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事件 平成 18年 (ワ) 22106号 損害賠償等請求事件
福島県郡山市<以下略>
原告A 福岡県北九州市<以下略>
被告株式会社JAPANCREATE 福岡県北九州市<以下略>
被告株式会社匠
被告両名訴訟代理人弁護士寒河江孝允
同訴訟復代理人弁護士洞 敬
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/11/13
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1被告らは,原告に対し,連帯して金585万6600円及び別紙附帯金目録記載の金員を支払え。
2被告らは,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を製造し,輸入し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
3被告らは,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を廃棄せよ。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。
6この判決は,第1,5項に限り,仮に執行することができる
事実及び理由
全容
第1請求1被告らは,原告に対し,連帯して金2000万円及びこれに対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
22被告らは,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を製造し,輸入し,販売し,又は販売のために展示してはならない(なお,訴状においては,「本件特許及び本件意匠に抵触する簡易顕微鏡」と記載されているものの,上記記載は,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を指すものと解される。)。
3被告らは,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を回収し廃棄せよ(なお,訴状においては,「本件に関するすべての商品」と記載されているものの,上記記載は,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品を指すものと解される。)。
4被告らは,自社ホームページに謝罪広告を1年間掲載せよ。
第2事案の概要等本件は,原告が被告らに対し,被告株式会社JAPANCREATE(以下「被告JAPANCREATE」という。)が製造し,被告株式会社匠(以下「被告匠」という。)が販売する,別紙被告製品目録記載1ないし3の各製品(以下,それぞれに付された番号に従って「被告製品1」などといい,被告製品1ないし3をまとめて「各被告製品」という。)につき,被告らがこれらを製造,販売する行為が,原告の有する特許権(特許番号第3806828号。発明の名称「対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」)を直接侵害する行為であるか,あるいは,特許法101条2号,5号,平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)101条4号(改正前の行為について)により,上記特許権を侵害するものとみなされると主張して,特許法100条1項,2項,106条に基づき,さらに,原告の有する意匠権(意匠番号第1171883号,意匠番号第1171884号)を侵害しているとして,意匠法37条1項,2項及び41条の準用する特許法106条に基づき,各被告製品の製造,輸入,販売及び販売のための展示の差止め,並びに各被告製品の回収及び廃棄,謝罪広告の掲載を求めるとともに,特許法65条1項に基づく補償金の支払(平成173年9月1日から平成18年5月25日までの製造,販売分),民法709条,719条に基づく損害賠償金の支払(平成18年5月26日から平成19年11月20日までの製造,販売行為による特許権侵害分及び平成17年9月1日から平成19年11月20日までの製造,販売行為による意匠権侵害分)を求める事案である。
なお,附帯請求は,平成18年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求である。
1争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1)原告の特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲の各請求項の発明を「請求項1の発明」などという。また,本件特許権に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(甲7。別紙特許公報参照)を「本件明細書」という。)を有する。(甲7)特 許 番 号第3806828号発明の名称対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用出願日平成10年6月22日出願公開日平成12年1月14日公 開 番 号特開2000-10026登録日平成18年5月26日特許請求の範囲【請求項2】「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを備え,前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた4簡易顕微鏡。」【請求項3】「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを備え,前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡を用いた試料観察方法において,前記各シートを指で挟んで,すり合わせする事で観察ポイントを移動するようにした簡易顕微鏡を用いた試料観察方法。」【請求項5】「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,透明部を有する試料保持シートとを備え,前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け,前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ,各シートの面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,X,Y方向の移動が自由に出来るようにした簡易顕微鏡。」【請求項6】「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,透明部を有する試料保持シートと,その他のシートを備え,前記各シートに各々穴を設け,前記穴を支点中心に各シートを互いに回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせた簡易顕微鏡。」(2)構成要件の分説ア請求項2の発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下分説した各構成要件をそれぞれ「構成要件A1」などという。)。
A1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,A2観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを5備え,A3前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,A4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせたA5簡易顕微鏡。
イ請求項3の発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下分説した各構成要件をそれぞれ「構成要件B1」などという。)。
B1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,B2観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを備え,B3前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,B4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡を用いた試料観察方法において,B5前記各シートを指で挟んで,B6すり合わせする事で観察ポイントを移動するようにしたB7簡易顕微鏡を用いた試料観察方法。
ウ請求項5の発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下分説した各構成要件をそれぞれ「構成要件C1」などという。)。
C1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,C2透明部を有する試料保持シートとを備え,C3前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け,C4前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ,C5各シートの面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,6X,Y方向の移動が自由に出来るようにしたC6簡易顕微鏡。
エ請求項6の発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下分説した各構成要件をそれぞれ「構成要件D1」などという。)。
D1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,D2透明部を有する試料保持シートと,D3その他のシートを備え,D4前記各シートに各々穴を設け,D5前記穴を支点中心に各シートを互いに回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせたD6簡易顕微鏡。
(3)原告名義の意匠登録ア登録名義人を原告とする,次の意匠権(以下「本件カード意匠権」といい,その登録意匠を「本件カード意匠」という。)が存する。
その意匠公報において,本件カード意匠は,図面代用見本又はひな形によって現されたものであり,同公報に掲載された図面は,別紙本件カード意匠見本図のとおりである。(甲30)意匠登録第1171883号出願番号2000-033364出願日平成12年10月17日登録日平成15年3月7日意匠に係る物品顕微鏡イ登録名義人を原告とする,次の意匠権(以下「本件レンズチップ意匠権」といい,その登録意匠を「本件レンズチップ意匠」という。)が存する。
その意匠公報において,本件レンズチップ意匠は図面代用見本又はひな7形によって現されたものであり,同公報に掲載された図面は,別紙本件レンズチップ意匠見本図のとおりである(なお,別紙本件レンズチップ意匠拡大図が同見本図の拡大図であることは,当事者間に争いがない。)。
(甲31)意匠登録第1171884号出願番号2000-033803出願日平成12年10月21日登録日平成15年3月7日意匠に係る物品顕微鏡(4)被告らの行為ア被告JAPANCREATEは,教育機器,医療器具,玩具などの企画,製造,並びに販売等を業とする株式会社であり,その代表者はBである。
被告匠は,テレビショッピング,ラジオショッピング,カタログ,インターネット,ダイレクトメールによる各種商品の通信販売等を業とする株式会社であり,その代表者はBである。(甲53ないし55,弁論の全趣旨)イ被告JAPANCREATEは,業として,各被告製品を製造し,被告匠は,業として,各被告製品を販売している。
2争点(1)各被告製品の製造,販売は本件特許権の侵害となるか。(争点1)ア被告製品1及び被告製品2は請求項5の発明に係る特許権を侵害するものか。(争点1-a)イ被告製品1及び被告製品2は請求項2の発明に係る特許権を侵害するものか。(争点1-b)ウ被告製品1及び被告製品2は請求項3の発明に係る特許権を侵害するも8のか。(争点1-c)エ被告製品3は請求項6の発明に係る特許権を侵害するものか。(争点1-d)オ被告製品3は請求項2の発明に係る特許権を侵害するものか。(争点1-e)カ被告製品3は請求項3の発明に係る特許権を侵害するものか。(争点1-f)(2)請求項2,3,5及び6に係る特許は無効にされるべきものか。(争点2)ア請求項2,3の記載が特許法36条6項1号に違反するものか。(争点2-a)イ請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条6項2号に違反するものか。(争点2-b)ウ請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条4項1号に違反するものか。(争点2-c)エ請求項2,3,5及び6に係る発明は進歩性を欠くものか。(争点2-d)オ本件特許が平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項に違反するものか。(争点2-e)(3)各被告製品の製造,販売は本件意匠権侵害となるか。(争点3)ア本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠の構成態様(争点3-a)イ被告製品1及び被告製品2と本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠との類否(争点3-b)ウ被告製品3と本件レンズチップ意匠との類否(争点3-c)(4)本件意匠は無効にされるべきものか。(争点4)ア本件カード意匠について9(ア)本件カード意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか。(争点4-a)(イ)本件カード意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか。(争点4-b)(ウ)本件カード意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか(争点4-c)(エ)本件カード意匠は,意匠法5条3号に該当するものか(争点4-d)イ本件レンズチップ意匠について(ア)本件レンズチップ意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか。(争点4-e)(イ)本件レンズチップ意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか。
(争点4-f)(ウ)本件レンズチップ意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか(争点4-g)(エ)本件レンズチップ意匠は,意匠法5条3号に該当するものか(争点4-h)(5)損害額(争点5)(6)各被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄請求の可否,並びに謝罪広告の要否(争点6)第3争点に関する当事者の主張1争点1(各被告製品の製造,販売は本件特許権の侵害となるか)について〔原告の主張〕(1)争点1-a(被告製品1及び被告製品2は請求項5の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品1及び被告製品2の構成被告製品1及び被告製品2は,いずれも次の構成を有する。
10c1レンズが取り付けられたステージカード(レンズ保持シート)と,c2透明カバーフィルム(透明部を有する試料保持シート)を備え,c3前記レンズ保持シートに切れ目があり,c4前記切れ目に前記試料保持シートをはめ込むように各シートを重ね合わせるようになっていて,c5各シートの面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向とした時,X,Y方向の移動(片方の移動は約2?oの範囲であるが)が自由にできるようになっている,c6簡易顕微鏡。
イ請求項5の発明との対比(ア)被告製品1及び被告製品2のステージカードはレンズ保持シートのことであるから,c1は構成要件C1を充足する。
(イ)被告製品1及び被告製品2の透明カバーフィルムは透明部を有する試料保持シートのことであるから,c2は構成要件C2を充足する。
(ウ)被告製品1及び被告製品2のステージカード(レンズ保持シート)には切れ目があるから,c3は構成要件C3を充足する。
(エ)被告製品1及び被告製品2においては,ステージカード(レンズ保持シート)の切れ目に透明カバーフィルム(透明部を有する試料保持シート)をはめ込んで重ね合わせるようになっているから,c4は構成要件C4を充足する。
(オ)被告製品1及び被告製品2においては,透明カバーフィルム(透明部を有する試料保持シート)の幅が,ステージカード(レンズ保持シート)の切れ目の幅より狭くなっており,Y方向にもX方向にも移動が可能であるから,c5は構成要件C5を充足する。
(カ)被告製品1及び被告製品2は簡易顕微鏡であるから,c6は構成要件C6を充足する。
11ウ以上によれば,被告製品1及び被告製品2は,請求項5の発明の技術的範囲に属し,被告製品1及び被告製品2を製造,販売することは,請求項5の発明に係る特許権を侵害する。
(2)争点1-b(被告製品1及び被告製品2は請求項2の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品1及び被告製品2の構成被告製品1及び被告製品2は,いずれも次の構成を有する。
a1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,a2透明部を有する試料保持シートを備え,a4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせたa5簡易顕微鏡。
そして,被告製品1及び被告製品2は,いずれも,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有する。
イ請求項2の発明との対比(ア)a1は構成要件A1を充足する。
(イ)a2は構成要件A2を充足する。
(ウ)a4は構成要件A4を充足する。
(エ)a5は構成要件A5を充足する。
(オ)被告製品1及び被告製品2は,いずれも,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有し,ユーザーは,被告製品1及び被告製品2を使用する際には,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに観察試料を直接接触させつつ,前記レンズと前記試料保持シートの透明部との間に観察試料を挟む(構成要件A3)。
したがって,被告製品1及び被告製品2は,請求項2に係る発明の生12産に用いる物であり,上記発明による課題の解決に不可欠なものであるといえる。
ウ被告らは,原告からの警告を無視して,被告JAPANCREATEにおいて,被告製品1及び被告製品2を製造し,被告匠において,販売したのであるから,特許法101条2号により,請求項2の発明に係る特許権を侵害するものとみなされる。
エなお,被告らは,インターネット上において(甲52),被告製品1及び被告製品2について,「見たいものをスポイドでレンズに直接付ける。」,「安全な透明のプレパラートを挟み込む。」などと使用方法を説明しており,これは,譲渡等のための展示行為(特許法2条3項)に該当するから,請求項2の発明に係る特許権を直接侵害するものであるとも言い得る。
(3)争点1-c(被告製品1及び被告製品2は請求項3の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品1及び被告製品2の構成被告製品1及び被告製品2は,いずれも次の構成を有する。
b1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,b2透明部を有する試料保持シートを備え,b4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡。
そして,被告製品1及び被告製品2は,いずれも,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有する。
イ請求項3の発明との対比(1)b1は構成要件B1を充足する。
(2)b2は構成要件B2を充足する。
13(3)b4は構成要件B4を充足する。
(4)ユーザーは,被告製品1及び被告製品2を使用する際には,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに観察試料を直接接触させつつ,前記レンズと前記試料保持シートの透明部との間に観察試料を挟み(構成要件B3),前記レンズ保持シートと試料保持シートとを指で挟んで(構成要件B5),すり合わせすることで観察ポイントを移動させるようにし(構成要件B6),簡易顕微鏡を用いて試料を観察する(構成要件B7)。
したがって,被告製品1及び被告製品2は,請求項3の発明の使用に用いる物であり,上記発明による課題の解決に不可欠なものであるといえる。
ウ被告らは,原告からの警告を無視して,被告JAPANCREATEにおいて,被告製品1及び被告製品2を製造し,被告匠において,販売したのであるから,特許法101条5号,改正前特許法101条4号(改正前の行為について)により,請求項3の発明に係る特許権を侵害するものとみなされる。
エなお,被告らは,インターネット上において(甲52),被告製品1及び被告製品2について,「XY方向への移動が簡単に」,「明かりに向かって覗くだけで脅威の500〜1000倍率の世界。」などと使用方法を説明しており,これは,譲渡等のための展示行為(特許法2条3項)に該当するから,請求項3の発明に係る特許権を直接侵害するものであるとも言い得る。
(4)争点l-d(被告製品3は請求項6の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品3の構成被告製品3は,次の構成を有する。
14d1レンズ2個が取り付けられたレンズカード(レンズ保持シート)と,d2試料受けとなる透明カード(透明部を有する試料保持シート)を備え,d3その中間に穴の開いた透明ガードフイルムと,透明な試料保持シートの外側に補助カードを有し,d4前記各シートの一方端近部に各々穴を設け,d5前記穴を支点を中心に各シートを回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせたd6簡易顕微鏡。
イ請求項6の発明との対比(ア)被告製品3のレンズカードはレンズ保持シートのことであるから,d1は構成要件D1を充足する。
(イ)被告製品3の透明カードは透明部を有する試料保持シートのことであるから,d2は構成要件D2を充足する。
(ウ)被告製品3の透明ガードフイルムと補助カードはその他のシートであるから,d3は構成要件D3を充足する。
(エ)被告製品3においては,前記各シートに,それぞれ穴を設けているから,d4は構成要件D4を充足する。
(オ)被告製品3においては,前記穴を支点を中心に各シートを回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせているから,d5は構成要件D5を充足する。
(カ)被告製品3は簡易顕微鏡であるから,d6は構成要件D6を充足する。
ウ以上によれば,被告製品3は,請求項6の発明の技術的範囲に属し,被告製品3を製造,販売することは,請求項6の発明に係る特許権を侵害する。
(5)争点1-e(被告製品3は請求項2の発明に係る特許権を侵害するもの15か)についてア被告製品3の構成被告製品3は,次の構成を有する。
a1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,a2透明部を有する試料保持シートを備え,a4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせたa5簡易顕微鏡。
そして,被告製品3は,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有する。
イ請求項2の発明との対比(ア)a1は構成要件A1を充足する。
(イ)a2は構成要件A2を充足する。
(ウ)a4は構成要件A4を充足する。
(エ)a5は構成要件A5を充足する。
(オ)被告製品3は,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有し,ユーザーは,被告製品3を使用する際には,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに観察試料を直接接触させつつ,前記レンズと前記試料保持シートの透明部との間に観察試料を挟む(構成要件A3)。
したがって,被告製品3は,請求項2の発明の生産に用いる物であり,上記発明による課題の解決に不可欠なものであるといえる。
ウ被告らは,原告からの警告を無視して,被告JAPANCREATEにおいて,被告製品3を製造し,被告匠において,販売したのであるから,特許法101条2号により,請求項2に係る特許権を侵害するものとみな16される。
エなお,被告らは,テレビ番組において,被告製品3について,試料をレンズに直接付けることなど,その使用方法を説明しており,これは,譲渡等のための展示行為(特許法2条3項)に該当するから,請求項3の発明に係る特許権を直接侵害するものであるとも言い得る。
(6)争点1-f(被告製品3は請求項3の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品3の構成被告製品3は,次の構成を有する。
b1レンズが取り付けられたレンズ保持シートと,b2透明部を有する試料保持シートを備え,b4前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡。
そして,被告製品3は,観察試料を,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに直接接触させつつ,同レンズと前記試料保持シートとの間に挟むことができる構成を有する。
イ請求項3の発明との対比(1)b1は構成要件B1を充足する。
(2)b2は構成要件B2を充足する。
(3)b4は構成要件B4を充足する。
(4)ユーザーは,被告製品3を使用する際には,前記レンズ保持シートに取り付けられたレンズに観察試料を直接接触させつつ,前記レンズと前記試料保持シートの透明部との間に観察試料を挟み(構成要件B3),前記レンズ保持シートと試料保持シートとを指で挟んで(構成要件B5),すり合わせすることで観察ポイントを移動させるようにし(構成要件B6),簡易顕微鏡を用いて試料を観察する(構成要件B7)。
17したがって,被告製品3は,請求項3の発明の使用に用いる物であり,上記発明による課題の解決に不可欠なものであるといえる。
ウ被告らは,原告からの警告を無視して,被告JAPANCREATEにおいて,被告製品3を製造し,被告匠において,販売したのであるから,特許法101条5号,改正前特許法101条4号(改正前の行為について)により,請求項3の発明に係る特許権を侵害するものとみなされる。
エなお,被告らは,テレビ番組において,被告製品3について,その使用方法を説明しており,これは,譲渡等のための展示行為(特許法2条3項)に該当するから,請求項3の発明に係る特許権を直接侵害するものであるとも言い得る。
(7)被告らの主張に対する反論ア各被告製品が,いずれも正視観察法の構成を有するものであって,逆視観察法をその構成に含むものではないことは,被告らが主張するとおりである。
イしかしながら,本件特許権のうち,請求項2,4,5及び6は,正視観察と逆視観察を一つのデバイスにより行うことができる簡易顕微鏡という物の発明であり,請求項1は,請求項2,4,5及び6の各簡易顕微鏡について逆視観察法を用いた方法の発明であり,請求項3は,これらの簡易顕微鏡における観察ポイントの移動の方法の発明である。
請求項2,3,5及び6は,請求項1の従属項でもないのであって,これらの請求項の各発明の技術的範囲が逆視観察法に限定されるとする被告らの主張は誤りである。
なお,正視観察も逆視観察も,簡易顕微鏡の構造としては同一であって,単に表側から観察するか,裏側から観察するかという違いと作動距離が異なるだけである。
ウ本件明細書における【発明の名称】欄の記載が,「対物レンズと試料と18の位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」となっているからといって,請求項2,3,5及び6の各発明の技術的範囲が,逆視観察法に限定されるものではない。
本件明細書中には,「本簡易顕微鏡では簡単に本発明の逆視顕微鏡的方法と正視顕微鏡的な方法の二つで観察ができる」(段落【0006】),「正視顕微鏡的な方法と逆視顕微鏡的な方法とで高倍率で試料を観察でき,」(段落【0017】)などの記載があり,これらの記載に照らしても,請求項2,3,5及び6の各発明の技術的範囲が,逆視観察法に限定されるものではないことが明らかである。
〔被告らの主張〕本件特許権に係る発明の本質的部分は,本件明細書において,その発明の名称が「対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」となっていることや,本件明細書の記載内容から明らかであるように,レンズを使って試料を拡大して見る場合の従来の技術が,通常のルーペや顕微鏡のように,「光の進行方向から言って,試料(1),レンズ(2),目(3)の順序」であったのに対し,「レンズ(2),試料(1),目(3)の順序で試料を拡大する」ことにあり,この点を理由に特許権を付与されているということが明らかである。
請求項2,3,5及び6においては,「レンズが取り付けられたレンズ保持シート」と観察対象の試料受けとなる「透明部を有する試料保持シート」を前提としているものの,上記の本件特許権に係る発明の本質からすれば,レンズと試料を観察する人と目との間に観察対象の試料が位置し,試料を保持する「透明部を有する試料保持シート」も,レンズと目との間に位置することになる。これらのこと(レンズ,試料,目の順序)は,上記各請求項には記載されていないものの,当然の前提とされている。
(1)争点1-a(被告製品1及び被告製品2は請求項5の発明に係る特許権を19侵害するものか)についてア被告製品1及び被告製品2の構成被告製品1及び被告製品2が,c1ないしc3の構成を有することは認める。c4ないしc6については,次のとおりである。
(ア)c4について被告製品1及び被告製品2は,レンズに観察試料を直接接触させつつ,レンズと透明カバーフイルムの間に,前記観察する試料を挟んで,レンズ保持シートの裏側と試料カバーフイルムとを重ね合わせるべく,レンズ保持シート裏面の切れ目に試料カバーフイルムをはめ込むように重ね合わせる構成を有する。
(イ)c5について被告製品1及び被告製品2は,「各シートの面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向とした時,X,Y方向の移動が自由に出来る」構成を有しない。
すなわち,被告製品1及び被告製品2は,Y方向の移動は自由にできるものの,X方向の移動は自由に出来ない。
(ウ)c6について被告製品1及び被告製品2は,正視型簡易顕微鏡である。
イ請求項5の発明との対比(ア)請求項5の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(段落【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
(イ)被告製品1及び被告製品2は,上記アのとおり,正視観察法によるも20の(試料,レンズ,目という順序),すなわち,正視型簡易顕微鏡であるから,請求項5の発明の技術的範囲に属さない。
(2)争点1-b(被告製品1及び被告製品2は請求項2の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア請求項2の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(段落【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
イ被告製品1及び被告製品2は,正視観察法によるものであるから,請求項2の発明の技術的範囲に属しない。
したがって,被告製品1及び被告製品2については,間接侵害(特許法101条2号)も成立し得ない。
(3)争点1-c(被告製品1及び被告製品2は請求項3の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア請求項3の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(段落【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
イ被告製品1及び被告製品2は,正視観察法によるものであるから,請求項3の発明の技術的範囲に属しない。
したがって,被告製品1及び被告製品2については,間接侵害(特許法101条5号,改正前特許法101条4号)も成立し得ない。
21ウそもそも,被告製品1及び被告製品2は,請求項3の発明を使用していない。
(4)争点1-d(被告製品3は請求項6の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア被告製品3の構成被告製品3が,d1,d2,d4及びd5の構成を有することは認める。
d3及びd6については,次のとおりである。
(ア)d3について被告製品3は,観察試料を,レンズに直接接触させつつレンズと試料保持シートの中間に,前記観察試料をガードする試料ガードフイルムを介して挟み,レンズ保持シートの裏面と試料保持シートを,前記ガードフイルムを介して重ね合わせる構成を有する。
(イ)d6について被告製品3は,正視型簡易顕微鏡である。
イ請求項6の発明との対比(ア)請求項6の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
(イ)被告製品3は,上記アのとおり,正視観察法によるもの(試料,レンズ,目の順序),すなわち,正視型簡易顕微鏡であるから,請求項6の発明の技術的範囲に属さない。
(5)争点1-e(被告製品3は請求項2の発明に係る特許権を侵害するものか)について22ア請求項2の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(段落【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
イ被告製品3は,正視観察法によるものであるから,請求項2の発明の技術的範囲に属しない。
したがって,被告製品3については,間接侵害(特許法101条2号)も成立し得ない。
(6)争点1-f(被告製品3は請求項3の発明に係る特許権を侵害するものか)についてア請求項3の発明は,逆視観察法によるものに限定されており(正視観察法によるものを意識的に除外しており),従来の顕微鏡観察法である,光源,試料,レンズ,目の位置順による観察法,いわゆる正視観察法(レーウエン・フック型顕微鏡)を,その技術的範囲として含まない。
このことは,本件明細書の記載(段落【0002】,【0004】,【0006】,図1ないし図4等)から明らかである。
イ被告製品3は,正視観察法によるものであるから,請求項3の発明の技術的範囲に属しない。
したがって,被告製品3については,間接侵害(特許法101条5号,改正前特許法101条4号)も成立し得ない。
ウそもそも,被告製品3は,請求項3の発明を使用していない。
2争点2(請求項2,3,5及び6に係る特許は無効にされるべきものか)について〔被告らの主張〕23(1)争点2-a(請求項2,3の記載が特許法36条6項1号に違反するものか)についてア請求項2の記載は,本件明細書の「発明の詳細な説明」及び図面に基づかないものである。
すなわち,構成要件A3「前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,」,構成要件A4「前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた」,構成要件A5「簡易顕微鏡。」について,本件明細書中にはこれらの記載を支持する記載や図面が見当たらない。
イ請求項3の記載は,本件明細書の「発明の詳細な説明」及び図面に基づかない。
すなわち,構成要件B3「前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで,」,構成要件B4「前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡を用いた試料観察方法において,」,構成要件B5「前記各シートを指で挟んで,」,構成要件B6「すり合わせする事で観察ポイントを移動するようにした」,構成要件B7「簡易顕微鏡を用いた試料観察方法。」について,本件明細書中にはこれらの記載を支持する記載や図面が見当たらない。
ウすなわち,本件明細書中には,次の記載がある。
「今後,従来の拡大方法を正視顕微鏡的方法と呼び,本発明の方法を逆視顕微鏡的方法と呼ぶことにする。以下,本発明に似たものについて述べてみる。
フライング・スポット顕微鏡と呼ばれる方式の場合は接眼レンズから対物レンズに向けて小さな光のスポットを送り,対物レンズでさらにスポットを小さくして,試料を照射して,通過した光の強弱を電気信号に変換し24てCRT上にその試料の拡大像を表示する,勿論,スポットはスキャンさせる事は当然である。この場合も光の進行方向からすれば,本発明と同じくレンズの後に試料が来て,その後に観察する機器が来る。
しかし,本発明のように,拡大像をレンズ上に見ることはなく,また,倒立像と言うこともなく,単に試料を一種の投影機のフイルムとみなしたもので,根本的に本発明とは異なる。
又,光顕暗視野法における,試料とコンデンサーレンズの関係が本発明の試料とレンズの関係と同じであるが,本発明では試料にレンズを通過した光を直接に当てて観察するのに対し,光顕暗視野法に於いてはある角度で試料に当てて,それによって生じるエバネツセント光を対物レンズで拡大し観察するわけでコンデンサーレンズのほかに,本命の拡大用のレンズがあるが,本発明に於いては一個で兼用していて,根本的に異なっている。
この様に観察する試料がレンズの後にきて,しかも,拡大率がそのレンズの倍率に関係して,しかも,像が倒立する様な像の拡大法は今までなかった。」(本件明細書2頁段落【0002】28行目ないし44行目)しかしながら,これらの記載が請求項2及び請求項3の要件にどのように関係しているのか全く不明であり,特許法36条6項1号に違反する。
(2)争点2-b(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条6項2号に違反するものか)についてア請求項2,3,5及び6の記載は,発明としての明確性を欠いており,技術的に理解することができないものである(乙10)。
イ本件明細書には,次の記載がある。
(ア)【発明の名称】「対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」(【発明の名称】)(イ)「従来,レンズを使って,試料を拡大して見る場合は図1の(b)に示す様に,光の進行方向から言って,試料(1),レンズ(2),目25(3)の順序であり,ルーペしかり,顕微鏡しかりである。本発明は図1の(a)の様にレンズ(2)試料(1)目(3)の順序で試料を拡大するのである。今後,従来の拡大方法を正視顕微鏡的方法と呼び,本発明の方法を逆視顕微鏡的方法と呼ぶことにする。」「しかし,本発明のように,拡大像をレンズ上に見ることはなく,また,倒立像と言うこともなく,単に試料を一種の投影機のフイルムとみなしたもので,根本的に本発明とは異なる。」「又,光顕暗視野法における,試料とコンデンサーレンズの関係が本発明の試料とレンズの関係と同じであるが,本発明では試料にレンズを通過した光を直接に当てて観察するのに対し,光顕暗視野法に於いてはある角度で試料に当てて,それによって生じるエバネツセント光を対物レンズで拡大し観察するわけでコンデンサーレンズのほかに,本命の拡大用のレンズがあるが,本発明に於いては一個で兼用していて,根本的に異なっている。
この様に観察する試料がレンズの後にきて,しかも,拡大率がそのレンズの倍率に関係して,しかも,像が倒立する様な像の拡大法は今までなかった。」(段落【0002】)(ウ)「レーウエン・フック型の顕微鏡は図2のようなもので,今から約300年前にオランダ人のレーウエン・フックによって制作され,しんちゅう板(13,14)に小さな穴を開け微小なレンズ(12)を挟みこんで,さらに,試料取り付け針(11)を微調整できるようにして,手に持って目をレンズ(12)に近ずけて観察するものであり,断面の略図が図3である。そして本発明の概念を説明するために,レンズと試料と目の関係を抽象化したのが図1であり,レーウエン・フック型でも図1(b)の様に,光の進行方向の順序からは試料(1)レンズ(2)そして観察者の目(3)の関係で試料を拡大して見る事になる。一方,一26度述べたが本発明の方法では図1の(a)に示すように,レンズ(2),試料(1)観察者の目(3)の順序になって試料の拡大像を得るようになる。」(段落【0004】)(エ)「この,拡大像がどうして得られるのか,理論的な説明は現在は出来ないが,実際に製作してみると,上下・左右が反転した拡大像をレンズ上に見ることが出来る。しかも,同じレンズなのに(a)の方法即ち本発明の方法では(b)の方法より約4倍大きく見える,作動距離も大きくとれるし,透明体の凹凸がリアルな感じでみえる。しかし,制約条件もある,それは試料を透かして見る関係上,試料全体が不透明であってはだめな事,少なくても,試料の一部分からレンズを見る事が出来なければならない。」(段落【0005】)(オ)「このレンズ側からの観測は従来の方法であるが,透明フイルム(5)側に目を近ずけて覗くとフイルムにつけてある試料が拡大して見える,図3の様なレーウエン・フック型の試料取り付け針(11)がないために目をレンズ(2)に近ずけられるから,このことが可能になつた訳である。又,複式顕微鏡の様なものでは試料側からは覗くこともできないが,本簡易顕微鏡では簡単に本発明の逆視顕微鏡的方法と正視顕微鏡的な方法の二つで観察ができる。尚,逆視及び正視のどちらの場合でも,試料を透明フイルム(5)の左でも右でも,即ち,中でも外でも,どちらにでも着けて良い。」(段落【0006】)(カ)「この形式の場合は正視顕微鏡的な方法か逆視顕微鏡的な方法かによつて,レンズ(2)と透明フイルム(5)とのギャップが違うので,あらかじめ作る前にどちらにするか決めておく必要がある。」(段落【0007】)(キ)「尚,逆視顕微鏡として見る場合でも絞りがあるとよく見える。」(段落【0012】)27(ク)「此の図13のものは正視顕微鏡的にでも逆視顕微鏡的にでも見ることが出来るが,製作に際しては倍率が異なるのであらかじめ,どちらにするかきめておかねばならない。尚,量産に際しては穴を開ける代わりに縮小した絵や写真の部分も同時に透明なシートに焼き付けても良い。」(段落【0014】)(ケ)「再生においては本発明の逆視顕微鏡的方法を使えばコンパクトに納まる。以下に再生について図14を参照して説明する。」「又,印として蛍光物質を使うと,図14の(c)に示す様な正視顕微鏡的な方法,即ち,レンズ(2)の前に光デスク(94)が来る様にしても20ナノメートルの印をはつきりと識別できる。」(段落【0016】)(コ)「又,簡易顕微鏡は,微小な球形レンズを使用するだけで,正視顕微鏡的な方法と逆視顕微鏡的な方法とで高倍率で試料を観察でき,とても安い価格で製造出来て,小型で持運びが楽で子供などの理科の学習に役立つと思われる。」(段落【0017】)上記(ア)ないし(エ)の記載と,(オ)ないし(コ)の記載とは,矛盾齟齬しており,技術的に統一して理解することができない。
また,【図1】ないし【図3】の記載とも,矛盾齟齬しており,技術的に統一して理解することができない。
ウ原告は,試料の位置は,【図11】(b)「4穴」の前でも後でも(言い換えれば,右でも左でも)よいとするものの,発明の特定性が欠如する。
エ段落【0006】には,「尚,逆視及び正視のどちらの場合でも,試料を透明フイルム(5)の左でも右でも,即ち,中でも外でも,どちらにでも着けて良い。」との記載があるものの,上記記載は,発明の特徴を不明確化しており,技術的に理解することが不可能である。
オ段落【0017】には,「本発明は逆視顕微鏡的な方法によって微小な28物を大きく拡大出来ることを見付けた事に,その発端があるが,これの,理論的な事が不明であるが,像の拡大率が大きい事,倒立像をていすること」との記載があるものの,上記記載は,発明の理解を不明確にしている。
カ以上のとおり,請求項2,3,5及び6項の記載は,特許法36条6項2号に違反するものである。
(3)争点2-c(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条4項1号に違反するものか)についてア上記(2)の記載で述べたとおり,請求項2,3,5及び6の記載は,当業者が理解することができる程度に明確かつ充分なものとなっていない。
上記各請求項に係る発明の特徴が,本件明細書の記載及び図面からは不明確であり,当業者において,実施可能とする説明がされているとはいえないのである。
イしたがって,請求項2,3,5及び6の記載は,特許法36条4項1号に違反するものである。
(4)争点2-d(請求項2,3,5及び6の発明は進歩性を欠くものか)についてア請求項2,3,5及び6の発明は,次のとおり,公知文献(乙7,8,25,26)及び周知技術であるレーウエン・フック型簡易単式顕微鏡の技術(本件明細書【従来の技術】)により,容易に想到することができるものであり,進歩性を欠く。
イ公知文献の記載(ア)平成1-287524公開特許公報(乙7。以下「乙7公報」という。)の記載乙7公報において,以下の事項が開示されている。
aレンズが透明球3から構成され,b観察する試料(観察対象物5)を保持する透明シート4,29cレンズ保持シート1と試料保持シート4を重ね合わせ,d試料を,光,試料,レンズ,眼の順序で観察する,正視型観察方法による簡易顕微鏡(イ)昭和52-45942公開特許公報(乙8。以下「乙8公報」という。)乙8公報において,以下の事項が開示されている。
a正視型簡易顕微鏡において,b顕微鏡の構造材料が,プラスチック又は紙製で出来ている,c試料(標本)を,光,試料,レンズ,眼の順序で観察する,正視型簡易(手持形)顕微鏡。
d液体状試料の場合,表面張力効果と開口のテーパの構造により,レンズに正確に位置する。
e焦点合わせの微調整は,指でもって底部材(光側)と蓋部材(眼側)とを変形することで可能とする。
f試料は,標本スライドにより,観察点の位置決めが出来る。
(ウ)第2757301号特許公報(乙25。以下「乙25公報」という。)乙25公報において,以下の事項が開示されている。
a試料である「唾液」の乾燥組織を透明平板6に塗着させ,見本版5の見本との照合をレンズ部30を介して的確に行う。
b試料を塗着させて,レンズ部との適正観察間隔(ピント)を合わせる。
(エ)第2693363号特許公報(乙26。以下「乙26公報」という。)乙26公報において,以下の事項が開示されている。
試料を,光,対物(試料)レンズ,眼の位置にするとともに,レンズ30に発光素子による光を照射して,薄型,携帯性に優れたルーペを提供する。
ウ請求項2,3,5及び6の発明と乙7公報との一致点請求項2,3,5及び6の発明と乙7公報とは,以下の点で一致する。
(ア)レンズ保持シート(イ)試料保持シート(ウ)レンズ保持シートと試料保持シートを重ね合わせる(エ)簡易顕微鏡エ請求項2,3,5及び6の発明と乙7公報との相違点請求項2,請求項3,請求項5及び請求項6に係る発明と乙7公報とは,以下の点で相違する。
(ア)試料をレンズに直接接触させつつ観察する点(相違点?@)(イ)各シートを指で挟んで観察する点(相違点?A)オ相違点について(ア)相違点?@について乙8公報には,正視型簡易顕微鏡における液体状試料の観察方法の場合,液体の表面張力によりレンズと直接接触して行うことが開示されている(309頁右上欄3行目ないし7行目,312頁右上欄1行目ないし3行目)。
(イ)相違点?Aについて乙8公報には,材料がプラスチック製であること,焦点合わせ(ピント),標本スライドによる試料観察位置決めなどが指で操作しながら行われることが開示されている(309頁右下欄11行目ないし14行目等)。
(ウ)また,乙25公報には,試料を観察シートに塗着して行う方法が,乙26公報には,薄型,携帯型の正視型簡易観察ルーペが,それぞれ開示31されている。
カ以上によれば,請求項2,3,5及び6の発明は,乙7公報に乙8公報,乙25公報,乙26公報及び周知技術を組み合わせることにより,当業者において容易に想到することができるものである。
(5)争点2-e(本件特許が平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項に違反するものか)について平成18年2月16日付け手続補正書による「特許請求の範囲」の補正の内容(乙6の7)は,特許出願時の明細書(乙1の2)又は図面(乙1の3)に記載した事項の範囲内のものではなく,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項に違反する。
乙9公報には,請求項2以下の「レンズに試料を直接接触させつつ」との点はどこにも記載されていない。
むしろ,当初明細書第4図(c)(段落【0006】),第5図(段落【0007】,「ギャップ」の存在),第6図(c)(段落【0008】,「セパレータ」の存在),第10図(b)(段落【0011】)の各記載によれば,レンズと試料が直接接触することを避けつつ,観察する方法が開示されている。
〔原告の主張〕(1)争点2-a(請求項2及び3の記載が特許法36条6項1号に違反するものか)について被告らの主張は否認ないし争う。
(2)争点2-b(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条6項2号に違反するものか)について被告らの主張は否認ないし争う。
(3)争点2-c(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条4項1号に違反するものか)について32被告らの主張は否認ないし争う。
(4)争点2-d(請求項2,3,5及び6に係る発明は進歩性を欠くものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ請求項2,3,5及び6の発明と乙7公報との相違点は,?@試料をレンズに直接接触させつつ観察する点(相違点?@),?A各シートを指で挟んで移動することができ,移動した位置で指を離してもその位置が保持できる点(相違点?A)である。
そして,乙8公報には,試料をレンズに直接接触して観察する方法(相違点?@)は開示されていないし,焦点を合わせながら,同時にXY方向の位置決めをすること,観察ポイントの移動が大きくできることや,移動した位置でその位置を保持することができること(相違点?A)も開示されていない。
ウ請求項2,3の発明には,次のような効果があり,進歩性を有する(なお,以下の事柄は,本件明細書には記載されておらず,また,本件特許権の出願経過において一切触れられていない。)。
(ア)請求項2の発明a単式顕微鏡において,これまで,液浸ということはなかった。
したがって,NA値を高くすることができ,解像度が増すという効果がある。
bレンズと試料保持シートと液体状の試料とで生じる表面張力により,試料を保持し,乾燥や,他からの異物の混入を防ぐことができ,細菌の培養を高倍率のレンズ上で行うことができるので,観察に便利である。
c観察試料を直接軸方向に移動させることができる。
(イ)請求項3の発明33a観察する細菌等の微小な試料を,高倍率で観察しながら,その物を直接移動,回転,破壊,結合,分離,選別することができる。すなわち,いわゆるレンズピンセット効果と,マニュピュレーター的操作を簡単に行うことができる。
b特に,レンズピンセット効果は,他の顕微鏡にはない効果であり,発明の最大の特徴であるといえる。
(5)争点2-e(本件特許が平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項に違反するものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ本件特許権に係る公開特許公報(乙9)の段落【0006】,【0007】,【0010】,【0012】等に,平成18年2月16日付け手続補正書による「特許請求の範囲」の補正の内容が示されている。
3争点3(各被告製品の製造,販売は本件意匠権侵害となるか)について〔原告の主張〕(1)争点3-a(本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠の構成態様)についてア本件カード意匠の構成態様本件カード意匠の構成態様は,次のとおりである。
E1見本表面図から見て,全体として長方形状の薄板状カード型の物で,E2長辺部の上下より該カード型中央に向け,ゆるやかな円弧状のプレパラート支持用切れ目を設け,E3カード型の各四方角端は4分の1円弧状に隅取りして,E4カード左右の短辺部は両側とも,各中央部からカード中心方向に,カード中心から見て対称にして,略4分の1の円弧状切欠き部を設け,E5カード型中心に小穴1個と,シート四つ角の内の一角端寄りに該小穴と同程度の小穴を1個設けた,34E6簡易顕微鏡用の薄板状カードの形状。
イ本件レンズチップ意匠の構成態様本件レンズチップ意匠の構成態様は,次のとおりである。
F1見本の平面図で見て,小さな円形状のレンズチップであり,F2該レンズチップの中央に,山型の凸部を形成させ,F3該頂上部に微小の丸型のレンズを配し,F4該凸部に対応する部分の裏面に凹部が形成された,F5顕微鏡用のレンズチップの形状。
(2)争点3-b(被告製品1及び被告製品2と本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠との類否)についてア被告製品1及び被告製品2の意匠の構成態様被告製品1及び被告製品2の構成態様は,いずれも次のとおりである。
(ア)カード部e1見本表面図から見て,全体として長方形状の薄板状カード型の物で,e2長辺部の上下より該カード型中央に向け,ゆるやかな円弧状のプレパラート支持用切れ目が有り,e3カード型の各四方角端は4分の1円弧状に隅取りされていて,e4カード左右の短辺部は両側とも,各中央部からカード中心方向に,カード中心から見て対称にして,略4分の1の円弧状に切欠き部が有り,e5カード型中心に小穴が1個ある,e6顕微鏡用の薄板状のカード。
(イ)レンズ部f1見本平面図から見て,小さな円形状のレンズチップであり,f2該レンズチップの中央に,山型の凸部が形成されていて,35f3該頂上部に微小の丸型のレンズがあり,f4該凸部に対応する部分の裏面は凹部になっている,f5顕微鏡用のレンズチップ。
イ対比(ア)本件カード意匠との対比a被告製品1及び被告製品2と本件カード意匠とは,?@全体として長方形状の薄板状カード型の物で(e1,E1),?A長辺部の上下より該カード型中央に向け,ゆるやかな円弧状のプレパラート支持用切れ目を設け(e2,E2),?Bカード型の各四方角端は4分の1円弧状に隅取りして(e3,E3),?Cカード左右の短辺部は両側とも,各中央部からカード中心方向に,カード中心から見て対称にして,略4分の1の円弧状切欠き部を設け(e4,E4),?Dカード型中心に小穴が1個ある,?E顕微鏡用の薄板状カードの形状(e6,E6)の点で一致し,本件カード意匠には,シート四つ角の内の一角端寄りにカード型中心部の小穴と同程度の小穴が1個設けられているのに対し,被告製品1及び被告製品2にはこのような小穴が設けられていない点で相違する。
bシート四つ角の内の一角端寄りにカード型中心部の小穴と同程度の小穴があること(上記相違点)は,本件カード意匠の要部とはいえない。
本件カード意匠の要部は,カードの長辺部の両側に,該カード型中央に向け,ゆるやかな円弧状のプレパラート支持用切れ目を設けている点(E2)及びカードの短辺部の両側に,各中央部からカード中心方向に,カード中心から見て対称にして,略4分の1の円弧状切欠き部を設けている点(E4)にある。そして,被告製品1及び被告製品2のカード部は,いずれも,上記要部において,本件カード意匠に一36致する。
c以上によれば,被告製品1及び被告製品2のカード部は本件カード意匠と同一又は類似の美感を有し,被告製品1及び被告製品2の部品として使用して,本件カード意匠権侵害している。
(イ)本件レンズチップ意匠との対比a被告製品1及び被告製品2と本件レンズチップ意匠とは,?@小さな円形状のレンズチップであり(f1,F1),?A該レンズチップの中央に,山型の凸部を形成させ(f2,F2),?B該頂上部に微少の丸型のレンズを配し(f3,F3),?C該凸部に対応する部分の裏面に凹部が形成された(f4,F4),?D顕微鏡用のレンズチップの形状(f5,F5)の点で一致する。
本件レンズチップ意匠の要部は,円形状の外形(F1),レンズチップの中心部の山型の凸部(F2)及びレンズチップ裏面の凹部(F3)である。そして,被告製品1及び被告製品2のレンズ部は,いずれも,上記要部において,本件レンズチップ意匠に一致する。
b以上によれば,被告製品1及び被告製品2のレンズ部は本件レンズチップ意匠と同一又は類似の美感を有し,被告製品1及び被告製品2の部品として使用して,本件レンズチップ意匠権侵害している。
(3)争点3-c(被告製品3と本件レンズチップ意匠との類否)についてア被告製品3のレンズ部の構成態様被告製品3のレンズ部の構成態様は,次のとおりである。
f1小さな円形状のレンズチップであり,f2該レンズチップの中央に,山型の凸部が形成されていて,f3該頂上部に微小の丸型のレンズがあり,f4該凸部に対応する部分の裏面は凹部になっている,f5顕微鏡用のレンズチップ。
37イ被告製品3と本件レンズチップ意匠との対比(ア)被告製品3と本件レンズチップ意匠とは,?@小さな円形状のレンズチップであり(f1,F1),?A該レンズチップの中央に,山型の凸部を形成させ(f2,F2),?B該頂上部に微少の丸型のレンズを配し(f3,F3),?C該凸部に対応する部分の裏面に凹部が形成された(f4,F4),?D顕微鏡用のレンズチップの形状(f5,F5)の点で一致する。
本件レンズチップ意匠の要部は,円形状の外形(F1),レンズチップの中心部の山型の凸部(F2)及びレンズチップ裏面の凹部(F3)である。そして,被告製品3のレンズ部は,いずれも,上記要部において,本件レンズチップ意匠に一致する。
(イ)以上によれば,被告製品3のレンズ部は本件レンズチップ意匠と同一又は類似の美感を有し,被告製品3の部品として使用して,本件レンズチップ意匠権侵害している。
(4)被告らの主張に対する反論本件カード意匠は,一個のパーツとして取引をすることができる切欠き部を有する顕微鏡用のカードに関する意匠である。
「ラベル」という別のパーツとの組物の意匠ではない。
したがって,本件カード意匠と被告製品1及び被告製品2とは,ラベルを捨象して対比すべきである。
〔被告らの主張〕(1)争点3-a(本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠の構成態様)についてア本件カード意匠の構成態様本件カード意匠の構成態様は,上記(1)ア記載のとおりである。
イ本件レンズチップ意匠の構成態様38本件レンズチップ意匠の構成態様は,次のとおりである。
F??見本の平面図で見て,小さな円形状のレンズチップであり,F??該レンズチップの中央に,レンズチップの直径の3分の1幅の,略3分の1の円形状で,山型の凸部を形成させ,F??該頂上部に微小の丸型のレンズを配し,F??該凸部に対応する部分の裏面に凹部が形成された,F??顕微鏡用のレンズチップの形状。
(2)争点3-b(被告製品1及び被告製品2と本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠との類否)についてア被告製品1及び被告製品2の意匠の構成態様被告製品1及び被告製品2の構成態様は,いずれも次のとおりである。
(ア)カード部e??平面図から見て,全体として長方形状の薄板状カード型の物で,e??長辺部の上下よりに,該カード型中央に向け,ゆるやかな切欠き円弧状のプレパラート支持用切れ目を設け,e??カード型の各四方角端は4分の1円弧状に隅取りされていて,e??カード型の短辺部は両側とも,各中央部からカード中心方向に,カード中心から見て対称にして,略4分の1の円弧状に切欠き形状となり,e??カード型中心に,稍小穴を,該小穴を中心として順次,黒太円,黒細円,周辺近くにさらに黒細円を,各同心円状模様より成る円形状レンズチップ支持ラベルを設けた,e??薄板状カード状顕微鏡。
(イ)レンズ部f??見本図の正面及び平面から見て,円形状のレンズチップ部であり,f??該レンズチップの中央に,レンズ支持用の,直径がレンズチップ39の3分の1幅の,二等辺三角形状(富士山型)凸部を設け,f??該凸部の中心頂部に極小の丸型のレンズを配し,f??裏面から見て,上記レンズ支持用凸部が逆に二等辺三角形凹部に形成される,f??顕微鏡用のレンズチップ部。
イ対比(ア)本件カード意匠との対比a「顕微鏡」が意匠法上の「物品」であるとすると,本件カード意匠は,実質上顕微鏡の部品に相当する部材である。
この部材自体は,独立して,取引の客体とはならない。
b被告製品1及び被告製品2には,シート四つ角の内の一角端に小穴を設けていないのに対し,本件カード意匠においては,シート四つ角の内の一角端寄りにカード型中心部の小穴と同程度の小穴を1個設けている。
また,被告製品1及び被告製品2には,カード型中心に設けられた小穴を中心として,順次,黒太円,黒細円,周辺近くにさらに黒細円の,各同心円状模様より成る円形状レンズチップ支持ラベルが存するのに対し,本件カード意匠においては,カード型中心に設けられた小穴の周囲にこのような模様は存在しない。
本件カード意匠は,極めてありふれた態様であって,被告製品1及び被告製品2のカード部と本件カード意匠との間に,上記相違点があることにより,本件カード意匠と被告製品1及び被告製品2のカード部とは,異なる美感を与える。
(イ)本件レンズチップ意匠との対比a「顕微鏡」が意匠法上の「物品」であるとすると,本件レンズチップ意匠は,実質上顕微鏡の部品に相当する部材である。
40この部材自体は,独立して,取引の客体とはならない。
b被告製品1及び被告製品2の全体としての構成態様は,上記(2)(ア)及び(イ)のとおりであり,被告製品1及び被告製品2全体の外観,外部形状が,本件レンズチップ意匠の構成態様と異なることは明らかである。
c仮に,被告製品1及び被告製品2のレンズ部のみを対比するとしても,本件レンズチップ意匠が,レンズ支持用凹・凸部が略3分の1円形状(盛り上がりの小さいUFO型)のもので,凹・凸部が緩やかな丸みを帯び,柔らかな印象を与える態様であるのに対し,被告製品1及び被告製品2のレンズ部は,レンズ支持用凹・凸部が大きく盛り上がった二等辺三角形状(富士山型)のものであり,凹・凸部が角張った,すり鉢状の印象を与える。
本件レンズチップ意匠は,極めてありふれた態様であって,被告製品1及び被告製品2のレンズ部と本件レンズチップ意匠との間に,上記相違点があることにより,本件レンズチップ意匠と被告製品1及び被告製品2のレンズ部とは,異なる美感を与える。
(3)争点3-c(被告製品3と本件レンズチップ意匠との類否)についてア被告製品3の全体としての構成態様は,次のとおりである。
g??平面から見て,レンズ保持用表面カード,透明試料ガードフイルム,透明試料保持用カバーフイルム,裏面カードより成る各部材,同各部材をカシメ固定する円型カシメボタンを,該表面カードの先端各部を丸く構成した略正三角形状部の一方端近部に設けてあり,g??該表面カードの三角形状部,これに続いて,該三角形の一辺の幅を有する略正四角形状をもってカード本体部を形成し,g??該表面カードの三角形状部と四角形状部の境部にあたるところの中央部付近に,レンズ保持用の小さな二等辺三角形状(富士山型)凹部41を2箇所形成し(レンズチップ部),g??表面カードのカシメ側と反対側四角形の一辺縁の中央部を該カード中心に向かい4分の1円弧状に切り欠いた形状で,g??レンズ保持カード裏面から見ても,180度回転させると,これと(レンズチップ部の凹部と凸部の反転を除き)該形状と同じ形状となる,g??簡易顕微鏡。
イ被告製品3の全体(簡易顕微鏡)の外観,外部形状が,本件レンズチップ意匠の構成態様と異なることは明らかである。
ウ仮に,被告製品3のレンズ部のみを対比するとしても,本件レンズチップ意匠が,レンズ支持用凹・凸部が略3分の1円形状(盛り上がりの小さいUFO型)のもので,凹・凸部が緩やかな丸みを帯び,柔らかな印象を与える態様であるのに対し,被告製品3のレンズ部は,レンズ支持用凹・凸部が大きく盛り上がった二等辺三角形状(富士山型)のものであり,凹・凸部が角張った,すり鉢状の印象を与える。
本件レンズチップ意匠は,極めてありふれた態様であって,被告製品3のレンズ部と本件レンズチップ意匠との間に,上記相違点があることにより,本件レンズチップ意匠と被告製品3のレンズ部とは,異なる美感を与える。
4争点4(本件意匠は無効にされるべきものか)について〔被告らの主張〕(1)争点4-a(本件カード意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか)についてアBは,顧客やユーザーの意見を吸収し,これらを参考にしながら,本件カード意匠を創作し,原告に対して図面化して提案した(平成12年9月ころ,Bが切れ目と切欠部を入れることを提案した。)。原告は,Bの提42案を元に,具体的に試作品を製作したものである。(乙15の1ないし5,乙18の1・2,乙19の1・2,21)よって,本件カード意匠は,Bと原告との共同創作によるものである。
イ本件カード意匠は,Bと原告との共同創作によるものであるにもかかわらず,原告は,Bに無断で,本件カード意匠に係る意匠出願を単独で行っており(意匠法15条1項において準用する特許法38条),本件カード意匠は無効である(意匠法48条1項1号)。
(2)争点4-b(本件カード意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか)について本件カード意匠は,顕微鏡ではなく,いわば「部品」の意匠である。
部品であるカード型そのものが,一般の取引の対象となるものではなく,意匠法3条1項柱書の「物品」要件を欠く(意匠法48条1項1号)。
(3)争点4-c(本件カード意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)について本件カード意匠は,次の公知文献等の記載によれば,新規性を欠くか,又は,創作非容易性を欠くものである。
ア平成12年1月14日公開に係る特開2000-10026公開特許公報(乙9。以下「乙9公報」という。)の【図8】,【図9】,【図11】,【図13】イ平成12年10月3日発行に係る雑誌記事(甲8)から,意匠法3条1項2号に該当することが明らかである。
ウ甲第10号証の1・2から,意匠法3条1項1号に該当することが明らかである。
エ意匠登録第75464号公報(乙11の1。以下「乙11の1公報」という。),意匠登録第75465号公報(乙11の2。以下「乙11の2公報」という。),意匠登録第75466号公報(乙11の3。以下「乙4311の3公報」という。),意匠登録第75467号公報(乙11の4。
以下「乙11の4公報」という。),意匠登録第88294号公報(乙11の5。以下「乙11の5公報」という。),第172228号意匠公報(乙11の6。以下「乙11の6公報」という。),第226433号意匠公報(乙11の7。以下「乙11の7公報」という。),第404703号意匠公報(乙11の8。以下「乙11の8公報」という。)第610934号意匠公報(乙11の9。以下「乙11の9公報」という。),第708680号意匠公報(乙11の10。以下「乙11の10公報」という。)には,カード型の短辺部が切欠円弧状の形状が開示されている。
オ第269351号意匠公報(乙12の1。以下「乙12の1公報」という。),第1050123号意匠公報(乙12の2。以下「乙12の2公報」という。),第2927758号特許公報(乙12の3。以下「乙12の3公報」という。),実公平6-10827号公報(乙12の4。以下「乙12の4公報」という。)には,取出部の切欠円弧状の形状が開示されている。
カ第827037号意匠公報(乙13。以下「乙13公報」という。)には,円弧状切込部の形状が開示されている。
また,円弧状切欠部は必要に応じて設けられる,古くから存在するありふれた形状である。
キ第934734号意匠公報(乙14。以下「乙14公報」という。)には,三角形と四角形の結合形状が開示されている。
ク長方形,カード型,周縁部の切欠部,取出部の切欠円弧状部,中心の穴,四隅の円弧状取り,円弧状切込部,いずれも,機能上,古くから存在するありふれた形状であり,その組合せにも創作性は認められない。
(4)争点4-d(本件カード意匠は,意匠法5条3号に該当するものか)について44長方形,カード型,周縁部の切欠部,取出部の切欠円弧状部,中心の穴,四隅の円弧状取り,円弧状切込部,いずれも,機能上,古くから存在するありふれた形状であり,その組合せにも創作性は認められない。
(5)争点4-e(本件レンズチップ意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか)についてアBは,顧客やユーザーの意見(レンズの使い勝手が悪い,対象物が見えにくいなどの苦情)を吸収し,これらを参考にしながら,本件レンズチップ意匠を創作し,原告に対して図面化して提案した(平成12年8月ころ,Bは,原告に対して電話で説明した上で,レンズチップ図面をファクシミリで送信した。)。(乙15の1ないし5,乙18の1・2,乙19の1・2,21)よって,本件レンズチップ意匠は,Bと原告との共同創作によるものである。
イ本件レンズチップ意匠は,Bと原告との共同創作によるものであるにもかかわらず,原告は,Bに無断で,本件レンズチップ意匠に係る意匠出願を単独で行っており(意匠法15条1項において準用する特許法38条),本件レンズチップ意匠は無効である(意匠法48条1項1号)。
(6)争点4-f(本件レンズチップ意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか)について本件レンズチップ意匠は,顕微鏡ではなく,いわば「部品」の意匠である。
部品であるレンズチップそのものが,一般の取引の対象となるものではなく,意匠法3条1項柱書の「物品」要件を欠く(意匠法48条1項1号)。
(7)争点4-g(本件レンズチップ意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)について本件カード意匠は,次の公知文献等の記載によれば,新規性を欠くか,又は,創作非容易性を欠くものである。
45ア乙9公報の【図10】(b)イ平成12年10月3日発行に係る雑誌記事(甲8)から,意匠法3条1項2号に該当することが明らかである。
ウ甲第10号証の1・2から,意匠法3条1項1号に該当することが明らかである。
エ甲第16号証オ乙第15の1ないし5,乙第16の1ないし12,乙第17の1ないし3,乙第18の1・2,乙第19の1・2,乙第20の1・2(8)争点4-h(本件カード意匠は,意匠法5条3号に該当するものか)について本件レンズチップの計上は,真円形の土台とそれに続く3分の1の球状のふくらみないしへこみ(凸,反対側から見て凹)とレンズのみから成り,機能上不可欠の形状であって,意匠法上の創作性は認められない。
〔原告の主張〕(1)争点4-a(本件カード意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ本件カード意匠は原告が単独で創作したものであって,Bと共同で創作した事実はない。
ウ原告は,平成12年ころから平成19年ころまでの間に,Bとは合計4回しか面会しておらず,これらのうち3回はホテルで話す程度のものであり,残りの1回も郡山市内で印刷屋を訪ねるのに費やされた。
原告とBとの間には,上記の程度の接触しかなく,また,Bには光学に関する技術的知識もなかったのであるから,技術的な相談や共同開発などできるわけがない。
また,そもそも,原告とBとの間において,原告が製造,被告が販売を46分担することが前提となっていた。被告が,製品を販売するために,ラベルなどのデザインを変更することはあっても,これゆえに,被告が本件カード意匠を創作したことにはならない。
(2)争点4-b(本件カード意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ本件カード意匠は,顕微鏡用の部品の意匠であるものの,それ自体取引の対象になるものであって,意匠法の物品性に欠けるところはない。
(3)争点4-c(本件カード意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ乙9公報の【図8】には,試料保持用の直線状の切れ目が設けられている。本件カード意匠の切れ目は円弧状であって,直線上ではない。
ウ甲第8号証及び甲第10号証の1・2は,本件カード意匠に関するものではない。
エ甲第16号証の平成12年11月の欄には,「トムズカードDX改良(XY方向に試料を動かせるように提案。」と記載されている。しかしながら,本件カード意匠は,平成12年10月17日に既に出願済みである。
仮に,上記記載を前提とすれば,上記出願時点においては,本件カード意匠が公知ではなかったということになる。
オ意匠全体のうちの特定の一部分がそれぞれ公知であったとしても,種々の部分をまとめ上げた全体が意匠なのであって,各部分が公知であるからといって,直ちに当該意匠が無効となるわけではない。
カ乙第12号証の1ないし4,乙第13号証及び乙第14号証は,いずれも,本件カード意匠とは全く異なる。
(4)争点4-d(本件カード意匠は,意匠法5条3号に該当するものか)につ47いて被告らの主張は否認ないし争う。
(5)争点4-e(本件レンズチップ意匠に係る出願が,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ本件レンズチップ意匠は原告が単独で創作したものであって,Bと共同で創作した事実はない。
ウ原告は,平成12年ころから平成19年ころまでの間に,Bとは合計4回しか面会しておらず,これらのうち3回はホテルで話す程度のものであり,残りの1回も郡山市内で印刷屋を訪ねるのに費やされた。
原告とBとの間には,上記の程度の接触しかなく,また,Bには光学に関する技術的知識もなかったのであるから,技術的な相談や共同開発などできるわけがない。
また,そもそも,原告とBとの間において,原告が製造,被告が販売を分担することが前提となっていた。被告が,製品を販売するために,ラベルなどのデザインを変更することはあっても,これゆえに,被告が本件レンズチップ匠を創作したことにはならない。
(6)争点4-f(本件レンズチップ意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ本件カード意匠は,顕微鏡用の部品の意匠であるものの,それ自体取引の対象になるものであって,意匠法の物品性に欠けるところはない。
(7)争点4-g(本件レンズチップ意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)についてア被告らの主張は否認ないし争う。
イ上記(3)で述べたとおり,被告らの主張は失当である。
48ウ乙9公報の【図10】(b)は,平坦と同じ程度の凹凸に相当するものであり,本件レンズチップ意匠とは全く異なる。
エ甲第16号証には,レンズチップに関することは記載されていない(平成12年8月の欄にレンズ形状の変形が記載されているものの,これはレンズの変形であって,レンズチップの変形に関するものではない。)。
オ乙第15の1ないし5,乙第16の1ないし12,乙第17の1ないし3,乙第18の1・2,乙第19の1・2,乙第20の1・2は,角凸型レンズチップに関するものであり,本件レンズチップ意匠(丸凸型)とは異なる。
(8)争点4-h(本件レンズチップ意匠は,意匠法5条3号に該当するものか)について被告らの主張は否認ないし争う。
5争点5(損害額)について〔原告の主張〕(1)原告は,被告らに対し,次の請求を重畳的に主張する。
ア特許権侵害に基づく請求として,平成17年9月1日から平成18年5月25日までは,特許法65条に基づき,補償金を請求し,同年5月26日から平成19年11月20日までは,同法102条1項又は3項に基づき,損害賠償(認定額の高い方)を請求する。
意匠権侵害に基づく請求として,平成17年9月1日から平成19年11月20日まで,意匠法39条1項又は3項に基づき,損害賠償(認定額の高い方)を請求する。
(2)特許権侵害に基づく請求ア補償金請求本件特許出願は,平成12年1月14日に出願公開された。被告らは,出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って,本件特許権の49設定登録前に,業として,本件特許権に係る発明を実施した。
(ア)販売個数(平成17年9月1日から平成18年7月末日までの期間の販売個数を記載している。)被告製品11940個被告製品21940個被告製品39143個(イ)販売単価及び実施料相当額被告製品1800円×3%(実施料率)=24円被告製品2800円×3%(実施料率)=24円被告製品32000円×3%(実施料率)=60円(ウ)補償金額被告製品124円×1940個=4万6560円被告製品224円×1940個=4万6560円被告製品360円×9143個=54万8580円合計64万1700円イ損害賠償請求(ア)102条1項a販売個数被告製品13267個被告製品23061個被告製品32629個b原告製品を販売した場合の1個当たりの利益額被告製品1300円被告製品2300円被告製品31500円c原告の損害額50被告製品1300円×3267個=98万0100円被告製品2300円×3061個=91万8300円被告製品31500円×2629個=394万3500円合計584万1900円(イ)102条3項原告は,過去において,Bに対し,本件特許権の実施を許諾したことがある。この実施許諾料は,初年度は純利益額の50%相当額,その後は販売価格の3%相当額であった。
また,原告は,Bとの交渉が決裂する前において,相手先ブランド形式で,被告製品3を一個当たり200円で,被告製品1又は被告製品2を一個当たり100円で受注し,販売していた。その後,原告が,Bに対し,被告製品3の単価を300円に値上げするように求めたものの,この交渉が決裂したという経緯がある。
(3)意匠権に基づく請求ア譲渡個数被告製品11万1266個(卸し,小売,サンプル個数の合計)被告製品21万0060個(卸し,小売,サンプル個数の合計)被告製品39499個(小売,サンプル個数の合計)イ被告らが,被告製品1及び被告製品2を第三者に発注したことによる損害額原告は,被告製品1及び被告製品2を,被告らに対し,1個当たり100円で販売していた。このうち,限界利益は1個当たり70円である。
したがって,原告は,合計149万2820円(70円×2万1326個)の損害を被った。
ウ意匠法39条2項(卸しによる譲渡分)被告製品1及び被告製品2の小売価格は1個当たり800円である。
51このうち,被告らの限界利益は,1個当たり120円(800円×15%)と推定される。被告製品1及び被告製品2の卸し個数の合計は9490個である。
したがって,原告は,合計113万8800円(120円×9490個)の損害を被った。
エ意匠法39条2項(小売による譲渡分)被告製品1及び被告製品2の小売価格は1個当たり800円である。
このうち,被告らの限界利益は,1個当たり240円(800円×30%)と推定される。被告製品1及び被告製品2の卸し個数の合計は3432個である。
したがって,原告は,合計82万3680円(240円×3432個)の損害を被った。
オ意匠法39条1項被告らは,被告製品3を,1個当たり2000円で販売することができる。このうち,被告らの限界利益は1個当たり1500円である。
したがって,原告は,合計1424万8500円(1500円×9499個)の損害を被った。
カ合計1770万3800円キ意匠法39条1項原告は,被告製品1及び被告製品2を,1個当たり1000円で販売しており,このうち,限界利益は1個当たり970円である。
原告は,被告製品3については,1個当たり1500円の限界利益を得ることができた。
したがって,原告は,合計3493万4720円(970円×2万1326個+1500円×9499個)の損害を被った。
〔被告らの主張〕52(1)原告の主張は否認ないし争う。
(2)原告は,本件特許権,本件カード意匠権及び本件レンズチップ意匠権実施に関する事業を行っていないから,本件において,特許法102条1項,2項及び意匠法39条1項,2項を適用することはできない。
(3)各被告製品の販売数量及び単価は,次のとおりである。
ア被告製品1販売個数4848個平均単価345円売上額167万2560円イ被告製品2販売個数4642個平均単価345円売上額160万1490円ウ被告製品3販売個数8126個平均単価540円売上額438万8040円(4)実施料相当額により損害額を算定するとしても,大幅の赤字となっており,実施料率は相当に低く定めるべきである。
6争点6(各被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄請求の可否,並びに謝罪広告の要否)について〔原告の主張〕各被告製品は,本件特許権,本件カード意匠権及び本件レンズチップ意匠権侵害するものであるから,原告は,被告らに対し,第1「請求」の第2項記載の各被告製品の製造,輸入,販売及び販売のための展示行為の差止め,同第3項記載の各被告製品の回収及び廃棄,同第4項記載の謝罪広告の掲載を求め53る。
〔被告らの主張〕否認ないし争う。
第4当裁判所の判断1争点1(各被告製品の製造,販売は本件特許権の侵害となるか)について(1)各被告製品の構成ア被告製品1及び被告製品2(ア)証拠(甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1及び被告製品2の構成は,いずれも次のとおりであると認められる(なお,被告製品1と被告製品2とは,取り付けられたレンズの倍率が異なるのみで,構成は同一である。)。
?@レンズが取り付けられたレンズ保持カード(シート)と,?A観察する試料の試料受けとなる透明な試料保持用カバーフイルム(保持シート)とを備え,?B前記レンズ保持カードに切れ目を設け,?C前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明カバーフイルムの間に前記観察する試料を挟んで,?D前記レンズ保持カードの裏と前記試料カバーフイルムとを重ね合わせるべく,?E前記レンズ保持カード裏面の切れ目に前記カバーフイルムをはめ込むように重ね合わせ,?F前記カードと前記カバーフイルムの各面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,前記カード又は前記カバーフイルムを,Y方向(短辺部に平行な方向)については,前記切れ目と前記カバーフイルムとの余裕の範囲内で自由に,X方向(長辺部に平行な方向)については自由に,移動することができるようにした54?G正視型簡易顕微鏡。
(イ)上記?Fの認定の補足説明被告らは,被告製品1及び被告製品2は,前記カードと前記カバーフイルムの各面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,X方向(被告らの主張する「Y方向」は,長辺部に平行な方向を指すものと解されるから,上記(ア)の定義に従えば,「X方向」と置き換えることになる。)は自由に移動することができるものの,Y方向(被告らの主張する「X方向」は,短辺部に平行な方向を指すものと解されるから,上記と同様に,「Y方向」と置き換えることになる。)の移動は自由にすることができない旨主張する。
しかしながら,被告製品1及び被告製品2のレンズ保持カードの長辺部両側に設けられた2つの円弧状の切れ目の端部間の幅よりもカバーフイルムの短辺部の幅の方が若干短いので(甲1,弁論の全趣旨),Y方向(短辺部に平行な方向)についても,前記切れ目と前記カバーフイルムとの余裕の範囲内で自由に移動することができる構成となっているものと認められる。
イ被告製品3証拠(甲1,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品3の構成は,次のとおりであると認められる?@レンズが取り付けられたレンズ保持カード(シート)と,?A観察する試料の試料受けとなる透明な試料保持用カバーフイルム(保持シート)を備え,?B前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ,前記レンズと前記透明カバーフイルムの中間に前記観察する試料を,レンズが取り付けられた位置に相当する部分に穴を設けた透明な試料ガードフイルムを介して挟み,55?C前記レンズ保持カードの裏面と前記カバーフイルムを?D前記試料ガードフイルムを介して重ね合わせ,?E前記各部材の各一方端近部に各々穴を設け,?F前記各穴を,支点中心に各部材を互いに回転することができるようにカシメ部材で止めて前記順番に従い重ね合わせた,?G正視型簡易顕微鏡。
(2)請求項2,3,5及び6の各発明の技術的範囲ア被告らは,本件特許権に係る発明の本質的部分は,レンズを使って試料を拡大して見る場合の従来の技術が,光の進行方向から見て,「試料,レンズ,目の順序」(正視観察法)であったのに対し,「レンズ,試料,目の順序」(逆視観察法)であることにあり,請求項2,3,5及び6の各発明は,その技術的範囲に正視観察法によるものを含まず,「レンズ,試料,目の順序」となる逆視観察法による簡易顕微鏡や試料観察方法に限定されている旨主張する。
イ特許請求の範囲の記載請求項2,3,5及び6の記載は,前記争いのない事実等(1)記載のとおりであり,いずれも,その文言上,観察法を正視観察法又は逆視観察法に限定するものではない。
ウ本件明細書の記載等(ア)本件明細書の発明の詳細な説明には,次の記載がある。
a「従来,レンズを使って,試料を拡大して見る場合は図1の(b)に示す様に,光の進行方向から言って,試料(1),レンズ(2),目(3)の順序であり,ルーペしかり,顕微鏡しかりである。本発明は図1の(a)の様にレンズ(2)試料(1)目(3)の順序で試料を拡大するのである。
今後,従来の拡大方法を正視顕微鏡的方法と呼び,本発明の方法を56逆視顕微鏡的方法と呼ぶことにする。」(段落【0002】,2頁24行目ないし29行目)b「上記目的を達成するために,レーウエン・フック型の顕微鏡を制作した,レンズ径が0.5mmの球形で,約500倍で精子の存在は確認できることが解ったが,一個の精子の奇形を識別できるまでにはいたらなかった。倍率を二倍に上げても識別する迄にはいたらないため,従来の方法でない像の拡大方法を探すことにした,その結果が本発明の方法となった訳であるが,精子の奇形を見るまでには至らなかった。 レーウエン・フック型の顕微鏡は図2のようなもので,今から約300年前にオランダ人のレーウエン・フックによって制作され,しんちゅう板(13,14)に小さな穴を開け微小なレンズ(12)を挟みこんで,さらに,試料取り付け針(11)を微調整できるようにして,手に持って目をレンズ(12)に近ずけて観察するものであり,断面の略図が図3である。そして本発明の概念を説明するために,レンズと試料と目の関係を抽象化したのが図1であり,レーウエン・フック型でも図1(b)の様に,光の進行方向の順序からは試料(1)レンズ(2)そして観察者の目(3)の関係で試料を拡大して見る事になる。一方,一度述べたが本発明の方法では図1の(a)に示すように,レンズ(2),試料(1)観察者の目(3)の順序になって試料の拡大像を得るようになる。」(段落【0004】,3頁2行目ないし15行目)c「この,拡大像がどうして得られるのか,理論的な説明は現在は出来ないが,実際に製作してみると,上下・左右が反転した拡大像をレンズ上に見ることが出来る。しかも,同じレンズなのに(a)の方法即ち本発明の方法では(b)の方法より約4倍大きく見える,」(段落【0005】17行目ないし19行目)57d「図4(a)のシート(41)は厚さ0.75mmのポリプロピレンシートを直径40mmの円形にカットして,その中心に0.4mmの穴を開け,そこに0.5mmのガラスの球形レンズ(2)を圧入して,表面より0.1mm出るようにしたものである。これが本簡易顕微鏡の本体であり,倍率は明視距離250mmとして,レンズの焦点距離,約0.5mmで割って角倍率で500倍になり,この倍率で精子の運動などは観察できる。 図4の(b)は現在市販されている,複式顕微鏡のプレパラートに相当する試料受け部分で厚さ0.75mmのポリプロピレンシートを本体と同じ直径40mmの円形にカットして,中心に4mmの丸い穴を開けて,その片側に透明な厚さ0.05mmのフィルム(5)を装着(粘着テープで貼りつける)したものである。
使用方法は(a)と(b)のものを(c)の断面になるように,外形をそろえて重ね合わせてレンズ(2)を覗けば良い。観察するポイントを移動するときは親指と人差し指とでシート(41)と(43)を挟んですり合わせるようにして,ずらせれば良い。観測する時は照明は太陽光直接よりも室内の窓からの光か,蛍光灯のほうがよいし,光源の角度を少し,ずらすようにすると,暗視野照明法のようになって,コントラストがついて,はっきり見える。
このレンズ側からの観測は従来の方法であるが,透明フイルム(5)側に目を近ずけて覗くとフイルムにつけてある試料が拡大して見える,図3の様なレーウエン・フック型の試料取り付け針(11)がないために目をレンズ(2)に近ずけられるから,このことが可能になつた訳である。又,複式顕微鏡の様なものでは試料側からは覗くこともできないが,本簡易顕微鏡では簡単に本発明の逆視顕微鏡的方法と正視顕微鏡的な方法の二つで観察ができる。
58尚,逆視及び正視のどちらの場合でも,試料を透明フイルム(5)の左でも右でも,即ち,中でも外でも,どちらにでも着けて良い。」(段落【0006】,3頁26行目ないし48行目)e「図5は図4(b)のシート(43)の外径を(a)のシート(41)より小さくして,さらに,透明フイルム(5)を貼りつける両面粘着テープ(46)を透明フイルム(5)より大きくして,シート(43)を図4の顕微鏡本体のシート(41)に直接に貼りつけたものであり,完全に使い捨てを意識したものである。 この場合,シート(41,43)は紙で充分である。又,(46)の粘着剤で(41,43)が半固定されているので,観察の時のポイントの移動は前記の方法と同じく指でシートをずらせば良い,少々,力を要するがミクロン単位の移動でも,それが拡大されるので充分である,又,動かさなくても,微小な物は全体が観察できる。この形式の場合は正視顕微鏡的な方法か逆視顕微鏡的な方法かによつて,レンズ(2)と透明フイルム(5)とのギャップが違うので,あらかじめ作る前にどちらにするか決めておく必要がある。」(段落【0007】,3頁50行目ないし4頁9行目)f「図8は磁石を使用しないで,焦点が一定になるようにした実施例である。
(a)はポリプロピレンの厚さ0.75mmのシート(51)をテレホンカード状にして,切れ目(52,53)を二箇所設けて,中心にレンズ(2)をいれる,これを顕微鏡の本体とする。
(b)は(a)と同じ材質のシート(54)をクロス型にして,真ん中に穴(4)を開け透明フイルム(5)を貼りつけたものである,これを試料受けとする。
(c)は(a)の物に(b)の物を切れ目(52,53)を開いて,59はめ込んだ物であり,これが完成品である。
この(c)の物は切れ目(52,53)の力で(b)の試料受けをレンズ(2)の方へ押しつける様になるために指で押えなくても焦点が一定になるため,観察する時に楽になるし,磁石を使わないので,レンズに傷を付けることがなくなるし,安く作る事ができるといった利点がある。」(段落【0010】,4頁35行目ないし46行目)g「図11は顕微鏡を屋外で使用する場合,太陽光を使う時,観察しやすくするため,絞りを付けてコントラストを良くした実施例の説明図である。これらの中で説明するシートはポリプロピレンの厚さが0.75mmの物である。そして,(a)は20×40mmの長方形であり,(c)も同じである。(a)の(81)と(c)の(83)は同じ4mmΦの穴である。又,(a)の穴(84)は5mmΦの穴で,(c)の(85)は凸部の高さが約0.4mmで外径5mmのエンボスで,これらが組合わさる時に(84)に(85)の凸部が入って位置を固定するためのものである(b)は図の様に左側に5mmΦの穴(82)を中心に半径10mmの円を描いた外形,即ちダルマ型をしている。
(a)の(80)はピンホールである。以上の様な各パーツを(c)の上に(b)の物をのせ,さらに,(a)の物を重ねハトメの玉でカシメる。すると(d)の様な断面になる,これを上から見ると,(e)のようになる。
使い方は(e)のハトメ部(86)を中心にして各々のパーツを扇子を開く様に広げると図12(a)の様に,そして,穴(4)から透明フイルム(5)に試料を着けて,液体の場合に試料がこぼれるのを防ぐためにはセロテープで穴(4)をふさげば良い。このようにしたら,各パーツを閉じて(e)の様にして,レンズ(2)に眼を近ずけ60て,屋外で明るい方を見れば,光はピンホール(80)で絞られて,コントラストが良くなり,はっきり試料の拡大像を見ることが出来る。
この時,指で(a)の(84)と(c)のエンボス(85)の部分を押す様にすると,レンズとピンホールの軸芯が合うと同時に,透明フイルム(5)がレンズの方におされるので,焦点が定まり良く見える様になるわけである。尚,X,Y方向の移動は(B)の穴(82)がハトメの玉の外形より1mm大きくなっているのでそのクリアランスの範囲だけ移動ができる。
又,図12の(b)の様に開いて試料をいれることもポリプロピレンのシートならできる。尚,逆視顕微鏡として見る場合でも絞りがあるとよく見える。」(段落【0012】,5頁10行目ないし32行目)h「本発明は逆視顕微鏡的な方法によって微小な物を大きく拡大出来ることを見付けた事に,その発端があるが,これの,理論的な事が不明であるが,像の拡大率が大きい事,倒立像をていすること,透明体でも立体感のある像が見える事,作動距離が大きくとれる事,観察するポイントを見付け安い事。など,多くの利点がある。
又,簡易顕微鏡は,微小な球形レンズを使用するだけで,正視顕微鏡的な方法と逆視顕微鏡的な方法とで高倍率で試料を観察でき,とても安い価格で製造出来て,小型で持運びが楽で子供などの理科の学習に役立つと思われる。」(段落【0017】,6頁49行目ないし7頁5行目)(イ)上記d及びeは請求項2,3に該当する実施例の記載であり,上記記載は,当該実施例に係る簡易顕微鏡が,逆視顕微鏡的にも,正視顕微鏡的にも用い得るものであることを開示している。
また,上記fは請求項5に該当する実施例の記載であり,上記gは請61求項6に該当する実施例の記載である。これらの記載は,当該実施例に係る顕微鏡が,逆視顕微鏡的にも,正視顕微鏡的にも用い得るものであることに直接言及するものではないものの,請求項5,6の発明の内容は逆視顕微鏡的にも,正視顕微鏡的にも用い得るものである上,本件明細書中には,請求項5,あるいは,請求項6について,特に,逆視顕微鏡的方法に限定されることを開示又は示唆する記載は見当たらない。むしろ,上記hのとおり,発明の効果として,簡易顕微鏡は,微小な球形レンズを使用するだけで,正視顕微鏡的な方法と逆視顕微鏡的な方法とで高倍率で試料を観察することができることが記載されている。
エ本件特許権の出願経過等(ア)出願当時の明細書等の記載内容(乙1の1ないし3)a特許請求の範囲の請求項1ないし11のうち,請求項1は,「レンズ(2),試料(1),観察者の目(3)の順序」になって試料の拡大像を得るようになる方法(図面(乙1の3)【図1】(a)。逆視観察法)の発明であり,請求項2ないし10は,逆視観察法を使用することができる顕微鏡の発明とされていた(請求項2は,請求項1の従属項であり,請求項3ないし請求項10は,請求項2の従属項とされていた。)。
bしかしながら,明細書(乙1の2)の【発明の詳細な説明】には,上記ウ(ア)dないしhと同一の記載があった。
(イ)特許請求の範囲変更(乙2の1ないし4)a原告は,平成17年6月6日付け手続補正書において,特許請求の範囲変更することを内容とする補正を(乙2の1),同月14日付け手続補正書において,特許請求の範囲変更することを内容とする補正を(乙2の2),同年9月29日付け手続補正書において,特許請求の範囲変更することを内容とする補正を(乙2の3),同年1621月7日付け手続補正書において,特許請求の範囲変更することを内容とする補正を(乙2の4)行ったものの,上記補正の内容は,いずれも,簡易顕微鏡及び簡易顕微鏡の観察方法(請求項2以下。なお,出願当初においては,特許請求の範囲は請求項1ないし11まで存在したものの,上記補正により,請求項1ないし7までに変更されている。)の技術的範囲から正視観察法によるものを除外し,逆視観察法によるものに限定するようなものではない。
なお,平成17年11月7日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲は,次のとおりである。
【請求項1】「レンズをピンホールの中か,その近傍に設けて光りをそのレンズに入れてレンズの後に試料を置き,試料を透かしてレンズを覗く事に依って試料の拡大像を得る方法。」【請求項2】「レンズの片側に試料受け部の透明体が来る様にした,請求項1記載の方法が使用出来る簡易顕微鏡に於いて,レンズと透明体の間に精液を配置すれば正視顕微鏡的方法で精子が観察出来る簡易顕微鏡。」【請求項3】「シートにレンズを取り付け,これを顕微鏡本体とし,もう一つの透明部を有するシートを試料受けとして,この二枚のシートを指で挟んで,すり合わせる事で観察ポイントを移動させる簡易顕微鏡の観察方法。」【請求項4】「レンズと試料の距離を一定にし,かつ,XY方向の移動が自由に出来,かつ着脱を容易にするためレンズ保持部材と試料保持部材とが磁力でカップリングする様にした簡易顕微鏡。」63【請求項5】「レンズのついたシートと透明部を有するシートとの,どちらか一枚に相手のシートが入る切れ目を設けて二枚のシートの保持とXY方向の移動とが自由に出来る様にした簡易顕微鏡。」【請求項6】「レンズのついたシートと透明部を有するシートと,その他のシートをハトメ玉様部材で止めて互いに支点中心に回転出来る様にした簡易顕微鏡。」【請求項7】「直径が0.25?o以上1.4?o以下の球形レンズからなる請求項2記載の簡易顕微鏡。」b本件出願について,平成17年12月6日付けの拒絶理由通知書(乙4)により,特許法36条6項1号,2号,同条4項,29条2項に基づく拒絶理由が通知された。
c原告は,上記拒絶理由通知を受けて,請求項2ないし7の記載を,明細書中に開示された具体的な実施形態の簡易顕微鏡及びこれら簡易顕微鏡を用いた試料観察方法に対応する具体的な形状,構造等で特定するなどの補正を企図し,平成18年2月16日付け手続補正書(乙6の7)で,特許請求の範囲を,本件明細書の請求項1ないし7のとおりの記載(本件特許権の現請求項の記載)に変更する旨の補正を行った。上記補正も,簡易顕微鏡及び簡易顕微鏡の観察方法(請求項2以下)の技術的範囲から正視観察法によるものを除外し,逆視観察法によるものに限定するようなものではない。
オ以上によれば,請求項2,3,5及び6の各発明の技術的範囲(簡易顕微鏡)は,逆視顕微鏡的方法(逆視型簡易顕微鏡)に限られず,正視顕微鏡的方法(正視型簡易顕微鏡)もこれに含まれるものと解される。
64(3)請求項2,3,5及び6の各発明と各被告製品との対比ア被告製品1及び被告製品2(ア)請求項2?@は構成要件A1に,?Aは構成要件A2に,?Cは構成要件A3に,?D及び?Eは構成要件A4に,?Gは構成要件A5に,それぞれ相当する。
したがって,被告製品1及び被告製品2は,請求項2を充足する。
(イ)請求項3a?@は構成要件B1に,?Aは構成要件B2に,?Cは構成要件B3に,?D,?E及び?Gは構成要件B4に,それぞれ相当する。
b構成要件B5ないしB7について(a)証拠(甲1,2)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品1及び被告製品2の使用説明書には,被告製品1及び被告製品2の使い方として,「両手で「たま」のルーペを持ち,?C接眼特殊レンズより覗きます。」「?Bステージを少し曲げて,レンズと試料の距離を調節する。」,「上下左右覗きながら?@フィルムをY方向にスライドさせ,観察物を探します。」と記載されていることが認められる。
(b)上記記載によれば,被告製品1及び被告製品2は,?H前記レンズ保持カードと前記カバーフイルムを指で挟んで,?Iすり合わせすることで上記レンズ保持カードの裏と前記カバーフイルムの間の試料の観察ポイントを移動するようにした,?J試料観察方法の使用に用いる物である。
そして,?Hは構成要件B5に,?Iは構成要件B6に,?Jは構成要件B7に,それぞれ相当する。
cそうすると,被告製品1及び被告製品2は,請求項3の発明(方法)の使用に用いる物であって,その発明による課題の解決に不可欠なものであるといえる。
65そして,証拠(甲1ないし5,16ないし18,21,24,25等)及び弁論の全趣旨によれば,平成12年1月ころ,原告とBは知り合い,その後,原告において本件特許権の実施品を製造し,Bにおいてこれを販売する事業を共同して行うことになったこと,平成13年3月には,原告は,Bとの間で,出願中の本件特許権に係る発明について原告がBに対して実施を許諾する旨の契約や独占的販売権を許諾する旨の契約を締結したこと,しかしながら,原告は,平成15年6月ころ,Bに対し,上記両契約を解除する旨の意思表示をしたこと,さらに,原告は,被告らに対し,平成18年6月ころ,各被告製品が本件特許権を侵害するものである旨の警告書を発していること,各被告製品のラベル上には「特許出願中」との記載があること,が認められる。これらの事実に照らせば,被告らは,請求項3の発明が特許発明であること,被告製品1及び被告製品2が請求項3の発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡,若しくは譲渡の申出をしていたものと認められる。
d以上によれば,被告らの上記行為は,請求項3の発明に係る特許権を侵害する行為であるとみなされる(特許法101条5号,改正前特許法101条4号)。
(ウ)請求項5a?@は構成要件C1に,?Aは構成要件C2に,?Bは構成要件C3に,?Eは構成要件C4に,?Fは構成要件C5に,?Gは構成要件C6に,それぞれ相当する。
したがって,被告製品1及び被告製品2は,請求項5を充足する。
b構成要件C5についての補足説明被告らは,被告製品1及び被告製品2は,前記カードと前記カバーフイルムの各面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,66X方向(被告らの主張する「Y方向」は,長辺部に平行な方向を指すものと解されるから,前記1(1)ア(ア)の定義に従えば,「X方向」と置き換えることになる。)は自由に移動することができるものの,Y方向(被告らの主張する「X方向」は,短辺部に平行な方向を指すものと解されるから,上記と同様に,「Y方向」と置き換えることになる。)の移動は自由にすることができない旨主張する。
本件明細書には,請求項5に対応する実施例として【図8】があり,上記実施例について,上記(2)ウ(ア)fの記載がある。この記載に照らせば,「移動が自由に出来る」(構成要件C5)とは,「制約なく自由に移動することができる」場合のみを意味するのではなく,「切れ目とシートとの遊びの範囲内で自由に移動することができる」場合も含まれるものと解される。
よって,?Fは構成要件C5に相当するものと認められる。
イ被告製品3(ア)請求項2?@は構成要件A1に,?Aは構成要件A2に,?Bは構成要件A3に,?C及び?Dは構成要件A4に,?Gは構成要件A5に,それぞれ相当する。
したがって,被告製品3は,請求項2を充足する。
(イ)請求項3a?@は構成要件B1に,?Aは構成要件B2に,?Bは構成要件B3に,?C,?D及び?Gは構成要件B4に,それぞれ相当する。
b構成要件B5ないしB7について(a)証拠(甲1,3)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品3の使用説明書には,「カードを広げ,カードの間を鼻の上に載せ,セットします。(固定する)」との記載とともに,カードを広げて,中央付近を鼻の上に載せ,両端を指で挟み,位置を固定している様子が67イラストで描かれていることが認められる(なお,被告製品3は,レンズ保持カード,試料ガードフイルム,試料保持用カバーフイルムが,この順にカシメ部材で留められている。加えて,別紙被告製品目録3にあるとおり,上記試料保持用カバーフイルムの,試料ガードフイルムとは反対の側に,レンズ保持カードと同一の形状のカード(ただし,レンズは取り付けられていない。)が上記カシメ部材で上記3枚のカードとともに留められている。)。
また,被告製品3は,レンズ保持カード,試料ガードフイルム,試料保持用カバーフイルムが,この順にカシメ部材で留められており,カシメ部材を支点として,互いに回転することができる構成を有する。加えて,弁論の全趣旨によれば,被告製品3においては,試料ガードフイルム及び試料保持用カバーフイルムのカシメ部材を挿通するための穴の外周が,カシメ部材の外周よりも,若干大きくなっており,そのクリアランスの範囲だけ,試料ガードフイルム及び試料保持用カバーフイルムを移動させることができるようになっている(なお,本件明細書段落【0012】5頁29行目ないし30行目)。
(b)上記によれば,被告製品3は,?H前記レンズ保持カードと前記カバーフイルムを指で挟んで,?Iすり合わせすることで上記レンズ保持カードの裏と前記カバーフイルムの間の試料の観察ポイントを移動するようにした,?J試料観察方法の使用に用いる物であるといえる。
そして,?Hは構成要件B5に,?Iは構成要件B6に,?Jは構成要件B7に,それぞれ相当する。
cそうすると,被告製品3は,請求項3の発明(方法)の使用に用いる物であって,その発明による課題の解決に不可欠なものであるとい68える。
そして,上記ア(イ)cの認定事実に照らせば,被告らは,請求項3に係る発明が特許発明であること,被告製品3が請求項3の発明の実施に用いられることを知りながら,業として,その生産,譲渡,若しくは譲渡の申出をしていたものと認められる。
d以上によれば,被告らの上記行為は,請求項3の発明に係る特許権を侵害する行為であるとみなされる(特許法101条5号,改正前特許法101条4号)。
(ウ)請求項6?@は構成要件D1に,?Aは構成要件D2に,?Bは構成要件D3に,?Eは構成要件D4に,?Fは構成要件D5に,?Gは構成要件D6に,それぞれ相当する。
したがって,被告製品3は,請求項6を充足する。
2争点2(請求項2,3,5及び6に係る特許は無効にされるべきものか)について(1)争点2-a(請求項2及び請求項3の記載が特許法36条6項1号に違反するか)についてア前記1(2)で述べたところによれば,本件特許権に係る発明は,逆視顕微鏡的観察法の発明(請求項1)と(逆視顕微鏡的観察法か正視顕微鏡的観察法かを問わない)簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察方法の発明(請求項2以下)とから成る。
そして,逆視顕微鏡的観察法の発明(請求項1)については,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】,【0005】及び【図1】(a)等に,簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察方法の発明(請求項2以下)については,段落【0006】ないし【0013】及び【図4】ないし【図12】等にそれぞれ開示されており,当業者において,69発明の詳細な説明の記載に基づき,各請求項に係る発明を実施し得る程度の記載がされていると認められる。また,各請求項の記載も明確性を欠くものとはいえない。
したがって,特許法36条4項1号,6項1号・2号違反をいう被告らの主張はいずれも失当である。
以下,被告らの主張について補足する。
イ被告らは,請求項2の構成要件A3ないしA5の各構成要件発明の詳細な説明中に開示されていない旨主張する。
しかしながら,前記第4の1(2)ウ(ア)d認定のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明中には,「観察するポイントを移動するときは親指と人指し指とでシート(41)と(43)を挟んですり合わせるようにして,ずらせれば良い。」(段落【0006】3頁36行目ないし37行目),「逆視及び正視のどちらの場合でも,試料を透明フイルム(5)の左でも右でも,即ち,中でも外でも,どちらにでも着けて良い。」(段落【0006】3頁47行目ないし48行目)との記載がある。
上記記載によれば,レンズが取り付けられた顕微鏡本体シート(41)と透明フイルム(5)が装着された試料受けシート(43)との間に試料が存在し,かつ,レンズに試料が直接接触する形態が開示されていると認められる。
ウまた,被告らは,請求項3の構成要件B3ないしB7の各構成要件発明の詳細な説明中に開示されていない旨主張する。
しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明中には,上記イのとおりの記載があるから,請求項3の上記各構成要件が開示されていると認められる。
エなお,被告らは,本件明細書段落【0002】の記載と請求項2及び請求項3の要件との関係を問題とするものの,上記段落の記載は従来技術に70関する記載であって,そもそも,これと請求項2及び請求項3の構成要件とが直接結びつけられなければならないものではない。
(2)争点2-b(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条6項2号に違反するものか)についてア被告らは,乙第10号証を根拠に,請求項2,3,5及び6の発明は技術的に理解することのできないものであり,発明としての明確性を欠く旨主張する。
しかしながら,乙第10号証は,その書面の表題からも明らかなように,請求項1に係る発明(逆視顕微鏡的観察法の発明)について,技術的観点からの問題を指摘するものであり,簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察方法の発明(請求項2以下)に関するものではない。
よって,乙第10号証により,請求項2,3,5及び6の明確性は否定されない。
イ上記(1)アで述べたとおり,本件特許権に係る発明は,逆視顕微鏡的観察法の発明(請求項1)と(逆視顕微鏡的観察法か正視顕微鏡的観察法かを問わない)簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察方法の発明(請求項2以下)とから成り,本件明細書の発明な詳細中には,各請求項に係る発明がそれぞれ開示されており,当業者において,発明の詳細な説明の記載に基づき,各請求項に係る発明を実施し得る程度の記載がされていると認められ,各請求項の記載も明確性を欠くものとはいえない。
被告らは,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は技術的に統一して理解することができないものであるなどとして種々主張するものの,いずれも,本件特許権に係る発明が,上記逆視顕微鏡的観察法の発明(請求項1)と(逆視顕微鏡的観察法か正視顕微鏡的観察法かを問わない)簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察法の発明(請求項2以下)とから成ることを前提としない主張であり,失当と言わざるをえない。
71(3)争点2-c(請求項2,3,5及び6の記載が特許法36条4項1号に違反するものか)についてこの点に係る被告らの主張も,上記(1),(2)で述べたところと同様に,理由がない。
(4)争点2-d(請求項2,3,5及び6の発明は進歩性を欠くものか)についてア被告らは,請求項2,3,5及び6の発明は,乙7公報,乙8公報,乙25公報,乙26公報及びレーウエン・フック型簡易単式顕微鏡の周知技術を組み合わせることにより,当業者において,容易に想到し得るものであり,進歩性を欠く旨主張する。
イ請求項2,3の各発明の進歩性について(ア)乙7公報について乙7公報には,次の記載がある。これらの記載に照らせば,乙7公報には,レンズと試料とを直接接触させない形態の簡易顕微鏡が開示されているのみであって,請求項2の構成要件A3及び請求項3の構成要件B3の「前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ」との構成については,何ら開示されておらず,また,示唆もない。
a「拡大素子は小径の透明球から構成し,該透明球の直径を所望倍率に応じて設定するとともに該透明球を適当な支持体に装着し,該透明球を介して所定の焦点距離に配置された対象物を観察可能としたことを特徴とする簡易顕微鏡。」(297頁左欄5行目ないし9行目)b「この小径球は幅狭な矩形支持シート内に設けられた対応キャピティ内に配置されかつ該支持シートの両側部に接着された透明シートを介して保護されている。」(298頁左上欄9行目ないし12行目)c「観察しようとする対象物を両透明保護シートの一方と接触させて配置するとともに所定の焦点距離とするために適当な厚さのシートと72し,」(298頁左上欄15行目ないし17行目)d「該球3はシート1の両面と共通平面を成す2つの透明シート4により保護されるとともに第1図に示すように隙間のない位置に固定される。」(298頁右上欄16行目ないし19行目)e「観察しようとする対象物5は一方の透明シート4の外面に直接載せられ,」(298頁右上欄20行目ないし左下欄1行目)f「対象物5は当該アッセンブリに使用されている球3の直径に対するシート1および4の厚みにより固定される正確な焦点距離をもって配置される」(298頁左下欄4行目ないし6行目)g「上記対象物は球3に対応する正確な焦点距離をもって配置するようにしなければならない。これは透明シート4の厚みおよび一方のスライドの厚み寸法を適正に定めることにより達成される。」(298頁左下欄16行目ないし20行目)(イ)乙8公報について乙8公報には,次の記載がある。しかしながら,ここでは,光導入用開口28ないし84の中に液体状の試料を導入することが記載されているのみであり,レンズ(22ないし80)は,観察用開口20ないし中央観察用開口81に固定されて位置しており,蓋部材(14ないし63)と底部材(10ないし66)の距離を調節することにより,焦点を合わせる旨記載されているから,レンズと試料との間には間隙が存在しているものと考えられる(蓋部材と底部材との間には,スライド保持台(30)や接続構造手段用部分(67,68)が存在する。)。
したがって,乙8公報には,請求項2の構成要件A3及び請求項3の構成要件B3の「前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ」との構成については,何ら開示されておらず,また,示唆もない。
a「光導入用開口28の中に導入された液体状試料は,表面張力効果73開口28のテーパ構造との協働によって,レンズに対して正確に位置する。」(309頁右上欄上から4行目ないし7行目)b「開口28の場合について第8図及び第16図に示したのと同様にして光導入用開口84の中に検査用の液滴を置くこともできる。」(312頁左上欄17行目ないし右上欄3行目)(ウ)乙25公報及び乙26公報について乙25公報及び乙26公報には,請求項2の構成要件A3及び請求項3の構成要件B3の「前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ」との構成については,何ら開示されておらず,また,示唆もない。
(エ)以上によれば,乙7公報,乙8公報,乙25公報及び乙26公報の記載に基づいて,当業者において,請求項2,3の各発明の構成を容易に想到し得たとはいえない。
ウ請求項5の発明の進歩性について乙7公報,乙8公報,乙25公報及び乙26公報には,レンズ保持シートと試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け,前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むという点,各シートの面と平行な2つの直交する方向をX,Y方向としたとき,X,Y方向の移動が自由に出来るとの点について,何ら開示されておらず,また,示唆もない。
したがって,乙7公報,乙8公報,乙25公報及び乙26公報の記載に基づいて,当業者において,請求項5の発明の構成を容易に想到し得たとはいえない。
エ請求項6の発明の進歩性について乙7公報,乙8公報,乙25公報及び乙26公報には,試料保持シート,レンズシート及びその他のシートをハトメ玉様部材で止めるとの点については,何ら開示されておらず,また,示唆もない。
なお,乙8公報には,蓋部材と底部材とをヒンジで結合することが記載74されているものの,その他のシートの存在は開示されておらず,その他のシートを設ける動機付けもない。
したがって,乙7公報,乙8公報,乙25公報及び乙26公報の記載に基づいて,当業者において,請求項5の発明の構成を容易に想到し得たとはいえない。
(5)争点2-e(本件特許が平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項に違反するものか。)について逆視顕微鏡的観察法の発明(請求項1)については,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】,【0005】及び【図1】(a)等に,簡易顕微鏡ないし同簡易顕微鏡を用いた試料観察方法の発明(請求項2以下)については,段落【0006】ないし【0013】及び【図4】ないし【図12】等にそれぞれ開示されていることは,前記(1)アで述べたとおりであり,発明の詳細な説明の記載は,出願当時から変更がないから,特許請求の範囲の記載を現請求項の記載に変更することを内容とする平成18年2月16日付け手続補正書による補正は,出願時の明細書及び図面に記載した範囲内のものであるといえる。
また,レンズが取り付けられた顕微鏡本体シート(41)と試料受けシート(43)との間に試料が存在し,かつ,レンズに試料が直接接触する形態が開示されていると認められることも,前記(1)イで述べたとおりである。
(6)以上によれば,請求項2,3,5及び6の発明に係る特許が無効とされるべきものであるとする被告らの主張は,いずれも理由がない。
3争点3(各被告製品の製造,販売は本件意匠権侵害となるか)について(1)争点3-a(本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠の構成態様)について前記第2の1争いのない事実等に証拠(甲11,12,30,31)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
75ア本件カード意匠の構成態様(ア)基本的構成態様カード型の単式顕微鏡の部品である板状カードより成る。
(イ)具体的構成態様a平面から見て,全体として長辺と短辺との寸法比がおおむね8:5である長方形状の薄い板状カードである。
bカードの四方角端は,略4分の1円弧状に隅取りされている。
c長方形状の長辺部両側には,カード中心部に向けて,ゆるやかな円弧状の切れ目が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている。
d長方形状の短辺部両側には,カード中心部に向けて,略6分の1円弧状の切欠き部が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている。
eカード中心部に小穴1個,四方角端のうちの一つの角端寄りに中心部の小穴と同程度の大きさの小穴1個が,それぞれ設けられている。
イ本件レンズチップ意匠の構成態様(ア)基本的構成態様単式顕微鏡の部品であるレンズが装着された小片より成る。
(イ)具体的構成態様a平面から見て,全体として円盤状の小片である。
b正面から見て,中央部にはゆるやかな山型の凸部が形成されている。
上記凸部の底面外周円の直径と上記円盤状の小片の直径との寸法比はおおむね1:2となっている。
c上記凸部の周囲には,これを囲むようにして輪状の平坦部が形成されている。
d上記凸部の頂上部には,微小の丸形のレンズが配されている。
76e平面裏から見て,上記凸部に相当する部分には凹部が形成されている。
(2)争点3-b(被告製品1及び被告製品2と本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠との類否)についてア本件カード意匠との類否(ア)被告製品1及び被告製品2のカード部の構成証拠(甲1,30)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a基本的構成態様カード型の単式顕微鏡の部品である板状カードより成る。
b具体的構成態様(a)平面から見て,全体として長辺と短辺との寸法比がおおむね8:5である長方形状の薄い板状カードである。
(b)カードの四方角端は,略4分の1円弧状に隅取りされている。
(c)長方形状の長辺部両側には,カード中心部に向けて,ゆるやかな円弧状の切れ目が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている。
(d)長方形状の短辺部両側には,カード中心部に向けて,略6分の1円弧状の切欠き部が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている。
(e)カード中心部に小穴1個が設けられている。
(イ)対比a本件カード意匠は,これにレンズチップを取り付けて,カード型の単式顕微鏡とする物であり,カードの切れ目二箇所にプレパラートをはさんで,検鏡するために用いられ,顕微鏡を利用する者は,顕微鏡を手に持ってレンズを覗くなどして検鏡する(甲30,弁論の全趣77旨)。
これらのことに照らせば,正面から見たカード外周の形状に関わる上記(1)ア(イ)a,b及びd,並びに,顕微鏡として用いるに当たって技術的機能を有するc及びeのうちカード中心部の小穴1個が設けられている点が,看者である利用者の注意を惹くものであるというべきである。換言すれば,eのうち四方角端のうちの一つの角端寄りに設けられた小穴は,カードの外周の形状に関わる部分ではなく,かつ,顕微鏡として用いるに当たって技術的機能を有する部分でもないから,本件カード意匠の要部とはいえない。
b本件カード意匠と被告製品1及び被告製品2のカード部とを対比した全体の共通点は?@カード型の単式顕微鏡の部品である板状カードより成る点,?A平面から見て,全体として長辺と短辺との寸法比がおおむね8:5である長方形状の薄い板状カードである点,?Bカードの四方角端は,略4分の1円弧状に隅取りされている点,?C長方形状の長辺部両側には,カード中心部に向けて,ゆるやかな円弧状の切れ目が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている点,?D長方形状の短辺部両側には,カード中心部に向けて,略6分の1円弧状の切欠き部が,カード中心から見て対称にて,向かい合うように,各一つずつ設けられている点,?Eカード中心部に小穴1個が設けられている点である。
他方,本件カード意匠と被告製品1及び被告製品2のカード部とを対比した全体の差異点は,本件カード意匠では,四方角端のうちの一つの角端寄りに中心部の小穴と同程度の大きさの小穴1個が設けられているのに対し,被告製品1及び被告製品2のカード部には,そのような小穴が設けられていない点である。
なお,被告らは,被告製品1及び被告製品2には,カード中心部に78設けられた小穴を中心として,順次,黒太円,黒細円,黒細円の同心円状模様より成る円形状レンズチップ支持ラベルが存する点をも,差異点として挙げる。しかしながら,上記ラベルは,被告製品1及び被告製品2における,カード部とは別個の顕微鏡部品にすぎないか,あるいは,カード部の模様にすぎない。本件カード意匠は,物品の形状を対象とするものであって(甲30),模様は問題とならないから,被告らの上記主張は失当である。
c上記のとおり,被告製品1及び被告製品2のカード部の意匠は,本件カード意匠と,その要部というべき点において共通するものであるから,類似する。
イ本件レンズチップ意匠との類否(ア)被告製品1及び被告製品2のレンズチップ部の構成証拠(甲1,31,乙27の1・2,乙28の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a基本的構成態様単式顕微鏡の部品であるレンズが装着された小片より成る。
b具体的構成態様(a)平面から見て,全体として円盤状の小片である。
(b)正面から見て,中央部にはゆるやかな山型の凸部が形成されている。
上記凸部の底面外周円の直径と上記円盤状の小片の直径との寸法比はおおむね1:2となっている。
(c)上記凸部の周囲には,これを囲むようにして輪状の平坦部が形成されている。
(d)上記凸部の頂上部には,微小の丸形のレンズが配されている。
(e)平面裏から見て,上記凸部に相当する部分には凹部が形成されて79いる。
(イ)対比本件レンズチップ意匠と被告製品1及び被告製品2のレンズチップ部の意匠とは,基本的構成態様及び具体的構成態様の点で一致する。
なお,被告らは,被告製品1及び被告製品2の全体(顕微鏡の完成品)の意匠と本件レンズチップ意匠とを対比すべきである旨主張するものの,失当である。また,被告らは,被告製品1及び被告製品2のレンズチップ部の意匠と本件レンズチップ意匠とを対比するとしても,本件レンズチップ意匠が,レンズ支持用凹・凸部が略3分の1円形状(盛り上がりの小さいUFO型)のもので,凹・凸部が緩やかな丸みを帯び,柔らかな印象を与える態様であるのに対し,被告製品1及び被告製品2のレンズチップ部は,レンズ支持用凹・凸部が大きく盛り上がった二等辺三角形状(富士山型)のものであり,凹・凸部が角張った,すり鉢状の印象を与える旨主張するものの,両意匠を比較しても,このような差異点を見いだすことは困難であると言わざるを得ない。
そうすると,被告製品1及び被告製品2のレンズチップ部の意匠は,本件レンズチップ意匠と同一又は類似する。
(3)争点3-c(被告製品3と本件レンズチップ意匠との類否)について被告製品3のレンズチップ部は,被告製品1及び被告製品2において用いられているレンズチップと共通の物である。
したがって,上記(2)イで述べたとおり,被告製品3のレンズチップ部の意匠は,本件レンズチップ意匠と同一又は類似する。
4争点4(本件意匠は無効にされるべきものか)について(1)争点4-a,e(本件カード意匠に係る出願,本件レンズチップ意匠に係る出願は,意匠法15条1項において準用する特許法38条(共同出願)に違反するものか)について80被告らは,本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠が,Bと原告との共同創作に係るものであることの証拠として,Bの陳述書(乙21,22)を挙げ,同陳述書には,「Bが,顧客やユーザーの声を,吸収,参考にしながら,トムズカード(TOM'S Card DX)及びこれに組み込むレンズチップのデザインを平成12年8月ころ創作し,これを原告に電話をし,その説明の確認のために手書きで図面化してFAXをした上,提案をし,原告に具体的に試作してもらいました。」,「平成12年9月ころ,お客様からの声を反映させてBが原告に,カード(紙製及びプラスチック製)にプレパラート支持用切れ目を入れて,移動できるプレパラートをどうにか付けられないかを提案しました。そして,平成12年9月ころ,カードにプレパラート支持用切れ目のある,透明プレパラートをセットとする試作品が完成しました。」旨の記載がある。
しかしながら,これらの記載は,原告が上記事実を否認していること(甲51,弁論の全趣旨),裏付けとなる客観的証拠を欠くこと,Bが原告に提案したという意匠の態様も抽象的であって,具体性を欠くと言わざるを得ないことなどに照らし,直ちに信用することができず,他に被告らの主張に係る上記事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,この点に関する被告らの主張は理由がない。
(2)争点4-b,f(本件カード意匠,本件レンズチップ意匠は,意匠法3条1項柱書の要件を欠くものか)についてア本件カード意匠は,カード型の単式顕微鏡の部品(カード部)の意匠である。
上記部品も,互換性を有し,カード型の単式顕微鏡から独立して取引の対象となり得るものといえるから,物品に該当する。
イ本件レンズチップ意匠は,カード型の単式顕微鏡の部品(レンズチップ部)の意匠である。
81上記部品も,互換性を有し,カード型の単式顕微鏡から独立して取引の対象となり得るものといえるから,物品に該当する。
ウよって,この点に関する被告らの主張は理由がない。
(3)争点4-c(本件カード意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)についてア乙9公報の【図8】,【図9】,【図11】,【図13】について上記各図において開示された簡易顕微鏡の形状は,本件カード意匠とは同一ではなく,また,上記図面で開示された形状は,いずれも,本件カード意匠の具体的構成態様c及びdに相当する形状を備えないから,類似ともいえない。
そして,上記各意匠の組合せに基づき,当業者において,本件カード意匠を容易に創作をすることができたものであるとも認めるに足りない。
イ甲第8号証(平成12年10月3日発行に係る雑誌記事)について甲第8号証において開示された簡易顕微鏡の形状は,本件カード意匠とは同一ではないから,上記証拠をもって,意匠法第3条1項2号に該当するとはいえない(なお,上記アのとおり,類似ともいえない。)。
ウ甲第10号証の1・2について甲第10号証の1・2の記載からは,本件カード意匠の出願前に原告が「カード型顕微鏡『トムズカード』」をBに対して販売していたことが認められるものの,上記販売に係る物品の形状は不明であるから,上記証拠をもって,意匠法第3条1項1号に該当するとは認められない(なお,証拠(乙22,乙23の1ないし3,乙24の1の1・2,乙24の2の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,上記販売に係る物品の形状は,本件カード意匠とは同一ではなく,類似ともいえない。)。
エ乙11の1ないし10公報,乙12の1ないし4公報,乙13公報,乙14公報について82上記各公報において開示された形状は,本件カード意匠とは同一ではない。
乙11の1ないし10公報には,長方形状のカード型の形状,円弧状の切欠部の形状,小穴の形状,カードの四方角端の隅取りの形状,の一つ又は複数を組み合わせた形状が開示されている。しかしながら,これらの形状は,本件カード意匠の具体的構成態様とは相当に異なるものである上,上記各公報で開示された形状は,いずれも,本件カード意匠の具体的構成態様cに相当する形状を備えないから,本件カード意匠と類似するともいえない。
乙12の1ないし4公報には,長方形状のカード型の形状,円弧状の切欠部の形状,カード型の四方角端の隅取りの形状,の一つ又は複数を組み合わせた形状が開示されている。しかしながら,これらの形状は,本件カード意匠の具体的構成態様とは相当に異なるものである上,上記各公報で開示された形状は,いずれも,本件カード意匠の具体的構成態様cに相当する形状を備えないから,本件カード意匠と類似するともいえない。
乙13公報には,半円と四角形を接続した形状のカードに円弧状の切れ目を設けた形状,カードの二方角端の隅取りの形状が開示されている。しかしながら,上記形状は,本件カード意匠の具体的構成態様とは相当に異なるものである上,本件カード意匠の具体的構成態様a,b及びdに相当する形状を備えないから,本件カード意匠と類似するともいえない。
乙14公報には,三角形と四角形を接続した形状のカードにおける二方角端の隅取りの形状が開示されているものの,本件カード意匠の具体的構成態様とは相当に異なるものであり,本件カード意匠と類似するものともいえない。
そして,上記各意匠の組合せに基づき,当業者において,本件カード意匠を容易に創作をすることができたものであるとも認めるに足りない。
83オ被告らは,長方形,カード型,周縁部の切欠部,取出部の切欠円弧状部,中心の穴,四隅の円弧状取り,円弧状切込部は,いずれも,機能上,古くから存在するありふれた形状であり,その組合せにも創作性は認められない旨主張する。
しかしながら,仮に,本件カード意匠の細分化した各部分自体の形状が公知であったとしても,それらを組み合わせて一つの意匠にまとめ上げた点に創作性がないとは直ちに言えない。
(4)争点4-g(本件レンズチップ意匠は,新規性,創作非容易性を欠くものか)についてア乙9公報の【図10】(b)について上記図において開示されたレンズ部(段落【0011】の記載によれば,レンズの付近をフイルム(5)と離すために,へこませた状態を示す説明図)には,中央部にゆるやかな山型の凸部を形成し,上記凸部に相当する裏面には凹部を形成し,凸部の頂上部にレンズを配するという概念は示されているものの,本件カード意匠とは同一ではなく,本件レンズチップ意匠の具体的構成態様a及びcに相当する形状を備えないから,本件カード意匠と類似するともいえない。
イ甲第8号証(平成12年10月3日発行に係る雑誌記事)について甲第8号証からは簡易顕微鏡のレンズ部の形状は判然としない(なお,本件カード意匠とは同一ではないから,上記証拠をもって,意匠法第3条1項2号に該当するとはいえない(なお,証拠(乙22,23の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,甲第8号証に掲載された簡易顕微鏡において用いられていたレンズチップ部品の形状は,本件レンズチップ意匠とは同一ではなく,少なくとも本件レンズチップ意匠の具体的構成要件aに相当する形状を備えないから,類似ともいえない。)。
ウ甲第10号証の1・2について84甲第10号証の1・2の記載からは,本件カード意匠の出願前に原告が「カード型顕微鏡『トムズカード』」をBに対して販売していたことが認められるにとどまり,上記販売に係る物品の形状は不明であるから,上記証拠をもって,意匠法第3条1項1号に該当するとは認められない(なお,証拠(乙22,乙23の1ないし3,乙24の1の1・2,乙24の2の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,上記販売に係るレンズチップ部品の形状は,本件レンズチップ意匠とは同一ではなく,少なくとも本件レンズチップ意匠の具体的構成要件aに相当する形状を備えないから,類似ともいえない。)。
エ甲第16号証について甲第16号証には,レンズチップの形状が具体的に表れているとはいえない。
オ乙第15の1ないし5,乙第16の1ないし12,乙第17の1ないし3,乙第18の1・2,乙第19の1・2,乙第20の1・2について(ア)乙第15の1ないし5,乙第16の1ないし12,乙第17の1ないし3の記載からは,販売の対象となっている物品の形状は明らかではないものの,証拠(乙22,乙23の1ないし3,乙24の1の1・2,乙24の2の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,本件レンズチップ意匠と同一又は類似の形状によるレンズチップ部品を用いた簡易顕微鏡の販売を開始したのは,本件レンズチップ意匠の出願後である平成12年11月になって以降のことであり,それ以前に販売していた簡易顕微鏡におけるレンズチップ部の形状は,本件レンズチップ意匠とは同一ではない(少なくとも,全体として円盤状の小片ではなかった。)ことが認められる。
よって,上記証拠をもって,本件レンズチップ意匠が意匠法3条1項1号に該当するとはいえない。
85(イ)乙第18の1・2,乙第19の1・2乙第18の1・2,乙第19の1・2で用いられているレンズチップ部の形状は,本件レンズチップ意匠とは同一ではなく,少なくとも本件レンズチップ意匠の具体的構成要件aに相当する形状を備えないから,類似ともいえない(なお,被告らは,上記各物件の作成時期を平成12年9月中旬ころであるとするが,本件レンズチップ意匠出願前に作成されたものであることを認めるに足りる証拠はない。)。
(ウ)乙第20の1・2乙第20の1・2で用いられているレンズチップ部の形状は,本件レンズチップ意匠とは同一ではなく,少なくとも本件レンズチップ意匠の具体的構成要件aに相当する形状を備えないから,類似ともいえない。
(5)争点4-d,h(本件カード意匠,本件レンズチップ意匠は,意匠法5条3号に該当するものか)について被告らは,本件カード意匠及び本件レンズチップ意匠は,いずれも,物品の性能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠である旨主張する。
しかしながら,本件カード意匠における具体的構成態様及び本件レンズチップ意匠における具体的構成態様は,いずれも,カード型の単式顕微鏡の部品としての機能を確保するために不可欠な構成のみから成るものであるとは認められない。
5小括以上によれば,被告JAPANCREATEは,業として,各被告製品を製造し,被告匠は,業として,これらを譲渡することにより,?@被告製品1及び被告製品2については,本件特許権のうち請求項2,請求項3及び請求項5に係る特許権,本件カード意匠権,並びに本件レンズチップ意匠権侵害し,?A被告製品3については,本件特許権のうち請求項2,請求項3及び請求項6に係る特許権,本件レンズチップ意匠権侵害しているものと認められる。
86そして,被告らには,上記行為について,少なくとも過失が推定される(特許法103条,意匠法40条)。
被告JAPANCREATEと被告匠は代表者が共通であることに加え,両社の取締役は全員共通であること(甲53ないし55),被告JAPANCREATEと被告匠とは,各被告製品の販売について,その製造元と発売元の関係にあること(甲2,3及び弁論の全趣旨)等に照らせば,被告らは,上記侵害行為について共同不法行為責任(民法719条1項)を負うというべきである(不真正連帯債務)。
また,被告らは,出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知って(製品上,又は,その使用説明書上に「特許出願中」との記載があることから明らかである。),本件特許権の設定登録前に,業として,本件特許権の請求項2,請求項3,請求項5及び請求項6に係る発明を実施したから,平成18年5月26日までの実施について,共同して補償金を支払う義務を負う(不真正連帯債務)。
6争点5(損害額)について(1)原告は,本件において,特許権侵害に基づく請求として,平成17年9月1日から平成18年5月25日までは,特許法65条に基づき,補償金を請求し,同年5月26日から平成19年11月20日までは,同法102条1項又は3項に基づき損害賠償(認定額の高い方)を請求し,意匠権侵害に基づく請求として,平成17年9月1日から平成19年11月20日まで,意匠法39条1項又は3項に基づき,損害賠償(認定額の高い方)を請求する。
(2)譲渡数量についてア被告らは,平成17年9月1日から平成19年11月30日までの譲渡数量を証する証拠として,被告JAPANCREATEの売上明細表(乙30ないし32,37ないし39)を提出する。
原告は,上記明細表記載の譲渡数量は客観的裏付けを欠き,直ちに信用87することができない旨主張するものの,他方,原告から,上記明細表に代えて,客観的裏付けを伴う譲渡数量に関する証拠の提出はなく,原告も,被告らの明細表記載の譲渡数量を基に,損害主張を試みているところであるから,上記明細表における譲渡数量を基礎として,損害額を算定することとする。
上記明細表における各被告製品の譲渡数量は次のとおりである。
なお,「卸し販売」は,主として,被告JAPANCREATEから被告匠に対する販売であり,「小売販売」は,インターネット販売を指す(乙42)。
【被告製品1】年月 卸し販売 サンプル 小売販売 サンプル合計(個)H17. 929920019910708104197013191014491122720012710564121862008610482H18. 1181200811047221551005510320315410054103184161100615327594100495248614010040628671551005543353813720037103849165701651094110169200691044888111512005110412121382003810386H19. 1130100301027021271002710264313310033527146710022519451371003732776453100291759972531004794098351002961709329100231847010381003801761121510015033048484702171626211528【被告製品2】年月 卸し販売 サンプル 小売販売 サンプル合計(個)H17. 929910019910608104196013191013491122710012710464121861008610382H18. 1181100811037221551005510320315410054103184161100615327594100495248896140100406286715510055433538137100371028491656016510841101691006910348111511005110312121381003810286H19. 11301003010270212710027102643133100335271467100225194513710037327762531002917399715310047930983510029617092231002318364102381003803761121510015033046423702171626210322【被告製品3】年月 卸し販売 サンプル 小売販売 サンプル合計(個)H17. 9535053501070101265300126510003830113632003631000192612235300235500127090H18. 122461002246504642215710015720434316320163203664173201732038651092010920258612020120202807131201312030281212012120282948920489201018102352023520510113662036620772121442014420328H19. 117220172103742108201081024631482014810326498209810226513220132203046104201041424271761317611247781051010523243993109371267107710770164116110610132812613738126305020675イ平成19年11月20日までの譲渡数量について91上記アの各被告製品における平成19年11月の譲渡数量は,同月1日から30日までの総計であるものの,本件全証拠によるも同月の日ごとの譲渡数量は明らかでない。
そこで,平成19年11月1日から20日までの譲渡数量を,1か月間の譲渡数量の日割計算により算出すると,次のとおりとなる。
被告製品1220個被告製品2220個被告製品388個(3)特許法102条1項,意匠法39条1項による損害額の算定について原告は,特許権侵害については,特許法102条1項による損害算定額と同条3項による損害算定額のうち認定額の高い方,意匠権侵害については,意匠法39条1項による損害算定額と同条3項による損害額のうち認定額の高い方をそれぞれ請求する旨主張する。
しかしながら,各被告製品と競合関係に立つ原告の製品の単位数量当たりの利益の額を的確に認定し得る証拠は存しないから,本件において,特許法102条1項,意匠法39条1項を適用して,損害額を算定することはできないと言わざるを得ない。
(4)補償金,特許法102条3項,意匠法39条3項による損害額の算定についてア実施料率について各被告製品は,いずれも,簡易顕微鏡であり,被告製品1及び被告製品2については,精子,血液,微生物などを観察することをその用途としてうたっており(甲2,4),被告製品3については,「精子鑑定」などと製品に記載し,精子を観察することをその用途としてうたっている(甲3,5)。このような商品分野については,一般に,当該機器で用いられている技術に特許権が付与されている場合には,需要者や取引者は,特許権が92付与されている事実に大きな信頼を寄せることになるということができる。
実際,被告らは,各被告製品について,その製品上や使用説明書上,あるいは,各被告製品を紹介するインターネットホームページ上において,各被告製品について特許出願中である旨を標榜している(甲2ないし5)。
また,本件については,原告とBは,平成12年1月ころ以降,本件特許権に係る発明について共同して事業を行うことを企図し,平成13年3月には,原告とBとの間で,出願中の本件特許権に係る発明について,実施許諾契約や独占的販売許諾契約を締結したこと,上記実施許諾契約では,実施権対価として,?@契約後1年間は,純利益を原告(日本ヒロソフ)とB(日本クリエイト)とで折半すること,?A2年度以降については,許諾製品を販売した販売価格に3パーセントを乗じて得られた金額及び当該販売で得られた売上げより諸経費を差し引いた額を原告とBの販売寄与率に照らして配分することが定められていたこと(甲17),原告は,平成15年6月に上記両契約を解除する旨の意思表示をした当時,Bに対し,被告製品1及び被告製品2に対応する物品を1個当たり100円で,被告製品3に対応する物品を1個当たり200円で納入していたこと(甲21,22,弁論の全趣旨),原告は,Bに対し,上記納入価格の値上げを求めたものの,Bがこれに応じなかったことなどから,Bとの共同事業関係を解消したこと(弁論の全趣旨)が認められる。
(ア)被告製品1及び被告製品2について被告製品1及び被告製品2は,本件特許権のうち請求項2,3及び5の発明に係る特許権,並びに本件カード意匠権及び本件レンズチップ意匠権侵害するものであり,被告製品1及び被告製品2の構成,上記被侵害権利の内容及び上記事情に照らせば,上記各権利の使用料相当額については,総じて,需要者への販売価格の10パーセントと認めるのが相当である。
93(イ)被告製品3について被告製品3は,本件特許権のうち請求項2,3及び6の発明に係る特許権,並びに本件レンズチップ意匠権侵害するものであり,被告製品3の構成,上記被侵害権利の内容及び上記事情に照らせば,上記各権利の使用料相当額については,総じて,需要者への販売価格の10パーセントと認めるのが相当である(なお,上記料率の認定に当たっては,被告製品3が本件レンズチップ意匠を2箇所で使用していることを考慮した。)。
イ販売価格証拠(甲59,乙33)によれば,被告製品1及び被告製品2は,両者をセットとして販売しており,1セット当たりの販売価格が1600円,被告製品3は1個当たりの販売価格が2000円であると認められる。
そして,被告製品1と被告製品2がレンズの倍率が異なるのみで他の構成は同一であることに照らせば,被告製品1の1個当たりの販売価格は,上記1セット当たりの販売価格の50パーセントに相当する800円,被告製品2の1個当たりの販売価格も,同様に,800円であると認めるのが相当である。
ウ上記を前提に算定した補償金(平成17年9月1日から平成18年5月25日までの使用料相当額の補償金)及び損害賠償額(平成18年5月26日から平成19年11月20日までの特許権の使用料相当額の損害金及び平成17年9月1日から平成19年11月20日までの意匠権の使用料相当額の損害金)の合計額は,別紙「補償金及び損害金認定額一覧表」記載のとおりであり,これらの合計は585万6600円となる。
エ遅延損害金の始期について原告は,附帯請求として,平成18年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
94各月の譲渡は,遅くとも当該月の末日までには行われているものと推認することができるから,原告は,遅くとも翌月1日を始期として(ただし,平成19年11月については,同月21日を始期として),前月の譲渡数量に対応する認定額について遅延損害金を請求することができる。
なお,原告は平成18年10月1日を始期とする遅延損害金を請求しているから,平成17年9月1日から平成18年9月30日までの譲渡数量に対応する認定額については,遅延損害金の始期は平成18年10月1日となる(なお,甲26によれば,原告が平成18年10月1日より前に,被告らに対し,補償金の請求を行っていたことを認めることができる。)。
7争点6(各被告製品の製造,販売等の差止め及び廃棄請求の可否,並びに謝罪広告の要否)について(1)被告らは,本訴提起後においても,各被告製品に相当する物品を輸入し(乙40の13),製造,譲渡し,販売のために展示していることに照らせば,被告らに対し,これらの行為の差止めを命ずる必要がある。
(2)被告らの輸入数量(乙40の1ないし13,弁論の全趣旨)と譲渡数量とを対比すると,被告らは,各被告製品の在庫を所有し,占有しているものと推認することができるから,各被告製品の廃棄を命ずる必要がある。
なお,第三者のもとにある各被告製品を回収して廃棄することを求める部分は理由がない。
(3)原告は,被告らに対し,謝罪広告の掲載を求めるものの,被告らの行為により,原告の業務上の信用が害されたとは認められないから,上記請求は理由がない。
8以上のとおりであるから,原告の請求は主文第1ないし3項の限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却し,仮執行宣言は,主文第2,3項については,相当でないからこれを付さないこととする。
95
追加
阿部正幸裁判長裁判官平田直人裁判官柵木澄子裁判官96(別紙)附帯金目録(1)内金31万9280円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(2)内金98万9840円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(3)内金46万7440円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(4)内金32万3120円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(5)内金99万5920円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(6)内金13万8000円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(7)内金12万4080円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(8)内金12万9520円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(9)内金9万1280円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(10)内金10万1760円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(11)内金11万6880円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(12)内金10万9840円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員97(13)内金34万6160円に対する平成18年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(14)内金16万5680円に対する平成18年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(15)内金21万2320円に対する平成18年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(16)内金11万9360円に対する平成19年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(17)内金11万8000円に対する平成19年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(18)内金9万1440円に対する平成19年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(19)内金10万8560円に対する平成19年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(20)内金7万6240円に対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(21)内金10万5120円に対する平成19年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(22)内金12万8240円に対する平成19年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(23)内金15万2840円に対する平成19年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(24)内金7万5800円に対する平成19年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(25)内金12万0120円に対する平成19年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員98(26)内金7万6960円に対する平成19年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(27)内金5万2800円に対する平成19年11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員以上99100101102103(別紙公報省略)104105106107108109110111
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