関連審決 | 無効2006-80163 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19行ケ10261審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 発明者 / 29条1項3号 / 容易に発明 / 周知技術 / 公知技術 / 出願公開 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 特許発明 / 実施 / 構成要件 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 訂正要件 / 国際公開 / |
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事件 |
平成
19年
(行ケ)
10248号
審決取消請求事件
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原告日本クラウンコルク株式会社 訴訟代理人弁護士島田康男 訴訟代理人弁理士小野尚純,奥貫佐知子 被告日本山村硝子株式会社 訴訟代理人弁理士藤本昇,岩田徳哉 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2008/04/23 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が無効2006−80163号事件について平成19年5月30日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1原告の求めた裁判主文同旨の判決第2事案の概要本件は,被告の有する下記1(1)の特許(以下「本件特許」という )について, 。 原告が無効審判請求をしたところ,特許庁は,被請求人である被告の訂正請求に係る訂正を認めた上,審判請求は成り立たないとの審決をしたため,原告が,同審決の取消しを求める事案である。 1特許庁における手続の経緯(1)本件特許(甲第12号証)特許権者:日本山村硝子株式会社(被告)発明の名称: 合成樹脂製ピルファープルーフキャップ」 「出願日:平成6年8月6日(特願平6-204354号)登録日:平成11年6月25日特許番号:第2943048号(2)本件手続審判請求日:平成18年8月29日(無効2006-80163号)訂正請求日:平成18年11月9日(以下「本件訂正」という )。 審決日:平成19年5月30日審決の結論: 訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない 」 「 。 審決謄本送達日:平成19年6月11日(原告に対し)2本件訂正後の特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。ただし,下線部分は本件訂正に係る訂正事項aによる訂正箇所であり,当該部分は,本件訂正前においては「前記密封用パッキンが前記容器口部の開口内に密封可能に嵌入される中足を有し,更に,前記密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に形成された空気溜り部を有する」と記載されていた。 「 請求項1】蓋天板およびこの蓋天板の周縁から垂下する周壁から構成され,該 【周壁の内周面に,容器口部の外周面に形成された容器ねじ部と螺合するキャップねじ部を有する蓋本体と,複数のブリッジを介して前記蓋本体と一体的に連接されたピルファープルーフバンドと,閉栓時に,前記容器口部を密封するよう設けられた密封用パッキンとからなり 開栓時に 前記ブリッジが切れるまでは前記密封用パッ ,,キンによる前記容器口部の密封を保持し,前記ブリッジが切れると前記密封用パッキンの周縁部に当接して,これを前記容器口部上方に持上げうるパッキン案内部を前記周壁の内周面に有するとともに,前記ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,前記密封用パッキンの下面には容器口部の開口内に密封可能に嵌入される環状の中足を設けると共に該密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に空気溜り部を設けてなることを特徴とする合成樹脂製ピルファープルーフキャップ。 【請求項2】パッキン案内部が,蓋本体と一体に,又は別体に形成された環状突条からなる請求項1に記載の合成樹脂製ピルファープルーフキャップ。 【請求項3】パッキン案内部が,キャップねじ部の一部である請求項1に記載の合成樹脂製ピルファープルーフキャップ。 【請求項4】閉栓時に,内容物を密封した密封容器内が容器外部に対して減圧状態となる請求項1に記載の合成樹脂製ピルファープルーフキャップ。 【請求項5】閉栓時に,内容物を密封した密封容器内が容器外部に対して加圧状態あるいは密封容器内の内圧が容器外部と同圧の状態となる請求項1に記載の合成樹脂製ピルファープルーフキャップ 」。 3審決の要点審決は,本件訂正を認め,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜5の記載に基づいて発明の要旨を認定した上(以下,この認定に係る発明を,請求項の番号に従って「本件特許発明1」などといい,本件特許発明1〜5を総称して「本件特許発明」という,下記甲第1〜第6号証を提出してなされた原告の無効事由の主張 。)に対し,本件特許発明は,?@下記甲第1号証に記載された発明と同一ではなく,?A甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく,?B甲第4号証に記載された発明に甲第5号証に記載された技術事項及び/又は周知慣用の技術事項を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものでもないと判断した。 甲第1号証欧州特許庁出願公開公報0261047A1号(1988年(昭和63年)3月23日公開)甲第2号証米国特許第5031787号特許公報(1991年(平成3年)7月16日特許)甲第3号証実願昭63-170205号(実開平2-93250号)のマイクロフィルム甲第4号証国際公開第92/15495号パンフレット(国際公開日1992年(平成4年)9月17日)甲第5号証実願昭60-115118号(実開昭62-25655号)のマイクロフィルム甲第6号証特開昭60-58344号公報審決の理由中,訂正事項aに係る本件訂正の可否についての判断,甲号各証の記載事項の認定,本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との対比・判断(本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との同一性の判断 ,本件特許発明1についての甲 )第1号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明を主引用例とする容易想到性の判断,本件特許発明2〜5についての判断の部分は,以下のとおりである(審決中の甲号証は本訴におけるものと共通である。なお,誤記を訂正した部分がある。 。)(1)訂正事項aに係る本件訂正の可否についての判断訂正事項aにおいて 「密閉用パッキンが中足を有し」を「密閉用パッキンの下面に環状に ,中足を設ける」にする訂正は,中足が設けられる箇所および中足の形状を明らかにする限定を付加するものであり,また 「中足を有し,更に,空気溜り部を有し」を「ブリッジが切れる ,まで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足を設けると共に空気溜り部を設けてなる」にする訂正は 「中足および空気溜り部」を設けることの技術的意義を明らかにする限定 ,を付加するものであって,これらは,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,特許明細書の【0019】には 「 実施例】以下,この発明に係る合成樹脂製ピル ,【ファープルーフキャップの一実施例を図面に基づいて説明する ・・・密封用パッキン9が容 。 器口部3の開口3b内に密封可能に嵌入される環状の中足11を有し・・・」との記載,および,同【図1】には 「密閉用パッキン9の下面に形成された中足11」の図示があり,これ ,らからして 「密閉用パッキンの下面に環状に中足を設ける」にする訂正は,特許明細書に記 ,載した事項の範囲内の訂正であって,新規事項を追加するものではなく,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 また,特許明細書の特に【0003【0004【0023【0024【0025】 】,】,】,】,の記載からして 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足 ,を設けると共に空気溜り部を設けてなる」にする訂正は,特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって,新規事項を追加するものではなく,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 なお,請求人は,口頭審理陳述要領書(第1回)および口頭審理陳述要領書(第2回)において,訂正事項aにおける「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように は 発明の目的動機であって 発明の構成 必須構成要件 ではないことからブリッ 」 ,,,(),「ジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」にする訂正は,発明の必須構成要件のみを記載することを要求している旧特許法第36条第5項第2号の趣旨に反する訂正であるので,訂正として認められない旨の主張をしている。 ところで 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」にする訂 ,正は,上記で示したように 「中足および空気溜り部」を設けることの技術的意義を明らかに ,するものであり そして中足および空気溜り部 は 合成樹脂製ピルファープルーフキャッ ,,「 」 ,プ(物品)の部位であって,発明の構成(必須構成要件)である。 つまり 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」にする訂正 ,は,発明の必須構成要件である「中足および空気溜り部」に関わる訂正であり,そうである以上,旧特許法第36条第5項第2号の趣旨に反する訂正であるとはいえない。 よって,請求人の上記主張を採用することはできない。 (2)甲号各証の記載事項の認定ア甲第1号証(ア)公報第2頁右欄第61行乃至第63行『多用途ねじキャップは筒形状本体から構成されており,その鉛直な壁(1)は内面上にねじ(2)を有し・・・,』(イ)公報第3頁左欄第7行乃至第22行『キャップの基壁の中央部には,ストッパを瓶のネックに密封するのに寄与する凸状隆起部(6)が存在する。 キャップは,更に,その先端に,容易に破断され得るポイント(8)によって本体に接続された密封フラップ(7)を有する。 キャップ内に収容されているストッパはフランジ形態の平坦部(9)と,その片面から延在する円錐形状ネック(10)から構成されている。このネックの中間部には同様に円錐形状であるステッパ(11)が形成されている。 ストッパはキャップ内に移動自在に収容され,キャップのねじに保持され,キャップが鉛直方向に移動する際にフランジ(9)に当接する・・・。』(ウ)公報第3頁左欄第23行乃至第27行いったんストッパがキャップ内に収容されると あとの方ではっきりされるように 瓶のネッ 『 , ,クへのストッパの保持が維持され,瓶のネックの外側の口部に近いところに,帯(13)と共に周辺リブ(14)がある ・・・』(エ)公報第3頁左欄第28行乃至第42行『このために,キャップは瓶のネックの外側螺条に螺合され,同時にストッパの円錐形状ネック(10)が瓶のネック内の内側に密封嵌入するまで鉛直方向に進入する。 円錐形状ネック(10)が瓶のネック内に完全に進入すると,ストッパの円錐形状ステッパ(11 ・・・が瓶のネックの上端に位置し,これによって密封が補強される。 )他方,キャップの螺合が解除される時には,キャップのねじ(2)の内側部がストッパのフランジ(9)に当接してストッパを引っ張り,瓶のネックからストッパを緩め,キャップと共に離脱させる・・・。』(オ)FIG.-2には 「瓶口部の開口内に密封可能に嵌入されるストッパ(5)の下面に形 ,成されている環状の円錐形状ネック(10「ストッパ(5)の上面に対向する基壁(4) )」,() 」「() の下面に形成されている凸状隆起部 6 の周囲に存在する空間 および キャップねじ部 2最上部はストッパ(5)のフランジ(9)の下面に対して相当な間隔をおいてその下方に位置しており,一方,密封フラップ(7)の上端縁は瓶の周辺リブ(14)に近接して位置する」が図示されている。 上記(ア)ないし(オ)より,甲第1号証には,基壁4およびこの基壁4の周縁から垂下する壁1から構成され 該壁1の内周面に 瓶のネッ 「 ,,クの外周面に形成された瓶ねじ部13と螺合するキャップねじ部2を有する本体と,複数のポイント8を介して前記本体と一体的に連接された密封フラップ7と,閉栓時に,前記瓶のネックを密封するよう設けられたストッパ5とからなり,開栓時に,前記ストッパ5のフランジ9に当接して,これを前記瓶のネック上方に持上げうる瓶ねじ部2最上部を前記壁1の内周面に有し,瓶のネックの開口内に密封可能に嵌入される前記ストッパ5の下面に形成されている環状の円錐形状ネック10と,前記ストッパ5の上面に対向する前記基壁4の下面に形成されている凸状隆起部6の周囲に存在する空間を設けた,キャップ 」が開示されている。 。 イ甲第2号証(カ)公報第3欄第3行乃至第17行『図1に示されているパッケージ10は,容器11と蓋12とから構成されている。容器11は雄ねじ16と上端の密封リム17を備えた上部即ち口部15を有する。ねじ16の下方には下方に向いたロッキング面19を備えた環状ロッキングリブ18が形成されている (後に明 。 らかになるとおり,ロッキングリム18の機能は,蓋が開封される時にタンパーエビデント手段を破断させることである )蓋12は別個に形成された上部即ち挿入ディスク25を有する 。 複合蓋であり,ディスク25は包囲シェル26内に収容され保持されている。シェル26は挿入ディスク25の周縁を覆う天板27と,容器11の雄ねじと協働する1条或いは数条の雌ねじ29が有する円筒形状のスカート28とからを構成されている 』。 (キ)公報第3欄第60行『スカート28はその内周面上にデスク持ち上げビード48を有する 』。 (ク)公報第4欄第57行乃至第68行『タンパーエビデントバンド34は,ビード48がディスク25に係合してこれを持ち上げて真空を破壊する前に破断されるのが好ましい。このためには,ビード48がディスク25に係合してこれを持ち上げる前に,蓋が充分に開方向に回転されて,バンド保持部42がロッキングリブ18の面19に係合することが必要である。タンパーエビデントバンド48が破断され完全に或いは部分的に蓋11から分離されると,密封が実際に破壊されなくともタンパリング(いたずら)が明示される。かくして,最初にタンパーエビデントバンドが分離されることなく,ディスク25が持ち上げられることは不可能である 』。 ウ甲第3号証(ケ)明細書第5頁第16行乃至第6頁第9行「第 1 図は本考案の栓の実施例を示し,内壁1に容器口部2との螺合部3を有する筒部4と天板 5 とを有する外蓋6と,容器口部2の頂面7に当接するフランジ部8と,フランジ部8より連設して容器口部2と密着する筒部9と,筒部9より連設する底部10とを有する中栓11とからなる可撓性を有する合成樹脂製栓であり,中栓11のフランジ部8から筒部9に連設するコーナー部に内方突出部12を設け,外蓋6の天板5下面に環状垂下部13を設け,この環状垂下部13の外壁に前記中栓の内方突出部12と係合する外方突出部14を設けている 」 。 (コ)明細書第6頁16行乃至第7頁第4行「又,この栓は,所謂ピルファープルーフキャップと呼ばれるもので,中栓11の筒部9の下端にブリッジ部15を介してリング部16が連設しており,キャッピング後は,爪7が容器口部のビード18に係合して封緘状態が保たれ,開封すると,第2図のように,ブリッジ部15が切断され,開封を確認することができる 」。 (サ)明細書第7頁第12行乃至第17行このとき このとき 外蓋6の環状垂下部13の外方突出部14より上方の外径が 中栓11 「,, ,の内方突出部12の内径と同一若しくは若干小さくされているので,中栓11は外蓋6の回転に伴って回転することなく,外蓋6と共に上昇する 」。 (シ)第1図には 「中栓11の筒部9と,中栓11のフランジ部8の上面に対向する外蓋6の ,天板5下面の環状凹部」が図示されている。 エ甲第4号証(ス)公報第6頁第19行乃至第8頁第23行『図示の容器はPETの如きプラスチック材料から形成された瓶であり,ネック12を有し。 , ()。 ている ネック12には内壁13 外壁14及び両者間のリム15 図2 が配設されている外壁にはねじ16及び周縁カラー17が配設されている。この容器は通常の構成である。 図示のキャップ20は天板21及び周縁スカート22を有する スカートの外壁には キャッ 。,プを手で把持し易くするための,交互に位置する軸線方向溝23と軸線方向リブ24が配設さ。 。,, れている タンパーエビデントバンド25も配設されている 図2に示す如く バンド25は間隔をおいて配置された破断可能なウエブ26によって周知の様式で,スカート22に接続さ, 。, れており バンドはカラー17によって瓶11のネック12上に拘束されている スカートは瓶のねじ16に螺合する雌ねじ28を有する。バンド及びカラーは,キャップが螺着されるとバンドがカラーを通過し,キャップを瓶から離脱する時にはバンドがカラーに係合し破断可能なウエブが破壊される,ように構成されている。 スカートのねじ28とキャップの天板21との間には,環状保持リング30が配設されている。リングは全体として細長い三角形状の断面を有し,スカートから遠ざかるに従って先細になっている。リングは半径方向に延出して瓶の口部の外壁14に弾性的に係合する。リングは弾性的に変形されて外壁14に加圧密封30aを生成する。 密封用パッキン31が配設されており,保持リング30によってキャップの天板に隣接して保持されている。パッキンはキャップよりも柔軟性が優れ且つ化学的バリア性に優れた材料から形成されている。パッキン及びキャップの材料はグレードが異なったポリエチレンでよい。 パッキンには,天板21から延出する半径方向内側突条33と半径方向外側突条34とが配設されている。内側突条33は外側突条34よりも長く,瓶の口部の内壁13に弾性的に密封係合する凸状外側面33aを有する。外側突条34は天板21に対して鋭角をなして外方に延, 。 びており 瓶の口部のリム15の外側縁15aに弾性的に密封係合される内壁34aを有する双方の突条共図2では成形された状態で図示されているが,図3は口部に係合して変形された突条を図示している。 上述した構成は3点加圧密封を提供し,これらは製造における公差を許容する。全ての密封は先端縁密封であり,容器の開封及び閉栓に過度の力が要求されることが回避されている。 キャップへのパッキンの装着を容易化するために,外側突条34はキャップ軸線に対して鋭角をなす外壁を有する。これによって傾斜面が提供され,突条の柔軟性と共に,パッキンが保持リング30を通過することを可能にする 』。 オ甲第5号証(セ)明細書第1頁末行乃至第2頁第13行「従来の中栓付キャップとしては,例えば,第7図及び第8図に示すようなものがある。斯かる従来例にあっては,ボトル100から中栓101を取り出す手間を省くため,中栓101がキャップ102の奥に装着され取れないようになっており,キャップ102を開方向へ回動すれば中栓101もキャップ102と同時にノズル部100aから外れてボトル100の開口操作を容易にできるものである。従って,このキャップ構造においては,中栓101が外れないようにするために,キャップ102のネジ奥に環状のアンダーカット102aが設けられていて,このアンダーカット102aに中栓101の基部101aが係合せしめられている 」 。 (ソ)第7図には 「ボトル100口部の開口内に突出している中栓11の突出部と,中栓11 ,上面とこの上面に対向するキャップ102の天板の下面との双方の円形凹部形態からなる空間」が開示されている。 カ甲第6号証(タ)公報第3頁上段右欄第14行乃至同頁下段左欄第8行「閉鎖キャップは成形合成樹脂部品であり,一体成形のねじ付きスカート1と頂部パネル2とを有する。頂部パネルの中央内面にスピゴット3を有し,平な環状のライナー円板4を係合する ・・・ 中略 ・・・頂部パネル2の内面に環状リブ7,8を形成し,標準の容器の首部の 。()内外曲面部e,cに対向して封鎖円板を押下げる位置とする ・・・ 中略 ・・・ 。()この構成によって,ライナー円板4の材料は容器首部の頂面aを横切る方向にある程度伸長され,摩擦を大にする 」。 (チ)公報第2頁下段左欄第19行乃至同頁同段右欄第4行「頂部パネル下面のリブの役割はライナーの材料を容器頂端又は一方又は双方の曲面部にクランプして封鎖接触線を形成し,同時にライナーの面を首部の頂端面の全部又は大部分に押圧してライナーと容器首部との間の摩擦をライナーと外殻との間の摩擦よりも大にする 」 。 (ツ)公報第3頁上段左欄第15行乃至第18行「本発明による閉鎖キャップは既知のキャップの欠点を除き,締付の最終及び弛める最初にはガスケットは容器に摩擦接触し外殻内面との間で滑動する 」。 (テ)公報第4頁上段左欄第10行乃至第12行「閉鎖キャップを開き始める時にライナー円板は容器と共に回動し」(ト)図面には 「環状リブ7,8周辺の空間」が図示されている。 ,(3)本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との対比・判断(本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との同一性の判断)上記・・・で示したように,甲第1号証には 「基壁4およびこの基壁4の周縁から垂下す ,る壁1から構成され,該壁1の内周面に,瓶のネックの外周面に形成された瓶ねじ部13と螺合するキャップねじ部2を有する本体と,複数のポイント8を介して前記本体と一体的に連接された密封フラップ7と,閉栓時に,前記瓶のネックを密封するよう設けられたストッパ5とからなり,開栓時に,前記ストッパ5のフランジ9に当接して,これを前記瓶のネック上方に持上げうる瓶ねじ部2最上部を前記壁1の内周面に有し,瓶のネックの開口内に密封可能に嵌入される前記ストッパ5の下面に形成されている環状の円錐形状ネック10と,前記ストッパ5の上面に対向する前記基壁4の下面に形成されている凸状隆起部6の周囲に存在する空間を設けた,キャップ 」が開示されている。 。 本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比する。 ・後者の「基壁4「壁1「瓶「ネック「本体「ポイント8「ストッパ5「フラ 」,」,」,」,」,」,」,ンジ9「ねじ部2最上部「円錐形状ネック10「空間「キャップ」は,前者の「蓋天 」,」,」,」,板「周壁「容器「口部「蓋本体「ブリッジ「密封用パッキン「周縁部「パッ 」,」,」,」,」,」,」,」,」,「」,「」,「 」 。 キン案内部中足空気溜り部ピルファープルーフバンド にそれぞれ相当している・後者の「ストッパ5(密封用パッキン)の上面に対向する基壁4(蓋天板)の下面に形成されている凸状隆起部6の周囲に存在する空間(空気溜り部)を有する」は,いい換えると,「密封用パッキンの上面に対向する蓋天板の下面に空気溜り部を設けてなる」となり,前者の「密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面に空気溜り部を設けてなる」に相当している。 ・上記(1)の(オ)において示した後者の「キャップ(蓋本体)のねじ部2最上部(パッキン案内部)はストッパ5(密封パッキン)のフランジ9(周縁部)に対して相当な間隔をおいてその下方に位置しており,一方,密封フラップ7(ピルファープルーフバンド)の上端縁は瓶の周辺リブ14の下面に近接して位置する」は 「パッキン案内部が密封パッキンの周縁部に対 ,して当接して密封パッキンを持上げるよりも,ピルファープルーフバンドが瓶の周辺リブ14に当接してブリッジを切る方が早い ,つまり 「ブリッジが切れるまでは密封用パッキンによ 」,る容器口部の密封を保持し,ブリッジが切れるとパッキン案内部が密封用パッキンの周縁部に当接して,これを容器口部上方に持上げうる」を意味していると認められるので,これは,前者の「ブリッジが切れるまでは密封用パッキンによる容器口部の密封を保持し,ブリッジが切, 」 れると密封用パッキンの周縁部に当接して これを容器口部上方に持上げうるパッキン案内部に対応している。 上記より,両者は 「蓋天板およびこの蓋天板の周縁から垂下する周壁から構成され,該周 ,壁の内周面に,容器口部の外周面に形成された容器ねじ部と螺合するキャップねじ部を有する蓋本体と,複数のブリッジを介して前記蓋本体と一体的に連接されたピルファープルーフバンドと,閉栓時に,前記容器口部を密封するよう設けられた密封用パッキンとからなり,開栓時に,前記ブリッジが切れるまでは前記密封用パッキンによる前記容器口部の密封を保持し,前記ブリッジが切れると前記密封用パッキンの周縁部に当接して,これを前記容器口部上方に持上げうるパッキン案内部を前記周壁の内周面に有するとともに,前記密封用パッキンの下面には容器口部の開口内に密封可能に嵌入される環状の中足を設けると共に該密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に空気溜り部を設けてなる,ピルファープルーフキャップ 」という点で一致し,以下の点で相違している。 。 ○前者は,ピルファープルーフキャップが「合成樹脂製」であるのに対して,後者は,これを明らかにしていない点 (以下 「相違点1」という ) 。,。 ○前者は 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および ,空気溜り部を設ける」を構成要件にしているのに対して,後者は,中足および空気溜り部を設けているものの 「ブリッジが切れるまで密封用パッキ ,ンの共回りを防止できるように設ける」を構成要件にしていない点 (以下 「相違点2」とい 。,う )。 上記両相違点について検討する。 ●相違点1について一般に,複数のブリッジを介して蓋本体と一体的に連接されたピルファープルーフバンドにおいて,これが合成樹脂製であること自体,極めて普通の技術的事項であることから,甲第1号証記載の発明の「複数のブリッジを介して蓋本体と一体的に連接されたピルファープルーフバンド」においても,これが合成樹脂製であると見ること自体,極めて妥当である。 上記より,該相違点1は,単なる文言上の相違にすぎないものと認められる。 ●相違点2について請求人は,口頭審理陳述要領書(第1回)の第6頁第18から26行において 『 そして, ,「中足(円錐形状ネック10)と空気溜り部の作用効果について検討すると,甲第1号証における「キャップの螺合が解除される時には,キャップのねじ(2)の内側部がストッパのフランジ(9)に当接してストッパを引っ張り,瓶のネックからストッパを緩め,キャップと共に離脱させる 」との記載から,甲第1号証に開示されているキャップにおいても,蓋本体のねじ 。 (2)が密封用パッキン(ストッパ)のフランジ(9)に当接してストッパを引っ張り,瓶のネックからストッパを緩めるまでは,ストッパの中足(円錐形状ネック10)が容器口部(瓶のネック)に緩められることなく密着していて,共回りすることなく密封を維持し続けることが理解される 』との主張を行っており, 。 請求人の上記主張は,甲第1号証記載の発明において,ブリッジが切れるまで密封用パッキンによる容器口部の密封が保持されている以上,ブリッジが切れるまで密封パッキンの共回りが防止されている旨を主張するものであると認める。 たしかに,甲第1号証記載の発明は,中足および空気溜り部が設けられ,ブリッジが切れるまで密封用パッキンによる容器口部の密封が保持されているものであると認められる。 しかしながら,甲第1号証記載の発明において,ブリッジが切れるまで密封用パッキンによる容器口部の密封を保持することは,あくまで,密封用パッキンによる密封を保持することを意味するものにすぎず 「密封用パッキンの共回りを防止できる」ことまでも意味するものと ,は認められない。 つまり,甲第1号証記載の発明は,ブリッジが切れるまで密封用パッキンによる容器口部の密封を保持する「中足および空気溜り部」が設けられているとしても 「ブリッジが切れるま ,で密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設ける」を意図するものであるとはいえない。 一方,本件特許発明1は 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるよ ,うに,中足および空気溜り部を設ける」を構成要件にするものである。 上記より,甲第1証記載の発明は 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止 ,できるように,中足および空気溜り部を設ける」を構成要件にするものではないから,本件特許発明1と同一のものであるとはいえない。 よつて,請求人の主張の「本件特許の請求項1に係る発明は,甲第 1 号証に記載された発明と同一のものであることから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである」を採用することはできない。 (4)本件特許発明1についての甲第1号証記載の発明及び甲第4号証記載の発明を主引用例とする容易想到性の判断(a)上記・・・で検討したように,甲第1号証記載の発明は 「ブリッジが切れるまで密封用 ,パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 (b)上記・・・で示したように,甲第2号証には,(カ)『図1に示されているパッケージ10は,容器11と蓋12とから構成されている。容器11は雄ねじ16と上端の密封リム17を備えた上部即ち口部15を有する。ねじ16の下方には下方に向いたロッキング面19を備えた環状ロッキングリブ18が形成されている後。(に明らかになるとおり,ロッキングリム18の機能は,蓋が開封される時にタンパーエビデント手段を破断させることである )蓋12は別個に形成された上部即ち挿入ディスク25を有 。 する複合蓋であり,ディスク25は包囲シェル26内に収容され保持されている。シェル26は挿入ディスク25の周縁を覆う天板27と,容器11の雄ねじと協働する1条或いは数条の雌ねじ29が有する円筒形状のスカート28とからを構成されている 』。 (キ)『スカート28はその内周面上にデスク持ち上げビード48を有する 』。 (ク)『タンパーエビデントバンド34は,ビード48がディスク25に係合してこれを持ち上げて真空を破壊する前に破断されるのが好ましい このためには ビード48がディスク25 。,に係合してこれを持ち上げる前に,蓋が充分に開方向に回転されて,バンド保持部42がロッキングリブ18の面19に係合することが必要である。タンパーエビデントバンド48が破断され完全に或いは部分的に蓋11から分離されると,密封が実際に破壊されなくともタンパリング(いたずら)が明示される。かくして,最初にタンパーエビデントバンドが分離されることなく,ディスク25が持ち上げられることは不可能である 』との記載・・・がある。 。 上記(カ)ないし(ク)より,甲第2号証記載の発明は 「開栓時に,タンパーエビデントバン ,ド34(ブリッジ)が切れるまではディスク25(密封用パッキン)による容器口部の密封を保持し,タンパーエビデントバンド34(ブリッジ)が切れるとディスク25(密封用パッキン)の周縁部に当接して,これを容器口部上方に持上げうるビード48(パッキン案内部)を蓋12の周壁の内周面に有するもの」である。 しかしながら,甲第2号証には 「中足および空気溜り部」の存在を示す記載および示唆が ,ない。 つまり,甲第2号証記載の発明は 「中足および空気溜り部」がそもそも設けられていない ,ものであることから 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように, ,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 (c)上記・・・で示したように,甲第3号証には,(ケ) 第 1 図は本考案の栓の実施例を示し 内壁1に容器口部2との螺合部3を有する筒部4 「 ,と天板 5 とを有する外蓋6と,容器口部2の頂面7に当接するフランジ部8と,フランジ部8より連設して容器口部2と密着する筒部9と,筒部9より連設する底部10とを有する中栓11とからなる可撓性を有する合成樹脂製栓であり,中栓11のフランジ部8から筒部9に連設するコーナー部に内方突出部12を設け,外蓋6の天板5下面に環状垂下部13を設け,この環状垂下部13の外壁に前記中栓の内方突出部12と係合する外方突出部14を設けている 」。 (コ) 又 この栓は 所謂ピルファープルーフキャップと呼ばれるもので 中栓11の筒部9 「,, ,の下端にブリッジ部15を介してリング部16が連設しており,キャッピング後は,爪7が容器口部のビード18に係合して封緘状態が保たれ,開封すると,第2図のように,ブリッジ部15が切断され,開封を確認することができる 」。 (サ)「このとき,外蓋6の環状垂下部13の外方突出部14より上方の外径が,中栓11の内方突出部12の内径と同一若しくは若干小さくされているので,中栓11は外蓋6の回転に伴って回転することなく,外蓋6と共に上昇する 」との記載がある。 。 (シ)第1図には 「中栓11の筒部9と,中栓11のフランジ部8の上面に対向する外蓋6の ,天板5下面の環状凹部とを有する」が図示されている。 上記(ケ)ないし(シ)より 甲第3号証記載の発明は中栓11 密封用パッキン の筒部9 , ,「()と,中栓11(密封用パッキン)のフランジ部8の上面に対向する外蓋6(蓋本体)の天板5蓋天板 下面の環状凹部とを有し 開栓時に 中栓11 密封用パッキン の内方突出部12 () ,,()に当接して これを容器口部上方に持上げうる環状垂下部13 パッキン案内部 を外蓋6 蓋 , ()(本体)の天板5(蓋天板)下面に有し,中栓11(密封用パッキン)は外蓋6(蓋本体)の回転に伴って回転することなく,外蓋6(蓋本体)と共に上昇するもの」である。 しかしながら,上記の「中栓11(密封用パッキン)は外蓋6(蓋本体)の回転に伴って回転することなく ,いい換えると 「蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転が防止される」 」,は,上記(サ)からして 「外蓋6(蓋本体)の環状垂下部13の外方突出部14より上方の外 ,,() 」 径が 中栓11 密封用パッキン の内方突出部12の内径と同一若しくは若干小さくされるに依っていると云え,また 「中栓11の筒部9」を「中足」として捉えると共に 「中栓11(密封用パッキン) , ,のフランジ部8の上面に対向する,外蓋6(蓋本体)の天板5(蓋天板)下面の環状凹部」を「空気溜り部」として捉えたとしても 「中足および空気溜り部」に依って上記「防止」がな ,されているとは明確にいえない。 つまり,甲第3号証記載の発明は 「蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転が防止され ,る」ものであるとしても,上記より,中足および空気溜り部を設けることで,蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転の防止を行うことを意図するものであるといえないことから 「ブ ,リッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 (d)上記・・・で示したように,甲第4号証には,(ス)『図示の容器はPETの如きプラスチック材料から形成された瓶であり,ネック12を有している。ネック12には内壁13,外壁14及び両者間のリム15(図2)が配設されて。 。 。 いる 外壁にはねじ16及び周縁カラー17が配設されている この容器は通常の構成である図示のキャップ20は天板21及び周縁スカート22を有する スカートの外壁には キャッ 。,プを手で把持し易くするための,交互に位置する軸線方向溝23と軸線方向リブ24が配設さ。 。,, れている タンパーエビデントバンド25も配設されている 図2に示す如く バンド25は間隔をおいて配置された破断可能なウエブ26によって周知の様式で,スカート22に接続さ, 。, れており バンドはカラー17によって瓶11のネック12上に拘束されている スカートは瓶のねじ16に螺合する雌ねじ28を有する。バンド及びカラーは,キャップが螺着されるとバンドがカラーを通過し,キャップを瓶から離脱する時にはバンドがカラーに係合し破断可能なウエブが破壊される,ように構成されている。 スカートのねじ28とキャップの天板21との間には,環状保持リング30が配設されている。リングは全体として細長い三角形状の断面を有し,スカートから遠ざかるに従って先細になっている。リングは半径方向に延出して瓶の口部の外壁14に弾性的に係合する。リングは弾性的に変形されて外壁14に加圧密封30aを生成する。 密封用パッキン31が配設されており,保持リング30によってキャップの天板に隣接して保持されている。パッキンはキャップよりも柔軟性が優れ且つ化学的バリア性に優れた材料から形成されている。パッキン及びキャップの材料はグレードが異なったポリエチレンでよい。 パッキンには,天板21から延出する半径方向内側突条33と半径方向外側突条34とが配設されている。内側突条33は外側突条34よりも長く,瓶の口部の内壁13に弾性的に密封係合する凸状外側面33aを有する。外側突条34は天板21に対して鋭角をなして外方に延, 。 びており 瓶の口部のリム15の外側縁15aに弾性的に密封係合される内壁34aを有する双方の突条共図2では成形された状態で図示されているが,図3は口部に係合して変形された突条を図示している。 上述した構成は3点加圧密封を提供し,これらは製造における公差を許容する。全ての密封は先端縁密封であり,容器の開封及び閉栓に過度の力が要求されることが回避されている。 キャップへのパッキンの装着を容易化するために,外側突条34はキャップ軸線に対して鋭角をなす外壁を有する。これによって傾斜面が提供され,突条の柔軟性と共に,パッキンが保持リング30を通過することを可能にする 』との記載・・・がある。 。 上記(ス)より,甲第4号証記載の発明は 「開栓時に,密封用パッキン31の外側突条(周 ,縁部)に当接して,これを容器口部上方に持上げうる環状保持リング30(パッキン案内部)をキャップ20(蓋本体)の周壁の内周面に有するもの」である。 しかしながら,甲第4号証には 「空気溜り部」の存在を示す記載および示唆がない。 ,また 「密封用パッキン31の内側突条」を「中足」として捉えたとしても 「密封用パッキ , ,ン31の共回りを防止できるように中足を設ける」の開示が明確にあるとはいえない。 つまり,甲第4号証記載の発明は,中足および空気溜り部を設けることで,蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転の防止を行うことを意図するものであるといえないことから 「ブ ,リッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 (e)上記・・・で示したように,甲第5号証には,「 ,, 。 (セ) 従来の中栓付キャップとしては 例えば 第7図及び第8図に示すようなものがある斯かる従来例にあっては ボトル100から中栓101を取り出す手間を省くため 中栓101 , ,がキャップ102の奥に装着され取れないようになっており,キャップ102を開方向へ回動すれば中栓101もキャップ102と同時にノズル部100aから外れてボトル100の開口操作を容易にできるものである。従って,このキャップ構造においては,中栓101が外れないようにするために,キャップ102のネジ奥に環状のアンダーカット102aが設けられていて,このアンダーカット102aに中栓101の基部101aが係合せしめられている 」 。 との記載がある。 (ソ)第7図には 「ボトル100口部の開口内に突出している中栓11の突出部と,中栓11 ,上面とこの上面に対向するキャップ102の天板の下面との双方の円形凹部形態からなる空間」が開示されている。 上記(セ),(ソ)より,甲第5号証記載の発明は 「ボトル100(容器)口部の開口内に突 ,出している中栓11(密封用パッキン)の突出部と,中栓11(密封用パッキン)上面とこの上面に対向するキャップ102(キャップ本体)の天板下面との双方の円形凹部形態からなる空間とを有し,開栓時に,中栓101(密封用パッキン)の周縁部に当接して,これを容器口部上方に持上げうる基部101a(パッキン案内部)をキャップ102(蓋本体)の周壁の内周面に有するもの」である。 しかしながら,甲第5号証には 「ブリッジ」の存在を示す記載および示唆がない。 ,また 「ボトル100(容器)口部の開口内に突出している中栓11(密封用パッキン)の ,突出部」を「中足」として捉えると共に 「中栓11(密封用パッキン)上面とこの上面に対 ,向するキャップ102(キャップ本体)の天板下面との双方の円形凹部形態からなる空間」を「空気溜り部」として捉えたとしても 「密封用パッキン31の共回りを防止できるように中 ,足および空気溜り部を設ける」の開示が明確にあるとはいえない。 つまり,甲第5号証記載の発明は,上記より,中足および空気溜り部を設けることで,蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転の防止を行うことを意図するものであるといえないことから 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気 ,溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 (f)上記・・・で示したように,甲第6号証には,(タ)「閉鎖キャップは成形合成樹脂部品であり,一体成形のねじ付きスカート1と頂部パネル2とを有する。頂部パネルの中央内面にスピゴット3を有し,平な環状のライナー円板4を係合する ・・・ 中略 ・・・頂部パネル2の内面に環状リブ7,8を形成し,標準の容器の 。()首部の内外曲面部e,cに対向して封鎖円板を押下げる位置とする ・・・ 中略 ・・・ 。()この構成によって,ライナー円板4の材料は容器首部の頂面aを横切る方向にある程度伸長され,摩擦を大にする 」。 (チ)「頂部パネル下面のリブの役割はライナーの材料を容器頂端又は一方又は双方の曲面部にクランプして封鎖接触線を形成し,同時にライナーの面を首部の頂端面の全部又は大部分に押圧してライナーと容器首部との間の摩擦をライナーと外殻との間の摩擦よりも大にする 」 。 (ツ)「本発明による閉鎖キャップは既知のキャップの欠点を除き,締付の最終及び弛める最初にはガスケットは容器に摩擦接触し外殻内面との間で滑動する 」。 (テ)「閉鎖キャップを開き始める時にライナー円板は容器と共に回動し」との記載がある。 (ト)図面には 「環状リブ7,8周囲の空間」が図示されている。 ,上記(タ)ないし(ト)より,甲第6号証記載の発明は 「環状リブ7,8周辺の空間を有し, ,開栓時に,ライナー円板(密封用パッキン)は,容器と共に回動し,閉鎖キャップ(蓋本体)と滑動して共に回動しないもの」である。 しかしながら,甲第6号証には 「中足」の存在を示す記載および示唆がない。 ,また 「環状リブ周辺の空間」を「空気溜り部」として捉えたとしても 「ライナー円板(密 , ,封用パッキン)の共回りを防止できるように空気溜り部を設ける」の開示が明確にあるとはいえない。 つまり 甲第6号証記載の発明はライナー円板 密封用パッキン は 閉鎖キャップ 蓋 , ,「() ,(本体)と滑動して共に回動しない ,いい換えると 「蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回 」,転が防止される」ものであるとしても,上記より,中足および空気溜り部を設けることで,蓋本体の回転に伴う密封用パッキンの回転の防止を行うことを意図するものであるといえないことから 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空 ,気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 上記(a)ないし(f)より,甲第1ないし6号証記載の発明は 「ブリッジが切れるまで密封用 ,パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものではない。 また,この「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設けて」は,本件出願前周知の事項であるということもできない。 そして,本件特許発明1は 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できる ,ように,中足および空気溜り部を設けて」を構成要件にするものである。 したがって 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足お ,よび空気溜り部を設けて」は,甲第1ないし6号証記載の発明の構成要件でなく,また,本件出願前周知の事項でないことから,甲第1ないし6号証記載の発明および本件出願前周知の事項に基いて,上記を構成要件にする本件特許発明1を当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので,請求人の主張の「本件特許の請求項1に係る発明は,甲1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである」および「本件特許の請求項1に係る発明は,甲第4号証に記載された発明に甲第5号証に記載された技術事項及び/又は周知慣用の技術事項を単にそのまま適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものであることから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである」を採用することはできない。 (5)本件特許発明2〜5についての判断本件特許の請求項2ないし5に係る発明 本件特許発明2ないし5 は 本件特許の請求項1 ( ) ,に係る発明(本件特許発明1)にさらに限定事項を付加するものであるので,本件特許発明1と同様に,請求人主張の「本件特許の請求項2ないし5に係る発明は,甲第1号証に記載された発明と同一のものであることから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである「本件特許の請求項2ないし5に係る発明は,甲1号証に記載さ 」,れた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである」および「本件特許の請求項2ないし5に係る発明は,甲第4号証に記載された発明に甲第5号証に記載された技術事項及び/又は周知慣用の技術事項を単にそのまま適用することによって当業者が容易に発明をすることができたものであることから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである」を採用することはできない。 第3原告の審決取消事由の要点1取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)(1)平成6年法律第116号による改正前(以下「平成6年改正前」という )。 の特許法36条5項の適用の誤り本件訂正における訂正事項aに係る部分(以下「本件訂正a」という )は,特 。 許請求の範囲の記載につき,発明の必須構成要件のみを記載することを要求している平成6年改正前の特許法36条5項の趣旨に反する訂正であり,認められるべきものではないから,本件訂正を認めた審決の判断は誤りである。 (2)平成6年改正前の特許法134条2項ただし書の適用の誤り本件訂正aは,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではないから,本件訂正を認めた審決の判断は誤りである。 (3)平成6年改正前の特許法134条5項が準用する同法126条2項の適用の誤り本件訂正aは,新規な技術手段を付加するものであり,本件特許発明1は本件訂正によって別個の発明となってしまうから,本件訂正aは実質上特許請求の範囲を変更する訂正であり,これを認めた審決の判断は誤りである。 2取消事由2(本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2の認定の誤り)(1)本件訂正aは,本件特許発明1の構成に作用効果を加える訂正であり,発明の構成に関するものではないから 「中足および空気溜り部」を「ブリッジが切れ ,るまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」設けるか否かに係る相違点2は実質的な相違点ということはできない。 (2)甲第1号証記載の発明において,ストッパのネック(10)と瓶のネックとの接触は周方向に連続して延在する環状面接触であり,本件特許発明1における空気溜り部と全く同様に,キャップの基壁の下面には,中央に形成された凸状隆起部(6)の周囲に位置する空気溜り部が存在する。また,キャップのねじ(2)の内側部がストッパのフランジ 9 に当接してストッパを引っ張った時に初めてストッ ()パが緩められることは明らかであるから,それまでの間はストッパによる密封が維持されており,ストッパが共回りすることが防止されている。したがって,甲第1号証記載の発明も「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」中足および空気溜り部を設けることを意図するものであり,審決の相違点2の認定は誤りである。 3取消事由3(本件特許発明2〜5についての甲第1号証記載の発明と同一性がないとした判断の誤り)上記2のとおり,審決がした本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2の認定は誤りであり,本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは実質的に同, , 一であるから 本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との間に相違点2が存在し両者が同一ではないことを前提として 「 本件特許の請求項2ないし5に係る発明 ,『は 甲第1号証に記載された発明と同一のものであることから 特許法第29条第1 , ,項第3号の規定により特許を受けることができないものである ・・・を採用する 』ことはできない 」とした審決の判断は誤りである。 。 4取消事由4(相違点2についての判断の誤り)甲第2〜第6号証に開示された以下の技術,又はこれらの個々の技術から抽出される周知技術を甲第1号証記載の発明に適用することにより,相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは容易であるから,審決の相違点2についての判断は誤りである。 ,「 () (1)甲第2号証には密封が実際に破壊されなくともタンパリング いたずらが明示されること最初にタンパーエビデントバンドが分離されることなく ディ 」,「 ,スク25が持ち上げられることは不可能であること」が開示されており 「ブリッ ,ジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,中足および空気溜り部を設ける」ことが示唆されているといえる。 (2)甲第3号証には 中栓11は外蓋6の回転に伴って回転することなく 外蓋6 「 ,と共に上昇すると記載されており 第1図には中栓11のフランジ部8と外蓋6 。」,の天板5の間に空隙が図示されており,この空隙は「空気溜り部」に相当する。 (3)甲第4号証のキャップの密封用パッキン31に配設されている内側突条33は本件特許発明1における密封用パッキンの中足に相当し 「密封パッキン31が ,配設されており,保持リング30によってキャップの天板に隣接して保持されている「キャップへのパッキンの装着を容易化するために,外側突条34はキャップ 」,軸線に対して鋭角をなす外壁を有する。これによって傾斜面が提供され,突条の柔軟性と共に,パッキンが保持リング30を通過することを可能にする 」との記載 。 があるほか,図2及び図3にこれらの態様が図示されている。 (4)甲第5号証の記載(審決摘記事項(セ(ソ )並びに第7図及び第8図に ),)よると,密封用パッキン(中栓101)は容器(ボトル100)口部の開口内に密封可能に嵌入される中足を有するほか,密封用パッキン(中栓101)の上面とこの上面に対向するキャップ本体(102)の天板の下面との双方に円形凹部形態である空気溜り部が形成されることが開示されている。 (5)甲第6号証には,頂部2(蓋天板に相当する )及びスカート1(周壁に相 。 当する )を有する蓋本体とライナー円板4(密封用パッキンに相当する )とから 。 。 構成されたキャップにおいて,頂部2(蓋天板)の下面に2条の環状リブ7,8を形成して かかるリブ7 8の内側及び外側に円形及び環状の空間 すなわち空 ,, ,,「」,「」 () 気溜り を形成し かかる 空気溜り の存在に起因して蓋本体の頂部2 蓋天板() () とライナー円板4 密封用パッキン との摩擦をライナー円板4 密封用パッキンと容器口部との摩擦よりも小さくし,かくして,容器口部を開封するために蓋本体を容器口部に対して回転する際に,蓋本体とライナー円板4(密封用パッキン)との共回りを防止することが開示されている。 5取消事由5(本件特許発明2〜5についての容易想到性判断の誤り)上記4のとおり,審決がした本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2についての判断は誤りであり,本件特許発明1は,甲第1号証記載の発明と甲第2〜第6号証記載の個々の発明又は周知技術に基づいて容易に想到し得えたものであるから,本件特許発明1が容易想到ではないことを前提として 「 本件特許の ,『請求項2ないし5に係る発明は,甲1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである ・・・を採用することはできない」と 』した審決の判断は誤りである。 第4被告の反論の要点1取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)に対して(1)審決は,本件訂正aは必須構成要件である中足および空気溜り部の技術的意義を明らかにする限定を付加するものであるから,必須構成要件に関する訂正であり 「旧特許法第36条第5項第2号の趣旨に反する訂正であるとはいえない 」 , 。 として,本件訂正aを認めているのであり,その判断に誤りはない。 (2)本件特許に係る明細書の段落【0003【0004】には,圧力状態にか 】,かわらず,パッキンの共回りという点に発明者が着目したことが記載され,同段落00230024 にはパッキンの共回りを防止する中足と空気溜り部によっ 【】,【】て容器内部の気密性を保持できることが記載され,同段落【0025】には加圧状態においても同様に中足と空気溜り部とでパッキンの共回りを防止することが記載されているから,本件訂正aは明細書に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。 (3)本件訂正aは,中足や空気溜り部とは無関係の全く新規な構成を付加するものではなく,訂正前の中足および空気溜り部の技術的意義を明確にするものであって,第三者に不測の不利益を生じさせるものではないことは明らかであり,実質上特許請求の範囲を変更するものではない。 2取消事由2(本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2の認定の誤り)に対して(1)本件訂正aは,中足および空気溜り部をどのように設けるかという点で中足および空気溜り部の態様を限定したものでありブリッジが切れるまで密封用パッ ,「キンの共回りを防止できるように所定の中足および空気溜り部を設ける」という部分(訂正事項a)は,それ全体として,中足および空気溜り部という部位を具体的に規定する一つの構成であるところ,このように規定することによって,一見,中足や空気溜り部と見えるものであっても,ブリッジが切れるまでパッキンの共回りを防止できないようなもの,例えば,単に容器に挿入されているに過ぎない部材などとは,明確に区別されるのであるから,相違点2は実質的な相違点である。 (2)甲第1号証のストッパは,ネックが容器口部の内周面に嵌入してその内周面との間で密封するという構造ではなく,単にネックのテーパ面が容器口部のエッジに点接触して密封する構造である上,フランジも容器口部の上端面から浮いていることから,開栓時に基壁の凸状隆起部が少しでも上昇してストッパから離間すると凸状隆起部による押圧力がなくなり,ストッパは開栓の開始と同時に浮上するか共回りする。 また,図2からも明らかなように,ストッパのフランジ9と壁1の内周面との間の隙間は極小であり,実際上は,壁やストッパの寸法や組み付けにバラツキが生じたり,ストッパが傾斜したりすることによって,ストッパのフランジは壁の内周面に接触する。したがって,開栓時には,壁の内周面からストッパのフランジに回転力が与えられ,容器口部に点接触しているに過ぎないストッパは,ブリッジが切れる前において壁と共に回転することになる。 さらに,図2においてフラップ7がリブ14に近い位置に設けられているからといって,必ずしも,ねじ部のテーパ面の上端部がフランジに当接するよりも先にポイントが切断するということにはならず むしろ ねじ部の最上部がテーパ面となっ ,,ていてそのテーパ面の上端部がフランジ下面にかなり接近していること,ポイントの伸び,フラップの形状やリブとの係合量の少なさ,並びに,フラップの上端面とリブの下面が共にテーパ面となっていることを総合的に考慮すれば,ポイントが切断するよりも先にねじ部のテーパ面の上端部がフランジに当接するおそれが十分にある。したがって 「開栓時にブリッジが切れるまでは密封用パッキンによる容器 ,口部の密封を保持しブリッジが切れると密封用パッキンの周縁部に当接してこれを容器口部上方に持上げうるパッキン案内部」は,甲第1号証には記載されていないというべきである。 これに対して,本件特許発明1は,開栓時における蓋本体の動きを上昇と回転という2つの動きとして把握し,開栓時における上昇という動きに関しては,蓋本体に設けるパッキン案内部をブリッジが切れるまでは密封用パッキンの周縁部に当接しないような位置に設けることとし,また開栓時における回転という動きに関しては,ブリッジが切れるまで共回りを防止できるように中足と空気溜り部とを設けることとしているものであり,ブリッジが切れるまでの間であって未だパッキン案内部によって密封用パッキンが持ち上げられていない状況においても蓋本体は回転していることから,密封用パッキンの共回りを防止できるように中足と空気溜り部とを設けてそれによってブリッジが切れるまで密封用パッキンを停止状態とするものである 特に 蓋天板と容器口部の上端面との間で強く上下に挟持される部分であっ 。,て密封用パッキンとして容器を密封する部分であるところの外周部分において,その下面においては容器口部との高い密着性を中足と共に確保し,その上面においては空気溜まり部によって密着性を相対的に小さくし,これらによって開栓時の共回りを防止している。 , , 甲第1号証には このような本件特許発明1の技術思想は全く記載されておらず甲第1号証記載の発明と本件特許発明1とが同一でないことは明白である。 3取消事由3(本件特許発明2〜5についての甲第1号証記載の発明と同一性がないとした判断の誤り)に対して上記2のとおり,審決がした本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2の認定に誤りはなく,両者が同一でないことは明らかであるから,このことを前提として,本件特許発明2〜5が甲第1号証記載の発明と同一でないとした審決の判断に誤りはない。 4取消事由4(相違点2についての判断の誤り)に対して以下のとおり,甲第2〜第6号証には,本件特許発明1の「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」中足及び空気溜り部を設けることは,記載も示唆もないから,原告の主張は失当であり,審決の相違点2についての判断に誤りはない。 (1)甲第2号証に記載されたキャップは,天板のないスカートとディスクからなるフローティングディスクタイプのもので,天板自体がないから空気溜り部が存在, , することはなく 密封用パッキンに相当するものも単なる板状のディスクであって中足も存在しない。そもそも「中足および空気溜り部」が設けられていないものであるから 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように, ,中足および空気溜り部を設ける」ことの示唆はない。さらに,甲第2号証に記載されたキャップの密封構造は,リップ27がディスクを下方に押圧する押圧力に頼ったものであるから,開栓時にリップがスカートと共に上昇するとその押圧力が解除され,密封も自動的に解除されるものであり,この点で凸部による押圧力に頼っている甲第1号証記載のキャップと同様の密封構造であって 「スカートの上昇動作 ,=密封解除」という考えに留まっており,スカートがディスクを持ち上げない間におけるスカートの回転に伴ったディスクの回転という点には一切考慮が払われていない。 (2)甲第3号証記載の中栓は有底筒状のものであって,筒部の上端部外側にフランジ部が突設された形状のものであるから,そもそも本件特許発明1の密封用パッキンとは全く異なるものである。甲第3号証記載の中栓が容器口部を密封している部分は筒部の底面であるところ,その筒部の底面に本件特許発明1の中足に相当するものが存在しないことは明らかである。仮に,甲第3号証記載の中栓の周縁部がフランジ部であるとしても,そのフランジ部は容器口部の外周面から側方に突出していないから,甲第3号証記載の中栓には本件特許発明1の密封用パッキンの周縁部に相当する部分が存在しない。 また,甲第3号証には,中栓が外蓋の回転に伴って回転しないのは環状垂下部の径を小さくしているからであると記載されているのであって,空気溜り部の存在によるとは一切記載されていない。 そもそも,筒状の中栓とその中栓の上端開口に進入する環状垂下部という構造を甲第1号証記載のキャップに適用できるはずもなく,仮に適用したとしても凸部で中栓を押圧することもできないから,結局,甲第1号証記載のキャップと甲第3号証記載のキャップは全く異なる構造であって組み合わせること自体に無理がある。 なお,本件特許発明1において,パッキン案内部と中足および空気溜り部とは,ブリッジが切れるまでという区間において密接に関係したものであるところ,これらの相互関係については,甲第1号証と甲第3号証の何れにも記載されておらず,甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された公知技術を適用しても,本件特許発明1の構成とすることはできない。 (3)甲第4号証記載のパッキンの構造は,そもそも周知な技術事項であるということができない。 また,甲第4号証記載のパッキンは開栓直後から動く構造のものであるから,開栓動作と同時に容器内周面に対して動摩擦状態となり,蓋本体に伴って共回りしてしまうから,内側突条は密封用パッキンの共回りを防止できるように設けられた中足ではない。 さらに,甲第4号証記載のキャップには空気溜り部も存在せず,開栓動作に伴ってパッキンが復元して内側突条が容器に対して相対的に上昇するというパッキン構造を前提として,蓋本体の天板とパッキンとが密着していることから,開栓時にはパッキンが容易に共回りする。 (4)甲第5号証記載のキャップ構造は,そもそも周知な技術事項であるということができない。 また,甲第5号証記載のキャップにはブリッジが存在せず,ちょい回し対策の必要性がないものであり,相違点2に係る「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように中足および空気溜り部を設ける」ことは記載されていない。 また,甲第5号証記載のキャップは,開栓動作に伴って中栓を容器に対して積極的に相対移動(共回り)させることによって素早く容器を開封させると共に開口操作を容易にするものであるということができるから,容器の内周面と密着しているように見える中栓も,実のところは,容器の内周面に対して周方向に容易に相対回転できる状態で接しているに過ぎない。 (5)甲第6号証記載のキャップ構造は,そもそも周知な技術事項であるということができない。 また,甲第6号証記載のライナー円板は容器を密封しておらず密封用パッキンに相当するものではない 容器を密封しているのは内側のリブであるから 密封用パッ 。 ,キンの共回りを防止することの前提が欠けている。 さらに,開栓時にリブがライナー円板の上面に対して少しでも摺動すると,リブとライナー円板との間から容器内の圧力は必然的に漏れることとなり,開栓動作と同時に容器はリークするのであり,また,ライナー円板の上方の空間は容器内と連通しているのであるから空気溜り部でなく,ライナー円板には中足もなく,ブリッジも存在していない。 5取消事由5(本件特許発明2〜5についての容易想到性判断の誤り)に対して上記4のとおり,審決がした本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2についての判断に誤りはなく,本件特許発明1は,甲第1号証記載の発明と甲第2〜第6号証記載の個々の発明又は周知技術に基づいて容易に想到し得えたものとはいえないから,このことを前提として,本件特許発明2〜5が甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないとした審決の争点2についての判断に誤りはない。 第5当裁判所の判断1取消事由1(本件訂正の可否についての判断の誤り)について(1)原告は,本件訂正aは発明の必須構成要件のみを記載することを要求している平成6年改正前の特許法36条5項の趣旨に反する訂正であり,認められるべきものではないから,本件訂正を認めた審決の判断は誤りであると主張するが,本件訂正が認められるための要件は,平成6年改正前特許法134条2項及び同条5項により準用される同法126条2項に定める各要件であり(同法126条3項については,現行特許法134条の2第5項によって読み替えて準用される同法126条5項の適用により 本件訂正の要件とはならない平成6年改正前の特許法36 , 。),条5項は訂正要件とされていないのであるから,原告の主張は失当である。 (2)原告は,本件訂正aは,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではないから,本件訂正を認めた審決の判断は誤りであると主張するので,この点について検討する。 本件訂正aは,本件訂正前の請求項1の記載のうち 「前記密封用パッキンが前 ,記容器口部の開口内に密封可能に嵌入される中足を有し,更に,前記密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に形成された空気溜り部を有する」との部分を「前記ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように,前記密封用パッキンの下面には容器口部の開口内に密封可能に嵌入される環状の中足を設けると共に該密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に空気溜り部を設けてなる」とするものであるから,本件訂正aによる訂正内容は,容器口部の開口内に密封可能に嵌入される密封用パッキンの下面の環状の中足と,密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面の空気溜り部について 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるよう ,に」設けることを付加しているものであると認められる。 ところで,甲第7及び第12号証によると,本件特許に係る本件訂正前の明細書(「」。), 。 以下 本件訂正前明細書 というには 次の各記載があることが認められる「この発明は,上記問題に鑑みてなしたもので,その目的は,簡単な構成で,開栓時に,少なくともパッキンの共回りを防止でき,かつブリッジが切れるまでは容器の密封を保持できる合成樹脂製ピルファープルーフキャップを提供することにある(段落【0004 ) 。」】「そして,この密封用パッキン(以下,単にパッキンという)は,?@高温液体を充填し,または,液体充填後高温処理が付され,その後室温まで冷却した際に密封容器が減圧状態となる場合,?A内容物を密封した密封容器内が容器外部に対して加圧状態となる場合,?B密封容器内の内圧が容器外部と同圧の状態となる場合,に使用される。この発明において (A)まず, ,上記?@で述べたように減圧状態で内容物を保持する場合は,開栓時に,少なくともパッキンの共回りを防止するために,パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面に空気溜り部12を形成する ・・・ B)次に,上記?Aで述べたように加圧状態で内容物を保持する場合 。(は,開栓時に,パッキンの共回りを防止するために,容器口部の開口内に密封可能に嵌入される中足11を備えたパッキン9を用いる ・・・ (段落【0011】〜【0014 ) 。」 】「なお,この発明においては,密封容器内の内圧が容器外部と同圧の状態となる場合は,上記(B)で述べたような中足を備えたパッキンを用い,上記(A)で述べたように,パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面に空気溜り部を形成して少なくともパッキンの共回りを防止する。 【作用】減圧状態で内容物を保持する容器の密封に使用される合成樹脂製ピルファープルーフキャップの場合には,高温液体を充填したり,または,液体充填後高温処理を付した後,室温まで冷却した際に減圧状態となり,容器内部にバキュームが発生し,これによりパッキンは特にこれを持上げる力が生じない限り,容器口部を密封し続けることになる。従って,いたずら等によりキャップが全開しない程度に開栓動作が行われても,ブリッジの伸びを考慮して少なくともこれが切れるまでの間はパッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面に設けた空気溜り部により蓋天板の下面およびパッキンの上面間に空気層が形成され,併せて中足が備わっているので,少なくともパッキンの共回りを防止でき,これにより容器内部の気密性を保持できる。そして,少なくともブリッジが確実に切れた後に,パッキン案内部によって,上記のバキュームシール中のパッキンを蓋本体と共に持上げ,容器を開封できる。加圧状態で内容物を保持する場合には,容器口部の開口内に密封可能に嵌入される中足を備えたパッキンを用いているので,いたずら等によりキャップを全開しない程度に開栓動作が行われても,少なくともパッキンの共回りを防止でき,これにより容器内部の気密性を保持できる。そして,少なくともブリッジが確実に切れた後に,パッキン案内部によって,シール中のパッキンを蓋本体と共に持上げ,容器を開封できる(段落【0016】〜【0018 ) 。」 】「この実施例のものは上記構成を有するから,図4に示すような (A)減圧状態で内容物 ,を保持する容器の密封に使用される合成樹脂製ピルファープルーフキャップCの場合には,閉栓状態から 図5に示すように 蓋本体6に開栓回転方向に回転力を加え開栓を行うと ブリッ ,, ,ジ7の伸びを考慮して少なくともこれが切れるまでの間はパッキン9の上面9aに容器口部3の外周面3a(図2参照)から空気aが流入する空気溜り部12により蓋天板1の下面1aおよびパッキン9の上面9a間に空気層Sが形成されている上に,パッキン9が容器口部3の開口3b内に密封可能に嵌入される環状の中足11を有するので,いたずら等によりキャップCを全開しない程度の開栓動作が行われても,パッキン9の共回りを確実に防止でき,これにより容器内部の気密性を保持できる。そして,少なくともブリッジ7が確実に切れた後に,パッキン9の周縁部に当接するパッキン案内部10によって,上記のバキュームシール中のパッキン9を蓋本体6と共に持上げ,容器口部3を開封できる(段落【0023 ) 。」】「なお,図4に示すような (A)減圧状態で内容物を保持する容器の密封に使用される合 ,成樹脂製ピルファープルーフキャップの場合に代えて (B)加圧状態で内容物を保持する容 ,器の密封に使用される合成樹脂製ピルファープルーフキャップの場合でも,上記実施例と同様の構成,あるいは,パッキンが容器口部の開口内に密封可能に嵌入される所定長の中足を有する構成にすると,上記実施例と同様の効果を奏する(段落【0025 ) 。」】上記本件訂正前明細書の記載によると,本件訂正前明細書には,減圧状態で内容物を保持する容器の密封に使用される合成樹脂製ピルファープルーフキャップの場合,密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面の空気溜り部を設けることによって空気層が形成され,少なくとも密封用パッキンの共回りが防止されること,加圧状態で内容物を保持する容器の場合には,容器口部の開口内に密封可能に嵌入される環状の中足を備えたパッキンを使用することによって,少なくと,, も密封用パッキンの共回りが防止されることが記載されており 更にこれに加えて密封用パッキンの下面には容器口部の開口内に密封可能に嵌入される環状の中足を設けると共に該密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に空気溜り部を設けるという構成を備えたピルファープルーフキャップの実施例が,減圧状態であるか加圧状態であるかを問わず,ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止するという効果を奏することについても記載されているということができる。 そうすると 「密封用パッキンの下面には容器口部の開口内に密封可能に嵌入さ ,れる環状の中足を設けると共に該密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に空気溜り部を設け(る 」ことにより,容器の内容物が減圧状態 )で保持されているか加圧状態で保持されているかを問わず 「ブリッジが切れるま ,で密封用パッキンの共回りを防止できる」という作用をもたらすことは,本件訂正前明細書に記載された事項であるというべきであり,本件訂正aは明細書に記載された上記事項の範囲内においてする訂正であることは明らかである。 したがって,原告の主張は失当である。 (3)原告は,本件訂正aは,新規な技術手段を付加するものであり,本件特許発明1は本件訂正aによって別個の発明となってしまうから,本件訂正aは実質上特許請求の範囲を変更する訂正であり,これを認めた審決の判断は誤りであると主張するので,この点について検討する。 本件訂正aの内容は上記(2)のとおりである。そして,上記(2)のとおり,本件訂正前明細書には,本件訂正前発明1の構成のうち 「前記密封用パッキンが前記容 ,器口部の開口内に密封可能に嵌入される中足を有し,更に,前記密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する前記蓋天板の下面に形成された空気溜り部を有する」との部分が 「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できる」とい ,う作用をもたらすことが具体的に記載されていることが認められるところ,本件訂正aは,上記構成部分を維持した上で,上記作用を機能的な要件として付加し,特許請求の範囲を減縮しただけのものであり 本件訂正aの前後で 本件訂正前発明1 ,,と本件特許発明1が実質的に異なる発明であるということは到底できないから,本件訂正aが実質上特許請求の範囲を変更するものということはできない。 したがって,原告の主張は失当である。 , ,。 (4)以上のとおり 原告の主張はいずれも失当であり 取消事由1は理由がないそうすると,本件発明の要旨は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜5の記載に基づいて認定すべきものであるから,審決が,本件発明の要旨を「本件特許発明1」〜「本件特許発明5」のとおり認定したことに誤りはない。 2取消事由2(本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2の認定の誤り)について(1)原告は,本件訂正aは,本件訂正前発明1の構成に作用効果を加える訂正であり 発明の構成に関するものではないから中足および空気溜り部 を ブリッ , ,「」 「ジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」設けるか否かに係る相違点2は実質的な相違点ということはできないと主張する。 しかるところ,本件特許発明1は 「容器口部の開口内に密封可能に嵌入される ,密封用パッキンの下面の環状の中足と密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面の空気溜り部」について 「ブリッジが切れるまで密封用パッキン ,」,,, の共回りを防止できるように 設けると規定されており 原告の主張は 要するに「 」, ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように との規定が発明の構成に関するものではないから,本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2が実質的な相違点ではないとの主張に帰着するものであるが,上記部分の規定は 本件特許発明1の 容器口部の開口内に密封可能に嵌入される密封用パッ ,「キンの下面の環状の中足と密封用パッキンの上面又はこの上面に対向する蓋天板の下面の空気溜り部」を機能的に限定するものと認められるから,この部分の規定が発明の構成に関するものではないことを前提とする原告の主張は失当である。 (2)原告は,甲第1号証記載の発明において,ストッパのネック(10)と瓶のネックとの接触は周方向に連続して延在する環状面接触であり,本件特許発明1における空気溜り部と全く同様に,キャップの基壁の下面には,中央に形成された凸状隆起部 6 の周囲に位置する空気溜り部が存在すると主張するとともに キャッ () ,プのねじ 2 の内側部がストッパのフランジ 9 に当接してストッパを引っ張っ () ()た時に初めてストッパが緩められることは明らかであって,それまでの間はストッ, , パによる密封が維持されており ストッパが共回りすることが防止されているから甲第1号証記載の発明も「ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように」中足および空気溜り部を設けることを意図するものであり,審決の相違点2の認定は誤りであると主張するので,この点について検討する。 ア甲第1号証には次の記載がある。 「多用途ねじキャップは筒形状本体から構成されており,その鉛直な壁(1)は内面上にねじ(2)を有し(訳文3〜4行) ,」「キャップの基壁の中央部には,ストッパを瓶のネックに密封するのに寄与する凸状隆起部(6)が存在する。 キャップは,更に,その先端に,容易に破断され得るポイント(8)によって本体に接続された密封フラップ(7)を有する。 キャップ内に収容されているストッパはフランジ形態の平坦部(9)と,その片面から延在する円錐形状ネック(10)から構成されている。ネックの中間部には同様に円錐形状であるステッパ(11)が形成されている。 ストッパはキャップ内に移動自在に収容され,キャップのねじに保持され,キャップが鉛直方向に移動する際にフランジ(9)に当接する(訳文6〜14行) 。」このために キャップは瓶のネックの外側螺条に螺合され 同時にストッパの円錐形状ネッ 「, ,ク(10)が瓶のネック内の内側に密封嵌入するまで鉛直方向に進入する。 円錐形状ネック(10)が瓶のネック内に完全に進入すると,ストッパの円錐形状ステッパ(11)が瓶のネックの上端に位置し,これによって密封が補強される。 他方,キャップの螺合が解除される時には,キャップのねじ(2)の内側部がストッパのフランジ(9)に当接してストッパを引っ張り,瓶のネックからストッパを緩め,キャップと共に離脱させる(訳文16〜24行) 。」また,甲第1号証には次の図がある。 イ上記アの記載及び図示によると,甲第1号証には次のことが記載されていると認められる。 (ア) ストッパは,キャップ内に移動自在の状態で収容され,キャップのねじがストッパのフランジ9に当接するようにして保持される。 (イ) キャップを閉めるためには まず キャップ内に移動自在に保持されたストッ ,,パの円錐形状ネック10が瓶のネックの内側に密封嵌入されるまで,キャップを瓶のネックにねじ込む。さらに,円錐形状ネック10が瓶のネック内に完全に進入すると,ストッパの円錐形状ステッパ11によって密封が補強される。 (ウ) キャップの基壁中央部に存在する凸状隆起部6は,ストッパの上面中央部を押圧し,ストッパを瓶のネックに密封するのに寄与する。 (エ) キャップの螺合が解除されるときには,キャップのねじ2の内側部がストッパのフランジ9に当接してストッパを引っ張り,瓶のネックからストッパを緩め,キャップと共に離脱させるが,この際,キャップ本体と密封フラップ7を接続するポイント8が破断される。 , , (オ) キャップとストッパは 密封時には凸状隆起部6のみにおいて当接しており開栓時にはねじ2の内側部のみにおいて当接している。 ウ上記イで認定したところによると,キャップの凸状隆起部6は密封時において,ストッパの上面中央部でストッパと当接・押圧し,ストッパを瓶のネックに密封するのに寄与していることから,この当接が解除され,凸状隆起部6がストッパを押圧しなくなると,ストッパが瓶のネックを密封する力は相対的に弱いものになると考えられる。 しかしながら,ストッパの円錐形状ネック10は,密封時に,瓶のネックの内側に密封嵌入されるまで進入し,円錐形状ネック10が瓶のネック内に完全に進入す, , ると ストッパの円錐形状ステッパ11によって密封が補強されるというのでありまた,キャップの螺合が解除される際には,キャップのネジ2の内側部がストッパのフランジ9に当接してストッパを引っ張ることによって瓶のネックから緩められるものであるところ,この場合に,凸状隆起部6は,ネジ2の内側部がフランジ9に当接するより前に,ストッパから離隔することは明らかであるから,ストッパと瓶のネックとの結合は,単に凸状隆起部6がストッパから離隔したのみでは緩まない程度に強固であるということができる すなわち ストッパの円錐形状ネック10 。,及び円錐形状ステッパ11は,凸状隆起部6の当接・押圧がなくとも,それ自体で十分にストッパを瓶のネックに嵌着密封することができるものであると認められる。 他方,密封時において,キャップとストッパとは,凸状隆起部6のみにおいて当接するにすぎないものであるから,キャップの螺合が解除され,凸状隆起部6が回転しながらストッパから離隔していく際に,キャップ(凸状隆起部6)とストッパとの間に生ずる摩擦力が,ストッパと瓶のネックの間に生じている摩擦力よりも小さいことは明らかである。したがって,キャップ内で移動自在に保持されているストッパが,キャップの回転によって共回りするものとは到底認め難いといわざるを得ない。 そして,甲第1号証記載の発明に「瓶のネックの開口内に密封可能に嵌入されるストッパ5の下面に形成されている環状の円錐形状ネック10と,ストッパ5の上面に対向する基壁4の下面に形成されている凸状隆起部6の周囲に存在する空間」があることについては当事者間に争いがないところ,上記に説示したところによれば 「円錐形状ネック10」及び「空間」は,ストッパの共回りを防止する機能を ,有するものというべきである。 ,「」,「」, エ上記ウで説示したところに加え 甲第1号証記載の発明の 瓶ネック「ストッパ5「円錐形状ネック10「基壁4」及び「空間」が,それぞれ本 」,」,件特許発明1の「容器「口部「密封用パッキン「中足「蓋天板」及び「空 」,」,」,」,気溜り部」に相当することについては当事者間に争いがないことからからすると,結局,甲第1号証には「容器口部の開口内に密封可能に嵌入される密封用パッキンの下面に形成されている環状の中足と,密封用パッキンの上面に対向する蓋天板の下面に,空気溜り部を,ブリッジが切れるまで密封用パッキンの共回りを防止できるように設ける」ことが記載されていると認められる。 そうすると,審決の認定した相違点2は,単なる文言上の相違に止まるものにすぎず,実質的な相違点ではないというべきである。 (3)被告の主張の検討ア被告は,甲第1号証のストッパは,ネックが容器口部の内周面に嵌入してその内周面との間で密封するという構造ではなく,単にネックのテーパ面が容器口部のエッジに点接触して密封する構造である上,フランジも容器口部の上端面から浮いていることから,開栓時に基壁の凸状隆起部が少しでも上昇してストッパから離間すると凸状隆起部による押圧力がなくなり,ストッパは開栓の開始と同時に浮上するか共回りすると主張するが,上記(2)で説示したとおり,被告の主張は失当である。 イ被告は,ストッパのフランジ9と壁1の内周面との間の隙間が極小であり,実際上は,壁やストッパの寸法や組み付けにバラツキが生じたり,ストッパが傾斜したりすることによって,ストッパのフランジは壁の内周面に接触するから,開栓時には,壁の内周面からストッパのフランジに回転力が与えられ,容器口部に点接触しているに過ぎないストッパは,ブリッジが切れる前において壁と共に回転することになる旨主張するが,甲第1号証の FIG.-2 によると,ストッパのフランジ9とキャップの鉛直な壁1の内周面との間に隙間があることは明らかであって,甲第1号証記載の発明は,ストッパのフランジ9とキャップの壁1の内周面とが接触しないものとして開示されており,実際の製品がそのとおりにならない可能性の有, ,。 無は 上記開示の内容に影響を与えるものではないから 被告の主張は失当であるウ被告は,図2においてフラップ7がリブ14に近い位置に設けられているからといって,必ずしも,ねじ部のテーパ面の上端部がフランジに当接するよりも先にポイントが切断するということにはならず,むしろ,ねじ部の最上部がテーパ面となっていてそのテーパ面の上端部がフランジ下面にかなり接近していること,ポイントの伸び,フラップの形状やリブとの係合量の少なさ,並びに,フラップの上端面とリブの下面が共にテーパ面となっていることを総合的に考慮すれば,ポイントが切断するよりも先にねじ部のテーパ面の上端部がフランジに当接するおそれが十分にあるから 「開栓時にブリッジが切れるまでは密封用パッキンによる容器口 ,部の密封を保持しブリッジが切れると密封用パッキンの周縁部に当接してこれを容器口部上方に持上げうるパッキン案内部」は甲第1号証には記載されていないと主張する。 しかしながら,甲第1号証の FIG.-2 によると,キャップねじ部2の最上部とストッパ5のフランジ9の下面との間隔は,密封フラップ7の上端と瓶の周辺リブ14の下端との間隔より明らかに大きく記載されていることが認められ 上記(2) ,アで認定した甲第1号証の記載によると,ポイント8は容易に破断され得るものであるから,甲第1号証記載の発明においても,ポイント8が破断した後にキャップねじ部2によりストッパ5が持ち上げられるものと認められる。 したがって,甲第1号証には「開栓時にブリッジが切れるまでは密封用パッキンによる容器口部の密封を保持しブリッジが切れると密封用パッキンの周縁部に当接してこれを容器口部上方に持上げうるパッキン案内部」が開示されているというべきであるから,被告の主張は失当である。 エ被告は,本件特許発明1における「蓋天板と容器口部の上端面との間で強く上下に挟持される部分であって密封用パッキンとして容器を密封する部分であるところの外周部分において,その下面においては容器口部との高い密着性を中足と共に確保し,その上面においては空気溜まり部によって密着性を相対的に小さくし,これらによって開栓時の共回りを防止する」という技術思想は,甲第1号証記載の発明に全く記載されていないから,甲第1号証記載の発明と本件特許発明1とは同一でない旨主張する。 しかしながら,被告の主張する,上記本件特許発明1の技術思想なるものが本件訂正後の明細書に記載されていることは認められず,被告の主張は本件発明の要旨又は明細書の記載に基づかないものとして,失当であるといわざるを得ない。 3取消事由3(本件特許発明2〜5についての甲第1号証記載の発明と同一性がないとした判断の誤り)について本件特許発明2〜5に係る特許法29条1項3号の事由についての審決の判断は,本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点2が実質的な相違点であることを前提として,本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは同一ではなく,したがって 本件特許発明1に更に限定事項を付加する本件特許発明2〜5も 甲第1 , ,号証記載の発明と同一ではないとするだけのものであるから,上記2のとおり,上記前提が誤りである以上,審決の上記判断にも,誤りがあるといわざるを得ない。 したがって,取消事由3は理由がある。 4結論以上のとおり,審決には,取消事由2及び3に係る誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は取り消しを免れない。 |
裁判長裁判官 | 石原直樹 |
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裁判官 | 杜下弘記 |
裁判官 | 古閑裕二 |