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関連審決 不服2005-4931
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  公知技術 /  技術常識 /  優先権 /  優先日 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10288号 審決取消請求事件
原告ジェーエムエンジニアリング株式会社
訴訟代理人弁理士安倍逸郎
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人溝渕良一,山岸利治,亀丸広司,高木彰, 大場義則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/03/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2005-4931号事件について平成19年6月20日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成15年12月9日,発明の名称を「ボルト・ナットの緩み止め構造」とする発明について特許出願(特願2003-410893号。優先権主張:平成15年6月18日〔以下「本件優先日」という。〕)をしたが,平成17年2月8日付けで拒絶査定を受けたので,同年3月22日,拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は,これを不服2005-4931号事件として審理し,平成19年6月20日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年7月3日,原告に送達された。
2発明の要旨平成19年5月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(甲9)の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の要旨(請求項2は省略する。)「ボルトと,内周面に形成した雌ねじにより,このボルトに螺合するナット部材と,このナット部材をボルトにロックするロックナットとを備え,上記ナット部材は,スパナ係止部と,これに連続して設けられ,軸方向の一端に向かって先細り状またはストレートに形成されたロックナット係止部とを有し,このロックナット係止部には,その内周面の雌ねじとは逆ねじ方向の雄ねじがその外周面に形成されるとともに,軸方向の一端に向かって延びるスリットを有し,上記ロックナットがそのテーパー状の内周面に形成された雌ねじを上記ロックナット係止部の上記雄ねじに螺合することにより,ナット部材をボルトにロックするボルト・ナットの緩み止め構造であって,上記ロックナット係止部の内周面の雌ねじは並目ねじであり,上記ロックナット係止部の雄ねじは細目ねじであるとともに,上記ロックナットの軸方向の厚みを上記ナット部材のスパナ係止部のそれより大きくしたボルト・ナットの緩み止め構造。」3審決の理由( )審決の理由の概要1審決は,本願発明は,実願昭53-104462号(実開昭55-20776号)のマイクロフィルム(甲1。以下,「第1引用例」といい,そこに記載された発明を「引用発明」という。),実願平4-28051号(実開平5-79028号)のCD-ROM(甲2。以下「第2引用例」という。),特開平8-247129号公報(甲3。以下「第3引用例」という。),実願昭58-193194号(実開昭60-101211号)のマイクロフィルム(甲4。以下「第4引用例」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした(なお,本判決においては,審決,引用例の原文を引用する場合も含め,「ナツト」及び「ナット」については,「ナット」と表記する。)。
( )審決が認定した引用発明(3頁第2段落)2「ボートCと,内周面に形成した螺子穴4の螺子山により,このボートCに螺合する締付ナット1と,この締付ナット1をボートCにロツクする戻り止ナット7とを備え,上記締付ナット1は,平面部2を有する部分と,これに連続して設けられ,円錐形に形成された突出部3とを有し,この突出部3には,外螺子5がその外周面に形成されるとともに,軸方向の一端に向かって延びる割溝6を有し,上記戻り止ナット7がそのテーパー状の内周面に形成された螺子穴8の螺子山を上記突出部3の上記外螺子5に螺合することにより,締付ナット1をボートCにロツクするボート・締付ナットの緩み止め構造。」の発明( )審決が認定した本願発明と引用発明の一致点及び相違点(5頁最終段落〜36頁第4段落)ア一致点「ボルトと,内周面に形成した雌ねじにより,このボルトに螺合するナット部材と,このナット部材をボルトにロックするロックナットとを備え,上記ナット部材は,軸方向の一端に向かって先細り状に形成されたロックナット係止部とを有し,このロックナット係止部には,雄ねじがその外周面に形成されるとともに,軸方向の一端に向かって延びるスリットを有し,上記ロックナットがそのテーパー状の内周面に形成された雌ねじを上記ロックナット係止部の上記雄ねじに螺合することにより,ナット部材をボルトにロックするボルト・ナットの緩み止め構造。」イ相違点(ア)相違点1「本願発明では,ナット部材は,『スパナ係止部』を有し,ロックナット係止部はこの『スパナ係止部』に連続して設けられているのに対し,引用発明では,締付ナット1は,平面部2を有する部分を有し,突出部3はこの平面部2を有する部分から連続して設けられており,本願発明のような,スパナ係止部との言及がない点。」(イ)相違点2「本願発明は,『ロックナット係止部には,その内周面の雌ねじとは逆ねじ方向の雄ねじがその外周面に形成される』としているのに対し,引用発明は,突出部3には,外螺子5がその外周面に形成されるものの,この外螺子5が突出部3の内周面の螺子穴4の螺子山とは逆ねじ方向であるか否かは不明である点。」(ウ)相違点3「本願発明は,『上記ロックナット係止部の内周面の雌ねじは並目ねじであり,上記ロックナット係止部の雄ねじは細目ねじであるとともに,上記ロックナットの軸方向の厚みを上記ナット部材のスパナ係止部のそれより大きくした』としているのに対し,引用発明は,突出部3の内周面の螺子穴4の螺子山が並目ねじであるか否か,突出部3の外螺子5が細目ねじであるか否かは不明であり,さらに,本願発明でいう,『上記ロックナットの軸方向の厚みを上記ナット部材のスパナ係止部のそれより大きくした』との事項を具備しているか否か不明である点。」( )相違点についての審決の判断4ア相違点1について(6頁第5段落)「上記(イ)で摘示した如く,締付ナツト1はボートCに螺合されること,及び引用発明の締付ナツト1の『平面部2を有する部分』は,第1引用例の第2図によれば,六角形状を有することは明らかであるので,第1引用例に接した当業者であれば,引用発明の『平面部2を有する部分』が六角形状の『スパナ係止部』であることは,容易に認識できる事項である。
そして,引用発明においても,本願発明の『ロックナット係止部』に相当する『突出部3』は,『平面部2を有する部分』に連続して設けられているのであるから,上記相違点1に係る事項は,格別なものではない。」イ相違点2について(6頁最終段落〜7頁第5段落)「本願発明では,上記相違点2に係る事項を備えることにより,ナット部材のボルトに対する緩み止めをなすものである(出願当初の明細書の段落番号【0006】参照。)。
一方,上記した如く,第2引用例には,『ボルト・ナットの緩み止め構造において,ナット1,2がボルト7と螺合する雌ねじ1b,2bと逆向きの雄ねじ2aおよび雌ねじ1aで相互に螺合する』技術的事項が記載されているものと認める。
そして,この技術的事項によれば,上記(オ)でも摘示した如く,ナットの外周面と内周面を逆向きのねじとすることにより,確実な緩み止めが行われるのであるから,上記相違点2に係る事項は,この技術的事項に示唆されているといえる。
そして,引用発明と第2引用例に記載された技術的事項は,ともに『ボルト・ナットの緩み止め構造』に関するもので,また,引用発明に第2引用例に記載された技術的事項を適用することを妨げる特段の事情も窺えない。
したがって,引用発明の突出部3の外周面の外螺子5及び内周面の螺子穴4の螺子山に関して,第2引用例に記載された技術的事項を適用して,上記相違点2に係る本願発明の事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものと認める。」ウ相違点3について(7頁第6段落〜8頁第4段落)「本願発明では,上記相違点3に係る事項を備えることにより,ナット部材の外周面とロックナットの内周面との接触面積を大きくし,ボルト・ナットの緩み止め構造をさらに緩み難くするものである(出願当初の明細書の段落番号【0006】,及び平成19年5月21日付け意見書第2頁第11行乃至第20行参照。)。
一方,上記した如く,第3引用例には,『ボルト・ナットの緩み止め構造において,メイン・ナット1の突出部12におけるおねじ部120のピッチを,該メイン・ナット1のねじ孔13のピッチよりも小さく設定する』技術的事項が記載されているものと認める。
同様に,第4引用例には,『弛みを生じにくい締付ナツトの構造において,内ナツト(6)と外ナツト(7)間のネジ(8)は内ナツト(6)と回転軸(2)間のネジ(9)に対し,ピツチをより小さく形成する』技術的事項が記載されているものと認める。
そして,これらの技術的事項によれば,上記(キ)及び(サ)でも摘示した如く,ピッチの小さいねじを用いることにより,ナットを容易に緩まないようにさせるものであるから,第3引用例及び第4引用例には,『並目ねじ』及び『細目ねじ』との記載はないものの,上記相違点3に係る事項の内,「上記ロックナット係止部の内周面の雌ねじは並目ねじであり,上記ロックナット係止部の雄ねじは細目ねじである」点は示唆されているといえる。
また,引用発明の『平面部2を有する部分』を本願発明でいう『スパナ係止部』として容易に認識できることは,上記『4-1相違点1に対し』(判決注:上記ア)において言及したとおりである。
してみると,引用発明においては,本願発明のように「上記ロックナットの軸方向の厚みを上記ナット部材のスパナ係止部のそれより大きくした」とは言えないものの,ボルト・ナットの緩み止め構造において,緩み止め効果を高めることは一般的な課題であって,しかも,ねじ同士の接触面積を大きくするとより強固な結合がなされることは,当業者であれば容易に認識できることであるので,引用発明においても,同課題を達成するために,戻し止ナツト7(ロックナット)の軸方向の厚みを大きくすることは,当業者であれば試みることは当然のことであり,その際,戻し止ナツト7(ロックナット)の軸方向の厚みを締付ナツト1(ナット部材)の平面部2を有する部分(スパナ係止部)のそれより大きくすることも,当業者が適宜実施し得ることであって,格別なものではない。
そして,引用発明と第3引用例及び第4引用例に記載された技術的事項は,ともに『ボルト・ナットの緩み止め構造』に関するもので,また,引用発明に第3引用例及び第4引用例に記載された技術的事項を適用することを妨げる特段の事情も窺えない。
したがって,引用発明の突出部3の外周面の外螺子5及び内周面の螺子穴4の螺子山に関して,第3引用例及び第4引用例に記載された技術的事項を適用して,その際,戻し止ナツト7の軸方向の厚みを締付ナツト1の平面部2を有する部分のそれより大きくするようにして,上記相違点3に係る本願発明の事項とすることは,当業者が容易に想到し得るものと認める。」エ効果について(8頁第5段落)「そして,本願発明の効果は,引用発明,及び第2引用例乃至第4引用例に記載された技術的事項から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。」第3原告主張の審決取消事由審決は,本願発明の効果を看過し(取消事由),本願発明は,当業者が容易に発明をすることができるとの誤った結論に至ったものであり,違法であるから,取り消されるべきである。
1取消事由(本願発明の効果の看過)( )審決は,「本願発明の効果は,引用発明,及び第2引用例乃至第4引用例1に記載された技術的事項から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。」(上記第2の3( )エ)としたが,誤りである。
4( )第1引用例ないし第4引用例は,いずれも,本願発明に係るロックナット 2及びナット部材を開示するものではない。すなわち,これらの引用例には,いずれも,本願発明に係る,ロックナットがテーパー状内周ネジ面を有しており,ロックナットがボルトに螺合するのではなくこのテーパー面でスリット入りのナット部材のロックナット係止部を締め付けること,このときロックナット係止部の雄ねじとナット部材の雌ねじとが逆方向のネジであることについて,記載されていないし,示唆もされていない。
そして,本願発明に係るロックナットでは,ナット部材によって,上記引用例記載の発明の場合よりも,より強固に螺合される。
すなわち,本願発明のボルト・ナットの緩み止め構造にあっては,まず,ナット部材に,ボルトを一方向に回転させて螺合し,次いで,ナット部材のロックナット係止部に,ロックナットを上記とは逆回りに螺合する。これにより,ボルトはナット部材にねじ込まれるとともに,ナット部材は,ロックナットで締め付けられ,特に,ロックナット係止部の外周面には,その内周面の雌ねじとは逆ねじ方向の雄ねじが形成されているため,ナット部材及びロックナットは,ボルトに対して互いに逆向きにねじ込まれていて,この締結構造に対して,振動や衝撃が付加されたとき,ナット部材は緩もうとするが,ロックナットがナット部材に対して締め付ける結果,ナット部材のボルトに対する緩み止めがされる。そして,ナット部材のロックナット係止部をストレートに形成したため,ロックナットが螺合された場合にその締め付け力が大きくなって,有効に緩み止め効果を発揮するのであり,この点は,各引用例のいずれにも示唆されていない。
また,ナット部材のロックナット係止部の外周面に形成されている雄ねじは細目ねじであり,細目ねじは,並目ねじよりもねじ山のピッチが小さいため,ナット部材の外周面とロックナットの内周面との接触面積が大きくなり,並目ねじよりも細目ねじの方が緩み難くなっている。
さらに,このロックナット内周面がテーパー面であって,ロックナット係止部がストレートに形成されていても,ロックナットのねじ込みにより,より強固に結合される。
加えて,ロックナット係止部の厚さをスパナ係止部のそれよりも厚くしているため,ロックナットおよびロックナット係止部外周の細目ねじ同士の接触面積がさらに大きくなって,より強固な結合を確保することができる。
このように,本願発明は,第1引用例ないし第4引用例記載の発明とは,その構成が明らかに異なり,しかも,この構成の差異によりその作用効果も顕著に異なる。
上記逆ネジ構造を使用することで,戻しトルクが締め付けトルクより大きくなり,これは,当業者にとって自明の範囲ではないし,本願発明に係る緩み止め構造にあっては,メンテナンスにおいて正確なトルク締めが可能であり,取り付け取り外しが簡単である。
したがって,本願発明は,当業者が上記引用例の記載技術に基づいて容易になし得る程度のものではない。
( )本願発明の効果の優位性は,試験の結果によっても明らかである。
3原告は,ロックナットの内周面に形成されたねじを正ねじとし,かつ,並目ねじに形成した試験サンプルを作成した。これは,本願発明の実施品をもとに引用発明に近づけるようにしたため,ロックナットの大きさがスパナ係止部より大きい点,ロックナット係止部がテーパー状になっていない点,ロックナットにはボルトが螺合されていない点において,第1引用例のボルトとナットとは構成が異なる。そして,本願発明の実施品と,試験サンプルの緩み止めナットについて,高速ねじ弛み試験機の加振台の上に加振対象物を固定する筒状の振動バーレルを配設し,この振動バーレルに,一方向からボルトを略水平に挿入し,振動バーレルの他方向にナット部材(下ナット)をボルトの軸部の先端に螺合し,ナット部材のロックナット係止部にロックナット(上ナット)を螺合して,同条件で,緩み構造に対する振動試験を行った。そして,この試験結果(甲10)によれば,ナット部材の雄ねじのねじ山を逆ねじに,ねじ山のピッチを細目ねじにすることで,下ナットの戻しトルクが大きくなり,その条件を欠くと下ナットの戻しトルクが小さくなることは明らかであり,本願発明のボルト・ナットの緩み止め構造には,緩みに対して優位性があることが明らかである。
( ) 被告は,第2引用例に接した当業者であれば,ナット2の外周面である雄4ねじ2aと内周面である雌ねじ2bを逆向きのねじとすれば,ナット1がナット2を制御して,確実な緩み止めが行われることは容易に認識できる事項である旨主張するが,理由がない。
第2引用例に基づいた緩み止めナットを用いた場合,振動させると,凸型ナットと凹型ナットとについては緩み止めの役割を果たすが,凸型ナットの雌ねじと凹型ナットの小径の雌ねじには,同じ方向のねじ山が形成されているから,ボルトとナットについての緩み止めの役割を果たすことができない。これと異なり,本願発明は,ロックナットの内周面に形成された雌ねじには,ナット部材のロックナット係止部に形成された雄ねじが螺合されており,ボルトは螺合されていないから,本願発明に基づいてロックナットを用いた場合において,振動させると,ナットが締め付けられ,ボルトに対する緩み止めがされる。
本願発明は,第2引用例に記載の発明と比較してもその構成が明らかに異なり,第2引用例の凸ナットの逆ねじ構造はナット同士の緩み止めのために設けられたものにすぎず,第2引用例の逆ねじ構造を目的が異なる第1引用例に適用すべき示唆はないし,構成の差異によりその作用効果についても顕著に異なる。
( )被告は,引用発明に対し,第3引用例及び第4引用例に記載された技術的5事項の適用を試みることは,当業者であれば当然のことである旨主張するが,理由がない。
第3引用例に基づいたメインナットとサブナットとの取付構造に振動を与えると,メインナットとサブナットとについて,細目ねじを形成しているため緩み止め効果はあるが,ナットとボルトとについては,第2引用例の場合と同様,緩み止めの役割は果たさない。また,第4引用例に基づいた外ナットと内ナットとの取付構造に振動を与えると,外ナットと内ナットとは,細目ねじを形成しているため緩みにくくなっているが,緩み止めの効果はわずかしかないし,内ナットと取付軸とについても緩み止めの効果はない。そして,第3引用例,第4引用例には,第1引用例への組合せへの動機付け,示唆はない。
さらに,本願発明は,ロックナットの厚さがスパナ係止部のそれより厚くなっているとの特徴を有する。この特徴は,ボルト・ナットの締結構造に振動や衝撃が与えられたときの衝撃をロックナットに負わせることを目的としている。衝撃によりロックナットが緩むと,ロックナットの内周面に形成されたねじは逆ねじになっているため,ボルトとナットとが締め付けられ,その結果,ボルト・ナットの緩み止め効果に優位性を持たせることができ,この点について,第3引用例,第4引用例ともに記載はない。
したがって,本願発明は,第3引用例,第4引用例に記載の発明とはその構成が明らかに異なり,しかも,この構成の差異によりその作用効果についても顕著な相違点を有していて,第1引用例と第3引用例,第4引用例を組み合わせても本願発明の構成に想到することはできない。
第4被告の反論1取消事由1(顕著な効果の看過)に対して( )原告は,第1引用例ないし第4引用例は,いずれも,本願発明に係るロッ1クナット及びナット部材を開示するものではない旨主張する。
しかし,原告が主張する本願発明の構成のうち,ロックナットがテーパー状内周ネジ面を有しており,ロックナットがボルトに螺合するのではなくこのテーパー面でスリット入りのナット部材のロックナット係止部を締め付けることについては,第1引用例に記載されていて,ロックナット係止部の雄ねじとナット部材の雌ねじとが逆方向のネジであることについては,審決は,相違点2として挙げて,相違点2に係る本願発明に構成に想到することが容易であるかを検討している。
そして,第2引用例に接した当業者であれば,ナット2の外周面である雄ねじ2aと内周面である雌ねじ2bを逆向きのねじとすれば,ナット1がナット2を制御して,確実な緩み止めが行われることは容易に認識できる事項であるから,引用発明の「締付ナット1」及び「戻り止ナット7」においても,確実な緩み止めを行うために,第2引用例に記載された技術的事項の適用を試みることは,当業者であれば当然のことである。
そして,原告が主張する,本願発明に係るロックナットではナット部材によって,より強固に螺合される点も,第2引用例に記載された「逆向きのねじ」に関する技術的事項から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
また,原告は,本願発明は,ナット部材のロックナット係止部をストレートに形成したために,有効に緩み止め効果を発揮する旨主張している。
しかし,本願発明は,「上記ナット部材は,・・・軸方向の一端に向かって先細り状またはストレートに形成されたロックナット係止部」を有するのであるから,ナット部材のロックナット係止部をストレートに形成したものと限定的に解釈するのは誤りであり,先細り状に形成されたロックナット係止部が第1引用例に記載されていることは明らかである。
さらに,原告は,本願発明は,ピッチの小さい細目ねじを使用すること,ロックナット係止部の厚さをスパナ係止部のそれより厚くすることにより接触面積を大きくして緩み止め効果を高めている旨主張する。
しかし,第3引用例及び第4引用例に接した当業者であれば,ナットの内周面のねじより外周面のねじピッチを小さくすること,すなわち,ナットの内周面を並目ねじとし,外周面を細目ねじとすることにより,よりナットは緩まないことは容易に認識できる事項であるから,引用発明の「締付ナット1」においても,確実な緩み止めを行うために,第3引用例及び第4引用例に記載された技術的事項の適用を試みることは,当業者であれば当然のことである。また,ロックナット係止部の厚さをスパナ係止部のそれより厚くすることにより接触面積を大きくして緩み止め効果を高めている点は,技術常識であって格別なものではない。そして,本願発明が,上記の構成により,接触面積を大きくして緩み止め効果を高める点も,第3引用例及び第4引用例に記載された「ピッチ」に関する技術的事項並びに技術常識から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
( )原告は,本願発明は,逆ネジ構造を使用することで,戻しトルクが締め付2けトルクより大きくなり,これは,当業者にとって自明の範囲ではないとして,本願発明が顕著な効果を奏する旨主張する。
しかし,原告が主張する本願発明の効果は,引用発明及び第2引用例に記載された「逆向きのねじ」に関する技術的事項並びに第3,第4引用例に記載された「ピッチ」に関する技術的事項,さらには技術常識から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。
また,明細書において,本願発明の試験結果が示されているが,これは,本願発明と六角ナット,Uナット等との比較であって,少なくとも公知技術である第1引用例に記載されたものとの比較ではないので,この試験結果から直ちに,本願発明に顕著な効果があるとはいえない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(顕著な効果の看過)について( )原告は,「本願発明の効果は,引用発明,及び第2引用例乃至第4引用例1に記載された技術的事項から,当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものとはいえない。」とした審決の判断を争う。
( )原告は,第1引用例ないし第4引用例は,いずれも,本願発明に係るロッ2クナットおよびナット部材を開示するものではなく,本願発明は,第1引用例ないし第4引用例記載の発明とは,その構成が明らかに異なって,その効果が顕著に異なる旨主張する。
ア原告は,本願発明について,まず,ナット部材に,ボルトを一方向に回転させて螺合し,ついで,ナット部材のロックナット係止部に,ロックナットを上記とは逆回りに螺合することにより,振動や衝撃が付加されたとき,ナット部材は緩もうとするが,ロックナットがナット部材に対して締め付ける結果,ナット部材のボルトに対する緩み止めがされる旨主張する。
ここで,第2引用例には,以下の記載がある。
「【従来の技術】従来,緩み止ダブルナットとして,例えば特公昭48-25700号公報に示されるように,凹形ナットと凸形ナットとで構成したものがある。
その一例を図7に示す。すなわち,内周に左右逆向きの大小の雌ねじ51a,51bを設けた1個の凹形ナット51に,外周に雄ねじ52aを切った1個の凸形ナット52をねじ込んで構成される。各ナット51,52は,外形を六角ナットあるいは軸受用ナットタイプとし,次のように締め付けを行う。まず,凹形ナット51と凸形ナット52とを,互いの内側の雌ねじ51b,52bのつる巻き線が一致するように,外側の雄ねじ52aと雌ねじ51aとを利用して一体化する。この一体化したものを,ボルト(あるいはねじ付シャフト)53に螺合する。次に,被締結材54を充分に締め付けた後,凹形ナット51を若干ねじ戻して緩み止めする。このダブルナットによると,両ナット51,52がボルト53と逆向きの雄ねじ52aで螺合しているため,確実な緩み止めが行われる。すなわち,ボルト53が右ねじであるとすると,左に回ることにより緩むのであるが,左ねじの雄ねじ52aと雌ねじ51aとの螺合のために,左回転に強い抵抗を示す。つまり,凹形ナット51の右ねじの雌ねじ51bと左ねじの雌ねじ51aとが相互に凸形ナット52を制御して,その戻り回転を阻止する。そのため,振動や衝撃に対して強い緩み止め効果が得られる。」(段落【0002】〜【0004】)これによれば,本件優先日より前に,緩み止めダブルナットとして,ボルトに螺合するナット内周面の雌ねじとは逆ねじ方向のねじにより2個のナットを螺合し,一方のナットが緩む方向に回転するような振動が与えられたときに他方のナットがその回転を阻止することにより,振動や衝撃が付加されても,ナット部材がボルトに対して緩み止め効果を奏することが知られていたと認められる。
そして,このような構成とその効果が知られていたとき,引用発明に対し,互いに螺合する二つのナット(ナット部材とロックナット)を用いたボルト・ナットの緩み止め構造を有するものである点で共通性を有する第2引用例記載の技術を適用して,相違点2に係る本願発明の構成とすれば,その効果として振動や衝撃に対する緩み止め効果が得られることは,当業者が当然に予測できるようなものであると認められる。
イ原告は,ナット部材のロックナット係止部をストレートに形成したため,ロックナットが螺合された場合にその締め付け力が大きくなって,有効に緩み止め効果を発揮し,この点は,各引用例のいずれにも示唆されていない旨主張する。
しかし,本願発明の特許請求の範囲には,ナット部材のロックナット係止部について「軸方向の一端に向かって先細り状またはストレートに形成された」と記載されていて,本願発明のロックナット形成部の形状は,先細状に形成したものとストレートに形成したものが含まれることが明らかであるから,ロックナット係止部がストレートに形成されるものに限定されることを前提として,本願発明の効果をいう主張は,採用の限りではない。
ウ原告は,本願発明のナット部材のロックナット係止部の外周面に形成されている雄ねじは細目ねじであり,細目ねじは,並目ねじよりもねじ山のピッチが小さいため,ナット部材の外周面とロックナットの内周面との接触面積が大きくなり,並目ねじよりも細目ねじの方が緩み難くなっている旨主張する。
本願発明のナット部材のロックナット係止部の外周面に形成されている雄ねじに細目ねじを用いることにより,並目ねじよりねじ山のピッチが小さくなり,「細目ねじは,並目ねじよりもねじ山のピッチが小さい。ピッチが小さいと,ナット部材の外周面とロックナットの内周面との接触面積が大きくなる。」(平成19年5月21日付け手続補正書による補正後の明細書〔甲9。以下「本件明細書」という。)の段落【0007】)ことにより,並目ねじによる場合よりも緩み難くなると認められる。しかし,ねじ山のピッチが小さい細目ねじにおいて,単位面積当たりの接触面積が大きくなることによって,並目ねじより緩み難くなるという効果が得られることは技術常識であって,原告が主張する細目ねじを使用することによる効果も,当業者には本件優先日には自明であったこの技術常識である効果をいうものというほかなく,同構成に係る効果について,これを格別顕著なものであるとすることはできない。
エ原告は,ロックナット係止部の厚さをスパナ係止部のそれよりも厚くしているため,ロックナット及びロックナット係止部外周の細目ねじ同士の接触面積がさらに大きくなって,より強固な結合を確保することができる旨主張する。
本件明細書には,「ロックナット13の軸方向の厚み(スパナ係止部の幅)を大きくすると,これが螺合するナット部材12のロックナット係止部14の外周面16と,ロックナット13の内周面18との接触面積が大きくなる。よって,ボルト・ナット緩み止め構造の緩み止めが強固になる。」(段落【0010】)との記載があり,ロックナットの軸方向の厚みを大きくして,ナット部材とロックナットとの接触面積が大きくなり,緩み止めが強固になることが記載されている。
しかし,ロックナットの軸方向の厚みを大きくするとロックナットとナット部材の接触面積が大きくなること,それにより,緩み止めが強固になることは当業者には当然に予想される効果である。引用発明において,引用発明のロックナット(戻り止ナット7)の厚みをどのようなものとするかは,設計上当然決定されるべき事項であり,その厚みを大きくすることは当業者が設計上の必要に応じて適宜なし得る程度のことといえることに,上記のように,原告が主張する構成に係る効果は,当業者には当然に予想される効果であることを考慮すると,原告が本願発明の効果として主張する効果について,これを顕著な効果と認めることはできない。
オ原告は,本願発明は,メンテナンスにおいて正確なトルク締めが可能で,取り付け取り外しが簡単である旨主張するが,その効果は,本件明細書に記載されているものではないし,本願発明の構成をとることにより当業者が予測し得るものとは異なる,格別の効果を奏するものと認める根拠はない。
そして,原告は,本願発明は,第1引用例ないし第4引用例記載の発明とは,その構成が明らかに異なって,その効果が顕著に異なる旨主張するところ,本願発明と第1引用例ないし第4引用例記載の発明とは構成が異なること,それに伴い効果が異なることは認められるものの,原告が本願発明の効果として主張するところは,上記のとおり,いずれも当業者に予測できなかったような顕著な効果とはいえないものであり,かつ,原告が主張する上記のそれぞれの効果を奏するための構成を組み合わせたことによって,それら個々の効果を併せることにより予測できる効果とは異なった,顕著な効果が得られたことも認められず,本願発明が奏する効果について,これを顕著な効果と認めることはできない。
( )原告は,本願発明の効果の優位性は,試験の結果によっても明らかである3旨主張する。
ア本件明細書及び甲10によれば,本願発明の実施品をもとにして,ロックナットの内周面に形成されたねじを正ねじとし,かつ,並目ねじに形成した試験サンプルと,本願発明の実施品について,緩み構造に対する所定の振動試験を行ったところ,以下の結果を得たことが認められる。
試料名締付ロックナットの雄ね ロックナットの雄 下ナットのトルクじのねじ山の向きねじのねじ山のピ 戻しトルクッチ(N・m)本願発明40逆ねじ細目ねじ49.3本願発明50逆ねじ細目ねじ63.8試験サンプル40正ねじ並ねじ46.8試験サンプル50正ねじ並ねじ20.0イ上記アによれば,ナット部材の雄ねじのねじ山を逆ねじとして,ねじ山のピッチを細目ねじにした本願発明の実施品は,ナット部材の雄ねじのねじ山を正ねじとして,ねじ山のピッチを並目ねじとした試験サンプルに対し,緩み止めについて,優れた効果を発揮することが認められる。
ウしかし,前記( )アのとおり,本件優先日より前に,緩み止めダブルナッ2トとして,ボルトに螺合するナット内周面の雌ねじとは逆ねじ方向のねじにより2個のナットを螺合し,一方のナットが緩む方向に回転するような振動が与えられたときに他方のナットがその回転を阻止することにより,振動や衝撃が付加されても,ナット部材がボルトに対して緩み止め効果を奏することが知られていたと認められること,同ウのとおり,ねじ山のピッチが小さい細目ねじにおいて,単位面積当たりの接触面積が大きくなることによって,並目ねじより緩み難くなるという効果が得られることは技術常識であることからすると,ナット部材の雄ねじのねじ山を逆ねじとして,ねじ山のピッチを細目ねじにした本願発明の実施品は,ナット部材の雄ねじのねじ山を正ねじとして,ねじ山のピッチを並目ねじとした試験サンプルに対し,緩み止めについて,優れた効果を発揮することが認められるとしても,これは,当業者にとって当然予測可能なものというほかなく,このような効果について,顕著な効果を奏するものであるということはできない。
( )原告は,被告が,第2引用例に接した当業者であれば,ナット2の外周面4である雄ねじ2aと内周面である雌ねじ2bを逆向きのねじとすれば,ナット1がナット2を制御して,確実な緩み止めが行われることは容易に認識できる事項である旨主張するのに対し,被告の主張に理由がない旨主張する。
そして,原告は,第2引用例に基づいた緩み止めナットを用いた場合,振動させると,凸型ナットと凹型ナットとについては緩み止めの役割を果たすが,凸型ナットの雌ねじと凹型ナットの小径の雌ねじには,同じ方向のねじ山が形成されているから,ボルトとナットとについての緩み止めの役割を果たすことができず,第2引用例の凸ナットの逆ねじ構造はナット同士の緩み止めのために設けられたものにすぎず,第2引用例の逆ねじ構造を目的が異なる第1引用例に適用すべき示唆はないし,構成の差異によりその作用効果についても顕著に異なる旨主張する。
確かに,第2引用例に記載された技術そのものは,本願発明のものと構成が異なるといえるものである。しかし,引用発明と第2引用例に開示された技術は,ともに,互いに螺合する二つのナット(ナット部材とロックナット)を用いたボルト・ナットの緩み止め構造を有するものであるという共通性を有すること,引用発明においても確実な緩み止め効果を得ることは当業者にとって自明の課題であり,その課題を解決するものとして第2引用例に開示された技術が知られていたといえることを考慮すると,当業者は,引用発明の構成に対して,上記の共通性を有し,また引用発明における課題を解決するものといえる第2引用例に開示された技術を適用して,相違点2に係る本願発明の構成に想到することは容易にできたものと認められる。
( )原告は,被告が,引用発明に対し,第3引用例及び第4引用例に記載され5た技術的事項の適用を試みることは,当業者であれば当然のことである旨主張するのに対し,被告の主張に理由がない旨主張する。
ア原告は,第3引用例に基づいたメインナットとサブナットとの取付構造に振動を与えると,メインナットとサブナットとについて,細目ねじを形成しているため緩み止め効果はあるが,ナットとボルトとについて,第2引用例の場合と同様緩み止めの役割は果たさず,また,第4引用例に基づいた外ナットと内ナットとの取付構造に振動を与えると,外ナットと内ナットとについて,細目ねじを形成しているため,緩みにくくなっているが,緩み止めの効果はわずかしかないし,内ナットと取付軸とについても緩み止めの効果はなく,そして,第3引用例,第4引用例には,第1引用例への組合せへの動機付け,示唆はない旨主張する。
しかし,第3引用例及び第4引用例について,細目ねじを採用したことによる緩み止めの効果は原告主張のとおりの関係において生じるとしても,前記のとおり,ねじ山のピッチが小さい細目ねじにおいて,単位面積当たりの接触面積が大きくなることによって,並目ねじより緩み難くなるという効果が得られることは技術常識であること,第3引用例及び第4引用例は,互いに螺合する二つのナット(ナット部材とロックナット)を用いたボルト・ナットの締結構造を有する点においては引用発明と共通すること,引用発明においても確実な緩み止め効果を得ることは当業者にとって自明の課題であったことを考慮すると,当業者は,第3引用例及び第4引用例において開示されているような細目ねじについての技術的事項を,引用発明の突出部3の外螺子5のねじについて適用することを容易になし得たということができる。
イ原告は,本願発明は,ロックナットの厚さがスパナ係止部のそれより厚くなっているとの特徴を有し,この特徴は,ボルト・ナットの締結構造に振動や衝撃が与えられたときの衝撃をロックナットに負わせることを目的としていて,衝撃によりロックナットが緩むと,ロックナットの内周面に形成されたねじは逆ねじになっているため,ボルトとナットとが締め付けられる結果,ボルト・ナットの緩み止め効果に優位性を持たせることができ,この点について,第3引用例,第4引用例ともに記載はない旨主張する。
しかし,本件明細書(甲9)には,「ロックナット13の軸方向の厚み(スパナ係止部の幅)を大きくすると,これが螺合するナット部材12のロックナット係止部14の外周面16と,ロックナット13の内周面18との接触面積が大きくなる。
よって,ボルト・ナット緩み止め構造の緩み止めが強固になる。」(段落【0010】)との記載があり,ロックナットの軸方向の厚みを大きくすることにより,ナット部材とロックナットとの接触面積が大きくなり緩み止めが強固になることが記載されているが,ロックナットの軸方向の厚みとナット部材のスパナ係止部の厚みとの関係やその関係に基づく効果が記載された部分は存在しない。他方,本件明細書には,上記記載に続いて,「ボルト11,ナット部材12,ロックナット13の材質,寸法(厚さ,長さ,幅)などは適宜に構成することができることはいうまでもない。」(段落【0010】)との記載がある。
このことにも照らすと,ロックナットの軸方向の厚さは,ロックナットとナット部材との接触面積にかかわるものであるから,当業者はそのような観点などを考慮して最適な設計を行うものであるが,その結果,スパナ係止部のそれより厚くなることも当然にあり得るところであって,ロックナットの軸方向の厚みとナット部材のスパナ係止部の厚みとの関係は,当業者が適宜なし得る設計事項といえるものである。したがって,ロックナットの軸方向の厚みとナット部材のスパナ係止部の厚みの点について,第3引用例及び第4引用例に記載そのものがないことは,相違点3に係る本願発明の構成に当業者が容易に想到できたとの結論を左右するものではない。
ウ原告は,本願発明は,第3引用例,第4引用例に記載の発明とはその構成が明らかに異なり,しかも,この構成の差異によりその作用効果についても顕著な相違点を有していて,第1引用例と第3引用例,第4引用例を組み合わせても本願発明の構成に想到することはできない旨主張する。
しかし,本願発明と第3引用例及び第4引用例に記載の発明との構成が異なり,また,構成の差異によりその作用効果についても相違するとしても,本願発明の効果を当業者が予測できない格別顕著なものとまではいうことはできないなど,前示したところによれば,原告の主張は採用の限りではない。
( )したがって,原告主張の取消事由は採用できない。
62以上によれば,原告主張の取消事由は理由がないから,原告の請求は棄却することとする。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明