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関連審決 不服2003-2891
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事件 平成 18年 (行ケ) 10464号 審決取消請求事件
原告コミンコ・エンジニアリング・ サービス・リミテッド( .)COMINCO ENGINEERING SERVICES LTD
訴訟代理人弁理士佐藤辰彦
同 堀進
同 鷺健志
同 加賀 谷剛
被告特許庁長官 肥塚雅博
指定代理人平塚義三
同 鈴木由 起夫
同 徳永英男
同 内山進
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/09/18
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2003-2891号事件について平成18年5月11日にした審決を取り消す。
第2事案の概要本件は,後記特許の出願人である原告が,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたところ,特許庁が同請求不成立の審決をしたことから,その取消しを求めた事案である。
第3当事者の主張1請求原因( )特許庁における手続の経緯1原告は,名称を「塩化物で補助される湿式冶金的な銅抽出方法」とする発明について,平成6年(1994)年12月20日に外国語による国際特許出願 PCT/CA94/00696 特願平7-524852号 以下 本 ( , ,「願」という。翻訳文提出日平成9年(1997年)6月20日,公表特許公報〔特表平10-510585〕は甲5)をし,その後平成14年8月16日に明細書の全文及び図面の全図につき手続補正(請求項の数55。甲6)をしたが,拒絶査定を受けたので,平成15年1月20日付けで不服の審判請求をした。
同請求は不服2003-2891号事件として審理されることとなったが,その中で原告は,平成15年2月17日付けで,明細書の全文を変更する誤訳訂正書(請求項の数55。甲7。以下「本件明細書」という )を提。
出したが,特許庁は,平成18年5月11日 「本件審判の請求は,成り立 ,たない 」との審決をし,その謄本は平成18年6月17日原告に送達され 。
た。なお,出訴期間として90日が附加された。
( )発明の内容2誤訳訂正書により訂正された本件明細書に記載された請求項の数は,上記のとおり55であるが そのうち請求項1及び51は 次のとおりである 以 , ,(下,順に「本願発明1」及び「本願発明51」という。。)「 請求項1】酸素と酸性塩化物溶液との存在下,鉱石または精鉱を加圧酸 【化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸と,酸性溶液中で加水分解する金属硫酸塩とからなる群から選択される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の存在下で行われ,添加される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の量は,少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸水素イオン源または硫酸イオン源を含むことを特徴とする硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法 」。
「 請求項51】鉱石または精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液によ 【り浸出して,第1の銅溶液と,不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離し,塩基性銅塩を,第2の浸出過程で,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液により浸出して,第2の銅溶液と,固体残留物とを生成し,第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供して,銅の電解抽出のための濃縮された銅溶液を生成する過程からなる硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法 」。
( )審決の内容3ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,@本願発明1は下記引用発明1及び周知事項に基づき,A本願発明51は下記引用発明3に基づき,それぞれ当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない,としたものである。
記引用例1:特開昭50-51415号公報(甲1)(これに記載された発明を以下「引用発明1」という )。
引用例2:特公昭52-38806号公報(甲2)引用例3:特開昭59-64722号公報(甲3)(これに記載された発明を以下「引用発明3」という )。
引用例4:特公昭61-34483号公報(甲4),, , イ 上記判断に当たり 審決は 引用発明1の内容を次のとおり認定した上本願発明1との一致点及び相違点を次のとおりとした。
〈引用発明1の内容〉酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法〈一致点〉「酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法」である点〈相違点〉本願発明1は 「添加される硫酸イオン源の量は,少なくとも,塩 ,基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸イオン源を含む」のに対して,引用発明1は 「添加される硫酸イオン源 ,の量」が不明である点ウまた,審決は,引用発明3の内容を次のとおり認定した上,本願発明51との一致点及び相違点を次のとおりとした。
〈引用発明3の内容〉鉱石または精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離し,第1の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供して,銅の電解抽出のための濃縮された銅溶液を生成する過程からなる硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法〈一致点〉「鉱石または精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離し,第1の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供して,銅の電解抽出のための濃縮された銅溶液を生成する過程からなる硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法」である点〈相違点〉本願発明51は 「第1の浸出過程」で分離された「塩基性銅塩」 ,を 「第2の浸出過程で,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液により浸出 ,して,第2の銅溶液と,固体残留物とを生成し,第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出」に供するものであるのに対して,引用発明3は,この点が不明である点( )審決の取消事由4審決の本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点の認定は認める。
しかしながら,審決には,以下のとおり,その認定判断に誤りがあり,違法として取り消されるべきである。
ア取消事由1-1(本願発明1と引用発明1との相違点についての判断の誤り)(ア)審決は 本願発明1と引用発明1との相違点について理論上 添 , ,「『加される硫酸イオン源の量』は 『 加圧酸化過程において生成される) ,(塩基性硫酸銅塩の量』から『 酸添加無しの場合に)加圧酸化で本来産 (み出される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量であり,段落【0038】の酸添加の場合の(2)式によれば,化学式の右辺の『塩基性硫酸銅塩』をより多く生成させるために『 』, 化学式の左辺の 添加される硫酸イオン源の量 をより多くすることは当業者に周知の事項といえる」と判断した(9頁6行〜12行 。)しかし 「 添加される硫酸イオン源の量』は 『 加圧酸化過程におい ,『 ,(て生成される)塩基性硫酸銅塩の量』から『 酸添加無しの場合に)加 (圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」である(すなわち,A=C-B)というのは,本件明細書(誤訳訂正書,甲7)に示された式(1)及び(2)を知って初めていえることであるが,これらの式は公知でも周知でもない。
また 「塩基性硫酸銅塩」をより多く生成させるために「添加される硫 ,酸イオン源の量」をより多くすることは,周知の事項とはいえない。
そうすると,審決は,上記相違点に係る本願発明1の特定事項について,周知の事項でない事項を周知として相違点についての判断を導き出した点で判断を誤っている。
(イ)仮に上記が周知であるとしても,本願発明1は 「硫酸イオン源の,添加により,硫酸銅塩をより多く生成させるのではなく,硫黄の酸化を抑制する」ものであり,この「硫酸イオン源の添加によって硫黄の酸化」, 。 を抑制する ことは 本願発明1の出願前に周知でも公知でもなかった(ウ)以上により 「 添加される硫酸イオン源の量』は 『 加圧酸化過程 ,『 ,(において生成される)塩基性硫酸銅塩の量』から『 酸添加無しの場合(に)加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量(理論量)以上とすることは,当」() 業者が容易に想到することといえる とした審決 9頁12行〜16行の判断は誤りである。
イ取消事由1-2(本願発明1の作用効果の顕著性の看過)(ア)本願発明1によれば,加圧酸化に前記量の硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源を添加することにより,硫化銅鉱石に含まれる硫黄の酸化により生成する硫酸塩の少なくとも一部を,前記硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源により生成する硫酸塩で代替することができ,硫黄が硫酸イ() 。 オン SOへ酸化されることを抑制するとの顕著な効果を奏する42-この結果,本願発明1によれば,硫黄の酸化に要する酸素の量と,生成した酸のための中和剤の量とを低減することができ,さらに硫黄の酸化による発熱を抑制することができる。
(イ)本願発明1は,硫酸イオン源の添加により,硫酸銅塩をより多く生成させるのではなく,硫黄の酸化を抑制するものであるのに対し,審決は,本願発明1において硫酸イオン源を添加するのは硫酸銅塩の生成を増加させるためであると認定し,その結果,本願発明1の顕著な作用効果を看過したものである。
ウ取消事由1-3(本願発明1の容易想到性についての判断の誤り)(ア)引用例1においては,硫酸又は硫酸イオンは硫酸塩を生成するものであるとの認識しかなく,硫黄の硫酸塩への酸化が問題であるという認識は全くなく,したがって,硫黄の酸化は硫酸の添加で抑制できる旨の記載も全くない。
さらに,引用例1には,本願発明1による「硫化銅に含まれる硫黄が硫酸イオンに酸化されることを抑制する」との作用効果について記載も示唆も無く,加圧酸化における硫黄の酸化を抑制するという技術的思想はない。
したがって,引用発明1は「加圧酸化が硫酸イオン源の存在下で行われる」ものであっても 「添加される硫酸イオン源の量が,塩基性硫酸 ,銅塩の量から,加圧酸化で本来生み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量以上」との要件を備えておらず,硫黄の酸化を抑制するということは全く想定していない。
(イ)そうすると,本願発明1は,引用発明1及び周知技術において当業者が想定し得なかった着想に基づき,上記の顕著な作用効果を奏するものであるから,引用発明1と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ取消事由2-1(本願発明51との関係における引用発明3の認定の誤り)(ア)審決は,引用例3について「上記独立形式で記載された第18項に記載の『塩化物を3モル/l以下の濃度含む硫酸塩イオンを含む溶液中, , で酸素の注入をしつつ ゆるやかな加圧下で上記銅含有硫化物を処理しさらに溶出工程における固形残渣から銅含有溶液を分離』する工程は,銅含有硫化物を酸性塩化物溶液により浸出し,銅溶液と塩基性銅塩とを分離するものであるから 『鉱石または精鉱を,浸出過程で酸性塩化物 ,溶液により浸出して,銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,銅溶液と塩基性銅塩とを分離』する工程に相当し」と認定した(10頁15行〜22行 。)しかし 「ゆるやかな加圧下で銅含有硫化物を処理」する溶出工程で ,は「固形残渣」として,第1図に示された「PbSO /s 」のような金属含40有物が生成されるのであり,これと「不溶性の塩基性銅塩」とは固形物であっても,化合物として全く異なる。
(イ)したがって,審決は,引用発明3について「鉱石または精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離」するものであると認定した点において,誤りである。
オ取消事由2-2(本願発明51と引用発明3との一致点及び相違点の認定の誤り)審決における引用発明3の認定は誤りであるから,この認定を前提としてなされた,本願発明51と引用発明3と一致点及び相違点の認定も誤りである。
すなわち,以下のようにその一致点及び相違点を認定すべきであり,下記相違点を看過した審決の認定は誤りである。
(一致点)「鉱石または精鉱を,一の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,銅溶液と固形物とを生成し,銅溶液と固形物とを分離し,銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供して,銅の電解抽出のための濃縮された銅溶液を生成する過程からなる硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法」である点。
(相違点)本願発明51は,第1の浸出過程で第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,分離された塩基性銅塩を,第2の浸出過程で,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液により浸出して,第2の銅溶液と固体残留物とを生成し,第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供することにより,第1の銅溶液と,第2の銅溶液に浸出された塩基性銅塩との両方から銅を回収するのに対し,引用発明3は,一の浸出工程で分離した銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供することにより,第1の銅溶液のみから銅を回収するものであり,第1の浸出工程で不溶性の塩基性銅塩を生成すること及びこの塩基性銅塩から銅を回収することは全く想定されていない点。
カ取消事由2-3(本願発明51と引用発明3との相違点の判断の誤り)審決は 「引用例3の(3d)には 『この溶出工程は単一の反応容器内 , ,でおこなわれることが好ましいが,2段以上を用いておこなわれる場合,酸素は各段階において注入されるべきである 』と記載されており,浸出 。
(溶出)過程を2回とすることも示唆されているから,浸出工程を2回と, , して 第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供することは当業者が容易に想到することといえる」と判断した(11頁10行〜15行 。)しかし,本願発明51は,酸性塩化物溶液による第1の浸出工程で第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを分離し,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液による第2の浸出工程で塩基性銅塩を浸出して,第2の銅溶液と固体残渣とを生成し,最後に第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供して,そこからの銅の電解抽出のための濃縮された銅溶液を生成するものである。
,「 , 引用発明3の溶出工程は 前述のように 銅溶液と固形残渣とを生成し銅溶液と固形残渣とを分離」するものであるのに対し,本願発明51にお,「 , ける第1の浸出過程は第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを分離 するものであり 前者は 固 」,「形残渣 ,後者は「不溶性の塩基性銅塩」をそれぞれ生成し分離する点で 」異なる。
したがって,引用発明3の溶出工程を2回行うとしても,それは同じ浸出工程を繰り返すだけであり,本願発明51のように異なる2つの浸出過程を行うことにはなり得ない。本願発明51における第1及び第2の浸出過程は,引用発明3の溶出工程の繰り返しとは全く異なる。
そうすると 「浸出工程を2回として,第1及び第2の銅溶液を有機抽 ,出剤による溶媒抽出に供することは,当業者が容易に想到することといえる」と認定した審決の判断は,誤りである。
キ取消事由2-4(本願発明51の作用効果の顕著性の看過)本願発明51は,第1の浸出過程で分離された「塩基性銅塩」を,第2の浸出過程で,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液により浸出して,第2の銅溶液と固体残留物とを生成し,第1及び第2の銅溶液を有機抽出剤による溶媒抽出に供することにより,第1の銅溶液と第2の銅溶液に浸出された塩基性銅塩との両方から銅を回収する点において,引用発明3と相違し,かつ,この相違点に係る構成により,銅は浸出溶液と不溶性の塩基性銅塩の両方から回収されるので,銅の回収量を増大できるという顕著な効果を奏する。
引用発明3は,浸出工程で分離された銅溶液のみを溶媒抽出に供するものであるから,銅は浸出溶液のみから回収されるだけである。そして,引用例3には,一の浸出工程で不溶性の塩基性銅塩を生成すること及びこの塩基性銅塩から銅を回収することは全く記載されていない。
してみれば,審決は,引用発明3にはない本願発明51の顕著な作用効果を看過している。
ク取消事由2-5(本願発明51の容易想到性についての判断の誤り)本願発明51によれば,まず,鉱石又は精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,第1の銅溶液と,不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離する。そして,この塩基性銅塩を,第2の浸出過程で,銅塩を溶解する酸性硫酸塩溶液により浸出して,第2の銅溶液と,固体残留物とを生成した後,第1及び第2の両銅溶液から銅を回収する。これにより,第1の浸出過程で得られた第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩との両方から銅を回収することができ,銅の回収量を増大させることができる。
引用例3には,溶出(浸出)工程における固形残渣から銅含有溶液を分離し,金属成分である銅を有機溶液中に抽出させ,この有機溶液を酸性硫酸塩溶液と接触させて,銅を該硫酸塩溶液中に抽出させ,得られた銅含有硫酸塩溶液を電気分解して銅を回収する方法が記載されているが,銅含有溶液を分離した後の固形残渣から更に銅を回収することについては記載も示唆もない。
そうすると,本願発明51に係る上記相違点は,当業者が容易に想到することができたとはいえず,本願発明51は,引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
2請求原因に対する認否請求の原因( )ないし( )の各事実は認めるが,同( )は争う。
13 43被告の反論審決の判断には,原告主張の誤りはない。
( )取消事由1-1に対し1ア原告の主張は,本件審決を正しく理解していないので,まず審決の本願発明1と引用発明1との相違点についての判断の論理を説明する。
審決は,本願発明1と引用発明1との相違点に係る発明特定事項,すなわち,添加される硫酸イオン源の量が 「少なくとも,塩基性硫酸銅塩の ,量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」である点について 「理論上『添,加される硫酸イオン源の量』は 『 加圧酸化過程において生成される)塩 ,(基性硫酸銅塩の量』から『 酸添加無しの場合に)加圧酸化で本来産み出 (される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量であり・・・化学式の右辺の『塩基性硫酸銅塩』をより多く生成させるために化学式の左辺の『添加される硫酸イオン源の量』をより多くすることは,当業者に周知の事項といえる」から 「 添加される硫酸イオ ,『ン源の量』は 『・・・塩基性硫酸銅塩の量』から『・・・加圧酸化で本 ,来産み出される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量(理論量)以上とすることは,当業者が容易に想到することといえる 」と判断した(9頁6行〜16行 。 。 )イそして上記本願発明1の引用発明1との相違点に係る発明特定事項,すなわち,添加される硫酸イオン源の量が 「少なくとも,塩基性硫酸銅塩 ,の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」の記載は,用語が厳密に用いられていないため,その意義が必ずしも明らかではない。
本件明細書(甲7 ,審判段階における「審尋 (甲9)とこれに対する ) 」「回答書 (甲10)及び同じ硫化銅鉱石又は精鉱の酸素と酸性塩化物存 」在下における「硫酸イオン (SO)源を添加する加圧酸化反応系であ 」42-ると認められる引用例1の記載等を考慮して,審決では,この発明特定事項を以下のとおりと解して判断したものである。
本願発明1は,引用発明1と同じ「酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法」であり(原告はこの一致点について争っていない,その化学反応は 「酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を加 。),圧酸化」し,この加圧酸化は 「硫酸イオン源の存在下」で行われ 「加圧 , ,酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩」を得る過程からなるものである。
本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項は,添加される「硫酸イオン (SO)源の量を規定するものであることから,その「塩基性硫酸 」42-銅塩の量」とは,上記酸素と酸性塩化物存在下における硫化銅精鉱の加圧酸化において,生成する塩基性硫酸銅塩(CuSO ・2Cu(OH) )4 2における「硫酸イオン (SO)成分の量( C」とする )をいうも 」「。 42-のと解される。
その塩基性硫酸銅塩における「硫酸イオン」成分の由来は,その加圧酸化反応水溶液に存在する「硫酸イオン (SO)成分である。加圧酸化 」42-反応水溶液に供給される硫黄源は硫化銅鉱石又は精鉱中の硫黄源(Sと2-して存在)と添加される「硫酸イオン源」のSOの硫黄源である。す 42-ると,特に後者の「硫酸イオン」成分が塩基性硫酸銅塩における「硫酸イ」 , オン 成分にならないということは化学常識上ありえないことであるからその塩基性硫酸銅塩における「硫酸イオン」成分の由来は,硫化銅精鉱由来の「硫酸イオン」成分(これは,そのSが酸素によって元素硫黄(S2-)を経てSOに酸化されたものと認められる。引用例1(甲1)の40 2-4頁左上欄17行〜右上欄6行参照)及び添加される「硫酸イオン源」由来の「硫酸イオン」成分のいずれかということができる。
ウそして,上記本願発明1の相違点に係る特定事項における「加圧酸化で本来(原文は「」=その場で)産み出される硫酸塩の量」は,そinsituの生成する塩基性硫酸銅塩における「硫酸イオン (SO)成分量Cの 」 42-うち前者由来の量( B」という )であると解される。 「。
そして,生成する塩基性硫酸銅塩における「硫酸イオン (SO)成」42-分の量(C)のうちの残余(C-B)は,添加される「硫酸イオン源」からのものであるといえ,この添加される「硫酸イオン源」からの「硫酸イオン」成分量を「A 」で表すと,A =C-Bと書くことができる。
1 1すると,結局,本願発明1の相違点に係る発明特定事項「塩基性硫酸銅塩の量( 硫酸イオン」成分の量C)から,加圧酸化で本来産み出される 「硫酸塩の量( 硫酸イオン」成分の量B)を差し引いたものを生成するた 「めに必要とされる(硫酸イオン源の)化学量論的量」とは,C-B,すなわちA であると解される。
1審決の「理論上『添加される硫酸イオン源の量』は 『 ・・・)塩基性,(硫酸銅塩の量 (判決注:C)から『 ・・・)加圧酸化で本来産み出され 』(る硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量であり (9頁6行〜9行)との記載は,この趣旨である。 」エ引用発明1は,審決に記載されているように,引用例1(甲1)記載の請求項1を引用した請求項6を本願発明1の記載ぶりに則って整理したものであり,その内容は 「酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を加圧酸化 ,に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法 」である。この引用発明1を原料と生成物とに分け 。
て整理すると,原料は 「酸素「酸性塩化物「硫化銅精鉱「硫酸イ ,」,」,」,」, , , オン源 であり さらに引用発明1の方法は 水の存在下で行われるから「」,,「」,「 」 水 であり 生成物は加圧酸化濾過液不溶性の塩基性硫酸銅塩である。
してみると,これらの原料と生成物とを化学反応平衡式のようにして示すと,「酸素」+「酸性塩化物」+「硫化銅精鉱」+「硫酸イオン源」+「水」「加圧酸化濾過液」+「不溶性の塩基性硫酸銅塩」・・・(i)aeと表すことができる。
また,本願発明1は 「酸素と酸性塩化物との存在下,鉱石又は精鉱を ,加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸と,酸性溶液中で加水分解する金属硫酸塩とからなる群から選択される硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源, , の存在下で行われ 添加される硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源の量は少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源を含むことを特徴とする硫化銅鉱石または精鉱から銅を抽出する方法 」である。この記載の「硫化銅精鉱」から 。
銅を抽出する場合であって 「硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源」のう ,ちの「硫酸イオン源」の存在下のときに起こる化学反応を原料と生成物とに分けて整理すると 原料は酸素酸性塩化物硫化銅精鉱硫 ,,「」,「」,「」,「酸イオン源」であり,さらに本願発明1の方法は,水の存在下で行われるから 「水」であり,生成物は 「加圧酸化濾過液「不溶性の塩基性硫 ,,」,酸銅塩」である。
してみると,本願発明1の原料と生成物とを,引用発明1におけるのと同様に化学反応平衡式のようにして示すと,「酸素」+「酸性塩化物」+「硫化銅精鉱」+「硫酸イオン源」+「水」「加圧酸化濾過液」+「不溶性の塩基性硫酸銅塩」・・・(i )ae ’と表すことができる。
そうすると,引用発明1及び本願発明1の加圧酸化の反応の概要を,原料と生成物とを化学反応平衡式のように示したものである(i(i )),’は,いずれも,「酸素」+「酸性塩化物」+「硫化銅精鉱」+「硫酸イオン源」+「水」「加圧酸化濾過液」+「不溶性の塩基性硫酸銅塩」aeであって同じ式である(この式を「反応式(i 」という。)。)そして,化学反応式の右辺の物質の一つをより多く生成させる,すなわち反応を右辺に進めるために左辺の原料の少なくとも一つの量(濃度)を高めればよいことは,化学反応における周知の事項である。
上記反応式(i)において 「塩基性硫酸銅塩」は目的物であるから, ,これをより多量に生成させることは当然のことであって,そのために,左(),, 辺の原料物質の一つである硫酸イオンの量 濃度 を多くする すなわち「添加される硫酸イオン源の量 ( A」とする )を化学量論量A 以上 」「。
1とすること(=少なくとも化学量論量A とすること)は当業者であれば 1容易に想到することである。
審決の「化学式の右辺の『塩基性硫酸銅塩』をより多く生成させるために化学式の左辺の『添加される硫酸イオン源の量 (判決注:A)を化学 』量論量(判決注:A )より多くすることは,当業者に周知の事項といえ 1る」から 「 添加される硫酸イオン源の量 (判決注:A)は 『・・・ ,『 』,塩基性硫酸銅塩の量 (判決注:C)から『・・・加圧酸化で本来産み出 』される硫酸塩の量 (判決注:B)を差し引いたものを生成するために必 』要とされる化学量論的量(理論量 (判決注:A )以上とすることは,当 )1」(), 業者が容易に想到することといえる9頁10行〜16行 との判断はこの趣旨である。
さらに言えば 「添加された硫酸イオン源」は 「塩基性硫酸銅塩」の硫 , ,酸イオン源となる他に,反応溶液中に「硫酸イオン (SO)で存在し」42-たり他の硫酸分含有固体として存在することもあり得るのであるから,この量を見込んで「添加される硫酸イオン源」の量Aをさらに多くすることは当業者が容易に想到することといえる。
オ(ア)原告は,審決の相違点についての判断における「 添加される硫酸『イオン源の量』は 『 加圧酸化過程において生成される)塩基性硫酸銅 ,(塩の量』から『 酸添加無しの場合に)加圧酸化で本来産み出される硫 (酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」は,化学反応式(1)及び(2)を知って初めていえることであるが,これらの式は公知でも周知でもなく,これらの式から導いた「化学量論的量」を根拠にした審決の上記相違点についての判断は,前提を欠くものであって誤りである旨主張する。
しかし,審決のこの「化学量論的量」についての記載の根拠は上記のとおりであって,化学反応式(1)及び(2)を根拠とするものではない。原告のこの主張は,審決を正しく解しない主張である。
化学反応式(1)及び(2)に関して付言すると,本願発明1の出発原料は,その請求項1の記載からみて 「硫化銅鉱石または精鉱」とい ,う一般的な記載であって,それを敢えて化学式で表すとすれば,その主成分がCuxSy(xとyとは,それぞれCuとSとの原子数を表す添字)と表示されるものである。化学反応式(1)及び(2)のCuFe「」,, S は 硫化銅鉱石または精鉱 の一態様を表すにすぎず したがって2化学反応式(1)及び(2)は,本願発明1の化学反応を示すものであるとはいえない。
本願発明1の進歩性の判断に当たって,化学反応式(1)及び(2)が周知あるいは公知であるか否かにかかわらず,上記反応式(i)が発明の進歩性の判断に当たって考慮すべきものといえる。
(イ)原告は 『 塩基性硫酸銅塩」をより多く生成させるために「添加さ ,「れる硫酸イオン源の量」をより多くすること』は周知の事項ではないとも主張する。
しかし,この点についても上記のとおりであって,その周知の事項等に基づけば,引用発明1において相違点に係る本願発明1の特定事項とすることは当業者が容易に想到することができるものといえる。
カ以上のとおりであり 「化学式の右辺の『塩基性硫酸銅塩』をより多く ,生成させるために化学式の左辺の『添加される硫酸イオン源の量』をより多くすることは,当業者に周知の事項といえるから 『添加される硫酸イ,オン源の量』は 『 加圧酸化過程において生成される)塩基性硫酸銅塩の ,(量』から『 酸添加無しの場合に)加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の (量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量(理論量)以上とすることは,当業者が容易に想到することといえる (9頁1」0行〜16行)とした審決の判断に誤りはない。
なお,原告は,仮に周知であるとしても,本願発明1は「硫酸イオン源の添加によって硫黄の酸化を抑制する」という格別顕著な作用効果を奏するものであり,この効果は,本願の出願前に周知でも公知でもなかった事項であると主張するが,本願発明1の効果については以下の( )のとおり2である。
( )取消事由1-2に対し2上記( )で述べたように,引用発明1において相違点に係る本願発明1の1発明特定事項とすることは当業者が容易に想到することといえ,しかも,以下で述べるとおり,本願発明1における発明特定事項の奏する効果も,予期しうる域を出ないものであって,その特定事項が容易想到なものであるにもかかわらず特許を与える得るほどの格別顕著なものである,ということはできない。
上記( )のとおり 「添加される硫酸イオン源」は,加圧酸化反応水溶液に1 ,存在し,硫化銅からの銅及び水とから「塩基性硫酸銅塩」となるものであって 「塩基性硫酸銅塩」の硫酸イオン源の少なくとも一部となっていること ,は明らかである。
,(),「 」, そして 引用例1 甲1 には添加される硫酸イオン源 がなくても「塩基性硫酸銅塩」が生成すること,それは,引用例1の反応条件下では加圧酸化反応水溶液に浸出操作の間にSOイオンがその場に生成され,次42-いで硫化銅の塩基性硫酸銅への変化に関与するからであること,もっとも好ましい実施態様においては,浸出溶液は塩酸と硫酸との混合物であること,すなわち,SOイオンを添加することが好ましいことが示唆されている42-(4頁左上欄17行〜右上欄6行「その場に生成され」るSOイオン )。 42-の硫黄源は,上記のとおり硫化銅からの硫黄源(S)であると認められる2-から 「添加される硫酸イオン源」がないときは,SOイオン生成のため , 42-にSを元素硫黄(S )を経てSOに酸化する分の酸素(S1モル当2- 0 2- 2-4たり酸素(O )2モル)がより多く消費されること,また,S又は元素 22-硫黄(S )が反応系においてより多く消費されることは明らかである。
0そうすると,引用例1には明記されないとしても 「添加される硫酸イオ ,ン源」があるとき,SOイオン生成のためのS又は元素硫黄(S )及42- 2- 0び酸素の消費が減ること,すなわち,硫黄の酸化が抑制されその結果として発熱が抑制されることは,当業者であれば予測しうることであるといえる。
そして添加される硫酸イオン源 の量Aを 本願発明1において特に 少 ,「 」,「なくとも化学量論的量」とした点により格別顕著な効果も認めるに足りるものではない。
したがって,審決は,本願発明1が奏する顕著な作用効果を看過したものとはいえない。
( )取消事由1-3に対し3原告は,引用例1の発明者の認識等を主張するが,その出願の発明が刊行物に記載された発明に基づき容易想到であるか否かは,本願出願時(平成6年12月20日)において,その刊行物に接した当業者にとって,その刊行物に記載したものから把握する発明に基づきその出願の発明が容易想到であるか否かである。
上記のように,本願出願時において,引用例1に接した当業者にとって,引用例1に記載したものから把握される上記引用発明1に基づいて本願発明1は容易に想到し得た発明といえるのである。
したがって 「本願発明1は,引用発明1と上記周知事項に基づいて当業 ,者が発明をすることができたものといえる(9頁18行〜19行)という 。」審決の判断は妥当である。
( )取消事由2-1に対し4引用例3に記載の「銅含有硫化物 (硫化銅鉱石または精鉱)は,金属成 」分として種々の金属成分を含み得るものであり,金属成分としてPbを含む場合にはPbSO が生成されるとしても,Pb分を含まない「銅含有硫化4物 (硫化銅鉱石又は精鉱)ではPbSO が生成されることはない。そうす 」 4ると,引用発明3も本願発明51と同様に「硫化銅鉱石又は精鉱」を,第1の浸出過程で,本願発明51と同様に「酸性塩化物溶液」により浸出するものであるから,本願発明51と同様に「銅溶液」と「不溶性の塩基性銅塩」とを生成するものといえる。
してみると,引用例3に記載されている「固形残渣」は 「不溶性の塩基,性銅塩」を含むものといえる。もし 「不溶性の塩基性銅塩」が含まれてい ,ないとすると,本願発明51そのものの成立性が疑わしくなる。
そうすると 「固形残渣」を「不溶性の塩基性銅塩」に相当するものとし ,て引用発明3を認定した点に誤りはない。
そして,引用例3には 「銅溶液」と「固形残渣」とを分離することが記 ,載されているから 「銅溶液」と「不溶性の塩基性銅塩」とを分離するとし ,て引用発明3を認定した点に誤りはない。
したがって,引用発明3を「鉱石または精鉱を,第1の浸出過程で酸性塩化物溶液により浸出して,第1の銅溶液と不溶性の塩基性銅塩とを生成し,第1の銅溶液と塩基性銅塩とを分離し ・・・硫化銅鉱石または精鉱から銅 ,を抽出する方法 (引用発明3)と認定した点に審決の誤りはない。 」( )取消事由2-2に対し5上記( )で述べたように「固形残渣」は「不溶性の塩基性銅塩」を含むも4のであるから,本願発明51と引用発明3との一致点及び相違点の認定に誤りはない。
( )取消事由2-3に対し6引用例3に記載されている「固形残渣」は 「不溶性の塩基性銅塩」に相 ,当することは,上記( )で述べたとおりである。そして,引用例3に記載の4硫化銅鉱石又は精鉱から銅を抽出する方法も,浸出工程を2回とすることが示唆されているから,第2の浸出過程を行うことに差異はない。また,本願発明51は,第2の浸出過程を「酸性硫酸溶液」で行い,第1の浸出過程で用いる「酸性塩化物溶液」と一見異なるように見えるが,引用例3に記載の塩化物を含む硫酸塩イオンは,硫酸塩イオンが硫酸の形で添加されると「酸性硫酸溶液」といえるから,この「酸性硫酸溶液」を塩化物を含む点からみて表現した「酸性塩化物溶液」と差異はない。すなわち,第2の浸出過程で用いる溶液について,引用例3に記載のものと本願発明51のものとに差異はない。してみると,引用例3に記載の方法も 「固形残渣 ,すなわち「不 ,」溶性の塩基性銅塩」を含むものを第2の浸出工程で銅塩を溶解する「酸性硫酸塩溶液」よって「塩基性銅塩」を浸出するものといえる。すなわち,引用例3に記載の方法も,本願発明51と同じ第2の浸出工程を行うものといえる。
そして,上述のように,浸出工程を「酸性塩化物溶液」による「第1の銅溶液」と「不溶性の塩基性銅塩」とを生成する「第1の浸出過程」と 「第,1の銅溶液」と「不溶性の塩基性銅塩」とを分離し,銅塩を溶解する「酸性硫酸塩溶液」による「塩基性銅塩」を浸出する「第2の浸出過程」との2回とした点で,本願発明51と引用例3に記載の方法とに浸出工程として差異はない。そして 「第2の銅溶液」にも銅成分が含まれているから,銅の回 ,収率を高めるために「第2の銅溶液」からも銅成分を抽出することは,銅を抽出する方法として当業者が容易に想到することといえる。
したがって 「浸出工程を2回として,第1及び第2の銅溶液を有機抽出 ,剤による溶媒抽出に供することは,当業者が容易に想到することといえる」(11頁10行〜14行)と認定した審決の判断に誤りはない。
( )取消事由2-4に対し7本願発明51は 「不溶性の塩基性銅塩」から「銅」を回収する工程を特 ,定事項とするものではないから,銅は浸出溶液と不溶性の塩基性銅塩の両方から回収されるので,銅の回収量を増大できるという顕著な効果を奏するものであるという主張は当を得たものとはいえない。仮に,この主張の「不溶」「」 「」 性の塩基性銅塩 から 銅 を回収する工程という意味が 第2の浸出過程で,銅塩を溶解する「酸性硫酸塩溶液」により浸出して,第2の銅溶液と固,「」 , 体残留物とを生成し第2の銅溶液 から銅を回収することであるならば上記( )で述べたように,銅塩を溶解する「酸性硫酸塩溶液」により浸出し6た「第2の銅溶液」は銅成分を含んでいるから 「第1の銅溶液」と同様に ,「第2の銅溶液」からも銅を回収することは,当業者が当然予測できる程度のことで格別顕著なこととはいえない。
してみると,銅は浸出溶液と不溶性の塩基性銅塩(第2の浸出過程による第2の銅溶液の意味として)の両方から回収されるので,銅の回収量を増大できるということも,当業者が予測し得る程度のことであって,格別顕著な効果を奏するものとはいえない。
( )取消事由2-5に対し8上記( )で述べたように,本願発明51は,不溶性の塩基性銅塩から銅を7回収する工程を特定事項とするものでもない。仮に,不溶性の塩基性銅塩から銅を回収するという意味が上記( )に記載した意味であるとしても,上記7( )で述べたように,当業者が当然予測できる程度のことで格別顕著なこと 7とはいえない。
したがって,本願発明51に係る上記相違点は,当業者が容易に想到することができたものといえるから,本願発明51は,引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
第4当裁判所の判断1請求原因( )(特許庁における手続の経緯 ,(2)(発明の内容 ,(3)(審決1 ))の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2本願発明1に関する取消事由1-1ないし1-3について原告は,本願発明1について,引用発明1との相違点の判断を誤り(取消事由1-1 ,本願発明1の作用効果の顕著性を看過し(取消事由1-2 ,また ) )本願発明1の容易想到性についての判断を誤った(取消事由1-3)ものであると主張するので,以下この点について判断する。
( )本願発明1の内容は,上記第3,1,( )記載のとおりであるところ,本 1 2件明細書(甲7)の【発明の詳細な説明 (10頁以下)には,以下の記載 】がある。
【0001 【発明の属する技術分野】本発明は,塩化物イオンの存在下に 】おける硫化銅鉱石または精鉱の湿式冶金的な処理方法に関するものである。本発明はまた,銅に加えて亜鉛またはニッケルを含む混合された鉱石の処理方法に関するものである。
【0002 【従来の技術】黄銅鉱(CuFeS )のような硫化銅鉱石の 】2湿式冶金的処理は,これらの鉱石から効果的に銅を浸出するための加圧酸化過程において必要とされる厳しい条件が結果として鉱石中の硫化物の硫酸塩への酸化となり,高価な中和を必要とする大量の酸の生成をもたらすので,問題である。硫化物が原子状硫黄に酸化されるだけであるような比較的温和な条件で浸出することができる硫化物精鉱にする試みがなされたが,全ての方法が硫酸塩に通じているとは限らなかった。これらの試みは,米国特許第4,039,406号記載のように,硫化物精鉱をより容易に浸出することができるようにするための加圧酸化過程に先立つ精鉱の前処理と塩化物イオン存在下に精鉱を浸出することとを含んでいる。この方法において,精鉱中の銅有価物は,米国特許第4,338,168号記載のように,後に回収されるべき銅有価物から固体の塩基性硫酸銅に換算される。特許第4,039,406号記載の方法において,鉱石または精鉱中の硫化物のかなりの量(20〜30%)がまだ硫酸塩に酸化され,結果として,加圧浸出及び硫酸の生成の間に酸素要求量を多量にしている。これは,S/Cu比が高い低級精鉱について,特に好ましくない。
【0003 【発明が解決しようとする課題】本発明は,鉱石または精鉱中 】の硫化物の硫酸塩への酸化が低減され,高級及び低級の両方の銅鉱石または精鉱を処理できる方法である,銅の湿式冶金的な抽出のための方法を提供する。
【0004 【課題を解決するための手段】本発明によれば,酸素及び酸性 】塩化物溶液の存在下,鉱石または精鉱を加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化は,硫酸と,酸性溶液中で加水分解する硫酸金属塩とからなる群から選択される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の存在下で行われ,添加される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の量は,少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸水素イオン源または硫酸イオン源を含むことを特徴とする硫化銅鉱石または精鉱からの銅の抽出のための方法が提供される。
【0005】本発明の一つの特定の態様によれば,前記方法はさらに,加圧酸化濾過液を加圧酸化過程にリサイクルし,加圧酸化により生成する塩基性硫酸銅塩を,酸浸出で,塩基性銅塩を溶解する酸性の硫酸塩溶液により浸出し,溶液中に硫酸銅を含む浸出溶液()と結果としleach liquorて得られる固体残留物とを生成し,固体残留物から浸出溶液を分離し,浸出溶液を溶媒抽出に供して,銅濃縮溶液と抽出残留分()とを生raffinate成し,残留抽出分を酸浸出過程にリサイクルする過程からなる。この態様では,加圧酸化は約115℃から175℃の温度で行われてよい。また,加圧酸化は約445kPa(50psig)から約1825kPa(250psig)の酸素分圧下に行われてよい。
2 【0035】上述のように,加圧酸化過程12への液体供給物25は,HSO が添加されているリサイクルされた濾過液で,部分的に構成されて4いる。濾過液に対する酸の添加の直接の効果は,加圧酸化過程12のオートクレーブに供給される濾過液の酸性度を増加することであるが,最も重要な効果は,驚くべきことには,酸またはより特定的には硫酸イオンの添加が加圧酸化過程12で精鉱から生じる硫黄の酸化を実際に抑制することが見出されたことである。
【0036】典型的には,もし酸が全く添加されないならば経験される硫黄の酸化は,米国特許第4,039,406号に記載された方法の場合と同様に,精鉱中の供給された硫黄の約25〜30%である。しかしながら,もし酸が添加されるならば,硫酸塩への硫黄の酸化は約5〜10%に低減されることが理解される。この改良は湿式冶金的抽出方法において実質的に有益な効果を有する。硫酸塩への硫黄の酸化は,反応のために付加的な酸素が必要とされたり,酸化により形成される酸の中和に付加的な試薬が必要とされるというようないくつかの方法において,付加的なコストを生じ,非常に発熱的である硫酸塩への硫黄の酸化に起因する熱除去の準備がなされなければならない。これは,実際に加圧酸化過程12が行われるオートクレーブの処理量を限定する。
【0037】加圧酸化過程12での反応の化学は,次のように,酸の添加により選択されるべきであると信じられる。
【0038】【化1】酸添加無し3CuFeS +O +H O↑ 2 2 2 21/4[CuSO ・2Cu(OH) ]+Fe O +5S(1) 4 2 23 3/20酸添加3CuFeS +O +H O+H SO ↑ 2 2 2 2415/4CuSO ・2Cu(OH)+Fe O +6S(2) 4 2 23 3/20両方の反応で,銅は,殆ど塩基性硫酸銅からなると理解される塩基性銅塩の状態で沈殿する。
【0039】第1の反応(判決注:上記【0038 (1)の酸添加無しの 】反応。以下「第1の反応」という )では塩基性硫酸銅の硫酸塩は,精鉱 。
中で供給された硫黄の酸化により供給されることが明らかであり,一方第2の反応(判決注:上記【0038 (2)の酸添加の反応。以下「第 】2の反応」という )ではオートクレーブに添加された酸の硫酸イオンに 。
より供給されるべきことが明らかであって,硫酸塩への硫黄の酸化の必要性を未然に回避する。このように,第2の反応では,塩基性銅塩の形成が,硫酸イオンの正味の消費量である。硫黄の酸化を抑制するために必要とされる硫酸の量は,精鉱の型及び精鉱中の固体のパーセンテージに依存し,経験的に約25〜75g/lであると理解されている。
【0040】実際の試験業務において,硫黄の酸化はどちらかの反応により予測されるよりも多い。第1の反応は6分の1または16.7%の硫黄が酸化されることを予測し,一方,経験的には約25〜30%が見いだされる。酸添加により,実験結果は,もし前記第2の反応が起きている唯一の反応であれば予測されるゼロ酸化よりも,むしろ,約2〜16%の硫黄が硫酸塩に酸化されていることを示す。従って,これらの反応式は加圧浸出過程12で起きていることを正確に反映してはおらず,ひとつの近似に過ぎない。
( )上記記載によれば,本件明細書(甲7)には,@本願発明1は,鉱石又2は精鉱中の硫化物の硫酸塩への酸化が低減され,高級及び低級の両方の銅鉱石または精鉱を処理することのできる,銅の湿式冶金的な抽出のための方法を提供することを目的とするものであること,Aまた本願発明1によ, , , れば酸素及び酸性塩化物溶液の存在下鉱石又は精鉱を加圧酸化に供し結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化は,硫酸と,酸性溶液中で加水分解する硫酸金属塩とからなる群から選択される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の存在下で行われ,添加される硫酸水素イオン源又は硫酸イオン源(以下「硫酸イオン源等」という )の量は,少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で 。
本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸イオン源等を含むことを特徴とする硫化銅鉱石又は精鉱からの銅の抽出のための方法が提供されること,B濾過液に対する酸の添加の直接の効果は,加圧酸化過程12のオートクレーブに供給される濾過液の酸性度を増加することであるが,最も重要な効果は,酸又はより特定的には硫酸イオンの添加が加圧酸化過程12で精鉱から生じる硫黄の酸化を実際に抑制することが見出されたこと,C典型的には,もし酸が全く添加されないならば経験される硫黄の酸化は,精鉱中の供給された硫黄の約25〜30%であるが,酸が添加されるならば,硫酸塩への硫黄の酸化は約5〜10%に低減されること,D硫酸塩への硫黄の酸化は,反応のために付加的な酸素が必要とされたり,酸化により形成される酸の中和に付加的な試薬が必要とされるという付加的なコストを生じ,また,非常に発熱的である硫黄の酸化反応に起因する熱の除去の準備もなされなければならないこと,E第1の反応において,塩基性硫酸銅の硫酸塩は,精鉱中の硫黄の酸化により供給されるが,第2の反応においては,それは,添加された酸の硫酸イオン源等により供給されること,が記載されていると認められる。
(3)そして,本願発明1は,添加される硫酸イオン源等の量に関して「少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」であると規定しているが 「少なくとも・・・必要とされる化学量論的量」とはいかな ,る量を意味するのかはその文言からは必ずしも明らかとはいえないので,以下この点について検討する。
ア原告は,平成17年1月24日付け特許庁審判長からの審尋(甲9)に対する平成17年4月20日付け回答書(甲10)において,次のとおり回答している。
「・・・加圧酸化過程12において酸を添加した場合には (2)式の反,応 判決注:第2の反応 だけではなく これと一緒に 1 式の反応 判 (),()(決注:第1の反応)も起きていることが明らかである。
, , とすると 加圧酸化過程12において生成される塩基性硫酸銅塩の量は(1)式に示される[CuSO ・2Cu(OH) ]と (2)式に示さ4 2 ,れるCuSO ・2Cu(OH) との総計である。従って 「 加圧酸化過4 2 ,(程12において生成される)塩基性硫酸銅塩の量」=「C」とおけば,化学反応一般において実際の収量は理論量よりも少ないことを考慮して,「C」≦「A」+「B」(a)とすることができる。
(a)式は,移項することにより,「A」≧「C」-「B」(b)となることが明らかである。
上記(b)式を,上記用語の解釈に従って言語で表現するならば,「 添加される硫酸水素イオン源または硫酸イオン源の量」は,少なくと 「も 「塩基性硫酸銅塩の量」から 「加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の , ,量」を差し引いたもの」に他ならない(2頁下6行〜3頁12行) 。」イ加えて,本願発明1は上記( )@,Aのとおり,原料となる鉱石又は精2鉱を所定の加圧酸化過程に供し,原料中に含まれる塩基性硫酸銅塩等を得ることを目的とするものであり,上記のとおり硫酸イオン源の添加量に関しては 「少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出 ,される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」とされている。ここで,上記塩基性硫酸銅塩は第1,第2の反応による目的物であり,ここから差し引かれる加圧酸化で本来生み出される硫酸塩の量とは第1の反応により生成される硫酸塩である。そうすると,本願発明1においては,原料とする鉱石又は精鉱に含まれる銅の総量につき予め原料の成分分析を行う等して把握し,そこに含まれる銅成分の総量を塩基性硫酸銅塩として取り出すことを可能とするだけの硫黄成分の量を予め見込むことが必要となり,これなくしては添加する硫酸イオン源等の量を決めることができない。本願発明1における硫酸イオン源等の添加量は,このように原料となる鉱石又は精鉱につき予め成分分析等を行うことを前提としているというべきである。
そして,上記アのとおり,加圧酸化過程において生じる実際の反応においては,酸を添加した場合にも,そこで生じる第2の反応のみならず,第1の反応も生じていることも明らかである。
ウ上記の検討を総合すると,本願発明1における添加する硫酸イオン源等に関する「少なくとも・・・化学量論的量」とは,加圧酸化過程において酸の添加なく生じる第1の反応に代わり,予め見込まれた塩基性硫酸銅塩が第2の反応により生成しうるため必要な硫黄の全量を,理論的には賄い得るに足る硫酸イオン源等の量を意味すると解すべきである。
(4)一方,引用例1は,発明の名称を「銅精鉱から銅有価物を回収する湿式」( , , 冶金法出願日昭和49年8月28日公開日昭和50年5月8日出願人カナダ国オンタリオ州トロント所在のノランダ・マインズ・リミテッド)とするものであり,その明細書(甲1)には,次の記載がある。
ア特許請求の範囲「(1)銅精鉱からの銅有価物の回収において(a)予じめ定めた濃度における塩素イオンまたは臭素イオンを含有する浸出水溶液を調製し,(b)銅精鉱を前記浸出溶液中に分散させてスラリーを形成させ,(c)高温および酸素過圧下において,ならびに該精鉱中に存在する銅有価物の大部分を固体塩基性硫酸銅に変化させるような塩素イオンまたは臭素イオンの濃度において前記スラリーの浸出操作を行い,(d)前記塩基性硫酸銅を含有する生成浸出残留物を浸出溶液から分離し,次いで(e)前記浸出残留物から銅有価物を回収する,ことを特徴とする銅精鉱から銅有価物を回収する湿式冶金法。
(2)塩素イオンを含有する浸出水溶液を塩酸で形成することを特徴とする前記第(1)項に記載の方法。
( )塩素イオンを含有する浸出水溶液をNaCl,CaCl または3 2NH Clで形成することを特徴とする前記第(1)項に記載の方法。4(4)臭素イオンを含有する浸出水溶液をHBr,NaBrまたはKBrで形成することを特徴とする前記第(1)項に記載の方法。
( )塩素イオンを含有する浸出水溶液を塩酸と硫酸との混合物で形成5し,該混合物が少くとも25重量%の塩酸を含有するものであることを特徴とする前記第(1)項に記載の方法。
(6)浸出水溶液に硫酸イオンのイオン源をも含有させることを特徴とする前記第(1),第(2),第(3)または第(4)項に記載の方法(下線は。」判決付記,以下略)イ発明の詳細な説明(ア)「本発明は銅精鉱を処理してそれより銅有価物を回収する新規な湿式冶金法に関する。更に詳しくは本発明は銅精鉱を高温および酸素の過圧下において浸出水溶液中で浸出することによる銅有価物の回収方法に関する(2頁右下欄10行〜14行,審決の1b) 。」(イ)「銅精鉱を高温および酸素圧力下において硫酸水溶液の浸出溶液中で処理し,それにより銅有価物を該浸出溶液中に溶解し,次いで電。 解採取などにより該溶液から抽出する湿式冶金法は既に知られているこのような方法の一つが1965年7月6日A等に与えられたカナダ国特許第712,989号明細書に開示されている。この方法によれば硫酸鉱を,少くとも該硫化鉱中に存在する銅有価物と結合して硫, 化塩を生成するのに十分な量の硫酸を含有する溶液中において浸出し, 次いで得られたスラリーを遊離酸素を含有するガスの圧力下においてかつ175゜F以上の温度において反応させるのである(2頁右下。」欄下6行〜3頁左上欄9行)(ウ)「1969年3月11日にこれもまたA等に与えられたカナダ国特許第808,108号明細書においてもう一つの方法が開示されている。この方法によれば少くとも90%がマイナス325メッシュである粒度の硫化鉱をある特定の条件,すなわち酸の量が該硫化物中に含有される銅有価物と硫酸塩として化学量論的に結合するのに十分な量であり,かつそれと同時に生成スラリー中における酸対銅のモル比が1:1よりは小さく,0.55:1よりも大きいような条件下で硫酸水溶液中において浸出する(3頁左上欄9行〜19行) 。」(エ)「塩素イオンまたは臭素イオンのイオン源に加えて硫酸,硫酸ナトリウムなどのような硫酸イオンのイオン源を該浸出溶液に導入することができる。しかし浸出溶液にSOイオンの導入は必須なもので4=はない。なぜならばこれらのイオンが最初に添加されなくても反応は進行するからである。しかしながら高温および酸素圧力の条件下における浸出操作の間にSOイオンがその場に生成され,次いで硫化銅4=の塩基性硫酸銅への変化に関与するであろうということが信じられている。
しかしながら最も好ましい実施態様においては,浸出溶液は塩酸と硫酸との混合物で形成される(4頁左上欄下4行乃至右上欄8行) 。」(オ)「本発明にしたがって処理することのできる銅精鉱は黄銅鉱,精銅鉱,コベリン班銅鉱などまたはそれらの混合物のような硫化鉱を含有する普通の精鉱である。しかしながら本方法は工業上最も一般的である黄銅鉱の精鉱の湿式冶金処理に特に好適である(4頁右下欄6行〜11 。」行,審決の1c)(5)上記( )の記載によれば,引用発明1は,審決が認定したとおり 「酸素と4 ,酸性塩化物との存在下,精鉱を加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法」を内容とするものであり,本願発明と引用発明1とは 「酸素と酸性塩化物との存在下,精鉱を ,加圧酸化に供し,結果として加圧酸化濾過液と不溶性の塩基性硫酸銅塩とを得る過程からなり,加圧酸化が,硫酸イオン源の存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法」である点で一致し,一方,本願発明1は 「添加さ,れる硫酸イオン源の量は,少なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量の硫酸イオン源を含む」のに対して,引用発明1は 「添加,される硫酸イオン源の量」が不明である点で相違するというべきである(当事者間に争いがない 。)( )進んで,審決の相違点に関する判断について検討する。
6ア審決は上記相違点に関し 「しかしながら,理論上『添加される硫酸イオ ,』 ,『( )』 ン源の量 は加圧酸化過程において生成される 塩基性硫酸銅塩の量から『 酸添加無しの場合に)加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量』を (差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量であり,段落【】() (), 0038 の酸添加の場合の 2 式 判決注:第2の反応 によれば化学式の右辺の『塩基性硫酸銅塩』をより多く生成させるために化学式の左辺の『添加される硫酸イオン源の量』をより多くすることは,当業者に周知の事項といえるから 『添加される硫酸イオン源の量』は 『 加圧酸 , ,(化過程において生成される)塩基性硫酸銅塩の量』から『 酸添加無しの場(合に)加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量』を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量(理論量)以上とすることは,当業者が容易に想到することといえる(9頁6行〜16行)と判断した。 。」しかし,前述した本件明細書段落【0038】の上記(2)式(第2の反応)自体が公知ないし周知であると認定するに足る適切な証拠はないから,上記(2)式に化学平衡等の技術常識によれば引用発明1と本願発明1との相違点に関しては容易に想到し得るとした審決の判断は妥当とはいえない。
イもっとも,引用発明1は,上記( )のとおり,加圧酸化が硫酸イオン源の5存在下で行われる硫化銅精鉱から銅を抽出する方法に関する発明であるところ,加圧酸化過程における硫酸イオン源に関し,上記(4),イ,(エ)のとおり,@加圧酸化過程において硫酸イオンのイオン源を浸出溶液に導入することができるが,硫酸イオンの導入は必須なものではなく,これらイオンが最初に添加されなくても反応は進行すること,Aしかし,最も好ましい実施態様においては,浸出過程は塩酸と硫酸との混合物で形成されること,B加圧酸化過程においても硫酸イオンがその場に生成され,次いで硫,() 化銅の塩基性硫酸銅への変化に関与することが それぞれ引用例1 甲1に明らかにされている。
また,硫酸イオン源の量に関しても,@上記(4),イ,(イ)のとおり,少なくとも該硫化鉱中に存在する銅有価物と結合して硫化塩を生成するのに,,, 十分な量の硫酸を含有する溶液中において浸出することA上記(4)イ(ウ)のとおり,酸の量が該硫化物中に含有される銅有価物と硫酸塩として化学量論的に結合するのに十分な量であることが,それぞれ引用例1(甲1)に記載されている。
そうすると,引用例1には,加圧酸化過程において最も好ましい実施態様は硫酸イオン源等の存在下にあることが示唆されており,硫酸イオン源等の存在が硫化銅の塩基性硫酸銅塩への変化に寄与し好ましい作用効果を奏すること,硫酸イオン源等を添加する場合には,その量は少なくとも硫化鉱中の銅と硫酸塩を生成するのに必要十分な量とすべきことが記載されているといえる。
上記検討によれば,引用例1(甲1)において好ましい態様として示唆されているところに従って硫酸イオン源等の存在下で加圧酸化せしめることを想到し,そのための硫酸イオン源等の添加量については引用例1に記載されているところに従って,少なくとも添加された硫酸イオン源等が硫化鉱中の銅との硫酸塩を生成するのに必要十分な量とすることを想到することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって格別困難な事柄ではないということができる。結局,本願発明1と引用発明1との相違点(硫酸イオン源等の添加量)については,本件明細書の段落【0038】に記載された反応式(1)及び(2)自体の認識の有無にかかわらず,当業者において容易に想到し得るというべきである。
そうすると,審決はその結論において相当なものとして是認し得る。
,() , ( )ア原告は 引用例1 甲1 の硫酸イオン源等の量についての記載に関し7引用例1には「・・・化学量論的に結合するのに十分な量「・・・SO」,イオンの導入は必須なものではない 」と記載されているから,引用例4=。
1には「必要量より多く」硫酸イオン源を加えるとの技術思想はないと主張する。
しかし 本願発明1において添加する硫酸イオン源等の量に関しては少 , ,「なくとも,塩基性硫酸銅塩の量から,加圧酸化で本来産み出される硫酸塩の量を差し引いたものを生成するために必要とされる化学量論的量」とされているのみで,その意味についても上記(3)ウのとおり,加圧酸化過程において酸の添加なく生じる第1の反応に代わり,予め見込まれた塩基性硫酸銅塩が第2の反応により生成しうるため必要な硫黄の全量を,理論的には賄い得るに足る硫酸イオン源等の量を意味すると解される。そして,この点に関し,引用例1には,加圧酸化過程において最も好ましい実施態様として硫酸イオン源等の存在下にあることが示唆されている上,硫酸イオン源等を添加する場合の添加量に関しても,少なくとも硫化鉱中の銅と硫酸塩を生成するのに必要十分な量とすべきことが記載されていることは上記( )イで検討したとおりであり,原告の主張は採用できない。
6イまた原告は,本願発明1は,硫酸イオン源等を添加することにより硫黄, , の酸化に要する酸素の量 生成した酸素のための中和剤の量とを低減できまた硫黄の酸化による発熱を抑制することができ,これら顕著な作用効果を奏するとも主張するが,上記(6)イで検討したとおり,引用例1(甲1)に接した当業者において,引用例1の加圧酸化に硫酸イオン源等が導入されない場合には,浸出操作の間に硫化銅鉱石中の硫黄成分から硫酸イオンがその場で生成され,それが硫化銅の塩基性硫酸銅への変化に関与する過程を経るとの前提に立脚して考えたとき,加圧酸化に硫酸イオン源等が導入される場合にはその硫酸イオン源等は,硫化銅鉱石中の硫黄成分からその場で生成される硫酸イオンの代わりに,直接的に,硫化銅の塩基性硫酸銅への変化に関与することができるから,その分だけ加圧酸化の反応効率の向上に資するであろうと予想することも困難なことではない。
そして,引用例1(甲1)に接した当業者であれば,加圧酸化に導入される硫酸イオン源等は,硫化銅の塩基性硫酸銅塩への変化に寄与し,上記(6)イで検討したとおり好ましい作用効果を奏するであろうと推察することができるということができる以上,これを実際に試しさえすれば,原告が主張する本願発明1の作用効果は当然に確認されるというほかない。原告の主張は採用することができない。
3結語以上によれば,原告がその余の取消事由として主張するところについて判断するまでもなく,本願の拒絶査定を是認した審決の判断は結論において正当である。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 今井弘晃
裁判官 田中孝一
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