関連審決 | 訂正2006-39141 無効2005-80193 |
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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成18ネ10069特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件 平成19ネ10023同附帯控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成18ネ10038損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成19ネ10005損害賠償等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成18ワ19307特許権侵害差止等請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17ネ10085特許権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 協議 / 産業上利用(29条1項柱書) / 新規性 / インターネット / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 周知技術 / 技術的範囲 / 特許の有効性 / 実施可能要件 / 技術常識 / 先行技術 / 発明の詳細な説明 / 遡及 / 実質的に同一 / 警告 / 悪意 / ライセンス / 特許出願日 / 対象製品 / 容易に想到(容易想到性) / 不存在 / 特許発明 / 実施 / 社会通念 / 交換 / 構成要件 / 差止請求(差止) / 侵害 / 損害額 / 不法行為(民法709条) / 設定登録 / 拒絶審決 / 訂正審判 / 請求の範囲 / 減縮 / 拡張 / 変更 / 釈明 / 審決確定(審決が確定) / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
18年
(ネ)
10040号
特許権侵害差止請求権不存在確認請求控訴事件
平成 19年 (ネ) 10052号 同附帯控訴事件 |
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控訴人・附帯被控訴人株式会社半導体エネルギー研究所 (以下「1審被告」という。) 訴訟代理人弁護士永島孝明 同 安國忠彦 同 明石幸二郎 同 古城春実 同 粟田口太郎 同 内田公志 同 鮫島正洋 補佐人弁理 士磯田志郎 被控訴人・附帯控訴人チー メイ オプトエレクトロニクス コーポレーション(以下「1審原告」という。) 訴訟代理人弁護士大野聖二 同 市橋智峰 訴訟復代理人弁護士佐藤公亮 補佐人弁理 士片山健一 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/10/31 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
11審被告の控訴及び1審原告の附帯控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。 - 2 -(1)1審被告は 1審原告に対し 1995万7600円及びこれに ,,対する平成17年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)1審原告のその余の請求を棄却する。 ,,( 。) 2訴訟費用は 第1審 第2審 附帯控訴により生じたものを含むを通じこれを5分し,その1を1審原告の,その余を1審被告の負担とする。 3この判決の第1項(1)は,仮に執行することができる。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1控訴及び附帯控訴の趣旨1控訴の趣旨(1)原判決中,1審被告の敗訴部分を取り消す。 (2)1審原告の請求をいずれも棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。 2附帯控訴の趣旨(1)原判決主文第2項を次のとおり変更する。 1審被告は,1審原告に対し,1995万7600円及びこれに対する平成17年4月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は,第1,2審とも1審被告の負担とする。 (3)仮執行宣言第2事案の概要等及び争点に関する当事者の主張1事案の概要1審原告は,1審被告に対し,1審被告の有する特許権(特許第3241708号,以下「本件特許権」という。また,原判決別紙特許公報写し記載の本件特許に係る明細書及び図面を「本件特許明細書」といい,本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1記載の発明を 本件特許発明 というに基づく差 「」。)止請求権を被保全権利とし,原判決別紙物件目録記載の液晶テレビ(以下「本件製品 というを販売していた1審原告の顧客である株式会社西友 以下 西 」。) (「友 というを相手方として 販売禁止等の仮処分を申し立てた1審被告の行 」。),為等が不正競争防止法 以下 不競法 という2条1項14号所定の営業上 (「」。)の信用を害する虚偽事実の告知行為に該当すると主張して,?@同法3条1項に基づく差止め,?A同法4条に基づく損害金の一部として1000万円及び遅延損害金の支払,?B1審被告の1審原告の顧客に対する上記差止請求権が存在しないことの確認を求めた。これに対し,1審被告は,上記?@及び?Aの請求につき,1審被告の上記行為は不競法2条1項14号の営業上の信用を害する虚偽事実の告知行為には該当しない,上記?Bの請求に係る訴えにつき,確認の利益がない,などと反論して争った。 原判決は,1審被告による上記仮処分申立ては不競法2条1項14号の営業上の信用を害する虚偽事実の告知行為に当たるなどと認定判断し,1審原告の上記?@及び?Aの請求をいずれも全部認容したが(ただし,仮執行宣言は付していない,1審原告の上記?Bの請求に係る訴えについては,確認の利益がない 。)として,これを却下した。 1審被告は,原判決中の1審被告の敗訴部分(上記?@及び?Aの請求に係る部分)を不服として,本件控訴を提起した。また,1審原告は,附帯控訴を提起して,上記?Aの請求に関し請求を拡張し,不競法4条又は民法709条に基づく損害金の一部として1995万7600円(原判決の認定額)及び遅延損害金の支払を求めるとともに,上記請求を拡張した部分及び原判決中の1審原告の勝訴部分について,仮執行宣言を求めた(なお,民法709条に基づく損害賠償請求は当審において釈明したものである。。)原判決において,これに係る訴えが却下された上記?Bの請求は,当審における審理の対象ではない。 2前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張次のとおり訂正付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要 の 1前提事実 ないし 8争点(6) 損害額 に関する当事者 」 「」「()の主張原判決2頁18行〜22頁22行 に記載のとおりであるから これ 」( ) ,を引用する なお 原判決の略語表示 前記1において用いたものを含むは 。,( 。)当審においてもそのまま用いる。 3原判決の訂正(1)原判決2頁23行目の 液晶トランジスタ を 薄膜トランジスタ と改 「」 「」める。 (2)原判決3頁8行目の 平成3年3月25日 の後に 行を改め 次のとお 「」,,り挿入する。 当審注 本件特許は 平成3年3月25日に出願した特願平3-846 「(,,53号の一部を分割して,平成11年12月27日に新たな特許出願とした特願平11-371641号の一部を更に分割して,平成12年8月7日に新たな特許出願(特願2000-238616号)としたものである」。)(3)原判決3頁12行目の 争いのない事実 の後に弁論の全趣旨 当裁 「」「,,判所に顕著な事実」を挿入する。 (4)原判決5頁25行目の「営業誹謗行為に当たるか 」の後に「また,本件 。 仮処分申立て及び本件記者発表は,不法行為を構成するか 」を挿入する。 。 (5)原判決7頁16行目及び13頁7行目の 本件明細書 を いずれも 本 「」 ,「件特許明細書」と改める。 41審被告の主張(原審における主張の補足及び釈明)(1)争点(2)(構成要件Cの充足性)について構成要件Cの 酸化物半導体膜 の意義については 以下のとおり酸化 「」,,「錫,酸化インジウム,酸化錫インジウム又はそれらの合金や化合物」からなるものであれば足りると解すべきでありソース・ドレイン間の抵抗に比べ ,「て相対的に抵抗の大きいもの」と限定的に解すべきではない。 ア特許請求の範囲には 構成要件Cの 酸化物半導体膜 は酸化錫 酸 ,「」 ,「,化インジウム,酸化錫インジウム又はそれらの合金や化合物」から構成さ, , れるものであれば足りるというべきであって その他の限定すべき文言は記載されていない。したがって,本件において,発明の詳細な説明の記載,「」 。 に基づいて 構成要件Cの 酸化物半導体膜 を限定解釈する理由はないイ本件特許明細書の発明の詳細な説明欄には,酸化物半導体膜がソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいものであることの記載は,,【】,【】,【】,, なく むしろ006900250038 には 以下のとおり「ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいもの」とは矛盾するような事項が開示・示唆されている。 (ア)本件特許明細書の【0069】には,透明導電性材料の被膜として酸化物半導体膜を形成し,その一部を表示部の画素電極として使用し,他の一部を保護回路の薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方とゲートとを接続する「酸化物半導体膜」として使用した実施例が記載されているところ,本件特許発明の属する表示装置の技術分野において,画素電極としても使用される酸化物半導体膜の抵抗が薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗に比べて小さくなることは技術常識から自明である。なぜなら,表示装置の画素電極として使用される透明導電性材料の被膜は10Ωcm程度の比抵抗であるから 乙9 甲16本-4(,),件特許明細書の【0025】に記載された「長さ10μm,幅1μm,厚さ0 1μmの線状体 の場合には 10 Ω程度の抵抗となるのに対 .」,2し,表示装置の薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗は,本件特許明細書の記載によれば10 〜10Ωであり 一般的にもオン状態8 11,で10 Ω程度にすぎないことが周知であった(乙19)からである。 6(イ)本件特許明細書の 0038 には良導電体 である金属材料の 【】,「」電極と対比して抵抗として機能する配線 が記載されており これが ,「」,金属材料の電極と比較して抵抗の大きい配線を意味することは明らかであるところ抵抗として機能する配線 については 酸化物半導体膜で ,「」,ある酸化錫・インジウムが単なる「抵抗性材料」とされている一方,アモルファスシリコンは「高抵抗」とされているから,酸化物半導体膜の方がアモルファスシリコンよりも抵抗が小さいことが明示されているということができる。 (ウ)なお 本件特許明細書の 0025 には抵抗として機能する配 ,【】,「線」の抵抗とソース・ドレイン間の抵抗とを比較した記載が存在する。 しかし ここでの 抵抗として機能する配線 は酸化物半導体膜 で ,「 」 ,「」はなく高抵抗多結晶シリコン 又は アモルファス セミアモルファ ,「」「(ス)シリコン」であり,しかも,ある特定の寸法の線状体に形成したものが示されているにすぎない。酸化物半導体膜は,アモルファスシリコンよりも抵抗が小さいものであり,本件特許発明ではその寸法を限定していないから,本件特許明細書の上記記載は,構成要件Cの「酸化物半導体膜」を「ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいもの」と理解する根拠とはならない。 ウ酸化物半導体は,表示装置の技術分野において,透明度が高いという光学的性質から,一般的に画素電極の材料として使用されていたことは周知であり 乙9 甲16酸化物半導体の抵抗が 金属材料の抵抗に比べて (,),,高く,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗に比べて小さいことは 当業者の技術常識であるから 構成要件Cの 酸化物半導体膜 を ソ , ,「」 「ース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいもの」と解釈することは,技術常識にも反する。 (2)争点(4)(無効理由の存否について)ア進歩性欠如の無効理由その2について,, , 本件特許発明は 以下のとおり 引用発明2に周知技術を組み合わせて又は引用発明2に引用発明1を組み合わせることによって,当業者が容易に発明することができたということはできない。 (ア)本件特許発明の目的及び作用効果について従来,アクティブマトリクス型表示装置は,静電気等による過大な電圧が薄膜トランジスタに印加されると,薄膜トランジスタがダメージを, (【】, 受け 破壊されるという問題点があった 本件特許明細書 00070008これに対し 本件特許発明は薄膜トランジスタを保護 【】)。,,「するための回路を適切な位置に適切な作製方法によって設け,薄膜トランジスタを保護し 上記表示素子の信頼性 寿命を高めること同 0 ,,」( 【009 )を目的とする。 】本件特許発明は,構成要件A及びEに規定するように,表示部及び保護回路を有するアクティブマトリクス型表示装置であり,また,保護回路は,構成要件BないしDで規定するように,薄膜トランジスタを有しており,薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方が,該薄膜トランジスタのゲートに酸化物半導体膜を介して電気的に接続され,該薄膜トランジスタのソース及びドレインの他方が,基準の電圧の配線に電気的に接続されている。このため,本件特許発明は,静電気等による過大な電圧が印加されても,保護回路を通じて過大な電圧を基準の(つまり低い)電圧の配線にバイパスして取り除くことができ,過大な電圧によって表示部の薄膜トランジスタが損傷されることを防止することができる。さらに,本件特許発明は,構成要件Cにおいて,保護回路の薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方とゲートとの接続として「酸化物半導体膜」を介した電気的接続を採用したため,保護回路の薄膜トランジスタを保護し,過大な電圧を速やかに取り除くことができ,表示部の薄膜トランジスタの作製と同時に作製することができる。すなわち,本件特許発明は,保護回路の薄膜トランジスタの保護,過大電圧の速やかな除去,保護回路の作製容易性という作用効果を有する。 (イ)周知技術について本件特許出願当時,ITO膜を透明導電膜として画素電極に用いることは周知であったけれども,以下のとおり,ITO膜を導電膜として用いることが周知の技術であったわけではない。 確かに,本件特許出願当時,表示装置の技術分野において,ITO膜が透明導電膜として用いられていたが,これは透明度が高いというITO膜の光学的特性から,主に表示部の画素電極の材料として用いられていたにすぎない。すなわち,本件特許出願日当時,酸化物半導体膜は,金属材料に比較して,透明度が高いという光学的特性を有するものの,導電性においては劣っていることが周知であったから,単なる導電材料として使用する場合は,酸化物半導体膜ではなく金属材料が用いられていた。このため,配線等には一般的に金属材料が用いられ,金属材料が使用できない特殊な理由がある場合にのみ,酸化物半導体膜が利用されていた。甲14,16,17,36〜47においても,ITO膜は表示装置の画素電極として使用されることが前提とされている。 なお,乙43(特開昭62一209514号公報)には,配線としては,金属材料の方がITOよりもシート抵抗が小さく優れているが,工程数の増加によるコストアップを防ぐため,やむを得ず,金属材料ではなくシート抵抗の大きいITOを利用していたことが示されている。 (ウ)相違点1についての容易想到性の有無について薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方と薄膜トランジスタのゲートとの接続につき,酸化物半導体膜を介した接続にすることは,以下のとおり,当業者にとって容易であったということはできない。 a本件特許出願当時,ITO膜を透明導電膜として画素電極に用いることが周知の技術であったとしても,薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方とゲートという特定の部材の接続に着目して,これらをITO膜で接続することは,以下のとおり,当業者による設計事項とはいえない。 引用発明2の保護トランジスタは,表示部に設けられるものではなく画素電極を有していないものであり,そのソース及びドレインの一方とゲートとを接続する配線として透明である必要はない。 また,引用発明2では,既に金属材料によって配線が形成されているから,乙43に示される周知技術に照らしても,当業者が,引用発明2の金属材料による配線をシート抵抗の大きいITOに変更するはずはない。 b本件特許出願当時,表示装置の技術分野において,酸化物半導体の抵抗率が,金属材料に比べて高いことは当業者にとって技術常識であった。また,ゲート電極とドレイン電極の途中に酸化物半導体を介在させると,異なる材料同士のコンタクトが増加するため,接触抵抗が増加することからも,インピーダンスを高めることになる。 したがって,引用発明2において,保護トランジスタのゲートとドレインとの金属材料による接続に,金属材料に比べて高抵抗の酸化物半導体膜を介した接続を適用することには,阻害要因がある。 c引用発明2には,プロセス的にも構造的にも複雑になる「ゲート電極とドレイン電極の途中に酸化物半導体膜を介在させる構造」を採用する動機付けが存在しない。乙43に示される周知技術に照らせば,当業者は,工程数の増加によるコストアップを防ぐためにも,酸化物半導体膜を介した接続を採用しない。 d本件特許発明の前記(ア)の効果は,保護回路の薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方とゲートとの接続として,金属材料よりも抵抗の大きい「酸化物半導体膜」を採用したことによって得られる効果であり,引用発明2から予測できるものではない。 (エ)相違点2に関する容易想到性の有無について引用発明2における薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方と薄膜トランジスタのゲートとの接続に用いられる酸化物半導体膜を表示,, 部で用いられる酸化物半導体膜と同一材料とすることは 以下のとおり当業者にとって容易であったということはできない。 a引用発明は,後にエッチングにより除去するため,ソース・ドレイン電極12とは異なる金属を用いる必要があることから,ショート配線13の存在を前提として,ショート配線13をそのままソース・ドレイン電極12上に形成した場合にソース・ドレイン電極12の段差によって断線が生じるという課題を解決するために,酸化物半導体膜である透明電極をソース・ドレイン電極12とショート配線13との間に介在させた点に特徴がある。 したがって,トランジスタを破壊する電流を他の場所に流すための配線として酸化物半導体膜を使用するとの技術思想は,引用例1には開示されていない。 b引用発明2には,引用発明1の構成を適用する前提が存在せず,引用発明2に引用発明1を組み合わせることは当業者にとって容易に想到できるものではない。さらに,前記(ウ)のとおり,引用発明2において,酸化物半導体膜を介した接続を適用することには,阻害要因があり,動機付けも存在しないから,当業者は,引用発明1の酸化物半導体膜である透明電極を用いた接続を引用発明2に適用することはないといえる。 (オ)本件無効審決について1審原告は,本件特許に対する無効審判(無効2005-80193号事件 の審決 以下 本件無効審決 というにおいて 本件特許発 )(「」。),明を減縮した,平成18年1月19日付け訂正請求書(甲65)における特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下「無効審決時発明」というについて 特許庁が引用発明2に周知技術を適用することにより当 。),業者が容易に発明することができたと判断していること(甲49)を指摘する。 しかし,1審被告は本件無効審決の取消を求めて審決取消訴訟を提起しており(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10298号審決取消請求事件同事件において 本件無効審決は その認定判断に誤り ),,,があるものとして,取り消されるべきものであるから,これに基づく1審原告の主張は失当である。 (カ)本件訂正拒絶審決について1審原告は,本件特許に対する訂正審判(訂正2006-39141号事件 以下 本件訂正審判 というの審決 以下 本件訂正拒絶審 ,「」。)(「決 というにおいて 本件特許発明を減縮した 平成18年8月30 」。),,日付け訂正審判請求書(甲53)における,特許請求の範囲の請求項1記載の発明 以下 本件訂正発明 というについて 特許庁が引用発 (「」。),明2及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたと判断していること(甲57)を指摘する。 しかし,1審被告は本件訂正拒絶審決の取消を求めて審決取消訴訟を提起しており(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10044号審決取消請求事件同事件において 本件訂正拒絶審決は その認定判 ),,,断に誤りがあるものとして,取り消されるべきものであるから,これに基づく1審原告の主張は失当である。 イ実施可能要件違反ないし産業上利用することができる発明ではないことについて1審原告は 本件特許明細書の 0017 の 図6 A は ・・・過 ,【】 「() ,大電圧がかかったときにのみ動作して過大電圧をバイパスする回路である ・・・一方 A点における電位が+50V以下であれば 薄膜トランジ 。, ,,」 , スタは高い抵抗として機能し ・・・・ なる記載は技術的に誤りであり保護回路として機能し得ない旨主張する。 しかし,1審原告の上記主張は,本件特許明細書の【0017】の記載を誤解するものであり,失当である。 (ア)本件特許明細書の【0017】には,A点の電位が50V以下の場合に 薄膜トランジスタが導通しない とは記載されておらず電圧は 「 」,「あまり低下しない」との記載が示唆するように,薄膜トランジスタが導。, , 通することを前提としている そして 薄膜トランジスタが導通しても抵抗R1によって電圧降下された電圧が薄膜トランジスタのゲートに印加されるため,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間を流れる電流を小さくすることができ,結果として,薄膜トランジスタの抵抗を高くすることができ,さらに,抵抗R1及びR2に加えて,薄膜トランジスタの抵抗を有するため,保護回路の薄膜トランジスタを流れる電流が少なくなり,A点の電位をあまり低下させずに,正常な信号電圧を表示部分に供給することができる。仮に抵抗R1及びR2を設けなかった場合,A点の電位が40Vであったとしても,保護回路の薄膜トランジスタのゲートにはしきい値(5V)をはるかに上回る電圧が印加され,抵抗R1及びR2を設けた場合よりも薄膜トランジスタの抵抗は小さくなり,A,B間の抵抗は小さくなる。 そもそも,本件特許明細書の【0010】に記載されているように,本件特許発明の保護回路は正常な駆動電圧は 表示部分の薄膜トラン ,「(ジスタに)通過させるが,過大な電圧は(表示部分の薄膜トランジスタに)通過させず適切にバイパスさせる必要がある」ものである。正常な駆動(信号)電圧は,電源から大量の電流が供給されるものであり,保護回路を通じて多少バイパスしたとしても,表示部分の薄膜トランジスタに供給することが可能である。また,本件特許明細書の【0008】に記載されているように 過大な電圧は静電気が主な理由であり 電 ,,「,流量自体は決して大きくない」から,保護回路を通じてバイパスさせることによって取り除くことができる。 このように,保護回路の薄膜トランジスタが正常な駆動(信号)電圧によって駆動したとしても,保護回路は,正常な駆動電圧を表示部分の薄膜トランジスタに通過させ,過大な電圧を表示部分の薄膜トランジスタに通過させずバイパスさせることができ,保護回路としての機能を果たすことができるのであるが,保護回路に抵抗R1及びR2を設けることで,上述したとおり,正常な駆動電圧がバイパスされる量をより低減させることができる。 (イ)シミュレーション報告書(乙53)及び追加シミュレーション報告書(乙54)も,1審被告の主張を裏付けるものである。 (ウ)1審原告は,本件訂正拒絶審決において,本件訂正発明は,保護回路がその機能を果たすための技術事項が,発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとはいえず,発明の詳細な説明の記載が平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項 以下 特許法旧36条4項 というに規定す (「」。)る要件を満たしていないと判断していること(甲57)を指摘するが,前記ア(カ)のとおり,本件訂正拒絶審決は,その認定判断に誤りがあるものとして,取り消されるべきものであるから,これに基づく1審原告の主張は失当である。 (エ)原判決は 「本件特許発明が保護回路として機能しないこと(前記第 ,2 6(1)オ(産業上利用することができる発明でないこと)(ア))及び(イ)) ,, , 。」 は 被告において明らかに争わないから これを自白したものとみなす(〔,「」 「」 原判決31頁7行〜9行 当審注 同7行の 6(1)エ は 6(1)オの誤記と認めるとして これを基礎に判断したが 1審被告は 原審 。〕),,,における平成17年9月26日付け被告準備書面(5)の18頁において,上記事実を明確に争っているから,原判決の上記認定判断は誤りである。 ウ訂正による無効理由の解消について仮に本件特許権に無効理由が存在するとしても,本件訂正審判における訂正により,無効理由は解消されている。また,本件製品は本件訂正発明の構成要件についてもこれをすべて充足する。 なお,前記ア(カ)のとおり,本件訂正拒絶審決は,その認定判断に誤りがあるものとして,取り消されるべきものである。 (3)争点(5)(信用を害する虚偽事実の告知行為又は不法行為)についてア「競争関係」について以下のとおり,1審被告と1審原告との間に,不競法2条1項14号にいう「競争関係」は存在しない。 (ア)不競法2条1項14号にいう「競争関係」とは,必ずしも双方が販売競争を行っているというような現実の商品販売上の競争関係があることを要さないとしても,同種の役務を提供するという業務関係にあることが必要である。 ところで,1審被告は,結晶系薄膜集積回路,半導体薄膜集積回路,半導体薄膜トランジスタ,液晶ディスプレイ等の研究開発(研究開発のみ行い 製造を行わないを業とする企業であり 研究開発の成果につ ,。),き工業所有権を取得し,これをライセンス等により普及,活用し,更なる研究開発に投資しており,商業登記簿の目的欄の記載にかかわらず,液晶ディスプレイ等を製造販売したことはなく,また,将来これを行う意図もない 乙26したがって 1審被告と1審原告とは 液晶ディ ()。,,スプレイの製造販売という同種の役務を提供するという業務関係になく,そのような関係に至るおそれもないから,不競法2条1項14号にいう「競争関係」は存在しない。 (イ)1審原告は,1審被告が,訴外エルディス株式会社(以下「エルディス社 というを通じて ディスプレイ製品の生産に関与しているこ 」。),とによっても,1審原告と競合する関係にある旨主張する。 しかし,以下のとおり,1審原告の上記主張は失当である。 すなわち,1審原告は,1審被告でなく,エルディス社との競争関係, 「」 を指摘するにすぎないところ 不競法2条1項14号にいう 競争関係は,そのような間接的な場合を含まない。 また,そもそも1審被告はエルディス社の業務をコントロールできる地位にはないから,1審被告が,同社を通じて,ディスプレイ製品の生産に関与しているということはできない。 (ウ)1審原告は,本件製品と1審被告のライセンス製品とが市場で競合, 。 する関係にあることからも 1審原告と競合する関係にある旨主張するしかし,不競法2条1項14号にいう「競争関係」は,そのような間接的な場合を含まない。 イ本件仮処分申立てについて(ア)「告知」行為の有無について以下のとおり 本件仮処分申立ては 不競法2条1項14号にいう 告 ,, 「知」には該当しない。 a同号にいう 告知 とは自己が感知した一定の事実を特定の人に 「」,「知らせる伝達行為」を意味する。これに対し,仮処分申立てを含め,訴えの提起は,権利者が義務者に対して権利を実現するための裁判による救済を求める申立て行為であって自己が感知した一定の事実を ,「特定の人に知らせる伝達行為」には当たらない。 b西友は,原告モジュールを搭載した本件製品を日本国内において販売したものであり,その行為は本件特許権の侵害となり得るものである。そして,原告モジュールの製造及び本件製品への搭載は,日本国, , 外で行われ 完成品である本件製品が日本国内に輸入されているため日本において侵害訴訟の相手方当事者となり得るのは,輸入業者及び西友のような販売業者のみである。このような事実関係の下で,西友を相手とした本件仮処分事件に係る申立書の送達行為が不競法上2条1項14号の「告知」行為に該当するとするならば,仮処分の決定において1審被告の主張が認められなかった場合には,同号所定の「虚偽事実の告知」行為に該当することになり,裁判制度を設けた趣旨目的に反する不都合が生ずる。なお,本件仮処分事件は,決定がなされる前に1審被告が取下げることにより終了しており,何ら執行力を生じていない。 (イ)「虚偽の事実」の有無について本件製品が本件特許権を侵害するとの事実は,以下のとおり,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」に当たらない。 a原告モジュールを組み込んだ本件製品は本件特許発明の構成要件をすべて充足し,また,本件特許権には無効理由は存在しない(仮に無効理由が存在するとしても,本件訂正審判における訂正により,無効理由は解消される。したがって,本件製品が本件特許権を侵害する 。)との事実は,客観的にも真実である。 b以下のとおり,特許権の行使ないしこれに付随する行為が,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当するというためには,当該行為が違法である場合,すなわち,特許権者が特許に無効理由が存在すること若しくは対象製品の製造販売等が当該特許を侵害しないことが明らかであることを知りつつ,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たにもかかわらず,あえて通知・公表等を行った場合に限られると解すべきであって,事後的に当該特許に無効理由があり,あるいは,対象製品が特許発明の技術的範囲に含まれないとの公権的な判断がされたことから直ちに,これに先立つ権利行使に伴ってされた特許権者の主張等が不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」に当たるということはできない。 そして,後記(オ)のとおり,本件仮処分申立ての時点において,1審被告が本件特許に無効理由が存在すること若しくは本件製品が本件特許発明の技術的範囲に含まれないことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのに,あえてこれを行ったというような事情は存在しないから,本件仮処分申立ては,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」の告知行為には該当しない。 (a)特許権の正当な行使は不正競争行為に該当しないところ,事後的に当該特許に無効理由があり,あるいは,対象製品が特許発明の,, 技術的範囲に含まれないとの公権的な判断がされた場合に 直ちにこれに先立つ権利行使に伴ってされた特許権者の主張等を不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」に該当するとすれば,特許権の正当な権利行使を著しく萎縮させることになり,相当でない。したがって,同号にいう「虚偽の事実」の該当性の判断に際しては,特許権の正当な権利行使を萎縮させるおそれと公正な競争秩序の維持とを比較考量して,社会通念上許容される限度を超える違法なものであるか否かを検討すべきである。 原判決のように,同号に該当するとした上で,更に違法性阻却事由を検討するという立場は,条文解釈上無理があり,また,違法性阻却事由の評価根拠事実の立証責任を特許権者に課すことにより,,。 特許権の権利行使を著しく萎縮させるものであるから 相当でない(b)「虚偽」という文言が「真実ではないと知りながら真実であるかのようにみせること」ないし「真実のようにみせかけること」を意味すること,法律上の文言である「虚偽表示」が「相手方と通じてなす真意でない意思表示」と解されていることに照らせば,不競「」「 」 法2条1項14号の 虚偽 とは 真実でないことについての悪意を包含するものと解釈すべきである。 (c)特許法125条は,特許権の遡及的無効について規定しているが,その趣旨は,確定審決により無効とされた特許権の権利者による遡及的な権利行使を防止するための法律上の擬制にすぎず,事後に特許が無効と判断されることがあっても,権利行使をした時点において,特許権が有効に存続していたという事実自体が遡及的に消滅するわけではない。 (ウ)違法性について不正競争行為というためには,違法性が必要であるが,前記(イ)のとおり,事後的に当該特許に無効理由があり,あるいは,対象製品が特許発明の技術的範囲に含まれないとの公権的な判断がされれば,当然に不競法2条1項14号に該当するというのではなく,特許権の正当な権利行使を萎縮させるおそれと公正な競争秩序の維持とを比較考量して,社会通念上許容される限度を超える違法なものであるか否かを検討し,違法性の判断がされるべきである。 なお,仮処分申立ては,緊急性及び暫定性を前提とするものではあるが,裁判制度の利用という点で本案訴訟の提起と異なるものではなく,, , 特に債務者の審尋が行われる場合には 実質的に後者と異ならないから仮処分申立てが違法となる場合は,本案訴訟の提起が違法となる場合と何ら異なるものではない。 しかるところ,後記(オ)の事情の下では,本件仮処分申立てに違法性があったということはできない。 また,前記(ア)bのとおり,本件仮処分事件は,決定がされる前に1審被告が取下げることにより終了しており,何ら執行力を生じていないことに照らしても,本件仮処分申立てが違法と評価される余地はない。 (エ)故意過失について以下のとおり,1審被告に故意過失は認められない。 a技術的範囲の属否や特許権の有効性について高度な調査義務を課せば,特許権の正当な権利行使を萎縮させ,特許制度の存在意義を没却するおそれがある。また,特許庁の審査を経て設定登録された特許権, , は 無効審決が確定するまでは有効性が推定されるというべきであり,, 特許権者に無効理由の調査義務を課すことは 高度な調査義務を課しひいては不可能を強いるものである。 b仮処分申立ての場合と本案訴訟の提起の場合とで,不競法4条の損害賠償請求の要件としての故意過失を区別する理由はない。前記(ウ)のとおり,前者は,緊急性及び暫定性を前提とするものではあるが,裁判制度の利用という点で後者と異なるものではなく,特に債務者の審尋が行われる場合には,実質的に後者と異ならない。 仮処分手続において,債権者に本案訴訟とは異なる注意義務が要求されることがあるが,これは,仮処分命令が出され,即時に執行力を獲得する場面を想定したものであって,仮処分申立てそれ自体に本案訴訟の提起の場合よりも高度の注意義務が課されるという趣旨ではない。 なお,前記(ア)bのとおり,本件仮処分事件は,決定がされる前に1審被告が取下げることにより終了しており,何ら執行力を生じていない。 c1審被告は,下記(オ)のとおり,通常必要とされる以上の事実調査を実施した上で,本件仮処分申立てをしたものであるから,故意過失があるということはできない。 (オ)本件仮処分申立てに至る経緯についてa1審被告は,本件仮処分申立てに先立つ平成16年5月ころ,本件特許権及びその国内外の関連出願について,先行技術に係る文献を収集するとともに,弁護士及び弁理士を交えて,慎重に検討した。具体的には,本件特許権及び上記関連出願の審査過程を精査して,特許の有効性に影響を与えるような瑕疵や限定解釈の根拠となるような事実がないことを確認するとともに,本件特許発明及び上記関連出願に係る発明の作用効果の抽出作業を行う一方,これらの審査経過において引用された文献に,本件特許発明の構成要件や作用効果が開示されて。 , いるか否かについて確認するなどした このような調査・検討の結果保護回路のゲートとソース及びドレインの一方を電気的に接続させる材料として,ITOに代表される酸化物半導体膜を使用する先行技術はないことを確認し,本件特許に無効理由がないことを確認した。 また,1審被告は,本件特許明細書の記載から,本件特許発明の構成要件Cにいう「酸化物半導体膜」は,酸化錫,酸化インジウム,それらの化合物であるITOを含む,構成要件Dにいう「基準の電圧の配線」は,サージ(静電気)電圧によって発生する電位差を逃がす先の配線を意味する,とそれぞれ解釈した上で,西友が販売していた本件製品について分析を行い,本件製品に搭載された液晶パネルに保護, , 回路が存在すること 保護回路が薄膜トランジスタを用いていること上記薄膜トランジスタのソース及びドレインとゲートを接続する薄膜が存在していること,上記薄膜が,その主成分として,In(インジウムSn 錫 及びO 酸素 を含んでおり ITOであると認め ),()(),られることを確認するとともに,上記薄膜トランジスタのソース及びドレインの他方が配線Lに電気的に接続されていることを確認し(乙3 ,本件製品が構成要件C及びDを充足すると判断した。 )このように,1審被告は,通常必要とされる事実調査を超える精度の高い詳細な調査・分析を行って,本件仮処分申立てを行った。 b1審被告は,1審原告に対し,平成13年7月27日,1審原告の製造する液晶モジュールが1審被告の特許権の技術的範囲に属すること,及び,1審原告が適切に対応しない場合には権利行使することを警告したところ 甲71審原告は 同年8月23日 特許権侵害を (),,,検討するため,1審原告のどの製品が1審被告のどの特許権を侵害し(),, ているのかを明らかにすることを求めたので 甲241審被告は同年9月11日,1審原告の製品に関連する1審被告の有する合計40個の特許権リスト示して,1審原告において特許権侵害の調査は容易であることを指摘するとともに,問題解決への努力を促した(甲25これに対し 1審原告は 1審被告に対し 同年10月5日 1 )。,,,,審被告の有する特許権の内容は明らかになったとしながらも,1審原告のどの製品がどのようにして1審被告の有する特許権を侵害しているかが明らかでないとし,さらには,1審原告において特許権侵害の有無を明らかにするためには相当の時間を要することを述べるとともに,自ら,1審被告のライセンス契約書のサンプルを求め,ライセン()。,, ス交渉を開始するよう求めた 甲26これを受けて 1審被告は同月15日,1審原告に対し,1審原告の液晶モジュールが組み込まれているアドテック製の液晶モニター及び富士通製品が1審被告の特許権を侵害する可能性がある旨を伝えた(乙27)が,1審原告は,同月31日,1審被告に対し,1審被告の特許を概括的に検討した結果,上記各製品が1審被告の特許権を侵害しないと結論付けたことを述べるとともに,1審被告が液晶ディスプレーの分野では卓越した技術を有するとの理由で,本件解決のための協議を行いたい旨を回答した(乙28 。)その後,1審被告と1審原告との間で,協議の日程調整のため書簡の交換が行われたが 乙29ないし311審被告からの平成14年 (),5月14日付書面(乙31)を最後に,1審原告からは回答がなくなった。 上記一連のやり取りから約1年が経過した平成15年5月26日,1審被告は 1審原告に対し 東京又は台湾での協議を提案したが 乙 ,, (), ,, 321審原告から回答がなかったため その後計3回にわたって台湾での協議を提案・要望し 乙33ないし35さらに 同年12 (),,月16日,1審被告の有する新たな日米の特許リストを送付し,社内分析の結果1審原告の液晶ディスプレー製品の1つが特許リスト記載の特許権を侵害すると伝えた 乙33また 1審被告は 平成16 ()。,,年1月6日,1審被告にとって,知的財産は重要な財産であり,本件は重要度が高く,早急な解決のために協議を行いたいこと,協議において1審被告は特許権について説明する用意があることを伝えた(乙35さらに 1審被告は 1審原告に対し 同年1月9日 同月1 )。,,,,4日に1審原告の本社を訪れ,1審被告の上記特許リストに掲載され()。, ている特許公報を手渡しすることなどを提案した 乙36しかし1審原告は,代表者の都合がつかないと説明し,特許公報についても米国代理人に送付して欲しいと回答するのみで,具体的な話し合いの姿勢を見せなかった 乙37その後 1審原告は 同年4月5日に ()。,,なって突然,1審被告に対し,協議を望むのであればその前にライセンス契約書及び技術資料を1審原告に送付するよう求めるとともに,1審被告やその関係者が興味を有すると1審原告が考えた1審原告の有する米国及び日本における特許リストを送付してきた 乙381()。 , , 審被告は 上記特許リストを調査する意思のないことを示すとともに同年5月10日ないし13日のいずれかにおいて,東京での協議を行うことを改めて求めた 乙39ところが 1審原告は 1審被告に ()。,,対し,同年4月15日,1審被告が1審原告やその関連会社の特許を使用しており,1審被告やその関連会社であるエルディス社は,1審原告からライセンスを受けることを望むはずであるなどと主張し,さらに,1審被告への投資又は投資とライセンスの両方について,協議()。,, の議題とすること等を要請した 乙40これを受けて 1審被告は1審原告に対し,同月19日,1審原告から投資を受ける意思はないこと 投資に関する協議であれば行わないことを伝えた 乙41こ , ()。 れに対し,1審原告は,1審被告に対し,同月21日,再び1審被告への投資の可能性を提案するとともに,1審被告がエルディス社等を通じて間接的に1審原告の特許を侵害していると警告してきた(乙42 。)1審被告は,このよう交渉態度にかんがみ,1審原告とのライセンス交渉は無益であると判断した。 その後,1審被告は,前記aの調査・検討を行った上で,同年12月1日,西友に対し,本件仮処分を申し立てた。その後,平成17年2月,1審原告は,1審被告に対し,本件訴訟を提起した。 c上記bの経緯によれば,1審被告のみならず,通常人であれば,1審原告に1審被告とのライセンス契約を締結する意思がないこと,さらには,1審原告が交渉の長期化を目論んでいたと判断するのは当然である。 そうすると,1審被告が,自らの技術開発の成果を正当に守り,また,本件特許権について1審被告から正規のライセンスを受けている者との関係を考慮して,特許権行使のための裁判手続を選択することは,妥当であるというべきである。しかも,原告モジュールの製造販売は台湾において完結しているため,本件特許権の行使の対象たり得る者は,輸入業者又は西友などの販売業者をおいて他にはなかった。 したがって,西友に対し本件仮処分申立てを行ったことは,1審被告にとって当然の選択であったというべきである。 ウ本件記者発表について1審原告の主張(後記5(3)ウ)は争う。 エ不法行為の成立について1審原告の主張 後記5(3)エ は争う 前記アないしウの事実経緯等に ()。 照らし,1審被告の行った本件仮処分申立て及び本件記者発表は,民法709条の不法行為を構成するものではない。 (4)争点(6)(損害額)について1審原告の主張(後記5(4))は争う。 51審原告の主張(原審における主張の補足及び釈明)(1)争点(2)(構成要件Cの充足性)について構成要件Cの「酸化物半導体膜」は,以下のとおり,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗をほとんど無視できる程度の大きな抵抗値を持つ酸化物半導体膜に限定されるものとして,その意義を解釈すべきである。 ア1審被告は,本件特許明細書の【0069【0025【0038】 】,】,にはソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいもの と ,「 」矛盾する事項が開示・示唆されている旨主張する。 しかし,以下のとおり,1審被告の上記主張は失当である。 (ア)1審被告は,本件特許明細書の【0025】の記載について,構成要件Cの「酸化物半導体膜」を「ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいもの」と解する根拠とはならない旨主張する。 しかし 1審被告の上記主張は誤りである すなわち0025 と , 。,【】これに続く【0026】の記載によれば,本件特許明細書の図6及び図7に図示された保護回路で使用される抵抗としては,珪素を主とする材料を用いてもよいし,金属材料や金属と珪素との合金,各種化合物半導体(例えば酸化錫,酸化インジウム,酸化錫インジウム等)を用いてもよいが,いずれの材料を用いるにせよ,ソース・ドレイン間の抵抗の値を考慮することはソース・ドレイン間の電圧を決定する上で重要であり,薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる抵抗体であることが求められるとされていると理解することができる。 (イ)1審被告は 本件特許明細書の 0038 の記載を指摘して抵 ,【】,「抗として機能する配線」の抵抗値が,保護回路に設けられる薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗とは無関係であるかのように主張する。 , 。,【】 , しかし 1審被告の上記主張は誤りである すなわち0038 は図6及び図7並びに【0025】ないし【0026】に記載された抵抗体を備える保護回路の作製方法を説明する記載部分であるから,ここでいう「抵抗として機能する」とは,保護回路に設けられる「薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる」ことを意味することは明らかである。 (ウ)1審被告は,本件特許明細書の【0069】の記載を指摘しつつ,本件特許発明の属する表示装置の技術分野において,画素電極としても使用される酸化物半導体膜の抵抗が薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗に比べて小さくなることは技術常識から自明である旨主張する。 しかし,1審被告の上記主張は誤りである。すなわち,本件特許明細書の【0069】は,実施例の記載された部分であり,図6及び図7並びに【0025】ないし【0026】の記載内容を前提とするものであるから0025 において 保護回路に設けられる抵抗体は 薄膜ト ,【】, 「ランジスタの抵抗はほとんど無視できる」抵抗体であることが求められる旨を記載している以上0069 に記載された保護回路の薄膜トラ ,【】ンジスタのソース及びドレインの一方とゲートとを接続する「酸化物半導体膜」は,保護回路に設けられる「薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる」ものとならざるを得ない。このような本件特許明細書の記載を離れて,画素電極としても使用される酸化物半導体膜の抵抗が薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗に比べて小さくなることは技術常識から自明であるなどとすることはできない。 イ1審被告は酸化物半導体膜 を ソース・ドレイン間の抵抗に比べて ,「」 「相対的に抵抗の大きいもの」と解釈することは,技術常識に反する旨主張する。 しかし 本件特許明細書には保護回路 の動作原理などにおいて 記 ,,「」,載された技術事項に基本的な誤りがある。 本件特許明細書の 0017 の 図6 A は ・・・過大電圧がかか 【】 「() ,。, ったときにのみ動作して過大電圧をパイパスする回路である ・・・一方A点における電位が+50V以下であれば,薄膜トランジスタは高い抵抗として機能し・・・」なる記載は,技術的に誤りである(原判決13頁19行〜22行 。まず,A点の電位がゼロからゲイト閾値電圧V( 00 ) 【th17】の例では5V)となるまでの時点では,薄膜トランジスタのゲイトにはA点の電位がそのまま抵抗R1をとおして供給される。次に,A点の電位が(50Vとならなくても)ゲイト閾値電圧Vをすぎた時点から,th薄膜トランジスタは電流を流し始める。つまり,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間に電流を流し始めるA点の電圧は,R1/R2の値には無関係である。 本件特許明細書には,このような技術常識に反する保護回路が記載されている。 (2)争点(4)(無効理由の存否)についてア進歩性欠如の無効理由その2について本件特許発明は,引用発明2に周知技術を組み合わせて,又は引用発明2に引用発明1を組み合わせて,当業者であれば容易に発明することができたものであり,原判決の認定判断に誤りはない。 1審被告の主張 前記4(2)ア は 特許請求の範囲の記載に基づかない () ,ものであり,失当である。 1審被告の主張に理由がないことは,本件無効審決において,本件特許発明を減縮した無効審決時発明について,特許庁が引用発明2に周知技術を適用することにより当業者が容易に発明することができたと判断していること 甲49本件訂正拒絶審決において 本件特許発明を減縮した本 (), ,件訂正発明について,特許庁が引用発明2及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたと判断していること(甲57)に照らしても,明らかである。なお,1審被告は,本件無効審決及び本件訂正拒絶審決は,いずれもその認定判断に誤りがあるものとして,取り消されるべきものである旨主張するが,両審決の認定判断に誤りはなく,1審被告の主張は失当である。 イ実施可能要件違反ないし産業上利用することができる発明ではないことについて以下のとおり,本件特許発明は実施可能要件(特許法旧36条4項)に違反する発明であり,又は産業上利用することのできない発明である(特許法29条1項柱書違反 。)a前記(1)イにおいて主張したとおり 本件特許明細書の 0017 の ,【】図6 A は ・・・過大電圧がかかったときにのみ動作して過大電圧 「() ,をバイパスする回路である ・・・一方 A点における電位が+50V以 。,下であれば 薄膜トランジスタは高い抵抗として機能し ・・・・ なる , ,」記載は技術的に誤りであり,保護回路として機能し得ない。 ,「 (, 原判決が本件特許発明が保護回路として機能しないこと 前記第2( )) 6(1)オ 産業上利用することができる発明でないこと (ア)及び(イ), , 。」 は 被告において明らかに争わないから これを自白したものとみなす(〔,「」 「」 原判決31頁7行〜9行 当審注 同7行の 6(1)エ は 6(1)オの誤記と認めると説示したとおり 上記の事実は1審被告が自白した 。〕),とみなされたところである(なお,1審被告は,原判決の上記認定が誤りである旨主張するが,原判決を正解せずに論難したものであり,失当である。また,自白の撤回を認めるべき事情は存在しない。。)そして,上記事実は,本件特許発明が実施可能要件(特許法旧36条4項)に違反する発明であり,又は産業上利用することができない発明であること(特許法29条1項柱書違反)を意味する。 b1審被告の主張に理由がないことは,本件訂正拒絶審決において,本件特許発明を減縮した本件訂正発明について,特許庁が,本件訂正発明は,保護回路がその機能を果たすための技術事項が,発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとはいえず,発明の詳細な説明の記載が特許法旧36条4項に規定する要件を満たしていないと判断していること(甲57)に照らしても,明らかである。なお,1審被告は,本件訂正拒絶審決は,その認定判断に誤りがあるものとして,取り消されるべきものである旨主張するが,同審決の認定判断に誤りはなく,1審被告の主張は失当である。 c1審被告の提出に係るシミュレーション報告書(乙53)及び追加シミュレーション報告書(乙54)はいずれも,1審被告の主張の裏付けとなるものではない。なお,追加シミュレーション報告書(乙54)に係る主張及び立証は,弁論準備手続の終結後にされたものであるから,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきものである。 (3)争点(5)(信用を害する虚偽事実の告知行為又は不法行為)についてア「競争関係」について1審被告と1審原告との間には,以下のとおり,不競法2条1項14号にいう「競争関係」が存在する。1審被告は,商業登記簿の目的欄の記載にかかわらず,液晶ディスプレイ等を製造販売したことはなく,将来これを行う意図もないから,同号にいう「競争関係」がない旨主張するが,失当である。 (ア)1審被告は,その目的として,薄膜トランジスタの研究,開発,製造,販売を掲げている株式会社であることに加え,資本金43億4800万円で,従業員数約600名を擁し,約11,100平方メートルの敷地に少なくとも7棟の最新の機器・設備を備えた施設を有し,製品の量産に関する事業活動にも関与している 乙26したがって 1審被 ()。,告は,自ら市場で本件製品と競合関係に立つ製品の製造販売に乗り出すことができるから,1審被告の地位を個人の発明家のような純然たる特許権者と同視することはできず,市場における競合が生ずるおそれがある。 (イ)1審被告は,エルディス社を通じてディスプレイ製品の生産に関与していることからも,1審原告と競合する関係にある。すなわち,エルディス社は,訴外東北パイオニア株式会社(以下「東北パイオニア社」という,訴外シャープ株式会社及び1審被告が共同で設立した合弁会 。)社であり,ディスプレイ製品の生産を行っているが,1審被告の出資率が45%であり,1審被告と提携関係にある東北パイオニア社の出資率も45%であるなど,1審被告はエルディス社の意思決定に重大な影響を及ぼすことができる地位にある(乙26,甲50)から,エルディス社は1審被告から独立した第三者とはいえない。 (ウ)1審被告は,本件製品と1審被告のライセンス製品とが市場で競合する関係にあること(両製品が競合することは,訴外バイ・デザイン株式会社に対する仮処分申立てにおける1審被告の主張(甲51)等に照らし,明らかである )からも,1審原告と競合する関係にある。 。 イ本件仮処分申立てについて(ア)「告知」行為の有無について以下のとおり,本件仮処分申立ては,不競法2条1項14号にいう告知に該当する。 ,「」,「 」 すなわち 同号にいう 告知 とは特定の人に対して伝達する行為をいうから,本件仮処分申立てにより,東京地方裁判所をしてその申立書を西友に送達させた行為は告知 する行為に当たる 1審被告の主 ,「」。 張(前記4(3)イ(イ))は,以下のとおり,失当である。 a1審被告は,仮処分申立てを含め,訴えの提起は,裁判による救済,「」 。 を求める申立て行為であるから告知 には当たらない旨主張するしかし,以下のとおり,1審被告の主張は失当である。 「告知」の文理上,仮処分申立てや訴え提起行為を通じた伝達行為のみを除外することは困難である。また,実質的な観点からも,仮処分申立てや訴え提起行為は,警告書の送付よりも,強力かつ効果的に信用を毀損する場合があるから,そのような信用毀損行為を抑制する必要性は存在する。このように解したからといって,特許権侵害に対する正当な権利行使が否定されることはない。 以上のとおり,仮処分申立てや訴え提起行為を通じた信用毀損行為について,それが裁判による救済を求める手段であることのみを理由, 。 として 不正競争行為に該当することを否定する根拠とはなり得ないb1審被告は,西友が本件製品を販売したものであり,その行為が本件特許権の侵害となり得ることを主張する。しかし,特許権侵害訴訟の相手方となり得ることをもって,1審原告の信用を害する虚偽事実の告知行為の相手方にはなり得ないとすることはできない。なお,後記(ウ)cのとおり,1審被告は,本件製品の輸入者など,西友以外に権利行使をすることも可能であった。 また,1審被告は,本件仮処分申立てについて執行力を生じていない旨主張する。しかし,そもそも執行力のない訴訟外の警告や執行力, 「」 が問題とならない訴えの提起が 不競法2条1項14号にいう 告知に該当し得ることに照らすならば 本件仮処分申立てが同号にいう 告 , 「知」に該当しないとの根拠にはなり得ない。 (イ)「虚偽の事実」の有無について本件製品が本件特許権を侵害するとの事実は,以下のとおり,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」に該当する。 すなわち,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実」とは,客観的な真実に反する事実をいうところ,原審並びに前記(1)及び(2)において主張したとおり,原告モジュールを組み込んだ本件製品は本件特許発明の構成要件C及びDを充足せず,また,本件特許権には無効理由が存在する(なお,本件訂正審判における訂正によっても,無効理由は解消されないから 本件製品が本件特許権を侵害するとの事実は 客観的な 。), ,, 「」 真実に反するものであって 不競法2条1項14号にいう 虚偽の事実に該当する。 (ウ)違法性及び故意過失について違法性判断のための諸事情と故意過失の具体的な評価事実は密接に関連するので,一括して主張する。 1審被告は,その主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くことを知っていたか,又は,通常必要とされる事実調査を行えば,本件特許権に無効理由が存在すること又は本件製品が本件特許発明の技術的範囲に属しないことを容易に知り得たものであるから,本件仮処分申立ては違法であり,また,1審被告には故意過失がある。 a1審被告は,通常必要とされる事実調査を超えた詳細な調査・分析を実施した旨主張するが,そのような調査は行われていない。 1審被告は,本件製品の分析に係る乙3以外には,本件特許権の無効理由の存否や本件製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか否かについて調査・検討をしたことにつき,何ら立証しておらず,1審被告の上記主張は裏付けを欠くものである。 また,仮に1審被告の主張を前提とするとしても,特許に無効理由が存在するのは,新規性がない場合に限られるものではなく,進歩性, ,, がない場合 その他の特許要件を欠く場合があるところ 1審被告は保護回路のゲートとソース及びドレインの一方を電気的に接続させる材料として,ITOに代表される酸化物半導体膜を使用する先行技術がないことを確認したにすぎないから,新規性についてはともかく,進歩性その他の特許要件については,全く検討を行わなかったことになる。また,調査の対象となる先行技術の範囲は,本件特許権及びその関連出願の審査経過において引用された文献に限られるものではない 1審被告は 最低限のものとして必要な 一般的な公知例調査 公 。, ,(開済みの各種公報及び一般公表された技術文献の調査)も行っていない。 , , , さらに 前記(1)イ及び(2)イのとおり 本件特許明細書の記載から本件特許発明が保護回路として機能しないことは明らかであり,このことは1審被告が自白したとみなされている。1審被告は,本件仮処分申立てに際して,本件特許明細書の記載に照らし,本件特許発明が保護回路として機能するかどうかについて,調査・検討を怠ったものといえる。 以上のとおり,1審被告は,通常必要とされる注意義務を尽くさなかった。 b無効審判請求において無効判断がされる割合や,審決取消訴訟における無効不成立審決が取り消される割合が少なくないことに照らせば,特許査定を受けたという一事をもって調査義務を免れる理由はないし,弁理士等の専門家の意見を判断の基礎としたという事情があったとしても,違法性や過失の存在を否定する理由とはならない。 また,特許権侵害に関して,具体的な交渉が行われれば,相手方から,当該特許権に関連する先行技術が示されるのが通常である。したがって,特許権者が相手方との交渉を拒否することは,先行技術について調査・検討する機会を放棄することを意味する。本件において,1審被告は,一連の交渉において,特許権侵害に関する具体的な根拠を示さなかったのみならず,1審原告との交渉において提示したリスト(甲25)に,本件特許権を掲載しなかった。したがって,1審被告は,先行技術を認識・発見する機会を自ら放棄したものであり,このような交渉態度に照らしても,権利者としての通常の注意義務を尽くしていないといえる。 c特許権侵害をめぐる紛争の真の相手方に対してではなく,その顧客等に対し仮処分申立てをして,当該顧客等の紛争回避的傾向を利用するような場合は,仮処分制度をその本来の目的に反して濫用するものといえる。 本件仮処分申立ては,1審被告が,仮処分制度を濫用し,真実は被保全権利が存在しないにもかかわらず,西友の紛争回避的傾向を利用するなどして,1審原告に対し,仮処分命令が執行された場合と同等な損害を与えたというものであるから,1審被告の過失が存在するものというべきである。本件製品は,TATUNG社が原告モジュールを用いて製造したものであるところ,これを日本に輸入して西友に販売していたのは,TATUNG社が設立した日本法人である訴外大同日本株式会社(以下「大同日本」という )である(乙3 。1審被告 。)は,販売業者にすぎない西友ではなく,本件製品の製造元であるTATUNG社のグループ会社であり,特許権侵害訴訟への対応能力も西友に比して格段に大きい,大同日本を相手方として,権利行使することもできた。しかるに,1審被告は,ことさら大同日本を相手方とするのを回避し,西友を相手方として,本件仮処分申立てをした。 以上のとおり,1審被告は,特許権侵害訴訟への対応能力に乏しい西友の紛争回避的傾向を利用する目的で,同社を相手として,本件仮処分申立てをした。 d1審被告は,1審原告との交渉経緯について縷々述べる。 しかし,1審被告の主張に係る交渉経緯は本件特許権に関するものではない。1審被告は,本件特許権の設定登録後も,本件特許権に基づく警告をすることなく,事実上も法律上も根拠のない本件仮処分申立てに及んだものである。 ウ本件記者発表について本件記者発表は,以下のとおり,不競法2条1項14号にいう「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当する。 本件仮処分申立ては 前記イのとおり 不競法2条1項14号にいう 虚 ,, 「偽の事実を告知・・・する行為」に該当するところ,本件記者発表は,これと一連一体に行われた行為であって,客観的な真実に反する事実を仮処分申立ての内容等の公表という形式で陳述したものと評価すべきである。 また,1審被告は,本件記者発表において,1審原告が,本件特許以外にも1審被告保有の特許権を侵害しているとの虚偽の事実を告知・流布しており 甲9本件仮処分事件の提起の事実や当該事件における自己の申 (),立内容や事実的主張,法律的主張の内容を陳述するにとどまるものではない。 したがって,本件記者発表は,本件仮処分申立てと同様に,同号の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」と評価すべきである。 エ不法行為の成立について前記アないしウの事実経緯に照らすならば,1審被告の行った本件仮処分申立て及び本件記者発表は,民法709条の不法行為を構成する。 (4)争点(6)(損害額)について本件仮処分申立て及び本件記者発表により1審原告が被った損害の額は,原審で主張したとおり,7億7456万2729円を下らないところ,原判決は,本件仮処分申立てにより,1審原告が,西友における原告モジュールの販売減少だけで,1995万7600円の損害を被ったことを認定しており 原判決35頁13行〜36頁9行1審被告が1審原告に支払うべき損 ( ),害額は,少なくともこの額を下らない。 第3当裁判所の判断当裁判所は,?@本件製品は本件特許発明の技術的範囲に含まれず,?A本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであり,?B1審被告が本件製品を販売する西友を相手方として,本件特許権に基づいてした販売禁止の本件仮処分申立て及びこれに関する本件記者発表は,1審原告に対する不法行為を構成するから,1審原告の1審被告に対する損害賠償請求は,1審原告の請求する限度 当審において拡張した損害金を含むで認容すべきであると判断する ( 。)ものである(なお,本件仮処分申立て及び本件記者発表は,不競法2条1項14号所定の営業上の信用を害する虚偽事実の告知行為には該当しないので,同法3条1項に基づく差止請求は認められない。。)その理由は,次のとおり訂正付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄「」 「()」 の 第3当裁判所の判断 の 2争点(2) 構成要件Cの充足性 についてないし「5争点(6)(損害額)について (原判決23頁18行〜36頁12 」行)に記載のとおりであるから,これを引用する。 1原判決の訂正(当審における補足的主張に対する判断を含む )。 (1)原判決23頁22行目ないし24頁3行目を次のとおり改める。 「イ本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮して,構成要件Cの「酸化物半導体膜」の意義を検討する(特許法70条2項 。)1審原告の主張ア(イ)bないしe(原判決8頁14行〜9頁3行)で1審原告が指摘する本件特許明細書の記載及び図6 図7 図13の記載 甲 ,,(2)によれば,保護回路の設計に当たって,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値を考慮することが,ソース・ドレイン間に印加される電圧を決定する上で重要であるとしつつも,実際には,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値10 〜10Ωと比べて 抵抗R1 薄膜8 11,(トランジスタとアクティブマトリクスの表示部とを電気的に接続する酸化物半導体膜)と抵抗R2(薄膜トランジスタのゲートとソース又はドレインの一方を電気的に接続する酸化物半導体膜)の値を10Ω程度とする12ことができるため,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値は無視できるとの説明がされている なお 本件特許明細書の 00170 。,【】,【022】では,薄膜トランジスタのゲートに印加される電圧は,R1とR2の抵抗値の比で決まると説明されているが その理由は0025 の ,,【】記載により,R1とR2の抵抗値が薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値よりも桁違いに大きく,後者は無視できるためであると理解できる。そうすると,本件特許明細書においては,保護回路として機能するためには,構成要件Cの「酸化物半導体膜」は,少なくともソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいものでなければならないというべきである。 以上によれば,構成要件Cの「酸化物半導体膜」は,ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きいものを意味すると解釈すべきである。 これに反する1審被告の主張は,採用することができない。 ウこの点について,1審被告は,本件特許明細書の【0069【002】,50038 にはソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗 】,【】,「の大きいもの」とは矛盾する構成が開示・示唆されていることを根拠に,構成要件Cの「酸化物半導体膜」を「ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的に抵抗の大きい酸化物半導体膜」を意味すると解釈するのは誤りである旨主張する。 しかし,1審被告の上記主張は失当である。 まず,本件特許明細書の【0026】の記載によれば,図6及び図7に図示された保護回路で使用される抵抗は0025 に例示された材料に ,【】, (,, 限られず ITOなどの酸化物半導体膜 例えば酸化錫 酸化インジウム酸化錫インジウム等 を用いることができ0025 は 酸化物半導体 ),【】 ,膜を使用する場合を含め,ソース・ドレイン間の抵抗の値を考慮することはソース・ドレイン間の電圧を決定する上で重要であり,薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる抵抗体であるとされていることが理解できる。また,本件特許明細書の【0038】は,図6及び図7並びに【0025】ないし【0026】に記載された抵抗体を備える保護回路の作製方法を説明する記載部分であるから0038 において 抵抗として機能 ,【】「する」とされているのは,保護回路に設けられる「薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる」ことを意味すると理解できる。そして,本件特許明細書の【0025】において,保護回路に設けられる抵抗体は「薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる」抵抗体であることが求められる旨記載されていることに照らすならば,実施例に関する【0069】に記載された保護回路の薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方とゲートとを接続する「酸化物半導体膜」も,保護回路に設けられる「薄膜トランジスタの抵抗はほとんど無視できる」ものであると解される。 また 1審被告は酸化物半導体膜 を ソース・ドレイン間の抵抗に ,,「」 「」 , 比べて相対的に抵抗の大きいもの と解することは技術常識に反するから限定的に解釈すべきでないと主張する。しかし,仮に,本件特許明細書において酸化物半導体膜 は ソース・ドレイン間の抵抗に比べて相対的 ,「」 「に抵抗の大きいもの」と解釈することが技術常識に反するので,限定的に解すべきでないとの前提に立った場合には,そのこと自体が,実施可能要件に違反する結果をもたらすこととなる。したがって,少なくとも,本件特許発明の技術的範囲の解釈に当たっては,1審被告の主張を前提とすることは相当でないというべきである。1審被告の主張は採用できない 」。 「 ,」 (2)原判決24頁15行目の 構成要件Cの充足性が認められる場合に備えを削除する。 (3)原判決25頁14行目ないし同頁23行を次のとおり改める。 「(イ)1審被告は,本件特許明細書の【0010【0069】及び図1 】,5(B)の記載に基づき,本件特許発明の「酸化物半導体膜」は,表示部で用いられる酸化物半導体膜と同一材料のもの」を意味するので,本件特許発明と各引用発明との間には,相違点2(本件特許発明は,ソース及びドレインの一方と薄膜トランジスタのゲートとの接続につき,表示部と同一材料の酸化物半導体膜を介した電気的接続に限定しているとの相違点)が存在すると主張する。 しかし,1審被告の主張は,以下のとおり理由がない。 すなわち,特許請求の範囲には,本件特許発明の「酸化物半導体膜」が表示部で用いられる酸化物半導体膜と同一材料のものであることを意味するような記載は見当たらない。また,仮に本件特許明細書の【0010】の「また,表示部の薄膜トランジスタの作製と同時に作製することが望まれる 」との記載や 【0069】及び図15(B)における同 。,一材料の酸化物半導体膜を使用した実施例の記載を考慮したとしても,これらの記載のみでは酸化物半導体膜 が表示部で用いられる酸化物 ,「」半導体膜と同一材料のものであると定義されているものと認めることはできない。 したがって,1審被告の上記主張は,採用することができない 」。 (4)原判決25頁25行目の「引用明2」を「引用発明2」と改める。 (5)原判決26頁9行目ないし28頁2行目を次のとおり改める。 「オ1審被告の主張(当審での補足主張を含む )に対し。 1審被告は,本件特許発明が引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明することができたとはいえないと主張するが,以下のとおり,失当である。 (ア)1審被告は,本件特許発明が,?@保護回路を構成する薄膜トランジスタを保護し,?A表示部の薄膜トランジスタにかかる過大な電圧を速やかに取り除くことができ,?B保護回路の薄膜トランジスタを表示部の薄膜トランジスタの作製と同時に作製することができる,との作用効果を有する旨主張する。 しかし,1審被告の上記主張は,以下のとおり理由がない。 a本件特許明細書の記載(a)本件特許明細書の 000100020007 〜 0 【】,【】,【】 【009】の記載によれば,発明の詳細な説明では,画素を構成する電気光学素子(例えば,液晶素子)を薄膜トランジスタにより制御するアクティブマトリクス型表示装置では,静電気等により表示部の薄膜トランジスタのゲート電極に高い電圧がかかった場合や,薄膜トランジスタのソース・ゲート間に過大な電圧がかかってゲート電極とチャネル形成領域との間の電圧が大きくなった場合に,ゲート絶縁膜が破壊され,素子として機能しなくなるという問題があったので,本件特許発明は,発生した過大な電圧を速やかに取り除く回路を適切な位置に設けることによって,表示部の薄膜トランジスタを破壊から保護するようにしたもの,とされていることが理解できる。 (b)本件特許明細書の【0010【0011【0017】の記 】,】,載によれば,発明の詳細な説明では,?@保護回路は,装置の表示部分の周辺に設けられること及び表示部分の薄膜トランジスタの作製と同時に形成されることが望まれること,?A保護回路は,正常な駆動電圧は通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせる必要があること,?B薄膜トランジスタにおいて過大な電圧とは通常,ゲート電圧のしきい値電圧の10倍程度であり,50V以上を指すが,この値は薄膜トランジスタの構造によって大きく変化すること,?C上記?Aのような効果を有する保護回路は,ダイオードの持つツェナー特性を利用しても,薄膜トランジスタを利用しても構成することができ,?D図6の回路構成の場合,R1とR2の抵抗値を選択して,Nチャネル型薄膜トランジスタのゲート電圧及びソース・ドレイン間の電圧を適当な値となるように設計することにより,保護回路が構成できることなどが,説明されているということができる。 ,,「,」 そして 請求項1には保護回路は 薄膜トランジスタを有しとの記載があるから,本件特許発明は,本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面に記載された保護回路のうち,薄膜トランジスタを用いたものを対象としていることが明らかである。 (c)本件特許明細書の【0021】〜【0026【0038】の】,,,,, 記載によれば 発明の詳細な説明では 保護回路は 図7のようにPチャネル型薄膜トランジスタとNチャネル型薄膜トランジスタを両方とも用いることによっても構成でき,図6の保護回路と同様,適切な抵抗R1,R2を選択することによって,ソース・ドレイン間の電圧とゲート電極の電位を適切な値に設定できることなどが,説明されているということができる。 さらに,保護回路の設計に当たって,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値を考慮することがソース・ドレイン間に印加される電圧を決定する上で重要であると指摘しつつ,実際には,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値10 〜10Ωに比8 11べて 抵抗率10 Ω・cmの高抵抗多結晶シリコン又はアモルファ ,6() ,, ス セミアモルファス シリコンを用いて長さ10μm 幅1μm. ,, 厚さ0 1μmの線状体を構成した場合 抵抗値は10Ωとなり12薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値は無視できるとされている。 そして,R1,R2の材料としては,多結晶シリコンやアモルファスシリコンのような珪素を主とする材料を用いてもよいし,金属材料や金属と珪素との合金,各種化合物半導体,例えば,酸化錫,酸化インジウム,酸化錫インジウム(ITO)を用いてもよいとされている。 なお,段落【0024】には,保護回路で使用される薄膜トランジスタの耐圧が保護回路の耐圧を決定する旨が記載されているが,これは,保護回路(電気回路)の設計に当たっては,それを構成する薄膜トランジスタ(半導体素子)の耐圧を考慮すべきであるという電気回路設計上の一般原則を述べているにすぎないものと理解され,この記載を,本件特許発明が,保護回路を構成する薄膜トランジスタ自体の保護を目的とすることを示す根拠とすることはできない。 (d)上記(a)ないし(c)によれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面には,?@アクティブマトリクス型表示装置の表示部の周辺に,正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせる保護回路を設けることにより,表示部の薄膜トランジスタを高電圧による破壊から保護できること,?A保護回路は,表示部分の薄膜トランジスタの作製と同時に形成されることが望まれること,?B保護回路を薄膜トランジスタを用いて構成する場合(図6の保護回路)は,R1とR2の抵抗値を選択してソース・ドレイン間の電圧とゲート電極の電圧を適正な値に設定することにより,正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが,, , 過大な電圧は通過させず 適切にバイパスさせるようにできること?C保護回路をPチャネル型薄膜トランジスタとNチャネル型薄膜トランジスタを両方とも用いて構成した場合(図7の保護回路)も,図6の保護回路と同様,R1,R2の抵抗値を適切に選択することによって,ソース・ドレイン間の電圧とゲイト電極の電位を適切な値に設定できること,?D薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値は,保護回路の設計上,重要な考慮事項であるが,R1,R2を線状の多結晶シリコンやアモルファスシリコンを用いて形成した場合,R1,R2の抵抗値を桁違いに大きくできるので,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値を無視できること,?ER1,R2を構成する材料としては,多結晶シリコンやアモルファスシリコンのような珪素を主とする材料を用いてもよいし,金属材料や金属と珪素との合金,各種化合物半導体(例えば,酸化錫,酸化インジウム,酸化錫インジウム)を用いてもよいことが記載されているということができる。 しかし,保護回路を構成する薄膜トランジスタ自体を保護することは記載されておらず,その示唆があるということもできない。 b特許請求の範囲の記載次に,特許請求の範囲の記載について検討する。 請求項1の記載は表示部及び保護回路を有するアクティブマト ,「リクス型表示装置であって,前記保護回路は,薄膜トランジスタを有し,該薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方は,該薄膜トランジスタのゲートに酸化物半導体膜を介して電気的に接続され,該薄膜トランジスタのソース及びドレインの他方は,基準の電圧の配線に電気的に接続されることを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置というものであり 保護回路に関し 薄膜トラン 。」,,ジスタを有すること,該薄膜トランジスタのソース及びドレインの一方は,該薄膜トランジスタのゲートに酸化物半導体膜を介して電気的に接続されていること,該薄膜トランジスタのソース及びドレインの他方は,基準の電圧の配線に電気的に接続されることが規定されている。 しかし,?@薄膜トランジスタのゲートとソース又はドレインの一方を電気的に接続する酸化物半導体膜(R2)は,どの程度の抵抗値を有するのか,?A薄膜トランジスタとアクティブマトリクスの表示部とを電気的に接続する酸化物半導体膜(R1)の抵抗値は,どの程度の抵抗値を有するのか,?B薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値,及び上記各酸化物半導体膜(R1,R2)の抵抗値は,どのように設定するのか,?C保護回路の薄膜トランジスタとアクティブマトリクスの表示部の薄膜トランジスタとの関係については,同じものなのか,同時に形成するものなのか等については,何ら規定されていない。なお,請求項1には,表示部と薄膜トランジスタを接続するR1も規定されていない。 c判断(a)上記の認定によれば,本件特許明細書には,本件特許発明について,?@保護回路を構成する薄膜トランジスタを保護し,?A表示部の薄膜トランジスタにかかる過大な電圧を速やかに取り除くことができ,?B保護回路の薄膜トランジスタを表示部の薄膜トランジスタの作製と同時に作製することができるとの作用効果についての記載はないと判断できる。 まず,本件特許明細書には,保護回路を構成する薄膜トランジスタ自体を保護する点の作用効果に関する記載はなく,その点の示唆もない。確かに,薄膜トランジスタのゲートとソース又はドレインの一方を電気的に接続する酸化物半導体膜(R2)が存在することにより,R2による電圧降下の分だけ,薄膜トランジスタに印加される電圧は低くなるが,R2は,あくまでも,R1との間で電圧を分圧して薄膜トランジスタのゲートに印加される電圧を所望値に設定するためのものとして記載されているのであり,これを,保護回路を構成する薄膜トランジスタ自体を保護するためのものと理解することはできない。 また,本件特許明細書には,表示部の薄膜トランジスタにかかる過大な電圧を速やかに取り除くことができる点についての作用効果に関する記載はなく,その点の示唆もない。本件特許明細書の記載によれば,薄膜トランジスタを用いた保護回路が,正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせるように動作するためには,R1,R2の抵抗値を適切に設定することが必要であり,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗値が無視できない場合は,少なくともそれとの関係も考慮する必要があるが,請求項1は,この点について何らの規定もない。 さらに,本件特許明細書には,保護回路の薄膜トランジスタを表示部の薄膜トランジスタの作製と同時に作製することができる,。 点についての作用効果に関する記載はなく その点の示唆もない請求項1にも,保護回路の薄膜トランジスタとアクティブマトリクスの表示部の薄膜トランジスタとの関係について,何ら規定がない。 (b)以上のとおり,本件特許発明が,上記?@ないし?Bの作用効果を有することを前提とする1審被告の主張は,本件特許明細書又は特許請求の範囲の記載に基づかないものであって,いずれも採用することができない。 なお 後記(2)エにおいて検討するところに照らせば シミュレ , ,ーション報告書(乙53)及び追加シミュレーション報告書(乙54)も,1審被告の主張を裏付けるものとはいえない。 (イ)1審被告は,本件特許出願当時,周知の技術であったのは,ITO膜を透明導電膜として画素電極に用いることであり,ITO膜を導電膜として用いることは周知の技術ではない旨主張する。 しかし,以下のとおり,1審被告の上記主張は採用することができない。 証拠(甲14,16,17,36〜47,乙43)によれば,?@ITO膜のような酸化物半導体膜は,透明電極膜として広く用いられるものであること,?AITO膜は,Al等の金属材料で形成した場合に比べ,抵抗が大きいものの,ITO膜のような酸化物半導体膜が導電膜として用いられること等が認められる。 したがって,本件特許出願当時,ITO膜を導電膜として用いることは周知の技術であったと認めるのが相当である。 (ウ)1審被告は,本件特許発明と引用発明2との相違点1について,設計事項として適宜行う程度のものでないとし,動機付けの不存在,阻害事由,効果の予測困難性を主張する。 しかし,以下のとおり,1審被告の上記主張は採用することができない。 上記(イ)のとおり,ITO膜は,金属材料に比べて導電性は劣るものの,導電膜として用いられていたことは,本件特許出願当時において周知であった。 そして,弁論の全趣旨によれば,一般に,半導体装置に用いられる導,,, , 電材料として 各種金属 金属珪化物 多結晶シリコンが知られており目的とする半導体装置に要求される特性(導電膜の電流容量,導電性,密着性等)や製造の容易性(同時形成等)を考慮して,具体的に用いる材料が選択されるものであり,例えば,大きな電流容量の要求される部分に導電性の高い金属材料が用いられ,そうでない部分に多結晶シリコンが使われていたと認められる。 ITO膜は,その光透過性から,多くの場合に,透明性が要求される, , 画素電極に用いられていたものであるが 画素電極に適していることは他の部分の導電膜として使用できないことを意味しないことは明らかである。本件特許明細書の【0008】にも記載されているように,高電圧の原因となる静電気は電流容量自体は小さいことから,静電気を逃がすための導電膜は,必ずしも金属である必要はない。 そして,引用発明2においても,本件特許発明と同様に,薄膜トランジスタを用いた保護回路はアクティブマトリクスの表示部の周辺に設けられており,これを作製するに当たり,ITOなどの酸化物半導体膜を形成する工程を要することは自明であるから,引用発明2において,保護回路の薄膜トランジスタの電極の接続にITO膜を採用する契機こそあれ,それを妨げる事情があるということはできない。 また,1審被告主張の効果がいずれも根拠を欠くことは,前記(ア)において述べたとおりである。 (エ)1審被告は,本件特許発明と引用発明2とは,相違点2においても異なるとし,その想到困難性を主張するが,1審被告の主張にかかる相違点2を本件特許発明と引用発明2との相違点ということはできない。 (オ)なお,1審被告は,本件無効審決及び本件訂正拒絶審決は,いずれもその認定判断に誤りがあるものとして,平成18年(行ケ)第10298号審決取消請求事件及び平成19年(行ケ)第10044号審決取消請求事件において,取り消されるべきである旨主張する。この点につき,当裁判所は,平成19年9月26日,本件無効審決及び本件訂正拒絶審決にはこれを取り消すべき理由はない旨の判決をした。 (カ)以上のとおり,進歩性欠如の無効理由がないことを前提とする1審原告の主張は失当である。 カ訂正による無効理由の解消について1審被告は,仮に本件特許権に無効理由が存在するとしても,本件訂正審判における訂正により,無効理由は解消される旨主張するが,上記訂正は確定しておらず,これが認められる可能性もない(当裁判所は,平成19年9月26日,本件訂正拒絶審決にはこれを取り消すべき理由はなく,請求を棄却する旨の判決をした )から,失当である。 。 (2)実施可能要件違反等【】,「 , ア本件特許明細書の 0010 には薄膜トランジスタの保護回路は・・・正常な駆動電圧は通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせる必要がある同 0017 には図6 A は 正の 。」, 【】,「() ,過大電圧がかかったときにのみ動作して過大電圧をバイパスする回路である。抵抗R1およびR2を選択することによって,Nチャネル型薄膜トランジスタのゲイト電圧および,ソース・ドレイン間の電圧を適当な値とな。」, 【】,「 , るように設計する同 0022 には図6で示したものと同様に適切な抵抗R1,R2を選択することによって,ソース・ドレイン間の電圧とゲイト電極の電位を適切な値にすることができると それぞれ記載 。」 ,されている(甲2 。)本件特許明細書の図6及び図7並びに上記各記載によれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,?@薄膜トランジスタを用いた保護回路が,保護回路として機能するためには,正常な駆動電圧は通過させるが,過大, , な電圧は通過させず 適切にバイパスさせるものでなければならないこと?A図6,図7に示した回路構成において,R1とR2の抵抗値を選択して薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の電圧とゲート電極の電圧を適正な値に設定することにより,このような動作が可能とされていることが記載されているということができる。 イ本件特許発明が保護回路として機能しないこと(1審原告の主張オ(産業上利用することができる発明でないこと)(ア)及び(イ)(原判決13頁12行〜22行は 1審被告において明らかに争わないから これを自 )) , ,(, 。)。 白したものとみなす なお 自白が錯誤に基づくものとは認められないそうすると,アクティブマトリクス型表示装置の表示部にかかる過大な電圧を速やかに取り除くという本件特許発明の目的は達成できないことになる。 ウ上記ア及びイによれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明欄には,R, , 1とR2の抵抗値を選択して 正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせて,アクティブマトリクス型表示装置の表示部を静電気等の高電圧による破壊から保護するという本件特許発明の課題を解決する手段が,具体的に説明されているとはいえないと解される。 したがって,本件特許発明における保護回路がその機能を果たすための技術事項が,本件特許明細書の発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとはいえず,発明の詳細な説明の記載は,特許法旧36条4項に規定する要件を満たしていない(なお,1審原告の主張オ(ア)及び(イ)は,実施可能要件違反(特許法旧36条4項該当性)を基礎付ける事実を主張するものと理解できる。。)エシミュレーション報告書 乙53 及び追加シミュレーション報告書 乙 () (54)について同各報告書も,1審被告の主張を裏付けるものとはいえない。 (ア)シミュレーション報告書(乙53)上記シミュレーション報告書は,?@保護回路のR1,R2の抵抗値を10 Ω〜10 Ωに設定しているが,本件特許明細書の【0025】の2 5説明では,R1,R2の大きさは10Ω程度とされており,7桁も値12が異なる点,?A薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗が無視できず,R1とR2の抵抗値の比だけでは薄膜トランジスタのゲートに印加される電圧は決まらないことを示しているが,これは,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の抵抗は無視でき,ゲートに印加される電圧【】 がR1とR2の抵抗値の比で決まるという本件特許明細書の 0017の説明と整合しない点,?B仮定したパラメータの下での保護回路の電気的特性を示したにすぎず,これがアクティブマトリクス型表示装置の表示部の保護回路として機能するかどうかについて検討されていない点,などにおいて,1審被告の主張を裏付けるものとはいえない。 のみならず,同シミュレーションの結果は,シミュレーションで仮定したパラメータの下では,R1とR2の抵抗値の比だけでは薄膜トランジスタを動作させる電圧が決まらないばかりか,薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の動作抵抗自体がゲートに印加する電圧に依存して大きく変動し,逐一シミュレーションをしない限り,保護回路として機能するか否かを確認できないことを示すものであり,かえって,本件特許明細書の記載に基づいては,保護回路を設計できないことを示すものといえる。 (イ)追加シミュレーション報告書(乙54)追加シミュレーション報告書は,?@人体の静電気により高電圧が印加されるとの前提で,R1とR2の抵抗値を変化させた場合の保護回路の時間応答特性(過渡現象)を評価したものであるが,そもそも,保護回路の時間応答特性の問題は,本件特許明細書に記載も示唆もされていない点,?A乙13の174頁に記載されているように,人体モデルは,一般に 100pFの容量と1 5×10 Ωの抵抗との直列回路で表現さ ,.3れるが,追加シミュレーションでは,人体モデルを,抵抗を無視して100pFの容量のみで表現しており,妥当なものとはいえない点,?B本【】,, 件特許明細書の 0010 の記載によれば 過大な電圧とされる値は薄膜トランジスタの構造によって大きく変化するとされているにもかかわらず,追加シミュレーションでは,過大な電圧の下限値を50Vに設定している点,?Cさらに,乙54の図4から,電圧が500Vから50Vまで降下するまでの時間がR1の値に依存することが理解できるところ,下限値が,例えば,40Vと仮定して図4を参照すると,R1が10 Ωの場合 電圧降下に要する時間は 図4に表示された時間範囲に収5,,まらないほど大きくなる点,などにおいて原告の主張を裏付けるものとはいえない。 のみならず,追加シミュレーションの結果は,保護回路の時間応答特性が,素子のパラメータの値や電圧の設定値によって大きく変動することを示しており,かえって,本件特許明細書の記載に基づいては,保護回路を設計できないことを示すものといえる。 なお,1審原告は,弁論準備手続の終結後に1審被告から書証の申し出がされた乙54及びこれに基づく1審被告の主張に対し,時機に後れた攻撃防御方法であるので許されないと主張する。しかし,乙54は,専門委員の立会いの下で行われた第5回弁論準備手続期日において,同期日において取り調べられた乙53について,指摘された問題点に関連して,1審被告において,これを補足する趣旨で作成されたものであること,弁論準備手続の終結に際して,その提出が予告されていたことに照らせば,故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたとはいえないし,その内容に照らせば,訴訟の完結を遅延させるものということもできない。 , , オ1審被告は 本件訂正拒絶審決は取り消されるべきである旨主張するが前記(1)カのとおり 当裁判所は 平成19年9月26日 本件訂正拒絶審 ,,,, 。」 決にはこれを取り消すべき理由はなく 請求を棄却する旨の判決をした(6)原判決28頁3行目「(2)」を「(3)」と改める。 (7)原判決28頁6行目ないし35頁12行目を,次のとおり改める。 「4争点(5)(信用を害する虚偽事実の告知行為又は不法行為)について1審被告のした本件仮処分申立等が1審原告に対する関係で,不法行為を構成するか否か,及び,不競法2条1項14号所定の不正競争行為に該当するか否かについて,以下検討する。 (1)不法行為該当性についてア仮処分申立ての不法行為該当性について紛争の当事者が当該紛争の解決を裁判所に求め得ることは法治国家の根幹にかかわる重要な事柄であるから,裁判を受ける権利は最大限尊重されなければならず,訴えの提起について不法行為の成否を判断するに当たっては,いやしくも裁判制度の利用を不当に制限する結果とならないよう慎重な配慮が必要である。したがって,法的紛争の解決を求めて訴えを提起することは,原則として正当な行為であって,不法行為を構成することはない。しかし,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合には,違法な行為として不法行為を構成するというべきである(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)。 この理は仮処分の申立てにおいても異なることはなく,債権者がその主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのに,あえて販売禁止等の仮処分を申し立てた場合には,同仮処分の申立ては違法な行為として不法行為を構成すると解すべきである。 また,当該仮処分申立てにおいて,債権者の主張した権利又は法律関係が,事実的,法律的根拠を欠くものであることを,通常人であれば容易に知り得たものとまでいえない場合であっても,権利の行使に藉口して,競業者の取引先に対する信用を毀損し,市場において優位に立つこと等を目的として,競業者の取引先を相手方とする仮処分申立てがされたような事情が認められる場合には,同仮処分の申立ては違法な行為として不法行為を構成するというべきである。当該仮処分の申立てが,違法な行為となるか否かは,当該申立てに至るまでの競業者との交渉の経緯,当該申立ての相手方の態度,仮処分に対する予測される相手方の対応等の事情を総合して判断するのが相当である。 上記の観点から,本件仮処分申立等が不法行為を構成するか否かを検討する。 イ事実認定(ア)本件特許権の無効理由等a本件特許権の無効理由本件特許権に無効理由が存在すること及びその無効理由は,前記説示のとおりである。 b本件仮処分申立て前の検討1審被告は,本件仮処分申立てに当たって,弁護士及び弁理士を交えて,本件特許権及びその関連出願の審査過程を精査し,本件特許発明及び上記関連出願に係る発明の作用効果の抽出作業を行う一方,これらの審査経過において引用された文献に,本件特許発明の構成要件や作用効果が開示されているか否かについて調査検討し,保護回路のゲートとソース及びドレインの一方を電気的に接続させる材料として,ITOに代表される酸化物半導体膜を使用する先行技術はないことを確認した旨主張する。 しかし,本件全証拠によるも,1審被告が上記調査をしたことを認めるに足りる事実は認められず,1審被告が行ったと主張する調査内容も,本件特許権及びその関連出願の審査過程の精査にとどまるものであって,十分な調査と評価することはできない。特に,本件特許明細書の発明の詳細な説明欄の記載について,R1とR2の抵抗値を選択して,正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせて,アクティブマトリクス型表示装置の表示部を静電気等の高電圧による破壊から保護するという本件特許発明の課題を解決する手段に関して,説明を欠いているとの瑕疵があることは容易に知り得たはずであるといえる。以上のとおり,1審被告は,本件特許明細書の記載内容も含めて,十分な調査,検討を尽くしていないことが伺われる。 また,前記のとおり,本件特許発明における保護回路がその機能を果たすための技術事項が,本件特許明細書の発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとはいえず,発明の詳細な説明の記載は,特許法旧36条4項に規定する要件を満たしていないにもかかわらず,1審被告がこの点にあらかじめ対処していないことも明らかである。 この点について,1審被告は,本件特許権は特許庁の処分によって権利化されたものであるから,仮に無効理由があったとしても,それを容易に知り得たものではない旨主張する。しかし,特許庁で特許査定がされたことは,本件仮処分申立てに当たって,無効理由がないか否かの検討を不要とするものではないから,1審被告の上記主張は,採用することができない。 (イ)1審被告の業態1審被告は 現在 液晶ディスプレイの製造 販売は行わず 液晶ディ ,,,,スプレイ等に係る特許出願を行い 取得した複数の特許権を背景に液晶デ ,ィスプレイ等の製造業者との間で ライセンス契約を締結するように交渉 ,し,ライセンス料収入を得ることを業務としている。 (ウ)交渉の経緯a1審被告は 1審原告に対し 平成13年7月27日付けの書面(甲 ,,7)をもって 1審被告が日本においてアモルファスシリコンTFT及 ,び液晶に関する多数の特許権を有すること,1審原告の製品の少なくとも1つが1審被告の有する特許権の技術的範囲に属すること,及び1審原告が適切に対応しない場合には1審原告の顧客に対して権利行使をすることを警告した。 1審被告は,同書面の中で,1審原告のどの製品が,1審被告の有するどの特許権を侵害するのかを明らかにしなかった。 b1審原告は,1審被告に対し,同年8月23日付け回答書(甲24)をもって,特許権の侵害問題を更に検討するために,1審原告のどの製品が1審被告のどの特許権を侵害しているのかを明らかにするよう要請した。 cこれに対し,1審被告は,1審原告に対し,?@同年9月11日付け書面(甲25)をもって,1審原告のどの製品が1審被告のどの特許権を侵害しているのかを明らかにしなければ検討を進められないとの1, , 審原告の上記bの回答は 問題解決の遅延を意図したものであること?Aそのような状況に鑑みて,1審被告は,1審原告の顧客であるアドテック社に対して警告の書簡を送付したこと,?B当該書簡に添付した1審被告の有する特許(40個)のリストを1審原告において参照すれば検討が可能であると,?Cアドテック社以外の1審原告の顧客に対しても,同様の措置を採る用意があることなどを回答した。 本件特許権は,特許権の設定登録前であったため,上記リストに掲載していなかった。しかし,1審被告は,本件特許権について設定登録があった後においても,1審原告と交渉するに当たって,本件特許権については一切提示したことはなかった(甲25,乙33 。)d1審原告は,1審被告に対し,同年10月5日付け書面(甲26)をもって,?@1審被告の有する特許権の内容は明らかになったものの,未だに1審原告のどの製品が,どのようにして1審被告の有する特許権を侵害しているかが明らかでないこと,?Aそのような状況下では,日本向けの1審原告の製品の製造,販売を停止するように求める1審被告の要求に応じられないこと,?B特許権侵害の有無を明らかにする, , ためには相当な時間が必要であること ?C特許権者である1審被告は特許権を侵害するか否かを検討するのに通常必要となる情報を提供していないこと,?D1審被告の1審原告の顧客に対する行為は,不正競争行為を構成する可能性がある旨を回答した。 e1審被告は,1審原告に対する情報提供を拒否したのは,1審原告に1審被告とのライセンス契約を締結する意思がないことが判明したためである旨主張するが,1審原告のどの製品が1審被告のどの特許権をどのように侵害しているかを明らかにするよう求めることは,特許権侵害紛争の話し合いによる解決及びそれに引き続くライセンス交渉上当然のことであり,前記1審原告・1審被告間の書簡のやり取りから,1審原告に1審被告とのライセンス契約を締結する意思のないことや,交渉の長期化を目論む意図があったことを認定することは到底できない(甲7,23〜26)。 (エ)本件仮処分申立ての経緯等1審被告は,前記(ウ)の書簡のやり取りが途絶えてから3年以上経過した後の平成16年12月1日に,1審原告に何ら事前の予告をすることなく,1審原告の顧客である西友を相手方として本件仮処分申立てを行い,本件仮処分申立て後直ちに本件記者発表を実施した。 本件仮処分申立てによって,本件製品が本件特許権を侵害する旨1審被告が主張している事実を知ったのは西友だけであるが,本件記者発表によって,同事実は広く世間の知るところとなった。 なお,本件仮処分申立ては,その後,取り下げられた。 (オ)西友の業態,対応等a西友は,小売業者であり,液晶テレビに関しては,専ら,完成品を仕入れて一般消費者に販売することを行っていた。西友には,本件仮処分事件のような特許侵害事件への対応能力はなく,本件仮処分申立てを受けた後,直ちに本件製品を店頭から撤去し,販売を中止した。 西友は,現在に至るまで,本件製品の販売を再開していない。 bまた本件仮処分申立ての約半年前の平成16年6月 シャープが台 , ,湾東元電機製の液晶テレビを対象として仮処分の申立てを行ったが,イオンは 直ちに当該液晶テレビを店頭から撤去した この事件は マスコミ , 。,によって大きく報道された。 c 西友が小売り業者であること及びイオンの対応例からすると,1審被告は 西友が 仮処分の申立てを受ければ 必ず商品を店頭から撤去するで ,, ,あろうことを予測した上で,本件仮処分申立てを行ったものと推認される(甲27,28,乙2)。 (カ)他の仮処分申立て1審被告は,本件仮処分申立て後においても,別の小売業者であるバイ・デザインを相手方として,本件特許権に基づき,1審原告モジュールと実質的に同一構造の液晶パネルを搭載する液晶テレビの製造,販売行為の差止めを求める仮処分の申立てを行った。 (キ)1審原告を相手方とする仮処分申立ての可能性1審原告モジュールを製造,販売する1審原告の行為は,台湾において完結しているため,1審被告は,1審原告に対し,日本国内において直接権利行使をすることができず,本件特許権を行使するためには,本件製品の輸入業者又は小売業者を相手方とすることが必要であった。 しかし,1審被告は,西友等の小売業者を相手方とする以外にも,本件製品の製造元であるTATUNG社のグループ会社であり,本件製品を輸入販売していた大同日本社を相手方とすることも可能であったし,むしろ,同社を相手とした方が,究極的な紛争の解決に資するものということができる(乙3 。)(ク)本件記者発表1審被告は 本件仮処分申立て後 本件仮処分申立てをしたとの事実や ,,本件仮処分事件における申立の内容及び主張の概要を説明することを目的として,報道機関への発表を行った。本件記者発表等に基づいて,日経BP社は,同月15日に原判決別紙記事目録1記載の記事を,同月16日に同記事目録2記載の記事を,それぞれインターネット上で不特定又は多数の者に閲読可能な状態に置き,また,日経新聞社も,本件記者発表及び他の取材結果に基づき,同月16日,同記事目録3記載の記事をインターネット上で不特定の者に閲読可能な状態に置き,同記事目録4記載の記事を掲載した全国紙を販売した(甲4,5,9,10)。 ウ検討(ア)上記イに説示の各事実を総合すると,1審被告が本件仮処分申立て前に,本件特許明細書の記載を検討すれば,実施可能要件違反の無効理由が存在することを容易に知り得たものであり,また,通常必要とされる事実調査を行えば,本件特許権に進歩性欠如の無効理由が存在することも容易に知り得たものというべきである。 そして,?@1審原告のどの製品が1審被告の有するどの特許権をどのように侵害しているか何ら指摘することなく,ライセンス契約を締結するよう求めていた1審被告の交渉の態度,?A西友に対しては,事前に警告等の措置を行った形跡はうかがわれないこと,?B完成品を仕入れて一般消費者に販売する業態を採用している量販店に対して,仮処分を申し立てれば,量販店は,直ちに販売を中止するであろうことは十分に予測できたこと,?C仮処分の申立てをしたことを記者に公表すれば,マスコミ等が事件報道することが予測できたこと等の諸事情を総合すれば,1審被告がした本件仮処分申立ては,専ら自己の有する複数の特許権を背景に1審原告に圧力をかけ,1審被告に有利な内容の包括的なライセンス契約を締結させるための手段として,行われたものと認められる。すなわち,本件仮処分申立ては,特許権侵害に基づく権利行使という外形を装っているものの,1審原告の取引先に対する信用を毀損し,契約締結上優位に立つこと等を目的とした行為であり,著しく相当性を欠くものと認められる。 (イ)1審被告のした本件記者発表は,本件仮処分申立ての事実や本件仮処分事件における自己の申立内容や事実的主張,法律的主張の内容を説, 。 明したものであって 虚偽の事実を公表したものということはできないしかし,本件記者発表は,上記の本件仮処分申立てに続いて直ちに実施されていることに照らすならば,新聞記者らに告知した事項を掲載した記事が作成され,報道されることにより,本件製品の需要者を含む一般の読者に,本件製品が本件特許権を侵害しているかのような印象を与える蓋然性が高く,そのような報道がされた場合,量販店であれば,販売を中止せざるを得ない状況となる。そうすると,本件記者発表は,本件製品が本件特許権を侵害しているかのような事実を広く世間に知らしめることにより,1審原告に圧力をかけ,1審被告に有利な内容の包括的なライセンス契約を締結させる手段として用いられたものということができ,正当な権利行使の一環としてされたものとは到底いえない本件仮処分申立てと同様に,著しく相当性を欠くものと認められる。 (ウ)前記(ア)のとおり,1審被告が本件仮処分申立て前に,本件特許明細書の記載を検討すれば,実施可能要件違反の無効理由が存在することを容易に知り得たものであり,また,無効理由の有無について通常必要とされる事実調査を行えば,本件特許権に進歩性欠如の無効理由が存在することも容易に知り得たものというべきである。 (エ)以上によれば,1審被告による本件仮処分申立て及びこれに引き続く本件記者発表は,1審原告に対する不法行為を構成するというべきである。 (2)不競法2条1項14号所定の不正競争行為該当性についてア本件仮処分申立てについて1審原告は,1審被告が,本件仮処分申立てにより,東京地方裁判所をしてその申立書を西友に送達させた行為が,1審原告の取引先である西友に対し,本件製品が本件特許権を侵害するとの虚偽の事実を告知する行為であると主張する。 しかし,本件全証拠によるも,本件仮処分事件に係る申立書が東京地方裁判所により西友に送達されたとの事実は認められない。なお,乙2及び弁論の全趣旨によれば,本件仮処分申立て後遅くとも平成16年12月17日までの間に,本件仮処分事件に係る申立書の内容を西友が知ったことが認められるものの,仮処分の申立てが権利者が義務者に対して権利を実現するために設けられた仮の救済制度であって,かかる救済制度の利用及びこれに当然随伴する行為を差し止めることは不競法の予定するところではない点に鑑みれば,特許権侵害等を理由とする差止の仮処分など仮の地位を定める仮処分の申立てに伴って,申立書の内容を相手方に知らしめることを,不競法2条1項14号所定の告知行為であるとすることはできない。 したがって,1審原告の主張は採用することができない。 イ本件記者発表について1審原告は,本件仮処分申立ての事実を記者に公表したことが,本件製品が本件特許権を侵害するとの虚偽の事実を告知・流布する行為であるとも主張する。 しかし 前記(1)イ(イ)で認定したとおり 1審被告は 本件記者発表に , ,,より,本件仮処分申立ての事実や本件仮処分事件における自己の申立内容や事実的主張,法律的主張の内容を説明したものであり,その公表自体について,虚偽の事実を告知・流布したものと評価することはできない(なお,1審原告は,1審被告が,本件記者発表により,本件特許以外にも1審被告保有の特許権を侵害しているとの虚偽の事実を告知・流布したことを主張するが,本件全証拠によるも,具体的にいかなる事実が告知・流布されたというのか明らかでなく,採用の限りでない。。)ウ差止請求の当否について以上のとおり,本件仮処分申立て及び本件記者発表が,不競法2条1項14号所定の不正競争行為に該当することを前提とする1審原告の主張は採用できない。したがって,1審原告の不競法3条1項に基づく差止請求は理由がない 」。 (8)原判決36頁11行目ないし同頁12行目を次のとおり改める。 「よって,1審原告の損害賠償請求(ただし,附帯控訴に伴う請求拡張後) , ,。」 のもの は その余の点について判断するまでもなく すべて理由がある2結論以上のとおりであって,1審原告の1審被告に対する本訴請求のうち,不法行為に基づく損害賠償金1995万7600円及び遅延損害金の支払の請求当審で拡張した部分を含むは理由があるが 不正競争防止法3条1項に基 ( 。),づく請求は理由がない。よって,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 飯村敏明 |
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裁判官 | 大鷹一郎 |
裁判官 | 嶋末和秀 |