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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ネ10038損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10032特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10005損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10089特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
平成17ネ10005損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 協議 /  製造方法 /  守秘義務 /  秘密保持義務 /  共同開発 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  相違点の判断 /  公知技術 /  技術常識 /  優先権 /  優先日 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  特許発明 /  実施 /  先使用権(先使用) /  社会通念 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  業として /  差止請求(差止) /  侵害 /  設定登録 /  目的の範囲 /  変更 /  同一事実(同一の事実) /  同一証拠(同一の証拠) / 
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事件 平成 19年 (ネ) 10102号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人三 菱電機株式会社(1審原告)
訴訟代理人弁護士近藤惠嗣
補佐人弁理 士村上加奈子
被控訴人株式会社日本マイクロニクス (1審被告)
訴訟代理人弁護士安江邦治
同 鈴木潤子
補佐人弁理 士須磨光夫
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/03/25
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人(1)原判決を取り消す。
(2)ア被告(被控訴人)は,原判決別紙物件目録記載のプローブカードを製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。
イ被告(被控訴人)は,その占有する原判決別紙物件目録記載のプローブカードを廃棄せよ。
ウ被告(被控訴人)は,原告(控訴人)に対し,1億5120万円及びこれに対する平成18年9月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2被控訴人主文と同旨。
第2事案の概要(以下,略語については原判決の例による )。
1本件特許控訴人は,名称を「半導体装置のテスト方法,半導体装置のテスト用プローブ針とその製造方法およびそのプローブ針を備えたプローブカード」とする発明について本件特許(特許第3279294号。平成11年8月27日出願,優先権主張平成10年8月31日〔日本 ,平成14年2月22日設定登録。請求項の数7, 〕特許公報は甲2)を有していた。
2第1次審決本件特許の請求項2,3及び7につき,被控訴人が,特許庁に対し,第1次無効審判請求(無効2004-80105号)をし,その中で,控訴人が,訂正請求を行ったところ,特許庁は,審理の上,平成17年4月18日付けで 「訂正を認め ,る。本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をした(第1次審決 。そこで, 。 )被控訴人が上記審決の取消しを求めて訴訟を提起したところ,知的財産高等裁判所は,平成18年3月1日,請求棄却の判決をした(平成17年(行ケ)第10503号 。)3第2次審決本件特許の請求項2及び3につき,被控訴人が特許庁に対し第2次無効審判請求(無効2005-80177号)をしたところ,特許庁は,審理の上,平成18年12月22日付けで 「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をした(第2 , 。
次審決 。そこで,被控訴人が上記審決の取消しを求めて訴訟を提起したところ, )知的財産高等裁判所は,平成19年10月30日,請求棄却の判決をした(平成19年(行ケ)第10024号 。)4第3次審決本件特許の請求項2,3及び7につき,被控訴人が特許庁に対し第3次無効審判請求(無効2006-80222号)をしたところ,特許庁は,審理の上,平成20年2月6日付けで 「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をした(第3 , 。
次審決 。そこで,被控訴人が上記審決の取消しを求めて訴訟を提起したところ, )知的財産高等裁判所は,平成20年(行ケ)第10084号として審理し(平成21年1月14日口頭弁論終結 ,同年3月25日に判決言渡しが予定されている。 )5第4次審決本件特許の請求項2,3及び7につき,被控訴人が特許庁に対し第4次無効審判請求(無効2006-80243号)をしたところ,特許庁は,審理の上,平成20年6月11日付けで 「特許第3279294号の請求項2,3,7に係る発明 ,についての特許を無効とする 」との審決をした(第4次審決 。そこで,控訴人が 。 )上記審決の取消しを求めて訴訟を提起したところ,知的財産高等裁判所は,平成2), 0年(行ケ)第10266号として審理し(平成21年1月14日口頭弁論終結同年3月25日に判決言渡しが予定されている。
6(1)本件は,特許権を有する控訴人(1審原告)が,被控訴人(1審被告)に対し,被控訴人のプローブカードの製造等の行為が,本件第2発明(訂正後の本件特許の請求項2に係る発明)及び本件第7発明(訂正後の本件特許の請求項7に係る発明)に係る特許を侵害していると主張して,被控訴人製品の製造・販売について差止め等や損害賠償を求めた事件である。
(2)これに対し,原判決は,本件第2発明及び本件第7発明が進歩性欠如の無効理由を有し,また,被控訴人には先使用権が認められるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
(3)そこで,上記判決に不服の控訴人が,原判決の取消しを求めて,本件控訴を提起した。
第3当事者双方の主張1当事者双方の主張は,次に付加するほか,略称も含め,原判決の「事実及び理由」欄の第2「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。
2控訴人の主張(1)先使用権に関する事実誤認ア原判決の認定原判決は 「本件管理基準表の配布開始後で,原告以外の顧客に対するものに限 ,っても,次のとおり,本件第2発明及び本件第7発明の構成要件を充足する製品が製造販売されていることが認められる(51頁6行〜9行「被告による…製品 。」),の製造販売は,単に顧客の指示に従いその手足として行われたものではなく,被告の事業の実施として行われたものと認められる(52頁12行〜14行)とする 。」が,誤りである。
イ針先端の曲率半径に関する認定の誤り被控訴人が,本件特許の優先権主張日前に事業として製造・販売したプローブ針の中に先端を球面仕上げとしたものがあったとしても,次の(ア)〜(エ)のとおり,その曲率半径が10〜20μ の範囲にあったことはあり得ない。
m(ア)岩手東芝?@原判決は,被控訴人作成(岩手東芝宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙8」の1)及び岩手東芝の従業員作成の「証明書 (乙8の2)に基づいて,被控訴人 」が岩手東芝に対して曲率半径10μ の球面である先端を有するプローブ針を製造m販売したと認定する(51頁10行〜15行 。), , しかし,乙8の1の2枚目には 「針先先端径を10μ Rに変更」と記載されm乙8の2でも 「先端半径:R15μ「形状:球面」と記載されているが,ど ,」, mこにも,球面の曲率半径がR15μ であったとは記載されていない。先端径は, m先端を球面とした場合の曲率半径とは異なるものであり,先端の形状が球面であれば先端径の半分が当然に曲率半径になるものではない。しかるに,乙8の2は,このことが争点であることが明らかになった後に作成されたものであるにもかかわらず,この点をあえて明確にすることを避けたかのような表現になっている。
被控訴人作成の1999年(平成11年)の「PROBE CARD」と題する総合カタログ(甲7)の17ページ左上の図面においては,明らかに 「先端径」と「球面半 ,径」とは使い分けられている。甲7のカタログ作成時点において,被控訴人は,当時の技術常識に従って「先端径」という用語を用いていたはずである。同様に,甲7の43ページ中央の図においても「先端径」という用語は,先端の太さを表現するものとして説明されている。また,甲7の43ページ中央の図には 「先端の長 ,さ」という用語も使われている一方,乙8の1の2枚目では 「針仕様の変更」と ,いう見出しのもとに 「針先端長」と「針先端径」が記載されている。被控訴人の ,用いていた用語の意味が乙8の1が作成された1997年(平成9年)当時と甲7が作成された1999年(平成11年)当時とで異なると解釈すべき理由はないから,甲7の43ページの図の説明からも分かるとおり 「針先端長」と「針先端 ,径」とは,長さと太さを表わすものとして,ワンセットで使用されていたものである。
?A被控訴人PB技術統括部のG(以下単に「G」という )作成の説明書(乙6 。
9)では 「プロービングエリア」とプローブ針に許容される最大先端径の関係が ,説明されているが,この説明も,先端径が針先の太さを表わしているという事実と整合するものである。
?B甲5のカタログの2頁においても 「先端径」は先端の太さを表わすものと ,して説明されている。ただ,理由は不明であるが,球面仕上げの場合の「球面半径」の説明は削除されている。この事実から推測すると,仮に,被控訴人の主張するように,先端球面仕上げの場合には先端径の半分が球面の曲率半径になるという関係が成立するとしても,それは,甲5のカタログが作成された2002年(平成14年)12月頃以降のことであると考えられる。
?CG作成の「1998年7月以前の先端球面プローブ針販売の経緯についての陳述書(乙34「針仕様についての説明書 (乙35「先端球面プローブ針と ), 」),MJ8Nの形状が同じである事についての陳述書 (乙36)は,いずれも,訴訟 」になってから被控訴人の従業員が作成した陳述書であり,信用性がない。
?Dなお,被控訴人が言及している被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙12)の4頁目は,控訴人が作成したものであり,岩手東芝が作 」成したものではない。先端形状を球面と指定したのみでは,先端径の半分が球面の曲率半径となるという常識が成立していなかったからこそ,控訴人は,説明図面を作成して乙12に添付したものである。
(イ)富士フィルムMD原判決は,被控訴人作成(富士フィルムMD宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書」(乙50の4)及び富士フィルムMDの従業員作成の「証明書 (乙50の5)を 」引用して,先端が曲率半径20μ の球面であるプローブ針の製造販売の事実を認m定する(51頁16行〜21行 。)しかし,乙50の4には,先端径が記載され,プローブの仕様欄において「特殊」に丸が付けられ 「球面」と記載されているが,先端の曲率半径はどこにも記 ,載されていない。また,乙50の5は,単に,納品を受けた事実を記載しているにすぎない。被控訴人は,先端形状が球面であれば,当然に,球面の曲率半径が先端径の半分になることを前提としているが,失当である。
なお 「富士フイルムマイクロデバイス?蒲l球面プローブ針のプローブカード ,一覧表 (乙50の1)には「直径・曲率半径」という欄が設けられているが,乙 」50の1は,被控訴人が本件訴訟に当たって作成したものである。乙50の2〜4では 「先端径」という用語が使われているにもかかわらず,被控訴人において勝 ,手に用語を変更したものであるから,乙50の1は,事実認定の資料とはなり得ない。
(ウ)Siemens原判決は,乙54の10〜22を引用して,先端が曲率半径15μ の球面又はmR加工であるプローブ針の製造販売の事実を認定する(51頁22行〜52頁1行 。しかし,乙54の10〜22にも「先端径」が記載されているにすぎない。 )また,乙54の1は,本件訴訟に当たって,被控訴人が主張を整理する目的で作成したものであり,本来的な意味での証拠とはいいがたいものであるが,そこでも,「先端径」が記載されているにすぎない。
(エ)G陳述書(乙1,35,60,70)の矛盾点?@G作成の「針仕様についての説明書 (乙35)には,記載された最先端の球 」面仕上げの場合には,先端径の半分が先端の曲率半径になるとの記載がある(5頁 。しかし,上記説明書(乙35)の2頁の説明図にもあるとおり,球面仕上げ )の場合には,先端径とは別に球面半径を定め得る。G自身も,上記説明書(乙35)の5頁において 「この曲率半径は指定の先端径に対して1/2ではなく,± ,。, 5μ の範囲内で近いものを選択(設計)する場合もあります 」と述べているがm±5μ に限らず,先端径とは独立して先端の曲率半径を選択できるものである。m?AG作成の「プローブ針先端処理(粗面仕上げ管理基準:乙18号証)作成の経緯 (乙70)の4頁には 「合計7種類の針先仕上げのプローブ針(球面R1 」,5μ )を作成し,岩手県釜石市…にある新日鉄グループ株式会社ニッテツ・ファmイン・プロダクツ釜石試験分析センター(判決注:以下「釜石試験分析センター」という )に対し,プローブ針先端部分の粗さ測定を依頼しました 」との記載があ 。 。
る。しかし,Gが述べる,粗さ測定の結果を報告した書面が,釜石試験分析センター作成の平成9年3月4日付け「調査結果報告 (甲15)であることについては 」当事者間に争いがないところ,控訴人の担当者が甲15に記載されている測定結果に基づいて針先端部の曲率半径を計算した結果(控訴人の生産技術センター計画部企画グループのH作成の「報告書 〔甲19 )の3頁の表にまとめられているとお 」〕り,7種類の針先の先端の曲率半径は,48.5μ から121.7μ の範囲にばmmらついており,15μ に近いものは存在しないから,誤差の点を考慮しても,7 m種類の針先の全てが半径15μ の球面であったというGの陳述が虚偽であること mは明らかである。甲15の各鳥瞰図から視覚的に受ける印象も,これを裏付けるものである(上記H作成の「報告書 〔甲25。」〕)実際にも,本件特許の優先権主張日前に被控訴人が現実に製造販売したプローブ針の先端は,乙23(特開平8-166407号公報)の図4と同様の形状をしていた(控訴人高周波光デバイス製作所アセンブリテスト生産推進部I作成の「陳述書 〔甲24〕参照 。 」)被控訴人は,曲率半径の計測は,プローブ針の先端部を基点に,プローブ針の根元側に指定された曲率半径の長さ分だけ遡り,その位置におけるプローブ針の直径が,指定された曲率半径の2倍になっているかどうかを見るものであると主張する。
しかし,被控訴人の測定(検査)では,先端において内接円の外側にはみ出している部分の大きさを評価することは行われていないから,先端球面の曲率半径はまちまちにならざるを得ない。
?BG作成の「陳述書 (乙1)には 「針先を真横にして,プロジェクターと呼 」,ばれるスクリーンへ,拡大射影し先端の形状(曲率半径)を計測(検査)し (2」頁下から1行〜3頁1行)との記載がある。
ところが,Gは 「報告書 (乙60)においては 「白い反射の最下端より若干上 ,」,に,プローブ針先端部の球状形状の中心が存在すると判断できます(1頁下から。」2行〜下から1行)と述べている。しかし,白い反射がどこに現れるかは,光の当て方(光の当たる角度や光の強さなど)によって異なることは自明であるから,白い反射の位置と球状形状の中心とは何の関係もない。
その一方で,Gは,同「報告書 (乙60)において 「プローブ針先端部の曲率 」,と一致すると思われる近似円は,…プローブ針先端の曲面をどのように近似円に取り込むかによって,無数に描くことが出来ます。従って,円の中心位置がどこにあるかを合理的に決めることなく,単に近似円を描くことには,何の意味もありません(2頁下から2行〜3頁3行)と述べている。 。」このような「報告書 (乙60)の陳述が 「陳述書 (乙1)における「拡大射 」,」影し先端の形状(曲率半径)計測」という陳述と矛盾することは明らかである。影には白い反射は現れるはずもないから,乙60でGが述べる方法では円の中心位置を決めることはできない。
ウ先端の表面粗さに関する認定の誤り本件管理基準表が作成された時点においては,被控訴人の粗面仕様A〜Fのプローブ針は,未完成であった。
(ア)証拠の不存在原判決は,被控訴人が製造し,岩手東芝(乙8の1,2 ,富士フィルムMD(乙5 )0の4,5 ,Siemens(乙54の10〜22)に対して販売したプローブ針のいず )れについても,プローブ針先端部の粗さについて 「本件管理基準表の粗面仕様 ,『E』に相当」と認定する(51頁10行〜52頁2行 。)しかし,各プローブ針の先端部の粗さについては,岩手東芝に対して販売したものは「かるい粗面 ,富士フィルムMDに対しては「鏡面 ,Siemensに対し 」 」ては「指定なし」というように,それぞれ指定が異なる。それにもかかわらず,これらのすべてについて本件管理基準表の「E」に相当すること自体が奇異であるし,本件管理基準表の「E」に相当すると認定したことに対する根拠が示されていない。
もっとも,岩手東芝のデバイス技術部D/S・評価技術開発担当のJ作成の「証明書 (乙8の2)には 「 かるい粗面』とは,…粗面仕様Eを指しております 」と 」,『 。
の記載がある。しかし,この書面は,本件訴訟になってから作成されたものであり,当時から 「かるい粗面」が粗面仕様Eを指していたという根拠にはならないし, ,現実に納入されたものが管理基準表の粗面仕様Eに対応していたという証拠も存在しない。
(イ)原判決の認定矛盾また,原判決は,上記(ア)の認定を 「本件管理基準表の配布開始後で,原告以 ,外の顧客に対するものに限っても」という前提の下で行っている。しかし,被控訴人が本件管理基準表を交付したと主張している岩手東芝を含めて,注文仕様書において先端の粗さを指定する際に,本件管理基準表に準拠したAないしFの符号を用いた者は,控訴人自身を除いて存在しない。このことは,本件管理基準表が営業ツールであったという被控訴人の主張が事実に反することを疑わせるに十分である。
(ウ)本件管理基準表の目的G作成の「先端球面プローブ針とMJ8Nの形状が同じである事についての陳述書 (乙36)の末尾添付の図面によれば,先端を平坦にしたプローブ針材料は, 」エッチングによって先端を球面に加工されるところ,同陳述書(乙36)には,「粗面仕上げの指定がある場合は,球面,鏡面に加工した針をプローブカードに組み立てた後,別のエッチング液,別の直流電源設定により表面を荒らす加工をする事で『梨地』=粗面に仕上げます(3頁4行〜7行)と記載されている。 。」しかるに,前記乙70によれば,Gは 「サンプルとして仕上げ条件(薬液や電解 ,の電圧など)を変えたA〜Fの6種類+処理無し合計7種類の針先仕上げのプローブ針 (4頁9行〜11行)について,先端部分の粗さ測定を依頼したところ,そ 」の結果を報告したものが前記甲15である。そして,被控訴人が本件管理基準表を作成したのは,簡易な形式で甲15の調査結果を岩手東芝に報告することにあった。
このことは,本件管理基準表に手書きの文字が記入された文書(甲23)において,手書き部分が 「MHC K部長殿 FromG(3/6岩手東芝様へ中間報告として提出 ,済 」という内容のものであることから明らかである。 )(エ)本件管理基準表と被控訴人作成の「プローブカードについて (甲8)と 」の矛盾本件管理基準表には,表の下部に 「処理無しは,抵抗値が高くそのままプロー ,ブとしては使用できません 」と記載されている。ここで 「処理無し」とは,乙3 。 ,6及び乙70の上記記載からみて,先端を球面に加工する化学エッチングのみを行ったものであると考えられる。そうすると,本件管理基準表を作成した時点では,表面を荒らす別のエッチング加工によって抵抗値が低くなると想定していたことになる。
一方,上記甲8には 「研磨を続けると最終的に先端形状は必ず球面(擬球面) ,となる。この現象は化学研磨という工法の特徴である(9頁)との説明がある。 。」これは,本件管理基準表において「処理無し」と呼ばれているものを得るまでの工程を説明しているものと思われる。そして,上記甲8には,化学研磨に関して,「特にタングステンのプローブ針では硬く丈夫な表面酸化膜が生じるので二次的な表面処理が必要となる「化学的研磨処理でも処理条件を変化させると表面粗さ 。」,を変化させる事が出来るが,表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しいので弊社では機械的表面処理を用いている(13頁)と説明されてい 。」る。そうすると,上記甲8の技術説明資料が作成された時点(2005年(平成17年)10月20日)においては,被控訴人は,表面酸化膜の形成と,表面粗さのコントロールの困難さを理由に機械的表面処理を最終仕上げとして用いていることとなる。
しかるに,上記甲8の13頁の表に記載された数値は,本件管理基準表に記載された数値と全く同じである。しかし,これらのうち,一方は乙70に記載された化学的研磨処理による結果であり,他方は甲8に記載された機械的表面処理の結果である。本件管理基準表の前提となっている技術と甲8に記載されている技術が異なるものであり,かつ,甲8においては,化学研磨による仕上げでは「表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しい」とされていることを考えると,化学研磨による仕上げしか行っていなかった本件管理基準表の段階では被控訴人における発明が未完成であったと考えられる。
」, 被控訴人は,本件管理基準表における粗面仕様「A」に相当する「粗面仕上げ及び粗面仕様「E」に相当する「鏡面仕上げ (すなわち「軽い粗面仕上げ )のプ 」 」ローブ針を,化学研磨によって製造し,複数の顧客に対し,繰り返し多数回販売していたのであるから,少なくとも本件管理基準表における粗面仕様「A」及び粗面仕様「E」なる仕様が,本件管理基準表が作成された平成9年(1997年)3月の時点で未完成であったなどということはあり得ない,と主張する。
しかし,例えば,被控訴人作成の「実験結果報告書 (乙74)の3/4ページ 」に接触抵抗値に関し 「…初期値は全て0.4Ω以下である (出荷基準0.5Ω以下)10 , 。
00回以降最大値は2Ω〜11Ωの間で大きくばらついている…」と記載されており,また,4/4ページには 「1000回以降はアルミカスの付着が多くなり,これらの ,付着物はエタノール等による簡単な洗浄では殆ど落ちる事は無く,コンタクトが増すにつれ付着物も多くなる傾向にある 」と記載されている。これらの記載は,被 。
控訴人において,実用的に使用できるプローブ針が得られていなかったことを意味している。
(オ)被控訴人は,控訴人自身が「A仕様」又は「B仕様」を指定していたことなどを根拠として本件管理基準表が被控訴人によって営業ツールとして使用されていたと主張する。
しかし,被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙9〜11) 」が作成された頃までに,控訴人と被控訴人の間には秘密保持義務(控訴人と被控訴人との間の「取引基本契約書 〔甲9〕参照)を前提とした意見交換があり,その 」ような関係の中で,控訴人の担当者であったLは被控訴人から本件管理基準表を受領していた。Lは,被控訴人の担当者であったPからプローブ針の表面粗さを粗くすることを勧められ,同人の指示により,乙9から乙11に添付された控訴人作成の製作仕様書にA仕様又はB仕様と記載したのである。そうすると,控訴人がA仕様,B仕様という表現を用いていたとしても,それは,被控訴人が本件管理基準表を一般的な営業ツールとして用いていたことを意味するわけではない。また,乙9〜11と同時期に作成された被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書」(乙80)についても,備考欄に記載の仕様変更(F仕様の指定)は被控訴人が内部連絡のため記したものである。さらに,被控訴人作成(東芝多摩川工場宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙76)については,その1頁目の朱書きは被控訴人 」が追記したものであり,かつ2頁目の「仕様変更通知書」はそもそも被控訴人の内部文書であるから,東芝多摩川がE仕様という指定をしたことを示すものではない。
エ被控訴人と岩手東芝との関係原判決は 「被告による…製品の製造販売は,単に顧客の指示に従いその手足と ,して行われたものではなく,被告の事業の実施として行われたものと認められる…(52頁)と認定するが,誤りである。 。」すなわち,岩手東芝の製造部第一製造担当のM作成の「証明書」添付の「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙32)に「秘」のスタンプが押捺されている 」ことからも明らかなとおり,被控訴人と岩手東芝とは,共同開発の途上にあったものである。したがって,被控訴人が岩手東芝に納入した製品は,共同開発の途中経過における評価の対象としての製品であり,このような行為は事業の実施には該当しない。
侵害行為との関係原判決は 「原告が差止めを求めている被告の現在の実施内容は,本件特許の優 ,先権主張日前に被告が実施をしていた発明及び事業の目的の範囲内にあるものと認められる(52頁下から6行〜下から4行)と認定するが,誤りである。 。」すなわち,前記のとおり,前記甲8の記載から見て,本件特許の優先権主張日前においては,被控訴人の発明は未完成であったから,そもそも,先使用権は成立していないし,当時の行為と本件において控訴人が差止めを求めている行為とは実質的に異なるものである。
(2)特許法29条2項違反に関する認定の誤りア原判決の認定原判決は 「乙19(判決注:特開平5-273237号公報)又は乙21(判 ,決注:特開平7-63785号公報)により選択した曲率半径と,本件管理基準表に開示され顧客に伝えられたプローブ針先端部の表面粗さを『0.4μ 以下』とmする知見とを組み合わせ,本件第2発明のように構成することは,…当業者にとって,容易なことであったと認められる(49頁7行〜12行)とする。 。」しかし 「本件管理基準表に開示され顧客に伝えられた」の部分は,前述のとお ,り誤りであるし,また,乙21(特開平7-63785号公報)に開示された内容は,実質的に乙19(特開平5-273237号公報)の開示内容と同じであることに鑑みれば,本件特許に対する乙19(特開平5-273237号公報)を理由とする無効審判の請求不成立審決の取消訴訟において請求棄却判決(乙25)が確定しているにもかかわらず,本件の原判決がこれと異なる結論に達したのは,本件管理基準表によって,表面粗さを「0.4μ 以下」とする知見が公知であったとmいう認定に基づくものであるところ,同認定は誤りである。
イ本件管理基準表の作成経緯(ア)乙18に添付された本件管理基準表の作成経緯については,次のとおりである。
1996年(平成8年)3月に,被控訴人と岩手東芝との間で技術的な事項につき打合せがもたれ(G作成の陳述書〔乙1,70,これ以降,被控訴人と岩手東 〕)芝との間にプローブ針の共同開発的な関係が成立した。被控訴人は,1996年(平成8年)4月に評価用プローブカードを岩手東芝に出荷した(被控訴人作成の平成8年3月28日付け「PROBE-BOARD注文仕様書 〔乙4の1,乙5の1。その 」〕)一方で,被控訴人の担当者であったGは,岩手東芝の担当者と何度も協議し,岩手東芝から貸出を受けた金ベタウエハーにコンタクトさせて実験を行い,岩手東芝による評価(確認)試験が行われた(G作成の陳述書〔乙70。〕)そして,岩手東芝は,上記評価試験の結果を1997年(平成9年)2月13日付けの「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙32添付)としてまとめ,被 」控訴人に交付した。同報告書の表紙には明瞭に「秘岩手東芝エレクトロニクス?梶vのスタンプが押捺されている。
(イ)G作成の陳述書(乙70)には,この段階で,被控訴人は,岩手東芝から「定量的な『粗さ基準』を設けた方が良いのではないか」との提案を受け,この提案を受けたGは,G自身が「目視上の差異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものかを確認したいと考えて」いたことから,仕上げ条件(薬液や電解の電圧)を変えたA〜Fの6種類+「処理無し」合計7種類の針先仕上げのプローブ針を作成した,作成した針先の形状は,「球面R15μ 」であった,と記載されている。
m上記7種類のプローブ針の先端部分の粗さ測定をGが依頼し,この依頼に基づく測定結果を報告したものが,平成9年3月4日付け釜石試験分析センター作成の「調査結果報告 (甲15)である。そして,Gは,この結果に基づいて本件管理基 」準表を作成し,岩手東芝に対して「中間報告として提出 (甲23)したものであ 」る。そうすると,本件管理基準表は,名称は「管理基準」であっても,その実質は,「定量的な『粗さ基準』を設けた方が良いのではないか」という提案を行った岩手東芝に対する「中間報告」である。
(ウ)しかるに,G作成の陳述書(乙70)には 「この『管理基準』の内容は, ,当社が実施しているプローブ針先端の処理が複数の種類を有し,各々が粗さとして数値管理されていることを顧客全般に紹介(針仕様の説明資料として)できる内容となっています」との記載があるが,信用性がない。
まず,乙70においてG自身が説明しているとおり,もともと,Gは 「目視上の ,差異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものかを確認したいと考えて」いたものである。そして,仕上げ条件(薬液や電解の電圧)を変えたA〜Fの6種類についても,被控訴人が通常行っていたものであるなどとは述べていない。むしろ,Gの疑問としていた「目視上の差異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものか」という点を明らかにするために選択された実験条件であったと考えられる。
次に,得られた結果は,むしろ 「数値的に管理ができない」と解釈すべきもの ,である。このことは,本件管理基準表が管理基準としての体をなしていないことからも明らかである。同表が管理基準とは認められない理由は,次の各点のとおりである。
?@仕様Cと仕様Dが中心線平均粗さの値は3つともほとんど同じである点?A仕様Dの十点平均粗さの平均値が極端に小さい点?B仕様Fの中心線平均粗さの最小が0.0000である点?Cそれぞれの仕様について,中心線平均粗さの基準値と最小の差に比べて基準値と最大の差が極端に大きい点?Dそれぞれの仕様について,最大と最小の間に入るものを合格と考えると,仕様と仕様の重なりが極めて大きく,異なる仕様として規定している技術的意味が不明であり,そもそもいかにして区別するのかという点。
ウ本件管理基準表の配布先(ア)原判決は 「被告の営業担当者は,以後,被告製品を購入希望する客先又は ,新規開拓を目指す多数の客先に対し,被告のプローブカード製品仕様の資料として本件管理基準表を提出又は提示して,被告製品の説明を行った(46頁9行〜1。」1行)とする。しかし,本件管理基準表を受領したことが認められるのは,岩手東芝と控訴人にすぎない。そして,岩手東芝も控訴人も,被控訴人との間で守秘義務を前提とする情報交換をしていたのであるから(乙32の「評価報告書」の「秘」のスタンプ,甲9 ,岩手東芝や被控訴人が本件管理基準表を受領したとしても, )それが「営業ツール」であったことにはならない。
(イ)原判決は 「原告は,被告に対する注文に当たり,本件管理基準表に記載さ ,れたA〜Fの仕様を使用した (46頁12行〜14行)としている。しかし,控 」訴人は,本件管理基準表に記載された数値を信頼して注文したものではなく,被控訴人が「最も粗い」と考えているもの,あるいは 「粗い方から2番目」と考えて ,いるものを注文したにすぎない。したがって,控訴人がA〜Fの符号を用いたからといって,本件管理基準表が一般的に被控訴人の「営業ツール」であったことにはならない。むしろ,控訴人以外には,岩手東芝も含めて,A〜Fの符号を用いたものがなかったことの方が重要な事実である。
(ウ)原判決の認定に沿う証拠として,例えば,富士通株式会社電子デバイス事業本部岩手工場デバイス技術部のNは,乙72において 「書面をみながら説明を受 ,けた」と述べているが,交付されたとは述べていない。したがって,同人が本件管理基準表を受領した事実はなかったはずである。カタログ等と同等の営業ツールであれば,交付することが当然であり,極めて不自然である。さらに,乙72では「1997年当時,…書面を見ながら説明を受けた」と述べているが,その日時や事実を裏付ける証拠は全く示されていない。
また,被控訴人半導体機器営業統括部の青森営業所所長O作成の「報告書 (乙7 」1)には 「Gが作成した『管理基準』は,それまでの曖昧な基準とは違い,針先の ,表面処理をA〜Fまでの6段階に分類して表面粗さを数値的に管理するものです「顧客から先端処理の違いによる具体的数値の要求があった場合などに用い 。」,ました。それまでは経験則的な表現でしか説明できなかった2種類の表面処理を,数値的に説明できるようになったことが営業ツールとして非常に有意義であり,説明を受けた顧客にも良く理解していただけたと思います(2頁)との記載がある。 。」しかし,前記イ(ウ)に記載したとおり,本件管理基準表からは,A〜Fの数値的な違いなどは分からず,仮に,本件管理基準表に基づいて顧客に説明したならば,混乱だけが残ったはずである。このことは,たとえば,本件管理基準表の仕上げ条件Aの針とCの針とを注文したと仮定してみれば容易に分かることである。Aを注文した顧客は,中心線平均粗さで0.005μ の製品を受け取る可能性があり,m他方で,Cを注文した顧客は,中心線平均粗さで0.02μ の製品を受け取る可 m能性がある。これでは,Cを注文した顧客の方が表面の粗いものを受け取ることになり,受け取ってみなければどのような表面粗さの製品が納品されるか分からないのと同じことである。本件管理基準表は,到底,営業ツールたり得ない。
エ本件管理基準表に関する原判決のその他の認定(ア)秘密保持義務の対象原判決は 「本件管理基準表には,プローブカードの製造販売を業とする被告が ,顧客に供給することができるプローブピン先端部の粗さの仕様が記載されているにすぎず,…秘密保持義務の対象となる『業務上の秘密』には当たるものと認めることはできない(46頁下から2行〜47頁4行)と認定している。 。」しかし,上述したとおり,本件管理基準表は,いわば,実験結果の中間報告であり,現実に被控訴人が顧客に提供することができたプローブピンの先端部の粗さの仕様を記載したものではないから,原判決の上記認定は,その前提において誤っている。
また,岩手東芝は共同開発の中間報告として本件管理基準表を被控訴人から交付され,控訴人は不具合対策の一つとして本件管理基準表を被控訴人から交付されたのであって(乙1,16〜19頁 ,評価や確認試験などを繰り返しながら実使用 )するに最良のものを開発している岩手東芝や控訴人と被控訴人との間のこのような行為が秘密保持義務を前提としたものであることは,社会通念上又は商慣習上,当然のことである。
(イ)現物の入手可能性原判決は 「被告からその現物を入手し,その存在を確認することができたもの ,である (49頁4行)と認定している。 」しかし,本件管理基準表に記載されたプローブ針は,Gが 「目視上の差異がどの ,程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものか」という疑問を解決するために複数の仕上げ条件A〜Fで製造したものである。これらの仕上げ条件は,いずれも化学研磨であるところ,甲8によれば,「化学的研磨処理でも処理条件を変化させると表面粗さを変化させる事が出来るが,表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しいので弊社では機械的表面処理を用いている(13頁)との記載があるから,本件管理基準表に記載 。」されたものは,その後,本件特許の優先日以後に入手可能になった製品とは異なるものであるといえる。そうすると 「被告から現物を入手」という原判決の認定は ,誤りである。
容易想到性判断に関する原判決の誤り(ア)以上に述べたとおり,原判決の「乙19又は乙21により選択した曲率半径と,本件管理基準表に開示され顧客に伝えられたプローブ針先端部の表面粗さを『0.4μ 以下』とする知見とを組み合わせ,本件第2発明のように構成するこmとは,…当業者にとって,容易なことであったと認められる(49頁7行〜12 。」行)という認定において言及されている 「本件管理基準表に開示され顧客に伝え ,られたプローブ針先端部の表面粗さを『0.4μ 以下』とする知見」は存在しなmかったから,そもそも,組合せの容易性を論ずる余地はない。
(イ)原判決は 「仮に,本件第2発明が0.4μ 程度以下で急激にコンタクト ,m回数を増やすという本件明細書の図8に示された効果を奏するとしても,特開平8-166407号公報(乙23)及び特開平8-152436号公報(乙22)の開示内容…に照らすと,表面粗さ0.4μ 以下とすることによって急激にコンタmクト回数を増やすことができるとの効果は,本件第2発明のように構成することから予想することができる程度のものと認めるべきであり,顕著な効果の点から,上記…と異なる容易想到性の判断をすることはできない(49頁下から2行〜50 。」頁6行)と判断している。
しかし,この判断は,確定審決の趣旨を逸脱するものである。原判決は,本件管理基準表を容易性判断に介在させることによって,特許法104条の3の適用に当たって考慮すべき特許法167条の規定の趣旨を考慮しないことを形式的に正当化しようとしているが,実質的には確定審決を無視した判断をしているものである。
すなわち,本件の乙19及び乙23は,それぞれ,乙25の判決及びその基礎となっている審決における甲4及び甲5である。
また,本件の乙21及び乙22は,乙25の判決及びその基礎となっている審決において審理の対象とはなっていないが,乙19と乙21,乙23と乙22とを,それぞれ比較すれば,乙19及び乙23の方が,乙21及び乙22に比べて,より一層,本件第2発明との関連性の高い公知技術であることは明らかであるから,原判決が乙21及び乙22に言及していることは,実質的にみて,新たな公知技術が引用されているとはいえないものである。
そうであるところ,乙25の判決は,被控訴人(同事件の原告)の主張(取消事由2)として 「甲4の『直径50μ〜30μ程度の円錐形状』…との記載,甲5 ,の『 最大高さは)1μ 以下であれば望ましく,0.8μ 以下であればより望 (m mましい 』…『最大粗さ0.6μ 』との記載…に基づいて,当業者が容易に発明 。 mすることができたというべきである 」と摘示し(13頁ウ ,その上で,この被控 。)訴人の主張について理由がないと判断して,被控訴人の請求を棄却している。しかるに,この乙25の事件における被控訴人の取消事由2の主張と,原判決の上記判断がなされた事項とは,軌を一にするものである。そうすると,原判決の上記判断は,確定審決の存在を無視するものに他ならず,特許法167条の趣旨に照らしても,特許法104条の3の立法趣旨に明らかに反する判断であり,本件は 「特許 ,が特許無効審判により無効とされるべきものと認められるとき」には該当しないものである。
カ被控訴人は,本件管理基準表を多数の顧客に提示したと主張するが,具体的な事実を客観的に証明する証拠はなく,本件管理基準表は公知資料とはいえない。
また,被控訴人は,本件管理基準表が技術的に信頼性のあるものと主張するが,電解エッチングの条件が異なるからといって表面粗さを区別できることにはならないし,被控訴人の内部において,粗面仕様A〜Fに対応する電解エッチング条件が区別されていたとしても,本件管理基準が技術的な意味での管理基準としては意味をなさないことに変わりはなく,また,前述のように,本件管理基準表は,中心線平均粗さ(Ra)が十点平均粗さ(Rz)よりも大きいという理論的にあり得ない数値を含んでいるのであって,当業者が,本件管理基準に依拠して何らかの発明をすることはあり得ない。さらに,被控訴人において先端の曲率半径を正しく計測していなかったことは前述のとおりであるから,本件特許の優先権主張日前に被控訴人から本件特許発明実施品と同一のプローブ針を入手することが可能であったとした原判決の認定は誤りである。
3被控訴人の主張原判決は正当であり,控訴人が主張する控訴理由はいずれも失当である。
(1)先使用権に関する事実誤認の主張に対しア針先端の曲率半径に関する認定誤りの主張に対し(ア)岩手東芝?@原判決は 「岩手東芝(乙8の1及び2(51頁10行〜15行)におけ , )」る認定をするに先だって 「証拠(乙1,34〜36)及び各項に記載の証拠によ ,れば,本件管理基準表の配布開始後で,控訴人以外の顧客に対するものに限っても,次のとおり,本件第2発明及び本件第7発明の構成要件を充足する製品が製造販売されていることが認められる(原判決51頁6行〜9行)として,乙1,乙34 。」〜36を挙げているところ,控訴人はこのことを看過している。
例えば,G作成の「1998年7月以前の先端球面プローブ針販売の経緯についての陳述書(乙34)1〜2頁には 「1.PROBE-BOARD注文仕様書」 ,として,被控訴人営業担当者による「PROBE-BOARD注文仕様書」の記入についての説明がされ,特にその2頁9〜12行には 「 ■プローブの仕様』欄の ,『下方『備考』に球面の指示が記載されている場合は,記載された最先端の直径寸法となる球面仕上げを要求していることになります。また,R○○とか○○Rと記載されている場合は,先端球面仕上げを要求しており,その曲率半径を指定しています 」と記載されており,G作成の「針仕様についての説明書 (乙35)5頁5〜 。 」7行にも同様の記載がある。
これらの記載によれば,被控訴人作成(岩手東芝宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙8の1)の1枚目において 「プローブの仕様」の欄に「15±5Rμm」 」 ,と記載され,かつ 「球面」との指定があれば,プローブ針先端部を曲率半径が ,「15±5μm」の半球状に仕上げる仕様が指定されていることは明らかである。
また,乙8の1の2枚目の「仕様変更通知書」における「針先端径を10μmRに変更」との記載も同様であり,既に乙8の1の1枚目の「PROBE-BOARD注文仕様書」において 「球面」との指定がある以上,プローブ針先端部を曲率半 ,径が「10μm」の半球状に仕上げる仕様に仕様変更がされたことは明らかである。
?Aまた,乙8の1の1枚目におけるような「PROBE-BOARD注文仕様書」において 「先端径」の欄に,例えば 「15μmR」との記載があり,かつ, , ,「針先端処理」に関し 「球面(仕上げ 」との指定があれば,プローブ針先端部を, ,)曲率半径15μmの半球状に仕上げる指定であることを,控訴人自身も認めているところ,控訴人はこれを看過している。
すなわち,控訴人は,原審における原告第3準備書面において,以下のとおり述べている。
・ 被告は,被告書面4の34ページにおいて 『乙第12号証によれば,本件特許の優先権主 「 ,張日前の平成9年(1997年)に,原告である三菱電機株式会社に対し,先端部の形状が球状で,先端部の曲率半径が『15μm ,先端部の表面粗さが『0.4μm以下』のプローブ 』針を備えたプローブカードが製造,販売されたことは明らかである 』と主張している。原告 。
は,被告が原告の指定した仕様に基づいてプローブカードを製造し,これを原告に対して販売した事実そのものを争うものではない(4頁16〜22行) 。」・ 日本電子材料と被告に対して先端を球面状として,その曲率半径を15μmとしたプロー 「ブ針を有するプローブカードを特注した。乙12等の『PROBE-BOARD注文仕様書』は,その際の被告に対する注文に関するものである(5頁11〜14行) 。」・ 乙12に従って原告が被告に発注したプローブ針の仕様は本件特許発明構成要件を充足 「する (13頁20〜21行) 」しかるに,乙12の「PROBE-BOARD注文仕様書」における「プローブの仕様」欄における記載ぶりと,乙8の1の「PROBE-BOARD注文仕様書」における「プローブの仕様」欄における記載ぶりとは,曲率半径を指定する「R」の文字が 「μm」の後に記載されているか前に記載されているかの違いを ,除いて,実質的に違いはなく,また,被控訴人の担当者が,乙12の「PROBE-BOARD注文仕様書」と,乙8の1の「PROBE-BOARD注文仕様書」とで,記載ぶりを変更したと考えなければならない特段の事情も存在しないから,乙12の「PROBE-BOARD注文仕様書」が,プローブ針先端部を曲率半径15μmの球面状に仕上げる仕様を指定するものであれば,乙8の1の「PROBE-BOARD注文仕様書」も,同様に,曲率半径15±5μmの球面状に仕上げる仕様を指定するものであることは論を待たない。
?B控訴人は,乙2以下,被控訴人が多数提出した「注文仕様書」において,プローブの仕様の欄における「先端径」は,針先の太さを表していると主張する。
しかし,被控訴人が提出した多数の「PROBE-BOARD注文仕様書」における「先端径」が 「針先の太さ ,すなわち,プローブ針先端部の直径を意味する ,」ことと 「球面(仕上げ 」という被控訴人の仕様が,プローブ針先端部を先端径の ,)1/2,又は先端部の半径に等しい曲率半径をもった半球状に仕上げる仕様であることとは何ら矛盾しないから,控訴人の上記主張はそもそもが失当である。
被控訴人は,先端径が,即,先端部の曲率半径を意味していると主張しているのではない。被控訴人における「球面(仕上げ 」という仕様は,プローブ針先端部 )を先端径の1/2,又は先端部の半径に等しい曲率半径をもった半球状に仕上げる仕様であるから 「PROBE-BOARD注文仕様書」の「先端径」の項に 「○ , ,○μm」として先端部の直径を指定する記載,或いは 「○○μmR」として先端 ,部の半径を指定する記載があり,かつ 「球面(仕上げ 」という仕様の指定があれ ,)ば,プローブ針先端部の曲率半径は,指定された先端径の1/2,あるいは指定された先端部の半径と同じになると主張しているのである。
(イ)富士フィルムMD乙50の4の「PROBE-BOARD注文仕様書」には 「プローブの仕様」 ,「先端径」の項に 「20Rμm」と記載され,かつ 「球面」との仕様の指定があ , ,るから,この「PROBE-BOARD注文仕様書」に基づいて製造されるプローブ針の先端部が曲率半径20μmの球状となるものである。そして,先端部の曲率半径が20μmであるプローブ針を備えたプローブカードが被控訴人によって製造され,本件特許の優先権主張日前の平成9年(1997年)12月に,当時の富士フィルムマイクロデバイス株式会社に販売されたことは,乙50の5から明らかである。
(ウ)Siemens乙54の10〜22のうち,少なくとも,乙54の12,13,14,15,16,19,20,21,22の「PROBE-BOARD注文仕様書」には 「プ,ローブの仕様」として「球面(仕上げ 」の指定があるから,プローブ針の先端部 )の曲率半径が,指定された「先端径:30μm」の1/2,或いは指定された先端半径「15μmR」と同じ,15μmであったことは明らかである。また,乙54の10,11,17,18には 「PROBE-BOARD注文仕様書」に「球面 ,(仕上げ 」の指定は記載されていないけれども,これら乙各号証の2枚目の「P )ROBEBOARDORDERFORM(page1/2 」をみると 「P ),ROBESPECIFICATION」の欄の上から4行目の「Tipshape」の項において 「□Flat」と一対になっている「□Round」にチェ ,ックが入れられており 「球面(仕上げ 」の指定であったことは明らかである。 ,)(エ)G陳述書(乙1,35,60,70)の矛盾点?@G作成の「針仕様についての説明書 (乙35)の2頁には,その右下に,先 」端部が「平坦仕上げ」の場合について 「先端径」がどこを指すかの説明図と,先 ,端部が「球面仕上げ」の場合について 「球面半径」がどこを指すのかの説明図が ,記載されているだけであり 「球面仕上げの場合には,先端径とは別に球面半径を ,定め得る」などということは一切記載されていない。また,控訴人は,G自身も,「この曲率半径は指定の先端径に対して1/2ではなく,±5μmの範囲内で近いものを選択(設計)する場合もあります 」と述べているが,±5μmに限らず, 。
先端径とは独立して先端の曲率半径を選択できる,と主張するが,控訴人の同主張は,乙35におけるGの陳述を歪曲するものである。Gは,あくまでも 「プローブ ,針の在庫の有無,納期の関係」から,指定された先端径の1/2に対し 「±5μ ,mの範囲内で近いものを選択(設計)する場合」もあることを述べているにすぎない。
?AG作成の「プローブ針先端処理(粗面仕上げ管理基準:乙18号証)作成の経緯 (乙70)について,控訴人は,甲19における針先端部の曲率半径の計算 」を根拠に挙げるが,同計算には合理性がない。
また,控訴人高周波光デバイス製作所アセンブリテスト生産推進部I作成の「陳述書 (甲24)に添付されたSEM写真は,本件特許の優先権主張日前に被控訴 」人が現実に製造販売したプローブ針の先端を撮影したものであるとはいえない。
曲率半径の計測は,プローブ針の先端部を基点に,プローブ針の根元側に指定された曲率半径の長さ分だけ遡り,その位置におけるプローブ針の直径が,指定された曲率半径の2倍になっているかどうかを見るものである。
?B控訴人は,乙60の報告書においてGが述べていることは,乙1の陳述書におけるGの「拡大射影し先端の形状(曲率半径)計測」という陳述と矛盾する,影には白い反射は現れるはずもないから,乙60でGが述べる方法では円の中心位置を決めることはできない,と主張する。
しかし,乙60を正確に読めば,Gが 「先端曲率半径の近似円」の中心が定まら ,ないと,曲率半径を測定できないと述べているものでないことは明らかである。一方,被控訴人において,プローブ針の先端部の曲率半径が指定された値になっているかどうかの測定は 「1μm単位で計測が可能なマイクロメーターヘッドを備え ,たX・Y移動ステージに針先を真横にして,プロジェクターと呼ばれるスクリーンへ,拡大射影し先端の形状(曲率半径)を計測(検査 」することによって行われ )ているのであり,より具体的には,スクリーンに拡大射影したプローブ針の先端部を基点に,プローブ針の根元側に指定された曲率半径の長さ分だけ遡り,その位置におけるプローブ針の直径が,指定された曲率半径の2倍になっているかどうかを見ることによって行われている。このように,被控訴人における曲率半径の測定(検査)は 「先端曲率半径の近似円」なるものを描かなくても可能なのであるか ,, 。 ら 「先端曲率半径の近似円」なるものの中心位置を定める必要もないものであるイ先端の表面粗さに関する認定の誤りの主張に対し(ア)証拠の不存在の主張に対し控訴人は,被控訴人が製造販売したプローブ針に関する原判決の「本件管理基準表の粗面仕様『E』に相当」との認定には根拠がないと主張する。
しかし,原判決は,上記の認定をするに際し 「証拠(乙1,34〜36)及び ,各項に記載の証拠によれば (原判決51頁6行)と述べて,乙1,乙34〜乙3 」6を挙げ,その認定の根拠を明確に示している。
また 「軽い粗面仕上げ ,すなわち「鏡面仕上げ」が,管理基準表にいう粗面仕 ,」様「E」に相当することは,乙8の2において,岩手東芝のJが 「 かるい粗面』 ,『とは,テストの対象が金バンプ電極のICである事から,日本マイクロニクスの1997年3月6日付け資料『プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準』の中に記載の,金バンプ電極に推奨する粗面仕様Eを指しております 」と述べていることによっても裏付けられる。 。
また,東芝多摩川工場からの発注に基づく,本件特許の優先権主張日前の平成10年(1998年)1月16日付の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙7 」6)によれば 「プローブの仕様」の欄に 「10Rμm球面」との記載があり,加 , ,, , えて 「先端を軽い粗面にすること-E仕様」と記載されている。これによっても「軽い粗面仕上げ ,すなわち「鏡面仕上げ」が,管理基準表にいう粗面仕様 」「E」に相当することは明らかである。
さらに,Siemensからの発注に基づく乙54の10〜22の「PROBE-BOARD注文仕様書」においては,プローブ針先端部の粗さについて,特段の指定が記載されていないけれども,例えば,乙54の10の4枚目( プローブボ 「ード製造履歴票」続き)の中段 「検査」の項における「先端エッチング仕上げ」 ,の欄をみると 「鏡面」に丸印が付されており 「指定なし」の場合には「鏡面仕上 , ,げ ,すなわち,管理基準表にいう粗面仕様「E」に相当する表面粗さとなること 」は明らかである。そして,同様に,乙54の11,12,14,19,20,21,22の各4枚目( プローブボード製造履歴票」続き)の中段 「検査」の項におけ 「 ,る「先端エッチング仕上げ」の欄においても「鏡面」に丸印が付されており,いずれも,管理基準表にいう粗面仕様「E」に相当する表面粗さとなっている。
以上のように,岩手東芝,富士フィルムMD及びSiemensに対して製造販売されたプローブカードに組み込まれたプローブ針の表面粗さが管理基準表の粗面仕様「E」に相当することは,各証拠から明らかであり,原判決の認定に誤りはない。
(イ)原判決の認定矛盾の主張に対し控訴人は,本件管理基準表に基づいて 「B仕様(粗面(乙9の3枚目)ある ,)」いは「A仕様(粗面(乙10及び乙11の各3枚目)と仕様を指定して,被控訴 )」人にプローブカードの製造を依頼している。この事実は,まさしく,本件管理基準表が被控訴人によって営業ツールとして使用されていたことを示している。また,本件管理基準表を,被控訴人が,当初提案のあった岩手東芝以外の控訴人にも配布したことも,まさしく,被控訴人が本件管理基準表を営業ツールとして使用していたからにほかならない。
被控訴人営業担当者のOが乙71の報告書で述べるとおり,Oが担当していた東北・北海道地区において,本件管理基準表は,岩手東芝を始め,富士通株式会社岩手工場,セイコーエプソン株式会社酒田事業所等,複数の顧客に対し,製品説明資料として積極的に活用されたものである。また,関東地区においても,当時同地区を担当していたRが乙77の陳述書で述べるとおり,ソニー厚木工場及び国分工場,日本モトローラー会津工場を始め多数の顧客に対して説明資料として使用され,さらには,関西地区においても,当時同地区を担当していたPが乙78の陳述書で述べるとおり,関西日本電気株式会社,福井日本電気株式会社,シャープ株式会社天理工場,福山工場など複数の顧客に対して,針先表面処理の説明に活用されたのであり,本件管理基準表を営業ツールとする伝統は,その後,関西地区の担当となったQにも受け継がれた(乙79参照)のである。このように本件管理基準表は,営業ツールとして十二分に活用されていたのである。
これらは,乙18の1枚目の岩手東芝のMの証明書,さらには,乙72の富士通株式会社Nの証明書によっても裏付けられる。
なお 「注文仕様書において先端の粗さを指定する際に,本件管理基準表に準拠 ,したAないしFの符号を用いた者」には,乙76から明らかなとおり,控訴人以外にも東芝玉川工場が存在する。
以上のとおり 「本件管理基準表が営業ツールであったという被控訴人の主張が ,事実に反する」とする控訴人の主張は,合理的根拠を欠く。
(ウ)本件管理基準表の目的の主張に対し控訴人は,乙36及び乙70に言及し,被控訴人が本件管理基準表を作成したのは,簡易な形式で甲15の調査結果を岩手東芝に報告することにあった,このことは,甲23において 「3/6岩手東芝様へ中間報告として提出済」と記載されて ,いることから明らかである,と主張する。
しかし,本件管理基準表が,甲15の調査結果を岩手東芝だけに簡易な形式で報告するために作成されたものではなく,被控訴人におけるプローブ針の表面処理仕様を顧客に説明するための営業ツールとして作成され,かつ,使用されたものであることは,前述したとおりである。
また,本件管理基準表が,単に,調査結果を岩手東芝に報告するために作成されたものでないことは,本件管理基準表の記載からも明らかである。
すなわち,本件管理基準表には,右肩に「社外用」との表示が付され,標題下には,以下のような記載がある。
・ ?鞄?本マイクロニクスが製造,納入するプローブカードのプローブ針先端は接 「触抵抗をより低く安定し使用いただく為に,下記の6種類の処置を施す事ができます 」。
・ 又,下表のとおり先端の処理状態は表面粗さにて管理し,数値的には中心線平 「均粗さを目標値として最大値,最小値を管理します 」。
「 , ・ 但し,現在全プローブカードの全プローブ先端を粗さ測定する事は,測定器や測定条件,環境の問題で出来兼ね,定期的なサンプリングの粗さ確認となります事をご了承願います 」。
・ 弊社の製造においては,処理条件(処理装置の設定など)の管理を徹底し,バ 「ラツキや誤仕様が発生しないよう配慮する所存です 」。
これらの記載内容に照らせば,本件管理基準表が,単に,甲15の調査結果を岩手東芝に報告するために作成されたものであるなどということはできず,被控訴人におけるプローブ針先端処理仕様を顧客に説明し,営業販売活動をより積極的に拡大するための技術資料,すなわち,営業ツールとして作成されたものであることは明らかである。
なお,控訴人は,甲23(書き込みを除いて本件管理基準表と同じもの)に,「3/6岩手東芝様へ中間報告として提出済」と手書きの書き込みがされていることを指摘するが,この書き込みは,文字どおり,単に,本件管理基準表が岩手東芝に中間報告として提出済みであることを述べているにすぎず,本件管理基準表が,甲15の調査結果の報告書であることを意味するものでないことは明らかである。
(エ)本件管理基準表と被控訴人作成の「プローブカードについて (甲8)と 」の矛盾の主張に対し?@控訴人は,甲8の13頁の記載と,本件管理基準表とを比較し,化学研磨による仕上げしか行っていなかった本件管理基準表の段階では被控訴人における発明が未完成であったと考えられると主張する。
しかし,乙3〜乙17,乙48の1〜乙54の22,乙64の1〜乙67の2に示されるとおり,被控訴人は,本件特許の優先権主張日前,本件管理基準表が作成された平成9年(1997年)3月6日前後を通じて,本件管理基準表における粗面仕様「A」に相当する「粗面仕上げ ,及び粗面仕様「E」に相当する「鏡面仕 」上げ (すなわち「軽い粗面仕上げ )のプローブ針を,化学研磨によって製造し, 」 」複数の顧客に対し,繰り返し多数回販売していたのであるから,少なくとも本件管理基準表における粗面仕様「A」及び粗面仕様「E」なる仕様が,本件管理基準表が作成された平成9年(1997年)3月の時点で未完成であったなどということはあり得ない。
?A控訴人は,甲8の13頁の記載に言及し,甲8の技術説明資料が作成された時点(2005年10月20日)においては,被控訴人は,表面酸化膜の形成と,表面粗さのコントロールの困難さを理由に機械的表面処理を最終仕上げとして用いている,と主張する。
しかし,甲8の13頁に,機械的表面処理によらなければ,同頁の表に記載されたような表面粗さ(被控訴人注:本件管理基準表に記載されている表面粗さと数値的に同じもの)のプローブ針を製造することができないと記載されているわけではない。甲8の13頁には,表下7〜8行に 「化学研磨処理でも処理条件を変化さ ,せると表面粗さを変化させる事が出来るが,表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しいので弊社では機械的表面処理を用いている 」と記載さ 。
れているが,この記載は,単に,甲8が作成された平成17年(2005年)当時,被控訴人が保有していた化学研磨処理技術と,機械的表面処理技術とを比べた場合,機械的表面処理よりも化学研磨処理の方が,表面粗さのコントロールが難しいということを述べているにすぎない。
ウ被控訴人と岩手東芝との関係の主張に対し控訴人は,乙32に添付された「Auバンプ用プローブカード評価報告書」について主張する。しかし,同評価報告書は,乙32の1枚目の証明書において,岩手東芝のMが述べるとおり 「評価実験の結果で合格になれば同じ仕様のプローブカー ,ドを継続購入することを条件に,日本マイクロニクスに無償で提供」してもらったプローブカードを用い,それらのプローブカードが,電極が金バンプタイプのデバイスのテストに使用できるかどうかを,岩手東芝において評価した実験の結果を単に報告したにすぎないものであり,被控訴人と岩手東芝とが,当時,共同開発の途上にあったことを示すものではない。
侵害行為との関係の主張に対し前記のとおり,甲8の記載から見て,本件特許の優先権主張日前においては,被控訴人の発明は未完成であったとの控訴人の主張は誤りであるから,その誤った主張を前提とする 「そもそも,先使用権は成立していないし,当時の行為と本件に ,おいて控訴人が差し止めを求めている行為とは実質的に異なるものである 」との 。
控訴人の主張も,また誤ったものであることは明らかである。
(2)特許法29条2項違反に関する認定の誤りの主張に対しア本件管理基準表の作成経緯の主張に対し本件管理基準表を,単に,岩手東芝に対する中間報告のために作成された(ア)文書であるとする控訴人の主張が誤りであることは,既に前記したとおりである。
また,Gが,作成された針先の形状について「球面R15μm (乙70の4頁) 」と述べていることが事実に反するとする控訴人の主張が誤りであることも,既に前記したとおりである。
(イ)控訴人は,Gは,仕上げ条件(薬液や電解の電圧)を変えたA〜Fの6種類についても,被控訴人会社が通常行っていたものであるなどとは述べていない,むしろ,Gの疑問としていた「目視上の差異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものか」という点を明らかにするために選択された実験条件であったと考えられる,と主張する。
しかし,G作成の「針先の表面粗さと『管理基準』について (乙73)には,次 」の記載がある。
・ 私の経験によれば,エッチング液の濃度及びエッチング電圧などの条件が同じ 「であれば,プローブ針先端の仕上がり状態も同じになり,例えば,濃度10%のエッチング液を用いて電圧1.5V,すなわち 『粗面仕上げ』の条件で電解エッチ ,ング処理を行うと,処理された針先端表面の状態は,顕微鏡による目視観察では全ての針が同様に梨地状態で白く見えます。目視観察で同じ状態に見えれば,接触抵抗値もばらつかず,ほぼ同じ値を示します。これは,濃度1%のエッチング液を用いて電圧1.0Vで行う『軽い粗面仕上げ』の場合も同様です(2頁6〜14。」行)・ そこで,上記『管理基準』を作成すべく 『粗面仕上げ』及び『軽い粗面仕上 「 ,げ』を含め,粗面仕様A〜Fの処理条件の異なる6種類のサンプル針を作成し,別途用意した処理無しのサンプル針と併せて,合計7種類のサンプル針について,株式会社ニッテツ・ファイン・プロダクツ釜石試験分析センターに表面粗さの測定を依頼しました。各粗面仕様の電解エッチング条件の違いは表-1に示すとおりです(3頁5〜10行) 。」・ ここで,従来からの『粗面仕上げ』及び『軽い粗面仕上げ』は,それぞれ 『粗 「 ,。 , 面仕様A』及び『粗面仕様E』に対応しています 『粗面仕様B,C,D,F』は釜石試験分析センターに表面粗さの測定を依頼するに際して新たに設定した仕様です(乙第73号証3頁表下1〜4行) 。」これらの記載から明らかなとおり,粗面仕様A〜Fのうち,粗面仕様AとEとは,それぞれ,被控訴人が従前から行っていた「粗面仕上げ」及び「軽い粗面仕上げ」に相当する仕様なのであり,粗面仕様B,C,D,Fは,釜石試験分析センターに表面粗さの測定を依頼するに際して新たに設定された仕様なのである。
そして,乙73の3頁表-1に示されるとおり,各粗面仕様A〜Fは,エッチング液の濃度及びエッチング電圧という電解エッチングの条件において明らかに区別される仕様であるから,Gは,乙70において 「この『管理基準』の内容は,当社 ,が実施しているプローブ針先端の処理が複数の種類を有し,各々が粗さとして数値管理されていることを,顧客全般に紹介(針仕様の説明資料として)できる内容となっています (4頁20〜22行)と述べたのであって,Gの陳述を「到底,信用 」できない」とする控訴人の主張には合理的な根拠がない。
イ本件管理基準表の配布先の主張に対し(ア)控訴人は,本件管理基準表を受領したことが認められるのは,岩手東芝と控訴人にすぎない,岩手東芝も控訴人も,被控訴人との間で守秘義務を前提とする情報交換をしていたのであるから(乙32の『評価報告書』の『秘』のスタンプ,甲9 ,岩手東芝や控訴人が本件管理基準表を受領したとしても,それが「営業ツ )ール」であったことにはならない,と主張する。
しかし,乙63の1〜5において,それぞれ,岩手東芝のM,NECエレクトロニクス株式会社のS及びT,富士通株式会社のV,福井日本電気株式会社のU,日本テキサス・インスツルメンツ株式会社のWが述べるとおり,プローブ針の先端形状や寸法,表面処理仕上げなどのプローブ針仕様に関しては,守秘義務の対象外である。
同様に,控訴人と被控訴人との間で取り交わされた「取引基本契約書 (甲9)に 」おいても,守秘義務の対象は 「本契約及び個別契約により知り得た相手方の業務 ,上の秘密 (第27条)に限られており,プローブカードの製造販売を業とする被 」控訴人が,顧客に提供することができるプローブ針先端部の仕様として,本件管理基準表に記載したような表面粗さの仕様が,守秘義務の対象でないことは明らかである。
(イ)控訴人は,本件管理基準表を受領したことが認められるのは,岩手東芝と控訴人にすぎないと述べるが,乙72に記載されているとおり,本件管理基準表は,富士通株式会社の担当者にも提示され,さらに,乙71,乙77〜79で述べられているとおり,本件管理基準表は,被控訴人の営業担当者によって,多数の顧客に提示され積極的に営業ツールとして使用されていたものである。
(ウ)控訴人は,控訴人がA〜Fの符号を用いたからといって,本件管理基準表が一般的に被控訴人の「営業ツール」であったことにはならない。むしろ,控訴人以外には,岩手東芝も含めて,A〜Fの符号を用いたものがなかったことの方が重要な事実であると主張するが,かかる控訴人の主張が誤りであることは,前記のとおりである。
(エ)控訴人は,乙71のOの報告書に言及し,本件管理基準表からは,A〜Fの数値的な違いなど分からず,仮に,本件管理基準表に基づいて顧客に説明したならば,混乱だけが残ったはずである,本件管理基準表は,到底,営業ツールたり得ない,と主張する。
しかし,本件管理基準表を見た控訴人は,乙9〜11の各3枚目に示されるとおり,A仕様,B仕様を指定して被控訴人にプローブカードの発注を行っているのであり,また,平成9年(1997年)3月19日付の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙80)から明らかなとおり,控訴人からはF仕様を指定した発注も 」あったのであるから,これらの事実は,管理基準表が営業ツールとして十二分に機能していたことを裏付けるものである。
ウ本件管理基準表に関する原判決のその他の認定の主張に対し(ア)秘密保持義務の対象の主張に対し控訴人の秘密保持義務の対象についての主張は,前記に照らし,誤りである。
(イ)現物の入手可能性の主張に対し控訴人は,本件管理基準表に記載された仕上げ条件は,いずれも化学研磨であるところ,甲8によれば 「化学的研磨処理でも処理条件を変化させると表面粗さを ,変化させる事が出来るが,表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しいので弊社では機械的表面処理を用いている(13頁)との記載があるか 。」ら,本件管理基準表に記載されたものは,その後,本件特許の優先日以後に入手可能になった製品とは異なるものであると主張する。
しかし,前記のとおり,被控訴人は,本件特許の優先権主張日前,本件管理基準表が作成された平成9年(1997年)3月6日前後を通じて,本件管理基準表における粗面仕様「A」に相当する「粗面仕上げ」及び粗面仕様「E」に相当する「鏡面仕上げ (すなわち「軽い粗面仕上げ )のプローブ針を化学研磨によって製 」 」造し,プローブカードに組み込んで,複数の顧客に対し,繰り返し販売していたものであり,控訴人自身も,乙9〜11,乙80に示されるとおり,本件特許の優先権主張日前に,本件管理基準表におけるA仕様,B仕様,F仕様のプローブ針を組み込んだプローブカードを,被控訴人に対して発注し,受領しているのであるから,「プローブカード等の専業メーカーである被告からその現物を入手し,その存在を確認することができた (原判決49頁3〜4行)ことは明らかである。 」エ容易想到性判断に関する原判決の誤りの主張に対し(ア)原判決の判断は,乙25の判決でその取消しが争われ,既に確定した,無効2004-80105号審決(甲3 (以下,単に「確定審決」という )と同一 ) 。
の事実及び同一の証拠に基づくものではないから,控訴人の上記主張は失当である。
(イ)また,次に示すとおり,原判決の判断は,実質的にも,確定審決と同一の事実及び同一の証拠に基づくものではない。
すなわち,原判決と確定審決とは,主引例を異にする上に,曲率半径についての相違点の認定を異にし,かつ,曲率半径並びに表面粗さに関する2つの相違点の判断に用いた引例においても異なっているから,両者が,実質的にも,同一の事実及び同一の証拠に基づくものでないことは明らかである。
(ウ)なお,控訴人は,原判決が判断の根拠とした乙21と乙22は,確定審決で審理判断の対象とはされていないが,それらよりも,確定審決で審理判断の対象とされた乙19及び乙23の方が,より一層,本件第2発明との関連性が高いから,原判決が乙21及び乙22に言及していることは,実質的にみて,新たな公知技術が引用されているとはいえないと主張する。
しかし,乙21は,原判決が44頁において認定しているとおり,乙19が開示する「15〜25μm」という曲率半径の範囲よりも広く,本件第2発明が規定する「10〜20μm」を包含する 「10〜50μm」という曲率半径を開示して ,いるのであるから,新たな証拠であることは明らかである。
また,乙22は 「…上記第1,第2の平面1,2は,鏡面研磨された平面をな ,すことが望ましい (原判決48頁1〜3行参照)として,乙23が問題とする, 」「コンタクト時の摺動により,比較的硬度の低いSn含有被覆層が先端部に凝着したり削り取りを生じることがある (原判決47頁21〜26行参照)場合に限ら 」れずに表面粗さが低いことの利点を開示しているのであるから,これもまた,新たな証拠であることは明らかである。
第4当裁判所の判断1当裁判所も,本件第2発明及び本件第7発明については,いずれも進歩性欠如の無効理由があり,また,被控訴人の先使用権が認められるから,控訴人の請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載したとおり(ただし,51頁22行〜52頁1行の「(ウ)Siemens(乙54の10〜22 」の欄の)記載部分は除く )であるから,これを引用する。 。
2控訴人の主張について(1)特許法29条2項違反に関する認定の誤りについてア本件管理基準表の作成経緯について各掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の(ア),(イ)の事実が認められる。
(ア)?@被控訴人は,本件管理基準表作成前から,針先仕上げ処理として 「粗,面仕上げ」と「軽い粗面仕上げ」という2種類の処理仕様を実施していた。そして,顕微鏡下で梨地状に白く荒れた状態に見える「粗面仕上げ」は,濃度10%のエッチング液を使用して,エッチング電圧1.5Vで電解エッチングを行うのに対して,顕微鏡下で黒く見える「軽い粗面仕上げ」は,それよりも電解エッチング条件が温和な,濃度1%のエッチング液を使用して,エッチング電圧1.0Vで行うものであった (乙73)。
?A被控訴人は,平成8年3月,岩手東芝との間で 「Auバンプ製品用プロー ,ブカード」に関する技術的な事項について打合せをもち(乙1,乙70 ,平成8 )年3月28日,岩手東芝から評価サンプルプローブカードの仕様の連絡を受けて,その製造を製造部門へ指示し,その後,当該評価サンプルプローブカードを出荷し) , た(乙1,乙4,乙5 。そして,岩手東芝は,評価試験を行った上,その結果を「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙32)としてまとめ,これを被控 」訴人に対し提出した(乙1,乙70 。)?B上記評価試験結果の報告の際に,被控訴人PB技術統括部のGは,岩手東芝の担当者から,定量的な「粗さ基準」を設けた方が良いのではないかとの提案を受けた(乙70 。これを受けて,Gは,プローブ針の先端仕上げにつき,目視上の差 )異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつ,どの程度数値的な管理ができるものかを確認したいと考え,サンプルとして針先端部の仕上げ条件(薬液や電解の電圧など)を変えたA〜Fの6種類及び「処理無し」の合計7種類のプローブ針(球面針)を作成し,釜石試験分析センターにプローブ針先端部の粗さ測定を依頼した(乙70 。)?C上記依頼に基づく測定結果が,平成9年3月4日 「調査結果報告 (甲1 ,」5)としてまとめられ,釜石試験分析センターから被控訴人に報告された(乙70 。Gは,平成9年3月6日,上記「調査結果報告」に基づいて,本件管理基準表 )(乙18添付)を作成し,被控訴人の営業担当者が顧客に対する説明資料及び営業用ツールとして必要に応じてこれを客先に持参することができるように,被控訴人本社,青森営業所その他の部署に対し配布した(乙70 。)(イ)?@被控訴人の青森営業所所長のOは,平成9年3月6日,本件管理基準表を岩手東芝に交付した(乙72,乙18 。)?A被控訴人の営業担当者は,以後,被控訴人製品を購入希望する客先又は新規開拓を目指す多数の客先に対し,被控訴人のプローブカード製品仕様の資料として本件管理基準表を提示又は交付して,被控訴人製品の説明を行った (乙72) 。
?B本件管理基準表を提示又は交付した顧客の中には,控訴人が含まれ,控訴人は,被控訴人に対する注文に当たり,本件管理基準表に記載されたA〜Fの仕様を使用した(乙9〜11 。)(ウ)以上の(ア),(イ)を踏まえて,控訴人の主張について検討する。
?@控訴人は,本件管理基準表は,名称は「管理基準」であっても,その実質は,「定量的な『粗さ基準』を設けた方が良いのではないか」という提案を行った岩手東芝に対する「中間報告」であると主張するところ,甲23には,本件管理基準表と同一のものに,上部に手書きで「MHC K部長殿 FromG(3/6岩手東芝様へ中間報告として提出済 」と記載されている。 )しかし,本件管理基準表の体裁や内容を見ると,その右肩に「社外用」との不動文字が記載され 「プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ ,針の粗面仕上げ管理基準 」との表題に続き 「 株)日本マイクロニクスが製造, ),(納入するプローブカードのプローブ針先端は接触抵抗をより低く安定し使用いただく為に,下記の6種類の処置を施す事ができます。プローブ針をコンタクトさせるPADあるいはバンプ,パターンの材質,状態により選択できます。又,下表のとおり先端の処理状態は表面粗さにて管理し,数値的には中心線平均粗さを目標値として最大値,最小値を管理します。但し,現在全プローブカードの全プローブ先端を粗さ測定する事は,測定器や,測定条件,環境の問題で出来兼ね,定期的なサンプリングでの粗さ確認となります事をご了承願います (3ヶ月に1度のサンプリ 。
ング)弊社の製造においては,処理条件(処理装置の設定など)の管理を徹底し,バラツキや誤仕様が発生しないよう配慮する所存です 」と記載され,推奨用途の 。
記載も含む次の表が記載されている。
そうすると,本件管理基準表の作成経緯について,こうした本件管理基準表の体裁・内容や,開示された技術内容の汎用性を踏まえて見ると,本件管理基準表がもともとは岩手東芝の担当者からの示唆を踏まえて作成され,提案元である岩手東芝に対して取り急ぎ中間的な報告をしたものであるとしても,それとともに,被控訴人において,岩手東芝の示唆に基づいてGがもともと抱いていた技術思想を具体化させ,推奨用途の明示ができるプローブ針の定量的な粗さの基準という汎用性のある技術的な結果を得ることができたため,これを被控訴人のプローブカードの顧客一般に対して提示することを意図して表題や文章を工夫し 「社外用」との表示を ,つけ,実際に被控訴人の営業担当者が社外の顧客一般に営業を行う際のツールとして提示又は交付したものと認めることができる 「上表の数値は,弊社製造部門の 。
管理値であって保証値ではありません 」との記載も 「弊社の製造においては,処 。,理条件(処理装置の設定など)の管理を徹底し,バラツキや誤仕様が発生しないよう配慮する所存です 」等の記載に照らせば,被控訴人が,推奨用途の明示ができ 。
るプローブ針の定量的な粗さの基準という汎用性のある技術的な結果を得て本件管理基準表に管理値として記載したことを否定するものではなく,上記認定を左右するものではない。
以上によれば,本件管理基準表が,単に 「定量的な『粗さ基準』を設けた方が ,良いのではないか」という提案を行った岩手東芝に対する「中間報告」にすぎないとみることはできないから,控訴人の上記主張は採用することができない。
?Aまた,控訴人は,本件管理基準表における仕上げ条件(薬液や電解の電圧)を変えたA〜Fの6種類については,Gの疑問としていた「目視上の差異がどの程度粗さとして数値的に差異があるものであり,かつどの程度数値的に管理が出来るものか」という点を明らかにするために選択された実験条件であったと考えられる,と主張するところ,G作成の「針先の表面粗さと『管理基準』について (乙73) 」には 「従来からの『粗面仕上げ』及び『軽い粗面仕上げ』は,それぞれ 『粗面仕 , ,様A』及び『粗面仕様E』に対応しています 」との記載があるが,他方 「 粗面 。 ,『仕様B,C,D,F』は,釜石試験分析センターに表面粗さの測定を依頼するに際して新たに設定した仕様です 」との記載がある。 。
しかし,粗面仕様B,C,D,Fが,もともとは表面粗さの測定依頼時に新たに設定した仕様であるとしても,本件管理基準表の粗面仕様B,C,Fには,それぞれ 「普通の蒸着アルミPADに有効「軟らかめ蒸着アルミに有効「半田バン , 」, 」,プ等に有効」のように,各推奨用途が記載されているから,前記の説示にも照らせば,これらの粗面仕様は,推奨用途の明示ができるプローブ針の定量的な粗さの基準という汎用性のある技術的な結果として,被控訴人が顧客一般に提供できる定量的な粗面仕様の複数の種類の一つと位置付けられ,前記のような被控訴人の社外の顧客一般に営業を行う際のツールとして交付又は提示する本件管理基準表に記載されたものと認められる。粗面仕様Dの推奨用途に「特に推奨なし」と記載されていることは,この認定を左右するものではない。
以上によれば,本件管理基準表のA〜Fが単なる実験条件であるとの控訴人の上記主張は採用することができない。
?B控訴人は,本件管理基準表は管理基準としての体をなしていないとして,a仕様Cと仕様Dが中心線平均粗さの値は3つともほとんど同じである点,b 仕様Dの十点平均粗さの平均値が極端に小さい点,c 仕様Fの中心線平均粗さの最小が0.0000である点,d それぞれの仕様について,中心線平均粗さの基準値と最小の差に比べて基準値と最大の差が極端に大きい点,e それぞれの仕様について,最大と最小の間に入るものを合格と考えると,仕様と仕様の重なりが極めて大きく,異なる仕様として規定している技術的意味が不明であり,そもそもいかにして区別するのかという点,を指摘するが,次に判断するとおりであって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
a仕様Cと仕様Dが中心線平均粗さの値は3つともほとんど同じである点,及びb仕様Dの十点平均粗さの平均値が極端に小さい点について本件管理基準表を見ると,粗面仕様Dについては 「推奨用途」の欄にも「特に ,推奨無し」として,参考として記載するにとどめていると認められる。そうすると,粗面仕様Cの粗さに近似した粗面仕様Dが記載されているとしても,また,そのような粗面仕様Dについての「参考値」である十点平均粗さの平均値が小さいとしても,これらにより,本件管理基準表が直ちに管理基準として使用できないものということはできない。
c仕様Fの中心線平均粗さの最小が0.0000である点についてG作成の「針先の表面粗さと『管理基準』について (乙73)には 「 管理基 」,『準』における中心線平均粗さの最大値と最小値とは,実測された最大値および最小値のデータを基に,当社において蓄積された技術常識に従って,各仕様における表面粗さのばらつきの許容範囲を示す数値として記載したものです「粗面仕様F。」,に関し 『管理基準』では最小値(Ra-Min)を『0.0000』としましたが,こ ,れはあくまでも許容範囲の下限を示すもので,実際の表面粗さの最小値が『0.0000』であることを意味するものではありません 」との記載がある。 。
そして,本件管理基準表の中心線平均粗さの最小値を見ると,仕様AからFにつれて 『0.0050『0.0040『0.0030『0.0020『0.0010『0.0000』というよ ,』,』,』,』,』,うに,0.0010ずつ次第に小さくなっていることが認められる。そうすると,当業者がこれを見れば,仕様Fが,0.0010以下の測定限界に近い数値であることを理解するということができる。
以上によれば,仕様Fの中心線平均粗さの最小が0.0000であることをもって,本件管理基準表が直ちに管理基準として使用できないものということはできない。
dそれぞれの仕様について,中心線平均粗さの基準値と最小の差に比べて基準値と最大の差が極端に大きい点について上記cに記載したように,本件管理基準表における中心線平均粗さの最大値と最小値は,実測された最大値および最小値のデータを基に,被控訴人において蓄積された技術常識に従って,各仕様における表面粗さのばらつきの許容範囲を示す数値として記載したものと認められる。そうすると,中心線平均粗さの最大値と基準値との差が,最小値と基準値との差と比べて大きいとしても,それは,その大きさの度合いから見ても,実測された最大値および最小値のデータと,測定値の分布及び被控訴人のデータ処理に基づいた結果によるものと評価できる範疇のものというべきであるから,この点をもって,本件管理基準表が直ちに管理基準として使用できないものということはできない。
eそれぞれの仕様について,最大と最小の間に入るものを合格と考えると,仕様と仕様の重なりが極めて大きく,異なる仕様として想定している技術的意味が不明であり,そもそもいかにして区別するのかという点についてG作成の「針先の表面粗さと『管理基準』について (乙73)によれば,本件管 」理基準表の粗面仕様A〜Fは,電解エッチングの条件(エッチング液の濃度および電解エッチング電圧)において明確に区別される別異の処理仕様であること,管理基準において管理の対象とされる中心線平均粗さの「基準値」は,参考として記載した粗面仕様Dを除いて,粗面仕様AからFへと電解エッチングの条件が温和になるにつれて,次第に小さな値(表面粗さが小さい)となっていること,中心平均粗さの「最大」と「最小」も同様に,粗面仕様AからFへとなるにつれて,次第に小さな値(表面粗さが小さい)となっていることが認められる。
そうすると,本件管理基準表の粗面仕様A〜C,E,Fについて 「最大」と ,「最小」の間の範囲が重複する領域があるとしても,中心線平均粗さの「基準値」において区別でき,その傾向として,粗面仕様AからFへと次第に表面粗さが小さくなっていることに鑑みると,それらを別異の仕様として設定することに,技術的意味がないということはできない。
イ本件管理基準表の配布先等について(ア)各掲記の証拠には,次の記載がある。
?@G作成の陳述書(乙1)「1997(平成9年)3月4日,A〜Fの6種類の仕上げ条件別にプローブ針先端部の表面粗さを実測し,その結果をまとめた『プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準 』と題する文書(以下 )『管理基準表』という )を作成しました。同年3月6日,この管理基準表を岩手 。
東芝エレクトロニクス(株)に提出しました。その後,三菱電機(株)を含む他社にもこの管理基準表を提出しました(7頁)。」?AG作成の「プローブ針先端処理(粗面仕上げ管理基準:乙18号証)作成の経緯 (乙70)」「1997年(平成9年)3月6日,乙第18号証の『プローブカードのプロー)。 ブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準 』を作成しましたこの『管理基準』の内容は,当社が実施しているプローブ針先端の処理が複数の種類を有し,各々が粗さとして数値管理されていることを,顧客全般に紹介(針仕様の説明資料として)できる内容となっていますので,それ以降,当社製品を発注されたり,発注を検討されている顧客に対する説明資料として有効活用することとし,『社外用』の表示を付して当社営業部門に配布しました。なお,この管理基準表は,作成した1997年(平成9年)3月6日当日に当社の青森営業所/O係長,本社営業部長/g,技術部長/Kにも,それぞれコピーしたものを送付し,営業用資料として使用するように指示しました(4〜5頁)。」?B被控訴人の半導体機器営業統括部青森営業所所長のO作成の「報告書-プローブカードのプローブ針先端処理-(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準(乙71))」「当時,私が担当していた複数の顧客からは針先の表面処理の定量的なデーターの必要性が言われておりました。その一社が,岩手東芝エレクトロニクス様です。
岩手東芝エレクトロニクス様からの要求で当社のGが作成した『管理基準』は,それまでの曖昧な基準とは違い,針先の表面処理をA〜Fまで6段階に分類して表面粗さを数値的に管理するものです。それまでの 『粗面仕上げ』はAに当たり 『軽 , ,い粗面仕上げ(鏡面仕上げ 』はEに当たりますが,その他に,B,C,D,Fの )粗さについても管理するものです。営業部門の上司から,この『管理基準』を,顧客への製品説明資料として積極的に活用するようにとの指示がありました。私は,この『管理基準』をプローブカード製品仕様の資料として携帯し,客先での商談時に提出し,また説明を行いました。…この『管理基準』を持参し,私は,岩手東芝エレクトロニクス株式会社様を始め,当時私が担当していた,富士通株式会社岩手工場様,セイコーエプソン株式会社酒田事業所様,日立北海セミコン株式会社様(現在,ミツミ電機千歳事業所 ,山形日本電気株式会社様,東北エプソン株式会 )社様,東北セミコンダクタ株式会社様など,私が担当する東北・北海道地区の多数の顧客に説明させて頂きました(2頁)。」?C岩手東芝の製造部第一製造担当のM作成の「証明書 (乙18の1枚目) 」「プローブカードメーカである株式会社日本マイクロニクスにプローブ針の先端表面粗さに関する資料の提出を要求し,1997年3月6日に受領したのが添付の株式会社日本マイクロニクス資料『プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準 』であります 」 )。
?D富士通株式会社の電子デバイス事業本部岩手工場デバイス技術部のN作成の書面(乙72)「1997年当時,私は貴社の青森営業所の当社担当であるO様より,貴社のプローブ針先端処理(表面粗さ)に関わる資料『プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準 』の内容の書面をみながら説 )明を受けた事を記憶しております 」。
?Eミツミ電機株式会社の半導体事業本部千歳事業所技術部検査技術課技師のh作成の「証明書 (乙81)」「私が,日立北海セミコンダクタ株式会社に在籍していた当時,プローブカードの購入にあたり,株式会社日本マイクロニクスの営業担当であったO様よりプローブの先端処理について表面粗さ資料『プローブカードのプローブ針先端処理(タングステンプローブ針の粗面仕上げ管理基準 』をもって説明を受けたことは間違い )ございません 」。
?Fa「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙9)の1枚目(被控訴人作成 」(控訴人宛 )には「97年4月1日」の日付があり,2枚目(控訴人作成(被控 )訴人宛 )には「Serengetiテストチップ対応プローブカード製作仕様書「三菱電 ) 」,機株式会社」との記載があり,3枚目の「針仕様」の「針先処理」の欄に「B仕様(粗面 」との記載がある。 )b「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙10)の1枚目(被控訴人作成 」(控訴人宛 )には「97年8月25日」の日付があり,3枚目(控訴人作成(被 )控訴人宛 )には「M7E2001対応プローブカード製作仕様書「三菱電機株式会社」 ) 」,との記載があり,4枚目の「針仕様」の「針先処理」の欄に「A仕様(粗面 」と)の記載がある。
c「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙11)の1枚目(被控訴人作成 」(控訴人宛 )には「97年9月1日」の日付があり,2枚目(控訴人作成(被控 )訴人宛 )に「C7E2007S0001Tプローブカード製作仕様書「三菱電機株式会社」と ) 」,の記載があり,3枚目の「針仕様」の「針先処理」の欄に「A仕様(粗面 」との )記載がある。
(イ)以上の(ア)によれば,被控訴人のGは,1997年(平成9年)3月6日頃,本件管理基準表を作成したこと,その後,本件管理基準表は,被控訴人の営業部門に交付され,被控訴人の製品仕様についての顧客一般に対する説明資料と位置付けられたこと,これを踏まえて,被控訴人の営業担当者は,本件管理基準表を用いて,岩手東芝,富士通株式会社,日立北海セミコンダクタ株式会社の担当者に対して被控訴人の製品仕様についての説明をしたことが認められる。そうすると,本件管理基準表は,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられていたというべきである。
(ウ)控訴人の主張について以上のとおりであるから,これと異なる控訴人の主張はいずれも採用することができないが,事案に鑑み,控訴人の主張のうちいくつかの主張に対し念のために,個別に判断を加えることとする。
?@控訴人は,本件管理基準表を受領したことが認められるのは,岩手東芝と控訴人にすぎない,そして,岩手東芝も控訴人も,被控訴人との間で守秘義務を前提とする情報交換をしていたのであるから(乙32の「評価報告書」の「秘」のスタンプ,甲9 ,岩手東芝や被控訴人が本件管理基準表を受領したとしても,それが )「営業ツール」であったことにはならない,と主張する。
しかし,前記のとおり,本件管理基準表は,Gが,被控訴人のプローブカードの顧客一般に対して提示することを意図して表題や文章を工夫し 「社外用」との表 ,示をつけたものであり,これを受けて,上記(イ)のとおり,被控訴人の営業担当者は,本件管理基準表を用いて,岩手東芝,富士通株式会社,日立北海セミコンダクタ株式会社の担当者に対して被控訴人の製品仕様についての説明をしたことが認められるのであるから,これに照らせば,本件管理基準表が被控訴人の「営業ツール」として用いられていたと優に認めることができる。また,岩手東芝や控訴人が,プローブ針の定量的な粗さ基準についても守秘義務と位置付けて,被控訴人との間で情報交換をしていたと認めることはできないことは,後記のとおりである。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?A控訴人は,本件管理基準表に記載された数値を信頼して注文したものではなく,被控訴人が「最も粗い」と考えているもの,あるいは 「粗い方から2番目」 ,と考えているものを注文したにすぎないから,控訴人がA〜Fの符号を用いたからといって,本件管理基準表が一般的に被控訴人の「営業ツール」であったことにはならない,控訴人以外には,岩手東芝も含めて,A〜Fの符号を用いたものがなかったことの方が重要な事実であると主張する。
しかし,前記(ア)によれば,被控訴人は,控訴人に対しても本件管理基準表を用いて定量的なプローブ針の粗さ基準について説明を行い,この説明に基づいて,控」, 訴人は,当該管理基準表に記載の「粗面仕様」の中から針先処理として「A仕様「B仕様」等の指定を行って,被控訴人に対しプローブカードの発注を行ったことが認められるから,この事実からは,本件管理基準表が被控訴人の「営業ツール」として一般的に用いられていたとの認定が導かれるものである。控訴人の上記指摘をもっても,これを左右することはできない。また,控訴人以外に,A〜Fの符号を用いたものが見当たらないとしても,前記(イ)の説示が左右されるものとはいえない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?B控訴人は,富士通株式会社電子デバイス事業本部岩手工場デバイス技術部のNは,乙72において 「書面をみながら説明を受けた」と述べているが,交付され ,たとは述べていないこと,日時や事実を裏付ける証拠が示されていないことを指摘する。
しかし,控訴人の上記指摘をもって,被控訴人の営業担当者が,本件管理基準表を用いて,岩手東芝,富士通株式会社,日立北海セミコンダクタ株式会社の担当者に対して被控訴人の製品仕様についての説明をしたこと自体の認定が左右されるとはいえず,本件管理基準表は,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられていたと認められることに変わりはない。
?C控訴人は,本件管理基準表からは,A〜Fの数値的な違いなど分からず,仮に,本件管理基準表に基づいて顧客に説明したならば,混乱だけが残ったはずである,受け取ってみなければどのような表面粗さの製品が納品されるか分からないのと同じことであるから,本件管理基準表は,到底,営業ツールたり得ない,と主張する。
しかし,前記ア(ウ)?Beに説示したとおり,本件管理基準表の粗面仕様A〜C,E,Fについて 「最大」と「最小」の間の範囲が重複する領域があるとしても, ,中心線平均粗さの「基準値」において区別でき,その傾向として,粗面仕様AからFへと次第に表面粗さが小さくなっていることに鑑みると,それらを別異の仕様として設定することに,技術的意味がないということはできない。そうすると,本件管理基準表が営業ツールたり得ないということはできず,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ本件管理基準表に関する原判決のその他の認定について(ア)秘密保持義務の対象についての主張について控訴人は,本件管理基準表は,いわば,実験結果の中間報告であり,現実に被控訴人が顧客に提供することができたプローブピンの先端部の粗さの仕様を記載したものではない,また,岩手東芝は共同開発の中間報告として本件管理基準表を被控訴人から交付され,控訴人は不具合対策の一つとして本件管理基準表を被控訴人から交付されたのであって,評価や確認試験などを繰り返しながら実使用するに最良のものを開発している岩手東芝や控訴人と被控訴人との間のこのような行為は,秘密保持義務を前提としたものであると主張する。
しかし,前記に説示したとおり,本件管理基準表は,単なる実験結果の中間報告であるということはできず,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられていたというべきである。
また,確かに,岩手東芝作成の「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙3 」2添付)において「秘」のスタンプが押されているが,上記評価報告書(乙32添付)の目的は,金バンプ電極デバイスの製造ラインでのテストに使用するプローブカードの仕様を決めるための様々な側面からの評価実験結果を記載することにあり( 証明書 (乙32,その記載事項は,岩手東芝が秘密と位置付けることが首肯 「」))できる性質のものである。他方,本件管理基準表に記載された事項は,被控訴人が顧客に対して提供することができるプローブ針先端の粗面仕様の種類や,各仕様における表面粗さ,および推奨用途であって,プローブカードの製造販売業者であれば,通常は,積極的に顧客に提示する性質の事項である。このことは,岩手東芝のほか,NECエレクトロニクス株式会社,富士通株式会社,福井日本電気株式会社,日本テキサス・インスツルメンツ株式会社の各担当者が記載した書面である乙63の1〜5の各記載からも裏付けられ,このような事項は,取引基本契約書(甲9)に定める秘密保持義務の内容になっていると認めることはできない。
このように,両者には,性質が異なると位置付けられる事項が記載されており,その記載内容を精査しても,上記評価報告書(乙32添付)に記載された技術事項は,本件管理基準表に記載された技術事項と同一のものとは認められない。そうすると,岩手東芝作成の「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙32添付)に 」おいて「秘」のスタンプが押され,岩手東芝と被控訴人との間に秘密保持を前提とする関係があったとしても,そのことから直ちに,本件管理基準表に記載された事項が秘密保持義務の対象になっているということはできない。
(イ)現物の入手可能性の主張について控訴人は,本件管理基準表に記載されたプローブ針の仕上げ条件は,いずれも化学研磨であるところ,控訴人が2005年(平成17年)に作成した「プローブカードについて」と題する資料(甲8)には 「化学的研磨処理でも処理条件を変化 ,させると表面粗さを変化させる事が出来るが,表面酸化膜の形成が有り,また表面粗さのコントロールも難しいので弊社では機械的表面処理を用いている(13。」頁)との記載があるから,本件管理基準表に記載されたものは,その後,本件特許の優先日以後に入手可能になった製品とは異なるものであるといえる,そうすると,被控訴人から現物を入手できたという原判決の認定は誤りであると主張する。
しかし,前記認定のとおり,被控訴人のGは,1997年(平成9年)3月6日頃,本件管理基準表を作成したこと,その後,本件管理基準表は,被控訴人の営業部門に交付され,被控訴人の製品仕様についての顧客一般に対する説明資料と位置付けられたこと,これを踏まえて,被控訴人の営業担当者は,本件管理基準表を用いて,岩手東芝,富士通株式会社,日立北海セミコンダクタ株式会社の担当者に対して被控訴人の製品仕様についての説明をしたことが認められ,本件管理基準表は,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられていたというべきであるから,これに照らせば,本件管理基準表作成の頃,被控訴人の顧客一般が,被控訴人から現物を入手できたと優に認めることができる。また,被控訴人は,前記認定のとおり,本件管理基準表作成前から,針先仕上げ処理として 「粗面仕 ,上げ」と「軽い粗面仕上げ」という2種類の処理仕様を実施していたのであるから,プローブ針の製造販売業者である被控訴人は,その頃から 「粗面仕上げ」や「鏡 ,面仕上げ ( 軽い粗面仕上げ )のプローブ針を,複数の顧客に対して販売してい 」「」たと推認することができるところ,これらが本件管理基準表における粗面仕様「A」及び「E」にそれぞれ相当し,また,本件管理基準表に開示された表面粗さを有していたのであるから,本件管理基準表における粗面仕様の表面粗さを有するプローブ針は,本件特許の優先権主張日前から,入手可能であったといえる。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
容易想到性に関する原判決の誤りの主張について控訴人は,原判決は,本件管理基準表を容易性判断に介在させることによって,特許法104条の3の適用にあたって考慮すべき特許法167条の規定の趣旨を考慮しないことを形式的に正当化しようとしているが,実質的には確定審決を無視した判断をしているものであると主張する。
しかし,原判決の判断は,知財高裁平成17年(行ケ)第10503号審決取消請求事件における判決(乙25)でその取消が争われ,既に確定した,無効2004-80105号審決(甲3)と同一の事実及び同一の証拠に基づくものではないことは明らかであるから,控訴人の上記主張は失当である。
オ控訴人は,本件管理基準表は公知資料とはいえず,技術的に信頼性のあるものともいえない,被控訴人においてプローブ針の先端の曲率半径を正しく計測していなかったから,本件特許の優先権主張日前に被控訴人から本件特許発明実施品と同一のプローブ針を入手することが可能であったとした原判決の認定は誤りであると主張する。
しかし,前記の説示に照らし,本件管理基準表が公知資料とはいえず技術的に信頼性のあるものともいえないとの控訴人の主張には理由がない。また,後記のとおり,被控訴人の「先端球面仕上げ」との仕様は,従前から,先端が半球面を構成するものを意味していたものと認めることができるものであって,先端が半球面を構成していれば,曲率半径については,測定方法いかんにかかわらず同じ測定結果が得られるというべきであって,被控訴人においてプローブ針の先端の曲率半径を正しく計測していなかったということはできないから,本件特許の優先権主張日前に被控訴人から本件特許発明実施品と同一のプローブ針を入手することが可能であったとした原判決の認定が誤りであるとはいえない。
(2)先使用権に関する事実誤認の主張についてア先端径と曲率半径について(ア)平成6年10月25日付けの被控訴人作成に係る「TAB選別プローブボード製造仕様書案 (乙44)は,その体裁・内容から,被控訴人の顧客である日 」本電気株式会社,関西日本電気株式会社,福井日本電気株式会社に提示した資料と認められるところ,その3枚目には「2.針先端形状」として「先端球面仕上げ」について説明されており,プローブの先端径(直径)を示すE=60μ±5μと,指定径の1/2の位置を示すI=30μ±5μの記載がある。そして,同製造仕様書案(乙44)の図面を参照すると,先端からIの距離の部分で球面(曲線部)からプローブの軸(直線部)へと移り変わっているから,この球面は,直径の半分の高さをもっており,いわゆる半球面を構成しているものと見ることができる。そうすると,被控訴人がその顧客に対して提示した資料のこのような記載内容からすれば,被控訴人の「先端球面仕上げ」との仕様は,従前から,先端が半球面を構成するものを意味していたものと優に認めることができる。このことは,被控訴人の顧客(岩手東芝,NECエレクトロニクス株式会社,福井日本電気株式会社)が提出した各書面(乙68の1〜3)やG作成の「針仕様についての説明書 (乙35 ,被 」)控訴人作成の1999年(平成11年)の「PROBE CARD」と題する総合カタログ(甲7)の各記載からも裏付けられる。
しかるに,プローブ針の先端が半球面を構成しているとき,プローブ針の先端径の半分(すなわち,先端の半径)が半球面の曲率半径となることは,技術的に自明のことである。そうすると,これに,G作成の「1998年7月以前の先端球面プローブ針販売の経緯についての陳述書 (乙34「針仕様についての説明書 (乙 」), 」35)の各記載も併せれば 「■プローブの仕様」欄の下方「備考」に球面の指示 ,が記載されている場合は 「先端球面仕上げ」の仕様,すなわち,先端が半球面を ,,, 構成する仕上げを要求しているものであること,そのとき 「□先端径」においてR○○μm又は○○μmRと記載されている場合は,プローブピンの先端の半径であると同時に,先端球面仕上げの曲率半径を意味していることがそれぞれ認められる。
(イ)控訴人の主張について?@控訴人は,原判決が,被控訴人作成(岩手東芝宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙8の1)及び岩手東芝の従業員作成の「証明書 (乙8の2)によって被 」 」控訴人が岩手東芝に対して曲率半径10μ の球面である先端を有するプローブ針mを製造販売したと認定したことは誤りであると主張するが 「PROBE-BOARD注文仕様 ,書 (乙8の1)においては「■プローブの仕様」欄の下方「備考」に球面の指示 」が記載され 「□先端径」において,10μmRと記載されていると認められるか ,ら,上記(ア)の説示に照らし,控訴人の同主張は採用することができない。
?A控訴人は,被控訴人作成の1999年(平成11年)の「PROBE CARD」と題する総合カタログ(甲7)の17頁左上の図面において 「先端径」と「球面半 ,径」とは使い分けられており,43頁の中央の図において 「先端径」という用語 ,は,先端の太さを表現するものとして説明されている,一方,乙8の1の2枚目では 「針仕様の変更」という見出しのもとに 「針先端長」と「針先端径」が記載さ , ,れている,被控訴人は 「針先端長」と「針先端径」とを,長さと太さを表わすも ,のとして,ワンセットで使用していたものである,と主張する。
しかし,前記(ア)に説示したとおり,被控訴人の「先端球面仕上げ」との仕様は,従前から,先端が半球面を構成するものを意味していたものと認めることができるところ,プローブ針の先端が半球面を構成しているとき,プローブ針の先端径の半分(すなわち,先端の半径)が半球面の曲率半径となることは,技術的に自明のことであるから,被控訴人作成の「PROBE-BOARD注文仕様書」の「□先端径」において,R○○μm又は○○μmRと記載されている場合には,プローブピンの先端の半径であると同時に,先端球面仕上げの曲率半径を意味していることが認められるものであり,先端径が針先の太さのみを表しているとはいえない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?B控訴人は,G作成の説明書(乙69 ,甲5のカタログの2頁も,先端径が針 )先の太さを表わしている,本件訴訟になってから作成されたGの陳述書等の信用性はないと主張するが,上記に説示したとおり,先端径が針先の太さのみを表しているとはいえないし,前記(ア)に説示したとおり,G作成の陳述書等は,訴訟前に作成された仕様書案等の各証拠に沿うものであり,信用性を有すると認められるものである。
?C控訴人は,被控訴人が言及している被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙12)の4頁目は,控訴人が作成したものであり,先端形状を 」球面と指定したのみでは,先端径の半分が球面の曲率半径となるという常識が成立していなかったからこそ,控訴人は,説明図面を作成して乙12に添付したものであると主張する。
しかし,乙12の4頁目の体裁・内容からのみでは,乙12の4頁目が添付された経緯について,注文するプローブ針の仕様を相手方に対して明確に示すという意味は読みとれるものの,それを超えて,当然に,先端形状を球面と指定したのみでは先端径の半分が球面の曲率半径となるという常識が成立していなかったからこそ説明図面を作成して添付したものという意味を読みとることはできない。
?D控訴人は,原判決が,被控訴人作成(富士フィルムMD宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙50の4)及び富士フィルムMDの従業員作成の「証明書 (乙 」 」50の5)によって先端が曲率半径20μ の球面であるプローブ針の製造販売をm認定したのは誤りであると主張するが 「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙50の4) , 」においては「■プローブの仕様」欄に球面鏡面との指示が記載され 「□先端径」 ,において20μmRと記載されていると認められるから,前記(ア)の説示に照らし,控訴人の同主張は採用することができない。
m ?E控訴人は,原判決が,乙54の10〜22によって先端が曲率半径15μの球面又はR加工であるプローブ針の製造販売を認定したのは誤りであると主張するが,乙54の10〜22を見れば,上記?@,?Dと同様に,前記(ア)の説示に照らし,控訴人の同主張は採用することができない。
?F控訴人は,G作成の「針仕様についての説明書 (乙35)の2頁の説明図に 」もあるとおり,球面仕上げの場合には,先端径とは別に球面半径を定め得るものであり,G自身も,上記説明書(乙35)の5頁において 「この曲率半径は指定の先 ,端径に対して1/2ではなく,±5μ の範囲内で近いものを選択(設計)する場m合もあります 」と述べている,と主張する。 。
しかし,前記(ア)に説示したとおり,被控訴人の「先端球面仕上げ」との仕様は,従前から,先端が半球面を構成するものを意味していたものと認めることができるものであり,球面仕上げの場合に,理論的には,先端径とは別に球面半径を定め得ること自体は肯定できるとしても,前記?Aに説示したとおり,被控訴人の仕様において,先端径が針先の太さのみを表しているとはいえない。また,上記説明書(乙35)5頁の「この曲率半径は指定の先端径に対して1/2ではなく,±5μ のm範囲内で近いものを選択(設計)する場合もあります 」との記載における±5μ 。
mの数値は,その文脈からすれば,基本的に,曲率半径が指定の先端径に対する1/2であることを否定するものではなく,あくまで,曲率半径が指定の先端径に対する1/2であることを前提とした上での許容値の記載であることが明らかである。
?G控訴人は,その担当者が釜石試験分析センター作成の平成9年3月4日付け「調査結果報告 (甲15)に記載されている測定結果に基づいて針先端部の曲率 」半径を計算した結果(控訴人の生産技術センター計画部企画グループのH作成の「報告書 〔甲19〕の3頁の表)によれば,7種類の針先の先端の曲率半径は, 」48.5μ から121.7μ の範囲にばらついているから,7種類の針先の全てmmが半径15μ の球面であったというGの陳述が虚偽であることは明らかである, m甲15の各鳥瞰図から視覚的に受ける印象も,これを裏付けるものである(上記H作成の「報告書 〔甲25 )と主張する。 」〕しかし,甲19における針先端部の曲率半径の計算方法は,甲19添付の「図2.曲率半径rの計算方法」によれば 「測定範囲」の中心に位置する球面の頂点をA ,とし 「測定範囲」の最も低い点をBとし,点Aと点Bとの標高差(図2で,AC ,の長さ)と,点Aと点Bとの間の水平距離(図2で,BCの長さ)とから,三平方の定理を利用して曲率半径rを求めるものであり,ACは甲15の図1-1等の鳥瞰図の一番高い点(MAX)と一番低い点(MIN)との差に相当する(AC=MA?]-MIN)として,曲率半径rを次の式で求めている。
r=(MAX-MIN)/2+BC /2(MAX-MIN)2そして,控訴人は,式中の「MAX-MIN」を計算するにあたり,甲15の図1-1等の鳥瞰図横に記載されている「MAX」と「MIN」を代入して,曲率半径rが,48.5μmから121.7μmとの計算結果を得ている。しかし,甲15において,その図1-1等の鳥瞰図横に「MAX「MIN」として示されてい 」,る数値が,球面の頂点であるA点及び最も低い点のB点のZ方向の高さを意味していると認めるに足りる証拠はなく,そうすると,鳥瞰図の数値をそのまま代入した結果として,甲15で使用された7種類の針先の先端の曲率半径が,48.5μmから121.7μmの範囲にばらついているとの控訴人の上記主張を直ちに首肯することはできない。また,平成6年10月25日付けの被控訴人作成に係る「TAB選別プローブボード製造仕様書案 (乙44)の「2.針先端形状 先端球面仕上 」げ」の「I=30μ±5μ」の記載からすれば,一定程度の製造誤差は生じるものと認められるから,これに鑑みて甲15における各鳥瞰図を精査すると,その見え方の違いから直ちに,各鳥瞰図のものが明らかに規格から外れているとまでいうこともできず,各図における針先の先端の曲率半径が明らかに異なるとまでいうこともできない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?H控訴人は,実際にも,本件特許の優先権主張日前に被控訴人が現実に製造販売したプローブ針の先端は,乙23(特開平8-166407号公報)の図4と同様の形状をしていた,として,控訴人高周波光デバイス製作所アセンブリテスト生産推進部I作成の「陳述書 (甲24)を提出する。 」しかし,同陳述書(甲24)に「私の前任者…が走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し,私は,前任者からSEM写真を受け取りました。…これら3枚のSEM写真が,株式会社日本マイクロニクス製『球面・鏡面仕様プローブ』を撮影したものであることは,前任者からの情報です 」とあるように,添付されたSEM 。
写真が被控訴人の「球面・鏡面仕様プローブ」を撮影したものであることは,あくまで,他者からの伝聞情報に基づいて記載されている。また,同SEM写真の表題に「E社製球面・鏡面仕様プローブ」とあり 「表題の…『E社』とは株式会社 ,日本マイクロニクスのことです 」と記載されているが 「E社」が被控訴人のこと 。,を意味するとの根拠は特に示されていない。
これらを考慮すれば,上記陳述書(甲24)に添付されたSEM写真が,被控訴人が本件特許の優先権主張日前に製造した「球面・鏡面仕様プローブ」を,使用前の状態で撮影したものであるとは直ちに認めることはできず,控訴人の上記主張は採用することができない。
?I控訴人は,被控訴人の測定(検査)では,先端において内接円の外側にはみ出している部分の大きさを評価することは行われていないから,先端球面の曲率半径はまちまちにならざるを得ない,と主張する。
しかし,前記(ア)に説示したとおり,被控訴人の「先端球面仕上げ」との仕様は,従前から,先端が半球面を構成するものを意味していたものと認めることができるものであって,先端が半球面を構成していれば,曲率半径については,測定方法いかんにかかわらず同じ測定結果が得られるというべきであるから,先端球面の曲率半径がまちまちにならざるを得ないということにはならず,控訴人の上記主張は採用することができない。
?J控訴人は,G作成の「報告書 (乙60)の陳述が,同人作成の「陳述書」 」(乙1)における「拡大射影し先端の形状(曲率半径)計測」という陳述と矛盾する,と主張するが,上記?Iに説示したとおり,先端が半球面を構成していれば,曲率半径については,測定方法いかんにかかわらず同じ測定結果が得られるというべきであり,Gの述べる2つの測定方法についての控訴人の上記指摘を検討しても,前記(ア)の判断を左右するものはない。
イ先端の表面粗さに関する認定誤りの主張について(ア)G作成の「プローブ針先端処理(粗面仕上げ管理基準:乙18号証)作成の経緯 (乙70)及び「針先の表面粗さと『管理基準』について (乙73)によ 」 」れば,1997年(平成9年)に本件管理基準表が作成されるまで,被控訴人製品におけるプローブ先端処理(粗面処理)は 「粗面仕上げ」及び「軽い粗面仕上 ,げ」の2種類であったと認められる。また,電解エッチング条件として対比すると,それぞれの仕様は,本件管理基準表の「粗面仕様A」及び「粗面仕様E」に対応していることが乙73に記載されており 「粗面仕様E」については,1998年 ,(平成10年)1月16日付けの被控訴人作成(東芝多摩川工場宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙76)において 「先端を軽い粗面にすること-E 」,仕様」との赤字の記載があることからもその対応関係が裏付けられる。
しかるに,顧客からの注文仕様を記載した「PROBE-BOARD注文仕様書」の「■プローブの仕様」の欄には 「球面+鏡面仕上げ (乙3「球面鏡面仕 ,」),様 (乙6の1「平面+鏡面に近い粗面 (乙7の1)等の様々な記載がある。そ 」),」うであるところ,G作成の陳述書(乙1)の「 軽い粗面仕上げ』=『鏡面仕上 『げ(19頁 ,同人作成の「プローブ針先端処理(粗面仕上げ管理基準:乙18 』」)号証)作成の経緯 (乙70)の「軽い粗面仕上げ(鏡面仕上げ(1頁「PR 」 )」),OBE-BOARD注文仕様書 (乙7の1)の「平面+鏡面に近い粗面 (1頁) 」 」と「鏡面 (同2頁の「プローブカード購入仕様書」の鏡面の○印)との各記載に 」よれば,上記の「■プローブの仕様」の欄の記載はいずれも「軽い粗面仕上げ」を意味しており,本件管理基準表の「粗面仕様E」に対応するものと認められる。
そうすると 「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙3〜乙17)に示される , 」とおり,被控訴人は,本件特許の優先権主張日前,本件管理基準表が作成される以前から,本件管理基準表における粗面仕様「A」に相当する「粗面仕上げ」及び粗面仕様「E」に相当する「鏡面仕上げ (すなわち「軽い粗面仕上げ )のプローブ 」 」針を,化学研磨によって製造し(乙70,73 ,複数の顧客に対して販売してい )たというべきであるから,少なくとも本件管理基準表における粗面仕様「A」及び粗面仕様「E」の仕様が,本件管理基準表が作成された時点で未完成であったということはできない。
(イ)控訴人の主張について?@控訴人は,各プローブ針の先端部の粗さについては,岩手東芝に対して販売したものは「かるい粗面 ,富士フィルムMDに対しては「鏡面 ,Siemens 」 」に対しては「指定なし」というように,それぞれ指定が異なる,それにもかかわらず,これらのすべてについて本件管理基準表の「E」に相当すること自体が奇異であり,本件管理基準表の「E」に相当と認定したことに対する根拠が示されていないと主張する。
しかし,上記(ア)の説示に照らせば,岩手東芝の「かるい粗面 ,富士フィルム 」MDの「鏡面」は,いずれも「軽い粗面仕上げ」を意味しており,本件管理基準表の「粗面仕様E」に対応するものと認められる。なお,Siemensのものが「指定なし」であり,必ずしも本件管理基準表の「粗面仕様E」に対応するものと認められないが,そうであるとしても,上記(ア)の説示を左右するものではない。
?A控訴人は,岩手東芝を含めて,注文仕様書において先端の粗さを指定する際に,本件管理基準表に準拠したAないしFの符号を用いた者は,控訴人自身を除いて存在しない,このことは,本件管理基準表が営業ツールであったという被控訴人の主張が事実に反することを疑わせるに十分であると主張する。
しかし,前記に説示したとおり,本件管理基準表は,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられていたというべきであり,控訴人以外に,A〜Fの符号を用いたものが見当たらないとしても,この認定が左右されるものとはいえないから,控訴人の同主張は採用することができない。
?B控訴人は,被控訴人が本件管理基準表を作成したのは,簡易な形式で甲15の調査結果を岩手東芝に報告することにあった,このことは,本件管理基準表に手書きの文字が記入された文書(甲23)において,手書き部分が 「MHC K部長殿 F ,romG(3/6岩手東芝様へ中間報告として提出済 」という内容のものであること )から明らかである,と主張するが,上記?Aと同様に,控訴人の同主張は採用することができない。
?C控訴人は,化学研磨による仕上げしか行っていなかった本件管理基準表の段階では被控訴人における発明は未完成であった,被控訴人作成の「実験結果報告書 (乙74)の3/4ページに接触抵抗値に関し 「…初期値は全て0.4Ω以下で 」 ,ある (出荷基準0.5Ω以下)1000回以降最大値は2Ω〜11Ωの間で大きくばらつ 。
いている…」と記載されており,また,4/4ページには 「1000回以降はアルミ ,カスの付着が多くなり,これらの付着物はエタノール等による簡単な洗浄では殆ど落ちる事は無く,コンタクトが増すにつれ付着物も多くなる傾向にある 」と記載 。
されており,これらの記載は,被控訴人において,実用的に使用できるプローブ針が得られていなかったことを意味している,と主張する。
しかし,本件特許の優先権主張日後に,従前と異なる製造方法で,本件管理基準表と同じ粗面仕様が実現できるようになったとしても,それは,従前の方法で製作されていたプローブ針が未完成であることを意味するものではない。また,被控訴人作成の「実験結果報告書 (乙74)の3/4ページには,接触抵抗値に関し, 」「平均値は1Ω前後の値である 」とも記載され,その添付資料1-?Aによれば, 。
50万回のコンタクト後においても,トータルの平均値は0.97Ωであることが認められる上,乙74の全ての記載を精査しても,実用的に使用できないことを示唆する記載があるとは認められない。これらに照らせば,控訴人の指摘する記載によって,直ちに,実用的に使用できるプローブ針が得られていなかったことが導かれることにはならないというべきである。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?D控訴人は,被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙9〜 」11)が作成された頃までに,控訴人と被控訴人の間には秘密保持義務(控訴人と」 , 被控訴人との間の「取引基本契約書 〔甲9〕参照)を前提とした意見交換がありそのような中,控訴人は,被控訴人の担当者の指示により,乙9から乙11に添付された控訴人作成の製作仕様書にA仕様又はB仕様と記載したのであるから,同記載が,被控訴人が本件管理基準表を一般的な営業ツールとして用いていたことを意味するわけではない,と主張する。
しかし,前記(1)ウ(ア)に説示したとおり,本件管理基準表に記載された事項が秘密保持義務の対象になっているということはできない。また,前記(1)イ(ウ)?Aに説示したとおり,被控訴人は,控訴人に対しても本件管理基準表を用いて定量的なプローブ針の粗さ基準について説明を行い,この説明に基づいて,控訴人は,当該管理基準表に記載の「粗面仕様」の中から針先処理として「A仕様「B仕様」」,等の指定を行って,被控訴人に対しプローブカードの発注を行ったことが認められるから,この事実からは,本件管理基準表が被控訴人の「営業ツール」として一般的に用いられていたとの認定が導かれるものである。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?E控訴人は,乙9〜11と同時期に作成された被控訴人作成(控訴人宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙80)についても,備考欄に記載の仕様変更(F仕 」様の指定)は被控訴人が内部連絡のため記したものである,被控訴人作成(東芝多摩川工場宛)の「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙76)については,その1頁目の朱 」書きは被控訴人が追記したものであり,かつ2頁目の「仕様変更通知書」はそもそも被控訴人の内部文書であるから,東芝多摩川がE仕様という指定をしたことを示すものではない,と主張する。
しかし 「PROBE-BOARD注文仕様書 (乙76,80)の体裁・内容に照らせば, , 」控訴人が指摘する記載は,いずれも被控訴人が顧客から受けた指示に基づいて記載したものと認められるから,上記注文仕様書における被控訴人の顧客(控訴人,東芝多摩川工場)が仕様の指定をしたことが左右されるものではなく,控訴人の上記主張は採用することができない。
?F控訴人は,岩手東芝の製造部第一製造担当のM作成の「証明書」添付の「Auバンプ用プローブカード評価報告書 (乙32)に「秘」のスタンプが押捺されて 」いることからも明らかなとおり,被控訴人と岩手東芝とは,共同開発の途上にあったものであり,被控訴人が岩手東芝に納入した製品は,共同開発の途中経過における評価の対象としての製品であり,このような行為は事業の実施には該当しない,と主張する。
しかし,前記に説示したとおり,本件管理基準表は,被控訴人の「営業ツール」として被控訴人の顧客一般に対し用いられ,岩手東芝にも交付されたものであり,本件管理基準表に記載された事項が秘密保持義務の対象ということもできないのであるから,このような本件管理基準表等の交付を受けた岩手東芝が発注し,被控訴人が岩手東芝に納入した製品が,単に共同開発の途中経過における評価の対象としての製品であるとして,被控訴人の行為が事業の実施に該当しないということはできない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
?G控訴人は,本件特許の優先権主張日前においては,被控訴人の発明は未完成であったから,そもそも,先使用権は成立していないし,当時の行為と本件において控訴人が差止めを求めている行為とは実質的に異なるものである,と主張する。
しかし,前記説示のとおり,本件特許の優先権主張日前において,被控訴人の発明が未完成であったということはできない。また,前記説示のとおり,被控訴人は,本件特許の優先権主張日前,本件管理基準表が作成される以前から,本件管理基準表における粗面仕様「A」に相当する「粗面仕上げ」及び粗面仕様「E」に相当する「鏡面仕上げ (すなわち「軽い粗面仕上げ )のプローブ針を,化学研磨によっ 」 」て製造し(乙70,73 ,複数の顧客に対して販売していたというべきである。 )そして,針先端の曲率半径,先端の表面粗さに関する原判決の認定誤りの主張をいずれも採用できないとした前記説示に照らしても,原判決説示のとおり(ただし,51頁22行〜52頁1行の「(ウ)Siemens(乙54の10〜22 」の)欄の記載部分は除く,被控訴人が販売した製品は,本件第2発明及び本件第7発 。)明の構成要件を充足するものであったというべきである。そうすると,当時の行為と本件において控訴人が差止めを求めている行為とが実質的に異なるものということはできない。
以上によれば,控訴人の上記主張は採用することができない。
3結語以上のとおりであるから,本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 本多知成
裁判官 田中孝一
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