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関連審決 不服2002-22266
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成13行ケ422審決取消請求事件 判例 特許
平成12行ケ65審決取消請求事件 判例 特許
平成17行ケ10818審決取消請求事件 判例 特許
平成2ワ12094 判例 特許
平成17行ケ10312審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 医療行為 /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  登録実用新案 /  容易に想到(容易想到性) /  拒絶査定不服審判 /  拒絶査定 /  請求の範囲 /  変更 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 268号 審決取消請求事件
原告 インターフェイス・テクノロジー株式会社
訴訟代理人弁理士 井波実
被告 特許庁長官小川 洋
指定代理人 山本穂積
同 佐藤伸夫
同 小林信雄
同 小曳満昭
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/12/27
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-22266号事件について平成15年5月14日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成13年4月4日,名称を「オンライン看護支援装置」とする発明につき,特許出願(特願2001-105683号,以下「本件出願」という。)をしたが,平成14年10月18日,拒絶査定を受けたので,同年11月19日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付けで手続補正書を提出して,本件出願の願書に添付した明細書(以下,図面と併せて「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の補正(以下「本件補正」という。)をした。特許庁は,同請求を不服2002-22266号事件として審理し,平成15年5月14日,本件補正を却下するとの決定をするとともに,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月26日,原告に送達された。
2 発明の要旨 (1) 本件明細書(拒絶査定時のもの)の特許請求の範囲の【請求項1】に記載した発明(以下「本願発明」という。)の要旨 情報及び該情報に対応するラベルをサーバーに入力し蓄積する情報蓄積工程,該ラベルをコードとして出力するコード出力工程,該コードを端末から読取るコード読取り工程,及び読取りコードを前記端末から前記サーバーに入力し該読取りコードに対応するラベル及び該ラベルに対応する読出し情報を読出して前記端末に出力する情報読出工程を有する,オンライン看護支援方法をプログラミングした看護支援ソフトであって, 該看護支援ソフトは,患者データ入力工程,アセスメント入力工程,看護計画入力工程,看護指示入力工程,看護履歴入力工程,評価又はサマリー入力工程,及び退院時指導入力工程をタグとしてフロー化した入力画面をスタート画面とし,前記タグをクリックすることにより該タグの詳細入力画面が表示され, 該詳細入力画面において,5W1Hのうちのすくなくとも1種をオペレーションラベルとして注記する,看護支援ソフト。
(2) 本件補正に係る明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載した発明(以下「本願補正発明」という。)の要旨(符号(a)ないし(i)を付加し,各符号に対応する構成を「構成(a)」などという。) (a)情報及び該情報に対応するラベルをサーバーに入力し蓄積する情報蓄積工程,(b)該ラベルをコードとして出力するコード出力工程,(c)該コードを端末から読取るコード読取り工程,及び(d)読取りコードを前記端末から前記サーバーに入力し該読取りコードに対応するラベル及び該ラベルに対応する読出し情報を読出して前記端末に出力する情報読出工程を有する,(e)オンライン看護支援方法をプログラミングした看護支援ソフトであって, (f)該看護支援ソフトは,患者データ入力工程,アセスメント入力工程,看護計画入力工程,看護指示入力工程,看護履歴入力工程,評価又はサマリー入力工程,及び退院時指導入力工程をタグとしてフロー化した入力画面をスタート画面とし,(g)前記タグをクリックすることにより該タグの詳細入力画面が表示され, (h)該詳細入力画面において,5W1Hのうちのすくなくとも1種をオペレーションラベルとして注記し,且つ (i)前記看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記する,看護支援ソフト。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願補正発明は,特開平11-282933号公報(甲5,以下「引用例1」という。)及び平成12年5月16日発行の登録実用新案第3068772号公報(甲6,以下「引用例2」という。)に記載された発明並びに周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,同法17条の2第5項で準用する同法126条4項(注,平成15年法律第47号による改正前のもの)の規定に違反し,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものであるとして,本件補正を却下した上,本願発明は,拒絶査定の拒絶の理由に引用した引用例1,2に記載された発明及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができないと判断した。
原告主張の審決取消事由
審決は,本願補正発明と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)との相違点についての判断を誤り(取消事由1),本願補正発明の特有の効果を看過し(取消事由2),これらの誤りにより,本願補正発明の容易想到性の判断を誤って本件補正を却下し,また,補正却下に当たって特許法50条違反の手続違背を犯した(取消事由3)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点5の判断の誤り) (1) 審決は,本願補正発明と引用発明との相違点5として認定した,「前者(注,本願補正発明)が,看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記するのに対して,後者(注,引用発明)は,5W1Hをオペレーションラベルとして注記することは記載していない点」(審決謄本8頁第2段落)について,「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めておくことが周知であり(例えば特開平10-240813号公報〔段落0012,0021〕参照。),看護業務においても,該周知の技術手段を適用し仕事の進め方として5W1Hを決めておくことは当業者が当然に考えることであるから,後者において,看護業務の仕事の進め方として5W1Hを設定しておくようにし,看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記することは,当業者が容易に推考し得たことである」(同9頁第2段落)と判断したが,誤りである。
(2) 審決は,「周知の技術」として,特開平10-240813号公報(甲9,以下「甲9公報」という。)のみを挙げるが,唯一の文献,特に単なる公開特許公報によって「周知」と認定することはできない。
(3) また,審決が,上記(1)の判断において,「看護業務においても,該周知の技術手段を適用し仕事の進め方として5W1Hを決めておくことは当業者が当然に考えることである」としている点も,誤りである。看護業務において,詳細な5W1Hをあらかじめ決定することは,非常に困難であり,さらにその困難な事項を「詳細指示入力画面」により入力させるために「オペレーションラベルとして注記する」ことは,従来,全く行われていない事項であった。例えば,平成5年9月15日日総研出版発行「標準看護計画 第1巻」(甲14,以下「甲14文献」という。)には,「<看護行為>・・・看護手順(既成のもの)は原則的に入れない。
ただし,個別性を加味し,ケースバイケースで入れる場合もある」(10頁下から第2段落)と記載され,患者の病状がケースバイケースであるため,「詳細な5W1H」の看護指示を記録できないことが示されている。
(4) さらに,本願補正発明の「看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記する」との構成(i)と同様の構成を開示する刊行物等が存在しないことは,「5W1Hを決めておくこと」がたとえ周知の技術であったとしても,本願補正発明の構成となるように「5W1Hを決めておくこと」を,看護支援装置又は看護支援ソフト,特に「看護指示入力工程における詳細指示入力画面」に当業者が容易に適用することのできない特段の事情が存在することを示すものである。
看護業務は,患者を対象とし,患者の病状の重篤度,病状の変化の度合い,患者の個性により,ケースバイケースであり,そのときどきに最適に提供すべき医療行為又は看護行為が異なるものであるから,このような特異性により,「5WIHを決めておくこと」を看護業務には容易に適用することのできない事情が存在する。この点を,引用発明を例にとって説明すると,引用発明においては,本願補正発明の構成(i)を採用しても,構成(a)の「サーバー」がないので,患者の容態などの情報は最新とはいえず,この最新とはいえない情報を基に,看護詳細指示として5W1Hを入力すると,情報が最新でないため,実際に提供すべき看護行為を変更せざるを得ない状況となるから,看護詳細指示として5W1Hを入力すること自体が無意味となる。また,看護詳細指示として5W1Hを入力する時点において患者の容態などが最新情報であったとしても,患者の容態は変化するから,この場合も,実際に提供すべき看護行為は変更せざるを得ない状況となり,看護詳細指示として5W1Hを入力すること自体が無意味となる。さらに,看護詳細指示として5W1Hを入力する入力手段としての「コード入力」(本願補正発明の構成(c)及び(d))が引用発明にはないため,入力に時間がかかり,医師等の作業において煩雑さが増して,結局,入力を怠ることになる。したがって,引用例1においては,看護行為をあらかじめ入力すること,すなわち,看護詳細指示として5W1Hを入力することを容易に適用することができない。
2 取消事由2(本願補正発明の特有の効果を看過した誤り) (1) 審決は,本願補正発明と引用発明との相違点1ないし5について,各相違点に係る構成は当業者が容易に推考し得たものである(審決謄本6頁第3段落〜9頁第2段落)とした上,「本願補正発明の作用効果も,引用例1,2に記載された発明及び周知の技術手段から当業者が予測できる範囲のものである」(同頁第3段落)として,本願補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものであると判断したが,この判断は,本願補正発明の各構成を組み合わせることによって生じる本願補正発明に特有の効果を看過してされたものであるから,誤りである。
(2) 本願補正発明は,構成(a)〜(i)の組合せ,特に,構成(a)の「サーバー」,構成(c)及び(d)のコード読取り工程とコードを端末からサーバーに入力する工程(以下「コード入力」という。),及び構成(i)の「5W1Hを注記する看護指示入力工程の詳細指示入力画面」の組合せを採用することによって,次の@〜Cの効果を奏するものである。
@ 看護師は,本願補正発明のソフトを用いることによって,患者の病状を「コード」(構成(c)及び(d))により,簡易に入力できる。この簡易に入力された患者の病状データは,「サーバー」(構成(a))により即時に離れた場所にいる医師,他の看護師の端末で確認できる。
A 患者の病状を即時に把握した医師は,患者の病状に合わせた的確,かつ,詳細な看護指示を「コード」(構成(c)及び(d))を用いて簡易に入力できる。
簡易に入力された詳細な看護指示は,「サーバ-」(構成(a))により,即時に離れた場所にいる看護師又は薬剤師などに伝達できる。
B 患者の傍にいる看護師は,その詳細な看護指示に沿って,誤ることなく,的確な看護を患者に提供できる。特に,看護師は,医師からの詳細な看護指示を「サーバー」を介して看護師自身が保持する端末により確認できるため,医師から看護師への看護指示ミスを防ぐことができる。より具体的には,「詳細な看護指示」は,本件明細書(甲2)の【図7】に開示されるように,「だれに」(患者名称)が記載されているため,看護師による患者誤認を防ぐことができる。同様に,処置として「何をする」についても,記載されているため,薬剤等の種類又は量の誤認,処置時間の誤認,処置方法の誤認などの看護師による医療事故を未然に防止することができる。
C 看護師は,医師からの看護指示に従って行った看護履歴を,「コード」(構成(c)及び(d))により簡易に入力できる。この看護履歴は,「サーバー」(構成(a))により,即時に離れた場所にいる医師に伝達できる。
以上のような本願補正発明の上記@〜Cの効果は,連鎖的かつ循環的に生じ,最終的には,患者に対して,誤りのない,的確な看護を即時に提供できるという効果を奏するものである。
本願補正発明は,病状の変化が激しい患者であっても,看護師などがその病状を簡易かつ即時に「コード入力」することができ,その病状を「サーバー」を介して離れている医師又は看護師に,即時に伝達することができるから,病状の変化が乏しい患者から病状が激変する患者まで,すべての患者に対して,5W1Hを決定し,入力することができる。このように,本願補正発明においては,伝達された患者の諸病状を医師が判断した結果,医師が適切な「看護指示」を「詳細指示入力画面」により入力することができるのであり,しかも,入力の際には,「コード入力」により簡易に入力することで,この点においても即時性を高めることができるという特有の効果を有している。
審決は,本願発明の構成(a)〜(i)の組合せによって生じる上記のような本願補正発明の特有の効果を考慮することなく,本願補正発明を当業者が容易に想到し得たとする結論を導いたものであって,誤っている。
3 取消事由3(特許法50条違反の手続違背) 甲9文献は,拒絶理由に示されていない文献であるから,特許出願人である原告に意見書を提出する機会を与えることなく,同文献に基づいて補正却下の決定及び拒絶査定維持審決をすることは,特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反した手続的瑕疵がある。
被告の反論
審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1 取消事由1(相違点5の判断の誤り)について (1) 一般に,業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めることが周知であることは,甲9公報のみならず,乙1〜4からも明らかであるから,審決の「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めておくことが周知であり」(審決謄本9頁第2段落)との認定に誤りはない。
(2) 「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決める」という周知の技術事項は,看護分野の当業者にも周知の技術事項である。そして,一般的な技術事項を看護業務に適用することは,特にこれを阻害する事情がない限り,当業者が当然に考えることである。看護業務においては,患者の容態は,常に激しく変化する訳ではなく,安定して推移することも多く,個々の患者の状況を考慮した仕事の進め方として5W1Hを決めておけば,状況が激しく変化する事態(患者の容態変化の激しい事態)が生じるまでは,その決めておいた仕事の進め方が有効に機能するのであるから,看護業務において,個々の患者の状況を考慮した仕事の進め方として5W1Hを決めておくことができないとする理由はない。 (3) 本願補正発明の「看護指示入力工程における詳細指示入力画面」に相当する引用発明の入力画面(例えば,引用例1の図11に例示される「看護ケア予定日入力」画面)において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記することも容易である。5W1Hは,看護(ケア)についての情報であり,当然に,看護指示入力工程における詳細指示入力画面(看護ケア予定日入力画面)から入力され,あるいは該画面から出力されるべき情報であるところ,一般に,操作者により情報の入出力が行われるシステムにおいて,操作者による入力ミスや判断ミスを防止するために,入力すべき情報の種別や,出力情報の種別等をオペレーションラベルとして注記することはごく普通に行われている。審決で示したように,引用例1の図6Aの「情報収集日」,図11の「患者氏名:」,「日付」,「看護介入」等はその例である。
そうすると,「看護指示入力工程における詳細指示入力画面」に相当する引用発明の入力画面(引用例1の図11に例示される「看護ケア予定日入力」画面)において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記することは,当業者が容易に想到し得たことである。
2 取消事由2(本願補正発明の特有の効果を看過した誤り)について 原告が本願補正発明の特有の効果として主張する効果は,構成(a)〜構成(i)の各構成がもたらす効果の単純な総和にすぎず,相乗効果といえるものではないから,当業者が予測可能なものにすぎない。
相違点1ないし5に係る各構成を得ることは,審決に記載したとおり,当業者にとって容易であり,しかも,原告が本願補正発明の特徴として強調する相違点1に係る構成(構成(a)の「サーバー」に相当),相違点2に係る構成(構成(c)及び(d)の「コード入力」に相当)及び相違点5に係る構成(構成(i)の「5W1Hを注記する看護指示入力工程の詳細指示入力画面」)を組み合わせることを阻害する要因は何もない。したがって,各相違点に係る構成を得ることが容易であり,その相違点に係る構成相互に,組合せを妨げる事情がある等の特段の事情がない本件において,本願補正発明の全体の構成を得ることも,また,容易であるというほかない。
3 取消事由3(特許法50条違反の手続違背)について 審決において,周知技術の証拠を示すことは必ずしも必要ではない。また,特許法50条は,「特許出願人に対し,・・・意見書を提出する機会を与えなければならない」との規定に続けて,「ただし,第17条の2第1項第3号に掲げる場合において,第53条第1項の規定による却下の決定をするときは,この限りでない」と規定しているから,審判の請求の日から30日以内にされた平成14年11月19日付け手続補正書による本件補正を,特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下した審決に手続上の瑕疵はない。原告の手続違背の主張は,失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点5の判断の誤り)について (1) 原告は,審決が,その認定に係る相違点5の「看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5WIHをオペレーションラベルとして注記する」構成について,「後者(注,引用発明)において,看護業務の仕事の進め方として5W1Hを設定しておくようにし,看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5WIHをオペレーションラベルとして注記することは,当業者が容易に推考し得たことである」(審決謄本9頁第2段落)とした判断は,誤りであると主張する。
(2) 原告は,まず,審決が上記判断の前提として,唯一の文献(甲9文献)に基づき,「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めておくことが周知」(審決謄本9頁第2段落)であると認定したことが誤りであると主張する。
しかしながら,「5W1H」は,平成8年4月26日日本経済新聞社(1版6刷)発行「日経文庫(420)秘書入門」26〜27頁(乙1)に,上司からの指示・命令の受け方のポイントとして,「5W2H(WHEN=いつ,WHERE=どこで,WHO=誰が,WHAT=何を,WHY=なぜ,HOW=どのように,HOW MUCH,HOW MANY=どのくらい)を確認します」とあることからもうかがわれるとおり,一般用語であるとともに,特開平7-309083号公報(乙2,段落【0009】,【0010】),特開平6-289970号公報(乙3,段落【0038】)及び特開平11-232088号公報(乙4,段落【0025】,【0026】)にも,業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めることが記載されているから,「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めること」は,本件出願日当時周知であったというべきであり,この点に関する審決の認定に誤りは認められない。
(3) 原告は,看護業務においては,患者の病状がケースバイケースで,しかも変化しやすいものであるため,詳細な5W1Hをあらかじめ決定することは非常に困難であるとして,「看護業務において,仕事の進め方として5W1Hを決めておくことは当業者が当然に考えること」とした審決の判断は,誤りであると主張する。
しかしながら,患者の病状がケースバイケースで,変化しやすいものであっても,的確な看護を行うために,医師の指示に沿った看護の進め方として,可能な範囲で5W1Hをあらかじめ決めておくことには,十分な合理性があり,仕事の進め方としては,むしろそうすることが自然であるから,「看護業務において,仕事の進め方として5WIHを決めておくことは当業者が当然に考えること」であるというべきである。
原告は,甲14文献の「看護手順(既成のもの)は原則的に入れない。ただし,個別性を加味し,ケースバイケースで入れる場合もある」(10頁下から第2段落)との記載は,詳細な5W1Hの看護指示を記録することができないことを示すものであると主張するが,上記記載は,同文献の「U.標準看護計画作成」の「3.標準看護計画内容についての検討」の項の中で「〈看護行為〉・・・検討項目,5)知識レベルをどの程度入れるか」の表題の下に記載されているから,看護師の知識レベルを前提として,既成の看護手順は原則的に記載しないとしたものと解することが相当であって,患者の病状がケースバイケースであるために「詳細な5W1H」の看護指示を記録できないことを示すものとは認められない。
(4) 原告は,さらに,引用発明は,本願補正発明と異なり,「サーバー」の構成(構成(a),審決認定の相違点1に対応)を有しておらず,患者の容態などの情報が最新のものではないため,この最新でない情報に基づき,看護詳細指示として5W1Hを入力しても,実際に提供すべき看護行為は変更せざるを得ず,また,詳細看護指示の入力時点では患者の容態などが最新情報であったとしても,容態が変化した場合には,上記と同様に,実際に提供すべき看護行為は変更せざるを得ない状況となるから,いずれの場合も,看護詳細指示として5W1Hを入力すること自体が無意味となる,引用発明には,入力手段として「コード入力」(本願補正発明の構成(c)及び(d),相違点2に相当)がないため,入力に時間がかかり,結局,入力しなくなる,などの点を挙げ,看護業務には,「看護詳細指示として5W1Hを入力すること」を容易に適用することのできない事情が存在し,引用発明に「看護詳細指示として5WIHを入力すること」を適用することは当業者が容易にし得ることではない旨主張する。
しかしながら,引用発明に,「看護詳細指示として5W1Hを入力すること」を採用すれば,これを採用しない場合と比較して,より的確な看護を提供し得ることは明らかであるから,「看護詳細指示として5W1Hを入力」したことが結果的に無益となる場合があるとしても,そのことが「看護詳細指示として5W1Hを入力する」構成を採用しようとすることの妨げになるとはいえない。さらに,審決が相違点1及び相違点2についての判断(審決謄本7頁下から第2,第3段落)として示しているとおり,引用発明に「コード入力」及び「クライアントサーバーシステム」の構成を採用することは,当業者が容易に想到することというべきであるから(原告もこれらの点に関する審決の判断を争っていない。),これらの構成を採用することにより,原告の主張するような5WIHを入力することが無意味となるケースもなくなるということができる。
(5) 上記(3)のとおり,看護業務において,仕事の進め方として5WIHを決めておくことは,当業者が当然に考えることであり,また,上記(4)のとおり,5WIHを決めておくことを看護業務に適用し得ないとする事情も認められない。加えて,被告が主張するとおり,一般に,操作者により情報の入出力が行われるシステムにおいて,操作者による入力ミスや判断ミスを防止するために,入力すべき情報の種別や,出力情報の種別等をオペレーションラベルとして注記することは,引用例1(甲5)の図6Aの「情報収集日」,図11の「患者氏名:」,「日付」,「看護介入」等の例に見られるように,ごく普通に行われていることと認められるから,引用発明において,相違点5に係る「看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5WIHをオペレーションラベルとして注記する」構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことというべきである。
(6) 以上のとおり,原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(本願補正発明の特有の効果を看過した誤り)について (1) 原告は,審決が,本願補正発明の各構成を組み合わせることによって生じる本願補正発明の特有の効果を看過し,これによって,本願補正発明の容易想到性の判断を誤ったと主張する。原告の主張する本願補正発明の特有の効果とは,構成(a)〜構成(i)の組合せ,特に,構成(a)の「サーバー」,構成(c)及び(d)の「コード」による入力,及び構成(i)の「5W1Hを注記する看護指示入力工程の詳細指示入力画面」の組合せにより,原告主張の効果@〜Cが連鎖的かつ循環的に生じ,最終的には,患者に対して,誤りがなく,かつ,的確な看護を即時に提供することができるというものである。
しかしながら,原告主張の効果@(患者の病状をコードにより簡易に入力することができ,この病状データはサーバーにより即時に離れた場所にいる医師等の端末で確認できるというもの),効果A(患者の病状をサーバーにより即時に把握した医師が,患者の病状に合わせた的確かつ詳細な看護指示を,コードにより簡易に入力することができ,この看護指示を即時に離れた場所にいる看護師等に伝達できるというもの),効果B(看護師が,医師の詳細な看護指示に沿って,誤ることなく,的確な看護を患者に提供することができ,看護師の誤認による医療事故を未然に防止し得るというもの)及び効果C(看護履歴をコードにより簡易に入力でき,看護履歴は,サーバーにより,即時に離れた場所にいる医師に伝達し得るというもの)は,いずれも,構成(c)及び(d)の「コード」による入力を採用することによって得られる,簡易に入力ができるという効果と,構成(a)の「サーバー」を採用することによって得られる,即時に離れた場所にいる者に情報を伝達することができるという効果と,(i)の「看護指示入力工程における詳細指示入力画面において,5W1Hをオペレーションラベルとして注記する」構成を採用することによって得られる,詳細な看護指示を看護師が確認することで誤認による医療事故が防止されるという効果の組合せであって,それ以上のものとは認められない。また,最終的に患者に誤りのない的確な看護を即時に提供することができるという効果も,上記@〜Cの効果が「連鎖的かつ循環的に生じ」ることによって得られるものであるとの原告自身の主張に照らしても,結局,原告主張の効果@〜Cを組み合わせたものにすぎないというべきであって,本願補正発明の各構成から得られる効果の総和を超えた,当業者の予測外のものであるとは認められない。
(2) 原告は,相違点1ないし4に係る本願補正発明の構成が,引用発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に推考し得たものとした審決の判断は争っておらず,また,上記1のとおり,相違点5に係る本願補正発明の構成を当業者が容易に想到し得るとした審決の判断に誤りは認められないから,相違点1ないし5に係る本願補正発明の構成は,当業者が容易に想到し得たものというべきである。そして,その効果も,相違点1ないし5に係る本願補正発明の構成から当業者が予測することのできる効果であることは,上記(1)のとおりである。
(3) 以上のとおり,原告の取消事由2の主張は理由がない。
3 取消事由3(特許法50条違反の手続違背)について (1) 原告は,審決は,拒絶理由に示されていない文献である甲9文献につき,特許出願人である原告に意見書を提出する機会を与えることなく,同文献に基づいて補正却下の決定及び拒絶査定維持審決をしたから,特許法159条2項で準用する同法50条の規定に違反した手続的瑕疵があると主張する。
しかしながら,特許法159条1項,2項は,同法53条1項及び50条ただし書の規定を,同法17条の2第1項4号の場合を含めるように読み替えた上で準用しており,読替え後の同法50条は,「特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,・・・意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,第17条の2第1項第3号又は第4号に掲げる場合において,第53条第1項の規定による却下の決定をするときは,この限りでない」と規定しているものであるから,拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内にされた補正である本件補正を,同法53条1項の規定により却下した審決に手続上の瑕疵は認められない。
(2) さらに,審決において,甲9文献は,「業務管理において,仕事の進め方として5W1Hを決めておくこと」(審決謄本9頁第2段落)が周知技術であることを示すために引用されたものであることが明らかであり,周知技術とは,文献等を例示するまでもなく,当業者ならば当然知っているはずの事項であるから,周知技術を示す証拠を提示して出願人に当該証拠についての意見書を提出する機会を与えることなく拒絶の審決をしても,出願人に弁明の機会が与えられなかったということはできず,特許法159条2項において準用する同法50条に違反した手続的瑕疵があるということはできない。
(3) 以上によれば,原告の取消事由3の主張は理由がない。
4 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 古城春実
裁判官 岡本岳
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