関連審決 | 不服2003-12966 |
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関連ワード | 特許を受ける権利 / 承継 / 発明者 / 物の発明 / 方法の発明 / 生産方法の発明 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 公知技術 / 同一の発明 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / 表現上の差異 / 参酌 / 均等 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 拒絶査定 / 請求の理由 / 審理終結通知 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / |
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事件 |
平成
18年
(行ケ)
10513号
審決取消請求事件
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原告サイエンス・アンド・テクノロジー・インク ()SCIENCE AND TECHNOLOGY.INC. 被告特許庁長官 肥塚雅博 指定代理人宮川哲伸 同 山口由木 同 徳永英男 同 内山進 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/09/25 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
1原告の請求を棄却する。 2訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求特許庁が不服2003-12966号事件について平成18年7月12日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,訴外会社(後記のとおり)が後記特許を出願したところ,拒絶査定を受けたため,これを不服として審判請求をしたところ,特許庁が同請求不成立の審決をしたので,訴外会社から特許を受ける権利を承継した原告が,その取消しを求めた事案である。 第3当事者の主張1請求原因( )特許庁における手続の経緯1ア「アメリカ合衆国91361カリフォリニア以下省略」に事務所を有しA を代表者とするアメリカ合衆国デラウェア州法人である サ ,「」 「イエンス・アンド・テクノロジー・インコーポレーテッド (以下「訴外」会社」という )は,名称を「植物栽培方法とその装置」とする発明につ 。 いて 平成5年9月7日に特許出願 特願平5-222536号 以下 本 , ( 。「願」という。請求項の数2,甲5)をし,その後平成14年12月13日に特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(第1次補正,甲6)をしたが,平成15年6月6日に拒絶査定を受けたので,平成15年7月9日,不服の審判請求をした(乙1 。)イ特許庁は,同請求を不服2003-12966号事件として審理し,その中で訴外会社は平成15年8月6日付けで,発明の名称を「農作物或いはその苗の生産方法」と変更するとともに特許請求の範囲も変更(請求項の数4。乙2)する手続補正(第2次補正)をしたが,特許庁は,平成18年7月12日 「本件審判の請求は,成り立たない 」との審決をし,そ , 。 の謄本は平成18年7月24日訴外会社に送達された。なお,出訴期間として90日が附加された。 ウ米国ネバダ州法人である原告は,平成12年(2000年)5月16日に訴外会社から,本願に関し特許を受ける権利の譲渡を受ける契約を締結していたので,平成18年11月20日に当庁に対し訴外会社と原告の共同名義で上記審決の取消しを求める訴状を提出し(その後,下記届出後に訴外会社を原告とする部分は訴え取下げの趣旨で削除された,訴外会社。)は平成18年11月29日に上記譲渡の事実を特許庁長官に届け出た。 ( )発明の内容2第2次補正により補正された後の請求項の数は前記のとおり4であるが,そのうち請求項1は下記のとおりである(乙2。以下,この発明を「本願発明」という。。)記【請求項1】人工光或いは太陽光を一旦集光し,その集光光束より熱線を分離除去した可視光によって面状発光体の一面の全面をほぼ均一に発光させ,その光線を植物に照射して植物を栽培する農作物或いはその苗の生産方法であって,面状発光体は,植物に近接してその上方に配置され,面状発光体から発する光線を至近距離より植物の葉面に直接照射してその光線を葉面に吸収させ,葉面に吸収されない未利用の光線を発光体と反射物と他の葉面間で反射させることにより,植物のいずれかの葉面に吸収させることを特徴とする農作物或いはその苗の生産方法。 ( )審決の内容3ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。 その理由の要点は,本願発明は,その出願前に頒布された下記引用文献1,2に基づき当業者が容易に発明をすることができたから,特許法(以下「法」という )29条2項により特許を受けることができない,とし 。 たものである。 記引用文献1:特開平2-7003号公報(甲1。以下,この発明を「引用発明」という )。 引用文献2:特開平2-145181号公報(甲2)イなお,審決は,上記判断に当たり,引用発明と本願発明との一致点及び相違点を,次のとおりとした。 〈一致点〉「人工光或いは太陽光を一旦集光し,その集光光束より熱線を除去した可視光によって発光体をほぼ均一に発光させ,その光線を植物に照射して植物を栽培する農作物或いはその苗の生産方法であって,発光体は,植物に近接してその上方に配置され,発光体から発する光線を至近距離より植物の葉面に直接照射してその光線を葉面に吸収させ,葉面に吸収されない未利用の光線を反射物で葉面方向に反射させる農作物或いはその苗の生産方法」である点。 〈相違点1〉本願発明においては,発光体が,面状発光体の一面の全面をほぼ均一に発光させるものであるのに対して,引用発明においては,このような面状発光体を均等に発光させているものではない点。 〈相違点2〉本願発明では,集光光束より熱線を分離除去しているのに対して,引用発明では,集光光束より熱線を除去しているものの,集光光束から分離していない点。 〈相違点3〉本願発明においては,葉面に吸収されない未利用の光線を発光体と反射物と他の葉面間で反射させることにより,植物のいずれかの葉面に吸収させるようにしているのに対して,引用発明においては,反射物によって葉面方向に反射させた未利用の光線が,どのように反射して,植物に対して如何に作用するものであるのか明確ではない点。 ( )審決の取消事由4しかしながら,審決は,以下のとおり本願発明と引用発明との一致点の認定を誤り(取消事由1,2 ,相違点2について容易想到性の認定判断を誤 )り(取消事由3 ,また審決に至る手続き自体が不当なものであるから(取 )消事由4 ,違法として取消しを免れない。 )ア取消事由1(審決の対比bについての認定の誤り)審決は,本願発明と引用発明との対比「b (6頁2行目以下)におい 」,「,『( )』 て引用発明では自然光源または人工の発光源からの光を 採光しとしているのに対して,本願発明では 『 人工光或いは太陽光を)一旦集 ,(光し』としており,両者は一応異なるが,特に『一旦』という部分に対応する構成について本願明細書中に何ら説明されていないことから,この部分には特に技術的な意義はなく,単なる表現上の差異に過ぎず,両者は相」() , 。 当している とした 6頁2〜7行 が この対比bの認定は誤りである人工光或いは太陽光を集光することなく採光したのでは熱線の分離に大きな面積を持つコールドミラーを用いねばならない。また,これを光学的に伝送するには大径のライトガイドが必要になり,産業上の実用化への大きな障害となる。本願明細書(甲5)の【0020】にあるように,直径1mmの光ファイバーを最密結束した径30mm足らずの受光端に直径400mmの面積で採光し,これを同面積以上の面積を要するコールドミラーにより熱線で分離した光束のほぼ全てを入射することは不可能である。 そこから,集光は本願発明のみならず,引用文献1,2においてもこれを実用化するには不可欠の要素である。 さらに実用的な植物栽培に必要な光量を運ぶには,採光した光束を集光し,これを光ファイバーの束に入射し,伝送することが必要であり,光ファイバーの束に入射させる前に熱線を分離しなければ受光部付近は発熱により溶けてしまう。光ファイバーの束へ入射する前の熱線分離を行わずにかかる光ファイバーの束の溶解を避けるには集光を行わず大径の光ファイバーの束が必要になり,実用化はあり得ない。引用発明の内容は実用化が不可能な点に於いて本願発明との相異が明確である。 よってこれらを看過した審決の認定は誤りである。 イ取消事由2(審決の対比cについての認定の誤り)審決は,本願発明と引用発明の対比「c (6頁8行目以下)として, 」「引用発明における『その採光された光から赤外線成分を減衰させた光』は,熱線成分である赤外線成分を減衰させることで可視光および紫外線よりなる光(集光光束)であって 『栽培室内が不必要に昇温することがな ,く,空調管理が容易となる』ためのものである・・・ことから,本願発明の『その集光光束より熱線を除去した可視光』に相当する (6頁8〜1」2行)としたが,この認定も誤りである。 まず熱線の分離は費用対効果の観点から,集光の進んだ適切な個所で行われるのがよい。集光が受光端の面積迄進んだ所では,熱線の密度が極めて高くなり,コールドミラー上の発熱によりその金属多層膜が損傷する。 従って,熱線分離は受光端迄の集光が進む前の適切な位置で行われなければならない。本願明細書(甲5)の【0014】及び図7はかかる集光と熱線分離の技術構成を,また図8はこれを明確に示している。 また,かかる熱線分離が栽培室内で行われたのではその分離された熱線を熱媒により直ちに栽培室外へ運び出さなければならない。さもなければ, 。 周囲温度を上げることになり 熱線分離の効果を減じてしまうことになる本願発明は明確に熱線分離は栽培室外で行うことを述べている。 一方,引用発明では,PMMAを材質とする光ファイバーに熱線を吸収させ,さらに投光部のPMMA板にも熱線を吸収させるとしている。この引用発明では光ファイバーの一部と投光部のPMMA板は栽培室に配置されていることより,これらのPMMA材に吸収された熱線はPMMAを発熱させ,伝熱や対流により栽培室内に拡散される。このことより熱線の除去の効果は栽培室外の光の伝送部に於いてのみ有効である。ここから,熱線処理及びその効果について本願発明との相異が明確である。 また,引用文献1では採光手段に於いて熱線を除去してもよいとの記載があるが,何ら具体的な手段は示されていない。加えて採光手段,投光手段及び光ファイバーのうち少なくともいずれかという表現は栽培室外で熱線の分離を終了させる重要性を認識していないことを示している。この点においても引用発明と本願発明との相異は明確である。 これらを看過した審決の認定は誤りである。 ウ取消事由3(相違点2についての判断の誤り)審決は,相違点2についての判断において 「引用文献2には ・・・こ ,,とが開示されており,このような入射する光を熱線と熱線を除去した光に分離する構成を 『植物栽培方法』の発明である引用発明に適用すること ,は,当業者が容易に想到し得たものである」とした(7頁27〜31行)が,これも誤りである。 引用発明2は組織培養器内の植物組織や培地を熱線が照射することと,熱線が光拡散液を照射することによる光拡散液の温度上昇を避けることを目的としている。しかし,熱線分離除去部で分離された熱線が周囲の温度を上昇させ培養器がその影響を受けることへの対策は何も述べられていない。引用発明2は植物組織への熱線の直接照射を避ける目的に於いて有効であり,培養器周囲の調温の負担を軽減する効果は実用上はない。なぜなら多くの場合,かかる培養器は培養の温度と湿度の制御のため,小型の調温調湿庫に入れられるが,引用発明2の構造では培養器だけを庫内に入れ熱線分離部を庫外に置くことは困難である。従って人工光源部と熱線分離も庫内に入れることになり培養器周囲の調温,調湿への負担は熱線を分離しない場合と変らない。 本願発明では,植物培養室はかかる培養器より大型であることから,人工光源部及び熱線分離部を調温調湿が行われる栽培室内の外へ配置することが可能になることにより初めて実現し得るものである。すなわち本願発明はその使用に於ける調温調湿を考慮したとき,引用発明2の培養器との機能の相異が明確になる。 これらの相違を看過し,引用文献2記載の構成を引用発明に適用することは,当業者が容易に想到し得たとする審決の認定は誤りである。 なお,引用文献2から本願発明が決して容易に導かれたものではないことは,引用文献2の開示後の平成6年(1994年)2月2日に,本願発明による製品が日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」において優秀賞を受けている事実(甲3の1,2)からも十分理解できる。 エ取消事由4(審決の手続違背)平成18年6月27日特許庁発送の審判官及び審判書記官氏名通知(変更)の3日後の平成18年6月30日特許庁発送の審理終結通知がされており,その手続経緯は極めて不当であり,これは本願出願人の上申書及び面接の機会を実質的に奪うものである。 2請求原因に対する認否請求の原因( )ア・イ,( )・( )の各事実はいずれも認める。同( )は争う。 123 43被告の反論審決の判断は正当であり,原告主張の誤りはない。 ( )取消事由1に対し1ア原告の取消事由1の主張は,以下の内容から成ると解される。 すなわち,引用文献1の記載内容からして,@引用発明は「自然光源または人工の発光源からの光」を「集光」することなく「採光」しているものであって,, , A引用発明は 熱線の分離には大きな面積を持つコールドミラーを光を伝達するには大径のライトガイドを,用いなければならないような実用性を欠くものであって,審決が 「対比b」において,引用発明における「 自然光源または人 , (工の発光源からの光を)採光し」と,本願発明における「 人工光或い(は太陽光を)一旦集光し」としているものとが実質的に相当する関係にあると説示している点は誤りである。 そこで,上記@,Aに以下のとおり反論する。 イ引用発明は光源からの光を集光することなく,採光しているとの原告の主張(上記@)につき引用文献1(甲1)には 「採光装置5」に関して 「第2図は採光装置 ,,5の要部を拡大して示す断面図である。箱状をなす採光装置5の側部14及び底部15は,メチルメタクリレート(MMA)板で覆われており,その内面にはアルミ箔16が貼着されている。また,第2図に於ける上部の採光部17は乳白色のアクリル板18と内部に設けられた複数のフレネルレンズ19とから構成されている。底部15には,光ファイバ7の受光側端部が外部から挿入されており,その端面には魚眼レンズ21が設けられている。尚,符号20は透明なMMA板からなる補強リブである。外部からの自然光は乳白色のアクリル板18及びフレネルレンズ19を介して各光ファイバ7の端部魚眼レンズ21に集光され,採光室1に送られるようになる。ここで,乳白色のアクリル板18は外部からの光を拡散させ,その下部のフレネルレンズ19に広範囲の光を取込ませるためのものであり,また,アルミ箔16は採光装置5内部の光を効率的に用いるための反射板である(3頁右上欄1〜19行)との記載がある。 。」引用文献1の上記記載箇所中の「外部からの自然光は乳白色のアクリル板18及びフレネルレンズ19を介して各光ファイバ7の端部魚眼レンズ21に集光され,採光室1に送られるようになる 」といった記載からし 。 ても,引用発明における「 自然光源または人工の発光源からの光を)採 (光し」としている部分が,採光装置5の構成要素であるフレネルレンズ19や各光ファイバ7の端部魚眼レンズ21といった光学機器を介して採光部17に照射された自然光を各光ファイバ端部に集光するものに対応していることは明らかである。 ,「 」 「」 従って 引用発明は 自然光源または人工の発光源からの光 を 集光することなく「採光」しているものであるという原告の主張は,引用文献1の記載事項に対する誤った認定に基づくものである。 ウ引用発明は,熱線の分離には大きな面積を持つコールドミラーを,光を伝達するには大径のライトガイドをそれぞれ用いなければならないような実用性を欠くものであるとの原告の主張(上記A)につき,「 , 審決では 引用発明を 自然光源または人工の発光源からの光を採光しその採光された光から赤外線成分を減衰させた光によって投光装置4を均等に発光させ,採光された光から赤外線成分を減衰させた光を栽培せんと,, する植物に照射して植物を栽培する植物栽培方法において 投光装置4は栽培せんとする植物の上方に配置され,投光装置4から発する光を栽培せんとする植物の葉面に直接照射してその光を葉面に吸収させ,投光装置4の底部に設けられたアルミ箔31が,栽培棚3から反射される光を再度栽培棚3に向けて反射するようになっている植物栽培方法 (4頁33行〜」5頁1行)と認定した。 すなわち,審決が認定している引用発明中に「コールドミラー」や「分離」といった語句は存在していない。 加えて審決は 「3.対比 (5頁下4行目以下)において 「本願発明 ,」 ,では,集光光束より熱線を分離除去しているのに対して,引用発明では,, 」 集光光束より熱線を除去しているものの 集光光束から分離していない点を,相違点2としている(7頁5〜7行 。)このように,審決において,引用文献1に記載されている事項から,引用発明が集光光束より熱線を分離しているものであるといった認定を行っていないことは明らかである。 ウ以上,ア,イからして,審決が 「3.対比b 」において,引用発明に ,.おける「 自然光源または人工の発光源からの光を)採光し」と,本願発 (明における「 人工光或いは太陽光を)一旦集光し」としているものとが (実質的に相当する関係にあると説示している点に,原告が主張するような誤りはない。 なお,引用発明は実用性を欠くものであるとの原告の主張については,後記(2)イのとおり,その前提に誤りがあり,理由がない。 (2)取消事由2に対しア原告の主張する取消事由2は,以下の内容から成ると解される。 すなわち,引用文献1の記載内容からして,@引用発明は,熱線が栽培室内に拡散される構造であり,熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させるものであるから,実用化は有り得ないものであり,A引用発明は,栽培室外で熱線の分離を終了させるものではないので,熱線分離を栽培室外で行うことを明確に述べている本願発明との相違は明確であって,審決が 「3.対比c 」において,引用発 ,.「 」 , 明における その採光された光から赤外線成分を減衰させた光 と本願発明における「その集光光束より熱線を除去した可視光」としているものとが相当する関係にあると説示している点は誤りである。 そこで,上記@,Aに対し以下のとおり反論する。 イ引用発明は,熱線が栽培室内に拡散される構造であり,熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させるものであるから,実用化はあり得ないものであると原告が主張している点(上記@)につき審決が「2.引用刊行物記載の発明」において,引用文献1の記載事項(ニ)として掲げる(3頁6〜9行)とおり,引用文献1には「また,栽培せんとする植物に,外部に設置した人工の発光源と赤外線成分のみを除去した自然光とを併用して供給するようにすれば,人工の発光源の電力コストが低減できると共に栽培室内が不必要に昇温することがなく,空調管理が容易となる 」といった引用発明の目的ないし効果が記載されている 。 とともに (ト (審決4頁20〜24行)にも同内容の事項が記載されて ,)いることからしても,引用発明が「採光された光から赤外線成分を減衰させる」ことで「赤外線成分のみを除去した自然光」を得ているのは「栽培室内が不必要に昇温することがなく,空調管理が容易となる」ためであって,原告が主張するような,熱線が栽培室内に(いたずらに)拡散されるようなものを意図していないことは明らかである。 また,審決は,引用発明を「熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させるものである」とも認定していない。 ところで,引用文献1において,原告が実施不可能であると主張するところのポリメチルメタクリレート(PMMA)材を光ファイバのコア材として使用して,このPMMA材で光の赤外線成分のみを減衰させることと,()() する例は このことが引用文献1 甲1 の<実施例> 2頁右下欄以下の部分に記述されている(すなわち,特許請求の範囲には記載されていない)ことからして,引用文献1に開示されている発明を実施する際の単なる1例を例示的に示したものといえる。 他方,引用文献1(甲1)の特許請求の範囲の記載を見ると 「 3)前,(記採光手段,前記投光手段及び前記光ファイバのうちの少なくともいずれかひとつが,前記光源からの光の赤外線成分を減衰する手段を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項若しくは第2項に記載の植物栽培用光供給装置 」という記載がある。 。 そうすると,仮に,原告主張の「熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させるものである」という実施例のものが実施不可能であるとしても,引用文献1の上記「光源からの光の赤外線成分を減衰する手段」を「採光手段」側に設けた場合に,言い換えれば光ファイバへの光入射前の部位で「光源からの光の赤外線成分を減衰する手段」を設けるという選択をした場合に,引用発明は(上記「PMMA材からなる光ファイバ」を用いていても,当該光ファイバに入射される光は既に赤外線成分が減衰されたものとなっているから)実施不可能であるということはできない。 ちなみに,審決では引用発明において「その採光された光から赤外線成分を減衰させた光」との認定をしており,引用文献1の「採光された光の赤外線成分を減衰する手段」の配置に関して「熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させる」という実施例に限定して引用発明を認定していないことも明らかである。 従って,引用文献1は 「採光された光から赤外線成分を減衰させる」 ,ことを(光ファイバ部分で行う例だけではなく)採光手段で行う例についても併せて開示しているのであるから,引用発明は,原告が主張するような(例えば,光ファイバの束が溶融してしまうという)理由によって実用化が不可能であるということはできない。 ウ引用発明は,栽培室外で熱線の分離を終了させるものではないので,熱線分離を栽培室外で行うことを明確に述べている本願発明とは明確に相違するものであると原告が主張している点(上記A)につきところで,引用発明が,原告が主張するような,熱線が栽培室内に(いたずらに)拡散されるようなものを意図したものでないことは,既に,上記で反論したとおりである。 他方,本願発明には 「その集光光束より熱線を分離除去した可視光」 ,を用いるものの,当該集光光束から熱線の分離除去を行う場所が「栽培室外」であるということを特定する事項が,特許請求の範囲には何ら規定されていないことが明らかである。 そうすると,引用発明が熱線を減衰させることにより除去する手段を栽培室外に配置するものではないとしても,熱線分離を栽培室外で行うことを明確に述べている本願発明とは明確に相違するものであるという原告の主張は,特許請求の範囲に記載された事項に基づかない主張である。 また,審決が「3.対比c(6頁8行目以下)において,引用発明に .」おける「その採光された光から赤外線成分を減衰させた光」と,本願発明における「その集光光束より熱線を除去した可視光」としているものとが相当する関係にあると説示している点は,本願発明における「その集光光束より熱線を分離除去した可視光」は,集光光束より「分離」するという方法により熱線が完全に除去されたものであるのに対して,引用発明では「減衰」させるという方法により赤外線成分(熱線)が部分的に除去されたものであるという相違があるとしても,栽培室で植物に照射される光としては,不必要に栽培室の温度に影響を及ぼさない程度に熱線が除去され,「. た光である点で両者は共通しているということができるから 審決が 3対比c 」において,引用発明における「その採光された光から赤外線成 .分を減衰させた光」が,本願発明の「その集光光束より熱線を除去した可視光」に相当するとした点に,原告が主張するような誤りはない。 (3)取消事由3に対しア原告は,取消事由3につき,以下のように主張していると解される。 すなわち,引用文献2(甲2)の記載内容からして,@引用文献2は人工光源部と熱線分離部を培養器内に入れる構造のものであり,熱線分離を培養器外で行っている本願発明と機能が異なるものであり,本願発明との対比あるいは進歩性の判断などを行うのに用いることは不適切なものである。 A引用文献2により本願発明が容易に導かれたものではないことは,引用文献2が既に1990年(平成2年)6月4日に開示されていたにも係わらず,1994年2月2日に本案による製品は日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」に於いて優秀賞を受けていることから明らかであって,審決の相違点2についての判断は誤ったものである。 そこで,上記@,Aに以下のように反論する。 イ引用文献2は人工光源部と熱線分離部を培養器内に入れる構造のものであり,熱線分離を培養器外で行っている本願発明と機能が異なるものであり,引用発明と対比あるいは進歩性の判断などを行うのに用いることは不適切なものであると原告が主張している点(上記@)につき審決において,引用文献2に開示されている事項として認定しているものは 審決の 2 引用刊行物記載の発明 に記載されているとおりの 組 ,「.」 「織培養用光照射装置において,入射する太陽光又は人工光をライトガイドに導く際に,コールドミラーを用いて,熱線と熱線を除去した光に分離する」ことであって,こうした事項が引用文献2に開示されていることは,審決の「2.引用刊行物記載の発明」で示した(リ)〜(ヲ)の事項(審決5頁6〜33行)から明らかである。 そして,本願発明には「熱線分離を栽培室外で行う」という規定がないのであるから,原告主張のような,引用文献2に記載されているものが熱線分離部を培養器の内か外のいずれの位置に設けたものであるかということは,本願発明の進歩性を否定するにつき何らの阻害事由にもならないことは明らかである。 加えて,引用文献2には,コールドミラーを用いて熱線と熱線を除去した光に分離することを,光ファイバ素線などのライトガイドへ導く際に,言い換えれば,光ファイバへ入射する前段階で行う点が開示されているのであるから,これを「植物栽培方法」の発明である引用発明に適用することにより相違点2に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到し得るものと説示した審決の相違点2についての判断に原告主張の誤りはない。 以上のとおり,引用文献2は本願発明との対比あるいは進歩性の判断などを行うのに用いることは不適切なものであるという原告の主張は,その前提に誤りがあり失当である。 ウ引用文献2により本願発明が容易に導かれたものではないことは,引用文献2が既に1990年(平成2年)6月4日に開示されていたにも係わらず,1994年2月2日に本案による製品は日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」に於いて優秀賞を受けていることから明らかであって,審決の相違点2についての判断は誤ったものであると原告が主張している点(上記A)につきところで 日本経済新聞社による 93年日経優秀製品サービス賞甲 ,「 」(3の1)というものが,いかなるものを評価対象としているのか(すなわち,原告がいう「本願発明による製品」としているものがどのようなものか,あるいは「本願発明による製品」と審決の本願発明とは同じものであるのか)が明らかでないことから,原告が証拠として提出した日経産業新聞の記事(甲3の2)を参酌すると,次の記載がある。 「・・・にもかかわらず,これまで普及していないのは結局,エネルギー効率が悪くコストが高くつくためだ。我々の開発した電照システムはこれらの点を解決する。核となるのは照明から出るエネルギーのうち,光だけを分離し植物に照射するシステムだ。まずコールドミラーを使って光と熱を分離する。その次に光を光ファイバーを使って栽培室内に転送し,植物に照射する。光だけが照射されるので空調設備がいらなくなる。周囲には鏡をはりめぐらし,照射した光が無駄にならないように工夫した。 。, 使っているコールドミラーは特別なものではない 独自に開発したのは光を伝送する光ファイバーと,栽培室内で光を均一に拡散させる光ファイバーだ。光伝送用の光ファイバーは断面が六角形。何本束ねてもすき間ができない。これは我々しか作れないものだ。コールドミラーで分離した熱も有効利用する。これらを組み合わせることで,総合的なエネルギー効率は従来システムの10倍以上になる 」。 上記記載によれば,日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」に於いて優秀賞を受けた「植物工場用照明システム」及び「STI電照システム」は,総合的なエネルギー効率を従来システムの10倍以上とした電照システムであって,コールドミラーで分離した熱を有効利用できるとともに独自に開発した断面が六角形の光ファイバを使用するものであると理解される。 ,「 」, ところが農作物或いはその苗の生産方法 の発明である本願発明はその発明の名称からすると「電照システム」という物の発明でないことが明らかであり,コールドミラーで「その集光光束より熱線を除去した可視光」を利用する方法の発明ではあるものの,その除去された熱線の有効活用についての規定もないし,また,断面六角形の光ファイバを用いるとの規定もないことが明らかである。 そうすると,本願発明が,日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」に於いて優秀賞を受けた「植物工場用電照システム」及び「STI電照システム」と称する発明と同一の発明であると直ちにいうことができないのであるから,両者の発明が同一の発明であることを前提として本願発明の効果が格別なものであると主張していると解される原告の主張は,その前提において疑義があり,妥当なものということはできない。 (4)取消事由4に対しア本件の審判請求以降の実体的な(職権訂正通知書,審査前置移管通知などは除いた)手続経緯は以下の通りである。 平成15年7月9日審判請求書(乙1)平成15年8月6日手続補正書(乙2)平成15年10月27日手続補正書(審判請求書の請求の理由の補充,乙3)平成15年10月30日上申書(以下 「上申書1」という。 ,乙4)平成16年6月9日上申書(以下 「上申書2」という。 ,乙5)() 平成17年4月5日審判官及び審判書記官氏名通知 乙6発送() 平成17年4月11日審判官及び審判書記官氏名通知 乙7発送平成17年4月14日上申書(以下 「上申書3」という。 ,乙8)() 平成18年6月27日審判官及び審判書記官氏名通知 乙9発送平成18年6月30日審理終結通知書(乙10)発送平成18年7月24日審決発送イそして,上申書1〜3におけるそれぞれの【上申の内容】は,以下のとおりである。 上申書1: 本件について,明細書の補正をすべく平成15年8月6日 「付で手続補正書を提出致しましたが,特許請求の範囲(手続補正2 ,段)落0007(手続補正5 ,0008(手続補正6)で補正しました「人 )口光或いは太陽光」は「人工光或いは太陽光」の誤りであります。何卒,誤字の補正の機会を頂きたくお願い申し上げます 」。 上申書2: 本件に関しましては,現在のところ審判官氏名通知をいた 「だいておりませんが,本件は明細書の補正等を予定しておりますので,ご担当が決まり,審理に着手をしていただいたときには,是非,意見書,補。, 正書の提出の機会を与えていただきたくお願い致します 必要のときには本件発明の説明をさせていただきたいと思います 」。 上申書3: 本件について,平成17年4月11日付(発送日)で審判 「官及び審判書記官氏名通知をいただきました。本件については,さきに上申書を提出し,ご担当が決まり次第,引用例との違いを明らかにすべく,意見書,補正書の提出の機会を与えていただくか,あるいは直接ご説明を,() させていただきたい旨のお願いをいたしておりましたが 発明者 担当者が米国に2ヶ月ほどの長期出張中のため,内容説明を含めて直ちに対処することができません。代理人として発明者に弁明の機会が失われることにないように対応いたしたいと考えていますので,このまま審理終結の通知が下されるようなことなく,もしご審理の結果その様な決定が下されるようなことになったとしても,少なくとも2ヶ月のご猶予をいただきたくお願いします 」。 上記のように,上申書1〜3において,本願出願人の上申した内容を要約すると以下(以下 「上申の趣旨1」等という )のとおりである。 , 。 () 上申の趣旨1:誤字を補正する機会の得ることの申し出 上申書1より上申の趣旨2:意見書,補正書を提出する機会を得ることの申し出(上申書2より)上申の趣旨3:必要に応じて本願発明を(発明者が直接)説明することの申し出(上申書2および上申書3より)上申の趣旨4:平成17年4月4日から,少なくとも2ヶ月の猶予を得ることの申し出(上申書3より)ウそして,上申の趣旨1〜4に対する被告の対応は,それぞれ以下のとおりである。 ・上申の趣旨1に対して:審決の「1.手続の経緯・本願発明」に示したとおり,原告の上申の趣旨1に沿った本願発明の認定を行った。 ・上申の趣旨2に対して:審判合議体による合議の結果,審判請求人(本願出願人)は審査段階および審判請求段階などにおいて十分に補正をする機会が得られていたとともに,審査段階の拒絶理由通知後と審判請求時にも実際に補正を行っていること,さらに,上申書には何ら具体的な補正案の提示もないことから,審判合議体から新たに意見書,補正書を提出する機会を与えるべき特段の事情を見出せないと判断した。 ・上申の趣旨3に対して:審判合議体による合議の結果,審判請求人(本願出願人)が明確に「面接希望」の表明をしている訳ではないこと,さらに,本願発明を理解するに際して,本願明細書に特段不明確とする点もないことから,審判合議体から審判請求人に対して改めて本願発明の説明を求める必要性もないと判断した。 ・上申の趣旨4に対して:審判合議体による合議を行っている時点(審決を通知した合議体の審判官指定(変更)通知(乙9 )が平成18年6月)22日付(起案日)であることから,この直前の時期において (上申書,3が提出された)平成17年4月14日から2ヶ月以上の期間が十分に経過していること,さらに,その後に代理人による上申等が新たに行われていないことを確認した。 エ以上のように,審判合議体は,審判請求人(本願出願人)による全ての上申の内容を十分に確認した上で審決にいたる手続を進めてきた。 なお,上記のとおり本願出願人は審判請求後から審理終結通知が送達されるまでの間に3回上申書を提出している(上申書の提出は審判官指定等の通知とは関係なく行えるものであるとともに,実際に,上申書1,2のように,審判官指定(変更)通知がなされていない段階においても本願出願人は上申書の提出を行っている)こと,本願出願人が審判請求後に上申書を提出するという手段に限らず電話やFAXなどの手段で面接を希望する旨を申し出た事実も見出せない(仮に,審理終結前に面接を希望する旨を申し出たのであれば,審判合議体は当然ながら審査基準などにも明記されているとおり,その要請に応じる準備はあったが,こうした要請は結果的にはされていない 。)さらに,本件審判事件では,平成18年6月30日に審理終結通知(乙10)が発送された後に,審判請求人から法156条2項に規定されている審理再開の申立てもされていないことから,審理終結後の審理再開の必要性について特段検討することなく,平成18年7月24日に審決の発送がされたものである。 したがって 「その手続経緯が極めて不当である」もしくは「平成18 ,年6月27日特許庁発送の審判官及び審判書記官氏名通知(変更)の3日後の平成18年6月30日特許庁発送の審理終結通知が為されている。これは本案出願人の上申書及び面接の機会を実質的に奪うものである 」と。 いった原告の主張は,いずれも理由がないことが明らかである。 第4当裁判所の判断1請求原因( )アイ 特許庁における手続の経緯( ) 発明の内容( ) 審1 23( ),(),(決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。同( )ウの事実(訴1外会社から原告への特許を受ける権利の譲渡等)は,弁論の全趣旨によりこれを認める。 そこで,以下,原告の主張する審決の取消事由について順次判断する。 2取消事由1について原告は,審決が,本願発明と引用発明との対比「b」に関し 「引用発明で,は 『 自然光源または人工の発光源からの光を)採光し』としているのに対し ,(て,本願発明では 『 人工光或いは太陽光を)一旦集光し』としており,両者 ,(は一応異なるが,特に『一旦』という部分に対応する構成について本願明細書中に何ら説明されていないことから,この部分には特に技術的な意義はなく,単なる表現上の差異に過ぎず,両者は相当している 」とした点(6頁2〜7 。 行)は誤りであるとし,本願発明において人工光あるいは太陽光を集光するのは不可欠の要素であるところ,引用発明には集光に関して実施可能な記載がなく,審決はこれら相違点を看過していると主張する。 ( )引用発明は,出願日が昭和63年6月27日・公開日が平成2年1月111日で発明の名称を「植物栽培用光供給装置」とするもの(出願人千代田化工建設株式会社)であり,同発明が記載されている引用文献1には,以下の記載がある(甲1,下線は判決で付記 。)ア特許請求の範囲「 1)密閉断熱された栽培室にて植物を栽培するべく,所要量の光を前 (記植物に向けて供給する植物栽培用光供給装置であって,自然光源または人工の発光源からの光を採光する手段と,前記栽培室内にて前記採光した光を前記植物に向けて投光する手段と,前記両手段を互い接続する光ファイバとを有することを特徴とする植物栽培用光供給装置 (2)前記採光。 手段が,自然光源からの光を採光する第1の採光手段と,人工の発光源からの光を採光する第2の採光手段とを有し,前記第2の採光手段が,前記人工の発光源からの光量を調節する手段を具備することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の植物栽培用光供給装置 (3)前記採光手段, 。 前記投光手段及び前記光ファイバのうちの少なくともいずれかひとつが,前記光源からの光の赤外線成分を減衰する手段を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項若しくは第2項に記載の植物栽培用光供給装置。 (4)前記投光手段が,前記栽培室内にある前記光ファイバの側面部分のコアを露出させるように切除した軸線方向に延在する投光面を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載の植物栽培用光供給装置(1頁左欄4行〜右欄10行) 。」イ発明の詳細な説明@「 産業上の利用分野〉本発明は,密閉断熱された栽培室にて,栽培せ 〈んとする植物に向けて光源から所要量の光を供給するための光供給装置に関する 〈従来の技術〉従来から,密閉された室内にて温度,湿度, 。 内部雰囲気及び光量等を調節することにより食用植物等を効率的に栽培する技術が知られている ・・・しかるに,栽培室内の植物に各々均等 。 に光を供給する必要があるため,この植物を棚状に多段配置することが困難であり,栽培室内空間の利用効率が悪くなりがちであった。また,電灯等の人工の発光源は発熱量が比較的大きいことから,栽培室内の空調管理が煩雑になる問題があった(1頁右欄12行〜2頁左上欄12 。」行)A「他方,自然光と人工の発光源からの光量とを併用することも提案されている。即ち栽培室を自然光を採光可能な透明体で覆い,かつ栽培室内に補助的な光源として電灯等を設けるものである。しかしながら,このような栽培室は自然光に含まれる赤外線の作用により室内の気温が上昇しがちになるため,上記した人工の発光源の発熱と相俟って空調管理及び内部雰囲気管理が煩雑になる問題が一層深刻となる。更に,栽培室内に人工の発光源の設置場所を確保する必要があり,栽培室内空間の利用効率が低下すると云う問題は回避できない(2頁左上欄18行〜右上 。」欄9行)B「 作用〉このようにすれば,栽培せんとする植物を棚状に多段配置し 〈ても効率的にかつ均一に植物に光を供給することが可能となる。また,栽培せんとする植物に,外部に設置した人工の発光源と赤外線成分のみを除去した自然光とを併用して供給するようにすれば,人工の発光源の電力コストが低減できると共に栽培室内が不必要に昇温することがなく,空調管理が容易となる。更に,光ファイバの投光側即ち栽培室内に於ける端部近傍の側面部を切除し,光ファイバのコアを露出させ,その露出部分から側面方向に投光するようにすれば,好適に光が拡散され,。」( ) 別途にレンズ等を設ける必要がない2頁左下欄15行〜右下欄8行「 。 C 第1図は本発明が適用された植物栽培設備の構成を示す模式図である・・・栽培室1の内部には,複数の栽培棚3が多段配置されており,その上部には各々投光装置4が配置されている。各投光装置4は外部に設けられた自然光の採光装置5及び同じく外部に設けられ,各々個別の人工の発光源からの光を採光する複数の採光装置6に光ファイバ7及び8を介して接続されている。ここで,光ファイバ7,8は,ポリメチルメタクリレート(PMMA)材をコアとして使用しており,このPMMA材は光の赤外線成分を吸収する効果を有していることから,自然光から赤外線成分のみが減衰され採光室1(判決注: 栽培室1」の誤り)に 「送られるようになる。また,採光装置6は光ファイバ8をもって栽培室1と接続されているため,その配置を比較的自由に行うことが可能となっている(2頁右下欄12行〜左上欄11行) 。」D「第2図は,採光装置5の要部を拡大して示す断面図である。箱状をなす採光装置5の側部14及び底部15は,メチルメタクリレート(MM),, 。 A 板で覆われており その内面には アルミ箔16が貼着されているまた,第2図に於ける上部の採光部17は,乳白色のアクリル板18と内部に設けられた複数のフレネルレンズ19とから構成されている。底部15には,光ファイバ7の受光側端部が外部から挿入されており,その端面には魚眼レンズ21が設けられている。尚,符合20は透明なMMA板からなる補強リブである。外部からの自然光は乳白色のアクリル板18及びフレネルレンズ19を介して各光ファイバ8の端部魚眼レンズに集光され,採光室1に送られるようになる。ここで,乳白色のアクリル板18は外部からの光を拡散させ,その下部のフレネルレンズ19に広範囲の光を取込ませるためのものであり,また,アルミ箔16は採光装置5内部の光を効率的に用いるための反射板である(3頁右上欄。」1〜19行)E「第4図は投光装置4の要部を拡大して示す断面図である。投光装置4は栽培棚3の上面を概ね覆うような箱状をなしている。投光装置4の第4図に於ける下部即ち底部28には,光ファイバ7,8の端部が,その投光側端面7b,8bを栽培棚3に植えられた植物と対向して露出させるように,コネクタ29をもって保持されている。また,光ファイバ端部7b,8bを覆うように透明なアクリル板或いはMMA板であって良い保護板30が設けられている。尚,実際にはこの保護板30に光の赤外線成分を吸収するものを用いても良い。更に,投光装置4底部の栽培棚3と対向する面に於ける光ファイバ端面7b,8bの露出した部分以外の部分にはアルミ箔31が設けられており,栽培棚3から反射される光を再度栽培棚3に向けて反射するようになっている。次に,上記光供給装置の作動要領を説明する。まず図示されない光センサにより自然光の光量が検出され,比較的自然光が強い場合,採光装置6のナトリウムランプ23を殆ど点灯させず,天候が悪化する等自然光が弱くなった場合にナトリウムランプ23を適宜点灯させ,常に好適に栽培室1に光を供給する。このとき,供給される光が赤外線成分を殆ど含んでいないことから栽培室内が昇温することがない(3頁右下欄11行〜4頁左上 。」欄15行)F「また,本実施例では採光装置5,6の内部壁面及び投光装置4の植物との対向面等にアルミ箔を貼着し光を効率的に利用するようにしたが,これら各面にアルミ箔の代わりにクロムメッキを施すようにしても良。 , い 第5図は上記実施例の投光装置を一部変形した実施例を示しており上実施例に於ける投光装置4の光ファイバ7,8の投光側端部の構造を示す。本実施例によれば,光ファイバ7,8の投光側の端部近傍の側面部が一部切除されており,コア35が側面部から露出した形状をなしている。従って,この露出したコア35の側面部35aから,採光装置5及び6からの光が側方に向けて均等に投光される。この側面部35aを栽培棚3の植物と対向させるように設ければ,投光装置4と栽培棚3との間隔を一層狭めることができ,栽培室1内の空間の利用効率が一層向上する(4頁右上欄3〜19行) 。」G「 発明の効果]このように,本発明によれば,光ファイバをもって外 [部光源からの光を栽培室内に導くようにすることで,栽培せんとする植物を棚状に多段配置しても効率的にかつ均一に植物に光を供給することが可能となる。また,光源が人工の発光源を有する場合,この発光源の配置も自由に行える。更に,栽培せんとする植物に,外部に設置した人工の発光源と赤外線成分のみを除去した自然光とを併用して供給するようにすれば,人工の発光源の電力コストが低減できると共に栽培室内が不必要に昇温することがなく,空調管理が容易となる。加えて光ファイバの投光側即ち栽培室内に於ける端部近傍の側面部を切除し,光ファイバのコアを露出させ,その露出部分から側面方向に投光するようにすれば,好適に光が拡散され,別途にレンズ等を設ける必要がない。以上の。」( ) ことから本発明の効果は大である4頁右上欄20行〜左下欄17行ウ図面@第1図として 「本発明が適用された植物栽培設備の構成を示す模式 ,図」が示され,その投光装置4は,栽培棚3にて栽培しようとする植物(図中番号無し)に対して,その上方に配置されていることが読み取れる。第1図は下記のとおりである。図中符号等の説明は上記イCのとおりであるが,5,6が採光装置,7,8が光ファイバである。 記A第2図として 「第1図の自然光の採光装置(判決注,上記第1図の ,符号5)の要部のみを拡大して示す要部断面図」が示され,その内容は下記のとおりである。図中符号等の説明は上記イDのとおりであるが,21は魚眼レンズである。 記B第4図は下記のとおりであり 「第1図の投光装置(判決注,上記第 ,1図の符号4)のみを拡大して示す要部断面図」である。図中符号等の説明は上記イEのとおりであるが,31は,アルミ箔である。 記( )上記( )アないしウの記載によれば,引用文献1には,審決が認定すると21おり 「自然光源または人工の発光源からの光を採光し,その採光された光 ,から赤外線成分を減衰させた光によって投光装置4を均等に発光させ,採光された光から赤外線成分を減衰させた光を栽培せんとする植物に照射して植物を栽培する植物栽培方法において,投光装置4は,栽培せんとする植物の上方に配置され,投光装置4から発する光を栽培せんとする植物の葉面に直接照射してその光を葉面に吸収させ,投光装置4の底部に設けられたアルミ箔31が,栽培棚3から反射される光を再度栽培棚3に向けて反射するようになっている植物栽培方法」の発明が記載されているものと認められる。 また,上記( )イDによれば,引用発明の「採光装置5」は「外部からの1自然光」を 「乳白色のアクリル板18及びフレネルレンズ19を介して各 ,光ファイバ7の端部魚眼レンズ21に集光」するものであり,集光された光は「各光ファイバ」によって「採光室1に送られる」ものであって,また上記( )イC,Eのとおり,この光ファイバのPMMA材により,光の赤外線1が減衰されるものである。 したがって,引用発明は光ファイバーによって熱線を除去する前に 「採,光装置5」により,一度外部からの自然光を集光するものであると認められる。 ( )上記のとおり,引用発明の「採光装置5」は,外部からの自然光を熱線3を除去する前に集光するものであって,本願発明の「熱線を分離除去する前, 」 , に 一度人工光或いは太陽光を集光する ものに相当するものといえるから審決が 「引用発明では 『 自然光源または人工の発光源からの光を)採光 ,,(し』としているのに対して,本願発明では 『 人工光或いは太陽光を)一旦 ,(集光し』としており,両者は一応異なるが,特に『一旦』という部分に対応する構成について本願明細書中に何ら説明されていないことから,この部分には特に技術的な意義はなく,単なる表現上の差異に過ぎず,両者は相当している(6頁b)と認定,判断したことには誤りはない。 。」( )原告は,人工光あるいは太陽光を集光することなく採光したのでは,熱4線の分離に大きな面積を持つコールドミラーや大径のライトガイドが必要となるから,引用発明は,実用化に適さず本願発明とは明確に相違するものであると主張する。 しかし,引用発明の「採光装置5」が,太陽光である自然光を「集光」するものであることは上記認定のとおりであり,原告の主張は前提が異なり採用することができない。 ( )さらに原告は,実用的な植物栽培に必要な光量を運ぶには,採光した光5束を集光し,これを光ファイバーの束に入射し伝送することが必要であるところ,光ファイバーの束に入射させる前に熱線を除去しなければ受光部付近, , は発熱により熔けてしまうこととなって 実用化ができないものである点で引用発明と本願発明とは相違すると主張し,また引用発明は実施が不可能である点で,引用例としての適格性を有するものではないとの主張であるとも解されるので,以下検討する。 ア採光装置において,太陽光を集光して光ファイバーの束に入射するに当たって,受光部付近の光ファイバーが熔けてしまうことのない程度の集光とすることは当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が当然考慮すべき設計的事項にすぎないから,この点から引用発明が実施不可能であるとする原告の主張は技術常識に反するものである。 そもそも上記引用文献1の第1図,第2図から明らかなとおり,引用発明の採光装置5は,魚眼レンズ21を備えた光ファイバーの先端を複数個備えるものであって,集光度がそれほど大きなものでないことは明らかであることから原告の主張は採用することができない。 イまた,引用文献1において (原告が実施不可能であると主張するとこ ,ろの)ポリメチルメタクリレート(PMMA)材を光ファイバーのコア材として使用して,このPMMA材で光の赤外線成分のみを減衰させることとする例は,実施例として例示的に示されたものにすぎず,その特許請求の範囲の記載には「 3)前記採光手段,前記投光手段及び前記光ファイ (バのうちの少なくともいずれかひとつが,前記光源からの光の赤外線成分を減衰する手段を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項若しくは第2項に記載の植物栽培用光供給装置 」との記載があるように,引用文 。 献1には,赤外線成分を減衰する手段を,採光手段に設けることが記載されている。 そうすると,仮に,原告が主張するように「熱線分離をしない光束をPMMA材からなる光ファイバの束に入射させるものである」という実施例が実施不可能であるとしても,引用文献1の上記「光源からの光の赤外線成分を減衰する手段」を「採光手段」側に設けた場合,すなわち光ファイバーへの光入射前の部位で「光源からの光の赤外線成分を減衰する手段」,「 」 を設けるという選択をした場合に 上記 PMMA材からなる光ファイバを用いていても,当該光ファイバーに入射される光は既に赤外線成分が減衰されたものとなっていることから,引用発明が実施不可能ということはできない。 ( )原告は 「引用文献1の採光装置は 『乳白色のアクリル板18』が表面6 , ,に設けられているから,その表面に入射する光の一部を反射し,残りの内部に達する光は前方向に散乱拡散することにより,入射光の多くを外部に向かわせるものであるから,フレネルレンズ19に到達する光量は乳白色のアクリル板18に入射する自然光の量を大きく下回るものであること,フレネルレンズ19に入射する光が散乱拡散光であることから集光性が低く,フレネルレンズ19に入射する光量の一部が下部の魚眼レンズ21に達するにすぎない。また,魚眼レンズにより集光された光の多くは,光ファイバー内を内部全反射で伝送される角度を超えて光ファイバー端に入射されるから,その。,, 光は入射直後光ファイバー外へ出てしまう このように 乳白色アクリル板フレネルレンズ19,魚眼レンズ21より成る系は不合理である」旨も主張する。 しかし,引用文献1の採光装置が,その表面に入射する光の一部を光ファイバーに集光するものであるとしても,当該「採光装置5」は,外部からの自然光を,熱線を除去する前に集光するものであると認められることは上記のとおりであって,原告の主張は採用できない(採光装置により,その表面に入射する光のうちどの程度を集光するようにするかは,採光装置の表面の面積,必要とする光量などに応じて決定する設計的事項であるところ,それに応じて採用する乳白色アクリル板の光透過度(材質や厚み)を調節することも設計的事項にすぎない。原告は,引用文献1の採光装置は,1%程度の光しか利用するものではないともいうが,原告の提出した甲8( スミペッ「」 ), クスシート技術資料 住友化学工業株式会社252頁〜260頁 によれば乳白色のメタクリル樹脂板の光線透過率は,20%〜86%まで様々なものが存在するから,この点からしても原告の主張には根拠がないといえる。。)( )また原告は,引用文献1において,魚眼レンズにより集光された光の多7くが,光ファイバー内の内部全反射で伝送される角度を超えて,光ファイバー端に入射されるとも主張するが,魚眼レンズにより集光された光を光ファイバー端に入射するに当たり,当該光を光ファイバーにより効率よく伝送できるように調整することは当業者が当然なし得る設計的な事項であり,引用文献1にも魚眼レンズの光学特性等は特に記載されていないから,引用文献1において,光ファイバーに入射した光の大部分が,光ファイバーから出て行くとも認められず,原告の主張は採用できない。 3取消事由2について( )原告は,審決が対比「c」において 「引用発明における『その採光され1 ,た光から赤外線成分を減衰させた光』は,熱線成分である赤外線成分を減衰させることで可視光および紫外線よりなる光(集光光束)であって 『栽培,室内が不必要に昇温することがなく,空調管理が容易となる』ためのもので,『 』 ある・・・ことから 本願発明の その集光光束より熱線を除去した可視光に相当する(6頁8〜12行)とした点が誤りであると主張するので,以 。」下この点について判断する。 ア本願発明は 上記第3 1(2)記載のとおりであるところ そこには 人 ,, ,「工光或いは太陽光を一旦集光し,その集光光束より熱線を分離除去した可視光」と規定されており,上記「集光光束」が,人工光或いは太陽光を一旦集光したものを指すことは文理上明らかであるから,本願発明の「可視光」は,人工光或いは太陽光を集光した後に「熱線」を「分離除去」した「可視光」を意味するものと解される。 イそして,上記2( )イCによれば,引用発明の「投光装置4」は,外部1に設けられた自然光の採光装置5に光の赤外線成分を吸収する効果を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)材をコアとして使用した光ファイバーを介して接続されていることから,自然光から赤外線成分のみが減衰されて栽培室1に送られることが記載されている。 したがって,上記2( )において認定したとおり,引用発明の投光装置24から採光室内に放射される光は,集光された自然光から,赤外線成分が減衰された光であると認められる。 ウそして 「熱線」が「赤外線」と同義であることは,技術常識であるこ ,,,「 」 とからすれば 審決が 本願発明の 集光光束より熱線を除去した可視光と引用発明の「採光された光から赤外線成分を減衰させた光」とが相当するものと認定したことには誤りはない。 ( )原告は,本願発明は「熱線の分離」を「集光の進んだ適切な個所で行う2」,「 」, ものでありさらに 明確に熱線分離を栽培室外で行うものである 点で引用発明とは相違するものであることから,審決の認定は誤りであると主張する。 , , しかし 原告の主張する熱線の分離を適切な箇所で行うとの点については本願発明においては,上記のとおり「集光光束より熱線を除去した可視光」とのみ記載されており,栽培室外ないし適切な位置で熱線分離を行うとの原。, 告主張の点については本願発明において何ら特定されていない そうすると原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえない。 加えて,上記2( )イA,Bによれば,引用発明においても栽培室内にお1ける赤外線の影響による昇温を防ぐことが必要であることが記載され,赤外線の減衰手段も記載されているものであるから,赤外線の減衰を栽培室外等, 。 の適切な位置で行うことは 当業者であれば技術常識に属することといえる上記によれば,原告の主張は採用できない。 ( )なお,引用発明(甲1)が特許請求の範囲(3)の記載に「赤外線成分3を減衰する」とある点で,本願発明の「熱線を分離除去」するとあるのと比較すると,赤外線ないし熱線を除去する程度に表現上の差があるようにもみえる。 審決はこの点に関し「本願発明では,集光光束より熱線を分離除去しているのに対して,引用発明では,集光光束より熱線を除去しているものの,集光光束から分離していない点」を相違点2とし,その判断において,引用文(。,「」, 献2 甲2 発明者は原告代表者A 発明の名称は 組織培養用光照射装置出願日昭和63年11月22日,公開日平成2年6月4日,出願人はアメリカ合衆国.デラウエア州ウイルミントン市オレンジストリート1209ザ・コーポレーション・トラスト・カンパニー気付の「サイエンス・アンド・テクノロジー・インコーポレイテッド )によれば「組織培養用光照射装置 」において,入射する太陽光又は人工光をライトガイドに導く際に,コールドミラーを用いて,熱線と熱線を除去した光に分離する」ことが開示されており このような入射する光を熱線と熱線を除去した光に分離する構成を植 , ,「物栽培方法」の発明である引用発明に適用することは,当業者が容易に想到し得たものであるとした(審決7頁27〜31行)ので,その判断の相当性について検討する。 まず,引用文献1(甲1)には,上記2(1)イBのとおり 「植物に,外部,に設置した人工の発光源と赤外線成分のみを除去した自然光とを併用して供給する」と記載され,また上記2(1)イEのとおり「栽培室1に光を供給する。このとき供給される光が赤外線成分を殆ど含んでいない」と記載されているものであるから,そもそも,引用発明(甲1)においても,栽培室内を昇温させないのに必要な程度に赤外線成分を除去することを前提としており,この点に関し引用発明と本願発明とには特段の差異はないというべきである。 進んで,相違点2に関する審決の判断について検討すると,まず引用文献2(甲2)には 「太陽光又は人工光を入射させるライトガイド (2頁左上 , 」欄14〜15行)において 「光ファイバー素線などによるライトガイドを ,通して外部から熱線及び紫外線を除去した太陽光あるいは人工光を散光体中に分散導入すると・・・組織培養容器内の植物の全周面に光を照射する 」。 (2頁左上欄20行ないし右欄5行「熱線はコールドミラー又は熱吸収フ ),ィルターを用いてこれを除去する(2頁右上欄16〜17行)との記載が 。」ある。 また,引用文献2(甲2)には,実施例の説明として「第3図のようにコールドミラー15で熱線を除いた光線を集光してその光束をライトガイド5の受光口に入射した (2頁右下欄16〜18行)との記載があり,第3図 」(ライトガイドへの光の入光要領を示す図)として,下記のとおりのものが記載されている。 記上記によれば,審決が認定したとおり,引用文献2には「組織培養用光照射装置において,入射する太陽光又は人工光をライトガイドに導く際に,コールドミラーを用いて,熱線と熱線を除去した光に分離する」ことが開示されており,入射する光を熱線と熱線を除去した光に分離する構成を 「植物,栽培方法」の発明である引用発明に適用することは当業者において容易になしうるといえるから,審決の判断は相当である。 以上のとおりであって,原告の主張する取消事由2は理由がない。 4取消事由3について( )原告は,引用文献2に記載された「培養器」は,植物組織への熱線の直1接照射を避ける目的において有効であり,培養器周囲の調温の負担を軽減す, , る効果は実用上は無いものであって 本願発明とは相違するものであるから引用文献2に記載の事項から本願発明を容易とすることはできないと主張する。 , ,「, ( )審決は 相違点2について上記第3の1( )イのとおり本願発明では2 3集光光束より熱線を分離除去しているのに対して,引用発明では,集光光束より熱線を除去しているものの,集光光束から分離していない点 」と認定。 した上,相違点2に関する判断において 「引用文献2には 『組織培養用光 ,,照射装置において,入射する太陽光又は人工光をライトガイドに導く際に,コールドミラーを用いて,熱線と熱線を除去した光に分離する』ことが開示されており,このような入射する光を熱線と熱線を除去した光に分離する構成を 『植物栽培方法』の発明である引用発明に適用することは,当業者が ,容易に想到し得たものである」とした(7頁27〜31行 。)上記審決の認定判断によれば,審決は引用文献2に記載の事項から,コールドミラーを用いて,熱線と熱線を除去した光に分離することが公知技術であると認定したことが明らかである。 そして,原告の主張する,培養器周囲の調温の負担を軽減する効果の有無は,上記審決の認定の当否を左右するものではないから,原告の主張は,審決を正解しないものであって失当といわざるを得ない。 ( )そして,引用文献2には,上記3,( )で認定したとおり,コールドミラ3 3ーを用いて熱線と熱線を除去した光に分離することを,光ファイバー素線などのライトガイドへ導く際,すなわち光ファイバへ入射する前段階で行う点が開示されているのであるから,これを引用発明に適用することにより相違点2に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到し得るものと説示したものであり,審決の判断に誤りがないことは上記3,( )のとおりである。 3( )なお,原告は,平成6年(1994年)2月2日に本願発明による製品 4が日本経済新聞社より「93年日経優秀製品サービス賞」において優秀賞を受けている事実(甲3の1,2)からも本願発明の進歩性が肯定されるべきであると主張するが,相違点2に関する審決の認定判断に誤りがないことは上記のとおりであり,原告の主張は失当である。 5取消事由4について( )原告は,平成18年6月27日特許庁発送の審判官及び審判書記官氏名1通知(乙9)の3日後の平成18年6月30日(特許庁発送)には審理終結通知(乙10)がされており,これは本願出願人の上申書及び面接の機会を実質的に奪うものであり,審決の手続は極めて不当である旨主張する。 (2)証拠(各認定事実の末尾に摘示した)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア本願出願人である訴外会社は,本願の拒絶査定に対して,平成15年7月9日に審判請求を行った(乙1 。)その後,訴外会社は,平成15年8月6日に手続補正書を提出し,発明の名称・特許請求の範囲及び明細書をそれぞれ変更する内容の補正(第2次補正)を行った(乙2 。)そして,上記審判請求には【請求の理由】欄に「追って補充する 」と。 の記載しかなかったことから(乙1 ,訴外会社は,平成15年10月2 ), ()。 7日手続補正書を提出し 審判請求書の請求の理由の補充を行った 乙3上記手続補正書においては,拒絶査定の理由が本願発明は引用例1・引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり法29条2項により特許を受けることができないとしたものであるとしたことを前提に,これに対し詳細に反論した。 イ訴外会社は,平成15年10月30日に上申書を提出した。その【上申の内容】は,下記のとおりである(乙4 。)記本件について,明細書の補正をすべく平成15年8月6日付で手続補正書を提出致しましたが,特許請求の範囲(手続補正2 ,段落000)7(手続補正5 ,0008(手続補正6)で補正しました「人口光或 )いは太陽光」は「人工光或いは太陽光」の誤りであります。何卒,誤字の補正の機会を頂きたくお願い申し上げます。 ウまた,訴外会社は,平成16年6月9日にも,上申書を提出した。その【上申の内容】は下記のとおりである(乙5 。)記本件に関しましては,現在のところ審判官氏名通知をいただいておりませんが,本件は明細書の補正等を予定しておりますので,ご担当が決まり,審理に着手をしていただいたときには,是非,意見書,補正書の提出の機会を与えていただきたくお願い致します。必要のときには,本件発明の説明をさせていただきたいと思います。 エそして,平成17年4月4日付けで,特許庁から訴外会社に対し,審判官及び審判書記官氏名通知がされ(乙6 ,また平成17年4月8日付け )で,同じく審判官の1名を変更する内容の審判官及び審判書記官氏名通知がされた(乙7 。)オ訴外会社は,平成17年4月14日,上申書を提出した。その【上申の内容】は下記のとおりである(乙8 。)記本件について,平成17年4月11日付(発送日)で審判官及び審判書記官氏名通知をいただきました。本件については,さきに上申書を提,, ,, 出し ご担当が決まり次第 引用例との違いを明らかにすべく 意見書補正書の提出の機会を与えていただくか,あるいは直接ご説明をさせていただきたい旨のお願いをいたしておりましたが,発明者(担当者)が米国に2ヶ月ほどの長期出張中のため,内容説明を含めて直ちに対処することができません。代理人として発明者に弁明の機会が失われることにないように対応いたしたいと考えていますので,このまま審理終結の通知が下されるようなことなく,もしご審理の結果その様な決定が下されるようなことになったとしても,少なくとも2ヶ月のご猶予をいただきたくお願いします。 カその後,特許庁は,平成18年6月22日付けで,訴外会社に対し,審判官及び審判書記官の全員を変更する内容の審判官及び審判書記官氏名通知を起案し,これを平成18年6月27日に発送した(乙9 。)キそして特許庁は,平成18年6月29日付けで訴外会社に対し審理終結通知書を起案し,これを平成18年6月30日に発送した(乙10 。)特許庁は,平成18年7月12日,本件審決を行い,平成18年7月24日原告に送達された。なお,上記イの上申書で訴外会社が誤記として補正することを求めた点についてはこれを認めた上で審決がされている。 ( )上記経緯によれば,本願出願人である訴外会社は,@特許庁の拒絶査定3に対し手続補正を行って対応するとともに,本件審決の理由と同旨である拒絶査定理由に対して詳細に反論していること,A平成16年6月9日付けで上申書(乙5)を提出し,審判官等が決まり審理に着手した後には意見書,補正書等の提出とともに説明の機会を与えてほしいとし,B平成17年4月8日の審判官及び審判書記官氏名通知を受けた後の平成17年4月14日に上申書(乙8)を提出し,意見書,補正書の提出あるいは説明の機会を与えてほしいが,発明者(担当者)が出張中のため少なくとも2か月の猶予を求めるなどしていたところ,特許庁においても,上記を踏まえて,平成18年6月29日に至り審理終結通知書(乙10)を起案して発送し,平成18年7月12日に本件審決をしたことが認められる。 上記によれば,本願出願人である訴外会社において,本件審決と同旨を理由とする拒絶査定に対して反論するとともに,特許庁においても訴外会社からの上申等を踏まえて本件審決をしており,審決の手続に不当な点はみられない。 なお,原告の主張するように,平成18年6月22日付け(平成18年6月27日発送)の審判官及び審判書記官氏名通知(乙9)から平成18年6月29日付け(平成18年6月30日発送)審理終結通知書(乙10)までは数日しかないが,訴外会社が少なくとも2か月の猶予がほしいと上申(乙8)した平成17年4月14日からは既に1年2か月以上が経過しており,審判官等が交代したとしてもそれまでの経緯を踏まえた上で本件審決がされているのであり,原告の主張は採用の限りでない。 6結語以上の次第で,原告が取消事由として主張するところは,いずれも理由がない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 中野哲弘 |
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裁判官 | 今井弘晃 |
裁判官 | 田中孝一 |