関連審決 | 異議1998-70682 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成20ワ4損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19ワ23460損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的範囲 / 優先権 / 優先日 / 侵害 / 損害額 / 既判力 / 拒絶査定 / 補助参加 / 取消決定 / 申し立てない理由 / 不服申立 / 異議申立 / |
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事件 |
平成
16年
(ワ)
19959号
損害賠償請求事件
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原告 株式会社イー・ピー・ルーム 被告国 指定代理人 森田強司 同 鈴木愼吾 同 小林進 同 山内孝夫 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2004/12/10 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の請求
被告は,原告に対し,160万円及びこれに対する平成16年10月9日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 |
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事案の概要
1 本件は,放電焼結装置に関する特許権(特許第2640694号,以下「本件特許権」という。)を有していた原告が,本件特許権について特許庁が平成13年7月4日付で行った取消決定(平成10年異議第70682号。甲2。以下「本件取消決定」という。)は,特許庁の担当審判官らが,異議申立人である住友石炭鉱業株式会社(以下「住友石炭鉱業」という。)の利益を図る目的で,同社の不利益になる特許公報(特許第96574号公報。甲3)及び実用新案公報(実公昭46-5289号公報。甲4。以下,これらを併せて「本件各公報」という。)を,故意又は過失により審理することなく決定した違法があり,同違法行為によって,原告は,本件特許権が存続していれば得られたであろう利益15億円相当の損害を被ったとして,国(被告)に対し,国家賠償法1条1項に基づき,上記損害金のうち金160万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定される事実。証拠により認定した事実については,末尾に証拠を掲げた。) (1) 原告は,放電焼結装置の発明に係る次の特許権を有していた(甲1,本件特許権)。 ア 特許番号 第2640694号 イ 発明の名称 放電焼結装置 ウ 出願日 平成2年9月18日 エ 出願番号 特願平2-248085 オ 公開日 平成4年1月14日 カ 公開番号 特開平4-9405 キ 優先日 平成2年2月2日 ク 優先権主張番号 特願平2-23962 (2) 本件取消決定がされた経緯等 ア 住友石炭鉱業は,平成10年2月13日,特許庁に対し,本件特許権について特許異議を申し立て,特許庁は,平成13年7月4日付で本件特許を取り消す旨の決定をした(平成10年異議第70682号。本件取消決定。甲2)。本件取消決定の担当審判官は,A,B及びC(以下,3者を併せて「本件各審判官」という。)であった(甲2)。 イ 原告は,同年8月21日,東京高等裁判所に,本件取消決定の取消を求める訴訟を提起したが,東京高等裁判所は,平成15年4月9日,原告の請求を棄却する旨の判決をした(平成13年(行ケ)第369号。甲11)。なお,住友石炭鉱業は,上記訴訟に,被告補助参加人として参加した(甲11)。 原告は,同月22日,上記高裁判決について,上告及び上告受理申立てをしたが,最高裁判所第一小法廷は,同年10月9日,上告棄却及び上告不受理決定をし,本件取消決定は確定した(平成15年(行ツ)第197号,同年(行ヒ)第203号。乙1)。 ウ 原告は,同年11月5日,本件取消決定確定後の同年10月20日に,本件各公報の存在を初めて知り,本件各公報によれば,本件特許権に取消理由はないことが明らかであるなどとして,東京高等裁判所に,再審の訴えを提起した。同裁判所は,平成16年6月30日,原告の上記再審の訴えを却下した(平成15年(行ソ)第9号。乙2。以下「本件再審訴訟」という)。 原告は,上記却下決定について,東京高等裁判所に,抗告許可の申立てをするとともに(平成16年(行ハ)第8号),最高裁判所に対して特別抗告をしたが(平成16年(行ト)第45号),東京高等裁判所は,同年7月30日,抗告を許可しない旨の決定をした(乙3)。 エ 原告は,同年8月3日,東京高等裁判所に,再度,再審の訴えを提起した(平成16年(行ソ)第15号)。 |
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争点
1 本件各審判官が,本件各公報について審理することなく本件取消決定をしたことが国家賠償法1条1項の違法行為に該当するか(争点1) 2 原告の被った損害額(争点2) |
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争点についての当事者の主張
1 争点1(本件各審判官が,本件各公報について審理することなく本件取消決定をしたことが国家賠償法1条1項の違法行為に該当するか) (原告) 特許庁長官と住友石炭鉱業は結託しており,本件各審判官は,住友石炭鉱業の利益を図る目的で,住友石炭鉱業に不利になる本件各公報について審理することなく本件特許権を取り消す旨の決定(本件取消決定)をした。特許庁長官と住友石炭鉱業が結託していることは,原告が,特許庁を相手方として,東京高等裁判所に本件取消決定の取消を求める訴訟を提起した際に,住友石炭鉱業が特許庁長官の補助参加人として参加していることから明らかである。本件各審判官が本件各公報を取り調べていれば,本件特許権が取り消されることはなかったのであり,本件各公報は特許庁が保管するものであるから,本件各審判官は,これを取り調べる職務上の注意義務があった。 以上のとおり,本件各審判官は,住友石炭鉱業の利益を図る目的で,故意又は過失により本件各公報について審理すべき職務上の義務に違反して,本件各公報について審理することなく本件取消決定をしたものであり,かかる行為は,国家賠償法1条1項所定の違法行為に当たる。 (被告) 国家賠償法1条1項の「違法」とは,公務員が個別の国民に対して負担する職務上の義務に違反することをいうが(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁),特許異議の申立てについて審判官がした取消決定につき,国家賠償法1条1項にいう違法行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには,単に取消決定に取消訴訟等の不服申立て制度によって是正されるべき法令違反等の瑕疵が存在するというだけでなく,違法な取消決定に対する救済を,当該不服申立て制度による取消決定の是正にゆだねるものとするだけでは不相当と解されるような特別の事情があることを必要とすると解すべきである(拒絶査定に対する不服の審判につき,東京地裁平成10年4月27日判決(平成5年(ワ)第23650号。乙5),東京高等裁判所平成12年3月22日判決(平成10年(ネ)第3054号。乙6),最高裁平成12年10月31日第三小法廷決定(平成12年(オ)第1187号,同年(受)第1025号。乙7)。 本件取消決定については,その取消訴訟の判決の既判力によって適法であることが確定している上,当該不服申立て制度による取消決定の是正にゆだねるものとするだけでは不相当と解されるような特別の事情をうかがわせるところもないから,本件各審判官が,本件各公報について審理することなく本件取消決定をしたことが,国家賠償法1条1項の違法行為に当たるということはできない。 2 原告の被った損害額(争点2) (原告) 住友石炭鉱業が製造販売する「放電プラズマ焼結機Dr.SINTER SPS-2040」(以下「対象品」という。)は,本件特許権の技術的範囲に属するから,住友石炭鉱業の上記行為は,本件特許権を侵害する行為である。住友石炭鉱業は,対象品の製造販売によって少なくとも15億円の利益を得ているから,原告は,上記本件特許権が存続していれば,住友石炭鉱業に対して同利益相当額の15億円の損害賠償金の支払を請求できたはずである。ところが,本件各審判官の前記違法行為により,住友石炭鉱業に対して上記支払請求ができないのであるから,原告は,本件各審判官の前記違法行為によって,少なくとも15億円の損害を被った。 (被告) 原告主張の損害額については,争う。 |
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当裁判所の判断
1 争点1(本件各審判官が,本件各公報について審理することなく本件取消決定をしたことが国家賠償法1条1項の違法行為に該当するか)について 特許異議の申立てについて特許庁の審判官がする審理及び決定は,裁判に類似した準司法手続によって行われ(平成15年法律第47号による改正前の特許法(以下,単に「法」という。)116条,117条2項,119条,120条の6等),審判官がした取消決定に対して不服がある場合には,これを是正するための救済手続が定められているのであるから(法171条1項,178条1項,民事訴訟法311条),審判官がした取消決定について国家賠償責任が肯定されるためには,取消訴訟等の救済方法で是正されるべき法令違背等の瑕疵等が存在するというだけでは足りず,違法な審理判断に対する救済を上記不服申立手続による救済にゆだねるだけでは不相当と解されるような特別な事情のあることを要するものと解すべきである。 本件において,原告は,本件各公報について審理していれば,本件特許権が取り消されることはなかったにもかかわらず,本件各審判官はこれを審理しなかった旨主張する。 特許庁の審判官は,特許異議申立てについての審理において,特許権者等が申し立てない理由についても審理することができるが(法120条1項),このことから直ちに審判官が特許庁の保管する公報について網羅的に審理する職務上の義務を負っているということはできない上,本件における証拠に照らしても,本件特許権に対する異議申立てについての審理において本件各公報の内容を斟酌していれば取消決定がされなかったと認めるには足りない(原告は,本件再審訴訟において,上記の点を主張し,この主張が採用されなかったことは,前記第2,2(2)ウ記載のとおりである。)。 さらに,原告は,本件各審判官は,住友石炭鉱業の利益を図る目的で,本来審理すべき本件各公報について審理することなく本件取消決定をした旨主張するが,証拠上,本件各審判官が住友石炭鉱業の利益を図る目的でことさら本件各公報についての審理を行わずに本件取消決定をした事実は,認められない。原告は,東京高等裁判所における本件取消決定に対する取消訴訟に住友石炭鉱業が特許庁長官の補助参加人として参加したことを指摘するが,かかる事実をもって,特許庁と住友石炭鉱業が結託し,又は,本件各審判官が,住友石炭鉱業の利益を図る目的で審理を行い,本件取消決定をしたと認めることは到底できない。 2 結論 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。よって主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 三村量一 |
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裁判官 | 古河謙一 |
裁判官 | 吉川泉 |