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関連審決 不服2006-12364
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10490審決取消請求事件 判例 特許
平成17ワ12207特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成14行ケ426特許取消決定取消請求事件 判例 特許
平成19ワ8064特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ネ10005損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  引用発明の認定 /  発明特定事項 /  周知技術 /  上位概念 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  登録実用新案 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  発明の範囲 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10241号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁護士高橋淳
訴訟代理人弁理士福田賢三
被告特許庁長官
指定代理人北川清伸,川本眞裕,紀本孝,森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/03/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が不服2006-12364号事件について平成20年5月20日にした審決を取り消す。」との判決第2事案の概要本件は,原告が,下記1(1)の特許出願(以下「本件特許出願」という。)についてされた拒絶査定に対して,同1(2)のとおり不服審判請求をしたところ,特許庁は上記審判請求は成り立たないとの審決をしたため,原告が,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件特許出願(甲第2号証)等出願人:原告発明の名称:「空気清浄装置」出願日:平成17年8月18日出願番号:特願2005-237040号ただし,本件特許出願は,特願2000-30900号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり,原出願は特許法41条に基づく優先権主張を伴う出願であるが,優先権主張の基礎となる特願平11-190817号に係る明細書等には照明灯を有する空気清浄装置について記載されていないので,照明灯を有する空気清浄装置の発明である本件特許出願に係る発明(請求項1〜6に記載の発明)については,優先権主張は認められない(当事者間に争いがない。)。
手続補正日:平成17年12月27日(甲第5号証。以下「先行補正」という。)拒絶査定日:平成18年5月9日(甲第10号証)(2)不服審判請求等の手続審判請求日:平成18年6月15日(甲第11号証。不服2006-12364号)手続補正日:平成18年7月14日(以下「本件補正」という。)(甲第12号証)審決日:平成20年5月20日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成20年6月3日2本件補正後の特許請求の範囲の記載(甲第5,第12号証)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。ただし,下線部分は先行補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載からの補正部分である。
「給電部に装着される被給電部を一端に有し,他端に吹き出し口が設けられ,中心軸線を有する電球型のケースと,このケース内に収納され,前記被給電部からの交流を直流に変換する交流直流変換器と,前記ケース内に収納され,前記交流直流変換器からの電圧を昇圧する昇圧トランスと,前記ケース内に収納され,前記昇圧トランスに接続されたマイナスイオン発生器と,前記ケース内に収納され,前記被給電部からの電力によって点灯する照明灯とからなり,前記マイナスイオン発生器は,前記中心軸線と平行で,前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え,この1つの電極に高電圧が印加されることにより,放電が起こってマイナスイオンを前記吹き出し口から放出する,ことを特徴とする空気清浄装置。」(以下「本願補正発明」という。)3審決の理由の要旨審決は,本願補正発明は,特表平9-508065号公報(甲第1号証。以下「引用例」という。)記載の発明(以下「引用発明」という。),引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許出願の際独立して特許を受けることができないとして本件補正を却下した上,先行補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づいて本願発明の要旨を認定し,本願発明についても引用発明,引用例記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。審決の理由中,本件補正発明が独立特許要件を満たさないとした部分は,以下のとおりである(ただし,項目の番号等について改めた部分がある。)。
(1)引用例原査定の拒絶の理由に引用された特表平9-508065号公報(引用例)には,図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「技術分野本発明は空気浄化装置に関するもので,更に具体的には放電ランプのような従来の照明装置と共に一つのユニットに統合されて室内空気を浄化するために簡便に使用することができる空気浄化装置に関するものである。
背景技術一般的に,家庭や事務室の室内空気を浄化させるために使用される空気浄化装置は,不快な臭いを生じる各種のビールス,バクテリア,煙草の煙等を除去させることによって,快適な室内環境を提供するものとして知られている。このような空気浄化装置を使用すれば,室内環境が快適になり,人体に適したものとなる。空気浄化は,浄化装置内に装着されたイオン発生機により発生された陰イオンの作用によりなされる。しかし,このような空気浄化装置は,室内空気を対流させるために別途の送風装置を使用しているため,モータ等のような関連駆動部品を装置内に収容しなければならないという問題点がある。更に,空気浄化装置が大きくなるため,設置空間を大きく占めるという問題点がある。
近年においては,空気浄化装置を小型化するために,前述の送風装置は使用されなくなっている。その結果として,室内空気の対流が制限されて浄化能力が劣ることとなり,これにより使用面積も縮小されるという問題点がもたらされる。」(5頁3〜20行)イ.「ピン状の放電極(58)は,陰イオンを放出するためのアノードとして機能する。放電極(58)は,金,銅,黄銅,アルミニウム,タングステン,ステンレススチル及びそれと類似のもので構成されるグループから選ばれた物資で作ることができる。回路(21)の基準電圧が放電極(58)に印加される。放電極(58)の下部は遮蔽部(59)に取り囲まれているが,この遮蔽部(59)はハウジングの上部(10a′)の内部に延長され,絶縁体からなる支持部材(53)を放電極(58)に印加される高電圧から保護する。支持部材(53)の端部はネジ線即ちネジ溝(threads)を有している第1環状リング(55)と組み立てられ,この第1環状リング(55)は,ネジ線を有している第2環状リング(56)と組み立てられる。第2環状リング(56)はその上部の表面に複数の孔(60)が定義されたハウジングの上部(10a′)に固く固定される。複数の孔(60)はランプ(12)の下部が十分に嵌め込まれるほどの適当な直径を有しなければならない。
塵や粗雑な空気粉塵を漉すための塵フィルタ(54)は空気が通過できるようにする引込口である複数の貫通孔(53′)を有している支持部材(53)の下部外周面に嵌め合わせられる。イオン集塵パネル(52)は支持部材(53)の上部外周面に嵌め合わせられる。イオン集塵パネル(52)は,銅,黄銅,アルミニウム,タングステン,炭素及びそれと類似する物資のグループから選ばれた物資で作ることができ,放電極(58)から放出された陰イオンを集塵するためのカソードの役割を行う。回路(21)からの高増幅電圧はイオン集塵パネル(52)に印加される。」(11頁20行〜12頁13行)ウ.「以下,本発明による空気浄化装置(5)の作用を第3図の印刷回路基板(20)上に装着された回路素子を含む回路のブロック図が示された第9図を参照して説明する。電極(11)が従来の電源ソケットに組み立てられた状態でハウジング(10)にある電源スイッチ(図示せず)を点灯すれば,電極(11)を介して装置に給電が行われる。例えば,117/220Vの電源電圧はヒューズ(22)を介して整流のために整流器(23)へ供給される。
整流された電圧はインバータ増幅器(24,25)により使用され,適切に増幅された正弦波信号を発生させる。
例えば,インバータ増幅器(24)からの41KHZの正弦波信号は,ランプ(12)のコイルを駆動してその中で放電を起こす。一方,インバータ増幅器(25)から発生された正弦波信号は,正弦波信号の電圧レベルを調節するフライバックトランスフォーマ(fly-backtransformer)のようなトランスフォーマ(26)へ供給される。
尚,印刷回路基板(20)に装着された部品の数を減少させるために,2つのインバータ増幅器(24,25)の代わりに一つのインバータ増幅器を使用することもできる。
調節された電圧はおおよそ7,000〜10,000VのDC電圧が発生される高電圧整流器(27)に供給される。回路(21)の接地電位のような基準電圧はアノード,即ち,電子銃(34)の端部(36b),又は放電極(58)に印加され,発生されたDC電圧はカソード,即ちイオン集塵パネル(31)の延長片(33)又はイオン集塵パネル(52)に印加されてアノードから発生された陰イオンを集塵できるようにする。」(12頁17行〜13頁10行)エ.「ランプ(12)が点灯される時,ランプ(12)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(30,30′)の周りに空気対流が自然に起こる。従って,空気が貫通孔(32)と第1絶縁部材(37a)の貫通孔(38)で構成された引込口へ入り込まれるようになる。
引込口へ入ってくる空気は陰イオン発生機(30,30′)内で浄化されるが,イオン集塵パネル(31)では放電極(35)から発生された多い陰イオンが集塵される。放電極(35)から放出された陰イオンは青い色調を有しているため,貫通孔(32)や貫通孔(38)を介して外部からみることができる。従って,使用者は陰イオン発生機(30)の動作状態を容易に確認することができる。浄化された空気は引込口としても作用する出口を通して出ることになる。」(13頁11〜20行)オ.「本発明の新規な概念を容易に応用し,小さく簡単な空気浄化装置を製造し得るように考案することができる。以下,本発明による空気浄化装置(73)を図10乃至図12を参照して説明する。図10は空気浄化装置(73)を部分的に切り取って示した斜視図である。空気浄化装置(73)は,一般的に電極(11″),ハウジング(61,61′),第1グリール(63)及び第2グリール(70)を含む。図12に示した通り,第1グリール(63)はグリール支持部材(62′)に複数の環状リング(62)を固定させることによって形成される。
図12にて第1グリール(63)は3つのグリール支持部材(62′)を有しているものと示されているが,複数の環状リング(62)を固く支持するために必要な個数ほどの支持部材(62′)を有することができる。複数の環状リング(62)の間にある第1グリール(63)の引込口(64)は空気がハウジング(61,61′)の内部に入ってその中で浄化されるようにする。浄化された空気は第2グリール(70)の出口(74)を通して出ることになる。
この空気浄化装置の断面を示した図11を参照して装置(73)をより詳細に説明する。引込口空気フィルタ(65),4つの放電極(66,66′)(2つの電極は図示せず),連結棒(67),イオン集塵パネル(68),出口空気フィルタ(69,69′)及び印刷回路基板(72)がハウジング(61,61′)内に含まれている。円筒状の引込口空気フィルタ(65)は,第1グリール(63)の内部に同心円の形態に配置されるが,フィルタ(65)とグリール(63)との間の間隔が一定に配置されている。下部(62-1)に5つのステップ状(stepped)孔(2つは図示せず)を有しているコップ状の支持部(62″)は,その円筒状の側壁(62-2)で印刷回路基板(72)を支持する。
イオン集塵パネル(68:図示せず)を駆動するための高いDC電圧を発生させるための関連の電気部品は印刷回路基板(72)上に装着される。支持部(62″)は,第1グリール(63)と一体型に作ることもできる。アノードで作用する4つの放電極(66,66′)は,下部(62-1)の中央に該当することを除外した4つのステップ状の孔に挿入される。
下部(62-1)の中央の位置した残りの一つのステップ状の孔は下部(62-1)からイオン集塵パネル(68)まで下側に延長されるボス(67′)を有している。連結棒(67)は,印刷回路基板(72)から発生された高電圧がイオン集塵パネル(68)に印加され得るようにする。
カソードとして作用するイオン集塵パネル(68)は4つのステップ状孔に垂直方向に対応される位置に4つの孔(71:2つは図示せず)を有している。4つの放電極(66,66′)は,イオン集塵パネル(68)を(判決注:「イオン集塵パネル(68)に」の誤記であると認められる。)向かって整列されているため,コロナ放電によるエネルギーは浄化された空気が4つの孔(71)に入り込んで出口空気フィルタ(69,69′)と第2グリール(70)の出口(74)を通して外部へ出るようにする。ハウジング(61′)の円筒状の側壁(61″)により支持される出口空気フィルタ(69,69′)に化学的汚染物資を吸収するようにするために炭素で作ることができる。
本明細書に示された空気浄化装置(73)は,電源電極(11″)を従来の電源ソケットに差し込むことによって,便利に設けることができ,その構造は放電ランプの大きさほどの小さな大きさで製造でき,単純に作ることができる。更に,この装置(73)は容易に3つの部分,即ち,ハウジング(61),ハウジング(61′)及び第1グリール(63)に分けることができ,出口空気フィルタ(69,69′)又は印刷回路基板(72)の電気部品を便利に掃除又は取替えることができる。
これまで,本発明は特定応用と関連して特定実施例を参照して記述された。当業者として本発明の内容が理解できる者ならば,本発明をその範囲で付加的に変更し,応用し得るものである。例えば,本発明は単に例示の目的で示された陰イオン発生機の特定構造に限るものではない。尚,関連の技術分野で通常の知識を有する者ならば,本発明にて示された陰イオン発生機にやや変更を加えさえすれば本発明のランプとして白熱灯を使用することができるというのが分かる。
従って,添付された特許請求の範囲は,本発明の範囲内における全ての応用,変更及び実施例を含むものであると解釈されるべきである。」(14頁20行〜16頁末行)カ.図10,図11には,空気浄化装置(73)は電極(11″)を一端に有し,他端に出口(74)が設けられており,ハウジング(61,61′),第1グリール(63)及び第2グリール(70)からなる部分は中心軸線を有する電球型のケースを構成しており,電球型のケース内には,印刷回路基板(72)や,中心軸線と平行で出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′),イオン集塵パネル(68)を備える陰イオン発生機が収納されていることが図示されている。
キ.上記記載事項ウ,オから,図10,図11に図示されている印刷回路基板(72)には,電極(11″)からの電源電圧を整流する整流器(23)と,整流器(23)からの電圧を高いDC電圧にするインバータ増幅器(25),トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)が装着され,さらに,高電圧整流器(27)に陰イオン発生機が接続されることは明らかである。
ク.上記記載事項イ,オから,4つの放電極(66,66′)に基準電圧が,イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加されることにより放電が起こって陰イオンを発生することは明らかである。
これら記載事項,図示内容及び明らかな事項を総合し,本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例には,次の発明(引用発明)が記載されている。
「電極(11″)を一端に有し,他端に出口(74)が設けられ,中心軸線を有する電球型のケースと,このケース内に収納され,前記電極(11″)からの電源電圧を整流する整流器(23)と,前記ケース内に収納され,前記整流器(23)からの電圧を高いDC電圧にするインバータ増幅器(25),トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)と,前記ケース内に収納され,高電圧整流器(27)に接続された陰イオン発生機とからなり,前記陰イオン発生機は,前記中心軸線と平行で,前記出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え,4つの放電極(66,66′)に基準電圧が,イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加されることにより放電が起こって陰イオンを発生する空気浄化装置(73)。」(2)本願補正発明と引用発明の対比そこで,本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者における「電極(11″)」が,その機能・構造からみて前者における「給電部に装着される被給電部」に相当し,以下同様に,「出口(74)」が「吹き出し口」に,「電源電圧を整流する整流器(23)」が「交流を直流に変換する交流直流変換器」に,「高いDC電圧にするインバータ増幅器(25),トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)」が「昇圧する昇圧トランス」に,「陰イオン発生機」が「マイナスイオン発生器」に,「空気浄化装置(73)」が「空気清浄装置」に,それぞれ相当している。
また,後者の「前記中心軸線と平行で,前記出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え,4つの放電極(66,66′)に基準電圧が,イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加される」ことと,前者の「前記中心軸線と平行で,前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え,この1つの電極に高電圧が印加される」こととは,「前記中心軸線と平行で,前記吹き出し口へ向かって延びる少なくとも1つの電極を備え,電極に高電圧が印加される」という概念で共通している。
また,後者の「放電が起こって陰イオンを発生する」ことと,前者の「放電が起こってマイナスイオンを前記吹き出し口から放出する」こととは,「放電が起こってマイナスイオンを発生する」という概念で共通している。
したがって,両者は,「給電部に装着される被給電部を一端に有し,他端に吹き出し口が設けられ,中心軸線を有する電球型のケースと,このケース内に収納され,前記被給電部からの交流を直流に変換する交流直流変換器と,前記ケース内に収納され,前記交流直流変換器からの電圧を昇圧する昇圧トランスと,前記ケース内に収納され,前記昇圧トランスに接続されたマイナスイオン発生器とからなり,前記マイナスイオン発生器は,前記中心軸線と平行で,前記吹き出し口へ向かって延びる少なくとも1つの電極を備え,電極に高電圧が印加されることにより放電が起こってマイナスイオンを発生する空気清浄装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。
相違点1:前者では,ケース内に収納され,被給電部からの電力によって点灯する照明灯を有するのに対して,後者ではそのような照明灯を有しない点。
相違点2:マイナスイオン発生器の電極に関し,前者では,前記中心軸線と平行で,前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え,この1つの電極に高電圧が印加されるのに対し,後者では,前記中心軸線と平行で,前記出口へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え,4つの放電極(66,66′)に基準電圧が,イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加される点。
相違点3:発生したマイナスイオンに関し,前者では,吹き出し口から放出するのに対し,後者では,発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない点。
(3)相違点についての判断上記相違点について検討する。
まず,相違点1について検討する。
引用例には,上記記載事項アに「本発明は空気浄化装置に関するもので,更に具体的には放電ランプのような従来の照明装置と共に一つのユニットに統合されて室内空気を浄化するために簡便に使用することができる空気浄化装置に関するものである。」と,照明装置(照明灯)と共に使用することができる空気浄化装置(空気清浄装置)に関するものであることが記載されており,さらに,上記記載事項エには「ランプ(12)が点灯される時,ランプ(12)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(30,30′)の周りに空気対流が自然に起こる。従って,空気が貫通孔(32)と第1絶縁部材(37a)の貫通孔(38)で構成された引込口へ入り込まれるようになる。」と,ランプ(照明灯)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)の周りに空気対流が自然に起こることが記載されており,引用例の図1には,ランプ(照明灯)を陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に隣接して設けることが図示されているのであるから,引用発明においても,必要に応じて熱の作用を利用した空気対流が起こるようにランプ(照明灯)を陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に隣接して設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることであり,その際に,引用発明では陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)はケース内に収納されているのであるから,ランプ(照明灯)もケース内に収納されるようにするとともに,ランプ(照明灯)を電極(被給電部)からの電力によって点灯するようにすることも当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって,上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
次に相違点2について検討する。
マイナスイオン発生器の電極として,1つの電極に高電圧を印加することにより放電が起こってマイナスイオンを発生するものは,特開平11-191478号公報(段落【0002】等参照),特開平10-261477号公報(段落【0002】〜【0004】,図1等参照)にも記載されているように周知技術であり,必要に応じてこれを引用発明の陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に適用して上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
次に相違点3について検討する。
マイナスイオンを発生する空気清浄装置において,マイナスイオンをケースの吹き出し口から放出するようにすることは,特開平10-152307号公報,登録実用新案第3045395号公報にも記載されているように周知技術であり,必要に応じてこれを引用発明の出口(吹き出し口)から陰イオン(マイナスイオン)が放出されるようにすること,すなわち上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして,本願補正発明による効果も,引用発明,引用例に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。
したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(4)むすびよって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3審決取消事由の要点原告は,審決が本願補正発明が独立特許要件を満たさないとした点を争い,取消事由として以下のとおり主張する。
1取消事由1(相違点3についての認定の誤り)審決は,本願補正発明と引用発明の相違点3として,「発生したマイナスイオンに関し,前者では,吹き出し口から放出するのに対し,後者では発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない」と認定しているが,引用発明においては,発生した陰イオンを出口74から放出することはないのであって,審決による相違点3は,この点について引用発明を誤って認定したことに基づいて認定されたものであり,審決は誤りである。
すなわち,まず,理論的に考察すると,放電極66,66’において発生したマイナスイオンは,出口74(図11)の近傍にある空気フィルター69(図11)により吸着され,空気浄化装置の外に排出されることはあり得ない。なぜなら,空気フィルター69は陽極であり,マイナスイオンとの間では,引きつけ合うクーロン力が働くからである。さらに,クーロン力が距離の二乗に反比例することに照らせば,出口74により近づいたマイナスイオンは,空気フィルター69にもより近づくことになるのであり,より強力なクーロン力の作用を受けることを考え合わせれば,放電極66,66’において発生したマイナスイオンは,出口74(図11)の近傍にある空気フィルター69(図11)(イオン集塵機ではない。空気フィルター69は,有害物質を遮断するのみならず(これはクーロン力の効果ではなく,単に,空気フィルター69の目が細かいことによる。),マイナスイオンも吸着するものである。)により完全に吸着されるのである。したがって,引用発明において,マイナスイオンが空気浄化装置の外に排出されることは,当業者にとっては,およそ,想定できないことである。
また,このことは,実験によっても裏付けられる。A作成の報告書(甲第25号証)にあるとおり,マイナスイオン発生器に5種類の空気フィルターを付加した構成の空気浄化装置(引用発明の実施品でもある)を試作し,マイナスイオン測定器により,出口からマイナスイオンが放出されるか否かを測定したところ,いずれも,マイナスイオンが放出されないことが確認できた。
さらに,引用発明において,万が一,何らの理由により,微量のマイナスイオンが放出されるとしても,それは,本願補正発明におけるような,「意図的なマイナスイオンの放出」,つまり,マイナスイオンを「放出する」ものではないのであるから,この意味においても,引用発明においては,発生した陰イオンを出口74から放出することはないのであり,審決の認定は誤りである。
2取消事由2(相違点の看過)(1)審決は,本願補正発明と引用発明とが,「空気清浄装置」という同一の技術分野に属すると認定しているが,誤りである。
引用発明は,装置内部においてマイナスイオンを発生させた上,装置内部に取り込んだ汚れた空気を浄化し,浄化された空気を放出する空気清浄機であり,フィルターを具備し,かつ,浄化された空気を放出するための放出機能を有することを必須とするものであり,「機械式空気清浄機」(空気浄化装置)の技術分野に属する。これに対し,本願補正発明は,その実質は,マイナスイオン発生器であり,「マイナスイオン発生器」の技術分野に属する。
日本電機工業会規格(JEM1467)における空気清浄機の定義は,「脱臭及び集塵又は集塵だけを目的とする装置」であり,それは,電気式のものと機械式のものとに分けられている。電気式空気清浄機の定義は,「高電圧を利用して粉じんを荷電し,集塵する空気清浄機」であり,機械式空気清浄機の定義は「主として濾材を用いて集塵する空気清浄機」(甲第27号証。なお,「濾材」とは「フィルター」のことである。)である。
他方,本願補正発明は,装置中に発生させたマイナスイオン自体を空気中に放出するものであり,「濾材(フィルター)を用いて集塵する」ものではないから,「機械式空気清浄機」の技術分野に属さないことは明らかである(マイナスイオン発生器は,「医療用物質生成器」に属するものである(甲第28号証)。)。
また,仮に,引用発明が,「機械式空気清浄機」の上位概念である「空気清浄機」の技術分野に属するものであるとしても,本願補正発明は,装置中に発生させたマイナスイオン自体を空気中に放出し,空気中のプラスイオンとマイナスイオンとが結合することにより空気の汚れを浄化するものであって,「集塵」機能は具備しないものであるから,「脱臭及び集塵又は集塵だけを目的とする装置」に該当せず,空気清浄機(なお,「空気清浄機」は,「装置内部に取り込んだ汚れた空気を浄化し,浄化された空気を放出する空気清浄機」であるから,「空気浄化装置」と呼称すべきものである。)の技術分野に属さないことは明白である。
(2)技術の流れ以上の点をより明確にするため,空気浄化装置に関する技術の流れとマイナスイオン発生器に関する技術の流れを概観する。
ア空気浄化装置に関する技術の流れ空気浄化装置に関する技術の流れを概観すると,出発点となる空気浄化装置の基本的構成は,?@汚れた空気を装置内に取り込む吸込口?A汚れた空気から「塵埃」(空気中の汚れ。例えば,土埃,ちり,すす,花粉,たばこの煙,ダニの死骸,卵及び糞など無数に存在する。)を除去するフィルター?B浄化された空気を放出する放出口?C各構成要素を格納するハウジングである(甲第29号証)。
そして,この基本的構成に対し,効率よく汚れた空気を装置内に取り込むためのファン,浄化された空気を短時間で大気中に放出するための送風機などが付加される。
このような空気浄化装置の基本的構成をベースとして,その後改良が加えられて現在に至っている。
イマイナスイオン発生器に関する技術の流れ次に,マイナスイオン発生器に関する技術の流れを概観する。
約60数年前,フィリップ・レーナルト(ノーベル物理学者)が滝の水滴の分裂からマイナスイオンが発生するということ(レーナルト効果)を発見した。その後,滝の近く又は森林に行った場合,身体の疲労や精神的ストレスが緩和され,快適な気分になることが,マイナスイオンの効果であるということが判明した。そして,潜水艦の空気の淀みを原因とする船員の体調不良を解消するために,電気式のマイナスイオン発生器が発明された。これがマイナスイオン発生器の出発点である。
マイナスイオン発生器の基本的構成は,マイナスイオンを発生させるための機構とマイナスイオンを放出させる放出口とハウジングからなる。マイナスイオンを発生させるための機構としては,正電極と負電極を配置し,負コロナ放電を行うものの他,負電極に対し負の高電圧を供給することにより負電極付近の大気をマイナスイオン化するものがある。
このようなマイナスイオン発生器の基本的構成をベースとして,その後改良が加えられて現在に至っている。
ウ以上のとおり,空気浄化装置の技術の流れとマイナスイオン発生器の技術の流れとは,全く異なるのであり,マイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部を構成する場合があるという点を除き,全く接点はない。このことからも,両者が同一の技術分野に属さないことは明らかである。
(3)したがって,上記のような技術分野の相違を相違点として認定しなかった審決は,相違点を看過したものである。
3取消事由3(相違点3についての判断の誤り)(1)審決は相違点3(発生したマイナスイオンに関し,前者では,吹き出し口から放出するのに対し,後者では,発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない点。)に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることであると判断したが,この判断は誤りである。
(2)動機付けがないこと引用発明は,従来から存在していた空気浄化装置をベースとするものであり,空気浄化装置の内部においてマイナスイオンにより空気を浄化し,浄化された空気を排出するものである。つまり,引用発明において,課題として,「室内空気を対流させるために別途の送風装置を使用しているため,モータ等のような関連駆動部品を装置内に収容しなければならないという問題点がある」ことが指摘されており(「背景技術」の欄の6行から8行),主要な目的として,「送風装置を使用せず室内空気を浄化させることができる」ことが記載されている(「発明の開示」の欄の1行から2行)ことから明らかなとおり,引用発明は,吸込口,フィルター及び放出口の存在と浄化された空気を室内に放出する機能を必須とする空気浄化装置である。
これに対して,本願補正発明は,マイナスイオン発生器であり,マイナスイオンを室内に放出して室内空気を浄化するものである。したがって,本願補正発明は,浄化された空気を室内に放出する機能を必須としないものであって,浄化された空気を室内に放出する機能を必須とする空気浄化装置である引用発明とはその基本的発想が全く異なるものである。そして,上記2のとおり,両者の技術の流れは全く異なり,マイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部として利用される場合がある点を除き,何らの接点はなく,相互に技術の交流もないから,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することはないのである。
この点に関し,確かに,本願補正発明に係る請求項には,「・・・空気清浄装置」という記載があるし,また,本件明細書にも「空気清浄装置」という記載があるが,これは,本願補正発明に係る特許の出願当時,「マイナスイオン発生器」というカテゴリーが存在しなかったため,本願補正発明を「空気清浄装置」にカテゴライズするために採られた便法であり,本願補正発明の本質はマイナスイオン発生器である。
また,マイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部として利用される場合があることを捉えて,両者が関連する技術分野であり,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照する動機付けがあるとの議論もあり得るが,関連する技術分野であるから動機付けがあるとの論理は,原因と結果を取り違えたものである。問題は,何が関連する技術分野であるかであり,結局は,動機付けがあるような分野を関連する技術分野というマジックワードで表現しているにすぎない。
両分野の技術者層に重なりはないため,上記のようにマイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部として利用される場合はあり,その意味において,フィルターを具備し,かつ,浄化された空気を室内に放出する機能を有する空気浄化装置の技術者が,マイナスイオン発生器に関する技術を参照することはあるが,その逆はないのである。
(3)阻害要因があること仮に,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することを動機付けられたとしても,以下のとおり,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することには阻害要因があるというべきである。
本願補正発明の課題は,従来のマイナスイオン発生器が設置型であり,構造の変化に乏しかったため,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供することにある(本件特許出願に係る明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0003】,【0004】)のに対して,引用発明は,その構造において,ハウジング並びにフィルター及び引込口・出口を必要とするものであり,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供するという課題の解決には相反するものである。
したがって,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することには阻害要因があるというべきである。
例えば,フィルターについて検討すると,引用発明は,平面的なフィルターを使用しているため,ハウジングの形状が制約される。すなわち,平面のフィルターを3次元Rにすることができないため,フィルターを収納するハウジングの形状も3次元Rにすることができないという制約が生じる。また,大きさという観点で考えた場合,引用発明は,空気を浄化するための部材に加え,フィルター及び浄化された空気の取込み・放出のための部材が必須となることから,小型化のためには,空気を浄化するための部材の大きさに加え,フィルター及び浄化された空気の取込み・放出のための部材の大きさという制約が加わる。
これに対し,本願補正発明は,フィルターがないため,フィルターの形状の制約に伴うハウジングの形状の制約は生じない上,大きさという観点で考えた場合,フィルター及び浄化された空気の取込み・放出のための部材の大きさという制約がないのである。
(4)引用発明が技術的誤りを含むものであることさらに,引用発明が,どのようにして「放出」を行っているかは全く不明であり,その意味で,引用発明は技術的な誤りを含んでいるということができるから,本願補正発明の課題に接した当業者が,このような技術的な誤りを含む引用発明を参照することはあり得ないというべきである。
(5)以上によると,本願補正発明の課題に直面した当業者が,引用発明を参照することを前提として相違点3について判断した審決は誤りであるというべきである。
第4被告の反論の要点1取消事由1(相違点3について認定の誤り)に対して原告は,審決が相違点3の認定に関し,引用発明について「発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない」としたことは誤りであり,相違点3は引用発明を誤って認定したことに基づいて認定されたものである旨主張する。
しかしながら,審決が本願補正発明と引用発明の相違点3の認定において,「後者では,発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない点」としたのは,引用例には,発生した陰イオンが出口から放出されているとも,放出されていないとも記載されていないため,どちらとも断定することができなかったからであり,この認定が誤りであるということはない。
また,出口から陰イオンが放出されているのであれば,この点は一致点となるから,相違点3として認定する必要がないものであるが,引用発明では発生した陰イオンが出口から放出されない可能性があるから,審決で相違点3として認定したのであり,審決の相違点3の判断では,引用発明の出口から陰イオンが放出されるようにすることは周知技術に基いて当業者であれば容易に想到し得ることであると判断しているように,審決では,引用発明の出口から陰イオンが放出されていない場合を想定して判断しているのであるから,原告が主張するように,引用発明においては,発生した陰イオンを出口から放出することがなかったとしても,そのことが審決の結論に影響するものではない。
したがって,原告の主張は失当であり,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点の看過)に対して(1)原告は,本願補正発明は,その実質はマイナスイオン発生器であるから,審決において引用発明の「空気浄化装置(73)」が本願補正発明の「空気清浄装置」に相当するとした点は誤りであり,相違点とすべきであったという主張をしているものと理解することができるが,本願補正発明は,「マイナスイオン発生器」を備えた「空気清浄装置」であり,一方引用発明も「陰イオン発生機」を備えた「空気浄化装置」であるから,両者は共にマイナスイオン発生器を備えた空気清浄装置である点で一致しており,審決で,引用発明の「空気浄化装置(73)」が本願補正発明の「空気清浄装置」に相当するとした点に誤りはない。
また,本願明細書の発明の詳細な説明には,「このマイナスイオンが空気を清浄する原理は,人体によくないと言われているプラスイオン(ミクロンオーダーの粉塵,ダニの死骸,黴,バクテリア,花粉など)に付着してマイナス化し,空気より重くなって床に落下し,プラスイオン化された床に吸着することにより,空気を清浄化する。そして,床に落ちたものは,掃除機で吸い取られる。」(段落【0015】)と記載されており,本願補正発明はマイナスイオンが粉塵等に付着して,空気より重くなって床に落下させることにより空気を清浄化するものであるから,空気清浄機能を有する空気清浄装置といえるものである。そして,床に落下した粉塵等は床に吸着されるのであるから,粉塵等は床に集められることになり,実質的に集塵されるものである。
一方,引用発明も,原告が主張しているように,マイナスイオンを発生させて空気を浄化すると共に,集塵するものであり,本願補正発明と引用発明とは空気の浄化及び集塵する場所が装置の内外の違いはあるものの,同様の空気清浄機能を有する装置である。したがって,この点からみても,審決において引用発明の「空気浄化装置(73)」が本願補正発明の「空気清浄装置」に相当するとした点に誤りはなく,審決が相違点を看過したということはない。
(2)また,原告は,空気浄化装置の技術の流れと,マイナスイオン発生器の技術の流れとは,全く異なるのであり,マイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部を構成する場合があるという点を除き,全く接点はない旨主張しているが,例えば審決において周知技術として例示した,特開平11-191478号公報(甲第21号証参照)の段落【0001】には,「本発明は,空気清浄機に搭載されるイオン発生装置,特にマイナスイオン発生装置に関する。」と記載されており,同じく審決において周知技術として例示した,特開平10-261477号公報(甲第22号証参照)の段落【0002】には「従来より負イオン発生装置として,イオン式空気清浄装置が知られている。」と記載されており,同じく審決において周知技術として例示した,登録実用新案第3045395号公報(甲第24号証参照)の段落【0004】には「空気清浄機(1)にマイナスイオン生成器(3)を取り付ける。」と記載されているのであるから,空気浄化装置とマイナスイオン発生器が従来から関連があったことは明らかであり,空気浄化装置とマイナスイオン発生器が,全く接点がないということはないから,原告の主張は失当である。
(3)以上のとおり,原告の主張は失当であり,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(相違点3についての判断の誤り)に対して(1)原告は,審決の相違点3について判断は誤りであると主張するが,以下のとおり,原告の主張は失当である。
(2)「動機付けがないこと」について原告は,本願補正発明は,浄化された空気を室内に放出する機能を必須としないものであって,浄化された空気を室内に放出する機能を必須とする空気浄化装置である引用発明とは,その基本的発想が全く異なる旨主張するとともに,両者の技術の流れは全く異なるから,関連する技術分野とはいえない旨主張しているが,上記2のとおり,空気浄化装置とマイナスイオン発生器が従来から関連があったのは明らかであり,何の接点もないということはない。また,本願補正発明と引用発明とは,マイナスイオンを発生させて空気を浄化すると共に,集塵する点で同様の空気清浄機能を有する装置であり,両者の基本的発想が全く異なるということもない。
また,原告は,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することはない旨の主張もしているが,本願明細書の発明の詳細な説明には,「従来の空気清浄装置は,上述したように設置型であるため,部屋の上方からマイナスイオン,または,マイナスイオンおよびオゾンを拡散させることができなかったし,極めて変化に乏しい構成であった。この発明は,上記したように不都合を解消するためになされたもので,被給電部を給電部に装着するだけでどのような形態でも使用でき,部屋の上方からマイナスイオン,または,マイナスイオンおよびオゾンを拡散させることのできる変化に富んだ空気清浄装置を提供するものである。」(段落【0003】,【0004】)と記載されているように,本願補正発明の課題は,従来の設置型の空気清浄装置が有する問題を解決することであり,その課題を解決するための手段として,被給電部を給電部に装着する構成を採用したものである。
一方,引用発明は,被給電部を給電部に装着するという設置型ではない構成を有しており,引用例には,「本明細書に示された空気浄化装置(73)は,電源電極(11″)を従来の電源ソケットに差し込むことによって,便利に設けることができ,その構造は放電ランプの大きさほどの小さな大きさで製造でき,単純に作ることができる。」(審決が摘記した引用例の記載事項「オ.」参照)という有利な効果も記載されているのであるから,従来の設置型の空気清浄装置が有する問題を解決しようとする当業者であれば,このような引用発明の被給電部の構成を参照すると考える方が自然であり,この点についての原告の主張は失当である。
また,審決では,本願補正発明と引用発明との相違する点は,相違点1〜3として認定した上で,各相違点について技術内容を具体的に検討して,容易に想到し得ることであると判断したのであるから,本願補正発明の進歩性の判断に,審決の結論に影響を及ぼすような違法があるということもない。
(3)「阻害要因があること」について原告は,引用発明は,ハウジング並びにフィルター及び引込口・出口を必要とするものであるから,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供するという課題の解決には相反するものである旨の主張をしているが,本願の発明の詳細な説明には,参考例や実施例として,マイナスイオン発生器に引込口(図4,図6のスリット状の開口2a,図8の開口3c,図15のスリット状の開口3g等:甲第2号証参照),及び出口(図4,図6,図8,図15の吹き出し口3a等:甲第2号証参照)をハウジング(ケース1:甲第2号証参照)に設けることが記載されているのであるから,引用発明において,ハウジング並びに引込口・出口が存在することが,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供するという課題の解決に相反するものであるということはない。
また,原告の主張する「構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供する」とは,本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0003】,【0004】)に記載されているような,従来の設置型の空気清浄装置が有する問題を解決するために,本願の発明の詳細な説明の段落【0004】に記載されているような被給電部を給電部に装着する構成を採用することを意味するものと考えられるところ,被給電部を給電部に装着する構成を採用することと,ハウジング並びにフィルター及び引込口・出口が存在することとは何の関係もなく,これらの存在が課題を解決に相反するものであるということはない。
また,上記(2)のとおり,従来の設置型の空気清浄装置が有する問題という課題に直面した当業者であれば,引用発明の被給電部の構成を参照すると考える方が自然であるから,引用発明と本願補正発明とを対比して,本願補正発明の進歩性を検討することに阻害要因があるということはない。
さらに,引用例には「本明細書に示された空気浄化装置(73)は,電源電極(11″)を従来の電源ソケットに差し込むことによって,便利に設けることができ,その構造は放電ランプの大きさほどの小さな大きさで製造でき,単純に作ることができる。」(審決が摘記した引用例の記載事項「オ.」参照)と,その構造を小さな大きさで単純に作ることができることが記載されているのであるから,当業者であれば,多少大きさを大きくしたり,多少構造を複雑にしたりする等,必要に応じてその構造に設計変更を加える程度のことは適宜なし得ることであるから,引用発明は,構造上の自由度の高いものといえるものでもある。
(4)「引用発明が技術的誤りを含むものであること」について原告は,引用発明がどのようにして「放出」を行っているのか全く不明であり,引用発明は技術的な誤りを含むものであるから当業者が技術的な誤りを含む引用発明を参照することはあり得ない旨主張しているが,引用例には,「コロナ放電によるエネルギーは浄化された空気が4つの孔(71)に入り込んで出口空気フィルタ(69,69′)と第2グリール(70)の出口(74)を通して外部へ出るようにする。」(審決が摘記した引用例の摘記事項「オ.」参照)とコロナ放電によるエネルギーにより放出を行うことが記載されているのであるから,どのようにして放出を行っているのか全く不明であるということはない。
また,審決が相違点1についての判断で述べたように,引用例にはランプから放出された熱の作用により空気対流が起こることが記載されており,このようなランプの熱による空気対流を利用して「放出」を行うことも適宜なし得る設計的事項にすぎない。
したがって,原告の引用発明は技術的な誤りを含むものであるとの主張は根拠がなく,原告の引用発明を参照する動機付けの阻害要因があるとの主張は失当である。
(5)以上のとおり,原告の主張はいずれも失当であり,取消事由3は理由がない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(相違点3についての認定の誤り)について原告は,「審決は,本願補正発明と引用発明の相違点3として,『発生したマイナスイオンに関し,前者では,吹き出し口から放出するのに対し,後者では発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない』と認定しているが,引用発明においては,発生した陰イオンを出口74から放出することはないのであって,審決による相違点3は,この点について引用発明を誤って認定したことに基づいて認定されたものであり,審決は誤りである。」と主張する。
そこで検討するに,原告は,審決が引用発明につき「発生した陰イオンが出口74から放出されるか否か明らかではない」と認定したのは誤りであり,引用発明においては「発生した陰イオンを出口74から放出することはできない」と認定すべきであると主張するところ,仮に,このように認定することが正しいとしても,これを本願補正発明の「発生したマイナスイオンを吹き出し口から放出する」構成と対比すると,本願補正発明においては「発生したマイナスイオンを吹き出し口から放出する」構成を採るのに対し,引用発明においては「発生した陰イオンを出口74から放出することができない」結果,本願補正発明の上記構成の有無が両発明の相違点,すなわち審決が認定した相違点3の存在に帰着するのであるから,結局,原告の上記主張は審決がした相違点3の認定に何らかの影響を及ぼすものではなく,主張自体において失当であるというべきである。
したがって,取消事由1の主張は失当である(なお,審決による相違点3についての判断の適否については,取消事由3において検討する。)。
2取消事由2(相違点の看過)について(1)原告は,空気浄化装置の技術の流れとマイナスイオン発生器の技術の流れとは,全く異なるのであり,マイナスイオン発生器が空気浄化装置の一部を構成する場合があるという点を除き,全く接点はないことからも,両者が同一の技術分野に属さないことは明らかであるから,このような技術分野の相違を相違点として認定しなかった審決は,相違点を看過したものである旨主張する。
(2)本件特許出願の明細書(以下「本願明細書」という。)には,次の記載がある。
「この発明は,マイナスイオンを発生させて拡散させ,さらに,殺菌作用および脱臭作用を有するオゾンも発生させて拡散し,さらに,照明灯を備えた空気清浄装置に関するものである。」(段落【0001】)「従来の空気清浄装置は,上述したように,設置型であるため,部屋の上方からマイナスイオン,または,マイナスイオンおよびオゾンを拡散させることができなかったし,極めて変化に乏しい構成であった。
この発明は,上記したような不都合を解消するためになされたもので,被給電部を給電部に装着するだけでどのような形態でも使用でき,部屋の上方からマイナスイオン,または,マイナスイオンおよびオゾンを拡散させることのできる変化に富んだ空気清浄装置を提供するものである。」(段落【0003】,【0004】)「この発明によれば,給電部に装着される被給電部を設けたので,照明用のソケットなどに装着することにより,部屋などの上方からマイナスイオン,オゾンを拡散させ,室内などを清浄化するとともに,殺菌したり,脱臭することができる。
そして,照明灯を配設したので,室内を照明することができる。
さらに,ケースを電球型として吊り下げ型としたので,床,机などに設置する設置型と異なった斬新で変化に富んだ空気清浄装置を提供することができる。・・・」(段落【0006】)「次に,動作について説明する。まず,昇圧トランス12から第1電極23へ直流の負の高電圧を供給すると,各第1電極23の先端前方の大気がイオン化されてマイナスイオンが発生し,各第1電極23の前方の大気が帯電したクーロン力により,マイナスイオンが各第1電極23側から対応する吹き出し口3aを通過するように発生する。そして,マイナスイオンが吹き出し口3aの第1電極23側から他方の側へ発生することにより,マイナスイオンが拡散するので,このマイナスイオンが空気清浄装置Aを配設した室内の空気を清浄する。」(段落【0013】)「このマイナスイオンが空気を清浄する原理は,人体によくないと言われているプラスイオン(ミクロンオーダーの粉塵,ダニの死骸,黴,バクテリア,花粉など)に付着してマイナス化し,空気より重くなって床に落下し,プラスイオン化された床に吸着することにより,空気を清浄化する。
そして床に落ちたものは,掃除機で吸い取られる。・・・」(段落【0015】)「上述したように,この第1参考例によれば,ケース1を電球型とするとともに,ソケットに直接装着される口金部4を設けたので,照明用のソケットなどに装着することにより,部屋などの上方からマイナスイオンを拡散させ,室内の空気を清浄化させることができる。」(段落【0017】)これらの記載によると,本願補正発明は,装置内に設けられたマイナスイオン発生器によってマイナスイオンを発生させ,これを室内などに拡散させて,空気を清浄することを目的とするものであると認められる。
他方,引用例には,次の記載がある。
「技術分野本発明は空気浄化装置に関するもので,更に具体的には放電ランプのような従来の照明装置と共に一つのユニットに統合されて室内空気を浄化するために簡便に使用することができる空気浄化装置に関するものである。
背景技術一般的に,家庭や事務室の室内空気を浄化させるに使用される空気浄化装置は,不快な臭いを生じる各種のビールス,バクテリア,煙草の煙等を除去させることによって,快適な室内環境を提供するものとして知られている。このような空気浄化装置を使用すれば,室内環境が快適になり,人体に適したものとなる。空気浄化は,浄化装置内に装着されたイオン発生機により発生された陰イオンの作用によりなされる。・・・」(5頁3〜13行)「本発明のまた他の特徴によると,電源電圧により給電される空気浄化装置が提供されるが,・・・本特徴に従えば,前記少なくとも一つの放電極から放出された陰イオンの作用により,前記引込口を通過した空気が前記ハウジング内の前記少なくとも一つの電極周囲で浄化されることになる。また,浄化された空気は前記少なくとも一つの通気口と前記ハウジングの出口を介して外部へ抜け出すこととなる。
本発明によると,陰イオン発生機により発生される陰イオンと照明ランプの相互作用により空気浄化が行われるようになる。・・・」(7頁4〜18行)「ランプ(12)が点灯される時,ランプ(12)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(30,30’)の周りに空気対流が自然に起こる。従って,空気が貫通孔(32)と第1絶縁部材(37a)の貫通孔(38)で構成された引込口へ入り込まれるようになる。引込口へ入ってくる空気は陰イオン発生機(30.30’)内で浄化されるが,イオン集塵パネル(31)では放電極(35)から発生された多い陰イオンが集塵される。放電極(35)から放出された陰イオンは青い色調を有しているため,貫通孔(32)や貫通孔(38)を介して外部からみることができる。従って,使用者は陰イオン発生機(30)の動作状態を容易に確認することができる。浄化された空気は引込口としても作用する出口を通して出ることになる。」(13頁11〜20行)これらの記載によると,引用例に記載された発明は,装置内に設けられたイオン発生機により陰イオン(マイナスイオン)を発生させることにより,装置内に取り込まれた空気を浄化し,浄化した空気を装置外に放出させることにより,空気を浄化することを目的とする発明であると認められ,引用発明も同様の目的を有する発明であると認められる。
(3)上記(2)によると,本願補正発明及び引用発明は,いずれもマイナスイオン(陰イオン)を発生させるマイナスイオン発生器(イオン発生機)により空気を浄化(清浄化)することを目的とする技術であって,マイナスイオンを装置の外部に放出し,これによって空気を浄化するか,装置内において清浄した空気を外部へ放出するかの点において違いがあるが,その技術分野において何ら相違はない。
したがって,本願補正発明及び引用発明は,共にマイナスイオンを発生する空気清浄装置であるから,この点を両発明の一致点と認定した審決に誤りはない。
なお,原告は,引用発明は濾材(フィルター)を具備する「機械式空気清浄機(空気浄化装置)」であるのに対し,本願補正発明は「マイナスイオン発生器」である旨主張するところ,この主張は審決による引用発明の認定の誤りを指摘し,ひいては一致点の誤認による相違点の看過を主張するものと解することができる。
しかしながら,引用例には,フィルターに関して,「【特許請求の範囲】」において「10.前記イオン集塵手段及び前記出口の間に配置されて化学汚染物資を吸収するための出口用空気フィルタを更に含むことを特徴とする請求項9記載の空気浄化装置。」との記載があり,「この空気浄化装置の断面を示した図11を参照して装置(73)をより詳細に説明する。引込口空気フィルタ(65),4つの放電極(66,66’)・・・,連結棒(67),イオン集塵パネル(68),出口空気フィルタ(69,69’)及び印刷回路基板(72)がハウジング(61,61’)内に含まれている。円筒状の引込口空気フィルタ(65)は,第1グリール(63)の内部に同心円の形態に配置されるが,フィルタ(65)とグリール(63)との間の間隔が一定に配置されている。」(15頁5〜12行),「ハウジング(61’)の円筒状の側壁(61”)により支持される出口空気フィルタ(69,69’)に化学的汚染物資を吸収するようにするために炭素で作ることができる。・・・更に,この装置(73)は容易に3つの部分,即ち,ハウジング(61),ハウジング(61’)及び第1グリール(63)に分けることができ,出口空気フィルタ(69,69’)又は印刷回路基板(72)の電機部品を便利に掃除又は取替えることができる。」(16頁1〜11行)との記載が見られるのみであり,このような「フィルタ」がマイナスイオンによる空気の浄化に関連するものでないことは明らかであるから,審決が引用例から「陰イオンを発生する空気浄化装置」の発明を認定したことに誤りはないのであって,原告の主張を採用することはできない。
また,原告は,機械式空気清浄機(空気浄化装置)とマイナスイオン発生器の技術の流れが異なることを主張するが,引用発明からはマイナスイオンの作用により空気を浄化する空気浄化装置の発明を認定することができることは上記のとおりであるから,原告の主張は前提を誤るものであり,失当である。
さらに,原告は,引用発明が集塵機能を有するのに対して,本願補正発明は集塵機能を具備しないものであるから,両発明の技術分野が異なる旨主張するところ,両発明の技術分野が異なることについては上記のとおりであるが,この主張は集塵機能の具備の有無を相違点として認定すべきであるとの主張とも解される。
しかしながら,上記のとおり,両発明において空気を浄化する仕組みは同様であり,上記(2)において認定した本願明細書の記載によると,引用発明における集塵機能は,本願補正発明において,「床に落ちたものは,掃除機で吸い取られる。」とされるところと同様の機能であると認められる。そうすると,引用発明及び本願補正発明において空気浄化と集塵は別の機能と理解することができるものであり,審決が引用例に記載された空気浄化の仕組みに着目して引用発明を認定し,これと本願補正発明との対比を行ったことには何ら誤りはないというべきである。
(4)以上によると,原告の主張を採用することはできないから,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(相違点3についての判断の誤り)について(1)原告は,審決による相違点3の判断に関し,引用発明と本願補正発明の技術者層が異なり,技術分野が異なることを前提として,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することはないから,動機付けがないと主張し,仮に動機付けがあるとしても,本願補正発明の課題は,従来のマイナスイオン発生器が設置型であり,構造の変化に乏しかったため,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供することにあるのに対して,引用発明は,その構造において,ハウジング並びにフィルター及び引込口・出口を必要とするものであり,構造上の自由度の高いマイナスイオン発生器を提供するという課題の解決には相反するものであるから,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用発明を参照することには阻害要因があるというべきであると主張する。
(2)原告の主張のうち,動機付けの欠如に関する主張については,引用発明と本願補正発明の技術分野が異なることを前提とするものであるところ,この主張が誤りであることは上記2のとおりであるから,原告の主張は前提を誤るものであり,失当である。
そこで,原告の主張のうち,阻害要因をいうものについて検討する。
本願明細書には,上記2(2)のとおりの記載があるところ,この記載によると,本願補正発明の課題は,従来の「設置型」の空気清浄装置が有する問題を解決することにあるところ,その問題とは,具体的には,「部屋の上方からマイナスイオン,または,マイナスイオンおよびオゾンを拡散させることができなかったし,極めて変化に乏しい構成であった」(段落【0003】)ことであると認められる。
そして,本願補正発明は,そのような課題を解決する手段として,被給電部を給電部に装着する構成を採用するとともに,照明灯を配設して,電球型とすることにより,「給電部に装着される被給電部を設けたので,照明用のソケットなどに装着することにより,部屋などの上方からマイナスイオン,オゾンを拡散させ,室内などを清浄化するとともに,殺菌したり,脱臭することができる。そして,照明灯を配設したので,室内を照明することができる。さらに,ケースを電球型として吊り下げ型としたので,床,机などに設置する設置型と異なった斬新で変化に富んだ空気清浄装置を提供することができる。」(段落【0006】)という効果を奏するようにしたものであるところ,引用例には,これと同様に被給電部である「電極(11”)」と照明である「ランプ(12)」を備えた電球型の空気浄化装置が記載されているのである。
そうすると,本願補正発明の課題に直面した当業者が引用例を参照するについて何ら障害はないのであり,その引用例中に記載された引用発明を参照することについても,何ら阻害要因はないものというべきであるから,原告の主張を採用することはできない。
なお,原告の主張が,上記において認定した点以外の課題を主張するものであるとすれば,それは明細書の記載に基づかない主張であって,失当というべきである。
(3)原告は,引用発明が,どのようにして「放出」を行っているかは全く不明であり,その意味で,引用発明は技術的な誤りを含んでいるということができるから,本願補正発明の課題に接した当業者が,このような技術的な誤りを含む引用発明を参照することはあり得ないと主張するが,引用例には,「4つの放電極(66,66’)は,イオン集塵パネル(68)を(判決注:「イオン集塵パネル(68)に」の誤記であると認められる。)向かって整列されているため,コロナ放電によるエネルギーは浄化された空気が4つの孔(71)に入り込んで出口空気フィルタ(69,69’)と第2グリール(70)の出口(74)を通して外部へ出るようにする。」(15頁25行〜16頁1行)との記載があり,コロナ放電によるエネルギーによりマイナスイオンの「放出」を行うものであることが記載されているというべきであり,「どのようにして『放出』を行っているのか全く不明であ(る)」との原告の主張は誤りである。
(4)以上によると,原告の主張はいずれも採用することができないから,取消事由3は理由がない。
第6結論以上のとおり,審決取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求を棄却すべきであるから,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 浅井憲
裁判官 杜下弘記
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