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事件 平成 19年 (ワ) 17559号 特許権侵害差止等請求事件
名古屋市瑞穂区〈以下省略〉
原告フ ルタ電機株式会社
訴訟代理人弁護 士小南明也
補佐人弁理士竹中一宣
同 大矢広文 愛知県田原市〈以下省略〉
被告渡 邊機開工業株式会社
訴訟代理人弁護 士塩見渉
訴訟代理人弁理 士涌井謙一
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2008/01/17
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求1被告は,別紙物件目録記載の「異物除去洗浄機」を製造し,販売し,若しくは販売の申出をしてはならない。
2被告は,その保持する別紙物件目録記載の「異物除去洗浄機」を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,900万円及びこれに対する平成19年7月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,生海苔の異物分離除去装置の異物分離機構の特許権を有する原告が,被告に対し,被告の製造販売する異物除去洗浄機が原告の特許発明技術的範囲に属すると主張して,特許権に基づく同異物除去洗浄機の製造販売等行為の差止め及び廃棄と,特許権ないし独占的通常実施権侵害に基づく損害賠償として900万円及びこれに対する遅延損害金(不法行為の後の日である平成19年7月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によるもの)の支払いを求めた事案である。
1前提となる事実(当事者間に争いがないか,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる )。
( ) 当事者1原告及び被告は,いずれも,海苔製造加工に必要とされる機械の製造販売業者である。
( ) 原告は,株式会社Aから,以下の特許権(以下「本件特許権」という )2 。
を取得し,平成19年1月31日付けで移転登録を受けた。
発明の名称生海苔異物分離除去装置の異物分離機構出願日平成10年1月26日(特願平10-29274)公開日平成11年8月3日(特開平11-206345)登録日平成12年10月20日登録番号特許第3121307号( ) 本件特許の出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。本3判決添付の特許公報(以下「本件公報」という )参照 )の特許請求の範 。。
(,「」 囲の請求項1の記載は次のとおりである 以下 この発明を 本件特許発明という。。)【請求項1】生海苔・海水混合液をプールする混合液槽と,この混合液槽の底部に設けた異物排出口と,前記混合液槽に設けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において,前記異物分離機構を,前記混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランスとで構成し,このクリアランスを,前記回転軸に設けた回転板の上昇で拡大可能としたことを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構,(, ( ) 本件特許発明構成要件をそれぞれ分説すると 次のとおりである 以下4各構成要件を「構成要件A1」のようにいう。。)A1生海苔・海水混合液をプールする混合液槽と,2この混合液槽の底部に設けた異物排出口と,3前記混合液槽に設けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において,B前記異物分離機構を,1前記混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,2この選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,3この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランスとで構成し,Cこのクリアランスを,前記回転軸に設けた回転板の上昇で拡大可能としたことを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構( ) 被告は,別紙物件目録記載の異物除去洗浄機「渡辺式異物除去洗浄機『W5K-500型 『WK-600型(以下,まとめて「被告製品」という ) 』』」 。
を製造,販売している(別紙物件目録のうち,図面については争いがなく,説明についても,ごく一部の用語の表現の仕方を除いて争いがない。争いがある部分についても,次に述べるとおり,原告主張の表現で客観的に特定されているものと認められる すなわち 被告は第2符号の説明 の 3 。,,「」 「回転円板」の「a側面部」を「端面「4環状固定板」の「a内 」,周側面部」を「内周端面」とそれぞれ改めるべきと主張するものの,いずれも原告主張の表現で特段不都合はないから,原告主張の表現を採用する。また,被告は 「第3被告装置の構成」の「5・・・回転円板3は,ケー ,シング部材7に貫設された回転軸に載架されて環状固定板4の内周側で回転する」との表現につき,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に固定的に取り付けられているから 「載架されている」を「固定的に取 ,り付けられている」と改めるべきと主張する。しかし,回転円板3は,その裏面にある穴に回転軸が差し込まれて,回転軸に載せ掛けられているものであり,ネジなどで固定されているとしても 「載架されている」といえるか ,ら,原告主張の表現を採用する。。)( ) 被告製品は,以下のとおり,本件特許発明構成要件A1ないし3,B16及びCを充足する。
構成要件A(ア)異物選別槽Aは,原料供給ホース6を介して供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水混合液)を蓄えることができるので 「生,海苔・海水混合液をプールする混合液槽 (構成要件A1)を充足す 」る。
(イ)異物選別槽Aに供給された生海苔・海水混合液は,異物選別槽Aの底部に設けた回転円板3の回転により攪拌され,流動化されながら,回転円板3と環状固定板4の間に形成した隙間Cを通過する。
隙間を通過できない異物は,異物選別槽Aの生海苔・海水混合液中に残存する。そして,最終的には,洗浄水供給ホースから供給された洗浄水(海水)とともに,底板2に開口した異物排出口5から排出される。すなわち,異物排出口5は「この混合液槽の底部に設けた異物排出口 (構成要件A2)を充足する。 」(ウ)被告製品は,異物と生海苔を分離する「異物除去洗浄機」であり,前記のとおり「異物分離機構」を備えている。そして,その機構は異物選別槽Aに設けられているから,被告製品は 「前記混合液槽に設 ,けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置 (構成要件A3)を充足する。 」イ構成要件B1被告製品の異物分離機構は,環状固定板4,回転円板3,隙間Cからなり,異物選別槽Aの底部に位置する。
環状固定板4は,異物選別槽Aの底板2の上部に突出するようにしてケーシング部材7に一体として取り付けられており,環状固定板4とケーシング部材7は,一体として「選別ケーシング」を充足する。
また,ケーシング部材7の側面下部には吸引ポンプ用の連結口が設けられているから,環状固定板4及びケーシング部材7は 「混合液槽の ,底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシング (構成」要件B1)を充足する。
構成要件C回転円板3は,隙間調整機構Bによって,上昇可能なように構成されており,回転円板3の上昇に伴い,側面に開口した隙間Cが拡大していく。よって被告製品は 「クリアランスを,前記回転軸に設けた回転板 ,の上昇で拡大可能」なように構成しており,構成要件Cを充足する。
( ) 本件特許の出願経過7ア本件特許は,株式会社Aを特許出願人として出願された(以下,同社を「本件特許出願人」ともいう。出願当初の特許請求の範囲は,次の 。)とおりであった(特開平11-206345,甲9の1。以下「本件出願当初明細書」といい,ここに記載された発明を「本件出願当初発明」という。。)【請求項1】 生海苔・海水混合液をプールする生海苔混合液槽と,この生海苔混合液槽の底部に設けた異物排出口と,前記生海苔混合液槽に設けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において,前記異物分離機構を,前記生海苔混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングに重畳するように設けた回転板で構成するとともに,この異物分離機構のクリアランスを,前記回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成し,前記生海苔・海水の吸込みをこのクリアランスで行うこと,また吸込んだ生海苔・海水を前記選別ケーシングの連結口より前記生海苔異物分離除去装置外に搬送することを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
【請求項2】 上記のクリアランスの一部に傾斜状のクリアランスを設ける構成とした請求項1の生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
【請求項3】 上記の回転板を逆洗時に上昇させ,当該回転板と選別ケーシングとでなる異物分離機構のクリアランスを拡大させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
,,,, イ特許庁審査官は 平成12年4月17日 上記請求項1 2について(。「」 引用文献である特開平8-140637号公報 乙3 以下 乙3文献という )に記載された発明に基づき,進歩性なしとの拒絶理由通知を 。
発した(乙5 。)本件特許出願人は,同年5月2日,手続補正書を提出し,以下のとおり,特許請求の範囲を補正した(下線部が補正にかかる部分である。甲9の2。以下「本件一次補正」といい,ここに記載された発明を「本件一次補正発明」という。。)【請求項1】 生海苔・海水混合液をプールする混合液槽と,この混合液槽の底部に設けた異物排出口と,前記混合液槽に設けた異物と生海苔を, 分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において前記異物分離機構を,前記混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランスとで構成し,このクリアランスを,前記回転軸に設けた回転板の上昇で拡大することを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
【請求項2】生海苔・海水混合液をプールする混合液槽と,この混合液槽の底部に設けた異物排出口と,前記混合液槽に設けた異物と生海苔を, 分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において前記異物分離機構を,前記混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングの上方に重ねるように設けた回転板と,当該選別ケーシングの円周縁面と前記回転板の回転円周縁面とで形成した略水平方向のクリアランスと,このクリアランスと前記底部とで形成した段差とで構成し,この異物分離機構の略水平方向のクリアランスを介して前記回転板の周辺を略水平展開状態で流動旋回する生海苔を吸込み,この吸込んだ生海苔・海水を前記連結口より前記生海苔異物分離除去装置外に搬送することを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
【請求項3】 上記のクリアランスの一部に上・下方傾斜状のクリアランスを設ける構成とした請求項1の生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
,,,, ウ特許庁審査官は 平成12年6月21日 上記請求項2 3について引用文献である乙3文献に記載された発明に基づき,進歩性なしとの拒絶理由通知を発した(甲9の3 。)本件特許出願人は,同年8月18日,手続補正書を提出し,現特許請求の範囲の記載のとおり,特許請求の範囲を補正した(甲9の4 。)エ本件特許出願人は,同日,分割出願(特願2000-248571,甲10の1)を行い,同分割出願については,平成13年6月15日受付手続補正書(甲10の2 ,平成14年10月10日受付手続補正書 )(甲10の3)による補正を経て,平成15年1月24日に特許登録さ( ,。)。, れた 特許第3392111号 甲10の4その特許請求の範囲は次のとおりである(甲10の4 。)【請求項1】 異物排出口を有する生海苔・海水混合液をプールする生海苔混合液槽に設けた異物分離機構を,前記生海苔混合液槽の底部に設けた連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングの中心部に貫設した回転軸と,この回転軸に遊嵌し,かつ前記選別ケーシングの上方に重ねるように設けた回転板と,この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成した水平重ね式のクリアランスと,この水平重ね式のクリアランスと前記底部とで形成した段差と,前記選別ケーシングに設けた連結口に連設したホースに設けた吸込用ポンプとで構成し,前記底部に沿って略水平展開状態で流動旋回する生海苔を,前記異物分離機構の段差,及び水平重ね式のクリアランスと,吸込用ポンプとを介して吸込み可能とし,またこの吸込んだ生海苔を前記連結口より生海苔異物分離除去装置外に搬送可能とした生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
【請求項2】 上記のクリアランスの一部に,上向き及び/又は下向き傾斜部を形成する構成とした請求項1に記載の生海苔異物分離除去装置の異物分離機構。
2争点( ) 被告製品が本件特許発明構成要件B2を充足するか(争点1 。
1 )( ) 被告製品が本件特許発明構成要件B3を充足するか(争点2 。 2 )( ) 損害の額(争点3)33争点に関する当事者の主張( )争点1(被告製品が本件特許発明構成要件B2を充足するか)1(原告の主張)ア被告製品の回転円板3は,ケーシング部材7の上方に重ねるように設けられている。また,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架され遊嵌する。よって,回転円板3は 「選別ケーシングの ,上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板 (構成要件B2)を充足する。 」, , イ被告は 回転円板3の外径は環状固定板4の内径よりも僅かに小さく, , 上側から見た場合に 回転円板3が環状固定板4に重なっていないから構成要件B2を充足しないと主張する。
しかし,被告製品のケーシング部材7が「選別ケーシング」に該当することは争いがない。そして,別紙物件目録図6によれば,回転円板3は,ケーシング部材7の上方に位置しており,ケーシング部材7に貫設された回転軸に差し込まれているのであるから,環状固定板4そのものには重なっていないとしても,環状固定板4と一体となって選別ケーシングを構成するケーシング部材7に重なっていることは否定できない。
回転円板3は,ケーシング部材7の底部よりも上方に位置しており,この位置関係からすれば,重なっていないとはいえない。
本件特許請求の範囲の文言上も,回転板は「選別ケーシングの上方に重ねるように設け」とされ,選別ケーシングの上方開口の周縁部(被告製品における「環状固定板」に相当する部分)において重なっていなければならないとの記載はない。
本件明細書において 「選別ケーシング」とは,図2,図4で「33 ,選別ケーシング」と示されているものである。本件明細書には 「前,記混合液槽の底部に設けた吸い込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシング本件公報 特許請求の範囲選別ケーシングの内底面0 」(【】),「」(【010 )との記載があり 「選別ケーシング」がケーシングを構成する 】,部材全体を指していることは明らかである。本件明細書には「逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33の噴射口32の上方に位置する受圧板34と,前記選別ケーシング33に重畳される回転板35」と記載されており( 0015,図面に示さ 【】)れた状態をもって上方,重畳などと表現している。
以上によれば 「選別ケーシングの上方に重ねるように設け」とは, ,選別ケーシングと回転板の上下方向の位置関係を示すものであることは明らかである。
ウ被告は 「回転軸に遊嵌した回転板」とは 「回転板が,回転軸に,上 , ,下動可能なように,遊びをもって嵌められている」と解釈しなければならず,被告製品の回転円板3は,回転軸に固定的に取り付けられているから 「遊嵌」という要件を充足しないとも主張する。 ,しかし,本件明細書においては 「遊嵌」について特に定義しておら ,ず,それに関する記載もない。
そもそも 「遊嵌」とは 「遊びをもった状態に嵌めること」であるか ,,ら,構成要件B2「回転軸に遊嵌した回転板」とは,単に,回転板を軸中心に回転できるように,回転板(の裏側の穴)に軸を「嵌め込む」ことにすぎない。回転板をモータによって回転させる場合,通常は,回転軸(すなわちモータ)と回転板を別部品として作成した上で,回転板の裏側に穴(くぼみ)を設け,その穴にモータの回転軸を通すことで,回転板と回転軸の分離接合を容易にする,そして,回転板の穴の内径を,回転軸の外径より僅かだけ大きくして(すなわち「遊び」を設ける,。)分離接合を容易にするように設計する。この 「遊び (回転板の穴の内 ,」径と回転軸の外径の差)を設けた状態で嵌め込むことを一般に「遊嵌」といっているにすぎない。
本件出願当初明細書によれば,出願当初の特許請求の範囲に「遊嵌」との記載はなく,これは補正段階で特許請求の範囲に追加されたものである。被告の指摘する本件明細書【0017】の記載は 「遊嵌」の定 ,義とは全く関係ない。これは,本件出願当初における請求項3に対応する実施例である。その後,補正を行った結果,特許請求の範囲は現在のものに変更され,当初出願の請求項3は残っていないにもかかわらず,【】 。 その実施例の記載である 0017 が本件明細書に残ったにすぎない本件特許出願人は,この「遊嵌」に対して特に技術的に新規な限定をするつもりはなく,出願経過において,特にその点に関して意見を述べていない。このことからも 「回転軸に遊嵌した回転板」とは,回転板 ,が,単に「回転できるように(回転)軸に嵌め込まれている」という程度の意味で用いられているにすぎないことが明らかである。
本件特許発明は 「クリアランスを,前記回転軸に設けた回転板の上 ,昇で拡大可能としたことを特徴とする」という構成要件Cをその本質的部分とするものである 回転板の上下動可能は 構成要件Cにおける 回 。,「転板の上昇」という用語で言い尽くされており 「遊嵌」を「上下方向 ,の遊び」と曲解してまで 「遊嵌」に「上下動可能」という意味を持た ,せる必要はないのであるから,被告主張のように 「遊嵌」を「回転板 ,が,回転軸に,上下動可能なように遊びをもって嵌められている」などと解釈する必要はない 被告製品においては 回転円板3の裏面に穴 く 。,(ぼみ)を設け,その穴に回転軸を差し込むことで回転円板3が回転軸に載架され,また 「遊び(回転板の穴の内径と回転軸の外径の差 」が設 , )けられ,回転軸から回転円板3を容易に取り外すことができるのであるから,回転円板3が 「回転軸に遊嵌した回転板」に該当することは否 ,定できない。
仮に,被告主張のように 「遊嵌」を「回転板が,回転軸に,上下動 ,可能なように遊びをもって嵌められている」と解したとしても,被告製品において 「回転板が上下動可能」なように回転軸に嵌められている ,ことは明らかであるから,構成要件B2を充足することを否定する理由とはならない。被告製品のクリアランスは,回転軸に設けた回転板の上昇で拡大可能であり,構成要件Cを充足することは争いがない。回転円板が回転軸に嵌め込まれ,かつ,その回転円板が上昇可能というためには,回転軸自体の上下方向の位置は固定し,その上に嵌めた回転板自体を上下動可能にするほかない。被告製品は,回転円板3を回転軸の上に載せた後に回転軸に固定した上で,ネジを用いて当該回転板が回転軸上を上下動可能なように構成しているというのであるから,結局,回転軸と回転円板3を別部品とし,回転円板3(の裏面)に回転軸を通す穴をあけ,そこに回転軸を嵌め込んで一体化させた上で,ネジで固定したにすぎない。したがって,被告主張の解釈を前提としても,被告製品は,構成要件B2を充足する。
(被告の主張)ア被告製品の回転円板3は,ケーシング部材7の上方に重ねるように設けられていないし,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されても遊嵌されてもいないので,構成要件B2を充足しない。
イ被告製品において,回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。そこで,回転円板3の外周縁は,常に環状固定板4の内周面よりも内側に位置している。そして,環状固定板4とケーシング部材7とが一体になって選別ケーシングになっているのであるから,回転円板3の外周縁は,常に選別ケーシングの内周面よりも内側に位置している。被告製品においては,装置の上側から見た場合,回転円板3の外周側から回転円板3の中心側に向かって,環状固定板4(選別ケーシング)の最も内側の部分,クリアランス,回転円板3の最も外側の部分という順序で,環状固定板4(選別ケーシング ,クリアランス,回転円 )板3が配置されることになる。
よって,被告製品においては,回転円板3はケーシング部材7の上方に重ねるように設けられておらず 「選別ケーシングの上方に重ねるよ ,うに設け(た回転板 」を充足していない。 )ウまた,被告製品は 「選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回 ,転板」も充足していない。
本件明細書には 「回転板35は,駆動装置5のモータ51に設けた ,回転軸52に係止ピン10を介して上下動可能に設けられている。従って,逆洗槽11内の海水を,ホース12及びポンプ13を介して噴射口32より噴射して,受圧板34及びこの回転板35を押し上げ,この押し上げによりクリアランスSの寸法を拡げる構成となっている( 0。」【017 )との記載がある。 】そして 本件特許発明において 回転板35は回転するものであり0 ,, (【015,このとき回転板35は,回転軸の回転に伴って回転している 】)が,その一方で,上記のとおり 「回転板35は,回転軸52に係止ピ ,ン10を介して上下動可能に設けられている( 0017 )ものであ 。」【】る。
以上によれば,構成要件B2の「選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板」における「遊嵌」の意味は,回転板は回転軸の回転につれて回転を行うが,上側方向に向かう水流により,上側方向に向けて押し上げる力を受けたときには,回転板は回転軸を上側方向に向けて移動でき,この状態から上側方向に向けて押し上げる力がなくなったときには,回転板を下側方向に向けて移動して,前述の上側方向に向けて押し上げる力を受け,,, る前の状態の高さ位置に戻ることができるように 回転板が 回転軸に上下動可能なように,遊びをもって嵌められているというものである。
これに対し,被告製品の回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に固定的に取り付けられており,回転軸に載架,即ち,回転軸に架け渡すように置かれているものではない。
別紙物件目録の図6-1,図6-2に示した状態で被告製品を作動させている間は,止めネジ113のネジ115が,回転軸の上端に形成されているネジ孔125に螺合され,止めネジ113の下面114が隙間調整ネジ110の上面112に当接し,隙間調整ネジ110の下面111が回転軸の上面109に当接しているので,隙間調整ネジ110を回転軸に対して回転させることはできず,隙間Cの大きさは設定されている状態から変動しない。隙間Cの大きさを変更する場合には,別紙物件目録図6-1,図6-2に示されている状態での被告製品の作動を終了した後,止めネジ113を回転軸に対して回転させ,止めネジ113のネジ115を回転軸の上端に形成されているネジ孔125から抜き取った後,隙間調整ネジ110を回転軸に対して矢印120方向,あるいは矢印121方向に回転させることにより,回転円板3を回転軸に対して矢印122あるいは矢印123方向に上昇あるいは下降させる。
このように,被告製品において,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されているものではなく,回転軸に固定的に取り付けられている。したがって,別紙物件目録の図6-1,図6-2に示した状態で被告製品を作動させている間は,止めネジ113のネジ115が,回転軸の上端に形成されているネジ孔125に螺合され,止めネジ113の下面114が隙間調整ネジ110の上面112に当接し,隙間調整ネジ110の下面111が回転軸の上面109に当接しているので,回転円板3は,回転軸に対して上下方向に移動することができない。また,隙間Cの大きさを変更するために,回転円板3を回転軸に対して矢印122あるいは矢印123方向に上昇あるいは下降させる場合であっても,別紙物件目録図6-1,図6-2に示されている状態での被告製品の作動を終了した後,止めネジ113を回転軸に対して回転させ,止めネジ113のネジ115を回転軸の上端に形成されているネジ孔125から抜き取り,その後,隙間調整ネジ110を回転軸に対して矢印120方向,あるいは矢印121方向に回転させるという操作が必要である。
以上によれば,被告製品の回転円板3は,回転軸に上下動可能なように遊びをもって嵌められていないから 「遊嵌」の状態にない。よって, ,被告製品は 「選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板」を ,充足していない。
( )争点2(被告製品が本件特許発明構成要件B3を充足するか)2(原告の主張)ア被告製品の回転円板3の側面部3aは 「回転板の回転円周縁面」に ,該当し,また,ケーシング部材7に一体として取り付けられた環状固定板4の内周側面部4aは「選別ケーシングの円周縁面」に該当する。そして,隙間Cは,回転円板側面部3aと環状固定板内周側面部4aで形成されているから 「回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円 ,周縁面とで形成したクリアランス (構成要件B3)に該当する。 」イ被告は,本件特許発明の「クリアランス」は 「略水平状態に開口す ,るもの」でなければならないのに対し,被告製品の隙間Cは「縦方向に開口するクリアランス」であるから,構成要件B3を充足しないと主張する。
しかし,被告の上記解釈は誤っている上,そもそも隙間Cは略水平状態に開口するものであるから,かかる主張は失当である。
ウ被告は,本件明細書【0015】の記載を根拠として,上記解釈を主張する。しかし,構成要件B3は 「この回転板の回転円周縁面と前記 ,選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランス」であり 「略水,平状態に開口するもの」との限定はどこにもない。
被告は,本件特許の出願経過において,本件特許出願人が 「生海苔 ,異物分離除去装置」についての乙3文献に記載された「クリアランス」は縦方向に開口する構成であるのに対して,本件特許発明の「クリアランス」は略水平方向に開口する点で相違すると主張したと指摘する。
しかしながら,被告が指摘する意見書等の記載は,1回目の拒絶理由通知の対象となった出願当初の請求項1,2に関するものである。本件特許発明は,拒絶理由通知の対象外であった出願当初の請求項3に関する発明の特徴部分を明瞭にして分離させたものであり,被告が指摘している点は,最終的には分割出願(甲10の1)に移行させた発明に関するものであるから,被告主張は的はずれである。
したがって,構成要件B3の「クリアランス」を「略水平状態に開口するもの」と限定解釈する必要性はまったくない。
エ被告製品の隙間Cの構造は,縦方向に開口するものではなく 「略水,平状態に開口するもの」であるから,仮に構成要件B3を被告主張のと,,「」 おり解釈するとしても 結局 隙間Cは構成要件B3の クリアランスを充足する。
, ,(),(), 本件明細書においては クリアランスの形状として 図3 イロ(ロ1(ハ)の四つを示し,様々な形状があり得ることを記載してい ),る。すなわち (イ)は,水平方向に開口するものであるが,開口部自 ,体はもちろん,内部(選別ケーシングと回転板で作られる広い空間)に至るまで当該隙間(生海苔の通路部分)は水平状態(本件明細書図3でいえば,左右方向)を維持している。しかし (ロ (ロ1)は,開口部 ,)は水平方向に向いているものの,途中に上向き傾斜部(下向き傾斜部)が存在するため,生海苔の通路部分は,いったん,上方(下方)に向けられている。そのため,本件明細書においても 「上方傾斜状のクリア ,ランスS2 「下方傾斜状のクリアランスS3」と明示されている。 」また,本件特許出願人が,出願経過において行った説明で示した原告の実施装置の設計図面でも,クリアランスの開口部からすぐに斜め上方に向いているもの,水平方向に開口しながらそのすぐ途中から斜め上方に向いているものを示している。
被告製品の隙間Cの構造は,別紙物件目録図5から明らかなように,環状隙間の開口部は水平方向に開口している。被告製品を運転する際には,回転円板3は,ツメ8よりも高い位置まで上昇させた状態,すなわち,回転円板3を環状固定板4よりも僅かながら上昇させた状態でなければならない。この状態では,回転円板表面3bと環状固定板表面4bの間で高低差が生じ,隙間Cの生海苔の導入開口部が側面に現れる。回,() 転板の回転によって略水平展開となった生海苔は この側面 水平方向に開口した導入開口部に向かって,そのまま略水平状態でケーシング部材7の内部に吸い込まれていく。
この被告製品の隙間Cは,回転円板3の側面部3aがテーパー状に形成されていることから,本件明細書の実施例(図3の(ロ (ロ1 )に ))きわめて近い形状といえる。また,原告実施装置の隙間形状にもきわめて近い形状である。
被告製品においては,回転円板3の側面部3aはテーパー状に形成されており,円周状を呈した該側面部3aと環状固定板4の内周側面部4aとで,隙間Cが形成されている。そして,回転円板3を僅かながら上昇させた状態で運転させる。この状態では,回転円板表面3bと環状固定板表面4bの間で高低差が生じ,隙間Cの導入開口部が側面に現れ,回転板の回転によって略水平展開状態となった生海苔は,この側面(水平方向)に開口した導入開口部に向かってそのまま略水平状態でケーシング部材7の内部に吸い込まれる。したがって,この隙間Cが 「回転,板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランス」を充足することは明らかである。
(被告の主張)ア本件特許発明構成要件B3「回転板の回転円周縁面と前記選別ケー」「」 シングの円周縁面とで形成したクリアランス における クリアランスとは 「略水平状態に開口するクリアランス ( 0015 )である。 , 」【】本件明細書によれば 「混合液槽2に供給された生海苔は,この回転 ,板35が回転することにより,略展開した状態となり,即ち,略水平展開状態となる。この略水平展開状態の生海苔は,底部21に沿って略水平展開状態で流動していることと,このように略水平展開状態で流動することから,略水平状態に開口するクリアランスSに,抵抗を受けることなく,確実かつ容易に吸い込まれる特徴がある( 0015 )とさ 。」【】れ,本件特許発明は,略水平展開状態で流動する生海苔が,抵抗を受けることなく,確実かつ容易に吸い込まれる点に特徴があるとしている。
これに対し,被告製品のクリアランスとは,回転円板3の端面3aと環状固定板4の内周端面4aとで形成された縦方向に開口するクリアランスであって,本件特許の審査の過程において,本件特許出願人が 「縦,方向に開口するクリアランス」であるとする,乙3文献の図4記載のクリアランスと同様の構造・構成である。
「 」(。「」。) イ早期審査に関する事情説明書乙2 以下 事情説明書 というによれば,本件特許出願人は,本件特許の審査過程において,乙3文献記載の「生海苔異物分離除去装置」におけるクリアランスについて 「ク,リアランスは縦方向に開口する構成である。即ち,図4の如く,クリアランスは第一回転板の端面と,環状枠板部の端面とで構成される(このことから,請求項1にある「内嵌め」と言う言葉が導き出される」。)。
と指摘し,縦方向に開口するクリアランスと,略水平方向に開口するクリアランスは相違するものであることを認めている。
本件特許出願人は,事情説明書において,本件出願当初発明におけるクリアランスと乙3文献の縦方向に開口するクリアランスとの作用効果の相違について 「本願発明は,図(イ)の如く,クリアランスが略水 ,平方向に開口しており,生海苔を回転板の回転及び吸込用ポンプによる吸込みを利用してクリアランスに強制的に吸込む構成である。従って,生海苔はクリアランス内を抵抗を受けることなくスムーズに通過し,確実かつ効率的な吸込みと,異物の確実かつ効率的な分離ができる。これに対して文献(判決注:乙3文献)は,図(ロ)の如く,クリアランスが縦方向に開口しており,生海苔は自重によりクリアランスに縦方向に。, 。 直接導かれる 従って 生海苔の確実かつ効率的な吸込みが困難である以上の如く,両者は構成及び生海苔の動き(方向)が全く相違し,本願発明における作用効果は,文献では全く期待できない 」と説明してい 。
る。
ウ本件特許出願人が,拒絶理由通知を受け,審査官と行った面接に関する面接記録(乙6)によれば,本件特許出願人は,本件一次補正発明について 「クリアランスの方向は,重ね合せであるので,略水平方向で ,。, , ある 従って 回転板の周辺を略水平展開状態で流動旋回する生海苔を略水平状態で吸い込む構成である 」と指摘し,一方,拒絶理由通知書 。
(乙5)に引用された文献である乙3文献記載の発明では 「クリアラ ,ンスの方向は,内嵌めであるので,垂直方向,即ち,軸方向である。従って,回転板の遠心力で,当該回転板の略水平展開状態で流動旋回する生海苔を,略90°曲折して吸込む構成である 」と指摘している。ま 。
た,本件一次補正発明について 「略水平状態で吸込む構成であり,生 ,海苔を傷めなく,吸込み能力があり,自然法則にかなっている 」と指。
摘し,一方,引用文献記載の発明では 「略90°曲折して吸込む構成 ,であり,生海苔を傷めること,吸込み能力が劣り,自然法則にかなっていない 」と指摘している。 。
エクリアランスが縦方向に開口し,略水平方向には開口していない被告製品は 「略水平展開状態の生海苔は,底部21に沿って略水平展開状 ,態で流動していることと,このように略水平展開状態で流動することから,略水平状態に開口するクリアランスSに,抵抗を受けることなく,確実かつ容易に吸い込まれる ( 0015 )という本件特許発明の特 」【】徴を具備しない。
被告製品のクリアランスは,乙3文献の図4に記載されている縦方向に開口するクリアランスと同じく縦方向に開口するものである。乙3文献の縦方向のクリアランスは,本件特許出願人が,審査の過程において主張しているとおり,本件特許発明技術的範囲に属さないのであるから,被告製品のクリアランスも本件特許発明技術的範囲に属さない。
原告は,本件特許出願人が出願経過において行った主張を知り,又は知り得る立場にあって,本件特許権を譲り受けているのであるから,本件特許出願人のかかる主張に拘束される。
オ以上によれば,被告製品は,構成要件B3の「クリアランス」を充足しない。
( )争点3(損害の額)3(原告の主張)ア被告は,平成18年夏ころから本件訴訟提起時までに,被告装置を少なくとも合計30台製造販売しているものと推測される。
被告装置の販売価格は少なくとも約100万円で,その利益率は約3割と推測されるので,特許法102条2項により,少なくとも900万円が原告の受けた損害と推定される。
原告は,平成19年1月30日までは,株式会社Aから本件特許発明につき独占的通常実施の許諾を受けて本件特許発明実施していたので,仮に,被告製品が,平成18年夏ころから平成19年1月30日までに販売されたものである場合,その販売による損害は独占的通常実施権侵害によるものになる。この場合には,特許法102条2項が類推適用されるべきである。
イ被告の不法行為相当因果関係にある弁護士等費用相当額は,少なくとも500万円は下らない。
ウよって,原告は,被告に対し,上記損害額合計1400万円の内金として900万円を請求する。
(被告の主張)否認ないし争う。
第3当裁判所の判断1争点1(被告製品が本件特許発明構成要件B2を充足するか)及び争点2(被告製品が本件特許発明構成要件B3を充足するか)について( )本件明細書には,次の記載がある(甲1の2 。
1 )【0002 【従来の技術】従来,生海苔異物分離除去装置(以下,異物分 】離除去装置とする) としては,混合液槽の回転板と底部(環状枠板部)でなる異物分離機構のクリアランスを利用する構成と,混合液槽のパンチングメタル式の濾過筒,コイル式の濾過筒等の濾過部材を利用する構成と,に大別される。本発明は,前者の異物分離機構のクリアランスを利用する構成(以下,異物分離機構とする) である。そして,この異物分離機構を備えた異物分離除去装置としては,特開平8-140637号の生海苔の異物分離除去装置がある。その構成は,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とした異物排出口を設けたことにある。この発明は,比重差と遠心力を利用して効率よく異物を分離除去できること,目詰り難いこと,また他の目詰り洗浄装置等を設ける必要がない,等の特徴があると開示されている。
【0003 【発明が解決しようとする課題】前記発明は,内嵌め構造のク 】リアランスと比重差及び遠心力を利用して効率よく異物を分離除去できること,回転板が常時回転するので目詰りが少ないこと,等の特徴を有する。しかし,筒状混合液タンク内で遠心力により略水平方向に流動している(略水平展開状態の)生海苔が,筒状混合液タンクの内嵌めによる垂直構造のクリ, 。 アランスを通過するためには 生海苔を垂直方向に方向転換する必要があるこのように生海苔が略水平方向から垂直方向に方向転換するには,生海苔に少なからず無理を与えること,生海苔を傷める虞があること,又は垂直構造のクリアランスへの誘導が十分でないこと等の課題がある。尚,この発明では,混合液タンク内の生海苔・海水は,分離された後,クリアランス内を自然落下方式により,流れ落ちる構成となっている。即ち,ポンプを利用して強制的に吸引する構成となっていない。従って,混合液タンク内の生海苔・海水を,垂直構造のクリアランスに誘導し,かつクリアランス内をスムーズに通過するには,些か問題が考えられる。
【0004 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は,異物分離機 】構のクリアランスを回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成し,回転板の回転により略水平展開状態となっている生海苔を,そのまま略水平状態で吸込むことが可能となり,かつ略水平方向からの吸込みを利用して効率よく,しかも確実に分離すること,又は回転板の確実な上昇を図り,かつこの上昇でクリアランスの拡大を図って目詰りを解消すること,等を意図する。
【】, , 0005 この請求項1は 生海苔・海水混合液をプールする混合液槽とこの混合液槽の底部に設けた異物排出口と,前記混合液槽に設けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において,前記異物分離機構を,前記混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,この選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランスとで構成し,このクリアランスを,前記回転軸に設けた回転板の上昇で拡大可能としたことを特徴とする生海苔異物分離除去装置の異物分離機構である。
【0010 【発明の実施の形態】本発明の生海苔混合液槽には,生海苔タ 】ンクから順次混合液が導入される。この導入された混合液は,回転板により略水平方向に流動旋回( 略水平展開状態で旋回流動) されつつ,吸込みポンプにより異物分離機構のクリアランスへと導かれる。このクリアランスは流動旋回方向と同方向に開口されているので,流動旋回する混合液中の生海苔は,抵抗を受けることなくスムーズにこのクリアランスを通過し,選別ケーシングの内底面に達した後,連結口を経由して処理タンクに導かれる。
【】【】, 。 0012実施例 以下 本発明の一実施例を図面に基づいて説明する【0015】異物分離機構3は,分離した生海苔・海水を吸い込む連結口31,及び逆洗用の噴射口32を有する選別ケーシング33と,この選別ケーシング33の噴射口32の上方に位置する受圧板34と,前記選別ケーシング33に重畳される回転板35と,この回転板35の回転円周縁面35aと前記選別ケーシング33の円周縁面33aとで形成されるクリアランスSと,で構成されている。そして,このクリアランスSと前記底部21とで形成した段差Aを構成する。従って,混合液槽2に供給された生海苔は,この回転板35が回転することにより,略展開した状態となり,即ち,略水平展開状態となる。この略水平展開状態の生海苔は,底部21に沿って略水平展開状態で流動していることと,このように略水平展開状態で流動することから,略水平状態に開口するクリアランスSに,抵抗を受けることなく,確実かつ容易に吸い込まれる特徴がある。
【】,,,,, 0016クリアランスSの形状は例えば図3の(イ)(ロロ )1(ハ) の構成があり,(イ) は水平クリアランスS1の形態を,(ロ) は上方, , 傾斜状のクリアランスS2 (ロ )は下方傾斜状のクリアランスS3の形態1(ハ) は線接触クリアランスS4の形態,を示す。前記(イ) は最もシンプルな形態で,かつ構造の簡略化,低コスト化が図れる特徴があり,回転板35の回転円周縁面35aと選別ケーシング33の円周縁面33aとでなる形態である。尚,図示しないが,回転板35の回転円周縁面35a及び/又は選別ケーシング33の円周縁面33aに断面視して傾斜状の変形部,同刃面形。, , 状部とすることも有り得る また(ロ ロ )はクリアランスSの容易な調整1吸込力・量等の調整,保守管理の容易化,目詰り防止効果の向上等が図れる特徴があり,(ロ) は回転板35・選別ケーシング33の回転円周縁面35a・円周縁面33aの一部に上向き傾斜部35b ・33b’を設けた上方 ’傾斜状のクリアランスS2を構成した形態,(ロ)は回転板35・選別ケー1シング33の回転円周縁面35a・円周縁面33aの一部に下向き傾斜部35b ・33b”を設けた下方傾斜状のクリアランスS3を構成した形態, ”をそれぞれ示す。尚,前記上(下)向き傾斜部35b (35b”) ・33 ’b (33b”) が,回転板35の回転円周縁面35a及び選別ケーシング ’33の円周縁面33aの全部に設けられる場合も有る。さらに(ハ) は目詰まりの解消に役立つ線接触クリアランスS4にした形態を示す。尚,この線接触クリアランスS4は,図示しないが,回転板35の回転円周縁面35a及び/又は選別ケーシング33の円周縁面33aを断面視して刃面形状部とすることも有り得る。
【0019 【発明の効果】請求項1の発明は,生海苔・海水混合液をプー 】ルする混合液槽と,この混合液槽の底部に設けた異物排出口と,混合液槽に設けた異物と生海苔を分離する異物分離機構とで構成される生海苔異物分離除去装置において,異物分離機構を,混合液槽の底部に設けた吸込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと,選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつ選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面で形成したクリアランスとで構成し,クリアランスを,回転軸に設けた回転板の上昇で拡大可能とした構成の生海苔異物分離除去装置の異物分離機構である。
【0020】従って,異物分離機構のクリアランスを,回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成したので,回転板の回転により略水平展開状態となっている生海苔を,そのまま略水平状態で吸込むことが可能となり,かつ略水平方向からの吸込みを利用して効率よく,しかも確実に分離できること,又は回転板の確実な上昇を図り,かつこの上昇でクリアランスの拡大を図って目詰りを解消できること,等の特徴がある。
( ) 構成要件B2の「選別ケーシングの上方に重ねるように設け・・・た回転2板」及び構成要件B3の「クリアランス」について本件特許請求の範囲には,クリアランスについて 「回転板の回転円周縁 ,面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランス」と記載され,「」 。 るのみであり その形状について 略水平方向 に形成した等の記載はないしかし,本件明細書によれば,従来の技術である,筒状混合液タンクの環状枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし,この回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とした異物排出口を設けた,特開平8-140637号(乙3文献)の生海苔の異物分離除去装置では,筒状混合液タンク内で遠心力により略水平方向に流動している略水平展開状態の生海苔が,筒状混合液タンクの内嵌めによる垂直構造のクリアランスを通過するためには,生海苔を垂直方向に方向転換する必要があることから,生海苔を傷めるおそれがあるとともに,垂直構造のクリアランスへの誘導が十分でないとの課題があり( 0002 【00 【】03,本件特許発明は,かかる垂直構造のクリアランスの課題を解決す 】)るため,クリアランスを回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成し,回転板の回転により略水平展開状態となっている生海苔をそのまま略水平状態で吸込むことが可能となること等を意図する( 0004 ) 【】ものである。
すなわち,本件特許発明の異物分離機構は 「混合液槽の底部に設けた吸 ,込みポンプ用の連結口を有する選別ケーシングと (構成要件B1「この 」),選別ケーシングの上方に重ねるように設け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と (構成要件B2「この回転板の回転円周 」),縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成したクリアランスとで構成」(構成要件B3)されるものであり,このように,異物分離機構のクリアランスを,回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成した結果,回転板の回転により略水平展開状態となっている生海苔を,そのまま略水平状態で吸込むことが可能となったものであって( 0020,回転板 【】)「」 の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成される クリアランスが略水平方向に形成されるものであることは,本件明細書の上記各記載において明示されているところである。
また,本件明細書の実施例に開示されている「クリアランス」も,いずれも,略水平方向に流動旋回する生海苔と同方向に開口されているクリアランス( 0010,回転板35の回転円周縁面35aと選別ケーシング33 【】)の円周縁面33aとで形成され 略水平状態に開口するクリアランスS0 , (【015 )であり,略水平方向に開口する「クリアランス」が開示されてい 】る。もっとも,クリアランスの形状として,開口部は水平方向に向いているものの,途中に上(下)向き傾斜部があるものも開示されており(図(ロ)(ロ1,また上(下)方傾斜部が回転板の回転円周縁面及び選別ケーシ ))ングの円周縁面の全部に設けられる場合もあるとされる【0016 。しか】し,これらも,選別ケーシングの円周縁面とその上方に重ねるように設けられた回転板の円周縁面との間に形成されるクリアランスであって,内嵌めによる垂直構造のクリアランスとは異なるから,略水平方向に開口するクリアランスに含まれるというべきである。
以上によれば,本件特許発明においては,略水平方向に流動旋回する生海苔を,回転板の回転円周縁面と選別ケーシングの円周縁面とで構成され,略水平方向に開口されているクリアランスによって,そのまま略水平状態で吸い込むことを,その技術思想の中核とするものであると認められる。したがって,本件特許発明構成要件B3の「クリアランス」とは,選別ケーシングの上方に重ねられた回転板の回転円周縁面と,選別ケーシングの円周縁面との間に形成され,略水平方向に開口する「クリアランス」を意味するものと解すべきである。また,構成要件B2の「選別ケーシングの上方に重ねるように設け・・・た回転板」とは,選別ケーシング円周縁面の上方に,回転板の回転円周縁面が重なるように設けられる,との構成を意味すると解すべきである。
, 。 ( ) このことは 本件特許発明の出願の経緯からも裏付けられるところである3ア事情説明書の記載本件特許出願人は,平成12年2月9日に提出した,本件特許の早期審査における事情説明書(乙2)において,先行技術として,乙3文献記載の「生海苔の異物分離除去装置」を挙げた上で,これと本件出願当初発明の内容との対比を行っている すなわち 本件出願当初発明の内容は回 。, ,「転板及び連結口を有する選別ケーシングでなる異物分離機構と,異物排出口及び選別ケーシングの連結口,回転板の駆動装置と,吸込用ポンプで構成される異物分離除去装置において,異物分離機構のクリアランスを,略水平方向に開口するように構成する(図3(イ)等参照」ものである)。
のに対し,乙3文献記載の発明の内容は 「クリアランスは縦方向に開口 ,。,, , する構成である 即ち 図4の如く クリアランスは第一回転板の端面と環状枠板部の端面とで構成される(このことから,請求項1にある「内嵌め」と言う言葉が導き出される・・・」であり,両者の作用効果につ 。)。
いて 「本願発明は,図(イ)の如く,クリアランスが略水平方向に開口 ,しており,生海苔を回転板の回転及び吸込用ポンプによる吸込みを利用してクリアランスに強制的に吸込む構成である。従って,生海苔はクリアランス内を抵抗を受けることなくスムーズに通過し,確実かつ効率的な吸込みと,異物の確実かつ効率的な分離ができる。これに対して文献(判決注) , (), , :乙3文献 は 図 ロ の如く クリアランスが縦方向に開口しており生海苔は自重によりクリアランスに縦方向に直接導かれる。従って,生海苔の確実かつ効率的な吸込みが困難である。以上の如く,両者は構成及び生海苔の動き(方向)が全く相違し,本願発明における作用効果は,文献では全く期待できない 」と説明している(乙2 。 。)イ面接記録の記載本件特許出願人は,平成12年4月17日,本件出願当初明細書の請求項1及び2について,乙3文献記載のクリアランスの方向を好適化することは,当業者が通常行う範囲内のことにすぎない旨の拒絶理由通知を受け(), 。() 乙5同月27日に審査官と面接を行っている その面接記録 乙6によれば,本件特許出願人は,乙3文献記載のクリアランスとの相違に関して,本件一次補正発明では 「選別ケーシングの上方に重ねるように設 ,け,かつこの選別ケーシングに貫設した回転軸に遊嵌した回転板と,この回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成するク」「リアランスの方向は,重ね合せであるので,略水平方向である。従って,回転板の周辺を略水平展開状態で流動旋回する生海苔を,略水平状態で吸い込む構成である 」と主張する一方,乙3文献記載の発明では 「環状 。 ,枠板部の内周縁内に回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めして形成する 「クリアランスの方向は,内嵌めであるので,垂直 」方向,即ち,軸方向である。従って,回転板の遠心力で,当該回転板の略水平展開状態で流動旋回する生海苔を,略90°曲折して吸込む構成である 」と主張していること,また,本件一次補正発明について 「略水平 。 ,状態で吸込む構成であり,生海苔を傷めなく,吸込み能力があり,自然法則にかなっている 」と主張する一方,乙3文献記載の発明では 「略9 。 ,,,, 0°曲折して吸込む構成であり 生海苔を傷めること 吸込み能力が劣り自然法則にかなっていない 」と主張していることが認められる。 。
ウこのように,本件特許出願人は,本件特許の出願経過において,一貫して,乙3文献記載の発明では,環状枠板部の内周縁内に回転板を内嵌めするので,クリアランスは垂直方向であるのに対し,本件出願当初発明あるいは本件一次補正発明では,クリアランスは,選別ケーシングの上方に重ねるように設けた回転板の回転円周縁面と前記選別ケーシングの円周縁面とで形成され,クリアランスの方向は,重ね合わせなので略水平方向であると主張し,その結果,乙3文献記載の発明では,生海苔を垂直に曲折して吸い込むのに対し,本件出願当初発明あるいは本件一次補正発明では,生海苔は略水平展開状態のまま吸い込まれるとの相違があると主張しており,本件出願当初発明あるいは本件一次補正発明の略水平方向の「クリアランス」と乙3文献記載の発明の略垂直方向の「クリアランス」とを明確に区別しているのである。これらの出願の経過からも,本件特許発明においては,構成要件B2の「回転板」の「回転円周縁面」が「選別ケーシングの円周縁面」の「上方に重ねるように設け」られ,これにより構成要件B3の略水平方向に開口する「クリアランス」が「形成」されるものであることが明確に裏付けられるものである。
( )ア 原告は,かかる出願経過における本件特許出願人の主張は,本件出願当4初明細書の請求項1及び2,すなわち分割出願された特許発明に関するものであり,同明細書の請求項3,すなわち本件特許発明に関するものではないと主張する。しかし,本件出願当初明細書の請求項3は,同請求項1に従属しており,同請求項1に記載されたクリアランスの構成もその内容に含まれるものであるから(甲9の1 ,同請求項1に対する拒絶理由に )ついての本件特許出願人の上記主張が,同請求項3に記載された発明に関係しないとは到底いえない。原告の上記主張は採用し得ない。
イ原告は,構成要件B2の「回転板」は,選別ケーシングの上方に位置していれば「選別ケーシングの上方に重ねるように設け」られているのであり,選別ケーシングの上方開口部の周縁部において重なっている必要はない,と主張する。しかし,本件明細書の前記各記載からすれば,構成要件B2の「回転板」がその回転円周縁面において選別ケーシングの円周縁面の上方に重なっているからこそ,構成要件B3の略水平方向の「クリアランス」が構成され,これにより,回転板の回転により略水平展開状態となっている生海苔を,そのまま略水平状態で吸込む,との本件特許発明の課題が解決されるのである。原告の上記主張は,本件明細書の前記各記載を無視するものであり,採用し得ない。
( )被告製品のクリアランスは,回転円板3の側面部3aと環状固定板4の5内周側面部4aとで形成された隙間Cであり,略垂直方向に開口するクリアランスであるから 略水平方向に開口する本件特許発明構成要件B3の ク , 「リアランス」とは異なり,同要件を充足しないことは明らかである。
,, ,() 原告は 本件明細書において クリアランスの実施形態として 図3 イ(ロ (ロ1 (ハ)の四つを示しており (ロ (ロ1)は,開口部は水平 )) ,)方向に向いているものの,途中に上向きないし下向きの傾斜部が存在する形状であり,被告製品も,運転する際には,回転円板3を環状固定板4よりも僅かに上昇させた状態となり,回転円板表面3bと環状固定板表面4bとの間で高低差が生じ,隙間Cの生海苔の導入開口部が側面に現れ,導入開口部は水平方向に開口することになるので,回転円板3の側面部3aはテーパー状であることも併せると,隙間Cの形状は,上記(ロ (ロ1)の形状とき )わめて近く,よって,隙間Cも略水平方向に開口したクリアランスであると主張する。
しかし,本件明細書の図面3(イ)ないし(ハ)の実施例は,いずれも,選別ケーシングの上方に重ねるように設けられた回転板の回転円周縁面と,選別ケーシングの円周縁面との間に形成されたクリアランスであり,略水平方向に開口部があるのに対し,被告製品では,回転円板3の外径は環状固定板4の内径よりも僅かに小さいため,回転円板3の外周縁は環状固定板4の内周面よりも内側に位置しており,隙間Cは,回転円板3の側面部3aと環状固定板の内周側面部4aの間の略垂直方向に形成される隙間であり,これを構成要件B3の略水平方向に開口したクリアランスということは到底できない。なお,被告製品においては,回転円板3を上昇させた場合には,回転円板3と環状固定板4との間に段差が生じるものの(別紙物件目録図5 ,)回転円板3の側面部3aと環状固定板4の内周側面部4aの間の隙間自体が水平方向に開口するものではないから,本件特許発明構成要件B3の略水平方向に形成された「クリアランス」の要件を充足するものではないことは明らかである。原告の上記主張は採用し得ない。
(5) 以上によれば,被告製品は,本件特許発明構成要件B2及びB3を充足せず,本件特許発明技術的範囲に属しないというべきである。
第4結論よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
別紙物件目録下記説明,及び別紙図面に示す「異物除去洗浄機(被告製品)」第1図面の説明「」,,「」WK-500型は回転円板が4枚のタイプでありWK-600型は,回転円板が6枚のタイプである。
,,「」,,下記図面のうち図1から3はWK-500型を示し図4から7は「WK-500型「WK-600型」に共通である。」1図1平面図2図2正面図3図3右側面図4図4隙間調整機構Bの拡大斜視図5図5図4の隙間C,ツメ8部分の拡大図回転円板3の上昇により隙間Cが拡大していく状態を示す。
()回転円板3を最低位置に下げ,隙間Cを最挟にした状態1()回転円板3を()の状態よりも上昇させて,表面3bを環状固定板の表面214bよりも高くした状態(ツメ8の表面と同じ高さにした状態)()回転円板3を()の状態よりも上昇させて,表面3bを環状固定板の表面324b,ツメ8の表面よりも高くした状態6図6ケーシング部材7の断面図(隙間調整機構Bを載架した状態)()図6-1吸引ポンプ用連結口を含む断面1()図6-2吸引ポンプ用連結口を含まない断面27図7ケーシング部材7の断面図(隙間調整機構Bを取り外した状態)()図7-1吸引ポンプ用連結口を含む断面1()図7-2吸引ポンプ用連結口を含まない断面2第2符号の説明1外枠2底板3回転円板3a側面部3b表面4環状固定板4a内周側面部4b表面5異物排出口6原料供給ホース7ケーシング部材8ツメA異物選別槽B隙間調整機構C(環状)隙間D段差第3被告装置の構成1外枠1,底板2,回転円板3,環状固定板4は,全体として一つの異物選別槽Aを構成しており,原料供給ホース6を介して異物選別槽Aに供給された生海苔と海水の混合液(生海苔・海水混合液=原料)を蓄えることができる。
2外枠1は,上方からみて八角形状を呈し,その内側には,多数の小孔が開けられたパンチング網で,更に枠が形成される。
異物選別槽Aの開口上部には,原料供給ホース6,洗浄水供給ホース,センサーなどが設置されている。
底板2の一部(パンチング網に囲まれた部分)には,通常は閉鎖され,コックによって開口可能なように構成された異物排出口5が設けられている。
3底板2には,円形孔が複数個(WK-500型」は4個「WK-600「,型」は6個)設けられ,その各内周に,環状固定板4を突出させるようにしてケーシング部材7(4個又は6個)が(底板2の)裏側から取り付けられている。そのため,環状固定板4の表面4bと底板2の表面とで段差Dが形成される。
,。ケーシング部材7の側面下部には吸引ポンプ用の連結口が設けられている同連結口に連設したホースは,吸引ポンプに接続されている。
4環状固定板4の表面4bの一部には,ツメ8が取り付けられている。
,()。その取付部位においてはその厚さ約1?o分だけ表面が高くなっている5回転円板3の外径は,環状固定板4の内径よりも僅かに小さい。そのため,回転円板3は,ケーシング部材7に貫設された回転軸に載架されて環状固定板4の内周側で回転する。
回転円板3の側面部3aは,テーパー状に形成されており,円周状を呈した該側面部3aと環状固定板4の内周側面部4aとで,環状隙間Cを形成する。
6回転円板3は,止めネジ,隙間調整ネジ,目盛板,スプリングなどから構成される隙間調整機構Bによって,上下方向移動可能なように構成されている。
7回転円板3の上昇による環状隙間Cの拡大()回転円板3の最低位置状態(図5()の状態)11回転円板3を最も低い位置に下降させた状態では,回転円板表面3bと環状固定板表面4bがほぼ面一に形成され,隙間Cが最も狭い状態となる。
()回転円板3を上昇させ,円板表面3bとツメ8の表面を同じ高さにした状2態(図5()の状態)2この状態では,回転円板表面3bとツメ8の表面が同じ高さであるため,回転円板表面3bは,環状固定板4の表面4b(ツメ8が取り付けられていない部分)よりは高い位置となる。
回転円板表面3bと環状固定板表面4bの間で高低差が生じ(図5()の2右図参照,環状隙間Cの(生海苔の)導入開口部は側面(図では右側)に)現れる。
()回転円板3を()の状態より上昇させた状態(図5()の状態)323回転円板3の上昇に伴い,回転円板表面3bと環状固定板表面4bの間の高低差が更に拡大し(図5()の右図参照,側面(図では右側)に現れた3)環状隙間Cの(生海苔の)導入開口部が拡大していく。
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 中島基至
裁判官 関根澄子