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関連審決 無効2006-80220
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10089特許権侵害行為差止等請求控訴事件 判例 特許
平成14ワ9503特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成18ネ10034特許権侵害差止等請求控訴事件 判例 特許
平成15行ケ303審決取消請求事件 判例 特許
平成17ネ10040特許権侵害差止請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  置き換え /  置換 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  請求の範囲 /  減縮 /  拡張 /  変更 /  審決確定(審決が確定) / 
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事件 平成 19年 (ネ) 10010号 特許権侵害差止等請求控訴事件
控訴人株 式会社キーエンス
訴訟代理人弁護士岩坪哲
同 田上洋平
被控訴人オプテックス・エフエー株式会社
訴訟代理人弁護士本渡諒一
同 仲元紹
同 黒田厚志
補佐人弁理 士杉本修司
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/10/27
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴を棄却する。
2控訴人の当審で追加した請求を棄却する。
3当審における訴訟費用は全部控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
第1控訴人の求めた裁判(下線部は追加後の差止請求部分)1原判決を取り消す。
2被控訴人は,別紙物件目録1ないし3記載の光電センサの製造,販売,販売の申出,又は輸出をしてはならない。
3 被控訴人は前項の光電センサを廃棄せよ。
4被控訴人は,控訴人に対し,金4500万円及びこれに対する平成18年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人の負担とする。
6 仮執行宣言第2事案の概要【以下,略称は原判決の例による。】1一審原告である控訴人は,発明の名称を「電子機器ユニット,電子機器および結線構造」とする特許第3457107号(出願日 平成7年9月29日,登録日 平成15年8月1日,請求項の数5。)の特許権者であるところ,本件訴訟は,一審被告である被控訴人に対し,原判決別紙物件目録1ないし3記載の光電センサ(被告物件)を被控訴人が製造販売する行為は上記特許の請求項1を侵害するとして,上記請求項1の特許権に基づき,?@被告物件の製造・販売・販売申出の差止め,?A被告物件の廃棄,?B平成15年8月から平成18年1月末日までの損害賠償金4500万円とこれに対する平成18年2月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である。
2原審の大阪地裁は,平成19年1月16日,上記請求項1の発明は,特開平7-36585号公報(発明の名称「オプション装置」,出願人 株式会社日立製作所,公開日 平成7年2月7日,乙1),特開平2-285698号公報(発明の名称「電子機器用筐体」,出願人 横河電機株式会社,公開日 平成2年11月22日,乙2),及び特開平6-230809号公報(発明の名称「ビルディングブロック構造のプログラマブルコントローラ用ユニット」,出願人 オムロン株式会社,公開日 平成6年8月19日,乙3)に記載された各発明から容易に想到できたから進歩性に欠け(特許法29条2項違反),特許法104条の3第1項によりその権利を行使することができないとして,控訴人の上記請求をいずれも棄却した。そこで,これに不服の控訴人が本件控訴を提起した。
3当審に至り控訴人は,上記第1,2・3のとおり差止請求部分を追加したものである。
4当審における争点は,原審におけるそれと基本的に同様であるが,とりわけ特開平1-184668号公報(乙13の2,後にいう「新引用例」)との間における進歩性の有無である。
5なお,本件特許権に対し被控訴人から無効審判請求がなされ,特許庁がこれを認容する審決をしたことから,控訴人が審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10163号)を提起し,本件訴訟と並行して審理が進められている。
・平成15年8月1日 本件特許権登録(請求項の数5)・平成18年10月26日無効審判請求(無効2006-80220号事件)・平成18年12月18日訂正請求(第1次。請求項1・2を変更して請求項3を削除し,4・5を3・4に繰り上げ。)・平成19年5月1日訂正請求(第2次。請求項1・2を変更して請求項3を削除し,4・5を3・4に繰り上げ。)・平成19年8月14日審決(第1次。訂正を認め,請求項1〜4無効)・平成19年9月19日審決取消訴訟(平成19年(行ケ)第10325号)を提起・平成19年12月6日知財高裁が特許法181条2項による差戻し決定・平成19年12月21日訂正請求(第3次。請求項1・2を変更して請求項3を削除し,4・5を3・4に繰り上げ。)・平成20年4月15日審決(第2次。訂正を認め,請求項1〜4無効)・平成20年5月1日審決取消訴訟(平成20年(行ケ)第10163号)を提起第3当事者の主張当事者双方の主張は,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」,「第3争点に関する当事者の主張」記載のとおりであるから,これを引用する。
なお,控訴人の平成19年12月21日付け訂正請求(第3次のもの)を以下「本件訂正」という。
1控訴人(1) 差止め請求部分の追加等被控訴人は,イ号物件の型式名「WLL190」としてOEM供給している製品の供給先につき,ドイツ連邦共和国「SICKAG」社に対しても供給・販売を行っていることから,同社を供給先を追加し(別紙「物件目録1」記載のとおり),これを差止め対象に加える。
また被控訴人がイ号物件,ロ号物件は「増設用コネクタ」を備えないと反論するところ,被控訴人は「部品B」(増設用コネクタ)について光電センサ本体と接合試験を行ったうえで,販売形式上のみ,「子ケーブル」(「DOL-LL1901-02M」ないし「DOL-LL1901-05M」)と同梱か或いは「増設用コネクタ」(「STE-WLL190-05P」ないし「STE-WLL190-03P」)単体で別売りしているにすぎない。そこで,本件イ号及びロ号物件が増設用コネクタを含むことを明りょうにするため,別紙物件目録1,2に増設用コネクタを型式名を特定して記載する。
さらに,平成18年法律第55号による改正後の特許法2条3項1号が平成19年1月1日に施行されたことに伴い,輸出についても差止め対象行為に加える。
(2)本件特許発明(本件訂正前の請求項1)の進歩性判断に関する原判決の誤り原判決には,本件特許発明(本件訂正前の請求項1。特許登録時のもの)の進歩性判断において,以下のとおり誤りが存する。
一致点の認定の誤り原判決は,乙1(特開平7-36585号公報)の接続ユニット42を主引用例(引用発明)とした上で,訂正前の本件特許発明と引用発明とは「…該接続用の開口の1つを貫通して,前記第1コネクタに接続されると共に他の電子機器ユニットに接続される第2コネクタとを備えた」電子機器ユニットである点で両者が一致すると認定した(28頁22行〜24行)。
しかし乙1には「接続用開口を貫通して第1コネクタに接続される第2コネクタ」の開示は一片も存在せず,上記一致点認定は根拠のないものである。即ち,乙1には「4か所に設けた外部コネクタ43が全て同一高さでは増設するオプション装置のハウジングと干渉するためにジョイントコネクタ44を用いてコネクタ高さを高く」することで,特定の外部コネクタ43のみをかさ上げしてオプション装置の増設コネクタに届かせる技術思想が開示されているのみである。
ここで,筐体(ウエケース及びシタケース)の内壁との関係において,外部コネクタが内壁面よりも内側に引退していること,換言すれば,外部コネクタ43に接続されるジョイントコネクタ44が「接続用開口を貫通」している必要性も必然性も全く存在しないことは明らかである。実際,乙1においては,ジョイントコネクタ44の先端がシタケースの壁面を貫通して内側まで到達することを示唆する一片の記載も存在しない。ウエケースとシタケースの内壁面間の空間距離「D2」と外部コネクタ43及び増設コネクタ45の厚みを加味したオプション接続基板41の厚み「C」との関係は,「D2≦C」であって全く構わないのである。
この点に関して,原判決は,「…ジョイントコネクタが開口の壁面すら貫通できなければ,ジョイントコネクタは容易に接続ユニットから脱落してしまう」などと判示しているが(37頁末行〜38頁2行),コネクタ同士の機械的接合はコネクタケース同士の機械的な嵌合と雌雄ピンコンタクトのかしめにより実現されることは当業者ならずとも理解できる技術的自明事項であって,筐体の壁面を貫通するか否かはコネクタの接合と関係がない。コネクタが筐体の壁面より内側に没入していなければコネクタが脱落することが常識であるとすれば,筐体に覆われないコネクタ,例えば,基板に実装されたコネクタとハーネス(コネクタが末端に設けられたケーブル)との結合は不可能ということになる。
イ相違点?@についての検討の誤り原判決は,引用発明と本件特許発明とは「本件特許発明の第1コネクタは『一対の』,すなわち2個で1組となるコネクタであるのに対して,引用発明には1個の増設コネクタ45に対応する外部コネクタ43が4個設けられており,2個で1組という構成を有しない点」において相違するが(29頁1行〜3行),当該相違点は下記理由により当業者が容易に改変できる設計事項であると判断した(29頁20行〜30頁3行)。すなわち「引用発明のような接続ユニットの現実の使用態様を考えるに,ユーザは,既に購入済みのオプション装置のコネクタの位置が相互に合わない場合においては,そのオプション装置のコネクタの位置に合わせて外部コネクタを設けた接続ユニットを買い求める場合が多いと容易に想到し得るから,そのような需要に対応するためには,その特定の箇所1か所に外部コネクタが設けられていれば十分であることが当業者に自明である。したがって,上記のような場合を想定して,4か所に外部コネクタを設けた引用発明の構成を1か所にのみ外部コネクタを設ける構成に変更することは,当業者が適宜選択できる設計事項であるというべきである。」しかし,4か所の外部コネクタを設けた接続ユニット42を準備する目的は,「既に購入済みのオプション装置のコネクタの位置が相互に合わない場合」において相互の連結を可能とするためである(乙1,5欄29行〜39行)。即ち,接続ユニット42は接続不能なオプション装置間の接続を可能とするために用いられる汎用のユニットなのである。これに対し,「特定のオプション装置同士の結合にのみ供するカスタマイズされた複数種類の接続ユニット」を準備することは,メーカーにとっては複数種類の接続ユニット用に新たな金型を複数準備することを強制し,購入者に対しても本来なら1つ持っていればよい接続ユニットを複数購入することを強いるという,当業者にとって発想の及ばない極めて不自然な改変である。
また原判決のいうように外部コネクタ43を1か所にした途端に引用発明(接続ユニット42)には「ジョイントコネクタ44」を設ける意味が消失し,外部コネクタを,別のコネクタであるジョイントコネクタ44によってかさ上げするという有害無益な改変に当業者が想到するはずがないという自明事項を看過した誤りがある。
乙1には,「…上述する3種類のオプション装置では組合せを変えることで2種類のオプション増設が可能であったが,4種類以上の場合は接続用の専用コネクタ基板を設け対応する。例えば4種類目のオプション装置を書体増設基板54を内蔵する書体増設オプション40とする場合,4種類全てのオプション装置,書体増設オプション40,LP-IF装置64,IS-IF装置65,パソコン通信装置66を増設するときは問題が無いが,その中から2種類のオプション装置を接続することができない組合せがある。それは前後のオプション装置を増設しない場合であることから,増設するためにオプション装置に接続できるようコネクタを4箇所設けたオプション接続基板41を内蔵する接続ユニット42を設けることによりオプション装置の増設が可能となる。図14はこのオプション接続基板41を内蔵する接続ユニット42である。4か所に設けた外部コネクタ43が全て同一高さでは増設するオプション装置のハウジングと干渉するためにジョイントコネクタ44を用いてコネクタ高さを高くし,増設コネクタ45とオプション装置に設けた接続コネクタ21とを接続することで,特定のオプション装置を増設しなくともユーザが必要とするオプション装置のみ増設することができる」と記載されている(段落【0033】〜【0035】)。
3種類のオプション装置を有するユーザにとっては,どのような順序でもコネクタの位置を合わせてオプション装置を増設することができ,またオプション装置が4種類に増えた場合もこれを全て使用する限り接続に支障を生じないが,そのうち2種類のオプション装置だけ使用する場合には接続できない事態を生ずるから,接続ユニット42を用いて「コネクタの位置を相互に合わせ」て使用するのである。このように,接続ユニット42を設ける動機,目的は,原判決がいう「既に購入済みのオプション装置のコネクタが相互に合わない場合(注:図3)において」,「そのオプション装置のコネクタの位置(注:図4の場合,LP-IFの増設コネクタ24と,IS-IFの接続コネクタ21)」を合わせるためなのである。
乙1は,原判決が指摘する動機を解決する手段として「コネクタを4か所設けたオプション接続基板41を内蔵する接続ユニット」という完結した解決手段を開示している。
しかるに原判決は,上記図3の場合において「そのオプション装置のコネクタの位置に合わせて外部コネクタを設けた接続ユニット(特定の箇所1か所に外部コネクタが設けられた接続ユニット)を買い求める場合が多い」としたが,根拠を欠く。すなわち「4種類全てのオプション装置…を増設するときは問題が無いが,その中から2種類のオプション装置を接続することができない組合せがある」という課題を解決するために,どの組み合わせでも対応できる1種類の「コネクタを4箇所設けたオプション接続基板41を内蔵する接続ユニット42」を設けたにもかかわらず,「特定のオプション装置」(図12ではIS-IF装置及び書体増設オプション)に専用の「特定の箇所1か所に外部コネクタが設けられた」接続ユニットを複数種類準備するということは,メーカーにとっては新たに金型を複数種類起こすというコスト増をもたらし,ユーザにとっても新たな部材購入代金という無駄なコストを強いることになる。
更に「4か所に外部コネクタを設けた引用発明の構成を1か所のみ外部コネクタを設ける構成に変更すること」は,即ち,「4か所設けた外部コネクタ43が全て同一高さでは増設するオプション装置のハウジングと干渉するためにジョイントコネクタ44を用いてコネクタ高さを高く」する必要性がなくなり,接触不良な破損,紛失等の不利益しかもたらさない有害無益なジョイントコネクタを設ける必然性がなくなることである。
技術的に意味のない「外部コネクタ43」と「ジョイントコネクタ44」とのツーピースの構成を採用することは当業者が適宜選択し得る設計事項とはいえない。
原判決は,引用例3(乙3)を引用し,「同一技術分野」とか「機能の拡張性を向上させるという共通の課題」を云々したうえで,引用発明に引用例3に記載された発明を組み合わせて本件特許発明のようにすることは容易想到であると結論しているが(31頁12行〜15行),その「組み合わせ」は乙1の接続ユニット42におけるジョイントコネクタ44の設置動機を失わせる誤った判断である。
即ち,引用発明に引用例3に記載された発明を適用した途端,原判決が引用発明と本件特許発明の一致点として認定した「第2コネクタ」を設けることが出来なくなる。よって,「引用発明に引用例3に記載された発明を適用するに当たって,その適用を妨げるような記載や示唆はない」とした原判決の判断(31頁11行〜12行)は誤りである。
ウ相違点?Aに関する検討の誤り原判決は,「引用例2には,引用発明との相違点?Aである本件特許発明構成要件B?@ないし?Bの構成(『?@該一対の第1コネクタ付の前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有する…?B箱状のケース本体と』)を備える発明が記載されている」と認定し,乙2によって相違点?Aを補充することができるとの論理構成を採用しているが(31頁22行〜末行),上記認定は事実誤認である。
引用例2(乙2)には,「該一対の第1コネクタ」,即ち訂正前の構成要件Aに係る「配線基板の表面および裏面に取り付けられた一対の第1コネクタ」は開示されておらず,当然ながら当該第1コネクタ付きの配線基板が挿入される基板挿入用開口を有するケース本体も開示されていない。
引用例2に開示されているのは,配線基板の端部に,ケーブル付きのコネクタと接続されるコネクタ21,22を上下に間隔を置いて設ける配線基板と,これを納めるケース10のみである。当該コネクタを配線基板に横付けされるよう変更し,その状態の配線基板をケース本体に挿入する構成は開示も示唆もされておらず,従って,乙2に記載された発明を乙1のオプション装置に適用しても本件特許発明には到達し得ない。
なお,原判決は,「引用発明と引用例2に記載された発明」の結合動機に関する判断においても,事実誤認をしている。原判決は,「引用発明と引用例2に記載された発明は,いずれもケーブルの配線を要することなくコネクタにより他のユニットと直接接続することを可能とするように,コネクタが取り付けられた電気回路基板を収容する電子機器ユニットに関するもので,同一技術分野に」属すると認定したが(32頁1行〜4行),乙2の「コネクタ21,22」は,「ケーブル付きコネクタの接続に使用される」ものであり(乙2の3頁左上欄4行〜5行),「他のユニットと接続する」ものではないし,その他に,乙2のモジュールユニットが「他のモジュールユニット」とコネクタによって直接接続されることを開示ないし示唆する記載は存在しない。
即ち,原判決が乙1に乙2を結合する動機付けとして認定した「技術分野の同一性」は存在せず,よって,両号証に記載された発明が相互に適用容易であるとした結論も誤りである。
エ相違点?Bについての検討の誤り原判決は,本件特許発明と引用発明の相違点?Bとして,前者は「ケース本体における壁面に形成され一対の第1コネクタが近接して臨む一対の接続用の開口」であるのに対し,後者は「カバー(シタケース)における壁面に外部コネクタが近接して臨む4つの開口が形成されている点」において本件特許発明と相違するが(原判決29頁11行〜14行),当該構成については,「引用例2には『フロントカバー30(本件特許発明の『カバー』)に形成されコネクタ21,22が近接して臨むケーブル付きコネクタ接続用の矩形の開口部31,32から成る』という相違点?Bに係る構成が開示されている」とし,そのうえで該ケースの構造を乙1の接続ユニット42(引用発明)に適用すれば,「ケース本体における壁面に接続用の開口が形成されることになる」と判断した(32頁22行〜33頁4行)。
しかし,乙2には,本件特許発明の特定事項である「ケース本体における前記壁面に形成され前記一対の第1コネクタが近接して臨む一対の接続用の開口」,即ち,一対の壁面のそれぞれに各ひとつずつ開口された開口は開示されていない。乙2のフロントカバーにおける開口31,32は,配線基板の端部に上下に設けられたコネクタ21,22に対応して,上下に直列された開口であって,「相違点?Bに係る構成」,即ち,本件特許発明の「ケース本体における壁面に形成され一対の第1コネクタが近接して臨む一対の接続用の開口」との構成を開示していないことは明白である。
従って,「引用発明と引用例2の組合せ」について思考を巡らせても「ケース本体における壁面に一対の接続用の開口が形成される」構成に辿りつくことはできない。
よって,上記事実誤認は乙1及び乙2に基づく進歩性否定の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
なお,乙1のオプション接続基板41を乙2のケース10にその開口部側から押し込むことが可能であるとの開示ないし示唆も両号証中に見出すことはできない。乙1には外部コネクタ43及び増設コネクタ45付きのオプション接続基板41の厚みがケースの内壁面間距離より薄い旨の開示ないし示唆が全く存在せず,そのような構造を採用する必然性も存在しない。そうすると,基板から突出した増設コネクタ及び外部コネクタがケースの壁面と干渉し,開口部から押し込むことが出来ないことは明らかである。
この点について,原判決は,「…当業者であれば,引用例1の他の箇所の記載から,図14,図15の増設コネクタ45の端面がケース内壁の内側にあって開口に近接しているとの技術内容が開示されていることを十分に把握することが可能である」(33頁20行〜23行)と認定しているが,図14,15をどのように解釈すれば「外部コネクタ43」及び「増設コネクタ45」の端面がケース内壁の内側に近接して臨んでいると認定できるのか,根拠が明らかでない。原判決の「引用発明において,外部コネクタの数を1個にすることが当業者が適宜選択し得る設計事項である」(34頁4行〜5行)との判断も誤りである。
(3)被控訴人が特開平1-184668号公報(乙13の2,発明の名称「識別装置」,出願人 立石電機株式会社,公開日 平成元年7月24日)に基づき本件特許発明の無効を主張することは,時機に遅れた攻撃防御方法として許されない。
被控訴人は,本件特許の無効審判事件(無効2006-80220号事件)における合議体による職権審理結果通知書に便乗する形で乙13の2に基づき無効主張をするが,本訴の経過に照らして時機に後れたものであり,却下されるべきものである。
被控訴人は,原審において一貫して前記乙1〜4に基づく本件特許発明(訂正前の請求項1)の進歩性欠如を主張していた。被控訴人は,平成18年3月17日の原審第1回口頭弁論以降,7ヶ月半もの公知資料検索の機会を付与されていながら,上記引例(乙1〜4)以外の公知文献の存在,内容には一切言及していなかった。それゆえ,原判決も上記引例中乙1〜3に対する進歩性の存否のみに焦点を当てて判断を下した。
ところが,被控訴人が新たに引用する乙13の2,あるいは乙13の3〜6(特開平4-174924号公報,同平5-268043号公報,同平5-167418号公報,実開平3-30339号公報)に基づく無効理由の主張は内容に具体性を欠くものの,少なくとも原審において主張されなかった新規の主張であることは明らかである。そして,被控訴人において,上記の公知文献を原審口頭弁論終結時までに提出できなかった格別の事情も存しないから,当該主張は被控訴人の過失により時機に後れて提出されたものであることは明らかである。してみれば,被控訴人による提出の目的が本件審理の不当遅延にあることも明らかである。
よって,上記主張は,民事訴訟法157条あるいは特許法104条の3第2項に基づき却下すべきである。
(4) 訂正請求の再抗弁(特許無効の抗弁に対し)仮に被控訴人主張のように本件特許発明(訂正前の請求項1。特許登録時の請求項1)に無効理由があるとしても,?@控訴人は本件特許権に対する無効審判手続(無効2006-80220号事件)において平成19年12月21日付けで下記アの内容を有する訂正請求(本件訂正。請求項1,2の内容を変更するほか,3を削除し,4・5を3・4に繰り上げ)を行い,?Aその内容は,いずれも特許請求の範囲減縮等を目的とするものであって,その実質的拡張変更にも該当せず,かつ特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり,かつ,?B被告物件は後記イのとおり訂正後の請求項1の技術的範囲に属するものである。
ア(ア)本件訂正後の請求項1(以下「訂正発明1」という)の記載は以下のとおりである(下線は訂正部分)。
「光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式検出器のアンプユニットであって,一枚の配線基板の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられると共に,後記箱状のケース本体内で後記一対の壁面の内壁から内方で後記一対の接続用の開口に近接して臨むように設けられる一対の第1コネクタと,その下方でレールに取り付けられる箱状のケース本体であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有し,該基板挿入用の開口の面積が前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板の表面および裏面の各面の面積よりも小さくなるように形成されると共に,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板に略平行な一対の壁面を有し,該略平行な一対の壁面に沿って前記基板挿入用の開口から下方に前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される箱状のケース本体と,該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーと,前記箱状のケース本体における前記一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が前記基板挿入用の開口から前記箱状のケース本体に挿入されたとき前記一対の第1コネクタが前記一対の壁面の内壁から内方で近接して臨む一対の接続用の開口と,該一対の接続用の開口の1つを貫通して該1つの接続用の開口が形成された一方の前記壁面の内壁を越えて前記箱状のケース本体の内側に挿入され,前記一対の壁面の内壁から内方に位置する前記一対の第1コネクタのうちの前記1つの接続用の開口に近接して臨む一方の第1コネクタに前記一対の壁面の内壁から内方で接触端子によって接続されていると共に他の検出器のアンプユニットに前記箱状のケース本体の外側で接触端子によって接続される第2コネクタとを備え,前記一対の第1コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みが前記箱状のケース本体の内側の幅よりも小さく前記基板挿入用の開口から挿入可能な厚みであり,かつ,前記箱状のケース本体の内側の幅が前記一対の第1コネクタのうちの一方に前記第2コネクタを接続したときの前記一対の第1コネクタおよび前記第2コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さいことを特徴とする光ファイバ式検出器のアンプユニット。」(イ) 訂正発明1を構成要件に分説すると以下のとおりである。
A’光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式検出器のアンプユニットであって,A一枚の配線基板の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられると共に,後記箱状のケース本体内で後記一対の壁面の内壁から内方で後記一対の接続用の開口に近接して臨むように設けられる一対の第1コネクタと,Bその下方でレールに取り付けられる箱状のケース本体であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有し,該基板挿入用の開口の面積が前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板の表面および裏面の各面の面積よりも小さくなるように形成されると共に,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板に略平行な一対の壁面を有し,該略平行な一対の壁面に沿って前記基板挿入用の開口から下方に前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される箱状のケース本体と,C該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーと,D前記箱状のケース本体における前記一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が前記基板挿入用の開口から前記箱状のケース本体に挿入されたとき前記一対の第1コネクタが前記一対の壁面の内壁から内方で近接して臨む一対の接続用の開口と,E該一対の接続用の開口の1つを貫通して該1つの接続用の開口が形成された一方の前記壁面の内壁を越えて前記箱状のケース本体の内側に挿入され,前記一対の壁面の内壁から内方に位置する前記一対の第1コネクタのうちの前記1つの接続用の開口に近接して臨む一方の第1コネクタに前記一対の壁面の内壁から内方で接触端子によって接続されていると共に他の検出器のアンプユニットに前記箱状のケース本体の外側で接触端子によって接続される第2コネクタとを備え,F前記一対の第1コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みが前記箱状のケース本体の内側の幅よりも小さく前記基板挿入用の開口から挿入可能な厚みであり,かつ,前記箱状のケース本体の内側の幅が前記一対の第1コネクタのうちの一方に前記第2コネクタを接続したときの前記一対の第1コネクタおよび前記第2コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さいことを特徴とするG光ファイバ式検出器のアンプユニット。
イ 被告物件の訂正発明1の構成要件充足性(ア)被告物件のうち,イ号物件は以下の構成を有する(別紙「イ号物件説明書」参照)。
1a’光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式の検出器のアンプユニットである。
1a一枚の配線基板2の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体1内で後記一対の壁面1a,1bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口5a,5bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部6a,6bを有する。
1bその下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた配線基板2が挿入される基板挿入用開口部4を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記配線基板2に略平行な一対の壁面1a,1bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部4から下方に前記配線基板2が挿入されるケース1を有する。
1cケース1の前記開口部4は,デジタルモニタ9及び設定ボタン10を備えたパネル体3によって閉塞される。
1dケース1における前記一対の壁面1a,1bの前記基板挿入用開口部4から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口5a,5bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記基板2が前記基板挿入用開口部4から前記ケース1に挿入されたとき前記開口5a,5bに,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが,前記一対の壁面1a,1bの内壁から内方で近接配置されている。
1e増設用コネクタ7は,増設用コネクタ接続用の開口5a,5bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部6a,6bのうちの前記接続用開口5a,5bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース1の外側で接触端子によって接続される。
1f前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記配線基板2の厚みは,前記基板挿入用開口部4から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース1の内側の幅が,前記配線基板2に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部6a,6bの一方に前記増設用コネクタ7を接続したときの前記増設コネクタ接続部6a,6b及び前記増設用コネクタ7の厚みに前記配線基板2の厚みを加えた厚みより小さい。
1g 以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
(イ)被告物件のうち,ロ号物件は以下の構成を有する(別紙「ロ号物件説明書」参照)2a’光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式の検出器のアンプユニットである。
2a一枚の配線基板102の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体101内で後記一対の壁面101a,101bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口105a,105bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部106a,106bを有する。
2bその下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた配線基板102が挿入される基板挿入用開口部104を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記配線基板102に略平行な一対の壁面101a,101bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部104から下方に前記配線基板102が挿入されるケース101を有する。
2cケース101の前記開口部104は,回転感度ボリウム109及び表示灯110を備えたパネル体103によって閉塞される。
2dケース101における前記一対の壁面101a,101bの前記基板挿入用開口部104から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口105a,105bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記基板102が前記基板挿入用開口部104から前記ケース101に挿入されたとき前記開口105a,105bに,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが,前記一対の壁面101a,101bの内壁から内方で近接配置されている。
2e増設用コネクタ107は,増設用コネクタ接続用の開口105a,105bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部106a,106bのうちの前記接続用開口105a,105bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース101の外側で接触端子によって接続される。
2f前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記配線基板102の厚みは,前記基板挿入用開口部104から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース101の内側の幅が,前記配線基板102に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部106a,106bの一方に前記増設用コネクタ107を接続したときの前記増設コネクタ接続部106a,106b及び前記増設用コネクタ107の厚みに前記配線基板102の厚みを加えた厚みより小さい。
2g 以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
(ウ)被告物件のうち,ハ号物件は以下の構成を有する(別紙「ハ号物件説明書」参照)3a’レーザセンサからの信号を変換して信号の処理を行うレーザ式の検出器のアンプユニットである。
3a一枚の配線基板202の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体201内で後記一対の壁面201a,201bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口205a,205bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部206a,206bを有する。
3bその下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた配線基板202が挿入される基板挿入用開口部204を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記配線基板202に略平行な一対の壁面201a,201bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部204から下方に前記配線基板202が挿入されるケース201を有する。
3cケース201の前記開口部204は,デジタルモニタ209及び設定ボタン210を備えたパネル体203によって閉塞される。
3dケース201における前記一対の壁面201a,201bの前記基板挿入用開口部204から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口205a,205bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記基板202が前記基板挿入用開口部204から前記ケース201に挿入されたとき前記開口205a,205bに,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが,前記一対の壁面201a,201bの内壁から内方で近接配置されている。
3e増設用コネクタ207は,増設用コネクタ接続用の開口205a,205bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部206a,206bのうちの前記接続用開口205a,205bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース201の外側で接触端子によって接続される。
3f前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記配線基板202の厚みは,前記基板挿入用開口部204から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース201の内側の幅が,前記配線基板202に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部206a,206bの一方に前記増設用コネクタ207を接続したときの前記増設コネクタ接続部206a,206b及び前記増設用コネクタ207の厚みに前記配線基板202の厚みを加えた厚みより小さい。
3g 以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
(エ) まとめ以上のとおりであるから,イ号物件の構成1a〜1g及びロ号物件の構成2a〜2gは,いずれも訂正発明1の構成要件A〜Gをそれぞれ充足する。
なお,ハ号物件の構成3aは,本件訂正発明1の構成要件Aを充足しない。ハ号物件はレーザ式の光電スイッチだからである。従って,控訴人は,無効主張に対する対抗主張が認められることを停止条件として,ハ号物件に対する差止請求を取り下げる。
(5) 訂正発明1の無効主張に対する反論被控訴人は,本件訂正に係る請求項1(訂正発明1)にも進歩性を欠く無効理由があり本件訂正請求はその要件を欠くと主張するが,以下に述べるとおり,被控訴人の主張は失当である。
ア 「接続用開口」の非開示乙13の2の第2図には,ソケット型コネクタ14,15よりも一b-1回り大きい矩形状の段差部の周縁が明記されているところ,該段差部は明らかに有底である。
そして,該段差部の段落ちした底部に,ヘッド制御モジュールの外壁面と面一に貼着されたコネクタ15,15が設けられていることは明a-1b-1らかである。更には,コネクタ15,15がヘッド制御モジュールa-1b-1の外壁面と面一に設けられていることは,乙13の2の第1図に中継コネクタ16の厚み分の隙間がヘッド制御モジュール12,12…間に明-1 -2記されていることから明らかである。被控訴人は該隙間につき「明細書には隙間の事について何ら言及していないのであるから,この図面にある隙間は単に各モジュールの配列順序を示すために分かりやすいように記載しているものであって,図1は製作図面でもなんでもないのであるから,重要視しないのが,この種の図面をみるときの技術者の合理的かつ一般認識である」などと述べるが,「各モジュールの配列順序を示す」ために「隙間」を記載する必要性も必然性も全くなく,被請求人の主張は根拠に欠ける。
イ訂正発明1の「第2コネクタ」の非開示乙13の2の中継コネクタ16は,「接続用の開口の1つを貫通して該1つの接続用の開口が形成された一方の前記壁面を越えて前記箱状のケース本体内の内側に挿入」されるものではない。乙13の2のヘッド制御モジュールには「一対の接続用の開口」が開示されていない以上,該「開口の1つを貫通」するものが開示されているとはいえない。
そして,乙13の2のヘッド制御モジュール間には,前述のとおり,中継コネクタ16の厚みに相当する隙間が存在するものである。これはヘッド制御モジュールに空冷を施すためのスペーサであることは明らかである。従って,該隙間を省略すべく中継コネクタ16をヘッド制御モジュールの外壁面を超えてヘッド制御モジュール本体内に挿入することは,技術的に必要な空冷のための隙間を取り去る技術的に困難な改変であり,これに想到することが当業者にとって容易であったとすることもできない。
ウ技術分野の相違「検出器」とは「物体,放射線,化学物質などの存在を検出するのに用いる装置あるいはシステム」である(技術用語大辞典,甲26)。一方「検出」の普通の用語の意義は「検査して見つけ出すこと」(広辞苑)である。これに対し,「識別」の普通の用語の意義は「みわけること」である(広辞苑)。物体の存在を「検査して見つけ出す」検出器と物の属性を見分ける「識別装置」とは,目的,機能を異にする技術分野の異なる装置であることは明らかであり「用途に応じて光ファイバ式を採用するか電磁波式を採用するかは普遍的手段の選択,設計上の問題にすぎない」といえる根拠はない。
このことは,甲19(「制御機器・制御システムの現状と将来動向1995年3月」社団法人日本電気制御機器工業会,92頁)に,「検出用スイッチ」(「4.」)として特に「光電センサ」(「4.4」)と「IDシステム」(「5.4」)とが異別の制御機器として区別されていることから明白である。
そして,「検出用スイッチ」(光ファイバ式検出器のアンプユニット)のケースをもって識別装置のヘッド制御モジュールに置換できないことは,検出用スイッチの一般的要請として「使用される環境が,温度の変化や,水,油,ごみ,ほこり,…など種々の環境ストレスの高い場所であり,多くの故障要因に対して対応しなければならない」(甲19,117頁「?B」)ことが知られていることから明らかである。即ち,識別装置のヘッド制御モジュールは熱源である「ヘッド駆動電源」を有するため(乙13の2第3図),複数の窓を設ける等の空冷用の措置が必要であり,油,ごみ,ほこりなどを防御するための気密性が要求される光電スイッチのケースを使用することは出来ない。
エ「配線基板」へのコネクタの実装訂正発明1は「一枚の配線基板の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられる……一対の第1コネクタ」を特定事項とするところ,乙3(特開平6-230809号公報)は「雄型電気コネクタ5はプリント電気回路基板3の一方の面部に装着されたコネクタボディ9とコネクタボディ9内に配置された複数個の針状の雄型コネクタ端子11とを有し,雌型電気コネクタ7はプリント電気回路基板3の他方の面部に装着され雄型電気コネクタ5のコネクタボディ9と嵌合するコネクタボディ13とコネクタボディ13内に配置され雄型コネクタ端子11を受け入れる複数個のばねクリップ状の雌型コネクタ端子15とを有している」ものであり(段落【0015】),「雄型コネクタ端子11と雌型コネクタ端子15とは各々,直接かしめ結合されて互いに直接に導電接続され,プリント電気回路基板3に形成された端子貫通孔21に貫通係合してプリント電気回路基板3より支持」されるものである(同【0017】)。この態様は,訂正発明1の上記構成を開示するものではない。
乙13の6(実開平3-30339号公報)にも,コネクタが配線基板の電路に半田付けされる旨の開示はない。その他乙号証にも訂正発明1の上記構成を開示ないし示唆するものは存在せず,これが容易想到であるとする主張は理由がない。
オ「周知のケース」の適用阻害要因被控訴人が「配線基板の収納箱としてケース本体とカバーを有する例」に挙げる乙2,4,13の3〜5はいずれも「単体使用」される光電スイッチないし電気機器用筐体を開示するものであって,乙13の2(特開平1-184668号公報)に開示された「連結使用」される識別装置のヘッド制御モジュールに適用できる旨の示唆,教示は存在しない。
乙13の2には,「各ヘッド制御モジュール12,…の両側壁に,ソケット形のコネクタ15…及び15…が設けられている」と記載さa-1 b-1れている(3頁右上欄5行〜9行)。そして,第2図には,ヘッド制御モジュールの筐体外側壁面から僅かに落ち込んだ段差部にコネクタが貼着される状態が記されている。さらに第3図には,ヘッド制御モジュールが,「通信制御回路51」と「ヘッドI/F回路53」という2枚の回路基板を備えていることが開示されている。
これらの開示事項から,乙13の2には,ヘッド制御モジュールが筐体外部の外側壁にコネクタを設けており,筐体と基板に設けたスルーホールを介して,コネクタのピンコンタクトが配線基板に接続されているものであるとの開示が存在することは明らかである。
仮にヘッド制御モジュールの筐体が「開口」を有していると解釈し,第2図におけるコネクタ14,15の周囲に露出しているのが筐体の開a-1口越しに見える「基板」の一部であったとすれば,ヘッド制御モジュール内に備わる少なくとも2枚の基板(通信回路制御基板とヘッドI/F回路基板)にコネクタa-1とコネクタb-1のピンコンタクトが接続されていることから,コネクタの周りに見えるのは基板の一部露出面ということになる。以上のように,乙13の2の第2図,第3図には,コネクタ15及びコネクタ15が,筐体の一部である段差部を介して,あるいはa-1 b-1筐体の開口越しに,それぞれ各1枚(計2枚)の基板に接続されていることが開示されている。ヘッド制御モジュールのケースを,乙13の3〜5等を根拠として,「配線基板が該配線基板に略平行な一対の壁面に沿って挿入される基板挿入用の開口を有する箱状のケース本体と,該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーとで構成する」ことは,不可能か極めて困難である。これは基板挿入用の開口を上側に設けた場合,基板を筐体に固定する工程が困難だからである。上方から挿入した基板を筐体の内側のボス孔等に取り付けようにも,ネジ止めするための冶具(ドライバー)を筐体内に挿入できず困難な作業となることは明らかである。
乙13の2のヘッド制御モジュールにはコネクタが取り付けられた少なくとも2枚の回路基板が備わるためこの基板をヘッド制御モジュールの内側に固定するためには「上方の基板挿入用開口」から挿入する方法は容易に採用し得ない。これは仮にヘッド制御モジュールに「接続用の開口」が存在するという解釈を採用した場合でも同様である。
乙13の2において基板を設置するための合理的なケースの構造は,ケースを縦に割って側壁側に大きく開口させ,開口方向と平行に基板を収納し,ボス孔等にネジ止めする構造,本件特許公報(甲2)従来例の【図8】のような「ケース本体111とカバー112を横に分割して,ケースの構造を単純化する」構造である。識別装置のヘッド制御モジュールは熱源である「ヘッド駆動電源」を有するため,複数の窓を設ける等の空冷用の措置が必要であることは当該技術分野における当業者の技術常識であって,それゆえ,識別装置のコントローラは例外なく放熱のための多数の開口を表面に設けている。
しかるに,乙13の3〜5に見られるような光電スイッチは,油,ごみ,ほこりなどを防御するための気密性が要求され,開口を設けることは当業者にとって避けるべきことである。かかる気密の光電スイッチのケースを,熱原を有する識別装置のヘッド制御モジュールに使用するならば,電解コンデンサ等の耐熱性に優れない素子は劣化を起こしてしまい,そのようなケースの採用は当業者が回避することが明らかな技術事項である。
よって,控訴人が摘示する相違点6,7に関する主張はいずれも根拠を欠くものである。
訂正発明1と乙13の2との一致点に関する主張,相違点の改変容易に関する被控訴人の主張はいずれも当を得ないものである。
訂正発明1が乙13の2〜6あるいは他の乙号証に開示された発明に基づき容易に想到できたとすることは出来ない。
よって,訂正発明1にも無効理由があるとする被控訴人の主張が成り立たないことは明らかである。
(6) 損害額に関する主張の補足ア 売上高被控訴人は,平成17年1月1日から平成19年12月31日までの3年間において会社全体で98億9700万円を売り上げた(甲20〜22)。即ち,被控訴人の年平均総売上高は上記の3分の1である32億9900万円である。
従って,平成15年8月1日から平成20年6月30日まで4年10カ月間の売上高は,32億9900万円×(4+10/12)?垂P59億4500万円を下らない。
そのうち,イ号及びロ号物件(光電センサ)の売上は全売上159億4500万円の1.2%である1億9134万円を下らない。
イ 利益乙28によれば,平成15年8月1日から平成19年12月31日までの被控訴人によるイ号物件(光電センサ)の売上高は7777万1526円であり売上利益は2187万0967万円とされている。即ち,利益率は約28.12%とされている。従って,イ号及びロ号物件の光電センサに係る利益の額は,1億9134万円に28.12%を乗じた5380万4808円を下らない。
ウ 小括上記利益の額は,特許法102条2項により控訴人の損害と推定される。よって,控訴人は被控訴人に対し,少なくとも5380万4808円の損害賠償請求権を有するところ,控訴人は本訴において,内金4500万円を請求する。
2 被控訴人(1)本件特許発明進歩性がないとした原判決が誤りであるとの主張に対しいずれも否認する。原判決に控訴人主張のような誤りはない。
(2)本件特許発明及び訂正発明1には,本件特許出願前に公開された乙13の2(特開平1-184668号公報)との関係で進歩性を欠くから,本件特許には無効理由がある。
控訴人の試みている本件訂正は,いずれも公知技術を用いた減縮であって,仮に訂正を認める審決が確定したとしても,本件特許の無効理由が解消されないことは明らかである。したがって,本件請求は,特許法104条の3第1項の規定に基づき棄却されるべきである。
ア本件特許出願前に公開された乙13の2(特開平1-184668号公報。以下「新引用例」という)には以下の技術が開示されている。
(ア)新引用例記載の発明は,一台のコントローラで多数のヘッドを制御し,多数のデータキャリアに対し,リード/ライト処理を行うための技術を提示するものであるところ,それは一台のコントローラに多数の制御ヘッドを連結することを技術手段としている。
そして,新引用例における多数個の制御ヘッドの連結構成(第1図)が,訂正発明1における多数個のケース本体に配置されているその表裏にコネクタを配設した集積回路の連結構成とが同一である。このことを示すのが第1図であり,その説明が明細書に記載されている。
明細書の発明の詳細な説明の記載から,新引用例は,各ヘッド制御モジュールは「箱状のケース」を有するものであって,その「箱状のケース」の両側壁の表裏の対称位置に「中継コネクタ(16)」と接続される「コネクタ15〜15,15〜15」が配されており,まa-1 a?8 b?1 b?8た,「コネクタ15〜15,15〜15」のコネクタは「箱a-1 a?8 b?1 b?8状ケース」の内部に納められている回路と接続されていることは明らかであるから,「箱状のケース」の両側壁の上記コネクタが臨む位置には,上記コネクタと中継コネクタを連通させるための接続用の開口が設けられていることも容易に推測できる。
従って,新引用例には,箱状のケース,ケースの両外壁の対象の位置に配されたコネクタ,コネクタと中継コネクタを接続させるためにケース両外壁に設けられた開口等が開示されている。
(イ) そうすると新引用例(乙13の2)にはa下記箱状ケース内部に収納される電子回路部に接続される表面と裏面の対称位置に配置される一対のコネクタ(15,15)と,a?2 b?2b 下方でガイドレール(30)に取り付けられる箱状のケースと,c前記箱状のケースの両側壁に形成され,一対のコネクタ(15,a?215)が近接して臨む一対の接続用の開口と,b?2d一対のコネクタ(15,15)のうちの一方(15)に接a?2 b?2 b?2続されていると共に他のヘッド制御モジュール(12)に接続され?3る中継コネクタ(16)とを備えた,e識別装置のヘッド制御モジュール(12)という単体のヘッド制御モジュール並びにf及び複数のヘッド制御モジュール(12)を連結した装置であ-1〜8って,内部電子回路部に接続され表面及び裏面の対称位置に配置される一対のコネクタ(15,15)と,下方でガイドレール(3a?2 b?20)に取り付けられる箱状のケースと,前記箱状のケースの両側壁に形成され,一対のコネクタ(15,15)が近接して臨む一対a?2 b?2の接続用開口と,一対のコネクタ(15,15)のうちの一方a?2 b?2(15)に接続されると共に他のヘッド制御モジュール(12)b?2 -3に接続される中継コネクタ(16)とを備えた,装置が記載されていることになる。
イ 訂正発明1と新引用例記載の発明との一致点と相違点上記によると,訂正発明1と新引用例記載の発明との一致点及び相違点は,以下のとおりであることになる。
(ア) 一致点?T.前記箱状のケース本体内で表面及び裏面の対称位置で,後記一対の壁面で後記一対の接続用の開口に近接して臨むように設けられる一対の第1コネクタ?U.その下方でレールに取り付けられる箱状のケース本体,?V.前記箱状のケース本体における一対の壁面に形成され,前記一対の第1コネクタが前記一対の壁面の内壁に近接して臨む一対の接続用の開口?W.該一対の接続用の開口の1つを貫通して該1つの接続用の開口が形成された一方の前記壁面の内壁を越えて前記箱状のケース本体の内側に挿入され,前記一対の壁面の内壁から内方に位置する前記一対の第1コネクタのうちの前記1つの接続用の開口に近接して臨む一方の第1コネクタに前記一対の壁面の内壁から内方で接触端子によって接続されていると共に他の検出器のアンプユニットに前記箱状のケース本体の外側で接触端子によって接続される第2コネクタの各構成が一致する。
(イ) 相違点a相違点1訂正発明1について,「光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式検出器のアンプユニット」であるが,新引用例記載の発明ではヘッド制御モジュールとある。
b相違点2訂正発明1では配線基板となっているが,新引用例記載の発明では電子回路部となっている。
c相違点3訂正発明1では第1コネクタがケースの内壁内方に存在するが,新引用例記載の発明ではこの点が不明である。
d相違点4訂正発明1のBの実装端子の半田付について,「配線基板の表面及び裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一の面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられると共に」の構成があるが,新引用例記載の発明ではこの点が不明である。
e相違点5訂正発明1のCの配線基板挿入用開口の面積と配線基板の面積並びにカバーについて,「該箱状のケース本体の上方には前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有し,該基板挿入用の開口の面積が前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板の表面および裏面の各面の面積よりも小さくなるように形成されると共に,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板に略平行な一対の壁面を有し,該略平行な一対の壁面に沿って前記基板挿入用の開口から下方に前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される箱状のケース本体と,該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーと」との記載があるが,新引用例記載の発明では不明である。
f相違点6訂正発明1のDについて,「接続用開口の位置」について,訂正発明1では?@「前記一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され」の構成,ならびに“第1コネクタと箱状ケースの関係”について?A前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が前記基板挿入用の開口から前記箱状のケース本体に挿入されたとき」との記載があるが新引用例記載の発明ではこの記載がない。
g相違点7訂正発明1のEの第1コネクタと第2コネクタに関して,「該一対の接続用の開口の1つを貫通して該一対の接続用の開口が形成された一方の前記壁面の内壁を越えて前記箱状のケース本体の内側に挿入され,前記一対の壁面の内壁から内方に位置する前記一対の第1コネクタのうちの前記1つの接続用の開口に近接して臨む一方の第1コネクタに前記一対の壁面の内壁から内方で接触端子によって接続されていると共に他の検出器のアンプユニットに前記箱状のケース本体の外側で接触端子によって接続される第2コネクタとを備え」の構成があるが,新引用例記載の発明ではこの構成が不明である。
h相違点8訂正発明1のFのケース内壁間と配線基板,第1コネクタ,第2コネクタの厚さについて,訂正発明1の「前記一対の第1コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みが前記箱状のケース本体の内側の幅よりも小さく前記基板挿入用の開口から挿入可能な厚みであり,かつ,前記箱状のケース本体の内側の幅が前記一対の第1コネクタのうちの一方に前記第2コネクタを接続したときの前記一対の第1コネクタおよび前記第2コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さいことを特徴とする」の構成が新引用例記載の発明には記載されていない。
ウ 相違点についての検討(ア) 相違点1につき光信号を光電変換して電気信号を処理する検出器と,リードライトヘッドを接続して通信を行うヘッド接続モジュールは,いずれも光あるいは電磁波を発信し,その反射あるいは返答を受信して処理する電子機器,という分類に当てはめることができる。一般に,光ファイバ式検出器では検出する物体によって赤色,緑色,赤外光のように光の波長つまり周波数を変えているが,新引用例記載の発明でリードライトヘッドに電磁波を用いるのは光よりも周波数を低くして検出する物体に適合させているだけのことである。
乙13の3(特開平4-174924)は,その第1図,第2図に,受光手段として光ファイバ3と光電変換素子24,25を有する光ファイバ式検出器のアンプユニットが図示されている。光ファイバ式検出器のアンプユニットとしては,その他に,乙4の2(オプテックスケース),乙13の6(実開平3-30339のマイクロフイルム)などがある。
これらのことから,訂正発明1と新引用例記載の発明では,実施例で示されている機器の名称と物体を検知するための波長発生手段が異なるものの,いずれの波長発生手段も工場などの産業分野で使用される電子機器であり,用途に応じて光ファイバ式を採用するか電磁波式を採用するかは普遍的手段の選択,設計上の問題にすぎない。
(イ) 相違点2につき訂正発明1では配線基板となっているが,新引用例記載の発明では電子回路となっている。しかし,電子回路として配線基板を用いることは当業者にとって周知技術として適宜かつ容易になし得る設計事項である。よって,この構成には特段の特徴はない。
(ウ) 相違点3につき新引用例記載の発明に周知の「ケース本体と基板挿入用開口を塞ぐカバー」からなるケースを採用すると,コネクタ15を付した電子回路としての配線基板は上記基板挿入用開口から挿入されることになる。そうすると,コネクタ15はケース内壁の内側に位置する。なお,電子回路としての配線基板にコネクタ15を付すのは一般的に半田付けであるから,当該配線基板をケースに挿入したのちに,中継コネクタ16を貫通させるための接続用開口があり,この開口を利用して挿入後にコネクタ15を配線基板と半田付けするのは困難であることは容易に理解できることであるので,当業者であればコネクタ15を配線基板に半田付けする場合,配線基板をケースに挿入前に半田付けするのが技術常識である。
(エ) 相違点4につき電子回路を配線基板に置換することは慣用の技術である。
そして,新引用例記載の発明ではコネクタ15と中継コネクタ16を配していて,この位置はケース外壁の中央部にあるから,コネクタ15と中継コネクタ16は対向位置にあり,従って,コネクタ15aと15bは配線基板の表裏面の対称位置に存することは明らかである。一対のコネクタを配線基板の表裏面の対称位置に配する技術は,乙3(特開平6-230809号公報),乙13の6(実開平3-30339号のマイクロフィルム)などに見られるように,周知技術である。
また,配線基板に実装用端子を取り付けるのに半田付けする技術も公知の技術である(乙19)。
(オ) 相違点5につきこの構成のうち「?@該箱状のケース本体の上方には前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有し,?A該基板挿入用の開口の面積が前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板の表面および裏面の各面の面積よりも小さくなるように形成されると共に,?B前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板に略平行な一対の壁面を有し,該略平行な一対の壁面に沿って前記基板挿入用の開口から下方に前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される箱状のケース本体と,?C該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーと」の構成が新引用例記載の発明には確かな記載がない。
そこで,前記相違点を?@〜?Cに分類して検討する。
?@と?Cはケースとカバーの構成であって,配線基板を収納する収納箱の基本的構成を形作る。上記の配線基板の収納箱としてケース本体とカバーを有する例としては,乙2(特開平2?285698号公報)や乙4の2(「ファイバ型小型光電センサ」の「Jファイバシリーズ」のカタログ),乙13の3(特開平4-174924号公報),乙13の4(特開平5-268043号公報),乙13の5(特開平5-167418号公報)などのような収納箱が開示されて公知である。
従って,配線基板を挿入する上部開口を有するケース本体と該開口を閉塞するカバーからなる箱状収納体を訂正発明1の構成にすることに何らの工夫を要せず想到できるものであって,進歩性はない。
?Aの構成は,乙2(特開平2?285698号公報)や乙4の2(「ファイバ型小型光電センサ」の「Jファイバシリーズ」のカタログと当該商品の購入証明書〔乙9,乙10〕),乙13の3(特開平4-174924号公報),乙13の4(特開平5-268043号公報),乙13の5(特開平5-167418号公報)において開示される技術である。上記構成を採用することに何らの工夫も要しない。
?Bの構成は,新引用例記載の発明において,箱状ケースを乙2(特開平2?285698号公報)や乙4の2(「ファイバ型小型光電センサ」の「Jファイバシリーズ」のカタログ),乙13の3(特開平4-174924),乙13の4(特開平5-268043),乙13の5(特開平5-167418)などのような収納箱に置き換えることに何らの困難性も存しない。
上記の検討から,訂正発明1の構成は,公知例に見られる構成からの選択であり,そこに工夫の困難性はなく,また,その選択をしたことが訂正発明1に格別の技術的効果を与えるものでもない。
(カ) 相違点6につき相違点6は,「接続用開口の位置」について,訂正発明1では?@「前記一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され」との構成,ならびに“第1コネクタと箱状ケースの関係”について?A「前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が前記基板挿入用の開口から前記箱状のケース本体に挿入されたとき」である。
?@については,上記構成が新引用例においては記載がなく不明であるが,それは新引用例において電子回路をヘッド制御モジュールである箱状ケースに挿入する構成自体が不明であるからである。
しかし,新引用例のヘッド制御モジュールには中継コネクタ16と電子回路に付されたコネクタ15と接続されるもので,その接続のためにケース壁面に開口が設けられており,この開口は壁面中央に位置していることが図示されている。訂正発明1の明細書においても開口位置が特別な作用効果をもたらす記述はない。また,訂正発明1における第1コネクタの位置については「配線基板の表面および裏面に対称位置」で取り付けられるとの記述と,「配線基板の挿入用開口より下方」との記述があるだけで,第1コネクタの位置とケース本体壁面の高さとの関係が,作用効果に影響するとの記述はない。
また,乙4の2,及び乙13の3等に見られるように,配線基板を基板挿入用の開口から下方に挿入するケース本体と,そのカバーの構成からなるケースは,光ファイバ式検出器のアンプユニットとして周知技術にすぎず,また,ケースは任意に選択,採用され得るものであるから,このような周知のケースを引用発明1の電子回路部を収納するケースに採用することは容易である。そして,このような周知のケースを新引用例のケースに採用することによって,接続用の開口は箱状のケース本体における基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成されたものとなることは,基板挿入用の開口と一対の接続用の開口との位置関係から明らかであり,当然選択されるものといえる。
?Aの記載は,配線基板をケースに納める方法ならびに納まった後の状況を説明するものであって,公知技術である乙2,乙4の2,乙13の3,乙13の4,乙13の5において開示された方法及び状態である。
この構成を採用することに困難は存しない。
(キ) 相違点7につき新引用例記載の発明において電子回路を収納するケースを,公知の配線基板を配線基板挿入用開口から挿入するケース本体とそのカバーの構成からなるものに置き換えると,新引用例のコネクタ15a,bは,ケースの内方に位置するようになる。そうすると,コネクタ15a,bと中継コネクタ16は,ケースの側壁の接続用開口を貫通して接合することは当然のことである。
即ち,コネクタをケースの内壁内方に配置させることは,乙20(特開平5-242924号公報),及び乙1(特開平7-36585号公報)に見られるように周知技術にすぎない。乙1の図14は,第1コネクタ43がケース本体の接続用の開口から凹入した状態で,第1コネクタ43と第2コネクタ(ジョイントコネクタ)44を接続しており,このような第1と第2のコネクタの接続構造が公知の技術であることも明らかである。従って,上記の訂正発明1の構成は,当業者が容易に想到できるものである。
(ク) 相違点8につき訂正発明1は「?@前記一対の第1コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みが前記箱状のケース本体の内側の幅よりも小さく前記基板挿入用の開口から挿入可能な厚みであり,かつ,?A前記箱状のケース本体の内側の幅が前記一対の第1コネクタのうちの一方に前記第2コネクタを接続したときの前記一対の第1コネクタおよび前記第2コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さいことを特徴とする」の構成である。
?@については,一対の第1コネクタの厚みと配線基板の厚みを加えた電子回路の幅が,ケース本体内側の幅よりも大きければ電子回路はケースに納まらない。従って,また,基板挿入用開口の幅が第1コネクタの厚みと配線基板の厚みを加えた電子回路の幅よりも大きいことは公知の当然の理である。
?Aについては,ケース本体の内側の幅が,一対の第1コネクタの厚みと第2コネクタの厚みの各厚さと回路基板の厚さを加えた全体厚さよりも小さいことを構成としている。ここで,第2コネクタの厚みを構成要件の一要素とする。要するに,?Aの構成は,ケース内側の幅が第1コネクタの2個の厚さ・第2コネクタの厚さ・回路基板の厚さ,を加えた厚さよりも小さいことを要件とするが,第2コネクタの厚さを無限に大きくすれば(この場合,ケース間に距離が存在する),上記説明は数学上当然のことである。
そうすると,構成要件とされる「ケース本体の内側の幅が,一対の第1コネクタの厚みと第2コネクタの厚みの各厚さと回路基板の厚さを加えた全体厚さよりも小さい」ことは当然である。
さらに,訂正発明1では,ケース間が密接しているか否かについては明らかでないが,ケース間に空隙があるとすれば第2コネクタの厚さが大きくなるだけであるから,少なくとも壁厚さ分だけが内壁間よりも大きい事になる。このことは,数学上明らかなことにすぎない。
上記から,ケース内に納められた配線基板を他のケース内に納められた配線基板を結合させる構成において,訂正発明1の構成と新引用例記載の発明の構成とを比較したとき,前記の各相違点を乙号証に開示された公知の技術に置き換えることは容易であり,また,そこにみられない構成も公知の理論を述べた構成かあるいは公知の理論に背く構成となり当該構成からは作用は生じないものとなる。
(3) 時機に遅れた攻撃防御方法であるとの主張に対し否認する。民訴法157条により却下すべきか否かは,当該訴訟の具体的な進行状況に応じ,その提出時期よりも早く提出すべきことを期待できる客観的事情があったか否かにより判断すべきであるところ,被控訴人が乙13の2(特開平1-184668号公報,新引用例)に基づき本件特許発明及び訂正発明1の無効を主張することは,時機に遅れた攻撃防御方法ではない。
(4) 損害額に関する主張の補足に対し否認する。
第4 当裁判所の判断1控訴人の被控訴人に対する本訴請求は,当審において請求を追加した部分も含め,本件特許(第3457107号)の旧請求項1に基づく請求であるところ,当裁判所も上記特許発明は,原判決と同じく,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,相手方(被控訴人)に対しその権利を行使することができない(特許法104条の3)と判断する。その理由は以下のとおり付加するほか,原判決記載のとおりであるから,これを引用する。
2 本件特許発明(旧請求項1)についての無効理由の有無(1)控訴人は,本件特許発明がその出願前に頒布された刊行物である乙1ないし乙4(原判決にいう引用例1ないし引用例4)に記載された発明に基づいて容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができないとした原判決は誤りであることを,前記第3,1,(2)において具体的に主張する。
しかし,同主張によっても,上記乙1ないし乙4に記載された発明に基づいて本件特許発明容易に発明することができたと解すべきであり,その理由は原判決第4(23頁以下)記載のとおりであるから,これを引用する。
(2)のみならず,当審において被控訴人から新たに提出された乙13の2(新引用例,特開平1-184668号公報)に基づいても同様に解することができる。その理由は,後記3(2)の訂正発明1の無効理由とほぼ同一であるから,これを引用する。
(3)そこで,進んで,控訴人主張の本件訂正請求の再抗弁の当否について判断する。
3 訂正請求の再抗弁の当否について(1)本件特許発明を含む旧請求項全部に対し被控訴人が平成18年10月26日付けで特許庁に対し無効審判請求(無効2006-80220号事件)をなし,これに対し控訴人が平成19年12月21日付けでも訂正請求(本件訂正)をなし,そのうち請求項1に関する部分(訂正発明1)の内容が前記第3,1,(4)ア(ア)のとおりであることは,甲18の1,2及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
そこで,上記訂正請求に係る訂正発明が進歩性を欠き無効であるかにつき,以下検討する。
(2) 新引用例の内容被控訴人は,当審に至り,乙13の2(特開平1-184668号公報,発明の名称「識別装置」,出願人 立石電機株式会社,公開日 平成元年7月24日。以下「新引用例」という)を主引用例として主張し,この新引用例が存在することにより訂正発明1は進歩性を欠く無効なものであると主張する。
そして,上記新引用例(乙13の2)には以下の記載がある。
ア 特許請求の範囲「(1)被識別対象の識別データを記憶するメモリを内蔵するデータ記憶ユニットと,上位機器よりのコマンドにより,前記データ記憶ユニットのメモリにデータをリード処理し,あるいはライト処理するリード/ライト制御装置とからなる識別装置において,前記リード/ライト制御装置は,各々にリード/ライトヘッドが接続され,内部にパラレル/シリアル・シリアル/パラレル変換部を有するN個のヘッド制御モジュールと,これらN個のヘッド制御モジュールの1つを選択して,対応するデータ記憶ユニットへのリード処理あるいはライト処理を制御するコントローラとから構成され,かつ前記コントローラ及びN個のヘッド制御モジュールは,コントローラに対し,順次ヘッド制御モジュールをビルドアップ式に接続可能なコネクタを備え,各ヘッド制御モジュールのコネクタは,コントローラのデータ及び信号端子に,かつ互いに並列に接続される端子と,自己及び他の位置をコントローラに伝えるための端子を備えたことを特徴とする識別装置。」イ 発明の詳細な説明・「(イ)産業上の利用分野この発明は,工具やパレット等の物品を被識別対象とする識別装置,特に多チャンネル用の識別装置に関する。」(1頁7行〜10行)・「この種の識別装置の従来の概略構成例を第6図に示している。この識別装置は,上位コンピュータlに,コントローラ2が接続され,このコントローラ2には,2個のリード/ライトヘッド3a,3bが接続されている。リード/ライトヘッド3aは,例えばパレット(図示せず)に付設される偏平なデータキャリア4aとの間で,また,リード/ライトヘッド3bは,例えば工具等に付設される円柱状のデータキャリア4bとの間で,データを授受するために設けられている。
コントローラ3内には,いずれのデータキャリアに対し,データをライト処理し,あるいはリード処理するかの選択をなすためのヘッド制御回路が設けられている。」(2頁左上欄4行〜17行)・「この識別装置では,例えば3チャンネル構成としようとすれば3個のヘッド制御モジュールを用意し,コントローラに対し,第1,第2及び第3のヘッドモジュールを,コネクタにより順次接続すればよい。さらに例えば4チャンネル構成としようとすれば,第4のヘッド制御モジュールを,第3のヘッド制御モジュールに対し,コネクタにより接続すれば,ビルドアップされる。構成された各チャンネルのヘッド制御モジュールは,コントローラのコネクタのデータ端子及び信号端子に,自己のコネクタのデータ端子及び信号端子が接続され,さらに互いのヘッド制御モジュール間においても,データ端子及び信号端子が並列接続される。また,各ヘッド制御モジュールの装着位置に応じた信号がコントローラに対して伝送可能となる。…」(2頁左下欄19行〜右下欄14行)・「第1図は,この発明の一実施例を示す多チャンネルの物品識別装置の外観斜視図である。この実施例物品識別装置はリ-ド/ライト制御装置10と,データキャリア20とから構成されている。リード/ライト制御装置10は,コントローラ本体11と,8個(この実施例は8チャンネル)のヘッド制御モジュール12,12,…,12-1 -2,12と,これらヘッド制御モジュール12,12,…,1-7 -8 -1 -22,12にそれぞれ対応して個別に接続される8個のリード/ラ-7 -8イトヘッド13,13,…,13,13とから構成されてい-1 -2 -7 -8る。また,8チャンネルであるからパレットや工具に付設される8個のデータキャリア20,20,…,20,20がそれぞれリ-1 -2 -7 -8ード/ライトヘッド13,13,…,13,13に接近す-1 -2 -7 -8る。
コントローラ11の側壁には,第2図に示すように,ソケット形のコネクタ14が設けられ,コントローラ本体11の内部で後述する電子回路部に接続されている。同様に各ヘッド制御モジュール12,12,…,12,12の両側壁に,ソケット形のコネクタ15-2 -7 -8,15,…,15,15及び15,15,…,1a-1a-2 a-7a-8 b-1b-25,15が設けられている。そして,コントローラ本体11とb-7b-8ヘッド制御モジュール12のコネクタ14と15間は,中継コ-1 a-1ネクタ16によって接続されるようになっており,同様に各ヘッド制御モジュール12,12,…,12,12間も中継コネクタ-1 -2 -7 -8によって接続されるようになっている。…」(3頁左上欄6行〜右上欄15行)」・「コントローラ本体11,及びヘッド制御モジュール12,12,…,12,12の底部には,凹溝18,19,19,2 -7 -8 -1 -2…,19,19が設けられ,コントローラ本体11に,ヘッド制-7 -8御モジュール12,12,…,12,12を接続する場合に-1 -2 -7 -8は,ガイドレール30に凹溝18,19,19,…,19,1-1 -2 -79を摺動させて装着するようになっている。」(3頁右上欄20行〜左下欄7)・「また,ヘッド制御モジュール12は,パラレル/シリアル,シリアル/パラレル変換機能を有し,コントローラ本体11のCPU42と接続される通信制御回路51,デコーダ52及びリード/ライトヘッドと送受信データ信号及び送受信制御信号の授受を行うヘッドI/F回路53から構成されている。他のヘッド制御モジュール12,12,…,12,12もヘッド制御モジュール12と全く同-3 -7 -8 -1様の回路を備えている。」(3頁右下欄3行〜11行)・「この実施例物品識別装置において,例えば4チャンネルの装置を構成する場合には,ガイドレール30にコントローラ11を装着した後,第1番目のヘッド制御モジュール12をガイドレール30に装着し,コントローラ11とヘッド制御モジュール12間を中継コネクタ16で接続し,以下同様に順次,第2番目から第4番目までのヘッド制御モジュールをガイドレール30に装着し,互いの隣接するヘッド制御モジュール間を中継コネクタ16で接続すればよい。…」(4頁右上欄6行〜15行)」ウ 図面(かっこ内は「4.図面の簡単な説明」の記載)・第1図(この発明の一実施例を示す多チャンネルの物品識別装置の外観斜視図)・第2図(同物品識別装置のコントローラ本体とヘッド制御モジュールの接続状態を説明するための拡大斜視図)・第3図(同物品識別装置のコントローラ本体とヘッド制御モジュールの回路構成を示すブロック図)エ上記ウの図面の記載によれば,第1図には,ヘッド制御モジュール12が全体として箱状であり,その側壁に中継コネクタ16が取り付けられること,ヘッド制御モジュール12に同形状の他のヘッド制御モジュール12が連結され,ヘッド制御モジュール12に接続されたリード/-1 -2ライトヘッド13は,非接触でデータキャリア20と信号の授受を行-2 -2う様が看て取れる。また,第3図には,ヘッド制御モジュール12のヘッドI/F回路53から送受信データ信号が入出力される態様が看て取れる。
そして,第1図に関しての上記発明の詳細な説明の記載をみると,上記摘記のように,「リード/ライト制御装置10は,コントローラ本体11と,8個(この実施例は8チャンネル)のヘッド制御モジュール12,12,…,12,12と,これらヘッド制御モジュール12,1-2 -7 -8 -12,…,12,12にそれぞれ対応して個別に接続される8個のリ-2 -7 -8ード/ライトヘッド13,13,…,13,13とから構成され-1 -2 -7 -8ている。」と記載されており,第1図において間隔を空けて図示されたヘッド制御モジュール12と同形状のヘッド制御モジュール12との間-2 -7には,更に同形状のヘッド制御モジュール12ないしヘッド制御モジュール12が連結されることが示されている。そうすると,ヘッド制御モジュール12の両側壁に位置するコネクタ15,15は,ガイド-2 a-2b-2レール30に装着された状態で,同形状のヘッド制御モジュール12のa-1 -3 b-3コネクタ15,及び,ヘッド制御モジュール12のコネクタ15a-2 bとそれぞれ接続されるのであるから,コネクタ15及びコネクタ15は,箱状のケースの表面および裏面の対称位置に配置されているものといえる。
また,ヘッド制御モジュール12は,全体として箱状であって,通信制御回路51,デコーダ52及びヘッドI/F回路53から構成されることより,箱状のケースの中に,通信制御回路51,デコーダ52及びヘッドI/F回路53等の電気回路が収納されて構成されていることは明らかである。
さらに,ヘッド制御モジュール12のコネクタ15,15は,-2 a-2b-2箱状のケースの中に収納された電気回路と接続されていることも明らかであり,隣接するヘッド制御モジュール12とヘッド制御モジュール12同士,ヘッド制御モジュール12とヘッド制御モジュール12同士-2 -2 -3は,コネクタ15,15を介して接続されるものであると解されa-2 b-2る。
以上の検討によれば,新引用例(乙13の2)には,電子機器である識別装置が記載されており,この識別装置は,リード/ライトヘッド3a,3bにより工具やパレット等の製品に付設されたデータキャリア4a,4bからデータを接受し,そのデータをヘッド制御モジュール12に送り,ヘッド制御モジュール12で信号処理を行い,コントローラ本体11内のコンピュータ(CPU42)において情報処理が行われる。そして,新引用例の識別装置は,複数の生産物(製品)情報の信号処理を可能にするために,複数の識別装置のヘッド制御モジュール12,12を-2 -3コネクタにより接続して識別装置を構成し,各ヘッド制御モジュール12,12は,その下方でガイドレール30に取り付けられて電気回路を-2 -3収納する箱状のケースで構成され,その箱状のケースの両側壁に一対のコa-2 b-2 a-2ネクタ15,15が配置され,そのうちの一方のコネクタ15に接続されていると共に他のヘッド制御モジュール12にも接続される中継コネクタ16を備えている。
オそうすると,新引用例には,以下の発明が記載されているものと認められる。なお,下記にいう新引用発明1と新引用発明2の相違は,新引用発明2は,新引用発明1の識別装置のヘッド制御モジュールを複数連結したことのみである。
・「識別装置のヘッド制御モジュール12であって,表面および裏面a-2 b-2の対称位置で電気回路に接続された一対のコネクタ15,15と,その下方でガイドレール30に取り付けられて電気回路を収納する箱状のケースと,前記箱状のケースの両側壁に形成され,一対のコネクタ15,15が近接して臨む一対の接続用の開口と,一対のコネa-2b-2クタ15,15のうちの一方のコネクタ15に接続されていa-2 b-2 a-2ると共に他のヘッド制御モジュール12に接続される中継コネクタ16とを備えた,識別装置のヘッド制御モジュール12。」(以下「新引用発明1」という)。
・「複数の識別装置のヘッド制御モジュール12,12を連結した-2 -3識別装置であって,表面および裏面の対称位置で電気回路に接続された一対のコネクタ15,15と,その下方でガイドレール30に取a-2b-2り付けられて電気回路を収納する箱状のケースと,前記箱状のケースの両側壁に形成され,一対のコネクタ15,15が近接して臨む一a-2b-2対の接続用の開口と,一対のコネクタ15,15のうちの一方のa-2b-2コネクタ15に接続されていると共に他のヘッド制御モジュール1a-22に接続される中継コネクタ16とを備えた,識別装置。」(以下「新引用発明2」という)。
(3) 訂正発明1と新引用発明1との一致点及び相違点ア上記によれば,訂正発明1と新引用発明1とは以下の(一致点)記載の内容で一致し,以下の(相違点1)〜(相違点5)で相違すると認められる。
(一致点)「検出器の電子機器ユニットであって,表面および裏面の対称位置に配置されて内部回路に接続された一対の第1コネクタと,その下方でレールに取り付けられて内部回路が収納される箱状の電子機器ユニットのケースと,前記箱状の電子機器ユニットのケースの一対の壁面に形成され前記第1コネクタが近接して臨む一対の接続用の開口と,前記一対の第1コネクタのうちの一方の第1コネクタに接続されていると共に他の検出器の電子機器ユニットに接続される第2コネクタとを備えた,検出器の電子機器ユニット。」(相違点1)検出器の電子機器ユニットの種類に関して,訂正発明1においては,光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う「光ファイバ式検出器のアンプユニット」であるのに対し,新引用発明1においては,「識別装置のヘッド制御モジュール」である点。
(相違点2)一対の第1コネクタに関して,訂正発明1においては,「一枚の配線基板の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられると共に,後記箱形のケース本体内で後記一対の壁面の内壁から内方で後記一対の接続用の開口に近接して臨むように設けられる」のに対し,新引用発明1においては,係る事項が不明である点。
(相違点3)箱状の電子機器ユニットのケースに関して,訂正発明1においては,「箱状のケース本体の上方には前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される基板挿入用の開口を有し,該基板挿入用の開口の面積が前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板の表面および裏面の各面の面積よりも小さくなるように形成されると共に,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板に略平行な一対の壁面を有し,該略平行な一対の壁面に沿って前記基板挿入用の開口から下方に前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が挿入される箱状のケース本体」と,「該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバー」とで構成され,「前記箱状のケース本体における前記一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され,前記一対の第1コネクタが取り付けられた前記配線基板が前記基板挿入用の開口から前記箱状のケース本体に挿入されたとき前記一対の第1コネクタが前記一対の壁面の内壁から内方で近接して臨む一対の接続用の開口」を備えるのに対し,新引用発明1においては,その具体的構成が不明である点。
(相違点4)第2コネクタに関し,訂正発明1においては,「該一対の接続用の開口の1つを貫通して該1つの接続用の開口が形成された一方の前記壁面の内壁を越えて前記箱状のケース本体の内側に挿入され,前記一対の壁面の内壁から内方に位置する前記一対の第1コネクタのうちの前記1つの接続用の開口に近接して臨む一方の第1コネクタに前記一対の壁面の内壁から内方で接触端子によって接続されていると共に他の検出器のアンプユニットに前記箱状のケース本体の外側で接触端子によって接続される」のに対し,新引用発明1においては,係る事項が不明である点。
(相違点5)箱状の電子機器ユニットのケースに収納される内部回路の厚みと箱状の電子機器ユニットのケースの幅との関係に関して,訂正発明1においては,「前記一対の第1コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みが前記箱状のケース本体の内側の幅よりも小さく前記基板挿入用の開口から挿入可能な厚みであり,かつ,前記箱状のケース本体の内側の幅が前記一対の第1コネクタのうちの一方に前記第2コネクタを接続したときの前記一対の第1コネクタおよび前記第2コネクタの厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さい」のに対し,新引用発明1においては,係る事項が不明である点。
イなお,被控訴人は,新引用発明1と訂正発明1との相違点として1〜8を挙げるところ,上記相違点1〜5との異同は,被控訴人は上記相違点2,3をそれぞれ2つに書き分けているほかは,訂正発明1で配線基板となっているのに新引用発明1では電子回路部となっている点を挙げる(被控訴人相違点2)ところ,電子機器の内部回路として用いられる電気回路を,配線基板とすることは慣用技術であると認められるから,特にこれを採り上げるまでもないと解する。
(4) 相違点についての判断ア上記相違点1に関し,被控訴人が周知例として挙げる文献には以下の記載がある。
(ア)乙13の3(特開平4-174924号公報,発明の名称「光電スイッチおよび光電スイッチ本体ケースカバーの保持構造」,出願人 富士電機株式会社,公開日 平成4年6月23日)「3.発明の詳細な説明〔産業上の利用分野〕本発明は元ファイバを利用して物体の有無を検出する光電スイッチに関する。」(2頁左上欄12行〜15行)(イ)乙13の6(実願平1-91287号〔実開平3-30339号〕のマイクロフィルム(出願人 株式会社キーエンス,公開日 平成3年3月26日)「[従来の技術]光電スイッチなどの電子機器ユニットを,DINレールに複数個載せて使用する場合が増えている。…各光電スイッチ2a,2b,2c,2dには検出部位からの光ファイバ30が接続される。検出出力は,各光電スイッチ2a,2b,2c,2dごとに,出力ライン23によって取り出される。」(明細書2頁6行〜下2行)(ウ)上記文献の記載によれば,光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式検出器のアンプユニットは,検出器の電子機器ユニットとして周知のものである。
そうすると,検出器の電子機器ユニットとして,光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式検出器のアンプユニットを選択し,相違点1に係る訂正発明1の構成とすることは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)であれば適宜なし得たことであると認められる。
イ 上記相違点2に関し,被控訴人が挙げる文献には以下の記載がある。
(ア)乙3(特開平6-230809号公報。発明の名称「ビルディングブロック構造のプログラマブルコントローラ用ユニット」,出願人 オムロン株式会社,公開日 平成6年8月19日)・「ユニット本体1は箱状をなしており,ユニット本体1内にはプリント電気回路基板3が固定装着されている。」(段落【0013】)・「プリント電気回路基板3を隔てて,ユニット本体1の一方の側には電源ラインおよびデータバス,アドレスバス,コントロールバスの各バスライン接続用の雄型電気コネクタ5が,ユニット本体1の他方の側には雄型電気コネクタ5と同種類の電源ラインおよび各バスライン接続用の雌型電気コネクタ7が各々設けられている。」(段落【0014】)・【図1】(イ) 乙19(「CONNECTORS GENERAL CATALOG」ヒロセ電機株式会社,1994年〔平成6年〕)「(注)表面実装時の実装高さはコネクタ単位での設計寸法であり,実際は使用するクリーム半田の量(厚さ)によって多少異なります。」(241頁)「■概説SMT対応A3シリーズコネクタは,高密度化の思想を反映した超小型2mmピッチ表面実装用コネクタです。半田ディップタイプ…」(253頁)(ウ)上記(ア)によれば,一対のコネクタを配線基板の表裏面の対称位置に配する技術が周知であること,また(イ)によれば,配線基板に実装用端子を半田付けして取り付けることも周知の技術であることが認められる。
(エ)そうすると,相違点2に係る構成についても当業者において適宜なし得たことであると認められる。
ウ 上記相違点3に関し,被控訴人が挙げる文献には以下の記載がある。
(ア)乙2(特開平2-285698号公報。発明の名称「電子機器用筐体」,出願人 横河電機株式会社,公開日 平成2年11月22日)・「(1)プリント基板を挿入する開口部を有するケースと,この開口部に取付けられて当該開口部を塞ぐフロントカバーを有する電子機器用筐体において,…」(特許請求の範囲)・「プリント基板20はケース10の内部に一枚収容されるもので,開口部側の端部には信号接続用のコネクタ21,22が位置を隔てて設けられている。」(2頁右下欄14行〜17行)・【第1図】(イ)乙13の4(特開平5-268043号公報,発明の名称「光電スイッチ」,出願人 アルプス電気株式会社,公開日 平成5年10月15日)には以下の記載がある。
・「次に,上記第1実施例に係る光電スイッチの内部構造の一例を,図4〜図6に基づいて説明する。図4は光電スイッチの側面図,図5は光電スイッチの平面方向から見た断面図,図6はLEDの説明図である。図4及び図5において,11はケース,12は蓋板,13は投光用光ファイバ,14は受光用光ファイバ,15は回路基板,36は検出用投光部に備えられたLED,50は受信部に備えられたホトダイオード,16はLED36からのモニター用光vをホトダイオード50に導く第1のミラー,17はマスタ側の光電スイッチからの伝達用光信号をホトダイオード50に導く第2のミラーを示している。」(段落【0031】)・「回路基板15は,図1の回路を搭載してなり,上記ケース11内に収納可能な大きさに形成されている。蓋板12は,ケース11の開口部を密封可能な大きさの平板状に形成されており,回路基板15をケース11内に収納した後,ケース11の開口部に着脱可能に被着される。」(段落【0033】)・ 【図4】(ウ)上記(ア)(イ)によれば,箱状の電子機器ユニットのケースを,配線基板が該配線基板に略平行な一対の壁面に沿って挿入される基板挿入用の開口を有する箱状のケース本体と,該箱状のケース本体の前記基板挿入用の開口を閉塞するカバーとで構成することは,周知の技術である。
そうすると,新引用発明1の構成を相違点3に係る構成とすることは当業者にとり適宜なし得る事項であると認められる。
エ上記相違点4,5に関しては,一対の第1コネクタは,箱形のケース本体内で一対の壁面の内壁から内方で後記一対の接続用の開口に近接して臨むこと,接続用の開口は箱状のケース本体における一対の壁面の前記基板挿入用の開口から下方に離れた位置に形成され,一対のコネクタが一対の壁面の内壁から内方で近接して臨むことは,基板挿入用の開口と一対の接続用の開口との位置関係,内部回路に取り付けられたコネクタの幅と箱状のケース本体の内側の幅との関係から,適宜設定し得る事項であり,箱状のケース本体の内側の幅が一対のコネクタのうちの一方に中継コネクタ16(第2コネクタ)を接続したときの一対のコネクタ,及び中継コネクタ16(第2コネクタ)の厚みに前記配線基板の厚みを加えた厚みよりも小さいことも,当業者において適宜設定し得る事項であると認められる。
オ上記ア〜エによれば,訂正発明1は,新引用発明1及び周知の技術等から容易に想到し得たものといえる。
(5) 控訴人の主張に対する補足的判断ア控訴人は,新引用例(乙13の2)の第2図には,段差部の周縁が明記され,これは有底であって,その底部にコネクタが設けられているから接続用開口については開示されていないと主張する。
しかし,乙13の2の第2図に関する発明の詳細な説明には,上記で摘記のとおり,「「コントローラ11の側壁には,第2図に示すように,ソケット形のコネクタ14が設けられ,コントローラ本体11の内部で後述-する電子回路部に接続されている。同様に各ヘッド制御モジュール121 -2 -7 -8 a,12,…,12,12の両側壁に,ソケット形のコネクタ15-1 a-2 a-7 a-8 b-1 b-2 b-,15,…,15,15及び15,15,…,15,15が設けられている。そして,コントローラ本体11とヘッド制7 b-8御モジュール12のコネクタ14と15間は,中継コネクタ16に-1 a-1よって接続されるようになっており,同様に各ヘッド制御モジュール12,12,…,12,12間も中継コネクタによって接続されるよ-1 -2 -7 -8うになっている。もっとも,第1図,第2図で示すコネクタ14及び中継コネクタ16は略図しており,端子数は少ないが,実際には,端子数は第4図に示すように多数個設けられている。」(3頁右上欄2行〜右上欄19行)と記載されているだけであり,控訴人主張の筐体外壁表面から一段下がった段差部にコネクタ14,コネクタ15が貼着されていると認b-1めることはできない。したがって控訴人の上記主張は採用することができない。
イまた控訴人は,乙13の2には接続用の開口が開示されておらず,また制御モジュール間には中継コネクタ16の厚みに相当する隙間が存すると主張する。
しかし,下記文献には以下の記載がある。なお,下記乙2,乙3の図面については,上記(4)ウ(ア)・イ(ア)において各摘記のとおりである。
(ア)乙1(特開平7-36585号公報。発明の名称「オプション装置」,出願人 株式会社日立製作所,公開日 平成7年2月7日)・「以上本発明は情報処理装置に設けたオプション増設用のオプションコネクタに,複数のオプション装置を増設可能とする情報処理装置とオプション装置を提供することにある。」(段落【0008】)・「図14はこのオプション接続基板41を内蔵する接続ユニット42である。4か所に設けた外部コネクタ43が全て同一高さでは増設するオプション装置のハウジングと干渉するためにジョイントコネクタ44を用いてコネクタ高さを高くし,増設コネクタ45とオプション装置に設けた接続コネクタ21とを接続することで,特定のオプション装置を増設しなくともユーザが必要とするオプション装置のみ増設することができる。」(段落【0035】)・【図14】(イ)乙2(特開平2-285698号公報。発明の名称「電子機器用筐体」,出願人 横河電機株式会社,公開日 平成2年11月22日)・「(1)プリント基板を挿入する開口部を有するケースと,この開口部に取付けられて当該開口部を塞ぐフロントカバーを有する電子機器用筐体において,…」(特許請求の範囲(1))・「プリント基板20はケース10の内部に一枚収容されるもので,開口部側の端部には信号接続用のコネクタ21,22が位置を隔てて設けられている。」(2頁右下欄14行〜17行)(ウ)乙3(特開平6-230809号公報。発明の名称「ビルディングブロック構造のプログラマブルコントローラ用ユニット」,出願人 オムロン株式会社,公開日 平成6年8月19日)・「ユニット本体1は箱状をなしており,ユニット本体1内にはプリント電気回路基板3が固定装着されている。」(段落【0013】)・「プリント電気回路基板3を隔てて,ユニット本体1の一方の側には電源ラインおよびデータバス,アドレスバス,コントロールバスの各バスライン接続用の雄型電気コネクタ5が,ユニット本体1の他方の側には雄型電気コネクタ5と同種類の電源ラインおよび各バスライン接続用の雌型電気コネクタ7が各々設けられている。」(段落【0014】)上記(ア)〜(ウ)の記載によれば,箱状のケース内に収納された制御回路に接続されたコネクタと,ケース外の他のコネクタを接続する際に,ケースの一部に他のコネクタを連通させるための接続用の開口を設けることは技術常識であることが認められる。そうすると,新引用例(乙13の2)においても,箱状のケースの両側壁のコネクタが近接して臨む位置には,コネクタを連通させるための接続用の開口が設けられていると解するのが自然である。また,新引用例(乙13の2)には,中継コネクタ16が各モジュール間にその厚み相当分の隙間を形成するものであることは特段記載されていない。したがって控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ控訴人は,新引用例(乙13の2)の「識別装置」と訂正発明1の「光ファイバ式検出器」とでは技術分野が相違すると主張する。
訂正発明1の「光ファイバ式検出器」も新引用例の「識別装置」も共に電子機器であるところ,訂正発明1の「光ファイバ式検出」ユニットは,工場の生産ラインや検査ライン等で検出した生産物(製品)の情報を光信号として光ファイバ101を通してアンプ部1に送られ,アンプ部において光電変換して信号処理を行い,上位のコンピュータにおいて情報処理を行うものであり,一方,新引用例に記載された「識別装置」は,生産ラインを流れる工具やパレット等の製品に付設されたデータキャリア4a,4bからデータを接受し,そのデータをヘッド制御モジュール12に送り,ヘッド制御モジュール12で信号処理を行い,コントローラ本体11内のコンピュータ(CPU42)において情報処理を行うものである。
新引用例の「識別装置」において,工具やパレット等の物品の識別は,それらのデータ信号を検出することによって行っているところから,結局,訂正発明1の「光ファイバ検出器」と同様に,新引用例の「識別装置」も一種の検出器であるということができる。そうすると,新引用例の「識別装置」の「ヘッド制御モジュール12」と,訂正発明1の「光ファイバ式検出器」の「アンプユニット」とは,検出器の電子機器ユニットである点で一致する。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
エまた控訴人は,配線基板への実装用端子の半田付けについて,これは乙号証等に開示されていないと主張するが,上記イで検討したとおり,一対のコネクタを配線基板の表裏面の対称位置に配する技術,配線基板に実装用端子を半田付けして取り付けることはいずれも周知の技術である。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
オさらに控訴人は,新引用例(乙13の2)のヘッド制御モジュールでは2枚の回路基板を備えるものであるとして,これを光電スイッチに適用するには阻害要因があると主張する。
控訴人の上記主張は,乙13の2のヘッド制御モジュールにおいては2枚の回路基板を有することが前提となっているところ,乙13の2には,第3図中の「通信制御回路51」,「ヘッドI/F回路53」及び「ヘッド接続コネクタ33-1」につき,2枚の回路基板として配置することについては何ら記載されていない。したがって,控訴人の上記主張は前提を欠き,採用することができない。
(6) まとめ以上によれば,訂正発明1と新引用発明1との相違点については,当業者において容易に想到することができたものと認められるから,訂正発明1には,進歩性欠如(特許法29条2項)の無効理由が存在すると認められるので,特許法104条の3により,特許権者たる控訴人は被控訴人に対しその権利を行使することができないことになる。
そうすると,本件訂正に係る訂正発明1には無効理由があることになるので,控訴人の提出した訂正の再抗弁は理由がないことに帰する。
4 時機に遅れた攻撃防御方法の主張についてこの点に関し控訴人は,乙13の2に基づく主張は時機に遅れたものであり却下すべきであると主張するが,乙13の2は,本件特許の無効審判請求手続において,平成19年4月3日付け職権審理結果通知書(乙13の1)において示された公知文献であり,本件訴訟の経緯に鑑みると時機に遅れたものということはできない。控訴人の上記主張は採用することができない。
5 結論以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,本件特許発明に基づく控訴人の請求は,当審において追加された部分も含め,全て理由がない。
よって,これと結論を同じくする原判決は相当であるから本件控訴を棄却し,控訴人が当審において追加した請求も理由がないから棄却して,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)物件目録1被控訴人の製造販売に係る,品名デジタルファイバセンサ(型式名下記のとおり)と称する光電センサ,及び品名「増設用コネクタ」(型式名下記のとおり)1光電センサ型式名DRF-TNDRF-TPDRF-TCNDRF-TCPDGF-TNDGF-TPDGF-TCNDGF-TCP並びに,被控訴人がOEM製造し,ドイツ連邦共和国「SICKAG」もしくは日本国「ジック株式会社」を供給先とする品名ファイバ型光電センサ「WLL190」。
2増設用コネクタ?@型式名「DOL-LL1901-02M」又は「DOL-LL1901-05M」のケーブルに付属される増設用コネクタ。
?A型式名「STE-WLL190-05P」又は「STE-WLL190-03P」(別紙)物件目録2被控訴人の製造販売に係る,品名ファイバセンサ(型式名下記のとおり)と称する光電センサ,及び品名「増設用コネクタ」(型式名下記のとおり)1光電センサ型式名B2RF-NB2RF-HNB2GF-NB2IF-WNB2RF-CNB2RF-CHNB2GF-CNB2IF-CWNB2RF-PB2RF-HPB2GF-PB2IF-WPB2RF-CPB2RF-CHPB2GF-CPB2IF-CWP2増設用コネクタ?@型式名「DOL-LL1901-02M」又は「DOL-LL1901-02M」のケーブルに付属される増設用コネクタ。
?A型式名「STE-WLL190-05P」又はい「STE-WLL190-03P」(別紙)物件目録3被控訴人の製造販売に係る,品名センサアンプ(型式名下記のとおり)と称する光電センサ型式名DSA-MNDSA-SNDSA-MN3DSA-SN1DSA-MN-M8DSA-MPDSA-SPDSA-MP3DSA-SP1DSA-MP-M8(別紙)イ号物件説明書1図面の説明図1外観斜視図(増設コネクタ非装着)図2外観斜視図(増設コネクタ装着)図3分解斜視図図4基板正面図図5連結状態における図2のA-A’断面要部拡大図図6連結状態を表す斜視図ただし,原判決別紙イ号物件説明書添付の図1ないし6の記載を引用する。
2符号の説明1ケース2配線基板3パネル体4基板挿入用開口部5増設用コネクタ接続用開口6増設コネクタ接続部7増設用コネクタ8防塵用キャップ8’パッキング9デジタルモニタ10設定ボタン3構成光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式の検出器のアンプユニットである。
一枚の配線基板2の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体1内で後記一対の壁面1a,1bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口5a,5bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部6a,6bを有する。
その下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた配線基板2が挿入される基板挿入用開口部4を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記配線基板2に略平行な一対の壁面1a,1bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部4から下方に前記配線基板2が挿入されるケース1を有する。
ケース1の前記開口部4は,デジタルモニタ9及び設定ボタン10を備えたパネル体3によって閉塞される。
ケース1における前記一対の壁面1a,1bの前記基板挿入用開口部4から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口5a,5bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記基板2が前記基板挿入用開口部4から前記ケース1に挿入されたとき前記開口5a,5bに,前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが,前記一対の壁面1a,1bの内壁から内方で近接配置されている。
増設用コネクタ7は,増設用コネクタ接続用の開口5a,5bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部6a,6bのうちの前記接続用開口5a,5bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース1の外側で接触端子によって接続される。
前記一対の増設コネクタ接続部6a,6bが取り付けられた前記配線基板2の厚みは,前記基板挿入用開口部4から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース1の内側の幅が,前記配線基板2に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部6a,6bの一方に前記増設用コネクタ7を接続したときの前記増設コネクタ接続部6a,6b及び前記増設用コネクタ7の厚みに前記配線基板2の厚みを加えた厚みより小さい。
以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
(別紙)ロ号物件説明書1図面の説明図1外観斜視図(増設コネクタ非装着)図2外観斜視図(増設コネクタ装着)図3分解斜視図図4基板正面図図5連結状態における図2のA-A’断面要部拡大図図6連結状態を表す斜視図ただし,原判決別紙ロ号物件説明書添付の図1ないし6の記載を引用する。
2符号の説明101ケース102配線基板103パネル体104基板挿入用開口部105増設用コネクタ接続用開口106増設コネクタ接続部107増設用コネクタ108防塵用キャップ10910回転感度ボリウム110表示灯3構造の説明光ファイバからの光信号を光電変換して信号の処理を行う光ファイバ式の検出器のアンプユニットである。
一枚の配線基板102の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体101内で後記一対の壁面101a,101bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口105a,105bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部106a,106bを有する。
その下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた配線基板102が挿入される基板挿入用開口部104を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記配線基板102に略平行な一対の壁面101a,101bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部104から下方に前記配線基板102が挿入されるケース101を有する。
ケース101の前記開口部104は,回転感度ボリウム109及び表示灯110を備えたパネル体103によって閉塞される。
ケース101における前記一対の壁面101a,101bの前記基板挿入用開口部104から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口105a,105bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記基板102が前記基板挿入用開口部104から前記ケース101に挿入されたとき前記開口105a,105bに,前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが,前記一対の壁面101a,101bの内壁から内方で近接配置されている。
増設用コネクタ107は,増設用コネクタ接続用の開口105a,105bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部106a,106bのうちの前記接続用開口105a,105bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース101の外側で接触端子によって接続される。
前記一対の増設コネクタ接続部106a,106bが取り付けられた前記配線基板102の厚みは,前記基板挿入用開口部104から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース101の内側の幅が,前記配線基板102に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部106a,106bの一方に前記増設用コネクタ107を接続したときの前記増設コネクタ接続部106a,106b及び前記増設用コネクタ107の厚みに前記配線基板102の厚みを加えた厚みより小さい。
以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
(別紙)ハ号物件説明書1図面の説明図1外観斜視図(増設コネクタ非装着)図2外観斜視図(増設コネクタ装着)図3分解斜視図図4基板正面図図5連結状態における図2のA-A’断面要部拡大図図6連結状態を表す斜視図ただし,原判決別紙ハ号物件説明書添付の図1ないし6の記載を引用する。
2符号の説明201ケース202配線基板203パネル体204基板挿入用開口部205増設用コネクタ接続用開口206増設コネクタ接続部207増設用コネクタ208防塵用キャップ209設定ボタン210デジタルモニタ3構造の説明レーザセンサにおいてレーザ反射光を信号に変換して処理を行うレーザ式の検出器のアンプユニットである。
一枚の配線基板202の表面および裏面の対称位置で,各々の接触端子が配置される面と同一面の電路に各々の実装用端子が半田付けされて取り付けられていると共に,後記箱状のケース本体201内で後記一対の壁面201a,201bの内壁から内方で後記一対の接続用の開口205a,205bに近接して臨むように設けられる一対の増設コネクタ接続部206a,206bを有する。
その下方でレールに取り付けられ,箱状であって,該箱状のケース本体の上方には前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた配線基板202が挿入される基板挿入用開口部204を有すると共に,該基板挿入用開口の面積が前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bの各面の面積よりも小さくなるように形成されていると共に,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記配線基板202に略平行な一対の壁面201a,201bを有し,この略平行な一対の壁面に沿って,基板挿入用開口部204から下方に前記配線基板202が挿入されるケース201を有する。
ケース201の前記開口部204は,デジタルモニタ209及び設定ボタン210を備えたパネル体203によって閉塞される。
ケース201における前記一対の壁面201a,201bの前記基板挿入用開口部204から下方に離れた位置には一対の増設用コネクタ接続用の開口205a,205bが形成されており,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記基板202が前記基板挿入用開口部204から前記ケース201に挿入されたとき前記開口205a,205bに,前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが,前記一対の壁面201a,201bの内壁から内方で近接配置されている。
増設用コネクタ207は,増設用コネクタ接続用の開口205a,205bのうち1つを貫通して,該1つの開口が形成された一方の前記壁面の内壁から内方に位置する前記増設コネクタ接続部206a,206bのうちの前記接続用開口205a,205bのいずれか1つに近接配置されている一方の増設コネクタ接続部に前記一対の壁面から内方で接触端子によって接続されていると共に,他のアンプユニットに前記ケース201の外側で接触端子によって接続される。
前記一対の増設コネクタ接続部206a,206bが取り付けられた前記配線基板202の厚みは,前記基板挿入用開口部204から挿入可能な厚みであり,かつ,ケース201の内側の幅が,前記配線基板202に取り付けられた一対の増設コネクタ接続部206a,206bの一方に前記増設用コネクタ207を接続したときの前記増設コネクタ接続部206a,206b及び前記増設用コネクタ207の厚みに前記配線基板202の厚みを加えた厚みより小さい。
以上の特徴を有する光電センサのアンプユニットである。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 清水知恵子