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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ19959損害賠償請求事件 判例 特許
平成19ワ23460損害賠償請求事件 判例 特許
関連ワード 実施 /  侵害 /  不法行為(民法709条) / 
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事件 平成 20年 (ワ) 4号 損害賠償請求事件
神奈川県相模原市<以下略>
原告株式会社イー・ピー・ルーム 東京都港区<以下略>
被告住 友石炭鉱業株式会社
同 訴訟代理人弁護 士冨永敏文
同 尾原央典
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/05/23
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,40万円及びこれに対する平成19年11月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,被告が,原告作成に係る放電プラズマ焼結機の設計図及び部品図の原本を毀棄した行為が,原告の所有権に対する侵害に当たり,不法行為が成立すると主張して,原告が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,40万円及びこれに対する遅延損害金を支払うよう請求する事案である。
1原告の主張の要旨(1)原告は,放電焼結機の設計及び製造を業とする株式会社であり,平成6年1月14日,被告との間で,放電焼結機の販売に関する取引基本契約(甲10の2。以下「本件基本契約」という。)を締結し,同年9月ころ,被告2において原告の設計したSPS-S502放電プラズマ焼結機の製造を原告に発注するか否かを検討するため,被告に対し,同放電プラズマ焼結機の設計図及び部品図の写しを交付した。
原告は,同年10月7日,被告から,図面の修正,加筆等が必要であるとして,上記設計図及び部品図の原紙を交付するよう要請されたため,上記設計図及び部品図にそれぞれ自ら修正,加筆をした設計図及び部品図50枚(以下,これらの図面を合わせて「原告図面」という。)を作成し,これらの原紙を被告に送付した。
原告は,その後,被告に対し,原告図面を返却するよう求めたものの,被告は,原告の求めに応じることなく,原告図面を毀棄した。被告の上記行為は,原告の所有権に対する侵害に当たり,不法行為が成立する。
(2)被告は,本件基本契約に基づき,原告図面の所有権は被告に帰属すると主張する。しかしながら,原告は,被告に対し,原告図面の作成費用等について平成6年12月15日付け見積書(甲18)及び同月29日付け請求書(甲19)をそれぞれ被告に送付したにもかかわらず,被告は,原告に対し上記金員を支払っていないから,原告図面の所有権は原告に帰属する。
(3)原告は,被告が原告図面を毀棄したことにより放電プラズマ焼結機の受注活動を阻止され,40万円以上の得べかりし利益を失った。したがって,被告は,原告に対し,損害賠償として40万円を支払う義務がある。
2被告の主張の要旨本件基本契約においては,被告が原告に対して設計図等の作成を発注し,原告がこれを請け負うという関係にあった。本件基本契約につき作成された取引基本契約書19条には,「注文品又は請負の実施に付帯して作成された乙の図面,技術資料等の所有権は甲に帰属する。」と規定されており,同規定によれば,乙(原告)が甲(被告)に納品した原告図面の所有権は被告に帰属するから,原告の請求はその前提を欠いている。
3第3当裁判所の判断1証拠(甲4,10の1,2,甲12の1ないし51,甲13,15,16,18,19)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)原告は,平成6年1月14日,被告との間で,原被告間における請負又は物品の売買取引に関する取引基本契約である本件基本契約を締結した。
本件基本契約につき作成された取引基本契約書の19条は,注文品又は請負の実施に付帯して作成された原告の図面,技術資料等の所有権は被告に帰属する旨を規定している。
(2)原告は,平成6年9月ころ,被告において原告の設計したSPS-S502放電プラズマ焼結機を発注するか否かを検討するため,被告に対し,同放電プラズマ焼結機の設計図及び部品図の写しを交付した。
原告は,同年10月7日,被告から,上記図面に修正,加筆等を加えた設計図及び部品図の原紙を作成,交付するよう依頼されたため,原告図面を作成し,これらの原紙を被告に送付した。
(3)被告は,原告に対し,原告図面の作成費用を請求するよう求めた。原告は,被告の上記求めに応じて,被告に対し,原告図面の作成費用等について平成6年12月15日付け見積書(合計56万3781円)及び同月29日付け請求書(合計48万1381円)を送付した。
(4)原告は,被告との間における,知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10015号損害賠償請求控訴事件において,平成19年4月4日,原告図面を対象とする文書提出命令の申立てを行った。
被告は,上記文書提出命令の申立てに関し,同年6月18日付け意見書(補充書)において,原告図面は現存しない旨回答した。
2上記1で認定した事実によれば,本件基本契約につき作成された取引基本契約書19条には,注文品又は請負の実施に付帯して作成された原告の図面,技術資料等の所有権は被告に帰属する旨の規定がある。そして,原告は,被告の4依頼に基づき原告図面を作成し,その作成費用を被告に請求したというのであるから,原被告間には原告図面の作成を内容とする請負契約が成立したものということができる。したがって,原告図面は,取引基本契約書19条にいう請負の実施に付帯して作成された原告の図面に当たるというべきである。
そうすると,原告図面の所有権は被告に帰属すると認められるから,原告の所有権侵害の主張はその前提を欠くものである。
原告は,被告が原告図面の作成費用を支払っていないことを理由に,原告図面の所有権は原告に帰属していると主張する。
被告が,原告に対し,原告図面の作成費用を支払ったことを認めるに足る証拠はない。しかしながら,取引基本契約書19条は,請負契約等に基づき原告が作成した図面等の所有権は被告に帰属する旨を規定するのみで,所有権の帰属を代金の支払にかからしめておらず,他に,原被告間において,被告が原告図面の作成費用を支払わない限り原告図面の所有権は被告に帰属しない,との合意があったことを認めるに足る証拠はない。そして,本件全証拠によっても,原告が,平成6年12月に原告図面の作成費用等の請求書を送付して以降,本件訴訟に至るまでの間に,被告に対し上記作成費用等の支払を催告した形跡はない。そうすると,被告による作成費用の支払の証明がないからといって,直ちに,被告について原告図面の所有権帰属の効果が生じないということはできない。原告の上記主張は,採用することができない。
3よって,原告の本訴請求は,その余について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。