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関連審決 無効2005-80164 無効2005-80162 無効2007-800087
訂正2006-39066
訂正2006-39062
無効2005-80159 無効2007-800090
訂正2006-39067
無効2005-80161
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成16ワ20636特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成19ワ4544特許権侵害差止請求事件 判例 特許
平成19ワ11981特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
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平成15ワ18472特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
関連ワード 技術的思想 /  物の発明 /  方法の発明 /  製造方法 /  加工方法 /  頒布された刊行物 /  インターネット /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  寄せ集め /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  実質的同一 /  下位概念 /  技術的範囲 /  同一の発明 /  技術常識 /  発明の詳細な説明 /  分割出願 /  実質的に同一 /  共有 /  実施料相当額 /  クレーム /  均等 /  均等論 /  均等侵害 /  実質的同一性 /  置き換え /  置換 /  置換可能性 /  同一の作用効果 /  置換容易性 /  容易に想到(容易想到性) /  不存在 /  特許発明 /  実施 /  権原 /  加工 /  交換 /  間接侵害 /  構成要件 /  方法の使用 /  差止請求(差止) /  侵害 /  損害額 /  販売数量(販売数) /  損失額 /  予防に必要な行為 /  実施料 /  不法行為(民法709条) /  同意 /  設定登録 /  拒絶理由通知 /  訂正審判 /  新規事項追加(新規事項の追加) /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  訂正要件 /  不当に遅延 /  取消決定 / 
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事件 平成 16年 (ワ) 25576号 特許権侵害差止等請求事件
東京都新宿区<以下略>
原告 HOYA株式会社
同訴訟代理人弁護士吉澤敬夫
同 牧野知彦
同訴訟代理人弁理士新井全
同補佐人弁理士岡崎信太郎
同 岩田弘 愛知県岡崎市<以下略>
被告 東海光学株式会社
同訴訟代理人弁護士高橋譲二
同 川崎修一
同補佐人弁理士石田喜樹
同 園田清隆
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/12/14
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,別紙物件目録記載のシステムを使用してはならない。
2被告は,原告に対し,2384万0600円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は,別紙物件目録記載のシステムを使用してはならない。
2 被告は,別紙被告方法目録記載の方法を使用してはならない。
3被告は,別紙被告方法目録記載の方法で別紙被告製品目録記載の製品を製造し,又は,上記方法で製造した上記製品を譲渡してはならない。
4被告は,その本店,営業所及び工場に存する第1項のシステムを構成する端末コンピュータ,サーバー及びホストコンピュータを廃棄せよ。
5被告は,別紙被告方法目録記載の方法によって製造した別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ。
6被告は,原告に対し,4億円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 訴訟費用は被告の負担とする。
8 仮執行宣言
事案の概要
1訴訟の概要本件は,眼鏡レンズメーカーである原告が,同じく眼鏡レンズメーカーである被告に対し,次の請求をした事案である。
(1)加工レンズ供給に係る方法の発明である後記本件特許権1に基づいて,当該方法により生産した製品の製造・譲渡の差止め(請求第3項)及び当該方法により製造された製品の廃棄(請求第5項)(製造方法の発明と解される場合),並びに当該方法の使用差止め(請求第2項)(単純方法の発明と解される場合),(2)加工レンズの供給に係る物(システム)の発明に関する後記本件特許権2ないし4に基づいて,物(システム)の使用の差止め(請求第1項)及びその廃棄(請求第4項),(3)上記各特許権を侵害した不法行為又は不当利得(選択的)に基づいて,損害賠償金又は不当利得金4億円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求第6項)2技術的背景の要点眼鏡レンズは,いまだ眼鏡枠形状に加工されていない丸形の眼鏡用レンズであるアンカットレンズの縁を眼鏡枠に合う形状に加工(縁摺り加工)するとともに,眼鏡枠によっては,眼鏡レンズ周縁をヤゲン(薬研)と呼ばれる山型状の隆起に加工(ヤゲン加工)した上で,この部分を眼鏡枠の溝にはめて枠入れをする。
従来,眼鏡レンズは,眼鏡店において顧客のレンズ度数等の処方値や光学中心等のレイアウト情報などに基づいて決定され,眼鏡店からレンズ製造業者に当該眼鏡レンズが注文され,眼鏡店においてレンズ製造業者から送付されたアンカットレンズを加工していた。
しかしながら,眼鏡店におけるチェーン化が進むなどし,眼鏡店に技術者を置かずに加工工程が一部に集約されたり,レンズ製造業者が加工工程までを行って付加価値の高い眼鏡レンズの販売を行ったり,加工失敗の損失危険を眼鏡店に代わって負うサービスを提供するようになった。そして,眼鏡枠を眼鏡店の手元に残し,眼鏡店から眼鏡枠形状情報,眼鏡レンズ情報等の情報のみが加工工場に送られ,当該情報のみで加工工場において加工を行い,その加工済みレンズを納入する場合があるが,そのような場合でも加工工場において眼鏡レンズが眼鏡枠に正確にはめられるように加工するためには,眼鏡枠等について必要な情報を取得し,加工結果が適正かどうかを確認することなどが必要となる。
(甲1〜4の各2,弁論の全趣旨)3前提事実(1)当事者ア原告原告は,眼鏡用レンズ・フレーム・機器の製造・販売等を業とする株式会社である。
イ被告被告は,眼鏡レンズの製造・仕入れ販売,眼鏡フレームの製造・仕入れ販売等を業とする株式会社である。
(以上,争いのない事実)(2)原告の特許権原告は,アないしエの特許権を有する(以下,順に,「本件特許権1」のようにいい,各特許権に係る特許を「本件特許1」のようにいい,各請求項1に係る発明を「本件発明1」のようにいい,各特許に係る明細書及び図面を「本件明細書1」のようにいい,その記載は,別紙に添付するとおりである。)。
(争いのない事実)ア本件特許権1(甲1の1・2)(ア)登録番号特許第3075870号(イ)発明の名称ヤゲン付き眼鏡レンズの供給方法(ウ)出願日平成4年12月11日(エ)出願番号特願平4-331589号(オ)公開日平成6年6月24日(カ)公開番号特開平6-175087号(キ)登録日平成12年6月9日イ本件特許権2(甲2の1・2)(ア)登録番号特許第3502383号(イ) 発明の名称眼鏡レンズの供給システム(ウ)原出願特願平4-255018号(平成4年9月24日)(以下「原出願1」という。)(エ)第1次分割出願特願2000 91821号(平成12年3月29日)-(以下「原出願2」という。)(オ)第2次分割出願特願2003-128889号(平成15年5月7日)(カ)公開日平成15年10月10日(キ)公開番号特開2003-287723号(ク)登録日平成15年12月12日ウ本件特許権3(甲3の1・2)(ア)登録番号特許第3548569号(イ) 発明の名称眼鏡レンズの供給システム(ウ)原出願特願平4-255018号(平成4年9月24日)(原出願1)(エ)第1次分割出願特願2000 91821号(平成12年3月29日)(原出願2)-(オ)第2次分割出願特願2003-128894号(平成15年5月7日)(カ)公開日平成15年10月10日(キ)公開番号特開2003-287724号(ク)登録日平成16年4月23日エ本件特許権4(甲4の1・2)(ア)登録番号特許第3294825号(イ) 発明の名称眼鏡レンズの供給システム(ウ)原出願特願平4-165912号(平成4年6月24日)(エ)分割出願特願平11 212631号(平成11年7月27日)-(オ)公開日平成12年3月31日(カ)公開番号特開2000-89175号(キ)登録日平成14年4月5日(3)発明の内容本件発明1ないし4を構成要件に分説すると,各(ア)のとおりであり,明細書に記載された作用効果は,各(イ)のとおりである(争いのない事実)。
ア本件発明1(ア)構成要件の分説【ア】指定された眼鏡フレームに枠入れするために未加工の眼鏡レンズを前記眼鏡フレーム枠のレンズ枠形状データに基づきヤゲン加工を行いヤゲン付き眼鏡レンズを供給するヤゲン付き眼鏡レンズの供給方法において,【イ】前記眼鏡フレームのレンズ枠の枠溝に沿った眼鏡レンズ枠周長を3次元的眼鏡枠測定装置で測定する眼鏡レンズ枠周長測定ステップと,【ウ】所定の加工条件に基づいてヤゲン加工を行うレンズ加工ステップと,【エ】前記レンズ加工ステップによりヤゲン加工が施され眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を3次元周長測定装置で測定するヤゲンレンズ周長測定ステップと,【オ】前記眼鏡レンズ枠周長とヤゲンレンズ周長とを比較し,それらの差異が所定の範囲にあれば適性とする検査ステップと,【カ】を有することを特徴とするヤゲン付き眼鏡レンズの供給方法。
(イ) 本件明細書1に記載された作用効果「【0084】・・・予め求めた眼鏡レンズ枠の枠溝に沿った3次元の眼鏡枠周長と,加工済眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿った3次元のヤゲン周長の測定値とを比較し,その比較結果に基づき,加工済眼鏡レンズが眼鏡レンズ枠に適正に嵌合するか否かを判定するようにする。これにより,例えば加工側に眼鏡フレームがなくとも,加工済眼鏡レンズが眼鏡レンズ枠に正確に嵌合することを確認できる。したがって,例えば加工済眼鏡レンズが加工側から眼鏡店舗へ送られ,眼鏡フレーム枠に枠入れされるとき,加工済眼鏡レンズが大き過ぎて眼鏡フレーム枠に入らなかったり,逆に,加工済眼鏡レンズと眼鏡フレーム枠との間に隙間が生じるというような不具合は解消され,適正に加工されたヤゲン付き眼鏡レンズを供給できる。特に,眼鏡レンズ枠周長及びヤゲン周長を3次元形状として測定したので,より正確な周長測定ができ,加工済眼鏡レンズが眼鏡レンズ枠に正確に嵌合するかどうかを正確に判定できる。」イ本件発明2(ア)構成要件の分説【A】眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,【B】この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを有する眼鏡レンズの供給システムであって,【C】前記発注側コンピュータは,所定の入力操作により,眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有するものであり,【D】前記入力操作とは,所望の眼鏡フレームをフレーム形状測定器で測定し,その測定データから,眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,及びフレームセンターを計算処理して得た3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報を入力するステップを有する【E】ことを特徴とする眼鏡レンズの供給システム。
(イ) 本件明細書2に記載された作用効果「【0125】・・・眼鏡レンズの供給システムにおいて,発注側にて所望の眼鏡フレームをフレーム形状測定器で測定し,その測定データより,眼鏡枠形状の周長,フレームPD,眼鏡枠形状のAサイズBサイズ,及びフレームセンターを計算処理して得た3次元的な眼鏡フレーム枠形状情報と,眼鏡フレーム枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報を,コンピュータに入力するステップを有することで,精度の高い眼鏡フレーム枠形状情報を加工者側に与え,より精度の高いレンズのヤゲン加工及びそのレンズの供給を可能とし,特に,眼鏡枠形状の周長という新規な指標を採用したことで,フレームの変形誤差をも考慮した眼鏡レンズの供給システムができた。」ウ本件発明3(ア)構成要件の分説【F】眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータと,この発注側コンピュータへ接続された3次元的眼鏡枠測定装置とを有する眼鏡レンズの供給システムであって,【G】前記発注側コンピュータは,眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し,発注に必要なデータを前記製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有し,【H】一方,前記製造側コンピュータは,前記発注側コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備え,【I】前記眼鏡枠情報は,前記3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を前記眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データ(Rn θn Zn)を採取して得たものであり,,,【J】前記発注側コンピュータは,前記3次元の枠データに基づいて前記眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを前記製造側コンピュータへ送信する【K】ことを特徴とする眼鏡レンズの供給システム。
(イ) 本件明細書3に記載された作用効果「【0125】・・・眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとにより,発注側より製造側へ,眼鏡枠の3次元の枠データ,及びこの3次元の枠データに基づいて求めた前記眼鏡枠のレンズ枠の周長を与えることで,加工者は前記眼鏡枠の正確な形状データを把握することが出来る。」エ本件発明4(ア)構成要件の分説【L】眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,この発注側コンピュータに情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを備え,【M】前記発注側コンピュータが前記眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有し,【N】前記製造側コンピュータが前記眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を有する眼鏡レンズの供給システムにおいて,【O】前記発注側コンピュータにおいて,眼鏡レンズ情報,3次元的枠形状情報及び枠材質情報を含む眼鏡フレーム枠情報,処方値及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力する一方,【P】前記製造側コンピュータにおいて,前記入力された枠入れ加工をする上で必要となる情報に基づいてヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算し,【Q】この演算処理結果に基づき,レンズ加工が可能か否かの可否判断処理を含む処理結果を前記発注側コンピュータに出力することにより,【R】前記発注側コンピュータにおいて,少なくともレンズ加工の可否を発注前に確認でき,【S】かつ当該処理結果に基づいて前記各情報の当初の入力内容を変更できるようにした眼鏡レンズの供給システムであって,【T】前記発注側コンピュータには,3次元フレーム枠形状測定装置が接続されており,【U】この3次元フレーム枠形状測定装置の出力結果が前記3次元的枠形状情報として当該発注側コンピュータに入力されるようになっており,【V】前記発注側コンピュータには,表示装置が接続され,【W】該表示装置の画面には,前記3次元フレーム枠形状測定装置の出力結果として,少なくともフレームカーブ,ヤゲン溝の周長,フレームPD(瞳孔間距離),左右フレーム枠のなす角度である傾斜角が表示されることにより,当該出力結果が確認できるようになっていること【X】を特徴とする眼鏡レンズの供給システム。
(イ) 本件明細書4に記載された作用効果「【0016】・・・3次元形状測定装置によって得た3次元的枠形状情報を発注側コンピュータに入力するようにしたことにより,眼鏡レンズの発注及び受注処理を極めて効率的に行うことを可能にしている。また,3次元形状測定装置によって得た3次元的枠形状情報として,少なくともフレームカーブ,ヤゲン溝の周長,フレームPD(瞳孔間距離),左右フレーム枠のなす角度である傾斜角が,発注側コンピュータの表示装置に表示されるので,当該出力結果を確認することもできる。」「【0085】・・・また,エラーメッセージを表示することにより,無駄な処理を行う危険性を著しく軽減することを可能にしている。」(4)被告の行為ア被告システム及び被告方法の使用(ア)被告は,遅くとも平成12年6月ころから現在まで,別紙物件目録記載のシステム(以下「被告システム」という。)を使用し,その中で別紙被告方法目録記載の方法(以下「被告方法」という。)を使用して,ヤゲン加工済み眼鏡レンズを眼鏡店に販売・供給している。
(争いのない事実)(イ)サポートシステムは,眼鏡店が,眼鏡店にある共通発注端末機等からVAN通信である「メガネットVAN」又はインターネット通信である「Meganet web」を利用して,「メガネット協会」に設置されたコンピュータ(以下「VANコンピュータ」という。)を介して,被告らメーカーとの間で受発注等を行うシステムであり,眼鏡店の専用発注端末を利用したり,眼鏡店にある専用発注プログラムを利用したり,あるいは,眼鏡店にあるwebブラウザを用いてインターネットを利用したりする方法が採られるなど通信手段の変遷はあったが,眼鏡店からメガネット協会へ,メガネット協会からメーカーへというシステムの根幹において変更はない。
(争いのない事実,甲7,8,10の1〜5,18,乙74,75,弁論の全趣旨)(ウ)以下では,通信手段の変更の前後を通じて,メガネット協会の有するシステムを「メガネットVAN」という。
イ被告システム及び被告方法の内容被告システムは,少なくとも以下の構成を有し,被告方法は,少なくとも以下の内容を有している(争いのない事実,甲11,12,26,乙8,66,弁論の全趣旨)。
(ア)眼鏡店【1】眼鏡レンズの発注者である眼鏡店には,「CT-200」「MEGANET3000」などのメガネット協会対応の共通仕様端末機又はインターネットに接続可能な端末コンピュータ(以下「眼鏡店コンピュータ」という。)が設置されている。
眼鏡店コンピュータは,キーボード及びディスプレイを備えるとともに,3次元フレームトレーサが接続されている。
【2】眼鏡店コンピュータの入力画面から,発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報が入力される。
【3】フレームトレーサにフレームがセットされる。
【4】フレームトレーサが,フレームを測定し,その計測データ(R,θ,Z)から,フレームの1000ポイントデータ(0.36度刻みの半径のデータ),ヤゲン溝の周長,フレームPD,フレームカーブを演算する。
【5】眼鏡店コンピュータは,フレームトレーサの演算データを取り込む。
【6】眼鏡店コンピュータからVANコンピュータに,発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報が,通信回線を使って送信される。
【7】VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに,製作可能との回答を意味するVANナンバー,受付日時及び納期が送信された場合,眼鏡店コンピュータからVANコンピュータに1000ポイントデータが送信され,眼鏡店コンピュータの画面にはVANナンバー,受付日時,納期が表示される。その後,入力内容を変更することはできなくなる。
【8】VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに,製作不可との回答を意味するエラーコード,エラーメッセージが送信された場合,眼鏡店コンピュータの画面に当該エラー表示がされる。その後は,入力内容が修正されて処理が再度されるか,又はデータを削除して処理が中止される。
(イ)メガネット協会【1】眼鏡店コンピュータからVANコンピュータに発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報が送信されると,あらかじめ登録されている取引先,商品,カラー,納期,製作範囲などのデータで,発注データをチェックし,製作可否及び納期を計算処理する。
【2】VANコンピュータにおいて製作可能と計算処理された場合には,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに,製作可能との回答を意味するVANナンバー,受付日時及び納期が送信される。
VANコンピュータが受信した発注データに回答データを付加したデータが,加工メーカー別の宛先ファイルに蓄積される。
眼鏡店コンピュータからVANコンピュータに1000ポイントデータが送信されると,1000ポイントデータが加工メーカー別の宛先ファイルに蓄積される。
【3】VANコンピュータにおいて製作不可と計算処理された場合には,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータにエラーコード及びエラー内容が送信される。
(ウ)玉型加工メーカー【1】玉型加工メーカーのホストコンピュータ(以下「メーカーコンピュータ」という。)は,約10分置きにVANコンピュータに接続し,蓄積された注文データ(1000ポイントデータを含む発注データに回答データを付加したもの)を取得する。
【2】取得した注文データを基にレンズ作業指示書が発行されるとともに,縁摺加工機にデータが受け渡される。
【3】レンズ作業指示書のナンバーに基づいて,注文データに応じた玉型加工用アンカットレンズが在庫から取り出され,玉型加工伝票が印刷される。
【4】玉型加工伝票の指示に基づいて,アンカットレンズに印点が打たれる。
【5】玉型加工伝票からレンズブロッカーにデータが取り込まれ,プラスチック製の固定部材がアンカットレンズに装着され,アンカットレンズの固定作業(チャッキング)が行われる。
【6】チャッキングされたアンカットレンズが縁摺加工機にセットされる。
【7】注文データから得られた1000ポイントデータ,周長データが,加工機付属パソコンから縁摺加工機に送信される。
【8】縁摺加工機によって計測されたレンズの表面,裏面での1000ポイント位置での座標データが,縁摺加工機から加工機付属パソコンに送信される。
【9】上記縁摺加工機によって計測された1000ポイント位置での座標データ及び注文データから加工機付属パソコンによって演算されたヤゲン位置データが,加工機付属パソコンから縁摺加工機に送信される。
【10】ヤゲン位置,1000ポイントデータ及び周長を基に,縁摺加工機によってアンカットレンズが玉型加工される。
【11】専用面取機によってレンズの面取りが行われる。
【12】レンズメーターによって玉型加工済レンズの度数確認がされる。
【13】光学中心ずれと軸ずれが確認される。
【14】玉型加工済レンズの外観確認が行われる。
【15】確認実施作業者によって玉型加工伝票に検査印が押捺され,検査記録が残される。
【16】玉型加工伝票のバーコードが読み取られ,出庫処理が行われる。
【17】玉型加工済レンズが眼鏡店に納品される。
(5)構成要件の充足ア本件発明1被告方法は,構成要件ア,イ,ウ及びカを充足する(争いのない事実)。
イ本件発明2被告システムは,構成要件A,C及びEを充足する(争いのない事実)。
ウ本件発明3被告システムは,構成要件G,I及びKを充足する(争いのない事実)。
エ本件発明4被告システムは,構成要件M,N,R,T,U,V,W及びXを充足する(争いのない事実)。
(6)審判及び無効審決取消訴訟ア本件特許1(ア)手続の経緯の概要平成17年5月26日,被告は,本件特許1につき,特許無効審判請求(無効2005-80159)をした。
平成18年2月10日,特許庁は,特許無効の審決(乙62)をした。
同年3月20日,原告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の取消訴訟(平成18年(行ケ)第10120号)を提起するとともに,同年4月28日,特許庁に対して,訂正審判請求(訂正2006-39062号。甲44の1・2)をした。
平成18年5月12日,知的財産高等裁判所は,特許法181条2項による審決取消決定(甲44の3)をした。
平成19年5月10日,特許庁は,みなされた訂正請求による訂正を認め,被告の特許無効審判請求を不成立とする審決(甲60)をした。
(争いのない事実)(イ)訂正の内容訂正が確定した場合の本件発明1(以下「本件訂正発明1」という。)を分説すると,次のとおりである(甲44の2)。原告の訂正請求に係る訂正部分を下線で示す。
【ア’】ヤゲン付き眼鏡レンズの発注側から指定された眼鏡フレームに前記発注側が枠入れ可能とするために,手元に眼鏡フレームが存在しない加工側において,未加工の眼鏡レンズに対して,前記発注側から通信回線を介して受信した前記眼鏡フレーム枠のレンズ枠形状データに基づきヤゲン加工を行いヤゲン付き眼鏡レンズを前記発注側に供給するヤゲン付き眼鏡レンズの供給方法において,【イ’】前記眼鏡フレームのレンズ枠の枠溝に沿った眼鏡レンズ枠周長を3次元的眼鏡枠測定装置で測定する前記発注側における眼鏡レンズ枠周長測定ステップと,【ウ’】所定の加工条件に基づいてヤゲン加工を行う前記加工側におけるレンズ加工ステップと,【エ’】前記レンズ加工ステップによりヤゲン加工が施され眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を3次元周長測定装置で測定する前記加工側におけるヤゲンレンズ周長測定ステップと,【オ’】前記眼鏡レンズ枠周長とヤゲンレンズ周長とを比較し,それらの差異が所定の範囲にあれば適性とする前記加工側における検査ステップと,【カ’】を有することを特徴とするヤゲン付き眼鏡レンズの供給方法。
イ本件特許2(ア)手続の経緯の概要平成17年5月26日,被告は,本件特許2につき,特許無効審判請求(無効2005-80162) をした。
平成18年2月10日,特許庁は,特許無効の審決(乙63)をした。
同年3月20日,原告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の取消訴訟(平成18年(行ケ)第10121号)を提起するとともに,同年4月28日,特許庁に対して,訂正審判請求(訂正2006-39066号。甲45の1・2)を請求した。
同年6月2日,知的財産高等裁判所は,特許法181条2項による審決取消決定(甲45の3)をした。
同年12月27日,原告は,訂正請求の内容を一部変更した。
平成19年4月12日,特許庁は,訂正を認め,被告の特許無効審判請求を不成立とする審決(甲58)をした。
被告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の取消訴訟(平成19年(行ケ)第10175号)を提起した。
同年4月26日,被告は,特許庁に対して,新たな無効審判請求(無効2007-800087)をした(乙90)。
(争いのない事実)(イ)訂正の内容訂正が確定した場合の本件発明2(以下「本件訂正発明2」という。)を分説すると,次のとおりである(甲58)。原告の訂正請求に係る訂正部分を下線で示す。
【A’】ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータと,【B’】この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを有する,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムであって,【C’】前記発注側コンピュータは,所定の入力操作により,ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有するものであり,【D’】前記入力操作とは,所望の眼鏡フレームを3次元的フレーム形状測定器で測定し,その3次元測定形状データである測定データから,眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,及びフレームセンターをそれぞれ計算処理して得た3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報を入力するステップを有する【E’】ことを特徴とするヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム。」ウ本件特許3(ア)手続の経過の概要平成17年5月26日,被告は,本件特許3につき,特許無効審判請求(無効2005-80164)をした。
平成18年2月10日,特許庁は,特許無効の審決(乙64)をした。
同年3月20日,原告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の審決取消訴訟(平成18年(行ケ)第10122号)を提起するとともに,同年4月28日,特許庁に対して,訂正審判請求(訂正2006-39067号。甲46の1・2)をした。
平成18年6月2日,知的財産高等裁判所は,特許法181条2項による審決取消決定(甲46の3)をした。
平成19年4月17日,特許庁は,訂正を認め,被告の特許無効審判請求を不成立とする審決(甲59)をした。
被告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の取消訴訟(平成19年(行ケ)第10176号)を提起した。
同年5月8日,被告は,特許庁に対して,新たな無効審判請求(無効2007-800090)をした(乙91)。
(争いのない事実)(イ) 訂正の内容訂正が確定した場合の本件発明3(以下「本件訂正発明3」という。)を分説すると,次のとおりである(甲46の2)。原告の訂正請求に係る訂正部分を下線で示す。
【F’】ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータと,この発注側コンピュータに情報交換可能に通信回線で接続された製造側コンピュータと,この発注側コンピュータへ接続された3次元的眼鏡枠測定装置とを有する,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムであって,【G’】前記発注側コンピュータは,眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し,発注に必要なデータを前記製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有し,【H’】一方,前記製造側コンピュータは,前記発注側コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,ヤゲン加工済眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備え,【I’】前記眼鏡枠情報は,前記3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を前記眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データ(Rn,θn,Zn)を採取して得たものであり,【J’】前記発注側コンピュータは,前記3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された前記眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを前記製造側コンピュータへ送信すること【K’】を特徴とするヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム。」エ本件特許4平成17年5月26日,被告は,本件特許4(請求項1)につき,特許無効審判請求(無効2005-80161)をした。
平成18年2月10日,特許庁は,請求不成立の審決(乙65)をした。
被告は,知的財産高等裁判所に対して,上記審決の審決取消訴訟(平成18年(行ケ)第10124号)を提起した。
平成19年1月31日,知的財産高等裁判所は,被告の請求を棄却する判決(甲55)をし,同判決は確定した。
(争いのない事実)4争点(1)複数主体の関与(争点(1))(2)充足ア本件発明1(ア)構成要件エ(争点(2))(イ)構成要件オ(争点(3))イ本件発明2(ア)構成要件B(争点(4))(イ)構成要件D(争点(5))ウ本件発明3(ア)構成要件F(争点(6))(イ)構成要件H(争点(7))(ウ)構成要件J(争点(8))エ本件発明4(ア)構成要件L(争点(9))(イ)構成要件O(争点(10))(ウ)構成要件P(争点(11))(エ)構成要件Q(争点(12))(オ)構成要件S(争点(13))(3)無効ア本件特許1(争点(14))イ本件特許2(争点(15))ウ本件特許3(争点(16))エ訂正後の本件特許1(争点(17))オ訂正後の本件特許2(争点(18))カ訂正後の本件特許3(争点(19))(4)差止対象(本件特許2及び本件特許4)(争点(20))(5)損害(争点(21))(6)利得(争点(22))5争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(複数主体の関与)ア原告(ア)本件発明1a本件発明1のように,発明自体において複数主体の工程を含む発明においても,他人の行為を自己の行為として利用していると評価される場合,すなわち?@作用効果発揮のために,構成要件要素たる手順が行われるべき蓋然性を認識し,その実現を意欲していること,?A作用効果発揮のために,構成要件要素たる他人の手順を利用する関係にあること,?B差止めが侵害行為除去のため実効性を有することとの要件が満たされる場合には,構成要件の一部に該当する行為を行う他者の行為をその他の構成要件に該当する行為を行っている者による行為と評価してよいと解される。
bこれを本件に当てはめれば,被告方法が関係する被告の玉型加工システムである「SAPOTSYSTEM」は,システム自体が眼鏡店による眼鏡枠を測定する行為を予定しており,被告方法を実施するためには,眼鏡店の行為を利用することが必要不可欠であり(要件?A),被告は眼鏡店による眼鏡枠測定が行われることを確実なものとして認識し,その実現を意欲している(要件?@)。また,被告方法の差止めが認められれば,眼鏡店は必然的に侵害に関与する行為を行うことができなくなるから,被告方法の差止めにより完全に侵害行為の除去を行うことができる(要件?B)。
したがって,本件では,眼鏡店の行為を被告による行為と同視することが可能である。
(イ)本件発明2ないし4a(a)本件発明2ないし4のようにシステムに関する発明では,発明を特定するために不可避的に複数の人物の関与を伴うものとなっており,複数主体の機能や動作により特定される構成要素があったとしても,それは,物の発明たるシステムを特定するための手段にすぎず,このような他者の行為による機能を含むシステム全体が端的に物の発明として保護の対象とされるべきである。
(b)そして,ある者の行為が当該物の発明の使用に当たるか否かは,当該特許発明の目的・作用効果と行為者の具体的な行為の双方を特定した上で,?@当該者による行為と当該特許発明の目的・作用効果の実現との間に一定の因果関係を認めることができるか,?A当該者が被疑物件に対して一定の影響力(例えば,一定の支配管理関係の有無,利用についての主導的役割の有無等)を及ぼしているか,?B当該特許発明の目的・作用効果の実現によって当該者が何らかの経済的利益を享受しているかといった諸要素を総合的に検討した上で,当該者が,「発明の目的を達成するような方法で当該物を用い」たと規範的に評価できるか否かを具体的に判断すべきである(甲27)。
(c)被告は,製造側の行為のみを構成要件として特許を取得すれば保護される旨主張するが,複数者の関与を前提とするシステムそのものに発明性が認められる以上,一部の行為のみを無理に取り上げて特許請求の範囲とすることは,社会的な実体に反するばかりか,特許性を認められるとすることも困難である。
b被告システムは,加工者側である被告のコンピュータと発注者側である眼鏡店のコンピュータの情報とが正確に同期し,システムさえ起動していれば,その作用効果が発揮させられるものであるから,被告の行為は,あたかも物たる機械においてスイッチを押すと同様に,被告システム全体を使用することに該当するものであり,「使用」に該当する。
イ被告(ア)本件発明1a原告の主張(ア)aは争う。
ある特許の特許請求の範囲に記載されたすべての構成要素を単独の者が行ってはじめて,その者について当該特許の侵害行為が成立するのであり,その例外は,間接侵害の場合に限られる。
また,主導的役割を演じた主体が他者を道具のように利用しているケースであれば,その者の行為が構成要件のすべて充足するとして特許侵害を観念することができる場合があるとしても,それは,極めて例外的な場合に限られる。
b同bは否認する。
被告方法においては,眼鏡店,メガネット協会,被告らメーカーが,完全に別個独立の主体としてその一部に関与しているだけであり,それぞれが他人の行為を自己の行為として利用しているわけではない。
(イ) 本件発明2ないし4a同(イ)a(a)及び(b)は争う。前記(ア)aと同旨である。
このような解釈をしたとしても,出願に当たって,発注側の行為のみ,又は製造側の行為のみを構成要件とする特許出願をして特許を取得すれば,発注側,製造側のそれぞれの行為について特許侵害を主張することが可能である。
b同bは否認する。
被告システムにおいては,眼鏡店,メガネット協会,被告らメーカーが,完全に別個独立の主体としてその一部に関与しているだけであり,それぞれが他者を道具として使用しているわけではないし,被告の行為が「機械のスイッチを押す行為」と同視されるものでもない。
(2) 争点(2)(構成要件エ-周長測定ステップ)ア原告(ア)被告の行為被告方法において,被告は,3次元のデータによって測定する周長測定装置によって,ヤゲン加工された眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を測定している。
(イ)周長測定の意義aフレームカーブの深浅やレンズ度数の差異から,眼鏡フレームの眼鏡枠の軌跡とレンズ端面のヤゲン頂点位置の軌跡とは一致しないことが一般的である。もっとも,眼鏡レンズ枠はレンズに設けられたヤゲン形状に応じて変形可能であり,その周長は変化しないから,製造側においては,レンズの周長を変えないように製造すればよいことになる。しかしながら,この場合の周長は,3次元的な測定に基づき,かつ極めて正確なものである必要があり,0.5mm程度でも異なって加工されてしまうと,もはや眼鏡枠には入らず,高価な眼鏡レンズが無駄になってしまうことになる。このように,遠隔地にある眼鏡枠に加工済みレンズを収めるためには,3次元的測定装置で測定した眼鏡枠の「周長」というデータが極めて重要な意味を持っている。
b(a)他の方法の不存在遠隔地にある眼鏡枠に収まる正確な加工済みレンズを製造するためには,周長を検査する以外に,適切な方法は存しない。
(b)加工品の検査後記被告の主張b(b)は否認する。
レンズ周長の誤差は,わずか0.5mm程度あってもレンズをフレームに入れることができ±なくなり,また,見る角度や置く位置によっても変わるのであり,このような精度を目視によって確認することはできない(甲36)。
(c)加工機の検査??同(c)のうち,??は不知,??は否認する。
??被告が使用しているというノギスは,その最小読取値でさえ0.05mmで,器差は最小でも0.05mmもある道具であり(乙18),加工機に要求される0.01mm以内の精度(乙± ±5の6枚目)を確保することなどできない。被測定物の円形レンズの素材は,ほとんどがプラスチックであるところ,プラスチック素材は,吸水性がある上,非常に柔らかく,さらに,温度の影響も受けやすく,温度,湿度,レンズ切削等の種々の条件で0.01mmの単位で変形をする。また,真円のプラスチック素材の寸法を測定すると,ノギスで把持する位置がずれたりするほか(甲41),ノギスを当てた圧力によって容易に潰れたり凹んだりしてしまうため,大きな誤差が生じやすい。したがって,真円のプラスチック素材の寸法を測定しても器差をはるかに越えた誤差が発生するはずである。しかも,ノギスで測定できるのは,円の直径にすぎないから,円周についてはその器差や測定誤差は少なくともその倍(円周率)になり,周長について0.01mm以π ±内の精度をノギスを用いて確保できるはずはない。その上,加工機をx-yの2次元方向に動かすだけの真円の加工では,実際には3次元方向にも動くレンズ加工について十分な加工精度があるかどうかを確認できない。
??また,器差というのは,個々のノギスが真の値に対しどれだけの誤差をもつかという値であり,繰返し精度とは,同一物を同一ノギスで繰り返し測定した場合の誤差をいう(甲41)。
したがって,器差が0 02mm以上である(乙60)ノギスは,それ自体で0 01mmの精度は持± . .たないし,繰返し精度が0 01mmである以上,0 02mmに0 01mmを加えた値の範囲でし ... ±か精度が得られない。複数回の測定により当該機器の最大誤差(器差)の半分にまで精度を高め得ることはないし,これにより0.01mm内の誤差で測定が可能となるはずもない。
??さらに,ガラスレンズのような堅い材質の場合には,一日の作業においても加工機が摩耗して加工状態は変化するのであるから,加工機のみの事前の検査で一定の品質の製品を安定して供給し続けることは極めて困難である。
(d)周長測定装置の保有??同(d)??は不知。
??同??は否認する。
??同??は不知。
??同??は否認する。
??同??は否認する。
??同??は否認する。
??同??は否認する。
管理を1箇所で行うならば,周長測定装置は1,2台程度あれば足りる。
??同??は否認する。
ニデックの周長測定装置(NIDEKLT-100)には,0 01mmの精度があることが知られ .ている(甲37)。
仮に,被告が使用していた周長測定装置がレンズ測定の精度さえ保証されないのであれば,より精度の要求される加工装置の精度確認のために使用できるはずがない。また,そのような装置を最初の一台をリースしてから,数年後になって更にリースなどするはずもなければ,11年間もリースし続けるはずがない。
(e)他のメーカーの方法そのため,原告を含む多くのレンズメーカーでは,現に,眼鏡店から極めて厳密な「眼鏡枠周長」データを送らせ,そのデータどおりに正確に加工している。
(f)周長情報の受領??被告は,眼鏡店から,3次元的測定装置で測定した「眼鏡枠周長」情報を受け取っている。
??被告が後記被告の主張(イ)b(f)のとおり「眼鏡枠周長」情報を受け取りながら,要求されたデータどおりにレンズが加工されたかどうかを確認していないことは,工程管理の常識からあり得ない。
(ウ充足 )よって,被告方法は,構成要件エを充足する。
また,被告方法は,訂正後の構成要件エも充足する(本件では,充足の点につき,’訂正により新たに検討すべき問題は生じていない。この点は,他の発明についても同様である。したがって,以下では,訂正後の構成要件も充足する旨を個別に記載することはしない。 。
)イ被告(ア)被告の行為原告の主張(ア)は否認する。
被告方法には,ヤゲン加工後にヤゲンレンズ周長を3次元周長測定装置により測定する工程はない。
(イ)周長測定の意義a同(イ)aは不知。
b(a)他の方法の不存在同b(a)は否認する。
(b)加工品の検査被告は,玉型加工伝票に記載された玉型図の上に加工済みのレンズを置いて,玉型に合っているかを目視によって検査している。
(c)加工機の検査??被告は,ほぼ1日1回の頻度で,真円の原器データを加工機に入力して,この原器データに基づいて加工された加工品の真円度を専用ノギスで測定し,その結果で加工機を補正して,精度管理をしている。
??被告使用のノギスの精度の誤差は,±0.05mmないし±0.15mm又は0.01mmの範囲内にあり(乙17,18,60),十分な精度を確保できる。
(d)周長測定装置の保有??被告は,平成6年12月15日に1台目の3次元周長測定装置(NIDEK LT-100)をリースにより使用し始めた。
??しかし,測定精度が著しく劣るため,周長測定の目的で使用することは直ちに断念し,週に一度,加工装置立ち上げ時に,不具合発生率が高い形状の加工品を周長測定装置で測定して加工精度を調べ,加工装置の機能確認のために使用することとした。
??被告は,平成10年3月30日に2台目の3次元周長測定装置(NIDEK LT-100)をリースにより使用し始めた。
??この2台目は,1台目のバックアップ用としてリース契約したものである。
??もっとも,平成16年以降は,加工機の型式が変わって不具合や誤差が少なくなり,測定が不要となったことから,このような目的での使用も行われなくなった。
??現在,上記2台の装置は,サポートラインとは全く別のセクションに保管されている。
??仮に,ヤゲン周長を3次元周長測定装置で測定するとすれば,機器の準備や演算時間を含め,最低1個当たり2分程度の時間を要するから,すべての加工済みレンズの周長を測定するとなると,加工機台数の半数程度の周長測定装置が必要となる。
したがって,2台の周長測定装置ですべての加工済みレンズの周長を測定することは,不可能である。
??しかも,被告保有の周長測定装置は,0.5mm程度の誤差が発生し,周長測定の機能を果たし得ない。
(e)他のメーカーの方法同(e)は不知。
(f)周長情報の受領同(f)のうち,??は認め,??は否認する。
(3)争点(3)(構成要件オ-周長の比較ステップ)ア原告被告方法において,被告は,眼鏡レンズ枠周長とヤゲンレンズ周長とを比較し,それが所定の範囲にあれば,適性と判断している。
イ被告原告の主張は否認する。
(4)争点(4)(構成要件B-情報交換可能な接続)ア原告(ア)製造側コンピュータaメガネット・システム使用許諾契約書被告及びその他のレンズメーカーが,メガネット・システムを所有し,それに関する商標を所有し,メガネット協会は,レンズメーカーが所有するメガネット・システムを管理して,レンズメーカーの業務の一部を代行している(乙1(メガネット・システム使用許諾契約書)1条1項,2項,2条1項)。
b被告システムとメガネットVAN(a)被告自身,メガネットVANを被告システムの一部である通信手段として位置付けし,メガネットVANの機能は被告システムのサービスの内容・実態とは関係ないものとしている(甲7,13,19)。
(b)メガネットVANに入力されている被告システムの製品内容の更新は,被告営業担当者が眼鏡店を訪問して眼鏡店のメガネットVAN用のコンピュータに対してバージョンアップ作業をするなどして行っている。また,被告からの設計情報の提供を受けないと,メガネットVANのサーバー機能は働かない。このように,被告システムは,被告により管理されている。
(c)さらに,被告システムを中止しても,メガネットVANには一切関係がない。このように,被告システムは,メガネットVANのサーバー機能の一部を使用する閉鎖された被告独自のネットワークを形成している。
c維持・管理(a)メガネット協会は,法人ではなく,被告らレンズメーカーの6社の任意団体であって,被告らレンズメーカーが,出資金も含め,その維持・管理費用を負担している。
(b)よって,メガネット協会は,メーカーと離れた経営の独立性を有しない。
d眼鏡店とメガネットVAN(a)眼鏡店がメガネット協会のメガネットVANを利用して,あるレンズメーカーにレンズを発注する場合,当該レンズメーカーとの個別の取引契約がないと,メガネットVANを利用できない(甲7)。
(b)メガネットVAN自体は,メガネット協会から眼鏡店に開放されたものではなく,個々のレンズメーカーと眼鏡店との取引契約に基づき運用されており,単に通信部分とオーダーフォーマット部分とを共通化しているにすぎない。
eまとめ以上の事実からすると,VANコンピュータが設置されているメガネット協会は,「製造側」に分類されるべきものであり,VANコンピュータは,「製造側コンピュータ」である。
(イ)VANコンピュータとの情報交換可能被告システムでは,VANコンピュータと眼鏡店コンピュータとは,情報交換可能である。
(ウ)充足よって,被告システムでは,発注側コンピュータと製造側コンピュータとが情報交換可能に接続されているというべきであり,構成要件Bを充足する。
イ被告(ア)製造側コンピュータaメガネット・システム使用許諾契約書原告の主張(ア)aは認める。
b被告システムとメガネットVAN同bのうち,(a)は否認し,(b)及び(c)は明らかに争わない。
c維持・管理同cのうち,(a)は明らかに争わず,(b)は否認する。
d眼鏡店とメガネットVAN同dのうち,(a)は認め,(b)は否認する。
eまとめ同eは否認する。
メガネット協会は,製造行為を一切行っておらず,眼鏡店と同様に,発注に必要な眼鏡フレームの正確な形状把握のための測定データの入力等を行う作業に関わっているにすぎないから,眼鏡店と同様,「発注側」である。
(イ)VANコンピュータとの情報交換可能同(イ)は認める。
(ウ)充足同(ウ)は否認する。
(5)争点(5)(構成要件D-3次元的眼鏡枠形状情報等の入力)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムは,構成要件Dのうち,次の(イ)ないし(エ)以外の点を充足する。
(イ)フレームセンターaクレーム解釈構成要件Dは,「3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報」を入力することを要件としているが,フレームセンターそのものを入力することを要件とはしておらず,計算処理の過程で,フレームセンターを計算していれば足りる。
bフレームセンターの計算被告システムにおいては,測定データからフレームセンターを計算処理している。
c充足したがって,被告システムにおいて,フレームセンター自体が入力操作の対象になっていないとしても,構成要件Dを充足する。
(ウ)眼鏡枠の縦サイズ横サイズaクレーム解釈構成要件Dは,眼鏡枠の縦サイズ横サイズそのものを入力することを要件とはしておらず,計算処理の過程で,眼鏡枠の縦サイズ横サイズを計算していれば足りる。
b眼鏡枠の縦サイズ横サイズの計算被告システムにおいては,測定データから眼鏡枠の縦サイズ横サイズを計算処理している。
c充足したがって,被告システムにおいて,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ自体が入力操作の対象になっていないとしても,構成要件Dを充足する。
(エ)眼鏡枠材質情報aクレーム解釈構成要件Dにいう「眼鏡枠材質情報」とは,「メタル」「セル」「オプチル」等の眼鏡枠の材質に関する情報を意味し,それらの材質が眼鏡枠形状の3次元データの補正に使用されているか否かを問わない。
b「メタル」等の入力被告システムにおいては,「フレーム種別の入力」において,「メタル」「セル」「オプチル」(プラスチックの一種。甲29参照)という情報を入力している(甲11の6-66頁(2))。
c充足(a)よって,被告システムは,構成要件Dの「眼鏡枠材質情報」の入力を充足する。
(b)仮に,「リムレス」や「みぞほり」を選択した場合には,「眼鏡枠材質情報」の入力に当たらないとしても,そのような選択をした場合には技術的範囲に含まれないというだけであり,被告システムにおいて「眼鏡枠材質情報」の入力がないことを意味するものではない。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,被告において明らかに争わない。
(イ)フレームセンターaクレーム解釈同(イ)aは争う。
bフレームセンターの計算同bは認める。
フレームトレーサ内部では,測定データ(R,θ,Z)から,1000ポイントデータ,ヤゲン溝の周長,フレームPD,フレームカーブなどを計算し,それらをデータとして出力する。
フレームセンターは,1000ポイントデータを得る過程で計算されるが,1000ポイントデータを得た後は不要となるため,フレームトレーサから外部へ出力されることはない。
c充足同cは否認する。
(ウ)眼鏡枠の縦サイズ横サイズaクレーム解釈同(ウ)aは争う。
b眼鏡枠の縦サイズ横サイズの計算同bは認める。
眼鏡枠の縦サイズ横サイズは,フレームセンターを得る過程で計算されるが,製造には必要でないため,発注側コンピュータから外部へ出力されることはない。
c充足同cは否認する。
(エ)眼鏡枠材質情報aクレーム解釈同(エ)aは争う。
構成要件Dの「眼鏡枠材質情報」とは,プラスチック,金属(金,プラチナ,チタン),べっ甲など,眼鏡枠形状の3次元データの補正に使用される材質についての情報を意味する(本件明細書2の【0037】)。
b「メタル」等の入力同bは認める。
ただし,被告システムでは,フレームに柔軟性があって,曲げることができるフレームか否かは,一切考慮していない。被告システムでは,「メタル」等の情報は,レンズの縁摺り加工において凹か凸か等を決めるために必要なものである。
「フレーム種別の入力」の選択項目として,平らなヤゲンを意味する「リムレス」や,凹形状を意味する「みぞほり」があるが(乙13参照),このことは,上記の点を裏付けるものである。
c充足同cは否認する。
(6)争点(6)(構成要件F-情報交換可能な接続)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムでは,構成要件Fのうち,次の(イ)以外の点を充足する。
(イ)製造側コンピュータ及び情報交換可能前記(4)(構成要件B)ア(ア)及び(イ)のとおりである。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,被告において明らかに争わない。
(イ)製造側コンピュータ及び情報交換可能前記(4)(構成要件B)イ(ア)及び(イ)のとおりである。
(7)争点(7)(構成要件H-製造側コンピュータの演算処理)ア原告(ア)製造側コンピュータ前記(4)(構成要件B)ア(ア)のとおりである。
(イ)演算処理被告システムでは,VANコンピュータが眼鏡店コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,眼鏡レンズの受注に必要な処理を行っている。
(ウ)充足よって,被告システムは,構成要件Hを充足する。
イ被告(ア)製造側コンピュータ前記(4)(構成要件B)イ(ア)のとおりである。
(イ)演算処理原告の主張(イ)は認める。
(ウ)充足同(ウ)は否認する。
(8) 争点(8)(構成要件J-眼鏡枠周長,眼鏡枠の傾きTILT等の送信)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムでは,構成要件Jのうち,次の(イ)ないし(エ)以外の点を充足する。
(イ)発注側コンピュータによる演算処理aクレーム解釈「発注側コンピュータ」が果たすべき機能は,構成要件J記載の周長等を求め,これを製造側コンピュータに送信することにあるから,「発注側コンピュータ」とは,「発注する側に存在し,周長等を求めこれを製造者側に送信する電子計算機」の意味である。
したがって,周長等の演算が,眼鏡店コンピュータに内蔵されたCPUによってされても,フレームトレーサに内蔵されたCPUによってされても,「発注側コンピュータ」によってされたことに変わりはない。
bフレームトレーサによる演算被告システムでは,周長等の演算処理がフレームトレーサに内蔵されたCPUによって行われ,眼鏡店コンピュータを介して,VANコンピュータに送信されている。
c充足よって,被告システムは,構成要件Jの「発注側コンピュータは,・・・眼鏡枠のレンズ枠周長(等)を求め」を充足する。
(ウ)発注側コンピュータによる演算処理の均等論仮に,フレームトレーサに搭載されたCPUで眼鏡枠のレンズ枠の周長等を求めた場合には「発注側コンピュータ」による演算の点を文言上充足しないとしても,次のとおり,均等侵害が成立する。
a本質的部分本件発明3の本質は,発注側にある3次元的眼鏡枠測定装置によって眼鏡フレームを測定し,製造側に測定結果から求められた眼鏡枠の周長等の情報を送り,これによって加工者に眼鏡枠の正確な形状データを把握させることにある。
したがって,眼鏡枠の周長等を「発注側コンピュータ」と「3次元的眼鏡枠測定装置」のどちらで計算するかの点は,「発注側」内部の問題にすぎず,発明の本質的部分ではない。
b置換可能性発注側コンピュータでの演算処理をフレームトレーサでの演算処理に置き換えても,発注側コンピュータで演算処理した場合と同じ情報が製造者側に送信されるから,本件発明3と同一の作用効果を奏する。
c置換容易性平成5年ころには,3次元的眼鏡枠測定装置に接続されたコンピュータで周長等を求める装置が市販されていたにすぎなかったが(甲31),高性能化・小型化されたコンピュータが一般的に普及した平成9年ころであれば,演算のためのCPUを3次元的眼鏡枠測定装置に内蔵させることは極めて容易であった。
したがって,被告システムの使用開始当時において,演算を発注側コンピュータではなくフレームトレーサ内のコンピュータに置き換えることは,極めて容易なことであった。
d公知技術等の除外後記被告の主張dは否認する。
乙53及び54は,眼鏡枠測定装置の証拠ではなく,眼鏡店において手元にある眼鏡枠を測定しながらレンズを加工するための加工機のカタログである。加工機に3次元測定装置が一体的に組み合わされてはいるが,通信によって玉型加工をするためのものではなく,周長を測定しているとも記載されていないから,測定すべきデータやCPUの演算処理機能等についても,本件発明3や被告システムの場合とは全く異なるものである。
(エ)傾きTILTaクレーム解釈構成要件Jにいう「傾きTILT」は,「眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度」を意味する。
b被告の測定内容後記被告の主張bは認める。
c充足上記bの被告の測定内容は,「傾きTILT」を本件明細書3に開示された測定方法とは異なる方法で測定しているというにすぎず,被告システムは,構成要件Jのうち「傾きTILT」の点を充足する。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,被告において明らかに争わない。
(イ) 発注側コンピュータによる演算処理aクレーム解釈原告の主張(イ)aは争う。
bフレームトレーサによる演算同bは認める。
c充足同cは否認する。
(ウ)発注側コンピュータによる演算処理の均等論a本質的部分同(ウ)aは明らかに争わない。
b置換可能性同bは明らかに争わない。
c置換容易性同cは明らかに争わない。
d公知技術等の除外計算機能付きトレーサは,本件発明3の出願前公知技術であったことから(乙53,54),演算をフレームトレーサ内のコンピュータで行うようにした被告システムは,当業者が容易に想到することができた発明である。
(エ)傾きTILTaクレーム解釈同(エ)aは争う。
「傾きTILT」に特許性を認めるのであれば,クレーム解釈に当たっては,極力狭く限定的にその権利範囲を解釈するほかない。
そうすると,「傾きTILT」とは,単に結果的に左右の傾きの数値が一致していれば足りるというものでなく,「眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の傾きが同一となるように設置して計測された傾き」と解すべきである。
b被告の測定内容被告システムでは,フレームトレーサの測定平面に対する左右それぞれの眼鏡枠の傾きを測定し,その平均を演算している(乙73 。
)c充足同cは否認する。
(9) 争点(9)(構成要件L-情報交換可能な接続)ア原告前記(4)(構成要件B)ア(ア)及び(イ)のとおりである。
イ被告前記(4)(構成要件B)イ(ア)及び(イ)のとおりである。
(10)争点(10)(構成要件O-発注側コンピュータでの入力)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムでは,構成要件Oのうち,次の(イ)以外の点を充足する。
(イ)眼鏡枠材質情報前記(5)(構成要件D)ア(エ)のとおりである。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,被告において明らかに争わない。
(イ)眼鏡枠材質情報前記(5)(構成要件D)イ(エ)のとおりである。
(11)争点(11)(構成要件P-製造側コンピュータにおける演算)ア原告(ア)クレーム解釈a構成要件Pは,入力された「3次元的枠形状情報」等の情報に「基づいて」,「ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算」することを要件としているにとどまり,演算に使用されるデータが2次元データであるか3次元データであるか,演算結果が2次元データであるか3次元データであるかを問うものではない。
b本件明細書4には,実施例の記載として,レンズの外形形状(2次元情報)のみに基づき,レンズ加工が可能か否かの可否判断を行う場合が記載されている(【0041】〜【0052】)。
(イ)2次元の場合の充足被告システムにおけるレンズ形状の演算が,後記被告の主張(イ)のとおりであるとしても,24ポイントデータの位置がすべて規格円に収まるかどうかを判断するためには,光学中心からの24ポイントデータの各点の位置を計算により把握する必要があるのであり,このような計算で求められた形状が正にレンズ形状である。
よって,被告主張のとおりであっても,構成要件Pを充足する。
(ウ)3次元の場合の充足a演算に使用されるデータ演算に使用されるデータが3次元データである必要があるとしても,(a)??24ポイントデータは,構成要件Tに記載された「3次元枠形状測定装置」によって測定された3次元のデータから高さ方向の情報を除いた情報である。
??したがって,被告システムでは,3次元データに基づき,ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算をしている。
(b)??また,被告システムにおける24ポイントデータは,3次元枠形状測定装置から得られた情報であるために,実際の眼鏡フレームの高さ方向を反映した情報となっており,従来の型板(2次元である)から得られる2次元情報とは,同じ2次元情報であっても異なる情報となっている。
??この点からも,被告システムでは,3次元データに基づき,ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算をしている。
b演算結果演算結果が3次元データである必要があるとしても,(a)被告システムにおいては,次のとおり,ヤゲン加工を可能とするために,一定のコバ厚(レンズ周縁部の厚さ)を確保するための演算を行っている。
(b)??メガネットwebで,レンズ中心の厚みを2.0mmに指定して加工を依頼する加工指定を行ったところ(甲49),各方向のコバ厚というヤゲンの立体形状に関する情報が表示された上,加工指定内容にもかかわらず,中心厚は「7 2mm」と表示された(第5図)。
.??各方向のコバ厚は,処方,レイアウト情報,フレーム情報等から,演算処理によって玉型加工の結果を3次元的に予測しなければ表示できないものである。
??また,表示された中心厚が異なったという事実は,入力された眼鏡枠形状データを含む枠入れ情報に基づき,ヤゲン加工可能なように製造側コンピュータでレンズ厚の変更処理がされたことを意味している。
(c)??また,被告システムでは,眼鏡枠のレイアウトがレンズの玉型内にあってレンズ径が不足していないにもかかわらず,「径不足」と表示される場合があった(甲54の第7図)。
??これは,ヤゲンが立てられないコバ厚不足が発生し,その結果エラーを表示したものと解される。
(d)??さらに,フレームの種類を「メタル」から「みぞほり」へ変更するだけで,中心厚が1.0mm近く厚くなるケースも見つけ出された。
??これは,「みぞほり」を行う際にコバ厚が不足するため,各方向のコバ厚を確認して,「みぞほり」における所定のコバ厚が確保できるように,中心厚を変更していると解される。
イ被告アクレーム解釈( )a原告の主張(ア)aは争い,bは否認する。
b構成要件Pにいう「ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算」とは,これに続く構成要件Qにおいて「この演算処理結果に基づき・・可否判断処理を含む処理結果を前記発注側コンピュータに出力する」とあるから,発注側コンピュータに出力する可否判断処理を行うための演算を意味する。
cしたがって,構成要件Pにいう「演算」は,被告システムが24ポイントデータにより行っているような径不足の判断という単純な事実を確認する作業を含まない。
(イ)2次元の場合の充足a被告システムでは,フレームトレーサの測定データから得られた1000ポイントデータは,距離と角度だけの情報であり,2次元情報である。
b眼鏡店コンピュータは,VANコンピュータとの間の通信速度を向上させるために,1000ポイントから間引いて24ポイントを作成し,そのデータをVANコンピュータに送信する(乙66)。この24ポイントデータは,当然,2次元情報である。
cVANコンピュータは,24ポイントデータに基づいて,基準のアンカットレンズのサイズでの製作可否と径不足を判定している。
dなお,共通発注端末機の「径不足の画面表示」に使用されるデータは1000ポイントデータを間引いた200ポイントデータである(この200ポイントデータを用いると滑らかな曲線が描ける)。
(ウ)3次元の場合の充足a演算に使用されるデータ原告の主張(ウ a(a)??は認め,??は否認し,(b)??は認め,??は否認する。
)b演算結果(a)同b(a)は否認する。
(b)同(b)のうち,??は不知,??及び??は否認する。
レンズ中心厚は,顧客により指定された処方度数や商品の種類によって決定されるもので,処方度数や商品の種類により制約があり,レンズの縁厚について一定の厚さを確保しなければならないということからくる制約もある。すなわち,要求された商品,処方度数の条件下で,所定のレンズ直径と所定の縁厚を前提として,中心厚を計算するのである。その結果として,当初指定した中心厚2 0mmが実現できず,7 2mmが可能であるとの回答が示されたにすぎ..ない。
被告システムで表示されている各方向のコバ厚は,玉型情報がなくても表示されるものであって,ヤゲンの立体形状の表示ではなく,レンズの厚みを表示しているものにすぎない(甲49,乙76)。ここで表示されるのは,ヤゲン加工ができないとの判断ではなく,「丸レンズができない」との判断である。縁厚(コバ厚)は,眼鏡レンズの使用上の便宜等の観点から所定の値を確保することになっており,被告会社では,最低0 7?o,0 5?oなど製品ごとに定められている。
..(c)同(c)??は不知,??は否認する。
反射防止膜加工をアンカットレンズに施すと,縁に沿って1mm,径としては計2mm,商品として使用できない部分がある。これを除いて径不足の有無を判断するため,ぎりぎりの数値を選択すれば,レンズ径が不足していないにもかかわらず「径不足」と表示される場合がある。
(d)同(d)??は不知,??は否認する。
「みぞほり」の指定があれば,最低限の縁厚を確保するため,所定の縁厚確保するように変更され,その結果として中心厚も変更される。
(12)争点(12)(構成要件Q-レンズ加工の可否判断処理の発注側コンピュータへの出力)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムでは,構成要件Qのうち,次の(イ)及び(ウ)以外の点を充足する。
(イ)「この演算処理結果に基づき」前記(11)(構成要件P)アのとおりである。
(ウ)「レンズ加工が可能か否かの可否判断」aクレーム解釈構成要件Pでは,入力された「3次元的枠形状情報」などの情報に「基づいて」,「ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算」することを要件としているにとどまり,演算に使用されるデータが2次元データであるか3次元データであるかや,演算結果が2次元データであるか3次元データであるかを問うものではないから,構成要件Qにおける「レンズ加工が可能か否かの可否判断」は,被告主張の24ポイントデータによるアンカットレンズに当該眼鏡枠が収まるかどうかの判断程度のものも含む。
bVANコンピュータの判断内容後記被告の主張(ウ)b(a)(b)は,明らかに争わず,同(c)は否認する。
c充足後記被告の主張(ウ)b(a)の内容であっても,構成要件Qの「レンズ加工が可能か否かの可否判断」を充足する。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,明らかに争わない。
(イ)「この演算処理結果に基づき」前記(11)(構成要件P)イのとおりである。
(ウ)「レンズ加工が可能か否かの可否判断」aクレーム解釈原告の主張(ウ)aは争う。
構成要件Qにおける「レンズ加工が可能か否かの可否判断」は,レンズ加工が可能か否かの最終判断でなければならない。
bVANコンピュータの判断内容(a)VANコンピュータは,各眼鏡店の共通発注端末機から届く発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報,1000ポイントデータを除くトレース情報,24ポイントデータ,それらを含む発注データを受信すると,各メーカーごとにあらかじめ登録されている取引先,商品,カラー,納期,製作範囲などの情報を基に,そのメーカーとそもそも取引できる発注先であるか否か,レンズの商品は,在庫があるか又は特注レンズで製作できるか,さらに,度数は製作範囲内であるか,指定されたカラーは製作可能かをチェックして,「アンカットレンズ製作可否判定」をする。次に,2次元の眼鏡枠形状情報である24ポイントデータとフィッティング情報より光学中心位置を計算し,光学中心位置を中心に,アンカットレンズ規格径の円を描いてみて,24ポイントデータと規格径とを比べ,24ポイントデータの位置がすべて規格径に収まれば製作可能と判定し,収まらなかった場合は,径が一番不足する方向と距離を計算して製作不可と判定するなど「径不足の判定」をする。
(b)その後,VANコンピュータが受信した注文データは,玉型加工工程に送られ,1000ポイントデータに基づいて,改めてアンカットレンズの径に照らして当該眼鏡枠が納まるか否か,及び加工する際に眼鏡枠のサイズが小さすぎて玉型加工が不可能とならないかの2点を確認する。次に,アンカットレンズを実際に加工する際に,1000ポイントデータを基に,レンズの表面,裏面の各1000ポイントを計測し,計測した座標と周長からヤゲン位置を3次元的座標により決定し,ヤゲンのカーブが基準内か否か(眼鏡フレームのカーブの度合いによってはレンズからはみ出るものがある。),レンズの厚みが基準内か否か(レンズが薄すぎてヤゲンを立てることが不可能な場合がある。)を確認する。
(c)かような確認の結果,ヤゲンが立たない場合は,加工不能と判断して加工を行わないこととするが,この判断結果は,VANコンピュータにも眼鏡店コンピュータにも一切出力されない。かような場合には,眼鏡店へ架電し,他の仕様で製作し直すことの同意を求めている。
c充足同cは否認する。
(13)争点(13)(構成要件S-当初入力内容の変更)ア原告(ア)その余の点の充足被告システムは,構成要件Sのうち,次の(イ)以外の点を充足する。
(イ)「当該処理結果に基づいて」前記(12)(構成要件Q)ア(ウ)のとおりである。
イ被告(ア)その余の点の充足原告の主張(ア)は,明らかに争わない。
(イ)「当該処理結果に基づいて」前記(12)(構成要件Q)イ(ウ)のとおりである。
(14)争点(14)(本件特許1の無効)ア拡大先願(ア)被告a乙9甲1刊行物特開平5-212661号公報(乙9添付甲1。以下「乙9甲1刊行物」といい,その発明を「乙9甲1発明」のようにいい,公開番号の最後の3桁を併記することがある。他の刊行物についても,同様に略称する。)は,平成4年2月4日に出願され,平成5年8月24日に公開された他人の先願に係る当初明細書である。
b乙9甲1刊行物の記載乙9甲1刊行物の記載内容を本件発明1の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件ア(眼鏡フレーム枠形状データに基づくヤゲン加工)「【請求項5】眼鏡枠に枠入れするためにレンズの周縁を加工するレンズ周縁加工方法において,眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデータに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップと,枠入れされる仮想又は現実のコバ厚及びレンズカーブを測定又は算出する第3ステップと,第3ステップにより測定又は算出されたデータに基づいてヤゲン先端軌跡がなすカーブ値を決定する第4ステップと,第4ステップで決定されたヤゲン先端の軌跡の周長と前記眼鏡枠のレンズ枠の周長が略一致するようにレンズ周縁加工機の制御データを算出する第5ステップと,第5ステップで得られた制御データに基づいてレンズ周縁加工機を制御する第6ステップとからなることを特徴とするレンズ周縁加工方法」【0008】上記同旨「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,眼鏡枠に枠入れするレンズを加工する装置及びその方法に係わり,更に詳しくは,眼鏡枠のレンズ枠の立体形状(本明細書においてレンズ枠の形状とは眼鏡枠の溝底またはこれに近似する位置の軌跡形状のことをいい,玉型ともいわれる)を計測する眼鏡枠形状測定装置からの情報をもとにレンズ周縁加工を行う加工機及びその加工方法に関する。」(b)構成要件イ(眼鏡レンズ枠周長測定ステップ)【請求項5】上記(a)のとおり「【0008】・・・眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデータに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップ・・・」(c)構成要件ウ(レンズ加工ステップ)【請求項5】上記(a)のとおり「【0008】・・・第5ステップで得られた制御データに基づいてレンズ周縁加工機を制御する第6ステップ・・・」(d)構成要件エ(加工後のヤゲンレンズ周長測定)「【0034】・・・ヤゲンカーブの軌跡の周長・・・」(e)構成要件オ(眼鏡レンズ枠周長とヤゲンレンズ周長との比較)「【0003】【発明が解決しようとする課題】・・・ヤゲンカーブとレンズ枠のカーブRが等しい場合には両者の周長も一致するが,多くの場合異なるためので(ママ)周長も一致しない。従って,このようにヤゲン加工したレンズを眼鏡枠に入れると,周長が一致せず,枠入れ作業時の適切なフィットが得られない。・・・」(f)構成要件カ(供給システム)【請求項5】,【0008】及び【0001】c一致点及び相違点乙9甲1刊行物には,厳密には構成要件エ及びオに対応する記載はないから,本件発明1と乙9甲1発明とは,それらの点で一応相違し,その余の点で一致する。
d相違点の検討(a)乙9甲1刊行物には,周長の不一致という解決課題や周長の一致による効果が記載されており,このような解決課題や効果の認識の前提として,周長が測定され,かつ一定の基準の下でそれが比較されるべきことは当然のことであって,乙9甲1刊行物には,構成要件エ及びオの周長測定及び比較の記載がある。
(b)上記(a)が認められないとしても,加工品の測定値と基準値とを比較してその差異が所定範囲内にあれば適正とすることは,品質管理上の基本事項として日常使用されている周知慣用技術であり,これを当てはめれば,乙9甲1刊行物から,構成要件エ及びオを自ずと読み取ることができる。
(c)??上記(b)が認められないとしても,乙9甲2発明(特開昭60-8701号公報(昭和60年1月17日公開)には,次の記載がある。
「〔4頁右上欄下から5〜3行〕・・・本発明の課題は,・・・検測装置の測定速度をさらに改善して,」「〔7頁右下欄下から2行〜8頁左上欄2行〕・・・この際に得られた測定値は,計算器に記憶された理論上正しい測定値と距離発信器35を介して比較され,両測定値の偏差が誤差である。」「〔6頁右下欄6〜8行〕このようにして検査すべき歯溝を選び出した後で,方位検出子12は本来の測定のために働く測定接触子13と交換される。・・・」??上記記載には,構成要件エ及びオに対応する周知技術が記載されている。したがって,本件発明1は,乙9甲1発明に単に周知慣用技術を付加したものである。
eまとめよって,本件発明1は,乙9甲1発明(661)と同一か,又は乙9甲1発明に単に周知慣用技術を付加した実質的に同一の発明である。
(イ)原告a乙9甲1刊行物被告の主張aは認める。
b乙9甲1刊行物の記載同bは認める。
c一致点及び相違点同cのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
乙9甲1発明は,眼鏡フレームが手元にある眼鏡店におけるレンズ加工,すなわちアンカット方式に関する発明であるのに対し(【0001】【産業上の利用分野】参照),本件発明1は,手元に眼鏡フレームがない状態で適切な玉型加工をして眼鏡店に加工済レンズを供給する方法に関する発明であり,その属する技術分野が全く異なるから,乙9甲1発明は,本件発明1の課題,構成及び効果を何ら開示していない。
d相違点の検討(a)同d(a)は否認する。
(b)同d(b)は否認する。
(c)同d(c)のうち,??は認め,??は否認する。
乙9甲2刊行物(701)は,被告が指摘する技術を従来技術としてではなく発明の一部として記載しているのであるから,その記載を周知慣用技術と解することはできない。
また,乙9甲2発明は,本件発明1とは「対象物を測定する」という点で共通するだけで,全く異なる技術分野に係る発明であり,本件発明1の技術分野における周知技術を立証するものではない。
仮に,被告主張の周知慣用技術があるとしても,本件発明1は,それらの構成要件を追加することにより新たな効果を奏するものであるから,やはり実質的に同一とはいえない。
eまとめ同eは否認する。
進歩性(ア)被告aまとめ本件発明1は,乙9甲3発明(特開昭62-215814号公報)に,乙9甲4発明(特開昭58-196407号公報)を適用し,周知慣用技術である乙9甲2発明(701)を加えることで,当業者が容易に発明できたものであり,進歩性を有しない。
b乙9甲3刊行物の記載乙9甲3刊行物の記載内容を本件発明1の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件ア,イ及びウ(周長に関する部分を除く)並びにカ「〔5頁右上欄5〜14行〕このようにしてレンズ固定用溝形状の測定装置100によって測定された三次元座標データは演算処理装置400にて読込まれ,演算処理装置400はデータ入力装置300からの指令によって,第2図ないし第7図のフローチャートに従った演算処理を行ない,結果を記憶装置600に記憶させると共に,表示装置700に表示せしめる。そして必要があれば,インターフェイス装置500を通して,玉摺器800等の外部装置にデータを送出する。」「〔5頁左下欄3〜5行〕・・・フレームの溝カーブとメガネレンズの周縁のヤゲンカーブを一致させることが可能となり・・・」(b)解決課題「〔1頁右欄12行〜2頁左上欄3行〕・・・またフレームの溝形状のカーブ値は測定されないため,フレームにメガネレンズを固定するためにメガネレンズの周縁にヤゲンを形成する際,フレームの溝カーブにヤゲンカーブを一致させるようになすことは困難で,フレームをヤゲンカーブに一致させる為フレーム自体を修正しなければならないという欠点もあった。
(発明の目的)本発明は,これらの欠点を解決し,眼鏡フレームの玉型形状を決定するデータを簡単に得ることが出来る形状測定装置を得ることを目的としている。」(c)作用効果「〔5頁左下欄5〜6行〕・・・メガネレンズの固定が正確かつ容易になる利点がある。・・・」c一致点及び相違点本件発明1と乙9甲3発明とを対比すると,両者は,構成要件イ,同ウのうち周長に係る部分,同エ及び同オが乙9甲3発明に明示されていない点で相違し,その余の点で一致する。
d相違点の検討(a)乙9甲4刊行物の記載??乙9甲4刊行物(407)には,次の記載がある。
「〔2頁左下欄12行〜右下欄7行〕・・・従って,回転子(17)はフレーム枠(23)の全内周分だけ転動したことになり,回転子(17)の円周長にエンコーダ(15)で検出した回転数を掛合せればフレーム枠(23)の内周長を測定し得る。又,眼鏡レンズは完全な円形ではない為,その周端は3次曲線となり,V状溝(24)も上下に変位する。…上記測定した内周長に眼鏡レンズの外周長が合致する様眼鏡レンズを削込めば,該レンズを加工機より取外すことなくフレーム枠の形状に正確に合せることができる。」「〔1頁右欄下から5行〜2頁左上欄3行〕本発明は斯かる事情を鑑み,フレーム枠の眼鏡レンズ周端と嵌合するV状溝の内周長を・・・基に眼鏡レンズを加工機より取外すことなく,直ちに最終形状に迄研削し得ることを可能にして枠合せ作業の能率を飛躍的に向上させると共に研削加工精度も又大幅に向上させることを目的とするものである。」??原告は,乙9甲4発明について,回転子は上下方向の移動分については回転せずに単に上下方向に滑るだけである旨主張するが,周長を測定する回転子がフレームの高さ方向に追従することは,とりもなおさず縦横方向以外の第3の方向を考慮に入れていることを示しており,乙9甲4発明によって測定されている周長は,3次元に対応するものである。
(b)乙9甲2刊行物の記載乙9甲2刊行物には,前記ア(ア)d(c)??の記載がある。
(c)組合せの容易性??本件発明1の課題と乙9甲3発明(814)及び乙9甲4発明(407)の課題とは同一であり,乙9甲3発明に乙9甲4発明における周長に係る事項を組み合わせて本件発明1の構成要件イ及びウのように構成することは,当業者にとって容易であった。
??また,所定の加工を施した製品の測定値とその基準値とを比較して差異が所定範囲内にあれば適正とすることは,周知慣用技術である。
??したがって,構成要件イ及びウとして構成された事項に,上記??の周知慣用技術又は本件発明1と同じ課題を有する上記(b)の乙9甲2発明(701)を組み合わせて構成要件エ及びオのように構成することも,当業者にとって容易であった。
??そして,本件発明1の奏する作用効果も,乙9甲3発明に乙9甲4発明等を組み合わせた場合に予想される程度のものである。
(イ)原告aまとめ被告の主張aは否認する。
b乙9甲3刊行物の記載同bは認める。
c一致点及び相違点同cのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
本件発明1は,眼鏡フレームが手元にない加工者が適切なレンズを加工して眼鏡店に供給する方法に関する発明であるのに対し,乙9甲3発明は,眼鏡フレームが手元にある眼鏡店においてレンズを加工するために使用する眼鏡フレーム測定装置に関する発明である(「発明の技術分野」参照)。そのため,乙9甲3発明には,「周長」に関する記載が一切存在せず,玉型加工済レンズの供給サービスに特有の課題を解決するための構成も記載されていない。また,乙9甲3発明にいう「レンズ加工ステップ」も,「眼鏡店」における「レンズ加工ステップ」にすぎず,「供給」という概念が示されていない。このように,両者は,その属する技術分野が全く異なり,発明の課題,構成及び効果が全く異なる。
d相違点の検討(a)乙9甲4刊行物の記載??同d(a)??は認める。
??乙9甲4発明(407)での周長は,眼鏡フレーム枠内周を平面に投影した長さという2次元的な値である(2頁左下欄下から8〜5行)。すなわち,乙9甲4発明における周長測定用の回転子(17)は,シャフト(16)の周囲を横方向にのみ回転するように取り付けられており(2頁左上欄4行〜右上欄8行,第1図,第2図),高さ方向の変位に対しては,平行リンク(14),バランスバネ(19)の作用によってシャフト(16)及び回転子(17)を高さ方向に追従させるものであるところ(2頁左下欄下から3行〜末行),これによって,シャフト(16)及び回転子(17)が上下方向に移動しても,回転子(17)は上下方向の移動分については回転せずに単に上下方向に滑るだけである。そして,立体形状における上下方向の変位をも測定した3次元的な値と,立体形状の投影図に当たる2次元的な値とは異なるのである。このように,乙9甲4発明は,高さ方向を考慮しない,いわば「2次元的眼鏡枠周長測定装置」を開示しているにすぎない。
(b)乙9甲2刊行物の記載同d(b)は認める。
(c)組合せの容易性??同d(c)は否認する。
??乙9甲2発明(701)には,構成要件エ及びオに対応する構成は記載されていない。すなわち,本件発明1では,供給者の手元にはない眼鏡フレームの周長と加工したレンズの周長とを比較して加工したレンズの適性を担保するという構成を開示しているのであり,単なる「所定の加工を施した後加工製品を供給する前に加工に係る寸法を測定し,この測定値とその基準値とを比較して差異が所定範囲内にあれば適性とする」ことが周知慣用技術であるか否かとは関係がない。
??本件発明1は,構成要件エ及びオが付加されることで,新たな作用効果を奏する(前提事実(3)ア(イ))。
(15)争点(15)(本件特許2の無効)ア進歩性その1(ア)被告a分割要件違反(a)原出願1と本件特許2に係る出願??原出願1に係る出願当初の明細書及び図面(特開平6-102473号公報。乙10甲1。以下「原明細書1」という。)には,眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター,眼鏡枠材質情報,3次元枠データ,眼鏡枠の傾き,鼻幅等の多数の情報が記載されている。
??しかしながら,原明細書1には,このような情報の中から,構成要件Dの要素である眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター,眼鏡枠材質情報を取り出せば,「フレームの変形誤差をも考慮」する等といった本件発明2の作用効果を奏させる旨の記載はなく(【0127】,【0128】,【0129】参照),また,それが記載されているに等しいものと評価することもできない。
??また,原明細書1には,本件発明2にいう「3次元的眼鏡枠形状情報」についての記載がなく,この用語の意味ないし含み得る情報の範囲の記載がなく,その意味を技術常識で補うこともできない。
??さらに,原明細書1には,本件発明2にいう「眼鏡フレーム枠情報」についての記載はなく,この用語の意味ないし含み得る情報の範囲の記載がない。
??したがって,本件発明2は,原明細書1に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,遡っても原出願2の出願日までである。
(b)原出願2と本件特許2に係る出願??原出願2の当初明細書及び図面(特開2000-321540。乙10甲2。以下「原明細書2」という。)には,眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター,眼鏡枠材質情報,3次元枠データ,眼鏡枠の傾き,鼻幅等の多数の情報が記載されている。
??しかしながら,原明細書2には,構成要件Dの要素の選出とこれらの組合せによる作用効果の記載がない。
??原明細書2には,本件発明2にいう「3次元的眼鏡枠形状情報」の記載がない。
??原明細書2には,本件発明2にいう「眼鏡フレーム枠情報」の記載がない。
??したがって,本件発明2は,原明細書2に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,実際の出願日である平成15年5月7日となる。
b進歩性(a)乙10甲1刊行物等の記載乙10甲1刊行物(原明細書1。473)又は乙10甲2刊行物(原明細書2。540)には,次の記載がある。
??構成要件A乙10甲1刊行物(【0014】)又は乙10甲2刊行物(【0009】)の「眼鏡店100には,オンライン用の端末コンピュータ101およびフレーム形状測定器102が設置される。・・・」??構成要件B乙10甲1刊行物(【0014】)又は乙10甲2刊行物(【0009】)の「・・・そして端末コンピュータ101の出力データは,公衆通信回線300を介して工場200のメインフレーム201にオンラインで転送される。」??構成要件C乙10甲1刊行物(【0014】)又は乙10甲2刊行物(【0009】)の「・・・端末コンピュータ101へは,フレーム形状測定器102から眼鏡フレーム実測値が入力され,端末コンピュータ101で計算処理が行われるとともに,キーボード入力装置から眼鏡レンズ情報,処方値等が入力される。・・・」??構成要件D眼鏡枠周長について,乙10甲1刊行物(【0086】)又は乙10甲2刊行物(【0081】)の「〔S603〕ステップS602で補正された眼鏡枠形状座標値(Xn,Yn,Zn)(n=1,2,3,・・・,N)から眼鏡枠形状(内周溝の底の周形状)の周長FLNを算出する。・・・」眼鏡枠瞳孔間距離について,乙10甲1刊行物(【0113】)又は乙10甲2刊行物(【0108】)の「つぎに,この傾きTILTと,ステップS609で求めた鼻幅DBLと,ステップS610で求めたAサイズとを基に,幾何学中心間の距離であるフレームPDを算出する。・・・」眼鏡枠の縦サイズ横サイズについて,乙10甲1刊行物(【0105】)又は乙10甲2刊行物(【0100】)の「・・・この移動による変換後の座標値(Xn,Yn,Zn)において,Xnの最大値および最小値をXmax,Xminとし,Ynの最大値および最小値をYmax,Yminとすれば,眼鏡枠形状のAサイズ47は,XmaxとXminとの差の絶対値として求められ,Bサイズ48は,YmaxとYminとの差の絶対値として求められる。」フレームセンターについて,乙10甲1刊行物(【0106】)又は乙10甲2刊行物(【0101】)の「また,幾何学中心(フレームセンタ)座標(FCx,FCy)は下記式(3),(4)により求められる。・・・」眼鏡枠材質情報について,乙10甲1刊行物(【0028】)又は乙10甲2刊行物(【0023】)の「また,フレームの材質(メタル,プラスティック等)を指定し,」??構成要件E乙10甲1刊行物(【0013】)又は乙10甲2刊行物(【0008】)の「・・・図2は,本発明の眼鏡枠形状同形化方法が実施される眼鏡レンズの供給システムの全体構成図である。・・・」(b)一致点及び相違点本件発明2と乙10甲1発明又は乙10甲2発明とは,乙10甲1刊行物又は乙10甲2刊行物に,本件発明2の構成要件Dの要素の組合せの選出及びこれによる作用効果が明示されていない点で相違するが,その余の点において一致する。
(c)相違点の検討??構成要件Dの要素は,乙10甲1刊行物又は乙10甲2刊行物に一括して記載されているため,これらの要素を単に寄せ集めることは,当業者にとって容易なことであった。
??なお,当該情報の単なる寄せ集めが当業者にとって困難でないと評価されること(進歩性の判断)と,情報の組合せないしその作用効果が当業者にとって読み取れるか(分割出願の要件)とは,別個の判断事項である。
(d)まとめ以上によれば,本件発明2は,乙10甲1発明又は乙10甲2発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであり,進歩性を欠如する。
(イ)原告a分割要件違反(a)原出願1と本件特許2に係る出願??被告の主張a(a)のうち,??は認め,その余は否認する。
??原明細書1には,【0114】から【0126】に「マージ処理」に関する発明が,【0013】から【0113】に「製造側における眼鏡フレームの正確な形状把握」に関する発明がそれぞれ含まれている。そして,「マージ処理」に関する発明が原出願1の特許請求の範囲に記載され,「製造側における眼鏡フレームの正確な形状把握」に関する発明が本件発明2の特許請求の範囲に記載されている。原明細書1の【0013】から始まる実施例の記載と本件明細書2の【0007】から始まる実施例の記載とは全く同一である。
??本件発明2の作用効果は,正確には「【0125】・・・精度の高い眼鏡フレーム枠形状情報を加工者側に与え,より精度の高いレンズのヤゲン加工及びそのレンズの供給を可能とし,特に,眼鏡枠形状の周長という新規な指標を採用したことで,フレームの変形誤差をも考慮した眼鏡レンズの供給システムができた。」というものであり,「フレームの変形誤差をも考慮」するために特に必要な構成は眼鏡枠形状の周長であり,構成要件Dの要素をすべて選出することが必要なのではない。
「フレームの変形誤差をも考慮」するために特に必要な構成が眼鏡枠形状の周長であることは,原明細書1に記載されている。
??また,構成要件Dとして記載されている眼鏡枠材質情報や眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ及びフレームセンターは,3次元的眼鏡枠形状を特定するために,3次元的眼鏡枠形状情報に含まれる特徴的な形状要素の指標を選出したものにすぎない。
これらの形状要素が正確な眼鏡枠形状を把握するのに有用な情報であることは,当業者に自明である。
(b)原出願2と本件特許2に係る出願??同a(b)のうち,??は認め,その余は否認する。
??原明細書1と原明細書2の実施例の記載は同一であり,原明細書1の【0013】から始まる実施例の説明が,原明細書2の【0008】以下に記載されており,原出願2についても分割要件を満たすことは,原出願1と同様である。
b進歩性(a)乙10甲1刊行物等の記載同b(a)は認める。
(b)一致点及び相違点同b(b)は否認する。
(c)相違点の検討同b(c)は否認する。
(d)まとめ同b(d)は否認する。
イ拡大先願(ア)被告a乙10甲3刊行物乙10甲3刊行物(乙9甲1刊行物と同じ。661)は,平成4年2月4日に出願され,平成5年8月24日に公開された他人の先願に係る当初明細書である。
b乙10甲3刊行物の記載乙10甲3刊行物の記載内容を本件発明2の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件D??フレーム形状測定器による測定・眼鏡枠周長に係る計算「【請求項1】・・・立体計測された眼鏡枠のレンズ枠形状を入力する入力手段と,該入力手段により入力された3次元レンズ枠形状からレンズ枠の周長を求める算出手段と,・・・」「【0004】・・・立体計測された眼鏡枠のレンズ枠形状を入力する入力手段と,該入力手段により入力された3次元レンズ枠形状からレンズ枠の周長を求める算出手段と,・・・」「【請求項5】・・・眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデ-タに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップと,・・・」「【0008】・・・眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデ-タに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップと,・・・」「【0019】・・・さらに,(xn ,yn ,zn)(n=1,2,3・・・N)の各データ間の距離を算出し,それをたし合わせることにより近似的に玉型の周長を求め,これをΠfとする。」「【0032】・・・次に,動径情報(rsδn,rsθn)とヤゲンデータ(rsθn,yZn)からヤゲンカーブ軌跡(rsδn,rsθn,yZn)を求め,その各データ間の距離を算出し,それをたし合わせることにより近似的にヤゲンカーブ軌跡の周長を求め,これをΠbとする。ここで,サイズ補正量Δを求める。Δ=(Πb-Πf)/2π(Πf:玉型の周長)という形に直してからさらに,サイズ補正後のヤゲン加工情報(L’i,ξi,Zi)を求め,これを枠データメモリに記憶し直す。このときL’i=Li-Δである。ヤゲンはこの情報に基づいてモータ728はL’iをモータ721はξiをモータ714はZiをそれぞれi=1,2,3・・・Nの順に同時に制御しながら加工する。・・・」??眼鏡枠瞳孔間距離に係る計算「【0021】・・・この計測データ(rn,Θn)から,フレーム測定の場合と同様に幾何学中心Oを求め,入力部からのFPD,PD,内寄せ量I,上寄せ量Uをもとに加工データである”(srn,sΘn)(n=1,2,………,N)を得る。」「【0020】・・・次に,入力部4で設定された瞳孔間距離PDから内寄せ量Iを,・・・求める。・・・」「【0028】・・・[ステップ1-2] 被装者のPD値及び乱視軸を入力する。型板測定の場合にはFPD値も入力する。また,遠近切換スイッチ406により,入力されるPDが遠方であるか近方であるかを設定する。設定状態は表示部3のディスプレイにて表示される。ここで遠方に設定された状態で遠方PDを入力した後,遠近切換スイッチ406にて近方に変更すると,次式により近方PDに変換する。近方PD=遠方PD×((I-12)/(I+13)) Iは必要とする作業距離,12は日本人の角膜頂点間距離,13は角膜頂点と回旋点との距離を意味する。近方状態において近方PDを入力した後遠方に変更すると,下記の式により遠方PDに変換する。遠方PD=近方PD×((I+13)/(I-12))変換の詳細については特開昭63-82621号公報に記載されている。また上下レイアウトも近方,遠方それぞれにあらかじめ前述の基準値設定において入力された設定値に設定する。作業者がその値について変更を加えたい場合には,(+)スイッチ408,(-)スイッチ409にて変更が可能である。このときPDについても変更が可能である。
[ステップ1-3]ステップ1-1で求めたフレームまたは型板の動径情報及びFPD値と前ステップで入力されたPD上下レイアウトの情報により,前述の方法により新たな座標中心に座標変換し,新たな動径情報(rsδn,rsθn)を得,これを枠データメモリに記憶する。・・・」??眼鏡枠の縦サイズ横サイズやフレームセンターに係る計算「【0020】また図10において(xn,yn,zn)のx,y成分(xn,yn)から,x方向の最大値を持つ被計測点(xa,ya),x軸方向の最小値を持つ被計測展(ママ)B(xb,yb),y軸方向の最大値を持つ被計測点C(xc,yc)及びy軸方向の最小値を持つ被計測点D(xd,yd)を選び,レンズ枠の幾何学中心OF(xF,yF)を,・・・求め,既知であるフレーム中心から測定子部2120の回転中心O0(x0,y0)までの距離LとO0,OFのズレ量(Δx,Δy)から,レンズ枠幾何学中心間距離FPDの1/2は,・・・として求める。次に,入力部4で設定された瞳孔間距離PDから内寄せ量Iを,・・・求め,また設定された上寄せ量Uをもとに,被加工レンズの光学中心が位置すべき位置Os(xs,ys)を,・・・求める。・・・」??眼鏡枠材質情報の入力「【0025】・・・フレームの材質がセルかメタルかを指示するフレームスイッチ403・・・」(b)構成要件E「発明の名称レンズ周縁加工機・・・」「【0001】【産業上の利用分野】・・・眼鏡枠に枠入れするレンズを加工する装置・・・」c一致点及び相違点本件発明2と乙10甲3発明(661)とは,構成要件AないしCが乙10甲3発明において明示されていない点で一応相違し,その余の点において一致する。
d相違点の検討(a)発明の同一性??乙10甲3刊行物(661)には,次の記載がある。
「【0026】・・・主演算制御回路はシリアル通信ポートを介して,ICカード,検眼システム装置等とデータの交換を行うことが可能であり,レンズ枠及び型板形状測定部のトレーサ演算制御回路とデータ交換・通信を行う。・・・キャリッジ移動モータ714,キャリッジ上下モータ728,レンズ回転軸モータ721はパルスモータドライバ,パルス発生器を介して主演算回路に接続されている。・・・」図20にも,同旨の図示がある。
「【0027】・・・レンズ枠・型板の形状を測定するポテンショメータ2130,2134及びフレームのリム厚を測定するポテンショメータ2046の出力はA/Dコンバータへ接続され,変換された結果はトレーサ演算制御回路へ入力される。・・・また,測定されたレンズ枠及び型板の形状データは一旦トレースデータメモリに記憶され,主演算制御回路に転送される。」「【0031】・・・ステップ1-4の設定によりレンズがプラスティックであればプラスティック用荒砥石60c,ガラスであればガラス用荒砥石60aの上に被加工レンズがくるようキャリッジ714をモータにて移動させる。・・・」「【0032】[ステップ2-7,2-8,2-9]モータ728によりレンズを砥石から離脱させた後キャリッジ移動モータ714によりレンズをヤゲン砥石の上に移動させる。・・・」??このように,乙10甲3刊行物自体に構成要件AないしCの示唆があるから,本件発明2と乙10甲3発明とは,同一である。
(b)発明の実質的同一性??周知技術(??)次のとおり,オンライン化は,乙10甲4刊行物及び乙10甲5刊行物に示されるように,周知技術である。
(??)乙10甲4刊行物(420)乙10甲4刊行物(特開昭59-93420号公報)には,次の記載がある。
「〔3頁左上欄12〜15行〕この様に多くの情報を,眼鏡店がレンズ製造工場に伝える手段としてはコンピュータを用い,オンラインにて電送することが最も望ましいが,本発明はそれに限定されるものではない。」「〔3頁右上欄5〜11行〕・・・次に眼鏡店では顧客の選択した眼鏡枠に付された品番と,前述の主要寸法,すなわちレンズサイズや鼻幅等とをレンズ製造工場に伝達する。その伝達手段としては,コンピユータ用オンラインや,ファクシミリあるいは電話通信等の手段がある。」「〔第3頁左上欄下から3行〜右上欄5行〕(1)先ず,眼鏡枠の形状に関する豊富なデータをレンズ製造工場のコンピュータに予め蓄積しておく,すなわち第1図に示すような眼鏡枠1において,その枠中心0から枠上の複数の点n1,n2,n3・・・nnまでのそれぞれの距離のデータが1つの眼鏡枠の形状を表わすデータとなり,このようなデータが多種類の眼鏡枠ごとに品番が付されてコンピユータに蓄積されている。・・・」「〔3頁右上欄下から5行〜左下欄3行〕・・・そこで,これらの眼鏡枠の標準類型を型番号で表わしたデータをレンズ製造工場のコンピユータに蓄積しておき,眼鏡店では装用者の好みによつて選択した型記号と,その装用者のレンズ処方値および眼鏡枠の寸法情報すなわち横幅(A),縦幅(B)や枠内の瞳孔の位置を表わすデータ(ED)等をレンズ製造工場に伝達する。」「〔3頁左下欄4〜12行〕(3)眼鏡店において第3図の2で示すような例えば格子状のチヤート(又はこれに相当する測定器)が予め準備されており,装用者の好みによつて或る眼鏡枠が決まると,その枠3をチヤート2の所定位置に乗せ,枠中心O’から枠上の複数点n1,n2・・・nnまでのそれぞれの距離データを眼鏡枠形状データとして,前項(2)で述べたレンズ処方値および眼鏡枠の寸法情報とともにレンズ製造工場に伝送する。」(??)乙10甲5刊行物(539)原出願1の出願前である平成4年1月17日に頒布された刊行物である乙10甲5刊行物(特開平4-13539号公報)には,次の記載がある。
「〔5頁左下欄5〜9行〕このフレームリーダFR2で測定された眼鏡フレームの測定データ(2ρi,θi)及び店舗OS2の識別信号を,店舗OS2に備え付けのパソコンPC2と公衆通信回線網NWを介して,加工センターMCのパソコンPCkへ転送する。」「〔2頁右上欄10〜17行〕(6)前記第1演算手段を内蔵または接続した眼鏡フレーム形状測定手段は,各々少なくとも1台毎に複数の眼鏡店舗に設けられ,前記コンピュータと複数の前記玉摺機は加工センターに設けられ,前記各々の第1演算手段と前記コンピュータは公衆通信回線網を介して前記補正された形状データの授受が行われるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の眼鏡レンズ加工システム。」「〔2頁右上欄末行〜左下欄2行〕本発明は,複数の玉摺機と複数の眼鏡フレーム形状測定装置とをコンピュータを(ママ)接続した眼鏡レンズ加工ネットワークシステムに関する。」「〔2頁左下欄下から3行〜右下欄2行〕近年,眼鏡店のチエーン化が進み,各眼鏡店舗には眼鏡フレーム形状測定装置のみを設置し,複数台の玉摺機を1つの加工センターに配置して,これらをコンピュータと公衆通信回線網で接続するネットワーク化が要求されるようになった。」「〔4頁左上欄6〜末行〕第1図において,眼鏡店舗(店舗)OS1ないし店舗OSnは,各々眼鏡フレーム形状測定装置(眼鏡フレーム形状測定手段)であるフレームリーダFR1〜FRnを各々少なくとも1台有している。・・・また,フレームリーダFR1〜FRnの測定データは,パーソナルコンピュータ(パソコン)PC1〜PCnを介して,VAN等の公衆通信回線網(情報ネットワーク)NWで加工センターMCに転送される。この加工センターMCは,複数の玉摺機LE1〜LEmを有し,これら玉摺機LE1〜LEmはパーソナルコンピュータ(パソコン)PCkにその転送手段としてのインターフェイスIFを介して接続されている。・・・」「〔5頁右下欄下から6〜2行〕第4図は,本発明の第2実施例を示す。本実施例は,第1実施例のパソコンPCkで行った加工データの演算を,玉摺機LE1〜LEmに設けたCPU20-1〜CPU20-nで実行させるようにした例を示したものである。・・・」「〔6頁左上欄6行〜右上欄7行〕第5図は,本発明の第3実施例を示したものである。本実施例では,各店舗OS1〜OSnにフレームリーダFR1〜FRnがそれぞれ配置されていて,各フレームリーダFR1〜FRnでフレームをそれぞれ測定できるようになっている。・・・各パソコンPC1〜PCnは,第1演算手段としてのCPU1-1〜CPU1-nを有する。そして,店舗OSjのフレームリーダFRjで測定されたフレームの測定データFRj(jρi,θi)[j=1,2,…N]は店舗OSjのパソコンPCjに入力される。・・・店舗OSjのパソコンPCjは,演算された補正フレームデータ(jρ’i,θi)及び識別信号を,公衆通信回線網NWを介して加工センターMCのパソコンPCkに転送する。」??乙10甲3発明の課題等(??)課題乙10甲3刊行物(661)には,次の記載がある。
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の装置においては,ヤゲンカーブとレンズ枠のカーブRが等しい場合には両者の周長も一致するが,多くの場合異なるためので(ママ)周長も一致しない。従って,このようにヤゲン加工したレンズを眼鏡枠に枠入れると,周長が一致せず,枠入れ作業時の適切なフィットが得られない。そこで作業者は眼鏡枠の無理な変形を行わざるを得なくなるという欠点がある。本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので,レンズ枠入れ時にフィット感の良い,すなわちサイズ精度の高いレンズ周縁加工機及びレンズ周縁加工方法を提供することを技術課題とする。」(??)作用効果乙10甲3刊行物には,次の記載がある。
「【0034】【発明の効果】上記のように本発明は,枠入れ作業時のフィット感における重要な要素の1つがヤゲンカーブの軌跡の周長と玉型立体形状の周長が一致していることに着目し,一般的なレンズ枠入れ作業において多く発生しているレンズ枠のカ-ブRとヤゲンカーブの違いによる周長の誤差を補正し,眼鏡枠の材質に柔軟性がある場合には枠をヤゲンカーブになじませ,また,柔軟性のない場合には枠のカ-ブRを修正して枠入れ作業を行うことにより,眼鏡枠にレンズをフィットと(ママ)させることができる。」??まとめ(??)以上のとおり,本件発明2の課題と乙10甲3発明の課題はほとんど同じものであり,本件発明2の作用効果も,乙10甲3発明の作用効果から予測できる効果以上の効果を奏するものではない。
(??)したがって,本件発明2と乙10甲3発明は,実質的に同一発明である。
(イ)原告a乙10甲3刊行物被告の主張aは認める。
b乙10甲3刊行物の記載同bは認める。
c一致点及び相違点同cのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
本件発明2と乙10甲3発明とは,すべてが相違点である。
d相違点の検討(a)発明の同一性被告の主張d(a)??は認め,??は否認する。
乙10甲3発明は,「レンズ周縁加工機」と「検眼システム」や「トレーサ」との間を通信可能としただけであり,アンカットレンズを眼鏡店において玉型加工する際のレンズ周縁加工機及びレンズ周縁加工方法に関する発明である。
したがって,乙10甲3発明は,本件発明2とはその属する技術分野が根本的に異なっている。
(b)発明の実質的同一性??周知技術同d(b)??のうち,(??)及び(??)は認め,(??)は否認する。
乙10甲4刊行物に記載された一つの実施形態から,周知技術ということはできない。
また,乙10甲5刊行物は,本件特許2を出願した平成4年に公開されたものであるから,ここに記載されているからといって,本件特許2の出願時に周知技術であったといえるものではない。
??乙10甲3発明の課題等同d(b)??は認める。
??まとめ同d(b)??は否認する。
進歩性その2(ア)被告a乙10甲4刊行物の記載乙10甲4刊行物(420)の記載内容を本件発明2の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件AないしC及びE前記イ(ア)d(b)??(??)のとおりである。
(b)構成要件D眼鏡枠瞳孔間距離について,「〔3頁左上欄5〜11行〕この他,眼鏡枠内に於けるレンズ処方値の位置情報,即ち,装用者の角膜頂点間距離(PDと呼ばれる。左右眼が対称で無いときは,左右一対の片眼PDと呼ばれる数値で表現されることもある。),又,レンズの光学中心や多重焦点レンズの近方視領域の眼鏡枠内に於ける配置を指定することもある。」眼鏡枠の縦サイズ横サイズ及びフレームセンターについて,「〔2頁右下欄13行〜第3頁左上欄4行〕(ロ)眼鏡枠の形状眼鏡枠の大きさを正確に把握する為の情報であり,左右それぞれの眼鏡枠内の中心(フレーム・センターと呼ばれる。)相互の距離(フレームPDと呼ばれる。),鼻幅(レンズ間距離とも呼ばれる。),枠の片眼の横幅(一般にAで表わされ,レンズサイズと呼ばれる。),及び縦幅(一般にBで表わされる。),更にフレームセンターを中心として,眼鏡枠の縁までの距離を種々の方向に対して測定した寸法(即ち,フレームセンターを中心とした眼鏡枠の極座標表示)等の情報である。」眼鏡枠材質情報について,「〔2頁右下欄6〜10行〕(イ)眼鏡枠の種類即ち,合成樹脂製か,金属製か,ナイロン糸等で固定する方式か,等に関する情報であり,縁摺りされたレンズの最も薄い周辺の厚みを決定する際に必要となる情報である。・・・」b一致点及び相違点本件発明2と乙10甲4発明とは,乙10甲4発明には構成要件Dの周長に係る部分が明示されていない点で相違し,その余の点で一致する。
c相違点の検討(a)周長に係る部分を付加して構成要件Dのように構成することは,当業者が容易に行うことができた事項である。
(b)仮に上記(a)が認められないとしても,??乙10甲6刊行物(乙9甲4刊行物と同じ。407)の記載内容は,前記(14)(本件特許1の無効)イ(ア)d(a)??のとおりである。
??本件発明2の眼鏡フレームの正確な形状を把握するという課題は,原出願1の出願前に周知の一般的課題にすぎない。
??本件発明2の作用効果についても,乙10甲6刊行物にある「フレーム枠の形状に正確に合せることができる」と同等である。
??そして,オンライン化は,乙10甲4刊行物及び乙10甲5刊行物に示されるとおり,周知であり(前記イ(ア)d(b)??),周長の伝達を乙10甲6発明にいう物理的伝達からデータ入力・送信の形式とすることは,オンライン化という性質上当然にされるものであり,格別の困難があるものではない。
(c)そうすると,本件発明2は,乙10甲4発明に,一般的課題を念頭にして,乙10甲6発明の眼鏡フレーム枠の内周長を物理的に伝えるという技術及び周知技術を適用することによって当業者が容易になし得た発明であり,進歩性を欠如する。
(イ)原告a乙10甲4刊行物の記載被告の主張aは認める。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認める。一致点のうち,構成要件AないしC及びEに関する部分は認め,その余は否認する。
乙10甲4刊行物(420)には,構成要件Dのうち被告の自認する周長に係る部分以外の点も明示されていない。
c相違点の検討(a)同c(a)は否認する。
乙10甲4発明は,眼鏡店において枠入れ加工が施されるアンカット方式において,アンカットレンズを工場に注文する際,適正な肉厚のアンカットレンズを注文するために必要な情報を眼鏡店から工場へ送信するようにした発明である。そのため,乙10甲4発明における情報は,高さ方向の要素に欠けた「2次元的枠形状情報」であり(3頁左上欄18行〜3頁左下欄12行),「眼鏡枠周長」は必要がないから,それに関する開示は一切ない。
(b)同c(b)のうち,??は認め,その余は否認する。
乙10甲6発明(乙9甲4発明と同じ。407)での周長が眼鏡フレーム枠内周を平面に投影した長さという2次元的な値であることは,前記(14)(本件特許1の無効)イ(イ)d(a)??のとおりであり,乙10甲6刊行物には,構成要件Dにいう3次元的眼鏡枠形状情報である周長は開示されていない。
そうすると,乙10甲4発明に乙10甲6発明を組み合わせても,構成要件Dの構成とはならない。
(c)同c(c)は否認する。
(16)争点(16)(本件発明3の無効)ア進歩性その1(ア)被告a分割要件違反(a)原出願1と本件特許3に係る出願??原明細書1(乙11甲1刊行物。乙10甲1刊行物と同じ。473)には,眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT及びフレームPDについて,他の情報(眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター,眼鏡枠材質情報,鼻幅等)と共に個別に記載がある。
??しかしながら,原明細書1には,このような情報の中から,構成要件Jの要素を選出することにより,「眼鏡枠の正確な形状データを把握」する等といった本件発明3の作用効果を奏する旨の記載はなく,また,それが記載されているに等しいものと評価することもできない。
??また,原明細書1には,本件発明3にいう「3次元的眼鏡枠形状情報」についての記載やこの用語の意味ないし含み得る情報の範囲の記載がなく,また,その意味につき技術常識で補うことができない。
??さらに,原明細書1には,本件発明3にいう「眼鏡枠情報」の記載はなく,この用語の意味ないし含み得る情報の範囲の記載がない。
??したがって,本件発明3は,原明細書1に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,遡っても原出願2の出願日までである。
(b)原出願2と本件特許3に係る出願??原明細書2(乙11甲2。乙10甲2と同じ。)には,眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT及びフレームPDについて,他の情報(眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター,眼鏡枠材質情報,鼻幅等)と共に個別に記載がある。
??しかしながら,原明細書2には,構成要件Jの要素の選出とこれらの組合せによる作用効果の記載がない。
??また,原明細書2には,本件発明3にいう「3次元的眼鏡枠形状情報」の記載がない。
??さらに,原明細書2には,本件発明3にいう「眼鏡枠情報」の記載がない。
??したがって,本件発明3には,原明細書2に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,実際の出願日である平成15年5月7日となる。
b進歩性(a)乙11甲1刊行物等の記載乙11甲1刊行物(原明細書1。473)又は乙11甲2刊行物(原明細書2。540)には,次の記載がある。
??構成要件F乙11甲1刊行物(【0014】)又は乙11甲2刊行物(【0009】)の「眼鏡店100には,オンライン用の端末コンピュータ101およびフレーム形状測定器102が設置される。・・・」??構成要件G乙11甲1刊行物(【0014】)又は乙11甲2刊行物(【0009】)の「・・・そして端末コンピュータ101の出力データは,公衆通信回線300を介して工場200のメインフレーム201にオンラインで転送される。」乙11甲1刊行物(【0014】)又は乙11甲2刊行物(【0009】)の「・・・端末コンピュータ101へは,フレーム形状測定器102から眼鏡フレーム実測値が入力され,端末コンピュータ101で計算処理が行われるとともに,キーボード入力装置から眼鏡レンズ情報,処方値等が入力される。・・・」??構成要件H乙11甲1刊行物(【0015】)又は乙11甲2刊行物(【0010】)の「メインフレーム201は眼鏡レンズ加工設計プログラム,ヤゲン加工設計プログラム等を備え,入力されたデータに基づき,ヤゲン形状を含めたレンズ形状を演算し,その演算結果を,公衆通信回線300を介して端末コンピュータ101に戻して画面表示装置に表示させるとともに,その演算結果を工場200の各端末コンピュータ210,220,230,240,250にLAN202を介して送るようにする。」??構成要件I乙11甲1刊行物(【0068】)又は乙11甲2刊行物(【0063】)の「・・・眼鏡フレームFを,図示しない眼鏡フレーム保持手段に固定保持し,スタイラス30の頭部32を眼鏡枠FrのV字形の内周溝に接触させ,図示していない制御装置によりモータ6を回転させる。それにより,タイミングベルト4で連結された回転台2が回転し,スタイラス30が眼鏡枠Frの内周溝に接触しながら転動する。測定部1の回転は,タイミングベルト7で連結されたロータリエンコーダ9を回転し,回転角(θ)として検出される。スタイラス30の半径方向の移動量は,リニアエンコーダ24によってスライド板16のE方向の移動量Rとして検出され,上下方向の移動量はZ軸測定器33によってスタイラス30のZ軸方向の移動量Zとして検出される。なお,これらの円筒座標をなす値θ,R,Zは,連続して測定されるものでなく,回転角(θ)の所定増加量毎に間欠的に測定されて,図2の端末コンピュータ101に入力されるものである。したがって,この入力座標値を以下,3次元測定形状データ(Rn,θn,Zn)(n=1,2,3,・・・,N)と表すことにする。Nが1回転での測定回数を表す。」v構成要件J乙11甲1刊行物(【0086】)又は乙11甲2刊行物(【0081】)の「〔S603〕ステップS602で補正された眼鏡枠形状座標値(Xn,Yn,Zn)(n=1,2,3,・・・,N)から眼鏡枠形状(内周溝の底の周形状)の周長FLNを算出する。・・・」乙11甲1刊行物(【0111】)又は乙11甲2刊行物(【0106】の「〔S612〕まず,ステップS608で再度変換された眼鏡枠の正面方向単位ベクトルFVを用いて,眼鏡枠の傾きTILTを算出する。・・・」乙11甲1刊行物(【0113】)又は乙11甲2刊行物(【0108】)の「つぎに,この傾きTILTと,ステップS609で求めた鼻幅DBLと,ステップS610で求めたAサイズとを基に,幾何学中心間の距離であるフレームPDを算出する。・・・」??構成要件K乙11甲1刊行物(【0013】)又は乙11甲2刊行物(【0008】)の「・・・図2は,本発明の眼鏡枠形状同形化方法が実施される眼鏡レンズの供給システムの全体構成図である。・・・」(b)一致点及び相違点本件発明3と乙11甲1発明又は乙11甲2発明とは,乙11甲1発明又は乙11甲2発明に,本件発明3の構成要件Jの要素の組合せの選出及びこれによる作用効果が明示されていない点で相違するが,その余の点において一致する。
(c)相違点の検討??構成要件Jの要素は,乙11甲1刊行物又は乙11甲2刊行物に一括して記載されているため,これらの要素を単に寄せ集めることは,当業者にとって容易なことであった。
??なお,当該情報の単なる寄せ集めが当業者にとって困難でないと評価されること(進歩性の判断)と,情報の組合せないしその作用効果が当業者にとって読み取れるか(分割出願の要件)とは,別個の判断事項である。
(d)まとめ以上によれば,本件発明3は,乙11甲1発明又は乙11甲2発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであり,進歩性を欠如する。
(イ)原告a分割要件違反(a)原出願1と本件特許3に係る出願??被告の主張a(a)のうち,??は認め,その余は否認する。
??原明細書1には,次の記載がある。
「【0020】端末コンピュータ250には,ヤゲン頂点の形状測定器251が接続され,端末コンピュータ250は,この形状測定器251が測定したヤゲン加工済のレンズの周長および形状を,メインフレーム201から送られた演算結果と比較して加工の合否判定を行う。」「【0086】〔S603〕ステップS602で補正された眼鏡枠形状座標値(Xn,Yn,Zn)(n=1,2,3,・・・,N)から眼鏡枠形状(内周溝の底の周形状)の周長FLNを算出する。眼鏡枠形状の周長FLNは,眼鏡枠形状の各点間の距離の総和として次式(1)により算出される。」「【0111】〔S612〕まず,ステップS608で再度変換された眼鏡枠の正面方向単位ベクトルFVを用いて,眼鏡枠の傾きTILTを算出する。これを図22を参照して説明する。」「【0112】図22は,眼鏡枠の傾きTILTおよびフレームPDの算出を説明する説明図であり,図22(A)は眼鏡枠の傾きTILTの斜視図,図22(B)は眼鏡フレームの平面図である。すなわち,図22(A)に示すように,眼鏡枠の傾きTILTは,眼鏡枠の正面方向単位ベクトルFVとYZ平面とのなす角として算出する。」「【0113】つぎに,この傾きTILTと,ステップS609で求めた鼻幅DBLと,ステップS610で求めたAサイズとを基に,幾何学中心間の距離であるフレームPDを算出する。すなわち,図22(B)に示すように,Aサイズは左右の眼鏡枠で異なるので,右の眼鏡枠のAサイズをAr,左の眼鏡枠のAサイズをAlとすると,フレームPD(FPD)は次式(5)で算出される。」「【0114】FPD=(Ar+Al)/2・cos(TILT)+DBL・・・(5)」「【0117】〔T1〕まず,ステップS610で求めた各幾何学中心を原点とする左右の眼鏡枠形状の直交座標値(Xn,Yn,Zn)に基づき,左右の眼鏡枠形状の各周長を算出する。」「【0123】〔T7〕そして,この混合眼鏡枠形状54に基づき,新たな左右の眼鏡枠形状を決定する。・・・」「【0124】〔T8〕ステップT7で決定された新たな左右の眼鏡枠形状の各周長がステップT1で算出された左右の眼鏡枠形状の周長に一致するように,ステップT7で決定された新たな左右の眼鏡枠形状を相似形状にそれぞれ変形する。」??これらの記載からすると,原明細書1には,本件発明3の構成要件Jの要素や「眼鏡枠の3次元の枠データ及びこの3次元の枠データに基づいて求めた前記眼鏡枠のレンズ枠の周長を与えることで,加工者は前記眼鏡枠の正確な形状データを把握することが出来る。」との効果が記載されており,分割出願の要件違反はない。
(b)原出願2と本件特許3に係る出願??同a(b)のうち,??は認め,その余は否認する。
??原出願2についても,原出願1と同様である。
b進歩性(a)乙11甲1刊行物等の記載同b(a)は認める。
(b)一致点及び相違点同b(b)のうち,相違点は認め,一致点は否認する。
(c)相違点の検討同b(c)は否認する。
(d)まとめ同b(d)は否認する。
イ拡大先願(ア)被告a乙11甲3刊行物乙11甲3刊行物(乙9甲1刊行物と同じ。661)は,平成4年2月4日に出願され,平成5年8月24日に公開された他人の先願に係る当初明細書である。
b乙11甲3刊行物の記載乙11甲3刊行物の記載内容を本件発明3の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件I「【0019】・・・このとき測定子部2120はレンズ枠の動径に従って,ガイドシャフト2010a,2010b上を移動し,その移動量はポテンションメータ2134によって読取られ,測定子軸2122がレンズ枠のカーブに従って上下し,その移動量がポテンションメータ2130によって読取られる。パルスモータ2107の回転角Θとポテンションメータ2134の読取り量r及びポテンションメータ2130の読取り量zからレンズ枠形状が(r,Θ,z)(n=1,2,・・・,N)として計測される。・・・」(b)構成要件Jレンズ枠の周長について,「【請求項1】・・・立体計測された眼鏡枠のレンズ枠形状を入力する入力手段と,該入力手段により入力された3次元レンズ枠形状からレンズ枠の周長を求める算出手段と,」「【0004】・・・立体計測された眼鏡枠のレンズ枠形状を入力する入力手段と,該入力手段により入力された3次元レンズ枠形状からレンズ枠の周長を求める算出手段と,」「【請求項5】・・・眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデ-タに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップと,」「【0008】・・・眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測する第1ステップと,第1ステップにより得られたデ-タに基づいて眼鏡枠のレンズ枠の周長を求める第2ステップと,」「【0019】・・・さらに,(xn,yn,zn)(n=1,2,3,・・・N)の各データ間の距離を算出し,それをたし合わせることにより近似的に玉型の周長を求め,これをΠfとする。」眼鏡枠の傾きTILTについて,「【0002】・・・眼鏡枠の傾きによるコサインエラーの除去・・・」フレームPDについて,「【0021】・・・この計測データ(rn,Θn)から,フレーム測定の場合と同様に幾何学中心Oを求め,入力部からのFPD,PD,内寄せ量I,上寄せ量Uをもとに加工データである“(srn,sΘn)(n=1,2,………,N)を得る。」「【0020】・・・次に,入力部4で設定された瞳孔間距離PDから内寄せ量Iを,・・・求める。・・・」「【0028】・・・[ステップ1-2] 被装者のPD値及び乱視軸を入力する。型板測定の場合にはFPD値も入力する。また,遠近切換スイッチ406により,入力されるPDが遠方であるか近方であるかを設定する。設定状態は表示部3のディスプレイにて表示される。ここで遠方に設定された状態で遠方PDを入力した後,遠近切換スイッチ406にて近方に変更すると,次式により近方PDに変換する。近方PD=遠方PD×((I-12)/(I+13))Iは必要とする作業距離,12は日本人の角膜頂点間距離,13は角膜頂点と回旋点との距離を意味する。近方状態において近方PDを入力した後遠方に変更すると,下記の式により遠方PDに変換する。遠方PD=近方PD×((I+13)/(I-12))変換の詳細については特開昭63-82621号公報に記載されている。また上下レイアウトも近方,遠方それぞれにあらかじめ前述の基準値設定において入力された設定値に設定する。作業者がその値について変更を加えたい場合には,(+)スイッチ408,(-)スイッチ409にて変更が可能である。このときPDについても変更が可能である。
[ステップ1-3]ステップ1-1で求めたフレームまたは型板の動径情報及びFPD値と前ステップで入力されたPD上下レイアウトの情報により,前述の方法により新たな座標中心に座標変換し,新たな動径情報(rsδn,rsθn)を得,これを枠データメモリに記憶する。・・・」眼鏡枠瞳孔間距離について,【0020】(c)構成要件K「〔発明の名称〕レンズ周縁加工機・・・」「【0001】【産業上の利用分野】・・・眼鏡枠に枠入れするレンズを加工する装置・・・」c一致点及び相違点本件発明3と乙11甲3発明(661)とは,構成要件FないしHが乙11甲3発明において明示されていない点で一応相違し,その余の点において一致する。
d相違点の検討(a)発明の同一性??乙11甲3刊行物(乙10甲3刊行物と同じ。661)の記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(a)??のとおりである。
??このように,乙11甲3刊行物自体に構成要件FないしHの示唆があるから,本件発明3と乙11甲3発明とは,同一である。
(b)発明の実質的同一性??周知技術(??)次のとおり,オンライン化は,乙11甲4刊行物及び乙11甲5刊行物に示されるように,周知技術である。
(??)乙11甲4刊行物(乙10甲4刊行物と同じ。420)及び乙11甲5刊行物(乙10甲5刊行物と同じ。539)の記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(b)??(??)及び(??)のとおりである。
??乙11甲3発明の課題等(??)課題乙11甲3刊行物(661)の課題に関する記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(b)??(??)のとおりである。
(??)作用効果乙11甲3刊行物(661)の作用効果に関する記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(b)??(??)のとおりである。
??まとめ(??)以上のとおり,本件発明3の課題と乙11甲3発明の課題はほとんど同じものであり,本件発明3の作用効果も,乙11甲3発明の作用効果とほとんど同じである。
(??)したがって,本件発明3と乙11甲3発明とは,実質的に同一発明である。
(イ)原告a乙11甲3刊行物被告の主張aは認める。
b乙11甲3刊行物の記載同bは認める。
c一致点及び相違点同cのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
本件発明3と乙11甲3発明とは,すべてが相違点である。
d相違点の検討(a)発明の同一性同d(a)??は認め,??は否認する。
乙11甲3発明は,「レンズ周縁加工機」と「検眼システム」や「トレーサ」との間を通信可能としただけであり,アンカットレンズを眼鏡店において玉型加工する際のレンズ周縁加工機及びレンズ周縁加工方法に関する発明である。
したがって,乙11甲3発明は,本件発明3とはその属する技術分野が根本的に異なっている。
(b)発明の実質的同一性??周知技術同d(b)??のうち,(??)は認め,(??)は否認する。
乙11甲4刊行物に記載された1つの実施形態から,周知技術ということはできない。
また,乙11甲5刊行物は,本件特許3を出願した平成4年に公開されたものであるから,ここに記載されているからといって,本件特許3の出願時に周知技術であったといえるものではない。
??乙11甲3発明の課題等同d(b)??は認める。
??まとめ同d(b)??は否認する。
進歩性その2(ア)被告a乙11甲4刊行物の記載乙11甲4刊行物(乙10甲4刊行物と同じ。420)の記載内容を本件発明3の構成要件に対応させて整理すると,次のとおりである。
(a)構成要件F,G及びH前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(b)??(??)に記載のとおり。
(b)構成要件I及びJ「〔2頁右下欄13行〜3頁左上欄4行〕(ロ)眼鏡枠の形状眼鏡枠の大きさを正確に把握する為の情報であり,左右それぞれの眼鏡枠内の中心(フレーム・センターと呼ばれる。)相互の距離(フレームPDと呼ばれる。),鼻幅(レンズ間距離とも呼ばれる。),枠の片眼の横幅(一般にAで表わされ,レンズサイズと呼ばれる。),及び縦幅(一般にBで表わされる。),更にフレームセンターを中心として,眼鏡枠の縁までの距離を種々の方向に対して測定した寸法(即ち,フレームセンターを中心とした眼鏡枠の極座標表示)等の情報である。」「〔3頁左上欄5〜11行〕この他,眼鏡枠内に於けるレンズ処方値の位置情報,即ち,装用者の角膜頂点間距離(PDと呼ばれる。左右眼が対称で無いときは,左右一対の片眼PDと呼ばれる数値で表現されることもある。),又,レンズの光学中心や多重焦点レンズの近方視領域の眼鏡枠内に於ける配置を指定することもある。」b一致点及び相違点本件発明3と乙11甲4発明とは,乙11甲4発明には構成要件Jの?@周長に係る部分と?A眼鏡枠の傾きTILTに係る部分が明示されていない点で相違し,その余の点で一致する。
c相違点の検討(a)周長に係る部分及び傾きTILTに係る部分を付加して構成要件Jのように構成することは,当業者が容易に行うことができた事項である。
(b)仮に上記(a)が認められないとしても,??乙11甲6刊行物(乙10甲6刊行物と同じ。407)の記載内容は,前記(14)(本件特許1の無効)イ(ア)d(a)??のとおりである。
??乙11甲7刊行物(特開昭62-215814号公報)には,眼鏡枠の傾きTILTについて,「〔2頁右下欄18行〜3頁左上欄1行〕この時この球の中心座標データとフレームの三次元座標データの幾何学中心座標データとを比較することにより,フレームの測定時の傾きも算出できる。」と記載されている。
??本件発明3の眼鏡フレームの正確な形状を把握するという課題は,周知の一般的課題にすぎない。
??本件発明3の作用効果も,乙11甲6刊行物にある「フレーム枠の形状に正確に合せることができ」,乙11甲7発明の「フレームの玉型形状を決定するデータが簡単に得られる」との作用効果と同等である。
??(??)次のとおり,オンライン化は,乙11甲4刊行物及び乙11甲5刊行物に示されるように,周知技術である。
(??)乙11甲4刊行物(乙10甲4刊行物と同じ。420)及び乙11甲5刊行物(乙10甲5刊行物と同じ。539)の記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)イ(ア)d(b)??(??)及び(??)のとおりである。
(??)したがって,周長の伝達を乙11甲6発明にいう物理的伝達からデータ入力・送信の形式とすることは,オンライン化という性質上当然になされるものであり,格別の困難があるものではない。
??後記原告の主張c(b)??(??)(乙11甲7刊行物の記載)は認める。
(c)そうすると,本件発明3は,乙11甲4発明に,一般的課題を念頭にして,乙11甲6発明の技術及び乙11甲7発明の技術を適用することによって当業者が容易になし得た発明であり,進歩性を欠如する。
(イ)原告a乙11甲4刊行物の記載被告の主張aは認める。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認める。一致点のうち,構成要件F,G及びIに関する部分は否認し,その余は認める。
乙11甲4発明は,アンカットレンズを工場に注文する際に,そのアンカットレンズの肉厚を適正なものとするために必要な情報を眼鏡店から工場へ送信するようにした発明であり,送信される情報は,「2次元的枠形状情報」である。したがって,乙11甲4刊行物には,被告の自認する構成要件Jの「眼鏡枠レンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT」だけでなく,構成要件Gの「3次元的眼鏡枠形状情報」が開示されておらず,また,3次元的眼鏡枠測定装置の記載がないので,構成要件F及びIの開示もない。
c相違点の検討(a)同c(a)は否認する。
(b)??同c(b)のうち,??及び??は認め,??及び??は否認し,??のうち,(??)は認め,その余は否認する。
??乙11甲6発明(乙9甲4発明及び乙10甲6発明と同じ。407)での周長が眼鏡フレーム枠内周を平面に投影した長さという2次元的な値であることは,前記(14)(本件特許1の無効)イ(イ)d(a)??のとおりであり,乙11甲6刊行物には,構成要件Jにいう3次元的眼鏡枠形状情報である周長は開示されていない。
そうすると,乙11甲4発明に乙11甲6発明を組み合わせても,構成要件Jの構成とはならない。
??(??)乙11甲7刊行物(乙9甲3発明と同じ。814)には,次の記載がある。
「〔1頁右欄8行〜12行〕・・・いずれの装置も得られる結果は,眼鏡フレームの装置への取付位置により変化してしまい,取付位置が不適切だと正しい測定が行なわれないという欠点があった。・・・」「〔5頁右上欄15行〜5頁左下欄1行〕以上の実施例によればフレームの溝形状を測定する際,フレームが傾かないように固定したり,フレームの玉型の幾何学中心に中心出しをしながら固定する必要がなくなり,測定が容易になり,フレームの傾き,玉型の幾何学中心を溝形状の測定データにより算出し補正することにより測定も正確になる利点がある。・・・」(??)上記記載によれば,乙11甲7刊行物に記載されている「傾き」とは,測定台等の基準物に対して眼鏡フレームがどれだけ傾いて置かれているかということである。
(??)したがって,乙11甲7発明の「傾き」は,構成要件Jにいう「眼鏡枠の傾きTILT」,すなわちレンズ枠が曲げられている場合のそのレンズ枠の「傾き」とは全く異なる概念である。
(??)そうすると,乙11甲4刊行物にも乙11甲7刊行物にも,構成要件Jの「眼鏡枠の傾きTILT」は開示されていないから,乙11甲4発明に乙11甲7発明を組み合わせても,構成要件Jの構成とはならない。
(c)同c(c)は否認する。
(17)訂正後の本件特許1の無効ア訂正要件違反(ア)被告次のとおり,本件特許1の訂正は,新規事項を追加するものであって,許されない。
a「通信回線」(a)本件明細書1には,「通信回線」の下位概念としての「公衆通信回線」又はこれと同様の「公衆回線」が示されているが,「通信回線」は示されていない。
(b)訂正後の「通信回線」は,広域通信回線や構内通信回線(非公衆通信回線)を含む。
(c)したがって,本件特許1の訂正は,新規事項を追加するものであって,許されない。
b「発注側」(a)本件明細書1には,「発注側」とは専ら眼鏡店を表すものとして説明がされており,眼鏡店以外の「発注側」に属するものについては言及がない。
(b)「発注側」とは,「注文を発する側」を意味するから,訂正後の「発注側」は,眼鏡店以外の「発注側」に属するものを含む。
(c)したがって,本件特許1の訂正は,新規事項を追加するものであって,許されない。
c「加工側」(a)本件明細書1では,「加工側」は専らレンズメーカーの工場として説明されている。
(b)訂正後の「加工側」は,レンズメーカーの工場以外の「加工側」に属するものを含む。
(c)したがって,本件特許1の訂正は,新規事項を追加するものであって,許されない。
(イ)原告a「通信回線」(a)被告の主張a(a)は否認する。
本件明細書1の「公衆通信回線」は,「広域通信回線」や「構内通信回線」であっても公衆用に敷設された通信回線を含む。
仮に,本件明細書1の「公衆通信回線」と訂正後の「通信回線」とが異なるとしても,本件発明1においてはどのような通信回線によるのかは任意の設計事項であり,「通信回線」は,本件明細書1から自明な事項にすぎない。
(b)同a(b)のうち,訂正後の「通信回線」が構内通信回線(非公衆通信回線)を含むことは否認し,その余は認める。
(c)同a(c)は否認する。
b「発注側」(a)同b(a)は否認する。
本件発明1が離隔した発注側と加工側との間の通信によって通信玉型加工をする発明であることは,本件明細書1に明確に開示されている。眼鏡店は,発注側として最も代表的一般的なものであり,本件明細書1にも,「【0009】・・・発注側である眼鏡店・・・」と記載されている。
したがって,本件明細書1は,代表的一般的なものとして眼鏡店を例示したものであり,「発注側」がこれに限定されるわけではない。
(b)同b(b)は認める。
(c)同b(c)は否認する。
c「加工側」(a)同c(a)は否認する。
本件発明1の発明内容からして,発注側に対して加工側があることは当然であり,本件明細書1にも,「【0084】・・・これにより,例えば加工側に眼鏡フレームがなくても・・・」と「加工側」が明確に開示されている。
(b)同c(b)は認める。
(c)同c(c)は否認する。
イ拡大先願(ア)被告a乙9甲1刊行物乙9甲1刊行物(661)の記載内容は,前記(14)(本件特許1の無効)ア(ア)bのとおりである。
b一致点及び相違点乙9甲1刊行物には,厳密には構成要件エ’及びオ’に対応する記載はないから,本件訂正発明1と乙9甲1発明とは,それらの点で一応相違し,その余の点で一致する。
c相違点の検討(a)検査ステップ製造工程に最終製品の良否を判断する検査ステップを具備させることは常套手段である。
したがって,ヤゲン先端の軌跡の周長と眼鏡枠のレンズ枠の周長がほぼ一致するように,加工したヤゲン付き眼鏡レンズが所定の周長を有しているか否かを検査するステップを具備させることは単なる設計事項にすぎない。
また,製造工程に検査ステップを具備させることが常套手段である以上,検査ステップが加工側に存することは明らかである。
(b)周長測定ストップ(a)のとおり,検査ステップを具備させることが常套手段である以上,検査ステップに先立ってヤゲンレンズの周長測定ステップを備えることは,当然の技術的事項である。
また,検査ステップに先立つヤゲン周長測定ステップが加工側に存することも,当然の技術的事項である。
(c)作用効果本件訂正発明1の奏する作用効果は,乙9甲1発明に検査ステップという常套手段を付加することによって当然予想される程度のものである。
(イ) 原告a乙9甲1刊行物被告の主張aは認める。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
乙9甲1発明は,眼鏡フレームが手元にある眼鏡店におけるレンズ加工すなわちアンカット方式に関する発明であり(【0001】【産業上の利用分野】参照),一方,本件訂正発明1は,手元に眼鏡フレームがない状態で適切な玉型加工をして眼鏡店に加工済レンズを供給する方法に関する発明であり(構成要件ア及びエ参照),その属する技術分野が全く異なり,乙9甲1発明は,本件訂正発明1の課題,構成,効果を何ら開示していない。
c相違点の検討(a)検査ステップ同c(a)は否認する。
(b)周長測定ストップ同c(b)は否認する。
(c)作用効果同c(c)は否認する。
進歩性(ア)被告a乙9甲3刊行物の記載乙9甲3刊行物(814)の記載内容は,前記(14)(本件特許1の無効)イ(ア)bのとおりである。
b一致点及び相違点本件訂正発明1と乙9甲3発明とは,次の2点において一応相違し,その余の点おいて一致する。
?@本件訂正発明1は,「眼鏡フレームのレンズ枠の枠溝に沿った眼鏡レンズ枠周長を3次元的眼鏡枠測定装置で測定する前記発注側における眼鏡レンズ枠周長測定ステップ」を有する点,?A本件訂正発明1は,「レンズ加工ステップによりヤゲン加工が施され眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を3次元的周長測定装置で測定する前記加工側におけるヤゲンレンズ周長測定ステップと,前記眼鏡レンズ周長とヤゲンレンズ周長とを比較し,それらの差異が所定の範囲内にあれば適正とする前記加工側における検査ステップ」を有する点c相違点の検討(a)乙9甲4刊行物の記載乙9甲4刊行物(407)の記載内容は,前記(14)(本件特許1の無効)イ(ア)d(a)のとおりである。
(b)組合せの容易性??本件訂正発明1の課題と乙9甲3発明(814)及び乙9甲4発明(407)の課題とは同一であり,乙9甲3発明に乙9甲4発明における周長に係る事項を組み合わせて本件訂正発明1の構成要件イ’及びウ’のように構成することは,当業者にとって容易であった。
??また,所定の加工を施した製品の測定値とその基準値とを比較して差異が所定範囲内にあれば適正とすることは,周知慣用技術である。
??したがって,構成要件イ’及びウ’として構成された事項に,上記??の周知慣用技術を組み合わせて構成要件エ’及びオ’のように構成することも,当業者にとって容易であった。
??そして,本件訂正発明1の奏する作用効果も,乙9甲3発明に乙9甲4発明等を組み合わせた場合に予想される程度のものである。
(イ)原告a乙9甲3刊行物の記載被告の主張aは認める。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
c相違点の検討(a)乙9甲4刊行物の記載同c(a)は認める。
(b)組合せの容易性同c(b)は否認する。
(18)訂正後の本件特許2の無効ア拡大先願(ア)被告本件訂正発明2と乙10甲3発明(乙9甲1発明と同じ。661)との間に相違点はなく,両者は同一の発明である(乙68)。
(イ) 原告被告の主張は否認する。
進歩性その1(ア)被告a分割要件違反(a)原出願1と訂正後の本件特許2に係る出願本件訂正発明2は,原明細書1に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,遡っても原出願2の出願日までである。
(b)原出願2と訂正後の本件特許2に係る出願本件訂正発明2は,原明細書2に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,実際の出願日である平成15年5月7日となる。
b進歩性本件訂正発明2は,乙10甲1刊行物(原明細書1。473)によって進歩性が否定される。
(イ) 原告a分割要件違反被告の主張aは否認する。
b進歩性同bは否認する。
進歩性その2(ア)被告a乙10甲4刊行物の記載(a)乙10甲4刊行物(420)の記載内容は,前記(15)(本件特許2の無効)ウ(ア)aのとおりである。
(b)乙10甲4発明においては,眼鏡店の手元に眼鏡フレームがあって,レンズ製造工場の手元に眼鏡フレームがない状態である。
b一致点及び相違点本件訂正発明2と乙10甲4発明とは,次の3点で相違し,その余の点で一致する。
?@本件訂正発明2では,3次元フレーム枠形状測定器で眼鏡フレームを測定するものである点,?A本件訂正発明2では,測定データから眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ及びフレームセンターの3次元的眼鏡枠形状情報を計算処理して得るものである点,?B本件訂正発明2では,眼鏡枠周長情報について記載している点c相違点の検討(a)相違点?@相違点?@のように構成することは,乙10甲4発明及び周知技術から当業者が容易に想到することができたことである。
(b)相違点?A3次元的眼鏡枠形状情報を得ることは周知技術であり,それによって得られた情報は3次元的眼鏡枠形状情報といえるから,3次元という限定は格別なものではない。
(c)相違点?B相違点?Bのように構成することは,眼鏡枠フレーム情報が有用であることを開示する乙10甲6刊行物から当業者が容易に想到することができたことである。
(イ) 原告a乙10甲4刊行物の記載(a)被告の主張a(a)は認める。
(b)同a(b)は否認する。
乙10甲4発明は,アンカット方式にラボ方式の長所を取り入れて課題を解決したものであり(2頁左下欄下から4行〜右下欄1行),アンカット方式に関する発明である。また,乙10甲4刊行物では,「〔2頁左下欄12行〜16行〕・・・アンカット方式が主流である市場に於いてラボ方式を導入することは,枠入れ加工という眼鏡店に於いて大きな比重を占めている工程をレンズ製造工場側が奪う形となり,容認され難いであろう。」として,レンズ製造工場がヤゲン加工を行うことを積極的に排除している。
したがって,乙10甲4発明は,玉型加工を行うシステムについての発明ではない。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
c相違点の検討同cは,いずれも否認する。
乙10甲4発明では,レンズ製造工場がヤゲン加工を行うことを積極的に排除しているから,玉型加工を適切に行うために必要な情報である周長に関する情報が眼鏡店から製造工場に送信されることはなく,乙10甲4発明に「周長」に関する技術事項を組み合わせることはできない。
進歩性その3(ア)被告a時機に後れた攻撃防御方法等の申立てに対する反論(a)後記原告の主張a(a)は認め,(b)は争う。
(b)本件がこれまで審理に長期間を要した原因は,対象特許が4件ある上,クレーム解釈及び侵害論に関して複雑な問題点が多々あったこと,特許無効審判が4件すべてについて請求され,そのうち3件がいったん無効とされたものの原告がこれに対応して訂正請求をし,その後無効審判請求が成り立たないとの審決が出るという経緯をたどったことにある。
本件訂正発明2に対する進歩性その3の無効主張も,特許庁の審決がされて速やかに無効審判請求を行った上でされているものであり,被告は,信義に基づき誠実に訴訟を追行している。
加えて,本件訂正発明2に対する進歩性その3の無効主張の主要な証拠である乙90甲1刊行物(「ニデックパターンレス玉摺機LE-8000」)及び乙90甲2刊行物(407)は,それぞれ乙77,乙10甲6として従前から本訴において提出されていた。しかも,新たな無効主張をしたのは,損害論に入る以前の段階であって,直ちに弁論を終結できる段階にあったものでもない(他の証拠の引用との統一性を図るため,枝番を使用した「乙90の2刊行物」ではなく,「乙90甲1刊行物」のように略称する。)。
bまとめ本件訂正発明2は,乙90甲1発明に,乙90甲2発明(407),乙90甲3発明(特開平3-20605公報)及び乙90甲4発明(「TD-PRO」カタログ)と周知技術又は公知技術を組み合わせて当業者が容易に想到できた発明であり,進歩性がない。
c乙90甲1刊行物の記載(a)「ニデックパターンレス玉摺機LE-8000」日本眼鏡技術研究会雑誌第20号15頁以下(乙90甲1)は,平成元年11月1日に発行された。
(b)乙90甲1刊行物には,次の発明が開示されている。
「ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたフレームリーダーと,このフレームリーダーへ情報交換可能に接続された玉摺機とを有する,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズ宅配システムであって,前記フレームリーダーは,所定の入力操作により,ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有するものであり,前記入力操作とは,所望の眼鏡フレームを測定し,眼鏡枠瞳孔間距離(眼鏡枠形状情報)を含む眼鏡フレーム枠情報を入力するステップを有するものであることを特徴とするヤゲン加工済眼鏡レンズ宅配システム。」d一致点及び相違点本件訂正発明2と乙90甲1発明とは,次の2点で相違し,その余の点で一致する。
?@本件訂正発明2では,3次元的フレーム形状測定器を用いるのに対し,乙90甲1発明では,フレーム形状測定器を用いるものの,3次元的フレーム形状測定器を用いることについての明示がない点,?A本件訂正発明2では,3次元測定形状データから,眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,及びフレームセンターを計算処理して得ているとともに,眼鏡枠材質情報を得ているのに対し,乙90甲1発明では,眼鏡枠瞳孔間距離を得ているとの言及しかない点e相違点の検討(a)被告主張の相違点?@??乙90甲3刊行物,乙90甲4刊行物(平成4年1月発行),乙90甲5刊行物(「眼鏡1992年3月号通巻414号」。平成4年3月15日発行),乙90甲6刊行物(特開昭62-215814号公報),乙90甲7刊行物(特開昭64-409号公報)及び乙90甲8刊行物(特開平3-135711号公報)に例示されているとおり,フレーム形状測定器として3次元フレーム形状測定器が用いられることは,周知である。
??したがって,相違点?@のように構成することは,この周知技術を用いただけである。
(b)被告主張の相違点?A??眼鏡枠周長を採用することについては,乙90甲2発明(乙9甲4刊行物及び乙10甲6刊行物と同じ。407)から公知である(前記(14)(本件特許1の無効)イ(ア)d(a)??)。
??眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,及びフレームセンターを計算処理して得ることについては,乙90甲3刊行物,乙90甲4刊行物,乙90甲5刊行物,乙90甲6刊行物,乙90甲7刊行物及び乙90甲8刊行物に例示されているとおり,周知である。
??眼鏡枠材質情報を用いることについては,乙90甲3刊行物及び乙90甲4刊行物にあるとおり,公知技術である。
??よって,相違点?Aのように構成することは,当業者にとって容易であった。
(イ)原告a時機に後れた攻撃防御方法等の申立て(a)本件訴訟が提起されたのは平成16年12月1日であるところ,被告は,平成19年4月25日付け第20準備書面によって,本件特許2についての新たな無効主張をした。
(b)したがって,この新たな無効主張は,時機に後れた攻撃防御方法等として却下されるべきである(民事訴訟法156条の2ないし157条の2,特許法104条の3第2項)。
bまとめ被告の主張bは否認する。
c乙90甲1刊行物の記載同cのうち,(a)は認め,(b)は否認する。
乙90甲1刊行物は,LE-8000というフレームリーダーとエッジャーとを一体化した装置を使用した将来的なシステムの可能性を単なる思い付きとしてポンチ絵で示したにすぎないものであり,実現可能な具体的な技術的思想は何ら示していない。
乙90甲1刊行物に開示されているのは,LAB(加工側)にあるLE-8000の機能のうち,2次元のフレームトレースの機能のみをSHOP(発注側)に置くことで,複数台のフレームトレーサでLAB(加工側)に設置されたLE-8000を共有しようとするものであり,フレームトレーサから送信されるデータは「フレームデータ」(座標点データ)に限定されている。
したがって,乙90甲1発明は,あくまでも「加工側」(LAB)に設置されたLE-8000において形状データを演算する発明であって,「発注側」(SHOP)に設置された「外部フレームリーダ」では,座標点の測定のみを行うことが想定されており,本件訂正発明2のような「通信玉型加工」を開示するものではない。
d一致点及び相違点同dのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
少なくとも,次の点で相違する(被告の主張する相違点と重複する。)。
(a)相違点?@本件訂正発明2が「ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータ」を有するのに対し,乙90甲1発明は,2次元座標点データを送信するフレームトレーサしか有していない点。
(b)相違点?A本件訂正発明2が「発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータ」を有するのに対し,乙90甲1発明は,「情報交換可能」となっていない点。
(c)相違点?B本件訂正発明2が「製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」であるのに対し,乙90甲1発明は,この構成を有しているか不明である点。
(d)相違点?C本件訂正発明2が「発注側コンピュータ」の所定の入力操作によってヤゲン加工済眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有するものであり,また,眼鏡フレームの測定は「3次元的フレーム形状測定器」で測定するのに対し,乙90甲1発明は,フレームトレーサで座標点データを送信する機能を有するにすぎず,また,2次元的フレーム形状測定器で測定している点。
(e)相違点?D本件訂正発明2が「3次元測定形状データ」である測定データから眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,及びフレームセンターをそれぞれ計算処理して得た3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報を入力するステップを有するのに対し,乙90甲1発明は,2次元測定座標点データである測定データをそのまま入力するステップのみを有する点。
e相違点の検討(a)被告主張の相違点?@同e(a)??は明らかに争わず,??は否認する。
乙90甲1発明は,「加工側」(LAB)側に設置されたLE-8000に関する発明であるから,その発明内容はLE-8000の機能により限定される。LE-8000は2次元の処理しかできないから,フレームリーダを3次元フレーム形状測定装置に変更することに想到することはできない。
(b)被告主張の相違点?A??同(b)??は明らかに争わない。
乙90甲2発明(407)は,眼鏡フレームが手元付近にあって発注側と加工側という区別がされていない発明であり,フレーム枠の内周長の測定を「発注側」において行うとすることは,当業者といえども困難なことである。また,乙90甲2発明における内周長の測定装置は,2次元周長測定装置である。しかも,同装置は,長さを直接測定する装置であり,形状を測定する機能がないし,3次元の枠形状データから周長を演算してもいない。
周長という概念自体が公知であるとしても,本件訂正発明2のように3次元的フレーム形状測定装置で測定し,その3次元測定形状データである測定データから眼鏡枠周長を計算処理して得るとの技術的事項は容易に想到されない。
??同(b)??ないし??は否認する。
(19)争点(19)(訂正後の本件特許3の無効)ア訂正要件違反(ア)被告a本件明細書3には,「通信回線」の下位概念としての「公衆通信回線」又はこれと同様の「公衆回線」が示されているが,「通信回線」は示されていない。
b構成要件F’の「通信回線」は,広域通信回線や構内通信回線(非公衆通信回線)を含む。
cしたがって,本件特許3の訂正は,新規事項を追加するものであって,許されない。
(イ)原告a被告の主張aは否認する。
本件明細書3の【0005】には,「通信回線」との用語が使用されているから,新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
b同bのうち,訂正後の「通信回線」が構内通信回線(非公衆通信回線)を含むことは否認し,その余は認める。
c同cは否認する。
イ拡大先願(ア)被告a乙11甲3刊行物の記載乙11甲3刊行物の記載は,前記(16)イ(ア)bのとおりである。
b一致点及び相違点本件訂正発明3と乙11甲3発明(661)とは,本件訂正発明3が3次元の枠データに基づいて眼鏡枠の傾きTILTを求める点で一応相違し,その余の点で一致する。
c相違点の検討(a)3次元の枠データに基づいて眼鏡枠の傾きTILTを求めることは,周知である。
(b)したがって,この点は実質的な相違点とはいえず,本件訂正発明3は,乙11甲3発明と実質的に同一である。
(イ) 原告a乙11甲3刊行物の記載被告の主張aは認める。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
c相違点の検討同cは否認する。
進歩性その1(ア)被告a分割要件違反(a)原出願1と訂正後の本件特許3に係る出願本件訂正発明3は,3次元的眼鏡枠形状情報の要素の組合せについて,原明細書1(乙11甲1刊行物。473)に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,遡っても原出願2の出願日までである。
(b)原出願2と訂正後の本件特許3に係る出願本件訂正発明3は,同様に,原明細書2に記載した事項の範囲内でないものを含み,分割要件に違反しており,その出願日は,実際の出願日である平成15年5月7日となる。
b進歩性本件訂正発明3は,乙11甲1刊行物(原明細書1。473)に基づいて進歩性が否定される。
(イ) 原告a分割要件違反被告の主張aは否認する。
b進歩性同bは否認する。
進歩性その2(ア)被告a乙11甲4刊行物の記載(a)乙11甲4刊行物の記載内容は,前記(16)(本件特許3の無効)ウ(ア)aのとおりである。
(b)乙11甲4発明においては,眼鏡店の手元に眼鏡フレームがあってレンズ製造工場の手元に眼鏡フレームがない状態である。
b一致点及び相違点本件訂正発明3と乙11甲4発明とは,次の2点で相違し,その余の点で一致する。
?@本件訂正発明3では,3次元的眼鏡枠測定装置が発注側コンピュータに接続されており,眼鏡枠形状情報が3次元的であって,眼鏡枠情報が3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度ごとに前記測定子の移動量を検出して3次元の枠データ(Rn,θn,Zn)を採取して得たものである点,?A本件訂正発明3においては,発注側コンピュータが眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILTを求めて製造側コンピュータへ送信する点c相違点の検討(a)被告主張の相違点?@??眼鏡枠情報を把握するために眼鏡枠測定装置が用いられることは当然の技術的事項であり,眼鏡枠測定装置として3次元測定装置が用いられることは,当該技術分野において周知である。
??そして,3次元的に眼鏡枠を測定する際に測定子を用いて枠データ(Rn,θn,Zn)を採取することは,通常の3次元的測定装置を用いて眼鏡枠の形状を測定する際の一実施形態にすぎない。
??したがって,相違点?@のように構成することは,当業者であれば適宜採用できたことである。
(b)被告主張の相違点?A??乙11甲7発明(814)にいう「傾き」とは,眼鏡フレームのレンズ固定用溝が乗る球の中心座標及びフレームの幾何学中心座標を結んだ直線の垂線と,基準となる面との角度であるが(2頁右下欄18行〜3頁左上欄1行),左右の玉型の傾きが一致するときはその角度が傾きとなり,一致しないときは左右の玉型のなす角度を足して2で割ることで傾きを求め得る。
??一方,本件訂正発明3の「眼鏡枠の傾きTILT」は,「眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度」(構成要件J’)であるから,「左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなす」という条件で測定される乙11甲7発明にいう眼鏡枠の傾きと同じである。
??(??)原告は,本件特許4に係る特許出願の経過において,拒絶理由通知に対する意見書の中で,「請求項1では,3次元フレーム形状測定装置の出力結果たる3次元的枠形状情報として,フレームカーブ,ヤゲン溝の周長,フレームPD,傾斜角を挙げていますが,このうちフレームカーブ,フレームPD,及び傾斜角がレンズ加工設計に利用されるのは当業者にとって常識の範囲内にあります。」(乙71の2頁(3)5〜8行目)と主張した。
(??)このように,原告も,「傾斜角」すなわち「眼鏡枠の傾きTILT」がレンズ設計上必要な情報として当業者の常識である旨を明言していた。
??また,「日本眼鏡技術研究会雑誌第20号」(乙77),「眼科診療のための眼鏡ハンドブック」(乙78),「眼鏡調整規準」(乙79),「眼鏡士読本」(乙80),「眼鏡技術テキスト昭和62年度」(乙81),「目と眼鏡」(乙82),「よくわかる眼鏡講座」(乙83),「屈折異常と眼鏡」(乙84)によれば,眼鏡枠の傾きTILTは,原出願1前に公知技術である。
??眼鏡枠周長を送信する点については,乙11甲6刊行物に眼鏡レンズ枠の周長の情報が有用であることが開示されているから,そのように構成することは容易に想到することができたことである。
??眼鏡枠の傾きTILTを送信する点については,乙11甲6刊行物及び乙11甲7刊行物から当業者が容易に想到できたことである。
dまとめ以上のとおり,本件訂正発明3は,乙11甲4発明に,乙11甲7発明等により認められる眼鏡枠の傾きの公知技術,乙11甲6刊行物により認められる眼鏡レンズ枠の周長の並びに周知技術を組み合わせて当業者が容易に想到できた発明であり,進歩性がない。
(イ) 原告a乙11甲4刊行物の記載(a)被告の主張a(a)は認める。
(b)同a(b)は否認する。
乙11甲4発明と同じ乙10甲4発明について述べた前記(18)(訂正後の本件特許2の無効)ウ(イ)a(b)のとおりである。
b一致点及び相違点同bのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
乙11甲4発明では,発注者とヤゲン加工を行う者が同一の眼鏡店であるため,手元に眼鏡フレームがあり,本件訂正発明3のように「製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」とはなり得ない。また,乙11甲4発明では,眼鏡店は,「ヤゲン加工済みレンズ」を発注するのではないから,眼鏡店に設置されたコンピュータに「ヤゲン情報を送信する機能」はない。さらに,乙11甲4発明の「眼鏡枠材質情報」は,「眼鏡枠に最も適した厚みを有する眼鏡レンズ」を供給するために必要な情報である。そして,乙11甲4発明は,「3次元的フレーム形状測定器」を使用せず,そこで得られるフレー眼鏡枠情報も3次元情報ではない。
c相違点の検討(a)被告主張の相違点?@同c(a)のうち,??及び??は明らかに争わず,??は否認する。
乙11甲4刊行物には,レンズ製造工場が玉型加工を行うことを否定する記載があり,乙11甲4発明と通信玉型加工とを組み合わせることができない。
(b)被告主張の相違点?A??同c(b)??は否認する。
乙11甲7発明にいう「フレームの測定時の傾き」は,「〔1頁右欄8行〜12行〕・・・いずれの装置も得られる結果は,眼鏡フレームの装置への取付位置により変化してしまい,取付位置が不適切だと正しい測定が行なわれないという欠点があった。・・・」「〔5頁右上欄15行〜左下欄1行〕以上の実施例によればフレームの溝形状を測定する際,フレームが傾かないように固定したり,フレームの玉型の幾何学中心の中心出しをしながら固定する必要がなくなり,測定が容易になり,フレームの傾き,玉型の幾何学中心を溝形状の測定データにより算出し補正することにより測定も正確になる利点がある。・・・」とあるとおり,測定する時に測定台等の基準物に対して眼鏡フレームがどれだけ傾いて置かれているかというものであって,「眼鏡枠の傾きTILT」とは全く異質なものである。しかも,左右の傾きを比較するという概念自体も記載されていない。
??同??は否認する。
??同??のうち,(?? は認め,(?? は否認する。
))??同??は否認する。
??同??は否認する。
乙11甲6発明にいう周長は,2次元的な周長専用測定装置で測定されたものであり,かつ,データから周長を計算処理して求めるのではなく,直接的に長さを測定するものである。3次元的眼鏡枠測定装置が公知であるとしても,通信玉型加工において「3次元的」に把握された正確な「眼鏡枠周長」を使用するという技術は,別途の技術である。
??同??は否認する。
眼鏡の加工に当たっては,レンズの光学中心(OP)と,使用者の瞳の位置(PD)を正確に合致させる必要があるが,レンズを大きく傾けて設ける眼鏡枠のような場合には,眼鏡枠の傾きTILTの値によって眼鏡枠上のPD等がかなり変化するので,その眼鏡枠の傾きTILTの数値情報を利用して,レンズの光学中心とPDを正確に合致させるようにレイアウトしてレンズ加工をすることができる。
ところが,「眼鏡枠の傾きTILT」を「角度」として把握して玉型加工に利用するとの技術的事項は従前全く知られていなかったものである。
dまとめ同dは否認する。
進歩性その3(ア)被告a時機に後れた攻撃防御方法等の申立てに対する反論(a)後記原告の主張a(a)は認め,(b)は争う。
(b)本件がこれまで審理に長期間を要した原因は,対象特許が4件ある上,クレーム解釈及び侵害論に関して複雑な問題点が多々あったこと,特許無効審判が4件すべてについて請求され,そのうち3件がいったん無効とされたものの原告がこれに対応して訂正請求をし,その後無効審判請求が成り立たないとの審決が出るという経緯をたどったことにある。
本件訂正発明3に対する進歩性その3の無効主張も,特許庁の審決がされて速やかに無効審判請求を行った上でされているものであり,被告は,信義に基づき誠実に訴訟を追行している。
加えて,本件訂正発明3に対する進歩性その3の無効主張の主要な証拠である乙91甲1刊行物(「ニデックパターンレス玉摺機LE-8000」)及び乙91甲2刊行物(407)は,それぞれ乙77,乙11甲6として従前から本訴において提出されていた。しかも,新たな無効主張をしたのは,損害論に入る以前の段階であって,直ちに弁論を終結できる段階にあったわけでもない。
bまとめ本件訂正発明3は,乙91甲1発明に,乙91甲2発明(407)並びに周知技術又は公知技術を組み合わせて当業者が容易に想到できた発明であり,進歩性がない。
c乙91甲1刊行物の記載乙91甲1刊行物(乙90甲1刊行物と同じ。)には,次の発明が開示されている。
「ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータと,この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された玉摺機とを有する,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズ宅配システムであって,前記フレームリーダーは,フレーム形状測定データ,処方・プリズム処方・処方データ,及びレイアウトを含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し,発注に必要なデータを前記玉摺機に送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有し,一方,前記玉摺機は,前記フレームリーダーからの送信に応じて演算処理を行い,ヤゲン加工済眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備え,前記フレームリーダーは,前記フレームデータに基づいてフレームPDを求め,これらを前記玉摺機にへ送信することを特徴とするヤゲン加工済眼鏡レンズ宅配システム。」d一致点及び相違点本件訂正発明3と乙91甲1発明とは,次の2点で相違し,その余の点で一致する。
?@本件訂正発明3では,眼鏡枠情報に3次元的眼鏡枠形状情報が含まれ,眼鏡枠情報は3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を前記眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度ごとに前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データを(Rn,θn,Zn)を採取して得たものであるのに対し,乙91甲1発明では,眼鏡枠形状情報を用いるものの,3次元的眼鏡枠形状情報を用いることの明示,又それを具体的にどのように得るのかについて明示がない点,?A本件訂正発明3では,3次元の枠データに基づいて,3次元の座標値から算出された眼鏡枠周長,眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である傾きTILT,及びフレームPDを求めているのに対し,乙91甲1発明では,フレームPDを得ていることの言及しかない点e相違点の検討(a)相違点?@この点は,単なる周知技術による置き換えにすぎない。
(b)相違点?A??眼鏡枠周長を採用することについては,乙91甲2発明(乙90甲2発明と同じ。
407)から公知である。
??眼鏡枠の傾きTILTを求めることについては,乙91甲4刊行物(「TD-PRO」カタログ。平成4年1月発行),乙91甲5刊行物(「眼鏡1992年3月号通巻414号」。平成4年3月15日発行),乙91甲16刊行物(「眼科診療のための眼鏡ハンドブック」。平成2年5月1日発行),乙91甲17刊行物(「眼鏡調整規準」。昭和52年9月10日発行),乙91甲18刊行物(「眼鏡士読本3版3刷」。昭和43年12月1日発行),乙91甲19刊行物(「眼鏡技術テキスト」。昭和62年6月1日発行),乙91甲20刊行物(「目と眼鏡」。昭和35年10月1日発行),乙91甲21刊行物(「よくわかる眼鏡講座」。昭和60年3月10日発行),及び乙91甲22刊行物(「屈折異常と眼鏡」。昭和51年12月15日発行)に例示されるように,周知である。
??フレームPDを求める点については,乙91甲3刊行物(特開平3-20605号公報),乙91甲4刊行物,乙91甲5刊行物,乙91甲6刊行物(特開昭62-215814号公報),乙91甲7刊行物(特開昭64-409号公報),及び乙91甲8刊行物(特開平3-135711号公報)に例示されているとおり,周知であった。
??よって,相違点?Aのように構成することは,容易であった。
(イ)原告a時機に後れた攻撃防御方法等の申立て(a)本件訴訟が提起されたのは平成16年12月1日であるところ,被告は,平成19年4月16日付け第19準備書面によって,本件特許3についての新たな無効主張をした。
(b)したがって,この新たな無効主張は,時機に後れた攻撃防御方法等として却下されるべきである(民事訴訟法156条の2ないし157条の2,特許法104条の3第2項)。
bまとめ被告の主張bは否認する。
c乙91甲1刊行物の記載同cは否認する。
d一致点及び相違点同dのうち,相違点は認め,一致点は否認する。
本件訂正発明3と乙91甲1発明とは,少なくとも次の点で相違する(被告の主張する相違点と重複する。)。
(a)相違点?@本件訂正発明3が「ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータ」を有するのに対し,乙91甲1発明は,2次元座標点データを送信するフレームトレーサしか有していない点,(b)相違点?A本件訂正発明3が「発注側コンピュータに情報交換可能に通信回線で接続された製造側コンピュータ」を有するのに対し,乙91甲1発明は「情報交換可能」ではない点,(c)相違点?B本件訂正発明3が「発注側コンピュータに接続された3次元的眼鏡枠測定装置」を有するのに対し,乙91甲1発明では,発注側に2次元的眼鏡枠測定装置のみしか存在しない点,(d)相違点?C本件訂正発明3が「製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」であるのに対し,乙91甲1発明はこれが不明である点,(e)相違点?D本件訂正発明3が「発注側コンピュータは,眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し,発注に必要なデータを前記製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能」を有しているのに対し,乙91甲1発明は,フレームデータ(座標点情報)のみを製造側コンピュータ(LE-8000)に送信する処理を行っている点,(f)相違点?E本件訂正発明3が「眼鏡枠情報は,前記3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を前記眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データ(Rn θn Zn)を採取して得たものであり,前記発注側コンピュータ,,は,前記3次元の枠データに基づいて,この 次元の座標値から算出された前記眼鏡枠のレン 3ズ枠の周長,眼鏡枠の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを前記製造側コンピュータへ送信する」ものであるのに対し,乙91甲1発明は,2次元的眼鏡枠測定装置の測定子を眼鏡枠の形状に従って2次元的に移動し,所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の2次元の枠データ(Rn θn)を採取して得た座標点デー,タをそのまま製造側コンピュータ(LE-8000)へ送信している点。
e相違点の検討(a)被告の主張する相違点?@について同e(a)は否認する。
乙91甲1発明は,加工側(LAB)に設置されたLE-8000に関する発明であるから,その発明内容はLE-8000の機能により定まるから,LE-8000が2次元の処理しかできない以上,フレームリーダを3次元フレーム形状測定装置に変更するはずがない。また,「3次元的眼鏡枠測定装置」が知られていたとしても,それにより得られたデータを計算処理して3次元的眼鏡枠形状情報を発注側で求め,これを加工側に送信することは,技術的に新規である。
(b)被告の主張する相違点?Aについて??同e(b)??は明らかに争わない。
乙91甲2刊行物に記載された装置は2次元周長測定装置であって,形状を測定する機能がなく,長さのみを直接測定する装置であり,その「内周長」は高さ方向の変位を考慮していない2次元データであって,通信玉型加工に利用できる精度のある3次元データである本件訂正発明3のそれとは異なる。また,乙91甲2発明は,フレーム型取装置から削り出された2次元のフレーム型板(通常プラスチック製)を使用する倣い加工を前提とするものであり,本件訂正発明3のように発注側コンピュータから送信される3次元的眼鏡枠測定装置から得た3次元の枠データを用いる通信玉型加工とは異なる。
??同??は否認する。
乙91甲4刊行物における「フレーム傾斜角」は,「測定面に対するフレームの傾斜角」のことであり,同刊行物記載の製品の3次元測定によりフレーム形状の測定面からの傾きが把握できるようになったことから,2次元フレーム測定と3次元フレーム測定でのサイズ比較のための表現として,「フレーム傾斜角」の文言が使用されているだけである。
乙91甲5刊行物における「フレームの反り量」は,2次元フレーム測定と3次元フレーム測定でのサイズ比較のための表現として使用されているだけである。
乙91甲16刊行物ないし乙91甲21刊行物に記載されている技術は,眼鏡フレームのフィッティング時におけるフレームの角度調整をした際の角度であって,本件訂正発明3の「眼鏡枠の傾きTILT」とはまったく異なる概念である。すなわち,従来,眼鏡レンズの加工は片眼ごとに瞳の位置がレンズの光学中心位置に合うようにレンズ加工を行っていたため,近方視のときに実際の瞳の位置が光学中心位置には合わなくなっていた。そこで,視線の向きとレンズの向きを合わせるために,フィッティングの段階で,フレーム間の角度を曲げてしまう(光学中心位置と瞳の位置がずれてしまうが方向性の一致を優先する。)という技術である。
乙91甲22刊行物は,眼鏡枠の選択に関する解説をしている文献であり,加工後に行う眼鏡の調整(フィッティング)作業をより容易にできる枠を選ぶことを勧めているものであるが,本件訂正発明3にいう眼鏡枠の傾きTILTを把握すれば,乙91甲22刊行物にいうような枠を選択する必要はないのであり,乙91甲22発明は何ら眼鏡枠の傾きTILTを開示するものでもなく,また,これを示唆するものでもない。
従来から眼鏡枠は反っていたのであるから,このような反り角(あおり角)として把握されるべき傾きは物理的には存在していたし,従来の方式であっても,レンズは反り角のある眼鏡フレームに収まっていたのであるから,結果的には,従来から眼鏡枠の傾きTILTに相当するものを考慮した玉型加工はされていた。原告が眼鏡枠の傾きTILTは公知としたのはこの意味にすぎない。しかしながら,本件訂正発明3以前に,これを「角度」として把握し,玉型加工に利用するとの技術的事項は全く知られておらず,本件訂正発明3の眼鏡枠の傾きTILTは,この物理的に存在していた反り(傾き)を,3次元的枠データに基づいて数値化したものであり,このような処理技術は公知ではないし,まして,これを通信玉型加工に利用することによって,離隔者間の通信によっても極めて正確な玉型加工が可能となることは,公知技術ではない。
??同??は明らかに争わない。
??同??は否認する。
乙91甲1発明は,「加工側」(LAB)で情報処理(演算処理)する発明であるのに対し,本件訂正発明3は「発注側」で情報処理(演算処理)する発明である点で,両者は基本的な構成が全く相違している。また,乙91甲1発明は,手元に眼鏡フレームが存する可能性があるから,加工側の手元に眼鏡フレームがないという課題やその解決手段の構成の開示も示唆もない。したがって,当業者であっても,乙91甲1発明を基に本件訂正発明3に想到することはできない。
(20)争点(20)(差止対象(本件特許2及び本件特許4))ア原告(ア)被告システムは,「リムレス」「みぞほり」が選択される場合と「メタル」「セル」「オプチル」が選択される場合とを含んだ不可分一体のシステムとして構築されており,かつ,被告システムを枠材質情報を入れる場合に使用しないとすれば,被告システムは通信玉型加工システムとしての機能を果たすことはできない。
(イ)したがって,被告システムの使用全体の差止めが認められるべきである。
イ被告(ア)原告の主張は否認する。
(イ)仮に,眼鏡店が「メタル」「セル」「オプチル」を選択した場合に侵害であるとしても,眼鏡店が「リムレス」「みぞほり」のフレームを選択した場合には,本件発明2及び本件発明4の「枠材質情報」を入力しているとはいえない。
そして,「リムレス」「みぞほり」が選択される場合と「メタル」「セル」「オプチル」が選択される場合とを分けてシステムを構築することは,技術的に容易であるから,被告システム全体の差止めが認められるべきではない。
(21)争点(21)(損害)ア原告(ア)算定対象a通信玉型加工の不可欠性(a)今日では,通信玉型加工は,レンズメーカーにとっても眼鏡店にとっても,必須不可欠のレンズ供給手段である。眼鏡店側からすると,通信玉型加工ができないと,顧客の注文に応ずることができないのが現状であり,レンズメーカー側からすると,通信玉型加工ができないと,このような大型店や一般店との取引自体ができないことになる。
(b)すなわち,かつての眼鏡店における顧客の獲得は,当該眼鏡店におけるレンズの加工技術,検眼技術,フィッティング技術,接客技術の4つの要素の良さを売り物にして,顧客を拡大する一種の職人的技術を基にするものであった。ところが,通信玉型加工の普及により,レンズ加工をレンズメーカーが行い,眼鏡店は店頭加工用の大量のレンズストックを持たず,コストのかかるレンズ加工設備を保有する必要もなくなり,加工ミスをするリスクから解放されるなどの利点があるため,眼鏡店はこの通信玉型加工への依存度を年々増大させている。
眼鏡店も,チェーン店化などの大型化が進み,上位20社で国内総売り上げの50%を占めるほどになっているが,このような大型店における通信玉型加工による比率は,70%にも上る。
一般店でも,20ないし30%が通信玉型加工によっている。
(c)累進屈折レンズ,超撥水レンズ等のなどの高度な技術によって作られるレンズは,在庫レンズを加工するのではなく,発注ごとに顧客に合わせてレンズメーカーによって作成される特注レンズであり,販売価格も高価となる。このような特注レンズについて,店頭加工でミスをすると,眼鏡店に大きな損失を生ずる。
一般のレンズメーカーの売上げのうち,数量の比率でみると,一般レンズが7割程度,特注レンズが3割程度であるが,売上価格の比率では,特注レンズが単純屈折レンズを上回るようになってきている。
このように,特注レンズでは,通信玉型加工による依存度が更に高まっている。
(d)本件特許1ないし4は,通信玉型加工実施するために不可欠な技術であり,代替技術もない。
b加工代金の意味(a)通信玉型加工では,レンズ加工料はレンズの製造・販売が収受の前提となっている。また,レンズ加工料は,加工コストを基準にしたものではなく,販売するレンズ代金や販売数量との関係によって,取引交渉をもって決定されるものである。
(b)すなわち,レンズメーカーは,もともとレンズの生産会社であるから,レンズ加工などの役務の提供をして利益を得るという発想もないし,そのような会社の体制にもない。レンズメーカー側の視点からすれば,通信玉型加工の意義は,眼鏡店にとって大きな負担であった高度の職人技術や高いコストを必要とするレンズ加工設備の投資をレンズメーカー側が引き受けるという多大なサービスを眼鏡店に提供することにより,高価なレンズを簡便に,しかも安定的に眼鏡店で売ってもらうことにある。
(c)したがって,通信玉型加工による代金は,レンズ代金とレンズ加工料とが一体となった代金である。
(d)したがって,本件訴訟における損害額の算定に当たり,レンズ加工料やその割合を算定することは困難であり,損害額は,レンズ加工料を含むレンズの売上代金を基に算定すべきである。
(イ)売上高a被告における売上げは,年間約100億円程度である。
bそのうち,被告システムを利用した売上げは30%を下らない。
c本件特許2の登録日である平成15年12月12日から平成19年6月4日まで,約3年6か月である。
dしたがって,現在までの被告システムを利用した売上高は,105億円を下らない。
100億円×3.5年×30%=105億円(ウ)実施料率a今日のレンズ販売における通信玉型加工の重要性,代替技術の不存在等の事情によれば,相当実施料率は,被告システムを用いて販売した玉型加工レンズの売上高(レンズ代金 サポート加工代金)の10%が相当である。
+b(a)発明協会の「実施料率〔第5版〕」(甲62)の「14.精密機械器具」には,「眼鏡製造技術」が含まれるので,本件の実施料を決定するにはこれを参照すべきである。
同書によれば,この分野の実施料率の平均値は平成4年度から平成10年度はイニシャル有りが5.3%,イニシャル無しが6.8%である。
また,高率契約については,技術内容別に見ると,眼鏡・サングラスが実施料率8%以上の契約件数の過半を占めている(ただし,商標を含む。)。
(b)このように,本件特許1ないし4の技術分野における実施料率は相対的に高い率であり,このことを考慮すると,本件における実施料率は,少なくとも被告システムを用いて販売した玉型加工レンズの売上高(レンズ代金 サポート加工代金)の7%を下らないと考えるべきで+ある。
(c)したがって,原告の損害は,少なくとも7億3500万円を下らない(特許法102条3項
)105億円×7%=7億3500万円イ被告(ア)算定対象a通信玉型加工の不可欠性原告の主張(ア)aは否認する。
b加工代金の意味同(ア)bは否認する。
次の理由により,本件特許1ないし4と関係のないレンズ代金は控除して,レンズ加工料のみを基に損害額を算定をすべきである。
?@被告は,原告と異なり,サポート加工代金(レンズ加工料)をレンズ代金と峻別している。被告の玉型加工レンズの売上げ(レンズ代金 サポート加工代金)のうち,サポート加工代金は10+%強にすぎない。
?A原告の主張は,本件発明1ないし4の製品全体への寄与率を無視している点で,主張自体,合理性に欠ける。
?B本件発明1ないし4は,他のシステムによる代替が容易であり,価値は低い。すなわち,かつては,通信回線の速度が遅く,フレームの3次元データをそのまま送ると,通信費及び通信時間がかかりすぎる点で問題があった。しかし,近年では,インターネットの著しい発達により,安価で高速な通信が可能となったため,フレームの3次元データをそのままメーカーに送っても何ら問題がない。
(イ)売上高a同(イ)aは否認する。
b同bは否認する。
玉型加工レンズの売上高(レンズ代金 サポート加工代金)は,年間8億円程度にとどまり,サ+ポート加工代金は,このうち年間1億円強にとどまる(乙93ないし96)。サポート加工代金は,1件(レンズ2枚)当たり700円前後にとどまることが多い(乙94,96)。
c同cは認める。
d同dは否認する。
(ウ)実施料率同(ウ)は否認する。
(22)利得ア原告(ア)被告は,本件特許1ないし4の実施に対して実施料相当額を支払っておらず,同額の利得を得,原告は,この実施料相当額の支払いを受けておらず,同額の損失を被った。
(イ)被告の利得と原告の損失との間には,因果関係がある。
(ウ)損失額は,前記(21)ア(ウ)のとおり,7億3500万円を下らない。
イ被告原告の主張は否認する。
第3当裁判所の判断1 本件発明1の充足(1)争点(2)(構成要件エ-周長測定ステップ)ア認定被告方法において,被告がヤゲン加工された眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を3次元のデータによって測定する周長測定装置によって測定していることを認めるに足りる証拠はない。
イ原告の主張に対する判断(ア)眼鏡枠周長情報の取得原告は,被告が眼鏡店から,3次元的測定装置で測定した「眼鏡枠周長」情報を受け取りながら,要求されたデータどおりにレンズが加工されたかどうかを確認していないことは,工程管理の常識からあり得ない旨主張する。
しかしながら,眼鏡レンズ枠周長情報がヤゲン加工に当たって重要であるとしても,加工に当たってその眼鏡レンズ枠周長情報を利用すれば足りると判断することも可能である。また,完成品の検査が製品検査において常識であるとしても,それゆえに,眼鏡レンズ枠周長を得ている者が必ずヤゲンレンズ周長と眼鏡レンズ枠周長との比較という検査方法を採用するとはいえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(イ) 精度管理原告は,加工されたレンズを型図と対比して目視によって検査をしたり,加工品をノギスで測定して加工機の精度を確認しても品質確認はできない,あるいは周長測定装置があるのにあえてこれを使用しないのは不合理である旨主張する。
確かに,被告システムにおいて0.01mm以内の精度を要するとされている加工機(乙5,±51)によって製造された真円レンズを,最小読取値が0.01mmないし0.05mm,器差が0.02ないし0.15mm,繰り返し精度が0.01mmであるノギス(乙18,60)によって測定することで,加工機それ自体の精度確認をすることが果たして可能なのか,並びに被告が主張するように,被告保有の周長測定装置が周長測定の機能を果たし得ないのであれば,それを加工装置の精度確認のために使用することに意味があるのかの点に疑問が生じないわけではない。
しかしながら,完成品の目視検査は,「PD確認・・・印点を押したレンズを玉型加工伝票の玉型図の上に置き,作図された印点位置とのズレが出荷規格の範囲内であるか確認する。」「寸法の確認玉型加工伝票に記載された玉型図に,カット後のレンズを置き,玉型に合っているか認定検査員が確認,判断する。」(乙52)とされているように,「PD位置」「寸法」が目視で分かる範囲でされる検査にすぎず,そもそも原告が主張するように,0.01mm単位の周長の正確性の確認までを求めた工程ではない。
また,原告のした実験によっても,ブロックゲージの測定においては,複数の測定者間の差は最大0.02mmで,レンズ直径の測定においては,同一の測定者の複数回の差は最大で0.03mm,複数の測定者間の差は最大で0.05mmにとどまっており(甲41),本件明細書1の【0058】に例として挙げる合格品の基準値0.1mm以内との数値に照らすと,ノギスによる検査に何らの意味がないとまでは断じ得ない。
そして,被告が周長測定装置を2台を超えて有していることを認めるに足りる証拠はないところ,この台数では,到底全製品の周長測定を行うことができるとは考えられない。
以上の点にかんがみると,加工後のヤゲンレンズ周長を測定していないとの被告の主張を直ちに排斥することはできず,原告の上記主張を採用することはできない。
ウまとめよって,被告方法は,構成要件エを充足しないから,本件発明1の技術的範囲に含まれない。
(2)本件訂正発明1の充足被告方法において,ヤゲン加工された眼鏡レンズのヤゲン頂点に沿ったヤゲン周長を3次元のデータによって測定する周長測定装置によって測定していることを認めるに足りる証拠がない以上,被告方法は,本件訂正発明1の構成要件エ’を充足しないから,本件訂正発明1の技術的範囲にも含まれない。
(3)結論よって,本件特許1に基づく原告の請求は,すべて理由がない。
2 本件発明4の充足(1)争点(11)(構成要件P-製造側コンピュータにおける演算)及び争点(12)(構成要件Q-レンズ加工の可否判断処理の発注側コンピュータへの出力)アクレーム解釈(ア)本件明細書4の記載本件明細書4には,次の記載がある(前提事実(2))。
a特許請求の範囲「【O】・・・発注側コンピュータにおいて,眼鏡レンズ情報,3次元的枠形状情報及び枠材質情報を含む眼鏡フレーム枠情報,処方値及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力する一方,【P】・・・製造側コンピュータにおいて,・・・ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算し,【Q】この演算処理結果に基づき,レンズ加工が可能か否かの可否判断処理を含む処理結果を前記発注側コンピュータに出力することにより,【R】・・・発注側コンピュータにおいて,少なくともレンズ加工の可否を発注前に確認でき,・・・るようにした眼鏡レンズの供給システム・・・」b発明が解決しようとする課題「【0008】・・・従来,ヤゲン加工の完了時におけるレンズ形状までの予測計算はなされておらず,したがって,ヤゲン加工をした結果,レンズ形状(レンズ外形,レンズ表面およびレンズ裏面の形状,レンズ厚さ等)が不適当なためにヤゲンを最適な位置に設けることができないという問題点があった。」「【0009】例えば,・・・レンズ外径が不足したり,コバ厚が不足する事態が発生する。」「【0012】こうした不満に対処するために,事前に仕上がり予想形状を確認でき,かつ,その確認の結果,・・・レンズの変更ができるシステムが求められる。このようなシステムを実現するためには,左右フレーム枠のなす角度である傾斜角の情報を含む3次元的枠形状情報を正確に把握する必要がある。」「【0013】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり,3次元形状測定装置によって得た3次元的枠形状情報を発注側コンピュータに入力するようにし,眼鏡レンズの発注及び受注処理を極めて効率的に行うことを可能にした眼鏡レンズの供給システムを提供することを目的とする。」c発明の実施の形態「【0041】〔S11〕工場200のメインフレーム201には・・・ヤゲン加工設計プログラムが備えられている。レンズ情報,処方値,フレーム情報,レイアウト情報,ヤゲン情報等のデータが,公衆通信回線を介して送られると,・・・眼鏡レンズ加工設計プログラムが起動し,レンズ加工設計演算が行われる。すなわち,ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状が演算される。」「【0042】まず,フレームの形状情報,処方値,およびレイアウト情報に基づき,指定レンズの外径が不足していないかを確認する。・・・」「【0043】レンズの外径に不足が出なければ,レンズの表カーブの決定を行う。・・・」「【0044】つぎにレンズの厚さの決定を行う。・・・」「【0045】レンズの厚さが決まったら,・・・縁摺り加工前のレンズの全体形状が決定する。ここで,フレーム各方向の動径毎に全周のコバの厚さを調べて,必要なコバ厚さを下回る箇所がないかを確認する。・・・」「【0049】〔S12〕つぎに,メインフレーム201では,・・・ヤゲン加工設計プログラムが起動し,ヤゲン加工設計演算が行なわれる。」「【0050】まず,眼鏡フレームの材質に応じてフレーム形状の3次元データの補正を行い,眼鏡フレームの材質に起因するフレーム形状データの誤差を補正する。つぎに,眼鏡フレーム枠形状と眼鏡レンズとの位置関係をアイポイント位置を基に3次元的に決める。」「【0051】・・・3次元のヤゲン先端形状を(ヤゲン軌跡も含む),指定されたヤゲンモードに応じて決定する。その際,3次元ヤゲン先端形状をヤゲン周長を変えることなく変形させることを前提とし,その予想される変形量を算出する。・・・」「【0053】なお,3次元のヤゲン先端形状を変形させることにより,アイポイント位置がずれるので,その誤差を補正するようにする。・・・」「【0055】・・・工場200のメインフレーム201から送られてきた問い合わせの結果に基づき,端末コンピュータ101がヤゲン加工完了時のレンズの予想形状を画面表示装置に表示し,変更や確認に供するためにある。・・・」「【0063】眼鏡店100では,・・・画面を見て,コバとヤゲンとの位置関係のバランスが悪い場合には,・・・ヤゲンモードを変更したり,眼鏡レンズの種類を変更したり,また,レンズの表カーブを指定したりすることができる。」「【0064】〔S145〕・・・ステップS12でのヤゲン加工設計演算において,エラーが発生しているならば,・・・ヤゲン加工上のエラーの内容が表示される。」「【0068】〔S146〕・・・ステップS11でのレンズ加工設計演算において,レンズ外径やコバ厚さが不足するエラーが発生しているならば,・・・エラー表示図が表示される。」「【0070】・・・エラーが発生していれば,その結果を公衆通信回線を介して眼鏡店100の端末コンピュータ101へ送り,ステップS17へ進む。一方,エラーが発生していなければ,その結果を公衆通信回線を介して眼鏡店100の端末コンピュータ101へ送り,ステップS16へ進むとともに,・・・実際の加工を実行する。」「【0071】〔S16〕眼鏡店100の端末コンピュータ101の画面表示装置に『注文を受け付けた』旨の表示を行う。これにより,フレームに確実に枠入れ可能な縁摺り加工前またはヤゲン加工後のレンズを発注できたことが確認できる。」「【0072】〔S17〕注文のレンズは,レンズ加工設計演算またはヤゲン加工設計演算においてエラーが発生していて加工のできないレンズであるから,『注文を受付られない』旨の表示を行う。」(イ)検討a以上によると,構成要件Pの「・・・入力された枠入れ加工をする上で必要となる情報に基づいてヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算し」た結果であって,構成要件Qの「この演算処理結果に基づき,レンズ加工が可能か否かの可否判断処理を含む処理結果を前記発注側コンピュータに出力する」際に使用される「処理結果」とは,3次元的形状として「ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算」したものであると解される。
b原告は,本件明細書4には,実施例の記載として,レンズの外形形状(2次元情報)のみに基づき,レンズ加工が可能か否かの可否判断を行う場合が記載されているから(【0041】〜【0052】),構成要件P等での演算結果が2次元データであるか3次元データであるかを問うものではない旨主張する。
確かに,指定レンズの外径が不足しているか否かの確認(【0042】)だけをとらえれば,2次元データだけで上記確認を行っていると認められないではないが,全体としての可否判断(【0041】〜【0052】)は,3次元的形状について演算しているものであるから,原告の上記主張は,採用することができない。
イ被告システム本争点に関して,前提事実(4)イと証拠(甲11,49,12,26,乙8,66,76)及び弁論の全趣旨により認められる被告システムの構成は,次のとおりである。
【?@】眼鏡店の3次元的眼鏡枠測定装置であるフレームトレーサが,フレームを測定し,その計測データ(R,θ,Z)から,フレームの1000ポイントデータ(0.36度刻みの半径のデータ),ヤゲン溝の周長,フレームPD,フレームカーブを演算し,これらのトレース情報を得る。
【?A-1】眼鏡店コンピュータは,フレームトレーサの演算データを取り込む。
【?A-2】眼鏡店コンピュータは,1000ポイントデータを間引いて200ポイントデータを作成し,この200ポイントデータに基づいて画面にヤゲン形状の平面表示を行う。
【?A-3】眼鏡店コンピュータは,通信時間を短くするため,200ポイントデータを更に間引いて24ポイントを作成し,この24ポイントデータと,そのほか発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報をVANコンピュータに送信する。
【?B】VANコンピュータは,1000ポイントデータを除くトレース情報,24ポイントデータ等の発注データを受信すると,各メーカーごとにあらかじめ登録されている取引先,商品,カラー,納期,製作範囲などのデータを基に,?@商品在庫があるか,製作範囲内であるか等の判定をするとともに,?A24ポイントデータとフィッティング情報から光学中心位置を計算し,光学中心位置を中心に,アンカットレンズ規格径の円を描いてみて,24ポイントデータと規格径を比べ,24ポイントデータの位置がすべて規格径に収まるか否かを,収まらない場合の径が一番不足する方向と距離を判定し,さらに,レンズの厚みとして所定の値を確保することになっているコバ厚に不足が生じていないかを判定し,製作可否の判断をする。
【?C-1】製作可能である場合には,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに対して,製作可能との回答を意味するVANナンバー,受付日時及び納期が送信される。そうすると,眼鏡店コンピュータからVANコンピュータに,1000ポイントデータが送信され,眼鏡店コンピュータの画面には,受付日時,納期等が表示される。その後,入力内容を変更することはできなくなる。
【?C-2】VANコンピュータが受信した発注データ,回答データ及び1000ポイントデータは,加工メーカー別に宛先ファイルに蓄積され,メーカーコンピュータがVANコンピュータに接続した際にメーカーコンピュータに送信される。
【?D】製作不可である場合には,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに,製作不可との回答を意味するエラーコード,エラーメッセージが送信され,眼鏡店コンピュータの画面には当該エラー表示がされる。その後は,入力内容が修正されて処理が再度されるか,又はデータを削除して処理が中止される。
【?E】注文データを取得した玉型加工メーカーは,1000ポイントデータに基づき,改めて製作可否の確認をするとともに,1000ポイントデータ等を基にレンズの表面,裏面の各1000ポイントを計測し,計測した座標と周長からヤゲン位置を3次元的座標により決定し,ヤゲン加工の可否を確認した上,ヤゲンレンズ製作に取りかかり,所定の加工,検査を終えた後,玉型加工済みレンズを眼鏡店に納品する。
加工実施に入るまでにヤゲン加工が不可と判定された場合には,加工は中止されるが,この判定結果は,VANコンピュータや眼鏡店コンピュータに出力されることはなく,電話等の方法で伝えられる。
ウ充足の有無上記イに認定の被告システムの構成によると,被告システムにおいて発注前に行われている処理結果は,ヤゲンレンズ径を2次元的に比較した径不足の判定結果と,レンズの厚さについてあらかじめ定められた所定の値が確保されているかどうかの点に限られているものであり,3次元的情報としてのヤゲン形状を演算し,この演算結果に基づいて行われる処理結果ではないから,被告システムは,構成要件P及びQを充足しない。
エ原告の主張に対する判断原告は,被告システムにおいてもレンズの立体形状が計算されている旨主張する(第2,5(11)(構成要件P)ア(ウ)b(b)〜(d))。
しかしながら,被告システムの眼鏡店コンピュータに表示されたコバ厚は,処方,レイアウト情報,フレーム情報等から,演算処理によってヤゲン加工の可否を3次元的に予測した結果として表示されるものではなく,度数,レンズ直径,レンズ中心厚,縁厚,「みぞほり」の指定などからヤゲンの立体形状に関係なくあらかじめ定まった値を確保するためにされたものや,反射防止膜加工を施すための制限からきたものであるとする被告の主張は,証拠(乙76,85)に照らして排斥し難いから,被告システムで表示されるコバ厚がヤゲン形状と関連性があるものとは認められず,原告の上記主張は,採用することができない。
オまとめ以上から,被告システムは,構成要件P及びQを充足しないから,本件発明4の技術的範囲に含まれない。
(2)結論よって,本件特許4に基づく原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
3 本件発明2の充足(1)本件発明2ア争点(4)(構成要件B-情報交換可能な接続)(ア)クレーム解釈a本件明細書2本件明細書2には,次の記載がある(前提事実(2))。
(a)特許請求の範囲「【A】眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,」「【B】この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを有する眼鏡レンズの供給システムであって,」(b)発明の詳細な説明「【0002】【従来の技術】眼鏡レンズの発注側から送られた眼鏡レンズや眼鏡フレームに関する情報に基づき,眼鏡レンズの加工側が,・・・レンズ加工が可能であるか否かの可否情報を,さらにはヤゲン加工形状を含めた眼鏡レンズの仕上がり予想形状を,発注側に返信し,発注側は,・・・・最適なヤゲンが設けられた眼鏡レンズを決定して発注するようにした眼鏡レンズの供給システムが,本願出願人により提案されている・・・。」「【0006】【課題を解決するための手段】・・・眼鏡レンズの発注側に設置されたコンピュータと,この発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを有する眼鏡レンズの供給システムであって,前記発注側コンピュータは,所定の入力操作により,眼鏡レンズの発注に必要な処理を行う機能を有する・・・眼鏡レンズの供給システムである。」「【0007】【発明の実施の形態】・・・発注側である眼鏡店100とレンズ加工側であるレンズメーカの工場200とは公衆通信回線300で接続されている。・・・」b解釈上記記載内容からすると,「発注側」に対する概念として「加工側」又は「製造側」とが同一の意味を有する文言として使用され,一方,本件明細書2を見ても,それ以外の主体の概念は記載されていない。そして,「発注側」は眼鏡店等の眼鏡レンズの注文を発する主体,「加工側」又は「製造側」はその注文を受けて眼鏡レンズを製造する主体との意味で使用されており,特別な意味を有するものとして明示又は黙示に定義されたものと認めることはできない。
以上からすると,構成要件Bにいう「発注側」と「加工側」又は「製造側」との区別は,眼鏡店に対する眼鏡レンズの供給過程を二分し,ある主体がレンズ発注行為を行う側の立場にあるのか,又はレンズ製造側の立場にあるのかによって決するべきものと認められ,同「情報交換可能」とは,上記にいう2主体間のコンピュータが双方向に接続されているか否かによって決せられるものと認められる。
(イ) 認定事実証拠(甲7,10の1〜5,13,19,26,乙1,8,74)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
aメガネット協会と被告との関係(a)メガネット協会は,昭和61年7月,眼鏡レンズのオンライン受発注システムを運営する目的で設立された被告らレンズメーカー6社の共同出資により設立された任意団体であり(現在7社),サーバーであるVANコンピュータや通信ネットワークシステムが設置されている。
それら設備・施設の所有権は,被告ら加盟団体にあり,そのうちオペレーションシステム,総合通信ネットワーク,プロトコル,アプリケーションシステム,レンズメーカー6社の各レンズ受発注システム等が,メガネット協会に無償で使用許諾されている。
(b)サポートシステム(被告システム)の内容は,すべて被告により管理されており,新製品追加等の更新作業は,メガネット協会ではなく,被告営業担当者が眼鏡店のメガネットVAN用コンピュータに対して作業を行う。
このようにサポートシステムの変更は,メガネットVANシステムやほかのレンズメーカーのネットワークと関係なく行うことができる。
b眼鏡店とメガネット協会との関係眼鏡店がメガネットVANを利用してレンズメーカーに発注するには,その前提として,個別に当該レンズメーカーとの取引契約をしている必要があり,被告と取引のない眼鏡店がメガネットVANを経由して被告と接続することはできない。
また,発注の窓口がメガネットVANシステムで共通化しているものの,メガネット協会に加盟している各レンズメーカーは,それぞれ顧客とは独立して対応している。
c情報交換眼鏡店コンピュータから発注先・帳合先,眼鏡レンズ情報,フィッティング情報,ヤゲン情報,フレーム情報がVANコンピュータに送信されると,VANコンピュータは,あらかじめ登録されている取引先,商品,カラー,納期,製作範囲などのデータで,発注データをチェックし,製作可否及び納期を計算処理し,製作可能であれば,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに製作可能との回答を意味するVANナンバー,受付日時及び納期が送信される。また,製作不可である場合には,VANコンピュータから眼鏡店コンピュータに製作不可の回答であるエラーコード及びエラーメッセージが送信される。
(ウ)充足上記認定事実によれば,被告システムであるサポートシステムは,被告と顧客とを結ぶ被告独自のネットワークであり,メガネット協会は,被告システムの運営に対して主体的役割を果たしているものではなく,被告システムを構成する装置・施設の一部である通信手段とサーバー機能を提供しているだけであるから,実質的には被告とは一体であり,また,VANコンピュータは被告システムの一部というべきである。したがって,メガネット協会は「製造側」,VANコンピュータは「製造側コンピュータ」と認められる。
そうすると,VANコンピュータと「発注側コンピュータ」である眼鏡店コンピュータとは情報交換可能であるから,結局,被告システムは,「発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された製造側コンピュータとを有する」ものである。
したがって,被告システムは,構成要件Bを充足する。
イ争点(5)(構成要件D-3次元的眼鏡枠形状情報等の入力)(ア)「フレームセンター」aクレーム解釈構成要件Dは,「3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報」を入力することを要件としているが,フレームセンターそのものを入力することを要件とはしておらず,フレームセンターは,計算処理の過程で計算されていれば足りると解される。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
bフレームセンターの計算被告システムにおいて,測定データから1000ポイントデータを得る過程で,フレームセンターが計算されていることは,被告の自認するところである。
c充足したがって,被告システムは,構成要件Dのうちフレームセンターの点を充足する。
(イ) 「眼鏡枠の縦サイズ横サイズ」aクレーム解釈構成要件Dは,「3次元的眼鏡枠形状情報と,眼鏡枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報」を入力することを要件としているが,眼鏡枠の縦サイズ横サイズそのものを入力することを要件とはしておらず,眼鏡枠の縦サイズ横サイズは,計算処理の過程で計算されていれば足りると解される。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
b眼鏡枠の縦サイズ横サイズの計算被告システムにおいて,フレームセンターを得る過程で,眼鏡枠の縦サイズ横サイズが計算されていることは,被告の自認するところである。
c充足したがって,被告システムは,構成要件Dのうち眼鏡枠の縦サイズ横サイズの点を充足する。
(ウ)眼鏡枠材質情報a被告システム証拠(甲11(6-66頁),乙13 によれば,被告システムにおいては,フレーム情報の入力の)一つとして,「フレーム種別の入力」があること,「フレーム種別の入力」においては,「メタル」「セル(天然繊維素材)」「オプチル(プラスチックの一種)」だけでなく,「リムレス」や「みぞほり」を選択できること,並びに「リムレス」は平らなヤゲンを意味し,「みぞほり」は凹形状を意味することが認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
被告は,被告システムでは,フレームに柔軟性があって曲げることができるフレームか否かは一切考慮しておらず,「メタル」等の情報はレンズの縁摺り加工時において凹か凸か等を決めるために必要なものである旨主張するが,被告が上記主張に反し,「メタル」等の情報をフレームの柔軟性の把握のために使用していることを認めるに足りる証拠はない。
bクレーム解釈(a)特許請求の範囲の記載構成要件Dにいう「眼鏡枠材質情報」が上記aのような被告システムにおいて「フレーム種別」として入力される情報の全部又は一部を含むかについては,特許請求の範囲の記載のみからは一義的に明確ではない。
(b)発明の詳細な説明そこで,本件明細書2中の発明の詳細な説明の「眼鏡枠材質情報」についての記載を抜き出すと,次のとおりである(前提事実(2))。
「【0022】〔S5〕まず,眼鏡店100の端末コンピュータ101において,レンズ注文問い合わせ処理プログラムからフレーム形状測定プログラムへ処理が渡される。そして,これから形状測定される眼鏡フレームに付された測定番号を入力する。また,フレームの材質(メタル,プラスティック等)を指定し,さらに,フレーム曲げの可不可の指定を行う。」「【0037】まず,眼鏡フレームの材質に応じて眼鏡枠形状の3次元データの補正を行い,眼鏡フレームの材質に起因する眼鏡枠形状データの誤差を補正する。つぎに,眼鏡枠形状と眼鏡レンズとの位置関係を,アイポイント位置を基に3次元的に決める。」「【0038】ヤゲン加工を行うためにレンズを保持する際に基準となる加工原点および回転軸である加工軸を決め,この加工座標に今までのデータを座標変換する。そして,3次元のヤゲン先端形状(ヤゲン軌跡も含む)を,指定されたヤゲンモードに応じて決定する。
その際,3次元ヤゲン先端形状を,ヤゲン周長を変えることなく変形させることを前提とし,その予想される変形量を算出する。ヤゲンモードがフレームならいのときやフレーム曲げが不可のときには変形できないから,変形しないとヤゲンが立たない場合には,その旨のエラーコードを出力する。」「【0039】その算出された変形量を,眼鏡フレームの材質毎に設けられた変形の限界量と比較し,限界量を越えていれば,その旨のエラーコードを出力する。なお,3次元のヤゲン先端形状を変形させることにより,アイポイント位置がずれるので,その誤差を補正するようにする。また,復元の誤差の補正も行う。これらの処理は選択的に行うことができる。」「【0125】【発明の効果】以上説明したように本発明によれば,上述した眼鏡レンズの供給システムにおいて,発注側にて所望の眼鏡フレームをフレーム形状測定器で測定し,その測定データより,眼鏡枠形状の周長,フレームPD,眼鏡枠形状のAサイズBサイズ,及びフレームセンターを計算処理して得た3次元的な眼鏡フレーム枠形状情報と,眼鏡フレーム枠材質情報とを含む眼鏡フレーム枠情報を,コンピュータに入力するステップを有することで,精度の高い眼鏡フレーム枠形状情報を加工者側に与え,より精度の高いレンズのヤゲン加工及びそのレンズの供給を可能とし,特に,眼鏡枠形状の周長という新規な指標を採用したことで,フレームの変形誤差をも考慮した眼鏡レンズの供給システムができた。」(c)まとめ上記(b)の発明の詳細な説明中の記載によれば,構成要件Dにいう「眼鏡枠材質情報」とは,眼鏡フレームの材質に起因する眼鏡枠形状データの誤差を補正するために必要な情報であることが認められる。
これに反する原告の主張は,採用することができない。
c充足の有無上記aのとおり,被告システムの「フレーム種別の入力」においては,「リムレス」や「みぞほり」といった眼鏡フレームの材質に起因する眼鏡枠形状データの誤差を補正するために使用することのできない選択肢があるだけでなく,眼鏡フレームの材質に起因する誤差の補正に使用することができる「メタル」「セル」「オプチル」といった情報についても,上記誤差の補正に使用するために入力していることの立証はないから,被告システムは,構成要件Dにいう「眼鏡枠材質情報」の入力の点を充足しないといわなければならない。
ウ結論以上のとおりであるから,被告システムは,本件発明2の技術的範囲に含まれない。
(2)本件訂正発明2上記(1)イ(ウ)に述べたことからすれば,被告システムは,本件訂正発明2の技術的範囲にも含まれない。
4本件発明3の充足(1)本件発明3ア争点(6)(構成要件F-情報交換可能な接続)(ア)前記3(1)ア(構成要件B-情報交換可能な接続)で説示したとおり,VANコンピュータは製造側コンピュータであるから,被告システムは,構成要件Fのうち,製造側コンピュータ及び情報交換可能の点を充足する。
(イ)被告システムが,構成要件Fのうちその余の点を充足することは,被告において明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。
(ウ)したがって,被告システムは,構成要件Fを充足する。
イ争点(7)(構成要件H-製造側コンピュータの演算処理)(ア)製造側コンピュータ前記3(1)ア(構成要件B-情報交換可能な接続)で説示したとおり,VANコンピュータは製造側コンピュータであるから,被告システムは,構成要件Hのうち,製造側コンピュータの点を充足する。
(イ)演算処理被告システムでは,VANコンピュータが眼鏡店コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,眼鏡レンズの受注に必要な処理を行っていることは,当事者間に争いがない。
(ウ)充足したがって,被告システムは,構成要件Hを充足する。
ウ争点(8)(構成要件J-眼鏡枠周長,眼鏡枠の傾きTILT等の送信)(ア)発注側コンピュータによる演算処理aフレームトレーサに内蔵されたCPUによる演算被告システムでは,周長等の演算処理がフレームトレーサに内蔵されたCPUによって行われ,眼鏡店コンピュータを介して,VANコンピュータに送信されていることは,当事者間に争いがない。
b文言侵害本件発明3は,機能的記載ではなく,機器の構成の記載により請求項を特定し,発注側コンピュータと3次元的眼鏡枠測定装置とを明確に区別しているから(構成要件F),3次元的眼鏡枠測定装置に当たるフレームトレーサに内蔵されたCPUを発注側コンピュータの一部と認めることは,困難である。
したがって,原告の文言侵害の主張は,採用することができない。
c均等侵害(a)周長等の演算処理が,眼鏡店コンピュータではなく,フレームトレーサに内蔵されたCPUによって行われていることの均等侵害につき,均等の本質的部分,置換可能性,置換容易性の要件を満たすことは,被告において明らかに争わないから,これを自白したものとみなす。
(b)被告は,公知技術等の除外の要件を満たさない旨主張するが,本件訂正発明3が進歩性欠如等の無効理由を有しないことは,後記5のとおりであるから,計算機能付きトレーサが原出願1の出願前に公知であったこと(乙53,54)が加わったとしても,被告システムが本件発明3の出願前に公知等であったと認めることはできない。
(c)よって,被告システムは,構成要件Jのうち,発注側コンピュータによる演算処理の点を充足する。
(イ) 傾きTILTaクレーム解釈構成要件Jにいう「眼鏡枠の傾きTILT」の意味は,特許請求の範囲の記載から一義的に明確ではないが,本件明細書3中の図22及び発明の詳細な説明【0106】によれば,「眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度」を意味すると認められる。
証拠(乙77〜84 によれば,この「傾きTILT」は,周知である眼鏡枠の傾き(そり をごく) )一般的な指標である角度で表示したものにすぎないと認められる。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
b被告の測定内容被告システムで,フレームトレーサの測定平面に対する左右それぞれの眼鏡枠の傾きを測定し,その平均を演算していることは,当事者間に争いがない。
c充足被告の上記測定及び演算内容は,技術的に構成要件Jにいう「眼鏡枠の傾きTILT」と同じものを測定及び演算しているものであり,構成要件Jにいう「眼鏡枠の傾きTILT」の点を充足する。
エ結論以上から,被告システムは,本件発明3の技術的範囲に含まれる。
(2)本件訂正発明3上記(1)に述べたことからすれば,被告システムは,本件訂正発明3の技術的範囲にも含まれる。
(3)争点(1)(複数主体の関与)ア(ア)本件発明3は,「眼鏡レンズの供給システム」であって,発注する者である「発注側」とこれに対向する加工する者である「製造側」という2つの「主体」を前提とし,各主体がそれぞれ所定の行為をしたり,システムの一部を保有又は所有する物(システム)の発明を,主として「製造側」の観点から規定する発明である。そして,「発注側」は,「製造側」とは別な主体であり,「製造側」の履行補助者的立場にもない(前提事実(3)ウ)。
(イ)この場合の特許請求の範囲の記載や発明の詳細な説明の記載は,2つ以上の主体の関与を前提に,実体に即して記載することで足りると考えられる。この場合の構成要件の充足の点は,2つ以上の主体の関与を前提に,行為者として予定されている者が特許請求の範囲に記載された各行為を行ったか,各システムの一部を保有又は所有しているかを判断すれば足り,実際に行為を行った者の一部が「製造側」の履行補助者ではないことは,構成要件の充足の問題においては,問題とならない。
(ウこれに対し,特許権侵害を理由に,だれに対して差止め及び損害賠償を求める)ことができるか,すなわち発明の実施行為(特許法2条3項 を行っている者はだれかは, )構成要件の充足の問題とは異なり,当該システムを支配管理している者はだれかを判断して決定されるべきである。
イ以上を前提に検討すると,被告が被告システムを支配管理していることは明らかであり,原告は,被告に対し,本件特許3に基づき,他の要件も満たす限り,被告システムの差止め及び損害賠償を求めることができる。
5 訂正後の本件特許3の無効(1)訂正要件違反ア被告の主張内容被告は,原告が求めた訂正の内容(前提事実(6)ウ(イ))のうち,「公衆通信回線」又は「公衆回線」しか記載がなかったのに「通信回線」と訂正することは新規事項の追加に当たる旨主張する。
イ本件明細書3の記載(ア)本件明細書3には,次の記載がある(前提事実(2))。
「【0005】【発明が解決しようとする課題】上記,ヤゲン加工を含めた眼鏡レンズの供給システムにおいて,最も重要なことは眼鏡フレームの形状データを正確に把握することである。・・・このような場合,熟達した加工者は,当該変形を受けた眼鏡フレームを見て,ここへレンズが枠入れ加工された際の形状復元度等を考慮して,レンズのヤゲン加工等の縁擂り加工を行っていた。しかし,上記眼鏡レンズの供給システムにおいて,加工者は,当該眼鏡フレームの現物を見ることなく,遠隔地から通信回線にて送られた加工データのみで対応しなければならないため,眼鏡フレームの正確な形状データ把握と,そのデータの送受信が望まれていた。本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり,発注側にて眼鏡フレームの正確な形状データ把握し(ママ),加工側と互いに情報交換をしながら当該データを加工側に与える眼鏡レンズの供給システムを提供する。」(イ)この記載によれば,本件明細書3には,下位概念としての「公衆通信回線」又はこれと同様の「公衆回線」について記載があっただけでなく,「通信回線」についても記載されていたものと認められる。
したがって,訂正により広域通信回線が含まれることになったとしても,新規事項の追加には当たらない。
ウ通信回線の意味被告は,構成要件F’の「通信回線」は構内通信回線(非公衆通信回線)を含むから,この点で新規事項の追加に当たる旨主張する。
しかしながら,訂正後の請求項1の記載(前提事実(6)ウ(イ))から明らかなように,本件訂正発明3は「製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」であるから,構成要件F’の「通信回線」は「構内通信回線(非公衆通信回線)」を含まないものと認められる。したがって,「構内通信回線(非公衆通信回線)」の点で新規事項の追加にも当たらないと認められる。
エまとめそうすると,本件訂正発明3は,新規事項を含まず,その訂正は認められるものと認められる。
(2)拡大先願ア乙11甲3発明(ア)乙11甲3刊行物の記載内容は,当事者間に争いがない。
(イ)上記乙11甲3刊行物の記載内容によれば,乙11甲3発明は次のとおりのものと認められる。
「主演算制御回路と,この主演算制御回路に形状データを転送する眼鏡枠のレンズ枠形状を立体計測するレンズ枠及び型板形状測定部2とを有する,眼鏡枠に枠入れするためにレンズの周縁を加工するレンズ周縁加工機であって,前記主演算制御回路は,加工レンズの材質がプラスチックかガラスか,レンズ枠及び型板形状測定部2で立体計測したデータ,被装者のPD値及び乱視軸等を入力し,レンズ研削のために必要な処理を行う機能を有し,ポテンショメータの読取り量r,パルスモータの回転角Θ,ポテンションメータの読取量zからレンズ枠形状が(r,Θ,z)(n=1,2…,N)として計測され,前記主演算制御回路は,計測データを極座標-直交座標変換した後のデータから,玉型の周長,及びレンズ枠幾何学中心間距離FPDを求めることを特徴とするレンズ周縁加工機。」イ一致点及び相違点本件訂正発明3(前提事実(6)ウ(イ))と乙11甲3発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致すると認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
(ア)相違点?@本件訂正発明3は,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるのに対して,乙11甲3発明は,手元に眼鏡フレームがある状態でヤゲン加工が行われる点。
(イ)相違点?Aヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムが有するコンピュータが,本件訂正発明3は,ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置された少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータと,この発注側コンピュータへ情報交換可能に通信回線で接続された製造側コンピュータであるのに対して,乙11甲3発明は,そのような限定がされていない点。
(ウ)相違点?B眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報について,本件訂正発明3では,発注側コンピュータが,これらの情報を入力し,発注に必要なデータを製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有するのに対して,乙11甲3発明は,発注側コンピュータと製造側コンピュータという概念がなく,また,発注に必要なデータを製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有しない点。
(エ)相違点?C本件訂正発明3は,製造側コンピュータは,発注側コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,ヤゲン加工済眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備えているのに対して,乙11甲3発明は,そのような限定がされていない点。
(オ)相違点?D本件訂正発明3では,発注側コンピュータが,3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された前記眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを前記製造側コンピュータへ送信するのに対して,乙11甲3発明は,主演算制御回路(コンピュータ)が,3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された前記眼鏡枠のレンズ枠の周長及びフレームPDを求めるのに留まる点。
ウ相違点の検討(ア)眼鏡レンズのヤゲン加工を行うに際して,その眼鏡にはめるべき眼鏡フレームが手元にない状態でヤゲン加工をするか,それとも手元に眼鏡フレームがある状態でヤゲン加工をするかは,発明の基本的構成についての差異というべきものであるから,相違点?@が実質的な相違点であることは,明らかである。
(イ)そして,本件訂正発明3は,「【0125】・・・眼鏡枠の3次元の枠データ,及びこの3次元の枠データに基づいて求めた前記眼鏡枠のレンズ枠の周長を与えることで,加工者は前記眼鏡枠の正確な形状データを把握することが出来る。」という顕著な効果を奏する。
(ウ)したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正発明3と乙11甲3発明とは同一でない。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
(3)進歩性その1ア訂正後の本件特許3に係る出願と原出願1との関係(ア)「3次元的眼鏡枠形状情報」証拠(乙11甲1)によれば,原明細書1には,フレーム形状測定器は,眼鏡枠の内周溝にスタイラスを接触させて転動させることによって,その回転角θ,その半径方向移動量R,その上下方向の移動量Zを検出し,もって3次元測定形状データを得るものであって(【0068】ないし【0076】),この計測された3次元測定形状データに基づいて,【0086】の眼鏡枠周長,【0113】の眼鏡枠瞳孔間距離,【0104】【0105】の眼鏡枠の横サイズ縦サイズ及び【0104】ないし【0106】のフレームセンターが算出されることが記載されていることが認められる。
これら3次元測定形状データに基づいて得られた眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の横サイズ縦サイズ及びフレームセンターは,いずれも眼鏡フレームの形状情報といえるものであると認められる。
したがって,原明細書1には,「3次元的眼鏡枠形状情報」についての構成が実質的に開示されていると認められる。
(イ)「眼鏡枠情報」証拠(乙11甲1)によれば,原明細書1には,「【0002】【従来の技術】眼鏡レンズの発注側から送られた眼鏡レンズや眼鏡フレームに関する情報に基づき,眼鏡レンズの加工側が,ヤゲン形状を含めた所望のレンズ形状を演算し,その結果に基づき,ヤゲン加工を含めたレンズ加工が可能であるか否かの可否情報を,さらにはヤゲン加工形状を含めた眼鏡レンズの仕上がり予想形状を,発注側に返信し,発注側は,送信された可否情報または仕上がり予想形状を画面表示し,ヤゲン加工を含めたレンズ加工が可能であるか否かを確認し,あるいは仕上がり予想形状を確認し,この確認に基づき,最適なヤゲンが設けられた眼鏡レンズを決定して発注するようにした眼鏡レンズの供給システムが,本願出願人により提案されている(特願平4-165912号)。」「【0003】このシステムの完成度をより高めるためには,眼鏡枠の左右のバランスをとることが行われる必要がある。一般に左右の眼鏡枠形状は同一であることが美観上好ましいが,フレーム製造後の輸送,保管等の取扱やフレーム素材の経時変化等により形状変形を受け,差異を生じる場合がある。・・・そこで,眼鏡枠の左右のバランスをとるために,従来,左右の眼鏡枠形状を同形化することが行われていた。すなわち,例えば特公平3-25298号公報に開示されるように,左右いずれか一方の眼鏡枠形状をそのまま双方の眼鏡枠形状として使用して眼鏡レンズの加工を行い,他方の眼鏡枠形状を変形した上で眼鏡レンズを枠入れすることが行われていた。」「【0007】「本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり,眼鏡枠形状の変形量が少なく,また,眼鏡枠の周長およびデータムラインに対する眼鏡枠形状の傾きを変えることなく,左右の眼鏡枠形状を同形化して眼鏡枠の左右のバランスをとるようにした眼鏡枠形状同形化方法を提供することを目的とする。」と記載されていることが認められる。
この記載によれば,原明細書1には,発注側が眼鏡フレームに関する情報を製造側に送ることが記載されているものと認められ,これが眼鏡フレーム枠情報に相当することは明らかであるから,原明細書1には,「眼鏡枠情報」についての構成が実質的に開示されていると認められる。
(ウ)要素選出と作用効果a上記(ア)のとおり,原明細書1の【0086】には眼鏡枠周長,【0113】には眼鏡枠瞳孔間距離,【0104】【0105】には眼鏡枠の横サイズ縦サイズ,【0104】ないし【0106】にはフレームセンターについて記載されている。
bさらに,証拠(乙11甲1)によれば,原明細書1には,次のとおり記載されていることが認められる。
「【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし,上記従来の方法では,・・・変形量に限度があるので好ましい方法ではなかった。」「【0005】また,上記従来の方法では,左右の実際の眼鏡枠形状の周長が異なっている場合,・・・ぴったりと嵌合できないという問題があった。」「【0006】・・・眼鏡のデータムラインに対する左右の眼鏡枠形状の傾きが異なっている・・・場合,・・・枠入れの際に眼鏡レンズが軸ずれを起こすという問題があった。」「【0007】本発明は・・・眼鏡枠形状の変形量が少なく,また,眼鏡枠の周長およびデータムラインに対する眼鏡枠形状の傾きを変えることなく,・・・眼鏡枠形状同形化方法を提供することを目的とする。」「【127】【発明の効果】・・・本発明では,・・・眼鏡枠の左右のバランスをとるに際し,眼鏡枠形状の変形量を少なくすることが可能となる。」「【128】また,・・・左右の眼鏡枠形状の各周長を予め算出し,算出された新たな左右の眼鏡枠形状の各周長が,算出された対応の眼鏡枠形状の周長にそれぞれ一致するように,算出された新たな左右の眼鏡枠形状を各相似形状にそれぞれ変形する。これにより,眼鏡枠の周長を変えることなく,左右の眼鏡枠形状を同形化して眼鏡枠の左右のバランスをとることができる。」cこれらの記載によれば,原明細書1には,眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT,フレームPD,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター等の各要素が奏する作用効果が記載されているものと認められる。
dしたがって,本件訂正発明3は原明細書1に記載された事項の範囲内であり,分割要件に違反しないと認められる。
イ訂正後の本件特許3に係る出願と原出願2との関係(ア)「3次元的眼鏡枠形状情報」証拠(乙11甲2)によれば,原明細書2には,上記ア(ア)と同旨の記載があることが認められる(【0063】ないし【0071】,【0081】,【0108】,【0099】,【0100】,【0099】ないし【0101】)。
これら3次元測定形状データに基づいて得られた眼鏡枠周長,眼鏡枠瞳孔間距離,眼鏡枠の横サイズ縦サイズ及びフレームセンターは,いずれも眼鏡フレームの形状情報といえるものであると認められる。
したがって,原明細書2には,「3次元的眼鏡枠形状情報」についての構成が実質的に開示されていると認められる。
(イ)「眼鏡枠情報」証拠(乙11甲2)によれば,原明細書2には,上記ア(イ)と同旨の記載があることが認められる(【0002】,【0003】,【0005】)。
この記載によれば,原明細書2には,発注側が眼鏡フレームに関する情報を製造側に送ることが記載されているものと認められ,これが眼鏡フレーム枠情報に相当することは明らかであるから,原明細書2には,「眼鏡枠情報」についての構成が実質的に開示されていると認められる。
(ウ)要素選出と作用効果a上記(ア)のとおり,原明細書2の【0081】には眼鏡枠周長,【0108】には眼鏡枠瞳孔間距離,【0099】【0100】には眼鏡枠の横サイズ縦サイズ,【0099】ないし【0101】にはフレームセンターについて記載されている。
bさらに,証拠(乙11甲2)によれば,原明細書2には,次のとおり記載されていることが認められる。
「【0004】【発明が解決しようとする課題】ところで,上記従来の方法では,一方の眼鏡枠を固定化して,それを基準とするので,例えば,左右の実際の眼鏡枠形状の間に大きな差異が存在する場合に,他方の眼鏡枠形状を大幅に変形させねばならなくなる。しかし,その変形量にも限度がある。しかるに,従来は,必要な変形量をあらかじめ把握して変形可能なものであるか否か等を客観的に確認するための適当な方法がなかった。」「【0005】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり,左右の眼鏡枠形状の相違をできるだけ客観的に把握できるように処理して左右の眼鏡枠形状を重ね合わせる左右眼鏡枠形状重ね合わせ方法を提供することを目的とする。」「【0112】〔T1〕・・左右の眼鏡枠形状の各周長を算出する。」「【0119】・・・新たな左右の眼鏡枠形状の各周長がステップT1で算出された左右の眼鏡枠形状の周長に一致するように,・・・それぞれ変形する。」「【0122】【発明の効果】以上説明したように本発明によれば,重心位置を中心とした各動径方向における左右の眼鏡枠間距離の総和を算出してこれを左右の眼鏡枠形状の差異量とし,この差異量が最小になるように前記左右の眼鏡枠形状の一方を回転させる処理をして左右眼鏡枠形状を重ね合わせるようにしているので,左右の眼鏡枠形状の相違を客観的に把握することができる。」cこれらの記載によれば,原明細書2には,眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡枠の傾きTILT,フレームPD,眼鏡枠の縦サイズ横サイズ,フレームセンター等の各要素が奏する作用効果が実質的に記載されているものと認められる。
dしたがって,本件訂正発明3は原明細書2に記載された事項の範囲内であり,分割要件に違反しないと認められる。
進歩性以上のとおり,訂正後の本件特許3に係る出願は原出願1及び原出願2との関係で分割出願の要件を満たすから,本件訂正発明3は乙11甲1刊行物(原明細書1。473)に基づいて進歩性が否定される旨の被告の主張は,理由がない。
(4)進歩性その2ア乙11甲4刊行物の記載(ア)乙11甲4刊行物(420)の記載内容(前記第2,5(15)(本件特許2の無効)ウ(ア)(a)は,当事者間に争いがない。
(イ)上記記載内容によれば,乙11甲4発明は,次のとおりのものと認められる。
「眼鏡店に設置された眼鏡枠に関する情報をオンラインで電送するコンピュータと,この眼鏡店のコンピュータにオンライン接続されたレンズ製造工場に設置されたコンピュータとを有する,使用する眼鏡枠に最も適した肉厚を有する眼鏡レンズの供給システムであって,眼鏡店のコンピュータは,レンズの種類,眼鏡枠の形状及び眼鏡枠の種類を含む眼鏡枠に関する情報,眼鏡枠内におけるレンズ処方値の位置情報,装用者の角膜頂点距離(PDと呼ばれる),レンズ処方値,レンズの光学中心,多重焦点レンズの近方視領域の眼鏡枠内における配置等の使用する眼鏡枠に最も適したレンズ肉厚のレンズを製造する上で必要な情報を入力し,その情報をレンズ製造工場のコンピュータに電送し,一方,前記レンズ製造工場のコンピュータは,前記眼鏡店のコンピュータからの電送に基づいて,使用する眼鏡枠に最も適したレンズ肉厚を決定することを特徴とする使用する眼鏡枠に最も適した肉厚を有する眼鏡レンズの供給システム。」イ一致点及び相違点本件訂正発明3(前提事実(6)ウ(イ))と乙11甲4発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致すると認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
(ア)相違点?@本件訂正発明3では,製造側において手元に眼鏡フレームがない状態でヤゲン加工が行われるのに対し,乙11甲4発明では,そのような限定がされていない点。
(イ)相違点?A眼鏡レンズの供給システムにより供給される眼鏡レンズが,本件訂正発明3では,ヤゲン加工済眼鏡レンズであるのに対し,乙11甲4発明では,使用する眼鏡枠に最も適した肉厚を有する眼鏡レンズに留まり,ヤゲン加工済との限定がない点。
(ウ)相違点?B発注側に設置されたコンピュータが,本件訂正発明3では,少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えるのに対して,乙11甲4発明では,その限定がされていない点。
(エ)相違点?C本件訂正発明3では,3次元的眼鏡枠測定装置が発注側コンピュータに接続されているのに対し,乙11甲4発明では,その限定がされていない点。
(オ)相違点?D発注側コンピュータに入力する情報が,本件訂正発明3では,枠入れ加工をする上で必要となる情報であるのに対して,乙11甲4発明では,使用する眼鏡枠に最も適したレンズ肉厚のレンズを製造する上で必要な情報である点。
(カ)相違点?E発注及び受注の対象となる眼鏡レンズが,本件訂正発明3では,ヤゲン加工済眼鏡レンズであるのに対して,乙11甲4発明では,使用する眼鏡枠に最も適した肉厚を有する眼鏡レンズにとどまり,ヤゲン加工済との限定がない点。
(キ)相違点?F眼鏡枠形状情報が,本件訂正発明3では,3次元的と規定されているのに対し,乙11甲4発明では,3次元的とは規定されていない点。
(ク)相違点?G眼鏡枠情報が,本件訂正発明3では,3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度毎に前記測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データ(Rn,θn,Zn)を採取して得たものであるのに対し,乙11甲4発明では,その点について限定されていない点。
(ケ)相違点?H発注側コンピュータが,本件訂正発明3では,3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡の正面方向に垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを製造側コンピュータへ送信するのに対し,乙11甲4発明では,その点について限定されていない点。
(コ)相違点?I本件訂正発明3の対象は,ヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムであるのに対し,乙11甲4発明の対象は,使用する眼鏡枠に最も適した肉厚を有する眼鏡レンズの供給システムである点。
ウ相違点?Hのうち「眼鏡枠周長」の点の検討(ア)乙11甲4刊行物a証拠(乙11甲4)によれば,乙11甲4刊行物(420)には次の記載があることが認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
「〔1頁右欄11〜14行〕本発明は眼鏡レンズの供給方法に関し,各々の眼鏡装用者の使用する眼鏡枠の種類及び形状に対し,最適な肉厚を有する眼鏡レンズを提供することを目的とする。」「〔2頁右上欄11〜17行〕・・・アンカツト方式にあつては,同じ度数に対して準備されている外径の種類は一般にせいぜい2,3種類であり,多種多様の眼鏡枠に細かく対応しうるものではない。従つて,必要以上に大きな外径のレンズを用いざるを得ず,そのために必要以上のレンズの厚みと重量とを眼鏡装用者に強いる形となつている。」「〔2頁左下欄9〜11行〕・・・ところが,ラボ方式に於いては,高価なフレームの輸送という工程がある為,破損や遺失による大きなリスクを伴なうという欠点がある。」「〔2頁左下欄12〜16行〕又,例えば現在の日本国内の様にアンカツト方式が主流である市場に於いてラボ方式を導入することは,枠入れ加工という眼鏡店に於いて大きな比重を占めている工程をレンズ製造工場側が奪う形となり,容認され難いであろう。」「〔3頁左下欄13行〜右下欄1行〕さて,この様にして得られた種々の情報を基に使用する眼鏡枠に最も適したレンズ肉厚を決定し,そのレンズを製造する方法は従来のラボ方式に依る方法と何ら変るところはない。即ち,眼鏡枠内に於いて最も薄くなる位置を算出し,その位置の厚みが所定の値となるようなレンズの中心肉厚を算出し,所定のレンズ処方値を与える表面形状にレンズを荒摺,砂掛,研磨することにより,所望のレンズが得られるのである。」bこれらの記載によると,乙11甲4発明では,レンズ製造工場は,眼鏡枠に最適な肉厚を有する眼鏡レンズを提供するため,ヤゲン加工を含むレンズの枠入れ加工は行わないが,それ以前のレンズ製造工程を手元に眼鏡フレームがない状態で行い,眼鏡店は,ヤゲン加工を含むレンズの枠入れ加工を行うものであり,乙11甲4発明は,ヤゲン加工を含むレンズの枠入れ加工を行うのは,むしろ眼鏡店であるべきことを開示する発明であると認められる。
(イ)乙11甲6刊行物a証拠(乙11甲6)によれば,乙11甲6刊行物(407)には次の記載があることが認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
「〔1頁右下欄16行〜2頁左上欄3行〕本発明は斯かる事情に鑑み,フレーム枠の眼鏡レンズ周端と嵌合するV状溝の内周長を測定し得る測定装置を提供し,測定した内周長を基に眼鏡レンズを加工機より取外すことなく,直ちに最終形状に迄研削し得ることを可能にして枠合せ作業の能率を飛躍的に向上させると共に研削加工精度も又大幅に向上させることを目的とするものである。」「〔2頁左下欄12行〜右下欄7行〕・・・従つて,回転子(17)はフレーム枠(23)の全内周分だけ転動したことになり,回転子(17)の円周長にエンコーダ(15)で検出した回転数を掛合せればフレーム枠(23)の内周長を測定し得る。又,眼鏡レンズは完全な円形ではない為,その周端は3次曲線となり,V状溝(24)も上下に変位する。この上下方向の変位に対しては,平行リンク(14),バランスバネ(19)の作用によって回転子(17)を追従させる。
而して,眼鏡レンズの外形形状は原型レンズより研削した時点でフレーム枠の形状と相似形に仕上げられているので,上記測定した内周長に眼鏡レンズの外周長が合致する様眼鏡レンズを削込めば,該レンズの加工機より取外すことなくフレーム枠の形状に正確に合せることができる。」bこれらの記載によると,乙11甲6刊行物には,眼鏡レンズの外形形状と眼鏡フレームの形状とを正確に合致させるためにフレーム枠の周長を測定する技術思想及び「眼鏡フレーム枠のV状溝内周長測定装置」の発明が記載されており,眼鏡枠周長が有用な情報であることが開示されている。
(ウ)検討上記(ア)に認定のとおり,乙11甲4発明においては,ヤゲン加工を含むレンズの枠入れ加工を行うのは発注側であるから,ヤゲン加工を含むレンズの枠入れ加工に有用な情報である眼鏡枠周長情報を製造側コンピュータへ送信するために発注側コンピュータに入力する必要がない。そうすると,眼鏡枠周長が有用な情報であることが乙11甲6発明に開示されているとしても,それを乙11甲4発明と組み合わせる動機付けが生じない。
したがって,本件訂正発明3を相違点?Hのように構成することが当業者にとって容易に想到し得たことであると認めることはできない。
エまとめ以上のとおり,訂正後の本件特許3に対する進歩性その2の主張は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(5)進歩性その3ア時機に後れた攻撃防御方法等の申立てについて(ア)被告による進歩性その3に係る主張の提出は,訴訟の完結を「遅延」させるものとまでは認めることはできない。
(イ)また,その提出が「審理を不当に遅延させることを目的として」されたものと認めることもできない。
(ウ)よって,上記攻撃防御方法等は却下しない。
イ乙91甲1刊行物の記載事項(ア)証拠(乙91の2)によれば,フレームトレーサと加工機が一体となったニデック社製「パターンレス玉摺機LE?8000」について説明をする乙91甲1刊行物には,次のような記載があることが認められる。
a 商品コンセプト「?Aシステム化弊社検眼装置から処方データの自動入力・・・外部フレームトレーサとの結合」b 機能の特徴「?@フレーム形状読取・・・形状測定のみならず,フレームPD自動計測,リム厚さの測定,型板トレースも可能・・・?A最適ヤゲン加工レンズ生地玉型形状測定,リム厚さの自動計測と加工ノウハウのソフト化と相俟って,最適ヤゲン加工をオート加工できる。
又,フレームカーブに合ったカーブでオート加工できるので,フレームのカーブ調整,ガラスレンズの割れ等の問題がない。
その他,比率カーブ,カーブ指定等豊富なヤゲンモードが可能なため,用途に応じて最適ヤゲンに対応することができる。
・・・?B加工前安心感フレーム形状をトレーサで計測した原寸大玉型を表示し,光学中心の内寄せ,上げ下げした位置の玉型への表示,フレーム前縁とヤゲン位置関係の表示ができ且つ,必要最小径のレンズサイズが瞬時に表示できるなど,予め確認してから加工を開始することができるので,失敗の不安がない。
・・・?C自動レイアウト機能処方入力とフレームPD自動計測により,自動レイアウトができるので印点後の軸打機によるレイアウト作業が不要。
・・・?EシステムアップICカードと通信による,処方データの直接入力,パソコンへのフレーム形状データの保存による顧客管理および,外部フレームトレーサからの入力によるラボでの集中加工等,システムの拡張に柔軟に対応することができる。
・・・」c 仕様「・・・加工モードオートレンズ計測とリム厚測定によるコンピュータヤゲン・・・・調整範囲・・・ヤゲン位置±9.9?o(0.1単位)・・・フレームトレース・・・測定点1000点/全周」d 「?B外部トレーサとの結合」図左側に「SHOP」と表示された枠があり,その中に「フレームリーダー」と「モデム」があり,両者が「RS232Cケーブル」で接続されている。
右側には「LAB」と表示された枠があり,その中に「モデム」とLE?8000を示す図があり,両者が「RS232Cケーブル」で接続されている。
「SHOP」と「LAB」とを接続する「電話回線」を表示する線が記載され,その上に「フレームデータ」と「SHOP」から「LAB」側に向かう矢印が記載されている。
また,「LAB」から「SHOP」側に向かう矢印とトラックが記載され,その上に「加工レンズ宅配」と記載されている。
(イ)上記記載によれば,乙91甲1発明は,次のものと認められる。
「SHOPに設置されたフレームデータを送信する機能を備えたフレームリーダーと,このフレームリーダーにモデム及び電話回線を介して接続されたLABに設置された玉摺り機であって,フレームトレーサが本体に内蔵され,コンピュータが備えられた玉摺機とを有する,LABにおいてヤゲン加工が行われ,LABでヤゲン加工されたレンズをSHOPに宅配するヤゲン加工されたレンズの宅配システムであって,外部フレームトレーサである前記フレームリーダーは,フレームデータを得るものであり,前記玉摺機は,フレームカーブに合ったカーブでヤゲン加工する機能を有することを特徴とするヤゲン加工レンズの宅配システム。」ウ一致点及び相違点(ア)本件訂正発明3と乙91甲1発明との対比a発注側乙91甲1発明の「SHOP」は,本件訂正発明3の「ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側」に相当する。
bヤゲン情報乙91甲1発明の「フレームデータ」と本件訂正発明3の「ヤゲン情報」とは,ヤゲン加工するために用いられる情報の点で一致する。
c発注側「コンピュータ」乙91甲1発明の「フレームリーダー」と本件訂正発明3の「コンピュータ」とは,機器という点で一致する。
d接続乙91甲1発明の「公衆通信回線網を介して接続された」は,本件訂正発明3の「通信回線で接続された」に相当する。
e製造側乙91甲1発明の「LAB」は本件訂正発明3の「製造側」に相当する。
f製造側「コンピュータ」乙91甲1発明の「フレームトレーサが本体に内蔵され,コンピュータが備えられた玉摺り機」と本件訂正発明3の「製造側コンピュータ」とは,コンピュータが備えられた製造側機器の点で一致する。
gヤゲン加工乙91甲1発明の「LABにおいてヤゲン加工が行われ,LABでヤゲン加工されたレンズをSHOPに宅配するヤゲン加工されたレンズの宅配システム」と本件訂正発明3の「製造側において手元にフレームがない状態でヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」とは,製造側においてヤゲン加工が行われるヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システムの点で一致する。
h供給システム乙91甲1発明の対象である「ヤゲン加工されたレンズの宅配システム」は,本件訂正発明3の対象である「ヤゲン加工済眼鏡レンズの供給システム」に相当する。
(イ)認定以上から,本件訂正発明3(前提事実(6)ウ(イ))と乙91甲1発明とは,次の点で相違し,その余の点で一致すると認められる(一部は,当事者間に争いがない。)。
これに反する被告の主張は,採用することができない。
a相違点?@ヤゲン加工済眼鏡レンズの発注側に設置されたヤゲン加工をするために用いられる情報を送信する機能を備えた機器が,本件訂正発明3は,「少なくともヤゲン情報を送信する機能を備えたコンピュータ」であるのに対し,乙91甲1発明は,「フレームデータを送信する機能を備えたフレームリーダー」である点。
b相違点?Aレンズの発注側に設置された機器に通信回線で接続されたコンピュータが備えられた製造機器に関して,本件訂正発明3は,コンピュータが備えられた製造側機器自体が,「製造側コンピュータ」であり,また,通信回線での接続について,「発注側コンピュータへ情報交換可能に接続された」のに対し,乙91甲1発明は,コンピュータが備えられた製造機器が,「フレームトレーサが本体に内蔵され,コンピュータが備えられた玉摺り機」であり,また,通信回線での接続について,「発注側コンピュータに情報交換可能に接続された」とは限定されていない点。
c相違点?B製造側におけるヤゲン加工が,本件訂正発明3は,「手元に眼鏡フレームがない状態で行われる」のに対して,乙91甲1発明は,その点の限定がされていない点。
d相違点?C眼鏡枠測定装置が,本件訂正発明3は,発注側コンピュータに接続された3次元的眼鏡枠測定装置であるのに対し,乙91甲1発明は,フレームリーダーである点。
e相違点?D本件訂正発明3は,「発注側コンピュータは,眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力し,発注に必要なデータを前記製造側コンピュータへ送信する処理を含む眼鏡レンズの発注機能を有」するのに対し,乙91甲1発明は,発注側コンピュータ及び眼鏡レンズの発注機能について限定されていない点。
f相違点?E本件訂正発明3は,「製造側コンピュータは,発注側コンピュータからの送信に応じて演算処理を行い,ヤゲン加工済眼鏡レンズの受注に必要な処理を行う機能を備え」るのに対し,乙91甲1発明は,この点について限定されていない点。
g相違点?F本件訂正発明3は,「眼鏡枠情報は,3次元的眼鏡枠測定装置の測定子を眼鏡枠の形状に従って3次元的に移動し,所定の角度毎に測定子の移動量を検出して前記眼鏡枠の3次元の枠データ(Rn,θn,Zn)を採取して得たものであ」るのに対し,乙91甲1発明は,この点について限定されていない点。
h相違点?G本件訂正発明3は,「発注側コンピュータは,3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された眼鏡枠のレンズ枠の周長,眼鏡の正面方向の垂直な平面に対して左右の各眼鏡枠が同一の傾きをなすものとして定義される該傾きの角度である眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め,これらを製造側コンピュータへ送信する」のに対し,乙91甲1発明は,この点について限定されていない点。
エ相違点の検討(ア)相違点?Dまず,被告は,少なくとも相違点?Dに関する主張はしていないから,進歩性その3の主張は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(イ) 外部フレームトレーサ念のため,その余の相違点についても検討する。
上記イのとおり,乙91甲1刊行物は,LE?8000の機能等を紹介するとともに,これを中核に据えたシステム拡張の一例として,電話回線を介した外部トレーサとLE?8000との結合等を開示するものである。
証拠(乙91の2)によれば,乙91甲1刊行物におけるLE-8000は,フレームトレーサが内蔵されて眼鏡フレーム枠の測定機能があるほか,フレームPDの自動計測等の演算機能とフレームカーブに合ったヤゲンカーブでヤゲン加工する機能等の玉摺機能を有していることが認められる。
このようなLE-8000の機能にかんがみると,乙91甲1刊行物にある外部フレームトレーサ(フレームリーダー)として求められたトレーサは,フレームの測定とその測定データの送信を行う機能のみを有するものに限定されているものと認められる。なぜなら,外部フレームトレーサで演算処理までを行うとすると,LE?8000が果たすべき機能は,加工機能とせいぜいその加工機能を果たすために必要な最低限の演算機能だけになってしまうことになるが,そうであればLABにはその程度の玉摺機を設置すれば足りることであり,わざわざLE?8000をLABに配置する利点はなくなってしまうからである。
(ウ)相違点?@,?D及び?Ga上記(イ)によれば,乙91甲1発明は,LE?8000は外部からフレームの測定データのみを受信するとの技術思想を開示しているものであるから,フレームの測定データに限定されない様々な情報を外部から受信しようとして,乙91甲1発明の「フレームデータを送信する機能を備えたフレームリーダー」を「コンピュータ」に置き換えることは,当業者であっても容易に想到することができたことではないというべきである。
そして,この置換を前提として,「発注側コンピュータ」に「眼鏡レンズ情報,3次元的眼鏡枠形状情報を含む眼鏡枠情報,処方値,及びレイアウト情報を含めた枠入れ加工をする上で必要となる情報を入力」すること,また,「発注側コンピュータ」が「3次元の枠データに基づいて,この3次元の座標値から算出された眼鏡枠のレンズ枠の周長,・・・眼鏡枠の傾きTILT,及びフレームPDを求め」ることも,容易に想到できたことではないことになる。
b証拠(乙91の7)によれば,乙91甲6刊行物(特開昭62-215814号公報)には,「〔2頁右上欄4〜7行〕測定データ処理装置200は,データ入力装置300,演算処理装置400,インターフェイス装置500,記憶装置600,表示装置700,を有する。」「〔3頁右下欄3〜5行〕インターフェイス装置500は,他の機械,例えば玉摺器800等とのデータの伝送を目的とするRS232C等で構成されている。」との記載があることが認められる。
この記載によれば,測定データ処理装置から,RS232C等のインターフェイス装置を介して,所定のデータが他の機械,すなわち測定データ処理装置とは別体の機械である玉摺器に伝送されるものとはいえるが,その記載からみて,眼鏡フレームの形状測定装置が接続された測定データ処理装置と玉摺器とが公衆通信回線で接続される程度に離れた場所に設置されていることを読み取ることは困難であり,測定データ処理装置と玉摺器とは,いずれも加工側にあると認められる。したがって,発注側で眼鏡枠情報を演算処理することが開示され,又は示唆されているとはいえない。
c証拠(乙91の10)によれば,乙91甲9刊行物(539)には,加工機側において手元に眼鏡フレームがない状態で,眼鏡店舗側コンピュータからの眼鏡枠形状情報データに基づいて,レンズ形状加工をする点が記載されていることが認められるが,そこにいう眼鏡枠形状データとは,フレームリーダが測定した動径データ(ρ,θ)又はこのデータを測定した測定機固有の誤差量で補正したものであることが認められるから,それ以外の演算は,すべて加工側で行われる発明であると認められる。
したがって,乙91甲9刊行物では,実質的には発注側から送信されるのは動径データにすぎず,それ以上の演算処理を眼鏡店舗側ですることが開示され,又は示唆されているとはいえない。
(エ)相違点?Cまた,上記(イ)からすると,発注側コンピュータのない乙91甲1発明にあっては,外部フレームトレーサは,単に公衆通信回線を通じて,加工側のLE-8000に接続されているとみるべきであるから,当業者であっても,この基本的構成を変えることは容易に想到することができたことではないというべきである。
オ小括以上のとおりであるから,訂正後の本件特許3に対する進歩性その3の主張は,理由がない。
(6)まとめ以上のとおり,仮に本件特許3に無効理由があるとしても,その訂正により無効理由を解消することができるから,被告主張の本件特許3の無効の主張(争点(16))は,理由がない。
6争点(21)(損害)(1)売上高証拠(乙93ないし95)及び弁論の全趣旨によれば,被告の平成16年5月から平成19年3月まで35か月間の玉型加工レンズの売上げ(レンズ代金 サポート加工代金)は,約22+億2988万6000円であることが認められる。
そこで,本件特許3が設定登録された平成16年4月23日から平成19年6月4日までの3年1か月と13日間の売上額は,次のとおり,23億8406万円であると推認され,これに反する証拠はない。
22億2988万6000(円)÷35(月)×37.42(月)?垂Q3億8406万円(2)実施料率ア証拠(甲1ないし4の各2,7,8,10の1〜5,18,19)及び弁論の全趣旨によれば,現在,眼鏡店のチェーン化による加工工場の集約化の方向とこれに応じるレンズメーカーによる加工サービスの提供により,通信玉型加工がレンズ供給手段として一定の地位を占めていること,また,これが,単なるアンカットレンズの販売よりもレンズ販売による付加価値を高めているとともに,顧客サービスをも高め,ひいては相応のレンズ売上げに貢献することとなっていることが認められる。
イまた,証拠(甲62)によれば,発明協会の「実施料率〔第5版〕」の「14.精密機械器具」によると,実施料率の平均値が平成4年度から平成10年度は,イニシャル有りが5.3%,イニシャル無しが6.8%であることが認められる。
ウしかしながら,被告システムの本件特許3の充足あるいは無効について前記4及び5に認定判断した事実及び弁論の全趣旨によれば,眼鏡店においてフレームトレーサで3次元データを測定して,その全データをメーカーに送ってメーカーにて演算処理をするのであれば,本件特許3を充足しない可能性があるところ,高速度大容量通信が発達した現在,技術面からみる限りはそのようなことが実現不能とはうかがわれず,結局,本件特許3には容易な代替技術が存するものというほかないこと,また,本件発明3の進歩性は否定し難いとしても,その程度は大きなものとはいえないこと,さらに,玉型通信加工実施するには,他の多くの特許を使用することが必要であることが認められる。
以上のほか,本件では,ヤゲンレンズ玉型加工代金だけでなく,ヤゲンレンズ代金を加えた額に相当実施料率を乗ずるものであること並びに本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,相当実施料率として,1%が相当である。
(3)算定以上から,実施料相当額は,次のとおり,2384万0600円と認めるのが相当であり,これをもって原告の損害とする。
23億8406万円×1%=2384万0600円7争点(22)(利得)について原告は,選択的に実施料相当額を不当利得としても請求しているが,被告が上記5で認定した損害額を超える利得を得たことを認めるに足りる証拠はない。
8結論(1)本件特許権1に基づく請求被告方法は,本件特許1の技術的範囲に含まれないから,本件特許権1に基づく当該方法により生産した製品の製造等の差止請求(請求第3項)及び当該方法により製造された製品の廃棄(請求第5項),当該方法の使用差止め(請求第2項)並びに損害賠償請求(請求第6項)は,いずれも理由がないから,これを棄却する。
(2)本件特許権2に基づく請求被告システムは,本件特許2の技術的範囲に含まれないから,本件特許権2に基づく差止請求(請求第1項)及び廃棄請求(請求第4項)並びに損害賠償請求(請求第6項)は,いすれも理由がないから,これを棄却する。
(3)本件特許権3に基づく請求ア差止請求(請求第1項)被告システムは,訂正後も本件特許3の技術的範囲に含まれ,無効理由はなく,本件特許3に基づく差止請求は,理由があるから,これを認容する。
イ廃棄請求(請求第4項)原告は,侵害予防措置として,被告システムを構成する端末コンピュータ,サーバー及びホストコンピュータの廃棄を求めるが,証拠(乙93,95)及び弁論の全趣旨によれば,これらコンピュータシステムがヤゲンレンズ供給のみに使用されているものでないこと,そして,ヤゲンレンズ供給に係る部分とその他レンズ供給に係る部分とは不可分一体のものであることが認められる。
よって,本件特許3に基づく廃棄請求は,著しく過剰な予防措置を求めるものであって,「侵害予防に必要な行為」とはいえず,理由がないから,これを棄却する。
ウ損害賠償請求(請求第6項)原告の損害賠償請求は,損害賠償金2384万0600円及びこれに対する平成19年6月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから,これを棄却する。
(4)本件特許権4に基づく請求被告システムは,本件特許4の技術的範囲に含まれないから,本件特許権4に基づく差止請求(請求第1項)及び廃棄請求(請求第4項)並びに損害賠償請求(請求第6項)は,いずれも理由がないから,これを棄却する。
(5)まとめよって,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を適用し,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)物件目録通信回線を利用した玉型加工レンズ受発注システムである「SAPOTSYSTEM(サポートシステム)」以上(別紙)被告方法目録眼鏡店によって指定された眼鏡フレームの周長,反り角,及びフレームPDなどの眼鏡フレームに関する情報を眼鏡店から通信回線を利用して受け取り,当該情報に基づき,ヤゲン加工を行い,眼鏡店にヤゲンが付いた眼鏡レンズを供給する玉型加工レンズの供給方法であり,被告の「SAPOTSYSTEM(サポートシステム)」で使用されている方法。
以上(別紙)被告製品目録以下の製品のうち,ヤゲンが付いた眼鏡レンズ。
1プラスチック累進屈折力レンズベルーナレガリアSJXベルーナレガリアJXベルーナレガリアSHXベルーナレガリアHXベルーナレアルJXベルーナレアルHXベルーナデセオJXベルーナデセオHXベルーナデセオCXベルーナクレスVJXベルーナクレスHXベルーナクレスCXベルーナクレスVサンセンサーベルーナウノHXベルーナウノCXベルーナラルゴGHXベルーナラルゴGJXベルーナラルゴHXベルーナラルゴCXレグ-フライトHX2ガラス累進屈折力レンズαナインデセオ3プラスチック単焦点レンズベルーナJX-ASベルーナJX-MUベルーナNX-ASベルーナUX-ASUVベルーナHX-ASUVベルーナHX-ASUVLLベルーナHX-ASベルーナHXUVベルーナHX-UVLLベルーナHXUVSHカラーベルーナHXUVLLSHカラーベルーナHXベルーナHXSHカラーベルーナHX-MUベルーナアスリート8HXカラーベルーナSR-ASベルーナASベルーナASUVベルーナベルーナSSベルーナサンセンサー(ブラウン・グレー)フライトワンHXアクト4ガラス単焦点レンズαナインEXASαナインEXαナインEXNCαライトASαライトαライトNCニューハイライトホワイトエクストラグレーエクストラブラウンエクストラRB-G15RB-G31カラーコートRB-G31RB-♯3RB-8カーブ5プラスチックバイフォーカルレンズベルーナHXUVB-25ベルーナHXUVB-28ベルーナHXUVGF16ベルーナCB-25ベルーナCB-28ミディーミディーSP6ガラスバイフォーカルレンズWXB-25SB-25SB-25BX(ブラウンエクストラ)SB-28以上
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 中村恭
裁判官 宮崎雅子