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関連審決 不服2004-18980
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10040審決取消請求事件 判例 特許
平成20行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 頒布された刊行物 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  同一技術分野(同一の技術分野) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  優先日 /  参酌 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  拒絶査定 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10161号 審決取消請求事件
原告X
訴訟代理人弁護士尾関孝彰
訴訟代理人弁理士長谷川芳樹
同 城戸博兒
同 三上敬史
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人小林正明
同 山本章裕
同 大場義則
同 大日方和幸
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/02/21
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2004-18980号事件について平成18年12月18日にした審決を取り消す。
第2争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「ネットワークに接続するコンピュータに全数字コードを用いてアドレスを割り当てる方法」とする発明について,1999年(平成11年 10月25日 優先権主張:1998年12月4日 中国国際特 )( ,),許出願(特願2000-587275号。以下「本願」という )をした。 。
その後,原告は,平成16年5月25日付けの手続補正書により,本願に係る明細書の特許請求の範囲の記載を補正する手続補正をしたが,同年6月11日付けの拒絶査定を受けたので,同年9月14日,これに対する不服の審判を請求し 不服2004-18980号事件更に同年10月14日付けの手続 ( ),補正書により,上記明細書の特許請求の範囲の記載を補正(以下,この補正を「本件補正」という )する手続補正をした。 。
,,,, 特許庁は 審理の結果 平成18年12月18日 本件補正を却下した上で「,。」(。「」 本件審判の請求は 成り立たないとの審決 附加期間90日 以下 審決という )をし,平成19年1月9日,その謄本を原告に送達した。 。
2特許請求の範囲(1)本件補正前の本願に係る明細書における特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。。)「接続番号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成され,ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる全数字コードアドレスを用いて,インターネットアクセスする方法であって,, , 前記接続番号は 国又は地域が指定したウェブサイトの数字コードであり前記電話番号は,ユーザーの所在国の国際ダイレクトダイヤル電話の国コードと,ユーザーの所在地域の国内長距離ダイレクトダイヤル電話の地域コードと,ユーザの勤務先或は個人の電話番号との組み合せであり,前記類別番号は,国或は地域が統一的に分類した業務の類別に指定した数字コードであって,前記全数字コードアドレスにおいて,接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができ,電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに入力して,相応するデジタルコードをリンクし,専用ソフトウエアによって変換してから,電子メールボックスにアクセスしたりインターネットをブラウジングすることを特徴とする,方法 」。
(2)本件補正後の本願に係る明細書(以下「本願明細書」という )における 。
特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この発明を「本願補正発明」という。下線部は,本件補正による補正箇所を示す。。)「接続番号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成され,ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる全数字コードアドレスを用いて,インターネットアクセスする方法であって,, , 前記接続番号は 国又は地域が指定したウェブサイトの数字コードであり前記電話番号は,ユーザの所在国の国際ダイレクトダイヤル電話の国コード, , と ユーザの所在地域の国内長距離ダイレクトダイヤル電話の地域コードとユーザの勤務先或は個人の電話番号との組み合せであり,前記類別番号は,国或は地域が統一的に分類した業務の類別に指定した数字コードであって,前記全数字コードアドレスにおいて,ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場合,接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができ,電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに入力して,相応するデジタルコードをリンクし,専用ソフトウエアによって変換してから,電子メールボックスにアクセスしたりインターネットをブラウジングすることを特徴とする,方法 」。
3審決の理由別紙審決書写しのとおりである 要するに 下記(1)の理由により 本件補正 。,,は却下すべきであり 下記(2)の理由により 本願は特許を受けることができな ,,い,というものである。
(1)本願補正発明は,本願の優先権主張日(以下「本願優先日」という )前。
(「」 に頒布された刊行物である特開平10-78928号公報 以下 引用例1という。甲1)及び特開平9-321894号公報(以下「引用例2」という。甲2)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから,本件補正は,特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反し,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきである。
審決は上記判断をするに当たり,本願補正発明と引用例1(甲1)の特許請求の範囲の請求項1 2頁1欄2行〜18行 に記載された発明 以下 引 ()(「用発明」という )との一致点・相違点を次のとおり認定した。 。
(一致点)「ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる全数字コードアドレスを用いて,インターネットアクセスする方法であって,全数字コードアドレスとして電話番号を用い,専用ソフトウエアによって変換してから,電子メールボックスにアクセスしたりインターネットをブラウジングする方法 」である点(審決書4頁16行〜20行 。 。 )(相違点1)全数字コードアドレス の電話番号が 本願補正発明においては接 「」,,「続番号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成され「接続番号は,国」,又は地域が指定したウェブサイトの数字コードであり,電話番号は,ユーザの所在国の国際ダイレクトダイヤル電話の国コードと,ユーザの所在地域の国内長距離ダイレクトダイヤル電話の地域コードと,ユーザの勤務先或は個人の電話番号との組み合せであり,類別番号は,国或は地域が統一的に分類した業務の類別に指定した数字コード」であるのに対し,引用発明においては電話番号 の記載があるものの その余の示唆がない点 審 ,「」,(決書4頁21行〜28行 。)(相違点2)本願補正発明においては 「ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場 ,, 」 合 接続番号或は電話番号の後にユーザが数字番号を付加することができるものであるのに対し,引用発明においては,この点につき特段の記載がない点(審決書4頁29行〜32行 。)(相違点3)コンピュータのモデムに入力する際に 本願補正発明においては電話 ,,「のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力」するのに対し,引用発明においては,特段の記載がない点(審決書4頁33行〜35行 。)(2)本願発明は 引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて 当業者 , ,が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第3取消事由に係る原告の主張審決は,以下のとおり,本件補正を誤って却下した結果,判断の対象である本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明について,その要旨の認定を誤った違法があるから,取り消されるべきである。
1一致点・相違点の認定の誤り審決は 以下のとおり 本願補正発明と引用発明との対比を誤り相違点を ,, ,看過した点において 一致点・相違点の認定に誤りがある なお 本願補正発 , 。,明と引用発明とが相違点1ないし3において相違することは認める。
(1)本願補正発明と引用発明との対比の誤りア審決は引用発明の クライアント側のインターネットへのアクセス機 ,「『器』は,本願補正発明の『ネットワークに接続するコンピュータ』に相当する(審決書4頁4行〜5行)と認定した。 。」しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
本願補正発明の ネットワークに接続するコンピュータ審決書2頁3 「 」(行〜4行)は,インターネットによりアクセスされるサーバ側のコンピュータを指すと解すべきであって,同発明の「相応するデジタルコード」が入力 される コンピュータ審決書2頁14行及び同頁15行 以下 「」「」( ,第2のコンピュータ ということがあるを指すと解すべきではないか 「」。),「 」 , ら 引用発明の クライアント側のインターネットへのアクセス機器 はこれに相当しない。
すなわち,?@インターネットにおけるアクセスが少なくとも2つのコンピュータ間で行われることは自明であるところ,本願補正発明の「ネットワークに接続するコンピュータ」と第2のコンピュータとが同じであると考えると,自分のコンピュータに割り当てられた全数字コードアドレスと相応するデジタルコードを自分のコンピュータに入力することになり不合理であること,?A第2のコンピュータに関し,本願明細書の特許請求の範囲には「前記」との記載はないこと,?B仮に,本願補正発明の「ネットワークに接続されたコンピュータ」が,引用発明のような「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」であるとするならば,本願補正発明の「第2のコンピュータ」はその通信相手先となり,クライアントが通信相手先のコンピュータにキーボード入力することになり,不合理であることに照らせば,本願補正発明の「ネットワークに接続するコンピュータ」は,第2のコンピュータを指すと解すべきでないから,引用発明の「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」には相当しない。引用発明の「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」は,本願補正発明の「相応するデジタルコード」が「入力」される「電話」や「第2のコンピュータ」に相当するものである。
イ審決は引用発明の URLに対応する任意の桁数の番号 は 本願補 ,「『 』 ,正発明の『全数字コードアドレス』に対応する(審決書4頁11行〜1 。」2行)と認定した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
(ア)一般に,IPアドレスとは,インターネットに接続するホストコンピュータに割り当てられた固有のグローバル識別子であって,インターネットによって使われる真のアドレスである。IPアドレスは,10進数の数値群及びドットにより表記され,機械によって容易に認識されるが,人間が記憶することは困難である。
そこで,さらなる利便性のため開発されたのが,言語のキャラクタ群(文字,数字,シンボル)から構成されるドメインネームである。オペレータがドメインネームを入力すると,ドメインネームサーバがドメインネームをIPアドレスに変換する。すなわち,ドメインネームは,IPアドレスと対応するものであるが,オペレータのために割り当てられたツールであって,インターネット上のホストコンピュータの物理的な場所を反映したものではない。ネットワークの実体が最下層となり,オペレータが最上層となるようなネットワークのレイヤー構造(上位〔オペレータ〕から下位〔ネットワークの実体〕までの順番)は,/オペレータ/ドメインネーム/IPアドレス/ネットワークの実体/となる。
ネットワークの拡大とともに,ドメインネームは複雑となり,記憶することが困難となったため,簡単かつ特徴のある記号及び文字から構成されるネットワークエイリアスが開発された。オペレータがネットワークエイリアスを入力すると,ドメインネームにマッピングされ,ドメインネームはさらにIPアドレスを発見するために変換される。レイヤー構造(最上層〔オペレータ〕から最下層〔ネットワークの実体〕までの順番)は,/オペレータ/ネットワークエイリアス/ドメインネーム/IPアドレス/ネットワークの実体/となる。
(イ)これに対し 本願補正発明の 全数字コードアドレス はネット ,「」 ,「ワークに接続するコンピュータに割り当てられる」ものであって,ネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスであるから,本願明細書の段落【0010】等に記載されているように,/オペレータ/全数字コードアドレス/ネットワークの実体/とすることも可能であり,論理的には,IPアドレスを使用する必要はない。しかし,現在のインターネットと互換性を保つため 本願補正発明は入力して 相応する ,,「,デジタルコードをリンクし,専用ソフトウエアによって変換」する工程。,「 」 を有する すなわち オペレータが入力する 相応するデジタルコード, , は インターネットで使われるIPアドレス等に一時的に変換されるがネットワークに接続するホストとなるコンピュータにアクセスするために 再び全数字コードアドレスに変換されるものである つまり相応 , 。,「するデジタルコード」は,アクセスされるコンピュータの全数字コードアドレスと一対一に対応する,同一のものである。レイヤー構造(最上層〔オペレータ〕から最下層〔ネットワークの実体〕までの順番)は,/オペレータ/相応するデジタルコード/IPアドレス等の他のアドレス/全数字コードアドレス/ネットワークの実体/となる。
,,「 」 (ウ)一方 引用発明はURLに対応する任意の桁の番号を割り当てるものである。URL(uniform resource locator)とは,IPアドレスのようにコンピュータに割り当てられたアドレスではなく,インターネット上のHTML文書,イメージ,ビデオ,プログラムのようなリソースの場所の特定のために用いられる識別子である。そして,引用発明ではURLに対応する任意の桁の番号 は すべてIPアドレスに変 ,「 」 ,換され,IPアドレスにより目的とするコンピュータにアクセスしているものであるから,引用発明における「URLに対応する任意の桁の番号」は,ドメインネームないしネットワークエイリアスの一類型ということができる。引用発明におけるレイヤー構造は,/オペレータ/URLに対応する番号/IPアドレス/ネットワークの実体/となっている。
(エ)そうすると,引用発明の「URLに対応する任意の桁の番号」は,本願補正発明の 相応するデジタルコード に相当するとしてもコン 「 」,「ピュータに割り当てられる全数字コードアドレス」には相当しない。
ウ審決は,本願補正発明の「相応するデジタルコードをリンクし」との構成について考慮しておらず,これを無視した点に誤りがある。
なお,本願補正発明の「相応するデジタルコード」を解釈することを通じて 前記ア及びイにおいて主張したようにネットワークに接続された , ,「コンピュータ」ではない,第2のコンピュータに「相応するデジタルコード をオペレータが入力することが理解され また全数字コードアドレ 」 ,,「ス が単なるエイリアスではなくネットワークに接続するコンピュータ 」 ,「に割り当てられたアドレス であって ホスト側の ネットワークに接 」「」,「続するコンピュータ」により直接使用されることができることが明らかとなる。
エ審決は引用発明の 検索エンジンにより前記URLと前記割り当てら ,「『れた番号との対応関係を示す記憶テーブルを用いて前記URLに逆変換』することは,本願補正発明の『専用ソフトウエアによって変換』することに相当する(審決書4頁8行〜10行「引用発明の『インターネット 。」 ),上の探査を行う』ことは,本願補正発明の『インターネットアクセスすること』に相当する(審決書4頁6行〜7行)と認定した。 。」しかし,審決の上記各認定はいずれも,前記ア及びイにおいて指摘した誤解に基づくものであり,誤りである。
(2)相違点の看過本願補正発明は全数字コードアドレス が リソースに対するエイリア ,「」 ,スとしてでなくアドレス として ネットワークに接続されたコンピュー ,「」「タに割り当てられる 点において 引用発明と相違することは 前記(1)にお 」, ,いて指摘したところから明らかである。審決は,上記の相違点を看過した点に誤りがある。
2相違点に係る容易想到性判断の誤り審決は 以下のとおり 本願補正発明と引用発明との相違点について 進歩 ,, ,性の判断を誤った。
(1)相違点1の容易想到性判断の誤り審決は 相違点1について本願補正発明のように構成することは 格別 ,,「 ,。」( ) の創意を要することなくなし得たものである審決書5頁24行〜25行と判断した。
しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
まず,引用例1における「ネットワーク上に置かれている情報提供サーバの蓄積する情報資源をアクセスするためのURL・・・を用いる審決書4」(頁37行〜5頁3行 旨の記載から 直ちに国又は地域が指定したウェブ ),,「」「」 。 サイトの数字コード である 接続番号 を用いることが容易とはいえないまた 本願補正発明は接続番号と電話番号と類別番号とを組み合わせて ,,「編成され」た「全数字コードアドレス」を用いることにより,覚えやすく,管理が便利になり,アドレスの重複がないという顕著な効果を奏する(本願明細書の段落 0008 参照のであり 上記各番号それ自体がそれぞれ 【】。),周知であったとしても,上記効果を奏する組合せを用いることが容易とはいえない。
なお 審決は本願補正発明のようなウェブサイトを特定するための 国 ,,「 『又は地域が指定したウェブサイトの数字コード』である『接続番号(審決』」書5頁3行〜5行 と説示しているが 前記1のとおり 本願補正発明の 全 ),,「数字コードアドレス」は,エイリアスとしてURLに対応する番号を割り当てる引用発明とは異なりネットワークに接続されたコンピュータに割り当 ,「てられるアドレス であり コンピュータの特定を行うものであってウ 」「」, ,「ェブサイトを特定するため」のものではないから,前提が異なる。
(2)相違点2の容易想到性判断の誤り審決は 相違点2について本願補正発明のように構成することは 格別 ,,「 ,。」( ) の創意を要することなくなし得たものである審決書5頁32行〜33行と判断した。
しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
引用例1には,重複を防いでユニークに番号を割り当てるために,ユーザ名のアルファベットに応じて自動生成した番号に対して,さらに3桁の番号を付与していることが記載されているにすぎず,アドレスを秘密にするために暗証番号を付与することは記載されていない。
本願補正発明は,ユーザ名のアルファベットに応じて自動生成された数字ではなく,接続番号と電話番号と類別番号とを組み合わせて編成された全数字コードアドレスを用いる,簡単で覚えやすいアドレスシステムである。ユーザによっては,全数字コードアドレスを推測した第三者からのアクセスを防止したいという課題が発生するが接続番号或いは電話番号の後に暗証数 ,「字番号を付すこと」により,セキュリティ性能を高めることができる。このような思想は,引用例1及び2には記載も示唆もされていない。
また そもそも 引用例1及び2にはネットワークに接続するコンピュ ,,,「」 「」,。 ータ に 全数字コードアドレス を割り当てることは 開示されていない(3)その他の誤りア前記1(2)のとおり,本願補正発明は 「全数字コードアドレス」が,リ ,ソースに対するエイリアスとしてでなくアドレス として ネットワー ,「」「クに接続されたコンピュータに割り当てられる」点において,引用発明と相違するところ,引用例1及び2には,オペレータとIPアドレスとの間に位置するネットワークエイリアスに関する技術が記載されているにとどまり,本願補正発明のような,IPアドレスとネットワークの実体との間に位置する技術については,何らの記載も示唆もない。
イ本願補正発明は,?@「ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる全数字コードアドレス」が,ネットワーク及びネットワークに接続されたコンピュータによって直接使用されることができ,アドレッシング処理が非常に簡単にされる ?A 全数字コードアドレス は接続番号と , 「」 ,「」,, 電話番号と類別番号とを組み合せて編成され たものであり 覚えやすく管理が簡単となり,アドレスの重複がないものとなる,?B「前記全数字コードアドレスにおいて,ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場合,接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができセキュリティ」,の向上も可能である,という作用効果を奏する。これらの作用効果は,いずれも「引用例1及び引用例2の記載から当業者が予測できる範囲のものである(審決書5頁38行〜39行)とはいえない。 。」第4取消事由に係る被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
1一致点・相違点の認定の誤りに対し(1)本願補正発明と引用発明との対比の誤りに対しア本願明細書の特許請求の範囲の請求項1にはネットワークに接続する ,「コンピュータ と記載されているにとどまりネットワークに接続するコ 」 ,「ンピュータ」がサーバ側のコンピュータであるか,クライアント側のインターネットへのアクセス機器であるかは,特定されていない。
, ,, そもそも サーバとクライアントとはそれぞれ IPアドレス等により相手方と自分とをはっきりさせない限り,通信(データのやり取り)はできないからネットワークに接続するコンピュータ は サーバ側のコン ,「 」 ,ピュータでもあり,クライアント側のインターネットへのアクセス機器でもある。
本願補正発明はネットワークに接続するコンピュータ が何かを特定 ,「 」していない以上,引用発明の「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」がこれに相当するとした審決の認定に誤りはない。
イ本願明細書の特許請求の範囲の請求項1には電話のポッシュボタンで ,「ダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに入力して,相応するデジタルコードをリンクし,専用ソフトウエアによって変換してから,電子メールボックスにアクセスしたり,インターネットをブラウジングすることを特徴とする」と記載されているが,当該記載からは,何が入力され何に変換されるのかが,必ずしも明確でない。
そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載(段落【0003【0】,005000700100012を参酌すると 本願補正 】,【】,【】,【】),発明の「電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに入力して,相応するデジタルコードをリンクし,専用ソフトウエアによって変換してから,電子メールボックスにアクセスしたりインターネットをブラウジングすること」とは,電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに正確な全数字コードを連続的に入力し,これを相応するデジタルコードである全数字コードアドレスとして,変換器の専用の翻訳ソフトウエアによって,IPアドレス或はドメイン名或いは中国ドメイン名システムに変換し,相手先のコンピュータに識別を実行させることができるということを意味するということができる。
そうすると,本願補正発明において,入力されるのは「全数字コードアドレス」であり,上記「全数字コードアドレス」は,IPアドレス,ドメイン名又は中国ドメイン名システムを求めるために入力されるものであっ,「 」。 てネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレス ではない「 」 , ウ本願補正発明の 相応するデジタルコード が実体的に何を指すのかは本願明細書において明示されていないが,上記イで検討したところによれば,本願補正発明は,電話のポッシュボタンでダイヤルアップ又はコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに,正確な全数字コードを連続的に入力し,これを相応するデジタルコードである全数字コードア, ,, ドレスとして 変換器の専用の翻訳ソフトウエアによって IPアドレスドメイン名又は中国ドメイン名システムに変換し,相手先のコンピュータに識別を実行させるというものであることが理解される。
審決は2 平成16年10月14日付の手続補正についての補正却下 ,「.」 「()」( ), の決定 の4 判断 の欄審決書4頁36行〜6頁4行において全数字コードを連続的に入力する点,これを相応するデジタルコードである全数字コードアドレスとする点,さらに全数字コードアドレスをIPアドレス,ドメイン名又は中国ドメイン名システムに変換し,相手先のコンピュータに識別を実行させる点を指摘しており,また,これらの点に係る検討は適切である。
エ以上のとおり,審決は,本願補正発明及び引用発明について適切に認定しており,原告の主張に係る認定の誤りはない。
(2)相違点の看過に対し前記(1)で検討したところによれば 本願補正発明の 全数字コードアドレ ,「ス」が「アドレス」として「ネットワークに接続されたコンピュータに割り当てられる」ものである旨の原告主張は,根拠を欠くものであり,審決における一致点・相違点の認定に原告主張の誤りはない。
2相違点に係る容易想到性判断の誤りに対し(1)相違点1の容易想到性判断の誤りに対しア電話番号として「ユーザの所在国の国際ダイレクトダイヤル電話の国コードと,ユーザの所在地域の国内長距離ダイレクトダイヤル電話の地域コードと,ユーザの勤務先或は個人の電話番号との組み合せ」を用いることは,引用例2にも記載があるように,本願優先日前の周知技術である。
また,本願補正発明における「類別番号」は,国或は地域が統一的に分類した業務の類別に指定した数字コードであって,引用例1には「所定の桁数の番号を,特定のグループに分類した職業別,地域別などの目的に応じたグループ毎に自動的に割り当てる 旨の記載があり業務の類別に指 」,「定した数字コード」も,本願優先日前の周知技術である。
したがって,ネットワークに接続するコンピュータにアドレスを割り当てる際に,コンピュータを識別するための「全数字コードアドレス」として番号 をいくつどのように用いるかは それぞれの 番号 の用い方 ,「」 ,「」が周知であることを考慮すれば,当業者が適宜に行う選択事項であり,本願補正発明のように構成することは,格別の創意を要することなくなし得たものである。
イ全数字コードアドレスとして接続番号と電話番号と類別番号 とを用 ,「 」いること,また,これらのいくつかを組み合わせて編成することも,周知技術であり,また,これが,インターネットという同一技術分野における周知技術であることを考慮すれば,組み合わせに格別困難な点はなく,また,その奏する効果も格別のものではない。
(2)相違点2の判断の誤りに対し秘密にしたい情報に暗証番号を付加することは例示するまでもなく周知技術であり,その際に,暗証番号を付加する場所として,接続番号又は電話番号の後にすることは,引用例1に「接続番号或いは電話番号の後」に3桁の数字を付加する事例が記載されている点を考慮すれば,当業者が格別の創意を要することなく,なし得たものである。
(3)その他の誤りに対しア本願補正発明における 全数字コードアドレス がネットワークに接 「」 ,「続するコンピュータ」それ自体に割り当てられたものではないことは,前記1のとおりであり,原告の主張は失当である。
イ?@本願補正発明の 全数字コードアドレス がネットワークに接続す 「」 ,「るコンピュータ」自体に割り当てられたものでないこと,?A「全数字コー」 「 」 ドアドレス を 接続番号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成する, 「 , ことが容易であること ?B ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場合接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付す」ことが容易であることは,いずれも既に主張したとおりである。
また,本願補正発明の作用効果は,引用発明の「覚えやすく,管理が簡単となり,アドレスの重複がなく,セキュリティの向上も可能」であるという作用効果にほかならず,両発明の作用効果に差異はない。
第5当裁判所の判断1一致点・相違点の認定の誤りについて(1)本願補正発明と引用発明との対比の誤りについてア原告は,本願補正発明の「ネットワークに接続するコンピュータ」はインターネットによりアクセスされるサーバ側のコンピュータを指すものと解すべきであるから,引用発明の「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」は,これに相当しないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
(ア)本願明細書の記載本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載 前記第2 2(2) に (,)よれば,本願補正発明において 「全数字コードアドレス」は 「接続番 , ,号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成され「インターネットに 」,アクセスする ために 用い られるものとしてネットワークに接続 」「」,「するコンピュータに割り当てられる ものであることネットワークに 」,「接続するコンピュータ は全数字コードアドレス が 割り当てられ 」 ,「」 「」 ,「」 る 対象であることがそれぞれ認められるが全数字コードアドレスとネットワークとの物理的な接続関係については何ら特定されておらず,また,第2のコンピュータ(請求項1の「電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力でコンピュータのモデムに入力して との記載における コンピュータについては 何 」「」),が入力され,何に変換されるのかが,明確に記載されていない。
, (),, 一方 本願明細書の発明の詳細な説明 甲5 では 本願補正発明は国内外で採用されている3つのアドレスの編成方式(IPアドレス,ドメイン名及び中国ドメイン名システム ではインターネットに接続す ),「るコンピュータに独自のアドレスを与えることができるが,アドレスの編成が複雑で,方式が統一されておらず,覚えにくく,更に入力が難しいという欠点がある」ことに鑑み(段落【0003】参照「ネットワ),ークに接続するコンピュータのアドレスの編成方式に存在する上記の欠点を克服するために,簡単で覚えやすい全数字コードにより編成方法を提供することであり,それを用いて,電話のポッシュボタンでダイヤルアップ或いはコンピュータのキーボード入力によって,電子メールボックスにアクセスしたりインターネットをブラウジングすること」を目的とし(段落【0004】参照「全数字コードを用いて,ネットワーク ),に接続するコンピュータにアドレスを割り当てる方法」によりこれを実現するものであってその特徴は 接続番号と電話番号と類別番号とを ,「,組合せて,全数字コードアドレスを編成すること」であり(段落【0005】参照「全数字コードアドレスを使用する場合,電話ダイヤル又 ),はコンピュータのキーボード入力により正確な全数字コードを連続的に入力」すると(段落【0010】参照「全数字コードアドレスは,専 ),用の翻訳ソフトウエアによって,IPアドレス或いはドメイン名或いは中国ドメイン名システムに変換され段落 0007 参照1つの 」(【】),「全数字コードアドレスを指定すると,それに対応するIPアドレス或いはドメイン名或いは中国ドメイン名システムに変換することができ」るがコンピュータはIPアドレスしか識別できないため 本発明が使用 ,「 ,される場合,全数字コードアドレスを世界通用のドメイン名とIPアドレスに変換するための変換器を設立する必要があり,さらに,本発明の数字アドレスをIPアドレスに翻訳する機能をもつサーバーを指定する必要もあり,それによって,コンピュータが識別を実行することができる」こと(段落【0012】参照 ,などが説明されている。 )(イ)引用例1(甲1)の記載引用例1 甲1 にはクライアント側のインターネットへのアクセ (),「ス機器」に関し,次の記載がある。
請求項23複数のクライアントと複数の情報提供サーバとがネ 「【】ットワーク上に接続され,このネットワーク上に置かれている前記情報提供サーバの蓄積する情報資源をアクセスするためのURLを用いたインターネットへのアクセスシステムであって,前記URLに対応する任意の桁数の番号を割り当てる手段と,この割り当てられた番号と前記URLとの対応関係を示す記憶テーブルと,前記割り当てられた番号を前記URLに逆変換する検索エンジンとを有し,前記割り当てる手段により割り当てられた番号を前記クライアント側の前記インターネットへのアクセス機器から入力し,この入力された番号を前記検索エンジンにより前記記憶テーブルを用いて前記URLに逆, , 変換し この逆変換されたURLで前記インターネット上の探査を行い該当するデータを表示または取得することを特徴とするインターネットへのアクセスシステム(3頁3欄28行〜43行) 。」(ウ)対比a本願明細書の請求項1には全数字コードアドレスを用いてイ ,「 」,「ンターネットにアクセスする」と,その「全数字コードアドレス」が「割り当てられ」た「ネットワークに接続するコンピュータ」に,ネットワークを通して接続されると記載されているからネットワーク,「に接続するコンピュータ とはコンピュータ を 全数字コードア 」,「」 ,ドレスが割り当てられて,ネットワークに接続されるものという機能によって規定されたものと解される。そして,本願補正発明の「第2のコンピュータ請求項1の 電話のポッシュボタンでダイヤルアッ 」(「プ或いはコンピュータのキーボード入力でモデムに入力 する コ 」「」「ンピュータ )は 「全数字コードアドレス」を入力するときに使用さ 」,れるものであるからコンピュータ を キーボード又はモデムを有 ,「」 ,し,かつ,上記の入力機能及び通信機能を果たすという機能によって規定されたものと解される。
「 」 , 本願補正発明における ネットワークに接続するコンピュータ は上記で規定された機能,目的以外の要素によって格別限定されるものではないから第2のコンピュータ としての機能を有することを排 ,「」除しないというべきである。
b他方,引用発明における「クライアント側のインターネットへのアクセス機器」は,URLに対応して割り当てられた任意の桁数の番号の入力を受けて,この番号から逆変換して得た対応するURLでインターネット上の探査を行い,該当するデータを表示又は取得することから,本願補正発明において入力機能又は通信機能を果たす第2のコンピュータに相当するということができ,また,インターネット上を探査することで得たデータを表示又は取得することからネットワー,「クに接続するコンピュータ」にも相当するということができる。
(エ)小括以上によれば引用発明の クライアント側のインターネットへのア ,「『クセス機器』は,本願補正発明の『ネットワークに接続するコンピュータ に相当するとした審決の認定は 本願補正発明における ネット 』。」,「ワークに接続するコンピュータ」と第2のコンピュータとが,その目的及び機能において書き分けている点を十分に説示しているものではないが,上記認定に誤りがあるということはできない。
イ原告は,引用発明の「URLに対応する任意の桁の番号」は,本願補正発明の「コンピュータに割り当てられる全数字コードアドレス」には相当しないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
(ア)原告は 本願補正発明の 全数字コードアドレス はネットワー ,「」 ,「クに接続するコンピュータに割り当てられる」ものであって,ネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスであると主張する。
しかし,原告の主張は採用の限りでない。すなわち,前記ア(ア)のとおり,本願補正発明の「全数字コードアドレス」とネットワークとの物理的な接続関係は,請求項1には何ら記載されていない。そして,本願明細書の発明の詳細な説明(甲5)における「全数字コードアドレスを使用する場合,電話ダイヤル又はコンピュータのキーボード入力により正確な全数字コードを連続的に入力して (段落【0010「全数字 」】),コードアドレスは,専用の翻訳ソフトウエアによって,IPアドレス或いはドメイン名或いは中国ドメイン名システムに変換され段落 00」(【071つの全数字コードアドレスを指定すると それに対応するI 】),「 ,Pアドレス或いはドメイン名或いは中国ドメイン名システムに変換する「コンピュータはIPアドレスしか識別できないため,本発明が使 」,用される場合,全数字コードアドレスを世界通用のドメイン名とIPアドレスに変換するための変換器を設立する必要があり,さらに,本発明の数字アドレスをIPアドレスに翻訳する機能をもつサーバーを指定する必要もあり,それによって,コンピュータが識別を実行することができる (段落【0012 )などの記載によれば,本願補正発明の「全数 」】字コードアドレス」は,ネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスであるということはできず むしろインターネットにアクセ ,,「スする」ために「ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる」ものであって,IPアドレス,ドメイン名又は中国ドメイン名システムを求めるために第2のコンピュータに入力されるものにすぎないというべきである。
(イ)引用例1(甲1)の「本実施の形態1のURLの番号割り当て方法は,たとえばパーソナルコンピュータ,ゲーム機,家電などのアクセス機器から,ネットワーク上に置かれている情報資源を統一的にアクセスするためのURLを用いてインターネットアクセスする際に,予め長く複雑な文字列で表現されているURLを比較的短い桁数の番号に割り当てることで,ユーザの抱える煩わしさを解消することを可能とするものである段落 0021との記載が示すように 引用発明の U 。」(【】),「RLに対応する任意の桁数の番号」は,ネットワーク上に置かれている情報資源を統一的にアクセスするためのURLを用いてインターネットアクセスするに際し,予め長く複雑な文字列で表現されているURLに対して比較的短い桁数で割り当てられた番号であるということができる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)で検討したところによれば,本願補正発明の「コンピュータに割り当てられる全数字コードアドレス と 引用発明の U 」 ,「RLに対応する任意の桁の番号」とは,インターネット上に接続された様々なハードウェアをアクセスするために使用する識別子として,数字(番号)のみを用いるようにした点において,共通する。
,() , なお 数字 番号 のみからなる識別子の対象であるハードウェアは本願補正発明ではネットワークに接続するコンピュータ であるのに ,「 」対し,引用発明では,サーバとなるホストコンピュータにとどまらず,() 当該コンピュータ内の具体的なファイル名ないしサービス名 情報資源まで指定するものであるが,サーバとなるホストコンピュータのアドレス指定までは共通するということができ,前記(ア)のとおり,本願補正発明の「全数字コードアドレス」はネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスであるということはできないから引用発明の U,「『RLに対応する任意の桁数の番号』は,本願補正発明の『全数字コード』。」 。 アドレス に対応するとした審決の認定を誤りということはできないウ原告は,審決が本願補正発明の「相応するデジタルコードをリンクし」との構成について検討していない旨主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
すなわち 審決にはネットワークに接続するコンピュータにアドレス ,,「を割り当てる際に,当該コンピュータを識別するための『全数字コードアドレス』として,上記『番号』を,いくつ,どのように用いるかは,それぞれの『番号』が周知技術であることを考慮すれば,当業者が適宜に行う選択事項であり (審決書5頁20行〜23行)との説示がある。 」ところで,本願補正発明の「相応するデジタルコードをリンク」するとは,本願明細書の段落【0010】の記載に照らせば,全数字コードアドレスを,電話ダイヤル又はコンピュータのキーボード入力により正確な全数字コードを連続的に入力することを意味すると解されるところ,電話ダイヤル又はコンピュータのキーボード入力それ自体は,通常行われていることであって,格別な技術事項とはいえない。そうすると,本願補正発明の「相応するデジタルコードをリンクし」との構成について,審決が検討をしていないとの原告の主張は理由がないというべきである。
エ原告は引用発明の 検索エンジンにより前記URLと前記割り当てら ,「『れた番号との対応関係を示す記憶テーブルを用いて前記URLに逆変換』することは,本願補正発明の『専用ソフトウエアによって変換』することに相当する引用発明の インターネット上の探査を行う ことは 本 。」,「『 』,願補正発明の インターネットアクセスすること に相当するとの各 『 』。」認定が誤りであると主張する。
しかし 原告が上記主張の前提とする前記第3 1(1)ア及びイの各主張 , ,を採用することができないことは,既に説示したとおりである。
そして,検索エンジンによる記憶テーブルを用いた逆変換は専用ソフトウェアによる変換の範ちゅうに含まれるものであり,インターネット上の探査もインターネットアクセスすることに変わりないことに照らせば,審決の上記各認定はいずれもこれを是認することができる。
(2)相違点の看過について本願補正発明は全数字コードアドレス が リソースに対するエイリア ,「」 ,スとしてでなくアドレス として ネットワークに接続されたコンピュー ,「」「タに割り当てられる」点において,引用発明と相違すると主張する。
しかし 前記(1)イのとおり 本願補正発明の 全数字コードアドレス は ,,「」ネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスではなく,IPアドレス,ドメイン名又は中国ドメイン名システムを求めるためのものにすぎないから,原告の上記主張は採用することができない。
2相違点の容易想到性判断の誤りについて(1)相違点1の容易想到性判断の誤りについてア原告は,引用例1における「ネットワーク上に置かれている情報提供サーバの蓄積する情報資源をアクセスするためのURL・・・を用いる審」(決書4頁37行〜5頁3行 旨の記載から 直ちに国又は地域が指定し ),,「たウェブサイトの数字コード」である「接続番号」を用いることが容易とはいえないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は審決を正解せずにこれを非難するものであり,失当である。
審決は 「接続番号」について 「引用例1・・・に『ネットワーク上に ,,置かれている情報提供サーバの蓄積する情報資源をアクセスするためのURL・・・を用いる』旨記載されており,本願補正発明のようなウェブサ『 』 イトを特定するための 国又は地域が指定したウェブサイトの数字コードである『接続番号』を用いることは,KDDIや日本テレコムなど新電電を利用する場合は『0077』や『0088』が接続番号であり,また,NTTにも東日本0036,西日本0039,NTTコム0033という,,『』 識別番号が付与されていることからみて 格別の技術ではなく接続番号,。」( ) を用いることに 困難性は見いだせない審決書4頁37行〜5頁9行との説示から明らかなとおり,URLを用いてネットワーク上の情報資源(リソース)をアクセスすることが引用例1に記載されている一方,アクセス対象の特定に「接続番号」を用いることは格別の技術ではないから,この 接続番号 を用いることに困難性はないと判断したものであって国 「」 ,「又は地域が指定したウェブサイトの数字コード」である「接続番号」を用いることがネットワーク上に置かれている情報提供サーバの蓄積する情 ,「報資源をアクセスするためのURLを用いる」との記載から直ちに容易となると判断したものではない。
なお,審決は,何に対して「接続番号」を用いるかについて明瞭に説示していないが 上記説示に引き続きネットワークに接続するコンピュー ,,「タにアドレスを割り当てる際に,当該コンピュータを識別するための『全数字コードアドレス』として,上記『番号』を,いくつ,どのように用いるかは,それぞれの『番号』が周知技術であることを考慮すれば,当業者が適宜に行う選択事項であり,本願補正発明のように構成することは,格別の創意を要することなくなし得たものである(審決書5頁20行〜2 。」5行)と説示していることに照らせば,審決は,URLに対応する任意の桁数の番号を割り当てる引用発明において,その割り当てる番号の一部として「接続番号」を用いることに困難性はない旨判断したものと理解することができる。
イ原告は 本願補正発明は接続番号と電話番号と類別番号とを組み合わ ,,「せて編成され」た「全数字コードアドレス」を用いることにより,覚えやすく,管理が便利になり,アドレスの重複がないという顕著な効果を奏するのであり,上記各番号それ自体がそれぞれ周知であったとしても,上記効果を奏する組み合わせを用いることが容易とはいえないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
まず 「覚えやすく,管理が便利」との点につき検討するに 「全数字コ , ,ードアドレス」を割り当てる対象が「ネットワークに接続するコンピュータ」であることに照らせば,その数は膨大と考えられる一方,本願補正発明における全数字コードアドレスの編成に用いられる電話番号には「ユーザーの・・・個人の電話番号」が含まれる。そして,このような個人の電話番号を当該ユーザー(個人)自身及び同人と関係が深い者が覚えているとしても,それ以外の者が覚えていることが通常とはいえないこと,そもそも覚えることができる電話番号の数は限定的であること,馴染みが深いものとはいえない接続番号及び類別番号を電話番号の前後に加えて覚えることには困難を伴うことからすれば覚えやすい という効果は普遍的な ,「」ものとはいえない また 同様に管理が便利 という効果も普遍的とは 。,,「」いえない。したがって,本願補正発明が「覚えやすく管理が便利」との効果を奏するものということはできない。
次にアドレスの重複がない との点につき検討するに アドレスに重 ,「」,複があれば,個々のコンピュータが一義的に決まらず特定できないことになるからアドレスの重複がない ことは アドレスとして採用するに当 ,「」,たっての必須事項(必要条件)であり,本願補正発明に特有の効果ということはできない。
ウ原告は,審決が「本願補正発明のようなウェブサイトを特定するための『 』『』」 国又は地域が指定したウェブサイトの数字コード である 接続番号(審決書5頁3行〜5行)と説示した点につき,本願補正発明の「全数字コードアドレス」は,エイリアスとしてURLに対応する番号を割り当てる引用発明とは異なりネットワークに接続されたコンピュータに割り当 ,「」「」, , てられるアドレス であり コンピュータの特定を行うものであって「ウェブサイトを特定するため」のものではないから,前提が異なると主張する。
しかし,原告の上記主張が失当であることは,前記1において既に説示したとおりである。
(2)相違点2の容易想到性判断の誤りについてア原告は,引用例1には,重複を防いでユニークに番号を割り当てるために,ユーザ名のアルファベットに応じて自動生成した番号に対して,さらに3桁の番号を付与していることが記載されているにすぎず,アドレスを秘密にするために暗証番号を付与することは記載されていないのに対し,本願補正発明は,ユーザ名のアルファベットに応じて自動生成された数字ではなく,接続番号と電話番号と類別番号とを組み合わせて編成された全数字コードアドレスを用いる,簡単で覚えやすいアドレスシステムであって,ユーザによっては,全数字コードアドレスを推測した第三者からのアクセスを防止したいという課題が発生するが接続番号或いは電話番号の ,「後に暗証数字番号を付すこと」により,セキュリティ性能を高めることができるものであり,このような思想は,引用例1及び2には記載も示唆もされていないと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
本願明細書の特許請求の範囲の請求項1には全数字コードアドレスに ,「おいて,ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場合,接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができ」との記載があり,発明の詳細な説明 甲5 には 暗証数字番号に関し使用中に ユーザが自分のア (),,「,ドレスを秘密にしたい場合,接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができる。その暗証数字番号は,ユーザが自ら提出して,アドレス編成先に登録することができる (段落【0010 )との記載があり, 」】本願補正発明において接続番号或いは電話番号の後に暗証数字番号を付 ,「すこと」の目的は,ユーザが自分のアドレスを秘密にすることにあると認められる しかし 本願補正発明は 上記目的を達成するために接続番 。,, ,「号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すこと」を特定しているのみであり,本願明細書には,暗証数字番号自体の特徴(例えば,桁数)や暗証数字番号を付す位置(接続番号或は電話番号の後)の技術的意義について,何らの記載もない したがって接続番号或いは電話番号の後に 付され 。,「 」る「暗証数字番号」とは,暗証のための数字番号であり,それを取り込んだ番号列は接続番号或いは電話番号の後に 相応の数字 番号 を追加 ,「 」()することにより,単に番号の桁数を増やしたものにほかならない。
,(), () 一方 引用例1 甲1 には 所定の番号列に対して番号を付加 追加することについて 「(4).上位8桁〜10桁の番号も,必要に応じてユー ,ザが望む場合には上位1〜5桁,さらに上位1〜7桁のユニーク性を高めるために3桁の数字を付加する段落 0026との記載があり ユ 。」(【】),ーザが望む場合,番号列のユニーク性を高めるために3桁の数字を付加する技術が開示されている。本願補正発明と引用発明とは,番号の桁数を増やした点において共通し,異なる点はない。
そして,弁論の全趣旨によれば,情報を秘密にしたい(秘匿性を高めたい)場合に,当該情報に暗証番号を付加することは,本願優先日前に周知の技術であったと認められる。
そうすると,引用例1には,引用発明において,元の番号列のユニーク性(特異性)を高めるため,新たな数字を付加することが開示されているところ,情報を秘密にする(秘匿性を高める)ことは,情報の特異性を高めることの一態様といえるから 引用発明において 情報を秘密にする 秘 ,,(匿性を高める)ために,暗証数字番号という新たな数字を付加(追加)することは,当業者であれば容易に想到し得たものというべきである。
,,「 」 イ原告は 引用例1及び2にはネットワークに接続するコンピュータに「全数字コードアドレス」を割り当てることは開示されていないと主張する。
,,「」 しかし 前記1(1)イのとおり 本願補正発明の 全数字コードアドレスはネットワークにおける物理的な場所を反映したアドレスであるということはできず引用発明の URLに対応する任意の桁数の番号 は 本願 ,「『 』 ,補正発明の 全数字コードアドレス に対応するとした審決の認定に誤 『』。」りはないから,原告の上記主張は失当である。
(3)その他の誤りについてア原告は 本願補正発明は全数字コードアドレス が リソースに対す ,,「」 ,るエイリアスとしてでなくアドレス として ネットワークに接続され ,「」「たコンピュータに割り当てられる」点において,引用発明と相違するところ,引用例1及び2には,オペレータとIPアドレスとの間に位置するネットワークエイリアスに関する技術が記載されているにとどまり,本願補正発明のような,IPアドレスとネットワークの実体との間に位置する技術については,何らの記載も示唆もないと主張する。
しかし 本願補正発明は全数字コードアドレス が リソースに対す ,,「」 ,るエイリアスとしてでなくアドレス として ネットワークに接続され ,「」「たコンピュータに割り当てられる」ものであり,IPアドレスとネットワークの実体との間に位置する技術である旨の原告主張が失当であることは,前記1(1)ア,イ及び(2)のとおりである。したがって,原告の上記主張はその前提を欠くものであって,採用することができない。
イ原告は,本願補正発明は,?@「ネットワークに接続するコンピュータに割り当てられる全数字コードアドレス」が,ネットワーク及びネットワークに接続されたコンピュータによって直接使用されることができ,アドレッシング処理が非常に簡単にされる ?A 全数字コードアドレス は接 , 「」 ,「続番号と電話番号と類別番号とを組み合せて編成され」たものであり,覚えやすく,管理が簡単となり,アドレスの重複がないものとなる,?B「前記全数字コードアドレスにおいて,ユーザが自分のアドレスを秘密にしたい場合 接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すことができセ , 」,キュリティの向上も可能である,という作用効果を奏し,これらの作用効果は,引用例1及び2の記載から当業者が予測できる範囲のものであるとはいえないと主張する。
しかし ?@本願補正発明がネットワークに接続するコンピュータに割 ,,「り当てられる全数字コードアドレス」が,ネットワーク及びネットワークに接続されたコンピュータによって直接使用されることができ,アドレッシング処理が非常に簡単にされるとの原告主張の作用効果を奏するといえ,, , ないことは 前記1(1)ア イ及び(2)に説示したところから明らかであり?A 接続番号或は電話番号の後に暗証数字番号を付すこと は 前記(2)の 「 」 ,とおり,引用発明及び周知技術から容易に想到し得たものであって,これによるセキュリティの向上も可能であるという作用効果も当業者が予測で,,「,, きないものではなく ?B本願補正発明が覚えやすく 管理が簡単となりアドレスの重複がない との作用効果を奏するといえないことは 前記(1) 」 ,イのとおりである。
3結論上記検討したところによれば,原告主張の取消事由は理由がなく,その他,原告は縷々主張するが,いずれも理由がない。また,審決に,これを取り消すべきそのほかの誤りがあるとも認められない。
よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 大鷹一郎
裁判官 嶋末和秀