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関連審決 不服2004-2588
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  上位概念 /  発明の詳細な説明 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 /  独立特許要件 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10024号 審決取消請求事件
原告サミー株式会社
訴訟代理人弁理 士竹山宏明
同 米山淑幸
被告特許庁長官 鈴木隆史
指定代理人吉川康史
同 三原裕三
同 高木彰
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/08/06
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が不服2004−2588号事件について平成19年12月6日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求主文同旨第2事案の概要1本件は,原告(旧商号 サミー工業株式会社)が名称を「パチンコ機」とする後記発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁が平成16年3月10日付けでなされた補正を却下の上,請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
2争点は,上記補正に係る発明(本願補正発明)が,特開平2-309985号(発明の名称「パチンコ遊技機 ,出願人 株式会社ソフィア,公開日 平成 」2年12月25日。以下「引用例」といい,そこに記載された発明を「引用例発明」という。甲1)との関係で進歩性(特許法29条2項)を有するか,等である。
第3当事者の主張1 請求の原因(1) 特許庁における手続の経緯原告 旧商号 サミー工業株式会社 は 平成6年5月20日 名称を パ ( ) ,,「チンコ機 とする発明につき特許出願 特願平6-106762号 以下 本 」 ( ,「願」という。公開特許公報〔特開平07-313689号〕は甲6)をし,平成14年9月2日付け(第1次補正。甲7)及び平成15年6月30日付け(第2次補正。甲5)でそれぞれ特許請求の範囲等の変更を内容とする補正をしたが,拒絶査定を受けたので,平成16年2月9日付けでこれに対する不服の審判請求をした。
特許庁は,同請求を不服2004-2588号事件として審理し,その中で原告は平成16年3月10日付けで特許請求の範囲等の変更を内容とする補正(第3次補正,以下「本件補正」という。請求項の数2。甲4)をしたが,特許庁は,平成19年12月6日,本件補正を却下した上 「本件審判 ,の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は平成19年12月20日原告に送達された。
(2) 発明の内容ア 本件補正前本件補正前の特許請求の範囲は,平成15年6月30日付けの第2次補正時のもので,請求項の数は2であるが,その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という )は,次のとおりである。 。
「 請求項1】遊技盤表面に設けた画像表示装置内に複数列の表示部を 【表示し,始動口への入球に基づいて,それぞれの表示部に複数のシンボルマークを高速で移動表示した後,該シンボルマークの移動表示を停止し,該シンボルマークの停止表示態様が予め定めた賞態様である所定の組み合わせであった場合に,特別遊技装置を用いて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,上記画像表示装置内に表示する表示部は,複数のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部と,1個のシンボルマークを停止表示可能であるとともに,該シンボルマークの停止表示位置が上記第1表示部におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲内で移動可能な第2表示部とを備え,第1表示部と第2表示部に表示されるシンボルマークにより,賞態様を構成するために有効となる有効ラインが複数本形成可能に構成され,前記第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,リーチ状態が成立していないライン上に停止している第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにしたことを特徴とするパチンコ機 」。
イ 本件補正後本件補正後の特許請求の範囲は,請求項1及び2から成るが,そのうち請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という )は,次のと 。
おりである(下線部は本件補正による補正部分 。)「 請求項1】遊技盤表面に設けた画像表示装置内に複数列の表示部を 【表示し,始動口への入球に基づいて,それぞれの表示部に複数のシンボルマークを高速で移動表示した後,該シンボルマークの移動表示を停止し,該シンボルマークの停止表示態様が予め定めた賞態様である所定の組み合わせであった場合に,特別遊技装置を用いて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,上記画像表示装置内に表示する表示部は,複数のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部と,1個のシンボルマークを停止表示可能であるとともに,該シンボルマークの停止表示位置が上記第1表示部におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲内で移動可能な第2表示部とを備え,第1表示部と第2表示部に表示されるシンボルマークにより,賞態様を構成するために有効となる有効ラインが複数本形成可能に構成され,前記第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにしたことを特徴とするパチンコ機 」。
(3) 審決の内容ア 審決の詳細は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,?@本願補正発明は,前記引用例発明及び周知技術(特開平4-327870号公報〔発明の名称「弾球遊技機 ,出願人 」株式会社三共,公開日 平成4年11月17日,甲2,以下「甲2公報」という,実願昭63-136952号公報〔実開平2-58479号公 。〕報,考案の名称「パチンコ機用入賞装置,出願人 株式会社パル,公開日平成2年4月26日,甲3,以下「甲3公報」という 〕等)に基づいて 。
容易に発明をすることができた(特許法29条2項)から独立特許要件を欠き本件補正は却下されるべきである,?A本件補正前の発明である本願発明も同様の理由で特許を受けることができない,というものである。
イなお審決は,引用例発明の内容,本願補正発明と引用例発明との一致点及び相違点を次のとおりとした。
〈引用例発明の内容〉「遊技盤1の前面に設置した可変表示装置20内に縦に三列の可変表示部235a〜235dおよび249aを表示し,始動入賞口6への遊技球が入賞すると,それぞれの可変表示部235a〜235dおよび249aに0〜9の数字を流れるような変化のスクロール表示した後,該数,『 , , 』, 字のスクロール表示を停止し 該数字の停止表示態様が 3 3 3『7,7,7』などである特定の数字表示の組合せとなったときには,変動入賞装置70を用いて遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与えるパチンコ遊技機において,上記可変表示装置20内に表示する可変表示部235a〜235dおよび249aは,一列に二つの数字を停止表示可能な位置固定式可変表示部235a〜235dと,1個の数字を停止表示可能であるとともに,該数字の停止表示位置が上記位置固定式可変表示部235a〜235dにおける数字の停止表示位置の範囲内である上段・中段・下段で移動可能な移動式可変表示部249aとを備え,位置固定式可変表示部235a〜235dと移動式可変表示部249aに表示される数字により 『3,3,3『7,7,7』などを構成 ,』,するために有効となる可変表示ゲームラインが横又は斜めの数だけ形成可能に構成され,前記移動式可変表示部249aに表示される数字のスクロール表示を停止する前に,最終的に『3,3,3『7,7,7』などを構成させ 』,るときには,横一線の場合,前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後,該移動式可変表示部249aを,移動させてリーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上に停止させ,また,斜めの場合,リーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上の中立位置を維持させたパチンコ遊技機 」。
〈一致点〉「遊技盤表面に設けた画像表示装置内に複数列の表示部を表示し,始動口への入球に基づいて,それぞれの表示部に複数のシンボルマークを高速で移動表示した後,該シンボルマークの移動表示を停止し,該シンボルマークの停止表示態様が予め定めた賞態様である所定の組み合わせであった場合に,特別遊技装置を用いて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,上記画像表示装置内に表示する表示部は,複数のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部と,1個のシンボルマークを停止表示可能であるとともに,該シンボルマークの停止表示位置が上記第1表示部におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲内で移動可能な第2表示部とを備え,第1表示部と第2表示部に表示されるシンボルマークにより,賞態様を構成するために有効となる有効ラインが複数本形成可能に構成されるパチンコ機 」。
〈相違点〉第2表示部において,本願補正発明では 「第2表示部に表示される ,シンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにした」のに対して,引用例発明では「移動式可変表示部249aに表示される数字のスクロール表示を停止する前に,最終的に『3,3,3『7,7,7』などを構成させると 』,きには,横一線の場合,前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後,該移動式可変表示部249aを,移動させてリーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上に停止させ,また,斜めの場合,リーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上に停止させ,また,斜めの場合,リーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上の中立位置を維持させた」ものであり,引用例発明は,本願補正発明のような構成になっていない点。
(4)審決の取消事由しかしながら,審決は,以下に述べるように本願補正発明の進歩性についての判断を誤り,その結果として本件補正を却下したから,違法として取り消されるべきである。
ア 取消事由1(引用例発明の認定の誤り)審決は,引用例発明について,上記のとおり 「…前記移動式可変表示 ,部249aに表示される数字のスクロール表示を停止する前に,最終的に『 , , 』,『 , , 』,, 3 3 37 7 7 などを構成させるときには 横一線の場合前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後,該移動式可変表示部249aを,移動させてリーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上に停止させ,また,斜めの場合,リーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上の中立位置を維持させたパチンコ遊技機 」との構成を含むものであるとして 「移動式可 。 ,変表示部249a」があたかも別の位置からリーチ状態が成立していないライン上の中立位置まで移動する構成であるかのように認定する。
しかし,引用例発明における「移動式可変表示部249a」は,電源投入時の初めから中立位置に存在し,条件が揃わなければ移動を開始しないものであるから,斜めのゲームライン上にリーチ状態が成立している場合は常時位置する中立位置にそのまま保持して動かないものであり,上段又は下段の横一線のゲームライン上にリーチ状態が成立している場合はリーチ状態が成立していない常時位置する中立位置に保持された状態からリーチ状態が成立している上段位置又は下段位置のゲームライン上に移動するものである。
そうすると 「移動式可変表示部249a」があたかも別の場所にあっ ,て移動してきたことを示唆するような「前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後」という動作は引用例から把握されるものではないから,審決は引用例発明を誤って認定したものであり,また,誤った引用例発明と対比してなされた本願補正発明との相違点の認定も誤りといわざるを得ない。
イ 取消事由2(本願補正発明についての進歩性判断の誤り)(ア) 審決は,本願の出願当時(平成6年5月20日 「…一般的に,最後 ),に可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部を,リーチ状態が成立しているライン上またはリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすることが周知{例えば,特開平4-327870号公報(段落【0044【0047】等,図1 】,〜3等 ,実願昭63-136952号(実開平2-58479号)の )マイクロフィルム(第8頁第12〜20行等)参照}である… (審決」11頁8行〜16行)から,本願補正発明の上記相違点に係る構成は容易に想到し得るものであるとする。
(イ) しかし,審決が周知例として引用する特開平4-327870号公報(甲2公報)について検討すると,甲2公報記載の構成は,左右の図柄が揃うリーチ状態になると同時に中図柄に一旦大当たり図柄の組合せとなる図柄を表示させて,その当たり図柄を上下方向にスクロール表示するものであり,中図柄を停止する処理は行われていないと理解される。
換言すれば,甲2公報には,中図柄が上下方向に変動表示する旨は記載されているが,最終的に停止するまでの間に,図柄の変動表示を停止させる旨の記載はない。
この点,被告は,甲2公報には大当たり図柄が上下往復スクロールされる際,上下の移動方向の切替の時点で一旦停止する構成が記載されている旨主張するが,甲2公報には上下往復スクロールが移動方向の切替の際に停止するとの記載はなく,このように図柄の変動表示を制御しようとする積極的な記載もなければ,それらの意図を示唆するような記載もない。
, 。 したがって 甲2公報には審決が周知とした事項は記載されていない(ウ) 次に,審決が周知例として引用する実願昭63-136952号公報(甲3公報)について検討すると,甲3公報に記載の構成は,数字を可変表示する表示部を縦に3列,横に3行の計9個配置して形成された可変表示器13が配置された遊技部において,可変表示器13の9つの可変表示部がそれぞれ個別に変動表示を行い,例えば上段横一行の数字が「7,7,2」と揃った場合には上段横一行の「7,7 」の表示を一 ,旦固定し,次にこの「2」を含む縦一列の瞬間調光板を透明にしてこれに対応する3つの表示部のみを変動させるものと理解できる。
したがって,甲3公報には,リーチ状態が成立しているライン上で可変表示を一旦停止させた後,当該可変表示を再び開始させてリーチ状態が成立しているライン上で停止させるようにすることが記載されているにすぎず,審決が周知とした事項は記載されていない。
(エ) さらに,被告が本件訴訟において周知例として引用する特開平6-134106号公報(発明の名称「パチンコ機の図柄表示方法 ,出願人 」株式会社大一商会,公開日 平成6年5月17日,乙1,以下「乙1公報」という )についてみても,乙1公報に記載の構成は,中図柄の停 。
止に先立って停止表示された左図柄と右図柄の組合せがリーチ図柄となった場合には,中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数回繰り返した後停止するというものであり,そもそも図柄がラインへ移動するものではなく,一旦停止した図柄の変動表示を再び開始させることを示しているにすぎない。
, 。 したがって 乙1公報には審決が周知とした事項は記載されていない(オ) 以上のとおり,甲2公報,甲3公報及び乙1公報のいずれにも,審決が周知とした事項は記載されていない。そして,本願補正発明は 「前,記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにした」構成を備えることにより,一旦変動表示を停止した際,第2表示部は大当たりのライン上になく,当たりとなっていないことから,遊技者は高まっていた期待感を失いそうになるが,再び第2表示部が移動を開始して,失いそうになった期待感を再び得ることができるという,大きな効果を得られるものである。これに対して引用例発明は本願発明のように,図柄の表示は確定しておらず,期待感の喪失と復活といったこともない。
したがって,このような引用例発明に,変動表示を一旦停止する態様をどう組み合わせてみても 「前記第2表示部をリーチ状態が成立して ,いないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにした」という構, 。 成を備えるものではなく かかる構成を容易に想到することはできない2 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
(1) 取消事由1に対し原告は 「移動式可変表示部249a」があたかも別の場所にあって移動 ,してきたことを示唆するような「前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後」という引用例発明の動作に関する審決の認定は誤りであると主張する。
しかし,引用例発明(甲1)の移動式表示器247(移動式可変表示部249a)は,斜めのゲームライン上にリーチ状態が成立している場合は,常時位置する中立位置にそのまま保持して動かさないものであり,上段又は下段の横一線のゲームライン上にリーチ状態が成立している場合には,リーチ状態が成立していない常時位置する中立位置に保持された状態からリーチ状態が成立している上段位置又は下段位置のゲームライン上に移動するものである。
そして,表現が正確でなかったかもしれないが,審決の引用例発明の認定における「…横一線の場合,前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後… (審決9頁25行〜2 」6行)との記載は,横一線にリーチ状態が成立したときに,リーチ状態が成立していない常時の位置である中立位置から,当該リーチ状態が成立しているライン上に向かって移動するという動作の起点を表現することを意図する記載であって 「横一線の場合,前記移動式可変表示部249aをリーチ状 ,態が成立していないライン上の中立位置から」と言い換えても同義である。
したがって,審決において,引用例発明を,上記構成のとおり認定した点に誤りはない。
また原告は,審決が上記引用例発明の認定を誤った結果,相違点の認定も誤ったことになると主張するが,引用例発明の認定に誤りがないことは上記のとおりであるし,仮に引用例発明の認定に誤りがあるとしても,当該構成は,「前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後」という事項を含め,相違点として挙げられており(審決10頁下8行〜11頁6行 ,相違点としての判断を経ていること )から,審決には相違点の看過はない。したがって,原告の上記主張は審決の結論に影響を及ぼすものではない。
(2) 取消事由2に対しア審決が認定する周知技術は,遊技者が注目する最後に可変表示を停止する「可変表示部の図柄」の移動表示の態様を表現しようとするものであるから,審決に記載された周知技術が意図する内容は 「一般的に,最後に ,可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組合せを構成させるときには,前記可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上又はリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部の図柄を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすることが周知」と言い換えることができる。
イそして,甲2公報には 「当り外れ決定用カウンタの値によって大当た ,りかはずれかを判定し,左右の可変表示器12,13が大当たり図柄でリーチ状態となると,最後に停止表示される中図柄として可変表示器14bに表示される図柄の変動速度が遅くなるとともに,その図柄を一旦大当たり図柄の組合せとし,その後,中図柄としての大当たり図柄が可変表示器14a〜14cの複数の表示位置のいずれかの位置に常に移動表示され上下往復スクロールするようにした弾球遊技機の可変表示装置」が記載されている。
上記リーチ状態は,すべての図柄が揃って大当たりとなる可能性がある状態を意味するから,可変表示装置がリーチ状態となった後に,上記周知事項である「最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組合せを構成させるとき」となる場合が含まれることは明らかである。
また,中図柄として上下往復スクロールされる大当たり図柄は,上段の可変表示器14aの位置で移動方向が上方向から下方向へと切り替わり,同様に,下段の可変表示器14cの位置で移動方向が下方向から上方向へと切り替わることから,その切替の時点でそれぞれ大当たり図柄である図(「 」) ,「 」 柄 例えば 7はリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止するとともに,それぞれの切替の時点で 「リーチ状態が成立しているラ ,イン上」にある中央の可変表示器14bには大当たり図柄の一つ先の図柄(「 」)(「 」)「」 例えば 8又は一つ手前の図柄 例えば 6が同時に 一旦停止するから 「リーチ状態が成立しているライン上」に図柄が「一旦停止」 ,しているといえる。したがって,甲2公報には,上記周知事項である「前記可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上またはリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させ」ることが示されている。
その後,中図柄としての大当たり図柄が可変表示器14a〜14cの複数の表示位置のいずれかの位置に常に移動表示され上下往復スクロールす,「,」, ることから 一旦停止した 可変表示部の図柄を 再び動作させて おり最終的に大当たりとなるときには,中図柄に最後に停止させることを予め決定している図柄である大当たり図柄を 「リーチ状態が成立しているラ ,イン上に停止させる」ものといえる。
したがって,甲2公報には上記周知事項が記載されている。
ウ次に,乙1公報には 「大当たりか否かを大当たり判定用乱数の値によ ,り決定し,左上図柄表示部10,左中図柄表示部11,左下図柄表示部12よりなる左図柄表示部7と中図柄表示部8と右上図柄表示部13,右中図柄表示部14,右下図柄表示部15よりなる右図柄表示部9よりなる3つの表示部を有し,中図柄の停止に先立って停止表示された左図柄と右図柄の組合せがリーチ図柄となった場合には,中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数回繰り返した後停止し,左中図柄と中図柄と右中図柄がすべて同じ図柄となる場合,左下図柄と中図柄と右上図柄がすべて同じ図柄となる場合又は左上図柄と中図柄と右下図柄がすべて同じ図柄となる場合に大当たりとするパチンコ機 」が記載されている。 。
そして,上記パチンコ機におけるリーチ図柄の例として,中図柄の停止に先立って停止表示される左図柄が“1*1 ,右図柄が“*21”とい ”うリーチ図柄(左上図柄表示部10に停止した図柄「1」と右下図柄表示部15に停止した図柄「1」とにより斜め方向のリーチ状態が成立)の場合を考えると,上記リーチの時点では,中図柄表示部8は斜め方向の「リーチ状態が成立しているライン上」に位置する。その後,中図柄表示部8は 「中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数回繰り返した後停止」さ ,せるから 「可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上」 ,に「一旦停止させた後,該可変表示部の図柄を,再び動作させて」おり,最終的に大当たりとなるときには,中図柄として最後に停止させることを予め決定しているリーチ図柄と同じ図柄(図柄「1 )を「リーチ状態が 」成立しているライン上に停止させ」て,図7の左上に記載された斜め方向のラインに大当たり図柄の組合せを構成させるものである。
したがって,乙1公報には 「最後に可変表示を停止する可変表示部の ,図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上に一旦停止させた後,該可変表示部の図柄を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすること」という,上記周知技術が記載されている。
エ以上のとおり,甲2公報及び乙1公報によれば 「最後に可変表示を停 ,止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上またはリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部の図柄を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすることが周知」であるといえるから,審決が意図する周知技術の認定に誤りはない。
オそもそも,パチンコ機の分野においては,当たりとするかはずれとするかは最初にコンピュータにより決定されており,決定された当たりはずれの結果に基づいて事前に決定された図柄を停止させることは,甲2公報や乙1公報に記載されているように周知である。この場合,リーチ状態が成立しているライン上にある可変表示部に最終的に事前に決定された大当たり図柄を停止させるまでの過程は,甲2公報のように,最後に停止する中図柄は複数の表示位置である可変表示器14a〜14cのいずれかの位置に常に大当たり図柄である「7」が上下方向に移動表示され,最終的に大当たり図柄である「7」をリーチ状態が成立しているライン上に停止させて大当たりとする表示の態様がある一方,乙1公報のように,リーチ図柄が図柄「1」である場合に 「中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数 ,回繰り返した後 ,中図柄を図柄「1」で停止させて大当たりとする表示 」の態様があるが,これらは,コンピュータの制御により,最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄について,最終的には事前に停止することが決定されている大当たり図柄を,途中段階では種々の図柄を一旦停止させ, 。 ながら リーチ状態が成立しているライン上に持ってきているにすぎないすなわち,審決が認定した上記周知技術は,リーチ状態が成立した後,最終的に大当たり図柄の組合せを構成させるときには,最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄に着目すると,事前に停止させることが決定された大当たり図柄が,当たりとならない位置から当たりとなる位置へと移動してくる態様を示しているといえる。なお,審決に記載した周知技術がこのような内容を意図していたことは,本願補正発明の「第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにした」との構成を相違点として認定していることからも裏付けられる。つまり,本願補正発明と引用例発明とが相違する点は,端的にいえば,第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止させた後,第2表示部を移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるのか(本願補正発明 ,又は,第2表示部を )移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させた後,第2表示() 部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止させるのか 引用例発明ということであり,両者は,第2表示部の移動と第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示の停止という二つの動作の順序の違いである。
審決は,前者の順序を採った本願補正発明について 「最終的に賞態様を ,構成させるとき」に,移動表示を停止した「第2表示部に表示されるシンボルマーク」が,いわゆる当たり図柄が表示された状態で,当該「第2表示部」をリーチ状態が成立していないライン上に「一旦停止」し 「再び,移動」させて,リーチ状態が成立しているライン上に「再び移動」するという動作,すなわち,当たり図柄が表示された「第2表示部」が,当たりとならない位置から当たりとなる位置に移動してくる態様の想到容易性を検討しているのである。
そして,パチンコ機の分野の周知技術を同じくパチンコ機である引用例発明に適用することに困難性はないから,図柄の移動に関わる上記周知技術を引用例発明の第2表示部に適用して,大当たり図柄が当たりとならない位置から当たりとなる位置に移動してくる態様とすること,すなわち,本願補正発明の上記相違点に係る構成である「第2表示部に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにした」とすることに,格別の発明力を要したとはいえず,当業者が必要に応じて容易に想到し得るとした審決の判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断1請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 本願補正発明の意義(1)本願補正発明の内容は,前記第3,1,(2)イのとおりである(当事者間に争いがない 。)(2)一方,本願補正明細書(甲4)には次の記載がある(なお,下線部は,本件補正により補正された記載 。)ア 産業上の利用分野「 0001】【本発明は,パチンコに関し,特に,予め定めた所定の条件が整った場合に,遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,所定の条件の発生過程を複雑にしたものである 」。
イ 従来の技術「 0002】【従来,この種のパチンコ機としては,遊技部内に設けた画像表示装置内に横3列の表示部を並設し,各表示部には,複数のシンボルマークが移動表示可能となっている。そして,始動口に打球が入賞すると,画像表示装置内に設けた表示部に複数のシンボルマークを高速で移動表示し,所定時間が経過した後,シンボルマークの移動表示を停止し,該シンボルマークの停止表示態様が所定の組み合わせ,例えば『7 『7 『7』となった場合に,遊技者にとって有利な特別遊技を行わせてい 』』た 」。
ウ 発明が解決しようとする課題・ 0004】「【しかし,上記した従来のパチンコ機では,画像表示装置内に設けた複数の表示部は,それぞれ同様の形態をなしており,各表示部におけるシンボルマークの停止表示過程は,いずれの表示においても同様なものとなっている。したがって,シンボルマークの停止表示過程に変化を持たせることができないので,表示部を用いて行う特別遊技を発生させるための遊技が単純なものとなって,遊技の興趣を損ねることとなっていた 」。
・ 0005】「【そこで,請求項1記載のパチンコ機は,上記した従来の技術の有する問題点に鑑み提案されたもので,その目的とするところは,画像表示装置内に設けた表示部におけるシンボルマークの表示態様に変化を持たせ,シンボルマークの停止表示過程を複雑にすることで,遊技の興趣を高めることができるパチンコ機を提供することにある 」。
エ 課題を解決するための手段・ 0007】「【本発明は,上記した目的を達成するためのものであり,以下にその内容を図面に示した実施例を用いて説明する。
請求項1記載の発明は,遊技盤(10)表面に設けた画像表示装置(50)内に複数列の表示部(40)を表示し,始動口(60)への入球に基づいて,それぞれの表示部(40)に複数のシンボルマークを高速で移動表示した後,該シンボルマークの移動表示を停止し,該シンボルマークの停止表示態様が予め定めた賞態様である所定の組み合わせであった場合に,特別遊技装置(例えば大入賞口 70)を用いて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,上記画像表示装置(50)内に表示する表示部(40)は,複数のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部(41)と,1個のシンボルマークを停止表示可能であるとともに,該シンボルマークの停止表示位置が上記第1表示部(41)におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲内で移動可能な第2表示部(42)とを備え,第1表示部(41)と第2表示部(42)に表示されるシンボルマークにより,賞態様を構成するために有効となる有効ラインが複数本形成可能に構成され,前記第2表示部(42)に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部(42)をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部(42)を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにしたことを特徴とする 」。
オ 作用・ 0009】「【請求項1記載の発明によれば,遊技盤(10)の表面に設けた画像表示装置(50)内に複数の表示部(40)が表示される。この表示部(40)は,複数のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部(41)と,1個のシンボルマークを停止表示可能であるとともに,該シンボルマークの停止表示位置が移動する第2表示部(42)とから構成されている。
また,第1表示部(41)と第2表示部(42)に表示されるシンボルマークにより,賞態様を構成するために有効となる有効ラインが複数本形成可能に構成されている。
また,前記第2表示部(42)に表示されるシンボルマークの移動表示を停止した後,最終的に賞態様を構成させるときには,前記第2表示部(42)をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該該第2表示部(42)を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させる 」。
・ 0011】「【そして,パチンコ機における遊技が開始し,遊技者が遊技部(30)内に打球を発射して,打球が始動口(60)に入球すると,それぞれの表示部(41,42)では,複数のシンボルマークが高速で移動表示を開始する。その後,所定時間が経過する等,所定の条件が整うと,それぞれの表示部(41,42)に高速で移動表示されているシンボルマークが停止するとともに,第2表示部(42)の移動が停止する。
そして,最終的に賞態様を構成させるときには,前記該第2表示部(42)をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該該第2表示部(42)を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させ,最終的に賞態様を構成させないときには,前記該第2表示部(42)をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該該第2表示部(42)を,再び移動させてリーチ状態が成立していないライン上に停止させる 」。
・ 0012】「【ここで,第2表示部(42)の停止態様に基づいて決定される有効ライン上に停止表示されるシンボルマークの組み合わせが,賞態様を構成する予め定めた所定の組,『』『 』『』,() み合わせ 例えば 333 であった場合には 特別遊技装置 大入賞口 70を用いて遊技者にとって有利な特別遊技を行わせる。この特別遊技により,遊技者はより多くの賞球を獲得することができる 」。
・ 0013】「【このように,特別遊技の成立を決定するための表示部(40)は,シンボルマークの停止表示態様が異なる第1表示部(41)及び第2表示部(42)とからなるとともに,第2表示部(42)のシンボルマークの停止位置が変化するため,表示部(40)におけるシンボルマークの停止表示過程が複雑なものとなり,遊技の興趣を高めることができる 」。
実施例・ 0019】「【図2に基づき,画像表示装置 50 内に表示される表示部 40 について,さらに詳しく説明する。
画像表示装置 50 内には,横並びに3列に複数のシンボルマークを移動表示可能な表示部 40 が表示される。この表示部 40 のうち左右に設けた第1表示部 41 には3個のシンボルマークを縦並びに停止表示することができ,中央に設けた第2表示部 42 には1個のシンボルマークを停止表示することができる 」。
・ 0020】「【上記した第2表示部 42 は,縦方向に移動可能である。この第2表示部 42 の移動範囲は,左右に設けた第1表示部 41 に停止表示されるシンボルマークの範囲となっており,第2表示部 42 は,第1表示部 41 に停止されるシンボルマークの各位置に対応して,上,中,下の各位置に停止する。この第2表示部 42 は,上-中-下の順に移動し,下位置まで移動した後は再び上位置に戻って,上記した順で循環して移動を繰り返す 」。
・ 0021】「【上記した2箇所の第1表示部 41 と1箇所の第2表示部 42 とに表示されるシンボルマークのうち,第2表示部 42 の停止位置に基づき,横一直線上または斜め一直線上に表示される3個のシンボルマークの組み合わせにより,賞態様を構成するかどうかが判断される。すなわち,第2表示部 42 の移動停止位置により,賞態様を構成するために有効となるラインが決定されるのであり,第2表示部 42 が上位置に停止した場合には,図2(A)に示すように,上部の横ラインL1が有効ラインとなる。また,第2表示部 42 が中位置に停止した場合には,図2(B)に示すように,中央の横ラインL2及び×字状にクロスする2本の斜めラインL3,L4が有効ラインとなる。さらに,第2表示部 42 が下位置に停止した場合には,図2(C)に示すように,下部の横ラインL5が有効ラインとなる 」。
・ 0022】「【上記した各表示部 41,42 におけるシンボルマークの表示及び第2表示部 42 の移動態様をさらに詳しく説明する。尚,以下に説明する実施例では,賞態様を構成するシンボルマークの組み合わせは 『3 『3 『3』であるとする。 ,』』通常遊技時,及び遊技を行っていないデモンストレーション時においては,上記したように,画像表示装置 50 内には横並びに3列の表示部 41,42 が表示されており,3列の各表示部 41,41,42 のうち左右に位置する表示部は3個のシンボルマークを停止表示可能な第1表示部 41,41 であり,中央に位置する表示部は1個のシンボルマークを停止表示可能な第2表示部 42 となっている。そして,第1表示部41,41 内及び第2表示部 42 内ではシンボルマークが移動せずに停止表示されているとともに,第2表示部 42 が上〜中〜下,さらに,下〜中〜上,そして,上〜中〜下の順に低速で上下方向に移動表示されている 」。
・ 0023】「【そして,始動口 60 に打球が入球すると,第1表示部 41 内では複数のシンボルマークが高速で上下方向に移動表示を開始する。また,上下方向に移動する第2表示部 42 内でも複数のシンボルマークが高速で移動表示を開始するとともに,第2表示部 42 の巡回移動も高速なものとなる。
その後,所定時間が経過すると,第1表示部 41 におけるシンボルマークの移動表示が停止する 」。
・ 0024】「【そして,第2表示部 42 におけるシンボルマークの移動表示及び第2表示部 42の循環移動も停止するのであるが,これらの停止過程は,予め定めた賞態様が構成される可能性があるかどうかで異なる。
予め定めた賞態様となるシンボルマークの組み合わせである『3 『3 『3』 』』となる可能性がない場合 すなわち いわゆる非リーチ時には まず 第2表示部 42 ,, ,,内で移動表示しているシンボルマークが賞態様を構成しない状態,例えば『5』等の数字となるよう停止する。その後,第2表示部 42 の循環移動が,上,中,下のいずれかの位置で停止する 」。
・ 0025】「【この場合には,第2表示部 42 内のシンボルマークが停止表示された時点で,遊技者は賞態様が構成されないことを知ることができる。
一方,予め定めた賞態様となるシンボルマークの組み合わせである『3 『3』 』『3』となる可能性がある場合,すなわち,いわゆるリーチ時には,まず,第2表示部 42 の循環移動が,上,中,下のいずれかの位置で停止する。これにより,上記した有効となるラインが決定される 」。
・ 0026】「【そして,第1表示部 41 内で移動表示していたシンボルマークが停止するのであるが,この場合,有効となったライン上に当たりを構成するシンボルマークである『3』が位置するように停止する。例えば,第2表示部 42 が上位置に停止した場合には,上部の横ラインL1上にある左右の第1表示部 41 の上位置には,それぞれ『3』が停止表示されるのである 」。
・ 0027】「【次に,第2表示部 42 内で移動表示していたシンボルマークが,低速で移動表示,。, 『』 された後 停止する ここで 第2表示部 42 に停止表示したシンボルマークが 3,, 。, であった場合には 賞態様を構成し 上記した特別遊技を行うことができる 一方第2表示部 42 に停止表示したシンボルマークが『3』以外である場合には,ハズレとなり,通常の遊技状態に戻る。
・ 0028】「【また,表示部 40 におけるシンボルマークの停止過程に変化を持たせるため,リーチ時には,他の態様でシンボルマークの表示停止及び第2表示部 42 の循環移動の停止をさせることもできる。以下,リーチ時における他の停止パターンを説明する。
予め定めた賞態様となるシンボルマークの組み合わせである『3 『3 『3』 』』となる可能性がある場合 すなわち いわゆるリーチ時には まず 第2表示部 42 ,, ,,の循環移動が,上,中,下のいずれかの位置で停止する。これにより,有効となるラインが決定される。
・ 0029】「【そして,第1表示部 41 及び第2表示部 42 内で移動表示していたシンボルマークが,低速で移動表示された後,停止する。この場合,第2表示部 42 に停止するシンボルマークは『3』となっている。
ここで,最終的に賞態様を構成させる場合で,リーチ状態が成立していないライン上に第2表示部 42 が停止している場合には,リーチ状態が成立しているライン上に第2表示部 42 が停止するよう,再び第2表示部 42 を移動して,賞態様を構成させる。例えば,第2表示部 42 が上位置に停止し,左右の第1表示部 41 に停止したシンボルマークが,上位置ではそれぞれ『5 『5』であり,中位置ではそれ 』ぞれ『7 『7 ,下位置ではそれぞれ『3 『3』である場合(図2(A )には, 』』 』 )上位置に停止した第2表示部 42 を再び移動して下位置に停止させて,下部の横ラインL5上に賞態様を構成させ(図2(C,特別遊技を行わせるのである 」 )) 。
・ 0030】「【一方,最終的に賞態様を構成させない場合には,上記した態様で第2表示部 42を移動させない(図2(A)のまま)か,上位置に停止した第2表示部 42 を再び移動して中位置に停止させて(図2(B,ハズレの態様とする。 )),, , 尚 上記した実施例では 画像表示装置 50 の中に表示される表示部 40 のうち左右を第1表示部 41 とし,中央を第2表示部 42 としたが,第1表示部 41,第2表示部 42 の位置は適宜変更して実施することができ,例えば左側を第2表示部 42とするとともに中央及び右側を第1表示部 41 としたり,あるいは,左側及び中央を第1表示部 41 とするとともに右側を第2表示部 42 とすることもできる。また,,, それぞれの表示部 41,42 に表示するシンボルマークの数は 上記した数に限られず例えば,第1表示部 41 に2個または4個以上のシンボルマークを停止表示させたり,第2表示部 42 に2個以上のシンボルマークを停止表示させることもできる。
, , , さらに 第1表示部 41 及び第2表示部 42 の数も 上記した実施例の数に限られず例えば,第1表示部 41 を3箇所以上とし,第2表示部 42 を2箇所以上とすること。 , もできる このように第1表示部 41 及び第2表示部 42 の位置や数等を変更すればさらに遊技内容に変化を持たせたり,遊技内容を複雑にすることができる。
キ 発明の効果・ 0032】「【本発明は,以上のように構成されているので,以下に記載されるような効果を奏する。…」・ 0034】「【…賞態様を構成するか否かが決定されてから変動表示を一旦終了してから再び表示部が移動することで,表示部におけるシンボルマークの停止表示過程が複雑なものとなるので,特別遊技を発生させるための遊技が複雑なものとなり,遊技の興趣を高めることが可能となる。
(3)以上によれば,本願補正発明は,画像表示装置の表示部において高速で移動表示されるシンボルマークが所定の賞態様で停止した際に遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,シンボルマークの表示態様に変化を持たせ,停止表示過程を複雑にすることにより,遊技の興趣を高めることを目的とするものである。
そのため,本願補正発明においては,複数あるシンボルマークの表示部の中に,位置の変わらない第1表示部と,位置が移動可能な第2表示部が設けられ,当該第2表示部の停止位置に応じて賞態様を構成するラインが変化す, () るようにした上で いわゆる大当たりとする場合 賞態様を構成させる場合のシンボルマークを停止表示させる過程を,?@第2表示部内に表示されるシンボルマークの移動表示を停止し,?Aその後,前記第2表示部の位置をリーチ状態が成立していないライン上に敢えて一旦停止させ,?Bさらにその後,当該第2表示部を再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させる,という過程を経るようにしたものである。これを換言すると,遊技者は,リーチ状態が成立した状態で,しかも第2表示部に当たりのシンボルマークが目前に表示され続けることにより,当たりの期待を抱かされるところ,第2表示部が一度はずれ位置に停止することで大きな失望感を感じるものの,さらにこれがおもむろに第2表示部が移動することにより当たりが発生し,その喜びを増加させることになるのであって,本願補正発明は,このような複雑な停止表示過程を含む点に意義を有するものである。
なお,上記のような停止表示過程における 「最終的に賞態様を構成させ ,るときには,前記第2表示部をリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該第2表示部を,再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させる」との構成は本願補正発明で追加されたものであり,出願当初明細書(甲6)にはこれに対応する構成は存在しないところ,当初明細書において実施例として記載された賞態様を構成する場合の具体的な停止過程は,?@第2表示部の位置移動が停止して有効ラインが決定された後,第1表示部の移動表示が停止してリーチ状態を形成し,その後,第2表示部の移動表示が停止して賞態様を構成するものと 上記段落 0025 〜 0 (【】 【027,?Aまず第2表示部の位置移動が停止して有効ラインが決定され, 】)その後第1表示部及び第2表示部の移動表示が停止し,ここで賞態様を構成させる場合で,リーチ状態が成立していないライン上に第2表示部が停止している場合には,第2表示部を再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に第2表示部を移動させるもの(段落【0028】〜【0029,】)。,,, の2種類である そうすると 出願当初明細書には 賞態様を構成する場合第2表示部を,リーチ状態が成立していないライン上で積極的に一旦停止させることが記載されているとはいえないのであるが,本願補正発明に係る請求項1の記載上は,上記のように「前記第2表示部の位置をリーチ状態が成立していないライン上に敢えて一旦停止させ」るものと理解せざるを得ないから,以下の取消事由の検討においても,本願補正発明の意義を上記のように理解した上で行うこととする。
3 取消事由1(引用例発明の認定の誤り)について(1)原告は,引用例発明における「移動式可変表示部249a」は,電源投入時の初めから中立位置に存在し,条件が揃わなければ移動を開始しないものであるから 「移動式可変表示部249a」があたかも別の場所にあって移 ,動してきたことを示唆するような「前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後」という審決の認定する引用例発明の動作は引用例から把握されるものではないと主張するので,この点について検討する。
(2) 引用例(甲1)には次の記載がある。
ア 特許請求の範囲「始動入賞部と,該始動入賞部への入賞球を検出する始動入賞検出手段と,該始動入賞検出手段の検出信号に基づいて大当りを発生させる可変表示ゲームを行なう複数ずつの固定式可変表示部が並んだ可変表示ゲームラインおよびそれら全ての可変表示ゲームライン上に移動可能でいずれの可変表示ゲームラインの可変表示ゲームの組み合わせに対しても有効な可変表示ゲームを行う移動式可変表示部を備えた可変表示装置と,一定の条件下に前記固定式可変表示部の表示の変化をすべて停止させた後に前記移動式可変表示部の表示の変化を停止させる表示装置停止手段と,前記固定式可変表示部の全ての表示の変化が停止されるまでの間に前記いずれかの可変表示ゲームラインに沿って大当りを発生させる可能性が生じたか否かを判定する特別表示前兆成立判定手段と,該特別表示前兆成立判定手段による大当り発生の可能性が生じたとの判定に基づいて前記移動式可変表示部の表示が停止される前に該移動式可変表示部を大当りを発生させ得る可変表示ゲームライン上に移動させる移動表示部作動手段とを備えたパチンコ遊技機(1頁左下欄5行〜右下欄6行) 。」イ 発明の詳細な説明・ 「 産業上の利用分野] [この発明は,始動入賞口への入賞に基づいて可変表示ゲームを行なわせ,その可変表示ゲームの結果如何によって大当りを発生させるようにしたパチンコ遊技機に関する。
[従来の技術]従来,始動入賞口への打球の入賞に基づいて可変表示装置の可変表示の変化を開始させ,一定時間の経過又は遊技者のストップスイッチの操作によってその可変表, (,『, , 示を停止させ その表示の停止態様が予め定められた停止態様 例えば7 77 )となったときに,遊技者にとって有利となるように変動入賞装置を開状態に 』変換する特別遊技(大当り)を発生させるようにしたパチンコ遊技機が知られている。
この種のパチンコ遊技機の中には,遊技の興趣を高めるために,可変表示装置の可変表示部が複数並んだ大当りの組合せ表示ライン(可変表示ゲームライン)を複, (, 数設定し そのいずれの表示ライン上に大当りを発生させる停止表示態様 例えば『7,7,7 )が成立しても,特別遊技(大当り)を発生させるものもある。 』[発明が解決しようとする課題], , , しかし 上記いずれの場合にあっても 可変表示部は固定式のものであったので特別遊技態様を発生させる態様は固定的で変化に乏しく,遊技者の興趣をそれ程高められるものではなかった。
本発明にあっては,可変表示装置の可変表示ゲームに変化をもたせて,遊技者に対し,特別遊技の発生への期待感がより一層高められるパチンコ遊技機を提供することを目的とする(1頁右下欄8行〜2頁左上欄下3行) 。」・ 「 作用][可変表示装置による可変表示ゲーム中,可変表示装置の固定式可変表示部の全ての表示の変化が停止されるまでの間に,いずれかの可変表示ゲームラインに沿って大当りを発生させる可能性が生じたときには,移動式可変表示部がその大当りを発生させ得る可変表示ゲームライン上に移動し,その後にその移動式可変表示部の可変表示が停止される可変表示ゲームが行なわれるので,特別遊技(大当り)発生の可能性があるときには可変表示装置の表示部に動きのある変化が生じ,それによって,遊技者に対し,特別遊技発生への期待感がより一層高められるものとなる 」。
(2頁左下欄3行〜下6行)・「図外の電源スイッチ操作によりパチンコ遊技機に電気が供給されると,可変表示装置20の可変表示部235a〜235dおよび249aには任意の数字等が赤色に表示された状態となり,移動式の可変表示部249aは第1図に示すごとく移動範囲の中立位置に位置している。
…この通常遊技時に,打球発射装置(図外)の作動によって遊技領域2中に打ち込まれた遊技球が始動入賞口6,8,8のうちのいずれかに入賞すると,…その入賞記憶に基づき,可変表示部235a〜235d,249aの表示(例えば,0〜9の数字表示)の変化(赤色の表示変化)が開始されるとともに,入賞未処理個数記憶表示ランプ232の点灯状態にあるもののうちの1つが消灯される。そして,その可変表示の変化の開始時から所定時間経過したとき(又は,その表示の変化の開始後に遊技者によってストップスイッチが操作されたとき)には235a,235b,235c,235d,249aの順にその表示の変化が停止される。
各可変表示ゲームにおける表示の停止の過程で,A(可変表示部235aの停止表示)=C(可変表示部235cの停止表示)又はB(可変表示部235bの停止表示)=D(可変表示部235dの停止表示)の態様となって,横の可変表示ゲームライン上にぞろ目が成立しそうなときにはその2つ揃った可変表示部の表示が緑色に変換されるとともに,そのぞろ目が成立しそうな箇所(上又は下)に可変表示部249aが移動し,しかる後,その可変表示部249aの表示の変化がスクロールされながら徐々に停止を開始される。
それ以外のとき,例えば,A=D,B=Cとなって斜めの可変表示ゲームラインに沿ってぞろ目が成立しそうなときやぞろ目が揃う可能性のないときには,可変表示部249aは中段(中立)位置を維持したまま動かない。
このような可変表示装置20による可変表示ゲームが始動入賞口6,8.8への入賞記憶に基づいて繰返し行なわれる。
その結果,可変表示装置20の可変表示の停止表示態様がその移動した可変表示部219aの停止表示Eを含めて横又は斜めの可変表示ゲームラインの沿って特定の数字表示等の組合せ(この実施例では,ぞろ目( 3,3,3『7,7,7』 『』,など )となったときにはそのぞろ目の表示が全て緑色となって大当りと呼ばれる )特別遊技の権利が発生する(3頁右上欄下5行〜4頁左上欄下7行) 。」(3)以上によれば,引用例発明は,可変表示装置の表示部においてスクロール表示される数字などの表示内容が「3,3,3」などの所定の組合せで停止した際に遊技者にとって有利な特別遊技を行わせるパチンコ機において,表示態様に変化を持たせることで遊技の興趣を高めることを目的とするものであり,そのために,複数ある表示部の中に位置の変わらない固定式可変表示部と位置移動可能な移動式可変表示部を設け,移動式可変表示部の停止位置に応じて大当たりを構成するラインが変化するように構成したものである。
そして,引用例発明においては,固定式可変表示部の可変表示が停止した後に移動式可変表示部の可変表示が停止するようにされているが,移動式可変表示部は常時中段の中立位置に位置しつつ,上段あるいは下段のライン上に上記所定の組合せが成立しそうなときは,同ライン上に移動式可変表示部が移動してスクロール表示が停止され,その結果に応じて大当たりが発生することになる。また,斜めのライン上に上記所定の組合せが成立しそうなときは,移動式可変表示部は中段位置を維持したまま動かずにスクロール表示が停止され,その結果に応じて大当たりが発生することになるものである。
(4)これに対し,審決は,引用例発明について,前記第3,1,(3)イのとおり認定するものであるところ,移動式可変表示部の動作については 「横一,線の場合,前記移動式可変表示部249aをリーチ状態が成立していないライン上の中立位置に位置した後,該移動式可変表示部249aを,移動させてリーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上に停止させ,また,斜めの場合,リーチ状態が成立している可変表示ゲームライン上の中立位置を維持させ (審決9頁25行〜29行)るとして,大当たりが横一線で構成 」される場合,あたかも移動式可変表示部249aが中立位置に移動する,換言すれば,それ以前は中立位置以外の場所に位置していたものを積極的に中立位置に移動させるものであると認定したように解する余地があり,その意, 。 味で 審決のなした上記引用例発明の認定は適切でないといわざるを得ないもっとも,審決は,斜めにリーチ状態が成立している場合につき,移動式可変表示部は中立状態に「維持」するとして,移動式可変表示部が当初から中立状態に位置していること前提とする認定をしているものと理解することもでき,スクロール表示が停止する直前までの移動式可変表示部の動作はリーチ状態が横一線の場合も斜めの場合も同様であることを併せ考慮すれば,リーチ状態が横一線の場合に係る上記認定においても,移動式可変表示部が中立位置に当初から存在していることを前提とするものであると理解することができる。
そうすると,審決における上記引用例発明の認定は,表現上必ずしも適切とはいえないものの 全体としては 移動式可変表示部の動作につき 上記(3) ,, ,の認定と同様の認定をするものと理解することができるから,このような認定が審決を取り消すべき瑕疵に当たるということはできない。
したがって,引用例発明の認定の誤りをいう原告の上記主張は採用することができない。
4 取消事由2(本願補正発明についての進歩性判断の誤り)について(1)原告は,審決の挙げた周知例(甲2公報,甲3公報)及び被告が本件訴訟で挙げる周知例(乙1公報)はいずれも審決の認定する周知事項(最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部を,リーチ状態が成立しているライン上又はリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすること)を基礎付けるものではないから,これを前提としてなした審決の進歩性の判断は誤りである旨主張するので,以下,甲2公報,甲3公報,乙1公報について,順次検討する。
(2)ア 甲2公報には次の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲「 請求項1】可変表示装置に設けられる複数の可変表示部材を順次停止して 【予め定められた組合せ位置に特定図柄の組合せが表示されたときに,特定遊技状態を生起せしめる弾球遊技機において,前記複数の可変表示部材のうち,少なくとも最後に停止制御される最後可変表示部材を,前記組合せ位置を含む複数の位置に図柄を表示することができるように構成し,前記最後可変表示部材を除く他の可変表示部材の可変表示動作が停止し,その停止時に表示される図柄と前記最後可変表示部材が停止したときに表示される図柄との前記組合せ位置における組合せが前記特定図柄の組合せとなる可能性がある状態となったとき,前記特定図柄を前記複数の位置間で移動表示するように前記最後可変表示部材を表示制御する表示制御手段を備えたことを特徴とする弾球遊技機 」。
(イ) 発明の詳細な説明・「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,可変表示装置に設けられる複数の可変表示部材を順次停止して予め定められた組合せ位置に特定図柄の組合せが表示されたときに,特定遊技状態を生起せしめる弾球遊技機に関するものである 」。
・「 0002】【【従来の技術】従来,可変表示装置に設けられる複数の可変表示部材を順次停止して予め定められた組合せ位置に特定図柄の組合せが表示されたときに 特定遊技状態 以 ,(下,大当り遊技状態という場合もある)を生起せしめる弾球遊技機が多数市場に提供されていた。このような弾球遊技機においては,可変表示装置の複数の可変表示部材のうち,最後に停止制御される最後可変表示部材を除く他の可変表示部材の可変表示動作が停止し,その停止時に表示される図柄と最後に停止制御される可変表示部材が停止したときに表示される図柄との組合せ位置における組合せが特定図柄の組合せとなる可能性がある状態(以下,リーチ状態と), , いう となったとき 遊技者に大当り遊技状態となる期待感を持たせるために例えば,最後に停止制御されるべく未だ可変表示している可変表示部材をゆっくり可変表示せしめるような表示制御を行っていた 」。
・「 0003】【【発明が解決しようとする課題】しかし,上記したリーチ状態での可変表示動作においては,単に図柄が表示される速度が遅くなるだけであって,表示される図柄の数(通常10個以上)は,速く表示されるときと変わりがなく,一旦特定図柄が通過したときには,大当り遊技状態に対する期待感も減少するという問題があった。本発明は,上記した問題点に鑑みなされたもので,リーチ状態となったときに,従来以上に遊技者に期待感を抱かせることができるように可変表示装置を表示制御することができる弾球遊技機を提供することにある 」。
・「 0004】【【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために,本発明においては,可変表示装置に設けられる複数の可変表示部材を順次停止して予め定められた組合せ位置に特定図柄の組合せが表示されたときに,特定遊技状態を生起せしめる弾球遊技機において,前記複数の可変表示部材のうち,少なくとも最後に停止制御される最後可変表示部材を,前記組合せ位置を含む複数の位置に図柄を表示することができるように構成し,前記最後可変表示部材を除く他の可変表示部材の可変表示動作が停止し,その停止時に表示される図柄と前記最後可変表示部材が停止したときに表示される図柄との前記組合せ位置における組合せが前記特定図柄の組合せとなる可能性がある状態となったとき,前記特定図柄を前記複数の位置間で移動表示するように前記最後可変表示部材を表示制御する表示制御手段を備えたことを特徴とするものである 」。
・「 0005】【【作用】リーチ状態となったとき,最後に停止制御されるべく未だ可変表示動作をしている可変表示部材の複数の表示位置のいずれかの位置に常に特定図柄が移動表示されることになるので,当該可変表示部材が停止するまで大当り遊技状態に対する大きな期待感を持ち続けることができる 」。
・「 0009】【【実施例】…図1において,可変表示装置10は,前記遊技盤1の表面に取り付けられる取付基板11を有し,その取付基板11の中央に「十」字状に複数の可変表示器12,13,14a〜14cが設けられている。図示の可変表示器12,13,14a〜14cは,ドットLED表示器によって構成されるもので,複数の図柄を表示するようになっている。例えば 「0」〜「9」までの10個の ,数字と「A」〜「E」までの5つの英文字の合計15種類の図柄を順次連続的にスクロール表示するようになっている 」。
・「 0010】【…その停止時の図柄の組合せ位置として,横方向の3つの可変表示器12,14b,13に表示される図柄がすべて同じ図柄となったときに,特定遊技状態となって可変入賞球装置30を後述する所定の態様で駆動するものである。
しかして,最初に停止する左の可変表示器12は,1つのドットLED表示器によって構成され,次に停止する右の可変表示器13も,1つのドットLED表示器によって構成されている。つまり,左右の可変表示器12,13は,単独で可変表示部材を構成している。しかし,最後に停止する可変表示器14a〜14cは,3つのドットLED表示器で構成され,それぞれが独立に駆動表示制御されるものの,各可変表示器14a〜14cに表示される図柄の連続性は,保持される。つまり,中央の可変表示器14a〜14cは,3つの表示器で1つの可変表示部材を構成している。なお,リーチ状態時には,図2及び図3に示すように,特定図柄(図示の場合 『7』が特定図柄)が可変表示器14 ,a〜14cを往復移動するように表示制御される 」。
・「 0022】【以上,説明した遊技制御回路の具体的な動作の一例を図8図乃至図15に示すフロー図を参照して説明する。…」・「 0044】【…右図柄が予定停止図柄となったときには,ステップS63で左と右の図柄が同じであるか否かが判別される。即ち,リーチ状態か否かが判別される。リーチ状態でなければ,後述するステップS66に進み,リーチ状態であれば,ステップS64で中図柄を左図柄に合わせる。このステップS64の処理は,リーチ状態になると同時に中図柄(可変表示器14bに表示される図柄)を一旦大当り図柄の組合せとすることを意味する。その後,当り図柄を上下方向にスクロール表示するものである。…」・「 0046】【以上,実施例に係るパチンコ遊技機の可変表示装置10の構成及び作用について説明してきたが,本実施例によれば,可変表示装置10がリーチ状態となったとき,最後に停止制御されるべく未だ可変表示動作している可変表示器14a〜14cの複数の表示位置のいずれかの位置に常に大当り図柄が移動表示されることになるので,可変表示器14a〜14cの可変表示が停止されるまでの間,遊技者は,大当り遊技状態となる期待感を緊張して持ち続けることができる 」。
・「 0047】【なお,上記した実施例では,リーチ状態となったときに,大当り図柄の前後の図柄も上下に往復スクロールするものを示したが,大当り図柄だけを表示してそれを上下往復スクロールするようにしても良い。…更に,最後に停止する可変表示部材を3つの可変表示器から構成したものを示したが,1つの可変表示器で1つの図柄を移動表示できるものでも良い。…」・「 0048】【【発明の効果】以上,説明したところから明らかなように,本発明においては,リーチ状態となったときに,最後に停止制御されるべく未だ可変表示動作している可変表示部材の複数の表示位置のいずれかの位置に常に特定図柄が移動表示されることになるので,可変表示部材の可変表示が停止されるまでの間,遊技者は,大当り遊技状態となる期待感を緊張して持ち続けることができる 」。
イ以上によれば,甲2公報には,可変表示装置に設けられる複数の可変表示部材を順次停止して予め定められた組合せ位置に特定図柄の組合せが表示されたときに特定遊技状態を生起せしめる弾球遊技機において,前記複数の可変表示部材のうち,少なくとも最後に停止制御される最後可変表示部材を前記組合せ位置を含む複数の位置に図柄を表示することができるように構成し,前記最後可変表示部材を除く他の可変表示部材の可変表示動作が停止し,その停止時に表示される図柄と前記最後可変表示部材が停止したときに表示される図柄との前記組合せ位置における組合せが前記特定図柄の組合せとなる可能性がある状態となったとき,前記特定図柄を前記複数の位置間で移動表示するように前記最後可変表示部材を表示制御する表示制御手段を備えたことを特徴とする弾球遊技機についての記載がある。
そして,実施例には,この弾球遊技機において,中央の可変表示器は3つの可変表示器14a〜14bで構成されることが記載されているとともに,同構成に代えて,一つの可変表示器で図柄を移動表示しても良いとさ(【】),,「」, れており 段落 0047また 甲2公報において 移動表示 とは「 」, 請求項1に 特定図柄を前記複数の位置間で移動表示する とあるように位置を変えて表示することを意味しているから,この記載は,一つの可変表示器の位置を移動させて図柄を表示させることを意味するものと認めることができる。
しかし,甲2公報には,上記移動表示の動作に関して,リーチ状態になると同時に中図柄(可変表示器14bに表示される図柄)を一旦大当たり図柄の組合せとすることと,その後,当たり図柄を上下方向にスクロール表示するものである旨の記載(段落【0044 )はあるが,これが中央 】の可変表示器をリーチ状態が成立しているライン上に一旦停止させた後,再び動作させるようにすることを意味するものなのか,それとも中図柄の表示とスクロールの動作が一連のものとしてなされ遊技者において可変表示器がライン上に停止されたものとして認識されないような態様を意味するものなのかは,同記載によっては不明といわざるを得ない。
しかも,仮にこれが前者を意味するものと解したとしても,それ自体は審決が周知事項とすることのうち 「可変表示部を,リーチ状態が成立し ,ているライン上に一旦停止させるようにすること」を開示するに止まり,「可変表示部を,リーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させるようにすること」を開示するものではないし,その他,甲2公報においてこれを開示するものと理解することができる記載は見当たらない。
この点被告は,大当たり図柄が上下往復スクロールして上端ないし下端において移動方向が切り替わる時点で「リーチ状態が成立していないライン上に一旦停止」する旨主張するが,前記2に認定した本願補正発明の意義に照らせば,ここにおける「一旦停止」とは遊技者において大当たりにならなかったと誤信させる程度の停止状態を指すものと解すべきであって,上下往復スクロールが継続する過程で可変表示部が反転する状態がこれに当たるものでないことは明らかであるから,被告の上記主張は採用することができない。
ウそうすると甲2公報には 「最後にスクロール表示を停止する中央の可 ,変表示器の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記中央の可変表示器を,リーチ状態が成立しているライン上又はリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該中央の可変表示器を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上」 。 に停止させるようにすること が記載されていると認めることはできない(3)ア 次に,甲3公報には次の記載がある。
(ア) 実用新案登録請求の範囲・「(1)数字をランダムに可変表示する表示部を縦に二列以上横に二行以上並べて配設し,該表示部の数字が停止した状態での組合せを判断して予じめ設定された組合せの成立により特賞遊技状態を開始するようにしたパチンコ機用入賞装置において,電圧をかけることによって透明から半透明又は透明から不透明に変化させられる瞬間調光板を前記表示部の前面に配置し,個々の表示部に対応する部分の瞬間調光板を必要に応じて透明と半透明又は透明と不透明に変化させるようにしたことを特徴とするパチンコ機用入賞装置 」。
・「(2) 予じめ設定された組合せが成立した場合に,その行又は列及びそれ以外のいずれか一箇所の表示部に対応する瞬間調光板のみ透明になし,当該一箇所の表示部により特賞遊技状態のカウント表示を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載のパチンコ機用入賞装置 」。
(イ) 考案の詳細な説明・「 産業上の利用分野] [本考案は,パチンコ機に使用する入賞装置に関する 」。
[従来の技術]従来,数字をランダムに可変表示する表示部を縦に二列以上横に二行以上並べて配設し,該表示部の数字が停止した状態での組合せを判断して予じめ設定された組合せの成立により特賞遊技状態を開始するようにしたパンチンコ機用, 。, 入賞装置は 例えば…実願昭63-48705号等に開示されている ここに特賞遊技状態とは特定の条件成立により大入賞口を開かせ入賞の機会を飛躍的に増大させる状態をいう。
[考案が解決しようとする課題]上記従来技術は,表示部の数を増加させ,それによる組合せ態様の増大を図ったものであるが,表示部の数を増したことにより遊技者の注意力がいままで以上に要求され,表示部の数字の配列が把握しがたくなって遊技の興趣の増大を図る目的達成が不十分であり,かつ,目や精神的疲労の増加が新たな問題点として指摘されるに至った(2頁4行〜3頁4行) 。」・「遊技部6の略中央には数字を可変表示する表示部 12,12 …を縦に三列,横に三行の計九個配置して形成された可変表示器 13 が配置されている。該可変表示器 13 は,遊技部6に設けた始動入賞口 14,14 へパチンコ球が入賞すると各表示部 12,12 …が「0」〜「9」の範囲でランダム変動し,一定時間の経過或いは前面枠2の下部隅角部に設けたストップボタン 15 のキー入力により各表示,。 ,, 部 12 12 …が停止する この停止状態での各表示部 12 12 …の数字の配列が例えば縦,横のいずれかが『7,7,7』であれば特賞遊技状態となる等のように予じめプログラムに設定しておけばこれに従って一定時間大入賞口16が開口する。… (5頁10行〜6頁2行) 」・「第三に,第7図に示したように例えば上段横一行の数字が『7,7,2』と揃った場合には上段横一行の『7,7』の表示を一旦固定し,次にこの『2』, , , , を含む縦一列の瞬間調光板 17 17 17 を透明にしてこれに対応する表示部 12 1212 のみを変動させる。そして,該縦の表示部 12,12,12 の前記『2』を表示し『』 『, , 』 ていた上部角部の表示部12が 7 で停止すれば上段横一行が 7 7 7と揃って特賞遊技状態となるのである(8頁12行〜下1行) 。」イ以上によれば,甲3公報には,数字をランダムに表示する縦横2列2行以上の多数の可変表示部を備え,表示部の数字が停止した状態での組合せにより特賞遊技を開始するパチンコ機が記載されているところ,同パチンコ機においては,表示部の数字の配列を把握しやすくするために,特賞遊技状態となる可能性が高くなったときに,対象となる表示部の数字変動だけが見えるよう,表示部に配置した調光板を透明とする技術は開示されているが,審決が認定した前記周知技術は全く開示されていないといわざるを得ない。
(4)ア また,乙1公報には次の記載がある。
・ 「 0001】【【産業上の利用分野】本発明は,パチンコ機の図柄表示方法に関する 」。
・ 「 0005】【【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,パチンコ機の図柄表示装置において表示される多数の図柄のうち特定の図柄の出現確率を異ならせて段階的に設定し,図柄の判定条件を複合的に設定してパチンコ機の趣向性を高める 」。
・「 0018】以下,実施例における図柄表示装置1を装備したパチンコ機につ 【いて説明する。実施例のパチンコ機においては,左上図柄表示部10,左中図柄表示部11,左下図柄表示部12よりなる3つの表示部は,左図柄表示部7として駆動制御され,右上図柄表示部13,右中図柄表示部14,右下図柄表示部15よりなる3つの表示部は,右図柄表示部9として駆動制御される 」。
・「 0019】また,左図柄表示部7と中図柄表示部8と右図柄表示部9に停止 【, , , 表示される図柄は 図4に示されるとおりであって 左図柄に関しては26種類中図柄に関しては数字0〜9,記号J及び記号*の12種類,右図柄に関しては26種類設けられている 」。
・「 0040】…大当たり図柄は,図7に示されるように,横一列に同一の数字 【が一致する場合か,もしくは斜め1列に同一の数字が一致する場合かであり,即ち,左中図柄と中図柄と右中図柄がすべて同じ図柄となる場合,左下図柄と中図柄と右上図柄がすべて同じ図柄となる場合及び左上図柄と中図柄と右下図柄がすべて同じ図柄となる場合であり,全部で73種類設けられている。また,遊技者にとっては,大当りに関する図柄合わせの方向が3方向あることになる 」。
・「 0042】また,実施例では,左図柄と右図柄とを中図柄に先立って停止表 【示するようにしているが,この時,停止表示された左図柄と右図柄の組み合わせが,図7に示される大当たりに関する図柄の左図柄と右図柄の組み合わせに一致するものをリーチ図柄ということにする 」。
・「 0044】さらに,中図柄の停止に先立って停止表示された左図柄と右図柄 【の組み合わせがリーチ図柄となった場合には,中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数回繰り返した後停止する 」。
イ以上によれば,乙1公報にはパチンコ機の図柄表示方法が記載されているところ,その実施例には,左側の3個の表示部からなる左図柄表示部7,, , と 中図柄表示部8と 右側の三個の表示部からなる右図柄表示部9との3つの表示部を有するパチンコ機において,中図柄の停止に先立って停止表示された左図柄と右図柄の組み合わせがリーチ図柄となった場合には,中図柄の図柄変動が低速と一時停止とで数回繰り返した後停止し,すべて同じ図柄が揃った場合に大当たりとする技術が記載されていると認められる。
しかし,乙1公報に記載された上記パチンコ機の表示部においては,左右の図柄の組合せがリーチ図柄となった場合に,中図柄の図柄が特徴的な変動をするものの,表示部自体は固定されており,その位置が移動することは想定し得ず,表示部における図柄の変動が停止された後に表示部自体がラインを移動することはあり得ない。
そうすると,乙1公報には,審決が認定した周知技術の開示はされていないといわざるを得ない。
(5)以上検討したところからすれば,審決が周知技術として認定した 「最後,に可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部を,リーチ状態が成立しているライン上またはリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部を,再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすること (審決11頁8行〜13行)は,甲2公 」報,甲3公報及び乙1公報には開示されていないから,上記事項が本件出願前に周知の技術であったと認めることはできない。
したがって,上記周知技術の存在を前提として本願補正発明は容易想到とした審決は,前提において誤りがあるといわざるを得ない。
(6)アこれに対し被告は,審決が認定する周知技術は,遊技者が注目する最後に可変表示を停止する「可変表示部の図柄」の移動表示の態様を表現しようとするものであるから,審決に記載された周知技術が意図する内容は,「一般的に,最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄を停止した後,最終的に大当たり図柄の組み合わせを構成させるときには,前記可変表示部の図柄を,リーチ状態が成立しているライン上またはリーチ状態が成立していないライン上に一旦停止させた後,該可変表示部の図柄を再び動作させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させるようにすることが周知」と言い換えることができるとし,甲2公報及び乙1公報にはそのような意味での周知技術が開示されていると主張する。
しかし,前記2のとおり,本願補正発明においては,第2表示部内に表示されるシンボルマークの移動表示と第2表示部自体の移動は明確に区別され,?@第2表示部内に表示されるシンボルマークの移動表示を停止し,?Aその後,前記第2表示部の位置をリーチ状態が成立していないライン上に敢えて一旦停止させ,?Bさらにその後,当該第2表示部を再び移動させてリーチ状態が成立しているライン上に停止させる,という独特の過程を経るものであり,その際,第2表示部には大当たりを期待させる図柄が第1表示部におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲内で移動して表示されることを一つの特徴とするものである。これに対し,被告の上記主張に係る構成は,可変表示部の図柄の変動のみを構成要素とし,しかも,乙1公報においては大当たりの図柄自体が第1表示部におけるシンボルマークの停止表示位置の範囲外に移動すること(すなわち,表示部から消えてしまうこと)をも想定するものであって,両者は技術的な意義を異にするものといわざるを得ない。
, , そうすると 被告の主張する上記技術を引用例発明に適用したとしてもこれだけでは本願補正発明の構成が導き出せるものではないから,被告の上記主張は採用することができない。
イまた被告は,甲2公報と乙1公報とではリーチ状態が成立しているライン上にある可変表示部に最終的に事前に決定された大当たり図柄を停止させるまでの過程ないし態様が異なるものの,リーチ状態が成立した後,最終的に大当たり図柄の組合せを構成させるときに,最後に可変表示を停止する可変表示部の図柄に着目して,事前に停止させることが決定された大当たり図柄が,当たりとならない位置から当たりとなる位置へと移動する態様は両公報に共通する周知技術であり,これを引用例発明に適用すれば本願発明は容易想到である旨主張する。
被告の上記主張は,甲2公報と乙1公報に開示された大当たりとなるまでの過程を,大当たり図柄がはずれの位置から当たりの位置へ移動するという内容に抽象化して共通点を把握した上で,これを引用例発明に適用するというものであるが,前記のとおり,本願補正発明の構成は大当たりとなるまでに独特の過程を経る点に特徴があり,本願補正発明の技術的意義はこの点に見出されるのであるから,その具体的な過程自体の容易想到性を検討することなく,単に上位概念化された過程を引用例発明に適用したとしても,それのみで本願補正発明の構成が容易想到といえるものではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
5 結論以上によれば,原告主張の取消事由2は理由があり,審決は違法として取消しを免れない。
特許庁は,本件補正の可否につき,手続要件及び実体要件を含めて,改めて審理すべきである。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海