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関連審決 不服2002-20938
関連ワード 技術的思想 /  方法の発明 /  新規性 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  周知技術 /  手続違反 /  発明の詳細な説明 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  実施 /  販売数量(販売数) /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  審理終結通知 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10294号 審決取消請求事件
X 原告
訴訟代理人弁護士小原望,若山満教,古川智祥
同弁理士中井宏行
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人藤内光武,赤穂隆雄,坂庭剛史,小池正彦, 大場義則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/03/25
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2002-20938号事件について平成19年6月28日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成12年11月6日,発明の名称を「商品を桝目で選択するプログラムを活用した販売方法」とする発明について特許出願(特願2000-378168号。以下「本件出願」という。)をしたが,平成14年9月24日付けで拒絶査定を受けたので,同年10月29日,拒絶査定不服審判を請求した。
特許庁は,これを不服2002-20938号事件として審理し,平成17年1月31日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
これに対し,原告は,同年3月16日,取消訴訟を提起した。知的財産高等裁判所は,これを平成17年(行ケ)第10393号事件として審理し,同年12月8日,「特許庁が不服2002-20938号事件について平成17年1月31日にした審決を取り消す。」との判決をし,その後同判決は確定した。
そこで,特許庁は,不服2002-20938号事件について,さらに審理し,平成19年6月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。
この審決に対し,原告が知的財産高等裁判所に取消しの訴えを提起したのが,本件訴訟である。
2発明の要旨( )平成19年4月16日付け手続補正書により補正された明細書(甲14,1以下,平成13年6月22日付け手続補正書〔甲9〕による補正後の図面と併せて「本件明細書」といい,平成19年4月16日付け手続補正書による補正を「本件補正」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下,同請求項に記載された発明を「本願補正発明」という。請求項2は省略する。)「【請求項1】商品を桝目で選択するプログラムを活用した,通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法であって,上記商品を桝目で選択するプログラムは,販売者側のサーバに保存され,販売者が入力した,複数の商品に共通する説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項を受付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップと,販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき,商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件を受付けるステップと,販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき,商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件を受付けるステップと,上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップとを少なくとも備えていることを特徴とする,通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法。」( )本件補正前の,平成18年9月19日付け手続補正書により補正された明2細書(甲12)の特許請求の範囲の請求項1の記載(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。請求項2ないし4は省略する。)「【請求項1】商品を桝目で選択するプログラムを活用した,通信ネットワークを用いた商品販売方法であって,上記商品を桝目で選択するプログラムは,販売者側のサーバに保存され,販売者が入力した,複数の商品に共通する説明事項を受付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップと,販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき,商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件を受付けるステップと,販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき,商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件を受付けるステップと,上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップとを備え,かつ購入者が通信端末器を通じて上記販売者側のサーバにアクセスして来たときには,購入者の通信端末器に,上記共通事項と上記商品一覧表とを表示させるステップと,購入者が上記商品一覧表の横軸の桝目と縦軸の桝目とで特定される商品を選択し,その商品の購入数量の入力を受付けて,購入金額を演算して,演算結果を表示するステップとを少なくとも備えていることを特徴とする,通信ネットワークを用いた商品販売方法。」3審決の理由( )審決の理由の概要1審決は,別紙審決のとおり,本願補正発明は,特開2000-306000号公報(平成12年11月2日公開。甲1。以下「引用例1」という。)及び株式会社インプレス平成8年7月1日発行「HTMLエディター百花繚乱・後編(制作実践編)最新HTMLエディターの使い勝手を検証」(甲7。以下「引用例7」という。)に記載された発明(以下,それぞれ「引用例発明」,「引用例7発明」という。)並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとして,本件補正を却下し,本願発明も,同様の引用例発明等に基づいて,容易に発明をすることができたから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
( )審決が認定した引用例発明の要旨2「商品を桝目で選択するコンピュータプログラムを利用した,ネットワークを用いた商品予約注文方法であって,上記商品を桝目で選択するコンピュータプログラムは,スーパーマーケットの計算機に保存され,商品についての説明事項と,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有し,桝目の横軸に第1の項目を表示し,桝目の縦軸に第2の項目を表示し,横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップを少なくとも備えている,ネットワークを用いた商品予約注文方法。」( )審決が認定した本願補正発明と引用例発明の一致点及び相違点3ア一致点「商品を桝目で選択するプログラムを活用した,通信ネットワークを用いた商品販売方法であって,上記商品を桝目で選択するプログラムは,販売者側のサーバに保存され,商品についての説明事項と,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有し,桝目の横軸に第1の項目を表示し,桝目の縦軸に第2の項目を表示し,横軸と縦軸とで特定される商品について販売単価を表示した商品一覧表を準備するステップを少なくとも備えている,通信ネットワークを用いた商品販売方法。」イ相違点(ア)相違点1「商品についての説明事項として,前者(判決注:本願補正発明)は,『複数の商品に共通する説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項』であるのに対し,後者(判決注:引用例発明)は,そうではない点。」(イ)相違点2「前者は,商品一覧表の桝目の横軸に表示される第1の項目が,『商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件』であり,商品一覧表の桝目の縦軸に表示される第2の項目が,『商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件』であるのに対し,後者は,そうではない点。」(ウ)相違点3「前者が,商品販売方法における販売者の商品データの入力方法であって,『販売者が入力した,商品についての説明事項を受付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップ』と,『販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき第1の条件を受付けるステップ』と,『販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき第2の条件を受付けるステップ』と,『上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップ』の各ステップを備えるのに対し,後者は,少なくとも『商品についての説明事項と,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有し,桝目の横軸に第1の項目を表示し,桝目の縦軸に第2の項目を表示し,横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップ』を備える商品販売方法ではあるものの,一覧表を準備する個々のステップについての明記がなく,商品販売方法に含まれる販売者の商品データの入力方法については記載がない点。」第3原告主張の審決取消事由1取消事由1(本願補正発明の認定の誤り)( )審決は,本願補正発明について,実質的な認定を欠落して進歩性判断を行1ったものであり,その要旨の認定に誤りがある。
本願補正発明は,販売者の商品データの入力方法であり,電子商取引システムにおける商品データベースを生成するために使用されるものである。
すなわち,本願補正発明は,通信ネットワークを用いた商品販売方法のうち,販売者の商品データ入力方法に特徴を有するものであって,プログラムにより,販売者が最初に入力する複数の商品に共通する商品説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項と,次に入力する複数の商品間で相違する2つの商品説明事項である第1の条件,第2の条件とを順次受け付けて,共通事項と桝目を有した商品一覧表とで構成される複数商品に関するデータを作成するといった,プログラムを用いた商品データの入力方法を規定したものであり,当該プログラムは,4つのステップを時系列的に組み合わせた構成を有している。本願補正発明は,このステップの組合せ手順に特徴があり,この特徴のため,販売者側の入力の手間が軽減される。
審決は,本願補正発明が,商品データベースへの入力方法であることを否定又は看過していて,本願補正発明の要旨の認定を誤ったか,認定を欠落しているものであり,違法である。
( )本願補正発明が商品データベースへの入力方法の発明であることは,特許2請求の範囲の記載に基づくものである。本願補正発明の特許請求の範囲には,「通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法」と記載されていて,また,従来の技術の問題点として,「・・・販売単価が違う商品は,個別の商品ごとに画像,商品説明等をプログラムに入力しなければならない。」(平成18年9月19日付け手続補正書により補正された明細書〔甲12〕の段落【0003】)ことが指摘されていた。本願補正発明は,このような問題点を解決し,「・・・販売者の商品のプログラムへのデータ入力を省力・・」(同段落【0005】)することを目的としていることが記載されている。
このような記載は,販売者による商品データベースへの商品説明等の入力を問題にしていて,本願補正発明が,販売者側のサーバを通じて商品データベースに商品データが入力されることを当然の前提としてされたものであることは自明である。
すなわち,近時における電子商取引システムにおいては,販売者側には,サーバと商品データベースとが設置され,それらが連携して使用されていて,販売者が販売の対象とする商品データはデータベースに入力されて保存されていることが通例であることからすると,本願補正発明が,「通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法」であって,その目的が「・・・販売者の商品のプログラムへのデータ入力を省力・・」(同段落【0005】)することにある以上,本願補正発明が商品データベースの生成につながるものであることは自明である。このことは,本願補正発明の基本概念図を示した本件明細書の【図1】に,「(5)データベース(プログラム)」と記載されており,桝目プログラムが商品データベースへのデータ入力を行う点を明示していることからも明らかである。
原告は,本願補正発明が対象とする電子商取引システムにおいて,商品データベースを使用し,それに商品データを入力することが,従来から周知の事項であったことから,商品データベースに関する詳細を省略したにすぎない。
( )以下に照らしても,審決は,本願補正発明の要旨の認定を誤っている。
3ア引用例1について引用例1は,販売者が,商品の共通事項と商品一覧表とをサーバ上で表示させて,商品データベースに販売すべき商品データを入力するために使用されるものであって,種々のマスタファイルからデータを取り出し編集して画面表示をさせ,当該画面において購入者が商品を選択,入力させるようにしたものにすぎないものであり,商品データベースの生成といった技術的意義を有する本願補正発明と技術的背景を全く異にするものである。
引用例1は,平成13年4月13日付拒絶理由通知(甲15)において初めて引用されたものであるが,この拒絶理由通知は被告によって曲解された発明を前提とするものであって,その後,審決の違法性が争われた事件(平成17年(行ケ)第10393号)の判決においては,出願に係る発明が正確に認定された上で,被告の曲解が明確に指摘されていることに照らしても,本願補正発明が引用例1と全く技術的背景を異にするものであることは明らかである。
イ審決は,本願補正発明と引用例発明の相違点1を認定し,この相違を表示すべき情報の内容(コンテンツ)の相違に関するものであると認定している。
しかし,本願補正発明は,プログラムにより,販売者が最初に入力する複数の商品に共通する商品説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項と,次に入力する複数の商品間で相違する2つの商品説明事項である第1の条件,第2の条件とを順次受け付けて,共通事項と桝目を有した商品一覧表とで構成される複数商品に関する商品データベースを作成するものである。つまり,商品の共通事項は,商品説明事項と不可分一体となって商品を特定するものであり,プログラムが商品データベースを作成していくために不可欠な重要な機能を有しているものであって,商品の説明事項と商品の共通事項とを切り離して,相違点1について単なる情報の内容(コンテンツ)の違いとしか認識しなかった審決は,本願補正発明の技術内容を誤っている。
ウ商品データベースへの言及の不存在審決は,本願補正発明が,電子商取引システムにおける商品データベースを生成するために使用されるものであることを言及せず,電子商取引システムの本件出願の出願当時の技術内容について,誤った解釈を有していたか,考察を怠っていた。
電子商取引システムにおいて,販売者側には販売対象となる商品データを保存しておく必要があり,そのために商品データベースを設けることは常識であって,そのような商品データベースを設けないシステムは知らない。本願補正発明では,プログラムが作成した商品一覧表を購入者に購入者側の端末器で表示閲覧させ,商品選択を行わせた後には,購入者が選択操作したすべての商品についての購入数量を計算し,全体の購入金額を計算して表示する機能を有したものであり,このような技術レベルを考慮すれば,本願補正発明が,被告が想定するひな形ファイルを前提としたシステムのようなものでないことは当然である。
また,審決が引用している引用例1の請求項4には,組合せ商品群データベースが記載されており,そこでは商品データベースを使用していることが明らかであって,このような事実を看過,無視した上で,本願補正発明の商品一覧表と類似しない表のみを抽出して,一致点を認定することは不当である。
( )被告は,本願補正発明は,「商品の購入者に提示する商品一覧表を作成す4るための商品データの入力方法」であることは明らかであるとして,本願補正発明と商品データベースの関連性を否定する。
しかし,商品データベースとの関連性のない商品データの入力方法は,実際に行われている電子商取引システムの現状を無視し,電子商取引システムの技術的背景を全く理解しないものであって,単に言葉の組合せによってのみ創造された技術的内容であり,本願補正発明と全くかけ離れた技術的思想である。商品データベースと関連性のない「商品の購入者に提示する商品一覧表を作成するための商品データの入力方法」がどのような発明であるかは不明であり,被告の主張は実質的な根拠を欠く。
被告は,本願補正発明に係る商品一覧表が,ひな形ファイルやそれに類したようなものを想定しているようであるが,そのようなひな形ファイルとの関連については,前回の審決取消訴訟の判決において否定されている。
2取消事由2(引用例発明の認定の誤り)( )審決は,引用例発明を前記第2の3( )のとおり認定したが,誤りである。
1 2引用例1と本願補正発明とは,一覧表の形態が一見すれば類似するように見えても,それらを構成する要素や発想概念が異なるものであって,審決は引用例1を曲解し,引用例発明を誤って認定した。
( )ア引用例発明は,商品についての説明事項を有するものではない。
2審決は,引用例1の【図4】(b)の「献立n3人分の食材必要量は以下の商品の組み合わせとなります」という表示(以下,引用例1の【図4】(b)の図を「引用例1の図4」といい,上記の「献立n・・・」の表示を「図4の説明表示」という。)の存在から,引用例発明は商品についての説明事項を表示しているとした。
しかし,販売者の商品データの入力の省力化を図る商品データ入力方法である本願補正発明において,説明事項は商品そのものについての説明事項でなければならない。図4の説明表示は,表が表示している商品の組合せの説明事項であって,商品そのものについての説明事項ではない。
この点,被告は,図4の説明表示は,商品についての説明事項である旨主張するが,本願補正発明における商品の説明事項とは,単価の異なる製品を特定するための説明事項であるのに対し,引用例発明の記載は,単価の異なる商品の説明にはなっておらず,表の説明にとどまるものであるから,商品の説明事項ではない。
イ引用例発明は,横軸と縦軸で商品そのものを特定するものではない。
審決は,引用例発明は,桝目の横軸に第1の項目を表示し,縦軸に第2の項目を表示し,横軸と縦軸とで商品を特定するものと認定した。
しかし,引用例1の図4において,横軸と縦軸で特定されるのは桝目であり,商品そのものが特定されているものではない。引用例1の図4は,縦軸に必要な食材商品名が記載され,横軸に標準パックと予約パックとが記載されているが,商品そのものを特定するためには,標準パックと予約パックを対比するための内容量が必要不可欠であり,当該商品一覧表は,横軸と縦軸のみによって商品そのものを特定しない。さらに,引用例1の図4は,献立nの食材リストであって,変数である人数を,第3の条件として確定することによって,初めて商品の組合せが特定されるものである。
この点,被告は,引用例1には,横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表が開示されている旨主張する。
しかし,本願補正発明は,商品データベースの作成に際し,単価の異なる商品データの入力の省力化を図ることに目的があるから,本願補正発明の「商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品」とは,単価の異なる特定の商品が横軸の条件(商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件)と縦軸の条件(商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件)のみにてよって特定されるものである。引用例1においては,食材Anの標準パックと食材Anの予約パックという単価の異なる商品を区別するには,内容量(標準パックは100g,予約パックは50g)という第3の要素が不可決である。引用例1のものは,横軸と縦軸とで商品を特定しているものではなく,単に,桝目に商品の説明事項を羅列的に記載しているにすぎない。
3取消事由3(一致点の認定の誤り)審決は,本願補正発明の引用例発明の一致点を前記第2の3( )のとおり認定し3たが,本願補正発明の商品一覧表は,複数の商品の共通事項と,2つの属性を特定した第1(横軸),第2(縦軸)の条件との組合せで商品を特定することによって商品データ入力の手間を省力化するものであり,商品の共通事項と,横軸,縦軸による商品の特定を切り離すことができない。審決は,このような本願補正発明の技術的意義及び背景を全く無視し,単なる形式的な言葉の概念の類似性から,本願補正発明と引用例発明との間の一致点を認定した。
また,形式的な言葉の概念においても,前記2のとおり,引用例発明は,商品の説明事項を有しないし,横軸と縦軸とで商品そのものを特定しない。
したがって,審決は,本願補正発明と引用例発明の一致点の認定を誤ったものであり,違法である。
4取消事由4(相違点の認定の誤り)( )審決は,本願補正発明及び引用例発明の認定を誤ったので,両者の相違点1の認定も誤った。
相違点1及び3において,審決は,引用例発明が,「商品についての説明事項」を表示していることを前提とするが,前記2のとおり,引用例発明は,「商品についての説明事項」を有しない。また,相違点2及び3において,審決は,引用例発明が,「桝目の横軸に第1の項目を表示し,桝目の縦軸に第2の項目を表示し,横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップを少なくとも備えている」ことを前提としているが,前記2のとおり,引用例発明は,横軸と縦軸で商品を特定するものではない。
( )本願補正発明の商品一覧表と引用例1の図4の表は,表の使用目的から,2技術的背景を全く異にする。本願補正発明が対象としているのは,販売者が行う商品データの入力,すなわち,商品データベースの生成に使用する商品データ入力画面である。これに対し,引用例1は,購入者が個人端末機などから商品の購入を予約するために提案されたシステムであり,引用例1の図4の画面は,購入者が商品を購入するために選択操作する画面である。
また,本願補正発明の商品一覧表と引用例1の図4の表は,説明事項及び構成要素において異なる。本願補正発明の商品の説明事項とは,共通事項と桝目を有した商品一覧表とで構成される複数商品を説明するための商品一覧表を作成する過程において,第1ステップである複数の商品に共通する説明事項をまとめたものである。
これに対し,引用例1の図4の説明表示は,条件入力フィールドに文言を付加するとともにガイダンス表示として兼用したものにすぎない。そして,表の構成要素をみると,本願補正発明の商品一覧表は,複数の商品の共通事項をまとめて表示し,その上で,複数の商品間で相違する2つの商品説明事項である第1の条件(横軸に表示)及び第2の条件(縦軸に表示)のみにより,相互に独立の商品を特定するものである。これに対し,引用例1の図4の表で選択の対象となるのは,標準パックと予約パックに区分された相互に関連性のある食材パックである。
5取消事由5(相違点についての判断の誤り)( )審決は,本願補正発明と引用例発明の相違点1ないし3について,引用例17発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得ると判断したが,誤りである。
( )審決は,本願補正発明,引用例発明の認定を誤った結果,本願補正発明と2引用例発明の相違点の認定も誤った。したがって,審決の容易想到性の判断が誤っていることは明らかである。相違点1,2は,単なる情報の内容(コンテンツ)の相違ではなく,商品を特定し,商品データベースを作成するための機能的な違いがあるものである。
( )本願補正発明は,販売者の商品データ入力手間の軽減という特段の効果を3有しているから,引用例1及び7をもってしても,当業者が容易に想到し得る事項でない。
従前の技術水準によると,販売者側の商品データ入力担当者は,各商品ごとに商品入力ページを呼び出して,その商品の属性である商品名,種類,素材,販売数単位,商品画像,サイズ,色,販売単価を逐一入力していた。これに対し,本願補正発明においては,商品データ入力担当者は,複数の商品データを入力する際に,同じ共通事項(商品名,種類,素材,販売数単位,商品画像)についてのデータを繰り返して入力していた手間と,商品一覧表の横軸と縦軸の第1の条件(サイズ),第2の条件(色)についてのデータを繰り返して入力していた手間が軽減される。
したがって,本願補正発明は,所定のステップからなるプログラムを実行することで,複数商品についての複数の商品データをまとめて入力することによる特段の効果を奏するといえる。例えば,複数の商品に共通する説明事項が5項目存し,第1の条件が10項目,第2の条件が10項目存している場合,本願補正発明の商品データ入力方法によると,その工数は127となるのに対し,従来の方法によると800となり,入力工数に格段の差がある。
本願補正発明の課題である電子商取引における販売者側の商品データ入力の手間の軽減については,引用例1には全く示唆されていないし,本件出願時の技術水準から周知であることを示す証拠も存しない。引用例1は,商品購入者が個人端末機などから商品購入を予約するために提案されたシステムで,本願補正発明と課題が全く異なり,当業者が,引用例1から,数多くの商品データを含む商品一覧表作成をできるだけ簡単にする方法としての本願補正発明に係る商品データ入力方法を容易に予測し得るものではない。
また,引用例7は,商品データ入力軽減という効果を奏するものではない。引用例7で紹介されている技術は,Web画面に2次元の表を作成することもできるという単なる表作成ツールである。引用例7記載の技術は,本願補正発明のように,複数の商品に共通する説明事項をくくり出してから,更に,異なる二つの属性を第1,第2の条件として入力することが商品データ入力の手間を軽減するために有益なことを教示等するものではないし,商品データベースへの言及も一切ない。このような引用例7は,本願補正発明を推考させる動機付けにはならない。
( )被告は,本願補正発明の進歩性を判断するについて,一覧表を準備するに4当たり,できる限り簡単に表を作成する方法を採用しようと努めることはごく自然な発想であることなどを主張する。
しかし,これは一覧表を作成する者の願望を述べたにすぎず,単なる願望が,発明の動機になり得るものではない。引用例7は,ホームページ作成エディタとして,タグを使用せずに表が作成できる表作成ソフトを紹介する記事であって,このような表作成ソフトを販売者の商品データベースの入力に用いることを教示,示唆するものではなく,本願補正発明の動機付けになるものではない。また,仮に,引用例7に表形式を利用してデータ入力を行うことで同じデータを繰り返して入力する手間が省けることが教示されていたとしても,それは,表を用いれば,同じ情報の重複表示が避けられ,見やすくできるため,その分だけ同じデータを重複して入力する手間が省けることにすぎない。これに対し,本願補正発明は,桝目表を作成する方法を提案するものではないし,表の作成のためにデータを入力しているのではない。本願補正発明は,桝目プログラムが作成した商品一覧表に,販売者が商品を特定するための第1,第2の条件を入力させることで,商品を特定して,商品データを入力するもの,すなわち,桝目プログラムを用いた商品データの誘導支援方法である。
6取消事由6(手続違反)( )本件の経緯に照らすと,本願補正発明の進歩性を否定した審決は,手続的1に違法なものである。
( )原告は,発明の名称を「商品を桝目で選択するプログラムを活用した販売2方法」とする発明(以下「出願当初発明」という。)について,平成12年11月6日に特許出願(特願2000-378168)した(甲8)ところ,平成13年4月13日付けの最初の拒絶理由通知(甲15)を受けた。この拒絶理由通知において,出願当初発明は,引用例1を含む引用文献から進歩性を否定された。これに対し,原告は,平成13年6月22日付の手続補正書(甲9)を提出し,明細書,図面等を補正(以下「平成13年補正」という。)したところ,平成14年5月21日付の最後の拒絶理由通知(甲16)は,進歩性に一切触れることなく,平成13年補正の内容が当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものでないとした。原告は,平成14年7月29日付けの意見書及び手続補正書(甲10)を提出し,明細書を補正(以下「平成14年補正」という。)したが,平成14年9月24日付けで平成14年補正の却下の決定がされるとともに(甲17),同日付けで,平成14年5月21日付けの拒絶理由通知に記載した理由によって拒絶査定を受けたので(甲18),平成14年10月29日,拒絶査定不服審判を請求した(甲19)。特許庁は,上記請求を不服2002-20938号事件として審理をした上,平成17年1月31日,審判請求が成り立たない旨の審決をした(甲21)が,そこで,審決は,進歩性に一切触れることなく,平成14年補正及び平成13年補正の適法性のみを判断した。その後,知的財産高等裁判所は,平成13年補正は明細書に記載した事項の範囲内のものであり,平成14年補正を却下したことが誤りとなるとして,審決を取り消し,その後同判決は確定した。そこで,特許庁は,原告に対し,審理を再開し,平成18年7月11日付けの最初の拒絶理由通知(甲11)において,引用例1ないし6から,発明の進歩性を否定した。これに対し,原告は,平成18年9月19日付けで意見書及び手続補正書を提出し,次いで,平成19年2月6日付けの最後の拒絶理由通知に対し,平成19年4月16日付けで意見書及び手続補正書を提出したが,特許庁は平成19年6月8日付けで,審理終結通知書を発送し,同年6月28日,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をしたことから,原告は本件訴訟を提起した。
本件の訴訟においては,本願補正発明の進歩性の有無が問題とされているが,この進歩性は,平成13年4月13日付けの最初の拒絶理由通知において指摘されていた事項である。しかし,平成14年5月21日付の最後の拒絶理由通知(甲16)においては,進歩性の点については一切触れられていない。仮に,平成13年4月13日付けの最初の拒絶理由通知に対して原告が提出した平成13年補正によっても発明の進歩性の問題が解消されていなかったのであれば,特許庁としては,最後の拒絶理由通知において,進歩性を否定する旨を指摘しておくはずであり,また,そうすべきであった。そのような処理をしておけば,前回の審決取消訴訟により,一回的な解決が可能であり,本件の訴訟が不要であったことは明らかである。
当初の出願から8年を経過していること及び出願人の手続的負担にかんがみると,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知において進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後,発明の進歩性を否定する主張をすることは,不当であって,拒絶理由通知等に関する裁量の範囲を明らかに逸脱しており,本件の審決については,手続的な点でも違法である。
第4被告の反論1取消事由1(本願補正発明の認定の誤り)に対して( )原告は,審決が本願補正発明の要旨の認定を誤った旨主張するが,理由が1ない。
審決は,本願補正発明について,平成19年4月16日付の手続補正により補正された請求項1に記載された発明であると正しく認定し,また,本願補正発明が商品販売方法における販売者の商品データの入力方法であるのに対し,引用例発明は,商品販売方法であるものの,商品販売方法に含まれる販売者の商品データの入力方法については記載がない点を相違点3として認定している。
( )本願補正発明に係る商品データの入力方法は,特許請求の範囲の記載,本2件明細書の記載(段落【0002】〜【0004】)に照らしても,また,本願補正発明の実施の形態(段落【0012】〜【0015】)に商品データベースに関し具体的記載がないことに照らしても,販売者が複数の商品に共通する説明事項を入力し,さらに所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した一覧表を作成,表示しながら,当該一覧表の横軸,縦軸の所定の桝目に販売者が設定した第1の条件,第2の条件を入力し,さらに,上記一覧表の横軸と縦軸とで特定される桝目に販売者が販売単価を入力するという,商品の購入者に提示する商品一覧表を作成するための商品データの入力方法であることは明らかである。
原告は,本願補正発明は,電子商取引システムにおける商品データベースを生成するために使用されるものである旨主張するが,これは,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づかない主張であり,失当である。
2取消事由2(引用例発明の認定の誤り)に対して( )原告は,引用例1の図4の説明表示は,商品についての説明事項でない旨1主張する。
しかし,図4の説明表示は,一覧表で示す商品の組合せが献立nの3人分を料理するのに必要な食材であることを説明するものであり,商品についての説明事項であることは明らかである。
( )原告は,引用例1の図4は,横軸と縦軸とで商品そのものを特定しない旨2主張する。
しかし,引用例1の図4に示された対話画面において,商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品,例えば,縦軸の「食材An」と横軸の「標準パック」とで特定される食材Anの標準パックの商品に対応する桝目に,「45円」という単価が表示されていて,引用例1には,横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表が開示されていることは明らかである。
3取消事由3(一致点の認定の誤り)に対して原告は,審決は,引用例発明の認定を誤り,本願補正発明と引用例発明の一致点の認定を誤った旨主張するが,審決の引用例発明の認定に誤りはないから,理由がない。
4取消事由4(相違点の認定の誤り)に対して( )原告は,審決が,引用例発明の認定を誤ったことを前提として,本願補正1発明と引用例発明の相違点(相違点1ないし3)の認定を誤った旨主張するが,審決の引用例発明の認定に誤りはないので,理由がない。
( )原告は,引用例1の図4の表は,購入者が商品を購入するために選択操作2する画面であるのに対し,本願補正発明が対象としているのは,商品データベースの生成に使用する商品データ入力画面であり,本願補正発明と引用例1は,表の使用目的から,技術的背景を異にするものである旨主張する。
しかし,本願補正発明の商品データの入力方法は,販売者の商品データの入力方法であって,商品データベースの生成に使用する商品データ入力画面ではないから,原告の主張は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づかない主張であり,失当である。
また,原告は,本願補正発明と引用例発明の技術的背景の相違を述べるところ,審決は,相違点3として,本願補正発明が商品販売方法における販売者の商品データの入力方法であるのに対し,引用例発明は,商品販売方法であるものの,商品販売方法に含まれる販売者の商品データの入力方法については記載がない点を認定している。
( )原告は,商品の説明事項の相違として,引用例1の図4の説明表示が,本3願補正発明における商品の説明事項とは異なる旨主張する。
しかし,引用例1の図4の説明表示は,商品についての説明事項であるし,その事項について,審決は,相違点1として,本願補正発明は,複数の商品に共通する説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項であるのに対し,引用例発明は,そうではない点を正しく抽出し,相違点に係る構成の容易想到性判断をしているのであって,審決に原告主張の誤りはない。
( )原告は,本願補正発明の商品一覧表と,引用例1の図4の表の構成要素が4相違する旨主張する。
しかし,審決は,表の構成要素について,本願補正発明は,商品一覧表の桝目の横軸に表示される第1の項目が,商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件であり,商品一覧表の桝目の縦軸に表示される第2の項目が,商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件であるのに対し,引用例発明はそうではない点を相違点2として正しく抽出し,相違点に係る構成の容易想到性判断をしているのであって,審決に原告主張の誤りはない。
5取消事由5(相違点についての判断の誤り)に対して( )原告は,審決が,本願補正発明,引用例発明の認定を誤った結果,本願補1正発明と引用例発明の相違点の認定も誤り,その相違点についての容易想到性の判断が誤っていることは明らかである旨主張するが,審決に原告主張の相違点の認定の誤り等はないのであるから,理由がない。
( )原告は,本願補正発明が,販売者の商品データ入力手間の軽減効果という2特段の効果を奏する旨主張する。
しかし,商品データの入力方法に係る効果やデータを繰り返して入力していた手間が軽減されるという効果は,引用例発明及び引用例2,7に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に想到される構成から必然的に得られる効果として当業者が予測し得るものである。
すなわち,引用例発明において,商品に関する説明事項の内容として商品に共通する説明事項である共通事項を設定し,商品一覧表の桝目の横軸に商品の規格,種類,色,型のうちから選択された属性を設定し,かつ,桝目の縦軸に商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された他の属性を設定するとともに,引用例7記載のデータ入力方法を採用して,販売者が前記設定した共通事項,商品一覧表の各属性に係る商品データを入力するように構成すれば,従来の技術のデータ入力である「販売単価が違う商品は,個別の商品ごとに画像,商品説明等をプログラムに入力しなければならない。従って商品ページが多くなり,商品の共通の商品説明事項がある商品でも,販売者は個々にデータを入力しなければならず」(引用例1の段落【0003】,【0004】)と比較すれば,商品の共通事項である見本画像,商品名,商品説明,販売単位等のデータや商品の各属性に係るデータを繰り返して入力していた手間が軽減されることは,必然的に得られる効果として当業者が予測し得るものであり,原告が主張する本願補正発明の奏する効果は,格別なものとは認められず,本願補正発明の進歩性を肯定する根拠になり得るものではない。
6取消事由6(手続違反)に対して原告は,特許庁の手続に違反があった旨主張するが,特許庁の手続に,原告主張の違反はない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(本願補正発明の認定の誤り)について( )原告は,本願補正発明は,電子商取引システムにおける商品データベース1を生成するために使用されるものであり,審決は,本願補正発明が商品データベースへの入力方法であることを否定,看過していて,その要旨の認定を誤った旨主張する。
( )本件補正により,発明の名称が「通信ネットワークを用いた商品販売方法2における販売者の商品データの入力方法」と補正され,特許請求の範囲が前記第2の2( )のとおり補正されたほか,発明の詳細な説明も以下のとおりとなった。
1ア「【発明の属する技術分野】「本発明は,販売者が通信手段をもちいて,ネット上で商品を販売するのに,商品を購入者が桝目で選択することができるプログラムを活用した,販売者の商品の入力方法に関する。」(段落【0002】)イ「【従来の技術】現在,販売者はネット上で販売する商品について,共通の説明事項がある場合でも,商品の規格,サイズ,大きさ,販売単価等が違うと,別々の商品としなければならない。よって販売単価が違う商品は,個別の商品ごとに画像,商品説明等をプログラムに入力しなければならない。従って商品ページが多くなり,商品の共通の商品説明事項がある商品でも,販売者は個々にデータを入力しなければならず,また購入者も商品を選択するのに個別の商品ごとに商品説明を閲覧しなければならないので手間がかかる。」(段落【0003】〜【0004】)ウ「【発明が解決しようとする課題】そこで本発明では,図2のように閲覧表示させて商品を購入者が桝目で選択することができるプログラムを構築し,それにより,販売者の商品のプログラムへのデータ入力を省力し,購入者に商品説明の閲覧をしやすくさせることを目的とした。」(段落【0005】)エ「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために提案される,請求項1に記載の発明方法は,商品を桝目で選択するプログラムを活用した,通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法であって,商品を桝目で選択するプログラムは,販売者側のサーバに保存され,販売者が入力した,複数の商品に共通する説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項を受け付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップと,販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき,商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件を受付けるステップと,販売者側が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき,商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件を受付けるステップと,上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップとを少なくとも備えていることを特徴とする。請求項2に記載のコンピュータで読取り可能な記録媒体は,請求項1に記載の商品を桝目で選択するプログラムを記録している。」(段落【0007】〜【0009】)オ「【発明の実施の形態】図1は,ネットワークを用いて行われる本発明方法の基本概念図を示しており,図3は,商品を桝目で選択するプログラムの基本構成を示している。商品を桝目で選択するプログラム(以下,「プログラム」という)は,図3に示すように,販売者がネット上で販売する商品の共通の説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明,販売単位等を共通事項としてプログラムに入力すると,プログラムが共通事項をまとめて表示する手段(ステップ)(図3-(1))と,販売者が,プログラムの商品一覧表の桝目の横軸に商品の規格,種類,色,型等を第1の条件として設定し,更に,桝目の縦軸に商品のサイズ,色,大きさ,重さ等を第2の条件として設定すると,プログラムが商品一覧表の桝目の横軸,縦軸の条件に合った商品を商品一覧表に表示し特定する手段(ステップ)(図3-(2))と,販売者が,販売単価を桝目に入力する手段(ステップ)(図3-(3)),購入者が桝目の商品を選択する手段(ステップ)(図3-(5))と,購入者が購入数量を入力する手段(ステップ)(図3-(6))と,プログラムが演算をし購入金額を表示する手段(ステップ)(図3-(7))とを備えている。商品を桝目で選択するプログラムでは,図2に示すように,まず,販売者は,販売者側のサーバで,商品(図2-(9))の共通事項(図2-(14))である商品見本の画像(図2-(2)),商品名(図2-(3)),商品説明(図2-(4)),販売単位(図2-(5))等をプログラムに入力する(図3-(1))と,プログラムが,共通事項をまとめて表示する。
次に,販売者がプログラムに,商品一覧表(図2-(6))の桝目の横軸に商品の規格(図2-(8)),種類,色,型等を第1の条件として設定し,桝目の縦軸に商品のサイズ(図2-(7)),色,長さ,大きさ,重さ等を第2の条件として設定する(図3-(2))と,プログラムが桝目の横軸,縦軸の条件に合った商品(図2-(9))を商品一覧表に表示し特定する。・・・これに対して,購入者は,通信端末器を通じて販売者のサーバにアクセスし,図2に示した商品選択閲覧画面を表示させると,商品一覧表(図2-(6))の桝目に表示された商品(図2-(9))を見比べて選択し(図3-(5)),購入数量(図2-(11))を入力する(図3-(6))と,プログラムは販売単価(図2-(10))と購入数量(図2-(11))で演算し,演算結果が購入金額(図2-(12))として画面に出力される(図3-(7))。購入者は送信ボタン(図2-(13))を操作して申しこむ(図3-(8))ことができる。」(段落【0010】〜【0015】)カ「【発明の効果】本発明方法によれば,販売者は商品の共通事項として商品の見本画像,商品名,商品説明,販売単位等をプログラムに入力すると,プログラムが,共通事項をまとめて表示し,販売者が桝目の横軸,縦軸に規格及びサイズ等を入力すると,プログラムが桝目の横軸,縦軸の条件に合った商品を商品一覧表に表示し特定するので,商品の共通事項である見本画像,商品名,商品説明,販売単位等のデータの入力が省力できる。また,購入者は商品の共通事項を確認し,商品一覧表で商品及び販売単価を見比べて商品を選択することができるので,商品の選択,閲覧が容易になる。」(段落【0016】)( )本願補正発明は,通信ネットワークを用いた商品販売方法において,販売3者が行う,「商品データの入力方法」についての発明であり(特許請求の範囲,上記( )ア等),従前は,販売者が個々にデータを入力しなければならず,入力に手2間がかかっていたという課題(同イ)を解決し,効率的に入力ができるようにして,データ入力の省力化を可能とする(同ウ等)方法の発明であると認められる。
本願補正発明は,通信ネットワークを用いた商品販売方法において,商品データの入力を問題とするものであるところ,商品データ等の入力方法につき,これが商品販売方法におけるものとされていて,通常は,入力されたデータ等が保存され,その後の商品販売に用いられるといえるものであるから,入力されたデータ等が,何らかの記憶媒体に保存されることを前提としているものであると認められる。
しかし,上記( )のとおりの本件明細書の発明の詳細な説明においても,原告が2主張するデータベースの生成についての記載は一切ない。そこに記載があるのは,商品データの入力方法における意義であって,入力,作成されたものの記憶媒体への保存が本願補正発明において前提とされていても,通常行われる記憶媒体への保存という意義を超える,データベースの生成方法として特段の技術的意義が存することについて,本件明細書に記載,示唆されているものではない。
そうすると,本願補正発明において入力されたデータ等の記憶媒体への保存が前提とされているとしても,前記のような特許請求の範囲の記載,発明の詳細な説明の記載に照らせば,データ等の記憶媒体への保存があることによって,本願補正発明がデータベースを生成する方法を規定した発明となるものではなく,本願補正発明を「商品販売方法における販売者の商品データの入力方法」についての発明とすることに誤りはない。
そして,審決は,相違点3の認定において,本願補正発明が,「商品販売方法における販売者の商品データの入力方法」であるとし,引用例発明について,「商品販売方法に含まれる販売者の商品データの入力方法については記載がない」としていることに照らせば,本願補正発明について,上記の方法の発明であることを正しく認定しているのであるから,審決の本願補正発明の要旨の認定に誤りはない。
( )原告は,本願補正発明が商品データベースへの入力方法の発明であること4は,特許請求の範囲の記載や本件明細書の記載から明らかであり,本願補正発明が,販売者側のサーバーに商品データが入力されることを当然の前提としてされたものであることは自明であること,それが自明であったから,商品データベースに関する詳細を省略したにすぎない旨主張する。
しかし,本願補正発明において,入力されたデータ等が記憶媒体に記憶されることが前提であることが認められ(前記( )),また,通信ネットワークを用いた商3品販売方法において,販売者側において商品データベースが存在し,本願補正発明の入力方法がそのような商品データベースへの入力に使用し得ることが認められるとしても,「通信ネットワークを用いた商品販売方法における」販売者の商品データの入力方法の発明である本願補正発明は,前記( )のとおり,特許請求の範囲の3記載からも,発明の詳細な説明の記載からも,商品データベースへの入力方法の発明ととらえることができるものではないのであり,原告の主張は採用の限りではない。
その他,原告は,本願補正発明が商品データベースへの入力方法の発明であることを前提として,本願補正発明が引用例1と技術的背景を異にすること,審決が相違点1の認定を誤ったことなどを主張するが,いずれも前提を欠くものであり理由がない。本願補正発明は,「通信ネットワークを用いた商品販売方法における販売者の商品データの入力方法」であり,「通信ネットワークを用いた商品販売方法」といえる引用例発明と技術的に共通する点を有するし,本件出願について争われた訴訟(平成17年(行ケ)第10393号)においても,出願に係る発明が商品データベースへの入力方法の発明と認定されたものではない。
( )したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
52取消事由2(引用例発明の認定の誤り)について( )原告は,審決が引用例発明の認定を誤った旨主張する。ここで,引用例11には,以下の記載がある。
ア「本発明の予約注文システムは,処理装置,主記憶装置,補助記憶装置,入出力装置などから構成される計算機上で,コンピュータプログラムを実行して実現される。」(段落【0014】)イ「提供されたコンピュータプログラムは,可搬型媒体から直接計算機の主記憶装置にロードされ・・・て実行する。」(段落【0015】)ウ「まず,図2の構成と機能を説明する。点線で囲まれた部分は食材等を並べて販売するスーパーマーケットである。利用者は自宅等に備えてネットワーク13で接続されたパソコン等個人端末機14(14a〜14n)・・・を使用して画面との対話により予約注文システムの中核部である予約注文制御部23に商品の予約注文を行う。」(段落【0017】)エ「予約注文制御部23には上記の端末機等の他,ネットワーク13を経由して接続されたスーパーマーケットの本部サーバ11に用意された献立メニュ12やレシピが得られるようになっており,また,構内で接続されたPOSサーバ21にある食材の価格表22,あるいは直接接続して備えられた食材在庫表25から最新の在庫状況と最新の価格により好みの献立に必要な食材の買物を提示して利用者の便に供することができるように構成されている。」(段落【0020】)オ「図3には請求項1に対応して,買物計画&予約パック注文画面の説明図を示す。・・・買物の計画を立てるにあたって各商品の必要量を算出したとき標準外の量の商品でも,あらかじめ予約すれば販売するお店が利用者が来店前に販売できる商品として用意することができるようにするのである。・・・端末機の画面であらかじめ買物計画をするために,まず商品の一覧を表示し利用者に必要な商品毎に必要量を入力してもらう。」(段落【0022】〜【0024】)カ「例えば,商品名として1番のパックAは標準パックでは内容量が100gで45円である。分割して標準外の量のパックがほしいときには予約パックが提示されているので半量の50gのものが用意されていることが分かる。購入個数,予約個数の欄にアンダーラインがある部分に個数を入力するようになっているのでそれぞれの必要数を入力する。」(段落【0026】)キ「このようにして,必要な商品について数量を指定すると合計価格が計算され買物計画が妥当なものかを判断することができる。」(段落【0027】)ク「図4は請求項2乃至請求項4の実施の形態として食材商品の買物計画を行う時の個人端末機14あるいは店内端末機26の画面の説明をするものである。
・・・このような情報紹介は利用者としても毎日の献立に悩んでいる問題解決につながり歓迎される。・・・上記したようにそれぞれの購入者の事情と,大量に且つ少ない人手で販売しなければならない販売店の事情と,を満足させる方法が本発明の実施の形態である。 ・・・図4(a)は最初に提示する旬の献立メニュである。
(段落【0029】〜【0033】)ケ「図4(b)には上記メニュから一つの献立を選択されたとき,表示される画面,すなわち,献立に必要な食材をこのスーパーマーケットで販売している商品を組み合わせて準備できるように必要な商品名,量目,価格を食材リストとして提示する。・・・先に説明した実施の形態と同様に商品としては店頭に並んでいる標準パックの他に予約注文を条件として予約パックも組み合わせた表示画面となっている。」(段落【0034】)コ「ステップS103では食材在庫表に基づき在庫のある食材のみを使用する献立を選びメニュ表示する。ステップS104においては内容を見て献立を選択し,料理する人数を入力する。ステップS105は指定された人数分の献立に必要な食材量となるように標準パック商品と予約パック商品の内容量の組合せで提示する。ステップS106でPOSサーバの食材価格表に基づき各食材のパック商品の価格を合わせて提示する。ステップS107では利用者は手持ちの材料を考慮して買物数量を修正し総合計ボタンを押して総合計金額など買物計画を確認する。ステップS108では予約パックが必要か否かを調べ,必要ないときはこれで終了する。
必要であるときにはステップS109で予約ボタンを押して予約注文制御部に予約パック注文情報を送信する。」(段落【0038】)サ「上記実施の形態において,予約して注文する商品は店頭に並べて販売されていないもの(予約パック)を対象としているが,標準パックも合わせてこれらを同様に予約の対象としてもよい。」(段落【0039】)シ図4として,以下の図がある。
( )原告は,引用例発明は,商品についての説明事項を有するものではなく,2これを有するとした審決の引用例発明の認定が誤りである旨主張する。
上記( )シに照らせば,引用例1の図4においては,横軸と縦軸とを有する一覧 1表の罫線が引かれ,その一覧表の縦軸に,「必要な食材商品名」として,「食材An」,「食材Bn」,「食材Cn」,「食材Dn」,「食材Nn」が表示され,横軸に,「標準パック」,「予約パック」が表示され,横軸と縦軸とで特定される桝目には,単価が表示された食材リストが示されている。そして,上記( )ク,ケ,1コ等に照らしても,「食材An」等は商品であって,引用例1の図4の横軸と縦軸とを有する一覧表は,インターネットを用いた商品予約注文において,「献立n」という献立について,注文者が人数を入れれば,必要な食材の個数やその合計価格などを表示するものであり,この一覧表は,インターネットを用いた商品予約注文方法における,商品の一覧表の性質を有するといえる。
他方,この一覧表は,上部に,図4の説明表示である,「献立n3人分の食材必要量は以下の商品の組合せとなります」との表示がされているところ,これは,その商品一覧表に表示されている商品の組合せ,個数等の意味を説明するものであり,これは,インターネット商品予約注文方法において,注文の対象となる商品を説明するといえるものであるから,商品についての説明事項と認められる。
原告は,図4の説明表示は,商品そのものについての説明事項ではなく,表が表示している商品の組合せの説明事項であり,表の説明にとどまり,商品についての説明事項ではない旨主張する。
しかし,一般的な用語として,図4の説明表示について,これを商品についての説明事項といえることは上記のとおりである。本願補正発明においては,商品についての説明事項につき,商品見本の画像等を含む複数の商品に共通する説明事項とされているのであるが,その点は,審決は,引用例発明が同構成を有していないことを前提にこれを相違点1として認定し,相違点1に係る本願補正発明の構成に容易に想到することができたかを判断しているのであって,審決は,引用例発明について,一般的な用語の意味で商品の説明事項があるとした上で,具体的な内容については,その相違を相違点として認定し判断していて,このような審決の認定判断方法は誤りではなく,審決の引用例発明の認定に原告主張の誤りはない。
( )原告は,引用例発明は,横軸と縦軸とで商品そのものを特定するものでは3なく,これを特定するとした審決の引用例発明の認定が誤りである旨主張する。
引用例1の図4の商品一覧表において,例えば,縦軸の「食材An」と横軸の「標準パック」とで特定される桝目には,商品の「45円」という単価が表示されていて,これは,「食材An」と「標準パック」という事項で特定される商品についての単価である。そして,引用例1には,ネットワークを用いた商品予約注文方法が記載され(前記( )ア,オ,ク等),引用例1の図4の商品の一覧表は,利用1者の端末に商品についての説明事項を付した商品一覧表を表示させることができるように販売者が商品一覧表を準備するステップといえるものであるから,引用例1に「横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップ」が記載されているとした審決の認定に誤りはない。
原告は,本願補正発明は商品データベースの作成に際し,単価の異なる商品データの入力の省力化を図ることに目的があり,本願補正発明では,横軸と縦軸の条件のみにより商品が特定されるのに対し,引用例1のものは,他に特定のための要素が不可欠で,桝目に商品の説明事項を記載されているにすぎない旨主張する。
しかし,引用例1の図4の商品一覧表において,特定の横軸と特定の縦軸が交差する桝目には,横軸の条件と縦軸の条件との双方の条件を満たす商品についての単価の記載があるのであり,そのような意味で,横軸と縦軸とで特定された商品についての単価の記載があるといえるものであって,審決は,そのことから,引用例1に「横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップ」があるとしたのであり,その認定に誤りはない。桝目に商品の説明事項が記載されているにすぎないことをいう原告主張は上記に照らし,理由がないし,審決は,そもそも,引用例1の図4において,商品特定のためのすべての事項が,横軸と縦軸の条件のみによって特定されていると認定したものではないから,引用例1の図4の商品一覧表において,横軸と縦軸の条件のほかに,商品の特定のための要素が不可欠であるとしても,そのことは引用例1に,「横軸と縦軸とで特定される商品について単価を表示した商品一覧表を準備するステップ」が存在しないことにはならず,原告主張は理由がない。
( )したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
43取消事由3(一致点の認定の誤り)について原告は,本願補正発明の商品一覧表は,複数の商品の共通事項と,2つの属性を特定した第1(横軸),第2(縦軸)の条件との組合せで商品を特定することによって商品データ入力の手間を省力化するもので,商品の共通事項と,横軸,縦軸による商品の特定とを切り離すことができないにもかかわらず,審決は,形式的な言葉の概念の類似性から,本願補正発明と引用例発明の一致点を認定したとし,また,形式的にも,引用例発明は,商品の説明事項を有さず,横軸と縦軸で商品そのものを特定しないとして,審決の一致点の認定が誤りである旨主張する。
しかし,前記2のとおり,商品についての説明事項及び横軸,縦軸による商品の特定について,審決の引用例発明の認定に誤りはなく,これが誤りであることをいう原告の主張は前提を欠くものであり,また,本願補正発明と引用例発明の説明事項についての相違は,審決は,相違点1として認定して,その構成についての容易想到性判断をしているのであって,審決は,商品の特定について,本願補正発明と引用例発明とが異なることを前提として,一致点を認定しているのであり,審決の一致点の認定に原告主張の誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由3は理由がない。
4取消事由4(相違点の認定の誤り)について( )原告は,審決が本願補正発明及び引用例発明の認定を誤ったことから,そ1の相違点の認定も誤ったことをいうが,審決の本願補正発明及び引用例発明の認定に原告主張の誤りがないことは前記1及び2のとおりであり,原告の主張は前提を欠くものである。
( )原告は,本願補正発明が対象とするのは,販売者が行う商品データの入力,2すなわち,商品データベースの生成に使用する商品データ入力画面であるのに対し,引用例1は,購入者が個人端末機などから商品の購入を予約するために提案されたシステムで,引用例1の図4の画面は,購入者が商品を購入するために選択操作する画面である旨主張する。
しかし,前記1のとおり,本願補正発明は,商品データベースを作成する方法についての発明ではなく,通信ネットワークを用いた商品販売方法についての発明と認められるものであり,販売者側で入力した説明事項を受け付けるステップを有するものである。
そして,本願補正発明が,販売者側で入力した説明事項を受け付けるステップを有するのに対し,引用例発明については,そのようなステップを有するものではないことは,審決が相違点3として認定しているところである。
なお,確かに,本願補正発明において,作成された商品一覧表等は,販売者側の何らかの記憶媒体に記憶されるといえるが,引用例発明においても,ネットワークを用いた商品予約注文において,購入者が商品を購入する際に表示される図面は,通常,販売者側の何らかの記憶媒体に記憶されているといえるのであって,この点で,本願補正発明と引用例発明に相違があるとは認められない。
したがって,審決の相違点の認定に上記の原告主張の誤りはない。
( )原告は,本願補正発明の商品一覧表と引用例1の図4の表は,説明事項及3び構成要素において異なり,また,本願補正発明の商品の一覧表は,複数の商品の共通事項をまとめて表示し,第1の条件と第2の条件のみで,相互に独立の商品を特定するものであるのに対し,引用例1の図4では,相互に関連性のある商品である旨主張する。
しかし,審決は,本願補正発明の商品一覧表と引用例1の図4との説明事項との相違を相違点1として認定し,また,横軸に表示される第1の条件と縦軸に表示される第2の条件にかかる構成は相違点2として認定していて,引用例1の図4が,それのみで独立して商品を特定するものでなく,商品の特定のために他に説明が必要であるとしても,それは,説明事項及び第1の条件と第2の条件の項目の相違といえるものであり,これらは,基本的には相違点1及び2として認定されているし,また,本願補正発明の商品の一覧表は,共通事項と第1と第2の条件で相互に独立した商品を特定するといえるものであるとしても,そのことが審決の容易想到性の判断の結論に影響がないことは後記5( )のとおりである。
4( )したがって,原告主張の取消事由4は理由がない。 45取消事由5(相違点についての判断の誤り)について( )原告は,本願補正発明と引用例発明の相違点1ないし3について,引用例17発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るとした審決の判断が誤りである旨主張する。
( )原告は,審決が相違点についての認定を誤ったことを前提として,審決が2相違点についての容易想到性判断を誤った旨主張するが,審決の相違点の認定に原告主張の誤りがないことは前記4のとおりである。
ここで,原告が,本願補正発明と引用例発明の相違点として主張するところは,前記4のとおり,審決の相違点の認定に含まれるものが多いであるが,事案にかんがみ,原告が主張する相違点と相違点に係る本願補正発明の構成に容易に想到することができたかについて,以下検討する。
( )原告は,本願補正発明と引用例発明の相違点として,本願補正発明が対象3とするのは,販売者が行う商品データの入力,すなわち,商品データベースの生成に使用する商品データ入力画面であるのに対し,引用例1は,購入者が個人端末機などから商品の購入を予約するために提案されたシステムで,引用例1の図4の画面は,購入者が商品を購入するために選択操作する画面である旨主張する。
前記1のとおり,本願補正発明は,商品データベースを生成する方法についての発明ではなく,通信ネットワークを用いた商品販売方法についての発明と認められるものであり,商品一覧表を作成し,表示するステップ,販売者側の入力した説明事項を受け付けるステップを有するものである。これに対し,引用例発明は,通信ネットワークを用いた商品販売方法の発明であり,商品一覧表を準備するステップを有するが,一覧表を準備する個々のステップについての記載はなく,商品販売方法に含まれる販売者の商品データの入力方法についての記載はないものである。
したがって,原告が主張する本願補正発明と引用例発明の相違は,審決の相違点3の認定の範囲で相当と認められる。
ここで,引用例発明は,通信ネットワークを用いた商品販売方法の発明であって,ネットワークを介して,利用者の端末に商品についての説明事項を付した商品一覧表を表示させるものであるところ,販売者側において,商品についての説明事項を付した商品一覧表を準備することは当然に予定されていると認められる。そして,その際,商品一覧表の準備について,販売者が入力を行って一覧表を作成して行うこと自体は当業者がまず考えるようなことであり,一覧表の作成に当たって,販売者が項目等の入力を行うことは,当業者が容易に想到することができることである。
もっとも,本願補正発明は,一覧表の作成に当たり,販売者の入力を規定するのみでなく,さらに,「販売者が入力した,商品についての説明事項を受付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップ」と,「販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき第1の条件を受付けるステップ」と,「販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき第2の条件を受付けるステップ」と,「上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップ」の各ステップを備えることを規定している。
このうち,前記によれば,引用例1の図4から,上記商品一覧表の横軸と縦軸とで特定される商品について,販売者が入力した販売単価を受付けるステップが記載されているのと同然であると認められるが,引用例1は,「販売者が入力した,商品についての説明事項を受付けて,予め準備された,所定の横軸と縦軸とで特定される桝目を有した商品一覧表を作成し,表示するステップ」と,「販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の横軸に表示すべき第1の条件を受付けるステップ」及び「販売者が設定入力した上記商品一覧表の桝目の縦軸に表示すべき第2の条件を受付けるステップ」を規定するものではない。
ここで,引用例7には,HTMLエディタについて,表について説明タイトルの入力を受け付けるとともに,所定の横軸と縦軸とで特定されるセルを有するテーブルを表示させ,このテーブルの表形式を利用してセルにデータを入力し,表を作成することが記載されており,ここでは,所定の横軸と縦軸とで特定されるセルを有した表をあらかじめ準備作成し,表示するステップと,表のセルの横軸に表示すべき作成者が設定した第1の項目の入力を受付けるステップと,当該表のセルの縦軸に表示すべき作成者が設定した第2の項目の入力を受付けるステップと,当該表の横軸と縦軸とで特定されるセルに作成者が行う所定の書き込みを受付けるステップとを備えるとともに,表について作成者が設定した説明タイトルの入力を受付けるステップを備えるところの,表を作成するためのデータの入力方法が開示されていると認められる。
引用例1は,通信ネットワークを用いた商品販売方法における商品一覧表を問題とするところ,本件出願当時,そのような通信ネットワークを用いた商品販売方法において,通信ネットワークとしてインターネットを想定することは当業者が設計事項としてするような事項であるし,また,そのように通信ネットワークとしてインターネットを使用するとき,商品一覧表のデータの入力に際し,インターネットにおいてごく普通に使用されている言語であるHTMLの編集等に用いられるHTMLエディタを使用することは当業者が設計事項としてするようなことであったと認められる。そうすると,当業者は,引用例1の商品一覧表の作成に当たり,引用例7を適用し,本願補正発明の構成に容易に想到することができたというべきである。
( )原告は,本願補正発明と引用例発明の相違点として,本願補正発明の商品 4一覧表と引用例1の図4の表は,説明事項及び構成要素において異なり,本願補正発明の商品の一覧表は,複数の商品の共通事項をまとめて表示し,第1の条件と第2の条件のみで,相互に独立の商品を特定するものであるのに対し,引用例1の図4では,相互に関連性のある商品である旨主張する。
前記4( )のとおり,原告主張の点について,審決は,基本的には,本願補正発3明と引用例発明の相違点1及び2として認定しているといえる。
そして,確かに,本願補正発明の説明事項は,「複数の商品に共通する説明事項である商品見本の画像,商品名,商品説明を含む共通事項」であるが,引用例1の図4の説明表示は,商品についての説明事項であるとはいえるものであるが(前記2( )),本願補正発明の上記のような「共通事項」といえるものではない。
2また,本願補正発明の商品一覧表の桝目の横軸に表示される第1の項目が,「商品の規格,種類,色,型のうちから選択された第1の条件」であり,商品一覧表の桝目の縦軸に表示される第2の項目が,「商品のサイズ,色,長さ,大きさ,重さのうちから選択された第2の条件」であるのに対し,引用例1の図4の横軸及び縦軸が表示しているのはそのような項目ではない。そして,「共通事項」という性質から,本願補正発明については,「共通事項」である説明事項,横軸に表示される第1の項目,及び,縦軸に表示される第2の項目によって,商品が特定するともいえるのに対し,引用例1の図4の説明事項,横軸,縦軸に表示される事項は,そのようなものでないといえる。
ここで,商品を一覧表に整理して紹介する場合に,商品見本の画像,商品名,商品説明などからなる,表示する複数の商品に共通する説明事項を付加すること,また,商品一覧表の桝目の横軸・縦軸には,商品の規格,種類,色,型,サイズ,長さ,大きさ,重さなどを用いることは,普通に行われていることというほかなく(甲2,3,4),商品を特定する横軸と縦軸をどのような項目とするかは,販売の対象としようとする商品の性質や,販売の形態に応じて,当業者が適宜設定する事項である。また,複数の商品に共通する事項を説明事項として一覧表に付加することや,そのような共通事項を設けるとともに,その共通事項と一覧表の横軸,縦軸の項目により商品を特定することもごく普通に行われているというほかないものであり,これらは,利用者の便宜,商品説明に与える役割などを考慮して,当業者が適宜設定しているものである。
そうすると,引用例1の図4が本願補正発明と上記の点で異なるとしても,それらの相違に係る点について,本願補正発明で行われていることは,商品の一覧表を作成する際にごく普通に行われていて,当業者が適宜設定しているというほかないものである。したがって,引用例1の図4と本願補正発明の商品一覧表が,商品についての説明事項を有し,また,商品につき,一覧表の横軸と縦軸による単価の特定をしているという点で共通するとき,引用例1の図4について,その説明事項や横軸,縦軸の項目について,本願補正発明の構成を採用することに当業者は容易に想到することができたと認められる。
( )原告は,本願補正発明は,販売者の商品データ入力手間の軽減という特段5の効果を有しているから,引用例1及び7をもってしても,当業者が容易に想到し得る事項でないとし,従来の技術と比べ,本願補正発明の商品データ入力方法によるとその工数が大幅に軽減され,このことは,引用例1には示唆されていないし,本件出願時の技術水準から周知であることを示す証拠も存しない旨主張し,また,引用例7は,商品データ入力の手間を軽減するために有益であることを教示するものではなく,本願補正発明を推考させる動機付けにはならない旨主張し,さらに,本願補正発明は,桝目表を作成する方法を提案するものではなく,桝目プログラムを用いた商品データの誘導支援方法である旨などを主張する。
しかし,引用例1の図4の一覧表について,これに引用例7記載の技術を適用することは,当業者が設計事項としてするようなものであることは前記( )のとおり3であり,原告主張の各事実は,この判断を左右するものではない。そして,引用例7には,所定の横軸と縦軸とで特定されるセルを有した表をあらかじめ準備作成し,テーブルの表形式を利用してセルにデータを入力することが記載されているところ,これによれば,各セルの内容を個別に入力する場合に比べ,入力の手間が軽減されるのであり,引用例1の図4の一覧表について,引用例7記載の技術を適用すると,販売者の商品データ入力手間の軽減は図れるのであるから,このことについて,本願補正発明の特段の効果と認めることはできない。
( )したがって,原告主張の取消事由5は理由がない。
66取消事由6(手続違反)について( )原告は,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知にお1いて進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後発明の進歩性を否定する主張をすることは,拒絶理由通知等に関する裁量の範囲を明らかに逸脱しており,審決は,手続的に違法である旨主張する。
( )本件出願について,以下の経緯が認められる。
2ア平成12年11月16日,原告は,発明の名称を「商品を枡目で選択するプログラムを活用した販売方法」とする発明(「出願当初発明」)について特許出願し,平成13年4月13日付けの最初の拒絶理由通知(甲15)を受けた。この拒絶理由通知において,出願当初発明は,引用例1を含む引用文献から進歩性を否定された。
イ原告は,平成13年6月22日付の手続補正書(甲9)を提出し,明細書,図面等を補正(「平成13年補正」)した。
特許庁は,平成14年5月21日付の最後の拒絶理由通知(甲16)において,平成13年補正の内容は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものでないとした。同拒絶理由通知書には,補正後の発明については新規性,進歩性等の特許要件についての審査を行っていない旨が記載されていた。
原告は,平成14年7月29日付けの意見書及び手続補正書(甲10)を提出し,明細書を補正(「平成14年補正」)した。
ウ平成14年9月24日付けで,特許庁は,平成14年補正について,特許法17条の2第4項に掲げるいずれの事項を目的とするものではないことを理由として却下の決定をするとともに(甲17),同日付けで,本件出願について,拒絶査定をした。拒絶査定の理由は,平成14年5月21日付けの拒絶理由通知に記載した理由であるとされた。
エ平成14年10月29日,原告は,拒絶査定不服審判を請求した(甲19)。特許庁は,平成17年1月31日,平成14年補正,平成13年補正が法の要件に適合しないとして,審判請求が成り立たない旨の審決をした(甲21)。審決は,進歩性の問題に触れていない。
オ原告は,上記審決の取消しを求めたところ,知的財産高等裁判所は,平成17年12月8日,平成13年補正は明細書に記載した事項の範囲内のものであり,また,平成13年補正が明細書に記載した事項の範囲内ではないことを前提として平成14年補正を却下したことが誤りとなるとして,審決を取り消し,その後,同判決が確定した。
カ特許庁は,本件出願についての審理を再開し,平成18年7月11日付けの最初の拒絶理由通知(甲11)において,引用例1を含む文献に記載された発明に基づき発明の進歩性を否定した。これに対し,原告は,同年9月19日付けで意見書及び手続補正書を提出し,次いで,平成19年2月6日付けの最後の拒絶理由通知に対し,同年4月16日付けで意見書及び手続補正書を提出したが,特許庁は,同年6月28日,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をしたことから,原告は本件訴訟を提起した。
( )特許庁は,一定の場合には,特許出願について拒絶査定をしなければなら3ず(特許法49条1項),その場合として,明細書等についてした補正が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとき(同項1号),特許出願に係る発明が同法29条の規定により特許をすることができないとき(同項2号)などが掲げられている。したがって,明細書等にした補正が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていなければ,特許出願は拒絶されるのであり,特許庁は,同補正が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断した場合には,そのことを理由とする拒絶理由通知を行うこととなり,また,その理由が解消していないと判断する場合には,そのことを理由とする拒絶査定を行うこととなる。
本件において,特許庁は,平成13年補正が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断して平成14年5月21日付けの拒絶理由通知を行い,また,その理由が解消されていないとして,同年9月24日付けの拒絶査定を行った(なお,本件においては,平成13年補正の後に,平成14年補正がされているが,これは,同法17条の2第1項第3号に掲げる場合の補正であり,審査官は,その補正が同法17条の2第3項から第5項までの規定に違反しているものと認めたときは,決定をもって補正を却下することとなり,本件においても,決定をもって補正が却下された〔同法53条〕。)。
その後,上記のとおり,平成13年補正,平成14年補正についての特許庁の判断が誤りであることが確定したのであるが,そうすると,平成13年補正,平成14年補正についての特許庁がした判断が誤りであることを前提として,審査がされることととなるのであり,特許庁は,上記を前提として審査を行って(出願に係る発明については,その後さらに補正がされた。),特許法29条についての拒絶理由があるとしてこれを通知し,拒絶の査定をしたのであり,この手続に違法な点はない。
( )原告は,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知にお4いて進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後発明の進歩性を否定する主張をすることを問題とするのであるが,これは,特許庁が,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その他に,特許法29条についての拒絶理由があると示さなければ,その後,特許法29条を理由として特許出願の拒絶をしてはならない旨の主張と解される。これは,結局,特許庁は,補正について,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであり,そのような手続を経なければ,その後,特許法29条の拒絶理由に基づいて拒絶してはならないというものである。
しかし,特許法17条の2第3項に違反した補正がされれば,そのことのみによって特許出願は拒絶査定されるのであるから,特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として予備的に特許法29条の判断をしなければならないとまではいえない 。また,特許請求の範囲について特許法17条の2第3項に違反した補正がさ.れた場合には,特許法29条の判断の基礎となる発明が補正前と異なることから,上記のように必ず特許法29条について予備的に判断しなければならないとすると,新たな審査を要する場合も多いのであり,このことを考慮すると,特許法17条の2第3項に違反する補正がされたと判断する場合に特許庁は自らの判断が誤りであることを前提として必ず予備的に特許法29条の判断をしなければならないとすることが合理的であるとはいえない。
確かに,本件のように,補正について判断した審決が取り消されて審理が再開されたが,再開後の審理において前回とは異なる理由により出願が拒絶されるような場合,出願人は,時間的,手間的な負担等を負うこととなるのであるが,前記のような法の構造等に照らせば,特許庁が,補正が特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りである可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであるとは認められず,原告主張の,出願からの経過年数や手続的負担は,この判断を何ら左右するものではない。
( )したがって,原告主張の取消事由5は理由がない。
56以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとする。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明