒30画像を維持したまま視覚化を可能とするものであることが認められる。 (エ)上記(ア)〜(ウ)によれば,甲第1号証発明に用いられた装置においても,少なくとも毎秒15枚の画像取得速度においてもCABGにおける血流の中を運ばれるICGの移動を視覚化できるものと認めることができるから,審決の上記認定に誤りはないというべきである。 R.W.FlowerComparison of the (オ)これに対し原告は,甲51(「〔甲第1号証の装置と装置Hamamatsu Exhibit 1 and SPY DevicesSPY 」との比較〕平成19年10月22日作成)を提出し,甲51の実験結果によれば,甲第1号証発明の装置では,仮に毎秒15枚の画像取得速度に装置を変更して撮影したとしても,輝度値10の微弱な輝度しか得られず画像を視覚化できないと主張する。 しかし,甲51の実験は,上記ARGUS-20のコントラスト増強機能(ENHANCEDIMAGE機能)には何ら言及していないから,甲第1号証発明に接した当業者において,いかなる調整を施しても毎秒15枚以上で取得された画像の視覚化を実現できなかったとまでいうことはできない。加えて,ICGトレーサーから放出される蛍光を観察できるように該ICGを励起させる放射照度を強めるなど,各種実験条件や装置の設定を調整したりすることは当業者が適宜なし得ることである。原告の上記主張は採用することができない。 ウ次に原告は,審決の「既に蛍光を放出することが分かっているトレーサーからの蛍光を観察する装置を使用する際に,放出されているはずの蛍光が見えるようになるまで装置を調整するのは当業者が通常行うことであること(34頁18行〜20行)との認定は誤りである旨主張する。 。」原告はその理由として,本件特許発明1を知ることなく上記調整を行う, 。 ことは非常に困難であり 審決の上記認定は誤りであるとするものであるしかし,審決の認定は上記のとおり,既に蛍光を放出することが分かっているトレーサーからの蛍光を観察する装置を使用する際の装置の調整に関して,放出されている蛍光が見えるようになるまで装置を調整することは当業者において通常行うことであるとするものであって,本件特許発明1に関する発明事項の開示とは何らの関係もない。原告の上記主張は採用することができない。 エ以上のア〜ウのとおり,審決の相違点3に関する判断において甲第1号証発明の認定,周知技術の認定に誤りはなく,これに基づき相違点3の構成を容易想到とした審決の判断に誤りはない。 ( )取消事由2-4(作用効果の顕著性の看過)につき4ア原告は,審決が「本件特許発明1の作用効果も,甲第1号証発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである(34頁2。」1行〜22行)と判断したのは誤りであり,本件特許発明1の?@構成の困難性,?A目的・課題の新規性,?B予想を超える格別に顕著な作用効果として,過去約40年間存在しなかったバイパスグラフト手術の成功に役立つ画期的な装置であること,?C作用効果の顕著性を裏付ける事実として,本件特許発明1を実施したSPYシステムが各界で絶賛されていること,等からして本件特許発明1は格別の作用効果を奏するものであると主張する。 イしかし,上記2,3(1)〜(3)のとおり本件特許発明1と甲第1号証発明との一致点・相違点に関する審決の認定・判断に誤りはなく,本件特許発明1が予測できない作用効果を達するものとは認められない。本件特許発明1の実施品であるSPYシステムが各界で高い評価を受けた優れた製品であることは証拠(特に甲44〜49)により認められるところではあるけれども,これをもって本件特許発明1が格別の作用効果を奏するものとすることもできない。原告の上記主張は採用することができない。 4取消事由3(手続違背)について原告は,審決が複数の参考周知例に基づき本件特許発明1の当業者の技術水準を評価しているところ(審決34頁末行〜36頁30行 。これら参考周知 )例は,全て職権で探知・証拠調べが行われ,審決において初めて通知されたものであるが,原告には全く意見を申し立てる機会を与えられていないから,審決には特許法150条5項の規定に反する瑕疵があると主張する。 特許法150条5項は 「審判長は,第1項又は第2項の規定により職権で ,, ,, 証拠調…をしたときは その結果を当事者…に通知し 相当の期間を指定して意見を申し立てる機会を与えなければならない 」と規定しているところ,周 。 知技術に関しては,必ずしも審判手続において当事者に対しこれを通知し意見を述べる機会を与えなければ手続が違法となるとは解されない。原告が主張する本件各参考周知例は 「被請求人の主張について (審決34頁25行)とし , 」て被請求人(原告)の主張に対する判断において用いられたものであり,いずれも本件特許出願の優先日当時の周知技術を認定するものであるから,原告の上記主張は採用することができない。 5取消事由4(本件特許発明2〜11の容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件特許発明2〜10は本件特許発明1に従属し,また本件特許発明11は本件特許発明1を前提とするものであるところ,本件特許発明1に関する取消事由1,2で述べたのと同様の理由で本件特許発明2〜11も当業者が容易に発明をすることができたものではないから,これら発明(本件特許発明2〜11)を容易想到であるとした審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,本件特許発明1につき原告が主張する取消事由1,2に理由がないことは上記2,3で検討したとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。 6取消事由5(本件特許発明11に関する相違点13についての判断における周知技術の認定の誤り)( )原告は,本件特許発明11に関し,審決が認定した相違点13につき容1易想到と判断したところ,その前提として認定した周知技術である,?@「…ICGを注入する際に,ボーラスとして注入することは周知(甲第5号証技術,甲第6号証技術,甲第15号証技術及び参考周知例5第268頁左欄第6-7行『ICGはボーラスとして注入された』参照)であ」る(53頁5行〜7行)としたこと,?A「…食塩水によってボーラスとして一気に注入できるものであることも周知(甲第15号証技術及び甲第28号証技術)…」(53頁8行〜9行)との点はいずれも誤りであると主張する。 ( )この点につき,甲15(中村隆ら「色素稀釈法における新色素クーマシ2ーブルー,インドシアニングリーンの使用」内科14巻7号1361頁〜1366頁)には,以下の記載がある。 ・「心疾患ならびに肺疾患患者約400例を対象とし,色素稀釈法は疾患の診断および血流量算定のために行なった。1回の注入量は成人でクーマシーブルーを30〜60mg,インドシアニングリーンを2.5〜5.0mgとし,小児は体重にしたがい減量して,同一被検者に2〜10回の注入を繰り返した。間隔はまちまちであるが,いずれも全注入を1時間以内に行なった。色素はあらかじめ心カテーテル内,もしくはビニール管内に満たしておき,これを5%ブドウ糖か生食水5〜10ccで急速に押し流して,肺動脈,心腔内,末梢静脈内のいずれかに注入する方法をとった。… (1362頁右欄下6行〜136 」3頁左欄5行)( )上記( )の記載のほか,上記3( )アの甲5摘記?C,甲6の摘記?Fによれ 32 1ば,ICGの注入に当たり,生理食塩水でボーラスとして,すなわち急速に注入するのは周知であると認められる。 ( )原告は,審決が認定の根拠に用いた各技術は,いずれも冠状動脈バイパ4スグラフトにおける血液の流れの中を運ばれる蛍光剤としてのICGの移動を視覚化する技術とは関係がないと主張する。 確かに甲5,6,15はいずれも冠状動脈バイパスグラフトに関する文献ではないが,ICGの注入に当たり生理食塩水でボーラスとして注入する技術を認定するに当たっては,これが妨げとなるものとは認められない。原告の上記主張は採用することができない。 ( )次に原告は,審決が「ICGを含む複合体 (53頁13行)としたのは5 」誤りで,請求項11(本件特許発明11)に記載されているのは 「ICG ,を含む組成物」であり,当該組成物と複合体とは化学的・物理的に異なる物質であると主張する。 審決は,甲第1号証発明と本件特許発明11との相違点13において「本件特許発明11においては…ICGを含む組成物であるのに対し…」と認定し,相違点13における判断においても 「…ICGを含む組成物とは,食 ,塩水を担体として投与されるICGを含むものと解されるところ… (53」頁3行〜5行)と認定しており,上記「ICGを含む複合体」との記載は,「ICGを含む組成物」の誤記であることが明らかであるから,原告の上記主張は採用することができない。 7結語以上のとおりであるから,原告主張の取消事由は全て理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
---|---|
裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 真辺朋子 |