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関連審決 不服2002-6450
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10212審決取消請求事件 判例 特許
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平成21行ケ10068審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 物の発明 /  方法の発明 /  生産方法の発明 /  製造方法 /  物を生産する方法 /  発明特定事項 /  技術常識 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  発明が明確 /  単一性 /  技術的特徴 /  優先権 /  参酌 /  技術的意義 /  実施 /  加工 /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  拒絶理由通知 /  請求の範囲 /  特許協力条約 /  国際出願 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10075号 審決取消請求事件
原告ネクシスファイバーズアーゲー
訴訟代理人弁理士杉村憲司,藤谷史朗
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人石井淑久,鴨野研一,唐木以知良,森山啓
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/11/13
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が不服2002-6450号事件について平成18年10月6日にした審決を取り消す。」との判決第2事案の概要本件は,原告が,特許の拒絶査定不服審判請求について,審判請求不成立の審決を受けたため,同審決の取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(乙第1号証の1,3)出願人:ローディアフィルテックアーゲー(原告の旧商号)出願日:平成10年1月12日(国際出願)優先権主張日:1997年(平成9年)1月20日,スイス国発明の名称:「エアバッグのための工業用織物」拒絶査定日:平成13年12月28日審判請求日:平成14年4月15日(不服2002-6450号)拒絶理由通知日:平成18年2月3日手続補正日:平成18年8月7日(以下「本件補正」という。)審決日:平成18年10月6日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成18年10月24日2特許請求の範囲の記載審決が判断の対象としたのは,本件補正後の明細書(以下「本願明細書」という。)に係る特許請求の範囲の請求項1,2であり,その記載は以下のとおりである(なお,請求項の数は2個である。)。
「【請求項1】ポリアミド製工業用織物であって,熱可塑性の太い繊維および細い繊維を具えるフィラメント糸からなり,このフィラメント糸の線密度が30〜1000dtexの織物において,前記糸の前記太い繊維の線密度が5〜14dtexであり,前記細い繊維の線密度が 1.5〜5dtexであって,前記糸の前記太い繊維および前記細い繊維を1:1〜1:5の混合比率で混合し,この多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせたことを特徴とする工業用織物。
【請求項2】請求項1記載の織物のためのフィラメント糸の製造方法において,太い繊維のための孔(11)および細い繊維のための孔(12)を,交互に並べて配置した紡糸口金を用いることを特徴とするフィラメント糸の製造方法。」3審決の理由の要旨審決は,請求項1に係る発明は明確であるとはいえないから,本件特許出願は,特許法36条6項2号(平成14年法律第24号による改正前のもの。以下,同項につき同じ。)に規定する要件を満たさず,また,請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明は,いずれを特定発明としても,他方が同法37条(平成15年法律第47号による改正前のもの。以下,「旧37条」という。)各号に掲げる要件に該当するものではないから,本件特許出願は,同条に規定する要件を満たさないとした。
審決の,特許法36条6項2号及び旧37条の各該当性についての判断の部分は以下のとおりである(略称を本判決が指定するものに改めた部分がある。)。
(1)本件補正後の明細書の記載事項「当審の拒絶理由に対して,本件出願人が平成18年8月7日付けで提出した手続補正書によって補正された明細書(本願明細書)の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の欄には,次のとおり記載されている。
【特許請求の範囲】において,「(判決注:上記2の請求項1,2のとおりであるから,省略)」発明の詳細な説明の欄において,「【0009】多重繊維を絡み合わせて用いることがさらに有利であり,1メートル当たり25〜40node空気で絡み合わせることが最も適切である。」「【0010】混合糸は,紡糸口金を通した溶融紡糸により製造され,紡糸口金には太い繊維のための孔と細い繊維のための孔が交互に並べて配置されている。これは,太い繊維と細い繊維の混合を絡み合わせの前に行う際に有利である。・・・」「【0014】【表1】項目欄に,「結節数(nodes/m)」」(2)特許法36条6項2号該当性について「拒絶理由・・・において,「請求項1の「この多重繊維に空気を1m当たり5〜40nodes巻き込ませたこと」との発明特定事項に関し,この出願の願書に最初に添付した明細書の「多重繊維を撚り合わせて用いることがさらに有利であり,1メートル当たり空気を25〜40nodes巻き込ませることが最も適切である。混合糸は,紡糸口金を通した溶融紡糸により製造され,紡糸口金には太い繊維のための孔と細い繊維のための孔が交互に並べて配置されている。これは,太い繊維と細い繊維の混合を撚り合わせの前に行う際に有利である。」(第3頁7〜11行)及び「撚り(nodes/cm)」が「30」(第4頁,表1)との記載を参酌したとしても,前記「多重繊維に空気を・・・巻き込ませたこと」との発明特定事項の技術的事項が不明であり,また,実施例の「撚り」の項目の単位表記から,当該記載が「撚り合わせること」ないし「撚り」と同義であるとも解されるが,発明の詳細な説明の記載を参酌しても「撚り」であるとも明らかとはいえず,さらに,「nodes」(node)の単位の意味及びその測定方法が,不明であるから,請求項1の前記発明特定事項の技術的事項が理解できない。」旨指摘しているものである。
上記拒絶の理由の指摘に対し,請求人は上記・・・のとおり,請求項1に係る発明特定事項を補正して,補正事項(a)「この多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせたこと」を発明特定事項とするとともに,本願明細書の段落【0009】,段落【0010】及び段落【0014】のとおり補正するものである。
ところで,上記補正事項(a)の「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載は,「25〜40」の数値の単位が何か不明であり,また,数値が「絡み合い」の何をカウントしたものか,さらに,その測定方法についても記載がなく,数値自体の意味するところが不明である。
そして,「1m当たり25〜40絡み合わせた」(a1)とは,前後の記載から「多重繊維を絡み合わせた」その絡み合わせた内容を規定していると解せるが,「多重繊維を絡み合わせた」(a2)とは,多重繊維が絡み合っているということか,多重繊維を構成している太い繊維,細い繊維が絡み合わさっているということか,また,「絡み合わせる」のに空気を用いていることは明らかであるが,空気の適用の仕方,強さなど「絡み合わせる」方法が記載されていないため,「絡み合わせた」とはどのようにどの程度絡み合わさっていることなのか不明であり,絡み合わせた状態が特定できず,さらに,「絡み合わせた」ことをどのように測定したのかその測定方法も記載がないため1m当たり25〜40絡み合わせたとはどのような状態のものをいうのかも不明である。
以上のとおり,(a2)の点が如何なることを意味するのか又は如何なる状態となることなのか,さらには,(a1)の点も特定できず,結局,補正事項(a)が明確ではない。
ところで,本願明細書によれば,「25〜40」の数値は「25〜40node」という意味であると伺われ,「node」は「結節」という用語で表される内容を意味するものであると解され,一応,「25〜40」の数値は1メートル当たりに存在する結節数を意味し,本願明細書には「25〜40結節絡み合わせた」ことが記載されているということができる。しかしながら,請求項1には上記補正事項(a)としか記載されておらず,上記したとおり補正事項(a)は不明である。例え,「25〜40絡み合わせた」との記載の「絡み合わせた」が「結節」を意味するとしても,「結節」が絡み合わせたどのような状態を意味するものか特定できず,また,そのような結節の数をどのように測定するのか記載がなく,やはり,絡み合わせた状態が不明であり,依然として,発明が明確であるとはいえない。
また,本件請求人は,平成18年8月7日付けで提出した意見書において,「すなわち,「node(s)」という語句は,フィラメント糸の製造技術分野の当業者には,エアー交絡(フィラメント糸に空気を吹き付けてフィラメントの絡み合いを部分的に発生させる加工)によりフィラメントが絡み合った部分である「結節」を意味することは良く知られています。この「node(s)」を記述する他の言葉は「knot(s)」すなわち結び目であり,エアー交絡方法,node計測方法および装置は,当業者に良く知られています」と主張している。
しかしながら,主張の根拠となる資料等を何ら示すこともなく,しかも,「エアー交絡」によりフィラメント糸を「交絡」させ,嵩高な繊維としたり,繊維を不織布状にする技術が知られているところであるが,上記のとおり請求項の「多重繊維を1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載の本願発明にいう「絡み合わせた」との記載が,発明の詳細な説明の欄の「25〜40node空気で絡み合わせた」との記載と一致しておらず,請求項にいう「絡み合わせた」が,単に嵩高な繊維とする「交絡」や不織布を製造する時のエアを使ったニードリングによる「交絡」といった意味の「交絡」を意味しているものか,「結節」というこの用語の意味するところ自体明確ではない「結節」なるものを生じさせるように「絡み合わせ」たことを意味しているものか,記載からは明確ではなし,「交絡」と「結節」が同じものであるなどとは到底認めることはできないから,やはり,補正事項(a)の点は明確であるとはいえない。
さらに,「25〜40絡み合わせた」が,「多重繊維」に「1m当たり25〜40」の「結節」を生じさせるという意味であったとしても,「1m当たり25〜40」の「結節」を生じさせる方法および装置,その「結節」の測定方法および装置等については,本件出願人の主張によっても,また,本願明細書の記載をみても依然として不明である。
以上のとおりであるから,「1m当たり25〜40」あるものが「絡み合わせ」であるか,また,該「絡み合わせ」とは具体的には何を意味するものであって,それは計数できるものか,さらには,その測定する方法も不明であるから,上記発明特定事項が不明であるので,結局,本件請求項1に係る発明が依然として明確ではない。」(3)特許法旧37条該当性について「本願の請求項1に係る発明(「特定発明」ともいう)は,「工業用織物」に係る物の発明である。これに対して,本件請求項2に係る発明は「請求項1記載の織物のための」と特定しているものの「フィラメント糸の製造方法」に係る発明であり,特定発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明とも,特定発明と産業上の利用分野及び請求項に記載する事項の主要部が同一である発明ともいえない。
また,本件請求項2に係る「フィラメント糸の製造方法」の発明は,前記特定発明に係る「工業用織物」を製造する方法ではないし,また,その特定発明の「工業用織物」を使用する方法の発明,その「工業用織物」を取り扱う方法の発明,その「工業用織物」を生産する機械,器具,装置その他の物の発明,その「工業用織物」の特定の性質を専ら利用する物の発明又はその「工業用織物」を取り扱う物の発明のいずれにも当たらない。
したがって,いずれを特定発明にしても,特許法旧37条各号に掲げられた要件に該当するものとはいえないから,一の願書で特許出願をすることができるものとはいえない。」第3当事者の主張の要点1原告主張の審決取消事由(1)取消事由1(特許法36条6項2号該当性判断の誤り)ア審決は,本件補正における「補正事項(a)」である,請求項1の「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載のうち,「「1m当たり25〜40絡み合わせた」(a1)とは,前後の記載から「多重繊維を絡み合わせた」その絡み合わせた内容を規定していると解せるが,「多重繊維を絡み合わせた」(a2)とは,多重繊維が絡み合っているということか,多重繊維を構成している太い繊維,細い繊維が絡み合わさっているということか,また,「絡み合わせる」のに空気を用いていることは明らかであるが,空気の適用の仕方,強さなど「絡み合わせる」方法が記載されていないため,「絡み合わせた」とはどのようにどの程度絡み合わさっていることなのか不明であり,絡み合わせた状態が特定できず,さらに,「絡み合わせた」ことをどのように測定したのかその測定方法も記載がないため1m当たり25〜40絡み合わせたとはどのような状態のものをいうのかも不明である。」(3頁21行〜31行)として,結局,補正事項(a)が明確ではないとした。
しかしながら,審決は,「本願明細書によれば,「25〜40」の数値は「25〜40node」という意味であると伺われ,「node」は「結節」という用語で表される内容を意味するものであると解され,一応,「25〜40」の数値は1メートル当たりに存在する結節数を意味し,本願明細書には「25〜40結節絡み合わせた」ことが記載されているということができる。」(3頁35行〜4頁1行)として,本願明細書に「1m当たり25〜40結節絡み合わせた」ことが記載されていることを認定し,また,原告の,「「node(s)」という語句は,フィラメント糸の製造技術分野の当業者には,エアー交絡(フィラメント糸に空気を吹き付けてフィラメントの絡み合いを部分的に発生させる加工)によりフィラメントが絡み合った部分である「結節」を意味することは良く知られています。・・・エアー交絡方法,node計測方法および装置は,当業者に良く知られています」との主張を引用した(4頁9行〜15行)上,「「エアー交絡」によりフィラメント糸を「交絡」させ,嵩高な繊維としたり,繊維を不織布状にする技術が知られているところである」(4頁17行〜18行)とも認定しているのであるから,補正事項(a)の「絡み合わせた」が「結節」を生じさせたことを意味し,その「結節」がエアー交絡(空気交絡,Air-Entanglement)によって絡み合わせた箇所(node)を意味することを十分認識しているものである。
そして,請求項1に係る発明は,「フィラメント糸の太い繊維および細い繊維を1:1〜1:5の混合比率で混合し,この多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」構成であるところ,「フィラメント糸の繊維」を「空気で1m当たり25〜40絡み合わせる」との表現に接した場合,当業者は,「25〜40」との数値が,空気交絡によって絡み合わせた箇所(node)の数,すなわち,空気交絡における「交絡度」を表すと理解するものであり,また,明細書の記載から,そのことは,当業者に明らかである。
イまた,審決は,「「25〜40絡み合わせた」が,「多重繊維」に「1m当たり25〜40」の「結節」を生じさせるという意味であったとしても,「1m当たり25〜40」の「結節」を生じさせる方法および装置,その「結節」の測定方法および装置等については,本件出願人の主張によっても,また,本願明細書の記載をみても依然として不明である。」(4頁29行〜33行)とするが,「1m当たり25〜40」の「結節」すなわち「交絡」を,多重繊維を空気で絡み合わせて生じさせる「エアー交絡(空気交絡)」の方法及び装置は,例えば「繊維の百科事典」の「交絡」の項(甲第2号証)に記載されているように当業者には周知である。また,その「結節」すなわち「交絡」の測定方法は,例えば「JISハンドブック繊維」中の「JIS L 1013」の「交絡度」の項(甲第3号証)に記載されているように「針法」が一般的なものであり,測定装置についても,優先権主張日当時は,ロスチャイルド社製のものが一般的であって,これらは当業者にとって周知である。
したがって,請求項1に係る発明が明確でないとした審決の判断は誤りである。
(2)取消事由2(特許法旧37条該当性判断の誤り)ア審決は,「本願の請求項1に係る発明(「特定発明」ともいう)は,「工業用織物」に係る物の発明である。これに対して,本件請求項2に係る発明は「請求項1記載の織物のための」と特定しているものの「フィラメント糸の製造方法」に係る発明であり,特定発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明とも,特定発明と産業上の利用分野及び請求項に記載する事項の主要部が同一である発明ともいえない。
また,本件請求項2に係る「フィラメント糸の製造方法」の発明は,前記特定発明に係る「工業用織物」を製造する方法ではないし,また,その特定発明の「工業用織物」を使用する方法の発明,その「工業用織物」を取り扱う方法の発明,その「工業用織物」を生産する機械,器具,装置その他の物の発明,その「工業用織物」の特定の性質を専ら利用する物の発明又はその「工業用織物」を取り扱う物の発明のいずれにも当たらない。
したがって,いずれを特定発明にしても,特許法第37条第1項各号に掲げられた要件に該当するものとはいえないから,一の願書で特許出願をすることができるものとはいえない。」(5頁3行〜17行)として,請求項1に係る発明と請求項2に係る発明との間に単一性は認められないと判断した。
イしかしながら,特許法旧37条は,平成15年法律第47号により,以下のように改正された。
第37条二以上の発明については,経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは,一の願書で特許出願をすることができる。」そして,ここでいう「経済産業省令で定める技術的関係」とは,特許法施行規則25条の8が定めるところであり,以下のとおりである。
「第三十7条の経済産業省令で定める技術的関係とは,二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより,これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
2前項に規定する特別な技術的特徴とは,発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。」これを請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明に当てはめると,審査官による平成13年7月9日付け拒絶理由通知において示された先行技術(特開平8-325888号公報)は,本願発明1における細い繊維よりも約1/10の太さの細い繊維と,太い繊維とを混ぜ合わせた混合糸を用いたエアバッグ用織物であったから,請求項1に係る発明における「細い繊維の線密度が1.5〜5dtex」である点が「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴(特別な技術的特徴)」であるといえる。
このように,請求項1に係る発明は,細い繊維でも先行技術の10倍の線密度があるため,請求項2に係る発明のように「紡糸口金に太い繊維のための孔と細い繊維のための孔を交互に並べて配置」する構成でも孔が詰まらなくなり,従来は困難であった溶融紡糸による混合糸の製造が可能になったのであるから,請求項2に係る発明における「紡糸口金に太い繊維のための孔と細い繊維のための孔を交互に並べて配置」する構成も,「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴(特別な技術的特徴)」であるというべきであって,請求項2に係る発明は,先行技術との対比において発明が有する技術上の意義が請求項1に係る発明と共通しており,両発明は「対応する特別な技術的特徴」を有し,単一の一般的発明概念を形成するように連関している。
なお,特許法旧37条1〜5号所定の単一性を有する発明の類型は例示であって,発明の単一性が認められる場合が,これに限られるものではない。平成15年法律第47号による特許法37条の改正の趣旨は,特許法における発明の単一性の概念を,特許協力条約における発明の単一性の概念に合わせて,特許制度の国際的調和を図ることにあったから,国際出願に係る本件特許出願については,上記改正後の規定が斟酌されるべきである。
ウまた,以下のとおり,請求項1に係る発明を特定発明とした場合に,請求項2記載の発明は,特許法旧37条3号所定の「その特定発明が物の発明である場合において,その物を生産する方法の発明」に該当するから,請求項1に係る発明と請求項2に係る発明との間には単一性が認められる。
すなわち,請求項1に係る発明の目的は,軽量かつ柔軟で,それにもかかわらず改良された引っ張り強さ,特に改良された引き裂き強さを示す,低通気性の織物を提案することにあり(本願明細書段落【0005】〜【0009】),その目的は,フィラメント糸の太い繊維が5〜14dtexの線密度,細い繊維が1.5〜5dtexの線密度を有し,それら太い繊維と細い繊維とを1:1〜1:5の混合比率で混合し,この多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせることにより達成される。他方,請求項2に係る発明の目的は,上記フィラメント糸の製造方法を提案することにあり(本願明細書段落【0005】),ひいては請求項1に係る発明である織物の製造方法を提案することにある。そして,関連発明が,特許法旧37条3号所定の「その特定発明が物の発明である場合において,その物を生産する方法の発明」に該当するかどうかは,当該生産方法が,当該物の生産に適しているかどうかによって定まるものとされているところ,請求項2に係る発明の「請求項1記載の織物のためのフィラメント糸の製造方法において,太い繊維のための孔(11)および細い繊維のための孔(12)を,交互に並べて配置した紡糸口金を用いる」との構成は,請求項1に係る発明において,フィラメント糸の太い繊維と細い繊維とを,絡み合わせの前に混合するのに有利であり(本願明細書段落【0010】),したがって,請求項2に係る生産方法の発明は,請求項1に係る物の発明の生産に適しているから,請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明を特定発明とした場合に,特許法旧37条3号所定の「その特定発明が物の発明である場合において,その物を生産する方法の発明」に該当するものである。
2被告の反論(1)取消事由1(特許法36条6項2号該当性判断の誤り)に対してア原告は,審決が,本願明細書に「1m当たり25〜40結節絡み合わせた」ことが記載されていることを認定したと主張するところ,審決に,被告の引用する説示があることは,そのとおりであるが,そうであるからといって,補正事項(a)が明確であるわけではない。審決は,上記認定に続けて,「例え,「25〜40絡み合わせた」との記載の「絡み合わせた」が「結節」を意味するとしても,「結節」が絡み合わせたどのような状態を意味するものか特定できず,また,そのような結節の数をどのように測定するのか記載がなく,やはり,絡み合わせた状態が不明であり,依然として,発明が明確であるとはいえない。」と判断しているのである。
また,原告は,原告の「「node(s)」という語句は,フィラメント糸の製造技術分野の当業者には,エアー交絡(フィラメント糸に空気を吹き付けてフィラメントの絡み合いを部分的に発生させる加工)によりフィラメントが絡み合った部分である「結節」を意味することは良く知られています。・・・エアー交絡方法,node計測方法および装置は,当業者に良く知られています」との主張に対する審決の応答の一部である「「エアー交絡」によりフィラメント糸を「交絡」させ,嵩高な繊維としたり,繊維を不織布状にする技術が知られているところである」との説示を捉え,審決が,補正事項(a)の「絡み合わせた」が「結節」を生じさせたことを意味し,その「結節」がエアー交絡(空気交絡,Air-Entanglement)によって絡み合わせた箇所(node)を意味することを十分認識しているなどと主張する。
しかしながら,上記説示を含めた審決の上記原告の主張に対する応答が,?@原告の上記主張は根拠となる資料を欠いていること,?A補正事項(a)の「絡み合わせた」が,繊維の嵩高や不織布を形成する技術を意味するものとして通常に使われている「交絡」のことか,「結節(node)」なるものを生じさせるように「絡み合わせた」ことを意味するものであるかが明確でないこと,?B「交絡」と「結節」が同じものであるとは認められないこと,?C「結節」を生じさせる方法及び装置,さらにはその測定方法について不明であることなどを挙げて,補正事項(a)が明確ではないとしているものであることは,審決の記載上明らかである。
さらに,原告は,請求項1に係る発明の構成である「フィラメント糸の繊維」を「空気で1m当たり25〜40絡み合わせる」との表現に接した場合,当業者は,「25〜40」との数値が,空気交絡によって絡み合わせた箇所(node)の数,すなわち,空気交絡における「交絡度」を表すと理解するものであり,また,明細書の記載から,そのことは,当業者に明らかであると主張する。
しかしながら,本願明細書においては,「結節(node)」との用語の定義や,その計測方法及び計測のための装置等について,何ら記載がなく,「結節(node)」がどのような技術的意味合いを有するのか,曖昧なままであり,「絡み合わせた」ことが「結節」を生じさせたことを意味するとか,「結節(node)」が,エアー交絡によって絡み合わせた箇所を意味する等の記載もない。これらのことが,当業者に明らかであることを示す証拠もない。さらに,本願明細書では,「交絡」との用語は全く用いられていない。したがって,原告の上記主張は全く根拠のないものである。
イ原告は,「繊維の百科事典」の「交絡」の項(甲第2号証)を挙げて,「結節」すなわち「交絡」を多重繊維を空気で絡み合わせて生じさせる「エアー交絡(空気交絡)」の方法及び装置は,当業者に周知であると主張するが,失当である。
すなわち,甲第2号証に記載されているのは,周知の「交絡」といえる方法及び装置であり,これに対して,請求項1に記載された「絡み合わせ」は,「結節(node)」と認められるものを生じさせる方法及び装置である。それにもかかわらず,本願明細書には,「結節(node)」が生じていると認められる「交絡」がどのようなもので,どのように形成し,どのように「結節(node)」を測定するのか等について記載がないのであるから,補正事項(a)は,やはり明確とはいえない。
さらに,原告は,JIS規格を挙げて,「交絡」の測定方法及び装置が周知であると主張するが,本件発明の出願は,スイス国出願を基に優先権主張した国際出願であり,本願明細書には,測定方法の規格は「DIN」であることが明示されているから(段落【0016】),当然,JIS規格という日本の規格を適用してなされた測定であるはずがない。
しかも,本願明細書において,測定方法として挙げられている「DIN」の種類には,「交絡」に関連する方法及び装置,並びに「交絡」の測定方法及び装置に関する規格が挙げられていないし,明細書中に「交絡」に関する測定方法の規格を使用したとの記載もなければ,「交絡」に関する測定方法の規格の内容がJISと同じであることを窺わせる記載もないから,原告の主張は失当である。
仮に,「交絡度」により,「結節(node)」が表現されるものであったとしても,上記甲第2号証に「糸条を走行させながら自動的に交絡度を測定する装置も開発されている.」(542頁本文左欄15〜16行)と記載されていること,また,乙第2〜第8号証によると,多数の異なる交絡度の測定方法が知られていることからすれば,「JISハンドブック繊維」に「JIS L 1013」の交絡度の測定方法があるとしても,本願発明の「結節」が,その測定方法によって測定されたことを示す記載は本願明細書になく,そうである根拠を示すところもないのであるから,結局,補正事項(a)の意味内容は不明確であるといわざるを得ない。
(2)取消事由2(特許法旧37条該当性判断の誤り)に対してア原告は,平成15年法律第47号による改正後の特許法37条の規定及びこれに基づく特許法施行規則25条の8の規定に基づいて,請求項1に係る発明と請求項2に係る発明との間に単一性が認められると主張するが,本件特許出願は,平成10年1月12日の国際出願に係るものであり,上記特許法37条の改正に関しては,「なお従前の例による」とされ(平成15年法律第47号附則2条),同改正前の規定(旧37条)が適用されるのであるから,原告の上記主張は失当である。
イまた,原告は,請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明を特定発明とした場合に,特許法旧37条3号所定の「その特定発明が物の発明である場合において,その物を生産する方法の発明」に該当するものであると主張するが,争う。
第4当裁判所の判断1取消事由1(特許法36条6項2号該当性判断の誤り)について(1)本願明細書の特許請求の範囲の請求項1には,補正事項(a)に係る「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載があるが,「25〜40」には単位が付されていないから,この数値の意味が特許請求の範囲の記載から一義的に明確であるということはできず,ひいて,「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との構成の技術的意義が明確ではない。
(2)本願明細書の発明の詳細な説明には,多重繊維を絡み合わせることに関連する次の記載がある。
ア「多重繊維を絡み合わせて用いることがさらに有利であり,1メートル当たり25〜40node空気で絡み合わせることが最も適切である。」(段落【0009】)イ「混合糸は,紡糸口金を通した溶融紡糸により製造され,紡糸口金には太い繊維のための孔と細い繊維のための孔が交互に並べて配置されている。これは,太い繊維と細い繊維の混合を絡み合わせの前に行う際に有利である。通常,単一のポリマーが用いられる。」(段落【0010】)ウ「結節数(nodes/m)」(段落【0014】【表1】中の項目欄)(3)上記(2)の各記載によれば,請求項1の「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載に係る「25〜40」は,「25〜40node」のことであること,「node」は「結節数」の単位であり,「1m当たり25〜40」は,「1m当たり25〜40個の結節」との意味であることを,一応読み取ることができる。
しかしながら,上記のように読み取ることは,発明の詳細な説明の記載を参酌して初めて可能となったことであり,特許請求の範囲の請求項1自体としては,「特許請求の範囲の記載が,特許を受けようとする発明が明確であるものでなければならない」とする特許法36条6項2号所定の要件に適合しないものといわざるを得ない。
のみならず,その点を措き,請求項1の記載から,「1m当たり25〜40」が「1m当たり25〜40個の結節」の意味であることが読み取れるものと仮定しても,本願明細書には,上記段落【0014】の【表1】以外には,「結節」ないし「結節数」に関する記載が見当たらず,そうであれば,請求項1に係る発明において,「結節」がどのようなもので,多重繊維を空気で1mあたり25〜40個の「結節」を絡み合わせるとは,どのような方法・装置により,どのような状態にすることであるのか,また,「結節」の個数の測定は,どのような方法・装置によって行うのか等が明らかとはいえず,請求項1の「多重繊維を空気で1m当たり25〜40絡み合わせた」との記載は,なお明確でないといわなければならない。
(4)この点につき,原告は,「1m当たり25〜40」の「結節」すなわち「交絡」を,多重繊維を空気で絡み合わせて生じさせる「エアー交絡(空気交絡)」の方法及び装置は,当業者に周知であり,また,「交絡」の個数の測定方法は「針法」によることが,その装置はロスチャイルド社製のものが一般的であって,そのことも当業者に周知であるから,請求項1が明確でないことはない旨主張する。
しかるところ,この主張は,「結節」との用語が,「交絡」との用語と同義であることを前提とするので,まず,その点につき,検討する。
ア結節について(ア) 上記のとおり,本願明細書には,段落【0014】の【表1】内の「結節数(nodes/m)」との記載以外には,「結節」ないし「結節数」に関する記載が見当たらない。
(イ) 平成3年11月15日株式会社岩波書店発行の「広辞苑第4版」(810頁)には,「結節」について,「むすぼれて節ができること。また,その節。・・・」,「結節点」について,「つなぎ合わされた部分。結び目。」との記載がある。
(ウ) 昭和48年2月10日丸善株式会社発行の「繊維便覧-加工編-」には,「6・2漁網」の項目中に「網目は網糸を互いに結び合わせた4個の結節(結び目)と・・・」との記載がある。
イ交絡について(ア) 本願明細書には,「交絡」に関する記載は全く見当たらない。
(イ) 平成14年3月25日丸善株式会社発行の「繊維の百科事典」(甲第2号証)には,「交絡」について,「マルチフィラメントの構成単糸相互の絡まりによって集束性を与えられた状態.撚(より)をかけることが,集束性を確実に与える方法として古くから広く用いられているが,撚糸(ねんし)機を用いた撚かけ工程は生産性が低いので,撚の代替に交絡が用いられることが多い.交絡は一般に,ノズルから噴射される高速気流の作用により,走行する繊維束のフィラメントをかく乱・開繊し,繊維相互の配列を乱すことによって形成される・・・.交絡度の評価はJIS L 1013に具体的に規定されているが,繊維束を二分するように一定の荷重フックをかけ,フックの移動距離から求める.すなわち,交絡のかかっていない(開繊)部分の長さを求め,その逆数を交絡度とする.糸条を走行させながら自動的に交絡度を測定する装置も開発されている.」(541頁右欄32行〜542頁左欄16行)との記載がある(なお,この刊行物は,本件出願に係る優先権主張日より4年余り後に発行されたものであるが,その百科事典としての性格上,掲載項目についての解説事項は,発行日当時,強固な技術常識を形成していたものと推認され,そうであれば,翻って,本件出願に係る優先権主張日においても,当該解説事項は,当業者に周知の事項であったものと推認される。)。
(ウ) 平成2年4月20日財団法人日本規格協会発行の「JISハンドブック繊維1990」(甲第3号証)には,「交絡度」について,「試料の一端を適当な性能を有する垂下装置の上部つかみに取り付け,つかみ部より1m下方の位置におもりをつり下げ,試料を垂直に垂らす。試料の上部つかみより1cm下部の点に糸束を2分割するようにフックを挿入する。フックの他端に所定荷重を取り付け,約2cm/秒の速度でフックを下降させる。フックが糸の絡みにより停止した点までのフックの下降距離を求め,次の式により交絡度を求める。試験回数は50回とし,その平均値で表す(小数点以下1けたまで)。
1000交絡度=Lここに,L:フックが下降した距離(mm)」との記載がある。
ウ上記ア及びイによると「結節」が「結び目」を意味するものであるのに対し,「交絡」とは「撚り」のように「多重繊維に集束性が与えられた状態」のことを意味するものと認められるから,「交絡」と「結節」とは全く異なる概念であることが明らかである。
そうすると,「結節」が「交絡」と同義であること,したがって,「結節数」は「『交絡』の数」であることを前提とする原告の主張は,技術的に合理性を有しないものといわざるを得ず,失当である。
(5)なお,この点に関し,原告は,審決の「「エアー交絡」によりフィラメント糸を「交絡」させ,嵩高な繊維としたり,繊維を不織布状にする技術が知られているところである」との説示を挙げて,審決が,補正事項(a)の「絡み合わせた」が「結節」を生じさせたことを意味し,その「結節」が,エアー交絡(空気交絡,Air-Entanglement)によって絡み合わせた箇所(node)を意味することを十分認識していると主張する。
しかしながら,審決に,原告主張に係る説示があることはそのとおりであるが,当該説示は,審判における原告の「「node(s)」という語句は,フィラメント糸の製造技術分野の当業者には,エアー交絡(フィラメント糸に空気を吹き付けてフィラメントの絡み合いを部分的に発生させる加工)によりフィラメントが絡み合った部分である「結節」を意味することは良く知られています。・・・エアー交絡方法,node計測方法および装置は,当業者に良く知られています」との主張に対する応答の一部であって,当該応答は,全体として,本願明細書に記載された,「結節(node)」を生じさせるように「絡み合わせ」ることと,繊維の嵩高や不織布を形成する技術を意味する用語として,通常に使われている(当業者に知られている)「交絡」とが,同一事項を指すと解することはできないとするものであることは,審決の記載上,極めて明白であり,したがって,審決が,原告の主張するような「認識」を有するものではないから,上記原告の主張を採用することはできない。
また,原告は,「フィラメント糸の繊維」を「空気で1m当たり25〜40絡み合わせる」との表現に接した場合,当業者は,「25〜40」との数値が,空気交絡によって絡み合わせた箇所(node)の数,すなわち,空気交絡における「交絡度」を表すと理解するものであるとも主張するが,当業者が,そのように理解することを認めるに足りる証拠はない。
(6)上記のとおり,原告の主張は,その前提において失当であるが,1997年(平成9年)に発行されたGupta外著の教科書である「Manufactured FibreTechnology」(甲第10号証)には,「フィラメント糸の交絡特性を決定するのに使用できる方法には様々なものがある。・手動針法・・・。・自動針法・・・。静電法・・・。自動厚み測定・・・。」(訳文1頁21行〜29行)との記載があり(なお,この刊行物の発行日と本件出願に係る優先権主張日との先後関係は明らかではないが,仮に,本刊行物の発行が後であったとしても,上記優先権主張日との差は1年以内であり,かつ,本刊行物が教科書であることや,上記引用に係る記載事項の内容に照らすと,上記記載事項は,上記優先権主張日においても,妥当するものであったものと推認される。),いずれも本件出願に係る優先権主張日前の文献である乙第2〜第13号証の各公報には様々な交絡度又は交絡数の測定方法が示されていることからすると,上記優先権主張日において,交絡度又は交絡数の測定方法について,何ら特定しなくても「針法」によると考えるのが一般的であると認めることはできない。また,測定装置についても,上記乙第2,第6,第11及び第13号証の各公報にはロスチャイルド社製以外の測定装置が記載されており,上記優先権主張日当時において,当業者が交絡度の測定装置として同社製のものを想定するのが技術常識であるということは到底できない。
したがって,原告の上記主張は,これらの点においても失当である。
2以上によると,取消事由1は理由がなく,本件特許出願は特許法36条6項2号の要件を満たしていないとの審決の判断は正当であるから,取消事由2について判断するまでもなく,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 石原直樹
裁判官 古閑裕二
裁判官 杜下弘記
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