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関連ワード 特許を受ける権利 /  発明者 /  考案者 /  協議 /  黙示の合意 /  共同開発 /  時効 /  援用権(援用) /  信義則 /  特許発明 /  実施 /  算定方法 /  実施料 /  持分譲渡(持分の譲渡) /  実施権 /  実施許諾(実施の許諾) /  対価 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 1479号 特許を受ける権利等譲渡代金請求事件
原 告セプロ株式会社
訴訟代理人弁護 士安倉孝弘
被 告JFEスチール株式会社
訴訟代理人弁護 士森本紘章
同 佐藤史肇
同 西尾亮平
被 告JFE物流株式会社
訴訟代理人弁護 士大藤潔夫
同 太田尚成
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2009/02/26
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告らは,原告に対し,各自3億円及びこれらに対する平成19年2月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,?@後記特許に係る発明の発明者は,同発明についての特許を受ける権利をその使用者たる会社に譲渡し,同会社は,上記特許を受ける権利を更に原告に譲渡したこと,?A後記実用新案登録に係る考案の考案者である原告代表者は,同考案についての実用新案登録を受ける権利を原告に譲渡したことを前提とし,原告が,被告らに対し,上記特許を受ける権利及び上記実用新案登録を受ける権利の各持分25パーセントをそれぞれ譲渡したとして,その各持分の譲渡代金の支払(各被告に対しそれぞれ13億8750万円のうちの3億円を請求。遅延損害金は各被告に対しいずれも訴状送達の日の翌日である平成19年2月23日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による。)を求めた事案である。
第3前提となる事実(次の事実は,当事者間に争いがないか,末尾記載の証拠等により認められる。)1当事者等(1)原告原告は,旧商号が平井電機株式会社であり,平成6年4月1日,現在の商号に商号変更した株式会社である。
(2)被告JFEスチール株式会社(以下「被告スチール」という。)被告スチールは,旧商号が川崎製鉄株式会社であり,平成15年4月1日,現在の商号に商号変更した株式会社である。
(3)被告JFE物流株式会社(以下「被告物流」という。)被告物流は,旧商号エヌケーケー物流株式会社が,平成16年4月1日,川鉄物流株式会社(平成6年7月1日の商号変更前の旧商号は川鉄運輸株式会社)を吸収合併すると同時に,現在の商号に商号変更した株式会社である。被告物流は,被告スチールの関連会社である。
(4)JFE電制株式会社(以下「JFE電制」という。)JFE電制は,旧商号が川鉄電気設備工事株式会社であり,昭和62年1月1日,川鉄電設株式会社に商号変更し,平成16年4月1日,現在の商号に商号変更した株式会社である(甲4の1・2)。
2本件装置(1)被告スチールは,その西日本製鉄所倉敷(旧川崎製鉄株式会社水島製鉄所。
以下「本製鉄所」という。)において,溶融状態の銑鉄を高炉出銑口で積み込み,所要の場所まで運搬するための貨車(それ自体は駆動力を備えていないもので,「台車」「TC車」「トピードカー」ともいう)及びこれを牽引するディーゼル機関車(「動力車」「DHL車」ともいう。)を使用し,溶銑運搬の作業を行っている。
(2)前記の機関車と貨車には,昭和61年3月から,「混銑車自動停留ブレーキ及び連結解放装置」ないし「トレックス-PB装置(Train Remote Electricwave control System Parking Brake/列車遠隔電磁波制御方式停留制動装置)」(以下「本件装置」という。)が採用されている。本件装置は,無線遠隔指令によって任意の貨車のブレーキの緊締・緩解及び機関車と貨車,貨車相互の連結・解放を行うとともに,貨車の突放(逸走)等の緊急時にブレーキが自動的に作動するシステムである。
3特許及び実用新案登録(1)特許(甲110の1ないし8。以下,この特許を「本件特許」,その特許発明を「本件発明」という。)発明の名称車両の連結並びに解放方法及び装置出願日昭和61年8月4日(特願昭61-183235)登録日平成5年11月26日特許番号特許第1804586号特許請求の範囲別紙特許公報記載のとおり抹消登録日平成18年10月11日発明者P1,P2,P3,P4出願人兼特許権者被告スチール,被告物流,JFE電制,原告(2)実用新案登録(甲111の1ないし6。以下,この実用新案登録を「本件実用新案登録」,その考案を「本件考案」という。)考案の名称低速車両の自己発電による電気制御装置出願日昭和61年11月12日(実願昭61-174285)登録日平成6年10月21日実用新案登録番号実用新案登録第2036129号実用新案登録請求別紙実用新案公報記載のとおりの範囲抹消登録日平成14年1月16日考案者P1,P2,P3,P4出願人兼実用新案権者被告スチール,被告物流,JFE電制,原告4本件訴訟の提起原告は,平成19年2月13日,本件訴訟を提起した。
5時効援用被告らは,原告に対し,平成19年9月3日の本件弁論準備手続の期日において,本件発明に係る特許を受ける権利(以下「本件特許を受ける権利」という。)及び本件考案に係る実用新案登録を受ける権利(以下「本件実用新案登録を受ける権利」という。)の各譲渡代金債権につき,消滅時効援用するとの意思表示をした。
第4争点1譲渡代金の発生の有無(1)本件発明の発明者及び特許を受ける権利の譲渡の有無(2)本件考案の考案者及び実用新案登録を受ける権利の譲渡の有無2消滅時効の成否3譲渡代金相当額第5争点に対する当事者の主張1譲渡代金の発生の有無(前記第4の1の争点)(1)原告の主張ア本件発明の発明者及び特許を受ける権利の譲渡の有無(前記第4の1(1)の争点)(ア)湯浅通信機工業株式会社(以下「湯浅通信機」という。)の従業員であったP5及びP6は,昭和60年1月ころから昭和61年3月ころまでに,湯浅通信機における自己の職務として,本件装置のハード部分(ただし,電気制御装置に関する部分は除く)に関する発明(本件発明)をして,本件特許を受ける権利を取得した。
(イ)P5及びP6は,本件特許を受ける権利を湯浅通信機に譲渡した。
(ウ)湯浅通信機は,原告に対し,遅くとも昭和61年3月3日までに,本件特許を受ける権利を譲渡した。
(エ)原告は,被告ら及びJEF電制に対し,遅くとも昭和61年8月4日までに,本件特許を受ける権利の持分のうち各25パーセントをそれぞれ黙示の合意により譲渡した(以下「本件譲渡1」という。)。同譲渡に際しては報酬ないし対価に関する定めはなかったが,商法512条により商人間の契約として有償であるから,譲渡人である原告は,譲受人である被告らに対し,相当額の譲渡代金を請求することができる(以下「本件譲渡代金1」といい,その債権を「本件譲渡代金債権1」という。)。本件譲渡代金1の支払時期の定めはなかった。
イ本件考案の考案者及び実用新案登録を受ける権利の譲渡の有無(前記第4の1(2)の争点)(ア)原告代表者P4は,原告における自己の職務として,昭和60年1月ころから昭和61年3月ころまでに,本件装置のうち電気制御装置に関する部分についての考案(本件考案)をして,本件実用新案登録を受ける権利を取得した。
(イ)P4は,遅くとも昭和61年5月31日までに,本件実用新案登録を受ける権利を原告に譲渡した。
(ウ)原告は,被告ら及びJEF電制に対し,遅くとも昭和61年11月12日までに,本件実用新案登録を受ける権利の持分のうち各25パーセントをそれぞれ黙示の合意により譲渡した(以下「本件譲渡2」といい,本件譲渡1と併せてそれぞれの譲渡を「本件各譲渡」という。)。同譲渡に際しては報酬ないし対価に関する定めはなかったが,商法512条により商人間の契約として有償であるから,譲渡人である原告は,譲受人である被告らに対し,相当額の対価を請求することができる(以下「本件譲渡代金2」といい,その債権を「本件譲渡代金債権2」という。また,本件譲渡代金1及び同2を併せて「本件譲渡代金」といい,本件譲渡代金債権1及び同2を併せて「本件譲渡代金債権」という。)。本件譲渡代金2の支払時期の定めはなかった。
(2)被告スチールの主張否認する。被告スチールは,昭和59年12月ころ,被告物流に対し,本件装置の開発を依頼し,被告物流は,本件装置の電気制御エンジニアリング部門の開発をJFE電制に依頼し,JFE電制は,原告に対し,本件装置の全体設計・製作・配線工事を依頼し,こうして本件装置は,被告ら,JFE電制,原告が共同開発したものであり,本件発明及び本件考案も上記4社により共同で行われた。
仮に,本件各譲渡につき,有償譲渡契約が締結されていたとすれば,その本質的要件である目的物の具体的対価ないしその算定方法を契約締結時に定めなければならないところ,被告スチールは,被告スチールにとって著しく不利・不合理な算定方法というべき原告が主張する対価算定方法(本件装置導入により被告スチールが得られる利益を基準として対価とするもの)について,明示の意思表示はしていないし,黙示にもすることは絶対にない。
原告は,商法512条を根拠に,本件譲渡代金につき相当額を請求できると主張するが,商法512条は,民法上の無償契約の特則であり,適用の前提として当該契約が無償契約であることを要するところ,原告の主張によれば,本件各譲渡は有償契約なので,商法512条の適用はない。
(3)被告物流の主張否認ないし争う。電磁コイル信号伝送装置のアイディアが湯浅通信機によって発案されたことは認めるが,本件装置の開発自体は,被告らの指示,指導のもと,共同開発体制下で共同開発されたのであり,本件特許を受ける権利及び本件実用新案登録を受ける権利も,被告ら,JFE電制,原告(本件特許を受ける権利については湯浅通信機を含む。)が共同で取得した。なお,湯浅通信機にあっては,本件装置の開発,設計には,もっぱらP7,P5,P8の3名が携わり,P6は実験機の製作段階である昭和60年3月以降に関与した。
2消滅時効の成否(前記第4の2の争点)(1)被告スチールの主張ア消滅時効の完成原告の主張によれば,本件特許を受ける権利の譲渡は昭和61年8月4日,本件実用新案登録を受ける権利の譲渡は昭和61年11月12日に行われ,いずれも弁済期の定めはなかったのであるから,各譲渡日から本件譲渡代金債権1及び2の権利行使は可能である。したがって,本件譲渡代金債権1及び2は,いずれも各譲渡日から5年の経過により時効消滅している。
イ原告の時効未完成の主張について消滅時効は,権利を行使することができる時から進行するところ(民法166条1項),権利を行使することができる時とは,権利を行使するのに法律上の障害がなくなった時をいうのであり,権利者の一身上の都合で権利を行使できないことや権利行使に事実上の障害があることは何ら影響しない。
原告は,平成16年12月21日まで,被告らと後記の本件プログラムの使用料の清算に関する協議・交渉を行っていたから,本件譲渡代金債権の権利行使に障害があり,時効は進行しないと主張するが,本件譲渡代金債権は,後記の本件プログラムの使用料とは別個の債権であり,その行使に法律上の障害はなかった。
ウ原告の信義則違反の主張は争う。
(2)被告物流の主張ア消滅時効の完成原告の主張によれば,本件譲渡代金債権1及び2の支払時期の定めはなかったのであるから,本件譲渡代金債権の支払時期は,譲渡日が遅い方である本件実用新案登録を受ける権利の譲渡日である昭和61年11月12日となり,これから5年(商事債権)を経過した平成3年11月12日に本件譲渡代金債権は時効により消滅した。
イ原告の時効未完成の主張について時効は,権利を行使することができる時から進行するところ,権利を行使することができるとは,権利行使について法律上の障害がない状態をいう。
原告が主張する諸事情は,法律上の障害にはあたらない。
ウ原告の信義則違反の主張について原告は,被告らの消滅時効の主張は,著しく信義則に違反すると主張するが,原告が主張する諸事情は,本件譲渡代金債権の行使により,利益をもたらしている被告らとの商取引が円滑に運ばなくなることをおそれたことに尽きるのであり,利益をもたらしている商取引をとるか,本件譲渡代金債権を行使するかの選択において,原告は,企業者の自由意思をもって前者を選択したのであるから,原告が選択しなかった他方の結果につき,被告らが消滅時効を主張したからといって,信義則違反となるものではない。
(3)原告の主張ア時効の未完成(ア)被告物流は,昭和43年9月から平成10年ころまで,約定に基づき,被告物流が保有する車両の電装品に関するメンテナンス業務をすべて原告(昭和43年当時は原告代表者の個人営業)に発注し,発注業務の範囲を拡大したり,被告物流の下請業者からの発注をあっせんするなどし,原告もこれに応じてきた。
(イ)原告は,本件装置の開発・製作を受注し,昭和60年8月27日,被告らとの間で,本件装置用のコンピュータープログラムの使用料(以下「本件プログラムの使用料」という。)の清算について,支払に替えて5項目(本件装置完成後のメンテナンスにつき,原告が被告スチールと外注契約を締結した上,被告物流の下請として常駐体制でメンテナンスを行うこと等)の代替措置をする合意をし(以下「本件5項目合意」という。),その代替措置が不履行にならない限り,被告らに対して,上記使用料を請求できない約定があった。
(ウ)本件5項目合意は,平成8年ころから徐々に十分に履行されない状態となり,原告は,本件5項目合意の対象である発注額の増額を申し入れたが,平成10年ころにほぼ不履行になった。
(エ)原告は,平成13年4月から平成16年12月21日まで,被告らとの間で,本件装置の更新に関する協議をしたが,原告が,本件プログラムの使用料の清算を協議対象としたこともあり,被告物流から,被告ら及びその関連会社と原告との取引を打ち切る旨通告されたため,原告は,協議による解決を断念し,平成17年3月22日,本件プログラムの使用料の支払等を求める訴えを提起した。
(オ)被告物流は,その優越的な地位を利用し,原告との取引の全期間を通じて,しばしば無理難題と思える要求を押しつけ,原告が異議を述べたり,要求をすると,取引関係の打ち切りを示唆することが多かったが,原告は,被告物流との取引関係を打ち切られると,経営が破綻するおそれがあったため,異議や要求を差し控えざるを得なかった。
(カ)以上の経緯ないし事情に照らすと,原告が被告らに対し明示の支払約束のない本件譲渡代金債権を行使することは,少なくとも平成16年12月21日までは,取引社会の通念上不可能又は著しく困難であった。よって,原告は,平成16年12月21日までは,本件譲渡代金債権の行使に障害があったので,同日まで時効は進行しない。
(キ)被告らは,上記の経緯ないし事情は法律上の障害にはあたらないと主張するが,事実上の障害であっても,その障害が重大で,権利行使が取引社会の通念上著しく困難であり,権利の上に眠れる者などと評価することが酷であると認められるときは,その事実上の障害は法律上の障害と同視されるべきであり,その事実上の障害が存在しなくなったときに初めて時効が進行すると解するべきである。上記の経緯ないし事情は,法律上の障害と同視すべき事実上の障害ということができる。
信義則違反上記の経緯ないし事情に照らせば,被告らの消滅時効に関する主張は,著しく信義則に反し,許されない。
3譲渡代金相当額(前記第4の3の争点)(1)原告の主張ア従来方式による装置と対比した本件装置の利点は次のとおりである。
?@作業効率の上昇に伴う溶銑温度低下の抑止によるエネルギーの節約?A自動化による作業員の大幅削減?Bモーターカー(MC車)の廃止によるその新規購入費用及びメンテナンス費用の削減?C脱硫センターの廃止による設備費用及び監視要員の削減等?D各貨車の無線機器の廃止による設備費用及びメンテナンス費用の削減?E安全性の向上による監視要員の削減イ本件装置の導入に伴う上記利点を金銭に換算すれば,控えめにみても1か月当たり1億円,年額12億円を下回ることはなく,このうち本件発明及び本件考案の寄与にかかる部分は,その50パーセントに相当する年額6億円をくだらない。また,本件発明及び本件考案の寄与の割合は,本件発明が70パーセント,本件考案が30パーセントである。
ウこれを前提とすると,本件特許を受ける権利は84億円(6億円×70%×20年),本件実用新案登録を受ける権利は27億円(6億円×30%×15年),合計111億円と評価すべきところ,本件発明及び本件考案の実施に当たる本件装置が被告スチールに納入され,その製作代金が既に決済されていること等から,本件譲渡代金1及び2の合計額は,その50パーセントである55億5000万円が相当である。
エよって,原告が各被告に対して請求できる本件譲渡代金は,55億5000万円の25パーセントに当たる13億8750万円であり,原告は,うち各3億円を本件訴訟において請求する。
(2)被告スチールの主張否認ないし争う。本件装置が溶銑運搬作業の効率と安全性の向上に寄与することは否定しないが,それらを飛躍的に高めたわけではない。
特許権,実用新案権の有償譲渡の対価は,当該権利の法的独占に由来する独占的実施の利益あるいは第三者に対する実施許諾による実施料収入等の利益により決せられるべきである。本件では,同様の目的を達しうる本件装置が先行して開発されているので,当該権利を独占できる利益はなく,また,本件装置について,開発以来,他社への実施権設定契約も販売実績もない。被告スチールは,本件装置そのものを有償で購入しているので,当該権利を被告スチールで実施することによる利益を考慮する必要はない。
(3)被告物流の主張否認ないし争う。本製鉄所において溶銑運搬作業の効率が従来より高まったのは,同作業について総合的な合理化対策を実施したからであり,本件装置そのものの寄与は極めて小さい。実際,原告と被告物流は,平成6年8月ころ,韓国の浦項製鉄所に本件装置の売り込みを図ったが,成功しなかったし,本製鉄所において本件装置を導入して20年を経過した現在でも,本件装置を使用しているのは本製鉄所のみであり,我が国の他の製鉄所では,それぞれ独自の方式で溶銑運搬をしている。原告が挙げる利点のうち?@のみがわずかながらあることは認めるが,その余は否認する。
第6当裁判所の判断1消滅時効の成否(前記第4の2の争点)について(1)消滅時効は,権利を行使することができる時から進行するところ(民法166条1項),権利を行使することができる時とは,法律上の障害がなくなったときをいうと解される。
(2)本件においては,原告の主張によれば,本件各譲渡に際して,本件譲渡代金債権の弁済期の定めはなかったというのであるから,原告は,本件各譲渡時から本件譲渡代金債権を行使することができたというべきであり,本件譲渡代金債権の消滅時効は,本件各譲渡のときから進行する。原告の主張によれば,本件譲渡1は遅くとも昭和61年8月4日,本件譲渡2は遅くとも昭和61年11月12日に行われたというのであるから,本件譲渡代金債権は,本件各譲渡の日から5年の経過により時効消滅したものである。そして,前記第3の前提となる事実のとおり,被告らはその消滅時効援用したので,原告の被告らに対する本件譲渡代金の請求はいずれも理由がない。
(3)この点,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯等からすれば,本件譲渡代金債権の行使は,平成16年12月21日までは取引社会の通念上不可能又は著しく困難であったから,時効は進行しないと主張する。
しかし,原告が主張する事情ないし経緯は,本件譲渡代金債権を行使することについての事実上の障害にすぎず,法律上の障害ではないから,この点に関する原告の主張は失当である。
(4)また,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯等からすれば,被告らの消滅時効に関する主張は,著しく信義則に反し,許されないと主張する。
しかし,原告の指摘する事情ないし経緯をもって,消滅時効援用することが社会的に許容された範囲を逸脱し,又は信義則上許されない行動を取ったと評価することはできないから,被告らが消滅時効の主張ないし援用をすることが著しく信義則に違反するということはできない。
2結論よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 村上誠子
裁判官 高松宏之
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