関連審決 | 不服2007-24051 |
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関連ワード | 技術的思想 / 容易に発明 / 発明特定事項 / 周知技術 / 参酌 / 発明の要旨認定 / 実施 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 減縮 / 変更 / |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10270号
審決取消請求事件
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原告株式会社インコムジャパン 訴訟代理人弁理士鯨田雅信 被告特許庁長官 指定代理人吉田耕一,赤穂隆雄,岩崎伸二,森山啓 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/02/26 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が不服2007−24051号事件について平成20年6月3日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1原告の求めた裁判主文同旨の判決第2事案の概要本件は,原告が,下記1(1)の特許出願(以下「本件特許出願」という。)についての拒絶査定に対する不服審判請求を成り立たないとした審決の取消しを求める事案である。 1特許庁における手続の経緯(1)出願手続及び拒絶査定(甲第1号証の1〜4,甲第3,第4,第7号証)出願人:インコムジャパン有限会社(商号変更前の原告)及び有限会社足立発明の名称:「アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システム」出願日:平成19年3月27日出願番号:特願2007-81965号手続補正日:平成19年6月22日(以下「先行補正1」という。)拒絶査定日:平成19年7月23日(2)本件手続(甲第5,第6号証)審判請求日:平成19年8月31日手続補正日:平成19年8月31日(以下「先行補正2」という。)手続補正日:平成19年9月11日(以下「本件補正」という。)審決日:平成20年6月3日審決の結論:?@「先行補正2及び本件補正をいずれも却下する。」,?A「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成20年6月23日2先行補正1及び本件補正の内容(1)先行補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載「【請求項1】ユーザー側の通信端末との間でネットワークを介して必要なデータを送受信することにより,それぞれの内部,外部,及び販売・提供する商品が3次元画像で示される複数の仮想店舗を含み,3次元画像で示されるユーザーのアバターが,前記複数の仮想店舗の内外を渡り歩きながら回遊できるような,3次元画像で示される仮想空間を,ユーザー側に提供するための仮想空間回遊システムであって,ユーザー側からの要求に基づいて,商品を未だ試着していない試着前アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す試着前アバター用データを生成しユーザー側に送信するための試着前アバター用データ生成送信手段と,ユーザー側から,前記試着前アバターの前記仮想空間内(複数の仮想店舗の内部を含む。以下同じ)における位置の移動に関する位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記位置移動情報に対応する位置に移動したときの移動後の試着前アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す移動後試着前アバター用データを生成しユーザー側に送信するための移動後試着前アバター用データ生成送信手段と,前記仮想空間の中の或る一つの仮想店舗がユーザーの身体に装着又は近接させて使用する商品を販売・提供しており,且つ,その仮想店舗内(仮想店舗の店頭を含む。以下同じ)にユーザーのアバターが存在しているとき,ユーザー側からの前記商品に関する購入検討情報を受信するための購入検討情報受信手段と,ユーザー側からの前記購入検討情報を受信したとき,前記アバター画像と前記商品の画像とに基づいて,前記アバターが前記商品を試着している試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための試着アバター用データ生成送信手段と,前記試着アバターに関する情報であって,各ユーザー又はそのアバター毎に,少なくとも前記アバターの仮想空間内の現在位置と前記アバターが現在試着している一つ又は複数の商品に関する商品IDと前記試着商品をそれぞれ提供した仮想店舗に関する仮想店舗IDとを互いに対応付けて記憶しておくための試着状態記憶手段と,前記の或る仮想店舗Aが提供している或る種類の商品aを試着した試着アバターに関して,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報を受信したとき,前記受信した位置移動情報に基づいて,前記『他の仮想店舗』B内の試着アバター及びその周辺空間を示す移動後試着アバター用データであって,前記試着アバターが試着している前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bとを同じ一つの3次元空間の中で3次元的に表示するための移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための移動後試着アバター用データ生成送信手段と,前記の或る商品aを既に試着している試着アバターが,前記商品aを提供してくれた仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内に存在している場合において,前記『他の仮想店舗』B内に陳列されているユーザーの身体に装着又は近接させて使用する商品bについて,ユーザーからの購入検討情報を受信したとき,前記『他の仮想店舗』Bの商品bが,前記試着アバターが既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品であるかどうかを判定するための判定手段と,前記判定手段からの信号に基づいて,前記『他の仮想店舗』Bの商品bが,既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品であるとき,前記仮想店舗Aの商品aに代えて前記『他の仮想店舗』Bの商品bを新たに切り替え的に試着した状態を示す切替試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す切替試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための切替試着アバター用データ生成送信手段と,を備え,(1)前記の或る仮想店舗Aが提供している或る種類の商品aを試着した試着アバターが,その後,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内に移動して,自らが試着している前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』B内の商品bとを同じ一つの3次元空間の中で見比べることができるようにし,さらに,(2)前記『他の仮想店舗』B内で,前記仮想店舗Aが提供している試着商品aと同じ種類の前記『他の仮想店舗』Bの商品bを,前記仮想店舗Aの商品aに代えて新たに切り替え的に試着することを容易にできるようにして,ユーザーが,前記同じ種類の複数の商品a,bについて,複数の仮想店舗A,Bの中のどの仮想店舗の商品が自分に適しているかを,前記試着アバターに複数の仮想店舗A,B内を渡り歩かせてそれぞれの仮想店舗A,B内で試着を行わせながら,容易に比較・検討できるようにした,ことを特徴とする,アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システム。 【請求項2】請求項1において,前記判定手段からの信号に基づいて,前記『他の仮想店舗』Bの商品cが,既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品ではないとき,前記仮想店舗Aの商品aに加えて前記『他の仮想店舗』Bの商品cをも追加的に試着した状態を示す追加試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す追加試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための追加試着アバター用データ生成送信手段と,を備え,前記の或る仮想店舗Aから提供された或る取水の商品aを試着した試着アバターが,『他の仮想店舗』B内で,『他の仮想店舗』B内で陳列されている他の商品cを,前記既に試着している或る種類の商品aに追加して試着することを可能にすることにより,ユーザーが,前記互いに異なる複数の種類の商品a,cについて,前記試着アバターに複数の仮想店舗A,Bを渡り歩かせてそれぞれの仮想店舗A,Bで試着を行わせながら,複数の仮想店舗A,Bでそれぞれ提供している複数の種類の商品a,cの相互のコーディネートをも検討しつつ比較・検討することを可能にした,ことを特徴とする,アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システム。」(2)本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載(下線部分は先行補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載と対比した補正部分である。なお,「追加試着アバター用データ生成送信手段」に係る補正部分及び末尾の「(3)」に係る補正部分は,先行補正1による補正後の請求項2に記載された発明特定事項であると認められる。)「ユーザー側の通信端末との間でネットワークを介してデータを送受信することにより,それぞれの内部,外部,及び販売・提供する商品が3次元画像で示される複数の仮想店舗を含み,3次元画像で示されるユーザーのアバターが,前記複数の仮想店舗の内外を渡り歩きながら回遊できるような,3次元画像で示される仮想空間を,ユーザー側に提供するための仮想空間回遊システムであって,ユーザー側からの要求に基づいて,商品を未だ試着していない試着前アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す試着前アバター用データを生成しユーザー側に送信するための試着前アバター用データ生成送信手段と,ユーザー側から,前記試着前アバターの前記仮想空間内(複数の仮想店舗の内部を含む。以下同じ)における位置の移動に関する位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記位置移動情報に対応する位置に移動したときの移動後の試着前アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す移動後試着前アバター用データを生成しユーザー側に送信するための移動後試着前アバター用データ生成送信手段と,前記仮想空間の中の或る一つの仮想店舗であってユーザーの身体に装着又は近接させて使用する商品を販売・提供する仮想店舗と,その仮想店舗内(仮想店舗の店頭を含む。以下同じ)に存在するユーザーのアバターとをユーザー側に表示させながら,ユーザー側からの前記商品に関する購入検討情報を受信するための購入検討情報受信手段と,ユーザー側からの前記購入検討情報を受信したとき,前記アバター画像と前記商品の画像とに基づいて,前記アバターが前記商品を試着している試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための試着アバター用データ生成送信手段と,前記試着アバターに関する情報であって,各ユーザー又はそのアバター毎に,少なくとも前記アバターの仮想空間内の現在位置と前記アバターが現在試着している一つ又は複数の商品に関する商品IDと前記試着商品をそれぞれ提供した仮想店舗に関する仮想店舗IDとを互いに対応付けて記憶しておくための試着状態記憶手段と,前記の或る仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバターに関して,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示するための移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための移動後試着アバター用データ生成送信手段であって,(a)前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま『他の仮想店舗』B内へ移動した移動後試着アバターを前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報を,ユーザー側から受信したとき,前記の受信した位置移動情報と前記試着状態記憶手段から抽出された前記試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDとに基づいて,前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示するための,移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段と,(b)前記『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターと,前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターが試着している前記仮想店舗Aの商品aと,前記『他の仮想店舗』B内の商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるようにユーザー側に表示させながら,ユーザー側からの前記商品bに関する購入検討情報を受信する手段と,を含む移動後試着アバター用データ生成送信手段と,前記の或る商品aを既に試着している試着アバターが,前記商品aを提供してくれた仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内に存在している場合において,前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに関する購入検討情報をユーザー側から受信したとき,前記『他の仮想店舗』Bの商品bが,前記試着アバターが既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品であるかどうかを判定するための判定手段と,前記判定手段からの信号に基づいて,前記『他の仮想店舗』Bの商品bが,既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品であるとき,前記仮想店舗Aの商品aに代えて前記『他の仮想店舗』Bの商品bを新たに切り替え的に試着した状態を示す切替試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す切替試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための切替試着アバター用データ生成送信手段と,前記判定手段からの信号に基づいて,前記『他の仮想店舗』Bの商品cが,既に試着している前記仮想店舗Aの商品aと同種の商品ではないとき,前記仮想店舗Aの商品aに加えて前記『他の仮想店舗』Bの商品cをも追加的に試着した状態を示す追加試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す追加試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための追加試着アバター用データ生成送信手段と,を備え,(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,(2)前記『他の仮想店舗』B内で,前記仮想店舗Aが提供している試着商品aと同じ種類の前記『他の仮想店舗』Bの商品bを,前記仮想店舗Aの商品aに代えて新たに切り替え的に試着することを容易にできるようにして,ユーザーが,前記同じ種類の複数の商品a,bについて,複数の仮想店舗A,Bの中のどの仮想店舗の商品が自分に適しているかを,前記試着アバターに複数の仮想店舗A,B内を渡り歩かせてそれぞれの仮想店舗A,B内で試着を行わせながら,容易に比較・検討できるようにし,(3)前記の或る仮想店舗Aから提供された或る種類の商品aを試着した試着アバターが,『他の仮想店舗』B内で,『他の仮想店舗』B内で陳列されている他の種類の商品cを,前記既に試着している或る種類の商品aに追加して試着することを可能にすることにより,ユーザーが,前記互いに異なる複数の種類の商品a,cについて,前記試着アバターに複数の仮想店舗A,Bを渡り歩かせてそれぞれの仮想店舗A,Bで試着を行わせながら,複数の仮想店舗A,Bでそれぞれ提供している複数の種類の商品a,cの相互のコーディネートをも検討しつつ比較・検討することを可能にした,ことを特徴とする,アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システム。」3審決の理由の要旨審決は,先行補正2及び本件補正は,いずれも本件特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」といい,そのうち明細書について「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものではないとし,これらの補正をいずれも却下する決定をした上,本願発明の要旨を先行補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づいて認定し,本願発明は特開2001-344474号公報に記載された発明,同公報のほか特開2001-160095号公報,特開2001-216528号公報,特開2002-99786号公報及び特開2003-20512号公報に記載された事項並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであると判断した。 後記第3のとおり,原告が審決取消事由として主張するのは,本件補正を却下した点のみであるところ,審決の理由中,本件補正の却下決定に関する部分は以下のとおりである。 (1)本件補正中,審決が判断対象とした補正の内容について本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正後の請求項1に記載された以下の発明を特定するための事項(以下,「発明特定事項」という。)が,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(当初明細書等)に記載された事項の範囲内のものであるかどうかを検討する。 (発明特定事項1)「前記の或る仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバターに関して,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示するための移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための移動後試着アバター用データ生成送信手段であって,(a)前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま『他の仮想店舗』B内へ移動した移動後試着アバターを前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報を,ユーザー側から受信したとき,前記の受信した位置移動情報と前記試着状態記憶手段から抽出された前記試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDとに基づいて,前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示するための,移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段と,(b)前記『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターと,前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターが試着している前記仮想店舗Aの商品aと,前記『他の仮想店舗』B内の商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるようにユーザー側に表示させながら,ユーザー側からの前記商品bに関する購入検討情報を受信する手段と,を含む移動後試着アバター用データ生成送信手段と,」(発明特定事項2)「(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,」(2)補正事項の検討について本件補正後の請求項1の記載からみて,上記発明特定事項1の『移動後試着アバター ア用データ生成送信手段』は,仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバターが,前記仮想店舗Aとは異なる「他の仮想店舗」B内への位置移動情報を受信してから,「他の仮想店舗」B内に陳列されている商品bに関する購入検討情報(試着指示情報)をユーザー側から受信するまでの処理手段を特定しようとするものと認められる。 つまり,上記発明特定事項1の(a)における「前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」,(b)における「前記『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターと,前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターが試着している前記仮想店舗Aの商品aと,前記『他の仮想店舗』B内の商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるようにユーザー側に表示させながら」は,いずれも「移動後試着アバター」が「他の仮想店舗」Bの商品bを試着する前の状態を特定する記載と認められる。 そして,当初明細書等の【0043】段落には,「・・・図9では,ユーザーのアバイター(車椅子利用者の画像)が図7,8とは別の仮想店舗の店頭に位置しているが,前の仮想店舗で試着した帽子(前記ステップS5で試着した図8の帽子)をそのまま試着し続けている(前記ステップS4の判定はYESとなる)。そして,図9の仮想店舗の店頭では店員がジャンパーを販売している(前記ジャンパーはアバターが既に試着している帽子とは異なる種類の商品なので前記ステップS6の判定はNOとなる)。この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(図9のジャンパー)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。・・・」との記載はあるものの,ここに記載されている事項は,試着アバターが「他の仮想店舗」Bの店頭に位置している状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末で生成され,それがネットワーク経由で送信されるということに留まり,上記発明特定事項1で特定されるような,試着指示情報(購入検討情報)が発せられる前に,「前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように」,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」ための処理について記載していない。 また,当初明細書等におけるその他の記載を参酌しても,アバターが仮想店舗内を移動することに合わせてアバターの周辺の仮想店舗の3次元画像を表示することについての記載はあるものの,商品bに関する購入検討情報(試着指示情報)を受信する前に,システムがユーザーの意図する商品bを認識して,「商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように」という目的を達するために,特定の表示を行うことについての記載はないから,「前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように」,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」ことについて記載されているとは認められない。 また,商品bに関する購入検討情報(試着指示情報)を受信するまでに,システムがユーザーの意図する商品bを認識して,商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,特定の表示を行うことが,当初明細書等の記載から自明な事項とも認められない。 このことから,上記発明特定事項1は,当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとは認められない。 また,同様に,上記発明特定事項2で特定されるような「前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるように」することは,当初明細書等に記載された事項ではなく,このことが当初明細書等の記載から自明な事項とも認められないから,上記発明特定事項2は,当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとは認められない。 また,この出願の明細書,特許請求の範囲及び図面において,「試着アバター」は,ウ商品を試着した状態のアバターを特定する用語である。この意味において,発明特定事項1の(a)における「前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」との記載で特定される表示内容は,1)「仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバター」と,2)「移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品a」と,3)「陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品b」とを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示することと把握される。 しかしながら,「仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバター」とは別に,「移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品a」を表示することは,当初明細書等に記載された事項ではなく,このような表示内容は当初明細書等の記載から自明な事項でもないから,発明特定事項1は,当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとは認められない。 したがって,上記イ,ウで検討したように,発明特定事項1,2は,当初明細書等にエ記載された事項の範囲内のものとは認められないから,上記発明特定事項1,2を含む本件補正後の請求項1は,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではなく,この補正を含む本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 (3)まとめ以上,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記結論の通り決定する。 第3審決取消事由(本件補正の却下決定の誤り)の要点1審決は,本件補正に係る補正事項のうち,「前記の或る仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバターに関して,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示するための移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための移動後試着アバター用データ生成送信手段であって,(a)前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま『他の仮想店舗』B内へ移動した移動後試着アバターを前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報を,ユーザー側から受信したとき,前記の受信した位置移動情報と前記試着状態記憶手段から抽出された前記試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDとに基づいて,前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示するための,移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段と,(b)前記『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターと,前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターが試着している前記仮想店舗Aの商品aと,前記『他の仮想店舗』B内の商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるようにユーザー側に表示させながら,ユーザー側からの前記商品bに関する購入検討情報を受信する手段と,を含む移動後試着アバター用データ生成送信手段と,」(以下,審決と同様に「発明特定事項1」という。)の下線部分(以下「発明特定事項1の下線部分」という。)及び「(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,」(以下,審決と同様に「発明特定事項2」という。)は当初明細書等に記載した事項ではないから,本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないとして,本件補正を却下したが,この判断は誤りである。 2発明特定事項1の下線部分について(1)下線部分のうち,「前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように」については,当初明細書の「本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって,ユーザーが,仮想空間中に複数の仮想店舗がある場合に,ユーザーのアバターに,或る仮想店舗の商品を試着したままの状態で,前記仮想空間中の複数の仮想店舗を渡り歩から(判決注:「歩き」の誤記であると認める。)ながら,或る仮想店舗の商品と他の仮想店舗の商品とをその色合いや形状などについて直接に比較検討することができる,アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システムを提供することを目的とする。」(段落【0008】)との記載から,当業者にとって自明な事項であるということができる。 (2)下線部分のうち,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」ための処理に関して,当初明細書には以下のような記載がある。 アまず,「或る仮想店舗Aの商品aを試着している試着アバターを他の仮想店舗B内へ移動させるための位置移動情報を受信したとき,試着状態記憶部16から試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDを抽出し,これらに基づいて,試着アバターが他の仮想店舗Bの内部又は店頭に新たに移動した後においても,試着アバターが前の仮想店舗Aの商品aを試着し続けていられるようにする」ための構成に関して,次の記載がある。 「前記試着アバターの現在の最新の試着状態に関する情報であって,各ユーザー又はそのアバター別に,前記アバターが現在試着している一つ又は複数の商品に関する商品IDなどの情報を前記試着商品を提供した仮想店舗に関する仮想店舗IDなどの情報と互いに対応付けて記憶しておくための試着状態記憶手段と,ユーザー側から,前記試着アバターが試着している試着商品を提供した仮想店舗の内部又は店頭から前記仮想店舗の外の他の場所(他の仮想店舗を含む)への位置の移動に関する位置移動情報を受信したとき,前記試着状態記憶手段からの情報と前記位置移動情報とに基づいて,前記位置移動情報に対応する前記仮想店舗の外の他の場所への移動後の位置における前記試着アバターの3次元画像を表示するための店舗外移動後試着アバター用データ及び前記アバターの周辺の仮想空間の3次元画像を表示するためのデータを生成しユーザー側に送信するための店舗外移動後試着アバター用データ等生成送信手段と,を備え,ユーザーが,自己のアバターに,前記商品を試着した状態のままで且つ前記商品についての購入手続を行わないままで,前記仮想店舗の内部又は店頭から前記仮想店舗の外の他の場所に移動して他の複数の仮想店舗の中に出入させながら,複数の仮想店舗の中のどの仮想店舗の商品が自分に適しているかを比較・検討することを可能にした,ことを特徴とするものである。」(段落【0011】)イ次に,図1のデータベース11,リクエスト受信部14,アバター位置記憶部15,画像生成部12などの構成と,図2のフローチャートのステップS2,S3の動作,例えば,「或る仮想店舗Aの商品aを既に試着している試着アバター」が他の仮想店舗Bの商品bの近くに移動する動作に関して,次の記載がある。なお,図2のフローチャートはサブルーチンであるから,ユーザーからのリクエスト情報が受信されるたびに,その「START」から「END」までの各ステップの流れが繰り返される。 「今,ユーザー側からのリクエスト情報を受信したときは(ステップS1),まずそれが前記アバターの位置の移動を指示する位置移動情報か前記アバターの試着を指示する試着指示情報かを判定する(ステップS2)。前記受信したリクエスト情報が位置移動情報であったときは,ステップS3に進む。ステップS3では,前記アバター位置記憶部15が前記リクエスト受信部14からの情報(アバターの移動後の位置情報を含む)を受信し,それを前記アバターの最新の位置情報として記憶すると共に,前記画像生成部12が,前記アバター位置記憶部15からのアバターの最新位置情報(又は前記リクエスト情報に含まれるアバターの移動後の位置情報)と前記データベース11からの描画用データとに基づいて,移動後のアバター画像とその周囲の仮想空間画像を生成し,前記画像送信部13からユーザー側に送信する(ステップS3)。」(段落【0038】)ウそして,図1のデータベース11,画像生成部12,試着状態記憶部16試着状態管理部17などの構成と,図2のフローチャートのステップS4,S5の動作とによる「試着アバター画像」の生成と表示に関して,次の各記載がある。 「・・・前記ステップS1で受信したリクエスト情報が位置移動情報ではなく試着指示情報であったときは,ステップS4に進んで,前記アバターは既に他の商品を試着しているかどうかを判定する。前記アバターがまだ他の商品を試着しておらず前記ステップS4の判定がNOのときは,ステップS5に進む。ステップS5では,前記試着状態管理部17が,前記試着指示情報に基づいて取得した前記試着希望商品のIDとこれを検索キーとして前記データベースから引き出した商品詳細情報を,前記試着状態記憶部16に記憶されている最新のアバター試着情報(又は前記リクエスト情報に含まれる試着指示情報)とこれをキーとして前記データベース11から抽出される前記試着希望商品の描画用データなどに基づいて,前記商品を試着したアバター画像とその周囲の仮想空間画像を生成し,前記画像送信部13からユーザー側に送信する。」(段落【0039】)「この図7の状態では,前記アバターは未だ何も商品の試着をしていない(前記ステップS4の判定はNOとなる)。この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(帽子)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。前記リクエスト受信部14がこれを受信して前記試着状態管理部17や画像生成部12に転送することにより,前記のステップS4及びS5で説明した動作が行われ,前記試着状態記憶部16の記憶内容が追加的に更新されると共に,前記商品(帽子)が試着されたアバターの画像とその周囲の仮想空間画像が生成され,それがユーザー側に送信され,ユーザー端末2側で表示される(図8参照)。」(段落【0040】)エさらに,上記ア〜ウの動作が行われた結果,或る仮想店舗Aの商品a(帽子)を既に試着している試着アバターとその商品aとが,共に,他の仮想店舗Bが陳列している商品b(ジャンパー)の近くの位置に配置されて表示される(すなわち,試着アバターと商品aとが一緒に,商品bの近くに表示される)という動作を示す画像が生成され,ユーザー側で表示される動作を,図9を参照しながら,次のように説明する記載がある。 「図9では,ユーザーのアバター(車椅子利用者の画像)が図7,8とは別の仮想店舗の店頭に位置しているが,前の仮想店舗で試着した帽子(前記ステップS5で試着した図8の帽子)をそのまま試着し続けている(前記ステップS4の判定はYESとなる)。そして,図9の仮想店舗の店頭では店員がジャンパーを販売している(前記ジャンパーはアバターが既に試着している帽子とは異なる種類の商品なので前記ステップS6の判定はNOとなる)。この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(図9のジャンパー)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。」(段落【0043】)オ上記ア〜エによると,当初明細書には,試着アバターが,商品aを提供している仮想店舗Aとは別の仮想店舗Bの内部(又は店頭)に移動して仮想店舗Bの内部(又は店頭)の商品Bの近くに移動したとき,?@試着アバターと,?A試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品a(図9の例では「帽子」)と,?B「他の仮想店舗Bの内部(又は店頭)に陳列されている商品b(図9の例では「ジャンパー」)とを同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示すること,が開示されているということができる。 (3)上記(1),(2)によると,発明特定事項1の下線部分に記載された事項はいずれも当初明細書に記載された事項又は当業者にとって自明な事項であるというべきである。 3発明特定事項2について上記2(2)によると,発明特定事項2である「(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,」についても,当初明細書に開示された事項であるということができる。 4被告の主張に対する反論被告は,後記第4のとおり,「試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」ることが,サーバーシステムが実行する処理であることを前提として,「ユーザーが商品bについての購入や試着の検討をし易くなるように,当該商品bに近づく位置に試着アバターを移動させようとして移動指示したとしても,サーバーシステムは,移動先の位置情報を含む位置移動情報を取得するのみであり,位置移動情報に基づいて移動後の位置情報に対応する『移動後試着アバター』と『その周囲の仮想空間(周辺空間)』を含む3次元画像を生成し,そこには『商品b』が周辺空間の画像(移動位置の情景)の一部として含まれているものの,サーバーシステムは,ユーザーにとって『商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように』,移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成するものではないことは,当初明細書等の記載から技術的に明らかである」と主張する。しかしながら,上記2(2)イのとおり,図2のフローチャートはサブルーチンであって,ユーザーからのリクエスト情報が受信されるたびに,その「START」から「END」までの各ステップの流れが繰り返されるものでり,試着アバターを特定の位置へ移動させる主体はユーザーであると理解すべきであるから,被告の主張は前提を誤っている。 また,被告は,「試着アバター」は,商品を試着した状態のアバターを特定する用語と理解するのが合理的であるとした上,「前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」との記載によって特定される表示内容は,?@仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバター,?A移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品a,?B陳列されている「他の仮想店舗」Bの商品bを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに近くの位置に配置されるように表示することと把握されると主張し,ここで,?@とは別に?Aを表示することを前提として,上記記載は当初明細書に記載された事項ではないとする。しかしながら,「仮想店舗Aの商品aを試着している試着アバター」の表示は,商品aを試着している試着アバターと商品a自体の表示を含むものであるから,これによって上記?@及び?Aが表示されていると理解すべきであり,被告の主張は前提を誤っている。 5以上によると,審決が新規事項であるとした事項(発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2)はいずれも,当初明細書に記載された事項であり,これらの事項が新規事項であることを理由として本件補正を却下した審決の判断は誤りであるから,審決は本願発明の要旨認定を誤ったものとして取り消されるべきである。 第4被告の反論の要点原告は,本件補正が新規事項を追加するものであるとの審決の判断が誤りであると主張するが,原告の主張は,以下のとおり,失当である。 1発明特定事項1について(1)まず,発明特定事項1の下線部分を含む次の記載を,以下のとおり分説する(下線部分は分説中に示す。)。 (a1)「前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま『他の仮想店舗』B内へ移動した移動後試着アバターを前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報を,ユーザー側から受信したとき,」(a2)「前記の受信した位置移動情報と前記試着状態記憶手段から抽出された前記試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDとに基づいて,」(a3)「前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,」(a4)「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,」(a5)「前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示するための,」(a6)「移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段」このうち,(a4)の「試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」ることが,サーバーシステムが実行する処理であるか,それともユーザーの操作指示であるかについて検討する。 (a1)から明らかなように,上記(a1)〜(a6)の処理は,移動後試着アバターを商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報」をユーザー側から受信したことを前提としており,(a4)がユーザーの操作指示であると解すると,既に受信したユーザー側からの位置移動情報と全く同じ内容の操作指示を再度ユーザーが行うことになるところ,(a4)はエラー発生時等の例外処理でもないから,このタイミングで「試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」るためにユーザーの操作指示が与えられることは,コンピュータの動作又は操作として不自然であり,合理的でない。 したがって,(a4)の「試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」るのは,(a2)の(ユーザー側から)「受信した位置移動情報に基づいて」,サーバーシステムが実行する処理であると理解するのが合理的である。 (2)上記(1)を前提として,当初明細書の記載について検討する。 ア当初明細書には,発明の目的として,原告が指摘する段落【0008】の記載があるが,本件特許出願に係る発明においては,少なくとも位置移動処理と試着処理の2種類の処理が実行されるものであるところ,(a4)のサーバーシステムが実行する位置移動処理において,発明の目的を達成するための構成が含まれていることは,段落【0008】には記載又は示唆されておらず,同記載から,上記サーバーシステムが実行する位置移動処理が自明であるということはできない。 イまた,当初明細書の他の記載(段落【0026】,【0028】,【0040】)の記載を参酌すると,サーバーシステムは,ユーザーの意図する商品を,「試着指示情報(購入検討情報)」又は「購入申込み情報」を受信した時に初めて認識するものであり,「位置移動情報」を受信するだけでは,移動先となる位置情報を認識するのみで,「商品b」に関する情報を受信しているとは認められないから,「商品b」に関する情報を認識していないと理解される。 つまり,ユーザーが,商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,当該商品bに近づく位置に試着アバターを移動させようとして移動指示したとしても,サーバーシステムは,移動先の位置情報を含む位置移動情報を取得するのみであり,位置移動情報に基づいて移動後の位置情報に対応する「移動後試着アバター」と「その周囲の仮想空間(周辺空間)」を含む3次元画像を生成し,そこには「商品b」が周辺空間の画像(移動位置の情景)の一部として含まれているものの,サーバーシステムは,ユーザーにとって「商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように」,移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成するものではないことは,当初明細書等の記載から技術的に明らかである。 したがって,(a3)〜(a6)にいう「前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,・・・配置させるように表示するための,・・・移動後試着アバター用データを生成」との記載は,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。 ウ原告は当初明細書の段落【0043】の記載を根拠に挙げるが,同記載においてステップS4及びS6の判定が示されていることからすると,同記載は,試着指示情報(購入検討情報)を受信した場合の「試着処理」の説明と理解されるから,これは「位置移動処理」とは別の処理を説明する記載であり,発明特定事項1の下線部分の根拠とはなり得ない。 もっとも,段落【0043】には「この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(図9のジャンパー)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。前記リクエスト受信部14がこれを受信して前記試着状態管理部17や画像生成部12に転送することにより,前記のステップS4,S6及びS7で説明した動作が行われ,・・・」との記載があり,この記載を参酌すると,図9には,「商品a(帽子)を試着した試着アバターが,商品a(帽子)を提供している仮想店舗A(ショップフジイ)とは別の仮想店舗B(衣料のアキヤマ)の店頭の位置に移動したときに,商品a(帽子)を試着した試着アバター画像とその周辺空間の画像(仮想店舗Bの店頭で店員がジャンパーを販売している)が表示される」ことが図示されているということができる。 しかしながら,図9は図7,8に示される仮想店舗A(ショップフジイ)から,別の仮想店舗B(衣料のアキヤマ)の店頭の位置に移動してきた状態を示しているにすぎず,「仮想店舗Bに移動した移動後試着アバターを商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報」をユーザーが指示することやサーバーシステムが受信することについて記載又は示唆したものではない。 また,「商品b(ジャンパー)」が,仮想店舗Bの店頭で店員が手に持っているジャンパーであるとしても,図9は,商品a(帽子)を試着した試着アバターが別の仮想店舗Bの位置に移動したときの,その周辺空間の画像(移動位置の情景)として,仮想店舗Bとその店頭で店員がジャンパーを販売している様子の画像が表示されているにすぎず,「移動後試着アバター」の近くの位置に「商品b(ジャンパー)」が配置されるように表示する処理,又は「商品b(ジャンパー)」の近くの位置に「移動後試着アバター」が配置されるように表示する処理の結果によるものではない。 エ当初明細書の段落【0031】等には,商品の詳細情報として,「その商品がアバターの表面に重ねて表示される表示領域」が記載されており,試着商品はアバターの表面に「重ねて表示される」と表現される。逆に,「試着アバター」と「陳列されている商品b」とが互いに3次元的に近くの位置に配置されるのと同等に,「試着アバター」と「試着アバターが試着している商品a」とが互いに3次元的に近くの位置に配置されるとした場合の表示態様としては,当業者であれば,「(商品aを試着した)試着アバター」と「(もう一つの)試着アバターが試着している商品a」とが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する,例えば,試着アバターが商品aを手に持っている状態などを表示することと理解するのが通常と考えられる。 そして,当初明細書の段落【0018】,【0039】の記載を参酌すると,「試着アバター」は,商品を試着した状態のアバターを特定する用語と理解するのが合理的であるから,「前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」との記載によって特定される表示内容は,?@仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバター,?A移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品a,?B陳列されている「他の仮想店舗」Bの商品bを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに近くの位置に配置されるように表示することと把握され,?@とは別に?Aを表示することが必要となるところ,このようなことは当初明細書に記載した事項ではない。 なお,「商品棚の上に積まれている商品b」は通常折り畳まれているものであり,商品aと商品bを近くの位置に配置されるように表示するだけでは,ユーザーが商品aと商品bとを互いに比較したりそれらのコーディネートを検討すること」は実質的に困難であるというべきである。 2発明特定事項2について上記1(2)エによると,発明特定事項2である「(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,」は,当初明細書に記載した事項ではない。 3上記1,2によると,発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2は当初明細書等に記載した事項ではなく,本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないとした審決の判断に誤りはないから,審決取消事由は理由がない。 第5当裁判所の判断1審決は,上記第2の3のとおり,本件補正について,発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2はいずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとは認められないことを理由として,これらを含む本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないから,特許法17条の2第3項の規定に違反すると判断し,同法159条1項により読み替えて準用する同法53条1項の規定により本件補正を却下したものである。 原告は,審決取消事由として,本件補正を却下した決定の誤りのみを主張し,先行補正2を却下した決定については争わないところ,本件補正は本件特許出願に係る特許請求の範囲の記載の請求項1の全文を対象としたものであり,拒絶査定不服審判請求の日から30日以内にしたものであるから,審決取消事由に理由があり,本件補正を却下した決定が誤りであれば,本件補正却下が適法であることを前提としてされた審決の本願発明の要旨認定は,その前提を誤ったものとなる。 なお,本件補正に係る補正事項には,上記第2の2(1),(2)のとおり,先行補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載の一部を「・・・追加試着アバター用データ生成送信手段」及び「(3)・・・」として付加する部分が含まれているところ,審決は,上記のとおり,同付加部分以外の補正事項である発明特定事項1の下線部分及び同2が,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないことを理由として本件補正を却下したものであるから,却下決定の理由として審決が示したところが是認できなければ,「(3)・・・」を付加する補正が補正の要件を満たさないかどうかにかかわらず,同決定は誤りであるというほかなく,その場合,上記のとおり,審決は本願発明の要旨認定を誤ったものとなる。 ところで,特許法17条の2第3項は「第1項の規定により明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をするときは,・・・願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定するところ,補正が,当初明細書等の記載によって開示された技術的事項に対し,新たな技術的事項を導入しないものであると認められる限り,同項にいう「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に・・・記載した事項の範囲内において」するものであるというべきである。もっとも,当初明細書等に記載された事項は,通常,当該明細書等によって開示された技術的思想に関するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合において,付加される補正事項が当初明細書等に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような補正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に・・・記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。 以上を前提として,以下において,審決取消事由について検討する。 2発明特定事項1について(1)審決は,発明特定事項1の下線部分(「前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」)は,当初明細書等に記載した事項ではないと判断したところ,原告は審決のこの判断は誤りである旨主張するので,以下において検討する。 (2)発明特定事項1の構成の整理まず,上記(1)の下線部分を含む発明特定事項1全体の構成について整理する。 発明特定事項1は「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の構成について記述しているところ,その構成は,発明特定事項1の記載によると次のように整理することができる。 ア目的部分の記載まず,「前記の或る仮想店舗Aが提供している或る商品aを試着している試着アバターに関して,前記仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報を受信したとき,前記の受信した位置移動情報に基づいて,前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示するための移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための」との記載部分についてみると,同記載部分はその文言からみて,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の目的について記載した部分であると理解することができる。ところで,請求項1の本件補正による補正の対象となっていない部分に,「ユーザー側から,前記試着前のアバターの前記仮想空間内・・・における位置の移動に関する位置移動情報を受信したとき」との記載があることからすると,上記目的記載中の「位置移動情報」についても,ユーザー側が送信し,サーバーシステムが受信するものであると理解するのが相当であるから,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」は,ユーザー側からの「位置移動情報」を受信したときに,その「位置移動情報」に基づいて,「移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する」ことを目的とするものであるということができる。 また,上記の「移動後試着アバター用データ」は,上記の「位置移動情報」が「仮想店舗Aとは異なる『他の仮想店舗』B内への位置移動情報」であることから,このような「位置移動情報」に基づいて「前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示する」ものであると理解すべきである。 そして,請求項1の本件補正による補正の対象となっていない部分に,「前記アバターが前記商品を試着している試着アバター及びその周辺空間の3次元画像を示す試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信するための試着アバター用データ生成送信手段」が記載されていることからすると,上記の「前記『他の仮想店舗』B内に移動した後の移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に表示する」とは,仮想店舗Aの商品aを試着している試着アバターが他の仮想店舗B内に移動した後も試着アバターと周辺空間の3次元的な表示を継続するという意味であると理解することができる。 イ「(a)」と「(b)」の記載の位置付け発明特定事項1では,上記アの目的部分に続けて,「(a)」及び「(b)」として,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の内容をより具体的に特定しているところ,これらはそれぞれ,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の「移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段」としての側面(「(a)」の部分)及び「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の「ユーザー側からの前記商品bに関する購入検討情報を受信する手段」としての側面(「(b)」の部分)についての記載であると認められる。 (3)発明特定事項1中の「(a)」の部分の整理上記(2)を前提として,「(a)」の部分について,順に検討する。 ア「前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま『他の仮想店舗』B内へ移動した移動後試着アバターを前記『他の仮想店舗』B内に陳列されている商品bに近づく位置へ移動させるための位置移動情報を,ユーザー側から受信したとき,」とは,上記(2)アのとおり,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」の目的が,仮想店舗Aの商品aを試着している試着アバターが他の仮想店舗B内に移動した後も試着アバターと周辺空間の3次元的な表示を継続するものであることを前提として,他の仮想店舗B内にいる移動後試着アバターについて,ユーザー側が更に同店内の商品bに近づくという位置移動情報を送信し,サーバーシステムがこれを受信したときのことを意味する。 ここで,「位置移動情報」は,上記(2)アのとおり,ユーザー側が送信し,サーバーシステムが受信するものである。 イ「前記の受信した位置移動情報と前記試着状態記憶手段から抽出された前記試着済み商品aに関する仮想店舗ID及び商品IDとに基づいて,前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,」との記載について検討する。 このうち,「試着状態記憶手段」について,請求項1の本件補正による補正の対象となっていない部分において,「前記試着アバターに関する情報であって,各ユーザー又はそのアバター毎に,少なくとも前記アバターの仮想空間内の現在位置と前記アバターが現在試着している一つ又は複数の商品に関する商品IDと前記試着商品をそれぞれ提供した仮想店舗に関する仮想店舗IDとを互いに対応付けて記憶しておくための試着状態記憶手段」と記載されていることからすると,「試着状態記憶手段」は,商品aの同一性を認識するための「商品aに関する仮想店舗ID及び商品ID」をアバターの現在位置と対応付けて記憶しているため,受信した上記アの位置移動情報を組み合わせることにより,試着アバターが商品aを試着したままの状態を維持することができることを意味するものである。 したがって,上記記載は,試着アバターが仮想店舗Bにおいて陳列されている商品bに近づく位置へ移動させる場合に,試着アバターが仮想店舗Aの商品aを試着したままの状態が維持されていることを意味するものと理解することができる。 ウ「前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,」とは,上記アのとおりのユーザー側からの位置移動情報に基づいて,上記イのとおり,商品aを試着したままの状態で,試着アバターを移動させる処理について記載されているものであり,そのような移動によって,他の仮想店舗B内において商品bの購入や試着の検討がし易くなるという効果が併せて記載されていると理解することができる。 この点に関連して,被告は,上記の「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」は,ユーザー側からの位置移動情報に基づいてサーバーシステムが実行する処理ではあるが,ユーザーの操作指示(によるもの)ではないと主張する。 しかしながら,上記のとおり,位置移動情報はユーザー側が送信し,サーバーシステムが受信するものであり,上記の「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」は,上記アのとおり,ユーザー側からの(他の仮想店舗B内において)「更に同店内の商品bに近づく」という内容の位置移動情報をサーバーシステムが受信したことを前提として記載されているものであることからすると,試着アバターを商品bに近づく位置へ移動させるという内容の位置移動情報に基づいて,そのように試着アバターを移動させる(そのようなデータを生成し,送信する)というサーバーシステムの処理が記載されていると理解する以外にないというべきである。 このように理解することについて,被告は,既に受信したユーザー側からの位置移動情報と全く同じ内容の操作指示を再度ユーザーが行うことになり,不自然であり,合理的でない旨主張するが,上記アのとおりユーザー側からの位置移動情報を受信したことに基づいて,その受信内容に応じた処理を行うことに,何ら不自然な点はないから,被告の主張を採用することはできない。仮に,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」との記載について被告の主張するように理解するとするならば,この記載は,請求項1のどこにも記載されていない「ユーザーの操作指示によらずにサーバーシステムが実行する処理」を何の説明を加えることなく記載したものということになってしまい,かえって不自然であるといわざるを得ない。 したがって,被告の上記主張は失当であり,この主張を前提とする主張(前記第4の1(2)ア〜ウの主張)についてはいずれも採用することができない。 エ「前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示するための,」とは,上記アのとおり,他の仮想店舗B内にいる移動後試着アバターについて,更に同店内の商品bに近づくというユーザー側からの位置移動情報に基づいて,上記イのとおり,試着アバターが商品aを試着したままの状態で,上記ウのとおり,試着アバターを商品bに近づける処理を行うことにより,試着アバター,試着アバターが試着している商品a,陳列されている商品bの3つを互いに近くの位置に表示することを意味するものであり,これによって上記ウにいう「商品bについての購入や試着の検討がし易くなる」という効果が達成されることにつながるものと理解することができる。 この点に関して,被告は,「『試着アバター』と『試着アバターが試着している商品a』とが互いに3次元的に近くの位置に配置されるとした場合の表示態様としては,当業者であれば,『(商品aを試着した)試着アバター』と『(もう一つの)試着アバターが試着している商品a』とが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する,例えば,試着アバターが商品aを手に持っている状態などを表示することと理解するのが通常と考えられる」と主張する。 しかしながら,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」として,上記イのとおり,商品aを試着したままの状態である試着アバターを,上記ウのとおり,前記商品bに近づく位置へ移動させた結果として「別の商品の購入や試着の検討がし易くなる」という効果を達成することを目的とし,そのために,上記のとおり,「試着アバター,試着アバターが試着している商品a,陳列されている商品bの3つを互いに近くの位置に表示する」という構成が採用されているものと理解することができることは以上に説示したとおりである。被告は,「試着アバター」が商品aを試着したままの状態であることから,「試着アバター」の用語は「商品aを試着しているアバター」及び「商品a」の両者が含まれていることを前提としているようであるが,発明特定事項1の下線部分の直前に「前記移動後試着アバターが前記の仮想店舗Aの商品aを試着したまま」との記載があるように,特許請求の範囲の記載において「試着アバター」と「その試着アバターが試着している商品a」は別個の存在として書き分けられているのであるから,被告による「試着アバター」の理解を前提とすることはできないというべきである(なお,被告が主張するように,例えば商品aを試着したままの試着アバターが,更に商品aを手に持つことによって,サーバーシステムが生成・送信したデータに基づく試着アバター及び周辺空間の表示を見るユーザーにとって,「別の商品の購入や試着の検討がし易くなる」ものとも認められない。)。 したがって,被告の上記主張(前記第4の1(2)エの主張)を採用することはできない。 オ「移動後試着アバター及びその周辺空間を3次元的に示す移動後試着アバター用データを生成し,ユーザー側に送信する手段」とは,「移動後試着アバター用データ生成送信手段」が,上記ア〜エのとおり,移動後試着アバターとその周辺空間についてのデータを生成し,送信する手段であることを表現した記載である。 (4)発明特定事項1の下線部分について上記(2),(3)を踏まえて,発明特定事項1の下線部分に記載された事項が,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるかどうかについて検討する。 ア下線部分に記載された事項上記(2),(3)によると,発明特定事項1の下線部分(「前記『他の仮想店舗』B内において,前記『他の仮想店舗』Bが提供・販売する商品bについての購入や試着の検討がし易くなるように,前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ,前記移動後試着アバターと,前記移動後試着アバターが試着している仮想店舗Aの商品aと,前記陳列されている『他の仮想店舗』Bの商品bとを,同じ一つの3次元空間の中で,それらが互いに3次元的に近くの位置に配置されるように表示する」)には,サーバーシステムが,(他の仮想店舗B内にいる移動後試着アバターについて,更に同店内の商品bに近づくというユーザー側からの位置移動情報に基づいて,試着アバターが商品aを試着したままの状態で,)試着アバターを商品bに近づける処理を行うことにより,試着アバター,試着アバターが試着している商品a,陳列されている商品bの3つを互いに近くの位置に表示すること,これによって「商品bについての購入や試着の検討がし易くなる」という効果が達成されることが記載されているものと認められる。 イ当初明細書に記載した事項当初明細書には以下の各記載がある。 「本発明は・・・ユーザーが,仮想空間中に複数の仮想店舗がある場合に,ユーザー (ア)のアバターに,或る仮想店舗の商品を試着したままの状態で,前記仮想空間中の複数の仮想店舗を渡り歩から(判決注:「歩き」の誤記であると認める。)ながら,或る仮想店舗の商品と他の仮想店舗の商品とをその色合いや形状などについて直接に比較検討することができる,ア(段 バターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システムを提供することを目的とする。」落【0008】)「・・・図1において,12は,ユーザー端末2からのリクエスト(指示)情報など (イ)に対応して,前記データベース11からの画像生成用データを使用して,各仮想店舗やそれらが扱う各商品やそれらの中で買い物などをする各アバターなどを含む仮想空間の3次元画像を略リアルタイムに生成するための画像生成部,である。前記画像生成部12は,前記ユーザー端末2からのリクエスト情報などに基づいて,前記データベース11から所定の画像生成用データを抽出し,それらを元に略リアルタイムに種々のジオメトリ処理やレンダリング(描画)(段落【0025】) 処理を行って3次元画像を生成する。」「前述した本実施例1による前記アバター及び仮想空間の画像の生成及び送信の動作(ウ)を,図2のフローチャートを参照して説明する。なお,以下では,説明の簡便化のため,前記ユーザー側からのリクエスト情報の内容を,アバターの移動かアバターの試着かのいずれかに限るものとして説明する。今,ユーザー側からのリクエスト情報を受信したときは(ステップS1),まずそれが前記アバターの位置の移動を指示する位置移動情報か前記アバターの試着を指示する試着指示情報かを判定する(ステップS2)。前記受信したリクエスト情報が位置移動情報であったときは,ステップS3に進む。ステップS3では,前記アバター位置記憶部15が前記リクエスト受信部14からの情報(アバターの移動後の位置情報を含む)を受信し,それを前記アバターの最新の位置情報として記憶すると共に,前記画像生成部12が,前記アバター位置記憶部15からのアバターの最新位置情報(又は前記リクエスト情報に含まれるアバターの移動後の位置情報)と前記データベース11からの描画用データとに基づいて,移動後のアバター画像とその周囲の仮想空間画像を生成し,前記画像送信部13からユーザー(段落【0038】) 側に送信する(ステップS3)。・・・」「・・・図7では,ユーザーのアバター(車椅子利用者の画像)が仮想店舗の店頭に(エ)位置しており,この店頭では帽子を試着している他の顧客が表示されている。また,この図7の状態では,前記アバターは未だ何も商品の試着をしていない・・・。この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(帽子)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。前記リクエスト受信部14がこれを受信して前記試着状態管理部17や画像生成部12に転送することにより,・・・前記試着状態記憶部16の記憶内容が追加的に更新されると共に,前記商品(帽子)が試着されたアバターの画像とその周囲の仮想空間画像(段落【0 が生成され,それがユーザー側に送信され,ユーザー端末2側で表示される。」040】)「・・・図9では,ユーザーのアバター(車椅子利用者の画像)が図7・・・とは別 (オ)の仮想店舗の店頭に位置しているが,前の仮想店舗で試着した帽子・・・をそのまま試着し続けている・・・。そして,図9の仮想店舗の店頭では店員がジャンパーを販売している・・・。この状態で,ユーザーがマウスなどで所定の操作を行うと,例えば前記アバターに最も近い位置にある商品(図9のジャンパー)についての試着指示情報(購入検討情報)がユーザー端末2で生成され,それがネットワーク1経由で送信される。前記リクエスト受信部14がこれを受信して前記試着状態管理部17や画像生成部12に転送することにより,・・・前記試着状態記憶部16の記憶内容が追加的に更新されると共に,前記商品(ジャンパー)を図8の帽子に追加して試着した状態を示すアバターの画像とその周囲の仮想空間画像が生成され,そ(段落【0 れがユーザー側に送信され,ユーザー端末2側で表示される(図10参照)。」043】)ウ上記イの各記載によると,当初明細書等には,以下の各事項が記載されていることが認められる。 (ア) 画像生成部は,画像生成用データを使用して,各仮想店舗やそれらが扱う各商品やそれらの中で買い物などをする各アバターなどを含む仮想空間の3次元画像を生成する(上記イ(イ))。 (イ) アバター及び仮想空間の画像の生成及び送信は,ユーザー側からのリクエスト情報を受信することにより行われ,リクエスト情報が位置移動情報であったときは,その情報を受信したアバター位置記憶部がこれをアバターの最新の位置情報として記憶し,画像生成部が移動後のアバター画像とその周囲の仮想空間画像を生成・送信する(上記イ(ウ))。 (ウ) ユーザーのアバターが或る店舗の商品(帽子)を試着すると,商品を試着した状態のアバターの画像とその周囲の仮想空間画像が生成・送信される(上記イ(エ))。 (エ) ユーザーのアバターが前の店舗の商品(帽子)を試着したままの状態で,別の店舗の店頭に移動することを内容とする位置移動情報を受信すると,アバター記憶部はこれを最新の位置情報として記憶し,画像生成部は,前の店舗の商品(帽子)を試着したままの移動後のアバター画像とその周囲の仮想空間画像を生成・送信する(上記イ(ウ),(オ))エ上記ウによると,当初明細書には,或る仮想店舗Aで商品a(帽子)を試着したアバターが,商品a(帽子)を試着したままの状態で,他の仮想店舗Bの店頭に移動することにより,商品a(帽子)を試着したままのアバター画像と他の仮想店舗Bを含む周囲の仮想空間の3次元画像を生成・送信することが記載されていると認められる。 また,上記ウ(イ)のとおり,ユーザー側からのリクエスト情報としての位置移動情報が受信されると,その度に最新の位置情報に基づいて,移動後のアバター画像とその周囲の仮想空間画像が生成・送信されるというのであるから,位置移動情報に基づく処理は,ユーザーによるアバターの移動操作中,間断なく繰り返し行われるサブルーチンであるということができる。 さらに,他の仮想店舗Bの店頭において商品b(ジャンパー)が陳列されている場合があることは明らかであり(なお,図9,10において,商品(ジャンパー)が陳列された状態が示されている。),他の仮想店舗が露店ではなく,屋内に設置されたものである場合に,これが「店頭」ではなく「店舗内」となることは自明である。 そうすると,ユーザーが,前の仮想店舗Aの商品a(帽子)を試着したままの状態で別の仮想店舗Bの店頭へと移動した「移動後試着アバター」を,その店頭に陳列されている商品b(ジャンパー)に相対的に近づける操作をすることにより,リクエスト情報(位置移動情報)が送信され,サーバーシステムがこれを受信すると,アバター記憶部はこれを最新の位置情報として記憶し,画像生成部は移動後試着アバターの画像とその周囲の仮想空間の3次元画像を生成・送信するのであり,その結果として,アバターとアバターが試着したままの状態である商品a(帽子)と店頭に陳列されている商品b(ジャンパー)の3つが互いにより近くの位置に表示されることになるということができる。 そして,このように表示されることによって,商品a(帽子)と商品b(ジャンパー)を近くに対比して観察することができるようになるところ,上記イ(ア)によると,本件特許出願に係る発明は,仮想空間回遊システムにおいて,アバターが,ある仮想店舗の商品を試着したままの状態で,仮想空間内の複数の仮想店舗を渡り歩きながら,ある仮想店舗の商品と他の仮想店舗の商品とをその色合いや形状などについて直接比較検討することができるようにすることを目的としたものであり,「商品の色合いや形状などについて直接比較検討する」ことが,「商品の試着や購入について検討し易くする」ことを主たる目的とするものであることは自明であるというべきであるから,商品a(帽子)と商品b(ジャンパー)を近くに対比して観察することができることにより「商品の試着や購入について検討し易くなる」ことは当初明細書の記載から自明な事項であるというべきである。 なお,被告は,「商品棚の上に積まれている商品b」は通常折り畳まれているものであり,商品aと商品bを近くの位置に配置されるように表示するだけでは,ユーザーが商品aと商品bとを互いに比較したりそれらのコーディネートを検討すること」は実質的に困難であると主張するところ,この主張は,上記のような表示によって,実質的に「商品の試着や購入について検討し易くなる」ということはできないとの主張であると理解することができる。しかしながら,商品bが折り畳まれたものに限られないことは明らかであることに加え,仮に被告主張のような状態にあったとしても,ユーザーにとっては,(アバターとアバターが試着したままの状態である)商品a(帽子)と商品b(ジャンパー)が相対的に近くの位置に表示されることにより,少なくとも色合いについて相対的に比較検討がし易くなるものということができるから,被告の上記主張を採用することはできない。 オ上記エによると,発明特定事項1の下線部分に記載された事項である「サーバーシステムが,(他の仮想店舗B内にいる移動後試着アバターについて,更に同店内の商品bに近づくというユーザー側からの位置移動情報に基づいて,試着アバターが商品aを試着したままの状態で,)試着アバターを商品bに近づける処理を行うことにより,試着アバター,試着アバターが試着している商品a,陳列されている商品bの3つを互いに近くの位置に表示すること」及びこれによって「商品bについての購入や試着の検討がし易くなる」ことのいずれについても,当初明細書に記載された事項又は当初明細書の記載から自明な事項であるということができる。 3発明特定事項2について発明特定事項2の内容は「(1)前記の『他の仮想店舗』B内に存在する移動後試着アバターを,前記の仮想店舗Aの商品aを試着した状態を維持したまま,前記の『他の仮想店舗』B内の商品bに近づく位置へ移動させることにより,前記仮想店舗Aの商品aと前記『他の仮想店舗』Bの商品bとを同じ一つの3次元空間の中で互いに3次元的に近くの位置に表示し,これにより,ユーザーが両商品a,bを互いに3次元的に近くの位置で見比べながらそれらの購入や試着を検討できるようにし,」というものであるところ,上記2(3)において発明特定事項1の下線部分の記載を整理したところに照らすと,発明特定事項2に記載された事項は,発明特定事項1の下線部分に記載された事項と同一であると認められる。 そうすると,上記2(4)において説示したところと同様の理由により,発明特定事項2に記載された事項は,いずれも当初明細書に記載された事項又は当初明細書の記載から自明な事項であると認められる。 4以上によると,本件補正に係る補正事項の一部である発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2は,いずれも当初明細書に記載された事項又は当初明細書の記載から自明な事項であり,本件補正がこれらの補正事項を含むからといって,本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないということはできないから,審決取消事由は理由がある。 第6結論以上のとおり,審決取消事由は理由があり,本件補正を却下した審決の判断は誤りであるから,審決は本願発明の要旨認定を誤ったものといわざるを得ず取消しを免れない。 よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 田中信義 |
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裁判官 | 榎戸道也 |
裁判官 | 杜下弘記 |