関連審決 | 訂正2005-39193 異議2003-73414 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成19行ケ10133審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10206審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10097審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成20行ケ10300審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成19行ケ10176審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 方法の発明 / 製造方法 / 頒布された刊行物 / 進歩性(29条2項) / 同一技術分野(同一の技術分野) / 容易に発明 / 引用発明の認定 / 相違点の認定 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 化学構造 / クレーム / 参酌 / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 設定登録 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 訂正明細書 / 取消決定 / |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10346号
審決取消請求事件
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原告ダイセル化学工業株式会社 訴訟代理人弁護士吉澤敬夫 同 牧野知彦 訴訟代理人弁理士新井力 同 岡崎信太郎 同 新井全 同 飯塚聖子 被告特許庁長官肥塚雅博 指定代理 人福井美穂 同 井出隆一 同 唐木以知良 同 大場義則 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2008/01/31 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1特許庁が訂正2005−39193号事件について平成18年6月19日にした審決を取り消す。 2訴訟費用は,被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求主文と同じ第2当事者間に争いのない事実1特許庁等における手続の経緯平成9年9月30日に特許出願された特願平9-282664号 原告は,「放射線感光材料用樹脂の製造方法」とし の一部を分割して,発明の名称を平成13年10月15日に特許出願し,平成15年4月18日に特許権の設 て定登録がされた(特許第3421328号。以下「本件特許」という。請求項の数は5である。。)本件特許に対し,請求項1ないし5に係る特許について特許異議の申立て(異議2003-73414号)がされ,特許庁は,平成17年6月14日。, 付けで請求項1ないし5に係る特許を取り消す特許異議決定をした原告は決定に対して,同年7月26日付けで特許取消決定取消請求訴訟を提起した(当庁平成17年(行ケ)第10586号 。)原告は,本件特許につき,平成17年10月21日付けで訂正審判の請求(訂正2005-39193号事件)をし,これに対して,特許庁は,平成18年6月19日に 「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をし, , 。 その謄本は同月29日に原告に送達された。 2明細書における特許請求の範囲(甲5。 設定登録時の明細書(甲9)及び訂正審判請求書に係る訂正明細書の各特許請求の範囲の記載は,次のとおり 以下「本件訂正明細書」という )。 である。 ( )設定登録時の特許請求の範囲1【請求項1】加熱された溶媒中に,極性基含有脂環式官能基を有するモノマー(C)及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマー(D)及び重合開始剤又は重合触媒を添加し,共重合させることを特徴とする極性基含有脂環式官能基及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を1分子中にそれぞれ少なくとも1つ以上有する放射線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 【】(),,,, 請求項2モノマー C の極性基が ケトン アルコール エーテルエステル,カルボン酸,酸無水化合物,又はこれらの構造の一部の原子が硫黄,窒素,若しくはハロゲンで置換された構造の基であることを特徴とする請求項1に記載の放射線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 【請求項3】モノマー(C)の脂環式官能基が,ノルボニル基,シクロヘキシル基,トリシクロデカニル基又はアダマンチル基であることを特徴とする請求項1に記載の放射線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 【】(),,,, 請求項4モノマー C の極性基が ケトン アルコール エーテルエステル,カルボン酸,酸無水化合物,又はこれらの構造の一部の原子が,, ,() 硫黄 窒素 若しくはハロゲンで置換された構造の基であり モノマー Cの脂環式官能基が,ノルボニル基,シクロヘキシル基,トリシクロデカニル基又はアダマンチル基であることを特徴とする請求項1に記載の放射線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 【請求項5】樹脂(A)がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放射線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 における特許請求の範囲 ( )本件訂正明細書2訂正前の請求項2ないし4については削除し,訂正前の請求項5を繰り上げて訂正後の請求項2とした。以下,これらの発明を請求項の番号に対応して「本件訂正発明1「本件訂正発明2」という。 」,【請求項1】加熱された溶媒中に,極性基含有脂環式官能基を有するモノマー(C)であるヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマー(D)及びラジカル重合開始剤を添加し,共重合させることを特徴とするヒドロキシアダマンチル基及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を1分子中にそれぞれ() 少なくとも1つ以上有する半導体集積回路用遠紫外線感光材料用樹脂 Aの製造方法。 【請求項2】樹脂(A)がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路用遠紫外線感光材料用樹脂(A)の製造方法。 3審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件訂正発明1及び2は,いずれも本件特許の親出願(特願平9-282664号)の出願前に頒布された刊行物である特開平7-252324号公報(本訴における甲1の1,審判における甲1。以下「刊行物1」という )及び特開平6-3826号公報(本 。 訴における甲1の2,審判における甲2。以下「刊行物2」という )に基づ 。 いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の要件を充足しないから,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではなく,同法126条5項の規定に適合しない,というものである。 審決の認定した刊行物1記載の事項(以下「刊行物1方法」という )並び。 に本件訂正発明1と刊行物1方法との一致点及び相違点は,次のとおりである(本件訂正発明2と刊行物1方法との一致点及び相違点も同様である。。)( )刊行物1方法(審決書8頁26行〜33行)1「ArFエキシマレーザ等の遠紫外線で露光させる半導体素子用感光性樹脂組成物に用いられる共重合体(2)を製造する方法であって,単量体(1)において,R が水素原子でR がアダマンタンジイル基の(メタ)アクリレ1 2ートと,共重合単量体としての(2-テトラヒドロピラニル (メタ)アク )リレートとを,テトラヒドロフラン溶剤中,ラジカル開始剤を加えて50〜70℃で共重合反応させる方法」なお,審決は,審決書において格別の定義をすることなく,刊行物1とは異なる「共重合体(2「単量体(1 」との語を使用する。しかし,審 )」,)決及び刊行物1の各記載に照らすならば,それぞれ 「一般式(2)で示さ ,れるビニル基含有重合体のうちの(単独重合体でなく)共重合体」及び「一般式(1)で示されるビニル基含有単量体」を指すものと理解することが明らかである。 ( )一致点(審決書8頁35行〜9頁2行)2「極性基含有脂環式官能基を有するモノマー(C)であるヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を有するモノマー(D)及びラジカル重合開始剤を添加し,共重合させることを特徴とするヒドロキシアダマンチル基及び酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基を1分子中にそれぞれ少なくとも1つ以上有する半導体集積回路用遠紫外線感光材料用樹脂(A)の製造方法」である点。 ( )相違点(審決書9頁3行〜5行)3訂正発明1における,モノマー(C ,モノマー(D)及び重合開始剤又 )は重合触媒を「加熱された溶媒中に添加して」共重合させる点が刊行物1には記載されていない点。 第3原告主張の取消事由, 。 次のとおり 本件訂正発明1の進歩性を否定した審決の認定判断は誤りであるまた,本件訂正発明2は,本件訂正発明1を引用する内容であり,刊行物1方法との対比においては本件訂正発明1と同一の相違点を有するから,本件訂正発明2についての審決の判断も誤りである。 1取消事由1(刊行物1方法の認定等の誤り)審決は,上記刊行物1方法を刊行物1に記載された事項として認定している。しかし,?@刊行物1方法が刊行物1に記載されているということはでき一般式(2)は,レジスト材料として使 ないこと,?A刊行物1の請求項2の用できない組成物を,抽象的にその特許請求の範囲として記載している点で適切でないこと,?B刊行物1の開示する技術思想全体が化学反応の理論に反していることから,審決が,本件訂正発明1の進歩性の判断の前提として,刊行物1方法と対比した点には誤りがある。 ( )一般式(2 (ないしは,一般式(2)で示され1 刊行物1の請求項2の)るビニル基含有重合体において,a+b=1,b=d=0の場合など)は,抽象的に膨大な数の組成物を包含するが,一般式(2)では,各種置換基は記載されていても,それらの置換基のどの組合せがレジスト材料として利用できるのか,具体的組成物を全く特定していないから,この一般式から刊行物1に記載された事項として認定することはできない(上記一般式から本件訂正発明1の具体的なレジスト材料としての組成物を導くことはできない。なお,被告が挙げる実施例18,22も,本件訂正発明1の範囲外 。)である。 刊行物1は,( )で述べるとおり,アルカリ可溶性についての材料の特 ( )23一般式 性を誤解しているものであって,正しい化学の知識に基づいて上記(2)を理解すると,かえってレジスト材料として使用できない組成物をクレームしているものといえる。実施例18,22についても,水酸基を有する有橋環式炭化水素基を持つユニットがアルカリ可溶となるという誤解に基づいた構成であるため,アルカリ可溶となることはなく,レジスト材料としては使用できない。 「R が水素原子である一般式(1)の単量体」及び「R が ( )刊行物1は3 , 1 1ターシャルブトキシカルボニル基である一般式(1)の単量体」が 「アル,カリ可溶基」及び「酸によりアルカリ可溶基を生じる官能基」を有するとする化学上の誤解に基づき,有橋環式炭化水素基をもつ単量体の組合せによっても,露光前後で溶解度差を発現できる重合体を得られるとする一貫した記載がされている。そして,一般式(2)も,一般式(1)を基本とする発明にほかならず,一般式(2)に相当する実施例もすべて一般式(1)の単量体がアルカリ可溶であるという誤解に基づいている。 すなわち,刊行物1の発明は,一般式(1)の単量体でR が水素であるも 1の,つまり一般式(2)で表される共重合体のa成分でR が水素原子であ 1るもの(これを仮にB成分と呼ぶ )は,アルカリ現像液に溶解することを 。 基礎として構成されており,またこのB成分を保護基で保護したもの(一般式(2)のa成分でR がターシャルブトキシカルボニル基等の保護基であ1るユニット,仮にA成分と呼ぶ )も,保護基がある間はアルカリには不溶 。 であるが,露光により保護基がはずれてB成分となり,アルカリに溶解すると考えるものであって,刊行物1はすべてこの誤った技術思想に基づいて構成された発明が記載されている。 上記B成分がアルカリ可溶であるという技術思想は,化学の原則に反し,, 。 重大な瑕疵があるから 刊行物1に記載されている技術は発明に該当しないまた,刊行物1の実施例もすべて一般式(1)の単量体(R1が水素原子であるもの)がアルカリ可溶であることを前提としているが,これも化学反応の理論に反している。このような誤った技術思想を開示した刊行物1を基礎にして,本件訂正発明1の組成物を導き出せると断定することは,誤りである。 2取消事由2(相違点に係る容易想到性の判断の誤り)本件訂正発明1におけるモノマーCがヒドロキシアダマンチルメ ( )1 ()「(タ)アクリレート」である場合について,これがどのような製造方法によって適切なレジスト材料が得られるかについて,刊行物1と刊行物2による一レジスト材料の膜 般的な知識のみから判断することはできない。すなわち,厚の均一性を得るという観点から,どのような製造方法が適するかは,選択するモノマーごとに異なり,本件訂正発明1におけるモノマー(C)が「ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート」である場合について,添加重合法が適するという知見は,それぞれの組み合わせについて研究しかつ実験してみないとわからない。 審決は,本件訂正発明1におけるモノマーの組合せと,それによってもたらされる効果の差異を参酌することなく,本件訂正発明1の進歩性を否定したものであって,誤りである。 審決は,刊行物1と刊行物2とは同一の技術分野のごく近接した技術で ( )2あるとするが,誤りである。 刊行物2に記載のレジスト材料は,リソグラフィの技術を応用したものではあっても,その内容は明らかに液晶ディスプレー(LCD)に用いるカラーフィルタ向けの技術であり,本件訂正発明1の対象とする半導体集積回路用のものではない。 レジスト材料の膜厚の均一性を得るという点からは,どのような製造方法が適するかは,選択する材料であるモノマーごとに異なり,本件訂正発明1() 「()」 におけるモノマー C が ヒドロキシアダマンチル メタ アクリレートである場合について,添加重合法が適するという知見は,それぞれの組合せについて研究しかつ実験してみないとわからない。 仮に,刊行物2により添加重合法が公知であったとしても,刊行物2のモノマーの組合せの反応では,レジスト膜厚の均一性について添加重合法と一括重合法で差異が生じないか,少なくとも特定の傾向が見出せないこと,及び,刊行物2は半導体集積回路を製造する分野とは異なるカラーフィルタの製造分野に関するものであることに照らすならば,刊行物2の方法を刊行物1に適用することについて阻害事由があるというべきである。 本件訂正発明1におけるモノマーCがヒドロキシアダマンチルメ ( )3 ()「(タ)アクリレート」と添加重合法を組み合わせた本件訂正発明1の方法によって,半導体集積回路技術に適する超微細加工を可能とする均一なレジスト膜が得られる。本件訂正発明1における「膜厚の均一性」との効果は,進歩性の判断において参酌すべき格別な効果であるにもかかわらず,このような作用効果を参酌しなかった審決の判断には誤りがある。 第4被告の反論1取消事由1(刊行物1方法の認定等の誤り)に対して,,, ( )審決の認定の具体的裏付けとなる部分は 刊行物1の実施例18 19122及び24である。 実施例18では「メチレン基が2つ結合したトリシクロデカン-4,8-ジイル基」であって「アダマンタンジイル基」ではないが,刊行物1では等価物として同等に扱っている(段落【0020【0021 )から,刊行 】,】物1の実施例18により,刊行物1には「R がアダマンタンジイル基」の2場合についての裏付けも実質的に記載されている。 ( )刊行物1に信憑性を疑う余地はなく,実施例22も審決の認定の裏付け2になる。 原告は,刊行物1は誤った思想に基づいた構成された発明のみが記載されていると主張する。 しかし,刊行物1の特許請求の範囲には,化学構造上,本件訂正発明1と一致するものが記載されているのであるから,刊行物1記載の発明が誤りということはできない。 原告は,刊行物1における,A成分が露光により保護基がはずれてB成分となり,アルカリに溶解するとの記載は技術思想として誤りであると主張する。しかし,仮に同主張を前提としても,刊行物1にはa成分とc成分のみの場合があり得るから,本件訂正発明1と一致するものが記載されているということができる。 原告は,刊行物1の実施例がその目的を達成しないものであることを証明するための実験結果(甲1の12,13,甲3)を提出するが,同実験結果には,分子量やコポリマーの量が示されず,光酸発生剤や溶媒,露光条件が明らかではないから,正確な追試実験ということはできない。 2取消事由2(相違点に係る容易想到性の判断の誤り)に対して( )原告は,レジスト材料の膜厚の均一性を得るという観点から,どのよう1な製造方法が適するかは,選択するモノマーごとに異なり,本件訂正発明1() 「()」 におけるモノマー C が ヒドロキシアダマンチル メタ アクリレートである場合について,添加重合法が適するという知見は,それぞれの組み合わせについて研究しかつ実験してみないとわからない旨を主張する。 , , しかし 刊行物2に記載された発明も本願発明と同一の技術分野のものでしかも(メタ)アクリレート重合性モノマーという本件訂正発明1におけるモノマー(C)である「ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート」を含むものであるから,刊行物1の記載の発明に刊行物2記載の添加重合法を適用することに困難性はない。 ( )原告は,刊行物2記載のレジスト材料は,本件訂正発明1の対象とする2半導体集積回路用のものではないと主張する。 しかし,刊行物2には 「 産業上の利用分野】本発明は印刷板,集積回 ,【路用フォトレジストおよびカラーフィルター用フォトレジスト材料などに有用なポジ型レジスト組成物に関し(段落【0001 )と 【産業上の利 ,」】,用分野】として「集積回路用フォトレジスト」と記載され,また 「 従来 ,【の技術】近年の集積回路技術の発達に伴い,高解像度のフォトリソグラフィーパターンを形成することが可能なポジ型レジストに対する関心が高まっている(段落【0002 )と記載され 「集積回路技術」を念頭においた 。」】,ものであることは明らかである。 ( )原告は,本件訂正発明1が,格別顕著な効果を奏すると主張する。 3しかし,本件訂正明細書には 「膜厚の均一性」は何ら記載されていない ,し,また,刊行物1の発明も 「均一な塗布膜 ( 膜厚の均一性」と同義) ,」「を形成し得るものであるから 「膜厚の均一性」という効果について刊行物 ,1と異なるとする原告の主張は,失当である。 第5当裁判所の判断刊行物1方法が記載されていると認定した 当裁判所は,審決が,刊行物1に点には誤りがあると判断する。その理由は,以下のとおりである。 1刊行物1の記載刊行物1(甲1の1)には,以下の記載がある。 ( )請求項1及び2の各記載1ア「 請求項1】一般式(I)で示されるビニル基含有単量体。 【【化1】(上式において,R は水素原子,ターシャル-ブトキシカルボニル基,1テトラヒドロピラン-2-イル基,テトラヒドロフラン-2-イル基,4-メトキシテトラヒドロピラニル基,1-エトキシエチル基,1-ブトキシエチル基,あるいは1-プロポキシエチル基,R は有橋環式炭化水素2基を有する炭素数7ないし12の炭化水素残基,R は水素原子あるいは 3メチル基を表す(特許請求の範囲の請求項1) )」イ「 請求項2】一般式(2)で示されるビニル基含有重合体。 【【化2】(上式において,R およびR は水素原子,ターシャル-ブトキシカルボ 1 6ニル基,テトラヒドロピラン-2-イル基,テトラヒドロフラン-2-イル基,4-メトキシテトラヒドロピラニル基,1-エトキシエチル基,1-ブトキシエチル基,あるいは1-プロポキシメチル基,R およびR は2 4有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭化水素残基,R , 3R ,R およびR は水素原子あるいはメチル基,a+b+c+d=1, 57 8aとbは同時に0であることはなく,aは0ないし0.9,bは0ないし0.9,cは0ないし0.7,dは0ないし0.5,nは10〜500の整数を表す (特許請求の範囲の請求項2) )( )刊行物1の発明の詳細な説明の記載欄には 「一般式(2)で示される2 ,ビニル基含有重合体」の化学構造及び「一般式(1)で示されるビニル基含有単量体」を重合させて上記重合体を製造することに関して,次の各記載がある。 「, , ア本発明は 新規なビニル基含有単量体およびそれらの重合体に関わり特に波長か220以下の紫外線を露光光とする感光性樹脂組成物に好nm適に用いられる樹脂に関するものである (段落【0001 ) 」】イ「本発明は,一般式(I)で表される新規なビニル基含有単量体,【化3】(上式において,R は水素原子,ターシャル-ブトキシカルボニル基, 1テトラヒドロピラン-2-イル基,テトラヒドロフラン-2-イル基,4-メトキシテトラヒドロピラニル基,1-メトキシエチル基,1-エトキシエチル基,1-ブトキシエチル基,イソプロポキシエチル基,n-プロポキシメチル基あるいはターシャル-プロポキシメチル基など,R は有2橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭化水素残基,R は水 3), () 素原子あるいはメチル基を表す 及び それらから誘導される一般式 2で表される新規な重合体,【化4】(上式において,R およびR は水素原子,ターシャル-ブトキシカルボ1 6ニル基,テトラヒドロピラン-2-イル基,テトラヒドロフラン-2-イル基,4-メトキシテトラヒドロピラニル基,1-メトキシエチル基,1-エトキシエチル基,1-ブトキシエチル基,イソプロポキシエチル基,, , n-プロポキシエチル基 あるいはターシャル-プロポキシエチル基などR およびR は有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭化水2 4素残基,R ,R ,R およびR は水素原子あるいはメチル基,a+b+ 357 8c+d=1,aとbは同時に0であることはなく,aは0ないし0.9,bは0ないし0.9,cは0ないし0.7,dは0ないし0.5,nは10〜500の整数を表す)である。 R およびR は有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭化2 4水素残基であり,より好ましくは有橋環式炭化水素基を有する炭素数7な2 いし12の脂肪族炭化水素残基である。また,一般式(2)においてRとR ,およびR ,R ,R とR は同一であっても良いし,異なってい4 3578ても構わない。より具体的には,R ,R ,R とR (判決注: R , 3578 3 「R ,R とR 」は「R とR 」の誤記と認める )は例えばトリシクロ578 24 。 [. . .],,, 5 2 1 0デカン-4 8-ジメチレンノルボルナン-22 6.6-ジメチレン基,トリシクロ[5.2.1.0]デカンジイル基,2.6アダマンタンジイル基,ノルボルナン-2,3-ジイル基,ノルボルネン-2,2-ジメチレン基,ノルボルナン-2,3-ジメチレン基,ノルボルナン-2,5-ジメチレン基,ビシクロ[2.2.2]オクテン-2,3-ジメチレン基,などである。 【表1】(判決注 「ノルボルナンジメチル基」とあるのは 「ノルボルナンジメ , ,チレン基」の誤記と認める(段落【0015】〜【0021 ) 。) 】ウ「また一般式(1)で表される単量体の単独重合により相当する単独重合体(一般式(2)のa=1の高分子化合物)を得ることが出来る(段。」落【0026 )】エ「一般式(2)で表される共重合体はR がターシャル-ブトキシカル 1() () ボニル基である一般式 1 の単量体とR が水素原子である一般式 1 1で表される単量体の仕込み割合及びその他の重合条件を選定することによ。」(【】) り任意のa値を有する共重合体を得ることが出来る段落 0027オ【作用 「本発明の新規な単量体を重合することにより得られる新規な 】重合体を利用することにより,新規な水酸基含有単量体及び重合体を提供できる ・・・ (段落【0044 ) 。」】( )刊行物1には,実施例1〜24が示されている。 3() , , , , ,, ア一般式 1 の単量体の製造例として実施例1 2 3 6 9 15,,,() , , 16 20 21が 一般式 2 の重合体の製造例として実施例4 57,8,10,13,17,18,22が,レジスト材料の製造及び試験例として実施例11,12,14,19,23,24が,それぞれ記載されている(段落【0045】〜【0107。】)イ上記のうち,一般式(2)の重合体であって共重合体の製造例は,実施,,,。,。 例5 13 18 22である 各実施例の概要は 以下のとおりである(ア)実施例5は「部分ターシャル-ブトキシカルボニル(BOC)化ポリマーの合成」とするものである。OH基が結合したトリシクロデカンジメチレン基(判決注:表1の1番目。以下も同じ )を有する繰返し 。 単位と,OCOOC(CH ) 基が結合したトリシクロデカンジメチレ33ン基を有する繰返し単位からなる共重合体の合成例であって,一般式(2)においてR 及びR がトリシクロデカンジメチレン基,a+b=2 41,c=d=0。OH基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位のみからなる単独重合体のOH基の一部をOCOOC(CH ) 基に変換して製造するものである。 33(イ)実施例13は「 2-テトラヒドロピラニル)オキシメチルトリシ (クロデカンメタノールメタクリレートとトリシクロデカンジメタノールモノメタクリレートの共重合体の合成」とするものである。OH基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位と (2-,テトラヒドロピラニル)オキシ基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位からなる共重合体の合成例であって,一般式(2)においてR 及びR がトリシクロデカンジメチレン基,a+b=2 41,c=d=0。共重合体のそれぞれの繰返し単位に対応する単量体を共重合させて製造するものである。 (ウ)実施例18は「 2-テトラヒドロピラニル)メタクリレートとト (リシクロデカンジメタノールモノメタクリレートとの共重合体の合成」とするものである。OH基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位と (2-テトラヒドロピラニル)メタクリレートか ,らの繰返し単位からなる共重合体の合成例であって,一般式(2)においてR 及びR がトリシクロデカンジメチレン基,a+b=0.65,2 4c=0.35,d=0。共重合体のそれぞれの繰返し単位に対応する単量体を共重合させて製造するものである。 (エ)実施例22は「 1-(エトキシ)エチル)オキシメチルトリシク (ロデカンメタノールメタクリレートと(2-テトラヒドロピラニル)メタクリレートとトリシクロデカンジメタノールモノメタクリレート,およびメタクリル酸の4元共重合体の合成」とするものである。OH基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位と,2-エトキシエチル基が結合したトリシクロデカンジメチレン基を有する繰返し単位と,2-テトラヒドロピラニル)メタクリレートからの繰返し単位と,メタクリル酸からの繰返し単位からなる共重合体の合成例であって,一般式(2)においてR 及びR がトリシクロデカンジメチレン2 4基,a=0.38,b=0.33,c=0.12,d=0.17。共重合体のそれぞれの繰返し単位に対応する単量体を共重合させて製造するものである。 ( )刊行物1には 「一般式(2)で示されるビニル基含有重合体」の重合4 ,「 , 」 条件が テトラヒドロフラン溶剤中 ラジカル開始剤を加えて50〜70℃であることに関して,次の各記載がある。 ア「一般式(1)で表される単量体の重合反応は,例えばテトラヒドロフラン溶剤中,不活性ガス(アルゴン,窒素など)雰囲気下,適当なラジカル開始剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル,単量体/開始剤の仕込みモル比=10〜200)を加えて50〜70℃で0.5〜10時間加熱攪拌することにより実施される(段落【0028 ) 。」】イ実施例1〜24のうち,一般式(2)の重合体の製造例は,実施例4,5,7,8,10,13,17,18,22であるが,これらの重合反応には,上記の条件が採用されている。 ( )刊行物1には 「一般式(2)で示されるビニル基含有重合体」がAr5 ,Fエキシマレーザー等の遠紫外線で露光させる半導体素子用感光性樹脂組成物に用いられることに関して,次の各記載がある。 ア「 請求項3】少なくとも請求項2に記載の樹脂と,露光により酸を発 【生する光酸発生剤を含有する・・・感光性樹脂組成物(特許請求の範。」囲の請求項3)イ発明の詳細な説明欄には 「本発明は・・・特に波長が220nm以下 ,の遠紫外線を露光光とする感光性樹脂組成物に好適に用いられる樹脂に関するものである 」との記載(段落【0001「一般式(2)で表さ 。 】),れる重合体の薄膜(膜厚=1.0μm)のArFエキシマレーザ光(19) , 。」 3nm の透過率は65〜75%と高く 実用的であることを確認した(段落【0030 )との記載 「本発明の・・・新規な・・・重合体の 】,利用により220nm以下の光の透明性が高く,ドライエッチング耐性が高く,且つ露光前後の溶解度差を発揮しうる官能基を有し,基板密着性の向上した新しいレジスト用樹脂材料が提供され,これらと感光剤(光酸発生剤)からなる感光性組成物により,220nm以下の短波長光露光により発生したプロトン酸を触媒とした水酸基保護基の分解によりレジストの溶解性の著しい変化が誘起される。その結果,微細パターンが形成可能となる 」との記載(段落【0044 )がある。 。 】ウまた,発明の詳細な説明欄には 「本発明の‥‥‥新規な重合体を含有 ,成分とする感光性樹脂組成物は,220nm以下の遠紫外領域に対し高い透明性を有し,かつ遠紫外線の露光光に対し高い感度,解像度を示し,220nm以下の遠紫外線とくにArFエキシマレーザを露光光とするフォトレジストに最適なものである。さらに,本発明の感光性樹脂組成物を用いることで,半導体素子製造に必要な微細パターン形成が可能である 」。 との記載もある(段落【0108。】)エ実施例1〜24のうち,レジスト材料の製造及び試験例は実施例11,,,,,,,,, 12 14 19 23 24であり それぞれに実施例5 13 1822の樹脂が用いられている(段落【0070【0071【007 】,】,5【0091【0106【0107。 】,】,】,】)その概要は,次のとおりである。 (ア)実施例11は,実施例5の樹脂を用いたレジスト材料の調製例である。光酸発生剤として 「シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘ ,) 」 ,. キシル スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート を 樹脂0950gに対して0.050g使用している。193.4nmにおける透過率は,71%である。 , 。 (イ)実施例12は 実施例11のレジストのパターン解像実験例である露光光として,ArFエキシマレーザー光を使用している。露光エネルギー約35mJ/cm で,解像性は,0.25μmラインアンドスペ2ースである。 (ウ)実施例14は,実施例13の樹脂を用いたレジスト材料の調製例及びパターン解像実験例である。光酸発生剤は,実施例11と同様であり(透過率は記載なし,パターン解像実験は,実施例12と同様であ 。)る。露光エネルギーは,約15mJ/cm であり,解像性は,0.225μmラインアンドスペースである。 (エ)実施例19は,実施例18の樹脂を用いたレジスト材料の調製例である。光酸発生剤として 「シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロ ,ヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート」を,樹脂0.995gに対して0.005g使用している。193.4nmにおける透過率は,68%である。 (オ)実施例23は,実施例22の樹脂を用いたレジスト材料の調製例である。光酸発生剤として 「シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロ ,ヘキシル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート」を,樹脂0.995gに対して0.005g使用している。193.4nmにおける透過率は,65%である。 (カ)実施例24は,実施例19及び23のレジストの試験例である。実施例19のレジストは,露光エネルギー約43mJ/cm で,解像性2は,0.25μmラインアンドスペースである。実施例23のレジストは,露光エネルギー約30mJ/cm であり,解像性は,0.3μm2ラインアンドスペースである。 2判断上記1の認定に基づいて判断する。 ( )刊行物1には,以下のような各発明が記載されていると認められる。ま1ず,以下のような条件のいずれかを満たす感光性樹脂組成物に用いられる樹脂及びその製造方法に係る各発明が記載されている。すなわち,?@刊行物1の請求項2に記載された一般式(2 (定義した置換基によるものを指す ) ) 。 で示されるビニル基含有重合体であるもの,?A刊行物1の段落【0018】〜【0019】に記載された一般式(2 (定義した置換基によるものを指 )す )で示されるビニル基含有重合体であるもの,?B上記?@又は?Aにおいて 。 式中R 及びR で示される「有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12 42の炭化水素残基」が「有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の2 4 脂肪族炭化水素残基」であるもの,?C上記?@又は?Aにおいて式中R 及びRで示される「有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭化水素残基」が「トリシクロ[5.2.1.0]デカン-4,8-ジメチレン,2.6ノルボルナン-2,6-ジメチレン基,トリシクロ[5.2.1.0]2.6,,,, デカンジイル基 アダマンタンジイル基 ノルボルナン-2 3-ジイル基ノルボルネン-2,2-ジメチレン基,ノルボルナン-2,3-ジメチレン基,ノルボルナン-2,5-ジメチレン基,ビシクロ[2.2.2]オクテン-2,3-ジメチレン基」から選ばれるもの,?D上記?@又は?Aにおいて式中R 及びR で示される「有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし122 4の炭化水素残基」が表1に記載の「トリシクロ[5.2.1.0]デカ2.6ンジメチレン基トリシクロ 5 2 1 0デカンジイル基ノ 」,「[. . .]」,「2 6.ルボルナンジイル基「ノルボルナンジメチル基(判決注 「ノルボルナン 」, ,ジメチレン基」の誤記と認める「アダマンタンジイル基」から選ばれ 。)」,るもの,?E実施例4,5,7,8,10,13,17,18又は22に記載された樹脂に係るものに係る発明が記載されている。 また,刊行物1には,a当該樹脂の用途が 「ArFエキシマレーザ等の ,遠紫外線で露光させる半導体素子用感光性樹脂組成物に用いられる」である発明,及び,b当該樹脂のための単量体の重合方法が 「テトラヒドロフラ ,ン溶剤中,ラジカル開始剤を加えて50〜70℃で共重合反応させる」である発明が記載されているといって差し支えない。 ,,,「() ( )しかし 刊行物1には 審決が認定したような 当該樹脂が 単量体 12において,R が水素原子でR がアダマンタンジイル基の(メタ)アクリレ 1 2ートと,共重合単量体としての(2-テトラヒドロピラニル (メタ)アク )リレート」を共重合させて得られる共重合体に係る感光性樹脂組成物に用いられる樹脂及びその製造方法の発明が記載されていると認めることはできない。 すなわち,刊行物1に,特定の単量体を共重合させて得られる特定の共重合体に係る発明が記載されているというためには,一般式(2)で示される重合体において,R 及びR が「アダマンタンジイル基」であるとともに,2 4添え字aが付された繰返し単位であってR が水素原子でないものが存在せ 1ず,添え字aが付された繰返し単位であってR が水素原子であるもの及び 1添え字bが付された繰返し単位の少なくとも一方が存在し,添え字cが付さ, れた繰返し単位が存在しかつR がテトラヒドロピラン-2-イル基であり6添え字dが付された繰返し単位が存在しないこと等の条件により特定した,具体的な共重合体が記載されていることを要するというべきである。 ところが,刊行物1には,?@審決が認定した特定の単量体を共重合させて得られる特定の共重合体は具体的に示されていないし,実施例に記載されたものは化学構造が異なること,?A刊行物1の請求項2又は段落【0018】〜【0019】に記載された一般式(2 (定義した置換基によるものを指 )す )で示されるビニル基含有重合体は,無数の高分子化合物を包含する上 。 位概念であり,審決が認定した特定の単量体を共重合させて得られる特定の共重合体は,その1つにすぎないこと,?B仮に,上記?@の一般式(2)の重合体について,置換基その他について,より好ましいとされ,又はより具体2 化された態様に限られるとしても,刊行物1における開示内容は,式中R及びR で示される「有橋環式炭化水素基を有する炭素数7ないし12の炭4化水素残基」を,表1に記載の「トリシクロ[5.2.1.0]デカン2.6ジメチレン基「トリシクロ[5.2.1.0]デカンジイル基「ノ 」, 」,2.6ルボルナンジイル基「ノルボルナンジメチル基( ノルボルナンジメチレ 」, 「ン基」の誤記 」又は「アダマンタンジイル基」から選択できるという程度 )の限定がされたにすぎず,具体的な開示がされたとはいえないことから,刊, 。 行物1には そのような特定された共重合体の記載はないと解すべきであるしたがって,刊行物1方法に係る審決の引用発明の認定には誤りがあり,これに基づいてした審決の一致点,相違点の認定にも誤りがある。 ( )これに対し,被告は,刊行物1の実施例18は「メチレン基が2つ結合3したトリシクロデカン-4,8-ジイル基」であって「アダマンタンジイル」, (【】, 基 ではないが 刊行物1では等価物として扱われている 段落 0020【0021 )から,刊行物1の実施例18により,刊行物1には「R が 】2アダマンタンジイル基」の場合について,実質的な裏付けが記載されていると主張する。 しかし,化学構造が異なる化学物質は,物としては別の化学物質なのであ,「 ,」 るからメチレン基が2つ結合したトリシクロデカン-4 8-ジイル基(以下「トリシクロデカンジメチレン基」という」を有する化学物質が 。)記載されているときに,これとは異なる「アダマンタンジイル基」を有する化学物質が記載されていると認定するのは妥当ではない。このことは 「ト,リシクロデカンジメチレン基」と「アダマンタンジイル基」が等価物といえるかどうかによって左右されるものではない。のみならず,刊行物1には,「トリシクロデカンジメチレン基」と「アダマンタンジイル基」が,単に列挙されているだけで,等価物である旨の説明もないし,実施例に9例記載されている重合体の合成例のうち 「トリシクロデカンジイル基」が7例に, ,「ノルボルナンジイル基」が2例に採用されているが 「アダマンタンジイ ,ル基」は1例も採用されていないこと,前述のとおり,化学物質では一般に化学構造が異なれば物性が異なることが技術常識であることからすれば,被告の「メチレン基が2つ結合したトリシクロデカン-4,8-ジイル基」と「アダマンタンジイル基」が「等価物」のものとして,実質的に記載されていると評価されるべきであるとの主張は,採用できない。 3結論刊行物1方法が記載されているとした審決の認 以上によれば,刊行物1にこの誤りは,本件訂正発明1及び2が刊行物1及び刊行 定には誤りがあり,物2に基づいて容易に発明をすることができたとした審決の結論の誤りを来すものというべきであるから,原告主張のその余の取消事由につき判断するまでもなく,審決は違法なものとして,取消しを免れない。 よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 三村量一 |
裁判官 | 上田洋幸 |