関連審決 | 不服2002-6040 |
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関連ワード | 進歩性(29条2項) / 容易に発明 / 一致点の認定 / 相違点の判断 / 周知技術 / 慣用技術 / 技術常識 / 発明の詳細な説明 / パリ条約 / 優先権 / 実質的に同一 / 参酌 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 交換 / 構成要件 / 発明の範囲 / 拒絶査定 / 請求の理由 / 前置審査 / 拒絶理由通知 / 請求の範囲 / 変更 / 国際出願 / |
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事件 |
平成
16年
(行ケ)
118号
審決取消請求事件
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原告X 訴訟代理人弁理士 酒井正己 被告 特許庁長官小川洋 指定代理人 井関守三,立川功,大橋信彦,井出英一郎,橋本正弘 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2005/02/08 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-6040号事件について平成15年11月19日にした審決を取り消す。」との判決。 |
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事案の概要
本件は,特許出願をした原告が,拒絶査定を受けたので,査定に対する審判を請求したところ,審判の請求は成り立たない旨の審決があったため,審決の取消しを求めた事案である。 1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は,名称を「多機能モジュラー・コードレス電話」とする発明について,平成4年12月16日(パリ条約による優先権主張1991年12月16日(DE)ドイツ連邦共和国),国際出願した。 (2) 原告は,平成13年3月7日付けで,請求項1,4,5,7ないし15,17ないし21及び23について拒絶理由の通知(甲4)を受けたので,同年9月20日,手続補正書(甲5)により明細書を補正した。 (3) 原告は,平成13年12月19日付けで,請求項1ないし5,7ないし15,17ないし22,25及び26について拒絶査定(甲7)を受けたので,平成14年4月9日,拒絶査定に対する審判を請求し(不服2002-6040号事件として係属),同年5月1日,手続補正書(甲9)により明細書を補正した。これにより,上記審判の請求は,特許法162条の規定による前置審査(審査官による審査)となった。 (4) 原告は,平成14年6月13日付けで,請求項1ないし25について拒絶理由の通知(甲11)を受けたので,同年12月17日,手続補正書(甲12)により明細書を補正した。 (5) 特許庁は,平成15年5月12日付けで,原告に対し,審査前置を解除する旨を通知し,同年11月19日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(甲1)をし,同年12月2日,その謄本を原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載 (1) 特許出願時のもの(甲2,3)「1.収容ケース12,キー16の形状をした電話番号を入力するための入力機器,音響再生機器14及び音声入力機器を有する受話機において,計算機20の形をした情報処理のための付加機器が受話器に結合され,受話器10の一つの広い面15,17上の制御機器16,18,27によって操作される受話器10から成る多機能コードレス電話において,少なくとも一つの付加機能機器が箱形モジュール30,40の中に収容され,該箱形モジュールは,収容ケース12を縦に延長するように受話器10に差し込まれて収容ケース12とほぼ対応して電気的に結合するものであることを特徴とする多機能コードレス電話。 2.計算機20は電話番号を入力するために備えられた入力機器16によって操作されるものであることを特徴とする請求項1記載の電話。 3.計算機20は受話器10の背面17上のキー27によって操作されるものであることを特徴とする請求項1記載の電話。 4.制御機器がいくつかの多機能キー18をキー面16に加えて有するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の電話。 5.受話器10の収容ケース12が非直線状であり,背面17が凸状であることを特徴とする請求項1から4記載の電話。 6.付加機能機器40が折りたたみ式の太陽電池機器42であることを特徴とする請求項1から5記載の電話。 7.付加機能機器30,40の一つがデータ記録のための又はコードレス情報やデータ修正に対する中間蓄積のためのメモリー機器であることを特徴とする請求項1から6記載の電話。 8.付加機能機器30,40の一つが遠隔データ伝達機器,特にモデムを有することを特徴とする請求項1から7記載の電話。 9.付加機能機器30,40の一つがラジオ及び/又はテレビ放送受信機であることを特徴とする請求項1から8記載の電話。 10.付加機能機器30,40の一つがプリンター又はファクシミリであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の電話。 11.付加機能機器30,40の一つが映像記録機器であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の電話。 12.付加機能機器30,40の一つが,例えばドア開放やスイッチのオン,オフ装置のための遠隔制御装置であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の電話。 13.付加機能機器30,40の一つが警報機器であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の電話。 14.付加機能機器30,40の一つがラジオ調節時計であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の電話。 15.付加機能機器30,40の一つが計算機20によって制御される予約帖であることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の電話。 16.付加機能機器30,40の一つが遭難信号送信機であることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の電話。 17.付加機能機器30,40の一つがゲームコンピューターであることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の電話。 18.付加機能機器30,40の一つが距離計であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の電話。 19.データ及び制御情報の入力が音声によって行われることを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載された電話。 20.データ及び制御情報の出力がディスプレイ機器24,25上に表示されることを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載された電話。 21.1枚の多機能ディスプレイ24が電話及び計算の操作のために備えられていることを特徴とする請求項20記載の電話 22.電池が載置された複合機器付きの中央局で特徴づけられる請求項1から21のいずれかに記載の電話。 23.受話器10の上部領域の回転クリップ46で特徴づけられる請求項1から22のいずれかに記載の電話。 24.クリップ46が角度つきのデザインを有し,アーム48によって受話器10の上部の横の側面を形成し,他のアーム50が発生部14の領域に備えられていることを特徴とする請求項23記載の電話。 25.円形の中央開口部が発生部14の領域にクリップ46の中に設けられていることを特徴とする請求項24記載の電話。 26.請求項1から25のいずれかに記載のコードレス電話とともに用いられるモジュールにおいて,モジュール30,40はプラグ・イン接触型で完全に容器に収納され,制御機器16,18,27で制御され,受話器10の電源より電気が供給されることを特徴とするモジュール。 27.少なくとも2個のモジュール30,40が合体されて1個のユニットを形成していることを特徴とする請求項26記載のモジュール。」 (2) 平成13年9月20日付け手続補正書による補正後のもの(甲5) この補正は,(1)のうち,請求項1を次のとおり変更し(下線部分が変更した箇所である。),また,請求項22を削除するとともに,以下の請求項につき請求項番号を繰り上げたものである。 「1.収容ケース(12),キー(16)の形状をした電話番号を入力するための入力機器,音響再生機器(14)及び音声入力機器(22)を有するとともに,その内部 に計算機(20)の形をした情報処理のための付加機器が組込 まれており ,その一つの広い面(15,17)上の制御機器(16,18,27)によって操作される受話器(10)を含む多機能コードレス電話であって ,少なくとも一つの付加機能機器が箱形モジュール(30,40)の中に収容され,該箱形モジュール(30,40)は,プラグ(32 )の位置 まで 箱内 に収容 され ,収容 ケース 12 の断面 とほぼ 対応 する 断面 を有し,収容 ケース 12 の縦方向 の長さの 延長部 として 受話器 10 にプラグ (32 )で接続 される ことを特徴とする多機能コードレス電話。」 (3) 平成14年5月1日付け手続補正書による補正後のもの(甲9) この補正は,(2)のうち,請求項1を次のとおり変更し(下線部分が変更した箇所である。),また,請求項の項番号の表示を「1.」から「【請求項1】」のように変更したものである。 「【請求項1】 収容ケース(12),キー(16)の形状をした電話番号を入力するための入力機器,音響再生機器(14)及び音声入力機器(22)を有するとともに,その内部に計算機(20)の形をした情報処理のための付加機器が組込まれており,その一つの広い面(15,17)上の制御機器(16,18,27)によって操作される受話器(10)を含む多機能コードレス電話であって,少なくとも一つの付加機能機器が箱形モジュール(30,40)の中に収容され,該箱形モジュール(30,40)は,プラグ(32)の位置まで箱内に収容され,制御機器(16 ,18 ,27 )によって 制御 され ,受話器 10 の電源 より 電気 が供給 され ,収容ケース12の断面とほぼ対応する断面を有し,収容ケース12の縦方向の長さの延長部として受話器10にプラグ(32)で接続されることを特徴とする多機能コードレス電話。」 (4) 平成14年12月17日付け手続補正書による補正後のもの(甲12) この補正は,(3)のうち,請求項1を次のとおり変更した(下線部分が変更した箇所である。)ものである。 「【請求項1】 収容ケース(12),キー(16)の形状をした電話番号を入力するための入力機器,音響再生機器(14)及び音声入力機器(22)を有するとともに,その内部に計算機(20)の形をした情報処理のための付加機器が組込まれており,その一つの広い面(15,17)上の制御機器(16,18,27)によって操作される受話器(10)を含む多機能コードレス電話であって,少なくとも一つの付加機能機器が箱形モジュール(30,40)の中に収容され,該箱形モジュール(30,40)は,プラグ(32)の位置まで箱内に収容され,制御機器(16,18,27)によって制御され,受話器(10 )の電源より電気が供給され,収容ケース12の断面とほぼ対応する断面を有し,収容ケース12の縦方向の長さの延長部として受話器10の長さ方向 の端面 にプラグ(32)で接続されることを特徴とする多機能コードレス電話。」 3 審決の理由の要点 審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本願発明(平成14年12月17日付け補正に基づく請求項1に記載の発明)は,引用例1に記載された発明に,引用例2,3に記載の発明及び周知技術,慣用技術を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というのである。 (1) 引用例 前置審査において平成14年6月13日付けで通知された拒絶理由に引用された特開平3-109891号公報(平成3年5月9日特許庁発行,以下「引用例1」という。本訴甲25。),実願昭63-51044号(実開平1-153759号)のマイクロフィルム(平成1年10月23日特許庁発行,以下「引用例2」という。本訴甲27。),及び特開平3-283925号公報(平成3年12月13日特許庁発行,以下「引用例3」という。本訴甲22。)には,それぞれ,次の事項が記載されている。 [引用例1]A.「〔従来の技術〕 情報化社会の進展と共にポケットベルや携帯用無線電話(セルラー方式の無線電話)が普及して来ている。」(1頁右下欄15〜18行)B.「本発明は上記の点に鑑みなされたもので,その目的とするところは,映像情報の撮影・伝送,或いは映像情報の受信・映像表示を行うことの出来る携帯用無線電話装置を提供することにある。」(2頁右上欄4〜7行)C.「第1図及び第2図は本発明の1実施例による携帯用無線電話装置に係り,第1図はその斜視図,第2図は同ブロック図である。 図において,1は携帯用無線電話本体で,大まかに言って,本体機能部10と映像表示部20と撮像部30とが,機械的に一体に結合されかつ電気的に接続されたものとなっている。」(2頁左下欄10〜16行及び第1,2図参照)D.「上記本体機能部10は,スピーカ3,マイク4,キーボタン(キー入力手段)6,アンテナ5と接続された送受信回路11,主制御回路12,映像系制御回路13等を具備しており,主制御回路12は,スピーカ3,マイク4,キーボタン6,映像系制御回路13,並びに前記撮像部30の信号処理回路33に接続されている。」(2頁左下欄16行〜右下欄2行及び第1,2図参照)E.「また,前記撮像部30は,レンズ系31,CCD等の撮像素子32,信号処理回路33,制御回路34等を具備し,撮像素子32によって電気信号として取込んだ各種映像情報を,信号処理回路33を介して本体機能部10に送出するようになっている。」(2頁右下欄7〜12行参照)F.「なお,撮像部30による撮影のための制御は,本体機能部10のキーボタン6の操作によって行うようにしても,或いは撮像部30自体に設けた手動操作手段で行うようにしてもよい。」(2頁右下欄12〜15行参照)G.「第4図は本発明の更に他の実施例を示しており,該実施例においては,撮像部30が携帯用無線電話本体1と着脱自在に構成されており,撮像部30を携帯用無線電話本体1に機械的に一体化した時には,両者1,30はコネクタ42(一方は図示せず)によって電気的に接続されて,前記第1,2図に示した実施例と全く同等に機能する。」(3頁右上欄4〜10行及び第1,4図参照。) そして,引用例1に記載の携帯用無線電話が,部品を収容する収容ケースを有することは,技術常識に鑑みて明らかである。 また,引用例1に記載の携帯用無線電話は,通常の電話の機能に加えて撮像機能をも有しているので,付加機能付き携帯用無線電話である。 よって,上記A〜Gの記載事項,及び第1,2,4図を参照すると,引用例1には,次の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 収容ケース,キーボタン,スピーカ及びマイクを有するとともに,キーボタンによって操作される携帯用無線電話本体を含むセルラー方式の付加機能付き携帯用無線電話であって,レンズ系,CCD等の撮像素子,信号処理回路及び制御回路が撮像部を成し,該撮像部は,キーボタンによって制御され,収容ケースの長さ方向の端部において,携帯用無線電話本体と着脱自在に構成され,携帯用無線電話本体に機械的に一体化したときには,携帯用無線電話本体とコネクタで電気的に接続されることを特徴とするセルラー方式の付加機能付き携帯用無線電話。 [引用例2]A.「この考案は,複数のサービス機能をキー表示とキー操作によって選択的に実現する携帯電話機に関するものである。」(明細書1頁13〜15行参照)B.「第4図(a)は携帯電話機の電源スイッチ20をオンにした時のLCD13によるスイッチ部17の表示内容を示し,必要な機能表示部分を押すことにより,つまり電話機能,電卓機能,電話帳機能のいずれかを選択して指で押すことにより,タッチパネル14が作動し,第4図(b),(c),(d)のいずれかの操作機能に関するキーが表示される。」(明細書7頁9行〜15行及び第1,4図参照)[引用例3]A.「第1図はこの発明を適用した装置の斜視図であり,1はコードレス電話子機,2はこのコードレス電話子機に接続されるハンディコピー機である。コードレス電話機はその底面部に接続用コネクタ11および12を有しており,前面部には通話キー13,切りキー(無線回線切断用キー)14,押しボタンダイヤル15等を有している。ハンディコピー機2はその前面に読み込みキー21,クリアキー22,送信キー23,受信キー24,コピーキー25,受信データ等を紙に記録する記録部26を有し,底面部に読み取りセンサ27を有し,上面には第2図に示すように,接続用のコネクタ28および29を,また内部にCPU210,メモリ211を有している。」(2頁右上欄2〜15行及び第1図参照。) (2) 対比 本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると,引用例1記載の発明における「キーボタン」,「スピーカ」,「マイク」,「携帯用無線電話本体」,「レンズ系,CCD等の撮像素子,信号処理回路及び制御回路」はそれぞれ,本願発明における「キー(16)の形状をした電話番号を入力するための入力機器」,「音響再生機器(14)」,「音声入力機器(22)」,「受話器(10)」,「付加機能機器」に相当する。 そして,引用例1記載の発明における「キーボタン」は,明らかに携帯用無線電話本体を操作するものであるから,本願発明の受話器を操作する「制御機器(16,18,27)」に相当する。 また,引用例1記載の発明における「撮像部」は,撮像機能を提供するためのまとまった部分であるから,本願発明の「モジュール」に相当する(「モジュール」とは,「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまとまった部分」(広辞苑第5版)である)。 さらに,引用例1記載の発明における,撮像部は,携帯用無線電話本体と着脱自在に構成され,携帯用無線電話本体に機械的に一体化したときには,携帯用無線電話本体とコネクタで電気的に接続される,という構成は,撮像部を携帯用無線電話本体に接続するための接続部材を有していることを示しており,これは,本願発明における,付加機能機器を受話器(10)に接続するプラグ(32)に対応している。 したがって,本願発明と引用例1記載の発明は, キー(16)の形状をした電話番号を入力するための入力機器,音響再生機器(14)及び音声入力機器(22)を有するとともに,制御機器(16,18,27)によって操作される受話器(10)を含む電話であって,少なくとも一つの付加機能機器がモジュールを成し,該モジュールは,制御機器(16,18,27)によって制御され,受話器(10)に,長さ方向の端部において,接続部材によって接続されることを特徴とする電話である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1:本願発明においては内部に計算機の形をした情報処理のための付加機器が組み込まれているのに対し,引用例1記載の発明においては計算機の形をした情報処理のための付加機器が組み込まれていない点。 相違点2:本願発明の制御機器は受話器の広い面上に設けられているのに対し,引用例1記載の発明においては,操作キーなどの制御機器がどのような面上に設けられているのかについて明らかではない点。 相違点3:本願発明においては電話に複数の機能が付加された多機能であるのに対し,引用例1記載の発明においては電話に撮像機能という一つの機能が付加された付加機能付きである点。 相違点4:本願発明がコードレス電話であるのに対し,引用例1記載の発明はセルラー方式の携帯用無線電話である点。 相違点5:本願発明においては付加機能機器が箱形モジュールの中に収容され,該箱形モジュールは接続部材であるプラグの位置まで箱内に収容されているのに対し,引用例1記載の発明においては付加機能機器としての撮像部と接続部材の物理的配置がどのようになっているのか明らかではない点。 相違点6:付加機能機器を受話器本体に接続するための接続部材が,本願発明においてはプラグであるのに対し,引用例1記載の発明においては,携帯用無線電話本体と着脱自在に構成され,携帯用無線電話本体に機械的に一体化するための部材および電気的に接続されるコネクタである点。 相違点7:本願発明のモジュールは,収容ケースの断面とほぼ対応する断面を有し,収容ケースの縦方向の長さの延長部として受話器の長さ方向の端面に接続されるのに対し,引用例1記載の発明の撮像部は,収容ケースの長さ方向の端部において,携帯用無線電話本体と機械的に一体化するように結合されるものであるが,その断面がどのような形状であるのか明らかではない点。 相違点8:本願発明のモジュールは受話器の電源より電気が供給されているのに対し,引用例1記載の発明の撮像部はどこから電気が供給されているのか明らかではない点。 (3) 審決の判断 以下,上記各相違点について検討する。 [相違点1] 引用例2には,携帯電話機に電卓機能を持たせることについて開示されている。 電卓機能は計算機能の一種であり,計算処理は一種の情報処理であるから,電話の内部に計算機の形をした情報処理のための付加機器を組込むことは,引用例2に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点2] 携帯電話機,コードレス電話機において,筐体の一つの広い面上に操作キーを設けることは周知であるので,操作キーなどの制御機器を受話器の一つの広い面上に設けることは,格別なこととは認められない。 [相違点3] 電話機に種々の機能を付加したところの,いわゆる多機能電話は周知であるから,引用例1記載の付加機能付き電話に,さらに電卓機能などの機能を付加して,多機能電話とすることに格別の困難性は存在しない。 [相違点4] 可搬式の小型電話としては,引用例1記載の発明の如きセルラー方式の携帯用無線電話もコードレス電話も共に周知のものである。セルラー方式の携帯用無線電話もコードレス電話も,電波によって無線にて通信するよう構成されるものであるから,機能の点において両者は類似したものである上に,両者は一般的にハンドセットに操作キーを付した構造となっており,形状の点においても両者は類似している。両者の機能及び形状・構造の類似性に鑑みれば,一方で考えられた技術を他方に転用することは当業者であれば普通に考えることであって,セルラー方式の携帯用無線電話の形状や付加機能を,コードレス電話に転用することには,格別の技術的困難性が存在しない。 [相違点5] 電子機器を箱形のケースに収容することは周知であり,コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設けることも周知であるので,付加機能機器を箱形のケースの中に収容し,その接続部材であるプラグを箱形のケースの外面側に設けることにより,本願発明のごとく「付加機能機器が箱形モジュールの中に収容され,該箱形モジュールはプラグの位置まで箱内に収容され」るように構成することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 [相違点6] 接続部材としてプラグは周知であり,「プラグインモジュール」と呼ばれるごとく,モジュールを本体に接続するためにプラグを用いることも周知(必要であれば,実願昭59-101917号(実開昭61-18691号)のマイクロフィルムの第1,2,3図及びマイクロフィルムの明細書第1頁第16から18行及び第3頁第9〜12行,又は,米国特許第4845751号明細書第1,2,3図,を参照。)である。 してみれば,付加機能機器としてのモジュールを,受話器本体に接続するための接続部材としてプラグを採用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 [相違点7] 引用例1記載の発明において,付加機能機器である撮像部は,携帯用無線電話本体の長さ方向端部に接続されている。 そして,引用例3には,コードレス電話機の底面部,すなわちコードレス電話機の縦方向の長さの延長部としてコードレス電話機の長さ方向の端面に,付加機能機器であるハンディコピー機の上面部を接続することが開示されている。 着脱自在に構成された付加機能モジュールを本体に接続するに際し,使用時の邪魔にならないよう構成することは,当業者が当然に追求すべき課題の一つである上に,携行用機器ならばなおのことこの課題は追求されるべきである。 使用時の邪魔にならないよう構成するためには,接続時にモジュールと本体との境界に突起部が生じないよう構成すべきであることは一般常識であり,そのために本体とモジュールとの断面形状を一致させることは慣用されていることである。 加えて,着脱自在に構成されたモジュールを本体に接続する場合に,デザイン面から連続性をもたせることも,慣用の設計である。 してみると,引用例1記載の発明と引用例3記載の発明とは,付加機能機器としてのモジュールを受話器の長さ方向の端部に接続する電話である点で共通しているのであるから,引用例1記載の発明における撮像部と収容ケースとを結合するときの形状として,引用例3に記載のごとく,付加機能機器としての撮像部を収容ケースの縦方向の長さの延長部として受話器の長さ方向の端面に接続するような構成を採用すると同時に,上記慣用の設計の如く撮像部の断面を収容ケースの断面とほぼ対応するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点8] 電子機器において,機能を付加するためのアダプタを電子機器本体に着脱可能に取り付けるよう構成するとともに,前記アダプタが本体に取り付けられたときには,そのアダプタの電源を本体から供給するように構成することは周知(必要ならば,特開平2-266668号公報(特に,第1〜5図),及び特開平2-202781号公報(特に,第1〜3図)を参照。)であるので,引用例1記載の発明において撮像部への電源を本体の携帯無線電話から供給するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。 上記で検討したごとく,相違点1〜8はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。 (4) 審判請求人の主張について 審判請求人は平成14年12月17日付け意見書にて,前記拒絶理由通知書において挙示した各引用例に記載された発明を組み合わせることに関して,「本件発明1の前記構成に到達するには,引用例5記載のハンディコピー機2を,まず引用例4(審決注:特表平3-505659号公報,本訴甲16)の記載に基づいて,電源を本体から供給を受けるような構造のものとし,次いで,このように想到されたものを引用例1記載のものにおいて,撮像部30に替えて適用することが必要です。 これは,すなわち,2段階の容易であり,このような容易論を許容すれば,容易に想到できる発明の範囲が際限なく広がります。請求人はこのような容易論に基づいて本件発明1が当業者が容易に想到し得たとされる審査官殿の認定には到底承服することができません」と主張している。(上記審判請求人の主張における「引用例1」及び「引用例5」は,それぞれ本審決の「引用例1」及び「引用例3」に対応している)。 そこで,上記主張について検討する。 引用例1記載の発明において,付加機能機器としての撮像部と携帯無線電話本体の接続構造と,撮像部への電源供給との間には組合せの阻害要因はなく,当業者が上記接続構造を検討する際には,機械的な接続と電気的な接続の両方を同時に考慮することが必要であるから,審判請求人が述べるように2段階の容易にならずに,上記相違点7及び相違点8における検討のごとく,引用例1記載の発明に,引用例3記載の発明,及び周知技術を同時に組み合わせることができる。 したがって,審判請求人の主張には根拠がなく採用することはできない。 (5) むすび 上記のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明に,引用例2,3に記載の発明及び上記周知技術,慣用技術を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 |
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当事者の主張の要点
1 原告主張の審決取消事由 (1) 取消事由1(手続違背) 審決は,拒絶査定に瑕疵があるにもかかわらず,これを取り消して,さらに審査に付することなく自判し,しかも,多数ある請求項のうち請求項1についてのみ判断して,審判の請求は成り立たないとしたが,誤りである。 ア 原告は,平成13年12月19日付けで,請求項1ないし5,7ないし15,17ないし22,25及び26(同年9月26日付け補正後のもの)に関する拒絶理由に基づき拒絶査定を受けたが,このうちの請求項2,3,25及び26(上記補正前の請求項2,3,26及び27)については,同年3月7日付け拒絶理由通知では拒絶の理由がないとされていた。そうすると,請求項1ないし3,25及び26については,拒絶理由を通知しないで拒絶査定がされたものであって,拒絶査定には瑕疵がある。このような場合には,特許法160条1項の規定に従い,拒絶査定を取り消して,さらに審査に付すのが相当である。しかるに,審決は,拒絶査定に瑕疵があることについて何ら言及することなく,審判の請求は成り立たないとしているから,誤りである。 イ また,前置審査における平成14年6月13日付け拒絶理由通知は,請求項1ないし25(同年5月1日付け補正後のもの)をひとまとめにしており,どの請求項に係る発明と引用例1記載の発明とを対比して,一致点及び相違点をどのように認定し,相違点についてどのように判断したのか明らかでない。審決は,このような拒絶理由通知に基づき,かつ,多数ある請求項のうち請求項1についてのみ判断しているのであって,あまりにも不適切である。 (2) 取消事由2(一致点の認定の誤り) 審決は,「引用例1記載の発明における「撮像部」は,撮像機能を提供するためのまとまった部分であるから,本願発明の「モジュール」に相当する(「モジュール」とは,「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまとまった部分」(広辞苑第5版)である)。」と認定したが,誤りである。 ア モジュールとは,日刊工業新聞社発行の「英和和英機械用語図解辞典-第2版-」(甲32)に,「モジュール 基本単位の意味.・・・A標準化した1つの組立部品(ユニット)の単位のことをモジュールという。」と記載され,「JIS工業用語大辞典第2版」(甲33)に,「モジュール システムを構成する,一定機能をもつ標準化された要素」と記載されているように,標準化された基本単位である。 特許請求の範囲の請求項1には,「少なくとも一つの付加機能機器」が,a「箱形モジュール(30,40)の中に収容され」,b「箱形モジュール(30,40)」は,プラグ(32)の位置まで箱内に収容され」,c「制御機器(16,18,27)によって制御され」,d「受話器(10)の電源より電気が供給され」,e「収容ケース12の断面とほぼ対応する断面を有し」,f「収容ケース12の縦方向の長さの延長部として受話器10の長さ方向の端面にプラグ(32)で接続され」との構成を有することが記載されているのであって,本願発明は,付加機能機器が,上記のaないしeの共通する構成を備え,かつ,それがモジュール化されているため,1台の受話器に対して互換可能に設けられることを構成要件としている。そして,明細書の発明の詳細な説明にも,モジュールについて,1台の受話器に対し,いくつもの付加機能機器がそれぞれ互換可能に接続される形態を有するものとして説明されているのである。 イ これに対し,引用例1記載の発明は,携帯用無線電話本体に「撮像機能を提供するためのまとまった部分」である撮像部を着脱自在に取り付けたというだけのものであって,そこには,撮像部を他の付加機能機器と同様に標準化して,1台の受話器に標準化された多種類の付加機能機器を取替可能にするという技術思想は全く開示されていない。 ウ したがって,引用例1記載の発明の撮像部は,本願発明のジュールに相当しない。 (3) 取消事由3(相違点の判断の誤り) ア 相違点5の判断の誤り 審決は,相違点5について,「電子機器を箱形のケースに収容することは周知であり,コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設けることも周知であるので,付加機能機器を箱形のケースの中に収容し,その接続部材であるプラグを箱形のケースの外面側に設けることにより,本願発明のごとく「付加機能機器が箱形モジュールの中に収容され,該箱形モジュールはプラグの位置まで箱内に収容され」るように構成することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。」と判断したが,誤りである。 引用例1記載の発明の撮像部は,「電子機器を箱形のケースに収容する」という構成を備え,また,「コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設ける」という構成を備えているが,引用例1には,プラグで接続する旨の記載はない。したがって,「電子機器を箱形のケースに収容すること」及び「コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設けること」が周知技術であるとしても,このような周知技術を引用例1記載の発明に適用して,箱形モジュールがプラグの位置まで箱内に収容されるように構成することは導き得ない。 イ 相違点6の判断の誤り 審決は,相違点6について,「付加機能機器としてのモジュールを,受話器本体に接続するための接続部材としてプラグを採用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。」と判断したが,誤りである。 引用例1記載の発明における撮像部が本願発明におけるモジュールに相当しないことは,上記(2)に述べたとおりである。また,審決が例示した実願昭59-101917号(実開昭61-18691号)のマイクロフィルム(甲28)及び米国特許第4845751号明細書(甲29)は,いずれもプラグインモジュールに関するものではない上,前者はビデオカメラに対してマイクロフォンをプラグで接続するというものであり,後者は音響装置の受信装置に対して発信器をプラグで接続するというものであって,いずれも携帯電話とは無関係の技術である。しかも,これらマイクロフォン及び発信器は,本願発明の付加機能機器には該当しないし,また,甲28又は29には,マイクロフォン或いは発信器をモジュール化することについての記載もない。したがって,上記周知例によってプラグ接続することが周知であるといえるとしても,付加機能機器をモジュール化して受話器にプラグで接続可能としてコードレス電話を多機能化することは,前記周知技術とは関係がない。 ウ 相違点7の判断の誤り 審決は,「着脱自在に構成された付加機能モジュールを本体に接続するに際し,使用時の邪魔にならないよう構成することは,当業者が当然に追求すべき課題の一つである上に,携行用機器ならばなおのことこの課題は追求されるべきである。使用時の邪魔にならないよう構成するためには,接続時にモジュールと本体との境界に突起部が生じないよう構成すべきであることは一般常識であり,そのために本体とモジュールとの断面形状を一致させることは慣用されていることである。」と認定し,「引用例1記載の発明における撮像部と収容ケースとを結合するときの形状として,引用例3に記載のごとく,付加機能機器としての撮像部を収容ケースの縦方向の長さの延長部として受話器の長さ方向の端面に接続するような構成を採用すると同時に,上記慣用の設計の如く撮像部の断面を収容ケースの断面とほぼ対応するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである。」と判断したが,誤りである。 従来,コードレス電話の技術において,多機能を持たせるために付加機能機器をモジュール化するという技術思想はなかったし,各引用例にこのような技術思想は開示されていない。当然の課題であり,一般常識であるというのであれば,公知例として存在しているはずであるが,前置審査の拒絶理由には,そのような課題があることや技術常識であることは示されていない。審決は,後知恵で本件発明を評価しているにすぎないのであって,審決の上記認定,判断は,裏付けを欠くものである。 エ 相違点8の判断の誤り 審決は,相違点8について,「機能を付加するためのアダプタを電子機器本体に着脱可能に取り付けるよう構成するとともに,前記アダプタが本体に取り付けられたときには,そのアダプタの電源を本体から供給するように構成することは周知であるので,引用例1記載の発明において撮像部への電源を本体の携帯無線電話から供給するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである」と判断したが,誤りである。 引用例1には,付加機能機器をモジュール化することについては記載がないから,引用例1記載の発明の撮像部に上記の周知技術を適用しても,モジュール化されている(すなわち標準化された形態を有する)付加機能機器への電源を本体の携帯無線電話から供給するという構成に想到することはできない。 2 被告の反論 (1) 取消事由1(手続違背)に対して 特許法158条には,「審査においてした手続は,第121条第1項〔拒絶査定不服の審判〕の審判においても,その効力を有する。」と規定されており,この審査には前置審査も含まれる。そして,本件において,仮に拒絶査定に瑕疵があるとしても,その後の前置審査において新たな拒絶理由が通知され,原告に意見書及び補正書を提出する機会が与えられているのであって,その後の手続は特許法の規定に従っているのであるから,前置審査において通知した拒絶理由に基づいて拒絶査定を維持した審決の手続に瑕疵はない。 (2) 取消事由2(一致点の認定の誤り)に対して ア 明細書の特許請求の範囲の請求項1には,「少なくとも一つの付加機能機器が箱形モジュール(30,40)の中に収容され」と記載されているにとどまり,「標準化」とか「互換可能」との明確な文言の記載はない。そして,「モジュール」という用語は,通常,「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまとまった部分」(広辞苑第5版)と理解されるところ,原告が主張するように,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,これを限定的に解釈しなければならないような格別な理由は見当たらない。 イ また,仮に,本願発明のモジュールが「標準化」され「互換性」を有するもののみを指し,引用例1記載の発明の撮像部が,直接的には本件発明のモジュールに対応していないと解釈されたとしても,着脱可能な「機能的にまとまった部分」を「標準化」し「互換性」を有するものとすることは,極々ありふれた一般的な技術であり,機器を設計するに当たり,当業者が通常採用する常套手段にすぎないから,引用例1記載の発明の撮像部と,本願発明の「標準化」し「互換性」を有するモジュールとの間に実質的な相違はない。したがって,引用例1記載の発明の撮像部は,本願発明のジュールに相当する。 (3) 取消事由3(相違点の判断の誤り)に対して ア 相違点5の判断の誤りに対して 引用例1記載の発明は,付加機能機器としての撮像部がケースの内部に収容されており,本体との接続のために,そのケースの外面側において機械的に接続部と電気的な接続部を備えている。そして,撮像部などの電子機器を箱形のケースに収容することは周知であり,かつ,コネクタやプラグ等の他の機器との接続部材をケースの外面側において設けることは周知であり,さらに,後記イのとおり,機械的な接続と電気的な接続を行う接続部材としてのプラグは,当業者にとって周知であるから,ケースとして箱形を選択し,本体との接続部材として周知のプラグを選択することにより,箱形モジュールがプラグの位置まで箱内に収容されるように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。 イ 相違点6に対して 引用例1記載の発明における撮像部が本願発明におけるモジュールに相当することは,上記(2)に述べたとおりである。また,プラグにより機械的な接続と電気的な接続を行うことは,特定の機器の分野に限定されることなく,広く一般的に採用されている技術であるから,このプラグによりモジュールを接続するという技術を,携帯電話やコードレス電話において,付加機能機器モジュールの接続に採用することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。 ウ 相違点7に対して 引用例1記載の発明における撮像部が本願発明におけるモジュールに相当するものであるところ,引用例1には,携帯無線電話において,撮像部を本体に着脱自在に構成することが開示されているから,本体に着脱自在に構成する機器の断面を,本体の収容ケースの断面にほぼ対応するように構成することは,当業者にとって自明である。 エ 相違点8に対して 引用例1記載の発明における撮像部が本願発明におけるモジュールに相当するものであるから,引用例1記載の発明において,撮像部に,本体の携帯無線電話から電源を供給するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。 |
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当裁判所の判断
1 取消事由1(手続違背)について (1) 取消事由1のアについて ア 第2,1の事実に,甲4ないし15,乙1,2及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。 (ア) 審査官は,平成13年3月7日付けで,原告に対し,請求項1,4,5,7ないし15,17ないし21及び23について,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないなどとして,拒絶理由(甲4)を通知した。 原告は,同年9月20日,手続補正書(甲5)により特許請求の範囲を含む明細書を補正するとともに,意見書(甲6)を提出した。 (イ) 審査官は,平成13年12月19日付けで,「この出願(本件出願)については,平成13年3月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものである。なお,意見書及び手続補正書の内容を検討したが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。」として,拒絶査定(甲7)をした。なお,そこには,備考として,上記補正後の請求項1ないし5,7ないし15,17ないし22,25及び26について,原告が意見書で主張した引用例1との相違点は周知技術であるとの判断が付されている。 原告は,平成14年4月9日,拒絶査定に対する審判を請求し,その日から30日以内である同年5月1日に,手続補正書(甲9)により特許請求の範囲を含む明細書を補正するとともに(その結果,上記審判の請求は,特許法162条の規定による前置審査(審査官による審査)に回った。),手続補正書(甲10)により請求の理由を補充した。原告は,手続補正書(甲10)の中で,審査官が請求項2,3,25及び26についても拒絶査定をしていることを取り上げ,拒絶査定が平成13年9月20日付け手続補正書による補正前の請求項26及び27(上記補正後の請求項25及び26)に対しても拒絶理由を提示しているという誤った前提に基づくものであると解釈せざるを得ないので,拒絶査定は取り消されるべきであると述べた。 (ウ) 審査官は,平成14年6月13日付けで,平成14年5月1日付け補正後の請求項1ないし25に係る発明について,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとして,拒絶理由(甲11)を通知した。 原告は,同年12月17日,手続補正書(甲12)により特許請求の範囲を含む明細書を補正するとともに,意見書(甲13)を提出した。 (エ) 審査官は,平成15年5月1日付けで,特許庁長官に対し,「請求項1〜25に係る発明は,平成14年6月13日付け拒絶理由通知書に記載した理由により,当業者が容易に想到し得たものと認められる。」として,報告(乙1)した。 特許庁長官は,平成15年5月12日付けで,審判請求事件について,今後は審判官の合議体が行う旨を原告に通知(甲14)し,同年10月15日付けで,合議体を構成する審判官等の氏名を原告に通知(乙2)した。 (オ) 審判合議体は,平成15年10月31日付けで,審判請求事件の審理が終結した旨を通知(甲15)し,同年11月19日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をした。 イ 平成13年9月20日付け手続補正書による補正前の請求項2,3,26及び27は,いずれも請求項1を引用しているので,上記手続補正書において,請求項1が補正されるのに伴い,補正されたものである。この手続補正前の上記請求項の記載は,補正後の請求項2,3,25及び26の記載と実質的に同一であるところ,補正前の請求項2,3,26及び27については,拒絶の理由が通知されていなかったことから,出願人である原告としては,これらの構成のうちの特定部分を他の請求項に含ませて限定することを意図して,上記補正をしたものと理解することができる。ところが,拒絶査定においてはこの補正後の構成についても進歩性がないとの判断が示されており,原告は,このような審査の経緯について手続違背があると主張しているものである。 確かに,平成13年3月7日付け拒絶理由通知書(甲4)の末尾には,同通知書中で指摘した請求項以外の請求項に係る発明については,現時点では,拒絶の理由を発見しない,と記載され,補正前の請求項2,3,26及び27についての拒絶の理由は発見しないとされていた経緯にある。 しかしながら,原告は拒絶査定を受けてその不服の審判請求をし,さらに請求項1の補正を含む平成14年5月1日付けの手続補正をしている。したがって,拒絶理由通知から拒絶査定に至る流れが原告の意図に沿わないものであったとしても,原告としてはそれへの対応が可能であったものである。上記手続の流れの中で,拒絶査定までの審査の過程,さらには,審査前置から審判合議体が審理を行うようになった経緯についてみれば,審決を取り消すべきまでの手続違背があったということはできない。 ウ したがって,取消事由1のアは,理由がない。 (2) 取消事由1のイについて ア 平成14年6月13日付け拒絶理由通知書(甲11)は,同年5月1日付け補正後の請求項1ないし25に係る発明ついて,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとしたものであるが,その理由中に,次の記載がある。 「文献1(引用例1)には,付加機能機器である撮像部30の撮影のための制御を,携帯用無線電話本体の収容ケースの広い面上に設けられたキーボタン6の操作によって行うこと(2ページ下右欄12〜14行),及び,該撮像部30は箱形形状をし,携帯用無線電話本体の収納ケースの断面と略対応する断面を有し,更に,該収納ケースの長さの延長部として該携帯用無線電話本体の収納ケースにコネクタ42で接続されること(3ページ上右欄1〜10行)が,それぞれ,記載されている。 そして,1. コードレス電話機の技術分野において,その収納ケースの内部に計算機として機能する情報処理のための付加機器を組み込むことは,たとえば,文献2(特開昭59-100659号公報(甲26))及び3(引用例2)に記載されるように,周知技術にすぎない。 そして,上記周知技術として挙げた文献において,情報処理のための付加機器は計算機として機能するものである以上,当然,計算機の形を有すると認められる。 2. 文献1には撮像部30の電源供給については記載がない。 しかしながら,コードレス電話機に付加機能機器を接続するとき,該付加機能機器には,コードレス電話機の受話機内の電源から電気が供給されることは,文献4(特開平3-505695号公報(甲16))の5ページ下左欄6〜8行に記載されており,文献1において,撮像部30には,携帯用無線電話本体の受話機内の電源から電気が供給することは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。 なお,文献1に記載のものは,付加機能機器である撮像部30を,携帯用無線電話本体の収納ケースの上測端部に接続するものであるが,付加機能機器を収納ケースの下側端部に接続することは,文献5(引用例3)に記載されている。」 イ 拒絶理由が通知された請求項1ないし25のうち,請求項2ないし25は,いずれも請求項1を引用しているところ,(1)の事実によると,平成14年6月13日付け拒絶理由は,請求項1に係る発明と文献1(引用例1)記載の発明とを対比し,請求項1における「内部に計算機(20)の形をした情報処理のための付加機器が組込まれており,」及び「受話器10の電源より電気が供給され,」との構成が相違していると認定し,その容易想到性を判断しているのであって,この理由は,請求項1ないし25にすべて共通する。そして,拒絶理由通知書においては,複数の請求項について,共通する拒絶理由をまとめて記載することが許されないわけではないから,平成14年6月13日付け拒絶理由通知に手続違背はない。 また,特許法は,49条,51条の規定などにかんがみれば,一願書に複数の請求項が記載されている場合に,一つの請求項に係る発明について特許をすることができないときは,他の請求項が独立項であると,従属項であるとにかかわらず,当該特許出願の全体について拒絶査定をすることも予定しているものというべきであるから,多数ある請求項のうち請求項1についてのみ判断することが,違法であるということはできない。 ウ 原告は,審決は,請求項1ないし25をひとまとめにした拒絶理由に基づき,かつ,多数ある請求項のうち請求項1についてのみ判断したのであって,あまりにも不適切であると主張するが,イに判示したところによれば,原告の上記主張は,採用することができない。 エ したがって,取消事由1のイは,理由がない。 2 取消事由2(一致点の認定の誤り)について (1) 「モジュール」とは,「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまとまった部分」(広辞苑第5版)との意味を有する。 そして,引用例1(甲25)には,「撮像部」について,「撮像部30は,レンズ系31,CCD等の撮像素子32,信号処理回路33,制御装置34等を具備し,撮像素子32によって電気信号として取込んだ各種映像情報を,信号処理回路33を介して本体機能部10に送出するようになっている。」(2頁右下欄7ないし12行),「第4図は本発明の更に他の実施例を示しており,該実施例においては,撮像部30が携帯用無線電話本体1と着脱自在に構成されており,撮像部30を携帯用無線電話本体1に機械的に一体化した時には,両者1,30はコネクタ42(一方は図示せず)によって電気的に接続されて,前記第1,2図に示した実施例と全く同等に機能する。また,撮像部30を携帯用無線電話本体1から取外した時には,両者1,30を専用ケーブル43で電気的に接続し,撮像部30を携帯用無線電話本体1とは独立した状態で取扱って撮影を可能としている。」(3頁右上欄4ないし14行)と記載されており,この記載によれば,引用例1記載の発明の「撮像部」は,撮像機能を有する装置で,機能的にまとまった部分であるから,「モジュール」に相当するものであると認められる。 (2) 原告は,「モジュール」とは,標準化された基本単位であり,明細書には,本願発明のモジュールについて,1台の受話器に対し,いくつもの付加機能機器がそれぞれ互換可能に接続される形態を有するものとして説明されているのに対し,引用例1記載の発明は,携帯用無線電話本体に「撮像機能を提供するためのまとまった部分」である撮像部を着脱自在に取り付けたというだけのものであり,引用例1には,撮像部を他の付加機能機器と同様に標準化して,1台の受話器に標準化された多種類の付加機能機器を取替可能にするという技術思想は全く開示されていないから,引用例1記載の発明の「撮像部」は,「モジュール」に相当しない旨主張する。 本願発明のモジュールは,特許請求の範囲の記載によれば,「箱形」であり,「少なくとも一つの付加機能機器がその中に収容され」,「プラグの位置まで箱内に収容され」,「制御機器によって制御され」,「収容ケースの断面とほぼ対応する断面を有し,収容ケースの縦方向の長さの延長部として受話器の長さ方向の端面にプラグで接続される」ことにより,特定されるものであって,少なくとも一つの付加機能機器が収容されるだけであり(一つの場合も含まれる。),複数の異なる付加機能機器がそれぞれ異なる箱形モジュールに収容されることまで規定されているわけではないから,原告の主張するように,本願発明のモジュールが,1台の受話器に対し,いくつもの付加機能機器がそれぞれ互換可能に接続される形態を有するもののみを意味していると解することはできない。 また,日刊工業新聞社発行の「英和和英機械用語図解辞典-第2版-」(昭和60年。甲32)には,「モジュール 基本単位の意味.・・・A標準化した1つの組み立て部品(ユニット)の単位のことをモジュールという。」と記載され,「JIS工業用語大辞典第2版」(1987年。甲33)には,「モジュール システムを構成する,一定機能をもつ標準化された要素」と記載されているから,「モジュール」が,標準化された基本単位との意味で使用されることがあると考えられるが,その場合であっても,原告の主張するように,1台の受話器に対して,いくつもの付加機能機器がそれぞれ互換可能に接続される形態を有するものに限定された意味のものと解することはできない。「標準化」には,「工業製品などの品質・形状・寸法を標準に従って統一すること。これによって互換性を高める。」(広辞苑第5版)との意味があるが,本願発明のモジュールは,上記のとおり,一つの付加機能機器が着脱自在にプラグ接続されるだけの意味しか有しないのであるから,標準化によって,いくつもの付加機能機器の互換性まで担保されるものに限定されていると解することはできない(「互換」には,異なった機能の部品を交換する場合や,同一機能の異なった部品を交換する場合があり,前者に限られるものではない。)。さらに,いくつかの異なる機能を互換可能に接続するためには,異なる機能を接続して使用することが可能となるような接続部の構成が必要になるところ,特許請求の範囲にはこれについて記載がなく,発明の詳細な説明にもそのような構成が記載されているとは認めることができないから,この点からも,本願発明のモジュールが,1台の受話器に対し,いくつもの付加機能機器がそれぞれ互換可能に接続される形態を有するものと規定されていると解することはできない。 そうであれば,原告の上記主張は,本願発明のモジュールについて,上記と異なる理解をするものであるといわなければならず,採用するに由ない。 (3) したがって,審決が,「引用例1記載の発明における「撮像部」は,撮像機能を提供するためのまとまった部分であるから,本願発明の「モジュール」に相当する」と認定したことに誤りはなく,取消事由2は,理由がない。 3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について (1) 相違点5の判断の誤りについて ア 相違点5に係る本願発明の「箱形モジュールは接続部材であるプラグの位置まで箱内に収容されている」との構成について,特許請求の範囲の記載からはその意味は必ずしも明確でない。上記構成は,特許出願時の明細書には記載がなく,平成13年9月20日付け手続補正書(甲5)による補正において,請求項1に付加されたものであるところ,同日に提出された意見書(甲6)には,次の記載がある。 「(2)補正の根拠 上記「(1-1)@」の補正(判決注:特許請求の範囲第1項の補正)は,モジュール(30,40)がプラグ(32)の位置まで箱内に収容される点,及び収容ケース12の断面とほぼ対応する断面を有している点を明確にしたものです。 そして,「モジュール(30,40)が,プラグ(32)の位置まで箱内に収容されている」点は図2に示されています。この補正は,モジュールと受話器との接続が接続コードを介さずに,モジュールと受話器とが接続端子を介して直接に接続されるものであることを明確にしたものです。」(3頁18ないし25行) この記載によれば,本願発明の「箱形モジュールは接続部材であるプラグの位置まで箱内に収容されている」との構成は,「モジュールと受話器の接続が接続コードを介さずに,モジュールと受話器とが接続端子を介して直接に接続されるものである」と理解することができる。 イ 審決は,相違点5として,「本願発明においては付加機能機器が箱形モジュールの中に収容され,該箱形モジュールは接続部材であるプラグの位置まで箱内に収容されているのに対し,引用例1記載の発明においては付加機能機器としての撮像部と接続部材の物理的配置がどのようになっているのか明らかではない点。」を,相違点6として,「付加機能機器を受話器本体に接続するための接続部材が,本願発明においてはプラグであるのに対し,引用例1記載の発明においては,携帯用無線電話本体と着脱自在に構成され,携帯用無線電話本体に機械的に一体化するための部材および電気的に接続されるコネクタである点。」を認定し,相違点5について,「電子機器を箱形のケースに収容することは周知であり,コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設けることも周知であるので,付加機能機器を箱形のケースの中に収容し,その接続部材であるプラグを箱形のケースの外面側に設けることにより,本願発明のごとく「付加機能機器が箱形モジュールの中に収容され,該箱形モジュールはプラグの位置まで箱内に収容され」るように構成することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。」と判断した。これによれば,審決は,「モジュールと受話器の接続が接続コードを介さずに,モジュールと受話器とが接続端子を介して直接に接続される」こと及び「モジュールが箱形のものであり,その中に付加機能機器が収容される」ことを相違点5として認定し,判断したと解される。 ウ ところで,原告は,相違点5について,引用例1記載の発明の撮像部が,「箱形のケースに収容される」構成及び「コネクタ等の他の機器との接続部材をケースの外面側に設ける」という構成を備えていることを自認した上,引用例1には,プラグで接続する旨の記載がないとして,周知技術を引用例1記載の発明に適用して,箱形モジュールがプラグの位置まで箱内に収容されるように構成することは導き得ないと主張する。 しかし,審決は,イのとおり,引用例1記載の発明が,「プラグで接続する」ものでない点を本願発明との相違点と認定し,相違点5において,「モジュールと受話器が接続端子を介して直接に接続される」ことについて判断し,相違点6において,「プラグで接続される」ことについて判断しているところ,引用例1にプラグで接続する旨の記載がないことを理由とする原告の上記主張に照らすと,原告は,相違点6に係る審決の判断に誤りがあることを前提にして,相違点5についての判断に誤りがあると主張しているものと理解される。そこで,この点を含めて,次項で判断する。 (2) 相違点6の判断の誤りについて ア 引用例1記載の発明の「撮像部」は,2のとおり,本願発明におけるモジュールに相当するものであると認められる。そして,審決が例示した実願昭59-101917号(実開昭61-18691号)のマイクロフィルム(甲28)は,マイクロホンユニットをプラグを介して直接にビデオカメラに接続するものであり,米国特許第4845751号明細書(甲29)は,プラグインの送信機モジュールを受信機/アンプに接続するものであるところ,「モジュール」とは,2のとおり,「装置・機械・システムを構成する部分で,機能的にまとまった部分」(広辞苑第5版)との意味を有することに照らすと,モジュールをプラグを用いて機器に直接に接続することは周知であると認めることができる。 そうであれば,付加機能機器としてのモジュールを,受話器本体に接続するための接続部材としてプラグを採用することは,当業者であれば容易に想到し得るものであるといわなければならない。 イ 原告は,引用例1記載の発明における撮像部は本願発明におけるモジュールに相当しない,審決が例示した周知例はいずれもプラグインモジュールに関するものでないと主張するが,アに判示したところに照らせば,原告の上記主張は,採用することができない。 なお,原告は,審決が,プラグに関する相違点について,相違点5と相違点6とに分け,相違点5において,引用例1記載の発明において,電気的接続部材としてプラグを採用することは容易であり,相違点6において,プラグに電気的接続手段の外に,機械的接続手段を兼ねさせるのは容易であると判断したのは,2段階の容易論であるから,論理構成としては通常採用されないものであり,審決がこのような判断をしたのは,付加機能機器をプラグで機械的かつ電気的に接続することについての引用例がないからであると主張する。しかし,審決は,(1)のとおり,「モジュールと受話器の接続が接続コードを介さずに,モジュールと受話器とが接続端子を介して直接に接続される」こと及び「モジュールが箱形のものであり,その中に付加機能機器が収容される」ことを相違点5として認定し,また,「付加機能機器を受話器本体に接続するための接続部材がプラグである」ことを相違点6として認定して,それぞれについて検討し,「当業者であれば容易に想到し得ることである。」と判断したものであって,原告の主張するような2段階の容易論というには当たらないから,原告の上記主張は,その前提を欠くものであり,採用の限りでない。 ウ したがって,審決が,相違点6について,「付加機能機器としてのモジュールを,受話器本体に接続するための接続部材としてプラグを採用することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。」と判断したことに誤りはなく,また,相違点5についての判断にも,原告主張の前記誤りはない。取消事由3のア,イは,理由がない。 (3) 相違点7の判断の誤りについて ア 携帯無線電話において,撮像部(2のとおり,本願発明におけるモジュールに相当するものである。)を本体に着脱自在に構成することは,引用例1に開示されているところ,このような本体に着脱自在に構成する機器の断面を,本体の収容ケースの断面にほぼ対応するように構成することは,引用例3(甲22)や平成13年3月7日付け拒絶理由通知に引用された特開昭57-6991号(甲18)に示されているように,当業者にとって自明である。そうすると,引用例1記載の発明に上記自明の事項を適用して,撮像部の断面を収容ケースの断面とほぼ対応するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることであるといわなければならない。 イ 原告は,従来,コードレス電話の技術において,多機能化するために付加機能機器をモジュール化するという技術思想はなく,各引用例にも開示されていないと主張するが,引用例1記載の発明の撮像部は,2のとおり,本願発明のモジュールに相当するものであり,これを本体に着脱自在に構成することは,引用例1に開示されているから,原告の主張は,採用することができない。 ウ したがって,相違点7に係る審決の判断に誤りはなく,取消事由3のウは,理由がない。 (4) 相違点8の判断の誤りについて ア 携帯無線電話において,撮像部(2のとおり,本願発明におけるモジュールに相当するものである。)を本体に着脱自在に構成することは,引用例1に開示されているところ,このような本体に着脱自在に構成する機器を本体に取り付けたときに,その機器の電源を本体から供給するように構成することは,審決が例示する特開平2-266668号公報(特に,第1〜5図。甲30)及び特開平2-202781号公報(特に,第1〜3図。甲31)に示されているように,周知であると認めることができる。そうすると,引用例1記載の発明に上記周知技術を適用して,撮像部への電源を本体の携帯無線電話から供給するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることであるといわなければならない。 イ 原告は,引用例1には,付加機能機器をモジュール化することについては記載がないから,引用例1記載の発明に前記周知技術を適用しても,モジュール化されている(すなわち標準化された形態を有する)付加機能機器への電源を本体の携帯無線電話から供給するようにするという構成に想到することはできないと主張するが,引用例1記載の発明の撮像部は,2のとおり,本願発明のモジュールに相当するものであり,これを本体に着脱自在に構成することは,引用例1に開示されているから,原告の主張は,採用することができない。 ウ したがって,相違点8について,審決が,「引用発明において撮像部への電源を本体の携帯無線電話から供給するように構成することは,当業者が容易に想到し得ることである」と判断したことに誤りはなく,取消事由3のエは,理由がない。 (5) なお,原告は,審決が,本願発明の箱形モジュールの構成を分解して4つの相違点を認定し,それぞれについて引用例や周知例を挙げて進歩性を判断したのは,本願発明の構成が従来技術から容易になし得たものでないことの証左であると主張する。しかし,本願発明の箱形モジュールについて,相違点5ないし8に係る構成を採用したことによる格別の相乗効果があるとは認められないから,審決が相違点5ないし8についてそれぞれ判断したことに誤りはないというべきである。原告の上記主張は,採用することができない。 |
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結論
以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由は理由がないから,原告の請求は棄却されるべきである。 |
裁判長裁判官 | 塩月秀平 |
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裁判官 | 田中昌利 |
裁判官 | 野輝久 |