審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成21ネ10033特許権侵害差止等請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成20ネ10083損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成18ネ10038損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成21ネ10023損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
平成18ネ10075特許権侵害差止請求控訴事件 | 判例 | 特許 |
関連ワード | 技術的思想 / 方法の発明 / 進歩性(29条2項) / 公知技術 / 技術的範囲 / 出願公開 / 先行技術 / 発明の詳細な説明 / 共同出願 / 実質的に同一 / 共有 / 抵触 / 出願経過 / 参酌 / 技術的意義 / 容易に想到(容易想到性) / 実施 / 構成要件 / 侵害 / 販売利益 / 共同出願人 / 拒絶理由通知 / 誤記の訂正 / 請求の範囲 / 減縮 / 変更 / |
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事件 |
平成
18年
(ネ)
10087号
損害賠償請求控訴事件
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控訴人株 式会社平河工業社 訴訟代理人弁護士澤田三知夫 同 中田好昭 同弁理士滝田清暉 補佐人弁理 士中村成美 被控訴人三 菱製紙株式会社 訴訟代理人弁護士熊倉禎男 同 富岡英次 同 奥村直樹 同弁理士近藤直樹 |
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裁判所 | 知的財産高等裁判所 |
判決言渡日 | 2007/05/30 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人( )原判決を取り消す。 1( )被控訴人は,控訴人に対し,3億円及びこれに対する平成17年9月1日 2から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ( )訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。 32被控訴人主文と同旨第2事案の概要1事案の要旨本件は,多頁面付け方法の発明についての特許権を被控訴人と共有する控訴人が,@被控訴人が多頁面付け方法を内包する製版印刷に関するパッケージソフトウェアである被控訴人製品を製造,販売する行為は,特許法101条3号又は4号により,上記特許権の控訴人の共有持分10分の6を侵害するものとみなされる,あるいは,A被控訴人において被控訴人製品の販売利益を不当利得しているとして,被控訴人に対し,主位的に,損害賠償請求と不当利得返還請求,予備的に,不当利得返還請求をした事案である。原判決が,被控訴人製品に基づく多頁面付け方法は本件発明の技術的範囲に属しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴し,原判決の上記判断を争っている。 2争いのない事実及び争点原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1争いのない事実」及び「2争点」のとおりであるから,これを引用する。 第3争点に関する当事者の主張以下のとおり,当審における当事者の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「3争点に対する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する。 1本件発明の技術的範囲の解釈について〔控訴人の主張〕( )本件発明におけるパターンデータは,画像情報に属し,フォーマットデー1タは,文字情報に属する。「パターン」は,画像の概念に属する図柄,模様,型等を意味する語として認知されており,パターン情報がコンピュータ上の画像情報に属することは周知であり,「パターンデータ」がパターン情報をコンピュータ処理可能なデータとしたものであり,画像データに属することは明らかである。この点について,被控訴人は,「頁の順番」等のパターンデータが数字で表されている旨主張するが,この場合の「数字」は頁を表すもので,寸法を表すフォーマットデータとはなり得ず,発明の実施において,コンピュータ処理した後のデータについて,文字情報のように取り扱っているものである。 そして,コンピュータ処理に当たり,画像情報と文字情報を区別せず同じように処理することができないこと,画像データと文字データのデータ処理の仕方が異なること,及び,画像情報処理には文字情報処理とは比べものにならないほど膨大なメモリーを必要とすることは,平成元年7月13日の本件発明の特許出願(以下「本件出願」という。)の当時,当業者に周知であった。コンピュータ処理に際し,情報が,画像情報と文字情報のいずれに属するかを認識すれば,その認識された情報は,必然的にいずれかのデータに分類され,処理されることになる。 このようなコンピュータ上の分類が,本件発明における「分類」の概念であり,本件発明の「分類」は,パターンデータ(画像データ)とフォーマットデータ(文字データ)の両方を含んでいる「多頁面付けに必要なデータ」を,それを構成している,画像データである各最小パターンデータと文字データである各最小フォーマットデータにそれぞれ分類すること,すなわち,その違いを認識することである。このような認識と分類は,コンピュータを扱う当業者には常識であり,本件明細書(甲3)においては,「認識」については当然の前提であるとして記載せず,「認識」の結果であり,より具体的な概念である「分類」について,本件発明の構成要件として記載したにすぎない。 そして,本件発明において,情報をパターンデータとして認識すると,そのデータは画像情報として分類され,画像データ(パターンデータ)としてコンピュータ処理されるという作用効果が生じ,情報をフォーマットデータとして認識すると,そのデータが文字情報として分類され,文字データ(寸法データ)としてコンピュータ処理されるという作用効果が生じる。本件明細書に記載された,「任意のパターンと任意のフォーマットデータとを組み合わせて多種多様の多頁面付け最終フォーマットを得ることができる」(8欄29行目〜31行目)という本件発明の作用効果は,パターンデータとフォーマットデータを認識するという,本件発明の一構成要素の作用効果ではない。 この点について,被控訴人は,本件出願の審査段階における,平成7年3月3日付けの拒絶理由通知(以下,同拒絶理由通知に係る拒絶理由通知書を「本件拒絶理由通知書」という。)において引用された特公昭59-47290号公報(甲8,乙7,以下「本件引用例」という。)記載の発明においても,上記意味での「分類」が行われている旨主張するが,本件引用例で使用されている最終フォーマットはコンピュータを用いて作成されたものでなく,本件引用例は「分類」を行っているものではない。 また,被控訴人は,本件出願日前に,多頁面付け作業は既にコンピュータ処理されていたものであるから,コンピュータ上の分類が本件発明における「分類」の概念であるとすると,「分類」の要件について本件発明と公知技術との間には何らの差異もないこととなる旨主張するが,その根拠とする文献は,審査段階で提出されたものでなく,それに基づいて本件発明を解釈することはできないし,それらの文献は,本件出願日後の文献か「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」という「分類」を示唆するものではない。 被控訴人の主張は,実質的にいわゆる特許無効の抗弁をいうものであり,自ら共有持分を有する本件特許権に対して無効の主張をするものにほかならず,信義誠実の原則に反するものである。 ( )平成7年5月17日付け手続補正書(乙3)による補正(以下「本件補2正」という。)は,後記( )のとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする 4補正ではなく,本件補正の前後を通じ,本件発明の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」は,セットデータのみならず,最小データである「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」をも含むものである。 多頁面付けの実際の作業においては,セットパターンの作成の際,同種のデータの群をその群ごとに記憶させ,例えば,頁の天の方向であれば,上下左右の4つの方向からなるデータ群の中から1つを選択し,これを,例えば,面付け数というような他のパターンデータと組み合わせることによって入力し,同様の手順で,他のパターンデータについても順次入力を行ってセットパターンを作成することが合理的である。また,フォーマットデータとして認識され分類された複数のフォーマットデータ(例えば,Aシリーズ,Bシリーズといった一連の頁サイズ)についても,この中から適宜選択してデータ入力することもできるが,特に,寸法のような連続的に変更可能な物理量については,手入力する場合も避けられない場合が想定される。 パターンデータ及びフォーマットデータは,「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」の群からなり,各データ群の中から一つの最小データを選択し,これら選択された最小データを組み合わせていって最終フォーマットを作成する態様を含むのが本件発明である。本件発明では,一度セットパターン及びセットフォーマットを作成し,セットデータを組み合わせることによって最終フォーマットの作成を行うこともできるが,これは本件発明の単なる一態様にすぎず,各最小データ群の中から最小データを一つずつ選択して組み合わせていく方法も,本件発明の基本的実施態様である。 被控訴人は,請求項3の「パターンデータ」を「最小パターンデータ」と解すると,請求項の記載に矛盾が生じる旨主張するが,矛盾は生じない。請求項3における「パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータであり」との記載は,請求項3に記載された発明においては,そこに記載されたデータを「パターンデータ」として必ず使用するが,それ以外の「パターンデータ」として取り扱えるデータをさらに「パターンデータ」として,適宜使用してもよいという意味であり,また,それに加えて,「パターンデータ」として「頁の露光の順番」,「くわえの方向のデータ」も必ず使用するとしたのが請求項4であり,そこには,何らの矛盾もない。 また,被控訴人は,本件明細書の「版の寸法,頁サイズ,ドブの幅,くわえの幅,その他の各種の寸法で決まるフォーマットデータ」(4欄4行目〜5行目)との記載によれば,控訴人の主張に矛盾が生じる旨主張するが,上記記載における「版の寸法」等は,フォーマットデータの例示列挙であり,これらの各フォーマットデータが,それぞれ「最小フォーマットデータ」の群からなるものであり,控訴人の主張には,何らの矛盾もない。 さらに,被控訴人は,本件明細書の実施例及び図面には,セットパターンデータが1枚のディスクに入力されて「パターンデータ」が作成される様子と,1枚のディスクともう1枚のディスクが読み込まれることによって,「最終フォーマット」が作成されることが記載されている旨主張するが,本件明細書には,「セットパターンデータ」を作成するために個々のパターンデータを組み合わせていく過程も記載されていて,その組合せ工程も本件発明の実施態様を説明していると解するのが相当である。 ( )原判決は,「相互に組合わされるべき『パターンデータ』と『フォーマッ3トデータ』とを,データディスクなどにそれぞれ別々に記憶させることにより『分類』することに意味があることになる。」(37頁21行目〜24行目)としたが,本件発明とは全く無関係といえる事項について,本件発明の構成要件中の「分類」と位置付けて本件発明を解釈するものである。 「『パターンデータ』と『フォーマットデータ』とを,データディスクなどにそれぞれ別々に記憶させること」は,本件発明における「データの分類」とは無関係であって,データディスクなどに別々に記憶させるか否かは,コンピュータの性能上の問題であり,一般的には,「データの格納」という概念に属するものであり,本件発明の技術的思想の一部を構成するものではない。 本件出願時においては,コンピュータの性能の関係から,一つのセットパターンを作成したら,通常,その結果であるセットパターンデータをフロッピー等のメモリ媒体に一時的に格納し,パソコンのメモリを最大限に活用できるように前のデータをすべて消去して内部メモリを復活させた後,次の作業をする必要があった。しかし,現在では,コンピュータの高性能化により,データディスクなどの記憶媒体にデータを一時的に格納する手順は不要となっているのであり,データディスクなどの記録媒体にデータを一時的に格納する手順は,本件発明の本質的部分ではあり得ない。 仮に,上記一時的格納の手順を本件発明の技術的範囲の解釈において参酌するとしても,その一時的格納の手順を使用する代わりに,同じ内容を実施することのできるより高性能のコンピュータを使用して上記一時的格納の手順を省略し多頁面付けを行う方法は,正に本件発明の技術的範囲に属するものである。 ( )原判決は,本件補正と同日付けの本件発明の出願人(被控訴人)が提出し4た意見書(乙4,本件意見書)の記載について,「本件意見書では,本件拒絶理由通知書で指摘された本件引用例に記載された発明について,多種多様の数多くのモードの中から所望のものを選択する必要があるため,最終フォーマットの作成が面倒であるという難点があることを主張した上で,本件発明では,各種のデータの中から任意に選択した一つのパターンデータと一つのフォーマットデータとを組み合わせるだけで最終フォーマットを作成できる旨を述べたものであり,これは,各種のセットデータの中から,一つのセットパターンデータと一つのセットフォーマットデータとを組み合わせるだけで最終フォーマットデータを作成できることを開示したものと認められる。」(原判決39頁14行目〜23行目)と判示したが,本件発明の出願人が,本件意見書において,本件発明が,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を「ただ一回の組合せだけ」で最終フォーマットを作成するものであるとの主張をした事実はなく,上記の判示は本件意見書に記載されていない「だけ」という文言を不当に補充して解釈するものである。 本件発明において,例えば,「頁の天の方向」を示すパターンデータの群の中から組み合わせるデータを選択する場合,頁の天の方向を決定するためには一つの方向を特定しなければならないから,必然的に一つのデータを選択する。フォーマットデータの場合も同様であり,頁のサイズを決定しようとするときにA4版とB5版を同時に選択すればサイズを決定することはできないから,必然的に一つのデータを選択することになる。本件意見書の「多頁面付けに必要なデータを,パターンデータ群(Pn)と,フォーマットデータ群(Fn)に分類し,それぞれのデータ群の中から多頁面付けに要求される両データのそれぞれ一つを選択し」との記載及び「本願発明のように,パターンデータ群の中から一つとフォーマットデータ群の中から一つを選択して組み合わせるようにしたもの」との記載は,このような当然の選択操作を説明したものである。これらの記載において,本件発明が「ただ一回の組合せだけ」で最終フォーマットを作成するものであるとはされていない。 本件拒絶理由通知書において,審査官は,本件引用例の「製版機において,製本様式に応じた複数のモードを予め記憶しておき,その中のモードを選択する点及び撮影倍率や寸法を考慮して面付けを行う点」を本件発明の先行技術としたが,上記「モード」の一つ一つは,本件発明における「最終フォーマット」に対応するものであり,本件引用例には,最終フォーマット自体を作成する方法である本件発明を示唆する記載や本件発明で導入した基本概念である,「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」の分類概念が存在しないし,本件引用例は,本件発明のように,最終フォーマットの作成や変更をすべてコンピュータ上で行い,その場合に使用する各データを,あらかじめコンピュータに記憶されているデータの中から選択して用いるものではないから,本件発明と本件引用例に記載された発明とは,明らかに異なっている。 したがって,出願人としては,審査官の拒絶理由通知に対して,本件発明の特許請求の範囲を減縮して対応しなければならない必要はなく,本件発明の基本的な概念である,多頁面付けに必要なデータを「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類する点を明らかにし,本件発明と本件引用例との違いを審査官が十分理解するために本件補正を行ったものであり,特許請求の範囲の減縮を目的として補正をしたものではない。このことは,本件意見書の「この認定(注,本件発明が本件引用例等に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとした審査官の認定)は,本願発明の構成上の特徴を看過したものと考えられ,本出願人は上記認定を承服することができません。本出願人は,本願発明の構成上の特徴をより明確にするために,別途手続補正書によって本願特許請求の範囲を改めましたので,以下,改めた特許請求の範囲の記載に沿って意見を述べます。」との記載からも明らかである。 そして,出願人は,本来,特許請求に係る発明について最大の権利範囲を獲得する権利を有すること,錯誤の場合は別として,必要もないのに特許請求の範囲を自ら減縮する補正をするはずがないことを考慮すれば,上記の解釈が合理的であることは明らかである。 〔被控訴人の主張〕( )本件発明の構成要件Bにいう「パターンデータとフォーマットデータに分1類し」の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」は,それ自体で具体的なパターンやフォーマットを形成でき,それぞれ一つずつ組み合わせて最終フォーマットを作成するに足りる,「セットパターンデータ」及び「セットフォーマットデータ」を意味し,本件発明における「分類」は,上記のような「パターンデータ」と「フォーマットデータ」とが現実に分けられることを必要とするものであって,このことは,本件発明の特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載,及び,本件発明の出願経過から明らかである。 控訴人は,本件発明における「パターンデータ」が「画像データ(情報)」に当たる旨主張するが,本件明細書の記載に基づかない主張であるばかりでなく,技術的にも誤りである。本件明細書には,「パターンデータ」が「画像データ(情報)」であることを示す記載も示唆する記載も全くない。 かえって,本件明細書には,「パターンデータ」に関し,「面付け数」,「ページデータ(各ページの番号)」,「天方向」,「背丁の数」等があることが記載され,特許請求の範囲の請求項3として,パターンデータは,少なくとも「頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータ」である「請求項1記載の多頁面付け方法」との構成が示されているところ,パターンデータとされるこれらの各データは,いずれも数字などの文字情報として表わされるものであって,画像情報ではない。本件発明においては,「頁の順番」等のパターンデータが数字で表わされているから,最終フォーマットを作成後,パターンデータが表わす数値(すなわち文字情報)に基づいて,「製版用カメラで1枚の感光材料に多数ページの原稿の像を頁面付けする場合」(本件明細書の7欄30行目〜31行目)に,「撮影しようとする1画面ごとに上記各ステッピングモータを駆動して撮影位置と撮影範囲を決めて撮影を繰返(す)」(同欄47行目〜49行目)ことが可能になるものである。 そして,構成要件Bに係る特許請求の範囲の記載は,「多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し」というものであり,「違い」を認識するだけでも「分類」の要件に当たるとする控訴人の解釈は,「分類」という請求項の文言から技術的に乖離したものであって,構成要件Bに続く「パターンデータ群と・・・フォーマットデータ群を記憶」及び「各データを組み合わせて」という要件の前提となっていることにかんがみても,本件発明における「分類」は,現実に分けられ,別々の群として記憶されるものである。本件明細書の実施例においては,本件発明における「分類」の要件に相当する構成として,セットパターンとセットフォーマットが別々に各1枚のデータディスクに保存されている構成が明確に示されていて,「分類」が現実に分けられることを必要とするとの解釈に,極めて整合した構成が示されている。 既成の最終フォーマットのみを用いる従来技術の場合には,新規作成しようとする最終フォーマットに一部でも既成のものとは異なる最小パターン(フォーマット)データが存在した場合には,既成の最終フォーマットを用いることができず,様々な最終フォーマットに対応することが困難であったのに対し,本件発明は,このような従来技術の課題を解決するものである。 そうすると,仮に,「分類」を,控訴人主張のとおり,単に,画像情報と文字情報のいずれに属するかの違いを「認識」するだけで足りるものとすれば,本件発明が解決しようとする上記課題との関係において,「分類」という要件の有する意義が,全く不明のものとなり,「本発明によれば,任意のパターンと任意のフォーマットデータとを組み合わせて多種多様の多頁面付け最終フォーマットを得ることができる」(本件明細書の8欄29行目〜31行目)という本件発明の作用効果との関連も全く不明なものとなる。 控訴人は,本件発明でパターンデータとして認識すると,そのデータは画像情報として分類され,画像データ(パターンデータ)としてコンピュータ処理されるという作用効果が生じ,フォーマットデータとして認識すると,そのデータが文字情報として分類され,文字データ(寸法データ)としてコンピュータ処理されるという作用効果が生じる旨主張するが,そのような作用効果は,本件明細書には何ら開示されていないし,そもそも発明の作用効果といい得るか自体疑問なものであり,「コンピュータ処理」は,通常,「コンピュータに記憶させる」処理を含むことを意味するから,控訴人は,「分類し,記憶させる」手段を他の用語で述べているにすぎない。 本件発明の出願経過に照らしても,出願人は,本件意見書において,本件引用例に記載された発明について,「本願発明のように,多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類するという思想・・・・はありません。」として,コンピュータ(CPU)を用いる本件引用例記載の発明においても,当然,控訴人が主張する意味での「分類」が行われているにもかかわらず,本件引用例記載の発明においては,本件発明における「分類」の構成が存在しないとしている。さらに,本件出願日前に,多頁面付け作業が既にコンピュータ処理されていたことは,複数の刊行物(乙7,15〜22)の記載からも明らかであるから,コンピュータ上の分類が本件発明における「分類」の概念であるとすると,「分類」の要件について本件発明と公知技術との間には何らの差異もないこととなる。 ( )控訴人は,本件発明の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」が,2「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」を含むものであるとした上で,単に,各最小データ群の中から一つずつを選択して組み合わせていく方法が,本件発明の構成要件Dにいう「各データを組み合わせて最終フォーマットを作成する」との要件に相当すると主張する。 しかし,本件発明の構成要件Dにいう「最終フォーマット」は,セットデータである「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」を組み合わせて作成されるものであり,仮に,控訴人主張のように「最小データ」を含むと解すると,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」とに別々に記憶させて「分類」する技術的な意味が失われ,構成要件Bに相当する部分が無意味な記載となる。 また,他の請求項の記載との比較によっても,「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」の意義を控訴人主張のように解することは不可能である。 すなわち,本件明細書の特許請求の範囲の請求項3には,「パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータであり,フォーマットデータは,少なくとも版の寸法,頁のサイズ,ドブの幅,くわえの幅のデータである」と記載されているところ,そこに摘示されていない「頁の露光の順番」及び「くわえの方向のデータ」は,「最小パターンデータ」に当たり,かつ,多頁面付け作業を行うために設定することが必要なデータであるから,「パターンデータ」が「最小パターンデータ」を含むものとして解釈すると,請求項3記載の発明においては,「頁の露光の順番」及び「くわえの方向のデータ」等の,「最小パターンデータ」に該当するデータであっても,「パターンデータ」に含まれなくてもよいことになり,請求項の記載に矛盾が生じる。 さらに,本件明細書における発明の詳細な説明の記載も,本件発明の構成要件Dに関し,控訴人の主張が成り立ち得ないことを裏付けるものである。 すなわち,本件明細書には,「版の寸法,頁サイズ,ドブの幅,くわえの幅,その他各種の寸法で決まるフォーマットデータ」(4欄4行目〜5行目)との記載が存在するところ,この記載は,「フォーマットデータ」が最小データ,すなわち,「版の寸法」,「頁サイズ」,「ドブの幅」等のみで決定されるものではなく,これら最小データが集まることによってはじめて決定されることを示す。また,本件明細書の「パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータとし,フォーマットデータは,少なくとも版の寸法,頁のサイズ,ドブの幅,くわえの幅のデータとする。また,パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁,頁の露光の順番,くわえの方向のデータとしてもよい。」(5欄34行目〜39行目)との記載に照らせば,「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」について,「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」を含むものと解釈すると,構成要件Dの記載は矛盾を生じる。 加えて,本件明細書において,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」とが複数回「組み合わせ」られることにより,「最終フォーマット」が作成されることを示す記載は何ら存在しない。本件明細書の実施例には,「パターンデータ」の作成動作について,「面付け数」,「ページデータ」,「天方向」,「背丁の数」,「背丁の位置」,「背丁の順位」,「背丁の天方向」,「表裏の区別のあり,なし」,「1折りのページ数」及び「1版中の折りの種類数」といったデータがすべて入力されて「パターン作成処理」が行われ,データディスクにパターンデータの書き込みを行うことが記載され(6欄8行目〜31行目),さらに,本件出願の願書に添付され,平成元年8月9日付け手続補正書(乙1添附)により補正された後の図面(以下「本件図面」という。)の第1図においても,「パターン作成」として,上記各最小データのデータディスクへの入力を経て「データディスクへパターン書き込み」を行う処理が示されており,「パターンデータ」が「セットパターンデータ」を意味するとの解釈と整合する記載がされている。そして,本件明細書の実施例には,セットパターンデータの入ったディスクと,セットフォーマットデータの入ったディスクが,それぞれ1回ずつ読み込まれて,最終フォーマットが作成される経過が記載され(6欄46行目〜7欄28行目),本件図面の第3図においても,実施例と同様,セットパターンデータの入ったディスクと,セットフォーマットデータの入ったディスクが,それぞれ1回ずつ読み込まれて,最終フォーマットが作成される経過が記載されている。 ( )控訴人は,本件意見書が,一つのセットパターンデータと一つのセットフ3ォーマットデータとを組み合わせるだけで最終フォーマットデータを作成できることを開示したものとは認められない旨主張する。 しかし,本件意見書において,出願人は,「多頁面付けに必要なデータを,パターンデータ群(Pn)と,フォーマットデータ群(Fn)に分類し,それぞれのデータ群の中から多頁面付けに要求される両データのそれぞれ一つを選択し,これを組み合わせて(P1+F1),所望の最終フォーマット(FF)を得ることを特徴としています。」と記載した上で,「引例1(注,本件引用例)記載の発明によれば,多種多様の数多くのモードの中から所望のものを選択する必要があるため,本願発明のように,パターンデータ群の中から一つとフォーマットデータ群の中から一つを選択して組み合わせるようにしたものに比べて,最終フォーマットの作成が面倒であるという難点があります。」と記載している。出願人の上記意見は,本件引用例に記載された発明は,多種多様のモードの中から目標とする多頁面付けに最適なモードを検索し選択する必要があるのに対し,本件発明は,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」とを分類し,両者を組み合わせたことによって,検索及び選択の手間が省けるようになったことを述べるものであり,このような本件意見書の趣旨にかんがみれば,控訴人の主張が失当であることは明らかである。 ( )控訴人は,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正には当た4らない旨主張する。 しかし,補正前の特許請求の範囲が「1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,多頁面付けパターンに必要な各種データを入力して各種の多頁面付けパターンを作成し,作成された各種多頁面付けパターンの中から任意のパターンを選択し,これに各種寸法データ(フォーマットデータ)を入力して最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」であったのに対して,本件補正により,特許請求の範囲は,「1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させておき,各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」となり,「分類」,「記憶」及び「組み合わせ」の要件を付加したことによって,これらの構成を具備しない多頁面付け方法は,本件発明の技術的範囲を外れることとなったものであり,本件補正が特許請求の範囲の減縮に当たることは,客観的に明らかである。 また,本件出願時には,既に,多頁面付け方法に関する技術として,既存の最終フォーマットを利用する本件引用例記載の発明,及び,コンピュータ上において最小データを一つずつ入力していく多頁面付け用ソフトウェアである「」,「」(乙15〜22参照)が存在したところ,本ImpostripPostStrip件補正によってこれらの公知技術の関係でも抵触が避けられ,本件発明の特許性が揺るがないものとなった。 2被控訴人製品を用いた多頁面付け方法について〔控訴人の主張〕被控訴人製品であるファシリスは,1枚の版に複数頁の原稿の像を形成するためのレイアウトの作成を含む多頁面付け作業を支援するソフトウエアであり,レイアウトの作成作業は,「1枚の版に複数頁の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,面付け数,背丁/背標,及び刷版サイズや仕上がりサイズのようなデータからなる,複数頁の原稿の像を形成するための,多頁面付け方法」を実施することによってされ,より具体的には,「刷版サイズと仕上がりサイズ,面付け数,折りの種類など,台の基本的な情報を設定してレイアウトを組み,トンボ,背丁/背標などを貼り込んだ状態で作成・保存する」ものである。 したがって,ファシリスを使用して多頁面付けを行う作業は,「(A’)1枚の版に複数頁の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,(B’)刷版サイズと仕上がりサイズ,面付け数,折りの種類など,台の基本的な情報を用い,(D’)これらの情報を組み合わせてレイアウトを作成すること(E’)を特徴とする多頁面付け方法。」との技術的構成からなる。 そして,本件発明の構成要件Aとファシリスにおける技術的構成A’が同一であることは自明である。 ファシリスの技術的構成B’の「刷版サイズと仕上がりサイズ」は寸法データであるから,本件発明の「フォーマットデータ」に属し,「面付け数,折りの種類」は「パターンデータ」に属する。そして,面付け数に応じた1枚の刷版中に配列される頁の配列パターンや折りの種類に対応したパターンは,画像データとしてコンピュータにあらかじめ登録して使用され,コードデータであるフォーマットデータは,ファシリスにおいて,フォーマットデータ群として登録可能になっていて,登録することは,コンピューターに記憶させることである。したがって,パターンデータとフォーマットデータとは,異なった種類のデータであるから,ファシリスの技術的構成B’の,フォーマットデータである「刷版サイズと仕上がりサイズ」,及び,パターンデータである「面付け数,折りの種類」は,当然,パターンデータ群とフォーマットデータ群に分類されていて,ファシリスの技術的構成B’は,本件発明の構成要件Bを充足している。 上記のデータは,それぞれ登録して使用されることから,ファシリスにおいても,「複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶」していて,ファシリスの技術的構成B’は,本件発明の構成要件Cも充足している。 また,ファシリスの技術的構成D’の「これらの情報」は,「予め記憶されたパターンデータ群及びフォーマットデータ群」として記憶された情報を意味し,本件発明における「最終フォーマット」がファシリスにおける「レイアウト」に対応することは明らかであるから,ファシリスの技術的構成D’と本件発明の構成要件Dは同一である。 そして,本件発明の構成要件AないしDとファシリスの技術的構成A’,B’及びD’は実質的に同一であるから,本件発明における構成要件Eとファシリスの技術的構成E’も同一である。 したがって,ファシリスを使用する多頁面付け方法は,本件発明の構成要件のすべてを充足しているから,ファシリスが本件発明には含まれない台割機能等を有するとしても,ファシリスを使用すれば本件発明をそっくりそのまま実施することになり,ファシリスの「レイアウトの作成」が本件発明の技術的範囲に属することは明らかである。 〔被控訴人の主張〕本件発明の構成要件B及びCにおける「パターンデータとフォーマットデータに分類」し,「パターンデータ群と・・・フォーマットデータ群に記憶」という要件は,「『パターンデータ』と『フォーマットデータ』とを,データディスクなどにそれぞれ別々に記憶させておく」ことを意味し,本件発明の構成要件Dにおける「各データを組み合わせ」という要件は,「一つのセットパターンデータと一つのセットフォーマットデータとを組み合わせて最終フォーマットを作成すること」を意味するものであるから,被控訴人製品を用いた多頁面付け方法が,本件発明の構成要件BないしDをいずれも充足しないことは明らかである。 控訴人は,被控訴人製品を用いた多頁面付け方法の構成として,「(A’)1枚の版に複数頁の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,(B’)刷版サイズと仕上がりサイズ,面付け数,折りの種類など,台の基本的な情報を用い,(D’)これらの情報を組み合わせてレイアウトを作成すること(E’)を特徴とする多頁面付け方法。」とするが,本件発明における「分類」及び「記憶」等の構成要件に対応する構成については何らの主張がなく,しかも,「組み合わせ」との要件についてみても,具体的に被控訴人製品を用いた多頁面付け方法のどのような構成をもって,「組み合わせ」に対応する構成と主張するかも明らかではないから,控訴人の主張する被控訴人製品を用いた多頁面付け方法では,そもそも本件発明との比較が不可能である。 第4当裁判所の判断1本件発明の技術的範囲の解釈について( )前記第3において引用する原判決の「事実及び理由」欄の第2の1( )の1 1とおり,本件発明の特許請求の範囲には,「1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させておき,各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」との記載があり,同( )のとおり,本件発明は,構成要件Aな2いしEに分説される。 ところで,上記の構成要件B及びCにいう「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」の意義は,特許請求の範囲には定義はなく,その意義について当事者間に争いがあり,また,構成要件Dにいう「各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成」の意義についても同様に争いがある。すなわち,控訴人は,本件補正の前後を通じ,パターンに関する個々の設定項目についてのデータである「最小パターンデータ」やフォーマットに関する個々の設定項目についてのデータである「最小フォーマットデータ」も「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」に含まれ,「最終フォーマット」は,「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」の群の中から一つの最小データを選択し,選択された最小データを組み合わせて作成される態様を含む旨主張するのに対し,被控訴人は,本件発明の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」は,「最小パターンデータ」及び「最小フォーマットデータ」を含むものでなく,それ自体で具体的なパターンやフォーマットを形成でき,それぞれ一つずつ組み合わせて最終フォーマットを作成するに足りる,「セットパターンデータ」及び「セットフォーマットデータ」であり,「最終フォーマット」は,セットデータである「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」を組み合わせて作成される旨主張するので,検討する。 ( )本件明細書(甲3)の記載には,以下の記載がある。 2ア「【請求項2】パターンデータ群及び/又はフォーマットデータ群は変更可能であることを特徴とする請求項1記載の多頁面付け方法。 【請求項3】パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータであり,フォーマットデータは,少なくとも版の寸法,頁のサイズ,ドブの幅,くわえの幅のデータである請求項1記載の多頁面付け方法。 【請求項4】パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁,頁の露光の順番,くわえの方向のデータであり,フォーマットデータは,少なくとも版の寸法,頁のサイズ,ドブの幅,くわえの幅のデータである請求項1記載の多頁面付け方法。」(【特許請求の範囲】)イ「パターンとは,頁の順番,頁の天の方向,背丁に関するデータ,頁露光の順番,印刷機のくわえの方向等の頁面付けレイアウトを指定するものをいう。」(3欄19行目〜21行目)ウ「各種の条件を考慮すると,片面8頁の頁面付けだけでも数100種のパターンが考えられる。しかも,これは頁面付けパターンだけの種類であり,これに版の寸法,頁サイズ,ドブの幅,くわえの幅,その他各種の寸法で決まるフォーマットデータを考慮すると,無数の種類がある。」(4欄1行目〜6行目)エ「ここで,パターンのデータとフォーマットデータからなる頁面付けに必要な全データを『最終フォーマット』ということにする。」(5欄5行目〜7行目)オ「上記マイコンが上記各ステッピングモータを順次制御するためには,多頁面付けのパターンとフォーマットデータが予め決められていなければならない。そこでこれまでは,各種の最終フォーマットを用意しておき,その中から一つを選択して使用していた。しかし,予め用意されていた最終フォーマットはいわば既成のものであり,希望する最終フォーマットデータの中に一部でも上記既成のデータと異なるデータがあるとその最終フォーマットは適用することができない。しかも,前に説明したように,多頁面付けパターン及びフォーマットデータには多種多様のものがあるし,製版カメラのユーザー独自のパターン及びフォーマットデータがあることを考えると,総ての最終フォーマットを網羅することは困難である。本発明は,かかる従来技術の問題点を解消するためになされたもので,希望する任意の最終フォーマットを自由に作成することができるようにして,製版用カメラ等に対応できる範囲をほとんど無限に拡大することができるようにした多頁面付け方法を提供することを目的とする。」(5欄8行目〜27行目)カ「(課題を解決するための手段)本発明は多頁面付けに必要なデータをパターンデータ群とフォーマットデータ群に分類し,それぞれのデータ群の中から任意に選択して入力することにより最終フォーマットを作成することを特徴とする。パターンデータ群及び/又はフォーマットデータ群は変更可能としてもよい。パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁のデータとし,フォーマットデータは,少なくとも版の寸法,頁のサイズ,ドブの幅,くわえの幅のデータとする。また,パターンデータは,少なくとも頁の順番,頁の天の方向,背丁,頁の露光の順番,くわえの方向のデータとしてもよい。」(5欄28行目〜39行目)キ「(作用)多頁面付けパターンはそれに必要な各種データの入力によって作成されるため,所望のパターンを任意に作成することができる。また,最終フォーマットは,作成された各種パターンの中に各種寸法データ(フォーマットデータ)を入力することによって作成する。パターンとフォーマットデータは任意に設定でき,これらの組み合わせも自由であるから,希望する多頁面付け最終フォーマットに柔軟に対応することができる。」(5欄40行目〜48行目)ク「(実施例)以下,第1図ないし第4図を参照しながら本発明にかかる多頁面付け方法の実施例について説明する。本発明は,多頁面付けパターンの作成部分と最終フォーマット作成部分に大別することができる。第1図,第2図は多頁面付けパターンの作成の例を示し,第3図は最終フォーマット作成の例を示す。」(5欄49行目〜6欄5行目)ケ「これによってパターン作成に必要な一通りのデータの入力が終了する。 そこで次に,ディスクドライブ装置にデータディスクをセットし,パターン作成処理を行う。そして,作成したパターンに付する番号を入力し,データディスクにそのパターンデータを書き込む。書き込まれたパターンデータは,あとで説明する最終フォーマット作成時に読み出される。」(6欄26行目〜33行目)コ「次に,第3図を参照しながら最終フォーマット作成について説明する。 最終フォーマット作成では,まずディスクドライブ装置にパターンデータの入ったディスクをセットし,パターンデータの読み込みを行う。次に,過去のフォーマットデータを参照するかどうかを選択し,過去のフォーマットデータを参照しない場合は,最終フォーマット作成に必要な全データを入力する。最終フォーマット作成に必要な全データ(フォーマットデータ)とは,感光材料の幅,感光材料の長さ,ページサイズ(縦横寸法)各ドブの幅,くわえの幅,トンボと称する祈り(注,「折り」の誤記と認める。)の基準マークの撮影幅,背丁の撮影幅,その他必要な各種寸法データである。一方,入力済みの過去のフォーマットデータを参照する場合は,参照フォーマットデータの入ったディスクをディスクドライブ装置にセットし,過去のデータを読み込む。読み込まれた過去のデータの中から参照しようとするデータのデータ番号を入力して選択し,これに変更しようとするデータを入力する。」(6欄45行目〜7欄12行目)サ「データ入力をしなおす必要がない場合はディスクドライブ装置にデータディスクをセットしたあとデータ番号を入力し,さらに綴じの種類を入力したあと最終フォーマット作成処理を行い,データディスクへ最終フォーマットを書き込む。・・・こうして,データディスクに書き込まれたパターンデータ群とフォーマットデータ群は,製版用カメラで1枚の感光材料に多数ページの原稿の像を頁面付けする場合に利用される。」(7欄19〜32行目)シ「上記実施例によれば,パターン作成において任意のパターンデータを入力することにより任意の多頁面付けパターンを作成することができ,これに任意の寸法データ(フォーマットデータ)を入力して任意の最終フォーマットを作成することができるため,任意のパターンと任意のフォーマットデータとを組み合わせて多種多様の多頁面付け最終フォーマットを作成することができる。従って,製版カメラのユーザーによって独自のパターンとフォーマットデータがあったとしても,これに柔軟に対応することができる。なお,多頁面付けパターンは,予め各種のパターンを用意しておき,これに任意のフォーマットデータを入力して所望の最終フォーマットを作成するようにしてもよい。この場合,パターンについてはいわゆる既成のパターンということになるが,フォーマットデータは任意のものを入力することができるため,これまで行われてきたように,既成の最終フォーマットの中から選択する場合に比べて,対応(する)できる範囲を格段に拡大することができる。」(8欄3行目〜21行目)ス「(発明の効果)本発明によれば,任意のパターンと任意のフォーマットデータとを組み合わせて多種多様の多頁面付け最終フォーマットを得ることができるため,製版カメラ等において対応できる範囲をほとんど無限に拡大することができる。また,製版カメラ等のユーザーによって独自のパターンとフォーマットデータがあったとしても,これに柔軟に対応することができる。さらに,予め用意した各種のパターンデータ群の中から適宜のパターンデータを選択し,これに任意のフォーマットデータを入力して所望の最終フォーマットを作成するようにした場合でも,フォーマットデータは任意のものを入力することができるため,既成の最終フォーマットの中から選択する場合に比べて,対応できる範囲を格段に拡大することができる。」(8欄28行目〜42行目)( )本件明細書の上記記載によれば,「最終フォーマット」とは,多頁面付け3のために必要な全データのことであること,「最終フォーマット」は,パターンデータとフォーマットデータとからなること,「パターンデータ」は,頁の順番,頁の天の方向,背丁に関するデータ,頁露光の順番,印刷機のくわえの方向等の頁面付けレイアウトを指定するデータであること,「フォーマットデータ」とは,版の寸法,頁サイズ,ドブの幅,くわえの幅,その他の面付けのために必要な各種の寸法についてのデータであることが認められる。 また,本件発明の構成要件B及びCにいう「多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させておき」との記載から,本件発明が,多頁面付けパターンに必要な各種データについて,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶させるという構成を有し,また,構成要件Dにいう「各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成する」との記載から,分類し,記憶された「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を組み合わせて,多頁面付けのために必要な全データである最終フォーマットを作成するという構成を有することが認められる。 そして,上記( )の本件明細書の記載によれば,従来は,多頁面付け方法2において,各種の最終フォーマットを用意しておき,その中から一つを選択して使用していたが,多種多様のデータがあるため,すべての最終フォーマットを網羅することは困難であったところ,本件発明は,必要なデータをパターンデータ群とフォーマットデータ群に分類し,それぞれのデータ群の中から任意に選択して最終フォーマットを作成することを特徴とするものであるとされている。そうすると,本件発明は,多頁面付け方法に必要なデータについて,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶し,各データを組み合わせて「最終フォーマット」を作成するという構成に技術的意義が認められるものである。 ここで,「最終フォーマット」を作成するのに,一つの「パターンデータ」と一つの「フォーマットデータ」を組み合わせるのではなく,「パターンデータ」同士又は「フォーマットデータ」同士を組み合わせる場合があるとすると,最終フォーマット作成のためには,「パターンデータ」又は「フォーマットデータ」として,同一の類型のものとして分類して記憶させたもの同士で組み合せられる場合が生じることとなり,結局,「最終フォーマット」は,上記の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」の分類,記憶と関係なく,データの性質を参酌してこれらを選択し,組み合わせることにより作成されることとなりかねない。これは,本件発明において,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶するとの構成を無意味とし,多頁面付けに必要なデータについて,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶させるという本件発明の技術的意義が失われることとなるものである。 そうすると,「最終フォーマット」を作成するのに,「パターンデータ」同士又は「フォーマットデータ」同士を組み合わせる場合が生じることとなる解釈は不合理であるといわざるを得ないところ,本件発明の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」が最小データを含むとすると,「最終フォーマット」を作成するのに,「パターンデータ」同士又は「フォーマットデータ」同士を組み合わせる場合が生じることとなるのであるから,本件発明の「パターンデータ」は「最小パターンデータ」を含まず,また,「フォーマットデータ」は「最小フォーマットデータ」を含まないものと認めるのが相当である。したがって,本件発明においては,その技術的意義からも,一つの「パターンデータ」と一つの「フォーマットデータ」を組み合わせることにより,「最終フォーマット」が作成されるものと解釈されるのであって,「パターンデータ」は「セットパターンデータ」をいい,「フォーマットデータ」は「セットフォーマットデータ」をいうものと認められる。すなわち,本件発明は,多頁面付けパターンに必要な各種データについて,「セットパターンデータ」又は「セットフォーマットデータ」として,分類してこれを記憶させ,「パターンデータ」のデータ群のうちの一つの「セットパターンデータ」と「フォーマットデータ」のデータ群のうちの一つの「セットフォーマットデータ」を組み合わせることで「最終フォーマット」を作成することを技術的思想とするものである。 ( )本件発明の技術的意義を上記( )のとおりに解釈することは,本件発明の4 3出願経過及び本件補正と同日付けで本件発明の共同出願人の一人である被控訴人名義で提出された本件意見書の記載からも裏付けられる。 すなわち,本件発明は,平成元年7月13日に特許出願され,同年8月9日付けで,本件出願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)及び図面について,誤記の訂正のために,若干の補正がされ,その後,平成3年2月27日に出願公開(乙1)がされたが,平成7年3月3日付けで,審査官から,本件出願について,特許法29条2項により特許を受けることができないことを理由とした拒絶理由通知が発せられた(乙2)。 そこで,出願人は,同年5月17日付けで,平成元年8月9日付けの上記補正により補正された後の明細書の特許請求の範囲のすべてと発明の詳細な説明の一部を補正する旨の本件補正(乙3)をし,併せて,審査官に対し,同日付けの本件意見書(乙4)を提出した。 当初明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,「1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,多頁面付けパターンに必要な各種データを入力して各種の多頁面付けパターンを作成し,作成された各種多頁面付けパターンの中から任意のパターンを選択し,これに各種寸法データ(フォーマットデータ)を入力して最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」であり,請求項2の記載は,「1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であって,予め用意されている各種の多頁面付けパターンの中から任意のパターンを選択し,これに各種寸法データ(フォーマットデータ)を入力して最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」であった(以下,同請求項1に記載された発明を「補正前発明1」,同請求項2に記載された発明を「補正前発明2」という。)。 そして,本件拒絶理由通知書(乙2)には,本件出願に係る発明の進歩性が否定される理由として,本件引用例が先行文献の一つとして引用され,本件引用例について,審査官から,「製版機において,製本様式に応じた複数のモードを予め記憶しておき,その中のモードを選択する点及び撮影倍率や寸法を考慮して面付けを行う点」が記載されているとの指摘がされた。 これに対し,本件意見書(乙4)には,本件補正後の発明である本件発明について,「本願請求項1記載の発明(注,本件発明)は,別途手続補正書で改めた特許請求の範囲に記載されているとおり,a.1枚の版に複数頁分の原稿の像を形成するための多頁面付け方法であること,b.多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させること,c.各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成すること,を構成上の特徴としています。これを具体的に説明すると,多頁面付けに必要なデータを,パターンデータ群(Pn)と,フォーマットデータ群(Fn)に分類し,それぞれのデータ群の中から多頁面付けに要求される両データのそれぞれ一つを選択し,これを組み合わせて(P1+F1),所望の最終フォーマット(FF)を得ることを特徴としています。」(2頁4行目〜15行目),「これに対して引例1(注,本件引用例)記載の発明は,引例1の第5欄第31行ないし第36行に『制御部CのCPU55には,用紙の寸法,印刷機の形式と大きさ,製本の様式等各種の要求に対応した,用紙に刷り合わせる原稿の数とその配置に関する多種のモードが予め記録され,操作盤54の選択ボタンにより,上記モードを自由に選択することができるようになっている。』とあるとおり,本願発明でいうところのパターンに関するデータとフォーマットに関するデータとが分類されることなく混然と記録された多種多様のモードの中から一つを選択するものであって,本願発明のように,多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類するという思想や,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させるという思想や,各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成するという思想はありません。従って,引例1記載の発明によれば,多種多様の数多くのモードの中から所望のものを選択する必要があるため,本願発明のように,パターンデータ群の中から一つとフォーマットデータ群の中から一つを選択して組み合わせるようにしたものに比べて,最終フォーマットの作成が面倒であるという難点があります。」(2頁16行目〜3頁3行目)との記載がある。 上記の特許請求の範囲の記載によれば,補正前発明1及び補正前発明2は,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を分類して記憶させるという構成を規定していなかったところ,本件補正により,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を分類して記憶させるという構成が規定された。 そして,本件拒絶理由通知書においては,本件引用例に製本様式における複数のモードを記憶させること等が記載されていると指摘されたところ,出願人は,本件引用例に記載された発明においては,本件発明における,各種データを「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶させるという思想がないことを指摘し,本件引用例に記載された発明は,数多くのモードの中から所望のものを選択する必要があるため,最終フォーマットの作成が面倒であるのに対し,本件発明は,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類して記憶させたため,最終フォーマットが一つの「パターンデータ」と一つの「フォーマットデータ」を選択して組み合わせるものであり,最終フォーマットの作成が容易であると述べている。 このように,出願人は,本件発明は,本件補正により規定された,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を分類して記憶し,それらを組み合わせて「最終フォーマット」が作成されるという点に技術的意義があること,また,分類して記憶させることによって,各一つの「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を組み合わせることで,多様な「最終フォーマット」を容易に作成できることを記載している。そして,「最終フォーマット」作成のために,「パターンデータ」同士又は「フォーマットデータ」同士を組み合わせる場合もあることは,分類して記憶させたにもかかわらず,分類,記憶と関係なく,データの性質を参酌してこれらを選択し,組み合わせる必要が生じ,分類して記憶させたという本件発明の技術的意義を失わせることになり,また,本件意見書における「パターンデータ群(Pn)と,フォーマットデータ群(Fn)に分類し,それぞれのデータ群の中から多頁面付けに要求される両データのそれぞれ一つを選択し」,「本願発明(注,本件発明)のように,パターンデータ群の中から一つとフォーマットデータ群の中から一つを選択して組み合わせるようにした」との記載にも反することとなるから,前記( )のとおり,本件発明における「パターンデータ」及3び「フォーマットデータ」は,一つの「パターンデータ」及び一つの「フォーマットデータ」を組み合わせることにより「最終フォーマット」を作成できる「セットパターンデータ」及び「セットフォーマットデータ」のことであることが裏付けられる。 ( )これに対し,控訴人は,本件発明の「パターンデータ」は画像データであ5り,「フォーマットデータ」は文字データであって,本件発明の「分類」は,画像データである「パターンデータ」と文字データである「フォーマットデータ」の両方を含んでいる「多頁面付けに必要なデータ」を,それを構成している最小パターンデータと最小フォーマットデータとして,その違いを認識することであるとし,また,「パターンデータ」として認識すると,そのデータが画像情報として分類され,画像データとしてコンピュータ処理されるという作用効果を生じ,「フォーマットデータ」として認識すると,そのデータが文字情報として分類され,文字データ(寸法データ)としてコンピュータ処理されるという作用効果を生じる旨主張する。 しかし,本件明細書には,「パターンデータ」が,控訴人主張のように画像データであるとの記載はないし,それを示唆する記載もなく,「フォーマットデータ」が「パターンデータ」との対比において文字データをいうとする記載もなく,また,「分類」について,控訴人主張のような意義を有することの記載もなく,それを示唆する記載もない。控訴人は,「パターン」は,画像の概念に関する図柄,模様,型などを意味する語として認知されていて,パターン情報がコンピュータ上の画像情報に属することは周知であり,「パターンデータ」がパターン情報をコンピューター処理可能なデータとしたものであり,画像データに属することは明らかである旨主張するが,「パターン」が控訴人主張のような意味を有する語であったとしても,「パターンデータ」が「パターン」に関する情報ということを超えて,当然に画像情報を意味するものであることを認めるには足りない。そして,本件発明における「分類」の技術的意義は,前記( )及び( )のとおりと認められるのであり,34控訴人主張のように,画像データが画像データとしてコンピュータで認識されて,処理され,文字データが文字データとしてコンピュータで認識されて,処理されることが,本件発明における「分類」であるということはできない。 また,控訴人は,「『パターンデータ』と『フォーマットデータ』とを,データディスクなどにそれぞれ別々に記憶させること」は,本件発明における「データの分類」とは無関係であり,一般的には,「データの格納」という概念に属するにすぎないものである旨主張する。 しかし,「多頁面付けパターンに必要な各種データをパターンデータとフォーマットデータに分類し,複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させておき,各データ群の中から任意に選択した各データを組み合わせて最終フォーマットを作成することを特徴とする多頁面付け方法。」との本件発明の特許請求の範囲の記載からも,「複数のパターンデータからなるパターンデータ群と複数のフォーマットデータからなるフォーマットデータ群を記憶させておき,」(構成要件C)との構成は,最終面付けに必要なデータ(最終フォーマット)を「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に「分類」することを前提として,それを記憶させるものであり,「記憶」自体は「データの格納」という概念に属するとしても,その記憶は,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」との分類を前提としてされるものであり,また,その分類の意義は前記( )及び( )のとおりであって,控訴人の主張は,上記34説示を左右するものではない。 ( )控訴人は,本件発明において,例えば,「頁の天の方向」を示すパターン6データの群の中から組み合わせるデータを選択する場合,頁の天の方向を決定するためには一つの方向を特定しなければならないから,必然的に一つを選択するのであり,フォーマットデータの場合も同様であって,本件意見書中の「パターンデータ群(Pn)と,フォーマットデータ群(Fn)に分類し,それぞれのデータ群の中から多頁面付けに要求される両データのそれぞれ一つを選択し」との文言,及び「本願発明のように,パターンデータ群の中から一つとフォーマットデータ群の中から一つを選択して組合わせるようにしたもの」との文言は,上記当然の選択操作を説明したものにすぎないとして,本件意見書において,本件発明が,「パターンデータ」と「フォーマットデータ」を「ただ一回の組合せだけ」で最終フォーマットを作成することが本件発明であるとの主張をした事実はない旨主張する。 しかし,本件意見書の上記記載は,その文言に照らしても,「パターンデータ」の一つと「フォーマットデータ」の一つを組み合わせて「最終フォーマット」を作成するものであると自然に理解できるものであり,控訴人が主張するような,「頁の天の方向」等の個々のデータについて,一つを選択するものであると当然に理解できるものではないし,控訴人主張のような解釈は,「最終フォーマット」作成に当たり,結局,「頁の天の方向」等の個々のデータの性質を参酌して,これらを選択し,組み合わせることになるものであって,本件発明が,分類して記憶させるところに技術的意義があるにもかかわらず,分類して記憶させたことと関係なく,「最終フォーマット」作成に当たっては,データの性質を参酌しながら,個々のデータの選択をしなければならなくなるものであって,本件発明の「分類」の技術的意義を失わせるものであることは,前示のとおりである。 控訴人は,また,本件発明と本件引用例に記載された発明とは明らかに異なっているとして,出願人は,本件拒絶理由通知に対して本件発明の特許請求の範囲を減縮して対応しなければならない必要はなく,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的としたものではなく,本件発明の基本的な概念である,多頁面付けに必要なデータを「パターンデータ」と「フォーマットデータ」に分類する点を明らかにし,本件発明と本件引用例との違いを審査官が十分理解するためにしたものであって,本件補正の前後を通じ,本件発明の「パターンデータ」は,「最小パターンデータ」であり,「フォーマットデータ」は,「最小フォーマットデータ」である旨主張する。 しかし,本件引用例の記載内容については控訴人主張の事実が認められるとしても,本件発明の特許請求の範囲の記載,本件明細書の記載に本件意見書の記載を併せ考慮すれば,本件補正により規定された「分類」の技術的意義,並びに,本件発明の「パターンデータ」及び「フォーマットデータ」の意義は,前記( )及び( )のとおりであると認められるのであり,控訴人の主34張は,採用の限りではない。 2被控訴人製品を用いた多頁面付け方法について( )証拠(甲5,乙11の1〜4)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人製品1のうちの「」を利用した多頁面付けは,同製品をパソ FACILIS IMVer.3.5Jコンにインストールした上で,パソコンの操作により行われるが,その詳細は次のとおりであることが認められる。 ア新規にレイアウトを作成する方法刷版サイズ,仕上がりサイズ,面付け数,用紙の返し方向,マージン,くわえ量,ドブ幅,綴じる位置,裁落とし幅,ページの番号と向き,トンボ,背丁,背標等の各データを入力し(なお,以上のデータの項目の中には,例えば,仕上がりサイズの項目では,A5版やA4版等のデータがあらかじめ登録されているように,その項目を構成する個々のデータ(最小データ)があらかじめ登録されており,ユーザーはその個々のデータの中から任意のものを選択して設定することができるようになっているものもある。),レイアウトを作成する。作成したレイアウトのデータは,ファイルに保存することができるが,レイアウト作成前のセットデータに当たるデータを保存することはできない。 イ既存のレイアウトを利用して新たなレイアウトを作成する方法保存していたレイアウトのデータの中から任意のものを選択して読み出し,個々の設定項目についてのデータを変更して新たなレイアウトを作成する。 ( )「」に基づく多頁面付け方法は,前記( )のとおり2FACILIS IMVer.3.5J 1であり,同多頁面付け方法において,「セットパターンデータ」又は「セットフォーマットデータ」として分類し,記憶するという作業は行われず,したがって,記憶させておいた「セットパターンデータ」と「セットフォーマットデータ」を組み合わせるという作業も行われない。 本件発明においては,前記1のとおり,「パターンデータ」とは「セットパターンデータ」を,「フォーマットデータ」とは「セットフォーマット」をいい,本件発明は,多頁面付けパターンに必要な各種データについて,「セットパターンデータ」又は「セットフォーマットデータ」として,分類して(構成要件B),複数のセットパターンデータからなるパターンデータ群と複数のセットフォーマットデータからなるフォーマット群を記憶させ(構成要件C),「パターンデータ」のデータ群うちの一つの「セットパターンデータ」と「フォーマットデータ」のデータ群のうちの一つの「セットフォーマットデータ」を組み合わせることで「最終フォーマット」を作成するもの(構成要件D)であるのに対し,「」に基づくFACILIS IMVer.3.5J多頁面付け方法は,前記のとおり,多頁面付けの各種データについて,「セットセットパターンデータ」又は「セットフォーマットデータ」として分類した上で,それぞれを記憶することをせず,したがって,記憶させておいた「セットパターンデータ」と「セットフォーマットデータ」を組み合わせるという作業も行われないから,上記多頁面付け方法は,本件発明の構成要件BないしDを充足しない。 そして,被控訴人製品には,いくつかのバージョンがあるが,いずれのバージョンも,その多頁面付け方法が,本件発明との対比の関係では同一であることは,当事者間に争いがないから,すべての被控訴人製品に基づく多頁面付け方法は,本件発明の構成要件BないしDを充足しない。 3以上によれば,被控訴人製品に基づく多頁面付け方法は本件発明の技術範囲に属しないものであるから,控訴人の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がなく,これらを棄却した原判決は相当であって,控訴人の控訴は理由がない。 よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 宍戸充 |
裁判官 | 柴田義明 |