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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10462審決取消請求事件 判例 特許
関連ワード 進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  相違点の認定 /  相違点の判断 /  周知技術 /  発明の詳細な説明 /  実施 /  設定登録 /  訂正審判 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10612号 審決取消請求事件
原告安 藤建設株式会社
原告訴訟代理人弁護士影山光太郎
同 石橋武征
同弁理士植田茂樹
被告Y1
被告Y2
被告ら訴訟代理人弁理士葛西泰二
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/07/30
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-80024号事件について平成17年6月27日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯(1)原告は,発明の名称を「管渠の布設方法」とする特許第2879021号(平成8年9月27日出願,平成11年1月22日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許の特許権者である。
(2)本件特許については,平成17年1月25日,本件特許を無効とすることを求めて審判の請求があり,無効2005-80024号事件として特許庁に係属した。その審理の過程において,原告は,平成17年4月15日,本件特許に係る明細書(以下「本件明細書」という。)を訂正する請求をした(以下この訂正を「本件訂正」という。)。特許庁は,審理の結果,平成17年6月27日,「訂正を認める。特許第2879021号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は平成17年7月7日に原告に送達された。
(3)なお,原告は,平成17年9月22日,本件明細書の訂正を求める審判を請求した。特許庁は,これを訂正2005-39165号事件として審理した結果,平成18年7月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成18年8月10日原告に送達された。原告は,この審決を不服として,審決取消訴訟を提起し,同訴訟は当庁に係属している(当庁平成18年(行ケ)第10408号)。原告の訂正審判請求に係る訂正後の請求項1は別紙のとおりである(波線部分は,訂正審判請求における訂正に係る箇所である。なお,請求項2は,同訂正により削除される。)。
2本件各発明の内容本件訂正後の本件各発明の請求項1,2は,次のとおりである(下線部分は,本件訂正に係る箇所である。)。
【請求項1】「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において,前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を,転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け,該多数の球状体上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。」(当該請求項1に記載の発明を,以下「本件発明1」という。)【請求項2】「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において,前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け,該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする管渠の布設方法。」(当該請求項2に記載の発明を,以下「本件発明2」といい,本件発明1と合わせて「本件各発明」という。)3審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件各発明は,特開平7-259169号公報(甲13。以下「刊行物1」といい,刊行物1記載の発明を「引用発明1」という。)及び実願昭60-131436号のマイクロフィルム(甲14。以下「刊行物2」といい,刊行物2記載の発明を「引用発明2」という。)の記載並びに特開平8-98476号公報(甲15。以下「刊行物3」といい,刊行物3記載の発明を「引用発明3」という。)等に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に違反して特許されたものである,というのである。
審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明1の内容並びに本件各発明と引用発明1との一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1)引用発明1の内容溝1内にコンクリートブロック2を荷卸しし,該コンクリートブロック2を基礎コンクリート20の上面埋め込んだガイド部材21に沿って牽引装置で他のコンクリートブロックとの連結を行う据え付け位置Bまで移動させ,該位置で各コンクリートブロック2同士を順次連結して一体となったコンクリートブロック構造物を構築するようにしたコンクリートブロック2の敷設方法。
(2)本件各発明との一致点と相違点ア本件各発明との一致点地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠の布設方法である点。
イ相違点(ア)本件発明1本件発明1では,レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に球状体を,転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け,該多数の球状体上に単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたのに対して,引用発明1では上記のような摩擦低減手段が設けられていない点。
(イ)本件発明2本件発明2では,レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれたレール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け,該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたのに対して,引用発明1では,上記のような摩擦低減手段が設けられていない点。
第3原告主張の取消事由の要点審決は,本件各発明と引用発明1との相違点についていずれも当業者が容易に行うことができたか否かの認定判断を誤ったものであるところ,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点の認定の誤り)審決は,本件各発明の「レール」を引用発明1の「ガイド部材」に相当すると認定したが,誤りである。
本件各発明の「レール」は,車輪を支える軌条のように走行の際の摩擦抵抗を減らす構成を前提としているのに対して,引用発明1の「ガイド部材」は,ブロックを移動するときの案内材であり,ブロックの据え付け高さ及び幅も規制して案内する部材にすぎない。
2取消事由2(相違点の判断の誤り)審決は,「本件各発明は,いずれも甲1,2(判決注:本訴における甲13,14)記載の各発明及び従来周知の事項に基づき,当業者が容易に発明できたものである。本件各発明によってもたらされる効果も,甲1,2記載の各発明及び従来周知の事項から,当業者であれば予測することができる程度のものであって,格別なものとはいえない。」旨判断したが,本件各発明と引用発明1,2とは構成及び作用効果において顕著な差異があるので誤りである。
(1)本件各発明と引用発明1,2との構成上の差異ア本件各発明と引用発明1とは,@本件各発明では摩擦低減手段と組み合わせて使われる「レール」を用いるのに対して,引用発明1では「ガイド部材」である部材であること,A本件各発明が管体とレールと球状体と基礎コンクリートとを一体化させるのに対し,引用発明1ではそのような構成は示されていないという点で,技術思想が異なる。
イ本件各発明と引用発明2とは,@本件各発明では球状体はレールの長さ方向及び幅方向に転動可能に敷き詰められているのに対し,引用発明2では鋼球はレールの長さ方向に一列に配置されレールの幅方向には拘束されている構造であること,A本件各発明では球状体は,管体の移動後グラウト注入によって管体,レール,基礎コンクリートと共に一体化されるのに対し,引用発明2では鋼球は移動のために用いられているにすぎないという点で,技術思想が異なる。
(2)本件各発明と引用発明1,2との作用効果の差異本件明細書の発明の詳細な説明,公知の文献等によると,本件各発明は,次のとおり引用発明1,2にはない優れた作用効果を奏する。
ア工学的観点から(ア)移動について@球状体が一列だとレールに作用する力が集中し,レールを損傷するが,レールの長さ方向及び幅方向に多数配置した場合は,荷重が多数点で支えるので,レールの損傷がなく,球状体が転動しやすい。
A球状体をレールの長さ方向及び幅方向に多数配置した場合は,レール面に多少の凹凸があっても,また球状体の径に不揃いがあっても,管状底面とレールとが多数の球状体を介して接するので,管体が容易に移動できる。
Bレール(H鋼)の幅を広げることで曲線上であっても,管体の移動を容易にできる。
C管体を複数個まとめて移動することが容易である。
Dソリが溝形のレールに嵌合している場合,管体の側方に働く不測の力に対して抑えとなり,管体のずれを防ぐことができる。
(イ)設置について@物理的観点からa管体は,レールの長さ方向だけでなく,その幅方向にもある程度移動が可能なので,接合作業が容易である。
b管軸方向にPC緊張作業を行うときに,摩擦力が軽減できるので小さいプレストレス導入力で所定の緊張力が得られる。その結果,PC鋼棒の径を小さくでき,またPC鋼棒の本数を減らせるので経済的観点からの効果もある。
c本件各発明では,引用発明1と比べて,@球状体がある分,管体底面が基礎コンクリートからの高さがあり,空気が抜けやすいこともあってグラウトが行きわたり易く,A管体底面がレールに接しておらず,球状体が間隔を置いて配置されているので,グラウトを通りやすい。
A化学的観点からaグラウトを充填された球状体(通常,鋼製)は,骨材として寄与し,良質な基礎コンクリート部材となる。骨材は堅くて重い方がよいからである。
b球状体は,グラウト注入によりグラウト材に覆われるので腐食しにくい。
イ安全上の観点から(ア)管体の移動,連結作業に際し,作業員は管体の進行方向で作業を行うことがないので,安全に作業ができる。
(イ)管体の移動,連結作業後に,球状体の撤去作業を必要としないので,作業を安全に効率よくできる。
ウ経済的観点から(ア)管体の重量に合わせて,レールの大きさ・条数,ソリの大きさ,球状体の数を調整し,適切なサイズを選定するので経済的である。
(イ)管体を多数の球状体で支えるので,各球状体の寸法等の精度はそれほど高いものを求められず,経済的である。
(ウ)管体の移動,管渠への設置,グラウト注入などが容易にできるので,工期が短縮でき,工費節減になる。
第4被告らの反論1取消事由1に対し(1)引用発明1における横引き工法にあっては,移送すべきコンクリートブロックを基礎コンクリート上で直接移動させるより,ガイド部材となるアングル材の表面上を移動させる方がウインチ等の牽引装置の負担が少なくなることは明らかである。したがって,当業者であればガイド部材の採用はガイド機能のみを期待するものではなく,摩擦低減効果も併せて期待するから,ガイド部材も摩擦抵抗を減らすためのものであり,本件発明の「レール」に相当する。
(2)本件各発明の「レール」は,その上に球状体を敷き詰めることによって初めて摩擦を低減するものであり,「レール」自体に摩擦抵抗を減らす機能はないことになる。そうすると,引用発明1の「ガイド部材」も「レール」に相当する。
2取消事由2に対し原告の主張は,訂正審判に係る訂正後の特許請求の範囲の内容に基づくものか,又は本件特許の特許請求の範囲の記載内容を超えた内容に基づくものであるから,失当である。
第5当裁判所の判断1取消事由1について(1)本件各発明の「レール」に関して,請求項1,2によると,「レール」は基礎コンクリート上に敷設され,その上面に球状体を敷き詰めて又は円筒形ローラーを配置してなる摩擦低減手段を設け,その上に単位管体を載置して横引き装置により移動させるものと認められる。そして,本件明細書(甲23。本件訂正後のもの。)の「発明の詳細な説明」には,次の各記載がある。
「【従来の技術】都市部の下水道工事における管渠の布設方法としてプレキャストコンクリート製品からなる同一形状の管体(以下,単位管体と記す。)を連結して管渠を構築する方法がある。この管渠の布設工法では,鋼矢板等の山留め壁で支保され,所定の地盤面まで掘削された山留め空間内の基礎コンクリート上に,プレキャストコンクリート製の矩形断面ボックスカルバートや円形断面ヒューム管等の単位管体を搬入し,各単位管体を連結可能な位置まで移動させ,勾配を調整して仮置きし,各単位管体間の水密性を保持しながら一体化した管渠を構築している。本工法によれば,開削工事のために地上部が占有されるが,プレキャストコンクリート製品の使用により工事全体を迅速に進めることができる。」「【0003】図6は単位管体の一例であるプレキャストコンクリート製のボックスカルバート51を用いた管渠の布設方法の一例を示した説明図である。図6に示したボックスカルバート51は図示しない荷卸し開口の地上部に設置された荷卸しクレーンにより山留め空間内に搬入される。そして基礎コンクリート52上に敷設された2本のレール53上を矢印方向に横引きされ,すでに設置されたボックスカルバート51の隣接位置に仮置きする。
このボックスカルバート51の横引きには図示しないワイヤを巻回するウインチ等の横引き装置が用いられる。ウインチによる横引き作業を効率良く行うために,ボックスカルバート51の底面には摩擦低減手段60が施されている。」「【0004】図7はボックスカルバート51の底面54に設けられた摩擦低減手段60を示した部分断面図である。同図に示したように,レール53と接触するボックスカルバート51の底面54には,断面形が偏平なU字形をなす埋込み金具61が埋設されている。この埋込み金具61と基礎コンクリート52に埋設されたレール53との間には摩擦低減手段としてのソリ60が示されている。このソリ60はボックスカルバート51の奥行きLに等しい長さからなる平板状で,埋込み金物61側に鋼板63が,レール53上面との接触位置にテフロン樹脂(商品名)等の樹脂板64が配置された積層板構造となっている。このソリを埋込み金具61と基礎レール53との間に介在させることにより,ウインチの横引き負荷を軽減することができる。」「【0005】【発明が解決しようとする課題】このように,図7に示したソリ60を摩擦低減手段として採用することにより,ボックスカルバート51の横引き時に生じるレール53と埋込み金具61との間の摩擦を低減することができる。しかし,重量物であるボックスカルバート51の下面54の埋込み金具61位置にソリ60を挿入するためにはボックスカルバート51を油圧ジャッキ等の昇降手段によりで所定の上下範囲で昇降させる必要がある。また,ソリ60を用いた場合でもボックスカルバート51を横引きするためのウインチは直引力3トン能力のものが2台必要であった。このため,さらに横引き時の摩擦の低減を計ることが求められていた。」「【0006】そこで,本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し,基礎レール上に搬入されたボックスカルバートを効率よく横引きできるようにする装置と,横引きされ連結作業により完成した管渠が基礎コンクリート上に確実に設置されるようにした管渠の布設方法を提供することにある。」「【0007】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において,前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に球状体を,転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け,該多数の球状体上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。」「【0008】地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において,前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に円筒形ローラーをレール延長方向に転動可能に所定間隔をあけて配列した摩擦低減手段を設け,該多数の円筒形ローラー上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記円筒形ローラーの転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させるようにしたことを特徴とする。」上記の各記載からすれば,「レール」は基礎コンクリート上に単位管体を搬入し,それを所定の位置まで移動させるために従来から設けられていたものであること,従来からその際に生じる摩擦の低減のために単位管体の底面に埋め込み金具とレールとの間にソリを設けていたこと,本件各発明は摩擦の低減のためにレールの上面に球状体又は円筒形ローラーを設けていることが認められ,そうすると,「レール」はそれ自体が横引き時の摩擦低減手段を形成する部材ではないということができる。
(2)他方,刊行物1(甲13)によれば,「ガイド部材」に関して,次の各記載がある。
「【請求項2】コンクリートブロックの移動路の上面両側に,断面直角状のガイド部材を予め所定のブロック据え付け高さ及び幅に設定して対向配置することを特徴とする請求項1に記載のコンクリートブロックの敷設方法。」「【0007】コンクリートブロックの移動路の上面両側に,断面直角状のガイド部材を予め一定のブロック据え付け高さ及び幅に設定して対向配置するのが良い。」「【0009】【作用】コンクリートブロックの荷卸し位置を据え付け位置から離れた場所に設定できるので,該荷卸し位置を一定とすることができ,クレーンを移動させる必要がなくなると共に,据え付け位置の上方に障害物があっても,何ら支障なく施工することができる。牽引装置によって牽引するので,ブロックを1サイクルで荷卸し位置から据え付け位置まで移動させることができ,従来のジャッキによる推進に比べ,効率良く施工できる。ブロックの移動路両側に,予め所定のブロック据え付け高さ及び幅に設定したガイド部材を配置することにより,据え付け時にブロックの高さ及び幅方向位置の調節という二次的な作業が不要となり,より効率化される。また,ブロックの底版に取り付けた調節ボルトを回してブロックを所定の据え付け高さに調節した後,底版の下方の隙間にグラウト材を注入,充填することにより,簡単にブロックの高さ調節を行うことができる。」「【0013】【実施例3】実施例3はブロック2の移動路のガイドに関するものである。図5,図6に示すように移動路の基礎コンクリート20の上面両側に,アングル材等の断面直角状の一対のガイド部材21,21を,予め所定のブロック据え付け高さと幅に調節して埋め込み,このガイド部材21,21間にはモルタル22を敷設する。なお,この基礎コンクリートは,予め工場で製作したプレキャスト基礎を用いてもよい。」「【0019】ブロックの移動路両側に,予め所定のブロック据え付け高さ及び幅に設定したガイド部材を配置することにより,据え付け時にブロックの高さ及び幅方向位置の調節という二次的な作業が不要となり,より効率化される。」上記各記載によれば,引用発明1の「ガイド部材」は,コンクリートブロックの移動路上の上面両側に敷設され,ブロック据え付け高さ及び幅に設定され,ブロックの高さ調節が容易になるものと認められる。
(3)以上を対比すれば,本件発明の「レール」も引用発明1の「ガイド部材」もともにコンクリートブロックを移動させる際にその移動路上に敷設され,それ自体特段摩擦低減手段を形成するものではないことからすると,引用発明1の「ガイド部材」が本件発明1の「レール」に相当するとした審決の認定に誤りはない。
原告は,「レール」にはレール上を走行する物体に対応して生じる摩擦抵抗を減ずる手段を含んでいると主張する。しかし,仮に基礎コンクリート上に物体を移動させる場合と比べて摩擦抵抗が減少するとしても,その点は基礎コンクリート上に敷設されその上に物体を移動させることを予定している「ガイド部材」についても同様である。原告の上記主張は,採用できない。
2取消事由2について(1)原告は本件各発明と引用発明1との構成上の相違を主張するが,このうち@については上記1で認定判断したとおり相違点とは認められず,Aについては,訂正審判で求めている訂正内容を前提としたものであるところ,同訂正審判請求において訂正を認める審決がなされて確定したという事情が存在しない以上,本件各発明の要旨に基づかない主張であり失当である(なお,同訂正審判請求に係る審決の取消訴訟(当庁平成18年(行ケ)第10408号)において,平成19年7月30日に,審判請求は成り立たないとした審決を維持すべきものとして,原告の請求を棄却する判決がされたことは,当裁判所に顕著である。)。
同様に,原告は本件各発明と引用発明2との構成上の相違を主張するが,これらはいずれも訂正審判で求めている訂正内容を前提としたものであって,上記のとおり,本件各発明の要旨に基づかない主張であるから,失当である。
(2)原告は本件各発明には引用発明1,2にはない顕著な効果があり,それは本件明細書の図2,図4,図5,図6から窺えると主張するが,これらの図面及び同図面についての説明を参照しても本件各発明の上記効果について記載されているとはいえず,また,訂正審判で求めている訂正内容を前提とした効果を含むものであるし(第3,2(2)ア(ア)@,A,(イ)@a,c,Aa,b各記載の効果が該当する。),その他の原告主張の効果も本件各発明の要旨及び本件明細書の記載に基づく効果ということはできない。原告の上記主張は,採用できない。
3結論以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由にはいずれも理由がない。原告はその他縷々主張するが,いずれも訂正審判で求めている訂正内容を前提とした主張であって失当であり,審決を取り消すべきその他の誤りも認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)【請求項1】「地盤掘削により形成された山留め空間内に単位管体を搬入し,該単位管体を基礎コンクリート上に敷設されたレールに沿って横引き装置で所定の連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体とした管渠を構築するようにした管渠の布設方法において,前記レールの側面に設けられたガイド部材に囲まれた前記レール上面に,球状体をレールの長さ方向及び幅方向に多数,転動可能に敷き詰めてなる摩擦低減手段を設け,該多数の球状体上に前記単位管体を載置し,この状態で該単位管体の横引き動作を行い,前記球状体の転動動作に伴い前記単位管体を前記連結位置まで移動させ,該位置で各単位管体同士を順次連結して一体化させるにあたり,単位管体の底面に設けたグラウト孔より単位管体底面と基礎コンクリートとの間に,グラウト材を,レール上面の多数の球状体の間を通過させるようにして充填し,単位管体底部とレールと多数の球状体と基礎コンクリートとをグラウト材によって一体化させる,ことを特徴とする管渠の布設方法。」
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 嶋末和秀
裁判官 上田洋幸