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関連審決 無効2006-80252
関連ワード 物の発明 /  製造方法 /  新規性 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  発明特定事項 /  一致点の認定 /  周知技術 /  慣用技術 /  同一の発明 /  技術常識 /  先行技術 /  明確性 /  発明の詳細な説明 /  翻訳文 /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  加工 /  発明の範囲 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10375号 審決取消請求事件
原告美津濃株式会社
訴訟代理人弁護士中村稔,田中伸一郎,相良由里子,水沼淳
訴訟代理人弁理士倉澤伊知郎,田巻文孝
被告株式会社ルイスビル・スラッガー・ジャパン
訴訟代理人弁護士城山康文,岩瀬吉和,山本健策
訴訟代理人弁理士津國肇,束田幸四郎,生川芳徳
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/07/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が無効2006-80252号事件について平成19年9月28日にした審決を取り消す 」との判決。
第2事案の概要本件は,原告の有する下記1(1)の特許(以下「本件特許」といい,本件特許に係る発明を「本件発明」という )について,被告が無効審判請求をしたところ, 。
特許庁が本件特許を無効とする旨の審決をしたため,原告が,同審決の取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本件特許(甲第32号証)特許権者:美津濃株式会社(原告)発明の名称: 野球又はソフトボール用のFRP製バット」 「出願日:平成11年1月20日(特願平11-11325号)登録日:平成15年9月19日特許番号:第3474793号(2)本件手続審判請求日:平成18年11月30日(無効2006-80252号)審決日:平成19年9月28日審決の結論: 特許第3474793号の請求項1〜7に係る発明についての特 「許を無効とする 」。
審決謄本送達日:平成19年10月11日(原告に対し)2本件発明の要旨本件発明の要旨は,本件特許に係る明細書(甲第32号証。以下「本件明細書」という )の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された以下のとおりのものと認 。
められる。
「 請求項1】バット本体がガラス繊維強化プラスチックやカーボン繊維強化プラ 【スック等の繊維強化プラスチック素材で構成されている野球又はソフトボール用のFRP製バットにおいて,前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けたことを特徴とする野球又はソフトボール用のFRP製バット。
【請求項2】前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が打球部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット。
【請求項3】前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に1層だけ設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット。
【請求項4】前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に2層以上設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット。
【請求項5】前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が離型効果を有する素材により構成されたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット。
請求項6 前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー WBL 層がフィ 【】 ()ルム状の材料を積層することにより形成されたことを特徴とする請求項5記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット。
【請求項7】前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がシリコン樹脂系乃至はフッ素樹脂系の離型剤より形成されたことを特徴とする請求項5記載の野球又はソフトボール用のFRP製バット(以下,請求項1〜7に記 。」載された個々の発明を,当該請求項の番号に従って「本件発明1」などという )。
3審決の要点審決は,被告による無効理由1〜4の主張に対し,?@本件発明1〜7は,下記甲第1号証記載の発明であると認められる(無効理由1が認められる,?A仮に,そ。)うでないとしても,本件発明1〜7は,甲第1号証記載の発明及び下記甲第2,第3,第7,第9号証によって認定することができる周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる(無効理由2が認められる )として,本件発明1〜7に係る特許は無効とすべきものであると判断した。 。
甲第1号証米国特許第5415398号明細書(1995年(平成7年)5月16日特許)甲第2号証実願平3-55846号(実開平5-175号)のCD-ROM甲第3号証特開平10-314353号公報甲第7号証特開平10-59476号公報甲第9号証特開平10-292899号公報甲第10号証特開平7-256772号公報審決の理由中,上記各甲号証の記載事項の認定並びに無効理由1(新規性欠如)及び2(甲第1号証に記載した発明と周知技術に基づく進歩性欠如)についての判断の部分は,以下のとおりである(ただし,項目の番号及び記号を改めた部分がある。なお,審決中の甲号証の番号は,本訴におけるものと共通である。。)(1)各甲号証の記載事項の認定ア甲第1号証, ,, , なお 甲第1号証の記載内容の認定は 原則 請求人が提出した翻訳文により行うこととし, 。,, 当事者間に争いのある部分に関しては 原文を併記することとする また 摘記箇所の記載は原文と翻訳文の両方について記載することとする。
また,下記において「グリース」との記載は,請求人の提出した翻訳文では「潤滑油」等と記載されているが,原文の「grease」をより適切に表現するために 「グリース」とした。 ,それに伴い,一部表現を変更した。
「本発明は,ソフトボール用バットおよび野球用バットに関するものであり,また特に(ア)バットの衝撃応答性を向上させるバット内の構造部材の使用に関するものであるcolumn 1,。」(line 8-11 /第4頁第5〜6行)「先行技術の欠点を踏まえ,本発明の目的の1つは,改良されたバットを提供すること(イ)である。
また,本発明には,バットから打球に伝導するパワーを増大させるバットを提供するという目的もある。
さらに本発明には,挿入部を持つ管状バットについて,シンプルな構造を提供するという目的もある(column 2, line 1-8 /第4頁第40行〜第5頁5行) 。」「本発明の好適な一実施例において,管状アルミニウム製バットフレームは,直径の大(ウ)きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部を具備する。管状挿入部は,同挿入部の両端に位置する締まりばめにより,衝撃部内に懸架される。第1締まりばめは,挿入部の第1端部をバットフレームのテーパ部に強く押し付けることにより形成される。次に第2締まりばめは,挿入部の第2端部の上部に位置する衝撃部の先端部分を曲げることにより形成される。懸架さ, 。, れた挿入部の長さに沿って 衝撃部の内側から挿入部を分離する間隙が存在する この間隙はボールを打ったときの挿入部と管状フレームとの間の相対運動を促進するため,グリースで満たされる(column 2, line 9-23 /第5頁第6〜13行) 。」「図1を参照すると,本発明の一実施態様におけるソフトボール用バット10は,比較(エ)的直径の大きい衝撃部12,中間テーパ部14および比較的小径の握り部16を具えた管状アルミニウムフレーム11を有する。
衝撃応答性を高め,バットから打球へのパワー伝導を向上させるため,管状挿入部18を管状フレームの衝撃部12内に懸架する。管状挿入部は中空管であり,その外径は,管状フレームの衝撃部12の内径よりわずかに小さい。管状挿入部18の第1端部20は,衝撃部12に挿入され,さらに,直径が減少するテーパ部14の内壁に接するように強く押し付けられ,これにより第一の締まりばめが形成される。管状挿入部18の第2端部22は,管状挿入部18が第1締まりばめで固定された時点で,衝撃部12の先端より内側に位置する。第2締まりばめは,挿入部の第2端部22の上部に位置する衝撃部の先端部分を曲げることにより形成され。, 。」 る この曲げられた部分が 管状フレーム11のうち直径が減少するヘッド部24を形成する(column 2, line 39-61 /第5頁第20〜31行)「挿入部18の外径が管状フレームの衝撃部12の内径よりわずかに小さいことから,(オ)懸架された挿入部18は,挿入部の第1端部20および第2端部22の両締まりばめのみにおいて管状フレームと接触する。挿入部18と,衝撃部12の内壁との間に狭い一定の間隙26が存在する この間隙は 挿入部の周囲 図3を参照 と 挿入部の第1端部20と第2端部22 。,() ,との間で挿入部の長さに沿って均一に伸びている。
図2で最もよくわかるが,間隙26は,グリースのような潤滑剤で満たされている。グリースは,挿入部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18の表面をグリースで覆うことにより,間隙26内に取り入れられる。挿入部18が第1締まりばめと第2締まりばめとの間で固定されると,潤滑剤で満たされた間隙26は,第1締まりばめおよび第2締まりばめによって効果的に密閉される(column 2, line 62 - column 3, line 9 /第5頁第32行〜第6頁第3 。」行)「図示された実施例によるソフトボール用バットの作用は,打球へのパワー伝導を向上(カ)させるよう設計されている。特に,バット10は,大きな弾性たわみが生じ,これが短時間で大きなパワーをもって反発することにより,ボールとの衝撃に応答する。
管状フレーム11は,挿入部18が懸架され,同挿入部がその両端において管状フレームに取り付けられるため,板ばねと同様の特徴を持つ機械的構造が実現する。バット10が衝撃部12においてボールを打った時,衝撃部12の壁は,グリースで満たされた間隙26によって内側方向にたわみ,その下に位置する挿入部の壁に負荷をかけ,これを内側方向にたわませる。衝撃部12のたわみは,原則として弧状になると考えられる。よって挿入部18は,衝撃部12の弧状のたわみの受け台となるため,弧状にたわむ。
挿入部18の弧状部分が衝撃部12の弧状部分の受け台となるため,挿入部18の弧状部分の曲率半径は,衝撃部12の弧状部分より大きい。挿入部18はその両端部20,22において管状フレーム内で固定されていることから,曲率半径の大きい挿入部がたわむことにより,挿入部18は衝撃部12のたわみに沿って引っ張られ,曲げられる。このためボールを打った時点で,挿入部18は,相当の引張応力と曲げ応力を受ける。
挿入部18が衝撃部12内に板ばねのように取り付けられていることにより,ボールへのパワー伝導を増大させる作用を持つ反発が得られる。衝撃部12と挿入部18の両方の壁が反発して負荷ゼロの状態になった時点で,曲げ応力は消滅する。その下に位置する挿入部の壁の引張荷重も同時に消滅し,さらに「スナップ」が加わることで,反発の力と速度が増す。このため,挿入部18を管状フレーム内で板ばねのように懸架することによって付加されるスナップにより,打球へのパワー伝導が向上するとともに,バットの「強打」力も向上する。
グリースにより,衝撃部12と挿入部18との間で相対運動が可能になるため,挿入部は,衝撃部12のたわみを囲むように独立して伸長することができる。グリースが間隙内で密閉されていることにより,もうひとつの利点も生じる。すなわち,ボールとの衝撃の発生が早すぎて,グリースが相当に流れ出さないという点である。むしろグリースは,流体静力学的に,衝撃部の壁を支持し,これを挿入部から遠ざける働きをする。この場合,衝撃部と挿入部との間, 。 でしっかりしたグリースの層が維持され よって衝撃部に対応した挿入部の運動が促進される一方,衝撃が加わる間にグリースが移動した場合,衝撃の力は衝撃部12の拡大区域に分配される。この衝撃応力の分配により,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくいことから,衝撃部の壁は薄いもので足りる(column 3, line 10-65 /第6頁第4〜32行) 。」「1平方インチ当たり80,000ポンドの降伏強度のアルミニウムを使用することに(キ)より,衝撃部12の長さが約13インチ,肉厚が0.058インチである場合に優れた衝撃応答性が得られる。長さが衝撃部12よりわずかに短く,肉厚が0.048インチの挿入部18が,衝撃部12に挿入される。挿入部の外径は,挿入部18の外面と衝撃部12の内面との間に約0.007インチの間隙が存在するように,選択される(column 4, line 9-17 /第6頁 。」第40行〜第7頁4行)「 , , (ク)図示された実施例における締まりばめは 優れた機能をもたらすものであるとともに設計と製造がシンプルである(特に溶接が一切必要がない)という利点がある。しかし,当然のことながら,溶接またはその他の留め具を利用することもできる。例えば,挿入部と管状フレーム11の締まりばめにおいて,さらに摩擦係数を上げるための装置を利用することができる。また,これらに代えて,挿入部の端部を管状フレームに接合させるため,接着剤または機械による留め具を利用することもできる。留め具は,間隙26内を潤滑剤で密閉するという目的においても利用することができる。板ばねのような懸架を維持する取付装置や留め具はすべて,本発明の範囲に含まれる(column 4, line 47-60 /第7頁第20〜27行) 。」( ,「 」 「」 審決注:上記において挿入部の端部を管状フレームに接合させるため の 接合させるは,請求人の提出した翻訳文においては「係合させる」と記載されているが,原文の「 forjoining 」をより適切に表現するために,上記のように変更した )。
「フレームおよび挿入部の材料として本実施例ではアルミニウムを使用しているが,当(ケ)然のことながら,他の多くの材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる。例えば,コストはやや高くなるが,優れた結果をもたらす挿入材としてチタンを使用することができる。チタンは衝撃応答性が高いという特性を持つことから,チタンの挿入は良い効果をもたらす。さらに,挿入部が中空管であるため,チタンを利用する場合の切削加工および冷間加工の問題も最小限にとどめることができる。チタンの挿入により,優れた衝撃応答性を持つとともに,中実のチタン製バットと比べて大幅のコストの低いバットを実現することができる。
さらに,コストについてそれほど懸念する必要がなければ,チタン製のバットにチタンを挿入して,極めて優れた結果を実現することができる。当然のことながら,他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる。
While the present embodiment utilizes aluminum for the frame and the insert, it shouldbe understood that many other materials will perfrom equally well with the presentinvention. For instance, at a slightly higher cost, titanium could be used as insertmaterial with excellent results. A titanium insert is advantageous owing to its excellentimpact response characteristics. In addition, because the insert is a hollow tube, themachining and cold working problems associated with titanium are minimized. The titaniuminsert provides a bat with an superb impact response, but at a cost vastly reduced fromthat of a solid titanium bat.Furthermore, where cost is less a consideration, a titanium insert may be used within atitanium bat with outstanding results. It should be understood that various othermaterials, composite materials, plastics, and other materials may likewise performequally as well with the present invention. (column 4, line 61 - column 5, line 10 /第7 」頁第28〜39行)「本発明のバットにおいては,多くの種類の潤滑剤を使用することができる。潤滑剤の(コ)粘性を変えれば,バットの感触および衝撃応答も変化する。好適な一実施例においては,衝撃が加わる間のグリースの油圧効果を強調するため,重い等級のグリースが使用されている。合成潤滑剤を 石油ベースのグリースやオイルと同様に使用することもできる Teflon 商 , 。(標)等の潤滑剤を用いても,同様の優れた結果が得られる。さらには,挿入部とフレームの独立した動きを可能にするため,それ自体が滑りやすくなっている挿入部およびバットフレームの材料も,同様の機能を果たすことができる。実際には,結果として挿入部とバットフレームの独立した動きを可能にするように構造が構成されていれば,潤滑剤はすべて省略することができる(column 5, line 11-24 /第7頁第40行〜第8頁7行) 。」「潤滑剤は塑性変形可能な材料であると考えられる。この材料の塑性変形は,バットフ(サ)レームおよび挿入部の作用によって回復される。本発明の利点の一部は,潤滑剤であるか否かを問わず,間隙26において塑性変形可能なあらゆる材料を代用することによって得ることができるという点である。
It will be recognized that the lubricant is a plastically deformable material. Plasticdeformation of this material is restored by action of the bat frame and the insert.Certain advantages of the present invention can be achieved by substituting anyplastically deformable material in the gap 26, irrespective of whether it is alubricant. (column 5, line 25-31 /第8頁第8〜11行) 」「 請求項1】円形断面を有する中空管状バットフレームと,(シ) 【前記フレーム内に位置し,円形断面を有し,前記管状フレームと係合する第一端部および第二端部を有し,前記第1端部と前記第2端部との間で中心部に沿って円環形の少なくとも一部,, を形成する間隙によって前記管状フレームから分離される挿入部とから成り 前記フレームが前記間隙のあらゆる位置で弾性たわみが可能であり,これにより前記挿入部の第1端部と第2端部との間で前記挿入部の一部に沿って前記挿入部を係合する機能を果たすことを特徴とするバット。
【請求項2】前記挿入部が前記フレーム内に懸架され,前記第1端部および第2端部において前記フレームに固定される請求項1のバット。
【請求項3】前記挿入部が固定され,ボールを打ったときに前記挿入部と前記管状フレームとの間の相対運動を増進するために前記間隙を潤滑剤で満たした請求項2のバット。
【請求項4】前記管状フレームが小径の握り部,中間テーパ部および直径の大きい衝撃部を有し,前記挿入部が前記フレームの衝撃部内に懸架される請求項3のバット。
【請求項5】前記挿入部が管状である請求項4のバット。
【請求項6】前記間隙の厚さが,前記衝撃部の壁の厚さおよび前記挿入部の壁の厚さより小さい請求項5のバット。
【請求項7】前記管状フレームがさらに前記衝撃部の先端において直径が減少したヘッド部を具備し,前記挿入部の第1端部が,前記フレームの前記テーパ内部の第1締まりばめによって前記フレーム内で固定され,かつ前記挿入部の第2端部が,前記バットの前記ヘッド部内の第2締まりばめによってフレームと固定されることを特徴とする請求項6のバット。
【請求項8】前記の両締まりばめが前記間隙内の前記潤滑剤を密閉する請求項7のバット。
【請求項9】前記挿入部がアルミニウムで作られた請求項8のバット。
【請求項10】前記管状フレームがアルミニウムで作られた請求項8のバット。
【請求項11】前記挿入部がチタンで作られた請求項8のバット。
【請求項12】前記挿入部が複合材料で作られた請求項8のバット。
【請求項13】前記挿入部がスチールで作られた請求項8のバット。
【請求項14】前記潤滑剤がグリースである請求項10のバット。
【請求項15】小径の握り部と直径の大きい衝撃部とを具備する中空のバットにおいて,前記バットの前記衝撃部の内壁によって円環形の間隙を形成する内部構造上の挿入部と弾性たわみが可能であり,これにより前記円環形間隙の一部を閉じて前記挿入部を係合させる機能を果たす前記衝撃部とから成るバットの改善。
【請求項16】前記間隙が塑性変形可能な材料により満たされた請求項15のバット。
【請求項17】小径の握り部,中間テーパ部,直径の大きい衝撃部および直径が減少したヘッド部を具備する中空の管状フレームと,前記フレームの衝撃部内に懸架される管状挿入部と,前記テーパ部に収容され,第1締まりばめによって同テーパ部に固定される前記管状挿入部の第1端部と,前記フレームの前記ヘッド部が収容し,第2締まりばめによって同ヘッド部に固定される前記管状挿入部の第2端部と,前記挿入部を前記管状フレームから分離し,前記第1締まりばめから前記第2締まりばめまで伸長し,バットでボールを打ったときに前記管状フレームと前記挿入部との間の相対運動を増進するためにグリースで満たされた間隙とから成り,前記挿入部および前記フレームがアルミニウムで作られることを特徴とするバット。
【請求項18】小径の握り部と直径の大きい衝撃部とを具備し,その内径および外径が円形である中空管状バットフレームと,ほぼ円形の断面を有し,その外径が前記フレームの衝撃部の内部より小さく,前記衝撃部内で固定される少なくとも1つの挿入部と,内側方向への弾性たわみが可能であり,これにより前記挿入部と前記衝撃部との間に強固な締まりばめを形成する前記衝撃部とから成るバット。
18. A bat, comprising:a hollow tubular bat frame having a small-diameter handle portion and a large-diameterimpact portion having a circular cross-section with an inner and outer diameter;at least one insert having a substantially circular cross-section with an otherdiameter less than the inner diameter of the frame impact portion, the insert being heldwithin the impact portion; and the impact portion being inwardly elastically defectablesuch to establish a tight imterference fit between the insert and the impact portion.」(column 5, line 53 - column 8, line 6 /第8頁第25行〜第10頁第1行)イ甲第2号証「FRPの強化繊維の繊維方向をバットの長手方向に対し任意の角度を有するように巻着積層形成されたFRP製バットにおいて,少なくとも打球部における強化繊維の繊維方向をバットの長手方向に対し0゜になるように巻着した層を,2層以上に分散して設けたことを特徴とするFRP製バット( 請求項1 ) 。」【】ウ甲第3号証「打球部に相当する外管パイプの内側に,補強用の内管パイプを装着した二重管式バッ (ア)トにおいて,前記外管パイプの打球部の肉厚が1.00mm以上1.60mm以下であることを特徴とするソフトボール用バット( 請求項1 ) 。」【】「図3に示すように外管パイプ2の内部に内管パイプ3を挿入する場合には,挿入がス(イ)ムーズに行えるように,内管パイプ3の外径を外管パイプ2の内径よりも小さい径とし,且つ内管パイプ3の下端部3bをスピニング加工によりあらかじめ絞り込んで予備成形することにより,該下端部3bが外管パイプのシャフト部2C内側のテーパー部2E形状に合致する部位で係止することにより 外管パイプ2の内径と内管パイプ3の外径との間に0 2〜0 3mm , ..程度の隙間4を設けることにより,挿入が容易となると共にバット成形後,これら隙間4の存在によりソフトボールを打球した際の衝撃応力が加わった時に外管パイプ2の撓みを増大させるため,反発特性がより向上するものである( 0025 ) 。」【】「本願発明に係るソフトボール用バット1の外管パイプ2や内管パイプ3に使用す素材(ウ)としては,例えば繊維強化プラスチック製(FRP製)のバットの場合には,カーボンファイバーやグラスファィバーやアラミドファィバーその他の補強繊維等を使用することが出来るものである( 0030 ) 。」【】エ甲第7号証「FRP製内殻とFRP製外殻とからなる二重殻構造の直胴部と,該直胴部の両端を密閉した鏡板とで形成され,前記直胴部は内殻と外殻との間に剥離層形成用のフィルム層が少なくとも二層設けられていることを特徴とするFRP製二重殻タンク( 請求項1 ) 。」【】オ甲第9号証「金属製ライナーの外周を繊維強化プラスチックで補強した複合容器であって,金属製 (ア)ライナーと繊維強化プラスチック層との間の全面又はその主要部分に離型剤の塗布膜,離型用フィルム又はこれらの組合せからなる固着防止層を形成させたことを特徴とする天然ガス自動車燃料装置用複合容器( 請求項1 ) 。」【】「前記離型用フィルムがフッ素樹脂熱収縮性フィルムからなる請求項1又は2記載の天(イ)然ガス自動車燃料装置用複合容器( 請求項3 ) 。」【】カ甲第10号証「回転するマンドレルに帯状体を螺旋状に巻回し,その帯状体を離型フィルムによって (ア)覆った後に,その離型フィルム上に,熱硬化性樹脂層が補強繊維によって補強された繊維強化樹脂層を積層することにより繊維強化樹脂管を製造する方法であって,製造される繊維強化樹脂管の内周面に直接接する離型フィルムの表面に,転写可能なマーキングを施すことを特徴とする繊維強化樹脂管の製造方法( 請求項2 ) 。」【】(2)無効理由1(新規性欠如)についてア甲第1号証に記載された発明上記(1)ア(ア)には,本発明は,ソフトボール用バットおよび野球用バットに関するものであることが記載されている。
上記(1)ア(ウ)には,当該バットは,直径の大きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部からなる管状アルミニウム製バットフレームと,当該管状バットフレーム内においてその両端が締まりばめされることにより衝撃部内に懸架される管状挿入部とから構成されており,懸架された挿入部の長さに沿って,衝撃部の内側と挿入部との間に間隙が存在し,この間隙が潤滑剤で満たされていることが記載されている。
前記挿入部及び前記フレームはいずれも管状(すなわち中空)であり,上記(1)ア(キ)に具体的数値で示されているように,管状フレームと挿入部との間の間隙は約0.007インチ(約0.18mm)と極めて薄いものであることから,断面で見れば,管状フレームと挿入部は層をなすものであり,両者の間に存在する潤滑剤も層状のものと解される。
上記した「締まりばめ」について,上記(1)ア(ク)には 「締まりばめ」は挿入部の端部を管 ,状フレームに接合させるための優れた手段ではあるが,その他に,溶接,接着剤,留め具などを利用することができると記載されている。
上記(1)ア(ケ)には「フレームおよび挿入部の材料として本実施例ではアルミニウムを使用しているが,当然のことながら,他の多くの材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる (While the present embodiment utilizes aluminum for the frame and 。
the insert, it should be understood that many other materials will perfrom equally wellwith the present invention. 」と記載され 「例えば,コストはやや高くなるが,優れた結果 ),をもたらす挿入材としてチタンを使用することができる (Forinstance,ataslightly 。
higher cost, titanium could be used as insert material with excellent results. 」と記載)され 「さらに,コストについてそれほど懸念する必要がなければ,チタン製のバットにチタ ,ンを挿入して,極めて優れた結果を実現することができる (Furthermore, where cost is less 。
a consideration, a titanium insert may be used within a titanium bat with outstandingresults. 」と記載され,その次に「当然のことながら,他の様々な金属,複合材料,プラス ), 。 チックおよびその他の材料を用いても 本発明によって同様の優れた効果を得ることができる(It should be understood that various other materials, composite materials, plastics,and other materials may likewise perform equally as well with the present invention. 」と )記載されている。
上記の摘記箇所では,まず,フレーム及び挿入部に対してアルミニウム以外の他の多くの材料を用いても良いことを記載し,次に,他の多くの材料の例として,挿入部にチタンを使用することを例示し,さらに,フレーム及び挿入部にチタンを使用することを例示した上で 「他 ,の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料」を用いてもよいことが記載されているのであるから,上記「他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料」を用いる対象を挿入部のみではなく,フレーム及び挿入部であると解するのが自然である。
したがって,上記(1)ア(コ)には,フレームと挿入部が同一の材料で形成されること,及び,アルミニウム以外の他の様々な材料を用いても同様の優れた効果が得られることが記載されていると解される。
また,上記他の様々な材料の中に含まれる「複合材料」とは「2種以上の素材を組み合せた材料。強度を高め軽量化を実現するなど,素材より優れた性質を持たせることができる。繊維強化プラスチック(FRP)の類。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」であり,甲第13号証「化学大事典」の1983頁「複合材料」の欄に記載されているように,広義の意味においては,鉄筋コンクリートなども「複合材料」であるといえるが,ソフトボール用バットおよび野球用バットの技術分野においてそのようなものをバットの材料として使用することは技術常識から想定し得ず,また,本件特許出願時において,繊維強化プラスチックはバットの材料として広く用いられている(必要ならば,甲第2号証及び甲第3号証を参照)ことから,甲第1号証における「複合材料」が繊維強化プラスチックの類を示していることは自明であるといえる。
以上のことから 上記(1)ア(ケ)には フレーム及び挿入部の材料として 繊維強化プラスチッ ,, ,クを用いることが記載されていると解することができる。
また,上記(1)ア(オ),(カ),(コ)などに,潤滑剤の例として「グリース」が記載されており,上記(1)ア(コ)には,潤滑剤として「テフロン(商標 」が例示されている。 )上記「グリース(grease 」は「潤滑剤の一種。液体潤滑剤に濃厚化剤を分散させた固体か )ら半固体状の潤滑剤。たとえば金属セッケンで濃厚化した石油 [マグローヒル科学技術用語 。
大辞典第3版 」を表す技術用語であり,固体状の材料を含むものであると解され,また,上 ]記「テフロン(商標 」には,固体状のものが含まれることは,本件特許の出願時においては )技術常識である。
さらに,上記(1)ア(シ)の「 請求項18 」には「少なくとも1つの挿入部(atleastone 【】insert 」との記載がなされている。 )以上のことから,甲第1号証には,次の発明が記載されていると認められる。
「直径の大きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部からなる繊維強化プラスチック製の管状フレームと,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合される少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部とから構成されるソフトボール用又は野球用バットであって,挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の約0.007インチの間隙にグリースやテフロン(商標)のような固体状潤滑剤の層を設けたソフトボール用又は野球用バット(以。」下 「甲第1号証記載の発明A」という ) , 。
イ本件発明1について本件発明1は 「バット本体がガラス繊維強化プラスチックやカーボン繊維強化プラスチッ ,ク等の繊維強化プラスチック素材で構成されている野球又はソフトボール用のFRP製バット であり前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリー 」,「レアー WBL 層を設けた ものであることから バット本体を構成する繊維強化プラスチッ ()」,ク素材は少なくとも2つの層から構成され,それら繊維強化プラスチック素材の層間に挟まれてウィークバウンダリーレアー(WBL)層が存在しているものと解される。
一方,甲第1号証記載の発明Aは 「ソフトボール用又は野球用バット」であって,繊維強 ,化プラスチック製の管状フレームと繊維強化プラスチック製の挿入部との間に固体状潤滑剤の層を設けたものであり,これら管状フレームと挿入部とが,上記した本件発明1の繊維強化プラスチック素材の2つの層に相当すると解され,甲第1号証記載の発明Aと本件発明1とは「バット本体がガラス繊維強化プラスチックやカーボン繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック素材で構成されている野球又はソフトボール用のFRP製バット」である点で共通, 。 しており 繊維強化プラスチック素材の層間に他の部材の層を設けている点でも共通しているなお,本件発明1における「ガラス繊維強化プラスチック」及び「カーボン繊維強化プラスチック」は 「繊維強化プラスチック」の例示にすぎず,また,これらはともに繊維強化プラ ,スチックとして,ごくありふれたものであることから,相違点としては扱わない。
次に,本件発明1の「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」について検討する。
本件発明1の「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」は「接着阻害層である」とされているが 「接着阻害層」にしてみても 「繊維強化プラスチック素材の層間」にあって,何と , ,何との接着を阻害するのかその記載だけでは必ずしも明確ではない。
そこで,本件特許明細書を参酌すると,その他 マンドレルにブレード 袋 状の強化繊維を被せて金型内に配置した後に マトリッ 「, () ,クス樹脂となるエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等を金型内に注入し硬化させるレジン・トランスファー・モールディング成形法(RTM成形法)においては,内層のブレードを被せた上に筒状のシリコンフィルムを1層被せ,さらに外層のブレードを被せることで,シリコンフィルムが離型性の効果を発揮するために接着阻害層であるWBL層が形成される(段落。」【0013 )】「本発明の接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層6に離型効果を有する素材として,例えばポリエチレン,ポリプロピレン,シリコン,テトラフルオロカーボン等からなる離型性フイルム状素材6Aを積層したり,巻着したり,筒状のものを被覆することにより形成することが出来るものである(段落【0023 ) 。」】「その他実施例としては,接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層6をシリコン樹脂系やフッ素樹脂系の離型剤を塗布乃至スプレーすることにより形成することも可能である(段落【0024 ) 。」】と記載されている。
この記載からして接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー WBL 層6 は離 ,「 ()」 ,「型性の効果を発揮する」もの 「離型効果を有する素材「離型剤」からなるものであると解 , 」,される。
ここで 「離型剤」とは「ワックスやシリコーンのような潤滑剤。鋳造品を鋳型から取り出 ,すときに付着しないように,鋳型の表面に塗っておくもの [マグローヒル科学技術用語大辞 。
典第3版を意味する用語であるので 当該 接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー ]」 ,「(WBL)層6」は,それ自体が他の素材(例えば,繊維強化プラスチック)との接着力が弱く,剥がれやすいものと解され,本件発明1においては,そのような「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層6」を繊維強化プラスチック素材の層間に設けることにより 「繊維強化 ,プラスチック素材」の層同士の接着を阻害しているものと解される。
一方,甲第1号証記載の発明Aは「挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の. () 」 約0 007インチの間隙にグリースやテフロン 商標 のような固体状潤滑剤の層を設けたものであり,上記「テフロン(商標(翻訳文においては「Teflon(商標 」と記載さ )」 )れ,原文では「TeflonTM」と記載されている )は 「イーアイデュポンドゥヌムー 。,ルアンドカンパニー(いわゆる,デュポン社 」の登録商標であるとともに,本件特許出 )願時,フッ素樹脂一般の呼称として広く知られている。
そして,当該「テフロン(商標 」は,摩擦係数が非常に小さく,潤滑性能を有し,離型効 )果を奏する,すなわち接着を阻害するものであることは自明であることから,甲第1号証記載の発明Aの「テフロン(商標)のような固形状潤滑剤の層」は,本件発明1の「接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層」に相当すると解される。
つまり,甲第1号証記載の発明Aの「挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の. () 」 約0 007インチの間隙にグリースやテフロン 商標 のような固形状潤滑剤の層を設けた点は,本件発明1の「前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けた」点と一致する。
以上のことから,甲第1号証記載の発明Aと本件発明1とは,「バット本体がガラス繊維強化プラスチックやカーボン繊維強化プラスック等の繊維強化プラスチック素材で構成されている野球又はソフトボール用のFRP製バットにおいて,前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けたことを特徴とする野球又はソフトボール用のFRP製バット 」。
である点で一致しており,相違するところはない。
よって,本件発明1は甲第1号証に記載された発明である。
ウ本件発明2について本件発明2は・・・ 本件発明1の発明特定事項全てを発明特定事項としており その他 前 , ,「記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が打球部に設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1に係る発明特定事項については,上記イで記載したとおり,甲第1号証記載の発明Aと相違する部分はない。
また,甲第1号証記載の発明Aにおいて,挿入部は,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合されるものであり,この「衝撃部」が,本件発明2の「打球部」に相当する。
そして,衝撃部に設けられた挿入部と管状フレームとの間の間隙に潤滑剤の層が設けられているのだから,本件発明2と甲第1号証記載の発明Aとは「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が打球部に設けられた」点でも一致している。
したがって 本件発明2と甲第1号証記載の発明Aとでは相違するところはなく 本件発明2 , ,は甲第1号証に記載された発明である。
エ本件発明3について本件発明3は・・・,本件発明1又は2の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に1層だけ設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1及び2に係る発明特定事項については,上記イ及びウで記載したとおり,甲第1号証記載の発明Aと相違する部分はない。
また,甲第1号証記載の発明Aは「少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部」を, 。 具備するものであって 挿入部を1つだけ管状フレーム内に挿入したバットを含むものであるさらに,甲第1号証記載の発明Aは,管状フレームと挿入部との間の間隙に潤滑剤の層を設けるものであり,この場合 「潤滑剤の層」は1層であるといえるので,本件発明3と甲第1 ,号証記載の発明Aとは「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に1層だけ設けられた」点でも一致している。
したがって 本件発明3と甲第1号証記載の発明Aとでは相違するところはなく 本件発明3 , ,は甲第1号証に記載された発明である。
オ本件発明4について本件発明4は・・・,本件発明1又は2の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に2層以上設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1及び2に係る発明特定事項については,上記イ及びウで記載したとおり,甲第1号証記載の発明Aと相違する部分はない。
甲第1号証記載の発明Aは「少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部」を具備するものであり,2以上の挿入部を設けたバットとすることを包含している。
挿入部を2以上設ける場合,2つ目以降の挿入部をどの部分にどのように設け,潤滑剤の層がどのように設けられるのかが,本件発明4と甲第1号証記載の発明Aとを対比判断する上で重要となるので,以下に検討する。
まず,挿入部の設け方について検討する。
甲第1号証には 「管状挿入部18の第1端部20は,衝撃部12に挿入され,さらに,直 ,径が減少するテーパ部14の内壁に接するように強く押し付けられ,これにより第一の締まりばめが形成される。管状挿入部18の第2端部22は,管状挿入部18が第1締まりばめで固定された時点で,衝撃部12の先端より内側に位置する。第2締まりばめは,挿入部の第2端部22の上部に位置する衝撃部の先端部分を曲げることにより形成される。この曲げられた部分が,管状フレーム11のうち直径が減少するヘッド部24を形成する(上記(1)ア(エ)を参 。」照)と記載されている。
この記載によれば,挿入部の一方の端部(第1端部20)は,衝撃部の一方に隣接したテーパ部に位置し,他方の端部(第2端部22)は衝撃部の他方に隣接したヘッド部に位置しており,挿入部は衝撃部の両端部で接合されていると解される。
また,甲第1号証には「挿入部18が衝撃部12内に板ばねのように取り付けられていることにより,ボールへのパワー伝導を増大させる作用を持つ反発が得られる(上記(1)ア(カ)を 。」参照)ことが記載されている。
この記載は,挿入部が衝撃部の両端部で接合されていることを前提に,挿入部が打撃時に板ばねとしての作用効果を発揮するとしているものと解される。
さらに,管状フレームの「衝撃部」とは,バットにおいてボールを当てて打撃力を伝達する部分を表す用語であると解される。
以上,挿入部が1つの場合,(1)ア(エ)の上記記載のように挿入部は衝撃部の両端部で接合されること,及び,(1)ア(カ)の上記記載のように挿入部が衝撃部内に板ばねのように取り付けられていることにより作用効果を発揮するものであること,さらには 「衝撃部」がボールを打 ,つ部分であって,実際の使用において衝撃部のどこにボールが当たるか分からないこと等を考慮すると 挿入部を2以上設ける場合 複数の挿入部のそれぞれが その両端部を 管状フレー , , ,,ムの衝撃部の両端に接合されるように,バットの中心軸に垂直な断面でみて,同心円を描くように層状に設けられるものと解するのが自然である(なぜならば,例えば,2以上の挿入部を設ける場合,衝撃部をバットの長手方向で複数に分割し,それぞれの部分において挿入部を両端で接合するように設けることも考えられるが,そのような場合,各分割部分の境界部は,挿入部の接合部となってしまい,上記(1)ア(カ)の作用効果を奏しない部分が衝撃部内に出来てしまうことになるので,そのような構造を採用するとは思えないからである。。)次に,潤滑剤の層の設け方について検討する。
複数の挿入部を設けた場合の潤滑剤の充填の仕方については,甲第1号証には明示的には何ら記載されていないのだから,複数の挿入部の間には潤滑剤を充填しないことも想定される得る。
実際,甲第1号証には「挿入部とフレームの独立した動きを可能にするため,それ自体が滑, 。 りやすくなっている挿入部およびバットフレームの材料も 同様の機能を果たすことができる実際には,結果として挿入部とバットフレームの独立した動きを可能にするように構造が構成されていれば,潤滑剤はすべて省略することができる(上記(1)ア(コ))と記載されており, 。」挿入部が1つの場合においても潤滑剤の層を省略することの記載がある。
しかしながら,それは,上記のように挿入部と管状フレームとの材料自体の滑りやすさにより,独立した動きが可能な場合であって,逆に,挿入部と管状フレーム自体が滑りやすい材料でない場合は,潤滑剤の層を設ける必要があることを意味していると解される。
また,複数の挿入部を設ける構造を採用し,挿入部がそれ自体滑りやすい材料でない場合においても,挿入部を複数設ける目的が,仮に,挿入部の層厚を単に厚くすることであるとした場合は,潤滑剤を充填する必要はないが,そのような目的であれば,1つの挿入部の層厚を厚くすることで足りるのだから,わざわざ,別部材とした複数の挿入部を挿入する必要もなければ,上記したような複数の挿入部それぞれの両端部を,管状フレームの衝撃部の両端で接合する構造とする必要はないことになるので,甲第1号証記載の発明Aにおいて,このような目的で複数の挿入部を設けるとは解せない。
甲第1号証記載の発明Aにおいて,挿入部を設ける目的は,上記(1)ア(カ)などに記載されているように,衝撃部と挿入部との間で相対的な独立した運動をさせて打球へのパワー伝導を向上させることにあることを考慮すれば,複数の挿入部を設ける構造を採用した際にも,挿入部自体滑りやすい材料でないものであるならば,目的とする打球へのパワー伝導作用をさらに向上させるべく,複数の挿入部間に潤滑剤の層を設けて各挿入部が衝撃部との間で相対的な独立した運動をできるようにすることは当然に想定され得ることと解される。
したがって,甲第1号証記載の発明Aが 「少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿 ,入部」を具備するものであり,2以上の挿入部を設けたバットとすることを包含している点,及び,甲第1号証記載の発明Aにおいて潤滑剤の層を設ける技術的意義等を考慮するならば,これら甲第1号証に記載された事項に触れた当業者は,その記載から複数の挿入部の間に潤滑剤の層を設けることを把握し得るものと認められる。
つまり,甲第1号証には,本願特許発明4の「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に2層以上設けられた」点は明示的に記載されていないものの,甲第1号証の記載内容を考慮すれば,記載されているに等しい事項であると解される。
したがって 本件発明4と甲第1号証記載の発明Aとでは相違するところはなく 本件発明4 , ,は甲第1号証に記載された発明である。
カ本件発明5について本件発明5は・・・,本件発明1,2,3又は4の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が離型効果を有する素材により構成された」点をその発明特定事項として含むものである。
甲第1号証記載の発明Aにおける「固体状潤滑剤」の具体例である「テフロン(商標 」が )離型効果を有する素材であることは上記イで記載したように自明である。
したがって 本件発明5と甲第1号証記載の発明Aとでは相違するところはなく 本件発明5 , ,は甲第1号証に記載された発明である。
キ本件発明6について本件発明6は・・・ 本件発明5の発明特定事項全てを発明特定事項としており その他 前 , ,「記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がフィルム状の材料を積層することにより形成された」点をその発明特定事項として含むものである。
上記した発明特定事項は「フィルム状の材料を積層する」の記載が 「フィルム状の材料」 ,を他の部材 繊維強化プラスチック素材の層 の上に重ねることを意味するのか またはフィ ( ) ,,「ルム状の材料」が,複数枚の層から構成されていることを意味するのかが,その記載からは必ずしも明確でない。
そこで,本件特許明細書を参酌すると以下のような記載がある。
【0010 「次に,接着阻害層であるWBL層を形成する方法としては,バットの成形方法 】にもよるが,例えばシート状のプリプレグをマンドレルに巻きつけた後に,金型に設置し,その筒状プリプレグの内部から圧力を加えて所望のバット形状に成形する内圧成形方法においては,前FRP層を形成するプリプレグの半分程度を巻き付けた後に,耐熱性のあるポリプロピレン,ポリエステル,ポリウレタン,シリコン,テトラフルオロカーボン等から適宜選択した合成樹脂製のフィルム状素材を重ねて巻き付けたり乃至は,これらの素材からなる筒状のフィルムを被覆しても良い 」。
【0014 「以上のように様々なFRP成形方法において,本発明を実施することが可能で 】あるが,接着阻害層であるWBL層の形成方法としては,フィルム状の材料を2枚以上重ねてFRP層の層間に積層もしくは埋設する方法が,簡便であり,効果が確実で,且つコストの点でも好ましい 」。
【0023 「本発明の接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層6に離型 】効果を有する素材として,例えばポリエチレン,ポリプロピレン,シリコン,テトラフルオロカーボン等からなる離型性フイルム状素材6Aを積層したり,巻着したり,筒状のものを被覆することにより形成することが出来るものである 」。
【0027 「なお,本発明においては,バット本体を構成するガラス繊維強化プラスチック 】やカーボン繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック素材の構成は,種々の組み合わせが可能であるが,本発明のFRP製バットにおける打球部の部位の積層事例を表2に示す 」 。
上記段落【0010】の記載から,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の形成方法として,FRP層を形成するプリプレグ上にフィルム状素材を巻き付けるか,筒状のフィルムで被覆することにより形成する方法が把握できる。
また,上記段落【0014】には「フィルム状の材料を2枚以上重ねて」との記載はあるものの 「FRP層の層間に積層もしくは埋設する方法」と記載されており,ウィークバウンダ ,リーレアー(WBL)層の設け方としてフィルム状の材料の「積層」と「埋設」が同列に記載されているので 「積層」自体がフィルム状の材料が2枚以上であることを意味するものでは ,ないと解される。
さらに,上記段落【0023】においても,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の設け方としてフィルム状素材の「積層「巻着「被覆」が同列に記載されており 「積層」が 」,」, ,「フィルム状素材」自体が2層以上であることを意味しているというよりは,むしろ,他の部材(FRP層)上に層として積み重なっていることを意味していると解される。
そして,上記段落【0027】に記載の「積層事例」は表2から複数の「フィルム状の材料」の「積層」ではなく,繊維強化プラスチックとフィルム状の材料(表2では 「PPフィ ,ルム」と記載されている)の積層配置のことであると把握できる。
以上のことを考慮すると,本件発明6の上記「フィルム状の材料を積層する」との記載は,フィルム状の材料を「2枚以上」積層するとの記載ではないことから,フィルム状の材料自体が複数枚(2枚以上)であることを意味するのではなく,対象となる他の部材(この場合は,繊維強化プラスチック素材の層であると解される)上にフィルム状の材料が積み重ねられていることを意味しているものと解釈するのが妥当である。
したがって,本願請求項6の上記発明特定事項は 「前記接着阻害層であるウィークバウン ,ダリーレアー(WBL)層が,繊維強化プラスチック素材の層の上に,フィルム状の材料を積() 」 。 層する 積み重ねる ことにより形成された ことを意味するものと解釈して以下に検討する「」 「。。 」, 上記フィルムは 薄皮薄膜 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版]を表す用語であり「フィルム状の材料」とは薄膜状を呈した材料であると解される。
また 「フィルム状」というだけでは必ずしも明らかではないものの,本件明細書の上記段 ,, (), ,, 落等に ウィークバウンダリーレアー WBL 層を フィルム状素材を巻着する あるいは巻き付ける等により形成することが記載されていることを考慮すると,本件発明6における,フィルム状の材料とは,固体状であって薄膜状を呈した材料を示している,あるいは,少なくとも含むものと解される。
甲第1号証記載の発明Aにおいてウィークバウンダリーレアー(BWL)層に相当するのは「グリースやテフロン(商標)のような固形状潤滑剤の層」であり,約0.007インチ(約0.18mm)の間隙に設けられるものであることから,間隙内において 「薄膜状」す ,なわち「フィルム状」であることは明らかである。
また,甲第1号証には「グリースは,挿入部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18の表面をグリースで覆うことにより,間隙26内に取り入れられる((1)ア(オ))との記載も 。」, ,「」 あり 上記のような極めて狭い間隙に挿入されることを考慮すれば 上記 固体状潤滑剤の層は,挿入前においても「フィルム状」の材料として挿入部の表面を覆う,すなわち,挿入部の表面に積層されることにより形成されるものを含むものと解される。
したがって 本件発明6と甲第1号証記載の発明Aとでは相違するところはなく 本件発明6 , ,は甲第1号証に記載された発明である。
ク本件発明7について本件発明7は・・・ 本件発明5の発明特定事項全てを発明特定事項としており その他 前 , ,「記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がシリコン樹脂系乃至はフッ素樹脂系の離型剤より形成された」点をその発明特定事項として含むものである。
前記イで記載したように,甲第1号証記載の発明Aの「テフロン(商標 」は,フッ素樹脂 )一般の呼称であり,また 「テフロン(商標 」が離型剤となることは自明であることから,本 ,)件発明7の上記の点は甲第1号証に記載された事項であるといえる。
したがって,本件発明7と甲第1号証記載の発明とでは相違するところはなく,本件発明7は甲第1号証に記載された発明である。
ケ無効理由1についてのまとめ,, , 以上のとおりであるから 本件発明1〜7は それぞれ甲第1号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しているから,本件発明1〜7に係る特許は,特許法第29条の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
(3)無効理由2(進歩性欠如)について, , 請求人の主張する無効理由2は 無効理由1と同様に甲第1号証を主な証拠方法としており上記(2)ケで結論したように,本件発明1〜7は,それぞれ甲第1号証に記載された発明であるのだから,本来ならば,無効理由2について検討するまでもない。
しかしながら,甲第1号証が,外国語で記載されたものであって,その翻訳文において,以下で述べる点において,当事者間に争いがある。
この点について,上記無効理由1では,被請求人の主張を採用せず,請求人の主張を採用して,本件発明1〜7について無効とすべきとの判断を行っている。
したがって,被請求人の主張が採用できると仮定した場合には,無効理由1が成り立たなくなり,当該審決の結論に影響を与えることとなる。
そこで,以下に示す被請求人の主張が採用できると仮定した上で,請求人の主張する無効理由2(進歩性欠如)が成り立つかを判断することは,当該審決の結論にとって重要なことであることから,以下に検討する。
ア甲第1号証に記載された発明・・・被請求人は,甲第1号証において「複合材料」が使用されることが記載されているのは挿入部だけであって,管状フレームに「複合材料」を使用することは記載されていないと主張している。
そこで,この主張を受け入れ,甲第1号証には管状フレームを「複合材料」で形成することが記載されていないと仮定して,甲第1号証に記載された発明を認定する。
その場合,甲第1号証には次の事項が記載されているといえる。
「直径の大きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部からなる管状フレームと,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合される少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部とから構成されるソフトボール用又は野球用バットであって,挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の約0.007インチの間隙にグリースやテフロン(商標)のような固体状潤滑剤の層を設けたソフトボール用又は野球用バット(以下 「甲第1号証記載の発 。」,明B」という )。
イ本件発明1について本件発明1と甲第1号証記載の発明Bとの対比は,上記前提による変更点以外は上記(2)イで記載したとおりであるから 両者は 本件発明1が バット本体の全部が繊維強化プラスチッ ,,,ク素材で構成されているのに対して,甲第1号証記載の発明Bは,バット本体を構成する管状フレームについて,繊維強化プラスチック素材で構成されていることの特定がない点でのみ相違していると認められる。
そこで,上記相違点について以下に検討する。
甲第1号証には,管状フレームを繊維強化プラスチックで形成することは明記されていないものの 管状フレームの材料として他の多くの材料を用いてもよいことは記載されている (1) , (ア(ケ)参照 。)また,甲第2号証には,複数層の繊維強化プラスチックの層でバット全体を形成したFRP製バットが開示されており(上記(1)イ(ア)参照 ,甲第3号証には,打球部に相当する外管パ )イプの内側に,補強用の内管パイプを装着した二重管式バットにおいて外管パイプ及び内管パイプの素材として繊維強化プラスチックを使用したソフトボール用バットが記載されている(上記(1)ウ(ウ)参照 。)本件発明の出願前において,野球又はソフトボール用のバットの素材として繊維強化プラスチックを使用することは周知・慣用であって,上記した各甲号証に記載されているように,複数層構造を採るバットにおいて,内外の層をともに繊維強化プラスチックの層として形成することも従来周知の技術であると解される。
なお,被請求人は・・・,管状フレーム11と挿入部18の間にすき間を構成する場合,打球時にそれぞれが単独で変形するため,管状フレーム11は強い耐久性が要求されるため,商品化されているこのタイプのバットでは,外側の管状フレームは金属製であるとの趣旨で反論しているが,上記甲第2号証や甲第3号証で例示されるように 「バット本体」の全体を繊維 ,強化プラスチックで形成したバットが周知であること考えれば,管状フレームに繊維強化プラスチックを用いることが強度の点から困難であるとする理由は見当たらない。
したがって これらの事項を勘案すれば 相違点に係る本件発明1の発明特定事項は 甲第1 , , ,号証記載の発明B及び周知技術に基づいて,当業者が想到容易な事項であると認められる。
よって,本件発明1は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,被請求人は答弁書,平成19年7月3日付け口頭審理陳述要領書及び平成19年7月10日付け上申書において,本件発明では 「 ウィークバウンダリーレアー(WBL)層』 ,『を含め『バット本体』は一体のものであって,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の外側の層と内側の層との間に間隙はない。もちろん,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が変形することにより,その外側の層と内側の層が相互に自由に運動するものでもない(答。」弁書第13頁第7〜11行記載を引用)と主張し,よって 「管状フレーム11と挿入部18 ,との間隙部26にあり,挿入部18が管状フレーム11の衝撃部12のたわみを囲むように独立して伸長するように 間隙部内で流動 変形する答弁書第12頁第28行〜第13頁第1 ,,」(行記載を引用 ような甲第1号証の 潤滑剤 は本件発明の ウィークバウンダリーレアー W )「」「 (BL)層」に該当しないとの趣旨の主張を再三にわたり行っているので,この点について付言する。
被請求人は「一体」をどのような意味として主張しているのか,上記各書類の主張内容からは,明確に把握できないが,一体とは「 1)一つのからだ。同一体 (2)一つになって分け ( 。
。。(),。 」 られない関係にあること 同類3 一つの様式 体裁 [株式会社岩波書店 広辞苑第五版], ,「」 などを意味する用語であることから 上記主張内容を考慮すると 被請求人が主張する 一体の意味は 「 バット本体を構成する部材が)一つになって分けられない関係にあること」であ ,(ると解される。
しかしながら,本件発明1において「一体」であるとの記載による限定はなく,他の本件発明2〜7においても同様である。
また,本件特許明細書を参酌しても 「一体」との文言は一切記載されていない。 ,そこで,本件特許明細書の記載を詳細に検討すると,本件特許明細書にはバットの成形方法として 例えば シート状のプリプレグをマンドレルに巻きつけた上に ウィークバウンダリー ,, ,レアー(WBL)層となるフィルム状素材を巻き付け,更にその上にプリプレグを巻きつけてから内圧成形することで,FRP層とFRP層の間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を形成する方法(段落【0010【0011】参照)などが記載されて 】,いる。
これらの方法で形成されたバットは,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の(長手方向)両端部より長手方向外側においては,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が間に介在していないため,FRP層が一つになっていると考えられるので,このバット本体を構成するFRP層に限定して考えれば,バットの形成方法を考慮することによって 「一体」である ,と捉えることは一応,可能であるといえる。
ただし,このような限定においては,本件発明1と甲第1号証記載の発明Bとが相違しているとは認められない。
なぜならば,甲第1号証記載のバットは管状フレームと挿入部とを別部材として成形するものの,最終的なバットとしては,別部材であった挿入部の両端部が管状フレームの衝撃部において締まりばめ,溶接,接着剤,留め具等により接合されるため,管状フレームと挿入部とは「一体 ,つまり,一つになって分けられない関係となっているからである。 」しかも 被請求人の上記主張はウィークバウンダリーレアー WBL 層 を含め バッ , ,「 () 」「ト本体 は一体のものであるというものであって 上記のように ウィークバウンダリーレアー 」 ,「(WBL)層」を除いたFRP層が一体であることを主張しているものではない。
それでは,なぜ 「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」も含めて「一体」といえる ,のかが問題となるが,その点に関し,被請求人は確たる証拠の提示や論理的な説明を何らしていない。
そもそも 「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」は離型効果を有する素材からなる ,もの 本件発明5 であり接着阻害層 であることからウィークバウンダリーレアー W (),「」,「 (BL)層」とそれと接している繊維強化プラスチック層(FRP層)とは接着されておらず,すなわち一体となっていないと解することの方が理にかなっている。
さらに言えば,本件発明は,バットにおける反発性能と耐久性を両立させることを目的としており(段落【0005,繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバ 】)ウンダリーレアー(WBL)層を設けることにより「従来のFRP製バットと比べて,偏平剛性を小さくして,ボールの反発性能を高めるトランポリン効果をより大きくすると共に,耐久性に係る偏平強度の低下を防止することにより耐久性に優れた高性能のFRP製バットが提供出来るものである(段落【0006 )という効果を奏するものとされている。 。」】「」 ,「」 , ここでいう 偏平剛性 はバットのつぶれ難さを表すものでありトランポリン効果 は変形の復元を利用してボールを飛ばす効果のことであって,肉厚が薄いほど効果が大きくなるものであり 「偏平強度」は,荷重に対する破壊し難さを表すものである。 ,上記効果や,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が接着阻害層であって,離型効果を有するものであることを勘案すると,繊維強化プラスチック素材の層とウィークバウンダリーレアー(WBL)層とが「一体」であるとは解し得ない。
もし,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層と繊維強化プラスチック素材からなるバット本体とが「一体」であるならば,当該ウィークバウンダリーレアー(WBL)層は 「接着 ,阻害層である」点,あるいは「離型効果を有する素材 (本件発明5)である点等にかかわら 」ず,周囲にある繊維強化プラスチック素材と一つになって運動することとなり,それでは,わざわざウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設ける技術的な意味がなく,上記のような作用効果を奏するものとも認められない。
したがって,上記した被請求人の主張は,本件特許明細書の記載及び当業者の技術常識を考慮したとしても,その根拠が見出せず,技術的に理解できないものであって,本件特許明細書に基づかない主張であるといえ,採用することができないものである。
ウ本件発明2について本件発明2は・・・本件発明1の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が打球部に設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1に係る発明特定事項については,上記イで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)ウで記載したとおりである。
したがって,本件発明2は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ本件発明3について本件発明3は・・・本件発明1又は2の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に1層だけ設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1及び2に係る発明特定事項については,上記イ及びウで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)エで記載したとおりである。
したがって,本件発明3は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ本件発明4について本件発明4は・・・本件発明1又は2の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に2層以上設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1及び2に係る発明特定事項については,上記イ及びウで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)オで記載したとおりである。
したがって,本件発明4は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ本件発明5について本件発明5は・・・,本件発明1,2,3又は4の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が離型効果を有する素材により構成された」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明1〜4の発明特定事項については,上記イ〜オで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)カで記載したとおりである。
したがって,本件発明5は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ本件発明6について本件発明6は・・・本件発明5の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がフィルム状の材料を積層することにより形成された」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明5の発明特定事項については,上記カで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)キで記載したとおりである。
したがって,本件発明6は,甲第1号証記載の発明B及び周知用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお ・・・被請求人は,甲第1号証には,潤滑剤として 「フィルム状の材料」は記載され , ,ておらず,本件発明6の「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がフィルム状の材料を積層することにより形成された」点については,甲第1号証には記載されていないとの主旨で主張している。
しかしながら,本件特許の出願時において,プラスチックなど特定の素材と接着しないか接着力が極めて弱いことを利用して,特定の素材が他の部材と接着しないように間に介在させる離型剤を,シート状やテープ状のフィルムとして形成したものは,甲第7号証,甲第9号証及び甲第10号証などにて例示されるように,周知・慣用技術である。
また,甲第1号証記載の発明Bにおいて 「潤滑剤」は,挿入部と管状フレームの独立した ,動きを可能にするため(上記(1)ア(コ) ,つまり,接着してしまわないように両者間に介在さ )せるものであることから,上記の周知・慣用技術である,シート状またはテープ状の離型フィルムを採用することは,当業者にとって容易に想到し得ることである。
よって,仮に,被請求人の上記主張を採用したとしても,本件発明6は,甲第1号証記載の発明B及び周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,結論に変わりはない。
ク本件発明7について本件発明7は・・・本件発明5の発明特定事項全てを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層がシリコン樹脂系乃至はフッ素樹脂系の離型剤より形成された」点をその発明特定事項として含むものである。
本件発明5の発明特定事項については,上記カで記載したとおりである。
上記「その他」の発明特定事項については,上記(2)クで記載したとおりである。
したがって,本件発明7は,甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ケ無効理由2についてのまとめ以上のとおりであるから,本件発明1〜7は,それぞれ甲第1号証記載の発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1〜7に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
第3原告の審決取消事由の要点1取消事由1(引用刊行物(甲第1号証)記載の発明の認定の誤り)(1)審決は,甲第1号証には 「直径の大きい衝撃部,中間テーパ部および小径 ,の握り部からなる繊維強化プラスチック製の管状フレームと,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合される少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部とから構成されるソフトボール用又は野球用バットであって,挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の約0.007インチの間隙にグリースやテフ() 。」 ロン 商標 のような固体状潤滑剤の層を設けたソフトボール用又は野球用バットの発明(審決のいう「甲第1号証記載の発明A 。以下,単に「発明A」という ) 」 。
が記載されていると認定し その上で 発明Aと本件発明1を対比して 本件発明1 ,, ,は発明Aとして甲第1号証に記載されていると判断した。
しかしながら,以下のとおり,審決の発明Aの認定は誤りであるから,これを前提とする審決の上記判断は誤りである。
(2)管状フレームの素材についてア審決は,甲第1号証に 「フレームおよび挿入部の材料として本実施例では ,アルミニウムを使用しているが,当然のことながら,他の多くの材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる。例えば,コストはやや高くなるが,優れた結果をもたらす挿入材としてチタンを使用することができる。チタンは衝撃応答性が高いという特性を持つことから,チタンの挿入は良い効果をもたらす。さらに,挿入部が中空管であるため,チタンを利用する場合の切削加工および冷間加工の問題も最小限にとどめることができる。チタンの挿入により,優れた衝撃応答性を持つとともに,中実のチタン製バットと比べて大幅のコストの低いバットを実現することができる。さらに,コストについてそれほど懸念する必要がなければ,チタン製のバットにチタンを挿入して,極めて優れた結果を実現することができる。当然のことながら,他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる 」との記載があると認定した(上記第2の3の(1)のアの(ケ) 。 。 )しかしながら,当該部分に係る甲第1号証の記載の原文は,次のとおりである。
While the present embodiment utilizes aluminum for the frame and the insert, it should 「be understood that many other materials will perform equally well with the presentinvention.For instance, at a slightly higher cost, titanium could be used as insertmaterial with excellent results.A titanium insert is advantageous owing to itsexcellent impact response characteristics. In addition, because the insert is a hollowtube, the machining and cold working problems associated with titanium are minimized.The titanium insert provides a bat with an superb impact response, but at a cost vastlyreduced from that of a solid titanium bat.Furthermore, where cost is less a consideration, a titanium insert may be used within atitanium bat with outstanding results.It should be understood that various othermetals, composite materials, plastics, and other materials may likewise perform equally(第4欄61行〜第5欄10行) as well with the present invention.」そして,この記載は,次のように翻訳されるべきである。
「本実施例ではフレームと挿入部にアルミニウムを用いているけれども,多くの他の材料も本発明と等しく良い効果をもたらすことが理解されなければならない。
たとえば,すこしコストが高くなるが,チタンは素晴らしい効果をもたらす挿入部として用いることができる。チタンの挿入部は素晴らしい衝撃応答性という特性によって有利である。加えて,挿入部は中空管なので,チタンに関連する工作加工,冷間加工の問題を最小にする。チタンの挿入部は中実のチタン製バットよりはるかに低減されたコストで優れた衝撃応答性を提供する。
さらに,コストに払う考慮が少ないときは,チタンの挿入部をチタンのバットの内部に用いて顕著な結果をあげることができる。様々な他の金属,複合材料,プラスチック,その他の材料も同様に,本発明と等しい良い効果を発揮することが理解されなければならない 」。
上記記載のうち 「本実施例ではフレームと挿入部にアルミニウムを用いている ,けれども,多くの他の材料も本発明と等しく良い効果をもたらすことが理解されなければならない 」という部分の「多くの他の材料」は,フレームおよび挿入部の 。
双方の材料について述べている可能性がある。
しかしながら,これに続く「たとえば,少しコストが高くなるが ・・・優れた ,衝撃応答性を提供する 」という部分は,挿入部にチタンが使用できることを開示 。
した上,さらに「中実のチタン製バット ,すなわち,バット全体をチタンで製造 」し得ることも明らかにしている。
次いで,段落を改めた「さらに,コストに払う考慮が少ないときは,チタンの挿入部をチタンのバットの内部に用いて顕著な結果をあげることができる。様々な他の金属,複合材料,プラスチック,その他の材料も同様に,本発明と等しい良い効果を発揮することが理解されなければならない 」との部分では,前半(第1のセ 。
ンテンス)で,チタン製の管状フレームの内部に挿入材としてチタンを挿入するこ,,() ,「,, とを述べ その上で 後半 第2のセンテンス で様々な他の金属 複合材料プラスチック,その他の材料」も 「本発明」と同様の効果を奏する旨が記載され ,ているものである。
そうすると,管状フレームに言及しているのは,段落を改めて「さらに」で始まる部分の前半だけであって,その他の説明は専ら挿入部の材料に関する記述であるから,段落を改めて「さらに」で始まる部分では,挿入材の材料として「様々な他の金属,複合材料,プラスチック,その他の材料」が使用できることを述べていると考えるべきである。
イまた,甲第1号証に開示されたバットの管状フレームの素材は,甲第1号証の記載全体から判断されなければならない。
(ア)まず 甲第1号証の 要約 欄 訳文1頁下から4行〜2頁4行 には管 ,「」 ( ),「状アルミニウム製バット」と記載されており,アルミニウム製バットが発明Aの対象であることを明らかにしている。
(イ)次に 「発明の背景および概要」欄には 「ソフトボール用(および野球用) , ,の管状金属バットは,当技術分野で広く知られている。よく知られる例としては,。,, 管状アルミニウムバットが挙げられる このバットには 一般に衝撃応答性が高いすなわち打球に対し効率的にパワーを伝えるという利点がある(訳文4頁8。」〜10行バットの衝撃応答性の最適化は 重要な必要性である訳文4頁15 ),「 ,。」(〜16行「アルミニウムバットの設計は,弾性たわみに塑性変形が伴わないよう ),。」(), にするという条件により制約される訳文4頁20〜21行 との記載があって発明が解決しようとする課題を明らかにし,次いで,チタンに触れて,材料自体のコストが高いことと,加工の困難性を指摘し(訳文4頁27〜31行 ,進んで, )挿入部を用いたバットの先行技術である米国特許第3,963,239号に係る発明(Fujii の出願に係るもの。以下「フジイ特許発明」という )の存在とその欠 。
点に言及した上(訳文4頁下から9〜2行「先行技術の欠点を踏まえ」た,改良 ),されたバットの提供が発明Aの目的である旨が記載されている(訳文4頁末行〜5頁1行 。)すなわち,発明Aの目的に至る背景説明の記載から見れば,発明Aの対象であるバットはアルミニウム製であり,仮にアルミニウム製に限られないとしても,それ以外ではチタン製であり,さらに広く考えたとしても,発明Aの対象は,せいぜい金属製バットに限られるものである。
(ウ)さらに,特許請求の範囲の請求項9〜13は,管状フレーム又は挿入部の材料について規定しているが 上記各請求項の記載は以下のとおりである 訳文9頁9 , (〜13行 。)「 請求項9】前記挿入部がアルミニウムで作られた請求項8のバット。 【【請求項10】前記管状フレームがアルミニウムで作られた請求項8のバット。
【請求項11】前記挿入部がチタンで作られた請求項8のバット。
【請求項12】前記挿入部が複合材料で作られた請求項8のバット。
【請求項13】前記挿入部がスチールで作られた請求項8のバット 」。
上記のとおり 「複合材料」は 「挿入部」の材料として,請求項12が規定して ,,いるだけであって,管状フレームの材料が「複合材料」であるバットを規定した請求項は存在しない。
, 「」 ウ以上によると 審決が引用した甲第1号証の上記アの記載に上記イの 要約の記載 「発明の背景及び概要」の記載,特許請求の範囲の記載を併せ読めば,甲 ,第1号証が対象とするバットの管状フレームの素材はアルミニウム等の金属であって,繊維強化プラスチック等の複合材料ではあり得ないから,審決が甲第1号証記載のバットの発明における管状フレームの素材として繊維強化プラスチックを認定したのは誤りである。
(3)潤滑剤についてア審決は,甲第1号証に 「図2で最もよくわかるが,間隙26は,グリース ,のような潤滑剤で満たされている。グリースは,挿入部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18の表面をグリースで覆うことにより,間隙26内に取り入れられる。挿入部18が第1締まりばめと第2締まりばめとの間で固定されると,潤滑剤で満たされた間隙26は,第1締まりばめおよび第2締まりばめによって効果的に密閉される 」との記載があると認定した(上記第2の3の(1)のアの(オ) 。 。 )しかるところ,この認定に係る記載のうち 「グリースは,挿入部を管状フレー ,ム11に挿入する前に挿入部18の表面をグリースで覆うことにより,間隙26内」 ,。 に取り入れられる との部分に係る甲第1号証の記載の原文は 次のとおりであるThe grease is brought within the gap 26 by coating the insert 18 with grease before the 「(第3欄4〜6行)insert is inserted into the tubular frame 11.」そして,この部分の記載は 「潤滑油は,挿入部を管状フレーム11に挿入する ,前に挿入部18に塗布することにより,間隙26内に持ち込まれる」と翻訳されるべきである 「coating」との語は,審決のように「覆う」と翻訳すると膜の形成を 。
暗示するが,端的に「塗布する」と翻訳すべきである。
, ,,, また 審決の認定に係る上記記載部分に関して 注目すべきであるのは 第1に「図2で最もよくわかるが,間隙26は,グリースのような潤滑剤で満たされている」との記載である。この部分に係る甲第1号証の記載の原文は,次のとおりである。
(第3「As best seen in FIG. 2, the gap 26 is filled with a lubricant, such as grease.」欄3〜4行)「fill」は,たとえば,函を本で満たす,というような場合にも,コップを水で満たすというような場合にも用いられ,間隙を本のような固体で満たすこともありえないことではないが,間隙のようなごく限られた狭い空間いっぱいに存在するものが固体状のものであれば,間隙は存在しなくなり,フジイ特許発明と同じ二重管構造となってしまうから,発明Aの趣旨に反することになる。また,製造過程を考慮すれば,あらかじめ設けている細く狭い間隙を固体状のもので満たすことは実際問題として不可能であるから,ここでは,液状のもので間隙を満たすことが表現されていると理解すべきである。
さらに重要なのは潤滑剤で満たされた間隙26は 第1締まりばめおよび第2 ,「 ,締まりばめによって効果的に密閉される」との記載であり,この部分に係る甲第1号証の原文は 「the lubricant-filled gap 26 is effectively sealed by the first ,and second interference fits. (第3欄7〜9行)というものである。 」,「」 間隙を満たしている物質が液体又は流動性のある物質でなければ密閉される(sealed)という表現はしない。
これらの表現からみて,審決が引用する上記記載は,グリース又は潤滑剤が液体又は流動性をもつ物質であることを明確に示すものということができる。
イ審決は,甲第1号証に 「グリースにより,衝撃部12と挿入部18との間 ,で相対運動が可能になるため,挿入部は,衝撃部12のたわみを囲むように独立して伸長することができる。グリースが間隙内で密閉されていることにより,もうひとつの利点も生じる。すなわち,ボールとの衝撃の発生が早すぎて,グリースが相当に流れ出さないという点である。むしろグリースは,流体静力学的に,衝撃部の壁を支持し,これを挿入部から遠ざける働きをする。この場合,衝撃部と挿入部との間でしっかりしたグリースの層が維持され,よって衝撃部に対応した挿入部の運動が促進される。一方,衝撃が加わる間にグリースが移動した場合,衝撃の力は衝撃部12の拡大区域に分配される。この衝撃応力の分配により,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくいことから,衝撃部の壁は薄いもので足りる 」との記 。
載があると認定した(上記第2の3の(1)のアの(カ) 。)しかしながら,当該部分に係る甲第1号証の記載の原文は,次のとおりである。
「The grease permits relative movement between the impact portion 12 and the insert 18,so that the insert can independently stretch around the deflection of the impact portion12.The sealed condition of the grease within the gap offers another advantage. Theimpact with a ball may occur so rapidly that the grease cannot appreciably flow. Rather,the grease hydrostatically supports the wall of the impact portion away from the insert.In this case, a substantial layer of grease is maintained between the impact portion andthe insert, facilitating the movement of the insert relative to the impact portion. Inanother aspect, any flow of the grease that does occur during impact serves to distributethe force of impact over an expanded area of the impact portion 12. The distribution ofthe impact stress permits a thinner-walled impact portion because high stress第3欄48〜65 concentrations causing plastic deformation are not likely to occur.」 (行)そして,これを正確に翻訳すれば,次のとおりである。
「, ,, グリースは 衝撃部12と挿入部18との間の相対運動を許すので 挿入部は衝撃部12のたわみの周りを独立して伸びることができる。間隙内で密閉されてい, 。 , るグリースは もうひとつの利点を提供する ボールとの衝撃がきわめて早いので目立つほど流動しない。むしろ,グリースは静水圧的に,衝撃部の壁を支持し,これを挿入部から離すような働きをする。この場合,衝撃部と挿入部との間でグリースの実質的な層が維持され,よって,衝撃部との相対的な挿入部の運動が促進される。一方,衝撃が加わる間におけるグリースの流動は,衝撃の力を衝撃部12の拡大区域に分配する。この衝撃応力の分配により,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくいことから,衝撃部の壁を薄くできる 。」ここで注目すべきことは,グリースが流動性をもつことが繰り返し記載されていることである。審決の上記認定は,たとえば 「衝撃が加わる間におけるグリース ,の流動 (any flow of the grease that does occur during impact)と翻訳すべきと 」ころを 「衝撃が加わる間にグリースが移動し」と翻訳し,グリースが流動性をも ,つことを不明確にしている。
ウ以上のとおり,甲第1号証におけるグリース又は潤滑剤が流動性のある物質であることは明白であって,審決のように,管状フレームと挿入部との間に「固体状潤滑剤」の層を設けたものが記載されている,と認定することはできないから,発明Aにつき 「挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の・・・間隙 ,に・・・個体状潤滑剤の層を設けた」とした審決の認定は誤りである。
2取消事由2(本件発明1と発明Aの一致点の認定の誤り)(1)審決は 「発明Aは『挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の ,約0.007インチの間隙にグリースやテフロン(商標)のような固体状潤滑剤の』,『()』 ,, 層を設けた ものであり ・・・ テフロン 商標は 摩擦係数が非常に小さく潤滑性能を有し,離型効果を奏する,すなわち接着を阻害するものであることは自明であることから,甲第1号証記載の発明Aの『テフロン(商標)のような固形状潤滑剤の層 は 本件発明1の 接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー W 』 ,『 (BL)層』に相当する」と認定した上,この認定を前提として,本件発明1と発明Aとが 「バット本体がガラス繊維強化プラスチックやカーボン繊維強化プラスッ ,ク等の繊維強化プラスチック素材で構成されている野球又はソフトボール用のFRP製バットにおいて,前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けたことを特徴とする野球又はソフトボール用のFRP製バット 」である点で一致すると認定した。 。
(2)しかしながら,上記1のとおり,発明Aにおいて,管状フレームと挿入部と,。 の間の間隙を満たすグリース等の潤滑剤は流動性のものであって 固体状ではないまた,甲第1号証記載のバットは管状フレームと挿入部に間隙を有することを特徴とし,打球による衝撃を受けた場合,管状フレームと挿入部とが相対的に独立した運動をすることにより,反発性能(トランポリン効果)を向上させることを目的としているから,発明Aにおいては管状フレームと挿入部の接着はあり得ないのであり,発明Aにおいて,潤滑剤で管状フレームと挿入部との間の間隙を満たしていることは,接着阻害と関係がない。
したがって,上記(1)における,審決の発明Aの認定部分は誤りであり,この認定を前提とする上記一致点の認定も誤りである。
3取消事由3(本件発明1と発明Aの相違点の看過)(1)発明Aと本件発明1は,以下の点で相違するにもかかわらず,審決はこのような相違点を看過したものである。
(2)発明Aにおいては,管状フレームと間隙によって分離された挿入部が,第1端部および第2端部において管状フレームと係合または固定され,その結果,板ばねと同様の特徴をもつ機械的構造を有している。
しかしながら,本件発明1の内側FRP部分は,外側FRP部分と間隙によって分離され,その両端において外側FRP部分と接合されるという構成を有していないため,本件発明1はこのような板ばね又は板ばねと同様の構造を有していない点において発明Aと相違し,これに伴って,本件発明1は,発明Aにおける「板ばねによるボールへのパワー伝導を増大させる作用を持つ反発が得られるような効果」をまったく利用していない点においても発明Aと相違している。
(3)また,発明Aにおいては,管状フレームと挿入部がバットによる衝撃を受けた場合に独立して径方向に移動するが,本件発明1においては,外側のFRPの層と内側のFRPの層は横方向にずれることはあっても,径方向に相対的に独立して移動するわけではないから,本件発明1と発明Aはバットから打球に伝導するパワーを増大させる機構,作用をまったく異にするものである。
(4)審決は,以上のような相違点を看過して,本件発明1と発明Aが同一であると判断したものであり,審決の判断は誤りである。
4取消事由4(本件発明2〜7の新規性についての判断の誤り)審決は,本件発明1に係る取消事由1〜3主張の誤りを前提として,本件発明2〜7の新規性について判断したものであるから,これらの判断も誤りである。これに加えて,本件発明2,4に対する判断については,以下のとおり,固有の誤りがある。
(1)本件発明2について本件発明2は 本件発明1の発明特定事項すべてを発明特定事項とし その他 前 , ,「記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が打球部に設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
甲第1号証記載の発明においては,挿入部は,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合されているものであるが,本件発明2のFRPの層と層は,接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層の両端において接合されてい,「」「」 るものではないから 甲第1号証記載の発明の 衝撃部 と本件発明2の 打球部は相違しており,この点においても,本件発明2は甲第1号証記載の発明と相違している。
(2)本件発明4について本件発明4は,本件発明1又は2の発明特定事項すべてを発明特定事項としており,その他「前記接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層が繊維強化プラスチック素材の層間に2層以上設けられた」点をその発明特定事項として含むものである。
審決は,甲第1号証の請求項18に「少なくとも1つの挿入部」との文言があることを理由として,甲第1号証記載の発明に,2つ以上の挿入部を設けたバットが含まれるとし,本件発明4の新規性を否定している。
しかしながら,甲第1号証には,上記請求項18のほか,2つ以上の挿入部を設けたバットについていかなる説明もなく,仮に,第1の挿入部の内部に第2の挿入部を挿入するものとしても,2つの挿入部の間に間隙があるか否か,間隙があるとすれば,それを潤滑剤で満たすのかどうかが全く明らかではない。したがって,審決が,甲第1号証の記載から「複数の挿入部の間に潤滑剤の層を設けることを把握しうるものと認められる 」とした認定は,根拠を欠くものであって,そのような 。
認定に基づいて,本件発明4の新規性を否定した判断は誤りである。
5取消事由5(進歩性についての判断の誤り)(1)審決は 本件発明1〜7に係る進歩性の判断に際して 甲第1号証には直 , ,,「径の大きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部からなる管状フレームと,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合される少なくとも1つの繊維強化プラスチック製の挿入部とから構成されるソフトボール用又は野球用バットであって,挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面との間の約0.007インチの間隙にグリースやテフロン(商標)のような固体状潤滑剤の層を設けたソフトボール用又は野球用バット 」の発明(審決のいう「甲第1号証記載の発明B 。以下,単 。 」に「発明B」という )が記載されていると認定しているが,これは,管状フレー 。
ムを「繊維強化プラスチック製」とするという特定がない点を除けば,発明Aと同じである。
,, 「」 したがって 上記1(3)と同様 管状フレームと挿入部との間に 固体状潤滑剤の層を設けたものが記載されている,との審決の上記認定は誤りである。
(2)審決は,甲第2,第3号証を引用して,複数層構造のバットにおいて,内外の層をともに繊維強化プラスチックの層として形成することは「従来周知の技術である」と認定し,本件発明1には進歩性がないと判断した。
しかしながら,本件発明1は,繊維強化プラスチック又はその二重管構造では望ましい反発力と耐久性をもつバットは製造できないという欠点を克服するために,接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を介したFRP層で形成されたバットを開発したものであり,従来技術とはその発想において異なっているものであるから,複数層構造のバットにおいて,内外の層をともに繊維強化プラスチックの層として形成することが「従来周知の技術である」からといって,当業者が本件発明1を容易に想到できるものではない。
また,本件発明1は,金属バットのもつ欠点をいかに克服するかを発明の出発点とする甲第1号証記載の発明(発明A,B)とも発想が異なるため,本件発明1に「間隙」や「潤滑剤」といった発明A,Bに係る構成が入り込んだり,結びついたりする余地はない。
したがって,審決は本件発明1の進歩性に関する判断を誤ったものであり,ひいて,直接又は間接に請求項1を引用する請求項2〜7に係る本件発明2〜7の進歩性に関する判断も誤ったものである。
(3)さらに,審決は,発明Bでは管状フレームと挿入部との間に間隙があるのに対し,本件発明1においては一体であるとの主張について 「一体」とはひとつに ,なって分けられないことをいうと定義した上で,本件明細書には「一体」である旨の記載がないという理由で,この反論を斥けている。
しかしながら,本件明細書の実施例を見れば,本件発明1〜7に係るバットが一体でしか製造し得ないことは明らかであり,FRPの層やWBLの層の間に間隙を, 。 形成するバットを製造するような技術については 本件明細書に記載も示唆もないしたがって,審決の上記判断は誤りである。
第4被告の反論の要点1取消事由1(引用刊行物(甲第1号証)記載の発明の認定の誤り)に対して(1)原告は,甲第1号証中 「複合材料」を素材として用いることが記載されて ,いるのは挿入部についてだけであり,甲第1号証の記載全体から見ても,同号証の記載が対象とするバットの管状フレームの素材はアルミニウム等の金属であるから,同号証には,繊維強化プラスチック製の管状フレームから構成されるバットの発明が記載されているとの審決の認定は誤りである旨主張する。
また,原告は,甲第1号証におけるグリースないし潤滑剤が流動性のある物質であることは明白であるから,甲第1号証に管状フレームと挿入部との間に「固体状潤滑剤」の層を設けたものが記載されているとの審決の認定は誤りであると主張する。
しかしながら,以下のとおり,原告の主張はいずれも誤りであり,審決による発明Aの認定に誤りはない。
(2)管状フレームの素材についてア原文の翻訳,,, , 原告は 甲第1号証につき 新たな翻訳を示すが 審決の翻訳と比較してみても単に言い回しが異なるだけであり,実質的な違いはない。
そして 「当然のことながら,他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよび ,, 。」 その他の材料を用いても 本発明によって同様の優れた効果を得ることができる(原告の新たな翻訳によれば「様々な他の金属,複合材料,プラスチック,その他の材料も同様に,本発明と等しい良い効果を発揮することが理解されなければならない)との記載における「本発明」が,管状フレームと挿入部からなるものであ 。」る以上,甲第1号証には,管状フレームと挿入部を「他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料 (原告の翻訳によれば「様々な他の金属,複合 」材料,プラスチック,その他の材料 )で製作することが当然に記載されていると 」解されるから,甲第1号証には,挿入部のみならず管状フレームを「複合材料」で形成することが記載されていることは明らかである。
イ甲第1号証の記載全体について甲第1号証の請求項1〜8は,バットの素材に何ら言及していない。これは,甲第1号証に記載されたバットはその素材に特徴を有するものではないからであり,甲第1号証記載のバットの素材がアルミニウム等の金属に限定されるとの原告の主張には根拠がない。
むしろ,明細書の記載全体をみれば,甲第1号証記載のバットの特徴は,管状フレームと挿入部との間に潤滑剤層を設けることでトランポリン効果により反発力を強化する点にあり,管状フレームの材質に特徴を有するものではないことが明らかである。
そして,本件特許出願前において,バット本体を繊維強化プラスチックの積層体で構成することは 甲第2 第3 第24号証 183頁図1第28号証 68 ,,,(),(頁図1)などから明らかなように,技術常識の一つであったのである。
ウ以上によると,甲第1号証には複合材料の管状フレームによって構成されるバットが記載されているというべきであり,原告の主張は誤りである。
(3)潤滑剤についてア原告は,甲第1号証には,グリース又は潤滑剤が液体又は流動性をもつ物質であることが記載されているから 甲第1号証に管状フレームと挿入部との間に 固 , 「体状潤滑剤」の層を設けたものが記載されているとの審決の認定は誤りである旨主張する。
しかしながら,本件発明のウィークバウンダリーレアー(WBL)層は液体又は流動性をもつ物質で構成されているものを含むものである。
すなわち,本件発明の出願過程において,特許庁審査官から「 ウィークバウン 『ダリーレアー(WBL)層』は一般的な技術用語でないのでどのような層なのか不明である 」との明確性要件違反を理由とする拒絶理由が通知されたのに対し,出 。
願人である原告は,平成15年7月9日提出の意見書(乙第4号証)において,本件発明1〜7にいう「ウィークバウンダリーレアー層」とは,日本接着協会が定義するところの「金属表面を覆う工作油,ナイロン樹脂表面の水,成形加工されたプラスチック表面の離型剤など,被着体表面に存在し,目的とする接着強さを上回る機械的強度を持たない層 (乙第5号証)を意味するとし,また 「このことは,被 」 ,着体表面と被着体表面の接触部の接着強度が阻害され,本来の接着力が発揮できない状況を説明するものであります 」と説明しているから,ウィークバウンダリー 。
レアー(WBL)層は工作油や水などの液体で構成されるものを含むものであると,, () 解されるのであり 本件明細書においても ウィークバウンダリーレアー WBL層から液状ないし流動性をもつ物質を排除するような記載は一切見受けられない。
そうすると,甲第1号証に記載された「潤滑剤」の状態に関する原告の主張が仮に正しかったとしても,それは本件発明との相違点を構成するものではなく,審決の結論に影響を及ぼすものではない。
イまた,原告は,甲第1号証の「The grease is brought within the gap 26 bycoating the insert 18 with grease before the insert is inserted into thetubular frame 11. (第3欄4〜6行)との記載部分について,審決が「グリース 」は,挿入部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18の表面をグリースで覆うことにより,間隙26内に取り入れられる 」と訳したのに対し 「潤滑油は,挿入 。,部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18に塗布することにより,間隙26内に持ち込まれる 」と翻訳すべきであるとし 「coating」との語は 「覆う」とい 。 ,,う膜の形成を暗示する文言ではなく,端的に「塗布する」と訳すべきであると主張する。
しかしながら 「coat」の日本語訳は 「<ほこりなどが><・・・の>表面をおお ,,う ,または「 ペンキなどを]塗る [錫などを]<・・・に>かぶせる」とされて 」[,おり(乙第6号証「覆う」との訳語は誤りではない。なお,原告は,潤滑剤が液 ),状のものであることを示す用語として「塗布」との訳にこだわっているようであるが,本件明細書の段落【0006】には「離型剤を塗布することにより,接着阻害()」, 層であるウィークバウンダリーレアー WBL 層を意識的に設ける と記載され段落【0024】には「接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層6をシリコン樹脂系やフッ素樹脂系の離型剤を塗布乃至スプレーすることにより形成することも可能である 」と記載されていることから,かかる明細書の記載に 。
おいてウィークバウンダリーレアー(WBL)層が液状のものを含むことが開示されている。
次に 原告は 甲第1号証における As best seen in Fig. 2, the gap 26 is filled ,,「with a lubricant, such as grease. 図2で最もよくわかるが 間隙26は グリー (,,。)」(), スのような潤滑剤で満たされている第3欄3〜4行 との記載を根拠として「潤滑剤」が固体状のものであれば,間隙がなくなって,フジイ特許発明と同じ二重管構造となってしまい,発明Aの趣旨に反するから 「潤滑剤」は液状の物質に ,限られる旨主張している。
しかしながら,フジイ特許発明は 「管状フレーム内に挿入部をぴったりと隣接 ,させることにより,同挿入部をフレームに対して固定すること」を提示するものであり,ぴったりとはめ込まれた上記特許に係るバットの挿入部は 「単にバットの ,衝撃部の壁を厚くする役割のみを果たすものである」のに対し,甲第1号証に記載されたバットは,管状フレームと挿入部との間に潤滑剤層が設けられ,それにより「ボールを打ったときの挿入部と管状フレームとの間の相対運動を促進する」作用が得られるのであるから,フジイ特許発明に係るバットとは異なるものである。
また,原告は,製造過程を考慮すれば,あらかじめ設けられている細く狭い間隙,, を固体状のもので満たすことは実際問題として不可能であると主張するが 例えば挿入部の外側にテフロンテープを巻き付けて潤滑剤の膜を形成し,これを管状フレームに挿入すれば,間隙が固体状のもので満たされたバットを製造することができるのであるから,原告の主張には理由がない(そもそも,本件発明は,製法を限定しているものでもないし,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層に空隙が一切含まれないことを特徴とするものでもない。。)さらに,原告は,甲第1号証の「the lubricant-filled gap 26 is effectivelysealed by the first and second interference fits.(潤滑剤で満たされた間隙 26は,第1締まりばめおよび第2締まりばめによって効果的に密閉される(第3。)」欄7〜9行)との記載から,間隙を満たしている物質が液体ないし流動性のある物質でなければ 「密閉される (sealed)という表現はしないとも主張するが 「密 ,」 ,閉」とは「隙間なく閉じること」を意味するに過ぎず(乙第7号証 ,閉じこめら )れる物質が液状か固体状かは問題とならない。
以上のとおり,発明Aの「潤滑剤」が液体又は流動性のある物質に限定される旨の原告の主張は失当である。
ウ原告は,甲第1号証中の「any flow of the grease that does occur duringimpact (第3欄59〜60行)との記載部分について,審決が「衝撃が加わる間 」にグリースが移動し」と翻訳したことに対し,グリースが流動性をもつことを不明確にしているとし,発明Aにおけるグリースないし潤滑剤が流動性のある物質であると主張している。
「flow」とは,原告が主張するように「流動」と翻訳する余地があるが,審決における「移動」との翻訳が最も適切である。
甲第1号証には,使用することができる潤滑剤の種類について 「本発明のバッ ,トにおいては,多くの種類の潤滑剤を使用することができる。潤滑剤の粘性を変えれば,バットの感触および衝撃応答も変化する。好適な一実施例においては,衝撃が加わる間のグリースの油圧効果を強調するため,重い等級のグリースが使用されている。合成潤滑剤を,石油ベースのグリースやオイルと同様に使用することもできる。Teflon(商標)等の潤滑剤を用いても,同様の優れた結果が得られる。さらには,挿入部とフレームの独立した動きを可能にするため,それ自体が滑りやすくなっている挿入部およびバットフレームの材料も,同様の機能を果たすことができる。実際には,結果として挿入部とバットフレームの独立した動きを可能にするように構造が構成されていれば,潤滑剤はすべて省略することができる(訳文7頁。」末行〜8頁7行)と記載されており,原告の指摘する箇所において流動性を有する潤滑剤が念頭に置かれていたとしても,甲第1号証にいう潤滑剤が流動性をもつものに限定されるわけではない。
さらに,審決が指摘するとおり 「グリース(grease 」は「潤滑剤の一種。液体 ,)潤滑剤に濃厚化剤を分散させた固体から半固体状の潤滑剤。たとえば金属セッケンで濃厚化した石油(1996年(平成8年)9月30日株式会社日刊工業新聞社 。」「 」), 発行 マグローヒル科学技術用語大辞典第3版 463頁 を表す技術用語であり固体状の材料を含むものであると解され,また 「テフロン」には,固体状のもの ,が含まれることは,本件特許の出願前における技術常識であった(乙第3号証 。)したがって,発明Aにつき,挿入部と管状フレームとの間の間隙に,固体状潤滑剤の層が設けられているとした審決の認定に誤りはない。
2取消事由2(本件発明1と発明Aの一致点の認定の誤り)に対して(1)原告は,発明Aの潤滑剤は流動性のものであって,固体状のものではなく,発明Aにおいて潤滑剤で管状フレームと挿入部の間隙を満たしているのは接着阻害とは関係がないから,発明Aは 「挿入部の外面と管状フレームの衝撃部の内面と ,」 , の間の・・・間隙に・・・固体状潤滑剤の層を設けた ものであるとの審決の認定及び このような層が本件発明1の 接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー , 「(WBL)層」に相当するとの審決の認定はいずれも誤りであると主張するが,以下のとおり失当である。
(2)発明Aの潤滑剤に固体状のものも含まれることについては,上記1(3)のとおりである。
また,発明Aのバットでは,ボールを打ったときに挿入部と管状フレームとが相対的に独立して運動することによってバットの反発力を高める点が特徴であり,潤滑剤によりこの相対的な独立運動が促進されるものである。そして,本件発明は物の発明であって,製法の発明ではないところ,物の発明については,物の構造が同じであれば同一の発明であるというべきであり,本件発明において,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が接着阻害を意図して設けられるに至ったことは,発明の同一性の判断には無関係である。
(3)したがって,取消事由2は理由がなく,発明Aにおける管状フレームと挿入() 部との間の潤滑剤の層が本件発明1におけるウィークバウンダリーレアー WBL層に相当するとした審決の認定に誤りはない。
3取消事由3(本件発明1と発明Aの相違点の看過)に対して(1)原告は,本件発明1と発明Aはバットから打球に伝導するパワーを増大させる機構,作用をまったく異にするものであり,審決はこのような相違点を看過した旨主張するが,誤りである。
,, , (2)本件発明1は 偏平剛性を小さくし トランポリン効果を大きくすることでボールの反発性能を向上させるものである(本件明細書段落【0030】参照)から,本件発明1に係るバットは,ボールが当たったときに必ず撓むのであって,その打球部は発明Aと同様に板ばねと同様の特徴を持つ機械的構造を有しており,同様の作用効果を利用しているものである。
甲第1号証の「管状フレーム 11 は,挿入部 18 が懸架され,同挿入部がその両端において管状フレームに取り付けられるため,板ばねと同様の特徴を持つ機械的構造が実現する(訳文6頁7〜8行)という記載の原文は 「The tubular frame 11 。」 ,with the suspended insert 18 attached at both ends to the tubular frame 11yields a mechanical system with characteristics similar to a leaf spring.」(第3欄16〜19行)というものである。ここで 「板ばね(leafspring 」と ,)の用語は,バットの撓む動きを説明するためのたとえとして,あくまで発明Aの動きを分かりやすく説明するために使用されているに過ぎない。
(3)本件発明1は 「バット打球部にWBL層が形成されることにより偏平剛性 ,が小さくなるため,俗にいうところのトランポリン効果が大きくなり,ボールを遠くに飛ばすための反発性能が大幅に向上する(本件明細書段落【0006 )と 。」 】の作用効果を奏するのに対し,甲第1号証には 「図示された実施例によるソフト ,ボール用バットの作用は,打球へのパワー伝導を向上させるよう設計されている。
特に バット10は 大きな弾性たわみが生じ これが短時間で大きなパワーをもっ ,,,て反発することにより,ボールとの衝撃に応答する(訳文6頁4〜6行)と記載 。」されており,両発明の作用効果は,バットの打球部ないし衝撃部の撓みを大きくして打球に対する反発を増大させる点で一致している。
なお,原告は,本件発明1においては,外側のFRPの層と内側のFRPの層は横方向にずれることはあっても,径方向に相対的に独立して移動するわけではない旨主張するが,この主張は,実験,計測等の客観的な根拠に基づくものではない。
(4)以上のとおり,本件発明1のバットにおいて,WBL層の外側の層と内側の層とは,相互に自由な運動をし,発明Aのバットにおいても,挿入部と管状フレームは独立して運動するのであるから,取消事由3は理由がない。
4取消事由4(本件発明2〜7の新規性についての判断の誤り)に対して原告の取消事由1〜3の主張は,上記1〜3のとおり,いずれも誤りである。また,本件発明2,4に対する判断に係る主張も以下のとおり失当であるから,本件発明2〜7が甲第1号証記載の発明と同一であるとした審決の判断に誤りはない。
(1)本件発明2について原告は,甲第1号証記載の発明の挿入部は,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合されているのに対して 本件発明2のウィークバウンダリーレアー W , (BL)層はその両端が接合されているものではないと主張する。
しかしながら,上記3のとおり,本件発明1は偏平剛性を小さくし,トランポリン効果を大きくすることで,ボールの反発性能を向上させるものであり,発明Aと同様の機構によって同様に作用するのであるから,本件発明1のウィークバウンダリーレアー(WBL)層の両端は接合されているものである。
したがって,本件発明2のウィークバウンダリーレアー(WBL)層の両端も接, 。 合されているというべきであり 本件発明2も甲第1号証記載の発明と同一である(2)本件発明4について甲第1号証の請求項18には 「ほぼ円形の断面を有し,その外径が前記フレー ,, 」 ムの衝撃部の内径より小さく 前記衝撃部内で固定される少なくとも1つの挿入部と記載され,バットの衝撃部内に複数の挿入部を設ける構成が明記されている。この挿入部を設ける位置については,いずれも「衝撃部内」と特定されているのであるから,複数の挿入部を設ける場合には必然的に,一つの挿入部の内側に更に他の挿入部を挿入することになる。
また,複数の挿入部を設けるのはトランポリン効果を更に増大させるためであるから,ボールを打ったときの挿入部と挿入部との間の相対運動を促進するため,複数の挿入部間に潤滑剤の層が設けられることは明らかである。
したがって,本件発明4も甲第1号証記載の発明と同一である。
5取消事由5(進歩性についての判断の誤り)に対して原告は,審決の発明Bの認定につき,発明Aと同様,管状フレームと挿入部との間に「個体状潤滑剤」を設けたとする点で誤りであると主張するが,発明Aにつき上記1(3)で述べたと同様,失当である。
また,原告は,本件発明1は,従来技術とは発想が異なっているから,複数層構造のバットにおいて,内外の層をともに繊維強化プラスチックの層として形成することが従来周知の技術であるとしても,当業者は本件発明1を容易に想到できないと主張するが,内外の層をともに繊維強化プラスチックの層として形成することが周知技術である以上,発明Bにこの周知技術を適用して,管状フレームに繊維強化プラスチックを用い,本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。本件発明が従来技術と「発想において異なっている」ことが,従来技術を発明Bに適用することを阻害する要因とならないことは明らかである。
また,審決が,本件特許発明では,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層を,, 含めバット本体は一体のものであるとの原告の主張を排斥した点について 原告は本件明細書の実施例をみれば,本件発明に係るバットが一体でしか製造し得ないことは明らかであり,FRPの層やWBLの層の間に間隙を形成するバットを製造するような技術については,記載も示唆もないと主張する。
しかしながら,本件明細書の請求項1には「前記繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けた」と記載されており,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が,FRPの層間に存在するとともに,FRP層同士を接着させないものであることが限定されているが,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層をどのように設けるか,同層がどのような構成となっているのかについては何ら限定されておらず,本件明細書の請求項1には,間隙があるという限定も,間隙がないという限定も存在しないから,本件発明1のバット本体が「一体」であることを理由とする原告の主張は失当である。
以上のとおり,本件発明1が進歩性を欠くとの審決の判断に誤りはなく,取消事由5は理由がない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(引用刊行物(甲第1号証)記載の発明の認定の誤り)について(1)原告は,審決による発明Aの認定,及び,発明Aと本件発明1が同一であるとした判断がともに誤りであるとし その理由として 甲第1号証には 管状フレー ,,,ムの素材として,繊維強化プラスチックを含む複合材料を使用することが記載されておらず,また,潤滑剤として固体状のものを使用することも記載されていないと主張するので,これらの点について順次検討する。
(2)管状フレームの素材についてア甲第1号証には,バットの素材に関し,次の記載がある。
「 発明の背景および概要】ソフトボール用(および野球用)の管状金属バットは,当 (ア) 【技術分野で周知である。よく知られる例としては,管状アルミニウムバットが挙げられる。このバットには,一般に衝撃応答性が高い,すなわち打球に対し効率的にパワーを伝えるという利点がある。この効率的なパワーの伝導により,競技者は『強打』により優れた飛距離を実現することができる。さらにアルミニウムバットには,亀裂が入りやすい木製のバットよりも耐久性が優れているという利点もある。現在のアルミニウムバットの性能も優れているが,より優れた 強打 力を持つバットの実現を目指し 絶え間ない探求が続けられている したがっ 『』 , 。
て,バットの衝撃応答性の最適化は,重要な必要性である。一般的に,衝撃応答性が最大となるのは,バットに最大限の弾性たわみが生じ,その後,最短時間で最大の力をもって反発する場合である。これらの3つの要素を最適化することにより,バットから放たれたボールの『弾力』が向上し,これにより優れたパワー伝導と『強打』力を持つバットが実現する。アルミニウムバットの設計は,弾性たわみに塑性変形が伴わないようにするという条件により制約される。塑性たわみは,ボールへのパワー伝導を減少させ,バットに永久的な凹みを残す。このためアルミニウムバットの設計は,アルミニウムの弾性変形および塑性変形の特性によって決定される。例えば,管状壁が薄すぎる場合,望ましい大きな弾性たわみが得られるが,同時に。, , 望ましくない永久的な塑性変形も生じてしまう 一方で アルミニウムの管状壁が厚すぎればバットの剛性が高すぎて,相当の弾性たわみは得られない。この場合,バットが衝撃応答する,, 。 『』, 際の弾力は比較的小さくなり その結果 パワー伝導も小さくなる弾力 を高めるため他のチタン等の材料を用いた管状バットが開発されている。チタンは,強度の高い材料であるため,バットフレームの壁を薄くしても,塑性変形が生じることなく,大きな弾性たわみを実現することができる。このバットは,優れたバネのような弾力と打球へのパワー伝導を提供する。しかし,材料自体のコストと,またチタンの加工が難しいことから,販売価格が上昇して(訳文4頁7〜31行) しまう。」「本発明の好適な一実施例において,管状アルミニウム製バットフレームは,直径の大 (イ)(訳文5頁6〜7行)きい衝撃部,中間テーパ部および小径の握り部を具備する。」「 発明の詳細な説明】図1を参照すると,本発明の一実施態様におけるソフトボール(ウ) 【用バット10は,比較的直径の大きい衝撃部12,中間テーパ部14および比較的小径の握り(訳文5頁20〜23行) 部16を具えた管状アルミニウムフレーム11を有する。」「好適な一実施例において,管状フレームおよび挿入部はともにアルミニウムで作られ(エ)(訳文6頁下から8〜下から7行)ている。」「フレームおよび挿入部の材料として本実施例ではアルミニウムを使用しているが,当(オ)然のことながら,他の多くの材料を用いても,本発明によって同様の優れた効果を得ることができる。例えば,コストはやや高くなるが,優れた結果をもたらす挿入材としてチタンを使用することができる。チタンは衝撃応答性が高いという特性を持つことから,チタンの挿入は良い結果をもたらす。さらに,挿入部が中空管であるため,チタンを利用する場合の切削加工および冷間加工の問題も最小限にとどめることができる。チタンの挿入により,優れた衝撃応答性を持つとともに,中実のチタン製バットと比べて大幅にコストの低いバットを実現することができる。さらに,コストについてそれほど懸念する必要がなければ,チタン製のバットにチタンを挿入して,極めて優れた結果を実現することができる。当然のことながら,他の様々な金属,複合材料,プラスチックおよびその他の材料を用いても,本発明によって同様の優れ(訳文7頁28〜39行) た効果を得ることができる。」「 請求項9】前記挿入部がアルミニウムで作られた請求項8のバット。
(カ) 【【請求項10】前記管状フレームがアルミニウムで作られた請求項8のバット。
【請求項11】前記挿入部がチタンで作られた請求項8のバット。
【請求項12】前記挿入部が複合材料で作られた請求項8のバット。
(訳文9頁9〜13 【請求項13】前記挿入部がスチールで作られた請求項8のバット。」行)イ上記アの各記載によると,甲第1号証記載の発明に係るバットの素材に関して,次のように認定することができる。
(ア) ソフトボール用及び野球用のバットの素材としては,従来からアルミニウム, , 製のものが知られており アルミニウム製の管状壁を適度な厚みとすることによりボールへのパワーの伝導をある程度適切なものとすることができることから,甲第1号証記載の発明に係るバットの好適な実施例としても,アルミニウム製のものが考えられる(上記ア(ア)〜(エ) 。)(イ) チタンは強度が高く,バットの素材として優れているため,甲第1号証記載の発明に係るバットの素材としても有効であるが,コストが高いという問題がある(上記ア(ア),(オ) 。)(ウ)甲第1号証記載の発明に係るバットの管状フレームと挿入部の材料としては,アルミニウムのほかにも多くの材料を使用することができるところ,コストは少し高くなるが,チタンの挿入部を使用すると良い結果をもたらすほか,更にコストはかかるが,チタン製フレームとチタン製挿入部を採用すれば,極めて優れた結果をもたらす(上記ア(オ) 。)(エ) 甲第1号証記載の発明に係るバットの材料としては,アルミニウム,チタンのほかにも他の様々な金属,複合材料,プラスチック及びその他の材料を使用することができるところ,そのうち挿入部がアルミニウム製であるもの,管状フレームがアルミニウム製であるもの,挿入部がチタン製であるもの,挿入部が複合材料で作られているもの及び挿入部がスチール製であるものについて,特許請求の範囲に掲げている(上記ア(オ) 。)なお 原告は 上記ア(オ)の甲第1号証の記載部分 日本語訳 に係る原文は本 ,, (),「実施例ではフレームと挿入部にアルミニウムを用いているけれども,多くの他の材料も本発明と等しく良い効果をもたらすことが理解されなければならない。たとえば,すこしコストが高くなるが,チタンは素晴らしい効果をもたらす挿入部として用いることができる。チタンの挿入部は素晴らしい衝撃応答性という特性によって有利である。加えて,挿入部は中空管なので,チタンに関連する工作加工,冷間加工の問題を最小にする。チタンの挿入部は中実のチタン製バットよりはるかに低減されたコストで優れた衝撃応答性を提供する。さらに,コストに払う考慮が少ないときは,チタンの挿入部をチタンのバットの内部に用いて顕著な結果をあげることができる。様々な他の金属,複合材料,プラスチック,その他の材料も同様に,本発明と等しい良い効果を発揮することが理解されなければならない 」と翻訳す 。
べきであると主張する。
しかしながら,上記ア(オ)で摘記した甲第1号証の記載部分(日本語訳)は,審決が摘記した際の訳文(審決16頁29行〜17頁2行)と同じであるとともに,上記ア(オ)の摘記箇所に付記したように,甲第1号証の提出者である原告自身が提出した訳文(翻訳書面)に基づくものである。外国語の文書を書証として提出する場合,裁判所法74条に基づく処置として,提出者は,その翻訳書面を添付する必要があり,また,その反対当事者においても,書証の提出者が提出した翻訳書面の内容が不正確であると考えた場合,その他,必要があるときに,自ら翻訳書面を提出することがあるが,これらの場合に提出すべき翻訳書面は,実際の訳出者が誰であれ,その提出者において,正確に訳出されたものであると考えるものでなければならないことはいうまでもない。したがって,甲第1号証の提出者であり,上記翻, , 訳書面の提出者である原告が 当該翻訳書面につきいわゆる差替え等も経ないまま甲第1号証の記載に関し,自らの提出した翻訳書面に係る訳文と異なるように訳すべきであると主張するが如きは背理であって,上記主張は,それ自体失当であるといわざるを得ない。
, ,, のみならず 原告が新たに主張する翻訳の内容に従い これに基づいたとしても上記(ウ),(エ)のとおり,認定することができる。
したがって,原告の上記主張は,いずれにせよ失当である。
また,原告は,甲第1号証の記載全体から,同号証に記載された発明はアルミニウム製バット又はせいぜい金属製バットを対象とするものである旨主張するが,甲第1号証にはバットの素材を金属製のものに限定する趣旨の記載はなく,原告の主張を採用することはできない。
ウ甲第2,第3号証の記載(ア) 甲第2号証(実開平5-175)には次の記載がある。
「 請求項1】FRPの強化繊維の繊維方向をバットの長手方向に対し任意の角度を有す 【るように巻着積層形成されたFRP製バットにおいて,少なくとも打球部における強化繊維の繊維方向をバットの長手方向に対し0°になるように巻着した層を,2層以上に分散して設け(実用新案登録請求の範囲) たことを特徴とするFRP製バット。」「 産業上の利用分野】本考案は,野球,ソフトボール用のバットに関し,さらに詳しく 【は,カーボン繊維,ガラス繊維等の繊維強化合成樹脂(FRP)製バットの改善に関するもの(段落【0001 ) である。」 】「 従来の技術】FRP製のバット,特にシートワィンディング製法によるバットの成形 【においては,打球部から,グリップ部に移行する部分の外形状が大きく異なる逆テーパー形状となっているため,剛性,圧縮強度,曲げ強度等バットとして要求される特定を満足させるた(段落【0002 ) めにシートの巻着には種々の方法が考案されている。」 】「本考案に用いるFRPは,ガラス繊維,カーボン繊維,ポリアミド繊維等の無機繊維類を(段落 強化繊維とし,該繊維を一方向に引揃えてプリプレグ化したものを用いる。」【0011 )】これらの記載によると,甲第2号証には,野球及びソフトボール用のバットについて,FRP製の層構造となっているものが存在することを前提として,打球部におけるFRPの繊維方向をバットの長手方向に対し0°になるように巻着した層を2層以上に分散して設ける技術が記載されているということができる。
(イ) 甲第3号証(特開平10-314353)には次の記載がある。
「 従来の技術】従来より,バットとしては木製,金属製の他,カーボンファイバー,グラ 【スファイバー等よりなる繊維強化プラスチック製など,各種の素材より構成されたものが市場に供給されている。又,従来のバットにおいては,バットの打球部の耐久性を向上させると共に,打球時のボールの反発特性を向上させる試みから,バットの打球部内部に各種の構造物を(段落【0002 ) 介在させる発明が公知となっている。」 】「 課題を解決するための手段】そこで,本願発明は上記課題を解明するためになされたも 【, ,, ので 従来から種々の発明が公知となっている二重管式バットを再度見直し 生産性を改善し(【】) 且つ反発特性の優れたバットを提供することを目的とするものである。」 段落 0007「本願発明に係る二重管式のバット(ソフトボール用バット1)の外管パイプ2素材としては,チタニウム,チタニウム合金製,アルミニウム合金製又は繊維強化プラスチック製の素材(段落【0023 ) を使用出来るものである。」 】「又,本願発明に係るソフトボール用バット1の外管パイプ2や内管パイプ3に使用する素材としては,例えば繊維強化プラスチック製(FRP製)のバットの場合には,カーボンファイバーやグラスファイバーやアラミドファイバーその他の補強繊維等を使用することが出来る(段落【0030 ) ものである。」 】これらの記載によると,甲第3号証には,従来からFRP製のバット,二重管式バットが知られていること,二重管式バットの外管と内管の双方をFRP製とすることができることが記載されているということができる。
,,(), (ウ) 上記(ア) (イ)によると 本件特許出願時 平成11年1月20日 においてソフトボール用及び野球用のバットを二重管式などの多層構造とすることにより性能を向上させること,多層構造の各層について各種の素材を使用することができること及びその素材としてFRPを使用することができることは,当業者に周知の技術事項であったものと認められる。
エ以上によると,甲第1号証の記載に接した当業者は,そこに記載された二重管式のバットの管状フレームと挿入部の双方をFRP製とすることができることを前提として,甲第1号証の記載を理解するものというべきであるから,甲第1号証, 。 には 管状フレームの素材を複合材料とするバットが記載されていると認められる(3)潤滑剤についてア甲第1号証には,潤滑剤に関する次の記載がある。
「図2で最もよくわかるが,間隙26は,潤滑油等の潤滑剤で満たされている。潤滑油 (ア), , は 挿入部を管状フレーム11に挿入する前に挿入部18の表面を潤滑油膜で覆うことにより(訳文5頁下から2行〜6頁1行)間隙26内に取り入れられる。」「潤滑油により,衝撃部12と挿入部18との間で相対運動が可能になるため,挿入部(イ)は,衝撃部12のたわみを囲むように独立して伸張することができる。潤滑油が間隙内で密閉されていることにより,もうひとつの利点も生じる。すなわち,ボールとの衝撃の発生が早すぎて,潤滑油が相当に流れ出さないという点である。むしろ潤滑油は,その油圧により,衝撃部の壁を支持し,これを挿入部から遠ざける働きをする。この場合,衝撃部と挿入部との間でしっかりした潤滑油の層が維持され,よって衝撃部に対応した挿入部の運動が促進される。一, , 。 方 衝撃が加わる間に潤滑油が移動した場合 衝撃の力は衝撃部12の拡大区域に分配されるこの衝撃応力の分配により,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくいことから,衝撃部(訳文6頁24〜32行) の壁は薄いもので足りる。」「本発明のバットにおいては,多くの種類の潤滑剤を使用することができる。潤滑剤の(ウ)粘性を変えれば,バットの感触および衝撃応答も変化する。好適な一実施例においては,衝撃が加わる間の潤滑油の油圧効果を強調するため,重質油が使用されている。合成潤滑剤を,石油ベースの潤滑油やオイルと同様に使用することもできる。Teflon(商標)等の潤滑剤を用いても,同様の優れた結果が得られる。さらには,挿入部とフレームの独立した動きを可能にするため,それ自体が滑りやすくなっている挿入部およびバットフレームの材料も同様の機能を果たすことができる。実際には,結果として挿入部とバットフレームの独立した動きを可能にするように構造が構成されていれば,潤滑剤はすべて省略することができる。潤滑剤は塑性変形可能な材料であると考えられる。この材料の塑性変形は,バットフレームおよび挿入部の作用によって回復される。本発明の利点の一部は,潤滑剤であるか否かを問わず,間隙26において塑性変形可能なあらゆる材料を代用することによって得ることができるという点であ(訳文7頁末行〜8頁11行) る。」イ上記アの各記載によると,甲第1号証記載の発明に係るバットの潤滑剤について,以下のように認定することができる。
(ア) 潤滑剤は,挿入部と管状フレームの独立した動きを可能にするためのものであり,塑性変形可能な多くの種類のものを使用することができる。
(イ) 潤滑剤の典型例として,石油ベースの潤滑油やオイルがあり,好適な実施例の一つとして,衝撃が加わる間の油圧効果を強調するため重質油が使用される。
(ウ) 潤滑剤としては,潤滑油以外に合成潤滑剤を使用することができるほか,テフロン等の潤滑剤を使用することもできる。
ウ上記イによると 甲第1号証記載の発明に係るバットの潤滑剤としてはテ , ,「フロン」を含む多くの種類のものを使用することができる。
しかるところ 「テフロン」とは 「ポリテトラフルオロエチレンの du Pont 社の ,,商品名 (1989年(平成元年)10月20日株式会社東京化学同人発行の「化 」学大辞典」1509頁)であり 「ポリテトラフルオロエチレン」は「テトラフル ,オロエチレン・・・の重合体.テトラフルオロエチレンを懸濁重合法または乳化重合法によるラジカル重合によりつくる.白色ないし淡灰色の固体で密度2.1〜2.3g・cm,融点327℃ ・・・テフロン(Teflon)は duPont 社の商 .品名 ・・・ (同2248頁)とされるから,テフロンが固体であることは明らか .」である。
したがって,甲第1号証には,潤滑剤としてテフロンのような固体を使用することが記載されているというべきであるから,管状フレームと挿入部の間に固体状潤滑剤の層を設けたものが記載されているとした審決の認定に誤りはない。
なお,この点に関する原告の主張は「固体」と「液体又は流動性のある物質」とを対置させ,あたかも「流動性のある物質」であれば「固体」に当たらないかのように主張するが 「固体」とは 「物質の状態の一。一定の形状と体積とを有するも ,,の。結晶質と非晶質に大別(1991年(平成3年)11月15日株式会社岩波 。」書店発行「広辞苑第4版」937頁)とされており,例えば 「plastic」の意義と ,して「1.プラスチックの・・・2.可塑性の半流動体に降伏価を越える力を加えたときに流動する(例えば成形する)ことのできる状態.3.塑性の・・・」(1989年(平成元年)6月1日株式会社工業調査会発行「英和プラスチック工業辞典」723頁)とされているように,固体であっても流動することのできる, 。, 状態が存在することは明らかであるから 上記のような主張は当を得ない さらに, ,, 原告は 潤滑剤が流動性のある物質であることを示すために 上記ア(ア)において原告の提出した翻訳書面に基づいて摘記した甲第1号証の記載部分(日本語訳)に係る原文につき,上記翻訳書面とは異なるように翻訳すべきであると主張するが,このような主張が,それ自体失当であることは,上記(2)イと同様であるのみならず,上記のとおり,潤滑剤が流動性のある物質であることは,それが固体でないことを意味するものではないから,上記主張は,この点においても失当である。
(4)以上によると,甲第1号証に記載されたバットの発明において,管状フレームの素材をFRPなどの複合材料とすること,潤滑剤として固体状のものが記載されていると認められるから,審決による発明Aの認定に誤りはなく,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(本件発明1と発明Aの一致点の認定の誤り)について(1)原告は,審決がした本件発明1と発明Aとの一致点の認定が誤りであると主張し その理由として 発明Aの管状フレームと挿入部との間の間隙を満たすグリー ,,ス等の潤滑剤は流動性のものであって,固体状ではないこと,発明Aにおいて,潤滑剤で管状フレームと挿入部との間の間隙を満たしていることは接着阻害と関係がなく,潤滑剤が「接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層」に相当するとはいえないことを挙げる。
しかるところ,潤滑剤が流動性のある物質であることが,固体状ではないことを意味しないことは上記1の(3)のとおりであるから,この点についての原告の主張を採用することはできない。
そこで 以下 発明Aにおける潤滑剤が 本件発明1の 接着阻害層であるウィー ,,,「クバウンダリーレアー(WBL)層」に相当するとはいえないとの主張につき検討する。
(2)発明Aの潤滑剤に,テフロン,すなわちポリテトラフルオロエチレンが含ま, , , れることは 上記1の(3)のとおりであるところ ポリテトラフルオロエチレンは( ),, 摩擦係数が小さいものであるから 前掲化学大辞典2248頁潤滑性能を有し離型効果を奏するもの,すなわち接着を阻害するものである点で,本件発明1の「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」に相当するものと認めることができる。
もっとも,原告は,甲第1号証記載のバット(発明A)は,管状フレームと挿入部に間隙を有し,打球による衝撃を受けた場合に,管状フレームと挿入部とが相対的に独立した運動をすることにより,反発性能(トランポリン効果)を向上させることを目的としているから,発明Aにおいては管状フレームと挿入部の接着はあり得ず,発明Aにおいて,潤滑剤で管状フレームと挿入部との間の間隙を満たしていることは,接着阻害と関係がないと主張するところ,この主張は,要するに,発明Aの潤滑剤が奏する作用効果と,本件発明1の「ウィークバウンダリーレアー(WBL)層」が奏する作用効果とが,異なるものであるという趣旨であるものと解される。
しかるところ,甲第1号証には,次の記載がある。
「現在のアルミニウムバットの性能も優れているが,より優れた『強打』力を持つバットの実, 。, , 現を目指し 絶え間ない探求が続けられている したがって バットの衝撃応答性の最適化は重要な必要性である。一般的に,衝撃応答性が最大となるのは,バットに最大限の弾性たわみが生じ,その後,最短時間で最大の力をもって反発する場合である。これらの3つの要素を最適化することにより バットから放たれたボールの 弾力 が向上し これにより優れたパワー , 『』,伝導と『強打』力を持つバットが実現する。アルミニウムバットの設計は,弾性たわみに塑性変形が伴わないようにするという条件により制約される。塑性たわみは,ボールへのパワー伝導を減少させ,バットに永久的な凹みを残す。このためアルミニウムバットの設計は,アルミニウムの弾性変形および塑性変形の特性によって決定される。例えば,管状壁が薄すぎる場合,望ましい大きな弾性たわみが得られるが,同時に望ましくない永久的な塑性変形も生じてしまう。一方で,アルミニウムの管状壁が厚すぎれば,バットの剛性が高すぎて,相当の弾性たわみは得られない。この場合,バットが衝撃応答する際の弾力は比較的小さくなり,その結果,パワー伝導も小さくなる(訳文4頁14〜26行) 。」「潤滑油により,衝撃部12と挿入部18との間で相対運動が可能になるため,挿入部は,衝撃部12のたわみを囲むように独立して伸張することができる。潤滑油が間隙内で密閉されていることにより,もうひとつの利点も生じる。すなわち,ボールとの衝撃の発生が早すぎて,潤滑油が相当に流れ出さないという点である。むしろ潤滑油は,その油圧により,衝撃部の壁を支持し,これを挿入部から遠ざける働きをする。この場合,衝撃部と挿入部との間でしっかりした潤滑油の層が維持され,よって衝撃部に対応した挿入部の運動が促進される。一方,衝撃が加わる間に潤滑油が移動した場合,衝撃の力は衝撃部12の拡大区域に分配される。この衝撃応力の分配により,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくいことから,衝撃部の壁(訳文6頁24〜32行) は薄いもので足りる。」これらの記載によれば,ボールへのパワー伝導を大きくすべく,バットの衝撃応答性を最大とするためには,バットの弾性たわみの最大化,反発時間の最短化,反発力の最大化という3要素の最適化が必要であるが,バットの管状壁を薄くした場合 大きな弾性たわみが得られるが 同時にボールへのパワー伝導を減少させ バッ , , ,トに永久的な凹みを残す塑性変形も生じてしまい,逆に管状壁が厚すぎれば,バットの剛性が高すぎて,相当の弾性たわみが得られなくなるという問題が生ずるところ,衝撃部の管状フレームと挿入部との間の間隙を潤滑剤で満たすと,衝撃が加わる間に潤滑剤が移動することにより衝撃応力が分散され,塑性変形をもたらす高い応力集中が生じにくくなるため,衝撃部の壁を薄いものとすることができること,すなわち,甲第1号証記載のバット(発明A)において,管状フレームと挿入部の間の間隙に潤滑剤の層を形成することは,衝撃部の衝撃応力を緩和し,塑性変形を生じさせないようにしながら,衝撃部の壁を薄いものとして,弾性たわみを大きくすることができるという効果を奏するものであることが認められる。
他方,本件明細書には,次の記載がある。
「 発明が解決しようとする課題】これら従来のFRP素材の種類や組み合わせを変えるだ 【けの方法においては,反発性能を向上させるためにバットの打球部の偏平剛性をやわらかくすることにより,バットの耐久性に影響を及ぼす偏平強度自体が大幅に弱くなる欠点を有していた。そのため,耐久性を保持するためには,反発性能を犠牲にしなければならず,結果として(段落【0003 ) アルミニウム合金製金属バットに勝る反発性能が発揮できなかった。」 】「 課題を解決するための手段】上記の問題点を解決するために,本発明は反発性能と耐久 【性を高いレベルで両立させるために,バット本体を形成するFRP素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を意識的に設けることで,非常に大きな反発性(段落【0005 ) 能と耐久性に優れたバットを作ることができるものである。」 】「 発明の実施の形態】本発明は,FRP製バット本体を形成するFRP素材内部の特定の 【層間に離型性を有する素材や同様の効果を有するフィルムを挿入したり,離型剤を塗布することにより,接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を意識的に設けることにより,接着阻害層であるWBL層がない従来のFRP製バットと比べて,偏平剛性を小さくして,ボールの反発性能を高めるトランポリン効果をより大きくすると共に,耐久性に係る偏平強度の低下を防止することにより耐久性に優れた高性能のFRP製バットが提供出来るもの(段落【0006 ) である。」 】「 発明の効果】本発明は,以上説明したような形態で実施され,以下のような効果を奏す 【る。バット打球部に接着阻害層であるWBL層が形成されることにより偏平剛性が小さくなるため,俗にいうところのトランポリン効果が大きくなり,ボールを遠くに飛ばすための反発性能が大幅に向上する。また,耐久性に関する強度については,接着阻害層であるWBL層が形成されるにも係らず,SG基準値(FRP製バットの破壊荷重値:400 kgf)を満足しており,特に強度的に問題はないことから,強度基準を満足させながらも反発性能が従来品に比(段落【0030 , べて際立った高性能を発揮するバットが実現できるものである。」 】【0031 )】上記各記載によると,本件発明1において,FRP層間にウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けることは,打球部の偏平剛性を小さくして,ボールの反発性能を高め,トランポリン効果をより大きくしつつ,耐久性に係る偏平強度の低下を防止するという効果を奏するものと認めることができる。
そして,このことは,発明Aにおいて,管状フレームと挿入部の間の間隙に潤滑, , 剤の層を形成することが 衝撃部の弾性たわみを大きくして衝撃応答性を高めつつ塑性変形を生じさせないようにする効果を奏することと何ら異なるところがないというべきである。
(3)したがって,審決のした本件発明1と発明Aとの一致点の認定に原告主張の誤りがあるということはできず,取消事由2は理由がない。
3取消事由3(本件発明1と発明Aの相違点の看過)について(1)原告は,発明Aは,管状フレームと間隙によって分離された挿入部が,第1端部及び第2端部において管状フレームと係合又は固定されているため,板ばねと同様の特徴をもつ機械的構造を有しているのに対し,本件発明1の内側FRP部分は,外側FRP部分と間隙によって分離され,その両端において外側FRP部分と接合されるという構成を有していないと主張する。
(2)しかしながら,本件発明1は,繊維強化プラスチック素材の層間に接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層を設けたものであるから,内側FRP部分と外側FRP部分とが分離され,その間隙にウィークバウンダリーレアー(WBL)層が存在するといい得るものである(なお,発明Aにおいても,管状フレームと挿入部との間の間隙には 上記のとおり ウィークバウンダリーレアー ,,(WBL)層に相当する固体状潤滑剤の層が設けられている。また,本件発明1 。)の要旨は,繊維強化プラスチック素材の層が,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の両端(すなわち,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の存在する間隙の両端)において接合しないとの限定をするものではないのみならず,本件明細書及び図面には,以下の記載及び図示があり,これらの記載及び図示によれば,本件発明1において,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層は,望ましくは打球部(その位置は,発明Aの衝撃部の位置に相当する )の部分の,外側のFRP層 。
と内側のFRP層の間に設けられるものであり,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層が設けられていない部分の内側と外側のFRP層は,互いの接着が阻害されないため,一体化することによって固定されているものと認められる。
ア「・・・断面としてみた場合に,FRP層全体に対する接着阻害層であるWBL層の位置は,1層の場合には,FRP層の肉厚の略中央部に形成させることが反発性能と耐久性のバランスに優れるため好ましい(段落【0015 ) 。」】イ「なお,図2に示すように,接着阻害層であるウィークバウンダリーレアー(WBL)層6を打球部2に設けることが望ましいが,シャフト部3あたりまで延在させることも可能である(段落【0021 ) 。」】ウ【図2【図3】として以下の図示がある。 】,そして,このように本件発明1と発明Aの構成が同一である以上,当該各構成によって奏する効果も同一であることは明らかである。
(3)原告は,本件発明1に係るバットおいては,打球時に外側のFRPの層と内側のFRPの層が横方向にずれることはあっても,径方向に相対的に独立して移動するわけではないとも主張するが,本件発明1に係るバットにおけるFRPの各層がこのような挙動をすることを認めるに足りる証拠はない。
(4)以上によると,審決が原告主張の相違点を看過したとはいえないから,取消事由3は理由がない。
4取消事由4(本件発明2〜7の新規性についての判断の誤り)について(1)原告は,審決が,本件発明1に係る取消事由1〜3主張の誤りを前提として本件発明2〜7の新規性について判断したものであるから,これらの判断も誤りであると主張するが,審決に取消事由1〜3に係る誤りがないことは,以上のとおりであるから,原告の主張を採用することはできない。
(2)また,原告は,甲第1号証記載の発明においては,挿入部は,衝撃部の管状フレーム内においてその両端が接合されているものであるのに対し,本件発明2のFRPの層と層は,ウィークバウンダリーレアー(WBL)層の両端において接合されているものではないから,甲第1号証記載の発明の衝撃部と本件発明2の打球部は相違する旨主張するが 上記3(2)のとおり ウィークバウンダリーレアー W ,, (BL)層の両端部分において,外側と内側のFRP層は一体化し,固定されていると認められるから,原告の主張を採用することはできない。
,, , (3)さらに 原告は 甲第1号証には2つの挿入部の間に間隙があるのかどうかその間隙を潤滑剤で満たすのかどうかについて何ら記載がないから,本件発明4が甲第1号証記載の発明と同一であるとはいえないと主張する。
しかしながら,甲第1号証には「 請求項18】小径の握り部と直径の大きい衝 【撃部とを具備し,その内径および外径が円形である中空管バットフレームと,ほぼ円形の断面を有し,その外径が前記フレームの衝撃部の内径より小さく,前記衝撃部内で固定される少なくとも1つの挿入部と,内側方向への弾性たわみが可能であり,これにより前記挿入部と前記衝撃部との間に強固な締まりばめを形成する前記衝撃部とから成るバット(訳文9頁下から5行〜10頁1行)との記載があると 。」ころ 「少なくとも1つの挿入部」に「複数の挿入部」が含まれることは明らかで ,あり,打球が衝撃部のどの部分に当たるかは分からないのであるから,衝撃部内を長手方向に分割して挿入部を複数設けることはおよそ想定されないことも明らかである。
そうすると,衝撃部内において複数の挿入部を固定する場合,挿入部の更に内側に挿入部を設けることになることは当業者にとって自明であり,上記1(3)イで認定した潤滑剤の機能及び上記2(2)で認定したバットの衝撃応答性を高めるための潤滑剤の層の役割に照らすと 複数の挿入部を設けたバットにおいては 管状フレー , ,ムと挿入部の間の間隙及び挿入部とその内側の挿入部との間の間隙に潤滑剤を満たす構成と成ることは,当業者であれば,当然に理解するところであり,甲第1号証には,実質上,かかる発明が記載されているものということができる。
, , したがって 本件発明4と甲第1号証記載の発明は同一であるというべきであり原告の主張を採用することはできない。
(4)以上によると,取消事由4は理由がない。
5結論以上のとおり,取消事由1〜4はいずれも理由がなく,本件各発明は甲第1号証記載の発明と同一であるとの審決の判断に誤りはないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 石原直樹
裁判官 榎戸道也
裁判官 杜下弘記
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