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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10008職務発明対価支払等請求控訴事件 判例 特許
平成19ネ10037損害賠償請求控訴事件 判例 特許
平成10ワ16832補償金請求事件 平成12ワ5572補償金請求事件 判例 特許
平成18ワ19307特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ネ10030損害賠償等請求控訴事件 判例 特許
関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  発明者 /  職務発明 /  共同発明 /  補償金請求権 /  時効 /  援用権(援用) /  特許料(維持年金) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  汎用品 /  実施料 /  共同発明者 /  実施許諾(実施の許諾) /  対価 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (ネ) 10077号 損害賠償請求控訴事件
控訴人X
被控訴人株 式会社日立製作所
訴訟代理人弁護 士城山康文
同 篠森重樹
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/05/30
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴を棄却する。
2控訴人の当審における予備的請求を棄却する。
3控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,617万2134円及びこれに対する昭和62年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事案の概要
1 事案の要旨被控訴人(1審被告)の元従業員である控訴人(1審原告)は,平成19年6月11日,被控訴人に対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法35条(以下,「特許法」という。)に基づき,控訴人が被控訴人に承継させた職務発明に係る特許権について,相当対価の一部として昭和61年実施分に対応する617万2134円の支払を求めて訴えを提起した(訴状送達日は,平成19年6月29日)。
原審は,控訴人が被控訴人から本件特許発明に係る特許を受ける権利承継対価の一部として平成3年3月ころに6万6660円を受領した時から10年経過後の平成13年3月ころに消滅時効が完成したことを理由として,控訴人が支払を求めていた昭和61年実施分の相当対価の支払請求を棄却した。
これに対して控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起し,当審において,予備的請求として,平成8年実施分の日本国内生産分全部に対する相当対価3054万8500円及びその遅延損害金の支払請求権の一部である617万2134円及びこれに対する弁済期である平成9年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求を追加した。
2 当事者間に争いがない事実,争点及びこれに関する当事者の主張次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「事案の概要」(原判決1頁21行目から8頁14行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 当審における控訴人の主張ア 昭和61年実施分の相当対価支払請求について被控訴人は,別件訴訟(東京地方裁判所平成10年(ワ)第16832号事件)において,「相当対価の支払は,年末の表彰後の褒賞金の支払のみにより行うものではなく,給料,退職金又は年金で支払う金額の中にも含められている。」旨主張している。そうすると,相当対価の支払時期は,年金の支払終了時になるはずであり,控訴人の年金の支払はまだ開始されていないから,相当対価の支払請求権の消滅時効も完成していない。
イ 平成8年実施分の相当対価支払請求について(ア) BA6303が本件特許発明実施品であることUnion Electronic Distributorsのネットカタログ(甲16)に,ローム株式会社(以下「ローム社」という。)の製造に係るBA6303について「HITACHIPARTS」と記載されていることからすれば,BA6303が,被控訴人の開発に係るローム社製造のICであることは明らかである。また,被控訴人のサービス技術資料(乙11)においても,BA6303(ソフトランディング制御用IC)が被控訴人製品(VT-F430,VT-F540,VT-S630,VT-S640)に使用されていることが記載されている。そして,別紙「計算機シミュレーションによる鋸歯波電圧のグラフ表示」及び別紙「計算機シミュレーションによるF/V変換器の変換効率に関する考察」によれば,BA6303が,本件特許発明実施したICであることは明らかである。
(イ) 平成8年実施分の相当対価の額a被控訴人の平成8年生産高=日本総生産台数×被控訴人のシェア×平均単価=6710万3000台×3.1%×2万9371円?垂U10億9700万円b特許収入=平成8年生産高×相当対価のみなしロイヤリティー率=610億9700万円×0.3%=1億8329万1000円c平成8年実施分の相当対価=みなし特許料×(1-被控訴人貢献度)×(他の共同発明者との関係での控訴人の貢献度)=1億8329万1000円×(1-0.5[被控訴人会社の貢献度50%])×(100%÷3)=3054万8500円よって,控訴人は,被控訴人に対し,特許法35条に基づき,?@主位的に,昭和61年実施分の相当対価617万2134円及びこれに対する昭和62年1月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,?A予備的に,平成8年の日本国内生産分全部に対する相当対価3054万8500円の一部である617万2134円及びこれに対する平成9年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2) 当審における被控訴人の反論ア 昭和61年実施分の相当対価支払請求に対し(ア)勤務規則等において,相当対価を分割支払とし,一定の期間ごとに特許発明実施の実績や実施料収入に応じた額を使用者から従業者に支払う旨の定めがされている場合にあっては,相当対価のうち分割された各期間における特許発明実施実施料収入に対応する分については,各期間に対応する分ごとに当該支払時期から消滅時効が進行すると解すべきである。
また,各期間における各支払が勤務規則等に基づき各支払時期に対応する期間についての特許発明実施実施料収入に対応する分として支払われたものであれば,その支払は,それ以前の期間に対応する相当対価に関するものではないから,それ以前の期間に対応する相当対価に関する時効完成前における債務の承認(民法147条3号)等に当たらないと解すべきである。
(イ)上記を前提とすると,昭和61年実施分の実績補償金支払請求権の消滅時効の起算日及び完成日は,次のとおりとなる。
a昭和61年1月1日から同年6月30日までの実績についての実績補償金実績補償金については,昭和57年5月6日付けで改正及び施行された「発明,考案等に関する表彰規程」(乙2)及びその第3条2項に基づき定められ同日付けで改正及び施行された「発明,考案等に関する表彰審査基準」(乙3)が,それぞれ適用される。乙3の第1.1条により特許賞の表彰が毎年行われ,同第2条柱書により「実施製品の売上高R」が特許賞の一つの基準とされ,同第2.2.1条により「前年7月初より当年6月末までの年間売上」が「売上高(R)」とされる。特許賞の金額は,乙2の第5条2項により定められていた。なお,本件特許の出願時に適用されていた昭和48年7月5日改正及び施行の「発明,考案等に関する表彰規程」(乙4)及びその第4条2項に基づき定められ同日付けで改正及び施行された「特許賞表彰審査基準」(乙5)も,同様に定められていた。
昭和60年7月1日から昭和61年6月30日までの期間の実績に対する特許賞は,乙2の第6条に基づく通達(乙6「昭和61年度特許関係表彰の件」)により,昭和61年12月下旬の社長表彰式で表彰され,遅くとも同年12月31日に支払われた。
したがって,上記の相当対価支払請求権の消滅時効の起算日は,昭和61年12月31日であり,平成8年12月31日の経過により,その消滅時効が完成した。被控訴人は平成19年11月28日の第1回口頭弁論期日においてその消滅時効援用した。
そして,上記の消滅時効は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払によっては,中断しない(この点,原判決は,「平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払」について,各支払の都度時効は中断したと判断している(原判決10頁15行〜16行)が,同支払は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払であるから,原判決の上記判断は誤りである。)。
b昭和61年7月1日から同年12月31日までの実績についての実績補償金昭和61年7月1日から昭和62年6月30日までの期間の実績に対する特許賞は,乙2の第6条に基づく通達(乙7「昭和62年度特許関係表彰の件」)により,昭和62年12月下旬の社長表彰式で表彰され,遅くとも昭和62年12月31日に支払われた。したがって,その消滅時効の起算日は,昭和62年12月31日であり,平成9年12月31日の経過により,消滅時効が完成した。被控訴人は平成19年11月28日の第1回口頭弁論期日においてその消滅時効援用した。
そして,この消滅時効は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払によっては中断しない(この点,原判決は,「平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払」について,各支払の都度時効は中断したと判断している(原判決10頁15行〜16行)が,同支払は,他の期間の実績に対する実績補償金の支払であるから,原判決の上記判断は誤りである。)。
(ウ)実績補償金請求権と年金請求権は全く別個の請求権であるから,相当対価の消滅時効が完成していないとする控訴人の主張は失当である。
イ平成8年実施分の相当対価支払請求に対し(ア)ローム社製品BA6303が本件特許発明実施製品であるとの立証がないことa被控訴人製品(VT-F430,VT-F540,VT-S630,VT-S640)で使用されているBA6303(ソフトランディング制御用IC)が本件特許発明実施製品であることを否認する。BA6303は,ローム社が汎用品として設計及び製造し,広く一般に販売した製品であり,被控訴人は,その設計又は製造に全く関与していない。したがって,被控訴人は,BA6303の回路構成についての資料を保有していない。
b本件特許発明の特許請求の範囲は,以下の構成要件に分説される(甲7の2)。
A入力信号の周波数に比例した繰り返し周波数で両者のパルス間隔が接近し第1のパルスより第2のパルスの方が先方した2つのパルスを発生するパルス発生回路と,Bこのパルス発生回路に接続され第1のパルスにより駆動され鋸歯状波を発生する鋸歯状波発生回路と,Cこのパルス発生回路に接続され第2のパルスにより駆動され鋸歯状波をサンプルホールドするサンプルホールド回路とを備え,D このサンプルホールド回路は,D1前記鋸歯状波発生回路にベースが接続されコレクタが電源の一端に接続された第1トランジスタと,D2第1トランジスタのエミツタと電源の他端間に接続されたコンデンサと,D3第1トランジスタのベースと電源の他端間に接続され第2のパルスにより駆動され第2のパルス入力時に第1トランジスタを導通してコンデンサに鋸歯状波をサンプルホールドするトランジスタ装置と,D4第1トランジスタのエミツタにコレクタが接続されエミツタが電源の他端に接続されベースに第2のパルスが入力されてコンデンサによるサンプリングを高速化する第2トランジスタとからなるE ことを特徴とするf-V変換器。
cこれに対して,BA6303のブロックダイアグラムを参照すると,BA6303の構成は,鋸歯状波発生回路とサンプルホールド回路とを有するが,以下のとおり,本件特許発明構成要件を充足するものではない(甲14)。
A パルス発生回路を有しているか否か不明である。
B鋸歯状波発生回路がパルス発生回路に接続されているか否か不明であり,また,第1のパルスにより駆動されているか否か不明である。
Cサンプルホールド回路がパルス発生回路に接続されているか否か不明であり,また,第2のパルスにより駆動されているか否か不明である。
DD1 第1トランジスタを有しているか否か不明である。
D2 コンデンサを有しているか否か不明である。
D3 トランジスタ装置を有しているか否か不明である。
D4 第2トランジスタを有しているか否か不明である。
d以上のように,BA6303が本件特許発明実施した製品であるとの立証はされていない。
(イ)また,被控訴人は,平成8年においてBA6303を使用していない。BA6303が搭載された被控訴人製ビデオデッキは,平成元年又は平成2年に発売された4機種(乙11記載のVT-F430,VT-F540,VT-S630,VT-S640)及び平成6年に発売された2機種(製品型番7B-S60,7B-F61)のみであり,これらのビデオデッキは,最も遅いものでも平成7年9月にはその生産を終了した。したがって,仮にBA6303が本件特許発明実施した製品であったとしても,平成8年において被控訴人による本件特許発明実施はない。
(ウ)さらに,被控訴人は,ローム社に対して本件特許の実施を許諾したことがなく,ローム社から本件特許の実施許諾対価を受領したこともなく,ローム社から本件特許発明について利益を得たこともない。したがって,本件特許発明の独占の利益を観念することができず,被控訴人が本件特許発明についての特許を受ける権利の譲渡を受けたことにより利益を受けたことはない。
(エ)平成8年1月1日から同年3月20日までの期間の実績についての実績補償金支払請求権の時効消滅平成8年1月1日から同年3月20日までの期間の実績についての実績補償金ついては,平成7年4月10日付けで改正及び施行がされた「発明考案等に関する補償規程」(乙8)並びにその第11条に基づき定められて同日付けで改正及び施行がされた「発明考案等に関する補償基準」(乙9)が,それぞれ適用される。乙8の第6条5項及び6項により実績補償金は毎年支払われ,乙9の「実績補償基準(発明考案)」第2.1条(1)により「前年3月21日より当該年度3月20日までの1年間」の売上高がベースとされた。そのため,平成7年3月21日から平成8年3月20日までの期間に係る実績補償金については,乙8の第6条6項により,遅くとも平成8年12月31日に支払われた。したがって,消滅時効の起算日は,平成8年12月31日であり,平成18年12月31日の経過により,その消滅時効が完成した。
被控訴人は,平成19年11月28日の第1回口頭弁論期日において,上記消滅時効援用する旨の意思表示をした。
当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する請求は,理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり,訂正付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の1及び2(原判決8頁18行目から10頁19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の訂正(1)原判決10頁14行目から16行目にかけての「平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払によりその都度中断したものの,」を,「平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払が昭和61年の実績に対する実績補償金の支払の趣旨を含んでいたと仮定した場合には,それらの支払によりその都度中断したということができるものの,」と改める。
(2)原判決10頁18行目の「認められる。」の次に,「なお,平成3年3月ころの6万6660円の支払及びこれに先立つ支払がいずれも昭和61年の実績分の実績補償金の支払の趣旨を含んでいなかったと仮定すると,昭和61年1月1日から同年6月30日までの期間の実績に係る実績補償金支払請求権の消滅時効の起算日は昭和61年12月31日のままであって消滅時効の中断がなく,平成8年12月31日の経過によりその消滅時効が完成したものと認められるとともに,昭和61年7月1日から同年12月31日までの期間の実績に係る実績補償金支払請求権の消滅時効の起算日は昭和62年12月31日のままであって同様に中断がなく,平成9年12月31日の経過によりその消滅時効が完成したものと認めることができる(乙2〜7)。」を加える。
(3)原判決10頁18行目の「そして,」の後に,「平成19年7月26日の口頭弁論期日において,」を加える。
2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 昭和61年実施分の相当対価支払請求権について控訴人は,被控訴人が,別件訴訟(東京地方裁判所平成10年(ワ)第16832号事件)において,相当対価の支払は,年末の表彰後の褒賞金の支払のみにより行うものではなく,給料,退職金又は年金で支払う金額の中にも含められている旨主張した点をとらえて,そうであれば,相当対価の支払時期は,年金の支払終了時になるから,相当対価の支払請求権の消滅時効も完成していないと主張する。
しかし,控訴人のこの主張は,以下のとおり理由がない。すなわち,被控訴人が別件訴訟においてした上記主張は,相当対価の額の算定に当たり考慮すべき諸事情の一つを述べたにすぎないものと理解すべきであって,年金支払請求権と実績補償金支払請求権とは別個の権利であることに照らすならば,被控訴人が上記主張をしたことにより,相当対価の支払時期が年金の支払終了時となるとすべき余地はない。
(2) 平成8年実施分の相当対価支払請求(予備的請求)についてア本件特許発明は,アナログ方式によるモータ制御に関するものであって(甲7の2),被控訴人においては,据置型ビデオカセットレコーダー(「VTR」又は「ビデオデッキ」)の主制御ICのモータ制御用として使用,実施していたものであるところ,例えば,被控訴人が製造していた「日立Hi-FiビデオデッキVT-F330」に関する「サービス技術資料」(平成1年5月。乙10)においては,「デジタルサーボシステム」として,「モータ或いはテープからの比較信号を基準信号とデジタル的に比較して誤差検出し,これをDC電圧に変換してモータ制御電圧とする」方式(デジタル方式)が採用されているとの記載がされ,更に「システムの主要部はメイン処理IC601内に含まれる」との記載がされており(乙10のサーボ回路1-2),「日立Hi-Fiビデオデッキ」に関する「サービス技術資料」(平成2年6月。乙11)の「主制御IC型式一覧表」によれば,その時点で販売されていた6機種について,サーボ系の「速度制御/位相制御」がすべて「HD49741NT(IC601)」とされているから,昭和61年ころには,ほぼ全数がデジタル方式による制御に移行し,遅くとも平成2年にはその移行が完了し,それ以降は,アナログ方式による主制御ICのモータ制御が行われることがなくなっていたものと認めることができる。そして,それから更に6年経過後の平成8年の時点においては,主制御ICのモータ制御について,本件特許発明実施されることはなかったものと認めるのが相当である。
イこれに対し,控訴人は,乙11によれば,BA6303が被控訴人製品(VT-F430,VT-F540,VT-S630,VT-S640)においてソフトランディング制御用ICとして使用されている旨記載されているが,同部品は,本件特許発明実施した製品であると主張する。
しかし,控訴人の上記主張は,以下のとおり採用できない。
まず,たとえローム社製造の上記製品BA6303が本件特許を実施した製品であると仮定したとしても,これを平成8年当時において被控訴人が生産販売していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,本件特許は,その第13年分から第15年分の特許料が平成5年6月29日に納付されていたにもかかわらず,第16年分特許料については,平成8年10月13日不納付を原因として平成9年9月3日にその登録が抹消されたこと(乙12特許登録原簿),被控訴人はBA6303を搭載したHi-Fiビデオデッキを平成8年には生産販売していなかったと述べられていること(乙14陳述書)を総合すれば,被控訴人は,平成8年に本件特許を実施していなかったものと認められる。そうすると,平成8年実績分に係る控訴人の被控訴人に対する実績補償金支払請求は,理由がない。
また,仮に,被控訴人が,平成8年に,ローム社製造のBA6303が搭載されたHi-Fiビデオデッキの生産販売を継続していたとしても,乙15(陳述書)によれば,被控訴人はBA6303を製造販売するローム社に対して本件特許の実施を許諾したことはなく,また,ローム社から本件特許の実施許諾対価を受領したこともないのであるから,ローム社の製品BA6303に関して平成8年実績分として被控訴人(使用者)の受けるべき利益が存在したと認めることができない。したがって,本件特許による利益の存在を前提とする平成8年実績分に係る控訴人の被控訴人に対する実績補償金支払請求は,理由がない。
3 結 論以上によれば,控訴人の被控訴人に対する特許法35条に基づく,昭和61年実施分の相当対価617万2134円及びこれに対する昭和62年1月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(主位的請求)及び平成8年の日本国内生産分全部の実績に対する相当対価3054万8500円の一部である617万2134円及びこれに対する平成9年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(当審で追加された予備的請求)は,理由がないのでいずれも棄却することとし,控訴人の請求(主位的請求)を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 嶋末和秀
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