関連審決 | 不服2003-9715 |
---|
関連ワード | インターネット / アクセス / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 引用発明の認定 / 相違点の認定 / 上位概念 / 発明の詳細な説明 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 実施権 / 拒絶査定不服審判 / 拒絶査定 / 請求の範囲 / 独立特許要件 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|
事件 |
平成
18年
(行ケ)
10564号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告株式会社篁画廊 訴訟代理人弁理士葛和清司,前田正夫,塩崎進 被告特許庁長官 肥塚雅博 指定代理人山本穂積,小林信雄,岩間直純,山本章裕,大場 義則 |
|
裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/11/07 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
全容
第1請求特許庁が不服2003-9715号事件について平成18年11月7日にした審決を取り消す。 第2事案の概要1特許庁における手続の経緯等本件は,特許出願をした原告が,拒絶査定を受けて,不服審判の請求をしたが,審判請求不成立の審決を受けたので,その審決の取消しを求めた事案である。 特許庁における手続の経緯は,次のとおりである。 ( ) 原告は,平成12年12月28日,発明の名称を「美術品販売支援システ1ム」とする発明について特許出願(特願2000-402463。以下「本件出願」という。)をした(甲7)。 ( ) 原告は,平成15年4月18日付け(起案日)で拒絶査定を受けたので(甲211),同年5月30日,拒絶査定不服審判の請求をした(不服2003-9715号事件として係属)。これに対し,特許庁は,平成18年11月7日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同月29日に原告に送達された。 なお,原告は,次のとおり,拒絶査定の前後に,それぞれ補正をしている。 ?@平成15年2月7日付けの手続補正書(甲10)により,本件出願に係る明細書を補正した。 ?A平成15年6月27日付けの手続補正書(甲13)により,本件出願に係る明細書を補正した(以下「本件補正」といい,本件補正後の明細書を「本件明細書」という。)。 2発明の要旨( ) 本件補正前の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 1「【請求項1】不特定多数の制作者のコンピュータ,不特定多数の購買者のコンピュータおよび中継サーバが公衆回線を介して接続されてなる美術品販売支援システムであって,前記制作者のコンピュータは,作品見本データ,制作者名,作品名および制作者の希望価格のデータを中継サーバに出力する手段を具備し,中継サーバは,制作者のコンピュータからの前記各データとともに,付加データとして,前記美術品と組み合せて購入するもののデータを保存する手段を具備し,購買者のコンピュータは,中継サーバにアクセスし,中継サーバにある作品見本データ,制作者名,作品名,制作者の希望価格のデータおよび付加データを組み合わせて画面上に表示する手段を具備することを特徴とする美術品販売支援システム。 【請求項2】美術品が絵画であり,付加データが額縁見本データである,請求項1に記載の美術品販売支援システム。 【請求項3】制作者のコンピュータが,さらに,制作年,制作動機,美術品保管場所,作品表示条件データおよび検索語からなる群から選択される1または2以上を中継サーバに出力する手段を具備することを特徴とする,請求項1または2に記載の美術品販売支援システム。」(以下「本願発明1」〜「本願発明3」という。)( ) 本件補正後の特許請求の範囲請求項1の記載は,次のとおりである。本件補2正によって請求項2は削除された。なお,これによって請求項2に繰り上がった旧請求項3は摘示を省略する。 「【請求項1】不特定多数の制作者のコンピュータ,不特定多数の購買者のコンピュータおよび中継サーバが公衆回線を介して接続されてなる美術品販売支援システムであって,美術品が絵画であり,前記制作者のコンピュータは,作品見本データ,制作者名,作品名,制作者の希望価格のデータおよび作品表示条件データを中継サーバに出力する手段を具備し,中継サーバは,制作者のコンピュータからの作品見本データ,制作者名,作品名,制作者の希望価格のデータおよび作品表示条件データとともに,額縁見本データを保存する手段を具備し,購買者のコンピュータは,中継サーバにアクセスし,中継サーバにある作品見本データ,制作者名,作品名,制作者の希望価格のデータ,作品表示条件データおよび額縁見本データを組み合わせて画面上に表示する手段を具備することを特徴とする美術品販売支援システム。」(以下「本願補正発明」という。下線部分は,本件補正に係る部分である。)3審決の理由の要点( ) 審決は,以下のとおり,本願補正発明は,特開平11-7467号公報に記1載された発明(以下,同公報を「引用例」といい,これに記載された発明を「引用発明」という。)及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとして,本件補正を却下するとともに,本願発明1についても,引用例に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。 ( ) 補正の適否(独立特許要件の存否)2ア引用発明(ア) 引用例の記載「本発明の目的は・・・購入,販売の両方の利用者が対等に参加でき,条件により商 a品の絞り込みが可能で,かつ,利用者のプライバシーを確保することが可能な技術を提供する(段落【0008】) ことにある。」「【発明の実施の形態】図1は,本発明の一実施形態にかかるの個人間商品売買仲介b装置の構成を説明するためのブロック図である。本実施形態の個人間商品売買仲介装置は,利用者の購入商品情報,または,販売商品情報を入力する利用者端末101と,利用者の購入商品情報を処理する購入情報処理部111と,販売商品情報を処理する販売商品情報処理部112と,購入商品情報を格納する購入商品情報格納装置121と,販売商品情報を格納する販売商品情報格納装置122とからなる仲介処理部102とがインタネット103で接続された構成をとる。購入商品情報処理部111は,利用者の端末101との間のデータの送受信処理,販売商品情報格納装置122からの販売商品情報の検索処理,購入情報の購入商品情報格納装置121への格納処理を行なう。同様に販売商品情報処理部112は,利用者の端末101との間の送受信処理,販売商品情報格納装置121からの購入商品情報の検索処理,販売商品情報の販売情商品報格納装置122への格納処理を行なう。上述した購入商品情報格納装置121に格納されている購入商品情報データは,例えば,図2に示すように,商品名,サイズ,色,その他からなる購入商品情報201と,価格,購入地域,その他からなる購入条件202と,名前,住所,電話番号,メールアドレスとからなる購入者情報203と,登録年月日からなるその他204とから構成される。販売商品情報格納装置122に格納される販売商品情報データは,例えば,図3に示すように,商品名,サイズ,色,その他からなる販売商品情報301と,価格,販売地域,その他からなる販売条件302と,名前,住所,電話番号,メールアドレスとからなる販売者情報303と,登録年月日からなるその他304とから構成される。」(段落【0013】〜【0018】)「図4は,利用者が商品を購入する場合の処理の手順を示すフローチャートである。 c本実施形態の個人間商品売買仲介装置の商品購入処理は,図4に示すように,まず,利用者端末101から,商品購入情報を受信する(ステップ401)。商品購入情報は,例えば,図5に示すように,商品名”セータ”,サイズ”M”,色”赤”,その他”Vネック”及び,購入条件として価格”1500”,地域”横浜”,その他”手渡し可能”,購入者の情報として,利用者自身の名前”菊地”,住所”横浜市”,電話番号・・・,メールアドレス・・・である。 そして,購入商品情報処理部111は,受信した商品購入情報の商品名”セータ”をキーとして販売商品情報格納装置122を検索し,商品の販売条件302と購入条件とが一致する商品のリストを作成する(ステップ402)。商品リストは,図6に示すように,販売商品情報データのうち商品名,サイズ,色,その他及び,販売条件の価格,地域,その他についての項目から作成し,販売者情報の名前,住所電話番号,メールアドレスは含めない。なお,商品リストには,完全に条件が一致するものの他に,一部いっちするものも載せても構わない。次に,条件に合う商品があった場合(ステップ403),その作成した商品リストを利用者端末101に送信する(ステップ404)。ステップ403において,検索の結果,条件に合う商品がない場合ステップ408へ進む。そして,利用者端末101に表示された商品リストから,利用者は601にしめす商品の番号を入力,あるいは,該当無しを入力する(ステップ405)。 商品が選択された場合,その商品の登録番号等を基に,選択された商品について商品情報及び登録者の情報を送信する(ステップ406)。商品情報及び販売者情報は,図7に示すように,販売商品情報データのうちの商品,サイズ,色,その他,販売条件の価格,地域,その他,販売者情報のうち名前,住所,電話番号,メールアドレスについての項目から作成する。ステップ405において,該当無しが入力された場合,ステップ408へ進む。そして,選択された商品の登録者に購入者の情報をメールにて送信する(ステップ407)。この購入者情報は,ステップ401において,利用者端末101から受信した購入商品情報データのうち,購入者(段落 情報203の中の名前,住所,電話番号,メールアドレスの項目から作成する。」【0020】〜【0028)「図8は,利用者が商品を販売する場合の処理の手順を示すフローチャートである。 d本実施形態の個人間商品売買仲介装置の商品販売処理は,図8に示すように,まず,利用者端末101から,商品販売情報を受信する(ステップ801)。商品販売情報は,例えば,図9に示すように,商品名”セータ”,サイズ”M”,色”白”,その他”Vネック”及び,販売条件として価格”1500”,地域”都筑”,その他”手渡し可能”,販売者の情報として,利用者自身の名前”池田”,住所”横浜市”,電話番号・・・,メールアドレス・・・であ(段落【0030】〜【0031】) る。」サービスを提供する装置と利用者端末とをネットワークで接続したサービス提供シス(イ)テムとしてクライアントサーバシステムが慣用されており,上記・・・「仲介処理部102」をサーバとすることは自明のことであるから,引用例には,「商品の販売を希望する利用者の利用者端末101と,商品の購入を希望する利用者の利用者端末101と,サーバである仲介処理部102とがインターネット103で接続されてなる個人間商品売買仲介装置であって,商品の販売を希望する利用者の利用者端末101は,入力された商品名,サイズ,色等の販売商品情報と,価格等の販売条件と,販売者の名前,連絡先等の販売者情報とをサーバである仲介処理部102に送信し,サーバである仲介処理部102は,商品の販売を希望する利用者の利用者端末101から受信した,商品名,サイズ,色等の販売商品情報301と,価格等の販売条件302と,販売者の名前,連絡先等の販売者情報303とを格納する販売商品情報格納装置122を備え,商品の購入を希望する利用者の利用者端末101は,サーバである仲介処理部102との間のデータの送受信を確立し,サーバである仲介処理部102の販売商品情報格納装置122から商品名をキーとして検索された商品の商品名,サイズ,色等の販売商品情報と,価格等の販売条件と含む商品リスト(図6)を受信して表示する個人間商品売買仲介装置。」の発明・・・が記載されている。 イ本願補正発明と引用例に記載された発明との対比(ア) 一致点「不特定多数の販売者のコンピュータ,不特定多数の購買者のコンピュータおよび中継サーバが公衆回線を介して接続されてなる物品販売支援システムであって,前記販売者のコンピュータは,物品に関するデータ,販売者の希望価格のデータを中継サーバに出力する手段を具備し,中継サーバは,販売者のコンピュータからの物品に関するデータ,販売者の希望価格のデータを保存する手段を具備し,購買者のコンピュータは,中継サーバにアクセスし,中継サーバにある物品に関するデータ,販売者の希望価格のデータを組み合わせて画面上に表示する手段を具備することを特徴とする物品販売支援システム。」(イ) 相違点「前者は,販売者が販売対象の物品の制作者であるのに対して,後者は,そうではない点」(以下「相違点1」という。)「前者は,販売対象の物品が美術品であり,しかも,美術品が絵画であって,物品に関するデータが作品見本データ,制作者名,作品名であり,中継サーバのデータを保持する手段が額縁見本データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に額縁見本データも組み合わせて表示するものであるのに対して,後(以下「相違点2」という。) 者は,そうではない点。」「前者は,制作者のコンピュータのデータを中継サーバに出力する手段が作品表示条件データも出力して,中継サーバのデータを保持する手段が作品表示条件データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に作品表(以 示条件データも組み合わせて表示するものであるのに対して,後者は,そうではない点」下「相違点3」という。)ウ相違点についての判断(ア) 相違点1について「物品の制作者が該物品の販売を行うことはよく行われていることであり,後者は,個人間の商品売買の仲介を行うものであって,販売者を販売業者に制限するものではないから,後者において,販売者を販売対象の物品の制作者として,前者のようにすることは,当業者が容易になし得たことである。」(イ) 相違点2について「美術品を売買対象とし売買することが従来より行われており,しかも,美術品として絵画を売買対象とし売買することも従来より行われており,絵画を説明するのに絵画に関する情報として制作者,作品名を示すことも従来より行われており,また,・・・物品の販売において,物品に関する情報として物品の画像を示すことが周知のことであるから,後者において,販売対象の物品を美術品とし,しかも,美術品を絵画として,物品に関するデータを作品見本データ,制作者名,作品名とすることは,当業者が格別に思考することなく推考し得たことである。 その際に,・・・絵画とともに額縁を販売することが周知のことであり,また,・・・物品の販売において,組み合わせて使用する物品について各物品の画像を組み合わせて表示し,購入者の各物品の購入の助けとすることも周知のことであるから,さらに,絵画とともに額縁も紹介するべく,中継サーバのデータを保持する手段が額縁見本データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に額縁見本データも組み合わせて表示するようにして,前者のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。」(ウ) 相違点3について「上記の[相違点2]についての検討において述べたとおり,後者において,販売対象の物品を美術品とし,しかも,美術品を絵画として,物品に関するデータを作品見本データ,制作者名,作品名とすることは,当業者が格別に思考することなく推考し得たことである。その際に,・・・画像データ提供者側装置が画像データと表示条件データを送り出し,利用者側装置は画像データと表示条件データを受け取り表示条件データに基づいて画像データの表示処理の態様を設定することが周知のことであり,機器の処理の態様を指示等の参考情報に基づいて人間が手動で設定することも慣用手段であるから,さらに,制作者のコンピュータのデータを中継サーバに出力する手段が作品表示条件データも出力して,中継サーバのデータを保持する手段が作品表示条件データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に作品表示条件データも組み合わせて表示するようにして,前者のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。そして,本願補正発明の作用効果も,引用例に記載された発明及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。」「したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明及び周知の事項に基いて,(エ)当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。」( ) 本願発明の進歩性3「本願の請求項1に係る発明の構成を全て含み,さらに構成を限定した本願補正発明が・・・引用例に記載された発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願の請求項1に係る発明も,同様の理由により,引用例に記載された発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。」第3原告の主張1取消事由1(一致点及び相違点認定の誤り)( ) 審決は,本願補正発明の「不特定多数の制作者」と,引用発明の「商品の販1売を希望する利用者」とが「不特定多数の販売者」である点で一致するととともに,相違点1について,「前者は,販売者が販売対象の物品の制作者であるのに対して,後者は,そうではない点」で相違すると認定したが,誤りである。 ( ) 本願補正発明は,その特許請求の範囲記載のとおり,「不特定多数の制作者2のコンピュータ,不特定多数の購買者のコンピュータおよび中継サーバが公衆回線を介して接続されてなる美術品販売支援システム」(以下「本願請求項1記載のシステム」という。)と規定されているから,当該システムは,?@美術品を販売しようとする当該美術品の制作者側のコンピュータ,?A当該美術品を購買しようとする購買者側のコンピュータ,及び,?Bその両者をつなぐ中継サーバ,の3者により構成されるシステムであり,そのうち?@の美術品制作者側のコンピュータは,「不特定多数の制作者」と規定されているのであるから,当該美術品の制作者ではない単なる販売業者のような「非制作者」のコンピュータが本願補正発明のシステムを構成することはあり得ず,他方で,美術品制作者のうちで,例えば特定の会派に属する制作者のコンピュータのみの参加を認め,それ以外の制作者のコンピュータの参加を認めないということもあり得ない。 本願補正発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているとおり,「制作者自らの意思により自由に参加できるシステムは知られていない」(段落【0006】)との問題意識から出発し,その問題を解決する手段として,「不特定多数の制作者が自由に参加し,その意思が購買者に直接伝わるシステム」(段落【0008】)を目指し,「制作者が自らの意思により自身の作品に係る情報を提供し,その情報に基づく電子データを利用して制作者と購買者との間での売買が行えるシステム」(同段落)を見いだしたのであるから,本願補正発明における「不特定多数の制作者のコンピュータ」は,「不特定多数の美術品制作者のみからなる販売者のコンピュータ」を意味することが明らかである。 引用発明の「商品の販売を希望する利用者」は,制作者ばかりでなく,非制作者をも含むであろう集団であって,まさに「不特定多数の販売者」といえるものであるから,引用発明は,制作者も非制作者も任意に参加できるシステムであって,制作者のみが参加できるシステムを意味するものではない。一方,本願補正発明の「不特定多数の制作者」は,不特定多数の制作者のみからなる集団であるから,販売者としてはあくまでも制作者のみからなる「特定の販売者」集団なのであって,引用発明における「不特定の個人」であるところの「不特定多数の販売者」には当たらないのである。 ( ) したがって,本願補正発明の「不特定多数の制作者」すなわち「不特定多数3の美術品制作者のみからなる販売者」と,引用発明の「商品の販売を希望する利用者」とは,全く異なるものであるから,両者が「不特定多数の販売者」である点において一致すると認定するのは誤りである。 2取消事由2(相違点についての判断の誤り)( ) 審決は,相違点1について,「物品の制作者が該物品の販売を行うことはよ1く行われていることであり,後者は,個人間の商品売買の仲介を行うものであって,販売者を販売業者に制限するものではないから,後者において,販売者を販売対象の物品の制作者として,前者のようにすることは,当業者が容易になし得たことである。」と判断したが,誤りである。 ( ) 本願補正発明の本質は,その物品が「美術品」であり,かつ,その制作者の 2みが販売者として参加することにあるから,不特定多数の美術品制作者のみからなる販売者のコンピュータが参加する本願補正発明の特許請求の範囲記載のシステムが周知又は公知であったか否か,さらには,「物品の制作者のみが当該物品の販売を行うシステム」が周知又は公知であったか否かが問題とされるべきであるところ,このようなシステムは,審決が引用する引用例,周知例1ないし5のいずれをみても記載がなく,その他,どの公知文献にも記載されていない。したがって,このようなシステムが周知又は公知であったか否かを検討していない審決は,前提においてすでに誤っているものである。 ( ) 被告は,本願明細書の発明の詳細な説明には,真の制作者でない者を技術的3に排除する具体的手段は記載されていないから,販売者を販売対象の制作者のみに限ることは人為的な取り決めにすぎない旨主張するが,このような主張は,審判段階でも審査段階でも指摘されたことのない新たな議論であり,到底採用されるべきでない。仮にこのような主張が採用されたとしても,人為的な取り決めか否かによって発明の進歩性が左右されるという被告の論理は失当である。 3取消事由3(顕著な作用効果の看過)( ) 本願請求項1記載のシステムは,前記のとおり,あくまでも「不特定多数の1美術品の制作者のみが当該物品の販売を行うシステム」であって,それ以外の者が販売者となることはない。その結果,本願補正発明においては,価格決定過程の透明性を確保し,適正市場を促し,また制作者に作品発表の場を提供可能にすることで,多様化する消費者の欲求に対応可能なマッチングビジネスを活性化するなど,日本美術業界の積年の諸問題を初めて一挙に解決し得るという,引用例や周知例,さらには画廊,個展,路上市などの旧来の商習慣からは到底予測することのできない格別の効果を奏するものである。 したがって,本願補正発明には進歩性が認められるべきである。 第4被告の主張審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 1取消事由1(一致点及び相違点認定の誤り)に対して( ) 原告は,本願補正発明における「不特定多数の制作者のコンピュータ」とは,1「不特定多数の美術品制作者のみからなる販売者のコンピュータ」を意味する旨主張する。 本件補正後の請求項1には,「不特定多数の制作者のコンピュータ」と記載されており,「不特定多数の制作者のコンピュータ」の「制作者」は販売に参加する者すなわち「販売者」でもあるが,「販売者」が「制作者のみ」に限定されることは記載されておらず,「不特定多数の制作者のみからなる販売者のコンピュータ」は記載されていない。また,「不特定多数の美術品制作者のみが販売者として参加する」ことも記載されていない。 2取消事由2(相違点についての判断の誤り)に対して( ) 原告は,不特定多数の美術品制作者のコンピュータが参加するシステム,換1言すると,「物品の制作者のみが当該物品の販売を行うシステム」が,本件出願前,周知でも公知でもなかった旨主張する。 ( ) しかし,例えば,「広辞苑第5版」(乙1)に「ちょくはん【直販】」の説2明として「生産者が流通機構を経ないで,直接に消費者に販売すること。」と記載されているように,物品の制作者が当該物品の販売を行うことはよく行われていることである。また,ネットワークを介して不特定多数の制作者の作品を紹介するシステムも周知であるから,個人間の商品売買の仲介を行う「不特定多数の販売者が参加するシステム」である引用発明において,販売者として不特定多数の販売対象の物品の制作者を参加させるようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 ( ) 仮に,原告主張のとおり,本願請求項1記載のシステムが「不特定多数の美3術品制作者のみが販売者として参加する」システムであるとしても,本願明細書の発明の詳細な説明には,真の制作者でない者を技術的に排除する具体的手段は記載されていないから,販売者を販売対象の制作者のみに限ることは人為的な取り決めにすぎず,催しや集まりに参加する者を,例えば18歳以上とか女性のみというように,販売者として不特定多数の販売対象の物品の制作者を参加させる際に,販売者として不特定多数の販売対象の物品の制作者のみを参加させるようにすること,すなわち,販売者を販売対象の物品の制作者のみとすることも,当業者が容易になし得たことである。 3取消事由3(顕著な作用効果の看過)に対して引用発明において,販売者を販売対象の物品の制作者のみとし,販売対象の物品を美術品の絵画のみとすれば,絵画の制作者のみが販売者となる当該絵画の販売において,原告が主張する「価格決定過程の透明性を確保し,適正市場を促し」,「適正な市場原理,競争原理を導入することを可能にする」,「制作者に販売する作品を発表する場を提供可能にする」,「複雑な契約も,また複製物の場合の煩雑な手続きも一切不要となり,」,「画像の複製行為による二次的著作物利用権等の問題も生じ得ない」との効果を奏することは,当業者が容易に予測し得たことである。 第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点及び相違点認定の誤り)について( ) 審決は,本願補正発明の「不特定多数の制作者」と,引用発明の「商品の販1売を希望する利用者」とが「不特定多数の販売者」である点で一致するとともに,相違点1について,「前者は,販売者が販売対象の物品の制作者であるのに対して,後者は,そうではない点」で相違すると認定したのに対し,原告は,これを争い,本願補正発明にいう美術品制作者側のコンピュータは,「不特定多数の制作者のコンピュータ」と規定されているのであるから,当該美術品の制作者ではない単なる販売業者のような「非制作者」のコンピュータが本願請求項1記載のシステムを構成することはあり得ない旨主張する。 ( ) 本願補正発明の特許請求の範囲の記載によると,「不特定多数の制作者」の2コンピュータが,中継サーバに「作品見本データ,制作者名,作品名,制作者の希望価格のデータおよび作品表示条件データ」を出力し,「購買者」のコンピュータが中継サーバにアクセスすると,上記データが「購買者」のコンピュータの画面上に表示されるという特徴を有する「美術品販売支援システム」というものであるから,美術品販売の一方当事者が販売者,他方当事者が購買者であって,「購買者」との取引の相手方である「不特定多数の制作者」は,美術品制作者であるとともに販売者でもあることが明らかである。 また,同特許請求の範囲の記載によると,「美術品販売支援システム」における「美術品が絵画」であると規定されているのであるから,「制作者」とは,当該美術品の制作者であると認められる。 ( ) 被告は,「不特定多数の制作者のコンピュータ」と記載されており,「不特3定多数の制作者のコンピュータ」の「制作者」は販売に参加する者すなわち「販売者」でもあるが,「販売者」が「制作者のみ」に限定されるとは記載されていない旨主張する。 特許明細書の用語,文章について,特定の意味で使用しようとする場合には,その意味を定義して使用することができる旨規定されているところ(特許法施行規則様式29〔備考〕8),本件明細書の発明の詳細な説明には,「本明細書でいう制作者とは,絵画等の制作をする画家など,美術品の制作者を含み,さらに美術品の著作権に係る実施権を有する者も含まれる。また,建築デザイナーなども制作者に含まれる。本発明において,全世界または国内全国の制作者の情報は,制作した美術品の画像データなどとともにデータベース化されていてもよい。」(段落【0022】)との記載があり,「制作者」概念を定義しているものである。 上記記載によると,本願補正発明にいう「制作者」とは,厳密な意味での美術品である絵画の制作者のほか,当該美術品に係る「著作権に係る実施権を有する者」などの美術品の制作者に準ずる者も含まれるものとしているのであるから,厳密な意味で絵画の制作者のみには限定されないものの,厳密な意味で絵画の制作者及びそれに準ずる者が「販売者」となっているのであって,「非制作者」を含むと解することはできない。 ( ) 原告は,本願補正発明の「不特定多数の制作者」は,不特定多数の制作者の5みからなる集団であるから,販売者としてはあくまでも制作者のみからなる「特定の販売者」集団なのであって,引用発明における「不特定の個人」であるところの「不特定多数の販売者」には当たらない旨主張する。 しかし,本願補正発明にいう「不特定多数の制作者」とは,上記のとおり,厳密な意味での絵画の制作者及びそれに準ずる者に限定されているところ,このような範囲に属する者であれば,その素性,人数等を問わないのであるから,「不特定多数」であることが明らかである。 ( ) そうすると,本願補正発明の「不特定多数の制作者」は,「不特定多数の販6売者」という上位概念で捉えることが可能であり,かつ,そのような販売者が「制作者」に限るか否かで相違するから,「不特定多数の制作者」に係る審決の一致点及び相違点1の認定に誤りはない。 2取消事由2(相違点についての判断の誤り)について( ) 前記第2の3( )ア(ア)に列挙した引用例の記載及び弁論の全趣旨によれば,12引用例には同(イ)認定の引用発明が記載されているものと認めることができるから,審決による引用発明の認定に誤りはない。また,本願発明と引用発明との対比による前記第2の3( )イの一致点,相違点の認定にも誤りはない。 2( ) 相違点1の「販売者が販売対象の物品の制作者である」点,及び,相違点2 2のうちの「販売対象の物品が美術品であり,しかも,美術品が絵画であ」る点についてア上記のとおり,引用発明における販売者は,「不特定多数の販売者」と認められるところ,「不特定多数の販売者」は,引用例において,個人間商品売買仲介装置の商品購入における利用者とされているものであるが,この「利用者」に関する限定は,引用例の全記載をみても見いだすことができない。 ところで,「広辞苑第5版」(乙1)の「ちょくはん【直販】」の項には,「生産者が流通機構を経ないで,直接に消費者に販売すること。直接販売」との記載があることからして,物品の生産者が自ら生産した物品を直接に販売することは,一般に,周知の技術事項というべきである。 そうすると,引用発明における「不特定多数の販売者」は,商品の生産者も包含するものと認めるのが相当である。 イ次に,引用発明における「販売対象の物品」についてみると,引用例において,「商品購入情報は,例えば,図5に示すように,商品名”セータ”,サイズ”M”,色”赤”,その他」とされており,衣類を例示しているが,売買仲介の対象とする「商品」に格別の限定を加えておらず,また,「本実施形態の個人間商品売買仲介装置は,利用者の購入商品情報,または,販売商品情報を入力する利用者端末101と,利用者の購入商品情報を処理する購入情報処理部111と,販売商品情報を処理する販売商品情報処理部112と,購入商品情報を格納する購入商品情報格納装置121と,販売商品情報を格納する販売商品情報格納装置122とからなる仲介処理部102とがインタネット103で接続された構成をとる。」という「個人間商品売買仲介装置」の性質からしても,売買仲介の対象とする「商品」に格別の限定があると認めることはできない。したがって,「商品」は,「美術品」を包含するものというべきである。 ウ上記イ,ロを併せ考えると,引用発明における「不特定多数の販売者」は,「美術品」,さらには,「絵画」の制作者を包含するものと認めるのが相当である。 エ本願発明は,上記のとおり,引用発明における「不特定多数の販売者」を「美術品」,特に「絵画」の制作者に限定するものであるが,このような限定は,システムの運用に当たるものであり,上記イの「個人間商品売買仲介装置」における「利用者端末101」,「購入情報処理部111」,「販売商品情報処理部112」,「購入商品情報格納装置121」,「仲介処理部102」,「インタネット103」から構成されるいわゆるハードウェアにかかわるものでないことは自明であり,しかも,システムの運用者が適宜に設定し得る日常的な事項にすぎないものというべきである。 したがって,引用発明に接した当業者が,「絵画」の制作者に限定したシステムに想到することに格別の困難性はないものというべきである。 オ原告は,本件出願時,美術品である絵画の制作者のみが当該絵画の販売を行うことも周知又は公知でなかったことなどを理由に,本願補正発明には進歩性がある旨主張する。 しかし,本件の進歩性判断において議論されるべきなのは,引用発明を基に,美術品である絵画の制作者が当該絵画の販売を行うことを当業者が容易に想到し得たか否かであって,当該絵画の制作者のみが当該品の販売を行うことが本件出願時,周知又は公知であったか否かという問題ではないから,原告の上記主張は,そもそも失当である。 ( ) 相違点2のうち「物品に関するデータが作品見本データ,制作者名,作品名3であり,中継サーバのデータを保持する手段が額縁見本データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に額縁見本データも組み合わせて表示する」点についてア 「物品に関するデータが作品見本データ,制作者名,作品名であり,」との点については,平成11年5月15日社団法人情報処理学会発行の「情報処理第40巻第5号」の荻原雄二の論文「美術品ディジタルアーカイブの構築と事業運用」(甲4。474頁〜478頁)に,次の記載がある。 (ア) 「イメージモールジャパンではコンテンツの著作権者,所有者(コンテンツホルダー)から画像を預かり,ディジタル化をして,会員向けにオンライン販売するビジネスを事業の柱としている。」(474頁右欄第2段落)(イ) 「このときの画像品質は画像検索の一覧表示用のレベルから印刷に使用する高精密レベルまであり,1つの写真から複数の品質のディジタルデータを作成し保有している。インターネット上で会員が見ることができるデータは一覧表示レベルのデータであり,画像上で画像の確認はできても電子出版や印刷には品質的に不適格なデータである。」(475頁左欄最終段落〜中欄第1段落)(ウ) 「データベースはテキスト中心の作品に関するテーブルと画像データ及び画像関連情報から成り立っている。作品名,作家名,制作年,国/地方,所蔵元,被写体の属性などで検索し目的のデータを出力する。」(476頁中欄第3段落)「ユーザはパソコンで希望の絵と,サイズ,額縁を選択し,指定の場所に配送するオンデマンド「ディジタル美術印刷」システムが実現することになった・・・。」(477頁右欄末行〜478頁第1段落)(エ) 図2の「検索画面」には,複数の「一覧表示用のレベルのデータ」とともに,例えば,作品名「聖三位一体」,作家名「エル・グレコ」,所蔵元「プラド美術館」,作品名「冥府の川の渡し守カロン」,作家名「パテニール・ヨアヒム」,所蔵元「プラド美術館」などといった記載がある。 イ 上記記載によれば,オンライン販売システムにおいて,運用に使用するデータとして,「画像データ」,画像関連情報として「作品名,作家名,制作年,国/地方,所蔵元」等を使用し,また,「額縁」に係るデータも使用していることが認められる。 しかも,そもそも絵画を販売しようとするときには,それがどのような絵画であるかを示す必要があるから,作品見本データ,制作者名,作品名を表示することは必須の事柄であり,また,購入者は,購入した絵画を適当な額縁に入れて掛けるのが通常であることは,当裁判所に顕著である。 以上を総合考慮すると,引用発明において,販売者のコンピュータからの送信される物品に関するデータとして「作品見本データ,制作者名,作品名」を選択し,「額縁見本データ」を中継サーバに保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に額縁見本データも組み合わせて表示するようにして,本願補正発明の相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものというべきである。 ( ) 相違点3について4ア「作品表示条件データ」について(ア) 本願補正発明の「作品表示条件データ」とは,文字どおりの意味としては,作品を画面上に表示する条件に係るデータということになるが,必ずしも明確でないところ,本件明細書の発明の詳細な説明には,「作品表示条件データとは,作品見本データをコンピュータで表示する際の条件を記録した電子データ」(段落【0016】)との記載があり,「作品表示条件データ」概念を定義していることが認められる。 (イ) 一般に,絵画を画面上に表示するために,表示の内容,程度等に応じて所定の条件を設定しておく必要があることは,当裁判所に顕著である。このことは,例えば,前記( )ア(イ)に「このときの画像品質は画像検索の一覧表示用のレベルから3印刷に使用する高精密レベルまであり,1つの写真から複数の品質のディジタルデータを作成し保有している。インターネット上で会員が見ることができるデータは一覧表示レベルのデータであり,画像上で画像の確認はできても電子出版や印刷には品質的に不適格なデータである。」と記載されているとおり,画像品質を,画像検索の一覧表示用のレベルから印刷に使用する高精密レベルまでに区分し,表示にランク付けをしていること,また,特開平2-124550号公報(甲6)では,撮影者のカメラが,画像情報をフィルムに記録するとともに,撮影者のトリミング指定に応じたトリミング情報を含む撮影情報をフィルムカートリッジのメモリに記録して提供し,フィルム現像後,鑑賞者のテレビ鑑賞システムは,フィルムに記録された画像情報とフィルムカートリッジのメモリに記録されたトリミング情報を含む撮影情報を受け取り,画像情報による画像をテレビ画面に表示するとともに,トリミング情報を含む撮影情報に基づいて,テレビ画面に表示される画像のトリミング,色指定を変化させることができる技術が記載されていることなどからも明らかである。 そして,「作品表示条件」をどのように設定し,設定された情報をどのように入力させ,出力させるかは,システム設計者がその目的,必要性等に応じて適宜決定し得るところである。 イそして,上記システム設計において,?@制作者のコンピュータのデータを中継サーバに出力する手段が「作品表示条件データ」も出力するようにすること,?A中継サーバのデータを保持する手段が「作品表示条件データ」も保持するようにすること,?B購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に「作品表示条件データ」も組み合わせて表示することにし,「制作者のコンピュータのデータを中継サーバに出力する手段が作品表示条件データも出力して,中継サーバのデータを保持する手段が作品表示条件データも保持し,購入者のコンピュータのデータを画面上に表示する手段が作品見本データ,制作者名,作品名に作品表示条件データも組み合わせて表示する」との相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものというべきである。 3取消事由3(顕著な作用効果の看過)について( ) 原告は,本願補正発明の美術品販売支援システムが不特定多数の美術品制作1者のコンピュータが参加するものであって,それ以外の者が販売者となることはないから,本願補正発明において,価格決定過程の透明性を確保し,適正市場を促し,また制作者に作品発表の場を提供可能にすることで,多様化する消費者の欲求に対応可能なマッチングビジネスを活性化するなどといった格別の効果を奏する旨主張する。 しかし,本願補正発明は,上記のとおり当業者が容易に想到し得たものであるところ,原告主張の上記効果は,本願補正発明の構成を採用したならば,当業者が容易に予想し得る範囲内の効果であって,格別のものということはできない。 4以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却を免れない。 なお,本願発明1の進歩性については,そのすべての構成が前記の本願補正発明に含まれているから,本願補正発明について,当業者が容易に発明をすることができたものである以上,本願発明1についても,同様の理由により,引用例に記載された発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 |
裁判長裁判官 | 塚原朋一 |
---|---|
裁判官 | 宍戸充 |
裁判官 | 柴田義明 |