審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成16ワ25576特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ15809損害賠償請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ19307特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ6548損害賠償等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ11880特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11881特許権侵害差止等請求事件 平成18ワ11882特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 有用性 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 技術的範囲 / 出願公開 / 共有 / 警告 / 実施料相当額 / 対象製品 / 文言解釈 / 同一の作用効果 / 特許発明 / 実施 / 加工 / 間接侵害 / 構成要件 / のみ用いる / 課題解決に不可欠(課題の解決に不可欠) / 差止請求(差止) / 侵害 / 販売数量(販売数) / 単位数量 / 乗じた額 / 実施料 / 不法行為(民法709条) / 実施許諾(実施の許諾) / 対価 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / |
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事件 |
平成
18年
(ワ)
1702号
特許権侵害差止等請求事件
平成 18年 (ワ) 27110号 特許権侵害差止等請求事件 |
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広島県福山市<以下略> 原告早 川ゴム株式会社 訴訟代理人弁護士大場正成 同 近藤祐史 訴訟代理人弁理士藤谷史朗 同 澤田達也 補佐人弁理 士杉村憲司 同(被告サンリツ技研株式会社に対する訴えを除く )。 杉村興作 富山県中新川郡<以下略> 被告株 式会社サンリツ 訴訟代理人弁護士塩見渉 同 小川晶露 同 河村直樹 補佐人弁理 士石黒健二富山県中新川郡<以下略> 被告サンリツ技研株式会社 訴訟代理人弁護士塩見渉 同 河村直樹 補佐人弁理 士石黒健二 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2007/12/25 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1被告らは,別紙物件目録1及び2記載の各製品を販売し,又は販売の申出を- 2 -してはならない。 2被告サンリツ技研株式会社は,前項の製品を製造してはならない。 3被告らはその占有する第1項の製品を,被告サンリツ技研株式会社はその占有する同項の半製品(同項の製品の構成を備えるものであって,製品として完成していないものをいう )を,それぞれ廃棄せよ。 。 4被告らは,原告に対し,連帯して,4358万4019円及び内金168万6277円に対する平成16年9月17日から,内金4189万7742円に対する平成18年9月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6訴訟費用は,被告らの負担とする。 7この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1原告の請求1被告らは,別紙物件目録1及び2記載の各製品を製造販売し,又は販売の申出をしてはならない。 2被告らはその占有する前項の製品を,被告サンリツ技研株式会社はその占有する同項の製品の半製品を,それぞれ廃棄せよ。 3被告らは,原告に対し,連帯して,金4460万4234円及びこのうち金168万6277円については平成16年9月17日から支払済みまで,金4291万7957円については平成18年9月1日から支払済みまで,それぞれ年5分の割合による金員を支払え。 4仮執行の宣言第2事案の概要本件は,原告が,被告らにおいて別紙物件目録1及び2記載の各マンホール構造用止水可とう継手(以下,別紙物件目録1記載の製品を「イ号物件 ,同」「」,「」。) 目録2記載の製品を ロ号物件 といい これらを併せて 被告物件 というを製造販売する行為は,主位的には原告の有する特許権を侵害するものであると主張して,選択的には特許法101条1号又は2号の規定により同特許権を侵害するものとみなされるものであると主張して,それぞれ被告物件の製造販売の差止め及び廃棄並びに特許法65条1項及び5項に基づく補償金並びに民法709条及び719条に基づく損害賠償金として合計4460万4234円の支払を請求する事案である。 1前提となる事実等(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定される事実をいう。なお,証拠により認定した事実については,当該証拠を該当箇所の末尾に掲げるものとしている )。 ( ) 当事者1ア原告は,土木止水材,建築防水材,防音材,自動車用フロアマット,ゴム床材を中心とする各種ゴム製品の製造販売等を目的とする株式会社である。 イ被告株式会社サンリツ被告株式会社サンリツ(以下「被告サンリツ」という )は,土木,建 。 築工事用資材等の製造販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告サンリツ技研株式会社被告サンリツ技研株式会社(以下「被告サンリツ技研」という )は,。 平成15年4月1日,被告サンリツの関連会社として設立された土木,建築工事用資材の製造等を目的とする株式会社である。 なお,被告サンリツは,被告物件を製造するものではなく,被告サンリツ技研に対して,被告物件の製造を委託し,これを購入している。 ( ) 原告の特許権2原告は,次の特許権(以下「本件特許権」という )を有している。 。 ア登 録 番 号第3597789号イ発 明 の 名 称マンホール構造,マンホール構造用止水可とう継手及びマンホール構造の施工方法ウ出願日平成13年3月27日エ登録日平成16年9月17日オ本件特許権に係る明細書(以下「本件特許明細書」という )の特許請 。 求の範囲(請求項8)の記載は,次のとおりである(以下,請求項8の特「」。〔〕, 〔〕。)。 許発明を 本件特許発明 という 甲2特許公報3 審決参照「マンホールと管とを接続するための,マンホール構造用止水可とう継手であって,前記マンホール構造用止水可とう継手が,剛性の筒状体と,前記筒状体の内側の筒状可とう体とを備えており,前記筒状可とう体が,前記筒状体と前記管との間の変位を吸収する弾性体から形成されており,前記筒状可とう体の立坑壁面側の一端が前記筒状体に固定されており,マンホール構造を形成する際,前記管が立坑内で推進敷設され,前記管の外周に,前記マンホール構造用止水可とう継手が装着され,前記筒状可とう体の他端が前記管の端部に向けられ,前記他端が前記立坑の中心側から締め付け可能な締結バンドによって前記管の端部の外周に締め付け圧着固定され,前記筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定されることを特徴とする,マンホール構造用止水可とう継手 」。 カ構成要件本件特許発明を各構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説された各構成要件をその符号に従って,例えば「構成要件A」のように表記する。。)構成要件Aマンホールと管とを接続するための,マンホール構造用止水可とう継手であって,構成要件B前記マンホール構造用止水可とう継手が,剛性の筒状体と,前記筒状体の内側の筒状可とう体とを備えており,構成要件C前記筒状可とう体が,前記筒状体と前記管との間の変位を吸収する弾性体から形成されており,構成要件D前記筒状可とう体の立坑壁面側の一端が前記筒状体に固定されており,構成要件Eマンホール構造を形成する際,前記管が立坑内で推進敷設され,前記管の外周に,前記マンホール構造用止水可とう継手が装着され,構成要件F前記筒状可とう体の他端が前記管の端部に向けられ,前記他端が前記立坑の中心側から締め付け可能な締結バンドによって前記管の端部の外周に締め付け圧着固定され,構成要件G前記筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定される構成要件Hことを特徴とする,マンホール構造用止水可とう継手キ本件特許発明と被告物件との対比についてa)イ号物件の構成は,別紙物件目録1記載のとおりである。これによれば,マンホールと下水道管とを接続するための,止水性を有するマンホール構造用可とう継手であって(構成要件A ,推進工法によって管3 )が敷設される場合において立坑にマンホール構造を形成するときに,管3の外周に装着される製品である(構成要件E 。また,本体ゴム5の )端5bは,ステンレスバンド7によって管3の外周に圧着固定されるものであって,この端5bは,管3の端部に向けられ,立坑の中心側から工具などでステンレスバンド7によって締め付けることができる(構成要件F 。)したがって,イ号物件は,本件特許発明の構成要件のうち,構成要件A,E及びFを充足する。 b)ロ号物件の構成は,イ号物件の構成との間で,?@イ号物件ではステンレスバンド7であるのに対して,ロ号物件ではワイヤー締め具7である点(構成要件F ,?Aイ号物件では鋼製管4の外周に水膨張ゴム11を )設けているのに対して,ロ号物件ではその外周に発泡ゴム製の緩衝材11を設けている点(構成要件G)においてそれぞれ相違し,その外の構成は一致する。 したがって,ロ号物件は,イ号物件と同様に,本件特許発明の構成要件のうち,構成要件A,E及びFを充足する。 なお,被告らは,本件特許発明との関係で,上記?@記載の相違点を主張しないものとしている。 ( ) 被告らによる被告物件の製造販売行為について3被告サンリツ技研は,平成14年3月から平成18年8月31日までの間に,製品名を「スペーサージョイントDR」とする製品を製造し,被告サンリツは,これを購入して第三者に販売した。このうち,少なくとも,平成17年12月末日までに製造販売した製品は,イ号物件である。 ( ) 原告による警告及び本件特許発明の補正等の経緯について4ア原告は,被告サンリツに対して,平成15年7月22日,本件特許発明の特許出願に係る特許公報を同封した通知書を送付する方法で,被告物件(「」。) が本件特許発明の技術的範囲に属する旨の警告 以下 本件警告 というをした(甲6 。)イ特許庁審査官は,上記特許出願について,平成16年2月2日付けの拒絶理由通知書により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないことを理由として拒絶理由の通知をした(乙1 。)これに対して,原告は,平成16年4月23日,特許請求の範囲を変更することを内容とする手続補正書及び上記拒絶理由に対する意見書を提出した(乙2,3 。),,「 」 具体的には 特許請求の範囲についてマンホール用止水可とう継手を「マンホール構造用止水可とう継手」に修正し 「筒状可とう体の少な ,くとも一部が前記筒状体及び前記管に固定されており」という構成のうち「及び前記管」の部分が削除され,この点について新たに「前記筒状可とう体の一端が前記立坑内から締め付け可能な締結バンドによって前記管の外周に締め付け圧着固定され」という構成を追加するものである。 ウイの結果,本件特許発明は,平成16年8月17日に特許査定され,同年9月17日に登録された。 エ原告は,イの補正の後からウの登録までの間には,改めて被告らに警告をしていない。 2争点( ) 被告物件の製造販売行為について直接侵害が成立するか(争点1 。 1 )ア被告物件は,構成要件Bを充足するか(争点1-1 。)イ被告物件は,構成要件Cを充足するか(争点1-2 。)ウ被告物件は,構成要件Dを充足するか(争点1-3 。)エ被告物件は,構成要件Gを充足するか(争点1-4 。)( ) 被告物件の製造販売行為について間接侵害が成立するか(争点2 。 2 )ア被告物件は,本件特許発明の生産にのみ用いる物か(争点2-1 。), ()。 a)イ号物件は 本件特許発明の生産にのみ用いる物か 争点2-1-a, ()。 b)ロ号物件は 本件特許発明の生産にのみ用いる物か 争点2-1-bイ被告物件は,本件特許発明による課題の解決に不可欠なものか(争点2-2 。)( ) 補償金について(争点3)3ア本件警告は,特許法65条1項の警告か(争点3-1 。)イ補償金の額について(争点3-2)( ) 損害賠償金について(争点4)4ア被告らが平成18年1月1日以降に製造販売した製品の構成について(争点4-1)イ特許法102条2項の被告らの利益について(争点4-2)ウ特許法102条2項の規定により損害と推定すべき利益の額について(争点4-3)第3争点に関する当事者の主張1争点1(被告物件の製造販売行為について直接侵害が成立するか )につい 。 て( ) 争点1-1(被告物件は,構成要件Bを充足するか )1 。 (原告の主張)ア被告物件は,鋼製管4と本体ゴム5を備えている。このうち,鋼製管4は剛性を,本体ゴム5は可とう性をそれぞれ有している。 ,,,, また 鋼製管4と本体ゴム5は いずれも筒状であって 本体ゴム5は実質的に鋼製管4の内側に備えられている。 したがって,被告物件は,構成要件Bを充足する。 イ被告らは,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の一方の端を屈折点として鋼製管4の内外ともに覆うものであるから,筒状体の内側のみに筒状可とう体を備える構成要件Bの構成とは異なるものであると主張している。 また,被告らは,本件特許発明では筒状体と管との間のみに筒状可とう体による柔結合の構成を有するものであるのに対し,被告物件では筒状体の外側であるコンクリート壁との間にも本体ゴム5による柔結合の構成を有するものであるから,被告物件の構成は,構成要件Bの構成とは異なると主張している。 しかしながら,本体ゴム5は,鋼製管4の外側のうち立坑壁面側の端部付近のみを覆うものである。 そうすると,被告らの主張のうち,本体ゴム5が鋼製管4の内外ともに覆う構成であることや本体ゴム5が鋼製管4の外側であるコンクリート壁, 。 との間をも覆う構成であるという事実は 客観的事実と異なるものである, ,, 仮に 被告らの主張する事実が正しい場合であっても 被告らの主張は本件特許発明の付加的要素を論ずるものにすぎず,本体ゴム5が鋼製管4の内側に位置しているという事実を動かすものではない。 むしろ,本体ゴム5が鋼製管4の一方の端を屈折点として鋼製管4の内外ともに覆う構成であるという被告らの主張は,本体ゴム5が鋼製管4の内側に位置していることを被告ら自ら認めるものである。 したがって,被告らの主張には理由がないことは明らかである。 (被告らの主張)ア本件特許発明では,筒状可とう体による柔結合は,筒状体と管との間に限定されるものである。 これに対して,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の一方の端を屈折点として,鋼製管4の内外ともに覆う構成である。 そうすると,被告物件は,筒状体の外側であるコンクリート壁との間も本体ゴム5によって覆われる構成であるから,筒状可とう体による柔結合は筒状体と管との間に限定されるものではない。そのため,被告物件は,筒状体の内側のみに筒状可とう体を備える構成要件Bの構成とは異なるものである。 したがって,被告物件は,構成要件Bを充足しない。 イ原告は,本体ゴム5は鋼製管4の外側のうち立坑壁面側の端部付近のみを覆うものであり,また,本体ゴム5は筒状体の外側であるコンクリート壁との間をも覆うものであるとしても,このことは,本件特許発明の付加的要素にすぎないため,本体ゴム5が鋼製管4の内側に位置することは明らかであると主張する。 しかしながら,本体ゴム5が鋼製管4の外側のうち立坑壁面側の端部付近しか覆っていないとしても,この構成は,この部分におけるコンクリート壁と筒状体の間を柔結合とするものであるから 本件特許発明でいう 筒 ,「状体の内側は柔結合,その外側は剛結合」という技術思想とは異なることになる。そうすると,この構成は,単なる付加的要素とはいえない。 したがって,原告の主張には理由がない。 ( ) 争点1-2(被告物件は,構成要件Cを充足するか )について2 。 (原告の主張)ア被告物件の本体ゴム5は,弾性を有し,鋼製管4と管3との相対的な変位を吸収する機能を有している。 したがって,被告物件は,構成要件Cを充足する。 イ被告らは,構成要件Cの「筒状可とう体」は,筒状体と管との間の変位を吸収する弾性体であるのに対して,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の外側をも覆うことにより,筒状体とマンホール壁との間の変位をも吸収する弾性体である点で相違し,また,構成要件Cの「筒状可とう体」は,筒状体と管との間の変位を吸収する弾性体であって,このような構成のみに限定されるのに対して,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の外側であるマンホール壁との間の変位をも吸収する弾性体である点で相違するとそれぞれ主張する。 しかしながら,被告物件では鋼製管4とマンホール壁とは止水モルタル又はコンクリートによって固定されるものであるから,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の外側であるマンホール壁との間の変位をも吸収するものではない。 仮に,被告物件の構成がこのような変位をも吸収するものであったとしても,このことは,本件特許発明の付加的効果であって,被告物件において本体ゴム5が鋼製管4と管3との間の変位を吸収する弾性体から構成されていること自体は明らかである。 したがって,被告らの主張には理由がないことは明らかである。 (被告らの主張)ア構成要件Cの「筒状可とう体」は,筒状体と管との間の変位を吸収する弾性体であるのに対して,被告物件の本体ゴム5は,鋼製管4の外側をも覆うことにより,筒状体とマンホール壁との間の変位をも吸収する弾性体である点で相違する。 すなわち,本件特許発明の構成は,筒状体の外側であるコンクリート壁との間はコンクリート壁用充填剤によって固定される剛結合であるから,この部分は,筒状体とマンホール壁との間の変位を吸収する構成ではないのに対し,被告物件の構成は,筒状体とマンホール壁との間の変位を吸収する点で相違する。 したがって,被告物件は,構成要件Cを充足しない。 イ原告は,本体ゴム5が鋼製管4の外側も覆うことによって筒状体とマンホール壁との間の変位をも吸収する弾性体である点について,本件特許発明の付加的効果をいうものにすぎないと主張する。 ,, , 確かに 本体ゴム5は 鋼製管4の外側の一部を覆うにすぎないもののこの部分は,筒状体とマンホール壁との変位を吸収する柔結合となっている。この構成は,本件特許発明の技術思想とは異なるから,単なる付加的効果とはいえない。 したがって,原告の主張には理由がない。 ( ) 争点1-3(被告物件は,構成要件Dを充足するか )について3 。 (原告の主張)ア被告物件では,本体ゴム5と鋼製管4がステンレスバンド6によって固定されている。このように固定されている部分は,本体ゴム5の立坑壁面側の一端の折り返し部5の部分である。 aしたがって,被告物件は,構成要件Dを充足する。 イ被告らは,本体ゴム5が鋼製管4の内側にあるとすれば,本体ゴム5は折り返し部5aを除く部分となるから,この部分は,立坑壁面側の一端で鋼製管4に固定されていないことになると主張している。 しかしながら,折り返し部5aは本体ゴム5の一部であるから,被告らの主張は,その前提を欠くものである。 したがって,被告らの主張には理由がないことは明らかである。 (被告らの主張)ア構成要件Dの「筒状可とう体」とは,構成要件B及び同Cによれば,筒状体の内側において筒状体と管との間の変位を吸収する弾性体であるから,折り返し部5aの部分は,鋼製管4の外側に位置している以上,この部分を本件特許発明の「筒状可とう体」ということはできない。 そうすると,構成要件Dの「筒状可とう体」は,本体ゴム5のうち折り返し部5aを除く部分となるから,この部分の立坑壁面側の一端は,鋼製管4に固定されていないことになる。 したがって,被告物件は,構成要件Dを充足しない。 イ原告は,折り返し部5aは本体ゴム5の一部であると主張する。しかしながら,上記アのとおり,原告の主張には理由がない。 ( ) 争点1-4(被告物件は,構成要件Gを充足するか )について4 。 (原告の主張)構成要件Gは 「筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定され ,る」という構成を定めるものである。本件特許発明は 「マンホール構造用 ,止水可とう継手」に関する発明であるから,構成要件Gは 「筒状体の外周 ,がマンホール壁用充填剤によって固定される」ような「マンホール構造用止水可とう継手」であることを意味すると解釈すべきである。 被告物件は,施工された時点では,必ず,マンホール壁用充填剤によってマンホール壁と固定されることになる。 そうすると,被告物件は,筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定されるようなマンホール構造用止水可とう継手であることは明らかである。 したがって,被告物件は,構成要件Gを充足する。 (被告らの主張)構成要件Gは 「筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定され ,る」という構成を定めるものである。本件特許発明の技術思想が「筒状体の内側は柔結合,その外側は剛結合という二重構成」にあることからすれば,構成要件Gの構成は,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤でマンホール壁と固定されるものと解釈すべきである。 そうすると,被告物件については,少なくとも,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤でマンホール壁と固定されるものではない。 したがって,被告物件は,構成要件Gを充足しない。 2争点2(被告物件の製造販売行為について間接侵害が成立するか )につい 。 て( ) 争点2-1(被告物件は,本件特許発明の生産にのみ用いるものか )に1 。 ついてア争点2-1-a(イ号物件は,本件特許発明の生産にのみ用いるものか否か )について。 (原告の主張))イ号物件には,マンホール壁用充填剤は含まれていない。しかし,施a工段階では,必ず,鋼製管4と削孔面2の間にマンホール用充填剤 a(コンクリートである場合とコンクリート以外の充填剤である場合とがある )を充填することにより,マンホール用充填剤がマンホール2の 。 壁を形成して,鋼製管4の外周を固定することになる。 このように,イ号物件は,必ず,鋼製管4がマンホール用充填剤を充填して固定されたときに,構成要件Gを充足することになる。 したがって,イ号物件は,本件特許発明の生産にのみ用いるものである。 )被告らは,イ号物件の鋼製管4の外側は本体ゴム5によって覆われるbものであって,マンホール壁用充填剤によって鋼製管4の外周がマンホール壁に固定されるものではないから,イ号物件は,施工段階であっても,構成要件Gを充足しないと主張している。 , , しかしながら 鋼製管4の外側のうち立坑の中心側の部分については本体ゴム5によって覆われるものではなく,この部分は,マンホール壁にマンホール壁用充填剤で固定されることになる。 したがって,被告らの主張には理由がないことが明らかである。 c)また,被告らは,構成要件Gは,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤によって直接固定される構成を定めていると解釈すべきであると主張する。 しかしながら,構成要件Gは「筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定される」という構成を定めるものである。 そうすると,その文言からも,筒状体の外周「すべてが」マンホール壁用充填剤によって「直接」マンホール壁に固定されるという構成までをも定めるものではないことは明らかである。 d)なお,イ号物件の構成からすれば,鋼製管4と管3の間の変位のみならず,鋼製管4とマンホール壁との変位をも吸収する必要は乏しいと考えられる。 むしろ,折り返し部5aとマンホール壁との間にマンホール壁用充填剤が充填された上で,鋼製管4とともに折り返し部5aが変位すると,マンホール壁用充填剤と折り返し部の界面に隙間が発生しやすく,漏水の原因となる。そのため,鋼製管4とマンホール壁とを柔結合の構成として,鋼製管4又は折り返し部5aが変位し得ることは,かえって不都合である。 そうすると,結局,折り返し部5aは,本体ゴム5を鋼製管4に固定するために設けられたものであって,それ以外の効果は,考えられないといえる。 (被告らの主張))イ号物件の鋼製管4の外側は,本体ゴム5によって覆われるものであaるから,コンクリート壁用充填剤によって鋼製管4の外周がコンクリート壁に固定されるものではない。 したがって,イ号物件は,その施工段階においても,構成要件Gを充足するものではないから,本件特許発明の生産に用いるものとはいえない。 )原告は,イ号物件では,鋼製管4の外側のうち,マンホール壁に固定bされている立坑の中心側の部分は,本体ゴム5によって覆われていないから,この部分の鋼製管4の外周は,マンホール壁用充填剤によってマンホール壁と固定されていると主張して,被告らの主張には理由がないと主張している。 しかしながら,構成要件Gは 「筒状体の外周がマンホール壁用充填 ,剤によって固定される」という構成を定めるものであるから,文言解釈からも,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤によってマンホール壁と固定されるものであると解釈すべきである。 また,本件特許発明の技術思想は 「筒状体の内側は柔結合,その外 ,側は剛結合という二重構成」にあるから,このような技術思想からも,構成要件Gの構成は,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤でマンホール壁と固定されるものであると理解すべきである。 そうすると,イ号物件では,鋼製管4の外側を覆っている折り返し部5aが,鋼製管4の長さ全体の概ね4分の1を占めるものであることは認めるものの,この部分は柔結合であって,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤でマンホール壁と固定されるものではないから,イ号物件は,構成要件Gを充足しない。 したがって,原告の主張には理由がない。 )原告は,イ号物件の構成では鋼製管4とマンホール壁との変位まで吸c収する必要性は乏しく,むしろ,鋼製管4とマンホール壁とが柔結合となって,鋼製管4又は折り返し部5aが変位し得ることは,かえって不都合であると主張する。 しかしながら,地震等の大規模な地殻変動によってマンホール壁と管との間に負荷による変位が生じた場合には,鋼製管4とコンクリート壁との間が剛結合となっているよりも,柔結合となっている方が,鋼製管4への負荷が小さくなるため,その分,作用効果の点で優れているといえる。 したがって,原告の主張には理由がない。 イ争点2-1-b(ロ号物件は,本件特許発明の生産にのみ用いるものか否か )について。 (原告の主張))構成要件Gとの関係では,イ号物件では鋼製管4の外周に水膨張ゴムa11を設けているのに対して,ロ号物件ではその外周に発泡ゴム製の緩衝材11を設けている点において相違するのみである。 したがって,構成要件Gに関する主張は,下記)の上記相違点に関bする主張を除き,イ号物件のとおりである。 ,, , b)ロ号物件には 上記a)のとおり 緩衝材11が設けられているものの鋼製管4のマンホール内側寄りの端部の外周には,緩衝材11が設置されていない。そうすると,鋼製管4と削孔面2の間にマンホール用a充填剤(コンクリートである場合とコンクリート以外の充填剤である場合とがある )を充填することにより,鋼製管4がマンホール壁に固定 。 されるという点においては,イ号物件と同じである。 したがって,ロ号物件は,必ず,鋼製管4の外周がマンホール用充填, , 剤を充填して固定されるときに 構成要件Gを充足することになるから本件特許発明の生産にのみ用いるものといえる。 (被告らの主張))構成要件Gは 「筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定a ,される」という構成を定めている。この構成について,本件特許明細書には,次のとおりの記載がある。 「 0025】【本発明では (中略)立坑内の型枠にマンホール壁用充填剤を流し込 ,んで,かかる管の周囲にマンホールの壁を形成することができる 」。 「 0028】【本発明にかかる筒状体の外周と,組み立てマンホールの壁の削孔面と,, の間に流し込まれるマンホール壁用充填剤は 特に制限されることなくモルタルコンクリート等,種々のコンクリートでよい 」。 「 0036】【本発明では,管に装着されたマンホール用止水可とう継手の筒状体の外周に,コンクリート等のマンホール壁用充填剤が流し込まれ,マンホール壁が形成されることができる。 【0037】また,本発明では,管に装着されたマンホール用止水可とう継手の筒状体の外周に,マンホール壁用充填剤が流し込まれ,予め形成されたマンホールの壁の削孔面と筒状体との間を埋めることができる 」。 「 0041】【本発明にかかる筒状体は,流し込まれる現場打ちマンホール壁用充填剤のダムとなる場合があり,筒状体と管との間で,筒状可とう体のための空間を確保する。このため,かかる筒状体は,好ましくは,打設コンクリート等の圧力によって変形し難いものがよい 」。 「 0077】【筒状体6の外周には,コンクリートが流し込まれて,マンホール壁2が形成されている (以下省略)。 【0078】このように,図1のマンホール構造1では,マンホール用止水可とう継手5を管3に取り付けた後,マンホール壁2のコンクリートを打設すれば,筒状体6がマンホール壁2のコンクリートのダムとなり,筒状体6と管3との間に空間を確保し,かかる空間内で,弾性体製の筒状可とう体7が筒状体6と管3とを連結する 」。 「 0085】【ゴム製筒状可とう体108は,筒状で,管107を周囲から取り巻いている。筒状体106は,モルタルコンクリート105を詰めることにより,マンホール102にしっかり固定されていなければならない 」。 「 0091】【また,図4のマンホール構造11では,筒状可とう体17の一端17, , aが 筒状体16の内面に拡張バンド18によって圧着固定されており筒状可とう体17の他端17bが,管13の外周に締結バンド19によって締め付け圧着固定されて,筒状体16の外周には,ケーシング鋼管20を外型枠として,立坑14内にコンクリートが流し込まれることによって,マンホール壁12が形成されている点は,マンホール構造1と同様である。 【0092】しかし,マンホール構造11では,マンホール用止水可とう継手15の筒状体16の外周にフランジ16aが設けられている。図4のマンホール構造11は,図1のマンホール構造1と,この点が異なる。かかるフランジ16aは,マンホール壁12のコンクリートに食い込み,筒状体16をマンホール壁12のコンクリートに固定するのに役立ち,筒状体16とマンホール壁12のコンクリートとの密着性を高める 」。 「 発明の効果】【本発明のマンホール構造によれば,筒状体の外周にマンホール壁が形成され,筒状体と管との間が弾性体製の筒状可とう体によって連結されるため,地震等の大規模な地殻変動によって,マンホール壁と管との間に,異なる負荷がかかったり,相対的な変位の差が生じて位置ズレが起きても,筒状可とう体がかかる負荷及び変位を吸収でき,マンホール壁と管との接合部の破損が防止できる 」。 )これらの記載並びに図1,図2及び図4によれば,筒状体の外周すべbてが,マンホール壁用充填剤により直接固定されているものであることは明らかであるから,構成要件Gは,筒状体の外周すべてがマンホール壁用充填剤で直接固定される構成を有するものであることが認められる。 それゆえに,上記【発明の効果】では 「筒状体の外周にマンホール ,壁が形成され」る構成,すなわち,筒状体の外周はマンホール壁用充填剤により全体として固定される剛結合である構成と,筒状体と管との間は弾性体製の筒状可とう体によって連結される柔結合である構成という二層構成により,筒状可とう体が負荷及び変位を吸収し,もって,マンホールと管との接合部の破損を防止できると記載されているものである。 ,( 。)c)ロ号物件では 鋼製管4の外周の一部 シール材12の箇所をいうがマンホール壁用充填剤によって固定されているとしても,その外の鋼製管4の外周の大部分は,折り返し部5aと緩衝材11によって覆われている。そうすると,筒状体の外周の大部分はマンホール壁用充填剤によって固定されるものではないから,ロ号物件が構成要件Gを充足しないことは明らかである。 したがって,ロ号物件は,本件特許発明の生産に用いるものとはいえない。 )原告は,ロ号物件では緩衝材11が設けられているものの,鋼製管4dのマンホール内側寄りの端部の外周には,緩衝材11が設けられていないため,鋼製管4と削孔面2との間にマンホール用充填剤を充填すaることにより,鋼製管4がマンホール壁に固定されるという点は,イ号物件と同じであると主張する。 しかしながら,ロ号物件における鋼製管4のマンホール内側寄りの端部の構成が原告の主張のとおりであるとしても,この部分を除く鋼製管4の外周がマンホール壁用充填剤によって固定されるものではないことは,上記のとおりである。 そうすると,構成要件Gの構成は,上記)のとおり,鋼製管4の外b周すべてをマンホール壁用充填剤により直接固定することにより,剛結合とすることにあるから,ロ号物件の構成は,鋼製管4の一部のみを直接固定しているにすぎないものであって,構成要件Gの構成とは明らかに異なるものである。 したがって,原告の主張には理由がない。 ( ) 争点2-2(被告物件は,本件特許発明による課題の解決に不可欠なもの2か )について。 (原告の主張)被告物件は,マンホール用充填剤を含まない点を除いて,本件特許発明の構成要件をすべて充足するものであって,施工段階においてマンホール用充填剤で必ず固定して利用する以外の用途はないものである。 また,被告物件が本件特許発明の構成要件をすべて充足するには,施工段,, 階においてマンホール用充填剤で固定されることで足りるから 被告物件が本件特許発明の生産に用いる物であって,その発明による課題の解決に必要不可欠なものであることは明らかである。 (被告らの主張)争う。 3争点3(補償金)について( ) 争点3-1(本件警告は,特許法65条1項の警告か )について1 。 (原告の主張)ア本件特許発明は,平成13年3月27日に特許出願され,平成14年1, 。 0月9日に出願公開された上で 平成16年9月17日に登録されている原告は,被告サンリツに対して,平成15年7月22日,本件特許発明の特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して本件警告をした。 また,被告サンリツは,被告サンリツ技研に対して,被告物件を委託して製造させているから,このような被告らの関係によれば,被告サンリツ技研は,本件警告によって,本件特許発明の特許出願に係る発明であることを知ったというべきである。 それにもかかわらず,被告らは,被告物件の製造販売を継続したものである。 したがって,原告は,被告らに対して,実施料相当額の補償金の支払を請求することができる。 イなお,本件特許発明に係る発明の内容は,平成17年9月28日付けの審決によって訂正されている。 しかし,本件特許発明に関する請求項8は 「筒状可とう体の少なくと ,も一部を前記筒状体に固定し,前記筒状可とう体の一端を前記立坑内から締め付け可能な締結バンドによって前記管の外周に締め付け圧着固定し」という記載が「前記筒状可とう体の立坑壁面側の一端を前記筒状体に固定し,前記筒状可とう体の他端を前記管の端部に向け,前記他端を前記立坑の中心側から締め付け可能な締結バンドによって前記管の端部の外周に締め付け圧着固定し」という記載に訂正されたものであって,その記載をより明瞭にしたものにすぎない。 したがって,このように訂正された場合であっても,本件警告は,特許法65条1項の警告というべきである。 (被告らの主張)ア原告は,平成15年7月22日,本件特許発明の特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して本件警告をしたと主張して,特許法第65条1項の規定に基づいて,被告らに対して,補償金の支払を請求するものである。 しかしながら,次のとおり,本件警告は適法なものではなく,特許法65条1項の警告ということはできない。 イ本件警告で提示された発明の内容は,原告の当初の出願における請求項8である。 原告の当初の出願における請求項8については,特許庁は,平成16年2月2日付けの拒絶理由通知書により,進歩性がないとして拒絶理由の通知をした。 これに対して 原告は 平成16年4月23日 請求項8について前 ,,,,「記筒状可とう体の一端が前記立坑内から締め付け可能な締結バンドによっ」,。 て前記管の外周に締め付け圧着固定され という要件を加えて 補正したこの補正について,原告は,意見書において 「本願発明のマンホール ,構造は,マンホールとなる立坑内から推進敷設された管の外周に,剛性筒状体と筒状可とう体とを有するマンホール構造用止水可とう継手を設けるもので,筒状可とう体の少なくとも一部が筒状体に固定され,筒状可とう体の一端が立坑内から締め付け可能な締結バンドによって管の外周に締め付け圧着固定され,剛性筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によってマンホールに固定されるマンホールと管との柔結合構造に係るものです。本願発明によれば,マンホールの外側から作業せずにすむので,マンホールと管との接続に際しマンホール構造の規模を超える大規模な掘削工事の必要性がありません。しかも,本願発明によれば,比較的狭い立坑内でも,マンホール構造用止水可とう継手を簡単に管に固定することができ,マンホールと管との間に十分な柔軟性,止水性及び強度を発揮させることができます。したがって,本願発明は,従来にない技術にかかるもので,上記引用文献1〜6のいずれかに記載された発明であるとも,また,上記引用文献1〜6に記載された各発明から容易に発明することができたものとも認められず,十分に特許を受け得るものです 」と記載している。 。 この補正により,本件特許発明は,平成16年8月17日に特許査定され,同年9月17日に登録された。 他方で,被告物件は,上記の補正の前においては,そもそも本件特許発明に係る請求項8の技術的範囲に属することはなかったものの,その補正により,初めてその技術的範囲に属するようになったものである。 ウ上記のような場合において,原告が被告らに対し補償金の支払を請求するには,原告は,被告らに対して,補正の後から登録までの間に改めて警告する必要があった。 しかしながら,原告による補正の後の警告は,本件特許発明の登録後である平成16年11月30日付け通告書によるものであって,本件特許発明の登録以前にはされていない。 したがって,本件警告は,特許法65条1項の警告ということはできない。 ( ) 争点3-2(補償金の額について)について 2(原告の主張)ア被告らによるイ号物件の製造販売は,被告らの販売数量がそれぞれ概ね等しいことからも明らかなとおり,一体として行われているから,被告サンリツの売上高を基準として,被告らに対する相当な実施料率の合計を乗じて算定すべきである。 イ計算鑑定の結果によれば,被告サンリツによる平成15年8月1日から平成16年9月16日までのイ号物件の売上高は,3372万5540円である。また,被告らの実施料率の合計は,少なくとも5%とすべきである。 ウしたがって,被告らに対する補償金の額は,少なくとも168万6277円とすべきである。 (被告らの主張)争う。 4争点4(損害賠償金について)について( ) 争点4-1(被告らが平成18年1月1日以降に製造販売した製品の構成1について)について(原告の主張)アはじめに被告らは,平成18年1月1日以降は 「スペーサージョイントDR」 ,, 。 という製品名で イ号物件とは異なる製品を製造販売していたと主張するしかしながら,次の事実からすれば,被告らは,平成18年1月1日から同年8月31日までの間も,イ号物件を製造販売していたことが認められる。 イホームページへの掲載について被告サンリツは,平成18年9月15日まで,同社のホームページにイ号物件を掲載してこれを宣伝していた。ホームページにおける製品の紹介は,自社製品の宣伝のためになされるものであるから,そのときに製造販売している製品を掲載しなければ意味がないことになる。そうすると,このような事実は,被告らが,少なくとも平成18年8月31日まで,イ号物件を製造販売していたことを裏付けるものである。 この点について,被告らは,単にホームページを更新しなかったことによるものであると主張する。しかしながら,顧客はホームページの宣伝によって製品を注文するものであるから,製造販売していない製品を,約9か月もの長期間にわたってホームページに掲載するということは,一般の商慣習に照らしてもありえないことである。 したがって,被告らの主張が事実に反することは明らかである。 ウ製品名と型番の未変更について被告らは,平成18年1月1日以降は,イ号物件の製造販売を止めて,製品名と型番がイ号物件と同一の別の製品を製造販売していたと主張している。 しかし,製品の製造販売を行う者は,顧客が製品の違いを判別できるように,また,その者自身がその製品の数量等を管理できるように,異なる製品については異なる製品名と型番をつけるのが常識である。逆に製品名と型番が同じであれば,同じ製品であると判断するのが常識である。 したがって,被告らの主張が事実と異なることは明らかである。 エ地方公共団体等に対する公的証明書や変更届の不提出についてマンホール用止水可とう継手の製造者は,通常,マンホールメーカー,商社又は公共工事の元請業者を通じて,主な消費者である地方公共団体に対して製品を販売している。 地方公共団体は,マンホール用止水可とう継手が上下水道等の安全に大きく関わるものであることから,製品を発注する際には,財団法人下水道新技術推進機構が発行する建設技術審査証明書その他の公的証明書の提出を製造者に求めている。 また,地方公共団体は,製品の発注の際には,その原材料費等を含めて製品の価格を詳細に判断する必要があるため,製品の発注後に当該製品に変更がある場合には,製造者に対して,変更後の製品について変更届の提出を求めている。 そのため,製造者が製造販売する製品を変更する場合には,変更後の製品について建設技術審査証明書その他の公的証明書を取得し,既に発注した製品を変更する場合には,さらに地方公共団体への変更届を提出することが必要となる。 しかしながら,被告らは,平成18年1月1日以降,イ号物件の製造販売を止め,別の製品を製造販売したと主張するにもかかわらず,その別の製品について建設技術審査証明書その他の公的証明書を取得した事実や変更届を提出した事実もない。 このような事実からすると,被告らが,実際には,イ号物件を別の製品に変更していないことは明らかである。 オ被告らの主張について被告らは,平成18年1月1日以降は,イ号物件の製造販売を止めて,別の製品に変更したと主張する。しかし,このような主張に関する立証は容易であるにもかかわらず,被告らは,次に述べるとおり,これまで何ら有効な立証をしていない。 平成18年1月1日から同年5月31日までの期間については,被告らは,立証しないと述べている。 次に,平成18年6月1日以降の期間については,被告らは,ロ号物件のパンフレット及びその納品表を提出するものの,パンフレットについては作成年月日が不明であり,また,納品表については「スペーサージョイントDR」という記載からはイ号物件のパンフレットと区別することはできない。そのため,これらの立証は,被告らの主張を裏付けるものではない。 よって,被告らの主張には理由がないことが明らかである。 カまとめ以上のとおり,被告らは,平成18年1月1日以降も,少なくとも同年8月31日までは,イ号物件を製造販売していたことは明らかである。 (被告らの主張)被告らは,次のとおり,平成18年1月1日以降は,イ号物件とは異なる構成の製品を製造販売した。 ア平成18年1月1日から同年5月末日までの製品の構造については,立証しないこととする。 ,。 イ平成18年6月1日から同年8月31日までの製品は ロ号物件であるこの事実は,?@被告サンリツ技研は,平成18年5月25日,剛性円筒の外周をロ号物件の構成にした製品を基本とする発明を特許出願していること,?A被告サンリツ技研は,ロ号物件の製造に使用する緩衝材であるネオプレンスポンジを6月2日に,DR用緩衝材を6月14日にそれぞれ仕入れていること,?B被告サンリツは,平成18年6月6日,ロ号物件の販売に使用するパンフレットの納品を受けており,当該パンフレットには,「3.マンホールとの柔接合-緩衝材により継手にかかる振動,衝撃を軽減します 」というロ号物件の柔接合の特徴が記載されていること等から 。 も明らかである。 なお,パンフレット裏面の最下欄右の「2006年2月1日現在」という記載は,事実と相違するものである。 ウ被告サンリツは,平成18年9月15日まで,同社のホームページにイ号物件を掲載したことは事実である。しかしながら,このことは,単にホームページを更新しなかったことによるものである。すなわち,新製品が発売された場合であっても,新製品はその仕様が変更される可能性があることや下水道展で発表されるまでは認知度が低く,そもそも問い合わせも少ないことから,通常は,ホームページは8月又は9月に更新することを理由とするものである。 ( ) 争点4-2(特許法102条2項の被告らの利益について)について2(原告の主張)ア計算鑑定の結果によれば,被告サンリツが平成16年10月1日から平成18年8月31日までに被告物件の販売から得た利益の額は3525万5908円であり,被告サンリツ技研が平成16年10月1日から平成18年8月31日までに被告物件の販売から得た利益の額は766万2049円である。 そうすると,被告らの利益の額は,被告らのそれぞれの利益の額の合計額である4291万7957円となる。 , ,,, イなお 被告サンリツのロイヤリティについては 仮に 被告サンリツが有限会社創研に対して,特許第3497151号の特許権に関して,被告物件1製品当たり350円のロイヤリティを支払っていると認められる場,, , 合であっても 実施許諾契約書によれば 有限会社創研の代表取締役Xは被告サンリツ技研の代表取締役でもあるから,上記ロイヤリティは,被告らがXに利益を移したものにすぎず,実態のないものである。 したがって,上記ロイヤリティは控除すべき費用として認めるべきではない。 (被告らの主張)アはじめに被告らの利益は,別紙経費一覧表(以下「別表」という )記載のとお 。 りである。平成16年10月1日から平成17年12月31日までの間の利益の額は1533万6115円,平成18年1月1日から同年8月31日までの間の利益の額は760万1898円である。 なお 計算鑑定人による平成19年10月5日付け修正後計算鑑定書 以 , (下「計算鑑定書」という )による計算鑑定の結果は,経費計上されてい 。 ない費用(出荷手数料,ロイヤリティ,展示会費用,機械償却費等)があ, , , る外に 経費計上された費用についても 実態と相違するものであるからそのままこれを採用することはできない。 イ販売数量等について計算鑑定書記載の販売数量を概ね認める。なお,スペーサージョイントDR-K,スペーサージョイントDR-L及びスペーサージョイントDR-Mは,イ号物件の構成とは異なるものの,これ以上の立証はせず,イ号物件として計算されることに異議はない。また,スペーサージョイントDR-Nは,ロ号物件の構成とは異なるものの,これ以上の立証はせず,ロ号物件として計算されることに異議はない。 なお,計算鑑定書には 「被告サンリツの担当者は,SJDR-Nとい ,う商品名で記載された販売取引が,鑑定期間の販売データにほとんどないのは,単純に販売データでの商品名称変更の必要性を感じていなかったた, , めであり 実態としては平成18年1月1日以降の販売データにおいては商品名としてSJDRと書いていようとも,SJDR-Nと書いていようとも,いずれもSJDR-Nの商品を販売している,と主張している 」。 (計算鑑定書7頁)と記載されているものの,この計算鑑定書記載の主張は撤回する。この場合のSJDRを商品名とする製品は,ロ号物件のことである。 ウ経費等について別表1ないし25記載のとおりである。 )各部材(別表1ないし16)についてa本体ゴムその他の別表の部材名称1から16記載の各部材については,各部材の数量と納入金額を集計して,平均単価を算定した。 )人件費(別表17及び18)についてb被告物件の14種類ごとに組立加工に要する作業時間を算出し,時間当たり3000円の人件費を乗じて算定した。 )諸経費(別表19)についてc?@機械償却費について(i) 被告物件の一製品当たりの機械償却費については,製造機械に関する被告物件の使用割合が40パーセントであるから,すべての機械償却費にこれを乗じて,計算鑑定の結果により認められた被告サンリツの販売数量である6112個で除した金額である711円であると算定した。 ( )計算鑑定書では,機械償却費について 「SJDR製造の専用ii ,機械はない (計算鑑定書6頁)として,補充鑑定書では 「サン 」 ,リツ技研がSJDRを製造するために用いる機械は専用機械ではなく,他の製品の製造と共有している一般的なものである(補充。」鑑定書6頁)として,経費計上していない。 しかしながら,被告物件以外の製品とは,スペーサージョイントGLとスペーサージョイントSRであり,製造機械は,これらの三つの製品のためのものであるから,これらの製品の専用機械として扱うべきである。 したがって,機械償却費は,被告物件の使用割合で按分して経費計上すべきである。 ?A製造機械の消耗品費について被告物件の一製品当たりの製造機械の消耗品費については,製造機械に関する被告物件の使用割合が40パーセントであるから,すべての消耗品費にこれを乗じて,販売数量である6112個で除した金額である372円であると算定した。 ?B水道光熱費について計算鑑定書には,水道光熱費は22万5547円であると記載されている(計算鑑定書4頁 。また,被告サンリツ技研の販売数量は4 )442個であると記載されている(同頁 。)したがって,被告物件の一製品当たりの水道光熱費は,すべての水道光熱費を販売数量で除した金額である51円であると算定した。 d)出荷手数料(別表20)について?@被告サンリツは,被告サンリツ技研に対して,出荷作業を被告物件の一製品当たり200円で委託して支払っている。 なお,出荷手数料とは,被告サンリツ技研が外部運送に委ねるまでの包装費や伝票作成費その他の諸手続費用である。 ?A補充鑑定書には 「緊密な関係をもつサンリツとサンリツ技研との ,間で決められたものであり,経済合理性のないおそれがある。そのため単に,サンリツからサンリツ技研に対する金銭の授受があったことをもって,計算鑑定上の経費の根拠とはならない「対象製品の出。」,荷に明確に紐付ける形で個別抽出することは困難であったため,当該費用は経費計上していない 」と記載されている(補充鑑定書5頁 。 。 )しかしながら,緊密な関係であれば経済的合理性がないというのは相当ではなく,被告サンリツは,上記のとおり,現実に支払をしている以上,出荷手数料は経費計上すべきである。 e)運賃(別表21)について?@運送する場合における被告物件の1梱包当たりの重量は20キロ程度である。そうすると,主に利用する運送業者の運賃表によれば,運賃は380円から1300円までであるから,平均運賃は,840円となる。 他方で,被告物件の種類は「V150」から「HPD900」までの14種類であり,1梱包当たりの被告物件の個数は,平均1.85個である。 したがって,被告物件の一製品当たりの運賃は,平均運賃を平均個数で除した454円と算定されることになるから,被告物件の一製品当たりの運送賃は,少くとも400円とするのが相当である。 ?A計算鑑定書には 「サンリツの販売データに占める売上高に比例さ ,せてSJDRへの按分を行なった 」と記載されているものの(計算 。 鑑定書4頁 ,これは実態に合致しないものである。 )f)ロイヤリティ(別表22)について?@被告サンリツが有限会社創研に支払っているロイヤリティの対象とさている特許権は 「マンホールと下水本管との接続構造」に係る特 ,許第3497151号の特許権である。 被告物件は,上記特許権の実施品であるから,その対価として,被告サンリツは,有限会社創研に対して,実施許諾契約に基づいて,被告物件である「スペーサージョイントDR」の一製品当たり350円を支払っている。 ?A計算鑑定書には 「当該特許の供与先はサンリツに限られていると ,のことであり,当該特許使用料に客観性を認めることは困難であったため,今回の鑑定ではサンリツの費用に算入していない 」と記載さ 。 れている(計算鑑定書6頁 。また,補充鑑定書には 「有限会社創 ),研が管理する特許第3497151号が,実際にSJDRに使われているかどうか,技術的な有用性がどの程度あるのかを判断する立場にない「有限会社創研の代表取締役のX氏は,被告サンリツ技研の 。」,代表取締役でもあり,当該ロイヤリティの料率は,経済合理性のない水準で決定されたおそれがある(補充鑑定書5頁)とそれぞれ記 。」載されている。 しかしながら,上記のとおり,被告物件は,上記?@の特許権の実施品であって,ロイヤリティが現実に支払われている以上,ロイヤリティは経費計上すべきである。 ?Bまた,補充鑑定書には 「特許法第102条第2項は,権利者の損 ,害賠償請求に当たっての権利者保護がその趣旨であることに鑑みるならば,計算鑑定上,客観的な水準が不明瞭な費用を経費計上することは困難であり,ロイヤリティは経費計上しなかった 」と記載されて 。 いる(補充鑑定書5頁 。)しかしながら,特許法102条2項は,侵害者が得た利益を権利者の損害と推定する趣旨の規定であって,現実に侵害者が得た利益を超える利益を権利者の損害と推定しようとするものではない。 それにもかかわらず,費用が被告物件の販売のための経費として現実に支出されている場合であっても,当該費用が,経済的合理性がない又は客観的な水準が不明瞭であるとの理由で経費計上されないならば,このような計算鑑定の結果は 「得た利益」ではなく 「得られ ,,るべき利益」となるから,特許法102条2項の趣旨に反し,鑑定の目的を逸脱するものとなる。 仮に 「得た利益」が,現実に支払われた経費が嵩む等の事情によ ,,, , って低額になる場合には 権利者は 特許法102条1項に基づいて「単位数量当たりの利益の額」を主張して損害賠償を請求することができるから,特許法102条2項の趣旨を上記のように解したとしても,権利者にとって不利益とはならないはずである。 g)カタログ費用(別表23)について計算鑑定書では,計算鑑定の対象期間内に発注して作成されたカタログの費用に限り,経費として認めている(補充鑑定書5頁 。しかしな )がら,カタログは,在庫量との兼ね合いで発注するものであるから,当該期間内に発注したカタログの費用の外にも,当該期間よりも前に発注した在庫のカタログの費用をも考慮すべきである。 なお,被告物件の一製品当たりのカタログ費用は,平成15年から平成18年までに発注して作成されたカタログの費用の合計額である156万4000円に,被告サンリツの販売数量である6,112個を除した金額である256円であると算定した。 h)展示会(下水道展)費用(別表24)について?@被告サンリツは,毎年7月に下水道展に出展し,平成15年から平成18年までの間に合計915万9511円を支払っている。そうすると,下水道展の展示品のうち,被告物件の展示割合は25パーセント相当であるから,すべての展示会費用の25パーセントに当たる228万9877円は,展示会費用として経費計上すべきである。 したがって,被告物件の一製品当たりの展示会費用は,販売数量である6112個で除した金額である75円であると算定した。 ?A計算鑑定人は,被告サンリツが下水道展に毎年出展していることやこの下水道展に被告物件が展示物として出展されていることは認めるものの,補充鑑定書には 「SJDRは,展示品の一品目に過ぎず, ,仮にSJDRがなくともサンリツは下水道展へと出展していたであろう,とも考えられる。また展示会費用とSJDRの販売高の増減との関連も明確に言い切れるものでなく,当該展示会費用からSJDRのためのみに費やされた部分を個別抽出することも困難である。そのため,計算鑑定上,展示会費用は共通固定費として扱い,経費計上していない 」と記載されている(補充鑑定書5頁 。 。 ),, , しかし この記載によれば 展示品全体では経費計上できるものの個々の展示品では経費計上できないということになるため相当ではない。 そうすると,広告宣伝のために重要な展示会の費用については,被告物件の出展割合で按分する方法で経費計上すべきである。 i)新技術申請費(下水道新技術推進機構認証費用 (別表25)につい )て, , 認証費用は 平成15年3月6日の申請により5年間有効になるため認証費用を平成15年8月1日から平成18年8月31日までの間の37か月で按分すると190万7945円となる。 したがって,被告物件の一製品当たりの新技術申請費は,販売数量である6112個で除した金額である312円であると算定した。 (3) 争点4-3(特許法102条2項の規定により損害と推定すべき利益の額について)(原告の主張)特許法102条2項の規定により損害と推定すべき利益の額は,被告サンリツの受けた利益の額と被告サンリツ技研の受けた利益の額の合計額であり,上記(2)アのとおり,合計4291万7957円である。 (被告らの主張)被告らは,被告らの製造販売行為が共同不法行為に当たることは認めるものの,被告サンリツ技研が被告サンリツに販売する行為自体は,内部関係にすぎないから,本件特許権の侵害行為の準備行為であるというべきである。 したがって,被告らの共同不法行為は,被告サンリツの販売行為に限られるから,特許法102条2項の規定により損害と推定すべき利益の額は,被告サンリツの受けた利益の額に限られるべきである。 第4当裁判所の判断1争点1(被告物件の製造販売行為について直接侵害が成立するか )につい 。 て( ) 争点1-1(被告物件は,構成要件Bを充足するか )について1 。 ,「 ,, ア構成要件Bはマンホール構造用止水可とう継手が 剛性の筒状体と前記筒状体の内側の筒状可とう体とを備え」という構成を定めている。同構成要件を被告物件が充足するか否かについて判断するには,同構成要件の「筒状体の内側の筒状可とう体」の意義が問題となる。 )本件特許明細書には,次の記載がある(甲2 。 a )【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明の課題は,現場打ちコンクリート製のマンホール壁と管との接合を,マンホール用止水可とう継手によって柔結合としたマンホール構造を得,地震時等におけるマンホール壁と管との接合部の破損を防ぐことである。 【0008】また,本発明の課題は,マンホールと管との接合を,マンホール構造用止水可とう継手によって柔結合としたマンホール構造を得,地震時等におけるマンホールと管との接合部の破損を防ぐことである。 【課題を解決するための手段】【0014】本発明にかかるマンホール用止水可とう継手は,剛性の筒状体と,この筒状体の内側の筒状可とう体とを備えており,この筒状可とう体が弾性体から形成されている。 【0015】本発明にかかる筒状可とう体は,剛性の筒状体と管との間を連結し,これらの変位を吸収する働きをする。 【0019】本発明では,かかる筒状体と管との間の空間には,弾性体製の筒状可とう体が配置される。かかる筒状可とう体は,筒状体と管との間の変位を吸収する働きをする。 【0020】本発明のマンホール構造によれば,筒状体の外周にマンホール壁が形成され,筒状体と管との間が弾性体製の筒状可とう体によって連結されるため,地震等の大規模な地殻変動によって,マンホールと管との間に,異なる負荷がかかったり,相対的な変位の差が生じて位置ズレが起きても,筒状可とう体がかかる負荷及び変位を吸収でき,マンホール壁と管との接合部の破損が防止できる。 【0021】また,本発明のマンホール構造によれば,筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によってマンホールの壁に固定され,マンホールの壁と筒状体との間が埋められ,筒状体と管との間が弾性体製の筒状, , 可とう体によって連結されるため 地震等の大規模な地殻変動によってマンホールと管との間に,異なる負荷がかかったり,相対的な変位の差が生じて位置ズレが起きても,筒状可とう体が,かかる負荷及び変位を吸収して,マンホールと管との接合部の破損が防止できる。 【発明の実施の形態】【0031】本発明にかかる筒状可とう体は,筒状体と管との間の変位を吸収する弾性体であれば,特に,形状の制限なく,種々のものを用いることができる。 【0034】本発明では,筒状可とう体の少なくとも一部は,筒状体及び管に固定されている。このようにすることで,マンホールの壁と管との間を一定の間隔で保てると共に,マンホールの壁と管とが異なった, , 変位を起こして位置ズレしても 筒状可とう体が変位を効率的に吸収し接合部の破損を防ぐことができる。 【0035】本発明では,マンホール用止水可とう継手は,筒状可とう体の一端が拡張バンドによって筒状体の内面に予め圧着固定されているのが好ましく,この状態で管に装着された後,筒状可とう体の他端が締結バンドによって管の外周に締め付け圧着固定されることになるのが好ましい。 【0038】このようにして得られるマンホール構造は,マンホール壁と管とのジョイント部に,マンホール用止水可とう継手が配置されることとなり,マンホール用止水可とう継手の筒状可とう体によって,マンホール壁と管とのジョイント部が柔接合となる。 【0039】本発明にかかる筒状可とう体は弾性体から形成される。 かかる弾性体は,マンホール壁と管との間の変位を吸収できる柔軟さが必要であるが,特に制限されることは無く,種々の材質を用いて形成することができる。 【0068】本発明にかかる拡張バンド及び締結バンドは,筒状可とう体を筒状体及び管に十分に圧着固定することができ,それらの間を十分に止水することができれば,適度な剛性を持つ高分子材料からなるものでも良い。 【0108 【発明の効果】本発明のマンホール構造によれば,筒状 】体の外周にマンホール壁が形成され,筒状体と管との間が弾性体製の筒状可とう体によって連結されるため,地震等の大規模な地殻変動によって,マンホール壁と管との間に,異なる負荷がかかったり,相対的な変位の差が生じて位置ズレが起きても,筒状可とう体がかかる負荷及び変位を吸収でき,マンホール壁と管との接合部の破損を防止できる。 )本件特許明細書のこれらの記載を考慮すると,本件特許発明の「筒状b可とう体」は,筒状体と管との間を連結するものであって,これらの間の負荷及び変位を吸収し,もって,マンホール壁と管との接合部の破損を防止するものであると認められる。 また,本件特許発明の「筒状可とう体」は,負荷及び変位を吸収する弾性体であれば,その形状に制限はなく(上記【0031】参照 ,少)なくとも一部は,筒状体及び管に固定されているものである( 003【4】参照)と認められる。 そうすると,構成要件Bの「筒状体の内側の筒状可とう体」とは,筒状可とう体が筒状体と管との間の負荷及び変位を吸収する作用を果たすことができるように筒状体の内側に位置するものであれば足りるというべきであって,それ以上に,筒状可とう体のすべての部分が筒状体の内側のみに位置するものに限定されるとまで解釈するのは相当ではない。 イ被告物件の本体ゴム5は,折り返し部5aの部分で鋼製管4の外側に折り返されてこれに固定されているため,その約4分の1は,鋼製管4の外側に位置するものである。 しかしながら,本体ゴム5の約4分の3は,鋼製管4の内側に位置しており(物件目録1及び2参照 ,この部分が鋼製管4と管3との間の負荷 )及び変位を吸収する作用を果たすことは明らかである。 したがって,被告物件は,構成要件Bの「筒状体」に相当する鋼製管4の内側に同構成要件Bの「筒状可とう体」に相当する本体ゴム5を備えているといえるから,構成要件Bを充足するものと認められる。 ウ被告らは,本件特許発明の技術思想は,筒状体の内側は柔結合,その外側は剛結合という構成にあるから 「筒状体の内側」とは,筒状可とう体 ,のすべての部分が筒状体の内側のみに位置するというべきであるという解釈を前提として,被告物件では,本体ゴム5の折り返し部5aが鋼製管4の外側に位置し,筒状体とマンホール壁との間の負荷及び変位をも吸収するものであるから,本件特許発明の技術思想とは異なるものであって,被告物件は,構成要件Bを充足しないと主張している。 しかしながら,上述のとおり,このような解釈は相当でない上,被告物件のうち,イ号物件では折り返し部5a以外の部分,ロ号物件では折り返し部5aと緩衝材11以外の部分は,マンホール壁用充填剤である止水モルタル8及びエポキシ系接合剤14によって鋼製管4にそれぞれ固定されている。 そうすると,イ号物件では鋼製管4の大半の部分,ロ号物件では鋼製管4のおよそ半分の部分が,マンホール壁用充填剤によっていわゆる剛結合されているから,折り返し部5aや緩衝材11が筒状体とマンホール壁の間の負荷及び変位をも吸収する作用を果たしているとまで認めることはできない。 したがって,被告物件の筒状体の外側が筒状体とマンホール壁との間の負荷及び変位をも吸収する構成を有することを前提とする被告らの主張は,その前提を欠くものであって,これを採用することはできない。 また,本件特許発明のマンホール構造用止水可とう継手の技術的思想の中核は,マンホール壁と管との接合部の破損を防止することにある。 そうすると,仮に,被告物件において,筒状体の外側において筒状体とマンホール壁との間の負荷及び変位を吸収する作用効果をも有する構成が認められる場合であっても,なお,被告物件が,筒状体と管との間の負荷及び変位を吸収する作用効果を同様に奏するものであることを左右するものではない。 したがって,このような構成が付加されたことにより,追加的な作用効果が認められる場合であっても,被告物件には本件特許発明の構成が一体性を失うことなく備わっており,本件特許発明と同一の作用効果を奏するといえるから,被告物件が,構成要件Bを充足することは明らかである。 ( ) 争点1-2(被告物件は,構成要件Cを充足するか )について2 。 ア構成要件Cは 「筒状可とう体が,前記筒状体と前記管との間の変位を ,吸収する弾性体から形成され」という構成を定めている。 被告物件の本体ゴム5が鋼製管4と管3との間の変位を吸収する弾性体であることについては争いはないから,被告物件が,構成要件Cを充足することは明らかである。 イ被告らは,折り返し部5aが筒状体とマンホール壁との間の変位をも吸収する弾性体であるから,被告物件は,構成要件Cを充足しないと主張する。 しかしながら,前記( )のとおり,被告物件の構成では,折り返し部51aや緩衝剤11が筒状体とマンホール壁の間の負荷及び変位を吸収する作,, 用を果たしていることまでを認めることはできないから 被告らの主張はその前提を欠くため,これを採用することはできない。 仮に,被告物件が,筒状体の外側において筒状体とマンホール壁との間の負荷及び変位をも吸収する構成を有すると認められる場合であっても,前記( )のとおり,このような構成は,追加的な作用効果を付加するもの1にすぎず,被告物件には本件特許発明の構成が一体性を失うことなく備わっており,本件特許発明と同一の作用効果を奏するといえるから,被告物件は,構成要件Cを充足するというべきである。 ( ) 争点1-3(被告物件は,構成要件Dを充足するか )について3 。 ア構成要件Dは 「筒状可とう体の立坑壁面側の一端が前記筒状体に固定 ,され」という構成を定めている。 被告物件では,本体ゴム5の立坑壁面側の一端である折り返し部5aがステンレスバンド6により鋼製管4に固定されているから,被告物件が構成要件Dを充足することは明らかである。 イ被告らは,構成要件Dの「筒状可とう体」とは,筒状体の内側でこれと管との間の変位を吸収する弾性体であることを前提として,折り返し部5aは,筒状体の外側に位置するものであるから,筒状可とう体ということはできないというべきであり,そうすると,折り返し部5aを除く本体ゴム5は,鋼製管4の立坑壁面側の一端には固定されていないと主張する。 しかしながら,折り返し部5aは本体ゴム5と一体であること,また,上記( )のとおり,本体ゴム5のすべての部分が鋼製管4の内側に位置す1る必要はないこと等を考慮すると,折り返し部5aは,筒状可とう体の一部であると認めるのが相当である。 したがって,被告らの主張は,その前提を欠くため,これを採用することはできない。 ( ) 争点1-4(被告物件は,構成要件Gを充足するか )について4 。 ア構成要件Gは 「筒状体の外周がマンホール壁用充填剤によって固定さ ,れる」という構成を定めている。 本件特許発明は,筒状体と筒状可とう体とを備えたマンホール構造用止, , 水可とう継手を対象とする発明であるから マンホール壁用充填剤自体は管と同様に,本件特許発明の構成そのものではなく 「マンホール構造用 ,止水可とう継手」の構成を定めるために規定されたものである。 そうすると,構成要件Gは 「マンホール壁用充填剤によって固定され ,」「」。,「」 る 構成の 筒状体の外周 と解すべきである また その 固定される時点とは,構成要件Eの「管の外周に,前記マンホール構造用止水可とう継手が装着され」る時点及び構成要件Fの「管の端部の外周に締め付け圧着固定され」る時点と同様に,構成要件Eの「マンホール構造を形成する際」であると解するのが相当である。 そして,被告物件の鋼製管4の外周は,その施工の際には,マンホール壁用充填剤によって固定されることになるから(別紙物件目録1及び2記載の「4.施工方法の説明」参照 ,被告物件は,構成要件Gを充足する )というべきである。 イ被告らは,構成要件Gの「筒状体の外周」とは,筒状体の外周すべてをいうものと解釈すべきであることを前提として,被告物件の鋼製管4の外周の一部は,折り返し部5aや緩衝材11により覆われているため,すべての外周がマンホール壁用充填剤によって直接固定されるものではないから,被告物件は,構成要件Gを充足しないと主張する。 しかしながら,筒状可とう体のすべての部分が筒状体の内側のみに位置すると解釈すべきではないのと同様に,筒状体のすべての外周がマンホール壁用充填剤によって直接固定されていない場合であっても,被告物件における本体ゴム5は,なお,筒状体と管との間の負荷及び変位を吸収するという作用効果を奏するものである。 したがって,被告物件では,鋼製管4の一部が,マンホール壁用充填剤によって直接固定されている以上,被告物件は,構成要件Gを充足すると認めるのが相当である。 よって,被告らの上記主張には理由がない。 ( ) 結論5以上のとおり,被告物件は,本件特許発明のすべての構成要件を充足し,本件特許発明の技術的範囲に属するから,被告物件の製造販売行為については,直接侵害が成立すると認められる。 2争点3(補償金について)について( ) 争点3-1(本件警告は,特許法65条1項の警告か )について1 。 ア特許法65条1項の警告について特許登録出願人が出願公開後に第三者に対して特許登録出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をするなどして,第三者がその出願公開がされた特許登録出願に係る発明の内容を知った後に,補正によって特許請求の範囲が補正された場合において,その補正が元の特許請求の範囲を拡張,変更するものであって,第三者の実施している物品が,補正前の特許請求の範囲の記載によれば発明の技術的範囲に属しなかったのに,補正後の特許請求の範囲の記載によれば発明の技術的範囲に属することとなったときは,出願人が第三者に対して特許法65条に基づく補償金支払請求をするためには,その補正後に改めて出願人が第三者に対して同条所定の警告をするなどして,第三者が補正後の登録請求の範囲の内容を知ることを要するが,その補正が,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において補正前の特許請求の範囲を減縮するものであって,第三者の実施している物品が補正の前後を通じて発明の技術的範囲に属するときは,その補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の特許請求の範囲の内容を知ることを要しないと解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第30号,第31号同63年7月19日第三小法廷判決参照 。)イ本件警告についてこれを本件警告についてみるに,本件特許発明の特許出願に係る請求項8の特許請求の範囲は,上記第2の1( )のとおり 「マンホール用止水4 ,可とう継手」を「マンホール構造用止水可とう継手」とし 「筒状可とう ,体の少なくとも一部が前記筒状体及び前記管に固定されており」という構成のうち「及び前記管」の部分を削除して,この点について新たに「前記筒状可とう体の一端が前記立坑内から締め付け可能な締結バンドによって前記管の外周に締め付け圧着固定され」という構成要件(以下「本件追加要件」という )を追加して,補正されたものである。 。 本件追加要件は,筒状可とう体の少なくとも一部が管に固定されている, , という構成を更に具体化して その固定の態様を限定するものであるから特許請求の範囲を減縮するものである。 また,被告物件の本体ゴム5の一端5bは,立坑の中心側から締め付けることが可能な締結バンドであるステンレスバンド7又はワイヤー締め具7によって管3の外周に締め付け圧着固定されるから,被告物件が,本件, 。 追加要件を充足することは明らかであって この点については争いがないこれと同様に,本件追加要件は,筒状可とう体が管に固定される態様を限定するものであって,筒状可とう体の少なくとも一部が管に固定されているという補正前の構成自体を変更するものではないから,被告物件が補正前の請求項8の構成要件も充足することは明らかである。 そうすると,上記補正は,補正前の特許請求の範囲を減縮するものであり,かつ,被告物件は,補正の前後を通じて本件特許発明の技術的範囲に属するものであると認められる。 ,, 。 したがって 本件警告は 特許法65条1項の警告であると認められるなお,被告らは,被告物件は,補正前には本件特許発明の技術的範囲に属しなかったものの,その後の補正によりこれに属するようになったものであると主張している。しかし,被告らの主張は,具体的な根拠が明らかでなく,上記のとおり,その理由がないことは明らかである。 ウ結論以上のとおり,本件警告は,特許法65条1項の警告であると認められる。 ( ) 争点3-2(補償金の額について)について2アイ号物件の売上高について計算鑑定の結果によれば,平成15年8月1日から平成16年9月16日までの間の被告サンリツの売上高は,3372万5540円であると認められる(計算鑑定書1頁 。なお,被告らは,売上高については,特段 )争っていない。 イ実施料率について被告物件は被告サンリツの委託により被告サンリツ技研によってすべて製造されているという取引の実情からすれば,被告サンリツの売上高を基準として,被告らに対する相当な実施料を算定すべきであり,また,本件特許発明の構成及び作用効果並びに後記認定のとおり被告物件の利益率が相当に高いことを考慮すると,補償金の額は,その算定の基礎とすべき実施料率を5パーセントとして,これに被告サンリツの売上高を乗じた金額とすべきである。 ウ結論被告サンリツにあっては本件警告後その発明を実施し,被告サンリツ技研にあっては本件警告により特許出願に係る発明であることを知ってその発明を実施した者であるといえる上に,前記第2の1(1)のとおり,被告サンリツは,被告サンリツ技研に対し被告物件の製造を委託してこれを購入して第三者に販売するものであるから,被告サンリツと被告サンリツ技研の各行為は,客観的に関連し共同するものと認められる。 したがって,被告らは,原告に対して,特許法65条1項及び5項の規定により,連帯して,補償金として,168万6277円を支払う義務がある。 3争点4(損害賠償金について)について( ) 争点4-1(被告らが平成18年1月1日以降に製造販売した製品の構成1について)についてア第2の1( )のとおり,被告らは,少なくとも,平成15年8月1日か3ら平成18年8月31日までに,製品名を「スペーサージョイントDR」とする製品を製造販売し,このうち,平成15年8月1日から平成17年12月末日までに製造販売した製品がイ号物件であることは,当事者間に争いがない。 イ被告らは,平成18年6月1日から同年8月31日までに製造販売した製品は,ロ号物件であると主張している。そうすると,被告らは,少なくとも,この期間には,イ号物件又はロ号物件の構成を有する被告物件を製造販売したことが認められる。 ウ被告らは,上記ア及びイ以外の期間である平成18年1月1日から同年「 」, 5月末日までに製造販売した スペーサージョイントDR という製品はイ号物件やロ号物件とは異なる被告物件以外の製品であると主張している。 しかしながら,被告らは,この製品の構成について何ら立証しない上,この期間には,イ号物件をホームページに掲載していたことからすると,被告らは,少なくとも,平成18年5月末日までは,イ号物件を引き続き製造販売していたと認めるのが相当である。 エ以上のとおり,結局のところ,被告らは,平成15年8月1日から平成18年8月31日までの間,本件特許発明の技術的範囲に属する被告物件を製造販売していたことが認められる。 ( ) 争点4-2(特許法102条2項の被告らの利益について)について2ア売上高について)被告サンリツについてa計算鑑定の結果によれば,平成16年10月1日から平成18年8月31日までの間の被告サンリツの売上高は,合計9150万2746円であると算定されている(計算鑑定書3頁 。この売上高は,計算鑑定 )人が販売データの商品名に被告物件の製品名である「スペーサージョイントDR」を意味する「SJDR」の記載がある販売取引の売上高を集計し,かつ,サンプルベースで請求書と販売データとの照合手続をなした上で,算定されたものであると認められる(計算鑑定書4頁 。)したがって,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,被告サンリツの売上高は,9150万2746円であると認めるのが相当である。 )被告サンリツ技研についてb計算鑑定の結果によれば,平成16年10月1日から平成18年8月31日までの間の被告サンリツ技研の売上高は,合計5303万1733円であると算定されている(計算鑑定書4頁 。)この計算鑑定の結果は,上記ア )と同様に,信用性の高いものであaるから,被告サンリツ技研の売上高は,5303万1733円であると認めるのが相当である。 )販売数量について c計算鑑定の結果によれば,被告サンリツの販売数量は4387個であり,被告サンリツ技研の販売数量は4442個であると算定されている(計算鑑定書3頁 。)この数量は,売上高と同様に,計算鑑定人が販売データの商品名に被告物件の製品名である「スペーサージョイントDR」を意味する「SJDR」の記載がある販売取引の数量を集計し,かつ,サンプルベースで請求書と販売データとの照合手続をなした上で,算定されたものであると認められる(計算鑑定書4頁 。)したがって,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,販売数量は,被告サンリツにあっては4387個,被告サンリツ技研にあっては4442個であると認めるのが相当である。 なお,計算鑑定書では 「サンリツの平成16年10月1日〜平成1 ,7年12月31日のSJDRの販売数量は3023個であるのに対して,サンリツ技研の同期間のSJDRの販売数量は3056個であり,サンリツの販売数量のほうが33個多い。同様にサンリツの平成18年1月〜同年8月のSJDRの販売数量は1364個であるのに対して,サンリツ技研の同期間のSJDRの販売数量は1386個であり,サンリツの販売数量のほうが22個多い(計算鑑定書6頁)と記載され 。」ている。これを前提に,計算鑑定人は,被告サンリツ又は被告サンリツ技研において販売データへの販売数量又は製品名の入力の誤りをした可能性があると指摘している(計算鑑定書6頁 。)しかしながら,計算鑑定の結果によれば,計算鑑定の対象期間において販売数量が55個多いのは,被告サンリツではなく,被告サンリツ技研であるから,計算鑑定人は,この点において前提を誤ったものと認められる。 そうすると,被告サンリツ技研はその製造に係る被告物件をすべて被告サンリツに販売しているという取引の実情からすれば,被告サンリツの数量の方が被告サンリツ技研の数量よりも少ない理由は,被告サンリツが計算鑑定の対象期間に被告物件55個を返品されたと推認するのが相当である。このような推認は,計算鑑定書における「SJDRに関するサンリツの販売数量とサンリツ技研の販売数量とは概ね等しい。すなわちサンリツやA社では在庫を持たず,顧客の注文があった場合には,物流としてはサンリツ技研から直接,顧客へSJDRを出荷する。ただし帳簿上は,サンリツ技研から(時期によってはA社を経由して)サンリツへ販売し,サンリツから顧客へと販売を行なっている。また外部顧客が返品をした場合など,サンリツがSJDRの一時的な在庫を持つ場合があるが,その数量はごく僅かであり,鑑定結果に重要な影響を与えるものでない 」という記載(計算鑑定書2頁)から認められる取引の 。 実情からも裏付けられるものである。 したがって,被告サンリツ及び被告サンリツ技研の販売数量自体は,合理的に認められる数量であるとして,これを前提に被告らの利益を算定するのが相当である。 )被告らの主張についてd,「」,「」,「」, 被告らは 被告物件を V-150V-200V-250「V-300「V-350「V-400「V-450「HP 」,」,」,」,D400「HPD450「HPD500「HPD600「H 」,」,」,」,PD700「HPD800」及び「HPD900」の14種類とし 」,た上,その種類ごとに「ケーシング「既設」及び「現場」とを区分 」,し,その区分ごとに号単位に分けている。その上で,号単位でAタイプ(ケーシング立抗用)及びBタイプ(既設人孔到達用 (乙10の1参 )照)の2種類の平均販売単価をそれぞれ算出して,これらに各販売数量を乗じて算定した合計額を売上高であると主張している。 しかしながら,被告物件の号単位の平均販売単価及びこれに対応する各販売数量については,計算鑑定の対象期間の一部(乙4ないし乙7)を除き,具体的な立証がない。 したがって,被告らの前提とする売上高は,具体的な計算根拠を欠くものであって,上記計算鑑定の結果による認定を覆すに足りるものではない。 イ控除すべき費用について)被告サンリツについてa?@仕入高について計算鑑定の結果によれば,被告サンリツの仕入高は,被告サンリツ技研の売上高に等しいものとみなして,被告サンリツ技研の売上高である5303万1733円としている(計算鑑定書4頁 。), , 前記第2の1( )ウのとおり 被告サンリツが販売した被告物件は1すべて被告サンリツ技研が製造販売したものであることについては,当事者間に争いがない。 そうすると,上記の計算鑑定の計算根拠は,合理的であるから,被告サンリツの仕入高は,5303万1733円と認めるのが相当である。 なお,被告らは,この点について,特段争っていない。 ?A運賃について(i) 計算鑑定の結果によれば,運賃は,123万1975円であると算定されている(計算鑑定書3頁 。)具体的には,被告サンリツが計上している全製品に関する運賃を総勘定元帳から集計した上で,これに全製品の売上高に占める被告物件の売上高の割合を乗ずるものとしている。ただし,被告サンリツが計上している運賃には,書類等の製品以外のものを送付するために計上されている宅配便運賃や支店で計上された運賃も混ざっていたため,運送会社から請求があったものであって本社で計上された運賃と顧客に対して支払った運賃に限定するものとし,さらに,少額の販売において顧客より徴収した運賃を控除した上で算定されている(補充鑑定書4頁 。)このような計算鑑定の経緯によれば,運賃に関する計算鑑定の結果は,基本的に信用できるものである。 したがって,運賃は,123万1975円であると認められる。 ( ) これに対して,被告らは,?@被告物件の1梱包当たりの重量がii20キロ程度であること,?A主に利用する運送業者の平均運賃は380円から1300円までの平均である840円であること ?B V,「150」から「HPD900」までの14種類の被告物件の1梱包, 当たりの被告物件の個数は平均1.85個であることを根拠として被告物件の一製品当たりの運送賃は,少くとも400円であると主張している。 しかしながら,上記?@及び?Bについては,具体的な立証がなく,?Aについては,被告らの所在する富山県内の運賃(380円)と北海道までの運賃(1300円)を,取引の実情を考慮することなく単純に平均していることからすると,被告らの主張する運賃は,あくまで推定値であって,上記計算鑑定の結果による認定を覆すに足りるものではない。 したがって,被告らの主張は,採用することができない。 ?B新技術申請費(下水道新技術推進機構認証費用)について計算鑑定の結果によれば,5年間の認証費用に要する新技術申請費である309万3965円を計算鑑定の対象期間で按分して,118万6018円と算定している(計算鑑定書3頁 。)被告らも,同様に,計算鑑定の対象期間で按分する方法で算定しており,新技術申請費については,特段争っていない。 したがって,新技術申請費は,118万6018円であると認められる。 ?Cカタログ費用について(i) 計算鑑定の結果によれば,カタログ費用は,計算鑑定の対象期間内に発注された被告物件用のカタログの購入費用である78万9000円であると算定している(計算鑑定書3頁 。)この結果は,被告サンリツが集計したカタログの購入費用をすべて請求書及び総勘定元帳で照合したものであり,信用性が高いものと認められる(計算鑑定書5頁 。)したがって,カタログ費用は,78万9000円であると認められる。 ( ) 被告らは,計算鑑定の対象期間内に発注したカタログ費用の外iiにも,当該期間よりも前に発注した在庫のカタログ費用も含めるべきであると主張する。 この点について,計算鑑定人は,被告サンリツには,カタログの消費数量や在庫数量等の記録が存在しないため,期首在庫金額及び期末在庫金額が明らかではなく,購入金額を発注金額としたものであるとしている(補充鑑定書5頁 。)そうすると,期首在庫金額を立証する証拠がない上,被告らの主張によっても,なお,平成18年6月6日に発注した3000枚のカタログ(乙10の2)に関する期末在庫金額を除く必要が生ずるものの,被告らは,これを主張立証していない。 したがって,被告らの主張は,採用することができない。 ?D出荷手数料について計算鑑定の結果によれば,計算鑑定人は,出荷手数料を控除すべき費用とは認めていない。この理由は,出荷手数料は,緊密な関係を有する被告サンリツと被告サンリツ技研との間で決められたものであるから,経済合理性のないおそれがあること,また,出荷手数料の根拠となる費用は,人件費であると考えられるものの,被告物件の出荷にこれを明確に関連づけることは困難であることを理由とするものである(補充鑑定書5頁 。)しかしながら,被告らの主張によれば,出荷手数料は,包装費,伝票作成費その他の手数料であるから,少なくとも包装費については,被告物件を梱包するにあたり個別に要する費用であると認められる。 また,証拠(乙11)によれば,被告サンリツが被告サンリツ技研に対して出荷手数料として被告物件の一製品当たり200円の支払をした事実が認められる。 以上によれば,被告サンリツ技研が被告サンリツの関連会社であって,被告サンリツが被告サンリツ技研に対して被告物件の製造を委託しているという関係が認められる場合であっても,出荷手数料の根拠となる費用に実態があり,現実にその支払が認められる以上,少なくとも包装費に相当する費用は控除すべき費用であると認めるのが相当である。 そうすると,被告物件の形状及び重量その他の事情を考慮すれば,被告物件の一製品当たりの包装費は200円とするのが相当であり,出荷手数料の合計額は,これに被告サンリツの販売数量である4387個を乗じた87万7400円であると認めるのが相当である。 ?Eロイヤリティについて(i) 計算鑑定の結果によれば,計算鑑定人は,ロイヤリティを控除すべき費用とは認めていない。この理由は,ライセンサーである有限会社創研の代表取締役であるは,被告サンリツ技研の代表取締X役でもあるから,ロイヤリティの料率は経済的合理性のない可能性があるというものである(計算鑑定書6頁,補充鑑定書5頁 。)この点について,被告らは,被告サンリツは有限会社創研に特許(。 ) 第3497151号の特許権 乙13 特願2002-19359のロイヤリティとして被告物件の一製品当たり350円を支払っている(乙14)から,ロイヤリティを経費計上すべきであると主張しているため,以下検討する。 ( ) 特許権実施許諾契約書(乙14)によれば,有限会社創研は,ii被告サンリツとの間で,平成11年10月1日,発明の名称を「管部の接続構造」とする特許出願第62-278691号の特許権を独占的に実施することを許諾すること(第1条 ,ロイヤリティの )金額については被告サンリツが販売する製品及び品種ごとに別途定めること(第2条)等を内容とする契約を締結している。また,同契約書に添付されているロイヤリティに関する覚書によれば(乙14の5枚目 ,有限会社創研は,被告サンリツとの間で,平成15 )年10月1日,被告物件の一製品当たりのロイヤリティの金額を350円とする契約を締結していることが認められる。 しかしながら,これらの契約の対象とされている特許権は,特許出願第62-278691号の特許権であって,被告らの主張に係る特許第3497151号の特許権(乙13)ではないから,被告らの主張は,その前提を欠くものである。 したがって,被告らの主張は,採用することができない。 ?F展示会(下水道展)費用について(i) 計算鑑定の結果によれば,計算鑑定人は,展示会費用を控除すべき費用とは認めていない。この理由は,被告物件は,展示品の一品目にすぎないため,被告サンリツは,被告物件がない場合であっても下水道展に出展していたとも考えられ,また,展示会費用と被告物件の売上高の増減との関連性も明確ではなく,展示会費用から被告物件のみに費やされた費用を個別に特定することが困難であるというものである(補充鑑定書5頁 。)( ) 下水道展に関連する証拠(乙15,16の1ないし4)によれiiば,下水道展は,業界における重要な宣伝の機会であり,被告サン,, ,, リツは 被告物件の外にも スペーサージョイントSR 同N?UsML支管,ML支管V型,キラト,1号マンホール,VU短管,スレンダホールその他の被告サンリツの販売する製品を幅広く展示していることが認められる。 また,下水道展に関する費用としては,出展関係費用として,出展料金,重機リース,電気代,装飾,ガイドブック記事広告が計上されており,その外には,宿泊費,飲食費その他の費用が計上されている。これらの費用のうち,出展料金及びガイドブック記事広告は,毎年定額であるものの,その他の費用は,年毎に変動していることが認められる。 そうすると,下水道展が宣伝の機会として重要なものであり,被告サンリツの販売する製品が幅広く展示されているという事実からすれば,少なくとも,下水道展の費用の相当部分を占める装飾費用は,被告物件の展示の増減により変動するものと認められるから,これに被告サンリツの全売上高に占める被告物件の割合を乗じた金額を展示会費用として控除すべきであると認めるのが相当である。 したがって,展示会費用は,平成16年から平成18年までの装飾費用の合計額である319万4835円に売上高に占める被告物件の割合である6パーセント(計算鑑定書4頁)を乗じた額である19万1690円であると認めるのが相当である。 ( ) 被告らは,被告サンリツは,平成15年から平成18年まで展iii示会費用として合計915万9511円を支払っており,下水道展, , の展示品のうち 被告物件の割合は25パーセント相当であるから展示会費用の25パーセントに当たる228万9877円は,控除すべき費用として認めるべきであると主張する。 しかしながら,被告らは,被告サンリツが販売する製品を「ML支管,ML支管V型「SJ-N?Us,SJ-SR,キラト「S 」, 」,J-DR」及び「その他」の4つのグループに分類できることを理由として,被告物件の割合を25パーセントとすべきであると主張するものの,展示会費用は通常は展示品の数に応じて増減するものであるから,被告物件の割合は,現実に出展された製品の数量の割合で算定するのが相当である。 そうすると,例えば,平成16年の下水道展でいえば,搬入品目に係る合計数量である14個のうち,被告物件の数量は僅か1個のみであるから,被告らの主張する割合は,明らかに展示会の実情とは異なるものである。 したがって,被告サンリツの販売する製品が幅広く展示されているという展示会の実情からすれば,上記(??)のとおり,被告物件の割合は,被告サンリツの全売上高に占める被告物件の割合とするのが相当である。 また,装飾費用以外の費用のうち,出展料金及びガイドブック記事広告は,毎年共通の費用であって,被告物件が出展されない場合であっても必要とされる固定費用であると認められ,その他の費用は,被告物件の出展により変動する費用であるとしても,その具体的な立証がないため,結局,控除すべき費用と認めることはできない。 したがって,被告らの主張は,採用することができない。 )被告サンリツ技研についてb?@材料費について(i) 計算鑑定の結果によれば,材料費は3693万3783円と算定されている(計算鑑定書4頁 。)この費用は,被告サンリツが提出した「サイズ別仕入先一覧」に基づいてサイズ別の必要材料の数量を特定し,これに仕入先が発行した請求書に基づいて必要材料の期間別の単価(当該期間中に単価が変動するものにあっては平均値とする )を乗ずることによって 。 算定されたものであることが認められる(計算鑑定書5頁 。)したがって,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,材料費は3693万3783円と認めるのが相当である。 ( ) 被告らは,上記材料費が被告らの主張に係る材料費と異なる理ii由について,?@本体ゴムについては,仕入れの際に運賃も負担しているものの,計算鑑定では当該運賃を計上していないこと,?Aエポキシ樹脂については,計算鑑定ではアルミパック代とシール代を計上していないこと,?B段ボールについては 「V150「V25 ,」,0」の使用サイズに間違いがあることによるものであると主張している(乙15 。)しかしながら,被告らの主張は,いずれの点についても立証がなく,販売データ,請求書その他の具体的な資料に基づくものではないから,上記計算鑑定の結果による認定を覆すに足りるものではない。 ?A人件費について(i) 計算鑑定の結果によれば,人件費は759万2095円と算定されている(計算鑑定書4頁 。)計算鑑定人は,?@ヒアリングにより製造工程及び設計工程に関与する人員を把握するとともに 「期間集計勤怠台帳」から計算鑑定 ,の対象期間の実労働時間を把握したこと,?A「月別給与一覧表」から給与及び賞与支給額を把握するとともに,個人別に会社が負担する社会保険料を把握したこと,?B退職金規定から退職金必要積立額を把握したことにより,個人別の人件費をそれぞれ算出している。 次に,計算鑑定人は,上記の各人件費に「旧DR加工時間」に記載されているサイズ別の製造時間を乗じて,控除すべき人件費を算定している(計算鑑定書5頁,補充鑑定書12頁 。)さらに,特注品にあっては,別途,設計が必要となるため,ヒアリングにより把握した設計に要する時間に設計工程の単位時間当たりの人件費を乗じた費用に販売データより認定した特注品の件数を乗じて特注品に要する人件費を求めている(計算鑑定書5頁 。)このような計算鑑定の経緯によれば,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,人件費は759万2095円と認めるのが相当である。 ( ) 被告らは,?@計算鑑定人は,被告物件の製造に関与しない人員iiを含めて9名の人件費を前提に計算しているものの,現実には,このうちの5名しか製造に関与していないこと,?A計算鑑定人の算定した時間当たりの人件費については,設計部門にあってはこれを認めるものの,製造部門にあっては低いことを理由として,計算鑑定の結果は相当ではないと主張している(乙15 。)しかしながら,被告らは,乙15の別表2において,個人別の人件費,労働時間及び時給単価をそれぞれ算定しているものの,いずれも具体的に立証されていないから,信用性が低いといわざるを得ない。 したがって,被告らの主張を採用することはできない。 ?B水道光熱費について計算鑑定の結果によれば,水道光熱費は22万5547円と算定されている(計算鑑定書4頁 。)この費用は,総勘定元帳から把握した被告サンリツ技研の水道光熱費を被告物件の売上高の割合で按分することによって算定されたものであることが認められる(計算鑑定書5頁 。)したがって,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,水道光熱費は22万5547円であると認めるのが相当である。 なお,被告らは,この点については,特段争っていない。 ?C消耗品費について(i) 計算鑑定の結果によれば,消耗品費は57万7496円と算定されている(計算鑑定書4頁 。)この費用は,総勘定元帳から把握した被告サンリツ技研のすべての消耗品費を全体の売上高に占める被告物件の売上高の割合で按分することによって算定されたものであることが認められる(計算鑑定書5頁 。)したがって,計算鑑定の結果は信用性の高いものであるから,消耗品費は57万7496円であると認めるのが相当である。 ( ) 被告らは,被告サンリツ技研のすべての消耗品費の額についてiiは認めるものの,全体の売上高に占める被告物件の売上高の割合で按分するのではなく,被告物件,スペーサージョイントGL及びスペーサージョイントSRの3種類の製品の売上高に占める被告物件の売上高の割合(31パーセントないし34パーセント)で按分すべきであると主張している。 しかしながら,被告らは,消耗品を費消する被告サンリツ技研の製造機械が上記3種類の製品のみの製造に使用されていることを具体的に立証していない。また,被告らは,平成15年4月1日から平成19年3月31日までの期間に生じた消耗品費を平成15年8月1日から平成18年8月31日までに被告サンリツが製造販売した6112個で除した金額である372円を被告物件の一製品当たりの消耗品費として算定するものの,消耗品費が生じた期間と被告物件が製造された期間とが異なるものであるため,被告主張に係る被告物件の一製品当たりの消耗品費は,不正確なものである。 したがって,被告らの主張は信用性が低いため,これを採用することはできない。 ?D機械償却費について(i) 計算鑑定の結果によれば,計算鑑定人は,機械償却費を控除すべき費用とは認めていない。この理由は,被告サンリツ技研の製造機械は,被告物件を製造するための専用的な機械ではなく,他の製品も製造する一般的な機械であるため,被告物件を製造しない場合には,他の製品を製造することができるというものである(計算鑑定書6頁,補充鑑定書6頁 。)( ) 被告サンリツ技研の製造機械は,一般的な機械であって,被告iiサンリツ技研の全売上高に占める被告物件の売上高の割合は,約6パーセントであることを考慮すれば(計算鑑定書3頁 ,被告サン )リツ技研は,仮に,被告物件を製造しない場合であっても,これらの機械を購入したと考えられる。そうすると,これらの機械償却費, , は 被告物件の製造に直接必要となる費用ではないことはもとより被告物件を製造するために追加的に必要となる費用ともいえない。 したがって,機械償却費を控除すべき費用として認めるのは相当ではない。 ( ) 被告らは,被告サンリツ技研の製造機械は,被告物件,スペーiiiサージョイントGL及びスペーサージョイントSRの専用的な機械であるから,機械償却費は,これらの3種類の製品の売上高に占める被告物件の売上高の割合によって按分する方法で控除すべき費用として認めるべきであると主張している。 しかしながら,被告らは,上記のとおり,被告サンリツ技研の製造機械がこれらの3種類の専用的な機械であることを裏付ける証拠を提出していないため,被告らの主張は信用性が低く,仮に,これを裏付ける証拠が提出された場合であっても,被告サンリツ技研の製造機械は,なお,被告物件のみの専用的な機械と認めることはできないから,上記()の結論を左右するものではない。 ??したがって,被告らの主張は,採用することができない。 ウ小括)被告サンリツの利益の額a被告サンリツの利益の額は,上記ア )の売上高である9150万2 a746円から上記イ )により認められる控除すべき費用の合計額であ aる5730万7816円を除いた額である3419万4930円となる。 )被告サンリツ技研の利益の額b被告サンリツ技研の利益の額は,上記ア)の売上高である5303 b万1733円から上記イ)により認められる控除すべき費用の合計額 bである4532万8921円を除いた額である770万2812円となる。 ( ) 争点4-3(特許法102条2項の規定により損害と推定すべき利益の額3について)についてア前記第2の1( )のとおり,被告サンリツ技研は,被告サンリツの関連1会社であり,被告サンリツは,被告サンリツ技研に対し被告物件の製造を委託してこれを購入した上で,第三者に対し被告物件を販売しているものである。 そうすると,被告サンリツと被告サンリツ技研は,それぞれ本件特許権を侵害する者に当たるのみならず,客観的に関連し共同して本件特許権を侵害したものであるから,特許法102条2項の規定により損害の額と推定される利益の額は,上記( )ウのとおり,被告サンリツと被告サンリツ2技研のそれぞれの利益の額の合計額である4189万7742円となる。 イ被告らは,被告サンリツ技研が被告サンリツに販売する行為は本件特許権の侵害行為ではなく,その準備行為であるとして,特許法102条2項の規定により損害の額と推定される利益の額は,被告サンリツの利益の額に限られると主張する。 しかしながら,被告サンリツ技研と被告サンリツは別法人であって,被告サンリツ技研は被告物件を製造しこれを販売する行為によって本件特許権を侵害していると認められるから,これを本件特許権の侵害行為の準備行為であると認めることはできない。 したがって,被告らの主張には理由がない。 ,,,,, ウ以上の次第で 被告らは 原告に対して 連帯して 損害賠償金として4189万7742円を支払う義務がある。 ( ) まとめ4上記のとおり,被告らは,原告に対して,連帯して,補償金である168万6277円及び損害賠償金である4189万7742円の合計額である4358万4019円を支払う義務がある。 第5結論以上によれば,原告の請求は,被告らの被告物件の販売,販売の申出及び被告サンリツ技研の被告物件の製造の各差止請求並びに被告らの被告物件及び被告サンリツ技研の被告物件の半製品の各廃棄請求並びに主文掲記の限度の損害賠償請求については,理由があるからそれぞれ認容し,被告サンリツの被告物件の製造の差止請求及び被告らに対するその余の損害賠償請求並びにこれらに関する特許法101条1号又は2号の規定に基づく選択的請求については,理由がないからいずれも棄却する。 なお,訴訟費用については,民事訴訟法64条ただし書を適用して被告らに訴訟費用の全部を負担させるものとし,仮執行の宣言については,同法259条1項を適用して主文第4項についてのみ認め,その余については相当ではないから却下する。 よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 設樂隆一 |
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裁判官 | 中島基至 |
裁判官 | 古庄研 |