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関連ワード 特許を受ける権利 /  承継 /  共同研究 /  権利移転 /  共有 /  債務不履行 /  悪意 /  意匠権 /  商標権 /  対象製品 /  信義則 /  特許発明 /  実施 /  持分譲渡(持分の譲渡) /  同意 /  実施許諾(実施の許諾) /  移転登録 /  対価 / 
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事件 平成 19年 (ワ) 16411号 無効確認等請求事件
大阪府豊能郡
原告西 淀空調機株式会社大阪市
原告株 式会社西淀鉄工所大阪市
原告X 東京都
被告株 式会社日本イトミック
訴訟代理人弁護士伊藤勝彦
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2008/05/20
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1請求の趣旨(1)被告は,この判決確定の日の12か月後の日限り,原告西淀空調機株式会社に対し,別紙特許権目録記載の特許権について特許権移転登録手続をせよ。
(2)被告は,この判決確定の日の12か月後の日限り,原告株式会社西淀鉄工所に対し,別紙不動産目録記載の各不動産について所有権移転登記手続をせよ。
2(3)被告は,原告西淀空調機株式会社に対し,2000万円を支払え。
(4)被告は,原告Xに対し,2800万円を支払え。
(5)訴訟費用は被告の負担とする。
(6)仮執行宣言2請求の趣旨に対する答弁主文と同旨第2当事者の主張1原告らの請求原因(1)原告西淀空調機株式会社(以下「原告西淀空調機」という )は,平成 。
17年3月29日,被告との間で別紙財産目録記載の財産を代金4億4900万円で被告に譲渡する旨の営業譲渡契約(以下「本件営業譲渡契約」という )を締結した。。
(2)さらに,原告株式会社西淀鉄工所(以下「原告西淀鉄工所」という )。
は,平成17年4月21日,被告との間で別紙不動産目録記載の各不動産(以下「本件不動産」という )を代金5億5100万円で被告に売る旨の 。
不動産売買契約(以下「本件売買契約」といい,本件営業譲渡契約と本件売買契約を併せて「本件各契約」ともいう。また,本件各契約に基づく営業譲渡を,以下「本件営業譲渡」という )を締結した。 。
(3)原告X(以下「原告X」という )は,本件各契約の締結に先立つ平成 。
17年2月25日,被告との間で,被告が本件営業譲渡後も,瞬間式のSHP及び3馬力以下(家庭用)の貯湯式のSHP(以下「本件対象製品」という )を,原告X又は同原告が全部若しくは一部出資する法人において製造 。
販売することを承諾し,本件対象製品に関連する特許権の実施許諾をすること等を内容とする覚書(甲1。以下「本件覚書」という )を取り交わし, 。
。。 本件覚書に基づく上記内容の合意(以下「本件覚書合意」という )をした(4)本件営業譲渡契約上,本件営業譲渡の対象となった他社との共有に係る3特許権のうち,T電力株式会社(以下「T電力」という )との共有特許権 。
(以下「本件共有特許権」という )については,原告西淀空調機の共有持 。
分を被告に譲渡するに当たり必要なT電力の同意は,被告においてこれを取り付けることと合意された。しかるに,被告は,T電力からその同意を取り付けることができなかった。
(5)T電力の同意が得られなかったため,被告は原告西淀空調機から本件共有特許権の持分を取得することができず,その移転登録を受けることもできなくなった。そのため,原告西淀空調機は,被告から本件覚書合意に基づく本件共有特許権の実施許諾を受けることができない。
(6)本件各契約は,本件覚書合意が履行されることがその成立のための条件であったから,上記前提条件が履行されない以上,本件各契約は条件不成就ないし錯誤により無効である。
また,本件営業譲渡契約は,強行法規である特許法33条,73条に違反する法律行為であり,無効である。
さらに,被告が本件覚書合意を履行しないことは,本件各契約上の債務不履行であるから,本訴状をもって本件各契約を解除する。
(7)被告は,本件覚書合意を履行せず,本件営業譲渡契約が成立していないことを知り,その結果,本件共有特許権の持分が原告西淀空調機にあり,被告にはないことを知りながら,これを解決しないまま本件共有特許権に係る特許発明実施して,生産販売したから,悪意の占有者である。したがって,被告は,原告西淀空調機に対し,平成17年4月1日から今日までに販売したCO2給湯器の売上金額の1%である2000万円を支払うべき義務がある。
(8)被告が本件覚書合意を履行しないため,原告Xは本件共有特許権の実施許諾を受けることができず,その事業活動ができなかった。そのため,原告Xが平成17年8月以降1か月100万円,合計2800万円の損害を被っ4たから,被告は原告Xに対し同額の支払義務がある。
(9)よって,被告に対し,原告西淀空調機は,本件営業譲渡契約の無効により回復した別紙財産目録記載の財産中の別紙特許権目録記載の特許権(以下「対象特許権」という )に基づき,又は同契約を債務不履行により解除し 。
たことによる原状回復請求権に基づき,その移転登録手続を求めるとともに,上記(7)の2000万円の支払を求め,原告西淀鉄工所は,本件売買契約の無効により回復した本件不動産の有権又は同契約を債務不履行解除した所ことによる原状回復請求権に基づき,本件不動産の移転登記手続を求め,被告Xは,上記(8)の2800万円の損害賠償を求める。
2請求原因に対する被告の認否及び主張(1)請求原因(1)(本件営業譲渡契約の締結)は認める。
(2)請求原因(2)(本件売買契約の締結)は認める。
(3)請求原因(3)(本件覚書合意の成立)は認める。
ただし,本件覚書合意の趣旨は,次のとおりである。すなわち,本件共有特許権は,本件覚書締結当時,原告西淀空調機とT電力の共有に属していたものであり,被告は権利者ではなかったから,被告が原告Xに対し「特許権の実施許諾をする」といっても,直ちになし得るものではなく,被告が原告Xに対して本件特許権の実施許諾をすることができるのは,本件営業譲渡に伴い本件共有特許権の持分の譲渡を受け,それについてT電力の同意を得た後である。しかし,T電力から同意が得られるか否かは本件覚書締結時点では不明であった。そこで,T電力が権利移転同意し,それにより被告が共有者となった場合には,原告Xに対し本件共有特許権の実施許諾をするというのが本件覚書合意の趣旨であった。
(4)請求原因(4)(T電力に対する同意の取り付け)は認める。ただし,本件覚書合意は,被告が原告Xに対しT電力からの権利移転同意を取り付ける5ことまでを約したものではない。本件覚書には,T電力により権利移転同意がなされることを被告が保証した規定はない。T電力は,その判断により権利移転についての諾否を自由に決定し得るのであり,被告において上記のような保証をなし得るものではない。本件営業譲渡契約には,被告がT電力の同意を取り付ける旨の規定があるが,同規定は,本来,営業譲渡財産に係る制限物権等の解除は譲渡人において行うべきところ(本件営業譲渡契約12条参照 ,したがって,共有特許権等の持分の移転についての共有者から )の同意の取り付けについても譲渡人である原告西淀空調機が当然行うべきところ,本件共有特許権についてのみ,その履行を免除したものであり,被告が原告西淀空調機や原告X個人に対して同意の取り付け義務を負担したというものではない。
また,仮に,原告Xとの関係で同意の取り付け義務を被告が負担しているとしても,T電力が権利移転同意をしないのは,原告西淀空調機がT電力との間で締結した共同研究契約(乙3。以下「本件共同研究契約」という )において定められている事前承認手続を怠ったことに原因があるので 。
あり,被告にその責任はない。
(5)請求原因(5)は認める。
(6)請求原因(6)の主張は争う。
本件営業譲渡の前提条件は,本件覚書の締結であり,本件覚書の履行ではない。すなわち,被告は,原告Xに対し本件対象製品の製造販売を承諾し,関連する特許権の実施許諾をすること,その対価として原告Xは被告に対し一定のロイヤリティを支払うこと,原告Xは本件対象製品以外のCO2給湯機を一切製造販売しないこと等,本件覚書に定められた一定の内容の合意をし,被告と原告Xが当該合意に基づく一定の権利義務を負担することが本件営業譲渡の「条件」であった(本件覚書冒頭部分「甲に譲渡するための条件として・・・合意する。そして,現に,被告は原告Xと本件覚書を締結 」)6し,これにより本件営業譲渡の「条件」は成就している。だからこそ,原告Xは,後に原告西淀空調機及び原告西淀鉄工所の代表者として,本件各契約に係る契約書に調印しているのである。この点,もし,本件覚書の履行が前提条件(ないし停止条件)であれば,上記各契約書にその旨の記載がされるはずであるが,そのような記載はない。また,時系列的に考えても,被告が原告Xに対して特許権の実施許諾をなし得るのは,本件営業譲渡が実行され,原告西淀空調機から特許権の移転を受けた後であるから,本件覚書の履行が本件営業譲渡の条件になるはずがない。
(7)請求原因(7)は否認ないし争う。
(8)請求原因(8)は否認ないし争う。
3被告の主張に対する原告らの反論(1)被告は,本件覚書合意の趣旨はT電力が権利移転同意しそれにより被告が共有者となった場合には原告Xに対し本件共有特許権の実施許諾をするというものである旨主張する。しかし,そのような趣旨であれば,本件覚書にそのように明記するはずである。
(2)被告は,本件覚書合意は被告が原告Xに対しT電力からの権利移転同意を取り付けることまで約したものではなく,本件覚書にはT電力により権利移転同意がなされることを被告が保証した規定はない旨主張する。しかし,上記同意がなされることを被告が保証した規定はないものの 「同意は ,被告が取り付ける」と明記され 「本件営業譲渡する条件である」と明記さ ,れ,その条件が履行されていないのであるから,本件営業譲渡契約は無効である。また,被告は,原告Xとの関係で同意の取り付け義務を被告が負担しているとしても,T電力が権利移転同意をしないのは,原告西淀空調機が本件共同研究契約において定められている事前承認手続を怠ったことに原因があるのであり,被告にその責任はない旨主張する。しかし,事前であろうが事後であろうが,T電力の同意は被告で取り付ける旨が明記されており,7その義務が被告にあることは明らかであって,T電力の同意が得られるのが難しい見通しであるなら,本件各契約の締結時に契約を延期するなり,少なくとも問題を解決していく責任・義務は被告にあった。
なお,原告西淀空調機が本件共同研究契約において定められている事前承認手続をとっていないことは認める。
(3)被告は,本件営業譲渡の前提条件は本件覚書の締結であり,本件覚書の履行ではない旨主張するが,この主張は原告Xを騙して契約させた証拠である。
第3当裁判所の判断1請求原因(1)ないし(3)の事実,すなわち,本件営業譲渡契約,本件売買契約及び本件覚書合意が成立したことは,いずれも当事者間に争いがない。なお,本件各契約は,いずれも原告西淀空調機の民事再生手続開始に伴い,同原告の営業の全部を譲渡することを目的として締結されたものであるところ,同原告が使用する工場及び工場敷地が原告西淀鉄工所の所有であったことから,契約書は,事業譲渡に係る営業譲渡契約書(甲2)と不動産譲渡に係る不動産売買契約書(甲3)とに分けて作成されたものの,本件各契約に基づく営業譲渡が一体のもの(本件営業譲渡)であることは明らかである(上記営業譲渡契約書(甲2)第14条2参照 。)2請求原因(4),(5)の事実は,当事者間に争いがない。もっとも,被告は,次のとおり主張する。すなわち,本件覚書合意は,T電力が権利移転同意してそれにより被告が本件共有特許権の共有者となった場合に,原告Xに対し本件共有特許権の実施許諾をするというものであった。そして,本件営業譲渡契約上の共有特許権等の持分の移転についての共有者からの同意の取り付けは,本来,譲渡人である原告西淀空調機が当然行うべきところ,本件共有特許権についてのみ,その履行を免除したものであり,被告が原告西淀空調機や原告X個人に対して同意の取り付け義務を負担したというものではない,と。
8(1)証拠(甲1)によれば,本件覚書には,その前文で原告西淀空調機の「営業全部を甲(被告)に譲渡するための条件として,下記のとおり合意する 」とした上,被告が原告Xに対し,本件対象製品を原告X又は同原告が 。
全部若しくは一部出資する法人において製造販売することを承諾し,本件対象製品に関連する特許権の実施許諾をする旨,原告Xは被告に対しその実施許諾対価として売上高の0.5%に相当するロイヤリティにT電力に対して支払うロイヤリティを上乗せした金額を3か月ごとに支払う旨等の約定記載があることが認められる。
(2)そして,証拠(甲2)によれば,本件営業譲渡契約に係る契約書には,次の各条項があることが認められる。
第7条2譲渡財産のうち,別紙財産目録3記載の特許権,実用新案権,意匠権及び商標権(以下 「工業所有権」と総称する )並びに , 。
特許,実用新案登録,意匠登録及び商標登録を受ける権利(以下,「登録権」と総称する )については,乙(原告西淀空調機)が 。
甲(被告)に対し,工業所有権の移転及び登録権の承継に必要な下記の書類を引き渡すことをもって,引き渡しを完了したものとみなす。なお,工業所有権及び登録権の移転,承継に必要な手続費用は甲(被告)の負担とする (以下省略) 。
3共有にかかる工業所有権及び登録権の移転,承継についての乙(原告西淀空調機)以外の共有者の同意の取り付けについては,次のとおりとし,共有者の同意を得るために要した費用は各自の負担とする。
?@共有者がT電力の場合甲(被告)にて同意を取り付ける?A共有者がT電力以外の場合乙(原告西淀空調機)にて同意を取り付ける第12条譲渡財産に第三者の権利が附されている場合等,譲渡財産に本9営業の適正かつ円滑な遂行を妨げる重要な法律上又は事実上の障害が存在するときは,乙(原告西淀空調機)は第4条の残代金決済時までにその全てについて障害の除去を完了するものとする。
(3)上記(1)の本件覚書の約定記載によれば,被告は,本件営業譲渡契約により取得した本件対象製品の関連特許権の持分を取得した後,原告X又は同原告が全部若しくは一部出資する法人にその実施を許諾し,本件対象製品を原告X等が製造販売することを承諾し,その対価としてロイヤリティの支払を受けることとされているのであり,本件営業譲渡が履行されて被告が本件対象製品の関連特許権の共有持分を取得することがその前提とされていたことが明らかである。
(4)そして,売買契約の対象となる財産中に他人の権利の対象とされる財産が存在するなど,売買による権利移転を妨げる障害事由があるときは,特段の合意がない限り,売主において他人から権利を譲り受けるなどして,買主への権利移転を妨げる障害事由を除去すべき義務を負うものというべきである(民法560条参照 。この理は,当然,営業譲渡契約にも当てはまると )ころ,本件営業譲渡契約第12条が上記(2)のとおり定めているのは,上記民法560条の趣旨を,本件営業譲渡契約の上で確認的に明らかにしたものにほかならない。
しかして,営業譲渡の対象財産中に第三者との共有に係る特許権が存する場合,その共有持分を譲渡するためには,他の共有者の同意を得なければならない(特許法73条1項)から,第三者の同意を欠く特許権の共有持分の譲渡は,営業譲渡による権利移転を妨げるべき障害事由を有することになる。
これを本件営業譲渡契約についてみると,T電力との共有に係る本件共有特許権については,その同意取得に関し特段の合意がなければ,本来,譲渡人である原告西淀空調機が上記障害事由を除去すべき義務,すなわち,本件共有特許権の自己の共有持分を被告に対する営業譲渡の対象とするのに共有者10であるT電力の同意を取得すべき義務を負うことになる。
ところが,本件営業譲渡契約第7条第3項は,本件共有特許権を除く共有特許権に関しては原告西淀空調機が他の共有者の同意を取得することとされているのに,本件共有特許権に関する限り,被告において共有者であるT電力の同意を取り付ける旨定めている。したがって,原告西淀空調機は,上記条項により,本件共有特許権に関する限り共有者であるT電力の同意を取得すべき義務を免除されたものであることが明らかである。
問題は,上記条項が,さらに進んで,被告に対し,T電力の同意を得るべき義務を原告西淀空調機に対して負わせたものであるか否かであるので,以下検討する。
(5)本件営業譲渡契約に係る契約書の文言は上記(2)のとおりであり 「共有,者がT電力の場合甲(被告)にて同意を取り付ける」と定められているにとどまり 「共有者がT電力の場合」すなわち本件共有特許権に関してその ,譲渡にあたり被告にその同意を取り付けるべき義務を負わせたものか,単に事実上被告に同意を取り付ける手続をとらせるというにとどまるのかは,文言上は必ずしも明らかとはいえない。しかし,上記のとおり,本来,売買契約の対象となる財産中に他人の権利の対象とされる財産が存在するなど,売買による権利移転を妨げる障害事由があるときは,特段の合意がない限り,売主において他人から権利を譲り受けるなどして,買主への権利移転を妨げる障害を除去すべき義務を負うものであり,そのことを注意的に確認する本件営業譲渡契約第12条が設けられていることからすると,同契約第7条第3項がいかなる経緯で設けられたものであるかはともかく,同条項をもって,営業譲渡人(売主)たる原告西淀空調機に対しT電力の同意を取り付ける義務を免除したものであることを超えて,逆に営業譲受人(買主)たる被告にその義務を負わせたものと解することは困難である。
(6)加えて,原告西淀空調機は,T電力との間で締結した本件共同研究契約11において定められている事前承認手続を履践しておらず(このことは当事者間に争いがない,乙第7号証及び弁論の全趣旨によれば,このことが本 。)件共有特許権の持分を被告に移転することについてT電力の同意が得られない理由であると認められるから,T電力の同意を取り付けることができないという事態を招いたのは,原告西淀空調機自身であるということができる。
このような場合,本件営業譲渡契約上,被告がT電力の同意を取り付けることとされているからといって,その同意が取り付けられなかったことを被告の債務不履行であるということはできない。
3請求原因(6)について検討する。
(1)原告らは,本件各契約は本件覚書合意が履行されることがその成立のための条件であった旨主張する。原告らの上記主張は,本件覚書合意が履行されることが本件各契約の成立ないし効力発生の停止条件である,すなわち,本件覚書合意が履行されるまで本件各契約の成立ないし効力は停止されるのであり,本件各契約は停止条件不成就により不成立に帰し,又は失効したとの趣旨をいうものと解される。しかし,上記2のとおり,本件覚書合意を履行するためには,本件営業譲渡契約に定める本件共有特許権を含む共有特許権の原告持分を各共有者の同意を得て被告が取得することが前提となっているのであって,逆に,本件覚書合意の履行が本件各契約の成立ないし効力発生の前提条件ないし停止条件となっているというのは,それ自体論理矛盾であって,原告ら及び被告の合理的意思に合致しないといわざるを得ない。
(2)また,本件覚書(甲1)には 「甲(被告)と乙(原告X)は,西淀空 ,調機株式会社の営業全部を甲(被告)に譲渡するための条件として,下記のとおり合意する 」として,被告が原告Xに対し,本件営業譲渡後も本件対 。
象製品を原告X又は同原告が全部若しくは一部出資する法人(原告西淀空調機)において製造販売することを承諾し,本件対象製品に関連する特許権の実施許諾をする旨定めているところ,上記規定にいう「譲渡するための条件12として,下記のとおり合意する 」という文言を素直に読めば,本件営業譲 。
渡の条件となるのは本件覚書合意を行い,本件覚書を取り交わすことにあることが明らかであって,明文の規定がないのに,それを超えて本件覚書の内容が履行されるか否かということ自体が本件営業譲渡の成立ないし効力発生の条件であると認めることは困難である。
(3)以上のとおり,本件各契約が,停止条件不成就により不成立ないし失効するとか,錯誤により無効となるものということは到底できない。
(4)また,被告が本件覚書合意の履行を怠ったときは,本件覚書合意自体の債務不履行責任としてこれによって原告Xの被った損害を賠償すべき責任を負うのは当然であるが,被告が本件覚書に記載の「瞬間式のSHP及び3馬力以下(家庭用)の貯湯式のSHP(本件対象製品)に関連する特許権の実施許諾」を不履行としたのは,前記2で説示したとおり,原告西淀空調機がT電力との間で締結した本件共同研究契約において定められている事前承認手続を履践しなかったことによるものであり,いわば同原告が自ら招いた事態であるから,本件において,同原告が,本件覚書合意の不履行を理由に被告に対して本件各契約の無効を主張し,又は債務不履行解除を主張するのは,信義則に反し許されないものというべきである。
(5)原告らは,本件営業譲渡契約は強行法規である特許法33条,73条に違反する法律行為であり,無効である旨主張する。特許を受ける権利(同法33条)又は特許権(同法73条)が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,その持分を譲渡することができないと定めている(同法33条3項,73条1項)ところ,本件営業譲渡契約は,共有に係る特許権等については他の共有者の同意を得ることを前提としているから,何ら特許法の上記各条項に違反するものではない。本件のように,本件共有特許権の原告西淀空調機持分の取得について,結局T電力の同意が得られなかったとしても,そのことによって営業譲受人である被告が同持分を取得で13きないということになるにすぎず,本件営業譲渡契約全体の効力に影響を及ぼすものではない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。
(6)その他,原告らは縷々主張するが,いずれも当裁判所の上記判断を左右するものではない。
4以上のとおり,本件各契約は,停止条件不成就により不成立ないし無効に帰し,又は錯誤により無効に帰するものではなく,また,債務不履行により解除されたということもできない。したがって,これらのことを前提する原告らの本件各請求は,その余の請求原因事実について判断するまでもなくいずれも理由がなく,これを棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中俊次
裁判官 西理香
裁判官 松宏之
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