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関連審決 不服2005-3337
関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  技術的思想 /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  周知技術 /  技術的手段 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  一般承継 /  名義変更 /  共有 /  参酌 /  技術的意義 /  均等 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  加工 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10008号 審決取消請求事件
原告株式会社HDT
原告X
両名訴訟代理人弁護士稲元富保
被告特許庁長官
指定代理人里村利光,小牧修,森山啓,山本章裕
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/10/15
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告らの求めた裁判「特許庁が不服2005-3337号事件について平成19年11月27日にした審決を取り消す。」との判決第2事案の概要本件は,Aがした後記特許出願(以下「本願」という。なお,後記のとおり,審査手続中に,B及び原告Xが,特許を受ける権利(持分各2分の1)を承継した。)に対し拒絶査定がされたため,B及び原告Xが,これを不服として拒絶査定不服審判を請求したところ(なお,後記のとおり,審判請求手続中に,原告株式会社HDT(旧商号・株式会社ヒューネット・ディスプレイテクノロジー)が,Bの上記共有持分権を全部承継した。),同請求は成り立たないとの審決がされたため,原告らが,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本願(甲4)出願人:A発明の名称:「液晶ディスプレイ用バックライト」出願番号:平成7年特許願第271994号出願日:平成7年9月26日原告Xを承継人とする出願人名義変更届の受付日:平成10年11月4日(甲6)Bを承継人(持分2分の1)とする出願人名義変更届の受付日:平成11年2月25日(甲7)拒絶査定:平成17年1月25日付け(2)審判請求手続審判請求日:平成17年2月24日(不服2005-3337号)手続補正日:平成17年2月24日(甲5。以下「本件補正」といい,本願に係る本件補正後の明細書(甲4,5)を「本願明細書」という。)原告株式会社HDTを承継人(Bの共有持分権を全部承継)とする出願人名義変更届(一般承継)の受付日:平成18年10月30日(甲8,9)審決日:平成19年11月27日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」原告らに対する審決謄本送達日:平成19年12月11日2発明の要旨審決が対象とした本件補正後の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この請求項に係る発明を「本願発明」という。)。
【請求項1】「端面を単一の傾斜面にした導光板と,前記傾斜面に並設されたRGBの光を発光する3本の冷陰極管とを備え,前記導光板の前記傾斜面は,断面鋸刃状に形成されていることを特徴とする液晶ディスプレイ用バックライト。」3審決の要点審決は,本願発明は,下記引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び下記周知例に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
引用例実願平4-26255号(実開平5-84938号)のCD-ROM(甲1)周知例1特開昭62-205388号公報(甲10)周知例2特開平7-65618号公報(平成7年3月10日公開。甲11)周知例3特開平4-218089号公報(甲2)周知例4特開平5-88168号公報(甲3)(1)引用発明「端面を単一の傾斜面にした導光体と,前記傾斜面に並設された3本の蛍光管とを備えている液晶表示装置の面光源装置。」(2)本願発明と引用発明との対比ア一致点「端面を単一の傾斜面にした導光板と,前記傾斜面に並設された3本の蛍光管とを備えている液晶ディスプレイ用バックライト。」イ相違点「【相違点1】本願発明は,光源が,『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』であるのに対して,引用発明は,『3本の蛍光管』である点。
【相違点2】本願発明は,導光板の傾斜面が『断面鋸刃状』に形成されているのに対して,引用発明は,導光板の傾斜面が『断面鋸刃状』に形成されていない点。」(3)相違点についての判断「【相違点1】について一般に,エッジライト型の液晶表示装置に用いられる面光源装置において,その導光板端面に設けられる光源としては,表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させるという観点から,RGBの光を発光する3本の冷陰極管が用いられることは周知であるから(周知例1(3頁左上欄3〜6行,第1図),周知例2(【0012】,【図2】)等参照。),引用発明において,『3本の蛍光管』に換えて,『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得る。
【相違点2】について本願発明で,導光板の傾斜面を『断面鋸刃状』としたのは,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,高輝度の液晶ディスプレイとするためである(本願明細書【0019】,【0023】)。
(因みに,同明細書には,導光板の傾斜面を『断面鋸刃状』に形成する方法については何ら記載がなく,したがって,その具体的形状や大きさ等は定かではない。)ところで,一般に,エッジライト型の液晶ディスプレイでは,導光板の光源側端面を『粗面化』することで,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,輝度が改良された液晶ディスプレイとすることは広く行われているから(例えば,周知例3(【0018】,【図3】),周知例4(【0009】,3頁左欄29〜31行)等参照。),引用発明において,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,輝度が改良された液晶ディスプレイとするために,導光板の傾斜面を粗面ないしは断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る。
また,本願発明の効果は,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであり,格別のものではない。」(4)審決の「むすび」「以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。」第3審決取消事由の要点審決は,以下のとおり,相違点1及び2についての各判断を誤った結果,本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断したものであるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点1についての判断の誤り)審決は,相違点1について,「一般に,エッジライト型の液晶表示装置に用いられる面光源装置において,その導光板端面に設けられる光源としては,表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させるという観点から,RGBの光を発光する3本の冷陰極管が用いられることは周知である」と認定した(以下,審決が認定した当該技術を「周知技術1」という。)。原告らは,この認定を争うものではないが,周知技術1を適用して,「引用発明において,『3本の蛍光管』に換えて,『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得る」と判断した審決には,以下のとおり,誤りがある。
(1)引用発明についてア引用例の記載(【要約】,段落【0005】〜【0009】,【0019】)によれば,引用発明は,光束の利用率を高めることを目的として,少なくとも3本のアパーチャ型蛍光管3を用い,同蛍光管3を△状にオーバラップさせて配列することにより,光束の利用率が高く,光輝度の表示装置を提供するとの作用効果を奏するものである。
また,引用発明における3本のアパーチャ型蛍光管3は,いずれも同色であることが前提となっている。
イ被告の主張に対する反論(ア)a被告は,「引用例の記載(請求項3,段落【0002】,・・・【0007】・・・)によれば,引用発明は,導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく,・・・『導光体の端面を単一の傾斜面にした』ものである。したがってまた,引用発明は,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束の色には関係のない発明である」と主張する。
bしかしながら,引用例の段落【0002】は,引用発明の従来技術について説明するものであるし,段落【0007】は,引用発明が解決しようとする課題について説明するものにすぎない。むしろ,引用発明は,上記アの作用効果を奏するものであり,そのために,導光板の厚さを10mm以下に限定するようなものではない。また,引用例の実用新案登録請求の範囲の記載中にも,そのような限定はない。さらに,引用発明は,蛍光管を3本「以上」使用するものであるから,例えば,蛍光管を10本並べるような場合に,導光板の厚さが10mm以下でなければならないと解釈することはできない。
そうすると,被告の上記主張中,「導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく」との部分は,引用発明の解釈を誤るものであり,かかる誤った解釈を前提とする「引用発明は,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束の色には関係のない発明である」との被告の上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。
(イ)被告は,「原告らの主張及び引用例の記載中,『光輝度』とあるのは,『高輝度』の誤記であることが明らかである」と主張するが,「輝度」は,光のほか,電子線や粒子線の強度を表す際にも使用されるものであるし,引用例に係る実用新案登録出願につき手続補正がされていないことも考慮すると,引用例に係る実用新案登録出願人は,「光輝度」の語をそのまま「光輝度」として理解していたものと推認するのが自然である(以下,被告の主張及び引用例の記載につき同じ。)。
(2)周知技術1についてア周知例1の記載(2頁右上欄の[発明が解決しようとする問題点],左下欄12行〜右下欄10行の[作用])及び周知例2の記載(段落【0005】,【0006】,【0011】)によれば,周知技術1は,1本の単色冷陰極管に換えてRGBの光を発光する3本の冷陰極管を用いる技術であり,発光色の可変性が前提となっているものである。
イ被告は,「審決が認定した周知技術1は,原告らが主張するように『1本の単色冷陰極管に換えて』RGBの光を発光する3本の冷陰極管を用いる技術ではない」と主張するが,周知例1の第6図(従来技術)と第1図との比較及び周知例2の第1図(従来技術)と第2図以降との比較からも明らかなとおり,周知例1及び2に記載された技術は,1本の単色冷陰極管を3本のRGBの冷陰極管に換えた技術であるから,被告の上記主張は失当である。
(3)周知技術1の引用発明への適用についてア上記(1)及び(2)によれば,周知技術1を引用発明に適用した場合,すなわち,引用発明における3本の蛍光管を「RGBの光を発光する3本の冷陰極管」に換えた場合には,RGBの各色を発光する蛍光灯はそれぞれ1本となってしまい,引用発明における上記(1)の目的ないし作用効果と相反する結果となる。
なお,審決が認定した引用発明(引用例の図2の配列)においては,△状にオーバラップさせた配列(引用例の図1)によって得られる上記(1)の目的ないし作用効果は得られないものである。
そうすると,周知技術1を引用発明に適用することには,阻害事由があるというべきであるから,引用発明における「3本の蛍光管」に換えて「RGBの光を発光する3本の冷陰極管」を備えるようにすることが,当業者が容易に想到し得るものであるとした審決の上記判断は,誤りである。
イ被告の主張に対する反論(ア)a被告は,「引用発明は,3本の蛍光管が発光する色には関係のない発明であるから,同発明の『3本の蛍光管』に換えて,『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得るものである」と主張する。
bしかしながら,前記(1)ア及びイ(ア)のとおり,「引用発明は,3本の蛍光管が発光する色には関係のない発明である」との前提自体が誤りであるから,被告の上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。
また,仮に,被告が主張するとおり,周知技術1が,「『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』を用いる技術そのもの」であるとしても,引用発明が前記(1)アの作用効果を奏するためには,RGBの各光源につきそれぞれ3本以上の蛍光管を備えるようにしなければならないことは明らかであるから,この点からも,被告の上記主張は失当である。
(イ)被告は,引用発明が,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束の色には関係のない発明であることを前提として,「引用発明に周知技術1を適用した場合,『導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達する』との引用発明の作用効果に加え,『表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させる』との周知技術1の作用効果も奏することになることは,当業者に自明のことである」と主張するが,引用発明が奏する作用効果は,前記(1)アのとおりであって,被告が独自に想定する「導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達する」との作用効果ではない。
(ウ)被告は,引用例の図1〜図4に記載された各発明が,「3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達するようにしたものであること」を前提として,「引用発明においても,図1の配列の場合と同様,『3本以上の蛍光管を効率よく利用し,光束の利用度が高く,高輝度の表示装置を提供することができる』との作用効果を奏するものである」と主張するが,上記(イ)のとおりであるから,被告の上記主張は,その前提を欠くものとして失当である。
2取消事由2(相違点2についての判断の誤り)審決は,相違点2について,「一般に,エッジライト型の液晶ディスプレイでは,導光板の光源側端面を『粗面化』することで,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,輝度が改良された液晶ディスプレイとすることは広く行われている」と認定した(以下,審決が認定した当該技術を「周知技術2」という。)。原告らは,この認定を争うものではないが,周知技術2を適用して,「引用発明において,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,輝度が改良された液晶ディスプレイとするために,導光板の傾斜面を粗面ないしは断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る」と判断した審決には,以下のとおり,誤りがある。
(1)「導光板の光源側端面を断面鋸刃状とする」との技術(以下「本件技術」ということがある。)の周知技術性についてア審決は,本件技術が周知技術であると認定していないにもかかわらず,「導光板の傾斜面を・・・断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る」と判断したが,当該判断は,認定していない周知技術を適用したものとして誤りである。
イ被告の主張に対する反論(ア)a被告は,「本願明細書の記載並びに本願に係る図1及び図2(以下,それぞれ『本願図1』及び『本願図2』という。)の記載によれば,本願図1に示されるものの傾斜面については,光学的に乱れが生じない程度の処理(鏡面化,平滑化等の処理)が行われているのに対し,本願発明(本願図2)の傾斜面については,そのような処理が行われていないことが理解される」と主張する。
bしかしながら,鏡面化すれば入射光はすべて反射されるのであるから,「光学的に乱れが生じない程度の処理」の例として,「鏡面化」を挙げるのは誤りである。
また,本願明細書の記載(段落【0018】)によれば,本願図2の形態は,傾斜面を鋸刃状としたほかは,本願図1の形態と同様であると理解されるから,本願発明(本願図2)においても,断面形状を鋸刃状とする態様以外の態様で,傾斜面に「光学的に乱れが生じない程度の処理」がされていると理解するのが自然である。
なお,被告は,「光学的に乱れを生じさせるために行う処理」が「粗面化(強制拡散)」であるとの前提に立っているが,「入射光を無方向に強制拡散させるために行う処理」が「粗面化」であり,光学的に乱れが生じるような傾斜面であっても,「粗面化による強制拡散」が生じていない場合もあるから,被告の上記前提は誤りである。
(イ)a被告は,「本願明細書の記載並びに本願図1及び図2の記載によれば,本願発明の導光板の光源側端面である『断面鋸刃状』に形成された『傾斜面』は,光源からの光を散光させるものであり,その任意の断面において,その表面形状が,すりガラスのように山と谷が周期的に現れるような形状のものであって,その平滑でない表面形状により,照射された光源からの光を四方へ散らすことができるものであることが理解される」と主張する。
bしかしながら,本願明細書の記載(段落【0023】)によれば,本願明細書にいう「散光」とは,傾斜面が断面鋸刃状に形成されていることから生じる散光を意味するものであり,四方に散らされることを必須の要件とする「散光」を意味するものでない(軸方向での拡散を目的としない)ことは,当業者であれば通常理解することができるといえる。したがって,本願明細書の「散光」との記載から,「本願発明の傾斜面の任意の断面において,その表面形状が,すりガラスのように山と谷が周期的に現れるような形状のものであって,その平滑でない表面形状により,照射された光源からの光を四方へ散らすことができる」などと理解することはできない。
また,すりガラスの表面は,無秩序な斜面で構成されており,「山と谷が周期的に現れるような形状」を有するものではない。
なお,「山と谷が周期的に現れるような形状」を持つ代表的なものとして回折格子の表面があるが,回折格子の表面を「粗面」と呼ぶことはない。
(ウ)a被告は,「本願明細書においては,一般的には『粗面』と呼ばれている平滑でない面のことを『断面鋸刃状』と表現したものであ(る)」,「相違点2に係る本願発明の構成をこのように解することは,例えば,特開平7-181330号公報(平成7年7月21日公開。乙1。以下『乙1公報』という。)に記載(段落【0030】,図10)があり,また,特開平7-5453号公報(平成7年1月10日公開。乙2。以下『乙2公報』という。)にも記載(段落【0027】)があるところであるから,何ら技術常識に反するものではない」と主張する。
bしかしながら,被告の上記主張の前段部分は,上記(ア)a及び(イ)aの主張を前提とするものであるところ,そのような前提が誤りであることは,上記(ア)b及び(イ)bのとおりである。
また,「断面鋸刃状」の面を「粗面」であると一般化することができる根拠は,本願明細書には存在しない(本願明細書においては,「断面鋸刃状」の形状が,そのまま,「断面鋸刃状」と表現されているにすぎず,一般に「粗面」と呼ばれる平滑でない面が「断面鋸刃状」と表現されているものではない。)。
c他方,被告の上記主張の後段部分についても,乙1公報の図10(図9も同様である。)に記載された粗面の断面形状は,高さが不揃いの鋭利な凹凸が形成されているものであって,これを「断面鋸刃状」と認めることはできない。
また,乙2公報の段落【0027】には,「鋸歯状の粗面」との記載があり,これによれば,「鋸歯状」と「粗面」とが異なる概念を有することは明らかである。
さらに,同段落には,「メッシュ状の粗面」との記載もある。
そもそも,審決自体,「粗面ないしは断面鋸刃状」との表現を用いており,「粗面」と「断面鋸刃状」とが異なる概念を有するものであると理解しているところである。
なお,乙1公報及び乙2公報は,「『粗面』を『断面鋸刃状』と表現し得ること」を立証趣旨として提出されたものであるが,その実質は,審決が認定していない本件技術の周知技術性を立証するために提出された新たな証拠にほかならない(ただし,乙1公報及び乙2公報によって,本件技術の周知技術性が立証されているとはいえない。)。
(エ)a被告は,「審決は,本願発明の『断面鋸刃状』が『粗面』と技術上同じ意味を有することにかんがみ,周知技術2を認定した上,『輝度が改良された液晶ディスプレイとするために,導光板の傾斜面を粗面ないしは断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る』と判断したものであるから,審決が,本件技術が周知技術であると明示的に認定していないからといって,審決の判断が誤りとなるものではない」と主張する。
bしかしながら,「本願発明の『断面鋸刃状』が『粗面』と技術上同じ意味を有する」との前提自体が誤りであるから,かかる誤った前提に基づく審決の判断が誤りであることは明らかである。
(2)相違点2に係る本願発明の構成(以下「本件構成」ということがある。)の想到容易性についてア本願発明が本件構成を採用したのは,「高い輝度の液晶ディスプレイ」とするためであって,引用発明のように,単に「光束の利用効率の高い光輝度の表示装置(引用例段落【0019】)」とするためではなく,また,本願発明と引用発明は,その作用効果においても異なるものである。
イ(ア)本件構成においては,冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない(光学的に乱れが生じない)。他方,RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された入射光は,鋸刃状の断面内において拡散され,入射初期の段階で混じり合うことで,色むらが低減されることになる(本願明細書段落【0019】)。
すなわち,本件構成は,線状光源からの入射光を鋸刃状の断面において断面方向に拡散させるという指向性を持たせることにより,RGBの3色の混じり合いの程度の均一化を図るものである。
(イ)これに対し,周知技術2における「粗面化」とは,面を荒らすということであり,例えば周知例3にも記載(【要約】)されているように,入射光を無方向的に強制拡散する面とすることである。そのため,RGBの各蛍光管からの入射光を粗面を介して入射した場合,無方向的に強制拡散されることになり,RGBの3色の混じり合いの程度が不均一になって色むらが発生することになるから,RGBの3色を用いる場合には,入射面を粗面化することは好ましいことではなく,したがって,周知技術2の粗面化の技術を適用することはできない。
(ウ)また,周知例4は,線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐために,光散乱効果の程度を線状光源の軸方向で変化させているものである(段落【0016】,【0017】)。したがって,線状光源の軸方向で拡散しない本件構成を有する本願発明においては,線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐことはできない。
すなわち,本件構成においては,冷陰極管の軸方向で拡散しない結果,軸方向における輝度の分布は,冷陰極管からの出射光の輝度に左右されることとなり,傾斜面を「粗面」とした場合のように軸方向における輝度低下まで防ぐことができない。
そして,周知例3(段落【0009】)及び周知例4(段落【0004】)にも,これを裏付ける記載があることからすると,周知技術2における粗面化は,線状光源の軸方向で拡散しない本件構成とは,その作用効果を異にするものであるといえる。
(エ)そうすると,当業者は,引用発明に周知技術2を適用することにより,傾斜面(入射面)を粗面化することには容易に想到し得るとしても,周知技術2によっては得られない作用効果を奏する本件構成には容易に想到し得ないというべきである。
ウ被告の主張に対する反論(ア)被告は,「本件構成に係る傾斜面は,光源からの光を四方に散らす(散光させる)ものである」と主張するが,前記(1)イ(イ)bのとおりであるから,被告の主張は誤りである。
(イ)a被告は,「『RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された入射光が,入射初期の段階で混じり合うこと』は,RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された光を四方に散らすことによっても奏される作用効果であるから,『色むらが低減される』との作用効果についても,『冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない』か否かにより左右されるものではない」旨主張する。
bしかしながら,「傾斜面内に入射された光を四方に散らす」ことは,無方向的に光を拡散する(どの方向にどの色の光が拡散されるかが定まらない)ことを意味するところ,そのような場合には,RGB3色の色の混じり合いの程度が不均一になり,色むらが発生する。また,無方向的に光を拡散させると,導光板内において,全反射で進める光が減少し,暗くなってしまう。
これに対し,冷陰極管の軸方向で入射光が拡散しないようにすると,各色の光の拡散に方向性が持たされ,色むらが低減されることになる。
したがって,「色むらが低減される」との作用効果は,「冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない」か否かによって左右されるものである。
(ウ)被告は,「本願明細書には,『色むら』についての記載は一切ないから,『色むらが低減される』との作用効果は,明細書の記載に基づかないものである」と主張するが,原告らは,本願発明の構成(本件構成)が奏する効果を主張するものであって,根拠を十分に有するものである。
(エ)被告は,「断面鋸刃状の傾斜面を構成する垂直面及び水平面は,平滑面であり,複数のプリズムの機能を有することとなるところ,本件構成に係る傾斜面にRGBの光を発光する3本の冷陰極管を並設した場合には,各プリズムが,それぞれ,入射光が集まるようにこれを幾分屈折させることになる。そうすると,入射光は,入射初期の段階では,RGBの色ごとにプリズムの数だけ集光して,明るくなる領域と暗くなる領域ができ,色むらが激しくなる箇所が増えることになる」と主張するが,被告のこの主張は,冷陰極管からの入射光が「平行光」であることを前提とするものであって,誤りである(冷陰極管から出射される光は,「散光」であって,「平行光」ではない。)。
なお,被告の主張中,「断面鋸刃状の傾斜面を構成する垂直面及び水平面」が平滑面であることは認める。
(オ)被告は,「周知技術2における『粗面化』は,入射光を無方向に強制拡散させて輝度の均一性を向上させる技術であるから,単に,面が荒れていればよいといったものではない」と主張するが,審決は,周知技術2の粗面化により,「輝度が改良された液晶ディスプレイとする」と認定しているにすぎず,「輝度の均一性を向上させた液晶ディスプレイとする」とは認定していない。
なお,単なる「粗面化」によって,線状光源の軸方向における輝度の均一性を向上させることができないことは,例えば,周知例4の段落【0017】にも記載されていることである。
(カ)a被告は,「RGBの各蛍光管からの入射光を周知技術2の粗面を介して入射した場合,無方向,すなわち,四方に均等に強制拡散され,RGBの3色の混じり合いの程度は,粗面化しない場合よりも均一となって,色むらが解消されることは明らかである」と主張する。
bしかしながら,粗面化した場合に,光が「無方向に拡散されること」と「四方に均等に強制拡散されること」とは,同義ではない(「無方向」とは,方向性がないことを意味するにすぎず,「四方に『均等に』強制拡散されること」までを意味するものではない。例えば,周知例3の段落【0018】にも,「均等に拡散される」などの記載はない。)。
したがって,「四方に均等に強制拡散されるから色むらが解消される」旨の被告の上記主張は,粗面化の技術的意義を理解しないものとして失当である。
(キ)被告は,「本願発明は,傾斜面を平滑でない面,すなわち,断面鋸刃状にすることにより,光源からの光を傾斜面において四方に散らし,導光板内に取り込まれた光を均一に導光板の全体に行き渡らせ,傾斜面に隣接する導光板の両端面付近の暗くなりがちな領域まで明るくし,もって,粗面化しない傾斜面と比較して,より高輝度の液晶ディスプレイを得るものであるから,本件構成が奏する作用効果と,周知技術2の『線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐ』との作用効果とは,光源側端面に隣接する導光板の両端面付近の輝度低下を防ぎ,より高輝度の液晶ディスプレイを得ることができるとの点で一致するものである」と主張するが,本件構成が,「光源からの光を傾斜面において四方に散ら(す)」ものでないことは,前記(1)イ(イ)bのとおりであるから,被告の主張は,その前提を欠くものとして失当である。
(3)小括ア以上のとおりであるから,「粗面化」する技術が周知技術であるとしても,本件技術までが周知技術であるとはいえず,また,引用発明に周知技術2を適用しても,当業者は,本件構成を採用することにまで容易に想到することはできないから,審決の上記判断は誤りである。
イなお,被告は,「輝度を改良するため,引用発明に周知技術2を適用し,単一の傾斜面とした導光板の光源側端面を,任意の断面が鋸刃状になるような粗面とし,本件構成とすることは,当業者にとって容易なことである」と主張するが,審決は,本件技術が周知技術であると認定していないのであるから,被告の主張は失当である。
第4被告の反論の骨子1取消事由1(相違点1についての判断の誤り)に対して(1)引用発明についてア原告らは,「引用発明は,光束の利用率を高めることを目的として,少なくとも3本のアパーチャ型蛍光管3を用い,同蛍光管3を△状にオーバラップさせて配列することにより,光束の利用率が高く,光輝度の表示装置を提供するとの作用効果を奏するものである。また,引用発明における3本のアパーチャ型蛍光管3は,いずれも同色であることが前提となっている」と主張する。
イしかしながら,引用例の記載(請求項3,段落【0002】,【0003】,【0007】,【0016】,図2)によれば,引用発明は,導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達するようにするために,「導光体の端面を単一の傾斜面にした」ものである。したがってまた,引用発明は,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束の色には関係のない発明であるといえる。
そうすると,引用発明の作用効果や,その蛍光管の色に係る原告らの上記主張は失当である。
ウなお,原告らの上記主張及び引用例の記載中,「光輝度」とあるのは,引用例の記載(段落【0005】〜【0007】)や,面光源装置の分野における通常の用語法に照らし,「高輝度」の誤記であることが明らかである(以下,原告らの主張及び引用例の記載につき同じ。)。
(2)周知技術1についてア原告らは,「周知技術1は,1本の単色冷陰極管に換えてRGBの光を発光する3本の冷陰極管を用いる技術であり,発光色の可変性が前提となっているものである」と主張する。
イしかしながら,審決が認定した周知技術1は,表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させるために必要とされる,導光板端面に設けられる光源の構成,すなわち,「RGBの光を発光する3本の冷陰極管」を用いる技術そのものであり,原告らが主張するように「『1本の単色冷陰極管に換えて』RGBの光を発光する3本の冷陰極管」を用いる技術ではないから,原告らの上記主張は失当である。
(3)周知技術1の引用発明への適用についてア表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させるとの技術課題は,エッジライト型の液晶表示装置に用いられる面光源装置の技術分野において周知であり,この課題が,引用発明のように導光体端面が単一の傾斜面に形成されたエッジライト型の液晶表示装置に用いられる面光源装置においても存在することは明らかであるから,引用発明に周知技術1を適用する動機は十分に存在するといえる。
そして,上記(1)のとおり,引用発明は,3本の蛍光管が発光する色には関係のない発明であるから,同発明の「3本の蛍光管」に換えて,「RGBの光を発光する3本の冷陰極管」を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
イ(ア)原告らは,「周知技術1を引用発明に適用し,引用発明における3本の蛍光管を『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』に換えた場合には,RGBの各色を発光する蛍光灯はそれぞれ1本となってしまい,引用発明の目的ないし作用効果と相反する結果となる」旨主張する。
(イ)しかしながら,原告らの上記主張は,引用発明における3本の蛍光管がいずれも同色であることを前提とするものであり,失当である。
なお,引用発明に周知技術1を適用した場合,「導光板の厚みを10mmよりも厚くすることなく,3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達する」との引用発明の作用効果に加え,「表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させる」との周知技術1の作用効果も奏することになることは,当業者に自明のことである。
ウ(ア)原告らは,「審決が認定した引用発明(引用例の図2の配列)においては,△状にオーバラップさせた配列(引用例の図1)によって得られる目的ないし作用効果は得られないものである」旨主張する。
(イ)しかしながら,審決は,引用例の図1〜図4に記載された各発明(3本の蛍光管の蛍光膜から発光する光束のいずれもが他の蛍光管に邪魔されることなく導光板の入射領域に到達するようにしたもの)のうち,図2(請求項3,段落【0016】)に記載されたものを引用発明と認定したものであり,引用発明においても,図1の配列の場合と同様,「3本以上の蛍光管を効率よく利用し,光束の利用度が高く,高輝度の表示装置を提供することができる」との作用効果を奏するものであるから,原告らの上記主張は失当である。
エ原告らは,上記イ(ア)及びウ(ア)の各主張を根拠に,「周知技術1を引用発明に適用することには,阻害事由があるというべきであるから,引用発明における『3本の蛍光管』に換えて『RGBの光を発光する3本の冷陰極管』を備えるようにすることが,当業者が容易に想到し得るものであるとした審決の判断は,誤りである」旨主張するが,上記イ(イ)及びウ(イ)のとおりであるから,周知技術1を引用発明に適用することに阻害事由があるということはできず,原告らの主張は失当である。
(4)以上のとおりであるから,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点2についての判断の誤り)に対して(1)本件技術の周知技術性についてア原告らは,本件技術が周知技術であると認定することなく,当該技術を適用して相違点2についての判断をした審決は誤りである旨主張する。
イ(ア)しかしながら,本願明細書の記載(段落【0011】,【0013】,【0018】,【0019】,【0023】)並びに本願図1及び図2の記載によれば,次のことが理解される。
a本願図1に示されるものの傾斜面については,光学的に乱れが生じない程度の処理(鏡面化,平滑化等の処理)が行われているのに対し,本願発明(本願図2)の傾斜面については,そのような処理が行われていないこと。
b本願発明の導光板の光源側端面である「断面鋸刃状」に形成された「傾斜面」は,光源からの光を散光させるものであり,その任意の断面において,その表面形状が,すりガラスのように山と谷が周期的に現れるような形状のものであって,その平滑でない表面形状により,照射された光源からの光を四方へ散らすことができるものであること。
(イ)上記(ア)によれば,本願明細書においては,一般的には「粗面」と呼ばれている平滑でない面のことを「断面鋸刃状」と表現したものであり,本願発明は,傾斜面を平滑でない面,すなわち,粗面にし,光源からの光を傾斜面において四方に散らし(散光し),導光板内に取り込まれた光を均一に導光板の全体に行き渡らせることにより,傾斜面に隣接する導光板の両端面付近の暗くなりがちな領域まで明るくし,より高輝度な液晶ディスプレイを得るものであるといえる。
(ウ)そして,本件構成をこのように解することは,例えば,乙1公報に記載(段落【0030】,図10)があり,また,乙2公報にも記載(段落【0027】)があるところであるから,何ら技術常識に反するものではない。
(エ)そうすると,審決は,本願発明の「断面鋸刃状」が「粗面」と技術上同じ意味を有することにかんがみ,周知技術2を認定した上,「輝度が改良された液晶ディスプレイとするために,導光板の傾斜面を粗面ないしは断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る」と判断したものであるから,審決が,本件技術が周知技術であると明示的に認定していないからといって,審決の判断が誤りとなるものではない。
(オ)よって,原告らの上記主張は理由がない。
(2)本件構成の想到容易性についてア(ア)原告らは,「本願発明が本件構成を採用したのは,『高い輝度の液晶ディスプレイ』とするためであって,引用発明のように,単に『光束の利用効率の高い光輝度の表示装置・・・』とするためではなく,また,本願発明と引用発明は,その作用効果においても異なるものである」と主張する。
(イ)しかしながら,引用発明と本願発明は,「高輝度の液晶表示装置」を提供するとの作用効果ないし目的において一致しているのであるから,原告らの上記主張は失当である。
イ(ア)原告らは,「本件構成においては,冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない(光学的に乱れが生じない)。他方,RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された入射光は,鋸刃状の断面内において拡散され,入射初期の段階で混じり合うことで,色むらが低減されることになる」と主張する。
(イ)aしかしながら,上記主張中,「冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない」との部分については,本願明細書に全く記載がないし,本件構成に係る傾斜面は,光源からの光を四方に散らす(散光させる)ものであるから,上記主張部分は,誤りである。
bまた,「RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された入射光が,鋸刃状の断面内において拡散され,入射初期の段階で混じり合うこと」は,本願図1に記載された発明においては困難なことであっても,RGBの各蛍光管から傾斜面内に入射された光を四方に散らすことによっても奏される作用効果であるから,「冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない」か否かにより左右されるものではない。したがって,「色むらが低減される」との作用効果についても,「冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しない」か否かにより左右されるものではない。
なお,本願明細書には,「色むら」についての記載は一切ないから,「色むらが低減される」との作用効果は,明細書の記載に基づかないものである。
cさらに,原告らの主張を前提にすれば,断面鋸刃状の傾斜面を構成する垂直面及び水平面は,平滑面であり(平滑面でないとすると,冷陰極管の軸方向にも入射光が散ることになる。),複数のプリズムの機能を有することとなるところ,特開平5-281541号公報(乙3)にも記載されているとおり(段落【0059】,【0060】,図11),このようなプリズム面は,入射光を方向転換(屈折)させるものであるから,本件構成に係る傾斜面にRGBの光を発光する3本の冷陰極管を並設した場合には,各プリズムが,それぞれ,入射光が集まるようにこれを幾分屈折させることになる。そうすると,入射光は,入射初期の段階では,RGBの色ごとにプリズムの数だけ集光して,明るくなる領域と暗くなる領域ができ,色むらが激しくなる箇所が増えることになるから,この場合,「入射初期の段階で混じり合うことで,色むらが低減されること」にはならない。
d以上からすると,原告らの上記主張は理由がない。
ウ(ア)原告らは,「周知技術2における『粗面化』とは,面を荒らすということであり,例えば周知例3にも記載されているように,入射光を無方向的に強制拡散する面とすることである。そのため,RGBの各蛍光管からの入射光を粗面を介して入射した場合,無方向的に強制拡散されることになり,RGBの3色の混じり合いの程度が不均一になって色むらが発生することになるから,RGBの3色を用いる場合には,入射面を粗面化することは好ましいことではなく,したがって,周知技術2の粗面化の技術を適用することはできない」と主張する。
(イ)aしかしながら,周知技術2における「粗面化」は,入射光を無方向に強制拡散させて輝度の均一性を向上させる技術であるから(周知例3の段落【0010】参照),周知技術2の粗面は,粗面化しない場合よりも導光板内の輝度をより均一化するようなものであり,光源からの入射光が四方に均等に散るものが好ましく,単に,面が荒れていればよいといったものではない。したがって,原告らの主張が,「粗面化」が単に「面を荒らすということ」を意味する旨をいうのであれば,当該主張は,周知技術2の内容を正解しないものである。
bまた,RGBの各蛍光管からの入射光を周知技術2の粗面を介して入射した場合,無方向,すなわち,四方に均等に強制拡散され,RGBの3色の混じり合いの程度は,粗面化しない場合よりも均一となって,色むらが解消されることは明らかである。
c以上からすると,原告らの上記主張は理由がない。
エ(ア)原告らは,「周知例4は,線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐために,光散乱効果の程度を線状光源の軸方向で変化させているものである。したがって,線状光源の軸方向で拡散しない本件構成を有する本願発明においては,線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐことはできない」,「そして,周知例3及び4にも,これを裏付ける記載があることからすると,周知技術2における粗面化は,線状光源の軸方向で拡散しない本件構成とは,その作用効果を異にするものであるといえる」と主張する。
(イ)aしかしながら,前記イ(イ)aのとおり,本件構成において,入射光が「線状光源の軸方向で拡散しない」との主張は誤りである。
bまた,前記(1)イ(イ)のとおり,本願発明は,傾斜面を平滑でない面,すなわち,断面鋸刃状にすることにより,光源からの光を傾斜面において四方に散らし,導光板内に取り込まれた光を均一に導光板の全体に行き渡らせ,傾斜面に隣接する導光板の両端面付近の暗くなりがちな領域まで明るくし,もって,粗面化しない傾斜面と比較して,より高輝度の液晶ディスプレイを得るものであるから,本件構成が奏する作用効果と,周知技術2の「線状光源の輝度分布に起因する輝度低下を防ぐ」との作用効果とは,光源側端面に隣接する導光板の両端面付近の輝度低下を防ぎ,より高輝度の液晶ディスプレイを得ることができるとの点で一致するものである。
cしたがって,原告らの上記主張は失当である。
オ原告らは,「当業者は,引用発明に周知技術2を適用することにより,傾斜面(入射面)を粗面化することには容易に想到し得るとしても,周知技術2によっては得られない作用効果を奏する本件構成には容易に想到し得ないというべきである」と主張するが,上記エ(イ)bのとおり,本件構成が奏する高輝度の液晶ディスプレイを得るとの作用効果は,周知技術2の作用効果と一致するのであるから,原告らの主張は理由がない。
(3)取消事由2の「小括」についてア原告らは,「『粗面化』する技術が周知技術であるとしても,本件技術までが周知技術であるとはいえず,また,引用発明に周知技術2を適用しても,当業者は,本件構成を採用することにまで容易に想到することはできないから,審決の判断は誤りである」と主張する。
イしかしながら,輝度を改良するため,引用発明に周知技術2を適用し,単一の傾斜面とした導光板の光源側端面を,任意の断面が鋸刃状になるような粗面とし,本件構成とすることは,当業者にとって容易なことであるから,審決の判断に誤りはない。
(4)以上のとおりであるから,取消事由2は理由がない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について(1)周知技術1,すなわち,一般に,エッジライト型の液晶表示装置に用いられる面光源装置において,その導光板端面に設けられる光源としては,表示色を任意に変えることができ,かつ,視認性を向上させるという観点から,RGBの光を発光する3本の冷陰極管を用いる技術が本願当時において周知であったことは当事者間に争いがない。
もっとも,原告らは,周知技術1は,1本の単色冷陰極管にRGBの光を発光する3本の冷陰極管を用いる技術であると主張するが,審決が周知例1及び2から認定した周知技術1は上記認定のとおりの技術内容であるから,原告らの上記主張は審決が認定しない技術を前提としたものであり,失当である。
(2)ア引用例には,次の各記載がある。
(ア)「一方の面を光透過面とし,これと対向する他面側に光反射手段を備えた光透過性を有する導光板の一端面部分に光源を配置した面光源装置に於いて,前記端面部分に配置する光源を,斜め形成された前記導光板の一端面部分に面して少なくとも3本のアパーチャ型蛍光管を配置して構成した事を特徴とする面光源装置。」(【請求項3】)(イ)「【考案が解決しようとする課題】最近,液晶表示装置のフルカラー化が進むにつれ,・・・面光源装置に要求される表面輝度は6000〜7000Cd/m とモノクロ液晶表示装置の数倍の輝度が必要となっている。
2このため,導光板の端部に配置する蛍光管に高光束のものが要求されるが,要求をみたす製品がなく,2本の蛍光管を並列に用いる場合がある。
しかし,表示画面の大型化につれて2本の蛍光管でも不十分で,2本以上の本数を使用することが試みられているが,導光板の厚さは10mm以下であり,直径5mm程度の蛍光管を,導光体の端面に2本以上平面状に並べることは,光束の利用率が低く,効果的ではなかった。」(段落【0005】〜【0007】)(ウ)「【課題を解決するための手段】本考案はこのような課題を解決するためになされたもので,導光体の端面部分に配置する光源に少なくとも3本のアパーチャ型蛍光管を用い,これらの蛍光管を△状にオーバラップさせて配列した。
また,導光板の端面部分を斜めに形成し,3本のアパーチャ型蛍光管をこの斜め形成された端面に面して配置した。」(段落【0008】,【0009】)(エ)「図2は,請求項3に該当する実施例であり,端面24は斜めに長く形成されており,この長くなった端面に面して3本の蛍光管が配置されている。」(段落【0016】)(オ)「【考案の効果】以上説明したごとく,導光体22の端面24に配置する光源として,少なくとも3本のアパーチャ型蛍光管3を用い,蛍光管3を△状にオーバラップさせて配列したので,3本の蛍光管を効率よく使用することができ,光束の利用率が高く,光輝度の表示装置を提供することができる。」(段落【0019】)イ以上の各記載によれば,引用発明は,厚さに制限がある導光板(導光体)の端面において,端面を傾斜させることで,端面を垂直とした場合よりも蛍光管の配置可能面の長さを長くすることにより,多くの本数の蛍光管の配列を可能にする技術的思想が開示されているものということができる。
(3)以上に説示した周知技術1及び引用発明からすれば,周知技術1に基づいてRGBの3本の光源を限られた厚みを有する導光板の端面に配置しようとする場合,引用発明に開示された配置方法を試みることは何らの困難性もなく容易に採り得る技術的手段ということができるものというべきである。
原告らは,引用発明において用いられるアパーチャ型蛍光管は同色のものであるから,これを前提とする引用発明にRGBの3色から成る周知技術1を適用することには阻害事由がある旨主張するが,前記認定のとおり,引用発明の配置方法は導光板の端面を傾斜させることにより配置面の長さを垂直の場合のそれよりも長くして無理のない配置位置を確保しようとするものであって,配置される蛍光管の色とは無関係の技術的思想であることは明らかであるから,原告らの上記主張を採用することはできない。なお,被告は,引用例の前記(2)ア(オ)の記載中の「光輝度の表示装置を提供することができる。」の「光輝度」は「高輝度」の誤記である旨主張するのに対し,原告らはこれを誤記ではないと争うところであるが,引用例の上記(2)ア(イ)の「面光源装置に要求される表面輝度は6000〜7000Cd/m と2モノクロ液晶表示装置の数倍の輝度が必要となっている。」との記載に照らすと,被告が主張するとおり「高輝度」の誤記と認めるのが相当である。
そして,原告らのその他の主張も相違点1についての審決の認定判断を誤りとするに足りるものではなく,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について(1)原告らは,「審決は,本件技術が周知技術であると認定していないにもかかわらず,『導光板の傾斜面を・・・断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る』と判断したが,当該判断は,認定していない周知技術を適用したものとして誤りである」,「当業者は,引用発明に周知技術2を適用することにより,傾斜面(入射面)を粗面化することには容易に想到し得るとしても,本件構成には容易に想到し得ない」などと主張するので,以下,検討する。
ア本件技術における「断面鋸刃状」の技術的意義(ア)本願発明に係る請求項1には,導光板の端面に形成された傾斜面の形状につき,「前記導光板の前記傾斜面は,断面鋸刃状に形成されている」との発明特定事項が記載されているのみであるところ,「断面鋸刃状」との抽象的な記載のみから,その技術的意義を一義的に明確に理解することができないことは明らかであるから(なお,当事者双方も,当該技術的意義を争うところである。),これを明らかにするため,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するに,同明細書の発明の詳細な説明には,次の各記載がある。
a「図1は本発明の好ましい実施の形態の一つを示すものであ・・・る。」(段落【0011】)b「この傾斜面は光学的に乱れが生じない程度に処理されており,また,傾斜角度は,導光板1の厚さに応じて好ましい角度が選択される。
この傾斜角度は,使用する各部材によっても異なるが,例えば,導光板1の厚さ3mmの場合には18度程度,導光板1の厚さ5mmの場合には30度付近が液晶ディスプレイ用バックライト高輝度を得ることができることから好ましい。」(段落【0013】,【0014】)c「図2は本発明のもう一つの実施の形態を示すものであり,全体の構成ならびに作用・効果は前記図1に示した発明の実施の形態とほぼ同様であるが,傾斜面7が鋸刃状に形成されている点が異なる。
実施の形態によれば,傾斜面7が鋸刃状に形成されていることから,冷陰極管21,22,23からの光が散光して導光板1内に照射されることから,より高い輝度の液晶ディスプレイを得ることができるものである。」(段落【0018】,【0019】)d「傾斜面が断面鋸刃状に形成されているので,RGBの三本の冷陰極管からの光が散光して導光板内に照射されることから,より高い輝度の液晶ディスプレイを得ることができるものである。」(段落【0023】(本件補正(甲5)後のもの))また,本願明細書の発明の詳細な説明が上記のとおり引用する本願図1及び図2の記載は,次のとおりである。
【図1】 【図2】(イ)前記第2の2掲記の請求項1の記載によれば,本願発明に係る液晶ディスプレイ用バックライトの導光板の端面は,?@単一の傾斜面とすること,?A同傾斜面にはRGBの光を発光する3本の冷陰極管を並設すること,及び,?B同傾斜面を断面鋸刃状に形成すること(すなわち本件技術を採用すること)と特定されている。
そして,本願発明に係る液晶ディスプレイ用バックライトの導光板の発明特定事項は以上の?@ないし?Bに尽きるものであるところ,上記(ア)bの記載によれば,本願発明に係る導光板の傾斜角度は,導光板の厚さが3mmの場合は18度程度,同厚さが5mmの場合は30度程度とすることにより高輝度を得ることができるものとされているところから見て,導光板の厚さとの関係を考慮して適宜決定されるべきものであり,また,上記(ア)cの記載によれば,本願発明の実施例である図2のものにおいては,導光板の傾斜面を断面鋸刃状とすることにより,冷陰極管からの光が散光して導光板内に照射されることにより,図1の実施例(同実施例は,甲4,5によれば,本件補正により削除された同補正前の請求項1に係るものである。)よりも高い輝度の液晶ディスプレイ用バックライトを得ることができるものとされているところである。なお,図2の実施例の傾斜面の性状が図1のそれと同様に「光学的に乱れを生じない程度に処理されている」か否かについては,前記(ア)b及びcの各記載からは必ずしも一義的に明確であるとまで言い難いところであり,原・被告間に争いがあるところであるが,既に説示したように,本願発明に係る請求項1においては導光板の傾斜面の形状は断面鋸刃状と特定されているものの,傾斜面の性状については何ら特定されているものではないから,この点を強いて確定しなければならない実益はないものというべきである。
以上によれば,本願明細書の記載によれば,本願発明において,導光板の傾斜面を断面鋸刃状と特定したことの技術的意義は,RGBの3本の冷陰極管からの光を散光させて導光板内に照射させることにより,かかる形状を持たないものに比して輝度をより高くすることを可能ならしめる点にあるものと見るのが相当である。
(ウ)原告らは,本件技術においては,冷陰極管の軸方向では入射光が拡散しないのに対し,鋸刃状の断面においては入射光を断面方向に拡散させるという入射光に指向性を与えることが可能となり,これにより,RGBの3色の混じり合いの程度の均一化を図るとの作用効果を奏するものである旨主張する。
そこで検討するに,本願明細書の記載を精査しても,上記主張に沿う明示的な記載があるものと認めることはできないし,また,本件全証拠を精査しても,当業者において,原告らの上記主張に係る作用効果が,導光板の傾斜面について本件技術を採用すること,すなわち,導光板の端面を断面鋸刃状とすることにより奏する作用効果として自明のものであると理解することが可能であるものと認めることもできない。
(エ)以上によれば,本件技術の技術的意義は,上記(イ)に認定したところのもの,すなわち,RGBの3本の冷陰極管から発生する光を断面鋸刃状に形成した導光板の傾斜面で散光させて導光板内に入射させる点にあるものと認めるのが相当であり,当業者の視点において本件技術に上述したところ以上の技術的意義を認めることは困難であるといわざるを得ない。
イ審決が周知技術2として認定した「粗面」の技術的意義審決は,周知技術2について,「一般に,エッジライト型の液晶ディスプレイでは,導光板の光源側端面を『粗面化』すること・・・は広く行われている・・・(例えば,周知例3(【0018】,【図3】),周知例4(【0009】,3頁左欄29〜31行)等参照。)」と認定したので,以下,審決が周知技術2として認定した「粗面」(以下「審決認定に係る周知例の粗面」という。)の技術的意義について検討する。
(ア)本願発明と同一の技術分野に属する「エツジライトパネル」と称する発明に関する周知例3(甲2)の記載事項a「【請求項1】乱反射面形成透明樹脂基板における,入射光供給用の一次光源に近接対向する一次光源対向端面をその長手方向連続的又は断続的に粗面化せしめた粗面入射面としてなることを特徴とするエッジライトパネル。」(2頁1欄2〜6行)b「【産業上の利用分野】本発明は,液晶バックライト・・・等として幅広く用いられる面光源装置におけるエッジライトパネルに関する。」(段落【0001】)c「本発明・・・の目的とする処は,・・・特に一次光源近傍における輝度の不均一性を解消し,可及的に均一な輝度を備えたエッジライトパネルを提供するにある。
上記目的に添い,本発明者らは・・・エッジライトパネルにおける透明樹脂基板の一次光源対向端面を,全体又は部分的に粗面化した粗面入射面とすることが均一性確保の上で極めて有効であることを見い出して本発明をするに至ったもので・・・ある。」(段落【0008】,【0009】)d「【作用】本発明にあっては,・・・エッジライトパネルの粗面入射面が,一次光源から供給される入射光の確実な捕捉により,入射光量を相対的に増加させる作用,入射光を入射段階で無方向的に強制拡散することにより,エッジライトパネル乱反射面の余力を残している乱反射機能を相対的に活用発揮させる作用を有して,エッジライトパネルの輝度,均一性を向上する。」(段落【0010】)e「・・・透明樹脂基板10は,・・・所定の原板から板取りしたものを用いてなるが,本例において4辺とされた各端面は,板取りにより生じたカッター傷を消失させる端面仕上げ処理を施してある。本例にあって,この端面仕上げは切削加工によるものとしてあり,・・・切削仕上げ機を用いて行っている。
即ち,4辺のうち入射光供給用の一次光源17に近接対向する一次光源対向端面には,上記切削仕上げ機のカッター送り速度を約1.2m/分の,鏡面仕上げに用いる最高速度1.5m/分より約2割程度遅らせた速度に設定して,微小の凹凸を残存するように切削仕上げを施すことによって,この対向端面を,その長手方向連続的に粗面化せしめた粗面入射面14として構成せしめてある。」(段落【0016】,【0017】)f「一方,この対向端面を除いた,他の非光源側の端面は,送り速度を上記最高の1.5m/分と設定することにより鏡面仕上げ面15としてあり,これによって,各端面における反射率を高めて,エッジライトパネル9に供給した入射光がこれら端面から外方に放射損失することを可及的に防止するようにしてある。
なお,・・・一次光源17は管径3.8mmの細幅冷陰極管・・・を用いて・・・ある。」(段落【0019】,【0020】)g「粗面化に当っては,なるべく微小の凹凸が多数存在するようにすることが入射光の強制拡散上有効であるが,このとき,例えば上記切削加工における如くに,端面に一定の規則性ある方向性が生じ得るものであってもよく,肉視の可否に拘らず,実質的に入射光を捕捉し,無方向的に強制拡散させるようにすれば足りる。」(段落【0035】)(イ)本願発明と同一の技術分野に属する「面状光源装置」と称する発明に関する周知例4(甲3)の記載事項a「【産業上の利用分野】本発明は線状光源から光を受けて比較的広い範囲にわたり均一輝度の発光面をもつエッジライト型面状光源装置に関し,特に透過型液晶表示装置の裏面照明用として用いられ,輝度が高く輝度分布にムラの少ない面状光源装置に係わるものである。」(段落【0001】)b「・・・線状光源はその構造上線状光源の長手方向の位置により輝度が変化し,通常,中央の輝度が最も高く,両端の電極部にかけて次第に低下するといった特性となっている。このためこれらの線状光源を使用する場合,線状光源からの距離だけを考慮した調光パターンの設計では,線状光源両端近傍の部分的な輝度低下による発光面の輝度ムラを生じるのを避けることはできない。」(段落【0004】)c「本発明は・・・線状光源の長手方向の輝度変化によって生じる発光面の輝度ムラをなくし,・・・比較的簡便な方法で均一な輝度分布の発光面をもつ面状光源装置を得ることを課題とする。」(段落【0008】)d「【課題を解決するための手段】本発明は・・・視野方向より光拡散板,透明導光板および反射板を順次積層し,透明導光板の少なくとも一側面に線状光源を備えた面状光源装置において,該側面に光散乱手段を有してなることを特徴とする面状光源装置を要旨とするものである。」(段落【0009】)e「【作用】このように本発明の面状光源装置では,線状光源に直角方向の輝度調整には透明導光板表面の調光パターンによって,また,線状光源に平行方向の輝度調整には透明導光板の受光側面の光散乱処理によってそれぞれ別個に行うため,各箇所における設計は一方向だけの因子で考慮すればよい。・・・線状光源に平行方向の輝度調整は,きわめて狭い受光側面における光散乱調整であるから,結果的により均一な輝度分布の発光面を有する面状光源装置をより簡便にそして短時間に得ることが可能となる。」(段落【0010】)f「【実施例】(実施例1)以下,実施例に基いて本発明を具体的に説明する。透明導光板として,厚さ3mmの市販の透明アクリル板・・・を130×230mmにカットし,外周の4つの側面を鏡面磨き仕上げする。」(段落【0011】)g「・・・透明導光板2の受光側面6の処理は,側面を粗面化する光散乱手段によって説明する。図1(a)に示すように,透明導光板2の受光側面6の両端20mmを素地鏡面部7として残し,残りの中央部90mmの範囲を#240のサンドペーパーを用いて平均的に粗面化して光散乱部8を形成した・・・。」(段落【0013】)h「(実施例2)図1(b)に示すように,実施例1の透明導光板2の受光側面6の中央40mmの範囲をさらに#60のサンドペーパーを用いて粗面化して強光散乱部9を形成し・・・た。」(段落【0015】)i「このように線状光源の受光側面を段階的,また場合によっては無段階的に光散乱効果の程度を変化させながら粗面化することにより,受光側面中央の65mmの位置の平均輝度をほとんど低下させることなく,線状光源両端近傍の中央部に対する輝度低下が改善され,より均一な面状光源装置を得ることができる。
この場合の粗面化処理が効果ある理由は,線状光源から発した光が受光側面の粗面に到達し,その一部が散乱光として一旦光源系へ戻り,リフレクタ内で反射,散乱を繰り返すうちに線状光源からの光放射範囲を拡大しながら再び受光側面へ到達することにより生じ,この際,受光側面の中央から両端にかけて粗面処理程度に傾斜を設けているため,中央は輝度が最も高くても粗面の程度も大きく,光が散乱する確率が高く,中央から両端にかけて光が配分されるからである。」(段落【0017】,【0018】)j「受光側面の粗面化処理についても,実施例1,2に示したサンドペーパーによるブラスト処理に限らず,薬品による化学エッチング処理や,その他例えば・・・円錐のほか四角錐,半球,柱状等の点刻やヘアーライン,フレネル状の線刻などを側面に施す方法,透明,半透明もしくは不透明な塗料等の光散乱物質を塗着する方法などを用いることができる・・・。」(段落【0020】)(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば,周知例3及び4に記載された審決認定に係る周知例の粗面の技術的意義は,光が入射する端面に無数の微小な凹凸を設けて粗面化することにより入射光を確実に捕捉しつつこれを無方向的に散乱させて輝度を高めるという点にあるものと認めることができる。
ウ審決認定に係る周知例の粗面と本件技術に係る断面鋸刃状の形状を有する傾斜面との異同上記アに認定説示したとおり,本件技術に係る断面鋸刃状の形状を有する傾斜面は,導光板の傾斜面を断面鋸刃状とすることにより入射光を散乱させるものであるから,その粗面としての性状の限度で技術的意義が認められるのであり,本願明細書には本件技術が持つそれ以上の技術的思想の開示はなく,また,本件技術自体から原告ら主張の技術的思想が自明であるとも認められないのであるから,結局,本件技術の持つ技術的思想は,上記イに認定説示したところの光の入射面を粗面化することにより入射光を散乱ないし散光させて輝度を高めるという周知の技術的思想と同一であるといわざるを得ない。
エ以上によれば,本件技術において採用した導光板の傾斜面を断面鋸刃状と特定したことに入射光を散乱(散光)させるための粗面化という以上の技術的意義が認められない以上,粗面化の一形状として断面鋸刃状とすることは,審決認定の周知技術2に基づいて,当業者が適宜その形状を選択・採用し得る程度のものといわざるを得ないから,この意味において,審決の認定判断に誤りがあるということはできない。
もっとも,審決は,相違点2の判断において,周知技術2を認定した上,「引用発明において,光源からの光を散光させて導光板内に照射し,輝度が改良された液晶ディスプレイとするために,導光板の傾斜面を粗面ないし断面鋸刃状とすること,は当業者が容易に行い得る」と判断したものであるところ,「断面鋸刃状」の傾斜面を「粗面」とはいい得るものの,「粗面」であれば必ず「断面鋸刃状」ということはできないという関係にあるにもかかわらず,上記のとおり,格別の説明を加えることもなく漫然と「粗面」と「断面鋸刃状」を同等のものとして説示しているものである。そして,両概念の上記のような関係に照らすと,上記説示をもって審決の論理を一読して理解することははなはだ困難であるといわざるを得ないのであり,本件技術の技術的意義について十分なる認定説示が示される必要があったものといわざるを得ないのである。
(2)取消事由2についての結論以上のとおりであるから,取消事由2は理由がない。
2結論以上によれば,審決取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を違法とする理由もないから,本訴各請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 榎戸道也
裁判官 浅井憲
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