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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成10ワ16832補償金請求事件 平成12ワ5572補償金請求事件 判例 特許
平成19ネ10056不当利得返還等請求控訴事件 判例 特許
平成15ワ29850職務発明等に対する相当対価等請求事件 判例 特許
平成17ワ1238特許権移転登録手続等請求事件 判例 特許
平成15ワ23981補償金請求事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  職務発明 /  発明行為 /  相当の対価(相当な対価) /  自然法則 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  使用方法 /  新規性 /  共同発明 /  頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  出願公開 /  特許の有効性 /  試行錯誤 /  先行技術 /  遡及 /  補償金請求権 /  着想 /  警告 /  クレーム /  ライセンス /  参酌 /  文言解釈 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  加工 /  交換 /  構成要件 /  差止請求(差止) /  侵害 /  算定方法 /  実施料 /  共同発明者 /  実施権 /  通常実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  対価 /  請求の範囲 /  変更 /  審決確定(審決が確定) /  費用負担 / 
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事件 平成 18年 (ワ) 7529号 職務発明の対価請求事件
原告 X
訴訟代理人弁護 士東野修次中山務 飯島歩 栗山貴行 生沼寿彦
被告マルコ株式会社
訴訟代理人弁護 士奥田孝雄池下利男
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/01/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告は,原告に対し,2253万0142円及びこれに対する平成18年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを20分し,その19を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4この判決の第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,5億円及びこれに対する平成14年2月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,発明の名称を「カップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式「衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダ 」,ーメイド方式」とする2件の特許発明(職務発明)の発明者である原告が,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ )に基づき,被告に承継させた上記各特許発明特許を受ける権利の相 。
当の対価として5億円の支払を求めた事案である。被告は,上記各特許発明発明者は原告のみではなく,被告の他の従業員等も含まれると主張し,上記発,, 。 明の寄与度 被告の貢献度の多寡等 原告主張の相当の対価の額を争っている1争いのない事実当事者()1, , 被告は 体型補整用婦人下着の製造販売等を事業内容とする株式会社であり原告は,平成12年6月から平成18年7月までの間被告に在職した。
職務発明()2原告は,被告に在職中,次の各特許権(以下,順に「本件特許権1「本」,件特許権2」といい,併せて「本件各特許権」という )に係る各発明(以 。
下,順に「本件発明1「本件発明2」といい,併せて「本件各発明」と 」,いう。また,本件各発明に係る特許を,順に「本件特許1「本件特許2」と」,いい,併せて「本件各特許」という )をそれぞれ完成させた。なお,本件各発 。
明の発明者が原告のみであるか,それとも被告の他の従業員等も発明者に含まれるかについては,後記のとおり争いがある。
ア(本件特許権1)登録番号第3652251号出願日平成13年1月16日公開日平成14年7月31日登録日平成17年3月4日発明者X(原告)出願人マルコ株式会社発明の名称カップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式イ(本件特許権2)登録番号第3692084号出願日平成14年2月13日公開日平成15年8月27日登録日平成17年6月24日発明者X(原告)出願人マルコ株式会社発明の名称衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式本件発明1()3本件発明1に係る明細書(以下「本件明細書1」という )の特許請求の範囲
の記載は次のとおりである。
【請求項1】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル【請求項2】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部とを有し,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。
【請求項3】カップ受部の上端縁とカップ部の下端縁にそれぞれ設けた一対の面ファスナーによってカップ受部とカップ部を着脱可能とした請求項1又は2記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。
【請求項4】カップ受部とバック部をかぎホックによって着脱可能とした請求項2又は3記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル。
【請求項5】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。
【請求項6】バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部とを有し,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。
【請求項7】カップ受部の上端縁とカップ部の下端縁にそれぞれ設けた一対の面ファスナーによってカップ受部とカップ部を着脱可能とした請求項5又は6記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。
【請求項8】カップ受部とバック部をかぎホックによって着脱可能とした請求項6又は7記載のカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式。
本件発明2()4本件発明2に係る明細書(以下「本件明細書2」という )の特許請求の範囲
の記載は次のとおりである。
【請求項1】身頃のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連絡部材を介して着脱自在に止着可能でヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛りが記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項2】前記ヒップ部の切り込みの内端位置は,ヒップトップの高さよりも下としたことを特徴とする請求項1記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項3】身頃のウエスト部にウエストサイズを調節可能なウエスト計測手段を設けた請求項1又は2記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該ウエスト計測手段は,前記ウエスト部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能でウエストサイズ調整可能とされ,前記一片の他片との連結位置にウエストサイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項4】身頃の脚囲部にその下端の脚口サイズを調節可能な脚口計測手段を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該脚口計測手段は,前記脚囲部が脚口から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で脚口サイズ調整可能とされ,前記一片の他片との連結位置に脚口サイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項5】前記脚口計測手段は,前記ヒップカップ計測手段と連続して形成されたことを特徴とする請求項4記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項6】身頃の胴部に胴部サイズを調節可能な胴部計測手段を設けた請求項1〜5のいずれかに記載のオーダーメイド用ボトム計測サンプルで,該胴部計測手段は,前記胴部がその上端から略縦方向に切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能で胴部サイズ調整可能とされ,前記一片の他片との連結位置に胴部サイズ計測用の目盛が記されたことを特徴とするオーダーメイド用ボトム計測サンプル。
【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載のボトム計測サンプルに,カップ部を有するトップが付設されたオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項8】前記トップは,前記ボトム計測サンプルに着脱可能に付設された請求項7記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項9】前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項10】前記トップは,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部と,一つのカップ受部において寸法の異なる複数のバック部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部及びバック部を着脱可能に設けてなる請求項7又は8記載のオーダーメイド用衣類計測サンプル。
【請求項11】前記衣装が体型補正機能を有する衣類である請求項1〜10のいずれかに記載のオーダーメイド用計測サンプル。
【請求項12】ヒップサイズを変えた請求項1〜11のいずれかに記載の計測サンプルを複数用意し,着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択して着用させ,カスタムサイズの計測をする衣類のオーダーメイド方式。
特許を受ける権利承継()5本件各発明の特許を受ける権利は,発明者(その範囲については,前記のとおり争いがある )から被告に譲渡された。 。
なお,本件各発明が完成した当時,被告は,従業者による職務発明に関する勤務規則その他の定めを置いていなかった。また,原告と被告は,職務発明承継及び対価の額等に関する契約を締結していなかった。
本件各発明の実施とHMS商品の販売()6被告は,?@平成13年6月,本件発明1の実施品であるブラジャー用の計測サンプル(以下「HMSメジャー(ブラジャー 」という )によって寸 )。
法を計測して製作したオーダーメイドのブラジャー(以下「HMS商品(ブラジャー 」という )の販売を開始し,?A平成14年3月,本件発明2の )。
(「()」 実施品であるガードル用の計測サンプル 以下 HMSメジャー ガードルという )によって寸法を計測して製作したオーダーメイドのガードル(以 。
下「HMS商品(ガードル 」という )の販売を開始し,?B平成15年1 )。
2月,本件発明2の実施品であるボディスーツ用の計測サンプルによって寸法を計測して製作したオーダーメイドのボディスーツ 以下 HMS商品 ボ (「(ディスーツ 」という )の販売を開始した(以下,ブラジャー,ガードル )。
及びボディスーツの区別を要しない場合は,本件各発明の実施品を単に「HMSメジャー」といい,HMSメジャーによって寸法を計測して製作した商品を「HMS商品」という。。)被告は,平成16年9月ころ,販売方針を転換して販売の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,平成20年2月,HMS商品の製造販売を中止した。
無効審判請求()7被告の元専務取締役Aは,平成19年7月25日,本件各特許について特許無効審判の請求をした。
特許庁は,被告に対して期間を定めて答弁を求めたが,被告は期間を経過しても応答せず,口頭審理にも出頭しなかった。
原告は,上記各無効審判請求事件において被請求人側に参加し,本件各特許の有効性について書面で意見を述べるなどした。
上記各無効審判請求事件のその後の経緯は次のとおりである。
ア本件特許1について特許庁は,平成20年5月8日,本件発明1はその特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであるとして 本件特許1を無効とする旨の審決をした 乙 , (123 。)これに対し,原告は,平成20年6月17日,知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求めて審決取消訴訟を提起した(平成20年(行ケ)第10229号 。)イ本件特許2について特許庁は,平成20年5月8日,本件発明2は,その特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえないとして,本件特許2を無効とすべき旨の無効審判請求は成り立たない旨の審決をした(甲93 。)これに対し,Aは,知的財産高等裁判所に上記審決の取消しを求めて審決取消訴訟を提起した(平成20年(行ケ)第10232号 。)2争点本件の争点は,本件各特許を受ける権利承継に対する相当の対価の額であり,具体的には次のとおりである。
本件発明1の発明者は原告のみか。
()1本件発明2の発明者は原告のみか。 ()2HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合 ()3独占の利益が発生する時期 ()4HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法 ()5本件各特許の無効理由の存否とその相当の対価の額への影響の有無・程度 ()6仮想実施料率 ()7被告の貢献 ()8被告における原告の処遇 ()9第3争点に関する当事者の主張以下においては,まず,当事者の主張の概要を示し,その後各争点ごとの当事者の主張の詳細を摘示する。
1原告の主張の概要本件各発明の発明者はいずれも原告のみである。
()1そして,HMS商品の売上実績は主として本件各発明の競争優位性による ()2ものであって,被告の販売促進活動や多色展開は,売上実績との関係では従たる要因にすぎないから,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は2分の1を下らない。
また,本件各発明のように使用者が発明を自己実施している場合は,特許()3出願後自己実施を開始した時点又は遅くとも特許出願中であることを対外的に公表した時点において独占の利益が発生しているものというべきであるから,本件発明1についてはHMS商品(ブラジャー)の販売を開始した平成13年6月から,本件発明2についてはHMS商品(ガードル)の販売を開始した平成14年3月から,それぞれ独占の利益が発生したものとして,上記各時点以降の売上高を計上すべきである。
被告は,平成16年9月ころからHMS商品の販売を大幅に抑制した。H()4MS商品には被告の主張するような根本的欠陥なるものはなく,上記販売抑制は経済合理性に反する不合理な販売抑制である。したがって,平成16年9月1日以降の販売抑制後の売上高しか計上しないのは相当でなく,本件各発明が正常に実施されていた平成13年9月1日から平成16年8月31日までの期間の売上実績をもとに1年当たりの平均売上高を求め,これに本件特許1の有効期間(本件特許2の有効期間よりも先に到来する )である平 。
成33年1月までの残年数16.3年を乗じたものを計上すべきである。
被告は,本件各特許には無効理由があるから独占の利益を観念することは()5できないか又は仮にこれを観念し得るとしてもライセンス料率は極めて低率にしかなり得ない旨主張する。しかし,本件各特許に無効理由は存在しないから,被告の上記主張は相当の対価の算定上何らの影響もなく,本件各発明の仮装実施料率は,上記超過売上額の5%を下らず,同額が本件各発明を独占的に実施することにより被告の受けるべき利益に相当する。
上記利益を得ることについての被告の貢献度は30%を上回らない。
()6被告は,本件各発明の対価として原告を取締役に昇進させたものであるか ()7ら取締役就任に伴う報酬の増額分を被告の貢献として考慮すべきである旨主張するが,取締役の報酬は取締役の職務執行の対価であるから,その中に職務発明対価を観念することはできない。
以上をもとに本件各発明を被告に承継させたことによる相当の対価の額を()8計算すると,45億5832万9777円となる。
(計算式)(404億8849万5435円+404億8849万5435円÷3年×16.3年)×1/2×5%×70%=45億5832万9777円2被告の主張の概要本件発明1の発明者は原告のみではなく,広瀬工業株式会社(以下「広瀬()1」。) ()。 工業 というのB及び被告の他の従業員15名も含まれる 合計17名本件発明2の発明者も原告のみではなく,B及び被告の他の従業員3名も含まれる(合計5名 。)本件各発明は単なる計測器に関する発明であり,HMS商品そのものの発()2明ではなく,HMSメジャーでの計測値や身生地がそのままHMS商品の製造に用いられているわけではない。HMS商品の売上実績は,多色展開等,被告による新商品の開発・発売,レディメイドの新商品の発売抑制,HMS商品の販売促進活動による部分が大きい。以上より,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は,10%以下である。
本件各発明のような自己実施事例においては,使用者が発明を排他的独占()3的に実施することができるようになった時期すなわち特許登録時から独占の利益が発生するというべきである。したがって,本件各発明について,いずれも特許登録がされた日である本件発明1については平成17年3月4日以降の,本件発明2については同年6月24日以降の各売上高を計上すべきである。
原告は,被告が平成16年9月以降HMS商品について不合理な販売抑制()4をしたとして,同月以降の売上実績しかHMS商品の売上高に計上しないのは相当でない旨主張する。しかし,被告が平成16年9月以降HMS商品の販売を抑制したのは,HMSメジャーないしHMS商品に根本的欠陥があるからであり,HMS商品がレディメイド商品よりも利益率が低いことから見ても,HMS商品の販売抑制策には合理性がある。また,原告は,本件特許1の有効期間満了まで売上げがあるものとして,その予測売上高をHMS商品の売上高に計上すべきである旨主張するが,HMS商品の販売は平成20年2月をもって終了しており,それ以降は売上げがない。したがって,平成16年9月1日から平成20年2月までの売上高をそのまま計上すべきである。
本件各特許には無効理由がある。職務発明に対する相当の対価は,当該発()5明の独占的実施を保障されている点に由来するものであるから,無効理由がある特許については,当該発明の独占的実施が保障されていない以上,独占の利益ひいては相当の対価を観念することはできない。また,仮に,無効理由がある特許について独占の利益を観念することができるとしても,ライセンス料率は極めて低率にしかなり得ない。また,HMS商品の利益率はレディメイド商品の利益率より低い。以上によれば,本件各発明の仮想実施料率は,超過売上げの1%を上回ることはない。
本件各発明に対する被告の貢献度は98%を下回らない。
()6なお,被告は,本件各発明を被告に承継させた相当の対価として,原告を ()7取締役に昇進させた。したがって,これに伴う原告の報酬の増額分は被告の貢献として考慮すべきである。
以上をもとに下記算定式を用いて相当の対価の額を計算すると,本件発明()8, 。, 1については2217円 本件発明2については6050円となる しかし原告の取締役就任に伴う報酬の増額分を考慮すれば,原告に対する相当の対価は既に支払済みというべきである。
(計算式)・本件発明118億8470万8000円×10%×1%×2%÷17?垂Q217円・本件発明215億1245万3000円×10%×1%×2%÷5?垂U050円3争点( )(本件発明1の発明者は原告のみか )について1 。
【原告の主張】本件発明1の発明者()1本件発明1の発明者は原告のみである。このことは,?@本件発明1の発明に至る経緯,?A本件特許1の特許公報(甲1)に原告のみが発明者として記載されていること,?B被告が作成した「〜マイモード新商品の誕my mode」(),「」 「。」 生 という冊子 甲66 3頁にHMSの考案・開発者 がXさんですと記載されていること,?C本件各特許が登録された際,第二生産部の部員が特許取得について原告を祝う会を自主的に催し原告にプレゼントを贈ったこと 甲(73 ,?D被告のオーダーメイド商品の歴史について最も熟知している者の1人 )であるCが本件発明1の「仕組み」すなわち発明の具体的な構成を考えたのは原告であると証言していること(C証人調書40頁6行目〜14行目)から明らかである。
被告の主張に対する反論()2被告は,本件発明1の発明者は,原告のみではなく,Bのほか,被告の他の従業員も共同発明者であると主張する。そして,証人B,同D及び同Cの証言は被告の上記主張に沿う。しかし,これら証言は,いずれも信用性が乏しいか又はその証言を前提としても原告以外の者が本件発明1の発明者であるとは認められない。その理由は次のとおりである。
アBは本件発明1の発明者でないこと部品の作り置きの提案について(ア)Bは,陳述書及び証人尋問において,あらかじめ部品の作り置きをしておいた上で,それを組み合わせるオーダーメイドをしてはどうかと提案することにより本件各発明の提案をした旨述べる。しかし,?@あらかじめ部品の作り置きをするとの供述内容自体不自然であり,また,?A供述内容に変遷もあり,上記供述は信用できない。
, , すなわち ?@については従来被告において行われていたフルオーダーは採寸の方法が統一されず 採寸結果の記載の仕方が販売員により区々であっ ,た上,採寸表を元にパターンをCADで修正する際に使用するツールの種類や修正の手順についても統一されていなかったことから,同じ採寸表を元に修正をした場合であってもCADのオペレーターごとに区々の修正がなされ,同じ結果とはならなかった。Bも認めているとおり,このような状態では,同一のサイズ・形状のパターンが再び現れる可能性は極めて小さく 頻繁に使用されるパターンを特定することは事実上不可能である B , (証人調書27頁2行目〜16行目,33頁16行目〜21行目 。また,同 )じ形のパーツを使用する顧客が現れる可能性が著しく低いのであるから,仮にパーツを作り置いたとしても,作り置いたパーツが無駄になるおそれが非常に高く,効率的な方法とはならないばかりか,縫製工場にとってはむしろ在庫リスクの原因となるだけで,特段の利益のない手法となる。こうしてみると,Bが被告のフルオーダーのデータに基づいて作り置きを提案するなどということは,縫製工場に勤める者の行動としてあまりに不自然である。
また,?Aについて,Bは,当初提出した陳述書(乙5)では実際に作り置きを行ったと述べておきながら,2通目の陳述書(乙70)では,実際には作り置きはしていなかったと述べるなど,作り置きに関する供述を大きく変遷させている。作り置きの時期についても,当初は 「ガードルだけ ,というんじゃなくて,提案したのはブラジャーのときですから,当然セットといいますか(B証人調書24頁26行目〜25頁1行目)とブラジ 。」ャーとガードルと同時に提案したと証言していながら,その後の原告代理人の「作り置きを提案したのは,10月以降とおっしゃってましたよね 」。
との質問に対しては 「それはブラジャーですね(B証人調書25頁13 , 。」行目)と,ブラジャーとガードルの提案が別の時期であることを前提とした供述をするなど,証言が変遷している。被告ないしBの主張によれば,作り置きの提案は発明行為の核心をなすものであるから,作り置きに関す, , る経緯は 発明者を自称するB自身の記憶に鮮明に残っているはずでありまた,少なくとも,Bの証言に際して最も重要なポイントとして準備がなされ,十分に記憶喚起がなされていたはずである。それにもかかわらず,極めて基本的な事実に関して上述のような変遷を生じたのは,単なる記憶違いで説明することはできず,Bが記憶に反する証言をしていることを示すものである。殊に,原告が第7準備書面において作り置きが現実的に不可能であることを指摘した後にBのかかる供述の変遷が生じたことにかんがみれば,Bは意図的に虚偽の供述をしたところ,原告にその矛盾を指摘, 。 されたため 供述を変遷させざるを得なくなったと考えるのが自然であるCADの指導について(イ)Bは,原告に対してCADの指導をしたとも供述する(乙5 。しかし, )CADに精通した者であれば,マスターパターンについても手書きを経ることなく最初からCADで作図した方が効率的であるが(原告本人調書1頁24行目〜2頁3行目 ,BのCADの技術は 「オリジナルの全く新し ),いパターンですね,これは手書きのほうが操作しやすい」という程度のも, 。, のであり その習熟度は原告と比較にならない程度でしかない 要するにBのCADに関する知識水準は,自らパターンを作り上げるには未だ相当の労力を要するというものであり,基本的には,他人が作成したパターンに多少の加工を加えることができるというレベルにとどまっていたのである。その程度の技能しか有していないBが,CADに関して原告を指導することなど不可能であり,この点でもBの供述には明白な虚偽がある。むしろ,この供述は,Bには,原告のCADに関する技量を知る機会すらなかったことを示すものであり,Bが本件各発明に関与していなかったことを示唆するものである。
Bが本件発明1の発明者でないことを裏付ける証言(ウ),, , Bの証言によれば Bは 被告に対してパーツの作り置きを提案した後次にHMSメジャーに関与したのは,原告からその試作品を見せられた時ということになる(B証人調書9頁24行目〜10頁3行目 。すなわち, )Bは,その証言内容が真実であるとしても,なお,作り置きという抽象的な提案をした後,試作品が出来上がるまでの開発行為には関与していないことを認めているのである。
そもそも作り置きを提案したとの供述が信用できず,Bが作り置きの提案をした事実自体が存在しないことは既に述べたとおりであるが,仮にBが供述するとおり作り置きの提案がなされていたとしても,Bは,作り置きという抽象的な提案をしたにすぎず,本件各発明の具体的な創作行為を何ら行っていないと認められるから 「発明者」には該当しない。 ,また,Bは,本件各発明の問題点として 「実商品とそのメジャーサンプ ,」,, ルが着用という体感面でギャップがある 点を指摘するが このこと自体Bが本件各発明の発明行為に何ら関与していないことを物語っている。すなわち,上記指摘は,上記試着サンプルの素材と実際の商品の素材が異なることから,試着サンプルと実際の商品の体感が異なるという点を指摘するものであるところ,Bの勤務する広瀬工業は,採寸器具の製造会社ではなく縫製工場であるから 莫大な数量のファンデーションの縫製を取り扱っ ,てきているのであり,その際には様々な種類の生地を使った縫製をしているはずである。そして,使用する生地により伸縮率等の差異があるのは当然であるから 広瀬工業は 同一のパターンに基づいて縫製する場合であっ ,,ても,使用する生地による違和感の発生を回避するため,部材の切り抜きの仕方や縫製の仕方を調節することを日常的に行っているはずであり,また,そのためのノウハウも蓄積しているはずである。そのような広瀬工業に勤務するBが,専門分野ではない計測サンプルの発明行為を行っておきながら,上記問題点について,自身の専門分野である素材ごとの特性に応。, じた縫製による回避手段を考慮しないなどということはあり得ない また仮にこの問題が技術的に克服できないような問題であるならば,B自身が最初にそのことに気付いたはずであり,本件各発明に寄与する以前に,その問題点を指摘していたはずである。このように,試着サンプルと実際の商品の着用感の差異を本件各発明の問題点として指摘すること自体が,Bが本件各発明の発明行為に何ら関与していないことを物語っているのである。
以上によれば,Bは本件各発明の発明者ではない。
(エ)イDは本件発明1の発明者でないこと,, ()。, Dは 平成13年1月ころ 第二生産部に異動となった 甲79この点Dは,第二生産部に異動となったのは平成12年12月と供述するが,いずれにせよ,原告が,本件発明1について,弁理士に出願の相談に行った日よりも後に異動してきている。よって,Dが第二生産部に異動してきた時点では本件発明1は完成していたのであるから,Dが本件発明1の発明行為に関与する機会はなかった。
よって,Dが本件発明1の発明者となることはあり得ない。
【被告の主張】本件発明1の発明者()1本件発明1の発明者は,原告のほか,元となるアイデアを出したBや,課題解決のために検討を重ね,本件発明1を具体化していったオーダー研究会の〔, , , , , , , , , , メンバーである被告の他の従業員 E F G H C I J K L MN,O,D,Pら〕も含まれる(合計17名 。)ア本件発明1の技術的思想創作本件発明1の請求項1の技術的思想は,バージスサイズを基本とし,バージスサイズに合わせた複数のカップ受部と1つのバージスサイズに対してカップ高を変えた複数のカップ部とを組み合わせてオーダーメイド用計測サンプルを作るという点にある。本件発明1の請求項2以下の技術的思想は,請求項1の技術的思想を基本とするものである。
そして,以下の諸点を考慮すれば,本件発明1の技術的思想創作については,Bが大きく貢献しており,原告はBに導かれて試作品第1号を作った被告の担当者にすぎないというべきである。
?@バージスサイズがフィット性と関係する点が周知であること〔特開平11-302905号公報( )左欄【0003 (乙1 ,実用新案登録第3072 】)2916号公報(乙2 ,特開2000-64103号公報(乙3。 ) )〕?A専用の測定器具を用いてバージスラインを計測しバージスラインに合ったカップ受部及びカップ部を有するブラジャーを作ることは本件発明1の出願前にワコールが行っていたこと(乙4 。)?Bこれを参考にすべきである旨を提言したのがBであること(乙5 。)?Cワコールでの体験がバージスサイズを基本とするということにつながったこと。
?Dワコールとは違った独自のシステムを作るために繰り返し行われたミーティングの席上で,作り置いてあるパーツ(カップ,前身,後ろ身)を着脱できるように組み合わせてみたらどうかという提案をBが行っていること。
?Eブラジャーの部材がカップ,前身(カップ受部 ,後ろ身であり,それを )組み合わせて縫製することは周知であること(実際にブラジャーの製造はこれらを縫製して行われている。また出願前の公知文献である乙第6号証にも各パーツとその縫製が記載されている。。)?F着脱させるために使用する部材としては,マジックテープ,フック,スナップ等があることは周知であること。
イ本件発明1の発明に至る経緯本件発明1は,当時被告が行っていたオーダーメイド事業の効率化という課題をクリアするために開発されたものである。
すなわち,被告は,平成10年8月に当時の代表取締役会長であったQの, , 発案のもとで これまでの既製品では対応できない顧客への対応を行うべくオーダーメイド事業を立ち上げ,広瀬工業の協力を得ながら進めていた。しかし,オーダーを受けてから納品までに3か月から6か月かかるという納期遅れの問題が起こっており,その解消が被告にとって大きな課題となっていた。
納期遅れが大きな問題となっていた当時,Bが同じようなパターンによるオーダーメイド製品が数多く出ていることに気づき,納期遅れの解消のために「パーツの作り置き」を行っておいて,それを組み合わせれば,納期遅れの解消になるという提案がなされていた(膝下ガードルでは実際に実施された。他方,第二生産部でも納期遅れ対策,採寸ミスの削減,オーダーメイ 。)ド受注の際にサンプルを持参する営業担当者の負担軽減といったことが検討課題となっており,ワコールのデューブルベの体験を元にしてバージスを基準とした計測器具を製作するということが検討課題となっていた。
このような状況の下で,原告がカップ部と前身をホックで接合し,前身と後ろ身を面テープで接合した試作品を,平成12年10月19日の第1回オーダー研究会に持ち込んで(C証人調書9頁 ,その後オーダー研究会におい )て,参加者から種々の意見を聴取しつつ検討を重ね,完成させたものが本件発明1である。
2原告の主張に対する反論()原告の主張は,本件発明1は誰の手も借りず,当時勤務していた被告における課題とは全く関係なく,いわば独力で本件発明1を完成させたというものである。しかし,かかる原告の主張は,当時の被告の状況及び原告が置かれていた立場と合致せず,原告及び原告側の証人であるRの証言自体が通常考えられないことを述べていることからしても,到底あり得ないものである。
アまず,原告は,原告が長年抱いていた問題意識として,?@バージスサイズの重要性,?A体感できるオーダーメイドの必要性の2点を挙げ,このファンデーションに対する考え方が,メジャー・アンド・メイク・オーダーにつながり(甲79・10頁 ,そしてHMSメジャーに結びついていったと述べる )(甲79・5頁 。)しかし,原告本人尋問により,原告が長年抱いていた問題意識のうち,?Aの体感できるオーダーメイドの必要性については,被告のフルオーダーに接して初めて実感したものであることが明らかとなっており(原告自身も尋問の中でかかる事実を認めている。原告本人調書40頁 ,原告が上記?Aの問題 )意識を長年抱いており,それが本件発明1に結実したという経緯の根本部分において,原告の虚偽主張が明白となっている。このように原告が本件発明1(本件発明2についても同様である。甲79・28頁)の開発経緯において虚偽の主張を行うのも,原告が本件発明1を一人で開発したというストーリーを作り出すに当たって,長年の問題意識の解決という開発に至った動機作りをしなければならなかったからにほかならない。
なお,上記?Aの問題意識が被告のフルオーダーに接して初めて実感したものであることからすると,原告主張のメジャー・アンド・メイク・オーダーという考え方は,被告が旭化成株式会社(以下「旭化成」という )のCAD 。
を導入した平成11年4月21日以降に着想されたことになるが,そうすると,次に述べるように,平成11年8月ころに,原告が被告取締役らにその考え方を説明した時まで,僅か3か月余りしかなかったこととなり,そのような短期間の間に,メジャー・アンド・メイク・オーダーという考え方(原告の主張によると 「顧客の体型に合わせながらも,それぞれの好みを取り入 ,」 れた体型補整効果をもたらすことができるようなオーダーメイド製品の実現を意味するようである。甲79・10頁〜11頁)を,具体的に構築し,具体的に説明することが可能であったとは思われない。
イ次に,原告によれば,原告は被告に入社する前からメジャー・アンド・メイク・オーダーという考え方をもっており,それを実現するために被告に入社したとしているが,その考え方を被告に説明したのは,平成11年8月ころに取締役らに1回行っただけであり(原告本人調書63頁 ,しかもその時 )には目指すべき方向性を話しただけであって,具体的なものはイメージしていなかったとしている(原告本人調書4頁 。)併せて,Rも,原告代理人の「メジャー・アンド・メイク・オーダーの提案の件なんですけれども,先ほどの話を聞いていると,ほとんど御記憶にないということなんですが,社内でこの提案を聞かれたほかの人の中で,この提案に関心を示したというふうな方はいらっしゃいましたか 」という質問に 。
対し 「おりませんね 」と答え,続いての「その提案に基づいて,何か会社 ,。
として開発に取り組もうとか,そういうふうな考えをもった人もいなかったという理解でいいですか 」という質問に対し 「納期遅れしか頭になかった 。,もんだから それ聞いてもぴんと来てなかったと思いますと答えている R , 。」(証人調書53頁 。)このRの証言と原告本人の供述を併せて理解すると,原告が本件発明1の試作品であるブラジャーを作ってきてRに見せるまでは,原告のいうメジャー・アンド・メイク・オーダーという考え方は,被告に対し具体的なイメージとして説明されたことは一度もなく,これからの方向性として抽象的に話がされたことが1回あるだけで,被告において関心を示した人間は誰もいなかったということになる。そして,この状況下で,原告は,被告には何ら提案も相談もせずに独自に本件発明1の開発を行い,市販のブラジャーを分解して,フックとホックで接合する形で製作した試作品を平成12年9月ころRに見せたということである(R証人調書22頁,原告本人調書18頁 。)原告及びRの供述又は証言によれば,それまで抽象的に1回しか説明したことのないメジャー・アンド・メイク・オーダーという考え方をブラジャーにおいて具体化させたこの試作品を見せるやいなや,これまでは誰も関心も示さず,全く被告社内において検討されたこともないものであるにもかかわらず,被告においていきなり採用が決定されて,ブラジャーのみでも大々的, , に展開することになり 特許出願するからということで社内にも秘密のままなぜか社外の松田産業株式会社(以下「松田産業」という )にサンプルの製 。
作依頼を行い,出願まで秘密であるとして第二生産部のメンバーには秘密にしたまま,その一方で,原告は出願前からPを使って社内用のマニュアル作成を行っていったというのである。
, 原告及びRはどのように考えて上記のような証言を行ったか不明であるがこのような商品開発及び新商品発売の決定が,上場会社である被告において行われるということは通常あり得ない。
ウまた,特許出願前で本件発明1の内容を会社内においても秘密にしないといけないので,出願前に被告において検討することなどありえないとしながら,出願前にPに本件発明1の内容を説明してマニュアルの作成に従事させているといった明らかな矛盾が生じている。
エ結局,原告は自分だけが本件発明1の発明者であるということを無理矢理こじつけようとしたことから,上記のような通常では考えられないストーリーを作り上げざるを得なかったのである。
4争点( )(本件発明2の発明者は原告のみか )について2 。
【原告の主張】本件発明2の発明者()1本件発明2の発明者は原告のみである。このことは,?@本件発明2の発明に至る経緯,?A本件特許2の特許公報(甲3)に原告のみが発明者として記載されていること,?B本件各特許が登録された際,第二生産部の部員が特許取得について原告を祝う会を自主的に催し原告にプレゼントを贈ったこと(甲73)から明らかである。
被告の主張に対する反論()2被告は,本件発明2の発明者は,原告のみではなく,Bのほか,被告の他の, , 。 従業員も含まれると主張し B 同D及び同Cの証言は被告の上記主張に沿うしかし,これら証言はいずれも信用性が乏しいか又はその証言を前提としても原告以外の者が本件発明2の発明者であるとは認められない。
アBは本件発明2の発明者でないこと, 「」()。 Bは 本件発明2の開発を原告から 丸投げ をされたと供述する 乙5しかし,他方において,Bは,被告が平成13年10月23日に開催したと主張する試着会において試着されたサンプルのグレーディングは被告が行ったと証言し(B証人調書13頁25行目 ,また,おなかの部分に切れ込みを )入れた商品は被告で作成したと証言する(B証人調書14頁20行目〜22行目 。)ところで,本件発明2における最も重要な点は,ヒップカップサイズを調節可能にするために脚口に切り込みを入れ,この部分をスライドさせることによる計測手段を取り付けた点にある。この点は,本件発明2に関する特許無効審判においても,主要な争点として取り上げられ,本件発明2の進歩性の決定的な要因として認定されている(甲93・16頁11行目〜17頁35行目 。), , しかし HMSガードルの開発を丸投げされたと主張するBの陳述書にも同人の証言にも,上記の脚口部分に切り込みを入れるという構成に想到したとの事実や,その具体的な経過は述べられていない。敢えて言うならば,乙第26号証の試着会にBも参加していたことが供述に表れているが,同号証の写真には,ウエスト部分に調節部分が設けられていることがうかがわれる写真はあるものの,脚口部分に調節手段が設けられた試着サンプルに関する写真は存在しないし,それについて検討がなされたことを裏付ける供述もない。これらの点から,Bが,本件発明2の最重要部分である脚口部分に調節部位を設ける構成とするに至る発明経過には一切関与していないことが明らかである。
また,Bが本件発明2に関与していないことは,BがHMSメジャー(ガードル)のパターンとして作成した乙第19号証を,原告が本件発明2の構成を取り入れて作成したY-GLのパターン(甲71)と比較することからも認められる。すなわち,甲第71号証においては,大腿部から上半分のヒップ部にかけて切れ込みが入っているところ,この部分が,本件発明2の最重要箇所である脚口の切り込みによる調節部位である。ところが,乙第19号証においては,大腿部のパーツは切り込みのない1枚のパーツで構成されており,ヒップ部にのみ切り込みが入ったものとなっている。このように,乙第19号証の図面には,本件発明2の最重要箇所の構成が全く表れていない それにもかかわらず Bは 乙第19号証が本件発明2の発明をBが行っ 。,,たことを証明する証拠とするが,これは,B自身,そして,被告も,本件発。 明2の本質的部分を全く理解していないことを如実に表しているものであるしたがって,Bが本件発明2の開発について原告から「丸投げされた」とのBの証言は信用できない。そうすると,Bの「被告が10月23日に開催したと主張する試着会において試着されたサンプルのグレーディングは被告が行った」旨の証言(B証人調書13頁25行目 ,及び「おなかの部分に切 )れ込みを入れた商品は被告で作成した」旨の証言(B証人調書14頁20行目〜22行目)は,本件発明2の重要部分が被告内部で創作されたことを自ら認めているものといえ,むしろ,被告から「丸投げ」されたのは機械的作業にすぎないこと,すなわち,単に縫製作業の委託を受けたにすぎないことが認められる。
以上によれば,Bは本件発明2の発明者とは認められない。
イDは本件発明2の発明者でないことCは,本件発明2の構成要件のうち最も重要な部分である脚口の切り込みについて,Dがそのような話をしたと証言する。他方,Dは,本件発明2について,調整箇所,調整方法,マジックテープの形状を第二生産部のみんなで検討したと証言し(D証人調書17頁18行目〜20行目 ,その中でD自 )身は,Bからもらったパターンに対して修正やグレーディング展開,そのパターンからメジャーへのパターン展開をしたと証言する(同23行目〜26行目 。)まず,Cの上記証言は,Dの証言と矛盾するものであり,信用できない。
次に,Dの証言においても,本件発明2の核心部分であるヒップカップサイズを計測可能とするための検討過程と,脚口に切り込みを入れて調節部分とするという構成に至る具体的な過程は全く明らかになっていない。真に発, , 明者として関与したのであれば 上記の核心部分に最も注力したはずであり記憶にも鮮明に残っているのが通常であるから,この点について具体的な経過を説明できないということはあり得ないことである。したがって,証人Dが,この点について具体的な証言をしていないことは,本件発明2の発明行為を行っていないことを示したものといえる。
また 「第二生産部のみんなで検討した」という点についても,そもそも, ,本件発明2の構成につながるような提案が 「みんなで検討」しているうちに ,自然に出来上がるなどということはあり得ず,必ず誰かが本件発明2につながる具体的な考えを提案しているはずであり,そのような発言をした者自身は,自分がそのような提案をしたことを覚えているはずである。そして,第二生産部のメンバーは被告の現従業員又は元従業員であるから,被告においてその全員から事情を聴取することは可能であり,これにより,具体的な提案をした者を特定することは可能であるはずである。それにもかかわらず,被告において具体的な提案をした者が特定できていないということは,原告以外の者でこのような具体的な提案をした者がいなかったことを示すものである。
さらに,証人Dが行ったと証言するパターンの修正やグレーディング,メジャーへのパターン展開といった作業(D証人調書17頁23行目〜26行目)は,いずれも本件発明2の実施品であるHMSガードルの商品開発に関する作業であり,本件発明2の創作行為ではない。
以上によれば,Dは本件発明2の発明者ではない。
【被告の主張】本件発明2の発明者()1本件発明2の発明者は,原告のほか,B及び被告の他の従業員〔D,P,C〕も含まれる(合計5名 。)ア本件発明2の技術的思想本件発明2の請求項1の技術的思想は,オーダーメイド用ボトム計測サンプルにおいて,?@ヒップカップサイズを調節可能とするため,ヒップ部を股口から略中央に向かって分割し,?Aその部分を連結部材を介して着脱自在とした上で,?B連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛りを記しているという点にある。請求項2ないし6の技術的思想は,請求項1の技術的思想を基本とするものである。
本件発明2の請求項7の技術的思想は,請求項1ないし6のいずれかに記載されたボトム計測サンプルに,カップ部を有するトップを付設する点にある。請求項8ないし10の技術的思想は,請求項7の技術的思想を基本とするものである。
本件発明2の請求項11の技術的思想は,請求項1ないし10のいずれかに記載されたオーダーメイド用計測サンプルにおいて,衣類が体型補正機能を有する衣類とする点にある。
本件発明2の請求項12の技術的思想は,ヒップサイズを変えた請求項1ないし11のいずれかに記載された計測サンプルを用いて,着用者のヒップサイズに応じて計測サンプルを選択して着用させることにより,カスタムサイズの計測を行う衣類のオーダーメイド方式という点にある。
そして,以下の諸点を考慮すれば,本件発明2の請求項1ないし6の技術的思想創作したものは,被告商品企画部に所属していたD,Pであり,原告はそれに関与していたにすぎないというべきである。
?@HMSのガードルの開発は当初広瀬工業に全面的に委ねていたこと。
?ABがHMS用のガードルのパターンを作成したこと。
?B出来上がったガードルについて,ウエスト部,ヒップカップ部を調節可能とするために切り込みを入れる箇所については,原告,広瀬工業及び被告商品企画部員であったD,Pにとって共通の認識が存在していたこと。
?C連結部材としてマジックテープを用いることについても共通認識が存在していたこと。
?D市場にはそのまま連結部材として使えるマジックテープがなく,実際に使用するための形状や厚みなどの決定に商品企画部で担当していたDやPが試行錯誤したこと。
?E脚口の切り込みについて,ヒップカップの切り込みと連続させればよいという点については被告商品企画部における試行錯誤から出てきたこと。
イ本件発明2の発明に至る経緯HMSブラジャーの開発が一段落した後の平成13年6月ころから,原告とCは,HMSガードルの開発に取り掛かったものの,どのように開発していったらよいかが分からなかった。そこで,原告やDらは,平成13年8月2日に広瀬工業に対して,HMSメジャー(ガードル)の開発を依頼した。
Bは,オーダーメイド事業において判明していた腹部と足口の調整箇所を念頭に置いた上でパターン図を作成した。その後,被告は同パターン図の提供を受け,同パターン図に基づくサンプルを広瀬工業に製作してもらった。被告担当者であった原告,D,P及びCは,そのパターン図を検討し,共通認識であったそのサンプルのウエストの部分に切り込みを入れ,面テープを付(), けて調節可能にしたものを平成13年10月23日に試着会を行い 乙26さらにパターンを改良し,また,これも共通認識であった脚口の切れ込み部位についても検討した上で,ウエスト部と脚口に切れ込みをいれて面テープで調整可能としたサンプルを製作してもらい,平成13年11月19日に試着会を行って開発を進めた。
2原告の主張に対する反論()原告は本件発明2についても自分一人が行ったと主張しており,そのため通常では考えられない開発経緯を主張している。
アまず,原告は,自分が作成したという甲第71号証を,平成13年8月8日に広瀬工業に送付し,サンプルの縫製依頼を行ったとしている(原告本人調書54頁 。そして,原告によれば,Bが勝手にパターン図を書き変えて, )それに基づいてサンプルを製作したが,弁理士から口止めされていたので,()。, それに対して何ら異議を唱えなかったという 原告本人調書31頁つまり原告によれば,原告が広瀬工業にわざわざ行ってサンプル縫製を依頼し,送付したとする甲第71号証を元にサンプルを作ろうと思えば作れたのに,協力工場の1つである広瀬工業が,わざわざ別のパターン図を作成してサンプルを製作したというのである。
しかし,広瀬工業は,それ以前から被告の製品の製造を受注している会社なのであって,発注者である被告の,しかもHMS商品の責任者である原告がわざわざ山口県まで来て縫製を依頼し,それを元に作ろうと思えば作れたパターン図まで送付しているにもかかわらず,原告に何の意図も聞かずに勝手に別のパターンによる別のサンプルを作ることは,広瀬工業の立場からは,。 , あり得ないし また作る必要性もない 広瀬工業が独自にパターンを作成しそれに基づくサンプルを製作したのは,まさに原告からHMSメジャー(ガードル)の開発依頼があったからにほかならないのであり,原告の上記主張には信憑性がない。
イまた,HMSメジャー(ガードル)は,Bが作成したパターンに基づいてできており,担当者であったDは,そのパターン図を元にグレーディングを, 。, 行い 修正を依頼して最終的なマスターパターンを作り上げた これに対し原告が作成したというパターン(甲71)については,Bはもちろん,Dも見たことも検討したこともない。
ウなお,Bが甲第71号証とは違ったパターンによるサンプルを製作したことについて,原告は,特許出願を予定していたため,弁理士から口止めされていたから異議を述べなかったと供述しているが,甲第71号証をそのまま使ってサンプルの作成が可能なのであれば,そのままのサンプルを作成することを依頼すれば足り,なぜ甲第71号証のような図面を作成したかということを説明する必要はない。また,特許出願を考えて秘密にしたといいながら,被告以外とも広く取引を行っていたセイブ繊維株式会社(以下「セイブ繊維」という )の担当者には,本件発明2の出願前に使用方法を説明して面 。
テープの注文を行っていたという(原告本人調書60頁)など,原告の説明は支離滅裂である。
エ結局この矛盾だらけの説明も,原告が本件発明2を一人で完成させたと無理に主張するからである。
5争点( )(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について3【原告の主張】HMS商品の売上実績は,主として本件各発明の競争優位性によるものである。被告の販売促進活動や多色展開等被告の主張する事情は,売上実績との関係では従たる要因にすぎない。HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は2分の1を下らない。以下詳述する。
本件各発明の競争優位性と実績()1本件各発明は,レディメイド商品にはない発明の効果を持ち,これにより売,,。, 上げに対する安定性 持続性をもたらし 利益の増大に寄与する 具体的には以下のとおりである。
ア発明の効果本件各発明の主要な効果は 「着用時に体型に合った衣類を提供できるとと ,, 」,, もに あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができかつ顧客の希望に応じて「体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる」という点にある(甲1,3・本件発明の特許公報の【発明の効果】欄 。)被告における本件各発明の実施に際しては,採寸の初めの段階で,顧客と被告従業員とが相談しながら,フィット感(着用感)を体感しつつ,体型補整効果の生じる度合いが細かく調節されていた。これにより,顧客は,千差万別の体型に合致するHMS商品を着用することができ,その結果,無理なく効果的に体型補整を行うことができた。
このことは,本件各発明の実施品であるHMSメジャーによる採寸時に,まず体型補整(ボディメイク)を行い,体型補整した状態の着用感(フィット感 を確認した上で採寸を行う旨のマニュアルの記載からも認められる 甲 ) (91・マニュアル7頁 。また,被告自身,本件訴訟前においては,HMS商 )品に体型補整効果があることを積極的に社外に公表していたこと(甲7・27期有価証券報告書6頁,甲78・被告ホームページ動画)からも,このことは明らかである。
これに対し,被告は,HMS商品の体型補整効果は限定的なものであると反論し,D証人やC証人も,HMSメジャーはパーツの接合部分の強度が不安定なため,レディメイド商品と同じようなフルボディメイクができない旨証言する。しかし,HMSメジャーのパーツは金属製のフックや大きな面ファスナーで接合され充分な強度を有しているのであり,実際にはこのような問題は生じていない。このことは,HMSメジャーを活用して出来上がったHMS商品によって実際にしっかりとしたボディメイクが行われていること(乙61,62)を見れば明らかであり,これらの証拠に反する両者の証言は信用できない。また,仮に接合部分が外れてしまうほどの強度なボディメイクを行うとすれば,HMS商品を日常的に着用する顧客の身体に悪影響を生じる恐れがあるところ,このようなことは本件発明の意図するところではない(甲1,3・本件各発明の特許公報の【従来の技術】欄 。)そもそも,HMS商品の体型補整効果を被告の他の商品との比較において論じることには意味がない。すなわち 「限定的」であってもHMS商品に体 ,型補整効果があることには争いがない以上,HMSメジャーは本件各発明の実施品として所期の作用効果を奏していると認められるから,これが顧客に受け入れられ,売上実績をあげることができれば本訴請求を認容する上で障害はなく,その体型補整効果が被告の他の製品と比較して「限定的」であるか否かは本件の結論に影響しない。
よって,被告の主張に理由はない。
イ売上の安定性,持続性に寄与すること本件各発明は,それ自体は計測手段に関するものであるから,これを活用したHMS商品をアレンジしていく限り陳腐化するような事態は生じず,安定した売上げを持続して上げることができる。その意味で,本件各発明の技術の寿命は極めて長い。
ウ利益の増大に直接寄与すること本件各発明は,注文を受けてから生産を行うオーダーメイド商品の計測手段に関するものであるから,HMS商品においては在庫の問題が原理的に生じず,レディメイド商品のように商品の保管費,売れ残り商品の廃棄費及び廃棄損が利益を圧迫するといったことは起こらない(R証人調書19頁 。す)なわち,本件各発明は,利益の増大にも直接寄与する。
エ実績被告の第24期から第27期まで(平成13年8月から平成16年8月ま), , 。 で の間 被告の業績は劇的に好転し 売上げ及び利益が驚異的に増大したこのようなことが起こったのは,本件各発明の効果が多数の顧客のニーズに合致したからであり,売上げの安定性,持続性に寄与する点,不良在庫の解消による利益の増大にも直接寄与する点が遺憾なく発揮されたからにほかならない。すなわち,HMS商品が爆発的に売れたのは,まさにHMSメジャーの計測の仕方に魅力があったからである。
この点に関し,被告は,業績向上の要因は上記以外の点,具体的には,Rが多額の営業施策関連費用を投じてHMS商品を積極的に販売したり,多色展開の新商品を開発,販売したことによるものであると反論する。
しかしながら,この主張は,被告自身,第24期から第27期(平成12年9月1日から平成16年8月31日)にわたり,女性用下着市場におけるHMS商品の競争優位性や,HMS商品が被告の業績向上に大きく寄与したことを社外に積極的に公表してきたこと(甲51・25期有価証券報告書8頁,甲6・26期有価証券報告書7頁)と矛盾している。
オ反対実績被告は,平成16年9月ころからわずか1年の間に,HMS商品の販売を意図的に抑制し,レディメイド商品や簡易オーダーメイド商品といった新商品を積極的に販売する政策を採用した(甲89,90・中期経営計画,甲45・楯の陳述書 。その結果,被告は,新製品によって積極的な販売促進活動 )を実施しカラー展開をしても新規顧客を獲得できず,かえって,大量の不稼働製品在庫を生み出して廃棄又は値引き販売をせざるを得ず,粗利益率の低下を来たした。
このように,本件各発明を実施している間は業績が向上し,実施を停止すると間もなく業績が悪化したことは,被告の前記実績が本件各発明によるものであることを端的に物語っている。
2被告の主張に対する反論()ア被告がHMSメジャーないしHMS商品の根本的欠陥と主張するものについて被告は,HMS商品の根本的欠陥について縷々主張するが,要するに,本件発明が実施され続けるためには,体感面では出来上がり商品と計測サンプルが全く同一でなければならず,計測面では一切誤差があってはならないところ,この要求を満たしていないHMS商品には根本的欠陥があり,本件各。, 発明には上記発明の効果を含む競争優位性はないというものである そしてこのような根本的欠陥があったにもかかわらずHMS商品の売上げが向上したのであるから,売上げ向上の要因は本件各発明の競争優位性以外のところに求めるべきであるというのが被告の主張の骨子であると思われる。
, , しかし 上記要求自体は目指すべき理想としては分からなくもないものの上記要求が満たされない限りHMS商品に根本的欠陥があるとの主張には理由がない。HMSメジャーの精度は実用上十分であったからである。
すなわち,原告が被告に在籍していた当時,明らかな計測や製造上の過誤による例外的場合を除き,被告に対し,HMS商品に関し顧客からクレームが寄せられたことは現実にはほとんどなく,クレーム発生率はHMSの総生産数に比してわずか0.1%前後にすぎない(甲75・再生産状況比率 。ま)た,原理的にいっても,HMSメジャーでは,計測幅が数?p以内であって,当該顧客の体型に細かく合わせて採寸できるのであるから,たとえ誤差が出ても,その誤差は小さなものにとどまる。そうである以上,現実には上記誤差は商品の素材の伸縮性などによってカバーされないほどの有意差になることはない。この点については,D証人も,現実には顧客の体感上問題にならないことを認めている(D証人調書43頁〜45頁 。また,被告自身,HM )Sの根本的欠陥といわれるものがクレームなどの事実によって裏付けられるものではなく,被告の推測あるいは顧客にとって無意識のものであることを認めざるを得ない旨の主張をしている。
常識的に考えれば,製品の売上げが画期的に伸び,かつ,顧客からのクレームもない状況で,顧客の体感にかかわる問題が存在するとは考えられず,まして,これを「根本的欠陥」と認識したとの主張には信頼性がない。むしろ,本件訴訟提起前の被告は,多額の費用を投じて,特段の改良もすることなくHMSメジャーをそのまま総入れ替えしたり,原告に対し,HMS商品の新アイテム(ボディスーツ,スリーインワン等)の早急な開発を指示していたほどである(甲67〜69,D証人調書34頁〜35頁 。)したがって,通常の商品におけると同様,何らかの改良の余地はあったとしても,HMS商品は十分な競争優位性を備えていたのであり,被告の業績向上への寄与を減殺あるいは阻害するような根本的欠陥が存在していたとは認められない。
イ被告の主張する売上向上の他の要因についてRの積極的施策やキャンペーン(ア)被告は,HMS商品の売上げ,利益が向上した要因として,RがHMS商品を積極的に販売するために行った営業政策・販売施策や,無理なキャンペーンなどの販売促進活動を挙げる。
しかし,RのもとでHMS商品が積極的に販売されていたといっても,。, 被告の主張するような特殊な施策を採用していたわけではない すなわちHMS商品が販売されていた当時,被告においては,同じ店舗内にHMS商品とレディメイド商品の双方がラインナップされていた(甲87の1・2・平成14年当時のラインナップカタログ 。そして,HMS商品の未発 )売のアイテム(HMSガードルは平成14年3月から,ボディスーツは平成15年12月から。甲81)については,被告販売員は顧客にレディメイド商品を勧め,顧客もレディメイド商品を購入していた。また,当時のキャンペーン資料(乙40の6等)によれば,レディメイド製品もHMS商品と並んでキャンペーンの対象とされており,HMSのみを対象とした販売促進活動はほとんどなされていない。このことは,被告がHMS商品を積極的に販売していた第25期から第27期の間,新商品の販売されていないレディメイド商品の売上高が総売上高の5割から4割程度あったことからも認められる。したがって,HMS商品について特別に無理な販売促進活動を行ったといった事実は認められず,むしろ,HMS商品に牽引されて,被告製品全般の売上げが伸びていたことが認められる。
また,被告のキャンペーン等の販売促進活動をもって,商品の持つ顧客。, 誘引力を離れた売上げ向上の主要因とすることには無理がある とりわけ顧客の口コミによる宣伝に多くを負っている被告は,商品自体に顧客誘引力がなければ売上げを伸ばすことができない。そうすると,キャンペーン等の販売促進活動が功を奏したということは,取りも直さずHMS商品に顧客誘引力があり,ひいては本件発明に競争優位性があったからにほかならない。したがって,キャンペーン等の販売促進活動をもって業績向上の主要因とする被告の主張には理由がない。
,, , さらに Rは 被告に増収増益をもたらす合理的なキャンペーンを行い結果として売上げの増加に比例した販売促進費用を要したにすぎず(R証人調書21頁 ,現に増益をもたらしていることから,利益を圧迫するよう )な不合理なキャンペーンを行っていたわけではないことも明らかである。
さらに言えば,被告の論理に従うなら,被告は,HMS商品につき行っていたのと同様の積極的な営業政策・販売政策や,同様のキャンペーンを「根本的欠陥」のないレディメイド商品について行えば,被告の業績を劇的に向上させることができたはずである。ところが,現実には,被告の業績は,第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)において赤字決算に転落し,翌第30期は概ね横ばいと,HMS商品が定着期に入った第27期の数値に遠く及ばなかった。今期(第31期)に至っては,第3四半期の売上高が167億円(前年同四半期比5.4%減 ,営)業損失が4億円(前年同四半期-6億円)という低迷状況である。このような客観的な業績の低迷状況からすれば,被告の営業政策・販売施策や販売促進活動は,売上高の向上に対して決定的な影響力をもっていなかったことが認められる。
以上のとおり,過去におけるHMS商品の売上げは,前記のようなHMS商品自体の競争優位性に基づいているのであり,被告の営業政策・販売施策や販売促進活動は,HMS商品の魅力を顧客に知らせる手段にすぎなかったのである。
多色展開(カラーフィット)(イ)被告は HMS商品の売上げ 利益が向上した要因として 多色展開 カ ,, ,(ラーフィット)の新商品を開発,販売したことを挙げる。
しかし,多色展開のリドル,デビュアランジェがHMS商品ほどの売上げ・利益を生んでいないこと,他方で多色展開のHMS商品であるカラーフィットを新たに販売すると概ね売上高が向上していることからすれば,HMS商品の売上げが増加したのは,多色展開自体が理由ではなく,多色展開した商品がHMS商品であったからであることは明らかである。この点,被告も,多色展開のリドル,デビュアランジェの売上げが伸びなかった理由を商品特性や顧客ニーズとのミスマッチに求めており,売上げの増減にとって重要なのは多色展開ではなく,商品特性や顧客ニーズと合致するかどうかであることを認めるに至っている。
HMSの売上げが伸びたのは,顧客が最も重要視する着用感及び体型補整効果といった点で顧客の支持を得たからであり,色のバリエーションはオプション以上の意味を持たないのである。
本件各発明とHMS商品との実質的一体性()3本件各発明は計測手段に関するものではあるが,HMS商品の受注・販売に, 。 際しては 必ず本件各発明の実施品であるHMSメジャーを使用して採寸するまた,既存顧客に対する受注・販売に際しても,顧客の体型変化に対応するため 改めて本件発明の実施品であるHMSメジャーを使用して採寸をし直す 甲 , (91・マニュアル48頁フローチャート左上「採寸・試着。」)実質的にも,女性用補整下着を日常的に着用する顧客にとって最も重要なのは着用感及び体型補整効果である以上,製品化の過程にあって計測段階は極めて重要であり,計測した数値の記入入力送信などの作業は,計測の付随的かつ機械的過程にすぎない。
そうすると,本件各発明が実施されなければ,HMS商品の売上げが生じることは絶対になく,この意味において,本件各発明の実施とHMS商品の販売とは完全に1対1の直接的対応関係にあると認められる。
結論()4, 上記のような本件各発明の競争優位性の高さとこれによる驚異的な売上実績本件各発明とHMS商品との実質的一体性にかんがみれば,HMS商品の売上げのうち,被告が原告より本件各発明の特許を受ける権利承継して本件各発明の実施を独占することができたことに起因する部分,すなわち本件各発明のHMS売上げに対する寄与割合は,2分の1を下らないというべきである。
【被告の主張】本件各発明は単なる計測器に関する発明であり,HMS商品そのものの発明ではない。また,HMSメジャーでの計測値や身生地がそのままHMS商品の製造に用いられているわけではない。HMS商品の売上げは,多色展開等,被告による新商品の開発・発売,レディメイドの新商品の発売抑制,HMS商品の販売促進活動による部分が大きい。以上によれば,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は,10%以下である。以下詳述する。
単なる計測器に関する発明であること()1本件各発明は単なる計測器に関する発明であり,HMS商品そのものの発明ではない。HMS商品を製造・販売するには,計測器であるHMSメジャーで測った数値をもとに(ただし,HMSメジャーでの計測数値がそのまま用いられてはいない )商品を製造販売するという過程が必要であり,HMSメジャー 。
がそのまま商品として製造販売されるわけではない。
このように,本件各発明は単なる計測器の発明であり,その意味では,テープメジャーなどと何ら異なる点はなく,HMS商品の売上げに寄与した部分は非常に少ない。体感の部分についても,HMSメジャーとHMS商品との間に大きな違いがあり,体感が売上げに寄与したと言える部分は非常に少ない。したがって,原告が主張するように,本件発明とHMS商品とは実質的に一体であるという関係にはなく,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与は極めて低い。
HMSメジャーでの計測値やメジャーの身生地がそのままHMS商品の製造()2に活用されているわけではないこと本件各発明とHMS商品との間に実質的一体性が存しないということは,HMSメジャーでの計測値やHMSメジャーの身生地がHMS商品の製造にそのまま活用されていないという事実からも明らかである。すなわち,証拠(乙101〜乙107,乙109〜乙110の2)からも明らかなとおり,HMSメジャーによって計測された数値とは別の数値によってHMS商品が製造されているし,またHMSメジャーの身生地の構成とHMS商品のそれとは,糸の強さ(デニール)も含めて,ほとんど異なっている。かかる事実からも,本件各発明とHMS商品との間に実質的一体性が存しないことは容易に理解できる。
多色展開等,新商品の開発・発売,キャンペーン等について ()3被告は,平成13年6月にHMS商品(ブラジャー)の販売を開始し,その後平成17年7月にレディメイドの新シリーズ「デコルテ」を発売するまでの間,HMS商品の売上げを作るため,レディメイドの新商品は一切販売せずにHMSの新商品のみ販売し,染色工場への最低支払保証という多額の経費を負担して多色展開を進めたり,多額の費用を投入したキャンペーン(HMS商品の新商品自体をプレゼントする等という常軌を逸した販促を含む )を多用した 。
りして,何とかHMS商品の売上げを積み上げていた(ただし,HMS商品の営業利益は著しく悪化している(乙78の1〜乙81,乙87の1・2,乙 。)93の1〜5,乙116〜乙119 。かかる販売実態においては,本件各発明 )がHMS商品の売上げに大きく貢献したとは到底いえない。
この点,原告は,キャンペーンを行うことは一般的な販促手法であり,そのことによって売上げが増加したからといって本件各発明の価値が減じられるものではないと主張する。しかし,本件各発明の売上げに対する寄与という観点から見ると,多額の販促費用を投じるということは,それだけ本件各発明がHMS商品の売上げに寄与した度合を低下させることを意味する(本件各発明に競争優位性が存するのであれば,多額のキャンペーン費用を投入しなくても,売上げが増大するはずである。したがって,原告の上記主張は失当である。 。)4結論()以上のように,本件各発明とHMS商品との間に実質的一体性はなく,HMS商品の売上げは多額の販促費用等によるものであるから,本件各発明がHMS商品の売上げに寄与した割合は10%以下である。
6争点( )(独占の利益が発生する時期)について4【原告の主張】本件各発明のように使用者が発明を自己実施している場合,特許出願後自己実施を開始した時点又は遅くとも特許出願中であることを対外的に公表した時点において独占の利益が発生するものというべきである。
被告は,出願公開前は当該発明の内容は公表されておらず,出願公開後は差止請求権がないため,いずれの時点においても排他的独占権がないことを理由に,独占の利益の発生時期は,特許登録時であると主張する。しかし,特許法35条3項は,本質的に特許権の対価ではなく特許を受ける権利対価であり,同項の文言上も「その発明により…受けるべき利益の額」と規定している。そうであれば,上記「利益」を特許登録後に特許発明により生じた法的独占権による利益のみに限定する必要はなく,上記「利益」には,少なくとも特許を受ける権利については補償金請求権ないしはその登録後に生じる法的独占権に由来する独占的実施の利益を含むと解すべきである コニカミノルタホールディングス事件判決 東 〔 ()〕。, 京地方裁判所平成18年1月26日判時1943号85頁 に同旨のみならず使用者等は,特許出願後出願公開前であっても,発明の自己実施を開始した時点から,あるいは特許出願中であることを不特定多数の第三者に対外的に公表した時点から,当該発明を第三者に対して実施許諾し,実施料収入を取得し得る具体的状況にあったということができ,少なくとも第三者が同種製品の発売に踏み切ることを躊躇させる状況にあったといえる。そうであれば,使用者等が発明を自己実施している場合には,特許出願後自己実施を開始した時点,又は遅くとも特許出願中であることを対外的に公表した時点から,独占の利益が発生するというべきである。
したがって,本件発明1についてはHMS商品(ブラジャー)の販売を開始した平成13年6月から,本件発明2についてはHMS商品(ガードル)の販売を開始した平成14年3月から,それぞれ独占の利益が発生したものというべきであるから,本件各発明により被告が受けるべき利益の額の算定に当たっては上記各時点以降の売上げを計上すべきである。
【被告の主張】本件各発明のような自己実施事例においては,使用者が発明を排他的独占的に実施することができるようになった時期すなわち特許登録時において独占の利益が発生するものというべきである。
原告は,特許出願後自己実施を開始した時点,又は遅くとも特許出願中であることを対外的に公表した時点から独占の利益を認識し得る旨主張する。しかし,出願公開前であれば,当該発明の内容は公表されておらず,この時点では第三者はどのような発明が出願されているのかさえもわからないのであり,出願されている発明を実施しても差し止められることもなく,損害賠償請求を受けることも, 。,, ないのであるから 使用者には独占の利益はない また 出願公開後については発明の内容については第三者に公開されているが,差止請求権はなく,また,補償金請求権特許発明を公開することの代償として特別に与えられた法的請求権とされており,この時点では排他的独占権は存在していない。よって,原告の上記主張は妥当ではない。
したがって,本件各発明により被告が受けるべき利益の額の算定に当たっては,本件各発明の特許登録日,すなわち本件発明1については平成17年3月4日以降の,本件発明2については同年6月24日以降の売上実績を計上すべきである。
7争点( )(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について5【原告の主張】被告は,平成16年9月ころからHMS商品の販売を大幅に抑制した。これは経済合理性に反する不合理な販売抑制策である。したがって,平成16年9月1日以降の売上げについては,その額をそのままHMS商品の売上高に計上すれば足りるものではなく,本件各発明が正常に実施されていた期間すなわち平成13年9月1日から平成16年8月31日までの期間の売上実績をもとに1年当たりの平均売上高を求め,これに本件特許1の有効期間(本件特許2の有効期間よりも先に到来する )である平成33年1月までの残年数16.3 。
年を乗じたものを計上すべきである。以下詳述する。
被告のHMS商品の販売抑制の事実 ()1被告は,平成16年9月ころからわずか1年の間に,HMS商品の販売を抑制し,レディメイド商品や簡易オーダーメイド商品といった新商品を積極的に販売するという政策を採用した。被告がHMS商品の販売を抑制したことは,()(),「」, 中期経営計画書 2006-2008甲90 25頁においてあこがれ「meet you「エクリナ「ヌディータ」といったHMS商品の計画的 」,」,, () 陳腐化を実施する旨の記載があることや 被告の元従業員楯の陳述書 甲45や,原告の陳述書(甲79の第6の4(41頁 )からも認められる。楯の陳述 )書の記載内容は,裁判所の文書提出命令により被告から提出された中期経営計画書(甲89,90)の内容と客観的に符合し,信用できる。のみならず,被告は HMS商品の販売抑制と並行して 平成17年2月以降 HMS商品 エ , ,,「3/4 3/4 クリナ のカップボディスーツ等の開発を中止した この エクリナ の 」 。「」カップボディスーツは,平成15年12月より販売され好評であったHMS商「」() , 品 エクリナ ボディスーツ 甲81 から比較的短期間で開発できる商品で被告は,平成16年の時点ではこの商品を含むHMS商品(ボディスーツ)等の開発を原告に指示し,開発予算まで組んでいた(甲67〜69)にもかかわらず,その開発を中止したのである(甲70・マイモードプロジェクト会議について 。このようなHMS商品(ボディスーツ)の開発を中止したことも,被 )告の上記意図的販売抑制を商品開発の現場から裏付ける事実である。
販売抑制の不合理性()2以下に述べる被告の業績の推移や販売抑制の背景からして,かかる被告のHMSの販売抑制は経済合理性を離れた不合理な行動であった。
ア本件各発明を実施していた当時の被告の業績が良好であったこと本件各発明の競争優位性により,被告の第24期から第27期まで(平成13年8月から平成16年8月まで)の間,被告の業績は劇的に好転し,売上げ及び利益が驚異的に増大した。その理由は,前述のとおり,本件各発明の競争優位性以外にはない。このような好成績のHMS商品の販売をいきなり抑制することは,そのこと自体経済的合理性を欠く行動である。
イ 本件各発明の実施を差し控えた後の被告の業績が悪化したままであること被告においてHMS商品の販売が差し控えられた後,被告の業績は,第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)において赤字決算に転落し,翌第30期は概ね横ばいであり,いずれも被告においてHMS商品が定着期に入った第27期の数値に遠く及ばない。今期(第31期)に至っては,第3四半期の売上高167億円(前年同四半期比5.4%減 ,営)業損失4億円(前年同四半期-6億円)を計上し,被告は,上記業績悪化を受けて業績予想及び期末配当の下方修正を行うとともに,平成20年6月から業績回復までの相当の期間,取締役報酬を減額する旨決定実施し,取締役の経営責任を明確に認めざるを得ないほどの惨状に陥っている(甲95・平成20年8月期第3四半期決算短信,甲96・同期業績予想の修正に関するお知らせ 。)このように,被告において好成績のHMS商品の販売を抑制した結果,業績が悪化した事実は,販売抑制が経済的合理性を欠く行動であったことを経験的に実証する事実である。本件各発明の競争優位性に照らせば,もし被告がHMS商品を販売しつづけていたならばこのような悲惨な結果にはならなかったことを容易に推認することができる。
ウ販売抑制の背景HMSの販売抑制の背景には,被告社内の権力闘争や経営陣の個人的嫉妬があった(甲47・R陳述書の3(3頁から5頁 ,甲79・原告陳述書第6 )の4(41頁。このような権力闘争や個人的嫉妬を企業の商品政策・販売 ))政策に反映させることは,それ自体経済的合理性を欠く行動である。
エ被告の反論について被告は,HMS商品の販売を差し控え,レディメイド商品を積極的に販売する政策に転換した理由として,HMSメジャーに種々の欠点や根本的欠陥や商品構成上の問題があったこと,HMS商品が顧客の支持を得られなかったことを挙げる。
しかし,HMSメジャーに被告の業績向上への寄与を減殺あるいは阻害するような欠点や根本的欠陥が認められないことは,前述のとおりである。
また,商品構成上の点についても,過去のHMS商品の売上げの実績からすれば当時はそれほど問題になっておらず,少なくとも被告が開発を中止しなければ早晩改善されたものであることが認められる。
さらに,被告は,顧客はレディメイド商品の方を支持しHMS商品を支持していなかったことが明らかになったと述べるが,レディメイド商品を積極的に販売する政策を採用した後の第28期以降の被告の業績悪化,低迷継続の現実を合理的に説明できていない。
実際には,顧客は,HMS商品を支持していたのに,被告がその販売を抑制したために購入できなくなったのにほかならないのである(甲79・原告の陳述書第3の4(42頁。))そうである以上,HMS商品の売上げ低下の事実は,被告の不合理な販売抑制の結果にすぎない。
被告の不合理な行動と相当対価の算定()3特許法35条3項は,本来的に,相当対価の算定において,使用者等が「受けるべき利益」すなわち,将来得られるであろう利益を基準として考慮することを求めている。ただ,ここにいう「将来得られるであろう利益」の算定にあたっては,使用者等が,経済合理性を離れた不合理な行動を取った結果,権利の活用が十分になされず,利益を逸したような場合には,このような事情を考慮すべきではない。すなわち,使用者等の不合理な行動があったとしても,そ。 のような事情が存しないものとして相当の対価を算定すべきであると解されるなぜならば,このように解さないと,発明の経済的価値そのものが適正に対価に反映されなくなる結果,発明から生ずる権利や利益を,使用者と従業者との間で効率的かつ公平に分配することにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与する同項の趣旨に反することとなるからである。
前記のとおり,本件各発明は被告が経済的に不合理な政策をとった結果実施されなくなった。他方において,本件各発明は,計測手段という性質上陳腐化しにくい技術であり,潜在的に長期間にわたって被告に利益をもたらすことが可能であった。したがって,被告が,その不合理な行動により,将来も安定的に得られたはずの売上げ及び利益を逸したことには疑いがない。したがって,本件においては,被告の不合理な販売抑制の事実が存在しないものとして,従来の実績を基礎に,将来分も含む相当の対価を算定すべきである。
【被告の主張】原告は,被告が平成16年9月以降HMS商品について不合理な販売抑制をしたとして,同月以降の売上実績をそのままHMS商品の売上高に計上すれば足りるものではない旨主張するが,被告が平成16年9月以降HMS商品の販売を抑制したのは,HMSメジャーないしHMS商品に根本的欠陥があるからであり,HMS商品の利益率がレディメイド商品の利益率より低いことから見て,HMS商品の販売抑制策には合理性がある。
,, , また 原告は 本件特許権1の有効期間満了まで売上げがあるものとしてその予測売上高をHMS商品の売上高に計上すべきである旨主張するが,HMS商品の販売は平成20年2月をもって終了しており,それ以降は売上げがない。
したがって,平成16年9月1日以降の売上げに関しては,平成20年2月までの売上実績をそのまま計上すれば足りる。
8争点( )(本件各特許の無効理由の存否とその相当の対価の額への影響の有6無・程度)について【原告の主張】被告は,本件各特許には無効理由が存在するから独占の利益を観念することはできないか,又は仮にこれを観念し得るとしても,ライセンス料率は極めて低率にしかなり得ない旨主張する。
しかし,まず,本件各特許に無効理由は存在しない。
, ,, 確かに 本件特許1については無効審決がなされたが 同審判の請求人Aは(), 被告に20年間も在籍し元専務取締役にもなった者であって 乙120・陳述書Q会長の妻の兄でもあるから,Q会長を含む被告の経営陣と長期にわたり親密な関係にあったことが推認できる。また,これに対し被告は特許庁から指定された答弁期間内に特許庁に対し何ら答弁書を提出しなかった。さらに,被告は,本件。 , 訴訟においても本件特許の無効を主張していた これらの事情を併せて考えると上記特許無効審判請求は,被告が原告に対する職務発明対価の支払を免れるために,被告の元役員と通謀してなされたものであり,無効審決の内容自体不合理なものであると認められる。特許無効審判の審理は職権主義ではあるが,現実的には権利者自身が別訴で無効主張し,かつ,審判請求手続を追行していないという事実が審決に悪影響を及ぼすことは当然である それでもなお不成立審決があっ (た本件特許2に対する無効主張がいかに理由のないものであるかがこのことからも明らかである。。)また,原告は,上記無効審決に対し審決取消訴訟を提起して争っており(甲97・訴状 ,本件特許1は少なくとも本件訴訟の口頭弁論終結時においては有効で )ある。さらに,上記のような審判の経緯に照らし,上記無効審決は審決取消訴訟において覆されるものと考えられる。
そうである以上,上記無効審決は,本件の相当の対価の算定上,何らの影響を及ぼさないと解すべきである。
仮に将来審決取消訴訟が棄却され無効審決が確定したとしても,特許権の遡及的消滅は法的擬制にすぎず,無効審決確定時点までは本件発明1に関する本件特許権1は有効に存在し,他者が被告に無断で本件発明1を実施することは現実にできなかったのであるから,独占的実施の利益を観念することができる。実質的にも,被告は本件各発明を独占的に実施する選択をし,これにより現に大きな独, 。 占的利益を得たのであるから 上記利益に対する対価を支払うべきは当然であるしたがって,仮に本件特許1が確定的に無効になったとしても,被告が過去に本件発明1を実施することにより得た利益との関係では,相当の対価の算定上,何らの影響はないというべきである。
また,本件特許2については,無効審判請求は成り立たない旨の審決がされている。したがって,被告の上記主張は相当の対価の算定上何らの影響もないというべきである。
【被告の主張】本件特許1に無効理由が存在すること()1, ,,, 本件発明1は 甲第13号証記載の発明に 甲第10号証 甲第12号証, , 乙第3号証 乙第4号証及び乙第6号証各記載の発明を適用することにより容易に想到し得るものであり,本件特許1には進歩性欠如の無効理由がある(特許法29条2項 。)本件特許2に無効理由が存在すること()2本件発明2は,乙第8号証記載の発明に,甲第10号証及び甲第12号証各記載の発明を適用することにより,容易に想到し得るものであり,本件特許2には進歩性欠如の無効理由がある(特許法29条2項 。)3本件各特許に無効理由が存在することと対価請求との関係()( ) キルビー最高裁判決 最判平成12年4月11日民集54巻4号1368頁及び特許法104条の3によれば,特許が無効審判請求によって無効とされる前であっても,無効理由が存在する特許については,実質上特許権者は当該発明の独占的実施を保障されているものではないと考えられる。
なぜならば,当該特許権を侵害されたとしても,特許に無効理由が存在し,無効審判において無効とされるべき場合には,侵害者に対して,当該特許権を侵害訴訟において権利行使をすることができず,侵害行為の差止という独占権を担保する法的効果が失われる以上,特許権者は当該発明の独占的実施を保障されているものではないからである。
そして,譲渡を受ける法人には既に通常実施権が保障されているのであるから,職務発明の譲渡の対価は,当該特許発明を独占的に利用できるという点にあり,独占的な利用を保障されていない当該発明について,独占的利用に基づ( , く対価というものは本来あり得ないものである さらにいえば無効理由のうち新規性欠如や進歩性欠如といった実質的に特許権を付与すべきでない発明は本来誰しも利用することが可能なものなのであって,それを創出したことによる価値というものは存在しない。。)仮に,無効理由が存在する特許について,相当対価を観念するとしても,例えば,ライセンスの交渉を行う場合に,無効理由の資料を収集することは一般的に行われており,明確な無効理由が存在する場合にライセンス契約を行うのは,単にトラブルを避けるといった意味しかなく,無効理由が存在するのではないかという資料が存在する場合にもライセンスを受ける側にその事情は有利に働いてライセンス料が低廉化するというのは常識である。
以上より,本件各特許には無効理由が存在しているから職務発明に基づく相当対価は存在しないか,あるいはライセンス料率を観念する場合に極めて低廉な料率にしかなり得ない。
9争点( )(仮想実施料率)について7【原告の主張】被告が本件各発明について第三者に実施許諾すると仮定した場合,実施料率は超過売上額の5%を下らない(甲60・実施料率 。)被告は,第三者が被告から本件各発明について実施許諾を受ける可能性はないと主張するが,本件のように使用者等が第三者に実施許諾をせずに当該発明を独占的に実施している場合においては,もとより仮想的に考えることとなるのであるから,被告が本件各発明を第三者に実施する可能性があるか否かは問題にならない。実質的にも,被告は本件各発明を独占的に実施する選択をし,これにより現に大きな利益を得たのであるから,上記独占の利益に対する対価を支払うべきは当然である。そして,本件各発明を第三者に実施許諾する場合,HMS商品の売上高に対して一定の比率でロイヤルティを算出する方法を採用するのが最も合理的であるから,原告の採用する計算式には合理性がある。
【被告の主張】本件各特許には無効理由があり,また,HMS商品の利益率はレディメイド商品の利益率より低い。したがって,第三者が被告から本件各特許について実施許諾を受ける可能性はないから,仮想実施料率は極めて低く,超過売上げの1%以下というべきである。
10争点( )(被告の貢献)について8【原告の主張】次のとおり,被告の貢献は,存在しないか,存在するとしても30%を上回らない。その理由は以下のとおりである。
本件各発明の完成に対する被告側の貢献()1本件各発明の完成に対する被告側の貢献はほとんどない。
ア原告の多大な貢献原告は単独で本件各発明を完成した。
その開発経緯においては,原告は,個人的に購入した市販の下着類や,自宅の工業用ミシンを用いた。CADについては被告会社のものも用いたが,個人所有のパソコンも用いた。何より,発明の最も重要な背景的要素となったCADに関する知識,知見や基本的な着想(メジャー・アンド・メイクオーダー)は,原告が旭化成在職中に得たものである。
また,発明完成後,弁理士に技術的構成を説明したり,出願書類等をチェックしたりといった特許出願に向けての対応も,原告1人で行った。
イ被告側の貢献他方で,本件各発明について,被告側の貢献はほとんど認められない。
第二生産部の他の部員についても,本件各発明の完成後において実施品の商品化には相当程度の関与をしたことは認められるものの,本件各発明の開発について有意の関与をした事実は認められない。
また,被告は,原告に対し研究開発環境を整えていたわけではない。すなわち,被告は,本件発明に関して研究開発費や研究設備費を出捐したわけではなく,原告が利用したCADシステムも本来研究用の機器ではなく,原告に対して研究開発のための時間を与えていたわけでもなく,原告は試作品の。 材料となった下着類やミシンについては原告所有のものを使用したのである,, 。 さらに 原告の発明は 従来の被告の技術的蓄積には一切依拠していない被告はメーカーではないため,発明の背景となるような技術的蓄積がなかったからである。
本件各発明により利益を受けるについての被告側の貢献()2本件各発明により利益を受けるについての被告側の貢献は,特許法35条3項において相当対価算定の考慮要素とされていない以上,もともと考慮されるべきことではない。仮に上記貢献を考慮するとしても,被告側の貢献は,以下に述べるとおり,微々たるものにすぎない。
ア原告の多大な貢献HMSメジャーの実用化や準備に当たって最も貢献したのは,本件各発明の完成のみならず,実施品のサイズ展開におけるサイズの決定,資材選び,製造工場との調整,マニュアルのたたき台作りと細かな作成指示,従業員の研修教育等を主導的に行った原告である。
イ被告側の貢献についてこれに対し,被告側は,原告の主導のもと,第2生産部の従業員や外部の業者において原告の手足として行動したり,商品化に要する費用を負担したことにとどまる。また,上述のとおり,被告はHMS商品だけをターゲットにした販売促進活動をほとんど行っておらず,また多色展開も,既に論じたとおり,それ自体特に売上げに貢献したわけではない。
【被告の主張】本件各発明は,一般の職務発明の場合と同様の開発経過を辿っており,被告の貢献度は98%以上であることは明らかである。以下,箇条書きで示すと,次のとおりである。
アワコールのデューブルベ試着に基づく被告による計測器具開発という目標設定イフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という被告による解決課題の付与ウフルオーダー事業によるノウハウやデータの蓄積とその利用容認エ第2生産部という開発部署の設置,人的・物的設備(協力工場の利用を含む )の整備。
オオーダー研究会という試着・検討・改良を行う場の確保とそれらの実践カ権利化における被告の顧問弁理士の利用容認及び費用負担,審判請求手続及び補正手続の利用,及び費用負担キHMSメジャー一式の全店舗配備,販売員への研修実施クHMS商品に対する多額の販売促進費用の投下11争点( )(被告における原告の処遇)について9【原告の主張】被告は,本件各発明の対価として,原告を取締役に昇進させ,昇進後の報酬額と昇進前の給与との差額合計1990万円を支払ったと主張する。しかし,取締役の報酬は取締役の職務執行の対価であるから,その中に職務発明対価を観念することは不可能である。
むしろ,原告は,本件発明により被告の業績向上に多大な寄与をしたにもかかわらず,HMS商品の販売が抑制され,また,開発も中止された上,原告は時を同じくしてお客様相談室への異動を命じられるとともに,間もなく取締役を解任され(形式上は任期満了による退任とされている,やり場のない気持ちや大き 。)な悲しみの中で退職まで過ごすことを余儀なくされた。
【被告の主張】原告は,平成14年11月から被告の取締役に昇進し(社内的には同年9月から取締役としての報酬を支払っている,平成17年11月に取締役から退任し 。)ている。原告が取締役に昇進したのは,発明に対する報奨制度が存しない被告において,取締役として処遇することによって報いるためであり(C証人調書19頁,原告本人調書68頁 ,発明に対する報奨という以外に原告が取締役に昇進す )るような特段の事情も存しないし,当時の代表取締役であったRも本件各発明に対する報奨であることを認める陳述をしている(甲47・4頁 。したがって,原 )告が取締役に昇進したことによって増加した報酬分は,本件各発明に対する対価と考えるべきである。
そして,原告が取締役に就任することによって増加した報酬額は総額1990万円にも達しており,本件発明の対価としては十分すぎる金額であるといえる。
12相当の対価の額について【原告の主張】1HMS商品の売上高()以上をもとに,HMS商品の売上高を算出すると,次のとおりである。
まず,本件各発明が正常に実施されていた第25期から第27期(平成13年9月1日から平成16年8月31日まで)におけるHMS商品の累計売上高を算出すると,第25期107億円(甲5)第26期127億3192万5000円(甲6の8頁2( ))2() 第27期170億5657万0435円 被告準備書面( )頁 3 32合計404億8849万5435円(?@)であり,本件各発明を実施することによる1年当たりの平均売上高は,404億8849万5435円÷3=134億9616万5145円になる。
この本件各発明の1年当たりの平均売上高に,本件各発明が正常に実施されなくなった平成16年9月から本件特許1の有効期間(本件特許2の有効期間よりも先に到来する )である平成33年1月までの残年数約16.3年を乗 。
じると,134億9616万5145円×16.3年=2199億8749万1863円(?A)になる。
HMS商品の売上高は,?@と?Aの合計であるから,404億8849万5435円+2199億8749万1863円=2604億7598万7298円になる。
本件各発明に係る相当の対価の額()2, ?@HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与は2分の1を下らないこと?A仮想実施料率は超過売上の5%を下らないこと,?B被告の貢献度は30%を, ,, 上回らないこと ?C本件各発明の発明者は原告のみであること 以上によれば相当の対価の額は,2604億7598万7298円×1/2×5%×70%=45億5832万9777円を下らない。
【被告の主張】1本件発明1に係る相当の対価の額()アHMS商品(ブラジャー)の売上高本件発明1の特許登録日である平成17年3月以降のHMS商品(ブラジャー)の売上合計は次のとおりである。
平成17年3月〜平成17年8月7億3605万5000円平成17年9月〜平成18年8月6億3329万8000円平成18年9月〜平成19年8月4億1817万円平成19年9月〜平成20年2月9718万5000円合計18億8470万8000円イ相当の対価の額, ?@HMS商品の売上げに対する本件発明1の寄与は10%以下であること?A仮想実施料率は超過売上の1%以下であること,?B被告の貢献度は98%以上であること,?C本件発明1の発明者は,原告を含め合計17名であること,以上をもとに,本件発明1に係る相当の対価の額を算出すると,18億8470万8000円×10%×1%×2%÷17?垂Q217円となるが,被告の原告に対する処遇を考慮すれば,これは既に支払済みというべきである。
本件発明2に係る相当の対価の額()2アHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高本件発明2の登録日である平成17年6月以降のHMS商品(ガードル,ボディスーツ)の売上合計は次のとおりである。
平成17年6月(6月分の売上げ÷30×6で計算)2463万3000円平成17年7月〜平成18年8月2億3756万8000円平成17年9月〜平成18年8月6億9310万9000円平成18年9月〜平成19年8月4億5635万1000円平成19年9月〜平成20年2月1億0079万2000円合計15億1245万3000円イ相当の対価の額, ?@HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与は10%以下であること?A仮想実施料率は超過売上の1%以下であること,?B被告の貢献度は98%,, , 以上であること ?C本件発明2の発明者は 原告を含め合計5名であることをもとに,本件発明2に係る相当の対価の額を算出すると,15億1245万3000円×10%×1%×2%÷5?垂U050円となるが,被告の原告に対する処遇を考慮すれば,これは既に支払済みというべきである。
第4当裁判所の判断【当裁判所の判断の大要】当裁判所は,原告が被告に本件各発明の特許を受ける権利承継させたことの相当の対価の額は2253万0142円と判断するものであるが,その判断の大要は,以下のとおりである。
まず,相当の対価の算定は,本件各発明の独占の利益が生じた日以降のHMS商品の売上額のうち本件各発明の寄与に基づく部分に,仮想実施料率を乗じ, , て被告の受けるべき利益の額とし これから被告の貢献に基づく部分を控除し共同発明者がいる場合には共同発明者間で原告が貢献した割合を乗じて算定すべきである。
これを前提に,原告の受けるべき相当の対価の額を算定すると,以下のとおりとなる。すなわち,本件各発明の発明者は原告のみであって,Bや他の被告従業員は(共同)発明者であるとは認められない。次に,本件各特許権により被告が受けるべき利益の額を算定するに当たり,その基礎となる売上高のうち本件各発明の寄与に基づく部分は2分の1と認められ,売上高算定の期間は,原則として特許登録の日(本件特許1は平成17年3月4日,本件特許2は同年6月24日)からとすべきであるが,本件各発明の出願公開によりある程度の独占力が備わることにかんがみ,その期間中(本件特許1は平成14年7月, ) 31日から 本件特許2は平成15年8月27日からそれぞれ上記登録日までについては本件各発明の寄与に基づく売上高の10分の1をもって計算するのが相当である。なお,被告がHMS商品の販売を抑制・中止したことは,経営判断として合理性を欠くものとはいえず,それが原告に対する相当の対価の支払を免れることを目的としてとった措置であるとはいえないから,被告がHMS商品の販売を抑制・中止した後も,実際の売上高をもとに算定するべきである。このように算定された平成20年2月までの売上高を使用者である被告が受けるべき利益とし,これに対する被告の貢献割合は80%とするのが相当であるからこれを控除する。そして,同控除後の売上高に乗ずるべき仮想実施料率は3%とするのが相当である。以上を上記算定式にあてはめて,原告が受けるべき対価の額を計算すると,2253万0142円となる。
1争点( )(本件発明1の発明者は原告のみか )について1 。
はじめに()1原告が,少なくとも本件発明1の発明者の一人であることは当事者間に争いがない。原告は,本件発明1の発明者は原告のみであると主張するのに対し,被告は,Bのほか,被告の他の従業員も発明者に含まれると主張する。
「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想創作のうち高度のものをいう (特許法2条1項)から,特許法35条が定める相当の対価を請求し得 」る発明者とされるためには,当該発明に係る技術的思想を,願書に添付した特許請求の範囲の記載を基準とし,明細書の記載及び図面をも参酌して把握した上,その創作に具体的に加担し,貢献したことが必要である。
そこで,以下ではまず,本件発明1の発明に至る経緯について認定し(後記( ) ,本件発明1の技術的思想が何であるかを検討し(後記( ) ,その2 3 ) )上で原告のみが本件発明1の技術的思想に具体的に加担し,貢献したものであるか,あるいは,被告が主張するように,Bや被告の従業員もまた本件発明1の技術的思想創作に具体的に加担し,貢献したものと認められ,本件発明1の(共同)発明者と認められるか否かを判断する(後記( ) 。 4 )本件発明1の発明に至る経緯()2証拠(甲25,27,33の1・2,34の1・2,37,39,47,62ないし64,79,乙72,C証人,R証人,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア被告におけるオーダーメイド事業の立ち上げ被告は,女性用の体型補正用下着の販売等を業とする会社であり,従前はレディメイド商品(既製品)のみを取り扱っていたが,平成10年8月,当時被告の代表取締役であったQは,レディメイド商品が着用できない顧客層〔例えば,バストの大きさに左右差がある女性,乳ガンによりバストを切除した女性,アンダーバストが極端に大きい又は小さい女性,バージスサイズ(バストの底面周径)が広く,レディメイドのサイズが合わない女性等〕に対しても対応できる補整用下着を提供して顧客層を拡大することを企図し,新たにオーダーメイド事業を立ち上げることを決めた。これを受けて,被告従業員Sは,同月18日,同事業を展開するために旭化成のCADショールームを見学した。このとき,原告は旭化成の従業員であり,見学に訪れたSに対してCADソフトのデモンストレーションを行った。
被告は,平成11年1月,Qの幼馴染みであったRを被告に迎え入れ,Rを部長とするオーダーメイド事業を担当する部署として第二生産部を立ち上げた(甲47,乙72 。)被告は,従前,レディメイド商品の企画及び製造を外部の業者に委託し,自らは商品の販売のみを行っていた。このような外部の業者を被告では「協力工場」と呼んでおり,広瀬工業は被告の「協力工場」であった。被告は,新たに取り扱うオーダーメイド商品についても,広瀬工業に製造を委託すべく,平成11年2月,広瀬工業にその旨を伝え,了解を得た。
また,同じころ,被告では,Qを始めとする役員がオーダーメイド商品の製作にCADを使用することの可否を検討するため旭化成を訪れた。その際も原告がデモンストレーションを行い,翌3月にも原告は再度デモンストレーションを行った。
イ被告における納期遅れ問題被告は,平成11年3月にオーダーメイド商品の初の受注を受け,同年4月,オーダーメイド商品のパターン(型紙)作成のため新たにCADを導入した。原告は,これに伴い,旭化成において,被告におけるCAD導入の指導や従業員へのトレーニングを担当することとされた。
被告は,平成11年6月,400名を超える顧客からオーダーメイド商品の受注を受け,オーダーメイド商品の受注が本格化した。
ところが,当時被告では,オーダーメイド商品のパターンの作成は,顧客1人1人の採寸データからCADによって顧客ごとにパターンを作成していた。そのため,パタンナー(パターンを作成する者)は,CADでパターンを作成するにしても,1人で1日5ないし7枚(乳ガン用では1日1枚 ,す)なわち1日で顧客5ないし7名分のパターンを作成するのが限度であり,受注はしたものの,納品までに数か月を要するという事態が発生し,オーダーメイド商品の受注が本格化した直後から納期遅れの問題が深刻化し,その解消が重要な課題となっていた。
ウ原告による採寸表の作成また,当時,被告において行われていたオーダーメイドはいわゆるフルオーダーであったところ,被告において使用されていたオーダー表は,オーダ, , ー内容が文章で記載されていたり 手書きの図面で描かれていたりするなど採寸を担当する販売員により区々で,CADを効率的に利用することができない状況にあった。そこで,原告は,CADの効率的な利用を図るため,平成11年8月,被告のオーダー表を元にブラジャーの採寸表の原案(甲33の1・2)を作成した。なお,当時,被告では,バージスサイズの計測が行われていなかったため,オーダー表の採寸項目にバージスサイズは入っておらず,したがって,原告が作成した採寸表の原案にも同サイズは入っていない。
エ「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の提案原告は,被告においてCADの指導を行うようになったころから,従来のオーダーメイドの方法では,採寸ミスが発生しやすいこと,顧客の立場に立てば,出来上がり商品を体感することができないこと,その結果,ボディメイク(体型補正)の効果も十分には発揮できないことなどの問題があることを認識するようになった。そして,ファンデーション(下着)のオーダーメイドのあるべき方向性として,単に身体に合わせるだけではなく,体型を美しく整えること(ボディメイク)が必要であると考え,これを自らメジャー・アンド・メイク・オーダー」と呼び,平成11年8月に,CADの効率的な利用のための対策について被告役員から意見を求められた際 「QRオーダ ,ーシステム」と題する書面(甲37)を用いて,採寸項目の選定,グレーディングルールの作成等について説明するとともに,目指すべきオーダーメイドの方向性について 「メジャー・アンド・メイク・オーダー」という言葉を ,用いて上記のような考えを伝えた。
もっとも,当時,原告においては,この「メジャー・アンド・メイク・オーダー」を具体化する方法を見出すには至っていなかった。また,原告から「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考えを聞いた被告役員において, , は 当時はオーダーメイドの納期遅れの解消が最大の課題であったことから原告の考えに注意を払うことはなかった。
オ「バージス」の重要性についての認識原告は,平成11年9月22日,被告第二生産部の部内会議に参加し,バージスの重要性を説明した。
このとき,原告は,説明用の資料として,一覧表(甲62)を作成した。
この一覧表は,縦軸にアンダーバストサイズ,横軸がカップサイズが示されており,縦軸と横軸が交わる升には,そのアンダーバストサイズとカップサイズの組合せで構成される試着サンプルにおけるワイヤーのサイズが色付きで記載されている。原告は,これを用いて,ある着用者の採寸をする際,大きめのサイズから縮めて適合させる方法と,小さめのサイズから伸ばして適合させる方法とが考えられるが,そこで調整できるのはアンダーバストサイズとカップサイズであり,バージスは最初に試着サンプルを選択した時点で決定してしまうことを指摘し,一番最初にバージスに適合した試着サンプルを選択することが重要であることを説明した。
その後,被告のオーダー表に「カップくりサイズ」の項目が加えられ,採寸時に着用した試着サンプルの種類(例:C70)を記載することでバージスサイズを表記することとし,アンダーバストサイズよりも前に計測すべき項目として最上段に記載されることとなった(甲34の1・2 。)カデューブルベの試用原告は,バージスに着目したオーダーとして,ワコールからデューブルベという商品が登場したことを新聞報道により知り,平成12年4月17日,その試用を行った(甲39 。デューブルベで採用されていたバージスの計測 )方法は,専用の独立したメジャーを使用するものであり,着用感を確かめるために着用するゲージブラはカップと一体となって切り離せないものであった。
キ本件発明1に至る着想及びその具体化, , 被告は オーダーメイド商品の納期遅れ問題を解消する方策の一環としてCADを複数台納入することとした。第2生産部部長であったRは,CADの効率的利用の促進を図るため,原告に対して被告への入社を要請した。他方,原告は,旭化成の従業員として被告のオーダーメイド事業に関わるうちに,自らの手でファンデーション(下着)の新しいオーダーメイドを実現したいとの気持ちを強く持つようになったことから,Rの勧誘を受け,旭化成を退社し,平成12年6月21日,被告に入社した。当時の被告は,Qが会長,Tが社長であり,原告は,CAD室主任の役職を与えられた。
, 。 原告は Q及びRの指示により入社後約1か月間納期遅れ対策に従事したその後,納期遅れ解消に一定の目処がつき,原告は,自らの「メジャー・アンド・メイク・オーダー」の考え方に基づき,新しいオーダーメイドのシステムを実現するための検討を1人で進めた。
原告は,まず,アウターウェアにおいて用いられる仮縫いを利用した洋服作成の手法を参考にした。すなわち,原告は,創美苑服飾専門学校において教師をしていた経歴を持ち(甲25 ,仮縫いと試着とを繰り返して着用者の )体型に合った洋服を製作することを教えていた経験から,この方法がファンデーションに応用できないかと考えた。しかし,仮縫いは,着用者が衣類を着用したままの状態で針と糸とを用いるものであるから,ファンデーション, , のように 肌に直接着用する衣類にそのまま用いることには危険が伴うため原告は発想を転換し,仮縫いにより寸法を変更して着用するのではなく,あらかじめパターンの違うパーツを用意し,これを着用者に組み合わせて着用, 。 させて採寸することにより 仮縫いと同様の効果を実現することを着想したそして,原告は,平成12年9月ころから,上記の考え方を具体化する方法,及びオーダーメイドにおいて特に重要であると考えていたバージスを重視した採寸を実現する方法の検討を始めた。
まず,原告は,簡易オーダー表により被告に蓄積されていた顧客のデータを分析し,被告のフルオーダーにおいて,試着サンプルからの修正がどのように分布しているのかを研究することとし,甲第26号証の表を作成した。
この表は,縦軸にアンダーバストサイズ,横軸にカップサイズを記載し,縦軸と横軸の交わる部分に,フルオーダーの採寸において着用者がその組合せを基準サイズとして試着サンプルを着用した人数を青色ペンで記載したものであり,アイテムごとに作成されている(FSはフルカップショートブラジャー,FLはフルカップロングブラジャー,BSは4分の3カップショートブラジャー,BLは4分の3カップロングブラジャー,Vはボディスーツを意味する。この表により,どのような試着サンプルサイズを着用する顧客 。)がオーダーに多く訪れているかが判明した。しかし,現実にどのような修正をしているのかということまでは分からず 具体的な成果には結びつかなかっ ,た。
次に 原告は ブラジャーのJIS規格において サイズ表記の基準となっ ,, ,ているアンダーバストサイズとカップサイズのうち,アンダーバストサイズを切り離し,JIS規格においては考慮されていないバージスサイズとカップサイズとの組合せでサイズ表記ができないかを検討するため,甲第27号証の1枚目の表を作成した。この表の縦軸に記載されているW1,W2…という記号は,ワイヤーの頭文字をとったWに,ワイヤーの長さの短いものから順番に1,2…という数字を組み合わせることにより,ワイヤーのサイズをもってバージスサイズを表記しようとしたものである。また,この表の横軸に記載されているC1,C2…という記号は,カップの頭文字のCに小さいサイズから順番に1からの数字を付したものである。ブラジャーにおいて通常用いられるA,Bといったカップサイズ表記を使用しなかったのは,カップサイズがトップバストサイズとアンダーバストサイズの寸法の差により決定されるものであるところ,アンダーバストを切り離した場合には,同様の表記をすることが適切ではないと考えたためである。しかし,甲第27号証の1枚目の表による検討では,縦軸と横軸の交わるところに,レディメイドの場合と同じくアンダーバストサイズを記入してしまったため,アンダーバストを切り離して考えるという試みは失敗に終わった。
,, 。, そこで 原告は 甲第27号証2枚目の表を用いた検討を行った ここで原告は,アンダーバストサイズはバック部(後ろ身頃)の長さで調節することができるので,前身頃についてはどのようなアンダーバストサイズでも共通して使用することができること,その結果として,ブラジャーのサイズ表記について,アンダーバストサイズを切り離し,バージスサイズとカップサイズとの組合せで表記できることに想い到った。そして,カップサイズについては,水平方向の表面の寸法(渡り寸法)ではなく,下カップの高さ(下カップ丈)で表記できるのではないかと考え,それまで原告が試みていたカップ表面の寸法での表記をやめ,下カップの高さでカップサイズを表記することとし,甲第27号証の2枚目の表を作成した。この表の横軸に記載されているW1,W2…という記号は,ワイヤーの頭文字をとったWに,ワイヤーの長さの短いものから順番に1,2…という数字を組み合わせることにより,ワイヤーのサイズをもってバージスサイズを表記しようとしたものであり,縦軸に記載されているC1,C2…という記号は,カップの頭文字のC,,「」 に小さいサイズから順番に1からの数字を付したものであるが 表中W1の列に「6.0 「6.5」と記載されているのが,下カップの高さである。 」そして 縦軸と横軸の交わる升には そのワイヤーサイズとカップサイズ 下 , , (カップの高さによって表記されたサイズ)の組合せからなるレディメイド製品が存在する部分に○印を入れ,どのようなサイズがレディメイドには存在しないかを検討した。
次いで,原告は,甲第27号証の3枚目の表を用いた検討を行った。この表は,上から2行目に,W1,W2という記号による表記に対応するワイヤーの寸法が記載されており,W4の行には,下カップ丈の寸法である「7.0 「7.5」…「13.5」という数字が記載されている。この表から,原 」告は,バージスが,アンダーバストとカップの組合せによって自動的に決定される付随的な寸法ではなく,単独の独立した寸法として計測できるものであることを確信した。その上で,C1,C2という記号で表していたカップサイズについても,下カップの高さを用いることにより,A,Bといった通常用いられる呼称で使用できると考え,改めて甲第27号証1枚目の表のC1,C2…という記号の横にA,B…というカップサイズを記入した。
そして,原告は,レディメイド商品では,カップ,カップ受け部,後ろ身頃を同時にグレーディングするものであるところ,上記の検討の結果,オーダーメイドにおいては,カップ,カップ受け部,後ろ身頃を別々に切り離すことができることを確信し,これらについて各々別々にグレーディングを行うことができることを認識した。
原告は,これらのパーツの組合せの仕方について,後ろ身頃が単独のパーツで構成できることを図(甲64)によって検証した。そして,市販のブラジャーのカップくりの部分にはさみを入れ,カップと前身頃を切り離して,カップ部を切り離した前身頃を顧客のバストにあてがうことにより,顧客のバージスに沿っているか否かがわかると考え,さらに,カップを切り取った前身頃に,同じバージスサイズでカップサイズの違うカップをミシンで縫いつけて,違うサイズの組み合わせができることを検証した。その結果,原告は,前身頃が単独で構成され得ること,バージスサイズを同一にしてカップサイズ(下カップの高さ)を変えた複数のカップ部を組み合わせることができることを確認した。
クグレーディング及び試作品の作成その後,原告は,実際に商品展開するため,各パーツのサイズを用意すべく,CADを用いて,バージスを一定にしてカップの高さを変化させる等のグレーディング作業を行った。その際,下カップと上カップ,カップ受け部とカップ部の境目がいずれも曲線で立体的な構成となっていることから,サイズの違うパーツを組み合わせた場合につながりが滑らかに行くかどうかを検証するため,原告は,CADを使ったパターンの修正とグレーディングルールの修正,サイズピッチの修正を繰り返して行い,最初の試作品を製作した。この試作品は,カップ部と前身頃(カップ受け部 ,後ろ身頃の3つのパ ), ,。 ーツに分け 各々を面ファスナーでつなげたものであり 色は黒色であった原告は,この試作品を息子に着用させたところ,横に引っ張る力が強く働くため,前身頃と後ろ身頃の接合部分が面ファスナーでははがれてしまうことがわかり,この部分の接合部品をフックに変更した。
ケ特許出願その後,原告は,上記試作品をRに見せ,その結果,特許出願のため弁理士に相談することとなった。原告は,自ら明細書を真似て実用新案登録の願書を作成し,特許出願用のサンプル品を持参して特許事務所に赴いた。特許出願用のサンプル品は,Rの指示により,被告の協力工場の一つである松田産業が縫製した。松田産業は,原告が作成した甲第63号証のパターンに基づいてサンプル品を縫製した。甲第63号証には「FUKKU」や「TE-PU」と書かれたパーツが存在し,特許出願用サンプル品にもフックやマジックテープといったパーツが存在しており,色はピンクであった。特許出願に向けた弁理士とのやり取りは,すべて原告が対応した。原告は,願書を提出するまで出願内容について口外しないよう弁理士から口止めされたため,具体的な構成については,出願まで第二生産部の部員に知らせなかった。
本件発明1は,平成13年1月16日に特許出願された。
本件発明1の技術的思想()3ア本件明細書1の記載本件明細書1には次の記載がある。
【発明が解決しようとする課題】(ア)【0005】「しかしながら,カップ部のフィット感は,バージスサイズ,すなわち乳房の下縁の半円状の輪郭線(バージスライン)の曲率とカップ高さによって異なってくるものであり,このバージスサイズとカップ高さとの組合せは各個人により様々であるが,上記の例では両者の組合せを種々に変えた胸当て部が用意されているわけではないので,バージスサイズ及びカップ高さの両者を合わせることは難しく,カップ部のフィット性は十分とはいえなかった 」。
【0007】「そこで,仕上がり状態と寸法的に同様な計測用サンプルを試着して実際の着用感を体感でき,また体型補整を目的として,あるいは着用者の好みに合わせて細かい寸法調整のできるカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式が望まれていた 」。
【0008】「したがって,本発明の目的とするところは,カップ部を有する衣類において,着用者の体型に対応したカスタムサイズのカップ部を有し,着用時にフィット感のある衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。またさらに,着用者がカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする 」。
【課題を解決するための手段】(イ)【0009】「上記目的を達成するために,本発明に係るカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプルは,請求項1記載のように,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設ける構成としたものである 」。
【0010】「このように構成すれば,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を選定することが容易であり,顧客はカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式を提供することができる 」。
【0018】「本発明は上記のようなオーダーメイド用計測サンプルを用いたオーダーメイド方式も提供している。すなわち,本発明に係るカップ部を有する衣類のオーダーメイド方式は,請求項5記載のように,バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせからなり,カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けることにより,カスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたことを特徴とするオーダーメイド方式である 」。
【0019】「カップ受部に対してカップ部を着脱可能に設けたオーダーメイド用計測サンプルを利用するものであって,カップ受部についてはバージスサイズを変えたものを複数種類用意し,カップ部については1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えたものを複数種類用意して両者を着脱自在に組み合わせ可能とし,これらの組合せを種々に変えることにより,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ部を。」 有するオーダーメイド用計測サンプルの試着を可能としたものである【発明の効果】(ウ)【0036】「以上の説明から明らかな通り,本発明のオーダーメイド用計測サンプルを使用すれば,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を選定することが容易であり,顧客はカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができる利点を有している 」。
【0037】「また本発明のオーダーメイド方式によると,顧客はカスタムサイズのカップ部を有するオーダーメイド用計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式となし得たのである。また,このようなオーダーメイド方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体型補整を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる利点も有している 」。
【0038】「また,各部材の組合せからなるオーダーメイド用計測サンプルを使用するものであるから,各部材ごとにサイズ順に重ね合わせればコンパクトに保管することができ,また,持ち運びも容易であり,しかも組合せ式であるから比較的少ない部材で多様な体型に対応し得るので,ブラジャー等をオーダーメイド方式で店舗販売する場合の試着式採寸に限らず,出張採寸にも適したオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供し得たのである 」。
イ本件発明1の技術的思想の本質的部分について上記アに先行技術(たとえば,甲13,乙3,4,6)を併せ考慮すると,本件発明1の技術的思想の本質的部分は,顧客のバージスサイズ及びカップ高さにフィットしたカップ受部とカップ部を容易に選定することができ,あらかじめそのフィット感を確認できる構成,すなわち 「バージ ,スサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せ」からなる構成とした点にあるものと認められる。
本件発明1の発明者について()4ア上記認定事実によれば,原告は,平成12年7月ころから,オーダーメイドのブラジャー用の計測サンプルの創作を開始し,アウターウエアにおいて用いられる仮縫いの手法から発想を転換して,あらかじめパターンの違うパーツを用意し,これを着用者に組み合わせて着用させて採寸することにより仮縫いと同様の効果を実現することを着想したが,これは,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組合せ」の基本となる考え方ということができる。また,原告は,オーダーメイドのブラジャーにおいてはバージスラインが特に重要であると常々考えていたことから,バージスラインを重視した採寸を実現することによって上記の考え方を具体化する方法を検討し,甲第27号証の1枚目ないし3枚目の各表を用いた検討の中で,平成12年9月ころには,JIS規格ではブラジャーのサイズ表記として採用されていなかったバージスサイズが単独の独立した寸法として計測できることを確認し,カップサイズについても,JIS規格がカップ表面の水平方向の寸法(渡り寸法)で表記していたものを,下カップの高さ(下カップ丈)によって表記することとし,前身頃が単独で構成され得ること及びバージスを同一にしてカップ高さを変えた複数のカップ部を組み合わせることができることを確認したことが認められるところ,この時点において原告は,本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ高さを変えた複数のカップ部との組み合わせ」に着想し,本件発明1を完成させたものと認められる。
イ被告は,Bも本件発明1の発明者であると主張し,B証人は,平成11年10月ころ,あらかじめ部品の作り置きをしておいた上でそれを組み合わせるオーダーメイドをしてはどうかと提案した旨供述する〔同証人作成の陳述書(乙5,70)中の供述記載部分を含む。以下同じ。。〕しかし,Bが本件発明1の技術的思想の本質的部分である「バージスサイズを変えた複数のカップ受部と,1つのバージスサイズにおいてカップ」,, 高さを変えた複数のカップ部との組み合わせ を着想したこと すなわち本件発明1の課題とその解決手段ないし方法を具体的に認識し,これを技術的思想として概念化することに関与し,これに貢献したことを認めるに足りる証拠はない。
かえって,Bは,部品の作り置きの提案をした理由について,オーダーメイド商品の納期遅れ対策である旨供述していることから,着用時にフィット感のある衣類を提供すること等の,本件発明1の発明の課題を認識していなかったものと認められる。また,Bは,原告代理人からの「バージスサイズを基本として計測する器具を何か提案されたことありますか。こんな器具使ったら,バージスサイズが計測できるよって 」との質問に対 。
し 「具体的にはありません。バージスというカップくりがありますけど ,も,そういう具体的な話じゃなくて,飽くまでも作り置きすると,それを有効活用するための計測器といいますか,メジャーサンプルというか,ということで,具体的にバージスのくりであるとか,そういうことは記憶にありません 」と供述しており(B証人供述調書30頁 ,同供述からは, 。 )Bが本件発明1の発明の課題の解決手段を認識していたことはうかがえない。他に,Bが本件発明1の技術的思想創作に具体的に加担し,貢献したことをうかがわせる証拠はない。
したがって,Bは,本件発明1の共同発明者であるとは認められない。
ウ被告は,原告以外のオーダーメイド研究会のメンバーである被告の従業員らも本件発明1の共同発明者である旨主張するが,C及びDの証言を含む本件全証拠によっても,これらの者が上記の本件発明1の技術的思想の本質的部分を着想し,その創作に具体的に加担し,貢献したことは認められない。
エ以上によれば,本件発明1の発明者は原告のみであると認められる。
2争点( )(本件発明2の発明者は原告のみか )について2 。
はじめに()1原告が本件発明2の発明者の一人であることは当事者間に争いがない。原告は,本件発明2の発明者は原告のみであると主張するのに対し,被告は,Bのほか,被告の他の従業員も発明者に含まれると主張する。上記説示のとおり,特許法35条が定める相当の対価を請求し得る発明者とされるためには,願書に添付した特許請求の範囲の記載を基準とし,明細書の記載及び図面をも参酌して把握される当該発明の技術的思想創作に具体的に加担し,貢献したことが必要である。
そこで,以下ではまず,本件発明2の発明に至る経緯について認定し(後記( ) ,本件発明2の技術的思想が何であるかを検討し(後記( ) ,その2 3 ) )上で原告のみが本件発明2の技術的思想創作に具体的に加担し,貢献したものであるか,あるいは,被告が主張するように,Bや被告の他の従業員もまた本件発明2の技術的思想創作に具体的に加担し,貢献したものと認められ,本件発明2の(共同)発明者と認められるか否かを判断する(後記( ) 。
4 )本件発明2の発明に至る経緯()2ア既存のガードルに対する問題意識原告は,従来のガードルの問題点は,JIS規格ではウエストを基準としてサイズ設定がされていること,また,ガードルのヒップ部は生地を薄く延ばす加工が施されているため,ガードルにおいて最も体型補整効果を発揮することが期待されるヒップ部の形状を害することにあると考えていた。そのため,原告は,ガードルについて,ブラジャーと同様採寸時に体感できるオーダーメイド方法を実現しつつ,ヒップの体型補整を重視したオーダーメイドガードルを実現することが課題であると考えていた(甲79・28頁 。)イオーダー表の作成原告は,旭化成の従業員として被告のCADの指導を行っていた平成11,, 。, 年5月ころから 被告に対し オーダー表の改訂の提案を行っていた まず, 。 原告は 平成11年5月14日にショートガードルのオーダー表を作成したこれは,ガーメントリストの「MAGS6000-TEST (乙37の7) 」に具体化された。また,原告は,同年7月5日にロングガードルのオーダー。,「」() 表を作成した これは ガーメントリストの GL6-64乙37の10に具体化された。さらに,原告は,これをもとに,同月26日ころ,ロングガードルのオーダー表(甲31)を提案した。被告の従業員は,これをもとにエクセルを使用して甲第32号証を作成した。甲第31号証において採寸項目に用いられているコード番号と,甲第32号証のコード番号が一致しているのはそのためである。このように,オーダー表の作成のため,採寸箇所を検討したことが,本件発明2の創作において,いかなる箇所のサイズをいかにして調節して計測するかを検討する上での基礎となった。
ウ体型の考え方原告は,前示認定のとおり,被告入社から約1か月を経過した後に本件発明1の創作に取り掛かったが,その際,原告は,並行してガードルについても構想を練っていた。これは,ブラジャーの中でも,ロングブラジャーは裾がウエスト部に当たり,ガードルのウエストとロングブラジャーのウエストとが同じ位置にくることになるため,両者は,ウエスト部でのつながりを意, 。, 識し 一体をなすものとして開発する必要があったからである このようなブラジャーとガードルの一体性を考える上で,原告は「体型」に着目していた。
婦人服におけるJIS規格は 「同一のバストサイズに対してヒップが大き ,いか小さいかということを体型で表し」ているのみで 「ウエストは年代別の ,範囲表示」になっているにすぎない。これに対し,原告の考える「体型」という概念は,ウエストを範囲表示にとどめるのではなく,各人の「ウエストも含めた体型」というものであった。すなわち,原告は,過去の勤務先等で重ねて来た職務経験や,被告の採寸データの集計に基づき,ウエスト部の体型についてX体型,H体型,O体型,また,ヒップカップ部についてW体,I体,M体等という独自の分類を創作し,これに従ってアルファベット表記した「体型分類」という考え方を考案した。原告は,本件発明1に関して弁理士に特許出願の相談をした平成12年11月16日までにこの「体型」の考え方をまとめたノート(甲29)を作成し,同日これを弁理士のもとに持参した。
エ具体的な検討原告は,平成13年7月ころから,ガードルの計測サンプルについての具体的な検討を開始した。
まず,原告は,JIS規格ではウエストを基準としてサイズ設定がされており,また,ガードルのヒップ部が十分な体型補正効果を発揮できていないという既存のガードルに対する前記問題意識に基づき,JIS規格のサイズ表示を利用せず,ヒップを中心とした独自の規格を採用した。すなわち,ガードルのオーダーに際しては,まずヒップのサイズを計測した上で,ウエスト,大腿部を計測していくことになることから,原告は市販のガードルを購入し,これをもとにCADを駆使して,ヒップを固定した上でウエスト,大腿部を調節した場合におけるパターンの検討を行った。この検討において,原告は 「大腿部を変えることによって,ヒップトップと大腿部のところに角 ,度がつくので,そこでAカップ,Bカップ,Cカップというふうに表現できるのではないか」と考え,ヒップカップという考えに思い到った。この「ヒップカップ」という考え方は,単にヒップ部の立体形状を捉えてカップという名称で呼んだというものではなく ヒップトップと大腿部の角度の差をもっ ,てAカップ,Bカップ・・・という大きさを表記する具体的指標(甲91・24頁)であり,従来存在しなかった考え方であった。このヒップカップという考え方を応用した技術を実現するためには,ヒップトップ部と大腿部の差を調節できるようにする必要があるところ,原告は,大腿部のサイズを調節することにより,これを実現できること,そして,ヒップカップの調節・採寸のためには,大腿部の調節が最も重要であることを認識するに至った。
そこで,原告は,このような調節を可能にするため,大腿部に切替え線(切り込み)を入れ,この部分にマジックテープを付けて,スライドさせることにより,ヒップカップサイズを調節すること,この切り込み部分に目盛りを付けることを考えついた。そして,このようにしてヒップカップサイズを計測した後,ウエストの計測も同様の方法により行うこととした。
原告は,遅くとも平成13年8月8日までに,以上の考えを盛り込んだ甲第71号証のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した(乙38の142記載の9356番 。),, , 。 次に 原告は 上記の考えを具体化するため 部材の選定作業に着手したそして,まず,原告は,ガードル自体が伸縮性のあるものであるため,出来上がりを体感するためには,計測の機能を有する部分がこの伸縮性を阻害しないようにする必要があるところ,伸縮性のある面ファスナーを使用することによりこの問題を解決することができると考え,部材メーカーであるセイブ繊維にその調達を依頼した。また,原告は,大腿部の端部(股口)の調節部分については,ヒップの立体的な形状に適合した形状となるように連結部材を構成する必要があるところ,面ファスナーをペンシル型にカットした場合に谷になる方の部材を使用することで,立体的な形状を出すことができる。,,。 と考えた このようにして 平成13年10月ころ 部材の選定が完了したオ特許出願用サンプル品の縫製原告は,平成13年8月2日,被告の従業員であるD,U及びKとともに,Bを尋ね,ガードルの計測サンプルの縫製を依頼した。Bはこれを了承し,乙第19号証のマスターパターン(ヒップサイズ88のもの)を作成し,同月23日これを被告に送付した。被告第2生産部のDは,Bから送付を受けたマスターパターンをもとにグレーディングを行い,広瀬工業は,被告から送付を受けたグレーディングパターンをもとに試着品を縫製した。原告は,試着品のウエスト部分に切り込みを入れ,同部分にマジックテープを付けて試着品を完成させた。
同年10月23日,原告ら被告従業員のほか,Bも参加して,上記試着品の試着会が行われた。この試着会の後,Dは,マスターパターンを3つ, , に分けるため 乙第35号証のパターン縮図を作成して広瀬工業に送付しBにマスターパターンの修正を依頼した。これに応じてBは,乙第20ないし22号証の3種類のマスターパターン(順にヒップサイズ88,108,100のもの)を作成し,これをもとに試着品を縫製した。その後,原告が試着品の大腿部端部に切れ込みを入れた。
同年11月19日,原告ら被告従業員のほか,Bも参加して,上記試着品の試着会が行われた。この後,Dは,乙第34号証のパターン図を作成してこれをBに送り,パターンの修正を依頼した。Bは,これを受けてパターンを修正し,このパターンに基づいて特許出願用のサンプル品を縫製した。
カ特許出願の準備及び商品化作業原告は,本件発明2について弁理士に相談をした後,1人で出願書類等のチェックを行った。被告は,平成14年2月13日,本件特許2の特許出願をした。
本件発明2の技術的思想()3ア本件明細書2の記載本件明細書2には次の記載がある。
【発明が解決しようとする課題】(ア)【0008】「本発明の目的とするところは,着用者の体型にフィットしたカスタムサイズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するところにある。また,着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供することを目的とする 」。
【課題を解決するための手段】(イ)【0016】「また,ヒップの頂部(ヒップの最も太い部分)を通る水平方向の周長寸法で表されるヒップサイズが同じでも,ヒップの膨らみ具合,つまり,ヒップカップサイズが異なることが多い。ヒップサイズのみのオーダーメイド方式では,顧客のヒップ形状に合わせることができない。ヒップカップサイズは各種あるため,顧客に合ったヒップカップサイズのカスタムサイズにオーダーできるのが好ましい 」。
【0017】「そこで,本発明は,後身のヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けたボトム計測サンプルを提供するものである。この構成によると,ボトム計測サンプルを顧客の身体に当ててヒップカップサイズを顧客のヒップカップサイズに調節できる。したがって,カスタムサイズのヒップカップサイズを有するボトム計測サンプルを試着させることができ,同時にその調節されたヒップカップサイズを計測することができる 」。
【0019】「ヒップカップ計測手段は,ヒップカップサイズを調節する機能と,その調節量を計測する機能とを併せ持っている。ヒップカップサイズを調節する機能は,前身の下端縁,後身の下端縁及び股下部の側縁によって囲まれた股口のうち,後身の下端縁からヒップカップ部側に切り込みを入れて分割し,分割した一片と他片とが連結部材を介して着脱自在に止着可能とする態様で発現できる。また,身頃の股口の一部を錐形につまんで周方向に折返した折返部を形成し,この折返部を折返した側の股口に止着し,又は離反可能とする態様により,ヒップカップサイズを調節する機能を発揮できるようにしてもよい。この折返しの量を変えることにより,ヒップカップサイズを調節することができる。また,ヒップカップ調節量を計測する機能は,ウエスト計測手段と同様な構成によって発現される 」。
【0031】「ヒップサイズを変えたボトム計測サンプルを複数種類用意し,着用者のカスタムサイズに合ったヒップサイズのボトム計測サンプルを選択して着用させる。そして,ウエスト計測手段,ヒップカップ計測手段,脚口計測手段及び/又は胴部計測手段により,それぞれのサイズを顧客のサイズに調節することにより,カスタムサイズとなったボトム計測サンプルの試着させることができる。同時に,調節されたそれぞれのサイズを計測することができる 」。
【0032】「これにより顧客はカスタムサイズのボトム計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用者の体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式を提供することができる。また,この方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体形補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる。また,同時に,カスタムサイズを計測することができるので,それに従ってカスタムサイズの衣類を製造し,提供することができる 」。
【0033】「また,ヒップサイズを変えたものさえ複数用意すれば,ウエスト,ヒップカップ等を調節して,多様な体型に対応することができる。したがって,ボトム計測サンプル点数が少なくてすみ,保管場所をとらず,持ち運びも容易となる。ボトムを有する衣類をオーダーメイド方式で店舗販売する場合の試着式採寸に限らず,出張採寸にも適したオーダーメイド用ボトム計測サンプル及びオーダーメイド方式といえる 」。
【発明の効果】(ウ)【0080】「本発明の計測サンプルを使用すれば,顧客の体型にフィットした計測サンプルとすることが容易であり,顧客はカスタムサイズを有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用者の体型に合った衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができる利点を有している 」。
【0081】「また本発明のオーダーメイド方式によると,顧客はカスタムサイズを有する計測サンプルを試着した上で注文することができるので,着用時にフィット感のある衣類を提供できるとともに,あらかじめそのフィット感を確認した上で注文することができるオーダーメイド方式となし得たのである。また,このようなオーダーメイド方式によれば,メジャー等での計測だけでは分からない素材収縮率の調整,体形補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる利点も有している 」。
イ本件発明2の技術的思想の本質的部分(,,,), 上記アに先行技術 たとえば 甲10 12 乙8 を併せ考慮すると本件発明2の技術的思想の本質的部分は 「ヒップ部にヒップカップサイ ,ズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けた」との点であって 「該ヒ,ップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが」着脱自在に止着可能で「ヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記された」構成にした点にあるものと認められる。
本件発明2の発明者について()4ア上記認定事実によれば,原告は,平成13年7月ころからガードル用の計測サンプルについて具体的な検討を始め,JIS規格にはなかった「ヒップカップサイズ」という独自の指標を考案し,甲第71号証のパターン(品番Y-GのLパターン)を作成した遅くとも同年8月8日までには,この指標を用いて大腿部の端部からヒップカップ部中央にかけて切り込みを設け,この部分にマジックテープを付けて着脱自在とし,同部分をスライドさせることによりヒップカップサイズの指標に合わせてその調節が可能となるような仕組みを着想していたものであり,これは,本件発明2の技術的思想の本質的部分である「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けた」オーダーメイドのガードル用計測サンプルにおいて 「該ヒップカップ計測手段は,前記ヒップ部が股口から ,ヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが」着脱自在に止着可能で「ヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛」 ,,, が記された 構成を着想したものと認められ したがって 本件発明2は遅くとも同年8月8日までに原告が単独で完成させたものと認められる。
イ被告は,Bも本件発明2の発明者であると主張し,Bは,広瀬工業は被告から本件発明2に関する開発を丸投げされたと供述する〔同証人作成の陳述書(乙5,70)中の供述記載を含む。。〕しかし,Bが,本件発明2の技術的思想の本質的部分である「ヒップ部にヒップカップサイズを調節可能なヒップカップ計測手段を設けた」オーダーメイドのガードル用計測サンプルにおいて 「該ヒップカップ計測手 ,段は,前記ヒップ部が股口からヒップカップ部の略中央に向かって切り込みを入れて分割され,分割された一片と他片とが」着脱自在に止着可能で「ヒップカップサイズ調節可能とされ,前記一片の他片との連結位置にヒップカップサイズ計測用の目盛が記された」構成を着想したこと,すなわち,本件発明2の課題とその解決手段ないし方法を具体的に認識し,技術に関する思想として概念化したことを認めるに足りる証拠はない。
Bは,本件発明2に関する開発を丸投げされたことを裏付ける証拠として,乙第19ないし第22号証のマスターパターンをBが作成したことを挙げるが,これらのパターンには,本件発明2の技術的思想の本質的部分である,大腿部端部からヒップカップ中央部にかけての切り込みのうち,ヒップ部の切り込みしかなく,大腿部端部の切り込みが入っていない。また,乙第19号証のマスターパターンは,原告が本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想した平成13年8月よりも後である同月23日に作成, , されたものであり 乙第20号証ないし第22号証のマスターパターンはそれよりもさらに後である同年10月23日の試着会の後に作成されたものであるから,Bが平成13年10月23日時点でもなお,本件発明2の技術的思想の本質的部分に想到していなかったことは明らかである。そして,大腿部に切り込みがない理由を尋ねる原告代理人の質問に対し,Bは「ちょっと意味が分かりません 」と答えるなど,質問の趣旨自体推し量 。
りかねるという意味の返答を繰り返していること(B証人供述調書20頁ないし21頁 ,大腿部からヒップ部にかけて切り込みを入れるアイデア )は誰が着想したのかという裁判所調査官の質問に対し,Bは「ガードルを開発依頼されたときに,当然,HMSのガードルですので,オーダーを取らなきゃいけませんので,パターン上,はぎを入れるというのは必要不可欠なんですね。で,当時の被告のあこがれというガードルは,ヒップのところにはぎがなかったんです。それが被告の当時のガードルの特徴でしたので,今回,オーダーを作るという依頼があったときに,どうしてもヒップにはぎを入れなくてはいけませんので,今までの被告のコンセプトといいますか,そういうこととちょっと異なりますので,それは確認さしてもらいました 」と,ヒップ部に切り込みを入れた理由のみを述べ,裁判所 。
調査官からの「はぎ」の意味を尋ねる質問に対し 「はぎって,切り替え ,ですね。当時の被告の商品は,1枚をプレス加工で,モールド加工と言うんですけれども,それを膨らまして立体にしておったんですね。それを,はぎを中心に入れてパターンを2つにしたというふうに御理解いただいたら分かるんですけれども,それを張り合わせるということですね 」と答。
,, , えるにとどまっていることからすると Bは この供述時点においてさえ本件発明2の技術的思想の本質的部分についてどの程度理解していたのか疑問である。まして,原告が本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想した平成13年8月時点において,Bも本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想していた,あるいは,その着想に関与していたものとは認められない。むしろ,上記供述内容からすると,Bが被告から「開発を丸投げされた」というのは,受注を受けたオーダーメイドのガードル商品自体の縫製を全面的に任された,あるいは,オーダーメイドのガードル用の計測サンプルの縫製を丸投げで依頼されたという程度の趣旨であると解するのが自然であり,オーダーメイドのガードル用の計測サンプル自体の開発を丸投げで依頼されたとの趣旨であったとはにわかに認め難い。
ウ被告は,Dも本件発明2の発明者であると主張し,D及びCはその旨供述する〔各証人作成の陳述書(D証人につき乙7,71,C証人につき乙72)中の供述記載を含む。。)〕しかし,Dが平成13年10月23日の試着会の後に作成した乙第35号証のパターン及び同年11月19日の試着会の後に作成した乙第34号証のパターンのいずれにも,B作成の上記各パターンと同様,本件発明2の技術的思想の本質的部分である,大腿部端部からヒップカップ中央部にかけての切り込みのうちヒップ部の切り込みしかなく,大腿部端部の切り込みが入っていないから,原告が本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想した平成13年8月時点において,Dも本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想していた,あるいは,その着想に関与していたものとは認められない。
エ被告は,P及びCも本件発明2の発明者である旨主張するが,原告が本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想した平成13年8月時点におい,, てP及びCが本件発明2の技術的思想の本質的部分を着想した あるいはその着想に関与していたことを認めるに足りる証拠はない。
オ以上によれば,本件発明2の発明者は原告のみであると認められる。
3争点( )(HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合)について3はじめに ()1原告は次のとおり主張する。すなわち,HMS商品の売上実績は主として本件各発明の競争優位性によるものである。被告の販売促進活動や多色展開等は,売上実績との関係では従たる要因にすぎない。以上によれば,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は,2分の1を下らない,と。
これに対し,被告は次のとおり主張する。すなわち,本件各発明は単なる計測器に関する発明であり,HMS商品そのものの発明ではない。また,HMSメジャーでの計測値や身生地がそのままHMS商品の製造に用いられているわけではない。HMS商品の売上げは,多色展開等,被告による新商品の開発・発売,レディメイドの新商品の発売抑制,HMS商品の販売促進活動による部分が大きい。以上によれば,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は,10%以下である,と。
当裁判所は,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(超過売上げの割合)は2分の1であると判断するものである。理由は以下に説示するとおりであるが,まず,HMS商品の売上実績及び販売促進活動の状況について認定し(後記( ) ,これを踏まえて,HMS商品の売上実績に対す2 )る被告の販売促進活動の寄与について検討する(後記( ) 。そして,本件3 )各発明の実施とHMS商品の売上げとの関係について検討し(後記( ) ,4 )最後に,HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合についての結論を示す(後記( ) 。
5 )HMS商品の売上実績及び販売促進活動の状況()2(,,,,) , 証拠 甲6〜8 43 50 51 乙90 及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
ア第24期(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで)第24期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高 153億円(。) 単位未満四捨五入 以下同じ(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 117億円販売管理費合計144億円うち営業施策関連費用●●円営業利益 △27億円第24期の有価証券報告書(甲50)には,次の記載がある。
(イ)「当社グループは…特に,既にテスト販売を開始し好成績を上げている当社グループ独自のメジャーシステム,生産システムによるオーダーメードのブラジャー(マイモード)を戦略商品として位置付け新市場を開拓し業績向上に邁進する所存であります(甲50・11頁 。 。」)販売促進活動の状況(ウ)被告は,平成13年6月からHMS商品の試験販売を開始したが,その際には特段の販売促進活動は行っていない。
イ第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)第25期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高209億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 167億円販売管理費合計151億円うち営業施策関連費用●●●円営業利益 16億円第25期の有価証券報告書(甲51)には,次の記載がある。
(イ)「当連結会計年度は,当社グループ独自のメジャーシステムによるオーダーメードシステム(ハイブリッドメジャーシステム)のブラジャー・ガードルを戦略商品として位置付けし 『ヌディータ 『カラーフィット』の ,』新製品を相次いで発売いたしました「これらの結果,当連結会計年度の 。」,売上高は208億72百万円(前年同期比36.6%増 ,経常利益15億 )97百万円…と大幅な増収増益となりました(甲51・8頁 。 。」)販売促進活動の状況(ウ)被告は,第25期において,HMS商品を戦略商品として位置付け,HMSによる下着のオーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の新商品だけを発売して,その売り込みを強化する方針をとった。しかし,上半期(平成13年9月から平成14年1月まで)においては,前年同月を下回る売上げしか達成できなかった月が大半であり,特に平成14年1月度は10億円を下回る売上げしか達成できず,売上高は73億600万円(前年同期比6.4%減)にとどまり,経常損失は8億2200万円を記録した(乙90 。)そこで,被告は,平成14年2月からキャンペーンと称する販売促進活動を始めるとともに,同年3月のHMS商品「ヌディータ」のブラジャーとロングガードルやHMS商品「あこがれ 「ミーチュー」のロングガード 」ルの発売に合わせて,商品購入者には「ヌディータ」のブラジャーを,紹介者にはベーシックショーツを,それぞれプレゼントするというキャンペーンを始めた。
しかし 「ヌディータ」のブラジャーやロングガードルの売上げが芳しく ,なかったことから,被告は,当初平成14年秋ころから実施予定としていたHMS商品の多色展開を急遽6月に繰り上げ 「カラーフィット」の名称 ,でHMSの新商品(完成したHMS商品を後染めして顧客の好みの色に染色したもの)を発売することとし,同年6月には夏カラーを,同年8月には秋カラーを販売した。また,これに併せて,同年6月1日から8月11日までの間,新たなキャンペーンとして 「カラーフィットデビューキャン ,ペーン(GO!GO!キャンペーン 」を全社挙げて実施した。このキャンペー )ンは,被告の支社・支部,営業店及び販売員に対するインセンティブの設定や初来店者に対する特典の付与を行うことに加えて,成約対策として,分割払金利手数料を被告が負担したり,セット購入者に対して累進的な自社製品の提供(たとえば,35万円以上の購入者に対して10万円相当の商品をプレゼントするなど)を行うなどして,売上げの大幅アップを目指したものである。
<中略>ウ第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)第26期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高 212億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●円レディメイド商品の売上高●●●円売上総利益 171億円販売管理費合計156億円うち営業施策関連費用●●●円営業利益 15億円第26期の有価証券報告書(甲6)には,次の記載がある。
(イ)「当社グループは引き続き独自のハイブリッドメジャーシステムによるオーダー商品の優位性を活かし「新規顧客の拡大・拡充の為に積極的な 」,マーケティング活動を行う「と共に,ヨーロッパのジュエリーをイメー 」,ジしたマイモード『エクリナ(ecrina 』等オーダーメード下着の新 )製品を発表してまいりました「これらの結果,売上高は211億85百 。」,万円(前期比1.5%増)と増収となりました 」と記載している(甲6・ 。
7頁 。)販売促進活動の状況(ウ)被告は,第26期においても引き続き,HMS商品による下着のオーダーメード市場の確立を目論み,レディメイドの新商品は発売せず,HMS商品の販売に注力した。特に,カラーフィット商品については,季節ごとに新色を展開し,平成14年11月には冬カラー,平成15年1月には新春カラー,同年3月及び4月には春夏カラーと,1年間で合計17色の商品を販売した。
被告は,第26期においても引き続きキャンペーンを実施し,<中略>エ第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)第27期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高 270億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 161億円販売管理費合計135億円うち営業施策関連費用●●●円営業利益 27億円第27期の有価証券報告書(甲7)には,次の記載がある。
(イ)「お客様には,独自のハイブリッドメジャーシステム(HMS)による試着体験により,体型補整効果を実体感して頂きながら,当社グループの製品の特徴とボディメイクの技術をアピールしてまいりました「これら。」,, (. の結果 当連結会計年度の売上高は270億48百万円 前年同期比27) (.) 7%増 となり…経常利益は25億63百万円 前年同期比70 4%増…となりました (以上,甲7・6頁「独自のハイブリッドメジャーシス 」),テム(立体メジャー)による体型補整コンサルティング業務を重視した事業形態が定着化してきた「当社グループの研究開発は,独自のハイブリ 」,ッドメジャーシステムによるオーダー製品の優位性を引き続き活用し」と記載している(以上,甲7・11頁 。)販売促進活動の状況(ウ)被告は,平成15年9月から同年11月までの期間中はキャンペーンを行っていない。
被告は,平成15年12月にHMS商品の新製品(エクリナ・ボディスーツ)を発売するとともに,キャンペーンを再開した。しかし,平成16年7月に発売されたレディメイド商品の新商品(デコルテ)の販売が好調であったことなどから,被告は,その販売政策の重点をHMS商品からレディメイド商品へと転換することとし,これに伴い,以後,HMS商品については新商品の発売を行っていない。
オ第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)第28期における売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高 313億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 175億円販売管理費合計137億円うち営業施策関連費用●●●円営業利益 38億円(), ,(イ) 第28期の有価証券報告書 甲8 には HMS商品に関する記載は研究開発活動欄(甲8・12頁)を除き,存在しない。
販売促進活動の状況(ウ)平成16年9月から平成17年4月までの期間中は,被告はキャンペーンを行っていない。
被告は,平成17年5月にレディメイドの新商品(モンマリエ)を発売するとともに 「体型補整実践キャンペーン」と称するキャンペーンを開始 ,した。キャンペーンを再開した理由は,前月の売上げが芳しくなかったからである。このキャンペーンは,顧客や従業員のうち,一定基準をクリアーした者をパリ研修旅行に招待したり,国内旅行を贈呈したりするものであった。
カ第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)第29期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
(ア)全売上高 226億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 110億円販売管理費合計119億円うち営業施策関連費用●●●円営業利益 △9億円第29期の有価証券報告書(甲43)には,次の記載がある。
(イ)「新規顧客の拡大に向けた積極的な販売促進活動を実施してまいりました「製品面においては 『DECORTE/DEMONIAQUE(デ 。」,,コルテ/デモニーク(判決注:レディメイド商品及びHMSメジャーを )』活用しない簡易オーダーメード商品)のカラー展開3色を発売すると同時,」,「『 ( )』 にmonmarierSUPER モン・マリエシュペールを発売致しました …しかしながら その効果は十分に浸透せず… 。 」,「, ,」,「新規顧客に対する売上高が大幅に下回る状況となり「当連結会計年度の ,」,業績は,売上高226億11百万円(前年同期比27.9%減)となりました「また,利益面では,…不稼働製品在庫の削減を行い,値引販売を 。」,行ったことなどにより,粗利益率が低下…いたしました「これらの影響。」,により,経常損失は9億78百万円(前年同期は経常利益36億57百万円)…となりました(甲43・6頁 。 。」)キ第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)第30期の売上げ等の実績は,次のとおりである。
全売上高 241億円(内訳)オーダーメイド商品の売上高省略うちHMS商品の売上高●●円レディメイド商品の売上高●●●●円売上総利益 119億円販売管理費合計106億円うち営業施策関連費用●●円営業利益 12億円HMS商品の売上実績に対する被告の販売促進活動の寄与について()3ア第24期(平成12年9月1日から平成13年8月31日まで),, 第24期のHMS商品の売上げは●●●●●●であるが この期間にはHMS商品の販売促進活動は行われていない。
被告は,平成13年6月に試験販売を開始したHMS商品の売上げに著しい伸びがないとして これを理由にHMS商品は顧客の支持を得ていなかっ ,た旨主張する。しかし,平成13年6月からのHMS商品の販売は,ブラジャーのみの,しかも試験販売であって,マルコの店舗総数約320店舗のうち20前後の店舗の,しかも販売員全員でなく,HMS研修を終了した限られた人数の販売員によって販売されていたにすぎない(当事者間に争いがない。したがって,3か月という試験販売期間における売上げの推移から直 。)ちにHMS商品が顧客の支持を得ていなかったということはできず,被告の上記主張は採用できない。かえって,試験販売の段階であるにもかかわらず一定の販売成績を上げていたこと,このことについて被告自身,第24期の有価証券報告書において「当社グループは…特に,既にテスト販売を開始し好成績を上げている当社グループ独自のメジャーシステム,生産システムによるオーダーメードのブラジャー(マイモード)を戦略商品として位置付け新市場を開拓し業績向上に邁進する所存であります(甲50・11頁)と 。」記載し,HMS商品が「好成績」を上げていることを公表していたことからすると,むしろ,HMS商品は,試験販売期間において既に一定程度の顧客の支持を得ていたものとみるのが自然である。
もっとも,HMS商品が平成13年6月当時既に一定程度の顧客の支持を得ていたという事実から直ちに,その後のHMS商品の売上げが被告の販売促進活動によるものではなく,もっぱら本件各発明の競争優位性によるものであるということにはならないことは当然である。
イ第25期(平成13年9月1日から平成14年8月31日まで)第25期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,●●●●●●●●●●である。
被告は,第25期におけるHMS商品の売上げ増は,多色展開という付加価値を付けたカラーフィット商品が顧客の支持を得たこと及び販売促進活動によるものである旨主張する。しかし,まず,カラーフィット商品が,,() 顧客の支持を得たとの点については 確かに カラーフィット 夏カラーA柄が発売された平成14年6月におけるHMS商品の売上げは●●●●であり,第25期のそれまでの期間におけるHMS商品の売上げが●●●●●●●●●●で推移していたのと比較すると,売上げの伸びには著しいものがあり,カラーフィットが顧客の一定の支持を得たということは容易に推測できる。しかし,そもそも,<中略>(弁論の全趣旨 。したがっ )て,第25期におけるHMS商品の売上げ増の主たる理由をカラーフィット商品に求める被告の主張は採用できない。
次に,HMS商品の売上げ増は 「カラーフィットデビューキャンペー ,ン」が的中したことなど被告の販売促進活動によるものであるとの主張については,確かに,同キャンペーンが実施された期間のHMS商品の売上げは,<中略>であり,第25期のそれまでの期間におけるHMS商品の売上げが<中略>で推移していた<中略>のと比較すると,格段の伸びを示しているところ,同期間における<中略>であり,第25期のそれまでの期間における<中略>であるのと比べると,格段に多額の費用を投入していることが認められる。
この点について,原告は,キャンペーンは他の商品の販売に際しても行われる一般的な販売促進の手段であるから,むしろキャンペーンが行われることを前提としなければ本件各発明の貢献度を正確に評価することはできないとし,キャンペーンが功を奏したということは取りも直さずHMS商品に魅力があったことを示すものである旨主張する。
確かに,原告が主張するように,顧客が全く魅力を感じない商品については,いくらキャンペーンを行ったとしても,通常の消費者であれば購入意欲が沸くことは少ないと考えられるから,キャンペーンが功を奏したということは,顧客がHMS商品に対して一定の魅力を感じていたものということはできよう。しかし,上記キャンペーン実施前の売上げは,上記のとおり●●●●●●●●●●で推移していたところ,キャンペーン期間中には●●●●●●●●●●という極めて大幅な売上増を記録しているのであり,キャンペーンの前後における売上高のかかる極端な変動は,HMS商品に対するキャンペーンが効果が通常の商品に比べて相当に大きかったを示すものというべきであり,キャンペーン自体の多大な貢献を考慮しなければ,これを合理的に説明し得ないものというべきである。
以上の事情を総合考慮すると,第25期におけるHMS商品の売上実績がHMS商品自体ひいては本件各発明の顧客吸引力のみによってもたらされたものということはできず,被告によるキャンペーン等の販売促進活動も相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。
ウ第26期(平成14年9月1日から平成15年8月31日まで)第26期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,●●●●●●●●●●である。
被告は,第26期は被告においてオーダーメイド市場の確立に向けてHMS商品の強力な売り込みをかけており,通期で,第25期に比べ3億円ほどの売上増であるが,HMS商品が顧客の絶大な支持を得ているのであればこの程度の売上増では済まないはずであり,売上増が上記程度であるという事実は,被告によるHMS商品の強力な売り込みにもかかわらず,同商品がさほど顧客の支持を得ていなかったことを示すものである旨主張する。これに対し,原告は,被告主張の強力な売り込みの内実は他の商品の販売に際して行われるキャンペーンと変わるものではなく,また,そのような販売努力はHMS商品販売前にも行っていたはずであるにもかかわらず,HMS商品販売後に全売上額において最高記録を達成し,かつ,その際にHMS商品の売上比率が最高であったことは,この業績がHMS商品の持つ魅力によって達成されたものであることを示す旨主張する。
そこで検討するに,確かに,原告が主張するとおり,第26期における全売上高は212億円で過去最高であり,このうちHMS商品の売上げ●●●●●が占める割合は●●●●●●●,過去最高となったことが認められる。しかし,被告は,第26期においてもキャンペーンを継続しており(ただし,平成15年3月を除く,レディメイド商品の新商品の発売 。)は見合わせる一方,HMS商品については,平成14年11月にカラーフィットの冬カラーA柄を,平成15年1月には新春カラーA柄を,同年3月には春夏カラーB柄をそれぞれ発売し,同年6月にはHMS商品の新商品「エクリナ」を発売するなど,強力にHMS商品の売り込みを図っていた。そして,第26期におけるHMS商品の売上げは●●●●●で,第25期におけるHMS商品の売上げ●●●●●●●●●●●●ものであり(被告主張の売上増3億円は,HMS商品以外のオーダーメイド商品及びレディメイド商品を合わせた全売上高の増加分である,その増加率は。)●●●に上るものであったが,他方,営業施策関連費用を見ると,第26期のそれは●●●●で,第25期の●●●●●●●●●●●●●●●ものであり,その●●●●●●●●●●に上る。
以上の事情を総合考慮すると,第26期におけるHMS商品の売上実績についても,第25期におけるそれと同様,HMS商品自体,ひいては本件各発明の顧客吸引力のみによってもたらされたものということはできず,被告によるキャンペーン等の販売促進活動が相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。
エ第27期(平成15年9月1日から平成16年8月31日まで)第27期のHMS商品の売上げは●●●●●であるところ,●●●●●●●●●●である。
被告は,第27期においてHMS商品の売上げは全売上高の63%に達しているが,それは被告の販売政策がHMS商品に注力していたためであり,HMS商品が顧客の支持を得ていたからではない旨主張する。これに対し,原告は,HMS商品の販売促進活動は他の商品と特に変わるものではなく,HMS商品が多数の顧客から一層の支持を得たからこそ売上比率が63%にまで上昇したものである旨主張する。
そこで検討するに,被告は,第27期においても,当初レディメイド商品の新商品の発売は見合わせる一方,HMS商品については,平成15年「 」, 12月にHMS商品の新商品 エクリナ・ボディスーツ を発売したほか同年9月にカラーフィットのB柄を,平成16年3月にC柄を,それぞれ発売するなどし,また,平成15年12月には,一時見送っていたキャンペーンを再開した。また,<中略>以上の事情を総合考慮すると,第27期におけるHMS商品の売上実績, ,, についても 第25期及び第26期におけるそれと同様 HMS商品自体ひいては本件各発明の顧客吸引力のみによってもたらされたものということはできず,被告によるキャンペーン等の販売促進活動が相当程度の寄与をしていたものと認めるのが相当である。
オ第28期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで)<中略>他方で,全売上高は第27期の270億円から313億円に,営業利益は第27期の27億円から38億円に増加した。
原告は,HMS商品の売上げが減少したのは,被告が平成16年9月ころからHMS商品の価格を意図的に下げて宣伝することによって多数の新規顧客集めに利用する一方でその販売を差し控え,その多数の顧客を高価格設定のレディメイド商品に誘因するという不合理な販売政策を採用したためであり,本件各発明の経済的価値とは無関係である旨主張する。これに対し,被告は,第27期の平成16年7月に発売したレディメイド商品の新商品「デコルテ」が販売直後から好調であったことなどから,HMS商品からレディメイド商品へと被告の販売施策を転換することとし,以後HMS商品の新商品の発売を行っていないが,これは,顧客がレディメイド商品を支持していることが明らかになったことや,HMS商品に種々の欠陥があることもあって,被告の営業方針がオーダーメイドの下着市場の確立から,従来の体型補正をより究めることに変更され,レディメイド商品の販売に注力するようになったからであって,不合理な販売政策ではない旨主張する。
そこで検討するに,被告がその営業方針を転換し,HMS商品からレディメイド商品へと販売の力点を変更したことが企業の経営判断として合理的であるか否かはさておき(この点は後述する,被告が販売の力点を 。)HMS商品からレディメイド商品に変更した以上,HMS商品の売上げが減少するのは当然の結果であって,HMS商品の売上げが減少したからといって,その理由をすべてHMS商品自体に顧客吸引力がないこと,ひいては本件各発明に競争優位性がないことに求めることはできない。この理は,第25期ないし第27期におけるHMS商品の売上増が,本件各発明の競争優位性のみによるものではなく,被告の販売促進活動によるところも相当にあるということのいわば裏返しであり,第28期におけるHMS商品の売上減もまた,本件各発明の競争優位性の低さのみによるものではなく,被告が商品施策をHMS商品からレディメイド商品に変更したことにも相当程度起因していることが明らかである。
カ第29期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで)<中略>また,全売上高も第28期の313億円から226億円に減少し,9億円の営業損失を計上した。
この点について,原告は,HMS商品の販売を抑制すると業績が悪化したという事実は,本件各発明の競争優位性が高いことを示すものである旨主張する。これに対し,被告は,第28期の全売上高の80%はレディメイド商品によるものであるから,第29期に全売上高が減少し,営業損失を計上したからといって,直ちにHMS商品の競争優位性を証明すること,, , にはならず また 真にHMS商品に対して顧客の支持があるのであれば被告の販売政策に関係なくHMS商品は売れるはずであるのに,<中略>ことからすると,HMS商品に対して顧客の支持がなかったことは明らかである旨主張する。
そこで検討するに,確かに,被告の主張するとおり,第28期の全売上高の80%はレディメイド商品によるものであるから,第29期に全売上高が減少し,営業損失を計上したからといって,直ちにHMS商品の競争優位性を証明することにはならない。また,被告は,販売政策を変更して販売の力点をHMS商品からレディメイド商品に変更した後も,HMS商品について,新商品の発売こそしていないものの,従来から販売していたHMS商品の販売は継続しており,HMS商品の購入を希望する顧客に対して被告が敢えてその販売を拒むということも考えられず,かかる事実を認めるに足りる証拠もない。したがって,HMS商品が被告の販売促進活動と無関係にその競争優位性のみによって売上げを達成できるのであれば,<中略>以上によれば,第29期の被告の業績は本件各発明の競争優位性を示す,, , ものということはできず かえって それまでのHMS商品の売上実績が本件各発明の顧客誘因力のみによって達成されたものではなく,被告の販売促進活動の寄与が相当程度あったことを示すものということができる。
キ第30期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで)<中略>他方で,全売上高は第29期の226億円から241億円へと増加し,営, 。 業利益も第29期の9億円の営業損失から 12億円の黒字へと回復した,, , この点について 被告は 第30期にはHMS商品の新商品を発売せずまたHMS商品の売り込みもしていないのにもかかわらず第29期よりも全売上高が増加したことは,HMS商品が顧客の支持を得ていなかったことを示すものであり,HMS商品に高い顧客誘因力がなかったことは明らかである旨主張する。
しかし,第30期における全売上高の増加は,レディメイド商品の売上増<中略>によるものであるから,当時のHMS商品がレディメイド商品との比較において顧客誘因力が劣っていたとしても,そのことから直ちにHMS商品に,その売上実績に対する寄与を認め得る程度の顧客誘因力もないとまでいうことはできない。
ク小括以上によれば,HMS商品の売上実績は,本件各発明の競争優位性ないし顧客誘因力のみによって達成されたものということはできず,キャンペーンの実施等,被告の販売促進活動によるところが相当程度寄与しているものということができるが,他方で,被告が主張するように,HMS商品には顧客誘因力が全くないということもできず,HMS商品の売上実績が被告の販売促進活動のみによって達成されたということもまたできない。
本件各発明の実施とHMS商品の売上げとの関係について()4本件各発明はいずれも,衣類のオーダーメイド用計測サンプル及び衣類のオーダーメイド方式に関するものであり,その実施品はHMSメジャーであって,HMS商品ではない。したがって,本件各発明の実施(その製造,使用)が当然にHMS商品の売上げに直結するとはいえない。
しかし,証拠(甲91)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,HMS商品, , の受注・販売の手順について HMSメジャーによる採寸・試着から始まり採寸表・オーダー表・購入申込書への記入等の過程を経て,生産指図処理,工場受付処理,商品縫製,工場出荷処理,営業店出荷作業,顧客への納品という一連の流れを「ハイブリッドメジャーシステム」として構成しており,新規の顧客に対しては,必ずHMSメジャーを使用して採寸し,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売し,また,既存の顧客に対しても,従前の採寸時からの当該顧客の体型変化に対応するため,改めてHMSメジャーを使用して採寸をし直した上で,その採寸結果に基づいてHMS商品を製造して販売している。したがって,HMS商品の売上げは本件各発明の実施(使用)なくしては発生しないことが認められる。
これに対して,被告は,HMSメジャーでの計測値やHMSメジャーの身生地がそのままHMS商品の製造に活用されているわけではなく,本件各発明の実施とHMS商品の販売との間には原告主張の1対1の直接的対応関係はない旨主張する。しかし,仮に被告主張のとおりであるとしても,本件各発明の実施(使用)なくしてHMS商品の売上げが発生しないことに変わりはない。
結論()5以上のとおり,HMS商品の売上げは本件各発明の実施なくしては発生しないものであり,HMS商品が本件各発明の競争優位性により一定程度の顧客誘因力を有していたことは認められるけれども,HMS商品の売上実績が本件各発明の競争優位性のみによって達成されたものということはできず,被告の販売促進活動等による寄与割合が相当程度存在することが認められる。そして,上記( ),( )で認定説示した諸事情を勘案すると,HMS商品34の売上げに対する本件各発明の寄与割合(いわゆる超過売上げの割合)は2分の1と認めるのが相当である(もっとも,上記事情のうち,被告の販売促進活動等は,文言上「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」として考慮されるべきものとはいえないが,解釈上 「使用者等が貢献した ,程度」として考慮することもできる。そのような解釈を採れば,被告の販売促進活動等に関する事情は,むしろ被告の貢献割合に関する事情(後記8で認定する )として位置付けるべきとも考えられる。しかし,本件では,当 。
事者双方ともこの事情を本件各発明の寄与割合の問題として位置付け,主張立証を尽くしているので,被告の貢献割合の認定に際してこの事情を考慮しないこととする。。)4争点( )(独占の利益が発生する時期)について4従業者等は,契約,勤務規則その他の定めにより,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させたときは,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法35条3項 。使用者等は職務発明承継す )ることがなくとも,当該発明について特許法35条1項が規定する通常実施権を有することによれば,同条4項にいう「その発明により使用者等が受けるべ」 , ,, き利益 は 単なる通常実施権を超えたものの譲渡により得た利益 すなわち当該発明の独占的実施による利益(いわゆる独占の利益 ,あるいは,第三者 )に当該発明を実施許諾して得た実施料収入による利益であると解される。
そして,使用者等が職務発明について特許を受ける権利承継して特許を出願した場合,これにより使用者等が独占の利益を受けることができる期間の始期は 原則として 当該発明を排他的独占的に実施することができるようになっ ,,た時期,すなわち特許登録時であると解すべきであるが,使用者等が特許を受, ,, ける権利を承継して特許を出願し その出願公開がされたときは 使用者等は未だ他者による当該発明の実施を禁ずることはできないけれども,一定の条件下で当該発明を実施している他者に対し補償金を請求することができるようになるのであるから,この時点以降は,ある程度の独占力が発生しないものとはいえない。
, ,, もっとも 特許の出願公開がされても登録までの間については 使用者等は未だ他者による当該発明の実施を禁ずることはできない上に,補償金を請求するためには,原則として,当該発明の内容を記載した書面を提示して警告をすることを要し,かつ,その警告後に当該発明を実施した者に対してのみ請求し得るにすぎず,また,当該警告をしない場合においては,出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って当該発明を実施した者に対してのみ請求し得るにすぎず,請求し得る金額も,当該発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額に限られている(特許法65条1項 。このように,特許の出願公開後登録までの間について使用者等が行使し )得る権利の内容が,登録後に行使し得る権利の内容と比べてかなり限定されたものにすぎないこと,また,使用者等は,職務発明について無償で実施し得る権利を有する(特許法35条1項参照)ことに照らすと,出願が公開された段階で被告が多額の利益を得たとしても,その大半は単純に上記実施権に基づくものであって,当該職務発明出願公開されたことによる独占力に基づくものではないというべきである。以上の事情を考慮すると,本件において原告に支払われるべき相当の対価の額を算定するに当たり,使用者である被告が受けるべき利益の額,すなわち,原告から本件各発明の特許を受ける権利承継して() 本件各発明の実施権を独占することができたことに起因する部分 超過売上高の割合は,特許登録後における売上高のうち超過売上高が占める割合の10分の1をもって相当と認める。
5争点( )(HMS商品の販売抑制後の売上げの算定方法)について5はじめに ()1従業者等は,契約,勤務規則その他の定めにより,職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させたときは,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法35条3項 。したがって 「相当の ),対価」請求権は,特許を受ける権利等が従業者等が使用者等に承継された時に客観的に算定可能なものとして発生しているというべきである。ただし,その「相当の対価」の算定資料となる「その発明により使用者等が受けるべき利益の額 (同条4項)については,特許を受ける権利が,将来特許を受 」けることができるか否かも不確実な権利であり,その発明の独占的実施により使用者等が将来得ることができる利益あるいはその発明を第三者に実施許諾をしたことにより当該第三者から受けるべき実施料収入額による利益の額をその承継時に算定することが極めて困難であることからすると,当該発明の独占的実施による利益を得た後,あるいは,第三者に当該発明の実施許諾をし実施料収入を得た後の時点において相当の対価を判断する場合に,これら独占的実施による利益あるいは実施料収入額をみて,その法的独占権に由来する利益を認定し,これをしん酌して 「その発明により使用者等が受け ,るべき利益の額」を認定することは,特許法35条4項文言解釈としても許容し得る合理的な解釈であり,上記「利益」を「その発明又は特許により使用者等が実際に受けた利益」から算定することは,合理的な算定方法の一つであるというべきである。
,,,,, ところで 使用者等が その時々の経済情勢 市場動向 競業者の動向等経営状況の変化に対応していかなる経営方針をもって臨むかは,基本的に経営者としての使用者等の経営判断に委ねられた事項である。使用者等がある職務発明実施するか否かについても,その発明が使用者等の業務の範囲内において従業者が職務として行った職務発明である以上,このような経営判断の一環として決定し得る事項であるから,当該発明を実施するか否か,実施するとしてどの程度の規模で実施するか,将来的にその規模を拡大してい, , くか縮小していくかは 基本的に使用者等がその時々の具体的状況に応じてその裁量により決定していくべきものである。したがって,使用者等がある職務発明実施を抑制するような方針をとり,結果として,当該発明の独占的実施による利益あるいは実施料収入が減少したとしても,それが使用者等において,もっぱら発明者である従業者等に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど,経営判断としての合理性を欠くことが明らかであるといった特段の事情が認められない限り 「相当の対価」の額 ,の算定に際しては,上記方針を採用した結果として実際に使用者等が当該発明の独占的実施によって得た利益あるいは実際に第三者から受けた実施料収入を基礎として算定すべきであって,販売抑制がなかった場合を想定し,かかる場合における当該発明の独占的実施によって得る利益あるいは第三者からの実施料収入を仮に想定して,これを基礎に相当の対価の額を算定するのは相当でない。
, , これを本件についてみると 被告が平成16年9月ころ販売政策を変更しHMS商品からレディメイド商品へと販売の力点を移し,以後HMS商品の新商品の発売を中止したことは当事者間に争いがなく,弁論の全趣旨によれば,被告は平成20年2月をもってHMS商品の販売を打ち切ったことが認められる。このような被告の販売政策の変更は,基本的には被告の経営判断に委ねられた事項であるから,被告の上記販売抑制策が,原告に対する相当の対価の支払を免れることを目的としたものであるなど,経営判断としての合理性を欠くことが明らかであるといった特段の事情が認められない限り,相当の対価の額はHMS商品の現実の売上高をもとに算定すべきであり,原告が主張するような算定手法,すなわち,被告によるHMS商品の販売抑制がなかったと仮定して,販売抑制以前の売上高を基礎にあるべき売上高を想定してこれに基づいて相当対価の額を算定するという手法は採用すべきではない。
そこで,以下では,被告の販売抑制策が,経営判断としての合理性を欠くことが明らかといえるか否かという観点から検討を行うこととするが,被告はその経営判断の合理性を基礎付ける事情として,HMSメジャーないしHMS商品に「根本的欠陥」があり,HMS商品の利益率がレディメイドの利益率と比べて低い旨主張し,原告はこれを否認していることから,まず,被告主張の「根本的欠陥」の有無について検討し(後記( ) ,次にHMS商2 )品の利益率について検討し(後記( ) ,これらとの関連で,被告が原告に3 )対する相当の対価を免れる目的があったか否かについても検討することとする(後記( ) 。 4 )HMSメジャーないしHMS商品の「根本的欠陥」について()2ア検討すべきこと, , 被告は その販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し最終的にHMS商品の販売を中止するに至った理由はHMSメジャーないしHMS商品に「根本的欠陥」があるからであるとし,その理由として,?@HMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力がかかる,?AHMSメジャーを使える人材の育成に要する費用・労力がかかる,?B工場における生産管理が難しいこと,?Cサイズ違いのクレームが発生した,?D体型補正効果が限定されていること,?Eあらかじめ体感することが不可能であること,?FHMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること,以上の点を指摘する。これに対し,原告は,HMSメジャーには被告主張の「根本的欠陥」なるものは一切存在しないとして,HMS商品の販売抑制策は経済的にみて不合理な政策である旨主張する。
そこで,以下,HMSメジャーに被告主張の「根本的欠陥」が存在する否かについて検討する。
イ検討HMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力(ア)被告は,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力が大きい旨主張する。これに対し,原告は,HMSメジャーにはHMS商品全体に対する汎用性があるとして,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力は,レディメイド商品のサンプル(試着品)を全店舗に備える費用・労力に比べれば圧倒的に小さい旨主張する。当裁判所は,HMSメジャーがHMS商品全体に対する汎用性を有するものとは認められず,したがって,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力がレディメイド商品のサンプル(試着品)を全店舗に備える費用・労力より圧倒的に小さい旨の原告の主張は採用できないと判断するものである。その理由は次のとおりである。
HMSメジャー(ブラジャー)についてa証拠(乙101,105)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が ( )a認められる。
?@素材の違いHMS商品(ブラジャー)には,素材の異なる商品が複数種類存在する。たとえば,HMS商品(ブラジャー)には 「あこがれ , ,」「ミーチュー「ヌディータ「カラーフィットA柄「カラーフ 」,」,」,ィットB柄「カラーフィットC柄」及び「エクリナ」があり,各 」,商品の素材は,商品を構成する部位(たとえば,カップの表,カップの裏,脇接部等)が同じであっても,同一ではなく,たとえば,<中略>これに対し,HMSメジャー(ブラジャー)は,各部位を構成する素材が1種類である。<中略>HMSメジャー(ブラジャー)及びHMS商品(ブラジャー)に用いられている素材は,それぞれ伸張回復性及び伸度が異なる。
?A部材の違い<中略>HMSメジャー(ブラジャー)には,カップと前身を接合するマジックテープ及び前身と後身頃を接合するファスナーが装着されているが,HMS商品(ブラジャー)にはこれらはいずれも装着されていない。
?B体感の違い原告は,レディメイド商品にないHMSメジャーの強みとして,HMS商品の着用感を予め体感できる点を強調する。しかし,上記?@?Aの結果,HMSメジャー(ブラジャー)で得られる体感と,HMS商品(ブラジャー)で得られる体感との間には,無視できない違いが存在する。すなわち,素材が異なれば着け心地が異なるのは自明であり,体型補正効果という面においても,素材の違いによる伸張回復性の違いから,体感の違いが生じると考えられる。
また,<中略>これは,両者の間に体感の違いがあることを示すものである。
HMSメジャー(ブラジャー)に汎用性がないこと()b上記(a)のとおり HMSメジャー ブラジャー とHMS商品 ブ ,()(ラジャー)とでは,その体感に無視できない違いがあるところ,<中略>そうして初めてHMSメジャー(ブラジャー)がHMS商品(ブラジャー)全体に対する汎用性を取得する条件が整うということができるのであって,実際に作成されたHMSメジャーすなわち1種類の素材から成るHMSメジャーがHMS商品全体に対する汎用性を有するものとは認められない。
しかして,<中略>しかるに,そのようなことは,資金面及び店舗のスペースから見てたやすいこととはいえないから,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力が大きい旨の被告の主張には理由がある。
HMSメジャー(ガードル)についてb証拠(乙101,105)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が ( )a認められる。
?@素材の違い(), 。 HMS ガードル にも 素材の異なる商品が複数種類存在するたとえば,HMS商品(ガードル)にも 「あこがれ「ミーチ ,」,ュー「ヌディータ「カラーフィットA柄「カラーフィットB 」,」,」,柄「カラーフィットC柄」及び「エクリナ」があり,<中略> 」,これに対し,HMSメジャー(ガードル)は,各部位を構成する素材が1種類である。<中略>HMSメジャー(ガードル)及びHMS商品(ガードル)に用いられている素材は,それぞれ伸張回復性及び伸度が異なる。
?A部材の違いHMSメジャー(ガードル)には,前パネルと脚口にマジックテープが装着されているが,HMS商品(ガードル)には装着されていない。
?B体感の違い,(), 上記?@?Aの結果 HMSメジャー ガードル で得られる体感とHMS商品(ガードル)で得られる体感との間には,無視できない違いが存在する。特に,ガードルは,伸縮性に富む生地が使用されている面積が大きく,かつ,マジックテープが使用されている面積が大きいことから,HMSメジャー(ガードル)とHMS商品(ガードル)の体感の違いは,HMSメジャー(ブラジャー)とHMS商品(ブラジャー)の体感の違いよりも大きいものと考えられる。
bHMSメジャー(ガードル)に汎用性がないこと()上記(a)のとおり HMSメジャー ガードル とHMS商品 ガ ,()(ードル)とでは,その体感に無視できない違いがあるところ,<中略>そうして初めてHMSメジャー ガードル がHMS商品 ガ ()(ードル)全体に対する汎用性を取得する条件が整うということができるのであって,実際に作成されたHMSメジャーすなわち1種類の素材から成るHMSメジャーがHMS商品全体に対する汎用性を有するものとは認められない。
しかして,<中略>しかるに,そのようなことは,資金面及び店舗のスペースから見てたやすいこととはいえないから,HMSメジャーを全店舗に備える費用・労力が大きい旨の被告の主張には理由がある。
まとめc以上のとおり,ブラジャー及びガードルについては,HMSメジャーとHMS商品が同様の体感を得られるためには,本来であればHMSメジャーを全店舗に備える必要があるところ,その費用・労力は大きいから,被告がこのことを理由の一つとして販売政策をHMS商品からレディメイド商品に変更したことをもって,不合理的な経営判断ということはできない。
HMSメジャーを使える人材の育成に要する費用・労力(イ)被告は,HMSメジャーの使用方法は簡単なものではなく,熟練した技量を必要とし,その技量を全従業員に習得させることは困難であり,HMSメジャーを使いこなせる人材を育成するために要する費用・労力が大きい旨主張する。これに対し,原告は,HMSメジャーによる計測は,実際の完成品と同等のサンプルを身に付けながら計測していくもの。,, であるから著しく容易である旨主張する さらに これに対して被告はHMSメジャーとHMS商品とでは,使用する素材が異なり,また,HMSメジャーにはHMS商品では使用しない部材が使用されていることから,HMSメジャーとHMS商品の仕上がり寸法が異なっており,したがって,HMSメジャーが実際の完成品と同等のサンプルであるとの原告の主張は当たらない旨主張する。
<中略>そうであれば,体感という意味では,上記HMSメジャーはHMS商品と「同等の」サンプルということができ,これを身に付けさせて計測すること自体が特に熟練を要するものとは認められない。
もっとも,HMSメジャーによる計測が,HMS商品と同様の体感を得ることができることを謳い文句にしたために,顧客においてHMSメジャーによる体感どおりのHMS商品が完成するものとの期待が大きかったのに対し,実際に完成したHMS商品は,HMSメジャーとは素材が異なることや,女性の体がホルモンバランスの影響により1か月の間でも変化することから,実際に完成したHMS商品ではHMSメジャーでの体感と異なる結果になることはあり得る。しかし,このことは,HMSメジャーによる計測自体が熟練を要するか否かとは別問題である。
よって,被告の上記主張は理由がない。
工場における生産管理が難しいこと(ウ)被告は,HMSメジャーが1cm刻みでサイズを変えるため,生産を。,, 委託している工場の生産管理が難しいと主張する これに対し 原告は?@個々のオーダーごとにサイズが変わるのは,オーダーメイド商品一般についていえることであり,HMS商品特有の問題ではない,?AHMSメジャーは,従来のオーダーメイドにおける納期遅れの問題も一挙に解消したことからすれば,生産面でも生産工場の負担を軽減したことになる旨主張する。さらに,これに対して被告は,?@生産管理が難しいことがオーダーメイド一般の問題であるとしても,それがHMSメジャーの欠陥であることには変わりがない,?A納期遅れ解消の問題に関しては,比較すべきはレディメイド商品の納期である旨主張する。
そこで検討するに,ここで検討すべきは,被告がHMS商品からレディメイド商品に販売方針の力点を移したことの当否であるから,HMSメジャー商品と比較すべきはレディメイド商品である。この観点から考えると,?@個々のオーダーごとにサイズが変わるのは,オーダーメイド商品一般についていえることであり,HMS商品特有の問題ではないけれども,レディメイド商品との比較でいえば,HMSメジャー商品では個々のオーダーごとにサイズが変わり,製造コストがかかるという意味で,生産管理が難しいということはできる。
また,?Aレディメイド商品の納期は8日間である(弁論の全趣旨)のに対し,HMS商品の納期は,販売当初,注文時から30日ないし60日間とされていた(乙114)ことからすると,レディメイド商品で対応できる顧客にとっては,HMS商品の納期はレディメイドに比べて相当遅いといえる。
したがって,HMS商品について工場における生産管理が難しいことや納期の点を理由に,HMS商品からレディメイド商品に販売方針の力点を移すことは,不合理な経営判断とはいえない。
サイズ違いのクレームの発生(エ)被告は,HMSメジャーについて,未熟練者による採寸,生産管理の困難性,あるいは採寸時から納品までの間における顧客の体型変化などの理由からHMSメジャーによって体感したフィット感とHMS商品におけるフィット感に大きな差異が生じてしまうことが頻発し,顧客から返品あるいは作り直しの要求が続発した旨主張する。
しかし 「続発した」との主張自体 ,具体性に欠けることはしばらくおくとしても,被告が上記主張を裏付ける証拠として提出した乙第83号証の4(被告の証拠説明によれば,作成者被告従業員V,作成日平成15年6月24日のノート)には 「6,/24(火)商品部会議」の欄に「・再生産23,000枚」との記載があるものの,この記載にある「23,000枚」がHMS商品そのものを指すのか,一つのHMS商品を構成する部材を指すのか明らかではないから,上記再生産枚数のみをもって顧客からの上記要請が「続発した」と評価することは困難である。
かえって,被告は,平成15年6月にHMS商品の新商品である「エクリナ」を発売し,その後も平成16年3月までHMS商品の新商品の投入を続けていたことからすると,平成15年6月時点で,HMS商品についてサイズ違いのクレームが発生したことを直接の理由として,平成16年9月ころHMS商品の販売を抑制するとの方針を決定したとは認められない(ただし,その遠因になった可能性はある。。)体型補正効果が限定されていること(オ)被告は,HMS商品はジャストフィットの商品であるが故に,レディメイド商品と比べて体型補正効果が限定されている旨主張する。これに対して,原告は,?@HMSメジャーは「体型補正を意図した修正なども実際の着用感を伴って実施することができる (本件各発明の特許公 」報の【発明の効果】欄)という効果を有すること,?A実際にも,まずボディメイクを行い体型補正をした状態での着用感を確認した上で採寸していること,?B女性の体は柔らかいから,原理的にも体型にフィットした製品の方が高い体型補正効果が得られること,?Cこれに対してレディメイド商品の場合,自己の体型を標準規格に合わせなければならないため,体型補正効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題があるとして,被告の主張を争う。
そこで検討すると,まず,上記?@?Aについては,そもそもHMS商品は,当初,ジャストフィット商品であることをアピールして販売を開始したものであるが,しかしそれでは被告の強み,すなわち他の下着メーカーにない強みであるボディメイク(体型補正)をどのようにして行うか分からない販売員が続出し販売現場に混乱が生じたことから,第26期(平成14年9月から平成15年8月まで)の途中から,体型補正を前面に押し出すことに販売方針を転換したものである。したがって,HMS商品のコンセプトとしての体型補正効果は,二次的なものと認められる。
また,上記?Bについては,被告における体型補正とは,下着を着用してボディメイクを行うことにより,いわゆるゴールデンプロポーションと呼ばれる理想の体型に近づけていくことを指すものであり,この意味での体型補正効果を求める顧客の体型は,通常この理想的な体型とは異なるから,体型にフィットした製品の方が高い体型補正効果が得られるということはできない。
さらに,上記?Cについては,レディメイド商品は,ゴールデンプロポーションのバランスの下に設計されているから,体型補正効果を求める顧客にとっては,レディメイド商品を付けてボディメイクを行えば理想的な体型を作ることができ,その目的を達することができる。原告は,レディメイド商品は体型補正効果はあるものの窮屈で着用感が悪くなるという問題がある旨主張するが,レディメイド商品に体型補正効果があること自体は否定できないし,体型補正効果を求める以上多少の窮屈感が生じるのは当然のことである。
以上によれば,原告指摘の?@ないし?Cはいずれも理由がなく,したがって,HMS商品については,体型補正効果がレディメイド商品に比べて限定されているものと認められ,これをHMS商品の販売抑制策をとることについての一つの理由とした判断が合理性を欠くものとはいえない。
あらかじめ体感することが不可能であること(カ)被告においては,HMS商品の販売に当たり,HMSメジャーを用いて計測することにより,実際の商品と同様の着用感を体感した上で商品を注文できることをアピールしていた。そして,HMS商品によって得られる体感がHMSメジャーによって得られる体感と異なることは前記のとおりである。そうであれば,HMSメジャーの謳うメリットが発揮できていないことになるから,上記の点はHMSメジャーないしHMS商品のデメリットであり,そのようなデメリットが存在することを理由にHMS商品の販売を抑制することは不合理な経営判断とはいえない。
HMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること(キ)被告は,HMS商品の仕上がり寸法とHMSメジャーにより計測した寸法との間に誤差があることを理由として,HMSメジャーは計測器として不正確である旨主張する。しかし,実際に計測する段階では,顧客の体型に細かく合わせて採寸しているから,誤差があったとしても,出来上がったHMS商品が顧客の体型と著しく異なることはないものと考えられる。したがって,HMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なることのみをもってHMSメジャーないしHMS商品の欠陥ないしデメリットということはできない。
もっとも,HMSメジャーは,計測器である以上,HMSメジャーで計測した寸法を使ってHMS商品を製造することに意味があるから,HMSメジャーで計測した寸法とは別の寸法を使ってHMS商品を製造するのであれば,別の寸法を使って製造された商品のサンプル(レディメイド商品のサンプル)を試着してもらう方法で足りると考えることも,あながち不合理な判断とはいえない。
ウ小括以上のとおり,HMS商品には,レディメイド商品との比較において,?@HMSメジャーを全店舗に備え維持する費用・労力を要すること,?B工, , 場における生産管理が難しいこと ?D体型補正効果が限定されていること?Eあらかじめ体感することが不可能であること,?FHMSメジャーによる計測とHMS商品の寸法とが異なること,というデメリットが存することが認められる。したがって,被告が,このようなHMS商品のデメリットを考慮して,レディメイド商品の方が被告の経営にとってメリットが大きいと判断しレディメイド商品に販売の力点を移し,HMS商品の販売を抑制することとした上,最終的にHMS商品の販売を中止することとしたのは,経営判断として不合理なものとはいえない。
HMS商品の利益率について()3ア検討すべきこと被告は,HMS商品はレディメイド商品に比べて利益率が低いことを理由の一つとして,被告が販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,HMS商品の販売を中止したことは経営判断として合理的である旨主張し これを裏付ける証拠として 乙第116号証 月次推移表 実 , ,〔(績,乙第117号証(経費内訳 ,乙第118号証(売上高/営業施策 )〕 )関連費用を示すグラフ等)及び乙第119号証(期別項目別損益比較表)を提出する。
これに対し,原告は,乙第116号証ないし第119号証は信用できないとして種々主張する。
当裁判所は,乙第116号証ないし第119号証は信用に値すると判断するものである。理由は以下に説示するとおりであり,まず,乙第116号証ないし第119号証がどのような資料であるのかその内容を認定し後記イその上で個々の資料に対する原告の主張の当否を検討する 後 (), (記ウそして 最後に HMS商品の利益率に関する事実認定を行う 後 )。,, (記エ 。)イ資料の内容証拠(乙116ないし119)及び弁論の全趣旨によれば,乙第116号証ないし第119号証には,次の内容が記載されていることが認められる。
乙第116号証〔期別月次推移表(実績 〕(ア) )乙第116号証は,被告の第24期から第30期までの各期における月次営業成績を一覧表にまとめたものであり,売上高については,?@オーダーメイド商品(HMS商品を含む )の売上高,?AHMS商品の売上高,?B 。
レディメイド商品の売上高の3つに区分してある。
「営業施策販促費用」と題する表は,各期における経費のうち,営業関連費用を一覧表にまとめたものである。そのうち 「オーダー(HMS)関 ,連費用 とは HMS商品に固有の営業関連経費をまとめたものでありオ 」, ,「ーダーメイド以外関連費用」とは,レディメイド商品に固有の営業関連経費をまとめたものである。
乙第117号証(経費内訳)(イ)乙第117号証は,乙第116号証の「営業施策販促費用」と題する表に記載されている各期の月別営業関連経費の内訳を記載したものである た(だし,10万円未満の経費については省略されている「オーダー(HM 。)。
S)関連費用」は黄色で表示され 「オーダーメイド以外関連費用」は水色 ,で表示され 「オーダーメイド以外関連費用」のうち,レディメイド商品に ,関連する費用は 「ファンデーションランジェリー」として薄水色で表示さ ,れている(なお,第25期においては 「プレゼント(景品 」という項目 ,)が別途設けられている。。)「科目」欄記載の各経費の内容は,次のとおりである。
a「景品費」従前,被告において実施していたスタンプ制度(アフタークラブ)の景品交換実績であり,第25期上半期までの「景品費」は,この意味の経費である。第25期下半期以降の「景品費」は,プレゼント特典商品の実績である。
b「信販手数料」顧客が商品購入時に割賦購入やクレジット購入を希望した場合に,被告が負担する手数料の実績である。無金利や金利半額という販促施策を行った場合の金利優遇分はこの科目に計上されている。
c「商品券」被告は,第25期から第27期にかけて,HMS商品の販売促進のため,あるいはHMS商品の納期遅延による顧客への謝罪として,自社商。「」 。 品券をプレゼントしていた商品券 にはこの合計額が計上されているd「販売促進費「会議費「旅費交通費」及び「広告宣伝費」 」,」,上記各科目には,毎月発生する通常費用は計上されていない。営業施策に関連する経費が計上されている。
乙第118号証(売上高/営業施策関連費用)(ウ)乙第118号証の上段のグラフは,各期の月次売上高と営業施策関連費用及び新製品の発売との相関関係を示したものである。上段の棒グラフの「レディメイド」は,オーダーメイド商品以外の商品の売上額であり,ボディケア化粧品やストッキングなどの売上額が含まれている。
乙第118号証の下段のグラフは,営業施策関連費用の月次内訳を示したものである。
乙第119号証(期別項目別損益比較表)(エ)乙第119号証の主な項目の内容は次のとおりである。
a「売上高」「売上高」の欄では,各期における?@オーダーメイド商品(HMS商品を含む )の売上げと?Aオーダーメイド商品以外の商品の売上げが区分 。
されて示されており,?@がさらにHMS商品の売上げとその他の売上げに区分され,?Aがさらにレディメイド商品( ファンデーション・ランジ 「ェリー」と記載のあるもの)の売上げとその他の売上げに区分されて示されている。
「売上比」は 「年間?@+?A」の売上全体に対する比率である。 ,b「売上原価「販管変動費「販管固定費」 」,」,上記各項目では,HMS商品に固有の経費は黄色で表示され,レディメイド商品(ファンデーション・ランジェリー商品)に固有の経費は水色で表示されている。HMS商品及びレディメイド商品に共通する経費については,各期の売上比に応じた数字が計上されている。
c「営業利益率」HMS商品とレディメイド商品(ファンデーション・ランジェリー商品)のそれぞれの営業利益額をそれぞれの売上高で除したものである。
ウ原告の主張について原告は,乙第116号証ないし乙第119号証が信用できない理由として,?@営業関連経費に関する偽装があること,?A販管費と営業利益率に関する偽装があること,?B商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があること,?Cプレゼント商品と景品費に関する偽装があること,?D売上高に関する偽装があること,?EHMS商品(ガードル)の販売開始時期に誤りがあること,?F営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があること,以上7点を主張する。以下,順次検討する。
営業関連経費に関する偽装があるとの主張について(ア)原告は,HMS商品の販売のために支出されたという「オーダー(HMS)関連費用」はレディメイド商品等の売上高形成のためにも支出されたと評価すべきであり,営業関連経費を「オーダー(HMS)関連費用」と「オーダーメイド以外関連費用」とに分類することは不可能であると主張し,その理由として,顧客はHMS商品とレディメイド商品を併せて購入していたこと,顧客は,HMS商品を購入した当時未発売であったアイテムについてはレディメイド商品を購入していたこと,HMS商品のみを対象とした販売促進活動はほとんどされていないことを指摘する。
そこで検討すると,乙第116号証及び乙第117号証は,HMS商品, の営業利益率あるいは営業利益額を算出するための基礎資料であるところHMS商品の営業利益率あるいは営業利益額を算出するためには,営業施策販促費用(乙116)ないし営業施策関連費用(乙117)をHMS商品とHMS商品以外の商品とに区分することが必要である。したがって,これらを区分すること自体は問題ではない 問題は どのような経費が オ 。,「ーダー(HMS)関連費用」に計上されているかである。
「景品費」については,HMS商品とレディメイド商品とを分け,HMS商品に要した経費のみを「オーダー(HMS商品)関連費用」に計上していること 「販売促進費」についても,HMS商品に関するパンフレット ,やポスターなどを「オーダー(HMS)関連費用」として計上しているこ, (), と カラーフィットデビューキャンペーン 乙40の1〜6 についてはHMS商品の販売促進が主たる目的であったが 「オーダー(HMS)関連 ,費用」に計上したのは,プレゼント品に要した経費のみを「景品費」として計上したにとどまることが認められる(弁論の全趣旨 。)上記認定事実によれば,HMS商品の販売に要したことが明らかな営業関連経費のみが「オーダー(HMS)関連費用」に計上されていることが認められる。
したがって,原告の指摘事項を考慮しても,乙第116号証及び乙第117号証における「オーダー(HMS)関連費用」と「オーダーメイド以外関連費用」の区分及びそれぞれの経費の額は合理的なものであるというべきであり,営業関連経費に関する偽装があるとの原告の主張は採用できない。
販管費と営業利益率に関する偽装があるとの主張について(イ)原告は,乙第119号証において 「販管固定費」をHMS商品と a ,レディメイド商品とで分けることは,事業部制を採用していない被告においては無意味である旨主張する。
しかし,特定の商品の利益率及び利益額を算出するに当たって,固定費を各商品の経費として割り付けるのは当然のことであり,事業部制を採用しているか否かとは関係がない。
また,原告は,特定の商品に結びついた費用ではない固定費を割り付bけたのでは,各商品の属性として利益率が求められず,分析の指標としての意味がない旨主張する。
しかし,被告が乙第119号証等によりHMS商品とレディメイド商品の利益率等を求めようとしている理由は,HMS商品の利益率がレディメイド商品の利益率と変わらず,HMS商品が,原告が主張するような高利益商品ではないこと,したがって,被告がその販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,最終的にHMS商品の販売を中止したことが合理的であることを立証するためである。このような趣旨に照らせば,固定費を各商品の経費として割り付けることには何ら問題はなく,分析の指標としての意味はある。
さらに,原告は,販管費を売上比によって配分することは合理的でなcい旨主張する。
しかし,ある商品の売上げが増加すれば,その分だけその商品の販売等に要する経費も増加すると考えることは,何ら不合理ではなく,販管費を売上比によって配分することは合理的である。
したがって,販管費と営業利益率に関する偽装があるとの原告の主d張は理由がない。
商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があるとの主張につ(ウ)いて原告は,被告が平成17年3月より商品券を「値引券」に変更し,また第29期の平成17年11月よりポイント制度を導入しているにもかかわらず,乙第116号証ないし乙第119号証にはこれらが全く反映されておらず,利益率が偽装されている旨主張する。
しかし,まず,被告は平成17年3月より値引券を発行しているが,監査法人から指摘を受けたこともあり,商品券とともに平成17年3月以降はこれらを売上高から直接控除する方式に会計処理を変更したこと,したがって,これらについては,売上高ベースで既に反映されていることが認められる(弁論の全趣旨 。)また,ポイント付与制度については,第29期は導入初年度であることから,乙第116号証の「第29期月次推移表(実績 」の「販売促進費」 )という科目に計上されていること<中略>第30期以降は,乙第116号証の 第30期月次推移表 実績の その他経費内訳 という科目の 紹 「()」 ()「介手数料・ポイント引当金繰入額」という項目に計上されていること,第29期及び第30期とも,ポイント引当金はHMS商品とHMS以外の商品の売上比に応じて割り付けられていることが認められる。
したがって,商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があるとの原告の主張は理由がない。
プレゼント商品と景品費に関する偽装があるとの主張について(エ)原告は,乙第117号証の経費内訳において,第25期の販売促進費欄の「プレゼント商品」は,本来他の期と同様「景品費」の項目に挙げるべきであるにもかかわらず,別途の項目が設けられ,黄色が塗られているのは,第25期に被告がプレゼントのキャンペーンを行ったことを殊更に強調するための偽装である旨と主張する。
しかし,被告においてプレゼントをキャンペーンとして始めたのは第25期からであり,同期においてはプレゼント商品を販売促進費に含めて会計処理していたこと,ところが,プレゼント商品の総額が増加し始めたことから,経費に対する認識を明確にするべく,第26期から「景品費」の科目に計上するようになったことが認められる。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
売上高に関する偽装があるとの主張について(オ), 「」, 原告は 乙第116号証の期別月次推移表の レディ売上 の数値にはレディメイド商品だけでなく,ボディケア化粧品・ストッキング・アウターウェアなどの売上高を上乗せした金額となっているとして,この数値に基づいて作成された乙第118号証の棒グラフは 故意に誤導的効果を狙っ ,たものである旨主張する。
しかし,被告が乙第116号証を作成したのは,HMS商品の利益率を求めるために,HMS商品の売上高と営業関連経費の関連性を示すことにあるから,HMS商品の売上高とそれ以外の売上高が区別できれば必要十分である。したがって 「レディ売上」の中にレディメイド商品(ファンデ ,ーション・ランジェリー)以外の商品(ボディケア化粧品・ストッキング・アウターウェアなど)の売上げが含まれていても何ら問題はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
HMS商品(ガードル)の販売開始時期に誤りがあるとの主張につい(カ)て原告は,乙第118号証のグラフ上,HMS商品(ガードル)の「あこ」 「」 , がれ と ミーチュー が発売されたのは平成14年2月とされているがこれは3月の誤りであり,<中略>プレゼントのキャンペーン費用の増減と売上げの増減との間には関連性はない旨主張する。
確かに,HMS商品(ガードル)の「あこがれ」と「ミーチュー」が発売されたのは,平成14年2月ではなく,同年3月である(当事者間に争いがない。<中略>。)しかし,HMS商品(ガードル)の「あこがれ」と「ミーチュー」は,平成14年3月にHMS商品(ガードル)の新商品として投入されたものであるから,もともと多額の費用を投じて販促活動を行わなくても売上高の増加要因となり得るともいえる。
したがって,平成14年3月にプレゼント費用が半減したにもかかわらず,HMS商品の売上げが増加したという事実から直ちに,プレゼント費用の増減と売上げの増減との間に関連性がないと結論付けることはできない。
営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があるとの主張について (キ)原告は,乙第116号証ないし乙第118号証の営業関連経費の発生時期や金額が被告の主張に平仄を合わせて設定入力されていたり,誤って記載されているおそれが多分にある旨主張し,その例として,?@平成14年8月に「ハイブリッドメジャー償却」としてHMSメジャーの償却費が計上されているのに,レディメイド商品のサンプルの償却費が計上されていないこと,?A第24期から第27期までの間,レディメイド商品も5割から3割の売上げがあったにもかかわらず,レディメイド商品関連経費が極, 「」, 端に少ないこと ?B乙第119号証の売上原価 染め加工料 欄においてカラーフィットの染め加工料は計上されているのに,第28期以降に販売された多色展開商品である「リドル」や「デビュアランジェ」の染め加工料が記載されていないことを指摘する。
しかし,上記?@については,乙第119号証の「売上原価」欄において「試着費償却(レディー関連 」としてレディメイド商品のサンプルの減価 )償却費が計上されている。
上記?Aについては,原告が具体的にどの数字を指しているのか不明であり,レディメイド関連経費が極端に少ないとの判断はできない。
上記?Bについては,被告は「リドル」や「デビュアランジェ」を染色された製品として商社経由で仕入れていること,したがって,これらの染め加工料は製造原価の中に含まれていることが認められる(弁論の全趣旨 。)したがって,原告指摘の例?@ないし?Bはいずれも失当であり,乙第116号証ないし乙第118号証の営業関連経費の発生時期や金額が被告の主張に平仄を合わせて設定入力されていたり,誤って記載されているおそれが多分にある旨の原告の主張は理由がない。
以上のとおり,原告が,乙第116号証ないし乙第119号証は信用(ク)できない理由として挙げた7点,すなわち,?@営業関連経費に関する偽装があること,?A販管費と営業利益率に関する偽装があること,?B商品券と値引券・ポイント付与制度に関する偽装があること,?Cプレゼント商品と景品費に関する偽装があること,?D売上高に関する偽装があること,?EHMS商品(ガードル)の販売開始時期に誤りがあること,?F営業関連経費の発生時期と金額の誤り等があることは,いずれも理由がないものであり,その他に乙第116号証ないし乙第119号証の信用性を否定すべき事情は見当たらない。
エHMS商品の利益率について証拠(乙116,117,119)及び弁論の全趣旨によれば,HMS(ア)商品とレディメイド商品の営業利益率は,次のとおりであったことが認められる。
HMS商品レディメイド商品差第24期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第25期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第26期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第27期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第28期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第29期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●第30期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●7期平均●●●●●●●●●●●●●●●●●●●7期通期●●●●●●●●●●●●●●●●●●●以上のとおり,いずれの期においても,レディメイド商品の方がHMS(イ)商品よりも高い営業利益率を上げていることが明らかである。HMS商品が最大の営業利益率を上げた第27期においても,レディメイド商品の営業利益率の約半分にしぎない。<中略>以上によれば,HMS商品の利益率は,レディメイド商品の利益率に比(ウ)べて低いことから,被告がその販売方針の力点をHMS商品からレディメイド商品に移し,最終的にHMS商品の販売を中止したことは,経営判断として,何ら不合理とはいえない。
被告に原告に対する相当の対価の支払を免れる目的があった否かについて()4以上のとおり,HMS商品の販売抑制策をとり,最終的にその販売を中止する措置をとった被告の経営判断は何ら不合理とはいえない。そして,その経営判断の内容に照らせば,被告が,もっぱら原告に対する相当の対価の支払を免れる目的をもって上記措置をとったとは認められず,他にこのことを認めるに足りる証拠はない。
結論()5以上のとおりであるから,本件各発明の特許を受ける権利承継に係る相当の対価の額の算定に当たっては,被告がHMS商品の販売を抑制した後についても,HMS商品の実際の売上高をもとに算定すべきであり,被告がHMS商品の販売を終了した平成20年2月以降については,その売上げはないから,これを零として相当の対価の額を算定すべきことになる。
6争点( )(本件各特許の無効理由の存否とその相当の対価の額への影響の有6無・程度)について上記5で判示したとおり,被告がHMS商品について平成16年9月ころに販売政策を変更してその販売を抑制し,平成20年2月をもってその販売を打ち切ったところ,その販売政策は経営判断として不合理とはいえないから,相当の対価の額の算定上,被告の受けるべき利益の額には平成20年2月以降のHMS商品の販売による利益は考慮されないこととなる。ところで,無効審決の確定により,特許権は初めから存在しなかったものとみなされる(特許法125条本文 。しかし,無効審決が確定するまでは,たとえ当該特許に無効理 )由があるとしても特許権は一応有効なものであって,事実上の独占力を有するものとして取り扱われる。したがって,仮に,本件各特許について上記販売打切り後に無効審決が確定したとしても,そのことは,直ちに,それまでに被告の得た利益の額に影響を及ぼすものではない。本件においては,口頭弁論終結時点において本件各特許に係る無効審決は確定していない。
被告は,ライセンスの交渉を行う場合に無効理由の資料を収集することは一般的に行われているから,明確な無効理由が存在する場合には,ライセンス契約を行うのは,単にトラブルを避けるといった意味しかなく,また,無効理由が存在するのではないかという資料が存在する場合にもライセンスを受ける側にその事情は有利に働いてライセンス料が低廉化するというのは常識であるとして,本件各特許には無効理由が存在しているから相当対価は存在しないか,極めて低廉なライセンス料率にしかなり得ないと主張する。
確かに,ライセンス交渉の対象特許に無効理由が存在することが同交渉の当事者双方の共通の認識になっている場合には,このことが同交渉において特許権者に不利に働き,ライセンス料が低率化することは考えられる。
しかし,本件各発明について被告が主張する無効理由は,いずれも進歩性欠如(特許法29条2項違反)を理由とするものであるところ,本件で被告が証拠として提出している引用例の内容,本件各発明との相違点等に照らし,進歩性の欠如が一見して明らかであるとは認められない。このような場合,ライセンスを受けようとする者が,ライセンス交渉を自己に有利に進めるべく,上記引用例を挙げながら対象となる発明が進歩性を欠き特許無効理由が存在する旨を相手方に主張したとしても,特許庁のした無効審決とか,侵害訴訟において裁判所が特許法104条の3の抗弁を理由ありと認めて判決をした場合等の公権的な判断の裏付けもない状況の下で(本件においては,本件口頭弁論終結日現在,いまだ本件各特許の無効審決は確定していない,ライセンス料を低廉化させられ得るとはに 。)わかに考え難い。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
7争点( )(仮想実施料率)について7被告は,本件各特許には無効理由が存在すること,HMS商品の利益率がレディメイド商品の利益率より低いことから,本件各発明の仮想実施料率は超過売上げの1%以下であると主張する。
しかし,まず,本件各特許については,本件口頭弁論終結時現在,いずれも無効審決が確定しておらず,特許無効理由が存在するとの一方当事者の主張のみによってライセンス料が低廉化するとは考え難いことは前記のとおりである。
そして,本件各発明の内容,HMS商品の売上実績,その他本件に顕れた一切の事情を考慮し,仮想実施料率は超過売上額の3%をもって相当と認める。
8争点( )(被告の貢献)について8本件各発明の完成に対する被告の貢献 ()1ア本件各発明は,原告が単独で完成したものである。
そして,証拠(甲79,R証人,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,その開発に際し,個人的に購入した市販の下着類や,自宅の工業用ミシンを用いたこと,本件各発明の完成のためにはCADの利用が重要な要素となったものであるが,CADに関する知識及び知見,本件各発明に至る基本的な着想は被告会社における業務とは関係なく原告が得たものであることが認められる。
他方,被告が,本件各発明に至る基本的な着想,本件各発明の完成に至る技術的思想の提供について何らかの有意な関与をしたとの事実が認められないことは前示のとおりである。また,原告は被告のCADを用いて本件各発明の開発を進めたが,これは本来研究用の機器ではなく,その他,被告が本件各発明の完成に至る経過において研究開発費や研究設備費を出捐したことはないし,被告が原告に対して研究開発のために特別に時間を与えていたということもない。
イ被告は,本件各発明の完成に至る経過における被告の貢献として,?@被告がワコールのデューブルベ試着に基づき計測器具開発という目標を設定したこと,?A被告がフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という解決課題を付与したこと,?B被告がフルオーダー事業によるノウハウやデータを蓄積しておりこれを利用することを容認したことを主張する。
しかし,上記?@については,被告は,平成11年9月に本件各発明は原告が独自に着想し開発を進めたものであり,証拠(甲79,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は独自に平成12年4月にワコールのデューブルベの試着を行ったこと,しかし,デューブルベで採用されていたバージスの計測方法は,それ自体独立したバージスメジャーを使用するものであり,着用感を確かめるために着用するゲージブラはカップと一体となって切り離せないものであったことが認められ,デューブルベの試着が本件各発明の技術的思想に何らかの寄与をしたとは認められない。
上記?Aについては,被告がフルオーダーの納期遅延及び採寸ミスの解消という課題を付与したということがあったとしても,このような「課題」は,本件各発明の課題とは異なる。すなわち,本件発明1の課題は 「カップ部 ,を有する衣類において,着用者の体型に対応したカスタムサイズのカップ部を有し,着用時にフィット感のある衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供する」こと,また「着用者がカスタムサイズのカップ部を有する計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができるカップ部を有する衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供するこ」(【 】【】) と本件明細書1の 発明が解決しようとする課題 の段落 0008であり,本件発明2の課題は 「着用者の体型にフィットしたカスタムサ ,イズの衣類を提供し得るオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供する」こと,また「着用者がカスタムサイズと同様な計測サンプルを試着することができ,そのフィット感を確認した上で注文することができる衣類のオーダーメイド用計測サンプル及びオーダーメイド方式を提供すること (本件明細書2の【発明が解決しようとする課題】の段 」落【0008 )にあるから,被告が原告に対してフルオーダーの納期遅延 】及び採寸ミスの解消という課題を与えたとしても,それをもって相当の対価の算定に当たって考慮すべき被告の貢献とみることはできない。
上記?Bについては,被告主張のノウハウやデータがどのように本件各発明の完成に寄与したのか不明であり,主張自体失当である。
よって,被告主張の?@ないし?Bは,いずれも本件各発明の完成に至る経過における被告の貢献として考慮することはできない。
本件各発明の完成後の被告の貢献()2前記認定事実,証拠(B証人,D証人,C証人,R証人,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,HMSメジャーの実用化ひいてはHMS商品の実用化に当たって,被告は,そのための部署として第2生産部を設け,人員を配置し,,「」 協力工場の協力を仰ぎその費用負担をしたこと 被告内部に オーダー研究会なる研究会を設けてBの協力も得ながら,HMS商品の実用化に向けて試着,検討,改良を進めたこと,本件各発明の特許出願に当たり,被告の顧問弁理士に協力を求め,審判請求及び補正手続を行い,その費用を負担したこと,HMS商品の販売に当たって,HMSメジャーを全店舗に配置し,販売員にHMSメジャーによる計測方法についての研修を行ったこと,HMS商品の販売のために多額の販売促進費用を投じたこと(ただしこの点は,前示のとおりHMS商品の売上げに占める本件各発明の寄与度を算定する際に考慮した,他方,。)原告は,HMS商品の実用化に当たって,HMS商品のサイズの決定,資材選び,製造工場との調整,マニュアルのたたき台作成,販売員の研修について主導的な役割を果たしたこと,本件各発明の特許出願に当たり,弁理士に技術的構成を説明したり,出願書類をチェックしたこと,以上の事実が認められる。
結論()3上記( )及び( )認定の事実を総合考慮すると,本件各発明の実施により被12告が得た利益に対する被告の貢献度は,80%をもって相当と認める。
9争点( )(被告における原告の処遇)について9被告は,本件各発明に対する報償として原告を取締役に昇進させたのであるから,昇進後の報酬額と昇進前の給与との差額は本件各発明の対価に当たる旨主張する。
しかし,取締役の報酬は取締役の職務執行の対価であるから,その中に職務発明対価を観念することはできない。
したがって,被告の上記主張は採用できない。
10相当の対価の額についてHMS商品の売上高()1本件発明1の特許登録日は平成17年3月4日であり,本件発明2の特許登録日は同年6月24日である。証拠(甲5,6,乙116)及び弁論の全趣旨によれば,HMS商品の売上高は次のとおりと認められる。
ア平成17年3月3日までのHMS商品全体の売上高平成13年9月から平成14年8月まで(ア)107億円(甲5)平成14年9月から平成15年8月まで(イ)127億3192万5000円(甲6・8頁の2( )) 2平成15年9月から平成16年8月まで (ウ)170億5657万0435円合計404億8849万5435円(エ)イ平成17年3月4日以降のHMS商品(ブラジャー)の売上高平成17年3月から同年8月まで7億3605万5000円(ア)平成17年9月から平成18年8月まで6億3329万8000円 (イ)平成18年9月から平成19年8月まで4億1817万円 (ウ)平成19年9月から平成20年2月まで9718万5000円 (エ)合計 18億8470万8000円 (オ)ウ平成17年3月4日から同年6月23日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)平成17年3月から同年8月までのHMS商品全体の売上げ-平成17年3月から同年8月までのHMS商品(ブラジャー)の売上げ-平成17年6月24日から同月30日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上げ-平成17年7月から同年8月までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上げ<中略>エ平成17年6月24日以降のHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高平成17年6月(6月分÷30×7)2873万7000円(ア)平成17年7月から同年8月まで2億3756万8000円 (イ)平成17年9月から平成18年8月まで6億9310万9000円 (ウ)平成18年9月から平成19年8月まで4億5635万1000円 (エ)平成19年9月から平成20年8月まで1億0079万2000円 (オ)合計 15億1655万7000円 (カ)相当の対価の額 ()2相当の対価の額=〔 平成17年3月3日までのHMS商品全体の売上高 {+平成17年3月4日から同年6月23日までのHMS商品(ガードル及びボディスーツ)の売上高}() ×HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合 50%×10%+{平成17年3月4日以降のHMS商品(ブラジャー)の売上高( ) +平成17年6月24日以降のHMS商品 ガードル及びボディスーツの売上高}×HMS商品の売上げに対する本件各発明の寄与割合(50% 〕)×仮想実施料率(3%)×原告の貢献度(20%)÷発明者の数(1人)<中略>=2253万0142円以上のとおり,本件各発明に係る相当の対価の額は,2253万0142円と認められる。
なお,原告の被告に対する相当の対価の請求権は,債務の履行について期限の定めのないものであるから,遅延損害金の起算日は,被告が履行の請求を受けたことが明らかな訴状送達の日の翌日である平成18年8月2日となる。
第5結論以上によれば,原告の本件請求は,主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 北岡裕章
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