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関連審決 異議2001-70271 無効2006-80112
無効2006-80034
この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17ワ12207特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成18ワ474特許権侵害差止等請求事件 判例 特許
平成18ワ1223特許権侵害行為差止等請求事件 判例 特許
平成17ワ8874不当利得返還請求事件 平成17ワ15841不当利得返還請求事件 判例 特許
平成16ワ8508損害賠償等請求事件 判例 特許
関連ワード 産業上利用(29条1項柱書) /  自然法則 /  技術的思想 /  創作性(創作) /  進歩性(29条2項) /  容易に発明 /  周知技術 /  慣用技術 /  公知技術 /  技術的範囲 /  同日出願 /  同一の発明 /  技術的手段 /  先行技術 /  発明の詳細な説明 /  優先権 /  分割出願 /  実質的に同一 /  着想 /  悪意 /  優先日 /  参酌 /  技術的意義 /  置き換え /  容易に想到(容易想到性) /  特許発明 /  実施 /  構成要件 /  構成要件充足性 /  差止請求(差止) /  侵害 /  同意 /  拒絶理由通知 /  訂正審判 /  請求の範囲 /  拡張 /  変更 /  訂正要件 /  合理的な理由 / 
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事件 平成 17年 (ワ) 27193号 損害賠償請求事件
東京都江東区<以下略>
原告アルゼ株式会社
原告訴訟代理人弁護士田中康久
同 中込秀樹
同 岩渕正紀
同 岩渕正樹
同 松永暁太
同 長沢幸男
同 長沢美智子
同 今井博紀
同 補佐人弁理 士正林真之
同 井口嘉和
同 八木澤史彦
同 佐藤武史
同 佐藤玲太郎
同 小椋祟吉
同 小野寺隆
同 鈴木康介
同 進藤利哉
同 清水俊介 東京都豊島区<以下略>
被告サミー株式会社
被告訴訟代理人弁護士牧野利秋
同 飯田秀郷
同 栗宇一樹
同 早稲本和徳
同 七字賢彦
同 鈴木英之
同 大友良浩
同 隈部泰正
同 戸谷由布子
同訴訟代理人弁理士黒田博道
同 北口智英
同 石井豪
同 布川俊幸
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2007/05/22
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求の趣旨1被告は,原告に対し,210億円及びこれに対する平成18年1月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3仮執行宣言第2事案の概要本件は 「遊技機」について特許権(特許番号第3069092号及び第3 ,708056号)を有する原告が,被告が製造販売する別紙被告物件目録記載のパチスロ機「北斗の拳 (以下「被告物件」という )が上記各特許権の特 」 。
許発明の技術的範囲に属するとして,特許権侵害を理由とする損害賠償等を求めた事案である。
( ) 1前提となる事実 争いのない事実及び末尾掲記の証拠により認められる事実( ) 原告は,ゲーム用機器及びゲームソフトウェアの試験研究,企画,開発,1製造,販売,レンタル及び経営等を業とする株式会社である。
被告は,パチンコ遊技機,回胴式遊技機,アレンジボール遊技機,雀球遊技機及び関連機器の製造販売等を業とする株式会社である。
( ) 原告は 次の特許 以下 本件特許1 というにつき特許権 以下 本2 ,(「」。)(「件特許権1」といい,本件特許の願書に添付した明細書(平成14年6月27日訂正請求による訂正後のもの)及び図面をまとめて「本件明細書1」という )を有する(甲1,2,3 。 。 )ア発明の名称遊技機イ特許番号第3069092号ウ出願日平成10年11月25日エ出願番号特願平11-160182オ公開日平成12年5月16日カ公開番号特開2000-135303キ優先日平成9年12月5日ク優先権主張番号特願平9-352171ケ優先権主張国日本コ登録日平成12年5月19日サ本件明細書1の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件特許発明1」という。本判決添付の本件特許1の特許公報及び特許決定公報(以下,まとめて「本件公報1」という )参照 。。)「乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示装置と,この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と,前記可変表示を各列毎に停止させる可変表示停止手段とを備えて構成される遊技機において,前記入賞態様決定手段は,複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当選フラグを成立させ,前記可変表示停止手段は,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段を備え,前記報知情報が,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知と,その後の,前記報知態様とは異なる報知態様による報知とからなることを特徴とする遊技機 」。
シ本件明細書1の特許請求の範囲の請求項3の記載は次のとおりである(以下,請求項3に記載された発明を「本件特許発明3」という。本判決添付の本件公報1参照 。)「前記報知手段は,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段と,前記可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段と,前記音発生手段によって発生される効果音の種類,および前記連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じて選択する報知態様選択手段とか。」 ら構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機ス本件明細書1の特許請求の範囲の請求項10の記載は次のとおりである(以下,請求項10に記載された発明を「本件特許発明10」という。本判決添付の本件公報1参照 。)「前記報知態様選択手段は,デモ抽選テーブル選択テーブルを参照して遊技状態および入賞態様に応じてデモ抽選テーブルを選択し,選択されたデモ抽選テーブルを参照して抽選乱数に応じて演出態様組合せを選択することを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の遊技機 」。
( ) 原告は 次の特許 以下 本件特許2 というにつき特許権 以下 本3 ,(「」。)(「件特許権2」といい,本件特許の願書に添付した明細書及び図面をまとめて「本件明細書2」という )を有する(甲4,5 。 。)ア発明の名称遊技機イ特許番号第3708056号ウ出願日平成14年2月15日エ出願番号特願2002-38046オ公開日平成14年9月24日カ公開番号特開2002-272904キ優先日平成12年4月26日ク優先権主張番号特願2000-125331ケ優先権主張国日本国コ登録日平成17年8月12日サ本件明細書2の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである(以下,請求項1に記載された発明を「本件特許発明2」といい,本件特許発明1及び同3と併せて「本件各特許発明」という。本判決添付の本件特許2の特許公報(以下「本件公報2」という )参照 。。)「乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段とを備えて構成される遊技機において,前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段と,この状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに現在の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機」( ) 本件各特許発明構成要件を分説すると,次のとおりである(以下「構成4要件A」などという。。)ア本件特許発明1A乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,B種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示装置と,Cこの可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と,D前記可変表示を各列毎に停止させる可変表示停止手段とを備えて構成される遊技機において,E前記入賞態様決定手段は,複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当選フラグを成立させ,, , F前記可変表示停止手段は 遊技者が操作可能な停止ボタンからなりこの停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い,G前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段を備え,H前記報知情報が,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知と,その後の,前記報知態様とは異なる報知態様による報知とからなることを特徴とするI遊技機イ本件特許発明2A乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,B遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段とを備えて構成される遊技機において,C前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段と,Dこの状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに現在の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段とを備えたことを特徴とするE遊技機ウ本件特許発明3A乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,B種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示装置と,Cこの可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と,D前記可変表示を各列毎に停止させる可変表示停止手段とを備えて構成される遊技機において,E前記入賞態様決定手段は,複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様の当選フラグを成立させ,F前記可変表示停止手段は,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い,G前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を所定の確率で遊技者に報知する報知手段,又は,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様とは異なる入賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段のうちの,いずれか1つの報知手段を備え,H前記報知情報が,配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される複数の効果音の中の1つの音による報知と,その後の,前記報知態様とは異なる報知態様による報知とからなりI前記報知手段は,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段と,前記可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段と,前記音発生手段によって発生される効果音の種類,および前記連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じて選択する報知態様選択手段とから構成されることを特徴とするJ遊技機( ) 被告物件について5ア被告が製造,販売している被告物件の構成は,別紙被告物件目録記載のとおりである 弁論の全趣旨 被告準備書面( )添付の被告物件説明書 た (。 (2だし 【図5】を被告準備書面( )添付の【図5】のとおり訂正したもの) , 5については,原告が,原告準備書面( )の1頁以下及び原告準備書面( )の 1 61頁以下で認否しており,一部の点を除き,概ね争いがない。被告作成の上記物件目録中,争いがある部分(同目録3頁7,8行,20行,6頁13ないし19行,7頁10行,12ないし23行,8頁11,12行)を削除し,一部説明を補ったもの(下線を付加したもの)が,本判決添付の別紙被告物件目録である。被告物件の構成について,当事者間に争い 。)がある部分は,争点1に記載したとおりである。
イアで認定した別紙被告物件目録の記載に基づいて,被告物件の構成を本件特許発明1ないし3の構成要件に則して分説すると次のとおりである(「」。,, 以下 被告物件の構成1-a などという なお 以下に引用する図はいずれも別紙被告物件目録の図である。。))本件特許発明1の構成要件に則した分説aa乱数サンプリング回路において,独立した二つの乱数(図柄抽選用乱数と演出パターン抽選用乱数)がサンプリングされ(0〜65535 ,当該ゲームの遊技状態(ストック待ちゲーム,ストック放出ゲ )) () ーム又はストックゲーム に応じて選択される当選番号 0ないし5ごとに,それぞれ所定の数値領域をもって区分された,例えば図6のような当選確率テーブルと,サンプリングされた図柄抽選用乱数とを照合して,当選番号が決定されるようにする当選番号決定手段と,b種々の図柄を付した3列のリール帯を回転させて,リール帯の回転が停止したときに表示窓から各列のリールの図柄の組合せが表示されるようにする手段と,cゲームの開始操作を行うスタートレバー4と,d前記リール帯を各列毎に停止させるストップボタンとを備えて構成されるパチスロ機において,e前記当選番号決定手段は,複数の入賞態様からなる当選確率テーブルを有し,抽出された乱数が,前記当選確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様に対応した当選番号を決定し,f前記ストップボタンは,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,このストップボタンの操作タイミングに応じて前記リールを各列毎に停止させるが,@ストップボタンスイッチが押下された時点における基準位置にある当該リールの図柄番号が検出され,A現在の遊技状態と,決定された演出パターン番号と,検知された第1停止リール及び停止テーブル決定乱数(別途取得される)に対応して,複数の停止テーブルの中から今回ゲームにおける当該リールの停止テーブル(例えば図9の7)を決定し(図8 ,B当該停止テーブルに記載されたデ )ータに記載されたずらしコマ数(5コマの範囲内)分だけ基準位置からずらして前記図柄番号に応じた図柄を停止し,g,h前記スタートレバー操作からストップボタンを三つ押し下げるまでの間に,遊技状態,前記当選番号及び演出パターン抽選用乱数と演出パターンテーブル(図7)との照合によって決定された演出パターン番号に応じて図5のような演出を行う演出手段を備えた,iパチスロ機)本件特許発明2の構成要件に則した分説 ba乱数サンプリング回路において,独立した二つの乱数(図柄抽選用乱数と演出パターン抽選用乱数)がサンプリングされ(0〜65535 ,当該ゲームの遊技状態(ストック待ちゲーム,ストック放出ゲ )) () ーム又はストックゲーム に応じて選択される当選番号 0ないし5ごとにそれぞれ所定の数値領域をもって区分された,例えば図6のような当選確率テーブルと,サンプリングされた図柄抽選用乱数とを照合して,当選番号が決定されるようにする手段と,b現在の遊技状態がストック待ちゲーム及びストックゲームの場合には「操作音 (継続しない)を出音し,ストック放出ゲームの場合に 」は「ワッハッハ (継続しない)を出音し,アシストゲーム及びRB 」ゲームの場合には「専用の音楽 (継続する)を出音するパチスロ機 」において,c全リールが停止し,メダルの払い出しが終了した後に,遊技開始時の初期設定を行い,遊技待機時間(約60秒)をセットし,メダルの投入がない状態で同待機時間が経過したか否かをチェックする手段(図13)と,d上記チェック手段によってメダルの投入がない状態で前記待機時間が経過したことが検出されたときに 「遊技待機コマンド」か「遊技 ,メダル投入コマンド」かをチェックし 「遊技待機コマンド」であっ ,て,かつ,アシストゲーム中又はRBゲーム中である場合には前記出音をフェードアウトする手段とを備えたことを特徴とするeパチスロ機)本件特許発明3の構成要件に則した分説ca乱数サンプリング回路において,独立した二つの乱数(図柄抽選用乱数と演出パターン抽選用乱数)がサンプリングされ(0〜65535 ,当該ゲームの遊技状態(ストック待ちゲーム,ストック放出ゲ )) () ーム又はストックゲーム に応じて選択される当選番号 0ないし5ごとに,それぞれ所定の数値領域をもって区分された,例えば図6のような当選確率テーブルと,サンプリングされた図柄抽選用乱数とを照合して,当選番号が決定されるようにする当選番号決定手段と,b種々の図柄を付した3列のリール帯を回転させて,リール帯の回転が停止したときに表示窓から各列のリールの図柄の組合せが表示されるようにする手段と,cゲームの開始操作を行うスタートレバー4と,d前記リール帯を各列毎に停止させるストップボタンとを備えて構成されるパチスロ機において,e前記当選番号決定手段は,複数の入賞態様からなる当選確率テーブルを有し,抽出された乱数が,前記当選確率テーブルのいずれかの入賞態様に属したとき,その属した入賞態様に対応した当選番号を決定し,f前記ストップボタンは,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,このストップボタンの操作タイミングに応じて前記リールを各列毎に停止させるが,@ストップボタンスイッチが押下された時点における基準位置にある当該リールの図柄番号が検出され,A現在の遊技状態と,決定された演出パターン番号と,検知された第1停止リール及び停止テーブル決定乱数(別途取得される)に対応して複数の停止テーブルの中から今回ゲームにおける当該リールの停止テーブル(例えば図9の7)を決定し(図8 ,B当該停止テーブルに記載されたデー )タに記載されたずらしコマ数(5コマの範囲内)分だけ基準位置からずらして前記図柄番号に応じた図柄を停止し,g,h前記スタートレバー操作からストップボタンを三つ押し下げるまでの間に,遊技状態,前記当選番号及び演出パターン抽選用乱数と演出パターンテーブル(図7)との照合によって決定された演出パターン番号に応じて図5のような演出を行う演出手段を備え,i前記演出手段は,前記リール帯の回転が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音(回転開始音)を発生させる音発生手段と,前記ストップボタンによって少なくとも1列のリール帯が停止される際に複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する表示手段と,前記音発生手段によって発生される効果音の種類及び前記表示手段によって演出される表示態様の種類の組合せを,前記当選番号決定手段で決定された当選番号,演出パターン抽選用乱数,入賞態様と,演出パターンテーブル(図7)との照合によって選択するj遊技機ウ被告物件の構成1-a,1-cないし1-e及び1-iは,本件特許発明1の構成要件A,CないしE及びIをそれぞれ充足する。
被告物件の構成2-a及び2-eは,本件特許発明2の構成要件A及びEをそれぞれ充足する。
被告物件の構成3-a,3-cないし3-e及び3-jは,本件特許発明3の構成要件A,CないしE及びJをそれぞれ充足する。
( ) 本件特許1の無効審判の経緯等6ア被告は,平成18年6月13日付けで,特許庁に対し,本件特許1の請求項1に係る発明(本件特許発明1)の特許を無効にする旨の審判を請求した(乙49,甲26。無効2006-80112 。)イ原告は,上記無効審判事件において,平成18年9月4日付け訂正請求書により,本件明細書1の特許請求の範囲の請求項1及び同3を次のよう(。, に訂正することを含む明細書の訂正を申し立てた 甲27の1・2 以下同訂正請求を「本件訂正請求1」といい,同訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項1を「本件訂正特許発明1」といい,同訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項3を「本件訂正特許発明3」という。訂正によって追加された部分(以下,請求項1について「本件訂正部分1」といい,請求項3について「本件訂正部分3」という )に下線を付した。。。))本件訂正特許発明1(請求項1)a「乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄の組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示, , 装置と この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と前記可変表示を各列毎に停止させる可変表示停止手段とを備えて構成される遊技機において,前記入賞態様決定手段は,複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれか, , の入賞態様に属したとき その属した入賞態様の当選フラグを成立させ前記可変表示停止手段は,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段を備え,前記報知情報が配当のある複数の異なる,小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に共通して演出される報知態様による報知と,その後の,前記報知態様とは異なる報知態様による報知とからなることを特徴とするスロットマシン」)本件訂正特許発明3(請求項3) b「乱数抽選によって遊技の入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,種々の図柄を複数列に可変表示し,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた図柄組み合わせを前記各列に停止表示する可変表示装置と,この可変表示装置の可変表示を開始させる可変表示開始手段と,前記可変表示を各列毎に停止させる可変表示停止手段とを備えて構成される遊技機において,前記入賞態様決定手段は,複数の入賞態様からなる確率テーブルを有し,抽出された乱数が前記確率テーブルのいずれか, , の入賞態様に属したとき その属した入賞態様の当選フラグを成立させ前記可変表示停止手段は,遊技者が操作可能な停止ボタンからなり,この停止ボタンの操作タイミングに応じて前記可変表示を各列毎に停止させるが,前記当選フラグが成立していても,前記停止ボタンが前記当選フラグに対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されないと,前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組み合わせを停止表示させない制御を行い,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に対応した報知情報を所定の確率で遊技者に報知する報知手段,または,前記入賞態様決定手段で決定された小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に対応した報知情報及び前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様とは異なる小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に対応した報知情報をそれぞれ所定の確率で遊技者に報知する報知手段のうちの,いずれか1の報知手段を備え,前記報知情報が,配当のある複数の異なる,小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に共通して演出される複数の効果音の中の1つの音による報知と,その後の,前記可変表示手段によって少なくとも1列の可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段による報知とからなると共に,前記報知手段は,前記可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段と,前記可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出, , する連動演出手段と 前記音発生手段によって発生される効果音の種類および前記連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,前記入賞態様決定手段で決定された小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様に応じて選択する報知態様選択手段とから構成されることを特徴とするスロットマシン」( ) 本件特許2の無効審判の経緯等 7ア被告は,平成18年3月1日,特許庁に対し,本件特許2を無効とする旨の審判を請求した(乙53。無効2006-80034 。)イ原告は,上記無効審判事件において,平成18年5月22日,本件明細書2の特許請求の範囲の請求項1を次のように訂正することを含む明細書の訂正を申し立てた(乙53。以下,同訂正請求を「本件訂正請求2」といい,同訂正請求に係る特許請求の範囲の請求項1を「本件訂正特許発明2」という。訂正によって追加された部分(以下「本件訂正部分2」という )に下線を付した。。。)「乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段とを備えて構成されるスロットマシンにおいて,特別の遊技が行われる際に前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段と,この状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに前記特別の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン」ウ特許庁の審判官は,平成18年10月4日付けで,本件訂正請求2を認め,本件特許発明2を含む本件特許2の請求項1ないし5に係る発明について特許を無効とする旨の審決をした(乙53 。)原告は,平成18年11月13日付けで,知的財産高等裁判所に上記審(())。 決の取消を求める訴えを提起した 平成18年 行ケ 第10504号2争点( ) 被告物件の構成(争点1)1ア被告物件の構成1-aの当選番号と被告物件の構成1-bの停止表示図柄の対応関係について(争点1-1 。)イ被告物件の構成1-cのスタートレバー操作とリール回転開始のタイミングが同時といえるか(争点1-2 。)ウ被告物件の構成2-cについて全リールが停止し,メダルの払い出しが終了するタイミングと,遊技開始時の初期設定を行うタイミングが同一といえるか(争点1-3 。)( ) 被告物件が本件特許発明1の技術的範囲を充足するか(争点2 。
2 )ア被告物件の構成1-b及び1-fが本件特許発明1の構成要件B及びFを充足するか(争点2-1 。)イ被告物件の構成1-g及び1-hの図5の各演出種類が本件特許発明1の構成要件G及びHを充足するか(争点2-2 。)( ) 本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものと3いえるか(争点3 。)ア本件特許発明1が特許法29条1項柱書の「発明」といえるか(争点3-1 。)イ本件特許発明1が,遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点3-2 。)( ) 本件特許発明1の無効理由が本件訂正請求1により解消されるか(争点44 。)ア本件特許発明1の無効理由が本件訂正請求1によって解消されるか(争点4-1 。)()。 イ被告物件が本件訂正特許発明1の技術的範囲に属するか 争点4-2( ) 被告物件が本件特許発明3の技術的範囲を充足するか(争点5 。
5 )ア被告物件の構成3-b及び3-fが本件特許発明3の構成要件B及びFを充足するか(争点5-1 。)イ被告物件の構成3-g及び3-hの図5の各演出種類が本件特許発明3の構成要件G及びHを充足するか(争点5-2 。)ウ被告物件の構成3-iが本件特許発明3の構成要件Iを充足するか(争点5-3 。)( ) 本件特許発明3に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものと6いえるか(争点6 。)ア本件特許発明3が特許法29条1項柱書の「発明」といえるか(争点6-1 。)イ本件特許発明3が,本件特許発明3の構成要件AないしFに遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点6-2 。)( ) 本件特許発明3の無効理由が本件訂正請求1により解消されるか(争点77 。)ア本件特許発明3の無効理由が本件訂正請求1によって解消されるか(争点7-1 。)()。 イ被告物件が本件訂正特許発明3の技術的範囲に属するか 争点7-2( ) 被告物件が本件特許発明2の技術的範囲を充足するか(争点8 。
8 )ア被告物件の構成2-bが本件特許発明2の構成要件Bを充足するか(争点8-1 。)イ被告物件の構成2-cが本件特許発明2の構成要件Cを充足するか(争点8-2 。)ウ被告物件の構成2-dが本件特許発明2の構成要件Dを充足するか(争点8-3 。)( ) 本件特許発明2に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものと9いえるか(争点9 。)() ア本件特許発明2がその出願前に公開された特許公報 乙16ないし22に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点9-1 。)イ本件特許発明2が特開平11-178990号公報(乙37)及び特開平7-51442号公報(乙18)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点9-2 。)ウ本件特許発明2が特願2002-38047(乙14出願)に係る発明と同一であり特許法39条2項によって特許を受けることができないものといえるか(争点9-3 。)エ本件特許発明2が特許法36条6項1号の要件を満たすものか(争点9-4 。)() 本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2により解消されるか(争点1010 。)ア本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2によって解消されるか(争点10-1 。)イ被告物件が本件訂正特許発明2の技術的範囲に属するか(争点10-2 。)() 本件特許1の請求項10に係る発明についての原告の主張の追加が,民11訴法143条4項の不当な請求の原因の変更,又は,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃方法に当たるか(争点11 。)() 損害の額等(争点12)12第3当事者の主張1被告物件の構成(争点1)( ) 被告物件の構成1-aの当選番号と被告物件の構成1-bの停止表示図柄1の対応関係について(争点1-1 。)ア原告被告物件は,乱数抽選によって決定された当選番号に応じて停止表示図柄を決定しているといえる。
被告は,当選番号ないし入賞態様と停止表示図柄との対応関係が失われるように制御されている旨主張する。しかし,仮に被告の主張どおり,当, 。 選番号と停止絵柄が無関係であるとするなら 乱数抽選を行う意味がない被告主張のような構成であることはあり得ない。なお,被告主張の当選番号と実際に停止する絵柄との合致確率についてはその根拠が示されていないため,俄に信じることはできない。
イ被告被告物件では 乱数抽選によって当選番号と入賞態様が決定されるが 被 , (告物件の構成1-a ,これを出発点として種々の処理がなされ,当選番 )号ないし入賞態様と停止表示図柄との対応関係が失われるように制御されている。リールの停止制御は,最終的には,被告物件の構成1-fの処理によって決定された停止テーブルに基づいて行われる。
このため,当選番号に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングでストップボタンが操作されたとしても,有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組合せを停止表示しない場合が大半である。
例えば,乱数抽選によってあらかじめ「ベル」当選役(当選番号3)が決定されたとしても,結果的に17.2%の確率でのみ「ベル」役が成立,「」「」() するにすぎずストックゲーム 中の リプレイ 当選役 当選番号4が決定されたとしても,結果的に32.8%の確率でのみ「リプレイ」役が成立するにすぎない。
( ) 被告物件の構成1-cのスタートレバー操作とリール回転開始のタイミン2グが同時といえるか(争点1-2 。)ア原告別紙被告物件目録の図5においては 「レバー操作」時の演出と「回転 ,開始音」の演出を別の欄に記載しているが,被告物件においては,スタートレバーの操作とリールの回転開始はほぼ同時に行われる。
被告は,遊技者が前回ゲームの開始から4.1秒以内に今回ゲームのスタートレバーを操作した場合にはレバー操作時とリールの回転開始時がずれる旨主張する。確かに,ゲーム開始から次ゲーム開始まで4.1秒以上経過しなければ遊技をすることができないという規制が存在するために,上記のようなずれが生じることはあり得る。しかし,遊技者がそのような操作を行った場合を唯一の例外として被告物件においてはレバー操作時とリールの回転開始時は同時なのであるから,これらのタイミングは実質的に同一時点であるといってよい。
イ被告被告物件においては,スタートレバーの操作とリールの回転開始は全く別の制御で行っているため,同時であるとは限らない。
例えば,パチスロ機には,ゲーム開始から次ゲーム開始まで4.1秒以上経過しなければ遊技をすることができないという規制が存在するため,被告物件においては,遊技者が前回ゲームの開始から4.1秒以内に今回ゲームのスタートレバーを操作した場合には,レバー操作と同時にリールが回転を開始しない構成になっている。
( ) 被告物件の構成2-cについて全リールが停止し,メダルの払い出しが終 3了するタイミングと,遊技開始時の初期設定を行うタイミングが同一といえるか(争点1-3 。)ア原告被告物件における前回ゲームのメダル払出し,今回ゲームの遊技待機処理の開始,初期設定の待機時間セットはすべて同時に行われている。
被告は,被告物件の構成2-cにおいては,遊技終了から次遊技開始の初期設定の間に,打ち止めであるか否かの判定を行い,その結果が打ち止めの判定である場合,打ち止め解除信号が来るまで次遊技開始の初期設定をすることができないから,今回ゲームの遊技待機処理の開始,初期設定の待機時間セットはすべて同時に行われているとはいえない旨主張する。
しかし,被告が主張する打ち止め判定は,RBゲームが終了した場合にのみ働く例外的処理であって,本件特許発明2の構成要件充足性との関係では単なる付加的構成にすぎない。このことをもって被告物件が構成要件Cを充足しないということはできない。また,打ち止め判定は瞬時に行われるものであり,打ち止め判定が行われる場合であっても,やはり,今回ゲームの遊技待機処理の開始,初期設定の待機時間セットはすべて同時に行われていることに変わりはない。
イ被告被告物件においては,遊技終了から次遊技開始の初期設定の間に,打ち止めであるか否かの判定を行い,その結果が打ち止めの判定である場合,打ち止め解除信号がくるまで次の遊技開始の初期設定をすることができない。したがって,1ゲーム終了のタイミングと次ゲームの遊技開始時の初期設定のタイミングが同一であるとはいえない。
2被告物件が本件特許発明1の技術的範囲を充足するか(争点2 。)( ) 被告物件の構成1-b及び1-fが本件特許発明1の構成要件B及びFを1充足するか(争点2-1 。)ア原告)原告の主張a前記1( )ア記載のとおり,被告物件においては乱数抽選によって決 1定された当選番号に応じて停止表示図柄を決定しているといえるから,被告物件は本件特許発明1の構成要件Bを充足する。
また,被告物件の構成1-fは,本件特許発明1の構成要件Fを充足する。
なお,被告物件においては,ストップボタンを,所定の押下順序で操作しないとベル三揃い図柄が揃わない「押し順ベル」という構成が付加されている。しかし,かかる付加的構成の存在は,構成要件充足性の判断に影響するものではない。
したがって,被告物件は,本件特許発明1の構成要件B及びFを充足する。
)被告の主張に対する反論b@当選番号と停止表示図柄との対応関係について被告は 構成要件B及びFを合わせ読むと 本件特許発明1は前 , ,,「記入賞態様決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ)に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで停止ボタンが操作されたときには前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ)に応じた図柄組み合わせを前記各列に100%の確率で停止表示するもの」であると解釈され,被告物件は,当選番号に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できるタイミングでストップボタンを操作しても必ずしも当該図柄を停止表示するものではないから,本件特許発明1の構成要件B及びFを充足しない旨主張する。
しかし,構成要件B及びFは言葉どおりの意味であって,被告主張の上記解釈は誤りである。
被告は,上記のように限定解釈する理由の一つとして,特許請求の範囲の記載文言を指摘する。しかし,構成要件B及びFを含む,構成要件AないしFの記載は,スタートレバー操作時に入賞態様が決定される「前段判定方式」において,ストップボタン操作後190ms以内(約4コマ以内)に回胴の回転を停止させなければならないという規制( 遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」別表5( )イ 「1(ヘ 。甲10)を組み合せた場合のパチスロ機の標準的動作を規定 )したものにすぎない。そして,被告物件も,前段判定方式を採用し,上記規制を遵守するパチスロ機である以上,本件特許発明1の構成要件AないしFを充足することは明らかである。なお,被告は構成要件A及びEを争っていないことから,被告物件において,乱数抽選によって入賞役の当選・非当選をあらかじめ決定する前段判定方式を採用していることは明らかである。
被告は,上記のように解釈する根拠として,原告が出願過程において特許庁審査官に宛てて平成12年1月28日に提出した意見書(乙52。以下「乙52意見書」という )の3頁に「図柄が入賞ライン 。
上に位置する4コマ手前以内で停止ボタンの操作を行えば,図柄が入賞ライン上まで滑って停止表示されるものです。逆に言えば,停止ボタンの停止操作タイミングが悪いと,@の内部抽選で当選フラグが成立したのにもかかわらず,有効化入賞ライン上に図柄を引き込むこと,, 。」 が出来ず 結果として 入賞が発生しないといったケースが生じますと記載していることを指摘する。
しかし,乙52意見書は,本件特許発明1とパチンコ機の先願明細書(特開平10-272230)との相違に力点を置いた陳述であって,操作タイミングが悪いと入賞ライン上に引き込むことができないというパチンコ機とは全く異なる遊技性を有することを強調したものであって,このような意見書の記載を根拠に限定解釈すべきであるとする被告の主張は採り得ない。
仮に,本件特許発明1の構成要件B及びFを被告主張のように解釈したとしても,被告物件においては,例えば 「ベル三つ揃い」の詳 ,細当選役である「押し順ベル」に当選し,その押し順どおりに停止操作が行われれば100%対応入賞図柄を表示させる停止制御が実行されるのであるから,被告物件は本件特許発明1の構成要件B及びFを充足するというべきである。
A本件特許発明1の構成要件Fの制御が,ストップボタンが操作された時点において所定コマ数の範囲に入賞態様に対応した図柄が存在するか否かをチェックする構成を有する制御に限定されるかについて被告は,本件特許発明1の構成要件Fは,停止ボタンが操作された時点において4コマ(所定のコマ数)の範囲に入賞態様に対応した図柄が存在するか否かをチェックすることを含む構成である旨主張する。
しかし,上記のような動作は,構成要件Fには記載されていない。
被告物件は選択された停止テーブルに従って停止制御されるが,停止テーブルに従って,構成要件Fに記載されたような制御が行なわれているのであるから,被告物件は構成要件Fを充足する。
イ被告)当選番号と停止表示図柄との対応関係についてa@本件特許発明1の構成要件B及びFの解釈本件特許発明1の構成要件B及びFを合わせ読むと,本件特許発明1は 「前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ) ,に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで停止ボタンが操作されたとき」には「前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ)に応じた図柄組み合わせを前記各列に」100%の確率で「停止表示する」ものと解釈される。
このことは,本件公報1の【0089】ないし【0092】の記載及び原告が本件特許1出願過程において特許庁審査官宛に提出した乙52意見書の記載からも明らかである。
A被告物件の構成1-b及び1-fが本件特許発明1の構成要件B及びFを充足するか前記1( )イ記載のとおり,被告物件においては,乱数抽選によっ1て当選番号と入賞役が決定されるが,これらを出発点として種々の処理がなされ,当選番号(入賞役)と停止表示図柄との対応関係が失われるように制御されている。
したがって,被告物件は「前記入賞決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ)に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで停止ボタンが操作されたとき」には 「前記入賞態様,決定手段で決定された入賞態様(当選フラグ)に応じた図柄組み合わせを前記各列に」100%の確率で「停止表示する」構成を有しないから,本件特許発明1の構成要件B及びFを充足しない。
)本件特許発明1の構成要件Fの制御が,ストップボタンが操作されたb時点において所定コマ数の範囲に入賞態様に対応した図柄が存在するか否かをチェックする構成を有する制御に限定されるかについて@本件特許発明1の構成要件Fの解釈本件発明1の構成要件Fと本件明細書【0089】ないし【0092【0111 (甲3)の記載によれば,本件発明1は,停止ボタ 】,】ンが操作された時点において4コマ(所定のコマ数)の範囲に入賞態様に対応した図柄が存在するか否かをチェックし,存在すれば前記有効化入賞ライン上に入賞が発生する図柄組合せを停止表示させる制御を行ない,存在しなければ前記有効化入賞ライン上に発生する図柄組合せを停止表示させない制御を行なうものであるといえる。かかるチェックは,停止ボタンの操作が「所定タイミング」で行われたかどうかを決定する上で必須である。
A被告物件の構成1-fが本件特許発明1の構成要件Fを充足するか被告物件においては,5コマ等所定のコマ数の範囲内に当選番号に対応した図柄が存在するか否かをチェックしていない。被告物件においては,ストップボタンが当選番号に対応した図柄を有効化入賞ライン上に停止できる所定タイミングで操作されたか否かに関係なく,決定された停止テーブルのデータに基づいて停止制御する。
したがって,被告物件の構成1-fは本件特許発明1の構成要件Fを充足しない。
( ) 被告物件の構成1-g及び1-hの図5の各演出種類が本件特許発明1の2構成要件G及びHを充足するか(争点2-2 。)ア原告)原告の主張a被告物件の構成1-g及び1-h(別紙被告物件目録における図5)によれば,被告物件は,図5の演出種類1ないし3においては,遊技開始時に「ギター前兆音」が出音され,演出種類4においては同じく「白」 , 「」 色オーラ+オーラ音 が 演出種類5においては同じく 人影+出現音が出音されるものであり,これらはいずれも構成要件Hの「複数の異な」。, る入賞態様に共通して演出される報知態様による報知 に当たる また被告物件は,その後,ストップボタンの停止操作に伴って,演出種類1においては,通行人の「黄シャツ「緑シャツ「赤シャツ「青シ 」,」,」,ャツ」の演出があり,演出種類2においては,キャラクターであるバッ「」,「」,「」,「」,, トの黄缶緑リンゴ赤リンゴ青缶の演出がありまた演出種類3においては,キャラクターであるリンの「転ぶ「回転こ」,ろがる「しゃがみ込む「躓く」等の動作による演出があり,さら 」,」,に 演出種類4においては黄オーラ緑オーラ赤オーラ青 ,,「」,「」,「」,「オーラ」の演出があり,演出種類5においては 「黄ザコ「緑ザコ , ,」,」「赤ザコ「青ザコ」が倒れるという演出がある。被告物件のこれら 」,の演出は,いずれも構成要件Hの「前記報知態様とは異なる報知態様による報知」に当たる。被告物件の演出種類1ないし5は,いずれも構成要件Hを充足するものであり,これらが液晶画面上に実行されることにより,遊技の中で何らかの内部当たりが生じていることを徐々に遊技者に報知しているものである。
なお,被告物件の構成1-g及び1-hにおける図5の演出種類3については,報知情報の組み合わせによって当選番号及び入賞役を特定することはできない。しかし,本件特許発明1における報知は入賞態様決定手段で決定された入賞態様と異なる入賞態様に対応した報知情報が所定確率で報知されて行われることもある(本件特許1の請求項2)のである。つまり,本件特許発明1の構成要件G及びHは,遊技者が演出パターンによって予測する当選役と異なる入賞結果になる場合を除外するものではないから,被告物件において上記演出種類3のような演出が行われているとしても,被告物件の構成1-g及び1-hが本件特許発明1の構成要件G及びHを充足することに変わりはない。
したがって,被告物件の構成1-g及び1-hは本件特許発明1の構成要件G及びHを充足する。
)被告の主張に対する反論b被告は,本件特許発明1の構成要件G及びHの「報知情報」とは,それ単独では入賞態様を示すことができないが,他の報知情報との組み合わせにより入賞態様を示すことができるものである旨主張する。
, , 確かに 本件特許発明1の構成要件Gにおける第1段階の報知情報は複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知でなければならないから(本件特許発明1の構成要件H ,第1段階の報知情)報は,それのみで入賞態様を特定し得るものを含まないことは明らかである。
しかし,第2段階の上記報知態様とは異なる報知態様による報知については,被告のように解釈する理由はない。第2段階の報知情報がそれ単独では入賞態様を示すことができないものでなければならないという解釈は誤りである。本件特許発明1の構成要件G及びHにそのような限定を導く記載はない。被告の解釈は,本件明細書1の【0065】ないし【0069】に記載された実施例からの過剰な類推にすぎない。報知情報とは,本件明細書1の【0012 【0266】のように,遊技の 】進行に従って入賞態様が徐々に明らかになる効果を奏するものであればよい。
被告は,上記のような解釈の根拠として,原告が特許異議の審理(特許異議2001-70271)において特許庁に提出した平成14年4月16日付けの意見書(乙48。以下「乙48意見書」という )の記。
載を指摘する。しかし,同意見書の記載は,本件明細書1の第2の実施例について記載したものであって,本件特許発明1の技術的範囲全体について述べたものではない。
被告は,被告主張のように解釈しなければ,本件特許発明1は,特開平3-73180号公報(乙3。以下「乙3公報」という,特開平。)8-336642号公報(乙4。以下「乙4公報」という,特開平。)9-103556号公報(乙5。以下「乙5公報」という,特開平。)6-114140号公報(乙6。以下「乙6公報」という,特開平。)8-117390号公報(乙7。以下「乙7公報」という,特開平。)9-299548号公報(乙8。以下「乙8公報」という,特開平。)6-304313号公報(乙9。以下「乙9公報」という,特開平。)7-136313号公報(乙10。以下「乙10公報」という )特開。
平7-68027号公報(乙11。以下「乙11公報」という,特。)開平8-173592号公報(乙12。以下「乙12公報」という )。
及び特開平8-280873号公報(乙13。以下「乙13公報」とい。) 。,, うによって無効理由がある旨主張する しかし 乙3ないし5公報乙7公報,乙9ないし13公報は「単独の報知情報による入賞態様の報知を行う先行技術」であり,乙4公報,乙6公報,乙8公報は 「報知,態様の組合せで入賞態様の報知が行われる先行技術」であって,小当たり入賞を含む入賞態様に共通する報知態様による報知と,その後のこれとは異なる報知態様による報知とにより報知情報を構成し,かつ,該報知情報を所定確率で発生させる報知手段を有するという本件特許発明1の構成を開示するものでもなく,示唆するものでもない。
イ被告)本件特許発明1の構成要件G及びHの解釈a本件特許発明1の構成要件G及びHを合わせ読むと 「報知情報」と,は,それ単独では入賞態様を示すことができないが,他の報知情報との組み合わせにより入賞態様を示すことができるようなものであると解釈される。したがって,単独の報知情報のみにより,入賞態様を遊技者に報知するものは,構成要件Hを充足しない。
このことは,原告が特許庁の異議2001-70271号事件において提出した乙48意見書の4頁5行から22行の記載からも明らかである。
仮に,このように解釈せず,本件特許発明の「報知情報」をそれ単独でも入賞態様を特定し得る情報まで含めて解釈した場合には,そのような報知情報を有する技術は本件特許1出願前に多数存在していたから(乙3ないし乙5公報,乙7ないし乙13公報 ,本件特許発明1は無 )効とされるべき特許であるといわざるを得ない。
)被告物件の構成1-g及び1-hが本件特許発明1の構成要件G及びbHを充足するか。
,, , 被告物件の構成1-g及び1-hにおいては 図5の演出種類1 24,5に記載するように,演出種類1においては,通行人のシャツの色のみにより,演出種類2においては,缶やリンゴの色のみにより,演出種類4においては,オーラの色のみにより,演出種類5においては,ザコの色のみにより当選番号及び入賞役が特定できるようになっている。
, , , また 図5の演出種類3においては 報知情報の組み合わせによってもそもそも当選番号及び入賞役を特定することはできない。
原告は,本件特許発明1の構成要件G及びHは,上記演出種類3のような演出をも含むものであると主張し,その根拠として本件特許1の請求項2の存在を指摘する。しかし,上記請求項2は本件特許発明1の解釈とは全く関係がない。また,実質的にも上記請求項2は内部当選していても遊技者に報知しない場合があるという構成を記載したものであって,遊技者に報知する場合の報知の仕方を記載したものではないから,原告主張のように解釈することはできない。
したがって,被告物件においては,構成要件G及びHを同時に充足する報知情報は存在しないから,被告物件は構成要件G及びHを充足しない。
3本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものといえるか(争点3 。)( ) 本件特許発明1が特許法29条1項柱書の「発明」といえるか(争点3-11 。)ア被告本件特許発明1の構成要件AないしFの構成を備える遊技機は,多くの特許公報に記載されており,かつ,実際のスロットマシンで使用されている周知慣用技術である。
そして,本件特許発明1の構成要件G及びHで規定する報知情報を報知することは,いわゆる「演出」であって技術的作用ではない。
かかる報知情報を報知する具体的手段は技術的意義を有するものであるが,本件特許発明構成要件G及びHは報知するための具体的手段を規定したものではない。報知情報を報知することによって当該報知の意味をあらかじめ知っている遊技者がより面白味を感じるとしても,それは,演出による効果なのであって,技術的作用ではない。
原告は,当該演出を実現するための乱数発生器36,サンプリング回路37,マイコン30,スピーカ,リールランプの点灯・点滅・消灯等は自然法則を利用したものである旨主張する。しかし,そのような技術的手段はいずれも公知である。本件特許発明1は,公知技術を用いて,いかなる効果音を発生させるか,いつリールランプを点灯・消灯させるかといった取決めを行っているにすぎない。
東京地方裁判所平成15年1月20日判決(同庁平成14年(ワ)第5502号実用新案権侵害差止等請求事件)においては 「たとえ技術的思,想の創作であったとしても,その思想が,専ら,人間の精神活動を介在させた原理や法則,社会科学上の原理や法則,人為的な取り決めを利用したものである場合には,実用新案登録を受けることができない」とされている。本件特許発明1は人間の精神活動を介在させた原理や法則,人為的な取り決めを利用したものであることは明らかである。
,, , そうすると 本件特許発明1は 周知技術である構成要件AないしFに技術的意義を有しない「演出」効果を奏することをもって「発明」とするものであって,技術的課題に対する具体的な技術的解決手段を提供するものではないから,特許法29条1項柱書に違反しており,無効である。
イ原告被告は,本件特許発明1は周知慣用技術であるスロットマシンに構成要件G及びHに記載する「演出」を付加したにすぎず,演出は,自然法則を利用した技術的思想ではないから,本件特許発明1は特許法29条柱書の「発明」に当たらない旨主張する。
本件特許発明1の構成要件AないしFの構成を備える遊技機は,多くの特許公報に記載されており,かつ,実際のスロットマシンで使用されている周知慣用技術であることは認める。
しかし,本件特許発明1の構成要件Gは技術的手段であり,構成要件Hは当該構成要件Gの報知手段に限定要素を付加するものである。このことは,本件特許発明1の特許請求の範囲の記載から明らかである。
「発明」とは 「自然法則を利用した技術的思想創作」であり,ここ ,でいう「自然法則を利用した」との要件は,単なる精神活動,純然たる学問上の法則,人為的とりきめ等を除外することを意味している程度の広い要件であると解釈されている。特許庁が公表する特許・実用新案審査基準(2005.4.15)は,かかる理解を前提として 「発明」に該当し,( . ないものの類型として以下の6つを挙げている 審査基準第U部第1章1)。,, , 1すなわち @自然法則自体 A単なる発見であって創作でないものB自然法則に反するもの,C自然法則を利用していないもの,D技術思想でないもの,E発明の課題を解決するための手段は示されているものの,, 。 その手段によっては 課題を解決することが明らかに不可能なものである被告は,本件特許発明1が,このうち「C自然法則を利用していないもの」に該当すると主張しているようである。
しかし,スロットマシンは純然たる自然法則を利用した技術的思想の所産である。特に,本件特許発明1は,次のような特徴を有するものであって,発明に該当することは明らかである。すなわち,従来のスロットマシンにおいては,大当たりについてのみ告知ランプ又はリーチ目による内部当選告知を行っていたが,このような従来技術では,@大当たりが出現する確率が低いため,遊技者は黙々と遊技を継続しなければならず,興趣がそがれる,A告知ランプではシンプルすぎて興趣に欠ける,Bリーチ目による告知では,リーチ目が多数存在するなどして,熟練した者以外には情報が伝わらないという問題があった。そこで,原告は相応の資金と労力を投下して創意工夫を凝らした結果,本件特許発明1においては,大当たりのみならず,小役についても内部当選の情報を告知し,告知態様についても,遊技の一連の流れの中で報知するという構成を採用したものである。
そして,上記各構成を実現するために,音データテーブル,CPU,スピーカ駆動回路,スピーカ(上記@,本件明細書【0042,リール停】)止信号回路,CPU,ランプ駆動回路,液晶駆動回路,各回路ないしCPU間の通信を行うバス(上記A,本件明細書【0043【0215,】,】)入賞態様報知選択抽選確率テーブル,デモ抽選テーブル選択テーブル,デモ抽選テーブルというマイコン制御上のデータ格納領域(ROM)及び乱(,,, 数発生器並びに比較回路ないしCPU 上記B 本件明細書図20 5354ないし56)が必要であり,これらが自然法則を利用したものであることは明らかである。
また,スロットマシンの演出に関わるアイディアは,スロットマシンというハードウエアの制約の中で,遊技の興趣を高めるための創意工夫が行われているのであり,その創意工夫のすべてがゲームのルールそれ自体に当たるということはできない。基本的なスロットマシンのルールに付加される要素は,人為的な取り決めを基礎とした自然法則を利用した技術的思想にほかならず,スロットマシンの演出に関わるアイディア全般について自然法則利用性を一律に否定する根拠はない。ある創作が一定の演出効果をもたらすことを目的とするからといって,これを理由に当該創作が「発明」に該当しなくなるものではない。このことは,遊技機に関して一定の演出効果をもたらすことを目的とする膨大な数の創作が特許・実用新案として登録されていることからも明らかである(甲19ないし23 。被告)自身,一定の演出効果をもたらすことを目的とする発明を多数出願しておきながら(甲14,15ないし18 ,そのような創作は「発明」ではな )い旨主張するのは不適切であり,その主張が成り立たないことは明らかである。
( ) 本件特許発明1が,遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易2に発明することができたものといえるか(争点3-2 。)ア被告)被告の主張a本件特許発明1の構成要件AないしFの構成を備える遊技機は,多くの特許公報に記載されており,かつ,実際のスロットマシンで使用されている周知慣用技術である(乙1,2 。)本件特許発明1の構成要件G及びHで規定する報知手段は,乙3公報ないし乙13公報に開示されている。特に,本件特許発明1の構成要件Hに記載された複数の種類の報知を組み合わせるという技術は,乙4公報の【0053【0054【0108】及び乙8公報の【000 】,】,】,【】,【】,【】,【】,【】, 200060009001000130014【0021】に記載されており,同構成要件Gに記載された報知情報を所定確率で遊技者に報知するという技術は,乙9公報の【0084 ,】【0050【0084】及び乙11公報の【0050】に記載され 】,ている。
したがって,本件特許発明1は,周知技術である本件特許発明1の構成要件AないしFに,上記遊技機における周知技術を組み合わせることで,本件特許1出願当時,当業者が容易に発明することができたものである。
)乙4公報,乙9公報及び乙11公報についての原告の主張に対する反b論@パチンコ機に関する技術をスロットマシンに転用することが容易といえるか。
原告は,乙4公報,乙9公報及び乙11公報はパチンコ機に関するものであり,本件特許発明1は,スロットマシンを想定した発明であるから,上記各公報に記載された発明をスロットマシンを想定した本件特許発明1の構成要件AないしFに適用して本件特許発明1に想到することは当業者にとって容易ではないと主張する。
しかし,パチンコ機の技術をスロットマシンの技術に転用することは容易に着想できる。このことは,本件明細書1の【0001 ,乙】4公報【0001 ,乙9公報及び乙11公報の【0001】の記載 】がスロットマシンとパチンコ遊技機とを明確に区別していないことからも明らかである。
また このことは 平成9年6月24日東京高裁判決 平成8年 行 ,, ((ケ)第103号)が 「パチンコゲーム機の技術をスロットマシンの ,技術に転用することは容易に着想できると認められ,…」と判示していることからも明らかである。
A上記各乙号公報に本件特許発明1の構成要件Gの「1回の遊技の中で…報知情報を…報知する」構成が開示されているといえるか。
原告は,パチンコ遊技機においてはスロットマシンのような可変表示の停止ボタン操作がないことから,パチンコ機に関する上記各公報に記載された発明においては,本件特許発明1におけるような「1回」,「 」 の遊技 は観念できず1回の遊技の中で…報知情報を…報知する構成が開示されていない点で上記各乙号公報は本件特許発明1と相違しており,上記各乙号公報を本件特許発明1の構成要件AないしFに組み合わせても本件特許発明1の構成にならず,かつ,かかる組合せは容易ではない旨主張する。
しかし,パチンコ機においては,リールの回転の停止操作はないものの,球が特定の入賞口に入ることにより盤面に設けられた液晶画面, , 等により表示されるリールが回転し始め 自動的にリールが停止してスロットマシンと同様の「1回の遊技」が行われるものであることは周知の事実である。
また,特開昭57-103665号公報(乙56。以下「乙56公」。) ,,, 報 というの3頁右上欄14行以下 7頁左下欄8行以下 8頁左上欄4行以下,特開平6-190114号公報(乙57。以下「乙57公報」という【0001【0006【0019【00 。)】,】,】,2000210025特開平6-339560号公報 乙 】,【】,【】, (58。以下「乙58公報」という )の【0022【0023 , 。】,】(。「」。) 特開昭64-49588号公報 乙59 以下 乙59公報 というの2頁左上欄6行以下,5頁左上欄11行以下,特開平7-275455号公報(乙60。以下「乙60公報」という )の【0003 ,。】【】,【】, (。 00260027特開平5-228251号公報 乙61以下「乙61公報」という )の【0044】ないし【0049 , 。 】(。「」。) 特開平5-277242号公報 乙62 以下 乙62公報 というの 0002 及び特開平8-206311号公報 乙63 以下 乙 【】 (。「63公報」という )の【従来の技術【0006】に,遊技者によ 。】,るリール停止操作の方法を用いたパチンコ機が開示されている。
これらは,本件特許発明1のメダルの投入後のスタートレバーの操作という条件により,可変表示部であるリールの回転が開始され,遊技者のリールストップボタンの操作によりリールが停止し,あらかじめ定められた特定の入賞態様に該当する図柄が揃った場合には大当たりの入賞態様が発生し,あらかじめ定められた特定の入賞態様に該当する図柄が揃わなかった場合にはハズレとなるというスロットマシンの「1回の遊技」と同じ構成を採用している。
したがって,パチンコ機においても,スロットマシン同様の「1回の遊技」が観念できることは明らかである。
そうすると,乙4公報,乙9公報及び乙11公報のほか,被告が指摘する周知技術を本件特許発明1の構成要件AないしFに組み合わせることによって本件特許発明1と同じ構成を想到することができ,かつ,この組合せが容易でないとはいえない。
B小役の内部当選を報知する構成が開示されているといえるか原告は,パチンコ機には大当たりしかないから,パチンコ機に関する上記各公報を本件特許発明1の構成要件AないしFに組合せたとしても小当たり入賞を報知する本件特許発明1と同一の構成とはならず,かつ,かかる組合せは容易ではない旨主張する。
しかし,乙10公報の【0028】ないし【0030】にはビッグボーナス(大当たり入賞 ,中当たり入賞 「チェリー」や「スイカ」 ),等の小当たり入賞が内部当選した場合に,該当する入賞態様に応じた表示ランプを点灯して報知する構成が開示されている。このように,ボーナスゲームのみならず,中当たり入賞や小当たり入賞が内部当選した場合に,各入賞態様に応じた報知を遊技者に行うことは本件特許1出願前に既に公知であった。
そうすると,乙4公報,乙9公報及び乙11公報のほか,被告が指摘する周知技術を本件特許発明1の構成要件AないしFに組み合わせることによって本件特許発明1と同じ構成を想到することができ,かつ,この組合せが容易でないとはいえない。
)乙4公報についてc原告は,乙4公報に開示されているのは複数の信頼度に共通する報知態様とその後の異なる報知態様による報知を行う構成であって,本件特許発明1の構成要件AないしFに乙4公報に記載された発明(以下「乙4発明」という )を組み合わせても本件特許発明1の構成要件Hの複 。
数の入賞態様に応じた報知情報を報知する構成にはならないし,かつ,このような組合せは容易ではない旨主張する。
しかし,乙4発明の信頼度に応じた報知情報も,遊技者に報知される報知情報であることに変わりはない。そして,乙4公報には,複数の信頼度に応じて複数の報知態様(音とキャラクタの組合せ)を用いる構成。, , が開示されている また その報知態様も1回の報知を行うのではなく複数の信頼度に共通する報知情報による報知と,その後の異なる報知態様による報知とを行う構成が開示されている(乙4公報【0125 ,】【0117。乙4発明のこのような構成を本件特許発明1の構成要 】)件AないしFの構成に組み合わせることで,本件特許発明1のように複数の入賞態様に応じた報知情報を報知する構成を想到することは容易である。
)乙6公報に記載された発明(以下「乙6発明」という )についてd 。
@乙6発明の課題が本件特許発明1の課題と異なることについて原告は,乙6発明の課題が本件特許発明1の課題と異なっていることを指摘して乙6発明から本件特許発明1を想到することは困難である旨主張する。
しかし,乙6公報に事前報知の思想が開示されていることに変わりはない。また,乙6発明と公開番号が近接しており,これと同様の記載がされている特開平6-114143号公報(乙32。以下「乙3」, 「」。) 2公報 といい 同公報に記載された発明を 乙32発明 というには,本件特許発明1と同様の課題が記載されている( 0003】【ないし【0006。】)A乙6公報に開示された構成が本件明細書1に従来技術として記載された技術であることについて原告は,ボーナスゲームフラグが成立している状態であることの情報提供は,本件明細書1に従来技術として記載された構成であり,そのような構成を本件特許発明1の構成要件AないしFに組み合わせたとしても本件特許発明1を想到することは容易ではない旨主張する。
しかし,乙6発明においては 「遊技効果ランプの点灯の有無」と ,「リーチ音発生の有無」という報知態様の組合せにより「ビッグボーナス当選」あるいは「ボーナス当選」したことを遊技者に報知している構成が開示されている。そして,遊技効果ランプの点灯のみではビッグボーナスかボーナス当選かは不明であり,その後にリーチ音が発生してビッグボーナスが当選したことが判明する構成を開示してい。, , る 乙6発明の構成は 本件明細書1に記載された従来技術のように内部当選を機械的に報知するものではない,乙6発明の上記構成を本件特許発明1の構成要件AないしFに組み合わせて本件特許発明1を想到することは容易である。
B乙6発明の告知ランプ及びリーチ音が本件特許発明1の構成要件Hを満たす報知といえるか。
原告は,リーチ音はリーチ状態になったことによって発生する事象であって,本件特許発明1における入賞態様決定手段で決定された入賞態様を報知する情報ではない旨主張する。
しかし,リーチ音の発生によってビッグボーナスが内部当選したのか,ボーナスが内部当選したのかを知ることができるのであるから,リーチ音も内部当選した入賞を報知する情報であることは明らかである。
原告は 「リーチ音なし」を報知情報とみた場合には,ハズレの場 ,合にも「リーチ音なし」になるのであるから,これを報知情報とみることはできない旨主張する。しかし,本件特許発明1においても「リールランプ点灯なし」はハズレの場合にも選択され得るにもかかわらず報知情報としているのであるから(本件明細書【図18,ハズ】)レの場合にも選択され得ることをもって本件特許発明1の報知情報に当たらないということはできない。
原告は,乙6発明の「ビッグボーナスゲームやボーナスゲームとなる可能性がないにもかかわらずリーチ状態の報知が行われることによる不快感を防止し得る」という思想と,本件特許発明1の「遊技者は予測した入賞とは異なる結果に接することもあり,遊技に意外性が出て一層熱くなることができる」という思想は相容れない旨主張する。
しかし,原告が指摘する上記作用効果は本件特許発明1に関するものではなく,請求項2に関する作用効果であるから,原告の上記主張は失当である。
)乙7公報に記載された発明(以下「乙7発明」という )についてe 。
原告は,乙7発明について,入賞態様が大当たりのみである点が本件特許発明1と異なっており,また,乙7発明はリーチ目を出現させることによって内部当選を遊技者に知らせるという技術であるが,本件特許発明1は,このリーチ目だけでは初心者が目を読むことが難しいという課題を解決する発明であるから,リーチ目による報知は本件特許発明1の「報知」には当たらないと主張する。
, 。, しかし 入賞態様の種類については乙10公報が存在している またリーチ目とは,第1リールと第2リールの停止した図柄で内部当選していることを報知するものであり,リーチ目も報知情報であることは明らかである。さらに,乙7公報には報知態様として,リールのバックライトの点滅又は点灯【0079 ,音の発生【0083 ,バックライト 】】と音の併用【0084】も記載されている。
)乙8公報に記載された発明(以下「乙8発明」という )についてf 。
乙8発明は,内部当選している場合にはスベリ時間を長くするが,スベリ時間が長くなる場合であっても内部当選している場合とそうでない場合(偽滑り)とがあるように設定し,偽滑りか否かはスベリ開始音と終了音を区別することで遊技者に報知する構成を開示している。
上記開始音と終了音及び音間隔(スベリ時間)は,いずれも,入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた報知情報であることは明らかである。
イ原告)本件特許発明1の構成要件AないしFが,乙1,2に記載された周知a慣用技術であることは原告も争わない。
)乙4公報,乙9公報及び乙11公報についてb被告が指摘する乙4発明,乙9公報及び乙11公報に記載されている発明(以下,それぞれ「乙9発明「乙11発明」という )は,本件 」,。
特許発明1が想定するパチスロ機(スロットマシン)に関する発明ではなく,いずれもパチンコ機に関する発明である。
@パチンコ機に関する技術をスロットマシンに転用することが容易といえるか。
パチンコ機とスロットマシンは,パチンコ・ホールの中で同じシマに置かれる機械ではあるがその遊技性は全く別のものである。すなわち,スロットマシンにおいては,遊技者が停止ボタン(可変表示停止手段)を操作してリール(可変表示手段)の回転を停止させ,その技量によって所望の図柄の組み合わせを入賞ライン上に停止表示させることに遊技性の基礎があるのに対し,パチンコ遊技機においては,せいぜい遊技者の技量は目釘の読み(台の選択)において発揮されるものであり,台を選んだ以上はひたすら発射装置(ハンドル)を操作して1球1球弾球し続けるのみであることに遊技性の基礎がある点において両者の遊技性は相違する。
また,スロットマシンにおいては,内部当選しているにもかかわらず,当該ゲームで当該役に入賞しなかった場合には,次回ゲームにおいて当該役に入賞することを期待できる可能性があるが(本件明細書1【0013,パチンコ機においてはそのような可能性はない点 】)においても両者は異なっている。
,, , そもそも パチンコ機では 告知ランプによる報知では興趣に欠きリーチ目による報知では初心者に報知内容が伝わらないという本件特許発明1の課題は生じ得ない。
このように,上記各公報に記載された発明はスロットマシンに関するものではないから,本件特許発明1の構成要件AないしFに上記各公報に記載された発明を組み合わせても,スロットマシンを想定している本件特許発明1の構成にはならないし,かつ,そのような組合せは容易ではない。
被告は,スロットマシンにパチンコ機における周知技術を組み合わせることが容易であると主張し,その根拠として,平成9年6月24日東京高裁判決(平成8年(行ケ)第103号)を挙げる。しかし,同判決は 「計数対象がパチンコ玉かメダルかという差異はあるもの ,のその所定数を計数してスロットマシンを停止する打止装置を有するスロットマシンに転用することは,容易に着想し得るものであると認められる 」としており,パチンコ機の「打止解除装置」と「スロッ 。
トマシンを停止する打止装置」との間の転用の容易性について述べたにすぎず,一般論としてパチンコ機の技術をスロットマシンに転用することが容易であると述べたものではない。
A上記各乙号公報に本件特許発明1の構成要件Gの「1回の遊技の中で…報知情報を…報知する」構成が開示されているといえるか。
スロットマシンにおいては,遊技者によるスタートレバーの押下と停止ボタンの操作とを含む「1回の遊技」を観念することができるのに対し,パチンコ遊技機においてはこのような意味での1回の遊技を観念することができないから,上記各乙号公報には本件特許発明1の構成要件Gの「1回の遊技の中で…報知情報を…報知する」構成が開示されているとはいえない。
被告は,遊技者が弾球を行い,球が特定の入賞口に入ることによって盤面に設けられた液晶画面等により表示されるリールが回転し始め,自動的にリールが停止するまでを,パチンコ機における「1回の遊技」と主張する。
しかし,上記一連の流れの中において,遊技者の動作は弾球動作のみであり,リール停止操作がない。スロットマシンにおいては,遊技者がスタートレバーと停止ボタンによって自ら操作することが遊技である。本件特許発明1は,遊技者が操作を進めていくにつれて内部抽選によってどのような入賞態様が決定されたかが判明していき,遊技者が熱くなることを特徴とするもので,例えば,スタートレバー操作時における遊技開始音で入賞の成立を一定程度推測することができ,さらに個々のリールの停止操作に連動して生じる演出によってこの推測が絞り込まれていくということを特徴としている。このように遊技者の遊技操作と関連して報知が現れることによってはじめて遊技者は熱くなることができるのである。
被告は,乙56公報ないし乙63公報に,遊技者によるリール停止。, 操作の方法を用いたパチンコ機が開示されている旨主張する しかしこれらの公報は,所定時間経過による図柄停止を好まない性急な遊技者のためにその代替手段として遊技者が操作する停止ボタンを付加したものにすぎず,乱数抽選によって決定された入賞態様に対応した報知情報を遊技者に報知して演出を行う機能を備えた遊技機に関するものではない。
このように,上記各公報に記載された発明はスロットマシンに関するものではないから,本件特許発明1の構成要件AないしFに上記各公報に記載された発明を組み合わせても,スロットマシンを想定している本件特許発明1の構成にはならないし,かつ,そのような組合せは容易ではない。
)乙4発明についてc乙4発明に係る報知は,大当たりという一種類の入賞態様について,信頼度の異なる3種類の報知(信頼度50%,70%,90%)が存在する。
しかし,これらは,複数の異なる入賞態様について報知するものではない。報知情報の信頼度と入賞態様の種類とは質を異にするものであるから,本件特許発明1の課題の解決を模索する当業者が乙4公報に接したとしても 「各信頼度を各入賞態様に置き換える」などという発想を ,するはずがない。
そもそも,乙4発明においては,報知情報の信頼度を設定しているにすぎず(乙4公報【0125,当該報知情報の信頼度を報知してい 】)るものではないから 「信頼度を報知する報知情報」は開示されていな ,い。
被告が引用する乙4公報の【0117】の記載は,始動記憶(パチン, , コ機の場合 始動入賞口に球が入ることによって可変表示が可変開始し所定時間の経過により停止するが,可変表示の回転中に始動入賞口にさらに球が入った場合,そのタイミングで乱数取得した上で記憶される。
この記憶を始動記憶という )において例えば3回転後に大当たりとな 。
る記憶がある場合の実施例である。すなわち,当該実施例は1回の遊技の中で3種類の報知パターンが存在する例を開示するものではなく,3回の遊技の中で各回の遊技ごとに大当たりという単一の利益状態について報知パターンが異なる例を開示したものにすぎない。したがって,万が一,本件特許発明1の課題を解決しようとする当業者が乙4公報に接して「信頼度を入賞態様に置き換えること」に思い至ったとしても,その結果得られる構成は 「1回の遊技の中で一つの利益状態について1 ,回の報知をいずれも行う」構成にすぎず 「1回の遊技の中で配当のあ ,る複数の入賞態様に共通する報知情報による報知とその後の異なる報知態様による報知を行うという構成」ではあり得ない。また,乙4発明の技術は上記のように始動記憶を前提とした技術であるから,1回の遊技の中で行われるものとはいえない。
このように,本件特許発明1の構成要件AないしFに乙4発明を組み合わせても,本件特許発明1の構成にはならないし,かつ,そのような組合せは容易ではない。
)乙6発明についてd乙6公報には「ビッグボーナス当選あるいはボーナス当選した場合に遊技効果ランプを点灯し,その後にさらにリーチ状態となった場合にはリーチ音を発生させ,このリーチ音の発生はビッグボーナス当選時,あるいはボーナス当選時のいずれかのときのみ行ってもよい」との構成が開示されている。
しかし,以下のとおり,かかる記載は本件特許発明1の進歩性を否定する理由にはならない。
@乙6発明の課題が本件特許発明1の課題と異なることについて乙6発明の課題は,スロットマシン内部の異常を取り除く作業を終えた遊技場の係員がスロットマシンの不能動化状態を解除するための作業を行わなければならず,この解除作業を忘れた場合にはスロットマシンが正常な状態に復旧しているにもかかわらず当該マシンが不能動化状態となってしまい,稼働率が低下するという欠点があるという点にある。これに対し,本件特許発明1は,遊技者の興趣の向上を目的とした発明である。両者は全く異なる課題を扱ったものであり,乙6公報に接した当業者が本件特許発明1を想到するということはない。
被告は,乙6発明と公開番号が近接する乙32公報に,本件特許発明1と同様の課題が記載されている旨主張する。しかし,乙32発明の課題は,告知ランプによる報知が行われても,それがビッグボーナス当選かボーナス当選かは実際にリールが停止し終わるまでは判らないため,特定の識別情報の組合せが成立したときの楽しみを先取りできないという点である。これに対し,本件特許発明1は,操作の進展にともなって入賞態様が徐々に判明することによって遊技の興趣を向上させるというものであって,乙32発明とは思想が異なる。
A乙6公報に開示された構成が本件明細書1に従来技術として記載された技術であることについて乙6発明の「ビッグボーナス当選あるいはボーナス当選した場合」の「遊技効果ランプ」の点灯は,ボーナス告知という本件明細書1において言及されている「内部抽選結果をそのまま機械的に遊技者に知らせる」という従来技術そのものである( 0009】なお 「告知」 【,はボーナスフラグが成立している状態であるとの情報の提供を意味し,当該ゲームにおける入賞態様に関する情報を提供する「報知」とは異なる。したがって,乙6公報の上記記載は,本件特許発明1 。)の「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知 (構成要件H)に該当しないし,これを示唆するもので 」もない。
B乙6発明が本件特許発明1の構成要件Gの「1回の遊技の中で…報知情報を…報知する」構成を開示しているといえるか。
乙6発明の遊技効果ランプはBB又はRBが内部当たりになると,これが当選するまで継続して点滅し続けるため,必ずしも1回のゲームで完結するものではない。したがって,乙6発明の遊技効果ランプは,1回の遊技の流れの中での入賞態様決定手段ではなく,これを示唆するものでもない。
C乙6発明のリーチ音が本件特許発明1の「報知情報」に当たるか。
乙6公報の【0044【0050】の記載によれば,乙6発明 】,のリーチ音は,リーチ状態であると判断された上,ビッグボーナス又はボーナスに当選しているか否かを判断し,当選している場合にのみ告知されるものである。リーチ音が発生するためにはリーチ状態とな, 。 っている必要があり リーチ状態になるか否かは遊技者の技量によるこのように遊技者の技量に左右される情報提供は本件特許発明1における「報知情報」に当たらない。本件特許発明1は,入賞態様に対応した報知情報を「所定確率」で報知するものであり,遊技者の技量に左右される場合には所定確率で報知することはできない。
また,被告は 「リーチ音なし」という報知が 「通常ボーナス」 , ,又は「ボーナスハズレ」の複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知であるかのように主張する。しかし 「リーチ音なし」は,入 ,賞態様決定手段で入賞していたとしても,リーチ状態になっていない場合には,リーチ音なしとなるのであるから,入賞態様決定手段で決定された入賞態様と関連した報知態様とはいえない。
そもそも 「報知しないという情報」という「報知情報」が存在す ,るなどという被告の理解は論理矛盾をはらんでいる 乙6発明はビ。,「ッグボーナスゲームあるいはボーナスゲームになる可能性がないにもかかわらずリーチ状態の報知が行われることによる遊技者の不快感を防止 ( 0044 )するために「ビッグボーナス当選フラグ又はボ 」【】ーナス当選フラグがセットされていること」をリーチ音の発生のための条件としている。これに対し,本件特許発明1は「内部抽選によって決定された入賞態様が遊技の一連の流れの中で,その入賞態様に対応した報知情報によって遊技者に報知される ( 0012「遊技」【】),者は予測した入賞とは異なる結果に接することもあり,遊技に意外性が出て,一層熱くなることができる ( 0015 )という本件特許 」【】発明1の根底に流れる思想とは全く関連しないものである。
D乙6発明の告知ランプ及びリーチ音が本件特許発明1の構成要件Hを満たす報知といえるか乙6発明において,被告が二種類の報知態様に当たる旨主張する告知ランプ及びリーチ音は,異なるトリガーに起因して発生するもので。, , ある すなわち 告知ランプはボーナスフラグの成立によって発生しリーチ音はリーチ状態の成立及びボーナスフラグの存在によって発生する。
したがって 両者は 本件特許発明1の構成要件G及びHにいう 入 ,, 「賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報」には当たらない。
)乙7発明について e乙7発明は 「リーチ目」を出現させることによって内部当選を遊技 ,者に知らせるという技術であるが,本件特許発明1は,初心者はこのような「リーチ目」をリールの出目から読むことが難しいというのを解決すべき課題の一つとする発明であるから,乙7発明と本件特許発明1の構成要件AないしFを組み合わせたとしても本件特許発明1に想到することはない。
被告はリーチ目であっても報知情報であることには変わりはない旨主張する。しかし,リーチ目が本件特許発明1の報知情報に含まれないことは明らかである。すなわち,リーチ目とは,被告が主張するような第1リールと第2リールの停止した図柄から内部当選していることを報知するものではなく,すべてのリールが停止した状態における「出目」のことをいう。そのため,リーチ目の組合せは機種によってはリール1本に記載されているシンボルの数である21を3乗した9261通りも存在し得るものであり,実際の機種でも,多いものは2000種類のリーチ目を用いていた。このようなリーチ目による報知では熟練者以外のものには報知が伝わらないというのが本件特許発明1の課題の一つである。したがって,リーチ目が本件特許発明1の報知情報に含まれないことは明らかである。
)乙8発明についてf被告は,乙8公報には,乱数サンプリングで入賞判定がなされた場合には入賞判定がなされなかった場合よりスベリ時間が長くなり,スベリの開始時と終了時に音を発生させる構成が開示されている旨主張する。
しかし,乙8公報には「入賞判定がなされる場合には,特定のシンボ,『』 」 ルの停止位置が限定されるためスベリ 時間が長くなることが多い( 0006「遊技者にとって回胴の『スベリ』は重要な意味を持 【】),つ,スベリの「 間』が短い場合は,視覚的にも認識が難しい ( 0 。」『 」【007 )という従来技術の課題を「スベリを音で強調する ( 000 】 」【8 )ことにより解決することが記載されている。かかる乙8公報の記 】載によれば,乙8発明は入賞判定がなされる場合に必ずスベリ時間が長くなるという構成ではなく,事実上スベリ時間が長くなることがあるという構成について記載しているにすぎない。したがって,かかるスベリ時間の長短が本件特許発明1の「入賞態様に対応した報知情報」に当たることはない。
仮に,乙8発明において,入賞態様とスベリ時間が関連するように構,「 」 成されていたとしても遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則(甲10)によれば,スベリ時間は最大でも0.19秒と規定されており,このような短い時間の範囲内における長短が,初心者にとって入賞態様の内部当選を予測しやすくするために発明された本件特許発明1の「報知情報」に当たるということはあり得ない。なお,被告は,スベリ時間の長さとスベリ開始・終了時の音とが異なる二つの報知情報に当たると主張するようであるが,この主張が誤りであることは多言を要しない。
()。 4本件特許発明1の無効理由が本件訂正請求1により解消されるか 争点4( ) 本件特許発明1の無効理由が本件訂正請求1によって解消されるか(争点14-1 。)ア原告)本件訂正請求1についてa原告は,平成18年9月4日付け訂正請求書によって本件特許1の特許請求の範囲の請求項1の記載の訂正を請求した(本件訂正請求1 。)本件訂正請求1については,未だ訂正すべき旨の審決がなされていないが,本件訂正請求1は訂正要件を満たすものである。
本件訂正請求1によって,本件特許発明1の構成要件G及びHの構成につき,@報知対象である入賞態様がボーナス役だけでなく小当たり入賞をも含むものであること,及び,A本件特許発明1がスロットマシンに関するものであることがより明確になった(本件訂正特許発明1 。))本件訂正特許発明1が報知対象に小当たり入賞も含まれる点で進歩性bを有するか。
@本件訂正特許発明1と被告が指摘する周知技術との相違点被告が本件特許発明1の進歩性を否定する根拠として指摘する公知技術のうち,乙4発明,乙9発明,乙11発明及び乙7発明については,小役に関する報知技術まで開示していない点で本件訂正特許発明1と相違する。
本件訂正特許発明1が解決しようとする課題は,従来,大当たり以外の入賞態様が報知されず,遊技者は大当たり以外の当選役に関する内部抽選結果を把握できないため,リールの回転を停止操作する際,どのような図柄を入賞ラインに揃えればよいのか知り得なかったというものであるところ,乙4公報,乙9公報,乙11公報に記載されたパチンコ機に関する発明においては上記のような課題自体存在していない。すなわち,パチンコ機の大当たりには,液晶画面の図柄の組み合わせによりアタッカーの開放時間に長短があるが,量的相違にすぎず,質的にはいずれも「大当たり」に当たる。パチンコ機の「大当たり」は本件訂正特許発明1の「入賞態様」には当たらない。本件訂正特許発明1の「入賞態様」には「チェリー」や「ベル」といった小役。, , も含まれる また 乙7発明はスロットマシンに関する発明であるが同様に,小役の入賞を報知する構成は開示されていない。小役に対して報知を行う点は,被告の指摘する上記各公報において開示されていない本件訂正特許発明1の特徴である。
被告が指摘する乙4公報,乙6公報,乙8公報は「報知態様の組合せで入賞態様の報知が行われる先行技術」であって,小当たり入賞を含む入賞態様に共通する報知態様による報知と,その後のこれとは異なる報知態様による報知とにより報知情報を構成し,かつ,該報知情報を所定確率で発生させる報知手段を有するという本件訂正特許発明1の構成を開示するものでもなく,示唆するものでもない。
A本件訂正特許発明1の構成要件AないしFにおいて小役に関する入賞態様をも報知する構成を適用することが容易といえるか当業者が本件訂正特許発明1の構成要件AないしFのパチスロ機において小役に関する入賞態様をも報知する構成を適用することについて動機付けは存在しない。なぜなら,小役の場合は引込コマ数の範囲内でほとんどの場合実現されるものであるため,小役を報知対象に加える改変は,プログラムを複雑化するとともにメモリ領域の拡張を余儀なくし,CPUに対する負荷の増大ひいては製造コスト増をもたらすものであって,当業者にとって必然性がないどころか躊躇を感じさせる不自然な改変だからである。本件訂正特許発明1においては,遊技者の中には,選好する小役を揃えること自体に興趣を感じる遊技者が存在することに初めて着眼し,遊技の興趣を高めるために小役報知をも行うことに初めて想到したものである。このことは,小役報知を行う本件訂正特許発明1の初めての実施品である「サンダーV」が当時としては爆発的なセールスを記録したことからも明らかである。
この点について,被告は,乙10公報には小当たり入賞をも含めて報知する構成が開示されている旨主張する。しかし,乙10公報に記載されている告知ランプは,本件訂正特許発明1の従来技術として記載されている面白味のない報知態様である。また,乙10公報に記載されている発明(以下「乙10発明」という )においては,1回の 。
告知で入賞態様を確定的に報知する構成が採用されており,この点においても本件訂正特許発明1とは異なる。乙10発明は,遊技者に遊技状態を確定的に把握させて遊技の興趣を高めるというものであり(乙10公報【0005,本件特許発明1とは目的を異にしてお 】)り,本件訂正特許発明1の構成要件AないしFに乙10発明を組み合わせて本件訂正特許発明1に想到することには阻害要因があるといえる。
)パチンコ機に関する技術をスロットマシンに転用することが容易といcえるかスロットマシンに関する本件訂正特許発明1の構成要件AないしFについて,パチンコ機に関する周知技術を組合せても本件訂正特許発明1と同じ構成は想到できず,かつ,そのような組合せが容易でないことについては前記3( )イ )で述べたとおりである。
2bイ被告)本件訂正請求1についてa本件訂正請求1が認められたとしても,本件訂正特許発明1についても,訂正前の特許請求の範囲に関する進歩性の欠如と同じ理由で進歩性が欠如していることは明らかである。
)本件訂正特許発明1が報知対象に小当たり入賞も含まれる点で進歩性bを有するか。
原告は,本件訂正特許発明1が報知対象に小当たり入賞も含まれる点で進歩性を有する旨主張する。
しかし,乙10公報の【0028】ないし【0030】にはビッグボーナス(大当たり入賞 ,中当たり入賞 「チェリー」や「スイカ」等 ),の小当たり入賞が内部当選した場合に,該当する入賞態様に応じた表示ランプを点灯して報知する構成が開示されている。このように,ボーナスゲームのみならず,中当たり入賞や小当たり入賞が内部当選した場合に,各入賞態様に応じた報知を遊技者に行うことは本件特許1出願前に既に公知であった。
)パチンコ機に関する技術をスロットマシンに転用することが容易といcえるか。
スロットマシンに関する本件訂正特許発明1の構成要件AないしFにおいて,パチンコ機に関する周知技術その他の周知技術を組み合わせて本件訂正特許発明1に想到することが容易であることは,前記3( )ア2)で述べたとおりである。 b( ) 被告物件が本件訂正特許発明1の技術的範囲に属するか(争点4-2 。 2 )ア原告被告物件は小役の入賞についても報知対象とするものであり(被告物件の構成1-g及び1-h ,かつ,被告物件はスロットマシンであるから )(被告物件の構成1-i ,本件訂正請求1が認められたとしても,被告 )物件が本件訂正特許発明1の技術的範囲を満たすことに変わりはない。
イ被告被告物件は,前記2( )ア,( )アと同様の理由で,本件訂正特許発明112の技術的範囲を充足しない。
5被告物件が本件特許発明3の技術的範囲を充足するか(争点5 。)( ) 被告物件の構成3-b及び3-fが本件特許発明3の構成要件B及びFを1充足するか(争点5-1 。)ア原告前記2( )アのとおり,被告物件の構成3-b及び3-fは本件特許発1明3の構成要件B及びFを充足する。
イ被告前記2( )イ記載のとおり,被告物件の構成3-b及び3-fは,本件1特許発明3の構成要件B及びFを充足しない。
( ) 被告物件の構成3-g及び3-hの図5の各演出種類が本件特許発明3の2構成要件G及びHを充足するか(争点5-2 。)ア原告前記2( )アのとおり,被告物件の構成3-g及び3-hは,本件特許2発明3の構成要件G及びHを充足する。
イ被告前記2( )イ記載のとおり,被告物件の構成3-g及び3ーhは,本件2特許発明3の構成要件G及びHを充足しない。
( ) 被告物件の構成3-iが本件特許発明3の構成要件Iを充足するか(争点35-3 。)ア原告)「可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに複数のa効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段」について被告物件においては,スタートレバーによってリールの回転が開始されるときに「ギター音「オーラ音「人影登場音」の中の一つの音 」,」,を発生させる音発生手段を有しており,これが,本件特許発明3の構成要件Iにおける「可変表示開始手段によって前記可変表示が開始される」。 ときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段 に当たる)「可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止さbれるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段」について被告物件においては,ストップボタンスイッチによって少なくとも1列のリールが停止されるのに連動し 「通行人演出「バット演出(缶 ,」,)」,「」,「」,「 ()」 ないしリンゴの落下リン演出オーラ演出敵 ザコ 演出の複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する表示手段を有しており,これが,本件特許発明3の構成要件Iにおける「可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段」に当たる。
)「音発生手段によって発生される効果音の種類,および前記連動演出c手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,前記入賞態様決定手段で決定される」について被告物件においては,前記)の音発生手段と前記)の表示手段の組ab合せは,演出パターンデータとして 「デモ抽選テーブル」に記憶され ,ており,その中から当選役決定手段で決定された当選役に応じて,演出パターン抽選用乱数との照合によって,当該ゲームの演出パターンとして選択される。
)以上のとおりであるから,被告物件の構成3-iは,本件特許発明3dの構成要件Iを充足する。
イ被告原告の主張は争う。
( )ア原告4以上のとおり,被告物件の構成3-b,3-f,3-g,3-h及び3-iは,本件特許発明3の構成要件B,F,G,H及びIを充足する。また,被告物件の構成3-a,3-cないし3-e及び3-jは,本件特許発明3の構成要件A,CないしE及びJをそれぞれ充足することは当事者間に争いがない。したがって,被告物件は本件特許発明3の技術的範囲に属する。
イ被告被告物件の構成3-b,3-f,3-g,3-h及び3-iは,本件特許発明3の構成要件B,F,G,H及びIを充足しない。
6本件特許発明3に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものといえるか(争点6 。)( ) 本件特許発明3が特許法29条1項柱書の「発明」といえるか(争点6-11 。)ア被告前記3( )アと同様のことがいえるほか,本件特許発明3は,本件特許1発明1と次の点で構成を異にしている。
本件特許発明3は,報知手段を「音発生手段による報知と連動演出手段による報知との組み合わせを報知態様選択手段で選択して報知する手段」に限定している。
このうち,@「音発生手段による報知」について,複数の効果音の中の一つの音を発生させる音発生手段は,この種のスロットマシンにおいて従来の周知慣用技術にすぎない。
また,A「連動演出手段による報知」について,可変表示停止手段によって可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する連動演出(効果音,電飾の点滅等)手段は,従来の周知慣用技術にすぎない。
B「効果音の種類及び連動表示態様の種類の組合せを選択する報知態様選択手段」についても,数種類存在する報知態様など,複数の対象物から条件に応じて特定の対象物を選択する技術手段は従来の周知慣用技術にすぎない。
このように,本件特許発明3において,本件特許発明1にない構成部分についても,いわゆる「演出」部分にすぎない。可変表示が開始されるときにその雰囲気を盛り上げたり入賞態様を報知する目的などのために何らかの音を発すること(上記@ ,可変表示停止手段によって少なくとも1 )列の前記可変表示が停止されるのに連動してその雰囲気を盛り上げたり入賞態様を報知する目的などのために何らかの音,光などを発すること(上記A ,こうした音や光の組み合わせをもって遊技開始時などに抽選によ )って決定された入賞態様と報知態様の組み合わせとの関係付けをしておき,これを従来周知の技術的手段によって選択するもの(上記B)であるにすぎない。したがって,本件特許発明3も,本件特許発明1と同様,自然法則を利用した創作とはなり得ず,特許法29条1項柱書に違反し,同123条1項2号により無効である。
イ原告前記3( )イと同様のことがいえるほか,本件特許発明3においては本1件特許発明1と異なる次の三つの構成が付加されている。
@可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段を備えていることA可変表示停止手段によって少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の1つの表示態様で演出する連動演出手段を備えていることB前記音発生手段によって発生される効果音の種類,及び前記連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組合せを,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じて選択する報知態様選択手段を備えていることそして,上記各構成を実現するために,音データテーブル,CPU,スピーカ駆動回路,スピーカ(上記@,本件明細書1【0042,リー】)ル停止信号回路,CPU,ランプ駆動回路,液晶駆動回路,各回路ないしCPU間の通信を行うバス(上記A,本件明細書1【0043【02】,15,入賞態様報知選択抽選確率テーブル,デモ抽選テーブル選択テ 】)ーブル,デモ抽選テーブルというマイコン制御上のデータ格納領域(ROM)及び乱数発生器並びに比較回路ないしCPU(上記B,本件明細書図20,53,54ないし56)が必要であり,これらが自然法則を利用したものであることは明らかである。
( ) 本件特許発明3が,本件特許発明3の構成要件AないしFに遊技機に関す2る周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点6-2 。)ア被告)相違点a本件特許発明3のうち,構成要件AないしFが周知慣用技術であることは当事者間に争いがない。
本件特許発明3のうち,構成要件G及びHの構成については,構成要件AないしFに周知慣用技術を組み合わせて容易に想到することができることは前記3( )アと同様である。
2本件特許発明3のうち,前記3( )アで述べていない構成要件Aない 2しFの周知慣用技術との相違点は,次の3点である。しかし,次の3点についても,本件特許発明3の構成要件AないしFに周知技術を組み合わせることによって容易に想到することができる。
@本件特許発明3においては可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の一つの音を発生される音発生手段を備えているのに対し,周知慣用技術はこれを備えていない点(相違点1)A本件特許発明3は,可変表示開始手段によって少なくとも1列の可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する連動演出手段を備えているのに対し,周知慣用技術はこれを備えていない点(相違点2)B本件特許発明3は,音発生手段によって発生される効果音の種類,及び連動演出手段によって演出される連動表示態様の種類の組み合わせを入賞態様決定手段で決定された入賞態様または入賞態様決定手段で決定された入賞態様と異なる入賞態様に応じて選択する報知態様選択手段を備えているのに対し,周知慣用技術はこれを備えていない点(相違点3))相違点1についてbパチンコ遊技機やスロットマシンにおいて,入賞態様を遊技者に報知する報知態様として,音による報知があることは周知慣用技術である(乙4公報【0108 ,乙6公報【0044 ,乙7公報【00 】】83 ,乙11公報【0020 ,乙12公報【0052 ,乙13公 】】】報【0066。】)また,乙8公報の【0011【0013】及び【0014】に 】,は異なる複数の音の中から一つの音を選択して報知する構成が開示されている。
上記のように遊技者に対して音による報知を行っている以上,音発生手段を設けているのは当然である。したがって,相違点1は,パチンコ機やスロットマシンが有する一般的な構成であって実質的な相違点たり得ない。
)相違点2についてcパチンコ遊技機やスロットマシンにおいて,遊技者に対する報知態様として,可変表示停止手段によって少なくとも1列の可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する連動演出手段を備えている構成は周知慣用技術である 乙7公報 0(【】【】,【】【】, 079 及び 0080乙12公報 0045 及び 0052乙11公報【0028】及び【0032 ,乙6公報【0050 , 】】乙31公報【0051 ,乙32公報【0050 ,乙33公報【0 】 】052。】)したがって,可変表示停止手段によって少なくとも1列の可変表示が停止されるのに連動して複数の表示態様の中の一つの表示態様で演,。 出する連動演出手段も周知慣用技術であり 実質的相違点たり得ない)相違点3についてd報知態様の組み合わせについては本件特許発明1の構成要件Hで検討したとおりである。
相違点3の本質は「報知態様選択手段」にある。そして,入賞態様,, 決定手段で決定された入賞態様に応じた報知態様が複数存在し またこれとは異なる入賞態様に応じた報知態様が複数存在し,その中から特定の報知態様を選択して遊技者に報知するという構成は,乙4公報の【0086【0091【0094】ないし【0096【0 】,】, 】,098【0099【0106】ないし【0110】及び図14 】,】,に記載されている。
すなわち,乙4発明においては,大当たり及び大当たり以外の報知方法が共通して各複数種類(@音による報知,Aキャラクタによる報知,B音とキャラクタの組み合わせによる報知)存在し,これら複数の報知態様の中のいずれを選択するかは乱数打ちによって所定確率で選択される。つまり,入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた報知態様が複数存在し,当該決定された入賞態様に対応した複数の報知態様の中から,特定の報知態様を選択して遊技者に報知する構成が開示されているといえる。また,大当たりと大当たり以外で,同様に複数の報知態様が規定されていることから,入賞態様決定手段で決定された入賞態様と異なる入賞態様に応じた報知態様が複数存在し,当該決定された入賞態様と異なる入賞態様に対応した複数の報知態様の中から特定の報知態様を選択肢で遊技者に報知する構成が開示されているといえる。
そして,本件特許発明3の構成要件AないしFの周知慣用技術に乙4発明を組み合せることを阻害する要因もないから,これらを組み合せて本件特許発明3に至ることは容易であるというべきである。
)小括e以上によれば,本件特許発明3は特許法29条2項に違反し同法123条1項2号により無効である。
イ原告)相違点1についてa被告は,パチンコ遊技機やスロットマシンにおいて,入賞態様を遊技者に報知する報知態様として音による報知は周知である旨主張する。
しかし,本件特許発明3の「音発生手段」は 「可変表示開始手段に ,よって前記可変表示が開始されるときに複数の効果音の中の一つの音を発生させる音発生手段」である。単に効果音を発生するにすぎない周知技術が存在しているからといって,本件特許発明3の上記構成に進歩性がないということはできない。
特に 被告が指摘する乙4公報はパチンコ機に関するものであり可 , ,「変表示開始手段」を構成に含むスロットマシンに関する本件特許発明3の構成とは無関係である。また,本件特許発明3は配当のある複数の入賞態様に共通して演出される報知態様として音を発するのに対し,乙4発明は獲得される遊技球の唯一種類の入賞態様にのみ対応する音を発するものである点においても異なる。さらに,乙4発明においては,遊技の進行に伴い報知される報知態様により入賞態様を予測でき,遊技者が熱くなるという作用効果( 0012 )を奏するものではない。 【】被告が指摘する乙7発明は,ストップボタンを押した直後に種々のパターンで点滅又は点灯する制御に代えて適当な音を発生することによって内部当選を遊技者に知らせることができるという発明である。これに対し,本件特許発明3は,可変表示開始手段によって前記可変表示が開始されるときに音を発するものであり,また,この音は,複数の配当のある当選役に共通して発せられるものである。乙7発明は,上記の各点において本件特許発明3と構成を異にしており,このため,乙4発明と, , 同様 遊技の進行に伴い報知される報知態様により入賞態様を予測でき遊技者が熱くなるという作用効果( 0012 )を奏するものではな 【】い。このことは,被告が指摘する乙12発明,13発明についても同様である。なお,乙7発明及び乙13発明においては,報知対象が大当たり(ボーナス役)のみであるという点においても本件特許発明3と構成を異にする。
被告が指摘する乙8発明は 「可変表示開始手段によって前記可変表 ,示が開始されるときに複数の効果音の中の1つの音を発生させる音発生手段」を開示しておらず,また「配当のある複数の入賞態様に共通して演出される報知態様」として可変表示開始時に「複数の効果音の中の1つの音」を発するものでもない。そのため,遊技の進行に伴い報知される報知態様により入賞態様を予測でき,遊技者が熱くなるという作用効果( 0012 )を奏するものではない。 【】)相違点2についてb被告は,パチンコ遊技機やスロットマシンにおいて,遊技者に対する報知態様として,可変表示停止手段によって少なくとも1列の可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する連動演出手段を備えている構成は周知慣用技術である旨主張して,,,,,。 乙7公報 乙12公報 乙11公報 乙6公報 乙31公報を指摘するしかし,被告が指摘する上記各公報は 「可変表示停止手段によって ,少なくとも1列の前記可変表示が停止されるのに連動し,複数の表示態様の中の一つの表示態様で演出する連動演出手段」を備えているとはいえず,かつ 「複数の効果音の中の1つの音」のその後に実行されるこ ,れとは「異なる」報知態様のものともいえない。
)相違点3について c被告は,乙4発明に入賞態様決定手段で決定された入賞態様に応じた報知態様が複数存在し,また,これとは異なる入賞態様に応じた報知態様が複数存在し,その中から特定の報知態様を選択して遊技者に報知するという構成が開示されている旨主張する。
しかし,乙4発明には,大当たりとハズレしか存在せず,発射装置により弾球した後は運に頼るしかないパチンコ機が開示されているにすぎない。また,乙4発明には複数の効果音の中の一つの音の種類,可変表示開始手段,可変表示停止手段も開示されていない。
()。 7本件特許発明3の無効理由が本件訂正請求1により解消されるか 争点7( ) 本件特許発明3の無効理由が本件訂正請求1によって解消されるか(争点17-1 。)ア原告)本件訂正請求1についてa原告は,平成18年9月4日付け訂正請求書によって本件特許1の特許請求の範囲の請求項3の記載の訂正を請求した(本件訂正請求1 。)本件訂正請求1については,未だ訂正すべき旨の審決がなされていないが,本件訂正請求1は訂正要件を満たすものである。
本件訂正請求1によって,本件特許発明3の構成要件G及びHの構成につき,@報知対象である入賞態様がボーナス役だけでなく小当たり入賞をも含むものであること,及び,A本件特許発明3がスロットマシンに関するものであることがより明確になった(本件訂正特許発明3 。))特許法29条1項柱書要件についてb本件訂正特許発明3についても,本件特許発明3と同様の理由で特許法29条1項柱書に適合することは明らかである。
)本件訂正特許発明3が,本件訂正特許発明3の構成要件AないしFにc遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものといえるか。
前記4( )ア), )のとおり,本件訂正特許発明3が,本件訂正特許1bc発明3の構成要件AないしFに遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ被告)特許法29条1項柱書要件についてa本件訂正特許発明3についても,本件特許発明3についてと同様のことがいえるほか,本件訂正特許発明3について付加された次の2点の構成について次のとおり主張する。
すなわち,本件訂正特許発明3については,次の2点が付加された。
@決定された小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様を報知する点(報知情報に小当たり入賞の報知情報を含むこと)A決定された入賞態様とは異なる小当たり入賞に該当する入賞態様を含む入賞態様を報知する点(決定された入賞態様とは異なる入賞態様に対応した報知情報を報知すること)しかし,遊技者への報知情報に小当たり入賞を含むか否か,あるいは決定された入賞態様とは異なる入賞態様に対応した報知情報を報知するか否かは,まさに人的に決定される「演出」方法(ルール)そのものにすぎない。したがって,本件訂正特許発明3も,本件特許発明3と同様に自然法則を利用した創作とはなり得ず,特許法29条1項柱書に違反し,同123条1項2号により無効である。
)本件訂正特許発明3が,本件訂正特許発明3の構成要件AないしFにb遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものといえるか。
前記6( )ア及び4( )イ), )のとおり,本件訂正特許発明3が,11bc本件訂正特許発明3の構成要件AないしFに遊技機に関する周知技術を組み合わせて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
( ) 被告物件が本件訂正特許発明3の技術的範囲に属するか(争点7-2 。
2 )ア原告被告物件の構成3-a,3-cないしe及び3-jが本件訂正特許発明A,CないしE及びJを充足することは,当事者間に争いがない。
被告物件の構成3-b,3-f,3-g,3-h及び3-iが本件訂正特許発明3の構成要件B,F,G,H及びIを充足していることは,前記5( )ア,( )ア,( )ア記載のとおりである。
123したがって,被告物件は,本件訂正特許発明3の技術的範囲に属する。
イ被告被告物件の構成3-b,3-f,3-g及び3-hが本件訂正特許発明3の構成要件B,F,G及びHを充足しないことは,前記5( )イ,( )イ12記載のとおりである。
,, 。 したがって 被告物件は 本件訂正特許発明3の技術的範囲に属しない8被告物件が本件特許発明2の技術的範囲を充足するか(争点8 。)( ) 被告物件の構成2-bが本件特許発明2の構成要件Bを充足するか(争点18-1 。)ア原告,, 被告物件の構成2-bにおいてはストック待ちゲーム ストックゲームストック放出ゲーム,アシストゲーム,RBゲームの5種類の遊技状態のうちアシストゲーム時及びRBゲーム時には,継続性のある各専用の音楽が出音されるのであるから,本件特許発明2の構成要件Bの「遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段とを備えて構成される遊技機」を充足する。
, , 被告は 上記5種類すべてにおいて遊技音が継続的に出音されなければ本件特許発明2の構成要件Bの「遊技音を継続的に出音し」に当たらない旨主張する。
しかし,本件特許発明2は,本件明細書2の【0006】の記載からも明らかなように,BBゲームやRBゲーム等遊技者が遊技台を離れてしまうような場合に遊技音が継続的に出音されると周囲の遊技者に迷惑であることから,当該遊技音の音量を下げるという発明であるから,遊技態様のうち特定の遊技態様について遊技音が継続的に出音されていれば足り,すべての遊技態様において遊技音が継続的に出音されなければならないというものではない。
イ被告被告物件においては,5種類ある遊技状態のうち,アシストゲーム時及びRBゲーム時には,継続性のある各専用の音楽が出音されるものの,ストック待ちゲーム及びストックゲーム時には継続しない操作音,ストック放出ゲーム時には継続しない「ワッハッハ」という操作音が出音される。
このように,被告物件の構成2-bにおいては,ストック待ちゲーム,ストックゲーム及びストック放出ゲーム時には「遊技音を継続的に出音」していない。また,ストック待ちゲーム及びストックゲームにおいてはいずれの遊技状態であるかによって出音が異ならないため,出音によって遊技状態を遊技者に報知することはできない。
したがって,被告物件の構成2-bは本件特許発明2の構成要件Bを充足しない。
( ) 被告物件の構成2-cが本件特許発明2の構成要件Cを充足するか(争点28-2 。)ア原告)原告の主張a被告物件の構成2-cにおいては,被告物件説明書の図13に記載されたとおり,メイン側遊技待機処理において「遊技待機時間セット(約60秒 」の処理の後 「メダル有り?」の識別子で「NO「遊技待 ), 」,機時間?」の識別子で「YES」の場合には,遊技待機時間が60秒を経過したことを条件に「遊技待機コマンドのサブCPUへの送信処理」が行われる。そして,サブ側遊技待機処理において「コマンド種類?」の識別子において「遊技待機コマンド」か「遊技メダル投入コマンド」を確認し 「遊技待機コマンド」の場合,すなわち,遊技がされてない ,状態の場合にのみ「音量変更要求(フェードアウト 」処理を行ってい)る。
このように,被告物件の構成2-cにおいては,メイン側遊技待機処理の「遊技待機時間?」の識別子で「所定時間経過」を判断しており,サブ側遊技待機処理の「コマンド種類?」の識別子で「遊技がされていない状態を検出」しているから,本件特許発明構成要件Cの「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」を有する。
)被告の主張に対する反論b@被告物件の構成2-cが「遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」を有しているといえるか。
被告は,被告物件においては遊技待機時間のカウントダウンのみを行い,遊技がされていない状態を検出したりしない旨主張する。
しかし,別紙被告物件目録図13によれば,遊技がされていない状態を検出しているといえる。
「」 仮に被告が主張するように被告物件において漫然と 遊技待機時間のカウントダウンのみ行っているとすれば,カウントダウン中にRBゲーム又はアシストゲームが開始されたとしても,開始の検出にかかわらずフェードアウトされることになるが,被告物件においてはそのような処理がなされていないことは被告物件の実技に基づいて確認している。
A被告物件の構成2-cが「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過」したか否かを検出しているといえるか。
被告は,被告物件においては,前回遊技の払い出し処理が終了し,遊技開始時の初期設定がなされた後に,遊技待機時間経過判断のための計時が開始されるから計時開始のタイミングが本件特許発明2の構成要件Cの「前回遊技における所定のタイミング」に当たらない旨主張する。
しかし,被告の上記主張は,メダル投入時からメダル払い出し時までを1つの「ゲーム」とみることを前提とした議論である。本件明細書2の実施例【0136】にはそのような記載があるものの,本件特許発明2が実施例の記載に限定されるものではない。
,,, , また そもそも 被告物件においては 前記1( )ア記載のとおり3今回ゲームの遊技待機処理の開始,初期設定の待機時間セットはすべて同時に行われている。
したがって,被告物件においては 「前回遊技における所定のタイ ,ミング」である「メダル払い出し時」を開始点として60秒という所定時間の経過を計測しているから,被告物件の構成2-cは,本件特許発明2の構成要件Cを充足する。
イ被告)被告物件の構成2-cが「遊技がされていない状態を検出する状態検a出手段」を有しているといえるか。
本件特許発明2の構成要件Cは「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」である。
ところが,被告物件の構成2-cにおいては,別紙被告物件説明書記載のとおり,遊技待機時間を経過したか否かが判断されて出音制御が行なわれるにすぎず 「遊技がされていない状態を検出」したりしないか ,ら遊技がされていない状態を検出する状態検出手段を備えていない。
)被告物件の構成2-cが「前回遊技における所定のタイミングから所b定時間経過」したか否かを検出しているといえるか。
被告物件においては,別紙被告物件説明書記載のとおり,前回遊技の払い出し処理が終了し,遊技開始時の初期設定がなされた後に,遊技待機時間経過判断のための計時が開始される。このように,被告物件においては,計時開始のタイミングは前回遊技終了後であって「前回遊技における所定のタイミング」ではない。
また,被告物件においては,遊技終了時から次遊技開始の初期設定の間に打ち止めであるか否かの判定を行い,その結果が打ち止めの判定である場合,打ち止め解除信号が来るまで次遊技の初期設定をすることができないから,前回遊技の終了と同時に次遊技の初期設定をすることができず,前回遊技の終了と同時に次遊技の初期設定の待機時間セットを行うものではない。
したがって,被告物件は本件特許発明2の構成要件Cを充足しない。
( ) 被告物件の構成2-dが本件特許発明2の構成要件Dを充足するか(争点38-3 。)ア原告被告物件の構成2-dにおいては,遊技待機時間セットと遊技待機コマ( ) ンド メダル投入のない状態すなわちゲームがされようとしていない状態の判別によって,所定時間経過時に遊技がされていない状態を検出している。
被告物件の構成2-dの上記構成は 本件特許発明2の構成要件Dの 状 , 「態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに…音量を下げる出音制御手段」に当たる。
よって,被告物件の構成2-dは,本件特許発明2の構成要件Dを充足する。
イ被告被告物件においては,遊技待機時間を経過したか否かが判断されて出音制御が行なわれるにすぎず 「遊技がされていない状態を検出」したりし ,ないから,本件特許発明2の構成要件Dを充足しない。
9本件特許発明2に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものといえるか(争点9 。)( ) 本件特許発明2がその出願前に公開された特許公報(乙16ないし22)1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点9-1 。)ア被告本件特許発明2は,特開平9-253274号公報(乙16。以下「乙16公報 というの 0020 ないし 002200270 」。) 【】【】,【】,【】, (。「」 031特開平10-277246号公報 乙17 以下 乙17公報という )の【請求項7,8 【0058】ないし【0062【006 。】 】,6【0090】ないし【0093 ,特開平7-51442号公報(乙 】, 】18。以下「乙18公報」という )の【0007【0009【00 。】,】,12】ないし【0013【0015【0016【図2 ,特開平1 】,】,】,】0-305130号公報(乙19。以下「乙19公報」という )の【0。
067【0102 ,特開平8-796号公報(乙20。以下「乙20 】,】公報」という )の【請求項1,2【0018【0022【003 。】,】,】,3】ないし【0034 ,特開2000-116845号公報(乙21。 】以下「乙21公報」という )の【0025【0031】ないし【00 。】,38 ,特開平9-122294号公報(乙22。以下「乙22公報」と 】いう )の【0029】に記載された周知技術に基づいて容易に発明し得 。
るものである。
なお,特許庁は,本件特許発明2とほぼ同一の特願2002-38047号に係る特許出願(乙14。以下「乙14出願」という )について上。
記と同じ理由で拒絶理由を通知している(乙14,15 。)イ原告)被告の指摘する周知技術から本件特許発明2を想到することが容易とaいえるか。
被告は,本件特許発明2はその出願前に公開された特許公報(乙16ないし22公報)に記載された周知技術に基づいて当業者が容易になし得る事項であると主張する。
しかし,被告が指摘する上記各特許公報には本件特許発明2が解決しようとする課題,すなわち 「遊技者がその遊技台で遊技をしていない ,のにもかかわらず,スピーカから大きな遊技音が出音され続けると,その遊技台の周囲で遊技をしている遊技者はその大きな遊技音によってはなはだ迷惑をこうむる(本件明細書2の【0006「遊技をして 。」 】),いないのにもかかわらずスピーカから大きな遊技音が出音され続けるため,その遊技台で遊技をしている遊技者自身がその大きな遊技音によって煩わされる(本件明細書2の【0007 )について何らの開示も 。」 】示唆もされていない。したがって,その解決手段であるところの「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態が検出されたときに現在の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段」を備えるスロットマシン,すなわち,本件特許発明2に想到することについて,上記各特許公報が当業者に何らかの教示を付与することはない。
)本件特許発明2の構成要件Cの構成について b被告は,乙19公報,乙20公報,乙21公報には,所定期間遊技がされていないことを検知して「制御を行う」点が記載されていると主張する。
しかし,乙19公報の【0067】には 「表示制御手段が,このオ ,フプレイ信号を入力すると,その以後,表示手段を任意に設定されたモードに従って作動させる,周囲の人に何の遊技機であるかという興味を起こさせたり,遊技の経験のある者に遊技時の楽しさを思い出させたりして,周囲の人を回胴式遊技機に引き寄せることができるようにすることが推奨される」とあり,オフプレイ信号の入力が周囲の人の注目を惹くためデモ実行の契機となる構成として開示されている。これを,例えば遊技音の出音に関する乙16公報に記載された発明(以下「乙16発明」という )及び乙17公報に記載された発明(以下「乙17発明」 。
という )に適用する動機はない。 。
また,乙19公報には「…本発明においては,遊技者が遊技しているインプレイ時には,上述のようにリーチ成立時にこれを表示手段が表示するようにしているが,遊技者が遊技をしていないオフプレイ時にはこのような表示が成されることがなければ,周囲の人を遊技に誘う魅力が乏しくなる」との事項( 0066 )が上記段落( 0067 )に先 【】【】だって記されている。すなわち,同号証におけるオフプレイ検出手段による遊技がされていない状態の検出は,遊技者が在籍していない「空き台」状態の検出にほかならないのである。
当該オフプレイの構成は本件特許発明2の構成要件C「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」を開示するものではないことは明らかである。遊技者が目前のビッグチャンスに興奮しゲームに専念する状態下「 」 , の 遊技がされていない状態の検出 と単なる空き台状態の検出とでは状態検出の目的が完全に相反しており,本件特許発明2の課題を知らずして当業者が本件特許発明2の構成に至ることは容易ではない。
乙20公報に記載された発明(以下「乙20発明」という )は,通。
常の回胴式遊技機ではなく遊技機の前面に設けられた一つの画像表示装置において,遊技時には遊技画像が,非遊技時にはインストラクション画像が表示されるという特殊な遊技機における画面表示の切り替えに関する技術である。すなわち 「画像の頻繁な切り替わりは,遊技者に対 ,して不快感を与えかねず,遊技の流れを妨げるおそれがある ( 00」【34 )という課題を解決するために 「メダルが投入されていなかっ 】 ,たり,クレジットメダルが残っていないと判断した場合」であってもすぐにインストラクション画面に切り替えるのではなく,所定時間(例えば30秒)経過後にインストラクション画面を表示するというものである( 0033【0034 )解決手段にとどまっている。本件特許 【】,】発明2のように「特別の遊技(例えばボーナスゲームの作動中)が行われている際に」遊技がなされていない状態を検出するという構成とは異なるものであって,乙20公報に記載された構成から本件特許発明2の構成に想到することは容易ではない。
乙21公報に記載された発明(以下「乙21発明」という )は,乙。
19公報に記載された発明(以下「乙19発明」という )と同様に,。
遊技者がいない空き台について周囲の人の注目を惹くためデモ実行の契機となる構成として開示されているにとどまり,これを遊技音の音量低下の契機に用いる動機は存在しない。むしろ,乙21発明は「遊技者がゲームをしていないいわゆる空き台状態である状態」を検出対象とすることが明確に記載されており,かかる乙21公報の構成から,本件特許発明2の「特別の遊技が行われる際」における遊技がされていない状態の検出手段を開示ないし示唆されるものではないから容易想到とはいえない。
)本件特許発明2の構成要件Dの構成についてc, (「」。) 被告は 乙18公報に記載された発明 以下 乙18発明 というについて,遊技者による遊技操作がないときに遊技場内の騒音を増大させないようにするために,継続的に出音している遊技音の音量を下げる制御を行う遊技機が記載されている旨主張する。
しかし,乙18公報に記載される「スピーカ26の音量」とは,台前に遊技者が着席していない状態のデモンストレーションに伴う効果音であることは明らかであって,これは,遊技者が遊技中であることを当然の前提とする本件特許発明2の構成要件Dすなわち「現在の遊技状態に応じた遊技音の音量」ではない。また,乙18発明でいう小さくしたり動作しないようにする音量とはデモンストレーション時の効果音であるのに対し,本件特許発明2でいう遊技音とは現在の遊技音(例えばBB遊技状態における継続的な出音)を意味する。
)小括dこのように,本件特許発明2は,乙16ないし乙22発明に基づき容易に想到できるものではないことは明らかである。
したがって,当業者が乙16ないし乙22公報に記載された周知技術から本件特許発明2を容易に想到することはできない。
( ) 本件特許発明2が特開平11-178990号公報(乙37)及び特開平27-51442号公報(乙18)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点9-2 。)ア被告)特開平11-178990号公報(乙37。以下「乙37公報」といaう )に記載された発明(以下「乙37発明」という )と本件特許発 。 。
明2の一致点及び相違点乙37公報【0059】ないし【0063【0065【006 】,】,】,【】,【】,【】,【】,【】 600710073007700800084ないし【0092】の記載によれば,乙37公報には次のような発明が記載されているといえる。
「乱数サンプリングを実行し得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして当選か否か及びその賞の種類等を判定することにより内部当たりか否かの抽選を行うとともに,音声出力部52に指示して現在の遊技状態を遊技者に報知する制御部50を備えて構成,,(。 されるスロットマシンにおいて 制御部50は BB ビッグボーナス以下同じ )フラグがセットされ有効ライン16上に各リール14にお 。
けるシンボルが揃うと音声出力部52を介して前記現在の遊技状態としてのBBゲームに応じたBB効果音をスピーカから発生させ,所定の遊技回数を消化すると音声出力部52を介して前記現在の遊技状態としてのBBゲームに応じたスピーカからのBB効果音の発生を停止させるものであるスロットマシン 」。
本件特許発明2と乙37発明とを対比すると,乙37発明の「乱数サンプリングを実行し得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして当選か否か及びその賞の種類等を判定することにより内部当たりか否かの抽選を行う…制御部50」が本件特許発明2の構成要件Aの「乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段」に相当する。乙37発明の「音声出力部52に指示して現在の遊技状態を遊技者に報知する制御部50」が本件特許発明2の「出音手段 ,乙」37発明の「BBゲーム」が本件特許発明2の「現在の遊技状態 ,乙」37発明の「BB効果音」が本件特許発明2の「 現在の遊技状態に応(じた)遊技音 ,乙37発明の「BBフラグがセットされ有効ライン1 」6上に各リール14におけるシンボルが揃うと「BB効果音を発生」,させ」が本件特許発明2の「 現在の遊技状態に応じた)遊技音を出音 (」。,「」 して にそれぞれ相当する そして 本件特許発明2の 出音制御手段と乙37発明の「制御部50」とは,ともに現在の遊技(BBゲーム)が行われる際にそれに応じた遊技音(BB効果音)の出音を制御する出音制御手段である点で技術的に共通する。したがって,両者は 「乱数,抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,遊技音を出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段とを備えて構成されるスロットマシンにおいて,遊技音の出音を制御する出音制御手段を備えたスロットマシン」の点で一致し,以下の点で相違する。
@相違点1「遊技音」について,本件特許発明2が「遊技音」を継続的に出音するものであるのに対して,乙37発明では遊技音を継続的に出音するのか否か定かでない点。
A相違点2「出音制御手段」について,本件特許発明2が 「前回遊技におけ,る所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」を備え 「この状態検出手段によって ,遊技がされていない状態が検出されたときに現在の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる」ものであるのに対し,乙37発明に記載された発明では,上記のような状態検出手段を備えておらず,遊技音の音量を上記のように制御していない点)相違点1についてb相違点1について,乙37発明は 「BBフラグがセットされ有効ラ ,イン16上に各リール14におけるシンボルが揃うと音声出力部52を介して前記現在の遊技状態としてのBBゲームに応じたBB効果音をスピーカから発生させ,所定の遊技回数を消化すると音声出力部52を介して前記現在の遊技状態としてのBBゲームに応じたスピーカからのBB効果音の発生を停止させる」ものであり,これによれば,BB効果音の出音は,本件特許発明2の遊技音と同様,継続的に出音するものといえ,相違点1に関しては,乙37発明と本件特許発明2との間には実質的な差異はないといえる。
仮に,相違点1が実質的な相違であったとしても,本件明細書2にはBBゲームやRBゲーム時に遊技音を継続的に出音するスロットマシンが本件特許発明2における課題解決のための対象となる従来例として記載されている また 特開平7-112051号公報 乙40 以下 乙 。, (。「40公報」という,特開平5-7642号公報(乙43。以下「乙 。)43公報」という,乙16公報,特開平7-328179号公報(乙 。)44。以下「乙44公報」という,特開平9-192296号公報 。)(乙45。以下「乙45公報」という )に効果音を継続的に発生させ 。
るスロットマシンが記載されているから,スロットマシンを含む遊技機の分野において,遊技者に対して期待を抱かせる遊技状態になったときに,そのような遊技状態であることをそれに応じた遊技音を継続的に出音し,あるいはその遊技状態の開始から終了までを表示するようにするなど何らかの形で継続的に遊技者に報知することが周知の技術にすぎないことは明らかである。そうすると,乙37発明の効果音について上記周知技術で用いられているようにそれを継続的に出音することには格別の困難性は認められないといえる。
)相違点2についてc乙18公報の【0007【0011】ないし【0013【00 】, 】,15【0016】には,スロットマシンではないものの 「遊技者に 】, ,よる遊技操作の有無を操作ハンドル10への触手の有無としてこれをタッチスイッチ17により検知し,操作ハンドル10への触手がなくタッチスイッチ17がオンすると,その一定時間経過後に,遊技場内の騒音を増大しないようスピーカー26から発生する音声の音量を小さくしたりスピーカー26を動作しないようにすることが好ましいデモンストレーションを実行させるようにした制御手段を備えたパチンコ機」が記載されている。これによれば,乙18公報には,少なくとも,遊技(遊技操作)がされていない状態を検出する状態検出手段(タッチスイッチ17)を備え,この状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたとき,その一定時間経過後に,音量を下げた出音態様(デモンストレーション)を実行する(遊技場内の騒音を増大しないようデモンストレーション中にスピーカー26から発生する音声の音量を小さくしたりスピーカー26を動作しないようにする)という技術が開示されているといえる。
乙20公報の【0029 【0033 ,乙19公報の【0067 , 】】 】【0102 ,乙21公報の【0035】ないし【0037【003 】 】,9【0040 ,特開平5-305173号公報(乙38。以下「乙 】,】38公報」という )の【0001【0070 ,特開平8-187 。】,】316号公報(乙39。以下「乙39公報」という )の【0069 ,。】【0070】の記載によれば,スロットマシン又はその他の遊技機の技術分野において,所定のタイミングを基準に遊技がされていない状態を検出する手段を備え,当該手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに,直ちに,あるいは,所定時間経過後に,その状態を表示や効果音等の形で報知する技術が周知の技術であることは明らかである。
, (。「」 また 特開平10-174741号公報 乙46 以下 乙46公報という )の【0006】ないし【0008【0026】ないし【0 。 】,032【0034】ないし【0036】の記載及び特開平10-2 】,16326号公報(乙47。以下「乙47公報」という )の【000。
】,【】,【】,【】,【】,【】 300050006001500260028ないし【0035】の記載によれば,乙46公報及び乙47公報には,次のような構成が記載されている。
「遊技者が遊技の途中でトイレ等のためにパチンコ遊技機2を離れた, , 状態になったとき その状態が設定時間B継続しているか否かを検出し設定時間B継続していると判断した場合には,予め設定した省電力モードに対応してパチンコ遊技機2の電気装置のうちすべて或いは一部への通電を遮断又は低電圧化するなどの通電制御を行い,当該電気装置の電力の消費を節約できるパチンコ機」さらに,遊技機の分野以外においても車載用音響器や電話着信音において,操作者等の不在時に出音を下げ調整するという技術は社会生活上一般的に存在している 特開平9-83278号公報 乙54 以下 乙 ( (。「54公報」という,特開平5-199307号公報(乙55。以下 。)「乙55公報」という。。))また,上記のような組合せをすることには何ら阻害要因がない。本件特許発明2において特別の遊技状態の遊技音を継続的に出音させることの技術的意義が,遊技者に現在の遊技状態が特別の遊技状態であることを確認させ,遊技者の期待感や興趣を高めることにある(本件明細書2【0005 )ことを考えれば,遊技者が離席した場合には,当該遊技 】音は意味を持たず,他方,周囲の者に対しては,スロットマシン遊技への関心を高める効果を奏することはあるにしても,常識的には煩わしい音であろうことは当業者ならずとも容易に推察されることである。
イ原告)相違点2に関して被告が指摘する各公報に開示された技術についてa被告は,本件特許発明2と乙37発明との相違点2(状態検出手段と音量低下動作)の構成は,乙18公報に記載されている旨主張する。
しかし,乙18発明は,遊技者が遊技機を占有していない状態におけるデモンストレーションに関する発明である。
乙18公報の【0016】の「その他,前記デモンストレーション中は,遊戯場内の騒音を増大しないように,スピーカー26の音量を小さくしたり,動作しないようにすることが好ましい 」との記載からは,。
それまで継続して出音される効果音の存在,さらには継続して出音される効果音を低下させる構成が開示されているということはできない。
また,乙18公報には,デモンストレーションの実行時に遊技者が弾球した打球が誤って入賞口に入らないようにタイマーによって遊技操作の有無を検出する技術( 0015 )とデモ中はスピーカーの音量を 【】小さくしたり動作させないようにしてもよいという事項( 0016 )【】が無関係に記載されているだけであって 「状態検出手段によって遊技 ,がされていない状態が検出されたとき,その一定時間経過後に,音量を下げる出音制御を行う」という技術は開示も示唆もない。
被告は 乙19ないし乙21公報 乙38公報及び乙39公報にス , , ,「ロットマシンその他の遊技機の技術分野において,所定のタイミングを基準に遊技がされていない状態を検出する手段を備え,当該手段によって遊技がされていない状態が検出されたとき,直ちに又は所定時間経過後にその状態を表示や効果音等の形で報知する技術」が開示されている旨主張する。
しかし,上記各公報に記載されている技術は,所定時間経過後にデモンストレーション処理を行う遊技機であって,特別の遊技状態における一定期間無遊技状態時に特別の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段については何ら開示も示唆もない。
被告は,乙46公報及び乙47公報に,遊技者が遊技台を離れた場合にはその状態を検知してスピーカの音量を下げる技術が開示されている旨主張する。
しかし,乙46公報及び乙47公報は,パチンコ機に関する技術である。パチンコ機においては,スロットマシンと異なり,遊技者が操作ハンドルから手を離した場合には遊技が当然に中止されるから,遊技者が離席したにもかかわらず遊技状態に対応する効果音が継続的に出音されるという状態は生じない。したがって,乙46公報及び乙47公報に,上記のような構成が開示されているという被告の主張は誤っている。
なお,被告は,乙54公報及び乙55公報を挙げて操作者の不在時に音量を下げる構成が社会生活上一般的に行われている技術である旨主張している。しかし,上記各文献にも「現在の遊技状態において無遊技状態のまま所定期間経過時に継続した効果音の音量を制御する」技術が開示されているとはいえない。
)被告の指摘する各公報を組み合わせることが容易といえるか。
b被告は,スロットマシンにおけるボーナスゲーム中の遊技音が,遊技者不在の状況においては煩わしい音であることは一般的な認識であるとして,効果音の音量を下げる周知技術と組み合せてボーナスゲーム中の遊技音を低下させることは当業者が容易に想到し得ることである旨主張する。
しかし,ボーナスゲーム中の遊技音は,周囲の遊技者の挑戦意欲をかきたてる効果を有するものであり,また,遊技場の経営者にとっても顧客の入店を誘引するための重要なツールであるから,煩わしい音であるという認識は一般的ではない。ボーナスゲーム中の遊技音を消音することにはむしろ阻害要因があるといえる。
本件特許発明2は,選曲の多様化,利用者層の性質の変化等から,利用者が仲間同士で話し込んだり,遊技音を堪能するために鳴らし続ける者が登場してきた一方で,遊技機の音響設備自体の性能は向上し,従来よりも際だって派手な効果音を用いるようになったという,本件特許2出願当時の環境の変化に基づいて初めて着想し得たものである。このことは,本件特許2出願前のスロットマシンに関する技術(乙16公報,乙37公報,乙40公報,乙43公報記載の技術)が,効果音を継続的に出音する技術を開示しながら,これを低下したり消音したりする技術を開示していないことからも明らかである。
( ) 本件特許発明2が特願2002-38047(乙14出願)に係る発明と3同一であり特許法39条2項によって特許を受けることができないものといえるか(争点9-3 。)ア被告乙14出願は,本件特許2と親出願を共通にする分割出願発明であり,本件特許発明2と同日に出願された。乙14出願に係る発明(以下「乙14発明」という )は,構成要件Cを除いて,特許請求の範囲の記載は本 。
特許発明2とほぼ同一である。乙14発明の構成要件Cは「遊技者による操作が所定期間されていない状態を検出する状態検出手段」であり,本件特許発明2の構成要件Cは「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段と」である。
「 」, 乙14発明の 遊技者による操作が…所定時間されていない状態 とは期間の始期からの所定期間内に遊技者による操作がないことを意味することは当然であり,遊技は1ゲームごとに行なわれるから,遊技者による操作がない状態が1ゲーム中に存することはなく(仮に1ゲームの途中で操作を止めても自動的に1ゲームは進行して終了する,遊技者の操作が。)ない状態は「前回のゲームの所定のタイミングから」開始することにならざるを得ない。したがって,両者の構成要件Cは実質的に同一であり,他の部分は同一であるから,両者は同一発明である。
したがって,本件特許発明2は,特許法39条2項に違反して特許された発明である。
イ原告被告は,本件特許発明2は,原出願を共通にする乙14出願の特許請求の範囲と同一であるから,本件特許発明2に係る特許は特許法39条2項に違反すると主張する。
しかし,そもそも,乙14発明は未だ審査中であり,今後内容が変動する可能性がある上,未だ特許されていないのであるから別出願発明についてダブルパテント(一発明一特許の原則)の問題は現時点では生じていない。なお,特許庁は,乙14発明について平成18年1月17日付け(発送日)の拒絶理由通知を出しているが,当該拒絶理由通知は特許法29条2項に関するものであり,同法39条2項を理由とするものではなかった(乙15 。)特許法39条2項同日出願に係る発明の同一性の判断は 「発明Aを,先願とし,発明Bを後願としたときに,後願発明Bが先願発明Aと同一…とされ,かつ発明Bを先願とし,発明Aを後願としたときに後願発明Aが先願発明Bと同一とされる場合」に同一発明と認定されるものであり(審査基準第U部第4章3.4( ) ,この判断基準に照らせば本件特許発明1 )2と乙14発明が同一発明と判断されることはない。本件特許発明2の構成要件Cにおいては「前回遊技における所定のタイミングから」として遊技がされていない時間の計時の始期が限定されているのに対し,乙14発明においては「遊技者による操作が所定期間されていない状態を検出する状態検出手段と」と記載されているのみであり,上記本件特許発明2の構成要件Cのような限定はない。そして,タイミング計時開始時について上記のような限定を付した公知技術周知技術は見当たらず,本件特許発明2と乙14発明が実質的に同一発明であるとされる理由もない。
本件特許発明2の構成要件Dにおいては,出音制御手段が作用する場合について現在の遊技状態が「遊技がされていない状態」である旨記載されているが,乙14発明においては出音制御手段が作用する場合について現「 」, 在の遊技状態を 所定の入賞に応じた遊技状態 とする旨記載されておりこの点においても異なる。そして 「所定の入賞態様に応じた遊技状態」 ,を遊技がされていない状態の検出対象とする公知技術周知技術は存在しないから,本件特許発明2と乙14発明が実質的に同一発明であるとされる理由もない。
( ) 本件特許発明2が特許法36条6項1号の要件を満たすものか(争点9-44 。)ア被告)本件明細書2に遊技音の出音によっては現在の遊技状態を遊技者に報a知することができる構成が記載されている必要があるか。
本件特許発明2の構成要件Bは「遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段」と規定しているから,報知された情報は,これによって複数種類ある遊技状態のうちのいずれの遊技状態であるかが区別されるものでなければならず,かつ,継続的に出音されるものでなければならない。
ところが,本件明細書2の【0092】の記載によれば,一般遊技中はスピーカ96から遊技開始音が出音されるにすぎず,現在の遊技状態を遊技者に報知するものではなく,また継続的に出音されるものでもない。また,BB内部当たり中とRB内部当たり中は,いずれの「スピーカ96からチャンス演出の効果音群」が出音されるため,いずれの遊技状態であるか出音手段によって区別することができない。したがって,本件明細書2には「遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に報知する出音手段」が開示されていない。
このように,本件特許発明2は特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されていないから特許法36条6項1号に違反し,同法123条1項4号により無効とされるべきである。
)本件明細書2に「遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」bが記載されているか。
本件特許発明2の構成要件Cは「前回遊技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段と 」と規定しているから 「状態検出手段」は「所定のタイミ ,,ングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態」を検出するものでなければならない。
ところが,本件明細書2の【0129【0141 ,図25,図2 】,】8の記載によれば,本件明細書2の詳細な説明に記載されている「状態検出手段」は 「今回ゲームの開始から (図25)又は「リール全停 , 」止から (図28)の経過時間を判断し,所定時間の経過を確認すると 」,「 」 直ちに音量低下を行うという処理であって遊技がされていない状態の検出をする構成は開示されていない。
このように,本件特許発明2は特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されていないから特許法36条6項1号に違反し,同法123条1項4号により無効とされるべきである。
イ原告)本件明細書2に遊技音の出音によっては現在の遊技状態を遊技者に報a知することができる構成が記載されている必要があるか。
被告は,本件明細書2に記載されている一般遊技中の出音が継続的ではなく,また,BB内部当たり中及びRB内部当たり中の出音は同じ出音であるから,遊技状態のすべてに個別に対応するような報知を行う出音手段が記載されていないとして,本件特許発明2は特許法36条6項, 。 1号 同法123条1項4号により無効とされるべきである旨主張するしかし,本件特許発明2の構成要件Bにいう「現在の遊技状態を遊技者に報知する」の意味は,すべての遊技状態に対応した報知が存在しなければならないことを意味するものではなく,各種遊技状態のうちのある特定の遊技状態について,これを報知する継続的な出音を行うことを意味するものである。このことは,本件明細書2の【0006】に「BBゲームやRBゲームが行われている最中,遊技者の中にはその遊技台を離れてしまう者があり,このような場合,…従来の遊技機ではスピーカから特別の遊技音が継続的に出音されたままの状態になる。…その遊技台の周囲で遊技をしている遊技者はその遊技音によってはなはだ迷惑をこうむる」と記載され,各種遊技状態の中でも特にRBゲーム,BBゲームの際に出音される遊技音について記載していることからも明らかである。
そして,本件明細書2の【0092】には 「現在の遊技状態がRB ,遊技状態である場合には,スピーカ96から…RB遊技演出の効果音群を出音させる「現在の遊技状態がBB遊技状態である場合には,ス 」,ピーカ96から遊技開始音およびBB遊技演出の効果音群を出音させる」と記載されているのであるから 「遊技音を継続的に出音して現在 ,の遊技状態を遊技者に報知する出音手段」についての記載がある。
)本件明細書に「遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」がb記載されているか。
被告は,本件明細書2には経過時間を判断し,所定時間の経過を確認すると直ちに音量低下を行う構成が記載されているにすぎず 「前回遊,技における所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」についての記載はないとして,本件特許発明2は特許法36条6項1号,同法123条1項4号により無効とされるべきである旨主張する。
しかし,本件明細書2【0049】には「サブCPU82,ROM83,RAM84およびこの非遊技状態監視用タイマ97は,遊技がされていない状態を検出する状態検出手段を構成している 」と記載されて。
おり 「遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」として,サ ,ブCPU82,ROM83,RAM84及び非遊技状態監視用タイマ97から構成される「状態検出手段」について記載している。
なお,上記「状態検出手段」は 「サブ制御基板62」上に存在して ,,「」 。 おりメイン制御基板61 からのコマンド送信を受けるものである例えば,本件明細書2の台1の実施例においては,遊技開始のコマンドが受信される毎に「非遊技状態監視用タイマ97」がセットされ【0126 ,定期的に割り込んでくる図25に示すサウンド音量調節処理の 】中でサブCPU82が「今回ゲームの開始から」の経過時間に基づく音量調整を行う。換言すれば,サブ制御基板62のサブCPU82がメインCPU64から遊技開始コマンドを受信するたびに音量調節を行うに,「」 当たっての非遊技状態監視用タイマ97の計時が更新され今回遊技という1単位遊技が「次回遊技」という次の1単位遊技に移行するのである。したがって,非遊技状態監視用タイマ97による計時が継続している限り,新たな遊技開始コマンドを受信していない,すなわち遊技がされていない状態を検出する「状態検出手段」について記載されているものである。
第2の実施例においては,前記のとおり,サブCPU82が「全停止」,「 」, コマンド を受信後遊技メダル投入コマンド を受信したか否かを前述の【図23】のフローに基づき繰り返し見ており( 0138,【】)遊技メダル投入コマンドが受信されていない場合には非遊技状態監視用タイマ97をセットして経過時間の計時を開始する。そして 「遊技メ,ダル投入コマンド」を受信したときには非遊技状態監視用タイマ97はクリアされる( 0142【図27】ステップ187 。即ち,第2 【】, )の実施例においては,遊技が開始されたことを示す契機であるメダル投入の有無を常時監視しておき,メダル投入が受信されない場合(=遊技がされていない状態)において非遊技状態監視用タイマ97による計時を開始し,メダル投入が受信された場合(=遊技がされている状態)で。, はタイマをクリアしてリセットするようになっているのである つまり非遊技状態監視用タイマ97が計時を継続している状態がすなわち遊技がされていない状態なのであり,第2実施例においては,メダル投入コマンドの検知と非遊技状態監視用タイマとの組み合わせにより 「前回,遊技における所定タイミング(=全停止状態)から所定時間経過したときに遊技(=遊技メダル投入)がされていない状態を検出する状態検出手段」を構築している。
10本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2により解消されるか(争点10 。)( ) 本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2によって解消されるか(争点110-1 。)ア原告)本件訂正特許発明2が乙16ないし乙22発明に基づき容易に想到でaきたといえるか。
本件訂正特許発明2は,本件特許発明2と同様,乙16ないし乙22発明に基づき容易に想到できるものではない(前記9( )イ 。
1 )このことは本件訂正特許発明2においては一層明らかである。
すなわち,本件訂正特許発明2は「状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに前記特別の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン」であることを要件とする。これに対し,乙18公報には「特別の遊技状態に応じた音量を下げる出音手段」は,開示されていない。
また,乙18公報は,スロットマシンではなくパチンコ機に関する技術文献である。パチンコ機においては,スロットマシンと異なり「特別の遊技状態」に対応する効果音が遊技者の操作がないまま継続的に出音され続ける状態は生じない(パチンコ機においては役物を引き当てた場合,遊技者がハンドル操作をしなくても時の経過とともに遊技機が勝手に遊技状態を進行させることが基本である。ただし,遊技者が操作して打球を遊技板面に送り込むことをしないと,入賞玉受け口は一定時間開いた後,開放時間が交信されることなく役物の作動が終了してしまう。
乙18公報【0011。このように,パチンコ機は遊技をせず報知 】)するとフィーバー状態そのものが消滅してしまうから 「特別の遊技が,行われている際」に遊技がされていない状態を検出したことを契機としてわざわざ「特別の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音手段」を組込むことは完全に不要で,そのような改変は当業者にとって不自然である。
したがって,当業者が乙16ないし22公報に記載された周知技術から本件訂正特許発明2を容易に想到することはできない。
)本件訂正特許発明2が乙37発明及び乙18発明に基づいて容易に想b到できたといえるか。
本件訂正特許発明2は,本件特許発明2と同様,乙37発明及び乙18発明に基づき容易に想到できるものではない(前記9( )イ 。
2 ))本件訂正特許発明2が乙14出願に係る発明と同一であり特許法39c条2項によって特許を受けることができないものといえるか本件訂正特許発明2は,本件特許発明2と同様,乙14発明と同一の発明ではない(前記9( )イ 。
3 )さらに,本件訂正請求2により乙14発明と本件訂正特許発明2との違いは一層明確になった。
すなわち,本件訂正特許発明2の構成要件Cにおいては「特別の遊技が行われる際に」との限定がされているのに対し,乙14発明においては「遊技者による操作が所定期間されていない状態を検出する状態検出手段と」と記載されているのみであり,上記本件訂正特許発明2の構成要件Cのような限定はない。
イ被告)本件訂正特許発明2が乙16ないし乙22発明に基づき容易に想到でaきたといえるか。
本件訂正特許発明2は,本件特許発明2と同様,乙16ないし22発明に基づき容易に想到できるものである(前記9( )ア 。
1 ))本件訂正特許発明2が乙37発明及び乙18発明に基づいて容易に想b到できたといえるか。
乙37発明のBBゲームは,本件訂正特許発明2の「特別の遊技」に当たる。この点を付け加えるほかは,本件特許発明2における主張(前記9( )ア)と同様である。
2()。 ( ) 被告物件が本件訂正特許発明2の技術的範囲に属するか 争点10-2 2ア原告本件訂正請求2により,本件訂正特許発明2においては,遊技態様のうち特定の遊技態様について遊技音が継続的に出音されていれば足り,すべての遊技態様において遊技音が継続的に出音されなければならないというものではないことが明らかになった。
よって,アシストゲーム及びRBゲームにおいて専用の音楽を継続的に出音する被告物件の構成2-bが本件訂正特許発明2の構成要件Bを充足することがより明確になった。
イ被告原告の主張は争う。
11 本件特許1の請求項10に係る発明についての原告の主張の追加が,民訴法143条4項の不当な請求の原因の変更,又は,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃方法に当たるか(争点11 。)( ) 原告1原告は,被告物件は,本件特許1の請求項10の技術的範囲を充足する旨の主張を追加する。
被告が,上記主張について不当な請求の原因の追加,又は,時機に後れた攻撃方法であるとして争っていることに鑑みれば,上記主張に対して被告から有意な反論がなされるとは思われず,上記主張の追加によって本件訴訟が遅延するとはいえない。原告に本件特許1の請求項10について別訴を強いなければならない合理的な理由は存在しない。本件特許1の請求項10は,同特許請求項3の従属項であり,両者の審理は大半において重なり合うはずであるから,上記主張の追加を認めることは訴訟経済に適う。
( ) 被告2本件特許1の請求項10に関する原告の主張の追加は,民訴法143条4項の不当な請求の原因の変更,又は,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃方法に当たるから,民訴法143条4項又は157条1項により却下されるべきである。
本件は,本来,平成18年11月28日の第4回口頭弁論期日において弁論が終結される見込みであったところ,原告が,同口頭弁論期日においてこれまで審理の対象となっていなかった本件特許1の請求項3を選択的請求原因として追加した。そこで,裁判所は,平成19年2月5日の第5回口頭弁論期日を指定し,同期日に口頭弁論を終結する予定であることを述べて,新しく追加された本件特許1の請求項3に基づく請求についての被告の反論,原告の再反論の準備書面の提出期限を定めた。上記のような経緯であったに,, , もかかわらず 原告は 平成19年2月5日の第5回口頭弁論期日において本件特許1の請求項10に関する新たな主張を追加提出したものである。本件特許1の請求項10に関する主張の追加を許せば,これに対する被告の反論,原告の再反論が必要となり,訴訟の完結が著しく遅滞することは明らかである。なお,原告は,本件特許1の請求項3についての主張を追加した時点で,既に本件特許1について請求項10を含むすべての請求項の訂正請求をしており,この時点で十分な検討は終了していたものというべきであるから,原告の本件特許1の請求項10の追加主張は,この点からも,訴訟の完結を遅延させる目的であるといわざるを得ない。
12損害の額等(争点12)( ) 原告1被告は,被告物件を平成15年11月以降,現在まで少なくとも単価35万円で60万台販売し,少なくとも2100億円を売り上げた。
, , 本件特許発明1 3及び10の実施に対して原告が受けるべき金銭の額は売上げの5%を下らない。よって,原告は,被告による本件特許権1の侵害に基づき,105億円の損害を受けた。
被告は,本件特許発明2の公開時においてその存在につき悪意で,被告物件を上記のとおり平成15年11月以降少なくとも2100億円売り上げた。
本件特許発明2の実施に対して原告が受けるべき金銭の額は,売上げの5%を下らない。よって,原告は,被告に対し,105億円の補償金を請求する。
( ) 被告2争う。
第4当裁判所の判断本件においては,第1に,被告物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するかについて判断し,第2に,被告物件が本件特許発明3の技術的範囲に属するかについて判断し,第3に,本件特許2が特許無効審判により無効とされるべきものかについて判断する。
1争点2-2(被告物件の構成1-g及び1-hの図5の各演出種類が本件特許発明1の構成要件G及びHを充足するか)について( ) 本件特許発明1の構成要件Gは 「前記入賞態様決定手段で決定された入1 ,賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段」と規定し,構成要件Hは 「前記報知情報が,配当のある複数の異なる入賞態様に ,共通して演出される報知態様による報知と,その後の,前記報知態様とは異なる報知態様による報知とからなる と規定している この構成要件Hの 前 」。「記報知情報」の「報知」については,次のとおり解すべきである。
ア本件明細書1には,構成要件G及びHの構成に関連して,次の記載がある(判決注・下線は,当裁判所が付加したものである。。))請求項1の作用効果の記載a【0012】本構成によれば,内部抽選によって決定された入賞態様が遊技の一連の流れの中で,その入賞態様に対応した報知情報によって遊技者に報知される。従って,遊技者は,遊技の進行に伴い報知される報知態様により,入賞態様を予測できる。すなわち,遊技者が操作を進めて行くに連れて内部抽選によってどのような入賞態様が決定されたかが判明して行き,この判明した入賞態様に起因して遊技者は熱くなる。
【0013】また,この報知は,全ての内部抽選結果に対して行われるのではなく,所定確率で行われる。従って,入賞態様は遊技者に報知される場合もあり,報知されない場合もある。…)第1の実施形態(判決注・図18参照) b【0063】また,入賞態様報知選択抽選確率テーブルは,上記の入賞態様決定手段で決定された8入賞態様の中の1入賞態様に応じて,遊技開始音の種類,連動表示態様の種類および停止表示態様の種類を組み合わせて得られる8組合せの中から1つの組合せを選択する報知態様選択手段を構成している。また,この報知態様選択手段,音発生手段,連動演出手段および停止演出手段は,スロットマシン遊技の一連の流れを通じて入賞態様を所定確率で遊技者に報知する報知手段を構成している。
【0064】本実施形態では図18に示すように8種類の各演出態様の組合せが8種類の各入賞態様に割り当てられている。
【0065】組合せ@は,遊技開始時に遊技開始音1が鳴り,各リール3〜5の停止最中に「リールランプ消灯なし」の連動表示態様が現れ,各リール3〜5の停止後に「リールランプ点滅なし」の停止表示態様が現れる組合せである。報知手段によるこの組合せ@の演出により,機械内部の抽選によって「ハズレ」当選フラグが立っていることが遊技者に報知される。
【0066】組合せAは,遊技開始時に遊技開始音1が鳴り,各リール3〜5の停止最中に「リールランプ消灯パターン1」の連動表示態様が現れ,各リール3〜5の停止後に「リールランプ点滅A」の停止表示態様が現れる組合せである。報知手段によるこの組合せAの演出により,内部抽選によって「再遊技」当選フラグが立っていることが遊技者に報知される。
【0067】組合せBは,遊技開始時に遊技開始音1が鳴り,各リール3〜5の停止最中に「リールランプ消灯パターン2」の連動表示態様が現れ,各リール3〜5の停止後に「リールランプ点滅B」の停止表示態様が現れる組合せである。報知手段によるこの組合せBの演出により,内部抽選によって「2枚チェリー」当選フラグが立っていることが遊技者に報知される。
【0068】組合せCは,遊技開始時に遊技開始音1が鳴り,各リール3〜5の停止最中に「リールランプ消灯パターン3」の連動表示態様が現れ,各リール3〜5の停止後に「リールランプ点滅C」の停止表示態様が現れる組合せである。報知手段によるこの組合せCの演出により,内部抽選によって「4枚チェリー」当選フラグが立っていることが遊技者に報知される。
【0069】以下同様にして組合せD〜組合せGの各演出により,内部抽選によって,各当選フラグが立っていることが遊技者に報知される。
同図に示す各演出態様の組合せは次の考えに基づいて作成されている。
【0070】遊技開始音の種類は図19(a)に示す考え方で選択される。つまり,音1は,一般遊技の際に高い頻度で出音され 「RB」当,選フラグや「BB」当選フラグといったボーナスフラグが立って行われるボーナスフラグ成立ゲームの際には低い頻度で出音される。また,音2は,一般遊技の際に低い頻度で出音され,ボーナスフラグ成立ゲームの際に高い頻度で出音される。遊技者は遊技開始音2を聞く聴覚効果により,内部抽選によってボーナスフラグが立った可能性があることを知ることが出来,ボーナスゲームへの期待感は高まる。
………【0120】本実施形態では上記のように遊技が進行して行くのに伴って入賞態様が判明して行く。つまり,スタートレバー15の操作によって各リール3〜5の回転が開始し,各停止ボタン16〜18の操作によってこの回転が各列毎に順次停止して行き,全てのリール3〜5の回転, 。 が停止するのに伴い 当選フラグの種類が遊技者に順次報知されて行く従って,遊技者が操作を進めて行くに連れて内部抽選によってどのような入賞態様が決定されたが徐々に報知されることになり,内部抽選結果を単に報知するのとは異なり,操作を進めれば進めるほど判明して行く入賞態様に起因して遊技者は熱くなる。この結果,スタートレバー15の操作や,各停止ボタン16〜18の操作は面白味を増すようになる。
イ上記( )及び( )のとおり,本件明細書1には,二つの報知態様(遊技開ab始音,リールランプの消灯パターンと点滅パターン)のそれぞれのパターンを組合せることにより,入賞態様が判別し得るもの,すなわち,最初の報知態様(遊技開始音)と,次の報知態様(リールランプの消灯パターンと点滅パターン)とによって,順次,入賞態様がわかるものが開示されている。
この本件明細書1の記載を参酌すれば 構成要件Hにおける 前段の 共 ,,「通して演出される報知態様による報知」とは,後段の「異なる報知態様による報知」と組み合せて入賞態様がわかるものでなければならず,これにより,遊技者に徐々に入賞態様をわからしめる効果を奏するものであり,単数又は複数の限定された入賞態様のうちいずれかの入賞態様に当選していることについて何らの情報ももたらさない演出(遊技音等 (例えば,)すべての入賞態様に共通して行われる1種類の演出(遊技音等 )は,本)件特許発明1の構成要件Hにおける「前記報知情報」の「報知」には当たらないというべきである。
ウまた,このことは,何よりも,特許請求の範囲の記載すなわち構成要件G及び構成要件H自体から明らかである。すなわち,構成要件Hの「前記報知情報」とは,構成要件Gの「入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報」であるから,この「報知情報」を報知するものであるところの,構成要件Hの前段の「共通して演出される報知態様による報知」と,後段の「前記報知態様とは異なる報知態様による報知」とは,いずれも「入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した(何らかの)報知情報」を含むものでなければならず,このような「入賞態様に対応した報知情報」を全く含まない単なる演出(遊技音等)は,構成要件Hにおける「前記報知情報」の「報知」とはいえないと解すべきである。
( ) 被告物件の構成1-g及び1-hについて2「」, 別紙被告物件目録の図5の演出種類1ないし3における ギター前兆音演出種類4における「白オーラ+オーラ音」及び演出種類5における「人影+出現音」は,他の報知態様と組み合わせて入賞態様がわかるもの,すなわち,遊技者に徐々に入賞態様をわからしめる報知態様による報知には当たらず,遊技者に単数又は複数の限定された入賞態様のうちいずれかの入賞態様に当選していることを報知し得ないもの,すなわち,入賞態様のいかんにかかわらず行われる効果音にすぎないから,本件特許発明1の構成要件Hでいう「前記報知情報」を「報知」するものには当たらない。具体的には,別紙物件目録の図5によれば,被告物件においては,演出種類1ないし5の内容は,次のアないしオの各)のとおりであり,これらは,各)のとおり,いa bずれも本件特許発明1の構成要件Hを充足しない。
ア演出種類1(通行人演出))演出種類1においては,装置画面上に通行人が表示されており,スタaートレバー操作により,リール帯が回転開始し,すべてのゲームにおいてリール帯の回転開始時に「ギター前兆音」が出音される。
遊技者が第1,第2,第3のストップボタンを押し下げる際のいずれかのタイミングで,当該ゲームにおける入賞態様に応じて,当該通行人の着ているシャツの色が様々に表示される。これを遊技者から見ると,通行人のシャツが黄色の場合は当該ゲームの入賞態様はベル(当選番号), (), 3通行人のシャツが緑色の場合には入賞態様はスイカ 当選番号2通行人のシャツが赤色の場合は入賞態様はチェリー(当選番号1 ,通)(), 行人のシャツが青色の場合は入賞態様はリプレイ 当選番号4 であり通行人のシャツが白色の場合の入賞態様は,ハズレ(当選番号0 ,ス)イカ(当選番号2 ,ベル(当選番号3 ,リプレイ(当選番号4)及 ))びJAC(当選番号5)のいずれかである。
)原告は,演出種類1における「ギター前兆音」が構成要件Hにおけるb「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」に当たり,第1,第2及び第3ストップボタンを押し下げる際の通行人の「 」 シャツの色の画面表示が 前記報知態様とは異なる報知態様による報知に当たると主張する。
しかし,演出種類1において,リールの回転開始時に出音される「ギター前兆音」は,上記のとおり,ハズレも含めた各入賞態様のすべての場合において出音される効果音であるから,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものである。これに対し,通行人のシャツの色のうち,黄色,緑,赤,青は,単独で特定の入賞態様を意味するものである。したがって,演出種類1における「ギター前兆音」は,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものであるから,他の報知態様と組み合わせて入賞態様がわかるものには当たらず,構成要件Hにおける「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」するものには該当しない(上記「ギター前兆音」は,構成要件Hの「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される」効果音であるということはできても,ハズレも含めたすべての入賞態様に共通して演出される効果音にすぎず,入賞態様について何らの情報ももたらさないものであるから そもそも構成要件Hにおける 前記報知情報 の 報 , 「」 「知」には当たらない。。)イ演出種類2(バット演出))演出種類2においては,装置画面上に登場人物の一人であるバットが a表示されており,遊技者がスタートレバーを操作する際,あるいは,その後,第1,第3ストップボタンを押し下げる際のいずれかのタイミングで,当該ゲームにおける入賞態様に応じて,バットの所持品が様々に表示される。これを遊技者から見ると,バットの所持品が黄色い缶(1) (), 個の場合と3個の場合がある の場合には入賞態様はベル 当選番号3バットの所持品が緑色のリンゴ(1個の場合と3個の場合がある)の場合は入賞態様がスイカ 当選番号2バットの所持品が赤いリンゴ 1 (), (個の場合と3個の場合がある)の場合は入賞態様がチェリー(当選番号1 ,バットの所持品が青い缶(1個の場合と3個の場合がある)の場 )合は入賞態様がリプレイ(当選番号4)であり,バットの所持品が空き缶1個の場合は,入賞態様がハズレ(当選番号0 ,スイカ(同2 ,))ベル(同3 ,リプレイ(同4)あるいはJAC(同5)のいずれかで )ある。
そして,装置画面上にバットの所持品が表示されるタイミングが,第1及び第3ストップボタンを押し下げるタイミングである場合には,入賞態様いかんにかかわらず,リールが回転を開始する際に「ギター前兆音」が出音される。
)原告は,演出種類2における,リール帯の回転開始とともに出音されbる「ギター前兆音」が構成要件Hにおける「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」に当たり,第1,第3ストップボタンを押し下げる際の黄色ないし青色の缶や緑ないし赤のリンゴ等の画面表示が「前記報知態様とは異なる報知態様による報知」に当たると主張する。
しかし,演出種類2における「ギター前兆音」は,前記のとおり,画面上にバットの所持品が表示されるタイミングが第1,第3ストップボタンを押し下げる際である場合において出音されるものであるが,ハズレも含めた各入賞態様のすべての場合において,リール帯の回転開始時に出音されるものである。このため,遊技者は,演出種類2において,リール帯の回転開始時に「ギター前兆音」が出音されたとしても,当該ゲームにおいて当選した入賞態様について何らの情報も得られないのである。これに対し,その後のバットの所持品の缶やリンゴが黄色,緑,赤,青の場合は,特定の入賞態様を意味するものである。
したがって,演出種類2における「ギター前兆音」は,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものであるから,他の報知態様と組合せて入賞態様がわかるものには当たらず,構成要件Hにおける「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」するものには該当しない(前記「ギター前兆音」は,構成要件Hの「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される」効果音であるということはできても,ハズレも含めたすべての入賞態様に共通して演出される効果音にすぎず,入賞態様について何らの情報ももたらさないものであるから,そもそも構成要件Hにおける「前記報知情報」の「報知」には当たらない。。)ウ演出種類3(リン演出))演出種類3においては,装置画面上に登場人物の一人であるリンが表a示されており,遊技者がスタートレバーを操作する際,あるいは,その後,第1,第2ないし第3ストップボタンを押し下げる際のいずれかのタイミングで,当該ゲームにおける入賞態様に応じて,リンの動作が様々に表示される。これを遊技者から見ると,リンの動作が「転ぶ」の場合には入賞態様はベル(当選番号3 ,スイカ(当選番号2 ,リプレ ))イ(当選番号4)及びハズレ(当選番号0)であり,リンの動作が「回転転がる」及び「躓く」の場合は,いずれも入賞態様がベル(当選番号3 ,スイカ(当選番号2 ,リプレイ(当選番号4 ,JAC(当選番 )))号5 ,及びハズレ(当選番号0)であり,リンの動作が「しゃがみこ )む」の場合はチェリー(当選番号1)も含めたすべての入賞態様のいずれかである。
そして,装置画面上にリンの動作が表示されるタイミングが第1,第2,第3ストップボタンを押し下げるタイミングである場合には,入賞「」。 態様にかかわらずリール帯回転開始時に ギター前兆音 が出音される)原告は,演出種類3における,リール帯の回転開始とともに出音されbる「ギター前兆音」が構成要件Hにおける「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」に当たり,第1,第2,第3ストップボタンを押し下げる際のリンの「転ぶ「ころがる「しゃが 」,」,みこむ「躓く」等の画面表示が「前記報知態様とは異なる報知態様 」,による報知」に当たると主張する。
しかし,演出種類3における「ギター前兆音」は,前記のとおり,画面上にリンの挙動が表示されるタイミングが第1ないし第3ストップボタン押し下げ時である場合において出音されるものであるが,上記のとおり,ハズレも含めた各入賞態様のすべての場合において,リール帯の回転開始時に出音されるものである。このため,遊技者は,演出種類3において,リール帯の回転開始時に「ギター前兆音」が出音されたとしても,その段階では,当該ゲームにおいて当選した入賞態様について何らの情報も得られないのである。
したがって,演出種類3における「ギター前兆音」は,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものであるから,他の報知態様と組合せて入賞態様がわかるものには当たらず,構成要件Hにおける「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」するものには該当しない(前記「ギター前兆音」は,構成要件Hの「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される」効果音であるということはできても,ハズレも含めたすべての入賞態様に共通して演出される効果音にすぎず,入賞態様について何らの情報ももたらさないものであるから,そもそも構成要件Hにおける「前記報知情報」の「報知」には当たらない。。)エ演出種類4(オーラ演出))演出種類4においては,装置画面上にオーラが表示されており,すべaてのゲームにおいて,スタートレバー操作時に「オーラ音」が,リール帯の回転開始時には「通常開始音」が出音される。
, , 演出種類4においては 遊技者がスタートレバーを操作する際は常に第1,第2,第3ストップボタンを押し下げる際はそのいずれかのタイミングで,当該ゲームにおける入賞態様に応じて,装置画面において,オーラの色が様々に表示される。これを遊技者から見ると,オーラの色が黄色の場合は当該ゲームの入賞態様はベル(当選番号3 ,オーラの)色が緑色の場合は入賞態様はスイカ(当選番号2 ,オーラの色が赤色)の場合は入賞態様はチェリー(当選番号1 ,オーラの色が青色の場合 )は入賞態様はリプレイ(当選番号4)である。
そして,スタートレバーを操作するタイミングにおいては,装置画面,「」, 上に上記色付きのオーラが表示されオーラ音 が出音される場合と白色のオーラが表示され 「オーラ音」が出音される場合とがある。白 ,色オーラが表示され 「オーラ音」が出音される場合は,それだけでは ,(,,, いずれの入賞態様かは不明である 入賞態様がベル スイカ チェリーリプレイの場合のみならず,JACである場合及びハズレである場合も白色のオーラが表示され,オーラ音が出音される。。))原告は 演出種類4における スタートレバー操作時に出音される 白 b ,, 「オーラ+オーラ音」が構成要件Hにおける「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」に当たり,第1,第2,第3ストップボタンを押し下げる際の黄色,緑,赤,青色のオーラの画面表示「 」。 が 前記報知態様とは異なる報知態様による報知 に当たると主張するしかし,演出種類4における「白オーラ+オーラ音」は,前記のとお,( , , , り 一定の場合 スタートレバーを操作するタイミングで黄色 緑 赤青色のオーラがでない場合)において,ハズレも含めた各入賞態様のすべての場合について,スタートレバー操作時に表示され,出音されるものである。このため,遊技者は,演出種類4において,スタートレバーの操作時に「白オーラ+オーラ音」が表示され出音されたとしても当該ゲームにおいて当選した入賞態様について何らの情報も得られない。
したがって,演出種類4における「白オーラ+オーラ音」は,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものであるから,他の報知態様と組合せて入賞態様がわかるものには当たらず,構成要件Hにおける「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知」(「」 態様による報知 するものには該当しない 前記 白オーラ+オーラ音は,構成要件Hの「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される」演出(効果音)であるということはできても,ハズレも含めたすべての入賞態様に共通して演出される演出(効果音)にすぎず,入賞態様について何らの情報ももたらさないものであるから,そもそも構成要件Hにおける「前記報知情報」の「報知」には当たらない。。)オ演出種類5(影(敵)演出))演出種類5においては,スタートレバー操作時に,すべてのゲームにaおいて,装置画面上に人影が表示されるとともに「出現音」が出音される。
演出態様5においては,遊技者が第1,第2,第3ストップボタンを押し下げる際のすべてのタイミングで,装置画面上にザコキャラクターが「出現」し 「突かれる「倒れる」動作を示しながら,当該ゲーム ,」,, 。 における入賞態様に応じて ザコキャラクターの色が様々に表示されるこれを遊技者から見ると,ザコキャラクターの色が黄色の場合は,当該ゲームの入賞態様はベル(当選番号3 ,ザコキャラクターの色が緑色 )の場合は,入賞態様はスイカ(当選番号2 ,ザコキャラクターの色が )赤色の場合には,入賞態様はチェリー(当選番号1 ,ザコキャラクタ)ーの色が青色の場合には,入賞態様がリプレイ(当選番号4 ,ザコキ)ャラクターの色が白色の場合には,入賞態様はベル(当選番号3 ,ス)イカ(当選番号2 ,リプレイ(当選番号4 ,JAC(当選番号5 , )))及び,ハズレ(当選番号0)のいずれかである。
)原告は 演出種類5における スタートレバー操作時の演出である 人b ,, 「影+出現音」が構成要件Hにおける「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」に当たり,第1,第2,第3ストップボタンを押し下げる際のザコの色の黄色 緑 赤 青色の画面表示が 前 , , ,「記報知態様とは異なる報知態様による報知」に当たると主張する。
しかし,演出種類5における「人影+出現音」は,前記のとおり,ハズレも含めた各入賞態様のすべての場合について,スタートレバー操作時に表示され,出音されるものである。このため,遊技者は,演出種類5において,スタートレバーの操作時に「人影+出現音」が表示され出音されたとしても,当該ゲームにおいて当選した入賞態様について何らの情報も得られない。
したがって,演出種類5における「人影+出現音」は,ハズレも含めた単数又は限定された複数のいずれの入賞態様であるかについて,何らの情報ももたらさないものであるから,他の報知態様と組合せて入賞態様がわかるものには当たらず,構成要件Hにおける「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」するものには該当しない(前記「人影+出現音」は,構成要件Hの 配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される 演出 効 「 」(果音)であるということはできても,ハズレも含めたすべての入賞態様に共通して演出される演出(効果音)にすぎず,入賞態様について何らの情報ももたらさないものであるから そもそも構成要件Hにおける 前 , 「記報知情報」の「報知」には当たらない。。)( ) 小括3被告物件の構成1-g及び1-hの図5の演出種類1ないし5には,本件特許発明1の構成要件Hの「前記報知情報」を「配当のある複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知 するものが存在しない 図 」(5において,演出種類1ないし5の「ギター前兆音「白オーラ+オーラ」,音「人影+出現音」以外のものについてみても,遊技者に入賞態様を報 」,知するものであって,かつ,複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知は認められない )から,被告物件は,本件特許発明1の構成要件Hを充 。
足せず,本件特許発明1の技術的範囲に属しない。
2争点5-2(被告物件の構成3-g及び3-hの図5の各演出種類が本件特許発明3の構成要件G及びHを充足するか)について, , 前記1と同様に 被告物件の構成3-g及び3-hの図5の各演出種類には本件特許発明3の構成要件Hの「前記報知情報」を「複数の異なる入賞態様に共通して演出される報知態様による報知」するものが存在しないから,被告物件は,本件特許発明3の構成要件Hを充足しない。すなわち,本件特許1の請求項3は,請求項1の従属項であるから(甲2,3 ,被告物件が本件特許発 )明1の技術的範囲に属しない以上,本件特許発明3の技術的範囲に属しないものである。
3争点9-2(本件特許発明2が特開平11-178990号公報(乙37)及び特開平7-51442号公報(乙18)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか)について( ) 乙37発明について1ア乙37公報には,次のような記載がある(乙37 。))【0085】a…BB(ビッグボーナス ,RB(レギュラーボーナス ,及びSB ) )(シングルボーナス ,並びにその他の遊技者にとって比較的利益の小 )(),,,, さい賞 小物 であるプラム ベル オレンジ 及びチェリーについて制御部50において,内部当たりか否かの抽選を行う。抽選は,乱数サンプリングを実行し,得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして,当選か否か,及びその賞の種類等を判定することにより行う。…)【0091】b…制御部50は,…音声出力部52に指示して…スピーカ20からBBの効果音を発生させ,BBゲームをスタートさせる。
)【0092】c制御部50は,所定の遊技回数を消化すると,…スピーカ20のBB効果音を停止させ,BBを終了する。
)【0095】d…制御部50は…スピーカ20からMGの効果音を発生させ,MG期間であることが遊技者に示される。
イ上記各記載によれば,乙37公報には 「乱数抽選によって入賞態様を ,決定する入賞態様決定手段と,遊技音(BB効果音)を継続的に出音して現在の遊技状態を遊技者に示す出音手段とを備えて構成されるスロットマシン」が開示されているといえる(乙37発明 。)ウ本件特許発明2と乙37発明の一致点及び相違点, , 本件特許発明2と乙37発明は いずれも本件特許発明2の構成要件AB及びEに該当する構成を有する点で一致している。前記ア)及び )のbc記載によれば,乙37発明のBB効果音は,BBゲームがスタートしてから所定の遊技回数を消化するまで,継続的に出音されているものと認められる。
本件特許発明2と乙37発明は,次の点で相違する。
)本件特許発明2においては前回遊技における所定のタイミングから所a定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段を有しているのに対し,乙37発明はこのような状態検出手段を有していない点(相違点1))本件特許発明2においては遊技がされていない状態が検出されたときbに現在の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げる出音制御手段を有しているのに対し,乙37発明はこのような出音制御手段を有していない点(相違点2)( ) 相違点1及び相違点2について2ア乙18公報には,次のような記載がある(乙18 。))【0007】a…中央処理装置CPUには,情報検出回路14が接続している。前記情報検出回路14は,その入力装置として…遊戯者による遊戯操作の有(), 無を検知するタッチスイッチ 判定スイッチ 17とが接続されており各センサーからの入力信号を…前記中央処理装置CPUに送る。
)【0009】b…中央処理装置CPUの出力側には,表示駆動回路(可変表示手段)22と,スピーカー駆動回路23と,ソレノイド駆動回路24とが夫々。 ,, 接続されている …スピーカー駆動回路23は …音制御信号に基づきパチンコ機1裏面に設けられたスピーカー26を鳴らす。
)【0011】c…前記スピーカー26は,前記入賞の態様に対応して,例えば前記LED表示器3a,b,3cの循環駆動時に音声を発生する。
)【0012】d…前記ROMには,前記タッチスイッチ17により,遊戯者による遊技操作のない場合にのみ実行するデモンストレーションプログラムが書き込まれている。ここでタッチスイッチ17は,遊戯者が操作ハンドル10を触手している場合には,オフとなり,開放するとオンとなるものである。
)【0015】e…操作ハンドル10を離すと同時に,デモンストレーションが作動すると,まだ遊技板面2を転球している打球が,デモンストレーションの実行により開放した入賞玉受口器5に入る恐れがある。このため,タイマーをステップ1の前に介装して,一定時間経過後にのみデモンストレーションを実行するようにする。
)【0016】f…前記デモンストレーション中は,遊戯場内の騒音を増大しないように,スピーカー26の音量を小さくしたり,動作しないようにすることが好ましい。
イ上記各記載によれば,乙18公報には 「入賞態様に応じて出音するス ,ピーカー26と,タッチスイッチ17がオンし,遊技者による遊技操作がない状態が検知されてから,タイマーにより所定時間経過したことを検出する手段を備え,所定時間経過したことが検出されたときにデモンストレーションを実行し,デモンストレーション中にスピーカー26の音量を小さくするパチンコ機 (乙18発明)が開示されている。 」ウ乙37発明に乙18公報に開示された上記技術を適用して相違点2の構成とすることが容易といえるか。
乙18発明は,遊技がなされていない状態において出音されるデモンストレーション中の音について,遊技場内の騒音を増大しないように,その音量を小さくするというものである。そして,遊技場内の騒音を増大しないように,遊技中ではない装置について,その音量を小さくするということは,この種の遊技機において通常考えられる課題であるから,乙37発明における遊技音についても,遊技がなされていない状態において出音されている場合に,乙18発明の構成を適用して遊技場内の騒音を増大しないようにその音量を小さくすることは,本件特許発明2出願当時,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,乙37発明において継続的に出音されるのは遊技音であり,乙18発明で音量を小さくするとされているのはデモンストレーション時の音であるという点で相違する。しかし,遊技がなされていない状態において出音される遊技音とデモンストレーション音とに実質的な差異はなく,いずれも遊技場内の騒音を増大させるものであることに変わりはないから,乙37発明に乙18発明の構成を適用して,遊技がなされていない場合に継続的に出音される遊技音の音量を小さくすることを想到することは当業者にとって容易であるということができる。
原告は,遊技音は周囲の遊技者の挑戦意欲をかきたて,顧客の入店を誘引するための重要なツールであるから,本件特許発明2出願当時,煩わしい音であるとは認識されておらず,遊技がなされていない場合に遊技音の音量を小さくする構成にすることは容易に想到できず,むしろ阻害要因がある旨主張する。しかし,遊技店内における遊技音やデモンストレーション音の音量をどの程度の音量にするかは,周囲の遊技者の挑戦意欲をかきたてる効果や,顧客の入店を誘引する効果等を考慮して,遊技場経営者等が適宜判断する事項であるから,遊技音の音量を小さくすることに阻害要因があるとの原告の主張は採用し得ない。
なお,乙37発明はスロットマシンに関する発明であり,乙18発明はパチンコ機に関する発明である。しかし,遊技場内の騒音を増大しないように遊技音ないしデモンストレーション音の音量を小さくするという構成を採用する点において,スロットマシンとパチンコ機との相違が影響するとは認められないから,スロットマシンの発明である乙37発明にパチンコ機の発明である乙18発明を組み合わせることは容易というべきである。
エ乙37発明に乙18発明を適用して相違点1の構成とすることが容易といえるか。
遊技機の遊技音を小さくする場合に,遊技がされていない状態を確実に検出するために,遊技がされていない状態から所定時間経過後に音量を小さくするという構成はむしろ一般的な手法であるといえるから,乙37発明において乙18発明の遊技音の音量を小さくする構成を適用する場合に,同じく乙18公報に記載されている遊技がされていない状態から所定時間経過したことを検出する構成を採用することは,当業者が適宜なし得ることである。
なお,相違点1における本件特許発明2の構成は 「前回遊技における,所定のタイミングから所定時間経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段」であるところ,乙18発明は 「遊技者による遊,技操作がない状態が検知されてから,タイマーにより所定時間経過したとことを検出する技術」であって,所定時間の開始タイミングが「前回遊技における所定のタイミング」ではない点 「所定時間経過した後に遊技が ,されていない状態を検出」するものではない点で相違点1における本件特許発明2の構成と異なる。
しかし,所定時間の開始タイミングが「前回遊技における所定のタイミング」ではない点については,所定時間の開始タイミングをどのタイミングとするかは当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項であって,何ら技術的な困難性はなく,これを「前回遊技における所定のタイミング」とすることに特段の技術的意義は認められない。乙18公報に記載された技術を用いてかかる構成を実現することは容易である。
また 「所定時間経過した後に遊技がされていない状態を検出」してい ,ない点については,乙18発明は,遊技者が操作ハンドルを離してから所定時間経過した後であって,かつ,遊技者が遊技操作していない状態においてデモンストレーションを実行することを目的とした技術であるから,遊技者による遊技操作がない状態が検知されてから,タイマーにより所定時間経過したことを検出し,さらにその後に,タッチスイッチにより遊技者による遊技操作がない状態であるか否かを検知してから音量を下げることも当業者が適宜設定し得る構成であるといえる。乙18発明を用いてかかる構成を実現することは容易である。
( ) 小括3本件特許発明2は,乙37発明に乙18発明を組み合わせることにより,当業者が容易に想到することができたものといえるから,本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる(特許法29条2項,123条1項2号 。よって原告は,被告に対して本件特許権2を行使する )ことができない(同法104条の3第1項 。)4本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2によって解消されるか(争点10-1 。)原告は,本件特許発明2について,本件訂正部分2を追加する本件訂正請求2を行っている。本件訂正請求2は,本件特許発明2の「遊技機」を「スロットマシン」に限定し 「遊技音」を「特別な遊技状態に応じた遊技音」に限定 ,する内容である。そこで,本件訂正請求2によって,上記結論に影響があるか否かについて検討する。
前記のとおり,遊技場内の騒音を増大しないように遊技音ないしデモンストレーション音の音量を小さくするという構成を採用する点において,スロットマシンとパチンコ機との相違が影響するとは認められない。したがって,本件特許発明2の「遊技機」を「スロットマシン」に限定するとの訂正は,前記3の認定判断に何ら影響を与えない。
原告は,パチンコ機においては,スロットマシンと異なり 「特別の遊技状,態」に対応する効果音が遊技者の操作がないまま継続的に出音され続けることはないから,その音量を小さくするという構成を採用することはない旨主張する。しかし,乙37発明のスロットマシンにおいて,パチンコ機のデモンストレーション音に関する乙18発明を適用して遊技音を小さくする構成を採用することが容易であることは前記のとおりである。遊技音が特別の遊技状態に応じた遊技音である場合にも,この結論に影響はない。
また,特別な遊技状態に応じた遊技音もデモンストレーション音も,遊技がなされていない状態において出音され得るものであり,かつ,遊技場内の騒音を増大させるものであることに変わりはなく,遊技がなされていない場合に継続的に出音される特別な遊技状態に応じた遊技音の音量を小さくすることを想到することが容易でないということはできない。
したがって,本件特許発明2の無効理由が本件訂正請求2によって解消されるとはいえない。
5争点11(本件特許1の請求項10に係る発明についての原告の主張の追加が,民訴法143条4項の不当な請求の原因の変更,又は,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃方法に当たるか ,及び,本件特許1の請求項10に基 )づく主張の当否について( ) 原告は,平成19年1月26日付けで本件特許1の請求項10の発明に係 1る特許権の侵害の主張を追加する旨の準備書面を提出し,平成19年2月5日の第5回口頭弁論期日にこれを陳述した。
原告の上記追加前の主張は,本件特許1の請求項1及び請求項3の発明に係る特許権の侵害並びに本件特許2の請求項1の発明に係る特許権の侵害に基づく損害賠償請求であるから,前記追加主張は請求原因の追加的変更に当たるというべきである。被告は,原告の上記主張の追加は,民訴法143条4項の不当な請求の原因の変更,又は,民訴法157条1項の時機に後れた攻撃方法に当たる旨主張するので,この点について判断する。
( ) 一件記録によれば,本件訴訟の経緯について,次の事実が認められる。
2原告は,平成17年12月27日に本件の訴えを提起し,その訴状において,被告物件が本件特許1の請求項1の発明に係る特許権及び本件特許2の請求項1に係る特許権を侵害するとして損害賠償を求めた。その後,平成18年2月7日に第1回口頭弁論期日が実施され,平成18年11月28日の第4回口頭弁論期日までに,被告物件が本件特許1の請求項1及び本件特許2の請求項1の各特許発明技術的範囲に属するか,上記各請求項に係る特許が無効理由を有するかについて,原告から9通,被告から10通の準備書面が提出され,主張立証はほぼ尽くされた。
しかし,原告は,平成18年11月16日付けで,被告物件の製造,販売が本件特許1の請求項3の発明に係る特許権を侵害する旨の主張を新たに追加する旨の準備書面を提出し,同年11月28日の第4回口頭弁論期日において陳述した。また,被告は,同期日において,従前の主張について新たな乙号証を提出し,これを引用した上で補充の主張を行った。
同口頭弁論期日においては,原告が追加した主張(本件特許1の請求項3の特許権侵害を請求原因とする主張)について,被告が平成18年12月22日までに反論の準備書面を提出し,原告が平成19年1月26日までに再反論の準備書面を提出することが合意され,また,従前の請求原因については,原告が平成18年12月22日までに被告の上記補充主張に対する反論の準備書面を提出することが合意されて,同口頭弁論期日から約2か月後の平成19年2月5日に第5回口頭弁論期日が指定された。この際,原告が,さらに新たな主張を追加する予定がある旨述べた事実は認められない。
以上のような経緯において,原告は,平成19年1月26日付けで,本件特許1の請求項10の発明に係る特許権を侵害する旨の新たな主張を追加する旨の準備書面を提出し,平成19年2月5日の第5回口頭弁論期日においてこれを陳述し,被告はこれについて時機に後れた攻撃方法であるとの異議を述べた。
( ) 以上の本件訴訟の経緯に鑑みると,本件特許1の請求項10の発明に係る3特許権を侵害する旨の主張の追加は,原告が当初訴状で主張していた訴訟物についての当事者双方の攻撃防御がほぼ尽きた後,本件特許1の請求項3の発明に係る特許権を侵害する旨の新たな主張を追加し,さらに当該追加された訴訟物についての当事者双方の攻撃防御がほぼ尽きた後に,突如として追加されたものである。このような場合,通常は,本件特許1の請求項10の発明に係る特許権を侵害する旨の請求原因の追加主張によって著しく訴訟手続を遅延させることになるものである。
しかし,本件特許1の請求項10は,本件特許1の請求項1の従属項であるから(甲2,3により明らかである,被告物件が本件特許発明1の技 。)術的範囲に属しないことは,前記認定判断のとおりである以上,被告物件が本件特許発明10の技術的範囲に属しないことは,請求項10自体から明らかである。したがって,被告物件が本件特許発明10に係る特許権を侵害するか否かの審理は,既に被告物件が本件特許発明1の技術的範囲に属するか否かについての審理が終了している以上,これ以上必要ないのであるから,原告の本件特許1の請求項10の特許権侵害を理由とする請求原因の追加は,本件においては,民訴法143条1項ただし書の著しく訴訟手続を遅滞させる請求の原因の追加的変更であるとか,民訴法157条1項の訴訟の完結を遅延させるものであるということはできず,また,その必要もない。
( ) 上記のとおり,原告の本件特許発明10に係る特許権に基づく損害賠償請4求は,被告物件が本件特許発明1の技術的範囲に属しないものである以上,被告物件が本件特許発明10の技術的範囲に属しないものであることも明らかであるから,その請求に理由がないことが明らかである。
6原告の弁論再開申請について原告は,本件の弁論終結後,平成19年5月9日付け準備書面及び甲39,40の写しを提出し,平成19年2月9日付けで,本件特許2の請求項1について訂正審判を申し立てたこと,及び,これにより近々訂正審決がなされる予定であるので,弁論の再開を希望する旨の上申をしている。
確かに,この訂正審判の申立ては,本件特許2の無効の抗弁に対する再抗弁として主張することが可能な事由ではある(平成19年3月6日の口頭弁論期日においても主張し得る事由ではあった。しかし,この訂正審判の申立て 。)は,本件訂正請求2に加え,特許請求の範囲に,@「前記所定のタイミングから計時を開始するタイマが所定時間計時する間に遊技媒体が投入されないときに,遊技がされていない状態であることを検出する状態検出手段 ,A「遊技」媒体が投入されると前記特別の遊技音を復して出音させる」を追加するものであるにすぎず,これにより前記無効理由が解消されるとはいえないと思料される。
すなわち,@「前記所定のタイミングから計時を開始するタイマが所定時間計時する間に遊技媒体が投入されないときに,遊技がされていない状態であることを検出する状態検出手段」とは,スロットマシンのゲーム継続中のある時点からタイマが動きだし,それから一定時間,遊技メダルがスロットマシンに投入されなければ,ゲームをしていないと判断することをいい,A「遊技媒体が投入されると前記特別の遊技音を復して出音させる」とは,遊技メダルがスロットマシンに投入された時点でゲームをすると判断して,音量を元の大きさに復することをいうのであるから,これらの訂正は,遊技メダルの投入が一定時間なければゲームをしていないと判断する,あるいは,遊技メダルを投入した時点でゲームをすると判断する点を強調しただけにすぎないものである(スロットマシンがゲーム中か否かの判断要素は,遊技メダル投入かスタートレバー操作が一般的であると考えられるが,この訂正は,この判断要素を遊技メダル投入に限定したものにすぎない。結局のところ,この訂正後の本件訂正 。)特許発明2も,乙18発明も,ゲームの進行に必要な動作が一定時間ない場合に,ゲームを行っていないと判断し,その音量を下げる点に差異はなく,前記のとおり,スロットマシンとパチンコ機とは互いに技術の転用が可能なものであることなど,上記3,4で述べたことを考えると,上記訂正後の本件訂正特許発明2も,前記の乙37発明及び乙18発明等から容易に想到し得たものと思料される。したがって,本件においては,弁論を再開する必要性は認められない。
第5結論以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
追加
(別紙)被告物件目録下記図に示し,下記構造及び作動を有する「北斗の拳」との名称のパチスロ機。,第1図の説明図1被告物件の正面図図2被告物件のリール帯図3配当図図4制御回路を示すブロック図図5演出態様一覧表図6当選確率テーブル図7演出パターンテーブル図8停止テーブル対応表図9「0-1」〜「0-7」の停止テーブル図10全体の作動を示すフローチャート図11演出パターン番号決定のフローチャート図12具体的演出態様決定のフローチャート図13遊技待機処理を示すフローチャート第2被告物件の構造1パチスロ機(パチスロ型遊技機,回胴式遊技機等とも称する)である。
2キャビネット1の正面には,各々,上,中,下の3つの位置に全7種,21並びの図柄を可変表示及び停止させる矩形上の表示窓2を設けると共に,該表示窓2中においては,中段M,上段U,下段B,右下がりD,右上がりPの合計5本が入賞ラインとなる。
前記21並び7種の図柄は,キャビネット1の内部に配置した3本のリール3L,3C,3Rの円周面に描かれている。
3キャビネット1の正面中央部には,向かって左側から,ゲーム開始用のスタートレバー4,各リール3L,3C,3Rの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ5L,5C,5R及びメダル投入口6が設けられている。
4表示窓2の上側には,ゲームの進行に応じて種々のカラーアニメーション映像を映し出す液晶表示部7が設けられている。
5キャビネット1の内部には,@メインCPU及びサブCPU,Aクロックパルス発生回路,B乱数発生器A及びBからなる乱数サンプリング回路,C@)メインCPUに接続され,遊技状態に応じて6種類の当選番号(RBゲームを),)除くごとにそれぞれ所定数値領域をもって区分された当選確率テーブルA現在の遊技状態と当選番号とに応じて17種類の演出パターン番号ごとにそれぞれ所定数値領域を持って区分された演出パターンテーブル,B)現在の遊技状態,決定された演出パターン番号,検知された第1停止リールおよび停止テーブル決定乱数に対応して選択される複数の停止テーブル等を有するROM(1,DサブCPUに接続され,演出パターン番号,現在の遊技状態,現在の)画面状態及び態様決定乱数によって選択される複数の具体的演出態様テーブル等を有するROM(2,E当選番号,演出パターン番号が記憶されるRAM,)Fスタート操作を行うスタートレバー,G液晶表示部の表示を駆動する表示駆動回路,Hスピーカによる音演出を制御するスピーカ駆動回路,Iステッピングモータによるリールの回転を制御するモータ駆動回路,Jステッピングモータによるリールの停止を停止テーブルに従って制御するモータ停止回路,Kストップボタンスイッチによるリールの停止操作を検出するリール停止信号検出回路を含む制御機構が内蔵されている。
第3ストックゲームについて1一般にパチスロ機では,比較的短時間で多くのメダルが獲得できるボーナスゲームがある。このボーナスゲームは,当選抽選で当選すると「7-7-7」,等が揃ったことを条件として,開始されるゲームである。もちろん,ボーナスゲームが当選すると「7-7-7」が揃いやすくなるような停止制御が行われ,るものである。更に,このボーナスゲームに当選しても,タイミングが合わないために「7-7-7」が揃わなかったとしても,ボーナスゲームに当選した権利が次ゲームに持ち越されるようになっている。
なお,ボーナスゲームには,ビッグボーナスゲーム(ゲーム)と,レギュBBラーボーナスゲーム(ゲーム)とがある。同様のボーナスゲームではあるもRBのの,ゲームに比べて,ゲームの方が多くのメダルが獲得できることとRBBBなっている。
2被告物件では,1回のゲームごとに乱数抽選が行われ,ゲーム役に相当すRBJACJACJACJACJACJACる当選番号5--:入賞役に当選しても-(「」),「-」が揃わないように制御される。したがって,当選番号5が乱数抽選にJACよって当選しても,当選番号5の役は成立せず,また次回ゲームでRBゲーム(一般のパチスロ機におけるレギュラーボーナスゲームに相当する)が行われ。,,,ることはないなおこの当選番号5が当選されたことはに記憶されてRAM次回ゲーム以降に貯留(ストック)される(このような操作は「ストック待ち」「」)。,ゲームストックゲームで行われるこのような貯留された当選番号5は所定の演出パターン番号が選択されたときに,別途行われる放出抽選に当選することによって「--」が揃いやすくなる遊技状態となる(こ,JACJACJACのような遊技状態を「ストック放出ゲーム」という。その後「--」),JACJACJACが揃ったときに,次回ゲームはRBゲームとなる。
従って,通常ゲームは,上記のように「ストック待ちゲーム(ストックが全」く行われていない遊技状態「ストックゲーム(ストックが行われている遊技),」状態「ストック放出ゲーム」とに分かれている。),第4被告物件の作動1メダルの投入遊技者がメダルを投入口6に投入する。被告物件は3枚がけ専用機であり,メダル3枚投入によって,中段M,上段U,下段B,右下がりD,右上がりPの合計5本の入賞ラインが有効となる。
メダルを3枚投入すると,ゲーム開始可能状態となり,投入メダルの返却が不能となるが,メダルを1枚または2枚投入したときには,ゲーム開始可能でなく,かつメダルが返却可能となっている。
2入賞役の種類(1)通常ゲーム(ストック待ちゲーム,ストックゲーム,ストック放出ゲーム)における入賞役@左リール「チェリー:当選番号1メダル2枚払出」但し,上段または下段に停止すると,2ライン有効であるためメダル4枚払出となる。
A「スイカ」三つ揃い:当選番号2メダル6枚払出B「ベル」三つ揃い:当選番号3メダル10枚払出C「リプレイ」三つ揃い:当選番号4再遊技D「JAC」三つ揃い:当選番号5メダル5枚払出してRBゲームに移行する権利がストックされる(ゲーRBムに移行すると,15枚払出を最大8回まで受けることができ,約120枚のメダルを獲得できる。)E入賞役ではないが,非当選(ハズレ:当選番号0)(2)RBゲームF当たり:当選番号1(リールの表示は「リプレイ」三つ揃い。但し,左リールを「7」とすることがある)メダル15枚払出G入賞役ではないが,非当選(ハズレ:当選番号0)3ゲームの開始及び当選抽選(RBゲームをのぞく)。遊技者によりスタートレバー4が操作されたことによりゲームが開始されるこのゲーム開始に伴って乱数サンプリング回路において,独立した2つの乱数(図柄抽選用乱数と演出パターン抽選用乱数)がサンプリングされる(0〜65535。当該ゲームの遊技状態に応じて選択される当選番号ごとにそれぞ)れ所定の数値領域をもって区分された例えば図6のような当選確率テーブルとサンプリングされた図柄抽選用乱数とを照合して,当選番号が決定される。この当選番号は,RAMに格納される。
4演出パターン番号の決定現在の遊技状態,当選番号および前記演出パターン抽選用乱数とから,図7に示した演出パターンテーブルにより演出パターン番号が決定される。
5リールの回転開始次に,リールが回転を開始する。
6停止制御(1)第1ストップボタンスイッチ(最初に押したストップボタンスイッチ)の押下第1ストップボタンスイッチに対応するリールが,左リール,中リール,右リールのいずれであるかを検知する(第1停止リールの検知。)(2)第1リール停止テーブルの選択現在の遊技状態と,決定された演出パターン番号と,検知された第1停止リールおよび停止テーブル決定乱数(別途取得される)に対応して,複数の停止テーブル中から今回の第1リール停止テーブルが決定される。
前記第1ストップボタンスイッチが押下された時点における基準位置にある当該リールの図柄番号が検出される。
停止テーブルには,その検出された図柄番号を,基準位置から5コマの範囲のどの位置で停止させるかのデータが書かれている。
第1停止リールが左リールであるときの停止テーブルは,例えば図8に示すようになっている。
(3)第1リールの停止第1ストップボタンスイッチの押下タイミングから停止テーブルによって決定される基準位置から5コマの範囲の停止位置データに基づき,図9にしたがって第1リールが停止する。
(4)第2リールの停止(左リールが第1停止リールのとき)前記決定された演出パターン番号,第1リールの基準位置に停止した図柄番号及び停止テーブル決定乱数(別途取得される)に基づいて停止テーブルが選択される。前記第1リールの停止と同様に(第2リールの基準位置から5コマの範囲内で,第2リールが停止する。)なお,左リールが第1停止リールでないときは,第1リールの停止テーブルがそのまま停止テーブルとして使用される。
(5)第3リールの停止(左リールが第1停止リールのとき)前記決定された演出パターン番号,第1リールの基準位置に停止した図柄番号及び停止テーブル決定乱数(別途取得される)に基づいて停止テーブルが選択される。前記第1リールの停止と同様に(第3リールの基準位置から5コマの範囲内で,第3リールが停止する。)なお,左リールが第1停止リールでないときは,第1リールの停止テーブルがそのまま停止テーブルとして使用される。
7演出パターンによる演出演出の種類は,図5のとおりである。
8遊技音の低下(1)遊技音の種類被告物件には遊技状態としてストック待ちゲームストックゲームス,,「」「」「トック放出ゲーム「アシストゲーム「RBゲーム」の5種類がある。」」これらの各遊技状態において出音手段によって出音される音は,下記の通りである。
「ストック待ちゲーム:操作音のみ,継続性なし」「ストックゲーム」:操作音のみ,継続性なし「ストック放出ゲーム:ワッハッハ」の操作音のみ,継続性なし」「「」,()アシストゲーム:専用の音楽が流れる継続性あり通常ゲームの一種「RBゲーム」:専用の音楽が流れる,継続性あり(2「アシストゲーム「RBゲーム」中の音量低下)」音量低下の処理の概要は,図13に示すとおりである。
待機時間セット後,投入メダルの有無が判断される。被告物件は,メダルを3枚投入するパチスロ機であるが,メダルが1枚でも投入されると,メダル有りとして遊技メダル投入コマンドをサブCPUに送信する。
一方,メダルの投入がないときには,遊技待機時間を経過したか否かが判断される。遊技待機時間を経過したときには,遊技待機コマンドをサブCPUに送信する。
サブCPUでは,コマンド受信の有無及びコマンドの種類を確認する。
コマンドの種類が,遊技待機コマンドであると「アシストゲーム「RBゲ,」ーム」中か否かが判断され「アシストゲーム「RBゲーム」中の場合は「ア,」,」「」。,「」シストゲームRBゲーム中の音量を低下させるまたアシストゲーム「RBゲーム」中でない場合は,デモンストレーション画面へと変化する。
一方,コマンドの種類が,遊技メダル投入コマンドである場合には,現在の状態が遊技待機コマンドからの待機状態であると「アシストゲーム「RBゲ,」ーム」中の場合は「アシストゲーム「RBゲーム」中の低下している音量を,」復帰させる。また「アシストゲーム「RBゲーム」中でない場合は,デモン,」ストレーション画面から,遊技画面へと変更される。
なお,遊技メダルを1枚あるいは2枚投入した場合には,コマンドの種類が,。遊技メダル投入コマンドとなるがそこで遊技メダルの返却を行うことがあるこの時には,メダルなしとなり,遊技待機時間を経過したか否かが判断され,経過しているときには,遊技待機コマンドがサブCPUに送信され「アシスト,ゲーム「RBゲーム」中の場合は「アシストゲーム「RBゲーム」中の音量」,」を低下させる。
以上(図及び公報略)
裁判長裁判官 設樂隆一
裁判官 古河謙一
裁判官 吉川泉