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関連審決 不服2007-8698
関連ワード 頒布された刊行物 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  慣用技術 /  発明の詳細な説明 /  容易に想到(容易想到性) /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10346号 審決取消請求事件
原告X
被告特許庁長官 肥塚雅博
指定代理人五十幡直子
同 岡田孝博
同 森川元嗣
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/04/28
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2007-8698号事件について平成19年9月4日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,原告が名称を「建築用金物」とする発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
争点は,特開平8-302817号公報(発明の名称「軸組固定構造」,出願人M・H,公開日平成8年11月19日。以下,これを「引用例1」といい,この発明を「引用例1発明」という。乙1)との関係における進歩性の有無(特許法29条2項),である。
第3当事者の主張1 請求の原因 特許庁における手続の経緯原告は,平成10年4月15日,名称を「建築用金物」とする発明について特許出願(請求項の数6。以下「本願」という。特願平10-104268号。公開特許公報は特開平11-293782号[乙11])をしたが,平成18年11月13日付けで拒絶理由通知(乙9)を受けたので,平成18年12月6日付けで特許請求の範囲等の変更を内容とする補正(第1次補正。請求項の数1。乙12)をしたものの,平成19年3月2日付けで拒絶査定(乙10)を受けた。
そこで原告は,平成19年3月27日付けで不服の審判請求をしたので,特許庁は,上記審判請求を不服2007-8698号事件として審理することとした。その手続の中で原告は,平成19年4月26日付けで特許請求の範囲変更を内容とする補正(第2次補正。請求項の数1。以下「本件補正」という。乙13)をしたが,特許庁は,平成19年9月4日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は平成19年9月14日原告に送達された。
 発明の内容ア 本件補正前(第1次補正後)のもの本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容は,次のとおりである(以下この発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】直角三角形の金属板と,前記金属板の周囲に設けたフランジと,前記フランジのうち直角を挟む2辺のフランジに空けた複数個の孔と,前記フランジのうち斜辺のフランジに設けた工具を挿入するための作業孔と,前記金属板の中心に軽量化されるように形成したくり抜き部と,前記金属板に対し前記フランジを直角に折り曲げ隣接するフランジの端部同士を溶接で固定した溶接部とからなり,建物の梁と柱,柱と土台,梁同士又は土台同士の直角な四隅の接合部に対し,直角を挟む2辺のフランジを接合部の中心線上にあてがい,釘又はネジ又はボルトを孔に通して接合部へ固定することにより,接合部の変形を防止すると共に接合部の強度を補強することを特徴とする建築用金物。」イ 本件補正後のもの本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の内容は,次のとおりである(以下この発明を「本願補正発明」という。下線部は本件補正に係る部分)。
「【請求項1】直角三角形の金属板と,前記金属板の周囲に設けたフランジと,前記フランジのうち直角を挟む2辺のフランジに空けた複数個の孔と,前記フランジのうち斜辺のフランジに設けた工具を挿入するための作業孔と,前記金属板の中心に軽量化されるように形成したくり抜き部と,前記金属板に対し前記フランジを直角に折り曲げ隣接するフランジの端部同士を溶接で固定した溶接部とからなり,建物の梁と柱,柱と土台,梁同士又は土台同士の直角な四隅の接合部に対し,直角を挟む2辺のフランジを接合部の中心線上にあてがい,釘又はネジ又はボルトを孔に通して接合部へ固定することにより,接合部の変形を防止すると共に接合部の強度を建造中あるいは既存の木造家屋において補強することを特徴とする建築用金物。」 審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は, 本願補正発明は,前記引用例1発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は認められない, 本願発明は,引用例1発明及び周知慣用技術に基づいて容易に発明することができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
イなお,審決が認定する引用例1発明の内容,同発明と本願補正発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
〈引用例1発明の内容〉「金属製の直角三角形状支持板10と,前記支持板10の周囲に設けた固定片11,11及び補強片12と,前記固定片11,11に空けた複数個のネジ挿通孔15と,前記補強片12に設けたドライバー挿通用開口部16,17と,前記支持板10に対し前記固定片11,11及び補強片12を直角に突設し固定片11,11と補強片12とが溶接により接合される溶接連結部Wとからなり,横部材と直交する縦部材,又は横部材と他の横部材の隅角部に対し,固定片11を隅角部にあてがい,ネジ18をネジ挿通孔15に通して隅角部へ固定する固定具8」〈一致点〉「直角三角形の金属板と,前記金属板の周囲に設けたフランジと,前記フランジのうち直角を挟む2辺のフランジに空けた複数個の孔と,前記フランジのうち斜辺のフランジに設けた工具を挿入するための作業孔と,前記金属板に対し前記フランジを直角に設けて隣接するフランジの端部同士を溶接で固定した溶接部とからなり,建物の梁と柱,柱と土台,梁同士又は土台同士の直角な四隅の接合部に対し,直角を挟む2辺のフランジを接合部にあてがい,釘又はネジ又はボルトを孔に通して接合部へ固定することにより,接合部の変形を防止すると共に接合部の強度を建造中あるいは既存の木造家屋において補強することを特徴とする建築用金物。」である点〈相違点1〉金属板の中心に,本願補正発明では,軽量化されるようにくり抜き部が形成されているのに対して,引用例1発明では,前記くり抜き部が形成されていない点。
〈相違点2〉金属板に対しフランジを直角に設ける場合に,本願補正発明では,折り曲げているのに対して,引用例1発明では,前者のように折り曲げていない点。
〈相違点3〉直角を挟む2辺のフランジを接合部にあてがうに際して,本願補正発明では,接合部の中心線上にあてがっているのに対して,引用例1発明では,接合部に中心線の明示がないため,前者のようにあてがっているかどうか不明である点。
 審決の取消事由詳細は,別紙「原告の主張」のとおりであるが,本願補正発明及び本願発明は,日本住宅新聞に震度8にも耐えるASP工法と報道され,茨城県知事にもその旨認定されているように,特許法の定める要件を満たしているから,特許されるべきであり,引用例1発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたとする審決は,誤りである。
2請求原因に対する認否請求原因 ないし  の各事実は認めるが,  は争う。
3被告の反論引用例1(乙1)の段落【0004】あるいは【0026】の記載からみて,引用例1発明が耐震性の向上を目的としたものであることは明らかであり,そして,耐震性の程度は,当業者ならばその寸法・材料等を選択することにより適宜決定し得る事項であるといえる。してみると,原告が本願発明又は本願補正発明の効果であるとする,「震度8にも耐える」及び「震度4の地震が来ても少しも揺れない」という効果も,引用例1の記載から当業者ならば十分予測し得る程度の事項にすぎないのみならず,本願発明又は本願補正発明ではその寸法等が限定されていないことから,どの程度の耐震性を有するものかは不明であり,原告の主張は失当である。
また,審決の理由において,認定判断に誤りはなく,違法性はない。
したがって,審決中の「理由」に記載される内容を根拠として,「本件審判の請求は,成り立たない。」とした結論にも違法性はない。
第4当裁判所の判断1請求原因 (特許庁における手続の経緯),  (発明の内容),  (審決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。
2審決の適否についての判断特許庁が本件について平成19年9月4日になした審決は,前記のとおり,原告出願(出願日平成10年4月15日)に係る本願補正発明及び本願発明は,その出願前に頒布された刊行物である引用例1(公開特許公報,特開平8-302817号公報,発明の名称「軸組固定構造」,出願人M・H,公開日平成8年11月19日)に記載された発明(引用例1発明)との関係で,特許法29条2項(特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは,その発明については,同項の規定にかかわらず,特許を受けることができない)の要件を満たさないから,特許を受けることができないとしたものであるが,原告はこの判断は誤りであると主張するので,以下,同判断の適否について検討する。
 原告は,まず,  本願発明(本願補正発明)は,地震国である日本国民の生命を助ける良い発明であるから,特許すべきである, 本願発明(本願補正発明)を用いた工法によって施工すると,震度8にも耐える,震度4の地震が来ても少しも揺れないなどと主張するところ,それ以上に審決が違法である理由を具体的に主張しないから,上記主張だけでは審決の取消事由ということはできない。
 一方,審決は,原告が平成19年4月26日付けでなした補正の申出(本件補正。その申出に係る発明が本願補正発明)は前記引用例1発明との関係で進歩性を有しない(特許法29条2項)としてこれを却下した上,本件補正前の発明である本願発明(平成18年12月6日付け補正[第1次補正]に係るもの)も同様に進歩性を有しないとしたものであるので,以下,本願補正発明及び本願発明につき進歩性を有するか(すなわち,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者[当業者]が引用例1発明に基いて本願補正発明及び本願発明を容易に発明をすることができたか)について判断する。
 本願補正発明の進歩性の有無ア本願補正発明は,前記第3,1 イのとおりであるところ,これを引用例1発明と対比すると,審決が認定する(5頁1行〜22行)ように,前記第3,1 イのとおりの一致点及び相違点1〜3が存する。
イ そこで,上記相違点について判断すると,次のとおりである。
 相違点1について金属板に軽量化のためにくり抜き部を形成することは, 実願昭59-90630号(実開昭61-5294号,考案の名称「チエン引き金具,出願人鈴木自動車工業株式会社,公開日昭和61年1月13日)のマイクロフィルム(乙2)の3頁14行〜16行(「…軽合金版11及び鉄板12には,剛性が高い部分を選んで,軽量化のための打ち抜き孔13が適当に設けてある。」)及び第2図, 特開平7-259963号公報(考案の名称「クランクシャフトプーリー」,出願人東海ゴム工業株式会社,公開日平成7年10月13日。乙3)の【発明の詳細な説明】の段落【0012】(「…そしてハブ部12には軽量化のための肉抜き孔12が周方向4ケ所に設けられ,…」)及び【0014】(「…ハブ部には…軽量化のための肉抜き孔12aがあり,…」)並びに【図1】及び【図3】, 特開平10-88789号公報(発明の名称「仮設足場コーナーステツプ」,出願人H.K,公開日平成10年4月7日。乙4)の【発明の詳細な説明】の段落【0005】(…コーナーステップ(1)は人力により運搬しやすいように軽量化する為軽量化孔(4)を設け,…)並びに【図1】及び【図2】などに記載されている周知慣用技術であると認められるから,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,相違点1に係る構成を,この周知慣用技術を参照することによって容易に想到することができたと認められる。
 相違点2についてフランジ状の部位を金属板に対して直角に折り曲げることは, 実願昭52-151736号(実開昭54-77510号,考案の名称「木造建築用連結金具」,出願人H.Y,公開日昭和54年)のマイクロフィルム(乙5)の2頁9行〜10行(「…三角部材Bは平板体5の直角部を直角に屈曲6して角7を溶接し…」)及び第2図, 大正13年実用新案出願公告第2792号公報(考案の名称「建築歪止金具」,出願人Y.K,公告日大正13年9月22日。乙6)の第1図及び第2図などに記載されている周知慣用技術であると認められるから,当業者は,相違点2に係る構成を,この周知慣用技術を参照することによって容易に想到することができたと認められる。
 相違点3について直角を挟む2辺の部位を有する建築用金物を接合部にあてがって使用する場合に,直角を挟む2辺の部位を接合部の中心線上にあてがうことは, 特開平5-311743号公報(発明の名称「建築構造材の連結工法及びそれに用いる連結材」,出願人T.H,公開日平成5年11月22日。乙7)の【発明の詳細な説明】の段落【0008】(「…本例では連結材1を柱材2,3の中央部に止着している。」)及び【0009】(「…本例では連結材1を柱材2,3の中央部に止着しているため,…」)並びに【図1】及び【図2】, 特開平9-144135号公報(発明の名称「建築用補強金具」,出願人Y.K,公開日平成9年6月3日。乙8)の【図3】などに記載されている周知慣用技術であると認められるから,当業者は,相違点3に係る構成を,この周知慣用技術を参照することによって容易に想到することができたと認められる。
ウそして,本願補正発明の効果も,引用例1発明及び上記各周知慣用技術から予測できる範囲内のものであると認められる。なお,原告が主張する「震度8にも耐える」,「震度4の地震が来ても少しも揺れない」といった効果は,本願明細書(乙11の本願の公開公報記載の明細書を乙12[第1次補正]と乙13[本件補正]によって補正したもの)には記載されておらず,本願補正発明がこのような効果を有するものとは認められない。
エそうすると,本願補正発明は,引用例1発明及び上記各周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたとの審決の判断に誤りがあるということはできない。
 本願発明の進歩性の有無本願発明は,前記第3,1 アのとおりであって,本願補正発明から「建造中あるいは既存の木造家屋において」という部分を除いたものであるから,本願補正発明と同様に,引用例1発明及び上記各周知慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものと認められ,その旨の審決の判断に誤りがあるということはできない。
3結語以上のとおりであるから,平成19年9月4日になされた本件審決が違法であるということはできない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)原告の主張1、私は平成10年4月24日に、特許庁官特許を申請いたしました。その経緯は私が群馬県にいたときに、群馬県の工業試験所で知り合った人「特許庁に勤めていた長瀬成城」はこの金物は特許になるので、この金物は人には見せない事といわれました。そして私は日本国民のために、数々の試験(埼玉県草加にある建材試験センター)に於いて、4回にわたり試験をいたしました。
1、試験成績書依試第8H72029号2、試験成績書依試第8H72124号法律が変わりましたので3、品質性能試験報告書受付第03A1506号この試験は日本国民のため、「安全な生活」をして頂くっため努力いたしました。
2、私は建材試験センターの(K担当)又(チーフ)に言われたことは、(試験成績表、依付第03A1506号)の試験をしたときに、2人はこの試験結果を見て、この金物は、国土交通省から大臣認定を至徳致させます。といわれています。この様にして頂く、となると、この金物の権利者が問われる事になる事、したがって得許を至徳しなければならない事。
日本国は地震国である事は、日本国民すべてが承知していますこの様に日本国民の生命が助かる。助かる事に承知していながら得許を出さない特許庁は日本国民までを裏切ることになる良いものは誰が見ても、よいのである私はここまで来る経緯は、どれだけの年月を掛けてきたか分かりますか。私は日本国民の生命保持のために、頑張ました私はこの仕事を10年以上かけています。
3、平成19年1月25日に、日本住宅新聞が、上記記載の試験成績表を見て震度8にも耐えるASP工法と新聞にて報道して頂きました。また(通巻245号平成18年7月1日発行の取材にきたのは「デビ、
スカルノ)の取材で(県知事も認定した抜群の強度、独自開発の(ASP工法)この様に、日本国人に報道されています。更に(平成18年4月1日現代画法にて報道されています。更に(平成19年ブームの真相)にもASP金物が報道されています。
結論日本国は日本国民の安全を確保する事に専念してください。
日本国は地震国である事は誰もが承知している事。ASP工法は建材試験センターにおいて試験の成績表も誰もが把握できること。私は茨城県のつくばみらい市において、建売住宅、注文住宅を販売しています。又新築をしたお客さんの声は、震度4の地震が来ても少しも揺れない喜んでくれていますしたがって特許庁官は、この成績表を把握し日本国民の安全な住まいを、提供してあげてください。したがってASP工法の権利者を、決めるのが第1と思われます。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海