関連審決 | 不服2005-19137 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20行ケ10175審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10096審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10171審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10209審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10189審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 発明者 / 物の発明 / 方法の発明 / 製造方法 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 相違点の認定 / 寄せ集め / 周知技術 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 構成要件 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 減縮 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
20年
(行ケ)
10213号
審決取消請求事件
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原告トキワケミカル工業株式会社 原告株式会社システムテクニカル 原告ら訴訟代理人弁護士川田敏郎 原告ら訴訟代理人弁理士仙田実 被告特許庁長官 指定代理人藤井俊明 同平上悦司 同高木彰 同紀本孝 同小林和男 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2009/02/18 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告らの請求を棄却する。 2訴訟費用は原告らの負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が不服2005-19137号事件について平成20年4月11日にした審決を取り消す。 第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告らは,平成10年1月29日,発明の名称を「自動車用アウター・インナーモールディング及びその成形法」とする発明につき特許出願をした(特願平10-54113号。出願時の請求項の数は3であった。以下「本願」という。甲4 。)原告らは,2回の補正をした後(甲7,甲8 ,平成17年4月7日付け手 )続補正書により明細書全文の補正をした(同補正により請求項の数は2となった。甲5。以下,同補正による補正後の明細書及び図面を「本願明細書」という。。)原告らは,平成17年8月3日付けで拒絶査定を受け,同年9月5日,これに対する不服の審判請求をし(不服2005-19137号 ,同年9月29 )日付け手続補正書により,明細書全文の補正をした(同補正は,従前の請求項1を削除し,従前の請求項2を補正して新たに請求項1とすること,及び発明の名称を「自動車用アウター・インナーモールディングの成形法」とすることを含むものである。甲6。以下,同補正を「本件補正」といい,本件補正による補正後の明細書及び図面を「補正明細書」という。。)特許庁は,平成20年4月11日,本件補正を却下した上で 「本件審判の ,,。」(「」。),, 請求は 成り立たないとの審決 以下 審決 というをし その謄本は同年5月8日,原告らに送達された。 2特許請求の範囲本願明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載,補正明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。 ( )本願明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載1()()() 自動車のドアー 11 における昇降窓硝子 7 のドアーパネル 10の内外側に装着されるアウター及びインナーモールディングの成形法におい,() (), て モールディング本体 1 を成形する第1押し出し成型機 20 には〔「」。 ポリプロピレン樹脂にタルクの紛体 判決注粉体 の誤りと認められる以下 「粉体」と表記する 〕を混合した混合合成樹脂を注入し,第2押し出 ,。 し成型機(21)には,表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料として高結晶ポリプロピレン樹脂を注入し,前記第1押し出し成型機(20)及び第2押し出し成型機(21)を同時に作動し,1台の金型ダイス(23)の内部で該薄被膜層(5)を一体的に重合被着することを特徴とする自動車アウ。(,「」 ター・インナーモールディングの成形方法以下 この発明を 本願発明という )。 ( )補正明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載2()()() 自動車のドアー 11 における昇降窓硝子 7 のドアーパネル 10の内外側に装着されるアウター及びインナーモールディングの成形法におい,() (), て モールディング本体 1 を成形する第1押し出し成型機 20 には〔「」。 ポリプロピレン樹脂にタルクの紛体 判決注粉体 の誤りと認められる以下 「粉体」と表記する 〕を15重量%以上混合した混合合成樹脂を注入 ,。 し,第2押し出し成型機(21)には,表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料として高結晶ポリプロピレン樹脂を注入し,前記第1押し出し成型機(20)及び第2押し出し成型機(21)を同時に作動し,1台の金型ダイス(23)の内部で該薄被膜層(5)を一体的に重合被着することを特徴とする自動車アウター・インナーモールディングの成形方法 (以下,この発 。 明を「補正発明」という )。 3審決の理由( )審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,次のとお1りである。 ア本件補正の可否について本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第4項2号(以下,条文は,特許法の条文を示す )の特許請求の範囲の 。 減縮を目的とするものに該当するが,補正発明は,特開平7-186235号公報(平成7年7月25日公開。甲1。以下「刊行物1」という )。 記載の発明,及び特開平8-127107号公報(平成8年5月21日公開 甲2 以下 刊行物2 という特開平6-190890号公報 平 。。「」。), (成6年7月12日公開。甲3。以下「刊行物3」という )に記載の周知 。 技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,本件補正は,平成18年法律第55号による改正前の17条の2第5項で準用する126条5項の規定に違反するものであり,159条1項で準用する53条1項の規定により却下すべきである。 イ本願の拒絶の成否について本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2,3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,29条2項の規定により特許を受けることができず,本願は拒絶されるべきである。 ( )審決の判断等2審決が,本件補正を却下するに当たってした補正発明と刊行物1記載の発明(以下「刊行物発明」という )の相違点の認定,相違点に関する容易想 。 到性の判断は,次のとおりである。 ア相違点の認定(ア)相違点1補正発明では,モールディング本体(1)を成形する構成材料が「ポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を15重量%以上混合した混合合成樹脂」であり,表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料が高結晶ポリプロピレン樹脂であるのに対して,刊行物発明においては,RPVCとステンレス箔テープ21である点 (審決6頁) 。 (イ)相違点2,(),() 補正発明では 第2押し出し成型機 21 には 表面の薄被膜層 5を形成する構成材料を注入して一体的に重合被着しているのに対し,刊行物発明においては,第2押し出し成型機にはリップ部4,5を形成する構成材料を注入し,補正発明の薄被膜層(5)に該当する金属薄膜材2はインサート成形により一体的に重合被着している点 (審決6ない 。 し7頁)イ相違点に関する容易想到性の判断相違点1について,モールディング本体(1)を成形する構成材料である「ポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂」及び表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料である「高結晶ポリプロピレン樹脂」は,刊行物2に示されている如く,自動車用モールド製品として通常用いられる材料であるから,当該材料を刊行物発明の自動車のドアーにおける昇降窓硝子のドアーパネルの内外側に装着されるアウター及びインナーモールディングに用いることは当業者なら容易に想到し得る程度のことである。なお,タルクの粉体の混合割合を15重量%以上とする点に関しては,15重量%に限定したことによって臨界的な効果が生ずることもないのであるから,当該「15重量%以上」の限定は単なる設計上の事項にすぎない。 相違点2について,表面の薄被膜層が合成樹脂材料の場合,押し出し成型機から注入して一体的に重合被着することは刊行物2及び3に示されているように周知技術であるから,当該技術を刊行物発明に適用して,表面の薄被膜層に合成樹脂材料を用いる際には,押し出し成型機から注入して一体的に重合被着することは当業者にとって格別困難なことではない。 そして,上記相違点1及び2を併せ備える補正発明が奏する作用効果について検討しても,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである (審決7頁)。 第3取消事由に係る原告らの主張審決は,次に述べるとおり,相違点に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由1 ,顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由2)があるから,違法と )して取り消されるべきである。 1相違点に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由1)( )補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて1当業者が容易に発明をすることができたものであるとの審決の判断は誤りである。その理由は,以下のとおりである。 ア刊行物発明は,ウェザーストリップの取付部1(モールディング本体)を硬質合成樹脂で成形し,その押出し成形時に,外部に露出する表面側にステンレス箔又はアルミニウム蒸着フィルム等の金属薄膜材をインサート成形するものであって,2層押出成形により簡単に連続して成形できる効果を有する。これに対し,補正発明は,モールディング本体のポリプロピレン樹脂としてタルク粉体を混合した混合合成樹脂を使用することによって,線膨張係数を小さくし,表面に被着する薄被膜層を高結晶ポリプロピレンにより構成することにより,モールディング本体の外部に露出する表面の剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に優れるという作用効果を生ずるものであって,刊行物発明と補正発明は,作用効果が異なる。 イ刊行物2記載の技術は,コア層(2)の全体の外周に被覆するスキン層(3)を設けた構成で,補正発明の自動車用アウター・インナーモールディングの成形法とは,その使用目的及びタルクを混合した目的と効果が著しく異なる分野のものである。 ウ刊行物2記載の技術は,スキン層(3)をポリプロピレン樹脂と着色剤の混合物とし,スキン層(3)のポリプロピレン樹脂は,6重量%以下のエチレンを含有するか,又は,これを含有せず,硬度が85以上のポリプロピレン樹脂であることを特徴とした高光沢樹脂成形体であり,外装品として,塗装品のような高い光沢感を目的としたものである。これに対し,補正発明は,特にアウター・インナーモールディングに使用するものであって,刊行物2記載の技術とは使用場所が異なり,着色剤等の混合等も異なるため,刊行物2記載の技術とは構成及び目的が著しく異なる。 エ補正発明は,モールディング本体についてポリプロピレンにタルク粉体を混合した混合合成樹脂を使用したことにより,全体を強靱化できるとともに,熱等による収縮膨張を防止し,従来のモールディングと比較して著しく線膨張係数が減少するという効果を奏するものであるから,刊行物2記載の技術においてタルクを混合することと効果において相違する。 ,(「」 オ刊行物3には ウェザーストリップ 刊行物3には ウエザストリツプと記載されているが 刊行物3の記載をそのまま引用する場合以外はウ , ,「ェザーストリップ」と表記する )本体に熱可塑性エラストマー及び発泡 。 体を使用し,その軟質を補強するため,溶融点が高い合成樹脂又は各種の添加材を混合したポリオレフィン系樹脂を表面保護被膜に被着することが記載されているが,薄被膜層の構成材料として高結晶ポリプロピレン樹脂を使用した構成については何ら記載がなく,刊行物3の記載から補正発明を容易に想到することはできない。 カ補正明細書の【0011】に示した表によれば,線膨張係数(×10) , () cm/cm・℃ は ポリプロピレン樹脂中のタルク粉体の割合 重量%が0%の場合は1.4であるのに対し,補正発明に定められた最低量の15%の場合は0.71,40%の場合は0.33となっており,タルク粉体が増えると小さくなる。補正発明の目的は,熱の発生による膨張を防止することにあるから,線膨張係数を小さくするためにタルク粉体の混合割合を15重量%以上に限定することは重要なことであり,単なる設計上の事項ではない。 ( )したがって,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技 2,, 術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく 審決が補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとした判断は,誤りである。 2顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由2)( )審決には,以下のとおり,補正発明の顕著な作用効果を看過した誤りが1ある。 すなわち,補正明細書の記載によれば,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の技術と比べて,次のような顕著な作用効果を有する。 ア補正発明は,モールディングの表面が高結晶ポリプロピレン樹脂で構成されているので,インナーモールディング及びアウターモールディングの外部に露出する表面が,従来のものより剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に著しく優れるとの効果がある。 イ補正発明は,従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーのように常温で軟化することなく,全体を強靭化し,かつ薄被膜層が傾斜支持片と一体的に結合して長時間に亘って強固に完成して使用できる効果がある。 ウモールディング本体についてポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を15重量%以上混合した混合合成樹脂を使用したことにより,全体を強靭化できるとともに,熱等による収縮膨張を防止し,そのため従来のモールディングと比較して著しく線膨張係数が減少するという効果もある。 エモールディング本体の成形法として,モールディング本体の傾斜支持片の表面に,薄被膜層を1台の金型ダイス内で一体的に重合被着することにより,成形が非常に容易であるとともに,両者は一体的に強固に結合されて剥離する等の憂いがないとの効果がある。 オ補正発明によるアウター・インナーモールディングによれば,従来のポリ塩化ビニール及びゴム等の構成材料と比較して著しく軽量に形成できるとともに,材料の性質上再度リサイクルが可能であるという便利な効果もある。 ( )そうすると,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の技術と2比べて顕著な作用効果を有するから,審決には,補正発明の顕著な作用効果。,,, を看過した誤りがある したがって 補正発明は 刊行物発明及び刊行物23に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく,審決が,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとした判断は,誤りである。 第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告らの主張はいずれも理由がない。 1相違点に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由1)に対し補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの審決の判断に誤りはない。 その理由は,以下のとおりである。 ( )補正発明と刊行物発明の相違点は,前記第2,3( )ア(ア),(イ)のとお1 2りであり,審決の認定に誤りはない。 ( )審決は,刊行物2の記載のみから補正発明の容易想到性を論じているの2ではなく,刊行物発明に刊行物2に記載された周知技術を適用することの可否を検討しているものであるから,原告らの刊行物2に関する主張は,補正発明の容易想到性を否定し得るものではなく,その主張自体失当である。 ( )刊行物2には 「アウター及びインナーモールディング」についての直接3 ,的な記載はないが,これらが刊行物2の【0046】に例示されたものと同様の自動車モールド製品であることは,乙1(特開昭61-37411号公報,昭和61年2月22日公開)の記載から明らかである。 , , ( )審決は 刊行物3の記載から周知技術に関する技術事項を認定しており4刊行物3の記載のみから補正発明の容易想到性を論じているものではない。 そして,審決は,表面の材質について,刊行物3の記載から 「表面の薄被 ,膜層が合成樹脂材料」であることを認定したにとどまり,その具体的材質まで認定したものではないから,刊行物3に記載された表面の具体的材質が補正発明と異なるとしても,そのことから補正発明の容易想到性を否定し得るものではなく,その主張自体失当である。 ( )タルクを混合することにより樹脂材料の耐熱性や剛性を向上させること5ができることは周知であり,刊行物2には,コア層をポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂とすることが記載されている。他方,補正明細書には,タルクの混合割合を15重量%とすると線膨張係数が0.71になることが示されているにすぎず,このような線膨張係数がどのような臨界的な意義を有するかについては記載されていない。したがって,タルクの混合割合を15重量%以上にすることは,設計事項にとどまる。 2顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由2)に対し審決には,補正発明の顕著な作用効果を看過した誤りはなく,原告らの主張は,以下の理由により,採用することができない。 ( )モールディング本体の表面に薄膜層を設けること自体は,刊行物1ない1し3に共通して記載されており,薄膜層が外部環境に直接さらされる位置にあることを考慮して,薄膜層に耐傷性,薬品性に優れたものを選択することに格別の創意は要しない。モールディング本体の表面に高結晶ポリプロピレン樹脂を用いたものは,刊行物2に記載されている。 ( )従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーのように常温で軟化すること2なく,全体を強靱化したとの作用効果は,刊行物1において,従来のステンレス板材をロールフォーミングして骨材とすることに代えて本体を硬質合成樹脂成形したことによる作用効果と同様である。また,薄被膜層が傾斜支持片と一体的に結合して長時間にわたって強固に完成して使用できる点は,合成樹脂を2層押出成形した場合に当然生じる効果である。 ( )補正発明の,軽量化を図るという課題は,刊行物1の課題と共通してい3る。また,リサイクルが可能であるとの効果がいかなる構成により奏されるか明らかでないが,本体と表面のそれぞれがポリプロピレン系樹脂からなることによって生ずる効果であるとすれば,刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用することにより得られる程度の効果にすぎず,当業者が十分に予測し得るものである。 したがって,審決には,補正発明の顕著な作用効果を看過した誤りはなく,補正発明は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5当裁判所の判断1相違点に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由1)について( )相違点に関する容易想到性の判断について1審決がした相違点1に関する容易想到性の判断には,以下のとおり,誤りはない。 ア審決が,相違点1について 「モールディング本体(1)を成形する構 ,成材料である『ポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂』及び表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料である『高結晶ポリプロピレン樹脂』は,刊行物2に示されている如く,自動車用モールド製品として通常用いられる材料であるから,当該材料を刊行物発明の自動車のドアーにおける昇降窓硝子のドアーパネルの内外側に装着されるアウター及びインナーモールディングに用いることは当業者なら容易に想到し得る程度のことである 」とした判断(前記第2,3( )イ)に誤りはない。そ 。 2の理由は,以下のとおりである。 (ア)刊行物2には,高光沢樹脂成形体に関する発明が記載されており,次のとおりの記載がある。 a「 目的】塗装品と同程度の高光沢感,メタリック感,及び耐傷 【付性を得ることができ,かつ,塗装工程を省略することができる,高光沢樹脂成形体を提供すること。 【構成】 コア層と該コア層の周囲に被覆されたスキン層とからなる樹脂成形体であって,コア層はポリプロピレン系複合材料からなり,一方,上記スキン層はポリプロピレン樹脂と着色剤との混合物からなる。スキン層におけるポリプロピレン樹脂は,6重量%以下のエチレンを含有するか又はこれを含有せず,かつロックウエル硬度が85以上である 」。 「【】,,, 0046 本発明は 上記サイドモールの他に ホイールカバーサイドガーニッシュ,ロッカパネル,バンパ,バンパコーナ,スポイラー,センターピラー等の外装製品,メータクラスター,センタクラスター,ガーニッシュ類等の内装製品,その他高光沢が要求される各種輸送機器,電気製品等の各種産業機器に適用できる。また,上記成形体はサンドイッチ射出成形法の他に,2層押出成形,2層ブロー成形等により製造することができる 」。 「【】, , b0009 また 上記スキン層のポリプロピレン樹脂としては結晶性ホモポリプロピレン,結晶性のプロピレン-エチレンランダム共重合体,結晶性のプロピレン-エチレンブロック共重合体,及びこれらの混合物等がある。 【0010】これらのうち,特に,アイソタクチック指数の高い高結晶性のポリプロピレン樹脂(ロックウエル硬度が95以上)が好ましい。さらに,この中でも,高結晶性のホモポリプロピレン樹脂(ロックウエル硬度が105以上)が最も好ましい。これにより,さらに優れた,高光沢感,メタリック感,及び耐傷付性を得ることができる。 ここで,アイソタクチック指数とは,C-NMR法によるメチル13基のトリアッド単位でのアイソタクチック分率である 」。 c「 0011】また,上記コア層におけるポリプロピレン系複合材 【料は,ポリプロピレン樹脂にゴム成分,無機質充填材のいずれか一方又は双方を含有していることが好ましい。これにより,適度の柔軟性及び剛性を有するコア層を得ることができる。また,上記コア層のポリプロピレン樹脂としては,ホモポリプロピレン,ブロックポリプロピレン,ランダムポリプロピレン,及びこれらの混合物がある。 【0014】また,上記無機質充填材は,ガラス繊維,タルク,マイカ,炭酸カルシウム,ワラストナイト,クレー,硫酸バリウム,チタン酸カリウムウィスカー,硫酸マグネシウムウィスカー,炭酸カルシウムウィスカー,シリカのグループから選ばれる1種以上であることが好ましい。これによっても,耐低温衝撃性等の強度特性を向上させることができる 」。 (イ)前記(ア)aの刊行物2の記載によれば,刊行物2にいうコア層は補正発明の「モールディング本体(1 」に該当し,コア層の周囲に被覆 )されたスキン層は 「表面の薄被膜層(5 」に該当し,コア層とスキン ,)層は2層押出成形されるものであるから,刊行物2には 「表面の薄被 ,膜層を形成する構成材料として樹脂を注入し,該薄被膜層を一体的に重合被着する」構成が示されていると認められる。そして,前記(ア)bの刊行物2の記載によれば,スキン層のポリプロピレン樹脂は,高結晶ポリプロピレン樹脂であると認められ,前記(ア)cの刊行物2の記載によれば,コア層のポリプロピレン系複合材料は,ポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂であると認められる。そうすると,自動車用モールド製品に用いられる材料として,その本体をポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂とし,その薄被膜を高結晶ポリプロピレン樹脂とすることは,本願の出願前に公知であり,これらの材料は,通常用いられるものであったと認められる。 刊行物2には,前記(ア)aの【0046】の記載にあるように,スキン層を高結晶ポリプロピレン樹脂とし,コア層をポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂として2層押出成形される自動車用モールド製品について,サイドモールの他に,ホイールカバー,サイドガーニッシュ,ロッカパネル,バンパ,バンパコーナ,スポイラー,センターピラーが例示されているが,本願発明及び補正発明に係るアウター及びインナーモールディングも,モールディングにより製造される自動車用モールド製品であるから,刊行物2に記載された製造方法を採ることができるものと認められる。そのことは,乙1(特開昭61-37411号公報)に,モールディングによる製造方法がサイドモールディングに限らず,バンパーモールディング,ウエザーストリップモールディング等の他のモールディングの製造にも適用可能であることが記載されていること(乙1,4頁右上欄9ないし15行)からも裏付けられる。 ,,,「() したがって 審決が 相違点1についてモールディング本体 1を成形する構成材料である『ポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂』及び表面の薄被膜層(5)を形成する構成材料である『高結晶ポリプロピレン樹脂』は,刊行物2に示されている如く,自動車用モールド製品として通常用いられる材料であるから,当該材料を刊行物発明の自動車のドアーにおける昇降窓硝子のドアーパネルの内外側に装着されるアウター及びインナーモールディングに用いることは当。」(, 業者なら容易に想到し得る程度のことであるとした判断 前記第23( )イ)に,誤りはないというべきである。2イ審決が相違点1について「なお,タルクの粉体の混合割合を15重量%以上とする点に関しては,15重量%に限定したことによって臨界的な効果が生ずることもないのであるから,当該『15重量%以上』の限定は単なる設計上の事項に過ぎないものである 」とした判断(前記第2,3( ) 。 2イ)に誤りはない。その理由は,以下のとおりである。 ( ,, (ア)a乙2 特開平7-314490号公報 平成7年12月5日公開発明の名称「自動車用モール成形体 )には,次のとおりの記載があ 」る。 「 0003】【【発明が解決しようとする課題】そこで,本発明者らは,GIM法により得られ,しかも塩化ビニル系樹脂を使用せず,加熱収縮がほとんどなく,かつ線膨張係数が小さくて寸法安定性に優れるとともに,自動車外装材料として良好な外観を有する自動車用モール成形体を開発すべく鋭意研究を重ねた 」。 「 0009】次に,該樹脂組成物において (C)成分として用いら 【 ,れるタルクについては,特に制限はないが,平均粒径5μm以下で,アスペクト比が10以上であるものが,寸法安定性の理由で好適である。その樹脂組成物中の配合量は10〜20重量%,好ましくは10〜17重量%,更に好ましくは10〜15重量%の範囲で選ばれる。 この配合量が10重量%未満では,充分な寸法安定性が得られず,20重量%を超えると,成形体の外観が悪くなる 」。 b前記aの乙2の記載によれば,タルク(滑石の粉末)は,樹脂材料に混合される無機フィラー(充填剤)として用いられており,樹脂組成物にタルクを混合することにより,熱膨張を防止し,線膨張係数を小さくして寸法安定性を確保できることが知られていたことが認められ,タルクを混合するに当たり,熱等による収縮膨張を考慮することは,当業者が適宜なし得る事項であったものと認められる。 ,,。 (イ)a補正明細書には 線膨張係数に関して 次のとおりの記載がある「 0004】【【発明が解決しようとする課題】本発明は 上記従来の各欠点を解決するものであり その種たる 判 , ,(決注「主たる」の誤記と認められる )目的とする所は,軟質性の 。 合成樹脂に代えて硬質のポリプロピレン樹脂にタルク(滑石)の粉体を15重量%以上混合した合成樹脂を以て剛性の優れた熱等の収縮膨張を防止するモールディング本体を形成し,且つ・・・するアウター・インナーモールディングの成形法を目的としている 」。 「 0010】【次に,本発明におけるポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂を使用した実施例として下記のような線膨張係数の結果が得られた。 【0011】【表 」】「 表】【サンプル1 サンプル2 サンプル3ポリプロピレンの割合100%85%60%タルク(滑石)の割合0%15%40%1.40.710.33 線膨張係数(×10-4?p/?p・℃)」b前記aのとおり,補正明細書には,補正発明の目的の一つがモールディングの線膨張係数を下げることであること,タルクの混合割合を15%としたときに線膨張係数が0.71となることが記載されている。しかし,線膨張係数を0.71以下とする必要があることについては記載がなく,線膨張係数が0.71であることがいかなる臨界的な意義を有するかについても記載がない。 (ウ)そうすると,補正発明においてタルクの粉体の混合割合を15重量%以上に限定したことは,それによって臨界的な効果が生じるとは認められず,設計上の事項にとどまるものと解される。 したがって,審決が相違点1について「なお,タルクの粉体の混合割合を15重量%以上とする点に関しては,15重量%に限定したことによって臨界的な効果が生ずることもないのであるから,当該『15重量%以上』の限定は単なる設計上の事項に過ぎないものである 」とした 。 判断(前記第2,3( )イ)に,誤りはないというべきである。 2( )原告らの主張に対して2原告らは,以下のとおり主張するが,いずれも理由がない。 アまず,原告らは,刊行物発明は,ウェザーストリップの取付部1(モールディング本体)を硬質合成樹脂で成形し,その押出し成形時に,外部に露出する表面側にステンレス箔又はアルミニウム蒸着フィルム等の金属薄膜材をインサート成形するものであって,2層押出成形により簡単に連続して成形できる効果を有するのに対し,補正発明は,モールディング本体のポリプロピレン樹脂としてタルク粉体を混合した混合合成樹脂を使用することによって,線膨張係数を小さくし,表面に被着する薄被膜層を高結晶ポリプロピレンにより構成することにより,モールディング本体の外部に露出する表面の剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に優れるという作用効果を生ずるものであって,刊行物発明と補正発明は,作用効果が異なると主張する(前記第3,1( )ア 。 1 )しかし,補正明細書( 0012 )の記載を参照すると,原告らが補正 【】発明の作用効果として主張する,モールディング本体の外部に露出する表面の剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に優れるという作用効果は,モールディング本体の表面を高結晶ポリプロピレン樹脂により構成し,補正発明の成形法により製造したアウター・インナーモールディングという物が有する作用効果であって,自動車アウター・インナーモールディングの成形方法という方法の発明である補正発明が有する作用効果ではない。補正明細書の「モールディング本体の成形法として,モールディング本体の傾斜支持片の表面に薄被膜層を1台の金型ダイス内で一体的に重合被着することにより,成形が非常に容易であると共に,両者が一体的で強固に結合されて剥離等の憂いがない効果がある( 0012 )との記載によ 。」【】れば,方法の発明である補正発明の作用効果は,成形が容易であり,モールディング本体と薄被膜層が一体的に強固に結合されるとの作用効果であると認められる。したがって,原告らの上記主張は,物の発明の作用効果をもって,方法の発明である補正発明の作用効果とすることを前提とするものであって,その前提において,採用することができない。 イ原告らは,刊行物2記載の技術は,コア層(2)の全体の外周に被覆するスキン層(3)を設けた構成で,補正発明の自動車用アウター・インナーモールディングの成形法とは,その使用目的及びタルクを混合した目的と効果が著しく異なる分野のものであり(前記第3,1( )イ ,スキン層1 )(3)をポリプロピレン樹脂と着色剤の混合物とし,スキン層(3)のポリプロピレン樹脂は,6重量%以下のエチレンを含有するか,又は,これを含有せず,硬度が85以上のポリプロピレン樹脂であることを特徴とした高光沢樹脂成形体であり,外装品として,塗装品のような高い光沢感を目的としたものであるのに対して,補正発明は,特にアウター・インナーモールディングに使用するものであって,刊行物2記載の技術とは使用場所が異なり,着色剤等の混合等も異なるため,刊行物2記載の技術とは構成及び目的が著しく異なる(前記第3,1( )ウ ,と主張する。 1 ),,。, しかし 原告らのこの点の主張は 以下のとおり失当である すなわち刊行物2記載の技術における,高光沢樹脂成形体を提供することやスキン層に着色剤が含まれているという特徴を有することは,刊行物2の記載の「自動車用モールド製品に用いられる材料として,その本体をポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を混合した混合合成樹脂とし,その薄被膜を高結」 , 晶ポリプロピレン樹脂とする技術 を刊行物発明に適用することにおいて何らの阻害要因にならないというべきである。 なお,原告らは 「刊行物3には,ウェザーストリップ本体に熱可塑性 ,エラストマー及び発泡体を使用し,その軟質を補強するため,溶融点が高い合成樹脂又は各種の添加材を混合したポリオレフィン系樹脂を表面保護被膜に被着することが記載されているが,薄被膜層の構成材料として高結晶ポリプロピレン樹脂を使用した構成については何ら記載がなく,刊行物3の記載から補正発明を容易に想到することはできない(前記第3,1。」( )オ)と主張するが,上記のとおり,薄被膜を高結晶ポリプロピレン樹1脂とする技術は,刊行物2に記載されているから,刊行物発明に刊行物3に記載された周知技術のみならず,刊行物2に記載された周知技術を適用することにより補正発明に想到することは容易であって,原告らの上記主張は,補正発明の容易想到性を否定する根拠とはいえず,採用することはできない。 ウまた,原告らは,?@補正発明は,モールディング本体にポリプロピレンにタルク粉体を混合した混合合成樹脂を使用したことにより,全体を強靱化できるとともに,熱等による収縮膨張を防止し,従来のモールディングと比較して著しく線膨張係数が減少するという効果を奏するものであるから,刊行物2記載の技術においてタルクを混合することと効果において相違する(前記第3,1( )エ ,?A本願明細書中の【0011】に示した表1 )によれば,線膨張係数(×10cm/cm・℃)は,ポリプロピレン樹脂中のタルク粉体の重量%が0%の場合は1.4であるのに対し,補正発明に定められた最低量の15%の場合は0.71,40%の場合は0.33となっており,タルク粉体が増えると小さくなり,補正発明の目的は,熱の発生による膨張を防止することにあるから,線膨張係数を小さくするためにタルク粉体の混合割合を15重量%以上に限定することは重要なことであり,単なる設計上の事項ではない(前記第3,1( )カ ,と主張す1 )る。 ,,。, しかし 原告らのこの点の主張も 以下のとおり失当である すなわちタルクを混合するに当たり,熱等による収縮膨張を考慮することは,当業者が適宜なし得る事項であったものと認められ(前記( )イ(ア) ,本願明1 )細書には,線膨張係数(×10cm/cm・℃)を0.71以下とする必要があることについて記載がなく,線膨張係数が0.71であることが(), いかなる臨界的な意義を有するかについても記載がなく 前記( )イ(イ)1補正発明においてタルクの粉体の混合割合を15重量%以上に限定したことは,それによって臨界的な効果が生じるとは認められず,設計上の事項にとどまるものと解されるから(前記( )イ(ウ) ,原告らの上記主張は,1 )採用することができない。 エなお,原告ら作成の第1準備書面(平成20年7月15日付け)には,審決の取消事由につき 「審決の相違点2について」との表題の下に 「モ , ,ールディング本体(1)の表面に合成樹脂の薄被膜層を押出し成型機で一体に注入して重合被着することのみが本願発明の重要な構成要件ではなく,特に,自動車専用のアウター・インナーモールディングとして,モールディング本体の内部にタルクの粉体を混合したものを使用したことによって,本願発明は,線膨張係数を小さくすることができ,且つ,表面の薄被膜層より浮上する如く粗面部が形成され,窓硝子の表裏面に圧接して昇降を軽快とする目的と作用効果を達成したものであって,周知のものを単に寄せ集めて容易に達成されるものではない事が明らかである(原告ら。」第1準備書面10頁( ))との記載がある。しかし,上記の記載は 「審決5 ,の相違点2について」との表題が付されているものの,その内容は 「モ,ールディング本体の内部にタルクの粉体を混合したものを使用したこと」による作用効果等から,容易想到性がないことを主張するものであり,実質的には,審決の相違点1に関する容易想到性の判断に誤りがあることを主張するものと解される。しかるに,前記( )のとおり,審決の相違点11に関する容易想到性の判断に誤りはないから,上記の記載に係る原告らの主張も,採用することができない。 ( )小括3以上によれば,原告ら主張の取消事由1は理由がない。 2顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由2)について( )原告らの主張について1原告らは,補正発明には,顕著な作用効果があると主張する。しかし,前記1( )アのとおり,補正明細書の記載によれば,方法の発明である補正発2明の作用効果は,成形が容易であり,モールディング本体と薄被膜層が一体的に強固に結合されるとの作用効果であると認められ,原告らが補正発明の作用効果として主張する,モールディング本体の外部に露出する表面の剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に優れるなどの作用効果は,補正発明の成形法により製造したアウター・インナーモールディングという物が有する作用効果であって,自動車アウター・インナーモールディングの成形方法という方法の発明である補正発明が有する作用効果ではない。 さらに,上記の点を措くとしても,原告らの主張は,以下のとおり理由がない。 ア原告らは,モールディングの表面が高結晶ポリプロピレン樹脂で構成されているので,インナーモールディング及びアウターモールディングの外部に露出する表面の剛性が増大し,かつ耐傷性,耐薬品性に著しく優れる格別の作用効果があると主張する。しかし 「モールディング本体の表面 ,に薄膜層を設ける技術」は,刊行物1ないし3に記載があり,薄膜層が外部環境に直接さらされる位置にあることを考慮して薄膜層の材質として耐傷性,耐薬品性等に優れたものを選択することは,特段の創意を要しないものと認められ,また「モールディング本体の表面の薄膜層に高結晶ポリプロピレン樹脂を用いた技術」も,刊行物2に記載されている。したがって,原告ら主張の上記作用効果は,刊行物発明に,刊行物2に記載された技術事項を適用することにより容易に得られる程度のものであり,顕著な作用効果ということはできない。 イ原告らは 「従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーのように常温で ,軟化することなく,全体を強靭化」し,また「薄被膜層が傾斜支持片と一体的に結合して長時間に亘って強固に完成して使用できる」との格別の作用効果があると主張する。しかし,前者は,刊行物1において,取付部1(モールディング本体)を硬質合成樹脂で成形するようにしたことによっ,,,, て生ずるとされた作用効果と同じであり また 後者は 後記エのとおり2台の押出成型機を同時に作動させて1台の金型ダイスから押し出す2層押出成形を採用する場合に当然に生じる効果といえる。したがって,原告ら主張の上記作用効果は,顕著な作用効果ということはできない。 ウ原告らは,モールディング本体についてポリプロピレン樹脂にタルクの粉体を15重量%以上混合した混合合成樹脂を使用したことにより,全体を強靭化できると共に,熱等による収縮膨張を防止し,従来のモールディングと比較して線膨張係数が減少するという作用効果があると主張する。 しかし,補正発明においてタルクの粉体の混合割合を15重量%以上に限定したことは,前記1( )イ(ウ)記載のとおり,臨界的な効果を生じると1はいえず,設計上の事項にとどまるものと解されるから,そのような作用効果が生じるとしても,それは,格別顕著な作用効果ということはできない。 エ原告らは,モールディング本体の傾斜支持片の表面に薄被膜層を1台の金型ダイス内で一体的に重合被着することにより,成形が非常に容易であると共に,両者は一体的に強固に結合されて剥離する等の憂いがないとの作用効果があると主張する。しかし,相溶性のある合成樹脂を2層押出成形した場合に,成形が容易であり,各層の樹脂が一体的に強固に結合されることは,当然生じる効果というべきものであり,刊行物3にも 「ウエ,ザストリツプ本体の熱可塑性エラストマーと,粗面接合帯及び表面保護被膜を形成するポリオレフイン系樹脂は,各々互いに相溶性があるため押し出し成形時の熱と圧力により全体を強固に融合一体化する効果がある 」。 (4欄21ないし25行)と記載されている。補正発明においては,モールディング本体と薄被膜層の双方がポリプロピレン系樹脂であり,相溶性があるから,これらを2層押出成形することにより,原告ら主張の上記作用効果が生じたとしても,それは当然生じる作用効果といえるから,顕著な作用効果ということはできない。 , , オ原告らは 補正発明によるアウター・インナーモールディングによれば従来のポリ塩化ビニール及びゴム等の構成材料と比較して著しく軽量に形成できると共に,材料の性質上再度リサイクルが可能であるという便利な効果もあると主張する。しかし,軽量化を図るとの作用効果は,刊行物1( 0005【0006【0021 )に記載があり,刊行物発明の 【】,】,】効果と同じである。また,再度のリサイクルが可能であるとの作用効果がどのような構成から生ずるのかは,補正明細書によっても明確でないのみならず,仮に,モールディング本体と薄被膜層のそれぞれがポリプロピレ,, ン系樹脂からなることによって生ずる作用効果であるならば 刊行物2にコア層とスキン層のそれぞれがポリプロピレン樹脂からなることが記載されているから,その作用効果は,刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用することにより当然に得られる作用効果にすぎず,格別顕著な作用効果ということはできない。 ( )小括2そうすると,審決に,補正発明の顕著な作用効果を看過した誤りはなく,補正発明が奏する作用効果は,刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術から当業者が予測できる範囲のものである(前記第2,( )イ)とした審2決の判断に誤りはなく,原告ら主張の取消事由2は理由がない。 3本願発明の進歩性の判断についてなお,上記と同様の理由により,本願発明は刊行物発明及び刊行物2,3に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの審決の判断に誤りはない。 4結論以上のとおり,原告ら主張の取消事由はいずれも理由がない。原告らは,その他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。 よって,原告らの本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 中平健 |
裁判官 | 上田洋幸 |