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事件 平成 19年 (行ケ) 10283号 審決取消請求事件
原告フィリップスルミレッズライティングカンパニーリミテッド ライアビリティカンパニー
訴訟代理人弁護士熊倉禎男,吉田和彦,高石秀樹
訴訟代理人弁理士西島孝喜,市川英彦
被告特許庁長官
指定代理人亀丸広司,北川清伸,森川元嗣,森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/10/29
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が訂正2006−39163号事件について平成19年6月19日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判主文同旨の判決第2事案の概要本件は,原告が,下記1(1)の特許(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明についてした下記1(4)の訂正審判請求(以下「本件訂正審判請求」といい,同請求に係る訂正を「本件訂正」という。)について,審判請求不成立の審決を受けたため,同審決の取消しを求める事案である。なお,本件特許については,下記1(2)のとおり,特許異議の申立て(以下「本件特許異議申立て」という。)がされ,異議2003-73487号事件として係属したところ,特許庁は,「本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定をしたため,原告は,これを不服として審決取消訴訟を提起したが,知的財産高等裁判所は原告の請求を棄却する判決(以下「別件判決」という。)をした。そこで,原告は,同判決を不服として上告受理申立てをしたところ,これを受理した最高裁判所第一小法廷は,平成20年7月10日,「1本件特許の請求項1に係る特許の取消決定に関する部分を破棄する。2特許庁が異議2003-73487号事件について平成18年2月22日にした決定のうち,本件特許の請求項1に係る特許を取り消した部分を取り消す。3上告人のその余の上告を棄却する。」との判決をした。これにより,本件特許のうち請求項2〜4に係る特許を取り消す旨の決定は確定した。
1特許庁等における手続の経緯(1)本件特許(甲第16号証)発明の名称:「発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源」特許権者:原告特許出願日:平成6年8月26日(特願平6-225776号)優先権主張日:1993(平成5)年9月17日(米国)設定登録日:平成15年6月20日特許番号:第3441182号請求項の数:4(2)本件特許異議申立異議申立日:平成15年12月26日(異議2003-73487号)訂正請求日:平成17年12月7日異議決定日:平成18年2月22日決定の結論:「本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」(3)本件異議決定取消訴訟訴え提起日:平成18年7月6日判決日:平成19年6月29日判決内容:請求棄却上告審判決日:平成20年7月10日判決内容:?@原判決中,本件特許の請求項1に係る特許の取り消し決定に関する部分を破棄する。?A特許庁の異議決定中,本件特許の請求項1に係る特許を取り消した部分を取り消す。?B上告人のその余の上告を棄却する。
(4)本件訂正審判請求訂正審判請求日:平成18年10月3日(訂正2006-39163号)審決日:平成19年6月19日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成19年6月29日2本件訂正(1)本件訂正前の請求項1の記載「【請求項1】それぞれが少なくとも2つの接続リードを有する複数の発光ダイオードランプ,アノードバスバー,カソードバスバー,および前記の発光ダイオードランプを前記のアノードバスバーと前記のカソードバスバーの間に機械的噛み合わせ接続によって機械的電気的に接続する手段を有する光源を提供するための発光ダイオードモジュール。」(2)本件訂正後の発明本件訂正後の発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本件発明」という。)。下線部分が本件訂正に係る訂正箇所である。
「【請求項1】それぞれが少なくとも2つの接続リードを有する複数の発光ダイオードランプ,導電性のアノードバスバー,導電性のカソードバスバー,および前記の発光ダイオードランプを前記のアノードバスバーと前記のカソードバスバーの間に機械的噛み合わせ接続によって機械的電気的に接続する手段を有し,前記の機械的噛み合わせ接続が前記のリード及び前記のバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成するようになっていることを特徴とする,光源を提供するための発光ダイオードモジュール。」3審決の理由の要旨審決の理由中,本件発明についての判断に関する部分(なお,審決は本件特許の請求項2〜4に係る発明についても独立特許要件の具備の有無について判断している。)は,以下の各項目において引用したとおりである(ただし,項目の番号及び記号並びに略称について,本判決で指定したものに改めた部分がある。)が,その内容は,要するに,本件訂正は特許請求の範囲減縮を目的とするものであり,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであって,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものではないが,本件発明は,下記の刊行物に記載された発明(以下,刊行物1に記載された発明を「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,本件発明は独立特許要件を満たさないから,本件訂正は特許法126条5項の規定に適合しないというものである。
刊行物1:実願昭63-5171号(実開平1-110454号)のマイクロフィルム刊行物2:特開平5-21097号公報刊行物3:特開昭51-137865号公報刊行物4:実願昭63-53101号(実開平1-157384号)のマイクロフィルム刊行物5:実願平4-5779号(実開平5-59705号)のCD-ROM刊行物8:特開平3-168315号公報(1)刊行物の記載ア 刊行物1(ア)「絶縁材層とこれの両側面に装着される導電性金属板とで,発光ダイオードの1対の針状端子が挟持して両導電性金属板と接触可能な厚みを有する可撓性の帯板状に形成されてなる発光ダイオード配線基材。」(実用新案登録請求の範囲)(イ)「第1図及び第2図は発光ダイオード配線基材1を,発光ダイオード2を接続した状態で示している。この配線基材1は,本体部3a及び取付台部3bからなる断面倒T字状の絶縁材層3と,この絶縁材層3の本体部3aの両側面に装着された両側1対の導電性金属板4,4と,から構成され,絶縁材層3の本体部3aは,発光ダイオード2の1対の針状端子2a,2aがこの本体部3aを両側から挟持して両導電性金属板4,4と接触しうるような厚みを有する可撓性の帯板状に形成されている。」(明細書2頁16行〜3頁5行)(ウ)「この配線基材11に発光ダイオード2…が適当間隔にて配設され,」(明細書5頁10行〜12行)(エ)「(考案の効果)本考案の発光ダイオード配線基材によれば,発光ダイオードの1対の針状端子を,絶縁材層の両側の導電性金属板を挟持するように外側から嵌め込むだけで,電気的接続を行うことができるから,従来のような半田付けを行う必要がなくなって,発光ダイオードの接続作業がきわめて簡単且つ容易となる。」(明細書5頁19行〜6頁6行)上記(ア)〜(エ)の記載事項からみて,刊行物1には次の発明(引用発明)が記載されていると認められる。
「1対の針状端子2a,2aを有する複数の発光ダイオード2と,絶縁材層3の本体部3aの両側面に装着された両側1対の導電性金属板4,4と,から構成され,発光ダイオード2の1対の針状端子2a,2aがこの本体部3aを両側から挟持して両導電性金属板4,4と接触している発光ダイオード配線基材。」イ刊行物2(ア)「図3は,組み立て後の状態を示す図であり,図3(A)は平面図,図3(B)は側面図である。同図に示すように,端子片1の係合部1a,1aは後述するプレス工程によりカシメられてプリント基板3に固定されている。この場合,端子片1の係合部1a,1aをプリント基板3に固定してから,端子片1を連結部2から切り離す。」(段落【0008】)(イ)「【発明の効果】この発明によれば,高密度実装に有利であり機械的接続強度や電気的接続の信頼性が良好で使用材料に制約がないプリント基板の端子構造を提供することができる。」(段落【0013】)ウ刊行物3(ア)「前記突出片3に図示しない電源端子に電気的に接続されている圧着端子2を圧着工具で圧着するだけで,電気的接続が可能となり従来の半田付あるいはねじ止に比べて作業性が向上する。」(1頁右下欄8行〜11行)(イ)「第3図はこの発明の第3の実施例を示すもので,前述の第1図,第2図とは異り長手方向に設けた1対の切り起し片5,6によりコネクタ端子挿入部7を構成し,これらを複数個構成してある。第4図はこの発明の第4の実施例を示すもので,1個の切り起し片8の先端を穴9に差し込んでコネクタ端子挿入部10を構成し,このコネクタ端子挿入部10を複数個構成してある。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄3行)エ刊行物4(ア)「ピンプラグタイプの端子を有し,かつ抵抗を内蔵したLEDランプモジュールと,3枚の絶縁板を重ね,その間に各々電極板を挟んで一体化した積層体に,前記LEDランプモジュールを着脱自在に装着する挿入孔を所要の配列となるように形成する一方,対向する一対の側縁部の一方に雌型コネクタ部を,他方に雄型コネクタ部をその側縁と平行な方向にスライド可能に一体に形成した表示ボードユニットとを備え,複数の表示ボードユニットを使用し,そのコネクタ部の結合によって拡張を行うことを特徴とするLED表示装置。」(実用新案登録請求の範囲)(イ)「前記表示ボードユニットBは必要とする表示面積に応じた枚数を組合わせる。例えば2枚の場合は第3図〜第5図に示すようにユニットB-1とB-2をその雄型コネクタ部Yと雌型コネクタ部Xの結合によって電気的,機械的に接続し,ユニットB-1の雌型コネクタ部Xには雄型コネクタ部Yと略同構造のコネクタ電極21を,ユニットB-2の雄型コネクタ部Yには雌型コネクタ部Xと略同構造のコネクタ電極22をそれぞれ結合させ,これらに側板23,24をねじ25により固定した後,枠形の外ケース26を取付ける。」(明細書6頁4行〜14行)オ刊行物5(ア)「各列毎に直列に接続された複数個のLEDを光源として備えたモジュールタイプLEDを複数個電気的および機械的に接続して構成した車輌用灯具において,前記モジュールタイプLEDのうちのいずれか1つに逆電流防止用ダイオードを組み込み,前記LED群と共に電源に接続したことを特徴とする車輌用灯具。」(実用新案登録請求の範囲,請求項1)(イ)図1,図3には,モジュールタイプLED4A,4Bをリード線20によって電気的に並列に相互接続した車輌用灯具が図示されている。
カ刊行物8(ア)「この組付けは,従来のような溶接は塗膜を破壊するため困難なので,機械的なカシメ(第2図20参照)によりおこなう。」(2頁右下欄11行から14行)(イ)第2図には,シェルアウタ1とセパレーター4とが機械的に接続されていて,その機械的接続がシェルアウタ1とセパレーター4の両方にくぼみを形成するようになってる点が図示されている。
(2)本件発明についての対比・判断本件発明と引用発明とを比較すると,後者の「1対の針状端子2a,2a」,「発光ダイオード2」は,機能,構造からみて,前者の「少なくとも2つの接続リード」,「発光ダイオードランプ」に各々相当し,後者の「発光ダイオード配線基材」と前者の「光源を提供するための発光ダイオードモジュール」は,発光ダイオードを用いた光源である点で共通し,また,バスバーとは,一般に電源供給ラインに替わって使用される細長い棒状の金属の総称であるから,後者の「1対の導電性金属板4,4」は,前者の「導電性のアノードバスバー,導電性のカソードバスバー」に相当する。更に,後者の「発光ダイオード2の1対の針状端子2a,2aがこの本体部3aを両側から挟持して両導電性金属板4,4と接触」することは,発光ダイオード2(発光ダイオードランプ)を両導電性金属板4,4(アノードバスバーとカソードバスバー)の間に電気的に接続する手段を有するものであるといえる。
してみれば,両者は,本件発明の文言を用いて表現すると,「それぞれが少なくとも2つの接続リードを有する複数の発光ダイオードランプ,導電性のアノードバスバー,導電性のカソードバスバー,および前記の発光ダイオードランプを前記のアノードバスバーと前記のカソードバスバーの間に電気的に接続する手段を有する発光ダイオードを用いた光源。」で一致し,次の点で相違する。
<相違点1>発光ダイオードを用いた光源に関し,本件発明は,発光ダイオードモジュールであるのに対して,引用発明は,発光ダイオード配線基材である点。
<相違点2>発光ダイオードランプをアノードバスバーとカソードバスバーの間に電気的に接続する手段に関し,本件発明は,機械的噛み合わせ接続手段を採用し,その機械的噛み合わせ接続がリード及びバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成するようになっているのに対して,引用発明は,各リードを各バスバーに接触させている点。
そこで,上記相違点1,2について以下検討する。
ア相違点1について刊行物4記載のLEDランプモジュールを装着した「表示ボードユニット」,刊行物5記載の「複数個のLEDを光源として備えたモジュールタイプLED」は本件発明の「発光ダイオードモジュール」に相当するので,刊行物4,5には,発光ダイオードモジュールを発光ダイオードを用いた光源とする発明が記載されているといえる。
したがって,発光ダイオードを用いた光源として発光ダイオードモジュールを採用して,本件発明の相違点1に係る構成とすることは引用発明及び刊行物4,5記載の発明から当業者が容易に想到し得たことである。
イ相違点2について刊行物2には,上記(1)イ(ア),(イ)の記載事項からみて,端子片1の係合部1a,1aをカシメによりプリント基板3に固定した機械的接続強度や電気的接続の信頼性が良好な端子構造が記載され,刊行物3には,上記(1)ウ(ア),(イ)の記載事項からみて,コネクタ端子を,切り起し片5,6に挿入してコネクタ端子挿入部7に機械的電気的に接続する接続構造が記載されている。そして,これらの接続構造は,機械的接続手段であって本件発明でいう機械的噛み合わせ接続であるといえる。また,刊行物8には,機械的接続において,接続される部材の両方にくぼみを形成するようになっていることが記載されていて,くぼみをカップ状とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。
そうすると,発光ダイオードランプをアノードバスバーとカソードバスバーの間に機械的電気的に接続する手段として,そのリード及びバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成した機械的噛み合わせ接続を採用して,本件発明の相違点2に係る構成とすることは引用発明及び刊行物2,3,8記載の発明から当業者が容易に想到し得たことである。
そして,上記相違点1,2によって本件発明が奏する作用,効果も,引用発明及び刊行物2ないし5,8に記載された発明から予測される範囲のものであって格別なものとは認められない。
以上のことから,本件発明は,引用発明及び刊行物2〜5,8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,請求人は,引用発明は,「導電性金属板4,4」の弾性変形を必須要件とする機械的接続であり,本件発明及び刊行物7の機械的接続がいずれも塑性変形を前提とする機械的接続であるから,引用発明の「導電性金属板4,4」と本件発明の「バスバー」は対応せず,また,相違点2の判断にも誤りがある旨主張している。
しかしながら,引用発明において,発光ダイオード2は,1対の針状端子2a,2aの弾性的変形による挟持力のみで導電性金属板4,4に機械的接続できることは明らかであり,導電性金属板4,4の弾性的変形を必須要件とする機械的接続であるとはいえない。そして,引用発明の導電性金属板4,4は可撓性を有するからといって塑性変形による機械的接続が排除されるものではない。また,リードの幅は,機械的接続を行うにあたって必要な幅に設計上決めることである。更に,刊行物8には,機械的接続において,接続される部材の両方にくぼみを形成するようになっていることが記載されていることは明らかであり,一般的な機械的接続手段を機械的電気的接続手段として採用できることも当業者にとって自明な事項であるから,この記載に接した当業者は,機械的電気的接続手段としてこの機械的接続手段を採用することは容易に想到し得たことである。
したがって,引用発明の「導電性金属板4,4」と本件発明の「バスバー」は対応せず,また,相違点2の判断にも誤りがあるとの上記請求人の主張は採用できない。
第3当事者の主張の要点1審決取消事由(1)取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)ア審決は,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」が本件発明の「少なくとも2つの接続リード」に相当するとした上,両発明の一致点について「それぞれが少なくとも2つの接続リードを有する複数の発光ダイオードランプ,導電性のアノードバスバー,導電性のカソードバスバー,および前記の発光ダイオードランプを前記のアノードバスバーと前記のカソードバスバーの間に電気的に接続する手段を有する発光ダイオードを用いた光源。」と認定したが,この認定は誤りである。
イ本件発明の「接続リード」はバスバーとともにカップ状のくぼみを形成して,このバスバーとの間に機械的な噛み合わせ接続を確立する程度の大きさを有するものであり,カップ状のくぼみを形成する前提として,バスバーと互いに密着できる平面部分を備えることが必須である。
これに対して,引用発明の「針状端子2a,2a」はそのような構成を有しないから,本件発明の「リード」に相当するものではない。
「針」とは「縫い,刺し,引っ掛け,液を注ぎなどするのに用いる,細くとがった道具の総称」であり,「鍼術(しんじゅつ)に用いる医療道具。・・・古くは針状のもの以外にメス状・へら状のものも使われた。」と説明されており,「針状」は「メス状・へら状」と区別されている。
しかも,引用発明の「針状端子2a,2a」は「発光ダイオードの1対の針状端子」であるところ,発光ダイオードが小さい素子であることは顕著な事実である(甲第1号証でも,針状端子間の間隔は通常0.1インチ(2.54mm)と記載されている。)から,そのような小さな素子との関係で「針」と称される以上,引用発明の「針状端子2a,2a」は,発光ダイオードと比較して充分に小さく,細い構成要素である。また,引用発明の「針状端子2a,2a」はLED2を貫通してLED2に接続されることが要求されるものであるから,針状端子の直径は極めて小さく,細いものである必要がある。
したがって,このような引用発明の「針状端子2a,2a」はカップ状のくぼみを形成し得る平面を有しないことが明らかである。
ウそして,刊行物1(甲第1号証)には,「本考案は配線基板は可撓性を有し且つ帯板状に形成されているため,自由な曲線が簡単に組める」ことが効果として記載されているところ,「針状端子」が配線基板の曲率の大きい箇所に当接する場合でも,(細い)「針状」であれば当接可能であるのに対し,「メス状・へら状」では両表面間の安定的・確実的な「電気的接続」を確立することが困難であるから,引用発明において「針状端子」が「針状」であることは不可欠である。
エ以上のとおり,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」が本件発明の「少なくとも2つの接続リード」に相当するとした審決の認定は誤りである。
(2)取消事由2(一致点の認定の誤り-その2)ア審決は,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」が本件発明の「アノードバスバー,カソードバスバー」に相当するとした上,両発明の一致点について「それぞれが少なくとも2つの接続リードを有する複数の発光ダイオードランプ,導電性のアノードバスバー,導電性のカソードバスバー,および前記の発光ダイオードランプを前記のアノードバスバーと前記のカソードバスバーの間に電気的に接続する手段を有する発光ダイオードを用いた光源。」と認定したが,この認定は誤りである。
イ「バー」とは「棒,横木。スポーツで,高飛びなどの横木やゴール-ポストの横木。」などとされており,本件訂正前の本件特許出願に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明においても「各実施例において,導電性のバスバーは電気的接続以外にLEDランプのための機械的支持体を形成する。」(段落【0048】)とされているように,本件発明の「バスバー」とは,少なくとも「棒」ないし「横木」といえるものであって,LEDランプのための機械的支持体を形成するものである。
これに対して,引用発明は,剛性のある「針状端子2a,2a」の嵌め込み動作の進行によって発生する「導電性金属板4,4」の表面に対する「針状端子2a,2a」からの作用力と,軟質の「絶縁材層本体部3a」から「針状端子2a,2a」の周囲表面を押し返す弾性的反発力との独特の組み合わせにより両表面間の「電気的な接続」を確立することを技術的な本質とするものであるから,引用発明の「針状端子2a,2a」は剛性を有し,「導電性金属板4,4」は剛性を有しないものである。また,「導電性金属板4,4」は,アルミ箔に例示されるような薄い金属板であって,「可撓性」を有し,「自由な曲線が簡単に組める」ものである必要があるから,「バー」ないしは「棒」であってはならない。
ウ以上のとおり,審決が,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」が本件発明の「アノードバスバー,カソードバスバー」に相当することを前提として,引用発明と本件発明の一致点を認定したことは誤りである。
(3)取消事由3(相違点2についての判断の誤り)ア審決は,相違点2として「発光ダイオードランプをアノードバスバーとカソードバスバーの間に電気的に接続する手段に関し,本件発明は,機械的噛み合わせ接続手段を採用し,その機械的噛み合わせ接続がリード及びバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成するようになっているのに対して,引用発明は,各リードを各バスバーに接触させている点。」を認定した上,「発光ダイオードランプをアノードバスバーとカソードバスバーの間に機械的電気的に接続する手段として,そのリード及びバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成した機械的噛み合わせ接続を採用して,本件発明の相違点2に係る構成とすることは引用発明及び刊行物2,3,8記載の発明から当業者が容易に想到し得たことである。」とし,本件発明が奏する作用,効果も予測される範囲のものであって格別なものとは認められないから,本件発明は,引用発明及び刊行物2〜5,8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断したが,審決のこの判断は誤りである。
イ引用発明に対して,刊行物2,3及び8記載の各発明を組み合わせる動機付けは存在せず,むしろ阻害事由が存在する。
(ア) 刊行物8記載の発明は,車両用のマフラーの製造方法に係るものであり,「機械的カシメ」は剛性を有する金属板同士の機械的接続のみを目的とする(電気的接続は無関係である)ものであるから,発光ダイオードランプの接続リードとバスバーとの電気的接続を確保するための本件発明の技術とは異質の技術であるほか,同発明は専ら腐蝕対策として導入されたものであるのに対し,本件発明はバルブランプに比べて光量の劣る発光ダイオードランプを集合的に結合し使用することで所望の光量を確保するものであって,本件発明に関係する部品は刊行物8記載の発明が対象とする部品に比べて遙かに微小であるため,これらは対象となる構成備品の材質,大きさ,適用される溶接技術(温度条件,熱量)等のいずれにおいても異なるものである。
したがって,本件発明と刊行物8記載の発明とは技術分野,解決課題を異にするものであり,引用発明に刊行物8記載の発明を適用することについて動機付けがない。
(イ) 引用発明は,「製作コストが高くつく」ことを問題視して,発光ダイオードの確実な固定を優先させずに,「半田付け作業」を省略して,単に発光ダイオードの端子を配線基材に対し馬乗り状態に嵌め込んだだけの極めて単純な構成を提案した発明であるから,「発光ダイオードの確実な固定」という課題が一般的には存在したとしても,そのような課題を優先せずにあえて単純な構成を提案した引用発明に,半田付けや,それよりも更に複雑な工程を要し,製作コストが高くつく刊行物8記載の機械的接続手段を採用することは考えられず,動機付けが存在しないばかりか,阻害事由が存在する。
また,引用発明の「針状端子2a,2a」は上記(1)のとおり,「針状」のものであり,小型素子の発光ダイオードと比較しても極めて小さく,細いものであるから,これに「カップ状のくぼみ」を形成することは物理的に不可能である。
審決は,「リードの幅は,機械的接続を行うにあたって必要な幅に設計上決めることである。」とするが,仮に引用発明の刊行物8記載の発明を適用することが容易であることを前提とし,本件発明との相違点が「リードの幅」の大きさのみである場合には,そのような相違点に係る構成について設計事項であるとされることはあり得るが,本件では引用発明に刊行物8記載の発明を適用することの容易性が問題とされているのであり,論理の順序が逆であるから,審決の判断は誤りである。
(ウ) さらに,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」は,アルミ箔に例示される薄い金属板であり,しかも,導電性金属板4は絶縁材層3に接着されているから,甲第2号証のようなカシメる構造,甲第3号証のような「切り起し片」を採用することはできない。
ウ以上のとおり,相違点2についての審決の判断は誤りである。
2被告の反論(1)取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)に対して本件発明の2つの「接続リード」は,発光ダイオード素子を外部配線と電気接続する,すなわち,外部の配線との橋渡しの役目を果たすものであって,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」も,同様の役目を果たすものである。
したがって,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」が本件発明の「少なくとも2つの接続リード」に相当するとした審決の認定に誤りはない。
原告は,本件発明の2つの「接続リード」と引用発明の「1対の針状端子2a,2a」は,形状が相違しているから,一致点の認定は誤りである旨主張しているが,「接続リード」は,上記役目を果たす部材を表す用語であって,形状を特定した用語ではなく,原告の上記主張は失当である。
したがって,取消事由1は理由がない。
(2)取消事由2(一致点の認定の誤り-その2)に対してアバスバーとは,一般に,電線に替わって使用される細長い導電性金属板のことであり(乙第1〜第6号証参照),そして,主に,銅(乙第2,第3号証参照),リン青銅(乙第3号証参照)等の金属板,銅,銀,ニッケル等の金属箔(乙第5,第6号証参照)から形成され,その性質は,可撓性(乙第2号証参照),バネ性(乙第3号証参照)を有する等多岐にわたっている。
引用発明の「1対の導電性金属板4,4」は,電線に替わって使用される細長い導電性金属板であって,銅(乙第2,第3号証参照),リン青銅(乙第3号証参照)等の剛性を有する金属板を含むものであるから,バスバーに相当するものであり,また,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」は,各々アノード,カソードとして用いられている。
したがって,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」が,本件発明の「アノードバスバー,カソードバスバー」に相当することは明らかである。
イ原告は,引用発明は,剛性のある「針状端子2a,2a」の嵌め込み動作の進行によって発生する「導電性金属板4,4」の表面に対する「針状端子2a,2a」からの作用力と,軟質の「絶縁材層本体部3a」から「針状端子2a,2a」の周囲表面を押し返す弾性的反発力との独特の組み合わせにより両表面間の「電気的な接続」を確立することを技術的な本質とするものであるから,引用発明の「針状端子2a,2a」は剛性を有し,「導電性金属板4,4」は剛性を有しないものである旨主張している。
しかしながら,刊行物1(甲第1号証)の記載によると,引用発明は,絶縁材層3の本体部3aを,発光ダイオード2の1対の針状端子2a,2aがこの本体部3aを両側から挟持して両導電性金属板4,4と接触し得るような厚みを有する可撓性の帯板状に形成することにより,発光ダイオードの1対の針状端子を,絶縁材層の両側の導電性金属板を挟持するように外側から嵌め込むだけで,電気的接続を行うことができるものである。
そして,1対の部片を,一定の厚みを有する部材に,外側から挟持するように嵌め込むだけで取り付けるものにおいては,1対の部片の弾性力による挟持力のみによって部材に取り付けることが出来ることは技術常識であり,この技術常識を考慮すると,引用発明において,発光ダイオード2は,1対の針状端子2a,2aの弾性力による挟持力のみで導電性金属板4,4に機械的接続するものであることは当業者において理解できることである。
また,原告は,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」は,アルミ箔に例示されるような薄い金属板であり,「可撓性」を有し,「自由な曲線が簡単に組める」ものであるから,「バー」ないしは「棒」ではない旨主張している。
しかしながら,銅の金属板から形成され,「可撓性」を有し,「自由な曲線が簡単に組める」バスバーも存在するから(乙第2号証参照),「可撓性」を有し,「自由な曲線が簡単に組める」ことを理由として,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」が,アルミ箔に例示されるものに限定されるとすることはできない。
ウ以上のとおりであるから,取消事由2は理由がない。
(3)取消事由3(相違点2についての判断の誤り)に対してア引用発明は,発光ダイオードの端子と配線の電気的接続のための半田付けを省略するために,配線の変わりに導電性金属板(バスバー)を採用し,発光ダイオードの端子によって導電性金属板を挟持し,すなわち,両者を機械的接続としたものである。
一方,本件発明も,発光ダイオードランプのリードとバスバーとの電気的接続のための半田付けを省略するために,両者を機械的噛み合わせ接続,噛み合わせ嵌め接続を採用,すなわち,機械的接続手段を採用したものである。
したがって,本件発明と引用発明は,発光ダイオードランプのリードとバスバーとの電気的接続のために,半田付けではなく,機械的接続手段を採用した点においては共通するものである。
また,電気的接続のための機械的接続手段として,カシメ(機械的噛み合わせ接続)を用いることは刊行物2に,切り起し片(機械的噛み合わせ接続)を用いることは刊行物3に,「両部材にくぼみを形成する」ことは刊行物8に記載されている。更に加えれば,機械的接続手段として「両部材にカップ状のくぼみを形成する」ことは周知の技術であり(乙第7,第8号証参照),これら機械的接続手段によって電気的接続を行うことができることは乙第7号証にも記載されているように技術常識である。
そして,電気的接続のための機械的接続手段として,どの手段を採用するかは,発光ダイオードランプの用いられる場所(例えば,自動車などの振動発生場所)に応じ,必要な接続強度等を考慮して当業者が設計上適宜決めることであるから,相違点2の判断に誤りはない。
イ原告は,「半田付け」よりも複雑な工程を要し,製作コストが高くつく,「カシメによる固定」や,「機械的接続手段」を採用することは,引用発明の目的ないし技術思想と正反対であるから,何らの動機付けも存在しないばかりか,阻害事由が存在し,また,引用発明の「針状端子2a,2a」に「カップ状のくぼみ」を形成することは物理的に不可能であり,さらに,引用発明の「1対の導電性金属板4,4」は,アルミ箔に例示される薄い金属板であり,しかも,導電性金属板4は絶縁材層3に接着されているから,刊行物2(甲第2号証)記載のようなカシメる構造,同3(甲第3号証)記載のような「切り起し片」を採用することはできない旨主張している。
しかしながら,製品の信頼性からみて,発光ダイオードが用いられる場所(例えば,自動車などの振動が生じる場所)に応じて,そのリードとバスバーとの機械的接続手段として接続強度の高い手段を採用することは技術常識であり,このことは,刊行物2の記載からみても明らかである。
そして,リードとバスバーの機械的接続手段として,例えば刊行物2(甲第2号証)のようなカシメる構造,同3(甲第3号証)のような「切り起し片」を採用する場合,そのリード構造を,採用される機械的手段に応じた構造とすることも甲第2,第3号証からみて明らかであるから,リードとバスバーの機械的接続手段として甲第8号証,乙第7,第8号証のような「カップ状等のくぼみを形成する」を採用する際,リードの構造を「カップ状等のくぼみを形成する」ことが可能な構造にすることは当業者ならば当然になし得る設計的事項である。
さらに,刊行物1(甲第1号証)の実用新案登録請求の範囲には,「絶縁材層とこれの両側面に装着される導電性金属板」としか記載されておらず,アルミ箔等は,薄い金属板の1つの例示にすぎない。そして,バスバーとしては,銅(乙第2,第3号証参照),リン青銅(乙第3号証参照)等の金属板,銅,銀,ニッケル等の金属箔(乙第5,6号証参照)のものが存在することは当業者にとって自明であるから,甲第1号証の記載に接した当業者は,導電性金属板(バスバー)が,銅(乙第2,第3号証参照),リン青銅(乙第3号証参照)等の金属板を含むものであることは容易に理解することができるのであり,これらの金属板は,機械的接続手段として,甲第2号証のようなカシメる構造,甲第3号証のような「切り起し片」,上記周知の「カップ状のくぼみを形成する」を採用することができるものである。
ウ以上のとおりであるから,取消事由3は理由がない。
第4当裁判所の判断1本件訴訟の対象について本件訂正審判請求は,請求項1及び2に係るものであるところ,前記第2の1(3)のとおり,請求項2に係る特許については特許取消決定が確定した結果,本件訂正審判請求のうち請求項2に係る部分は訂正の対象を欠くものとして無効というべきであり,したがって,同部分に対する審決も同様の理由により,結果的に無効というべきでものである。そうすると,審決は,請求項1に係る部分のみが有効に存在するものというべきであるから,本件審決取消訴訟は,同部分の取消しを求めるものと解するのが相当というべきである。
2取消事由1(一致点の認定の誤り-その1)について原告は,本件発明の「接続リード」はバスバーとともにカップ状のくぼみを形成して,このバスバーとの間に機械的な噛み合わせ接続を確立する程度の大きさを有するものであるのに対して,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」はそのような構成を有するものではなく,「針状」のものであるから,本件発明の「接続リード」に相当するものではない旨主張する。
そこで検討するに,甲第16号証及び同第1号証によれば,本件発明の「2つの接続リード」は,発光ダイオード素子を外部配線と電気的に接続する,すなわち,外部配線との橋渡しの機能を果たすものであるところ,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」も,同様の機能を果たすものと認めることができる。上記事実を踏まえて,審決が本件発明の「2つの接続リード」と引用発明の「1対の針状端子2a,2a」とを「機能,構造」の観点から対比判断した旨の説示をみると,審決は両者の形状を除外して一致点を認定したものであり,形状を分離して判断することを不相当とする特段の事情がない限り,そのこと自体に格別の問題はないと考えられるところ,上記特段の事情を認めるに足りる証拠はなく,上記事実によれば,引用発明と本件発明が上記の機能を果たすものとしての「2つの接続リード」を有する点において一致しているとした審決の認定自体に誤りはない。
これに対し,原告は,本件発明の「2つの接続リード」は,カップ状のくぼみを形成することができるようになっているのに対して,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」はこのような構成を有しないから前記一致点の認定は誤りであると主張する。
そこで,上記主張について検討するに,前述したとおり,審決は,本件発明の「2つの接続リード」と引用発明の「1対の針状端子2a,2a」が,共に,発光ダイオード素子と外部配線との橋渡しの機能を有する点において一致するとしたものであり,両者の形状の異同については言及していないのであるから,この点をも含んだものとして審決の一致点の認定を非難する原告の主張は前提を誤るものであり,採用することができない。
もっとも,原告が指摘する両者の形状の相違について審決がいかなる見解を採っているかについてみると,審決は,相違点2として,「発光ダイオードランプをアノードバスバーとカソードバスバーの間に電気的に接続する手段に関し,本件発明は,機械的噛み合わせ接続手段を採用し,その機械的噛み合わせ接続がリード及びバスバーの両方にカップ状のくぼみを形成するようになっているのに対して,引用発明は,各リードを各バスバーに接触させている点。」を認定しているところである。そして,上記相違点の認定においては,本件発明の「2つの接続リード」については,「リード・・・にカップ状のくぼみを形成するようになっている」とするのに対し,引用発明については,「各リードと各バスバーに接触させている」と認定するにとどまり,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」の形状を明示的に認定していない。
この点に関し,審決は,上記のとおり,本件発明の「2つの接続リード」については,原告が指摘する形状を認定しているのであるから,本件発明の「2つの接続リード」の形状の認定を遺脱したものでないことは明らかである。これに対し,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」については,上記認定のとおり「各リードを各バスバーに接触させている」とするのみで,そのリードの形状を認定したものということはできない。
しかしながら,審決は,相違点2として,本件発明の「2つの接続リード」が「リード・・・にカップ状のくぼみを形成するようになっている」のに対し,引用発明のリードはそのような構成を有しない点で相違するとしているのであるから,引用発明のリードの形状を「針状」と認定していない点において明確さにかけるきらいがあるとしても,原告が指摘する形状の相違を相違点として採り上げていることは明らかであり,この点に判断の遺脱はないものというべきである。
したがって,取消事由1は理由がない。
そこで,以下,相違点2についての判断の適否を問題とする取消事由3について検討することとする。
3取消事由3(相違点2についての判断の誤り)について(1)刊行物2,3及び8に記載の技術ア刊行物2(特開平5-21097号公報,甲第2号証)上記刊行物には,発明の名称を「プリント基板の端子構造」と題する発明において,端子片をプリント基板に固定する新たな方法として,プリント基板に設けた貫通孔にプリント基板に固定しようとする端子片の係合部を挿入した後,プレス工程により上記係合部をカシメ接合する発明が開示されていることが認められる。
イ刊行物3(特開昭51-137865号公報,甲第3号証)上記刊行物には,発明の名称を「電子回路用ブスバー」と題する発明において,電気的接続を図るために,圧着端子を設け,これを端部等に圧着して接合する発明が開示されていることが認められる。
ウ刊行物8(特開平3-168315号公報,甲第8号証)上記刊行物には,発明の名称を「耐蝕マフラー及びその製造方法」と題する発明において,自動車等のマフラーを構成する管路,シェルアウタ等の半完成品を塗装後に機械的カシメにより接合すると同接合部において2つの部材がくぼみを形成する発明が開示されていることが認められる。
エ以上の各刊行物記載の技術によれば,電気的接続を必要とする技術分野において,カシメ接合や圧着接合の機械的接続法が知られており,機械的カシメ接合において接合される平面形状の部材が,カシメにより接合部においてくぼみを形成することも知られていたものということができる。
(2)容易想到性についての検討前項の技術状況によれば,本件優先権主張日(平成5年9月17日)当時,2つの部材の電気的接続を図るための機械的接合方法を検討するに当たり,カシメ接合の方法を想到することは当業者にとって格別困難なことではないものといって差し支えない。そして,カシメ接合を検討する上においては,接合の強固性等を確保するために両部材の接合面の広さの確保が重要な考慮要素となることも,両部材を重ね合わせて加圧するというカシメ技術の性格上当然のことというべきである。
そこで,これを引用発明についてみると,同発明の接合部材である「1対の針状端子」の形状は「針状」と規定されている。一般に「針」とは,「縫い,刺し,引っ掛け,液を注ぎなどするのに用いる,細長くとがった道具の総称。縫針・待針・留針・注射針・釣針・レコード針など,用途に応じてきわめて種類が多い。・・・」(1991(平成3)年11月15日株式会社岩波書店発行の「広辞苑第四版」2106頁)とされていることからみると,「針状」とは「細長くとがった」状態となっていることを意味するものというべきである。また,引用発明に係る刊行物1(甲第1号証)には,「この絶縁材層3の本体部3aの厚さは,発光ダイオード2の針状端子2a,2a間の間隔が通常0.1インチ(2.54mm)であることから,2〜2.5mmとされている。」旨の記載があり,この記載によれば,引用発明に係る発光ダイオードの針状端子は,直径1mmに満たない程度の細長い「針」のような形状になっているものと解することができる。
そうすると,上記のような引用発明に係る「針状端子」の形状をそのままに,カシメ接合面を確保した上,カシメ接合することは困難であるといわざるを得ない。
この点に関し,審決は,「リードの幅は,機械的接続を行うに当たって必要な幅に設計上決めることである」とするが,本件全証拠を精査しても,発光ダイオードの「針状端子」(リード)を,必要とする適宜な幅にすることを容易に行い得ることを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,引用発明の「1対の針状端子2a,2a」に接した当業者が,本件発明の相違点2に係る構成を容易に想到し得たと認めることはできないというべきであるから,取消事由3は理由がある。
4訂正審判請求における判断対象の不可分一体性について(1)前記第2の1に記載したとおり,本件特許に係る請求項は全4項であったところ,本件訂正審判請求は上記請求項中の1及び2に係るものであり,請求項2〜4については,特許取消決定が確定した結果,本件訂正審判請求のうち,請求項2に係る部分は訂正の対象を欠くものとして無効であり,結局,本件訂正審判請求は,本件特許の請求項1に係るものとなった。また,本件特許の請求項3及び4に係る部分についても特許取消決定が確定したため,本件特許は請求項1に係る発明を対象とするものとなった。
ところで,特許庁は,前記第1の3に記載したとおり,本件特許の請求項1及び2に係る訂正審判請求である本件訂正審判請求について,訂正審判請求の対象となっていない請求項3及び4についても独立特許要件の具備の有無について審査すべきものとする立場を採っているところである。本件訂正審判請求については,上記のとおり,本件特許のうち,請求項1以外の各請求項に係る部分の特許取消決定は確定したため,請求項1に係る本件発明のみについての訂正の適否を検討すれば足りるものとなったが,以下,念のため,特許庁の上記取扱いについても検討しておくこととする。
(2)平成6年法律第116号附則6条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成6年改正前」という。)の特許法126条3項は「第一項ただし書第一号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」と規定し,同条1項ただし書第1号は「特許請求の範囲減縮」を掲記するところ,同条3項の上記「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」とは,「特許請求の範囲減縮をした後の発明」であって,「減縮されていない発明」を含むものではないというべきである。
もっとも,上記文言は,文理上,「訂正後における特許請求の範囲に記載されている全ての事項により構成される全ての発明」と解釈する余地があるが,特許法における訂正の審判の位置付けに照らすと,このように解釈することはできないというべきである。すなわち,平成6年改正前の特許法126条が定める訂正の審判は,主として特許の一部に瑕疵がある場合に,その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判請求されるおそれがあるので,そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておくための制度である。他方,特許法153条3項は「審判においては,請求人が申し立てない請求の趣旨については,審理することができない。」と規定しており,訂正の審判においては,訂正を許すべきか否かが判断の対象となり,(その限度で同条1項及び2項に基づいて職権で広範囲に審理できるものの,)求められた訂正の可否を超えて判断することは許されないのである。仮に,特許権者が,複数の請求項の一部の請求項について特許請求の範囲減縮を目的とする訂正を求めて訂正審判を請求した場合において,その訂正の可否を,一旦査定・登録された,訂正を求めていない他の請求項に係る発明についての独立特許要件の具備の有無にも係らしめるというのであれば,訂正審判請求がされるたびに,特許庁は,全請求項について審査を繰り返すことになってしまうほか,特許権者が権利行使の準備等のために必要と考えている訂正について,適時に判断を得ることができない結果ともなり得るし,制度についてのこのような理解は,ひいては,特許権者が訂正したいと考えている請求項のみについて,第三者をして形式的な無効審判を請求させた上,当該審判手続において訂正請求をすることによって実質的に必要な訂正の効果を確保しようとするなど,制度の不健全な利用を招来するおそれすらある。
したがって,平成6年改正前の特許法126条3項において,独立特許要件の存在が求められる発明は,「特許請求の範囲減縮をした後の発明」であるというべきであり,審決の判断中,本件訂正において訂正の対象とされていない請求項3,4に記載された発明について独立特許要件の有無を検討した部分は,審決の結論を導くために必要なものではなく,そもそも本訴における審理の対象となり得ないものであったというべきである。
なお,平成20年7月10日最高裁第一小法廷判決(平成19年(行ヒ)第318号)は「特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されない。」と判断したものであるが,その前提として,特許査定及び訂正審判請求と訂正請求の法的性質が異なることを示すために,「訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。」と説示するほか,「訂正請求の中でも,本件訂正のように特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲減縮を目的とするものについては,いわゆる独立特許要件が要求されない(特許法旧120条の4第3項,旧126条4項)など,訂正審判手続とは異なる取扱いが予定されており,訂正審判請求のように新規出願に準ずる実質を有するということはできない。」と判示している。しかしながら,上記判示中において「一体不可分」とされているのは,あくまでも「複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求」であり,「新規出願に準ずる実質を有する」との判示も,訂正が求められている請求項については,訂正後の特許請求の範囲の記載に基づく新たな特許出願があったのと同様に考えることができることを述べていると理解すべきものであって,訂正が求められていない請求項を含む全ての請求項について特許性の有無を再審査することまで求められるものでないことは明らかである。
第5結論以上のとおり,取消事由3は理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は取り消しを免れない。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 石原直樹
裁判官 杜下弘記
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