運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連審決 無効2005-80029
関連ワード 一致点の認定 /  技術常識 /  先行技術 /  技術的意義 /  容易に想到(容易想到性) /  実施 /  構成要件 /  請求の範囲 /  判決の拘束力 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 19年 (行ケ) 10037号 審決取消請求事件
原告大王製紙株式会社
訴訟代理人弁理士永井義久,湯浅正之
被告花王株式会社
訴訟代理人弁護士竹田稔,川田篤
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/10/09
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1原告の求めた裁判「特許庁が無効2005-80029号事件について,平成18年12月25日にした審決を取り消す 」との判決。
第2事案の概要原告の有する下記1(1)の実用新案登録(以下「本件実用新案登録」という )に。
ついて,被告が無効審判請求をしたところ,特許庁は,原告の訂正請求に係る訂正, (「」。)。 を認めた上 審判請求は成り立たないとの審決 以下 前審決 というをした被告は審決取消訴訟を提起し(以下「前訴」といい,審決を引用する場合を除き,前訴の判決を「前訴判決」という,前訴判決は本件実用新案登録は無効とされる 。)べきであるとして審決を取り消した。本件は,特許庁が,前訴判決後の無効審判において,原告の訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という )を認めた上,本。
(,「」。), 件実用新案登録を無効とする旨の審決 以下 単に 審決 というをしたため原告がその取消しを求める事案である。
1特許庁等における手続の経緯(1)本件実用新案登録(甲32)実用新案権者:大王製紙株式会社(原告)考案の名称:生理用ナプキン出願日:平成4年8月5日(実願平4-55010号)登録日:平成11年12月3日実用新案登録番号:第2603011号(2)本件手続審判請求日:平成17年1月28日(無効2005-80029号)訂正請求日:平成17年4月18日再度の訂正請求日:平成17年9月1日前審決日:平成17年11月10日( 訂正を認める。本件審判の請求は成り立 「たない 」との審決)。
( ) 審決取消訴訟提起日:平成17年12月16日 平成17年(行ケ)10846号前訴判決言渡日:平成18年9月20日( 特許庁が無効2005-80029 「号事件について平成17年11月10日にした審決を取り消す 」との判決)。
本件訂正請求日:平成18年11月13日審決日:平成18年12月25日( 訂正を認める。実用新案登録第26030 「11号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする 」との審決)。
審決謄本送達日:平成18年12月28日(原告に対し)2考案の要旨上記のとおり,審決は,本件訂正を認めたため,審決が対象とした考案は,本件訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された考案(以下「本件考案」という。なお,請求項の数は1個である )であり,その要旨は,以下のとおりで 。
ある。
「 請求項1】透液性シートと,不透液性シートと,両シート間に介装される排液 【を吸収する吸収体とを備えた生理用ナプキンにおいて,前記吸収体は,下部吸収体と,この下部吸収体より外径が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体との二層構造とされ,前記上部吸収体は,前記下部吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,前記下部吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成するとともに,前記上部吸収体の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記上部吸収体を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって前記下部吸収体に対して圧着固定して,前記上部吸収体をその幅方向および長手方向にズレを生じさせることなく固定し,前記圧着固定線の長手方向区間と同じか長い区間にわたって,各圧着固定線の幅方向外側において,弾性伸縮部材をそれぞれ設け,ナプキンの両側部を使用時にお。」 いて長手方向に沿って収縮するように構成したことを特徴とする生理用ナプキン3審決の理由の要旨審決は,本件考案が,下記引用例にそれぞれ記載された考案(以下,引用例1,引用例2に記載された考案を,それぞれ「引用考案1「引用考案2」という ) 」,。
に基づき,当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから,実用新( 。「」。) 案法 平成5年法律第26号による改正前のもの 以下 旧実用新案法 という3条2項の規定に違反してされたものであり,同法37条1項1号の規定により無効とすべきものであるとした。
引用例1特開平2-277453号公報(審判及び本訴とも甲1)引用例2実願昭56-105880号(実開昭58-13228号)のマイクロフィルム(審判及び本訴とも甲2)審決の理由中,引用例1,2の記載事項の認定,本件考案と引用考案1との対比及び本件考案と引用考案1との相違点についての判断に係る部分は,以下のとおりである。
(1)引用例1,2の記載事項の認定ア引用例1(a 「本発明の目的の一つは,側部において漏れの危険を有効に最小にする外部可処分生 )理用パッドを提供することである。別の目的は,新しい材料を使用することなく,かつ製造が困難な複雑かつ精巧な構造を使用することなしに,有効なパッドを提供することである。本発明のさらに別の目的は,高費用/利益比を有する有効かつ簡単なパッドを提供することである(3頁右下欄第1段落〜第2段落) 。」(b 「本発明により,該パッドの本体の各縦縁に沿いかつ接近した圧縮によって得られた )少なくとも一つの線を含むことを特徴とする可処分生理用パッドが提供される。そのような線は,互いから十分に離れており,その結果使用中,使用者の腿によって及ぼされた圧力は,液体が分泌される使用者の身体の方に隆起を提供する。本発明のパッドの機能性は,使用された時,製品が,使用者の腿により中央部分に圧縮されるという事実に基づく。この圧縮は,2つの線の間に含まれた材料を,使用者の身体の方に押しやらせ,こうして多量の材料を,吸収の必要性がより重大である分泌点に接近して吸収のために利用できるようにし,液体の皮膚への漏れの可能性のある自由な経路を防止し,こうして漏れの危険を縮小する。先行技術の場合における如く,2つの線が存在しない時,使用者の腿の圧力下にある吸収材料は,身体から離れるか,又は分泌点において良好な接触を設けない偶然の形態を取る傾向がある。これは,先行技術におけるものとは異なり,発明の可処分生理用パッドが,吸収材料の隆起を設けるようとし,この目的のために付加的な吸収性材料を使用する必要性なしに,使用者の身体との接触を最適にすることを意味する。ここで使用された如く,表現「圧縮線」又は「圧縮によって得られた線」は,生理用パッドの本体が,非弾性的に,周囲の材料に関してより大きな密度を生成するために十分に,線に沿って圧力を受けることを意味する。そのような線-少なくとも2つある-は,互いと縦縁に平行な直線であってもなくても良く,そして任意の厚さを有する。好ましくは,線は,縦縁に平行であり,そしてそれらの幅は,5mm よりも小さく,このようにして,それらは,製品が使用される時,隆起の形成を助長する(3頁右下欄第4段落〜4頁右 。」上欄第1段落)(c 「ここで使用された如く,用語パッド「本体」は,吸収要素を少なくとも含むと理解 )され,そして他の層,例えば,下側又は内側に置かれた正面シートと裏張りシートを含む。こうして,圧縮線は,所望ならば,吸収要素にのみ,あるいはパッド本体を含む他の構造要素に刻印される。例えば,圧縮線は,正面層と吸収要素の両方において作製される。圧縮線を生成するための好ましい方法は,所望の形式を有する適切な材料から作られたレリーフ・パターンを吸収性本体に配置し,そしてそれを押して,必要ならば加熱圧搾することにより,圧縮線を生成するための十分に,吸収要素の材料を刻印することによる。レリーフ・パターンと接触された吸収要素の表面は,使用者の身体に面する。そうでなければ,使用者の腿によって及ぼさ, , 。」 れた圧力は 身体からそらされた吸収要素の表面において 隆起の形成を非所望に助長する(5頁左上欄第2段落〜右上欄第1段落)(d 「今添付の図面を参照すると,本発明の教示による外部生理用パッド 30 が示される。 )形が細長く,かつ,それぞれ丸い上方及び下方端部縁 16 と 17 を有するパッド 30 は,体液浸透性正面シート 1 と,吸収要素又は吸収性コア 3 と,体液不浸透性裏張りシート 2 とを具備する。パッド 30 は,さらに,パッドのそれぞれ縦側部縁 18,19 に隣接して位置する一対の弾性要素 66を具備するパッド 30 は圧縮線 1011 12 a12 b12 c12 d13 aと 13 , ’。,,,,,,,bを含み,以後さらに詳細に記載される(5頁右下欄最終段落) 。」(e 「弾性要素 6,6’は,パッド 30 のそれぞれ縦フラップ 4,5 において正面シート 1 と )裏張りシート 2 の間に位置する。これらの弾性要素は,パッド 30 が第 1a 図に示された平坦構成にある時,延びているが弾性的に収縮する状態にある。弾性要素が,伸びている状態から収縮することを許容される時,生理用パッドは,第 2a 図に示された「ボート状」構成を取る。
……熱収縮性弾性要素 6 が,上記の如く,ヒートシール手順の使用により正面及び裏張りシートの間で固定される時,適用された熱はまた,要素 6,6’を収縮させるために役立ち,これにより弾性特性を提供する。熱収縮性弾性要素 6,6’が,例えば接着剤の使用により固定されるならば,それらが収縮し,かつ弾性特性を獲得するために,例えば熱空気の使用により,熱で要素を事後処理することが,必要である。弾性要素 6,6’が,収縮状態にある時,生理用パッド 30 は,第2a図と第2b図に示された解剖学的シェル状構成を取る(6頁左上欄最終段 。」落〜左下欄第17行)(f 「好ましくは,必ずしも必要ではないが,体液浸透性正面シート1は,ヒートシール )性のポリエステル繊維を含む不織布であり,22g/mの坪量と,平方インチ当たり144の穿孔を有する 体液不浸透性層2は 好ましくは 19g/cm2の坪量と 約0 020mm 。,, ,.の厚さを有するポリエチレンのフィルムを含む。正面シート1が,ヒートシール性のポリエステル繊維を含む時,正面及び裏張りシートは,ヒートシール技術により周縁部分において一緒に密封される。好ましい実施形態において,吸収要素3は,約7グラムの重量を有する100%木パルプ毛羽の層を含む。代表的な生理用パッドにおいて,吸収要素3は,約20cmの長さと約6cmの幅である。吸収要素3は,公知の方式において,液体浸透性正面シート1と液体不浸透性裏張りシート2の間に挟まれる(6頁右下欄第2段落) 。」() 「 ,, ,’ g本発明の一つの実施態様において 生理用パッド 30 は 吸収要素3の縦側部縁 9 9に平行に走行する圧縮線の第1対 10,11 を含む。22cm の長さを有する生理用パッド 30 に対し,,,,( ,’ て 圧縮線 10 11 は 都合良くは 長さが約 6 cm 第 1a 図において点AとBの間と 点AとBの間)であり,そして吸収要素3の縦側部縁 9,9’から僅かに内側(約 0.8 cm)に置かれる。圧縮線 10,11 は,パッドの頂部縁と底部縁の間の実質的に中央に位置する(6頁右。」下欄最終段落〜7頁左上欄第1段落)(h 「第2の好ましい実施態様において,生理用パッド 30,さらに,4つの付加的な圧縮 )線を含む。第 1a 図に見られた如く,一対の圧縮線は各圧縮線 10,11 の端部から,生理用パッド 30 の縦中心線に位置する点(第 1a 図のCとC )の方に向かってある角度において延びて ’いる。こうして,パッド 30 の上方端部において,第3圧縮線 12 aが,第1圧縮線 10 の上方端部A’から,パッドの該端部Aと上方縁 16 の間の中心線 33 に位置する第1点Cに延びている。同様に,第4圧縮線 12 bは,第2圧縮線 11 の上方端部Aから,第1点Cに延びている。
角度をなして配置された圧縮線 12 c,12 dの第2対は,生理用パッドの底部の近くに設けられる。第5圧縮線 12 cは,第1圧縮線 10 の下方端部B’から,パッド30の該端部B’と下方縁 17 の間の中心線 33 に位置する第2点C’に伸びている。第6圧縮線 12 dは,第2圧縮線 11 の下方端部Bから,中心線 33 に位置する第2点C’に延びている(7頁左上欄第2段 。」落〜右上欄第1段落)(i 「本発明の別の実施態様において,生理用パッドは,縦中心線 33 に沿って延びている )圧縮線のさらに他の対を有する。こうして,第 1a 図に見られた如く,第7圧縮線 13a が,生理用パッドの上方端部の方向において,縦中心線 33 における点Cから点Dに延びている。同様に,第8圧縮線 13b が,生理用パッドの下方端部の方向において,縦中心線 33 における点C’から点D’に延びている。パッド 30 と圧縮線 10,11,12a,12b,12c と 12d が,上記の代表的長さを有する時,圧縮線 13a と 13b は,代表的に,1.5cm の長さを有する(7頁左下。」欄第2段落)(j 「第3図は,使用者の会陰領域40と接触された,使用中の第2図のパッドを示す。 )使用者の腿12と13の圧力下で,隆起14が,圧縮線10,11の間で形成される。フラップ4と5は,使用者の腿に対して位置し,そしてまた,側部からの漏れを制限するために有用である(7頁右下欄第2段落) 。」()「 , , k-グループBよりもグループAから40%多くの製品が 中央隆起の形成を示し本発明により開示された如く,圧縮線の使用は,形成につながるという事実を明らかにした。
-グループBよりもグループAから5%少ない製品が,側部における漏れの徴候を示し,本発明により開示された如く,分岐点の近くの隆起は,漏れを防止するために役立つことを示した(8頁左上欄最終段落) 。」そして,判決における判示事項によれば,引用例1には,「体液浸透性正面シート1と,体液不浸透性裏張りシート2と,吸収要素又は吸収性コア3とを備えた可処分生理用パッドにおいて,前記吸収要素又は吸収性コア3の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収要素又は吸収性コア3より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する隆起14を形成するとともに,前記隆起14の幅方向両側部分において長手方向に沿って体液浸透性正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定し,前記圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bの長手方向区間と同じか長い区間,,,,, , にわたって 前記圧縮線10 11 12a〜12d 13a 13bの幅方向外側において熱収縮性弾性要素6,6’をそれぞれ設け,可処分生理用パッドの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した可処分生理用パッド 」の考案が記載されているもの 。
と認める。
さらに 今回の訂正において付加された構成に関連して FIG-1a FIG-1b FIG-2b FIG- , ,,,,3によれば,引用例1には,隆起14を囲む全周部分において,正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる。
したがって,以上の点を総合すると,引用例1には,「体液浸透性正面シート1と,体液不浸透性裏張りシート2と,吸収要素又は吸収性コア3とを備えた可処分生理用パッドにおいて,前記吸収要素又は吸収性コア3の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収要素又は吸収性コア3より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する隆起14を形成するとともに,前記隆起14の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記隆起14を含む全周部分において,体液浸透性正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定し,前記圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bの長手方向区間と同じか長い区間,,,,, , にわたって 前記圧縮線10 11 12a〜12d 13a 13bの幅方向外側において熱収縮性弾性要素6,6’をそれぞれ設け,可処分生理用パッドの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した可処分生理用パッド 」の考案(引用考案1)が記載 。
されているものと認める。
イ引用例2(l 「本考案の目的は,従来のナプキンが有している吸収性,使用上の安心感などの利点 )を維持し,しかも前述のような欠点を解消することができるナプキンを提供することにあり,その目的を達成するための,本考案の要旨とする処は,下部吸収材と,前端部域から中央部域の幅方向両端部を内方に折込み,この折込み部を前記下部吸収材の幅よりも狭く形成した上部, , 吸収材とから吸収体を構成し 前記下部吸収材の少なくとも下面に不透水性シートを位置させこの積層体を透水性シートで被覆することにより,幅方向中央部域を厚層に且つ後端部域を薄層に形成すると共に幅方向両端部に薄層のフラップを形成してあることを特徴とする生理用ナプキンに存する(明細書3頁最終段落〜4頁第1段落) 。」(m 「第2図,第3図に示すナプキン1は,下部吸収材2と上部吸収材3とから吸収体4 )を構成してある。上部吸収材3は,第6図A,B,C,Dに斜面図で例示してあるように前端部域から中央部域の幅方向両端部を内方へ折込み,この折込み部5を下部吸収材2の幅よりも。,, , ,,,, 狭く形成してある 即ち 第6図A B C Dにおいて 6は切断線 7は切込み線を示し… (同4頁最終段落〜5頁第1段落) 」(n 「斯くして形成したナプキン1は,上部吸収材3の折込み部5の幅方向両端部に位置 )する透水性シート11を線状に熱圧(溶)着することによりその線上部分13をネット状シート9を介して下部吸収材2に接合してあり,更に必要に応じて,ネット状シート9に重ねる不透水性シート10の折曲部分10の上面に位置する透水性シート11を線上に熱圧(溶)着することにより,透水性シート11と不透水性シート10とを接合してあり,その場合の加熱・加圧の如何によっては透水性シート11と不透水性シート10とネット状シート9とが接合されることもある(6頁第1段落)。」(o 「特に本考案によれば,ナプキンを装着して歩く時にナプキンの幅方向両端部が太も )もこすれたり,両太もも間に挟まれた状態で従来のナプキンの中央部に生じるが如き皺が生じたりすることなどに伴う使用感がなく,しかも膣部や臀部溝を含むその近傍の肌に対する密着性が向上し経血の漏れを有効に防止することができる。更に上部吸収材の両端部に位置する透水性シートを熱可塑性で疎水性のネット状シートを介して下部吸収材に線状に接合したものにおいては,経血の吸収上最も重要なナプキンの中央部に位置する上部吸収材が装着時に移動す, , ることがなく 且つ所望のメッシュを有する前記ネット状シートを位置させたものにおいては内部に一旦吸収された経血の肌当接面への逆流に効果あり 実用に供し極めて有益である8 , 。」(頁第2段落〜9頁第1段落)そして,判決における判示事項によれば,引用例2には,「ナプキン吸収材4を下部吸収材2と上部吸収材3で構成し,接合線13を用いて折込み部5を固定することにより,幅方向および長手方向に固定した上部吸収材3を有する生理用ナプキン 」の考案が記載されているものと認める。 。
(2)本件考案と引用考案1との対比そこで本件考案と引用考案1を対比すると,後者の「体液浸透性正面シート1「体液不浸」,透性裏張りシート2「吸収要素又は吸収性コア3」及び「可処分生理用パッド」は,前者の 」,「透液性シート「不透液性シート「両シート間に介装される排液を吸収する吸収体」及び 」,」,「生理用ナプキン」に相当する。
また,後者の「隆起14」は,吸収体が下部吸収体と上部吸収体との二層構造とされている点は除いて,前者の「吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部」に相当し,後者の「圧縮線10,11,12a乃至12d,13a,13b」は,前者の「圧着固定線」に相当する。
そして,後者の「熱収縮性弾性要素6,6 」は,前者の「弾性伸縮部材」に相当し,FIG- ’1a,FIG-2aによれば,後者の「熱収縮性弾性要素6,6 」は,後者の「圧縮線10,1 ’1,12a乃至12d,13a,13b」の長手方向区間と同じか長い区間にわたっており,後者の「熱収縮性弾性要素6,6 」は,後者の「圧縮線」の幅方向外側に設けられており, ’弾性要素が,伸びている状態から収縮することを許容される時,生理用パッドは,FIG-2aに図示された「解剖学的シェル状構成」となるものである。
してみると,両者は,本件考案の表記にならえば,「透液性シートと,不透液性シートと,両シート間に介装される排液を吸収する吸収体とを備えた生理用ナプキンにおいて,前記吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成するとともに,前記中高部の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記中高部を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって吸収体に対して圧着固定して,前記中高部をその幅方向および長手方向に固定し,前記圧着固定線の長手方向区間と同じか長い区間にわたって,前記圧着固定線の幅方向外側において,弾性伸縮部材をそれぞれ設け,ナプキンの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した生理用ナプキン 」である点で一致し,以下の点で相違している。 。
〔相違点〕,「,, , 本件考案は前記吸収体は 下部吸収体と この下部吸収体より外径が幅狭でかつ短長の前記下部吸収体上に積層される上部吸収体との二層構造とされ,前記上部吸収体は,前記下部吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,前記下部吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成するとともに,前記上部吸収体の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記上部吸収体を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって前記下部吸収体に対して圧着固定して,前記上部吸収体をその幅方向および長手方向にズレを生じさせることなく固定し」としているのに対し,引用考案1は,吸収要素3の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収要素3より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する隆起14を形成するとともに,前記隆起14の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記隆起14を囲む全周部分において,体液浸透性正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定するものであって,隆起14は,使用時に使用者の腿12と13の圧力下で形成されるものであり,吸収要素3の一部である点。
(3)本件考案と引用考案1との相違点についての判断上記した如く,引用例2には,「ナプキン吸収材4を下部吸収材2と上部吸収材3で構成し,接合線13を用いて折込み部5を固定することにより,幅方向および長手方向に固定した上部吸収材3を有する生理用ナプキン 」の考案(引用考案2)が記載されているものと認める。 。
ここで,引用考案2の「下部吸収材2」及び「上部吸収材3」は,その機能及び配置からして,本件考案の「下部吸収体」及び「上部吸収体」に相当し,さらに,引用考案2の「上部吸収材」は,本件考案の「中高部」に相当する。
そして,判決は 「引用例1の『隆起14』は,使用時において形成されるものであり,引 ,用例2の『上部吸収材3』は製造時に形成されるものではあるが,吸収体より幅狭でかつ短長の凸状に使用面側に突出する中高部を形成するという共通の構造を有し (36頁末行乃至3 」7頁3行)としており,引用考案2の「上部吸収材3」は,吸収体より幅狭でかつ短長の凸状に使用面側に突出する中高部を形成するものであるから,引用考案2のナプキン吸収材4は,下部吸収材2と,この下部吸収材2より外形が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収材2上に積層される上部吸収材3との二層構造とされているといえる。
したがって,引用考案2には,本件考案でいう 「前記吸収体は,下部吸収体と,この下部 ,吸収体より外径が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体との二層構造とされ」とする構成が示唆されているものと認める。
そして,引用考案1に引用考案2を適用することに関して,判決は 「引用考案2は,引用 ,, ,『』, 考案1と同様に 同じ生理用ナプキンの考案であるから 引用考案1の 隆起14 に替えて『』, ,, 引用考案2の 上部吸収材 を設け その上部吸収材を吸収要素3に固定すること すなわち吸収要素とは別部材とし,かつ,あらかじめ吸収要素3に固着して設けることは,当業者にきわめて容易に想到できるものと認められる(判決36頁10行乃至14行)と 「引用例1 。」 ,の『隆起14』は,使用時において形成されるものであり,引用例2の『上部吸収材3』は製造時に形成されるものではあるが,吸収体より幅狭でかつ短長の凸状に使用面側に突出する中高部を形成するという共通の構造を有し,また,それによって,使用者の身体とより密に接触して,漏れの危険がより小さくなるようにし,かつ,吸収性に優れたナプキンを得るという共通の課題,作用効果を有するものであるから,引用考案1のものに引用考案2を適用することに動機付けがあるというべきである(判決36頁末行乃至37頁7行)としている。 。」, , したがって 引用考案1に引用考案2を適用することを妨げる特段の事情も窺えないことは上記したとおりであるので,引用考案1に引用考案2を適用して,引用考案1の「隆起14」に替えて,引用考案2の「上部吸収材」を設け,吸収体を下部吸収体とこの下部吸収体より外形が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体の二層構造として,上記相違点に係る構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得るものと認める。
また,その適用において,上部吸収体をその幅方向および長手方向にズレを生じさせることなく固定することも,引用考案1のものが,隆起14を囲む全周部分において,正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定するものである以上,格別なものとはいえない。
そして,本件考案が奏する効果は,引用考案1及び引用考案2から予測される以上の格別のものとは認められない。
したがって,本件考案は,引用考案1及び引用考案2に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
なお,被請求人は・・・,引用例1の隆起14に関する判決の認定・判断は誤りである旨主張している。
しかしながら,判決における引用例1の「隆起14」に関する認定・判断は 「引用例1の,『』 ,『 』 ,『, 隆起14 は使用者の腿12と13の圧力下で 形成されるものであるが圧縮線1011の間で形成される』ものであり,…この『隆起14』は,FIG-3の図示から明らかなように,吸収要素3の幅方向中間の排液部分に,また,FIG-1a,FIG-2aの図示から明らかなように,吸収要素3の長手方向中間の排液部分に,吸収要素3よりも幅狭でかつ長さが短く,使用面側に突出して形成されているものである(判決30頁末行乃至31行8行)と 「引用 。」 ,例1の正面及び裏張りシートは,吸収要素3と共に,ヒートシール技術により『圧縮線』を生成する際に加熱圧搾され,大きな密度をもって固定されるものと認められる。そして,引用例1の『圧縮線10,11,12a,12b,12c,12d,13a,13b』は,吸収要素3の長手方向に沿って配置され,吸収要素3を幅方向及び横方向にも固定するものであり,また,隆起14は使用時においてではあるが,吸収要素3よりも幅狭でかつ長さが短く,使用面側に突出して形成されるものと認められる。したがって,引用例1には,吸収要素3の軸方向両側部分において長手方向に沿って正面シートをヒートシールによる圧縮線をもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる(判決32頁4行乃至15行)と 「引用例 。」 ,1の『隆起14』は 『圧縮線』内の長手方向中間に形成されるものであり,本件考案の『長 ,』 『』 。」( ) 手方向中間 に 中高部 を形成することが開示されている判決36頁16行乃至18行と 「引用例1には 『圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13b』を設けることが ,,,『』 ,() 記載され これによって 隆起14 は長手方向にも固定されるものであることは 上記3 3ウのとおりである(判決37頁19行乃至22行)と記載されているとおりである。 。」また,被請求人は・・・,引用考案1及び引用考案2は,上部吸収体の長手方向のズレ防止の課題及び作用効果を有しない旨,また,引用考案1の圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bは 「隆起14」を囲む全周部分における圧着固定線という概念を生じさせる ,ものではない旨主張している。
しかしながら,判決は 「引用例2においても,熱圧着部分(接合線)13を用いて折込み ,部5を固定する構成により,折込み部5の幅方向の変形,移動が規制されているから,本件考案の『幅方向に固定』がなされるとともに,長手方向の変形,移動の規制も,透液性シートに,『』 より押さえつけられるという程度にはなされていることになり 本件考案の 長手方向に固定がなされていることになる。したがって,引用例には,本件考案の『中高部』に相当する『上部吸収材』を有する生理用ナプキン(引用考案2)が記載されていると認められる(判決3。」6頁2行乃至9行)としており,引用考案2においても,上部吸収体の長手方向のズレ防止の課題及び作用効果を有しているものであり,また,引用考案1の圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bが 「隆起14」を固定させることは,上記判決30頁末行乃至31 ,行8行,判決32頁4行乃至15行,判決36頁16行乃至18行及び判決37頁19行乃至22行に記載したとおりである。
さらに,被請求人は・・・,訂正考案においては,引用考案1及び引用考案2に基づいて,いかなる適用を想定しても生じるものではなく,動機付けを生じさせるものではない旨主張している。
, , しかしながら 引用考案1に引用考案2を適用することを妨げる特段の事情も窺えないことそして,本件考案(訂正考案)が,引用考案1及び引用考案2に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであることは,上記・・・で述べたとおりである。
第3審決取消事由の要点1取消事由1(一致点の認定誤り), ,「,, (1)審決は 本件考案と引用考案1とが透液性シートと 不透液性シートと両シート間に介装される排液を吸収する吸収体とを備えた生理用ナプキンにおいて,前記吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成するとともに,前記中高部の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記中高部を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって吸収体に対して圧着固定して,前記中高部をその幅方向および長手方向に固定し,前記圧着固定線の長手方向区間と同じか長い区間にわたって,前記圧着固定線の幅方向外側において,弾性伸縮部材をそれぞれ設け,ナプキンの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した生理用ナプキン 」である点で一致すると認定した。 。
しかしながら,上記一致点の認定は,以下のとおり,引用考案1の認定の誤り,及び本件考案の構成と引用考案1の構成の相当関係の認定の誤りに基づいてされたものであって,誤りである。
(2)引用考案1の認定誤りア審決は,引用考案1が 「圧縮線10,11,12a〜12d,13a,1 ,3bの長手方向区間と同じか長い区間にわたって,前記圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bの幅方向外側において,熱収縮性弾性要素6,6’をそれぞれ設け,可処分生理用パッドの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した可処分生理用パッド」の構成を有するものと認定した。
しかしながら,引用例1には 「熱収縮性弾性要素6,6 」の長さと「圧縮線1 , ’0,11,12a〜12d,13a,13b」の区間の長さにつき,具体的な寸法の記載はあるが,長さの相対的な関係については記載がなく,FIG-1a のみがこれを示している。そして,FIG-1a によれば 「圧縮線10,11,12a〜12d, ,13a,13b」の幅方向外側に設けられた「熱収縮性弾性要素6,6 」は 「圧’,縮線10,11」の長手方向区間より長い区間にわたっているが 「圧縮線10,,11,12a〜12d」の長手方向区間よりは短い区間にしかわたっておらず(すなわち 「熱収縮性弾性要素6,6 」の両端間の長さは,12a,12bの交点C , ’と12c,12dの交点C’との間の長さより短い,まして 「圧縮線10,1 。),1,12a〜12d,13a,13b」の長手方向区間(DとD’との間の長さ)より短い区間にしかわたっていないことが認められる。
なお,FIG-2a には,シワらしき図示があり,その長さは,DとD’との間の長さとほぼ同じ長さであるように図示されているが,当業者であれば,それは「熱収縮性弾性要素6,6 」の収縮に伴う「シワ」を図示したものと当然に理解するも ’のであって 「熱収縮性弾性要素6,6 」の長さが 「圧縮線10,11,12a , ’,〜12d,13a,13b」の長手方向区間の長さと同じであるものとは理解しない。
,,「『, ’』 ,, また 前訴判決は引用例1・・・の 熱収縮性弾性要素6 6は FIG-1aFIG-2a に図示されているように 『圧縮線』の長手方向区間と同じか長い区間にわ ,たっており,また 『熱収縮性弾性要素6,6 』は 『圧縮線』の幅方向外側に設 , ’,けられている。そして,弾性要素が,伸びている状態から収縮することを許容される時,生理用パッドは,FIG-2a に図示された『解剖学的シェル状構成』となるものである。したがって,引用例1には,本件考案の構成要件Dが記載されているということができる(前訴判決32頁22行〜33頁3行)と認定したが,この認 。」定は,本件訂正前の考案に係る「中高部の幅方向両側部分において長手方向に沿って」いれば足りる圧縮線,すなわち「圧縮線10,11」に関するものであり,本件考案に係る「上部吸収体の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記上部吸収体を囲む全周部分」における圧縮線についてのものではない。
イ審決は 「FIG-1a,FIG-1b,FIG-2b,FIG-3 によれば,引用例1には,隆起 ,14を囲む全周部分において,正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,ll,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる」とした上,引用考案1が 「隆起14,の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記隆起14を含む全周部分において,体液浸透性正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定」する構成を有するものと認定した。
しかしながら,審決には,引用考案1の「隆起14」につき,その長手方向の形() , 。 成領域 両端部の位置 についての認定を経ないで 上記認定に及んだ誤りがある引用例1には,引用考案1の「隆起14」につき,幅方向の形成領域についての, 。, 開示はあるものの 長手方向における形成領域についての開示はない したがって「隆起14」の長手方向における形成領域は,当業者の技術常識に照らして判断せざるを得ないところ,引用考案1は,そのパッドを着用した場合,少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものである(甲第9号証〜甲第11号証,甲第21号証,甲第22号証参照 。)しかるところ,引用考案1において,後部側の圧縮線12a及び12bは,吸収要素3を横切っているのであるから,パッドを着用した場合,パッドの吸収要素3「」,, の後部にまで延在して形成される 隆起14 をも横切ることになり したがって圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bは 「隆起14」を囲むもの ,ではなく,審決の上記認定は誤りである。
(3)相当関係の認定の誤り, ,「」 , 審決は 本件考案と引用考案1との対比に当たり 引用考案1の 隆起14 が本件考案の「吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部」に相当すると認定した。
しかしながら,引用考案1において,使用時に「隆起14」が形成されるとしても,吸収要素3の変形に伴って「隆起14」が形成され,その変形状態においては吸収要素3と「隆起14」とが区別なく変形している,いわば「一体物」であり,本件考案のように,上部吸収体と下部吸収体とが積層され,区別されるものではない。
また,上記(2)のイのとおり,引用考案1の「隆起14」は,そのパッドを着用した場合,少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであるから 「隆起14」は,本件考案の「吸収体より・・・短長の使用面側に凸 ,状に突出する中高部」の構成を備えるものではない。
したがって,審決の上記認定は誤りである。
(4)一致点の認定誤り審決の上記(1)の一致点の認定は,上記(2),(3)の認定誤りに基づくものであるから,引用考案1が 「吸収体の・・・長手方向中間の排液部分に,吸収体より・ ,・・短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成する」点(上記(3)「中高部),の両側部における長手方向に沿う部分を含む前記中高部を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって吸収体に対して圧着固定して,前記中高部をその幅方向および長手方向に固定」する点(上記(2)のイ「圧),着固定線の長手方向区間と同じか長い区間にわたって ・・・弾性伸縮部材をそれ ,ぞれ設け」る点(上記(2)のア)において,本件考案と一致するとした認定は誤りである。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)(1)審決は,その認定に係る本件考案と引用考案1との相違点につき 「引用考,案1に引用考案2を適用して,引用考案1の『隆起14』に替えて,引用考案2の『上部吸収材』を設け,吸収体を下部吸収体とこの下部吸収体より外形が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体の二層構造として,上記相違点に係る構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得るものと認める 」。
と判断したが,以下のとおり,誤りである。
すなわち,本件考案は,下部吸収体と,この下部吸収体より外形が幅狭でかつ短長の上部吸収体との二層構造であるため,そのままでは,上部吸収体が少なくとも長手方向にズレを生じさせるものであるから 「前記上部吸収体の両側部における ,長手方向に沿う部分を含む前記上部吸収体を囲む全周部分において,透液性シートをヒートシールによる圧着固定線をもって前記下部吸収体に対して圧着固定して,前記上部吸収体をその幅方向および長手方向にズレを生じさせることなく固定し」たものである。
,, ,, しかるところ 審決は 上記相違点についての判断の前提として 引用考案2が「ナプキン吸収材4を下部吸収材2と上部吸収材3で構成し,接合線13を用いて折込み部5を固定することにより,幅方向および長手方向に固定した上部吸収材3を有する生理用ナプキン」の構成を有するものと認定したが,引用考案2において,「」 「」,「」 は上部吸収材3 は 下部吸収材2 と同長のものであるから上部吸収材3を 「下部吸収材2」に対し 「長手方向にズレを生じさせることなく固定」するよ ,,うな課題が生ずることはないのであり,引用例2には 「長手方向にズレを生じさ ,せることなく固定」したとの記載や示唆はない。そして,そうであれば,引用考案1に引用考案2を適用する動機付けはないのである。
もっとも,この点につき,前訴判決は 「引用例2においても,熱圧着部分(接 ,) , , 合線 13を用いて折込み部5を固定する構成により 折込み部5の幅方向の変形移動が規制されているから,本件考案の『幅方向に固定』がなされるとともに,長手方向の変形,移動の規制も,透液性シートにより押さえつけられるという程度にはなされていることになり,本件考案の『長手方向に固定』がなされていることになる(前訴判決36頁3行〜7行)と判示した。しかしながら,上記判示は,本 。」件訂正前の考案の要旨が,積層による二層構造であること 「圧着固定線」が上部 ,,, 吸収体を囲む全周部分に設けられたものであることを明らかにしておらず しかも「」, , 長手方向に固定 とだけ規定され 固定の程度が不明であったという前提の下で「上部吸収材3」のうちの部分としての「折込み部5」について,押さえ付けられるという程度に「長手方向に固定」したと認定したにとどまり 「上部吸収材3」,「 」 。 を 長手方向にズレを生じさせることなく固定 したと認定しているものではないしたがって,前訴判決の拘束力の下においても,審決の上記判断は誤りである。
(2)また,審決は 「本件考案が奏する効果は,引用考案1及び引用考案2から ,予測される以上の格別のものとは認められない 」と判断した。。
しかしながら,本件考案は 「前記弾性伸縮部材4は,その収縮力により,半剛 ,性体たる二層構造の吸収体3を舟形に下湾曲させ,フィット感を向上させるとともに,横漏れおよび前後漏れを防止する(甲第32号証段落【0026「この 。」 】),際,弾性伸縮部材4の長さXを中高部長さSよりも長くするとともに,中高部Dの長手方向形成範囲を前記弾性伸縮部材4の配設範囲内とすれば,中高部Dをも含めて全体に湾曲させるため股間形状に沿ってフィットさせることができる(同段落。」【0027「しかし,両圧着固定線33の間の部分が横断面上湾曲円弧状を描 】),きながら股間の局部にフィットすることは,生理用ナプキン(吸収体3)を前後方向に関して,図5の仮想線Xで示すように上膨出円弧状に反らせる結果となり,前後漏れを生じ易くなる(同段落【0032「そこで,本考案においては,前 。」】),記圧着固定線33の長手方向区間と同じか長い区間にわたって,圧着固定線33の幅方向外側において,弾性伸縮部材4,4をそれぞれ設け,ナプキンの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した。したがって,弾性伸縮部材4,4をそれぞれ設けることにより,図5の破線Yで示す力でナプキンは長手方向に収縮するので,ナプキンは,図5の実線で示すように,長手方向に関して下湾曲の舟形を呈するようになり,股間部全体に前後方向に関して良好にフィットし前後漏れを防止できる(同段落【0033 )との作用効果を奏するものである。 。」】,「, ’」, これに対し 引用考案1における 熱収縮性弾性要素6 6の両端間の長さは12a・12bの交点Cと12c・12dの交点C’との間の長さより短いのであるから,引用考案1はその作用効果を奏するものではない。
したがって,審決の,作用効果についての上記判断も誤りである。
第4被告の反論1取消事由1(一致点の認定誤り)に対し(1)「引用考案1の認定誤り」との主張に対し,,「, ’」 「,, ア原告は 引用例1には熱収縮性弾性要素6 6が 圧縮線10 1112a〜12d,13a,13b」の長手方向区間より短い区間にしかわたっていないことが示されているから,引用考案1が 「圧縮線10,11,12a〜12 ,,, ,, d 13a 13bの長手方向区間と同じか長い区間にわたって 前記圧縮線1011,12a〜12d,13a,13bの幅方向外側において,熱収縮性弾性要素6,6’をそれぞれ設け,可処分生理用パッドの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した可処分生理用パッド」の構成を有するものとした審決の認定が誤りであると主張する。
しかしながら,審決は,前訴判決の拘束力に従い,同一の認定判断をしたものであるから,原告が,その認定判断を誤りと主張することは許されない。
また,本件訂正後の考案(本件考案)においても 「圧着固定線の長手方向区間 ,と同じか長い区間にわたって,各圧着固定線の幅方向外側において,弾性伸縮部をそれぞれ設け」る構成に変わりはなく,本件訂正は,引用考案1に係る前訴判決の上記認定に何ら影響するものではない。
ちなみに,引用例1には 「吸収要素3は,約20cmの長さと約6cmの幅で ,ある(甲第1号証6頁右下欄16行〜17行「圧縮線は,必ず,月経分泌物 。」 ),を収容するために設計された領域の縦縁に接近して位置し,そして好ましくは,約1〜12cm,そしてより好ましくは,約2〜8cmの長さを有する(同5頁左。」下欄5行〜8行「平方センチメートル当たり約35gの坪量と,約13cmの長 ),さと…を有するエチレンと酢酸ビニルの熱収縮性コポリマーの細片を使用することが,好ましい。好ましくは,弾性要素は,パッド30の長さの約60%である長さを有し,そしてパッドの端部から端部までの中心にある(同6頁右上欄14行〜 。」左下欄1行)と記載され,また,その第1実施態様においては「圧縮線10,11は,都合良くは,長さが約6cm (第1a図において点AとBの間と,点A’と ,B’の間)であり (同7頁左上欄4行〜6行 ,第2実施態様においては「約20 」 )cmの長さと約6cmの幅の吸収要素3を含む,代表的な生理用パッド30において,圧縮線10と11は,約6cmの長さと,約0.15cmの幅を有する(同。」7頁右上欄17行〜20行)との記載がある(この記載は,FIG-2a とほぼ一致する )から,引用例1には,弾性要素が圧縮線の長手方向よりも長い例についても 。
開示されていることは明らかである。
イ原告は,引用例1には,引用考案1の「隆起14」の長手方向における形成, ,, 領域についての開示はなく 当業者の技術常識に照らすと パッドを着用した場合少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであって,後部側の圧縮線12a及び12bは「隆起14」を横切ることになるから,圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bは 「隆起14」を囲むものではな ,く,したがって 「FIG-1a,FIG-1b,FIG-2b,FIG-3 によれば,引用例1には,隆 ,起14を囲む全周部分において,正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,ll,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる」とした審決の認定は誤りである旨主張する。
しかしながら,前訴判決は 「引用例1・・・の『隆起14』は 『使用者の腿1 , ,2と13の圧力下で』形成されるものではあるが 『圧縮線10,11の間で形成 ,される』ものであり 『使用者の会陰領域40と接触され『液体が分泌される使 , 』,用者の身体の方に隆起 ・・・するものである そして この 隆起14 は FIG-3 』。,『』 ,, ,,, の図示から明らかなように 吸収要素3の幅方向中間の排液部分に また FIG-1aFIG-2a の図示から明らかなように,吸収要素3の長手方向中間の排液部分に,吸収要素3よりも幅狭でかつ長さが短く,使用面側に突出して形成されているものである。したがって,使用時においてではあるが,引用例1には,本件考案の構成要。」( ) 件Bが記載されているということができる前訴判決30頁26行〜31頁9行と認定判断しており,この認定判断における「構成要件B」は,本件訂正前の考案の「前記吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部を形成するとともに 」との要件である。,そして,審決は,この認定判断の拘束力に従いつつ 「今回の訂正において付加さ ,れた構成に関連して,FIG-1a,FIG-1b,FIG-2b,FIG-3 によれば,引用例1には,, , 隆起14を囲む全周部分において 正面シート1をヒートシールによる圧縮線1011,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる 」と認定したものであるが,引用例1(甲 。
),「 ,,, 第1号証 の記載事項 特に 本発明のパッドの機能性は 使用された時 製品が使用者の腿により中央部分に圧縮されるという事実に基づく。この圧縮は,2つの線の間に含まれた材料を,使用者の身体の方に押しやらせ(甲第1号証3頁右下 ,」欄18行〜4頁左上欄1行「先行技術の場合における如く,2つの線が存在しな ),い時,使用者の腿の圧力下にある吸収材料は,身体から離れるか,又は分泌点において良好な接触を設けない (同4頁左上欄7行〜10行)との記載によれば 「2 」 ,つの線」の内側において「隆起」が生じていることが開示されており,このような構成において,圧縮線10,11,12a〜12d(,13a,13b)が「隆起14」を囲む全周部分に形成されていることは技術的に自明であるから,審決の上記認定に誤りはない。
(2)「相当関係の認定の誤り」との主張に対し原告は,引用考案1において形成される「隆起14」は,吸収要素3と区別なく変形する「一体物」であり,本件考案のように,上部吸収体と下部吸収体とが積層され,区別されるものではなく,また,引用考案1の「隆起14」は,そのパッドを着用した場合,少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであり 「吸収体より・・・短長の使用面側に凸状に突出する中高部」の構 ,成を備えるものではないとして,引用考案1の「隆起14」が,本件考案の「吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面」 。 側に凸状に突出する中高部 に相当するとした審決の認定が誤りであると主張するしかしながら,審決は,引用考案1において 「隆起14」が,吸収要素3に形 ,,, , 成され 本件考案のように 上部吸収体と下部吸収体との二層構造ではないことを本件考案と引用考案1との相違点として認定しており,この点を含めて引用考案1の構成が本件考案の構成に相当すると認定したものではない。
また,引用考案1の「隆起14」が,本件考案の「吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に」形成されるとした審決の認定に誤りがないことは,上記(1)のイのとおりである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
(3)「一致点の認定誤り」との主張に対し上記(1)のア,イ,(2)のとおり,審決の引用考案1の認定及び本件考案と引用考案1との相当関係の認定に誤りはないから,本件考案と引用考案と1の一致点の認定にも誤りはない。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)に対し(1)審決の引用考案2の認定に誤りはなく,また,引用考案1に引用考案2を適用することについて,これを妨げる特段の事情も存しないから,本件考案と引用考案1との相違点につき 「引用考案1に引用考案2を適用して,引用考案1の『隆 ,起14』に替えて,引用考案2の『上部吸収材』を設け,吸収体を下部吸収体とこの下部吸収体より外形が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体の二層構造として,上記相違点に係る構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得るものと認める 」とした審決の判断に誤りはない。 。
(2)本件考案が奏する作用効果についての原告の主張は 引用考案1における 熱 ,「収縮性弾性要素6,6 」の両端間の長さが,12a・12bの交点Cと12c・ ’12dの交点C’との間の長さより短いことを前提とするものであるが,その前提が誤りであることは,上記1の(1)のアのとおりであり,原告の上記主張は,前提を誤ったものである。
第5当裁判所の判断1取消事由1(一致点の認定誤り)について(1)「引用考案1の認定誤り」との主張について,,「, ’」 「,, ア原告は 引用例1には熱収縮性弾性要素6 6が 圧縮線10 1112a〜12d,13a,13b」の長手方向区間より短い区間にしかわたっていないことが示されているから,引用考案1が 「圧縮線10,11,12a〜12 ,,, ,, d 13a 13bの長手方向区間と同じか長い区間にわたって 前記圧縮線1011,12a〜12d,13a,13bの幅方向外側において,熱収縮性弾性要素6,6’をそれぞれ設け,可処分生理用パッドの両側部を使用時において長手方向に沿って収縮するように構成した可処分生理用パッド」の構成を有するものとした審決の認定が誤りであると主張する。
しかしながら,引用例1の FIG-2a には,弾性要素6,6’の長さが,圧縮線の長さと同じか,長い区間にわたっていることが図示されていると認めることができる。この点につき,原告は,FIG-2a に図示されたシワらしきものは,当業者であれば 「熱収縮性弾性要素6,6 」の収縮に伴う「シワ」を図示したものと当然に , ’理解する旨主張するが,引用例1には,FIG-2a に関して 「・・・好ましくは,弾 ,性要素は.パッド30の長さの約60%である長さを有し,そしてパッドの端部から端部までの中心にある。熱収縮性コポリマーの前述の細片は,第1a図に示された如く,一連の間隔をあけた横向きの固定線7を設けるヒートシール装置の使用により,正面及び裏張りシートの間の弛緩状態において固定される。固定線7は,シールのない領域8により,互いに分離される ・・・弾性要素6,6’が,収縮状 。
態にある時,生理用パッド30は,第2a図と第2b図に示された解剖学的シェル状構成を取る。側部フラップ4,5と,それに隣接した生理用パッドの部分は,上方に高められ,その結果第2b図に見られた如く,フラップは,第1b図に示された平坦構成のパッド30の水平平面36に対して約30°の角度を形成する(甲。」第1号証6頁右上欄18行〜右下欄2行)との記載があり,この記載によれば,弾性要素6,6’は,正面及び裏張りシートの間に,一連の間隔をあけた横向きの固定線7とシールのない領域8を設けたもので構成されたものであり FIG-2a の シ,「ワ」は,このように構成された弾性要素6,6’を示すものと認められるから,原告の上記主張は失当である。
イ原告は,引用例1には,引用考案1の「隆起14」の長手方向における形成, ,, 領域についての開示はなく 当業者の技術常識に照らすと パッドを着用した場合少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであって,後部側の圧縮線12a及び12bは「隆起14」を横切ることになるから,圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bは 「隆起14」を囲むものではな ,く,したがって 「FIG-1a,FIG-1b,FIG-2b,FIG-3 によれば,引用例1には,隆 ,起14を囲む全周部分において,正面シート1をヒートシールによる圧縮線10,ll,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる」とした審決の認定は誤りである旨主張する。
しかしながら,引用例1には「本発明のパッドの機能性は,使用された時,製品が,使用者の腿により中央部分に圧縮されるという事実に基づく,この圧縮は,2つの線の間に含まれた材料を,使用者の身体の方に押しやらせ,こうして多量の材料を,吸収の必要性がより重大である分泌点に接近して吸収のために利用できるようにし,液体の皮膚への漏れの可能性のある自由な経路を防止し,こうして漏れの危険を縮小する(甲第1号証3頁右下欄18行〜4頁左上欄6行)との記載があ 。」るほか,実施例に関して 「弾性要素6,6’が,収縮状態にある時,生理用パッ ,ド30は,第2a図と第2b図に示された解剖学的シェル状構成を取る(同6頁。」左下欄15行〜17行「圧縮線10,11は,パッドの頂部縁と底部縁の間の実 ),質的に中央に位置する。第2のより好ましい実施態様において,生理用パッド30は,さらに,4つの付加的な圧縮線を含む ・・・圧縮線10,11,12a, 。
12b,12cと12dが,上記の方法において配置された時,それらは,第1a図に最良に見られた伸長六角形構成を形成する ・・・本発明の別の実施態様にお 。
いて,生理用パッドは,縦中心線33に沿って伸びている圧縮線のさらに他の対を有する(同7頁左上欄8行〜左下欄5行)との記載があり,これらの記載と 。」FIG-1a,FIG-1b,FIG-2b,FIG-3 の各図示とによれば,引用考案1において 「圧,縮線10,11,12a〜12d,13a,13b」によってその全周を囲まれた「隆起14」は,吸収の必要がより重大である分泌点に接近するように,生理用パッドの中央部分に形成された隆起であることが認められる そして 引用例1の 表 。,「現『圧縮線 ・・・は,生理用パッドの本体が,非弾性的に,周囲の材料に関して 』, 。 より大きな密度を生成するために十分に 線に沿って圧力を受けることを意味する・・・それらは,製品が使用される時,隆起の形成を助長する(同4頁左上欄1。」6行〜右上欄6行)と記載されている圧縮線の形成方法(その代表的な方法がヒートシールであることは,技術常識というべきである )及び作用効果に照らすと, 。
仮に,原告が主張するように,引用考案1の生理用パッドを着用した場合に,パッドの吸収要素3の後端縁にまで一定の隆起が形成されるとしても,当該隆起は,吸収要素3の後端縁に至る途中で,圧縮線12a,12bによって凹状に区切られ,圧縮線12a,12bの位置から前方に向けて隆起の開始があるものと認められるところ,上記引用考案1における「隆起14」の技術的意義にかんがみれば 「隆,起14」は,上記圧縮線12a,12bの位置から前方に向かう隆起部分を含む圧縮線10,11,12a〜12d,13a,13bをもって囲まれた部分をいうものと認められ,圧縮線12a,12bの位置の後部側に形成された隆起部分は,引用考案1の「隆起14」ではないというべきである。
したがって 「引用例1には,隆起14を囲む全周部分において,正面シート1 ,をヒートシールによる圧縮線10,ll,12a〜12d,13a,13bをもって,吸収要素3に対して圧着固定して,使用時に隆起14を形成する吸収要素3を幅方向及び長手方向に固定することが記載されているということができる」とした審決の認定に誤りはなく,原告の上記主張は失当である。
(2)「相当関係の認定の誤り」との主張について原告は,引用考案1において形成される「隆起14」は,吸収要素3と区別なく変形する「一体物」であり,本件考案のように,上部吸収体と下部吸収体とが積層され,区別されるものではなく,また,引用考案1の「隆起14」は,そのパッドを着用した場合,少なくともパッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであり 「吸収体より・・・短長の使用面側に凸状に突出する中高部」の構 ,成を備えるものではないとして,引用考案1の「隆起14」が,本件考案の「吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面」 。 側に凸状に突出する中高部 に相当するとした審決の認定が誤りであると主張するしかしながら,審決は,引用考案1の「隆起14」が,本件考案の「凸状に突出する中高部 に相当すると認定するに当たり後者 判決注:引用考案1 の 隆 」 ,「() 『起14』は,吸収体が下部吸収体と上部吸収体との二層構造とされている点は除いて,前者(判決注:本件考案)の『吸収体の幅方向および長手方向中間の排液部分に,吸収体より幅狭でかつ短長の使用面側に凸状に突出する中高部』に相当し」と認定したものであり,かつ 「本件考案は 『前記吸収体は,下部吸収体と,この下 ,,部吸収体より外径が幅狭でかつ短長の,前記下部吸収体上に積層される上部吸収体との二層構造とされ ・・・』としているのに対し,引用考案1は ・・・隆起14 , ,は,使用時に使用者の腿12と13の圧力下で形成されるものであり,吸収要素3の一部である点 」を,本件考案と引用考案1との相違点として認定しているもの 。
であって,その点の相違を看過して上記相当関係の判断をしたものではない。
また,引用考案1の「隆起14」が,そのパッドを着用した場合,パッドの吸収要素3の後端縁にまで延在して形成されるものであるとの主張が失当であることは,上記(1)のイのとおりである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
(3)「一致点の認定誤り」との主張に対し上記(1)のア,イ,(2)のとおり,審決の引用考案1の認定及び本件考案と引用考案1との相当関係の認定に,原告主張の誤りはないから,その誤りを前提として,本件考案と引用考案と1の一致点の認定が誤りであるとする原告の主張を採用することもできない。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)について(1)原告は,引用考案2に 「上部吸収材3」を 「下部吸収材2」に対し 「長 ,,,」 , 手方向にズレを生じさせることなく固定 するような課題が生ずることはないから引用考案1に引用考案2を適用する動機付けはないと主張するが,引用考案1に引用考案2を適用する審決の論理付けが,引用考案1に上記課題があり,かつ,引用考案2も同様の課題があって,それを解決したので,引用考案2の構成を引用考案1に適用する動機付けがあるとしたものでないことは,その説示上,明らかである(そもそも,引用考案1の「隆起14」は「吸収要素3」の一部であるのだから,。)。,「, 引用考案1に上記課題が生ずることはない審決は 前訴判決の 引用考案2は引用考案1と同様に,同じ生理用ナプキンの考案であるから,引用考案1の『隆起14』に替えて,引用考案2の『上部吸収材』を設け,その上部吸収材を吸収要素3に固定すること,すなわち,吸収要素とは別部材とし,かつ,あらかじめ吸収要素3に圧着固定して設けることは,当業者にきわめて容易に想到できるものと認められる(前訴判決36頁10行〜14行「引用例1の『隆起14』は,使用 。」 ),時において形成されるものであり,引用例2の『上部吸収材3』は製造時に形成されるものではあるが,吸収体より幅狭でかつ短長の凸状に使用面側に突出する中高部を形成するという共通の構造を有し,また,それによって,使用者の身体とより密に接触して,漏れの危険がより小さくなるようにし,かつ,吸収性に優れたナプキンを得るという共通の課題,作用効果を有するものであるから,引用考案1のものに引用考案2を適用することに動機付けがあるというべきである(同36頁末。」行〜37頁7行)との判示を踏まえ,引用考案1に引用考案2を適用することを妨げる特段の事情も窺えないことを確認した上で,上記認定に及んだものであり,前訴判決の拘束力に従ったものである。
したがって,原告の上記主張は失当である。
なお,原告の主張を善解し,引用考案2を 「ナプキン吸収材4を下部吸収材2 ,と上部吸収材3で構成し,接合線13を用いて折込み部5を固定することにより,幅方向および長手方向に固定した上部吸収材3を有する生理用ナプキン」の構成を有するものとした審決の認定が誤りであり,したがって,引用考案1に引用考案2を適用しても,本件考案の相違点に係る「上部吸収体をその幅方向および長手方向にズレを生じさせることなく固定し」との構成が得られないと主張するものであると解しても,やはり,当該主張を採用することができない。
すなわち,引用例2には 「斯くして形成したナプキン1は,上部吸収材3の折 ,込み部5の幅方向両端部に位置する透水性シート11を線状に熱圧(溶)着することによりその線上部分13をネット状シート9を介して下部吸収材2に接合してあり,更に必要に応じて,ネット状シート9に重ねる不透水性シート10の折曲部分10の上面に位置する透水性シート11を線上に熱圧(溶)着することにより,透水性シート11と不透水性シート10とを接合してあり,その場合の加熱・加圧の如何によっては透水性シート11と不透水性シート10とネット状シート9とが接合されることもある(甲第2号証6頁3行〜14行)との記載があり,その効果 。」として 「特に本考案によれば,ナプキンを装着して歩く時にナプキンの幅方向両 ,側部が太ももにこすれたり,両太もも間に挟まれた状態で従来のナプキンの中央部に生ずるが如き皺が生じたりすることなどに伴う使用感がなく,しかも膣部や臀部溝を含むその近傍部の肌に対する密着性が向上し経血の漏れを有効に防止することができる。更に上部吸収材の両端部に位置する透水性シートを熱可塑性で疎水性のネット状シートを介して下部吸収材に線状に接合したものにおいては,経血の吸収上最も重要なナプキンの中央部に位置する上部吸収材が装着時に移動することがな, , く 且つ所望のメッシュを有する前記ネット状シートを位置させたものにおいては内部に一旦吸収された経血の肌当接面への逆流防止に効果あり,実用に供し極めて有益である(同8頁9行〜9頁5行)と記載されている。 。」これらの記載によると,引用考案2においては,上部吸収材3を下部吸収材2に熱圧(溶)着することによって,ナプキンの中央部に位置する上部吸収材が装着時に移動することがないようにしていると認められ,上部吸収材3は幅方向のみならず長手方向にもズレを生じさせないように固定されているものといえる。
したがって,審決の引用考案2の認定に誤りはなく,上記主張も失当である。
(2)原告は,本件考案の効果を引用考案1は奏することができないものであるから,審決の「本件考案が奏する効果は,引用考案1及び引用考案2から予測される以上の格別のものとは認められない 」との判断が誤りであると主張するが,上記 。
主張は,引用考案1における「熱収縮性弾性要素6,6 」の両端間の長さが,1 ’2a・12bの交点Cと12c・12dの交点C’との間の長さより短いことを前提とするものであるところ,この前提を採用することができないことは,上記1の(1)のアのとおりであるから,上記主張は,その前提を欠き,失当である。
第6結論以上のとおり,取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却すべきであり,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 石原直樹
裁判官 古閑裕二
裁判官 杜下弘記