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関連審決 不服2003-24656
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19行ケ10098審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 頒布された刊行物 /  インターネット /  アクセス /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  一致点の認定 /  寄せ集め /  発明の詳細な説明 /  参酌 /  技術的意義 /  置換 /  実施 /  混同 /  拒絶査定 /  変更 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10502号 審決取消請求事件
原告飛島建設株式会社
訴訟代理人弁理士伊藤儀一郎
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人濱野隆,森川元嗣,森山啓,二宮千久
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/11/13
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が不服2003−24656号事件について平成18年9月25日にした審決を取り消す。
訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判主文と同旨の判決第2事案の概要本件は,原告がした後記特許出願(以下「本願」という。)に対し拒絶査定があったため,これを不服として審判請求をしたが,同請求は成り立たないとの審決がされたため,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯(1)本願(甲5)出願人:原告発明の名称:「写真測量サービスシステム」出願番号:特願2000-381509号出願日:平成12年12月15日拒絶査定日:平成15年11月14日付け(2)審判請求手続等審判請求日:平成15年12月19日(不服2003-24656号)手続補正日:平成18年8月18日(甲12。以下「本件補正」という。)審決日:平成18年9月25日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」審決謄本送達日:平成18年10月13日2本件補正後の請求項1の記載審決が対象とした本件補正後の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,この請求項に係る発明を「本願発明」という。)。
【請求項1】「顧客端末(8)と写真測量サービス業者の解析用コンピュータとが通信回線網により接続され,写真測量サービス業者の解析用コンピュータは,複数の測点(2-1,2-2,・・・2-n)を有する測量対象(4)を複数の地点から非測定用の市販のデジタル・カメラ(6)で焦点固定にて,顧客自身が撮影して得た複数枚の画像情報及び前記画像情報の中で長さが既知の被写体から得られた長さの情報とを,前記撮影した顧客の顧客端末(8)から通信回線網(10)を介して受信する画像情報受信手段(12)と,前記受信した複数枚の画像情報及び前記長さ情報から,カメラのレンズの歪みを補正して,各隣接する撮影地点から撮影した画像間において双方の画像内に存在する各測点の視差の違いから各測点の3次元座標値を示す数値情報,及び隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報とを演算処理により算出する解析処理手段(14)と,算出された前記3次元座標値を示す数値情報,及び前記面の方向を示す情報から図化処理を行う図化処理手段(18)と,図化された図化情報を,前記撮影した顧客の顧客端末(8)に通信回線網(10)を介して送信する解析結果送信手段(16)と,を有する,ことを特徴とする写真測量サービスシステム。」3審決の要点審決は,本願発明は,後記引用発明及び後記引用例2〜6に記載された周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。
(1)平成9年4月10日に頒布された刊行物である「解析写真測量改訂版」(発行責任者:(社)日本写真測量学会・解析写真測量委員会,発行所:(社)日本写真測量学会。以下「引用例1」という。甲6)に記載された発明(以下「引用発明」という。)「「一枚の写真の中に写された3点以上の基準点になりたつ共線条件を用いて,写真座標系と地上座標系の間の関係を確立し,立体写真を構成する2枚以上の写真を用いることにより,対応する立体写真の1組の写真座標をもつ点の3次元座標を算定する写真測量技術において,完全な測定用カメラでない場合には,測定用カメラに適用される共線条件の基本式により求められる写真座標xおよびyから,補正量Δx,Δyをそれぞれ差し引きして,レンズディストーションを補正する写真測量技術」の発明」(2)本願発明と引用発明との対比ア一致点本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「一枚の写真の中に写された3点以上の基準点」は,共線条件を設定するために測量対象に設けられた撮影対象点であるから,本願発明の「複数の測点」に相当する。
・・・以上より,本願発明と引用発明とは,「複数の測点を有する測量対象を複数の地点から非測定用のカメラで撮影して得た複数枚の画像情報から,カメラのレンズの歪みを補正して,各隣接する撮影地点から撮影した画像間において双方の画像内に存在する各測点の視差の違いから各測点の3次元座標値を示す数値情報を演算処理により算出する解析処理手段を有することを特徴とする写真測量システム。」という点で一致する。
イ相違点「[相違点A]本願発明では,「市販のデジタル・カメラ」で「焦点固定にて」撮影しているのに対して,引用発明では,そのような構成を備えていない点。
[相違点B]本願発明では,「撮影して得た複数枚の画像情報」の他に,当該「画像情報の中で長さが既知の被写体から得られた長さの情報」をも利用して,「各測点の3次元座標値を示す数値情報,及び隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報を演算処理により算出」し,「算出された前記3次元座標値を示す数値情報,及び前記面の方向を示す情報から図化処理を行う図化処理手段(18)」を備えているのに対して,引用発明では,そのような構成を備えていない点。
[相違点C]本願発明の「写真測量システム」は,「顧客端末(8)と写真測量サービス業者の解析用コンピュータとが通信回線網により接続され」た「サービスシステム」であり,当該「解析用コンピュータ」には,「顧客自身が撮影して得た複数枚の画像情報及び前記画像情報の中で長さが既知の被写体から得られた長さの情報とを,前記撮影した顧客の顧客端末(8)から通信回線網(10)を介して受信する画像情報受信手段(12)」及び「図化された図化情報を,前記撮影した顧客の顧客端末(8)に通信回線網(10)を介して送信する解析結果送信手段(16)」が設けられているのに対して,引用発明では,そのような構成としていない点。」(3)相違点についての判断ア[相違点A]について「(ア)平成9年11月11日に頒布された刊行物である特開平9-294225号公報(以下「引用例2」という。甲7)には,「デジタルカメラ等により撮影された画像の歪み等の補正及びデジタルカメラ等の撮像装置」(段落【0001】)に関して,「異なった方位から対象物を撮影した画像より,対象物の3次元的情報を抽出するような計測分野においても,幾何学的精度の高い画像が要求される」(段落【0005】)と記載されており,立体写真測量においてデジタルカメラを用いて撮影し,撮影画像の歪みを補正することは周知の技術であり,当該デジタル・カメラとして「市販の」ものを採用することは当業者が適宜為し得る設計事項にすぎない。
(イ)平成10年1月27日に頒布された刊行物である特開平10-26528号公報(以下「引用例3」という。甲8)には,「従来から,写真測量に用いられているカメラでは,主点Pの位置や画面距離Gの変化を避けるため,撮影画面Sに対して撮影レンズ系Lを固定した固定焦点の光学系が採用され,市販のカメラのような焦点調節を行わない構成とし,写真測量用のカメラ製造時に主点Pの位置,画面距離gを測定して,これらの測定値を画像解析時に使用していた。これは,通常,遠距離から被測定物を撮影するので,撮影時にピント合わせをする必要がほとんど無いからである。」(段落【0003】)と記載されており,写真測量において,「焦点固定にて」撮影することは周知の技術である。
(ウ)以上(ア)及び(イ)より,引用例2及び3に記載された周知の技術を引用発明に適用して,相違点Aに係る構成を得ることに当業者ならば格別の困難性はない。」イ[相違点B]について「(ア)平成12年6月23日に頒布された刊行物である特開2000-171254号公報(以下「引用例4」という。甲9)には,「従来,交通事故現場等で行われる写真測量において,被写体は例えばスチルカメラでもって2箇所から撮影される。この撮影により得られた画像から被写体の2次元座標が読取られ,これら2次元座標に基づいて被写体の3次元座標が求められる。」(段落【0002】),「このような写真測量では,測量図を作成するための基準尺と基準平面とが必要である。従来,かかる基準尺および基準平面を得るために,例えば3つの円錐状マーカが撮影現場に設置される。3つの円錐状マーカの先端で決定される面が基準平面に規定され,またこれらの先端の距離が巻尺等で実測されてその距離が基準尺とされる。」(段落【0003】)と記載されている。
(イ)これによれば,「円錐状マーカーの先端」の距離を「巻尺等で実測」することにより,既知の長さをもった「基準尺」とするのであるから,「撮影して得た複数枚の画像情報」の他に,「長さが既知の被写体から得られた長さの情報」をも利用して,写真測量を行うことは,引用例4に記載されているように周知の技術である。
(ウ)平成12年11月24日に頒布された刊行物である特開2000-321020号公報(以下「引用例5」という。甲10)には,「従来の形状測定で得られるデータは,位置ベクトルのみである。...計算機内に自由曲面を定義するためには,今までの測定データである位置ベクトルだけでは不十分である...従来の位置ベクトルだけではなく,接線ベクトル,ねじれベクトルに等価な制御点を検出すればよい。これらは,法線ベクトルから求められることが解っているから,位置および法線ベクトルの2つのベクトルを用いれば,測定データと計算機内の自由曲面の定義データが一致することになり,曲面モデルを構築するうえで有用である。
位置・法線ベクトルの計測方法として,3点測定に基づく計測方法が知られている。...測定対象物Wの測定対象点Q s に近接する3点にプローブを順に接触させ,それより得られるプローブ中心点 Qa,Qb,Qc の座標値を得る。3点 Qa,Qb,Qc を通る平面S p を求め,その平面Sp の法線方向 Ns を測定対象点Q s の法線方向として得る」(段落【0006】〜【0009】参照)と記載されている。
(エ)ここで,上記記載の「測定された位置ベクトル」は,本願発明の「各測点の3次元座標値を示す数値情報」に相当し,上記記載の「測定対象点Q s に近接する3点」の座標値により,当該3点を通る「平面S p の法線方向 Ns」を得ることは,本願発明の「隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報を演算処理により算出」することに相当する。
また,上記記載の「計算機内に自由曲面を定義」して「曲面モデルを構築する」ことは,本願発明の「図化処理を行う」ことに相当する。
(オ)したがって,「各測点の3次元座標値を示す数値情報,及び隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報を演算処理により算出」し,「算出された前記3次元座標値を示す数値情報,及び前記面の方向を示す情報から図化処理を行う」ことは,引用例5に記載されているとおり周知の技術である。
(カ)以上(ア)〜(オ)より,引用例4及び5に記載された周知の技術を引用発明に適用して,相違点Bに係る構成を得ることに当業者ならば格別の困難性はない。」ウ[相違点C]について「(ア)平成11年10月19日に頒布された刊行物である特開平11-286817号公報(以下「引用例6」という。甲11)には,「コンピュータネットワークを用いた型紙作成システム」(段落【0056】)において,「インターネットやイントラネット等のネットワークを介してサーバー20とクライアント30とが双方向に通信可能に構成され」(段落【0057】),クライアント30が「ユーザー端末31」(段落【0060】)から「必要な情報」(段落【0059】)をサーバー20に送信し,サーバー20側では,受信した情報に基づき「顧客の体型に適した特製の衣服の立体画像が作成され」,当該立体画像情報は,「ネットワークを介してクライアント30に送信され」(段落【0065】),クライアント30は「型紙作成のサービスを受けることができる」(段落【0060】)点が記載されている。
(イ)ここで,上記記載の「クライアント30」,「ユーザー端末31」,「インターネットやイントラネット等のネットワーク」,「サーバー20」及び「立体画像」は,それぞれ本願発明の「顧客」,「顧客端末(8)」,「通信回線網」,「サービス業者の解析用コンピュータ」及び「図化された図化情報」に相当する。
(ウ)また,上記記載の「サーバー20」は,顧客端末から「必要な情報」を受信しているから,本願発明の「画像情報受信手段」と「情報受信手段」である点で共通し,図化情報を顧客端末に送信する点で本願発明の「解析結果送信手段」と共通する。
(エ)さらに,上記記載の「型紙作成システム」は,クライアント30が「型紙作成のサービス」を受けるものであるから,本願発明と「サービスシステム」を備えている点で共通する。
(オ)そうすると,「顧客端末とサービス業者の解析用コンピュータとが通信回線網により接続されたサービスシステム」において,「当該解析用コンピュータ」に「必要な情報を顧客端末から通信回線網を介して受信する情報受信手段」及び「図化された図化情報を顧客端末に通信回線網を介して送信する解析結果送信手段」が設けられていることは,引用例6に記載されているように周知である。
(カ)そして,引用発明にかかる周知の技術を適用して,「顧客端末と写真測量サービス業者の解析用コンピュータとが通信回線網により接続された写真測量サービスシステム」として構成することに格別の困難性はなく,その際,受信される「必要な情報」を「顧客自身が撮影して得た複数枚の画像情報及び前記画像情報の中で長さが既知の被写体から得られた長さの情報」とすることは,これらの情報に基づいて3次元座標情報を得る写真測量技術が広く知られている以上(前掲の引用例4参照),上記適用に伴う帰結として格別の困難なく想到し得るものである。
(キ)この点に関し,請求人は,平成18年8月18日付けの意見書(甲13)において,「本願発明の構成要素である顧客自ら測量対象を写真撮影するという行為は,刊行物4(当審注:本審決では「引用例6」に相当。以下同様。)には記載されておらず...情報受信手段に係る顧客の実施行為は,ユーザー端末から,「顧客の体型に関する情報」,「生地,色柄,衣服の形等の衣服情報」を選択入力し,型紙作成の実行を指示するだけであり...本願発明の前記特徴(顧客自身が測量対象を写真撮影して得た情報等を受信すること)は引用例に記載されておらず,何ら示唆されるものはありません」とし,また,「刊行物4記載の「三次元画像」は,三次元曲面形状計測装置で実際のモデルを測定して得られる三次元距離データを用いて作成される...のに対して本願発明の「図化情報」は,(a)固定焦点のデジタルカメラで測量対象を撮影して得た画像情報等から各測点の3次元ベクトル関係の情報である3次元座標値を示す数値情報を解析算出する。(b)隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報を解析算出する。上記(a)及び(b)から図化処理を行うという点で異なり...本願発明の図化処理の内容である上記(a),(b)については,刊行物4には記載されておらずかかる構成要素は,周知な技術には当たらないものと思料いたします」と主張している。
(ク)そこで,上記主張について検討する。上記したように,引用例6には,顧客とサービス業者との間で通信回線網を介して行われる情報のやりとりを伴うサービスシステムが記載されており,このような周知の技術に接した当業者が,それを写真測量システムである引用発明に適用し,サービス業者側が受信する情報を顧客から提供される写真画像情報とすることは格別の推考力を要することなくなし得ることである。そして,その場合,第三者が撮影して得た画像情報を当該サービスを利用する顧客が当該第三者から入手し,サービス業者側へ端末を介して送信したとしても,本願発明の動作内容及び効果に何ら変更は生じないのであるから,「顧客自身」が撮影行動を行ったか否かは格別の特徴とはいえない。また,CAD等の図化処理に際し,各測点の3次元座標値を示す数値情報及び隣接する各測点の3次元座標値で構成される面の方向を示す情報を解析算出することは,前掲の引用例5に記載されているとおり周知の技術である。したがって,請求人の上記主張は採用できない。」エまとめ「以上ア〜ウより,相違点A〜Cに係る構成を得ることに当業者ならば格別の困難性はなく,本願発明の奏する効果も,引用例1〜6に記載された事項に基づいて当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2〜6に記載された周知の技術に基づいて,その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。」(4)むすび「以上のとおりであるから,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。」第3審決取消事由の要点審決は,以下のとおり,一致点の認定を誤り,また,各相違点についての判断を誤った結果,本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断したものであるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(一致点の認定の誤り)審決は,引用発明の「一枚の写真の中に写された3点以上の基準点」が本願発明の「複数の測点」に相当するとした上,本願発明と引用発明の一致点を「複数の測点を有する測量対象を・・・特徴とする写真測量システム。」と認定したが,以下のとおり,審決のこの認定は誤りである。
(1)引用発明が,解析写真測量を行うための抽象的な概念又は手法そのものを示したものであるのに対し,本願発明は,かかる抽象的な概念又は手法を進化,発展させ,実際の現場で「測定対象の変位量の測定」や「変状する法面の挙動監視」等を継続的に行う「システム」として使用することができるように開発されたものである。
したがって,引用発明の「基準点」が,計測上の抽象的概念であるのに対し,本願発明の「測点」は,計測上の抽象的概念である基準点を具体化したもの,すなわち,その構成に工夫を凝らして製作した上,工夫を凝らして現場に設置した具体的な「設置物(治具)」である(なお,本願発明の「測点」は,写真画像上においてよく認識することができるように,あるいは,自動的に認識することができるようにしたものである。)。
(2)また,引用発明の「基準点」が,決して動かない,又は動いては意味をなさない基準となる「点」であるのに対し,本願発明の「測点」は,その後の地盤の動き等を計測する「測点」であり,その動きが知りたいものであって,動くことを前提として設けているものである。
(3)被告は,本願発明と引用発明が,測定原理を共通にするものである旨主張する。確かに,本願発明は,引用発明の基本的手法や基本原則を利用するものであり,本願発明においても「基準点」は必要であるが,本願発明における「測点」は「基準点」ではなく,計測しなければならない「点」である。すなわち,本願発明においては,「基準点」の地上座標をあらかじめ明確にした上で,複数の「測点」を現場に設置し,当該「測点」の3次元座標を算定,計測していくものである(したがって,「測点」の地上座標は,あらかじめ計測しておく必要はなく,大まかな初期値をコンピュータ端末に入力すれば,繰り返し計算を行うことにより,正しい値が得られるものである。)。にもかかわらず,審決は,本願発明における上記「基準点」と「測点」とを混同している。
(4)以上のとおり,引用発明の「基準点」と本願発明の「測点」とは,その構成を異にするものであるから,本願発明と引用発明の一致点に係る審決の上記認定は,誤りである。
2取消事由2(相違点Bについての判断の誤り)審決は,相違点Bについての判断に当たり,「『撮影して得た複数枚の画像情報』の他に,『長さが既知の被写体から得られた長さの情報』をも利用して,写真測量を行うことは,引用例4に記載されているように周知の技術である。」と認定したが,以下のとおり,審決のこの認定は誤りであり,したがって,これを前提とする相違点Bについての審決の判断も誤りである。
(1)本願発明の「長さが既知の被写体」とは,あらかじめ長さが分かっている部分を有している被写体,すなわち,「物差しのような部材で,長さがあらかじめ分かっており,かつ,その長さが変化しない部分を持つ治具」を意味する。したがって,本願発明の「長さが既知の被写体」を設置した地盤が変動して,地盤が伸長したり縮んだりしても,当該「長さが既知の被写体」の長さは変化しない。これは,本願発明においては,「測点」間の距離が動くことが前提となっているため,本願発明の「長さが既知の被写体」は,長さが既知の「固定された部分」を持つものに限定して考えざるを得ないためである(これにより,「測点」間の距離が具体的に何cmずれたかなどが分かることになる。)。
これに対し,引用例4に記載された技術は,地面に直接置いた円錐状マーカーの先端の間の距離,すなわち,地面それ自体の距離を巻尺等で実測することにより,既知の長さをもった基準尺とするものであり,長さを測った地面の長さが変動したりすると,計った長さも変化してしまうものであるところ,これでは,地盤の変位を計測しようとする本願発明の目的・効果が達成できず,そのような円錐状マーカーの先端の間の距離をもって,「長さが既知」とは到底いい得ない。
(2)また,本願発明の「長さが既知の被写体」は,その文言上,「被写体」と表現されている以上,変位を計測しようとする地面そのものを含まないものであり,長さが既知の対象物が地面以外に必ず存在しなければならないことを意味する。
(3)被告は,「被写体」の語は,通常,「撮影手段により写される対象物体」を意味するものと理解されるところ,複数の移動可能な物体から成る集合体を撮影手段により写した場合には,かかる集合体も,「被写体」といい得ると主張するが,本願に係る本件補正前の明細書(甲5)にも,本願に係る本件補正後の明細書(以下「本願明細書」という。甲5,12)にも,そのような記載はないし,原告は,本願当初から,本願発明の「被写体」に当該集合体のようなものが含まれると考えたこともない。「被写体」の語義のみに基づく被告の上記主張は,失当である。
(4)以上のとおり,引用例4からは,相違点Bにいう「『長さが既知の被写体から得られた長さの情報』をも利用して写真測量を行うこと」が周知の技術であると認めることはできないから,これを周知の技術であるとした審決の認定は,誤りである。
3取消事由3(相違点A〜Cについての判断の誤り)審決は,相違点についての判断の「まとめ」において,「以上ア〜ウより,相違点A〜Cに係る構成を得ることに当業者ならば格別の困難性はなく,本願発明の奏する効果も,引用例1〜6に記載された事項に基づいて当業者が容易に予測し得る範囲内のものにすぎない。したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2〜6に記載された周知の技術に基づいて,その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。」と判断したが,以下のとおり,審決のこの判断は誤りである。
(1)取消事由1において主張したとおり,引用発明が,解析写真測量を行うための抽象的な概念又は手法そのものを示したものであるのに対し,本願発明は,かかる抽象的な概念又は手法を進化,発展させ,実際の現場で「測定対象の変位量の測定」や「変状する法面の挙動監視」等を継続的に行う「システム」として使用することができるように開発されたものであり,引用発明及び引用例2〜6に記載された技術に基づく単なる寄せ集めの発明でも,単なる置換・転用の発明でも,単なる数値・形状・配列・材料等の変更又は限定の発明でもない。
(2)また,取消事由1及び2において主張したとおり,「基準点」と「測点」についての誤った認識,「測点」についての誤った認識,「長さが既知の被写体」についての誤った認識,「長さが既知の被写体」による「長さの既知情報」についての誤った認識等に表れているとおり,各相違点についての審決の判断は,誤っているといわざるを得ない。
(3)本願発明は,進歩性を有する画期的な発明であり,引用発明及び引用例2〜6に記載された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4被告の反論の骨子以下のとおり,審決には,一致点の認定の誤りも,各相違点についての判断の誤りもない。
1取消事由1(一致点の認定の誤り)に対して(1)本願発明と引用発明は,複数地点からの複数枚の撮影画像の立体視差を利用して3次元座標を算定するという共通の測定原理に基づくものであり,「投影関係式から求められる共線条件式」に基づいて3次元座標を算出するという点でも共通するものである。
(2)本願発明の要旨には,「3次元座標値を示す数値情報」,「面の方向を示す情報」及び「図化情報」が「測量対象の変位量の測定」や「変状する法面の挙動監視」を継続的に行うためのものであるとの規定はなく,本願明細書の記載によっても,そのように解釈することはできない。
また,本願発明の要旨からは,「複数の測点」が「測量対象(4)」上にあることは読み取れるものの,治具として設けたものであるなどの限定は一切なく,具体的に構成された設置物であるとの規定もないばかりか,本願明細書の記載によっても,そのように解釈することはできない。
(3)以上のとおり,本願発明と引用発明は,測定原理を共通にするものであるから,引用発明が抽象的概念又は手法そのものを示したものであって本願発明とは異なるとの原告の主張は採用されるべきではないし,また,本願発明が実際の現場で「測量対象の変位量の測定」や「変状する法面の挙動監視」を継続的に行うシステムであるとの原告の主張及び本願発明の「測点」が具体的に構成された設置物である点で引用発明の「基準点」とは異なるとの原告の主張は,いずれも,本願発明の要旨に基づかないものであり,かつ,本願明細書の記載にも根拠を有しないものである。
2取消事由2(相違点Bについての判断の誤り)に対して(1)本願発明の要旨には,「被写体」について,「長さが既知」であることのほかに何ら限定はないのであるから,「長さが既知の被写体」は「物差しのような部材で,長さがあらかじめ分かっており,かつ,その長さが変化しない部分を持つ治具」であるとする原告の主張は,本願発明の要旨に基づかないものである。
(2)また,「被写体」の語は,通常,「撮影手段により写される対象物体」を意味するものと理解されるところ,複数の移動可能な物体から成る集合体を撮影手段により写した場合には,かかる集合体も,「被写体」といい得る。そうすると,引用例4に記載された,撮影現場に設置された3つの円錐状マーカーも,それが撮影手段により写されれば,「被写体」であることに変わりはない。
そして,各円錐状マーカーの先端間の距離は,地面それ自体の距離ではなく「被写体」の構成要素間の距離であり,それが巻尺等で実測されて基準尺となり,その長さは既に知られたものとなるのである。
(3)以上によれば,引用例4に記載された「3つの円錐状マーカー」も,「長さが既知の被写体」といって何ら差し支えないから,「長さが既知の被写体から得られた長さの情報」をも利用して写真測量を行うことが周知の技術であるとした審決の認定に誤りはなく,したがって,相違点Bについての審決の判断にも誤りはない。
3取消事由3(相違点A〜Cについての判断の誤り)に対して(1)上記1において主張したとおり,引用発明が抽象的概念又は手法そのものを示したものであって本願発明とは異なるとの原告の主張は採用されるべきではなく,また,引用例1〜6に記載された事項は,測定対象物の3次元座標を計測するという共通の技術分野に属するものであるから,引用発明に引用例2〜6に記載された周知の技術を適用して,本願発明のごとく構成することに,当業者であれば,格別の困難性はない。
(2)したがって,本願発明は引用発明及び引用例2〜6に記載された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の判断に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点の認定の誤り)について(1)本願発明の「測点」及び引用発明の「基準点」の意義についてア(ア)本件補正後の請求項1の記載によれば,本願発明の「測点」とは,「顧客自身がデジタル・カメラで撮影した測量対象上にある点」であって,これらの各「点」の「3次元座標値を示す数値情報」(図化処理に用いられる情報の1つである。)を演算処理により算出する際,当該算出のために必要とされる原情報の1つである「複数枚の画像情報」に写っているもの(各隣接する撮影地点から撮影した画像間において,双方の画像内に存在するこれらの「点」の視差の違いから,「3次元座標値を示す数値情報」が算出される。)であるといえ,それ以上に上記「測点」を特定する規定は,本件補正後の請求項1の記載中にはない。以上によれば,「測点」は,顧客が撮影した「測量対象」に存在する点というにとどまり,その技術的意義は必ずしも明確とはいい難い。そこで,以下,発明の詳細な説明の記載を参酌してその技術的意義について検討する。
(イ)発明の詳細な説明中にある「測点」に関する主な記載は,以下のとおりである。
a「・・・顧客は図5に示される写真測量サービス業者の見積用ホームページ42にアクセスし,該ホームページ42上で写真枚数,測点数(計測点数),出力フォーマット,希望納期,データの送受方法などを選択・入力する。」(段落【0021】)b「顧客は前記の電子メールに記載された撮影方法や留意点に従い,解析を依頼する測量対象について,複数枚のデジタル写真を測量対象が存在する現場で撮影する。すなわち,図7に示されるように,顧客は,先ず現地において測量対象に対して測点(測量点)を設置する(ステップ100)。この場合,後の画像処理で測点を自動抽出するために測点にランドマークを設置することも,特にターゲットを設置せずに解析時に測点を手作業などで抽出することも,可能である。また,顧客は測量対象について,各測点の3次元座標が必要な場合には,撮影画像中に長さが既知の被写体を含ませ,長さ情報とすればよい。」(段落【0023】)c「・・・前記の解析対象のデジタル写真画像が添付された電子メールをインターネットを介して受信した写真測量サービス業者は,解析用コンピュータにより測量対象の3次元位置解析等を行う。」(段落【0025】)d「・・・解析用端末のオペレータはコンピュータが複数の条件式を作成して演算処理するための未知数などの諸条件,すなわち,画像枚数,測点数,基準点数,長さ情報数・・・などを入力する。」(段落【0028】)e「次にオペレータは測量対象が存在する3次元空間において基準となる点,すなわち基準点の座標を入力する(ステップ114)。基準点は顧客が特定の測点を指定すること等により決定される。」(段落【0029】)(ウ)以上の各記載によれば,測点は,顧客が,測量対象がある現地において,測量対象内から位置及び数を任意に選んだ点であって,その3次元座標値は未知である。これに対し,測量対象である3次元空間における位置関係を示す基準となる基準点があって,その座標値は既知のものとして解析装置に入力されるということができる。なお,この基準点は顧客が特定の測点から選ぶことが可能であるとの前項eの記載からみて,この座標値の入手方法については発明の詳細な説明には明示的に記載されてはいないものの,顧客が提供するものと推認される。
これらからすると,「測点」は,原則として,測量対象内にある座標値が未知の点であって,顧客が測量対象を的確に把握するために必要と考える点を意味するものと理解することができる。
(エ)原告は,引用発明の「基準点」が計測上の抽象的概念であるのに対し,本願発明の「測点」は計測上の抽象的概念である基準点を具体化したもの,すなわち,現場に設置された具体的な「設置物(治具)」であるとか,また,引用発明の「基準点」が決して動かない,又は動いては意味をなさない基準となる「点」であるのに対し,本願発明の「測点」はその後の地盤の動き等を計測する「測点」であり,その動きが知りたいものであって,動くことを前提として設けているものであるなどと主張する。
しかしながら,本願明細書の記載を精査しても,原告の上記各主張を裏付ける記載はないから,これらの主張は,いずれも明細書の記載に基づかないものとして失当である。
イ(ア)引用発明の「基準点」に関し,引用例1には,次の各記載が存在する。
第4章単写真標定 「本章では,共線条件を基本とする単写真標定の方法についてのべられる。単写真標定とは,一枚の写真の中に写された3点以上の基準点になりたつ共線条件を用いて,写真を撮影したカメラの位置(?] ,Y ,Z )およびカメラの傾き( , , )を求め,写真座標系xyと地000 wjk上座標系XYZの間の関係を確立することである。」(46頁1〜5行)4.1単写真評定の問題 「4.1.1単写真標定の目的・・・。単写真標定は,つぎのような目的を有している。
(1)単写真を用いた測定・・・(2)空間後方交会3次元の地上座標が測定されている基準点と,対応する写真座標を用いて,撮影されたカメラの位置とカメラの傾きを求める。このように,与えられた基準点から,逆に測定器(この場合カメラになる)の位置および傾きを求めることをという。
空間後方交会空間後方交会は,基準点が多数配置される地上写真や傾め空中写真などに応用される。空間後方交会で求められるカメラの位置(?] ,Y ,Z )およびカメラの傾き( , , )は,000 wjkとよばれる。外部標定要素を求めるには,3点以上の基準点が必要である。 外部標定要素外部標定要素が求められると,写真座標xyと地上座標XYZとの射影関係が確立される。
従って,立体写真を構成する2枚以上の写真をそれぞれ単写真標定すれば,対応する立体写真の1組の写真座標を与え,その点の3次元座標が算定可能となる。」(46頁13行〜47頁5行)(イ)上記(ア)の各記載によれば,引用発明の「基準点」は,1枚の写真に写された3個以上の「点」であって,既にその3次元の地上座標値が測定されており,写真座標xyと3次元座標XYZとの射影関係を確立するために必要であり,これにより,立体写真を構成する2枚以上の写真に写された特定の点の3次元座標値の算出を可能にするものであるといえる。
(2)原告の主張(3)についてア原告は,本願発明の「測点」は「基準点」(3次元座標値(地上座標値)をあらかじめ明確にした「点」)ではなく,これから計測しなければならない「点」であるにもかかわらず,審決は「基準点」と「測点」とを混同している旨主張する。
イそこで検討するに,上記(1)のとおり,引用発明の「基準点」は,既にその3次元座標値(地上座標値)が測定されている「点」であるところ,本願発明の「測点」は,顧客が測量対象を的確に把握するために必要と考える測量対象内の点であり,演算処理により「3次元座標値を示す数値情報」が算出されるべき「点」であるから,その内容に照らし,測点が基準点を兼ねる場合を除き,3次元座標値がいまだ算出されていないものであることは明らかである。
そうすると,3次元座標値が既に知られているか否かという観点からは,引用発明の「基準点」は既知の「点」であり,本願発明の「測点」は未知の「点」であるといえ,したがって,両者は,技術的意義を異にするものというほかない。
してみると,審決は,本願発明の「(複数の)測点」の技術的意義の把握を誤り,これが引用発明の「基準点」,すなわち,「共線条件を設定するために測量対象に設けられた撮影対象点」と即断したものといわざるを得ない。その結果,原告が主張するとおり,引用発明の「基準点」と本願発明の「測点」とを混同し,これを一致点と誤認したものといわざるを得ない。
なお,本願明細書に「基準点は顧客が特定の測点を指定すること等により決定される。」との記載(段落【0029】)があることが,上記判断を何ら左右するものでないことは既に説示したとおりである。
ウそうすると,本願発明と引用発明の一致点を「複数の測点を有する測量対象を・・・特徴とする写真測量システム。」と認定した審決の一致点の認定が誤りであることは明らかである。
(3)以上のとおりであるから,取消事由1は,理由がある。
2結論よって,その余の取消事由について判断するまでもなく,審決は違法であり,取消しを免れないから,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 古閑裕二
裁判官 浅井憲
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