関連審決 | 不服2002-24456 |
---|
関連ワード | 技術的思想 / 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 発明の詳細な説明 / 参酌 / 置き換え / 置換 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 加工 / 請求の範囲 / |
---|
元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
---|
事件 |
平成
15年
(行ケ)
588号
審決取消請求事件
|
---|---|
原告 オプトエンジニアリング株式会社 訴訟代理人弁理士 清水定信 被告 特許庁長官小川洋 指定代理人 木原裕 同 高橋 介 同 立川功 同 伊藤三男 |
|
裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2004/12/27 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
---|---|
請求
特許庁が不服2002-24456号事件について平成15年11月18日にした審決を取り消す。 |
|
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,平成11年6月17日,発明の名称を「柱の補強金具及び補強方法」とする特許出願(特願平11-171053号,以下「本件出願」という。)をしたが,平成14年11月26日に拒絶の査定を受けたので,同年12月19日,これに対する不服の審判の請求をした。 特許庁は,同請求を不服2002-24456号事件として審理した結果,平成15年11月18日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月27日,原告に送達された。 2 本件出願の願書に添付した明細書(以下,願書に添付した図面と併せて,「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の【請求項1】記載の発明(以下「本願発明1」という。)の要旨 基端側にナット又はボルトが固設され,適所に長孔が穿設され,柱の軸方向に挿入されるプレート本体と,前記柱の軸方向に挿入されたプレート本体の長孔に,柱の軸方向に対し直交する方向から嵌入されるくさびプレートと,前記プレート本体のナット又はボルトに螺合して,前記プレート本体を被取付部材に固着するボルト又はナットとからなることを特徴とする柱の補強金具。 3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明1は,特開平10-147982号公報(甲2,以下「引用例1」という。)及び実願平5-74154号(実開平7-40809号)のCD-ROM(甲3,以下「引用例2」という。)に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものであるとした。 |
|
原告主張の審決取消事由
審決は,本願発明1と引用例1記載の発明(以下「引用発明1」という。)との相違点に関する判断を誤り(取消事由1),本願発明1の顕著な作用効果を看過した(取消事由2)結果,本件出願は拒絶されるべきものであるとの誤った結論に至ったものであるから,違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(相違点に関する判断の誤り) (1) 本願発明1の解釈の誤り ア 審決は,相違点に関する判断の前提として,本願発明1に係る「くさびプレート」の面の向きにつき,「特許請求の範囲の請求項1には,『適所に長孔が穿設され』,『柱の軸方向に対し直交する方向から嵌入されるくさびプレート』という事項はあるが,長孔およびくさびプレートの面の向き,さらには,柱の材質について何ら限定はなく,これらの事項から,『柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する』とはいえない」(審決謄本3頁最終段落)としたが,このような解釈は,本願発明1の本質を全く無視したものであって,誤りである。 イ 本件明細書(甲4-1,甲7)には,本願発明1の目的として,「負荷を面状体で支持することによって柱の木材繊維も破壊されにくく剪断力が大きく,地震にも強く補強の信頼性が高い柱の補強金具及び補強方法を提供することにある」(段落【0007】)と記載され,また,発明の実施の形態について,「本発明によれば,くさびプレート4が柱8の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持するので,繊維方向の剪断力が大きくなり,柱8と土台7,胴差(梁)14との緊締力も向上し,補強の信頼性が向上するし,耐震性能も高くなる。特に,剪断力は,くさびプレート4の面の広さ,プレート本体1の長さ及び長孔3の位置等を調整することによって強さの調整が可能で,必要強度を満足させることができる」(段落【0021】)と記載され,さらに,本願発明1の効果について,「本発明は,くさびプレートが面状体であり,柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持するので,繊維方向の剪断力が大きくなり,柱の支持力が大きくなるし,柱と土台,胴差,梁などとの緊締力も向上する。従って,補強の信頼性が向上するし耐震性能も高くなるし,耐力壁の壁倍率もアップできる。しかも,剪断力の強度は,くさびプレートの面の広さ,プレート本体の長さ及び長孔の位置などを調整することによって調整が可能であるので,必要とする強度を自由に設計できる」(段落【0022】及び段落【0023】)と記載されている。 これらの記載と図面(甲4-2,甲7)とを参酌すれば,本願発明1が,柱の内部において,くさびプレートの広い面によって木材繊維を縦方向(軸方向)に保持するものであることは明らかである。仮にそうでないとすれば,上記のような本願発明1の目的も効果も成立せず,本願発明1は発明として何ら意味を持たない。したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の「前記柱の軸方向に挿入されたプレート本体の長孔に,柱の軸方向に対し直交する方向から嵌入されるくさびプレート」との記載における「くさびプレート」とは,発明の詳細な説明における上記各記載及び図面を参酌すれば,「木材繊維を広い面において縦方向(軸方向)に保持する方向に嵌入される」ものと解すべきである。 ウ これに対し,被告は,引用例2(甲3)の打込み横長楔13は,木材繊維が縦方向(軸方向)である柱aを打込み横長楔の広い面にて保持する方向に嵌入されるものであるから,木造構造物の柱への楔の嵌入に際し,木材の性質を考慮すれば,打込み横長楔を横方向(軸と垂直な方向)に幅広にすることは,当業者であれば容易に思い付く設計的事項である旨主張する。 しかしながら,引用例2の打込み横長楔13は,「この打込み横長楔13の打込みにより,柱a全体が接合金具cの基板1に向かって下降し,その基板1に下面を完全に圧接したとき,上記ボルト挿通孔10と4とが一致するように関係部分を予め設計してある。このように,柱aの下面が基板1に完全圧接したとき,ボルト挿通孔10,4にボルト14を挿通し,ナット15で緊締するとともに,柱aの側面a1,a2の外方に突出している打込み横長楔13の両端を鋸で切断除去する(図5)」(段落【0014】)との記載及び図面から明らかなとおり,幅の小さい「楔」そのものであって,そこには,本願発明1のくさびプレートのような「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」(本件明細書〔甲4-1,甲7〕の段落【0022】)という発想はなく,このことは,引用例2において,打込み横長楔13が楔案内片12と併用するものとされていること(段落【0012】〜【0014】)からも理解することができる。すなわち,引用例2の打込み横長楔は,正に「楔」であるため,柱aを基板1に圧接するという楔としての役割を果たせばよく,幅広にする必要はないものであり,したがって,当該打込み横長楔を横方向に幅広にして,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」ことは,当業者が容易に思い付く設計事項などではない。 (2) 容易想到性の判断の誤り ア 審決は,本願発明1と引用発明1との相違点として認定した,「孔に嵌入される部材が,本願発明1では,長孔に嵌入されるくさびプレートであるのに対し,引用例1記載の発明(注,引用発明1)では,孔に打ち込まれるドリフトピンである点」(審決謄本3頁第2段落)について,「引用例1のドリフトピンに替えて引用例2の打込み横長楔を採用することは,当業者が容易になしうることであり,また,その際,楔窓孔を長孔とすることは,設計的事項にすぎない」(同頁第3段落)と判断したが,誤りである。 イ 引用例2(甲3)には,上記(1)ウのとおり,「この打込み横長楔13の打込みにより,柱a全体が接合金具cの基板1に向かって下降し,その基板1に下面を完全に圧接したとき,上記ボルト挿通孔10と4とが一致するように関係部分を予め設計してある。このように,柱aの下面が基板1に完全圧接したとき,ボルト挿通孔10,4にボルト14を挿通し,ナット15で緊締するとともに,柱aの側面a1,a2の外方に突出している打込み横長楔13の両端を鋸で切断除去する(図5)」(段落【0014】)と記載されている。この記載と図5とによれば,引用例2の打込み横長楔は,基板1と柱とを圧接する目的で打ち込まれるものであり,また,その材質は,鋸で切断するもの,すなわち,木質系のものであることが明らかであって,そうとすれば,この楔により引き抜き耐力を得ることはできない。そのため,引用例2のものにおいては,別途,ボルト挿通孔10及び4を設けた上でボルト14を挿通し,それによって引き抜き耐力を得るものとしているのである。また,古くから,木造建築では,木材の圧接に「込み栓」が使われており,引用例2の打込み横長楔は何ら目新しいものではない。 これに対し,本願発明1に係る「くさびプレート」は,柱を土台に押し下げ密接させる作用を有するものであるから,引用例2の打込み横長楔と本願発明1に係るくさびプレートとは,役割が異なるものである。さらに,引用例2の楔挿通横孔は,楔案内片を使用することが必須要件であるため,貫通孔となっているが,本願発明1では,本件明細書の図3(甲4-2,甲7)に示すように,貫通孔でなくともよいし,引用例2のものは,本件明細書の図4,図5及び図8で示されたような使用法を採ることはできない。このことも,両者の相違を端的に表しているということができ,引用例2に打込み横長楔が記載されているからといって,本願発明1のくさびプレートに係る構成が容易に想到できるものではないことを示唆するものである。 加えて,引用発明1に係る柱固定金具は,緊締部材を具備し,緊締部材によって長さを調節することにより,柱脚の緊締固定ができるようになっていることから,引用発明1においては,ドリフトピンに換えて,引用例2の打込み横長楔を採用する必要性が存在しない。 ウ この点について,被告は,引用例2(甲3)に,「打込み横長楔を水平に打設挿入することによって,該柱を土台に緊結している」等と記載されている旨主張する。しかしながら,上記(1)ウのとおり,引用例2の打込み横長楔は幅の小さい「楔」そのものであるから,引用例2において「柱を土台に緊結している」と記載されているのは,楔を水平に打ち込むことによって柱と土台との間に緩みがないようにするとの意味にすぎず,本願発明1のくさびプレートのように,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」との意味ではない。 被告は,引用例2のものにおいて,引き抜き耐力を有するのは打込み横長楔であって,ボルト14は,楔による引き抜き耐力を保持させるための補助用部材である旨主張する。しかしながら,引用例2の打込み横長楔が木質系であることは上記のとおりであり,仮に,被告の主張するとおり,引用例2のものにおいて打込み横長楔が柱と土台を緊結して引き抜き耐力を有しているのであるとすれば,打込み横長楔は木質系であるため,その耐力は極めて小さなものであって,実際の使用に耐えるものではない。 また,上記(1)ウのとおり,引用例2において,打込み横長楔13は,楔案内片12と対で作用するものであるところ,地震等によって発生した数トンもの引き抜き力を,木材である打込み横長楔13及び楔案内片12によって受け止め,しかも,垂直方向への引き抜き力を,楔案内片12及び打込み横長楔13の傾斜面で受けることになるから,横滑りの生じる危険等があり,構造力学的に見ても不合理といわざるを得ない。以上によれば,引用例2における打込み横長楔と楔案内片は,引き抜き耐力を目的とするものではなく,柱aを基板1に圧接させ,ボルト挿通孔10,4を一致させることのみを目的としているものであることは明らかである。 これに対し,本願発明1のくさびプレートは,「柱の補強金具」との記載及び「プレート」という語が金属板を意味することから明らかなとおり,くさびプレート自体が鋼材であり,したがって,引き抜き耐力が大きいのである。 エ さらに,本願発明1と引用発明1とを比較すると,構成及び作用効果において相違があり,特に,本願発明1には,引用例1(甲2)のものにおける柱脚固定具本体がないという点で,構成が全く異なるものであるため,引用例1のものから,本願発明1のようなシンプルな構成を想到することは困難である。 また,引用例2の楔挿通横孔9は,一般に市販されている角のみ盤によって容易に加工できるが,本願発明1のくさびプレートを挿通させる孔の加工機は存在せず,実際にも,試験に際しては手加工で実施し,加工機の開発も並行して進めている状況にある。このような状況下において,引用例1のドリフトピンに換えて引用例2の打込み横長楔を採用して,本願発明1を想到することは困難であるというほかはない。 オ 以上によれば,上記相違点に係る本願発明1の構成について,引用例2の打込み横長楔に関する記載を根拠に容易想到性を肯定した審決の上記判断は誤りというべきである。 2 取消事由2(顕著な作用効果の看過) (1) 審決は,本願発明1の作用効果について,「本願発明1によってもたらされる効果も,引用例1,2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって,格別なものとはいえない」(審決謄本3頁下から第2段落)と判断したが,誤りである。 (2) 本願発明1では,土台のボルトにナットを螺合してプレート本体を立設固定するだけであり,くさびプレートが面状体であり,柱の内部において木材繊維を広い面によって縦方向(軸方向)に保持するので,柱の支持力が大きくなる上,柱と土台,胴差,梁などとの緊締力も向上するため,補強の信頼性が向上し,耐震性能も高くなるものである。 これに対し,引用発明1のものは,柱脚固定具本体が土台に嵌挿され,この柱脚固定具本体と基礎に埋設されたアンカー部材とが,緊締部材を介して連結され,また,柱脚固定具本体と柱の下部に固定された固定板部材とが連結部材を介して連結されているので,地震等には弱い構造であり,補強の信頼性に欠けるものである。特に,緊縮部材及び連結部材と柱脚固定具本体との連結は,単に係合溝に嵌挿されているだけのものであり,係合溝に沿って移動が可能となっているから,地震時にはこの部分で位置ずれを生じるおそれがある。しかも,固定板部材はドリフトピンで柱に固定されるので,柱の繊維を破壊し,柱の軸方向に動きやすく,地震時のように大きな負荷が掛かると,繊維を破壊し,繊維間を柱の軸方向に移動し,支持力が低下してしまうおそれがある。そうした事態を少なくするためには,数多くのドリフトピンを差し込まなければならないが,それによっても,数多くのドリフトピン全体について生じる,柱を引き裂く力を除去することはできない。 また,引用例2(甲3)のものでは,打込み横長楔のほかに,ボルト14を使用しているが,そのことは,引用例2の打込み横長楔の引き抜き耐力が弱いものであることを示している。 (3) さらに,本願発明1の効果が絶大であることは,平成12年9月社団法人日本建築学会「学術講演梗概集(2000年度大会〔東北〕)」61〜62頁所収の研究論文(甲6,以下「甲6論文」という。)及び同年6月同学会東北支部「日本建築学会東北支部研究報告集 構造系 第63号」93〜96頁所収の研究論文(甲8,以下「甲8論文」という。)からも明らかである。 (4) 以上のとおり,本願発明1の作用効果と,引用発明1及び引用例2記載の発明の作用効果とでは格段の差があり,本願発明1の効果は格別のものであるというべきである。 |
|
被告の反論
審決の認定判断は正当であり,原告の取消事由の主張はいずれも理由がない。 1 取消事由1(相違点に関する判断の誤り)について (1) 本願発明1の解釈の誤りについて 審決は,原告の引用部分に続けて,「また,例え,それらに関して限定されても,引用例1,2はいずれも木造建築物が対象であり,引用例2の水平に打設挿入される打込み横長楔の幅を広くする程度のことは,設計的事項にすぎない」(審決謄本3頁最終段落)と判断している。そして,引用例2(甲3)の図面に示されるとおり,引用例2の打込み横長楔13は,木材繊維が縦方向(軸方向)である柱aを打込み横長楔の広い面にて保持する方向に嵌入されるものであるから,木造構造物の柱への楔の嵌入に際し,木材の性質を考慮すれば,支持力を大きくするため,木材繊維を広い面において縦方向(軸方向)に保持するように嵌入すること,すなわち,打込み横長楔を横方向(軸と垂直な方向)に幅広にすることは,当業者が容易に思い付く設計的事項である。したがって,審決の上記判断に誤りはなく,この点に関する原告の主張は失当である。 (2) 容易想到性の判断の誤りについて 原告は,引用例2の打込み横長楔は,基板1と柱とを圧接する目的で打ち込まれるものであるとした上,当該楔の材質が木質系であるとみられること,引用例2のものにおいては,別途,ボルト挿通孔10及び4を設けた上でボルト14を挿通していること等を根拠に,引用例2の打込み横長楔により引き抜き耐力を得ることはできない旨主張する。 しかしながら,引用例2(甲3)には,実用新案登録請求の範囲において,「打込み横長楔を水平に打設挿入することによって,該柱を土台に緊結している」(請求項1)と記載され,また,考案の効果としても,「柱の嵌合溝を,土台に緊締固着している接合金具の柱嵌合板に嵌合させ,さらに,互いに対応している柱の楔挿通横孔と接合金具の楔窓孔に打込み横長楔を打設挿入することによって,柱を土台に強固に設立固定できる。しかも,上記打込み横長楔は,柱の楔挿通横孔に水平に打設挿入すればよいから,その打設作業は簡単に行うことができる」(段落【0017】)と記載され,ボルト挿通孔にボルトを貫通させて柱を土台に緊結しているとは記載されていない。他方,「その基板1に下面を完全に圧接したとき,上記ボルト挿通孔10と4とが一致するように関係部分を予め設計してある。 このように,柱aの下面が基板1に完全圧接したとき,ボルト挿通孔10,4にボルト14を挿通し,ナット15で緊締するとともに,柱aの側面a1,a2の外方に突出している打込み横長楔13の両端を鋸で切断除去する」(段落【0014】)というのであるから,ボルト14は,楔による引き抜き耐力を保持させるための緩み止めといった補助作用部材であると解される。加えて,原告も自認するとおり,古くから木造建築では木材の圧接に「込み栓」が使われており,木質系の楔であるからといって,引き抜き耐力を得ることができないということもできない。 また,原告は,引用発明1に係る柱固定金具は,緊締部材を具備し,緊締部材によって長さを調節することにより,柱脚の緊締固定ができるようになっていることから,引用発明1においては,ドリフトピンに換えて,引用例2の打込み横長楔を採用する必要性が存在しない旨主張する。 しかしながら,引用発明1におけるドリフトピン及び引用例2における横長楔はともに,柱が土台から引き抜かれる力に抵抗する部材であるから,引抜き力に抵抗するドリフトピンを打込み横長楔に置き換えることは,当業者が容易に行い得ることである。また,打込み横長楔を嵌入させることにより柱脚を緊締固定する作用が生じることは,上記のとおり,引用例2の記載から明らかであり,ドリフトピンに換えて打込み横長楔を採用した場合,緊締部材の長さを更に短縮させて柱脚を緊締固定させる必要がなくなることは必然的に生じる効果にすぎないということができる。 さらに,上記(1)のとおり,楔を,木材繊維を広い面によって縦方向(軸方向)に保持するように幅広にすることは,当業者が容易に思い付くことであるから,その楔を嵌入する楔窓孔を長孔にすることは当然である。 以上によれば,「引用例1のドリフトピンに替えて引用例2の打込み横長楔を採用することは,当業者が容易になし得ることであり,また,その際,楔窓孔を長孔とすることは,設計的事項にすぎない」(審決謄本3頁第3段落)とした審決の判断に誤りはなく,この点に関する原告の主張はいずれも失当である。 2 取消事由2(顕著な作用効果の看過)について (1) 上記1のとおり,引用例2のものにおいて,柱と土台を緊締しているのは,打込み横長楔であり,また,引用発明1のドリフトピンに換えて引用例2の打込み横長楔を採用することは,当業者が容易にし得ることである。そして,引抜きに抵抗する部材を打込み横長楔(面状体)とすれば,本件明細書(甲4-1,甲7)記載の「柱の支持力が大きくなるし,柱と土台,胴差,梁などとの緊締力も向上する。従って,補強の信頼性が向上するし耐震性能も高くなる」(段落【0022】)という効果が生じることは,当業者が当然に予測し得ることというべきである。 (2) 原告は,本願発明1の効果が絶大であることの根拠として甲6論文及び甲8論文を挙げるが,当該論文は,本願発明1に係るフォールド金具と,山形プレートとを比較したものにすぎず,例えば,くさびプレートの点のみにおいて本願発明1と相違する,引用発明1に係る金具との比較をしたものではないから,原告の主張は失当である。 |
|
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点に関する判断の誤り)について (1) 本願発明1の解釈の誤りについて 原告は,審決が,相違点に関する判断の前提として,本願発明1に係る「くさびプレート」の面の向きにつき,「特許請求の範囲の請求項1には,『適所に長孔が穿設され』,『柱の軸方向に対し直交する方向から嵌入されるくさびプレート』という事項はあるが,長孔およびくさびプレートの面の向き,さらには,柱の材質について何ら限定はなく,これらの事項から,『柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する』とはいえない」(審決謄本3頁最終段落)とした点について,本願発明1の本質を全く無視したものであって,誤りである旨主張する。 確かに,審決の指摘するとおり,本件明細書(甲4-1,甲7)の特許請求の範囲の請求項1には,「適所に長孔が穿設され,柱の軸方向に挿入されるプレート本体」,「柱の軸方向に挿入されたプレート本体の長孔に,柱の軸方向に対し直交する方向から嵌入されるくさびプレート」との規定はあるものの,プレート本体に設けられる「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面の向きについて明確な規定は置かれておらず,文言上,それらの向きが,水平方向であるとの限定は付されていないといわざるを得ない。しかしながら,他方,本件明細書の発明の詳細な説明においては,「発明の実施の形態」として,「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面の向きが水平方向とされた,図1〜3(甲4-2,甲7)を引用した説明がされている(段落【0010】〜【0015】)上,「発明の効果」として,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」(段落【0022】)ことも記載されているから,少なくとも,上記発明の詳細な説明及び図面を参酌した場合,本願発明1について,その「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面の向きは水平方向であると解する余地があることは一概に否定することができないというべきである。 ただ,審決は,上記説示に続けて,「また,例え,それらに関して限定されても,引用例1,2はいずれも木造建築物が対象であり,引用例2の水平に打設挿入される打込み横長楔の幅を広くする程度のことは,設計的事項にすぎない」(審決謄本3頁最終段落)との判断を示しているから,仮に,審決のこの判断に誤りがなければ,本願発明1の「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面の向きに関する上記解釈の当否は,審決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである。そこで,以下,進んで,審決の容易想到性に関する判断の誤りの有無について検討する。 (2) 容易想到性の判断の誤りについて ア ドリフトピンから打込み横長楔への置換の点について (ア) 審決は,本願発明1と引用発明1との相違点として認定した,「孔に嵌入される部材が,本願発明1では,長孔に嵌入されるくさびプレートであるのに対し,引用例1記載の発明(注,引用発明1)では,孔に打ち込まれるドリフトピンである点」(審決謄本3頁第2段落)について,「引用例1のドリフトピンに替えて引用例2の打込み横長楔を採用することは,当業者が容易になしうることであり,また,その際,楔窓孔を長孔とすることは,設計的事項にすぎない」(同頁第3段落)と判断した。これに対し,原告は,引用例2の打込み横長楔は,基板1と柱とを圧接する目的で打ち込まれるものであり,当該楔の材質が木質系であるとみられること,引用例2のものにおいては,別途,ボルト挿通孔10及び4を設けた上でボルト14を挿通していること等を根拠に,引用例2の打込み横長楔により引き抜き耐力を得ることはできないなどとして,審決の上記判断は誤りである旨主張する。 (イ) そこで検討すると,引用例2(甲3)には,実用新案登録請求の範囲として,「接合金具が,取付け孔を有する基板の上面に柱嵌合板を設立し,その柱嵌合板にボルト挿入通孔と楔窓孔を設けていること,土台が,その上面に上記接合金具をそれの基板の取付け孔に(注,「取付け孔を」とあるのは誤記と認める。)嵌めたアンカーボルトにナットを螺合緊締することによって固着していること,柱が,その下端部の中央に,上記接合金具の柱嵌合板を受入する嵌合溝を,該柱の下面に開口させて掘削形成するとともに,その嵌合溝を横断する状態にしてしかも該柱の対向する両側面に両端を開口させ,かつ,上記接合金具の楔窓孔より大きい口径の楔挿通横孔を貫通形成していること,その柱が,それの上記嵌合溝を,土台に固着している上記接合金具の柱嵌合板に嵌合するとともに,互いに対応している上記楔挿通横孔と楔窓孔に,打込み横長楔を水平に打設挿入することによって,該柱を土台に緊結していることを特徴とする木造建築物における柱設立固定構造」と記載されるのみであり,原告主張に係るボルト14の存在は規定されていないから,当該実用新案登録請求の範囲において規定された考案は,柱に設けられた楔挿通横孔に打設挿通された打込み横長楔により,柱を土台に緊結しているものであって,実施例に記載される「ボルト14」の存在を必要としないものと認めるのが相当である。 なお,上記のとおり,当該実用新案登録請求の範囲においては,柱嵌合板に,打込み横長楔を打設挿入する楔窓孔のほかに,「ボルト挿入通孔」を設けることが規定されているが,そこに挿入されるべき「ボルト」については何ら規定されておらず,それが,「柱を土台に緊結している」機能とどのように関連するものであるかは把握できないから,この点は上記の判断を左右するものではない。 (ウ) 原告は,引用例2(甲3)の打込み横長楔は,基板1と柱とを圧接する目的で打ち込まれるものであり,当該楔の材質が木質系であるとみられることなどからすれば,当該楔によって引き抜き耐力を得ることはできない旨主張する。 しかしながら,引用例2の実用新案登録請求の範囲において,「打込み横長楔を水平に打設挿入することによって,該柱を土台に緊結している」ことが明確に規定されていることは上記(イ)のとおりである上,考案の詳細な説明を見ても,考案の効果として,「柱の嵌合溝を,土台に緊締固着している接合金具の柱嵌合板に嵌合させ,さらに,互いに対応している柱の楔挿通横孔と接合金具の楔窓孔に打込み横長楔を打設挿入することによって,柱を土台に強固に設立固定できる」(段落【0017】)と記載されていることからすれば,引用例2の打込み横長楔が「柱を土台に緊結し」,「柱を土台に強固に設立固定できる」もの,すなわち,引き抜き耐力を有するものであることは明らかというほかはない。また,引用例2の打込み横長楔の材質の点については,そもそも,上記実用新案登録請求の範囲においては何ら限定が付されていない上,原告が引用する,考案の詳細な説明における「この打込み横長楔13の打込みにより,柱a全体が接合金具cの基板1に向かって下降し,その基板1に下面を完全に圧接したとき,上記ボルト挿通孔10と4とが一致するように関係部分を予め設計してある。このように,柱aの下面が基板1に完全圧接したとき,ボルト挿通孔10,4にボルト14を挿通し,ナット15で緊締するとともに,柱aの側面a1,a2の外方に突出している打込み横長楔13の両端を鋸で切断除去する(図5)」(段落【0014】)との記載についても,鋸で切断されるものであるということから,直ちに,その材質が「木質系」のものに限られると解すべき理由はない。さらに,仮に,原告主張のように,当該打込み横長楔が木質系のものであったとしても,従来,木造建築において,引き抜き耐力を担保する部材として,木製の「込み栓」が使用されてきたこと(弁論の全趣旨)を考慮すれば,木質系であることのみによって,当該楔によって引き抜き耐力を得ることはできないとの結論が導かれるわけでもないから,原告の上記主張は採用の限りではないというべきである。 (エ) また,原告は,引用発明1に係る柱固定金具は,緊締部材を具備し,緊締部材によって長さを調節することにより,柱脚の緊締固定ができるようになっていることから,引用発明1においては,ドリフトピンに換えて,引用例2の打込み横長楔を採用する必要性が存在しないとも主張する。 しかしながら,本件においては,引用発明1が,「基端側にナット部が設けられ,適所に孔が穿設され,柱の軸方向に挿入される固定板部材と,前記柱の軸方向に挿入された固定板部材の孔に,柱の軸方向に対し直交する方向から打ち込まれるドリフトピンと,前記固定板部材のナット部に螺合して,前記固定板部材を土台に固着するボルトとからなる柱脚固定金具」(審決謄本2頁第1段落)であることは当事者間に争いがなく,審決において,引用発明1は,緊締部材を有するものとして認定されたものではないから,原告の上記主張は,前提において失当というべきである。仮に,その点をしばらく措き,原告の上記主張が,審決における引用発明1の認定を争う趣旨であると解したとしても,引用例1(甲2)記載の柱脚固定金具は,例えば,特許請求の範囲の請求項1において,「柱脚固定具本体」,「アンカー部材」,「緊締部材」,「固定板部材」及び「連結部材」と規定されるとおり,複数の部材から構成されるものであるところ,そのうち,「固定板部材」を土台に直接ボルトで固着することとすれば,上記引用発明1の構成が得られることは明らかであって,他方,そのような構成を技術的思想として独立に認定することを妨げる事情は認められないから,やはり,原告の主張は採用の限りではない。 (オ) さらに,原告は,@本願発明1と引用発明1とを比較すると,構成及び作用効果において相違があり,特に,本願発明1には,引用例1(甲2)のものにおける柱脚固定具本体がないという点で,構成が全く異なるものであるため,引用例1のものから,本願発明1のようなシンプルな構成を想到することは困難である,A引用例2の楔挿通横孔9は,一般に市販されている角のみ盤によって容易に加工できるが,本願発明1のくさびプレートを挿通させる孔の加工機は存在せず,実際にも,試験に際しては手加工で実施し,加工機の開発も並行して進めている状況にあるから,引用例1のドリフトピンに換えて引用例2の打込み横長楔を採用して,本願発明1を想到することは困難であるなどとも主張する。 しかしながら,上記@の点については,上記(エ)において判示したとおり,当事者間に争いのない,審決認定に係る引用発明1の構成に基づかない主張であり,かつ,審決の引用発明1の認定に誤りは認められないから,採用することができない(なお,作用効果の相違の点については,後記2において検討する。)。また,上記Aの点については,原告の主張は,発明の実施の困難性をいうものにすぎず,そのことが,本願発明1に係る構成の容易想到性の判断に直ちに影響を及ぼすものではないから,採用の限りではないというべきである。 (カ) 以上によれば,本願発明1と引用発明1との相違点について,「引用例1のドリフトピンに替えて引用例2の打込み横長楔を採用することは,当業者が容易になしうることであり,また,その際,楔窓孔を長孔とすることは,設計的事項にすぎない」とした審決の上記判断に誤りはないというべきである。 イ 打込み横長楔の幅の点について (ア) 審決は,引用例2の打込み横長楔の幅の点について,「引用例1,2はいずれも木造建築物が対象であり,引用例2の水平に打設挿入される打込み横長楔の幅を広くする程度のことは,設計的事項にすぎない」(審決謄本3頁最終段落)と判断した。これに対し,原告は,引用例2の打込み横長楔は,幅の小さい「楔」そのものであって,そこには,本願発明1のくさびプレートのような「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」という発想はないから,当該打込み横長楔を横方向に幅広にして,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」ことは,当業者が容易に思い付く設計事項などではないとして,審決の上記判断は誤りである旨主張する。 (イ) しかしながら,仮に,本件明細書(甲4-1,甲7)の特許請求の範囲において,本願発明1に係る「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面の向きが水平方向であることが規定されていると解したとしても,そこでは,「長孔」の長辺及び「くさびプレート」の面が,対象となる柱の横幅に対して,どの程度の幅を有するものであるのかについては,何ら規定されていないというほかはないし,発明の詳細な説明の記載を見ても,この点に関する特段の説明は見当たらないから,本願発明1の構成上,くさびプレートの幅の点については,当業者が実施に当たり適宜調整すべき設計的事項であるとしていることは明らかというべきである。 他方,引用例2(甲3)の打込み横長楔が,垂直方向に比べ,水平方向に幅広のものであることは,「横長楔」という語及び各図面から明らかであるから,横幅の点においても,本件明細書の特許請求の範囲に記載された本願発明1に係る構成を備えたものであるというべきであるし,仮に,それが,本願発明1のくさびプレートが想定するものに比べ,幾分,横幅が狭いものであったとしても,上記のとおり,本願発明1の構成上,くさびプレートの幅については,当業者が実施に当たり適宜調整すべき設計的事項であるとしている以上,引用例2の打込み横長楔の構成を引用発明1に適用するに当たり,楔の幅を横方向に拡げる程度のことは,当業者が実施に当たり適宜調整すべき設計的な事項であるといわざるを得ない。 なお,原告は,上記のとおり,引用例2の打込み横長楔には,本願発明1のくさびプレートのような「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」という発想はない旨主張するが,引用例2の打込み横長楔が,「柱を土台に緊結し」,「柱を土台に強固に設立固定できる」もの,すなわち,引き抜き耐力を有するものであることは上記ア(ウ)のとおりであり,その際,引き抜き耐力が,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」ことによって生じることも自明というほかはないから,原告の主張は失当である。 (ウ) 以上によれば,「引用例2の水平に打設挿入される打込み横長楔の幅を広くする程度のことは,設計的事項にすぎない」とした審決の上記判断に誤りはないというべきである。 (3) 以上のとおり,相違点に係る本願発明の構成につき,容易想到性を肯定した審決の判断に誤りはなく,仮に,原告主張に係る本願発明1の解釈の誤り(上記(1))が認められたとしても,その誤りが審決の結論に影響を及ぼさないことは明らかであるから,原告の取消事由1の主張は,いずれも理由がない。 2 取消事由2(顕著な作用効果の看過)について (1) 審決は,本願発明1の作用効果について,「本願発明1によってもたらされる効果も,引用例1,2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって,格別なものとはいえない」(審決謄本3頁下から第2段落)と判断した。 これに対し,原告は,本願発明1では,土台のボルトにナットを螺合してプレート本体を立設固定するだけであり,くさびプレートが面状体であり,柱の内部において木材繊維を広い面によって縦方向(軸方向)に保持するので,柱の支持力が大きくなる上,柱と土台,胴差,梁などとの緊締力も向上するため,補強の信頼性が向上し,耐震性能も高くなるものであるなどとして,引用発明1のものとの対比において,本願発明1の作用効果は格別である旨主張する。 (2) しかしながら,上記1(2)アのとおり,引用発明1のドリフトピンに換えて,引用例2(甲3)の打込み横長楔の構成を適用することは,当業者が容易に想到し得ることと認められる。そして,上記1(2)イ(イ)のとおり,引用例2の打込み横長楔が,「柱を土台に緊結し」,「柱を土台に強固に設立固定できる」もの,すなわち,引き抜き耐力を有するものであり,その際,引き抜き耐力が,「柱の内部において木材繊維を広い面にて縦方向(軸方向)に保持する」ことによって生じるものであることをも考慮すれば,本件明細書(甲4-1,甲7)記載の「柱の支持力が大きくなるし,柱と土台,胴差,梁などとの緊締力も向上する。従って,補強の信頼性が向上するし耐震性能も高くなる」(段落【0022】)との効果は,引用発明1に引用例2の打込み横長楔の構成を適用することにより生じる当然の効果にすぎないというべきである。また,原告は,引用発明1のものは,本願発明1のものに比べ,地震等には弱い構造であり,補強の信頼性に欠けるものである上,固定板部材はドリフトピンで柱に固定されるので,柱の繊維を破壊し,柱の軸方向に動きやすく,地震時のように大きな負荷が掛かると,繊維を破壊し,繊維間を柱の軸方向に移動し,支持力が低下してしまうおそれがあるなどとも主張する。しかしながら,引き抜き耐力を有する部材として,引用発明1のドリフトピンに換えて,引用例2の打込み横長楔のような面状体の構成を採用すれば,原告主張に係る引用発明1の上記欠点が解消され得ることは,当業者が当然に予測することというほかはない。 さらに,原告は,本願発明1の効果が絶大であることは,甲6論文及び甲8論文からも明らかであると主張するが,当該論文は,本願発明1に係るフォールド金具と山形プレートとを比較したものにすぎず,引用発明1に係る金具との比較をしたものではないから,上記の判断を左右するものではない。 (3) 以上によれば,「本願発明1によってもたらされる効果も,引用例1,2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって,格別なものとはいえない」との審決の判断に誤りはなく,原告の取消事由2の主張も理由がない。 3 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
---|---|
裁判官 | 古城春実 |
裁判官 | 早田尚貴 |