審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成18ワ29554特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ9352特許権侵害に基づく差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ11880特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11881特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11882特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ29704特許権侵害差止請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ19307特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 承継 / 物の発明 / 製造方法 / 新規性 / 守秘義務 / 公然実施(29条1項2号) / 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 技術的範囲 / 技術常識 / 明確性 / 実質的に同一 / 着想 / 実施料相当額 / 援用権(援用) / 特許出願日 / 数値限定 / 容易に想到(容易想到性) / 業として実施 / 特許発明 / 実施 / 先使用権(先使用) / 社会通念 / 加工 / 間接侵害 / 構成要件 / 業として / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 実施料 / 営業秘密 / 実施権 / 通常実施権 / 設定登録 / 知らないで / 発明の実施である事業 / 事業の準備 / 実施又は準備(実施または準備) / 目的の範囲 / 請求の範囲 / 変更 / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
18年
(ワ)
6663号
特許権侵害差止等請求事件
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東京都千代田区<以下略> 脱退原告新 日本製鐵株式会社東京都千代田区<以下略> 引受参加 人新日鉄マテリアルズ株式会社 訴訟代理人弁護士増井和夫 同 橋口尚幸 東京都千代田区<以下略> 被告JF Eス チ ール株式 会社 訴訟代理人弁護士近藤惠嗣 同 丸山隆 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2008/03/13 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1引受参加人の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用は,引受参加人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求, ,。 1被告は 別紙物件目録記載の粗面仕上金属箔を製造し 販売してはならない2被告は,引受参加人に対し,金14億6000万円及びこれに対する平成18年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は 「粗面仕上金属箔および自動車の排ガス触媒担体」についての特許 ,権を有している引受参加人が,被告が製造・販売した別紙物件目録記載の粗面仕上金属箔が上記特許権の技術的範囲に属し,その製造・販売が上記特許権を侵害したものであると主張して,被告に対し,上記粗面仕上金属箔の製造・販売の差止,損害賠償金12億円及び不当利得金2億6000万円並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求めている事案である。なお,本件においては,訴訟係属中に,会社分割により,脱退原告が有していた上記特許権を引受参加人が承継したという経緯があることに鑑み,以下においては,脱退原告又は引受参加人のいずれかを指して「原告」ということがある。 1前提となる事実等(当事者間に争いがないか,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる )。 ( ) 引受参加人及び日本金属株式会社は,次の特許につき特許権(以下 「本1 ,件特許権」といい,その特許を「本件特許 ,その特許出願を「本件特許出 」願」という )を有している(甲2,甲24 。 。 )ア特許番号第2857767号イ発明の名称粗面仕上金属箔および自動車の排ガス触媒担体ウ出願日平成元年6月17日エ登録日平成10年12月4日オ本件特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という )の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下, 。 請求項1の特許発明を「本件特許発明」という。本判決添付の本件特許の特許公報(以下「本件公報」という )参照。。。)「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる耐熱性ステンレス鋼製の金属箔において,表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmであることを特徴とする粗面仕上金属箔 」。 ( ) 本件特許発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説し2た構成要件をその符号に従い「構成要件A」のように表記する。。)Aろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられるB耐熱性ステンレス鋼製の金属箔において,C表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmであることを特徴とするD粗面仕上金属箔。 ( ) 被告製品3被告は 「R20-5USR」及び「JFE20-5USR」を商品名と ,する耐熱性ステンレス鋼製の金属箔(以下「被告製品」という )を製造・ 。 Emitec Gesellchaft 販売していた。被告の顧客にはドイツ国のエミテック社(。以下「エミテック社」という )が含まれておfur Emissionstechnologie mbH 。 り,エミテック社は,被告製品にろう付け法を適用して自動車の排ガス触媒担体を製造した。 ( ) 本件特許発明と被告製品との対比4被告製品は,耐熱性ステンレス鋼製の金属箔であるから,被告製品は,本件特許発明の構成要件のうち,構成要件Bを充足し,構成要件Dのうち「金属箔」を充足する。 ( ) JIS(B0601-1970)における表面粗度Rmaxの規定の概要5構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxについて,本件明細書の〔課題を解決するための手段〕欄には 「本発明は金属ハニカムを構成する金属箔 ,を粗面仕上げに調製したものを用いることを特徴としており,JIS(B0) ().. 601-1970 に規格化されている表面粗度 Rmax は0 7〜20μm,好ましくは1.0〜1.5μmである 」と記載されており(甲2 。 ・4欄11行〜14行 ,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの測定 )については,JIS(B0601-1970 (以下「70年JIS」とい )う。甲3)に従うことが明記されている。 そして,70年JISにおいて,表面粗度Rmaxは,概ね次のとおり規定されている。 すなわち,まず,機械表面の最大高さRmaxは,その表面から多数の断面曲線を求め,これらの断面曲線において測定した最大高さRmaxの平均値で表される。 そして,断面曲線において最大高さRmaxを測定する際に,断面曲線から抜き取る一定の長さを基準長さといい,この基準長さについては,原則として,0.25mm及び0.8mmを含む6種類の長さから指定するものとされている。 最大高さRmaxの測定に際し,基準長さを特に指定する必要がない限り用いる基準長さの標準値として,最大高さRmaxが0.8μm以下においては基準長さ0.25mm,最大高さRmaxが0.8μmを超え6.3μm以下においては基準長さ0.8mmと定められている。 ( ) 表面粗度Rmaxの測定試料1-原告サンプル6原告は 平成14年10月 海外のあるメタル担体メーカーから 被告 当 ,, ,(時の商号・川崎製鉄株式会社)が製造した「R20-5USR」を入手した(以下,原告が入手したこの製品を「原告サンプル」という。。)原告サンプルに添付された鋼材検査証明書,原告サンプルに貼付されていたラベルによれば,原告サンプルは,平成13年7月18日ころ,被告(当) 。, 時の商号・川崎製鉄株式会社 によって製造・販売されたものである また原告サンプルは,5本のコイルからなるものの,製鋼番号5137403,コイル番号B16926として出荷された一つのコイルを,MKM社において板幅方向に5分割したものである (甲8,甲23,乙31) 。 ( ) 表面粗度Rmaxの測定試料2-カルソニック材7原告は,第三者から,被告が製造したカルソニックカンセイを向先とする「R20-5USR」を入手した(以下,原告が入手したこの製品を「カルソニック材」という。。)カルソニック材は,三つのコイルからなっており,鋼材検査証明書及び検査カードによれば,それぞれ,平成16年2月26日ころ,平成15年5月22日ころ,同年6月11日ころ,被告によって製造・販売されたものである(甲41の1ないし甲41の6 。)( ) 表面粗度Rmaxの測定試料3-被告サンプル8被告は,被告製品の品質管理のため,すべてのコイルを対象として,最終検査工程において,各コイルから保管サンプル1枚(約300mm×約275mm)を採取して,1年間保管している。 被告は,表面粗度Rmaxを測定するため,いずれもエミテック社を向先とする,平成16年11月1日から平成17年9月22日までの間に保管サンプルを採取した406コイル分の保管サンプルから,1月当たり約3コイル分の保管サンプルをランダムに抜き取り,二輪バイクに使用される箔の厚み65μm以上のコイルを除外して,28コイル分の保管サンプルを選定した(以下,被告が選定したこの保管サンプル又はこの保管サンプルが採取されたコイルを指して「被告サンプル」という。そして,被告サンプルか 。)ら測定用箔試料各1枚を採取した (乙24)。 2本件の争点( ) 被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1 。 1 )ア被告製品は,構成要件Aを充足するか(争点1-1 。)イ被告製品は,構成要件Cを充足するか(争点1-2 。))構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定には,いかなる基a準長さを用いるべきか(争点1-2-1 。))被告製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cに規定された表面粗度Rbmaxの範囲に属しているといえるか(争点1-2-2 。)ウ被告製品は,構成要件Dを充足するか(争点1-3 。)( ) 先使用権の抗弁の成否(争点2)2( ) 本件特許は無効とされるべきものか(争点3 。 3 )ア記載不備(争点3-1)イ新規性の欠如(争点3-2)ウ進歩性の欠如(争点3-3)( ) 損害額及び不当利得額(争点4)43争点に関する当事者の主張( ) 争点1(被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属するか )について1 。 ア争点1-1(被告製品は,構成要件Aを充足するか )について 。 )引受参加人の主張a被告製品は,ろう付け触媒担体用に販売されているから,構成要件Aを充足する。 ?@原告は,構成要件BないしDを充足するステンレス箔が,ろう付け触媒担体に使用した場合,ハニカム構造のズレを防止する顕著な作用効果を有することを見出して本件特許発明を完成したのであるから,被告製品が構成要件Aを充足するためには,被告において被告製品がろう付け触媒担体に用いられることを予測して製造・販売すれば十分である。 被告は 構成要件Aを充足するためには 製品それ自体において ろ , ,「う付け触媒担体」に用いられるための客観的構成を備えていなければならないと主張する。しかし,一つの物が複数の用途を有することはよくあることであり,構成要件に規定された用途以外の用途を有する, 。 からといって それだけで特許権侵害が否定されることはあり得ない他の用途に用いられる場合と構造上の相違を備える必要はない。 ?A被告は,エミテック社指定の規格又は仕様に従って,エミテック社に対して被告製品を製造・販売している。エミテック社が排ガス触媒担体をろう付け法で製造していることは周知であり,エミテック社向けにステンレス箔を販売することは,ろう付け触媒担体用に販売することにほかならない。エミテック社以外の顧客についても,顧客がろう付け触媒担体用に使用しているか否かを被告が知らないはずがない。 )被告の反論b被告製品は,構成要件Aを充足しない。 ?@本件特許発明は,物の発明であり,特許請求の範囲において,用途も発明の構成要件として記載されている。したがって,被告製品による本件特許権の侵害が認められるためには,被告製品における何らかの物理的な構成によって用途が体現されている必要がある。 しかるに,引受参加人は,被告製品において用途を体現している構成を主張しないのみならず,被告製品には用途に対応するいかなる物理的構成も存在しないことを自認している。 ?A引受参加人は,構成要件Aを充足するためには,被告製品がろう付け触媒担体に用いられることを予測して製造・販売されれば十分であると主張する。しかし,そのような解釈は,引受参加人独自の解釈であり,学説・判例上も例を見ない主張である。現行特許法において,物の物理的構成に代えて行為者の主観的な意思が物の発明の特許権侵害の成立要件として考慮されるのは,特許法101条2号(物の発明の間接侵害の場合)に限られる。 ?B引受参加人は 「エミテック社向け」と表示された被告製品は,そ ,の表示のゆえに,本件特許権を侵害すると主張する。しかし 「エミ,テック社向け」という表示は,出鋼された鋼を製品化する前にエミテック社から出鋼鍋(チャージ)単位で事前承認(チャージアプルーバル)を受けたことを意味するものの,この事前承認は,少量を箔に仕上げ,耐酸化性能テストの合否判定に合格することにより与えられるものであり,表面粗度Rmaxを決定付ける仕上圧延ロールの粗度に関しては 「エミテック社向け」だからといって特別な仕様があるわ ,けではない。また 「エミテック社向け」と表示されて出荷された被 ,, , 告製品の中には 最終的にエミテック社以外に納入されるものもあり被告は,被告製品を出荷する段階で,当該被告製品の用途を確知してはいない。現に,原告が入手した原告サンプルも 「エミテック社向 ,け」と表示されているものの,エミテック社には納入されずに 「ろ,う付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体」を製造していないケミラ社に納入されたものである。以上のとおり 「エミテック社向け」 ,という表示は,被告製品の用途を示すものではない。 イ争点1-2(被告製品は,構成要件Cを充足するか )について 。 )争点1-2-1(構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定aには,いかなる基準長さを用いるべきか )について。 ?@引受参加人の主張構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定に用いるべき基準長さは,次に述べる理由により,0.8mmである。 ( ) 本件明細書には,本件明細書に用いられる表面粗度Rmaxは7i0年JISにより規格化されたものであることが記載され,測定の際の基準長さを具体的に指定した記載はないから,表面粗度Rmax測定の基準長さについては,70年JISの定める基準長さの標準値を用いるべきである。 この場合,構成要件Cの規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmは,二つの区分(0.8μm以下の区分と0.8μmを超え6.3μm以下の区分)にまたがることになるものの,二つの基準長さを併用したのでは,別表Aのとおり,複数の基準長さを適用可能ないわゆる一物二価の領域が生じ,Rmaxの値が不連続になるという不都合があるから,単一の基準長さを用いるべきである。 ( ) 構成要件Cの規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmのii,.(.. 大部分は 基準長さを0 8mmとする区分 0 8μmを超え63μm以下の区分)と重なっている。しかも,本件特許発明における好ましい範囲である1.0〜1.5μmはすべて基準長さを0.8mmとする区分に含まれている。 ( ) 本件特許に関する特許庁の判定(甲10)も上記( )と同様の説iii ii示をして,基準長さを0.8mmと認定した。 ( ) 本件特許出願当時の鉄鋼業界においては,基準長さを0.8mivmとすることが技術常識化していた。このことは,被告の特許出願に係る甲11号証及び甲29号証の各公開特許公報の記載や,被告の社内資料である乙2号証の報告書からも,明らかである。 ?A被告の反論構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定に用いるべき基準長さは,次に述べる理由により,少なくとも下限(0.7μm以上であるか否か )においては,0.25mmである。 。 ( ) 本件明細書には,基準長さを具体的に指定した記載はない。そしiて,表示された測定値に基準長さの付記を省略できるのは,表示された測定値が70年JISの定める基準長さの標準値と矛盾しない場合のみであるから(甲3,3.4備考参照 ,基準長さの付記が )ない構成要件Cの表面粗度Rmaxについては,70年JISの定める基準長さの標準値を用いるべきである。 ( ) 本件明細書の記載によれば,本件特許発明の作用効果の臨界的ii.。 意義を有するのは表面粗度Rmaxの下限である0 7μmであるすなわち,表面粗度Rmaxが0.7μm以上であるかどうかの判別こそが重要であり,Rmax0.7μmの場合も,それ以下の場合も,いずれもRmax0.8μm以下の区分に属するから,少なくとも,Rmaxが下限の0.7μm以上であるか否かを判断する際には,基準長さを0.25mmとすべきである。 ( ) 表面粗度Rmax0.7〜2.0μmのように,70年JIS iiiの定める基準長さの標準値によれば,上限と下限とで適用すべき基準長さが異なる場合には,特に基準長さを統一する旨の記載がない限り,上限と下限に異なる基準長さを適用すると解釈すべきである(甲3,3.3備考参照 。)( ) 引受参加人は,本件特許出願当時の鉄鋼業界においては,基準iv長さを0.8mmとすることが技術常識化していたと主張する。しかし,そのような技術常識がなかったからこそ,甲11号証の公開特許公報においては,わざわざ基準長さを明記しているのである。 ( ) 引受参加人は,二つの基準長さを併用したのでは,複数の基準長vさを適用可能ないわゆる一物二価の領域が生じ,Rmaxの値が不連続になるという不都合があると主張する。しかし,70年JISの基準長さの標準値に従って,表面粗度Rmaxの下限0.7μmの基準長さを0.25mmとし,上限2.0μmの基準長さを0.8mmとしても,別表Bのとおり,下限の表面粗度Rmaxよりも粗く,上限の表面粗度Rmaxよりも滑らかな領域を定めることができるから,不都合はないというべきである。 )争点1-2-2(被告製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cに規定bされた表面粗度Rmaxの範囲に属しているといえるか )について 。 ?@引受参加人の主張被告製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの範囲に属する。 ( ) 構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定に用いるべきi基準長さは,0.8mmである。 基準長さ0.8mmにより測定された被告製品の表面粗度Rmaxは,原告の測定(甲9,甲15,甲21,甲22)においても,被告の測定(乙24)においても,構成要件Cに規定された0.7〜2.0μmの範囲に含まれている。例えば,被告の測定報告である乙24号証では,被告サンプルの測定結果として,平均値0.784μmが報告されている。 被告は,被告製品のいずれの測定点においても,Rmax0.7μm以上でなければ本件特許権を侵害しないと主張する。しかし,表面粗度については,70年JISに明記されているように,個々の測定点の値には相当のばらつきが存在するのが通常であり,適切な測定個数に基づく算術平均としてRmaxが算出される。個々の測定点の値を問題にするのは誤りである。 触媒担体に用いるという本件特許発明の目的に適した広さ,すなわち触媒担体1個分以上の広さにおける平均値(当該面積における).,。 Rmax値 が0 7μm以上であれば 構成要件Cは充足される被告製品は,広幅のコイル全体の平均として0.7μmを明確に超えており,かつ,コイルのどの位置を計っても0.7μmを超えている(甲21)から,侵害品であることに議論の余地はない。 ( ) 仮に,構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定に用iiいるべき基準長さが0.25mmであったとしても,原告サンプルの測定値は,平均値として構成要件Cの下限である0.7μmに近接した約0.69μmを示すので,被告の製造工程から自然に生ずるばらつきの範囲(標準偏差により評価される)を考慮すると,被告製品の実質的な割合(約40%)が構成要件Cに規定された0.7〜2.0μmの範囲に含まれると解される。限られたサンプル数における実測でも,現実に0.7μmを超えるRmax値が得られている。 ( ) 甲26号証には,原告サンプルのうち特定のコイル(A1と命iii名されたもの)の先頭から末尾まで万遍なく採取した12枚のサン。. プルについての測定結果が記載されている 全測定値の平均値は069μmであり,本件特許発明の下限値0.7μmと極めて近い。 また,この12枚のサンプルについて,表裏合わせて10箇所の測定による平均値が0.7μm以上のものが2サンプル(4-1及び12-1)存在する。少なくともこの2サンプルの領域は,本件特許発明の表面粗度を有している。 また,乙32号証及び乙38号証には,原告サンプルから切り出した5本のコイルの測定結果が記載されており,いずれも,5本のコイル(102,103,104,105,10X)全部の測定値, .。, の平均は 原告による測定結果と同じ0 69μmである そして乙32号証によれば,コイル102のRmaxは表裏とも0.7μmを超えており,表裏の平均としても0.7μmを超えているし,コイル10XのRmaxは裏面において0.71μmであり,表裏の平均は0.70μmである。このように,乙32号証では,原告サンプル5本のうち,2本が表面粗度Rmaxについての構成要件Cを充足する。他方,乙38号証によれば,コイル105のRmaxは,表裏の平均として0.74μmであり,本件特許発明の表面粗度を有している。 さらに,甲36号証には,カルソニック材の測定結果が記載されており,3種類のサンプルの表裏合わせて10箇所の測定の平均値は,それぞれ0.68μm,0.67μm,0.71μmであり,全測定値の平均値は,この場合も0.69μmであった。なお,カルソニック社は,触媒担体の製造につき,ろう付け法ではなく,拡散接合法を採用しているから,カルソニック材は,本件特許権を侵害するものではないものの,被告によれば,R20-5USRは,販売先や用途によって仕様が異なるものではないから,表面粗度の評価に関しては,エミテック社向けの被告製品と同じ価値を有するものである。 ( ) 原告サンプル及びカルソニック材に関する甲26号証,甲36iv,,, , 号証 乙32号証 乙37号証 乙38号証のデータを総合すると, , 被告製品におけるRmax値は 異なるコイル間の平均値としても1本のコイルの全長にわたる平均値としても,0.69μm又はこれに極めて近い値であると判断される。そして,異なるコイル間についても,1本のコイルの幅方向及び長さ方向についても,ある程度の変動幅があるものと認められる。 被告が出荷した1本の広幅コイルとしてのRmax値が0.69μmである製品の場合,その中にも実質的な割合で0.7μmを超える領域が存在する。すなわち,被告製品を触媒担体1個に相当する面積に切り分けた場合,平均値として0.7μm以上のステンレス箔が実質的な割合で得られ,本件特許発明を実施する触媒担体が製造されることになる。なお,被告において製造する広幅コイルの幅,長さは非常に大きく,大型の装置によって製造されるのであるから,特性に変動を生ずるとしても,緩やかな変動であり,Rmax値が0.7μm以上の領域を生ずる場合には,触媒担体1個分よりはるかに広い領域になると認めるのが合理的である。 このような被告製品は,実質的な割合で侵害品である領域を有している以上,差止判決の対象となる。損害賠償額については,侵害品である領域の割合の問題に帰着する。 ( ) 被告製品の製造工程において生ずるRmaxの変動の程度についvては,最も多数の被告製品に関する測定値が報告されている乙29号証を参照するのが適切である。これによれば,最も被告に有利に標準偏差を計算した場合,0.051になる。 被告の製造工程において,特に意図的な変動が加えられない期間については,偶然の変動要因によって生ずる製品のばらつきは,正規分布に従う。そこで,平均値が0.69であり,標準偏差が0.051である正規分布曲線から,値が0.7以上となる割合を計算すると約42%となる。 このように高い割合で侵害品(あるいは侵害を構成する領域)が存在するから,上記のとおり,乙32号証の5サンプル中の2サンプル,甲26号証の12サンプル中の2サンプル,甲36号証の3, . サンプル中の1サンプルのように 表裏の平均としてRmaxが07μmを超えるサンプルが見つかるのである。 ( ) 被告サンプルの測定値は,乙29号証によれば,平均値0.5vi4μm,乙37号証,乙38号証によれば,平均値0.55μmと, 。 報告されており 原告の入手したサンプルの測定値と異なっているこのような相違が生じた理由としては,まず,製造時期の相違により,製造条件が異なっていたことが考えられる。また,被告サンプルが,被告製品を正しく代表していないことが考えられる。原告の入手したサンプルは,市場から入手したものであり,被告が販売した被告製品であることに間違いない。しかし,被告サンプルが正しく被告製品を代表するように選定されたことについては,証明されていない。 仮に,前者の製造条件の変更があったとしても,被告サンプルが製造された平成16年9月以前の被告製品に関する限り,約42%の割合で本件特許権を侵害している。また,被告が製法の変更はしていないと主張していることからすれば,被告が何時にても平成13年ないし平成16年当時の製造条件に復帰する可能性は否定されないから,差止請求も理由がある。 () 被告は,原告サンプルに筋状の疵があり,それは,MKM社にvii, , おけるスリット工程において 表面状態が変化したためであるから原告サンプルの測定値は被告製品の表面粗度Rmaxを表すものではないと主張する。 しかし,被告の主張する疵は,スリット工程で生じるような疵ではなく,圧延工程において生じるヒートストリーク(焼付)及びオイルピットと呼ばれる疵である(甲30ないし甲32 。また,原 )告サンプルのRa値は,原告サンプル出荷時のRa値と変わっておらず,表面状態に変化もなかった(甲23,甲33 。また,被告 )は,乙40号証を提出し,スリット工程の前後でRmax値が0., ., 04μm増大した旨を主張するものの 0 04μmという相違はコイル上の測定位置が違うだけで生じ得るレベルの相違にすぎず,乙40号証によってもスリット行為による変化であると認めることはできない。 よって,被告の主張は理由がない。 ?A被告の反論被告製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの範囲に属しない。 ( ) 被告製品の表面粗度Rmaxは,乙24号証及び乙29号証の各i報告書に記載された測定結果により,被告サンプルの28コイルの平均値0.54μmである。この測定値は,第三者である埼玉県産業技術総合センターによる測定値(乙37,乙38)とほぼ一致しており,信頼できる。また,コイル間の表面粗度Rmaxに基づく標準偏差は0.051μmである。 正規分布表を用いて,これらの平均値と標準偏差からコイルの表面粗度Rmaxが0.7μmを超える確率を計算すると0.1%に満たない。この数字は,統計計算上の数値であって,社会通念上,このような低い確率は起こり得ないものとして扱うべきものである。 したがって,いかなるコイルにおいても,被告製品の表面粗度Rmaxが0.7μm以上になることはない。 これに対して,引受参加人は,被告サンプルが無作為に抽出した, 。, ものではなく 意図的に選択されたものであると主張する しかし引受参加人は,被告サンプルの測定に基づいて被告製品の表面粗度Rmaxの標準偏差を0.051μmであると論じており,作為的に選択されたデータに基づいて被告の製造工程の性質によるばらつきを論じることは無意味であることからすれば,引受参加人も,本能的に,被告サンプルの測定値が無作為抽出したサンプルに基づいていることを認めているといえる。 ( ) 原告サンプルは,最初は,被告から出荷されたものではあるもiiのの,被告製品とは異なる表面粗度Rmaxを有しており,統計学的には,被告が測定結果を提示した被告サンプルとは異なる母集団に属している。 その原因として,原告サンプルは,MKM社が広幅の箔を触媒担体を製造するのに適した幅にスリットしたものであり,箔が滑らないようにロールによってかなり強い力で箔を押さえることが必要なスリット工程や反り矯正工程において表面粗度Rmaxが変化したものと考えられる。被告が,MKM社に依頼して,スリットの前と後に採取したサンプルを送付してもらって,表面粗度Rmaxを測定した結果,スリット工程のみでも,表面粗度Rmaxが0.04μm程度大きくなることが判明した(乙40 。)したがって,原告サンプルに基づく測定結果は,被告製品の表面粗度Rmaxを測定したものとは評価できない。 ( ) 仮に,被告から出荷された後の表面粗度の変化を無視して,原iii,(,), 告サンプルの表面粗度Rmaxを考えると 原告 甲26 甲27被告(乙32 ,第三者機関(乙37,乙38)によって独立に得 )られた値が一致する0.69μmが原告サンプルの表面粗度Rmaxの平均値である。したがって,原告サンプルは,表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmの範囲にないから,本件特許権を侵害しない。 これに対して,引受参加人は,この原告サンプルと前記標準偏差に基づいて,被告製品の42%が本件特許権を侵害していると主張する。しかし,この主張は,二つの前提において誤っている。第1に 「原告サンプルは,被告が出荷したときと同じ表面粗度Rma ,xを維持している」という前提が誤りであることは,上記( )のとiiおりである。第2に 「原告サンプルの表面粗度Rmaxを測定し ,て得られた『平均値』は,被告製品全体の表面粗度Rmaxの平均」,。,, 値である という前提も 誤りである すなわち 原告サンプルはもともと,1個のコイルから得られており,被告製品全体という母集団を考えたときには,たった1個のサンプルにすぎない。原告サンプルのいろいろな場所からサンプルを切り出しても,被告製品全体という母集団の表面粗度Rmaxを推定するという目的のためには,1データとしての意味しかない。したがって,原告サンプルに関する測定結果に基づいて被告製品全体を論ずることは,原理的に不可能である。 なお,引受参加人は,原告サンプルと被告サンプルの間に製造条件の変更があったことを前提として,被告サンプルが製造される前の平成16年9月以前の被告製品に関する限り,約42%の割合で本件特許権を侵害している旨主張する。 しかし,少なくとも原告サンプルが製造された平成13年7月以降,被告製品の表面粗度Rmaxに影響を与えるような製造条件の変更はない。 ( ) 引受参加人は,カルソニック材の測定結果も,被告製品の表面iv粗度Rmaxの認定の資料となると主張する。しかし,原告が入手したカルソニック材は,厚さ30μmの製品であり,この厚さ30μmの製品については,顧客であるカルソニックの要望によって,最終仕上圧延の直前に例外的に中間焼鈍(圧延加工によって表面が硬化したものを熱処理して硬化を除去する工程)が行われている。 その結果,表面が軟化して,通常よりも大きい表面粗度Rmaxとなったものと考えられる(乙42 。したがって,カルソニック材 )の測定結果は,被告製品の表面粗度Rmaxを認定する資料とはならない。 ( ) 引受参加人は 「あるコイルの全長にわたって,Rmaxが0.v ,7〜2.0μmの範囲に属することを要するものではない 」と主。 。,, , 張する しかし 抽象的には そのような議論が成り立つとしてもその立証のためには あるコイルの中から明確に区分された領域 本 , (件特許発明の趣旨から考えて,少なくとも1個の触媒担体を製造するに足りる大きさ,例えば,小さくても,数cm×10数m程度の領域)を取り出して,その領域における表面粗度Rmaxの母平均を推定するのに十分な数(たとえば,少なくとも1000個程度)の測定を行って,その値が0.7μmを超えていることを示す必要。, 。 がある しかし 引受参加人はこのような立証を何も行っていないなお,どのくらいの数の測定を行うべきかは,母集団の標準偏差, 。 を用いれば 得られる平均値の精度と信頼性の観点から決定できる例えば,標準偏差0.15μmの母集団からN個のデータを測定して平均値を求める場合,0.005μmの精度で95%の信頼が必要であれば 〔1.96×0.15/√N≦0.005〕から,N ,≧3457となる。式の最初の係数である1.96は,95%の信頼性に対する係数である。この係数は,正規分布表から求めることができ,70%の信頼性でよければ,1.04になり,必要なデータ数Nは,973個になる。 ウ争点1-3(被告製品は,構成要件Dを充足するか )について 。 )引受参加人の主張a構成要件Cを充足する箔であれば 「粗面」を有することは明らかで ,あり,被告製品は,構成要件Dを充足する。 )被告の反論b「粗面仕上」が何と比較して「粗面仕上」なのかが分からないため,「粗面仕上金属箔」の意味が不明であり,被告製品が「粗面仕上金属箔」に該当するか否かは知らない。 ( ) 争点2(先使用権の抗弁の成否)について2ア被告の主張被告は,原告による本件特許発明を知らないで,自ら,その従業員であるA,B(乙45)の発明に基づいてR20-5SRという名称の金属箔(以下「被告旧製品」という )を商品として販売することにより,本件 。 特許出願の際,現に本件特許発明の実施である事業を実施していた。そして,本件特許発明との対比において,当時の被告旧製品と現在の被告製品(JFE20-5USR)を区別する理由はなく,被告製品の製造・販売の事業は,被告旧製品の製造・販売の事業と継続性があり,同じ事業の目的の範囲に属する。 よって,被告は,被告製品(JFE20-5USR)を製造・販売することについて,先使用権を有する。 )被告は,本件特許出願の日である平成元年6月17日より前に被告旧a製品を製造・販売する事業を行っていた(乙13,乙25 。))被告旧製品の表面は#120ロールで仕上げられており,Rmaxはb約1μmであった(乙2,乙14,乙26 。)これは,ろう付け構造を有する自動車の排ガス用触媒担体の開発をリードしてきたエミテック社が自動車の排ガス用触媒担体に用いていたステンレス箔の表面粗度Rmaxが1μm程度であったこと(乙12)とも合致する。 また,構成要件Cの充足についての引受参加人の主張によれば,被告旧製品の少なくとも一部は,本件特許出願当時から表面粗度Rmaxが0.7μm以上であったと認めざるを得ないはずである。 )被告旧製品のカタログ(乙13)には,その用途として「触媒コンバcータ用メタルハニカム」と記載されており,この「触媒コンバータ用メタルハニカム」にはろう付け構造を有するものも含まれる。 現に,被告は,昭和62年(1987年)には,エミテック社及びベーア(Behr)社に対し,それぞれ被告旧製品の10キログラムのサンプルを,臼井国際産業株式会社(以下「臼井国際産業」という )に。 , 。, 対し 被告旧製品の箔100キログラムを各納入した エミテック社は本件特許出願日である平成元年6月17日に先立って,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体の第3世代と呼ばれるS型担体を昭和61年に開発し,昭和62年以降その製品が順次各自動車メーカーに採用されていったものである。被告とエミテック社との商談が成立したのが本件特許発明の出願後であったとしても,被告による営業活動はそれ以前から開始されていたのであるから,被告は,特許法79条の「事業をしている者」に該当する。ベーア社も,本件特許出願前には,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体を開発していたもので,臼井国際産業は,ベーア社と提携していた。 そして,臼井国際産業は,本件特許出願前には,被告が供給した被告旧製品を用いて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体を製造し,出荷していた。 )本件特許出願前に製造されていた被告旧製品(R20-5SR)と,d本件訴訟の対象である被告製品(JFE20-5USR)とは,微量成分の含有量と表面粗度Rmaxの2点で相違があるものの,先使用権の範囲内にある。 まず,微量成分の含有量の相違については,耐酸化性の向上を目的とするものであり,本件特許発明の本質とは無関係であるから,これによって先使用権が失われるものではない。 また,表面粗度Rmaxの相違については,阪神大震災による被災がきっかけとなった変更の結果であって,本件特許発明とは無関係の理由によるものであるし,#120番の研磨仕上げを行った圧延ロールによる圧延から#220番の研磨仕上げを行った圧延ロールに切り替えたのであるから,本件特許発明の作用効果を減少させる方向の変更であり,被告製品は,被告旧製品に基づく先使用権の範囲内にある。 イ引受参加人の反論被告は,被告製品(JFE20-5USR)を製造・販売することについて,先使用権を有しない。 )被告旧製品のRmaxが0.7〜2.0μmであったことの証明がなaい。 被告旧製品は,昭和63年9月1日から日産自動車株式会社のセフィーロ(以下「日産セフィーロ」という )に搭載されたメタル担体に採 。 (), , 用されており 乙1自動車メーカーが新たに採用する部品について材料メーカーにおける製造技術が確定していることを要求することからすれば,被告旧製品の仕様や技術標準は,同日より少なくとも数ヶ月前には確定していたはずである。にもかかわらず,被告からは,日産セフィーロ向けの製品の記録は提出されておらず,日産セフィーロ向けの被, 。 告旧製品は 本件特許発明の構成とは異なるものであったと推測される乙2号証は,昭和63年9月1日より9か月後の平成元年6月5日付けの社内資料であるから,日産セフィーロ向けの被告旧製品についての仕様であるとは考えられず,平成元年6月当時,新たに開発されていた何らかの新製品向けであると考えるのが自然である。対象が「R205」,「」 , SR*BA としてR205SR に付加記号が付されていること特に「#120ロール仕上げ」と記載されていること,メタル触媒担体に使用されない150μmの箔が検討されていることも,このような解釈を支持するものである。また,乙2号証は,表1があるのに表2がないこと,添付チャートは切り貼りされたもので,報告書との関係も不明であることなど,体裁に不自然な点があり,信頼性にもかける。 乙14号証の「技術標準」と題する書面(以下「乙14の技術標準」という )は,そこに記載された最新の日付が本件特許の出願後の平成 。 元年7月13日であるから,その記載内容によって,本件特許出願前の事実を証明することはできない。乙14の技術標準の表紙の変更履歴の記載と圧延条件の内容が正確に対応していると認める根拠もないから,あるいは,ロール番手の変更も制改?bRのパススケジュールの変更に含まれていた可能性もあるし,変更の都度,圧延条件の内容が記載された2枚目を変更後の内容が記載された新しい用紙に差し替えていたというのであるから,表紙と2枚目とが正しく対応しているかも疑問である。 そもそも,乙14の技術標準は,被告旧製品が日産セフィーロに搭載されたメタル担体に採用された後に制定されたものであり,制改?bRの欄にだけ「操業」という捺印欄が設けられていることなどを考慮すると,平成元年7月14日以後に初めて操業された製品に関するものであると考えられる。このように,同じ「R20-5SR」という名称を有していても,単一の製品を意味するものではないから,臼井国際産業に提供された特定の被告旧製品について表面粗度の立証を要するというべきである。 そもそも,#120というロール番手のみから,箔の表面粗度が一義的に定まるものではない。#120などの番手の数値は,ロールの仕上げ研磨に使用する際の砥石の番手を意味するものの,同じ番手の砥石を使用しても,研磨スピード(研磨回転数)などの研磨のやり方,圧延の際のパススケジュールなどによって圧延された板あるいは箔の表面粗さは変動する。乙28号証には,金属箔の表面粗度に,圧延時の潤滑条件が大きく影響することが記載されている。 さらに,被告が日産セフィーロ向けの金属箔を開発していた当時の被告の研究者による研究報告(甲18 ,平成6年の各鉄鋼メーカーの圧 )延条件などに関するアンケート結果の報告(甲19 ,被告によるステ )ンレス箔の開発・販売についての新聞記事(甲25の1,甲25の2)によれば,本件特許出願前において被告が製造していた被告旧製品については,#120よりも番手の大きな(平滑性の高い)ロールにより仕上げられていた可能性が高い。 )ろう付け触媒担体の事業としての実施又は準備がなされたことの証明bがない。 被告旧製品のカタログ(乙13,乙25)には,ろう付け触媒担体に使用される旨の記載はない。 乙15号証において,エミテック社及びベーア社へ納入したのは「サンプル」であり,メタル担体に使用されたか否かさえ定かでない。臼井国際産業についても 「試作」であると明記されているし,同社に納入 ,されたものが被告旧製品であったかどうかも明らかではない。納入された100キログラムでは,ろう付け触媒担体を100個程度しか作ることができないから,研究開発用のものであったと理解するのが合理的である。引受参加人が知る限り,本件特許出願前に,臼井国際産業がろう付け法による触媒担体の事業を開始したという事実はない。平成2年4月発行のステンレス製触媒担体に関する調査報告である甲20号証によれば,平成2年に至っても,臼井国際産業がなおメタルハニカムの開発段階にあり,事業のレベルに達していなかったことが確認できる。臼井国際産業が,本件特許の出願前にろう付け法によるメタル担体を製造した事実があり,それをユーザーに納入したことがあるとしても,それは開発行為としての試作品の製造であり,ユーザーでの評価のための提供であったことは明らかである。臼井国際産業に対する調査嘱託の回答によっても,臼井国際産業による,本件特許出願前の被告旧製品を使用したろう付け担体の製造は,1日当たり2〜3個の製造により,複数の自動車メーカーにサンプル提供をしていたものであり,開発段階に止まっていたことが明白である。本件特許出願前におけるサンプル提供が後の商品化に関係したと見られるC社の場合についても,サンプルの納入数からすれば,商品化への可能性が具体化したのは平成元年11月以降のことと考えられる。 以上によれば,臼井国際産業自身について,本件特許発明に対する先使用権が成立するとはいえないし,臼井国際産業に先使用権が成立しない(事業の準備に至っていたとは認められない)のであれば,臼井国際産業の先使用権に依存する被告の先使用権の主張も成り立たない。臼井国際産業自身において,メタル担体が製品として販売可能な状態に到達したことが確認されていないのであるから,被告としても被告製ステンレス箔がろう付け法メタル担体に使用可能か否かが未確認の状態にあったのである。 なお,臼井国際産業に対する調査嘱託の回答については,臼井国際産業自身が,本件特許権の請求項2を侵害した可能性があり,先使用権を主張することに固有の利益を受ける立場にあるということを考慮する必要がある。 )なお,被告旧製品が,被告製品とはチタンに代えてジルコニウムを含c有する点で異なるとの相違点については,引受参加人は特に問題としない。 ( ) 争点3(本件特許は無効とされるべきものか )について3 。 ア争点3-1(記載不備)について)被告の主張a本件明細書には記載不備があるから,本件特許は,平成2年法律第30号による改正前の特許法36条3項及び同4項2号の規定に違反し,同法123条1項3号の規定により無効とされるべきものである。 ?@本件明細書の記載では,構成要件Cの表面粗度Rmaxの基準長さをいくらにするかが不明確である。 ?A本件明細書の記載では,構成要件Cの表面粗度Rmaxの充足の有無を判断するにあたり,どの程度の個数のデータをとって平均すればよいかが不明確である。 ?B本件明細書の記載では,本件公報の第2図のAないしDのぬれ性のランクの定義が明らかでなく,本件公報の第2図の結果を追試することができない。 )引受参加人の反論b本件特許は,記載不備の無効理由を有しない。 ?@技術常識に従い,本件明細書の全体を正しく理解すれば,本件特許発明における表面粗度Rmaxは基準長さを0.8mmとして測定すべきことが明らかであり,明確性に欠けるところはない。 ?A70年JISのとおり,表面粗度Rmaxについては,効果的に母平均を推定できるように測定位置と個数を定める。どの程度の個数の測定を行えば,測定結果がほぼ一定してくるかは,サンプルの状態によるので,実験事項であるものの,Rmaxの測定は迅速に行い得るので,特段の困難性はない。 ?Bぬれ性の判断は,外観によるものであるから,定量的な基準は示しにくいものの,よく濡れたか,バインダー液がはじかれて濡れなかったかという評価は,特に基準が示されなくても,当業者において可能である。 イ争点3-2(新規性の欠如)について)被告の主張a本件特許発明は,本件特許出願前に公然実施された発明である被告旧製品と同一であるから,本件特許は,特許法29条1項2号の規定に違, 。 反し 同法123条1項2号の規定により無効とされるべきものであるすなわち,被告は,本件特許の出願前に,臼井国際産業に対し被告旧製品を販売しており,臼井国際産業は,被告から供給された被告旧製品を用いて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体を製造して,その顧客複数に販売した。被告,臼井国際産業,臼井国際産業の顧客との間には,守秘義務はなく,また,被告旧製品の表面粗度Rmaxは約1μm程度であった。 )引受参加人の反論b本件特許は,新規性欠如の無効理由を有しない。 被告旧製品の表面粗度Rmaxが約1μm程度であることは,先使用権の抗弁の成否において述べたとおり,立証されていない。 ウ争点3-3(進歩性の欠如)について)被告の主張a本件特許発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である第117回塑性加工シンポジウム(乙3。以下「乙3文献」という )又は日経 。 ニューマテリアル1988年11月28日号(乙1。以下「乙1文献」という )に記載の発明に基づき容易に想到することができるから,本 。 件特許は,特許法29条2項の規定に違反し,同法123条1項2号の規定により無効とされるべきものである。 ?@乙3文献には 「自動車の排ガス触媒担体に用いられる耐熱性ステ ,ンレス鋼製の金属箔において,表面粗度Rmaxが0.15〜5μmである金属箔」という発明(以下「乙3発明」という )が開示され 。 ている。 本件特許発明と乙3発明とは,本件特許発明においては,自動車の排ガス触媒担体が「ろう付け構造を有する」と特定されている点(相違点1)及び本件特許発明においては,表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmと限定されている点(相違点2)において,相違する。 しかし,乙1文献に「ろう付けによる製法に関して様々な特許が出願されているため,スポット溶接を採用した」などと記載されているとおり,乙3文献が頒布された当時,自動車の排ガス触媒担体がろう付け構造を有することは当然のことであり,相違点1は,乙3文献に記載が省略されているにすぎない。また,相違点2についても,乙4号証及び乙6号証に記載のとおり,ろう付けを行う際に,表面粗度が粗い方がバインダーのぬれ性がよいことは,当業者に周知であったから,公知の表面粗度Rmaxの範囲から,その範囲の中央付近の範囲を単に切り出して規定したにすぎず,格別の意義を有しない。 ?A乙1文献には 「スポット溶接構造を有する自動車の排ガス触媒担 ,体に用いられる耐熱性ステンレス鋼製の金属箔において,表面粗度Rmaxが約1μmである金属箔」という発明(以下「乙1発明」という )が開示されている。なお,乙1文献には,被告旧製品の表面粗 。 度Rmaxが記載されていないものの,被告旧製品は一般に販売されていて入手可能な材料であり,その商品名によって物が一義的に特定できたものである。 本件特許発明と乙1発明とは,本件特許発明は「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる」ものであるのに対し,乙1発明は「スポット溶接構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる」ものである点において,相違する。 しかし,本件明細書には,物として具体的にいかなる構成を備えた場合に 「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられ ,る」という構成要件が充足されるのかを明らかにした記載はなく,出願時の当業者の技術常識に基づいても 「ろう付け構造を有する自動 ,車排ガス触媒担体に用いられる」金属箔と 「ろう付け構造以外の構 ,造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる」金属箔とを形状,構造,組成等の観点から区別することは不可能であるから,特許請求の範囲の記載中 「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に ,用いられる」との部分は,物を特定するための意味を有していないと判断される。よって,本件特許発明は,乙1発明と実質的に同一である。 )引受参加人の反論b本件特許は,進歩性欠如の無効理由を有しない。 ?@被告が引用する文献のいずれにも,??)ろう付け構造を有する金属ハニカムの欠点である平板と波板のろう接合性を改善し,急速な加熱冷却にも耐える耐熱疲労性を有する金属ハニカムにするという本件特許発明の課題,??)ろう材を固着させるバインダーのぬれ性を向上すると,ろう材の固着性が向上し,ろう付け熱処理後のろう付け性がきわめて良好になるという本件特許発明特有の着想,??)ハニカムを構成する金属箔の表面粗度を0.7〜2.0μmと粗く粗面仕上げすることにより,ろう材を固着させるバインダーのぬれ性が向上するという解決手段は,全く開示も示唆もされていない。 ?A本件特許発明における「耐熱性ステンレス鋼」はFe-Cr-Al系の材料を意味するものであるから,乙3文献において,被告が指摘する図8は,本件特許発明における「耐熱性ステンレス鋼」についてのものではなく,乙3文献に 「自動車の排ガス触媒担体に用いられ ,, ,. る 耐熱性ステンレス鋼製の金属箔において 表面粗度Rmaxが015〜5μmの範囲のいずれかである金属箔」が開示されているとの被告の主張は誤りである。また,乙1文献は,ろう付け法が実用性に乏しいとの否定的評価が記載されているものであるし,乙3文献と乙1文献とを組み合わせても,表面粗度を特定の粗さにすることがハニカムのズレ防止をもたらすとの知見は得られず,本件特許発明に到達できるものではない。さらに,本件特許発明の当時,ステンレス箔の表面粗度を,本件特許発明のように粗く仕上げることは,決して普通に行われることではなかった。 ?B乙1文献には,被告旧製品の表面粗度Rmaxの記載はなく,これを被告の社内資料にすぎない乙2号証によって補うことはできない,, , し 乙2号証には 先使用権の抗弁の成否において述べた問題があり信用できない。また 「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担 ,体に用いられる」との構成要件を無視するような解釈に根拠はない。 ( ) 争点4(損害額及び不当利得額)について4ア引受参加人の主張)被告は,遅くとも本件特許の登録日である平成10年12月4日までa, (「」。) に 別紙物件目録記載の粗面仕上金属箔 以下 本件被告製品 というの製造・販売を開始し,本件訴訟提起時に至るまで,本件被告製品を販売してきた。 本件被告製品の1年間における売上高は少なくとも20億円である。 )本件被告製品の利益率は20%を超えるから,本件被告製品の販売にbより被告の得る利益は,年4億円を下らない。 よって,引受参加人は,特許法102条2項に基づき,本件訴訟提起の日から3年前までの販売に係る損害として,被告の得た利益12億円を請求する。 (算式)被告の年間利益4億円×3年=12億円)本件特許の実施料率は,3%が相当である。 cよって,引受参加人は,被告の不当利得として,本件特許の設定登録日である平成10年12月4日から本件訴訟提起の日より3年前の平成15年3月31日までの4年4か月分の実施料相当額2億6000万円を請求する。 (算式)年間売上額20億円×実施料率3%×4年4か月=2億6000万円イ被告の反論争う。 第3当裁判所の判断本件においては,事案の内容に鑑み,まず,争点1-2(被告製品は,構成要件Cを充足するか )から判断する。 。 1争点1-2-1(構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定には,いかなる基準長さを用いるべきか )について。 ( ) 構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxについて,本件明細書の〔課題1を解決するための手段〕欄に 「本発明は金属ハニカムを構成する金属箔を ,粗面仕上げに調製したものを用いることを特徴としており,JIS(B0601-1970)に規格化されている表面粗度(Rmax)は0.7〜2.0μm,好ましくは1.0〜1.5μmである 」と記載されており(甲2 。 ・4欄11行〜14行 ,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの測定 )については,70年JISに従うことが明記されていること,また,70年JISにおいては,表面粗度Rmaxは,その表面から多数の断面曲線を求め,これらの断面曲線において測定した最大高さRmaxの平均値で表すと,, , されていること 及び 断面曲線において最大高さRmaxを測定する際に断面曲線から抜き取る一定の長さを基準長さといい,この基準長さについては,原則として,0.25mm及び0.8mmを含む6種類の長さから指定するものとされていること,並びに,基準長さを特に指定する必要がない限り用いる基準長さの標準値として,Rmaxが0.8μm以下においては基準長さ0.25mm,Rmaxが0.8μmを超え6.3μm以下においては基準長さ0.8mmと定められていることについては,前記第2の1( )5で述べたとおりである。そして,本件明細書には,構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの測定に用いるべき基準長さは特に指定されておらず,単に特許請求の範囲(請求項1)において「表面粗度Rmax0.7〜2.0μmである」と規定されているのみであるから(甲2 ,構成要件Cにおける表 )面粗度Rmaxの属否の判定に用いるべき基準長さは,70年JISの基準長さの標準値によるべきである。したがって,構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの下限の「0.7μm」以上であるか否かの判別においては,0.25mmを基準長さと解すべきであり,また,上限の「2.0μm」以下か否かの判別においては,0.8mmを基準長さと解すべきである。 もっとも,このように解しても,70年JISの基準長さの標準値に従って0.25の基準長さにより,構成要件Cの下限の「表面粗度Rmammx0.7μm」以上であるか否かの判別をした結果,表面粗度Rmaxの数値が0.8μm以下となる場合であっても,同時に,これを0.8のmm基準長さによって測定すれば,同基準長さの測定による測定値の方がより大きくなる傾向があるため,同じ物について0.8μmを超える測定値となることがないわけではない(基準長さ0.25の測定値が基準長さ0.mm8の測定値の80%前後になる傾向があることについては,原告,被 mm告とも格別争わないところである。このように,70年JISの測定方 。)法によれば,表面粗度Rmaxが0.8μm近傍のものについては,同じ物について基準長さとして0.25と0.8のいずれを用いるかにmmmmより2種類の測定値が生じ,かつ,いずれの測定値と基準長さも,70年JISの標準値に適合する可能性があることは否定できないところである。しかし,特許発明の技術的範囲は明確に定められるべきであり,同じ物が技術的範囲に属したり,属しなかったりするような解釈は取り得ないこと,並び,()(「」。) に JIS B0601-1982以下82年JISという 乙8の3.4.4.においては,表面粗度Rmaxの表示において,上限と下限の数値に対応する基準長さが異なる場合で,標準値以外の基準長さを用いる場合には,基準長さを併記し,これを併記しない場合には,上限値の判別には上限値に対応する基準長さの標準値で,下限値の判別には下限値に対応する基準長さの標準値で,それぞれ測定することが明記されており,70年JISから82年JISに至る二度の改正において,技術的な内容の変更がなかったこと(甲28・4及び5( ))を考慮すれば,構成要件Cの「表面粗1度Rmaxが0.7〜2.0μmである」との要件の解釈としては,70年JISの基準長さの標準値により表面粗度Rmaxを測定すべきものであり,かつ,下限値の「表面粗度Rmaxが0.7μm」以上かどうかの判別は,その下限値「0.7μm」に対応する70年JISの基準長さの標準値(0.25)によるべきであり,また,上限値「2.0μm」以下かどmm, (. うかの判別は その上限値に対応する70年JISの基準長さの標準値 08)によるべきであると解すべきである。すなわち,構成要件Cの表面mm粗度Rmaxは別表Bの「JIS」と記載された範囲と解すべきであり,上記の例において,下限値「0.7μm」以上かどうかの判別において,70年JISの基準長さの標準値に従って,下限値に対応する基準長さ0.25により表面粗度Rmaxを測定し 「0.7μm」未満であれば,構成mm ,要件Cの「表面粗度Rmaxが0.7〜2.0μmである」との要件を充足しないことになるから,これについて改めて上限値「2.0μm」以下かどうかを測定し直す必要はないのであるし,仮に,下限値に対応する基準長さ0.25mmにより表面粗度Rmaxを測定し 「0.7μm」以上であれ ,ば,これについて改めて上限値「2.0μm」以下かどうかを上限値に対応する基準長さ0.8mmで測定し,上限値「2.0μm」以下を満たしており,構成要件Cを充足しているかどうかを判別することになると解すべきである。 また,このような解釈は,次に述べるとおり,本件特許発明において,下限の0.7μmが重要な意義を持つものであることからも,実質的に妥当な結果を導くものであると解される。 すなわち,構成要件Cにおいて,表面粗度Rmaxを0.7〜2.0μm,〔〕,「, と規定したことについて 本件明細書の 作用 欄には本発明において箔の表面粗度の下限をRmax0.7μm,上限をRmax2.0μmと定めたのは,ステンレス鋼箔へバインダーを塗布し,ぬれ性に及ぼす表面粗度,.. の影響を検討した結果を第2図に示すごとく 表面粗度Rmax0 2〜06μmではぬれ性が著しく劣るのに対して,Rmax0.7μm以上では,ぬれ性ランクが2〜3ランク向上し良好となる。またRmax2.0μmを超えても,ぬれ性は良好であるがそれほど変化はなく,箔の最適な表面粗度としては,Rmax0.7〜2.0μm,好ましくは1.0〜1.5μmである 」と記載されており(甲2・4欄42行〜5欄1行 ,本件公報の第 。 )2図には,この記載に沿う結果がグラフとして図示されている。本件明細書のこのような記載及び図示によれば,構成要件Cにおいて,表面粗度Rmaxを一定の数値範囲に限定した意義は,下限の0.7μmにおいて大きく,下限における表面粗度Rmaxの属否の判定こそが重要な意味を持つものと認められる。したがって,この点からも,表面粗度Rmaxが下限の0.7μm以上かどうかの判定には,70年JISの基準長さの標準値である0.25mmを用いるべきである。 ( ) これに対し,引受参加人は,本件特許発明における基準長さは単一の基準2長さを用いるべきであり,構成要件Cに規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmはその大部分が基準長さを0.8mmとする区分(0.8μmを超え6.3μm以下の区分)と重なっているし,本件特許出願当時の鉄鋼業. 。 界では基準長さ0 8mmを用いるのが技術常識化していたなどと主張するしかし,前記のとおり,82年JISの3.4.4.においては,表面粗度Rmaxの表示において,上限と下限の数値に対応する基準長さが異なる場合で,上記標準値以外の基準長さを用いる場合には,基準長さを併記し,これを併記しない場合には,上限と下限の数値に対応する基準長さの標準値(異なる基準長さ)を用いることが具体的に記載されていること,及び,70年JISから82年JISに至る二度の改正において,技術的な内容の変更がなかったことからすれば,70年JISによる場合においても,基準長さの標準値の区分が複数にまたがるような数値範囲の表面粗度Rmaxの測定にあたって,単一の基準長さを用いなければならないわけではないと考えられる。 また,本件公報の第2図を見ても,表面粗度Rmaxの数値とぬれ性ランクとの関係は,表面粗度Rmaxの値が0.2μmから2.8μmまでの間,,., で9点測定されているにすぎず そのうち 表面粗度Rmaxが0 2μm0.4μm,0.6μm,0.7μmの4点は,いずれも基準長さの標準値が0.25mmとされているものであり,また,既に述べたとおり,構成要件Cにおいて臨界的意義を有するのは表面粗度Rmax0.7μmの下限であり,表面粗度Rmaxが0.7μm以上であるか否かの判別こそが重要であるから,構成要件Cに規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの大部分が基準長さを0.8mmとする区分(0.8μmを超え6.3μm以下の区分)に属していることは,表面粗度Rmaxが0.7μmであるか否かの判別を70年JISの定める基準長さの標準値と異なる基準長さで行うことの理由となるものではない。 さらに,引受参加人指摘の甲11号証及び甲29号証の各公開特許公報や乙2号証の報告書は,いずれも,当該測定の際に,基準長さとして0.8m,,. mを用いたことを明らかにするにすぎず これらを総合しても 基準長さ08mmを用いることが技術常識といえるほどに一般化していたとまで認めるに足りるものではないし,本件に顕れたその余の証拠を精査検討しても,本件特許出願当時の鉄鋼業界において,基準長さを0.8mmとすることが技術常識化していたことを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない。本件明細書には,表面粗度Rmaxの測定については70年JISに従うことが明記されているから,本件明細書に接した当業者は,本件明細書に基準長さの指定がない以上,70年JISの定める基準長さの標準値に従って,表面粗度Rmaxの測定を行うものと理解すると考えるのが素直な解釈というべきであり,これに反する技術常識が存在すると主張するのであれば,本件明細書に接した当業者において,70年JISの定める基準長さの標準値にもかかわらず,基準長さを0.8mmとして構成要件Cの表面粗度Rmaxの範囲が規定されたものと明確に理解できたといえる程度に,そのような技術常識の存在を立証することが必要である。しかし,そのような立証はなされていない。 以上のとおりであるから,結局,構成要件Cにおける表面粗度Rmaxの属否の判定に用いるべき基準長さを0.8mmとすべき旨をいう引受参加人の主張は,採用できない。 2争点1-2-2(被告製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの範囲に属しているといえるか )について 。 ( ) 該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記第2の1で認1定した事実のほか,以下の事実を認めることができる。 ア原告サンプルの表面粗度Rmaxを,圧延方向に対し垂直の方向(C方向)に,基準長さ0.25mmで測定した結果は,以下のとおりである。 )平成15年1月23日付け財団法人機械振興協会技術研究所 以下 機a (「械振興協会」という )による測定結果(甲9,甲8,甲21) 。 原告サンプルのうちの1本のコイル(一つのコイルから5条取りされたと推定されるもの。以下「原告サンプルA」という )の先頭部分か 。 ら切り出した分析用試料1枚について,表面,裏面につき,測定方向に沿って,それぞれ5箇所(記号1ないし5)の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,各測定箇所においては,基準長さの約5倍の測定長さを基準長さに分割し,5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,原告サンプルAの表裏各面につきそれぞれ25区間の測定を行った。 表面平均0.71μm(小数点第3位を四捨五入)裏面平均0.70μm(小数点第3位を四捨五入), , . 各測定箇所の測定結果については 別紙1記載のとおりであり 07μm以上のものと0.7μm未満のものとが混在している。 )平成19年1月11日付け機械振興協会による測定結果(甲27,甲b26,甲14)原告サンプルAから切り出した分析用試料12枚(記号1-1,2-1等)について,表面,裏面につき,測定方向に沿って,それぞれ5箇所(記号1-1-1,2-1-1等)の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,12枚の分析用試料は,コイルの先頭から約100mの位置で1枚,コイルの末尾から約100mの位置で1枚,先頭部分と末尾部分を除く部位を約200m間隔で切断し10分割した中,。, 間部分から各1枚合計10枚を分割したものから 採取した そのうち実際に測定したのは,別紙2のとおりである。また,各測定箇所においては,基準長さの約5倍の測定長さを基準長さに分割し,5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,原告サンプルAの表裏各面につきそれぞれ300区間(5×5×12枚)の測定を行った。 表面平均0.69μm(小数点第3位を四捨五入)裏面平均0.69μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙2記載のとおりであり,その一部において0.7μm以上のものもあれば,0.6μm以下のものも含まれている。 )平成19年3月1日付け被告による測定結果(乙32,乙31,乙2c4)原告から被告に送られてきた原告サンプルから切り出した5枚の分析用試料(記号102ないし105,10X)それぞれについて,端部から長手方向に約1mの位置で測定方向に沿って それぞれ5枚の試料 記 ,(号AないしE)を採取し,それぞれ表面,裏面の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,5分割されている各原告サンプルの各面につきそれぞれ25区間の測定を行った。 総平均0.69μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙3記載のとおりであり,0.7μm以上のものと,0.7μm未満のものとが混在している。 )平成19年4月19日付け埼玉県産業技術総合センターによる測定結d果(乙37,乙38,乙32)上記 )によって採取された原告サンプルから切り出した分析用試料c15枚(記号102-A,103-A等)について,埼玉県産業技術総合センターにおいて,それぞれ表面,裏面につき,1箇所の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,5分割されている各原告サンプルの各面につきそれぞれ15区間の測定を行った。 総平均0.69μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙4記載のとおりであり,0.7μm以上のものもあるが,0.7μm未満のものが多い。 イカルソニック材の表面粗度Rmaxを,圧延方向に対し垂直の方向(C) ,. ,。 方向 に 基準長さ0 25mmで測定した結果は 以下のとおりである)平成19年4月19日付け機械振興協会による測定結果(甲36)aカルソニック材から切り出した分析用試料3枚(記号9ないし11)について,表面,裏面につき,測定方向に沿って,それぞれ5箇所(記号1ないし5)の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,各カルソニック材の表裏各面につきそれぞれ25区間の測定を行った。 9表面平均0.64μm(小数点第3位を四捨五入)9裏面平均0.71μm(小数点第3位を四捨五入)10表面平均0.66μm(小数点第3位を四捨五入)10裏面平均0.67μm(小数点第3位を四捨五入)11表面平均0.69μm11裏面平均0.73μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙5記載のとおりであり,0.7μm以上のものと,0.7μm未満のものとが混在している。 ウ被告サンプルの表面粗度Rmaxを,圧延方向に垂直の方向(C方向)に,基準長さ0.25mmで測定した結果は,以下のとおりである。 )平成18年8月7日付け被告による測定結果(乙24)a被告サンプルから採取した測定用試料28枚について,表面,裏面に,。 。, つき 1箇所の測定を行った その測定値は以下のとおりである なお各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,28枚の被告サンプルの各面につきそれぞれ5区間の測定を行った。 1表面0.400μm1裏面0.600μm2表面0.400μm2裏面0.650μm3表面0.500μm3裏面0.575μm4表面0.650μm4裏面0.825μm5表面0.525μm5裏面0.700μm6表面0.550μm6裏面0.475μm7表面0.550μm7裏面0.725μm8表面0.650μm8裏面0.575μm9表面0.650μm9裏面0.500μm10表面0.525μm10裏面0.525μm11表面0.675μm11裏面0.850μm12表面0.500μm12裏面0.675μm13表面0.500μm13裏面0.575μm14表面0.475μm14裏面0.600μm15表面0.500μm15裏面0.625μm16表面0.525μm16裏面0.450μm17表面0.475μm17裏面0.425μm18表面0.550μm18裏面0.525μm19表面0.500μm19裏面0.475μm20表面0.975μm20裏面0.575μm21表面0.500μm21裏面0.675μm22表面0.575μm22裏面0.775μm23表面0.600μm23裏面0.475μm24表面0.375μm24裏面0.550μm25表面0.700μm25裏面0.525μm26表面0.625μm26裏面0.600μm27表面0.475μm27裏面0.550μm28表面0.475μm28裏面0.575μm)平成19年1月10日付け被告による測定結果(乙29,乙24)b被告サンプル28枚からそれぞれ4枚の測定用試料(記号1-2,2),,,。 -2等 を採取し それぞれ表面 裏面につき 1箇所の測定を行ったその測定値及びこれと上記)の測定結果とによる平均値は以下のとおaりである。なお,各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,上記 )の測a定結果と合わせると,実際には,28枚の被告サンプルの各面につきそれぞれ25区間の測定を行った。 1表面平均0.50μm(小数点第3位を四捨五入)1裏面平均0.50μm(小数点第3位を四捨五入)2表面平均0.48μm2裏面平均0.50μm(小数点第3位を四捨五入)3表面平均0.47μm3裏面平均0.51μm(小数点第3位を四捨五入)4表面平均0.52μm(小数点第3位を四捨五入)4裏面平均0.63μm(小数点第3位を四捨五入)5表面平均0.63μm(小数点第3位を四捨五入)5裏面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)6表面平均0.44μm(小数点第3位を四捨五入)6裏面平均0.42μm(小数点第3位を四捨五入)7表面平均0.52μm7裏面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)8表面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)8裏面平均0.61μm(小数点第3位を四捨五入)9表面平均0.56μm(小数点第3位を四捨五入)9裏面平均0.52μm(小数点第3位を四捨五入)10表面平均0.58μm(小数点第3位を四捨五入)10裏面平均0.64μm(小数点第3位を四捨五入)11表面平均0.64μm(小数点第3位を四捨五入)11裏面平均0.63μm(小数点第3位を四捨五入)12表面平均0.47μm(小数点第3位を四捨五入)12裏面平均0.54μm(小数点第3位を四捨五入)13表面平均0.55μm(小数点第3位を四捨五入)13裏面平均0.56μm(小数点第3位を四捨五入)14表面平均0.51μm(小数点第3位を四捨五入)14裏面平均0.56μm15表面平均0.48μm15裏面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)16表面平均0.49μm(小数点第3位を四捨五入)16裏面平均0.51μm(小数点第3位を四捨五入)17表面平均0.47μm(小数点第3位を四捨五入)17裏面平均0.49μm(小数点第3位を四捨五入)18表面平均0.58μm(小数点第3位を四捨五入)18裏面平均0.55μm(小数点第3位を四捨五入)19表面平均0.47μm(小数点第3位を四捨五入)19裏面平均0.48μm(小数点第3位を四捨五入)20表面平均0.61μm(小数点第3位を四捨五入)20裏面平均0.58μm(小数点第3位を四捨五入)21表面平均0.52μm(小数点第3位を四捨五入)21裏面平均0.64μm(小数点第3位を四捨五入)22表面平均0.58μm(小数点第3位を四捨五入)22裏面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)23表面平均0.61μm(小数点第3位を四捨五入)23裏面平均0.54μm(小数点第3位を四捨五入)24表面平均0.49μm(小数点第3位を四捨五入)24裏面平均0.54μm(小数点第3位を四捨五入)25表面平均0.56μm(小数点第3位を四捨五入)25裏面平均0.53μm(小数点第3位を四捨五入)26表面平均0.53μm(小数点第3位を四捨五入)26裏面平均0.54μm(小数点第3位を四捨五入)27表面平均0.50μm(小数点第3位を四捨五入)27裏面平均0.52μm28表面平均0.48μm(小数点第3位を四捨五入)28裏面平均0.56μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙6記載のとおりであり,0.7μm以上のものは非常に少ない。 )平成19年3月1日付け被告による測定結果(乙32,乙24)c上記)によって採取された被告サンプルから切り出した測定用試料b7枚(記号13-3,14-3等)について,それぞれ表面,裏面につき,1箇所の測定を行った。その測定値は以下のとおりである。なお,各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,被告サンプルのうち7枚の各面につきそれぞれ5区間の測定を行った。 13-3表面0.46μm13-3裏面0.58μm14-3表面0.58μm14-3裏面0.55μm15-3表面0.52μm15-3裏面0.48μm18-3表面0.58μm18-3裏面0.57μm20-3表面0.47μm20-3裏面0.57μm24-3表面0.54μm24-3裏面0.51μm26-3表面0.43μm26-3裏面0.46μm)平成19年4月19日付け埼玉県産業技術総合センターによる測定結d果(乙37,乙38,乙29)上記)によって採取された被告サンプルから切り出した測定用試料b21枚(記号13-3,14-3等)について,それぞれ表面,裏面に,。 。, つき 1箇所の測定を行った その測定値は以下のとおりである なお各測定箇所においては,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としており,実際には,被告サンプルのうち7枚の各面につきそれぞれ15区間の測定を行った。 13表面平均0.51μm(小数点第3位を四捨五入)13裏面平均0.57μm(小数点第3位を四捨五入)14表面平均0.50μm(小数点第3位を四捨五入)14裏面平均0.62μm(小数点第3位を四捨五入)15表面平均0.51μm(小数点第3位を四捨五入)15裏面平均0.55μm(小数点第3位を四捨五入)18表面平均0.60μm(小数点第3位を四捨五入)18裏面平均0.52μm(小数点第3位を四捨五入)20表面平均0.56μm20裏面平均0.54μm24表面平均0.51μm24裏面平均0.54μm(小数点第3位を四捨五入)26表面平均0.64μm26裏面平均0.58μm(小数点第3位を四捨五入)各測定箇所の測定結果は,別紙7記載のとおりであり,0.7μm以上のものはほとんどない。 ( ) 70年JISにおいては,表面粗度とは,その2.( )備考1.に「一般2 1に機械表面では個々の位置における表面あらさは一様でなく,相当に大きなばらつきを示すのが普通である。したがって,機械表面の表面あらさを求めるには,その母平均が効果的に推定できるように測定位置およびその個数を定める必要がある 」と規定され,表面粗度Rmaxとは,その3.1備考 。 1.に「機械表面の最大高さは,その表面から多数の断面曲線を求め,これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の最大高さの平均値で表わす 」と規。 。,「」, 定されている このように 構成要件Cにおける 表面粗度Rmax とは金属箔コイル表面における多数の測定値の平均値であり,その母平均が効果的に推定できるように測定位置と個数を定める必要がある。したがって,前記( )の測定結果における個々の測定箇所における測定値は,表面粗度Rm1axを求めるための基礎資料にすぎないのであって,構成要件Cの充足の有無の判断は,特定の金属箔コイル製品全体の母平均が効果的に推定できるようにその測定位置と個数を定め,そのようにして定められた表面又は裏面における多数の測定値の平均値によって判断すべきである。また,本件特許発明の「金属箔」は 「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用い ,られる」ものであるから,構成要件Cに規定する表面粗度Rmaxの充足の有無を判断する対象は,必ずしも被告が製造・販売した金属箔コイルの全体に限られず,そのコイルのうち,排ガス触媒担体1個を製造するに足りる範囲(数cm×10数m)の金属箔(以下「担体1個分の面積」という )で。 もよく,この場合,担体1個分の面積の金属箔コイルの母平均を効果的に推定できるようにその測定位置と個数を定める必要がある。 ( ) 原告サンプルについて3前記( )ア )ないし )のとおり,原告サンプル全体の表面粗度Rmaxの1ad平均測定値は,平成15年1月の機械振興協会による測定結果を除いて,いずれも0.69μmである。 , , まず 前記( )ア )の平成15年1月の機械振興協会による平均測定値は1a.. , 表裏各面で0 71μmないし0 70μmという結果を得てはいるものの原告サンプルAの先頭部分から採取した分析試料の表裏各面についてそれぞれ25区間の測定を行ったものにすぎず,同)の平成19年1月の機械振b興協会の測定結果が,同じ原告サンプルAの先頭部分1箇所,中間部分の10箇所及び末尾部分1箇所の表裏各面についてそれぞれ300区間の測定を行った上で,0.69μmという結果を得ていることからすれば,後者の測定結果がより信頼できるというべきであり,前者の測定結果を採用することはできない。 また,原告サンプルAの全長は約2200mである(甲21,甲14 。)前記( )ア)の平成19年1月の機械振興協会による測定は,原告サンプル1bAから,12枚の分析用試料を切り出したものであるものの,12枚の分析用試料は,コイルの先頭から約100mの位置で1枚,コイルの末尾から約100mの位置で1枚,先頭部分と末尾部分を除く部位を約200m間隔で,, 切断し10分割した中間部分から各1枚合計10枚に分割し その分割の際先頭部分では,先頭から50mm間隔で50枚,中間部分では各5枚,末尾部分では各50枚の鋼片を採取し,先頭部分を1-1ないし1-50,中間部分を2-1ないし2-5,3-1ないし3-5・・・11-1ないし11-5,末尾部分を12-1ないし12-50として試料番号を付したものであり,そのうち,実際に測定したのはその一部にすぎない。その詳細は別紙2のとおりであり,各分析用試料1枚の表裏各面につき測定方向に25区間(5区間×5)測定しているものである(甲27,甲26,甲14 。この), ,. ような巨大なコイルについて 触針先端半径2μmの針により 基準長さ025mmで,表裏各面について300区間(25区間×12枚)しか測定していないことからすれば,上記( )ア)の機械振興協会による測定結果でさ1bえ,70年JISの基準に則った測定方法であるか否か,すなわち全長約2200mの原告サンプルAの母平均が効果的に推定できるものであるか否かについては,この結果だけから判断することは困難である。 また,前記( )ア )の被告による測定結果は,原告から送られてきた原告1cサンプルから切り出した5枚の分析用試料(記号102ないし105,10) , X それぞれについて端部から長手方向に約1mの位置で測定方向に沿ってそれぞれ5枚の試料(記号AないしE)を採取し,それぞれの表裏各面について,測定方向に沿って測定した5区間の測定データの平均値をもって,測定値としているにすぎず,この測定結果によっても,全長約2200mの原告サンプルの母平均が効果的に推定できるものかどうかを判断することは困難である。さらに,前記( )ア)の埼玉県産業技術総合センターによる測定1d結果についても,原告から送られてきた原告サンプルから切り出した分析用試料を測定したものであり,各試料の表裏各面について,5区間の測定しか行っていないことからすれば,前同様に,全長約2200mの原告サンプルの母平均が効果的に推定できるものかどうかを,この結果だけから判断することは困難である。 しかし,これらの測定結果は,それぞれ単独では,全長約2200mの原告サンプルの母平均が効果的に推定できる測定箇所のものであるかどうか明らかではないものの,前記( )ア )ないし )の測定平均値がいずれも0.61bd9μmであるということは,原告サンプルから無作為に抽出された試料片に(.) おいて測定された表面粗度Rmax 基準長さを0 25mmとする平均値が小数点第2位まで同じ数値であったことを意味するのであるから,この測定結果を原告サンプルの母平均が効果的に推定できるものとみて,原告サンプルの表面粗度Rmaxが0.69μmであることについては,一応の立証があるものと認めるのが相当である。しかし,これによっても,原告サンプルの表面粗度Rmaxが0.7μm以上であることを認めるに足りる証拠がないことに変わりはない。 なお,原告サンプルについて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる長さの金属箔の担体1個分の面積(数cm×10数m)において,構成要件Cを充足しているかどうかを検討してみても,前記の測定結果のいずれも,このような長さの金属箔を前提として,多数箇所のRmaxの平均値を測定したものではないため,原告サンプルの表面粗度Rmaxが担体1個分の面積で0.7μm以上であることを認めるに足りる証拠がないことに変わりはない(なお,この点の詳細は後記( )のとおりである。 7 。)( ) カルソニック材の表面粗度Rmaxについても,表面粗度Rmaxが0.47μm以上であると認めるに足りる証拠はない。 すなわち,上記( )イ )のとおり,カルソニック材についての機械振興協1a会による測定結果のうち,試料?bXの裏面と試料?bP1の裏面の表面粗度Rmaxについては,0.7μm以上であるという結果を得ているものの,これは,表裏各面についてそれぞれ25区間の測定を行ったものにすぎない。 そして,一つの面について25区間の測定を行ったのみでは,その面についての複数の断面曲線において測定した最大高さの平均値(これが,表面粗度Rmaxである )が未だ安定した値に収束せず,さらに多数の区間の測定 。 を行うことにより,平均値が異なり得ることは,上記( )で述べたとおりで3ある(上記( )ア )の25区間の測定値の平均は0.7μm以上であったも 1aのの,上記( )ア)の同一試料についての300区間の測定値の平均は0. 1b7μm未満であった。。)そうすると,カルソニック材の仕上圧延の直前に中間焼鈍が行われていることによる影響があるとの被告の主張の当否を検討するまでもなく,カルソニック材の表面粗度Rmaxが0.7μm以上であることを認めるに足りる証拠がないといわざるを得ない。 ( ) 被告サンプルの表面粗度Rmaxについても,これが0.7μm以上であ5ると認めることはできない。 すなわち,上記( )ウ )ないし )のとおり,被告サンプルの表面粗度Rm1ad, , axの測定結果は 同 )の平成18年8月の被告による測定結果を除いてa, .。 28コイル分の保管サンプルのすべてにおいて 0 7μmを下回っているまた,同 )の平成18年8月の被告による測定結果のうち,7枚の被告aサンプルの表面又は裏面の表面粗度Rmaxについては,0.7μm以上であるという結果を得ているものの,これは,表裏各面についてそれぞれわずか5区間の測定を行ったものにすぎないから,上記( )で述べたとおり,そ4(, の面についての複数の断面曲線において測定した最大高さの平均値 これが表面粗度Rmaxである )としては未だ信頼するに足りないというべきで 。 ある。現に,同)の平成19年1月の被告による測定結果においては,上b記平成18年8月の測定結果を取り込む形で,同じ7枚の被告サンプルの表面又は裏面についてそれぞれ25区間の測定を行った上で,0.7μmを下回るという結果を得ているから,7枚の被告サンプルの表面又は裏面の表面粗度Rmaxが0.7μm以上であるという上記平成18年8月の測定結果によって,特定の被告サンプルの一つの面の表面粗度Rmaxが0.7μm以上であると認めることはできない。 なお,被告サンプルは,被告製品の品質管理のため,すべてのコイルを対象として,最終検査工程において,各コイルから保管サンプル1枚(約300mm×約275mm)を採取して,1年間保管していた,エミテック社を向先とする合計406コイル分の中から28コイル分を選んだものであり,この保管サンプルについて表面粗度Rmaxを求めても,被告が既に出荷したコイル全体の表面粗度Rmaxが求められるものではないことは,既に述べたとおりである。しかし,28コイル分の被告サンプルすべてについて,表面粗度Rmaxが0.7μm未満との測定結果が得られたということから, ,. すれば 被告サンプルが採取されたコイルについて 表面粗度Rmaxが07μm以上であったことを認めることはできないものといわざるを得ない。 ( ) 以上によれば,本件に顕れた証拠では,被告製品の表面粗度Rmaxが構6成要件Cの規定する0.7〜2.0μmの範囲内にあり,被告製品が構成要件Cを充足することを認めるには未だ足りないというべきである。 ( ) これに対して,引受参加人は,被告製品の表面粗度Rmaxの分布は,平7均値が0.69μmであり,標準偏差が0.051である正規分布に従うか, . , ら この正規分布曲線において0 7μm以上となる約42%の被告製品は本件特許権を侵害すると主張し,それを裏付ける測定結果として,原告サンプルについての平成19年1月11日付け機械振興協会による測定結果(上記( )ア) ,同年3月1日付け被告による測定結果(上記( )ア ) ,同年1b 1c ) )4月19日付け埼玉県産業技術総合センターによる測定結果(上記( )ア1) ,カルソニック材についての同年4月19日付け機械振興協会による測 d )定結果(上記( )イ ))を援用する。 1aしかし,引受参加人の上記主張は,過去において製造された多数の被告製品の表面粗度Rmaxの平均値が0.69μmであることを前提とするものであり,その前提において誤っているから,採用することができない。すなわち,上記第2の1( )のとおり,原告サンプルは,単一のコイルを板幅方6向に5分割したものであるから,原告サンプルの測定値の平均値は,原告サンプルを採取した特定のコイルにおける表面粗度Rmaxを示すものにすぎず,28個の被告サンプルから求められた表面粗度Rmaxの平均値が原告サンプルの表面粗度Rmaxと異なることからも明らかなように,原告サンプルの前記数値は,これまでに多数製造された被告製品の表面粗度Rmaxの平均値を示すものではない。また,カルソニック材の測定値の平均値が,測定箇所の不足から未だ信頼するに足りないものであることは,上記( )で4述べたとおりである。したがって,被告製品の表面粗度Rmaxの平均値が0.69μmであることは何ら証明されていないといわざるを得ないから,これを前提として,被告製品の約42%が本件特許権を侵害する旨をいう引受参加人の主張を採用することはできない。 なお,被告は,被告製品について,本件特許出願前から阪神製造所葺合地区において,#120の砥石で研削したワークロールに基づいて被告旧製品を製作し,平成7年1月の阪神大震災により葺合地区が製造中止となったため,同年10月から,阪神製造所西宮地区で,#150の砥石で研削したワークロールで被告旧製品の製造を開始し,その後,砥石を#220に変更したものである(乙14,乙17,乙26,乙39,証人C。その上で,。)被告は,平成13年7月に製造された原告サンプルと平成16年9月以降に製造された被告サンプルとの間で表面粗度Rmaxに影響を与えるような製造条件の変更はないと主張するのに対し,引受参加人は,平成13年7月に製造された原告サンプルと平成16年9月以降に製造された被告サンプルとの間には,表面粗度Rmaxに影響を与える製造条件の変更の可能性があると主張する。 確かに,原告サンプルと被告サンプルとの間には,表面粗度Rmaxの測定値において,前記のような差異が存在することは事実である。しかし,原告サンプルと被告サンプルとの間に,砥石の型番の変更やその他の製造条件,, の変更があったことを直接確認し得る証拠はないため 本件全証拠によるもこの点は真偽不明といわざるを得ない。 また,本件特許発明が,自動車の排ガス触媒担体に用いられる金属箔についての発明であることからすれば,原告サンプルについて,その担体1個分の面積において,構成要件Cに規定する表面粗度Rmaxの要件を充足するものがあるかどうかについても念のため判断する。 , . 確かに 原告サンプルの表面粗度Rmaxすなわち各測定値の平均値が069μmであることからすると,原告サンプルという特定のコイルに限っていえば,担体1個分の面積においてRmax0.7μm以上となるものも含まれる可能性があることは否定しにくいところである。しかし,上記( )に 1おける測定結果は,少なくとも原告サンプルの担体1個分の面積当たりについて,その多数箇所を測定して表面粗度Rmaxを測定したものではないことは前記認定のとおりであり,現段階において,原告サンプルについて,この点の立証があったということもできない(引受参加人が指摘する,原告サンプルについての平成19年1月11日付け機械振興協会による測定結果(上記( )ア))における試料4-1及び12-1については,幅150m1bm×長さ50mmの試料の各面につき25区間,同年3月1日付け被告による測定結果(上記( )ア ))における試料102及び10については,長1c Xさ376cm及び917cmの試料の各面につき25区間,同年4月19日付け埼玉県産業技術総合センターによる測定結果(上記( )ア))における1d試料105については,幅約50mm×長さ約40mmの試料の各面につき15区間,カルソニック材についての同年4月19日付け機械振興協会による測定結果(上記( )イ ))における試料11については,100mm×51a0mmの試料の各面につき25区間の測定を行ったにすぎない。高々25区間の測定値の平均値では未だ信頼するに足りないことは,上記( )のとおり4である。。)なお,特定のコイル内における担体1個分の面積の表面粗度Rmaxの分布を考えるとしても,当該コイルにおける担体1個分の面積の表面粗度Rmaxの平均値及び標準偏差が判明しなければ,表面粗度Rmaxが0.7μm以上となる担体1個分の面積が存在するか否かは不明である。そして,少なくとも,原告サンプルにおいて,担体1個分の面積の表面粗度Rmaxの標準偏差については,不明であるから(被告サンプルについての平成19年1月10日付け被告による測定結果に基づく標準偏差0.051は,異なるコイル間の表面粗度Rmaxの標準偏差であるから,これを原告サンプルにおける担体1個分の面積の表面粗度Rmaxの標準偏差として用いることはできない,特定のコイル内における担体1個分の面積の表面粗度Rma 。)xの分布を考えても,構成要件Cの充足を認めるには未だ足りないというべきである(もっとも,原告サンプルに限ってみると,担体1個分の面積について,構成要件Cを充足するか否かとの点について,今後さらに立証がされていく可能性も否定できないから,本件においては,後記3のとおり,先使用についても判断することとする。。)3争点2(先使用権の抗弁の成否)について上記2によれば,被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属すると認めるに,,, 足りる証拠はないというべきであるものの 事案の内容に鑑み さらに進んで争点2(先使用権の抗弁の成否)も判断する。 ( ) 該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,上記第2の1で認1定した事実のほか,以下の事実を認めることができる。 ア臼井国際産業は,本件特許出願に先立つ昭和62年4月,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体の試作ラインを設け,被告から購入した被告旧製品を用いて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体の試作品の製造を開始した。同社が本件特許出願に先立ち製造した自動車の排ガス触媒担体は,いずれも試作品段階にあったもので,これを商品として量産したのは本件特許出願後の平成2年2月であった。同社が被告旧製品,, を用いて製造した自動車の排ガス触媒担体の試作品は 本件特許出願前に自動車メーカー4社及び触媒メーカー2社に対して出荷され,その出荷数量は,昭和62年度が265個,昭和63年度が150個,平成元年度が同年6月までで24個であり,その製造数量は,通常,出荷数量の20%ないし50%増しであった。同社において平成2年2月に量産を開始した排ガス触媒担体と同一の排ガス触媒担体の試作品は,昭和63年6月に10個,平成元年5月に20個,同年9月に40個,同年10月に55個,同年12月に60個,平成2年1月に170個,同年2月に60個(量産開始後の商品としては,同月に別に200個)が出荷されている (臼井。 国際産業に対する調査嘱託の結果)なお,引受参加人は,調査嘱託の結果について,臼井国際産業自身が,本件特許権の請求項2を侵害した可能性があり,同社が先使用権を主張することに固有の利益を受ける立場にあることを考慮する必要があると主張する。しかし,同社による平成19年9月5日付け調査嘱託回答書には,「 」 , METALIT試作状況 と題する取引記録簿の写しが添付されており同社の営業秘密にかかる部分が一部黒塗りされたり,伏せ字とされたりしてはいるものの,同社に対する調査嘱託の結果を裏付けており,引受参加人が指摘する抽象的なおそれがあるとしても,同社に対する調査嘱託の結果は十分に信用することができる。 イ被告(当時の川崎製鉄株式会社)社内では,昭和62年5月15日以前から,自動車排ガス浄化用触媒コンバーターのセラミック担体をメタルハニカムに変更しようとする一部自動車メーカーの動きに対応して,18C, ( 。) r3Al 20Cr5Alステンレス箔 被告旧製品は後者に該当するを開発し,自動車メーカー6社,ハニカムメーカー4社と接触し,複数のメーカーにステンレス箔のサンプル提供を行っていた。そして,被告社内においては,臼井国際産業について,ベーア社と提携して,既にパイロットラインを完成させているとの情報を得ていたほか,日本ラヂエーターの対抗メーカーに育てるため,バックアップすべきものと考えていた (乙。 15,乙13)ウ被告は,昭和62年9月印刷の自動車用ステンレス鋼のカタログにおいて 「リバーライト20-5SR (R20-5SR)について 「触媒コ , 」 ,ンバーター用メタルハニカム」という用途を示した(乙13 。)エ昭和63年9月1日,日産セフィーロが世界で初めて量産車のメーン触媒として耐熱ステンレス鋼を採用した際,その耐熱ステンレス鋼として被告旧製品が採用された。もっとも,日産セフィーロの排ガス触媒担体は,ろう付けを一切しておらず,ろう付け構造を有しない (乙1)。 オ被告社内において,昭和63年11月2日に,被告旧製品について乙14の技術標準が定められ,圧延に使用されるワークロールは,素材厚1mmのものを中間厚0.14mmを経て,最終製品である板厚0.05mm(50μm)に圧延するまで,一貫して#120の砥石で研削されたものを使用することとされた。被告旧製品は,被告の阪神製造所葺合地区で製造されていたものの,平成7年1月の阪神大震災により葺合地区が操業停止となったため,同年10月から阪神製造所西宮地区で製造されることになった。西宮地区においては,ワークロールの研削用砥石として,#150,#220,#600の3種類を保有していたため,被告旧製品の製造に,当初は,#150の砥石で研削されたワークロールが採用されたものの,その後,#220の砥石で研削されたワークロールを用いることに変。,(()) 更された なお 被告製品 R20-5USR JFE20-5USRは,被告旧製品(R20-5SR)に微量成分の調整を行い,鋼種変更をしたものである (乙14,乙17,乙26,乙39,証人C) 。 引受参加人は,乙14の技術標準が本件特許出願後に改訂されたものであること,日産セフィーロへの採用後に制定されたものであること,その表紙の制改?bRの欄にだけ「操業」という捺印欄が設けられていること,表紙と圧延条件の内容が記載された2枚目とが正しく対応しているか疑問であることなどを指摘して,乙14の技術標準によって,本件特許出願前の被告旧製品の製造条件を立証することはできないと主張する。 ,(,),, しかし 証拠 乙26 証人Cの証言 によれば 乙14の技術標準は昭和63年11月2日に新規制定された後,これを変更する際には,変更日及び変更内容を表紙に追記するとともに,圧延条件の内容が記載された2枚目を変更後のものに差し替えたものであるから,最後の変更が本件特許出願後であったとしても,表紙に記載されている変更履歴の記載と圧延条件の内容が記載された2枚目とを照合することにより,本件特許出願前の昭和63年11月あるいは12月の制定当時の製造条件のうち,ワークロールの研削が#120の砥石で行われていたことや,素材厚,中間厚,最終板厚などを確認することは十分に可能である。また,証拠(証人C及びDの各証言)によれば,乙14の技術標準を新規制定した当時の被告においては,技術標準の制定は操業を開始した後,技術が完全に確立した段階で行われるものであり,それまでの操業は作業指示書という別のフォーマットのものに技術条件を記載して行っていたというのであるから,乙14の技術標準が制定される前に,作業指示書に基づいて日産セフィーロ向けの被告旧製品が製造されていたとしても,特段不合理なことであるとま,,「 」 ではいえないし 乙14の技術標準は 単に R20-5SR箔圧延条件と明記されているのであるから,この技術標準とは別に日産セフィーロ向けの被告旧製品(R20-5SR)の技術標準が同時期に存在していたものと認めることはできない。さらに,証拠(証人Cの証言)によれば,制改?bRの欄にだけ「操業」という捺印欄が設けられているのは,平成元年1月から社内決裁のルールが変わり,操業グループからも技術標準が承認されることになったためであり,そもそも乙14の技術標準は 「R20 ,-5SR箔圧延条件」と題されており,その制改年月日における被告旧製品の箔圧延条件の技術標準であること,及び,その表紙には各制改年月日毎の箔圧延条件の変更履歴が明記されているのであるから,制改?bRの欄にだけ「操業」という捺印欄が設けられているからといって,乙14の技術標準が平成元年7月以降に操業された新たな製品の技術標準のみを示す証拠であり,それ以前の技術標準について何らの証拠価値もないものということはできない。加えて,乙14の技術標準について,表紙と圧延条件の内容が記載された2枚目との対応関係を疑わせる具体的事情も認められない。 () , カ本件特許出願日 平成元年6月17日 に先立つ平成元年6月5日ころ被告社内において,#120ロールで仕上圧延をしたR205SR*BAの表面及び裏面の表面粗度Rmaxを,圧延方向と垂直の方向(C方向)に,基準長さ0.8mmで測定した結果,その表面粗度Rmaxは1.0,.(,,)。 65μm 裏面が1 033μmであった 乙2 乙43 証人Dの証言証拠(証人Dの証言)によれば,被告旧製品「R20-5SR」を「R205SR」と表記することがあったことは認められるものの,この製品が被告旧製品であるかどうかは争いがあり,引受参加人は,乙2の測定時期が日産セフィーロに搭載されたメタル担体に被告旧製品が採用された昭和63年9月1日から9か月後であること,その測定対象が「R205SR*BA」と表示され 「BA」という付加記号が付されていること,特 ,に「#120ロール仕上げ」と記載されていること,メタル触媒担体に使用されない150μmの箔が検討されていることなどから,被告旧製品には,日産セフィーロ向けのもの以外に複数の種類があり,乙2号証の測定対象は,新たに開発されていた何らかの新製品向けのものであるとみるのが自然であると主張する。 しかし,?@証拠(乙19)によれば,引受参加人が問題とする「BA」は「冷間圧延後,光輝熱処理を施したもの」を意味する記号として 「J,ISG4305」に規定されていることが明らかであり,光輝熱処理, (), は 表面粗度Rmaxにあまり影響しない 証人Dの証言 のであるから「BA」という付加記号の存在は,乙2号証の測定対象となったR205SR*BAが,被告旧製品(R20-5SR)とは異なる新たに開発されていた何らかの新製品向けのものであったことを示すものとはいえない。 ?Aまた 「#120ロール仕上げ」という記載も,乙2号証において測定 ,の対象とした金属箔が#120の砥石で研削されたワークロールによって仕上圧延されたものであったという客観的事実を示すに止まり,それ以上に,仕上圧延にそのようなワークロールを用いることが通常とは異なる特別なことであったことを示すものとまではいえず,この記載も,乙2号証の測定対象が被告旧製品とは異なる新たに開発されていた何らかの新製品向けのものであったことを示すものとはいえない。?Bさらに,証拠(乙43,証人Dの証言)によれば,乙2号証において,150μmの箔が検討されたのは,新たに150μmの箔の引き合いがあったため,従来140μmとしていた中間厚を150μmに変更することが可能かどうか,そのような変更が最終製品である50μmの箔に及ぼす影響を調べるためであったというのであり,これは,上記乙14の技術標準にも符合するものであるから,被告旧製品が日産セフィーロに採用された後に,150μmの箔を検討していることも,被告旧製品には日産セフィーロ向け以外の複数の製品があったとか,乙2号証の測定対象のうち少なくとも厚さ50μmのものが新たに開発されていた何らかの新製品向けのものであったことを。 , 示すものとはいえない ?C乙2号証には表1があるのに表2がないことや添付チャートが切り貼りされたものであることなど,引受参加人が指摘す, 。 る体裁の点も 乙2号証の信用性に疑いを抱かせるものとは認められないしたがって,乙2号証のうち,厚さ50μmの金属箔についての測定結果は,当時の被告旧製品(R20-5SR)の表面粗度Rmaxを表すものとみて差し支えない。 キ本件明細書には,以下の記載があり,#80〜#120番程度の研磨仕上げを行った圧延ロールを用いて冷間圧延を行うことにより,表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの粗面仕上金属箔が得られることが記載されている(甲2 。)「本発明は金属ハニカムを構成する金属箔を粗面仕上げに調製したものを用いることを特徴としており,JIS(B0601-1970)に規格化されている表面粗度(Rmax)は0.7〜2.0μm,好ましくは1.0〜1.5μmである。かかる金属箔の製造法としては,たとえば#80〜#120番程度の研磨仕上げを行った圧延ロールを用いて冷間圧延を行うことにより,表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの粗面仕上金属箔が得られる(4欄11行〜18行) 。」( ) 以上を踏まえて検討すると,被告は,次に述べるとおり,本件特許発明の2内容を知らないで自らその発明をし,本件特許出願当時,その発明の実施である事業の準備をしていた者であり,本件特許発明について,その準備をしていた発明及び事業の目的の範囲内において,通常実施権を有するものと認められる(特許法79条 。)ア上記( )アないしオによれば,被告は,本件特許出願前に,本件特許発1明の内容を知らないで,自ら被告旧製品を開発したこと,被告は,臼井国際産業に対して,本件特許出願に先立ち,被告旧製品を製造販売し,臼井国際産業において,被告旧製品を用いて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体を試作品として製造し,出荷し,同社において,本件特許出願後に,これを事業として実施したことが認められる。これによれば,被告は,本件特許出願に先立ち,少なくとも構成要件A,B,Dを充足する金属箔を自ら開発し,その製造・販売の準備行為を行っていたと認められる。 すなわち,構成要件A及びBの「ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる・・・金属箔」とは,金属箔の用途がろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体であることを要件として規定するものである。そして,被告による行為がこの要件を充足するかどうかの認定判断においては,一般に,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられ得る金属箔は,同じ構成のものでも,ろう付けではない排ガス触媒担体にも用いることができるものであることからすると,被告がこれを製造する時点においては その出荷先が定まらない以上 未だその用途が ろ , ,「う付け構造」用なのか否か客観的にみても確定していない状況にあるという問題が生じるところである(その販売行為時において販売先が確定すれば,その段階ではじめて 「ろう付け構造」用のものかどうかが客観的に ,確定することになり 「ろう付け構造」用の金属箔を販売したと確定した ,場合には,これを前提として,本件特許権侵害行為に該当するか否かを判断することになる。しかし,構成要件Cの表面粗度Rmaxの数値限 。)定は,ろう付け構造の排ガス触媒担体であってはじめて意味があるものであることからすると,少なくとも本件特許権侵害かどうかの判断において, 。, は この要件を無視することができないことは明らかである したがって先使用権が成立するかどうかの判断においても,同様に 「ろう付け構造 ,を有する自動車の排ガス触媒担体に用いられる」金属箔として販売されたかどうかを考慮するものとする。これを前提とすると,被告が被告旧製品を製造販売していたとしても,その販売先である臼井国際産業が,ろう付け構造の排ガス触媒担体を試作品として製造販売していた以上,その時点においては,試作品の検討を踏まえた販売先からの依頼により細部の仕様等が変更される可能性が残されていたと考えられるから,被告によるろう付け構造の排ガス触媒担体用の金属箔の製造販売も,未だ準備段階の行為であったとみざるを得ないものである。このことは,被告によるろう付け構造を有する触媒担体に用いられる金属箔の製造販売については,その販売先である臼井国際産業が排ガス触媒担体の量産を開始してから,その量()。 産が開始されていること 前掲調査嘱託の結果 とも符合するものである被告旧製品については,結果的に試作品を踏まえた仕様等の変更はなかったものの,量産前の段階の行為は,製造販売の準備段階の行為であるとみざるを得ない。 イ被告は,上記( )オのとおり,本件特許出願に先立つ昭和63年11月12日に,被告旧製品の製造にあたり,乙14の技術標準を定め,#120の砥石で研削したワークロールを用いて,厚さ50μmの金属箔(被告旧製品)を製造していたものと認められる。そして,上記( )キのとおり,1本件明細書の開示するところによれば,#120の砥石で研削したワークロールを用いて冷間圧延を行えば,構成要件Cに規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの範囲内の金属箔が得られると考えられるから,本件特許出願に先立ち臼井国際産業に販売された被告旧製品の表面粗度Rmaxは,構成要件Cを充足することが推認される。現に,上記( )カのと1おり,被告旧製品の表面粗度を表すものとみて差し支えないR205SR*BA(厚さ50μm)について,本件特許出願に先立ち,その表面粗度Rmaxを測定した結果,基準長さ0.8mmにより,表面が1.065μm,裏面が1.033μmという構成要件Cを充足する測定結果が得られているのである。 以上によれば,被告が製造し,臼井国際産業に販売していた前記アの被告旧製品は,構成要件Cを充足するものであったと認められる。 これに対し,引受参加人は,#120というロール番手のみから,金属箔の表面粗度が一義的に定まるものではなく,研磨スピードや圧延のパススケジュール,潤滑条件等によって,表面粗度は変動すると主張する。確かに,例えば,脱退原告出願の公開特許公報である乙28号証には「金属箔の表面光沢には,ワークロールの表面粗さおよび圧延潤滑が大きくかかわっている 」との記載があり,第117回塑性加工シンポジウムにおけ 。 る脱退原告の報告である乙3文献にも「表面光沢の向上にはロール研磨粗さや圧延油の粘度調整等が重要な条件となる 」との記載があり,その他 。 引受参加人による実験結果の報告書である甲39号証によっても,仕上圧延に用いるワークロールを研削した砥石の番手のみによって,そのワークロールにより冷間圧延した金属箔の表面粗度が一義的に定まるものではないと認められる。しかし,上記( )キのとおり,ほかならぬ本件明細書に 1おいて,構成要件Cに規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの金属箔の製造法として,#80〜#120番程度の研磨仕上げを行った圧延ロールを用いた冷間圧延を挙げており,他の圧延条件の指定をしていないのであるから,圧延油の粘度をはじめとする圧延条件を意図的に変更することにより,意図的に表面粗度Rmaxを変化させることが可能であるにせよ,表面粗度Rmaxに最も大きな影響を与えるものが冷間圧延に用いるワークロールを研削する砥石の番手であり,また,殊更に圧延条件を変更せず,当業者において通常用いる程度の圧延条件によって,#80〜#120番程度の研磨仕上げを行った圧延ロールを用いて冷間圧延を行えば,構成要件Cに規定する表面粗度Rmax0.7〜2.0μmの金属箔を得ることができるものと認められる。このような理解は,上記乙3文献において,上記引用の記載に続けて 「ロール粗度の選択によりダルから ,鏡面に至るまでの広範囲の表面仕上げ材の造り込みが可能である 」と記。 載されていることとも整合すると考えられる。そして,被告による被告旧製品の製造において,当業者において通常用いる程度の圧延条件とは異なる特殊な圧延条件を用いていたことを窺わせる事情は見当たらないし,現に,被告において#120の砥石で研削したワークロールを用いて圧延した被告旧製品の表面粗度Rmaxを測定したところ,基準長さ0.8mmにより,約1μmという測定結果が得られていることは,上記のとおりである。 また,引受参加人は,そもそも本件特許出願前において被告が製造して, () いた被告旧製品については #120よりも番手の大きな 平滑性の高いロールにより仕上げられていた可能性が高いとして,被告が日産セフィーロ向けの金属箔を開発していた当時の被告の研究者による研究報告(甲18 ,平成6年の各鉄鋼メーカーの圧延条件などに関するアンケート結果 )の報告(甲19 ,被告によるステンレス箔の開発・販売についての新聞 )記事(甲25の1,甲25の2)を指摘する。しかし,証人Dの証言によれば,被告においては,本件特許出願前に被告旧製品を製造する際,通常は#120の砥石で研削されたワークロールを用いていたものの,建材用のものについては最終パスのみ又は最終パス及びその一つ前のパスのみ,#600の砥石で研削されたワークロールを用いていたことが認められる。原告指摘の甲19号証によれば,若干の例外はあるものの,多くの鉄鋼メーカーにおいては 「特に表面の美麗さが市場から要求される」鋼種 ,の圧延の際,仕上圧延を行う最終パスとそれ以前のパスとで,圧延に用いるロールを換えており,最終パス以前のパスにおいては比較的表面粗度の大きなワークロールを用い,最終パスのみ比較的表面粗度の小さな#320〜#800のワークロールを用いていることが認められ,このことも上記Dの証言を支持するものである。そうすると,特に表面の美麗さが市場から要求される際には,最終パス又はその手前のパスを行う前にワークロールを取り換える手間をかけるものの,そのような要求がない場合には,そのような手間をかけずに,それ以前のワークロールと同じワークロールで圧延するということも理にかなっていると認められるから,自動車の排ガス触媒担体が自動車の内部に組み込まれるものであることを考慮すると,多くの鉄鋼メーカーにおいて 「特に表面の美麗さが市場から要求さ ,れる」鋼種の圧延の際,仕上圧延を行う最終パスで#320〜#800のワークロールを用いていることを示す甲19号証や,被告が被告旧製品を建材向けに販売していたことを示す甲25号証の1及び甲25号証の2は,上記証人Dの証言と矛盾するものではない。また,甲18号証は,実験室レベルでの耐酸化性の研究に関するものであり,商品化された被告旧製品との関連も明らかではないから,これによって,被告旧製品の圧延が#120の砥石で研削されたワークロールではなく,#600の砥石で研削されたワークロールが用いられていたと認めることはできない。 よって,引受参加人の上記主張は採用できない。 , , なお 先使用権の抗弁における被告旧製品の構成要件Cの充足の有無と請求原因における被告製品の構成要件Cの充足の有無との関係について付言すれば,後者において充足が認められる場合には,前者においても充足が認められやすい関係にあるということができる。すなわち,前者においては,#120の砥石で研削されたワークロールを用いて冷間圧延された,, 金属箔の表面粗度Rmaxが問題とされているのに対し 後者においては#150又は#220の砥石で研削されたワークロールを用いて冷間圧延された金属箔の表面粗度Rmaxが問題とされている。そして,表面粗度Rmaxに最も大きな影響を与えるものが冷間圧延に用いるワークロールを研削する砥石の番手であることは上記のとおりであり,砥石の番手の数字が大きくなるほど表面は滑面となり,砥石の番手の数字が小さくなるほど表面は粗面となる。そうすると,構成要件Cの下限0.7μm以上であるか否かが主に問題となる本件において,仮に,#150又は#220の砥石で研削されたワークロールを用いて冷間圧延された金属箔の表面粗度Rmaxが構成要件Cの下限0.7μm以上であり,構成要件Cを充足すると認められるのであれば,他の圧延条件を特に変更しない限り,#120の砥石で研削されたワークロールを用いて冷間圧延された金属箔の表面粗度Rmaxは,より大きな値を示すはずであるから,同様に構成要件Cの下限0.7μmを超え,構成要件Cを充足する可能性が高いと考えられる。このように,仮に,争点1-2において,原告が被告製品の少なくとも一部が構成要件Cを充足することの立証に成功したとしても,そのこと自体がこの先使用権の抗弁における構成要件Cの充足を推認させる事実となり得るのである。 ウ上記( )イのとおり,被告は,昭和62年5月15日以前から,自動車1排ガス触媒担体に用いることを視野に入れて,20Cr5Alステンレス箔である被告旧製品の開発を進めるとともに,複数の自動車メーカー,担,, 。 体メーカーに サンプルを納入して 被告旧製品の採用を働きかけていたまた,臼井国際産業については,ベーア社と提携して,既にパイロットラインを完成させているとの情報を得ていたほか,日本ラヂエーターの対抗メーカーに育てるため,バックアップすべきものと考えていた。 , ,,, そして 上記( )ウ及びエのとおり 被告は 昭和62年9月ころには1被告旧製品の用途として 「触媒コンバーター用メタルハニカム」と表示 ,したカタログを発行し,また,昭和63年9月には,被告旧製品は,日産セフィーロの排ガス触媒担体の素材として採用された。 他方,上記( )アのとおり,臼井国際産業においては,昭和62年4月1には,既にろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体の試作ラインを設け,被告から購入した被告旧製品を用いて,ろう付け構造を有する自動車の排ガス触媒担体を製造し,本件特許出願日(平成元年6月17日)より前に,自動車メーカー4社及び触媒メーカー2社に対し,昭和62年度に265個,昭和63年度に150個,平成元年度(ただし,同年6月まで)に24個を試作品として出荷した。ただし,臼井国際産業が当時製造していた排ガス触媒担体が商品化されたのは平成2年2月であり,そのころから,ろう付け構造を有する自動車用排ガス触媒担体が量産され,それ用の金属箔として被告旧製品も同社に対し,大量に販売されるようになった。 ,,() 以上によれば 被告においては 本件特許出願日 平成元年6月17日より前に 「自動車の排ガス触媒担体」に用いられる金属箔としては,被 ,告旧製品の製造・販売を事業として実施していたことが明らかである。また,被告旧製品が,顧客において自動車の排ガス触媒担体の製造にあたってろう付け法を用いるか否かで,その製造方法を異にしていたと認めるに足りる証拠がないことをも併せ考慮すると,被告においては,本件特許出願日(平成元年6月17日)より前に 「 ろう付け構造を有する』自動 ,『車の排ガス触媒担体」に用いられる金属箔としても,被告旧製品の製造・販売について,即時実施の意図を有しており,かつ,その即時実施の意図は,既に稼動していた日産セフィーロ向けの生産ラインにより客観的に担保されるとともに,臼井国際産業に対する被告旧製品の断続的な販売という行為により客観的に認識されうる態様,程度において表明されていたといえるから,被告においては 「 ろう付け構造を有する』自動車の排ガ ,『ス触媒担体」に用いられる金属箔として,被告旧製品の製造・販売の事業, 。 の準備をしていたものとして 先使用権が認められるということができるエなお,被告旧製品(R20-5SR)と現在の被告製品(R20-5USR(JFE20-5USR )との間には,表面粗度Rmax値の減少 )方向への製造条件の変更,すなわち,ワークロールを研削する砥石の#120から#150さらには#220への変更と微量成分の変更とがあったものと認められるものの,後者については,本件特許発明の本質に関わるものではないし,原告も問題としないから,これによって先使用権の成否に影響が及ぶことはない。また,前者についても,既に述べたとおり,本件特許発明における表面粗度Rmaxの数値限定の臨界的意義が下限の0.7μmにあることからすると,本件特許発明の作用効果を減殺する方,,,() 向への変更であり 上記2のとおり 現に 被告製品 特に被告サンプルの測定においては,構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの範囲を充足しない方向への変更が行われたことが顕著に窺われるところであるから,仮に被告製品の一部のものにおいて構成要件Cに規定された表面粗度Rmaxの充足が証明されたとしても,このような表面粗度Rmaxの変更により先使用権が失われるものではないというべきである。 4結論,, , よって 引受参加人の本訴請求は その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 設樂隆一 |
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裁判官 | 中島基至 |
裁判官 | 古庄研 |