関連審決 | 無効2007-800061 |
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関連ワード | 技術的思想 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 着想 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 構成要件 / 設定登録 / 請求の範囲 / 変更 / 訂正明細書 / |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10225号
審決取消請求事件
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原告凸 版印刷株式会社 訴訟代理人弁理士鈴江武彦 同 蔵田昌俊 同 河野哲 同 中村誠 同 福原淑弘 同 竹内将訓 被告大 日本印刷株式会社 訴訟代理人弁理士結田純次 同 三輪昭次 同 竹林則幸 訴訟代理人弁護士櫻井彰人 訴訟代理人弁理士金山聡 同 伊藤英生 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/03/26 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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請求
特許庁が無効2007-800061号事件について平成20年5月7日にした審決を取り消す。 |
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事案の概要
--21本件は,原告が特許権を有し発明の名称を「広告表示体及び展示具」とする特許第2921361号につき,被告がその請求項1〜6に対し特許無効審判請求をしたところ,特許庁が平成20年1月18日付け訂正後の請求項1〜6のいずれもにつき無効とする審決を平成20年5月7日付けでなしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 2争点は,上記訂正後の本件特許に係る発明が下記甲1〜5(以下「甲1文献」〜「甲5文献」という。)に記載された発明との関係において進歩性を有するか(特許法29条2項),である。 記・ 甲 1 : 米 国 特 許 第 4 8 8 8 7 0 9 号 明 細 書 ( 発 明 の 名 称ELECTRONIC PRODUCT INFORMATION DISPLAY SYSTEM「〔電子商品情報表示システム〕」,発行日 1989年〔平成1年〕12月19日)・甲2:特開平3-46696号公報(発明の名称「商品価格表示システム」,出願人 平河電線株式会社,公開日 平成3年2月27日)・甲3:特開平4-76369号公報(発明の名称「ショーケースの広告表示装置」,出願人 富士電機株式会社,公開日 平成4年3月11日)・甲4:実公平3-49565号公報(考案の名称「映像付き商品ケース」,出願人 日本水産株式会社,公告日 平成3年10月23日)・甲5:特開平5-266341号公報(発明の名称「ビデオ再生装置を備えた自動販売機,出願人 株式会社芝浦製作所,公開日 平成5年10月15日) |
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当事者の主張
--31 請求原因(1) 特許庁等における手続の経緯ア原告は,平成5年11月10日,名称を「広告表示体及び展示具」とする発明について特許出願(特願平5-280938号)をし,平成11年4月30日,特許庁から特許第2921361号として設定登録を受けた(請求項の数6。特許公報は甲8。以下「本件特許」という。)。 これに対し被告から,本件特許の請求項1〜6につき特許無効審判請求がなされた(甲46)ので,特許庁は,これを無効2007-800061号事件として審理した上,平成19年9月7日,「特許第2921361号の請求項1〜6に係る発明についての特許を無効とする。」旨の審決(第1次審決。甲40)をした。 イ上記第1次審決に対し原告がその取消訴訟を提起したところ,知的財産高等裁判所(平成19年(行ケ)第10355号)は,平成19年12月17日,特許法181条2項により上記審決を取り消す決定(甲41)をしたので,特許庁で再び上記審判事件について審理されることになった。 ウ上記審理の中で原告は,平成20年1月18日付けで訂正請求(請求項の数6。以下「本件訂正」という。甲34)をしたが,特許庁は,平成20年5月7日,「訂正を認める。特許第2921361号の請求項1〜6に係る発明についての特許を無効とする。」旨の審決をし,その謄本は平成20年5月19日原告に送達された。 (2) 発明の内容本件訂正後の特許請求の範囲は,上記のとおり請求項1〜6から成るが,その内容は,以下のとおりである(これらの請求項に係る発明を以下「本件発明1」〜「本件発明6」という。下線は訂正部分)。 ・【請求項1】テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像--4表示パネル3と対向する部位に窓孔部2を孔設しかつ適宜広告表示5を施した表示プレート1を該装置前面側に設け,商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該装置4背面側に設けたことを特徴とする広告表示体。 ・【請求項2】表示ケース11内にテレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像表示装置4を固定状態に装填し,該装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3と対向する前記表示ケース11の少なくとも前面に窓孔部2を孔設し且つ適宜広告表示5を施し,商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該表示ケース11背面に設けたことを特徴とする広告表示体。 ・【請求項3】テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3と対向する部位に窓孔部2を孔設しかつ適宜広告表示5を施した表示プレート1を該装置前面側に設け,商品等を展示するための展示部に備えられた展示台部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該装置4背面側に設けた広告表示体Aを,前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具。 ・【請求項4】表示ケース11内にテレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像表示装置4を固定状態に装填し,該--5装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3と対向する前記表示ケース11の少なくとも前面に窓孔部2を孔設し且つ適宜広告表示5を施し,商品等を展示するための展示部に備えられた展示台部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該表示ケース11背面に設けた広告表示体Aを,前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具。 ・【請求項5】前記小型電子画像表示装置4は,受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する請求項1又は請求項2に記載の広告表示体。 ・【請求項6】前記小型電子画像表示装置4は,画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作する請求項1又は請求項2に記載の広告表示体。 (3) 審決の内容ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。 その要点は,本件発明1〜6は,いずれも上記甲1〜5に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,本件発明1〜6の特許は特許法29条2項に違反してなされたものである,というものである。 イなお,審決は,甲1文献(米国特許第4888709号明細書)に記載の発明の内容を以下のとおり認定したうえ(以下「甲1号証第1発明」,「甲1号証第2発明」という。),本件発明1と甲1号証第1発明との一致点及び相違点を,次のとおりとした。 --6<甲1号証第1発明の内容>「電子回路と液晶のディスプレイ16から成り,値段付け情報18と代替情報20が表示される電子画像装置前面の液晶のディスプレイ16と対向する部位に開口50を孔設しかつ商品ラベル56を前面に施したケース48内に該装置を設け,棚14の溝12に取り付けられる把持部材58をケース48背面に設けたモジュール。」<甲1号証第2発明の内容>「電子回路と液晶のディスプレイ16から成り,値段付け情報18と代替情報20が表示される電子画像装置前面の液晶のディスプレイ16と対向する部位に開口50を孔設しかつ商品ラベル56を前面に施したケース48内に該装置を設け,棚14の溝12に取り付けられる把持部材58をケース48背面に設けたモジュールを把持部材58にて棚14の溝12に取り付けた棚体。」<一致点>本件発明1と甲1号証第1発明とは,いずれも,「適宜広告表示を施した広告表示担持体を液晶画像表示パネルを前面に有する電子画像装置前面側に設け,商品等を展示するための展示部に取付固定可能な取付固定用具を該装置背面側に設けた広告表示体。」 である点で一致する。 <相違点1>液晶画像表示パネルを前面に有する電子画像装置に関し,本件発明1は,テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4であって,前面に面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3を有しているのに対し,甲1号証第1発明は,電子回路と液晶のディスプレイ16から成り,値段付け情報18と代替情報20が表示される電子画像装置であって,本件発明1のような特定がなされ--7ていない点。 <相違点2>広告表示担持体に関し,本件発明1は,電子画像装置4前面の画像表示パネル3と対向する部位に窓孔部2を孔設した表示プレート1であるのに対し,甲1号証第1発明は,商品ラベル56であって,本件発明1のような特定がなされていない点。 <相違点3>取付固定用具に関し,本件発明1は,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けているのに対し,甲1号証第1発明は,棚14の溝12に取り付けられる把持部材58であって,本件発明1のような特定がなされていない点。 (4) 審決の取消事由しかしながら,審決には,以下に述べるとおりの誤りがあるから,審決は違法として取り消されるべきである。 ア 本件発明1について(ア) 相違点1についての判断の誤り審決は,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1について,甲3〜5の各文献に記載の発明及び液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置に関する周知の技術に基づいて当業者が容易になしうるものであるとした(20頁20行〜21頁2行)が,以下のとおり誤りである。 aまず審決は,「甲第1号証第1発明の電子画像装置は,本件発明1のような特定がなされているものではないが,電子画像装置としてどのようなものを採用するかは必要に応じ適宜選択し得るものであ」る(20頁21行〜23行)とした。 ( ) しかし,甲1文献(米国特許第4888709号明細書)には,a--8電子画像装置としてテレビ画像用の表示装置を採用することの記載も示唆もない。甲1号証第1発明のディスプレイ16は,値段付け情報18や「(セール)」を通知する代替情報20を表示するSALEものである。そして,ディスプレイ16に関しては,望ましくは液晶の形式であるとしながらも,物品の値段付け表示に用いられるマトリックス52,その他のデータ(例えば1オンス当たりの値段付け)の表示に用いられるマトリックス54は,ドットマトリックスあるいはセグメントタイプであってもよいとされている。また,図1(.1)に示されたディスプレイ16は,七つの発光用セグメFIGントを8の字状に配置し,表示に必要なセグメントを発光させて数字0〜9を表示している。 このように,甲1号証第1発明は,英数字からなる値段付け情報18や代替情報20を表示する電子画像装置,換言すれば「(SALEセール)」などの代替情報20も表示できる電子値段付け装置というべきものであって,このような情報を表示する電子画像装置として適宜の装置を選択するに当たり,テレビ画像装置を採用する必要性も動機もない。 なおこの点に関し被告は,甲1文献には電子値段付け及び広告宣伝システムが開示されていると主張するが,甲1文献に開示されているのはあくまでも電子値段付け装置であって,本件発明1のように特定の商品の間近に配置して広告表示することを意図した広告表示体とは異なるものである。 ( ) また,甲1号証第1発明においては,図1(.1)に示されるよb FIGうに複数のモジュール10が取り付けられ,これらのモジュール10に設けられたディスプレイ16に表示される値段付け情報は時々刻々変化し,定期的な更新を必要とするが,これらの情報更新は,--9ディスプレイ16に表示される情報が上記のように英数字からなる値段付け情報18や「(セール)」などの代替情報20であっSALEて,単なる数字・文字・図形であることから,パソコンのキーボード操作により容易に更新できるものである。 一方,本件発明1の広告表示体が表示するテレビ画像による表示内容は,文字画像・線画画像・撮影画像等であり(本件訂正明細書〔甲35〕の段落【0017】参照),商品毎に異なる画像をレイアウト・アレンジするために,その更新作業は多様・多大なものとなる。 したがって,甲1号証第1発明における英数字からなる値段付け情報18や「(セール)」などの代替情報20を表示する電子SALE画像装置を,本件発明1のようなテレビ画像用の小型電子画像装置に置き換えるとすれば,その表示内容の更新に多様・多大な作業を要することとなるから,そのような置換は容易であるとはいえない。 ( )なお,本件発明1は,上記のような多大な作業を要するとはいcえ,本件発明1の構成を採用することにより,「看板による広告媒体と,テレビ受像機による広告媒体とをコンパクトにジョイントし,商品等の展示品の間近に設置することによって,より大きな広告効果を得る」(本件訂正明細書〔甲35〕,段落【0005】)という極めて大きな広告効果を実現することができるという新しい認識の下で着想されたものである。 bまた審決は,「…甲第3号証には,商品等の展示部に人目を引き付け易い動画像で広告を表示する小型電子画像装置を設置することが記載されており,甲第4,5号証には,商品等の展示部に設置されるビデオテープの画像を表示する画像装置,即ち,商品等の展示部に設置--10する表示装置を動画像を表示し得る電子画像装置とすることが記載され,甲第21号証の上記6-c.,6-d.には,小型液晶カラーテレビ,即ち,液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置が周知のものであることが示され,上記6-a.,6-bには,面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルも周知のものであることが示されている。更に,甲第4号証の上記4-b.の記載から,画像装置がスピーカーを有することが示唆され,甲第21号証に示す小型液晶カラーテレビが音声情報を取り扱うことができることは自明であり,そうであれば,スピーカーを一体若しくは別体で近設させることは,設計事項にすぎないものである。 よって,甲第1号証第1発明の電子画像装置として,周知のものである液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置を採用し,画像表示パネルを周知の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルとし,スピーカーを一体若しくは別体で近設させ,上記相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである」(20頁23行〜21頁2行)とした。 (a) しかし,甲3文献には,ショーケースの広告表示装置に関して「…なおディスプレイ装置としてはブラウン管,電球を平面的に配列形成し電光ニュースなどに使用される電光式表示体などケース前面取付可能な電光式のディスプレイ装置も使用できる」(4頁左欄2行〜5行),「この発明によれば,…ケースの前面に絵,文字などをコンピュータの指令制御に基づいて表示するディスプレイ装置を具備したので,…絵,文字などで表現して表示できるとともに,広告に動きを与えることができ,…」(4頁左欄7行〜16行)と記載されている。 上記記載によれば,甲3文献に開示されている動画像は,電光式--11のディスプレイ装置でも表示することのできる,絵・文字に動きを与えるという程度のものであり,本件発明1のようなテレビ画像を意図したものではない。 したがって,甲3文献の記載をもって,本件発明1のようなテレビ画像用の小型電子画像装置を採用することの容易性を肯定することはできないものである。 (b) また,甲4文献,甲5文献に開示された電子画像装置は,いずれもケース本体の上部に配置した中型ないし大型の電子画像装置であって,甲1号証第1発明の電子画像装置と容易に置換することができないものである。 すなわち,甲4文献に記載された映像付き商品ケースの映像部4は小型ではなく,ケース本体1にビルドインされており,商品等の展示部に対して取付固定可能な構成ではない。また,甲5文献に記載されたビデオ再生装置を備えた自動販売機のディスプレイ6も小型ではなく,自動販売機のボディ1にビルドインされており,商品等の展示部に対して取付固定可能な構成ではない。 つまるところ,商品等の展示部に設置する電子画像装置をテレビ画像用の小型電子画像装置とすることが周知であることを立証するためには,単にテレビ画像用の小型電子画像装置が周知であることを立証するだけでは足りず,それを商品等の展示部に設置する広告表示装置とすることの意図の存在が立証されなければならないのに,甲4文献・甲5文献のいずれにもこのような意図の存在についての開示はないものである。 cまた,本件特許の出願日(平成5年11月10日)当時における小型液晶ディスプレイパネルは,その当時に普及していたCRT(陰極線管)テレビジョン画像に比べて,相当に解像度及び精細さが低い画--12像であった。 すなわち,甲51(長谷川伸著「改訂 画像工学」平成12年10月20日改訂版9刷発行,株式会社コロナ社)に「精細な像を扱うには像1枚中の画素数は多いほうがよく,自然な動感を伝えるには毎秒像数が多いほうがよいが(日本のテレビジョンではそれぞれ約500×700画素に相当,30枚/s),それだけ高い技術を要求される」(7頁下4行〜下1行)と記載されているように,テレビジョン画像として望ましい画素数は35万画素とされている。ところが,平成5年当時の小型液晶ディスプレイパネルの画素数についてみると,甲50(「フラットパネル・ディスプレイ1994」平成5年12月10日発行,日経BP社)に掲載された5インチ以下の液晶ディスプレイパネルの画素数は7万4880〜8万1920画素とされており,これは上記35万画素の21%〜23%にすぎない。このように解像度等が低い小型液晶ディスプレイパネルを採用して広告表示に用いることの意義は低く,甲1号証第1発明の電子画像装置に小型液晶ディスプレイパネルを用いることは当業者が容易になし得たものではない。 (イ) 相違点2についての認定判断の誤りa審決は,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点2につき,前記(3)イのとおり認定した(20頁12行〜15行)。 しかし,本件発明1の広告表示担持体は,単なる電子画像装置ではなくテレビ画像用の小型電子画像装置と組み合わせられるものであり,またその表示内容は適宜広告表示をするものである。これに対し甲1号証第1発明は,商品ラベル56を値段付け情報18と代替情報20が表示される電子画像装置と組み合わせているものである。このように,本件発明1と甲1号証第1発明とはその広告内容に本質的な--13相違がある。 したがって,相違点2の認定については上記の点を考慮して,「広告表示担持体に関し,本件発明1は,テレビ画像用の小型電子画像装置4前面の画像表示パネル3と対向する部位に窓孔部2を孔設しかつ適宜広告表示した表示プレート1であるのに対し,甲1号証第1発明は,商品ラベル56であって,電子画像装置及び商品ラベルについて本件発明1のような特定がなされていない点。」(下線部分は原告による)と認定されるべきである。 bまた審決は,相違点2の構成の容易想到性について,「甲第2号証には,価格表示器2前面のLED表示部2dと対向する部位に窓孔部を孔設しかつ商品名,イラスト,商品のバーコード等の情報を施したディスプレイ・パネル2h(本件発明1の『表示プレート』に相当)を価格表示器2前面側にパネルケース2gを介して設けることが記載されており,甲第2号証記載のものと甲第1号証第1発明は,いずれも電子画像装置と表示を施した表示担持体からなり,商品情報を広告表示するものであるから,広告表示担持体として,甲第2号証記載の窓孔部を孔設し情報を施したディスプレイ・パネルを採用し,上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである」(21頁4行〜12行)とした。 しかし,上記に述べたとおり,甲1号証第1発明は,その商品ラベル56を値段付け情報18と代替情報20が表示される電子画像装置と組み合わせているものである。したがって,甲1号証第1発明の商品ラベル56に換えて甲2文献記載のディスプレイ・パネルを採用しても,テレビ画像用の小型電子画像装置と組み合わされる本件発明1の表示プレートが得られるものではない。 (ウ) 相違点3についての判断の誤り--14審決は,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点3について,「展示部へ固定される部材の具体的構成として,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けることは,甲第22〜24号証に示すように周知技術であり,甲第1号証第1発明の取付固定用具である把持部材58を前記周知の構成として,上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである」(21頁14行〜18行)とした。 aしかし,甲1号証第1発明の把持部材58は,複数のグリッピング要素又は歯60により棚14の溝12に取り付けられるものであり(甲1,図1〔.1〕,図2b〔.2 〕参照),把持部材58はFIGFIG b複数のグリッピング要素又は歯60を備えることが必要であると共に,棚14も把持部材58のグリッピング要素又は歯60が取り付けられるための溝12を有する構造であることが必要である。このように,把持部材58と棚とは相互に一体的に整合した構造を有するものであり,甲1号証第1発明の把持部材は,モジュールが棚から偶然外れることを防止するために相当に強固な取付けのための構造を採用しているものである。 一方,審決が周知技術であるとする甲22〜24記載の取付固定用具は,いずれも棚置き形式のものであり,甲1号証第1発明における把持部材のように相当に強固な取付け構造を有するものではない。 そうすると,甲1号証第1発明の相当に強固な取付け構造である把持部材に換えて甲22〜24記載の周知の取付固定用具を採用することは,甲1号証第1発明における強固な取付けの意図に反するものであり,その適用には阻害要因があるというべきである。 bまた,そもそも甲22〜24には,本件発明1の「縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた--15取付固定用具7を該装置4の背面側に設けた」構成が開示されていない。 すなわち,甲22(実願昭55-27214号〔実開昭56-130467号〕のマイクロフィルム)に記載された発明は,商品置棚から突出し商品を取り付ける表示板(円筒状商品又は角箱状商品を設置するためのもの)であり,甲23(特開平2-230183号公報)に記載された商品棚の表示用具も,表示紙挿入部7に表示紙14を挿入し,スリット12に突出板15を装着する表示用具であって,いずれも本件発明1のような「小型電子画像装置4の背面側に設けた取付固定用具7」ではなく,その目的を異にする。また,甲22〜24に記載された発明はいずれも本件発明1のように「面光源バックライト照明式液晶カラー画面表示パネル3を前面に備えるテレビ画像用の小型電子画像装置4」「広告表示5を施した表示プレート1」等を合わせた重量の広告表示体を支えることまでは想定していないものである。 (エ) 顕著な作用効果の看過審決は,「…本件発明1の作用効果も,甲第1〜5号証記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである」(21頁19行〜20行)とした。 しかし,本件発明1は,映像信号や音声信号に基づき広告表示動作を行う「テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4」と「広告表示5を施した表示プレート1」とを備えることによって,広告形態の異なる広告媒体をコンパクトに組み合わせてこれらの相乗的効果を得ることができ,さらに「商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該装置4背面--16側に設けた」ことにより,展示品の間近で,上記の相乗的な広告効果をより効果的に発揮することを可能にしたものであって,従来の広告表示と比較して格段に大きな広告効果が得られるものである(本件訂正明細書〔甲35〕,段落【0043】【0045】参照)。 (オ)したがって,本件発明1の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 イ 本件発明2について本件発明2は,本件発明1の「表示プレート1」に換えて「表示ケース11」を採用し,この「表示ケース11」内に「小型電子画像表示装置4」を固定状態に装填するというものであるところ,審決は,本件発明2と甲1号証第1発明との相違点は本件発明1における相違点1・3と同一である(ただし「本件発明1」を「本件発明2」と読み替える)とした上で,本件発明1におけるのと同じ理由により相違点1・3の構成は当業者が容易に想到しうるものであるとした(22頁20行〜31行)。 (ア) しかし,相違点1・3についての審決の判断が誤りであることは,前記アで述べたとおりである。 (イ) また,審決は本件発明2については相違点2を認定していないが,本件発明1について前記ア(イ)において述べたところの「広告表示担持体に関し,本件発明1は,テレビ画像用の小型電子画像装置4前面の画像表示パネル3と対向する部位に窓孔部2を孔設しかつ適宜広告表示した表示プレート1であるのに対し,甲1号証第1発明は,商品ラベル56であって,電子画像装置及び商品ラベルについて本件発明1のような特定がなされていない点」を認定すべき点については本件発明2についても同様(ただし,「表示プレート1」を「表示ケース11」と読み替える)である。したがって,審決は本件発明2と甲1号証第1発明との相違点2を看過したものである。 --17(ウ) また,本件発明2の作用効果については,前記アにおいて主張した効果に加えて,本件発明2には,本件発明1の表示プレートに換えて表示ケースを用いることにより,表示ケース内部に装填されるテレビ画像用の小型電子画像装置を保護することができると共に,広告表示体の本体と取付固定用具との間の接続を容易かつ強固にすることができ,広告表示体を安定した状態で設置することができるという効果を有するものである。 (エ)したがって,本件発明2の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 ウ 本件発明3について本件発明3は,本件発明1の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であるところ,審決は,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点1・2は本件発明1における相違点1・2と同一であり(ただし「本件発明1」を「本件発明3」と,「甲1号証第1発明」は「甲1号証第2発明」と,それぞれ読み替える),本件発明1におけるのと同じ理由により相違点1・2の構成は当業者が容易に想到しうるものであるとした。そして,相違点3'を「取付固定用具及び展示部に関し,本件発明3は,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定するのに対し,甲第1号証第2発明は,棚14の溝12に取り付けられる把持部材58であって,本件発明3のような特定がなされていない点」(23頁34行〜39行)と認定した上で,「展示部へ固定される部材の具体的構成と--18して,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けることは,甲第22〜24号証に示すように周知技術であり,展示部に商品等を載置するための底板を有する展示台部を備えることは例示するまでもなく周知技術であり,展示台部上に載置したものを固定する手段として,磁力を介在させて固定することは,甲第25,26号証に示すように周知技術である。甲第1号証第2発明の取付固定用具である把持部材58を甲第22〜24号証に示すような周知の構成とすることは,当業者が容易になし得る程度のことであり,この際に,甲第25,26号証に示す磁力を介在させて固定する周知技術を採用し,上記相違点3’に係る構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。そして,本件発明3の作用効果も,甲第1〜5号証記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである」(24頁3行〜15行)とした。 (ア) しかし,相違点2の認定,相違点1・2についての判断が誤りであることは,前記アで述べたとおりである。 (イ) また,相違点3’(正確には「取付固定用具7にて展示部Bに備えられた」を「取付固定用具7にて広告表示Aを展示部Bに備えられた」とすべきである)については,審決が周知技術とする甲25(実願昭57-104972号〔実開昭59-8666号〕のマイクロフィルム)に記載された発明は,食品陳列棚上の仕切板に磁石を設け,商品の移動(水平方向の移動)を防止する程度に固定するものであり,取付固定用具の転倒あるいは落下を防止するものではない。また,甲26(実願昭57-123780号〔実開昭59-28359号〕のマイクロフィルム)に記載された発明は陳列棚上の商品を前方に押し出すための商品前出し器に具備される商品背景板1の底面に磁石を装着したものであるが,これも商品背景板1の水平方向の移動を抑制するためのものである--19上,商品押し出し具3を手前に引っ張ると商品背景板1が前方に引き出される程度の磁力しか有しないものである(2頁11行〜16行参照)。したがって,いずれも本件発明3の「小型電子画像装置4の背面側に設けた取付固定用具7の延設板と展示台部の底部との間に磁力を介在させて取付固定用具7を展示台部に固定するもの」とはその機能を異にする。 (ウ) また,本件発明3の作用効果については,前記アにおいて主張した効果に加えて,本件発明3には,「延設板と展示台部の底板との間に磁力を介在させて延設板と底板を固定する」ことにより,広告媒体の配置等の手間や労力を低減することができるという効果を有するものである。 (エ)したがって,本件発明3の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 エ 本件発明4について本件発明4は,本件発明2の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であるところ,審決は,本件発明4と甲1号証第2発明との相違点は本件発明1における相違点1,本件発明3における相違点3'と同一であり(ただし「本件発明1」「本件発明3」は「本件発明4」と,「甲1号証第1発明」は「甲1号証第2発明」と,それぞれ読み替える),本件発明1・本件発明3におけるのと同じ理由により相違点1・3'の構成は当業者が容易に想到しうるものであるとした(25頁17行〜30行)。 (ア) しかし,相違点1についての判断が誤りであることは前記アで,相違点2を認定すべきであるのに看過されたことは前記イで,相違点3'についての判断が誤りであることは前記ウで述べたとおりである。 --20(イ) また,本件発明4の作用効果について,表示ケースを用いることにより,表示ケース内部に装填されるテレビ画像用の小型電子画像装置を保護することができる等の効果を有することは,前記イで述べたとおりである。 (ウ) したがって,本件発明4の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 オ 本件発明5について本件発明5は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,審決は,この限定した構成について「前記『1.本件発明1について』の相違点1の検討で述べたように,甲第1号証第1発明の電子画像装置として,周知のものである液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置を採用し,画像表示パネルを周知の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルとし,スピーカーを一体若しくは別体で近設させることが容易である以上,該電子画像装置は,映像・音声信号に基づき広告表示動作し得るものであり,無線送信電波による映像・音声信号を受信アンテナで受信することは,TV受像器で周知技術であるから,上記限定事項のような構成とすることは,当業者が容易になし得る程度のことであり,その効果も予測の範囲内である」(25頁下2行〜26頁7行)とした。 (ア) しかし,本件発明5が引用する本件発明1・2についての審決の判断は誤りであり,いずれも進歩性を有するものであることは前記ア・イで述べたとおりである。 (イ) また,本件発明5において限定が加えられた構成についても審決は容易想到であるとするが,甲1文献においては本件発明5の「受信アンテ--21ナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」という構成は採用されておらず,「…赤外線受信ダイオード90が,ケース48に隣接して設けられている。信号22がケース48を透過して,受信ダイオード90により十分な強度で受信されることができるように,受信ダイオード90に隣接するケース48の少なくともその部分は,赤外線透過性の材料で形成されるべきである」(訳文8頁11行〜14行)とされている。 また,甲2文献では「通信用ケーブル」を採用し(特許請求の範囲参照),甲3文献・甲4文献には送信手段に関する記載はなく,甲5文献ではビデオケーブルを採用している(段落【0010】参照)。 このように,甲1〜5文献のいずれにおいても本件発明5の「受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」は採用されておらず,本件特許の出願当時において,広告表示体に採用する電子画像装置への映像・音声信号の送信手段として上記構成を採用することは技術常識ではなかったものである。 (ウ) また,甲1文献において上記のように電波信号ではなく赤外線(電波よりも周波数が高い電磁波であるため,障害物の影響を受けやすく,遠くまで到達しにくい)を用いることとしているのは,電子的な表示対象が静止画像であれば,たとえ一時的に信号の受信がうまくいかなかったとしてもその影響は軽微であるためと考えられる。これに対して本件発明5では,電子的な表示対象がテレビ画像であり連続的に表示されることが強く要求されるために,送信源から距離がある場合や障害物がある場合でも信号を受信することができるよう,「テレビ画像の映像・音声信号を,無線送信電波」により送信するという構成を採用したものであり,甲1号証第1発明とは本質的に異なる技術的思想から得られたものである。 --22(エ) また,本件発明5の作用効果については,本件発明1・2に係る前記ア・イで述べたとおりの効果のほか,本件発明5の「無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」という構成により,「広告表示体Aは,オペレーションセンター等にて適宜に表示内容(展示メニュー,商品,価格等のインフォメーション)をレイアウトし,アレンジした映像信号・音声信号用のプログラムソフトに基づいて,展示場や店内の展示台やショーケース等に設置した画像表示パネル3(及び必要に応じてスピーカー)による表示内容を制御表示することが可能となる」(本件訂正明細書〔甲35〕,段落【0044】)という効果を有する。 (オ)したがって,本件発明5の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 カ 本件発明6について本件発明6は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,審決は,この限定した構成について「前記『1.本件発明1について』の相違点1の検討で述べたように,甲第1号証第1発明の電子画像装置として,周知のものである液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置を採用し,画像表示パネルを周知の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルとし,スピーカーを一体若しくは別体で近設させることが容易である以上,該電子画像装置は,映像・音声信号に基づき広告表示動作し得るものであり,画像記録媒体再生部からの有線送信により送信することは,例示するまでもなく周知技術であるから,上記限定事項のような構成とすることは,当業者が容易になし得る程度のことであり,その効果も予測の範囲内である」(26頁14行〜22行)とした。 --23(ア) しかし,本件発明6が引用する本件発明1・2についての審決の判断は誤りであり,いずれも進歩性を有するものであることは前記ア・イで述べたとおりである。 (イ) また,本件発明6において限定が加えられた構成についても審決は容易想到であるとするが,本件発明6の小型電子画像表示装置4は,展示品の間近に取付固定される程度に小型であるにもかかわらず「有線送信による映像・音声信号」という大容量の信号を受信・再生することが可能であるのに対し,甲1号証第1発明のモジュール10は,赤外線受信ダイオード90を備え,テレビ画像の映像信号ほどには容量の大きくない値段付け情報18と代替情報20を受信する点で,大きく相違する。 すなわち,本件発明6のように「有線送信によるテレビ画像の映像・音声信号に基づき広告表示動作する」ためには,小型電子画像装置が有線により大容量高速伝送可能でなければならないが,甲1文献にはこのような点について記載されていない。 (ウ) また,本件発明6の作用効果については,本件発明1・2に係る前記ア・イで述べたとおりの効果のほか,本件発明6の「画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」という構成により,前記オで述べたのと同様に当業者が予測できない効果を有する。 (エ)したがって,本件発明6の進歩性を否定した審決の判断は誤りである。 2 請求原因に対する認否請求原因(1)〜(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。 3 被告の反論審決の判断はいずれも正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。 (1) 本件発明1について--24ア 相違点1についての主張に対し本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1は,甲3〜5の各文献に記載の発明及び甲21(日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」平成2年10月30日初版2刷発行,日刊工業新聞社)等に記載の周知の液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置に基づいて当業者が容易になしうるものである。 (ア) 甲1文献には,それぞれの異なる商品に近接した位置に,送信された値段付け情報又は商品情報を受信してそれを表示する電子ディスプレイモジュール(電子画像装置)を設けた電子値段付けおよび広告宣伝システムが開示されている。 そして,電子ディスプレイモジュール(電子画像装置)の一例として,赤外線等の電磁信号により情報を受信し,液晶のディスプレイを有するモジュール10が示され,モジュール10に表示される値段付け情報又は商品情報の一例として,英数字からなる値段付け情報18と「(セール)」という代替情報20が示されている。 SALEこのような甲1文献の記載内容に照らせば,甲1号証第1発明の電子ディスプレイモジュール(電子画像装置)は,商品に近接した位置に設置され,送信された値段付け情報又は商品情報を受信して表示し,電子値段付け及び広告宣伝システムとして機能するものであればよいのであって,電子画像装置自体の種類(表示方式等),表示される情報の表現方法は適宜のものであればよいことが理解できる。 したがって,甲1号証第1発明において電子画像装置としてどのようなものを採用するかは必要に応じ適宜選択し得るものである(審決20頁21行〜23行も同旨)。 (イ) 一方,甲3文献には,商品を展示陳列するショーケースに設置され,人目を引き付け易い動画像で広告を表示する小型電子画像装置等からな--25る広告表示装置が記載され,甲4文献には,ビデオ画像が表示される映像部を備えた商品ケースが記載され,甲5文献には,広告宣伝用にビデオ画像を再生するディスプレイが組み込まれた自動販売機が記載されている。 また,前記甲21文献は液晶デバイスに関する一般的な技術を記載した刊行物であるところ,ここには小型液晶カラーテレビや均一面照明を得るためのバックライト等について記載されており,小型カラーテレビ(液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置)及び面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルは,本件特許の出願前に周知の事項であった。 (ウ) このように,甲1号証第1発明の電子画像装置は,商品に近接した位置に設置され,電子値段付け及び広告宣伝システムとして機能するものであればよく,電子画像装置自体の種類等は適宜のものであるところ,商品の展示部に設置され動画像(テレビ画像)で広告表示する電子画像装置の例(甲3〜5文献記載の発明)が存在し,さらに,甲21文献に記載されているように小型カラーテレビ(液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置)及び面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルは本件特許の出願前に周知であったことから,甲1号証第1発明の電子画像装置として,周知のものである液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置を採用し,画像表示パネルを周知の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルとすることは,当業者が容易になしうるものである(審決20頁下3行〜21頁2行も同旨)。 さらに,甲4文献には画像装置がスピーカーを有することが示唆され,甲21文献に記載の周知の小型カラーテレビにおいて音声情報を取り扱うことは自明のことであるから,上記電子画像装置にスピーカーを--26一体若しくは別体で近設させることは,設計事項にすぎず,これも当業者が容易になしうるものである(審決20頁32行〜35行も同旨)。 (エ) 以上に対し原告は,甲1号証第1発明は電子値段付け装置であるから本件発明1のような広告表示体とは異なると主張する。 aしかし,甲1文献の特許請求の範囲には,「それぞれの異なる商品に近接した位置に,複数の電子ディスプレイモジュールを設け…関連する商品の近接する位置に商品情報を表示する方法」(請求項1,訳文13頁19行〜14頁8行)等と記載され,電子ディスプレイモジュール(電子画像装置)に表示されるのは値段付け情報に限定されず,広く商品情報とされている。また,発明の背景として「…さらにこの産業において,商品についての事実または特別販売の通知等の各商品のための非値段情報の迅速かつ経済的な分配についての別の必要性が生じている」(訳文2頁16行〜18行),「各々のディスプレイモジュール10は,価格またはその他の情報のような商品情報が表示されるディスプレイ16を有している」(訳文4頁4行〜5行)と記載され,価格とその他の商品情報が表示されることが示されている。このように,甲1号証第1発明の電子画像装置は,電子値段付け装置に限定されず,商品情報などの広告を表示する装置である。 一方,本件発明1の小型電子画像装置4については,その表示内容は何ら限定されておらず,本件訂正明細書(甲35)に「…上記小型電子画像表示装置4を備えた広告表示体Aは,オペレーションセンター等にて適宜に表示内容(展示メニュー,商品,価格等のインフォメーション)をレイアウトし…」(段落【0044】)と記載されているように,展示メニュー,商品,価格等の情報を広く表示するものである。 したがって,本件発明1の小型電子画像装置4と甲1号証第1発明--27の電子画像装置はいずれも価格その他の商品情報を表示するものであって,両発明の表示内容に実質的な差異はないというべきである。 bまた,本件発明1の「適宜広告表示5を施した表示プレート1」の表示内容に関しても,本件訂正明細書(甲35)に「…適宜広告内容(キャッチフレーズ,独特の字体やデザインを表すロゴ,商品名,製造・販売会社名,価格等)(商品名,メーカー名,キャッチフレーズ,ロゴ,価格等)を表示するための文字,絵柄,写真画,彩色模様等の表示5」(段落【0025】)と記載されており,甲1号証第1発明の商品ラベル56(「例えば商品の箱の絵またはその他の図表,商品の記述された説明…を含む」〔甲1,訳文7頁11行〜13行〕)と比べてその表示内容に実質的な差異を有するものではない。 cしたがって,本件発明1における小型電子画像装置4と表示プレート1とを組み合わせた広告表示体は,甲1号証第1発明における電子画像装置と商品ラベル56とを組み合わせた広告表示体と基本的構成を同じくするものであって,本件発明1の小型電子画像装置4が「テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された」ものであって「前面に面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3を有している」という点において相違するものである。 dそして,甲3〜5の各文献に記載された商品の展示部に設置され動画像で広告表示する電子画像装置と,周知の小型カラーテレビ(液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置)及び面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルに基づいて上記相違に係る構成を得るのが容易であることは,上記において述べたとおりである。 eなお,情報を送信する信号に関して,甲1文献には赤外線信号により信号を送信することが記載されているが,正確には「モジュール1--280は,赤外線または光の信号22のような電磁信号による情報を受信する」(訳文4頁9行〜10行)と記載されているように,赤外線信号は電子画像装置が受信する信号の一例にすぎない。上記「電磁信号」の原文“”における“”はelectromagnetic signalselectromagnetic「電磁気の」の意味であり(乙1〔「研究社 新英和大辞典」〕671頁),“”は「信号《送信 受信 されるインパルス・波動・音signal[]響など》」を意味する(同1968頁)ことから,「電磁信号()」は,電磁気の波動(電磁波)を含む広いelectromagnetic signals概念を意味するものである。そして,テレビ電波も電磁波に含まれるものであるから,甲1号証第1発明はテレビ電波を送信すること,すなわち電子画像装置にテレビ画像を表示することを排除していないものである。 fまた原告は,甲3文献の「動画像」は本件発明1のようなテレビ画像を意図したものではないと主張するが,「動画像」については甲10(「科学大辞典」)に「映画やテレビのように,動いている対象を取り扱うための画像」と記載され,甲9(「広辞苑第四版」)に「一定時間間隔で撮影された一連の画像を,短い間隔で連続表示することにより得る動きのある映像」と記載されているように,「動画像」はその代表例として当然に「テレビ画像」を含むものである。 gまた原告は,甲4文献,甲5文献に開示された電子画像装置が中型ないし大型の電子画像装置であることを主張するが,甲4文献には「…商品ケースや映像部が相当小型化され,搬送が容易である場合には,商品ケースまたは映像部に把手を付けて,持ち運び自在に構成することもできる」(4欄40行〜43行)と記載され,映像部(電子画像装置)を小型にすることが示されている。なお,原告は甲4文献に記載の電子画像装置を小型化した場合でも商品ケースの上部に配置--29されることに変わりはなく特定の商品の間近に置かれるものではないと主張するが,本件発明1は「特定の商品の間近に配置」することを構成要件としておらず,原告の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものである。 hまた原告は,本件特許の出願日(平成5年11月10日)当時における小型液晶ディスプレイパネルは相当に解像度及び精細さが低いものであったと主張する。 しかし,乙2(「液晶カラーテレビ」平成5年7月発行,東京都消費者センター実験研究室)には,平成4年10月時点で市販されていた4〜6インチの小型液晶カラーテレビについて解像度,色の再現性,受信状態等についてテストを行ったところ,基本的性能に問題はなく,良好な画面であるとの結果が得られたことが記載されている。 また,乙3(「1991年版カラー液晶AV製品の市場動向総調査」平成3年4月25日発行,株式会社シード・プランニング)には,液晶カラーテレビの国内市場に参入しているメーカーが15社であり(2頁),液晶カラーテレビの国内生産台数が170万台であること(4頁),市販されている機種はすべて画面サイズが6インチ以下の小型であり(15頁〜18頁),その大多数が高画質のTFTアクティブマトリクスタイプであること(11頁)が記載されている。 さらに,乙4(礒部道生「20世紀最後の巨大マーケット『液晶』市場を制覇せよ!」平成5年11月10発行,こう書房),乙5(佐々木昭夫ほか「液晶ディスプレイのすべて」平成5年3月1日発行,株式会社工業調査会)においても,携帯ポケットテレビや車載用テレビとして,小型液晶カラーテレビが多数販売されていたことが記載されている。このように,本件特許の出願当時において,小型液晶カラーテレビは,その生産メーカー・機種が非常に多く,高画質のタイプが--30主流となって,数百万台の市場規模となり,日本国内に広く普及していたものである。 なお原告は,本件特許の出願当時の小型液晶ディスプレイの画素数等について主張するが,液晶ディスプレイパネルの解像度(画素数)は,一般に,画面のサイズが小さくなるにつれて低くなるものであり,その当時においても例えば13インチの液晶ディスプレイパネルとして1280×1024画素(「フラットパネル・ディスプレイ1994」平成5年12月10日発行,日経BP社〔甲50〕,図6)のものが存在していた。原告が主張する高解像度の画素数は家庭用テレビにおける一般的なサイズ(13〜17インチ)における画素数をいうものであり,原告の上記主張は根拠を有しないものである。 イ 相違点2についての主張に対し本件発明1と甲1号証第1発明との相違点2に関する審決の認定は正当であり,また,相違点2の構成は甲1号証第1発明に甲2文献記載の発明を適用することにより当業者が容易になしうるものであるから,容易想到性に関する審決の判断にも誤りはない。 (ア) 原告は,本件発明1の電子画像装置は「テレビ画像用の・・小型電子画像装置」であり,表示プレートは「適宜広告表示した表示プレート」であるから,相違点2に関する審決の認定は誤りであると主張する。 しかし,審決は,相違点1の認定において,本件発明1の電子画像装置が「テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4」であるとし,これを前提に相違点2の認定を行っている。また審決は,相違点2の冒頭に「広告表示担持体に関し」として,本件発明1の表示プレートが「適宜広告表示した」広告表示担持体であることを前提として相違点2を認定しているものである。 したがって,相違点2の認定に関する原告の主張は,形式的な点を捉--31えていうものにすぎず,審決の認定に誤りはない。 (イ) また原告は,相違点2の容易想到性に関する審決の判断は誤りであると主張する。 しかし,甲2文献には,陳列棚等の所定の位置に設置した複数の価格表示器につき,通信用ケーブルを介してストアプロセッサ等の制御装置で制御して商品価格を表示部2dに自動的に表示すると共に,価格表示器2の前面側(表示部2dと対向する部分)に窓孔を有しディスプレイ・パネル2h(商品名等の情報が記載されている)が挿入されたパネル用ケース2gが取り付けられ,価格データのみでなくディスプレイ・パネル等により商品情報も表示されることが記載されている。 そして,上記商品価格表示システムは,商品情報の提示により顧客の興味を引きつけて宣伝効果を発揮する点で甲1号証第1発明と共通し,また,ディスプレイ(表示部)に商品の価格や商品情報を「電子的に表示」することに加えて「電子的手段によらない表示」を隣接させて商品情報を広告表示する点でも共通している。そして,電子的手段によらない広告表示手段である,商品名等の情報が記載されたディスプレイ・パネル2hを挿入したパネル用ケース2gは,甲1号証第1発明におけるケース48の前面の商品ラベル56に対応する。 したがって,甲1号証第1発明において,電子的手段によらない広告表示手段として,ケース48の前面に表示ラベル56を施すことに換えて,甲2文献のディスプレイ・パネル2hが挿入されたパネル用ケース2gを適用し,本件発明1の表示プレートとすることは,当業者が容易になしうることである。 ウ 相違点3についての主張に対し本件発明1と甲1号証第1発明との相違点3は,甲1号証第1発明に甲22〜24に記載された周知の技術を適用することにより当業者が容易に--32なしうるものである。 (ア) すなわち,本件発明1の「縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設け」た構造(逆U字型構造)は,甲22(実願昭55-27214号〔実開昭56-130467号〕のマイクロフィルム),甲23(特開平2-230183号公報),甲24(実願平4-16673号〔実開平5-76371号〕のCD-ROM)に商品等の展示部に取り付られる表示体であって逆U字型構造を有するものが記載されているように,本件特許の出願前に周知の事項であった。 したがって,商品等の展示部に装置等を取付固定するに際し,上記甲22〜24に記載されたような周知の逆U字型構造を有する部材を使用することは当業者が当然に行うことである。 (イ) これに対し原告は,甲1号証第1発明の把持部材は相当に強固な取付けのための構造を採用しているのに対して甲22〜24に記載された部材は相当に強固な取付け構造を有するものではなく,上記把持部材に換えてこれらの部材を採用することには阻害要因が存在すると主張する。 しかし,本件発明1においては,取付固定用具が強固に取り付けられるかという点に関しては構成要件になっておらず,このような事項を阻害要因とすることはできない。また,甲1号証第1発明の把持部材58は,「モジュール10が偶然外れることを予防し,かつ同時に店の人が容易に取り外せるようにする」(訳文8頁5行〜6行)ものであり,偶然に外れはしないが容易に取り外しが可能である構造であって,相当に強固な取付け構造を採用したものでないことは明らかである。 (ウ) また原告は,甲22〜24に記載された表示具は本件発明1の「取付固定用具7を該装置(小型電子画像装置)4背面側に設けた」という構成とは異なることや本件発明1のような重量物を支えることを想定して--33いないことを主張する。 しかし,商品等を展示するための展示部に取り付けられる表示具(部材)が周知であれば,当該表示具(部材)が小型電子画像装置を取り付けるものとして,あるいは,重量物を支えるものとして記載されていなくても,当該表示具(部材)の構造を,適宜,小型電子画像装置の展示部への取付固定用具の構造とすることは当業者が容易になしうる程度のことである。 エ 本件発明1の作用効果に関する主張に対し原告は本件発明1の作用効果について主張するが,その効果は格別のものということはできない。 (ア) 本件発明1の作用効果は,広告表示プレートの表面に表示された広告表示と小型電子画像表示装置による広告表示というそれぞれ広告形態の異なる広告媒体をコンパクトに組み合わせて,手間や労力をかけずまた総体的な広告形態を煩雑にせずに広告効果を上げることができるというものである。 (イ) 一方,甲1号証第1発明の電子値段付け及び広告宣伝システムは,ケース48の前面側に設けられた商品ラベル56に商品の絵等の情報が表示されると共にディスプレイ16には値段付けやセールの情報が表示されるというものであるから,表面に表示された広告表示と小型電子画像表示装置による広告表示とをコンパクトに組み合わせている点で本件発明1と同様の効果を有するものである。しかも既述のとおり,商品の展示部に設置され動画像で広告表示する電子画像装置は,甲3〜5の各文献に記載され,小型カラーテレビ(液晶カラー画像表示パネルを前面に有するテレビ画像用の小型電子画像装置)及び面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネルは本件特許の出願前に周知であったのだから,本件発明1の作用効果は上記各発明及び周知技術から当業者が予測--34できる範囲のものである。 なお,異なる広告媒体を組み合わせて広告効果を上げることについては,甲6(実願昭56-100646号〔実開昭58-10477号〕のマイクロフィルム),甲7(実願平1-52460号〔実開平2-142872号〕のマイクロフィルム)にも示されているように,印刷などによる表面に表示された広告表示と小型電子画像装置による広告表示とを併用し,さらには音を発する広告媒体とすることによって広告効果を上げることは広く知られている。 (ウ) また,本件発明1において「商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7を該装置4背面側に設けた」構成による効果についても,このような逆U字型構造は甲22(実願昭55-27214号〔実開昭56-130467号〕のマイクロフィルム),甲23(特開平2-230183号公報),甲24(実願平4-16673号〔実開平5-76371号〕のCD-ROM)に記載されているように周知であるから,上記効果は周知技術から予測できる範囲のものである。 オしたがって,本件発明1について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 (2) 本件発明2について本件発明2は,本件発明1の「表示プレート1」に換えて「表示ケース11」を採用し,この「表示ケース11」内に「小型電子画像表示装置4」を固定状態に装填するというものであるところ,甲1号証第1発明の「ケース48」及び「開口50」は,本件発明2の「表示ケース11」及び「窓孔部2」に相当するから,本件発明2と甲1号証第1発明との相違点は本件発明1における相違点1・3と同一となるものであり,本件発明1におけるのと--35同じ理由により,相違点1・3の構成は当業者が容易に想到しうるものである。したがって,本件発明2について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 (3) 本件発明3について本件発明3は,本件発明1の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であるところ,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点1・2は本件発明1における相違点1・2と同一であり,本件発明1におけるのと同じ理由により相違点1・2の構成は当業者が容易に想到しうるものである。 また,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点3'についても,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けることは甲22〜24に記載されているように本件特許の出願前に周知であり,また,商品陳列棚の商品載置面(商品展示部の底板)上に板体を載置し,磁力を介在させてその板体を商品展示部に固定することについても,甲25(実願昭57-104972号〔実開昭59-8666号〕のマイクロフィルム)や甲26(実願昭57-123780号〔実開昭59-28359号〕のマイクロフィルム)に記載されているように周知の技術である。したがって,甲1号証第2発明の取付固定用具である把持部材58を甲22〜24に示されるような周知の構成とすることは当業者が容易になしうることであり,この際に,甲25・26に示される磁力を介在させて固定する周知技術を採用して相違点3’に係る構成とすることも当業者が容易になしうることである(審決24頁9行〜13行も同旨)。 したがって,本件発明3について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 --36(4) 本件発明4について本件発明4は,本件発明2の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であるところ,本件発明4と甲1号証第2発明との相違点は本件発明1における相違点1,本件発明3における相違点3'と同一であり,本件発明1・本件発明におけるのと同じ理由により相違点1・3'の構成は当業者が容易に想到しうるものである。 したがって,本件発明4について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 (5) 本件発明5について本件発明5は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,この限定した構成は周知技術の適用によって当業者が容易になしうるものである。 すなわち,テレビ(テレビジョン)について,甲20(「広辞苑第四版」)に「画像を電気信号に変換し,電波・ケーブルなどで送り,画像を再生する放送・通信の方式」と記載され,甲27(日本放送協会編「NHKカラーテレビ教科書[上]」昭和61年4月20日第22刷発行,日本放送出版協会)1頁にも「テレビジョンはいろいろな光景,映画,写真などの画像を電気信号に変えて無線または有線の経路によって瞬時に別の地点に送り,受像機によって画像を再現するもので」あると記載されているように,無線送信電波によるテレビ画像をアンテナで受信すること,すなわち無線送信電波による映像・音声信号を受信アンテナで受信することは,テレビ受像機において周知の技術である。そうすると,本件発明5において限定された構成は,これら周知の技術を適用することにより当業者が容易になしうるもので--37ある。 したがって,本件発明5について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 (6) 本件発明6について本件発明6は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,この限定した構成は周知技術の適用によって当業者が容易になしうるものである。 すなわち,甲4文献,甲5文献に記載された電子画像装置は,商品の展示部において,動きのある撮影画像を含む映像・音声信号に基づき広告表示するものであり,甲4文献に「これら何れの形のケース本体の下部にビデオテープの差込部1bを設け,この差込部1bをリードワイヤ等によつて映像部4の端子11に連結する」(5欄16行〜19行)と記載され,甲5文献に「…再生デッキと自動販売機のディスプレイとをビデオケーブルや,その制御信号線で接続する」(2欄下1行〜3欄2行)と記載されているように,画像記録媒体再生部から有線送信を行うことは普通に実施されている。さらに,前記(5)で述べたようにテレビ画像を電波(無線送信)やケーブル(有線送信)で送ることは周知である。そうすると,本件発明6において限定された構成は,これら周知の技術を適用することにより当業者が容易になしうるものである。 したがって,本件発明6について進歩性を否定した審決の判断は正当である。 |
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当裁判所の判断
1請求原因(1)(特許庁等における手続の経緯),(2)(発明の内容),(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。 2 取消事由の有無--38(1) 本件発明1についてア(ア) 本件訂正明細書(甲35)には,次の記載がある。 a発明の詳細な説明( ) 産業上の利用分野a・「本発明は,店頭等において商品等の広告表示を行なう広告表示体及び展示具に関する。」(段落【0001】)( ) 従来の技術b・「一般に,店頭等において商品等の広告表示を行なう広告媒体としては,看板やフラッグ,新規な動作をする可動ディスプレイ等がアイキャッチディスプレイとして広く利用されている。」(段落【0002】)・「また最近では,例えばテレビ受像機を1台若しくは数台配列してテレビ画像により商品の印象付けや,広告,インフォメーション等を行なう例が増えている。」(段落【0003】)( ) 発明が解決しようとする課題c・「しかし,通常のテレビ画像による広告では,テレビ受像機を数台設置するための専用スペースが必要であり,また,看板,フラッグ等とテレビ受像機とを併用して広告効果を上げようとする場合は,それぞれ広告形態が異なるため,それら媒体の設定や配置等に手間や労力を要し,また総体的な広告形態が煩雑になる傾向があった。」(段落【0004】)・「本発明は,看板による広告媒体と,テレビ受像機による広告媒体とをコンパクトにジョイントし,商品等の展示品の間近に設置することによって,より大きな広告効果を得ることにある。」(段落【0005】)( ) 実施例d・「本発明における第1発明の広告表示体を,図1(a)〜(b)に示す実施例に従って以下に詳細に説明すれば,広告表示体Aは,静止画像用--39又はテレビ画像用の小型電子画像表示装置4(通称;液晶テレビ等)と,該装置4前面に取付けられた紙製,プラスチック製,アルミニウム,ステンレス等金属製の表示プレート1と,前記装置4背面側に取付けられた取付固定用具7とを備える。」(段落【0010】)・「表示プレート1は窓孔部2を備え,表示プレート1を前面に被覆した前記小型電子画像表示装置4の画像表示パネル3(画像表示画面)は窓孔部2を透して観察される。なお,窓孔部2のサイズは画像表示パネル3のサイズに対応して設定される。」(段落【0011】)・「該表示プレート1と小型電子画像表示装置4前面とは,画像表示パネル3領域以外の部分で感圧接着剤,感熱接着剤等の接着剤により取付固定されるか,又は該表示プレート1の対向両端部を互いに対向するようにコの字型に折り曲げて画像表示装置4両側から挟み付けて嵌合し,接着剤又は適宜螺子止めにて取付固定されるが,取付固定の形式は特に限定されない。」(段落【0012】)・「前記表示プレート1の少なくとも前面(表面)には,適宜広告内容(キャッチフレーズ,独特の字体やデザインを表すロゴ,商品名,製造・販売会社名,価格等)を表示するための文字,絵柄,写真画,彩色模様等の広告表示5が印刷又は写真等によって表示されている。なお,表示プレート1前面に,透明なプラスチック板によるシートケース5aを設け,該シートケース5a内に広告表示5を施したシート等を挿入できるようにすることによって,広告表示5部分を表示プレート1に対して取付け取外し自在にしてもよい。また,前記表示プレート1と別体の紙製,プラスチック製,アルミニウム等の金属製の板材に,印刷若しくは写真等によって表示5を施し,該板材を表示プレート1の前面に螺子,接着剤等によって取付固定するようにしてもよい。」(段落【0013】)--40・「上記広告表示体Aの表示プレート1のサイズや形状は特に限定されないが,サイズは小型電子画像表示装置4の前面より上下左右のいずれか側方に張り出していることが表示効果の上で適当であり,例えば画面サイズが2.5インチ(対角線長さ;約64mm)〜4インチ(対角線長さ;約100mm)程度の小型の画像表示パネル3であれば,80mm×170mm〜100mm×200mm程度のサイズであり,上記広告表示体Aを,展示台やショーケースに配置する場合には,2.5インチ程度が適当であるが,画像表示パネル3の画面サイズや,展示効果やスペース等を考慮して適宜設定でき,また形状は三角形,正方形,長方形等の四角形,その他多角形,円形,楕円形等の適宜形状でよいが,長方形又は正方形状が適当である。」(段落【0014】)・「上記小型電子画像表示装置4は,前面の画像表示パネル3と,映像・音声出力変換部6(受信した映像信号・音声信号を画像表示パネル3及びスピーカーにて可視画像と音声に変換するための出力動作信号に出力変換する変換部)とを備える。」(段落【0015】)・「本発明において使用する小型電子画像表示装置4の前記映像・音声出力変換部6は,図1(a)〜(b)に示すように画像表示パネル3と一体的にその裏面側に接続配置されたユニットタイプが適当であるが,図示しないが別体として離間した部位に映像・音声出力変換部6が配線設置されたコンポーネントタイプであってもよい。」(段落【0016】)・「上記映像・音声出力変換部6は,一般的なテレビ受像機,音声受信機におけると同様に,映像・音声信号入力部,映像信号を可視画像に変換するための映像信号増幅変換回路,色信号復調回路,画像表示パネル3のX-Y走査電極及び信号電極の駆動信号を発生させる画像走査マトリクス回路及び音声を必要とする場合は,音声信号をスピーカー(図示せ--41ず)を介して音声に変換する音声増幅回路等を備え,映像・音声出力変換信号を画像表示パネル3側に出力して,該パネル3のマトリクスパターン状のX-Y画素を駆動走査して,静止画像(文字画像,線画画像)又はテレビジョン画像(文字画像,線画画像,撮影画像等)を画像表示パネル3にて可視出力するものである。なお音声出力用のスピーカーは,広告表示体A本体と一体に,画像表示パネル3側方(表示プレート1内面側又は前面側の適宜部位)に,電子画像表示装置4と一体若しくは別体で近設するか,又は広告表示体A本体と別体で,該表示体Aの近くに設置することができる。」(段落【0017】)・「前記画像表示パネル3は,照明光型(面光源バックライト照明式,室内光照明式等)のパッシブディスプレイ,又は自発光型のアクティブディスプレイのいずれであってもよく,通常は照明光式の液晶画像表示装置が適当であるが,場合によってはCRTやプラズマディスプレイ等のアクティブディスプレイ類を使用することも可能である。」(段落【0018】)・「本発明の広告表示体Aにおいては,図1(a)に示すように,電子画像表示装置4の映像・音声出力変換部6に,受信アンテナ6aを設け,適宜信号供給源(例えば,店内のオペレーティングセンター等)より無線送信電波として発信した映像信号を,又は映像信号と音声信号とを,前記受信アンテナ6aによって前記映像・音声出力変換部5受信入力して,画像表示パネル3より画像・音声を出力表示させるようにしてもよい。」(段落【0020】)・「また,本発明の広告表示体Aにおいては,電子画像表示装置4の映像・音声出力変換部5に,画像記録媒体再生部D(ビデオデッキ,レーザーディスクプレーヤー,CDプレーヤー,フロッピーディスクドライブユニット等)を配線接続することによって,該再生部Dから有線送信に--42よる信号として発信した映像信号,又は映像信号と音声信号によって画像表示パネル3より画像・音声を出力表示させるようにしてもよい。」(段落【0021】)・「上記第1発明の広告表示体Aは,図1(b)に示すにように,背面側に取付固定用具7を備え,該取付固定用具7の構造,形状は,特に限定されるものではなく,例えば,一例として略逆U字型を呈し,広告表示体Aの背面に接続固定する縦前板7aと,水平板7bと,縦後板7cとにより構成される。」(段落【0022】)・「図3(a)〜(b)は,第1発明又は第2発明の広告表示体Aの背面側に備える取付固定用具7の他の形態を示す側断面図である。図3(a)は,取付固定用具7の縦後板7c下端部に連続して水平方向に,展示台部20の底板21上面に沿うように,延設板7dを設けたものであり,該延設板7d上に商品等が載置される。」(段落【0038】)( ) 作用e・「本発明は,静止画像用又はテレビ画像用の小型電子画像表示装置4前面に画像表示パネル3用の窓孔部2を孔設し且つ適宜広告表示5を施した表示プレート1を取付け,あるいは画像表示パネル3用の窓孔部2を孔設した表示ケース11内に小型電子画像表示装置4を固定状態に装填し,取付固定用具7を該装置4背面側に設けたものであり,前記取付固定用具7にて展示部Bに取付固定することによって展示具として使用でき,例えば,前記小型電子画像表示装置4を受信アンテナ6によって,無線送信電波による映像信号に基づき広告表示動作させることができ,また画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像信号や音声信号に基づき広告表示動作させることができ,表示プレート1又は表示ケース11に表示した広告表示による広告効果と,電子画像表示による広告効果とによる相乗的効果が得られ,また上記広告表示体Aを展示部Bに取--43付けることによって,展示品の間近での電子画像による広告表示ができる。」(段落【0043】)・「また,上記小型電子画像表示装置4を備えた広告表示体Aは,オペレーションセンター等にて適宜に表示内容(展示メニュー,商品,価格等のインフォメーション)をレイアウトし,アレンジした映像信号・音声信号用のプログラムソフトに基づいて,展示場や店内の展示台やショーケース等に設置した画像表示パネル3(及び必要に応じてスピーカー)による表示内容を制御表示することが可能となる。」(段落【0044)】( ) 発明の効果f・「本発明の広告表示体及び展示具は,広告表示プレートや広告表示ケース等の表面に表示された広告表示と,小型液晶テレビやプラズマディスプレイ等の小型電子画像表示装置による広告表示とを併用することによって,広告効果を上げることが期待でき,それぞれ広告形態の異なる広告媒体をコンパクトに組み合わせて広告媒体の設定や配置等の手間や労力を逓減化でき,また総体的な広告形態を煩雑にせずにまとまりのある形態にすることができ,看板や表示プレート等による広告表示と,電子画像による動きのある画像による広告表示とをコンパクトにジョイントすることによってより大きな広告効果が得られるものである。」(段落【0045】)b図面の簡単な説明・「【図1】(a)は第1発明の広告表示体又は第3発明の展示具を示す斜視図,(b)は第1発明の広告表示体又は第3発明の展示具を示す側面図である。」・「【図3】本発明の広告表示体の取付固定用具の構造実施例を示す側面図である。」--44(イ) また,本件特許公報(甲8)に記載された図面(【図1】( )( )及びa b【図3】( ))は,次のとおりである。 a【図1】( ) ( )ab【図3】( )a(ウ)a 以上によれば,本件発明1は,店頭等において商品等の広告表示を行う広告表示体及び展示具に関するものであって,看板等による広告媒体とテレビ受像機による広告媒体とをコンパクトにジョイントし,商品等の展示品の間近に設置することによって,より大きな広告効果を得ようとするものである。 すなわち,テレビ受像機を利用した従来の広告においては,テレビ受像機を設置するための専用スペースを要し,また看板等とテレビ受--45像機を併用しようとする場合にはこれら異なる広告媒体の設置等に手間や労力を要し総体的な広告形態が煩雑になるなどの問題があった。 そこで,このような課題を解決するためになされたのが本件発明1であり,その基本的構成は,?@小型電子画像装置4及びその前面に備えられた画像表示パネル3,?A小型電子画像装置4の前面側に設けられた表示プレート1(画像表示パネル3が見えるように窓孔部2が設けられると共に,適宜の広告内容〔キャッチフレーズ,ロゴ,商品名,製造・販売会社名,価格等〕を表す文字・絵柄,写真等の広告表示5が施されている),?B小型電子画像装置4の背面側に取り付けられた取付固定用具7からなる。 bそして,小型電子画像装置4について,発明の詳細な説明では「静止画像用又はテレビ画像用」とされている(段落【0010】)が,本件訂正後の請求項1では「テレビ画像用」で「スピーカーが一体若しくは別体で近接された」ものに限定されている。また,小型電子画像装置4の前面に備えられた画像表示パネル3については,発明の詳細な説明では照明光型・自発光型のいずれのディスプレイでもよく,液晶ディスプレイのほかCRTやプラズマディスプレイ等を使用することも可能であるとされている(段落【0018】)が,本件訂正後の請求項1では「面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3」に限定されている。 また,小型電子画像装置4の背面側に設けられた取付固定用具7については,発明の詳細な説明では,【図1】( )のような縦前板7ab・水平板7b・縦後板7cによる略逆U字型の構造や,【図3】( )aのような縦後板7cの下端部に連続する延設板7dを有する構造が実施例の一つとして示されながらも,取付固定用具7の構造・形状は特定のものに限定されないとされ(段落【0022】【0038】参--46照),設置される場所も「展示場や店内の展示台やショーケース等」とされている(段落【0044】)が,本件訂正後の請求項1では「商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7」に限定されている。 cこのように,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載された実施例の一つに係る構成に限定し,「テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3」,「商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具7」という構成を備えるものである。 そして,上記「商品等を展示するための展示部に取付固定可能な縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた」という取付固定用具7の構成は,【図1】(b)及び【図3】(a)に示されるように,商品落下防止用の前柵が設けられた商品陳列棚(商品展示台)に取り付けるために上記のような逆U字型の構成を有するものであることは明らかであるから,本件発明1における「商品等を展示するための展示部に取付固定」とは,商品が陳列展示されるのと同じ場所,すなわち商品陳列棚に展示された商品の前側に配置されるように取付固定することを意味するものであり,本件発明1は,このような展示部に小型電子画像装置4(テレビ画像用で,スピーカーが一体若しくは別体で近設され,面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3を前面に有する)と適宜広告表示5を施した表示プレート1からなる広告表示体を取り付けることを内容とするものである。 --47イ(ア) 一方,甲1号証第1発明に関し,甲1文献(米国特許第4888709号明細書)には次の記載(訳文による)がある。 a特許請求の範囲・「1.それぞれの異なる商品に近接した位置に,複数の電子ディスプレイモジュールを設け;各々のモジュールをモジュールアドレスでプログラムし;アドレス部分があるモジュールアドレスを表わし,データ部分が該モジュールアドレスに対する商品情報を表わす,該アドレス部分と該データ部分とを含む信号を形成し;遠隔の送信器から該モジュールへ,赤外線と光とからなるスペクトル帯域から選択された,電磁エネルギーとしての前記信号を空中に放送して;少なくともいくつかの電子値付けモジュールを含む受信モジュールである,複数の受信モジュールにより前記信号を受信し;各々の受信モジュールにより,前記信号の該アドレス部分を,ある受信されたアドレスに復号し;該受信されたアドレスを,各々の受信モジュールに対する該モジュールアドレスと比較し;該受信中のモジュールの間の少なくとも一つのアドレスされたモジュールで,該受信されたアドレスを該モジュールアドレスと適合させ;各々のアドレスされたモジュールについて,該信号の該データ部分を商品情報に復号し;該適合のステップに応じて,該アドレスされたモジュールのディスプレイ上に該記憶された商品情報を表示し;かつ前記商品情報より少ない頻度で変更する情報を,各々のモジュール上に表示するステップを含む,関連する商品の近接する位置に商品情報を表示する方法。」(訳文13頁--4819行〜14頁8行)b発明の技術分野・「本発明は一般的に,小売り商品のディスプレイとデバイス制御システムに関し,特に赤外線送信の伝送を用いる電子的な値段付け,広告および制御システムに関する。」(訳文1頁14行〜15行)c発明の背景・「手作業による棚または品目への値段付けは,小売店内の多数の異なる物品の値段について消費者に知らせる伝統的な方法となっている。昔から確立されているこの方法によれば,値段が棚,商品自体,または物品が陳列されるそのほかのエリアにマークされる。 今日の増大した数の商品,より厳重な在庫コントロール,およびより厳重な利ざやの状況下で,物品の価格が変化するときにこの伝統的なシステムに問題が生じている。特定の物品の値段を手作業で変更することは,値段の更新におけるかなりの遅延および商品の値段付けにおける潜在的な誤りを生じさせる。近代的な食料雑貨店等の近代的な小売りチェーン施設であっても,地域本部からの値段の更新が個別の店のチェックアウトスキャナのデータベースへ電子的に伝達されるが,その後プリンタから新しい棚値段ラベルが到着し,関連する商品棚の場所に手作業で分散されるまで,効果を得ることができない場合,遅延が生じる。その種の遅延は,一般に4〜5日に及び,場合によっては地域レベルで値段変更の決定が行われてから7日を超えることが示されている。 また,プリントされた棚値段ラベルが,店のチェックアウトスキャナの値段データベース内に収められている値段と整合しないときには商品値段付け誤りも発生する。この値段不整合は,顧客苦情および不満足の主要原因となっている。さらに,プリント処理によって棚値段ラベルを継続的かつ手作業で更新する必要性は,棚ラベルに置かれることが可能な商品情報--49の量および質を制限する。店の顧客は,しばしば商品と,完全にコンピュータ生成されたUPCコード,ブロック体文字の説明,および値段だけを有する棚値段ラベルの突き合わせに困難を有する。顧客は,所定の商品のための棚値段ラベルを見つけることができないとき,その商品を購入しないか,さらにその店に不満を示す場合がある。 より最近になって,電子棚値段付け情報モジュールを作成するためにいくつかのスキームが提案された。これらのシステムは,ほとんど必ず個別の電子表示モジュールから中央店コンピュータへ,または暫定的リンクを介したハード結線接続を伴う。驚くことではないが,その種のハード結線システムの取り付けおよび維持に関連付けされる費用は,それらの経済的な実行可能性を妨げる。 したがって,この産業において,現在の値段変更サイクルにおけるプリントおよび手作業によるラベル配置活動の大半を,経済的に実行可能とするのに充分に廉価かつ柔軟な電子的な方法によって置換する必要性が存在する。さらにこの産業において,棚値段を電子的に更新されるチェックアウトスキャナの値段データベースに,特にオフ‐サイトの地域コンピュータ内に維持されるように,結びつける必要性が存在する。さらにこの産業において,商品についての事実または特別販売の通知等の各商品のための非値段情報の迅速かつ経済的な分配についての別の必要性が生じている。」(訳文1頁17行〜2頁18行)d発明の要約・「本発明は,リモート送信器からの光信号を使用して電子値段付けシステムを実装するための方法および装置を具備する。好ましい実施態様においては,複数の電子表示モジュールが,それぞれの商品の直近に設けられる。各モジュールはモジュールアドレスでプログラムされる。特定のモジュールによって表示される商品情報の変更が望まれる場合,アドレス部分--50およびデータ部分,すなわち特定のモジュールアドレスを表すアドレス部分,およびアドレスに関連付けされた商品情報を表すデータ部分を具備する信号が形成される。第1および第2の部分は,順番に,または逆順に組み立てるとしてもよい。このようにして形成された信号は,複数のモジュールに対してブロードキャストされる。モジュールは信号を受信し,信号のアドレス部分を受信されたアドレスに,信号のデータ部分を関連する商品情報にデコードする。受信されたアドレスは,プログラムされたモジュールアドレスと比較されて,整合が存在するか否かが決定される。整合が存在する場合には,商品情報が,モジュールのメモリ内に入れられる。そこから,モジュールのディスプレイ内における使用のために利用可能となる。 好ましい実施態様において,信号は,モジュールケースの内側に設けられた赤外線受信ダイオードまたはフォトトランジスタによって受信される赤外線信号である。モジュールケースの少なくとも一部は,赤外線放射に対して少なくとも部分的に透過性である。」(訳文2頁20行〜3頁4行)e図面の簡単な説明・「図1は,本発明に従った電子商品情報表示およびデバイス制御システムの図画および図式表現であり;図2aは,本発明に従った電子表示モジュールの正面図であり;図2bは,図2aに示されている電子表示モジュールの背面図であり;図2cは,図2aに示されている電子表示モジュールの側面図であり,さらに棚チャンネルに当該モジュールを取り付ける好ましい方法を示しており;…」(訳文3頁16行〜21行)f発明の詳細な説明・「最初に図1を参照すると,食料品店で用いられるような本発明に従う電--51子商品情報ディスプレイおよびデバイス制御システムが模式的に示されている。このシステムは,他の型式の店舗または倉庫で容易に採用されることができる。複数のモジュール10の各々が,以下に記述される方法で棚の溝12(一つが示される)に備えられている。各々の溝12は,その上にそれぞれの販売(または賃貸)商品が配置された棚14に従来技術の手段により取り付けられている。各々のモジュール10が販売に提供される物品にぴったりと取り付けられる限り,他の従来技術のディスプレイの搭載方法が用いられることができる。各々のディスプレイモジュール10は,価格またはその他の情報のような商品情報が表示されるディスプレイ16を有している。示されているように,そのようなモジュールの一つは値段付け情報18を現在表示し,その隣のモジュールはこの場合は『セール』の通知である代替情報20を表示している。望ましい実施態様では,各々のモジュール10は,値段付け情報18と代替情報20とを間欠的に表示するように構成される。」(訳文3頁下4行〜4頁8行)・「各々のモジュールは,望ましくは自給的である。モジュール10は,赤外線または光の信号22のような電磁信号による情報を受信する。…」(訳文4頁9行〜10行)・「商品情報と値段付けは,一般的に時々刻々変化し,定期的な更新を必要とする。この情報は,地域のコンピュータ36から店用コンピュータ32にアップロードされてもよい。次に値段付け情報は,以下の方法により,定期的モジュール10に送信されることができる。更新のシーケンスは,二次コンピュータ30で起動される。この更新シーケンスに従って,モジュールアドレスおよび関連する更新される商品情報が店用コンピュータ32から検索され,アナログ信号に変換されて,送信器/受信器24に送られる。送信器/受信器24では,複数のモジュール10に直接的に,または受信器/再送信器(『衛星』)26を介してモジュール10へ間接的に--52のどちらかで送信器/受信器24から赤外線信号が送信される。」(訳文5頁6行〜14行)・「ここで図2aを参照すると,モジュール10の可能な物理的な実施形態のいくつかのうち一つが示されている。モジュール10は,望ましくは少なくとも部分的に赤外線を透過するプラスチックまたは他の材料で少なくとも一部が形成されたケース48を有する。…」(訳文6頁24行〜26行)・「望ましくは液晶の型式である,ディスプレイ16用の開口50がケース48に形成されている。多くの高さの図形と英数字の表示を形成するために,ディスプレイ16は,異なる高さの二つまたはそれ以上のマトリックス52,54を望ましくは有する。一般的にマトリックス52は,物品の値付けの表示に用いられ,一方マトリックス54は,1オンス当たりの値付けのようなその他のデータを表示するために用いられる。代替案として図1に示されるように,ディスプレイ16は,『セール』のような標題を,連続的にまたは値付け情報と交互のどちらかで表示することができる。マトリックス52,54は,ドットマトリックスまたはセグメントタイプであってもよい。 ケース48は,また,より永続的な情報がその上に表示されることができる商品ラベル56用のスペースを望ましくは有する。そのような相対的に永続する情報は,例えば商品の箱の絵またはその他の図表,商品の記述された説明,UPCまたはEANバーコードを含むことができる。このようにしてモジュール10は,めったに変更されない永続的な情報と,日々変更されるより短命な値段付けやセールの情報の表示同時にできるようにする。 モジュール10は,さらに把持部材58を好適に含み,図2bおよび2cに,より明確にその構造および機能が図解されている。最初に図2bを--53参照するが,把持部材58は,板ばね鋼等の強靱な弾性材料から作ることが可能であり,ケース48の垂直限界を超えて突出する複数の把持部材または歯60を有することが可能である。把持部材58は,たとえば,好ましくケース48と一体成形されるプラスティックリベット62によってケース48に取り付けられる。部材58には,リベット62が挿入されるボア64が備えられる。リベット62は,続いて熱によって変形されてヘッド67を生成し,部材58を定位置でロックする。把持部材58は,形状において概略で長円である。…」(訳文7頁2行〜22行)・「図2cを参照すると,把持部材58を使用したモジュール10の溝12への取り付けが示されている。把持部材58は,溝12の凹部76,77を占有するために,外向きに解放される。モジュール10を最初に組み立て,または後に取り除くために,相対的平らで狭い道具(図示せず)が,把持部材58を溝12のエッジ80以下に押えて,モジュール10を取り外すために,モジュール10の後ろに挿入される。このようにして,把持部材58はモジュール10が偶然外れることを予防し,かつ同時に店の人が容易に取り外せるようにする。 図示された把持部材58は,単なる例である。機械ネジまたはその他の把持部材のような他の取り付け手段が,本発明に従って使用されてもよい。」(訳文7頁下1行〜8頁8行)・「新しい電子値段付けおよび広告宣伝システムが,要約して開示された。 開示されたシステムは,ラジオ周波数または個々の表示モジュールへのラインでの接続の必要性を避け,その代わりにモジュールへの値段付け情報または商品情報を送信するために,赤外線信号システムを使用する。モジュールは各々が,それらに向けられた商品情報を認識して,記憶することができ,そして,ある実施形態においては,接続された装置に関連する情報を中央コンピューターに送信することができる。このようにして,UP--54CまたはEANコードの形式で表されるようなデジタルの値段付け情報が完全に利用されることができ,かつ手作業で添付される棚用の表示を避けることができる。」(訳文13頁8行〜15行)g図面【図1(.1)】FIG【図2(.2)】FIG--55(イ) 以上によれば,甲1号証第1発明は,店頭等に陳列販売される小売り商品に関する電子的な値段付け情報の表示に関するものである。 すなわち,小売り商品の値段付け情報の表示に関する伝統的な方法として,商品陳列棚に手作業により値段付け情報を表示するという方法が採られてきたが,今日の小売店(例えば食料雑貨店等の小売りチェーン施設)における商品数の増大,在庫コントロールの厳重化等の下では,商品の価格を変更するときに新しい値段ラベルの商品陳列棚への配置を伝統的な手作業の方法で行うと,値段の変更が決定されてから実際に商品陳列棚の価格表示が変更されるまでに数日間を要する上,過誤が生じる可能性もあった。ところが,手作業に代わる電子値段付けシステムとして従来存在していたものは,個別の電子表示モジュールから中央店コンピュータ等へのハード結線接続を伴うものであったため,システムの取付け及び維持に費用を要するという問題があった。 --56そこで,リモート送信器からの赤外線等の信号送信により,特定の電子表示モジュールのアドレス及び価格等の商品情報に関する信号を各モジュールに送信し,これと整合するアドレスを有するモジュールのメモリ内に商品情報が記憶されるという構成を採用することによって,廉価な電子的方法により商品陳列棚への値段付け情報の配置を行うことができるようにしたのが甲1号証第1発明である。 ウ以上を前提として,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点について検討する。 (ア) 相違点1に関しa本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1は,本件発明1の小型電子画像装置4は,テレビ画像用でスピーカーが一体若しくは別体で近設され,前面に面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3を有しているのに対し,甲1号証第1発明はそのような構成を有していないというものである。 bこれに対し甲1文献の上記記載によれば,甲1号証第1発明の電子画像装置におけるディスプレイ16は,望ましくは液晶ディスプレイとされ,そこには当該商品の単価や単位量当たりの値段に関する値段付け情報18が表示されるほか,「SALE(セール)」等の代替情報20を表示することができるとされているが,その表示方式や代替情報として表示される内容は特定の方式・事項に限定されていない。 もっとも,甲1号証第1発明の目的が主として商品陳列棚における値段付け情報の電子的表示にあることに照らせば,使用される電子画像装置は値段付け情報を表示するに適したものでなければならない。 そして,小売店等の商品陳列棚における値段付け情報の表示は,顧客が当該商品の単価や単位量当たりの値段を即時かつ明確に知ることのできるものでなければならず,時間の流れに応じて映像が刻々変化す--57るテレビ画像をあえて値段付け情報を表示する方法として選択することは想定し難いものである。 したがって,甲1号証第1発明の電子画像装置としてテレビ画像用の小型電子画像装置を採用する動機付けは甲1文献中には存在しないというべきである。 cそこで,甲3〜5の各文献から,本件発明1の構成に至ることが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)に容易であるかについて検討する。 (a) 甲3文献(特開平4-76369号公報)には,次のとおり,商品を陳列展示するショーケースにおける広告表示に関し,ショーケースの前面に大きく開口する開口6の下縁部を形成するケース本体下部の前面にディスプレイ装置を設置し,絵や文字などをコンピュータの指令制御に基づいてディスプレイ装置に表示することにより,人目を引き付けやすい動画像を表示できることが記載されている。また,ディスプレイ装置としては液晶式のほかブラウン管や電光式表示体なども使用できるものとされている。 <産業上の利用分野>・「この発明は,内部に商品を陳列展示し前面が開口するケースの前面に広告を表示するショーケースの広告表示装置に関する。」(1頁左欄16行〜18行)<発明が解決しようとする課題>・「…このような従来のショーケースの広告表示装置は,広告13の表示場所がお客さんから見易いケース1の開口6の周縁部前面の狭い範囲に限られているので,広告13の表示内容を十分に表示できず,かつ広告13が絵,文字などで表現して紙などに記載された静止画像であり,人目を引きつけるのに十分とはいえず,その上,特別セール若しくは特価--58品あるいは目玉商品などを市況の変化に即応し効果的に宣伝して販売促進に役立てることができないという問題がある。」(2頁左下欄下3行〜右下欄7行)<作用>・「この発明は,内部に販売する商品を陳列展示し前面が開口するケースの前面に絵,文字などをコンピュータの指令制御に基づいて表示するディスプレイ装置を具備したので,ディスプレイ装置により販売商品を宣伝する広告をその量に無関係にケースの前面の狭い場所を有効に活用し絵,文字などで表現して表示できるとともに,広告に動きを与えることができ,かつ特別セール若しくは特価品あるいは目玉商品などの広告を市況に即応させて表示できる。」(3頁左上欄4行〜13行)<実施例>・「以下,この発明の実施例を第1図ないし第4図に基づいて説明する。 第1図はこの発明の一つの実施例のショーケースの広告展示装置の構成を示す要部左側面縦断面図で,図の右側が前面側であり,第2図は第1図のディスプレイ装置の正面図,…第4図はこの発明の対象となる前面開放形のショーケースの内部構成を示す要部左側面縦断面図で,図の右側が前面側である。…」(3頁左上欄15行〜右上欄3行)・「第1図ないし第4図において,1がケースであり,このケース1は…その前面に大きく開口する開口6を形成している。この開口6の下縁部を形成するケース本体2の下部のケース1の前面を,…側断面がほぼ左右が逆のL字形のカラーバンド8…の前面が形成している。カラーバンド8には前後方向に貫通する孔部27を形成しており,この孔部27に,…コンピュータの指令制御に基づき絵,文字などで表現した広告28を表示する前面の表示画面が横長長方形の液晶式のディスプレイ装置29の後端を嵌め込んで…カラーバンド8の裏面を引っ掛けて保持して--59おり,…コンピュータおよびディスプレイ装置29で広告表示装置を構成している。…」(3頁右上欄5行〜左下欄5行)・「…絵,文字などでなどを表現した広告28は,その表示する場所がケース1の開口6の周縁部形成するケース本体2の前面の狭い範囲に限られるにもかかわらず,その量に無関係に,静止画像のみならず人目を引き付け易い動画像でも,ケース1の前面であるカラーバンド8前面に保持したディスプレイ装置29の前面の表示画面に,図示しないコンピュータの指令制御により表示できる。その上,特別セール若しくは特価品あるいは目玉商品などの広告28をディスプレイ装置29の表示画面に市況に即応させて表示できる。なおディスプレイ装置としてはブラウン管,電球を平面的に配列形成し電光ニュースなどに使用される電光式表示体などケース前面取付可能な電光式のディスプレイ装置も使用できる。」(3頁右下欄11行〜4頁左欄5行)<図面>【第1図】【第2図】【第4図】--60( ) 甲4文献(実公平3-49565号公報)には,次のとおり,商b品を冷却・冷凍した状態で陳列する商品ケースにおける広告表示に関し,ケース本体1の上部にビデオテープの画像が映し出される映像部を備え,ビデオテープの映像により商品の宣伝を行うことが記載されている。 <実用新案登録請求の範囲>・「陳列商品が冷却または冷凍状態で収納される商品ケース本体と,これら各陳列商品の内容を示すビデオテープのうちから所望のビデオテープが選択的に映像され,しかも,前記商品ケース本体上に配置される映像部とを具え,この映像部と前記商品ケースとの間に断熱空気層を介在させて成ることを特徴とする映像付き商品ケース。」(1欄2行〜8行)<産業上の利用分野>・「本考案は映像付き商品ケースに係り,詳しくは,陳列される商品のなかから,所望商品を選択し,その商品の内容,例えば,特性,利用法等をあらわした映像をみた上で所望商品の内容を熟知して購買することができ,宣伝販売時に所謂マネキン等の宣伝販売による商品宣伝等の手数が省略できる映像付き商品ケースに係る。」(1欄12行〜18行)<発明の構成>・「…第1図は本考案の一つの実施例に係る商品ケースの斜視図…であ--61る。」(3欄33行〜36行)・「…第1図において,符号1はケース本体を示し,このケース本体1は通常の商品陳列ケースとして構成することもできるが,冷凍機能を持たせて…クローズドシヨウケースあるいはオープンシヨウケースとして構成することができる。…ケース本体1の表面は陳列された商品が外部から認識できるように通常は透明ガラス等を具えた戸3で開閉自在に構成し,消費者はこの戸をあけることによつて商品を取ることができるようにする。」(3欄37行〜4欄4行)・「次に,このケース本体1の上に映像部4を設ける。この映像部4は通常の通り表面に画像部5を具え,この画像部5を通して陳列商品の内容に対応するビデオテープ(図示しないが,後記の差込部に通常差込まれる。)の画像が写し出される。なお,この映像部4は通常の所謂ビデオテープレコーダー(V.T.R)と同様な機能を有するもので十分である。」(4欄7行〜14行)・「次に,ケース本体1ならびに映像部4はポータブル式や移動自在に構成する。この移動自在は通常商品ケース本体の下面にキヤスター6を設けて,このキヤスター6の回動によつて所望の場所に移動できる。また,商品ケースや映像部が相当小型化され,搬送が容易である場合には,商品ケースまたは映像部に把手を付けて,持ち運び自在に構成することもできる。」(4欄36行〜43行)--62<図面>【第1図】( ) 甲5文献(特開平5-266341号公報)には,次のとおり,c自動販売機における広告表示に関し,自動販売機のボディ1にビデオ再生装置のディスプレイ6を設けて商品の広告を行うことが記載されている。また,ビデオ再生装置のディスプレイはCRTや液晶表示板等から自由に選択できるものとされている。 <特許請求の範囲>・「自動販売機のボディにビデオ再生用のディスプレイを一体に組込んだことを特徴とするビデオ再生装置を備えた自動販売機。」(【請求項1】)<発明が解決しようとする課題>・「…従来の自動販売機は,単に金銭を投入すると商品を取出すだけのものであり,商品についての説明,表示,宣伝などは,そのボディの表面に写真やポスターなどで表示したに過ぎなかった。そのため,最近のように多様化された商品の説明を行うには不十分であったり,テレビのコマーシャルのように優れた宣伝広告機能を発揮することができない欠点--63があった。」(段落【0003】)・「本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので,その目的は,商品に対する宣伝,説明などの機能に優れ,より効果的に販売促進を可能とするビデオ再生装置を備えた自動販売機を提供することにある。」(段落【0004】)<実施例>・「本発明の一実施例を図1に従って具体的に説明する。図1において,自動販売機のボディ1には,従来の自動販売機と同様に,商品見本陳列部2,料金投入口3,商品取出し口4が設けられている。…このような自動販売機のボディ1には,更にディスプレイ6が設けられている。本実施例では,このディスプレイ6としてCRTが使用されている。このディスプレイ6は,ボディ1内に内蔵されたビデオ再生デッキ7に接続されている。…」(段落【0007】)・「このような構成を有する本実施例の自動販売機においては,利用者は,ディスプレイから流されるビデオ再生デッキ7からの映像により,商品の説明,コマーシャルなどの商品情報を受けることができる。…」(段落【0008】)・「…ディスプレイの位置や大きさ,その種類,例えばCRTや液晶表示板などは自由に選択できるし,再生装置の種類もビデオデッキ以外に光ディスク装置など適宜選択可能である。」(段落【0012】)--64<図面>【図1】d以上によれば,甲3〜5の各文献には,ショーケースや自動販売機など商品等が陳列展示されている場所の近くに,ビデオ再生装置など動画を表示できるディスプレイ装置を設置して商品の広告表示を行うことが示されている。 ところで,本件発明1は前記アのとおり商品陳列棚に展示された商品の前側に配置されるように取付固定されるものであるのに対し,甲3文献記載の発明はディスプレイ装置をショーケース本体の下部に設置するものであり,甲4文献記載の発明は商品ケース本体の上部に設置するものであり,甲5文献記載の発明は自動販売機のボディに設置するものであるから,本件発明1はこれらの発明と異なる特徴を有する。 しかしながら,商品が陳列展示されている場所の近くに動画を表示--65できるディスプレイ装置を設置して商品の広告表示を行うという発想自体は甲3〜5の各文献に表れているものであって,本件発明1と甲3〜5の各文献記載の発明との上記の違いは,ディスプレイ装置を商品陳列棚に取り付けるかという点に尽きるものである。そして,店頭等での広告表示を行う場合に,表示される場所が広告対象となっている商品と近ければ近いほど広告効果が上がるのは自明のことであるから,ディスプレイ装置の技術の進展に伴い,ディスプレイ装置を所望する任意の部位に取り付けることができるという状況下にあれば,当業者であれば最も広告効果が上がる場所すなわち商品陳列棚に展示された商品の前側にディスプレイ装置を配置しようとすることは当然に考えられることである。 eそこでさらに,本件特許の出願日(平成5年11月10日)当時における液晶カラー画像表示パネルを有するテレビ画像用の小型電子画像装置がどのようなものであったかにつき検討する。 ( ) 液晶ディスプレイ技術の経緯につき,後掲各証拠によれば次のとaおりであることが認められる。 ・液晶ディスプレイは,1970年代初め頃から時計や電子式卓上計算機に用いられるようになったが,当初のものは固定文字しか表すことのできないセグメント型であった。その後,1970年代中頃に任意の文字や画像を表示できるマトリクス型が開発され,その応用範囲は個人用ワープロ,OA機器や計測機器,モノクロテレビへと次第に拡大してきた。そして1980年代中頃に至り,カラー表示アクティブマトリクスの登場により応用分野は一挙に拡大した(乙5〔「液晶ディスプレイのすべて」〕269頁)。 ・一方,テレビの分野ではCRT(陰極線管)が独占的位置を占め--66ていたが,昭和59年頃から液晶ディスプレイがCRTと競合するようになり,当初は2〜3インチの画面サイズを有する小型の液晶ディスプレイが実用化され,次第に大型化が進められていった(甲21〔「液晶デバイスハンドブック」〕11頁〜13頁,600頁)。 ・液晶カラーテレビの国内市場は車載用製品を中心に成長し,平成2年における国内生産台数は170万台,平成3年3月現在におけるメーカーの参入数は15社となった。なお,この時点での液晶カラーテレビとしては,車載用のほか,ポケットタイプ,システム手帳組込みタイプ,ブックタイプ,ビデオムービーのモニター用など,様々な用途に向けた製品が販売されていた(乙3〔「1991年版 カラー液晶AV製品の市場動向総調査」〕2頁,4頁,11頁〜12頁,15頁〜18頁)。 ・さらに,平成5年に入ると液晶ディスプレイの広視野角化・多色化(フルカラー化)・低消費電力化等の技術が著しく進展し,製品の品揃えが増大すると共に,用途に合わせたパネル設計が可能となり,携帯情報端末等の新たな市場を創出するに至った(甲50〔「フラットパネル・ディスプレイ1994」〕38頁)。 ( ) 以上によれば,本件特許の出願日(平成5年11月10日)の時b点においては,液晶ディスプレイの性能は向上し,様々な分野・用途において広く使用されていたことが認められ,このような液晶ディスプレイを備えたテレビ画像用の小型電子画像装置を商品陳列棚に取り付けることに特段の技術的困難は存在しなかったということができる。 そうすると,店頭等での広告表示に関し,より高い広告効果を求めて,展示商品に最も近い場所である商品陳列棚に液晶カラー画像--67表示パネルを有するテレビ画像用の小型電子画像装置を取り付ける構成とすることは,当業者が容易になしうるものというべきである。 fしたがって,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1について容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 (イ) 相違点2に関しa原告は,相違点2の認定につき,本件発明1の広告表示担持体はテレビ画像用の小型電子画像装置と組み合わせられ適宜広告表示をするものであるのに対し,甲1号証第1発明はこのような構成を有していないから,この点を相違点として認定すべきであると主張する。 しかしながら,本件発明1の広告表示担持体がテレビ画像用の小型電子画像装置と組み合わせられるという点については,相違点1において本件発明1の小型電子画像装置がテレビ画像用のものであることが既に認定されているのであるから,相違点2においてこの点を重ねて認定する必要はない。また,本件発明1の広告表示担持体が適宜広告表示をするものであるという点については,甲1号証第1発明においても「ケース48は,また,より永続的な情報がその上に表示されることができる商品ラベル56用のスペースを望ましくは有する。そのような相対的に永続する情報は,例えば商品の箱の絵またはその他の図表,商品の記述された説明,UPCまたはEANバーコードを含むことができる」(甲1,訳文7頁10行〜13行)とされているように,本件発明1と甲1号証第1発明に共通するところである。 したがって,相違点2の認定に関する原告の上記主張は採用することができない。 bまた原告は相違点2の容易想到性についても主張するが,これは相違点2の認定に上記主張のような誤りがあることを前提としたもので--68あって,相違点2の認定に原告主張のような誤りがあるとはいえないことは前記のとおりであるから,容易想到性に関する原告の主張も採用することができない。 cしたがって,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点2について容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 (ウ) 相違点3に関しa本件発明1と甲1号証第1発明との相違点3は,取付固定用具の構成に関するものである。 b甲22(実願昭55-27214号〔実開昭56-130467号〕のマイクロフィルム),甲23(特開平2-230183号公報),甲24(実願平4-16673号〔実開平5-76371号〕のCD-ROM)には,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた表示用具等が次のとおり記載されている。 【甲22 第1図】【甲23第1図】--69【甲24 図1】上記表示用具等は,いずれも商品陳列棚に展示された商品の前側に広告等を表示するためのものであるところ,商品陳列棚には商品落下防止用の前柵が設けられていることが一般的であるから,商品陳列棚に表示を取り付けるために縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成すること,また商品陳列棚への取付けを安定的なものとするために縦後板の下端部に延設板を設けることは,ごくありふれた構成であって,本件特許出願前に周知の事項である。 したがって,相違点3の構成は,商品陳列棚に表示を取り付ける周知の技術を適用することにより当業者が容易になしうるものである。 cこれに対し原告は,甲1号証第1発明の把持部材は相当に強固な取付けのための構造を採用しているから,甲22〜24記載の周知技術を採用することは強固な取付けの意図に反するものであると主張する。 しかしながら,電子画像装置を商品陳列棚に取り付けるに際してどのような取付固定用具を採用するかは,電子画像装置及び商品陳列棚の構造に応じて適宜選択することができ,甲1号証第1発明の把持部材と異なる構造の取付固定用具の採用が妨げられるものではない。そして,商品落下防止用の前柵が設けられている商品陳列棚に電子画像装置を取り付けるために,縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた構造の取付固定用具を採用--70することは,当業者がごく自然になしうるものである。 dまた原告は,甲22〜24記載の表示用具等は本件発明1のように小型電子画像装置を取り付けるためのものではないなどと主張する。 しかしながら,甲22〜24に記載されている周知の構造(縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた構造)は,小型電子画像装置の背面に取り付けることも可能なものであり,また小型電子画像装置や表示プレートの重量に関しては,これに耐えうるように取付固定用具の材質や固定方法等を工夫すれば足りるものである。 eしたがって,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点2について容易想到であるとした審決の判断に誤りはない。 (エ) 本件発明1の作用効果に関し原告は,本件発明1には小型電子画像装置と表示プレートという広告形態の異なる広告媒体をコンパクトに組み合わせて相乗的効果を図ることができ,さらに展示品の間近でより効果的な広告効果を発揮することができるという作用効果があることを主張する。 しかし,これらの作用効果は,本件発明1の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明1の構成自体は上記のとおり容易想到であるから,原告の上記主張は結論を左右するに足りるものではない。 (オ) 以上のとおりであるから,本件発明1の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 (2) 本件発明2についてア本件発明2は,「テレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像装置4」を「表示ケース11」内に固定状態に装填するものであり,本件発明2と甲1号証第1発明との相違点1・3は,本件--71発明1における相違点1・3と同じである。 そして,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1・3について容易想到であるとした審決の判断に誤りがないことは,前記(1)のとおりである。 イ原告は,本件発明2についても本件発明1と同様に相違点2を認定すべきであったのに,審決はこれを看過したと主張する。 しかし,本件発明2が「表示ケース11内にテレビ画像用のスピーカーが一体若しくは別体で近設された小型電子画像表示装置4を固定状態に装填し,該装置4前面の面光源バックライト照明式液晶カラー画像表示パネル3と対向する前記表示ケース11の少なくとも前面に窓孔部2を孔設し且つ適宜広告表示5を施し」た構成を有する(本件訂正後の請求項2)のに対し,甲1号証第1発明のケース48も電子画像装置を固定状態に装填し,液晶のディスプレイ16と対向する部位に開口50を設けたものであり(甲1,訳文7頁2行〜3行参照),商品ラベル56により商品の箱の絵等の適宜の広告表示を施すことが記載されている(甲1,訳文7頁10行〜13行)。そうすると,両発明は「表示ケース内に液晶画像表示パネルを前面に有する電子画像表示装置を固定状態に装填し,該装置前面の画像表示パネルと対向する前記表示ケースの少なくとも前面に窓孔部を孔設し且つ適宜広告表示を施し」ている点で共通する(審決22頁21行〜23行も同旨)。 したがって,本件発明2と甲1号証第1発明には本件発明1における相違点2に相当する相違点は存在しない。 なお,原告は本件発明1の相違点2に関する主張と同様の主張をするが,かかる主張が採用できないことは前記(1)ウ(イ)のとおりである。 ウまた原告は,本件発明2の作用効果に関し,表示ケースを用いることにより小型電子画像装置を保護することができると共に広告表示体の本体と--72取付固定用具との接続を容易かつ強固にすることができる等の作用効果があると主張するが,これらの作用効果は,本件発明2の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明2の構成自体は上記のとおり容易想到であるから,原告の主張は上記結論を左右するものではない。 エしたがって,本件発明2の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 (3) 本件発明3についてア本件発明3は,本件発明1の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であり,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点1・2は,本件発明1における相違点1・2と同じである。 そして,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1・2について容易想到であるとした審決の判断に誤りがないことは,前記(1)のとおりである。 イまた,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点3’に関しては,「縦前板と水平板と縦後板とで逆U字型を構成し前記縦後板の下端部に延設板を設けた取付固定用具」にて展示台部に取付固定することは前記(1)ウ(ウ)のとおり当業者が容易に採用しうる構成であり,この構成を採用するに当たり「前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定する」ことは,甲25(実願昭57-104972号〔実開昭59-8666号〕のマイクロフィルム),甲26(実願昭57-123780号〔実開昭59-28359号〕のマイクロフィルム)に記載されている本件特許出願前に周知の技術を適用することにより当業者が容易になしうるものである。 --73ウこれに対し原告は,上記甲25,26に記載の技術は水平方向の移動を防止するためのものであるとか,小さな磁力しか有しないなどと主張する。しかし,甲25,26から読みとることができる周知の技術は,商品陳列棚上に載置する板と陳列棚の載置面との間に磁力を介在させることによって板の載置を安定させるというものであり,どのような方向の移動を防止するか(上下方向か,水平方向か),どのような強さの磁力とするかは,このような周知技術を適用するに際して当業者が適宜設定しうるものである。 エまた原告は,本件発明3の作用効果に関し,延設板と展示台部の底板との間に磁力を介在させることにより広告媒体の配置等の手間や労力を低減できることを主張するが,このような作用効果は,本件発明3の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明3の構成自体は上記のとおり容易想到であるから,原告の主張は上記結論を左右するに足りないものである。 オしたがって,本件発明3の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 (4) 本件発明4についてア本件発明4は,本件発明2の広告表示体と同じである「広告表示体A」を「前記取付固定用具7にて展示部Bに備えられた展示台部に取付固定し,前記延設板と前記展示台部の底板との間に磁力を介在させて前記延設板と前記底板を固定することを特徴とする展示具」であり,本件発明4と甲1号証第2発明との相違点は,本件発明1における相違点1,本件発明3における相違点3’と同じである。 そして,本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1,本件発明3と甲1号証第2発明との相違点3’について容易想到であるとした審決の判断に誤りがないことは,前記(1)(3)のとおりである。 イまた原告は,本件発明4の作用効果に関し,表示ケースを用いることに--74より小型電子画像装置を保護することができる等の作用効果があると主張するが,このような作用効果は,本件発明4の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明4の構成自体は上記のとおり容易想到であるから,原告の主張は上記結論を左右するに足りないものである。 ウしたがって,本件発明4の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 (5) 本件発明5についてア本件発明5は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,本件発明1・2が進歩性を有しないとした審決の判断に誤りがないことは前記(1)(2)のとおりである。 イそして,上記限定に係る構成については,テレビ(テレビジョン)について,甲20(「広辞苑第四版」)に「画像を電気信号に変換し,電波・ケーブルなどで送り,画像を再生する放送・通信の方式」と記載され,甲27(「NHKカラーテレビ教科書[上]」)1頁にも「テレビジョンはいろいろな光景,映画,写真などの画像を電気信号に変えて無線または有線の経路によって瞬時に別の地点に送り,受像機によって画像を再現するもので」あると記載されているように,無線送信電波によるテレビ画像(映像・音声信号)をアンテナで受信することは,有線送信と並んでテレビ受像機における周知の技術である。そうすると,テレビ画像用の小型電子画像装置4を備えるという本件発明1の構成が容易想到である以上,前記装置4に受信アンテナ6aを備え,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作するという本件発明5の構成は当業者が容易になしうるものである。 ウこれに対し原告は,甲1〜5文献のいずれにおいても無線送信電波によ--75る映像・音声信号に基づき広告表示動作する構成は採用されていないと主張する。 しかしながら,甲1〜5の各文献に無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する構成が記載されていないとしても,テレビ受像機の技術として無線送信電波によるテレビ画像の受信が周知であることは上記のとおりであるから,広告表示にテレビ画像用の小型電子画像装置を用いる場合に広告表示に関する映像・音声信号を送信する方法として無線送信電波を採用することは,当業者が当然になしうることである。 エまた原告は,赤外線信号を用いる甲1号証第1発明と電波信号(無線送信電波)を用いる本件発明5とは技術思想を本質的に異にするものであると主張する。 しかし,原告の主張は,つまるところ甲1号証第1発明の電子的な表示対象が静止画像であるのに対して本件発明5の電子的な表示対象はテレビ画像であることの違いを指摘するものであり,この点についてはテレビ画像用の小型電子画像装置を備える構成が容易想到かという本件発明1と甲1号証第1発明との相違点1に関して既に検討したとおりである。そして,テレビ画像用の小型電子画像装置を備える構成が容易想到である以上,連続的な表示が要求されるテレビ画像の送信に,送信源から距離がある場合や障害物がある場合でも信号を受信することができる電波信号を採用することは当業者が当然になしうることである。 オまた原告は,本件発明5の作用効果に関し,無線送信電波による映像・音声信号に基づき広告表示動作する構成を採用したことにより,オペレーションセンター等にて適宜に表示内容をレイアウトし,画像表示パネルの表示内容を制御することが可能となる等の作用効果があると主張するが,このような作用効果は,本件発明5の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明5の構成自体は上記のと--76おり容易想到であるから,原告の上記主張は結論を左右するに足りない。 カしたがって,本件発明5の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 (6) 本件発明6についてア本件発明6は,本件発明1・2を引用し,「前記小型電子画像表示装置4は,画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作する」との限定を加えたものであるところ,本件発明1・2が進歩性を有しないとした審決の判断に誤りがないことは前記(1)(2)のとおりである。 イそして,上記限定に係る構成については,テレビ画像(映像・音声信号)を有線送信することがテレビ受像機において周知の技術であることは前記(5)イのとおりであり,テレビ画像用の小型電子画像装置4を備えるという本件発明1の構成が容易想到である以上,画像記録媒体再生部Dからの有線送信による映像・音声信号に基づき広告表示動作するという本件発明6の構成は当業者が容易になしうるものである。 ウこれに対し原告は,テレビ画像を小型電子画像装置に有線送信するためには映像・音声信号が大容量かつ高速に伝送されることが可能でなければならないと主張する。 しかし,テレビ画像を有線送信するに当たって映像・音声信号をどのような容量・速度で伝送するかは当業者が適宜設定することができる事項である。 エまた原告は本件発明6の作用効果についても主張するが,原告が主張する効果は本件発明6の構成を採用することによって得られることが容易に予測できるものであり,本件発明6の構成自体は上記のとおり容易想到であるから,原告の主張は上記結論を左右するに足りないものである。 オしたがって,本件発明6の進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。 3 結語--77以上のとおりであるから,本件発明1〜6の進歩性を否定した審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 清水知恵子 |